人類に罰を (64)

どうも。百合SSを書くと言ったなあれは嘘だ
今回は、勇者ものです
タイトルから読み取れる通り、陰惨な要素を含みます。
とりあえず、書き溜め投下します。


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~魔王城~

勇者「やった……。勝ったんだ僕たち……」

魔法使い「早く帰ってお風呂に入りたいわ~」

戦士「おい魔法使い! 帰るまでが魔王討伐だぞ。気を抜くな。魔王を倒したからって魔物がいなくなったわけじゃないんだからな」

魔法使い「戦士はまじめすぎんのよ。そのうち禿るわよ? すでに前線から下がり始めてるけど。ふふっ」

戦士「んなっ! まだふさふさだし! 禿げてないし!」

魔法使い「ハーゲ、ハーゲ♪」タッタッタッタ

戦士「待てや、おらあああああああ」ダダダダダ

魔法使い「キャー、戦士に犯されるー」

勇者「あいつら元気だなー。僕なんてもう一歩も歩けないよ」

僧侶「そうですね。私もです」

勇者「それにしても、案外あっという間だったな。初めて会った時のことが昨日のように思い出せるよ」

僧侶「ふふっ。そういえば、始めに会った時からあの二人は変わってませんね」

勇者「そうだね。確かあの二人幼馴染何だっけ?」

僧侶「ええ。確か魔法使いさんに魔法の才があることが認められ、離れ離れになってしまったんですけど、戦士さんは必死に剣の修業をして追いかけてきたらしいですよ。一緒に旅をするためだけに」

勇者「へー。そりゃすごいね」

僧侶「かくいう私もその一人だったんですよ」

勇者「え? そうなの?」

僧侶「はい、だって勇者様ったら私を置いて、中央都市に連れて行かれるんですもの。あの時は寂しさのあまり毎日枕を濡らしていたんです」

勇者「うぐ……。だって、僕が勇者として選ばれるなんて思わなかったからなぁ」

僧侶「いいんです。だって今はこうしてずっと一緒に居てくれるって約束してくれましたから……」

勇者「帰ったら故郷で式を挙げような」

僧侶「絶対ですよ?」

勇者「約束するよ」

魔法使い「あー! 勇者と僧侶がまたイチャイチャしてるー!」

戦士「別にいいじゃないか。二人は婚約してるんだから」

魔法使い「ねえ。戦士~。私と結婚して!」

戦士「な、なななな何を言ってるんだ!?」

魔法使い「私、戦士の事好きなんだもん! 戦士は私の事嫌い?」

戦士「好きだよ。お前と離れ離れになるずっとずっと前から」

魔法使い「本当!? やったー!」

勇者「良かったな。魔法使い」

魔法使い「良かったよー! 本当に良かった……」グスッ

戦士「おいてめえ、魔法使いを泣かせやがったな!」

勇者「え? 僕のせいなの!?」

僧侶「勇者様は、つくづく女泣かせですね~」

魔法使い「よがっだあああああ」

勇者「おい泣くなって!」

戦士「おー、よしよし」ナデナデ

魔法使い「私もね。戦士の事ずっと好きだったんだー……。でも、戦士ったらヘタレなんだもん! いつまでたっても告白してこないから、もしかしてもう好きじゃなくなっちゃったのかなーって思ってたんだ。でも、本当に良かった……」

勇者「恋に関しては奥手だよな。戦士は」

僧侶「どの口が言いますか! どの口が!」

勇者「痛い! 痛い! ほっぺ引っ張らないでよ!」

戦士「お互い大変そうだな」

勇者「かもな」

魔法使い「さあ、皆帰ろう! 私早く帰って結婚したいし!」

戦士「まだ、両親の挨拶とか済んでないし……」

魔法使い「戦士なら大丈夫だよ!」

戦士「いや、でも……」

魔法使い「戦士は一々堅苦しいの! このハゲ!」タッタッタッタ

戦士「ハゲ言うな!」タッタッタッタ

魔法使い「勇者たちも早くー! 置いてくよー!」

勇者「帰ろうか……。僧侶」

僧侶「はい!」

~城~

王「よくぞ、魔王を倒してくれた! これでしばらく平和になるだろう。感謝するぞ」

勇者「はい、光栄でございます」

王「それで、頼みがあるんだが……」

勇者「はい、何でしょうか?」

王「この国を守る騎士団に入ってくれないか? 給料はかなりはずむぞ?」

勇者「すいません……。私は故郷で実家の農業を継ぐつもりなので」

王「そうか……。なら仕方ないの」

勇者「すいません……」

王「いや、いいのだ。おい! パレードの準備だ! 準備せい!」

兵士‘S「はい!」

勇者「いいんですか? 私たちの凱旋パレードなんか、行って……」

王「今や、お前たちはこの国の希望だからな。それに何百年も誰も倒せなかった魔王を倒したのだからな。当然だ」

勇者「そうですか。少し恥ずかしいですね」

王「そうか? なれると楽しいぞ?」

勇者「そうなんですか?」

王「ああ、凱旋パレードは一週間後だ。それまでは、好きにしていて給え」

勇者「はい。それでは失礼します」ガチャン

勇者「あ~、緊張した―。威圧感はんぱねーわ」

僧侶「お疲れ様です。勇者様」

勇者「ありがとう」

魔法使い「あの、おっさん話長いから私嫌いなんだよね」

戦士「コラ! そういう事は言わないの」

魔法使い「だって本当の事だもん」

戦士「そうだけど、そういう事はあんまり口に出すなよ?」

魔法使い「分かってる~」

戦士「本当かよ……」

魔法使い「それにしても来週のお祭り楽しみだなあ」

勇者「いや、僕達は見てるだけ……」

魔法使い「え!? じゃあ、私お祭り楽しめないの?」

勇者「そうだね。城のバルコニーから城下を眺めて、その後大通りを歩くだけだよ」

魔法使い「それじゃ、たこ焼きもイカ焼きも食べられないの?」

勇者「兵士に頼めば買って来てくれると思うけど……」

魔法使い「何それつまんなーい」

勇者「仕方ないよ。僕たち魔王倒しちゃったんだから……。あー何かもう今から緊張してきた」

戦士「まだ一週間だぞ!?」

勇者「国民の前で演説だよ!? 考えただけでも緊張するよー……」

僧侶「頑張ってくださいね」

勇者「う~、誰か代わりにやってくれないかな~」

魔法使い「私がやろうか?」

戦士「お前は絶対ふざけるからダメ!」

魔法使い「ひどい!」

勇者「僕がやるしかないよね~……。あはは」

~一週間後~

勇者「うわ~、人がいっぱいいるんだけど……」

魔法使い「私もお祭り行きたいー!!」ジタバタ

戦士「落ち着けって! 大通り歩き終わったらいくらでも参加できるらしいから」

魔法使い「ホント!?」

戦士「本当だ。だからしばらく大人しくしてなさい」

魔法使い「うん! 大人しくしてるね」

兵士「勇者様、演説お願いします」

勇者「うわ~来たよ……」

僧侶「頑張って来てくださいね。頑張ったらご褒美あげちゃいますよ♪」

勇者「よっしゃ、やる気出てきた」

僧侶「ふふっ」

勇者「え~と、皆さん。こんにちはー!勇者です」

国民「わぁぁぁぁ!」

勇者「この度は私たちのために、えー、パレードを開催していただき、えー、誠に光栄でございます」

国民「わぁぁぁぁ!」

勇者「えー、私は魔王を倒しました。しかし、魔物自体はまだいなくなったわけではありません。ですから、真の平和のためには皆さんの協力が必要です。だから、皆さんの力を僕に貸してください! そして永久の平和を目指しましょう!」

国民「わぁぁぁぁ!」

勇者「以上、演説は終了です!」

戦士「何だ、あの演説は……」

魔法使い「そうかなー? 私は勇者らしくて好きだったよ!」

勇者「ホントはちゃんと考えてたんだよー……。でも、緊張で全部飛んじゃって……」

僧侶「それではご褒美はなしと言う事で」

勇者「そんな~……。折角頑張ったのに……」ガクッ

僧侶「冗談ですよ♪ 勇者様、ちょっとこちらに」

勇者「うん!」

僧侶「ちょっと屈んでくれますか?」

勇者「屈んだよ!」

僧侶「えいっ♪」チュッ

勇者「あばばばばば」

僧侶「これがご褒美です♪」

勇者「嬉しさのあまり死ぬところだった」

魔法使い「じーっ」

戦士「何だよ!」

魔法使い「この鈍感! 私もしたいのー!」

戦士「いたいならそう言えばいいじゃないか」

魔法使い「戦士にはロマンがないね! 女子はそう言うシュチエーションに憧れるの!」

戦士「ああ、お前の部屋にある、本みたいなやつか」

魔法使い「ぶっ! え!? 見たの!?」カァー

戦士「あんだけ大量にあればな……」

魔法使い「忘れろ! 今すぐ忘れろー!」

戦士「やだねー」タッタッタッタ

魔法使い「待てや、こらー!」

戦士「待てと言って待つ奴が――」

魔法使い「もうこうなったら、戦士ごと消す!」バチバチバチ

戦士「魔法使いさん!? それはシャレになりませんって!」

魔法使い「じゃあ、こっち来て!」バチバチバチィ

戦士「は、はいぃ!」

魔法使い「んっ」グイッ

戦士「うわっ!」チュー

魔法使い「へっへ~ん。私が大好きな人消すわけないじゃん!」ニカー

戦士「お前ならホントにやりかねないから怖いんだよ……」

兵士「コホン! そろそろ凱旋のお時間です」

魔法使い「これが終わったら、お祭りに行けるんだよね?」

戦士「そうだな。一緒に回るか?」

魔法使い「回る! 回るー!」

勇者「僕たちも一緒に回る?」

僧侶「そうですね♪ 久しぶりのお祭りですし、今宵は楽しみましょう♪」

~凱旋終了後~

勇者「これで終りだ―」

魔法使い「終りだー♪」

戦士「ちょっと疲れたな」

僧侶「そうですね。手を振りながら歩き続けるというのは中々辛いものですね」

魔法使い「疲れるのは早いぜ。諸君。私たちにはまだまだメインディッシュが残っているのだから!」

戦士「そうだな」

勇者「それじゃ、各自解散!」

魔法使い「行こっ! 戦士!」ダキッ

戦士「あ、ああ」テレー

勇者「僕たちも行こうか」

僧侶「そうですね」

~祭り 勇者&僧侶~

勇者「パレードって言うだけあって結構人が多いね」

僧侶「そうですね~」

勇者「はぐれちゃ嫌だから、手繋がない?」スッ

僧侶「はい!」ギュッ

勇者「僧侶は何が食べたい?」

僧侶「そうですね~。あれです。あれが食べたいです」ユビサシー

勇者「綿菓子だね。分かった。すいません! 綿菓子二つください!」

店主「あいよー! 二つで600Gだよ」

勇者「はい」

店主「毎度ありー。じゃあ、これが綿菓子だよ」

勇者「どうもー。はい、綿菓子」

僧侶「ありがとうございます。綿菓子はやっぱり美味しいですね!」ハフハフ

勇者「それすごい分かるわ」モフモフ

僧侶「あの……」

勇者「何だい?」

僧侶「勇者様の綿菓子。一口もらえませんか?」

勇者「え? 味は同じだよ?」

僧侶「ん~。分かってませんねー。私は勇者様が食べた綿菓子が食べたいんですよ」

勇者「あー、そういうこと。いいよ」スッ

僧侶「いただきます」ハフハフ

勇者「どう?」

僧侶「とってもおいしいです!」ニコー

勇者「僧侶のも貰っていいかな?」

僧侶「いいですよ」スッ

勇者「いただきまーす」モフモフ

僧侶「どうでしょうか?」

勇者「とってもおいしいよ!」

僧侶「ふふっ、それは良かったです」

勇者「お、あれは輪投げじゃないか!」タッタッタ

店主「いらっしゃい。一回400Gだよ」

勇者「僧侶! 欲しいのある?」

僧侶「あのぬいぐるみが欲しいです」

勇者「任せて!」チャリン

店主「全部で500点取ったら、ぬいぐるみが手に入るよ」

勇者(リングは全部で五つ……。ぬいぐるみを取るためには一つも外せないわけか……)

勇者「せいっ」ポイポイポーイ

店主「兄ちゃん! すげえな! 全部100に入れやがった!」

勇者「こう見えて、地元では輪投げの天才と呼ばれていましたから」

店主「はい、ぬいぐるみだよ! 持っていきな」

勇者「どうもー」

僧侶「まさか、勇者様にこんな特技があったとは……」

勇者「まあね。はい、欲しがってたぬいぐるみだよ」

僧侶「ありがとうございます♪ 大切にしますね!」

勇者「そうしてもらえると、取った甲斐があったってものだよ」

ュ~ドン

勇者「花火だ」

僧侶「綺麗ですね」

勇者「そうだな」

ドーン

勇者「でも、僧侶のほうがすっと綺麗だよ」

僧侶「勇者様、テンプレすぎて何て言ったらいいか分かんないです」

勇者「辛辣だなー。僧侶は……」

僧侶「嘘ですよ。本当はとっても嬉しいんですから」ニコ

勇者「テンプレなのに?」

僧侶「それがいいんですよー」

勇者「なるほど、じゃあキスしていいかな? テンプレだけど」

僧侶「いいですよ」

勇者「んっ」チュー

僧侶「ぷはー」

勇者「もう一回」

僧侶「ちょ、勇者様! んぐっ」

勇者「ふふっ」

僧侶「ぷはー」

勇者「もう一回♪」

僧侶「もう! 怒りますよ!」

勇者「だって、キスの度に一々呼吸停めるのが可愛いんだから仕方ないよ」

僧侶「だって、キスとかそういうの初めてでよく分からないんですし……」

勇者「そのうち慣れていくって」

僧侶「そういえば、勇者様はやけに手馴れていたように見えましたけど、もしかして初めてじゃないですか?」

勇者「初めてだよ?」

僧侶「どうして、初めてなのにそんなにうまいんですか!?」

勇者「えっと……、本とか。そういうので……」

僧侶「もしかしてエッチな奴ですか……?」ジトー

勇者「え!? ちちちちち違うよ! エッチな本じゃないよ!」

僧侶「勇者様……。動揺しすぎです……。それじゃバレバレですよ。もう」

勇者「えっと、ごめん……」

僧侶「いいんですよ。勇者様も男ですから。別にそういうのくらい読んでるんだろうなって思っていましたから」

勇者「うぐっ」

僧侶「ですから、今度は私も一緒に読みます」

勇者「えっ!?」

僧侶「駄目ですか?」

勇者「いいけど」

僧侶「約束ですからね!」

勇者「僧侶って結構ムッツリなの?」

僧侶「ち、違いますよ!?」

勇者「それじゃ説得力ないよ。僧侶……」

僧侶「う~、忘れて下さい……」ポカポカポカ

勇者「あはは」

僧侶「私は聖職者ですから! ムッツリとかそういうんじゃないですからね!」

勇者「分かったよ」

勇者(そう言ったせいで、余計ムッツリだってばれてるんだけど黙っておこう……)

僧侶「ねえ、勇者様。私の事大切にしてくださいね」

勇者「もちろんだよ」

~祭り 戦士&魔法使い~

魔法使い「戦士―! 早く早くー!」

戦士「引っ張るなって」

魔法使い「早くしないと、なくなっちゃうじゃん!」

戦士「そう簡単になくならないっての」

魔法使い「何言ってんの!? ここは戦場だよ! そういう甘い言葉を言ってたらたちまち死に追いやられるんだから!」

戦士「ここはそんな恐ろしい場所じゃねえよ」

魔法使い「ふう、戦士は想像力が足りないね」

戦士「何だと!?」

魔法使い「ここは戦場なんだよ!」

戦士「分かったよ……。で、何が食べたいんだ?」

魔法使い「えっとね~。焼きそばと焼き烏賊、たこ焼き、綿菓子、かき氷に焼き鳥!」

戦士「多いな! そんなに食べれるのか!?」

魔法使い「食べれないわけないでしょー」

戦士「そういや、お前大食いだったな」

魔法使い「行くぞー」

戦士「おー」

戦士「ホントに戦場みたいだった……」

魔法使い「だから言ったじゃん!」

戦士「人多すぎだろ……。死ぬかと思ったわ」

魔法使い「祭りを甘く見るからだよ。祭りは遊びじゃないからね!」

戦士「身に染みて分かったよ……」

魔法使い「そんなとこで落ち込んでないで、早く食べようよー」

戦士「そうだな」

魔法使い「いただきます」

戦士「いただきます」

魔法使い「さすが、この国一美味しいと呼ばれるだけあって、どれも美味しいね!」モグモグ

戦士「そうだな。めちゃくちゃうめえ」モグモグ

魔法使い「ねえ、私両手が焼き串で塞がってるから食べさせてくれない?」

戦士「抜いて皿に写せばいいじゃないか」

魔法使い「馬鹿野郎!!」

ヒュ~ドン

魔法使い「たまや~」

戦士「確か東欧の島国の奴だっけ?」

魔法使い「そうそう! あそこいいところだったよね」

戦士「そうだな」

魔法使い「行ってくれないの?」

戦士「何をだ?」

魔法使い「戦士って、そう言うの全然だよね!」

戦士「剣ばっかりの人生だったから仕方ない……」

魔法使い「私だって魔法ばっかの人生だったよーだ」

戦士「うぐっ!」

魔法使い「まあ、そういうとこも戦士の魅力なんだけどサ」

戦士「あ、ありがとう?」

魔法使い「褒めてない!」

戦士「お、おう」

魔法使い「…………」

戦士「………………」

戦士「なあ」

魔法使い「何?」

戦士「また、お祭りがあったら行こうな。ずっとこの先もさ」

魔法使い「うん。というか嫌でも連れいていくからね!」

戦士「ハハハ……」

魔法使い「だから精々覚悟しておくのだ。戦士よ!」

戦士「はいはい。分かりましたよー」

魔法使い「本当に分かってんのかー!!」

戦士「分かってるよ。お前のことは一番知ってるつもりだからな」

魔法使い「じゃあ、私が今何考えてるか当ててみて!」

 二人の影が重なる。

すいません……。順番間違えました
これが>>17の後です

戦士「え!?」ビクッ

魔法使い「串から抜いて食べるなんて邪道だよ! 折角職人さんが頑張って串に刺したのに、抜くなんて非道すぎるよ!!!!!!!」

戦士「分かったよ。食べさせればいいんだろ? どれがいいんだ?」

魔法使い「とりあえず、焼きそばから」

戦士「ほらよ」

魔法使い「あ~んは?」

戦士「分かったよ。もう……。あ~ん」

魔法使い「ん~。美味しい~」ニコニコー

戦士「それは良かったな」

魔法使い「戦士も食べさせてあげるよ。はい、あ~ん」

戦士「あ~ん。うん焼き烏賊久しぶりに喰ったけど、やっぱうめえな」

魔法使い「そりゃ当たり前だよ。それに私が食べさせてあげたんだもんね!」

戦士「そうだな」ナデナデ

魔法使い「ん~。極楽だな~」パタパタ

戦士「そっか」ニコ

魔法使い「私幸せだな」

戦士「俺もだよ」

>>18の後です
戦士「これであってるかな?」

魔法使い「う、うん。正解だよ……」テレテレ

戦士「顔真っ赤だぞ」

魔法使い「これは花火の光だよ!」

戦士「花火今あがってねーぞ」

魔法使い「花火なのー!!」

戦士「はいはい」

魔法使い「ぐぬぬぬ……。弄るのは私の方なのに……」

戦士「俺も成長してるんだよ」

魔法使い「だったら、それよりも私が早く成長してやるもんね!」

戦士「精々期待してるよ」

魔法使い「絶対だからね! 見ててよ!」

戦士「ああ、見てやるとも。ずっと隣でさ」

~勇者と僧侶の故郷~

勇者「ここに帰ってくるのっていつぶりだったけ?」

僧侶「そうですね。旅の時に一度だけ寄ったので3年ぶりですね」

勇者「早いなー。もう三年か~」

僧侶「そうですねー」

村人「おっ、もしかして勇者か!? 聞いたぜ、あの魔王倒したんだってな。すっげーな」

勇者「そうでもないよ。仲間がいたからここまでこれたんだからさ」

村人「そっか。とりあえず落ち着いたら、お前の冒険について聞かせてくれよな」

勇者「いいよ」

村人「それじゃな。俺は農作業に戻るわ」

勇者「おう、それじゃまた」

勇者「あいつあんなにたくましくなって……」

僧侶「そうですね。三年前はヒョロヒョロでしたもんね」

勇者「変わったなー。色々」

僧侶「でも、根本的なものは変わってないみたいですけどね」

勇者「うんー。この風も匂いも懐かしいなぁ」

僧侶「勇者様、まるでおじいちゃんみたいですよ」

勇者「帰郷は人の心を老人にするものさ」

僧侶「分からなくもないですけど」

勇者「でしょ?」

僧侶「それでは、私はいったん実家に帰りますね」

勇者「分かったよ。じゃあ、一時にあの噴水の前で」

僧侶「分かりました。それでは、また」

勇者「うん、また」

~勇者の家~

勇者「ただいま~」

勇者母「おかえり、勇者。あと、お疲れ様。貴方ならできるって信じていたわ」

勇者「ありがとー。あと、もう一つ報告があるんだ」

勇者母「結婚するんでしょ? 僧侶ちゃんと」

勇者「さすが、母さん。何でも知ってるね」

勇者母「そりゃ、母親ですもの。まあ、小さい時からそうなる気がしてたからね~」

勇者「へー。俺は全然気が付かなかったけどね!」

勇者母「威張っていう事じゃないでしょ……」

勇者「えへへ」

勇者母「褒めてないからね?」

勇者「ふふふ」

勇者母「何にやけてんのよ。まあ気持ちは分からなくもないけど」

勇者「母さんが結婚する時もこんな感じだった?」

勇者母「そうね。特に結婚前夜と初夜はうかれまくってたわね」

勇者「父さんも?」

勇者母「そうねえ。父さんなんてもっと酷かったわ」

勇者「想像もつかない……」

勇者母「そうだ。もう、父さんに挨拶に行った?」

勇者「そういえば、まだだった」

勇者母「僧侶ちゃんとの待ち合わせは?」

勇者「一時だよ」

勇者母「じゃあ、まだ時間あるわね。ついでにこの花をお供えしてきてれるかしら?」

勇者「えーとこれ何って花だっけ?」

勇者母「リアンの花よ」

勇者「それそれ! 確かその花には意味があるんだったよね」

勇者母「そうよ。もう一度あなたに会いたい。そういう意味が込められた花よ」

勇者「母さんは、もう一度父さんに会いたい?」

勇者母「そうねぇ。もう一度会って文句言ってやりたいわ。何で私を置いて行ったんですか! ずっと一緒に生きて行こうって言うのは嘘だったんですか! って」

勇者「ふ~ん。母さんがのろけるの初めて見た」

勇者母「私をからかったのね! もう!! 早く行きなさい!」

勇者「はーい」

勇者母「勇者、ちょっと待って」

勇者「何?」

勇者母「貴方は、僧侶を一人ぼっちにしちゃだめよ」

勇者「うん」

勇者母「分かればいいわ」

勇者「じゃ、行ってくるね」

勇者母「行ってらっしゃい」フリフリ

~墓地~

勇者「はい、父さん。貴方の息子の勇者ですよ~」

勇者父「………………」

勇者「父さん、僕ね。僧侶と結婚することになったんだ。嬉しいでしょ?」

勇者父「………………」

勇者「はい、これお花。リアンの花って言うんだってだってさ」

勇者父「………………」

勇者「お母さん、もう一度父さんに会って文句言ってやりたいんだってさ。だからそっちでは覚悟決めといたほうがいいよ。多分一時間やそっとじゃ終わらないと思うしさ」

勇者父「……………」

勇者「さて、僕はそろそろ戻るよ。今後は僕と僧侶の子供が生まれたころに来るよ。じゃあ、またね」フリフリ

勇者父「………立派になったな」

勇者「ん? 何か聞こえたような……」

勇者「って気のせいか。さ、早く帰ろっと」

~噴水広場~

勇者「お待たせー」

僧侶「今さっき来たところなので大丈夫ですよ」

勇者「それじゃ行こうか!」

僧侶「どこにですか?」

勇者「そりゃ、挨拶だよ」

僧侶「挨拶?」

勇者「うん。僕たち結婚しますって、僧侶の両親に」

僧侶「そんなの聞いてませんよ!?」

勇者「だって、言ってないし」

僧侶「そんな……」

勇者「駄目かな?」

僧侶「いいですけど……」

勇者「それじゃしゅっぱーつ!」

僧侶「デートかと思ったのにな……」

勇者「デートは挨拶の後でちゃんとやるよ?」

僧侶「き、聞こえてたんですか!?」

勇者「そりゃ、あれだけ大きく喋ってたら聞こえるって」

僧侶「うぅ~」

勇者「僧侶は可愛いなあ」

僧侶「やめて下さい! もう……」

勇者「ごめんって! 可愛いからつい」

僧侶「怒ってないので大丈夫です」

八百屋のおばさん「あら? もしかして僧侶ちゃんと勇者君?」

勇者「おばちゃん! 久しぶりー!」

僧侶「お久しぶりです」

八百屋のおばさん「あれ? もしかして、二人は付き合ってるのかい?」

勇者「はい、結婚もするつもりです」

八百屋のおばさん「あらまあ! それは大変。皆に教えてこないと」

僧侶「え!? おばさん! ちょっと待ってください!」

僧侶「あ、行っちゃった……」


僧侶「勇者様? おばさんに話すとああなるって分かってて話したでしょう?」

勇者「何の事かな~?」

僧侶「目を合わせて言ってください!」

僧侶「あう~。これじゃ恥ずかしくて明日から村を歩けません……」

勇者「それは、困る」

僧侶「どうしてですか?」

勇者「それじゃ、僧侶と明日もデートできないからね!」

僧侶「それは困りますね……」

勇者「それにどうせばれるんだし。いいでしょ?」

僧侶「そうですけど……。心の準備っていうやつがですね……」

勇者「ごめんくださーい」

僧侶「勇者様ぁぁぁぁぁ!?」

勇者「どうもー、お義母さん。結婚の挨拶に来ました」

僧侶母「あら? 勇者君? 大きくなったわね~。さ、上がって」

勇者「お邪魔しまーす」

僧侶「ちょっと! お母さん!」

僧侶母「あんたも隅に置けないわね。勇者君ゲットしたんだから」

僧侶「うん、まあね」テレテレ


僧侶母「昔から勇者君にメロメロだったもんねぇ」

僧侶「お母さん!!」

勇者「お義母さん。そのお話あとで詳しく聞かせて下さい」ヒョコッ

僧侶「勇者様まで……」

僧侶母「後で、アルバムみせながら話すわ」

勇者「ありがとうございます」

僧侶「それはダメー!!」

勇者「何で?」

僧侶「それは……」

僧侶母「ああ、あれね。世界地――」

僧侶「それ以上喋ったら、絶対許さないから!」

僧侶母「別に恥ずかしいことじゃないじゃない。まだ子供だったんだし」

僧侶「お母さん?」

僧侶母「分かってるわよ。勇者君に知られたくないんでしょう?」

僧侶「うっ……。そうですよ。そうですよーだ」

勇者「すごい気になるなぁ」

僧侶「勇者様には絶対教えませんから!」

勇者「えー……」

僧侶「えーじゃありません! お母さん! とにかくあの写真は処分するか、別の場所に移しといてね!」

僧侶母「はいはい。分かりましたよー」

勇者「面白いお母さんだね」

僧侶「私にとっては、魔王よりも恐ろしい存在です」

勇者「そうかなぁ?」

僧侶「そうなんです!!」

僧侶母「勇者君に僧侶―。こっちよー」

勇者「はい。今行きます」

勇者「心の準備できてる?」

僧侶「できてるわけないでしょう!! いきなり言われたんですから……」

勇者「ごめんって! でも、僕だって結構ドキドキしてるんだよ?」

僧侶「そういえば、勇者様って結構小心者でしたもんね」

勇者「その言い方はちょっと傷つくなぁ」

僧侶「お返しですっ!」

勇者「さ、行こうか」

僧侶「はい!」

勇者「失礼します」

僧侶父「勇者君か。待っていたよ。とりあえず座りなさい」

勇者「どうも」

僧侶父「それで、今日はどんな用なのかな?」

勇者「はい! 娘さんを貰いに来ました!」

僧侶父「オッケー」

僧侶「早くない!?」

僧侶父「だって、こうなるって分かってたし」

勇者「あー、緊張したー」

僧侶母「貴方が、勇者君を好きなことを知らない子はほとんどいないわよ」

僧侶「え!?」

勇者「そういえば、母さんも言ってたな」

僧侶「そんな馬鹿な……」

僧侶母「だって、あんた分かり易すぎたもの。特に、勇者君が中央都市に連れて行かれた時なんて、酷かったんだから」

勇者「毎日、涙で枕を濡らしてたんですよね?」

僧侶母「そんなもんじゃなかったわよ。部屋に暫く引きこもって出てこなくて大変だったのよー」

僧侶「うう……。忘れたい……」

勇者「そんなに酷かったんですね」

僧侶父「全くだ。そんなに分かり易かったのに気付かなかった君も君だと思うけどね」

勇者「す、すいません……」

僧侶父「いいんだよ。今はこうして二人幸せになったんだからな」

勇者「そうですね」

僧侶母「それで式はいつなの?」

勇者「まだ、決めてないんです。場所は一応考えているんですけど……」

僧侶母「それならこの日がいいんじゃないかしら? 大安だし」

勇者「そうですね。この日にしましょう」

僧侶「そういえば、場所ってどこなの?」

勇者「あそこだよ。雪の街の協会」

僧侶「本当!?」

勇者「うん。そこで二人だけで式を挙げよう! その後もう一回、大聖堂でさ、みんなに祝福される式を挙げるつもりなんだけど、どう?」

僧侶母「二人だけの結婚式なんてロマンチックね!」

僧侶「うん! 賛成です。勇者様も珍しくいい事言いますね」

勇者「そりゃ、魔王討伐が終わってからずっと考えてましたからね!」

僧侶「もう一つの方は、どうするんですか?」

勇者「それは、ここだよ」

僧侶「この日って……」

勇者「よく分かったね。僕たちが再開した日だよ」

僧侶「勇者様……」

僧侶母「お父さん、私たちはここで退散しましょうか」

僧侶父「そうだな。じゃあ、あとは若い者同士仲良くやりなさいな」

僧侶「勇者様!」

勇者「僧侶!」

僧侶「愛してます!」

勇者「僕もだよ!」

~雪の降る街の協会~

僧侶「勇者様、私今最高に幸せです……」

勇者「これが一番だったなんて言わせないよ。もっともっと僕が幸せにしてあげるから」

僧侶「本当ですか?」

勇者「本当だよ」

勇者「それじゃ、始めようか。二人だけの結婚式」

僧侶「はい!」

勇者「僕は僧侶を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓います」

僧侶「私は勇者様を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓います」

勇者&僧侶「私たちは、お互いに自信を捧げあうことを誓います」

勇者「それじゃ、指輪交換だね」

僧侶「はい」

勇者「それじゃ、コホン。僕は、この指輪を僕の僧侶を愛する証として受け取りますか?」

僧侶「はい、受け取ります」

僧侶「私は、この指輪を勇者様を愛する証として受け取りますか?」

勇者「はい、受け取ります」

勇者「それじゃ、あげるよ。ベール」

僧侶「はい。いざこうなると結構緊張しますね」

勇者「うん。僕もさっきから心臓がバクバクいって止まらないんだ」

勇者「それじゃ行くよ」

僧侶「はい、来てください」

今日は雪が沢山振る夜だった。街はどこまでも静まり返っていてまるでこの世界に、僕と僧侶二人だけが取り残されたみたいだったんだ。

~雪の降る街~

勇者「何が起きたんだ……?」

大きな地鳴りが響いてその後、ドウナッタンダッケ?

勇者「どうして、僕は外にいるんだ?」

目の前には瓦礫の山があった。こんなものアッタケ?

勇者「そう言えば僧侶は? 僧侶はどこにいるんだ?」

ステンドガラスが目に入る。違う。ここは協会じゃない。

勇者「そうだ。協会だよ。僕たちはさっきまで結婚式を挙げていたんじゃないか」

可笑しくて笑い声をあげる。

村人「なんだこれは……」

勇者「あの、協会ってどこでしたっけ?」

村人「あんちゃん、気を確かにするんだ」

やめろ。やめてくれ。

村人「ここが協会だ」

勇者「あ、ああああ、あああ……」

分かってた。分かってたんだ……。

~数分前~

ドゴォォォン

勇者「天井が!?」

僧侶「勇者様!!」ヒュイーン

勇者「僧侶!? 何を!?」フワフワ

僧侶「勇者様は、生きて下さい!!」

勇者「嫌だ! 僧侶は約束したじゃないか!! 僕とずっと一緒に居てくれるって……」バシューン

~現在~

勇者「どうして……!! こんな時に限って……」

村人「あんちゃん。しっかりしな」

勇者「無理ですよ! 彼女は僕の全てだったんですから……」

勇者「彼女のいない世界なんて、ないのと同じですから……」フラフラ

村人「おいあんちゃん! どこに行くんだ!」

~勇者の故郷~

勇者母「勇者、ご飯ここに置いておくからね」

勇者「………ありがとう」

あれから、一か月経過した。それから僕は一歩もここから出ていない。出る気になれない。

勇者として、強くなり過ぎたせいか簡単にも死ねない。毒も飲んだし、首も吊った。

でもそれは苦しくなるだけで、死ねなかった。ただ、虚しさが残り、僕はとうとう何もしたくなくなった。

勇者「また、来客か」

こうして、たまに来客がくる。僕に同情と憐れみの視線をぶつけ、自らを良き人格者だということを僕に、教えるために。うんざりだ。

勇者母「お客さんよ」

勇者「帰らせてよ。僕はもう誰とも話したくないんだ」

魔法使い「何それ!? ありえない!! 折角私が来てやったのにそれはないんじゃないの
?」

戦士「ちょっと、魔法使い!! その言い方はあんまりだよ」

魔法使い「こんなところで、籠っている方がダメダメだよ!! 開けなさい!! 開けないと扉ごと吹っ飛ばす」ギュイーン

戦士「魔法使い!? その魔力量はシャレになれないって!! この村ごと消し飛んじゃうって!!」

勇者「別にいいよ。撃てばいいじゃん」

魔法使い「そう? じゃあ、遠慮なく……。 ジャンプキーック」

ドォォォォン

魔法使い「いやー、扉を一度蹴破って見たかったんだー。あーすっきりした」

戦士「お母さん、ごめんなさい。あとで修理費用払いますので」

勇者母「いや、いいのよ。こうでもしないと、外に出ようとしないと思ってたから」

魔法使い「すいません。ちょっとお母さんはしばらく席を外してもらえませんか? ちょっと大事な話が、勇者とあるので」

勇者母「ええ、ごゆっくりどうぞ」

魔法使い「単刀直入に話すわ。僧侶は殺されたみたいよ。誰かの手によってね」

勇者「!?」

魔法使い「おかしいと思ってたんだ。協会って古くなったくらいで、そう簡単に壊れたりしないんだもん。この世界には築一万年を超えてもなお存在する協会だってあるくらいだしねー。それなのに、新聞では事故だってことにされていて、おかしいと思った私は、独自に調査を始めたんだ。それで出てきたのが、これ」

勇者「これは、魔力痕……」

魔法使い「正解♪ これが協会の天井だった場所に沢山ついてたんだよ。つまりこれは故意的に起こされたってことー」

勇者「じゃあ、僕も狙われてたって事?」

魔法使い「事故の規模を見ると、その可能性は高いと思う」

勇者「そうか、ありがとう。僕のやることが決まったよ」

魔法使い「そう」

勇者「止めないの?」

戦士「お前が決めることだからな。それにしてほしくないならわざわざ教えに来ないだろう?」

魔法使い「私たちも、このことを知って、どうにかなってしまいそうなくらいなんだもん」

勇者「それもそうだね」

魔法使い「それじゃ、私達行くわね。助けが必要ならいつでも力を貸すから」

勇者「うん。またね」

魔法使い「戦士。帰るよ」

戦士「おっす」

魔法使い「帰還!!」バシュンッ

勇者「さてと、準備しないと」

僧侶を殺したやつを、捕まるために準備を始める。顔は平静をかろうじて保っているが、心の中は嵐の中の大海原のように荒れかえっていた。殺すなんて、生ぬるいことなんてしない。殺して楽になんてしてやらない。永遠の苦しみを与えないと。

勇者「お母さん。僕外に出るよ」

勇者母「そう……。気を付けてね」

勇者「それじゃ、行ってきます」

~雪の降る街~

勇者「ここか」

もうすでに、協会の崩壊によって生まれた瓦礫は撤去されていた。

勇者「でも、魔力の後は残ってるみたいだね」

魔力の流れを目で追う。

勇者「そっちか」

勇者「フライト」

魔法の翼が生える。

勇者「今行くよ。そっちにさ」

~アジト~

暗殺者「はー、もう金なくなっちまったぜ。まあ、勇者様とやらは今、家に引きこもってるらしいし簡単だな」

子分「クヒヒヒヒ。そうですねえ」

暗殺者「思い出すなあ。あいつの絶望した顔……」

子分「たまんなっかたすねぇ」

暗殺者「魔王倒して調子に乗るからそんな目に遭うんだっつーの。ヒャヒャ」

勇者「そうだね。でもそれは君たちもだよ」

」子分「どうして、勇者がここにいるんだ!?」

勇者「どうして? 君たち身に覚えがないの?」ザワッ

子分「ヒッ、何だよ。この魔力。恐ろしく冷てぇ……」

暗殺者「へー。暗殺対象がこっちから来てくれるなんてなぁ。わざわざこっちから出向かずに済んでラッキーだったぜ。わざわざここから遠い田舎町に行かなくて済んだんだからなぁ」

勇者「協会の屋根を崩落させたのはお前か?」

暗殺者「そうさ!! 俺一人でやったっよ……。クククあの時のお前さん最高だったぜ!!」

勇者「そっか、じゃあそっちの奴は楽になってもいいよ」

勇者「ブレイクウォール」

子分「て、天井が落ちてきやがっ」プチッ

暗殺者「てめぇ、よくもっ――」

勇者「アサシンを名乗る癖にずいぶん遅いんだね。腕貰ったよ」ポイッ

暗殺者「う、腕がぁぁぁぁ」

勇者「次は、左腕、右足、そして、左足~♪ はいこれでだるまの完成~♪」

勇者「そして最後に首だね♪」

暗殺者「助けてくれぇ!! 俺は命令されただけなんだよ……」

勇者「ふーん。で、誰に?」

暗殺者「てめーらのとこの王様だよ」

勇者「ふーん。そっか王様か。じゃあ次は王様だね」

暗殺者「話したから俺は殺さないよな?」

勇者「うん。殺さないよ。もう何もしない」

暗殺者「よかった……」

勇者「黒夢」

暗殺者「何だこの黒いのは!?」

暗殺者「何もしないんじゃなかったのか!?」

勇者「だから、何もしないよ。黒夢はね。相手を何も聞こえない。何も見えない。感覚も時間と言う概念すらない空間に閉じ込める魔法なんだ。だから、何もしてないでしょ?」

勇者「って、もう聞こえてないか」

勇者「じゃあね」

本日の書き溜めは終りです。
続きは書き溜めが完結するか、文字数溜まって一々投稿するの面倒になったら投稿します

更新始めます

~中央都市~

勇者「ねえ、王様に会わせて欲しいんだけど」

兵士「駄目だ」

勇者「どうして?」

兵士「通してはダメだと、言われているからだ」

勇者「そっか。じゃあ無理矢理通らせてもらうよ」キーン


ズドォォォン

兵士「なっ……!!」

勇者「じゃ、通らせて貰うよ」

兵士「敵襲だぁぁぁぁぁ」

ジリリリリリリリリリ

兵士長「ここから先は通しませんよ」

勇者「で?」

兵士長「貴方は国家反逆罪でここで処刑します」

勇者「裏切ったのはそっちなのに?」

兵士長「王が殺せと言われれば殺す。それが私達です」

勇者「悲しい生き方だね」

兵士長「いいのです。それが私の選んだ人生ですから」

勇者「じゃあ、君は君の目的を果たせばいいさ。僕は僕の目的を果たすだけだから」

兵士長「そうですね。それは実にシンプルで素晴らしい」

勇者「行くよ。出でよ、ブリューナク」ジャキン

兵士「兵士長!!」

兵士長「皆さん、手を貸してください」

兵士「はっ!!」シャキン

先に仕掛けたのは、勇者だった。刹那にも及ぶそのスピードで兵士は一気に死に絶えていく。兵士長は辛うじてそれを防ぐが、次の一太刀は避けられなかった。次元が違う。所詮は王国の兵士長と何百年も誰も倒せなかった魔王を倒した勇者では、話にならない。そういう事だ。

勇者「正直、最初の一太刀で全員倒せると思ったんだけどなぁ。油断して掠っちゃった」

頬に垂れる血を拭う。

勇者「さて、次は王様かな?」

~王の広間~

勇者「久しぶりだね」

王「久しぶりだな」

勇者「僕はお前を殺しに来たのに、逃げないの?」

王「逃げぬよ。何故ならここで死ぬのはお前だからな」

ぞろぞろと異形の騎士たちが姿を現す。

勇者「お前がそこまで外道だったとはな」

魔物と人間の融合。最早人としての尊厳も意思も失った化け物たちはそこにいた。見覚えのある人もそこに何人かいた。

王「こいつらは、非常に優秀でな。命令されたことは忠実にしたがうからな。感情に囚われて任務を遂行できないダメ兵士とは違うからな」

勇者「戦争か……?」

王「そうだ。お前が魔王を倒したおかげで、世界の半分が自由になったんだからな。そこを手に入れるために、世界中は争うだろうからな」

勇者「くだらないね」

王「庶民の貴様には分からんだろうな。さあ、こいつをやれ」

異形の騎士「ぐぉぉぉぉぉぉ」

勇者「お座り」

異形の騎士はその言葉通り座った。

王「何をしている!? 早くこいつを殺せ!!」

異形の騎士「……………」

勇者「魔物にするからですよ。魔物は強い奴のいう事に従う。僕が強いことが分かっているこいつは僕の言葉に従ったんだ。さあ、あの醜い男を殺してこい」

異形の騎士はコクリと頷くと、剣を引き抜いて王のほうへ向かった。

異形の騎士「ぐがあぁ……」

 が、突如現れた男によって異形の騎士は斬り伏せられた。


騎士団長「王様。お怪我は?」

王「大丈夫だ……。それより早くアイツを殺せ!!」

騎士団「私たちの誇りにかけて、その任務遂行します」

勇者「さっきの君の仲間じゃないの?」

騎士団長「だから、どうしたというのだ?」

勇者「いや、容赦なく斬るんだなって」

騎士団長「当たり前だ。王の命が最優先だからな」

剣の切っ先を僕に対して向けた。

王「こいつらはなぁ!! お前の仲間も殺したんだよ!! 確か、魔法使いと戦士だったけか?」

形勢が有利になったと分かったのか、王はべらべらと喋りはじめた。

王「だが、俺に感謝しろ。仲間の元へ送ってやろう」

騎士団長「そういう事です」

勇者「お前ぇ!! あの二人にも手を出したのか!!」

騎士団長「お話はそこまでです」

勇者「くっ」

ああ、黒い感情に心が支配されていく。目の前の人間を殺せ、殺せと本能が騒ぐ。そうか……。魔物とは人の方だったのか……。一つの結論に辿りつく。

勇者「お前ら全員に罰を与える。剣戟の翼」

風魔法を一つの場所に多重発動する。

騎士団長「収束魔法だと……。しかもこんなに……!! お前ら対魔法障壁を貼れ今すぐにだ!!」

騎士「はっ!」

対魔法障壁が完成される。だが、そんなものでこの魔法を防げるわけがない。

騎士団長「こんなのめちゃくちゃだ……」

勇者「断罪」

騎士団長「障壁をすり抜けただと……!?」

勇者「当たり前だよ。それは、大気中の空気を極限まで魔法で圧縮させたものだからね。障壁を貼って、魔法を消滅させればどうなるか? 分かるよね?」

一つ一つが大嵐にも相当する風圧が、何個も何個も襲い掛かる。解放された風は城を丸ごと消滅させた。

王「な、なんだこれは……」

王は、僕が張った防御魔法のおかげで無傷でそこにいた。

勇者「どうもー」

王「ヒィ……!」

勇者「一応聞いておくね。どうして僕たちを殺そうとしたの?」

王「お前たちは強くなり過ぎたからだ。強くなり過ぎた力を人々は恐れるだろう!! だから、その前にっ!!」

勇者「そうやって自信を正当化して、悪くないとでも言いたいのか?」

王「ち、違う!!」

勇者「本音は? それは建前だろ」

王「本当だ!!」

勇者「嘘つきだね。顔がそう言ってるよ? 従わなかったからだって。俺達も戦争の道具にするつもりだったんだろう?」

王「っ……!!」

勇者「図星だね」パチン

王「なんだこれは!?」

勇者「見たことあるでしょ? 処刑台だよ」

王「お前が欲しいものは、何でもやる! だから、殺さないでくれ!!」

勇者「無理だね。だってそれは王。貴方が奪ってしまったんですから」

王「うぅ。うぅぅ~」

勇者「地位も権力も金も僕には必要ないんです。僧侶さえいれば、何もいらなかった。でもそれを貴方は奪った。死んだ人間を生き返らせるなんてできるなら、話は別ですけど、そんなことできないでしょ?」

王「許してくれぇ……」

勇者「じゃあ、右と左と下。どれが好きですか?」

王「許してくれぇ……」

勇者「質問に答えろよ」

王「下! 下!」

勇者「なるほど、流石は国王陛下だ。下が好きなんですねぇ。じゃ、お望み通り」シュパン

王「っ……!」

勇者「ちょっと、痛かったでしょ? 今から、貴方をしたから一ミリずつ斬っていきます」ニコッ

王「ヒッ」

勇者「条件は、瞬き一回ごとにしましょうか。それではスタート」

王「いぎぎぎぎ……」

勇者「そんなに目を開いたら。眼球渇いちゃいますよ」

王「あがああ」

勇者「このままじゃ目渇いちゃうので、水かけてあげますね」ジョロー

王「ああああああああああ」

勇者「はい瞬きしたから、斬るね」シュパン

王「いだああああああい」

勇者「まだ、一センチもいってませんよ? あ、そうだ失血死の問題はないから安心してください。斬ると同時に治癒魔法で治癒してるので」

王「………」

勇者「ありゃ? 気絶しちゃった? 仕方ないですね。起きて下さいよー」バチッ

王「イギッ」

勇者「おはようございます♪」

王「もう殺してくれぇ」

勇者「断ります」

王「うぅ……」

勇者「さぁ、時間はたっぷりあるんですから楽しみましょう?」

~魔王城~

勇者「ここが、魔王のいる場所だね」

僧侶「そうだな。これが最後の決戦ですね。勇者様」

魔法使い「く~、緊張するぜ。何せ、数百年誰も倒せてないんだろ?」

戦士「だからこそ、戦い甲斐があるってものよ」

勇者「皆、準備はいい?」

僧侶「僕は大丈夫です」

魔法使い「いつでもいけるぜ」

戦士「早く行こうよ!」

勇者「あけるよ」

魔王「よく来たね。勇者諸君。僕を倒しに来たのかな?」

戦士「そうよ! 世界は貴方の好きにはさせないわ!」

魔王「僕を倒した後はどうするの?」

戦士「え?」

魔王「きっと、この大陸を巡って戦争が起きるんだよ。人と人でね」

戦士「そんなことないわ! 人と人は手を取って生きていける筈よ!」

魔王「そんなことは綺麗事だ。そんなふうにうまくいわけがない。もしそうできるんだったら、僕はここにいないしね」

魔王は、纏っていたフードを脱ぎ去った。

僧侶「魔王は人間だっただと……!?」

魔王「そうだよ。といっても、人としての一生よりはるかに長い時を生きた僕を人間と呼べるのかは謎だけどね」

勇者「皆は下がってて」

魔王「たった一人で僕を倒せるつもりなの?」

勇者「ううん、違う。私は貴方を助けに来た。たった一人で全てを抱え込んだ貴方を」

魔王「僕を助けるだって!? 面白い冗談だね」

勇者「だって、私は勇者ですから」

魔王「ふふっ、面白いね」

勇者「私はある人と約束したんです。貴方を必ず助けると」

魔王「約束か……。それは僕も同じかもしれないね。この世界を平和にするには、巨大な悪が必要だ。人々全員で協力しないと倒せない位の巨悪がね。そうなれば、もう誰も犠牲にならない。犠牲にさせない」

勇者「恐怖におびえて暮らすなんて、平和とは言えないわ」

魔王「じゃあ、君ならどうする?」

勇者「きっと、貴方の行ったように人は決して手を取り合って生きることはできないでしょう。でもそれでも信じていればいつかは……」

魔王「裏切られるかもしれないんだぞ? それでも信じられるのか?」

勇者「私はそれでも信じたい! そうすればいつかきっと分かってくれると思うから」

魔王「埒が明かないね。闘う前に、一つだけ聞くよ。君にとって正義とは何?」

勇者「私にと手の正義は、自分が正しいと思ったことだよ」

魔王「僕の正義は力だ。力がなければ、正義は悪になる。力こそ正義なんだ」

勇者「そうかもね」

魔王「だから、ここで決めよう。僕の正義と君の正義。どちらが正しいかさ」ジャキン

勇者「うん、皆行くよ!!」

勇者一行「おう!!!!」

~魔王戦後~

勇者「私たちの勝ちですね」

魔王「僕の負けだ……」

戦士「止めを」

勇者「待って!! 皆は部屋から出てくれるかな、話したいことがあるから」

僧侶「分かりました。こうなると勇者様は頑固ですからねえ」

魔法使い「分かりました」

戦士「分かったわよ」

魔王「どうして止めたの?」

勇者「それはこっちのセリフだよ。だって本気じゃなかったでしょ?」

魔王「ばれてたか……」

勇者「そりゃ、歴代最強の魔王を相手にして私たちが五体満足だからね」

魔王「なるほど……」

勇者「それで、どうして手を抜いたんですか?」

魔王「本気なんか出せるわけないだろう……。僕の妻だぞ?」

勇者「気づいていたんですね」

勇者「気づいていたんですね」

魔王「当たり前だ。僕が最愛の人を姿形が変わっていたくらいで見間違うわけないだろ?」

勇者「さすがにきもいです」

魔王「相変わらず、辛辣な物言いだね」

勇者「ふふっ」

魔王「僕は間違っていたのだろうか?」

勇者「さあ? 何が正しくて間違っているかなんて私が決めることじゃありませんからね」

魔王「そうか……。じゃあ、僕は間違っていたんだな。君のいう事はいつだって正しかったから」

勇者「そうでもないですよ」

魔王「さあ、君は君の目的を果たしてくれ」

勇者「今度は、私が必ず見つけますから」

魔王「僕ですら、何百年もかかったのに?」

勇者「何回繰り返しても、見つけてみせます。何回繰り返しても愛してあげます」

魔王「そうか……。僕は幸せ者だな」

勇者「ホントですよ」

魔王「じゃ、またね。僧侶」

勇者「はい! 今はゆっくりお休みください……。勇者様」

~雨の降る日~

兵士「女王様? どうかなされたのですか?」

女王「ええ、ちょっと」

女王「そこの君。よかったら家で暮らさない?」

兵士「いけません! こんな小汚い少年を城にお入れするつもりですか? これでは他国に示しがつきません!」

女王「何を言っているのですか貴方は!! 目の前で困っている人間を見捨てるような人こそ示しがつかないでしょう」

兵士「捨て子を見かけるたびに、こうして拾うおつもりですか? それでは城が子供で溢れかえりますよ!!」

女王「和やかでいいじゃありませんか? ねえ」

兵士「分かりましたよ。全く女王様は……。こうなったら全然話聞いてくれないんだもんなぁ……」

女王「さあ、行きますよ」

少年「………」コクン

ある所に、優しい女王がいた。その女王はかつて世界を支配していた魔王を倒した勇者である。その女王の国はとても貧しい国ですが、笑顔で溢れかえっていました。優しい女王と優しい国民たちの幸せな笑い声は今日も響いています。         ―FIN―

駄作失礼しましたぁ!!
前作:キムタク「ちょっと、待てよ」キムタク「ちょっと、待てよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453194249/)も読んでいただけると幸いです。
それでは、また次の機会にお会いしましょう

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