【モバマス】美玲「みんな! まゆから逃げるんだ!!」 まゆ「ふふふ……」【改訂版】 (49)

深夜――?
1階廊下――?



まゆ「逃げる悪い子は……」?

まゆ「 だ あ れ ? 」?





美玲「こっちだ!」?

幸子「早く逃げますよ!」?

乃々「ヒィ……ハァ……!」?





まゆ「こんなに必死に走り回って……」?

まゆ「これはもう……」?

まゆ「『お仕置き』が必要ですかねぇ……?」ニコォ...?





輝子「ひぇっ」?

小梅「振り返っちゃダメ……!」ギュッ

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幸子「この部屋に隠れましょう!」

小梅「分かった……!」

輝子「い、急げ……!」



パタン!



幸子「……!」ハァ...ハァ...

幸子「みなさん……全員いますか?」

小梅「だ、大丈夫……」

輝子「うぅ……まゆ、どうして……!」

幸子「今は自分の身を優先してください!」

幸子「きっと捕まったら最後、眠らされてしまうでしょう」

輝子「ううぅ……」ガクガク

小梅「よしよし……」ナデナデ

美玲「……オイ、乃々はどこだ?!」

幸子「部屋にいない……まさか……」





乃々「ひえぇええぇ~……!!」





幸子「乃々さんの声です!」

小梅「ウソ……!」ガクガク

美玲「乃々……乃々ぉ!」ガラッ

小梅「そんな……!」

美玲「あぁっ……乃々ぉ!」





まゆ「『芋けんぴ 髪に付いてたよ』」

乃々「グー……」ムニャムニャ...





輝子「お、遅かった……!」

幸子「お気に入りの少女漫画を良い声(CV:牧野由依)で読み聞かされています……!」

小梅「それも、膝枕までしてもらって……!」

美玲「ダメだ……もう乃々は手遅れだ!」

美玲「オマエら早くここから逃げるぞ!」 ダダダッ

幸子「うわあぁぁ……!」ダダダッ



【 乃々 脱落 】

1階階段――



小梅「階段があったよ……!」

美玲「でかした!」

幸子「で、でも、こっちで大丈夫なんですか?」

幸子「もしこの先に逃げ場が無かったら――!」





まゆ「逃げてもムダですよぉ……」コツン...コツン...





美玲「迷ってる場合じゃないぞ! 早く!」バシバシ

幸子「いたた! 背中叩かないでください!」タッタッタッ...

美玲「輝子も小梅も! 急いで!」

小梅「う、うん……!」タッタッタッ...

輝子「急げ……!」タッタッタッ...





まゆ「そっちですかぁ」ヒタヒタ...





美玲「くっ! 逃げるぞ!」タッタッタッ

中二階――



幸子「ヒィ……ハァ……!」

小梅「か、階段は苦手……!」

輝子「頑張れ……!」

美玲「早く逃げないと……!」チラリ





まゆ「そこですねぇ?」タンッタンッタンッ!





美玲「は、早い?!」

輝子「み、見ろ、あの足を……!」

小梅「ウソ……!」

幸子「なんてことでしょう……!」





幸子「階段を……二段飛ばしでのぼっています……!!」ガクガクブルブル

小梅「私たち、小柄だから……」

小梅「一段飛ばしでも、精一杯、なのに……!」

輝子「足の長さが、ち、違う……!」

小梅「ダンスレッスンによって引き締まった、それでいてスラリと長い足で、確実に私たちを追いつめる……!」

小梅「これが……読モ出身の力……!」

幸子「ダメです! 追いつかれます!」

美玲「あきらめるなぁ!」

美玲「もうすぐだ! もうすぐ上の階につくから!」

小梅「到着……!」スタッ

輝子「フヒー……!」スタッ

幸子「美玲さん早く!」スタッ

美玲「……よし! ウチもとうちゃk――!」





まゆ「そこまでですよぉ」ガシィッ!!





美玲「うわぁ!!」

幸子「み、美玲さん!!」

小梅「きゃっ……!」

輝子「美玲が、う、腕を……!」

輝子「に、逃げて……!」

美玲「くぅ……だ、ダメだ……!」ジタバタ

美玲「まゆの白くてキレイな手が、アザがつかないよう柔らかくかつウチが振りほどけない程度の絶妙な力加減で、ウチの手首を掴んでいる!」

輝子「なんてこと……!」

美玲「お、オマエら、逃げろぉ!」

美玲「ウチのことは構うな!」

幸子「そんな! 美玲さんを置いて逃げられません!」

小梅「そ、そうだよ……!」

輝子「乃々は、へ、平然と置き去りだったけど……!」

幸子「ボクたちは、五人揃ってカワイイクインテットじゃないですか……!」

輝子「乃々は犠牲になったのだ……」

美玲「オマエら……!」ウル...

美玲「っ……!」

美玲「ダメだ! すぐに逃げろ!」

幸子「でも美玲さんは――!」

美玲「ウチらユニット・カワイイクインテットを世に広めるのは、誰の仕事だ!!」

幸子「……!」ハッ

美玲「ウチに構わず早く行けぇ!」





まゆ「友情ごっこはそこまでですよぉ?」グイッ

美玲「わぁあぁぁ!?!?」ドサァッ





小梅「あぁ……!」

輝子「くっ……!」

幸子「美玲さん!!」

小梅「そ、そんな……!」

輝子「む、むごい……!」

幸子「美玲さんが……!」





まゆ「ゆっくり休んでいいんですよぉ」ナデナデ

美玲「グー……」スヤスヤ





小梅「顔を、む、胸に埋められてる……!」

輝子「しかも、なでなでつき……!」

幸子「あんな風に、綺麗な声(CV:牧野由依)で囁かれつつ優しく甘やかされたら……!」

小梅「お……堕ちる……!」ゾク...

幸子「……ボ、ボクたちまでああなってはいけません!」

幸子「早くここから逃げますよ!」ダッ

小梅「うん……!」ダッ

輝子「美玲……ゴメン……!」ダッ



【 美玲 脱落 】

2階廊下――



輝子「ま、また廊下の直線コース……!」

幸子「安心してください!」

幸子「まゆさんは廊下を、歩くよりはずっと速いけれど走っているとは言いにくい絶妙の速度でしか歩けませんから!」

幸子「その姿はまさに、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はまゆの花……!」ゴクリ...

小梅「は、早く行かないと……!」ダッ

幸子「廊下の端まで行きましょう!」ダッ

輝子「お、おう……!」ダッ





まゆ「今そっちに行きますねぇ……」コツン...コツン...





幸子「ひいぃ!!」 ビクゥ!

小梅「に、逃げなきゃ……!」

輝子「走れ走れぇ! ヒャッハー!!!!」





幸子「輝子さんうるさい」

輝子「す、すまん……」

小梅「あぅっ!」コケッ

幸子「あぁ! 小梅さんが転んだ!」

輝子「そ、そのすぐ後ろには……!」





まゆ「あらぁ……小梅ちゃん……」コツ...コツ...

まゆ「ケガしてませんかぁ……?」コツ...コツ...





小梅「あ、あぁ……!」ガクガク...

幸子「腰が抜けて動けないみたいです!」

輝子「っ……小梅ぇ!!」ダッ!!

幸子「ちょっと、輝子さん?!」

輝子「わ、私が相手だ!!」バッ

まゆ「ひゃっ?! ……なんだ、輝子ちゃんじゃないですか……」

輝子「ま、まゆ! どうしてこんなことをするんだ!」

まゆ「すべてはPさんのためですよぉ?」

輝子「う、ウソだ! 親友が、こ、こんなひどいことを……望むハズが、な、ない……!」

まゆ「ウソもなにも、ホントのことなんですけどねぇ……」





幸子「ダメです! 話が通じません!」

幸子「輝子さん! 小梅さんを連れて早く逃げてください!」

小梅「ご、ゴメンなさい……腰が、まだ……!」

小梅「このままじゃ、二人とも……!」

輝子「私は、だ、大丈夫……」

輝子「今のうちに、逃げて……」

小梅「輝子ちゃん、まさか……!?」





輝子「わ……私が、囮に……なる……!」ドン!!

小梅「で、でも……輝子ちゃんを置いていくなんて……!」

輝子「私たちには、大事な目的が、あ、ある……」

輝子「早く幸子の画像を、日本中に送信する、使命が……!」

幸子「輝子さん……」グ...

輝子「足……そろそろ動けるハズ」

小梅「う、うん……なんとか……」

輝子「さぁ、早く! 急ぐんだ二人ともぉ!! ヒャッハー!!」

幸子「分かりました!」

幸子「小梅さん、早く!」ダッ!

小梅「ご、ゴメンね、輝子ちゃん……」

輝子「ありがとうって……言ってほしいな」

小梅「ありがとう……輝子ちゃん」キュン...





小梅「でもうるさい」タタタ...

輝子「ゴメン……フヒ……」

まゆ「小梅ちゃんに逃げられちゃいました……」ハァ...

輝子「さぁ……まゆ! 私と勝負だぁ!!」

輝子「言っておくが! 貴様に屈する私ではなぁい!!」

まゆ「それでは、お手柔らかに……」





輝子「ふ、ふわあぁ~……!!」





幸子「な、なんですか今の叫び声は?!」クルリ

小梅「輝子ちゃん……何をされたの……?!」クルリ

幸子「うっ!!」

小梅「これは……!!」

幸子「ウソでしょう……?!」

小梅「あの輝子ちゃんが、いとも簡単に……!?」





まゆ「あなたはだんだん眠くなる~」

輝子「グー……」ムニャァ...





幸子「糸にキノコをぶら下げて、振り子のように揺らしているなんて……!」

幸子「しかも甘い声(CV:牧野由依)で脳まで揺さぶっています!」

小梅「アレは……サイキック催眠術……!」

幸子「知っているんですか小梅さん!?」

小梅「揺れる振り子で相手を眠らせる、サイキックとは名ばかりの、ただの催眠術……!」

小梅「教えた裕子さんは、一度も成功したことが無いと言ってたけど……」

小梅「まさか……まゆさんが、ここまで使いこなすなんて……」

幸子「ご丁寧に、輝子さんの大好きなキノコを用意しているという、とても女子力の高い気配りまで見せていますね……!」

幸子「これ以上接近すると、ボクたちまでヤバイです!」

幸子「早くどこかに隠れましょう!」ダッシュ

小梅「うん……!」スタタッ



【 輝子 脱落 】

ロッカー室――



幸子「まゆさんは……いませんね」チラリ

幸子「ここに隠れましょう!」 スタスタ

小梅「ロッカーがたくさん……」 スタスタ

幸子「ここならすぐには見つからないでしょう」

幸子「ところで……別々に隠れますか?」

小梅「……」ギュ...

幸子「ですよね、ボクも同じ気持ちです」ギュ

幸子「この大き目のロッカーに隠れますよ!」





まゆ「も~う い~い か~い?」ヒタ...ヒタ...





幸子(……)

小梅(……)





まゆ「も~う い~い か~い?」ヒタ...ヒタ...





幸子(音が離れていきますね……)

小梅(これで一安心……)

幸子「はぁ……」

幸子「まさか、こんなことになるなんて、思ってもみませんでした」

幸子「ボクたちは、ただ楽しんでいただけなのに……」

小梅「でも、Pさんの残留思念に囚われ、まゆさんがあぁなったのは本当のこと……」

幸子「ボクたちだけで、この夜を乗り越えられるでしょうか……?」

小梅「乗り越えよう……? 取り残された三人のためにも」

幸子「えぇ、そのつもりですよ……」





小梅「それにしても」

小梅「夜にこうやって隠れているなんて……」

小梅「なんだかお化けになったみたい」フフ

幸子「や、やめてくださいよ……」ドキィ!!

小梅「ふふふ……冗談」クスクス

小梅「大丈夫」ギュ

小梅「なにか出てきても、私が追い払ってあげるから……」

幸子「……まだ13歳の小梅さんに慰められるなんて」

幸子「ボクもまだまだですね」クス...

幸子「また音が近付いてきましたね……」

幸子「まあしばらく静かにs――」

小梅「う、ぐぅ……!」

幸子「小梅さん……小梅さん?!」

幸子「どうしたんですか、しっかりしてください!?」

小梅「ま……まゆさん、が……」ビクンビクン!

幸子「まゆさん? まゆさんが原因なんですか?!」

幸子「ちょ、ちょっと待ってください! 様子を見に行きますから!」ガチャリ

幸子「一体まゆさんは、何を……?!」チラリ





幸子「そ、そんな……?!」

幸子「まゆさんが、まさか……!!」





まゆ「摩~訶~般~若~波~羅~蜜~多~心~経~……」





幸子「まゆさんが般若心経を、幼さの残る愛らしい声(CV:牧野由依)で唱えています!」

幸子「小梅さんのために、ポケット般若心経を持ち歩いているという噂は、本当だったんですね……」

幸子「でも……一度もつまることなく、スラスラと読み上げるなんて、一朝一夕にできることじゃありません!」

幸子「怖いのを我慢してでも趣味に付き合おうとする、一途で友達想いな面が、ここで発揮されましたか……!」

幸子「――!」ハッ

幸子「まさか……これのせいで小梅さんが?!」

幸子「『幽霊になったみたい』と言っていましたが……まさか本当に幽霊に?!」





小梅「聞きなれたお経……優しい声……」

小梅「ダメ……眠くなってきちゃった……」

幸子「それはまるで子守唄を聞かされた赤子のよう!!」

小梅「ゴメンね……私、幸子ちゃんを守れない、みたい……」

幸子「諦めちゃダメです!」

小梅「ううん、もうダメ……自分で分かる……」

小梅「あの画像を……早く、外に……」

小梅「ぅっ……」ガクッ...

幸子「こ、小梅さーん!!」





まゆ「そこですかぁ……」カタッ





幸子「くっ……ここに隠れるのも、限界みたいですね」

幸子「ゴメンなさい小梅さん! ボクはもう逃げます!」

幸子「絶対……絶対やりきって見せますから……!!」ダッ





まゆ「あらぁ……おねんねしちゃったの……」クスクス

小梅「グー……」クゥ...



【 小梅 脱落 】

2階廊下突き当り――



幸子「とうとう、ボク一人になってしまいました……!」タッタッ

幸子「乃々さん、美玲さん、輝子さん、小梅さん……!」タッタッ

幸子「ボクに……力と勇気を……!」キキッ

幸子「ハァ……ハァ……!」

幸子「とうとう、着きました……」

幸子「この扉の向こうに、屋上が――!」ガチャッ





扉『閉まってるに決まってるっしょ』ガチャガチャ!





幸子「そ……そんなぁ!?」ガチャ...

幸子「ここは屋内じゃ電波が届かないんですよ……?!」ガチャガチャ

幸子「ここまで来たのに、こんなのヒドイです!!」ガチャガチャガチャガチャ





幸子「はっ」












まゆ「 見 ぃ つ け た ぁ 」










幸子「ひぃ!?!?」

まゆ「ダメですよぉ……夜中に騒いじゃ……」

まゆ「Pさんも言ってましたよねぇ?」

まゆ「なのに、どうして? なんでPさんの話を無視するんですかぁ?」

まゆ「なんで?」











まゆ「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」











幸子「うわああぁあああぁぁぁぁ!!!!!!!!」

幸子「ぼ、ボクは脅しに屈しません!」 ガクガク

幸子「みなさんの想いを、ムダにできませんから!」 ガクガク

まゆ「そんなことはどうでもいいんですよぉ」

まゆ「幸子ちゃんたちを捕まえるだけですからぁ」

幸子「ボクを眠らせるつもりですか! みなさんみたいに!」 ガクガク

幸子「それならムダですよ!」 ガクガク

幸子「ホラ! 見てください、この体の震えを!」ガクガク

幸子「緊張しているんですよ! だから絶対眠ったりしませんから!」 ガクガク

まゆ「そうですかぁ……」フゥ...





まゆ「……き……に……がさん……」ボソボソ

幸子「な、なんですか……?」

まゆ「……が15匹……16匹……」ボソボソ

幸子「羊を数えているんですか?」

幸子「普段のボクならイチコロですが、今日は無理ですよ!」





幸子「……え」

幸子「う、ウソ……そんな……!!」

幸子「ま、まゆさんが――!!」









まゆ「……カワイイが73匹……カワイイが74匹……カワイイが75匹……」









幸子「か……カワイイを数えている……!!」ガクガクブルブル!!

幸子「や、やめてくださいまゆさん!」

まゆ「カワイイが282匹……カワイイが283匹……」

幸子「そ、その透き通った瞳で見ないでください……ボクを、惑わす気ですか……?!」

まゆ「カワイイが1627匹……カワイイが1628匹……」

幸子「聞き慣れたカワイイで、ただでさえリラックスしてきているのに……!」

まゆ「カワイイが2551匹……カワイイが2552匹……」

幸子「もし5432(コシミズ)匹までカワイイ声(CV:牧野由依)で数えられたら……!」

まゆ「カワイイが4098匹……カワイイが4099匹……」

幸子「ボクは、ボクはぁあぁぁ……!!」

まゆ「カワイイが5430匹……カワイイが5431匹……」









まゆ「カワイイが5432匹」









幸子「グー……」フフーン...






まゆ「さぁ……みなさんといっしょに……」

まゆ「ぐっすり眠りましょうねぇ……」ニタァ...



【 幸子 脱落 】

二0一号室「鶴の間」――



まゆ「……」ス...

まゆ「……」フトンヲカケテ...

まゆ「……ふぅ」









幸子「むにゃ……」

美玲「ぐがー……」

小梅「くぅ……」

輝子「ひゃっはー……」

乃々「ぅるさい……ぐー」









まゆ「……」クス

まゆ「ようやく寝ましたねぇ……」ニッコリ

客足賀遠野板旅館――
二〇二号室「亀の間」――



P「……」カタカタ

まゆ「戻りましたぁ……」

P「お、まゆ、お疲れ様」

まゆ「Pさんの約束通り、しっかり寝かしつけました」

まゆ「五人とも、元気いっぱいでしたよ」

P「今度のドラマ撮影の下見も兼ねて、撮影現場に泊まるまでは良かったんだが……」

P「まさかあいつらが、こんな夜更けになるまで眠らないとは……」

P「いくら俺たちしか客がいないからって、騒ぐのはマナー違反だろ……」

まゆ「いつも仲良しですから、楽しみだったんですよ」

まゆ「その証拠に……ホラ」

P「これは……幸子のスマホ?」

P「この画面は……Twitter!」

P「しかもこれは、五人一緒に撮った画像じゃないか!」

まゆ「幸子ちゃんたち、それを送信したかったみたいです」

P(それであいつら、あんなに反発を……)



P「つまりこういうことだったんだな!」

クライマックス推理(1/3)



P「夜時間になったあいつらは、部屋で楽しく過ごしていた」

P「鶴の間に部屋割りされていたのは、幸子、輝子、小梅、美玲、乃々、まゆの六人だ」

P「その途中でまゆは、仕事の打ち合わせで俺に呼び出されたため、一旦退室する」

P「そして部屋に戻るとき、幸子たちが『喉が乾いた』と言っていたのを思い出し、近場のコンビニまで買い出しに出る役を、自ら買って出た」

P「それを聞いて五人は俄然盛り上がる」

P「ボルテージMAXをむかえた時、幸子が五人の写真を撮影、それをTwitterにアップしようとした」

P「しかし、ここでアクシデントが発生! 送信する直前になって、電波が圏外になってしまったんだ」

P「この旅館は館内全てが圏外になるから、それが普通のはず。しかし、さっきまで偶然通じていた五人はそれを知らなかったため、大慌て」

P「そこでまゆと同じように、正面玄関から外へ出て、電波の回復を試みたんだ」

クライマックス推理(2/3)



P「ちょうどその時だ……理由なく外出しようとするあいつらを見つけたのは」

P「消灯時間を過ぎていた俺は、夜中に五人を外に出すのは危ないと考え、外出禁止を言い渡した」

P「しかし、かなり楽しんだ後にかなり慌てたせいで、すでに消灯時間を過ぎていたことに、あいつらは気付かない」

P「あいつらにとって俺は、理由なく旅館に監禁しようとする極悪犯のように見えたんだ」

P「その時だった……まゆが買い物から帰ってきたのは」

P「この時のまゆが若干息が切れていたのは、なるべく消灯時間に外出することを避けたかったからだ」

P「慌てる俺たちを見て、事態を把握したまゆは、部屋に戻るよう注意した」

P「しかし、疑心暗鬼状態に陥っていたあいつらには、まゆが俺の共犯者のように見えたんだ」

P「とうとうパニック状態になったあいつらは、俺を振り切り、館内へ走り出す」

P「俺は追いかけようとするが、普段から鍛えているあいつらに勝てるはずもなく、ただいたずらに時間が過ぎるばかり」

P「そこで俺よりも体力のあるまゆが、五人を部屋へ連れ戻すことを申し出たのは、自然な流れだった」

クライマックス推理(3/3)



P「しかし、ここで思わぬアクシデントが発生したんだ」

P「そう……まゆの両手は、コンビニ袋で塞がっていた!」

P「そのため、荷物を置きに一旦部屋へ戻ったまゆ」

P「そんなまゆが、時計を見てふと気付いてしまう」

P「『あれ? 明日は早い時間に撮影開始だから、もう寝かしつけた方が良くね?』的な感じのことを……!」

P「こうして、五人の捕獲を命じられたまゆは機転を利かせ、代わりに寝かしつける行動に出た……」



P「これが……真実だ……!」

まゆ「……他の撮影スタッフの皆さんは?」

P「二〇三号室の『闇の間』だよ」

P「さっき様子を見たけど、明日に備えて全員眠ってた」

P「ちなみにこの部屋は、荷物置き場兼スタッフ詰所ということになっている」

まゆ「……ふふふ、そうなんですか……」

まゆ「へぇ……」









まゆ「 そ う な ん で す か ぁ 」ニタァ

まゆ「Pさぁん……」ギュ...

P「お、どうしたまゆ? 俺みたいなおっさんに、あすなろ抱きなんかしちゃって」

まゆ「まゆの考えてること……分かってるハズですよぉ?」

まゆ「こんな時間に、二人きりの空間を作るなんて……」

P「俺は仕事があるから、ここにいるんだけどな」

P「そういうまゆも、もう寝る時間だろ」

P「ホラ、幸子たちと一緒に寝たらどうだ?」

まゆ「いいえ……今夜は離れたくない気分なんです……」

まゆ「どうですか、Pさん? 私、今夜はとても機嫌が良いんですよぉ?」

まゆ「まゆの体……隅々まで味わってみませんかぁ……?」ニッコォ...

P「まゆ……」





P「ダメに決まってるだろ」キリッ

まゆ「……やっぱり、そうですよね……」

P「そりゃそうだ」

P「まゆだって、本当は分かってるハズだ」

まゆ「うぅ……」

まゆ「それでもまゆ、諦められなくて……」

P「まゆも大人なら、諦めなくちゃいけないんだ……」









P「まゆはまだ、俺の許嫁という立場なんだから」

まゆ「それは……そうですけど……」シュン...

P「まゆがアイドルとして成功して、その後に引退して、俺と正式に夫婦になって――」

P「そこで初めて体の付き合いをする……」

P「両親らにはそう固く誓ったじゃないか」

P「それを守ることで、俺をストーカーしていた過去は全部水に流してもらう約束だろ?」

まゆ「でも、私のPさんの初めてを、誰かに奪われてしまうかもって思うと……!」

P「いやいや、こんな冴えないおっさんを襲うやつなんていないって」

まゆ「います!!」キッ

まゆ「素っ気ないフリして忠犬な蒼歴史とか!」

まゆ「思わず構いたくなる正統派ツンデレとか!」

まゆ「病弱を武器によく抱き付くジャンクフード娘とか!」

まゆ「息を吐くように婚姻届に判子をねだる元秘書とか!」

まゆ「まだ4年もあるのに待たせようとするおませさんとか!」

まゆ「キス魔なのかキス魔じゃないのかよく分からないキス魔とか!」

P「うん、見事に全員クールアイドルだな」

P「まゆが俺のことを本気で愛してくれているのは知ってるし、本気で心配してくれてるのも知ってる」

P「今も昔も『信じてくれ』としか言えないが……」

P「俺はまゆのために体を守り続けるよ」

まゆ「本当に……信じていいんですねぇ……?」

P「あぁ、信じてくれ」

まゆ「例のフレッシュなサッカー少女みたいに、ラブホテルに連れ去られたりしないですよね……?」

P「何だその具体的な心配は」

P「そんなことは無いから安心しろ」

まゆ「もちろん、Pさんのことは信じていますよぉ」

まゆ「でも……某蛍光グリーン色のスーツを着込んだ女性事務員は信じられないんです」

P「それもう完全に個人特定余裕だな」

まゆ「いつPさんの個人情報の漏えいや、合鍵のオークションが始まるかと思うと……」グスッ...

P「おいおい、また俺に抱きつかないと眠れないのか?」

まゆ「Pさんにギュッてすると、安心するんです……」

P「許嫁になる前は、指一本触れられない純粋な子(ストーカー)だったのに、大胆になったなぁ……」

P「分かったよ、また抱き枕して良いから」

まゆ「ありがとうございます」

P「その前に……仕事を全部済ませてからでいいか?」

まゆ「構いませんよぉ」

P「ん、ありがと」カタカタ

まゆ「それでは……それまでの間、Pさんの背中をギュッてしますねぇ♪」ギュ...

P「まったく……こんなおっさんのどこが良いんだか……」カタカタ...ッターン!

まゆ「Pさぁん……♪」ニコニコ

CGプロ――



ちひろ「……」カタカタ

ちひろ「……」カタカタ

ちひろ「……」





ちひろ「風評被害なんですけど……」ガクッ...

終わり

終わりです

ありがとうございました

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