従妹「兄さんにレモンをかけると初恋の味がするらしいです。」(42)

兄「……何言ってるんだ?」

従妹「兄さんにレモンをかけると初恋の味がするらしいです。友人に聞きました。」

兄「おい、やめろ。レモンをかけようとするな。」

従妹「初恋の味を知りたいです。」

兄「俺にレモンをかけても初恋の味はしない。」

従妹「嘘です。」

兄「嘘じゃない。」

従妹「……」

兄「……それよりもいつ来たんだ? 叔母さんの家からここまで結構遠いだろ。」

従妹「さっきです。兄さんにレモンをかける為に来ました。」

兄「……」

従妹「レモン、かけさせて下さい。」

兄「駄目だ。……歩いて来たのか? 叔母さんに連れて来てもらったのか?」

従妹「いえ、お母さんに内緒で歩いて来ました。」

兄「はぁ……危ないから駄目だろ? 迷子になったり、変な人に遭ったりしたら、どうするつもりだったんだ?」

従妹「兄さんが助けてくれます!」

兄「……俺が昔従妹を助けられたのは、偶然。その時も言ったけど、危ないから遅い時間に出歩いちゃ駄目だ。」

従妹「でも、兄さんにレモン……」

兄「……」

従妹「……」

兄「……取り敢えず叔母さんに、従妹がこっちにいるって連絡するから待ってな。」

従妹「……はい。」

兄「うん。良い子。」

従妹「へへっ。」

兄「……もしもし、兄です。夜遅くにすいません。」

叔母『あら、兄君? 久しぶりぃ~!』

兄「はい、お久しぶりです。」

叔母『今ねぇ~? ロールキャベツ、作ってるのぉ~!』

兄「そうなんですか。あの……」

叔母『あ、あぁ、お鍋がぁ~! 兄君、ちょっと待っててねぇ~!』

兄「……」

祖母『ふぅ、兄君? それで、何の用事ぃ~?』

兄「従妹が家に来てるんですけど、どうしましょう? 送って行きましょうか?」

叔母『あらぁ~? 従妹なら家にいるはずだけどぉ~?』

兄「……いえ、こっちにいますよ。」

叔母『従妹ぃ~? 従妹ぃ~?』

兄「……」

叔母『……』

兄「……送りますね?」

叔母『……お願いねぇ~』

兄「……ふぅ。従妹、家に帰るよ。」

従妹「やだです。」

兄「どうして? 今日はロールキャベツらしいよ?」

従妹「えっ、本当? ……嘘です。騙されません。」

兄「嘘じゃないよ。今日は帰ろう? また今度遊んであげるから。」

従妹「……レモンお兄ちゃん。」

兄「……それは駄目。」

従妹「何でですか!」

兄「レモンはから揚げにかけるの。お兄ちゃんには普通、かけない。」

従妹「普通じゃないからこそ、初恋の味が味わえる。 そう友人が言ってました。」

兄「一体その友人は何を求めているんだ……」

従妹「きんしんそーかんって言ってました。」

兄「えっ、ちょっと。えっ?」

従妹「……良いからかけさせて下さい!」

兄「いやいや、駄目だから。それよりもその友人について。」

従妹「……やだです。……今、ちょっと嫉妬してます。」

兄「えっ、なんで嫉妬?」

従妹「……もう良いです。ふん。」

兄「えっ? えー?」

従妹「もう帰ります。」

兄「あ、あぁ、うん。送って行くよ。」

従妹「……お願いします。」

兄「……うん。」

従妹「……」

兄「それで、その友人の事なんだけど……」

従妹「っ! 兄さん嫌い!!」

兄「あっ、従妹! 一人で行くなって!!」

兄「……いきなりどうしたんだ?」

兄「ん? あぁ、まさか。その友人に言うなって言われてたのかな?」

兄「……近親相姦だしな。」

兄「あれ? 別に近親相姦って犯罪じゃないし、放っておくべきなのかな……?」

兄「それよりも。まだその友人が近親相姦してるって決まってないし。」

兄「うーん……」

兄「あっ、従妹。走るの疲れたか?」

従妹「……はぁ。……はぁ。別に疲れてないです。」

兄「ほら、おんぶしてあげるからおいで。」

従妹「!」

兄「……よし。良い子。」

従妹「♪」

兄「さっきはごめん。気が付かなくてさ。」

従妹「全然良いですよっ! えへへっ!」

兄「もう怒ってないのか。」

従妹「分かれば良いんです。分かれば。」

兄「そっか。良かった良かった。」

従妹「……へへっ、兄さんの背中暖かいです。」

兄「もう春だけど、まだちょっと肌寒いからな。風邪に気をつけろよ?」

従妹「はい。……兄さん兄さん。」

兄「ん? どうした?」

従妹「呼んでみただけですっ。えへへっ、兄さん兄さんっ♪」

兄「そんなにはしゃぐと危ないぞ。」

従妹「兄さん号! 全速力です!」

兄「全速力? しっかり掴まれよ?」

従妹「……わっ、怖い! 怖い! 兄さん速過ぎですっ! 怖いですっ! すとっぷっ!!」

兄「意地悪してみた。」

従妹「むー! もう! やだですよ!」

兄「ははっ、ごめんごめん。」

今日はここまで。閲覧超感謝。

あっ、トリップ。

従妹「……あっ。」

兄「どうした? って、冷たっ!?」

従妹「ふふっ、はむ。」

兄「えっ、ちょっ。何で首食べてるの?」

従妹「はむはむ。」

兄「あばばばばばば。」

従妹「……酸っぱいです。これが初恋の味。」

兄「レモンかけたのか……」

従妹「レモンお兄ちゃん美味しかったです。」

兄「駄目だって言っただろ? 首がむずむずする……」

従妹「えへへっ。」

兄「まったく……」

従妹「……」

兄「うぅ、むずむずする。」

従妹「……お兄ちゃん。」

兄「ん?」

従妹「……私の事好きですか?」

兄「勿論。」

従妹「……」

兄「いきなりどうした?」

従妹「……可愛い妹、ですか?」

兄「あぁ、勿論。」

従妹「……」

兄「どうしたんだ? 元気ないぞ?」

従妹「いえ、何でもないです。」

兄「そっか。それなら良いけど。あっ、家、見えてきたぞ。」

従妹「えぇ、やだです。もっと兄さんと一緒にいたいです。」

兄「そう言われても……」

従妹「兄さんも家でご飯食べれば良いです。そして遊んでくれれば良いです。」

兄「……いや、今日はごめんな。また遊んでやるから。」

従妹「……」

兄「ほら、良い子だから。拗ねないで。」

従妹「ただいま。」

叔母「お帰りぃ~!」

従妹「今日、ロールキャベツなの?」

叔母「そうよぉ~! お母さん頑張って作ってるのぉ~!」

従妹「やった! 私、部屋にいるね、お母さん。」

叔母「できたら呼ぶわねぇ~」

従妹「うん。」

従妹「……」

従妹「お兄ちゃん……」

従妹「……」

従妹「あっ、宿題やらないと……」

従妹「……」

従妹「妹……」

従妹「妹、なんだよね……」

従妹「……」

従妹「ただの妹……」

兄「ただいま。」

兄「誰も帰ってきてないのか。」

兄「まっ、テレビでも見るか。」

『――地方、明日のお天気は曇りのち、雨。夕方頃から冷え込む為、寒さには十分気を付けて下さい。』

『次のニュースは、明日公開予定の映画。七面賽子の特集です。』

兄「あっ、これ原作の小説が面白いんだよな。」

兄「……」

兄「……何か、寂しいな。」

兄「……」

兄「っ!」

兄「で、電話か……びっくりした……」

兄「こんな時間に……誰……」

兄「……叔母さん?」

兄「はい、もしもし。兄です。」

叔母『あ、兄君~!? 従妹が家にいないのぉ~!』

兄「!」

叔母『ご飯ができたから呼びに行ったらぁ~!』

叔母『部屋にも居なくてぇ~!』

叔母『家中探したんだけど、いなくてぇ~!』

叔母『靴もなくなってるのぉ~!』

叔母『兄君~?』

叔母『兄く~ん?』

叔母『あらぁ~? お手洗いかしらぁ~?』

叔母『それよりも、従妹ちゃん~!』

兄「はぁ……はぁ……!」

兄「……どこだ、従妹!?」

兄「畜生……!」

兄「また昔みたいに公園にいるのか? はぁ……はぁ……」

兄「昔……」

兄「また昔みたいに殺されかけたらどうするつもりなんだ!」

『兄さんが助けてくれます!』

兄「……馬鹿。」

従妹「ここの公園は落ち着きます。」

従妹「特に、このブランコが。ゆらゆら。」

従妹「でも、兄さんが押してくれないと楽しくないです。」

従妹「兄さん……」

従妹「……」

従妹「お兄ちゃん……」

従妹「……?」

従妹「え、ぁ、っ!?」

兄「心配かけさせないでくれ……」

従妹「お、お兄ちゃん? なんでここがわかったんですか?」

兄「昔もお前、ここで泣いてたじゃないか……」

従妹「……お兄ちゃん、そんなに強く抱きしめられると苦しいですよ。」

兄「死亡フラグとか、昔の事だけで十分なんだよ……誰得だよ……」

従妹「意味がわからないですよ……」

兄「従妹は俺の大切な妹なんだ……心配かけさせないでくれ……」

従妹「……お兄ちゃん。」

友人「それでそれで!?」

従妹「その後兄さんに怒られて家に帰りましたよ。」

友人「それだけ……? なんだ、つまんね。」

従妹「つまんねって何ですか……」

友人「漫画みたいには行かないんだなぁ。でも、良いなぁ。私もお兄ちゃん欲しいなぁ。」

従妹「……あげませんよ?」

友人「……なんかむかつく。うりうり。」

従妹「うひゃぁっ! や、やめてくださいです!」

友人「……で? 初恋の味は分かったの?」

従妹「分かりましたよ。酸っぱかったです。」

友人「まぁ、レモンだもんね。」

従妹「でも、友ちゃんちょっと間違ってますしたよ。」

友人「えっ、何が?」

従妹「お兄ちゃんにレモンをかけると初恋の味がする、って言いましたよね?」

友人「う、うん。」

従妹「でも。」


従妹「レモン、……かけなくても。初恋の味、しましたよ?」

end

閲覧支援超感謝。最近は時間も取れず、短めに終わらせています。
そして雑になる内容と終了はごめんなさい。

それでは次回作にご期待ください。

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