女騎士「私が守ってやる!!」(234)




 城壁国家エジンベア 外



白騎士「国全てが高く積まれ築かれた特集材質の壁に囲まれ、上空には魔法結界が張られている……」

白騎士「まるで鳥籠ね。こんな鳥籠の中に居る事が幸せだと、飼い慣らされた鳥は信じてる」


白騎士「こうやって目の前まで敵がやって来ているのに、兵士の一人も外へ出て来ないのが、頭まで鳥になっている証拠」

白騎士「城門を閉じるだけで守れると思ってるの? こんな壁なんて、せいぜい人間どもの貧相な魔法や、大砲ぐらいを防ぐのが精一杯よ!!」



白騎士「アルミラージ!! デスジャッカル!! キラーエイプ!! ごうけつぐま!! 各部隊は突入の準備をしておきなさい!!」

白騎士「私が……壁に風穴を空けるわ!!」



白騎士「左手から五発……」スッ

白騎士「右手から五発……」スッ


白騎士「合わせて十発のメラゾーマを、一度に纏めて叩き込みます!!」

白騎士「崩落せよっ、フィンガーフレアボムズ!!!」バッ




 ドゴォォォォォォォン!!!



白騎士「……」

白騎士「よしっ、突破口は開いた!! 各部隊、突撃しなさい!!」



白騎士「……」

白騎士(こんな事をしちゃって……)


魔王「状況はどうだシロよ?」スタッ

白騎士「ま、魔王様!?」クルッ



白騎士「はい。たった今、全軍に突撃の号令を掛けた所です。『あの条件』についても問題なく」ペコリ

魔王「そうか……」


魔王「それでシロよ」

白騎士「なんでしょう?」



魔王「溜まってる?」

白騎士「……」


魔王「……」

白騎士「はい?」



魔王「前にシた時、シロがイヤだイヤだって言ってたから、誘わないようにしてたんだけど」

魔王「クロが、最近シロがそわそわしてるって……」


白騎士「……」

白騎士「な、なっ、なっ……」プルプルプルプル



魔王「勘違いかも知れないし、だから、もう一回だけ聞くよ?」

魔王「シロ、溜まってる?」


白騎士「うぅっ……」プルプルプルプル

魔王「溜まってないの?」



白騎士「あんな恥ずかしい格好、私にさせるからじゃないですか!?」キッ

白騎士「なんで外でするんですかっ!? なんで裸にならせるんですかぁっ!?」


魔王「なんでって、シロは外の方がいいんでしょ?」

白騎士「良く有りませんっ!!!」



魔王「そうなの?」

白騎士「そうですっ!! もっと、こう、普通に」モジモジ


魔王「普通って?」

白騎士「それは……」モジモジモジモジ




 ドゴォォォォォォォン!!!



白騎士「っ!? どうやら、慌てて兵が出て来たようですわ」チラッ

魔王「ここも、戦いが始まったね……」




 ── エジンベア強襲 ──



 この日、大国で在ったエジンベアは魔王軍により攻め込まれ、シンボルの巨大な城は破壊された。

 ついに動き出した魔王に世界中の人々は震え、そして立ち向かうべく、より一層の協力体制を築いて行く……


 誰しもが傍観者では無い。誰しもが当事者で。誰しもが魔王軍と戦う意思を持つ。

 希望で有る勇者を筆頭に、そんな世界へと変わり始めていた……



第八話

女騎士「私が守ってやる!!」




 ポルトガ 正門より数キロ地点の平原



女騎士「僧侶、何をボーッとしている!? 早く補助魔法を!!」

僧侶「えっ、あっ、ひゃ、ひゃい!!」ビクッ


黒騎士「補助魔法など掛けさせるものか!!」ダッ

武闘家(チッ。ゴツい鎧を着てる割に早えぇじゃねぇか!!)



武闘家「狙われてるぞ僧侶!! 避けろ!!」

黒騎士「そうは行かん、掴まえた!!」ガシッ


僧侶「っ!? くうぅっ……」

黒騎士「……」



黒騎士「しっかりしろ、怪しまれるぞ?」ヒソヒソ

僧侶「っ!?」


黒騎士「分かったら、俺を適当な攻撃魔法で振り払え」ヒソヒソ

僧侶「……」



僧侶「わたくしに、触れないでくださいまし!! バギッ!!」バッ

黒騎士「おっと」サッ


黒騎士「危ない危ない、攻撃魔法も使えたか」スタッ

僧侶「勇者さま、すみません。敵のプレッシャーに気圧されてしまいました……ですが、もう大丈夫です!!」


おやすみなさい



黒騎士(とは、言ったが……)

黒騎士「キラーアーマー部隊、俺が勇者とやる!! 他の奴らを相手しておけ!!」


武闘家「チッ」スッ

僧侶「くっ……」



女騎士「……」

黒騎士「……」


黒騎士「少し、遊ぼうか?」ニヤリ

女騎士「私が、遊んでやろう」ニヤリ



女騎士(僧侶とは距離が離れたか)チラッ

女騎士(だが、コイツも補助魔法を掛けた形跡は無い。ならば!!)


黒騎士「勇者と魔王。敵同士がこうして出会ったんだ……」

女騎士「この闘い、是非など問わず!!」



黒騎士「お前の力、俺に見せてみな!!」ジャキッ

女騎士(剣を逆手に握り直した? どこかで……)


女騎士(いや、今はっ!!)

女騎士「良いだろう。勇者のみが扱える、最大の剣技を以て貴様を倒してやる!!」ジャキッ



女騎士「……」

黒騎士「……」


女騎士「フッ!!」ダッ

黒騎士「行くぞ!!」ダッ



女騎士「ギガッ、スラァァァッシュ!!!」

黒騎士「ストラッシュ!!!」




 ガキィィィィィィィン!!!


女騎士「……」スタッ

黒騎士「……」スタッ



女騎士「互角か、だが次の一撃で……」

黒騎士「互角?」


女騎士「ん?」バキィィン

女騎士「ッ!? 私の剣が、折れたっ!!?」ビクッ



黒騎士「おいおい。まさかとは思うが、武器の差だとか勘違いするなよ?」

黒騎士「違うのは剣の……腕の差だ」ニヤリ


女騎士「くっ……」ジリッ

黒騎士「まだ魔法が使えるだろ? もっとお前の力を見せろ」



女騎士「……」

女騎士「ふっ」クスッ


女騎士「ふふっ」

女騎士「あははははははははははははっ!!! はぁーあ……」



黒騎士「なんだぁ?」

女騎士「色々と繋がったよ。だが、そうだな。悪い事は言わん」


女騎士「私に剣で勝った事を手土産に、ここは引け。もしくは……」

女騎士「ここに跪いて降伏しろ。そうすれば、命だけは助けてやろう」ニコリ



女騎士「そうでなければ」

女騎士「この勇者最大の魔法が、貴様を葬る事になる」


黒騎士「……」

黒騎士「ぬかせ」



女騎士「どれ、カウントダウンをしてやろう。それまでに決めるんだな」スッ

黒騎士(両腕を左右に広げて構えた? ライデイン?)ジィーッ


女騎士「さん。にー。いち……」

黒騎士(左手から放つか? それとも右手か? はたまた両手を合わせるか? 何の魔法だろうと……さぁ、来い勇者ッ!!!)ギロッ



武闘家「ゼロだ……」

黒騎士「何ッ、後ろっ!?」クルッ


武闘家「遅せぇ!! 正拳突きぃッ!!」ドゴォッ

黒騎士「ぐうっ!? だが、この鎧の上からではダメージは……」



黒騎士(なんだ、体がっ、揺れっ!?)

黒騎士「ガハァッ!!?」フラフラッ


武闘家「おめぇ、仲間に俺みたいな武闘家は居ないだろ?」

武闘家「そして、ただ単に『鍛えた体を武器として戦う』。そんな認識しか無ぇ」



黒騎士「キラーアーマーはどうした?」

武闘家「戦ってるよ……」


武闘家「俺がマヌーサで作り出した幻影とな」ニヤリ

黒騎士「マヌーサ? その程度の魔法でっ」



武闘家「ああ、俺が使えるのはその程度の魔法だ。オメェには効かねぇんだろうよ」

武闘家「けどな、アイツらにはてきめんだったぜ?」ニヤリ


武闘家「昔から武闘家が苦手なのは、スライム系とゴムみてぇな軟体系だけって決まってんだ!!」

黒騎士「……」



僧侶「勇者さま、お待たせしましたっ」タタッ

女騎士「おお、僧侶も来たか」


黒騎士「成る程、確かに俺の知識不足だったようだ。しかし、もう油断は無いぞ?」

武闘家(チッ。ほしふるうでわを装備して、全力で短勁を打ち込んだってのに……復帰するのが早いんだよ!!)ジリッ



僧侶「バイキルト!! スクルト!! ピオリム!!」バッ

僧侶(黒騎士さん!! まだ戦うつもりですか!?)


黒騎士「……」

黒騎士「流石に分が悪いか。ここは引こう。サラバだ勇者よ!! ルーラ!!」バッ



僧侶「あ」

武闘家「逃げやがったか」


女騎士「3対1なら正攻法でも勝てるが、それ以外は邪道な戦法で奇襲を掛けるしか無さそうだな」

武闘家「チッ」



女騎士「確かに強い相手だった……だが、確実に勝てる方法を二つ思い付いたよ」

僧侶「それは?」


女騎士「ひみつだ」ニコリ

武闘家「張ったおすぞテメェ……」



女騎士「ん? 押し倒してみろイクジナシが」

武闘家「ああっ!?」キッ


僧侶「お、お二人共、ケンカはっ」アセアセ

女騎士「分かってるよ……まずは、まだ幻影と戦っている魔物を殲滅する」



女騎士「合わせろ武闘家!! イオを連続で叩き込むぞ!!」スッ

武闘家「応よっ!!」スッ


女騎士「イオ!! イオ!! イオ!! だだだだだだだだだだぁぁっ!!!」ズドドドドドッ

武闘家「イオッ、まとめて喰らいやがれッ!! オラオラオラオラオラァッ!!!」ズドドドドドッ



僧侶「……」

僧侶(取り敢えず、バレなくて良かったですね。これからは気を付けないと)


僧侶(……)

僧侶(わたくしは、このパーティーに居てよろしいのでしょうか?)



僧侶(わたくしは、わたくしはっ……)

僧侶「くっ!!」フルフル


僧侶(今さら考えようとっ)ギリッ

僧侶「勇者さまっ、わたくしも手伝います!!」




 数日後 カジノの街より西 平原



女騎士「それで、次の街へはどのぐらい掛かるんだ?」チラッ

僧侶「はい、早ければ三日ほどで」


女騎士「三日……ずいぶんと掛かるな」

武闘家「チッ。オメェが馬車代をカジノでスるからじゃねぇか」



僧侶「まぁまぁ。一応、この近くにダークエルフが住むと言われる森が在りますが……」

女騎士「よし。そこで風呂を借りよう」ポンッ


僧侶「ですがっ、わたくしも森へは入った事が有りませんし、ダークエルフは人嫌いとの噂も」

女騎士「心配するな。私はサキュバスだぞ? イザとなったら、体で落としてやる」ペロッ


おやすみなさい



武闘家「……」

武闘家「すっきりしねぇな……」


女騎士「なんだ、スッキリさせてやろうか?」チラッ

武闘家「ちげぇよ!! このクソビッチが!!」



女騎士「もっと言ってくれ!! 興奮する!!」

武闘家「チッ。だからよ……あの街のこった」


僧侶「……」

女騎士「ああ、あれか……」



僧侶「カジノは、何とか残して貰えましたね」

女騎士「低レートの国営化になってしまったがな……まぁ、遊んだり息抜きにはちょうど良いだろう」


僧侶「ですが、あの魔物達は……」

女騎士「オーナーがどうにかして押したのか、それとも魔物達が自分で押したのか」



武闘家「恐らく、あのオーナーをブッ殺す事を生き甲斐にしてたんじゃねぇか?」

女騎士「ふむ。オーナーを殺し、生きる目的を無くして押したか……それとも」


女騎士「二度と見せ物の為に戦わされる魔物が現れないよう、カジノを破壊したかったか」

僧侶「破壊されたのはカジノの一部でしたが、モンスター闘技場は終わるみたいですし、これで……少しは救われると良いのです」

>>39
×僧侶「破壊されたのはカジノの一部でしたが、モンスター闘技場は終わるみたいですし、これで……少しは救われると良いのです」

○僧侶「破壊されたのはカジノの一部でしたが、モンスター闘技場は終わるみたいですし、これで……少しは救われると良いのですが」



武闘家「しっかし、あの爆発に巻き込まれなかったのが奇跡だな?」ニヤリ

女騎士「ふっ、私は勇者だぞ? 何度だって奇跡を起こして見せるさ」ニヤリ


僧侶「……」

僧侶(わたくしがフバーハを掛けていたのですが、言わない方が良いのでしょうか?)



女騎士「で、だ。肝心のダークエルフの森へはどのぐらい掛かるんだ?」

僧侶「あっ、えっと……あそこの山の麓(ふもと)に広がるのがそうです」キョロキョロ


武闘家「ほぉ、かなりデケェな」

女騎士「ではっ、いざダークエルフの森へ!! 出発!!」ビシィッ




 ダークエルフの森 湖の畔




 ──どうだピサロよ? 力を手に入れる決心は着いたか?



ピサロ(湖に浮かぶ赤い水晶。俺だけがその水晶を見れて、俺だけがその水晶から発せられる声を聞ける)

ピサロ(フッ。仲間に覗かれたら、まるで俺は頭のオカシイ奴か)クスッ



ピサロ「もう一度聞く。『進化の秘法』とやらを使えば、巨大な力を手にする事ができるんだな?」

ピサロ「義理の妹を、人間や魔王から……守れるんだな?」




 ──無論だ。お前は全てを超越する最強の力を手に出来る。



ピサロ「……」

ピサロ(人間とダークエルフの間に産まれた義理の妹……ハーフ)


ピサロ(人間からは化け物と恐れられ、ダークエルフからは半端者と蔑まれ、友と呼べるのは森の動物達のみ)ギリッ

ピサロ「もう少しだけ考えさせてくれ。そう言えば、あんたの名前は何て言うんだ?」



 ──我が名は、エスターク。力を与える者だ。



ピサロ「そうか、エスターク」

ピサロ(俺は力を手に入れ……魔王から、人間からっ、そして妹を蔑む同族から!! 全てから妹を守る!!)




 ダークエルフの森 入り口



女騎士「ここがダークエルフの森か?」キョロキョロ

僧侶「はい。そうだと思われます」コクリ



ハーフ「止まれっ!!」

武闘家「んっ?」チラッ


ハーフ「お前らは人間だな? この森に何の用だ!!」ギロッ

女騎士「おお、これはまた可愛らしい」



ハーフ「うがああああっ!! 用が無いなら出て行ってよね!!」

ハーフ「アウルベア!! ケルベロス!! キメラ!!」


アウルベア「ゴアアアアアッ!!」ドシン ドシン

ケルベロス「グルルルルルルッ!!」



キメラ「クワァァッ!!」バサッ バサッ

女騎士「ふむ。魔物使いか?」


ハーフ「魔物じゃない!! 友達だっ!!」キッ

武闘家「友達だっつーならヤメさせろ。ケガさせるだけだぜ?」



女騎士「まぁ待て武闘家。話せば分かってくれるだろ?」チラッ

女騎士「ダークエルフの少女よ、私達は旅をしているのだ」


女騎士「しかし、ここ二日ほど野宿でな。一晩だけ、フカフカのベッドを貸して貰えないだろうか?」

ハーフ「……」



ハーフ「それだけか?」

女騎士「ああ。明日には出て行くさ」コクリ


僧侶「わたくしからも、どうかお願いいたします」ペコリ

ハーフ「分かった。着いて来て……でも、変な真似はしないでよね」




 ダークエルフの森 集落より離れた場所の一軒家



ハーフ「ただいま、にぃにぃ」ガチャッ

ピサロ「お帰りハーフ……」ニコリ


ピサロ「……」

ピサロ「おや、そちらの方々は?」ジロッ



ハーフ「旅をしててね、野宿が続いてるから、一晩だけ泊めて欲しいんだって……ダメかな?」

女騎士「ダメなら、せめて風呂だけでも頼みたい。礼なら、私と僧侶が体でする」


僧侶「だから、何でわたくしも交ぜるんですかっ!!?」ビクッ

武闘家「俺も、薪割りぐらいならするぜ?」



女騎士「安心しろ。ダークエルフが人間嫌いなのは知っている。怪しい素振りをしたら遠慮なく切り掛かって来い」

女騎士「それに私は……純粋な人間じゃない。人間とサキュバスのハーフだ」


ハーフ「っ……」ピクッ

女騎士「それだけで、安心する理由にはならないか?」ニコリ



ピサロ「分かりました。ここで会ったのも何かの縁。どうぞ客室を使ってください」

ピサロ「だが……」


ピサロ「俺の妹に少しでも危害を加えてみろ、その時はっ!!」ギロッ

女騎士「ああ、肝に命じて置こう」




 数十分後 同所の庭



僧侶「らららー──────♪♪」

ハーフ「よっ、はっ、ほっ。へへんっ♪」タッ タッ タッ


武闘家「へー、アイツ歌がうめぇじゃねぇか」ジィーッ

女騎士「それにあの子は踊りが上手いな。初めて聞く歌なのに、実に良く合わせている」ジィーッ



ケルベロス「ワンワンッ!!」タタッ

キメラ「クワワァ!!」バサッ バサッ


ピサロ「友達も一緒に駆け回って、とても楽しそうだ」ニコリ

女騎士「ふっ、そうだな」



女騎士「……」

ピサロ「……」


女騎士「彼女、確かに褐色の肌をしていて、エルフ特有の耳をしているが」

女騎士「どうも私には、人間に思えてしまう。もしかして」チラッ



ピサロ「そう。あの子は、俺の義理の妹。そして、人間とダークエルフのハーフだ」コクリ

女騎士「そうか……それを本人は?」


ピサロ「知ってるよ。いや、知らせるつもりは無かったが」

女騎士「そこまでで良い。容易に想像は付く。人間嫌いの種族が、その人間との間に産まれた子を好ましく思う筈がないからな」



ピサロ「恨んでは居ないさ。立派な母だったし、前父を早くに無くしてからも、一人で俺を育ててくれた」

ピサロ「その母が好きになったのが、たまたま人間だっただけの事」


ピサロ「実際、父も立派だった。名の有る賢者だったみたいだぞ?」

女騎士「ほぉ……ならば、名前に聞き覚えが有るかも知れんな」



ピサロ「だが、その父も死んだよ。病死だ」

女騎士「……」


ピサロ(だから俺が、俺がっ、残った家族をっ、義理の妹を守らなくてはならないんだ!!)ギリッ

武闘家「……」



ピサロ(頼れるのは……)

ピサロ(頼れるのは、自分しか居ないんだから!!)



 ── ×年前 ──



ピサロ『長老!! 森の奥へ行く許可を下さい!! このままでは、父が病気で死んでしまいます!!』

長老『ならぬっ!! 世界樹はこの森の御神体!! その葉は、ダークエルフのみに与えられるべきのだ』


ピサロ『父は、人間の盗賊団を森から追い払ってくれました!! 種族は違えど仲間です!!』

Dエルフ『自作自演で我らの信頼を得ようとして、お前の父が呼んだんじゃないのか?』



ピサロ『くっ、貴様ァァッ!! 武器を向けられただけで震えていた奴の言う事か!!?』

長老『何と言おうが許可は出来ぬ!! 森の外へ出て、人間の薬でも与えるのだな』


ピサロ『頼むよ皆、仲間だろっ!? 誰か協力してくれよ!!』

ピサロ『長老!! お願いします!! 長老ぉぉぉっ!!!』




 ──────



ピサロ(その為には力だ……)

ピサロ(力さえ有ればっ、俺は父を救えた!! 母も自殺なんてしなかった!! 力さえ、力さえ有ればっ!!)


おやすみ。




 夜 同所の庭



僧侶「今宵は、月が綺麗ですね」

ハーフ「そうだろっ? よっと。ここから見上げる月が一番綺麗なんだ!!」ゴロン


ハーフ「芝生にこうやって寝転がってさ? 友達とお喋りするのが、私の幸せさー」

キメラ「クワッ」コクリ



僧侶「ふふっ。では、わたくしもこれでお友達ですねっ」ゴロン

ハーフ「へっ?」キョトン


僧侶「おや、違うのですか? わたくしはてっきり……」

ハーフ「ううん、私も嬉しいぞ!!」ニコリ



ハーフ「名前は、えっと……」

僧侶「僧侶です」


ハーフ「そっか。よろしくねっ、僧侶」

僧侶「はい、こちらこそ」ニコリ



ハーフ「あ、でも……」

僧侶「どうか致しましたか?」


ハーフ「明日には、出て行っちゃうんだろ?」チラッ

僧侶「そうですね……恐らく、そうなるでしょう」コクリ



ハーフ「……」

僧侶「……」


僧侶「良ければ、勇者さまに頼んでみましょうか?」

ハーフ「勇者、さま?」



僧侶「おや、言っておりませんでしたか?」

ハーフ「き、聞いてないぞっ!!」アセアセ


僧侶「共に居た女性が、魔王を倒す旅をしている勇者さまです」

ハーフ「そう、なのか……」



僧侶「お願いすれば、後何日かは滞在出来るやも知れません」

僧侶(代わりに、どんな要求をされるのかも分かりませんが……)


ハーフ「……」

ハーフ「あのさぁ僧侶ー? 私も、勇者様の仲間になれないかなぁ?」



僧侶「それは」

ハーフ「私が魔王を倒せば、きっと皆も私を認めてくれると思うんだ」


ハーフ「友達は居るし、にぃにぃは優しいけど……同じダークエルフの友達も欲しいぞ」

ハーフ「仲間外れは、もうイヤだっ……」ギュッ



ケルベロス「ワウゥッ……」スリスリ

僧侶「……」


僧侶「旅は遊びでは有りません。死ぬかも知れないのですよ?」

ハーフ「覚悟してるぞ!! それに、今はまだ大きな魔法は使えないけど、賢者だった親の血も引いてるんだ!!」



ハーフ「きっと私だって、凄い魔法を使えるようになると思う!!」

ハーフ「それじゃ、ダメ、か?」チラッ


僧侶「……」

僧侶「了解しました。勇者さまに聞いてみましょう。それと、大切な結論は急ぐものでは有りませんよ? 今夜一晩、ゆっくりと考えてみてくださいまし」ニコッ




 同時刻 一軒家の客室



武闘家「ベッドが二つに、ソファーが一つか」

女騎士「武闘家? お前は私と僧侶と、どっちと同じベッドで……」


女騎士「いや、私と僧侶が同じベッドで……」

武闘家「アホか。俺がソファーで寝るから、オメェと僧侶はベッドで寝ろ」



女騎士「ん? それだとベッドが一つ余るぞ?」

武闘家「オメェと僧侶は、別々のベッドで寝ろっつってんだ!!」


女騎士「なんだ、そう言う事か」

武闘家「チッ……」プイッ



女騎士「まぁ、冗談はさておき」

武闘家「冗談には聞こえなかったけどな」


女騎士「……」

女騎士「感じるか?」チラッ



武闘家「……」

武闘家「森に入った頃かどうか、詳しくは分かんねぇが」


武闘家「少なくとも今は、『ヤバい警笛』が俺の中で鳴りまくってるぜ?」

女騎士「私は、この家に近付いてからだな。これ程の邪悪な空気……鎧の上からでも、肌にビリビリと伝わって来る」



女騎士「最初は、この辺りの場所に何か有るかとも思ったが」

女騎士「発信源は間違いなく、あのハーフエルフの兄だな」


武闘家「悪い奴には見えねぇが、明日、ここを出発するまでは要注意って事か?」

女騎士「私達に何もしないのなら、今はそれで良いさ……」



女騎士「しかし、僧侶は気付いてなかったな?」

武闘家「ああ、気付いてる様子はねぇ。むしろ、だいぶリラックスしてたと思うぜ? 唄なんか歌えたぐらいだからな」


女騎士「やはりそうか」

女騎士(僧侶ほどの力が有れば、この邪悪さは感じ取れる筈。神経が図太いのか、それとも、慣れているから、気付かないのか……)



女騎士「……」

女騎士「仲間だと、信じてるぞ僧侶?」ボソッ


女騎士「よし、今日はもう休もう。そして、明日は早くここを出るぞ?」

武闘家「それがいいな」コクリ



 トントンッ

僧侶「ただいま戻りました」ガチャッ

女騎士「ん、僧侶か?」チラッ


僧侶「……」

僧侶「あの、勇者さま、お願いが……」




 ダークエルフの森 湖の畔




 ──どうやら、決心が着いたようだなピサロ?



ピサロ「ああ、決まったよ」コクリ

ピサロ「さぁエスターク!! 俺に力をっ!! 『進化の秘法』を!!」




 ──この力は、自ら望んだ者にしか与える事ができぬ。よかろうピサロ!! 進化の秘法を受けとれい!!

 そしてたった今から、エルフも、人も、魔物をも超越した存在になるのだ!!!



ピサロ(俺がダークエルフで無くなってしまうとしても、妹さえっ、家族さえ守れるならっ!!)ギリッ

ピサロ「ぐおおおおおおおおおおおおッ!!! 俺に力をぉぉぉぉぉぉオオ!!!」ドクンッ



おやすみ




 翌日早朝 ダークエルフの里



Dエルフ「たっ、大変です長老!!」タタッ

長老「どうした? 騒がしいぞ?」


Dエルフ「この森の御神体で在る世界樹が……」ブルブル

長老「なにっ!? 世界樹がどうかしたのか!?」



Dエルフ「葉が全て腐り落ち……それだけでは有りません!!」

Dエルフ「定期巡回していた班のメンバーも全員……」ギリッ


ピサロ「おっと、口の過ぎる男は嫌われるぞ?」スタッ

長老「ピサロか?」チラッ



Dエルフ「ピサロッ!! キサマァァァァッ!!!」ジャキッ

ピサロ「俺に剣を向けるか……」


ピサロ「ベギラゴンッ!!」バッ

Dエルフ「なっ、まさか!!?」



 ドゴォォォォォン!!!


Dエルフ「ぐああああああああ!!!」ボォォッ

長老「なんとっ!? 森に火を放つとは、気でも狂ったかピサロ!!」


ピサロ「家族を助けぬお前らも、妹を傷付けるこの森も要らん!!」キッ

ピサロ「今より俺が大陸の覇者となり、全てを妹の望む世界に造り変える!!」




 同時刻 一軒家の客室



僧侶「勇者さま、昨日のお願いなのですが……」

女騎士「答えは変わらないぞ? この旅に連れて行く事は出来ないな」


ハーフ「うぅっ……泊めて上げたのにぃ」プルプル

僧侶「武闘家さんからもどうかっ!!」



武闘家「有名な賢者の血を引き継いでる、ってのは信じてもいい」

武闘家「だが、その血が覚醒すんのはいつだ? 一ヶ月後か? 一年後か?」


武闘家「明日にでも賢者に目覚めるってんなら、喜んで推薦するがな」チラッ

女騎士「そう言う事だ。残念だが、黒騎士……あの敵と戦った後では、誰かを守りながらは戦えない」コクリ



女騎士「そんな余裕なんて、無くなったさ」ギリッ

僧侶「勇者さま」


ハーフ「……」

ハーフ「もう良いよ僧侶。これからも……」



 バリーーン!!

キメラ「クワァァッ!!」バサバサッ

ハーフ「うわっ!? どうして窓ガラスを割って入ってくるんだ!!」ビクッ


キメラ「クワワッ、クワァァッ!!」

ハーフ「っ!? そんなっ、ウソだっ!!!」



武闘家「あ?」チラッ

女騎士「さぁ、全くわからない」


僧侶「あの、お友達はなんと?」

ハーフ「っ……」ギリッ



ハーフ「にぃにぃが、森を、燃やしてるって」

武闘家「マジかよ……」


女騎士「くっ、やはりあの不穏な空気は本物だったか!!」

僧侶「皆さん!! 早く参りましょう!!」タタッ




 燃え盛るダークエルフの里



長老「おの、れ……ピサ、ロ」ドサァッ

ピサロ「……」


ピサロ「最後まで抵抗できたのが、この老体とはな」

ピサロ「しかし、これで我ら兄妹以外のダークエルフは全て滅ぼした」ニヤリ



ピサロ「くくくっ……」

ピサロ「フハハハハハハハハハハッ!!!」


ピサロ「震えろ人間!! 震えろ魔王!! これよりこのピサロが世界を粛正する!!」

ピサロ「妹と俺が幸せに暮らせる世界を造り上げるのだ!!!」



ピサロ「森を燃やし尽くす炎は、初めの一歩を飾る狼煙に相応しい」

ピサロ「ああ、燃やしてやる。村も、街も、国も……」


ピサロ「俺の……ホノオで!! セカイを!! チジョウを!!」ドクンッ

ピサロ(素晴らしい。これが、シンカのヒホウ。体からチカラが溢れだしそうだ)ドクンッ ドクンッ



ピサロ「グオオオオオオオオオオオッッ!!!」

ハーフ「ヤメてにぃにぃ!!」ダッ


ピサロ「……」

ピサロ「来たか、イモウトよ……」チラッ


おやすみなさい



ハーフ「どうしてこんな事をするんだ!?」

ピサロ「お前の為だ。決まっているだろ?」


ハーフ「っ……こんなの、望んでないよっ!!」フルフル

ピサロ「弱く孤独な妹を守るのは、兄の務め」



ハーフ「孤独だなんて……」

ピサロ「思った事が無いとは言わせんぞ?」


ピサロ「フッ。化け物を拾って来たと思ったら、それを友達だなんだと」

ハーフ「きっ!! にぃにぃ……今のは取り消して」ジロッ



ピサロ「同じダークエルフに馴染めないから、化け物に友人関係を求めていたんだよ!!」

ハーフ「にぃにぃ……いつも、そう思ってたの? 笑ってくれてたのは、嘘だったの!?」


ピサロ「いや、嘘じゃない。お前が孤独から救われるなら、化け物を友とするのも良しとした」

ピサロ「だが、そこまでだ。他のダークエルフからは更に疎まれ、森の見回りも押し付けられ、余計に孤立した!!」



ハーフ「……」

ピサロ「あの化け物どもは、我らダークエルフよりも遥かに寿命が短いぞ? 死んだらどうするつもりだ?」


ハーフ「っ……」

ピサロ「だがっ、だが、だが、だがだが、だがだがだがだがだがッ!!!」



ピサロ「すべてっ、すべて、すべて、全て全て全て全て全てッ!! 全て安心しろ!!」

ピサロ「この兄が、お前を孤独へ追いやった森を燃やしてやった!! この兄が、他のダークエルフを皆殺しにしてやった!!」ニヤリ


ハーフ「うっ、うっ、うぅっ……」ブルブル

ピサロ「さぁ、こちらへ来い。この兄の手を取れ。これから二人で、新しい世界を作ろう?」ニコリ



アウルベア「ゴアァァァァァァッ!!」ドシン ドシン

ケルベロス「グルルルゥッ!!」ダダッ


キメラ「クワァァァッ!!」バサバサッ

ハーフ「っ!? みんな……き、来ちゃダメだ!! 逃げてっ!!」

出てくる魔法は殆ど、ドラクエシリーズか、それに慣例する漫画から抜粋



ピサロ「今までご苦労……」

ピサロ「しかし、これからの世界に、貴様ら化け物の居場所は無い。死ね」スッ


ピサロ「ベギラゴンッ!!!」バッ

ハーフ「ヤメてええええええええええ!!!」




 ドゴォォォォン!!!


ハーフ「あっ、ぁ、ああっ……」

ピサロ「……」


ハーフ「うわああああああああああ!!!」ガクンッ

ピサロ「これで、お前を理解できるのは俺だけになったな」



武闘家「今の音、こっちか!?」タタッ

女騎士「置いて行くな!! どこを走ってるんだか……ん!?」


僧侶「なっ!? これはっ」ビクッ

ハーフ「ぐすっ、うぅっ……そうりょぉ」ポロポロ



女騎士「……」

女騎士(獣の焼けた匂い。そうか、ピサロと言う男……)チラッ


ピサロ「ぐはははははははははっ!!」

武闘家「チッ。ヤロウ」



ピサロ「もはや誰も、この俺を止める事は出来ぬっ!!」

武闘家「勇者、コイツを止めるぞ!?」チラッ


女騎士「……」

武闘家「オイ、聞いてんのか!?」



女騎士「戦おうにも、剣は黒騎士に折られてしまって無いんだが?」

武闘家「クソがっ!! 何で代えを買っとかねぇんだ!!」


ピサロ「剣が有ったとて無理だな。ダークエルフ族に伝わる……この、『天空の剣』を前にしては」ジャキッ

ピサロ「どんな名匠が造った武器もナマクラよ」ニヤリ



僧侶「お待ちください!! 貴方様は、妹を幸せにしたいのでは無いのですか!?」

ピサロ「その為にっ、世界を作り替えると言っている」


僧侶「わたくしにはそう思えません!! 現にこうして泣いているでは有りませんか!? 望んでなどいないでは有りませんか!?」

ピサロ「……」



ピサロ「全ては、妹の為だ……弱い妹を、強い兄が守る。それのどこが間違いだ!?」ギロッ

ハーフ「ぐすっ。よわい、から? 私が、よわい、から……こんなこと」ビクッ


僧侶「だからとて、こんなやり方はっ、あまりにも……」フルフル

ピサロ「心配するな。すぐにダークエルフや化け物どもと同じ場所へ送ってやる」



女騎士「ふむ。立っているだけでも、燃え盛る炎の熱で汗が溢れて来る」

ピサロ「この炎は、森を完全に燃やし尽くすまで収まらんよ」


女騎士「ふっ。どうやら、魔法にも自信が有るようだな? しかし、魔法なら私も自信が有るぞ?」ニヤリ

ピサロ「魔法で勝負……と行きたい所だが、貴様、マホカンタを張っているな? とんだペテン師よ」



女騎士「おやっ?」

武闘家「おい、バレてんじゃねぇか」


ピサロ「安全に、切り殺させて貰う……行くぞっ!!」ダッ

武闘家「チッ。悪りぃが、手加減できねぇぞ!!」ダッ



僧侶「こうなっては……致し方ありません。そしてわたくしは、勇者さまの仲間」ギリッ

ハーフ「へっ?」


僧侶「貴女の兄を、ピサロを。ここで、殺します!! 武闘家さん、いま援護をっ」タタッ

ハーフ「や、ヤメてっ、僧侶!! にぃにぃ!! ヤメて!!!」



僧侶「スクルト!! ピオリム!!」

女騎士「ルカニ!! ボミオス!!」


ピサロ「フハハハハハハッ!! 効かん、効かんっ、効かん効かん効かんッ!!」ブォン

武闘家「っんだよ、耐性持ちかっ!?」サッ



ハーフ「どうしてっ」フラフラッ

ハーフ「こうなるんだぁ……」ガクンッ


ハーフ(私が弱いから? 私が弱いから、にぃにぃが壊れちゃったの?)

ハーフ(私が弱いから、友達の皆が……うぅっ、アウルベア、ケルベロス、キメラ。ダークエルフのみんなぁ。ごめんなさい、ごめんなさいっ)ポロポロ



ハーフ(そして今度は、僧侶と、にぃにぃまで……そんなの、そんなのっ、ヤだっ!!)

ハーフ(今度こそ、今度こそ守るんだ!! 私の……ううん、弱虫じゃない、自分の手で!!)スクッ


ハーフ(だからお願い。心の奥で鍵を掛けている賢者の血よ……お願いだっ、目覚めて欲しいっ!! もう誰も、失いたくないっ!!)ドクンッドクンッ

ハーフ「うああああああああああああああっ!!!」



女騎士「んっ!?」チラッ

ピサロ「なんだ、この懐かしい感覚……まさかっ!!?」ビクッ


ピサロ「妹よ、お前は」

ハーフ「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ」



ハーフ「にぃにぃ、賢者って呼んで」

賢者「これからの自分は、弱虫だった以前の自分とは別人だぞっ!!」キッ


僧侶「賢者……」

ピサロ「ついに、覚醒してしまったか」



賢者「まずは、森の炎を消さないとね」

賢者「右手からマヒャド、左手からバギクロス……」スッ


賢者「合体ッ!!」

賢者「氷刃嵐舞、マヒアロス!!!」バッ




 ブォォォォォッ!!!


ピサロ「ぐっ!?」

僧侶「なんとっ!?」ビクッ


賢者「……」

女騎士「森を焼いていた炎が、一瞬で消し飛んだ……」



賢者「自分はもう、にぃにぃに守って貰わなくても平気だぞ!!」キッ

ピサロ「……」


賢者「だからっ……」

ピサロ「……」



賢者「自分と、やり直そっ? この森を復活さする方法が、きっと有る筈さぁ!!」

ピサロ「賢者……」


賢者「ねっ、にぃにぃ?」ニコリ

ピサロ「そうか。そんな提案を出来るとは、本当に強くなったんだな」ニコリ



武闘家「チッ。んだよ……」

女騎士「ふむ、あっさり解決しそうだな」


ピサロ「……」

ピサロ「世界樹だ」ボソッ



賢者「世界樹?」

ピサロ「この森に在る世界樹の木を探せ」


ピサロ「妹の、賢者の魔法で火災は食い止められた。ならば世界樹も残っている可能性が有る」

ピサロ「あの木の生命力は計り知れない。葉の一枚でも存在すれば、またそれが木になり大量の葉を付けるだろう」



ピサロ「そして、世界樹の木が有れば、俺が殺したダークエルフも甦る」

女騎士「……」


ピサロ「肉体は滅びようと、魂がまだ現世をさまよって居るのならな」

女騎士(死んでも、生き返る……か)



僧侶「……」

僧侶「随分と、簡単に心変わり為されたようですが?」


ピサロ「ん? 裏が有ると、そう疑うか?」チラッ

僧侶「はい」コクリ



ピサロ「……」

ピサロ「勇者、この天空の剣を受け取れ。もはや俺には不要な物だ」スッ


女騎士「くれるなら貰うが、後で返せと言うなよ?」

ピサロ「言わん。俺の代わりに魔王を倒してくれ。俺には、やる事ができた」



女騎士「では、遠慮なく……」パシッ

女騎士「おおっ、見た目よりだいぶ軽いなコレは」


賢者「にぃにぃ……」

ピサロ「さっきのは、ビックリするぐらい凄い魔法だったぞ?」



ピサロ「お前も、これからは好きに生きろ。世界樹を探せとは言ったが、やはりそれは俺がやる」

ピサロ「世界樹を甦らせ、森を甦らせ、ダークエルフを甦らせる……それが俺の仕事だ」ニコリ


賢者「……」コクリ

賢者「ツラくなったら言って? いつでも自分が手伝うから」



賢者「これからは、自分がにぃにぃを助けてあげるぞっ」ニコリ

ピサロ「妹よ……」


僧侶「勇者さま? これなら彼女を仲間に」

女騎士「そうだな。これで……」




 ──使えん。貴様に『進化の秘法』を授けたのは、家族ごっこをする為では無い。



ピサロ「っ!?」ビクッ

賢者「にぃにぃ?」



 ──どぉれ、真の力を引き出してやろう。



ピサロ「がッ!? エス、ターク……」

賢者「にぃにぃ!? にぃにぃ!!」ユサユサ



 ──さぁ!! 地を焼き、海を涸れさせ、人を喰らう存在として目覚めるのだ!!



ピサロ「離れろ賢者!!」ドンッ

賢者「きゃっ!?」ドサッ





 ──死の災厄、デスピサロよ!!



ピサロ「グオオオオオオオオオオッッ!!!」メキメキメキッ

賢者「っ!? にぃにぃ!!!」



武闘家「チッ。なんだ!? 体が巨大化してってんぞ!!」

僧侶「それだけでは有りません!! あのゴーレムの様な異形の姿はっ!?」



女騎士「くっ……」ジャキッ

デスピサロ「我が名ハ、デスピサロ。このヨを、死で埋めツクス存在」



賢者「そんなっ、嘘だぞ……嘘だっ!!」フルフル

僧侶「しっかりなさいまし、今はっ」


武闘家「何やってんだ!? 来るぞっ!!」

デスピサロ「『かがやくいき』……ゴアアアアアッ!!」ブォォッ



賢者「っ!? あ、こっちに」ピクッ

賢者「にぃにぃ……」



女騎士「簡単に諦めるな馬鹿者っ!! フバーハ!!」バッ

僧侶「フバーハ!! 貴女はもう、独りでは無いのですよ?」バッ



女騎士(しかしっ、どれだけブレスを吐き続けるんだコイツは!? 二人で障壁を張っているのに、このままでは押し切られるっ)ギリッ

女騎士「武闘家ッ、何とかしろっ!!!」


武闘家「わぁーってるよ!!」ダッ

武闘家「デスピサロとか言ったな? テメェのデカい口の中に、特大のチョコレートをぶち込んでやんぜ!!」バッ



武闘家「イオラッ!!!」ドゴォォン

デスピサロ「グウッ!? フハハハハハハッ!! 効かぬ!! 効カヌ!!」


賢者「あっ、あっ、ああっ……」ブルブル

僧侶「っ、仕方有りませんね」



僧侶「フッ!!」バチィーン

賢者「いっ!?」ドサァッ


僧侶「……」

賢者「僧侶?」ヒリヒリ



僧侶「後でわたくしにやり返して結構ですから、どうか、どうか今は……共に戦ってくださいまし」ペコリ

賢者「……」


僧侶「貴女の力が、必要なのです」

賢者「分かった……自分も、戦うぞ僧侶!!」スクッ




武闘家「ばくれつけん!! オラオラオラオラオラァッ!!」ズドドドドッ

女騎士「ギガ、スラァァッシュ!!」ザシュゥゥッ


デスピサロ「ヌグォッ!?」フラフラッ

武闘家「どうだ、この野郎!?」



デスピサロ「ククッ、痛みすら心地よい」ニヤリ

デスピサロ「ドウシタ? ソンナモのでは、進化のヒホウの腕試しにもなるぞ?」


女騎士「くっ、切った場所が、即座に回復して行くっ……」

武闘家「どうするよ? 一撃で葬り去るしかねぇってか?」



デスピサロ「グハハハハハハハハッ!!!」ドシーン

賢者「……」


賢者(だけど、自分の魔法が通用するの? ルーラで逃げた方が……)

ピサロ『妹よ、強くなったのでは無いのか?』



賢者(っ!? にぃにぃの声が聞こえる!?)キョロキョロ

ピサロ『これ以上、大切な者を失いたくないのならば戦え』


賢者(でもっ、それじゃにぃにぃは?)

ピサロ『アレは、俺で在って俺では無い。俺の弱い心が招いた怪物だ』



ピサロ『愚かな俺の考えと行動。そして、甘い誘惑に抗え無かった……それも俺の弱さ』

ピサロ『賢者よ。お前が倒せ。元の肉体も魂も消え、ただの破壊神となった兄を!!』


賢者(だけど、何の魔法を使えば……)

ピサロ『分かる筈だ。賢者の血に目覚めたのなら、俺が教えなくとも、知っている筈だ』



賢者「……」

賢者(あっ……)


ピサロ『その魔法ならば、きっと倒せる。頼んだぞ……我が最愛の妹、賢者よ!!』

賢者(うんっ。自分、やってみるさ!!)コクリ



賢者「勇者、武闘家、僧侶、自分がアイツを倒すからっ、少し時間を稼いで!!」

女騎士「……」チラッ


女騎士「何をするかは聞かん。だが、信じていいんだな?」

賢者「……」コクリ



女騎士「よしっ!! 武闘家、僧侶、ここからは……」

黒騎士「っと、それじゃあ倒せんぜ?」スタッ


武闘家「なっ!? テメェ!!」

僧侶「黒騎士……」



女騎士「どう言うつもりだ?」

黒騎士「こっちにも事情が有ってな? 手を貸してやると言ってるんだ」


武闘家「誰がテメェの力なんか借りっかつーんだ!!」キッ

黒騎士「まぁ聞け。普通に攻撃しては回復される。それを防ぐには、奴の体内に有る『進化の秘法』を壊さなくてはならん」



黒騎士「そうで無くては、例え魔法で灰に出来たとて復活する」

武闘家「チッ」


女騎士「……」

女騎士「どうすればいい?」



黒騎士「奴を化け物に変えた進化の秘法は表裏一体。右肩と左肩に、それぞれ一つずつ存在する」

女騎士「つまり、肩から腕を切り飛ばせば良いのか?」


黒騎士「ああ。ただし、一瞬の違いも無く、全くの同時にな?」

黒騎士「片方ずつ切ったとて再生する」



武闘家「つってもよ? タイミングは合わせられんのか?」

黒騎士「同時に切りかかっていれば、何十、何百と繰り返してる内に合う事もあるだろう?」


女騎士「……」

僧侶「勇者さま、どうするにしても決断をっ!! また敵の攻撃が来ます!!」



女騎士「何十も何百も要らん……」

黒騎士「なに?」ピクッ




女騎士「モシャス!!」シュン

剣士「一度のチャンスで仕留める」スタッ



黒騎士「……」

黒騎士「貴様……」


剣士「なぁに、俺達は同じ技を使えるんだ。だったらタイミングも合う筈さ。だろ?」チラッ

黒騎士「いいだろう。構えてみせろ」ジャキッ



剣士「……」ジャキッ

黒騎士(剣を逆手に握り直した……やはり外見通りコイツは)


デスピサロ「『しゃくねつのほのお』!! 燃えツキヨ、ゴアアアアアアアッ!!!」ボォォォッ

僧侶「わたくしが防ぎます!! フバーハ!!」バッ


武闘家「一人で無茶するんじゃねぇ!! もういっちょフバーハ!!」バッ

武闘家「うおっ、あっちぃ!! チッ。さっさとしやがれカカシども!! こっちが焼き豚になんぞ!!」


剣士「いち、にの、さんで掛かるか?」チラッ

黒騎士「それに合わせよう」コクリ



剣士「……」

黒騎士「……」


剣士「いち」

黒騎士「にの」



剣士「さん!!」ダッ

黒騎士「さん!!」ダッ



剣士「ストラッシュ!!!」

黒騎士「ストラッシュ!!!」





 ザシュゥゥゥッ!!!


デスピサロ「グオオオオオオオオオッ!!? 腕がァァァッ!!!」ズバァァッ

武闘家「おっしゃ!!」


僧侶「賢者、魔法の準備は!?」チラッ

賢者「もう大丈夫さ!! トドメは自分に任せてくれ!!」コクリ




剣士「モシャス」シュン

女騎士「っと」スタッ


黒騎士「……」

黒騎士「元には戻らないんだ、手加減なんぞするなよ?」



賢者「手加減……なんてしない!!」

賢者「はあああああああああああ!!」ゴゴゴゴゴッ


武闘家「っ!?」

女騎士「これは、凄まじい魔力の高まりだな……」




賢者「行くぞ。賢者だけが扱える究極魔法……その名を」

賢者(さよならにぃにぃ。見ててくれ!! これが、今の自分に出来る全力全開だッ!!)



デスピサロ「こうナッタラ、キサマらも道連れにシテヤル!! メガン……」バチバチッ

賢者「マダンテッ!!!」バッ





 同時刻 無名の孤島 洞窟内



エスターク「……」

エスターク「愚か者が、あんなガキどもにやられおって!!」ギリッ


エスターク「これでは、秘法の研究にすらなんではないか」

エスターク「仕方無い。また、優秀な実験台を探すとするかのぉ」



白騎士「残念だけど、その研究は諦めて貰うわ!!」ザッ

エスターク「っ!? キサマ……どうやってここへ!?」クルッ


エスターク「デスタムーアはどうした!? あの魔神に、近付く者を殺せと命じていた筈だぞ!!」

魔王「フッ。この地上には相応しくない醜体なのでな、似合う地獄へと送り返して置いた」ザッ



エスターク「……」

魔王「辞世の句が有れば、聞き届けるが?」ニヤリ


エスターク「おのれ……」プルプル

エスターク「おのれぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」




魔王「今さらだが、名乗るか?」

エスターク「その必要は無い!! まとめて死ねい、メラゾーマッ!!!」バッ


魔王「そうか……」

魔王「ジゴデインッ!!!」バッ





 数日後 ロマリアの宿屋の一室



武闘家「この街で集めた情報を整理すっと、街の近くに空へと架かる橋が現れ、それが天空城ってとこに繋がってるらしい」

女騎士「イコール、それが魔王城とは限らないがな。慎重に判断しないと、長い日数をここで足踏みする事になる」


賢者「それで、どうするんだ? 自分はどっちでもいいぞ?」

僧侶「おや? ふふっ。賢者はこの旅が楽しんでいるようですね?」クスッ



賢者「うんっ♪ 今まで森の中に居たからなっ」ニコリ

賢者「悲しい別れもたくさん有ったけど、だから皆の分も楽しんで生きたいんだ!!」


僧侶「……」

僧侶「それがよろしいかと」ニコリ


※この後にレズセックス入るけど、苦手な人は飛ばしてね


おやすみなさい



女騎士「僧侶、教えてくれないか?」チラッ

僧侶「はい?」


女騎士「雲海に浮かぶ天空城が、魔王城かどうかだよ。前勇者と共に、行ったんだろ?」

僧侶「そうですね……」



僧侶「答えを申し上げるならば、天空城こそ魔王城で間違いございません」コクリ

武闘家「……」


僧侶「しかし、ここに架かる虹の橋は途中で消える偽物」

僧侶「本物は、更に西の地に……」



女騎士「なるほど」

武闘家「だが、クライマックスは近付いて来やがったな」ニヤリ


女騎士「では、真面目な話はこの辺りで終わりにしよう」スクッ

武闘家「解散か?」



女騎士「いや、新たな仲間の……賢者の歓迎会だ」ニコリ

賢者「歓迎会?」


武闘家「つっても、晩飯はもう食ったろ?」

女騎士「何を言ってるんだお前は? 飲んで食うだけが歓迎の作法では無いだろう?」



女騎士「なぁ、賢者?」クスッ

賢者「へっ?」キョトン


武闘家(嫌な予感が……)

僧侶(イヤな予感が……)



武闘家「まっ、俺はパスだ。自分の部屋に戻っから、やるんならオメェらだけでやれ」ガチャッ

女騎士「おい待てっ!! いつまで童貞で居るつもりだ!?」


武闘家「はいはい、じゃーオヤスミ」バタンッ

女騎士「くっ……」



僧侶「……」

賢者「ん? ん?」キョロキョロ


女騎士「ふむ。女だけになってしまったが、仕方あるまい」

女騎士「賢者には、私の真の姿を見せてやろう!!」



賢者「おおっ!? なんか凄そうだぞ、どうなるんだ?」ワクワク

女騎士「ふふっ。夜は長い……ゆっくりと」


僧侶「ゆっ、勇者さまっ!! お待ちくださいまし!!」ガシッ

女騎士「なんだ僧侶? 止めるのか?」



僧侶「いえ、いきなりは刺激が強すぎるかと」

女騎士「そう言われてもな、いつまで隠して置けるものでも……」


僧侶「で、ですから今宵はっ、わたくしが口頭にて伝えます故」アセアセ

女騎士「ふむ……そうか? なら、後日にしよう」



僧侶「はい。ここはわたくしと賢者の相部屋。今日中に伝えて置きましょう」コクリ

女騎士「と、言う訳だ。おやすみ、僧侶、賢者」ガチャッ


賢者「えっ、なんだか分かんないけど……オヤスミさ勇者!!」

僧侶「おやすみなさいませ」ペコリ



賢者「……」

僧侶「……」


賢者「二人に、なったね?」チラッ

僧侶「そうですね賢者」コクリ



賢者「勇者の話って、楽に聞いてても良いのか?」

僧侶「どうぞ、ベッドへ腰掛けてください」


賢者「へへーん。おおっ、ふかふかー!!」ボフッ

僧侶「わたくしも隣へ……」ボフッ



賢者「さぁ、話を聞かせて欲しいぞ僧侶」

僧侶「それは……」



 ── 勇者の体を説明中 ──



僧侶「と、言う訳です」

賢者「……」



賢者「うあぁっ……ホ、ホントなのか?」ブルッ

僧侶「はい」コクリ


僧侶「そして、わたくしが賢者と相部屋を希望した理由でも有ります」

賢者「へっ?」



僧侶「貴女がもし嫌悪感を抱いたのなら、ここから逃げなさいと……」

僧侶「そう、促す為です」


賢者「……」

僧侶「今日は帰って頂きましたが、勇者さまの状態次第では、貴女も相手をせねばなりませんよ?」



僧侶「ですから……」

賢者「ねぇ?」


僧侶「っ……なんでしょう?」

賢者「僧侶は、イヤなのか?」



僧侶「嫌?」

賢者「うん。勇者と、その……イヤなのにしてるの?」コクリ


僧侶「ふふっ、優しいのですね賢者は?」クスッ

賢者「なっ!? 自分は僧侶を心配して!! その……友達、だから」



僧侶「……」

僧侶「本当に嫌ならば、勇者さまとて共に旅など致しませんよ?」


賢者「ん、そうなのか?」

僧侶「それに、わたくしの体は……幾重にも汚れておりますから」ニコリ



僧侶「それで、如何なさいますか?」

賢者「……」


賢者「ここで逃げたって、どこに行けばいいのさ?」

賢者「森も焼けちゃって……にぃにぃも、仲間も、友達も、みぃんな死んじゃったんだぞ?」



賢者「世界樹だって、燃え尽きて無くなってたんだ。自分の行き先なんて……」ブルブルッ

僧侶「……」


僧侶「賢者が望むのならば、わたくしがかつて住んでいた信仰の街に掛け合って、住居を用意して頂く事も可能ですが?」

賢者「ありがとね僧侶。でも自分は……これ以上、逃げたくない!!」

ピサロからデスピサロになったとこで、タイトル回収有ったんだけど忘れてた…



僧侶「……」

賢者「……」


僧侶「それ程の強い覚悟が有るのなら、わたくしの言動は不粋でしたね」

僧侶「これからも友として、仲間として、よろしくお願いいたします」ペコリ



賢者「おー!! 任せてくれー!!」

賢者「あ、でも……」


賢者「経験ないから、勇者と何をすればいいのか分かんないぞ!!」

賢者「どうすればいいんだ僧侶!? 自分に教えてくれー!!」ガシッ



僧侶「教えてくれと申されましても……」ビクッ

賢者「なんでだ? いっつもやってるんだろ?」


僧侶「そっ、そっ、そのように頻繁には致しておりません!!」ビクッ

賢者「おっ? 分かったぞ!! 僧侶はヘタクソだから、教えられないんだな?」ニヤリ



僧侶「わ、わたくしは下手では有りません!!」ガシッ

僧侶「取り消しなさい!! 取り消すのです賢者!!」ユサユサユサユサ


賢者「うあー、じゃー、なんでさー」

僧侶「ぐっ、良いでしょう。そこまで言われたらこちらも引けません。勇者さまの前に、わたくしがお相手致します!!」




 宿の貸し切り天然露天風呂



賢者「わーっ、広いなー!! こんなの自分、初めてさ!!」タタッ

僧侶「これ、走ってはいけませんよ?」


僧侶(最初は体を清めるのだと、ここへ誘いましたが……)

僧侶(いいえっ、考えていても仕方ありません!! わたくしが何とかしなくては!!)グッ



賢者「湯船に飛び込んでも良いのか?」

僧侶「まずは体を清めるのです。賢者、こちらへ……わたくしの前で座ってくださいまし」クイックイッ


賢者「おー!! この椅子? の上?」

僧侶「はい。お風呂用の椅子ですので、遠慮なく」コクリ



賢者「へへーっ♪ それじゃ僧侶、お願いねっ」ペタン

僧侶「わたくしにお任せなさい。背中から洗いますよ?」ニコリ


僧侶(体用の洗剤を濡らしたタオルに付け……)ピュッピュッ

僧侶(賢者の体を洗っている間に、次の展開をっ)



僧侶「……」

僧侶「いざっ!!」スッ


僧侶「どうです? 痛くは有りませんか?」ゴシゴシッ

賢者「ううん。気持ちいいぞっ♪」



賢者「あっ、髪は邪魔じゃないか?」

僧侶「はい。きちんと上でまとめられていますよ?」ゴシゴシッ


賢者「そっか」

僧侶「……」グシュグシュ ゴシゴシッ



僧侶「耳……」

賢者「へっ?」


僧侶「ふふっ。先ほどから可愛らしく動いておりますね」クスッ

賢者「うぅっ……自分もエルフ族だから耳が長いしな。背中を誰かに洗って貰うのも久し振りだし、どうしたって動いちゃうぞ」ピコピコ



僧侶「さようですか……」

賢者「うんっ」コクリ


僧侶「……」ゴシゴシッ

賢者「……」



僧侶「はむっ……」パクッ

賢者「ひゃっ!?」ビクッ


賢者「なっ、なにするんだ僧侶ぉっ。自分の耳は、食べ物じゃないぞっ」ピクピクッ

僧侶「んっ、ちゅっ……エルフ族の弱点は、この長い耳だと聞いております。はむはむっ」モゴモゴ



賢者「うあぁっ、ヤメてぇぇっ……」

僧侶「ふむ? っ、ぷはぁっ……ふふっ、そうですね。まずは体を洗いませんと」クスッ


僧侶「次は、腕を持ち上げて洗います故、暴れてはなりませんよ?」グイッ

賢者「へっ?」



僧侶「参りますっ!!」ゴシゴシッ

賢者「んんっ!? ぎゃははははははははっ!! じ、自分、腋は弱っ……ひっ、ひいぃっ、あははははははっ!!!」クネクネッ


僧侶「我慢なさい賢者!! 反対の腕も洗います」ゴシゴシッ

賢者「んにゃぁぁぁっ!! くくくくっ、ヤメてヤメてっ、いひぃっ!! 死んじゃうぞっ、死んじゃうぅっ!!」ジタバタ



僧侶「はい、終わりましたよ?」

賢者「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」クテン


僧侶「僧侶? こちらへ向き直って下さいまし」

賢者「まっ、前は自分でやるぞ!!」アセアセ



僧侶「どうか、遠慮なさらず」ガシッ

賢者「遠慮なんかしてなっ……うああぁっ!? 回さないでくれぇ!!」クルンッ


僧侶「では、洗いますねっ?」ニコリ

賢者「うぅっ……僧侶が女の子でも、やっぱりおっぱい見られるの、恥ずかしいぞ」プルンッ

>>173
×僧侶「僧侶? こちらへ向き直って下さいまし」
○僧侶「賢者? こちらへ向き直って下さいまし」



僧侶「わたくし相手で縮こまって居ては、勇者さまと共に湯浴びなどできませんよ?」

賢者「ゆ、勇者って、そんなに凄いのか?」


僧侶「それはもう。自身の胸でわたくしの背中を……いえ、やめておきましょう」クスッ

賢者「えっ、なにそれ気になるっ!?」



僧侶「ふふっ、駄目ですよ。それよりも今は……」スッ

僧侶「賢者の胸を洗いませんと」ムニュムニュッ


賢者「んっ!?」ピクンッ

賢者「ぁっ、あ、あっ、あっ。なんか、くすぐった……」



僧侶「優しく」スリスリ

僧侶「優しくっ……」スリスリッ ゴシュゴシュ


賢者「はぁっ」

賢者「自分のおっぱい、泡で隠れちゃったぞ」



僧侶「こんなものでしょうか?」

僧侶(ええと……次は、どう致しましょう? 太ももなどを洗った方が)


賢者「ねぇ僧侶?」ニコリ

僧侶「はい?」チラッ



賢者「おりゃー!!」ムギュゥッ

僧侶「きゃあっ!!」ビクッ


賢者「へへーん、自分ばっかり泡だらけだからなっ!! 僧侶にもお裾分けだぞっ」スリスリッ

僧侶「だからとてっ、急に抱き付かないで下さいましっ!!」



賢者「……」

賢者「っ?」スリスリッ ムニュムニュッ


賢者「あっ……」

僧侶「今度は何ですか?」



賢者「自分、気付いたんだけどさ……」

賢者「こうやって、んっ……僧侶と、泡だらけのおっぱいを擦り合わせてると」ムニュムニュ グニュグニュ


賢者「んんっ、ふんん!! なんだか、気持ちいいんだ……」

僧侶「……」



僧侶(本当に知らぬのですね)

賢者「僧侶は、気持ちよく無いのか? 自分だけ?」


僧侶「いいえ。わたくしも心地よいですよ?」

賢者「そっか……よかった」ニコリ



僧侶(とは言え、女同士でここから先は……わたくしも勇者さまと一度しか有りません)

僧侶(あの時の事を、思い出さなくては……)




女騎士『ふむ。お互いにこれだけ濡れていれば良いか?』

女騎士『これは貝合わせと言ってな? クリトリスの皮を剥いた敏感なアソコを、ぐちゅぐちゅと擦り合わせたり吸い付かせ合ったりするのだ』




僧侶「……」

僧侶(わたくしは、何と言う事をしたのでしょうか?)


賢者「僧侶? どうかしたのか?」

僧侶「い、いえっ」フルフル



僧侶「……」

僧侶(このままで居ても、仕方有りませんね)


僧侶「賢者? 力を抜いていて下さい」スッ

賢者「んん?」



僧侶(まずは指先で、ココへ刺激を与える所から……)スリスリッ

賢者「おおっ!? 僧侶もそこ触るのなー?」ピクッ


賢者「んー。自分でも触ったりするけど、何かヌルヌルして来ちゃうから止めちゃうぞ?」

僧侶「おやっ……」クスッ



僧侶「一人でもなさるのですか?」クニュクニュ

賢者「んっ……うんっ。だって、ここ触るとっ、暖かくなるんだ」


賢者「僧侶は、してないのか?」

僧侶「ひゃい!?」ビクッ



賢者「もしかして、自分が変なの?」ウルウル

僧侶「わ、わたくしもしておりますよっ!! たまに……」アセアセ


賢者「そっかぁ!! 僧侶と一緒で安心したぞっ!!」ムギュゥッ

僧侶「あはっ、ははっ、は……」



賢者「……」

賢者「んっ……」ブルッ


賢者「なぁ? ヌルヌル、して来た?」

僧侶「そうですね、濡れておりますよ? だいぶ、感じ易い体質なのでは?」クチュクチュ



賢者「んんっ!?」ビクッ

賢者「そん、なの……自分じゃわかんないぞ」


僧侶(後は、このまま導いて差し上げれば宜しいでしょうか?)

僧侶「どうぞ。わたくしの指を感じてくださいまし」クリクリ スリスリ



賢者「っ……」ギュッ

賢者「ゆ、勇者もっ、はぁぁっ……同じこと、するんだろ?」


僧侶「いえ、勇者さまはもっと……」

賢者「えっ!? もっと凄いことするのかっ!?」



賢者「ど、どうするんだ僧侶ぉ!! 僧侶もできるんなら、教えて欲しいぞっ!!」

僧侶「あっ、あの……わたくしにはその真似事しか」アセアセ


賢者「それでもいいから……自分にしてくれぇ。そうじゃないと、ビックリして逃げちゃうかもしれないから」

僧侶「……」



僧侶(やはり、アレをせねばならないようですね……)

僧侶(わたくしに、上手くできるでしょうか?)


賢者「そうりょぉっ……」ウルウル

僧侶「畏まりました。何処までやれるかは知れませんが、出来うる限り真似てみましょう」コクリ



賢者「おーっ!! で、どうするんだ?」

僧侶「まずは、わたくしと向かい合いましょう。お互いにギリギリまで近付いて座るのです」ペタン


賢者「お尻を床に着けるんだよね? 足は?」ペタン

僧侶「そうですね……左足を伸ばして相手の体の横へ。右足は膝を曲げて立て、相手の伸ばした左足を跨ぐようにします」



賢者「……」ジィーッ

賢者「あっ、わかったぞ!! これでヌルヌルしたとこを『くっつけっこ』するんだなっ!!」


僧侶「まぁ、そうなのですが……」

賢者「違うのか?」



僧侶「……」

僧侶「くっ……」


僧侶(ここで、わたくしが恥ずかしがっては!!)プルプルッ

賢者「早く教えてくれぇ僧侶ぉ!!」ワクワク



僧侶「……」

賢者「……」


僧侶「ココですっ!!」ビシッ

賢者「ココ?」チラッ



僧侶「クリトリスですっ!!」

賢者「へぇー、そんな名前なのかぁ」


僧侶「ココの皮を剥きなさいっ!!」

賢者「へっ?」



僧侶「剥くのですっ!!」

賢者「……」


賢者「ムリムリムリムリムリっ!!」フルフルッ

僧侶「無理では有りません!!」



賢者「うああああっ、絶対に無理だぞっ!! 死んじゃう死んじゃう!!」フルフルッ

僧侶「死にませんっ!!」


賢者「ってゆーか、その……剥けるの?」

僧侶「……」コクリ



賢者「うぅっ」

賢者「やっぱり、怖っ……」


僧侶「わたくしも致します故」

僧侶「二人でなら、怖くないでしょう? ねっ?」ニコッ



賢者「……」

賢者「うん」コクリ


僧侶「ならば、わたくしの真似をして下さいまし」

賢者「お、おーっ!! わかったぞ!!」



僧侶「すぅぅっ」

僧侶「はぁぁっ……」


僧侶「……」

僧侶「いざっ!!」スッ



僧侶(ですが、幾ら同性とは言え、目の前でするのは……)

僧侶(くっ、もはや引けません)フルフル


僧侶「よく、見てくださいね?」

僧侶「コレが、んんっ、わたくしの、クリトリスです……」クリクリッ



賢者「へぇー、僧侶、生えてないんだな?」

僧侶「貴女もいずれ、勇者さまに剃られますよ……」ボソッ


賢者「ん?」

賢者「じゃあ、自分も……」スッ



賢者「ココ、でっ、っ、んっ、いいん、だよねっ?」クリクリッ

賢者「この尖ってるとこを、ふっ、んっ……剥けば、いいのか?」スリスリスリスリッ


僧侶「はい……このようにっ」

僧侶「ふんんっ!?」グリンッ



僧侶「はぁっ、はぁっ、はぁっ……わかり、ましたか?」ピクッ ピクッ

賢者「っ……わ、わかった」ゴクリ


賢者「……」

賢者(やっぱり怖いけど、一気にっ!!)



賢者「んぎぃぃっ!!?」グリュッ

賢者「っ、ふぅっ、ふぅっ……むい、たぞ?」ピクッ ピクッ


賢者(少し、ヒリヒリする……)

僧侶「敏感な部分だと言う事は、はぁぁっ。おわかり頂けましたね?」



僧侶「後はっ、ふぅっ、ふぅっ、賢者のその敏感な部分に、わたくしのヌルヌルする部分を……」

僧侶「擦りつけるっ!!」ヌチュヌチュッ


賢者「っ、ん゙あああああああっ!?」ビクンッ

僧侶「くんっ!?」ビクッ



賢者「あっ、ああっ……自分のに、ちゅーって、吸い付いて、来るっ」

僧侶「賢者も、腰を突き出しなさい。お互いにここを擦り合わせ、快楽をっ、貪るのですっ!!」クチュッ グチュッ


賢者「うんっ……」

賢者「こ、こうか? ん、んっ、んっんっん……」ヌチュヌチュッ クチュクチュッ



僧侶「あんっ!! っ、はぁぁっ……上手、ですよ?」ビクンッ

僧侶「わたくしも、ふっ、負けていられませんねっ!!」クチュクチュ クチュクチュッ


賢者「うああっ、僧侶ぉっ!! 僧侶ぉっ!!」グチュグチュッ グチュリ

賢者「んんっ、うんんっ、うんんっ!!」ビクッ ビクッ



賢者「僧侶っ、僧侶に、キスしたいんだ……して、いい?」

僧侶「……」


僧侶「んっ……」チュッ

賢者「んあっ、んんっ、僧侶ぉっ……」チュウッ



賢者「もっと、もっと、っ、ん、ぢゅちゅっ!!」ニュルニュルッ

僧侶「ん゙んっ!?」ビクッ


僧侶(賢者の舌が、わたくしの口の中まで入って来て、わたくしのっ、わたくしのっ)

僧侶「ふえぇっ……」



僧侶(わたくしの舌に絡み付いてっ、口の外まで引っ張り出されてしまうっ!?)ビクビクッ

賢者「ぢゅるるっ!! ちゅっ、ちゅっ、ちゅうっ!! あはっ♪ 僧侶ぉっ♪♪」


僧侶(いけません、このままではっ!! アソコの動きも、一層に激しくっ!!)グチュグチュグチュッ

僧侶「くひぃぃっ!?」



賢者「んっ、んっ、んっ!!」ヌチュッ グチュッ

僧侶(せめて、舌だけでも離さなくては……どこか、どこか賢者の弱い所をっ)


僧侶(耳は舐めれない。抱き締め合ったこの体制。となれば、残るは、胸か……)スッ

僧侶(お尻っ!!)グヂュグヂュッ



賢者「っっ!!?」ビクッ

賢者「ぁ、あ、あっ……な、何するんだ僧侶ぉっ!! 自分のお尻にっ、い゙ぃっ、指を入れないでくれぇぇっ!!」プルプルッ


僧侶「はぁっ、はぁっ、はぁっ……そうは言っても、簡単にわたくしの指を呑み込んでしまいましたよ?」クスッ

僧侶「ほらっ、このまま……イッてしまいなさい!!」ヌチュッ ヌチュッ ヌチュッ



賢者「ん゙ん゙んんんっ!!?」ビクビクッ

賢者(あぁっ……前も、お尻も、気持ちいいぞっ。この気持ちいいの、僧侶にも知って欲しい)スッ


僧侶「へっ!?」

僧侶(わたくしのお尻に、賢者の手が宛がわれた感触が……まさかっ!?)



僧侶「おっ、おヤメめなさい賢者!! ヤメるのですっ!!」フルフル

賢者「僧侶、僧侶も、感じて?」ニコリ


賢者「僧侶ぉっ!!」グチュグチュッ

僧侶「ん゙ぎぃぃぃぃぃっ!!?」ビクンッ



賢者「すごいなぁ……薬指に、中指。二本も入っちゃうぞ?」クチュゥッ

僧侶「くっ、賢者もっ……フッ!!」ヌヂュッ


賢者「あ゙あ゙ああっ、ぐあっ、んっ、ああっ!!」

僧侶「二本、入りましたね?」クチュクチュ



賢者「うあぁっ……僧侶ぉっ、自分っ、自分っ、何かキちゃうっ」

賢者「ぐすっ、ひっく、うぅっ……もう、ダメだぁっ」ポロポロッ


僧侶「わた、くしも……そろそろ限界です。一緒に、参りましょう?」

賢者「うんっ、うんっ!!」コクリ



僧侶「ではっ」

僧侶「どうせ誰も見てはいません。後は一心不乱にっ……」


僧侶「擦り合わせるのですっ!!」グチュグチュ ヌチュヌチュ

賢者「うあ゙ーーーっ、僧侶ぉっ!!」グチュグチュグチュグチュ



僧侶「ん、んっ、んんっ、んんっ!!」ニュチュッ

賢者「あっ、あっ、あっ、あっ!!」グチュグチュッ




僧侶「あ゙あ゙ああああああっ!!!」ビクビクンッ

賢者「ん゙ん゙んんんんんんっ!!!」ビクビクンッ



僧侶「っ、ん……」ギュッ

賢者「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅぅっ……」ギュウッ


僧侶「……」

賢者「……」



女騎士「すまん。私も風呂に入りたいのだが、もう良いか?」

僧侶「ひゃいっ!? ゆ、勇者さまっ!!?」ビクッ


賢者「おー、勇者か?」チラッ

女騎士「途中から見てたが、随分と楽しそうだったな? 次は、私も交ざろう」ニコリ




 ×年前 魔王城 玉座の間



魔王「ほぉ、恐れを知らず……この魔王の前に現れたか勇者よ?」ニヤリ

少年「初めまして」


魔王「……」

少年「……」



魔王「どうした? 掛かって来んのか勇者?」

少年「その前に聞きたいんですけど、なぜ復活しているのに、地上へ攻めないんですか?」


魔王「フッ。攻める? 必要あるまい?」

魔王「愚かな人間どもは、お互いに争い殺し合っている。わざわざ我が軍が攻めずとも、やがては滅びる種族よ」

何とか今日中に終わらせたい



少年「……」

少年「そうですか……」


少年「これから、攻め込む予定も有りませんか?」

魔王「人間なんぞを相手にして何になる? いつの世も、この魔王を楽しませるのは勇者のみ!!」



魔王「しかし……」チラッ

魔王「勇者ロトの復活を待っていれば、ここに来たのがこんなガキとはな」


少年「……」

少年「すみません」ペコリ



魔王「まぁいい……」

魔王「ロトが再び産まれるまでの暇潰しだ。ガキとは言え勇者ならば、多少の力は有るのだろう?」ニヤリ


少年「……」

魔王「だが、ハンデが必要だな」



少年「ハンデ?」

魔王「当然だろう? ガキと普通に戦ったとて結果は見えている」


魔王「さぁ、ハンデを言え。出来る限り譲歩をしてやるぞ?」

少年「確かに……ボクと貴方じゃ、普通に戦うにはハンデが必要ですね」



魔王「その通り。この魔王と渡り合えるのは、ロトのみよ!!」ニヤリ

少年「じゃあ……」ジャキッ


少年「……」ガリガリッ

魔王(剣の切っ先で、床に傷を付け始めた?)



魔王「何をしている勇者?」

少年「……」ガリッ


少年「ボクを中心に、だいたい半径一メートルぐらいで円を描きました」

魔王「だから、それがどうした?」



少年「だから? わからないですか?」

魔王「……」


少年「このボクが……」

少年「この円から出ずに戦ってやると言ってるんだ」



少年「ハンデだよ、魔王……」

少年「欲しいんでしょ? ハンデが?」クスッ


魔王「っ!?」

魔王「人間のガキが、虚仮にするかっ!!」ギリッ



少年「……」

魔王「……」


魔王「良いだろう。こちらも、玉座に座ったまま相手をしてやる」スッ

魔王「灰になれ……メラゾーマッ!!!」ドゴォォッ



少年「……」

魔王(動かない? まさかっ!?)ビクッ


少年「……」ガキィィン

魔王「マホカンタッ!? 事前に唱えていたか!!?」



魔王「ぐッ!!」ダッ

少年「あれっ、避けちゃったんですか?」


少年「でも、座ってた椅子……燃えちゃいましたね?」クスッ

魔王「……」



魔王「ゴパァッ!! 『しゃくねつのほのお』!!」ボォォウッ

少年「フバーハッ!!」バッ


少年「……」

魔王「ならば、ならばならばっ、この爪で切り裂くのみよっ!!」ジャキィッ



魔王(しかし何故だ? この者からは仕掛けて来ぬ……)

魔王(それどころか、殺気すら感じないではないか)


魔王「勇者よ、何をしている?」

少年「えっ? 何って、時間稼ぎですけど?」



魔王「時間稼ぎだと?」

少年「あ、言い忘れてました……」





少年「ボク」

少年「貴方の娘を、人質に取ってるんで」



魔王「……」

少年「今頃仲間が、完全に拘束してると思いますよ?」


少年「ボクの合図一つで……分かりますよね?」クスッ

少年「双子の水晶で見てみますか?」



魔王「もういい……」

魔王「何が望みだ?」ガクンッ


少年「そうですね」

少年「じゃあ、選んでください」



少年「娘と共に、元居た世界へ帰るか」

少年「魔王軍の全権をボクに委ね、ボクのもとに下るか」


少年「それとも、ボクと戦いますか?」

魔王「……」



少年「どれでも良いですよ?」

少年「ボクが……新しい魔王になるんで」


魔王「魔王になったとて、どうする?」

少年「そんなの、決まってるじゃないですか」ニコリ




 現在 魔王城 玉座の間



黒騎士「おい、寝るんなら部屋へ戻れ」ユサユサ

魔王「んっ……寝てたんだね?」パチッ


黒騎士「白騎士はどうした?」

魔王「んーっ。疲れたから寝るって」



黒騎士「ああ、あの後に白騎士んとこ行ったんだったな?」

魔王「うん……」ウツラウツラ


黒騎士「ほれっ。報告も有るから、もうちょい頑張れ」

魔王「……」



魔王「グハハハハッ!! その成果をこの魔王に報告せよクロ!!」ビシッ

黒騎士「スイッチの切り替えは早いんだな……」


黒騎士「っと。エスタークに、よりしろとなったデスピサロも倒した」

黒騎士「これで、次の魔王を狙うような奴は全て倒したって事だ」



魔王「……」

魔王「モンスターの軍勢は?」


黒騎士「全部バラ撒いて来たよ。これでもう、人間同士が争ってる隙は完全に無い筈だ」

魔王「そう……」



黒騎士「今の勇者も、俺の正体に恐らく気付いてる」

黒騎士「もしかすると、アンタの正体にも……」


魔王「……」

魔王「頃合いだね」



魔王「ここまで、来れるかな?」

黒騎士「必ず来るさ。相当に強いぜ?」コクリ



魔王「そっか……」

魔王「楽しみだよ」クスッ



おわり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年06月16日 (木) 00:43:58   ID: RgC6teKW

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