【北斗の拳×Fate】フェイ斗の拳 (84)

〔衛宮邸〕


桜「先輩、おはようございます…」ヨロッ

拳士郎「桜? その足…」

桜「いえ、昨日ちょっとぶつけて痛むだけで…」

拳士郎「しょうがないな……桜、じっとしてろ」ヌッ

桜「えっ、先輩何を――」


ビスッ


桜「っ、あ…」ピクン

拳士郎「経絡秘孔の一つ、“亜血愁”を突いた。これで痛みは消えたはずだが…具合はどうだ?」

桜「す、すごいです先輩! さっきまで痛かったのが、全然消えて…」

拳士郎「とは言っても、ケガはまだ治ってないからな。湿布を貼っておくぞ」

桜「あ、ありがとうございます!」

拳士郎(慎二のヤツめ…まだ懲りてないのか。今度は少しばかりキツく灸を据えてやらないとな)メキメキ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454314683


〔学校内〕


慎二「げっ、衛宮…!」ビクッ

拳士郎「おはよう慎二。顔色が悪いけど大丈夫か?」

慎二「な、何の用だよ?」

拳士郎「また桜に暴力を振るったな?」

慎二「ばっ、お…お前に関係あるかよ!」

拳士郎「どうやら、今までのでは物足りないらしいな。今日はキツめにいくぞ」ヌォォ…


ビタァッ


慎二「……な、何をした?」

拳士郎「効き目は授業中にでも味わうんだな」スタスタ

慎二「……クソっ、何なんだよ朝っぱらから…!」イライラ

――放課後


拳士郎「すっかり暗くなってしまったな。あんまり留守にしてると、また藤ねぇに文句言われそうだ」スタスタ


ガキッ
バゴッ


拳士郎「何だ? こんな時間に校庭で…」

ランサー「! 誰だ!? そこで見てるヤツは!」ギロッ

拳士郎「! 気付かれたか…」

凛「ちょ、まだ学校に人がいたの!?」

アーチャー「そうらしいな。しかしあの様子だと、逃げるつもりはなさそうだが」


ランサー「そこ動くなよ、坊主」ヒュッ

凛「危ない!!」


絶対に避けれないであろうランサーの刺突。
しかし拳士郎は、ランサーの槍を片手で掴み止める。


ランサー「!? 何ィ!」

拳士郎「……」グググッ

ランサー「クソっ! 貴様っ、離せ!!」

拳士郎「わかった」パッ

ランサー「っ!?」バッ


槍から拳士郎の手が離れ、ランサーは後ろに跳び退く。
しかし、拳士郎は動かない。


ランサー「……てめぇ、一体何者だ? ただの人間がサーヴァントの攻撃を受け止めるなんざ、できるハズがねぇ」

拳士郎「……何を言ってる?」

ランサー「チッ…話が通じねぇようだな。まあいい、あんまり長居できねぇもんでな、今は退かせてもらうぜ」シュンッ

拳士郎「消えて行った…か」


凛「ちょっと、あなた大丈夫!?」

拳士郎「俺のことか? 別に何ともないが…」

凛「ど、どうしてこんな時間に……って違うわ! あなた、どうやってアイツの攻撃を受け止めたの!?」

拳士郎「いや、別にあれくらいの攻撃なら、見切ることはできる」

凛「へ…」ポカン

拳士郎「悪いけど急いでるんでな。それじゃ」

凛「あ、ちょ、まだ話が…!」


〔衛宮邸〕


桜「先輩、お邪魔しました」

拳士郎「ああ、お疲れ」

藤村「ケン、また遅れたら容赦しないんだからね?」

拳士郎「あ、あぁ…」


バタン


拳士郎「二人とも帰ったか…なんだか、今日は疲れたな」ポキポキ

拳士郎(それにしてもあの光景、どう見たってただ事じゃなかった…俺が命を狙われる理由もわからない)

拳士郎「考えても仕方ない。今日の鍛錬だけして、さっさと寝よう」


〔衛宮家の土蔵〕


拳士郎「……」スゥー

拳士郎(……違和感がある。この感じ、まさか…)


ヒュッ
ズドン!


拳士郎「!」シュタッ

ランサー「チッ、また外したか。いい反応しやがるじゃないか、おい?」ブオンッ

拳士郎「お前は…」

ランサー「悪いが目撃者を生かしておくわけにはいかねぇ。てめぇには少し興味があるが…ここで死んでもらうぜ」

拳士郎「俺を殺すのか?」

ランサー「そうだ。今度は逃がさねぇぞ」ジャキッ

拳士郎「……やってみるがいいさ。お前にできるなら」

ランサー「なに?」ピク

拳士郎「俺を殺せる人間は、俺の知る限りではあの男しかいない…」コォォ…

ランサー「ヘッ…面白ェ。なら、ソイツより先に俺が殺してみせてやるよ!」バッ


ランサー「そらそらっ!」ヒュッ ヒュッ

拳士郎「……」シュババッ


幾重にも繰り出されるランサーの攻撃を、拳士郎は最小限の動きでかわす。


ランサー「野郎…」チッ

拳士郎「当たらなければどうということはない」

ランサー「ぬかせ!」ビュオッ

拳士郎「!」


ランサーの突きが拳士郎の喉元へと迫る。
しかしこの時、拳士郎は槍の矛先が僅かに己の心臓へとずれるのを見切っていた。


拳士郎「…フンっ!」バシッ

ランサー「なっ…!?」グググッ


ランサーの槍を左脇で挟み、相手の動きを封じる――。
この瞬間を、拳士郎は見逃さなかった。


拳士郎「あたァッ!」ドコォッ

ランサー「ぬぁっ!?」


ランサーのこめかみに、拳士郎の二本指が突き立てられる。


拳士郎「“北斗壊骨拳”」

ランサー「な…てめぇ何を!」


北斗壊骨拳――相手の額にある秘孔を突くことで、全身の骨を肉体から飛び出させて死に至らしめる奥義。
突かれた瞬間には痛みは伴わない、確実に死をもたらす必殺の一撃――のはずだったが、


ランサー「おい…何かしたのか?」ギリギリ

拳士郎(馬鹿な…? 確かに秘孔を突いたはず…)


拳士郎の技は、その効力をあらわしていなかった。


ランサー「このっ!!」ブンッ

拳士郎「っ…!」サッ


ランサーは強引に槍を振りほどき、拳士郎との距離を離す。


拳士郎「……」

ランサー「フン…手品か何かを仕掛けようとするとは、あまりいい趣味とは言えないぜ」

拳士郎(奴には秘孔が効かないのか? ならば…)


拳士郎が構え直そうとした、次の瞬間、


ランサー「ン…何だ!?」

拳士郎「!? こ、これは…?」


土蔵の床に、光る奇妙な紋様が浮かび上がる。
そこから出てきた一人の少女に、拳士郎とランサーは視線を向けていた。


セイバー「サーヴァント・“セイバー”、契約に従い参上した。マスター、指示を」


ランサー「サーヴァントだと!?」

セイバー「はあっ!」ブンッ

ランサー「ちぃッ! 貴様、マスターだったのか!」ガキンッ

拳士郎「な、何だ…一体どうなっている…」


混乱する拳士郎を後目に、セイバーはランサーを土蔵の外へと追いやる。


セイバー「マスター、下がって。まずはあの男を倒します」

拳士郎「あぁ…あいつをやるのか?」

セイバー「はい。もとより、そのつもりではなかったのですか?」

拳士郎「……そうだったな。お前、名前は?」

セイバー「私のことは“セイバー”と。マスター、あなたの名は?」

拳士郎「“衛宮拳士郎”だ。好きに呼べばいい」

セイバー「衛宮…?」

拳士郎「どうかしたか?」

セイバー「いえ…何でもありません。では、あなたのことは“ケンシロウ”と。この呼び方の方が、私にはしっくりきます」


ランサー「畜生、まずったな。まさかあの坊主がマスターだったとは知らなかったぜ」


ランサーの眼前に、隆々とした筋肉を持つ少年と、華奢な体付きだが威厳を感じさせる少女が立ちはだかる。


拳士郎「セイバー。お前には、あの男を一撃で倒す技があるのか?」

セイバー「ケンシロウ?」

拳士郎「俺の拳法では、あの男に有効な打撃を与えることができなかった。お前なら、それが可能なのかを聞いている」

セイバー「…宝具を使うならば、確実に。しかし、それにはかなりの魔力を使うことになります」

拳士郎「わかった。俺が奴の動きを封じる。その隙に、お前は渾身の一撃を奴に叩き込め」

セイバー「わかりました」


拳士郎「はッ!」シュバッ


拳士郎は瞬足の動きで、ランサーに接近する。


ランサー「なッ、コイツ本当に人間かよ!」ブンッ

拳士郎「あたたッ!」ヒュッ ヒュッ

ランサー「ちィ…!」シュバッ


反撃する素振りもなく、ランサーは一気に塀の外へと跳び退く。


セイバー「貴様、逃げる気か!」

ランサー「ご主人の命令とありゃ、いつまでも油売ってるわけにはいかないんだよ。それとも何か、追ってくるってのか?」

セイバー「逃がすと思ったのか、ランサー!」

拳士郎「やめておけ、セイバー」

セイバー「な、何故です!?」

拳士郎「向こうがまだ仕掛けてくるならば話は別だ。が、しかし今は…わからないことが多すぎる」

セイバー「ケンシロウ…?」

拳士郎「安心しろ。奴に俺は殺せない」

ランサー「…言ってくれるじゃねぇか。次は楽しみにしてるぜ」


直立する拳士郎を睨めつけ、ランサーは真夜中の闇に消えて行った。


セイバー「ケンシロウ、あれはランサーを仕留める好機でした! なのに……っ!?」


抗議の眼差しから一転、セイバーの表情が締まる。


拳士郎「どうした?」

セイバー「僅かながら魔力を感じる…まだ近くに敵がいるようです」

拳士郎「敵?」

セイバー「マスターはここで待っていてください。私が様子を見て行きます」シュンッ

拳士郎「お、おい!」


〔住宅路〕


セイバー「はあっ!」ビュオッ

アーチャー「チッ…」ガキッ

凛「まさか、このサーヴァントって……!」

拳士郎「やめろ、セイバー!!」ピカッ


ビキン


セイバー「なっ!? 何故ですケンシロウ…!」グググ

拳士郎「相手がまだ敵だとわかってないだろう。こちらから仕掛ける必要はない」

セイバー「で、ですが…!」ギリギリ

アーチャー「…どうやら、命拾いしたようだな」

凛「え、えぇ…」

凛(サーヴァントにあの男……って、今日学校で会ったアイツじゃない!)

〔衛宮邸・居間〕


拳士郎「聖杯戦争…」

凛「どう? 大体はわかってもらえた?」

拳士郎「まあ、な。しかし、何故俺にセイバーが召喚されたんだ…? 俺には魔術の素養なんて、期待できるほどあるわけではないと思うが。何よりもサーヴァントを呼び出す方法も知らなかったしな」

凛「逆にこっちが聞きたいわよ。よほど強力な霊媒が、近くにでもあったんじゃない?」

セイバー「…ケンシロウ、どうですか?」

拳士郎「心当たりはないな。それよりも、あのランサーという男…あいつもサーヴァントだろう?」

凛「そうよ。学校でアーチャーと戦ってたのはあいつ」

拳士郎「アーチャー…」

凛「あいつは私のサーヴァント。そうよね、アーチャー?」

アーチャー「……」スウゥ…

拳士郎「……何だ?」

アーチャー「いや、何でもない…」シュゥゥ

拳士郎「?」ポキポキ

アーチャー(……アレは、あそこまで逞しい身体をしていただろうか)


凛「今度はこっちから質問していいかしら?」

拳士郎「なんだ?」

凛「あなた、一体何者なの? ただの学生で、しかも生身でサーヴァントの攻撃を受け止めるなんて、見たことも聞いたこともないわ」

セイバー「それについては私も聞きたい。本来、サーヴァントはマスターを守るのが役目で、マスター自身もサーヴァントには勝てないと知っているからこそ、サーヴァントを使役している。それなのにあなたは、臆することなくランサーに勝負を挑んでいた。己の命を第一にするなら、考えられない行動です」

拳士郎「……俺は、奴を倒すことはできなくとも、倒されることはないと思った。俺の北斗神拳ならば、秘孔を突いて一撃で仕留められると思ったが…サーヴァントには秘孔が無いのか、あるいは秘孔を突いても効果はないのかもしれない」

凛「ほくとしんけん……?」

拳士郎「俺の親父よりも、何代も前から受け継がれる一子相伝の暗殺拳だ。俺は、その64代目の継承者として北斗神拳を継いでいる」

凛「拳法の使い手…いやでも、それだけでサーヴァントと戦える理由にはならないでしょ!」

拳士郎「北斗神拳には、人間の潜在能力を100%引き出すという特殊な呼吸法があるんだ。人間の潜在能力は、常人では30%しか使う事が出来ないが、北斗神拳ではこの残り70%を引き出すことを極意としている。これを行う事で、身体能力は飛躍的に上昇し、そこから繰り出される打撃は人間を一撃で粉砕する程の威力を持てる。もっとも、そこに至るまでには気の遠くなるような修業と、それに耐えられる精神的な強さが必要だがな」


〔教会〕


拳士郎「ここは…教会か」

凛「そう。ここの神父が聖杯戦争の監督役。私の知り合いなんだけどね」

拳士郎「これから何をするんだ?」

凛「あなたを聖杯戦争の参加者として、マスターとして認めてもらう。その前に、然るべき説明を受けなきゃいけないってわけ」


ガチャ


言峰「随分と変わった客を連れてきたな、凛」

凛「聖杯戦争について何も知らないって言われたら、あんたを通さないわけにはいかないでしょ」

拳士郎「……」

言峰「ほう…君がセイバーのマスターで間違いないか?」

拳士郎「ああ…そうだが」

言峰「少年、君の名前は?」

拳士郎「拳士郎…衛宮拳士郎だ」

言峰「衛宮…」ボソリ

拳士郎「知っているのか? 俺の家を」

言峰「…いや、知り合いに同じ名字の人間がいたものでな」

言峰(なるほど……この少年が、あの男の後を継ぐ者か)


言峰「さて、本題に入るが…君は何故自分が聖杯に選ばれたのか、わかるかな?」

拳士郎「どういう意味だ?」

言峰「聖杯戦争に参加するマスターは、他ならぬ聖杯の意思によって選ばれる。聖杯について知らずとも、君がこの戦いに加わるのは、ある意味では宿命とも言えるのだ」

拳士郎「宿命…」

言峰「どうだ? 何か自分に心当たりはないか?」

拳士郎「……俺には聖杯に託すような望みも無ければ、叶えたい願いもない。ただ、これだけは確実に言えることがある」

言峰「ほう…」

拳士郎「“北斗現る所、乱あり”――。北斗の力を継いだ者として、俺の行く先々に波乱が待ち受けているのはもとより承知の上。力が力を呼び、うねりとなって己の身に降りかかるのは、力を持つ者の宿命…」

言峰「なるほど…それが、君の戦う理由か」

拳士郎「そういうことになる」

言峰「…よかろう、セイバーのマスターよ。君を正式なマスターと認め、この戦い、しかと見届けさせてもらおう」

〔住宅路〕


凛「じゃ、ここでお別れね」

拳士郎「ああ。わざわざすまなかったな」

凛「別にいいわよ。それより……」

拳士郎「?」

凛「…あたしがあなたにここまで教えてあげたのは、もののついでだから。次会った時は、お互い敵同士ってこと、忘れないで」

拳士郎「…そうか。お前もマスターだったな」

凛「そういうこと。わかってるじゃない」

拳士郎「だが、俺はお前の命まで奪うつもりはない。サーヴァントが相手なら容赦はしないが、俺が人を殺す時は、そいつにどうしようもない怒りを覚えた時と決めている」ポキポキ

凛「そ…そう」ゴクリ

拳士郎「できればお前とは、敵対したくないがな」

凛(それはこっちのセリフよ…)


「へぇ…じゃあ、わたしはどうなの?」




凛「だ、誰!?」

拳士郎(あの人影…子供か? いや、もう一人別の気配がする…)

イリヤ「はじめまして。わたしは、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。長かったら“イリヤ”って呼んでね」

凛「アインツベルン…って、あの…!」

拳士郎「知っているのか?」

凛「魔術を知る者の間では、そりゃもう名の知れた家の一族よ。今回の聖杯戦争には少なからず関わっているだろうと思ったけど、まさかこんなタイミングで…」

イリヤ「さっきは面白いことを言ってたよね? おにいちゃん」

拳士郎「何のことだ?」

イリヤ「人を殺すのは自分が怒った時だって、言ってたでしょ? それじゃあ、おにいちゃんはわたしのこと殺せるのかなー…って思って」

拳士郎「……」スゥー

イリヤ「そんな怖い顔しないで。ほら、バーサーカーもおにいちゃんと戦いたいって言ってるよ」


イリヤの背後から、巨大な人影が姿を現す。
全身が岩肌のような皮膚で覆われ、その身に纏う筋肉は拳士郎のそれに勝るとも劣らない。
まさに、怪物としか形容しようがないほどの威圧感が伝わる。


イリヤ「殺っちゃえ、バーサーカー」

バーサーカー「■■■■■■――!!!!」クワッ


その巨大な体躯からは想像できないほどの俊敏さで、バーサーカーは凛へと迫る。


拳士郎「凛、下がれ!!」ドンッ

凛「あっ、きゃっ!?」


拳士郎が凛を突き飛ばす。
直後、バーサーカーの剣撃が拳士郎に振り下ろされ――、


セイバー「ケ、ケンシロウ!!」

凛「衛宮君!!」


轟音に二人の声は掻き消され、粉塵と土煙が立ち込める。
この時拳士郎は、バーサーカーの一撃を難なくかわし、反撃に転じていた。


拳士郎「北斗剛掌波!!」ゴオッ


次の瞬間、鈍い音が響き、バーサーカーの体が後方へ飛ばされる。


イリヤ「っ!? そんな、バーサーカー!!」

凛「えっ、な、何が起こったの…」

セイバー「まさか、ケンシロウが――」


北斗剛掌波――掌から圧縮された闘気を撃ち出し、相手の身体を打ちつける技を、拳士郎はあの数秒の間でバーサーカーに打ち込んでいた。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom