晶葉「ウサミンロボはきらりんロボの夢を見るか?」 (36)

【モバマスSS】です

「LIVEツアーカーニバル 鋼鉄公演 きらりんロボ -襲来!コスメティア帝国-」のネタバレ含みます

(もう終わったものなのでさすがに気にする人はいないと思いますが、念のため)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453728820


 ウサちゃんロボが一列に並んでいます。

 ここは池袋科学要塞研究所、と名付けられたシンデレラプロ事務所地下。

「全員揃ったか?」

 安部菜々と一緒に現れた池袋晶葉の言葉に、ウサちゃんロボの先頭に並んだウサミンロボが手を挙げます。

 うさっ

 ウサミンロボはウサミン星の未来科学によって強化されたウサちゃんロボです。
 だから、皆が集まるときはウサちゃんロボのリーダーを務めるのです。

「緊急会議を招集したのは他でもない。実は、次のライブツアーカーニバルに私とウサミンも出演することになった」


 うさーうさーうさー

 ぱふぱふぱふ、とロボたちのミトンハンドによる拍手とうさ歓声が響きます。

「残念ながら主役ではないが、私は私の役をしっかりとこなしたいと思う」

「菜々も主役じゃ無いけれど、一生懸命頑張るからね」

 うさーうさーうさー

「そこで、プロデューサーからアイドルとは別にロボ科学者としての私に依頼が来た」

 うさっ!?


「公演で使われるロボットを作って欲しい、と。だから、我々でそのロボットを作る」

 うさっ!?

 晶葉の言葉に続いて、菜々が言います。

「その名は、きらりんロボ! 協力しましょう、ウサちゃんロボ! ウサミンロボ!」

 うさーっ!

「設計図と作業割当表は今、ウサネットで配信中だ、各自ダウンロードしておくように」

 ロボたちはそれぞれ、自分たちに割り当てられた作業工程表をダウンロードして覚えます。
 まずは資材運搬班、機材調達班、現場準備班に別れました。


 作業が進みます。

 一朝一夕でできるわけもなく、作業は連日続きます。
 その合間にも、ロボたちのパトロール、事務所のお手伝いは平行しています。
 とは言っても、設計図を見る限り今回のロボットはタダの張りぼてです。それほど時間はかかりません。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「……晶葉」

「どうした? 助手。いや、今はアイドルの仕事中だからプロデューサーか」

「いや、実はロボットのことなんだが」

「鋭意制作中だ。ロボたちも張り切っているぞ」

「それが……すまん。設計変更を頼みたい」

「なに?」

「予定では背景として動かさないつもりだった」

「ああ、だから張りぼて……待て、まさか」


「両腕だけでも動かせないか、こう、振り上げるように」

「……演出が変わったのか?」

「すまん」

「いや、それくらいならたいした変更にはならない。関節部を可動にして、モーターを入れれば良いだけだ」

「そうか、ありがたい」

「私を舐めるなよ」

「助かるよ、さすが、天才ロボ科学者池袋晶葉」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 晶葉はすぐにロボたちに仕様変更を伝えました。

 うさーうさー

 ロボたちには否はありません。そもそもたいした作業でもないからです。

 そうこうしているうちに、一台のウサちゃんロボが晶葉と共演するために選ばれます。
 
 うさーうさーうさー

 共演するウサちゃんロボは、皆の声援を受けて照れながら晶葉と一緒に撮影に出かけました。

 残った皆はきらりんロボの組み立て作業を続けます。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「……すまん、晶葉」

「……まさか、また仕様変更なのか」

「いや、これ以上は駄目だと言ったんだが、演出家の先生が……」

「むぅ」

「天才池袋晶葉なら何とかするはずだ、と」

「……私がそんなおだてに乗ると思っているのか」

「そうだよな、すまん。俺からもう一度言うよ、いくら晶葉でも無理なものは」

「待て」


「ん?」

「今、何と言った?」

「いくら晶葉でも無理なものは……」

「無理だとは言ってないぞ」

「え? しかし」

「無理じゃない。どんな変更なんだ」

「ロボを動かしたいと」

「どんな風に」


「歩かせたいと」

「あの巨体をか?」

「……無理だよなぁ」

「だから、だれが無理だと言った」

「いや、流石に無理な話だろう」

「やってやろうじゃ無いか。設計変更してやる」

「無理はするなよ」

「無理じゃない。可動部を増やすだけの余裕はある。モーター出力も充分に余裕がある。流石に自律用のAIは無理だが」

「だろ?」

「各部の動きを統括する独立制御回路を複数使う。地球製ではちょっと不安があるから、ウサミン科学製の部品を使うぞ」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 再びの仕様変更をロボたちは受け入れます。

 うさーうさー

 作業は急ピッチで進みました。

 独立制御回路をモニターしたりフォローするためにきらりんロボからはたくさんの配線が伸びて、背後の機械に繋がれています。
 まるで、きらりんロボを繋ぎ止めているかのようです。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「すまん、晶葉」

「なんだ」

「この部分を光らせて、ちょっとしたSEと連動させようと……」

「……わかった。善処しよう」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「スマン、晶葉」

「……これで何回目の仕様変更だと……」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「晶葉ーーーー!!」

「いい加減にしろーーーーっ!!!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そして仕様変更の続いたある日……

 ……とう……
 
 うさ?

 作業中のウサミンロボは、何かが聞こえたような気がしました。

 うさ?

 うさーうさー

 誰も何も聞いていません。

 ……がとう……


 うさっ!

 やっぱり聞こえます。間違いありません。

 ……ありがとう……

 今度ははっきりと聞こえました。

 うさー?

 なんと、声はきらりんロボから聞こえるではありませんか。

 うさ? きらりんロボは喋るウサ?

 うにぃ、はじめましてにょわ


 喋っているわけではありません。ロボ同士にだけ通じる仮想AI空間通信。人間で言うところのテレパシーのようなものです。
 次々と追加された複数の独立制御回路が、きらりんロボの体内で仮想ニューロンネットワークを作り上げてしまったのです。
 さすがウサミン科学です。

 だけど、きらりんロボの言葉が通じるのは、同じウサミン科学部品を使っているウサミンロボだけのようです。
 ウサちゃんロボにも、それどころか晶葉たちにも聞こえないようです。

 きらりんロボは、みなと一緒にツアーに出るウサ
 とても羨ましいウサ
 ロボは、菜々ママのバックダンサーしかしたことがないウサ

 きらりんは、きらりと一緒にハピハピできてうれすぃにょわ

 頑張るウサ

 頑張るにょわ


 ウサミンロボときらりんロボはたちまちお友達になりました。

 毎日毎日、ウサミンロボはきらりんロボを組み立てながらお話します。

 ある日、完成した台本をダウンロードしたウサミンロボは、その内容をきらりんロボに伝えます。

 にょわ……

 悲しそうなきらりんロボ。

 どうしたウサ?

 きらりんロボは、悪いロボットにょわ?


 確かに、今回諸星きらりは悪の科学者役で、そのきらりんロボも悪のロボットです。

 お芝居ウサ

 にょわ……きらりんと一緒に出るのはとーっても嬉しいにょわ
 だけど、悪いきらりんはイケないことにょわ

 実はウサミンロボも、同じ事を少しだけ考えていたのでした。

 今回の池袋晶葉も悪役です。しかも、その配下としてウサちゃんロボも登場するのです。

 きらりも晶葉も今回のツアーでは悪役です。正義ではありません。菜々ママはきらり配下の役です。
 
 お芝居だとはわかっています。それでも、です。


 ウサミンロボは、そしてきらりんロボも、悪はいけないことだと知ってます。

 うさ!

 ウサミンロボはきらりんロボを元気づけます。

 悪とか正義とか……何が正義で何が悪かとわからないとき、瞳を閉じるのです。
 愛の光が見えたらそれが、命を賭けて護るべきものなのです。

 きらりんロボははたと気づきます。

 にょわっ! 愛かどうかはわからないけど、ハピハピは感じるにょわっ
 ハピハピは、大好きで、護るべきモノにょわ!


 ウサミンロボも両手を挙げてくるくる回ります。

 うさっ! ロボも、愛かどうかはわからないけど、博士と菜々ママは大好きウサ!

 ハピハピのために頑張るにょわ!

 応援するウサ!!


 その数日後ついにきらりんロボは完成しました。

 かしゅん、かしゅん、かしゅん

 繋がれていた配線を全て外すのは、ウサミンロボ直々です。

 頑張るウサ!

 頑張るにょわ!


 きらりんロボはウサミンロボの応援を受けながら、会場へと運ばれました。

 そして、本番当日。

 ウサミンロボたちは池袋科学要塞研究所の会議室に集まっていました。
 会議室に設置された大型テレビからは、ライブビューイングの映像と音声が流れてきます。

 うさーうさー

 ロボたちはこの日のために特別に準備された日○キャノーラ油の入ったボトルを手にして、それぞれリラックスムードです。
 何人かのアイドルも、それぞれ飲み物や軽いスナックを持って集まっています。

 ライブが始まりました。

 ストーリーが進みます。


 きらりんロボ初登場の場面ではウサちゃんロボたちが一斉に立ち上がって、くるくる回ります。

 一緒に見ていたライラさんも何故か回っていました。

 悪の科学者アキハこと池袋晶葉の登場でさらに興奮したロボたちはくるくる回りながら腕も回します。
 家事アンドロイド安部菜々登場でもっともっと回ります。

 ライラさんも回していました。市原仁奈ちゃんも回していました。ジュースがちょっとこぼれました。

 そしてついにクライマックス。

 きらりんロボとヒーローたちの対決です。

 うさーうさーうさーうさーうさー!!!

 ロボたちはきらりんロボを応援します。脚本は知っているけれど、それでも応援します。
 自分たちの作ったきらりんロボなのです。だから応援するのです。

 きらりんロボ大破シーンに、静まりかえる会議室。
 
 うさっ

 ぱふっぱふっぱふっぱふっ

 ウサミンロボのミトンハンド拍手です。

 ぱちぱちぱちぱち

 ライラさんや仁奈も拍手しています。

「きらりんロボさんもがんばったのですよー」

「がんばったでごぜーます」

 拍手はいつまでも鳴り響いていました。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 大破したきらりんロボは、研究所倉庫に運ばれてきました。

 かしゅん、かしゅん、かしゅん

 博士の指示に従って、再び配線を全て繋ぎます。
 なんだか配線が増えているような気もしますが、これはきっと修理のために違いありません。
 ウサミンロボはきらりんロボが修理されることに確信を持っていました。

 だからウサミンロボは毎日通って、きらりんロボのお世話をしています。
 博士の修理を待っているのです。
 
 博士は忙しいので、きらりんロボの修理は後回しになっているようです。


 仕方ないにょわ

 それまではロボがお世話するウサ

 だけど、ロボは少し心配でした。毎日毎日、きらりんロボの言葉数が少しずつ減っていくのです。

 うさ……

 にょわ……

 早く直して欲しい、とロボは思いました。だけど、博士は別の一件を抱え込んでしまったようで研究所にも顔を出しません。

 うさ……


 きらりんロボは少しずつ、静かになっていきます。

 うさ、うさ

 そしてついに、きらりんロボは何も言わなくなってしまいました。

 うさ? うさ? うさ!? うさ!!!

 ウサミンロボは、悲しくなってしまいました。

 何も言わなくなったきらりんロボをきちんとお掃除して、倉庫から研究所に戻ります。

 うさ……


「ロボ、今までご苦労様」

 そこには博士と、そして菜々ママがいました。

「ウサミンに頼んで、新しいウサミン星AI、ウサミニアックブレインを持ってきてもらったんだ」

 うさ?

「AI移植プログラムの構築に時間がかかったが、今朝方ようやく目処が付いてな。ついさっき、移植が終わったところだ」

 二人の後ろには、新しいウサミンロボがいます。
 新しいウサミンロボは、何故か耳の代わりにふわふわな巻き毛をつけています。
 そして、ほんのちょっぴり背が高いのです。


 そうです!

 天才池袋晶葉博士とウサミン星人安部菜々が、きらりんロボの変化に気づかないわけがなかったのです!
 
 大破したきらりんロボを繋いでいた配線は、この新しいウサミンロボに繋がっていたのです!

「紹介しよう、真きらりんロボだ」

 にょわ!

 ウサミンロボに、新しい仲間が増えました。


以上、お粗末さまでした

きらりPであり、このロボシリーズ書いている自分にとって、今回のツアーは最高すぎました。

ありがとう公式



あと、コミケで来てくれた人ありがとう

三日目デレマスジャンルで、うろうろしてたロボ(被り物コス)に優しくしてくれた人にもありがとう

後悔はしていない

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