僕のおそ松兄さん (16)

注意

・チョロ松が病んでる(つまりキャラ崩壊)

それでも許せる方は見てください。

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「ありもしない墓を造って…。」
何言ってるんだ?
もうすでに兄は死んでいる。
僕のおそ松兄さんは、とっくのとうに死んでいる。
―――――なのに。
どうして誰も悲しまない?
どうして誰もが僕を哀れな目で見る?
どうして僕の手をじっと見つめてる?
どうして…。

そうだった。
俺が偽者のおそ松兄さんを殺したんだ。
いくらのんきなふりをしても、俺には騙せるものか。
お前は偽者。
それに代わりは無い。


あれは、昨日のことだ。

「チョロ松、もうやめろよ!」
ダンッ、と大きな音を立てて机を叩き、おそ松兄さんは俺の手を握った。
あれは一体、誰だったんだろうか。
あれは何で、おそ松兄さんのふりをしていたのだろうか。
そこまでして俺の自傷行為を止めたいのなら、もっと早く止めておけばよかったのに。
…誰がやったのか知らないけど、今更何?って感じ。
「お前、なんでこんな…自傷してんだ!?」
なんで?…それはおそ松兄さんのせいだ。
俺からすぐに逃げ出すから。

おそ松兄さんのことがこんなに好きなのに。
俺を言葉で殺して、逃げたから。
「…」
俺は黙っていた。
こんなこと言っても、何も良いことなんて無いし。
馬鹿馬鹿しいと思われておしまいだ。
「確かに、俺には好きな人がいるって言ったよ?」
自覚してるんじゃん。
「けどさ、それを根に持ちすぎなんだよ。そんなにお前って執念深い奴だったっけ?」
六つ子のくせに、何も僕のこと、知らないんだ。
そっか。
そう。
そう、なんだ…。

あの時、僕が偽者のおそ松兄さんを殺したんだ。
偽者なのは、言葉を発してからわかった。

僕にあんな酷いこと言うなんて、おそ松兄さんなわけがない。

邪魔者は、排除しなきゃ。

「チョロ松、何してんだ?」




本物のおそ松兄さんが、帰ってきた。

「おそ松兄さん。」
僕は、墓を造る手を止めた。
おそ松兄さんには、厄介な目に合わせたくないから。
「チョロ松、トド松はどうした?」
…ああ、あのいつもおそ松兄さんにくっつくヤリチンのこと?
あんなの、知ったこっちゃない。

つーか、どうでもいい。

「さぁ?きっと女子とデートでもしてるんでしょ。」

これでいい。
適当に伝えれば伝えるほど。
おそ松兄さんが僕以外の人に興味を示さない。

「ふーん…、兄ちゃん寂しいなぁ。」
おそ松兄さんは、ため息交じりに小声で呟く。
「それ、すっかり口癖になってるよ!?」
そして、いつものように軽くツッコんでいる僕。
最後には、二人で笑いあう。

…ああ、僕にとってはこの時が一番楽しい。

この距離感から、逃れられないなぁ。
僕も、おそ松兄さんも。
昔から。

何も変わってないじゃんか。

この気持ちも。



「…なんだか懐かしいな。」
「そうだな、チョロ松。」

冷たい風の吹く夜、僕らは二人きりでチビ太のおでんを食べていた。

「お前は覚えてないだろうけど、あの時のお前さんは、今でいう悪餓鬼だったんだよな。」
鼻ですすっと笑いながら、おそ松兄さんは言った。
息が白い。

「それぐらいちゃんと覚えてるからね!思い出したくないけど!」
ちょっと怒り気味になって僕は言う。
これは本音だ。
昔の僕は、兄弟や親に鞭を振るったことがあるぐらい、悪餓鬼だった。
おそ松兄さんに憧れて、六つ子の中でリーダーをやろうとした。
けど。

おそ松兄さんじゃないと、ダメだった。



それがわかってから、僕はおそ松兄さんと行動するのがいつもの倍ぐらい嬉しくなって。

心臓が、ドクドクと動いたんだ。

「おい、何やってんだよチョロ松!」
ドジふんだ時には、すぐに助けに来てくれた。
「チョロ松、ごめんよ。」
喧嘩しても、すぐに仲直りした。
「ダメ、これはチョロ松の分だよ!」
僕がよその子になりかけても、僕の分までご飯を用意してくれた。

そんなおそ松兄さんとは、良い相棒みたいなもので。


でも、中学からはそんなことが続かなかった。

「今年はチョロ松と同じクラスになれるといいなぁ。」
「俺もおそ松と一緒のクラスがいいなぁ。」

張り紙が、ピラリと貼られる。

「あ…。」

『二年四組 29番 松野 チョロ松』
『二年一組 28番 松野 おそ松』

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