比企谷「本物を見つける事はできない」(103)


由比ヶ浜のマンション


     チーン☆

由比ヶ浜「あ、エレベーター来たよ、ヒッキー」

比企谷「ここでいいぞ、由比ヶ浜」

比企谷「わざわざ下まで見送りに来なくてもいい」

由比ヶ浜「いいの。 ヒッキーには買い物に付き合ってもらって」

由比ヶ浜「荷物持ちしてくれたんだもん」

由比ヶ浜「そのくらいさせてよ」

比企谷「……まあ由比ヶ浜がそれでいいのなら構わないが」




     ある冬の日の放課後

     奉仕部の部活の後、由比ヶ浜に頼みごとをされた。


     今、由比ヶ浜が言った通り

     買い物に付き合って荷物持ちをして欲しい、という

     他愛の無い内容である。


     確かに一人、しかも女の子が持つのには苦労する量だった。

     で、俺は由比ヶ浜の自宅マンションまで

     重い荷物担いで付いて行ったという訳だ。




     ヴィー… ヴィー…

比企谷「ん?」

     エレベーターに乗り込み

     『 閉 』のボタンを押した時

     けたたましい着信音が、俺のケータイから聞こえてきた。

由比ヶ浜「なに? ずいぶん変わった着信にしてるんだね?」

由比ヶ浜「誰からなの?」

比企谷「…………」つ(ケータイ)

     ガコン☆

比企谷「!!」

比企谷「やべぇ!!」

由比ヶ浜「え?」


     ゴゴゴゴゴゴ……

     …………

由比ヶ浜「はあっはあっはあっ……」

比企谷「はあっはあっはあっ……」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「い、今の……」

由比ヶ浜「地震?」

比企谷「ああ……」

比企谷「さっきのケータイの着信」

比企谷「緊急地震速報だったんだ」

由比ヶ浜「そうだったの……」

しもた……いっこ飛ばしてもうた……
>>4は見なかった事にしてください……


比企谷「由比ヶ浜、そこをどけ!」

由比ヶ浜「え?え? きゃあっ!?」

比企谷「早くボタンを――」

     ……ゴゴゴゴゴゴッ!

     ガガガガガガガガガガガッ! ギギッ

     ガゴンッ! ギィィッ!

由比ヶ浜「キャ―――――――――――!?」

比企谷「うわあああああああああああああっ!!」

     ガコンッ! ガガンッ!

     ギギギギギギ…… ガガンッ!

由比ヶ浜「やだやだやだやだやだっ!!」

比企谷「くっ……そおおおおおっ!!」


     ゴゴゴゴゴゴ……

     …………

由比ヶ浜「はあっはあっはあっ……」

比企谷「はあっはあっはあっ……」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「い、今の……」

由比ヶ浜「地震?」

比企谷「ああ……」

比企谷「さっきのケータイの着信」

比企谷「緊急地震速報だったんだ」

由比ヶ浜「そうだったの……」


比企谷「それよりも……」

     カチカチカチ…

比企谷「やっぱりか……動かなくなってる」

由比ヶ浜「え? 動かないって……エレベーターが?」

比企谷「ああ……」

比企谷「非常灯が点灯しているし、緊急ブレーキが作動したんだ」

由比ヶ浜「そっかぁ……」

由比ヶ浜「じゃあ早く助けを呼ばないと」

比企谷「…………」

比企谷「……そうだな」

比企谷「とにかく、俺達がここに居るって伝えないとな」




     俺は非常用ボタンを押して

     このマンションの管理人と連絡をとり

     エレベーター内に閉じ込められていると

     伝える事が出来た。


     この事は少なからず

     俺と由比ヶ浜に安心感をもたらした。






     だが……



     不安要素も有る。

     それが的中しない事を祈るばかりだ。





―――――――――――


地震発生から約一時間後


由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……遅いね、救助」

比企谷「まだ一時間くらいしか経ってないだろ」

比企谷「こういう時は焦らず、じっくりと待つもんだ」

由比ヶ浜「そうだけど……」

由比ヶ浜「あ、ほら、映画だとこういう時って」

由比ヶ浜「よく天井をこじ開けて脱出してるじゃない?」

由比ヶ浜「あれ出来ないかな?」


比企谷「あれはただのフィクション」

比企谷「実際は、たとえ天井に出れたとしても」

比企谷「吊ってるワイヤーとかケーブルとかで怪我をする事の方が多いそうだ」

比企谷「つまり、素人は余計な事をしない方がいい」

由比ヶ浜「えー」

比企谷「えーじゃありません」

比企谷「大人しく待っていましょう」

由比ヶ浜「ぶぅー」


     グラッ…

     ギギギギギ…… ユラユラ…

由比ヶ浜「ひっ……!」

比企谷「くっ……また余震か……!」

     …………

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

比企谷「ふう……」

比企谷「収まったか……」

由比ヶ浜「こんなに余震が来るなんて……」

由比ヶ浜「地震って怖いんだね……」

比企谷「ああ……まったくだな」



―――――――――――


地震発生から約3時間後


由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……来ないね」

比企谷「……ん」

     ……グウウウ

由比ヶ浜「」///

比企谷「俺も腹が減ったな」

由比ヶ浜「バ、バカー! ヒッキーのバカー!」///

由比ヶ浜「こ、こんなの聞かないでよ!」


比企谷「……こんなもの別に大した事じゃない」

由比ヶ浜「ヒッキーキモい!」///

比企谷「いいから落ち着け、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「むう……」

比企谷「…………」

比企谷「由比ヶ浜、とりあえず座ろう」

     バサバサバサ……

由比ヶ浜「え? どうしたの急に?」

由比ヶ浜「カバンの中身を取り出して?」

比企谷「……いいからどれでもいい」

比企谷「教科書でもノートでも何でもいいから座布団代わりにして座ろう」


     チョコン…

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「どうしたの? ヒッキー?」

由比ヶ浜「何か……怖い顔してる」

比企谷「…………」

比企谷「そうだな……まず最初に言っておくが」

比企谷「長期戦を覚悟した方がいいと思う」

由比ヶ浜「え? 長期戦?」

比企谷「……簡単に言えば」

比企谷「救助は明日以降になるのかもしれない」

由比ヶ浜「」

由比ヶ浜「そ、そんな!?」

由比ヶ浜「どうして!?」


比企谷「第一の理由として」

比企谷「今回の地震。 ワンセグで見たが」

比企谷「かなり広範囲で強い揺れになった様なんだ」

由比ヶ浜「……?」

比企谷「……エレベーターに閉じ込められたのが」

比企谷「俺達だけだと思うか?」

由比ヶ浜「!!」

比企谷「それと地震の被害も気になる」

比企谷「崩れた建物やら地割れやらで道路が寸断されてたら」

比企谷「救助する側も移動しにくいだろうし……」

由比ヶ浜「そ、そんな!!」

比企谷「だから落ち着け、由比ヶ浜」


比企谷「現状『待つこと』しか出来ないが」

比企谷「俺達がここに閉じ込められているのは、伝える事が出来た」

比企谷「……多少時間はかかるかもしれないが」

比企谷「必ず救助される」

比企谷「落ち着いて、それを待てばいい」

由比ヶ浜「……そっか」

由比ヶ浜「ヒッキーがそう言うのなら、きっと大丈夫だね」

比企谷「でも、備えあれば憂いなし」

比企谷「由比ヶ浜。 今の内に自分の持ち物を確認しておけ」

比企谷「サバイバルの基本だ」

由比ヶ浜「うん、分かったよ、ヒッキー」

比企谷「…………」


由比ヶ浜「……あたしの持ち物は」

由比ヶ浜「ケータイとハンカチ、家の鍵とティッシュにお財布」

由比ヶ浜「それと飴玉が4つ……かな」

由比ヶ浜「買ってきた物とカバン、そのまま家に置いてきたから」

由比ヶ浜「そんな感じだよ」

比企谷「そうか。 由比ヶ浜もケータイ持ってたのか」

由比ヶ浜「うん」

由比ヶ浜「電源切ってたんだ」

由比ヶ浜(……ヒッキーと二人きりの時間、邪魔されたくなかったし)///

比企谷「よし、由比ヶ浜のケータイはそのまま電源を落としたままにしておいてくれ」

比企谷「俺のは時々ワンセグを見るのに使う」

由比ヶ浜「うん」


比企谷「俺の方は……」

比企谷「カバンの中身……教科書とノートに飲みかけのペットボトルのお茶(500ml)」

比企谷「それを入れてたビニール袋に昼飯のゴミ……」

比企谷「後は筆記用具くらいか」

比企谷「おっと。 家の鍵と財布は俺も持ってた」

比企谷「それに生徒手帳。 カバンの脇ポケットに入れっぱなしだけどな」

由比ヶ浜「……今さら言っても仕方ないけど」

由比ヶ浜「あたしの家に帰る時なら、いろいろあったのにな……」

比企谷「……それは気にするな」

比企谷「こうなるって分かっていれば、誰も不慮の事故に合う事はない」

由比ヶ浜「……うん」


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「パパとママ……」

由比ヶ浜「大丈夫かな……」

比企谷「…………」

比企谷「心配なら、伝言ダイヤルサービスを使うといい」

由比ヶ浜「え? 伝言?」

比企谷「こういった大規模災害時に運用されるんだ」

比企谷「普通の電話だと回線は混雑してダウンする事もありうるから」

比企谷「それを防ぐ意味も有る」

由比ヶ浜「へぇ~。 それで? どうやるの?」


比企谷「まず『 171 』に掛ける」

由比ヶ浜「うん」

比企谷「後は音声ガイダンスに従って録音すればいい」

比企谷「やり方を教えてくれる」

比企谷「ただし、固定電話の電話番号が必要になる」

比企谷「それも市外局番からな」

由比ヶ浜「分かったよ、ヒッキー!」

由比ヶ浜「じゃ、ちょっとヒッキーのケータイ、貸してくれる?」

比企谷「おう」つ(ケータイ)

由比ヶ浜「ありがとう。 えーっと……171……と」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……あ」

比企谷「どうした? 由比ヶ浜?」


由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「電話番号……思い出せない」

比企谷「……お前のケータイ使え。 多少はいいから」

―――――――――――

由比ヶ浜「ふう……良かった」 モジモジ…

由比ヶ浜「パパもママも無事だったよ」 モジモジ…

比企谷「良かったな」

比企谷「俺も小町に両親とも無事だと確認できた」

由比ヶ浜「うん。 本当に良かったよね」 モジモジ…

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」 モジモジ…


比企谷「……トイレか?」

由比ヶ浜「んなっ!?」///

由比ヶ浜「なななな、何を言ってるのよ!」///

由比ヶ浜「ヒッキー超キモい!」///

比企谷「……どうあがいても生理現象は起こってしまうものだろ」

     ゴソゴソ… バッ

比企谷「ほら」

由比ヶ浜「……へ?」

比企谷「これは……もう避けられないし、避け様が無い」

比企谷「俺のカバンに……その……していいから」

由比ヶ浜「」///

比企谷「恥ずかしいのは分かる」

比企谷「でも……その……我慢するのは体にも良くない」


由比ヶ浜「…………」///

     クルッ

比企谷「ほら。 この通り俺は見ないし、もちろん耳も塞ぐ」

由比ヶ浜「……っ」///

比企谷「……あとな」

比企谷「ここは俺と由比ヶ浜だけだが……」

比企谷「多人数で閉じ込められているエレベーターは、もっと悲惨だろう」

由比ヶ浜「!」

比企谷「……いずれ」

比企谷「俺も由比ヶ浜と同様の恥ずかしい思いをする事になる」

由比ヶ浜「…………」///


由比ヶ浜「……絶対」///

由比ヶ浜「こっち見ないでね……」///

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜(……聞こえてないの?)

比企谷(……ここでうかつに返事すると聞こえてるのがバレてしまうからな)

比企谷「……終わったら背中を叩いて合図してくれ」

由比ヶ浜「!」

由比ヶ浜(や、やっぱり、聞こえてないんだ……)

由比ヶ浜「う、うん……」

比企谷「…………」



     チロチロチロ… シャー…


比企谷(うわ……力いっぱい耳塞いでるのに)

比企谷(何で詳細に聞こえてしまうんだよッ!)///

比企谷(…………)///

比企谷(ううう……)///

比企谷(これはヤバイ……)///

比企谷(見えないだけに、色々と妄想してしまうッ……!)///

比企谷(なんなんだよ、このプレイは!)///

     ……ムク

比企谷(ッ!!)


比企谷(止めなさい!)///

比企谷(今立ち上がらなくていいから!)///

比企谷(八幡の八幡! 静まってくれ!)///


     シャー… チロチロ… チロ…


比企谷(!)

比企谷(良かった……終わったみたいだな)

     スッ… スススッ…

比企谷(…………)

比企谷(この衣擦れの音……パンツを履いてる音なの……)

比企谷(!!)///

比企谷(そ、想像するなッ! 比企谷八幡!)


     バッキーン!

比企谷(…………)///

比企谷(……努力むなしく)///

比企谷(臨戦態勢に入ってしまいましたか……)///

     トントン

比企谷「!!」/// ビクッ!

由比ヶ浜「……お……終わったよ」///

由比ヶ浜「ヒッキー」///

比企谷「お……おう……」///

由比ヶ浜「…………」///

由比ヶ浜「……ぐすっ」///

比企谷「!」


比企谷「おいおい……由比ヶ浜」

比企谷「何も泣かなくても……」

由比ヶ浜「だって……だってぇ……ぐすっ……」///

比企谷「……そんなに嫌なのか」

由比ヶ浜「えぐっ……ぐすっ……ひっく……」///

比企谷「けどな……さっきも言ったが……」

比企谷「!!」

由比ヶ浜「……?」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……ヒッキー?」


比企谷「……安心しろ、由比ヶ浜」

比企谷「俺もお前の気持ちを理解する時が早くも来た」

由比ヶ浜「」

比企谷「しかも……大きい方で」

由比ヶ浜「」

―――――――――――

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

比企谷(くそ……出した本人が言うのもなんだが)

比企谷(臭い……)


比企谷(おそらく)

比企谷(昨日牛丼に付け合せとして たくあんを食べたのが良くなかった……)

比企谷(最強の臭くなる取り合わせだよな……はあ)

     ブル…

比企谷「寒っ……冷え込んできたな」

比企谷「…………」 サスリサスリ…

比企谷「!」

比企谷「由比ヶ浜、大丈夫か?」

由比ヶ浜「……え?」

由比ヶ浜「大丈夫だよ?」

     ブルブルブル…

比企谷「……どう見ても震えてるじゃないか」

比企谷(お互いジャケットは着ているが、制服のままだしな)

比企谷(おまけに由比ヶ浜はスカートで生足……そりゃ寒い)


比企谷「よし、待ってろ、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「え?」

     ゴソゴソ… バッ

比企谷「うひぃ……寒っ」

由比ヶ浜「!?」///

由比ヶ浜「ちょ、ヒッキー!?」///

由比ヶ浜「な、何、服を脱いでるの!?」///

     フワッ…

由比ヶ浜「え……」



     俺は、Tシャツ以外の上着を全部脱いで

     それを由比ヶ浜の下半身に多いかぶせた。


比企谷「ほれ。 俺の来てた服で悪いが」

比企谷「それをその足に掛けておけ」

比企谷「多少はマシだろ」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

比企谷「俺はこのジャケットがあれば、シャツとズボンだけで何とかいけるから」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ありがとう」

比企谷「ん……」



―――――――――――








     数時間後










比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

     ブルブルブル…

     ガタガタガタ…

比企谷(くそ……マジで凍えそうだ)

比企谷(今日の天気予報、かなり冷え込むって言ってたか……?)

     ブルブルブル…

     ガタガタガタ…

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」


比企谷(…………)

比企谷(……もう)

比企谷(四の五の言ってる場合じゃない)

比企谷(ここに閉じ込められてから約10時間……)

比企谷(今は深夜2時)

比企谷(このままだと朝の冷え込みに耐えられる気がしない……)

     ブルブルブル…

     ガタガタガタ…

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」


     ブルブルブル…

     ガタガタガタ…

比企谷「ゆ……由比ヶ浜……」

由比ヶ浜「!」

由比ヶ浜「う……うん……」

比企谷「たぶん……説明しなくても分かると思うが」

比企谷「もう他に……いい手がない」

由比ヶ浜「……うん」

比企谷「約束する」

比企谷「由比ヶ浜を傷つける様な事はしないと」

由比ヶ浜「……うん」

比企谷「……よし」


比企谷「じゃあ……お互いの体温で……暖め合うぞ」

由比ヶ浜「……うん」

比企谷「まず……由比ヶ浜の着ている上の服」

比企谷「俺と同じ様にジャケットにシャツだけ着て、後は俺達の足に掛ける」

由比ヶ浜「……うん」

比企谷「その後でお互いのジャケットのチャックを連結させて合体して……」

比企谷「その……こう……抱きしめ合う、みたいな形で……」///

由比ヶ浜「……う、うん」///

由比ヶ浜「で、でも……は、恥ずかしいから……」///

由比ヶ浜「ヒッキーは目をつぶってて」///

由比ヶ浜「開けていいって言うまでずっとだからね?」///

比企谷「ああ、分かってる」 スッ…


由比ヶ浜「…………」

     ススッ… スッ… シュルシュル…

比企谷「…………」

由比ヶ浜「よ……ううっ……寒っ……ふっ……くっ……」

     ススッ… スッ… シュルシュル…

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……よっと」

     ファサ…

由比ヶ浜「ヒッキー……準備できた、から……その……」

由比ヶ浜「ジャケットのチャック、開けるね?」

比企谷「……おう」


     ジィー…

比企谷(うひぃ……寒っ……)

由比ヶ浜「よ……っと……」

     カチカチ… カチャ☆

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「これで後は……閉めるだけ……と」

     ジィー…

比企谷(っ!?)

比企谷(こ、この二つの柔らかく、非常に心地よい感触はっ!!)///

由比ヶ浜「…………」///

由比ヶ浜「……お、終わったよ、ヒッキー」///

由比ヶ浜「もう目を開けて……いいよ」///


比企谷「……ん」///

由比ヶ浜「…………」///


比企谷・由比ヶ浜(近い近い近い近い近いっ!)///

比企谷・由比ヶ浜(顔が超近いっ!!)///


比企谷「…………」///

由比ヶ浜「…………」///


比企谷(そ、それにしても由比ヶ浜のやつ)///

比企谷(シャツ越しですら圧倒的な存在感を示せる)///

比企谷(いいモノをお持ちなんだな……)///



     ブルブルブル…

     ガタガタガタ…


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」


     ブルブルブル…

     ガタガタガタ…


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」



     ……ホカ


比企谷(……お)

由比ヶ浜「…………」


     ホカ ホカ


比企谷(温まってきた……)

比企谷(正直……心地いい)

由比ヶ浜「…………」

比企谷(足の方も俺と由比ヶ浜二人分の上着を掛けてあるから、厚みが出来て)

比企谷(思った以上に暖かい)

比企谷(……これで何とか凌げそうだな)

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜「……ねえ、ヒッキー」

比企谷「ん?」

由比ヶ浜「手……ジャケットの中にしまってもいいかな?」

比企谷「……ああ」

比企谷「別に構わないぞ」

由比ヶ浜「ありがとう」

     スッ… スススッ…

比企谷「うひゃっ!?」

由比ヶ浜「あ、ごめん、ヒッキー」

比企谷「い、いや。 ちょっと驚いただけだ」

比企谷「それにしても手……冷え切ってたんだな」

由比ヶ浜「うん……」


由比ヶ浜「ヒッキーも……手」

由比ヶ浜「しまったらどうかな?」

比企谷「!」///

比企谷「い、いや……それはさすがにマズイだろ」///

比企谷「この状態でしまうと……直接お前の体に……」///

由比ヶ浜「…………」///

由比ヶ浜「いいよ、ヒッキーなら。 シャツ越しだし」///

比企谷「」///

比企谷「あ、あのな、由比ヶ浜……」///

由比ヶ浜「だって、ヒッキー何もしないって約束……え?」

由比ヶ浜(何か……おなかの辺りでもぞもぞ……)

由比ヶ浜(っ!?)///


比企谷「…………」///

由比ヶ浜「…………」///

比企谷「……ほらな」///

比企谷「由比ヶ浜がそういう事を言うから……反応しちまった」///

由比ヶ浜「…………」///

由比ヶ浜「……で、でも、ヒッキーも手が寒いでしょ?」///

比企谷「そ、そりゃ、寒い。 けど……」///

比企谷「情けないが、理性を保つ自信がない……」///

由比ヶ浜「…………」///

由比ヶ浜「大丈夫。 あたし、ヒッキーの事……信じてるから」///

由比ヶ浜「だから……ヒッキーも手を入れて? 寒いんでしょ?」///


比企谷「…………」///

比企谷「…………」///

比企谷「……ええいっ! クソッ……!」///

     ゴソゴソ… モゾモゾ…

由比ヶ浜「ひゃあっ!?」///

比企谷「す、すまん……」///

由比ヶ浜「あはは……ヒッキーの手も冷え切ってたんだね」///

比企谷「な、なるべく、由比ヶ浜に障らない様に……」

     ギュッ…

由比ヶ浜「…………」///

比企谷「」///

比企谷「ゆ、由比ヶ浜……?」///




     由比ヶ浜は、俺の背中に手を回して

     がっちりホールドしてきた。

     ……要約すると抱きしめてきたのである。


     ああああああ当たってますっ

     お互いのいろんなモノががががががっ



由比ヶ浜「な、なるべく、くっついた方が暖かいし……」///

比企谷「…………」///




     由比ヶ浜は正論を述べているが

     はっきり言って、フルパワー状態の八幡の八幡を

     由比ヶ浜の下腹部に押し付けている状態である。


     だが……

     当然の事ながら、俺も由比ヶ浜も跳ね上がった

     お互いの心拍数を誤魔化しようが無く

     それを感じる事で、俺はある事を思い出し

     冷静になった……




比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」///

     ギュッ…

由比ヶ浜「……っ」///


     俺は、由比ヶ浜の背中に両手を回し

     彼女を抱きしめた。


     でも、それ以上の事はしなかった。


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」




     『 吊り橋効果 』


     極限状態に陥った男女が

     極度の緊張状態を続ける事で

     それを恋愛感情として錯覚してしまう現象……


     おそらくこれだろう。

     由比ヶ浜は一時的に精神錯乱を起こしているに違いない。

     そして、俺も危うくそれに負けるところだった……



比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」zzz




     いつの間にか……

     体が温まった事で、由比ヶ浜は眠っていた。


     気温は……たぶん氷点下では無いだろう。

     体感的にはそう感じてしまうが、一応閉ざされた空間ではある為

     おそらく10℃前後ではないかと思う。


     そんな事を考えながら、いつしか

     俺も眠りに付いていた……





―――――――――――




地震発生から約16時間後


比企谷「…………」

比企谷「……ん」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「由比ヶはっ……!?」

比企谷「ゲホッ!ゲホッ!」

由比ヶ浜「……ん?」

由比ヶ浜「え……? ……何?」

比企谷「…………」///


由比ヶ浜「ゲホッ!? ゴホッ!!」///

由比ヶ浜「ヒッ、ヒッキー!?」///

由比ヶ浜「ゴホッ…! ゴホッ…!」

比企谷「…………」


比企谷(……喉がカラカラだ)

比企谷(昨日の夕方から飲まず食わず)

比企谷(しかも乾燥した冬の空気の中で寝てたら、こうなるわな……)


比企谷「……よし、由比ヶ浜……ケホッ」

比企谷「とりあえず、分離しよう」

由比ヶ浜「…………」 コクッ


比企谷「昨日の昼飯の飲み残しのお茶」

比企谷「これだけしかない……」つ(ペットボトル)

由比ヶ浜「…………」

比企谷「二人で分けよう……ケホッ」

比企谷「あと飲むときは口に含んで、少しずつ飲み込め」

比企谷「冷たいから暖めて……ゴホッ……腹に入れないと体に良くない」

由比ヶ浜「…………」 コクッ

比企谷「よし」

比企谷「ほら……半分……ゆっくり行け」つ(ペットボトル)

由比ヶ浜「……ありがとう」つ(ペットボトル)

     グビッ…

比企谷「…………」




     残ってたお茶のだいだい半分……

     それを口に含むと、由比ヶ浜はその残りが入ったペットボトルを

     俺に差し出す。



比企谷「ん……」

     グビッ…

比企谷(くっ……冷てぇ……)

比企谷(だが、これが最後の水分補給……)

比企谷(人間は一日約2リットルの水分補給が理想と言われている)

比企谷(今日中に助けが来ないとヤバイな)

比企谷(…………)

比企谷(いや、必ず来る)

比企谷(必ず)



―――――――――――


昼ごろ

地震発生から20時間後


由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「……あ」

比企谷「ん?」

由比ヶ浜「そだ。 これ忘れてた」

     ゴソゴソ…

由比ヶ浜「はいこれ」

比企谷「……飴玉か」


由比ヶ浜「のど飴なら もっと良かったんだけどね……」

由比ヶ浜「4つあるから2つずつ食べよう?」

比企谷「悪いな」

由比ヶ浜「ううん。 あたしもヒッキーのお茶、分けてもらったし」

由比ヶ浜「お互い様だよ」

     パクッ…

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……ねえ、ヒッキー」

比企谷「ん?」


由比ヶ浜「地震が起こった時、さ」

由比ヶ浜「あたしを……突き飛ばして何かしようとしてたよね?」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「何をしようとしてたの?」

比企谷「……ボタンを押そうとしたんだ」

由比ヶ浜「何階の?」

比企谷「どこの階でもいい」

由比ヶ浜「?」

比企谷「意外と知られていないんだがな」

比企谷「エレベーターは地震が起こった直後、数秒は動いている」

由比ヶ浜「え……」


比企谷「つまり緊急停止する前に最寄りの階で」

比企谷「扉が開いた状態で止めようとしたんだ」

由比ヶ浜「!!」

比企谷「言っておくが」

比企谷「俺も着信音で緊急地震速報だと分かっていれば」

比企谷「もっと早く対応できていたハズなんだよ」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「だから……気にするな」

由比ヶ浜「……う、うん」

由比ヶ浜「…………」

     ……キシッ

由比ヶ浜「!」

比企谷「!」


由比ヶ浜「また余震……?」

比企谷「……だな」

     ヴィー… ヴィー…

比企谷「!?」

比企谷「緊急地震速報!?」

由比ヶ浜「え?」

     キシキシキシッ

     ガタガタガタガタッ

由比ヶ浜「きゃ!?」

比企谷「くっ……!」


     ゴゴゴゴゴゴッ!

     ガガガガガガガガガガガッ! ギギッ

     ガゴンッ! ギィィッ!

由比ヶ浜「やだやだやだぁっ!」

比企谷「……っ! ……っ!」

     ガコンッ! ガガンッ!

     ギギギギギギ…… ガガンッ!

     ゴゴゴゴゴゴ……

     …………

由比ヶ浜「えぐっ……ぐすっ……ひぎっ……」

比企谷「…………」

     …………

比企谷「……治まったか」

由比ヶ浜「もうやだぁ……もうやだよぉ……ぐすっ……」


     ギュッ…

由比ヶ浜「え……?」

比企谷「…………」

比企谷「落ち着け、由比ヶ浜」

比企谷「俺だって怖い」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「うん」

     ギュッ…

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」


比企谷「…………」つ(ケータイ)


     ……ており

     再び首都圏を襲った強い揺れは……


比企谷「…………」つ(ケータイ)

比企谷(……推定M(マグニチュード)……8,8!?)

比企谷(関東地方沿岸部全県で震度6強の強い揺れを観測……マジか)

比企谷(くそっ……)

比企谷(明らかに今回の地震の規模の方が大きい)

比企谷(…………)

比企谷(これが本震だったのか……)

比企谷(…………)



―――――――――――






深夜

最初の地震発生から34時間後








比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「……ケホッ」

由比ヶ浜「…………」


比企谷(……俺と由比ヶ浜は昨日の夜と同じく)

比企谷(寒さを凌ぐため、ジャケットを合体させ)

比企谷(お互いを抱きしめ合っていた……)

比企谷(体力の消耗を防ぐため、結構早い時間に)

比企谷(…………)

比企谷(昨日はボッ○する元気があったが)

比企谷(状況がさらに悪くなった事もあり、もう余裕そのものがない)

比企谷(明日救助が来なければ……本当にヤバイ)


比企谷(伝言ダイヤルにも救助を求めるメッセージを残して)

比企谷(家族に伝えている)

比企谷(メールも送った……)

比企谷(返信もあったし、待っててくれ、という言葉も聞いた)

比企谷(…………)

比企谷(でも……)

比企谷(救助はまだ来ない……)


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜「……ヒッキー」

比企谷「ん?」

由比ヶ浜「あたしって……迷惑ばかりかけてるね」

比企谷「……くだらない事を言うな」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ごめんね……ヒッキー」

比企谷「いきなりどうしたんだよ……」

由比ヶ浜「だって……」

由比ヶ浜「もしかしたら、これで最後かもしれないし」

由比ヶ浜「言いたいこと言っておこうって思って……」

比企谷「縁起でもないこと言うな」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「そのくらい、あたしにだって分かるよ……ヒッキー」

由比ヶ浜「ここに助けが来るかどうか、もう分からないって……」


比企谷「…………」

由比ヶ浜「だから……ゴホッ、ゴホッ……」

由比ヶ浜「伝えたい事……言っておきたい」

比企谷「…………」

比企谷「……あまり話さない方がいい」

比企谷「お互い、脱水症状を起こしかけている」

比企谷「俺達は必ず助かる」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「あたし……ヒッキーの事……好きだよ」

由比ヶ浜「ゴホッ、ゴホッ……」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「最初の依頼……」

由比ヶ浜「あれだって……ヒッキーに美味しいクッキー食べさせたかったからなの」


比企谷「…………」

比企谷「……え?」

由比ヶ浜「ゴホッ、ゴホッ……」

由比ヶ浜「……あたし、奉仕部に行く前から」

由比ヶ浜「ヒッキーの事……好きだったんだよ?」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「ゴホッ、ゴホッ」

比企谷「……もういいから」

比企谷「もう……」

由比ヶ浜「ウソだって……思ってる?」

比企谷「…………」


由比ヶ浜「サブレを助けてもらって……嬉しくて」

由比ヶ浜「お見舞いに……行きたかったけど」

由比ヶ浜「後ろめたさもあったし……いまさらって感じもあったし……」

由比ヶ浜「1年生の時は、クラスも離れてたから……会いに行く理由とか」

由比ヶ浜「なかなかきっかけが……無くて……」

由比ヶ浜「ゴホッ、ゴホッ」

比企谷「…………」

比企谷「それで……奉仕部か」

由比ヶ浜「うん」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」


由比ヶ浜「……もっと……早く……」

由比ヶ浜「伝えておけば良かった」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「そしたら……」

由比ヶ浜「ゴホッ、ゴホッ……」

比企谷「由比ヶ浜……」

比企谷「もうしゃべるな」

比企谷「今は体力の消費を少しでも抑える事に集中しろ」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「……うん」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「ヒッキー」


比企谷「ん?」

由比ヶ浜「また……明日」

比企谷「…………」

比企谷「ああ。 また明日な……」

由比ヶ浜「…………」

由比ヶ浜「…………」zzz

比企谷「…………」

比企谷「…………」

     ギュッ…

比企谷「…………」

比企谷「……っ」



―――――――――――








最初の地震発生から42時間後









由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」


     朝……か……


比企谷「…………」


     光が……眩しい……


比企谷「…………」


     もう……どのくらい時間が過ぎたのだろう……


比企谷「…………」



     だめだ……

     頭が……ぼんやりする……


比企谷「…………」


     けど……

     暖かいな……


比企谷「…………」

比企谷「……由比……ヶ浜……」


     なんだろう……

     この気持ちは……


比企谷「…………」



     好きとか……嫌いとか……

     そういう……気持ちじゃない……な


比企谷「…………」


     ……そうか

     そういう事だったんだな……


比企谷「…………」


     『本物』なんて……

     そんなもの……最初から無かったんだ……


比企谷「…………」



     ガコンッ!


比企谷「……!」

比企谷「あ……」


     ゴウンゴウンゴウン…

     ガタタ…… ウィーン


比企谷「…………」


     要救助者、発見!

     担架ヲ! オ兄チャン!

     結衣! 結衣ッ!



比企谷「…………」


     けたたましい喧騒

     救助の人か、救急車の人か、分からないが

     その人達に助けられ

     懐かしい顔と声を聞いた気がする。

     それが俺の朦朧とした意識で覚えている最後の記憶だった。


     その後、俺は意識を失い

     再び目覚めたのは病院のベッドの上で

     救出されてから24時間後の事だった。




―――――――――――




病院 由比ヶ浜の病室


比企谷「……よう」

由比ヶ浜「あ、ヒッキー」

比企谷「親御さんは?」

由比ヶ浜「もうすぐ帰ってくると思う」

比企谷「そうか……」

比企谷「じゃ、ちょっと待たせてもらう」

由比ヶ浜「え? パパとママに用なの?」


比企谷「色々とな」

比企谷「やむをえない処置だったとしても」

比企谷「嫁入り前の娘をどこぞの馬の骨とも分からん男が抱きしめていた訳だし……」

由比ヶ浜「その事なら……」

由比ヶ浜「ちゃんと話してヒッキーは何もしなかったよって」

由比ヶ浜「言っておいたけど?」

比企谷「だとしてもだ」

比企谷「その……けじめってやつだよ」

比企谷「はっきりと謝っておきたい」

由比ヶ浜「ふふっ。 そっか……」

比企谷「……あとな」

由比ヶ浜「ん?」


比企谷「やっておいた方がいいと思う事がある」

比企谷「それの提案」

由比ヶ浜「やっておいた方がいい事?」

比企谷「……今回、俺とお前はエレベーターに閉じ込められた訳だが」

比企谷「それがトラウマになって、今後PTSDを……」

比企谷「分かりやすく言うと、エレベーターが怖くなって乗れなくなる恐れがある」

由比ヶ浜「そうなの?」

比企谷「処置が遅れると回復が難しくなると」

比企谷「宇○兄弟でロシア人のおっさんが言ってたからな。 早めにした方がいい」

由比ヶ浜「何の話?」

比企谷「ともかく。 日常生活でエレベーターが乗れなくなると大変だ」

由比ヶ浜「よく分からないけど……分かったよ、ヒッキー」



―――――――――――


     チーン☆ ガララ…

由比ヶ浜「…………」

比企谷「…………」

由比ヶ浜「えと……普通にエレベーターに乗るだけでいいの?」

比企谷「そうだ」

比企谷「○宙兄弟でも言っていたが」

比企谷「トラウマになりそうな出来事や乗り物に時間を置かず」

比企谷「あえて接しさせるのがいいんだそうだ」

由比ヶ浜「へぇ~」


比企谷「よし。 次は一人ずつ乗ってみよう」

由比ヶ浜「うん」

―――――――――――

由比ヶ浜「……もう10往復くらい乗ったよ?」

比企谷「……そうだな」

比企谷「今日はこれくらいにしておこう」

比企谷「…………」

比企谷「なあ、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「うん?」

比企谷「最後に二人で乗らないか?」

由比ヶ浜「うん! いいよ」


比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」

比企谷「……由比ヶ浜」

由比ヶ浜「え? なに?」

比企谷「俺のこと……好きだって言った事は覚えているか?」

由比ヶ浜「っ!!」///

由比ヶ浜「あ、あの……あれはっ……」///

比企谷「…………」

由比ヶ浜「…………」///

由比ヶ浜「……うん。 もちろん覚えてるよ」///

比企谷「そうか……」


比企谷「今もその気持ちに変わりはないか?」

由比ヶ浜「ないよ! 全然っ!」///

比企谷「…………」

     ……チーン☆ ガララ…

由比ヶ浜「あ……」

由比ヶ浜(着いちゃった……)

比企谷「…………」

     ピッ… ガララ… パタン

由比ヶ浜「え……」

比企谷「俺……あの時」

比企谷「上手く言葉にできないけど……由比ヶ浜の事……」

由比ヶ浜「…………」





比企谷「失いたくないって思った」




由比ヶ浜「!!」

由比ヶ浜「ヒッ、ヒッキー……!」///

比企谷「これが由比ヶ浜の言う『好き』と同じ事なのか分からないし」

比企谷「その……お、女の子とまともに付き合った事なんてないから」///

比企谷「いろいろと……間違うかもしれ」///

     ガバッ! …チュッ

比企谷「んぐっ!?」///

由比ヶ浜「…………」///


由比ヶ浜「……はあッ」///

由比ヶ浜「えへへ……」///

比企谷「え、えへへ、じゃ……ないだろ……」///

比企谷「おま……男の唇奪うとか……」///

由比ヶ浜「したくなったんだからいいのっ」///

由比ヶ浜「それに……私と付き合ってくれるんだよね?」///

比企谷「お、おう……」///

由比ヶ浜「だったら――」

     スッ…

由比ヶ浜「今度は……ヒッキーからして欲しいな」///

比企谷「っ!?」///

比企谷「い、いきなり難易度高すぎだろっ」///


由比ヶ浜「…………」///

比企谷「ったく……」///

     ようし。 やってやる。

     俺も男だ。

     キスの一つや二つ、たいした事はないっ!

比企谷「…………」///

     チーン☆ ガララ…

     ……チュッ

小町「という事で、結衣さんと このエレベーターで……え?」

雪ノ下「」

陽乃「あらあら♪」


比企谷「!?」///

由比ヶ浜「!?」///

     バッ!

比企谷「あ、いや、これは、その……」///

小町「キャー!」///

小町「お兄ちゃんが大人の階段登ってるのを目撃しちゃった!」///

小町「小町的にポイント爆上げカンストレベルだよ~」///

材木座「なななな、何たること!」

材木座「八幡! 我との童貞同盟を忘れたのか!?」

比企谷「そんなもの最初から結んでねぇ!!」

葉山「これは……もう言い逃れできないね。 ヒキタニ君」

戸塚「えーと……おめでとう、八幡」///


三浦「ななな……ゆ、結衣! マジなの!?」

三浦「こんなヒキオでいいの!?」

三浦「無理矢理脅されたとかじゃないの!?」

由比ヶ浜「ち、違うよ! 優美子!」///

川崎「……さて、帰るか」

いろは「……そうですねー」

雪ノ下「」

陽乃「雪乃ちゃ~ん?」

陽乃「零体飛ばさないで帰ってこよう?」








     やはり……俺の青春ラブコメは間違いだらけだ。










     ……でも

     それでいいのかもしれない。


     俺が探していた『本物』なんてものは

     おれ自身が違うと思った瞬間に本物で無くなる。

     そういうものだったんだ。


     だから……間違いでも構わない。

     大事なのは、一歩を踏み出す事。

     そして、それを気づかせてくれた由比ヶ浜の事を……

     俺は……











     愛しいと思っている。








     おしまい

八雪しか書いた事ないのですけど
某SSのガハマさんの扱いがあまりにも酷いと思ったので、これを書きました。
ガハマさんはええ娘やで~

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年02月07日 (日) 14:10:37   ID: CQkdVpRx

ゆきのんざまぁww

2 :  SS好きの774さん   2016年02月07日 (日) 16:48:20   ID: f2l3nSa_

八幡が結衣の小便で結衣がフェラで水分補給する場面があるとなお良かった

3 :  SS好きの774さん   2016年02月07日 (日) 20:39:54   ID: UIzPG3m1

エレベーター内の酸素は大丈夫だったんだろうか

4 :  SS好きの774さん   2016年02月07日 (日) 20:42:36   ID: dm2qRTEJ

今度は、ゆきのんでお願い

5 :  SS好きの774さん   2016年02月07日 (日) 22:15:33   ID: AkPdl_q5

うんこのくだりいる?wwwww
脱水症状とかよりそっち気になって楽しめなかったわwwwww

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