【ミリマス】765学園物語 (675)

…朝が来た

…そろそろ目を覚まさないといけない時間だ

…だが俺は

…布団から出たくない

P「…おやすみ」

そう呟くと俺は再び微睡んでいった

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…ちゃん

…声が聞こえる

…お…ちゃん

…おっちゃん?

…お兄ちゃん

…誰かが俺を呼んでいる

…遅刻しちゃうよ

…遅刻なんてどうでもいい、俺はこのまま布団という生涯の知と人生を共にするのだ

…ほんと、朝弱いんだから

…声の主が去って行った、再び快適な睡眠をとるために俺は意識を沈めていった…

…えい!

ゴス

P「いっでぇ!?」

なにか固い物で頭を殴られた、あまりの痛みに強制的に意識が覚醒した

P「な、なんなんだ一体!」

「やっと起きた」

部屋を見渡すと広辞苑を片手に呆れた顔でこちらを見ている女の子が目に入った

「おはようお兄ちゃん、ちゃんと起きれたね」

P「起きれたけどさ…広辞苑の角で起こすのはやめようぜ桃子」

桃子「知らない、お兄ちゃんが起きないのが悪いんでしょ」

この子は桃子、我が家の三人兄弟の末っ子だ

P「まったく…それにしたってもう少し優しく起こしてくれてもいいだろうに」

桃子「それでお兄ちゃんが起きるならね。でもお兄ちゃん絶対起きないし」

P「…そんなことないぞ?」

桃子「はい嘘」

P「ぐぬぬ…でもな桃子、あんまり頭を叩くと脳細胞が死んで頭が悪くなるんだ、だから控えてくれると助かる」

桃子「ふーん…そうだね、これ以上お兄ちゃんの頭が悪くなったら困るし、別の方法考えるよ」

P「そうしてくれ」

桃子「そんなことより早く着替えて降りてきてよ、お姉ちゃんが怒ってるよ」

P「それはまずいな 」

「やっと起きてきた!はやくお皿並べてくれないと冷めちゃうわよ」

P「ごめんごめんすぐ用意するよこのみ姉さん」

この小っさい人はこのみ姉さん。こんななりだが学園では最上級生で俺の姉だ、こんななりだが

このみ「ちょっと、今凄く失礼なこと考えたでしょ」

P「まさかぁ」

このみ「ぐぬぬ…」

P「とりあえず皿だすけどさ…そろそろ収納場所変えたら?届かないんだし」

このみ「前に私が提案したらあんたが面倒臭がってお流れになったんだけど?」

P「…ソウダッタカナー」

このみ「とりあえずさっさと食べましょ、新学期早々遅刻したくないでしょ」

P「それもそっか」

桃子「桃子も新学期早々遅刻なんてやだし」

このみ「はい、それじゃあ」

「いただきます」

三人で朝食を摂る、両親は出張でいないので我が家には現在この3人しかいないのだ





P「っしご馳走様!」

このみ「食器は流しに置いておいてちょうだい、帰ったら洗うから」

P「了解、それじゃあお先!」

このみ「待ちなさい、せっかく初日なんだから三人で行きましょ」

桃子「そうだね、お兄ちゃんが途中で迷子にならないように見張ってないと」

P「迷子って…俺は桃子より長く学校に通ってるんだが」

このみ「まあ良いじゃない、それじゃあ行くわよ」




P「鍵は?」

このみ「どうせPが一番早く帰ってくるでしょ?だから渡しとくわ」

P「失礼な、俺だって友達と遊んで帰ることだって」

このみ「あんたの友達なんて冬馬くんと翔太くんしかいないじゃない」

P「ほ、他にもいるし!」

このみ「誰よ」

P「め、恵美とか」

このみ「あの子は誰とでも仲良いでしょ」

P「ぐぬぬ…」

桃子「ねえ、まだ?お兄ちゃんの人間関係より遅刻のほうが大事だと思うけど?」

このみ「それもそうね、とりあえず鍵は渡しとくから」

P「わかった」




三人で並んで通学路を歩く

何気ない日常だがゆったりとした時間が好きな俺にとってこの瞬間は好きだった

…あいつが来るまでは

「あ!見つけた!」

P「」ビクッ

あいつの声が聞こえた

P「…」

恐る恐る振り返ると…

「P~~~~!」ダダダダダ

ガバッ

P「ごふっ」

どんがらがっしゃーん

「おっはよう!今日も良い天気だね!」

P「」

このみ「極まってる、極まってるわよ海美ちゃん」

海美「あ!おはようこのみさん!桃子ちゃん!」

桃子「おはよう海美さん。そんなことよりお兄ちゃん死にかけてるよ」

海美「おっとっとそうだった」

P「も、桃子、助かった」

桃子「別に」

今突撃して一撃で俺を刈り取ったこいつは高坂海美

赤ん坊の頃からお互いを知っている謂わば幼馴染みというやつだ

性格は猪突猛進で体を動かしていないと気が済まない脳筋で、騒がしい奴だ

P「ったく、海美、飛びつくのは危ないっていつも言ってるだろ?怪我でもしたらどうするんだ」

海美「えへへ、ごめんごめん」

P「まったく…」

海美「でもPって私が怪我しないようにちゃんと庇ってくれてるよね!絶対に私が下にならないように!」

P「ま、まあ怪我したら大変だし」

海美「えへへ…やっぱりP大好き!」

P「…お、おう」

桃子「…」ギュッ

P「いてっ!な、何するんだ桃子!」

桃子「別に、お兄ちゃんが道端で顔を紅くしてたから」

P「べ、別に紅くなってない!」

桃子「ふんだ」

桃子「こんなとこで時間かけてちゃ遅刻しちゃうから桃子先行くね」

P「あ、桃子!」


「おはよう桃子ちゃん!」

「おはよう!」

桃子「おはよう、育、環」

このみ「私達も行きましょ」

海美「そうだね」

P「なんなんだ一体」


しばらく進むと校舎が見えてきた

俺達の通う765学園が…





このみ「それじゃあ二人とも、また後でね」

海美「このみさん!またね!」

P「はいはい」


「このみ姉さんこのみ姉さん」

このみ「あらおはよう莉緒ちゃん」

海美「じゃあ私達もいこ!」

P「先にクラスを見てからだろ?あと腕を組むのはやめなさい」

海美「…そうだった」

海美「同じクラスだったね!」

P「そうだな」

クラス表を確認し俺達が向かったのは765学園高等部2-Aクラスだった

P「席は好きに座って良いみたいだ」

海美「じゃあ私はPの隣!」

P「…騒がしくしないならな」

海美「うん!」

「…なんだ、またお前らと同じクラスか、これで何年連続だ?やれやれ、たまには離れたいぜ」

「とか言ってるけど~、さっき冬馬くんPくんと同じクラスじゃなかったらどうしようとか言ってなかったっけ-?」

「い、言ってねえよ!捏造するんじゃねえ!」

P「何年連続…か、初等部からずっと一緒だったから10年くらいか?冬馬、翔太」

翔太「そのくらいだね~。あ、僕はPくん達と同じクラスで嬉しいよ!」

P「翔太は素直だな~、それに比べてこっちは…」

冬馬「な、なんだよ」

翔太「ほんと、冬馬くんって友達がいないよねー」

冬馬「うるせえ!俺にだって友達くらい!」

翔太「あれ?僕は友達甲斐、ないよねーって言ったんだけど?どう捉えちゃったの?」

冬馬「ぐぬぬ…」

P「ま、冬馬を弄るのはこのくらいにして」

Pの友人ポジに都合の良いキャラとして冬馬と翔太だけミリマス外から持ってきてるけどごめんね

P「ま、改めて今年もよろしくな、冬馬、翔太」

冬馬「お、おう、よろしく」

翔太「よろしく~」



P「他に知ってるのは…」

「だ~れだ!」

P「うわっ!」

「にゃはは」

P「この声は…恵美か!」

恵美「せいか~い」

こいつは所恵美、陽気な性格で誰とでも友達になれると本人は言っている

嘘か本当かは知らないが堅物委員長として有名な田中琴葉の親友らしい

恵美「やー、また同じクラスだね~あたしゃ嬉しいよ」

P「嬉しいのはわかったから体重をかけるな、重い」

恵美「P~、女の子に重いなんて言うもんじゃないよ~?」

P「あだだだだ!ギブギブ!」

恵美「ほれほれ~」

恵美がヘッドロックをかけてきた

拘束されて苦しいのもあるが恵美の胸の柔らかさや良いにおいのせいで顔が紅くなる

P「め、めぐみ」

海美「むー!めぐみー引っ付きすぎ!」

恵美「にゃははごめんごめん」

P「た、助かった」

ようやく解放されたが顔は熱を持ったままだった

海美「Pもデレデレしすぎ!」

P「お、おう、なんか悪いな」


冬馬「…なあ翔太、高坂ってもしかして…」

翔太「え?冬馬くんもしかして気付いてなかったの?」

冬馬「お前気付いてたのか?」

翔太「誰でも気付くって」

冬馬「マジかよ…」

琴葉「恵美、そろそろ先生が来る頃だから席に着きなさい」

騒いでいると田中さんがやってきた

恵美「あ、もうそんな時間?」

琴葉「そうよ、だから早く戻りなさい」

恵美「はーい。…あれ、エレナは?」

琴葉「まだ来てないみたい、さっき電話したけど繋がらなかったわ」

恵美「寝坊かな」

琴葉「さあ…」

ガラッ!

その時、教室のドアが勢いよく開いた

「セ、セーフだヨー!」

緑の髪の女の子が息を切らして入ってきた

琴葉「エレナ、そんなに強く扉を開けると壊れるでしょ、ゆっくり開けなさい」

エレナ「ゴメンネコトハ!あとおはよう!」

琴葉「おはようエレナ」

恵美「おはよー!」

エレナ「メグミ!おはよ!」

琴葉「先生来るから、席に着きなさい」

エレナ「自由に座って良いんだよネ?じゃあコトハの隣!」

琴葉「もう、エレナったら…ふふ」

P「見ろよ冬馬、あの田中さんが笑ってるぞ」

冬馬「島原すげえな…」

海美「琴葉だって女の子なんだから笑うよ」

翔太「二人ともデリカシーないね~、これだから童貞は…」

P・冬馬「どどど童貞ちゃうわ!」

海美「どーてーってなに?」

P「気にするな」

P「そろそろ先生来るな」

冬馬「誰が担任なんだろうな」

P「うちの学校は千鶴先生といい風花先生といい美人揃いだからな、楽しみだ」

冬馬「全くだぜ」

翔太「えっ、冬馬くん女の人に興味あったんだ…!」

冬馬「どういう意味だ!」

P「ははは」

海美「むー…」

ガラッ

扉が開き先生が入ってきた

P「お」

「…」

冬馬「男か…」

「…」

先生は教壇に立ったまま俺達を見回した、そして…

「ふぅん、見事にへっぽこ揃いではないか!」

そんなことを口にした

P「へ、へっぽこ?」

その発言で教室がにわかに騒がしくなる

「この程度で騒ぐな」

琴葉「あの、黒井先生」

黒井「ん?誰かと思えば琴葉ちゃんではないか、どうした?」

琴葉「去年と同じ事態になる前に自己紹介をお願いします」

黒井「いいだろう」

あの人黒井って言うのか、言われてみれば顔に陰がかかっててよく見えないな

黒井「このへっぽこ2-Aを担当することになった黒井崇男だ」

黒井「貴様らは幸せだ、何故なら、この765学園の貴公子たる私に担任をしてもらえるのだからな!」

黒井「私がこのクラスを担当する以上Bクラスの高木やCクラスの美城に負けるなど許さんぞ!」

負けるって一体何にだ…

黒井「だが安心するがいい、貴様らがいかにへっぽこ生徒だろうと私が最高の生徒にしてやる!」

黒井「さあ、私についてくるがいい!」

………

なんなのなのこの人…

黒井「ふん、とりあえず出席をとる、呼ばれたら返事をしろ」

黒井「尼崎龍馬」

冬馬「誰が尼崎龍馬だおっさん!俺は天ヶ瀬冬馬だ!」

黒井「私に名前を覚えて欲しかったら私が納得するような成績をとるんだな」

出席を取り終えた黒井先生はため息を漏らした

黒井「次は転入生を紹介する」

転入生?珍しい

この765学園は初等部から大学までの一貫校だ

転入生はいないわけではないが大抵学級が変わる頃に受験して入ってくることがほとんどなのであまり見かけることはない

一体どんな子が…

黒井「入りたまえ」

「はい」

転入生が扉を開けて入ってきた

息を飲むほど美しい銀の髪、芯の通った佇まい、そして…

黒井「自己紹介を」

「はい」

「本日よりこの学園へ転入して参りました」










貴音「四条貴音と申します、何卒、よろしくお願いいたします」












一旦ここまで
とりあえず使い古されたギャルゲーのテンプレみたいにしてみた

攻略キャラは全員!と言いたいけれど流石に無理だから6人くらいかなぁ

四条貴音

そう名乗った彼女は優雅な動作で礼をした

黒井「貴音ちゃんの席だが…一番後ろの、あのへっぽこの後ろが空いているから一旦あそこに行きたまえ」

貴音「はい」

皆が四条さんを見ていた

貴音「よろしくお願いいたします」

P「あ、ああ…よろしく…」

透き通るような声で挨拶され、思わず緊張してしまう

海美「…」

横から視線が突き刺さっているが気にしないでおこう

黒井「この後は体育館で全校集会がある。その後は解散だ、部活に行くなり自習するなり好きにするがいい」

黒井「移動しろ」

俺達は体育館に移動した

順一朗「諸君、私は君達の元気で成長した姿を見られて嬉しいよ」

教壇で校長の高木順一朗先生が挨拶をしている

P「そういえば俺、高木先生の顔って見たことないな…」

P「なあ、冬馬は見たこと」ガシッ

冬馬「やめろ、消されるぞ」

P「お、おう」

いつも以上に真剣な冬馬に気圧されこの疑問を口にするのをやめた

その後ガミ先生、石原先生からの新年度の注意事項があり、退屈な全校集会は終わった

冬馬「今日はこれで終わりか」

P「だな」

全校集会の後はSHRがありそこで黒井先生からの注意事項と嫌味を受け、ようやく放課後になった

冬馬「どっか遊びに行くか?」

P「俺は構わないぞ?」

この後特に予定もないしな

P「海美と翔太はどうする?」

翔太「あ、ごめん僕ダンス部の練習があるからさ」

冬馬「そういやそうだったな」

P「てことは海美も陸上部か」

海美「うん、ひびきんも行くって」

P「そうか、残念だな」

翔太「また誘ってよ」

P「ああ」

冬馬「二人だけか…所もいないしどうしたもんかな」

P「男二人で遊ぶのもなぁ」

冬馬「だな…」

P「あ、そうだ、せっかくだし四条さんでも誘ってみるか?」

冬馬「四条ならとっとと帰っていないぞ」

P「早いな…」

冬馬「家の手伝いでもあるんじゃねーの?」

P「かもしれないな」

冬馬「まあ集まるのは次の休みで良いか」

P「そうだな」

冬馬「じゃあ俺も帰るわ」

P「おう、お疲れ、帰りに綺麗なお姉さんみつけてもストーキングするなよー」

冬馬「誰がやるかそんなこと!…ったく」

P「さて…どうしようかな」

P「…せっかくだし陸上部の練習でも見に行くか」







グラウンドでは陸上部の面々が練習をしていた

少し見渡すと海美が響と一緒に走っているのを見つけた

とても楽しそうだ

P「海美は昔から本当に楽しそうに走るよなぁ」

幼いころから楽しそうに走る幼馴染みを思い出し自然と笑顔になった

視線に気付いたのか海美がこっちを見た

遠目でもわかるくらいに笑顔が弾け、こっちに走ってきた

海美「どうさしたのP?陸上部見に来るなんて珍しいよね」

P「ちょっと予定が空いたからな、せっかくだし観に来たんだよ」

海美「そうなんだ」

響「海美~急に走りだしたからびっくりしたぞ~」

少し遅れて響もやってきた

P「よう響」

響「あれ、Pじゃないか、久しぶりだな!」

P「ああ」

響「Pが陸上部見に来るなんて珍しいぞ」

P「それ、海美にも言われたよ」

響「そっか」

P「ま、ちょっと暇になったから立ち寄っただけだよ。ついでに、差し入れだ」

俺はついさっき自販機で買ったジュースを二人に渡した

響「わ、これ自分の好きなシークヮーサー!」

P「響が好きだったのを覚えてたからな」

響「ありがと!」

P「海美はポカリだったよな」

海美「うん!ありがと、大好き!」

P「おう」

P「じゃあ俺は帰るよ」

海美「え~、もうちょっとゆっくりしていけば良いのに」

P「あんまり居ても邪魔になるしな」

海美「私は気にしないのに」

P「海美が良くても周りがそう思うとは限らないだろ?だから余計な波風立てないようにした方が良いんだよ」

海美「ちぇ~」

響「海美は本当にPのこと好きなんだね」

海美「うん!」

P「まあそういうことだから俺は帰るよ」

海美「うん…」

響「ばいば~い!」

P「響、また明日な」

その後特に問題もなく帰路を進み、自宅へと辿り着いた

P「…このみ姉さんの言ったとおり本当に一番最初に帰ってきたな…」

P「…まあいいか」

鍵開けて家に入る

P「ただいまー」

当然返事はない、むしろあったら異常だ

P「さてと…」

服を着替えてパソコンの電源を入れる

P「さっさとレベルを上げてしまわないとな」

冬馬に勧められたオンラインゲームを起動する

一般的なMMORPGなのだが、オンラインゲームをあまりやったことのない俺にとってはネット上で色んな人と一緒に遊べるゲームは新鮮だった

P「お、今日はvivid_rabbitさんとlily_knightさんもいるな」

vivid_rabbitさんとlily_knightさんは以前冬馬と二人で狩りをしていたとき、レベル上げを手伝ってくれた親切な人達だ

その後ギルドに誘われてお世話になっている

P「こんにちは…っと」

vivid_rabbit『こんにちは!』

lily_knight『こんにちは!』

P「相変わらずタイピングが早いな」

burizardo_pegasasu『こんにちは!』

P「なんだ、冬馬帰ってるじゃんか」

P「今日はどうしますか…っと」

vivid_rabbit『今日から始まるイベントダンジョンに行こうと思います』

P「イベントダンジョンか…俺も行きたいけどレベルがなあ」

lily_knight『あ、でもpegasasuさんとPさんのレベルが…』

burizardo_pegasasu『俺達はレベル上げしてますから。期間中に一度でも行けたら良いわけですし』

lily_knight『ごめんなさい』

P「気にしないでください、むしろいつも手伝ってもらってこっちが申し訳ないくらいです」

vivid_rabbit『じゃあ、行ってきます』

P「いってらっしゃい」

その後冬馬とダンジョンに潜ったり狩りをしてレベルが2くらい上がった頃、冬馬が父親が帰ってきたからとログアウトした

P「こんなもんかなー」

コンコン

部屋のドアがノックされる

桃子「お兄ちゃん、ご飯出来たって」

もうそんな時間か、ゲームしてるとあっという間だな

P「わかった、すぐいく」

俺はvivid_rabbitさんとlily_knightさんに別れの挨拶をしてパソコンの電源を落とし、リビングに降りていった

P「良い湯だった」

夕飯を済ませ風呂にも入り後は寝るだけだが…まだ寝るには少し早い

P「漫画も全部読んじまったからな…」

どう退屈を紛らわすか考えていると

コンコン

部屋の窓がノックされた

P「…」

カーテンを開けると

海美「こんばんは」

隣の家の窓から、海美が手を振っていた

次回16時頃再開

海美「とりあえず開けてよ」

P「しょうがないな」

俺は窓を開けてからそこを離れた

海美「ありがと。…ほっ!」

海美は窓の桟に足をかけ、俺の部屋に飛び込んできた

海美「うーん、なんかPの部屋久しぶり」

P「一昨日来たばかりだろ?」

海美「そうだけど私にとっては久しぶりなのー」

P「そうかい」

海美「んー、Pのベッド好きー」

P「そんな変わらんだろ」

海美「そんなことないよー、Pに抱っこされてるみたいで暖かいー」

P「そ、そうか…」

海美「はー…」

P「…」

海美「…クー」

P「こら起きろ、寝るなら自分の部屋で寝ろ」

海美「けちー。小さい頃は一緒の布団で寝たりしてたのに」

P「幼稚園くらいの話を持ち出してどうする。ほら帰った帰った」

海美「ちぇー」

渋る海美の背中を押して帰れという意思を伝える

そして海美が自分の部屋に戻ったのを確認し窓を閉めようとした時、海美が声をかけてきた

海美「ねえP」

P「ん?」

海美「おやすみ、また明日」

P「ああ、おやすみ、また明日」



結局ベッドに海美の匂いが残っている気がして柄にもなくドキドキしてしまった

…朝が来た

…そろそろ目を覚まさないといけない時間だ

…だが俺は

…布団から出たくない

P「…おやすみ」

そう呟くと俺は再び微睡んでいった

桃子「いや、そういうのいいから」

P「嫌だーまだ眠いんだよー」

桃子「いいから起きてよ」

P「お前はーお兄ちゃんのかけがえのない友との仲を引き裂こうというのかー」

桃子「うるさいよ、あんまり愚図るなら広辞苑持ってくるよ?」

P「ちくしょー…」

無慈悲にも脅迫してきた桃子に屈し、渋々布団から出て準備を始めた

P「ふわぁ…あふぅ」

このみ「P、通学路で大口開けて欠伸なんてだらしないわよ」

桃子「一緒に歩いてる桃子たちが恥ずかしいんだからしっかりしてよね」

P「あー、うん、善処する…ふわぁ…」

桃子「行ったそばから…」

P「朝は海美がいないからな、のんびり出来るんだ」

このみ「じゃあ毎朝海美ちゃんに起こしに来てもらう?」

P「海美は朝走りに行くから五時起きだろ…そんなの耐えられる気がしないよ」

「…あふぅ…」スタスタ

P「…」

このみ「…」

桃子「…」

P「いつ見ても思うけど、あれどうやって歩いてるんだろうな」

P「眠い」

冬馬「なんだ、夜更かしでもしたのか?」

P「そういう訳じゃないんだが」

翔太「あるよねー、ちゃんと寝たのに眠い時って」

P「不思議だよなー」

冬馬「規則正しい生活してればそんなことにはなんねーだろ」

P「正論なんだけど冬馬に言われると腹立つ」

翔太「だよねー」

冬馬「何でだよ!?」

貴音「みなさま、おはようございます」

P「お、おはよう、四条さん」

冬馬「おう」

翔太「おはよー」

貴音「…?少しお屈みを」

P「俺?」

貴音「はい」

P「はい」

突然四条さんが頭を触ってきた、少しくすぐったい

貴音「取れました」

P「あ、頭に葉っぱがついてたのか。ありがとう四条さん」

貴音「いえ…」

ドサッ

奇妙な音が聞こえたので音がしたほうを見ると

海美「」

海美が呆然とした表情で立ち竦んでいた

P「おー、海美おはよ」

しかし返事がない

冬馬「翔太」

翔太「これは仕方なくない?多分Pくんが言っても聴かないだろうし後でなんとかしとくよ」

冬馬「助かる」

P「何の話しだ?」

冬馬「大馬鹿鈍感野郎の尻拭いの話しだ」

P「?」

その後昼休みまで海美の機嫌が悪かったが…一体何だったんだろうか

退屈な授業を終えた昼休み、楽しい昼食の時間だ

P「さーて、昼にするかー」

冬馬「今日はどうすんだ?購買か、学食か」

翔太「僕は学食いくよ、今日は新しいラーメン出るらしいし」

貴音「…らあめん」

冬馬「じゃあ学食で良いんじゃねーか?」

P「そうだな」

海美「異議なし!」

どうやら学食で決まりのようだ。俺はあることを思いついたので提案してみた

P「四条さん、良かったら一緒に学食行かない?」

貴音「わたくし、ですか?」

P「うん、せっかくだし」

四条さんは少し考える素振りをすると

貴音「わかりました、ご一緒させていただきます」

承諾してくれた

765学園は学食に力を入れており、レストラン顔負けの豊富なメニューが特徴だ

中でも中華料理は特別力が入っていてメニューには何故か満漢全席も存在している

P「翔太は新作ラーメンだったな」

翔太「うん。僕は席取ってくるから」

冬馬「任せたぜ」

海美「何食べよっかな~」

貴音「…」

P「四条さんは何を食べるの?」

貴音「そうですね、わたくしは…らあめん、でしょうか」

P「そうなんだ、てっきり和食かと思った」

それぞれの注文が届いた

P「あれ、四条さんのまだ来てないね」

貴音「わたくしのことはお気になさらず、先に食べてください」

冬馬「そうか、悪いな」

海美「いただきまーす」

翔太「これが新作ラーメンか~」

貴音「御手洗殿、良い選択をしましたね」

翔太「四条さん、僕は翔太でいいよ、みんなそうだし」

貴音「そうですか、ならば翔太、良い選択をしましたね。スープは塩をベースに豚骨を加えた塩豚骨、そして仄かに香る柚子の香り…恐らく刻んだ柚子を麺に練り込んでいるのでしょう」

翔太「わ、ほんとだ、柚子の味がする」

冬馬「すげえな四条…匂いだけでわかるのか」

P「匂いだけでそこまでわかるものなんだなぁ」

海美「ね、ね、Pのそれは?」

P「これか?これは千鶴先生の実家が提供してるコロッケを使ったコロッケ定食だよ」

海美「前からあったっけ?」

P「確か前年度末あたりに出たはずだ、去年は購買がメインだったから知らないのも無理はないな」

P「俺だって間島に聞いて初めて知ったくらいだし」

海美「そっか!ね、ね、一口ちょうだい?」

P「良いぞ、持ってけ」

海美「あーん」

P「…」

海美「あーん」

P「…」

海美「あーん!」

P「仕方ないな、ほら、熱いから気を付けろよ」

海美「ん!美味しい!」

P「そりゃ良かった」

海美「私のも一口あげるね!」

P「野菜炒めか、それじゃあ一口だけ」

海美「はい、あーん」

P「いや、自分で」

海美「あーん」

P「…」

海美「あーん!」

P「…あーん。…あっちぃ!」

海美「どう?美味しい?」

P「熱いわ!」

海美「えへへ~」

貴音「ふふ、P殿と高坂嬢は仲が良いのですね」

海美「え?そ、そうかな…えへへ…」

P「まあ幼馴染みだしな」

冬馬「」

翔太「冬馬くんが何を言いたいのか僕には良くわかってるよ」

P「けど本当うちの学食って豪華だよな」

冬馬「二階堂精肉、木下農園、天空橋養豚場、佐竹飯店…他にも色んなところが協力してるんだろ」

翔太「ここより豪華な学食って日本中探してもそうそうないよね~」

貴音「なんと!それは真、素晴らしいですね」

のんきな話をしていた、その時だった

「お待たせしました~!醤油ラーメンと塩ラーメンと鳥白湯と豚骨と醤油豚骨と味噌と赤味噌と担々麺とワンタン麺と新作ラーメン、全部特盛り、です!」

ズドン

P「…え?」

突如四条さんの前に置かれた大量の麺・麺・麺…ラーメン尽くしだった

冬馬「な、なんだよ…これ」

貴音「いただきます」

言うが早いか四条さんはラーメンに手をつけ始めた

P「ていうか四条さん、食べきれるの…?」

貴音「はて」

一旦どんぶりを置く四条さん

…ていうか

冬馬「もう一杯食った…だと…」

特盛りのラーメンはあっという間に空になっていた

翔太「えっ…なにこれ…手品?」

そうしてる間にも四条さんはどんぶりを空にしていった

君は知るだろう

本当に想定外の事態に陥った時、人は声すら上げられないということを

貴音「真、美味でした」

すべてのどんぶりをさらえた四条さんは満足げにそう言った

冬馬「すげえな…色んな意味で…」

P「驚いたよ、ほんと」

海美「貴音さん凄いね!」

翔太「これだけ食べられるなんてね~」

冬馬「四条ならこの学食で未だ誰一人成し遂げられなかった佐竹スペシャルも食えそうだな…」

P「っと、そろそろ戻らないと」

翔太「あ、そっか、次は移動教室だっけ」

冬馬「そうだった」

海美「次の授業なんだったっけ」

P「中川先生の音楽だったはずだ、学年合同の」

翔太「音楽室遠いから早く戻ろう」

放課後になった

P「あー、本当に降ってきたな」

冬馬「夕方から降るかもって言ってたしな」

海美「じゃあ今日は陸上部お休みかー」

翔太「ダンス部は室内だから大丈夫だね」

P「部活と言えば…四条さんはどこか部活に入ったりするの?」

貴音「そうですね…まだどのような部活動があるか把握できておりませんのでまだなんとも…」

P「あ、それもそうか…」

765学園は妙に部活多いしな~…噂では茜ちゃん部とかいうのもあるとか

貴音「ただ、昨日茶道部に誘われましたので見学していこうと思います」

P「茶道部か」

冬馬「良いんじゃねーか?」

翔太「茶道部のエミリーさん、たまに差し入れ持ってきてくれるんだよね」

翔太「それじゃあ僕行ってくるから」

冬馬「おう、またな」

P「また明日」

海美「ばいば~い!」

貴音「では、わたくしも失礼いたします」

P「うん、また明日」

冬馬「じゃあな」

海美「貴音さん、またね!」




冬馬「さて、どうしようかな」

P「雨降ってるしどこかに行く気にはなれないなぁ」

冬馬「なら解散でいいか、今日は父親が早く帰ってくるから早めに飯作らないとな」

P「そっか、じゃあまた明日」

冬馬「おう」

海美「あまとうまたね!」

冬馬「あまとう言うな!」

P「さて、俺達も帰るか。…どうしたんだ?」

海美「え?あ、あはは~…傘忘れちゃった」

P「おいおい…しょうがないな、ちょっと狭いけど一緒に入るか?」

海美「!うん!」


雨の降る中一つの傘をさして二人で歩く

P「大丈夫か?濡れてないか?」

海美「こうすれば平気!」

P「あ、こら抱き付くな」

海美「こうしたら私もPも濡れないよ!」

P「まあ、そうだけどさ」

海美「えへへ」

P「こら、すりすりするな」

海美「Pの腕温かい~」

P「お前は小さい頃から甘えたがりだな」

海美「こんなことするのPだけだもーん」

P「…」

P「あまり濡れてないだろうけど帰ったらちゃんとシャワー浴びて体を温めろよ?風邪引いても知らないぞ」

海美「わかってるわかってる!」

P「なら良いけど」

海美「あ、そうだ!」

P「ん?」

海美「一緒にお風呂入る?」

P「はいらない」

海美「えー」

P「えーじゃない。じゃあな」

海美「ぶー」

P「ただいま」

桃子「お帰り」

P「ん?誰か来てるのか」

桃子「育と環が」

P「あの二人か、俺は部屋にいた方が良いか?」

桃子「その方が良いと思うよ、環は残念がるだろうけど」

P「環にはまた今度遊ぼうって伝えといてくれ」

桃子「わかった」

P「ふう…」

さっとシャワーを浴び、部屋着に着替えてベッドに寝転ぶ

するとすぐに眠気が襲ってきた

P「…おやすみ」

そのまま俺はゆっくりと目を閉じた…

昼休み

恵美「そういやさ」

パスタを食べながら恵美が聞いてくる

恵美「P達ゴールデンウィークはどうすんの?」

P「ゴールデンウィークか」

冬馬「俺は特に予定はねーな」

翔太「僕もかなー、ゴールデンウィークはダンス部もお休みだし」

海美「私も」

恵美「じゃあさ、みんなでキャンプ行かない?」

貴音「キャンプ、ですか」

冬馬「おい所、ゴールデンウィーク中のキャンプなんて正気か?行きも帰りもごった返して疲れるだけだぞ」

恵美「キャンプはまとまった休みがないといけないじゃん」

冬馬「確かにそうだがそれなら夏休みで良いだろ?ゴールデンウィークの時期なら川に入るにしてもまだ早いしな」

恵美「そっかな~、良いアイディアだと思ったんだけど」

P「まあキャンプはまた今度にしよう」

翔太「まあ普通に集まって遊ぶので良いんじゃない?」

冬馬「まあ無難なとこだな」

恵美「うーん、そだね、そうしよっか」

しかしゴールデンウィークか…どうせやることもないし家族とのんびり過ごすのもありか

それとも…






冬馬「じゃあな」

P「ああ」

冬馬と別れ帰路につく

明日からゴールデンウィークが始まる、これの過ごし方でこの1年が決まる気がするな

ゴールデンウィーク初日、俺は快適な睡眠を取っていた

誰にも邪魔をされない至福の時間

しかしその至福の時間はあっけなく散った

海美「起きて!」

P「!?」

突然布団が剥ぎ取られる

海美「起きて起きて!」

そして激しく揺さぶられた

P「お、起きてるからぁ…」

海美「おはよ!ご飯出来てるよ!」

突然の出来事に混乱したが、目が覚め冷静になって海美に問いかけた

P「それよりも何で海美が俺の部屋にいるんだよ…」

海美「あれ、言ってなかったっけ?私のお父さんとお母さん旅行行ってて私一人だからゴールデンウィークの間Pの家に泊めてもらうって」

P「初耳なんだが…」

海美「とにかくゴールデンウィークの間お世話になるね!」

P「まあ俺は良いけど」

海美「それじゃあ下行こ?皆待ってるから」

P「わかった」



このみ「おはよう寝ぼすけ」

桃子「…」

P「おはよう。…桃子なんか機嫌悪くない?」

桃子「別に、お兄ちゃんには関係ないから」

P「お、おう、そうか…」

桃子「ふんだ」

P「…?」

このみ「それじゃあ皆揃ったところで」

「いただきます」

このみ「そういえば海美ちゃんがうちに来るのは久しぶりね」

海美「ご無沙汰してました」

このみ「良いのよ、せっかく久しぶりに泊まりに来てるんだし、色んなお話ししましょうね」

海美「はい!」

P「あ、そうだこのみ姉さん、海美が泊まりに来るって教えてくれなかっただろ」

このみ「あ、今日から海美ちゃんうちに泊まりに来るから。はい、教えたわよ」

P「事後報告じゃないか!」

このみ「うるさいわねぇ、私が許可したんだから良いのよ」

P「くそっ…ちっこいくせに…」

このみ「あぁん?」

P「なんでもありません」

海美「相変わらずこのみさんと仲良いねー」

P「別にそんなんじゃないって」

桃子「…」

海美「桃子ちゃん、どうしたの?」

桃子「別に、何でもないよ」

海美「うーん…」

P「…」

海美と桃子は何故か昔から折り合いが悪い

海美は桃子に積極的に話し掛けたりしているんだけど桃子のほうが拒否しているようだ

嫌ってるわけではなさそうなんだけど…

桃子「ご馳走様」

このみ「お粗末さま」

桃子「それじゃあ桃子出かけてくるから」

P「いってらっしゃい、あんまり遅くならないようにな」

このみ「いってらっしゃい」

海美「いってらっしゃーい」



海美「私、桃子ちゃんに嫌われてるのかな~」

P「どうなんだろ」

このみ「大丈夫、桃子ちゃんは海美ちゃんのこと嫌いじゃないわよ」

海美「本当?」

このみ「ええ、だって桃子ちゃんは嫌いな相手は無視するもの。だからなんだかんだでちゃんと受け答えしてる以上嫌われてはいないわ」

海美「そっか…でもなんであんなに素っ気ないんだろ」

P「それは俺も気になる」

このみ「具体的な理由は秘密だけどあえて言うなら…拗ねてるのよ」

P「拗ねてる?何に?」

このみ「これ以上は教えてあげない。自分で考えなさい」

海美「うーん…」

このみ「私も出かけてくるから、もし出かけるなら戸締まりよろしくね」

P「わかった」

海美「この後どうするの?」

P「冬馬や翔太を誘ってどこかに遊びに行くのも有りだが…特に思い付かないな」

海美「じゃあ今日は一日家でのんびりしよっか」

P「お前がそんなこというの珍しいな」

海美「だってせっかく二人っきりなんだもん、一緒にごろごろしたい!」

P「ま、それでもいいか」

海美「やった!」

P「まあごろごろするだけってのも退屈だからゲームでもするか?」

海美「うん」

P「じゃあ部屋から取ってくる」

海美「あ、P」

P「ん?」

海美「わざわざ取りに行かなくてもPの部屋行こうよ」

海美「ベッドにダーイブ!」

P「お前がそれするとベッドメイク面倒なんだぞ」

海美「えへへ、ごめんごめん」

P「何やる?」

海美「うーんと…あ、太鼓の達人の新作あるんだ」

P「ああ、つい最近発売された太鼓の達人の最新作アイドルマスターマストソングスだな」

海美「これで良いよ」

P「わかった、バチ出すからちょっと待っててくれ」

海美「けど最新作アイドルマスターマストソングスか~…私も買おうかな」

P「中々面白いぞ?最新作アイドルマスターマストソングス」

フルコンボだドン!

P「ふうー…」

海美「何とかなったね~」

P「やっぱり面白いな」

海美「うん」

P「でも太鼓だけだと流石に飽きてくるな」

海美「そだね~」

P「他に何やる?」

海美「うーん…」

P「まあ色んなゲームあるし適当にやっていくか」

それから数時間、俺と海美はゲームをとっかえひっかえしながら遊んでいた

そしてあるゲームを遊んでいるとき、肩に重みを感じた

海美「…スー…スー…」

P「…寝ちまったか」

海美「…スー…」

P「…仕方ないな」

俺は寝ている海美を起こさないようにゆっくりと頭を膝の上に乗せた

P「硬い膝で悪いな」

海美「んん…」

起こさないように海美の頭を撫でる

海美が起きるまで、穏やかな時間を過ごした

一旦ここまで
うみみに膝枕してあげたい

ゴールデンウィーク二日目

P「暇だ」

海美「だね」

P「あいつら誘ってどこかに遊びに行くか」

海美「さんせ~」




冬馬「で、釣りに行くのか?」

P「ああ」

翔太「釣りか~…僕あんまりやったことないんだよね」

海美「大丈夫、そんなに難しくないよ!」

貴音「釣った川魚を川原で捌いて食べる…中々に風情がありますね」

P「あれ、四条さんいつからそこに」

冬馬「気が付いたら後ろにいたんだよ」

翔太「あの時の冬馬くんのびびりかた面白かったよね~」

P「マジかよ見たかったな」

冬馬「お前らな…」

俺達の住んでいる町から少し離れた所に綺麗な川がある

俺達はそこを目指して歩いていた

冬馬「ん、先客がいるな」

P「本当だ、珍しいな」

二人組の女の子が並んで糸を垂らしている

P「場所を変えるか」

冬馬「あそこが一番釣れるんだが仕方ないな」




ポジションを決め、準備を始める

冬馬「ほら、翔太」

翔太「うん」

海美「貴音さん、こうやって」

貴音「なるほど…」

みんなが思い思いの場所で釣りを始める

俺は…

少し考えてから海美の隣に座った

海美「みんなでこうやって釣りするの久しぶりだね」

P「そうだな…釣りはやらなくなってたからな」

海美「いっぱい釣って帰って桃子ちゃん、このみさんと一緒に食べようね!」

P「ああ」

冬馬「お、来たな!」

冬馬の竿に魚がかかったようだ

冬馬「うっし!釣れた!楽勝、だぜ!」

P「冬馬のくせに…」

翔太「ね~」

冬馬「どういう意味だ!」

海美「あ、私も来た!」

翔太「僕もかな!」

貴音「わたくしの竿にもかかったようです」

P「おいおい俺もだ」

皆の竿に一斉に魚がかかる

冬馬「一気に来るなんて珍しいじゃねえか」

「ち、千早さん!竿に動きが」

「落ち着いてエミリー、落ち着いて竿を引くのよ」

「は、はい」

P「向こうも当たってるな、今日は入れ食いか?」

冬馬「そうだ、良いことを思い付いた!」

P「却下」

冬馬「聞いてもないのに却下するんじゃねえ!」

P「まあどうせくだらないと思うけど聞いてやるよ」

冬馬「なんつう上から目線だよ…まあいい」

冬馬「勝負しねえか?」

翔太「勝負?」

冬馬「おう、釣った魚の数で勝負するんだ」

P「勝負ねぇ…」

冬馬「一番少なかった奴が罰ゲームで1週間学食奢りでどうだ?」

P「随分自信があるじゃないか」

冬馬「へっ、一番最初に釣ったのは俺だからな!今日は俺に風が吹いてるから楽勝、だぜ!」

P「面白い、吠え面かかしてやるぜ」

翔太「冬馬くんの奢りなら満漢全席行ってみようかな」

冬馬「もう勝った気でいるのか?甘いな翔太」

冬馬「高坂と四条はどうする?」

貴音「わたくしは構いません。天ヶ瀬冬馬の奢りだと言うのなら遠慮なく頂きましょう」

海美「勝負!勝負!勝負なら負けないよ!」

冬馬「全員参加だな、それじゃあ勝負開始だ!」

そういって冬馬は竿を握り直した。…だが

冬馬「…なあ」

P「なんだ」

冬馬「お前らの魚増えてる気がするんだが」

翔太「冬馬くんが喋るのに夢中になってる間僕等は釣り続けてたからね~」

P「この結果は当然のものです(キリッ」

翔太「ぶふっ!!」

冬馬「くそっ、まったく出遅れた!」

P「しかしあれだな」

海美「?」

P「今日釣れすぎじゃないか?」

翔太「そうだね~」

貴音「昼食には困りませんね」

大量にかかる魚たち、ここまで一気に釣れるのは初めてだ

冬馬「…」

P「冬馬く~ん、釣れてるカナー?」

冬馬「うるせえ!」

太陽が真上を少し過ぎた頃、腹が鳴った

P「昼にするかー」

翔太「さんせ~」

冬馬「俺は魚を捌くからよ、Pと翔太は火を熾してくれ」

P「わかった」

冬馬「高坂は俺が捌いた魚に串を通す、四条は皿を用意してくれ」

海美「は~い」

貴音「はい」

冬馬が慣れた手つきで昼食を用意する

俺達は昼食が出来るのを楽しみにしながらそれぞれの準備を進めていった

太陽が西に傾き、世界があかね色になり始めた頃、俺達は帰る準備を始めた

P「さてと」

冬馬「…」

翔太「冬馬くん、結果発表しようよ」

冬馬「…そうだな」

あの後俺達は釣れ続けた

…冬馬を除いて

P「一番少ないのは冬馬だな」

冬馬「…畜生、こんなはずじゃ…」

翔太「楽勝、だぜ!(キリッ」

P「ま、まあこんな時もあるって」

冬馬「…」

その時、四条さんが冬馬に話しかけた

貴音「天ヶ瀬冬馬」

冬馬「四条…」

貴音「勝負は時の運。今は敗北しようとも、次に勝てば良いのです」

冬馬「そうだな…」

貴音「ではわたくしからあなたに一つだけ言葉を贈りましょう」

冬馬「…」

貴音「ご馳走様です」

冬馬「…あっ」

冬馬「あ…あああ…!」

冬馬は現実を直視したくないようだった

ゴールデンウィーク最終日、我が家のリビングは大変賑やかだった

P「ゴールデンウィーク明けのテストに向けて勉強会なんだぞ?」

海美「う~…勉強したくないー…」

恵美「あたしもー…」

琴葉「恵美、せっかくこのみさんが場所を提供してくれているのに…」

恵美「わかってるけどさ~」

冬馬「へぇー、四条は勉強得意なんだな」

貴音「得意、と言うほどの物ではありませんが…人並みには」

桃子「ねえ、桃子さっきうるさいって言ったよね?」

エレナ「はい…」

翔太「ごめんなさい…」

響「もうしません…」

このみ「賑やかねー」

P「ほら、海美の勉強は見てやるからさ」

海美「う~…頑張る…」

恵美「あ、じゃあさ、あたしも見てよ!」

P「まあ良いけど」

海美「じー…」

琴葉「それじゃあPくん、恵美をお願い。私はエレナを見るから」

P「わかった」

琴葉「ほらエレナ、勉強するわよ」

エレナ「はーい…」

このみ「なら響ちゃんと翔太くんはこのお姉さんが見てあげるわ」

翔太「お願いしまーす」

響「お願いしまーす」

P「海美は物覚えはいいのになんで勉強になるとこうなるんだか」

海美「だって勉強つまんないんだもん~」

恵美「そーだそーだ!」

P「お前はわかっててもやらないだけだろーが」

恵美「にゃはは、バレちゃってた?」

P「バレバレだっての。自分が目立ちたくないからわざと点数抑えてるだろ」

恵美「あ、そこまでバレてるんだ」

P「なんだかんだで見てたしな」

恵美「えっ。そ、そっか…」

P「?」

海美「…」ギュー

P「いてっ!なんで抓るんだ」

海美「めぐみーばっかりずるい、私も見てよ!」

P「?今こうやって勉強見てるだろ」

海美「そうだけどそうじゃないの!」

P「一体なんなんだ…」

冬馬「このみさん、コーヒーくれ、ブラックで」

翔太「僕も…」

響「自分も…」

夕方頃

エレナ「あー、もう一生分勉強した気がするヨー…」

冬馬「何言ってやがる島原、人間生涯勉強だぜ」

エレナ「おー、アマトウの癖に良いこと言ったヨ」

冬馬「あまとう言うな!」

海美「も…だめ…死ぬ…」

P「うん、よく頑張ったな、偉いぞ海美」

勉強を終え、瀕死の海美の頭を撫でてやる

海美「あ…えへへ」

頭を撫でられた海美は満面の笑みを浮かべた

恵美「あたしも頑張ったと思うけどな~。…チラッ」

P「はいはい、恵美もよく頑張りました」

恵美「へへ~」

桃子「…」

桃子「お兄ちゃん、桃子も頑張ったんだけど」

P「ん?おお、そうか、よく頑張ったな」

桃子「…」

桃子が不服そうにこちらを見ている

P「…どうしたんだ?」

桃子「別に、なんでもない」

P「?」

片付けを終え、皆が帰宅の準備をする

琴葉「このみさん、Pくん、今日はありがとうございました」

P「気にしないでくれ」

このみ「こんな家で良かったらいつでも来てね」

琴葉「はい。…じゃあ恵美、エレナ、帰りましょう」

恵美「そだね、じゃあばいばーい」

エレナ「またネ!」

エレナ、田中さん、恵美の三人は楽しそうに話しながら帰って行った

翔太「じゃあ僕達も帰るね」

P「おう」

冬馬「明日から学校だぞ、遅れるなよ」

P「わかってるよ。…冬馬」

冬馬「なんだ?」

P「明日から学食だぞ、忘れるなよ」

冬馬「…あっ」

冬馬は真っ白になって翔太に引き摺られながら帰って行った

貴音「では、わたくし達もそろそろお暇いたします」

響「そだね、帰ろっか」

P「ん?響は四条さんと同じ方角なのか」

響「うん、詳しい場所は知らないけど近所なんだって!」

貴音「はい、響にはお世話になっております」

P「そうなんだ」

響「と言うわけで自分達も帰るぞ!」

P「ああ、お疲れさま」

響「じゃーねー!」

貴音「また明日、学食でお会いしましょう」

P「はは…手加減してやってくれ」

四条さんは響と一緒に歩いて行った…

みんなを見送って家に戻るとこのみ姉さんが話しかけてきた

このみ「あんた本当に友達いたのね」

P「だから言ったじゃないか」

このみ「てっきり見栄を張ってるのかと…」

P「そんなわけないだろ」

このみ「そう、それなら良かったわ。…友達、大切にしなさいね」

P「…ああ」

俺達のゴールデンウィークはこうして過ぎていった…

ゴールデンウィークが明け、特にこれと言った出来事のなかった五月が過ぎ去り六月となった

あえて言うなら冬馬が四条さんに苦手意識を抱いたくらいだろうか…

季節は春から夏に変わりつつある

それは同時に梅雨の到来ということであり、度重なる雨に彼女はイライラしていた

海美「あーもう!」

P「どうしたんだ急に」

海美「来る日も来る日も雨ばっかり!陸上部は出来ないし髪はぼさぼさになるしもうやだ!」

冬馬「梅雨なんだから仕方ないだろ」

P「まあ海美は昔から雨で苦労したからな…主に髪の毛が」

海美「毎朝必要以上に髪を手入れしないとダメだから面倒なの!」

冬馬「そんなもんなのか、女ってのは面倒臭いんだな」

冬馬「やっぱり男のほうがいいぜ」

P「しかし暑いな」

冬馬「湿度が高いからな」

海美「どうせ髪がぼさぼさになるならプール入りたいな~」

P「プールか…そういえばもうすぐプール開きだな」

冬馬「だな」

海美「Pと一緒にプールで泳ぎたいな~」

P「プールの授業は男女別なんだから仕方ないだろ」

海美「でもー」

P「夏休みになったら市民プールあたりに行こう、な?」

海美「ほんと!?」

P「ああ」

海美「やった!デート、デート!」

冬馬「ああ…あっちぃな」

P「お」

冬馬「?」

P「週末の球技大会の日、晴れるってさ」

冬馬「マジかよ」

海美「やったね!」

P「俺もここ最近の雨のせいで体動かせなかったからな、たまには頑張るとするか」

冬馬「どうせやるなら勝たねえとな!」

海美「気合い入れていこ-!」

そして球技大会

P「冬馬!」

冬馬「っらぁ!」

俺の回したパスを受け冬馬が敵のゴールにボールを叩き込んだ

冬馬「おっしゃあ!ナイスパスだったぜ、P!」

P「当たり前だろ冬馬!俺達なら」

冬馬「楽勝、だぜ!」

冬馬と拳をぶつけ合う

そして試合は終始優勢のまま幕を閉じた

冬馬「上級生って言っても大したことねーな」

P「だな」

冬馬「これなら黒井のおっさんの鼻を明かしてやれそうだぜ」

一旦ここまで
五月も六月もこれといったイベントなさ過ぎんよー

P「男子の部はもらったも同然だな」

冬馬「ああ、Bの間島とCの武内さえ警戒してりゃ後は雑魚ばっかりだからな」

P「問題は女子の方だ」

冬馬「ああ、同学年には我那覇に菊地、横山に星井、上には学園最強と名高い徳川」

冬馬「下にも伊吹や天空橋、永吉と強敵が揃ってやがる」

P「うちにも海美とエレナはいるが…」

冬馬「これは荒れそうだな…そこでだ」

P「ん?」

冬馬「賭けねえか?」

P「は?」

冬馬「だから、どのクラスが勝つかに賭けるんだよ。負けたら学食奢りでどうだ?」

P「冬馬」

冬馬「あん?」

P「ご馳走様」

冬馬「俺が負けるの前提にするんじゃねぇ!」

体育館

P「…なあ」

冬馬「ん?」

P「…バレーボールしてる女子ってエロいよな」

冬馬「……………」

P「沈黙は肯定として扱うぞ」

冬馬「……………」

P「特にジャンプしたときに裾が捲れて見える臍がさ…揺れる胸も良いけどさ」

冬馬「お前は何もわかっちゃいねえ」

P「なに?」

冬馬「確かに臍も胸も素晴らしい、だがな!」

冬馬「本当に見るべきところはな、太腿なんだよ!」

P「太腿だと…」

冬馬「太腿は人間のラインの中でもっとも美しい部位なんだよ!」

冬馬「ヒップから伸びるライン…脚線美って言葉があるくらいだからな!」

冬馬「そして何より太腿のもっとも素晴らしいところは…」

冬馬「ひ ざ ま く ら が出来るところだ!!」

P「!!」

冬馬「想像してみろ、彼女に膝枕されているシチュエーションを!」

冬馬「髪を撫でられふと上を見上げる、すると山と山の谷間から顔を見て微笑んでいる彼女と目が合うんだ!」

冬馬「最高じゃねえか!」

P「…膝枕か」

冬馬「うちのクラスで膝枕して欲しいなら島原か所、高坂だな」

冬馬「あのあたりは知り合い補正を抜きにしても良い肉付きだしな」

P「そりゃ」

ぐさぁー!

冬馬「ぎゃあああ!目が、目がああああ!!」

P「なんとなくお前に海美をそんな目で見られるのはムカつく」

冬馬「それならさっさと付きあっちまえよ…」

冬馬が蹲って呻いている

膝枕か…

膝枕の妄想で頭に浮かんだのは

…海美だった

海美「負けちゃったー…やっぱりのりさん強かったよー」

翔太「こっちは余裕だったよ」

海美と翔太が戻ってきた

…冬馬とあんな話をしたせいか海美を意識してしまう

P「ん、お、おかえり」

海美「?P、顔紅いけど風邪?」

P「い、いや、大丈夫だから気にするな」

翔太「…ねえ冬馬くん、Pくんが海美ちゃん意識してるんだけど、何かした?」

冬馬「俺の目を犠牲にちょっと焚き付けてやっただけだよ」

一旦ここまで
バネPは教師として在籍してます

海美「なんだったらちょっと休む?膝貸してあげる!」

P「ひ、膝枕!?」

膝を貸すと言われて、先程冬馬と話していたときの妄想を思い出しさらに顔が紅くなる

海美「ほら、遠慮しなくていいよ」

P「それじゃあ…」

海美の膝に頭を乗せる

…柔らかい

P「ふ、ふーん、これが海美の膝枕?…ま、まあ、悪くないかな」

冬馬「誰の真似だよ…」

P「うるせっ」

海美「…ふふ」

海美が微笑みながら俺の髪を撫でる

…これは…

冬馬「おお…」

翔太「これはこれは…」

翔太と冬馬の声が聞こえた

友人にこんな場面を見られていることを自覚し、違う意味で顔が紅くなる

もう少しこうしていたかったが恥ずかしさが上回ってしまったので起き上がる

P「も、もう平気だ!」

海美「そう?」

P「ああ!」

冬馬「…へたれやがったな」

その後、特に問題もなく球技大会は終了した…

6月が過ぎ去りようやく7月が顔を出す

だが未だ梅雨は明けておらず、ジメジメした日が続いていた

P「明日には梅雨明けるらしいぞ」

冬馬「その話し何回目だよ…」

翔太「五回目くらいだね~」

貴音「連日月が見れぬというのは悲しいことです」

海美「」

P「海美-、生きてるかー」

海美「」

翔太「ま、仕方ないよね~」

P「五日前はテンション高かったのになぁ」

五日前、梅雨が明けるという話をしていた時

海美「梅雨明けた!もう雨降らない!やったー!」

ととても上機嫌だった

しかし翌日も変わらず雨は降り、梅雨が明けていないことを知ると

海美「梅雨明けてないじゃん!もういい!私学校やめる!」

と大騒ぎだった

冬馬「まあ高坂ほどじゃないけどよ、確かにこの雨は鬱陶しいよな」

P「梅雨だからな」

翔太「それにしても今年は明けるの遅いよね」

P「まあもう少しの辛抱だって」

海美「…もう少しっていつ…?何時何分…?」

P「もう少しはもう少しだ。ほら、帰るぞ」

海美「…うん…」

海美の手を引いて立ち上がる

P「冬馬、翔太、四条さん、また明日な」

冬馬「おう」

翔太「またねー」

貴音「はい、また、明日」

P「ほら、雨くらいでそんな落ち込むなって」

海美「…うん…」

P「…」

海美が暗いと調子が狂うな…

P「梅雨、早く明けるといいな」

海美「…」

P「俺だって海美達と一緒に海に行くの楽しみにしてるからさ」

海美「…ほんと?」

P「ああ。だからいつもの元気な海美に戻ってくれよ、俺そっちのほうが好きだからさ」

海美「!…うん、わかった!」

急に元気になったな…そんなに海に行きたかったのか?

765学園では毎年一回、近所の砂浜を貸し切って学園全体での海水浴を実施している

この時持ってくる水着は特に指定されておらず、学園指定のセーラー水着でも自前の水着でも構わない

まあ毎年過激な水着を持ってくる生徒がいて問題になってるらしいけど…

そして待ちに待った海水浴の日、幸いにも梅雨は三日前に明けており、元気な太陽が俺達を照らしていた

海美「青い海!白い雲!青い海!やったー!」

海美が元気に砂浜を走り回っている

冬馬「高坂のやつ元気すぎんだろ…」

P「ま、気持ちはわかるけどな」

「わっほーい!佐竹飯店海の家出張店特製特盛カレーとラーメン、チャーハン、焼きそばお待たせしましたー!」

貴音「…」

「おかわり無料ですから気軽にどうぞ!」

貴音「なんと!それは真、素晴らしきことですね」

四条さんは…見当たらないと思ったらいきなり食っていた

まだ昼前なのに大丈夫だろうか…

海美「ね、ね!」

P「うん?」

海美「ビーチバレーしようよ!」

冬馬「ビーチバレーか…へっ、叩きのめしてやるぜ!」

P「でもビーチバレーやるなら一人足りなくないか?」

翔太「僕が海美ちゃんと組んでも良いけど」

P「あ、いや、それなら俺が海美と組むから翔太は冬馬と組んでやってくれ」

翔太「わかった」

P「こっちから行くぞ!せい!」

対戦が始まる

冬馬「へっ、そんなぬるいサーブで俺達に勝つつもりかよ!」

翔太「冬馬くん、お願い!」

冬馬「任せろ!くらいやがれ!」

冬馬のスパイクが炸裂する

海美「!」

海美が拾いに行くが間に合わなかった

冬馬「へっ、見たか」

P「開幕スパイクとはやってくれるじゃないか」

冬馬「勝利のためにはその場の最適解を実行するもんなんだよ」

P「面白い、叩きのめしてやる」

その後対戦は激しくなっていった

P「っ、はあ…はあ…」

冬馬「くそっ…しぶといじゃねえか」

海美「あはは、いい汗出るね!」

翔太「うん、良い運動だよね」

俺達のサーブだ

P「行くぞ」

しかし手元が狂い弱いサーブになってしまう

冬馬「もらったぁ!」

冬馬がスパイクを決める

海美がブロックしようと跳ぶが届かない

海美「わっ、たっ、たっ」

着地した海美が砂に足を取られてバランスを崩しこけそうになっていた

P「海美!」

海美が怪我をしないように助けに行こうとするが…

P「うおっ…!」

俺もバランスを崩し海美のほうへ転がった

しかし海美だけはなんとか守ろうとして…

両手が柔らかい何かを触った

P「…つぅ…海美、大丈夫か?」

海美「う、うん…大丈夫」

P「そうか、それならよかった」

怪我はないみたいだ

しかし海美の顔が紅い、一体…

そしてその時、俺は自分の両手を見て、この柔らかい感触の正体を知った

P「えっ…」

海美「…」

P「…っ!?」

俺の両手は海美の胸を鷲掴みにしていた

その事実に気付き急激に顔が爆発したように紅くなる

P「す、すまん!」

海美「だ、大丈夫、大丈夫」

海美に謝る

海美の顔ははっきりとわかるくらい真っ赤だった

海美の顔を見ると紅くなるので冬馬の方を見ると…

冬馬「っ~!!!」バンバン

大爆笑していた

P「…」イラッ

P「海美、立てるか?」

座り込んでいる海に声をかけ、手をさしのべる

海美「う、うん」

海美の手を掴み立たせてやる

P「あれを」

海美「?」

海美が視線を向けた先には大爆笑している冬馬がいた

海美「…」イラッ

P「俺は良い思いをさせてもらったから冬馬くんに『お礼』をしたいんだけど…付き合うか?」

海美「…良いね、付き合うよ」

P「さあ、再開しようか」

冬馬「お、もう良いのか?」

P「ああ、おかげさまで良い思いをさせてもらったよ」

冬馬「へっ、礼はいらねえぜ」

P「まあそう言うなよ、俺達からの礼…」

サーブが飛んでくる

それを海美がもっともスパイクの威力が出せる位置にパスする

P「受けとれぇ!」

海美「とりゃあ!」

海美のスパイクが砂浜に突き刺さる

冬馬「あ、危ねぇ!?」

P「ちっ、避けやがったか」

冬馬「何しやがる!」

P「海美!顔は狙うな!ボディだ、ボディを狙え!」

海美「うん!」

冬馬「お、お前ら!」

その後、冬馬をボコボコにし、ビーチバレーは終わった


冬馬「」

P「ふう…」

海美「すっきりしたー」

翔太「ご愁傷様」

深い満足感を味わっていると背中に衝撃を感じた

「おやぶ~ん!」

P「おっとと」

「おやぶん、何やってたの?」

P「ああ、ビーチバレーをやってたんだよ、環」

背中に飛び付いてきた環に話し掛ける

環「ビーチバレー!たまきもやりたい!」

P「良いぞ」

環「やった!」

この子は大神環、765学園初等部に在籍している子で、近所に住んでいるので暇なときは公園で一緒に遊んだりしている

桃子「もう環、勝手にどっか行ったら駄目だよ」

「あ、桃子ちゃんのお兄さんだ!」

環とじゃれていると桃子とその友達の中谷育ちゃんがやってきた

P「よう桃子、育ちゃん」

育「こんにちは、お兄さん!」

桃子「あ、お兄ちゃんいたんだ、何やってたの?」

P「ビーチバレーだよ」

桃子「ビーチバレー…ふーん」

育「あの、私達もやって良いですか?」

P「もちろん」

育「やった!桃子ちゃん、一緒にやろ?」

桃子「桃子は別に…って、育引っ張らないでよ。…もう」

と言いつつも楽しそうに育ちゃんと一緒に歩いて行った

恵美「楽しそうなことやってるね」

P「っと、恵美か」

初等部組のビーチバレーを見ていると声をかけられ、肩に重みを感じた

P「ちょっとビーチバレーをな」

恵美「ビーチバレー、良いねーウチらも混じって良い?」

P「別に独占してるわけじゃないからいくらでも混じって良いんだぞ?」

恵美「そっか、ありがと!琴葉-!エレナ-!ビーチバレーやろー!」

恵美が二人呼ぶ

…人が増えてきたな、響やB、Cクラスの生徒も来てるし、中等部の生徒もいるぞ

校長が何か持ってきた

…学園全体でビーチバレー大会をやることになったみたいだ

賑やかになりそうだ

空があかね色に染まるころ、ビーチバレー大会は幕を閉じた

P「結局あんまり泳げなかったな」

海美「もうあんまり時間はないけど、水遊びくらいなら出来るよ!」

笑いながら海美が水をかけてくる

P「わぷっ…やったな!」

負けじと俺も水をかけかえす

海美「ひゃっ、冷たい!あはは!」

集合時間になるまで、海美と水遊びを続けたのだった

…夢を見た

それは幼い頃の記憶

「みんな…どこ…?」

夢の中の彼女はまだ小さくて

暗闇の中一人で泣いていた

「おとうさん…おかあさん…」

この子をこのまま泣かせていたくない

そう思い手を伸ばす

しかし手を伸ばす前に、彼女の前に手が差し伸べられた

「あっ…」

「いつまでないてるんだ?」

…そこで夢は途切れた

目を覚まし起き上がる

P「…懐かしい夢を見た気がする」

あれはいつの頃だったかな…

桃子「お兄ちゃん、起きたの?ご飯もうすぐ出来るから早く降りてきてね」

部屋の外から桃子の声が聞こえた

P「わかった、すぐ降りるから」

桃子に返事をして支度をする

太陽が輝き町を照らしている

今日から夏休み、どうやって過ごそうか楽しみだ

ありきたりだが夏祭り
浴衣姿を見れるし、屋台巡り楽しそうだし、境内の裏で思い出を作ることも.........

>>210
大神環(12) Da
http://i.imgur.com/rqBdbx1.jpg
http://i.imgur.com/OLWtp1b.jpg

>>211
中谷育(10) Vi
http://i.imgur.com/27fdvmH.jpg
http://i.imgur.com/zmyoRxR.jpg

ビーチバレーの時のうみみよかった
http://i.imgur.com/YusKDYb.jpg
http://i.imgur.com/t7aZ4wF.jpg

感謝

あるファミレスにて

P「肝試し?」

冬馬「ああ、C組の白坂が発案した本格肝試しだとよ。結構怖いらしいぜ」

翔太「うわー、それは何というか…」

海美「本当に怖そうだねー」

貴音「…」

ふと貴音のほうを見る

顔面蒼白になって震えていた

P「た、貴音、どうしたんだ?」

貴音「は、はて…どうしましたか?」

P「いや、どうしたはこっちの台詞…滅茶苦茶顔が青いぞ」

貴音「わ、わたくしは別に、問題ありません」

P「そうか?」

貴音「はい」

翔太「貴音さんってもしかして…」

海美「うん、お化けとか苦手なのかも」

冬馬「今日行ってみねえか?」

貴音「」ビクゥ

P「お、いいなそれ」

貴音「あ、あの、わたくしは辞退…」

P「貴音も行くよな?」

貴音「させ…わかりました、参りましょう」

P「よし、じゃあ全員参加だな」

翔太「貴音さん涙目だよ」

海美「やっぱり苦手っぽいね」

貴音「面妖な…」ガクガク

夜、指定された墓地に来る

P「はー、夜の墓地ってやっぱり雰囲気あるなー」

貴音「面妖…マジ面妖…」ブツブツ

貴音が俯きながら何か呟いているが聞き取れない

恵美「あれ、P達じゃん」

突然声をかけられた

冬馬「所じゃねえか、ここにいるってことはお前らも?」

恵美「そ、肝試し!でもルール的に三人じゃ参加できなくてさ」

海美「あ、そっか、二人一組だもんね」

恵美「そそ、だからどうしよっかって話してたんだけどちょうどP達を見つけたからさ」

恵美「ウチらは三人でそっちは五人だからちょうど良い人数だしね」

P「そうだな、じゃあチーム分けるか」

恵美「あたし、Pと組んでも良いよ」

海美「むっ」

そう言いながら恵美が左腕に抱き付いてくる

…柔らかい物が当たっている

P「め、恵美、その…胸が当たってるんだが」

恵美「にゃはは、当ててんのよ~♪」

海美「めぐみーダメ!」

今度は海美が右腕に抱き付いてくる

海美「Pと組むのは私!昼から予約してたもん!」

恵美「えー、しょうがないなぁ…」

あっさりと離れる恵美

顔を見るにただからかっていただけみたいだ

一旦ここまで
今更ながら学園の名前をミスった感が半端ない

結局チームは

田中さん×恵美

貴音×エレナ

羅刹×翔太

俺×海美

になった

P「じゃあ行くか」

海美「うん!」

P「それじゃあみんな、ゴールで会おう」

P「結構本格的だな、火の玉も浮いてるし」

海美「だね」

P「そう言えば知ってるか?」

海美「?」

P「噂ではこの墓場には悪霊がいてそれに取り憑かれるとおかしな事を口走るようになるらしいぞ」

P「例えばあんな風に…」

指を指すとそこには女の子が立っていた

ホメ春香「…」

P「…え?」

どこを向いているのかわからない目をしているはずなのに確かに目の前の女の子から見られていることを感じる

ホメ春香「…」

海美「ぴ、P、あの子怖い…」

P「あ、あの…君?」

ホメ春香「美味しいですよね」

P「え?」

ホメ春香「美味しいですよね、カブトムシ」

全身を寒気が襲った

P「とりあえず逃げるぞ!」

海美の手を引いて走る

海美「う、うん」

ホメ春香「美味しいですよね、カブトムシ」

俺達が走りだしても彼女はそこでただ、俺たちを見ていた





P「なんだったんだあれ…」

海美「わかんないけど…」

一息つこうとしたところ、声が聞こえてきた

P「…なにか聞こえる」

「…ロリー…」

海美「…ロリ?」

「…カロリー…」

P「カロリー…?」

「今カロリーって聞こえましたけど!」

P「うおわぁ!?」

突然目の前に佐竹さんが現れる

美奈子「今カロリーって聞こえましたけど!」

P「あ、いや」

美奈子「カロリー要りませんか」

P「今は別に…」

美奈子「そうですか」

すると佐竹さんは顔を伏せた

…そして

美奈子「カロリーを取らない子はいねがー!」

急に追い掛けてきた

海美「ひぃっ」

P「に、逃げるぞ!」

P「はっ…はっ…」

海美「ま、まけたかな」

P「どうだろうな…」

美奈子「あんなに走ったらカロリーの消費も凄いよね、やっぱりカロリーをあげないと…」

P「…行ったみたいだ」

海美「」

P「海美?」

海美「あ、あれ…」

海美の指さした方を見ると…

3mはありそうな巨大な人影…その虚ろな目は俺達を見下ろしていた

ジャイアント茜ちゃん人形「…」

P「きょ、巨人…!?」

その時、巨人が動いた

こちらに向かって倒れ込んでくる

P「海美こっちだ!」

海美を呼び寄せ退避する

P「怪我はないか?」

海美「うん、大丈夫」

巨人は倒れ込んだ後、ピクリとも動かなかい

P「これも仕掛けなのか…?」

しばらく巨人を眺めていると…

ズボッ

うつ伏せになっている巨人の腹の辺りから手が生えてきた

P「な、なんだ!?」

なにかが巨人の下から這い出してくる

「…あ”ぁ…」

呻きながら女の子が這い出てきた

そして顔を上げる

その顔は血まみれだった

P「うわぁぁぁ!?」

海美「きゃあああ!」

思わず走り出す




「あちゃー…茜ちゃん人形大きくしすぎちゃった」ダラダラダラダラ

「あれ、傷開いちゃってる」ダラダラダラダラ

P「くそっ!なんだよあれ!」

海美「ち、血みどろ!血みどろだった!」

P「あれも仕掛けだってのか…?」

海美「あ、あれゴールかな?」

P「みたいだな…ところで海美?」

海美「なに?」

P「そろそろ腕を解放して欲しいんだが…鬱血しそうだ」

海美「あっ…」

腕に込められた力が緩む

海美「…もうちょっとだけ、このままで良い?」

腕を抱く力が優しく包むような力加減に変わった

P「…ゴールまでな」

海美「…うん!」

その後無事にゴールに辿り着いた俺達は皆を待っていた

最初に恵美達のペアが帰ってきた

二人ともそんなに怖くなかったらしい

次に翔太が帰ってきた

冬馬はどうしたのか聞くと…

翔太「うん、なんかね、腕が6本ある髪の長い白衣の女の人に連れて行かれちゃった」

とのことだ

まあそのうち帰ってくるだろう

そして最後にエレナと貴音が帰ってきた

貴音は号泣、エレナもかなり怯えて泣いていたので余程怖かったのだろう

そして俺達は泣いている二人をあやしながら肝試しを終え、帰路についた…

だらだらと夏休みを過ごし、7月を越え8月となった

熱さは激しさを増し、うだるような毎日が続いていた

そして8月は海美の誕生月でもある

なので…



ファミレス

冬馬「…はあ?」

P「だからさ、もうすぐ海美の誕生日なわけだよ」

冬馬「んなこたぁわかってるよ」

翔太「いやPくん、流石にまだなんの用意もしてないっていうのは…」

P「誕生日パーティー自体は問題ないんだよ、でもプレゼントがさ…」

冬馬「お前が選んだものなら何でも喜ぶと思うぞ?」

P「そうかな?」

恵美「はー、海美も大変だねぇ」

P「聞きたいんだが何を贈ったら良いかな?」

冬馬「気持ちさえこもってたら何でも良いんじゃねえか」

翔太「何でもとは言わないけどPくんの気持ち次第っていうのは僕も一緒かな」

P「恵美はどう思う?」

恵美「うーん…」

顎に手を当てて考える

恵美「やっぱアクセじゃない?」

P「アクセサリー?」

恵美「そ、あんまり派手じゃない方が良いかもね」

P「アクセサリーか…」

恵美「指輪とか良いんじゃない?」

恵美がにやにやしながら言う

P「指輪か、ありだな」

冬馬「マジかよ」

P「ありがとう、とにかくアクセサリー方面で考えてみるよ」

冬馬「おう」

翔太「きっと海美ちゃん喜んでくれるよ」

恵美「にゃはは♪頑張れ頑張れ~」

P「それじゃあまた明日な」

そして俺は店を出た

街に出てアクセサリーショップを見て回る

P「海美に合いそうなアクセサリーか…」

色々見ているとラーメン屋から貴音が出てきた

…後ろで店主らしき人が店終いをしている、まだ昼なのに…

貴音「おや、あなた様」

貴音がこちらに気付いた

P「こんにちは、貴音」

挨拶をする

貴音「このようなところで奇遇ですね」

P「ああ、あんまりこっちにはこないからな」

貴音「今日はどうされたのです?」

P「ああ、ちょっと買い物をな」

貴音「そうでしたか」

P「あ、そうだ貴音」

貴音「?」

P「貴音は男からプレゼントを貰うとき、どんなプレゼントなら嬉しい?」

貴音「プレゼント…ですか」

貴音が少し考え込む

貴音「そうですね…わたくしなら、らあめんせっと…でしょうか」

P「ああ、うん、予想はしてたけど」

予想通り過ぎてもはや何も言えない

貴音「そのようなことを聞くと言うことは…もしやわたくしにプレゼントしてくださるのでしょうか」

貴音が目をきらきらさせながら聞いてくる

…俺の財布を破壊する気だろうか

P「あ、いや、そういう訳じゃないんだ」

貴音「そうですか…」

…少しテンションが下がったみたいだが財布を守るためだ

貴音「らあめんせっと以外となると…小物類ではないでしょうか」

P「やっぱりアクセサリーが良いのかな」

貴音「そうですね…わたくしが贈られる立場なら」

貴音「そして贈ってくださる殿方がお慕いしている方ならば、常にその殿方の気持ちを身に付けていられるというのは幸せな事です」

P「…そんなもんなのか」

貴音「ええ」

あまり良くわからないが…やっぱりアクセサリーが一番ってことか

貴音「海美もあなた様が選んだ小物ならば、きっと喜ぶでしょう」

P「あれ、俺海美へのプレゼントだって貴音に言ったっけ?」

貴音「いえ、ですが…あなた様は少々分かり易い方だと思います」

P「そうか?」

貴音「はい」

P「うーん…」

以前恵美や桃子、このみ姉さんにも言われたんだよな

P「まあいいや、ありがとう貴音、今度ラーメンでも奢るよ」

貴音「真ですか!」

貴音が顔を近づけてくる

かなりテンションが上がっているようだ

P「ただし一杯だけな」

貴音「…あなた様はいけずです」

財布を守るためだ、許せ

8月10日、海美の誕生日を祝うために我が家では料理を作ったり、飾り付けをしたりとパーティーの準備をしていた

恵美「あたしこういう飾り付け結構好きなんだよね~」

響「自分も!なんだか楽しくなるさー」

エレナ「楽しいのは大事だヨー♪」



貴音「真、美味ですね」

冬馬「四条てめぇ!作ったそばから摘まみ食いしてんじゃねえぞ!最初の皿なんか空っぽじゃねえか!」

貴音「天ヶ瀬冬馬、これは摘まみ食いではありません」

貴音「…毒味です」

冬馬「とっとと出てけ!お前は厨房に入ってくんな!」

貴音「ああ…」

海美「あはは…やっぱりいくつになってもこうやってお祝いしてもらうのは嬉しいね」

P「そうだな」

皆が忙しく動き回っている中壁にもたれ掛かりながら海美と話す

P「海美の誕生日にこれだけ集まってくれたんだ」

海美「うん、皆大好き」

P「今日一日、楽しんでくれよな」

海美「うん!」

桃子「お兄ちゃんサボってないで手伝って」

P「すまんすまん」

桃子に怒られたので作業に加わった

このみ「みんな、席に着いたわね?それじゃあ明かりを消すわよ」

明かりが消え、リビングが蝋燭の火だけ残して暗くなる

闇の中で揺れる蝋燭の火はとても綺麗だった

このみ「それじゃあ海美ちゃん」

海美「はーい!すぅー」

海美が息を吸い込み

海美「ふぅー!」

蝋燭の火を吹き消した

「海美、誕生日おめでと-!」

海美「うん、ありがとう!」

電気をつけ、皆でケーキを食べる

甘さが控えめで美味しかった

そしていよいよプレゼントを渡すときが来た

響「はい海美、大切に使ってね!」

海美「うん!ありがとうひびきん!」

冬馬「最後、お前だぞ」

P「わかってる」

恵美「アドバイスしたんだから、決めてきなよ」

P「ああ」

P「…海美」

海美「うん」

P「これ、プレゼント」

海美「ありがと、開けてもいい?」

P「ああ」

海美「わぁ…」

海美が感嘆の声を上げる

海美「指輪だぁ…」

海美「ね、ね」

P「どうした?」

海美「これ、Pにつけて欲しいな」

P「俺に?」

海美「うん。…良い?」

P「わかった」

海美の手を取る

P「どの指が良い?」

海美「ま、任せる」

そう言った海美の顔は真っ赤だった

P「こっちの手の方が良いか」

左手をとる

海美「ひ、左手」

海美の声が微妙に上擦る

P「サイズ的にはここだな」

海美の左手小指に指輪をはめた

P「どうだ、サイズは?」

海美「うん、ぴったり。…どう?」

海美の小指に輝くペリドットの指輪を見る

P「うん、良く似合ってるぞ」

海美「そっか」

海美「最高の誕生日プレゼントをありがとう」

海美「一生大切にするね!」

そう言って笑った海美の笑顔はとても綺麗で眩しくて

俺は…

俺はやっぱり…

一旦ここまで

次の夏祭りでルート確定

夏祭り

学校近くにある神社を中心に町中で様々な屋台が出店し、打ち上げ花火で閉める1年に一度のイベントだ

俺達は皆で見て回るために女子達を待っていた

冬馬「しかし女ってのは本当に準備に時間かかるな」

P「良いじゃないか別に」

翔太「そうそう」

冬馬「あー、早く色々見て回りたいぜ」

そんな話をしていると

恵美「お待たせ~」

冬馬「やっと来たか」

女子連中が来たようだ

恵美「じゃじゃーん、どうよ?」

恵美がその場でくるっと回る

P「おお、浴衣似合ってるな」

恵美「でしょ?へへ~」

エレナ「ほらほら、コトハも恥ずかしがらず二♪」

琴葉「え、ええ…」

恵美に続いて田中さん、エレナも出てくる

P「おお、二人も良く似合ってる」

エレナ「ありがとうだヨー♪」

琴葉「あ、あの…ありがとう」

貴音「響…屋台が遠ざかってしまいます」

響「そんなの後だぞ!先に皆と合流してからね!」

貴音「屋台…」

響が貴音を引き摺りながらやってきた

P「響ー」

響「あ、いた」

貴音「お待たせしました」

到着した二人を見る

P「へえ…貴音は和服は絶対似合うと思ってたから予想通りだけど」

P「響も良く似合ってるじゃないか」

響「当然だぞ!なんせ自分はダンスやってるからな!」

ダンスと浴衣に何の関係があるのだろうか

環「おやぶん!」

P「おっと」

環が飛び付いてくる

環「どう?どう?」

P「おお、可愛い浴衣じゃないか環」

環「動きにくいけどおやぶんが喜ぶからって言われたから着たよ!」

P「そうか~環は偉いなぁ」

環の頭をわしゃわしゃと撫でてやる

環「くふふっ♪」

このみ「環ちゃん、急に走ったら危ないわよ」

環の頭をわしゃわしゃしているとこのみ姉さん、桃子、育ちゃん、そしてこのみ姉さんの友達の莉緒さんがやってきた

莉緒さんはこのみ姉さんの親友で長い付き合いらしい

基本的には年上のお姉さんなのだが休みの前の日などによくこのみ姉さんと一緒にリビングで酔い潰れていたり、机に頭をぶつけて悶絶したりと割と残念な人だ

そして…

海美「お待たせ!」

最後に海美がやってきた

海美「浴衣…どうかな?」

P「…」

昔から何度も見てきた姿なのに

とても…

P「か、可愛いぞ」

海美「…うん!」

顔が紅くなる

それを悟られまいと顔を逸らす

一瞬だけ見えた海美の顔は

俺と一緒で真っ赤だった

冬馬「全員集まったんならさっさと行こうぜ」

翔太「冬馬くんはせっかちだなー」

冬馬「俺はもう腹ペコなんだよ」

貴音「天ヶ瀬冬馬、わたくしも全面的に同意いたします」

響「貴音はいつでも腹ペコだろ」

貴音「…」

このみ「まずは皆で一通り回りましょ」

夏祭りは相変わらず色んな屋台が出店していた

焼きそばやお好み焼き、チョコバナナや綿飴りんご飴などの食べ物から射的、金魚すくい、型抜きなど定番のものは一通り揃っている

中にはご当地茜ちゃん人形射的などの色物や、北京ダック、ドーナツ、眼鏡などの珍しいものもあった

冬馬「相変わらず色々あって迷っちまうな」

P「常に何かしら興味を引かれるモノがあるって凄いと思う」

一通り回り終えた時、このみ姉さんがある提案をした

このみ「一通り見て回ったわけだけど、まだ花火まで時間があるから自由行動にしましょう」

このみ「それで、花火が始まる前にいつものあの場所に集合、良いかしら?」

「賛成です」

このみ「それじゃあみんな、また後でね」

莉緒「このみ姉さん、あの屋台行くわよ」

このみ「もちろん!」

このみ姉さんと莉緒さんはあっという間にいなくなった

恵美「じゃあウチらも行こっか」

琴葉「そうね」

エレナ「うん!」

恵美「桃子達も一緒においでよ、三人だけじゃ、何かあったら困るだろうし」

環「えー、たまきおやぶんと一緒がいい」

育「環ちゃんわがままいっちゃだめだよ」

桃子「お兄ちゃんならまた遊んでくれるから」

環「うー…わかった…」

恵美「ほら、そこの二人もナンパ除けについてきてよ」

冬馬「ナンパ除けかよ…」

翔太「良いじゃん良いじゃん」

そしてみんなどこかに行っていなくなっていた

P「あいつら…どうせなら一緒に回れば良いのに」

頭をかいていると袖を引かれた

P「海美、どうした?」

海美「せっかくだしその…二人で回りたいな…だめ?」

P「あ、ああ…良いぞ」

海美と二人で回ることにした

海美と二人で屋台を回る

茜「おめでとー!仙台の伊達茜ちゃんを進呈しよう!」

海美「あ、ありがとう」



美奈子「カロ」

P「逃げるぞ!」

海美「うん!」



海美「おじさん、クレープちょうだい」

「あいよ!そこのお兄さん、この子の彼氏かい?」

海美「うん!」

P「おいおい、俺達はまだ」

「だったらサービスだ、もう一つ持っていきな!」

海美「おじさんありがと!」

「良いって事よ!」

一旦ここまで

海美と一緒にりんご飴舐めたい

海美「はい、クレープ!」

P「ああ」

二人でクレープを食べながら歩く

P「美味いな」

海美「うん!」

P「お、たこ焼きもあるな」

海美「いこいこ!」

屋台に向かって歩いていく

しかしちょうど人の波に飲まれてはぐれそうになった

海美「わっわわ!」

P「海美!」

とっさに海美の手を掴んで抱き寄せる

海美「あ…」

P「とりあえず固まってやり過ごそう」

海美「…うん」

人波は収まり余裕が出来てきた

俺は掴んでいた海美の手を離し歩き出そうとしたその時

海美の手が俺の手を掴んだ

海美「ね、手繋いだままでいい?」

P「別に良いけどどうしたんだ?」

海美「またさっきみたいな人波が来たらはぐれちゃいそうだし…だめ?」

P「わかった」

海美と手を繋いだまま、歩き出した

海美と屋台を回りながら飲み食いしていると、花火が始まる時間が近づいていた

P「良い時間だな、そろそろ行くか」

海美「うん」

そして俺達は約束のあの場所へと足を進めた

海美「もうみんな来てるかな?」

P「どうかな」

約束の場所へ向かうために林を通る

毎年通っている場所なので暗くても迷うことはない

しかし今日は少し違った

海美「あっ!」

海美の短い悲鳴と、何かが倒れるような音がした

P「海美大丈夫か!」

海美「いたたた…」

後ろを振り返ると海美が転んでいた

P「こけたのか?」

海美「ううん、足が…」

足の方を見る

P「これは…挫いたみたいだな」

どうやら足を挫いたようで足首が赤くなっていた

P「立てるか?」

海美「ん…いたっ」

どうやら立てないようだ

P「仕方ない」

俺は海美に背を向けてしゃがみ込む

P「乗れ」

海美をおんぶして立ちあがる

…こんなに軽かったんだな

P「しっかり掴まってろよ」

海美「うん」

すこしゆっくり歩き出す

少し歩いたところで海美が口を開いた

海美「…なんだか懐かしいね」

P「なにがだ?」

海美「憶えてる?10年前のこと」

P「…憶えてるよ」

10年前の夏祭り、俺達とはぐれてしまい迷子になった海美は一人で泣いていた

だけど俺は海美を見つけ、泣き止ませるために今みたいにおんぶして両親の待つ場所へ連れて行ったことがあった

海美「あの時ひとりぼっちで、周りは暗くて、とっても怖かった」

海美「このままずっと一人なんじゃないかって思っちゃった」

海美「でもPが来てくれて、ずっと側にいてやるって言ってくれて」

海美「私嬉しかった」

P「…」

海美「私の気持ち、あの日からずっと変わってないよ」

海美「ずっと、大好き」

P「…」

小っ恥ずかしくなってきたので一旦ここまで

海美「私ね、もう友達くらいじゃ物足りないよ」

P「…」

海美「先に進みたい、彼女って言わせたい」

P「海美…」

海美「この気持ち、もう止められない」

海美「Pの気持ち、聞かせて?」

P「俺は」

P「俺はな、海美、お前に笑っていて欲しかったんだ」

P「あの日お前が泣いてた時、俺は誓った」

P「一番近くにいた…いつも側にいるお前の笑顔を守ろうって」

P「俺もあの日からその気持ちは変わってないよ」

海美「…」

P「あの頃はわからなかったけどさ、今なら分かるよ、なんで俺がお前の笑顔を守りたかったか」

P「あの頃からきっと、俺は海美の事が好きだったんだ」

海美「…!じゃあ…」

P「お前がストレートに伝えてきた気持ち、遠回りしたけどお前に伝える」

P「俺もお前が好きだ」

P「高坂海美が、世界で一番好きだ」

海美「…」

P「…海美?」

海美「やっと…やっと届いた」

俺の背中で海美は泣いていた

P「お、おい泣くなよ」

海美「だって…やっと…好きって」

P「ほら泣くな泣くな、俺はお前を泣かせたいわけじゃないんだから」

海美「うん…」

P「ほら、ハンカチ」

海美「うん…ありがと」

P「あの日言ったこと、もう一度言ってやる」

海美「うん…」

P「俺がずっと側にいてやる、だから泣くな」

海美「…うん!」

P「…改めて言うと照れくさいな」

海美「私は嬉しい!」

P「そうか…ん、見えてきたな」

いつもの場所が見えてきた

恵美「おーい、花火始まっちゃうよー」

P「今行くー」

恵美に返事を返し、俺達は進んだ

海美が足を挫いたことを説明した後、俺達はブルーシートを敷いた

冬馬「そろそろだな」

P「ああ」

時計を見る、もう間もなく花火があがる時間だった

ヒュー

バッ

恵美「あ、上がったよ!」

花火が始まった

恵美「た~まや~」

エレナ「か~ぎや~」

琴葉「綺麗ね…」

莉緒「このみ姉さん、花火を見ながらの1杯…素敵だと思わない?」

このみ「莉緒ちゃん、言葉にする必要ある?」

莉緒「ふふ、そうね」

毎年見ている花火だけど、今日はまた一段と綺麗だった

それはきっと…

海美「花火、綺麗だね!」

P「ああ」

海美が隣にいるからかも知れない

海美の頭に手を置く

海美「…」

海美が頭を俺の方に預けてきた

そのまま髪を撫でてやる

花火が終わるまで、俺達はそうしていた

一旦ここまで
海美ルート突入
この後恋のlesson初級編まで終わらせた

花火が終わり、俺達は帰路についた

恵美「んじゃまたね」

P「三人だけで大丈夫か?」

恵美「へーきへーき」

恵美達はタクシーを拾って帰るそうだ

響「自分たちもタクシー拾うから平気だぞ」

貴音「わたくしも、問題ありません」

P「そうか」

このみ「私達は育ちゃんと環ちゃんを送ってからになるからPは海美ちゃんと先に帰ってなさい」

P「わかった」

このみ「冬馬くんと翔太くん、ボディーガードよろしくね」

P「俺達も帰るか」

海美「うん」

P「足はどうだ?」

海美「ちょっとマシになってきたよ」

P「それなら良かった」

海美を負ぶって歩く

P「海美」

海美「?」

P「改めて、これからよろしくな」

海美「…うん!よろしく!」

家の前まで辿り着いた

海美「ここまでで大丈夫」

P「了解」

海美を降ろしてやる

P「一応応急処置はしたけど、帰ったらちゃんとするんだぞ」

海美「うん、わかってる」

P「ならば良し」

海美「あ、ちょっと屈んで?」

P「なんで」

海美「良いから良いから」

P「?」

言われた通り少し屈む

海美「…ん」

頬に柔らかい感触があった

P「!?」

海美「えへへ、色々な意味のお礼!」

P「なっ!う、海美!?」

思わず頬をおさえる

されたことに気付き一気に顔が赤くなる

海美「幸せにしたげるね!」

P「それ俺の台詞…」

海美「お、おやすみ、また明日!」

海美も恥ずかしかったのかそそくさと家に入っていった

うみみがいい感じだけど、裏でめぐみぃがフローズンワード歌ってそうだ…

>>315

部屋に戻りベッドに転がりながら今日のことを思い出す

それだけで胸の奥から海美への愛おしい気持ちが溢れてくる

我ながら単純だ、と苦笑しながら窓の方を見ると海美が窓を叩こうとしていた

すぐに窓を開けてやると海美が部屋に飛び込んできた

P「おいおい、足は良いのか」

海美「へーき」

P「どうしたんだ?」

海美「あのね、今日はなんだか一人だと寝れる気がしないから」

海美「一緒に寝よ?」

一旦ここまで
一緒に寝るっていってもKENZENな意味ですよ、KENZEN!

ここまで読んだ感じだと琴葉エレナは恵美ルート攻略後に解放されるサブキャラ感あるけど最初から攻略対象なんだな

>>331
良いところを突いてくる
お察しの通り琴葉エレナは恵美攻略後
ジュリアは翼攻略後にやる予定

P「い、一緒に寝るってお前…」

海美「お願い!」

P「…」

海美「…」

P「仕方ないな…」

海美「やった!」

P「寝ぼけて俺を蹴り落とすなよ?」

海美「うん!」

海美と一緒にベッドへ上がる

P「一応タオルケットは用意してあるから使ってくれ」

海美「ありがと」

俺が壁際になるように奥へ行く

P「それじゃあ海美、おやすみ」

恥ずかしいので海美に背を向ける…が

海美「こっち向いてよ」

肩を掴まれて強制的に体を反転させられた

P「…」

そのまま海美が抱き付いてきた

P「…暑いんだが」

海美「うん、暑いね」

そう言いながらも海美は体を離そうとしない

むしろ頭を胸にぐりぐりと押しつけてくる

体も密着しているので柔らかい部分が触れたり、風呂上りのシャンプーの匂いなどが鼻腔をくすぐってくる

P「あっ」

海美「?」

P「いや、なんでもない」

海美に気付かれないように少し腰を引いた

海美「んー」

P「…暑いんだが」

海美「暑いね」

P「…」

海美「…」

P「…海美?」

海美「ん…」

P「寝たか…」

鋼の意志でハイパー化した愚息を収め、海美を抱き寄せる

P「…おやすみ、海美」

頭を撫でながら、俺は意識を闇に委ねた

P「ん…?もう朝か…」

心地良い目覚めだった

好きな人と一緒に寝るだけでここまで変わるものかと考えながら体を起こす

P「海美はもう起きたみたいだな」

隣にいた愛しい人はすでに目を覚ましたらしくベッドの中にはいなかった

P「俺も起きよう」

ベッドから降りて着替えをし、朝食を摂るために下へ降りていった

顔を洗いに洗面所に行くと桃子が顔を洗っていた

P「おはよう桃子」

桃子「…?」

顔を拭いた桃子が不思議そうにこちらを振り向く

桃子「………………!?」

突然桃子が顔色を変えた

桃子「お姉ちゃん!お兄ちゃんが休みの日にこんなに早く起きてる!天変地異の前触れだよ!」

などと失礼なことをのたまいながらリビングに走って行った

顔を洗い、歯を磨いた後リビングに顔を出すと海美がこのみ姉さんに料理を教わっていた

そしてテーブルにはわかりやすいくらい不機嫌な桃子が座っていた

P「おはよう桃子」

改めて挨拶をする

桃子「………………………」

じろりと一睨みしたのち

桃子「ふんだ」

顔を背けた

このみ「あらおはよう、本当に起きてるなんて」

P「失礼な、俺だって早く起きるよ」

このみ「もうすぐご飯出来るから待ってなさい」

P「海美、料理出来たんだな」

このみ「前からちょくちょく教わりに来てたもの」

P「そうだったのか」

このみ「Pのために美味しいご飯を作れるようにーってね」

このみ「愛されてるわね~」

P「ん、まあな」

このみ「あら、余裕ね。これだから恋人持ちは…」

海美が自分のために苦手だった料理を克服しようと頑張ってくれている

こんなに嬉しいことはない

海美「お待たせ!」

海美が料理を運んでくる

P「おお」

焼き魚に味噌汁、漬物など定番の物だが数年前に見た炭に比べるとはるかに上達している

このみ「それじゃあ食べましょうか」

「いただきます」

まずは米を一口食べる

P「うん、良い炊き加減だ」

そして味噌汁をすすると…

P「こ、これは!」

P「これ、海美の家の味とウチの味の良いところを合わせてあるのか」

海美「うん、お母さんにレシピもらってね」

このみ「ウチの作り方と照らし合わせて良く出来そうなところを弄りながら作ったのよ」

桃子「…美味しい」

海美「良かった!」

このみ「海美ちゃんにはこれからウチの味全部教えてあげるから」

海美「はい!ありがとうこのみさん!」

これから楽しみだ

朝食後部屋に戻ると海美もくっついてきた

ベッドに腰掛け片手で本をめくる

…右腕には海美がコアラのように引っ付いていた

P「なあ海美」

海美「なに?」

P「暑いんだが」

海美「うん、暑いね」

そう言いながらも海美が離れる気配はない

P「お前は本当に甘えただな」

海美「好きな人に甘えられるって幸せだって思う」

P「ん、そうか」

…ベッドの上に二人きりだと緊張するな

本をめくっているとふと思い出した

P「そういえば…」

海美「?」

P「お前、宿題はやったか?」

海美「…」

P「…」

海美「…」

P「…」

沈黙が空間を支配した

冬馬「で、呼び出された訳か…」

恵美「あ、あたし宿題終わってるし帰って良い?」

P「宿題のノートを開いて証拠を見せたらな」

恵美「ぐぬぬ…」

翔太「僕は終わってるから見る側にいるよ」

P「結局宿題終わってないのは…エレナ、恵美、海美の3人か」

響「自分は冬馬が終わってるのにちょっと驚いたぞ」

冬馬「どういう意味だ我那覇、俺は夏休みを満喫するために宿題は夏休みの最初の方に終わらせる主義なんだよ」

P「まあそうだよな…恵美や海美はなんでいつもギリギリになるんだか」

恵美「や、だってさ~」

海美「私だってやろうやろうと思うんだけど」

恵美「気が付いたら一日経ってるんだよね~」

海美「ね~」

P「お前ら…」

桃子「お兄ちゃん」

P「どうした、桃子」

桃子「恵美さんはともかく、海美さんを100%やる気にさせる方法ならあるよ」

P「なんだって」

桃子「ちょっと耳貸して」

桃子が耳打ちしてくる

桃子(宿題が終わるまでお兄ちゃんへの接触を禁止すれば良いよ)

P(そんなんであの海美が宿題するようになるか?)

桃子(お兄ちゃん、もっと自惚れても良いと思うよ。多分お兄ちゃんが思ってる以上に海美さんお兄ちゃんのこと好きだから)

P(そこまで言うなら試してみるか)

P「海美」

海美「なに?」

P「宿題が終わるまで、俺への接触は禁止だ」

カラン

海美が手に持っていたペンを落とす

海美「」

P「宿題が終わったらまた」

海美「頑張る」

P「え?」

海美「めぐみー遊んでる場合じゃないよ宿題やろう」

恵美「あー、スイッチ入れられた…」

本当にやる気になった

桃子「それじゃあお兄ちゃん、集中してる海美さんの邪魔しちゃ悪いから桃子と遊んで」

P「仕方ないな、最近構ってやれてなかったしたまには良いぞ」

P「桃子と遊ぶの久しぶりな気がするな」

桃子「…そうだね、お兄ちゃん海美さんや友達とばっかり遊んたもんね」

P「お?もしかして寂しかったのか?」

桃子「そ、そんなこと言ってないでしょ!」

P「悪い悪い」

桃子の頭を撫でてやる

桃子「も、もう!子供扱いしないでよ!」

P「ん、そうか」

撫でる手を止めた

桃子「あっ」

P「ん?」

桃子「別に、嫌じゃないから…頭撫でるの許してあげる」

P「はいはい」

素直じゃない妹だ

P「どうだ、調子は」

桃子が疲れたので部屋に戻ってしまったので宿題組の様子を見に来る

恵美「疲れた~」

海美「ううう…」

めぐうみコンビは大変お疲れのご様子

P「エレナは?」

恵美「エレナはそんなに宿題残ってなかったからすぐ終わらせて今響達と買い物行ってる」

P「なるほど」

海美「疲れた~」

P「どれどれ…なんだ、あと少しじゃないか、頑張れ」

海美「うん…」

P「終わったらご褒美あげるから」

海美「ほんと!?よし、あと少し頑張る!」

恵美「…」

P「?恵美、どうしたんだ?」

恵美「あ、いや、やっぱり仲良いなって」

P「ま、まあ実はその…」

海美「私達、付き合い始めたの!」

P「ま、まあ、そういうことだ」

恵美「あっ…そ、そうなんだ、おめでとう」

恵美「まああたしは時間の問題だと思ってたけどね!いやーめでたいめでたい!」

恵美「さ、さ、彼氏に甘えるためにも早く終わらせないとね!」

海美「うん!」

P「…恵美?」

恵美のテンションに違和感を覚えた

P「ま、今日のところはこんなところだな」

海美「うーあー…」

恵美「…」

P「残りはまた明日だな」

海美「ううー…」

恵美「…」

P「恵美?」

恵美「…ん?どしたの」

P「いや、上手く言えないけど…なんだ、その…」

恵美「もー、変なPだなー」

なんだろう、恵美が無理をしているようにみえる

一旦ここまで

恵美「んじゃ、ウチらは帰るね」

P「ああ」

恵美「じゃまた」

P「送っていこうか?」

恵美「いいよいいよ、ちょっとカラオケ行きたいし」

P「そうか…恵美」

恵美「ん?」

P「もし悩んでることがあるなら相談に乗るからな、いつでも時間取るから」

恵美「…そういうのは可愛い彼女にしてあげなって」

恵美「大丈夫、そんなに気にしなくても次会うときにはきっと元のあたしに戻ってるから!」

P「めぐ」

恵美「そんじゃまたね!」

恵美は逃げるように帰って行った

P「…泣きそうな顔してたのに何もないわけないだろ…」

それから夏休みが明けるまで、恵美は顔を出さなかった…

そして夏休みと8月が開け、9月へと時が進む

海美「久しぶりの学校だ~」

P「宿題終わらせたら後は楽だって言っただろ?」

海美「うん、楽だった」

P「学校が始まったしまた気を引き締めて生活リズムを戻していかないとな」

海美「だね」

P「おはよう」

海美「おはよ!」

教室に入るといつもの面子がすでに揃っていた

冬馬「よう」

翔太「おはよー」

貴音「おはようございます」

俺達が席に着くと恵美がやってきた

P「恵美、おはよう」

恵美「おはよ!いやー、二人とも今日も熱いねー!」

いつものテンションで喋ってくる

どうやら悩みは解決したようだ

貴音「…」

夏休み明けの学校は特に変わりなく、毎年繰り返している全校集会を終え教室に戻る

あえて変わったことがあるとするならば、教師の石原先生が昨日退職したらしいということだけだった

教室に戻り全員が着席したのち、黒井先生が喋りだす

黒井「貴様達に報告しておくことがある」

黒井「間もなく我が校ではプロデューサー選挙を行う」

プロデューサー選挙…その言葉に教室がにわかに騒がしくなる

うちの学園には生徒会の代わりにプロダクションと呼ばれる組織が存在している

とは言っても世間一般で言われている生徒会と役職の名前を変えただけで中身は変わらないそうだが…

生徒会長の代わりがプロデューサーだそうだが何故社長ではないのか

黒井「貴様達の中で立候補したい者は私の所に来るが良い、詳細を伝える」

黒井「ただし私の所に来る以上生半可な気持ちで来るなよ」

そういうと黒井先生は教室を出て行った…

一旦ここまで
まさかこんな時間に寝落ちかますなんて思いませんでした

恵美って失恋したら空元気でいつも通りに接してくるけど裏で泣いてそう

P「プロデューサー選挙か…あんまり興味ないな」

冬馬「だな」

そもそも今のプロデューサーだって誰だったか曖昧なくらいだ

冬馬「この後どっか寄ってかねーか?」

冬馬がアソビに誘ってくる

だが…

P「悪い、今日はちょっと海美に陸上部のほうに呼ばれてるんだ」

冬馬「そうか、なら仕方ねーな」

P「悪いな」

冬馬「気にすんなよ」

冬馬と別れて陸上部に顔を出す

海美「あ、来た来た!」

P「どうしたんだ?陸上部に呼び出すなんて」

海美「実はお願いがあって」

P「うん」

海美「私の専属マネージャーやって欲しいなって」

P「…うん?」

海美「そしたら一緒にいられる時間も増えるし!」

P「待て待て、俺はマネージャーなんかやったことないぞ」

海美「大丈夫!私が戻ってきたらタオルで汗を拭いてくれて、ドリンク飲ませてくれて、後甘えさせてくれたらいいだけ!」

P「まあそれくらいなら良いけど」

海美「じゃあ早速今日からお願い!終わったら一緒にかえろ?」

P「わかったよ」

海美に頼まれ専属マネージャーをやることになった

専属とは言っても他に何もやらないというのは感じが悪いので暇していた響を捕まえて聞いてみた

響「はー、海美も結構強引だなー」

P「まあ許してやってくれ」

響「Pも満更じゃなさそうだね、もしかして付き合ってたりして!」

P「良くわかったな」

響「なーんてどっちもヘタレだしそんなわけ…えっ?」

P「だから、付き合ってる、海美と」

響「」

響「!?」

P「…そんなに意外だったか」

響「だ、だってヘタレだって有名な二人が付き合うなんて!」

どの辺りに有名なのか聞いてみたい気もしたがへこむ事態になりそうなのでやめておこう

響「それで、どっちから告白したんだ!?」

響が目をきらきらさせながら聞いてくる

女子って何でこんなに恋バナとか好きなんだろうか

P「…海美からだよ」

響「うわぁ…女の方から言わせるなんてやっぱりPは甲斐性なしだぞ」

P「うっせ」

P「話しは後でしてやるからマネージャー業務のこと、教えてくれよ」

響「あっと、そうだった」

話を打ち切り本題にはいる

響「といっても基本的に海美がPに頼んだことをやるだけだぞ!」

P「つまり他の生徒の汗を拭いたりドリンクを飲ませたり甘やかせば良いのか」

響「…海美、それは流石にないぞ…」

響がとても残念なものを見る目をしている、失礼な奴だ

響「とりあえずタオルを渡したりドリンクを渡したりって感じさー」

響「あ、別に甘やかしたりしなくて良いからね!」

P「そうなのか」

響「後は備品を倉庫に直したりするぐらい!」

P「わかった、ありがとう響、時間取らせて悪かったな」

響「なんくるないさ~、マネージャーが増えたら自分にとっても便利だしね!」

一旦ここまで

響「じゃあタオルとドリンクの場所教えるね」

P「ああ」

響「あ、そのうち洗濯とかもすることになるかもだけどタオルの匂いとか嗅いじゃ駄目だぞ!」

P「しねーよそんなこと」

響「ほんとかぁ?」

P「当たり前だろ、俺は海美一筋なんだから」

響「…なら大丈夫だね!」

P「ああ」

響から教わった通り俺は海美より先に休憩に入った部員にタオルとドリンクを渡していく

響「ね、簡単でしょ?」

P「ああ」

響は後ろについて変なところがないか見てくれている

響「今まで自分たちで取りに行かなきゃ行けなかったからマネージャーは本当にありがたいぞ」

P「そうか」

響「P、海美の専属じゃなくて正式に陸上部のマネージャーにならないか?」

P「気が向いたらな」

はぐらかしておいた

P「ん」

辺りを見ていると海美が休憩に戻ってくるのが見えた

タオルとドリンクを持ち海美に駆け寄る

P「海美、お疲れさん」

海美「ありがと!」

P「ほら、動くなよ」

タオルで海美の顔や頭を拭いてやる

海美「はふぅ~…」

P「気持ちいいか?」

海美「うん…気持ちいい…」

汗を拭き終わると海美は俺の足に頭を降ろした

P「お前本当に俺の膝枕好きだな」

海美「うん」

P「硬くて寝心地悪いだろうに」

海美「そんなことないよ、私Pの硬くて大きいの好きだし」

P「………………………」

その後練習は終わり、俺は片付けを手伝いながら海美が戻ってくるのを待っていた

響「じゃあP、明日もマネージャーよろしく頼むぞ!」

P「ああ」

少し手伝っただけだがああやって海美のサポートをする、というのは悪くないかもしれない

海美「お待たせ!」

そんなことを考えていると着替え終えた海美が戻ってきた

P「それじゃあ帰るか」

海美「うん!」

元気に返事をしながら海美が左腕に腕を絡めてくる

P「…歩きにくいぞ」

海美「大丈夫!」

P「海美はさ」

海美「?」

P「俺にマネージャー、続けて欲しいか?」

海美「うん」

P「今日ほんの少しかじっただけだから失敗するかも知れないぞ?」

海美「大丈夫!私が選んだんだもん、間違いない!」

海美「それにもうすぐ大会もあるから、どうせ目指すなら一人より二人が良いし」

P「…そうか」

海美の気持ちを聞いて、俺は決意した

P「海美、俺陸上部にマネージャーとして入部しようと思う」

P「どこまで出来るかは分からないけど…全力でお前をサポートしたいんだ」

海美「うん…ありがとうやっぱり大好き!」

翌日から本格的にマネージャー業務が始まった

11月の大会へ向けて本格的に練習を開始するらしい

P「…」

練習を頑張っている海美を見ているとこちらもやる気になってくる

P「みんながいつ戻ってきても良いように準備しておくか」

そう呟くと俺はタオルとドリンクの準備を始めた

突然だけど文化祭の出し物募集

どれだけ潜んでたんだ…
とりあえずクラス出し物は演劇、お化け屋敷、メイド喫茶の中から決めさせて貰います
他のは他クラスの出し物として採用するかも
一旦ここまで

これは今日も決まらないな…と思っていたとき、冬馬が立ち上がった

冬馬「このままじゃ埒があかねえ、もうそんなに期間もねえしさっさと決めちまおうぜ」

P「決めるったってなんかアイディアでもあるのか?」

冬馬「一応はな」

そう言うと冬馬は教壇へ向かい正面に立った

そして冬馬は自分のアイディアを話し始めた

冬馬のアイディアを受け、クラス中からも少しずつアイディアが出始めた

最終的にお化け屋敷、メイド喫茶、演劇の三つに絞られ多数決で決めることになった

冬馬「で、お前は何にするんだ?」

P「そうだな…」

正直どれでも良いんだが…

冬馬「まあメイド喫茶なら高坂のメイド姿が見られるかもな」

P「…」

冬馬に言われ海美のメイド姿を想像する



…良いな、これ

…だが

P「メイド喫茶以外なら何でも良い」

俺以外が海美に奉仕されるなんて許されるはずがない

結局クラスの出し物はお化け屋敷となった

一部猛烈な反対もあったが残念ながら多数決の前には黙らざるを得なかった





P「海美は文化祭どうするんだ?」

休憩中の海美に声をかける

海美「私はPとなら絶対楽しいから一緒に回れたらそれでいいよ」

P「そっか」

その夜、風呂から上がった俺はふと窓から海美の部屋の方を見た、すると海美も風呂上りだったのか着替えようとしていたところ、目が合ってしまった

P「」

海美の下着を見てしまい硬直する

海美も顔を真っ赤にしてしゃがみ込む

ようやく再起動した俺は慌ててカーテンをしめ、ベッドに潜り込んだ

そのまま目を瞑り、見てしまったものを忘れようと努力しながら眠りに落ちた

夜、違和感を覚えて目を覚ます

体に何かが乗っているような感覚

薄ら目を開けると…海美が俺に馬乗りになっていた

P「…!?」

声を上げそうになったが海美が静かにとジェスチャーをする

P「…どうしたんだ?」

海美「…さっき、Pに下着を見られてから体が変なの」

P「…」

海美「体の中から熱くなってきて、抑えられない」

P「海美…」

海美「ねえ、キスして良い?」

なにか言おうと口を動かす前に、俺の口は海美の唇に塞がれた

海美「ん…」

P「…」

柔らかい感触を感じ、部屋に満ちる雰囲気で脳が溶けそうになる

海美「ん…」

P「…」

海美が口を離す、頬は上気しており息は荒くなっている

海美「…もう一回」

その後も海美は貪るようにキスをしてくる

されるがままに海美のキスを受けていた俺は、隙を見て海美を転がし覆い被さった

海美「…」

P「海美…ここまでされたら俺だってむう我慢出来ないぞ」

海美「うん…良いよ、我慢しないで」

P「怖かったら言えよ」

海美「大丈夫、Pと一緒なら怖くないから」

その夜、二つの影が一つに重なった

一旦ここまで
何書いてんだ俺何書いてんだ俺

朝、とても幸せな気分で目を覚ます

昨日の夜、とうとう海美と一線を越え、心だけでなく体も深く繋がった

しかし海美のスタミナが凄すぎて先にダウンさせられてしまった…次は勝ちたい

海美「んー…」

隣に一糸まとわぬ姿で眠る愛する人の頭を撫で、今日の予定を考えようとしていると、背中に腕を回された

P「ん、海美、起きたのか?」

海美「うん」

海美「昨日は…すっごく良かった」

P「俺もだよ」

海美「だからね、もう一回やろ」

P「えっ」

海美が覆い被さってくる

P「ちょ、まっ!」

海美「じゃあ、行くよ」

朝から一発、プロデュースした

P「はあ…はあ…」ヨロヨロ

海美「~♪」

体力が…持たない

P「海美…今日は一日ゆっくりしないか?」

海美「良いよ」

P「ああ、ありがとう」

海美「体力が回復したら…ね?」

P「…えっ」

休日の二日間を体力を回復させたり消耗させたりを繰り返し過ごした

冬馬「お前、なんか疲れてないか?」

P「え?いや、大丈夫だ」

冬馬「なら良いけどよ」





響「結構マネージャー業務慣れてきたんじゃない?」

P「おかげさまでな」

響「こっちもスケジュールとか管理して貰えてだいぶ助かってるぞ」

P「なら良かったよ」

思ったように進まない
一旦ここまで

文化祭の準備は順調に進み、いよいよ文化祭当日となった

冬馬「お前、今日はどうするんだ」

P「海美と一緒に回る約束してる」

冬馬「そうか」

P「悪いな」

冬馬「別に、気にしてねーよ」

P「それじゃあ」

冬馬「おう、高坂と楽しんできな」

P「ああ」

海美「お待たせ!」

P「おう」

海美「どこから見て回るの?」

P「特に決めてないけど、適当に回ってみるか」

海美「うん」

海美と手を繋いで文化祭を見て回る

学園の規模的に毎年たくさんの出し物が出るので、適当に見て回るだけで楽しめる

もっとも有志出展の中には毎年変なモノが混じったりするので気を付けないと巻き込まれたりする

去年なんかは美術部の出展で学園中がゴミだらけになったりした

P「とりあえず見たいのは午後のライブかな」

海美「ライブもあるんだ」

P「ああ、そういえば海美は去年見てなかったっけ」

海美「うん」

P「凄かったぞ、Bクラスにジュリアって子がいるんだけど圧倒的でな」

P「最後は名前は知らないけど三人で演奏してな」

P「だから今年も是非見たくてな」

海美「そのジュリアって女の子?」

P「ああ」

海美「ふーん…」

P「はいはい、嫉妬しなくてよろしい」

海美の頭に手を置く

P「俺が好きなのは海美だから、安心しろ」

海美「…うん!」

P「それじゃあ行くか」

海美「うん!」

海美と恋人になって過ごす初めての文化祭、たっぷり楽しもう

P「お、今年も出店してるな」

視線の先には有志出展のうどん屋があった

去年発見した出店で、とても学生の作ったモノとは思えないくらい完成度の高いうどんを出す店だ

P「かけうどんで良いか?」

海美「うん」

P「すいません、かけうどん二つ」

「はい」

運ばれてきたのは相変わらず完成度の高いうどん

噂ではうどんは手打ちで、出汁も自分達で取っているとか

その後クラスを手伝ったり、ライブを堪能したりで文化祭はあっという間に過ぎていった

P「あっという間だったな」

海美「うん」

屋上から校庭を見下ろす

校庭に置かれたキャンプファイヤーの周りではたくさんの生徒が楽しそうに声を上げていた

腰を下ろし、体を横にする

視線の先には数え切れないほどの干した血が輝いていた

海美が隣で同じように寝転がる気配がした

P「良い雰囲気だ」

海美「うん、これでお団子でもあれば良いのに」

P「文化祭と月見を同時に、か?ちょっと欲張りだな」

二人で笑う

その時、屋上の扉が開いて冬馬たちがやってきた

冬馬「お、やっぱりここだったか」

P「なんでここに?」

冬馬「今日は晴れでしかも満月だからな、月見でもやるかって話しになってな」

翔太「お団子も買ってきたし」

恵美「みんなで月見ってのも良いもんだよね~」

うわぁ誤変換
正しくは星達で

みんなで団子を食べる

文化祭で来た客や行った店などの話しで盛り上がっていた

今日あったこと、明日からのこと

皆が思い思いにその日を過ごす

騒がしい一日は終わり、明日からまた日常に戻っていくだろう

今年もあと二ヶ月を切った

これから先どんな道を歩いて行くのか、俺はまだ決められずにいた

文化祭では皆がやりたいことをやっていた

だけど俺はそれを見ていただけだ

なら俺は…何をしたいんだろうか

俺の悩みを他所に、空に浮かんだ丸い大きな星は、静かに俺達を照らしていた

一旦ここまで
進路ってそう簡単に決まらないよね
わしにも覚えがある

文化祭が終わり、再び陸上大会に向けての練習が始まった

文化祭期間中、活動出来なかった分の遅れを取り戻すためにいつもよりハードな練習をしている

P「…」

ドリンクの準備が終わり、陸上部の練習を見学する

みんな真剣な表情で練習している

普段はふざけあったり緩い空気が流れているが、今、一切の油断がない

みんな目標に向かって真剣に努力していた

その表情を見たとき、文化祭で生まれた焦りの種が芽を出した

みんな目標に向けて努力している

だけど俺は?

俺は何をしている?

何一つ目指すモノを持たず、ただ日々を浪費しているだけだ

昔から何も目指すモノもなく、流されるままに今まで生きてきた

そして今、それが間違いだったと気付かされた

海美達が休憩に入る

一旦考えることをやめ、タオルとドリンクを人数分用意し、配りに行った

P「なあ海美」

海美「んー?」

汗を拭き、ドリンクを飲んで休憩している海美に問いかける

P「海美は将来、どうするか考えたことあるか?」

海美「んー…Pのお嫁さん」

P「それは内定済みだろ?」

海美「えへへー」

P「仕事とか」

海美「うーん…私は特に考えてないけど…運動に関わるお仕事がいいなー」

P「コーチとか、そういう感じか?」

海美「うん、それでも良いんだけど…ダンスもやってみたいなって」

P「そういえばお前ダンスが好きだったな」

海美「うん」

海美「Pはどうするの?」

P「…俺は」

P「俺は…わからないんだ」

自分の気持ちを素直に吐き出す

P「今までその場しのぎで生きてきたからかな、将来のビジョンがまったく見えてこない」

海美「…」

P「自分が何をやりたいのか、自分の事なのに何もわからないんだ」

P「このまま何も見つからなかったら、お前に置いて行かれるんじゃないかって思うと怖くてな」

その直後、海美に抱きしめられた

海美「大丈夫、私はいつも隣に…いるよ、置いていったりしない」

P「海美…」

海美「Pはずっと側にいるって言ってくれた、だから私もずっと側にいるから、大丈夫」

海美に抱きしめられていると焦りや不安が溶けていく

P「ああ…ありがとう海美」

素直な感謝を伝えた

P「まだ先が見えないのは変わらない、でももう悲観はしない」

P「海美の側にいるために、俺は俺に出来ることをやる」

海美「その意気その意気!」

海美「私達は二人で進めるんだから、楽しいことも、苦しいことも、二人で共有していこうよ!」

P「ああ、そうだな」

海美のおかげで気持ちが楽になった

これからも海美を隣で支えていくために、今できることを全力でやろう

練習を終え、ハードルやその他の備品を倉庫に片付けていると

海美「一緒に帰りたいから手伝うよ!」

と海美が手伝ってくれた

海美「鍵も預かってるから終わらせちゃお」

P「ありがとう海美」

海美「どういたしまして!」

二人でやるとやはり早い

あっという間に片付け終わった

P「よし、備品も揃ってるし帰るかな…海美、鍵を」

そう言いかけたとき、海美に突き飛ばされた

P「おわっ!」

突き飛ばされた先にはマットがあったので怪我や痛みはなかったが体勢を崩して倒れてしまう

P「海美!いきなり何を!」

言い切る前に海美が馬乗りになる

P「ちょ、何考えてるんだ!学内だぞ!」

海美「知ってるよ」

P「帰ってからでも良いだろ」

海美「さっきPを抱きしめたら我慢できなくなっちゃった」

P「だ、駄目だ!」

海美「でも体は正直だよ」

P「くっ…」

海美「もうすぐ大会だし…Pの力、私にちょうだい?」

P「待てって!……………アーッ!」

海美は棒遊びも得意だった

一旦ここまで
海美って凄く強そうなイメージ
逆に恵美や翼は一度ヤると恥ずかしがっていつまでも初々しいイメージ

ところで昨日は更新できなくて申し訳ない
このみ姉さんと同い年になったお祝いでちょっと更新する暇がなかった

その後大会まで練習練習棒遊び練習棒遊び棒遊び棒遊び練習を繰り返し、いよいよ陸上大会当日となった

陸上部員は学園から出るバスで会場に向かうことになっており、マネージャーである俺もバスに乗せて貰うことになっている

席は最前の補助席だったのだが…

海美が隣が良いと言い出し、最終的に海美の隣だった響と変わり、俺が海美の隣に

響が補助席に座ることになった

海美「とっなり~とっなり~♪」

上機嫌な海美に対し

響「自分…選手なのになんで補助席に…」

響は体育座りでしょげていた

…大会が終わったら何か奢ろう

会場に到着し、バスを降りる

P「…すごいな」

初めて陸上競技場を自分の目で見た、最初の感想はそれだった

P「こんな広いところで海美が走るのか…」

自分が走るわけでもないのに会場の広さに少し戦慄した

海美はこの会場に萎縮していないか目を向ける

海美「うーん楽しみ!」

どうやら杞憂のようだ

割り当てられた控室に荷物を運び、選手達は着替えのため更衣室に向かった

この先競技が始まるまで俺の出番はないので客席へ向かう

客席には既にいつもの面子が揃っており、こちらに手を振っていた

P「お前ら早いな、まだ時間あるのに」

恵美「せっかくだし海美達の練習も見ようかなーってね」

琴葉「私も、プロデューサーになった以上部活動には目を通しておかないと…これから部費とかを管理しないといけないから」

田中さんは真面目だな

冬馬「俺は別にこんな早くに来なくても良かったんだがよ」

翔太「とか言ってるけど僕が起きるより早くに電話かけて来たの誰だっけ-?」

冬馬「おまっ!」

P「はは、ありがとうな」

貴音「私は響、海美、その他の者達が本日のために努力していたことは知っています」

貴音「だから私は、その友人の努力の結果をこの目に刻みましょう」

P「貴音…」

みんなが駆け付けてくれている

P「頑張れ、海美」

開会式が終わり、いよいよ陸上大会が始まる

会場の空気は張り詰め、選手達の緊張が客席にまで届いている気がする

そんな中、第一競技が始まった






陸上部のみんなは大会に勝つために必死に練習してきた

俺はこの目で見てきたから良くわかる

だけど

「765学園、3着!」

それは他の学校も同じなんだ

P「…」

うちの学園だけが努力している訳じゃない

それはみんなもわかっていることだ

だけど負けて泣いている部員を見ているとやっぱり

P「悔しいなぁ…」

悔しさが込み上げてくる

競技に関係のない俺でもそうなのだから選手の悔しさは相当なものだろう

「次の競技は~」

アナウンスが聞こえてくる

この競技は確か海美が参加する競技だ

選手が位置に付いている、もちろん海美の姿もある

ここから見える海美の表情はとても真剣で、綺麗だった

各選手が位置に付く

海美の出場する競技は短距離走

瞬発力、加速力、最高速度、全てが優れている海美の得意競技だ

「位置に付いて」

係員が腕を上げ

パァン

合図をした

その瞬間、海美は後続を完全に置き去りにした

短距離走に参加した他の選手も自信があっただろう

だけど相手が悪かった

「765学園、一着!」

今の海美は控えめに見ても絶好調だ

その後走り幅跳びや障害物走などをこなし、昼休みをむかえる

海美「ね、ね、どうだった?」

P「ああ、凄かったぞ」

海美「えへへ、褒めて褒めて!」

P「よーしよく頑張ったな~」

昼飯も食わず、海美の頭を撫でてやる

海美「私午後も頑張るから」

P「ああ、俺も応援してるからな!」

P「とりあえず昼飯食べようか」

海美「うん!」

鞄から二人分の弁当箱を取り出す

P「一応作ってみたんだ、このみ姉さん程うまくは出来てないけど」

海美「そんなことないよ!Pが私のために作ってくれただけで最高に嬉しい!」

P「なら良かったよ」

弁当箱を開け、箸をつけようとしたところで海美に引っ張られた

P「どうした?」

海美「あーん」

海美が口を開けてこちらを見ている

海美「あーん」

P「ほら」

おかずをつまみ、海美の口へと運ぶ

海美「うん!おいしい!」

海美は嬉しそうだ

海美「はい、あーん」

今度は海美がおかずをつまみ、俺の方へと差し出してくる

P「あーん」

P「うん、悪くないな」

味見はしていたが目立った失敗もなく、美味しい弁当になっていた

それから俺達は自分の弁当には手をつけず、互いに食べさせあっていた

そんな時、肩を叩かれた

P「ん?」

後ろを振り返るととても良い笑顔の冬馬がいた

P「どうしたんだ冬馬?」

冬馬「お前ら、向こう行け」

冬馬の笑顔に気圧され、俺達は移動した

隔離されたまま昼食をとる

邪魔が一切入らなかったので思う存分いちゃいちゃした






昼休みが明けて陸上大会は後半戦をむかえる

みんなの頑張りで上位は維持できている

海美と響は温存出来ているしこれなら優勝を狙えるだろう

…そう思っていた時、それは起きた

P「よーし良いぞ海美!」

海美が参加したハードル走

海美はトップだった

しかし海美になんとか食らいついていた選手がバランスを崩し…

ガシャアァァン

海美を巻き込んで転倒した

P「海美!」

一旦ここまで
今日発売のアクリルキャラプレートをどう飾ろうか悩んでるとあっという間に時間が過ぎて困る

倒れた海美に駆け寄る

P「海美!大丈夫か!」

海美は膝を抱えて歯を食いしばっている

P「膝をやられたのか?少しじっとしてろ」

海美を抱き上げると風花先生が手を振って合図しているのを見つけたので指示に従うことにした

風花「こっちに医務室があるから」

P「ありがとうございます風花先生、もうセクハラしません」

風花「ほんと!?じゃあ先生頑張って治療するから!」

風花「はい、これで良し」

風花先生の手当てが終わる

長年海美の怪我の手当てをやってきたがやはり本職には敵わない

P「流石ですね風花先生、見直しました」

風花「ふふ、たまにはオトナとして頑張らないとね」

P「風花先生、後でちょっと相談が」

風花「何となく用件はわかったわ」

P「お願いします、後で詳しく話します」

P「海美、足の様子はどうだ?」

海美「うん、痛むけど折れてはなさそうだから大丈夫」

P「なら良かったよ」

安心して息を吐いた

P「でもその足じゃ走れないな」

海美「でも後リレーが残ってるのに」

P「走ったら悪化するぞ」

海美「…」

風花「海美ちゃん、私も走らない方が良いと思う」

P「また来年、次がある、だから今回は」

海美「次なんてない!」

海美が咄嗟に立ちあがる

海美「っ」

しかし足が痛むのだろう、すこし顔をしかめて再び座り込んだ

P「ほら、無理するなって」

海美「次なんてない、この大会は今しかないもん!」

P「お前の言いたいこともわかるけど…」

海美「お願い、出させて」

P「…」

海美「お願い」

海美がまっすぐこちらを見つめる

その瞳には強い意志が見えた

しばし見つめ合い…

P「仕方ないな」

折れることにした

海美「ありがとう!」

P「ただし無理そうならちゃんと言うんだぞ」

海美「うん!」

風花「本当は止めなきゃなんだけど、二人で決めたのなら協力するわ」

P「ありがとう風花先生」

P「それじゃあ海美、出番までゆっくり休むんだぞ」

そして俺は医務室を出た

高木「話は聞かせて貰ったよ」

P「高木先生」

うちの学園の部活動には顧問が存在しない

生徒だけで部活動の全てを担っている

もっとも大会や合宿の際には必ず誰かが付いてくるのだが今回はそれが高木先生だった

高木「高坂くんが怪我をしたようだが本人は最後のリレーに出たがっているようだね」

P「はい、俺も最初は止めましたが…本人の意志を尊重したいと思います」

高木「うむ、私も高坂くんの意志を尊重しよう」

P「ということは」

高木「高坂くんのリレー出場を許可しよう」

P「ありがとうございます」

高木「ただし条件がある」

P「え?」

高木「その条件は…」

一旦ここまで

観客席に戻ると冬馬達が駆け寄ってきた

冬馬「おい、高坂は大丈夫なのか」

P「ああ、風花先生に応急手当してもらったからな」

エレナ「それなら一安心だネ!」

P「とりあえず海美には最後のリレーまで休むように伝えてある」

恵美「それってリレーに出場するってこと?」

琴葉「そんな!怪我してるのに!」

P「俺だって止めたさ、だけど出場するのは海美自身の意志だ」

P「俺が言っても聞かないほど、海美は本気だ」

P「それに高木先生も許可を出した、それなら俺は見守るだけだ」

高木先生が出した条件、それは海美をアンカーにすること

アンカーなら他の生徒が差をつければ海美への負担も少なくなるからだそうだ

恵美「Pに出来ること、忘れてるよ」

P「え?」

恵美「海美が頑張ってゴールしたらさ、思いっきり甘やかして褒めてあげること」

恵美「頑張ってくるんだからさ、ちゃんとご褒美あげなよ?」

P「ああ」

恵美「よろしい、じゃあウチらは応援しよ?」

競技が進みもう間もなく最終競技が始まる頃、俺は再び医務室を訪れていた

P「海美、調子はどうだ」

海美「うん、ちょっとマシになったかな」

P「それなら良かった…いけるか?」

海美「いくよ」

P「わかった、そろそろだから移動しようか」

海美「うん」

海美を背負い立ちあがる

P「風花先生、ありがとうございました」

風花「気にしないで」

風花「海美ちゃん、頑張ってね!」

海美「うん!」

P「みんな心配してたぞ」

海美「うん、後で謝らなくちゃ」

P「部活のみんなは逆に気合い入ってたな、多分エースであるお前がやられたからだと思うが」

海美「私エースなんて柄じゃないのに…でも嬉しいな」

P「…最後の競技、勝っても負けても俺はお前を褒めてやる、だからさ」

P「全力で行ってこい!」

海美「うん!行って来る!」

観客席に戻り腰を下ろす

冬馬「いよいよか」

P「ああ」

翔太「こうなったら全力で応援しないとね」

みんな海美の応援をしてくれる

こいつらと友達になれてよかった

改めてそう思う

そして…リレーが始まった

皆後のことを気にしないで良いためか全力で走っている

足の速いメンバーを揃えているので少しリードしているがこのままでは厳しいか

そしてバトンが周り、もう間もなくアンカーの出番が来る

今バトンを手にした響は後続を抜き去り単独トップに躍り出た

P「響-!行けー!」

冬馬「良いぞ我那覇-!」

貴音「響、あなたの力を」

声援に気付いたのか響はちらりとこちらを見ると

bビッ

サムズアップをし、さらに加速した

そしてバトンが…

響「海美!」

海美「響!」

海美に渡る

海美「っ!」

海美が走りだすがやはり痛むのかいつもより数段遅い

冬馬「やっぱり痛むみてえだな…」

桃子「止めた方が良いんじゃ…」

P「…」

二番手の選手が追い上げてくる

翔太「追いつかれるよ!」

P「…」

そして、二番手は一番手となる

琴葉「抜かれた!」

環「うみー!がんばれー!」

少しずつ離されていく

エレナ「ウミー!ファイトだヨ-!」

恵美「海美-!」

だから俺は

P「海美-!勝て-!」

心の底から応援する

少し、海美のスピードが上がった気がした

P「行け!行け-!」

喉が嗄れても構わない

今一番頑張っているのは海美だ

だから俺は、海美を応援する

P「海美-!!」

海美のスピードが徐々に上がり、とうとう先頭と並んだ

先頭の選手は驚愕に目を見開いている

「頑張れ!」

「海美-!」

陸上部のみんなの声援も聞こえる

響「海美-!あとちょっとだぞ!」

P「海美-!」

そして、ゴールテープが切られた

…………………………




バスを降り、海美を背負って歩く

このみ姉さんは初等部組を送っていったので今は二人だけだ

P「お疲れ様」

海美「…うん」

P「よく、頑張ったな」

海美「…うん」

同時に切ったゴールテープ、カメラや検証の結果、相手の方が先に触れていた

最終結果は2位、つまり765学園の陸上部は優勝を逃してしまった

海美「私が怪我しなかったら、勝ててたよね」

海美「私が無理に出場しなかったら、勝ててたよね」

P「…かもしれないな」

海美「…」

P「でもな海美、たらればなんて考えるだけ無駄だ」

P「今自分がやれる精一杯をやった、それが今回はたまたま負けてしまっただけだ」

P「いつも全力なお前のことはみんな知ってる、誰も責めたりなんかしないさ」

海美「…」

P「この負けを次にぶつけよう…時間はある、だから一緒に、走って行こう」

海美「…うん」

そのまま歩き出すと、背中から小さい嗚咽が聞こえた

海美「勝ちたかった…勝ちたかったよぅ…」

P「悔しいか?」

海美「…うん…悔しい」

P「その悔しさをバネにして、次は必ず勝とう」

海美「…うん」

P「だから泣くんじゃない、頑張る決意が涙と一緒に流れちまうぞ」

海美「…ん」

P「よし、偉いぞ」

海美「お腹空いた…」

P「帰ったら何か作るよ、何が良い?」

海美「なんでも!」

P「一番困る回答をどうも」

帰ったら冷蔵庫の中を再確認しないとな

海美「Pの料理なら絶対美味しいから、Pの作った料理が食べたい!」

P「だからなんでも、か…わかったよ」

海美「楽しみにしてるね!」

こうして俺達は帰り道を歩いて行った

一旦ここまで
負けて悔し涙を流す女の子ってすごく綺麗だと思うの
残すイベントはクリスマス正月バレンタインで終わり

P「だいぶ寒くなったな」

刺すような空気に少し震える

今は12月の24日、テンションの上がる人と下がる人が明確に分かれる日の一つだ

こうやって町で人を眺めているだけでも結構な差がある

去年までは俺もあっち側だったんだよな…などと考えているとようやく待ち人がやってきた

海美「お待たせ!」

P「おう」

海美が右腕に抱き付いてくる

P「それじゃあ必要なもの買いに行くか」

海美「うん!」

今日は我が家でクリスマスパーティーを行う

俺と海美は買い出し班だ

海美「何足りないんだっけ?」

P「えーっとな」

恵美と冬馬から渡されたメモを見る

P「恵美からはジュース類とパーティーグッズ、冬馬からはサラダ用の野菜と食器類だとさ」

海美「これわざわざ町まで出る必要なかったんじゃ…」

P「まあ気を利かせてくれたんだろ、恵美なんかにやにやしてたし」

海美「じゃあ遠慮なく!デートしようよ!」

P「急だな、まあ良いけど」

唐突に始まったから何のプランもないけれど、デートを楽しむとしよう




デートとは言っても二人で町を回るだけの簡単なものだ

プレゼントを渡したり高級なレストランなんてものは俺達には無縁だ

それでもショーウインドウの商品の値段を見てはしゃいだり、少し足を止めて町のイルミネーションを見たり、音楽を聴くだけで楽しかった

イルミルミルミルミルミルミルミネーショーン

海美「ふったーりでいーわおー♪」

海美もかなり機嫌がいい

P「っと海美、デートはここまでだ」

時計を見ると思ってた以上に時間が経っていた

P「それじゃあ必要なもの買いに行くか」

海美「うん!」

近所のスーパーへ向かうために移動していると、ショーウインドウの中にマフラーを見つけた

P「マフラーか…」

少し長いマフラーを買って海美と二人で巻くのも有りかな…と考えながらスーパーへ向かった

スーパーとドン○で必要なものを買い揃え帰宅する

飾り付けは既に終わっており、後は買ってきたものを並べると完成だ

冬馬「やっと帰ってきたか、サラダ作るから野菜こっちにくれ」

P「おう」

冬馬に買ってきた野菜を渡すと再びキッチンに戻っていった

ジュースを紙コップに注ぎ、リビングのソファに座る

すると恵美が後ろから顔を出した

恵美「海美とのデート、どうだった?」

P「どうって言われてもただウインドウショッピングしただけだぞ」

恵美「そっか」

あっさり引き下がる

恵美「Pは今幸せ?」

P「どうしたんだよ」

恵美「いいからいいから」

P「そりゃあな、幸せだ、友達もいるし海美もいる」

P「自分が思ってた以上に恵まれてたんだなって思う」

恵美「ん、なら良いや」

P「?」

恵美が何を聞きたいのか良くわからない

恵美「まああたしの質問に深い意味はないよ」

恵美「幸せならそれが一番だしね」

P「まあな」

恵美「ちょっとした心理テストみたいなもんかな~」

P「それで、結果は?」

恵美「ん、秘密」

P「なんだそりゃ」

恵美「にゃはは」

恵美「さーて、あたしはちょっとキッチンの方見てくるね」

恵美「もーお腹ぺこぺこでさー、催促してくる」

恵美は離れていった

…本当に何だったんだ?

一旦ここまで
ついでに冬休みの出来事募集(スキーと初詣を除く)

クリスマスパーティーの途中、エレナがふと外を見る

エレナ「わお!雪降ってるヨ-!」

P「お、本当だ」

空から降りてくる白い結晶がクリスマスムードの町を白く染める

冬馬「うげ、積もったら面倒な事になりそうだな…」

恵美「えー、良いじゃんホワイトクリスマスなんだし」

翔太「僕はバスさえ止まらなかったら雪降ってても良いかなー」

貴音「…積もった雪の綺麗な部分だけを集めてしろっぷをかけたいですね」

琴葉「貴音さん…お腹壊しますよ」

その後も雪は降り続けた

帰りに支障が出るとまずいので、クリスマスパーティーを切りあげ帰る準備をする

冬馬達と響、貴音は見送りは必要ないと言っていたので恵美達を送っていくことにした

海美「ううー寒ーい!」

外に出ると予想以上に寒い

琴葉「本当に冷えるわね…」

恵美「ホワイトクリスマスって見る分には良いけど寒いから籠もりたくなるね」

エレナ「あはは!雪だヨ-!」

エレナは楽しそうに走り回っていた

恵美「この辺りで良いよ」

ある程度進んだところで恵美がそう言った

P「良いのか?」

琴葉「ええ、あと五分もかからないから」

エレナ「雪降ってるからPもウミも濡れちゃってるからこのままだと風邪引いちゃうからネ」

P「わかった」

恵美「じゃね!」

海美「それじゃあまた今度!」

三人が歩き出したのを確認し来た道を戻る

肌を晒している部分は刺すように冷たいが、別の手に包まれている右手は暖かかった

海美「あ、そうだ」

海美が持っていた鞄を漁る

P「どうしたんだ?」

海美「これ、クリスマスプレゼント!」

海美がラッピングされた物を渡してくる

P「これは?」

海美「良いから、開けてみて!」

言われたとおり袋を開ける

中身を取り出すと…

P「これは…マフラーか?」

海美「初めてだったからあんまり上手には出来なかったけど…」

海美の手作りなのだろう、他の人から見れば歪なマフラーなのだろうが…

P「ありがとう海美、最高のプレゼントだ」

俺にとっては世界で一番素敵なマフラーだ

海美「つけてみて」

P「ああ」

マフラーを首に巻く

しかし…

P「これ、長すぎないか?」

一人で巻くには長すぎる

半分に折ってから巻いても腰辺りまで余るくらいだ

海美「ううん、長さ合ってるよ」

そう言うと海美は俺のマフラーを解き、巻き直す

だが折ってから巻くのではなくそのまま巻いた

P「やっぱり長くないか?」

やはりかなり余ってしまう

というより持ち上げていないと地面で引き摺ってしまいそうだ

海美「ううん、だって」

海美は俺が手に持ったマフラーを手に取り

自分に巻いた

海美「こうすれば、ちょうど良い長さでしょ?」

一つのマフラーを二人で使う…そのための長さだったのか

海美「えへへ、暖かいね!」

P「ああ」

ただマフラーを巻いたからだけじゃない

海美と同じマフラーを巻く…それだけで最高に暖かかった

P「海美」

海美「?」

P「俺からも、プレゼントだ」

持っていた袋を渡す

海美「ありがと!開けてもいい?」

P「ああ」

海美「これ…ニット帽?」

P「市販品で悪いけど、冬休み中にスキー行くしちょうど良いかなと思ってな」

海美「嬉しいな」

そう言うと海美は俺にニット帽を渡す

海美「被せて欲しいけど…良い?」

P「もちろん」

海美にニット帽を被せてやる

海美「…どう?」

P「うん、よく似合ってる」

海美「えへへ…」

プレゼントを交換した俺達は、寄り添いながら家への道をゆっくり歩いて行った…

そしてその夜、クリスマスツリーを収納してホワイトクリスマスした

大晦日、特にやることのない俺達は特に意味もなく我が家に集まっていた

冬馬「ひまだ」

P「そーか」

冬馬「大晦日だから大抵の店も閉まってるし」

海美「そーだね」

冬馬「…いつまでも炬燵に籠もっていちゃついてんじゃねえ!」

冬馬が俺を炬燵から引き摺り出そうとする

P「やめろー!俺と海美を引き裂くつもりか!」

冬馬「抱き合って炬燵に籠もってんなよ!独り身に対する嫌味か!」

P「やーめーろー!」

結局冬馬は諦めたようだ

冬馬「年越しはどうすんだ」

P「あー?」

冬馬「年越しはどうすんだ」

P「うちのリビングでやるんだろ、このみ姉さんがもう人数分の蕎麦を注文してるし」

冬馬「年越し蕎麦食って、それから?」

P「カウントダウンしてから寝るで良いじゃないか、夜の寒い時間に外なんか出たくないぞ」

冬馬「それはわかる」

P「初詣は明日の朝行こうぜ」

冬馬「俺と翔太はどこで寝るんだ?」

P「お前と翔太は俺の部屋に布団敷くから」

P「海美達は客間に布団敷くらしいからそっちでな」

恵美「わかったー」

エレナ「うんー」

琴葉「もう、二人ともだらしないわよ」

恵美とエレナは炬燵に足を突っ込んで溶けていた

田中さんも口ではそう言いながらも体は正直なのか少し猫背気味だ

P「とーまー、とーまー」

冬馬「なんだよ」

P「時間になったら起こしてくれ」

俺は既に意識を手放している海美を抱き寄せて同じように意識を手放した

一旦ここまで
もうすぐ海美ルート終了
次恵美と翼、どっちのルートが良い?

炬燵に入りながらだらだらと過ごす

時刻は12月31日の23時55分、もう間もなく今年が終わり、来年が来る

蕎麦も食べ終わり今年に置き忘れたこともないので、心置きなく来年を迎えられるだろう

P「今年も色々あったな…」

冬馬「毎年言ってんな、それ」

海美「何もない年なんてないんだよあまとう」

冬馬「あまとう言うな!」

恵美「ほらほら、騒いでたらカウントダウン逃しちゃうよ」

新年目前にもかかわらずいつもと同じように騒がしい海美達を見ながら今年あった事を思い出す

海美と釣りに行ったり、海美と海に行ったり、海美と一緒に夏祭りを回って…恋人になったり

思い出す記憶には必ず海美がいた

海美はずっと俺を見ていたと言っていた

思い返せば俺もずっと海美を見てたんだな…

海美「?どしたの?」

俺の視線に気付いたのか海美が話し掛けてくる

P「ん、なんでもない」

海美「そう?」

そんなことをしているうちに今年も残り10秒となった

P「そろそろだな」

そして、カウントダウンが始まる

エレナ「10!」

琴葉「9」

このみ・莉緒「8」

育・桃子・環「7!」

翔太「6」

冬馬「5」

P「4」

海美・恵美「3!」

「2!」

「1!」

「Happy New Year!」

さようなら去年、よろしく今年

今年も一年、良い年になりますように

正月

目を覚まし皆でおせちを食べた後、俺達は初詣に来ていた

P「凄い人混みだな」

冬馬「正月だからな」

神社は参拝客でごった返しており、動くのにも苦労する

P「とりあえずおみくじか?」

冬馬「先に賽銭の方が良いだろ」

P「そっちの方が良いか」

人の波に飲まれながらなんとか賽銭を終え、今はおみくじを引いていた

P「俺は…吉か」

P「海美はどうだ?」

海美「私は中吉だったよ」

海美のおみくじを見ると確かに中吉だった

P「お、成したいことが成るって書いてあるな」

海美「じゃあ今年は大会勝てるね!」

P「ああ」

P「恵美はどうだった?」

同じようにすぐ近くにいた恵美に話しかける

恵美「…」

P「恵美?」

恵美「ん?…なに?」

P「おみくじ、どうだったんだ?」

恵美「ああ、うん、こんな感じ」

P「なになに…運命の人はすぐ側に?」

恵美「あはは、おみくじなんて当てにならないよ」

P「わからないぞー、もしかしたら本当にいるかもしれないし」

恵美「仮にいたとしてもね~…その人にとってあたしは運命の人じゃなかったんだし」

P「え?」

恵美「何でもない」

後半小声だったからかよく聞き取れなかった

恵美「そんなことより、エレナ達戻ってきたからいこ!」

恵美は足早に歩いて行った

P「?まあいいか」

海美に手を差し出し、手が握られたことを確認すると海美の手を引いて歩き出した





その後初詣を終え、解散して帰宅する

海美「今年はどんな年になるかな」

P「いい年に決まってる」

海美「そうだね」

このみ姉さんは桃子達と凧揚げに行っているので今は家に二人きりだ

海美「ね」

P「ん?」

海美「部屋にいこ?」

P「ああ」

一年の計は元旦に有り

おしべとめしべをくっつけた

もうすぐ冬休みが終わる

そんな中海美が二人っきりで出掛けたいと言いだした

ほぼ毎日のように誰かしらと一緒に行動していたため、夜のベッド以外であまり二人っきりになれなかったからだろう

だから俺達はある遊園地に来ていた

海美「ゆーえんち~♪」

海美が鼻歌を歌っている

P「ご機嫌だな」

海美「うん!久しぶりに二人っきりだし!」

海美はいつもと違うコーディネートだ、気合いが入っている

海美「めぐみーが服選んでくれたんだ~」

なるほど恵美のコーディネートか、いつもと違うわけだ

海美「やっぱりめぐみーは凄いよね~私に似合う服をパパパー!って選んじゃったの!」

確かによく似合っている、海美は普段から可愛いが今日は一段と可愛く見える

P「そうだなよく似合ってる、可愛いぞ」

海美「えへへ」

P「それじゃ早速入場するか?」

海美「うん!」

海美が腕に抱き付いてくる

P「学生2枚、お願いします」

P「どのアトラクションに行く?」

そこそこ大きい遊園地のため、色々なアトラクションが存在している

間違いなく一日では回りきれないだろうから絞らないとな

海美「う~ん…」

海美が顎に人差し指を当てて考える

可愛い

海美「じゃあとりあえず肩慣らしに」

海美が指差した先にあったのは…

レールを高速で走り、波打つ動きをするたびに悲鳴が聞こえる恐怖の存在…

ジェットストリームアタックコースターだ

>>588
ジェットストリームアタックコースター ×
ジェットコースター ○

あー、ならアトラクション名にしよう

ジェットストリームアタックコースター

この遊園地の目玉の一つで、紫と黒の変わった色の車両が三つに分かれているのが特徴だ

開始した時点では車両は並んでいるが、ある程度進むとレールが三つに増え、別々に進み始める

レールはそれぞれ全く異なる動きをするのだが最終的には再び並び、最後は大きな人形が先頭に現れ車両を飛び越えていくらしい

各レールが違う動きをするため三回楽しめるらしい

一旦ここまで

ガイア、オルテガ、マッシュ!遊園地でジェットストリームアタックをかけるぞ!

海美「あれ乗ろ!」

P「あ、あれか…」

開幕からジェットストリームアタックコースターか…

乗れないことはないが…

P「さ、最初からジェットコースターってのは少しきつくないか?」

海美「そうかな?」

P「ああ」

海美「じゃああれは?」

指差した先にはフリーフォール

P「…」

P「海美、絶叫マシーンも良いけど最初からフルスロットルだと疲れるぞ?」

海美「大丈夫!スタミナならあるから!」

P「情けないことに俺は海美程スタミナないからな、途中で疲れるかも知れない」

P「そしたら一緒に楽しめないぞ」

海美「それはやだな…」

P「陸上部でも始める前に準備運動するだろ?それと一緒だ、最初からフルスロットルは準備運動しないってことだ」

海美「それは確かに危ないね」

P「だろ?だから最初は軽いのからいこう」

海美「うん!」

最初に向かったのはコーヒーカップだった

P「ゆっくり慣らしていこう」

海美「うん!」

その後すぐにこの選択を後悔することになる

海美「じゃあいくよ!」

動きだすと同時に海美が真ん中のハンドルを握り、高速で回し始めた

P「ちょっ」

少しずつ回転が早くなり、今では風を切る音が聞こえるくらいの速度が出ていた

P「うおおぉぉぉ!?」

海美「あはははは!」

目が回る、っていうか吹き飛ばされそうだ

P「う、海美ぃ!」

海美「あはははは!たのしー!」

コーヒーカップは終了するまでその速度を維持していた

P「うぐぐ…」

海美「うーん楽しかった!」

ふらふらしてまっすぐ歩けない俺と鼻歌を歌っていて余裕な海美

P「目が回る…」

海美「そう?私は平気だったよ?」

P「俺は鍛えてないからな…」

海美「じゃあ私と一緒に鍛えようよ!」

P「気が向いたらな…」

俺達は次のアトラクションへ向かった

遊園地を調べれば調べるほど絶叫系ばかりに行き着く
やっぱり花形なだけあるなぁ

その後、カートやメリーゴーランドなど軽めのアトラクションと昼食をこなした

午前中お預けを食らっていた海美はとうとう我慢出来なくなったのか俺の袖を引っ張る

海美「ね、もう良いでしょ?そろそろ乗りたい」

P「仕方ないな、何が良い?」

海美「今一番近いアレからいこ!」

海美が指差したのは名物のL専用ビットブランコだった

他の遊園地にある空中ブランコとは違いこのビットブランコは支えるための棒がなく、文字通り浮いている

磁石の力らしいが縦横無尽に動き回るビットは評判がいい

少し並んだがすぐに順番が回ってくる

変な仮面をした係員の指示に従いビットに乗り込む

全員が乗り込むと軸となる緑色の宇宙船のようなものが浮かび上がり、位置に付くと順番にビットが射出された

P「うおっ…」

ビットが一気に加速し、空に飛び出す

格納されている閉所から一気に解放された感覚を味わう間もなくビットのスピードに翻弄される

海美「わー、高い!」

海美の言葉を聞き、下を見ると確かに結構な高度がある

P「ていうか高すぎないか!?」

観覧車やジェットストリームアタックコースターよりも高い

海美「これ私が操作して良いんだよね」

海美が乗る前に渡されたヘッドギアを付ける

このビットブランコは機械に任せた挙動を楽しめるが専用のヘッドギアを着用することでビットを自由に操作できるらしい

ちなみにビット同士はぶつからないように反発するそうだ

海美「うーん、じゃあこうしよ」

P「えっ」

海美が念じた瞬間、ビットがひっくり返る

P「!?」

そのまま速度を上げUターンする…逆さまのまま

P「お、落ちる!」

海美「シートベルトしてるから大丈夫大丈夫!それー!」

螺旋を描きながらビットが上昇し、ある程度の高さに到達すると急に動きを止め、そのまま落下を始め…

P「あああああああああ!」

そこから先の記憶はない

P「なんかあっという間に終わった気がする」

海美「だね!」

P「次はどうしようか」

海美「ゆっくりで良いよ?さっきので気絶してたし」

P「…マジ?」

海美「うん」

P「…」

かっこ悪いところを見せてしまったようだ

P「…ならゲーセンでも見てみるか」

海美「りょーかい!」

ゲーセン

P「何やろうかな」

海美「いっぱいあるね」

P「ここならではのゲームが多いな、やっぱり」

たくさんのゲームが設置されている

俺はその中でも人気のゲームを選んだ

P「これにするか」

海美「スカーレット叩き?」

P「ああ、ショットガン、バズーカ、ロケット弾を使っていかに早く敵を倒せるかっていうゲームだ」

P「対戦も出来るんだ、どっちが多く倒せるかっていうな」

海美「じゃあ一緒にやろ!」

P「おう、負けないぞ」

そしてゲームが始まる

結果は…

「スカーレット隊、全滅!」

1P 撃破数2

2P 撃破数10

P「…」

海美「楽しかった-!」

その後色々なアトラクションを堪能し、もう間もなく閉園時間となった

最後のアトラクションとして観覧車を選んだ

向かい合って座るのではなく隣り合わせに座る

P「ふう…」

海美「今日は楽しかったね!」

P「ああ」

ジェットストリームアタックコースター、ジャブロー・ザ・フリーフォール、ビットブランコ…結局絶叫系ばかりだったな

海美「今日は来れて良かった」

P「だな」

海美「いっぱい遊べたし一日中一緒にいれたし!」

P「二人で出掛ける機会が中々なかったからな」

ゆっくりとゴンドラが動く

それに合わせて景色が微妙に変化していく

海美「同じ高いところから見る景色でも昼と夜じゃ全然違うね」

P「そうだな…昼には昼の、夜には夜の良さがある」

海美「私達もこの先色んな景色を見るんだろうなー」

P「ああ…」

ゴンドラが天辺に近付く

海美「ねえ」

P「ん?」

海美「…ん」

海美の呼びかけに答え顔を向けると唇を奪われた

海美「えへへ、夜の観覧車でちゅーするってやってみたかったんだ」

不意打ちを受けて顔が赤くなる

P「そ、そうか」

海美「うん!」

海美は変わらず元気だったがよく見ると海美も頬が赤くなっていた




ゴンドラが天辺を越え、下りに入った

海美「ねえ」

P「ん?」

海美「観覧車は天辺過ぎちゃうと降りて行っちゃうよね」

P「ああ」

海美「でもさ、私思うんだ」

海美「上った後は絶対に降りないといけない訳じゃないって」

そう言いながら肩に頭を預けてくる

P「…」

海美「だから私は、私達はずっと上っていきたい、Pと一緒にどこまでも、上れるところまで」

海美「大変なこともいっぱいあると思うけど、私は最後まで一緒に、ね?」

P「俺もそう思うよ、海美と一緒なら限界だって超えてやる」

海美「うん」

P「だから俺はこの手を離さない、この先何があったってお前と一緒に上ってやる」

海美「私も、この手は離さない」

ゴンドラが地上に降りる前、俺達はもう一度キスをした




P「時間が時間だからやっぱり冷えるな」

海美「うん、でもこの売店で買ったテムのカイロと二人で巻いてるマフラー、なによりニット帽があるから暖かいよ」

P「俺も、お前がくれたマフラーと繋いだ手があるから暖かい」

海美「嬉しい」

P「お、ちょうど目の前に暖かい物が売ってるな、買っていくか?」

海美「うん!あ、半分こしよ?」

P「そうだな、すいません肉まん一つ」

買った肉まんを半分こしながら俺達は帰路についた

バレンタインデー

男子女子問わず様々な思惑が交差する一年に一度の大イベントだ

この日が訪れるたびに、日本では散った者達の怨嗟の声と、得た者達の歓喜の声が響き渡るという

P「みんな浮き足立ってるな」

冬馬「へっ、バレンタインなんかで浮かれやがってよ」

と言いつつもそわそわと落ち着きがない

P「へー」

冬馬「なんだよ」

P「なんでも」

冬馬「…」

靴箱の前に着くと冬馬は深呼吸し、何かを決意したかのように自分の靴箱をあけた

冬馬「…」

P「どうした?チョコでも入ってたか?」

冬馬「…なんもねーよ」

校内は割と騒がしかった、至る所でチョコのやりとりがある

「美希先輩美希先輩!わたしのチョコ食べてください!むしろわたしを食べてください!」

「や!」

「貴音様、日本の伝統に則り猪口礼糖をお渡しします!」

貴音「ありがとうございますエミリー、味わっていただきます」

莉緒「男の子は裸にチョコレートが好きだって言う話を聞いたから試してみたら火傷しちゃったのよ」

このみ「莉緒ちゃん…」

教室に入ると恵美達が声をかけてきた

恵美「おはよ、さっそくだけどこれあげる!」

そう言ってチョコを二つ差し出してきた

冬馬「あ、ああ…ありがとう」

P「サンキューな恵美」

恵美「本命じゃなくて義理だけどねー」

P「それでもやっぱり嬉しいもんだよ」

恵美「…そっか!」

恵美がにかっと笑った

琴葉「私からも、今年度は色々とお世話になったから」

田中さんも同じようにチョコを渡してくれる

P「ありがとう田中さん」

琴葉「こちらこそ」

エレナ「じゃあワタシもチョコあげるヨー!」

P「サンキューエレナ」

冬馬「所、田中、島原…俺、お前達と友達で良かった」

エレナ「アマトウは現金だネー」

冬馬「何とでも言え」

翔太「おはよー」

P「おう翔太、おは…よ…」

教室に入ってきた翔太は両手に紙袋を下げていた

その中身は溢れんばかりのチョコだった

冬馬「ま、マジかよ…マジかよ…」

冬馬ががくっと膝を突く

恵美「またいっぱいもらったねー、毎年増えてない?」

翔太「うん、増えてるかな」

P「相変わらず人気だな」

翔太「ところで海美ちゃんは?」

P「ああ、海美なら…」

その時、廊下を走る音が聞こえてくる

海美「ま、間に合った~」

海美が教室に滑り込んできた

一旦ここまで

P「おはよう」

海美「おはよ!」

翔太「珍しいね、海美ちゃんがぎりぎりなんて」

海美「ちょっと寝坊しちゃって」

P「このみ姉さん達が今日は見てないって言うし海美の義父さん(おじさん)義母さん(おばさん)は朝早いからもしかしたらと思って見に行ったらまだ寝ててな…翔太ぁ!」

翔太「反省してまーす」

海美「起こしてくれたら良かったのに」

P「起こしたけどお前が後5時間とか言うから諦めたんだよ」

海美「ちゅーしてくれたらすぐ起きたの!」

P「そうか?なら出来なかった分今から…」

冬馬「他所でやれ」

貴音「ふふ…仲良きことは良いことです」モシャモシャ

冬馬「うおっ、四条いつの間に」

貴音「海美が教室に入ってきた辺りからでしょうか」

P「ところで貴音は何食ってるんだ?」

貴音「そこにあった紙袋の中のチョコですが」

翔太「えっ!?」

その後も雑談していると先生が入ってきた

授業の準備をしていると海美が耳元に口を寄せ囁いてきた

海美「今日の放課後、楽しみにしててね」

P「…ああ」

海美は上機嫌で顔を離すと鼻歌を歌いながら準備を始めた

放課後が楽しみだ

部活動を終え、一緒に帰宅する

夜まで待っててと言われたのでベッドに転がっていると窓が開いた

そちらに目を向けると海美が部屋に入ってくるところだった

海美「お待たせ!」

P「ん」

よく見るとポンチョのようなものを着ている

海美「今日はバレンタインだから」

海美がポンチョを脱ぐと…

自分自身にプレゼント用のリボンを巻き、チョコを差し出す海美の姿があった

海美「チョコと私をプレゼント!」

P「えっ」

海美「莉緒さんがね、こうしたらPが絶対喜ぶからって」

海美「最初は体にチョコを塗ろうって話してたんだけど莉緒さんが試したら火傷するからやめなさいって」

P「そ、そうか」

莉緒さん…

海美「それで…受け取って貰える?」

P「ああ、もちろんだ」

海美「ありがとう、それじゃあね」

海美がチョコを開け自らの口に含むと

海美「んー」

口移しで食べさせてきた

P「…」

海美「…どう?」

P「凄く甘い」

海美「良かった、それじゃあもっと食べてね?」

その後チョコを堪能し、一足早いホワイトデーをプレゼントした

一旦ここまで
君達はチョコ貰えたかな?俺は貰ってない

P「…ん」

ふと目を覚ます、春の陽気に包まれ始業式の後居眠りしていたようだ

年度が変わり、教室もクラスメイトも変わった

進級したことで様々な変化があったがカワラナイモノもある

冬馬や翔太といった仲の良い連中とは今年も同じクラスでまたかよと笑いあった

担任も変わらず黒井先生のままだ

P「ふわぁ…」

欠伸をした後周りを見渡すと教室にはもう誰もいなかった

P「薄情な奴らめ…」

…いや、一人だけいた

俺の中で絶対にカワラナイモノ

海美「おはよ、よく眠れた?」

P「おかげさまで」

海美「じゃあ良かった」

P「起こしてくれたら良かったのに」

海美「気持ちよさそうだったから」

P「そうか」

海美「うん、思わず眺めてた」

P「寝顔を見られるのは結構恥ずかしいんだが」

海美「私は楽しかったよ」

P「そうかい」

P「帰るとするか」

海美「うん」

席から立ちあがり鞄を持つ

海美も同じように立ちあがり隣に並んだ

海美「ねえ」

P「ん?」

海美「良い夢でも見た?」

P「なんで」

海美「凄く幸せそうな顔だったから」

P「さあな、覚えてないよ…でも」

海美「でも?」

P「幸せな夢なら、今もお前と一緒に見てる」

P「この先ずっと見ていたいと思える、幸せな夢を」

海美「…そっか」

P「なんか凄え恥ずかしいこと言った気がする」

海美「そんなことないよ、私も同じ気持ち」

海美「Pと一緒に、ずっと幸せでいたい」

P「…そうか」

海美の頭に手を置く

海美は少しくすぐったそうにした

P「これからもよろしく頼むよ」

海美「うん!」

海美「ねえ、ちょっとしゃがんで?」

P「ああ」

言われたとおり少ししゃがむと海美が首に手を回し、キスをしてきた

P「お前は本当にキスが好きだな」

海美「うん、何回だってしたくなっちゃう」

P「ほどほどにな」

教室の扉を開け、一歩踏み出す

教室から出たとき、海美が少し前に出てこちらを振り返った

海美「ねえ!」

P「どうした?」

海美「言っとくけど大好き!」

終わり

くぅ疲w
まさか2カ月もかかるとは思わなんだ
海美の魅力を1%でも引き出せてたら幸いです
次の恵美は近いうちに

うみみ編イイ甘さだった、乙です

>>235
佐竹美奈子(18) Da
http://i.imgur.com/uHlEZzv.jpg
http://i.imgur.com/3jWPs9K.jpg

>>276
百瀬莉緒(23) Da
http://i.imgur.com/TE4giai.jpg
http://i.imgur.com/K1kQj7Z.jpg

>>285
野々原茜(16) Da
http://i.imgur.com/BumTDoT.jpg
http://i.imgur.com/Wqbk0Wz.jpg

【ミリマス】765学園物語 √FW
【ミリマス】765学園物語 √FW - SSまとめ速報
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