岡崎泰葉「アイドル最後の日」 (27)

・シンデレラガールズ2次創作
・プロデューサーとアイドルの恋愛
・ゲーム本編の10年後設定
・小説形式

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「アイドルに恋愛は御法度です。」
岡崎泰葉は僕の目の前でそう断言した。
「私はアイドルです。だからこの気持ちはあきらめることにします。」
「確かにアイドルは恋愛してはいけないことになってる。けれども僕は泰葉にはひとりの女の子としても幸せになってほしいと思ってるよ。」
「プロデューサーは優しいですね。」
泰葉は少し嬉しそうに笑った。
「それなら、私のわがまま聞いてくれますか…?」

「あの告白からもう10年か…」
そう独り言を口にすると
「独り言なんて老化のはじまりじゃない?」
そんなちゃかすような声が聞こえた。
「周子か。久しぶりだね。」
「まあお互い忙しかったからね。」

「今日はなにしにきたの?」
「なにしにって失敬だなー。泰葉のラストステージを見に来たにきまってんじゃん。」
「えっ?ああ、そうだね。」
「そうだねって、ほんとに大丈夫?ボケがはじまったの?」
「ちょっと緊張してるからじゃないかな。」
一応まだ40前だ。ボケははじまってないと思いたい。
「それはライブのこと?それともその先のこと?」
「たまに見透かしたこというよね、周子って。なんで分かるのやら。」
「なんでって、そりゃ泰葉本人から聞いたし。」
「本人かよ!?」
意外に口軽いなあ、おい。

「これでもあたし、信頼されてんのよー。それにしても10年も待つなんて…」
「ロマンチックすぎる?」
「いや、どん引き。」
「どん引きかよ…。」
まあそれも分かる。我ながらどうかしてるとも思うし。
「10年も待たせた、いや待った?まあどっちにしても今日はばっちしキメてよね」
「おっ、おう。」
「後で報告もらうから。」
「やだよ!?」

岡崎泰葉がアイドルとしてのラストステージの舞台として選んだのはあるテーマパークであった。
「アイドルとして10年間活動してきました。子役からアイドルに転向して大変なこと、つらいこともたくさんありました。うまくいかずに悔しい想いをするときもありました。」
「それでもアイドルを続けられたのはアイドルの仲間やスタッフ、そしてなによりファンのみなさんの支えのおかげです。ほんとにありがとうございました。」
「ひとりだったら決してここまでたどりつけませんでした。もうアイドル活動は終わりになりますが、今までの全ての日々は私の財産です。」
「それでは最後の曲、聞いてくださいーーー」
泰葉は笑顔でステージをやりきった。

「本当にお疲れさま泰葉。」
「ありがとうございます。ここでのステージだけが心残りでしたから…。」
アイドルになって少ししたころ、泰葉はこのテーマパークでのライブイベントに参加したことがあった。
このころは精神面でアンバランスな状態になっており笑顔でステージをやりきることができなかった。僕はこのある種の失敗は長期的視点でいえば決してマイナスではないと思ってるし、泰葉にもそれは伝えた。
しかし「観客のみなさんにとって一つ一つのステージは唯一無二のものなんです。」と泰葉は言った。だから過去の失敗そのものは取り消せなくとも、せめて…ということでラストステージをここでおこなうことにしたのだ。
「もう思い残すことはありません。」
「そっか、それなら良かった。」
泰葉はアイドルを岡崎泰葉というアイドルを終わらせた。
ならば今度は僕が岡崎泰葉のプロデューサーを終わらせなくてはならない。

「撤収が終わったら迎えに行くから楽屋で待っててくれないかな。」
「分かりました、待ってますから…。」
少し頬を染めてそう言った。この10年で泰葉は背こそあまり伸びなかったが、だいぶ雰囲気は大人っぽくなっていた。髪型の変化が一番大きい。子役時代からあまり変えてなかったという前髪ぱっつんをやめて、肩くらいまで髪を伸ばしていた。
でも目もだいぶ変わったと思う。こう官能を感じる大人っぽい艶やかさをまとっているというか…。
「プロデューサー?」
はっ!いかん、いかん。見とれすぎた。
「それじゃあ行ってきます。」
取り繕うようにいそいそと会場に戻った。

10年前、泰葉と僕は互いの気持ちを確かめ合った。僕は周囲に秘密にしてつき合ってしまえばいいと思った。でも泰葉はそんなことはできないと断言した。ファンに対して嘘はつきたくないと。
それでも僕は諦めきれなかった。彼女と一緒にいたいと思った。それに泰葉だって気持ちは同じなのだ。だったらどうして諦められるだろう。
そうやって粘り続けてやっと引き出したのだ。
「私のアイドル人生が終わるまで待っていてくれるなら…」

「お待たせ、泰葉。」
「お疲れさまです、プロデューサー。」
どことなく堅い口調で言葉をかわす。互いにこれからどうするか考えているからだろうか。
「あのさ、泰葉」
だったら僕の方から行動を起こそう。
「少し散歩しない?」
僕はまだ岡崎泰葉のプロデューサーなのだから。

2人で光の中を歩く。人工の明かり、偽物の星だけれど行く手を照らすには十分だ。
「出会ったときからずっと、凄いなあって思い続けてきたんだ。決して綺麗事だけじゃないこの世界で希望を諦めずに進み続けた泰葉のこと。」
隣で泰葉は前を向いていた。
「その尊敬の気持ちがいつから恋心になったのかは今ではもうよく分からないけれど、この10年色あせることはなかったよ。」
泰葉は静かに耳を傾けている。
「だから、」
僕は歩みを止める。泰葉も歩みを止める。そして向かい合う。
「僕とずっと一緒にいてくだひゃい。」

噛んだ…。噛んでしまった…。この状況で。
ショックと自己嫌悪で膝をついてしまう。
そんな僕を見て泰葉はなんだか懐かしそうな顔をしていた。
「ねえ、プロデューサー?私をアイドルにスカウトしたときのことおぼえてますか?プロデューサーこんなふうに言ったんですよ。『僕にも正直なところアイドルがどんな存在なのか確信を以てもって断言することはできない。でもだからこそその答えを見つけたい。一緒に理想のアイドルをさがしましぇんか?』って。そのときも噛んでたんですよ。」
プロデューサー緊張してたから覚えてないでしょうけどと笑顔で言った。

「そんな不器用でまっすぐなあなたと一緒だったからこそ私はアイドルを続けることができたんです。だから私と…あれっ?」
泰葉の目から涙がこぼれていた。

「だって私嬉しいんですよ。ずっと待っててくれて。10年も待っててくれるなんて思ってなかったんだから。だってどう考えたってあり得ないでしょう?10年も告白を待って、それでも一緒にいてくれるなんて。」
その涙は止まらなかった。
「なんで待ってたの!?こんなわがまま普通真に受けないでしょ!?私が裏切ったらどうするつもりだったの!?」
なんか挙げ句の果てに怒られてしまった。理不尽である。
ちょっとだけ不満が頭をよぎると、今度は抱きつかれた。
「ずっと…一緒にいてくれますか?こんなどうしようもなく不器用であなたを振り回す私でも。」
僕は泰葉の背中に手を回していった。
「ああ。ずっと一緒にいるよ。」

「すいませんでした…。告白をめちゃくちゃにしてしまって…。」
「いやそもそも僕が噛んだのが悪いわけだし…。」
泰葉がひとしきり泣き終わると今度は反省会みたいな雰囲気になってしまった。夜空の下2人でベンチに並んで座っていた。なぜこうもうまく行かないのか。
「あっ。そうだ。」
僕はあることを思いだし、スーツのポケットを探る。そして小さな黒い箱を取り出す。
泰葉の方を向きそれを差し出す。
「もう情緒もヘったくれもなくなっちゃたけどこれを。」
「これって…」
「改めてちゃんと言うよ。泰葉。」

「僕と結婚してください。」

「はい、プロデューサー。いえ、ーーーさん。」
その日僕は『岡崎泰葉のプロデューサー』を終わりにした。

本編は以上です。少し休憩後おまけを投下します。

後日談投下します。

岡崎泰葉ラストステージ&告白&プロポーズから半年の月日が流れていた。
泰葉はアイドルだけでなく芸能活動を引退していた。それなので今は専業主婦となっていた。
泰葉なら女優としてもやっていけるだろうにと思ったが本人いわく「今はこれでいいんです。」とのこと。ちょっと残念な気もするが本人が納得しているならそれでいいだろう。

そんなある日の朝食。食卓の上には白いご飯に味噌汁、焼き魚そして納豆がのっていた。やっぱり日本人ならこれだよなあ~。
ところで泰葉かなり料理が得意だった。なんでも葵に教わったらしい。
そんな彼女は目の前で同じく朝食を食べていた。女性らしく少しづつご飯を口に入れていた。ああ綺麗な唇してるなあ。
「ーーーさん?」
また見とれていた…。
「ーーーさん、そろそろ出かけなくて大丈夫ですか?」
「あっ。確かにそろそろでかけないと。」

玄関で泰葉が声をかけてきた。
「今日は早く帰りますか?」
「うん。最近はそんなに忙しくないから。」
「だったらお願いしてもいいですか?」
「どうしたの?」
「私、欲しいものがあるんです。」
「なにかな?」
「あの、そろそろ子供を…。」
………………っえ?

泰葉は顔を真っ赤にしていた。
きっと僕の顔も同じだったろう。
だから首を縦に振ることしかできなかった。
今でも彼女はまっすぐなのだ…。

以上です。

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