ゆの「ラビットハウス?わあー、素敵なお店」ココア「いらっしゃいませ♪」 (44)

~木組みの街~


宮子「いや~、今日は天気もいいしお出掛け日和ですなあ、ゆのっち」

ゆの「そうだね、宮ちゃん」

沙英「木組みの家に石畳の街道……何か外国にでも来たような景色だね」

ヒロ「本当よね、素敵だわ」

ぴょんぴょんっ

宮子「お、うさぎ発見!」

ゆの「わあ、可愛いー」

沙英「えっ、こんな街中にうさぎが?」

ヒロ「この街には至るところにうさぎがいるそうよ。パンフレットに書いてあるわ」

ぴょんぴょんっ

宮子「待つのだー!」

ゆの「あ、待って宮ちゃんっ」

沙英「おーい、二人ともはぐれない様に」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453731557

宮子「ほい、捕まえた」

なでなで

宮子「よしよーし、いい子いい子」

ゆの「大人しいね。飼われてるのかな?」

宮子「んー、たぶんノラじゃないかな。首輪とか付けてないし。ゆのっちもおんぶする?」

ゆの「あ、うん……じゃ、私も」

かぷっ!

ゆの「」

宮子「おおー」

ぴょんぴょんっ

ゆの「うああああん、噛まれたあああーっ」

宮子「野生に帰って行かれましたなー。ゆのっち大丈夫?痛い?」

ゆの「ううん、そこまで痛いって訳じゃないけど……でも何で私だけ?」

宮子「ゆのっちの指からニンジンの匂いがしてたとか?」

ゆの「そんなはずないよー。うぅ、私うさぎさんに嫌われちゃったのかな?」


千夜「それはたぶん違うと思うわ」

ゆの「えっ?」

千夜「うさぎは鼻先に手を差し出すと反射的に噛み付いちゃうのよ。だからあなたを嫌ってるわけじゃないの」

ゆの「あ、そうなんですか」

宮子「良かったね、ゆのっち。嫌われてないって」

ゆの「教えてくれてありがとうございます。えっと……」

千夜「千夜よ」

ゆの「千夜さんですか。千夜さんはうさぎに詳しいんですか?」

宮子「うさぎ博士?」

千夜「小さい頃からうちでうさぎを飼っててね。名前はあんこっていうんだけど」

宮子「おお~、甘そうなうさぎさん!」

千夜「よく噛まれてたわー」

ゆの「へえー」

千夜「友達が」

ゆの「友達が、ですか」


沙英「あ、いたいた。二人とも」

ヒロ「あら、そちらの方は?」

宮子「こちら、うさぎマスターの千夜殿です。たった今知り合いました」

千夜「そんな、マスターだなんて」

ヒロ「可愛らしい着物ね。着付けは自分で?」

千夜「はい。家が甘兎庵っていう和菓子屋でして、これ、仕事着なんです」

ゆの「へえー、和菓子屋さんなんだ」

沙英「働いてるんだ?えっと、高校生くらいに見えるけど」

千夜「高校一年生です」

ゆの「あ、じゃあ私と宮ちゃんと同じだね」

千夜「えっ?」

ゆの「あらためまして、私ゆのって言います。やまぶき高校の一年生」

宮子「同じくー、宮子と申します」

ヒロ「ヒロよ。私と沙英は一つ上の学年なの」

沙英「よろしく」

千夜「よろしくお願いします」

千夜「……じー」

ゆの「なに、千夜ちゃん?」

千夜(ゆのちゃん、チノちゃんと比べてどっちが大きいだろう)

ゆの「?」

ヒロ「甘兎庵って……そういえば、確か」

パラ

ヒロ「あ、やっぱり。パンフレットに紹介されているお店だわ」

沙英「どれどれ。へえー、老舗の甘味処なんだ」

ぐぅぅぅ

宮子「ううー、もうお腹ペコペコで力がでないや」

ゆの「もう、宮ちゃんったら」

千夜「良かったらうちに寄って行かない?」

宮子「行きまーす!」

ヒロ「そうね。結構歩いたし、疲れた時には甘いものが一番よね」

沙英「私も賛成」

ゆの「私も~」


――――――
――――

千夜「へえー、美術の勉強を?」

ゆの「うん。私達、美術科のクラスなんだ」

宮子「住んでるとこも同じだよ」

ヒロ「ひだまり荘って言ってね。それぞれ下宿しているんだけど」

沙英「まあ、毎日行き来してるし。一人暮らしって感じじゃないかな」

ゆの「みんな、まるで家族みたいな雰囲気で」

千夜「ふぅん、楽しそうね。ひだまり荘って」

千夜「着いたわ、ここよ」

ゆの「わあ、綺麗なお店」

ゆの「えっと、庵、兎、甘……?」

沙英「ゆの、それ右から読む」

ゆの「え、あ、そっか。『あまうさあん』ってこういう字書くんだ」

千夜「ええ」

ヒロ「あら、宮ちゃんは?」


宮子「見て見てヒロさん。この隣のボロ屋敷、蔦がいい感じに絡んでてイカスよ」

カキカキ

シャロ「ちょっとあんた!人の家の前に居座って勝手にスケッチしないでよ!」

宮子「おや、ここの住人さんですか?」

シャロ「え、いや……私はその……ただの通りすがりで」

千夜「シャロちゃん」

シャロ「あっ、千夜」

ゆの「千夜ちゃんの知り合い?」

千夜「私の幼馴染で、お隣さんのシャロちゃんよ」

宮子「おっ、やっぱりここの住人さんでしたか。いやー、いいセンスしてますなあ」

千夜「そうよね。慎ましやかでいい家だと思うわ」

シャロ「あんたたちねえ……」

~甘兎庵~


ヒロ「内装も落ち着いた雰囲気で居心地いいわね」

沙英「そこの黒ウサギの置物もいい味出してる」

千夜「こちら、うちの看板うさぎのあんこ」

沙英「えっ、生きてるんだ?微動だにしないけど」

千夜「恥ずかしがり屋で大人しいから、普段はじっとしているの」

ヒロ「ちょっと触らせてもらってもいいかしら?」

千夜「どうぞ」

ヒロ「わあ、ふわふわでさらさらよ。ほら、沙英も触ってみたら」

沙英「え、私?ん、じゃあ、ちょっとだけ……あ、ほんとだ、いい肌触り」

ヒロ「この子は雌なの?」

千夜「いいえ、男の子です」

沙英「男っ!?」

ゆの「シャロちゃんはあんこ君を撫でたりしないの?」

シャロ「私はその……あれよ。うさぎにはそんなに興味ないっていうか」

宮子「まあまあそう言わずに」

ひょい

シャロ「ひゃっ!?ちょっと、私に近づけないでぇー!」

ぴょんぴょんぴょんぴょんっ

シャロ「いやあああああ~っ!」

だだだだだだっ

宮子「おや、あんこさんが急に活発に」

千夜「あらあら」

ヒロ(怖がってる?)

沙英(怖がってる)

ゆの(あれ。もしかして小さい頃よく噛まれてた友達って……シャロちゃん?)


シャロ「はあ……はあ……」

千夜「こちら、おしながき」

ゆの「ありがとう」

パラリ

ゆの「……え?」

宮子「どしたのー、ゆのっち」

ゆの「えっと、千夜ちゃん……これっておしながきだよね?」

千夜「もちろん」


○煌めく三宝珠    ¥200
○雪原の赤宝石    ¥250
○海に映る月と星々  ¥300
・・・


沙英「へぇ、変わった名前付けてるんだね。これ和菓子?」

千夜「はい」

ヒロ「煌めく三宝珠って……いったい何のことなのかしら」

シャロ「ほら千夜。お客さん達が困惑してるわよ」

千夜「初めてのお客様向けに指南書も用意しているわ。こっちに」

ゆの「あ、そうなの」

宮子「ちょいタンマ!私が推理するよ」

宮子「煌めく三宝珠。宝珠は十字架の刺さった玉。丸い玉が三つ繋がった美味しそうに煌めく和菓子と言ったら……ほい、ゆのっち!」

ゆの「え、ええっ。えっと、んーと……玉が三つ……刺さって……あ、もしかしてお団子かな?」

千夜「お見事、正解は三色団子よ」

ゆの「当たったあ」

沙英「あ、なるほど。言われてみれば」

ヒロ「初見だとなかなか分からないわね」

シャロ「まあ、一目見てさくさく解読した子もいるんだけど」

宮子「ほおー、それはなかなかの手練れですな」

―――――― 
―――― 


千夜「お待たせしました。それではごゆっくり」


「「「「 いただきます 」」」」


ヒロ「んー、甘くておいしいわ」

沙英「この抹茶パフェもいけるよ」

ゆの「イチゴ大福も美味しいです」

宮子「千夜殿、お団子おかわりー!」

千夜「はーい、ただいまー」


ゆの「千夜ちゃん、どれも手作りなんだよね」

宮子「いやー、よく出来てますなあ」

千夜「ええ。小さい頃からしごかれたから。和菓子作りは趣味みたいな感じでね。自分で作ったものに付ける名前を考えるのも楽しいわ」

シャロ「ネーミングセンスは斜め上を行ってるけどね」

ヒロ「でも分かるわ。私も作品を仕上げてから題名を付けるときはいろいろ考えるの楽しいもの」

宮子「沙英さんも小説の題名考えるの楽しい?」

沙英「んー、そうだね。先に決めるときもあるけど、書きながらいろいろ練っていくのも楽しいっちゃ楽しいかな」

シャロ「へえ、小説書いてるんですか」

ゆの「沙英さんはプロの小説家なんだよ」

シャロ「ホントに?高校生で小説家って凄いですね」

沙英「いやー、まあ、それほどでもないけどさー」

千夜「甘兎庵にも小説家のひとがよく来るのよ。新作のネーミングを一緒に考えてもらったりもしているわ」

ゆの「そうなんだ。このお店、落ち着いた雰囲気だしお仕事捗りそうだね」

沙英「いい気分転換にもなりそうだし」

宮子「和菓子もお茶もおいしいし」

ヒロ「ふふ、だいぶ長居しちゃったわね。それじゃ、そろそろ」


「「「「 ごちそうさまでした 」」」」

千夜「これ、うちの自慢の栗羊羹。お土産にどうぞ」

ゆの「わあ、ありがとう」

千夜「どういたしまして」

宮子「さてさて、これからどこ行こっかー」

沙英「まだ帰りの時間には早いし、どこか寄って行こうか。ヒロはどう?」

ヒロ「うーん、ここまで結構歩いてきたし。甘兎庵のようにゆったり寛げるところがいいかな」

千夜「それじゃあ、ラビットハウスに寄って行ったらどうかしら」

ゆの「ラビットハウス?」

シャロ「コーヒー専門の喫茶店よ。ここからそう遠くないわ」

千夜「友達がバイトしているの。昔はライバル店だったんだけど、今はコラボ企画をやったりと仲良くしてるわ」

沙英「和風の次は洋風かあ。うん、いいんじゃない?」

ヒロ「そうね。折角の機会だもの、行ってみましょ」

千夜「私は今からお店の番をしないといけないけど、シャロちゃんは?」

シャロ「そうね。今日は久々にバイト休みだから、時間も空いてるし。案内してもいいわよ。この街、初めて来た人には迷いやすいし」

宮子「おお、ホームズ探偵、かたじけない」

シャロ「ホームズ?……って私シャーロックじゃないわよ、シャロよ?」

千夜「シャーロックもといシャロちゃん」

シャロ「もー、千夜まで茶化さないでくれる?」

千夜「大事なお客さんだからよろしくって、リゼちゃんたちに伝えておいてね」

シャロ「あ、うんっ……分かった」

沙英「それじゃ」

ヒロ「また来るわ、千夜さん」

千夜「またのご来店、お待ちしております」

ペコリ


―――――― 
―――― 

ゆの「私も今度、和菓子作りに挑戦してみようかな」

ヒロ「そうねえ。作るなら何がいいかしら」

シャロ「みんな自炊してるの?」

沙英「うーん、4人一緒に食べることも結構多いかな。ヒロやゆのは料理上手だし。私と宮子はどっちかというと食べる側かも」

宮子「いやいや沙英さん、私魚の干物作ったりして生存戦略してるよー」

ゆの「宮ちゃんって生活力あるよね。前に食べ物がないからって水だけで代用してたのはびっくりしたけど」

沙英「さすがに水だけは心配になるよ。ま、私も徹夜明けで朝は缶コーヒー1本ってこともあるけど……」

ヒロ「健康のことを考えたら、二人ともしっかり食べないとダメよー」

宮子「じゃあ喜んでゴチになります!」

ヒロ「んー、でもおごられ癖がつくのも問題かしらねえ」


「「「「 あははははっ 」」」」


シャロ「……」

シャロ(みんなで一緒に一つ屋根の下……かあ。ちょっと羨ましいかも)

ゆの「シャロちゃん、どしたの?」

シャロ「ううん。ひだまり荘っていいなーって」

シャロ「さ、着いたわ。ここがラビットハウス」

宮子「これはこれは、大きなうさぎ小屋ですなー」

シャロ「……うさぎ小屋じゃないわよ」

ゆの「わあー、素敵なお店」

沙英「周りの景観ともマッチしてていい感じ」

ヒロ「うさぎがコーヒーカップを抱えてる看板も可愛らしいわね」

宮子「では早速、突撃しますかー」


ガラッ

カランコロン


ココア「いらっしゃいませー♪」

~ラビットハウス~


宮子「ほほー」

ヒロ(アンティーク系のお店ね。コーヒーのいい香りが漂ってくるわ)

沙英(お客はあんまりいないみたい。静かにレトロな雰囲気を楽しむのならいいかも)

宮子(はてさて、うさぎはどこに?)

ココア「何名様ですかー、ってあれ……シャロちゃん?」

シャロ「お客さんを連れて来たわよ」

ゆの「こんにちはー」

ココア「あ、こんにちはー」

ゆの「その制服可愛いですね」

ココア「ありがとう。お客さんの服も可愛いよ!」

ゆの「え、そ、そうですか?」

ココア「うん、ちょっと大人っぽい感じで」

ゆの(大人っぽい……かあ)

シャロ「ココア、一応言っとけど、その子私達と同じ高一よ」

ココア「ええっ!小学生じゃないの!?」

ゆの「……」

どよ~ん

チノ「ココアさん。お客さんに対して失礼なことを言わないでください」

ココア「ち、違うよチノちゃん!全然悪気はなかったんだよ。お客さん、ごめんなさいっ」

ゆの「あ、ううん、全然気にしてないよ。えっと、ココアちゃんだっけ?私達、千夜ちゃんに紹介されてこの店に来たんだ」

ココア「えっ、千夜ちゃんから。それじゃ、大事なお客さんだね!」

ザッ

リゼ「大事な客だと?」

シャロ「あ、リゼせんぱ~い!」

リゼ「つまりあれか、VIPだな?」

チャキ

ゆの「ふぇ!?」

リゼ「護衛の方は任せてくれ。だが油断は禁物だ。常に敵襲を想定して備えることが大事だからな。防弾チョッキは着けているか?」

ゆの「え?え?銃……えええっ!?」

宮子「お、もしやこの子がうさぎさんかなー?」

ティッピー「……」

チノ「あ、えっと、はい……」

ココア「アンゴルモアうさぎのティッピーだよ。もふもふだよ~」

宮子「……じー」

ティッピー「……」

宮子「大福餅~。いただきま~す」

ティッピー「こ、こりゃ、やめんかっ!」

リゼ「おい待て!毛玉がのどに詰まったら危険だ」

ゆの「あれ、今この大福……じゃなくてうさぎさん?がしゃべったような」

ココア「私の腹話術なんだー」

ゆの「え、腹話術?すごいねっ」

チノ「いえ、私の腹話術なのですが……」

ゆの「あ、そういえばヒロさんと沙英さんは?」

シャロ「あっちよ」


ヒロ「こっちこっち」

沙英「とりあえず二人とも……席着きなよ」

ヒロ(何ていうか)

沙英(個性的な店員ばっかりだなあ、この店)

―――――――
―――― 


ココア「えーっと。ゆのちゃん、宮子ちゃん、ヒロちゃんに、沙英ちゃんだね。覚えたよっ」

沙英「沙英……ちゃん?」

ココア「あれ、何かおかしかったかな?」

シャロ「ま、普通に考えたら馴れ馴れしいと思うけどね」

沙英「年下からちゃん付けで呼ばれることってまあ無いし」

ヒロ「何だか新鮮」

ゆの「私達はヒロさん、沙英さんってさん付けしてるもんね」

宮子「そだねー」

リゼ「ココアは私のこともちゃん付けで呼んでいるんだ」

ココア「あ、そういやリゼちゃんって年上だったっけ!」

リゼ「おい、忘れてたのか?」

チノ「お待たせしました。オリジナルブレンドと特製パンケーキ、それとサンドイッチです」

宮子「待ってましたー!」

ヒロ「わあ、いい匂い」

ゆの「チノちゃんは中学生なんだっけ?」

チノ「あ、えっと、はい。そうですが……」

ヒロ「中学生でお店を切り盛りしているなんて立派よね」

チノ「は、はい。マスターの娘として当然のことで……」

沙英「ん、ひょっとして人見知り?」

ココア「そうだよ。チノちゃんはちょっぴり人見知りな私の妹なんだー」

ゆの「妹さんなの?」

チノ「妹じゃないです。ココアさんは黙っていてください」

ココア「ううー……ツンツンなチノちゃんも可愛い~」

宮子「はぐはぐもぐもぐっ」

シャロ「甘兎でもたくさん食べてたのによく入るわね」

宮子「いやいや、これは別腹ゆえ。ね、ヒロさん」

ヒロ「……うっ」

ヒロ(大丈夫よ……今日結構歩いてカロリー消費してるからこれくらいなら)

ヒロ(あ、でもケーキが思ったより大きいし……そのうえサンドイッチも食べたら……)

もんもん

シャロ「……私何かまずいこと言った?」

宮子「ヒロさん別に太くないのにー、もぐもぐ」

ココア「チノちゃんね、なかなか私のこと『お姉ちゃん』って呼んでくれないんだあ」

ゆの「呼んでほしいの?」

ココア「ほしいっ!もっと甘えてほしい!」

チノ「まったくココアさんは……」

沙英「ココアは実の妹はいるの?」

ココア「ううん、4人兄妹の末っ子なんだ。お姉ちゃんはいるよ。モカお姉ちゃん」

沙英「へえー。うちもココアみたいな妹だったら良かったなあ」

チノ「沙英さんにも妹さんがいるんですか?」

ゆの「智花ちゃんって言ってね。チノちゃんと同じ中学生だよ」

ココア「可愛いさかりだね!」

沙英「そんな可愛いってもんじゃないよ。喧嘩だってよくするし、何かにつけてあーだこーだってメールしてくるし」

ココア「それはきっと沙英お姉ちゃんのこと気に掛けてるんだと思うな。口にはしなくてもきっと心の中ではお姉ちゃん大好きモードなんだよ」

沙英「ええー、そんな、ないないって」

ココア「ねー、チノちゃん」

チノ「何で私に同意を求めるんですか」

ゆの「お姉ちゃんかあ。私は一人っ子だから、姉妹の間柄とかよく分かんないなあ」

ココア「じゃあ、私がゆのちゃんのお姉ちゃんになってあげるよー」

ゆの「えっ」

ココア「さ、お姉ちゃんって呼んでみて」

ゆの「えっと、お、お姉ちゃん……」

ココア「ふわぁ~可愛い~」

なでなで

ゆの「うう、同級生なのにー……」

チノ(何でしょう。ゆのさんがココアさんに撫でられているのを見ていると……何だか)


ヒロ「えっと、リゼさん」

リゼ「ん、何だ?」

ヒロ「リゼさんの持ってるそれって……玩具なのよね?」

リゼ「ああ、もちろんモデルガンだ。興味があるなら触ってみるか?」

ヒロ「う~ん……遠慮しておくわ」

宮子「私も使ったことあるよ。あれは満月の夜の繁華街。組織の抗争に巻き込まれたとき――」

リゼ「抗争だと……?その話詳しく聞かせてくれっ」

ヒロ「ねえ沙英、ここって日本よね?」

沙英「ああ、うん、たぶん……」

シャロ「やっほーい!楽しんでますかぁ~!先輩方!」

ヒロ「え、シャロさん……?」

チノ「シャロさんはカフェインを摂取するとたちどころに酔ってしまう体質なんです」

沙英「凄い変わりようだね……」

シャロ「ヒロしゃーんっ」

ぎゅっ

ヒロ「あらあら、どうしたのシャロさん?」

シャロ「ヒロしゃん、ふかふか~♪」

ヒロ「ふかふか……?私のからだ……ふかふか……?」

どよーん

沙英「ヒロー、それ悪い意味じゃないと思うよ」

―――――― 
―――― 


とろーり

ゆの「えっと、こんな感じでいいのかな」

ココア「そうそう、そんな感じ。上手上手」

ゆの「よし、完成。どうかな?」

ココア「うん、おいしそうなおまんじゅうが書けてるよ!」

チノ「ココアさん。おまんじゅうだなんて失礼です。これはきっと月夜に浮かぶ満月かと」

ゆの「あ、これ……ティッピー書いたつもりなんだけど……」


ヒロ「ラテアートって面白いわね。体験するのは初めてよ」

リゼ「うちではお客さんへのサービスの一環でやってるんだ。こうやって時間が開いてる時に練習している」

沙英「リゼが書いたのは……銃を構えたうさぎ?」

リゼ「あはは。その……最近、うさぎの縫いぐるみに銃器を持たせて武装させる趣味に凝ってて」

ヒロ「へえ……そうなの」

リゼ「あ、いやっ、でも私は全然普通の女子高生だからな!決して変な趣味は持っていないぞ!」

シャロ「はい!先輩の趣味は至って普通ですよ!」

沙英(説得力ないなあ)

沙英「でも、この出来は美術科顔負けだよ」

リゼ「そうか?そう言われると照れるな……」

宮子「ほい!でけたー」

沙英「お、宮子も書いた?どれどれ」

シャロ「ええ、これって……」

ヒロ「キュビズム?」

宮子「ロココ調に仕上げてみました」

リゼ(チノの作品と同じ方向性だ……)

―――――― 
―――― 


ココア「ゆのちゃん、夢はやっぱり芸術家?」

ゆの「うーん、まだ夢とか……具体的にどういう仕事をしたいかっていうのは考えてないかな。ココアちゃんは?」

ココア「私?私はパン屋さんと弁護士を掛け持ちしながらバリスタになって小説も書きたいかな」

ゆの「ええー、凄い!そんなに具体的に考えてるんだ」

チノ「ココアさんは影響されやすく目移りしやすいだけです」

ココア「夢はいっぱいあるけど、でもやっぱり一番は」

ぎゅうっ

ココア「チノちゃんにもっともっと頼ってもらえる自慢のお姉ちゃんになること!」

チノ「ココアさんっ……鬱陶しいので離れてください」

げしっ

ココア「うぅー……チノちゃんに拒否された……ゆのちゃん慰めて~」

ぎゅっ

ゆの「わっ、え、えっと……よしよし?」

チノ「ちょ!ゆのさんからも離れてください!」

ぎゅっ

ココア「ふへへへ~、これで両手に花だよ」

ゆの「もぉ~、ココアちゃんってばー」

チノ「まったく、……ココアさんはしょうがないココアさんです」

宮子「♪~」

カキカキ

シャロ「何描いてるの?」

宮子「ここまで案内してくれたお礼にと思いまして、似顔絵を」

シャロ「え、私の?……さっきのラテアートみたく変な絵なんじゃないでしょうね」

宮子「よし、一丁上がり。どぞどぞ、ご覧ください」

シャロ「どれどれ。え、これ私と……」

宮子「仲睦まじきは良きことなり~」

シャロ「……ありがと、上手だわ」

リゼ「ヒロはどんな服を着ても似合いそうだな」

ヒロ「あら、そう?」

リゼ「私はこの前、バーテンダーの衣装のほうが似合ってるなんて言われてな」

ヒロ「ボーイッシュってことなのかしら。でもその制服もうまく着こなせてるわ」

沙英「だね。髪綺麗だし伸ばしたら印象変わるんじゃない?」

ヒロ「フリフリのドレスなんかも似合うと思うわ」

リゼ「そう……かな」

カァ

沙英(顔赤くなってる?)

ヒロ(こういう反応は女の子らしいわね)


ギィィ


沙英「!」

ヒロ「あら、あのひとは?」

リゼ「ああ、チノのおやじさんだ。夜のバータイムでマスターをしている」

沙英「……へー」

ヒロ「格好いいお父さんね。沙英、あいさつしてきたら」

沙英「ああ挨拶なんてまだ早いっていうか私ただの客だしっ!」

リゼ「沙英は気持ちが顔に出やすいんだな」

沙英「えーそれ人のこと言える?」

リゼ「ん、私?私はそんなことは……」

ヒロ「うふふふ」

―――――― 
―――― 


宮子「いやー、今日は楽しかったー。満腹満腹」

シャロ「あんたってほんと快活で元気ねえ」

リゼ「しっかし、気が付いたら随分時間が経っていたな。もう閉店の時間とは」

チノ「皆さん、帰りの時間は大丈夫なんですか?」

沙英「うん、今から帰れば大丈夫」

リゼ「何なら私が家の者を呼んで車で送らせてもいいんだが」

ヒロ「いえいえ、お構いなく。そこまでしてもらっちゃたら悪いわ」

リゼ「そうか」

沙英(リゼの家の車だと戦車でも来そうだなあ。いや、まさかそれは無いか)


ココア「これ、うちで焼いたパンなんだ。はい、プレゼント!」

ゆの「わあ、ありがとう。でもこんなにもらっちゃっていいの?」

ココア「いいよ。友達になった記念で!またラビットハウスに来てね。いつでもうぇるかむかも~んだよっ」

ゆの「きっとまた来るね。ココアちゃん。千夜ちゃんにもよろしく言っておいて」

ココア「うんっ」

ヒロ「それじゃあ、お暇するとしましょうか」

沙英「そうだね」

チノ「お気をつけて」

シャロ「道に迷わないようにね」

宮子「ひだまり隊はこれにて退散します、サー!」

リゼ「健闘を祈る!元気でな」

ココア「ひだまり荘にもいつか行ってみたいな。お話聞いてると、とっても楽しそうだもん」


ゆの「いつでも来てくれていいよ――ひだまり荘で、待ってるね」


ココア「ばいばーい、ゆのちゃーん」

ゆの「またねー、ココアちゃん」

―――――― 
―――― 

ヒュゥゥ

シャロ「むー、ちょっと冷えてきたわ」

シャロ(はあー、さすがに長居し過ぎた……スーパーの特売に間に合わなかったじゃない)

シャロ(今日の夕ご飯、どうしようかな。いっそ水だけで節約……いやそれは辛いぃ~)


千夜「お帰りなさい、シャロちゃん」


シャロ「千夜」

千夜「どうだった、みんなとは?」

シャロ「そうね。楽しい一日だったわ。あ、これ」

千夜「なあに?あら……上手な絵。私とシャロちゃんね」

シャロ「宮子が案内してくれたお礼にって。素質あるわね」

千夜「嬉しいわあ。額に入れてお店に飾ろうかしら」

シャロ「ちょっとやめてよー、私が恥ずかしいっ」

千夜「ふふっ、冗談よ冗談」

シャロ「でも、いいわね。皆で同じ学校に通って、一つ屋根の下で暮らすっていうのも」

千夜「……。シャロちゃん、ひだまり荘のみんなのことが羨ましいの?」

シャロ「何ていうか、あの4人見てると……まるで本当の家族みたいでさ」

千夜「家族ねえ。でも、それなら私達だって家族同然なんじゃないかしら。付き合い長いもの」

シャロ「……まあ、そうね。長い腐れ縁よね」

千夜「ココアちゃんやチノちゃん、リゼちゃんとだって……住む場所は違っても、いつだって連絡を取って会うことができる」

千夜「みんな、見えない糸で繋がっていると思うの。私はね」

シャロ「……そうかもね」


千夜「さ、今夜はお鍋なの。シャロちゃんも上がっていって。一緒にごはんにしましょ」

千夜「心もからだも温まるわ」

シャロ「……うんっ」

~ひだまり荘~

ちゃぷ

ゆの「はあー、いいお湯」

ゆの(今日は楽しい一日だったなあ)

ゆの(千夜ちゃん、シャロちゃん、ココアちゃん、チノちゃん、リゼちゃん)

ゆの(初めて行った街で、いろんな出会いがあった)

ゆの(普段とはまた違う、ワクワクするような時間)

ゆの(今度あの街に行ったら、綺麗な風景を写生したいな)

ゆの(それからシャロちゃんがバイトしてるっていうお店にも寄ってみたいかも)

ゆの(みんな同じ高校生なのに、ちゃんと働いてるなんて凄いなあ)

ゆの「ふう、そろそろ上がろっか」

ばしゃっ


ゆの「ふあ~、眠くなってきちゃった。今日は早めに寝よう」

ゆの(ココアちゃんたちがひだまり荘に来たら、何して遊ぼうかな)

ゆの(今度は私達がごはんを作って歓迎するってのもいいし)

ゆの(今日みたいにいろんな話題で盛り上がるのもいいな)

ゆの「さてと」

ゆの(明日もきっといいことあるよね)

ゆの(おやすみなさい)

                                     ~おしまい~

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