李衣菜「ぽりぽり」泰葉「ぽりぽり」加蓮「ぽりぽり」 (34)



―――事務所


李衣菜「美味しいね、福豆」ポリポリ

泰葉「ん」ポリポリ

加蓮「んむ」ポリポリ


李衣菜「食べだすと止まらないや」ポリポリ

加蓮「こう……夢中になるよね」ポリポリ

泰葉「……蟹鍋、みたいな?」ポリポリ

加蓮「それだ」ポリポリ

李衣菜「いいね。今度作ろっか」ポリポリ


ぽりぽり

  ぽりぽり……


P(もう30分くらいぽりぽりしてる)カタカタ…

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※以下ずっとポリポリ


加蓮「節分てさ」

李衣菜「うん?」

加蓮「なんで節分って言うのかな」

李衣菜「さぁ……たしかに豆っぽくないよね、名前」

泰葉「……豆っぽさってなに?」

李衣菜「……なんだろう?」

加蓮「あれでしょ、几帳面な感じ」

李衣菜「なるほど、マメね」

泰葉「……高垣楓さんリスペクト?」

加蓮「ごめん忘れて」

李衣菜「綺麗だよねぇ、高垣さん」

泰葉「うん。素敵な女性だと思う……」

加蓮「…………あのふわふわな髪の毛……」

李衣菜「ん?」

泰葉「?」


加蓮「豆投げたら、絡まって取るのめんどくさそう」

李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「…………」


李衣菜「ディスってるよね」

泰葉「高垣さんの事務所に潰されそう」

加蓮「ひぃぃ」

李衣菜「豆ぶつけるなんて、天下の歌姫を鬼扱いとか……まずいでしょ」

泰葉「ああ……私たちのアイドル生命もここで……」

加蓮「えっ、えっ。そんなひどいこと言っちゃった?」

泰葉「週刊誌にすっぱ抜かれ……」

李衣菜「連日抗議の電話が鳴り止まず……」

加蓮「いやああああ」


李衣菜「ま、直接本人に言っても笑ってくれるだろーけど」

泰葉「むしろ喜ぶんじゃないかな。ふふ」

加蓮「だよねー」

泰葉「鬼のお面、ノリノリで付けそうよね」

加蓮「鬼なのに豆投げてきそう。酔っぱらいながら」

李衣菜「自由すぎる」

泰葉「また一緒にお仕事したいね」

李衣菜「へへ、うん。……ということで、Pさん?」

加蓮「ふふっ、よろしくねっ」

P「ん? ああ、任せとけ。……ただし、絶対失礼なことするなよ?」

「「「はーい」」」

P「あちら側にも連絡取らないとなー……さてさて、どんな企画を――」カタカタ ブツブツ


加蓮「で」

李衣菜「で?」

加蓮「節分。名前は置いといて、どうして鬼は豆ぶつけられただけで降参しちゃうわけ?」

泰葉「……たしかに」

李衣菜「貧弱だね、鬼」

加蓮「でしょ? そんなだったらもう、豆じゃなくてもいいと思わない?」

李衣菜「んじゃ、代わりになにぶつける?」

泰葉「なにがいいかな……。あ、そういえば」

加蓮「はい、岡崎さん」

泰葉「はい。……えっと、北海道では福豆じゃなくて落花生を撒くって聞いたことあるの」

李衣菜「へぇ、落花生? って、豆とほとんど変わらないじゃん」

加蓮「ふふ、ピーナッツだもんね。誰から聞いたの?」

泰葉「うん、この間一緒にお仕事した双葉杏さんに。落花生なら殻のまま拾いやすい、って理由で広まったって」

李衣菜「……それは双葉さんだからじゃない?」

加蓮「そう聞くといまいち信用が……」

泰葉「う、うーん……こういうことででたらめを言う人じゃないと思うんだけど」

李衣菜「まぁ出身地だしね」

泰葉「北国の妖精……なんて、かわいいあだ名もあるものね」

加蓮「あのスタンス、本気なのかな?」

李衣菜「じゃない? やるときはやる、ってかっこいいよね。ロックだよ」

泰葉「李衣菜もあのTシャツ着る? ふふふ」

加蓮「あは、意外と似合うんじゃない?」

李衣菜「そうかな? へへ、なら許可取らないと」

泰葉「ということでPさん」

李衣菜「双葉さんとのお仕事もお願いしますっ」

P「来ると思った。うん、いい機会だし、歳も近いんだから親睦深めるのもいいんじゃないか?」

加蓮「そだね。広げようアイドルの友情の輪♪」

李衣菜「あれ、歳近いって双葉さん……杏ちゃんっていくつだっけ?」

泰葉「17歳だって言ってたけど」

李衣菜「…………マジで?」

泰葉「うん」

加蓮「ほんとに妖精なんじゃないの……」

P「そういやあのプロダクションに知り合いいたな……名刺どこやったか」ゴソゴソ…


李衣菜「さぁ、歌姫とも妖精とも友だちになろう!」

加蓮「うーん、芸能界ってファンタジー……」

泰葉「ふふっ、不思議な世界よね。私も長いこといるけど、まだまだ知らないことあるもの」

李衣菜「そういえば、泰葉っていつから芸能界にいるの?」

加蓮「あ、それ気になってた。私、昔からテレビで見たことあったし」

泰葉「ああ、うん……どのくらいかな? 5歳のときからだったかな……」

「「え゛」」

東北はそうらしいね

泰葉「だから10年……11年か。そのくらい?」

李衣菜「じゅ、10年以上とか……凄まじいね」

加蓮「想像もつかないなぁ……」

泰葉「ふふ、いろんな大人のいろんな思惑を見て育ちました」

加蓮「わ、笑って話すこと?」

泰葉「笑って話せるのも、今が楽しいから。11年、芸能界にいたから……こうして2人に出会えたんだって思うの」

李衣菜「泰葉……!」

泰葉「もちろん、Pさんにも感謝してます。ふふふ♪」

P「ん? ああ……ふふ、いいさ」

李衣菜「泣ける」

加蓮「泣いた」

李衣菜「さぁさぁ泰葉、もっと福豆食べて」

加蓮「ほらほら食べて」

泰葉「た、食べてるけど。待って、そんなにいらないよ……」

李衣菜「泰葉を鬼から守れっ」ポイポイ

加蓮「泣いた赤鬼っ」ポイポイ

泰葉「それ絵本……くすっ、ありがと2人とも……♪」

李衣菜「おにはそとー!」

加蓮「やすはうちー!」

P「あー、袋から出すなよー。掃除大変だからなー?」

李衣菜「大丈夫です、直接撒いたら食べられませんし。もったいないじゃないですか」

加蓮「床も汚れないしねー」

P「ならいいけど。……というか食いすぎだろ。いくつ食べたんだよ……歳の分の10倍は行ってないか?」

泰葉「あ。……違うんです、福豆の方から口に入ってくるんです」

P「んなバカな」

加蓮「ふふっ。歳の分食べたら健康に過ごせるんだから、その10倍食べたらもっと健康になれるよ」

P「どんな理屈だよ……」


李衣菜「よし、加蓮はあと100倍食べなきゃ」

泰葉「毎日3食福豆にしなきゃ」

加蓮「言わなきゃ良かった」

李衣菜「風邪は外、だよ」

泰葉「ほら、『邪』って字、入ってるじゃない。鬼みたいなものでしょう?」

加蓮「はいはい……んもー、バカなんだから」

李衣菜「一緒にバカになろう、バカは風邪ひかないって言うしね!」

泰葉「李衣菜、うまい」

李衣菜「えへへへ」

加蓮「そんなうまくないし……ふふっ♪」

李衣菜「福豆もうまい。ぽりぽり」

加蓮「んむ。ぽりぽり」

泰葉「うん。ぽりぽり」

P(俺の分も残しといて)カタカタ…


加蓮「……なんの話してたんだっけ?」

泰葉「『なんで節分?』『鬼弱すぎじゃない?』って話?」

李衣菜「それそれ」

加蓮「『節』で『分』とは」

泰葉「んー……」

李衣菜「一小節で分ける。楽譜のことなんだよ!」

泰葉「……うん。そう」

加蓮「座布団全部持ってってー」

李衣菜「うーんきびしー」

P「……『季節を分ける』日だから、だってさ。たしかに立春の前日だな、節分は」カチカチ

加蓮「りっしゅん」

李衣菜「ヘイ、リッスン!」

泰葉「妖精がここにも」

李衣菜「ロックの妖精と呼んでくれ、べいべー」

加蓮「ぷっ」

泰葉「……ふっ」

李衣菜「だから厳しくない?」

P「立春は春の始めって意味で……聞いてる?」

李衣菜「あ、聞いてます聞いてます」

加蓮「まだ寒いのに春の始めって、変なの」

泰葉「でも、九州だとそろそろ梅が咲き始めるところもあるよ?」

加蓮「はやっ! そんな早いんだ?」

李衣菜「お、長崎県民の本領発揮?」

泰葉「ほ、本領ってわけでも……」

P「…………へぇ、長崎だと節分にクジラ料理食べるのか」カチカチ…

泰葉「あっ、小さな頃食べたことあります! 懐かしいなぁ……」

李衣菜「クジラ」

加蓮「クジラ?」


「「……クジラ!?」」

加蓮「クジラってあのクジラ? 海にいる?」

泰葉「ええ、あのクジラ。……海以外に知らないけど私」

李衣菜「クジラって……スーパーに売ってたかな」

泰葉「こっちじゃ見たことないかも。九州じゃ珍しくないの、クジラ料理は」

李衣菜「ほへー……」

加蓮「っていうかなんで節分にクジラ食べるの?」

P「大きなものを食べると縁起がいいから、だってさ。でかいにも程があるよな」

加蓮「動物の中で一番大きいよね、クジラって……豪快なんだね、九州人」

李衣菜「泰葉も豪快?」

泰葉「え、どうかな……自分じゃ分からないけど」

加蓮「がっはっは、って笑いながら手づかみでクジラを食べる泰葉」

李衣菜「ぶっふぉ」

泰葉「北条さん」

加蓮「あっはいごめんなさい」

李衣菜「んっふぐ、ぐ、くふふっふふ……!!」

泰葉「……李衣菜?」ジトッ

李衣菜「は、はい――んふっ、あははあは♪」

泰葉「もうっ!」

P「で、なんで鬼に豆が効くのかって話な」

加蓮「うんうん、それね。……んふふっ、ダメ、豪快な泰葉想像しちゃって……♪」

泰葉「…………」ペチ

加蓮「あいたっ」

P「……いいか?」

泰葉「はぁ……すみません、Pさん」

P「ふふ。……簡単に言うと、鬼の目を潰すために豆をぶつけるらしい」

李衣菜「え、えぐいですね」

泰葉「それは……退散もしますよね」

加蓮「鬼がなにしたっていうの! ……ああ悪さするんだっけ」

泰葉「セルフツッコミ……」

李衣菜「袋のまま投げてあげたら目に入らないよね」

加蓮「散らばらないし合理的……そっか、そういうことだったんだ」

泰葉「違うと思うけど……ふふ、優しいね2人とも」

李衣菜「鬼も笑顔にしてこそアイドルでしょ!」

加蓮「そうそう! みんなみんな楽しんでもらわないとねっ」

泰葉「うん、いい心がけだと思う。私も、どんな人も笑顔にしたいな……!」


加蓮「それじゃあ、ふくはーうちー♪」ポイポイ

泰葉「おにもーうちー。ふふふっ♪」ポイポイ

李衣菜「ちょ、いたいいたい!? なんで私にぶつけ、ちょっとぉ!」


P「……あはは。みんなが今年も健康でいられますように」ポリポリ…



がちゃ……


ちひろ「……だ、大丈夫ですか? 私、豆ぶつけられませんか?」ヒョコ


P「あ、ちひろさん。どこ行ってたんですか……って、なに怯えてるんです?」

ちひろ「あ、い、いえその……誰も彼も私のこと鬼だ悪魔だって、う、うぅぅ……!」グスッ

P「は? 誰ですかそんなひどいこと言う奴は。とっちめてやりますよ」

ちひろ「ぷ、ぷろでゅーさーさぁん……!」ウルウル


李衣菜「あっ、ちひろさんおかえりなさい!」

泰葉「ちひろさんもどうですか、福豆。美味しいですよ♪」

加蓮「ちひろさんの分、まだ残ってるよー。ふふっ」


ちひろ「…………み゛ん゛な゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛」ブワッ

P「きたない」



おわり

というお話だったのさ
脱線に脱線を重ねてもしっかりオチてくれるちひろさんは女神

習わしって地域によってさまざまだから調べてて楽しかった

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