ジル・ド・レェ「……」切嗣(……これが、アーサー王……) (40)


ジル「セイバーのクラスとして参上した、貴方が私のマスターか」

切嗣「そうだ」

ジル「聖杯に何を望む」

切嗣「……」

ジル「我がマスターよ、私は貴方に仕える前に問わねばならない」

ジル「私にも願いがある、故に貴方の願いを知らなければ」


切嗣(……なるほど、騎士王らしい)

切嗣(何処か僕に近い物を感じる、あの目……彼の伝説通りならばここは言うべきか)

切嗣「世界を救う事だ」


ジル「……」

ジル「我がマスター、貴方に仕えよう」ザッ

ジル「真名は『ジル・ド・レェ』、我が聖杯にかける願いは聖女の救済……どうか共にこの戦いを


切嗣「ちょっと待て」




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~~ その後 ~~


切嗣「……この聖杯戦争、圧倒的に不利だ」

アイリ「まさかあの青髭が召喚されるなんて……一体、何故……?」

切嗣「分からない」

切嗣「あの翁でさえ聖杯の狂いを疑った程だ、あれほどの聖遺物を揃えてこれではな」

アイリ「どうするの……?」

切嗣「やるしかないだろう、幸いな事に彼は弱いが……やりようによっては戦える筈だ」

アイリ「例の宝具もあるものね」

切嗣「ああ、いざという時は令呪を使って彼に使わせる」



切嗣(……大分予定が狂ったが、先ずは今後の事を考えてからだ)

切嗣(『聖なる怪物』……この聖杯戦争の中でどれだけ戦えるのか、見せてもらおう)



────────── ォォオオオッ・・・!



< ガギィッ!! ガキィンッ…!!

『くっ……』


「ハァッ!」

< ザシュッ!


『はぁ……はぁ……助かりました、ジル』

「ご無事で何より、しかし……押されていますな」

『ええ、私達がこの砦を落とす事を阻止する為に敵も必死です』

『ジル……何か策はありますか』

「……」

「撤退しましょう、士気も下がってきています」

『それは……』

「『  』、焦ってはいけない」

「貴女は何か焦っている、そのままでは先程の様に剣を抜くより先に斬られてしまいますぞ」

『……そう、かもしれませんね』



「第一、周りの兵を鼓舞する為だけに貴女は前に出過ぎだ」

「せめて剣を抜いたらどうですかな、聖女殿」

『旗を振り回すだけでは駄目でしょうか……一応、これも槍なのですが』

「間合いを詰められては先程の様になると言っているのです」

「それとも、血に濡れる事を恐れるのですかな……?」


『…………』

『いいえ、だって旗を振った時点で、私の手は貴方たちと一緒です』

『ただ、お恥ずかしいことに剣を使うのは不得手なので……ごめんなさい』





    (……これは夢、なのか)

    (血と煙の臭い……戦場の中で、数多の同胞と共に駆け抜けた二人の会話……)

    (そうか、ではこの女が……あの………………)





< 「切嗣」

切嗣「……」

切嗣「寝ていたのか、僕は」ムクッ

舞弥「はい、少し休むと言って」

切嗣「そうか」

舞弥「準備は出来ています、出ますか?」

切嗣「ああ……」スッ



切嗣「セイバー」

ジル「ここに」スゥゥッ……ガシャッ



切嗣「今夜の内に一組、サーヴァントとそのマスターを落とす」

切嗣「良いな?」

ジル「お任せ下さい、必ずやマスターに勝利を」




────────── ・・・




?「……他のサーヴァントが宝具で誘いをかけているだと」


【は、何らかの罠……或いは意図の下に宝具を使用しているものと】


?「フン、一体何処のマスターの采配かは知らぬが宝具を晒すとはな」

?「その宝具とは?」


【今、我等が居る位置から数キロ……マスターや周囲の人間の反応から考えて、『英霊にしか感知できない光』を放つ宝具かと】


?「ふむ……『ランサー』、こちらの誘いに乗る気配は無いのか」


【全く有りません】


?「…………」

?「引き続き誘いをかけ続けろ、向こうの誘いには乗らん」

?「移動すらせずに宝具を発動し続けているならば気にはなる、他の陣営の様子を見ながら当初の予定通りで行く」


【御意】


他鯖も入れ換えか?



~~ 冬木市郊外・廃屋 ~~



舞弥「……話には聞いていましたが、あの旗を立てる事で本当に英霊が?」

切嗣「そうだ、支援宝具『神聖たる旗に集いて吼えよ』……あの光にはあらゆる英霊を引き寄せる力がある」

切嗣「…………らしい」

舞弥「彼が共に戦った聖女、『ジャンヌ・ダルク』の使っていた旗でしたか」

切嗣「ああ、セイバーの話では本来の力は持たないらしいが」

切嗣「だがサーヴァントを誘い出す能力は使える、それにあれは他のサーヴァントを支援する物じゃない」

舞弥「……? 確かあの旗は……」


切嗣「……」

切嗣「来たぞ」カチャッ

舞弥「!」カチャッ


切嗣(さて……お手並み拝見だ)

切嗣(『聖なる怪物』、ジル・ド・レェ)



      ガシャッ……ガシャッ…………

   ガシャッ…………ガシャッ…………


< ガシャッ……ガシャッ……



【…………■■■■……ッ】ガシャッ



ジル「……」

ジル「名乗る必要は無さそうですな」チャキッ


【■■■■■■■■■ッッ ────────!!! 】
      ドゥッッ!!


ジル「……!!」バッ

< ギィンッッ

ジル「ッ……ぐ、その棒……ランサー、いや…………」

【■■■ッ!!】グルンッッ!!

< ガッ! ギィンッッ!!

ジル「このパワー、その様相……バーサーカーですかな……ッ」ズサァァアッ…


バーサーカー【■■■■■■■ ────────ッ!!】




< ドゴォォオオオッ!!


切嗣(……まさか初戦でセイバーの苦手とするタイプのサーヴァントが来るとはな)

切嗣(あの様子ではセイバーが自身の宝具を完全解放させるのに時間はかからない)

切嗣(そうなればあのバーサーカーらしきサーヴァントを倒せたとして、他のサーヴァントに倒される可能性がある……)


切嗣「舞弥」

舞弥「この付近に仕掛けたセンサーに反応はありません」

切嗣「……移動する、あの廃屋が見えて尚且つ隠れられるポイントは五ヵ所だ」

切嗣「そこに他の陣営を恐れたあのサーヴァントのマスターが居る」

舞弥「アイリスフィールには?」


切嗣「まだ待機していて貰う」



ジル「く……ッ…!」

< ゴガァッ!!

ジル「ヌゥッ……!!」ドサァアッ!!


バーサーカー【■■■■■……ッ】ガシャッ


ジル「これは……参りましたな、もしやバーサーカーではないのではと思うほどの武芸」

ジル「……」

ジル「元帥とは呼ばれはしても、かつて私が極めたのは残念ながら……」


バーサーカー【■■■■ ──────!! 】ゴバァッッ!!

< ギュルルンッッ

< バギィンッ!!

ジル「ッ……! 泣き言を言っても仕方ないですな、なら……」

ジル「…………ジャンヌ………!」




< キィィインッッ



バーサーカー【……!】ピタッ

ジル「『神聖たる旗に集いて吼えよ』……!」カッ!



< キィィィンッ…!!


切嗣「っ……!? 何……ッ……ぐぁ…!」ガクッ

< ザザッ『切嗣……? どうしました』

切嗣「ぐゥッ……! これは……っ……」

切嗣(廃屋のあの極光、セイバーが宝具を発動させたのか?)

切嗣(令呪を通して何かが頭に流れ込んで来る……!)




──────── 『ジャンヌ……ジャンヌ……』

──────── 『あぁぁ……ジャンヌ、何故だ……彼女が何故あんな……』

──────── 『神は居た筈だ、神は彼女を選んだ筈だ……何故……』





切嗣「っっ……!!」ドサッ……

切嗣(……意識が…………)

< 『切嗣! 切嗣!? どうしました切嗣!』

< 『……っ! しまっ……』ヴヴヴヴヴゥゥッ

< 『…………殺せ、バーサーカー…………』ザザッ

< パララララッッ!! パララララッッ!!

< ザザッ……ザザッ…………



切嗣「………」


>>15

キャスター「バベッジ」

アーチャー「テスラ」

とかかも


バーサーカー【■■■■■■ッッ!!】

ジル「 ────────!! 」

< ガキィンッッ!


ジル「………」ギチギチギチィィッ……!!

  ゴキャッッ!!

< ズドォッ!

バーサーカー【ッッ!!?】ガクッ

ジル「宝具化しているだけの棒切れではそれが限界だったな」

ジル「尤も、その代価にこちらは利き腕を潰されてしまったが……」グシャッ……ボタボタッ……


バーサーカー【………】

< ガッッ

< ザクッ……!


ジル「………」

ジル「その旗に込められた想いが、『彼女』以外が武器に出来る訳ないだろう」


< キィィインッッ……!

バーサーカー【ッッ………!?】ゴォォッ!!
[狂化C→狂化EX]


ジル「その旗に集い、戦うならば『彼女』の為だけに剣を取れ」

ジル「出来ないならば……呑まれるだけだ」


バーサーカー【■■■■■■■■■■■ ────────ッッ!!! 】



< ズォオオオオオッ!!

バーサーカー【■■■■■■ッッ………■■■■■ッ!!】


ジル「さて……」

ジル「それだけの狂化状態にあってもまともに戦おうとする辺り、俺以上の格の英霊だった様だ」

ジル「或いは……本来の適正クラスは別だったのか」


< ドゥッ!!

バーサーカー【 ─────ッッ!!!】

ジル「ッ!!」ガギィッ…!!

< ブワァッ!

ジル「く、俺ごと薙ぎ払うか……!」


    ズッ・・・ドォッッ!!



< ガラガラァッ……

ジル「……っ、が…は……ッ」

ジル(………)

ジル「『神聖たる旗に集いて吼えよ』の効力がまともに作用しているのかすら……分からない……」ぐぐっ……

ジル「……ハァ……はぁ……」


バーサーカー【■■■■■■■ッッ!!】ズォオオオオオッ!!



ジル「………」

ジル「……『まだ』か」

< チャキッ

ジル「行くぞ」





切嗣「………っ……!」



切嗣(しまった…! 僕はどれだけ気絶していた……!?)バッ

切嗣「舞弥、応答しろ……!」

< サー…

切嗣(……舞弥に向かわせたのは此方とは反対側、バーサーカーが現れた方向だったか)

切嗣(まだセイバーが戦っているということは、恐らく『勝てないとセイバーが判断した』)

切嗣(つまりここからは……)カチャッ


切嗣「アイリ、舞弥の向かった先にマスターがいる」ザザッ

< ザザッ『ええ、もう着いているわ』

< 『何があったの切嗣』

切嗣「セイバーの宝具が発動したのと同時に意識を失った、サーヴァントとマスターを繋ぐ令呪が原因かもしれない」

切嗣「……?」

切嗣「待ってくれ、何故既にそこに君がいる?」

< 『突然サーヴァントが……それもアサシンが現れて、舞弥さんが戦っていたマスターを逃がしてしまったらしいの』


切嗣「……!」


切嗣(……やはり遠坂邸でのアサシン撃破は茶番だったか)

切嗣(だとして、何故このタイミングで介入した? バーサーカーのマスターを助けに来たとでも言うのか)

切嗣「舞弥と共に離脱するんだアイリ、僕もここを離れる」

< 『バーサーカーのマスターは?』

切嗣「……今の状況では、もう当初のプランは使えない」

切嗣「この戦い、僕達の敗北だ」

< 『分かったわ……拠点で落ち合いましょう』



切嗣「………」

切嗣「クソッ……!」ギリッ






【セイバー! 撤退よ、作戦は失敗……ここは下がりましょう】


ジル「……」

ジル「分かりました」


【バーサーカーから逃げ切れる?】


ジル「私の宝具の効力を受けて、戦闘は出来ても追跡は不可能かと」

ジル「お恥ずかしい事に、私も宝具の恩恵が丁度消えていましてな……」ヨロッ


バーサーカー【■■■■■ッッ!!】ゴバァッッ!!


ジル「ふむ……並みの魔術師ならば魔力切れを起こす程の出力ですが……」

ジル「………」

ジル「そうですね、撤退しましょう……ジャンヌ」


< スゥゥッ…!



バーサーカー【■■■■■■ ────────ッッ!!! 】




~~ 切嗣・アインツベルン拠点 ~~



切嗣「……考えられるのは、アサシン陣営と例の黄金のサーヴァント、そしてバーサーカー陣営が協力関係にあることか」

アイリ「そうね……あのタイミングでアサシンが離脱した事を偽装していた筈なのに、それを捨てて駆け付けた以上は……」

切嗣「……厄介だな」

アイリ「どうするの切嗣、彼等が結託している以上はどう考えても私達では太刀打ち出来ないわ」

アイリ「セイバーの宝具は確かに有効だったかもしれないけれど、まさか狂化がEXに達しても戦闘が可能となるサーヴァントがいるなんて……」

切嗣「表向きの戦闘があのバーサーカーに任されるとしたら、僕達では勝てない」

切嗣(仮にマスターを狙ったとしても、アサシンに守護されているのではどうしようもないからな)

アイリ「…………」


アイリ「セイバー、貴方は何か策が思い付く…?」

< スゥゥッ……


ジル「………」ガシャッ



ジル「客観的に見れば、昨夜の戦闘は最後に現れたアサシンが最大の元凶であると私は思いますな」

切嗣「……」

ジル「ならば最初からアサシンを討つ構えで策を練れば良いのです」

切嗣「そう簡単に行かないだろう」

ジル「マスター、昨夜の戦闘が始まる前に教えた例の誘いをかけていたサーヴァントの事を覚えていますか?」

切嗣「……言っていたな」

ジル「彼等に接触してみましょう、向こうも昨夜の戦闘は遠巻きに確認していた筈です」

ジル「マスター達の行動まで見ていたかは分かりかねますが、少なくともアサシンの情報をカードに取り引きすれば一定の交渉は可能でしょう」

切嗣「待て、何を交渉する気だ」

ジル「同盟……可能ならば一時共闘出来る様にしたいと」

アイリ「……」


切嗣「……少し、考えさせろ」




切嗣「……」

アイリ「切嗣、今の話をどう考えるのかしら」

切嗣「現状の最大勢力は間違いなく、バーサーカー達だ」

切嗣「あれを破るにはこちらの火力も手数も足りない」

アイリ「では他の陣営と手を組む方針にするのね?」

切嗣「それをするにも、僕達の後ろから刺されたくはないな」

アイリ「では、あの宝具を用いるのは……」

切嗣「それも駄目だ、この序盤に使って良い宝具じゃないんだ」


切嗣(舞弥が目を覚ますまではこのままか)

切嗣(当座は様子見するしかないな……)




────────── (……その男には、ある分岐点が存在した)



    (その男には、数多くの可能性と未来が存在した)

    (『聖なる怪物』と呼ばれ悪虐の限りを尽くした反英霊の姿)

    (とある少女の救済を願い、そして悲劇を嘆いた若き日の元帥の姿……)

    (それはどちらも同じだった)

    (結末は変わらない)

    (後世で語られるその男の物語によって、決して変えられないのだ)


    
    (しかし男は彼方の世界で全く違う結末を迎えた)


    (後世で語られる彼の物語すら変異した)


    (彼が救済を願った少女は救われ、彼が望んだ平穏は訪れた)


    (そうして ──────『英霊ジル・ド・レ』 が生まれた)


    (英霊とは程遠い筈の、その男が英霊として迎えられたのは『英霊ジル・ド・レ』の存在があったからだった)


    (その男は数多の『自分』を認識し、そして受け入れる)


    (男が願い続けるのは只一つ)


    (『  』の救済だった)







切嗣「……」

切嗣(……夢)

切嗣(これ程はっきりと見れるのか、契約したサーヴァントから流れる記憶が)

切嗣(だが今の……)


< スゥゥッ……

ジル「マスター」ガシャッ


切嗣「! ……どうした、セイバー」

ジル「この城を何者かが見ている様ですが如何される?」

切嗣「何?」

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