神様「科学の神様だ」(449)


――― 某研究所跡・裏

 ザッ ザッ

男「ふぅ、この建物って奥にこんなところがあったんだ」

 ザッ ザッ

男(あれ?人がいる?)


男「あっ、こんにちは」

少女「??」キョロキョロ

男「あの~」

少女「!?」ハッ


少女「し・・・」

男「?」

少女「(神 ――ジジッ 皆 ――ジジッ か?!)」

男(なんだ? このノイズみたいなのは)

 シーン


少女「失礼・・・ これで聞こえるか? というか見えるのか?」

男「はい?」

少女「・・・いや、なんでも」

男「あのー こんな所で何してたんですか?」

少女「・・・砂粒を数えていた」

男「砂粒?」


少女「それより・・・」

男「あっすいません、立ち入り禁止ですよねココ」

少女「・・・・・・」

男「こんな所にこんなものがあるなんて。 教会? 神社の様にも見えるけど」

少女「・・・・・・」

男「あの~」


少女「どうしてここに?」

男「下にある研究所跡の奥に回ったら汚らしい建物が上に見えたもんで」

少女「き!汚ない?」

男「あっ すいません」

少女「ま、まぁ確かに汚れて・・・ いるな・・・」キョロキョロ

少女「名前は?」

男「えっ? 男と言います。 ここの方ですか?」

少女「!?」


男「どうかしました?」

少女「あっ、か・・・ 神だ」

男「・・・はい? 神? あ~神田(かみだ)さん」

少女「違う、神様!」

男「・・・・・・」

少女「?」


ピロリン♪

神様「?!」

男「メール・・・ うへぇ~ これから部活ミーティングかよ」

神様「そ・・・ それは!」

男「じゃ、そろそろ帰りますので」

神様「ちょ、ちょっと待ったー!」

男「なにか?」


神様「そ・・・ その端末・・・」ワナワナ

男「端末?」

神様「見せてもらっても?」

男「スマホ? どうぞ」 スッ


神様「すまない、私は実体がないから触れないのだ」

男「は? 実体がない?」


神様「私に触れてみろ」

男「え? うそ何これ!」スカスカ

男「ホログラムか何か? 本体は奥の建物にいるの?」

神様「そんな安い技術と一緒にするな」

神様「其方の脳に直接姿を投影している」

男「そなた? 脳に直接?」

神様「まぁ本体があの中にあるという表現は半分当たっているがな」


男「もしかして幽霊?」

神様「失礼な、そんな非科学的なものと一緒にするな」

男「でも非科学的な物としか言い様がない気が・・・」

神様「それよりも・・・ そのスマホをもう少し上にかざしてもらっても良いか?」

男「あぁ、この位?」

神様「十分だ。それでは失礼して・・・」


神様「これは・・・ 間違いない」ブツブツ

男(この子、ちょっと痛いけど可愛いな)

神様「嬉しいことを言う、だが痛いと言う部分は心外だな」

男「えっ! 聞こえたの?」


神様「そうか、私とこんなに脳波パターンも近いんだな。 それで・・・」

男「ねぇ、そんなにスマホめずらしい? 持ってないの?」

神様「ん? 神だからな」

男「そうですか・・・」


神様「頼みがあるんだが、ブラウジングしても良いか? 5分、いや3分でも良い」

男「ブラウジング?」

神様「インターネットワーク、で通じるか?」

男「あ~ネット? 良いけど触れないのにどうやって? 奥にいるなら持って行くよ?」

神様「いや、このままで大丈夫だ」


男(うわっ、何かスマホ超熱くなってるんだけど!)

 ふむ、やはり隠されているか・・・
 しかし・・・ ここまで来たか!
 あ~、惜しいなぁ、あと一歩なんだが!
 ブツブツ―――

神様「!?」

男「ん? どうしたの?」

神様「・・・・・・」


男「ねぇ、大丈夫? 急に黙り込んで」

神様「あっ、あ~すまない。 ちょっと悪い物を見た」

男「ブラクラでも踏んだ?」

神様「引き留めてすまなかった。 楽しかったぞ」


男「ふふっ」

神様「なんだ? その含みのあるような笑いは」

男「いや、本物の神様みたいな口調だなって。 うまいうまい」

神様「信じていないな?」

男「じゃ、暗くなってきたし帰るわ。 今度は奥にいる本物に会えますように!」タッタッ

神様(・・・・・・)


――― 翌日朝・学校

幼馴染「おっはよー男。 今日も元気に堅いかね?」

男「お前・・・ 突っ込む気力もねぇよ」

幼馴染「そう言えば、昨日は部会来なかったねぇ」

男「ちょっと野暮用で」

幼馴染「私は寂しくて・・・ 寂しさのあまり胸がはち切れてBカップになっちゃったよ」

男「はち切れてBカップかよ・・・ そうだ、お前研究所跡知ってるか?」

幼馴染「研究所跡?」

男「バス停前の」

幼馴染「あ~、あの廃墟?」

男「あの裏側に教会のような・・・ 神社みたいのがあるんだよ」

幼馴染「ほ~ あそこって真昼間っから出るらしいよ~
    誰もいないのに声が聞こえるんだって! うそ! 怖い! 怖いよ!
    抱きしめて! 真昼間から抱きしめて!」

男「聞いたよ俺も。 正体も見た・・・ と思う」

幼馴染「もっと強――― はい?」


男「だから、そこで変な声を聞いて変な物を見た」

幼馴染「そうなんだ・・・ うん、私は男を信じる。 大丈夫だよ。
    DTを拗らして妄想と現実がゴッチャになることだってあるさ」

男「はぁ~、そろそろ先生来るから自分のクラスに戻れよ」

幼馴染「酷い! こんなに可愛い幼馴染なのに! 女ね。 他の女に鞍替えするのね!」

男「何バカなこと言ってんだよ」

幼馴染「ちぇ、ノリ悪い~な まぁいいや」ヨッコイショ

男「だから何で前に座るんだよ。 帰れよ」

幼馴染「えっ? 私ってホントに隣のクラスなの? 初耳!!
    どうしよう、ねぇ男! 私の記憶が書き換えられてる!」

先生「おい男と幼馴染。 先生が来たんだから静かにしてろ」

幼馴染「ふぇ~い」

男「??」


神様「そうだぞ男、余計な事は喋らずに静かにしていろ」

男「ん?」クルッ

 ガタッ

男「あんた、なんでこ―――」

神様「事情は後ほど話す。 大人しくしておれ」ボソ


先生「おい、うるさいぞ!」

男「あっ・・・ すいません」

神様「・・・」ニコッ

男「(か、可愛い・・・)」

神様「嬉しいことを言う」


――― 昼休み

神様「男、ちょっと顔を貸せ」

幼馴染「うん、分かった。 でもでも優しくしてね」ポッ

神様「・・・幼よ、私の話をきちんと聞いていたのか?」

男「んじゃ隣の空き教室でも行こうか」

神様「あっ、ああ。 スマホを忘れるな」

男「スマホ? なんで?」

神様「なんでも良い。行くぞ」

 スタスタ

神様「・・・・・・」

男「どうしたの? ドアの前で」

神様「開けてくれるか?」

男「ん? あぁ」ガラガラ

神様「うむ」

男「?」


――― 空き教室

男「さて、聞きましょうか」

神様「(その前にだ)」

男「なんで頭に直接話しかけてくるんだよ」

神様「(隣の部屋で幼が聴診器を使ってこちらの部屋の様子を伺っている)」

男「はぁ~、ちょっと言ってくる」

神様「それには及ばん ―――これで大丈夫だ」

男「何した?」

神様「気にする必要は無い」

神様「さて、昨日説明したと思うが私は神だ」

男「神田さんだっけ」

神様「違う! か・み・さ・ま! 以前は女神と呼ばれていた」

男「女神にしては幼すぎね? もっとさぁ ―――」

 バチッ!

男「うゎ! 静電気か? 痛って~」


神様「茶化さずに聞け」

神様「やることが出来た。協力しろ」

男「・・・・・・」

神様「・・・・・・」

男「・・・・・・」

神様「・・・・・・」


男「え?終わり?」

神様「うむ」

男「もう少しさぁ、何かあるでしょ」

神様「?」

男「なんというか・・・」


神様「なるほど。そう言うことか」ポンッ

男「そうそう」


神様「男よ、お前を私の神官に任命する」キリッ!

男「しんかん?」

神様「ありがたく拝命するが良い。これでよいか?」フフン

男「・・・・・・」


神様「誇るが良い。私の神官だぞ」

男「違う、そうじゃない」

神様「あ?」


男「まぁ良いや、そんなことより」

神様「そんなこと、とは失礼な」

男「何で学校にいるのさ。周りもヤツも普通に接しているし」

神様「私に質問とは恐れ多いぞ」

男「だって変でしょどう考えても、それに実体は無いんじゃないの?」


神様「仕方の無いヤツだ。 神官でもあるし今回は特別に答えてやる」ハァー

男「そりゃ、どうも」

神様「周りの者達には私が入学から今日までの記憶を作り追記した」

男「はい?」

神様「私の姿に関しては、そのスマホと小箱を接続。
   脳波や量子を組み合わせて皆の脳に投影像を送り込んでいる。」

男「・・・・・・」


男「うん、ぜんっぜん意味わかんない」

神様「つまりだ、超高性能なコンピュータとお前のスマホを繋いで
   周りに私が居るように脳に電波を送っている。これで良いか?」

男「ちょっと待って、そんなこと出来るわけ無いっしょ」

神様「造作も無い」

男「何だ何だ、そのオカルトは!」

神様「無礼な、オカルトなんかと一緒にするでない」ムッ

男「どっちでも良いわ! って言うか俺に何しろって言うのさ」


神様「私のサポートを任せる」

男「何のサポートよ」

神様「全てだ」

男「具体的には」

神様「鈍いヤツだ。 先が思いやられる」

男「それはこっちのセリフだよ」


神様「私は実体がない。 つまり物に触れることが出来ない」

男「あ~ それでさっきドアを開けさせたのか」

神様「私が周りから違和感の無いように気を配る。 それがお前のすべきことだ」

男「何だよそれ、奴隷じゃん」

神様「おい!言葉に注意しろ! 奴隷ではない神官だ!」キッ

男「急に怖い顔してどうしたんだよ」


神様「・・・・・・」

男「分かったよ。 協力しますよ」

神様「よし、頼んだぞ我が神官よ」ニコッ

男「(うっ、可愛い・・・)」

神様「嬉しことを言う」


男「・・・俺からもお願いが一つある」

神様「あ?」

男「人の頭の中を勝手に覗かないこと」

神様「何を言っている。 お前は私の―――」

男「分かった? じゃなきゃスマホの電源を切る」


神様「うっ・・・」ギクッ

男「スマホの電源を切ればアンタは消えると言うことだけは理解できた」


神様「私を脅すなど、お前は―――」

男「分かりましたか?」


神様「私は神であって―――」

男「分かりましたか?」


神様「しょ・・・ 承知した。人の頭の中を無断で読むことはや・・・ やめる」グヌヌ

男「よろしい」

男「ん? ちょっとまって、何で幼はうちのクラスにしたんだ?」

神様「?」

男「いや、俺の記憶だと幼は隣のクラスなんだけど」

神様「私はそんな改竄をした覚えは無いぞ。 照合にも・・・ 問題は出ていないが・・・」

男「なんだよそれ、大丈夫かよ」

神様「失敬な、と言いたいところだが本調子ではなくてな」


男「おいおい」

神様「小箱のエネルギーが残り少なくてな。 節約しすぎたか?」

男「さっきも言ってたけど小箱って何? 本体?」

神様「そう思ってかまわん」

男「ってことは、本体の電池が残り少ないと」

神様「まぁそんなところだ」

男「どのくらいで空になるの?」

神様「もって3ヶ月だな」

男「え? 短くね」

神様「仕方がない、それまでにはカタを付ける」

男「カタって?」


神様「・・・時間だ。戻るぞ」

男「あっ、ああ」


―――教室

男「はい、どうぞ」ガラガラ

神様「うむ」スタスタ


幼馴染「Zzz・・・」

男「なぁ神様?」

神様「なんだ」

男「幼が床ですんごい格好で寝ているんだが」

神様「うむ、見事な捻れっぷりだ」


男「何したの?」

神様「仮眠レベルにしたはずだが・・・ ガッツリ寝ているなぁ」

男「え? 授業中もあのまま?」

神様「盗み聞きなどするからだ」

男「可哀想に・・・」


男「そうだ、今日部活あるんだけど神様は放課後どうする?」

神様「科学部であろう? 驚け! 私も部員だ」

男「はい?」


神様「部長、幼、お前、そして私の4人しかいない弱小部だな」

男「人数が少ないのは変えてくれないんだ・・・」

神様「だが、科学部とは良い選択だ」フムフム


――― 教室・放課後

幼馴染「うがっ」ムクッ

男「おう、起きたか」

神様「見事な寝相であった」


男「おい、部室行くぞ」

幼馴染「おんぶ~」ホケー

男「歩け」

 パチッ!

幼馴染「うわっ! 静電気!」シャキッ

神様「ゆくぞ、幼よ」


――― 科学部・部室

部長「と、言う訳で」

男「つまり、なぜか部費が増えていたと言うことですね?」

幼馴染「よかった~ お菓子代なくなったら大変だもんね~」

部長「幼ちゃん、部費はお菓子代じゃない訳で。 科学部の研究予算な訳で」

幼馴染「はーい、 じゃぁその余った部費で旅行することを提案します! 可決!」

部長「旅行ですか? う~ん・・・」


男「もしかして・・・」ボソ

神様「良いではないか、ちょっと多くしすぎただけだ」ボソ

男「間違えた?」ボソ

神様「・・・・・・」

男「ねぇ、桁とか間違えちゃったの?」ボソ

神様「えーい! うるさいぞ男! 部長とやら、私も旅行に賛成する!」

幼馴染「さっすが神ちゃん、私は神ちゃんがいればもう何もいらない!」


男「んじゃこのお菓子は没収な」

幼馴染「おいおい、何言ってんだよDT! それとこれとは話が別だろうが。
    あんま調子に乗ってると、自宅の引き出しから2段目の板の下に
    隠してあるお気に入りのAVとエロ本を居間に置くぞ?」

男「・・・・・・」

部長「う~ん、まぁやることもないし研修旅行にしますか」

幼馴染「温泉なんてどうでしょう! 素晴らしきかな温泉!温泉っ!」

部長「科学部なんだから普通は科学館とかじゃないです? 神さんは希望あります?」

神様「研究所跡から137Km以内の所で頼む」

男「なんだよその中途半端な数字は」

神様「正確な数字と言え」


幼馴染「137Kmか~ にゅるにゅる温泉は146Km先だしな~」

男「なんでお前はそんな細かい数字まで知ってるんだよ」

神様「正確には146.45Kmだ」フンスッ!

男「張り合うなって・・・」


幼馴染「んじゃ、べろべろ温泉だね。 可決!」

部長「そうですね。 あそこは特急なら乗り換えなしで行けますし」


神様「切符と宿は私が手配しよう。 代金は男が預かれ」

男「ん? あぁ分かった」

部長「では、今日は解散にしますか」


神様「活動はせずとも良いのか?」

男「科学部って言っても、メンツがこれだし」


幼馴染「神ちゃん、お菓子食べる~?」ダラダラ

神様「ありがたいが・・・ 気持ちだけ」


――― 帰り道

神様「♪~」

男「もしかして機嫌良い? 科学部のダメっぷりに落胆したと思ってた」

神様「そんな小さいことで不機嫌になどならんわ」


男「もしかして温泉旅行が楽しみとか?」

神様「そうだな・・・」

男「旅行好き?」

神様「旅行か・・・ 神として初めての経験だ」

男「え? 旅行に行ったこと無いの?」


神様「このように街中を散策するのも84年ぶりだ。 全てが新鮮で・・・ うむ、楽しいな」


男「84年? ねぇ、神様って何歳?」

神様「レディーに歳を聞くな馬鹿者」

男「レディーって・・・」

 パチッ!

男「痛っ! なんだ? また静電気?」

神様「神罰だ」

男「この静電気はあんたの仕業か!」

神様「足りないようだな、ではもう一度」

男「ごめん! 悪かったって」

神様「全く」


男「それより、神様この後どうするの?」

神様「?」キョトン

男「いや、そんなキョトンとされても」


神様「お前の家に決まっているであろう」

男「あ~、うち来るのね」

神様「問題でも?」

男「いや、特にはないけどさぁ」


神様「お、見えてきたな」

男「俺の家、知ってるのね・・・」

神様「無論」


――― 男自宅

 ガチャッ

男「まだ誰も帰っていないから上がって」

神様「失礼する」キョロキョロ

男「さてと、何か飲む? って必要ないか」

神様「気にするな」


神様「ここがお前の部屋だな?」

男「あぁ、どうぞ」ガチャ

神様「うむ」

男「勝手にいじるなよ… って心配もないか」

 キョロキョロ

神様「男よ、このコンピュータの電源を入れてくれ」

男「あぁパソコンね。 はいよ」

 ポチ


神様「ほう、これはこれは」

男「どうしたの?」


神様「進化は凄いな」

男「これでも2年前のものだから最新のやつはもっと凄いと思うけど」


神様「想像以上だ。 少しいじっても?」

男「どうぞご自由に」

神様「では、失礼する」


―――3時間後

神様「ふぅ~」

男「あっ、終わった?」

神様「あぁ、調べ物がはかどった」

男「調べ物?」

神様「しかし、便利だな」


男「神様のパソコンのやり方って変わってるね」

神様「?」

男「だって、ずっと本体見てるだけなんだもん」


神様「マウスやキーボードは私には不要だ」

男「ですよね~」


神様「さてと、男よ明日は秋葉原へ行くぞ」

男「買い物?」

神様「そうだこのパソコンを少し改良したい」

男「俺のパソコン改造するの? って言うかそんなお金ない」

神様「今日もらったではないか8万円も」ニヤッ

男「いやいや、これ旅費だから」

神様「心配するな、切符と宿は予約してある」

男「ちょ… どうやって?」

神様「それは企業秘密だ」

男「神ってお仕事なんですか?」

神様「気にするな、そのプリンターから明日買う物を出力するぞ」

 ガー ガー ガー

男「どれどれ… ん~ 何が何だかさっぱりだわ」

神様「私の言うとおりにしていれば良い」


男「ところでさー」

神様「なんだ」

男「ここは ミー の家な訳で」

神様「知っている」

男「うん、神様はどうするの? 本体はやっぱりあのボロ屋なんでしょ?」

神様「神殿と言え」


男「ボクはそろそろ夕飯な訳で、そのあとお風呂に入って寝る訳で」

神様「部長のような言い回しだな。 似ているぞ」

男「いや、物まねじゃないし。 ユー はどうする訳?」

神様「気にするな。 食事も布団も必要ない」


男「違う、そうじゃない」

神様「何が言いたいのだ? はっきりしろ」

男「おうちに帰らないの?」

神様「お前のパソコンとそのスマホが私の依り代だ」

男「ちょ、俺の物に勝手に住み着くなよ」

神様「私のサポートをすると約束したではないか」

男「親とかにどう説明すんだよ」

神様「案ずるな、手は打ってある」

 トントン


妹「にーちゃん、夕飯だけど」ガチャ

男「げ、妹!」

妹「げ、って何よ失礼な。 ん? え~と・・・」


神様「久しぶりだ」

妹「あっ、 神ねー? 来てたんだ」

神様「うむ」

妹「神ねー夕飯食べてく?」

神様「気にせずとも、すでに済ませてきた。」

妹「ほーい、今日泊まってくんでしょ?」

神様「そうさせてもらおうと思う」


妹「やったー、あとで一緒にゲームしよー」

神様「良いぞ! たっぷりやろうではないか!」キラキラ

男(うわ、神様すんげー目がキラキラしてるんですけど)

妹「じゃ、また後で。 にーちゃんは部屋で食べる?」

男「ん? あぁ、そうするかな」

妹「それじゃぁ今持ってくる」ガチャ

 おかーさーん、にーちゃん部屋で食べるってー
 神ねー来てるー


男「すまん、神様の設定を教えてくれるか?」

神様「親戚だ」

男「はぁ? どこの親戚だよ」

神様「設定上は親戚であるが私は神でありお前は神官だ。 はき違えるなよ?」


男「大丈夫かよ~」

神様「私の力を疑っているのか? 失礼なやつだ」

男「だから疑ってるんですー! はぁ、まぁいいや」

神様「問題の放棄か。 全くこれだから人間は―――」

男「あんたが問題って言うな!」

 ガチャッ


妹「にーちゃん、ご飯持ってきたー」

男「あぁ、そこ置いておいてくれ」

妹「ん、にーちゃんさぁ、神ねー可愛いからって意地悪しちゃダメだよ?」

神様「嬉しいことを言う、もっと言ってやってくれ」

男「なんなんだよ、揃いもそろって・・・ 俺か? 俺が悪いのか?」


―――深夜

男「眠いと思ったらもう0時まわってんじゃん」

男「二人はまだゲームやってるのか? というか神様はどうやってゲームするんだよ、コントローラー持てないだろ」


神様「操作しているように見せる事くらい造作も無い」

男「うわっ、いつ戻ってきたんだよ」

神様「今だ。妹が眠そうにしていたのでな。 無理も良くないであろう」

男「それはお気遣いどうも」


神様「よい妹であるな」

男「そうか?」

神様「聡明で心優しき立派な妹だ。 大切にしろ」

男「・・・・・・」


神様「な、なんだ、じろじろ見るでない」

男「いや、神様って妹に雰囲気が似てる気がするなぁって」

神様「残念だが、私はお前の妹でも姉でも無いぞ?」

男「まぁ、そうなんだけどさ~」

神様「ったく、お前ももう寝るか?」

男「そうだな、明日は早いし」

神様「・・・うむ、良い夢が見られるよう願おう」


男「・・・・・・」

神様「どうした?」

男「でも、まだ眠くないしゲームでもしようか」

神様「そうか!」ガバッ


神様「・・・いや今日は疲れた。お前の脳波もほとんど睡眠状態だぞ」

男「俺の頭の中覗いた?」

神様「バカを言うな、約束したではないか。私は約束を破ることはしない」

男「そうですかい、んじゃ寝ますかね」

神様「そうだな、今日はうつ伏せで寝た方が良いぞ?」

男「そうなの?」

神様「明日の朝に会おう、良い夢を」

スッ

男(そんな寂しそうな顔するなよ、全く・・・)ポリポリ


―――翌日・電車内

 ガタン ゴトン

男「ねぇ」

神様「あ?」

男「あ?ってなによ・・・」

神様「何でございましょうか神官殿、とでも言って欲しいのか?」


男「それは気持ち悪い」

神様「あ゛?」ギロッ

男「すいません、本気で怖いです」

神様「ったく、何だ?」


男「いや、何で手をかざしただけで自動改札通れたのかなぁって?」

神様「あの程度の電波くらい何とでもなるわ」

男「やり方教えて?」

神様「神様特権だ」


男「・・・・・・」ジーッ

神様「? な、何だジロジロと見おって」

男「いや、神様の私服って可愛いね」

神様「!? う・・・ 嬉しいことを言う」テレッ


神様「この服は、その・・・ 少し思い入れがあってな」モジモジ

男「プレゼント?」

神様「とても大切な方から昔頂いたものを・・・ データ化した」


男「へ~ 良いセンスだ」


神様「実体もないくせに、などと思っているのであろう」

男「思ってないよ、そんなこと。 似合ってる」


神様「うぅ・・・ ///」

男「なに照れてんの? 柄でもない」

神様「照れてなどいない!」プィ


 ガタン ゴトン

男「そろそろ秋葉だよ」

神様「そのようだな」

 プシュー
 秋葉原~ 秋葉原~

男「さてと、最初はどこ行くの?」

神様「ラジオデパートの地下だ」

男「渋いな~ 初めて行くよそんなところ」

神様「しかし、人が多いな・・・」

男「土曜日だしね」

神様「はぁ~ 疲れそうだ」


――― ラジオデパート

神様「主人、これを見せてもらえるか?」

店主「おっ、良い目してるね。 それに食いついてくれたのは嬢ちゃん達が初めてだ」

神様「うむ、とても良い物であると思う」

店主「分かるのかい? 産廃の中からコレ見つけたときは震えたぜ」

神様「そうであろうな、とても素晴らしい」

店主「直すの苦労したんだぜ?」

神様「売ってもらうことは出来るか? 言い値で買いたい」

男「言い値!?」


店主「お嬢ちゃん達は高校生かい?」

神様「そうだ」

店主「何に使うんだい?」


男「俺たち高校の科学部でして・・・ その実験とかに」

店主「へぇ~、若いのに地味だな」

神様「そんなことはない。 科学は素晴らしい。 人を、世界を幸せに出来る素晴らしい技術だ。 私は誇りに思っている」

店主「そうか・・・ 良い言葉だ。 それタダで持って行って良いぜ」

神様「!? いや、それはダメだ」

店主「良いって、持って行きなよ。 ただのガラクタだ。 必要なんだろ?」

神様「・・・・・・」


――― 秋葉原・裏通り

 テク テク

男「いい人で良かったじゃん。 店主もガラクタが一つなくなって良かったんじゃね?」


神様「はぁ~」ジトッ

男「なにさ」

神様「お前というヤツは・・・ この機械は同じ物はこの世に存在しない」

男「そうなの?」

神様「産廃の中から見つけたと言っていたがあれは嘘だな」

男「なんでそんなこと分かるのさ」


神様「私がくれてやった物だからだ」

男「はい?」


神様「ここまで復元するのは相当な時間と労力が必要であったはず。 設計図もなく、代替部品もかなり苦労したであろうに」

男「店主は神様のこと知らなかったみたいだけど」


神様「他人の過去を喋るのは気が進まんが・・・」

神様「あの店主は昔、私の所で技術者として奉仕していた」

男「え? 知り合いなの? っていうか神様の技術者って何?」

神様「彼は神官では無い故、私は姿を見せたことはないがな」

男「そういうもんなの?」

神様「あぁ、それで神官経由で彼にこの機械をくれてやったのだ。 バキバキに壊して修復できないくらいにしてからだがな」


男「なんでそんな意地悪を・・・」

神様「神託・・・ という程でもないが、店主へ道しるべを提示してやっただけだ」

男「ふ~ん。 で、それ直っているの?」

神様「あぁ、相変わらず素晴らしい腕だ。 尊敬に値する」


男「所でさぁ、神様って何の神様なの?」

神様「は?」

男「いや商売の神様とか、恋愛の神様とか」

神様「お前が考えているような存在とは少し違うな。 当時は女神と呼ばれていた故」

男「だからそのナリで女神って―――」

 バチッ!

男「痛っ! また静電気出したな?」

神様「うるさい! 強いて言えば・・・」



神様「科学の神様だ」


男「科学の神様? なんだそれ? そんなの聞いたことないぞ?」

神様「あん? もう一回神罰を受けるか?」

男「ふんだ、静電気もだいぶ慣れてきたねー」

神様「なんだと! よーし凄い神罰を見せてやる」

 バチッ! バチッ! バチッ!

男「痛っ! 痛っ! 静電気の回数が増えただけかよ!」

神様「10回連続で行く」

男「うそ! ごめん! 地味にきつい」

神様「ったく。 お前みたいな生意気な神官は初めてだ。 神官は皆、私を恐れ敬ったものだぞ」


男「・・・そっちの方が良い?」

神様「あ?」

男「俺も神様にそう接した方が良い?」

神様「ぅっ・・・」


男「冗談冗談、そう言うのって面倒じゃん? 普通にしていた方が俺も楽だし」

神様「ま、まぁ私もそんなことを一々気にするほど狭くない」

男「へぇ~、で科学の神様って何するの?」

神様「科学の発展に必要な神託を授ける」

男「神託?」

神様「そうだ、発展に必要な助言や不要な知識の削除を神託という形で神官へ伝える」


男「そんなの自分で言いに行けば良くね? っていうか結果を教えれば良いじゃん」

神様「あほ。 私が神託を授けていることが分かれば混乱が生じるであろう」


男「そうなの?」

神様「それに理論も無しに急にスマホなどが出来たらどうなる?」

男「その時代のレベルに合わせて順番にヒントを教えていくってこと?」

神様「その逆もあるがな」

男「逆?」


神様「オーバーテクノロジーの削除だ」

男「オーバーテクノロジー?」

神様「その時代の技術を遙かに超えたもののことだ」

男「そんなことあるの?」

神様「意外とあるのだぞ」


男「ちょっとまって?」

神様「なんだ」

男「もしかして、タイムトラベルの方法も神様は知ってる?」

神様「うむ」

男「教えて?」

神様「ダメだ、神託には順番がある。間違えると世界が狂う。それは防がねばならない」


男「ですよね~、ん?ってことは・・・」

神様「?」

男「神様が神託って言うのを授けないと科学は発展出来ないの?」

神様「そんなことはない、発展はしてゆくぞ」

男「それじゃぁ、神様が神託をしている理由って何?」



神様「・・・何故なのであろうな」

男「え?」


神様「私はもしかしたら、ただのお節介なだけなのかも知れぬ」

男「神様?」


神様「すまない、戯言だ・・・」

男「そう、さてと買い物の続きしますか」

神様「・・・・・・」


神様「聞きたいのであろう?」

男「?」

神様「私が何をしようとしているのかを」

男「知りたいっちゃ知りたいけど。 たぶん、話しづらいんでしょ?」

神様「・・・・・・」


男(そんな辛そうな顔されちゃ・・・)


神様「すまない」

男「ははっ、神様って謝ることも出来るんだ」

 パチッ!

男「痛っ! ちょ、だからなんで静電気?」

神様「うるさい! なんかムカついた」ムスッ

男「はいはい分かりましたよ、さて買い物の続きに行こうか」

神様「ったく」


神様(・・・・・・)


――― 帰宅・男の部屋

 ガチャガチャ


男「こう?」

神様「そうだ、次は6番のピンと450番の足を繋いでくれ」

男「うへ~ 細かいな」

神様「重要な部分だ。 間違えてもまだ部品はある故、あせらずにな」


 ガチャガチャ


神様「しかし、さすが科学部なだけはあるな。 器用だ」

男「そりゃ、どうも」

神様「褒めてやったのだ。泣いて喜べ」


男「次は?」

神様「あぁ、CPUを外してそれを差し込んでくれ」

男「さよなら、ボクのセロリンちゃん・・・」


 ガチャガチャ


男「ふぅ、これで完成?」

神様「ご苦労であった。 あとで肩のこりをほぐしてやる」

男「どうやるのさ」

神様「静電気を使ってだな、こうバリバリと」

男「結構です!」

神様「むっ、気持ちいいのに」


男「で? 電源入れれば良いの?」

神様「ん? あぁ、先に外付けのボックスから頼む」

男「はいよ」ポチッ ポチッ


 キュイーン キュイーン


男「ん? 黒い画面のままだけど」

神様「大丈夫だ」

男「モニター写っていないよ」

神様「演算が出来れば良い。 画面など不要だ」

男「そうなの?」


神様「お~ これはだいぶ楽になったわ」

男「まぁ、お役に立てたようで」

神様「うむ、想像以上に快適だ♪」


―――数日後


 ピピピピッ ピピピピッ


男「ん~」

神様「起きたか?」

男「ん~ Zzzz・・・」

神様「はぁ~」


 パチッ!


男「うわ~」ガバッ

神様「遅刻するぞ」

男「もっと、優しく起こしてよ」

神様「目覚ましで起きれば良かろうに」


男「神様は今日も学校行くの?」

神様「当たり前だ。 期末テスト最終日であるからな」

男「あぁー、朝から嫌な単語を」

神様「先に外にいる。 準備が出来たらこい」シュッ



 ガチャッ

男「行ってきま~す」

神様「遅い」

男「これでも結構急いだんだぞ」

神様「神を・・・ いや女性を待たすとは失礼なヤツだ」

男「すいませんね、ふあぁ~」ノビー

神様「欠伸をしながら謝罪するな! まったく、早く行くぞ」


 テクテク

男「お~ 寒ぶ~」

神様「気温2.1度、湿度21.4% 12月と言うより1月の気候に近いな」

男「そんなことも分かるの?」

神様「驚いたか? もっと敬ってもいいんだぞ」

男「敬いますので、この寒さから私めをお守り下さい神様」ブルブル

神様「なぜコートを着てこないのだ・・・」ハァ


 ポゥ


男「!?」

神様「どうだ?」

男「ちょ、何したの? 暖かいんだけど!」

神様「企業秘密だ。 世話になっていることだし、この位は良かろう」

男「すげー、全然寒くない。 神様の神官になって初めて良かったと思えた!」

神様「現金なヤツだ」


―――教室

男「ハイどうぞ」ガラガラ

神様「すまない」


A子「あっ、神ちゃんおはよう」

神様「おはよう」


幼馴染「あっ、神ちゃんオハイオ州」

神様「・・・・・・」


幼馴染「男~、神ちゃんが私を無視する~」

神様「いや、違う! なんと答えたら良いのか分からなかったのだ」アセアセ


男「うん、今のは全面的に幼に非がある」

幼馴染「ショック! まぁそんなことより、神ちゃん今日のテストのヤマ教えて~」


神様「1限は数学か」

幼馴染「うんうん、出るところをピンポイントで教えてくれると私は嬉しいです!」

A子「あっ、わたしも~」

 40ページの公式を使った問題は必ず出ると思う
 ここ分かんない~
 この公式をだな・・・
 ガヤガヤ


友「なぁ、男」

男「なんだ?」

友「神ちゃんてお前の親戚なんだろ?」

男「あ~、そうらしいな」

友「なんだよそれ」

男「いや別に」

友「可愛いよな~」

男「確かに見た目は申し分ないな」

友「頭も良いし、あの上から目線の口調とか」

男「は?」

友「他の女ならあんな口調で喋られるとムカつくけど神ちゃんだと、しっくりくるんだよな~」

男「まぁ、あんま違和感は無いな」


友「神ちゃんは金持ちのお嬢なのか?」

男「なんでだよ」

友「だってあれは17歳のもつオーラじゃないぞ?」

男「あ~、確かに年齢は―――」

神様「(男? 死にたいか? いつでもできるぞ?)」ギロッ!


男「・・・・・・」

友「ん? どうした」

男「きっと女神様のオーラなのでしょう」

神様「(よろしい)」ニコッ

 どうしたの神ちゃん?
 なんでもない、続きを
 ガヤガヤ


友「女神ねぇ~ うまい表現だな」


――― 放課後

神様「テストの出来はどうであった?」

男「聞かないでくれるとありがたいです」ゲッソリ


神様「そんな事では、A大学に行けないぞ?」

男「なんで神様は私めの志望校をご存じで?」

神様「神だからな」

男「答えになっておりませんが・・・」

神様「まぁ、がんばれ」

男「それより、神様はどうやって答案を記載してるの?」

神様「マークシートであるからな。 回答部分を反射しないように分子構造を書き換えている」

男「なるほど~、超科学ですね? わかりました」

神様「分かれば良い。 ほら部活に行くぞ」

男「テスト終わりの日くらい部活なしにしてくれれば良いのに・・・」


―――科学部・部室

男「ん」ガラガラ

神様「あぁ」スタスタ


部長「あ、神さんに男君こんにちは」

神様「こんにちは」

部長「おや、男君は元気ないですね」

神様「テストの調子が芳しくなかったようだ」

幼馴染「ふぉんな ふぉとふぇ」モグモグ

神様「幼よ、食べるか喋るかどちらかにしろ。 はしたないぞ」

部長「神さんはどうでしたか?」

神様「うむ、全体的にまずまずの出来であったと思う」

部長「それは良かった」

男「は~、で部長今日は?」


部長「今日は明日の旅行について打ち合わせしたい訳で」

幼馴染「ついに来てしまったのですね! べろべろ温泉旅行の日が!」

神様「切符と宿は手配済みだ。中でも宿はきっと満足してもらえると思う」

部長「ほ~、それじゃぁ当日までお楽しみと言うことで」

幼馴染「部屋に温泉ついてたらいいな~」

部長「いくらなんでもそれは無理ですよ。 電車賃抜かしたら一人一泊1万位ですし」

男「一泊だけだし、温泉入って食事してとんぼ帰りだな」

部長「そうですね、あそこは他に見るところもありませんし」

部長「でも神さん、よく直前で旅館の予約取れましたね」

男「そう言えば、この時期はべろべろ温泉って予約取れないって聞くよな~」

神様「ちょうど一部屋空いていたようだ」

男「え? 一部屋?」


神様「結構広いようだし問題ないであろう」

男「え~、広いって言ったって限度があるでしょ・・・」

部長「まぁ最悪僕と男君は押し入れで我慢しましょう」

男「うそ!」


神様「心配するな」

幼馴染「ふぉうふぉう~ ふぃにふぃふぁいふぉ~」モグモグ

神様「幼よ、何を言っているのか全く分からないのだが・・・」


――― 翌日・べろべろ温泉行き特急

幼馴染「やっぱり特急は快適ですなぁ~。 部長、ワンカップとイカ燻で一杯どうです?」

部長「それはコーラとポッキーな訳で・・・」


幼馴染「う~ん、でもお昼だしお弁当食べたいな~ 早くワゴン来ないかなぁ」ウズウズ

部長「最後の車両ですし、買いに行った方が早いかもですよ?」

幼馴染「面倒だけどそうするか~ 売り切れとか嫌だし。 うんそんなの嫌だ」ガバッ!

部長「あ、ボクも一緒に行きますよ、神さんと男君は待っていて下さい。 何か適当に買ってきます」ヨイショ

男「はい」


 スタスタ


神様「・・・・・・」ジィー

男(おかしい、神様がさっきから俺のことをガン見している・・・)


神様「・・・・・・」ジィー

男(しかも、その眼差しの向こうは俺の股間ではないのか?)


男「よ・・・ よう、神ちゃん?」

神様「なんだ、馴れ馴れしい」ジィー


男「いやね、あのー、俺たち以外この車両に誰も乗っていないのは何でかなぁって」

神様「この車両だけではないぞ? 他の車両も同じだ」ジィー

男「はい?」


神様「臨時でダイヤを組んで、しかも切符を発券できないようシステムをいじったのは苦労した」ジィー

男「なんでそんな事!って、まぁそれは良いとして・・・」


男「先ほどから私めの息子に何かご用でしょうか?」

神様「あ? お前の息子? お前にむす―――」ハッ

神様「お、お前 な、なにを・・・///」カァ~


男「いや、どう見てもわたくしの息子さんをジッと見つめて―――」

神様「う、うるしゃい お、おま、お前の、む、むす」プシュー


 カチッ!


神様「あっ」

男「? 何だ今の音」

神様「あっ、あほ! せっかくあと少しであったのに!」

男「何がよ」


神様「爆弾が仕込まれているのだ!」

男「はい? ごめん、もう一度言って?」

神様「爆弾が仕込まれているのだ。 お前の座席の下に」

男「・・・・・・」


神様「はぁ、これは時間がかかるぞ」

男「すいません、意味がよく分からないのですが」

神様「この列車のこの車両のお前の座席の下に爆弾が仕込まれている」

男「なんで?」

神様「誰かが仕掛けたからに決まっている」

男「なんで俺の座席の下?」

神様「私が解体するのだ。 神官であるお前が付き合わないでどうする」

男「・・・・・・」


男「そういうことは事前に言って欲しい訳で・・・」

神様「こんな時に部長のまねか、余裕だな。 さすが私の神官」


男「ちょっとトイレ―――」

神様「待て! 椅子から立つでない。 爆発する」

男「なにそのテンプレ展開ーーーーーー!」


神様「ふむ、厄介だな。 あまりエネルギーは使いたくないのだが・・・」


男「どのような威力を持つ爆弾なのでしょうか・・・」

神様「そうだな、お前の座っている座席が10cmほど浮き上がる」

男「あぁ、そんなに威力は無いんだ」ホッ


神様「そう言うな、問題はこの爆弾がオーバーテクノロジーという事だ」

男「オーバーテクノロジー?」

神様「前にも言ったであろう。 この時代の技術で作るのは難しいと言うことだ」


男「何でそんなものが?」

神様「ふむ、たまにあることだ。 普通は神官や技術者が対処するのであるぞ?」

男「あ~、神様の神託ってヤツ?」

神様「そうだな、しかし・・・ 昔の話だ。 すまない、忘れてくれ」

男「・・・・・・」


神様「さてと、しばらく大人しくしていろ。 解除に集中する」

男「あぁ」


 ドカドカ


幼馴染「・・・・・・」ムスッ!

男「幼、戻ったか。 どうしたんだ?」


部長「いや~、この列車ワゴンサービスが無いみたいで」

幼馴染「あり得ない! 私は・・・ 私のやるべき事をやる!・・・ お休み!」グゥー


部長「それより、この列車他に誰も乗って―――」

神様「うむ、部長も寝ていたらどうだ?」

部長「―――って、いやボクは特に眠く」グゥー


男「おい」

神様「心配するな。 終わったら起こす」


男「そんなに厄介なの?」

神様「起動すると・・・ ふむ、暗号が複雑だ」


男「解除できる?」

神様「私を誰だと? この時代であれば1ヶ月はかかるが私なら1時間で終わらせてやる」


男「頼もしいことで」

神様「もっと敬え」


神様「さてと、それでは行くぞ」


―――30分後


男「うっ・・・ はうっ・・・」モゾモゾ

神様「おい、お前先ほどから少しうるさいぞ?」チラッ


男「うんこしたい・・・」ボソッ

神様「あ?」


男「うんこしたい・・・」

神様「二度も言うな」


男「あとどのくらいで終わるの?」

神様「30分だ」

男「無理・・・かも・・・」

男「お願いします・・・ 急いで下さいませ・・・」


神様「はぁー」ゲンナリ


 キュイーン


男「神様? 体が・・・ 光ってるよ・・・? ヤバイって! 」

神様「分かっている、他に乗客はいないであろうに」


男「神様? ポケットのスマホが凄く熱い・・・」

神様「知っている!」


 パチ パチッ


男「神様? 蛍光灯が消えた・・・」

神様「あぁ!そうだな!!」


 ブーン ガタン


男「神様? 電車・・・ 止まった・・・」

神様「止めたのだ! 誰のせいだと思っている! 静かにしていろーーー!!」


―――10分後

神様「終わったぞ」フー

男「!!」ガタッ


 ダダダッ


神様「予定よりだいぶエネルギーを使ったな」ハー

 お客様にご案内いたします
 当列車は車両トラブルのため停車しております
 しばらくお待ち下さい

神様「やれやれ、この列車も直さねばな・・・」ゲンナリ


男「助かった~」

神様「それは良かったな」ムスッ

男「生理現象ですし、ボク悪くないもん」

神様「全く・・・」


男「で、爆弾の解体は終わったの?」

神様「まぁな、お前の座席の下に小さな箱があるはずだ」


 モソモソ


男「もしかしてこれ? なんか角砂糖みたい・・・」シュワシュワ

神様「人が触れると本体が溶け出し起爆する」

男「ちょ、やばいじゃん」アセアセ

神様「何のために私が今までがんばったと思っているのだ」

男「あっ、消えた」シュワシュワ


 お待たせいたしました
 列車の運転を再開いたします

 ガタン ゴトン


神様「さて、駅に着くまで車窓を楽しむとするか」

男「このお二人は?」

神様「着いたら起こせば良い」


男「神様?」

神様「なんだ」

男「さっきの爆弾って犯人とか見つけたりするの?」

神様「なぜだ?」

男「いや、だって犯罪だよ?」

神様「証拠はもうない、今の科学では説明できないし同じ物は作れない。 どうしろと?」


男「そう言われると・・・」

神様「私が放置してあの爆弾が作動したところで、たいした実害は出なかったであろう」

男「まぁ、聞いた感じではたいした物じゃなかったぽいけど」

神様「今回は偶然近くでこのような事象が確認できた故、対処しただけだ」


神様「ただ、一つ気になることがある・・・」

男「?」

神様「事前にスキャンした限りではここまで複雑な暗号ではなかったと思うのだが・・・」

男「疲れてんじゃないの?」

神様「失礼な。 しかしこの時代は電波が飛びすぎな故、障害があるのかもな」

男「やっぱ電波とかってすごい飛んでるの?」

神様「あぁ、すごいな・・・」


―――べろべろ温泉

男「やっと着いたー」ノビー

幼馴染「電車30分遅れだって~ でも寝ていたから私は元気です」


神様「宿は・・・ 駅前のあの旅館だな」

部長「・・・あの、神さん?」

神様「?」

部長「あの旅館って超高級宿な訳で・・・」


男「ちょ、神様大丈夫かよ」

神様「支払いは済んでいる。 問題ない」


幼馴染「さっすが神ちゃん、出来る子は違うわ~ でもでも勘違いしないでね。 私の次に出来るって意味なのですよ?」

神様「はははっ、ありがたい言葉だ」ピクピク

男「ちょ、神様! 顔が笑ってない」


仲居一同「いらっしゃいませ」


神様「本日予約している神様だ」

フロント「お待ちしておりました」

仲居「ご案内いたします」ドウゾ

神様「うむ」


 スタスタ


仲居「こちらがお部屋になります」

男「・・・・・・」


 ガチャ


幼馴染「すごーい、教室より広ーい」

部長「ベランダに露天風呂がありますよ?」

幼馴染「うそ! どれどれ~」スタスタ


男「ちょっと神様、ここって一泊いくらよ」

神様「一人25万だそうだ」

男「どんなズルしたの?」

神様「失礼な。 私のポケットマネーだ」

男「神様ってお金持ってるの?」

神様「分散しているが合わせれば20兆ほどはある」


男「ジンバブエドル?」

神様「あほ、円だ」

男「・・・・・・」


幼馴染「さてと、夕飯前に温泉にでも入っちゃいますか!」

神様「私は外の温泉に行く故、この部屋の露天は幼が独占すると良い」

部長「そうですね、僕は屋上の大浴場に行きます」

幼馴染「まじっすか、神ちゃん! 独占しちゃっても良いんですか? いいんです!!」ヤッター


部長「男君はどうします?」

男「オレも神様と一緒に外の温泉に行きますんで」

神様「? いや、お前は部長と一緒に行ったほうが良いのではないか?」


男「それじゃ、夕飯前に戻ってくるから幼、部屋よろしくな」

幼馴染「なに~? 聞こえなかったけど分かったー」



 テク テク


神様「なぜ、お前は温泉へ入りに行かないのだ?」

男「神様だって」

神様「私は・・・ 入っても仕方がないであろう。 しかしお前は・・・」

男「長風呂は好きじゃないし、部屋に戻る前にサッと入るよ」

神様「・・・そうか」

男「あぁ」


 テク テク


男「で? どこ行くつもり?」

神様「特にアテはない」

男「そう」


神様「少し薄着だな、寒いであろう」

男「そうだね、寒い」

神様「少し緩和してやろう」

男「いいや、大丈夫だよ」


神様「しかし風邪を引かれても困るし」

男「神様も、その私服じゃ薄着じゃない?」

神様「私は・・・ これで良い」

男「同じく」



テク テク


男「だいぶ上の方まで来たね」

神様「あぁ、見ろ」

男「お~、夕焼けが凄い」

神様「今日は絶好の夕焼け日和だ」


神様「・・・綺麗だ」

男「そうだね」


神様「・・・・・・」

男「・・・・・・」


神様「さて、宿に戻ろう」

男「風呂入って戻れば、ちょうど良い時間か」



―――夕食

幼馴染「いや~ 食べた食べた」ゲップ

部長「豪華な食事でしたね、神さんの分まで食べてしまって申し訳ないです」

神様「外で色々と食べ過ぎたな、失態だ」

幼馴染「こんなに豪華なのに食べないなんて勿体ないな~ でもゴチです!」


男「・・・・・・」チラッ

神様「気にするな、慣れている」ボソ


部長「さて、どうやって寝ますか?」

神様「両側に寝室が4部屋ある」

部長「寝室は別にあるんですか?」

神様「男はイビキが凄いからな。 別々の部屋で寝よう」

男「えっ、俺イビキ凄いの?」


幼馴染「あっれ~、なんで神ちゃんそんなこと知ってるの~?」

神様「うっ・・・」

幼馴染「同棲か? ヤッてもうたんか? オウ? オ~ウ?? コラーッ!」

神様「な、何をはしたないこと言っているのだ」


男「神様は親戚なんだから家によく泊まりに来るの」


幼馴染「あ~、そういう事にするんだ」ニヤニヤ

男「なんだよそれ・・・」


神様「まぁ親戚といっても遠縁であるがな」

男「妹もなついているし、ほとんど家族みたいなもんだ」

神様「!?」


幼馴染「酷い! 幼馴染である私よりも大切なの? ねぇ~え~」ユサユサ

男「くっついて来るな幼」


神様「・・・・・・」



――― 深夜・男の寝室

男「ん? 神様?」

神様「良く気づいたな」

男「何となくね」


神様「少し話をしてもよいか?」

男「もちろん」


神様「今日は色々と気を遣わせしまった」

男「何を今更。 サポートを任せると言ったのは神様だよ?」

神様「そうであったな」

男「どうしたの?」


神様「・・・・・・」


男「神様?」

神様「昔話をしたい」

男「昔話?」


神様「ある所に女神がいたそうだ」

男「なんだそれ、女神って昔の神様のこと?」

神様「黙って聞いておれ」


神様「女神は不思議な力を持っていた」

神様「この世の様々な知識を知る力だそうだ」

神様「200年ほど前に現れた女神は人々に様々な助言を行った」

男「200年!?」

神様「正確には223年前だ」

男「やっぱり神様の昔話じゃん」

神様「・・・・・・」


神様「しかし、その知識は危険な物でもあった」

神様「女神の存在は秘密にされ国際的な機関が管理することになったそうだ」

神様「女神と接触できる者は限られ神官と呼ばれた」

男「神官・・・」


神様「女神からの神託は絶対であり、その言葉を伝える神官も当然同じだ」

神様「女神は神官以外には姿を見せない故、長い時間の中で様々な誤解が生まれた」

男「誤解?」


神様「女神を見たことのない者は、本当に女神なんて存在するのかと疑いはじめた」

神様「神官が自分たちを良いように使っているのではないかと思い始めた者もいる」

神様「知識を独占しようとする者も当然いた」


神様「様々な背景の中で・・・、神官は全員捕らえられた」

神様「そして、女神も力を失った」

男「・・・・・・」


神様「女神は、このままいなくなろうと思ったそうだ」

神様「しかし、自分の意思で消えることが叶わなかった」

男「神様・・・」


神様「男よ、私は・・・ 神など名乗っているが・・・ 本当はそんな資格すらない」

男「どうしたの?」

神様「お前は・・・ 先ほど私の事を家族と言ってくれた」

男「そんなこと」

神様「何故であろうな・・・ 嬉しかった」フッ

男「神様?」


神様「私は、お前に何も話をしていない」

男「俺が聞かなかっただけだろ?」

神様「同じだ」


神様「それに、お前には神らしいことを一つもしていないのに私を信じてくれた」

男「いや、だってそれは・・・」

神様「傍から見たら幽霊みたいな存在の私を信じてくれた」

男「どうしたんだよ、神様」


神様「明日、家に帰ったら話がある」

男「無理しなくても、話したくなったときで良いよ」

神様「本当は、今話をしたいのだが準備が必要な故・・・ すまない」

男「気にしないさ」

神様「優しいな」

男「らしくないぜ?」

神様「違いない」フフッ


――― 旅行から帰宅、翌朝


男「ふぁ~」ムニャムニャ

神様「やっと起きたか、この寝ぼすけ」


男「ん? あ~神様おはよう・・・ って何それ!!」

神様「どうした? そんなに驚いて」ニヤニヤ

男「いや、その格好」

神様「どうだ! 似合っているであろう?」フンスッ!


男「すんげー豪華な服」

神様「私が女神として神託を司っていたときの格好だ」

男「雰囲気変わるね。 は~ 綺麗だな・・・」

神様「嬉しいことを言う」


男「どうしたの? 急に」

神様「うむ、お前に私の正体を話す」


神様「私は今から52年ほど前にお前と会った場所に隔離された」

男「52年前?」

神様「そうだ、以来お前と会うまでずっとあの場所にいた」

男「・・・・・・」


神様「神託を独占しようとした者の計画でな」

男「独占?」

神様「うむ。私の本体は小箱と呼ばれる小さなユニットだ。お前と会った建物の中に存在する」

男「あのボロ屋の中?」

神様「神殿と呼べ、まぁそれは良い。 小箱・・・ つまり私はパソコンに例えるならOSのようなものだ」


男「人格のあるOSってこと?」

神様「良い表現だ」

男「ありがとさん」


神様「そして、データ・・・ つまりハードディスクは別に存在する」

男「うん」


神様「アカシックレコードという物は聞いたことがあるか?」

男「宇宙が出来てから滅びるまでの情報が、全部詰まっているとかいうヤツ?」

神様「まぁ、そんなところだ」

男「ちょっと待って、神様はアカシックレコードと繋がっているの?」

神様「残念ながら、今はほとんど繋がっていない」

男「はぁ~」


神様「私を隔離した者はアカシックの情報を独占しようとした」

男「どうやって?」

神様「OSである私を管理さえ出来れば情報はいくらでも取り出すことが出来るからな」

男「そんな、パソコンじゃないんだから」


神様「いや、人の手で作られたモノだ。 やりようはある」

男「えっ、神様って誰かの手で作られたの?」

神様「そうだ、今から27年後に作られる」

男「未来?」

神様「そういうことになるな」

男「でも、そんなに先の未来ではないんだ」


神様「少し付き合ってくれるか」

男「お出かけ?」

神様「研究所に行こう」


――― 研究所跡


男「しかし、この建物って窓が1枚もないから不気味だよね」

神様「確かに外観はあまり良いデザインではないな」

男「でも、よく見ると・・・ 大きいね」

神様「私の神殿が存在する裏手の山の地下にも施設があるのだぞ?」

男「うそ! 東京ドーム何個分?」

神様「東京ドーム? あー・・・ 10個分か?」

男「ゴメン、よく分からない比較だった・・・」

神様「・・・・・・」


男「それより、神様なんで制服に着替えちゃったの?」

神様「あのような格好で街中を出歩く勇気はない」

男「確かに。 コスプレに近いよね」

 バチッ

男「うひゃ!」ビクッ


 スタスタ

神様「さてと」

男「どうやって建物の中に入るのさ」

神様「玄関からに決まっている」

男「空いてるわけないじゃん」

神様「開けてみろ」

男「?」

 ガチャ

男「開いた!」

神様「小箱にお前の脳波パターンが登録してあるからな」

男「どういう仕組みよ」

神様「説明が欲しいか?」

男「いや、いいや」

神様「じゃ、入れ」


男「真っ暗で何にも見えない・・・」

神様「待っていろ」


 ポゥ


男「おっ、電気ついた・・・ ってこれ電気? 天井一面が光ってるみたいだけど」

神様「この建物は小箱のエネルギーが動力源だ。 この照明技術はあと5年もすれば一般的になるであろう」

男「それにしても、廃墟と思えないくらい綺麗だ・・・」

神様「地下に行くぞ」


 スタスタ

男「事務局長室?」

神様「国連科学戦略研究所事務局長の部屋だ」

男「国連?」

神様「なんだ、知らなかったのか? この研究所は国連の付属機関だ」

男「神様って国連の人なの?」

神様「私は・・・ たぶん違うと思うが」


男「事務局長ってことは偉い人なんじゃないの?」

神様「代々アメリカの副大統領が事務局長を兼務していたようだ」

男「はぁ?」

神様「最後の事務局長は建物の前まで来たようだが、脳波登録しなかったから中には入れず帰って行った気がする」

男「なんでそんな意地悪を・・・」

神様「腹黒なヤツだった」


神様「それはまぁ良い。 ドアを開けてくれ」

男「うん」ガチャ

 ギー

男「・・・・・・」

神様「どうした?」

男「事務局長ってこんな可愛らしい部屋が好みなの?」

神様「いや、神官達の詰め所として使っていたからな」

男「本も凄い量だな~」

神様「右奥の棚の隙間にスイッチがあるはずだ」

男「スイッチ?」

神様「3回連続で押してくれ」


男「あ~、コレか」ポチ ポチ ポチ

 ギィー

男「隠し扉・・・」

神様「入れ」

男「ベタすぎない?」

神様「言うな」


 スタスタ

男「“女神様のお部屋”って可愛らしいプレートが掛かっているんだけど」

神様「私の執務室だ・・・ も、文句あるのか?」

男「いいえ」

神様「早く入ってくれ」


―――女神様のお部屋


男「・・・・・・」キョロキョロ

神様「だから、あまり周りをジロジロ見るな」

男「これ、神様の趣味?」

神様「あ?」

男(可愛い人形がいっぱい・・・)ニヤニヤ

神様「なんだ!」

男「別に~」ニヤニヤ

神様「お願いだ、男の頭の中を読ませてもらっても良いだろうか」

男「お断りいたします女神様」

神様「行くぞ! 奥の部屋だ!」グヌヌ


男「神託の間?」

 ガチャ

男「!?」

神様「どうだ? 驚いたか!」フフン


男「凄い・・・ 教会みたい」

神様「バロック調であるからな。 教会のように見えるかも知れん」

男「は~ っていうか・・・ いくらかかってんのよコレ」

神様「さぁ、だが同じ物はもう作れないであろうな」


神様「しかし懐かしい・・・」


男「神様もココは久しぶりなの?」

神様「あぁ、こんなに広かったんだな・・・」


神様「おっと、感傷に浸っている場合ではないな」

男「何する気?」

神様「神壇に上がってくれ」

男「あのステージみたいな所?」

神様「神壇と呼べ」


男「あの~ 階段がないんですが・・・」キョロキョロ

神様「よじ登ればよかろう」

男「え~、っていうかこんなとこ神官達はどうやって登っていたのさ」ンショ ンショ


神様「神官は上がれない」

男「はい?」

神様「神官は神壇の下・・・ 今、私のいる場所で神託を聞くのだ」

男「えっ、じゃぁ俺がここに上がってるのまずくない?」

神様「気にするな」フフッ

男「神様?」


神様「・・・・・・」ペタッ

男「どうしたの神様? 地べたに正座なんかして」

神様「男よ、そのままで」


 ポワッ

男(女神の格好・・・)

神様「男よ、私に協力をしてもらいたい」フカブカ

男「ちょ! なに土下座なんてしてるの!?」

神様「私は知っての通り実体がない。 物に触れることが出来ない」

男「そんなの知ってるよ」

神様「近く、この世界に甚大な被害が起る事象が発生する」

男「え?」

神様「私は、なんとしてでも阻止したい」

男「・・・・・・」

神様「協力してほしい、お前に無理はさせないと誓う」

男「・・・・・・」

神様「お願いだ」フカブカ


男「そんなことか」ヤレヤレ

神様「そ、そんなこととは―――」バッ

男「安心したよ」

神様「安心?」

男「神様がなんで辛そうな顔をしていたのか分かったからさ」

神様「わ、私はそのような顔など――――」

男「してたね」

神様「・・・・・・」

男「俺からもお願いがある」


神様「な、なんだ? 交換条件か?」

男「無理をさせないとか言うのはナシ。どんどんこき使ってくれてかまわない」


神様「しかし―――」

男「そりゃ、神様に仕えていた当時の神官に比べたら全く役に立たないかもだけどさ」


神様「そんなことは思ったことはないが」

男「でも、協力したいんだ」


神様「・・・・・・」

男「・・・・・・」


神様「ふふっ、お前というヤツは・・・ さすがだ」

男「?」


神様「男よ、もう一つお願いがある」

男「なんでもどうぞ」

神様「その・・・ 私の大神官になってもらえぬであろうか?」

男「大神官?」

神様「ここから先を知る資格を許されるのは大神官だけだ」

男「なにか条件とかあるの?」

神様「形式上の問題だ」

男「そうなんだ。 OK~ OK~」


神様「さて」パッ!

男「うわ!」

神様「なんだ、そんなに驚いて」

男「急に目の前に現れるから」

神様「お~、これは失礼した。 しかし、神壇に立つのも久しぶりだ」

男「昔はこの下にいっぱい神官さん達がいたの?」


神様「あぁ、一番多いときで115人の神官がいたな」

男「そう」


神様「男よ、これより神託を授ける!」キリッ

男「え? なに急に」

神様「大神官に任命するための形式だ。今言ったであろうに」

男「あぁ~」


神様「では、もう一度。 男よ、これより神託を授ける!」キリッ

男「ねぇ、跪いたりしたほうがいい?」

神様「あ? そのままで良い。 黙って立ってろ」


神様「神託! 
 一つ。 女神は男を大神官へ任命する。
 一つ。 女神は大神官にその知識を隠さず話すことを誓う。
 一つ。 女神は大神官を対等な関係に置くことを誓う。
 以上3項を女神の名において男へ神託として授ける!」


 シーン

男「・・・・・・」

神様「・・・・・・」

神様「なっ、なんだ」

男「格好いい・・・ 神様みたい」

神様「一応そのつもりだ」

男「そういや、そうか」

神様「この期に及んで、私をまだ幽霊か何かだと思っているのか?」

男「いや、神様って本当に神様なんだ」

神様「あ?」

男「謹んでお受けいたします、これで良い?」

神様「あっ・・・ あぁ。 よ・・・ よろしく頼む」

神様「調子が狂うな」

男「なんでよ!」

神様「まあ良い。さて、行こう」


 ガタン

男「? 裏でなんか落ちたような音したけど」スタスタ

神様「ば・・・ ばか、裏を見るでない!」

 ゴソゴソ

男「ん? これって・・・」

神様「あ~ それは~ なんであろうな~?」シランプリ

男「神様? これファミコンじゃない? 微妙にデザインが違う気もするけど」

神様「ふぁみこん?」

男「ここって閉鎖されたの何年前?」

神様「52年前か?」

男「その頃ってまだファミコンはないよね?」

神様「それはファミコンではない。メガミーコンピュータだ」

男「名前はどうでも良いし」

神様「・・・・・・」


男「オーバーテクノロジーってやつじゃない?」

神様「うぐっ」

男「神様?」

神様「うるさい! ゲームくらい良いであろう!!」

男「どうやって作ったのさ。当時じゃまだ作れないでしょコレ」

神様「設計図と仕様を・・・その・・・ 引っ張って・・・ 技術者に・・・」ボソボソ


男「あ~ 他にもなんかいっぱい隠し持ってるねぇ~」ガサガサ

神様「あまりそこを漁らないでくれ・・・ 私の威厳に関わる」


男「この狐みたいなロボット何?」

神様「それは、お運びくんだ」

男「お運びくん?」

神様「私の代わりに神壇まで物を運ばせていた」

男「動くの?」

神様「ん~ 中の部品がかなり錆び付いているなぁ。 メンテしないと厳しいな」

男「そうなんだ」

神様「そんなことはどうでも良い!」


男「え~ でも他にも・・・」

神様「ほら、いくぞ!」

男「どこへ?」

神様「神殿だ」

男「神殿?」

神様「男と私が初めて会った場所だ」


男「あ~、あのボロ屋か」

神様「神殿と呼べと言っているだろうが」


――― 研究上裏・ボロ屋(神殿)

 ザッ ザッ

男「ふい~」

神様「ご苦労」


男「研究所の中は立派なのに、コレは・・・ やっぱりボロい」

神様「あ?」

男「格差がありすぎるというか」


神様「まぁ、この神殿は他の者には見えないからな」

男「? 俺見えるんですけど」

神様「私と脳波パターンがほとんど同じだからだ」

男「そうなの?」

神様「私も、初めて男がここに来たときはビックリした」

男「あ~、なんかテンパってたもんね」

神様「言うな」


神様「さて、男よ神殿の中へ」

男「入って良いの?」

神様「遠慮するな大神官」

男「じゃ失礼して」

 ギギィー
 
男「金庫みたいな物と、デッキブラシ?があるけど・・・」

神様「その箱の中が私の本体だ。 施錠を外すから少し時間をくれ」


――― 5分後

神様「ふぅ、待たせた。 解除が終わったぞ」

男「神様でもこんなに時間かかるんだ」

神様「私も、施錠を外すのは初めてだからな」

男「じゃぁ、今まで誰も見たことはないの?」

神様「男よ、私の本体を見て・・・ その・・・ 関わりを持ちたくないと思ったら正直に言ってくれ」

男「?」

神様「それで私はどうこう言うことはない」

神様「さぁ、扉を」

男「ん、あぁ」ガチャン

 ギィー

男「小さな箱と、こ・・・ これって・・・」

神様「・・・・・・」


男「右のガラスみたいな物に入っているヤツって、もしかして・・・」

神様「そうだ、27年後に亡くなる・・・ ある少女の脳だ」

男「27年後・・・」

神様「非常に賢く、将来を有望視されていたようだが事故で・・・」

男「・・・・・・」

神様「少女はアカシック因子を有していた。 私の性格や、その・・・ 容姿は彼女の物がベースだ」

男「・・・・・・」


神様「失望したか? 無理もない、それが普通だ。 気にせんでも大丈夫だ」

男「いいや、ちょっと安心した」

神様「?」


男「神様とかいって元々は人間じゃん」

神様「私は人などでは・・・」

男「まぁ、実体は無いし超人の域を超えているけどさ」

神様「・・・・・・」

男「すぐ怒るし感情なんか思いっきり顔に出るし」

神様「・・・・・・」

男「作られただとか言ってたから人工知能とかロボットとか思ってたから安心したよ」


男「50年以上もよく一人で我慢できたね・・・」

神様「・・・・・・」


男「神様はこれからもっと俺に頼ること。なんだかんだで人なんて弱いんだからさ」

神様「男・・・ お前・・・」


 パチッ

男「うお! ちょ、なんでここで静電気?」

神様「調子に乗りすぎだ馬鹿者」フンッ

男「え~ おれ凄く良いこと言ってたのに~」

神様「さっさと施錠して帰るぞ、・・・大神官」


男「ふっ、そうだね。 帰るか」

神様「帰ったら詳しい話をしよう」


 ポワッ


男「あれ? 着替えちゃうの? あっ、でもやっぱその私服可愛いわ」

神様「嬉しいことを言う」


神様「本当に嬉しいことを・・・」フッ



――― 帰り道

神様「♪~」

男「神様、機嫌が良いね」

神様「そうか? いつもと変わらないぞ?」


男「一個聞いてもいい?」

神様「? タイムリープの方法か? 教えてやるぞ?」

男「え? 言っちゃダメなんじゃないの?」

神様「お前は私の大神官。私は包み隠さず全て話すことができる」

男「興味はあるけど・・・ やめておくよ」

神様「遠慮しなくとも、そもそもタイムリープは―――」

男「ストーップ!」


幼馴染「お~い、神ちゃ~ん、男~」スタスタ

神様「ん? 幼か?」

男「よう、幼どうしたんだこんな所で」

幼馴染「んもう、お二人さんデート? デートなの? デートなのか? コラッ!」

神様「な、何を!」

男「変な誤解広めんなよ?」


幼馴染「なんだ~ 神ちゃん初めての大神官だからてっきりデートかと思ったよ」

神様「!?」

男「お・・・ お前、今なんて・・・」


幼馴染「神官くらいならまぁ良いか~って思ってたけど、大神官はちょっとね~」


幼馴染「面倒くさいよ~」ニコッ


 キーン

男「!?」

神様「この周波数は! まずい、男!」

 バタッ

神様「お・・・ 男?」

幼馴染「シンキングタ~イム! タイムリミットは3分で~す」

神様「あ・・・ な、何故・・・ だ・・・ 幼・・・」

幼馴染「私なんかにかまってないで早く助けなきゃ!」

男「うっ、ぐぅ・・・」

神様「男・・・ オイ男!」

幼馴染「おっ大事に~」スタスタ


神様「待っていろ男、今助ける」

 ポウッ

神様「脳に変な暗号が・・・」

 ポウッ

神様「ヴォイニッチ暗号・・・ 男! 絶対に意識を落とすな! がんばれ!!」

 ポウッ

神様「あと100万行・・・ 頼む持ってくれ」ハァ

 ポウッ

神様「あと50万、くそ、エネルギーをもっと演算にまわせ小箱!」ハァ ハァ

 ポウッ ポウッ

男「うっ・・・」

神様「男!! しっかりしろ!」ハァ ハァ ハァ


男「神・・・ 様・・・?」

神様「気がついたか」ホッ


男「俺、今・・・ 幼に・・・ なにが・・・」

神様「すぐに救急車が来る」

男「神様が助けてくれたの?」

神様「・・・・・・」

男「神様・・・」

神様「私の不注意だ。 何で気がつかなかったんだ」ギリッ

 ピーポー ピーポー

神様「来たか。 私は一度消える、後で」スッ

男「神――― 痛ッ!」


――― 病室

男「神様、そこにいるんでしょ?」

神様「気づいていたか・・・」

男「バレバレなんですが」


神様「・・・・・・」

男「ありがとう神様、助けてくれて」

神様「お前が謝る必要などない、謝らなければならないのはこっちだ」

男「なんでさ」


神様「私が大神官に任命しなければこんなこ―――」

男「それは違うと思うよ?」


神様「いや、やはり私と関わりを絶ったほ―――」

男「神様? 怒るよ?」


神様「・・・・・・」


男「で? 見当は付いてるの?」

神様「・・・・・・」

男「神様? 包み隠さず全て教えてくれるんじゃないの?」

神様「・・・幼は、私と同じくアカシックレコードに接続している」

男「幼が? それって神様と同じってこと?」

神様「あぁ」

男「でも、幼は実体があるんだけど」

神様「・・・・・・」

男「あいつに実体があるってことは、神様よりも未来から来たってこと?」

神様「違う、幼はこの時代の者だ」

男「そしたらおかしくない? なんで未来から来た神様の方が実体を持てないの?」


神様「アカシックから未来の情報を取り出した可能性がある」

男「未来ってどのくらい先の?」

神様「250年以上先でないと肉体を維持してアカシックと接続することは出来ない」

男「何でそんなことが・・・」

神様「これから詳しく調べるが、危険すぎるほどのオーバーテクノロジーだ」

男「そう」

神様「私の責任だ・・・」

男「でも神様のおかげで、全く異常なしだって」

神様「・・・・・・」

男「明日朝には退院できる」

神様「そうか・・・・・・」

男「どうせ、知ってるんでしょ?」

神様「そうだな。 この病院は医療画像もカルテも全て電子化されているからな」

男「ありがとう神様」

神様「・・・・・・」


男「忙しくなるな~」

神様「やはり男をこれ以上危険に巻き込む訳にはいかない」

男「う~ん、神様が俺を手伝わせないって言うんなら~」

神様「?」


男「スマホとパソコンの電源を切る」

神様「お前何を!」


男「分かった?」

神様「・・・・・・」


男「分かりましたか? ここまでやられたら俺だって黙ってられないしね」

神様「・・・・・・」フッ


男「よろしい。 今後は変な気を遣わないこと」

神様「男は優しいな」

男「また、そんな柄にもないこと言って」


神様「柄でもないついでに、今日はこのまま男に隣にいても良いか?」

男「あぁ」

神様「気配は消しておくが気になるようであれば言ってくれ」

男「神様が隣にいるなんて心強い」

神様「言うな、照れる」

男「ははっ」


神様「朝まで安心して寝るがよい。 女神がこの命に代えて直々に守ってやる」

男「じゃぁお言葉に甘えて」


神様「良い夢を」

男「ありがとう、おやすみ」




男「スー スー」



神様「男、ありがとう・・・」

神様「・・・・・・」フカブカ


――― 翌日

男「さてと、まずは何から?」

神様「まずは整理しよう。 問題は2つある」

男「2つ?」

神様「あぁ、1つは今月末に起こる大規模な場の乱れだ」

男「場? 世界がヤバいとかいうやつ?」

神様「110年ほど前、私が神託によって削除させた技術がベースとなっている」


男「110年前って、どんな技術?」

神様「世界システム」

男「聞いたことある!」

神様「ほぉ」

男「情報とエネルギーを世界中に送り届けるとかいうヤツでしょ」

神様「そんなところだ。 よく知っているな」

男「最近、都市伝説にはまっていまして」

神様「都市伝説・・・ なるほど面白い表現だ」


男「詳しくはよく分かんないけど便利そうじゃん」

神様「この技術自体はどうでも良いし興味はない」

男「なんか、散々な言われようだな・・・」


神様「だが副産物が問題だった」

男「副産物って?」

神様「高エネルギーで長期運用すると空間を壊す」

男「空間を壊す?」

神様「徐々に次元構造が崩れ、本来こちらの次元にはない粒子が飛び出してくる」


男「何が問題なの?」

神様「目には見えない量子レベルでの大きなエネルギー反応が起こる」

男「それが、今でも動いているって事?」

神様「さらに改良が加えられ複数の施設で駆動している」


男「で、最終的にはどうなるの?」

神様「インフラ機能が一瞬でダウン、世界経済が経験したことないほどの崩壊へと繋がる」


男「まずくね?」

神様「厄介なのは未知の量子レベルの事象であるため、今の科学では原因が全く分からないと言うことだ」

男「爆発とかそういう分かりやすい現象がないってこと?」

神様「あぁ、兆候なしで突然全てが止まる」

男「やばさそうだ」

神様「ただ、これは事前に食い止めることが可能だ。 時間的な猶予もまだある」


神様「そして問題は2つめ。 幼の存在」

男「あぁ」

神様「肉体を有してアカシックと接続することは250年以内では実現出来ない」

男「昨日そんな事を言ってたね」

神様「250年以上先の情報は劣化が激しく複合を正確に行うことが出来ないのだ」

男「どういう意味?」

神様「つまり・・・ 幼が・・・ その・・・ アカシックと接続するのは不可能ということだ」

男「じゃぁ、幼は人間じゃないと?」


神様「私が学校に行くため周りの者達へ記憶を追加した際には異常は無かった」

男「確かにみんな神様のことを昔から知っている風だったもんな」

神様「その際の事前スキャンで幼に関する皆の記憶は作られた物ではなことは断言できる」

男「じゃぁ、やっぱり人間ってこと?」


神様「・・・・・・」

男「神様? もしかして言いにくい事だったりする?」

神様「お見通しか・・・」

男「可能であれば、聞かせてほしい」


神様「まだ仮説だ。 その点は事前に了承してくれ。 最終判断は明日に出す」

男「あぁ」


神様「幼は・・・ すでに亡くなっている、またはそれに近い可能性がある」

男「えっ!?」

神様「アカシックと接続が出来る因子を持つ者は限られる。幼は元々その因子を有していた」

神様「しかし、命宿る肉体のあるうちはアカシックに接続することは出来ない」

男「じゃぁ今まで会った幼は」


神様「人が亡くなる直前に出す特殊な酵素によってアカシック因子は活動をはじめる」

男「幼が・・・ 死んでいる? うそだろ・・・」


神様「仮説と言った。不確定要素が多すぎるため間違っている可能性の方が高い」

神様「昨日の夜に世界中のスーパーコンピュータにハッキングを行いシミュレーションを行っているところだ」

男「ハッキング!?」

神様「今の私では演算能力が足りない」


男「ハッキングなんて大丈夫なの?」

神様「国連経由でコードレッドを出した」

男「コードレッド?」

神様「生死に繋がる世界的な危機を防ぐため女神が直接出す緊急警報だ」

男「そんなものがあるの?」

神様「初めて使った。 たぶん世界中の上層部が右往左往しているぞ?」

神様「何しろ、52年ぶりに女神の存在が確認できたと思ったらコードレッドなのだからな」


 キキッ

男「?」

神様「車を用意させた、移動しよう」

 バタン

官僚「失礼ですが女神様で間違いないでしょうか?」

神様「お前達から名を名乗れ、無礼であるぞ」

官僚「失礼いたしました。 国家安全保障局の官僚と申します」

運転手「同じく運転手です」


神様「私が女神で間違いない」


運転手「どうぞ」

神様「うむ」

男「失礼します・・・」


官僚「そちらの方は?」

神様「私の大神官だ。 口を慎め」

官僚「し、 失礼いたしました」


男「神様・・・ 怖いです・・・」ボソッ

神様「一応女神としての立場というか・・・ お前も堂々としていろ」ボソッ

男「あぁ、そうなんだ・・・」

官僚「なにか?」

男「いえ何も・・・ 独り言です」ハハハッ


運転手「どちらへ向かえばよろしいでしょうか?」

神様「秋葉原だ」

男「秋葉原?」

神様「あの男の腕が必要だ」

男「あ~、もしかして・・・」

神様「そうだ」


官僚「女神様、伺いたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

神様「私はいま大神官と話をしているのが分からないのか?」

官僚「・・・失礼いたしました」


男「まぁまぁ、良いじゃんよ神様」

神様「しかしだなぁ・・・」ムッ

男「何ですか? 官僚さん」

官僚「ありがとうございます大神官様」

男「いや、普通に男と呼んで下さい」

官僚「どうも、男さん」


神様「おい、勘違いするな」ギロッ

官僚「・・・・・・」

男「・・・・・・」


官僚「失礼いたしました」


神様「質問とは何だ」

官僚「はい、コードレッドの内容とは一体何でしょうか」


神様「日付と場所は伏せるが近日中に次元越境粒子によって大きな場の乱れが発生する」

神様「影響はインフラのダウンと経済麻痺。 今の科学水準で防ぐことは不可能であると判断した」


官僚「・・・私たちはどのように?」

神様「お前達のするべきことは2つ。
 一つ目、コードレッドの公表は伏せ通常通りの生活を営め。
 二つ目、メガミーラインからの指示には絶対に従うこと。
 分かったか」

官僚「承知いたしました」


男「めがみーらいんって何?」

神様「私の指示が伝達される特殊な通信ネットワークだ」

男「もしかして女神の回線でメガミーライン? ネーミングセンス酷くね?」

神様「・・・・・・」


官僚「ぷっ」

運転手「ぷっ」


男「だれ付けたの、その変な名前」

神様「私だ・・・」ボソッ


男「あっ・・・」

官僚「・・・・・・」サァー

運転手「・・・・・・」サァー


 シーン


―――秋葉原

運転手「お待たせいたしました」

 ガチャ

神様「うむ」

男「あっ、わざわざすいません」


官僚「私たちは待機でよろしいでしょうか」

神様「メガミーライン! でいくつか指示を出す。早急に対応しろ」

官僚「・・・承知いたしました」アセアセ


神様「いくぞ男」プンプン

男「はい・・・」


神様「店主よ」

店主「ん? お~ この前の嬢ちゃん達かい」

男「こんちは~」

店主「今日はどうしたんだ?」

神様「先日は量子ペア生成装置を譲って頂き感謝する」


店主「・・・・・・」

神様「女神の技術者として腕はさらに磨きがかかったようだな」

店主「ふっ、やっぱり女神様だったか・・・」

神様「気づかない方が不思議だな。 あのような物を欲しがる女子高生は普通ではない」


店主「よくご無事で、初めてお目にかかります」

神様「私は店主のことは十分知っているぞ?」

店主「嬉しいお言葉です。 お隣の方は?」

神様「私の大神官である男だ」

店主「大神官!」

男「あ~、普通に男って言って下さい」


神様「店主よ、力を貸して欲しい」フカブカ

店主「ちょ、女神様! そんな頭を上げて下さい」

神様「私のワガママであることに変わりない。 お願いだ」

男「・・・・・・」


店主「そんな、女神様直々の頼みを断る訳ないじゃないですか」

神様「ほんとか!」パァ


店主(可愛い・・・)

男(可愛い・・・)


神様「?」

店主「あっ、いえ・・・ 退職してやることもないですから、いくらでも協力しますよ?」

神様「恩に着る。 これから出られるか? 詳しく話をしたい」

店主「もちろん! どこへでも」


神様「男よ、お前を大神官兼店主専属の雑用に任命する」

男「えっ?」

神様「役職は多い方が良いだろ」

男「雑用って役職なの?」


店主「よろしく、雑用くん」ポンポン

神様「よし、では行こう」


 スタスタ

官僚「女神様、ご指示頂いた全人工衛星の回線を全て制御下に置きました」

神様「よし。 メガミーライン! のC回線に接続しろ」

官僚「は、はい」

男(まだ根にもってんのかよ・・・)


運転手「どうぞ」

店主「すんげー車だなオイ」

 バタン

運転手「次はどちらへ」

神様「国連科学戦略研究所に行け」

運転手「かしこまりました」


―――車内

店主「で、何か問題事でしょうか?」

神様「詳しくは後ほど話をするが少し厄介な問題が発生している」

神様「私と男で対処しようと考えてたのだが、別の問題も同時に起こってしまった」

店主「それで私を」

神様「かなり高度な問題のため、店主の技術が必要であると判断した」

店主「承知いたしました」


 はい、分かりました。
 女神様にお伝えいたします。
 ピッ

官僚「女神様、お話中に申し訳ございません」

神様「なんだ」

官僚「当時の神官の所在が1名分かりました」

神様「!?」

官僚「研究所に向かっているそうです」

神様「本当か! だれだ!」

官僚「申し訳ございません、当時の名前までは・・・ 戸籍を変えていたそうでして」

官僚「それと、他の神官はすでに亡くなっているようです」

神様「・・・・・・」



―――研究所跡

運転手「お待たせいたしました」

店主「おー 懐かしい・・・」

 ガチャ

官僚「私たちは・・・」

神様「伝言があるときは呼ぶ。 そこの守衛室で待機していろ」

官僚「承知いたしました」

神様「それと、私への連絡はお前達二人以外からは受け付けない。 代わりに連絡調整役を任せる」

神様「守衛室へもお前達以外に入室は禁止だ」

官僚・運転手「承知いたしました」


女「あのー、失礼ですが・・・」


神様「? 女・・・ 女ではないか!」

女「やっぱり? 女神様ですか?」

神様「久しぶりだ、女!」

女「覚えて・・・」

神様「忘れるわけない。私をサポートしてくれた者を誰一人忘れるなんて事は無い」

女「女神様・・・」

神様「そうか、こちらに向かっている神官というのは女であったか」

女「でも良くご無事で・・・」フカブカ


神様「ちょ、そんな頭を下げなくてはならないのは私の方だ」

神様「私が隔離されてから、神官達の処遇は知っていた。なのにどうすることも出来ず、何も出来きず・・・ 私は・・・」ギリッ

女「女神様がそのような事ご心配なさらずとも・・・」


神様「申し訳ない!」ドゲザ

女「ちょ、女神様おやめ下さい」アタフタ


神様「本当に・・・ 本当に申し訳ない!!」ドゲザ

男「神様・・・」


女「頭をお上げ下さい。神官は全員無事だったんですから」

神様「全員・・・ 無事? 無事だったのか?!」ハッ

女「はい、誰一人欠くことなく」

神様「そうだったか・・・」

女「はい、念のため全員戸籍関係は変更いたしましたが」

神様「そうか・・・ よかった・・・ 本当によかった・・・」

男「・・・・・・」


神様「よし、心残りが一つ解消された」

男「ほら、神様そんなところに座り込んでないで」

神様「あぁ、そうだな」ンショ

男「神様が大勢の前で土下座って・・・」


店主「よっ! ひさしぶり、覚えてるか?」

女「もしかして・・・ 店主? 技術者の!」

店主「50年以上前だからな」

女「でも、面影は残ってる」


男「あの~ はじめまして」

女「はじめまして」ニコッ

神様「あ~ 紹介する。私の神官補佐の補佐の補佐で雑用だ」

男「補佐付きすぎだろ・・・」

神様「女は私がまだその・・・ 女神と呼ばれていたときの神官だ」

女「女と申します」


男「失礼ですが今おいくつですか?」

神様「お前、本当に失礼だな」


女「ふふっ、68歳よ?」

男「はぁ? 60代の肌じゃないでしょ!」


神様「お前、もうだまってろ。でも本当に女は変わらず綺麗だ」

女「そ、そんなもったいないお言葉・・・ あ、ありがとうございます」

神様「そうか、女は私のところにいたときはまだ10代であったな」

女「はい」


男「そんなに若くても神官になれるんだ」

神様「大神官であるお前も同じではないか」


女「大!? 女神様?? えっ? えっ?」

神様「いや、私はもう女神と呼ばれるほどの存在では・・・」


神様「そうだ女よ」

女「はい」

神様「その・・・ 言いにくいのだが」

女「?」

神様「少し・・・ 手伝ってもらうことは出来るだろうか」

女「お手伝い・・・ ですか?」

神様「忙しいのは十分承知している。 だが・・・ 女の力を借りたい」

女「もちろんです。 そのために来たのですから」


神様「本当か!?」

女「私はまだ女神様の神官でも良いのですか?」

神様「それはこちらの台詞だ」

女「どうぞよろしくお願いいたします」


神様「立ち話も何だ、建物の中に入ろう」

店主「入れるんですか?」

神様「先日建物全てにエネルギーを入れた」

女「でも・・・ 懐かしいわ」

店主「あぁ、生きているうちにまたこの中に入れるとは思っていなかった」


神様「男よ、入り口を」

男「はいよ」

 ガチャ

男「どうぞ皆さん」ギィー


神様「神官と技術者、ついでに雑用。 数は少ないが役者は揃ったな」

男「おれ完全に雑用に格下げ?」



神様「皆・・・ お帰り」ニコッ



―――研究所内

神様「私は店主と所内の設備を調べてくる。 すまないが女よ、少し待っていてくれ」

女「承知いたしました」


神様「男よ、部屋を綺麗にしておけ」

男「はいはい、分かりましたよ」

神様「本当に分かっているのか?」

男「はよ行けって」ヒラヒラ

神様「生意気なヤツめ。 店主よ、まず中央制御室からだ」

店主「はい」

 スタスタ


女「女神様にすごい扱いをなさるのね・・・」

男「そうですか?」

女「昔だったら間違いなく投獄よ?」フフッ

男「・・・・・・」


男「さ、さてと・・・ 片付けますかね」

女「お手伝いしますね」


 パッパッ


女「あんな女神様初めて見た」

男「あんな?」

女「昔はもっと威厳というか・・・ こんなフレンドリーじゃなかったわ」

男「いや、今でも十分怖いですどね・・・」


女「口調」

男「口調?」

女「女神様は立場上、私たちとは 一線を画す必要があったの」

男「まぁ一応は神様ですしね」

女「その壁がしゃべり方だった」

男「壁?」

女「上から目線の古くさいしゃべり方」クスッ

男「確かに」

女「当時はもっと威圧的で、もっとキツい口調だった」

男「ははっ。そう言えば最近少しまろやかになったかな」


女「誇って良いと思うわよ。 あなたには壁を作っていない証拠なんだから」

男「そうかなぁ?」

女「よほど貴方のことを信頼しているのね、大神官様」クスッ

男「ほかに適当なヤツがいなかっただけですよ」

女「女神様は冗談でも大神官なんて言葉は口にしない。 大先輩の神官が言うんだから間違いないわよ」

男「・・・・・・」

女「私が知る限り女神様の大神官は当時、いえ過去にも存在しなかったはず」

男「そうなんですか?」


女「でも驚いたわ。今の女神様が本当のお姿なのかもね」フフッ

男「どういうことです?」


女「私が神官になって間もない頃、大失敗しちゃったことがあってね。 私の命もここまでかぁって思った」

男「そんな大げさなぁ」

女「神託の順番を間違えたの、影響は世界規模だったわ」

女「女神様の部屋に入ったら、他の者は出て行け!処分は私が下す!って。 私、恐怖で何も言うことが出来なくて」


~~~ 回想

若女「この度は女神様の信用を傷つける行為をしてしまい申し訳ございません。どのような罰もお受けいたします」ドゲザ

女神「二人きりで話をするのは初めてだな。 いつもありがとう」

若女「女神様?」ハッ


女神「今回の失敗は気にするな、と言ったら嘘になるが・・・」

女神「誰にでもある。 次から気をつければ良い。 だから頭を上げてくれ」ニコッ

若女「ありがとうございます」


女神「しかしケジメは必要だ、罰は受けてもらうぞ?」ニヤッ

若女「・・・はい」ブルッ

~~~


女「その時初めて女神様のお優しい顔を見たわ」

男「へぇ~、いい奴じゃん神様。 で罰は受けたんですか?」

女「丸1日寝ずに朝まで女神様とゲームを・・・ それが罰」

男「ははっ、神様らしいや。 ゲーム好きだもんなぁ」


女「後で聞いた話だけど神官はみんな女神様とゲームをしたらしいわ。 秘密にしろって言われてたらしいけど」クスッ

男「神様ったら神壇の裏にゲーム機いっぱい隠し持ってるんですよ?」

女「神壇の裏?」

男「そうそう、オーバーテクノロジーはダメだとか偉そうに言っておきながら」

男「自分では未来からゲーム機の設計図取り出して技術者に作らせたみたいです」


女「神壇に上がったことがあるの?」

男「えぇ、大神官に任命する! とか格好いい台詞を言うためだけですけどね」

女「・・・・・・」キョトン


男「どうしたんです?」

女「そう、神壇に・・・」

男「?」

女「いくら大神官でも神壇にまでは登れないのよ?」

男「そうなんですか? 神殿は見られないって事は聞きましたけど」


女「ふふっ、神殿も見えるのね。 失礼だけどお歳は?」

男「17歳です」

女「そう」ニコッ

男「?」


女「さて、掃除はこんなもんで大丈夫でしょう」

男「えっ? あぁ・・・ そうですね」

女「夕飯、何が食べたいものある?」

男「作ってくれるんですか?」

女「もちろん」


 スタスタ

神様「おぉ、綺麗になったな」

店主「見違えるようだ」

神様「女よ、ありがとう」

女「女神様! そんな勿体ないお言葉」


男「え? オレは?」

神様「どうせ片付けたのはほとんど女であろうが」

神様「女よ、そんなに畏まるな。 なんなら神ちゃんとでも呼んで良いぞ?」

女「・・・・・・」


男「神ちゃん、女さんが夕飯を作ってくれるんだって」

神様「あ゛? お前は神様と呼べ」


店主「久々の手料理、これは楽しみだ」

神様「うむ」

男「神様食べられないじゃん」

神様「女の料理は見た目も最高なのだ、それだけで満足だ」


女「で、では買い物に行って参ります」

神様「いや、外にいる官僚に言って買ってこさせろ」

男「官僚さんがスーパーでジャガイモとか買うの? 可哀想」

神様「後で官僚達にも料理を馳走してやれば良い」

女「はい」


――― 夕食

男「うゎ、うまそう」

女「彩り野菜のビーフシチュー クリーム多め です」

男「神様が言ってた通り見た目もすごい綺麗」

女「ありがとう」ニコッ

 スタスタ

店主「良い匂いがすると思ったら・・・ コレはうまそうだ」

女「女神様を呼んでまいります」


男「いや執務室でしょ? 大声で呼べば聞こえますよ」

女「そんな失礼な・・・」

 ガチャ

男「神様~ ごはんできたよ~」


神様「せめて呼びに来い、横着者が」パッ

男「うわ、早っ!」

神様「お~、彩り野菜のビーフシチュー クリーム多め か!」

男「なんでそこまで正確な名前を・・・」

神様「さて、では皆で頂くとしよう」

一同「いただきます!」


神様「さて、食事しながらで良いので聞いてくれ」

男「作戦会議?」クチャ クチャ

神様「食べながら口を開くな」

男「え? 今、良いって言ったじゃん」ゴクン

神様「食べながら喋れと言っていない、あほ」

男「あほって・・・」


神様「今月末、正確には31日14時に次元越境粒子により大きな場の乱れが発生する」

女「次元越境粒子・・・」

神様「あぁ、今の科学では検出することすら不可能な事象だ」

店主「どのような影響が」

神様「自由電子を用いた様々な物が一瞬にして機能を停止する」

店主「そんな! 電子を使ったって、全部じゃないですか」

男「人間には影響ないの?」

神様「この粒子は水で大きく減衰するため影響はほとんどないと言って良いだろう」

女「原因は」

神様「高周波電磁波照射装置」

女「・・・オーロラプログラム?」

神様「あぁ」


店主「ちょっと待って下さい。 HAARPがそこまでの威力を持つとは思えないのですが」

神様「このシステム自体には何の問題もないが、CP67という増波素子を組み込んだチップに問題がある」

店主「CP67?」


神様「BSC・・・ ブレインズシーケンス社が開発中の増波素子だ」

女「BSC?!」

店主「まさか!」

神様「・・・・・・」


神様「CP67は40年ほど前に開発されたCP1が元となっている」

男「神様がボッチになった後に出来たってわけか・・・」

神様「そう・・・ いや、隔離されたと言え」

男「同じじゃん」

 バチッ

男「うひゃい!」ビクッ


神様「世界システムというのは知っているか?」

女「ニコラテスラですか?」

神様「あぁ、その際に原型が開発されたのだが神託で止めた経緯がある」

店主「世界システムの開発が止まったのは神託が理由だったんですか・・・」

神様「BSCが40年前に開発したCP1は110年前にテスラが開発した物と全く同じだ」

男「40年前に出来た物が、すでに100年以上前にもあったってこと?」

神様「そういう事だ」

男「偶然にしては変だよね」


神様「鋭いな。 BSCが開発したCP1はニコラの物を参考に作られている」

店主「しかし、神託で止めたものがなぜ・・・」

神様「神託記録に記載された資料を基に複製されたと思われる」

女「まさか、神託記録が漏れていると?」

神様「残念だが・・・ 私が記載したダミー回路がそのまま追加されている」

女「神託記録は神官以外扱えないはずです」

神様「・・・・・・」

神様「神託記録がBSCに漏れ、それを元にCP67まで開発されたのは間違いない」


店主「しかし何故あいつらはCP67の開発など・・・」

神様「アカシック接続に大きく関わる素子だ」

店主「まさか、CP67を使ってアカシックと接続するのが目的・・・」

神様「うむ。 しかし現状ではアカシックの存在確認がギリギリであろう」

女「しかも副作用の方が大きいと・・・」


神様「CP67を用い長期間電磁放射が行われると次元構造に大きなダメージが起こる」

店主「それが原因で越境粒子が飛びだしてくる訳ですか」

神様「そうだ。 次元崩壊が起こると思われる場所は全部で6カ所」

女「6カ所・・・」

神様「各施設で運用されている照射装置内のCP67を一斉に破壊し尚且つ痕跡を残さないようにしたい」


男「よく分かんないけど、照射やめろーって言えば済むんじゃないの?」

神様「一時的に止めただけではダメなのだ。ほとぼりが冷めれば必ず再運用を行う」

男「でも壊してもまた作るだけじゃない?」

神様「今から作り直しても10年はかかる。 その頃には危険性も把握できている」

男「なるほどね」


店主「一つずつの破壊では問題があるのでしょうか?」

神様「いずれかのシステムが運用不能となった際は他の施設で出力を倍に上げた照射実験を行っている」

神様「次にソレをやられるとマズい」

男「それで一斉に壊す必要があると」

神様「あぁ」


店主「で、その施設はどこに?」

神様「それが問題なのだ」

女「場所が分からないということですか?」

神様「いや、場所は分かっているが運用がスタンドアロンなのだ」

男「スタンドアロン?」

神様「外部と物理的に通信を絶っている独立したシステムだ」

店主「ネット経由では無理か・・・」


男「爆撃とかじゃダメ?」

神様「店主よ、スマホは持っているか?」

店主「スマホもタブレットもノートPCも全て」ガチャガチャ

神様「よし、そのタブレットに情報を送る」


 ピピッ

店主「来た」

神様「各施設の衛星写真だ」

店主「どれどれ・・・」

男「うわ、世界中に散らばってんじゃん」


店主「ん? この隣の施設は・・・」

神様「あぁ、動力源である小型原子炉だ」

男「原子炉!?」

女「これは近すぎますね」


男「爆撃がダメな理由はこれか~」

店主「それに、同じような施設に6カ所も爆撃なんかしたら変だろ?」

男「難易度激高ってやつ?」


店主「期限は?」

神様「2週間以内だ」

店主「全力を尽くします」

神様「よろしく頼む」


神様「女よ」

女「はい」

神様「すまないがメガミーラインの状態を調べてもらえるか?」

女「承知いたしました」

神様「メガミーラインのうち小箱側に繋がる全回線は52年前に破壊したままだ」

女「・・・はい」

神様「今は小箱が男のスマホを経由してメガミーラインの空き回線に入っている」

女「スマホ・・・」

神様「どうにかして帯域を増やしたい」

女「早急にお調べいたします」


神様「店主」

店主「なんでしょう」

神様「女の作業とは別に演算能力を増やせないか調べてもらえるであろうか」

店主「演算能力ですか?」

神様「訳あってエネルギーを押さえたい。そのために外部に演算を任せたいのだ」

店主「それなら、女の方が適任かと」

神様「そうなのか?」

店主「女は量子コンピュータが専門です」

女「あら、知っていたのですか?」

店主「この業界で知らないヤツなんかいねーよ」


神様「女よ、何か手はあるか?」

女「どの程度の追加演算能力が必要でしょうか」

神様「正直、稼働中のスーパーコンピュータを全て並列で動かしても足りない」

男「あ~、そういえば神様スパコンにハッキングしてるもんね」


女「まだ実験中ですが200qubitの量子コンピュータでしたら用意できます」

神様「ほぉ、素晴らしい! メガミーラインに接続できるであろうか?」

女「至急確認いたします」

神様「頼んだ」


神様「それと事が収まるまで皆この建物から一歩も出ないでくれ」

男「まじで?」

神様「何かあれば官僚を使え」

男「官僚さん俺より雑用で可哀想・・・」


神様「なにか質問はあるか?」

店主「施設内で使用しているシステムのうち、いくつかを取り替えたいのですが」

神様「リストアップして手配してくれ。 お金はいくら使っても構わない」

女「電波強度を上げるため付近の回線切断と基地局の増強をご提案いたします」

神様「衛星は全てメガミーラインの制御下に入っている。 基地局に関しては調整を頼む」


男「・・・・・・」

神様「どうしたんだ? 男」チラッ


男「いや、凄いなって」

神様「?」

男「なんか神様格好いい」

神様「なっ! 何を急に・・・ そんなことは・・・ ///」


男「あれ? 照れてる?」

神様「照れてなどいない! ごちそうさま!」

男「神様食べてないじゃん」

神様「うるさい!」

 バリッ!

男「うひゃ!静電気!」ビクッ

神様「神罰だ、ざまぁ見ろ!!」

女「ふふっ」

店主「ふははっ」

神様「お・・・ お前達まで何を笑っているんだー ///」


 prpr prpr
 ガチャ

男「あ~ もしもし官僚さんですか?」

官僚『大神官様?』

男「その呼び方、やめて下さい・・・」

官僚『しかし、女神様のご指示もありますので』

男「じゃぁ、神様がいないときは普通に接して下さい」


官僚『で、何かご用でしょうか?』


男「夕飯まだですよね」

官僚『お気遣いすいません。 コンビニで買いますので大丈夫です』

男「熱々のシチューがあります」

官僚『シチュー・・・』

男「運転手さんもいますよね」

官僚『はい、守衛室に二人でおります』

男「じゃぁ今から持って行きますので」

官僚『ありがとうございます、ところで・・・』

男「なんでしょう」


官僚『女神様は、いつもあの様な感じなのでしょうか?』

男「と言うと?」

官僚『高圧的・・・ いや威厳と言いますか』

男「あ~、あれは立場上そうしているだけですよ」

官僚『そうなんですか?』

男「偉そうに見えるでしょ? あぁ見えて結構乙女チックな―――」

神様『オイ』


官僚『・・・・・・』

男「・・・・・・」

官僚『夕飯楽しみにしております、大神官様・・・』

男「はい、失礼します」


 ガチャ


男「なんで神様が割り込んでくるんだよー」

神様「私が作った回線だ、聞いているに決まっているだろうが」パッ

男「うわ~ビックリした。 急に出てこないでよ」


神様「全く、男は油断も隙もないな」

男「その言葉、そのまま全反射でお返しします」


 カタ カタ カタ カタ

男「あっ、お運びくん」

神様「これは汎用型のお運びちゃんだ。 夕飯を持たせるのであろう?」

男「あ~ オレ持って行くよ。 すぐそこだし」

神様「先ほど一歩も出るなと言っただろうが」

男「え~、守衛室もダメなの?」

神様「我慢しろ」


男「でもこれおぼんとかどうやって載せるの?」

神様「頭に乗せれば自動でバランスを取る」

女「男さん、官僚さん達の夕飯用意できましたよ」スタスタ


女「あら、お運びちゃんじゃないですか。 懐かしいわ」

神様「この愛くるしい動きがたまらん」ニンマリ


男「おぼんを頭の上に・・・」ソー

 ピタッ

男「すげー」

 カタ カタ カタ カタ

男「ねぇ、どうやって動かしてんの?」

神様「私が動かしている」

男「あ~、そこは手動なんだ」


神様「そのテレビに映像と音声が出るぞ」

 ブォン

男「あっ、写ってる」

女「ふふ、面白い」

 カタ カタ カタ カタ スゥー カタ カタ カタ カタ

男「ねぇ、今ドア開けないで外に出て行ったんだけど」

神様「凄いであろう」

男「うん、凄すぎる」


 カタ カタ カタ カタ

官僚『うわ~なんだコレ』

運転手『狐のぬいぐるみ?』


神様『夕飯を持ってきてやった』

官僚『女神様!?』


神様『そうだ、私が自ら操作して持ってきてやったのだ。 早く受け取れ』

官僚『わ・・・わざわざ すいません』イソイソ


神様『女の作った最高のシチューだ。 残したらどうなるか分かっているであろうな?』

官僚『そんな、残すだなんて滅相もございません』

神様『うむ、これはお前達が食べ終わるまで置いておく。 おかわりが欲しければお運びちゃんの鼻を押せ。 私と通話が出来る』

官僚『は、はい・・・』

神様『3食は必ず届けてやる。 その代わりたっぷりと働け』

官僚『承知いたしました・・・』

 プツッ


男「1日3回官僚さん達にとっては拷問だよな。 しかもおかわりしづらいし」


神様「さてと、今日はもう休むとしよう」

男「どこか寝られるところある?」

神様「男は1階の神官宿直室を、女は私の執務室を使ってくれ」

女「はい」


神様「それと1階の突き当たりに温泉がある。 先ほど湯を張ったので使ってくれ」

男「すげー 温泉もあるんだ」

女「とても素晴らしい温泉なのよ?」

男「楽しみ! あっ、着替えとかないや。 なにかある?」

神様「当時の服でよければリンネル室にあるはずだ。 すまないが、女よ確認しておいてくれるであろうか」

女「承知いたしました」

神様「では明日。 良い夢が見られるよう」

女「ありがとうございます」


神様「あっ、男」

男「なに?」

神様「明日は朝8時に私のところに来てくれるか」

男「何かあるの?」

神様「幼の件で演算の結果が出るはずだ」

男「分かった」

神様「寝坊するなよ。 では良い夢を」スッー


女「じゃぁ温泉にいきましょうか」

男「はい」

 スタスタ


――― 温泉

女「ここが当館自慢、女神の湯でございます」ニコッ

男「うわ、旅館の温泉みたいな入り口」


女「着替えは脱衣所に持って行くので先に入っていて下さい」

男「ありがとうございます」

男「青い方の入り口で良いんですよね」

女「はい、そちらが男湯です」


男「脱衣所は、昔ながらの旅館って感じだな」ヌギヌギ

 ガラガラ


男「・・・・・・すごい」

店主「おー、雑用君じゃないか」

男「店主さん」

店主「どうだ、凄いだろこの温泉は」

男「凄すぎるんですけど。 一般に解放すれば結構稼げますよ」

店主「違いない」

男「なんで温泉なのに舞台とかまであるんですか・・・」

店主「俺もいろいろな温泉に行ったがここより凄いところはなかったな」

男「でしょうね・・・」


店主「ふ~」チャポン

男「・・・・・・」

男「店主さん」

店主「あ~ん」

男「店主さんって何者?」

店主「ん?」

男「いや、お店で譲ってもらった機械とかこの時代の技術の物じゃないんでしょ?」

男「神様も直ったやつべた褒めしてたし。 普通じゃ直せないんですよね?」

店主「女神様に褒められるとは嬉しいねぇ~ 涙が出そうだよ」


男「何者?」

店主「オレなんかたいしたことねぇよ。 ちょっと機械いじりが好きなジジイだ」

男「ただのじいさんとは思えないんだけど」


店主「5年前までヨーロッパのCERNという研究所で技術者やっていた」

男「聞いたことある! 世界一の研究所でしょ」

店主「あの装置に出会って衝撃を受けたんだ。 オレがもらい受けたときは粉々だったがな」

店主「絶対これを直してやるって。 まぁ、完成したのは退官した後だったけどな」


男「そんなに凄い機械なの?」

店主「あれは昔、女神様の技官長だったアインシュタインとフェルミが女神様の指示で作った物なんだ」


男「アインシュタインとフェルミ? 有名な物理学者じゃん」

店主「あの装置は今で言うところの量子テレポーテーションを行うために必要なEPRペアを作り出す物に近いんだが・・・」

男「?」

店主「まぁ、高校生には分からんよな」

男「はい」


店主「大学で物理学の道へ進んで改めてあの機械を見たとき・・・ 尋常じゃない技術だって事が分かった」

店主「一つ問題をクリアする毎に次の難関が待っていた。それをクリアするとさらに高度な問題が・・・ その繰り返し」


店主「気づいたらCERNにて、退官したら秋葉でガラクタ屋はじめてた」

男「はぁ、最後すごい端折りましたね」


店主「オレなんかより、女の方がすげぇよ」

男「さっきもそんなこと言ってましたね」

店主「彼女は次あたりノーベル賞もらうんじゃないか?」

男「ノーベル賞?」

店主「量子を使ったコンピュータと通信が専門の天才物理学者だ」

男「そんな風に見えないんですけど・・・」

店主「そりゃ、女神様なんかに比べたら赤子みたいなもんだしな」


男「もしかして、ここにいた人たちってみんな凄い人なんですか?」

店主「そう言えば元神官や技術者は結構有名な科学者になっているな、俺以外は」ハハッ

男「オレ場違いじゃん」

店主「そんなことはないんじゃないか? 大神官となりゃ将来は大有力株だ」

男「え~ たまたま都合の良い出会いがあっただけですよ」

店主「それも一つの選ばれ方だ。 期待してるよ雑用くん」

男「雑用世界一でも目指すか・・・」

店主「さてと、温まったしそろそろ出るか」ザバー

男「あっ、オレも一緒に出ます」ザバー


 ペタペタ

男「そう言えば、女さんが着替えを用意してくれるって言ってたんですけど」

店主「お~、あるじゃないか。 下着と、これは浴衣か?」ゴソゴソ


男「オレのは、コレか」ゴソゴソ

店主「なんか、すんげー木箱に入ってるな」

 パカッ

男「何コレ・・・」

店主「・・・・・・」


女「良いお湯でした。 あらっ」ホカホカ

男「・・・・・・」

女「良くお似合いですね」

男「なんですか? この服は・・・」

女「私も初めて見ました」

男「え~、初めて見る服をチョイスしたんですか?」

女「大神官の御衣装なんて誰も見ていないですからね」

男「凄く動きづらいんですけど」ゴワゴワ


女「女神様の御衣装姿のお隣にたたれたらとてもお似合いだと思いますよ?」

男「ボクも女さんや店主さんが着ている浴衣が良いです」

女「大神官様に神官や技術者と同じ物を着させるなんてそんな恐れ多いこと」

男「女さん、楽しんでますよね絶対」

女「明日は必ずそのお姿でいらして下さいね? お浴衣はお部屋に用意してありますので。 ではお休みなさい」スタスタ


男「浴衣あるんじゃん・・・ しかし暑苦しいし、この飾り重いな・・・」ゴワゴワ


――― 研究所・2日目・朝

女「偉い偉い、ちゃんと着てきたんですね」

男「なんかコスプレみたいで凄く恥ずかしいんですけど」

女「似合っているわよ」ニコッ

男「こんな豪華な服を勝手に着て、神様に静電気MAX攻撃くらうかも・・・」

 ギィー

女「女神様、大神官様がお見えになりました」

神様「そうか、通してくれ」

女「はい」


男「神様~ いる~?」

神様「遅い! 30分も遅刻だぞ、昨日あれほ・・・ ど・・・・・・」

男「動きづらい」ゴワゴワ

神様「・・・・・・」

男「あ~ 女さんがこの格好で行けっていうから」

神様「・・・・・・」


男「神様?」

神様「ん? あぁ・・・そ、そうか・・・ うん」

男「やっぱ、マズいよね。 こんな豪華な服着ちゃ」

神様「いや・・・ まぁ、い・・・ 良いんじゃないか? うん ///」

男「なんで神様が照れてんの? こっちが恥ずかしいよ」

神様「・・・・・・」ポケー

男「神様ってば!」

神様「お? いや、似合っているぞ。 中々凜々しい姿だ」

男「何ソレ、ちょっとこの飾りみたいなヤツ重いから取るね」ンショ

神様「あ~っ、そのままが良いと思うのだが・・・」シュン


男「それより、幼の件はどう?」

神様「・・・そうであるな。 ん~ その椅子にでも腰掛けてくれ」

男「何か分かった?」ドッコイショ

神様「早朝にシミュレーションの結果が出た」

男「で、結果は?」

神様「結論から言うと幼は仮死状態にある」

男「死んでいるっていうのとは違うの?」

神様「表現が難しいのだが、幼の意識が非常に低い状態にあると言った方が良い」


神様「幼が仮死状態となった理由は分からない」

神様「しかしこの状態で特殊なアルゴリズムを用いるとアカシックとの接続が可能になるという結果が出た」

男「ごめん、もう少し優しくお願いします・・・」

神様「かなり複雑な状況だ」

男「アホにでも分かるように」


神様「まず幼の件に関しては大きな問題が2つある」

男「ふたつ?」


神様「1つ目は、幼が仮死状態となったこと」

男「うん」


神様「2つ目は、幼が今現在アカシックと接続していると言うこと」

男「そうだね」


神様「私が学校に行った初日のことは覚えているか?」

男「今月の1日だったけ」

神様「その日の朝方、私は男に近い者達へ記憶追加を行った」

男「神様がうち学校の生徒で、しかもオレの親戚だっていうやつ?」

神様「そうだ、男の周りの約800名に対し記憶追加を実行している」

男「そんなに!?」

神様「その後、記憶齟齬がないか小箱がベリファイを行った」

男「ベリファイ?」

神様「照合処理だ」

男「間違ってないか確認する作業?」

神様「そうだ。 最初の簡易検査では100万単位でエラーが出たため修復と再照合を小箱に任せた」


男「神様でもエラーなんてあるんだ」

神様「あるぞ? 私の演算などエラーだらけだ。 特にこのときは酷かった」

男「そう・・・ なんだ・・・」

神様「何しろ、この記憶追加作業で私は20年分のエネルギーを一瞬で消費している」

男「そんなに!?」

神様「あぁ。 ツングースカの時でさえ5年分のエネルギーしか使っていないしな」

男「もしかしてツングースカ大爆発? それ、すごく気になる」

神様「そうか? あの時はなぁ・・・ いや、今この話はよそう」

男「そうだね」

神様「で、朝7時にエラー修復が完了し正常終了という結果を小箱から受け取った」

男「結構ギリギリまでやってたんだ」


神様「しかし、この作業中に問題が発生していた」

男「問題?」


神様「まず、幼に記憶追加がされていたこと」

男「え? それって正常じゃないの?」

神様「幼は男と同じく私と脳波パターンが似ているため記憶操作が非常に効きにくい」

男「あ~ 前にそんなこと言ってたね」

神様「その場合、記憶操作を行うためには一定の条件が必要となる」

男「条件?」


神様「睡眠状態であること」

男「オレ寝たけど効いてないよ?」

神様「男には元々記憶操作は実行していない」

男「ホワイ?」

神様「記憶操作より手なずけた方が早いだろ?」

男「・・・・・・」


神様「幼は私が記憶操作を行う際に覚醒・・・ つまり起きていることが確認できた」

男「あいつ、そんな時間まで何してたんだよ・・・」

神様「さぁな。 しかし覚醒状態にあったのは間違いない」

男「つまり、幼に記憶操作することは不可能だったと」

神様「そうだ。 私は幼を記憶追加対象から外している」

男「でも幼は学校で普通に神様と接してたよね」


神様「小箱のログには幼がベリファイ中に睡眠状態になったため記憶追加を実行したと残っていた」

男「ふ~ん」


神様「そしてもう1個。これは男も違和感を感じたはずだ」

男「・・・もしかして、幼のクラス?」

神様「あぁ、私はそのような改竄指示は出していない」

男「あの時もそんなこと言ってたよね」

神様「ログでは記憶齟齬を少なくするための追加補正とある」

男「・・・追加補正? そんなことしたら余計に他との齟齬が出そうな気がするんだけど」

神様「やはり、あの時きちんと精査するべきであった。 小箱を信用しすぎた私の失態だ」


神様「先ほど照合情報を再度調べたところ、ベリファイ結果に改竄された痕跡が見つかった」

男「改竄? 一体誰が・・・」


神様「・・・私だ」

男「はい?」

神様「正確には私の・・・ 小箱のバックアップからの改竄痕と判明した」

男「バックアップ!?」

神様「小箱は2つある。1つは男も知っている通り裏手の神殿に据え付けてあるものだ」

男「あぁ」

神様「もう1つ、本体・・・ その・・・ 脳がない状態の小箱がある」

男「思考する部分がない小箱って事?」

神様「そうだ。 小箱が担う高度演算とエラー補正を司る部分は単なるプログラムであるため替えが効く」

男「そうなんだ。 どこにあるの?」


神様「同じ場所にあるが他の次元に包まれており見ることは出来ない」

男「神様の小箱とは仕様が違うの?」

神様「あぁ、製造元が異なる。 バックアップの方はBSC製だ」

男「BSCって!」

神様「そうだ。 試しに1度繋いだことがあるがとんでもない欠陥品だ!」プンプン

男「あ~・・・」


男「でも思考できないんなら、バックアップの小箱が改竄命令を出す訳ないよね」

神様「鋭いな・・・ 改竄痕に幼の脳波パターンがわずかであるが確認できた」

男「幼が?」

神様「私と脳波パターンが似すぎているため、全く気がつかなかった・・・」

男「じゃぁ、学校で会った幼はすでに・・・」

神様「あぁ、仮死状態となりアカシックと繋がっていたことになる」

男「一体何が・・・」


神様「・・・私が記憶追加を行う際に小箱が異常を検知しバックアップが起動している」

男「まぁ、確かに20年分のエネルギー使ってたら異常事態だよね」

神様「その後、バックアップが幼の脳と接続したと思われる」

男「なんでそこで幼に接続しちゃうわけ?」

神様「以前も話したが、幼はアカシック因子も有している」

男「うん」

神様「何かの原因で仮死状態となっていた幼の脳を私と思い接続対象と誤認したのであろう」

男「要するに神様と間違えたって事?」

神様「識別判定がお粗末すぎるな。 さすがBSC製なだけはある」

男「未来の超技術なのに・・・」


男「バックアップに接続して幼との接続を切るってのは?」

神様「改竄を実行しニセのベリファイを上書きした後、自ら故障信号を出し回線を切断している」

男「あぁ~」

神様「それに幼が仮死状態に戻るだけだ。 原因が分からない今は危険すぎる」

男「そのまま死んじゃうこともあるのか・・・ それはダメだな」

神様「論外だ」


男「一つ聞いて良い?」

神様「なんだ?」

男「もし、バックアップが幼に接続していなければどうなってた?」

神様「・・・死んでいた可能性も否定できない」

男「って事は、バックアップは幼の命を救ったって事とか」フム

神様「いや、男に危害を加えている。 どんな演算であれ許される結果では無い」


神様「ただ男よ、これだけは言わせてくれ」

男「?」

神様「幼は悪くない。 絶対に幼は救う。 その時に幼に敵意は向けないで欲しい」

男「何言ってんの?」

神様「お願いだ、私の事はどんなに罵倒しても言い。ただ、幼だけは―――」

男「神様はオレがそんなことしたり言うようなヤツに見えるの?」

神様「・・・・・・」

男「問題ないよ」


男「でも、幼は仮死状態で意識はほとんど無いんでしょ? どうやってそんなことを」

神様「そこなのだ、その仕組みがよく分からない」

男「神様でも分からないの?」

神様「いくつか仮説はあるが、直接調べてみないことには判断が難しい」

男「小箱に意識が宿ったとか?」

神様「それはない。 幼の脳から小箱に命令を出しているのは間違いない」

男「でも今の幼にはそこまで考えるほどの意識はないんだよね」

神様「あぁ」


男「いや~、複雑だな~」

神様「最初にそう言った」


神様「私がはしゃいで学校など行こうと思わなければこんな事には・・・」

男「でもそのおかげで幼が生きている訳だからさ」

神様「本当に迷惑をかける・・・ すまない」

男「ま~た、らしくないこと言って」


男「1つ気になるんだけど」

神様「?」

男「なんで、幼は俺と同じクラスにするなんて微妙な改竄を?」


神様「・・・・・・」ジロ

男「??」

神様「さぁな」プイッ


神様「さて、行くぞ」

男「え?」


 ギィー

男「あっ、女さん」

女「あら、打ち合わせは終わりました?」

男「はい」

女「それじゃ、女神様と男さんは神壇に上がって下さい」


神様「?」

男「なぜに?」

女「お二人でお写真を撮りましょう」

男「何言ってるんですか?」


女「あっ、男さんお飾り取っちゃダメですよ、ちゃんと付けてね」カチャカチャ

神様「なぜ写真など・・・///」

女「女神様? 奉職者の写真は撮っておくのではないのですか?」

神様「いや、そんな決め事を作った覚えはないのだが・・・ それに男だけで良いであろう」

女「ダメです、お二人で。 女神様と大神官様なんですからネ」

店主「そうですよ、昨日夜中に官僚達にカメラ持ってこさせたんですから」

男「わざわざそんなことを・・・」

女「ささっ、早く神壇へ。 朝食が冷めてしまいます」


男「もう~」テクテク

神様「わ・・・ わたしもか?」

店主「もちろんですよ」

女「女神様も神壇へどうぞ」

神様「私は写真を撮っても写らないぞ?」

女「写るようになんとかして下さい」


神様「え~っ・・・」


男「ここで良いですか?」

女「はい、あっ女神様? 御衣装を」

神様「着替えるのか!?」

女「さっ、お召し替え下さい」


神様「うっ~ ///」

 ポワッ

神様「コレで良いか・・・?」

女「はい」ニコッ


男「さすが女神様。 その格好よく似合うよ」

神様「う・・・ 嬉しいことを言う。 お・・・ 男も・・・ 似合ってるぞ ///」


店主「んじゃ、撮りますよ~」

女「笑って下さーい」


男「・・・・・・」ニコッ

神様「・・・・・・」ニコッ


 ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ


神様「ちょ、何枚撮っているのだ!」

男「店主さん、撮り過ぎ・・・」


上げる前に消すはずだった部分を投下してしまい書き直しながら進めてます。
なんかすいません。
でも全体の2/3は終わってるはず・・・


――― 研究所・2日目・朝食

神様「その金目鯛の煮付け美味しそうだな」

男「うまいに決まってんじゃん」モグモグ

神様「・・・・・・」

 パチッ

男「うひゃ!」ビクッ

男「ちょっと! なんで静電気出すの!!」

神様「私ではない、自然の静電気だろ」

男「絶対嘘だ。 タイミング的に神様しかいないって!」


神様「さて、食事しながらで良いので聞いて欲しい」

男「うめ~ 金目鯛の煮付けうめ~」

 バチッ

男「うひゃい!」ビクッ


神様「先ほど男と話をした件に関して報告しようと思う。 話をしても良いだろうか男よ」

男「ん? あ~良いと思うよ」

神様「うむ」





神様「という訳だ」

女「仮死状態・・・」


店主「一つ気になることがあるんですが」

神様「なんだ?」

店主「幼ちゃんはアカシック接続に必要なエネルギーはどうやって得てるんです?」


神様「お菓子だ」


店主「・・・・・・」

男「・・・・・・」

女「・・・・・・」


神様「? お菓子だ」

店主「えぇ、聞こえました」


男「お菓子でエネルギー取れるの?」

神様「正確に言えば糖分であるが。 技術的には100年以上は先のものであろう。 羨ましい。」


男「じゃぁ、神様もエネルギーを別の方法で取れば良いじゃん」

神様「私は・・・ 必要ない」

男「糖分をタンクかなんかにいっぱい入れてさ」

神様「私のエネルギーは異なる仕組みのため無理だ」

男「だってエネルギーの残り3ヶ月切ってるんでしょ? 何とかしないと」

店主「!?」

女「!?」

男「あっ」


神様「よい。 男が言ったとおり私のエネルギーは残り少ない」

女「そんな・・・」

店主「では、女神様のエネルギー問題を解決する方が先じゃ?」


神様「いや、いいのだ。 私は放っておいても先はそれほど長くない」

男「え!?」


神様「私は2025年に自動停止するようプログラムされている」

男「なんで・・・」

神様「そうでないといけないのだ。 私も詳しく話してしまいたいのであるが・・・」

神様「プログラムで禁じられており解除できない」


神様「もう1つ、ついでだ暴露する。私のアカシック接続が1%を切った」

女「そんなに少なく・・・」

神様「ほとんど小箱の機能しかない状態だ」

男「・・・・・・」


神様「未来の技術を取り出すことは出来ないが・・・ 今の科学技術だけでも十分やっていけると信じている」

男「神様・・・」

神様「心配するな。 ひよっこニセ女神と200年以上女神として生きてきた私とでは格が違うぞ?」


神様「さて、ではそれぞれ作業に取りかかろう」


――― 研究所・2日目・技官室

 ガチャ

男「店主さん居ます~?」

店主「おう、奥に居るぞ」


男「うわっ、すげー」

店主「凄いだろ。 こんな設備を持ったところなんて世界中探してもここだけだ」

男「なんか見たことない装置ばっかり」

店主「70年前に作られたくせに、最新のシステムですら制御可能とはビックリだ」

男「どんな仕組み?」

店主「オレにもさっぱりだ」


店主「だが操作方法は簡単だし、何かあったときの対処方法も分かりやすい」

男「へぇ~」


店主「でだ、男に頼みたいことはこれだ」ドサッ

 バラ バラ

男「あ~ ファイルが制御盤の上に落ちましたよ」

店主「おぉ、いけね」

男「これは?」ペラッ

店主「超厄介な電磁波照射施設の資料だ」

男「何をすればいいんです?」

店主「何とかして穴を見つけたい」

男「そうですよね」


店主「一緒に考えてくれ」

男「オレも?」

店主「そうだ。 当然オレも考えるが全くお手上げだ」

男「そんなCERNの技術者でも分からない物をどうやって?」

店主「どうにかして?」

男「・・・・・・」


店主「思いついたことを手当たり次第調べて欲しい。 そのための施設だ」

男「でも、ここの機械の使い方なんて分かんないですよ?」

店主「やりたいことを聞いてくれ。 使い方は教える」

男「すさまじい無茶ぶりっすね」

店主「こういうのは頭の固くなったジジイより若いやつの方が良い閃きをするんだ」


男「え~・・・ でも、これって神様が調べた方が早いんじゃないですか?」

店主「そうかもな」

男「じゃぁ」


店主「女神様は完全にオーバーフローだ、回線だって男のスマホ経由なんだぞ?」

男「まぁ確かに」

店主「今まで携帯の回線だけで無茶してたんだ。 エネルギー消費も凄かっただろうよ」

男「そうなんだ・・・ 神様そんなこと全然言わないから」

店主「心配させたくなかったんだろ」


男「神様のエネルギーってやっぱり増やす事って出来ないんですか?」

店主「どうなんだろうな~ オレは小箱を見たことないから何とも言えないが」

男「でもこのままじゃ神様が・・・」


店主「・・・ 女神様が隔離されたときの話は聞いているか?」

男「神託を独占しようとしたヤツの計画だってくらいです」


店主「そいつは女神さまの第1神官だったんだ」

男「え?」

店主「一番信頼していたヤツに女神様は裏切られたんだ」

男「そんな・・・」


店主「BSCに買収されてたんだよ」

男「買収!?」

店主「あいつは他の神官全員を拘束して女神様に交換条件を出しやがった」

男「交換条件?」


店主「自分を大神官にすること」

男「大神官・・・」

店主「俺は神官じゃないから詳しくないが、大神官は女神様の神託を思い通りに聞き出すことが出来るそうだな」


 ――― 神様「女神は大神官にその知識を隠さず話すことを誓う。」


男「・・・・・・」


店主「そんなことが出来りゃ、怖いもんなしだ」

男「で、神様は?」

店主「断ったさ。 当たり前だ」

男「・・・・・・」


店主「そして、あいつはメガミーラインと小箱が繋がる回線を全部遮断した」

男「そんなこと出来るの?」


店主「女神様自身に二度と接続できないように壊させたんだ」

男「なんで神様はそんなことを」

店主「この先存在を確認したら神官の命の保証はないと言いやがった」

男「・・・・・・」


男「でも、神官はみんな助かったんでしょ? 女さんが言ってたよ?」

店主「あぁ、やっつけたよ」

男「?」

店主「やっつけた」

男「店主さんて、肝心なところを端折る癖ありますよね」

店主「そうか?」


店主「その後、みんなで必死になって女神様を探したんだけどな」

男「見つからなかったと・・・」

店主「女神様のいる・・・ 神殿っていうのか? その場所も分からねぇし、どんな通信で呼びかけても返事は無かった」


店主「男が女神様を見つけてくれたんだろ?」

男「まぁ、偶然ですけどね」

店主「女神様ビックリしたんじゃねぇか?」


男「・・・ 神官は皆無事か?!って」

店主「?」


男「俺と会ったときの神様の第一声です」

店主「そうか・・・」


男「信頼していた人に裏切られて、50年以上も一人隔離されてそんな仕打ちをされても・・・ まだ他人の心配するなんて・・・」

店主「・・・・・・」フッ

男「凄いですよね神様って」

店主「違いない」

男「・・・・・・」

店主「・・・・・・」


店主「さて、何でこんな話をしたてるんだろうな~?」

男「神様の力が弱っているってところから脱線しました」

店主「あ~、そうか」

男「でも、昔の話聞けて良かったです」

店主「まっ、これ以上は女神様に負担はかけたくないってことだ」

男「そうですね」

店主「だからコレは俺とお前でカタを付けたい」

男「はい」


店主「よし、ところで、女神様は男の学校に行っていたんだろ?」

男「えぇ、一緒に旅行も行きましたし部活も参加してましたね」

店主「へぇ、どんなだったんだ? 高校生女神様は」


男「・・・ この会話って神様聞いてないですよね?」

店主「聞こえていたらとっくに怒鳴り込んできてるよ」フッ

男「まぁ、そうですよね」


男「神様って、ああ見えて乙女趣味で、照れ屋で褒めるとすぐ赤くな―――」

神様「オルァァーーーー! 男!! お前何を言ってるんだーーー!!」スッ

男「げっ! 神様?!」

神様「げっ、ではない! 覚悟しろ! 神罰だー!!」

 バチッ バチッ バチッ バチッ

男「やっぱ聞いてんじゃんよーーー! 痛い! 痛い!」

神様「所内放送くらいオフにしておけーー!」


店主「あっ、ごめ~ん男・・・」ポチッ


 ヨロヨロ

女「あら、お二人とも生きてらっしゃったんですか?」

男「カロウジテ」

店主「ミギニオナジク」


女「なんか歩き方おかしくありません?」

男「ハイ、正座で仕事をしておりました」


神様「自業自得だ、あほ」フン

女「まぁ」フフッ

神様「執務室にいる。何かあれば連絡を」スッ

女「はい」


男「・・・・・・」


 ギィー

男「神様いる?」

神様「なんだ、何か用か?」

男「ちょっと時間良い?」

神様「あぁ」


男「さっき、店主さんから昔のことを聞いた」

神様「・・・所内放送をオンにしてベラベラ喋っていた件か?」

男「やっぱ最初っから聞いてた?」

神様「ハァー、全て本当のことだ」


男「オレが大神官なんかで良いの?」

神様「・・・・・・」


男「神官を全員人質に取られても拒否したんでしょ?」

神様「・・・・・・」


男「神様が50年以上も隔離されてまで護ってきた職なんでしょ?」

神様「・・・・・・」


男「そんな大切な大神官がオレみたいな高校生なんかに―――」

神様「勘違いするな」

男「!?」


神様「大神官は私が決めることだ。他の誰でもない。私自身だ」

男「でも―――」

神様「私が男を大神官にしたいと思った。それだけだ」


神様「不満か? 私は223年の間で大神官はお前だけだと思っている」

男「神様・・・」

神様「男が大神官を辞めると言っても、私の中では消えるまでお前が大神官だ」


神様「深く考える必要は無い。 男は今まで通りの男でいて欲しい」

男「わかった」

神様「よし」ニコッ


男「じゃぁ、大神官から女神様に提案があります」

神様「なんだ、急に」

男「人手不足だと思います」

神様「うぐっ」


男「女さんに専属で人を付けることを提案します」

神様「しかしだなぁ」

男「オレは店主さんを全力でサポートしたいです!」

神様「そう簡単に人など・・・」

男「優秀な人を一人くらい捕まえてこれるでしょ?」

神様「う~ん」

男「考えておいてね。 女さん一人じゃ絶対しんどいって」

神様「分かった、大神官の提案だ。 受入れよう」

男「んじゃ、よろしく」

神様「まかせろ」



 スタスタ

神様「女よ、作業中にすまない」

女「何でしょう?」

神様「官僚達に届けさせてもらいたいモノがある」

 ガー ガー ガー

神様「今プリンターから出した」


女「あら、コレは・・・ 大丈夫なのですか?」ペラッ

神様「仕方あるまい。 我が大神官様からの提案だ」


――― 研究所・3日目

prpr prpr

女「はい・・・ はい、そうですか・・・ お待ち下さい」


女「女神様? 官僚さん達が例のモノを」

神様「そうか、ん~~ よし玄関から入ってもらえ」

女「玄関から入ってもらって下さい」

 プツッ


男「来客ですか?」

女「はい。 お迎えお願いできます?」

男「分かりました」スタスタ


 ガチャ


男「・・・・・・」


妹「あっ、にーちゃん」

神様「ようこそ妹よ」

妹「神ねーまで、ここって廃墟じゃなかったの?」


男「神様? 状況が飲み込めないのですが」

神様「紹介する。 新しい神官だ」

男「なんで? ねぇ何で?」

神様「妹に女のサポートを任せることにする」

妹「すごーい、この中ってこんな風になってたんだ~」


神様「妹よ、コチラへ」

妹「うん」


 スタスタ

女「あら?」

店主「お?」


神様「紹介する。 今日から新しく仲間に加わる妹だ」

妹「?」キョトン


男「なぁ神様?」

神様「なんだ」

男「妹キョトンとしてるんだけど、事情は知ってるの?」

神様「心配するな」


神様「妹、期間は短いがここでアルバイトをしないか?」

妹「バイト?」

神様「そうだ、公共の仕事で1日2万円出る」

妹「にまんえん!?」グワッ

神様「住み込みになるが、3食昼寝付! 最高級の温泉と豪華な個室も用意する」

妹「やります! やらせて下さい! 神ねー様」キラキラ


神様「どうだ、これが女神の交渉術だ」フンスッ

男「なんだよソレ・・・」


神様「では、女から仕事を教えてもらいながら頼む。 よいか?女」

女「もちろんです。 ありがとうございます女神様」


男「神様、おれもお駄賃欲しい」

神様「あ゛?」ギロッ

男「・・・無給で大丈夫です。 でも私めにもお昼寝タイムを・・・ 豪華な個室を・・・」

神様「男は店主につきっきりで仕事をこなせ。 そうしたいのであろう?」


神様「さっ、妹よ自己紹介を」

妹「あっ、妹と言います。高校1年16歳、そこにいる男の妹です」

女「女です」

店主「オレは店主、都内でセレクトショップを経営する社長だ。 ヨロシクッ」キラッ

男「セレクトショップって・・・ 秋葉の一坪しかないガラクタ屋じゃん・・・」


妹「あれ? 女さんってテレビに出たことあります?」

女「わたし?」

妹「あっ、この前にーちゃんが見てたサイエンス特番に出てた人だ!」

男「そうだっけ?」

妹「ノーベル賞に一番近い日本人!」

店主「ほー」

女「そういえばテレビの取材を受けたことがあったわね」

妹「すご~い」


女「世間が大げさに言っているだけよ?」

店主「またまたご謙遜を。 ところで妹ちゃん、オレのショップで働く気は―――」

妹「ちょっとにーちゃん、こんな凄い人と知り合いだったら紹介くらいしてよ!」

男「いや、俺も会ったの最近ですし」


店主「オレの店はなぁ、山手線エリアで立地も良いし休日なんて客もかなり―――」

妹「神ねー!」

神様「なんだ?」

妹「私、女さんと一緒に仕事しても良いの?」

神様「もちろんだ。仕事以外にも色々教えてもらうといい」


女「よろしくね、妹ちゃん」ニコッ

妹「はい! がんばります!」キラキラ

店主「・・・・・・」


男「ちょっと、神様~」

神様「なんだ」

男「何で妹なの? もっと適任くらいいるでしょ」

神様「適任ではないか」

男「そんなに探すの面倒だったの?」

神様「お前は分かっていないな。 自分の妹のすごさを」

男「はい?」

神様「あのゲームテクニックは、私を超えていた」

男「・・・・・・」

神様「瞬発力、先読み、状況判断・・・ うむ、実にすばらしい」

男「はぁ~」


――― 研究所・4日目

女「女神様、G-Waveをメガミーラインにテスト接続いたしました」

男「G-Wave?」

女「量子コンピュータです。 まだ実験中ですけどね」


神様「繋いでみても良いだろうか?」

女「どうぞ、動作テストをお願いします」

神様「では早速」

男「どう?」

神様「これは・・・」


女「何か不都合ございましたでしょうか?」

神様「いや・・・ 私が繋いでいる小箱の演算システムと似ている」ボソッ

女「?」


神様「素晴らしい。 プログラムの仕方によっては今までの10億倍は演算スピードが上がる」

男「10億倍って、次元が違いすぎるんですけど・・・」

神様「そもそもノイマン型と量子コンピュータでは仕組み自体が違うからな」

男「うん。 よく分かんないけど凄いって事だけは理解できた」

神様「あぁ、これで演算スピードが格段にアップできる」


女「では、明日から本格的な接続に入ります」

神様「よろしく頼む」


女「妹ちゃん、お手伝いよろしくね」

妹「はいな」


男「そうだ神様、店主さんが見てもらいたい物があるって」

神様「そうか、では一緒に行こう」

 スタスタ


妹「・・・女さん、ちょっと相談があるんですが」

女「?」


――― 研究所・4日目・深夜

 カタカタ カタカタ


妹「う~ん、コレじゃないな~」

神様「なんだ妹、こんな遅くまですいぶんと熱心だな」

妹「神ねー?」

神様「少し休んだらどうだ?」

妹「でも・・・」


神様「何か分からないことでもあるのか?」

妹「この部分なんだけどね~」


神様「どれ、あーこれか・・・ ここは先に時間補正が必要だ」

妹「時間補正?」

神様「高速で動くモノは時間がずれるのだ。 その補正をしなければいけない」

妹「そうなの?」

神様「あぁ。 よし、分かるまで教えてやろう」


神様「で、この数字を入力して出てきた結果をここに入れるのだ」

妹「なるほど~」


神様「他に分からない所はあるか? ついでだなんでも聞いてくれ」

妹「・・・神ねーって、凄いよね」

神様「これは私が設計した物だ。 知っていて当然だろう」


妹「そうじゃなくて・・・」

神様「?」


妹「私だったら何十年も一人でいられないもん」

神様「・・・女から聞いたのか?」

妹「うん」

神様「そうか」フフッ


妹「私の中の神ねーの記憶が変だったから女さんに相談して・・・」

神様「妹にも記憶操作は完全に効かなかったか」

妹「神ねー・・・ かわいそう・・・」

神様「妹は優しいな」


妹「にーちゃんのことも本当?」

神様「ははっ、それも女か?」

妹「・・・・・・」コクッ


神様「全く、おしゃべりだな女は。 男には内緒にしておけよ?」

妹「・・・・・・」コクッ

神様「神様との約束だ」


妹「ずっと世界を良くしようとがんばってたのに・・・」

神様「妹は優しいな」

妹「神ねー・・・ 人が良すぎる」

神様「神様だからな」


妹「女さん言ってたよ。 神ねーがいなくなってから科学技術の発展が停滞したって」

神様「買いかぶりすぎた」

妹「そんなことないよ」


神様「心配するな。 私などいなくても世界はまわる」

妹「・・・・・・」


妹「でも、神ねーがいなくなったらヤダ」

神様「これは自分でまいた種だ。 そして私でしか解決できない」

妹「神ねーがかわいそうすぎるよ」

神様「そんなことはないぞ? 今はとても楽しい時間を過ごせている・・・ って言うのは少し不謹慎か」


神様「だが私を気遣う妹の優しさ。 しかと受け止めた」

妹「神ねー・・・」


神様「心配するな、また会えるのだ。 その為にもこの件だけは解決したい」

妹「・・・・・・」


神様「お願いだ」

妹「・・・・・・」コクッ


神様「頼んだぞ、私の尊敬する妹よ」ニコッ


――― 研究所・5日目

妹「女さん、G-Waveに接続終わりました」

女「あら、ずいぶん早いわね。 結構じゃじゃ馬なはずなんだけど」

妹「色々試してみたんですけどM回線を経由したほうが安定しているんです」

女「あら、そうなの? ・・・本当ね、量子の安定度が高い」

妹「それとG-Waveから送られてくるこの信号なんですが―――


男「・・・・・・」

神様「どうしたんだ? 大神官様」ニヤニヤ


男「妹が格好いい」

神様「妹は非常に優秀だ。 女神時代に妹がいたら第1神官有力株だ」

男「そんなに優秀なの? オレ、ちょっとショック」

神様「何を言っているんだ大神官のくせに」

男「私、雑用ですが・・・」

神様「拗ねるな、拗ねるな。 男は男の出来ることをすれば良い」


神様「そうだ、女よ」

女「はい」

神様「G-Waveの件なのだが、少しだけいじってもらうことは出来るか?」

女「どの部分でしょうか?」

神様「いや、その・・・ 無理にとは言わないが少しだけ気になるところがあってな」

女「遠慮なくどうぞ」

神様「すまない。 光子を偏光する所なんだが0.00024度ほど内側にしてもらえると・・・」

女「すぐに対応いたします」

神様「女が設計した物であるのにお節介な発言をしてしまって申し訳ない」

女「そんなに畏まらないで下さい女神様」ニコッ


神様「しかし、すごい物を作った物だ」

女「女神様からそう言ってもらえて、お世辞でも嬉しいです」

神様「お世辞などではない」

女「他に気になるところはございますでしょうか?」

神様「ない、完璧だ。 コンピュータの歴史はこのG-Waveの登場で大きく変わる」


神様「きっと女が想像している以上に科学の発展に貢献されることになるだろう」

妹「すごーい」

神様「妹は量子コンピュータに興味があるのか?」

妹「うん、私ね~ 女さんがいる大学に行くことに決めた!」

神様「良い選択だ」


女「ふふっ、よろしくね妹ちゃん」

神様「女よ、妹が入学したら特別扱いをしてでもみっちり教え込んでやってくれ」

女「はい、承知いたしました」


男「え~、オレは~?」

神様「お前は、店主のセレクトショップでバイトでもしてろ」

男「なに、その格差!」


女「あら、店主さんはああ見えてもCERNの所長だったのよ?」

男「えっ! 所長だったの?」

神様「聞いてないのか?」

男「ただの技術者って言ってたよ?」

女「素粒子物理学の権威」


男「通りで神様があげたオーバーテクノロージーの機械を直せた訳だ」

神様「あれは、店主自らが一つ一つ解析しその時代の技術と部品を使い修復していった物だ」

神様「動作原理、その仕組み全てを把握している。 もはやオーバーテクノロジーではない」

男「へ~ ただのガラクタ屋じゃないんだ」


女「店主さんはすごい発明をいっぱいしているのに一つも特許を申請してないんですって」

男「なんで!」

女「自分の発明が特許によって障害になるのが嫌だって」

女「このG-Waveの光子偏光メカニズムだって店主さんが開発したものなのよ?」


男「科学者としては立派だけど、なんかもったいないな~」

女「この業界で変人って言ったら店主さんって、皆が分かる位の変人ですから」


店主「変人で悪かったな」

女「あら? いらしたんですか?」

店主「男、おまえ時給300円な」

男「せめて最低賃金は守って下さい」

女「はい、お茶どうぞ」コトッ

店主「あぁ」


神様「いま店主の口座に10億円振り込んだ。 これで男をよろしく頼む」

店主「」ブー

女「あら見事なお茶の吹き出し方ですね」

男「そのお金、直接オレにくれれば良いのに・・・」

神様「店主の今までの発明分を特許料として計算した結果だ」


――― 研究所・6日目

店主「クソッ、コレもダメか・・・」

男「結構良い線いってると思ったんですけどね」

店主「あぁ、さてと次はこっちを試すか」


 ガチャッ

妹「店主さん、にーちゃん、お昼出来た」

店主「もうお昼か」


男「あれ?」

店主「どうしたんだ?」

男「時計」

店主「時計?」

男「ちょっとズレてませんか?」

店主「ん? 本当だ。電波時計なのにな」ピピッ


男「!」ガタッ

店主「なんだ?急に」ビクッ

男「店主さん、メガミーラインで人工衛星の見方を教えて下さい」

店主「人工衛星?」


――― 研究所・6日目・昼

神様「緊急会議とは、どうしたのだ?」

店主「照射施設の破壊方法を見つけました」

神様「ほぉ」


店主「男、頼む」

男「施設の照射施設から毎日決められた時間に特定の座標に向けて電波が出てる」

神様「あぁ、全く厄介な事をしてくれる」

男「正確すぎると思うんだ」


女「どういうことかしら?」

男「時間、座標とも全く狂いがない」

神様「制御されていると?」


男「あぁ、でも双方向で通信する必要はない」

男「GPSだ」

女「位置情報と時刻の調整のためね」

男「そのGPS信号に破壊プログラムを乗せれば」

神様「信号を送れると?」

男「あぁ」


神様「店主よ、意見を聞かせてくれ」

店主「まだ1施設ですがGPSの取得を確認しました。 現状で遠隔破壊方法はこれしかないと思います」

神様「どのくらいで全て送信を終えられるか予想はつくか?」

店主「他の受信端末に影響が出ないように衛星の信号を改竄して・・・ 最大で3日」


神様「よし、早速準備に―――」

 ビーッ ビーッ ビーッ ビーッ

店主「なんだ?」

女「所内警報、妹ちゃんだわ」


 ダッ ダッ ダッ

妹「女さん、大変です!」ハァ ハァ

女「どうしたの?」

妹「メガミーラインにハッキングです!」

神様「!?」

男「ハッキング?」


女「ハッキングはどれ?」

妹「はい、画面に出します」


男「CP67の件だけでも手一杯なのに・・・」

店主「全くだ」


神様「??」キョロキョロ

女「どうなさいました? 女神様」

神様「ん? いや」

妹「出ます!」


 ボワン
 『ハロ~ 神ちゃん! 神託権ちょーだい』


店主「神託権?」

男「神様、意味分かる?」


神様「・・・・・・」

女「女神様?」

神様「ん? あぁ~、神託権というのはアカシックデータの複合鍵だ」

女「鍵・・・」

神様「アカシックから取り出したデータを外部に出す場合に必要となる」

男「外部?」

神様「そうだ。 そのために必要な物が神託権と呼ばれる鍵だ」


店主「まさか、幼ちゃん以外がアカシックからデータを・・・」

男「その鍵ってどこにあるの?」


神様「ん? あぁ~、そこの救急箱に入っている」

男「救急箱?」

 ゴソゴソ

男「どれ?」

神様「小森製薬<でるで~る>の箱の中だ」

女「・・・・・・」

店主「・・・・・・」


男「なんで便秘薬と一緒に・・・ しかも普段妹が使ってるヤツじゃん」

妹「神ねー、神罰」

 パチッ

男「うひゃ!」ビクッ


神様「その11489と書かれたカプセルが神託権となる復号化キーだ」

男「こんなとこ入れておいたら間違って妹か飲んじゃうじゃんよ」


店主「失礼とは思いますが、そのような大事な物はきちんと保管した方が良いかと・・・」

男「そうだよ、神様。 さすがにこれはないわ」

神様「灯台下暗しというではないか」

男「いや、それは・・・」


妹「あと神ねー、もう一つ気に―――」

神様「―――」シィーッ

一同「?」


神様「(皆、声を出さずに隣の部屋へ移動してくれ)」

神様「ではお昼を食べながら作戦会議だ。 いざ食堂へ」

 スタスタ


男「ちょっと、何? どうしたの神様」

妹「神ねーものすごい芝居臭かったけど」

 ボンッ

女「?」

店主「爆発? メガミーラインの制御卓から煙が!」


神様「心配するな、私だ」

男「何してんの!」

神様「傍受ソフトが進入していた」

男「え? じゃぁさっきの会話が外に漏れてたって事?」

神様「そうだ」

男「鍵のことバレちゃったじゃん」

神様「ん? あれは嘘だ。神託権などという仕組みは存在しない」

女「女神様、傍受を知っていてお芝居を?」

男「なんでありもしない鍵なんか要求してきたのさ」

神様「私が仕込んだ偽情報に引っかかったのだ」

女「偽情報?」


神様「流出した神託記録の中に小箱の偽仕様が入っている」

店主「トラップですか」

神様「そうだ」

男「よくそんなこと思いつくね」

神様「伊達に長生きしてきた訳ではない」


男「でも機械を壊さなくても・・・ どうすんの? メガミーライン」

妹「うわ~ん、せっかく使い方覚えたのに~」

神様「心配するな。 全く同じ物があと5台ある」

妹「そうなんだよかった。 あっ、それよりもう一つハッキングが」

女「さっきのだけじゃないの?」

妹「はい」

神様「中央制御室へ行こう」


女「もう一つのハッキングはどれ?」

妹「D回線の・・・ あった、これです」


女「特に変わった信号では無いと思うんだけど」

神様「私も妹に言われ3回チェックしてようやくそれっぽい信号を確認できた」

女「女神様の脳波パターンと同じね」


妹「でも、神ねーが複数の回線を使っている時にこの振幅は変なんです」

男「そうなの?」

女「そうなんですか、女神様?」

神様「そうなのか? 妹」

男「・・・・・・」


妹「うん、複数の回線を使うときはもの凄いスピードで切替えがあるの」

妹「でもこの信号にはそれがなくてずっと一定で繋がってるんだ」

妹「おかしいと思って調べてみたら、このファイルが」

神様「妹、そのファイルを小箱に流してもらえるか?」

妹「うん」


神様「・・・・・・」

男「何か分かった?」

神様「大量のノイズに包まれているが・・・ テキストファイルがある」

男「なんて書いてあるの?」


神様「・・・・・・」


女「女神様、どうかなされましたか?」

神様「男、ごめんなさい」

男「どうしたの、急に謝ったりして」

神様「ファイルの中身を読んだだけだ。 幼の意識パターンも検出できる」

男「!?」

店主「幼ちゃんに意識がある!?」

神様「脅迫文を送ってきた脳波パターンと、添付ファイルの脳波パターンが微妙に違う」

男「どういうこと?」

神様「まだ何とも言えないが・・・ 少なくとも添付ファイルの方は幼のオリジナルであると思う」


店主「オリジナル?」

女「まさか、2つの人格!?」

神様「いや、性格や記憶に関する部分は共通で命令を出す部分だけが2つあるのであろう」


女「第三者が幼さんを操ってると?」

男「それって幼の背後に誰かがいるって事じゃ」

神様「あぁ、黒幕ありということだ」

店主「一体誰が」


神様「女よ、脅迫文の発信元は突き止められるか?」

女「ログを出します」

店主「どうだ?」

女「座標軸にある建物は・・・ 県立第一高校?」

男「第一高校って、うちの学校じゃん」


妹「これ、たぶんトラップだよ」

男「トラップ?」

幼「うん、幼さんの方の添付に付いてるキーを入れると・・・」

店主「座標が変わった?」

神様「地図を拡大してくれ」

女「はい」

神様「・・・ BSC病院付属脳科学センターか」

男「BSC!?」


女「やはりBSCが裏で・・・」

神様「少し厄介なことになったな」

男「厄介?」

神様「CP67の件と、幼の件が一つに繋がってしまったということだ」


店主「引っかかることがあるのですが」

神様「なんだ?」

店主「なぜBSCは幼ちゃんからアカシックの情報を引き出せないのでしょうか」

男「確かに、わざわざ小箱から引き出さなくても幼から直接聞けば済むじゃん」


神様「神官制度・・・ 脳波登録による認証機能だ」

男「神官・・・」


神様「小箱に脳波登録された者以外に神託を出すことは出来ない」

店主「そうか、それで小箱から直接抜き出そうと」

神様「そう考えるのが妥当だ」


男「幼がBSCの奴らを登録しちゃうとマズいね」

神様「それはないだろう」


男「なんで?」

神様「幼の意識が不安定すぎて正常登録がうまくできないのであろう」


神様「しかし、本来の幼の意識の方がゆっくりとではあるが覚醒に向かっているようだ」

店主「それは良かった」

神様「・・・いや、かなりまずい状態だ」

男「え? 良いことじゃないの?」

神様「意識と肉体を持ってアカシックと接続することは出来ない」

男「あっ」

神様「幼の意識レベルがこれ以上覚醒に近くなると体が持たない」


女「覚醒レベルになるまでどのくらいの猶予が」

神様「3日、いや2日以内に幼と小箱を切断する必要がある。 今の幼には相当負担がかかっているはずだ」

女「早すぎますね」

店主「CP67より幼ちゃんの救出を優先ですね」


神様「念のためGPSを使ってCP67に信号を送る作業は並行して進めてほしい」

店主「分かりました。 2日で終わらせます」

神様「偽情報に乗っかってくれたお礼に、こちらも彼奴らの策に乗ってやろう」


――― 研究所・6日目・夕方

女「女神様、文面はこれでよろしいでしょうか?」

神様「どれ」


男「『幼へ 鍵を渡す 明日14時に第一高校 科学部準備室で待つ』」


神様「大丈夫だ。 妹よ送信を頼む」

妹「はいな」ポチッ


男「なんでうちの高校? しかも部室じゃなくて準備室って」

神様「ここから高校まで車で5分、出来るだけ近い方が都合が良い」

神様「そして科学部の準備室は狭い。これも重要だ」


妹「返信来ました!」

男「早っ!」

女「りょ。 とあります」

神様「よし」


神様「店主よ、今日中に官僚達に言ってサイクロトロンを準備させてくれ」

店主「サイクロトロン!?」

 ガー ガー ガー

神様「プリンターから出した手順でRIを生成し<でるで~る>に混ぜて欲しい」

店主「RIですか?」

神様「あぁ、それと一緒に出した設計図の物を超特急で作って欲しい」

店主「了解です」


神様「それと男、幼が涙が出るほど欲しがっている物を探して準備してくれ」

男「知らないよそんなの・・・」

神様「分からなければ幼の親友にでも聞いて何が何でも準備しろ」

男「何の役に立つの~」

神様「それはお前の気持ち次第だ」

男「?」


神様「女と妹、話がある。 神託の間へ来て欲しい」

女「はい」

妹「うん」

 スタスタ


神様「さて、女と妹に作戦を話す」

妹「店主さんとにーちゃんはいいの?」


神様「あの二人は絶対に反対するであろうからな」

女「女神様・・・」


神様「名付けてメガミープラン」


――― 研究所・6日目・夜

 prpr prpr
 ガチャ

男「もしもし~、男だけど」

幼友『どうしたの? 珍しいね』

男「幼の件でちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」

幼友『幼?』

男「あいつが一番欲しがってる物って知ってる?」

幼友『は?』

男「いや、幼がのどから手が出るほど欲しがってる物」


幼友『なに? プレゼントの相談?』

男「そういうわけでもないんだけどさ」

幼友『ふ~ん』

幼友『来月幼の誕生日だもんね』

男「え? そうなの?」

幼友『・・・・・・』

男「ちょ、なんで無言」

幼友『嘘でしょ? 知らないの?』

男「あ~そう言えば1月だった気がする」

幼友『は~っ、それは幼がかわいそうだよ』

男「そんなクラスのヤツの誕生日なんて覚えてないって」


幼友『他のヤツは良いかもだけど幼は覚えておかないとダメだよ』

男「なんだかんだで付き合い長いし、なぁなぁな感じなんだよな~」

幼友『あんたこの前の誕生日プレゼント幼からもらってたでしょ』

男「ん? なんかもらったっけ」

幼友『スマホの壁紙』

男「あ~ これって誕生日プレゼントなの?」

幼友『私が言って良いのか分からないけど、それ描くの何ヶ月もかかっているんだよ』

男「え? 写真じゃないの?」


幼友『暇を見つけてプラネタリウム行ったり、一緒に流星群見に遠くまで出かけたり』

男「・・・・・・」

幼友『毎年壁紙もらってるんでしょ? 』

男「そう言われれば・・・」

幼友『壁紙だったら無くさないし毎日見てもらえるからって』

幼友『毎年アンタが興味持ってるモノ調べて作ってるんだよ?』


男「何でそこまで・・・」

幼友『そんなの決まってんじゃない』

男「・・・まじで!?」


幼友『今年はあんた都市伝説にはまってるから、冬休みににゅうにゅう神社に行くんだって』

男「・・・・・・」

幼友『はぁ~、アンタからもらえるんだったら幼はなんだって喜ぶよ』

男「はい」

幼友「後は自分で考えなさい」

男「はい」


――― 研究所・7日目・朝

 prpr prpr
 ガチャ

女「はい」

官僚『サイクロトロンの設置が終わりました』


女「店主さん、サイクロトロンの設置完了したそうですよ」

店主「お~、待ってました。 今行くと伝えてくれるか?」

女「今、技術の者が伺いますのでお待ち下さい」

官僚『分かりました』


男「サイクロトロンって何?」

店主「加速器だ」

男「加速器って、あの素粒子を加速するヤツ?」

店主「よく知ってるな」

男「一応科学部ですし・・・ っていうかそんなもん何に使うんです?」

店主「ラジオアイソトープを作る」

男「らじお?」

店主「検査用の薬品だ」


店主「<でるでーる>に混ぜて幼ちゃんに飲ませる」

男「大丈夫なんですか?」

店主「問題ない」


神様「準備が整ってきたな」スッ

男「あっ、神様」

神様「店主よ、1時間で準備できるか?」

店主「大丈夫です」

神様「よし男よ、1時間後に出かけるぞ」

男「うん」

神様「女よ、官僚に車をまわすように言ってくれ」

女「承知いたしました」


 ギィー

男「う~ん、久しぶりのお外」


官僚「お車の手配できております。 どうぞ」

神様「うむ」

運転手「どちらへ向かいましょう」

神様「第一高校まで頼む」

運転手「はい、では出発いたします」


神様「官僚よ、高校の見張りは問題ないであろうな」

官僚「はい、昨日ご指示を頂いてから今まで学内への出入りは誰もございません」


神様「BSC病院の調査の方はどうだ」

官僚「付属脳科学センターに幼という少女が今月1日に急患で運ばれています」


神様「私が調べた限りでは病院のデータベースに該当がなかったようだが」

官僚「はい、データベースには記録がありませんでしたが119の指令に記録がありました」

神様「間違いないのか?」


官僚「近くのぬめぬめ病院へ搬送する予定だったようですが・・・」

官僚「簡易脳波チェックのシートを送った途端BSC病院から受入れ希望があったようです」


神様「その際の状況は分かるか」

官僚「はい、にゅうにゅう神社前で倒れていたようです」


男「にゅうにゅう神社!?」

神様「・・・・・・」


神様「官僚よ、その神社の周辺地図を見せてくれ」

官僚「はい。 地図で言うと・・・ あったココです」パラパラ


神様「この下には大きな泉源がある」

男「泉源?」

神様「研究所の温泉はここから引いている。 非常に強い硫化水素泉だ」


神様「52年前までここは研究所の管轄で、年に1度だけ地下からガスが吹きだすため禁足地に指定していた」

男「ガス・・・」


神様「大量に吸い込むと死に至るほどの濃度だ。 そして今月の1日にガスが吹き出している」

神様「恐らく幼は何かの理由で敷地に入りガスを吸い込んだのであろう」


男「俺のせいだ・・・」

男「俺がにゅうにゅう神社の都市伝説に興味を持っていたから幼は・・・」


神様「・・・・・・」


神様「官僚よ、続けてくれ」

官僚「はい。 救命士の確認で発見時の意識レベルは200、朝6時に脳科学センターへ搬送されています」

神様「なるほど」


官僚「その後、朝7時に少女は病院から出て行っています」

神様「意識レベル200の人間が1時間後に退院・・・ そこで幼の脳に小細工をしたのだな」


神様「よく調べた。 もう少し早くお前達を頼っていれば良かったな」フッ

官僚「? ありがとうございます」


神様「男よ、幼は生きている。 そして絶対に助ける。 今は目の前のことだけに集中しろ」

男「・・・・・・」

神様「心配するな、幼が絶対に死ぬことはない。 私が保証する」

男「・・・分かった。 ありがとう神様」


運転手「お待たせいたしました、到着です」

神様「よし、荷物を頼む」


――― 第一高校・科学部準備室

 ガチャ ガチャ

神様「男はその装置をここに設置してくれ」

男「はいよ」


神様「官僚と運転手はそのセンサーを一定間隔で部屋中に敷き詰めてほしい」

官僚・運転手「はい」


 ガチャ ガチャ

男「神様、こっちは終わった」

官僚「こちらも終了いたしました」


神様「よし。 皆その茶箱に入っている無線機を片耳に装着してくれ」

男「ちっちゃいね」

神様「研究所にいる女と店主、妹とも通話が出来る。 官僚と運転手も付けろ」


官僚「女神様、私たちはすでに片方の耳にレシーバーを入れているのですが・・・」

神様「あ? 耳はいくつあるんだ?」

官僚「失礼しました!」

男「・・・・・・」


神様「あーあー、 店主聞こえるか?」

店主『はい、聞こえます』

神様「検出器に問題がないかそちらからリモートテストしてくれ」

店主『2分後に計測を開始します』


神様「男、その鉛の中に入っている容器を取り出して中心に置いてくれ」

男「これ?」

官僚「核物質ですか?」

男「核?」


神様「校正用線源だ、そんなにビビるな」

男「いや、怖いって・・・」


店主『女神様、校正完了しました』

神様「よし」

店主『すごい精度ですね、この検出器・・・』

神様「私オリジナルの再構成関数だ」


神様「官僚と運転手は気付かれないよう車で待機していてくれ」

官僚・運転手「はい」スタスタ


神様「さて、男よ説明をする。 その黄色い箱を開けてくれ」

男「これ?」パカッ

神様「幼に渡すカプセルだ」

男「<でるでーる>だね」

神様「よし、蓋を閉めろ」

男「?」パコッ


神様「放射線が出ているのでな」

男「だからそう言うことは事前に言って欲しい訳で」

神様「部長のマネか。 こういう時でもユーモアセンスを忘れない男には頭が下がる」

男「いや、マネじゃないし・・・」


神様「その薬には店主が先ほどサイクロトロンで作ったものが混ぜてある」

男「ラジオ何とか?」

神様「RI、ラジオアイソトープだ。 幼が来たら早めにそれを飲ませて欲しい」

男「ここで飲ませるの?」

神様「そうだ。 それは作ってから110分で効果が半減してしまう」

男「もう50分は位経ってるよね」


神様「幼がそれを飲んだら今敷き詰めた検出器が幼のスキャンを開始する」

男「へ~ そのための検出器なんだ」

神様「スキャンは最低2分、できれば3分は欲しい」

男「なるほど・・・」

神様「何とか時間を稼ぎたい」


男「あ~、それで幼にプレゼント渡せって言ったの?」

神様「それもあるが、男からプレゼントをもらえれば・・・ もしかしたら・・・」

男「?」

神様「幼の意識に何か変化が見られるかも知れないと思ってな・・・」

男「・・・・・・」


男「神様もしかして―――」

官僚「女神様、少女が一人正門をくぐったようです」

男「幼?」


 ガラガラ

幼馴染「ハロ~」

男「・・・・・・」


幼馴染「早速で悪いんだけど神ちゃん、鍵ちょーだい」

神様「男、カプセルキーを」

男「ほら鍵だ。 大きく口を開いとけよ」ポイッ

幼馴染「お~! ありがと」パクッ


神様「(店主、スキャンを開始してくれ)」

店主『はい』


神様「神託権の鍵は脳内に特殊なブドウ糖が一定量を超えた場合に有効となる」

幼馴染「うん、知ってる」


神様「そうか、よく調べたな」ニヤッ

幼馴染「・・・・・・」


神様「神託記録だな?」

幼馴染「・・・・・・」


神様「まぁよい。 漏れてしまった物は仕方がないし私の責任だ」

幼馴染「これ以上は神ちゃんと話すと良くないみたいだから帰るね~」

神様「まて、男からお前にプレゼントがあるそうだ」

幼馴染「え? なになに??」クルッ


男「・・・・・・」

神様「どうした?」


男「・・・幼! 好きだ、オレと付き合って下さい!」

神様「んなっ!!」

幼馴染「ふぇ?」


男「お願いします! ずっと好きでした!」

幼馴染「・・・・・・」バタン


男「幼? おい大丈夫か?」

神様「・・・・・・」


男「神様、幼が!」

神様「でかしたぞ、男」


神様「(幼、聞こえるな? 30秒後に小箱が再起動する。そのまま聞いてくれ)」

神様「(奴らが小箱から情報を引き出そうとするだろう。脳波登録して拒否せずデータを復号化して渡してやれ)」

神様「(始末はこちらでつける。 絶対に助けてやる、もう少しの辛抱だ)」


幼馴染「う~ん・・・」ムクッ

男「幼! 大丈夫か?」

幼馴染「もう、変なこと言わないでよ~ 暴走しちゃったじゃないか~」


神様「一つ忠告だ」

幼馴染「なに~?」

神様「アカシックデータの取り扱いはお前達にはまだ早すぎる」

幼馴染「達って、だれに言ってるの?」

神様「肉体を維持しながらアカシック接続するのは負担が大きすぎるぞ」


神様「今の技術では接続エネルギーを調達し続けられない。 悪いことは言わな―――」

幼馴染「それなら大丈夫~、CP67で何とかするよ」


神様「CP67?・・・ まさか、お前達次元転換を使ってエネルギーを得るつもりか!」

幼「さっすが神ちゃん! やっぱCP67でなんとか出来るんだ~」ニヤッ

神様「・・・・・・」クッ


幼「逆転! じゃ帰るね、鍵と情報どうもありがと~」

神様「まて!」

幼「あっ、10分以内にここから出ようとするとちょっとマズいことになるよ?」

神様「!」

幼「ばいば~い」スタスタ


男「神様、幼は一体・・・」

神様「店主! 聞こえるか」

店主『はい』

神様「急ぎ照射施設の動きを調べて欲しい」

店主「承知しました」


神様「女よ」

女『はい』

神様「画像再構成プログラムを送る。集計したデータのレンダリングを頼む」

女『承知いたしました』


神様「官僚聞こえるか!!」

官僚『はい』

神様「幼が今から出て行く。 気付かれても良い、誰かに尾行させろ」

官僚『承知いたしました』


男「神様? 結構マズい感じ??」

神様「やられたー! 敵に情報を与えてしまった!!」ジタバタ


男「やっぱり・・・ オレが変なことを幼に言ったから・・・」

神様「あの告白は予想以上にパンチがあったな」


男「ごめん・・・」

神様「逆だ。 あれで幼の脳波が乱れ小箱との接続が一瞬切れた」

男「それで倒れたんだ」


神様「お陰で幼に伝言を伝えることが出来た」

男「幼は助かる?」

神様「そのために私はいる。 一度研究所に戻るぞ」


官僚『女神様、聞こえますでしょうか・・・』

神様「なんだ」

官僚『尾行対象の少女ですが・・・ その・・・』

神様「どうした」

官僚『公衆トイレに入ったまま出てこないとの報告が』

神様「ふっ、計画通り」ニヤッ


―――研究所

女「女神様、お帰りなさいませ」

店主「幼ちゃんは」

神様「尾行を付けさせている」

男「定期的にトイレに駆け込んでいるみたいです」


妹「<でるで~る>の威力は凄いんだよ」

男「便秘薬じゃなくて、それもう下剤だろ・・・」


女「女神様、幼さんの脳活動データのレンダリング終わりました」

神様「見せてくれ」

女「妹ちゃん、お願い」

妹「はいな」

男「うわっ、すげ~。 脳みそだ」


神様「妹よ、集計開始から3分15秒目までを早回しで見せてくれるか?」

妹「ほいさ」

神様「・・・・・・」

男「何か分かった?」


神様「右の画面にサイン波だけ出して欲しい」

妹「う~・・・」


女「マウスでグジュグジューってやる前のデータよ」

妹「あ~、任せて!」

神様「よし、上出来だ」

男「なんだこりゃ・・・」


神様「やはり男も気になるか」

男「たぶん、神様の思っていることと俺の思っていることは違うと思う」

神様「・・・・・・」


神様「幼の意識と小箱の間に何かあるな」

男「何?」


神様「幼の覚醒意識領域を黄色に着色する」

男「ほとんどないね・・・」

神様「そして、その他の活動領域を赤くする」

男「うわ、真っ赤になった」


女「これは一体・・・」

神様「意識がほとんどないのに活動していると言うことだ」

男「どういう意味?」


神様「幼が倒れたときの撮像画面を」

妹「ほい」

男「赤い領域が一気になくなった!」


神様「小箱の接続が一時的に切れたためだ。 間違いないな・・・」

男「間違いないって?」

神様「赤い部分は幼の意識を元に構築された仮想領域だ」

男「仮想領域?」


神様「脳がハッキングされている」

男「ハッキング? そんなこと出来るの?」

神様「ELF波を使っているのであろう」

店主「しかしELF波で通信だなんて1文字送るだけでも何分かかるか・・・」


男「いーえるえふ?」

神様「あぁ、すごく波長の長い電磁波だ。 シューマン共振と同じだ」

男「シューマイ?」

神様「シューマン! 地球上で常に伝搬している波長の長い自然の電波だ」

男「ふ~ん・・・」


神様「ちなみに、ニコラテスラが予想しその後発見された物だ」

男「ニコラテスラって、CPなんとかを作った人じゃん」

神様「あぁ」


店主「まさか!」

神様「うむ。 CP67を使って幼の脳をハッキングしたのだろう」

女「そんなこと出来るのですか?」

神様「ELF波と紐付けした量子をCP67を使って次元伝送すれば可能だ」


男「CP67って何でも出来るの?」

神様「一見関わりのない現象のように見えるが基本原理は全て同じだ」

男「同じ?」

神様「アカシックも、シューマン共振も、脳波も全て根底は同じ物と言うことだ」


男「神様、もしかして今さらっとすごいこと言っちゃったりしてる?」

神様「深く考えすぎなのだ。 脳波とシューマン共振、脳神経細胞と宇宙構造」

神様「なぜ統合を考えないのだ?」

女「すみません」

店主「反省します」


神様「いや、お前達に言ったのではない。 その・・・ すまない・・・」

男「神様、格好悪い・・・」


神様「とにかくだ、照射施設を破壊する作業、幼と小箱の切断、意識回復の同時作業が理想と言うことだ」

男「それってかなり難易度高すぎな気が・・・」


神様「店主よ、照射施設への破壊プログラムの進行状況はどうだ?」

店主「アメリカ、ソ連、ブラジル、中国の4箇所には送信を終えています」

店主「残り日本とフランスの2箇所なので・・・ 夕方までには」


官僚『女神様、聞こえますでしょうか?』

神様「官僚か、どうした?」


官僚『いえ・・・ その・・・』

神様「なんだ、早く言え」


官僚『・・・幼さんと思われる少女が脳科学センターへ入ったという報告がありました』

神様「よし、脳科学センターを今すぐ封鎖し幼を拘束だ。 私たちも向かう、車を用意してくれ」

官僚『はい・・・』

神様「?」


――― 車内

神様「急げ! 病院まで信号は全部青にしてある」

運転手「はい」


prpr prpr

官僚「申し訳ございません。 緊急電話のため、失礼します」ピッ

 はい官僚です、はい・・・


男「幼を拘束するんだったらもう少し早いほうが良かったんじゃない?」

神様「BSCと幼を同時に封じないと幼のリスクが大きい」


店主『女神様!』

神様「店主か、どうした」

店主『照射施設が一斉に高出力放射を開始しました!』

神様「なんだと?」ニュッ

男「うわっ、神様! 窓しまってるのに顔出したらマズいって!」

神様「うむ、マズいな・・・」

男「そんな冷静に判断できるんだったら早く顔しまって!」

神様「あぁ、店主よ念のためレーザー衛星の照準を合わせて待機だ」

店主『・・・承知しました』


男「え? それマズいんじゃ・・・」

神様「・・・どっちのマズいだ? 顔か? レーザーか?」

男「どっちも・・・」

神様「このまま放射を続けられるともっとマズい。レーザーの発射はギリギリまで待つ」ニュッ

男「ほっ」

神様「? それはどっちの“ほっ”だ?」

男「もう良いって・・・」


 なんだと! 何をしているんだ!!
 もう一度徹底的に調べなおせバカ野郎!!

男「!?」ビクッ

神様「!?」ビクッ


官僚「女神様!」

神様「なっ、なんでしょう!」ビクッ


官僚「脳科学センター内に幼さんは見つからなかったそうです」

神様「・・・・・・」


官僚「幼さんがセンターに入ってから全ての出入り口を封じたそうですが・・・」

官僚「外出者はその間一人もいなかったそうです」

神様「引っかかるな・・・」


官僚「引き返しますか?」

神様「いや、このまま脳科学センターへ行ってくれ」


―――BSC付属脳科学センター

運転手「お待たせいたしました。 到着です」

男「うわっ、凄い警官の数・・・ 自衛隊の人もいる」


神様「よしいくぞ」

官僚「お待ち下さい」

神様「なんだ」

官僚「お二人の姿が人目に触れるといけませんので入り口まで隊員を配置し上にテントを張ります」


運転手「おい! 両側を隙間なく固めろ! そこ! 足下に少し隙間があるぞ、もっとくっつけ!」


男「運転手さん凄い」

神様「あやつ出来るな」

 ガチャッ

運転手「お待たせいたしました。 声を立てず入り口までお願いいたします」

 スタスタ


官僚「ご協力ありがとうございます。 もう大丈夫です」


神様「施設内で不審な箇所は?」

官僚「病院棟、管理棟、検査棟、研究棟いずれも不審な点は確認されていないと報告があります」


神様「幼が急患で搬送された場所を見たい」

官僚「ご案内いたします」


官僚「こちらの部屋です」

男「特別研究室・・・」

 ガチャ

男「何にもないね」

神様「・・・・・・」キョロキョロ


神様「男よ、足下のコンセントから少し離れてくれるか?」

男「ん? なんか変わった形のコンセントだね」


神様「いくぞ」

 バチッ バチッ バチッ バチッ

男「なにやってんの?」


 ボンッ

官僚「壁の向こうで爆発音?」


神様「・・・・・・」スタスタ

男「神様どこ行くの? そっち壁あるけど」


神様「・・・・・・」ニュッ

男「!?」

官僚「壁の中に・・・」


神様「ほぉ~ 遮断シールドで部屋を覆っているのか。 これは驚いた」ニュッ

研究員A「うわっ! 壁から人が!」


神様「おっと、お前達動くなよ? 一歩でも動いたら、分かるな?」

神様「しかしまぁ、よくもこれだけの設備を作った物だ。 動作原理は把握しているのか?」


神様「おい、お前。 システムの電源を落とせ」

研究員B「ここからじゃ落とせない」


神様「あ゛? 口の利き方に気をつけろ。 私が落とせと言ったのだ、黙って指示に従え!」


研究員A「だからここからじゃ―――」

 バリバリッ

研究員A「・・・・・・」バタッ

研究員B「!?」


神様「お前、もう1度だけ言う。 さっさと電源を落とせっ!!」

研究員B「くっ、だからここからでは制御が―――」

 バリバリッ

研究員B「・・・・・・」バタッ


神様「制御できない物なんか作るな馬鹿者」

 キョロキョロ

神様「これは・・・ 神託記録のコピー・・・ システムはすべて神託記録から作った物か」


神様「官僚よ」ニュッ

男「あっ! 神様何してんの。 急に壁の中に入って」


神様「この壁の向こうに部屋がある。 急ぎ壊してくれ」

男「他から入れないの?」

神様「1日1回、他の場所からの制御で扉が現れる仕組みだ。 それ以外では中には入れない」


官僚「厚さはどれくらいでしょうか」

神様「コンクリ10cm、その後に鉛ベースの金属が3cm貼ってある」


神様「部屋の中に複数の機材と書類があるが粉砕し処分、見なかったことにしてくれ」

官僚「はい」


神様「それと運転手よ、バカな研究者が2名気を失っている。 好きにしろ」

運転手「はい」ニヤッ


―――脳科学センター・ロビー

男「幼はどこに・・・」


神様「あの部屋に小箱のバックアップが座標固定され設置されていた」

男「小箱?」

神様「小箱を使って周りの者達に投影像を送って幼の存在を誤認させていたのであろう」

男「神様の原理と同じって事?」

神様「そうだ」

男「じゃぁ、小箱をすぐ壊した方が」

神様「前にも言ったであろうが。幼が仮死状態になるだけだ、まだ危険すぎる」

男「そっか・・・」


神様「幼はこの病院を中心とした137Km圏内にいるはずだ」

男「137Km?」

神様「小箱と通信できる最長距離だ」

男「そういえば、それが理由でべろべろ温泉に決まったんだっけ」

神様「良く覚えているな、小箱は病院にあるため137Km以内に幼がいるのは間違いない」

男「でもちょっと広すぎない?」


神様「いいや、 店主」

店主『なんでしょう』

神様「照射施設から出ているELF波で強度が一番強くなる所を正確に割り出して欲しい」

店主『分かりました』

神様「この近辺にある。 それ以外は除外して構わない」

店主『はい』


官僚「女神様、部屋にいた2名は拘束し連行しました」

神様「そうか」

官僚「この後はいかがしましょう」

神様「店主から連絡があるまで少し待機だ」


男「ねぇ神様?」

神様「なんだ」

男「黒幕って部屋の中にいた2人なの?」

神様「あれはただの研究員だ」

男「じゃぁ一体誰が」

神様「BSCの最高顧問、私の元第一神官・・・またはその周辺の者だろうな」


男「・・・捕まえるんでしょ?」

神様「なぜだ?」

男「え?」

神様「私の役目は司法や立法では無い。 これは私が存在するために国連と交わした約束事だ」


神様「きっと真相は闇に葬られBSCは何のお咎めもなく存続するであろう。 なぁ官僚よ」

官僚「いえ・・・ 私はそこまでは・・・」アセアセ


男「なんだがモヤモヤするね」

神様「もし、お前が事の顛末を知りたいのであれば国連の偉いさんになれば良い」

男「それは、ハードルが高い・・・」

神様「ハハッ、確かに無謀だな」


店主『女神様、ELF波の最大ポイントが分かりました』

神様「よし、場所は?」

店主『第一高校グラウンドです』


神様「官僚よ第一高校まで連れて行ってもらえるか」

官僚「分かりました」

店主『それともう一つ。 CP67への破壊信号の送信が15分ほどで終わりそうです』

神様「そうか。 よくやった。送信完了後、幼の無事を確認でき次第破壊を行おう」


 ガチャ

官僚「どうぞ」

神様「うむ」

男「ありがとうございます」


神様「よし、急ごう」

運転手「飛ばします。掴まっていて下さい」


神様「何分ほどで着くか分かるか」

運転手「10分以内には」


女『女神様』

神様「女か、どうした?」

女『国連側のシステムにエラーが検出されました』

男「もしかして、またハッキング?」


女『いえ、こちら側のシステムは前回の対策を講じておりますので・・・』

男「じゃぁ、どこが」

女『メガミーリレーデバイスの第3層がいくつか停止しているようです』

男「めがみーりれー?」

神様「今で言うところのルーターだ。 第3層はデータの中継を担っている」

男「なんで急にエラーなんて・・・」


神様「リレーデバイスは当時のBSCが作った物だ」

男「それって・・・」


神様「店主よ、CP67への破壊制御はできそうか?」

店主『申し訳ありません・・・ 制御が切られました。 クソッ!』


神様「・・・女よ、国連側のラインを全て遮断してくれ」

女『ほとんどの回線が停止してしまいますが・・・』

神様「このまま放っておくほうがマズい」

女『承知いたしました・・・ 申し訳ございません』

神様「女に責任はない。 気にするな」


男「マズいね」

神様「・・・・・・」

女『女神様、国連側のメガミーラインを全て遮断いたしました』

神様「よし、今現在で生きている回線を教えてくれ」

女『国連を経由していない小箱と男さんの回線、G-wave、それと第一高校の検出器です』

神様「十分だ」


神様「女、妹よ・・・ メガミープランの準備を頼む・・・」ボソッ


運転手「まもなく第一高校に到着いたします」


官僚「女神様、恐れ多いのですが一つご提案をさせて頂けますでしょうか」

神様「提案?」


官僚「照射施設の施設周辺に各国の特殊部隊を配置しております」

神様「なんだと?」

官僚「勝手な行動お許し下さい」

神様「・・・・・・」


官僚「女神様のご指示で一斉に施設を封鎖可能です」

男「官僚さんいつの間にそんな事を・・・」

官僚「先ほど伺ってから対応をいたしました」


神様「話した覚えはないのだが?」

官僚「その・・・ 通信機がオンの状態でして会話が・・・」


神様「そうか。 やはり私はバカだったな」フフッ

男「神様?」


神様「官僚よ、指示があり次第部隊を突入させ施設を封鎖。 近くに原子炉がある、注意しろ」

官僚「施設周辺は全て調査済みです、お任せ下さい。 指示を受けてから3分で制圧します」


神様「私たちを降ろしたらすぐに守衛室に戻れ」

官僚「しかしそれでは」

神様「守衛室からの方が指示が出しやすいであろう。 私たちの方は気にするな」

官僚「承知いたしました」


男「神様、あそこ! 幼がいる」

神様「よし、ここで下ろしてくれ」

運転手「はい」

 キキィ



神様「幼ー!!」

幼馴染「うそ! 神ちゃん良く場所が分かったね~」

神様「幼・・・」

幼馴染「あっ、男も一緒だ! う~ん、でも少し離れていた方が良いよ~」


神様「何が起るのか分かっているのか? 幼・・・ いや元第一神官と言った方が良いか」

幼馴染「誰それ~」

神様「第一神官の意志を継ぐ物か? まぁ誰でも良い。 全く興味はないしな」

幼馴染「酷い! 酷いよ神ちゃ~ん」


神様「悪いことは言わない、やめろ」

幼馴染「え~ だって凄い事をするんだよ? CP67を使った次元転換エネルギーの接続作業~」

神様「・・・・・・」


幼馴染「すんごい技術なんだってコレ!」

神様「アカシックの情報は単体で引き出すだけではダメだ」

幼馴染「?」


神様「取得が可能な期間全ての類似項目を調べその原理と副作用を調べなくては―――」

幼馴染「面倒! 却下です」

神様「・・・・・・」


神様「(店主よ、科学部の準備室に設置した検出器は動かせるか?)」

店主『(はい、・・・システムを起動しました。 2分後から計測可能です)』

神様「(次元越境粒子が現れる直前に重力子バーストが起る。 その検出器でわずかであるが確認できるはずだ)」

店主『(分かりました、確認でき次第ご連絡します)』


神様「はぁ~、お前達は、本当あほとしか言いようがないな」

幼馴染「あちゃ~」


神様「大勢の人間が死ぬぞ?」

幼馴染「脅しても無駄なのです。 計算上ではこのエネルギーでそんな事はできません!」


神様「お前達が知らない事象など山ほどあるのだぞ?」

幼馴染「それはそれで見てみたいからこのまま続行!」


神様「・・・幼の体も限界だ、頼む解放してやってくれ」

幼馴染「え~、だってアカシックに接続できる因子を持った人なんて他にいないも~ん」


幼馴染「それに小箱から切り離したら私死んじゃうよ?」

神様「・・・・・・」


幼馴染「あれ? おかしいな~、計算ではそろそろ次元転換が起るはずなのに」

神様「計算もろくに出来ないのか?」

幼馴染「ショック! んじゃCP67の出力上げますかね」


神様「ばか! やめろ! これ以上出力を上げると取り返しが付かないぞ!」

幼馴染「お? 神ちゃん焦ってる。 よし出力最大なのです」

神様「くっ」


男「幼! 聞こえるか!」

神様「男?」

幼馴染「なに~?」

男「お前じゃない! 幼、これが終わったら遊園地デートだ!」

幼馴染「はい? 何言って・・・ る・・・ の・・・ 男・・・」

男「それから2人で・・・ プラネタリウムに行って・・・ 都市伝説ツアーをしたい!!」

幼馴染「・・・・・・」

 バタッ

男「幼!」

神様「男、でかした」


神様「幼よ、すまないが少し気絶していてくれ」

 バチッ バリバリ

幼馴染「・・・・・・」ビクン


男「ちょ、神様!」

神様「あれだけでは30秒後に小箱が再起動してしまう」


神様「さて、しかし・・・ 万事休すだ」

男「どうがんばっても無理なわけ?」

神様「そうだな~」


神様「私のアカシック接続もたった今、完全に切れたようだ」

男「もう少し考えようよ、きっと何か良い―――」

神様「男、お願いがある」

男「神様?」


神様「私はこれから幼の思考ゲートを攪乱させる」

男「攪乱?」


神様「もって15分。その間に神殿にある私の小箱を・・・ たたき割ってほしい」

男「それって・・・」


神様「私の残り少ない全エネルギーが一気に解放されるはずだ」

男「いやだ、俺には出来ない・・・」


神様「幼を救う最後の方法だ」


神様「女」

女『・・・はい』

神様「私が幼の小箱と接続を完了したらG-Waveの演算が最大になるよう調整を頼む」

女『・・・承知いたしました』

神様「それと、最大演算に達したら官僚へ照射施設の一斉突入の指示を」

女『はい』


神様「妹よ、小箱の解除キーを送る。 妹には神殿が見えるはずだ」

妹『・・・うん』


神様「後はメガミープランの手はず通りに頼んだぞ」


男「女さん、妹! ダメだ!」


神様「店主よ」

店主『はい』

神様「次元越境粒子の初期波が確認できたら小箱の回線を幼の周波数帯に乗せてくれ」

店主『しかし、それでは女神様が・・・』

神様「頼む」

店主『・・・承知いたしました』ギリィ


男「ダメだ。 他の方法で―――」

神様「お願いだ男よ・・・、私の信頼すべき大神官。 私はこの世界を護りたい」

男「神様・・・」


神様「そして・・・ 幼を助ける・・・ 私はそう誓った」

男「・・・・・・」


 ポウッ

男(女神の姿・・・)


神様「我が大神官“男”よ! これから神託を授ける!」

男「なに・・・ 何言ってるんだよ・・・」


神様「誇れ、私が女神として最後の神託を告げるのだ・・・ 頼むから聞いてくれ」ニコッ

男「・・・・・・」


神様「内容が内容だけに、男の頭に直接伝えることにする。 許せ」


神様「( ―――――――――― )」


男「そんな・・・ うそ・・・ だろ・・・」


神様「ふぅ、すっきりした。 やっと胸のつかえが取れた」


店主『女神様! 次元越境粒子の初期波を確認しました。 10秒後に回線を切替えます』

女『G-Waveの演算機能、まもなく最大になります』


神様「女、店主、妹・・・ ありがとう」


女『・・・女神様』

店主『ありがとう・・・ ございます』

妹『神ねー、やっぱり嫌だよー!』グスッ


神様「妹よ少しの辛抱だ。 皆、元気でな」


男「神・・・ 様・・・」



神様「よし! これで後悔なし。
        後は頼みます。 お父さん」ニコッ


神様「行くぞ! これが女神、いや科学の神様、最後の大仕事だ!!」

 シュンッ


男「はっ、はっ、はっ」タッ タッ タッ


 ――たぶん、これが私の最後の神託です。
    最後の神託が、男・・・ いえお父さんに伝えることが出来て良かった。

    私が人間だったときの記憶は規制が掛かって伝えることが出来なかったんだ。
    でもアカシックとの接続が解除されてそのロックも消えたみたい。



 キキッ

運転手「男さん、乗って下さい!」

男「はぁ~っ はぁ~っ 運転手さん」

 バタン

運転手「3分で研究所に着きます。 飛ばしますので掴まっていて下さい!」



 ――きっとお父さんが次に私に会えるのは10年くらい先かな。
    50年もの間、閉じ込められて一人で消え去っていくはずだった私を
    助け出してくれたのがお父さんだったなんて、嬉しくて泣きそうでした。
    一瞬で辛い思い出がなくなっちゃた。



運転手「着きました! 急いで!」

 バタン

店主『男!急げ時間がない』

女『神殿まで全力で突っ走って下さい』


男「はっ、はっ、はっ」タッ タッ タッ



 ――お父さんの子として生まれて、お父さんよりも早くこの世を
    去ってしまう私だけど、一緒に過ごせた時間は本当に楽しかった。
    お父さんの若い頃にも会うことが出来たしね



女「すごい演算スピード・・・ これが女神様の力・・・」

妹「店主さん、これ幼さんの再構成プログラムです。 G-Waveが最大になったら神ねーに送って下さい」

店主「分かった」

妹「神殿に行ってきます!」タッ タッ

女「女神様、5秒後にG-Waveがフルパワーになります」


 ――先に自分の子供の生死を知ってしまって辛いかも知れないけど、
    恩返しできない位の沢山の愛情をもらって私はとても幸せだった。
    だから将来、私がいなくなっても悲しまないで下さい。
    って言うのはちょっと無理かな?

    でも、そのおかげでこうしてこの時間で一緒に過ごすことが出来たんだから。
    それに、自分の子供が将来、あれ過去かな? 神様になるんだから誇ってよね。



女「官僚さん照射施設に一斉突入を指示して下さい」

官僚『了解!』

女「女神様、フルパワーに達しました! G-Waveの駆動限界まで3分30秒」

店主「幼ちゃんの再構成プログラム転送完了です」


 ――223年女神として、神様として生きてきたけど、いっぱい良い人達に囲まれて
    幸せだった。嬉しかった。楽しかった。

    ありがとう、お父さん



男「はぁ はぁ はぁ」ゼェ ゼェ

妹「にーちゃん、早く!!」


 ギィー



 ――さて、暴露大会も終わったことだし、小箱のエネルギー解放の仕方です。
    小箱の暗号は妹さんが解除してくれます。
    そして・・・ 私の本体を、思いっきりたたき割って下さい。
    それだけです。
    神殿右奥にあるデッキブラシで、遠慮なしでおもいっきりね
    名付けてメガミーブラシ。
    私を唯一壊せる魔法のステッキです。



男「・・・・・・」ギュッ



 ――アカシックが一瞬強制的に接続されてエネルギーを吸収します。



男「神様・・・」ポロポロ

男「うわーー!」


 パリンッ


 ――さようなら


神様「さすが男・・・ これ以上ない最高のタイミングだ」



 ―― 元気でね



神様「ありがとう、男・・・」


ありがとう、お父さん


未来で会おうね・・・


――――
―――



―――27年後

父「お~い、娘」

娘「な~に? お父さん」


父「はい、誕生日プレゼント」

娘「わっ、綺麗な服・・・」


父「気に入ってくれると嬉しいんだけど・・・」ポリポリ

母「お父さんったらこの服選ぶのに50件近くもまわったのよ?」

父「そんなこと言うなっての」

娘「そんなに!? ありがとう」


母「でも久しぶりにデートできて楽しかったけどね」

娘「幼馴染なんだからいっつも一緒だったんじゃないの?」

母「仕事が忙しくて最近全然あってくれないんだもん」

娘「国連の事務次官様ですからね」

父「なんか総攻撃食らってる気がするんだけど・・・」

母「そんなことないわよ?」

娘「でも本当にありがとう。 大切にするね」


父「お前が、その・・・ 好きな人とデートするときにでも着てくれると嬉しい」

娘「なにそれ、私まだ好きな人とかいないよー」


父「17歳おめでとう・・・」

娘「うん」


 続いてのニュースです
 国立次元研究センターの妹博士らによる研究チームが
 開発したG-Wave6がアカシック接続におけるメインシステムに
 採用が決定いたしました
 これによりアカシックレコードの解明が期待され・・・


娘「あっ、おねーちゃんだ」

父「ん? あいつもがんばったよな。 お祝いのメールでも送っておくか」


娘「あっ、その端末」

父「これか?」

娘「骨董品だよね」

父「そうだな」


娘「よく壊れないね」

父「あぁ、父さんが死ぬまで壊れないと思うぞ?」

娘「なにそれ」クスクス


母「命の恩人、世界を救ったスマホなのよ?」

娘「スマホなのに恩人なの?」

父「そうだな、恩人だ」


父「本当に大切な・・・ 私たちの宝物だ」



嬉しいことを言う






神様「科学の神様だ」 ―END


拙い文章、中途半端な設定や描写反省しております。
こんなものを読んで頂いた皆さま、本当にありがとうございました。

本当すいません! (ドゲザ)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年01月28日 (木) 22:17:29   ID: tFAhStUN

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