少女「人を、殺すことが出来ます」(88)

初老の男 「今日君達に集まってもらったのは、この少年を守ってもらいたいからだ」
 >ペラッ
sp 「この少年を……? しかし、ここには私と……あの女の子しかいないが……」
少女 「…………」
初老の男 「彼女は能力者だ。未来予知部が、この少年の死亡を感知した」
     「危険度ランクaだ。機動隊を出動させるが、君達には、敵の駆除に当たってもらいたい」
sp 「二人だけで……? そんな無茶な……それに、この少年についての情報は……」
初老の男 「詳しいことは分かっていない」
     「この少年の詳細は、ここに載っている」
 >ペラッ

sp 「……普通の高校生のように見えますが……」
初老の男 「…………」
sp 「……?」
初老の男 「少年の死亡時間は、本日の20:35だ。君達には、それを何としても止めていただきたい」
sp 「分かりました……と素直に言えないのが事実なのですが……」
初老の男 「君に拒否権はない」
     「現在最高の護衛率を誇る君を招集した意味を、理解していただきたい」
sp 「…………」
少女 「…………」
初老の男 「作戦は二時間後に開始される。では」
 >ガチャリ

sp 「ハハ、弱ったな……いきなり呼びつけられてこれか……」
   「君、能力者なのか?」
少女 「…………」
sp 「何の力が使えるんだ? 俺はsp。機動一課に配属されてる」
少女 「……人を……」
sp 「……?」
少女 「人を……殺すことが出来ます」
sp 「え? あ……ああ。うん……で、それはどんな力なんだ?」
少女 「どういう?」
sp 「ああ、これから俺と君はタッグを組むことになる。相方の超能力の、詳しい内容を知っておきたい」

少女 「どういう……と聞かれましても……」
   「殺すことが出来ます」
sp 「…………?」
少女 「………………人を」
sp (また下を向いた……消極的な子なのか……?)
   (人を殺せるって……どういう意味だ?)
   「……ハハ、変なこと聞いちゃったかな。悪かった。気にしないでくれ」
少女 「…………」
sp 「ま、とりあえず予知部が予知した、この男の子の死亡事実を捻じ曲げればいいわけだ」
少女 「…………」
sp 「よろしく頼むよ」

sp (手を握ろうとしない……)
少女 「私に……」
sp 「?」
少女 「私に近づかない方がいいですよ」
sp 「大丈夫だ。超能力を持つ相方との任務には慣れてる」
少女 「そういう意味じゃなくて……」
sp 「大丈夫だって、ほら」
 >ぎゅっ
少女 「!!」
sp 「ほら、握手。一緒に頑張ろう!」
少女 「…………」

sp (…………あれからこの子、一言も喋らないな…………)
   (何か気に障ることしたのか、俺……)
   (超能力を持つ人間の、軍人への雇用か……)
   (テロリストも超能力を持っているとはいえ、こんな小さな女の子まで……)
   (しかし、危険度ランクaと言ってたな)
   (市街地で、大量虐殺でも始まるのか……?)
   (とてもじゃないが、こんな子にそれを止められる力があるとは思えないが……)
 >ガタンッ
運転手 「着いたぞ」
sp 「ありがとう。俺達が降りたら、大至急ここを離れてください」
運転手 「幸運を祈る」

―市街地、夜―

sp (ガチャリ)
少女 「…………」
sp 「あぁ、これ? 超能力者相手じゃ太刀打ちできない時もあるけど、俺はただの人間だからね」
   「市街地で発砲する羽目にならないことを祈るよ」
少女 「ただの……人間……」
sp 「ん? どうかした?」
少女 「…………」
sp (さっきからずっと、俺の服の袖を掴んだまま停止してるな……)
   (参ったな……戦闘になったら、どうすればいいんだ……)
   (それにこの子の超能力とやらも、教えてもらってないし……本人は喋ろうとしないし……)
   (……!)
   「来た……」

少年 「…………」

sp 「機動隊が見えないように配置されてるとはいえ、ターゲットに何も伝えてないのか……!」
   「普通に歩いてるぞ。どういうことだ……」
 >ピッ
sp 「こちらsp。本部、応答を願います」
初老の男 『どうした?』
sp 「ターゲットに接触して保護したい。許可を」
初老の男 『ならん、今回の任務は、あくまで秘密裏にコトを進めたい。ゆえに君達を招集した』
     『犠牲は厭わない。速やかに敵対勢力を排除し、少年を「捕獲」しろ』
sp 「(捕獲……?) し、しかし……現時点ではあまりにも情報が少なすぎて、対処しようがありません」
   「それに、犠牲は厭わないってどういう意味ですか? ここで戦闘が始まるとでも……」
初老の男 『通信を傍受される可能性が高い。切るぞ』
 >ブツッ

sp 「クソッ、何だってんだよ……」

少年 「…………」

sp 「あ……見失っちまう。君、着いてこれる?」
少女 「…………(コクリ)」
sp 「危ないことがあっても、俺が絶対守るから、ピッタリと後ろについてて。分かったね?」
少女 「逆……」
sp 「え……?」
少女 「あなたと私、守られるの、逆です……」
sp 「ごめん、ターゲットを見失っちまう。行くよ(ダッ)」
少女 「……(ダッ)」

sp (さっきこの子、なんて言ったんだ……?)
   (急いでてよく聞こえなかったが……)
少女 「…………」
sp (機動隊も追ってきてる。まわりの人たちも、気付き始めてるぞ……)
   (もうすぐ20:30だ……)
 >キラッ
sp 「狙撃だ!!」
 >ざわっ……!!
sp 「くっ……」
   (向こうのビルの屋上で、何か光った! テロリストは、あの少年を狙撃するつもりだ!!!)
   (ここからじゃ間にあわない……!!)
少女 (ぎゅっ……)
sp 「離してくれ! 撃たれるぞ!!」

少女 「どこ……?」
sp 「どこって……」
少女 「どこですか……? スナイパー」
sp 「あのビルの屋上だ! 君は伏せろ!」
少女 「あそこですね」
 >スッ
sp (何だ……? 指をピストルの形に……)
少女 「バン」
 >パンッ!!
sp 「!!」

 >ヒュゥゥゥゥゥッ!
 >ドザァッ!!!
 >ビシャァァァ!!
悲鳴 「きゃあああああ!!!!!」
   「人が落ちたぞ!!」
   「救急車……警察だ!!」
   「死んだの!? いやあああああ!!!!」
sp 「何だ……? 人が、ビルの上から落ちてきたぞ……」
少女 「第二射が来ます。次はどこですか?」
sp 「まさか……君が……?」
少女 「……手遅れになりますよ。次は、どこですか?」
sp 「第二射……? 別のスナイパーか!!」
 >キラッ
sp 「また光った! 斜め上のビルの屋上だ!!」

少女 「あそこですね」
   「バン」
 >パンッ
sp 「!!」
   (今度ははっきり見えた! 人が、屋上にいた人の頭が……)
   (爆発した……!!!)
少女 「敵の位置を教えてください。私が殺します(タタッ)」
sp 「あ……待って!! 迂闊に出て行ったら……(ダダッ)」
   「それに君が殺すって……君の超能力は一体何なんだ!」
少女 「…………」
   「煩い人……」
sp 「!!」
少女 「来ますよ。今度はもっと直接的な手で来ます」

 >キキィッ!!
 >ブロロロロロロロロ!!!
sp 「ガソリンの給油車……!!?」
少女 「自爆するつもりですね」
sp 「こっちに突っ込んでくる……! 逃げるぞ!!」
少女 「…………(スッ)」
   「バン」
 >パンッ
sp (運転席の男の頭が……破裂した……!!)
   (車の速度が弱まった……少年を保護するには、今しかない……!!)
   「く……(ダッ)」

sp 「静かに! 君の味方だ!!」
少年 「な……何だあんた……うわああ!!!」
 >ブロロロロロロロロ!!!
sp (アクセル踏んだまま死んだのか!? 車が止まらない……!!)
   「逃げるぞ! 俺につかまれ!!」
少年 「何なんだよ! 離せ!!」
sp 「少し静かにしてろ!!(ゴッ)」
少年 「う……!(ガクリ)」
sp 「君も早く! あの給油車、コンビニに突っ込むぞ!!」
少女 「…………」
sp 「早く!(ガシッ)」
少女 「!!」

 >ブロロロロロロ…………
 >グワッシャァァ!!!!
 >チュッドォォォォォォォンッ!!!!
sp 「伏せろ!!!」
少女 「!!!!」
 >ゴウッ!!
悲鳴 「ぎゃあああああ!!!」
   「うわあああああああああ!!!!!」
sp 「くそ……止められなかった!! 一般人をこんなに巻き込んで!!」
少女 「…………」
 >ピッ
sp 「こちらsp!」
初老の男 『少年は確保したようだな。今から機動隊を向かわせる。君達は即刻帰還するように』

sp 「待ってください! 市民に犠牲が出ています! 救助活動を……」
初老の男性 『先ほど予知部から知らせが入った。少年の死亡時刻が、明日の18:45に変更されたそうだ』
sp 「!!」
初老の男性 『少年の命を第一優先せよ。それが君の任務だ。安全な場所に移送するんだ』
sp 「く……(ギリ……) 分かりました……」
少女 「…………」
sp 「沢山の人が……爆発に巻き込まれた……!」
   「助けられたかもしれないのに…………!!!」
少女 「……どの道みんな死にます」
sp 「!!」

少女 「それが遅いか早いかの違いです」
sp 「そういう問題じゃ……」
機動隊 「sp! こっちだ!!」
sp 「機動隊か! 今迄何をしてた!!」
機動隊 「話は後だ! 早くトレーラーに少年を保護しろ!!」
sp 「…………(ギリ……)」
悲鳴 「助けてえええええ!!!!」
   「ママー! ママァァァ!!」
   「ぎぃぃやあああああ!!!!!」
少女 (ぎゅっ)
sp 「……!」
少女 「逃げないと第三波が来ます。行きましょう」

皆様お疲れ様です。

深夜vipでは初スレです。

上記投稿のようなssを、現実逃避のためチマチマと書いていこうと思います。

ご意見ご質問ご感想など、何でもどうぞ。

リアルタイムで反映しますので、こういう超能力者がイイ! とかありましたら、それもどうぞー。

こういう展開にしてよというのもどんどんどうぞ。

スレ主の生活環境が不安定なため、不定期更新ですが、長い目で見ていただければ幸いです。

―警視庁、夜―

少年 「…………」

sp 「これは……どうして檻に閉じ込める必要があるんですか!」

初老の男 「安全確保のためだ。薬で眠らせている」

sp 「何もそれで閉じ込めなくても……」

初老の男 「この子の安全ではない。君達の安全を考慮してのことだ(スタスタ)」

sp 「え……?」

少女 「…………」

sp 「で、俺達はこのマジックミラー室で待機ってわけか」

少女 「…………」

sp 「なぁ、教えてくれ。君は何をしたんだ? どうやって、三人も殺した?」

少女 「…………」

sp 「分かった。質問を変えよう。君の超能力は、もしかして……」

sp 「サイコキネシスでも何でもなく、狙った人間を、『殺す』ことが出来るのか?」

少女 「…………」

少女 「はい。私は、殺したいと思った人を、殺すことが出来ます」

sp 「…………(ゾッ)」

sp (何だ……この悪寒……!)

sp (何でこの子は、そんなことを……こんなに平然と言うことができる!?)

少女 「その目……」

sp 「!」

少女 「いい表情です。私を見る大人は、大概そういう顔をします」

sp 「…………」

sp 「……ハハ、俺としたことが子供に……何てザマだ」

少女 「……?」

sp 「そんな言葉一つで俺はビビったりなんかしないぞ。それとも何だ? 俺を今ここで殺せる?」

少女 「ええ」

sp 「…………」

少女 「命令があれば、殺しますけど」

少女 「……でも、別に命令はないし……勝手に殺すと怒られるので……」

少女 「あまりそうやって、私を煽らない方がいいです」

sp (嘘じゃない……)

sp (仕事柄沢山の人間を見てきたが、この子が言っていることは、嘘ではない……!!)

sp (その気になれば、俺を一捻りって訳か……)

sp (何て仕事だ……!!)

少女 「…………奥さんと子供さんはいますか?」

sp 「え……あ、ああ。八王子に住んでる」

少女 「そうですか……」

sp 「どうして?」

少女 「え……」

sp 「いや……どうして、そんなことを聞くのかって……」

少女 「奥さんと子供さんがいる人を殺すと、大概後味が悪いので……」

少女 「先に確認しておいた方がいいかなって……」

sp 「ストップ。ストップだ」

少女 「……?」

sp 「どうして俺を君が殺すって話になってるんだ。争う理由がないだろ」

少女 「…………」

sp 「一緒に、この男の子を守るパートナーじゃないか。仲良くしよう(スッ)」

少女 「握手……」

sp 「ん?」

少女 「握手するのは、慣れてないので……」

sp 「そうか。まぁ……慣れてないなら、無理しなくてもいいよ」

少女 「…………」

sp 「話を穿り返すようで悪いけど、君の力について、もう少し詳しく知りたい」

少女 「詳しくって……見たままです」

sp 「知覚した対象を、殺せるのかい?」

少女 「はい」

sp 「距離とかは関係なく?」

少女 「そこに人がいれば、私が力を込めれば死にます」

sp 「…………」

sp (そんな超能力があるのか……? でも、俺は実際この子のそういう力を目の当たりにしてる)

sp (嘘ではない……!)

少女 「あなたこそ……」

sp 「?」

少女 「どうして、spなんてしてるんですか?」

sp 「それは……仕事だからさ」

少女 「仕事だと、守らなくても死ぬ人を守らなきゃいけないんですか?」

sp 「え……どういうことだ?」

少女 「今まさにそういう状況じゃないですか」

sp 「た……確かに。でも、君がヒットマンを殺したおかげで、この子の命は明日までのびた」

少女 「おかげ……?」

sp 「…………ああ」

少女 「…………」

sp 「明日何があるのかは分からないが、俺達は更にこの子を守るだけだ」

sp 「俺はそこに、個人的感情は何もない」

少女 「奥さんも、子供さんもいるのに?」

sp 「…………」

sp 「家庭の事情と仕事は関係がない」

少女 「そうですか……」

少女 「悲しい人ですね、あなた……」

sp 「…………」

少女 「家族がいるのに、そういうことが言える人って、私嫌いです」

sp 「……子供にはまだ分からないだろうがな、大人の世界というものがある」

少女 「…………」

sp (何をムキになっているんだ、俺は……!)

sp 「すまない、言い過ぎた」

少女 「いいえ、慣れてますから」

sp 「……君は先に寝るといい。俺が見張りをしてる」

少女 「……分かりました。そうします(ゴロリ)」

 >チックタックチックタック

sp (……………………随分時間が経ったが、寝たかな……)

少女 「すぅ……すぅ…………」

sp (こうして見ると、普通の女の子なんだけどな……)

sp (この子は、大の大人三人を殺して……それで平然と今寝てるのか……)

sp (どういう心理構造なんだ……?)

 >ピッ

sp 「はい、spです」

初老の男 『予知部からの新しい予知が入った。ここを移動する。少年を連れて、23区外に出る』

sp 「今からですか? こんな時間に……」

初老の男 『不服か?』

sp 「……いえ、了解しました」

 >ピッ
 
sp 「檻の中に入れてるのに、わざわざまた出すってのかよ。意味が分からん……」

少女 「…………任務ですか?」

sp 「うわぁ! ……起きてたのか。残念ながら、ここからまた移動するらしい」

sp 「折角寝てたのに悪いね」

少女 「いえ……寝てると、嫌な夢ばっかり見るので……」

sp 「そ、そうなのか……」

sp 「少年を別の署に護送するらしい。行こう」

少女 「はい……」

―高速道路、夜―

sp (護送車に警護の軍用車が二台……どんな機密物資だよ……)

sp (相変わらず少年は眠ってる……この子にどんな秘密があるってんだ……?)

少女 「…………」

sp 「どうした? 気分が悪い?」

少女 「…………来ます」

sp 「え……?」

少女 「敵です。車を止めてください」

sp 「敵って……」

少女 「早く」

sp 「わ、分かった。(ピッ)こちらsp。車を脇に寄せてくれ」

少女 「そんな暇はないです……」

sp 「え? 何だって?」

少女 「敵にも超能力者がいます。捕まってしまいました」

 >グラグラグラ

sp 「何だ……? 護送車が揺れてる……」

 >ブワッ!

sp 「うわあ! な、何だ!?」

sp (車が……浮いた!?)

少女 「サイコキネシスの一種ですね。敵にリーディング能力者がいる可能性もあります」

sp (この状況で冷静に……)

sp 「どうしてそんなことが分かる!?」

少女 「さぁ……」

sp 「さぁって……」

少女 「お仕事です。敵を見つけてください。出来るだけ早く」

sp 「敵を……!?」

少女 「じゃないと、多分私達は死にます」

続きます

sp 「リーディング能力者って……心が読める超能力者のことか!?」

少女 「はい」

sp 「心が読めるなら、俺達の会話も筒抜けだ! 作戦を立てる意味がないぞ!」

少女 「ですから……」

少女 「分からない人ですね」

少女 「あなたが役に立たないのなら、この一帯、全ての人間を皆殺しにするまでです」

少女 「私が私の身を守るためです。きっと怒られません」

sp 「皆殺しって……」

sp 「そんな……そんな単語! 軽々しく口にしていいものじゃない!」

少女 「……何が悪いんですか?」

sp 「君は人間だろう!? 人間の筈だ!」

sp 「同じ人間を殺して、心が痛まないのか!?」

少女 「…………」

sp (何だ……この目……)

sp (憐れみ……? いや、違う)

sp (『悲しい』……?)

少女 「無駄な問答をしてるつもりはありません。敵はどこですか? 殺します」

sp (そうだ、今は言い争っている場合じゃない……!)

sp (車は地面から一メートルくらいを浮いてるのか……!!)

sp (この辺りの車全部が浮いてる……!)

sp (街中と同じ、無差別攻撃か!)

sp 「窓を開ける。いいね?」

少女 「早くしてください」

sp 「分かった(カチッ)」

sp (強力なサイコキネシス……念動力者だ!!)

sp (事故が起きたのか、少し前の地面が燃えてる……)

sp (敵にファイヤースターターもいるのか……?)

少女 「早く」

sp 「待て、もう少し……うわああ!!」

少女 「きゃっ……」

 >グググッ!!

sp (三つある車の中で、ここを特定された!? この車だけが、凄い勢いで浮き上がった……!!!)

sp (少女の言うとおり、敵の中にリーディング能力者がいる!)

sp (単独犯じゃない、複数だ!)

sp (落ち着け。落ち着いて考えろ……俺が敵だったら、どこから狙う……?)

sp (自分の安全が確保できて、なおかつ敵の情報を最も効率よく入手できる場所……)

sp (外じゃない、中だ……!!)

sp (近いところにいる……思わせぶりな動きをしたのは、こっちの動きを撹乱したいからだ!!)

sp 「警護車の二つ後ろの車、一緒に浮いてる、あのバスの中を狙え!!」

少女 「分かりました。まず運転手を殺します」

sp 「待て、運転手は無関係の可能性が……」

少女 「バン」

 >パァンッ!!

sp (バス運転手の頭が弾け飛んだ……!!)

sp (くっ……だが車の上昇が止まらない……!!)

sp (何てサイコキネシスだ……何トンもある警護車両だけじゃなく、周囲の車まで浮いてるぞ!)

少女 「何だ……外れじゃないですか……」

sp 「バスの乗客を装っている可能性が高い! 最後尾の客を狙え!!」

少女 「あそこですね」

少女 「まぁ、二、三人巻き添えにするかもしれませんけど、いいでしょう」

sp 「無駄な犠牲は……」

少女 「バン」

 >パパパパァン!!

少女 「あら、五人くらい死にましたね……」

 >グラッ……

sp 「車が……落ちる! 俺につかまれ!!」

少女 「……!!!(ガシッ)」

 >ズッ……ウゥゥン…………!!!

 >グラグラグラ
 
sp (く……凄い衝撃だ……!!)

少女 「…………(ぎゅっ)」

sp 「…………(ガシッ)」

 >ピッ

sp 「車を発進させてください、早く!」

 >キュル……キュルルルル……
 
 >ブォォォォォンッ!!!!

sp (流石軍用の警護車だ……あの高さから落ちても、ちゃんと走行できる……)

少女 「早く……残りも殺さないと……」

sp 「……もういい!」

少女 「(ビクッ)……!!」

sp 「…………もういい。無駄な犠牲は避けるんだ」

少女 「…………」

sp (炎の壁は、やはりファイヤースターターの超能力だったか……!)

sp (バスが落下した次の瞬間に消えた……)

sp (少女が殺した人間の中には、タイミング的に入っていなかったと考えるのが妥当だな……)

少女 「ケホ……ッ、ケホ…………」

 >コポッ

少女 「…………」

sp (……血!?)

sp 「どうした!? 舌でも噛んだのか!?」

少女 「…………」

少女 「……持病です。気にしないでください……」

sp 「血を吐いた子を放っておけるか!! 今救急セットを……」

少女 「本当に持病なんです……治せません。やめてください……私に触らないで……」

少女 「…………殺しますよ?」

sp (ゾッ……)

sp (何だ……心臓を……何かに鷲づかみにされたように……)

 >ピッ

初老の男 『sp、無事か?』

少女 「……!」

sp 「……ハァ!! ガハァッ! ハァ……ハァ……!!」

初老の男 『…………』

sp 「……………………」

少女 「…………」

sp 「……………………問題……ありません」

sp 「拘束している少年も……まだ眠っています……」

少年 「………………」

sp 「何も、問題は……ありません……!!」

sp (何だ、今の……体中の血液が沸騰しそうな感覚は……!!?)

―神奈川県警―

sp (ふらふら)

少女 「…………」

初老の男性 「良くやった。君達が敵を撃退してくれたおかげで、無事にここまで辿り着けた」

sp 「よくやった……? よくやっただって!?」

sp 「あんた……こんな子供に人殺しさせておいて……沢山の民間人に犠牲も出して……」

sp 「それで『良くやった』って、どの面下げてほざけるんだ!!!」

初老の男性 「手を離せ。sp。職務規定違反だぞ」

少女 「…………」

少女 「私は休みます……今日の18:00頃までは、もう何も起きないと思いますし……」

sp 「………………」

初老の男性 「ふん……(バッ)」

sp 「………………」

初老の男性 「君も休みたまえ。民間人の犠牲については気にすることはない」

sp 「何を……!!」

初老の男性 「それとも、君の『曖昧な』指示で少女が殺した人達へ、今から線香を上げにでも行きたいというのかね」

sp (ギリ……)

初老の男性 「任務はまだ継続中だ。休め(スタスタ)」

sp (で…………また、警視庁と同じ、マジックミラー室って訳か)

少女 「すぅ……すぅ…………」

sp (俺は、あいつの言う通り、少女に曖昧に指示をした……)

sp (俺の言葉を全て真に受けた少女がとった行動は、間違っていない……)

sp (バスの中の民間人を殺したのは……俺だ…………!)

sp (少女じゃない……俺が、殺したようなものだ……)

sp (人を殺すのは、初めてじゃない)

sp (初めてじゃないが……何だ、この感覚…………)

   『それは、あんたの中の僅かに残った良心が消えてなくなっていく感覚だよ』

sp 「!!」

sp (何だ……? 頭の中にいきなり声が……)

sp (ウィスパーがいるのか!?)

   『まぁ、そういうものだと思ってくれればいいよ』

sp (誰だ!? この部屋は外部からの超能力を完全に遮断する筈だ!!)

   『外部から遮断されるなら、内部からのは遮断されないってことだよね』

sp 「!!!」

少年 「…………」

sp (まさか…………君か!?)

続きます

   『存外気付くのが遅いね』

sp 「き……」

   『静かに』

sp 「…………」

sp (俺の頭の中に直接話しかけてるのか)

sp (いつから気がついてた?)

   『車が落ちた時から目が覚めてたよ。あんた達、俺をどうするつもり?』

sp (……分からない。俺達は、君を保護するようにとしか言われていない)

   『…………』
   
   『嘘は言ってないみたいだね』

sp (それより、俺の方こそ聞きたい)

   『?』

sp (君はどうして狙われてる? 超能力者なんだろう? 保護申請は出してるのか?)

   『プライバシーの範囲内だから、答えたくない』

sp (それはないだろう。君を守るために、既に沢山の人が死んでる)

sp (君自身の命も……)

   『俺の命?』

sp (……いや、何でもない。それより答えて欲しい。君は、どんな超能力を持っている?)

   『俺? ……まぁいいや。おじさんには教えてあげるよ』

   『人の心に入ることが出来る。今みたいに』

sp (それだけ……?)

   『それだけ。でも、上手く使えばこんなことも出来る』
   
sp 「ウッ……!!」

sp (何だ……凄まじい不快感が、胸の中に……)

   『へぇ。奥さんとは離婚してて、子供の親権を巡って、泥沼の裁判中か』
   
sp (!?)

   『四歳になる娘がいるの? 去年の誕生日プレゼントにはでかいテディベアをあげた。そうだろ?』

   『奥さんは超能力者?』
   
   『何々? へぇ。こりゃ酷いや』

   『あんたの奥さん、まさかね……』
   
sp (黙れ……!!)

 >パキィッ!!

   『……!!』
   
   『僕のマインドジャックが弾かれた……?』
   
   『あんた、対精神防壁を張ることが出来るのか』
   
sp (クソガキが……! 俺の心を読んだな!!!)

   『ハハ、怒らせちまった? ごめんごめん』
   
   『でも意外だな。俺の精神干渉を防いだのは、あんたが最初だよ。意外とあんたも超能力者だったりして』

sp (…………)

   『完全に俺の干渉を遮断したね。心の中をそこまで無にできるってのも、凄い才能だ』
   
   『ねぇ、取引しない?』

sp (…………)

   『俺のマインドジャックは、「回線」さえ繋がってれば、どこからでも行うことが出来る』
   
   『俺、あんたの奥さんの心を変えることができるよ』
   
   『離婚調停、あんたの都合のいい風に変えてやっていい』

sp (…………)

   『その代わり、俺をここから出してくれないかな』
   
   『もう檻の中はこりごりでさ。窮屈でしょうがないんだ』
   
   『その女の子、厄介なんだろ?』
   
   『何なら、その子の心の中に侵入して、「殺して」あげてもいいよ』
   
   『だから……』

sp (だ ま れ)

   『(ビクッ)……!』

sp (貴様は絶対に出さん。絶対にだ)

   『ちょっと待ってよ。俺は別に、あんたと争うつもりは……』

sp (成る程、特a級の危険物資が何かと思えば、こういう訳か)

sp (確かにこれは危険だ)

sp (テロリストが欲しがる訳だ)

   『テロリスト? 俺を狙ってるのって、テロリストなの?』

sp (答える義務はない)

   『待って! 怒らせたんなら謝る。もう二度とあんたの心に侵入したりはしない』
   
   『だから俺の話を……』
   
 >ピッ

sp 「こちらsp。少年が覚醒しました。薬の投与をお願いします」

   『チィ! あんたもそういう大人かよ!!』
   
sp (何とでも言え。マインドスターターは確保後、慎重に保護するのが規則だ)

   『あんたの「奥さん」と同じようにか!?』
   
sp (…………)

 >ピッ

sp 「早くしてください。薬の投与を」

警察 『了解した。独房に睡眠ガスの注入を始める』

sp 「了解」

 >ボワァッ!

   『クソ……もう嫌だ! あんた達みたいな大人に振り回されるのは、嫌だ!!』
   
   『嫌だァァ!!!』
   
 >グワンッ!!

sp 「! 何だ!?」

sp (今一瞬大気が揺れたような……)

少女 「…………余計なことを考えちゃ駄目です」

sp 「……! 起きたのか!? あの子はマインドスターターだ。心を空っぽにしろ!」

少女 「さっき分かりました。私は、そういう訓練も受けてますので大丈夫です」

少女 「逆にあなたも精神干渉を跳ね返せていることが、驚きです」

少女 「…………でも、他の人たちはそうじゃないみたい」

sp 「え……?」

少女 「強力な精神干渉。こんな物理防壁じゃ防げません」

 >バタバタバタ……
 
 >カチャッ
 
sp 「何だ……警察が、独房に入って少年の拘束を外してるぞ!!」

少女 「マインドジャックされましたね。迂闊でした……」

少女 「あなた、何をしたんですか?」

sp 「俺は……」

 >ダッ

sp 「少年が逃げる……! 後を追わなきゃ……」

 >ザザッ
 
 >ガチャガチャガチャガチャ

sp 「け……警官達が、こっちに銃を向けてる……安全装置も外れてる……!」

少女 「あの子逃げますよ。いいんですか?」

sp 「いいわけないだろう! あんな『危険物資』野放しにしておけるか!!」

少女 「………………」

 >パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!

sp 「くっ……(発砲してきた!)」

sp (ガシッ……ダッ!)

少女 「………………」

sp 「君の力は、相手を昏倒させたりはできないのか!?」

少女 「出来ません……私の力は、問答無用に相手を殺すだけです」

sp 「仕方ない……! 正当防衛だ!!」

 >パンッ! パンッ!!

 >ドサッ! ドサッ!!
 
少女 「どうして殺さないんですか……?」

sp 「操られているだけだ! 殺したくない。君はこの角に隠れているんだ!!」

少女 「その隙にあの子、どんどん外に逃げていってます。殺した方がいいと思います」

sp 「……! いいか!?(ガシッ)」

少女 「!!」

sp 「たとえ殺すことが出来ても、殺すとか、殺されるとか、そういうことを軽々しく口に出すな!!」

sp 「君は化け物じゃない。人間なんだ! 人間なら、もっと悩んでもいい筈だ!!!」

少女 「悩んで……」

少女 「悩むって……何を……?」

sp 「躊躇しろ! 一瞬でいい、殺す相手の人生を思い浮かべろ!」

sp 「そうしないと君は……」

 >ピッ
 
初老の男 『少年が県警の外に出た。何をしている?』

sp 「ここまで強力なマインドスターターだなんて聞いていない! このエリアの警察が操られて、銃を持って俺達を包囲してる!!」

sp 「援護を要請する!!」

初老の男 『少女の力だけで十分突破できる筈だ』

初老の男 『犠牲は厭わん。立ちふさがる者は全て殺して、少年の保護を最優先しろ』

sp 「……何だと……?」

初老の男 『それとも、「あの国」で呼ばれていた二つ名は嘘偽りなのか?』

初老の男 『なぁ、死神さん』

sp 「どうして……そのこと……」

sp 「!!」

 >ゴロゴロゴロ

sp (手榴弾!? 投げ込まれたのか!)

sp (ピンが抜けてる! 爆発まで五秒……? 四秒……)

sp (何をしてる、俺……! やめろ……!!!)

sp (相手は無関係の……)

 >ダッ!!
 
 >ヒュンッ!!

sp 「く……伏せろ!!(ガシッ)」

少女 「きゃあああ!!」

 >チュッドォォォォンッ!!!

sp (投げ返してしまった……無関係の警察に、手榴弾を……!!!)

sp (くそ……耳鳴りが……)

sp 「少女、無事か!!」

少女 「ゲホ……ケホッ…………!!」

少女 「うえぇ……!(コポッ)」

sp 「どこか怪我を……」

少女 「耳元で怒鳴らないでください……持病です……ただの」

少女 「どうせ殺すなら、私がやったのに……」

sp 「え……」

少女 「……行きますよ。追いかけましょう」

sp 「………………」

 >モクモクモク
 
 >シ…………ン………………

sp 「死んだ……? 今の爆発で……警官全員……?」
 
sp 「俺が……殺したのか……?」

 >ジリリリリリリリリリリ

sp (警報機が作動した! 今頃になって……)

少女 「何してるんですか、行きますよ」

少女 「あなた、偉そうなこと言ってるけど……」

少女 「所詮私と同類じゃない」

sp 「くっ……!!」

sp 「追うぞ! (ダッ)」

少女 「(ダッ)……」

sp (くそっ……! くそ!!)

sp (許せん……あのクソガキ……!!)

sp (俺はまた人を……また、沢山の人を…………!!!!)

sp (くそおお!!!)

少女 「…………」

 >ピッ
 
初老の男 『少年の服につけた探知機の反応をキャッチした。市街地に向かっている』

初老の男 『大惨事になる可能性がある。テロリストより早く少年を捕獲しろ』

初老の男 『犠牲は厭わない。軍上層部からの、最高決定が下った。命令だ。こちらは軍の部隊で包囲する』

続きます

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