あかり「永遠のゆるゆりSS」 (95)

櫻子「……暇だなー」ごろん


櫻子「暇だ暇だ、あー暇だ」ごろごろ


櫻子「ひ~~ま~~」


櫻子「ひまひまひまひま! ひま! ひまっひ! まひまひ! ひまひまひ!」


櫻子「…………」


櫻子「もー! こんだけ暇だって言ってんだから何か起これよ~~!」ばんっ


がちゃっ


撫子「ちょっと、うるさいんだけど。そんなにひま子が好きならひま子ん家行ってくればいいじゃん」

櫻子「ちげーわ! 退屈で暇だって言ってんの!」

撫子「じゃあどっちにしろひま子と遊んでくればいいじゃん」

櫻子「なんで私が貴重なお休みの時間を使って向日葵なんかと遊ばなくちゃいけないの……」

撫子「貴重なお休みの時間をひまひまひまひま言うだけで浪費してるよりマシでしょ」


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櫻子「も~~何かないのねーちゃん? 暇つぶしになるようなこと」

撫子「勉強でもすればいいじゃん。宿題とか出てないの?」

櫻子「ゲームもなぁ、さっきまでモンハンやってたけど一生懸命やったのに倒せなかったからやる気なくなっちゃってさ~……」

撫子「なんで急にゲームの話……どんだけ勉強嫌いなの」

櫻子「あーあ、何か面白いことが起こらないかなー」


コンコン


櫻子「ん?」

撫子「誰?」

「失礼しますわ」

撫子「あれ、ひま子?」

櫻子「え……でも向日葵の声じゃなかったよ!?」


がちゃ


花子「こんにちは櫻子、撫子おね……撫子さん」しゃなり

櫻子「は!?///」

撫子「は……花子? どうしたのその髪、おさげにしちゃって」

花子「何言ってるし撫子さん、私はいつもおさげだし……ですわ」

櫻子「ど、どしたの花子……向日葵とぶつかって中身でも入れ替わっちゃったの……??」

花子「もう櫻子ったら冗談が上手いですわね。あっそうそう、花子ちゃんからことづてを預かってますわ」

撫子「言伝?」


花子「『櫻子があんまりひまひまうるさいから、今日は花子が特別にひま姉になってやるし』ですって」

撫子「なるほどそういうことか……! よかったじゃん櫻子、ひま子が遊びに来てくれたみたいだよ」

櫻子「どこが向日葵だ! 見た目違いすぎるし口調のクオリティも低いよ!」

花子「だんだん慣れてきたし……ですわ」

櫻子「あとなんだそのおっぱいは! 大きいし不自然すぎるだろ! 何入ってんの!?」

花子「ゴムボールをふたついれて本物に近づけたんですわ」ぽよん

櫻子「ちょ……いくら花子でも、それ向日葵に見られたら怒られるぞ……」

撫子「あんたもよくやるくせに」

花子「まあそういうわけで、今日はわたくしがひま姉……向日葵ですわ。なんでも言ってきていいんですのよ」

櫻子「そんなこと言われてもなぁ……私向日葵といつも何して遊んでたっけ?」

撫子「おりがみとかお絵かきとかよくしてたじゃん」

櫻子「昔すぎるわ! 今更そんなのできるか! ……あっ、そうだ! 向日葵私の代わりに宿題やってよ!」

花子「なんで私がそんなことしなくちゃいけませんの……だいいち、櫻子のためになりませんわ」

撫子「すご、もう完璧にひま子をトレースしてるよ……!」

櫻子「くぅ、変なとこまで似やがって~……」



撫子「それにしても、ひま子っぽいことって、考えてみるとなかなか思い浮かばないね」

櫻子「あ、お菓子作り! そうだ向日葵、クッキーでも作ってきてよ」

花子「私だけ作っても櫻子がまた暇になっちゃいますわ。だから今日は一緒に作ってみましょう」

櫻子「めんどくさいなー……まあいいけど」

撫子「じゃあ私部屋で勉強してるから。出来上がったら食べさせてね」




花子「それじゃあ今から、クッキーを作りますわ」

櫻子「よっしゃ」

花子「まずは……櫻子、レシピの本を用意なさい」

櫻子「持ってるかそんなもん! レシピはいつも向日葵の頭の中に入ってるから、向日葵が頑張ってもらわないと困るんですけど」

花子「うう~……わ、わかりましたわ。頑張って記憶の奥底からレシピをひねり出しますから。とりあえず薄力粉を用意しましょう」

櫻子「はい薄力粉」さらさら

花子「これをえーっと……あっ、卵と混ぜるんですわ!」ぽん

櫻子「なるほどね! 確かにそれっぽい!」しゃかしゃか

花子「バタークッキーなんだから、バターもいれませんと」とぽん

櫻子「バター……なんか全然溶けないけどいいのかな」しゃかしゃか

花子「あっ、大事なのを忘れてましたわ。お砂糖!」

櫻子「お砂糖どこ?」

花子「グラニュー糖が確か上の戸棚に……櫻子どきなさい、今とりますから」

櫻子「身長足りなさすぎるでしょ……ちょっと、落ちないでね」

花子「何言ってるんですの、私がこんなことで落ちるわけ……あっ!」するっ


ってーん

ぼちゃっ


櫻子「うわーーー!! 生地にゴムボールが入っちゃった!」

花子「大変っ! 私のおっぱいがべとべとですわ!」

櫻子「てゆーかおっぱいもうやめろ! そりゃボールなんだから服の裾から転がり落ちるわ!」

花子「どうしましょう、この小麦粉と卵と溶けないバターとゴムボールを混ぜ合わせたどろどろの物体は……」

櫻子「こんなん食べ物じゃないよ……焼く前にわかるよ」

撫子「大丈夫……? なんか叫び声きこえたけど」がちゃ

櫻子「ねーちゃん助けてよ! 花子……じゃないや、向日葵のせいでクッキーがどろどろボールになった!」

花子「私の右のおっぱいぃ……」ぐすん


撫子「はぁ……やっぱりひま子になるのは難しいんだね。よしわかった、今度は私がひま子になるよ」

櫻子「え?」


花子「おおー、撫子おねえちゃんはひま姉をずっと見てきてるからきっと上手だし」

撫子「じゃあほら、髪留めとゴムボール貸して。このボールも洗わなきゃ」じゃー

櫻子「なんでボール!? 形から入りすぎでしょ!」





撫子「じゃ、行きますわよ」ぷるん

櫻子「ムカつくおっぱいだ……写メ撮って向日葵に送りつけてやりたい」

撫子「そんなことしたら張り倒しますわよ」ゴゴゴ

櫻子「怖っ! 向日葵でも滅多に出さない黒いオーラがだだ漏れだよ!」

撫子「気を取り直して……クッキー作りでしたわね」

花子「なでし……じゃないや、ひま姉クッキー作れるの?」

撫子「こんなこともあろうかと、クッキーのレシピを友達に聞いておきましたわ。携帯にメモってありますの」

櫻子「おおー向日葵みたいな準備の良さ! っていうか友達って誰?」

撫子「クックパッドちゃんですわ」

櫻子「友達じゃないじゃん……」


撫子「まずはカットしたバターをボールにいれ、泡立て器でよく練り混ぜます。なめらかなクリーム状になったらグラニュー糖と塩を一気に加え、ふわっと白っぽくなるまですり混ぜます」

櫻子「棒読みだ……」しゃかしゃか

撫子「次に卵黄を加えて手早く混ぜ、まんべんなく混ざったところで、濾し器で振るった薄力粉を一箇所に固まらないように加えます」

花子「おおー、さっきよりいい感じだし」さらさら


撫子「ゴムべらで底からすくい上げてさっくり切るように混ぜます。全体がしっとりしたそぼろ状になったらオーケーです。手で軽くつまむようにしてひとつにまとめ、ラップで包んで四角く形を整え、冷蔵庫にいれて30分なじませます。この間にオーブンを180℃に温めておきましょう」

櫻子「だんだん難しくなってきた……こうかな?」

撫子「ああっ、違う違う。もっとこんな感じでやるんですわ」はしっ

櫻子「う……」ぎゅむ

撫子「こうやって、生地をつぶさないようにさっくりと……」

櫻子「ちょっと向日葵……ボールが背中に当たってるんだけど」むかっ

撫子「ボールってなんのことですの?」

櫻子「おめーのおっぱいだよ!///」

撫子「きゃっ……! 櫻子ったら、わたくしのことそんな風に見てたんですのね!?」

櫻子「そっちが押し付けてきたんじゃん!!」がーっ


花子「さすがだし、すぐ喧嘩に発展するとこが完璧にそっくりだし」ぱちぱち

櫻子「向日葵でもここまでしたことはねーよ! おっぱい禁止ってかボール禁止ー!」むぎゅ

撫子「きゃー! 何するんですの!///」べちっ

櫻子「痛ってえ! 向日葵より何倍も痛い!///」




櫻子「全然ダメだね本当に! 二人とも向日葵には程遠い!」

花子「結構いい線いってたし」

撫子「そうだよ、完璧だったでしょ」

櫻子「どこが!? もうしょうがないな……私がお手本を見せてあげる」

花子「えっ、今度は櫻子がひま姉になるの?」

櫻子「私が一番上手にできるから。ほらボール貸して」

撫子「結局ボール使うんかい」

花子「どうせなら髪もおさげにしちゃえ」



櫻子「ふふふ……さぁ、行きますわよっ」

撫子「お、ちょっと元気な時のひま子だ」

花子「櫻子がいなくなったから、今度は花子が櫻子の役をやるし」


櫻子「それじゃ櫻子、クッキー作りの続きといきますわよ」

花子「え~やだめんどーい」ぐだぐだ

櫻子「えっ」

花子「向日葵ならクッキーくらい一人で作れるでしょ? 焼きあがったら持ってきてね。あとついでにうちの夕飯も作って? あと私の宿題もやっといて」ごろごろ

撫子「うわ櫻子だ……! そっくりだよ!」

櫻子「ど、どこがですの……? ちょっと花子ちゃん、ちゃんと櫻子を演じないと容赦しませんわよ?」

花子「はぁ?」

櫻子「はぁじゃなくて」


花子「わけわかんないこと言ってないで早く行けバカっぱい」しっしっ

櫻子「ちょっと……いくらなんでも櫻子はそこまでひどくありませんわ!」ぐいっ

花子「なにー! やるかおっぱい魔人!」むぎゅ

櫻子「痛っ!? やりましたわね!?///」

撫子「ちょっとひま子、ストップ」すっ

櫻子「なあっ、撫子さんは下がっててください!」

撫子「いくらひま子とはいえ……他所の子にうちの可愛い妹が乱暴されるのをただ見てるだけなんてできないんだよ。姉として」

櫻子「あぁー!? あっあああんた、一回でもそうやって櫻子を守ったことがありましたっけ!?///」

撫子「だいじょぶ櫻子……怪我してない?」さすさす

花子「ねーちゃんありがとう……だいすき……///」ぎゅっ


櫻子「あ~~~も~~~やめやめ!! やめだこんなもん! やってられっか!」

撫子「早っ、もうやめちゃった」


櫻子「せっかく私が向日葵を完璧に演じてるのに、肝心の櫻子ちゃんのクオリティが低すぎるんだもん! 下手っぴ!」

撫子「そんなことないよ、完璧に櫻子だったよ」

花子「いつもと寸分違わないつもりだったし」

櫻子「私あんなにひどい子じゃないもーん!!」


ぴんぽーん♪


撫子「あっ」

花子「誰か来たし」

櫻子「んん……?」

がちゃっ

向日葵「こんにちは。あら、皆さんお揃いで」

櫻子「向日葵……!」

花子「おおっ、本物登場だし!」

撫子「噂をすれば、ってやつだね」

向日葵「へ……?」きょとん


櫻子「聞いてよ向日葵! ねーちゃんたちが私をいじめるの!」

向日葵「ええ? 撫子さんたちがそんなことするわけないでしょう。きっとあなたに原因があるはずですわ」

撫子「さすがひま子……やっぱ本物は本物!って感じするわ」

花子「本物のひま姉が一番だし」


向日葵「ところで櫻子……なんですのその胸、何が入ってるんですの」

花子「ゴムボール。ひま姉の真似らしいし」

向日葵「やっぱり……」いらっ

櫻子「違うよ!? これ始めたの花子なんだからね!?///」

向日葵「どっちにしろ私が来たら取りなさいよ!」ぽーん

櫻子「ああっ、おっぱいが弾かれた!」

撫子「……で、ひま子は今日は何しに?」

向日葵「ああ、それなんですけど……知り合いにとてもおいしい紅茶の葉を貰ったんですの。たくさんあるのでせっかくだからおすそわけにと思って」

花子「わあ、いい香りだし」

撫子「紅茶か……ちょうどいいね。ひま子ちょっと上がってってよ。紅茶も今すぐいれてくれる?」

花子「あ、さっきのクッキーと一緒に?」

撫子「そうそう。みんなでおやつタイムにしよ」

櫻子「やったー!」


向日葵「あら、皆さんでクッキー作ったんですの? 楽しみですわ」

撫子「みんなでひま子の真似しながら作ったんだよ」

櫻子「つまりまずかったら向日葵のせいな」

向日葵「なんでですの……」

花子「でも難しかったし。今度はひま姉にレシピ教わりながらやりたいし」

向日葵「お安い御用ですわ。いつでも声かけてくださいね、花子ちゃん」

――――――――――

【2】

<ごらく部室>


ちなつ「結衣先輩、何読んでるんですか? NAMORI STYLE……?」

結衣「ファッション雑誌だよ。あかりがこの部室に置いていったみたいなんだ」ぺらっ

ちなつ「結衣先輩もこういうの読むんですね~」

結衣「普段はあんまりかなぁ……自分で買ったりはしないし」

ちなつ「えーなんでですか? 結衣先輩ももっとオシャレするべきですよぉ!」

結衣「わ、私はこういうの似合わないからさ……///」

ちなつ「そんなことないですって。それにこういうカワイイ系じゃなくても、結衣先輩に合わせたコーデを選べばいいんですから」

結衣「あんまりそういうの考えたことないからよくわかんないんだよね。京子とかに笑われたら怖いし……」

ちなつ「そんなの気にしちゃだめですよっ。自分がいいと思うものを選べばいいんです!」

結衣「ちなつちゃん……」


ちなつ「そうだ! 私ちょうど今度の日曜日に服見に行こうと思ってたんですよ。結衣先輩も一緒にどうですか?」ぽんっ

結衣「私も?」

ちなつ「色んなお店巡って色々試してみましょうよ! 気にいるものがあるかもしれないし、なにか方向性が見つかるかもしれないし。それに私も結衣先輩にお洋服選んでもらいたいです~♪」

結衣(ええと、確か今度の休みは何もなかったな……)


結衣「うん、それじゃお願いしようかな」

ちなつ「はぁ、そうですよね……こんな急な提案だめですよね……結衣先輩も忙しいですもんね……」しゅん

結衣「ち、ちなつちゃん? 大丈夫だよ?」

ちなつ「…………えっ?」


結衣「ちょうどその日は何もないし、久しぶりにどこか出かけたいとも思ってたんだ。ちなつちゃんと一緒してもいいかな」

ちなつ(これは……夢かしら……)


ちなつ「…………」むにっ

結衣「ど、どうしたの?」

ちなつ「い、いひゃい! 夢じゃない! ほんとにいいんですか!?///」ぱぁっ

結衣「こっちからお願いしたいくらいだよ。色々教えてもらえると助かるな」

ちなつ「きゃー任せてください頑張りますっ! ここまでの13年間で培ってきた私のセンスを集めに集めて凝縮させて日曜日に爆発させます~!」

結衣「待ち合わせとか、詳しいことはちなつちゃんが決めていいよ。連絡してね」

ちなつ「はーいっ!!///」


ちなつ(結衣先輩とお洋服選びだなんて、こんなチャンス滅多に来ないわ! あれ? というかこれって……)


ちなつ(もっ、ももも……もしかしなくても、デートなんじゃない……!?///)かああっ




ちなつ「っていうことで、結衣先輩とその日デートすることになったの~♪」

あかり「よかったねえちなつちゃん」

ちなつ「話の流れでそうなったんだけど、これってすごいことだよね! ほんとに夢みたい!」

あかり「お洋服選ぶだけじゃなくて、ランチとかも行けるもんねぇ」

ちなつ「私、この日はほんとの本気で頑張るわ……もう前日からデートコースを巡って下調べよ!」

あかり「そ、そこまで……!」

ちなつ「そう、そこであかりちゃんにお願いがあるのっ」


ちなつ「本番前の土曜日、また前みたいに……結衣先輩としてデートの予行練習してくれるっ?」

あかり「えっ……あかりが?」

ちなつ「大事な日は万全の準備で迎えたいの! 先輩の前でアガってまごついちゃったりしないように……」

あかり「その土曜日ってもう明日だよね。ええと……うん、たぶん大丈夫だよっ」

ちなつ「ほんと!?///」

あかり「上手にできるかわからないけど……でも、ちなつちゃんのお願いだもん。あかりでよかったら協力するよ~」

ちなつ「わーありがと~! じゃあ私、早速帰って下調べしちゃうから! あかりちゃんも明日楽しみにしててね♪」

あかり「わかった。また連絡してね~」


あかり「明日かぁ……大丈夫かな」はぁ


あかり(今日ずっと……なんか喉の調子が……)こほん


――――――
――――
――

<土曜日>

ちなつ「ええとまずはあそこにいって、次はあそこで、ランチのお店はここで、このルートを通りながら行って……」


ちなつ(がんばるのよちなつ、今回私は結衣先輩をリードする側なんだから!)ぐっ


ちなつ「そろそろあかりちゃん来るかな……」きょろきょろ


「だーれだ?」ばっ

ちなつ「えっ!? えっ!?///」びくっ


「私は誰でしょ~?」

ちなつ(ちょっと待って……あかりちゃんの声じゃない!! あかりちゃんの手じゃないんだけど!?)


ちなつ「いやぁぁーー!! 誰!?」ばっ

「ああっ、もう……ちなつちゃんずるいわよ?」


ちなつ「ふぇぇ!? あかりちゃんのお姉さん……!?///」

あかね「どうも~♪」

ちなつ「ちょ……え、なんで? あかりちゃんは一緒じゃないんですか?」

あかね「それなんだけど……あかりね、来れなくなっちゃったの」

ちなつ「えええっ!?」がーん


あかね「風邪引いちゃったのよ。昨日家に帰ってきてから急に熱が上がりだして……一応一晩寝たけど、まだまだ具合悪そうで」

ちなつ「そんなぁ……で、でもそれなら昨日連絡してくれればよかったのに!」

あかね「あかりは今朝の今朝までここに来ようとしてたのよ。一晩で治るかもしれないからってね」

ちなつ「えっ……?」


あかね「事情はあかりから聞いたわ。ちなつちゃんは明日の日曜日に大事な人とのデートがあるから、今日はその予行練習なのよね?」

ちなつ「そ、そうですけど……」

あかね「だから、今日は私があかりの代わりにちなつちゃんの練習相手を務めさせてもらいますっ」

ちなつ「えええ! お姉さんが!?///」

あかね「私じゃ役不足かしら……?」

ちなつ「そっそそそんなことはないですけど! お姉さんにそこまでしてもらうわけには……!」ぶんぶん

あかね「でも、私はあかりに頼まれて来てるのよ」

ちなつ「あかりちゃんに頼まれて……?」

あかね「あかりはね、ちなつちゃんのお願いを断るわけにはいかないって最後まで聞かなかったのよ。でも風邪でフラフラのあかりが行ってもちなつちゃんが心配するだけよ? って言い聞かせて……やっとのことで私が代わりに役目を果たしてくるってことで折り合いをつけたの。だから今日はあかりの代わりに立派に役目を果たしてみせるわ!」

ちなつ「そんなことが……」


あかね「さあちなつちゃん、さっそく行きましょ♪ 最初はどこにする?」

ちなつ「…………」


あかね「……ちなつちゃん?」

ちなつ「……私……やっぱりだめです」

あかね「えっ?」


ちなつ「そんなことできません……あかりちゃんが風邪で苦しんでるのに!」

あかね「あら……風邪のことは言わない方がよかったかしら」

ちなつ「違いますよ! あかりちゃん何にもわかってない!」だっ

あかね「ああっ、ちょっとちなつちゃん待って!?」ぱしっ

あかね「どうしたの……やっぱり私じゃだめ?」

ちなつ「そうじゃないです……あかりちゃん、何で私に何も言ってくれないの……っ」ぐすっ


ちなつ「私にとっては……たった一日のデートなんかよりも、あかりちゃんの方が大事だよぉ……!」

あかね「ち、ちなつちゃん……」



ちなつ「……お姉さん、申し訳ないけど今日の予定は変更です! 今すぐあかりちゃんのお家に行きますっ」

あかね「……そう、わかったわ。一緒に行きましょ」

ちなつ「あっ……待ってください、その前に薬局行きましょう! あかりちゃんに何か買って行ってあげなきゃ」

あかね「うふふ……ありがとう。きっと喜ぶわ」



<赤座家>


あかり(ちなつちゃんたち……どうなったかなぁ)こほこほ


がちゃっ


あかり(あれ? 玄関の音……おねえちゃん、もう帰ってきちゃったのかな)


「あかりちゃーん!」ばーん

あかり「わわわっ、ちなつちゃん!?///」


ちなつ「あかりちゃん具合は? ……大丈夫?」すっ

あかり「だ、大丈夫だけど……それよりちなつちゃん、予行練習は……?」

ちなつ「それより、なんて言わないで」

あかり「えっ……?」


ちなつ「あかりちゃん……私に隠し事しないでよ」

あかり「……!」

ちなつ「あかりちゃん……私に隠し事しないでよ」

あかり「……!」

ちなつ「自分が苦しいことさえも隠すなんて……そんなことが私のためになるなんて思わないで!」

あかり「ちなつちゃん……」


ちなつ「私そんなのちっとも嬉しくない! そこまでして練習なんてしたくない! 確かにデートは大事だと思ってたけど……あかりちゃんが弱ってるならそっちの方が大事なんだよ!?」

あかり「…………」


ちなつ「明日のデートはぶっつけでいい。今日は一日あかりちゃんの看病をします!」

あかり「ええっ? そんな、あかりは大丈夫だよ……?」

ちなつ「だめっ。あかりちゃんはいつも私のために何かしようとしすぎ! だから今日は私があかりちゃんにお返ししてげる番だよ」がさごそ

あかり「それは?」

ちなつ「色々買ってきたの。冷たいゼリーとか飲み物とか。あかりちゃん、まだ全然熱下がってないんでしょ?」

あかり「…………うん」

ちなつ「今はどう? 何か食べれそう?」

あかり「うん、少しなら」

ちなつ「ちょっと待っててね、スプーン取ってくるから。あっ、寝てていいよ?」たたたっ

あかり「ありがと……///」ぽすん


あかり(……ちなつちゃん……)


あかり(あかり、ちなつちゃんとお友達になれてよかったなぁ……)


あかり(ちなつちゃんのためなら……あかりは……)もぞもぞ




ちなつ「あかりちゃん、来週のお休みまでには治るよね?」

あかり「うん。普通の風邪だと思うから」

ちなつ「そっか……それじゃあ次の土曜日こそ、一緒にお出かけしようね」

あかり「予行練習……? じゃあ、明日の結衣ちゃんとのデートもずらしちゃうの?」

ちなつ「そんなことしないよ。明日はせっかく結衣先輩との都合もついたんだから」

あかり「じゃあ何を?」

ちなつ「何って、デートでしょっ♪」

あかり「え……?」


ちなつ「私、明日のデートもちゃんと頑張るよ。そしてそれが上手くいったら、今度はそれをあかりちゃんとのデートに活かすの。今回はいわば結衣先輩が、あかりちゃんとのデートの予行練習相手ってことになるのかな」

あかり「ちなつちゃん……///」

ちなつ「だから楽しみにしててねっ、来週!」

あかり「……うんっ!」

――――――――――

【3】

<結衣宅>


結衣「zzz……」


結衣「ん……」ぱちっ


結衣(……朝か……寒いな……)はぁ


結衣(土曜日だけど、寝すぎるのはよくないよな……)むくり


しゃっ


結衣「あっ……! 雪だ!」


結衣「すごい、一晩でこんなに積もってる……しかもまだ全然降ってるし」からり


結衣「粉雪だ……こんなに降ってるのを見るのは久しぶりだな」さらさら


結衣(というか、一人暮らしするようになってから初めての雪のような気がする)


結衣「うぅ、雪の冷気を乗せた風が冷たい……閉めよう」ぴしゃっ


結衣(雪の中を歩くような靴、実家に置いたままだっけ……とりあえず雪かきで道ができるまではどこにも行けそうにないな)


結衣「あっ、というか……!」ぱかっ


結衣「どうしよう、今日買い出し行こうと思ってたから食材が全然ないぞ……!」


結衣(参ったなぁ……まだ外は新雪のままだろうし、普通の靴で出たらすぐ濡れちゃうかも……)


結衣(……ま、ゆっくりしてればいいか。どうせ休みだしね)ぽすん



結衣「ん……LINE通知入ってる。京子からだ」てし


[9時頃着くと思うよ~]


結衣(え、別に遊ぶ約束もしてないのにな……って、もうちょうど9時回ったぞ!?)


ぴんぽーん


結衣「…………」はぁ

結衣「……はい?」ぴっ


『すな~おに~ なーれーないーなら~♪』


結衣(は……?)ぽかん


『よろこびもかなしみも~……むなしーいぃーーー! だぁーーけぇ~~~~!!』


結衣「やべぇ!!///」ばっ


がちゃっ


京子「こな

結衣「やめろ!! 静かにしろ!!///」ばっ


京子「んー、もひゃよー」もがもが

結衣「インターホン越しに歌うな! 近所迷惑になるだろ……!」

京子「いやー、今日という日にはなんだか無性に歌いたくなってね」ぷはっ

結衣「カラオケ行けよ……ってか古いよ」

京子「この歌なら、結衣の孤独を分け合うことができるかもしれないと思ったんだよ」

結衣「あのままサビ熱唱したら問答無用で追い返すとこだったけどな。ってか頭、雪ついてるぞ」

京子「うお、髪凍ってる!」ぱっぱっ

結衣「何やってんだよ……傘差してこなかったのか?」

京子「家出てきたときはそんなに降ってなかったからさ。邪魔になるかなと思って」

結衣「まあいいや、とりあえず入れよ」

京子「わーい」ぱたん

結衣「外はどう? 結構積もってる?」

京子「もー靴がすっぽり埋まっちゃうよ。てか結衣パジャマだけどまだ寝てたの?」

結衣「ああ……LINEもさっき見たんだよ。遊びに来るなら昨日のうちに言ってくれよ、びっくりしたぞ」


京子「あーやばい! 靴下濡れ子ちゃんだ」

結衣「大丈夫か……? 代えの靴下とか持ってきた?」

京子「クリスマスじゃないんだから持ってくるわけないじゃんそんなのー」

結衣「意味わかんねーよ……そこ、オイルヒーターの上に乗せとけばすぐ渇くよ」

京子「そういう使い方があるのかー。いやー便利だねこれ」

結衣「電気代食うけどな」

京子「いぇーい結衣の布団~」すぽっ

結衣「こら入るなよ……」

京子「だって足が寒いんだもーん」

結衣「……まあいいか。今日は何する?」

京子「うーん……雪の中歩いて疲れたし、あったかい布団に入ってたら眠くなってきた……私あんまり寝てないんだよね……」ぽすん

結衣「寝んのかよ! 寝足りないならなんでこんな朝から来たんだよ」

京子「頑張って起きて遊びに来てあげたんだから怒らないでよ~」むにゃむにゃ

結衣「それで家来て寝てたら本末転倒だろ……」

京子「ああ、お腹も減ってきた……朝ごはん食べてないからなぁ……」ぐ~

結衣「げっ、まじか。うち今全然食料ないんだよね」

京子「はぁーー!?///」がばっ

結衣「……そんなに意外!?」

京子「うう……あたたかいごはんを楽しみにしながら冷たい雪の中を必死に這いずってきたのに……」しくしく

結衣「他人の家に飯たかりに来るなよ……ええと、何かあったかな」

京子「簡単なのでいーよ? ビーフシチューオムライスとかさ」

結衣「手間かかりまくりじゃんか。ほんとに物凄い簡単なのしかできないよ? 春雨スープとか」

京子「いいけど……おなかが膨らまなさそう~」

結衣「仕方ないだろ。お昼ごろには買い出しに行こうと思ってるから、それまでの腹の足しでさ」

京子「あーい」




結衣「…………」とんとんとん

京子「おー見て結衣。ちなつちゃんたち今カフェにいるんだって。写真送られてきたよ」

結衣「えっ、そうなんだ」

京子「ちなつちゃん、今日はあかりと一緒に遊んでるんだってさ。いいなー楽しそう!」

結衣「こんな雪なのに……まあ雪降ってるからこそのいつもと違う楽しさがあるのかな」

京子「私たちもどっか行こうよ! 今からでもちなつちゃんたちに合流しない?」

結衣「それはなんか悪いだろ……それに私たちは買い出しで手一杯だよ」


結衣「というかこれ……このカフェ、私先週ちなつちゃんと行ったとこだ」

京子「ほぇ? そうなの?」

結衣「うん、この写ってるケーキ食べたもん。ちなつちゃんが美味しいやつを選んでくれたの、覚えてるよ」

京子「ちなつちゃんめ~、毎週ケーキ三昧だなんて意外とお金持ちなんだなぁ」

結衣「そ、そういうことなのか……?」

京子「あっわかった! 先週は結衣とケーキ、今週はあかりとケーキってことは……来週は私と行ってくれるんじゃない!?///」

結衣「どうだかな……というか私と行ったときは洋服屋さんを回る方がメインだったしね」

京子「楽しみにしとこ~♪」

結衣「変な期待押し付けてちなつちゃん困らすなよな……ほら」すっ

京子「ん?」

結衣「スープ、味見」

京子「…………」はひゅ


京子「ん熱っつ!///」

結衣「ふふふ……どう?」

京子「いやもう、熱くて味よくわかんなかった……でもいいと思います」

結衣「そっち持ってくから。準備して」

京子「ほーい」



<お昼>


京子「ここの謎解き難しいなーくそー……でも絶対近くにヒントあるはずだよね」ぽちぽち

結衣「ん……京子、そろそろ買い出し行こう」

京子「zzz……」ぱたっ

結衣「急に寝たフリすんな」


京子「え~~買い出し~~? いいよ私、今日は大人しく待っててあげるから」

結衣「待っててあげるじゃなくて、せっかくなら手伝ってよ。雪降ってるし大変なんだよ今日は」

京子「じゃあ床に手をついてこうべを垂れて、私の足にキスをしたらいいよ……///」すっ

結衣「……おなかに一発いれてさっきの春雨スープ出してやってもいいんだぞ?」ごごご

京子「ごめんなさい」ゲザァ


結衣「あ……ふつうの傘一本しかないや。折りたたみの小さいやつでいい?」

京子「いいよいいよ、一本で一緒にいこ? どうせ帰りは荷物も多くなるし大変でしょ」

結衣「あ……そっか」

京子「おおすごい! 私の靴下くんずっとヒーターに温められてたからぽかぽかだ!///」

結衣「よかったな」

京子「えへへへ……それじゃ行きますかっ」



<スーパー>


京子「へー、週末なのに結構空いてるね」

結衣「徒歩の人はまだいいけど、車が出せなくて来れない家が多いんじゃないかな」

京子「なるほどなー」

結衣「そんなわけで私もしばらく家から出なくていいようにいっぱい買うから、荷物の手伝いよろしく」

京子「じゃあさじゃあさ、何かご褒美にひとつ買って?」

結衣「……まあ、ひとつだけな」

京子「いよっしゃーお菓子ー!!」がーっ

結衣「こら! カート連れていきなりお菓子コーナー行くな!」



結衣(キャベツともやしと……)ぽいぽい

京子「結衣、買い物も結構慣れてきたねー」

結衣「慣れてきたって……?」

京子「一人暮らし始めてすぐの時はまだ全然だったじゃん。いちいち作るメニュー考えて、ちゃんとメモして、それに合わせて買い物するから時間かかっちゃってかかっちゃって」

結衣「確かに……今はどっちかっていうと、適当に買ったものからありあわせのメニューを作るようになってるね」

京子「なんかお母さんっぽい」にしし

結衣「でもある程度はメニューに沿って買ってるつもり……京子、何か献立のリクエストある?」

京子「えー? 私はなんでもいいけど」

結衣「何でもいいが一番困るんだよな……何か言ってくれよ」

京子「うわそのセリフ、うちのお母さんもよく言うやつだ!///」

結衣「そ、そう? でも本当なんだって。マジで何か意見ちょうだい」

京子「もー、お母さんの得意なのでいいよ?」

結衣「お母さんって言うな」



京子「お菓子何にしようかなー♪」うきうき

結衣「あんまり高いのは勘弁だからな」

京子「じゃあうまい棒でいいや……」しゅん

結衣「そこまで言ってないよ……そうだな、ラムレーズン一個分の金額までね」

京子「おっ、それなら決まった!」

結衣「何にするの?」

京子「ラムレーズン」

結衣「ずばりそのものかよ……っていうか、ラムレーズンはまだ買っておいたのが家にあるから、他のにしていいよ」

京子「マジ!? 結衣ふとっぱら~♪」もみもみ

結衣「やめろ! 腹を揉むな!///」




京子「う……おもい……」ずっしり

結衣「ごめんな、お米まで買っちゃって」

京子「お菓子買ってもらったからいいけどさ……よっ」

結衣「京子、何時くらいに帰るつもりなんだ? よかったら夕飯食べてってよ」

京子「あれ? 最初からそのつもりでこの買い物してたんじゃなかったの? 私の食べたいメニュー聞いてたじゃん」

結衣「こ、こういうのは一応礼儀で聞くんだよ……///」

京子「ん~?」

結衣「な、なんだよ」

京子「あはは、食べてくに決まってんじゃん! おいしく作ってよね」

結衣「はいはい」


京子「それにしても……多少道ができてきたとはいえ、雪の上を歩くのは大変だね」ぎゅっぎゅっ

結衣「ちょっとした運動だよな……転ぶなよ?」

京子「あーあ、いつも思うけど、こういうときに使える携帯型のミニスキー板みたいなの欲しいよね! 道路の上でもしゃーって滑って移動できるの!」

結衣「まあ……でも傾斜がないから実際滑りそうにないけど」

京子「はぁ……スキー行きたい~……」

結衣「また唐突な……京子スキーできたっけ?」

京子「失礼な!」

結衣「あれ? でもお前にスキーが上手そうなイメージがあんまり無いんだけど。スケートの時もあれだったし」

京子「スキーはできないけど、ソリなら世界一楽しんで乗れる自信あるから、私」ふんっ

結衣「なんの自慢にもなってないぞ……」


京子「でもさ、マジでスキーは行ってみたくない? みんなで一緒に!」

結衣「滑れないのに?」

京子「滑れなくてもその場に行くだけで楽しいでしょ! というか練習すればいいだけだし」

結衣「確かに……な。いいかもね」

京子「寒いゲレンデから帰ってきて、ロッジの食堂で食べるラーメンはきっとうまいぞ~……///」ぽわぽわ

結衣「結局メシかよ」

京子「結衣……私今日の夕飯ラーメンがいいな」ぐー

結衣「言うのがおせーよ! ラーメンは買ってないぞ!///」

京子「じゃあラーメンはスキー計画のときまでとっとくよ」

結衣「おおう……とりあえず、おおまかな計画とか決めてから今度近い友達に声かけてみようか」

京子「よし、決まりねー!」




<夕食後>

京子「ごちそうさまー! あー食った食った」

結衣「お粗末さま」

京子「っあ~~……」ごろん

結衣「こら、食ってすぐ寝るな。牛になるぞ」

京子「も~~~結衣はうるさいんだから~」

結衣「あ、なりかけてる」

京子「あーでも……ほんとに眠くなってきちゃった」

結衣「そういや朝から眠いって言ってたな。重い荷物持って雪道も歩いたし、疲れたんだろ」すとん

京子「ん……」ぽすん

結衣「ふぅ……」

京子「…………」じっ

結衣「……なに?」

京子「……結衣、明日何か用事とかある?」

結衣「……素直に『泊まっていい?』 って聴けばいいのに」

京子「一応の礼儀! でしょ!」

結衣「ふふ……なんもないよ。泊まるならちゃんと親御さんに連絡しろよな」

京子「うん、もうしてあるから大丈夫」

結衣「早っ、いつの間に?」

京子「結衣が夕飯作ってる間にしといたんだー」

結衣「じゃあずっと泊まる気でいたんじゃないか……」

京子「いいじゃんかー! 買い出しから帰ってきたらもう外出たくなくなっちゃったんだもんっ」

結衣「確かに……そのくらい寒い日だったね」


京子「こうしてあったかい布団に寝てると、余計外なんか出たくない~……///」ごろごろ

結衣「お風呂どうする? 京子先に入っていいよ」

京子「いいよ結衣先で」

結衣「だってお前このままだと、私が風呂あがる頃にはたぶん寝ちゃってるだろ……?」

京子「はは、そんなわけ……むにゃ……」すぅ

結衣「寝かけてる! こら、せめて歯みがけ。あと楽な格好に着替えとけ」

京子「わかったよ~」よいしょ

結衣(さて……もうひとつ布団敷くか。私も今日は早く寝ようかな)


結衣(さっきは寒いって言ったけど……なんか今日は、どことなくあったかい気がする……///)ふぁぁ

京子「へい!」がばっ

結衣「うわあっ!? な、なんだよ!///」

京子「今寝ようとしてたな~?」

結衣「あ、あくびしただけだよっ」

京子「人には寝るなとか言っておいて~」

結衣「私だってまだ少しは起きてるさ。というか、何?」

京子「ああそうそう、私まだラムレーズン食べてないから歯みがきできない」

結衣「…………」

京子「……あと、今日買ったお菓子も食べたい」

結衣「……じゃ、食べるか」

京子「やったー♪」

――――――――――

【4】

<生徒会>


綾乃「それじゃあ古谷さんと大室さん、今日はこのプリント整理お願いね」

向日葵「わかりました」

櫻子「うええ、多い……!」

綾乃「私たちも自分たちの仕事が終わったら手伝うから、それまで進めておいてくれる?」

千歳「頼むな~」

向日葵「ほら櫻子、やる前からそんなことじゃいつまでたっても終わりませんわ」

櫻子「だって多すぎるもんこの量! 滅入るに決まってんじゃーん……」

綾乃「もう……じゃあ大室さん、お仕事終わったらご褒美あげるから」

櫻子「えっ!?///」がたっ

向日葵「ちょ、先輩……あんまり櫻子を甘やかしても……」

綾乃「いいのよ。もちろん古谷さんにもご褒美あげるわ」

櫻子「それならやりますよ! まっかせてください!」ぱぱっ


綾乃「さて……それじゃ千歳、私たちも取り掛かりましょ」

千歳「綾乃ちゃんええの……? 今日のプリンはとっておきって言ってたような気が……」ひそひそ

綾乃「プリンじゃないわ。実は知り合いに貰ったシュークリームがあるのよ……もともとみんなにもあげるつもりで今日持ってきてたんだけど、こういう使い方もありよね?」こそこそ

千歳「あらら……綾乃ちゃんもやるようなってきたなぁ」くすっ

櫻子「ほら向日葵手動かせ! ほらほら!」

向日葵「言われなくてもやってますから。それより調子に乗って作業間違えないでちょうだいね」




綾乃「あら……? このプリント、歳納京子だけ提出してないじゃない……! こ、これは取り立てに行く必要があるわね……///」こほん

千歳「待って綾乃ちゃん、今一年生を一通りチェックしたんやけど……赤座さんのも出てへんみたいやね」

綾乃「えっ、赤座さんが……? 珍しいこともあるわね」

千歳「とりあえずごらく部に顔出してみよ? きっと二人とも一緒におるはずやし」

綾乃「そうね。じゃあ古たにさ……」はっ


向日葵「…………」かりかり

櫻子「むー……」もくもく


綾乃(……二人ともすごい集中してるみたいだし、今回はこっそり行きましょうか)

千歳(ふふっ……せやなぁ)


綾乃「ちょっと私たち、出てくるわね」がらっ

千歳「すぐ戻るな~」

向日葵「はい」

櫻子「…………」がたっ

向日葵「ん、櫻子? どこ行くんですの?」

櫻子「ちょっと、ご褒美とやらを確かめてみるの♪」わくわく

向日葵「はぁ……やめなさいよ」

櫻子「だって気になって仕事が進まないんだもん! ちょっと見るだけだから。見たら集中できるから」

向日葵「もう……」

櫻子「向日葵だって気になってるでしょうが! どれどれ……あっ、ビヤードママだー!///」

向日葵「あら、シュークリームだったんですのね」

櫻子「んー、でもこっちに美味しそうなプリンもあるぞ。どっちがいいかな~迷うな~♪」

向日葵「いや普通に考えてこのプリンは杉浦先輩のものでしょう……ひとつしかありませんし。櫻子に選ぶ権利なんてありませんわ」

櫻子「えーでもプリン食べたくなってきちゃった~」ぶー

向日葵「そんなに食べたいなら、先輩たちを感心させるくらい早く仕事を終わらせてみなさい? ほらやりますわよ」

櫻子「ちぇー。まあシュークリームでもいいんだけど」

コンコン


櫻子「ん?」

向日葵「はい、どうぞ?」


京子「ちわーっす」がらっ

櫻子「あー歳納先輩だ! 船見先輩も!」

京子「やっほー! 遊びに来たよ~ん♪」

結衣「遊びに来たわけじゃ……あれ? 今日はニ人だけなの?」

向日葵「いえ、そういうわけでは……」


櫻子「会長はもともと受験対策のなんとかかんとかでいませんけど、杉浦先輩と池田先輩はいますよ。ついさっきどっか行っちゃいましたけど」

京子「なーんだ、できればみんな集まってからにしたかったんだけどな。ちなみにどこいったの?」

向日葵「場所は特に言ってなかった気が……でもすぐ戻るっておっしゃってましたわ」

京子「そっかー。じゃあ待たせてもらおっかな」

結衣「うん……でも大室さんたち仕事してるみたいだし、悪くない?」

櫻子「全然大丈夫ですよ! 遊びましょうよー♪」るんるん

向日葵「…………」てきぱき

京子「ひまっちゃんが『本当は全然大丈夫じゃないですけどね』みたいなオーラで作業してるけど」

櫻子「……うう、はい。実はお仕事があるんです」がくっ

結衣「どんな仕事なの?」

向日葵「全校生徒分の書類整理です。特に難しいことはないんですけど、とにかく数が多くて大変で……」

京子「なるほどねー。そういうことなら、私たちも手伝おうか?」

向日葵「えっ? でも、先輩たちにそんなことしてもらうわけには……!」

京子「いいっていいってこのくらい。ひとまず綾乃たちが戻ってくる間まででもさ。結衣もいいでしょ?」

結衣「うん。大変そうだし手伝うよ」

櫻子「やったー! ちなみにこれ、終わらせたら杉浦先輩からご褒美のシュークリームもらえることになってるんですよ! 手伝ってくれたらきっと先輩たちも貰えるはずですよ!」

京子「マジで!? そうと聞いたらやるしかないっしょ! どんどんお仕事もってこーい!///」どっかり

結衣「しれっと会長席に座るな」

向日葵(シュークリームが何人分あるかもわかってませんわ……)



<ごらく部>


綾乃「歳納京子ーっ!」ぱんっ

あかり「あっ、杉浦先輩だ」

千歳「こんにちは~」


綾乃「あっ、あれっ? 歳納京子は?」きょろきょろ

ちなつ「さっきまでいたんですけど、どっか行っちゃいましたね……ってあれ!? いつの間にか結衣先輩もいない!」がーん

あかり「結衣ちゃんも、京子ちゃんと一緒にさっき出ちゃったみたいだよ?」

ちなつ「うぅ~、これに集中しすぎて周りが見えてなかったわ……」はぁ


千歳「なんなんこれ? パズル?」

あかり「京子ちゃんが持ってきてくれたんです。完成するとミラクるんの大きな絵になるみたいなんですよ」

ちなつ「頑張って作って、まりちゃんにプレゼントしてあげなきゃいけないんです! そうすれば喜ぶまりちゃんを見た結衣先輩が『おおちなつちゃん、君はなんて手先の器用な女の子なんだ……君のその細い指で、私の心のピースもぱちりとはめておくれ……』って言ってくれるはずなんですよ! キャーー♪」ぶんぶん

綾乃「そ、そうなのね……」


千歳「そうや赤座さん、この前提出になってるはずのプリントがあるんやけど……調べたら赤座さんと歳納さんが未提出みたいでなぁ。今持ってたら預かるで?」

あかり「ええっ! ごめんなさい、うっかりしてました……ええと、たぶんあるはずです」ごそごそ

綾乃「歳納京子のプリントも預かりたかったのに……いないんじゃ仕方ないわねぇ」

ちなつ「あれぇ、角っこのピースが見つからない……絶対どこかにあるはずなのに……」がさがさ

綾乃「吉川さん、ここに落ちてるのがそうじゃない?」ひょい

ちなつ「え……あっ! これですこれです! ありがとうございます~!」ぱちり

綾乃「あ……このピースはここじゃない? ほら」ぱちり

ちなつ「ええっ先輩すごい!! 見つけるの早い……!」

綾乃「た、たまたまよ……///」てれっ


あかり「あっそうだ。お二人とも、京子ちゃんたちが戻るまで一緒にパズルやりませんか?」

千歳「ん~……でもちょっと今日は仕事も残ってるし……」

ちなつ「お願いします先輩、ぜひ手伝ってください!」ぱしっ

千歳「えっ?」

ちなつ「京子先輩に用があるんですよね? きっとすぐ戻ってくるはずですし、それまでの間だけでいいですから! 先輩たちがいれば今日中に完成できるかもしれません……!///」

綾乃「そうね……じゃあ待たせてもらうついでにやらせてもらおうかしら。千歳も座ったら?」

千歳「そういうことならまあ……えへへ、うち実はパズルとか好きやねん……///」

あかり「わあい、やりましょやりましょ~♪」




京子「生徒会って結構ちゃんと仕事してんだねー……遊んでるばっかりかと思ってたけど、こりゃ意外と大変だぁ」ぺらっ

結衣「いや、当たり前だろ……ごらく部と比べるのもおこがましいよ。生徒会が頑張ってくれてるからこの学校もうまく回ってるんだって」かりかり

向日葵「そんな……一番は先輩たちみたいに、みんなを引っ張ってくれる良い人が多いからだと思いますわ」もくもく

京子「いやいやそりゃないよー。私なんて部室は不法占拠してるし授業中はうるさいし、模範とは正反対にいる生徒だって~」

結衣「自覚あったとしても自分で言うなよ……///」


櫻子「あっ」

向日葵「ん……なに?」

櫻子「そうだ向日葵、私たち今日先生に何か言われなかったっけ……? 総合学習のなんとかを決めておいてって」ひそひそ

向日葵「あっ、いけない……! 赤座さんたちと話し合わないといけなかったんですのよね。すっかり忘れてましたわ」

櫻子「たぶんごらく部にいるよね。行ってみない?」

向日葵「ええ、ちょっと行ってみましょうか」

向日葵「先輩たちすみません、ちょっと出てきますわね」

櫻子「すぐ戻りますんでー!」がらっ

京子「ほーい」


たたた……


結衣「どこいったのかな」ぺらっ

京子「ん~……さっきなんか話してたみたいだけど。トイレじゃない?」

結衣「そっか」かきかき

京子「うわ、結衣結構スピード早いな!」

結衣「うん。こういう単純作業とか、結構好きかもしれない……」もくもく

京子「確かに、ゲームでも単調なレベル上げとか好きだもんね……」

結衣「古谷さんたちにもよくお世話になってるし、こういうときくらいは役に立ってあげなきゃって思うしさ」

京子「まあねー。それじゃさくっちゃんたちが戻ってくる前に終わらせてびっくりさせてやろうぜ!」

結衣「そうだな」




千歳「あっ、これここに嵌まるんちゃう?」ぱちっ

綾乃「これはえっと……あ、ここね」ぱちり

ちなつ「先輩たちほんとすごいです~……! なんでこんなに上手いんですか!?」

綾乃「な、なんでかしら……そんなに経験あるわけじゃないのよ?///」

ちなつ「でもこの調子ならほんとに今日中に完成できちゃうかも……!」


あかり「ちなつちゃんちなつちゃん」ちょいちょい

ちなつ「ん?」

あかり「あかり思い出しちゃったんだけど……今日の総合学習の班で分かれてやったやつ、何か提出しなきゃいけなかったんじゃなかったっけ?」ひそひそ

ちなつ「あっそうだ……! 忘れてた、なんかあったよね」

あかり「どうしよう、あかりが櫻子ちゃんたちのとこに行って決めてこようか?」

ちなつ「いやいや、そんなのダメ! ちゃんと班での決めごとなんだから私も行くよっ」すくっ

あかり「それじゃ、ぱぱっと行って来ちゃおうか」


あかり「すみません先輩方、あかりたちちょ~っとだけ抜けますね? 」

ちなつ「すぐに戻りますのでー!」たたたっ

千歳「は~い」

綾乃「どこ行ったのかしら?」

千歳「なんかさっき話してたけど……トイレちゃう?」

綾乃「ふーん…………よし、千歳。ここからは本気で行きましょ」

千歳「え?」


綾乃「吉川さんたちが帰ってくるまでが勝負よ! 二人でこれを一気に完成させて、びっくりさせてあげましょ♪」

千歳「なるほど……確かにパズルって完成が近づくほどに簡単になっていくはずやし、頑張れば二人が戻ってくるまでにいけるかもわからんなぁ」

綾乃「今こそ生徒会の作業で鍛えた集中力を出すのよっ!」

千歳「あはは、綾乃ちゃんイキイキしとるなぁ~///」

綾乃「け、結構夢中になっちゃうのねパズルって……できあがっていく面積が増えるたびに楽しいわ」

千歳「確かにこれはハマってまうなぁ……」

綾乃「パズルだけに?」

千歳「…………」

綾乃「ちょっと!? 何か言って!」

千歳「あははっ、綾乃ちゃんが急にうまいこと言うからびっくりしてもうたわ~」

綾乃「恥ずかしいじゃない……もう……///」

「やっほー!」ぱんっ

綾乃「あら? 大室さん」

向日葵「あら先輩方! ここにいたんですの?」

千歳「どうしたん? うちらに用?」

櫻子「いや、私たちはあかりちゃんとちなつちゃんに用があったんですけど……二人とも見ませんでした?」

綾乃「ほんのついさっきまでいたのよ? すぐ戻ってくるって言ってたわ」

向日葵「あら、そうなんですのね。それじゃあ少しだけ待たせてもらおうかしら」


櫻子「ところでさっきから気になってたんですけど~……それ何やってるんですか!?」わくわく

綾乃「パズルよパズル。みんなで頑張ってたの」

千歳「そや、大室さんも手伝ってくれへん? 赤座さんたちが戻ってくるまでに完成させようって盛り上がってたとこなんよ。もうすぐやねん」

櫻子「わーいやりますやります! 私パズルめっちゃ得意なんで!!」

向日葵「ふふっ、こういうの久しぶりですわね」

綾乃「古谷さん、なんだかこういうの得意そうね」

櫻子「こいつひどいんすよ! 私の部屋にあったパズル勝手に完成させちゃったことあるんですよ!」

向日葵「あれはだって、ずっとやらずに放置されてたから……あなたはやる気なくなったのかと思って、花子ちゃんたちと一緒にやったんじゃないの」

綾乃「ふふ、これは二人とも期待できるわね」




あかり「失礼しま~す」がらっ

京子「あれ? あかり!」

結衣「ちなつちゃん……?」

ちなつ「結衣先輩!? ここにいたんですか!?」

結衣「うん……どうしたの二人とも?」


あかり「あかりたち、櫻子ちゃんと向日葵ちゃんに用事があるのを思い出したから、いるかなって思って来てみたんだけど……いないみたいだねぇ」きょろきょろ

京子「さっきまでいたんだけどね。すぐに戻ってくるみたいだよ?」

ちなつ「そうですか……ところで京子先輩たちはなんでここにいるんですか?」

京子「私たちはほら、さっきちなつちゃんたちにも話したスキーの話を綾乃たちにも伝えに来たんだけど……なんかちょっと出かけてるみたいだから、帰ってくるまで仕事しながら待たせてもらおうかなーって」

ちなつ「杉浦先輩を待ってるんですか? 今ごらく部にいますよ?」

結衣「ええっ!?」

京子「なんで綾乃がごらく部に!? 何してんの!?」

ちなつ「えっと……パズルを」

結衣「パズルって、さっきまでやってたミラクるんのやつ……?」

あかり「あっそうだ、杉浦先輩たちはね、京子ちゃんにプリントを提出してほしくてごらく部に来たみたいなの。でも京子ちゃんたちがどこに行ったかあかりたちはわからなかったから、とりあえず帰ってくるまでパズルしながら待ってません? って……」

京子「ど、どういうこと……どこかですれ違っちゃってるのかな!? とりあえずごらく部にもどってみよう!」




櫻子「これはここ!」ぱちっ

綾乃「これ……ここだわ!」ぱちり

千歳「ここや……!」ぴたっ

向日葵「あ……じゃあこれが最後のピース……!」


ぴたり


「「できたぁ~~~!!///」」


京子「うぉーい!」ぱぁん

綾乃「きゃあっ! と、歳納京子!」

櫻子「あれっ、あかりちゃん!」

ちなつ「うそっ!? 向日葵ちゃんたちいつからここに!?」

向日葵「えと、ついさっきですけど……」

結衣「ど、どういうことだろう……いつの間にか生徒会とごらく部が総入れ替えしちゃってるよ……」

京子「私たちずっと生徒会で仕事してたんだぞー!?」

ちなつ「きゃーー! パズル完成してるじゃないですかー!///」

櫻子「杉浦先輩に誘われたから、ばっちり頑張っちゃったよ」ぶいっ

千歳「生徒会で仕事って……ほんまに!?」

結衣「うん、ちょうど今終わらせてきた」

綾乃「終わらせた!? 船見さんが!?」


京子「まてまて……つまりえーっと? 今日は私たちが生徒会で仕事をやって……綾乃たちがごらく部でパズルを楽しんでたってこと?」

千歳「ご、ごめんなあ……つい夢中になってもうて……///」

綾乃「古谷さんたちもごめんなさいね……仕事させといて遊んでるなんて、副会長としてあるまじき行為だわ……///」はぁ

櫻子「しょうがないですねぇ先輩は。まあでも今回はシュークリームがあるから、それで手を打ってあげますよ~」

千歳(なんでシュークリームのこと知ってるん……?)

京子「感謝してほしいな綾乃~、私たちが仕事やってあげたんだから!」

綾乃「そ、それはありがたいと思ってるけど……あっそうだ、お礼のシュークリームがあるから歳納京子も食べてって?」

京子「ちょっとストップ。シュークリームももらうけど、それより違う形でお礼をしてほしいんだよねー」

千歳「??」



京子「あのね、私たち今度みんなでスキーに行く計画を立ててるんだけど、綾乃たちも一緒にこない?」

結衣「この話をしようと思って生徒会室に行ったんだ、私たち」

綾乃「す、スキー……?」


櫻子「わー行きたい行きたい! 私も行っていいんすか!?」

京子「モチのロンよ!」

櫻子「うわーい♪」

あかり「向日葵ちゃんもどう? きっと楽しいよ~」

向日葵「ええと、でも私スキーやったことなくて……」

ちなつ「大丈夫大丈夫そんなの。私も初めてだから、結衣先輩に教えてもらうの!///」きゃっ


京子「私お仕事頑張ったからさぁ、そのお礼はこのスキーに参加するってことで頼むよ綾乃~♪」

綾乃「そ、それはいいけど……///」

京子「やったー! 決まりねー!」

結衣「また詳しいこととかはこれから決めていくんだ。とりあえず今度のお休みの日ってことで」

あかり「みんなでどこか行くの久しぶりだねえ。あかり楽しみだよぉ♪」

【5】

<県内スキー場>


ちなつ「着いたね~スキー場!」

あかり「真っ白だよぉ~♪」

京子「ぜっこおーちょーお! まっふゆーのーこーい! スピードーにぃーのぉってー♪」るんるん

櫻子「きゅうじょおーしょーお! あついはーぁーと! とけるほーどこ~いした~~い♪」うきうき

向日葵「こら櫻子、あんまりはしゃいで先輩たちに迷惑かけるんじゃありませんわ」

京子「いいのいいの~。今日くらいはひまっちゃんもはしゃいじゃってー!」

結衣「パスは私たちでまとめて買って来ちゃうから。ここで待ってて」

綾乃「あ、私も行きましょうか?」

結衣「そうだな……じゃあ一緒に来て?」

綾乃「ええ」


千歳「うちこんなとこ来るん初めてやぁ」

あかり「あかりも久しぶりですっ」

向日葵「ちょっと不安なんですけど……大丈夫かしら」

京子「とりあえず初めての人も滑れない人も、今日で練習して滑れるようになればいいんだよ! そしてまたいつか来よう!」ぐっ

ちなつ「なんでもう次回のこと考えてるんですか」

櫻子「というか先輩もほぼ未経験って言ってましたよね」




結衣「それじゃまずは経験者と未経験者でわかれようか。経験者はこっちに集まって」

櫻子「わーい!」

あかり「あかりも一応できるよぉ~」


京子「未経験者はこっちー!」

綾乃「こういうのはスケート以来ね」

千歳「ちょっとドキドキしてきたわぁ……」

ちなつ「前もそうだったんだけど、あかりちゃんがこういうとき経験者側に回るのが意外すぎ……」

向日葵「イメージを裏切りますわね……」

あかり「えへへ、おねえちゃんに連れてきてもらったことがあるんだよねぇ~」


結衣「経験者が未経験者に付いて、基本的なことを教えてあげよう。わからないことがあったらどんどん聞いてね」

ちなつ「はいはいはい! 私結衣先輩に教わりたいです~!」

櫻子「先輩は私が教えてあげますよ! 櫻子ちゃんにおまかせですっ!」

京子「頼むよさくっちゃん! 私をオリンピックにつれてってー!」

向日葵「あなた本当にちゃんと教えられるんですの……?」

綾乃「それじゃあ赤座さんに頼もうかしら……」

あかり「あかりもまだまだだけど、よろしくお願いしますね」

千歳「よろしく~」

結衣「まずはちなつちゃん、道具のことで問題はない? 靴がゆるいとか」

ちなつ「ん~、むしろちょっときついくらいですけど……」

結衣「そのくらいがいいんだ。足がしっかりしてないと危ないからね」

ちなつ「なるほど~♪」

結衣「まずはいきなり滑る練習じゃなくて、危なくなったときの対処法とかを教えよう。とりあえずスキー板履いてみようか」

ちなつ「これですね? ええと……」かちゃかちゃ

結衣「シューズのここをひっかけて、かかとを思い切り踏むんだ」

ちなつ「えい! ……あれ? 履けない……」

結衣「全体重をかけてみて?」

ちなつ「お、おかしいですね~……かけてるんですけど、えーい!」

結衣「んん? ちなつちゃんが軽すぎるのかな。私も一緒に体重かけてみるね」ぎゅっ

ちなつ「きゃっ!///」

結衣「いくよ……せーのっ」かちっ

ちなつ「あ、入った! 履けました~!」

結衣「よし、それじゃあ少しその状態で歩いてみようか。スキー板をつけて移動するときは……」


ちなつ(結衣先輩にこんなに抱きしめてもらえるなんて……スキーってなんて素晴らしいの……!///)ぽわー

結衣「カニみたいに……あれ、ちなつちゃん?」

ちなつ「はっ、はいっ!?」どきっ

結衣「ちょっとかっこ悪いけど、こうやって横歩きで動くんだ。これなら坂道でも体勢を立て直せるから」

ちなつ「はぁ~……結衣先輩、スキーって楽しいですねぇ~……///」

結衣「え、もう……?」

櫻子「こんな感じで、基本こういう感じにしとけばいい感じにいけますんで!」

向日葵「あなたの教え方雑すぎますわ……///」はぁ

櫻子「なんだとー!?」

京子「つまり板をハの字の形にしておけばスピードを抑えられるから最初のうちはそれで慣れていって感覚を掴むってことだね?」

櫻子「さっすが先輩! そういうことです!」

向日葵(なんでこの二人完璧に意思疎通してるんですの)


京子「よっしゃー! じゃあさっそく上に行きますか!」

あかり「あっ、京子ちゃんまだリフトで上に上がるのは早いよぉ。ひとまずそこの緩い坂道で感覚だけつかんでおこう?」

京子「え~? 誰だー出遅れてるのは。団体行動のペースを乱しちゃだめだぞ~」

結衣「お前だ乱してるのは」

千歳「ごめんな~、ちょっと練習させてな?」つつー

綾乃「うまいじゃない千歳。様になってるわよ」

ちなつ「順番にここで少し練習しましょうか」

京子「私もやるやるー♪」


ずべっ


京子「うわー転んだ!///」こてん

綾乃「何やってるのよ」ぷっ

結衣「なんだかんだでお前が一番出遅れてないか……?」

京子「助けて! 立てない!」ずるずる

あかり「斜面に対して水平に板を向けないとどんどん滑っちゃうよぉ!」

櫻子「あれー? それ教えたはずなんだけどな」

向日葵「伝わってなかったら教えたことにはならないんですのよ……」




結衣「よし、じゃあそろそろリフト乗って上に行ってみようか。簡単なコースだから心配しないで? まずはみんなでゆっくり降りてこよう」

あかり「リフトは二人一組で乗るんだよ~」

櫻子「乗るときに転ばないように気をつけてくださいねー!」


千歳「綾乃ちゃん、一緒に乗ろ?」

綾乃「だ、大丈夫かしら……スムーズに乗れなかったら恥ずかしいわ……///」

千歳「平気やって。ほら順番来たで」

綾乃「きゃっ!」すとん

千歳「ほらなー? 心配することあらへんよ」

綾乃「ふふ……そうね」ほっ


あかり「あかり、滑るのも楽しいけどリフトさんに乗るのも好きなんだぁ」

ちなつ「これはこれでアトラクションみたいだよね~」ごとんごとん


京子「結衣! 助けて動けない!」

結衣「ああもう……ストックだけに頼らないで、スケートのときみたいに板をずらして前に進むんだ」

櫻子「あははは! 先輩遅れちゃってますよ~」

京子「くそー! なんでみんなできるんだ!?」

櫻子「さて、私も乗ろうかな」すいー

向日葵「あ、ちょ、ちょっと!」

櫻子「ん?」

向日葵「お、置いてかないでくださる?」

櫻子「あ……あれ!? 私向日葵と乗るのかよ!///」

向日葵「仕方ないじゃない……」

櫻子「もー……ほら、私のストックにつかまって。引っ張るから」

向日葵「の、乗れるかしら……怖いですわ」

櫻子「大丈夫だってこんなの。ほらっ」

向日葵「きゃっ、わっ、わっ!」わたわた

櫻子「よっと」

向日葵「っ……」ぽすん

櫻子「簡単でしょ? 座るだけなんだから」

向日葵「え、ええ……」どきどき

櫻子(あっ)


櫻子・向日葵(ち、近っ……///)


ごとんごとん……




結衣「ひとまず私が途中まで下りてくから、みんな私がいるポイントまで自由に滑ってきて?」

綾乃「け、結構急じゃない……!?」

櫻子「こんなのまだまだ緩いほうですよ?」

京子「さーて、トップバッター誰がいく?」

ちなつ「はいはいはい! 私が結衣先輩に一番に飛び込みます!」

あかり「げ、激突しないようにね……?」

京子「よーしちなつちゃん、GO-!」

ちなつ「はい……」つー


京子「おおーう行った♪」

千歳「だ、大丈夫かぁ……?」


ちなつ「は、早い! 早いです止まらないです~!」すいーっ

櫻子「ちなつちゃんハの字ー! まっすぐにしてたらどんどんスピード出ちゃうよ!」

ちなつ「ちょっ、わっ、きゃー!!」あたふた

結衣「ゆっくりゆっくり! ちなつちゃん!」

ちなつ「無理です~~!///」

向日葵「あ、激突しちゃいますわ」


どーん


京子「あははは! ふなみくん ふっとばされた!」

綾乃「笑い事じゃないわよ……」

千歳「だいじょぶか~~?」

結衣「へ、へーきー……」くらくら

ちなつ「結衣先輩……私を受け止めてくれた……///」ぽっ

櫻子「ちなつちゃん嬉しそうだよ?」

向日葵「わざとではなさそうですけど……」

綾乃「あ、あれを見ちゃうと行くのが怖いわね」

京子「よしじゃあ綾乃行こう」

綾乃「聞いてた!?///」

京子「へーきへーき! 結衣が受け止めてくれるってさ!」

千歳「ファイトやで綾乃ちゃんっ」

綾乃「だ、大丈夫かしら……」どきどき


すいーっ


綾乃「あっ、だめ! 早い~!」すーっ

あかり「杉浦先輩ハの字ハの字~!」

京子「激突パターンだこれ」

櫻子「あー」


どーん


向日葵「杉浦先輩が船見先輩に覆いかぶさってますわ……」

櫻子「綺麗に行けないねーみんな」

あかり「じゃあ次はあかりがお手本やるね。結衣ちゃんのところでききっと止まるから」すいっ

千歳「赤座さん手慣れてるな~」


あかり「~♪」すいー


ざっ


あかり「こんな感じだよぉ~!」ぶんぶん

結衣「さすがあかり、うまいね」

あかり「えへへ……これくらいのコースなら大丈夫だよっ」

京子「今の見たらわかった気がする! 次私行かして!」

千歳「頑張ってな~」


すーっ……


京子「お、お、あ! 早い!」

結衣「落ち着いて、腰落とせ」

京子「あぁーあ、あれー!?」つーっ

ちなつ「あっ、全然見当違いな方に曲がってっちゃいましたよ」

結衣「やばい! 私とめてくる!」しゅっ


櫻子「あーあーあ、どんどん行っちゃう」

京子「止まって~~~~!!///」しゅーっ

結衣(だめだ、早すぎて追いつかない……っ!)


京子「…………」しゅうう

綾乃「普通にふもとまで一直線に降りたわね……」

結衣「京子……だ、大丈夫か?」ざっざっ

京子「……楽しい」

結衣「え?」

京子「おっけー! もう感覚掴んだ! もっかい上行こっ?」

結衣「あ、ああそう……でも曲がることと速度落とすくらいは覚えろよな……誰かにぶつかったらどうするんだ」




結衣「ふぅ……もうみんな、すっかり慣れてきたね」

綾乃「思ったより早くコツがつかめてきたわ。一番簡単なコースくらいなら一人で滑れそうね」

京子「よーし、じゃあそろそろ各自自由行動にしよっか! また誰かと一緒に滑ってもいいし、もっと上の難しいコースに行ってもいいし!」

あかり「あかりはしばらくここの簡単なコースにいるよ~」

向日葵「じゃあ私は赤座さんについてようかしら」

櫻子「はーいはいはい! 上級コース行く人ー!」

結衣「そうだな……一回くらい行ってみようかな。せっかくだし」

ちなつ「わ、私も結衣先輩と行きます!」

結衣「だ、大丈夫ちなつちゃん……?」

ちなつ「平気ですっ! たぶん!」


京子「誰か私と一緒に来る人いないの~?」

綾乃「あなたはどこに行くの?」

京子「ロッジ。食堂でラーメン食べるの♪」

綾乃「ああそう……」

千歳「ふふ……じゃあうちも赤座さんと一緒に初級コース行こうかなあ」

綾乃「千歳が行くなら私も……」

千歳「あー綾乃ちゃん、そういや靴下濡れちゃって寒いゆうてへんかった?」

綾乃「へっ??」


京子「そうなの? じゃあ綾乃私と一緒に来てよ。私替えの靴下持ってきたからさ、貸してあげる!」

綾乃「えっ、ちょ、待っ……///」

京子「っていうか一人で食堂行くの寂しい~~」

綾乃「……わ、わかったわよっ」

結衣「時間を決めて最集合しよう。まだまだ時間はあるから、みんなゆっくり楽しんでね」




綾乃「ここのレストハウスいいわね。みんなが滑ってる所がよく見えるわ」

京子「はふはふ……ん~、こうして寒い所を上がって熱いラーメン食べるのが夢だった!」ずずー

綾乃「はぁ……あなたほんと食い気多いわね……」

京子「そんなことないもん! 前からこうしたいって決めてたんだから!」

綾乃「ふーん……」


綾乃(そ、そういえば私……歳納京子と二人きりになるの久しぶりかも……///)


京子「いいよねー雪って。見てるだけで心がふわふわしてきてさ」

綾乃「そう? 家から出られなくて困ることも多いけど……」

京子「でもこういうところの雪って全然違うじゃん! テンション上がるって言うかさ!」

綾乃「まあ、そうね」


京子「むぐむぐ……」ずずー

綾乃「…………」


綾乃(な、何か言わなきゃ……///)

綾乃「あ、あのっ」

京子「?」

綾乃「その……ありがと。靴下……」

京子「んー? いーよいーよそのくらい別に。靴下濡れちゃったら楽しくないからさ、いっぱい持ってきてたんだ」

綾乃「あとで洗って返すわね」

京子「ん」ずー


綾乃(えっと、えっと……///)


綾乃「だ、誰が企画したの? 今回のこのスキー旅行」

京子「え? 私だけど」

綾乃「なんでまた……?」

京子「みんなでやったことないことがやりたくてさー、ほら、海も行ったし山でキャンプもしたでしょ? スケートも行ったし、今度はスキーかなって」

綾乃「なんだ、それだけなのね」

京子「でも綾乃たちが来てくれてよかったよ。やっぱりみんなで来ると楽しいね」にひひ

綾乃「!」


綾乃「そ、そうね……///」かあっ


京子「綾乃も食べる?」すっ

綾乃「……じゃあ、ちょっともらおうかしら」

京子「これ食べたらみんなのところ戻ろうな。あ、そうそう……綾乃リフト乗るとき手伝ってね?」

綾乃「ええっ?」

京子「私まだ全然へたっぴだから、あれ乗るのも怖いんだよ!」

綾乃「結局あなたが一番出遅れてるのね……というか私だってまだそんなに慣れてるわけじゃないわよっ」

京子「いやいや、綾乃は実は上達が速いのちゃんと見てるから私」

綾乃「もう……調子いいんだから」


綾乃(ほんとうは、未体験だし参加するのを迷ってたんだけど……やっぱり来てよかったわ……///)ふふっ



<上級コース>


ひゅおおお……


櫻子「う、うおー! すっげーここ!」

結衣「急だなぁ……ちょっと私も怖いな」

櫻子「や、やりがいがありますよ~! どう行こっかな~……」


ちなつ「…………」がくがく

結衣「ち、ちなつちゃん?」

ちなつ「コワイ……」

結衣「え?」

ちなつ「こっ、怖すぎですよ何ですかここ!! こんなとこ滑ってくんですか!?///」

結衣「うん……」

ちなつ「無理無理無理無理です! こんなとこシロクマにならなきゃ無理です絶対!」

結衣「なんでシロクマ……?」

櫻子「ほらちなつちゃん見てよ、上手に滑ってる人他にもいるでしょ?」

ちなつ「あれはどうせプロの人でしょ! そんなの一目瞭然でわかるよ!」

結衣「いや、たぶん普通の人たちだと思うけど……」

ちなつ「え~~怖いですぅ、私まだこんなところにくるレベルじゃなかった……」はぁ

結衣「どうする……? リフトで下に降ろしてもらう?」

ちなつ「そ、そんなことする人いるんですか!?」

結衣「あんまり見たことはないけど……でも滑って降りれないなら仕方ないよ」

ちなつ「嫌ですそんなの恥ずかしい! そうやって降りるくらいならスキー板脱いで雪だるまになってふもとまで転がっていきます~~!」

結衣「落ち着いて落ち着いて……」


櫻子「よしちなつちゃん、とりあえず私が先に行くから見てて?」

結衣「そうだ。大室さんの滑り方を見て参考にしてみよう」

櫻子「じゃ、行ってくるね~……わ、わー! わー! どわぁ~~~!!」しゅーん


どふっ


ちなつ「え、あの……私の見間違いじゃなければ、櫻子ちゃん雪の塊に突っ込んでるんですけど……」

結衣「そうだね……」

ちなつ「ちょっとー怖さ倍増じゃないですか! あんなの見ちゃったらもうだめですよ~~!えーん」

結衣「……よし、じゃあ頑張って一緒に降りよう」

ちなつ「……ふぇ……?」

結衣「私がちなつちゃんの後ろについて、スピード調節してあげるから。ゆっくりゆっくり行けば怪我もしないよ」

ちなつ「ほ、本当ですか……?」


結衣「よしっ、しっかり捕まえてるからね」ぎゅっ

ちなつ(!///)

結衣「行こう!」ずぁっ

ちなつ「きゃ、きゃ~~~~~~~~~!!!///」


――――――
――――
――

京子「いやー楽しかったねー!」

あかり「また来たいね~」

櫻子「はっくしゅん!」

向日葵「あなた大丈夫ですの……? 風邪でも引いた?」

千歳「体調管理気を付けてな~」

ちなつ「ああ結衣先輩……一緒に危機を乗り越えた私たちの前にもう立ちはだかる壁などありませんね……♪」ぽっ

綾乃「吉川さんはどうしたの……?」

あかり「結衣ちゃんと一緒に難しい所を駆け抜けてきたそうですよっ」


結衣「スキー以外にも、何かみんなでできたらいいね」

京子「えーっとスキーやったでしょ? スケートもやって、海もいって、山もいって、だから今度はー……空! スカイダイビングか!」

結衣「いきなり飛躍しすぎだろ!///」

京子「でももう行くところなくない?」

千歳「そ、それは追々みんなで考えような~……」


~fin~

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