亜美「蝶野が斬る!」みほ「恋のお悩み特集です」 (32)

・ガルパンのSS

・百合

・劇場版ネタバレ注意

・2本あります。1本目はバッドエンド注意

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453230992





みほ「ドラマCDでも大好評の、蝶野が斬る! 今日は恋のお悩み特集番外編を、某演習場からお送りします」

亜美「今日も撃破率120%で、どんどんお悩みに答えちゃうわよ!」

みほ「1枚目のお便りは……”恋するウサギリーダー”さんから」

みほ「ええと……”私には好きな人がいます。同じ部活の先輩なんですが、部活をやってるときはとっても格好いいのに、普段の時はちょっぴりドジだったりあがり症だったりで、なんだか可愛くて守ってあげたくなっちゃうような所もある人なんです”」

みほ「”ただ困ってることが一つあって、その人はものすごくモテるんです。同じ学校はもちろん、他の学校にもその人を好きな人がたくさんいて……ライバルが多すぎて困っています”」

みほ「”同じチームの友達には、告白しちゃいなよーってけしかけられるんですが、どうしても勇気が出ません。私はどうしたらいいでしょうか?”だそうです」

亜美「青春って感じね!グッジョブベリーナイスよ!」

みほ「とっても素敵な先輩さんみたいですね。それで、恋のライバルが多くて困っているっていうお悩みなんですけど……」

亜美「恋は先手必勝よ!ライバルたちに先を越される前に、ドドーンと告白してガーッと押し倒して既成事実!」

みほ「うぇっ!?い、いきなり既成事実……ですか!?そ、それはちょっとその、アグレッシブ過ぎるというか……///」

亜美「これで、撃破率120%よ!」

みほ「ええっと、あの!まずは部活の相談などをきっかけにして話題の幅を徐々に広げていって、その延長でちょっとしたお出かけに誘ってみるとかはどうでしょう?その人の趣味や好みにさりげなく合わせてあげるといいと思います」

亜美「それも悪くないわね。でも私のおすすめも試してみてね!」

みほ「続いてのお便りです。”私は生徒会長をしてるんですが、とある事情で後輩にものすごく大きな重荷を押し付けることになってしまいました。何とかその件は解決したんですが、大変な重圧の中でも愚痴も言わずに前向きに頑張るその子の事を、いつの間にか好きになってしまったんです」

みほ「最初にウソまでついて引き込んだこともあり、告白だなんて図々しい気がしてとてもできません。それに飄々として掴みどころの無いキャラクターが定着してしまっていて、今さらそんなことを言っても信じてもらえなそうな気もします。どうしたらいいでしょうか?”……”干しイモジャンキー”さんからのお悩みです」

亜美「うんうん、真剣な感じでいいわね!」

みほ「今度は逆に、後輩さんがお相手なんですね。何だか、すごく悩んでらっしゃるみたいです……」

亜美「でも答えは簡単よ!恋も戦車道と同じ、チームワーク!生徒会長なら、権力で動かせる部下の1人や2人いるでしょ?集団で連れ出してどっかに閉じ込めて既成事実よ!」

みほ「ええええーっ!? そ、それって拉致監禁って言うんじゃ……」アワアワ

亜美「これで撃破率120%は確実ね♪」

みほ「ちょ、直接的な行動に出る前に、やっぱりまず本心を包み隠さずお話してみるのが一番だと思います……自分が一番心苦しく思っていることを打ち明けて、まずそれからじゃないでしょうか……きっと分かってくれると思います、がんばってください」

みほ「次は、”OK牧場ヤンキー娘”さんからです。”私の好きな子はものすごく鈍感です。何かというと用も無いのに会いに行ったりハグしたりスキンシップしたりキスしたりしてるんですが、全部友達としての親愛の表現だと思われてるみたいで……どうしたら分かってもらえるでしょうか?」

亜美「もっちろん!友達じゃ絶対ありえないアピールをするしかないわね!」

みほ「えっと……まさか、それも……?」

亜美「ダーッと突撃して寝室に連れ込んで既成事実よ!これでどんな鈍感な子が相手でも、撃破率120%!」

みほ「ちょ、蝶野さん!いくらなんでもそれは……あのあの!まず言葉でしっかり、好きだという気持ちを伝えることが大事なんじゃないでしょうか!場合によっては、手紙とかメールとかの方が自分の気持ちを整理できていいかもしれません」


みほ「えっと……次は”紅茶大好き田尻”さんからで……”私の好きな方は会う方会う方無節操にたらし込んでおきながら全く気づきもせず、もちろん私の想いにも気づいてもいない罪な方ですの。こうなったらうちの巡航戦車も歩兵戦車も全部繰り出して、実力行使ででも私のモノになっていただこうと思いますけれどかまいませんわよね?”」

みほ「って、これもう相談じゃなくて事後承諾みたくなってるんですけど!?」ガーン


亜美「こっちも同じようなお便りね。”私のミ……好きな人にちょっかい掛ける不穏分子が多くて困ってるの。いちいちしゅくせーしていくのもめんどくさいから副官と相談して、実力行使でウチの収y……キャンプの個室に監k……招待することにしたわ。後は数日も洗n……お話すれば他の不穏分子のことなんか忘れて、私のことだけしか考えられないようになるわよね!”」

みほ「も、もう許可すら求めてない……」

亜美「あら、どうしたの西住さん、気分でも悪いの?」

みほ「いや、あの……何だかもう他人事とは思えなくなってきたというか……え、ええと、は、早まらないで!とにかく早まらないでくださいっ!どうか平和的な解決の方法を……!」ダラダラ

亜美「それもいいけど、やっぱり恋も戦車も突撃戦法が基本!ガンガン積極的に行っちゃって、既成事実でノックアウトよ☆」

みほ「え、ええと、もうそれどころじゃない気分になってきたんですけど、つ、次のお便りは……熊本市の”西住まほ”さんと”西住しほ”さん……ってお姉ちゃんとお母さん!?」

みほ「な、内容は……”妹(娘)のためだと思ってあえて自由にさせてきたけれど、次から次にに手を出そうとする子鼠共が湧いてくるのでもう堪忍袋の緒が切れたわ」

みほ「黒森峰と西住流の全戦車団を率いてそちらに向かい、うちの屋敷の座敷牢に拉致監禁、姉妹母娘で既成事実するから首を洗って待っていなさいみほ”……」

みほ「……」ガタガタガタ

みほ「……あ、あ、あ、あのっ!私後ちょっとで用事を思い出せそうなのでっ!すぐに帰りますっ!」ダッ…

ガシッ

亜美「ちょっとちょっと、まだお便り読み終わってないんだからウェイタミニットよ」

みほ「あうっ!?は、離してくださーいっ……!」ジタバタ

みほ(……か、片手で……現役自衛官、力強すぎです……!)

亜美「ええっと、他には……”パスタ好き”さん、”ウラヌス”さん、”流浪の砂布巾”さん、”現副隊長”さん、”レッドスター・スモールプラム”さん……って、なーんだほとんど内容一緒じゃない」

亜美「じゃあまとめて答えちゃうわね!恋も戦車も、戦果が第一。他人がどうとか相手の気持ちがどうとか、そんなのは後回しよ!とにかくヤッちゃって、既成事実がすべてを語るのみ、ザッツ戦車道!」

みほ「せ、戦車道は犯罪行為を容認してませんっ!」

亜美「愛の電撃戦よ!」

みほ「沙織さんはそんな意味で歌ってません!……多分」

ドドドドドド

ドォォォンッ…

みほ「ひっ!とかやってるうちに四方八方から履帯音と砂煙と砲声が……!」ビクーッ!

亜美「ふむ……M3リーにヘッツアー、ファイアフライにマチルダ、クルセイダーにチャーチル、T-34にIS-2にKV-2、CV-33に九七式、ヤークトパンターにパンター、マウスにレオパルド2ってとこね」

みほ「か、完全に包囲されちゃってる……このままじゃ……」ブルブル

亜美「心配いらないわ、西住さん」ギュッ

みほ「ふわっ?ちょ、蝶野さん……あの、逃げないでいいんですか……?///」

亜美「逃げる……?私を誰だと思ってるの、みほさん?」

みほ「あ」



キュラキュラキュラ…

10式戦車一個師団「チーッス先輩方www」

旧世代戦車団「!?」

ドゴーンドゴーンドゴーン…

シュパッシュパッシュパッ!


亜美「んー、グッジョブベリーナーイスね♪」

みほ「た、助かりました……でもみんな、ケガとかしてないかな……」

亜美「車体にしかダメージを与えない特殊徹甲弾だから大丈夫よ。それより、早く脱出しましょう」サワサワ

みほ「は、はいっ!(何かさっきからやたらと触られてる気がするのが気になるけど……)」

みほ「あっ、でもこのまま大洗に帰るのも……それはそれで怖いっていうか……」

亜美「何言ってるの?大洗には帰らないわよ?」

みほ「へ?」

亜美「みほさんが帰るのは、私の部屋」スリスリ

亜美「あなたにまとわりつく害虫どももまとめて駆除したことだし」ムニュムニュ

亜美「二人だけの愛の巣で、思う存分楽しみましょう?レッツ既成事実よ!」ギラーン

みほ「ひぃっ!?」ゾクゥッ!

みほ「そんな……蝶野さんまで?う、ウソですよね……冗談ですよね……?」

亜美「蝶野さんなんてヒドイわね、亜美って呼んで?」グイッ…

みほ「あ……あ……」ガタガタ

ボヒューンッ

ボワワッ!

亜美「なっ……!?」

みほ「!」

亜美「これは……煙幕弾!?」ゴホッゴホッ

ギュロロロロロ ギギィッ

パカッ!

優花里「西住殿っ!お助けに参りました!」

沙織「早く乗ってみぽりんっ!」

みほ「Ⅳ号に……みんな!?」パァッ

華「煙幕は長くは保ちません、早く……」

みほ「う、うんっ!ありがとうみんな!」

ポスッ

麻子「捕捉される前に発進するぞ」

ガガガガガ!

ゴゴゴゴゴゴ…

みほ「う、うう……みんなが来てくれて助かったよぉ……」グスッ

沙織「よしよし、怖かったんだねみぽりん」ナデナデ

華「みほさんを怖がらせるとは悪い人たちですね」ナデナデ

みほ「う、うん……まさかこんなことになっちゃうなんて……みんなどうしちゃったんだろう……」ショボン

麻子「まあ、鈍感過ぎる西住さんにも少しだけ責任はあるけどな」

ギギィッ…

みほ「あ……あれ?あの……何でこんな人気の無い森の中で停めたの、麻子さん?」

沙織「みぽりんったら、外に出るとすぐ他の誰かに好きになられちゃうんだもん。もー我慢の限界だよ!」プンプン

華「だから私たち……話し合って決めたんです」ググッ…

みほ「あ、あの……沙織さん、華さん?何でぴったり隣に座って、身体をどんどんくっつけてくるの?/// その、動けな……」

麻子「西住さんはもう、Ⅳ号の外には出さないことにする」ジャラッ…

みほ「ま、麻子さん?そ、その鎖は何かな……?戦車の標準装備じゃないと思うんだけど……」ビクッ!

優花里「西住殿に装填するための各種砲弾も準備完了であります!」ヴィィィィ ウィンウィン…

みほ「ゆゆ優花里さん!?そ、それ全然砲弾と違うしっていうかそんなの装填するの私無理だよ!?」ギョッ

沙織「大丈夫だよみぽりん!戦車に通れない道はないんだから、ね?」ニコ

華「私たちが通った道が、私たちの戦車道になるんです」ニコニコ

みほ「ここでそのセリフ使わないでください!なんかいろいろダメになる気がするから!」ガビーンッ!

麻子「心配するな。あんこうチームはいつでも」

優花里「仲良しの一蓮托生であります!」

沙織「だから一緒に、既成事実、しよ?」

華「大丈夫です。お花を生ける時のように、集中してやりますから」

ズズズイッ…

みほ「い、い……」ガタガタ



みほ「いやぁぁぁぁーっっ!!」




──いやぁぁぁぁーっ!……

──ほ……

──みほ……!

「みほ!」

パチッ!

みほ「はっ……あ、あれ……?」

愛里寿「どうしたの、みほ……うなされてたみたいだけど」

みほ「愛里寿ちゃん……?そっか……」

みほ「夢だったぁ……良かったぁ……」ホッ

愛里寿「変なみほ」クスクス

みほ「だってぇ……みんなが私と既成事実しようとかしてきて……すっごく怖かったんだよ?」プクッ

愛里寿「既成事実する……?何それ、変なの」

みほ「あはは、確かに……それにしても、怖い夢だったなー……」ジャラッ

ズキッ

みほ「つっ……」

愛里寿「みほ、大丈夫?……手枷の大きさ、合ってないみたい……擦れちゃってる」

愛里寿「後でちゃんとサイズ合うの持ってくるね……塗り薬も」

みほ「うん、ありがとう愛里寿ちゃん……優しいね、えへへ……」

愛里寿「みほ……///」

愛里寿「あのね、またちょっと行かなくちゃならないの。少しの間だけ、一人で待ってて?」

みほ「えっ……そ、そうなの?ここ、暗いし……一人でいるの、ちょっと怖いな……」ブルッ

愛里寿「ごめんね」

愛里寿「私とみほの二人っきりをジャマしようとする、悪い人たちを……追い払ってこないといけないから」

みほ「そっか……それじゃ、仕方ないね……」シュン

愛里寿「いい子にしてて、みほ」ナデナデ

愛里寿「いい子にしててくれたら、また後で……たくさん気持ちいいこと、してあげる」

みほ「う、うん……愛里寿ちゃん……///」

愛里寿「みほ……」

チュッ♡

愛里寿「それじゃあ、行ってくるね」

みほ「気を付けてね、愛里寿ちゃん……!愛里寿ちゃんがいなくなったら、私、私、ひとりぼっちに……」グスッ

愛里寿「心配しないで……最後に勝つのは、いつだって私だから」

トテトテ…

愛里寿(”既成事実する”だなんて、本当に変な言葉)

愛里寿(”もう起こってしまったこと”だから、既成事実なのに)

ギギィーッ

愛里寿(起こってしまったことは、もう変えられない)

愛里寿(変えさせない)

愛里寿(だから、私は……)

バタンッ



キュラキュラキュラ

ドォン ドォォンッ…


愛里寿「行くぞ……戦車、前進っ……!」

・1本目終わり

・続いて2本目

優花里(廃校を賭けた西住殿と私たちの戦いは終わり、私たちは無事!大洗の学園艦に帰ってくることができました!)

優花里(しかし、私たちあんこうチームには、新たなる戦いが待ち受けていたんです)

優花里(名付けて……朝の戦い、モーニング・ウォーですっ!)


沙織「麻子ぉぉーっ!もーっ、いい加減に起きてってばぁー!」グイグイ

麻子「……ねむい」

みほ「ま、麻子さん、せっかく遅刻を取り消しにしてもらったのに、このままじゃまた進級が危なくなっちゃうよ?」アタフタ

麻子「……それは困る……でも無理……」Zzz

優花里「確か、戦車道をやるようになって低血圧が少し良くなったとおっしゃっていたような……」

沙織「ここ最近、前よりヒドイよねぇ……」

華「学園が無事存続したことで、かえって緊張感が無くなってしまったとか……でしょうか?」

ピピピピピピ…

沙織「わーっ!もうこんな時間!このままじゃ私たちも全員遅刻だよっ、もー麻子ーっ!!」ユサユサ!

麻子「……無理だ……私を起こしたければ戦車でも大砲でも持って来い……」Zzz…

みほ「あの、持ってきてるんだけど……毎日」アハハ…

「アンタたち、そんなんじゃいつになったって起きやしないよ!」

みほ「!」

優花里「あ、あなたは……!?」

バサッ!

麻子「!?」

久子(おばぁ)「さっさと起きなァァァこの寝坊スケがァァァ!」クワッ!

麻子「ギヤァァァァァァーッ!?」ビクーッ!


優花里「これは驚きの技術です!私たちではどうやっても剥がせなかった布団を一撃で!?」

沙織「更に思わず目を開けたところに迫力のドアップ……アレは効くよぉ……」ゴクリ

みほ「す……すごい……ね……あは、あはは……」

久子「アンタって子はお友達に迷惑ばっかりかけてんじゃないよ!シャッキリ起きなァァ!」

麻子「わ、わかった、起きる、起きるから……寝起きに大声出さないで……」フラフラ

久子「甘えた事言ってんじゃないよこのバカ孫が!早くしなァ!」

麻子「ひぃぃぃ、わかった、わかったからぁ……」バタバタ

──放課後 麻子の部屋──

久子「……」

麻子「……」ビクビク

さおみほゆかはな「……」

沙織(あの……何で私たちまで正座させられてんのかな……?)

みほ(さ、さあ……)

華(雰囲気で、でしょうか)

優花里(足がしびれてきましたぁ……)ジンジン


麻子「あの……おばぁ?その、何でこっちに来たんだ?体の調子は……」オソルオソル

久子「アタシの心配なんかしてる場合かいっ!」クワッ!

麻子「ひっ!」ビクッ

久子「……同じ学園の風紀委員の子が、心配して連絡くれたんだよ。また遅刻が増えてるみたいだけどこのままじゃ進級がまた危ないんじゃないかって」

麻子(そ、そど子めぇぇ……余計な事をぉぉ……)ギリギリ

久子「全くアンタって子は、今回と言う今回は呆れたよ全く!お友達まで一緒に遅刻したことまであったっていうじゃないかい!何考えてんだ!」

麻子「ご、ごめん……」

久子「謝るのはアタシにじゃないだろッ!」

麻子「も……申し訳ございませんでしたぁ……!」ドゲザァ!

みほ「ちょっ……ま、麻子さん!そんな、謝らないでくださいっ……」アタフタ

沙織「そ、そうそう、私たちこんなの慣れっこですし!」

華「麻子さんが朝弱いのは体質のせいですし、麻子さん自身が悪いわけじゃないですから」

優花里「毎日Ⅳ号を操縦させてもらえて、私としては願ったりかなったりでありますっ!」

麻子「……」

久子「……」

麻子「……その、ホントにみんな、ゴメン……」シュン

みほ(麻子さん……)

久子「はぁ……これからどうしたもんかねぇ……アタシももう先は長くないってのに、アンタがこんな体たらくじゃぁ安心して三途の川も渡れないよ」ハァ…

麻子「お、おばぁ!変な事言うのはやめてくれ……!」

久子「何言ってんだい!」カッ!

麻子「!?」

久子「現実を見な麻子。アタシはもういい歳だし、人間いつまでも生きてるわけにはいかないんだよ。いずれ必ず、アンタにも一人で生きていかなきゃいけない時がやってくるんだ」

麻子「そ、そんな……嫌だ……そんなの嫌だっ……」グスッ

久子「泣くんじゃないよ!……ったく、いつになっても子供なんだから、この子は……」

みほ(麻子さんが泣いてる……あの、いつでもあんまり感情を表に出したりしない、麻子さんが……)

久子「ああ、せめてアンタがしっかりしてくれるっていう見込みがあれば、アタシも少しは安心できるんだけどねぇ……」フゥッ…

麻子「……」グスッ…

みほ(麻子さんが泣いてるのを見てると……すごく胸が苦しくなって……私まで泣きたくなる……)ズキッ

沙織「あ、あの、おばあさん!麻子は確かに朝弱いし高いとこもお化けもダメだけど、すごく勉強できるし、絶対立派になると思う!」

華「どんなピンチの時でも冷静ですし、頼りになります」

優花里「それに前にも言いましたけど、冷泉殿は戦車の操縦がすっごく上手なんです!きっと素晴らしい選手になりますよ!」

みほ(せめて、何かしてあげたい……みんなみたいに、おばあさんを安心させてあげられるような事を、一言でも……)グッ

久子「そんなこと言ったってねぇ」

久子「だから戦車が操縦できたって、おまんま食べらんないだろっての」

みほ「!」

みほ「たっ……食べられますっ!」

みんな「へ?」

みほ「私の実家……戦車道で生計、立ててますからっ!ちゃんとご飯食べられますっ!」

久子「あの……この子は何言ってるんだい?」

沙織「おばあちゃん知らなかったの?みぽりんは有名な戦車道の家元さんの娘さんなんだよ?」

麻子「いやでもそれとこれとはあんまり関係な……」

久子「へぇぇ……じゃあ何かい?」ジロ

久子「アンタがこの子を引き取って、一生ずーっと面倒見てくれるとでも言うのかい?」

麻子「おいおばぁ西住さんに失礼な……」

久子「なーんて、できるわけないだろ?この子なんかの友達になってくれて本当にありがたいけれど……結局は私たち家族の問題なんだよ」

みほ「で……できますっ!」

みんな「は?」

みほ「私、麻子さんのためだったら戦車道頑張ってちゃんとプロになって、一生養っていく覚悟、ありますっ!」

麻子「い、いきなり何言いだしてんだ西住さん!?///」ギョッ

久子「……ほぅ?」キラーン

久子「でもこの子……朝は見てのとおりだし、起き出してからだって家事なんかからっきしで、何の役にも立ちゃしないよ?それでもいいのかい?」

みほ「大丈夫ですっ、家事も全部私がやります!麻子さんはただ寝ててくれればいいです!」キッ

麻子「お、落ち着いてくれ西住さん……何が何だか分からんがテンパりすぎだろ……///」アセ

久子「ははぁ、なるほどね……アンタが例の西住流の子かい……でも、確か家元とは断絶してるって噂だけどねぇ?」

みほ「そ、それは……」

久子「親と上手くやっていけない子に孫を嫁がせるのは、ちょっと心配だね、婆ぁとしては」

麻子(ととと嫁ぐって言ったか今!?本当にどんな話になってるんだ一体!?///)グルグル

みほ「……母とは和解します。必ず、してみせます。西住流を継ぐかどうかは別の問題ですけど……」

久子「本当かい?」

みほ「はい……ありがとうございます……」ペコリ

久子「アタシゃ何も礼を言われるようなこたぁしちゃいないよ」

みほ「いえ。さっきのおばあさんのお話を聞いて、思ったんです」

みほ「どんな人間も、いつまでも命があるわけじゃない……おばあさんだけの話ではなくて」

みほ「私たち自身も……それから、私のお母さんも。だったら、今この瞬間を大切にしなくちゃって」

みほ「今は仲たがいしてても……そのままにしてたら、きっと後悔する日が来る」

みほ「だって麻子さんは……ずっと……」

麻子「西住さん……」

みほ「……」

バッ

みほ「だから私は!きっと、麻子さんを守れるような立派な人間になってみせますから」

みほ「だから、あの……えっとえっと、その、麻子さんを、わわ私に……///」

麻子(あっ急にいつもの西住さんに戻ってきた……ていうか、そ、その先は何て言うつもりなんだ?ま、まさか……///)

久子「よーし、気に入った!」バァン!

みほまこ「ひっ!」ビクッ!

久子「こんな無愛想で大した役にも立たない子だけど、返品不可でいいなら持っていきな!」

麻子「はぁっ!?///」

みほ「おばあさん……!」パァッ

久子「言っとくけど、アンタの前途が有望だとか、家元の娘だとか、そんなことが気に入ったわけじゃないからね」フン

久子「アンタが人の気持ちや言葉を受け入れる……素直な心を持ってるからだ。結局人間、そいつが一番大事なんだよ」

久子「アンタがこの子の傍に居てくれるなら……アタシゃ今度こそ安心して、いつでもあの世に行けるってもんさ」

みほ「そんな事言わないでください……麻子さんのおばあさんなら、私にとっても大事なおばあさんなんですから」

久子「なんだいこの義理の孫は!実の孫よりよっぽど可愛げがあるねぇ!」

アハハハ…

麻子「って、いやいやいやいや!何で勝手に話が進んでるんだ……!///」バッ!

麻子「もう何か、私が西住さんの、おっおよっ、お嫁に行くのが確定みたくなってないか!?///」

久子「何だいこのバカ孫は。まさか、相手がみほさんなのが不服なんて言い出すんじゃないだろうね?」

久子「こんな理想の婚約者掴まえてそんなこと言ったらバチが当たるよ!」クワッ

麻子「いや、そういう問題じゃなくてだな……」ワタワタ

みほ「そ、そう……だよね……」シュン

麻子「に、西住さん?」

みほ「私なんかじゃ、麻子さんには釣り合わないよね……ごめんね、勝手に自分だけ舞い上がっちゃって……」ドヨーンッ

麻子「ちっ違う!そういう意味じゃない!」

麻子「その……西住さんのことは、えっと……結構、好きだ……///」

麻子「可愛いし、沙織やそど子とかと違っていつも優しいし……なんかアタフタしてる時は助けてやりたくなるし……///」

みほ「麻子さん……!良かったぁ……!私も麻子さんのこと、大好きです!」ギュウウッ♡

麻子「わぁぁ!?だ、だからと言って、コレはさすがに急すぎるだろ!///」ボフンッ!

麻子「いくらなんでもこういうのには段階ってものが……な、なぁ沙織そう思うだろ!?」

沙織「やられた……まさかよりによって麻子に、先に婚約者ゲットされるなんて……麻子だけは無いと思ってたのに……やだもぉぉぉ……」ガクッ

麻子「何で考える人みたいな体勢で私を微妙にディスりながら事実を受け入れてるんだ……そ、そうだ、五十鈴さん。五十鈴さんなんとか言ってやってくれ……!」

華「なんて感動的なんでしょう……私猛烈に花を活けたくなってきましたわ、次から次へとインスピレーションが!」パァァァ

麻子「くっ、芸術家モードになってて聞いてないな……なら秋山さん!西住さんファンの秋山さんならこんなのどうかと思うだろ……?」

優花里「西住殿……西住殿のお覚悟、この秋山優花里いたく感動致しましたっ……さすが西住殿ですっ……!」ダバーッ

麻子「なるほど、秋山さんは西住さんのやることならもう何でもいいわけか……」

久子「アンタも女だろ、みっともなくじたばたしてないで、とっとと覚悟決めな」

麻子「か、覚悟って……?」

久子「全く最近の子は物を知らないんだねぇ。こうやって三つ指付いて、”不束者ですがどうぞ宜しくお願いします”ってみほさんにやるんだよ。早くしな」

麻子「えええええ……む、無理っ……そ、そんな、いくらなんでも恥ずかしすぎるだろ……!///」

みほ「麻子さん……やっぱり私じゃ……ダメ、なのかな……?」シュンッ

麻子「だから違う!そういうことじゃない!」


華「何だかさっきかららちが開きませんねぇ」

優花里「冷泉殿!冷泉殿もそろそろお覚悟を決めてください……!」

沙織「そーだそーだー、さっさと婚約しちゃえばいいじゃーん」ブーブー

麻子「他人事だからって適当言うな……!」

久子「……」

久子「うぐぉッ!?」ビクン

麻子「お、おばあ!?」

みほ「どうしたんですか、おばあさん!?」

久子「と、突然持病の発作がぁぁ……こ、このままでは……死ぬるぅぅ……!」ガクガク

沙織「た、大変!救急車を……」

久子「ま、待ちな……麻子が無事にみほさんと婚約するのを見届けられれば……きっと安心して発作も収まるッ……」ビクンビクン

麻子「何だその不自然な発作!?わざとらしすぎるにも程があるだろ、そんなのに誰が騙されると……」

みほ「た、大変っ!?」

沙織「しっかりしておばあちゃん!今すぐ婚約させるからね!」

華「さあ麻子さん、早く!」

優花里「早く婚約を宣言してくださいぃ~!」

麻子(こんなみえみえの小芝居に騙される人間が4人もいるとは……うちのチームは本当に大丈夫なのか……)

ガシッ!

久子「うぐぉぉぉ……このまま死んだら、末代まで祟ってやるからねぇぇ……!」

麻子「ひぃぃぃぃぃーっ!?」ビクーッ!

優花里「自分の家系に祟るんですか!?」

華「斬新な怨霊ですね……」ゴクリ

麻子「わ、分かった、やるから!やるからもう、やめてくれ……普通に怖いから!」ババッ

麻子「えっと……その……西住さん……///」

みほ「ま、麻子さん……///」

麻子「その……こんな私なんかで、いいなら……その……よろしく、頼む……///」ボソボソ

みほ「……はいっ!こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」ニコッ♡

沙織「おめでとーみぽりん!」

華「良かったですね、みほさん」

優花里「西住殿ぉ、末永くお幸せにぃっ……!」ウルウル

麻子「もうそういうのには突っ込まないからな」


久子「さーてじゃあ話もまとまったとこでアタシは帰るとするかね」スクッ パンパン

麻子「いきなり小芝居を打ち切るなよおばぁ……」

優花里「良かったぁ、発作治ったんですね!」

沙織「んもー、どうなることかと思ったよ~」

麻子(本当に大丈夫かうちのチームは)

久子「……」クルリ

久子「こんな愛想の無い子だけど……」

久子「みほさん、皆さん。これからも、どうかよろしく……」ペコリ

麻子「おばぁ……」

みほ「はいっ……こちらこそ」

さおはなゆか「よろしくお願いしますっ!」ペコリ

麻子「……」

麻子(ありがと、おばぁ……)ボソッ…

──その夜──


みほ「みんな、先に帰っちゃったね……///」

麻子「気を利かせ過ぎだろ」

みほ「えっと、その……お風呂も入ったし、もう寝よっか?///」

麻子「布団も枕も一つしかないがいいか」

みほ「うっうっうんっわたっ私は大丈夫だいじょうぶ!」ギクシャク モソモソ

麻子「……西住さん」

みほ「ひゃいっ!?なっ何!?///」

麻子「いや、何でそんな無理矢理スペース空けてるんだ……隙間から空気が入って寒いぞ」

みほ「ご、ごめんなさい!く、くっつくね!」ギュウウウ

麻子「……今度は苦しい」

みほ「あわ、あわわ……ど、どうしたら……」アセアセ

麻子「……普通でいい」

みほ「え……?」

麻子「西住さんは、ただ普通で……私のそばに居てくれれば、それだけでいい」ニコッ

みほ「麻子さん……///」ドキンッ

麻子「なあ……私が朝起きられなくなった理由、聞いてくれるか」

みほ「理由……?」

麻子「ああ、私は……眠るのが怖いんだ」

麻子「起きた時、世界が変わってしまってるんじゃないか……両親が死んだあの時みたいに、おばぁや大切な人たちが、いなくなってしまってるんじゃないか……」

麻子「そう考えたら、自分が死ぬことよりも怖くなるんだ」

麻子「戦車道をやって、低血圧は少しだけよくなったけど……その代わりに、失いたくない大切なものが、たくさんできてしまった」

麻子「そして、今日は……もっともっと大切なものができてしまったから、もう、到底、眠ることなんて……」グスッ

みほ「……麻子さん」ギュッ

麻子(西住さんの手……あったかい……)

みほ「ねえ麻子さん、私は……絶対に麻子さんより先に死んだりしないって、約束はできないけど」

みほ「できるだけずっと、どんな時も……一緒にいることはできるよ。そうしたらきっと、何があっても……運命は一緒だと思うの」

みほ「そう思ったら……少しは楽にならないかな」

麻子「西住さん……」

みほ「だからその一歩目に……呼び方。もっと近くに、ならないかな?」クスッ

麻子「う……呼び方か……」

みほ「……」ジーッ…

麻子「えっと、その……」

みほ「……」ジーッ

麻子「……みっ、みほっ……///」ギュッ

みほ(照れながら私の名前を呼んでくれる麻子さんが可愛くて)

みほ(照れ隠しに私の胸に顔をうずめて抱き付いてくる麻子さんが暖かくて)

麻子「みほ……今夜は、月が……綺麗、だな……」

みほ(そして、そう呟きながら眠りにつく麻子さんの寝顔は、とても穏やかで……)

みほ(きっと、幸せな夢を見てるんだよね)

みほ(これなら、明日の朝はもうちょっとすっきり起きられるかな?)クスッ





麻子「というわけで、今日は6時にスッキリ起きられたぞ」

みほ「さすが私の麻子さん……とってもえらいです♡」チュッ

麻子「まあそれほどのこともある」フフン

沙織「や、やるわね麻子……おそれいりましたぁ……」ズザッ

華「麻子さん頑張りましたね♪」

優花里「尊敬しますっ!」

そど子「くっ……負けたわ……お詫びに遅刻分はまたチャラにさせてもらうわね……」


パパラパパラパー♪

ドドーン!


麻子「私の晴れやかな起床を祝ってー……ラッパを吹けー、祝砲を撃てー……」



みほ「って、むしろ朝寝坊が悪化しちゃってる!?お、起きてください麻子さんーっ!」

沙織「起きてよ麻子ー!せめてみぽりんだけでも解放してあげてぇー!」

麻子「えへへぇ……どうだみほ……これからは私もしっかり……して……」Zzz ギューッ

みほ「ふぇーん、何だかんだ言って結局低血圧が原因なんじゃないですかー!」

優花里「ダメです、起床ラッパも空砲も、全く効果ありません!」

華「こうなったら……みほさんと麻子さんをセットで抱えて連れて行くしかないでしょうか……」

みほ「そんなの恥ずかしすぎて死んじゃうからダメですっ!///」



優花里(この後、西住殿が母上との和解と婚約承認のために乗り込んだ西住家で、西住流門下生のドイツ戦車軍団を相手にあんこうチームが大立ち回りを繰り広げるというエピソードもあるのですが、ここでは割愛させていただきます)

優花里(だって、勝つことが分かりきってる勝負なんて、面白くないですもんね!)

優花里(それより、今は目の前の戦いに身を投じなければなりませんので!これにて失礼致しますっ)ビシッ


優花里「西住殿っ!たらい一杯の水をぶっかけるというのはどうでありましょうか?くっついて離れない猫を引き離すのに良いと聞いたことがあります!」

みほさお「「却下です!!」」

・終わりです

・それではおやすみなさい

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom