提督「それでも艦娘とイチャイチャしたい!」 (883)

前スレ
提督「提督になったら艦娘とイチャイチャできると思ってた」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448855326/)

注意点
キャラの崩壊(特に潜水艦)

いくつか短編を思いついたので、ちょっと書こうかなと思った所存

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1452674356

【もがみん】

最上(こんにちは、最上型重巡洋艦一番艦の最上です)

最上(今日はボクの所属する鎮守府についてちょっと説明しようかなって思います)

最上(この鎮守府の、ちょっと……というかとても変わってるところは……)

最上(対深海棲艦用決戦兵器たる艦娘が、艦娘じゃないってところなんだけど……)

最上(まあもっと具体的に言うと、『艦娘』じゃなくて、『艦息』あるいは『艦雄』……なんだよね……)


三隈「物憂げなモガミンもいいですよぉ……」ウットリ

鈴谷「何言ってんだ三隈……」


最上(……いったいなんなんだろう、この鎮守府は)

提督「はぁ……」

最上(そして、彼がこの鎮守府で艦息たちを束ねる司令官・……提督)

最上(彼にはとある悩みがあって、いつもこうしてため息を吐いているんだけど・……)

提督「艦娘とイチャイチャしてぇ……」

最上「あはは……」

最上(そう、彼は『艦娘とイチャイチャしたい』その一心で提督になった人なんだ)

最上(不純といえば不純だけど、意外と能力は高いからみんなに一目置かれてる)

最上(……周りはみんな艦息なんだけどね)

提督「なぁおい最上よぉお前もわかるだろ・……」

最上「えっ、なにが?」

提督「艦娘とイチャイチャしたい俺の気持ちがだよ……」

最上「えっ……うーん……ごめん、ボクはちょっとわからないかな」

提督「マジか……やっぱ俺のソウルフレンドは足柄しかいねーのか……」

最上「あはは……」


最上(ため息を漏らす提督相手に、ボクは愛想笑いで返すことしかできなかった)

最上(…………もしも、もしもだよ)


最上(ボクが本当は艦息ではなく、艦娘だとカミングアウトしたら……)


最上(提督はいったい、どんな顔をするんだろうか――)

最上「……また言いだすタイミングを失った」

最上(艦息だけが集まるこの鎮守府において、ボクはあまりにも異端だ)

最上(そう、ボクは艦娘。自分で強調するのは気恥ずかしいけど、女の子だ)

最上(どうしてボクだけが艦娘なのか、わからないんだけど・……それでも確かにボクは艦娘だった)


最上(ボクがこの鎮守府に配属されたのはちょっと遅めで)

最上(その時には既にこの鎮守府には艦息しかいなかった)

最上(加えてボクのこの見た目から、提督はボクを男の子だと決めつけてかかっていた)

最上(まあ、男の子しか見てない状況に追いやられたらそうもなるかな……とは思うけど)

最上(榛名さんとか羽黒とか、あの見た目で男の子な人たちもいるからいろいろ複雑だ)

最上(なんやかんやで自分が艦娘だと言いだすタイミングを失って久しい)

最上(最近はもう、自分が女の子であることを隠すことに心血を注いでいる感じすらしてくる)

最上(バレるかバレないかの瀬戸際を見極めるのが、実は密かな楽しみになってたり……)

最上(……いやいや、それはどうなんだよボク)


日向「……ん? 最上か」


最上「あっ、師匠」

日向「師匠はやめてくれ。俺はそんなに大層なものじゃない」

最上(彼は艦息、航空戦艦日向。何かと航空巡洋艦のボクたち最上型を可愛がってくれる頼れる先輩)

日向「何か考え事をしていたようだが、なにかあったのか?」

最上「はい……」

日向「そうか」

最上(……例えば師匠にカミングアウトしたら、どうなるだろう)

最上(彼のことだから、今までとはあまり変わらないで接してくれる気もするけど)

日向「言いにくいようなら無理には聞かんが……」

最上「え?」

日向「……何かあったらすぐに俺を頼れ。お前は俺の大事な後輩なんだからな」ポンッ

最上「あっ……」


最上(師匠の大きな、それでいて優しいぬくもりを持った手が、ボクの頭を撫でた)

最上(師匠にとっては何気ないスキンシップでも、不意打ちというものは、その……とても、くる)

最上(顔が熱い。頬が赤くなっているのがよくわかった……わかってしまった)カァァ

例によっていつもの中断 そして着地点も未定
もがみん……乙女ゲームの主人公張れそうじゃないっすかね?

日向「最上? 顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」

最上「あっ、ち、違います! すみません師匠!」バッ

日向「おい、最上?」

最上(あのままあそこにいたら変なことを口走ってたかもしれない!)

最上(危なかった……!)


日向「……なんだったんだ、最上の奴は?」

最上(師匠と別れたボクは、自分の部屋に戻ってきていた)

最上(……ふぅ。危ない危ない、実は女の子だと言いだしそうになってしまった)

最上(ボクはこの鎮守府を気に入っている。なんていうか、結構気楽というか、気安いというか)

最上(みんなが男の子だとそういうものなんだろうか。……それは自分を否定してることにも繋がりかねないけど)

ガチャッ

熊野「鈴谷!」バッ

鈴谷「や、やめ、熊野! 俺たちは男同士だろーが!」ワタワタ

熊野「ああ、そうだな……けど、金剛型や潜水漢たちを思い返してみろ」

熊野「男でも問題はない、違うか?」

鈴谷「問題だらけだろ!? ってか、三隈も微笑んで見てないで助けろよ!」

三隈「二人の逢瀬を邪魔するわけにはいきませんね」

鈴谷「おおおいいい!」

最上「」

最上「ふ、二人とも何やって……」

三隈「ついに辛抱堪らなくなった熊野君が、鈴谷君を襲ってるところですね」

最上「れ、冷静な解説は良いから、止めなきゃ!!」

三隈「……あれでいて鈴谷君は喜んでいると思うんですがねぇ」


鈴谷「んなわけねーだろ!!」

熊野「鈴谷……ああ、いい匂いだ……」クンクンハスハス

鈴谷「やめろぉ!!」


最上「と、とにかく、熊野! やめるんだ!」

三隈「……モガミン」ガシッ

最上「えっ?」

三隈「僕はね、モガミン」

三隈「君に、熊野君が鈴谷君にやっているようなことをやりたい気持ちがあるんですよ」

最上「えっと……それは……」

三隈「……姉弟艦としてだけでなく、もっと深いところで繋がりたい、と」

最上「三隈? 言ってる意味がちょっと、わからないんだけど……」


三隈「……君が女の子であることはとっくに気づいています」ボソッ

三隈「その上で……僕は君とああいうことをしたい」

最上「」

三隈「もちろん、合意がなくては意味がありませんから、今はそんなことしませんけどね」

最上(三隈にはバレていた――)

最上(姉妹艦……ここでは姉弟艦なんだから当然かもしれない)

最上(その上で、三隈の衝撃的な告白に、頭が一瞬真っ白になった)


最上(でもそれ以上に……ボクはどうしようもないくらい……)

最上(自分の置かれている状況に)

最上(三隈に秘密を握られたうえで……言い寄られている、この状況に)

最上(どうしてか、興奮を禁じ得なかったんだ――)ゾクッ


【スリルを楽しむもがみんの巻】

まあこんな感じで前スレではあんまりスポットの当たらなかった艦息たちとかにも手を出していけたらなと
なお、前スレや某翔鶴スレをご覧ならご存じの通り下ネタ結構入るのでそこのところは注意ください では

【第七駆逐隊】

ガチャッ

曙「おーい、遠征から帰ってきたぜークソ提督」

潮「曙くん……またそんな言葉づかいして……」

提督「だーれがクソ提督じゃこのクソガキが……」ユラリ

朧「あ、提督」

提督「上官に対する言葉遣いがなってない不出来な野郎にはこうだ!」グリグリ

曙「い、いてっ、いって! やめろよ! いった!」

提督「ったくよお、その言葉遣い直せよなーお前よー」

潮「はぁ……いつも曙くんがすみません、提督……」

提督「なに、お前が謝ることじゃないから気にすんな」

朧「漣、とりあえず今回の遠征の報告を、って……あれ?」

漣「んんwww遠征は大成功以外ありえないwwww」

提督「お、おう、そうか……」

漣「燃料補給を要請してもよろしいですかな?wwww」

提督「お、おう……手配しとく……」

漣「圧倒的感謝ですぞwwww」


提督「……なああんまこんなこと言いたくないんだが、お前話してて疲れないか?」ボソッ

朧「今日はあくまでこの話し方なだけですから……」

提督「差があんのかよ」

曙「っつーか! いつまで頭グリグリしてんだよクソ提督ー!」ジタバタ

提督「お前が反省して言葉遣いを正すまでに決まってんだろうが」グリグリ

曙「あああああ! いてええええ! ギブ、ギブ、俺が悪かった!」

提督「ったく……」パッ

曙「はぁ……頭割れるかと思ったぜ」

漣「燃料が我らを待っていますぞwwww」

朧「そうだね……提督、僕たちはこれで失礼します」

提督「おう、遠征お疲れ様。ゆっくり休めよ」

曙「おう! じゃーなクソ提督!」ダッ

提督「このクソガキあとで覚えてろよ……」

潮「…………」

提督「あれ、潮? お前、あいつらに着いていかなかったのか?」

潮「は、はい……」

提督「どうかしたのか? やけに深刻な顔して」

潮「あ、あの、提督にご相談があって……」

提督「相談? なんだ?」

潮「でもその……ちょっと話し辛いというか……あ、でも……」

潮「えっと……その……」

提督「落ち着け潮」ポンポン

潮「あ、すみません……」

提督「ゆっくりでいいぞ。お前らに悩みがあるんなら、何だって聞いてやる」


ガチャッ

加賀「話は聞きました。今すぐ私のリコンカッコガチを」

瑞鶴♀「何世迷い事をほざいてるのかなぁ加賀さんは?」

加賀「ひっ……」

瑞鶴♀「うふふ♪」ズリズリ

ガチャッ


潮「……あの、今の」

提督「俺たちは何も見ていない。いいな?」

潮「あ、はい……」

提督「それで……話というと」

潮「…………」

潮「…………」

潮「…………」グッ

提督「潮?」



潮「ッ、潮、参ります!」ズリッ

提督「ストップ! 潮! なぜ脱ぐ!?」ガシッ

潮「そ、相談の内容に関係するからです!」

提督「ちょ、ちょっと待て、でも何もいきなり脱ぐことないだろ! ストップ!」

潮「はぁ……はぁ……」

提督「ぜぇ……ぜぇ……」

潮「ろ、論より証拠って……」

提督「それでも隠すべきものとかあるから! お前には潜水漢みたくなってほしくないから!」

潮「……うぅ」

提督「な? まずは落ち着いて、話を聞かせてくれよ」

提督「頼む、いきなりズボン降ろされると俺の背筋に悪寒が走るんだよ」

潮「よ、よくわからないけどわかりました」

提督「ごめんね、ほんと頼む……」

潮「実はその……くて」

提督「……?」

潮「お、……らしくて」モジモジ

提督「すまん潮、ちょっと聞こえないんだけど……」

潮「……っ、あ、う……」

提督「潮?」

潮「……み、耳を貸していただけますか」

提督「おう」

潮「…………」グッ



潮「ぼ、僕のおちんちん、他のみんなに比べて……大きいらしいんです、けど……」ボソッ

提督「」

提督(顔を真っ赤にしてもじもじと俯く潮の姿を見ていると)

提督(駆逐艦を追っかけまわしては憲兵にとっ捕まっている長門の気持ちがほんの少しわかるような気がした――)

提督(…………)

提督(…………)

提督(…………)



提督「――いやわかっちゃダメだろ落ち着け俺ぇ!!」

提督「この鎮守府の空気に毒されてる! 俺たちが異端なんんだからねっ!」

潮「!?」ビクッ

潮「あ、あの、提督、それでまずは見てもらおうって……」

提督「うん、いくら相談とはいえあんまりオープンにするもんじゃないからね、そういうのは」

潮「そうですよね……でも、僕、その、悩んでるんです」

潮「みんなとお風呂入ってる時も……その、僕だけちょっと大きいみたいなので……」

潮「曙くんがからかってきたりとか……」

提督「ったくもー、アイツは……」

提督(まあ駆逐艦は人間でいったら小学生か中学生くらいだもんな、そういうのには敏感だよな……)

提督「そうだなあ……」

提督「まあ、結論から言うとだな」

潮「はい」

提督「大きくて困ることはないぞ! 将来的にな!」

提督「むしろ下の単装砲はな、小さいと大人になった時に悲しみを背負うことになるんだ!」

潮「そ、そうなんですか……?」

提督「ああ、そうだ、なるんだよ……」

提督「まあ……使う相手もいないんだけどな……」グスッ


ガチャッ

榛名「提督! 榛名はいつでも大丈夫です!」ペカー

金剛「やめなさい榛名、はしたないよ」ガシッ 

榛名「あ、提督ぅぅぅ……」ズルズル

ガチャッ バタン


潮「あの」

提督「俺たちは何も見てないんだよ、潮」

潮「……」

提督「身体の成長の速さってのは、人それぞれだからな」

提督「潮の場合はちょっと早かったんだと思う。いずれみんな、潮と同じくらいの単装砲を手に入れるだろうさ」

提督「まあでも、今困ってるのに将来の話をされても困るよな」

潮「は、はい……」

提督「じゃあ、今度から潮の風呂の時間をズラすことにしよう」

潮「え?」

提督「他人の単装砲のことなんて対して気にしないような奴らと風呂に入ればいい」

提督「根本的な解決じゃあ、ないけどな」

潮「い、いえ、でも、それならからかわれないで……」

提督「ああ、済むはずだよ」

提督「だが急に潮だけ第七と違うタイミングでの風呂は逆に怪しいか」

潮「あ、それなら、僕に考えが」

提督「お? なんだ?」

潮「逆にみんなのお風呂の時間をシャッフルすればいいんじゃないでしょうか」

提督「なるほど……」

提督「よし、やってみるか……」



この時、提督は気づいていなかった!

何の邪念もない潮の提案が、己を地獄へといざなう片道切符であることに――!

青葉「――話は聞きましたよ司令官♪」スタッ

提督「青葉お前、当然のごとく天井から降りてこないでくんない?」

潮「き、聞いてたんですか青葉さん……」

青葉「うん。でも大丈夫、青葉はいつだって艦息サイドに立った報道を心がけるからね!」

青葉「潮君の悩みは誓って僕の心にしまっておくよ!」

提督「あの、提督サイドに立った報道はないんですかね」

青葉「ないです」

提督「ワァオ、無慈悲!」

青葉「どうせお風呂シャッフルするなら全員巻きこんじゃいましょうよぉ」

提督「まあ、一応そのつもりだけど」

青葉「えー? 全員ですよ全員。提督もですよぉ?」

提督「……は?」

青葉「だってここ、艦息鎮守府ですし。みんな男だし、何か問題が?」

提督「待て待て待て待て落ち着け青葉」

青葉「一緒にお風呂入っても問題ないですよね? 裸と裸の付き合いって言いますもんね?」

提督「問題しかないだろ! 冷静になって! お願い!」

青葉「セッティングは青葉に任せてくださいね! 宴の始まりだぁ!」

提督「待って! 青葉! お願い! それはダメでしょ!?」

《二時間後》

青葉「はいはいどうもみなさんこんにちは!」

青葉「ほぼ全員集まっていらっしゃいますかー!?」

みんな『おー!』

青葉「いいお返事ですねー!」

青葉「さて今回皆さんに集まってもらったのは! 提督発案、『お風呂シャッフルタイム』のくじ引きのためです!」

提督「んー! ふーっ!」ジタバタ

青葉「うんうん、提督も待ちきれないご様子」

翔鶴「あの……提督がどこか嫌がっているように見えるのは気のせい……?」

青葉「気のせいです!」

木曾「猿轡噛ませられてるのは?」

青葉「目の錯覚です!」

青葉「単純明快なお話ではありますが、要はこれ、今まで兄弟艦だけで入ってたお風呂に」

青葉「別の艦息と一緒に入ってみてもいいんじゃないか、という感じで生まれた企画でして」

青葉「まあ、僕たち男同士ですし、裸と裸の付き合いも良いよね、みたいな感じで!」

***

最上(ぼ、ボク女の子なのに……)

最上(今まで一人で入ってたのに……これで、誰かと一緒のお風呂が強制されたら)

最上(ば、バレちゃうよね……ついに……あぁ、でも……)ゾクゾクッ

三隈「…………」

***

青葉「艦種はもちろん関係なし! 運命を握るのはクジだけ!」

青葉「そして今回は特別に、提督もくじを引いてくださいます!!!」


その時、一部の艦息たちに衝撃が走る――!

榛名(提督とお風呂!? ついに合法的に提督とお風呂!!)

金剛「ふむ……悪くないね。うん、悪くない」

***

羽黒(提督さんとお風呂に……お風呂で……)

足柄「お、おい羽黒、なんか顔赤いぞお前、大丈夫か?」

***

大井(北上くんとのお風呂タイムが消える……!?)

北上「ふーん……ねえ木曾、俺が提督と一緒に入るクジ引いたら木曾にあげるよ」

木曾「ハァ!? い、いや、いらねえよ」

***

長門「駆逐艦を引く。それだけだ」

陸奥「……兄さんは特別枠になってそうだけどね」

瑞鶴♀「流石に既婚者には配慮してくれると思うんだよね」

瑞鶴♀「だから逆に、今まで一緒に入れなかった私たちも、一緒に入れるんじゃないかな?」

瑞鶴♀「ね、どう思う?」

加賀「……風呂は、風呂だけは、やめてくれ……」

***

伊58「ついに来たでち♂」ムキッ

伊19「ゴーホー的に♂」ムキッ

伊168「提督とお風呂に入る時が♂」ムキッ

***

曙「なんか不思議なことすんだな」

漣「んんwwww実は意外と楽しみですぞwwww」

朧「ちょっと面白いかもね」

潮(……実は先に僕だけ引いてる、ってのは秘密)

青葉「はーいそれではくじ引きをはじめたいと思うんですがー!」

青葉「まずはですねー、特別枠の発表から始めさせていただきますねー!」

青葉「これはお風呂の相手が固定の人たちなんですけど……」


青葉「とりあえず長門さんね」


長門「なっ! 何故だ!? おかしいだろうが!!」

青葉「いや普通にアウトですよ。今さっきの自分の台詞思い返してみてくださいよ」

長門「駆逐艦を引く。それだけだ。……これの何がおかしい?」

青葉「それがおかしいと思えない時点でアウト! 長門さんは事前に了承を得た武蔵さんと入っていただきますんで!」

武蔵「よろしく頼むぞ」

長門「や、やめろ! 筋肉など、筋肉などぉ!」

青葉「自分も筋肉の塊だと思うんですけどね……」

青葉「はい次ねー。次は加賀さんね」

加賀「」

青葉「みんなご存じの通り、加賀さんはほらあれ、女の瑞鶴さんと結婚してるから」

青葉「夫婦には揃ってゆっくりお風呂に浸かっていただこうという配慮が光るね!」

加賀「」

瑞鶴♀「やっと夫婦水入らずだね♪」

加賀「」

青葉「あんまり熱中しすぎないようにね!」

瑞鶴♀「うん、気を付けます!」

加賀「」


赤城「加賀くん、がんばれー」

今日はこんなところで。
加賀くんは一生瑞鶴♀の尻に轢かれる運命
第七駆逐隊(というか潮)メインの筈がまたドタバタ下ネタ系にシフトしてるけど、まあ、いつものことです。では

提督「んー! んんー!」ジタバタ

青葉「司令官も嬉しそうだね、うんうんいいことだ!」

青葉「それじゃあみんな、くじを引こう!」

***

葛城「瑞鶴先輩! 俺、絶対先輩とのくじ引いてきますね!」

瑞鶴「いや、いらない」

葛城「先輩の隅から隅まで洗います! 俺!」

瑞鶴「だからいらないって!」

伊19「てーとくとの入浴権……♂」

伊58「めっちゃ昂ぶるでち♂」

伊168「もし三人のうち誰かがくじを引いたら、シェアだよね♂」

伊58「当然でち♂」

伊19「幸せはみんなで分かち合うものなのね♂」

伊8(提督の幸せはどこに……)

青葉「はい並んで並んで、押さない駆けないでしっかり引いてねー」

葛城「葛城、行きます!」

青葉「おー葛城くん。君の狙いはズバリ?」

葛城「瑞鶴先輩です!」

青葉「うんうん、美しい師弟愛だね」

青葉「加賀さんが女の自分にとられて寂しい瑞鶴くんを慰めてあげたいと」

葛城「そうです!」


瑞鶴「なにがそうですだよ葛城お前!」

青葉「はい、それじゃ引いてねー」

葛城(瑞鶴先輩こい瑞鶴先輩こい瑞鶴先輩と合法的に……)

バッ

葛城「!」

青葉「ふむふむ……注目の中身は!」

葛城「……瑞鶴って書いてありますね」ピラッ

瑞鶴「」

青葉「はい、じゃあ葛城くんは瑞鶴くんとお風呂決定ね」

瑞鶴「」

青葉「いやぁ、空母は着実にカップルが出来上がってるよねえ(棒)」

***

青葉「瑞鶴君が泣きながら葛城くんに引き摺られていっちゃったけどバンバン行きましょう!」

青葉「はい、次は?」

足柄「俺だぜ!」

青葉「おっ、飢えた狼足柄君! 彼女は出来ました?」

足柄「やめろ」

青葉「やだなーもう冗談だよー。はいはい、それじゃ引いてね」

足柄「おう……」ガサゴソ

足柄「これだ!」

足柄「……なんだこれ。提督ってかいてあるけど」

羽黒「!」

金剛「!」

榛名「!」

伊19「!」

青葉「あ、それ当たりだよ当たり! 提督とお風呂に入れるよ足柄君!」

足柄「え……いや、いらない……」

提督「よく言った足柄! こんなこと、誰も幸せには――」


羽黒「いらないなら私がもらいます、兄さん!!」バッ

足柄「うおっ、羽黒!?」

羽黒「うふふ……お風呂……提督さんとお風呂!!」ギュッ

足柄「おま、羽黒……いきなり突き飛ばすってどうなんだ……」

羽黒「ご、ごめんなさい兄さん、でもこれの為なら私……」

榛名「羽黒さん」

羽黒「……は、榛名さん」

榛名「そのくじは……この榛名がいただきます」バッ

羽黒「ぎ、艤装展開!?」


青葉「おーっと! これはこれは!」

青葉「当たりくじを巡って一部の戦艦と重巡が争い始めました!」

青葉「くじの意味ないじゃんとか気にしてはいけません!」

青葉「最終的にくじを手にしていたものが勝者なのですから!!」

金剛「榛名」

榛名「お兄さま、止めないでください」

榛名「榛名は……榛名は、このくじだけは、譲れません」

金剛「フッ……誰も止めるとは言っていないよ」

榛名「えっ、お兄さま……?」

金剛「助太刀しよう」スッ

榛名「お兄さま……!」

金剛「提督は金剛型と共にあるべきだ」


青葉「金剛さんも参戦してきちゃいましたねー」

青葉「司令官、大人気ですよ大人気」

提督「嬉しくない……」

羽黒「そんな……戦艦二隻が相手なんて……」

ポンッ

羽黒「ふえっ?」

球磨「羽黒、お前は一人じゃあないぞ。クマ」

羽黒「え、えっちな球磨さん!?」

球磨「その形容詞はやめろ」

羽黒「あ、すいません……」

球磨「ふふ……提督とも風呂には入りたいし、あの高速戦艦にもお仕置きが必要だなぁ? クマ」ギラリ


榛名「ひっ……」ガタガタ

金剛「榛名?」

伊19「水上艦だけにいいカッコはさせないのね♂」ムキッ

伊58「潜水漢も華麗に参戦でち♂」ムキッ

伊168「提督とのくじ、華麗にスナイプ♂ しちゃうんだから♂」ムキッ

***

青葉「ついに潜水漢も混じって混迷を極めてきましたね!」

提督「おお、もう……」

***

木曾「……ったく」

大井「お? 木曾も参戦?」

木曾「まさか。あのバカどもを止めてくるのさ」

大変申し訳ないがここでストップ ほんとすいません

木曾「おい、お前ら。少しは落ち着いたらどうだい?」

木曾「球磨兄も、しっかりしてくれよ。これじゃ球磨型の名が泣くぜ」

球磨「耳が痛いが……俺は弟だって可愛がる度量はあるつもりだぞ? クマ」ジトッ

木曾「あのなあ……」

伊19「出てきたのね、木曾♂」

伊58「この前は木曾がいいとこもってったでち♂」

伊168「今回は木曾対策もバッチリなんだから♂」

榛名「木曾さん対策?」

木曾「へぇ、面白いこと言ってくれるねぇ」

金剛「確かに私たちとしても、木曾に出張られるのは痛いものがあるね」

金剛「お手並み拝見させてもらおう、潜水漢」

伊19「任せるのね♂」

***

青葉「あの人たち、木曾さん相手に手を組み始めましたね」

提督「木曾! 負けるな木曾!」

***

伊19「木曾……お前、ウチのまるゆを可愛がってくれてるそうなのね♂」

木曾「あ? ああ、まあ、あいつは何か放っておけないところがあるからな」

伊19「ふふふ……お前がこれ以上こっちに近づいたら! まるゆはイクたちとぬるぬるローションプレイの刑なのね♂」バァーン



まるゆ「き、木曾さん……」グスッ

ろーちゃん「まるゆもろーちゃんと一緒に鍛えましょって♂」ギュッ

木曾「お、お前……自分の仲間を盾に……!」

伊58「勝負の世界は非情なのでち♂」ムキッ

伊168「使えるものはすべて使うのよ♂」ムキッ

伊19「まるゆの貧相な体がぬるぬるオイルなこんがり肌になるのを見たくなかったら、ここは引くのね♂」

木曾「くっ……」


金剛「予想以上に酷い手段だね」

榛名「最低です……」

羽黒「どうかと、思うなぁ……」

球磨「恥を知れ。クマ」


伊19「最大の障害の足止めをしてやってるのにひどい言い草なのね♂」

木曾「ちっ……」

伊58「おーっと、それ以上動いたらろーちゃんの手がまるゆの股間に動くでち♂」

ろーちゃん「でっちがね♂ 教えてくれたんだけど♂ 気持ちいいんだよ♂」ムキッ

まるゆ「ふえぇ……」

木曾「や、やめろ! くっ……」チラッ


提督「…………」(すべてを諦めた目)


木曾「……わかった、今回は俺は引く。だからまるゆには手を出すんじゃない」

伊19「言質は取ったのね♂」

伊168「まるゆを解放してあげるわ♂」

ろーちゃん「はい、どうぞ♂」バッ

まるゆ「き、木曾さん……」

木曾「まるゆ、無事か?」

まるゆ「……はい」

伊19「さあまるゆ、本懐を果たすといいのね♂」

まるゆ「はい!」

木曾「は?」

羽黒「本懐?」


まるゆ「僕、木曾さんとお風呂に入りたいんですっ」ギュッ

木曾「んな……騙したのか」

伊19「最初っからイクたちとまるゆはwin-winなのね♂」

伊58「まるゆ、そのまま木曾を抑え込んでおくでち♂」

伊168「あまり潜水漢を舐めない方が良いわよ♂」ムキッ

伊19「頭脳プレーもお手の物なのね♂」ムキッ


まるゆ「木曾さん、木曾さん」ギュッ

木曾「……おい、ひっつくなまるゆ……」


金剛「なるほど、確かに木曾を封じ込めたことは賞賛に値する」

榛名「だけど、木曾さんが封じられた以上、有利なのは戦艦である私たち……」

球磨「誰か忘れてないか? クマ」

榛名「ひぃっ……」

金剛「榛名はともかく、私が羽黒と、潜水漢を攻めたてればそれで終わりではないかね?」

羽黒「そう簡単に……させません!」

金剛「吠えるね、重巡」

羽黒「飛龍さん!」

デーデレー デーデレデー デン! デデドン!

BGM(https://www.youtube.com/watch?v=lO5JaBuRvoY)


飛龍「――目標を確認。任務を遂行する」シュタッ


金剛「飛龍!?」

羽黒「この前の伝手が活きました」

飛龍「羽黒の障害は全て斬り伏せよう」

羽黒「さあ、金剛さん。重巡と空母相手に、どうなさるおつもりですか?」

金剛「くっ……」

***

青葉「あーもうめちゃくちゃだよ」

提督「…………」(何もかもを諦めた目)

***

榛名「ッ、榛名は、榛名はトラウマを越えて見せる!」

榛名「あなたに穢された、あの忌まわしい過去を、塗り替えて見せるッ!」ジャキンッ

球磨「一応未遂なんだがな……クマ。てか艤装をマジでこっち向けるのは危な」

榛名「消し飛んで――!」

ドゴォォォォン

球磨「マジか!? クマ!」

金剛「榛名が口火を切ったか。ならば弟に負けてはいられないね」

金剛「さあ重巡、そして空母、まとめて葬り去ってあげよう」ジャキンッ

羽黒「いつまでも減らず口を!」ジャキンッ

飛龍「狩るのは俺で、狩られるのはお前だ、金剛」スッ

伊19「いつまでも水上艦の天下が続くわきゃあ、ないのねっ♂」

伊168「海のスナイパー♂ イムヤにおまかせっ♂」

伊58「いくでち♂ 潜水漢の天下の為にっ♂」

***

青葉「どうします、これ?」

提督「お前が招いたんだからな!?」






???「者ども、静まれ!」 ビィィィィン




金剛「!?」

榛名「!?」

球磨「!?」

羽黒「!?」

飛龍「……」

プリンツ「静まれ、日本艦! 我らが宰相のお言葉に耳を傾けるが良い!」

伊8「さ、宰相……!」



ビスマルク「…………」デーン



金剛「くっ……あのヒゲは……」

榛名「か、勝てない……」

球磨「あれ艦息か?」

羽黒「……そんなぁ」

飛龍「…………」

誰もが……。

誰もが彼の言葉には耳を傾けざるを得ない! 

そんな凄味が、その艦息にはあった!

むしろ、艦息などという呼称は非礼に当たるのではないか……!

そう思わせてしまう、圧倒的な存在感と、ヒゲが! その男にはあった!


ビスマルク「この場は……」


ビスマルク「この場は、私が預かる!」バァーンッ

***

提督「び、ビスマルク……この混乱を鎮められるのはビスマルクだったのか……!」

提督「今日ほどビスマルクがエロいカッコのねーちゃんじゃなくて嬉しかった日はないぜ!!」

金剛「くっ……彼に出張られては、どうしようもない……」

金剛「ここは引こう、榛名」

榛名「はい、お兄さま……」

羽黒「仕方、ありませんね……」

球磨「流石にあのヒゲには勝てんなぁ。クマ」

飛龍「契約失敗か……」


プリンツ「提督との入浴権くじは我らドイツ艦が預かろう」

ビスマルク「案ずるな。提督に思うところは……それほどない」

青葉「今回の勝者はドイツ艦かぁ……ま、中立的な意味ではいいのかもね」


提督(一気に不安になった……)

《お風呂》

カポーン


提督「……」

ビスマルク「……」

プリンツ「……」

提督(何だこの状況)

プリンツ「不運でしたな、提督」

提督「え、あ、おう、そうね」

プリンツ「思うに、日本艦には落ち着きが足りない……」

プリンツ「まったく、長門も嘆かわしい……」

提督(す、すげえまともだ……)

ビスマルク「…………」

提督(ビスマルクは何もしゃべらないし……)

提督「あの、二人とも」

プリンツ「なんでしょうか?」

ビスマルク「…………」

提督「昼は、助けてくれてありがとう」

プリンツ「礼には及びません」

ビスマルク「…………」ウム

提督(か、寡黙だ……ビスマルク)

プリンツ「宰相、どうなさいました?」

ビスマルク「…………ん、うむ」

プリンツ「……宰相?」

提督「どうかしたの……んですか?」

提督(思わず敬語が出てきちゃうほど凄味があるからなあビスマルク……)


ビスマルク「提督よ」

提督「は、はい」

ビスマルク「まあ、その、なんというのだ」

ビスマルク「もっと私を褒めても良いぞ?」


提督「」

プリンツ「」

《お風呂》

潮「~~♪」

龍驤「ご機嫌やな」

龍驤「そんなにウチと風呂入るのが嬉しかったんか、キミぃ?」

潮「えへへ、なんか、七駆以外の人とお風呂入るのって、新鮮で」

潮(それに、下のことでからかわれないでも済むしね♪)

龍驤「ほーん、そういうもんやろか……」

潮「えへへ」ボロンッ

龍驤「…………」

龍驤(え、いや、見間違い……か?)

龍驤(なんやあのマグナム……駆逐艦が持ってていいもんちゃうで……?)

龍驤「…………」チラッ

潮「龍驤さん?」ボロンッ

龍驤「ま、マジか……」

潮「へ?」

龍驤(へへ……なるほどなぁ……)

龍驤(女のウチがまな板で悲しんでるとは耳にしたことあったけど……)

龍驤(へへ、男はそうやな、こっちになるわな……)ズーン


【潮と悲しみを背負った龍驤の巻】

いまいちノリきれない感が滲み出てしまったので反省反省
そろそろ瑞鶴♂と加賀♀葛城♀回もやりたいところではある

《執務室》

提督「あー……女の子とイチャイチャしてぇなぁ~」

瑞鶴♀「あ、提督さん。悪いけど私は加賀さん専用だからね」

提督「専用って響きがそこはかとなくエロい……」

瑞鶴♀「ふふふ、まぁね~。人妻だよ人妻」

提督「念願叶ってと言っていいのか、艦娘がようやくウチの鎮守府にも来たは良いけど……」

提督「君人妻だしなあ……。部下の嫁に手ぇ出したらまずいよなぁ」

瑞鶴♀「まずいっていうか、多分私提督さんのこと爆殺するよ」

提督「爆殺!?」

提督「っつーかさ、瑞鶴、お前ってどういう扱いなの?」

提督「なんかあの指輪あげた時には既に押しかけ女房だったけど」

提督「もう何の違和感もなくウチの鎮守府に溶け込んでるし」

瑞鶴♀「まあ、移籍って扱いなんじゃないかなあ」

提督「なんで当事者がそんな適当な認識なんですかね」

瑞鶴♀「いやぁ、あの頃私は若かった!」

瑞鶴♀「加賀さんへの想いだけを胸に飛び出してきちゃってさぁ」テヘヘ

提督「いやお前それ、てへへで済ましていい案件じゃないからね」

瑞鶴♀「じゃあ、てへぺろ」テヘペロ

提督「よっしゃ許す!」


加賀「バカやってないで執務をしてくれませんかね……」

提督「まあいいじゃんいいじゃん、加賀は優秀な秘書艦だしな」

瑞鶴♀「さすが加賀さん!」

加賀「……」

提督「素敵! 加賀さん!」

瑞鶴♀「抱いて! ……あ、いつも抱かれてるか」

提督「瑞鶴よぉお前、独り身の前で惚気んじゃねえよ」

瑞鶴♀「えへへ、ごめんごめん」

提督「ったくもー」


加賀「 仕 事 を し ろ 」

提督「……思うに加賀は俺に嫉妬してるな」

瑞鶴♀「え? つまりあれ、私が取られちゃうかも、みたいな?」

提督「そうそう」

瑞鶴♀「やだなあ加賀さんってば! 私は加賀さん一筋だよ!」

瑞鶴♀「提督さんはアウトオブ眼中だよ♪」

提督「マジで俺の心にくるからやめてくれ」

加賀「……別にそういうことではなく、純粋に仕事をしていただきたいんですがね……」

提督「はいはいわかったわかった……」

prrrrrr

瑞鶴♀「あ、電話だよ提督さん」

提督「はいよ」

提督「はいこちら艦息鎮守h」

女提督『提督くん! 瑞鶴を返してくれるかな!?』キーン

提督「ぐえっ……耳が……」

瑞鶴♀「あ、この声」

加賀「お前の提督か」

瑞鶴♀「うん、そう」


提督「……おい女提督……なんだいきなり、大声で」

女提督『それはこっちの台詞よー! 君のとこと演習やった直後に瑞鶴が失踪して!』

女提督『風の噂じゃそっちの加賀くんと結婚までしたそうじゃない!』

提督「お、おう、まあそうみたいね……」

提督(お前、家出娘だったのかよ!)ボソッ

瑞鶴♀(いやぁ、すいません……」ボソッ

女提督『おかげでこっちの空母戦力がダウンで大変なのよー!』

提督「そ、そうか……」

女提督『だからね、瑞鶴をこっちに返してほしいんだけど!』

提督「まあ、そりゃ仕方ないな……」

瑞鶴♀「えっ」

加賀「いや、当然だろう……」

女提督『あ、瑞鶴そこにいるの?』

提督「おう、いるが……」

女提督『電話、代わってくれる?』

提督「……瑞鶴、お前んとこの提督から」

瑞鶴♀「は、はい……」

***
**


女提督『――――』

瑞鶴♀「――――」

女提督『――――』



加賀「…………」ソワソワ

提督「よー加賀、何ソワソワしてんだ?」

加賀「べ、別にそんなことはしていませんよ」

提督「まあ、口では何のかんの言いつつ心配だよなあ、当然なあ?」

加賀「……」

提督「まあ安心しろ。俺に一計がある」

加賀「はぁ……」

瑞鶴♀「あの、提督さん……お電話、返すね」

提督「おう。……もしもし?」

女提督『とりあえず瑞鶴は叱っておいたわ。……で、いつ返してくれるかな?』

提督「それなんだが、俺に一計がある」

女提督『一計?』

提督「ああ。……なんやかんやいいつつ、瑞鶴と加賀はこっちで仲睦まじくやってんだ」

提督「いきなり引き裂いちまうのも忍びない……ということで」

提督「男の瑞鶴をそっちに移籍させようかと」

女提督『……あら、あらあら』


女提督『……ハーレムね!』

提督「憎らしいことにな」

女提督『いいじゃない! 薄い本のネタに……おっとなんでもないわ』

提督「おう」

女提督『いいわ、乗った!』

提督「じゃあウチの瑞鶴を説得するわ」

女提督『話通してないの?』

提督「まあ……でも大丈夫」

提督「女の翔鶴と女の加賀と女の葛城で釣る」

女提督『……釣れるのかなあ』

提督「少なくともウチの葛城から離れられると知ったら結構乗り気になるとは思うが」

女提督『何それちょっと詳しく』

提督「はい、じゃあそういうことで」ガチャッ

***

提督「――と、いうわけで瑞鶴。お前今度から女の瑞鶴がいたとこの鎮守府に行ってくれ」

瑞鶴「ハァ!? いきなり何言ってんだよ!」

葛城「そうですよ! 瑞鶴先輩を女の園に送り込むなんて、そんな……」

瑞鶴「……いや、いいな、行くよ俺」

葛城「瑞鶴先輩!? 俺を捨てるんですか!?」ガシッ

瑞鶴「ええい、だからひっつくんじゃねーって!」

提督「うんうん、これでよし」

瑞鶴♀「私の勝手で迷惑かけてごめんね」

瑞鶴「それは否定しねえけどさ……」

瑞鶴「まーなんだ、加賀さんの事、幸せにしてやってくれよな」

瑞鶴♀「うん、誓うよ! 私!」

加賀「……お前な」

瑞鶴「へっ、女の尻に敷かれてるのがお似合いってことですよ! 加賀センパイ!」

加賀「……」

提督「期間は決まっている。ずっとってわけじゃあないから、頼むな、瑞鶴」


瑞鶴「おう、任せとけって!」

瑞鶴♂出張編の導入はこんなところで
あんまり提督メインじゃないね 仕方ないね

雪しゅごい
風呂湧くまでの小ネタ

***

【摩耶様の悩み】

摩耶「……」グデーン

提督「よー、どうした摩耶。疲れてんな」

摩耶「提督か……」

提督「この提督がお前の悩みを聞いてしんぜよう」

摩耶「……なあ、高雄型ってどう思う」

提督「なんだよいきなり。まさかの重い悩みか」

摩耶「あー、まあ……なんつーか……」

提督「兄弟艦に悩みがあるのか」

摩耶「……」

提督「高雄型つったら……」



高雄「うふふ。馬鹿めと言って差し上げますわ」

愛宕「ぱんぱかぱーん♂」

鳥海「破ァ!」



提督「……何かおかしいか?」

摩耶「全部おかしいだろ! キャラ濃すぎだろ羨ましい!」

提督「羨ましいと来たか」

摩耶「いやさ……俺、被ってんじゃん……不良キャラ」

提督「誰と」

摩耶「木曾とか……」

提督「はぁ!? 木曾は不良じゃないし! イケメンだし!」

摩耶「えぇ……」

提督「すまん、取り乱した……」


提督「いや、別に摩耶は摩耶でヤンキー系男子の地位を確立してるだろ」

摩耶「いや、そうかもだけどよぉ」

摩耶「高雄兄ぃはなんかしんねーけど女装してんべ?」

提督「してる」


♪ ♪ ♪

高雄「て・い・と・く? 私のガーターベルトがそんなに気になりますか?」クスッ

♪ ♪ ♪


提督「男と知っててもあのガーターベルトには目を奪われざるを得ない」

摩耶「お前……」ササッ

提督「引くなよぉ! 泣きたいのは俺も一緒だよ!!」

提督「最近自分の中で性別があんまり大きな壁じゃなくなってる気がしてきて怖いんだよぉ!!」

摩耶「まあいいや……愛宕兄ぃも、あれだ……」

摩耶「……女装してんべ……?」

提督「してる……」

摩耶「胸パッド、いれてるだろ……まあ高雄兄ぃもだけど」

提督「いれてる……」


提督「……ぱんぱかぱーん♂の破壊力は結構でかかったぞ」

提督「抱き付かれながらぱんぱかぱーん♂されたんだがな……」

提督「なんかな、俺の腰にな、硬いものが……」

摩耶「やめろ! 聞きたくねえ!」

摩耶「兄の痴態は聞きたくねえ」

提督「そうだろうな……」

摩耶「んで、最後は鳥海だけどよ」

提督「うん」

摩耶「……流石は鳥海法師というべきか」

提督「うん……」

摩耶「なんかたまに「破ァ!」してね?」

提督「……してる」

摩耶「あと後光が眩しい……デコも」

提督「うん、眩しい」


摩耶「みんな明らかにキャラ濃いよな!?」

摩耶「なんか俺だけ負けてねーか!? 大丈夫か!?」

提督「何を心配してるんですかね……」

摩耶「……この摩耶様がこの先生きのこるためにはどうすりゃいいんだ」

提督「天龍でも舎弟にすりゃいいんじゃね?」

摩耶「んー……まあ、それも考えたけどよ……」

***

天龍「今宵も我が剣は血に飢えている……」ギラリ

天龍「フフフ……怖かろう。悔しかろう」ニヤッ

***

摩耶「俺にはわからん世界なんだよな……」

提督「ああ、まあ、そうね……」


【摩耶様の悩み】

みじけえ! 風呂入ってきます

【瑞鶴、出張す!】

《女提督の鎮守府》

コンコン

女提督「どうぞー」

加賀♀「失礼します」ガチャッ

女提督「あら、加賀。どうしたの?」

加賀♀「……ひとつ、尋ねたいことがあるのだけれど」

女提督「いいわよ。私のスリーサイズ?」

加賀♀「……」

女提督「ごめん。……で?」

加賀♀「あの放蕩娘が……」

加賀♀「瑞鶴が戻ってくると聞いたのだけれど」

女提督「ああ、なるほどそのこと。ええ、『瑞鶴』なら戻ってくるわよ」

女提督(男の子な瑞鶴は、ね)

加賀♀「……そう」

女提督「どうしたの? 何だかんだで、瑞鶴がいないと寂しかった?」

加賀♀「別にそういうわけではありません」

女提督「そういうことにしておくわ」

加賀♀「だから……」

コンコン

女提督「あらあら、今日はお客様が一杯ね。どうぞ」

ガチャッ

葛城♀「失礼します!」

女提督「話は読めたわ」

葛城♀「えっ、すごい!」

女提督「『瑞鶴』なら、今日戻ってくる予定よ」

葛城♀「本当!? やったわ!」

加賀♀「まったく……後輩まで放っておいて、あの娘は……」

女提督(まあ、娘じゃないけどね……)

***
**


瑞鶴「ここが俺の着任先か」

瑞鶴「女の自分の尻拭いってのも複雑だけど、まあ……」

瑞鶴(……加賀さんが幸せそうだったし、それはそれで)

瑞鶴「……何考えてんだ俺は。アホくさい」

瑞鶴「あー、いこいこ」

スタスタ

アレ オトコノヒトダ
ダレカナー イケメンジャナイノ!
センジョウガ! イケメンガ! ワタシヲ  ハーイ アシガラチャンハダマッテテネー


瑞鶴「…………」

瑞鶴「…………」

瑞鶴(やべえ、既にもう安請け合いしたのを後悔してきた)

瑞鶴(当たり前だけどここ艦娘しかいねえ……)

瑞鶴(四方八方からの好奇の視線が……)

瑞鶴(はやいとこ執務室に行こ……)

《執務室》

加賀♀「あの放蕩バカ娘にはどのような灸を据えてあげようかしらね」

葛城♀「だ、ダメですよ加賀さん、瑞鶴先輩が折角戻ってきてくださるんですから!」

加賀♀「そうやってあなたが甘やかすからつけあがるのよ」

葛城♀「で、でもぉ……」

女提督「ふふふ、悩め悩め乙女たち」

加賀♀「……なんですかその含みのある笑いは」

女提督「なんでもなーい」

葛城♀「あなた……なんか腹立たしいわよその笑顔」

女提督「酷くない!?」


コンコンッ

加賀♀「!」

葛城♀「!」

女提督「どうぞ、入ってらっしゃい、瑞鶴」

加賀♀「……」

葛城♀「……」

ガチャッ


瑞鶴「……あー、えと、失礼します」

瑞鶴「翔鶴型航空母艦、二番艦、瑞鶴……です」ペコッ


女提督「ようこそ、瑞鶴『くん』」ニコッ

加賀♀「」

葛城♀「」

瑞鶴「本日ヒトフタマルマルをもって」

女提督「あー、いいからいいからそういう堅苦しいの」

瑞鶴「あ、はい」

女提督「歓迎しちゃうよ、瑞鶴くん」

瑞鶴「ど、どうも……」


加賀♀「」

葛城♀「」


瑞鶴「……?」チラッ

瑞鶴「あの、そこの人たちは」

女提督「まあ、いずれわかるよ、いずれね!」

瑞鶴「はあ……」

瑞鶴(……この人、結構適当だな!)

女提督「おっと……自己紹介が遅れちゃったわね。私は女提督、ここの司令官よ」

瑞鶴「よろしくお願いします」

女提督「うんうん、期待してるわ!」

女提督「移動で結構疲れただろうし、何よりまずは荷物を置いてもらわなきゃね」

女提督「そこの二人に案内させたい……とは思ってたけど、まだフリーズしてるから別の子呼ぶね」

瑞鶴「あ、どうも」

ガチャッ

蒼龍♀「提督、呼んだ?」

女提督「いらっしゃい蒼龍。今日も良い乳してるわね」

瑞鶴「…………」

蒼龍♀「またセクハラだよ……って、うわあ!? だ、誰、この人!?」

女提督「瑞鶴、って言ったら信じる?」

蒼龍♀「え、瑞鶴?」

瑞鶴「どうも、蒼龍先輩。瑞鶴です」

蒼龍♀「……え、ちょ、瑞鶴って男だっけ?」アタフタ

女提督「艦息って聞いたことない?」

蒼龍♀「……えっ、彼が!?」

瑞鶴(俺たちってそんなに珍しいのか)

女提督「いろいろあって、艦娘の瑞鶴の代わりに、彼があなたたちの後輩になるから」

蒼龍♀「い、いきなりだなあ」

女提督「まあね。で、とりあえず空母寮に案内してあげてくれる?」

女提督「荷物とかいろいろ置かないといけないし」

蒼龍♀「あ、はい、わかった」

瑞鶴「よろしくお願いします」ペコリ

蒼龍♀「あ、うん、いいよ、大丈夫! あはは!」


蒼龍♀(うわあ……艦息って噂には聞いてたけどいざ目にするとやっぱり違うなあ)

蒼龍♀(この青年があの瑞鶴なのかぁ……すごいなあ、性別の差って……)

瑞鶴「……あの、蒼龍先輩?」

蒼龍♀「――あ、ごめんごめん! それじゃ、いこっか!」

瑞鶴「よろしくお願いします」

蒼龍♀(……ヤバい。男の子に先輩って呼ばれるとなんかクるものがあるわ)

瑞鶴「では……いったん失礼します」

女提督「うん、それじゃあね。蒼龍、後よろしく」

蒼龍♀「はーい。……じゃ、着いてきてくれる? 瑞鶴くん……で、いいのかな」

瑞鶴「先輩の呼びやすい方でいいですよ」

蒼龍♀「……じゃ、じゃあ、瑞鶴って呼ばせてもらうよ、うん……」

ガチャッ


葛城♀「」

加賀♀「」

女提督「…………」

女提督「あんたたちはいつまで呆けてんのよ」パシッ

葛城♀「!」

加賀♀「!」

女提督「……さあて、どうだったかしら、私のサプライズは?」

葛城♀「あ、な……あの、あなたねぇ……!」

葛城♀「お、男の! 瑞鶴先輩が来るなんて! 聞いてないわよ!?」

女提督「言ってないしね」

加賀♀「瑞鶴が戻ってくると言ったじゃない!」

女提督「『瑞鶴』が着任したわよ? 誓って嘘は言ってないけど?」

加賀♀「う、ぐ……」

女提督「まあまあ、いいじゃない。案外うまくいくかもよ?」

加賀♀「そんなわけないでしょう……」

葛城♀「そうですよ!」

***

ヒソヒソ ジロジロ

瑞鶴「……うーん」

蒼龍♀「ああ……ごめんね、居心地悪い思いさせちゃって」

瑞鶴「いえ……俺たち艦息と艦娘は、あまり関わり合うことがありませんから」

瑞鶴「仕方ないことだとは思いますよ」

瑞鶴「女の俺が……ああ、元々ここ所属の瑞鶴がウチに来た時もそうでしたしね」

蒼龍♀「え? 瑞鶴、そっちに行ったの?」

瑞鶴「艦息の加賀さんとケッコンしました」

蒼龍♀「ま、マジかー……ていうか艦息と艦娘ってケッコンできるんだ……」

瑞鶴「指輪があればできるらしいです」

蒼龍♀「恐るべし、指輪……だね」

《空母寮》

蒼龍♀「はい、ここが我らが空母寮」

蒼龍♀「部屋は……多分瑞鶴♀の部屋が空き部屋になってるから、そこを使えって事だと思う」

瑞鶴「まあ、俺も瑞鶴ですしね」

蒼龍♀「そういうことだね。……それじゃ、私の案内はここまで、かな」

瑞鶴「あ。……ありがとうございました、蒼龍先輩」

蒼龍♀「ううん、気にしないでよ。……でも、あ、あー、その、あれだ」

蒼龍♀「なんか困ったことあったら、なんでも言ってね。力になるからさ」

瑞鶴「はい。……ありがとうございます」ニコッ

蒼龍♀「っ、う、うん、そ、それじゃねー!」ビューン

瑞鶴「うお、早っ」

***

蒼龍♀「や、やばい、あのままずっと傍にいたら惚れてた気がする……」

蒼龍♀「それじゃ惚れっぽすぎるだろ私ぃ~!」ポカポカ

***


瑞鶴「さて……」

瑞鶴「流石に好奇の視線に晒され続けるのも疲れたし……」

瑞鶴「部屋でゆっくりさせてもらうとしよう……」

《――鶴の部屋》

瑞鶴「ああ、ここか」

ガラッ




翔鶴「――え?」ヌギッ


瑞鶴「――は?」



――目に映ったのは、純白。


.

翔鶴「えっ、あっ、その……」

瑞鶴「しょ、翔鶴姉ぇ……」


純白の髪と、慈愛に溢れたその顔立ちから、彼女が『自分の姉』だということにはすぐに思い当った。

そして、目の前の彼女が『姉』であり、『女性』であり、そして今まさに『着替え中』だと知った瑞鶴は――。


瑞鶴「――っ、ご、ごめんなさいっ!」バシッ


すぐに謝って全力で戸を閉めた。


瑞鶴(い、いや、それしかないだろ! だって、いや、着替え中で……)

瑞鶴(つ、つーか、そうか、ここだと翔鶴兄ぃは翔鶴姉ぇで……)

瑞鶴(ま、まじか……)

《翔鶴の部屋》

瑞鶴(しかも部屋まちがってるし……瑞鶴の部屋は隣か)

瑞鶴(うわぁ……着任早々やっちまった……)

瑞鶴(しかも自分の……姉の着替えを……)

瑞鶴(うう、罪悪感が半端じゃねえ……)

瑞鶴(ど、どうすっかな、謝るにしたって……うげ、胃がキリキリする……)


ガラッ


翔鶴♀「あの……瑞鶴、でいいのかしら?」

瑞鶴「……あ、はい」

翔鶴♀「話は聞いています。ようこそ、この鎮守府へ」

瑞鶴「あ、ありがとう、ございます……」

瑞鶴「それと……さっきはすいませんでした……」

翔鶴♀「あら……。ふふ。もう……いいのよ、瑞鶴」

瑞鶴「え?」

翔鶴♀「私たちは姉弟なのよ? 気にするほどの事ではないわ」

瑞鶴「い、いやいやいや、気にすべきですよ!?」

翔鶴♀「それに、そちらの赤城さんにはもっと過激な……ふふっ」

瑞鶴「えっ……なに、ウチの赤城さん……あの腹黒なにしてんの翔鶴姉ぇに……」

翔鶴♀「妹の代わりに来てくれたと聞いたわ」

瑞鶴「あ、ええ……まあ……」

翔鶴♀「これからよろしくね?」

瑞鶴「はい、よろしくお願いします……」

翔鶴♀「こら、瑞鶴」ペシッ

瑞鶴「あてっ……な、なんすか?」

翔鶴♀「姉弟なのに敬語はどうかと思うわ?」

瑞鶴「……え、いや、あの」

翔鶴♀「お姉ちゃん、寂しいなぁ」ウワメヅカイ

瑞鶴(おい……反則だろ……)



瑞鶴「わ、わかった翔鶴姉ぇ……敬語は使わない、よ……」

翔鶴♀「うん、それでよし♪」

瑞鶴(ヤバい無理もう多分俺は色々と燃え尽きる)

***
**


《瑞鶴の部屋》

瑞鶴「…………」

瑞鶴(艦娘だらけの場所で生活できるなんて羨ましいと)

瑞鶴(足柄が血涙を流してたけど……)

瑞鶴(俺はとてもそうは思えないな……)

瑞鶴(男だけは気安いぜ、やっぱ……)

ガチャッ

飛龍♀「やっほー、遊びにこさしてもらったよ瑞鶴!」

蒼龍♀「ひ、飛龍、いきなりはまずいって!」

瑞鶴「!?」

瑞鶴「……ひ、飛龍先輩?」

飛龍♀「ほう、噂の艦息くんか。なるほどね」

蒼龍♀「ああもう飛龍ってば……ごめん瑞鶴、飛龍が話聞かなくて……」

瑞鶴「あ、いえ……。よろしくお願いします」

飛龍♀「うん、よろしく!」

飛龍♀「よし、撤収! 行くよ蒼龍!」

蒼龍♀「ええ!? 思いつきだけで動きすぎでしょ飛龍!」

飛龍♀「じゃあね瑞鶴! また明日!」

瑞鶴「あ、はい」

蒼龍♀「ごめんね、瑞鶴!」

瑞鶴「いえ……」

瑞鶴「嵐のような人たちだ……」

瑞鶴(ウチの飛龍先輩はなんかストライダーだし……また違った印象があるな)

瑞鶴「……はぁ」

コンコン

瑞鶴(客が多いな……まあ、仕方がないか)

瑞鶴「はい、どうぞ」


ガチャッ


グラーフ「失礼する」

赤城「こんばんは」ペコリ

瑞鶴「グラーフさんに赤城先輩……ですか?」

グラーフ♀「私を知っているのか」

瑞鶴「ああ、まあ、空母でドイツの方ですし」

グラーフ♀「なるほどな」

赤城♀「提督からお話は伺いました。これからよろしくお願いしますね」

瑞鶴「はい、こちらこそ」

赤城♀「なかなか加賀さん好みのしそうな方ですね」

グラーフ♀「……? それはどういう意味だ、アカギ」

赤城♀「いずれわかりますよ、いずれね」

瑞鶴「……?」

赤城♀「折角の自由時間にお邪魔して御免なさいね。それじゃ、行きましょう、グラーフさん」

グラーフ♀「うむ……では、またな、ズィーカク」

瑞鶴「はは……」

コンコン

瑞鶴「もう驚きやしない。どうぞ」

ガチャッ

雲龍♀「こんばんは」ペコリ

天城♀「失礼しますね」ペコリ

瑞鶴「」

瑞鶴(何なんだこの人たち!? なんでこんな薄着なんだ!? 目の毒過ぎるぞ!?)アタフタ

雲龍♀「あ……こんな夜更けにすみません、瑞鶴さん」

瑞鶴「瑞鶴さん!? その体で俺にさん付けなのか!?」

天城♀「えっ?」

瑞鶴「あ、いや、なんでもない……」

瑞鶴「……ひょっとして、雲龍と天城、か?」

雲龍♀「はい。わかっていただけて、嬉しいです」

天城♀「これからよろしくお願いしますね」

瑞鶴「あ、ああ……」フイッ

雲龍♀「……あの……」

瑞鶴「な、なんだ?」

雲龍♀「……何故、目を背けられるのでしょうか?」ズイッ

瑞鶴「あ、いや、これには深い意味はなく……いや深いけど……あの」

天城♀「瑞鶴さん……?」ズイッ

瑞鶴(やばいやばいこいつらダブルはヤバい)

瑞鶴(こうなりゃ、俺が葛城との戦いの中で編み出した最強の技しかねえ――!)



瑞鶴「悪いな、用事を思い出したんで先に失礼するわ!」ダッ

瑞鶴(三十六計逃げるに如かずってな!)

***
**


ダダダダダダダッ

瑞鶴「…………ふう」

瑞鶴(あの衣装はおかしいだろどうなってんだ……)

瑞鶴(ウチの提督なら一も二もなく襲って憲兵に捕まってるぞアレ……)

瑞鶴(……さすがにそれは失礼か? いや、どうだろう……)

瑞鶴(……てか、ここどこだ? 迷っちまった……)

瑞鶴「…………」スタスタ



瑞鶴「……あ」バッタリ

葛城♀「あ……」バッタリ

葛城♀「…………」

瑞鶴「あの、悪いんですけど……ちょっと道を」

葛城♀「わ、私は!」

瑞鶴「え?」

葛城♀「わ、私は、あなたが瑞鶴先輩だとは、認めないですから!」

瑞鶴「な、なんだよいきなり……」

葛城♀「私の尊敬する瑞鶴先輩は、あなたじゃあ、ない!」

瑞鶴「…………、そうか、お前、葛城か」

葛城♀「そ、そうよっ!」

瑞鶴「ふっ……はは、あはは」

葛城♀「な、なにがおかしいの?」

瑞鶴「いや……やっぱ、それくらいの気概を持って後輩にぶつかられる方が嬉しいよな、と思って」

葛城♀「な、何言って……。私は失礼なことを言ってるのに……」

瑞鶴「葛城」

葛城♀「な、なんですか」

瑞鶴「いつか俺を認めさせてやるよ。実力を持ってな」

葛城♀「ふ、ふんっ、できるといいですけどねっ」

瑞鶴「そうじゃなきゃな。張り合いがないぜ」

葛城♀「勝手に言ってればいいんですよーだ!」スタスタ


瑞鶴「ああいう葛城も新鮮でいいな」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「やべえ、道わかんねえ」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「…………」


ヒュッ バシッ 

  ギリギリ  ビュッ


瑞鶴「……この音」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「こっちか」ダッ

加賀「…………」ギリギリ

加賀「…………」ギリギリ

加賀「…………」ギリギリ


加賀「――――」ヒュッ


バシンッ


***

瑞鶴「……あれは、昼間の……じゃあ、あれが」

瑞鶴「加賀さんか……」

***


加賀「…………」

加賀「……そこの不埒者。出てきなさい」

瑞鶴(バレた……マジか)

加賀♀「出てこなければ、射るわ」

瑞鶴「……あ、それは勘弁……」

加賀♀「……あなた」

瑞鶴「こんばんは、加賀先輩」

加賀♀「瑞鶴、ね」

瑞鶴「え、ええ……」

加賀♀「…………」

瑞鶴(ち、沈黙が痛ぇ……)

加賀♀「…………」

瑞鶴「…………」

加賀♀「艦息だか、なんだか、知りませんけれど」

瑞鶴「……」

加賀♀「無様だけは、見せないでほしいわね」

瑞鶴「……ご期待に沿えるよう、努力はしますよ」

加賀♀「口だけでないことを願うわ」

瑞鶴「…………」

加賀♀「…………」スタスタ



瑞鶴(加賀さんってのは艦息だろうが艦娘だろうが、クールな感じになるのかね)


瑞鶴「――あ、やべ、また道を……」



【瑞鶴くんの受難 あるいは女難 ①】

提督出てこなさすぎで草生えますよ~
瑞鶴くんは主人公にしたい……したくない?

それではまた次回

せやな(ハナホジ)

shiriを貸すだと

【第六駆逐隊】

《執務室》

ドタドタドタドタ

ガチャッ

雷「ただいまー司令官!」

提督「おー、おかえり六駆」

響「……」

暁「ふふ、しっかりこなしてきたよ」

電「頑張ったのです!」

提督「そーかそーか、偉いぞみんな」

雷「収支報告書はこれだよ!」

提督「ん、確かに受け取った」

雷「もっと僕に頼っていいんだよ、司令官?」

提督「ありがとう。ま、ほどほどにな」

電「補給を要請しても良いですか?」

提督「ああ、もちろん。手配しておく」

響「……スパシーバ」

暁「紳士たるもの、仕事の後は優雅にしておきたい……よね!」

提督「んじゃ頑張ったお前らにジュースとお菓子をやろう」

雷「本当!? いいの、司令官!?」

電「嬉しいのです!」

響「悪くないね……」

提督「そうだろうそうだろう」

暁「ジュース……」

提督「何かご不満かな、小さな紳士殿」

暁「……ジェントルマンとして、ジュースは飲めないな」

提督「ほう、言うね」

提督「ではジェントルマンの暁くんには……」

提督「このブラックコーヒーをあげよう」ドンッ

暁「ぶ、ぶらっく、こーひー……」

提督「雷たちはほれ、ジュース」

雷「ありがとう司令官!」

電「いただきます!」

響「では僕も……」

暁「あ……」

提督「さ、俺たち大人の男は優雅にコーヒーを嗜もうじゃあないか」

暁「う……」

提督「……」ズズッ

暁「あう……」アタフタ

提督「どうした、暁?」

暁「ううっ……飲むよ、飲むとも……」プルプル


雷「無理しない方がいいと思うよ」

電「あんまり見栄を張らなくても……」

響「ハラショー」

暁「う、うるさいっ! し、紳士は怖気づかないんだから……!」

暁「っ!」バッ


提督「っと、流石にちょっとからかいすぎたな。悪い暁、お前の分もちゃんと……」

長門「涙目の暁……いいな……そそる……」ハァハァ

暁「ひっ」

提督「…………」

提督「……携帯取り出しポパピプペ、っと」

提督「あ、武蔵か? ちょっと執務室に来てくれる?」

長門「おい! 私が何かしたか!?」

提督「相変わらずお前は存在自体がアウトなんだよ。つーかいつ来た」

長門「駆逐艦あるところに長門ありだ」


電「ちょっと普通に気持ち悪いのです」

雷「ちょ、ちょっと電、そんなストレートにっ……!」

響「……」


提督「このショタホモセブンは……」

長門「あまり褒めるな」

提督「褒めてないでしょうが!」

長門「駆逐艦を愛でることの何がいけないというのか……理解に苦しむな」

提督「お前の性癖の理解に苦しむよ」

ガチャッ

武蔵「――呼んだか、提督」

提督「よく来た武蔵。このショタホモセブンを現行犯逮捕してくれ」

武蔵「おいおい……この前の風呂であれだけ激しくやったってのに……」

長門「人聞きの悪いことを言うな!」

武蔵「フッ、まあいいさ。……この武蔵の主砲♂、伊達ではないぜ♂」ガシッ

長門「は、離せ……くそっ、この筋肉が……!」

提督「んじゃ頼むわ武蔵」

武蔵「心得た」

長門「や、やめろ! 近寄るんじゃあない!」

武蔵「大和型に勝てると思ってるのかい?」ズルズル

♂付いてないから最初混乱したぞ…

提督「さて……悪は去った」

提督「悪いな暁、からかい過ぎたよ」

提督「ほれ、お前のジュース」

暁「あ……」パァ

暁「っ、し、紳士をからかうなんてどうかと思うよ、司令官!」

提督「そうだな。悪かった悪かった」ナデナデ

暁「こ、子ども扱いしないで、ひとりの大人として扱ってよ!?」

提督「それにはまず、コーヒー飲めるようになって貰わないとな」

暁「う~~……!」

雷「あー、ねえ司令官、僕も撫でていいんだよ?」

電「電も、いつでも大丈夫なのです!」

響「期待してるよ」

提督「わ、わかったわかった……」


【結局六駆は可愛いの巻】

混乱させてごめんなさいね、六駆についてはこれが>>1の限界でしたね

バナージ、駆逐艦の♂って難しいね……
風呂いってくるでち♂

第六駆(ショタ)見てるとさ
もうショタコンでもいいやと思える

【将を射んと欲すれば先ず馬を射よ】

《執務室》

提督「……はぁ」

加賀「……」

提督「…………はぁ~」

加賀「…………」

提督「はぁぁぁぁ……」

加賀「……」イラッ


加賀「……さっきからなんですか、鬱陶しい」

提督「あ、聞いてくれる?」

加賀「聞いてほしそうにしていましたしね」

提督「いやあ、さすが俺と加賀の仲と言わざるを得ないね」

提督「マブダチだよなマブダチ」

加賀「御託はどうでもいいんですが……」

加賀「話だけなら聞きますから、そうしたらとっとと執務に戻ってくださいね」

提督「相変わらずクールですこと……」

加賀「……」

提督「わかったから睨まないでくれ」

提督「まあ、その、なんだよ。ちょっと悩みがあってな?」

加賀「羽黒に尻を狙われているとかですか。お大事に」

提督「いやそれもそうっちゃそうだけど」

加賀「では潜水漢に尻を狙われていると。痔にはお気をつけて」

提督「やめて突き放さないで。あとそのアドバイス怖い」

加賀「……ではなんですか? 正直提督の悩みというと後ろの穴関連しか思いつきませんが」

提督「酷い連想ゲームだな……」

提督「……いやさ、俺も人の子だから当然親がいるわけでさ」

提督「その親がさ……しつこいんだよ」

加賀「はあ」


提督「『いい加減恋人の顔を見せてくれ』……って、しつこいんだよ……」

加賀「……それは、なんといいますか」

加賀「……同情します」

提督「急に素に戻って優しくしないで! 心にくる!」

加賀「世の中には絶対に不可能なこともありますから、親御さんには諦めて頂く方がよろしいかと」

提督「おいやめろ」

加賀「……でも無理でしょう?」

提督「やめてよ! まだ俺は希望に賭けてんの!」

提督「いつ終わるとも知れない深海棲艦との戦いの最中!」

提督「砲弾が飛び交い硝煙が香り怒号が犇めく戦場の中!」

提督「数多の戦場を共に駆けた司令官と艦娘との強い絆が実を結びやがて花開くハッピーエンドが待ってんの!」

加賀「そうですか」

提督「反応軽すぎィ!」

加賀「でも無理でしょう?」

提督「二度もいらねーんだよ同じセリフは」

提督「艦娘がなんやかんや建造されっかもしれねーだろ?」

加賀「今までの勝率は?」

提督「……0%ですけど!」

加賀「もういい加減諦めるべきですよ」

加賀「そして潜水漢にその身を委ねるといいんじゃないでしょうか」

提督「やめろ」

加賀「人を無理矢理妻帯者にさせた罰があたったのでは?」

提督「ぐっ、それを言われるとつらい……が」


提督「お前普通に瑞鶴とよろしくやってんじゃねえかうらやまけしからん」

加賀「別によろしくは……」

提督「嘘おっしゃい! あの川内ですら『夜は空母寮の一角が煩いんだよね』とか直訴しにくんだぞ!?」

加賀「なっ……」

提督「毎日毎日ナニやってんだよ! お猿さんかよ! 羨ましいよ!」ブワッ

加賀「ち、血涙……」

提督「はぁ……艦娘とイチャイチャしてえなあ……」

加賀「叶わぬ夢を追い求める他人の背中を見ていると心が痛みますね」

提督「うるせー! お前なんかとっとと瑞鶴との間に可愛い子供作ればいいんだよバーカバーカ!」

加賀「なんですかその罵倒は……」

提督「んで、可愛い娘が出来たら僕に下さいお義父さん」

加賀「絶っ対にあなたにだけはあげません」

提督「こいつ親バカになりやがる……」

加賀「あ……い、いや、今のはですね」

提督「いいよもう、お前が瑞鶴にべた惚れなのは公然の秘密だよ……」

加賀「だ、だから」

***

青葉「んっふっふー、いいこと聞いちゃったよねー」

青葉「そうかそうか、司令官の親御さんは『司令官の恋人』に逢いたいのかぁ、なるほどねぇ……」

ドタバタ劇への布石を打って今日はここまでなのね♂
短くて申し訳ないのね♂ それでは

また無知を晒してしまった……許してください! なんでもしますから!

無知を晒したお詫びにちょっと続きを書くのね♂ 

***

青葉「やあやあみなさまお集まりいただいてありがとう!」

青葉「今日も青葉プレゼンツの楽しいレクリエーションだよー!」


提督「レクリエーションねえ……」

瑞鶴♀「どしたの提督さん。なんか不満でも?」

提督「いや、あいつ発案のイベントって碌なことが起きん気が……」

瑞鶴♀「でも開催は許してあげるんだ?」

提督「まあ……頭ごなしに否定するのも……」

瑞鶴♀「……私のこともそうだけどさ、提督さんって優しいよね」

提督「え?」

瑞鶴♀「……加賀さんがいなかったら、もしかしたらちょっと心揺れてたかも、私」

提督「……人妻に言われてもな」

瑞鶴♀「だよね」

青葉「今日のレクリエーション、その内容はこちら!」

デデーン

青葉「全艦息対抗、『司令官の恋人は俺だ!』選手権~!」

青葉「どんどんぱふぱふ~!」

提督「」

瑞鶴♀「わぁお」

青葉「この企画がどういう企画かと言いますとー」

青葉「この青葉がゲットした独占情報によると!」

青葉「司令官は、親御さんから『恋人の顔を早く見せてほしい』って言われてるらしいんだよね!」

提督「おい待てどっから手に入れたその情報!」

青葉「はい、この反応で確定だね」

ザワザワ

青葉「青葉は考えました!」

青葉「尊敬する司令官の悩みを解決するお手伝いをしたいと!」

青葉「そんな司令官の親御さんの望みもまた、ぜひ叶えてあげたいと!」

青葉「そして思い至った! 司令官に一番距離が近い僕たち艦息こそ!」

青葉「『司令官の恋人』により近いのではないか! そのフリをして、司令官の親御さんを喜ばせてあげられるのではないかと!」

青葉「まあつまりそういうわけで、このイベントの優勝者は司令官のご実家に二人きりで突撃できるって感じで、どう?」

提督「ど、どうもこうもあるか! そんなん俺が認めなきゃ意味が――」

prrrr

瑞鶴♀「あの、提督さん。電話だよ?」

提督「誰だよこんな時に……はいもしもし」

提督母『あら、提督?』

提督「おふくろ……!? あの、いま勤務中で」

提督母『明日恋人の子連れて来てくれるそうじゃない。楽しみに待ってるからね』

提督「は、ちょ、えっ?」

提督母『もしすっぽかしたら持病が悪化して私は死にます』

提督「おい」

提督母『まあそれは冗談として、来なかったらわかってるわね』ガチャッ

提督「おい、ちょっと、おふくろ!?」

ツーッ ツーッ

提督「……えぇ」

青葉「根回しはバッチリだよ!」

提督「青葉お前……」

青葉「というわけで、場は整った!」

青葉「みんな! 司令官の実家へ行きたいかーっ!」

『おーっ!』

***

榛名「い、行きたいです……! 何をしてでも!」

羽黒「外堀を埋めれば……!」

愛宕「あらあら……興奮でぱんぱかぱーん♂ しちゃいそう……」

伊19「昂ぶるのね♂ めっちゃ♂」

***

青葉「当然艦息全員が行きたいわけではないにせよ、大半が参加するみたいだね!」

青葉「人気者は辛いね、司令官!」

提督「お前……あとで……覚えてろよ……」

青葉「おお、こわいこわい」

青葉「それでは『司令官の恋人は俺だ!』選手権をはじめよう!」

青葉「司会はこの青葉と!」

大井「提督にはあまり興味のないこの僕大井が執り行います」

青葉「まずは○×クイズ!」

大井「これから提督に関するクイズをいくつか出題するので、答えが○か×かを選んでくださいね」

青葉「司令官の恋人になろうってんなら、わかってなきゃ困る問題だらけだからねー」

大井「それじゃ、いってみよう!」


提督「俺の手に負えないところで話が転がっていく……」

瑞鶴♀「い、いつものことじゃん、元気だそ?」

提督「……はは、そうね……あはは……」

青葉「だいいちもーん!」

大井「『提督の昨日のオカズは、『駆逐艦~いけない夜戦演習~』である。○か×か!』」

提督「おいちょっと待てえ!」

ザワザワ 

***

雷「おかず……って、ご飯?」

電「し、司令官は駆逐艦を食べるんですか……?」

暁「まさか……何か深い意味があるに違いないよ。紳士的に!」

響「……ハラショー」

***

瑞鶴♀「……提督さん」

提督「まって! これは問題がいけない! 俺は悪くねぇ!」

伊19「初っ端から難易度高いのね♂」

伊58「でも、てーとくは駆逐艦じゃ満足できないってそれ一番言われてるでち♂」

伊8(いつ誰が言ったんだろう……)

伊168「×よ×!」

***

榛名「問答無用で×です」

金剛「おや、私も同じ気持ちだが……その心は?」

榛名「提督が駆逐艦に劣情を催すわけありません」

榛名「……戦艦に催してもらわないと」

金剛「それは、首肯させてもらうよ」

***

加賀「いきなり酷い目に遭っていますね」

提督「酷い晒し者だよ……」

大井「それじゃあそろそろ動いてくださいね」

青葉「おや、おやおや……○に移動してる人が一人もいない! なんと! こんなことがあるのか!」

大井「提督への信頼が厚いということが見て取れますねー」

***

提督「みんな……!」

加賀「結局自分で処理したことは否定されていませんが……」

提督「誰もかれもお前みたいに万事うまく行ってるわけじゃあないんだよぉ!!!」

***

青葉「では全員×ということで……大井くん、答えは!」

大井「はい、答えは……×! 全員正解です! すごい!」

大井「ちなみに提督の昨日のオカズは『雌提督~豚上官の魔の手に落ちた女士官~』ですね」

青葉「あら~」

提督「やめて!!! お願いやめて!!!!」

今日はここまででち♂

【~以下、○×クイズはダイジェストでお送りします~】

青葉「『司令官の自己発電は週3回である、○か×か!』」

提督「青葉ァァァァァ!」

朝潮「自己発電……? 司令官も主機を搭載している……?」

荒潮「あらあらぁ……」

霞「最低だな、クズ」

提督「えらいとばっちり!」

***

大井「『提督が自己発電に要する時間は2分である。○か×か!』」

瑞鶴♀「えっ、にふn」

島風「提督はっやーい!」

提督「」

島風「今度僕とかけっこする?」

提督「いえ、いいです……」

提督「ていうか青葉ァ! さっきから問題おかしくね!?」

青葉「えー? でも司令官の恋人ならこれくらい知ってなきゃ」

提督「そういう妙なとこで俺のリアルな知識積み重ねなくても良いでしょ!?」

青葉「でも何だかんだで正解不正解の人員は絞れて来てるからねー。どしどし行ってみよう!」

提督「胃が……胃がぁ……」

大井「では次、『提督の好みの艦種は重巡洋艦である、○か×か』」

瑞鶴♀「あ、なんかやっとまともっぽい」

提督「よかった……」

加賀「まともか……?」

羽黒「……」

榛名「……」

青葉「おお……我が鎮守府が誇る二大女装艦が睨みあってるね!」

羽黒「榛名さんはどう思いますか、この問題?」

榛名「…………」ギリッ

羽黒「ふふ……」


羽黒(答えは○……これは間違いない)

羽黒(そうでなきゃ、あの榛名さんが苦虫を噛み潰したような顔で突っ立っているわけがない)

羽黒(提督の好みが重巡であることを認めるのは――さぞや悔しいでしょうねぇ!)

榛名「たとえ提督の好みが……」

羽黒「……」

榛名「尻の青い重巡洋艦だったとしても……」

榛名「……いずれ私色に染め上げて差し上げればいいのですから」

榛名「今はたいして問題にはなりませんよ……今は」スタスタ

羽黒「そうですか……」

羽黒(それでも、あの榛名さんにあの表情をさせただけでもこのクイズに参加した価値がある……!)


大井「ちなみに正解は○! へー、意外だね、重巡が好みだったんだ」

提督「女子大生っぽいのって……いいじゃん……」

大井「……はい、じゃあ次行ってみましょうか」

>>359

× 大井「ちなみに正解は○! へー、意外だね、重巡が好みだったんだ」

○ 青葉「ちなみに正解は○! へー、意外だね、重巡が好みだったんだ」

大井「次は、『提督の好みの女の子は黒髪ロングストレートである、○か×か』」

提督「俺の性癖がどんどん明らかにされていく……てかどっから手に入れたんだ……」

青葉「司令官が蒐集していたエッチな本とか、色々ですかね」

提督「青葉、お前これ終わったら憲兵に引き渡しな」

青葉「えっ」

大井「当然だね」

提督「お前もだ大井」

大井「巻き込み事故過ぎませんかね……」

***

榛名「……ふっ」ドヤッ

羽黒「くっ……」

木曾(榛名は男なんだがな……)

《それからそれから》

青葉「さて……○×クイズのお蔭で大分候補者が絞れてきましたね!」

提督「俺の胃もキリキリ絞られたんですけど……」

***

伊58「潜水漢の薄い本を持ってないなんて許せないでち♂」

伊8(いや、普通ないよ……)

伊19「今度から紛れ込ませておくのね♂」

***

榛名「~~♪」キラキラ

羽黒「~~♪」キラキラ

青葉「今回参加の女装艦の大半が戦意高揚状態ですけど、どういうわけですかねえ大井さん」

大井「ええ……まさかまさかの、提督が『男の娘ものの薄い本』を所持していたのは大きな決め手でしたね」

提督「ち、違うんだ……あれは表紙買いで……騙されただけで……」

提督「深い意味はないんだ……ほんとに! ほんとなんだからぁ!」


加賀「だったら処分するとか手段あったでしょうに」

瑞鶴♀「状況証拠がね……」

提督「だって実用性が意外と高くて……」ゴニョゴニョ


青葉「もうこれ普通に提督、あとちょっと背中押したら踏み外すんじゃないの?」

大井「そう思いますね」

青葉「そんなわけで、熾烈な○×クイズを制した、イカれた艦息たちを紹介するぜ!」

大井「まずはエントリーナンバー1番! 金剛型が誇る女装艦息、榛名さん!」

榛名「榛名は大丈夫です!」

青葉「さすがの勝ち残りですね。司令官のプライベート把握については完璧というところでしょうか」

大井「続いてエントリーナンバー2番! 女装重巡の星、羽黒さん!」

羽黒「え、えっと……私、負けませんから!」

青葉「カマトトぶらなくていいんですよー。……さてさて、彼も当然のごとく勝ち残りましたね」

大井「執念がそうさせたというところでしょうか。絡め手に関してはかなりのものがありますね」

大井「エントリーナンバー3番も当然の人選! 我らがメインヒーロー、木曾!」

木曾「……なんか、勝ち残っちまったな」

青葉「しれっと紛れ込んできましたねー。さすがの一言です!」

提督「木曾、頑張ってくれ!」

木曾「善処するよ」フッ

榛名「……」

羽黒「……」

木曾「……おいおい、そんなに睨まないでくれよ」

大井「そしてエントリーナンバー4番はまさかまさかのダークホース!」

大井「いつの間に紛れこんでいたんだこの人は! 当鎮守府付きの憲兵殿です!」

憲兵「頑張るであります!」

***

提督「なんで取り締まる側があっちにいんだよ!?」

加賀「さて……」

***

大井「僕は何かと縁がある人ですが……まさかあなたも参加されているとは思いませんでしたよ」

憲兵「まあその……私にも思うところがありまして」

青葉「うんうん、良いと思います! それじゃあこの四人で次なる選考に移りましょう!」

がんばれ憲兵さん

青葉「次の選考は、投票形式!」

青葉「この四人にみんなの前でそれぞれ演説してもらうから」

青葉「それを聞いたみんなは自分の推す艦息にその清い1票を投じてね!」

榛名「……」

羽黒「これは、どんな内容の演説でもいいんですか?」

大井「ええ、その予定ですよ」

青葉「みんなの心を掴めるキャッチーな演説、期待してますよ!」

***

提督「碌なことにならねえ……」

瑞鶴♀「うん、それは私にもわかった」

大井「演説の順番はくじ引きで決定ですよ」

ジャラジャラ

羽黒「……」

木曾「ガラじゃないぞ……」

榛名「よしっ」

憲兵「ううむ、演説でありますか……」

***

青葉「えー、演説の順番が決定したようですね」

青葉「憲兵殿、木曾くん、羽黒くん、榛名さんって感じですね」

青葉「エントリーナンバーの逆だこれ」

《以下、演説もやっぱりダイジェストになります》

憲兵「あー、私もこの鎮守府付きの憲兵となって長いですが」

憲兵「その、提督殿が色々と苦労されている様を目の当たりにしてきたわけでありまして……」

憲兵「今回もこのような騒ぎが起こっている中、胃を痛めていらっしゃることは想像に難くないわけですから」

憲兵「私としては、提督殿の力になりたいと考えているわけであります」

憲兵「私はこの選考で優勝したとして、提督殿の実家にお邪魔するつもりはないであります」

憲兵「ただ、提督殿にお休みを……少しばかりの休息を差し上げたいと……」

憲兵「あなたのことを見ている者はちゃんといるということを、提督殿に知っていただきたかった……」

憲兵「もしも私と同じような考えをお持ちの方がいらっしゃるならば、私に票を投じて頂きたい……」

***

木曾「言いたいことは憲兵殿に持って行かれちまったが」

木曾「まあ、俺も概ね同じ考えでここに立ってる」

木曾「あいつの恋人役がやりたいとかじゃなくて……」

木曾「まあ、あいつの助けになってやりたいんだ」

***

羽黒「私に投票してくれたら提督さんをシェアしても良いですよ」

***

榛名「私に票を下さった方には側室の権利を差し上げます♪」

***

提督「この落差よ」

瑞鶴♀「こうまで別れたか……」

***
**


青葉「さてさて、なかなか刺激的な文言が躍ったわけだけども……」

青葉「投票の結果はいかがかな、大井くん!」

大井「えー……良識ある艦息たちからは憲兵殿と木曾の人気が高いけど……」

大井「それ以上に羽黒くんと榛名さんの人気は圧倒的だね……」

大井「……まあ、この二人の人気っていうか、この二人の公約の人気って感じがするけど……」

***

提督「知ってた……こうなるって、俺、知ってた……」

加賀「これはひどい」

大井「潜在的肉食艦の票がここにきて姿を表し始めたから」

大井「女装艦ふたりが強いね、やっぱり」

青葉「なるほど、ありがとう!」

***

憲兵「提督殿……力になれず、申し訳ないであります」

提督「い、いえ、いいんですよ……もう、慣れました」

提督「それに、毎日楽しいのだけは本当ですしね」

***

羽黒(榛名さんには負けない……!)

榛名(羽黒さんには負けられない……!)

青葉「結果が出そろったみたいですよ!」

提督「来たか……地獄が……」

瑞鶴♀「提督さん、目、目が死んでる!」

提督「……」

木曾「すまないな……最後の最後で」

提督「いや、いいのよ……」

加賀「お気を確かに」

提督「うふふ……俺の恋人はどっちだ?」


バァーン

榛名:38

羽黒:38


提督「」

青葉「同数ですね!」

大井「この場合どうなるんですか?」

青葉「規定上特には決まってないので、いいんじゃないですか、二人とも恋人役にしてしまえば」

提督「いやいやいやちょっと待って、それはダメだろぉ!?」

提督「そ、そうだ、投票のやり直しを――」

羽黒「……わ、私は、構いませんよ」

提督「いや、俺が構うよね」

榛名「羽黒さんと同数なのは多少気に食いませんが……」

羽黒「それは私もです」

青葉「さっそく喧嘩してるよ……」

榛名「お義母さまも、提督が恋人を二人連れて帰ったら喜ばれると思います!」

榛名「提督がお義母さまに褒められる分には、榛名、嬉しいですから! 大丈夫です!」

提督「どうしてそう思う……あとそのイントネーションやめて! 怖い!」

榛名「大丈夫です提督……流石に、榛名たちだって提督のご両親の前で粗相はしません」

提督「普段粗相してるのかよ……」

羽黒「りょ、良妻を演じ切って見せますから……!」

提督「ナチュラルに良妻とか言うなー! 君男の子なんだよ……?」

羽黒「でも、提督さん、男の娘の薄い本で……」

提督「やめて! あれは黒歴史なの!!」

***

瑞鶴♀「さっき実用性がどうとか言ってなかった?」

加賀「触れてやるな……」

榛名「その気になれば、私たち凄いんですから!」

羽黒「はい、その通りです!」

提督「で、でもだな……」

prrrr

提督「だからこんな時に誰だよ! はいもしもし!?」

提督母『ああ、提督』

提督「なんでこのタイミングで電話してきた!?」

提督母「明日、ちゃんとウチにくるのよね? 恋人さんを連れて』

提督「え……あ、それは……」


羽黒「……」アイコンタクト

榛名「……」コクッ

榛名「提督、失礼します!」バッ

提督「あ、ちょ、榛名っ!」

提督母『あら、女の子の声……』

榛名「突然申し訳ございません、お義母様。私、艦娘の榛名と申します」

提督母『あら、あらあら……もしかして提督の恋人さん?』

榛名「はい、提督とは親しいお付き合いをさせて頂いております」

提督母『そうだったのねえ。ちゃんと恋人いるんじゃないのよねえ』

榛名「その件なのですが……実はもう一人」スッ

羽黒「同じく艦娘の羽黒と申します!」

提督母『えっ……二人目?』

羽黒「はいっ! 明日の件は提督から伺いました。榛名共々、お義母様にお会いできるのを楽しみにしております!」

提督母『あら、あらあら……』


提督「」

青葉「逃げ場失ってるwww」

大井「自分の事普通に艦娘って言ったよあの人たち……」

加賀「確かにあの応対を見るにそこまで粗相はしなさそうだが……」

瑞鶴♀「どっかでボロ出てくるような気はするんだよねえ……」

***

提督母『提督に代わってくれるかしら?』

羽黒「はい。……提督、お義母様からです」

提督「……もしもし……」

提督母『あんた、女の子二人もコマしてたなんて、意外と隅におけないじゃないの』

提督「ははは……そう思いますか……」

提督母『榛名ちゃんと羽黒ちゃん、ちゃんと連れてきなさいよ! 明日!」

提督母『もし来なかったら持病がマジで悪化するからね!』

提督「イエスユアハイネス……」ガチャッ

提督「お前ら……やってくれたな……」

榛名「これで二人とも連れて行っていただかざるを得なくなりましたね」

羽黒「頑張ります! お義母様に認めてもらえるように!」

提督「頑張んないでいいから……ほんと……いいから……!」


青葉「てなわけで、司令官の恋人役は鎮守府の女装艦トップツーでした、と」

大井「なかなか愉快でしたね」

憲兵「では、お二人は連行させていただくであります」

青葉「えっ」

大井「えっ」

憲兵「ご両親と話が通った以上、榛名殿や羽黒殿を止めるのは不可能ですから」

憲兵「せめてあなたたちだけでも道ずれにしていくであります。提督殿の魂の供養のために」

今日はここでおしまい
外堀埋め編は次で終わり そしたら瑞鶴くん編かな

>羽黒「私に投票してくれたら提督さんをシェアしても良いですよ」
>榛名「私に票を下さった方には側室の権利を差し上げます♪」

と約束したな?あれはウソだ ってなりそうすぎる

《その日の夜》

ピロリン♪

提督「メール……」

From:榛名『明日は提督の恋人として、全力を賭しますね!』

提督「恋人役じゃなくて恋人ってことになってる……」

ピロリン♪

提督「今度は羽黒か」

From:羽黒『明日は必ずご両親に認めてもらえるように頑張りましょう!』

提督「ちょっと羽黒くん!? 君の頭の中では明日どういうことになってるの!?」

ピロリン♪


From:母『来なかったら持病が悪化して吐血します』

提督「…………」

《翌日・鎮守府前》

提督「はぁ……」

憲兵「提督殿。出立でありますか」

提督「ああ、憲兵さん」

憲兵「彼女……ではない、彼らも、準備万端のようでありますよ」

♪ ♪ ♪

榛名「……」キラキラ

羽黒「……」キラキラ

♪ ♪ ♪

提督「めっちゃおめかししてますね」

憲兵「ええ……とても男性とは思えない出で立ちでありますな」

提督「思惑はどうあれ……」

提督「確かに完璧に女装をこなして、俺の恋人役を演じてくれている……」

提督「あいつらが全力でぶつかってきてくれる以上は、俺もため息ばかりついてるわけにもいかないですね」

憲兵(いや……提督殿は今すぐ逃げ出しても良いと思うであります、が……)

憲兵(まあ、それを言うのは野暮……なのでありましょうかねぇ……)シミジミ

提督「それじゃ、行ってきます」

憲兵「あ、はい。お気をつけてであります!」

提督「……すまん、待たせたな」

榛名「いえ、私も今来たところですよ」

羽黒「あっ……私も言いたかったのに……」

榛名「早い者勝ちですよ」フフン

羽黒「そうですか……だったら、えいっ」ギュッ

提督「うおっ、羽黒、急に腕にしがみつくな」

羽黒「えへへ……今日は恋人ですもんね、司令官さん♪」

提督「まあ、そうなる、けど……」

羽黒「だったらこれくらい普通ですよねっ♪」

榛名「むぅ……」

提督(傍から見たらとんでもない美少女二人の間に挟まれてるクソうらやまけしからん男なんだよなあ俺)

提督(形かわるほど、むにゅって、とても豊かな双丘を腕に押し付けられてる超役得な男なんだよなあ俺)

提督(……でも、こいつら男なんだよなあ……)

提督(艦娘の榛名と羽黒、写真で見たことあるけど……)

提督(こいつらと寸分違わないんだよなあ……。こいつら本当は艦娘なんじゃねえかなあ……)

提督(そう思った方が俺、幸せになれるんじゃねえかなあ……)

提督(…………)


榛名「あの、提督……?」

羽黒「司令官さん?」


提督「……あ、すまん、ちょっと意識が危ない所に」

榛名「そうなんですか? だったら、榛名が現実に繋ぎ留めておきますねっ」ギュッ

提督「ふおっ!?」

榛名「これで大丈夫! 榛名がついていますよ、提督!」

羽黒「わ、私だって、お側にいますからね、司令官さん!」

提督「お、おう……」

提督(めっちゃいい匂いする……)

提督(こいつらほんとに男なのかな……)

提督(男がこんないい匂い出せるのかな……)

提督(…………)

榛名「て、提督っ!」

提督「はっ! あ、す、すまん……それじゃ、そろそろ行くか」

提督「実家は電車で一時間くらいの距離なんだが……」

提督「お前らまさか……俺の腕に引っ付いたまま移動するつもりじゃないよね?」

榛名「え?」

羽黒「ダメなんですか?」

提督「Oh……」

提督(どんだけ罪深い男に見られるんだ俺……)

提督(本当は哀れにドナドナされる男なんだがな……)

提督(でも……)

提督(今日は……今だけはこいつらが艦息であることを忘れて、艦娘だということにすれば……)

提督(それってひょっとして俺の求めてた艦娘とイチャイチャできる日々なんじゃないか……)

提督(…………)








提督「――って、だからやべーぞ俺! 堕ちかけてる! 堕ちかけてるぅぅぅぅぅぅぅ!」

榛名「!?」ビクッ

羽黒「!?」ビクッ

提督「しっかりしろ俺! あああああでもお前ら良い匂いするし柔らかいしなんなんだよぉぉぉぉぉ!」

榛名「鍛えてますから♪」

羽黒「女子力磨きに余念はないんですよ♪」

提督「男が女子力磨いて何になるんですかねぇ……」

榛名「対提督用の武器になります」

羽黒「リーサルウェポンです」

提督「……まあ効果はでかいよね、思わずトリップするくらいにね……」

榛名「じゃああと少しですね!」

羽黒「頑張ります!」

提督「やべえ」

《電車》

羽黒「司令官さんの実家にお邪魔するなんて……」

羽黒「私たちが初めてですよね」

提督「まあ、そりゃな」

榛名「こんなことでもなければお邪魔なんて出来る所ではありませんし……」

榛名「……でも提督、どうして私たちを連れて行って下さるんですか?」

提督「へ?」

榛名「あの、私が言うことではないですけれど……断ることもできましたよね」

提督「いや……」

提督「なんかさ……」


提督「……慣れって怖いよね……断るって選択し、ほぼほぼ思いつかなかったもんね……」

榛名「提督……!」パァァ

羽黒「司令官さん……!」パァァ

提督「や、やめろ、まだ、まだ俺は薄氷の上でぎりぎり踏みとどまってるだけだ……!」

榛名「だったら背中を押してあげれば完璧ですね♪」ギュッ

羽黒「全力で参ります♪」ギュッ

提督「や、やめ……ああ柔らかい……」

提督「ってだからしっかりしろよ俺……」

***
**


《提督の実家》

榛名「ついに……」ゴクリ

羽黒「き、来ましたね……」ゴクリ

提督「来ちまったな……」

榛名「羽黒さん、わかっているとは思いますが」

羽黒「はい。……抜け駆け禁止」

榛名「提督の不利になるようなことは禁止」

羽黒「全力で艦娘のフリをする」

榛名「ご両親をリスペクト……以上」


提督「……まあ、そんな畏まらなくても良いぞ。恋人っつーか、部下連れてきたって言うつもりだし……」

榛名「えっ、そんな!」

羽黒「お義母様は司令官さんの恋人をご覧になりたいと……」

提督「いやそうだけど……」

榛名「ダメです提督! お義母様は恋人をご覧にならなければ持病が悪化すると!」

提督「それもそうだけど……俺おふくろが持病抱えてるなんて聞いたことな」

羽黒「大丈夫です! ボロは出しません! 完璧にこなします!」

提督「ああ、はい……わかったよ」

提督「まあ、おふくろは多分喜んでくれるだろうけどさ……」

提督(艦息連れて来て親喜ばせるっていうのも、それはそれでいったいどうなんだ……)

榛名「それでは羽黒さん、行きましょう」

羽黒「え、ええ、榛名さん……」

ピンポーン ハーイ


ガチャッ

提督母「あらあら、いらっしゃい! 待ってたわよ~!」

榛名「はじめまして、お義母様!」

羽黒「お目にかかれて、光栄です!」

提督「お前ら、そんな堅苦しいこと言わんでもいいから……」

提督「つーわけで、ただいまおふくろ。家上がるよ」

提督母「はいはいおかえり。……いやー、それにしてもあんたがこんな別嬪さんを捕まえてくるなんてねえ!」

提督「うぐっ」

提督母「しかも二人も!」

提督「ぐふっ」

提督母「世間的にはどうかと思うけど……榛名ちゃんも羽黒ちゃんも納得しての事みたいだし」

提督母「ちゃんと甲斐性見せなさいよ、このバカ息子!」バシバシ

提督「ははは……」

提督(母上、この二人が男といったらあなたはどうしますかね……)

提督母「それじゃ榛名ちゃんと羽黒ちゃんもどうぞどうぞ!」

羽黒「ありがとうございます!」

榛名「お邪魔します……」

提督「…………」

提督(冷静に考えたら)

提督(俺、ピンチじゃねえか?)

提督(男の部下を恋人と偽って自分の親と面会させてる……それも二人も……)


提督父「……ああ、戻ってきていたのか」サスサス

提督「親父。久しぶりだな」

提督父「ああ……」サスサス

提督「……どうした? 腰でもいわしたか」

提督父「まあ、ちょっと、色々あってな」サスサス

提督「はぁ……?」

提督母「はいはい、それじゃ座って座って!」

榛名「あ、お義母様、あの、つまらない物ですが……」スッ

提督母「あらあら、気を遣わなくていいのに。んもう!」

提督母「美味しそうなお菓子じゃないの、ありがとうねぇ」

提督母「お茶淹れてくるから、ちょっと待っててね!」

羽黒「お、お手伝いいたします」

提督母「いいのいいの、二人は座ってなさいな!」

提督「まあ、おふくろはお前らをもてなしたいんだよ……。とりあえず任せていいと思うぞ」

榛名「は、はい」

羽黒「申し訳ないですけれど……」

提督父「昨日妻から話を聞いたばかりなんだが、君達は……息子の部下の?」

榛名「はい。艦娘です」

提督(表情一つ変えずに言い切った)

提督父「そうかそうか……実は私も元提督でね」

提督父「艦娘に好かれているとは……お前も少しはましな司令官になったということかな?」

提督「だといいんだけどな」

羽黒「司令官さんは最高の司令官ですよ!」

榛名「はい。榛名が保証します!」

提督「二人ともありがとう」

提督父「ほっほっほ」

提督母「あら、何盛り上がってるの? 私も混ぜてちょうだいな」

榛名「あ、お義母様」

羽黒「ぜひ!」

提督母「うふふ、こんな可愛い子が二人も恋人で、ホントうちの息子も隅におけなかったのねえ」ニコニコ

提督(笑顔が痛い! おふくろの笑顔が胸にくる!)

提督母「いろいろお話聞かせてちょうだいね、羽黒ちゃんに榛名ちゃん!」

榛名「はい!」

羽黒「喜んで!」


提督父「…………」

提督「……親父……?」

提督父「……ああ……」

提督「どうした、親父」

提督父「血は争えないか……」

提督「は? 急に何言ってんだ」

提督父「なんでもない……何でもないが……強く生きろよ、息子」

提督「なんだよその急に死ぬようなフラグ」

提督父「…………」

提督父「もし結婚するなら、母さんのような女が良いと思うぞ」

提督「急に何言ってんの……」

その後も、榛名と羽黒、そして提督母の談笑はつつがなく進んでいった――!

そしてそれと反比例するように、何故か提督父は口を噤み始めたのだった――!

何かある……だがわからない……。妙な焦燥感が、提督の胸を焼いた――!


提督(なんだ、なんなんだこの違和感……!)

提督(母親を騙している罪悪感と……!)

提督(妙に悟ってまるで菩薩のような瞳で俺を見つめる親父への不信感……!)

提督(そして調子に乗った母親により俺の幼少期の恥ずかしいエピソードがバラされていくことへの焦り……!)


提督(オカズがみんなの前でバレるよりはマシか)

提督母「あらあらまあまあ、もう、この子たちってば絶対いいお嫁さんになるわよぉ!」

榛名「そ、そんな、お嫁さんだなんて……」テレテレ

羽黒「私たちにはまだ早いですぅ……」テレテレ

提督母「いいじゃないの! 早く孫の顔みせてほしいわ、なんてね!」

榛名「ま、まご……」

羽黒「孫……」

提督「孫はちょっとなあ……」

提督母「なによ、無理って言うの?」


提督・榛名・羽黒(間違いなく無理……)


提督父「……なあ、ちょっと、いいだろうか」

提督母「あら、どうしたのあなた?」

提督父「……このまま黙っていても、誰の得にもならないと思うのでね」

提督「?」

榛名「お義父様?」

提督父「……君たちは、艦息を知っているかな」

羽黒「!」

榛名「!」

提督「な……」

提督父「その反応は知っているとみてよさそうだ……」

提督父「というか、それも当然か……君たちが当の艦息、だものな」


榛名「」

羽黒「」

提督「」

提督母「艦息って……あなた、それってあの……」

提督父「ああ、そうだ、お前もよく知っているだろう」

提督父「男の体を持つ艦娘……本来は女性の姿を取る対深海棲艦用決戦兵器が男の姿を取ったあれだ」

榛名「あ、あ……」ガタガタ

羽黒「そ、そんな……」ガクガク

提督「お、親父、なんで……」

提督父「わかるんだよ……初めはあまりに完璧な擬態で艦娘かと思ったが……」

提督父「あの頃の感覚を取り戻したらすぐにぴんときた……」

提督父「血は争えないということだ……我が息子よ……」

提督父「かつて、艦息鎮守府の長であった私にはわかる……!」

提督「」

榛名「えっ」

羽黒「ええっ!?」

提督母「えっ、あなた、それじゃ……」

提督母「この子達は……男の子、なの……?」チラッ

提督父「そうだ」コクリ

提督母「そ、そんな……」ヨロッ

提督「お、おふくろ!」

羽黒「お義母様!」

提督母「羽黒ちゃん……あなた、男の子だというの……?」

羽黒「あ……う、私は……」

榛名「……」

提督父「……」

羽黒「……」

提督「……おふくろ、こいつらは、親父の言う通り……艦息……男だ」

提督母「……ああ、なんということ……!」

提督母「ゲホッ! ゴホッ!」ビチャッ

榛名「お義母様! 血が!」

羽黒「じ、持病が……!?」

提督父「い、いかん!」

提督「おふくろ――」

榛名「――お義母様、しっかりなさってください!」

羽黒「だ、騙すような真似を、ごめんなさい……!」

羽黒「私たち……自分たちの欲のままに、司令官さんの実家にお邪魔したいって……!」

提督母「だ、大丈夫よ二人とも……これは確かに持病のせいだけれど……」

提督母「興奮のあまり吐血しただけだから……」

榛名「えっ」

羽黒「えっ」

提督父「やはりこうなったか……だが遅かれ早かれこうなる運命だったのだ……」

提督「えっ」

提督母「……榛名ちゃん……羽黒ちゃん……」ガシッ

榛名「は、はいっ」

羽黒「お、お義母様……?」

提督母「あなたたち……男の子なのよね……?」

榛名「えっ、あっ、はい……」

羽黒「そ、そう、ですけど……」

提督母「…………」ブピュッ

羽黒「は、鼻血っ!?」

提督母「……提督」

提督「な、なんだよ……」



提督母「――ンンンン、ナイスゥ!」サムズアップ

提督「はっ?」

提督父「いいか、我が息子よ。あれがお前の母の本当の姿だ……」

提督父「私も現役のころ何度となく生モノ妄想の餌食にされた……」

提督「えっ」

提督「えっ、ごめん……理解が追い付かないんだけど」

提督父「奴の年季は凄まじいぞ……!」



提督母「榛名ちゃん! 羽黒ちゃん!」

榛名「はっ、はいぃっ!」

提督母「普段の! 鎮守府の! 暮らしぶりを! 詳しく!」ズォォォォォ

羽黒「えっ、あの、司令官さんにいろいろ……」

提督母「いろいろ!? えろえろ!?」

羽黒「ふえっ……」


提督父「……我が家系の男子に刻まれた血はとても濃くてだな」

提督「はい……」

提督父「……男に尻を狙われ、かつ、伴侶は大抵の場合腐女子だ」

提督「なんでそんな罰ゲームみたいな!!!」

提督父「人生はいつだってハードモードだ……」

提督母「人生五十年と少し! まさか自分の息子で生モノ妄想する日が来るなんてねぇ」ツヤツヤ

榛名「え、えっと……」

提督母「榛名ちゃん! 金剛四兄弟とやらのこと、詳しく!!」

榛名「えっ、あ、はい……あの、金剛お兄さまも提督のことを……」

提督母「金髪で貴族みたいな子って言ってたわよね!? 鬼畜責めが似合いそうじゃないの!」

提督母「嫌いじゃない! 嫌いじゃないわ!」クワッ

榛名「ひえぇ……」

提督「……あの、参考までにお聞きしますけど」

提督父「うん」

提督「……処女と童貞捨てたの、どっちが早かった?」

提督父「…………」

提督父「…………」

提督「あの……」

提督父「……聞きたい? ちなみに私の童貞は母さんに捧げた」

提督「あ、いいです……」

提督父「大丈夫だ、救いはある……うん……」

提督「……そうか……これ、俺の家系の問題だったのか……」

提督父「そうだ……強く生きろ、我が息子よ……」

提督「…………」

提督「……生きるのって、難しいね……」

提督父「だが私も通った道だ……」

提督「尻、狙われてた?」

提督父「もちろん」

提督「潜水漢、いた?」

提督父「もちろんっ……!」

提督「……イケメンもいた……?」

提督父「もういっそ抱かれようかとすら思った」

提督「親父……近いうちに呑もう……」

提督父「ああ、息子よ……!」

父親と絆を確かめ合うのと相反するように――。

本性を見せた母親とは距離を置くべきやもしれない、と、提督は思った――。



提督母「二人とも、いつでも来ていいからね! 大歓迎よ!」ブンブン

榛名「あ、あはは……」

羽黒「お邪魔しましたぁ……」

提督父「…………」スッ

提督「…………」スッ



提督父が無意識にのうちにとっていたのは“敬礼”の姿であった――。

涙は流さなかったが、無言の男の詩があった――奇妙な友情があった――。

***
**


榛名「……提督」

提督「なんだ……」

榛名「……あの、私、もう少し自重します」

提督「おう、そうか……」

羽黒「……あまり、提督のお義母様を悪く言いたくはありませんけど……」

羽黒「たぶん……餌を与えてはいけないタイプだと思うんです……」

提督「奇遇だな、俺も同じ気持ちだよ……」

榛名「…………」

羽黒「…………」

提督「…………」


その後、疲れ切った三人は挨拶もそこそこに己の部屋に戻っていったという――。


【提督の系譜編 おしまい】

今日はここまで! やっとキリのいいところまで終わった!
提督は不憫かもしれないけど、ほらあれ、伴侶は大抵腐女子なんで! 
あと瑞鶴♀が秘書艦の頻度高いから女の子と縁がない訳ではない……ハズ……

次回は瑞鶴くん編か、憲兵殿関連かな……。では次回。

《鎮守府》

大井「北上くんのおぱんつを脱衣所から手に入れたぞ! フヒッ、フヒヒ……」

大井「おお、鼻腔を可能な限り広げて北上くんスメルを呼吸器全体で楽しまなくては……!」

大井「ふふ、うふふふふ……それではいざ尋常に――」スゥゥゥ


憲兵「――そこまでであります!」バンッ


大井「こ、この声はっ!」

提督「ハロー、大井くぅん。現行犯逮捕の時間だよ」

大井「な、なぜここが……」

憲兵「どれだけ自分と大井殿が追いかけっこをしてきたか……忘れたわけではありますまい?」

大井「なるほど……僕の居所はわかって当然というわけですか……」

提督「加えて長門の協力もあったからな」

長門「鎮守府に蔓延る性犯罪者は撲滅せねばなるまい」

大井「どうも自沈したいらしいですよ、このショタホモセブンは……」

提督「それについてはまったく同意だが・……なにはともあれ逮捕だ大井」

憲兵「北上殿の下着を窃盗した罪でしょっ引くであります」

大井「フッ……まあ、いいでしょう……」

大井「だが覚えておくことですね……僕が捕まったところで、いずれ第二第三の大井が……」

提督「お前捕まったときいつもそれ言ってんな……」

大井「お約束は大事ですよ」

憲兵「はい、それじゃキリキリ歩くであります! とりあえず営倉にぶち込むでありますからな!」

大井「はいはい……」ズルズル

長門「悪は滅びた。では私は失礼する」

提督「おう。協力ありがとよ」

長門「気にするな」

提督「ところでお前どこ行く予定なんだ?」

長門「駆逐寮だが」

提督「……犯罪防止の観点から、ある程度の制限も必要だよな」

長門「何を言っている?」

提督「武蔵! 来い!」

武蔵「出ずっぱりだな」サッ

長門「ゲェッ! 武蔵!」

武蔵「長門……お前また飽きもせずに……♂」

提督「犯罪は未然に防がないとな。いいぞ武蔵、連れて行ってくれ」

武蔵「さぁ、イこうか」

長門「やめろ! やめろぉ筋肉は嫌だァ!!」ズルズル

武蔵「潜水漢も待ってるぜ」

長門「筋肉など見続けていたら気が狂うわ! やめろぉぉぉぉ……」ズルズル

提督「お前も筋肉だろうが……」


憲兵「ふぅ……ただいま戻ったであります……って、あれ、長門殿は?」

提督「いつものです」

憲兵「あぁ、なるほど」

提督「ふう……今日もお疲れ様でした、憲兵さん」

憲兵「いえ、これが自分の仕事でありますゆえ」

提督「ウチの奴らがいつもいつもすみませんね」

憲兵「ははは……まあ、慣れたでありますよ」

提督「憲兵さんが理解ある方で良かったです」

憲兵「そう言われると、照れるものがありますなぁ……」

提督「あ、そうだ、憲兵さん」

憲兵「はっ、なんでありましょうか」

提督「今晩、お時間空いてますか?」

憲兵「へ……?」

提督「もしよければ、鳳翔の居酒屋に来ていただきたいんですが……」

憲兵「そ、それは、あの、夕飯をご一緒にということでありましょうか?!」

提督「そうですね……まあ、夕飯も一緒になるかとは思いますが……」

憲兵「しょ、承知いたしました! 不肖この憲兵、全力を賭して臨む覚悟であります!」ビシィ

提督「いやそんな畏まらなくても」

憲兵「いえ! 畏まります!」

提督「そ、そうですか……それじゃあ、あの、19時に鳳翔の居酒屋で……」

憲兵「はっ! 楽しみにしているであります!」

提督「そんな大げさな……」

***
**


《居酒屋鳳翔前》

憲兵(まさか提督殿からお食事に誘っていただけるとは……)

憲兵(想定外でありますよ! 自分、恰好はおかしくないでしょうか??)

憲兵(うむむ……き、緊張するでありますな……)ソワソワ


提督「――あ、憲兵さん。何も外で待っててくれなくてもよかったのに」


憲兵「提督殿!」

憲兵「……と」


瑞鶴♀「あ、憲兵さん。こんばんは」


憲兵「あの、瑞鶴殿もご一緒でありますか?」

提督「え、ええ、そうですけど……」

憲兵「あ、そうでありますか。ふーん……そうでありましたか」

提督「???」

憲兵(ああああ自分のバカ何を勘違いしてるのでありますか本当にもう!)

憲兵(穴があったら入りたいであります……)

提督「とりあえず入りましょうか」

瑞鶴♀「今日も冷えますね」

憲兵「ええ、そうでありますな……自分の心もヒエヒエであります」

提督「……?」

ガラッ

鳳翔「いらっしゃいませ。おや、提督」

提督「よう。鳳翔、3人分……座敷はあるか?」

鳳翔「まだ開店したばかりですからね。お好きなお座敷へどうぞ」

提督「ありがとう」

《お座敷》

憲兵「あの……自分は何故お呼ばれしたのでありますか?」

瑞鶴♀「元々は、私が提督さんを飲みに誘ったんです」

憲兵「は?」

提督「ええ、瑞鶴が相談があるとかで誘われたんですけどね」

提督「ただこいつ人妻でしょ……? 人妻と二人きりはヤバいだろってことで……こう」

瑞鶴♀「気にしすぎでしょ……」

憲兵「はーなるほど……つまり瑞鶴殿と二人きりでなければ誰でもよかったという訳でありますか」

提督「……い、いや、まさか」

瑞鶴♀「もっとはっきり否定しなさいよ……」

提督「憲兵さんには日ごろお世話になってますから、親睦を深める意味も兼ねてですよ!」

憲兵「そうでありますか……ふーん、へぇー、ほーう」

提督「うっ……助けて瑞鶴」

瑞鶴♀「自業自得でしょ……」


鳳翔「お待たせしました、おしぼりです。……ご注文はお決まりですか?」


提督「俺は生」

憲兵「自分も生でお願いするであります」

瑞鶴「私も生で!」

鳳翔「はい。すぐにお持ちしますね」

ガラッ

鳳翔「いらっしゃい……おや、赤城くん」

赤城「どうも、お父さん」

鳳翔「お父さんはやめてくれないか……」

赤城「席はありますか?」

鳳翔「奥に提督たちがいらっしゃいますよ」

赤城「へえ……じゃあ、相席させてもらおうかな」

赤城「――おや、本当だ。不思議なメンツが揃ってますね」

提督「ん? お、赤城か」

憲兵「こんばんはであります」

瑞鶴♀「あ、赤城さん!?」バッ

赤城「ああ、加賀くんならいませんよ」

瑞鶴♀「そ、そっか、よかった……」ホッ

赤城「もしかして浮気現場ですか? いやー参ったな」

提督「んなわけあるか。むしろそれを回避してんだよ」

憲兵「ええ、自分が証人でありますよ。はは、ははは……」

赤城「それはそれは……」

赤城「提督、僕も相席させてもらっていいですか?」

提督「え? いいけど……」

赤城「では遠慮なく。……鳳翔さん! 特上コース、提督のツケで!」


鳳翔「はーい!」


提督「はーいじゃねえよ何言ってんだ!」

赤城「同席した部下の分も奢ってくれるなんて提督は太っ腹だなあ」

憲兵「ごっつぁんであります」

瑞鶴♀「ありがとねっ」

提督「おい、マジか……」


憲兵(ちゃ、ちゃんと半分出すのでご安心あれ)ボソッ

提督(憲兵さん……!)

赤城「で? どういった面子が集まってるんですかこれは」

憲兵「元をただせば、瑞鶴殿が提督殿に何かご相談がおありだとか」

提督「ああ、そうだったな」

瑞鶴♀「忘れてたの?」

提督「そういうわけじゃないが……その相談って、この場でできるのか?」

瑞鶴♀「うん、むしろ複数人の意見が聞きたいところだったし……大丈夫」

憲兵「ふむ……力になれると良いのですが」

赤城「もう聞く前から大体わかるけどねえ……」

提督「えっ、マジで?」

赤城「加賀くん絡みだよね?」

瑞鶴♀「そ、そうです」

提督「やるな赤城」

憲兵「すごいであります!」

赤城「……この人たちは良いから、瑞鶴。続きをどうぞ」

瑞鶴♀「あ、うん……その、私と加賀さんって、結婚してるじゃない?」

憲兵「あの騒動は大変でありましたなあ」

提督「生きた心地がしなかった……」

瑞鶴♀「加賀さんって、恥ずかしがり屋なのかな……」

赤城「まあ、恥ずかしがり屋だとは思うよ」

提督「むっつりだな」

憲兵「提督殿も人のこと言えないのでは?」

提督「憲兵さんひっでえ……」

瑞鶴♀「私、まだ一度も愛してるって言ってもらったことないんだよね……」

赤城「ああ……なるほど」

提督(……予想以上にちょっと重い)

瑞鶴♀「確かに私強引に色々攻めたし……結婚もほぼほぼ無理矢理な感じだったけど……」

瑞鶴♀「でも、心の底から拒絶はされてないって思うの……」

憲兵「加賀殿と瑞鶴殿は、関係良好な夫婦に見えるでありますよ」

提督「大体、加賀がもしも結婚生活嫌がってたら、お前の事喜んで女提督の元に送り返してるだろ」

提督「あの時のあいつの顔見たか? 苦虫噛み潰したような顔だったぞ」

瑞鶴♀「それはそうかもだけど……」

赤城「提督……態度だけじゃなくて、口に出してもらわなきゃ不安なことだってあるんですよ」ハァ

提督「だからこいつモテねーんだよみたいな雰囲気やめて」

赤城「加賀くんは態度にも出にくいタイプですからね」

赤城「瑞鶴が不安がるのも、ま、無理はないんじゃないかなとは思いますよ」

提督「えー……ズバッて聞いてみれば? 私のこと愛してる? って」

憲兵「それで加賀殿が素直に答えてくれるなら、瑞鶴殿も悩みはしないと思うでありますが……」

瑞鶴♀「前に聞いてみたけど、はぐらかされちゃった」

提督「あのトゥーピュアピュアボーイめ……」

憲兵「童貞ではないでありますが」

赤城「ちなみに提督は……彼女とか、いらっしゃらないんですか?」

提督「え、そんなん関係ないでしょ」

赤城「彼氏候補ならたくさんいますけどねえ……」

提督「やめーや」

瑞鶴♀「加賀さん……私のこと、嫌いになってないよね」

憲兵「間違いなくそれはないでありますよ」

憲兵「嫌いな相手と同じ部屋で暮らすなど……」

提督「ああ、そこは安心していい。つーかあいつマジでお前にぞっこんだから」

瑞鶴♀「そ、そっかな……」

赤城「ただ、確かに加賀くんと瑞鶴の夫婦は、瑞鶴が一方的に好き好き大好きアピールしてるように見える」

憲兵「瑞鶴殿、加賀殿から求められたことは?」

瑞鶴♀「え……あ……、ない、けど……」

赤城「加賀くん……」

提督(童貞の僕には入りづらい話題のようですね。私は貝になりたい)

赤城「提督。考えてることがもろバレですよ」

提督「そんなバカな……」

赤城「俺だったら瑞鶴と毎日ヤるけどなって思ってたでしょう」

瑞鶴♀「えっ、提督さん……」ササッ

憲兵「え……」

提督「風評被害! 赤城くん勝手な推測はやめてくれませんか!?」

赤城「冗談ですよ」

赤城「ま……加賀くんがずっと黙ってるというのなら」

赤城「無理矢理口を開かせてしまいしょうか」

提督「おっ、何か案があるのか」

憲兵「さすがは赤城殿でありますな」

瑞鶴♀「赤城さん、いい案あるの?」

赤城「そうだね……姉妹共々僕が頂いてみれば、あの加賀くんも」スッ

瑞鶴♀「えっ」ビクッ


憲兵「アウトー!」

提督「あきません! それはあきませんよ!」

赤城「冗談ですって。妹に手を出したなんて翔鶴に知れたら、どうなるやら」

瑞鶴♀「じょ、冗談か……よかった……」ホッ


提督「おい一航戦同士で寝とり寝取られとかやめろよほんと……」

憲兵「痴情のもつれで機動部隊が機能不全とか笑えないであります……」

赤城「冗談ですってば」

提督「この腹黒一航戦は何考えてっかわかんねーとこあるからな……」

憲兵「聞くところによれば前回の演習でも食い気だけの筈かいつの間にか色気を見せていたとか」

赤城「翔鶴があまりにも可愛らしいものですから」

提督「こいつ……」

赤城「ま、ともかく。瑞鶴、押してダメなら引いてみよう」

瑞鶴♀「押してダメなら、引いてみる……?」

提督「ほう」

憲兵「なるほど、加賀殿は瑞鶴殿からグイグイ来るアピールに慣れているから」

赤城「急にそれがぱったり止んだらまず訝しむ」

提督「そして逆にそのアピールが恋しくなってくる……って寸法か」

瑞鶴♀「な、なるほど……!」

赤城「試してみる価値はあると思うよ」

提督「いいな、やってみよう瑞鶴」

瑞鶴♀「う、うん!」

一時中断 なんとなく赤城の腹黒感は出せているとうれしい

提督「ちなみに距離を置くとして……今まではどういうアピールを?」

瑞鶴♀「えっと……結構あるけど……」

赤城「とりあえずリストアップしてみようか」

瑞鶴♀「じゃあまずは朝仕事行く前のキスでしょ……」

憲兵「マジでありますか……」

提督「……ちなみにそれ加賀はやってくれんの?」

瑞鶴♀「うん、無理矢理奪う」

憲兵「おおう……」

***
**

《翌日・加賀と瑞鶴の部屋》

加賀「……これで準備は良し、か」

瑞鶴♀「あ、もう出れる?」

加賀「ああ……」

加賀「…………」

瑞鶴♀「よっし、それじゃいってきます!」ガチャッ

加賀「……ん?」

加賀(珍しいな、いつもなら『行ってきますのキスしよっ!』とか言ってくるが……)

瑞鶴♀(不思議がってる……かな?)

***

提督「なんで俺は朝から部下夫妻のイチャイチャっぷりを観察せねばいけないんですかね」

憲兵「乗り掛かった舟でありますよ」

赤城「まずは加賀くんに違和感を植え付けるのには成功かな」

《午前の休憩》

ブォー

提督「はぁ……やっとこ休憩か……」

提督「おい加賀、休んでいいぞ」

加賀「……休憩はあってないようなものなんですが」

提督「ああ……まあ、瑞鶴がいつも攻めてくるからな」

加賀「まったくあいつは……」

提督「ま、いいんじゃないの……」

ガチャッ

伊58「てーとく、ゴーヤたちと遊ぶでち♂」

伊19「ぬるぬるマットで押し相撲なのね♂」

提督「俺よかマシだろ……ええ、加賀?」

加賀「まあ、それはそうですね」

加賀「…………」

提督「だから、俺はやらんぞ、そんな相撲!」

伊19「きっと気持ちいいのね♂ ろーちゃんはどハマりしたのね♂」

伊58「ゴーヤたちのテクは最高でち♂」

提督「押し相撲のテクってなんだよ……」

加賀「…………」

伊19「早くしないと休憩が……」

♪ 喇叭の音 ♪

伊58「あーっ♂ 休憩終わっちゃったでち♂」

提督「よっしゃ、今日も俺は勝った!」

伊19「ちっ……でも諦めないのね♂ ゴーヤ、撤収なのね♂」

伊58「わかってるでち♂」

加賀「…………」

提督「おい、加賀? 休憩終わったぞ?」

加賀「……あ、そうですね。失礼しました」

加賀(本当に珍しいな。瑞鶴が攻めてこないとは)

加賀(まあ、たまには気が休まっていい……)


提督(まぁ、多分違和感を覚えてはいるんだろうな)

提督(だがこれがプラスに転んでるのかはまだ何とも言えん……)

***

瑞鶴「どう思う、二人とも」

憲兵「逆にリラックスしているようにも見えはするでありますが……」

赤城「なに、まだまだ序の口だよ」

《昼休み》

提督「はぁ……飯だ飯ーっと」

提督「加賀、食堂行こうぜ」

加賀「……おかしいですね。いつもの流れだと瑞鶴が突撃してくるはずなんですが……」

提督「んー……そういやそうだな。じゃあ瑞鶴待つか?」

加賀「いえ、行きましょう。たまにはいいでしょう」

提督「お、おう、そう……?」

提督(おいこれ効果あんのか俺判断つかねーぞ……)

《食堂》

ザワザワ

提督「ちょっと出遅れたか……加賀、席とっといてくれ」

加賀「わかりました。私はA定食で」

提督「あいよ」


加賀「さて……空いている席は……と」チラッ

瑞鶴♀「――――」

加賀「なんだ、いたのか」

加賀「おい、瑞か――」



赤城「――それで僕も翔鶴に言ったんだけどね」ニコニコ

瑞鶴♀「あはは、やだなあ赤城さんってば」クスッ

加賀(……赤城さんと食べていたのか)

加賀(そうであれば早く言えばいいものを)

加賀(…………)

提督「……おい加賀? どうした?」

加賀「え? あぁ、早いですね提督」

提督「お前が席見つけるの遅いんじゃねえの?」

加賀「かもしれません」

提督「とっとと座ろうぜ……おい青葉、相席いいか? 答えは聞いてない」

青葉「じゃあ無言で座ればいいんじゃないですかねえ」

加賀「…………」

提督「どうしたよお前。箸進んでないぞ?」

加賀「いえ……どうしたんでしょうね」

提督「いやこっちが聞きてえよ……」

加賀「…………」

****

赤城「――――」ニコニコ

瑞鶴♀「――――」ニコニコ

****

加賀「……馬鹿らしいな、我ながら」フッ

提督「…………」

***
**


赤城「それで、どうです? 昼休みは僕と瑞鶴がとても楽しそうに昼食をとっている様を見せつけてみましたが」

提督「めちゃくちゃ不調だったぞあいつ……箸の進みが俺より遅かった」

憲兵「それは相当でありますな……」

瑞鶴♀「それって効果があるってことでいいんだよね……?」

赤城「少なくともいつもより瑞鶴を意識してるのは間違いないね」

赤城「ここまで効果覿面だとすこし驚かざるを得ないけど……」

提督「このままいけば今日中にはアクション起こすかもな」

憲兵「ではもう少し頑張ってください、瑞鶴殿!」

瑞鶴♀「うん!」

《午後》

加賀「では提督、午後は弓道場に出ます」

提督「了解。秘書艦お疲れさん」

加賀「はっ」

提督「……さてさて、弓道場ではどうなるやら」

***

《弓道場》

赤城「――――」ギリギリ

加賀「…………」

赤城「――やあ、加賀くん」

加賀「どうも、赤城さん……」

赤城「調子はどう?」

加賀「可もなく不可もなく、ですよ」

赤城「なるほどね」

赤城(本当にそうなのか、見せてもらおうかな……っと)

加賀「…………」チラッ


瑞鶴♀「――――」ギリギリ


加賀「……いるのか」ボソッ

赤城「…………くふっ」

加賀「赤城さん?」

赤城「あ、ごめん……なんでもない……」

赤城(加賀くん、君、心底安堵したような声だったねえ……)


瑞鶴♀「――――!」バシュッ

瑞鶴♀「うーん……的は射ぬいてるけど……」

瑞鶴♀「なんかちょっと違うな……」ガシガシ


加賀「まったく……あいつは少し力みすぎなところがありますね……」

赤城「へえ、そう見える?」

加賀「ええ……少し指導してきます」スッ

赤城「行ってらっしゃい」


加賀「おい、瑞か――」


瑞鶴♀「あっ、翔鶴兄ぃ、ちょっと教えてほしいことがあるんだけど」

翔鶴「ああ、瑞鶴。うん、構わないよ」

瑞鶴♀「ありがとっ!」ニコッ

加賀「…………」


赤城「……く、っ」

赤城(だ……ダメだ、まだ笑うな……こらえるんだ……し、しかし……)

赤城(でもその顔は反則でしょ加賀くん……捨てられた子犬みたいな……!)


瑞鶴♀「なるほど、わかりやすい!」

翔鶴「弟は感覚で詰めていくタイプだったけど……理論も教えてあげないといけなかったから」

瑞鶴♀「さっすが私の兄艦だね!」

翔鶴「ありがとう、瑞鶴」


加賀「…………」

赤城(あ、今イラっとしたな加賀くん)

葛城「ふう……」アセフキ

瑞鶴♀「お疲れ、葛城。はいこれ、ドリンク」スッ

葛城「あ……瑞鶴……さん」

瑞鶴♀「しっかり水分補給しなきゃダメだよ?」

葛城「ええ……ありがとうございます」

瑞鶴♀「ん、よろしい。じゃね」


葛城「俺は瑞鶴先輩一筋だ……!」ゴクゴク

葛城「……あんな女の瑞鶴さんに惑わされるほど落ちぶれちゃ……」

加賀「…………」

葛城「ひいっ!?」ビクッ

***
**


赤城「加賀くんが近づこうとするたびに、絶妙なタイミングで瑞鶴が躱す……ってのを続けられたね」

瑞鶴♀「うぅ……加賀さん分が足りないよぉ……」

提督「このバカップルめ……」

憲兵「でも効果は抜群そうでありますな」

赤城「うん。加賀くん、大分イラついてたね、あれは」

瑞鶴♀「嫌われてないかなあ……心配だよ……」

提督「絶対それはないから」

赤城「今の加賀くんは瑞鶴欠乏状態だし」

憲兵「何というか……やっぱりお似合いなのでありますなあ」シミジミ

《夕飯時》

加賀(瑞鶴に避けられている……のだろうか)

加賀(……理由は、思い当たらないな)

加賀(…………)

加賀(いや……別に避けられていたところで気にすることではないだろう、加賀)

加賀(むしろいつもベタベタひっついてくるのから解放されて……)


瑞鶴♀「…………」スタスタ


加賀「あ、瑞鶴」

瑞鶴♀「……へ? あ、加賀さん。どしたの?」

加賀「いや……もうすぐ夕飯だが……食堂に行くか?」

瑞鶴♀「あ……ごめん、ちょっと先約が」

加賀「そうだったか」

瑞鶴♀「ごめんね、ほんと!」

加賀「いや……気にするな」

瑞鶴♀「じゃね、また部屋で――」

加賀「…………」

ガシッ

瑞鶴♀「――へっ?」

加賀「……ん?」

瑞鶴♀「あの、加賀さん……なんで私の腕、掴んで?」

加賀「あ、いや……すまない……なんでだろうか……」

瑞鶴♀(来てる来てるめっちゃ加賀さんから来てる!)

瑞鶴♀(きゅんきゅん来ちゃう!)


加賀(……馬鹿か私は)

加賀(…………)

加賀「……ちなみに……先約とは」

瑞鶴♀「え? 翔鶴兄ぃだけど……」

加賀「そうか……兄妹水入らずの食事だな。まあ、楽しむといい……」

瑞鶴♀「う、うん」

加賀「ではな」

瑞鶴♀「あ、うん……」

***
**


瑞鶴♀「ってことがあったんだけど!!!!」

提督「もうほとんど目的は達してるじゃねえか」

赤城「まだまだ。加賀くんに「愛してる」って言ってもらって、かつ、今晩は加賀くんから求めてもらわないとね」

瑞鶴♀「ふぇっ……そ、そうだね、うん……」

提督「さんざん逆レしといて今更赤面するかぁ?」

赤城「乙女心は複雑なんですよ」

提督「だからモテねーんだよこいつは見たいな雰囲気やめてくんない!?」

憲兵「ゴールは間近でありますな!」

《加賀と瑞鶴の部屋》

加賀「…………」

加賀「……今日は調子が狂ったな」

加賀「まったく……なんだというんだ……」

加賀「女心と秋の空というやつか……?」

加賀「…………」

***

瑞鶴「――――」ニコニコ

***

加賀「…………」

加賀(まずいな……今日の私はどこかおかしい……)

ガチャッ

瑞鶴♀「ただいまー」


加賀「…………」


瑞鶴♀「加賀さーん?」

加賀「……ああ、戻ったか。おかえり」

瑞鶴♀「うん、ただいま」

加賀「…………」

瑞鶴♀「どうしたの? なんか今日、ちょっとおかしいよ加賀さん?」

加賀「それはお前もだろう」

瑞鶴♀「え? そうかな……」

加賀「……いつものような過度のスキンシップがない」

瑞鶴♀「それは、ほら、加賀さんが嫌がってるかも、ってちょっと思ったし、今日は控えめに……」

加賀「…………まあ、それはいい」

瑞鶴♀「他にもあるの?」

加賀「赤城さんと楽しそうにしていたな」

瑞鶴♀「それはほら、赤城さんは翔鶴姉ぇと仲良いし、共通の話題が」

加賀「翔鶴に教えを請うてもいたか」

瑞鶴♀「近場にいたしね。……あの、加賀さん?」

加賀「…………」

加賀「どうも今日の私はおかしいらしい……」

瑞鶴♀「え、あ、うん……」

加賀「だが……今抱いている感情は、本物だ。間違いないだろう」

瑞鶴♀「うん……」

加賀「……今日は、落ち着かなかったし、苛々したんだ」



加賀「お前を、取られたような気分になった……」



瑞鶴♀「か、加賀さん……」キュン

加賀「瑞鶴」スッ

瑞鶴♀「な、なに?」


加賀「……お前は誰にも渡したくない」


瑞鶴♀「か、がさん……」

加賀「…………」

瑞鶴♀「わ、私、加賀さんにそんなこと言ってもらえて……」グスッ

加賀「……瑞鶴」

瑞鶴♀「な……んっ――ぅ……」

加賀「…………」

瑞鶴♀「加賀さん……」

加賀「今晩は……加減が効かないかもしれない」

瑞鶴♀「うん……いいよ、大丈夫……」


***

**

《翌日・執務室》

瑞鶴♀「……」ニコニコ

加賀「……」ズーン

提督「どうしたお前ら、朝から対照的だな」

瑞鶴♀「えへへ、ちょっとねー」

加賀「……たかだか一日瑞鶴の様子がおかしかっただけで私は何を錯乱して……」ズーン

提督「あーなるほど、賢者モード」


瑞鶴♀「最初は私が主導権持ってても、いつも最後は主導権握られちゃうんだけど……」

瑞鶴♀「昨日は最初から最後まで凄かったなぁ……えへへ」

加賀「……やめろ瑞鶴……」

提督「いやほんとやめて。部下の情事の詳細なんて聞きたくない」

加賀「…………」

瑞鶴♀「ね、加賀さん。私、ずっと加賀さん一筋だからね」

加賀「……わかっている。昨日さんざん聞いた……」

提督「うわぁ……ノロけてる……」

瑞鶴♀「加賀さんも……私一筋でいてくれる、よね?」

加賀「あたり前だ。……昨日さんざん言ったろう……」

提督「とてもつらい」


瑞鶴♀「だったら、ね、もう一回、言ってよ!」

加賀「…………」

瑞鶴♀「かーがーさーん?」ユサユサ

加賀「わかった、わかった……」






加賀「――瑞鶴、お前を愛している」





加賀「……これでいいだろう?」

瑞鶴♀「うん! 一日一回、ちゃんと言ってね♪」

加賀「……勘弁してくれ」

提督「俺も勘弁してほしい」

瑞鶴♀「えへへっ」


【加賀くんと瑞鶴さん編 おしまい】

途中から自分は何を書いているんだろうと真顔になりました。ホモスレではなかったのか!?
まあ加賀♂×瑞鶴♀は前スレから続く私的ベストカップルなのでこんな感じで……

次回こそ憲兵殿主役回にいくのね……多分……  それではまた次回

《執務室》

ガチャッ

伊19「ぬるぬるマット押し相撲の時間なのね♂」ムキッ

伊168「いえーい!」ムキッ

ろーちゃん「男気男気♂」ムキッ


提督「やめてくれよ……」

ガチャッ

榛名「あっ、潜水漢のみなさん……! また性懲りもなく!」

金剛「参ったね、どうも」

伊58「どの口が言うでち♂」

伊19「休憩になった瞬間執務室に飛び込んでくるのはそっちも同じなのね♂」

榛名「う……で、でも、私たちはそういうあれじゃなくて……」

金剛「提督を守りに来たんだよ」



瑞鶴♀「人気者だね、提督さん」

提督「……今日も騒がしいなあ相変わらず」



伊168「戦艦が潜水漢に勝てるわけないでしょ♂」

ろーちゃん「男気男気♂」

五十鈴「俺はそのために連れてこられたのか……」

夕張「部屋に籠って実験続けたいのに……」


伊58「ゲェッ! 対潜番長!!」

伊19「まっずいのね♂」

金剛「フッ、どうする潜水漢?」

伊168「ぐぬぬ……♂」

伊19「ここは戦略的撤退なのね♂」

伊58「あっ、イク、待つでち♂」

ろーちゃん「てーとく、男気男気♂」


提督「うん、ダンケダンケ……」

瑞鶴♀「字面がやばい」


金剛「さて、潜水漢を追い払ったところでティーパーティとしゃれ込もう」


金剛「紅茶しかないけど……いいかな?」サーッ

提督「おい何入れてんだよ見えてんぞ金剛」

金剛「……」

提督「なりふり構わなくなってきてない、君」

金剛「フフフ……」

提督「その意味深な笑みがこえーよ!」



憲兵「――おや、今日も提督殿は大人気でありますな」ガチャッ

瑞鶴♀「あ、憲兵さん。こんにちは」

憲兵「こんにちはであります、瑞鶴殿」

榛名「こ、金剛お兄さま! 薬はなしって!」

金剛「随分といい子になってしまったようだね榛名……」

榛名「で、でもぉ……」

金剛「目的を達するには手段を選んではいられない……違うかい?」

提督「目の前で薬入れてる時点でバレるのが目的だろ」

五十鈴(これはあれか)

夕張(ただ提督にじゃれ付きたいだけだ)


憲兵「……」

瑞鶴♀「どうしたの、憲兵さん?」

憲兵「いえ……提督殿と遊んでいるときの彼らはとても楽しそうだなあ、と思いまして」

瑞鶴♀「そうだね。提督さんって基本的には何でも付き合ってくれるからね」

憲兵「うむ、それは確かにであります」


足柄「提督! 外出許可くれ!」ガチャッ

提督「おー足柄。なんだ急に」

足柄「……ブツを、買いに行ってくる」

提督「そうか……行くのか……」

足柄「今日はお姉さん物を……」

提督「わかった。許可!」


榛名「あ、あの、提督、ブツって……」

提督「ブツはブツだ」

金剛「それはつまり……」

提督「……言わせるな金剛」

榛名「わ、私ではだめでしょうか……?」

提督「だめですね……」



憲兵「……」

瑞鶴♀「女子の前で何話してんだか……」

憲兵「少し、彼らが羨ましく思えますな」

瑞鶴♀「ほえ?」

憲兵「あ……いえ、失言でありました」

瑞鶴♀「……憲兵さん、ひょっとして」

憲兵「な、なんでありましょう?」

瑞鶴♀「提督さんと……」

憲兵「……えっ」

瑞鶴♀「仲良くなりたいんだ?」

憲兵「あ……いや、その、あっと……」

瑞鶴♀「いいじゃん、提督さんは拒みはしないと思うよ」

憲兵「…………」

瑞鶴♀「なんか心配事でもあるの?」

憲兵「……その、自分の所属は陸軍でありますし」

瑞鶴♀「あーそっか、憲兵さんってそうなんだっけ」

憲兵「それに、私は艦息ではない」

瑞鶴♀「……いや、それは私も艦息じゃないけど」

憲兵「……何にせよ、気後れしてしまうと言いますか」

瑞鶴♀「まぁ、そればっかりは自分の気持ちと折り合いつけるしかないもんね……」

瑞鶴♀「もし仲良くなりたいって気持ちがあるんだったら、自分から突撃しようよ」

憲兵「突撃……」

瑞鶴♀「そう。私も突撃して、加賀さんを手に入れたんだから!」

憲兵「その言いっぷりは面白いものがありますな」

憲兵「ですが……そうか……突撃か」

憲兵「…………ふむ」



提督「あの二人は何話してんだろな?」

榛名「さぁ……?」

***
**


《あくる日》

瑞鶴♀「――たっ、大変っ! 提督さん!」

提督「ん? どうした急に」

瑞鶴♀「け、憲兵さんが!」

提督「憲兵さんがどうかしたのか?」

瑞鶴♀「て、転属だって!」

提督「はぁ!?」

《憲兵詰所》

憲兵「よいしょ……と」ドサッ

憲兵「ふぅ……。荷物運びに協力していただいて、感謝の極みであります」

長門「なに、気にするな」

大井「僕たちと憲兵さんの仲じゃないですか」

長門「互いに追って追われての関係……嫌いではなかったぞ」

大井「まあ、僕のライバルとして認めてもいいくらいですかね」

憲兵「お二人とも……」


憲兵「……本音は?」

長門「ようやく目の上のたんこぶが消えて嬉しい」

大井「転属ありがとうございます! これで僕の北上くんへの愛はより深みを増します!」

憲兵「さすがのお二人であります……」

長門「フッ……しかし急に転属とはどうしたことだ?」

大井「激務に疲れましたか?」

憲兵「もしそうだとしたら、激務を生み出している要因のお二人には深く反省していただきたいでありますな……」

憲兵「……ま、自分にも思うところがあって」

憲兵「転属願いを出したのでありますよ」

長門「ほう、そうだったのか」

大井「やっぱり激務に疲れたんですね」


提督「け、憲兵さん!」

瑞鶴♀「いたいた!」


憲兵「おや、提督殿」

提督「て、転属されるって本当ですか?」

憲兵「ええ、その予定であります。今は長門殿と大井殿に引越しの手伝いを……」

提督「そうでしたか……」

憲兵「昨日、転属願いが受理されまして」

提督「き、昨日の今日で引っ越しですか!?」

憲兵「一刻も早く次の赴任地へ向かいたい欲が……」テレテレ

提督「そんな……せっかく憲兵さんと仲良くなりかけてたところだったのに」

憲兵「提督殿……そんな風に思っていてくれたのでありますか」

提督「ええ……」

憲兵「ありがとうございます。ここで勤務出来て楽しかったでありますよ」

提督「お別れ会とか……」

憲兵「ああいえ、そんな大層なものは……」

瑞鶴♀「憲兵さん、どうして急に転属なんて……」

憲兵「突撃あるのみ、ですからな」フフッ

提督「突撃……?」

憲兵「あとのお楽しみであります♪」


長門「?」

大井「?」

憲兵「それでは皆様、また後ほど!」

ブロロロロロロ

提督「憲兵さん! 今までありがとう!!」ブンブン



瑞鶴♀「いま後ほどって言わなかった?」

長門「言ったな」

大井「言いましたね」

瑞鶴♀「提督さん気づいてないよね」

長門「友人との別れに直面した自分に酔っているな」

大井「長門さん辛辣ゥ」

***
**


《数日後》

大井「ひゃっほおおおおおおう! 北上くんのおぱんつ! おぱんつ!」ペロペロペロペロ

長門「吹雪のワイシャツ!!! 初雪の毛布!!!!!」ダダダダダダ

提督「待てこの変態ども!!!」ドドドドドドド


大井「追いつけるものなら追いついてごらんなさい!」

長門「仇敵がいなくなった今、我らの天下だ!!」

提督「くっそー、憲兵さんがいてくれれば!!」

瑞鶴♀「またやってる」

加賀「長門と大井が水を得た魚のようになっているな」

瑞鶴♀「憲兵さんって偉大だったんだね……」

加賀「まったくだ」


***


大井「ヒャヒャヒャ! 僕に追いつけるわけないんですよぉ!!」

長門「フフフ、このビッグセブンを舐めるなよ!」

ザッ

「そこの二人、そこで停まるであります!」

大井「なにィ!?」ザッ

長門「こ、この声は……!」ザッ

提督「やっと止まったかバカども……って」



憲兵「やれやれ、やっと戻って来れたであります」



大井「け、憲兵殿!?」

長門「なぜ貴様がここに!?」

提督「け、憲兵さん!?」

憲兵「艤装の調整に時間がかかってしまいまして……」

憲兵「長年使っていないとやはり勝手を忘れていたであります」

大井「ぎ、艤装?」

長門「調整?」

提督「えっと、どういうことでしょう……?」


あきつ丸「憲兵改め陸軍特殊船、あきつ丸。本日より艦隊にお世話になるであります」スッ


大井「」

長門「」

提督「」

瑞鶴♀「」

加賀「……なるほど、元々は艦だったのか」

***

あきつ丸「提督殿」

提督「は、はい」

あきつ丸「この鎮守府の治安……そして提督のお尻は、このあきつ丸がお守りするであります!」

大井「えっちょ聞いてない」

長門「貴様が戻ってくるなど聞いていないぞ憲兵!」

あきつ丸「言ってないでありますからな。それと、自分はあきつ丸であります」

あきつ丸「騙していたようで申し訳ないであります」

あきつ丸「ちょっと……サプライズをしてみたかったというか……」

あきつ丸「これで、自分も真の意味で提督殿のお役に立てる……そう信じているであります!」

提督「け、憲兵さん……」

あきつ丸「むぅ……あきつ丸、でありますよ」

提督「あ、あきつ丸さん……」

あきつ丸「さんは結構であります」

提督「あきつ丸……」

あきつ丸「はい♪ よろしくであります!」ビシィ

***
**


《執務室》

伊19「ぬるぬるマットプレイが待ってるのね♂」ガチャッ

あきつ丸「カ号発進!」

伊58「ゲェッ! 撤退! 撤退なのね!」

あきつ丸「ふふふ……対潜ならお任せあれ、であります」

提督「…………」

あきつ丸「……提督殿、どうしたでありますか?」

提督「……いや、なんでもない……」


提督「俺は今……幸せをかみしめてるところだよ……!」ドバァ

あきつ丸「うわああ提督殿ぉ!? しっかり! しっかりなさるであります!!」


【憲兵改めあきつ丸着任すの巻】

憲兵=あきつ丸は前スレからようやく回収できた内容であります……
たまには提督に幸せがあっても良いよね…… 血の呪いが強いかあきつが強いかは神のみぞ知る

ではまた夜にでも~

「理解者ができた」という幸せと
あきつ丸は艦ではなく船だとか聞いたことあるので「艦息」ではないというのも含めてご想像にお任せいたします

【瑞鶴くん編】

《朝・食堂》

ザワザワ

瑞鶴(こっちに来てから三日……)

瑞鶴(当然ながら周りに艦息はいない)

瑞鶴(つまり、周りは全員女……提督に至るまで女)

瑞鶴(……艦娘たちの興味津々な視線を強く感じる)


瑞鶴(安請け合いすべきじゃなかったな……)トオイメ

瑞鶴(何は置いても居心地が悪い……)

瑞鶴(完全にアウェー……)

瑞鶴「……はぁ」

飛龍♀「瑞鶴~。何ため息ついてんの?」バシッ

瑞鶴「うわっ……っと、飛龍先輩?」

蒼龍♀「おはよ、瑞鶴」

瑞鶴「蒼龍先輩も。ちわっす」

蒼龍♀「相席、いいかな?」

瑞鶴「ええ、どうぞ」

蒼龍♀「ありがとね」

瑞鶴「いえ……」

飛龍♀「んで、どうよ? もうウチの雰囲気には慣れた?」

瑞鶴「どうでしょうね……」

蒼龍♀「まだ来てから三日だもんね」

瑞鶴「それもありますけど……やっぱり周りが全員女子って言うのが」

瑞鶴「今までと全然違うとこなんで難しいですね」

飛龍♀「はー、なるほど」

蒼龍♀「そっか……そうだよね。私も逆の立場だったらすっごく辛いだろうな」

瑞鶴「女の俺は滅茶苦茶馴染んでますけどね……」

蒼龍♀「ゆっくり慣れていくしかないんじゃないかな」

瑞鶴「ええ、そうですね。そうします」

葛城♀「うーん、席、席はっと……」キョロキョロ

葛城♀「あ、あそこ空いてる。飛龍先輩たちだ」

葛城♀「すみませーん飛龍先輩、お席――」


瑞鶴「――ん?」


葛城♀「あっ」

瑞鶴「ああ、葛城か。おはよう」

葛城♀「お、はようございます……」

飛龍♀「おはよう葛城。どったの?」

葛城♀「い、いえっ、なんでもないですっ! それではっ!」ビューン

蒼龍♀「あ、いっちゃった」

飛龍♀「ははーん、あのシャイガール、さては照れてるな~?」

飛龍♀「よっ、憎いね、この色男」グイグイ

瑞鶴「何言ってんですか……」

飛龍♀「翔鶴以外の空母はほとんど意識してるもんねえ」

飛龍♀「ねえ蒼龍?」

蒼龍♀「な、なんで私に振るかな!?」

瑞鶴「まあ、女の園に急に男が混じれば嫌でも目を引きますしね」

飛龍♀「あーなるほどそういう捉え方になるか」

蒼龍♀「飛龍はちょっと口塞いでよっか?」

飛龍♀「はいはい……」

瑞鶴「よくわかりませんが……」

蒼龍♀「わかんなくていいよ!? 別に!」

瑞鶴「そ、そうですか……」

***
**


瑞鶴「さて、弓道場に行くとするか……」


翔鶴「あら……瑞鶴。あなたも弓道場へ?」

瑞鶴「翔鶴姉ぇ。……ああ、そのつもりだけど」

翔鶴「なら一緒に行きましょうか」

瑞鶴「そうさせてもらうよ。……まだちょっと道を覚えられてないし」

♀表記を忘れるというミス たまにしてるけど

***

翔鶴♀「こっちには、少しは慣れた?」

瑞鶴「ぼちぼちかな。まだまだ時間がかかりそうだよ」

翔鶴♀「そうよね。……何かあったら言ってね、お姉ちゃんが力になるわ」

瑞鶴「あ、ありがと……」

翔鶴♀「あら、瑞鶴ってば。照れているの?」

瑞鶴「い、いや、そういうんじゃあないけど……」

翔鶴♀「ふふっ、可愛らしいわね」

瑞鶴「あああ、いや、だからそういうのでは……」アタフタ

《弓道場》

加賀♀「――――」バシュッ


翔鶴♀「加賀さんはいつも早いわね」

瑞鶴「……加賀さんか」

翔鶴♀「どうしたの?」

瑞鶴「ウチの加賀さんもそうだったなあと思って」

翔鶴♀「どこの加賀さんも、きっとそうなのね」

翔鶴♀「いつも真面目で、冷静で」


加賀♀「――――」バシュッ

瑞鶴「ああ……そして何より格好いい」



加賀♀「――――!?」スカッ

赤城♀「加賀さん? 大丈夫ですか?」

加賀♀「え、ええ、大丈夫よ……」



翔鶴♀「……聞こえていたのかしら?」

瑞鶴「え。今の俺のせいなの?」

翔鶴♀「さあ、どうかしら。もしそうだとしたら、なかなか罪深いわね、瑞鶴」クスッ

瑞鶴「翔鶴姉ぇ……」

飛龍♀「よっ、来てるね色男」

瑞鶴「うわ、飛龍先輩」

飛龍♀「うわ、とは酷い言い草だなぁ」ケラケラ

蒼龍♀「飛龍。もう、また瑞鶴に絡みに行って……」

飛龍♀「いいじゃんいいじゃん」

瑞鶴「ええ。俺も、遠巻きに見られてるよりはよほどやり易いです」

飛龍♀「そ。こういうのはとっとと壁を取り払うのが一番なんだって!」

蒼龍♀「飛龍は勢いで行動しすぎな気がするけどなあ……」

翔鶴♀「瑞鶴、もう飛龍先輩とは仲良しなのね。よかったわ」

飛龍♀「そうそう。そいじゃ私も弓引こっかなっと」


蒼龍♀「はぁ……瑞鶴、飛龍に押されてない? 大丈夫?」

瑞鶴「まあ、確かに多少グイグイ来るな、とは思いますけど……」

瑞鶴「でも、ありがたいですよ。飛龍先輩みたいなタイプ」

蒼龍♀「そっか……そういうものなのかな……」

瑞鶴「もちろん、蒼龍先輩が心配してくれるのもありがたいです」

蒼龍♀「あっ、そ、そっか……そうなんだ……へへ」

翔鶴♀(この短期間に蒼龍先輩をほぼほぼ堕としかけるとは……)

翔鶴♀(やるわね、瑞鶴……)

翔鶴♀(……まあ、演習で赤城さんに堕ちた私が言えたことではないのかもだけど)

翔鶴♀(お姉ちゃんは応援しているわ……)


瑞鶴「……?」

飛龍♀「また視線でも感じたの、色男」

瑞鶴「その色男ってのやめてくれません?」

飛龍♀「ダメかなぁ?」

瑞鶴「ダメでしょ……」

***
**


瑞鶴(ふう……大分汗かいたな)

瑞鶴(シャワーでも浴びさせてもらおう……)

瑞鶴(ええっと……どこにあるんだったかな……)


龍驤「はー、良いお湯やったわ……」ホカホカ


瑞鶴「あ」

龍驤「あん? なんや、瑞鶴やん」

瑞鶴「どうも……えっと……」

龍驤♀「龍驤や。独特なシルエットでしょ?」

瑞鶴「あ、ええ……確かに」

龍驤♀「ってどこ見とんのや!」ウガー

瑞鶴「す、すいません!」

龍驤♀「あはは、冗談やって。今のは自分でネタ振ったしな」

龍驤♀「――けど、もし次会うたときに胸のこと言うたら、沈めるで」

瑞鶴「は、はい……」コクコク

龍驤「よろしい。ほんで、どないしたん、キミ?」

瑞鶴「弓道場で汗をかいたので……シャワーでも浴びようかと」

龍驤♀「ああ、なるほどな。場所がわからへんのか」

瑞鶴「ええ。教えて頂けますか?」

龍驤♀「浴場はこの道真っ直ぐ行って突き当りを右、そしたらすぐや」

瑞鶴「わかりました。ありがとうございます」

龍驤♀「気にせんといて。ほんじゃね」

瑞鶴「ありがとうございます」ペコリ


龍驤♀「礼儀正しいやないの。背も高いし顔も整っとる……」

龍驤♀「そら他の空母どもが熱上げるのもわからんではないな」

龍驤♀「……あれ、待てよ? 浴場って男女の別あったやろか」

《浴場の前》

瑞鶴「ああ、ここか」

瑞鶴「汗が乾いて寒くなってきたな……」

瑞鶴「あー早く入ろ……」

スタスタ

《脱衣所》

ガラッ

瑞鶴「ふぅ……」


蒼龍♀「えっ」ヌギッ

飛龍♀「おっ」ヌギッ


瑞鶴「……えっ」

蒼龍♀「あ……え、瑞鶴……?」プルン

瑞鶴「そ、蒼龍先輩――!?」

飛龍♀「ほー。白昼堂々脱衣所突撃とはやるねぇ」

瑞鶴「ひ、飛龍先輩――、いえ、これは、違うんです!」

蒼龍♀「と、とりあえず、で、出てってもらってもいいかな……!?」

飛龍♀「私は別にいいけどね。瑞鶴、見たい?」

蒼龍♀「飛龍!!」

瑞鶴「け、結構です! すいません! 失礼しました!」ダッ

飛龍♀「おー、初々しい」

《浴場の前》

瑞鶴(ああああああ)

瑞鶴(やばいやばいまたやってしまった……)

瑞鶴(今回はしかも翔鶴姉ぇではなく二航戦の先輩ふたり……)

瑞鶴(翔鶴姉ぇだったらいいってわけでもないけど姉と先輩とじゃ重みが違う……)

瑞鶴(うげ……胃がキリキリする……)

瑞鶴(……とりあえず先輩たちが上がるまでここで待って……謝ろう……)

瑞鶴(女所帯に飛び込むのはこれが辛いな……)

瑞鶴(提督と足柄なら喜ぶんだろうけど……)

***

《数十分後》

飛龍♀「はー、良いお湯だった……」ホカホカ

蒼龍♀「うう……飛龍、見られちゃったかなぁ……?」ホカホカ

飛龍♀「さっきからそればっかだなー蒼龍は。いいじゃん、蒼龍の九九艦爆で逆に魅了しちゃえばさー」ムギュッ

蒼龍♀「うわあ!? どこ掴んでるの!」

飛龍♀「どこでしょうねぇ……」


瑞鶴「…………」ダラダラ


飛龍♀「うわっ!? 瑞鶴いたの!?」

蒼龍♀「ず、瑞鶴……っ」

瑞鶴「あの……先輩……先ほどは本当にすみませんでした」

飛龍♀「あー、さっきのこと?」

蒼龍♀「え……もしかして、ずっと待ってたの?」

瑞鶴「はい……」

飛龍♀「真面目だなあ瑞鶴は。私は気にしてないって言ったじゃん?」

瑞鶴「いえ、ですが……その、本当にすみません……」

蒼龍♀「そ、そんなに謝らなくていいよ……うん、もう、大丈夫」

飛龍♀「そうそう。ってか、艦娘が使うことしか想定してないから脱衣所に男女の別ないしさ。仕方ないよ」

瑞鶴「ありがとうございます……」

蒼龍♀「…………」

瑞鶴「……」

蒼龍♀「ち、ちなみになんだけど……」

瑞鶴「は、はい」

蒼龍♀「ど、どこまで見たのかな……?」

瑞鶴「えっ」

飛龍♀「おっ」

瑞鶴「ど、どこまでというと……」

蒼龍♀「あ、あの時私結構脱いでたような記憶がね!?」

飛龍♀「それ聞いてどうするのよ蒼龍……」

瑞鶴「す、すぐに目は逸らしたつもりなんですが……」

蒼龍♀「み、見えたんだ……?」

瑞鶴「えっ、と……」

蒼龍♀「どこまで……見ちゃったのかな……?」ズイッ

瑞鶴「え、あ、の……」

蒼龍♀「ね、瑞鶴……?」

瑞鶴「う、うわああああああああ!」ダッ


飛龍♀「あっ、逃げた!」

蒼龍♀「…………」

飛龍♀「自分からあそこまで攻めて尋ねるとは……蒼龍もやるね」

蒼龍♀「……う、うわああああ! 私ってば何を聞いてえええ!?」

飛龍♀「えぇ……」

蒼龍♀「あ、あんな、自分から強要して……変態みたいじゃんこれじゃあ!」

飛龍♀「落ち着きなよ蒼龍……はいどうどう」

蒼龍♀「うぅ……」

飛龍♀(ラブコメってるなあ……ってか、ラキスケか……)

《瑞鶴の部屋》

ダダダダダダ

瑞鶴「うわあああああああ!」

翔鶴♀「……瑞鶴、戻ってきたの?」ヒョコッ

瑞鶴「しょ、翔鶴姉ぇ! やばい、俺……二航戦の先輩たちの着替えを……!」

翔鶴♀「あらあら……」

瑞鶴「罪悪感が……こんなんでやってけるのかな……」

翔鶴♀「大丈夫よ、ふふっ……」ナデナデ


ラッキースケベに見舞われる瑞鶴!

彼の心に平穏が訪れる日は来るのか! そして、提督が聞いたらマジで嫉妬で狂いそうだがそれは大丈夫なのか!

【瑞鶴くんの受難 あるいは女難②】

飛龍♀みたいな先輩ほしい……ほしくない?
瑞鶴くん編の着地点は相変わらず未定。蒼龍♀がヒロインレースにエントリーしてる感ある

では、今日はこんなところで。また次回。

【一級フラグ敷設艦・瑞鶴くん編】

《瑞鶴の部屋》

瑞鶴「ふわぁ……もうこんな時間か……」

瑞鶴「そろそろ寝るか……」

瑞鶴「…………」モゾモゾ

瑞鶴「……おやすみ」

パチッ

瑞鶴「…………」スヤァ


川内♀「いええええええええええい!」ドタドタドタドタ

川内♀「夜だ夜だ夜だ夜が来たぁぁ!」ドタドタドタドタ

川内♀「やーせーんーだーっっっっ!」ドタドタドタドタ


瑞鶴「ん……」


川内♀「夜戦だ夜戦! 夜戦やーせーんっ!!!」ドタドタドタドタ

瑞鶴「…………うるせぇ」モゾモゾ

瑞鶴「…………」


川内♀「夜は良いよねー夜はさあ!」

川内♀「いやっほおおおおおおう!」

川内♀「やっせんー! やっせんー!」


瑞鶴「…………」イラッ

瑞鶴「ああああもう! うるせえ!!」バッ

ガチャッ

瑞鶴「おい、かわうち!!」

川内♀「はぁ!? 誰がかわうちよ!」

瑞鶴「……お前だよお前」

川内♀「しっつれいな……って、あ! お前、男の瑞鶴!」

瑞鶴「ああ、そうだよ……ったくどこの川内も夜になったら騒ぎやがって……」

川内♀「夜と言えば私じゃん?」

瑞鶴「そうかもしれないけど少しは大人しくしてくれ……」

川内♀「えー、でもさー。これって私のアイデンティティだし?」

川内♀「夜戦イコール川内! じゃん?」

瑞鶴「そんなに夜戦が好きか……」

川内♀「うん、大好き!」

川内♀「瑞鶴も夜戦する?」

瑞鶴「空母は夜戦できません」

川内♀「まあまあ、つれないこと言わずにさ」

川内♀「行こう! 夜戦を求める旅へ!」グイッ

瑞鶴「おい! 勝手にワケわからん旅に巻き込むな!」

川内♀「夜戦が! 夜が! 私たちを呼んでいる!!」

瑞鶴「だから引っ張るなって!」

川内♀「ははははは! 行くぞー! 出撃ッ!!」ドドドドドドド

瑞鶴「助けてくれ翔鶴姉ぇぇぇぇぇぇ!」ズルズル



ガチャッ

翔鶴♀「……うーん」ゴシゴシ

翔鶴♀「あら……瑞鶴の部屋がもぬけの殻……」

翔鶴♀「瑞鶴ってば、こんな夜にお出かけかしら……?」

翔鶴♀「……ひょっとして、夜這い?」

翔鶴♀「…………」

翔鶴♀「まさかね。ふぅ……私も寝ましょう……」バタン

《翌朝》

瑞鶴「うぅ……あのバカわうちめ……」フラフラ

瑞鶴「結局一晩中連れまわしやがって……」フラフラ

瑞鶴「寝不足で頭が働かねえ……」フラフラ

瑞鶴「くそ、ちょっとどっかで休まねーと……」フラフラ


瑞鶴「…………」グワングワン


瑞鶴「うぅ……どこか……横になれるところ……」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「…………」フラフラ


加賀「…………」スタスタ

加賀「…………」チラッ

加賀(……瑞鶴ですか)


瑞鶴「…………」ヨロヨロ


加賀(……足が覚束ないわね)


瑞鶴「…………」フラッ

加賀「……ちょっ、と」

加賀(なぜこっちに――!)

瑞鶴「…………」ヨロッ

加賀「あ――!」


ドタッ バタンッ   ギュムッ


瑞鶴「…………」

加賀「……い、た……」

加賀(ろ、廊下で……五航戦に押し倒され……)

加賀「っ、この……瑞鶴……!」

瑞鶴「…………」スヤスヤ

加賀「……何を寝ているの」バシンッ

瑞鶴「ふおっ!?」

瑞鶴「…………?」

瑞鶴「…………」キョロキョロ

瑞鶴「……?」

加賀「下よ」

瑞鶴「え……」ギギギ

加賀「……偉くなったものね?」

瑞鶴「あ……あ……」

加賀「……退いてくれるかしら」

瑞鶴「す、すみません! すぐに!」ギュッ

加賀「きゃっ」

また付け忘れてる……

***

瑞鶴「えっ……」

瑞鶴(落ち着け瑞鶴。右手に何か柔らかな感触を覚えた気がするがきっと気のせいだ)

瑞鶴(落ち着け……落ち着くんだ……素数を数えて落ち着くんだ……)

瑞鶴(これは断じて加賀さんの……ではなく……そう、床に転がってたクッションとかなんかそういう)

加賀♀「瑞鶴」

瑞鶴「は、はい!」

加賀♀「早く退いてちょうだい」

瑞鶴「はい!」

瑞鶴(……今見えた。間違いない。俺の手が見事に加賀さんの双丘を掴んでいた)

瑞鶴(……なるほどなあ、俺はここで殺されてしまうのか……)

瑞鶴(さようなら翔鶴兄ぃ、提督、翔鶴姉ぇ……加賀さん……ついでに葛城……)

瑞鶴(……出来れば一思いに――!)


加賀♀「…………」

瑞鶴「…………」

加賀♀「……今のことは」

瑞鶴「は、い」

加賀♀「忘れることにします。……故意というわけではないようですし」

瑞鶴(えっ、マジで)

瑞鶴「天使か……」

加賀♀「はぁ?」

瑞鶴「あ、いえ、すみません!」

加賀♀「調子が悪いのならとっとと休んでいなさい」

瑞鶴「す、すみませんでした!!」

加賀♀「自己管理も満足にできないようでは、この先が思いやられます」

瑞鶴「……そ、そうですよね」

加賀♀「わかったらとっとと行く」

瑞鶴「はっ! 失礼しました、加賀さん!」ダッ

***
**


加賀♀「……ふん」

加賀♀「…………」ギュッ

加賀♀「…………」

加賀♀(い、今の対応で間違いはないわよね)

加賀♀(……押し倒されてしまったのはともかく)

加賀♀(む、胸まで揉まれてしまったけれど……)

加賀♀(くっ……五航戦に、瑞鶴相手に私は何を狼狽して……!)

加賀♀(落ち着きなさい加賀……こういう時は素数を数えて落ち着くのよ……)

瑞鶴(はぁ……加賀さんが許してくれて何とかなったけど……)

瑞鶴(俺、こんなミスばっかりじゃねえか……)

瑞鶴(女所帯の中にいるんだからもっと気をつけなきゃ……)

瑞鶴「はぁぁ……」


川内♀「おっ、瑞鶴」

瑞鶴「あ……バかわうち……」

川内♀「うわっ、なんだよその渾名……」

瑞鶴「お前のせいで大変な目に遭ったんだからな!!」

川内♀「えー? なになに? 加賀さんを押し倒してあまつさえ胸揉んじゃったとか?」

瑞鶴「な、なぜそれを……」

川内♀「見てたもんさ。いやー、悪いね、寝不足にさせちゃったか」

瑞鶴「……わかってるなら今後気を付けてくれ」

川内♀「はいはいっと」

瑞鶴「お前、本当にわかってるんだろうな……」

川内♀「もちろん」

瑞鶴「信用ならねえ……。けど、まあいいや、とりあえず俺は寝るから……」

川内♀「ん、わかった」


川内♀「ああ、そうだ瑞鶴」

瑞鶴「ん?」

川内♀「昨晩は付き合ってくれてありがとね。楽しかったよ」

瑞鶴「そうか……」クラクラ

川内♀「んー? なにさ、つれないじゃんか」

瑞鶴「今はとりあえず寝たい……」フラフラ

川内♀「そうかい」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「……ああ、川内」

川内♀「ん、なに?」


瑞鶴「……別の夜戦ならつき合ってやっても良いぜ」ドンッ

川内♀「え……? えっ……?」

瑞鶴(足柄が『艦娘の川内に行ってみたい台詞ランキング』一位とか言ってたしな……)

瑞鶴(まあ、昨日振り回された分、冗談飛ばすくらいいいだろ……)


川内♀「あ……っと、その……」

瑞鶴「…………」

川内♀「ま、まだ出逢ったばっかだし? ちょっと早いかなって?アタフタ

川内♀「そ、それに私の中では瑞鶴ってまだ女な感じだしこう、ね、ほらこう!」アタフタ

瑞鶴「…………」

川内♀「あ……あぅ……」カァァァ


瑞鶴(あれ? …………あれ?)

瑞鶴「…………」

川内♀「……っ……」チラッ

瑞鶴(あっ、これ冗談が冗談ととられてない感じ――)


飛龍♀「――瑞鶴はっけーん! はいどーん!」ドーン

瑞鶴「ぐおっ!?」

川内♀「!?」

蒼龍♀「飛龍!!」

瑞鶴「ひ、飛龍先輩……」

飛龍♀「壁ドンとはやりますなー色男!」バシッバシッ

蒼龍♀「瑞鶴、大丈夫?」

瑞鶴「え、ええ……」

瑞鶴(正直助かった……ありがとうございます飛龍先輩!)

川内♀「た、助かったぁ……」ホッ


飛龍♀「うんうん……これで万事解決だね!」

蒼龍♀「何言ってるの……瑞鶴見るなり突撃してって……」

川内♀「わ、私行くねっ! それじゃ!」バビューン

飛龍♀「あれ、川内行っちゃった」

瑞鶴「……助かった」

蒼龍♀「何かあったの?」

瑞鶴「ちょっと……疲れと悪戯心が相乗効果を起こして……」

飛龍♀「よくわかんないけど……まあいいか!」

蒼龍♀「飛龍はもうちょっと反省しなってばぁ……」

瑞鶴「いえ、今のは本当に助かったんで……」

蒼龍♀「瑞鶴は飛龍に甘すぎだよ。もっとちゃんと怒っていいんだからね?」

瑞鶴「はは……」

飛龍♀「ところで聞いたぞ色男~」グイグイ

瑞鶴「え、何をですか……」

飛龍♀「加賀さんの胸、揉んだんだって~?」

蒼龍♀「えっ」

瑞鶴「」

飛龍♀「青葉が言ってたからガセかと思ってたけど、こりゃマジもんかぁ」

蒼龍♀「えっ、瑞鶴……加賀さんともうそんな関係に!?」

瑞鶴「いや違います違います! 事故です!」

飛龍♀「ほう、そうかぁ。じゃあ私の胸でも事故っちゃう?」

蒼龍♀「こ、こら! 飛龍っ!」

瑞鶴「あ、はは……」

瑞鶴(翔鶴姉ぇ……助けてくれえ……)


【瑞鶴くんの受難 あるいは女難③】

飛龍先輩は冗談半分で突撃してくうちに本気になっちゃうタイプ はっきりわかんだね
川内は時報でも言及あるし……ね? こう……ね?

【変なおクスリ編】

《執務室》

提督「……」

あきつ丸「どうしたでありますか、提督殿」

提督「……俺、艦息に囲まれてるじゃないですか」

あきつ丸「ええ」

提督「……で、まあ、自分で言うのは何ですけど、好意を持たれてる」

あきつ丸「そうでありますな」

提督「でも俺は男じゃないですか?」

あきつ丸「はい」

提督「俺が女だったらすべて円満解決するんじゃないですかね……」

あきつ丸「!?」

提督「…………」

あきつ丸「て、提督殿! 落ち着くであります!」

あきつ丸「こいつが女だったらなとか! 自分が男だったらなとかいう仮定は闇しか生まないであります!!!」

提督「でも……俺の求める艦娘とのハーレムはそこに……」

あきつ丸「それは艦息との逆ハーレムであって、提督殿の求めている物とは全く異なるものでありますよ!?」

提督「でもでもだって……」

あきつ丸「でも、も、かも、もないであります……冷静になられるでありますよ」

夕張「話は聞きましたよ提督!」バァーン

あきつ丸「うわっ、いきなり何でありますか」

夕張「――提督、女性になりたいんですか?」

提督「いや、なりたいとは言ってな」

夕張「ちょうどここに試験段階の薬があるんですが……」

あきつ丸「なんでんなもん作ってるんでありますか」

夕張「明石がハードなら私はソフトですから」

あきつ丸「意味わかんないであります」

提督「ふーん。薬って?」

夕張「ああ!」

あきつ丸「はよ話進めるであります」

夕張「これは提督の願望をかなえる薬です」

提督「つまり」

夕張「飲むと女になれます」

あきつ丸「えぇ……」

提督「……え、なに? くれるの?」

夕張「実験だ――治験者が欲しかったんですよね」

提督「…………」ゴクリ

あきつ丸「て、提督殿、落ち着くであります! 艦娘が艦息で提督が女提督ってもうごちゃごちゃでありますよ!?」

提督「いや……いい機会なのかもしれない……」

あきつ丸「夕張殿! 提督を止めてください!」

夕張「糖衣錠なんで飲みやすいですよ」

あきつ丸「こいつら話聞かないでありますなあ!!」

提督「……んっ」ゴクッ

あきつ丸「ああっ、提督殿ぉ!」

夕張「効果はどんなに長くとも二日ほどの筈です」

提督「あっ……熱っ……ちょ、体熱いんだけどなにこれ!?」

あきつ丸「て、提督殿! ちょ、提督殿――!」

提督「――こ、これで」

提督「女になれば……尻を狙われない……」

あきつ丸「根本的解決になってないでありますよぉ!」



提督「あふぅ!」ビク ビクン

***
**


《執務室》

提督「――はっ!?」ガバッ

提督「……ゆ、夢か……?」

提督「声が高くなってる……」

提督「……」チラッ

ポヨンッ

提督「こっ……この双丘は……ッ!」

提督「む、胸……! 胸だ! おっぱいだ!!」

提督「お、女になってる――!」

提督「夕張の薬すげぇ!」

提督「す、姿見姿見……」


提督「…………」

提督(めっちゃ美人じゃねえか……)ホゥ

提督(すげえぜ……)

コンコン

提督「おう、入っていいぞ」

加賀「女性の声?」ガチャッ

提督「なんだ、加賀か」

加賀「……失礼ですが、どちら様でしょうか?」

提督「ふっふっふ、誰だと思う?」

加賀「……それをお聞きしているのですが」

提督(……え、なに、冷たい……)

提督「ほら、お前らの提督だよ提督」

加賀「…………」

提督「あ、あの、夕張の薬を飲んで女の子に……」

加賀「あまり女性に手荒な真似はしたくありませんが、ここには軍事機密も多数存在しますので」

提督「へ?」

加賀「不法侵入として捕縛させていただきます」ガシッ

提督「えっ、ちょっ、信じて! 信じろよ加賀! 俺だよ俺!」

加賀「…………」グイッ

提督「マジか……お前、覚えてろよ……」

加賀「……まったく。執務室に女性を連れ込んで、提督はどこへ行ったのやら」

提督「だから俺だって言ってるだろ……」

加賀「……そんな与太を信用できるわけないでしょう」

提督(やっと耳を傾けてくれた……)

提督「あっ、じゃあ、ほら、あれ、部外者じゃないって説明するから!!」

加賀「どうやってです」

提督「……瑞鶴との夜戦ではいつも最終的にお前が主導権を握るんだよな?」

加賀「……な、何故それを……まさか提督、口を滑らせて……」

提督「ちがっ、だから俺だっての!!」

加賀「…………」

提督「……」

加賀「本当に提督なのですか?」

提督「そ、そう言ってるじゃん?」

加賀「……提督が執務室に連れ込んだわけではないと」

提督「今までそんなことしたことあったか……?」

加賀「ついに辛抱しきれなくなった可能性もあります」

提督「流石にそこまで落ちぶれちゃいねえよ……」

加賀「…………」

提督「…………」

加賀「…………」スルスル

提督「お、おお……加賀……信じてくれたのか」

加賀「……どこか薄幸そうな雰囲気は提督に通じるものがありますしね」

提督「信じてもらえてうれしいけど嬉しくねえ……」コキコキッ

加賀「……それで、何だってそんな急に女性なんかに」

提督「いや……艦息に囲まれてるんだから俺が女になれば解決じゃね、って」

提督「ちょうどいい具合に夕張がそんな薬開発してたらしかったから飲んだんだよ」

加賀「馬鹿ですか」

提督「も、物は試しで飲んだだけだよ!」

提督「さて……さっそく女になったわけだし、鎮守府の散歩でもするかなー」

加賀「え……執務室から出られるおつもりですか?」

提督「そらそうよ」

加賀「絶対碌なことにならないのでやめておいた方が賢明かと」

提督「でも折角女になったんだしよぉ」

加賀「……では一応、私も着いていきます」

提督「え? なんで?」

加賀「今の提督を一人にすると怖いものがありますから」

提督「うーん、そう……?」

***
**


提督「女になるとまた世界が違って見えるな」

加賀「はぁ」

提督「視線が低い! 新鮮だ!」

加賀「そうですか……」

提督「んだよ反応うっすいな」

加賀「早めに執務室に戻って、引きこもっていた方がいいと思いますがね……」

提督「……?」

伊58「執務室に突撃でち♂」

伊19「レッツゴーなのね♂」

伊168「行くわよ♂」


提督「おっ、潜水漢ども」

加賀「……」


伊58「……?」ムキッ

伊19「見慣れない人なのね♂」ムキッ

伊168「こんにちは♂」ムキッ

提督(お、おお……こいつらもまともな応対が出来るんだな……)

提督(なんか感動するよ……)

提督「こんにちは。元気だなお前ら」

伊19「え? あ、うん、そうなのね♂」

伊168「これから執務室に行くのよ♂」

提督「そうか。気を付けて行けよ」

加賀「……提督、あなたは今提督ではないんですから、そこのところを弁えて応対してください」ボソッ

提督「……あ、そうか……」



伊168「今の誰かしら♂」

伊58「謎でち♂」

朧「今日の遠征も上手くいったね」

潮「よかったぁ……」

曙「へっ、当然だろ?」

漣「ほう、経験が生きたな」


提督「お、七駆」

加賀「遠征帰りのようですね」

提督「よーお前ら、お疲れさん」


朧「えっ?」

潮(だ、誰……?)

漣「俺がどうやって遠征帰りだって証拠だよ」

曙「……あんた、誰?」


加賀「またやってる」ボソッ

提督「あ、あー……そっか……」

提督「おほん……えっと、私、今度から着任した提督よ」

加賀「」


潮「えっ……!?」

朧「こ、今度から?」

曙「それって……今までのクソ提督はどうしたんだ……ですか?」

提督(ですかって……曙、礼儀正しいとこもあんのなー)ニッコリ

提督「えっと、あのね、いろいろあって……今度から私が……」


曙「ッ、あのクソ提督!」ダッ

潮「あっ、曙くん!」

朧「あーもう……」

漣「お前それでいいのか?」ダッ

潮「あ、漣くんまで……」

朧「僕たちもいこう、潮」

潮「う、うん……」



提督「……」

加賀「だから外は出歩かない方がいいんじゃないかと言ったんです」

提督「もしかしてマズい?」

加賀「さあ……どうでしょうね。でも、七駆は間違いなく誤解したと思いますよ」

提督「…………」

提督「……いや、悔やんでいてもしょうがない。まだまだ続けよう」

加賀「はぁ……」

提督「意外な一面が見れて楽しいしな……」

加賀「そうですか……」

霧島「……ん?」

提督「おお、霧島!」

加賀「だからあなたは……」ハァ

霧島「加賀さん、こちらは?」クイッ

加賀「……提督だ」

霧島「提督……?」

霧島(……この女性が提督?)

霧島(だが我らの司令は……男性……)

霧島(……しかし、あの加賀さんが提督であると言い切るのだから彼女が提督であることは疑いようがないのだろう)

霧島(……この二つの事実が導き出す答えはひとつ……!)

霧島「……失礼、金剛兄様に報告すべき事柄が出来たようです」クルッ

提督「あ、行っちまった」

加賀「ですね」

提督「……なあ、これ、霧島もひょっとして勘違いしてたりしない?」

加賀「…………」

提督「俺のことは責められなさそうだなあ、加賀ぁ?」ニヤリ

加賀「くっ……言葉が足りなさ過ぎたか……!」

提督「ほれほれ加賀ぁ、お前にも落ち度があったぞ」グイグイ

加賀「屈辱だ……」

***

瑞鶴♀「だ、誰……あの女の人……!」ワナワナ

提督「しかし、一見して俺には元の面影、やっぱないもんか?」クルッ

加賀「まぁ……ほぼないですね」

提督「ほぼ?」

加賀「口を開けば提督だというのはわかりますが……」

加賀「七駆を相手にした時のように演技をされると見抜くのは難しいでしょうね」

提督「へぇ、そうか……それじゃ……」


提督「ねぇ、加賀」グイッ

加賀「は?」

提督「……私と夜戦、してみる?」クスッ

加賀「やめてくれませんか」

提督「ちぇっ、ノッてくれても良いだろ? 焦るとかさぁ」

加賀「大体私には……」

提督「あーはいはい、そうね、お前には瑞鶴が――」


瑞鶴♀「――加賀さん!」


提督「げっ……」

加賀「瑞鶴……」

瑞鶴♀「わ、私っ、加賀さんの事……信じてるからね……?」

提督「なるほど……あなたが瑞鶴さんね」

加賀「拗れるからやめてください提督」

提督「ふふっ……小娘がどうやって加賀のハートを射抜いたか知らないけど……」

提督「加賀は私の色気にクラクラなのy」

加賀「やめてください」バシッ

提督「ぎゃんっ!」ドサッ

瑞鶴♀「か、加賀さんが女の人に手を挙げた……」

加賀「瑞鶴、落ち着いて聞いてほしい」

加賀「これは提督だ」

提督「信じるわけないでしょ」

加賀「なんでさっきとは逆にそんな偉そうなんですか……」

瑞鶴♀「て、提督さん……? そこの美人さんが……?」

加賀「ああ、そうだ。色々あって薬で女になっている」

瑞鶴♀「そ、そう……」

加賀「……私はお前一筋だ。これは絶対に……揺らがない」

瑞鶴♀「加賀さん……! うん、わかった、私加賀さんを信じてる!!」



提督「美しきかな夫婦の愛ってか……」

***
**


瑞鶴♀「それで……提督さんなんだ、あなた」

提督「おう、まあな。どうだ、美人でビビったか」

瑞鶴♀「加賀さんに言い寄ってるときはちょっと迷ったよ……」

加賀「私はお前だけを見ていると言っただろう」

瑞鶴♀「うん、ありがと……、でも迷ったって言うのは、爆殺するかどうかで」

加賀「」

提督「」

瑞鶴♀「なんてね」

加賀(提督、迂闊な真似は今後止して下さいね)

提督(少なくとも瑞鶴相手にたちの悪い冗談はやめておこう……)

中断 今日中に戻ってくるかは不明
何気に前スレを越えてしまったのと、ネタ的な意味でこれが今スレ最終章になると思われる では

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年12月21日 (水) 02:26:52   ID: 0vG_V2ic

え?え?早くぅー帰ってきてくれー!

2 :  SS好きの774さん   2020年03月07日 (土) 21:46:32   ID: y3PcKi6r

キャラ同士の掛け合いやクセ、テンポや加減が上手くて面白かったです

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