魔王「フハハハハッ! よくぞ来たな、勇者よ!」 (34)

勇者「フハハハハッ! 来てやったぞ、魔王!」

魔王「フハハハハッ! その度胸だけは誉めてやる!」

勇者「フハハハハッ! ほざけ、返り討ちにしてくれるわ!」


魔王「…………」

勇者「…………」


魔王「返り討ちは私の台詞……」

勇者「あ、ごめん、つい……」


魔王「…………」

勇者「…………」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453223202

魔王「フハハハハッ! そう落ち込むな、勇者よ! 間違いは誰にでもある!」

勇者「フハハハハッ! それもそうだな、魔王よ!」

魔王「フハハハハッ! まずは遠路はるばる来た勇者に冷たい氷水を与えてやろう! 感謝するがいい!」

勇者「フハハハハッ! いきなり氷責めで来るとは流石は魔王だな!」


魔王「…………」

勇者「…………」


魔王「ネタバレした……」

勇者「あ……」


魔王「…………」

勇者「…………」

勇者「フハハハハッ! ネタバレしたぐらいでダメになるような弱い魔法ではあるまい!」

魔王「フハハハハッ! それもそうだな! 我は最強だからな!」

勇者「フハハハハッ! さあ、かかって来い、魔王め!」

魔王「フハハハハッ! ならばお望み通り、氷の塊をくれてやる! 極大氷魔法!!」バッ

ドゴンッ!!!

勇者「フハハハハッ! この程度か、魔王よ! 極大炎魔法!」

ジュワッ!!

魔王「……え?」

勇者「フハハハハッ! 折角の氷が消えてしまったな! 魔王の実力はこの程度か!」


魔王「…………」

勇者「…………」


魔王「頑張ったのに……」

勇者「あ……。ごめん……」


魔王「…………」

勇者「…………」

勇者「フハハハハッ! それなら次は俺の番だな!」

魔王「うん……」

勇者「あ、あの、ホントごめんな……」

魔王「平気……」


勇者「…………」

魔王「…………」


勇者「……大丈夫?」

魔王「……」コクッ

勇者「フハハハハッ! では行くぞ!」

魔王「フハハハハッ! 来るがよい、勇者よ!」

勇者「極大風魔……うっ!」グラッ

魔王「フハハハハッ! いきなりどうした! 勇者よ!」

勇者「お腹痛い……」

魔王「え」


勇者「うぅっ……。急に痛くなって……」

魔王「……だ、大丈夫? 薬持ってこようか?」

勇者「大丈夫……。俺、勇者だし……。魔王に助けてもらうなんて恥だし……」

魔王「でも……。スゴい辛そうだよ……? やっぱり薬持ってきた方がいい?」

勇者「フハハハハッ! バカめ、油断したな! 食らえ、極大氷魔法!」バッ

ドガンッ!

魔王「てい」パシッ

勇者「あ」


魔王「…………」

勇者「…………」


魔王「騙した……」

勇者「いや、でも、戦いだし」

魔王「心配したのに……」

勇者「ご、ごめん……」

勇者「もうしないから……ね?」

魔王「……ホントに?」

勇者「うん。約束する」

魔王「……指切り」スッ

勇者「うん」スッ


魔王「指切りげんまん♪」

勇者「嘘ついたら針千本飲ーます♪」

魔王「指切った♪」


勇者「フハハハハッ! 覚悟しろ、魔王よ!」

魔王「フハハハハッ! ほざけ、返り討ちにしてくれるわ!」

< 勇者ちゃん、魔王ちゃん、お待たせー。ご飯が出来たわよー

勇者「ホント! 母さん!」

魔王「わーい!」トタタタッ

勇者「あ、待って!」トタタタッ

< あらあら二人とも元気ね。何して遊んでたの? また勇者魔王ごっこ?

勇者「うん! 俺、大きくなったら勇者になって魔王を倒すんだ!」

魔王「私はそのお手伝いで、大賢者になるの!」

< そう。それは凄いわね。二人とも、魔法の才能は天才的ですもの。大賢者なら夢じゃないかもしれないわ。でも、勇者はちょっと無理があるかなあ

勇者「何で? 俺、絶対強くなるよ!」

魔王「そうだよー。勇者は強くなるんだもの!」

< それでも無理よ。だって、今は魔王がいないんですもの。平和な世の中だからそれは無理なの



ほのぼのして笑った

いい大人が何やってんだと思ったらちびっこかよ
一気に微笑ましくなったじゃねーか乙!

まぁでも100年単位で魔王復活とかしてるかもだし、備えるのは悪いことじゃないよな
おつ

いいねぇ

たまにはこういうほのぼのものも良い。素敵でした

この二人が将来本当に魔王と勇者になったら…悲しいなぁ

可愛らしい

以下、オマケ的な蛇足
ここから先は転載禁止でオナシャス

エピローグ(15年後)



勇者「遂にここまで辿り着いた……」

勇者「魔王のいる本拠地、魔王城へ!」

勇者「俺は……何としてでもこの手で魔王を討ち果たさないとならない!」

勇者「途中で、俺をかばって亡くなった幼馴染みの仇! それを必ずやこの手で晴らしてやる!」

勇者「いざ! 行くぞ!」

魔王「フハハハハッ! よくぞ来たな、勇者よ!」

勇者「っ……!?」

魔王「ククククッ、どうした? 驚きのあまり、声も出ないのか? この姿にそんなに驚いているのか? フハハハハッ!」

勇者「幼馴……生きて……。でも……あれ……何で……」

魔王「フハハハハッ! この体の魔力があまりに高く、素晴らしいのでな! 殺すのは惜しいと思い、憑依して我の体とした!」

勇者「じゃあ……幼馴染みは……ホントに生きて……。だけど……」

魔王「ククククッ。そういう事だ。この体は既に完全に我のもの。つまり、我を殺さねばお前の幼馴染みは自由になれぬ。だが、我を殺したらそれは幼馴染みをも殺す事となる。どうあがいても、お前の幼馴染みは助からぬのだ!」

勇者「う……。あ……」ポロポロ

魔王「フハハハハッ! その顔、最高だな! ここまで四天王を打ち倒してきた勇者ともあろう者が、絶望で涙を流すとは! 実に愉快だぞ!」

勇者「良かった……」ポロポロ

魔王「……む?」

勇者「本当に良かった……」ポロポロ

魔王「……何だと?」

勇者「幼馴染みは……生きていたんだ。幼馴染みは……。俺の身代わりになって死んだとばかり思ってたのに……」ポロポロ

魔王「貴様、呆けたのか? 幼馴染みを殺さねば幼馴染みは自由になれぬのだぞ? 状況がわかってないのか、この阿呆が」

勇者「阿呆はどっちだよ……」ユラリ

魔王「……何だと?」

勇者「子供の時から、俺と幼馴染みはずっと一緒だったんだぞ……」

勇者「家が近所で、すぐに気が合って……。どこに行くにも何をするのもずっと一緒だったんだ。言ってみりゃ、幼馴染みはもう一人の自分みたいなもんだったんだよ」

勇者「そいつが、死んだと思った時、どんな気持ちだったかお前にわかるか? 自分が殺されたようなもんだぞ? 弱い自分を責めて何度自殺しようと思ったか」

勇者「その絶望に比べりゃ、今の状況なんか絶望のぜの字もわかねーよ!」

魔王(何だ、この魔力は……! とてつもない魔力が奴の体内から湧き出てきている……!)

勇者「むしろ、嬉しくて嬉しくて仕方がないね。お前だけを殺せば幼馴染みは無事に帰ってくるんだからな!」

魔王「だが、それが無理だと我は言っている!!」

勇者「不可能を可能にするのが勇者だ! 覚悟しろ、魔王!!」チャキッ

魔王「ちいっ!! 極大氷魔法!!」バッ

ズガギンッ!!

勇者「ぬるい!! 極大炎魔法!!」バッ

ボシュッ!!

魔王「相殺か! 器用な事を!!」

勇者「その体、傷一つつけずに返してもらわないといけないからなっ!」

『勇者ちゃんと、魔王ちゃん?』

『ええ、そうね。あの二人は本当に仲が良くてね。しかも、どちらも子供の時から飛びきりの魔法の使い手だったわよ』

『本当にあの子たちは凄くってね。お互い、大人も顔負けの高度な魔法を撃ち合って、それでも怪我した事が一度もなかったもの。かすり傷一つなかったのよ』

『相殺技って言って、相手と同じだけの魔力を込めて反対の属性の魔法を返すの。そうするとその場の魔力が一瞬だけ0になって魔法が消えるんだって。だから、お互いに傷一つつかなくてね』

『あの子たちはそれが好きで、そうやってよく遊んでたんだけど、噂を聞いて王宮から訪ねて来た魔法使い様がそれを見て驚いていたわ。有り得ないって。見た事ないって』

『相殺技自体は結構有名らしいんだけど、普通、実戦では使えない代物なんだそうよ。真剣白羽取りと一緒。言うはやすし行うは難しだったかしら? 実際、あれだけの至近距離でそれが何度も完璧に出来るのって他に一人もいないらしいわね』

『二人とも、百年に一人現れるか現れないかの魔法の天才だって仰ってたわ。それは間違いないと私も思うけど』

『でも、魔王ちゃんと勇者ちゃんには、それぞれもう一つ天才が隠れてるの』

『それはね……』

魔王「喰らうが良い! 極大雷魔法!」バッ

魔王「相殺するには正反対の魔法でなければならぬ! だが、この魔法にはその対となる魔法が存在せぬ!!」

ビカンッ!!

勇者「だったら、作りゃいいだろ! 極大昇雷魔法!」バッ

バシュンッ!!

魔王「地面から立ち昇る雷だと! 有り得ん! 馬鹿な!」

勇者「実際、有り得てるんだから、それでいいんだよ! !」

魔王「ならば、召喚魔法だ! 出でよ、死神!」バッ


死神A「ギャアスッ!」ザシュッ

死神B「ギャアスッ!」ザシュッ

死神C「ギャアスッ!」ザシュッ

死神D「ギャアスッ!」ザシュッ


魔王「正面背後左右からの命を絶つ鎌だ! 死ぬが良い!」

勇者「馬鹿馬鹿しい! 時魔法、倍速!」カッチカッチ

ヒュンッ

魔王「消えた……! いや、自分の時間を早めて避けたのか!?」

魔王「だが、時魔法など、あれはお伽噺の中だけのもののはず……現実にあるはずが……!」

勇者「更に、肉体強化魔法! 足倍力!」ダッ

ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ

魔王「速いっ! 見えんっ! どこに!?」

魔王「そもそもそんな魔法は有り得ん! そんな魔法は存在せぬのだっ!!」

勇者「なかったら、作りゃいいってのが、俺の持論だ!」

魔王「!?」


『勇者ちゃんは、閃きの天才なの。その魔法センスで何でも新しい魔法を作っちゃう』

勇者「幼馴染み、悪い! ちょっとだけ揺らすぞ! 振動魔法!」ダッ

ドンッ!!

魔王「ぐふっ!! 貴様、何を……」グラッ

勇者「船酔いの酷いやつって言えばわかるか? 揺らして平衡感覚を奪った。幼馴染みは船がかなり苦手だったからな」

魔王「くっ……。体が……」ヨロッ

勇者「おい、幼馴染み! 聞こえるか! 聞こえてるなら一回でいい! 何でもいいから『お前自身』が自分に回復魔法を使え!」

勇者「頼む! 頑張ってやってくれ!」

魔王「……っ」

勇者「幼馴染み! 魔王の憑依を解くにはそれしかない!! お前の力がどうしても必要なんだ!!」

勇者「幼馴染みっ!! 返事をしてくれ!」

勇者「幼馴染みっ!!」


魔王「…………」

【……何だろう】

【何だか体が温かい……】

【どこかわからないけど……あったかくて、ぽかぽかする……】

【何だろう……】

【何だっけ……】

【前にこんな感じ……。似たようなのがあったような気がするけど……】

【ゆ……?】

【……ゆ?】

【…………うーん】


『幼馴染み!』


【あ】

【勇者だ!】

【思い出した、勇者だ!】

【最後の記憶、覚えてる! 泣かないで、平気だよって私言った!】

【絶対また会えるって思ってた! 勇者、会いたかった!】

勇者「幼馴染み! 聞こえてるだろ! お前なら絶対に聞こえてるはずだ!」

勇者「幼馴染み!!」


魔王「……ぅ」コクッ……


勇者「幼馴染み!!」

魔王「ゆ……う……」

勇者「おう、俺だ! 幼馴染み! 聞いてるなら、自分に向かって回復魔法を使ってくれ!!」

勇者「そうしたら、俺が必ずお前を助け出す!!」

勇者「だからっ!!」


魔王「う……ん……」ググッ

キュイーン……

勇者「!!」


『そして、魔王ちゃんは諦めない天才。逆境の時ほど強いの。無理な時ほど、絶対にどうにかしちゃう』

魔王「回復……魔法」バッ

勇者「今だ! 消耗魔法!」バッ

パリンッ!!

魔王「う……」グテッ


魔王(幽体)「な!?」

勇者「出たな、黒幕が!!」


魔王(幽体)「馬鹿な! 何故だ!? 何故、憑依が解けた!?」

勇者「当然だろ。憑依って言っても、どうせ魔力を使ってるんだからな」


『相殺技って言って、同じだけの魔力を込めて反対の属性の魔法を返すの。そうすると【その場の魔力が一瞬だけ0になって】魔法が消えるんだって。だから、お互いに傷一つなくて』


勇者「そして、お前は闇の魔力そのものみたいな存在か。だったら」ゴゴゴゴゴ

魔王(幽体)「まさか……! 貴様!!」

勇者「同じだけの正反対の魔力をぶつけてやりゃ、消えるよな! 光魔法を作ってやればいい!!」

魔王(幽体)「やめ……!!」

勇者「極・大・光魔法!!」バッ

魔王(幽体)「ぐわああああああああっ!!」


パリンッ


勇者「……幼馴染みを利用した罰だ! 二度と現れるな!!」

魔王「勇者……」

勇者「幼馴染み! 平気か!?」タタッ

魔王「平気じゃ……ない。気持ち……悪いよお……」

勇者「何だ、さっきの船酔いの影響かよ……。でも、良かった」ホッ

魔王「良くない……。治して……」

勇者「ああ、回復魔法に少し改良を加えればいいか。状態異常回復魔法!」サッ

パアッ……

魔王「うっ……」ムクッ


勇者「そのまま立てるか?」

魔王「うん……」ヨロッ


勇者「ふらついてるな。回復魔法、効きが悪かったか?」

魔王「そうじゃなくて……力が上手く出ないの……。あと、お腹空いた……」

勇者「わかった。なら帰ろうぜ。それで店にでも入って二人でたらふく食おう」

魔王「うん」

魔王「勇者……」

勇者「何だ?」


魔王「ええと……」

勇者「うん」


魔王「よく来たな、勇者よ」ニコッ

勇者「おう。誉めてくれ、魔王」ニコッ



本当に完


よかった

鬱展開だったら嫌だなと思ったけどハッピーエンドで良かった!

おつ
素晴らしい蛇足。


かなり強引だけどセンス良いな

魔王の居ない時代だから幼なじみを勇者にするために賢者志望が魔王になる話かと思った

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