【艦これ】扶桑「遭難ですか」山城「そうなんです」 (215)



時は西暦20XX年……ッ!!

深海棲艦が地球上のあらゆる海域に現出……ッ!!

母なる海における自由を失った人類最後の希望、艦娘……ッ!!

黒鋼の船の意思を持つ女達の熾烈な戦いは依然として続いていた……ッ!!

これは、混沌を極めし戦場を駆け抜けた彼女達「艦娘」の、平成における壮大な英雄叙事詩……






蛇「」ニョローン

山城「イヤあぁぁァぁ!!気持ち悪いィぃ!!」

扶桑「そんなこと言っちゃ蛇さんかわいそうよ……」


ではなかったッ!!!!!




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1452428900



扶桑(困ったわ……)

山城「」グスッ

扶桑「山城、心配しないで……お姉ちゃんがなんとかするから……」



生とは美しいモノ……ッ!!

誕生から営み……そして足掻きッ!!

そんな生きる事に対する執着が、敗北によりレイテの藻屑となる運命にあった姉妹の命を救ったのかもしれない……ッ!!



……故に運命とは残酷なものであるッ!!

生を拾ったためにッ!!

姉妹は再び窮地の真っ只中に立たされることとなるのだ……ッ!!

ここはレイテ島より北北東およそ1,000kmの絶海の孤島……ッ!!

即ち無人島であるッ!!

火を見るより明らかな絶望……ッ!!

それでも!!女達は生きねばならない……ッ!!

生きて!!生き残って!!


仲間達の下へ還るため……!!




扶桑(この島に流れ着いてから何時間ほど経ったのかしら……)

扶桑(左右は砂浜、後ろには森と山……そして目の前は見渡す限りの海……)

扶桑(艤装の主砲にはもうほとんど弾がないわ……無理に島を出ても、すぐに深海棲艦のいい的になってしまうわね……)

扶桑(そうなるとやっぱり……ここで救助を待つほか無いのかしら……)

山城「」グスッ…ヒクッ…

扶桑(かわいそうな山城……私がなんとかしなくちゃ……)゙




扶桑「そうよ……山城っ」

山城「……ふぇ?」グスッ

扶桑「今はこんなことになっちゃったけど、私たちは決して不幸なんかじゃないわ」

扶桑「だって、私のたったひとりの妹と生きてまた一緒になれたんだもの」

山城「お姉さま……」

扶桑「はぐれちゃったみんなもきっと無事よ。だから、一緒に頑張って生きるのよ」

山城「……はいっ!」ギュッ

扶桑「フフ……よしよしっ」




扶桑「それはそうと……おなかすいたわね」

山城「お姉さま!私の秋刀魚缶が無事でしたっ」

扶桑「本当?……でも、缶詰は日持ちするからまだ開けない方がいいわ」

山城「」シュン

扶桑「とにかく、この砂浜は満潮(駆逐艦ではない)になると危ないかもしれないから……」

扶桑「そうだわ、食べられるものを探すついでに島を散策してみましょう」

山城「食べられるもの……」

扶桑(探せばかまぼこが泳いでるかもしれないわ)

山城(コンビニかなにかあるかな)

山城(おにぎりたべたい……)

山城「フフッ」ニッコリ

扶桑「ウフフッ」ニコッ


姉妹のサバイバルが今ッ!!始まるッ!!



※この先は書き溜めがないので、ゆっくり書いていきます
 許してください!なんでもしますから!



扶桑「散策の前に、私たちが持っているものを一度確認しましょう……」

山城「はいっ」

・艤装(艦娘用36.5㎜連装砲)……1基
・弾薬……3発
・鉢巻……2本
・秋刀魚缶……1缶
・瑞雲……1機

扶桑「結構流されちゃったわね……」

山城「妖精さんとはぐれたから瑞雲も飛ばせないわ」

扶桑「困ったわね……」





扶桑「足袋(※履物)は流されなくて助かったわ」

山城「森の中は安心ですねっ」

扶桑「そうね」ニコッ

扶桑「でも、まずは島の全体を掴みたいから浜を辿ってみましょう」

山城(お姉さま、すごい頼もしい)

扶桑「怪我だけはしないようにね」




姉妹が歩を進める事およそ一時間……ッ!!

片方に見ゆる山を軸に……ッ!!

逆時計まわりの要領を以て散策は続く……ッ!!


山城「お姉さまとこうやってお散歩できるのも久しぶりですね」

扶桑「そうね……」

扶桑「それに空もこんなに青いし……」

山城「私、不幸なんかじゃないです」

扶桑「ウフフ、私もよ……」

山城「お姉さま……」


前向きで気高き美しい姉妹の絆……ッ!!

しかし、未だ気付かず……ッ!!



この島にはかまぼこもおにぎりもないことッ!!!



山城「お姉さま、主砲が重そう……」

扶桑「ウフフ、なんてことないわ……」

山城「ダメ、交代ですっ」

扶桑「そんな、悪いわ……」

山城「へっちゃらです!」サッ

扶桑「あら……」

山城「よっこい……しょっ」グイッ

扶桑(優しい子に成長したわね……嬉しいわ)



かまぼこもおにぎりも存在しない事実に気付きつつあった頃……ッ!!

高翌揚感に紛れていた疲労感が姉妹の全身を襲った……ッ!!


扶桑「疲れたわ……」

山城「そうですね……」

扶桑(このままじゃ悪戯に消耗するだけだわ……)

扶桑「このへんで一休みしましょう……」

山城「賛成です、お姉さm……」

扶桑「どうしたの山城?」

山城「き、木の実が見えますよ!」

扶桑「えっ、本当?」

山城「ほら、あの森の方!」




それは木の実……ッ!!

そうッ!!

紛れもないヤシの木ッ!!

そしてヤシの実だった……ッ!!


扶桑「偉いわ、山城っ」

山城「えへへ」

扶桑「問題はどうやって取るかね……」

山城「そうですね……」

山城(私もお姉さまも、運動神経は決してよくないから登って取ることは難しい……)

山城(かといって、石を投げて届かせる力もないわ)

山城(貴重な弾を使うわけにもいかないわ)

山城(どうすれば……………ハッ!!)


閃くッ!!

山城の頭脳ッ!!



山城が口を開くよりも早くッ!!

脊髄の反射が山城の全身に信号を送る……ッ!!

ヤシを手に入れろと……ッ!!

食して体を潤せとッ!!

DNAに刻まれし人類が生み出した理想のフォーム……ッ!!

流された飛行甲板がまるでそこにあるかのように……ッ!!

山城は無人の「瑞雲」を投擲したッ!!!!

山城「テェエエエエエエエイ!!」





ヤシの実に命中ッ!!

瑞雲は四散したッ!!



山城「ごめんなさい……お姉さま……!」ブワッ

扶桑「気にしちゃダメよ山城……あなたはよくがんばったわ」ナデナデ


無傷のヤシの実ッ!!

だが扶桑はあくまで冷静……ッ!!


扶桑「妹にこんな思いをさせるなんて……許さないわ……」


否……ッ!!

扶桑は怒りに燃えていたッ!!

それはヤシの木からすればまことに理不尽な怒りでもあったッ!!




山城は思い込んでいた……私たちには力がないとッ!!

だが、扶桑型姉妹には自覚無き力が備わっていたのだッ!!

艤装35.6㎝連装砲塔の650tの大重量を支える力がッ!!


扶桑「山城……もう大丈夫よ……」

山城「……え?」グスッ


山城はみた……ッ!!

根本からのし倒されたヤシの木の無残な姿をッ!!!



扶桑「山城……空いたわ……」

山城「ありがとうございます……お姉さま」

山城「瑞雲の破片を錐代わりに使うなんて、考えましたね」

扶桑「フフっ、たぁんとめしあがれ……」

山城「いえっ、お姉さまから頂いてください!」

扶桑「いいのよ山城、私はあなたのお姉ちゃんだもの……」

山城「お姉さま……」



山城(ヤシの実まっず!!!)



扶桑「日が暮れてきたわね……」

山城「はい……」

扶桑「今日はいっぱい動いたからしっかり休まなきゃ」

扶桑(とは言っても、ヤシの葉を布団代わりにするだけじゃ心もとないわ……)

扶桑(それに野生動物に襲われでもしたら大変……)

山城「お姉さま、私に考えがっ」

扶桑「どうしたの山城?」

山城「お姉さまが寝て、私が見張りをするの」

扶桑「それじゃあ山城が眠れないわ……そうだ、じゃあ交代で見張りをしましょう」




そして迎えた夜……ッ!!

ここは原生林の中……ッ!!

明かりなど無く鬱蒼とした空間……ッ!!


扶桑「フフッ、寄り添うと暖かいわ……」

山城「私もです……」

扶桑「……明日はヤシの実じゃないものがたべたいわね……」

山城「……そうですね……」

扶桑「……ウフッ」

山城「……フフフっ」

扶桑「……お先にごめんね山城」

扶桑「おやすみなさい」

山城「おやすみなさい、お姉さま」


朝早いので本日は以上です。
明日は成人の日ですね。新成人のみなさんおめでとうございます。

ガバガバ漂流ものにも関わらず見てくれてた人、ありがとうございました。
続きは近いうちにかきます。

またゆっくり書いていきます


>>33 うわ、マジでそうやった……ありがとう



ここは赤道直下……ッ!!

絶海の孤島……ッ!!

今は1月……ッ!!

暦の上ではジャニュアリー……ッ!!

にもかかわらず射すッ!!

強烈な紫外線ッ!!

可視光線ッ!!

赤外線ッ!!

唸るような灼熱ッ!!

我ら日の本のフネを襲うッ!!




扶桑「この暑さは応えるわね……山城……」

山城「全然、冬って感じがしません……」グデー

扶桑「喉が渇いたわね……」

扶桑「このヤシの実がなくなると、下手すれば私たち……」

扶桑「……死んでしまうわ……」

山城「そ、そんなぁ、姉さまに先立たれたら私……」ジワァ

扶桑「可愛いわね山城は……フフフ……私達はまだ大丈夫よ……」ニコッ

扶桑「でも、今日中に水をなんとかしなくちゃね……」




遭難において……ッ!!

水の確保は避けて通れぬ課題……ッ!!

多くの水分が失われる常夏の赤道直下においては尚の事……ッ!!

故に姉妹は考えた……確保の策ッ!!



山城「姉さま、手分けをしましょう」

山城「私は近くに川がないか、探しますっ」

扶桑「ごめんね山城……でも、森の中で迷っちゃだめよ……」

山城「大丈夫です!来た道に印をするから、絶対に姉さまのもとに戻ってきます」

扶桑「フフフ、頼もしいわね……じゃあ……」

扶桑「私は雨が降った時のために……ここのヤシの葉を使ってお皿をたくさん作るわ……」

扶桑「ついでに日よけになるものも作れればいいわね……」

山城「決まりですね」ニコッ




扶桑「じゃあ、気を付けてね山城……」

山城「姉さまも、あまりご無理はなさらないでくださいね」

山城「では……」

扶桑「えぇ、いってらっしゃい……」



手を振り……ッ!!

原生林に消えた山城……ッ!!

見送る扶桑……ッ!!

遭難は二日目に突入している……ッ!!




扶桑「さて……」

扶桑(今使えるものは……)


・35.6㎝連装砲……1基
・弾薬……3発
・秋刀魚缶……1缶
・鉢巻……1本
・瑞雲の残骸……主翼1枚、懸架1本、胴体1本(いずれも模型サイズ)
・ヤシの葉……多数
・ヤシの実……3個


扶桑(それにしてもこの暑さ、本当に応えるわ……)

扶桑(先に簡単な屋根から作っておいたほうがよさそう……)



扶桑(……とはいっても、どうやって作ればいいのかしら…………)

扶桑(私は知り合いに大工さんなんかいないし……)

扶桑(屋根……)

扶桑「そういえば鎮守府ってどんな造りだったかしら……」

扶桑(思い出せるのは……)

扶桑(建築構造技術的な特色として小屋組みにトラスを用いており、小屋組みの荷重は桁を介して側柱が負担する方式であることが確認されている。すなわちこれは、側柱が陸梁端部を支持する桁下に存在しなければならないという点を除けば、柱の位置や間仕切りの位置などが建築構造技術に縛られること無く自由に配列できるという利点がある。また、史料調査結果との照合による限りにお)※

扶桑「……フフ……だめね、全然わからないわ……」ニコッ


https://kaken.nii.ac.jp/d/p/13750605.en.html参照





扶桑「とにかくやれるだけやってみるわ……」

扶桑(屋根を作るなら……柱が欲しいところね……)

扶桑(昨日倒したヤシの木も使えそうだけど、今の手持ちじゃとても切って使うことはできないわ……)

扶桑(それから、ヤシの葉を束ねられるもの……)

扶桑(鉢巻は1本…山城のものを合わせても2本しかないからこれはダメね)

扶桑(だとしたら、植物のつるなんかがあるといいんだけど……)

扶桑「私も少しだけ……森に入ろうかしら……」




扶桑「それにしても本当に暑いわ……」

扶桑(お日様がもうすぐ真上にきそうよ……)

扶桑(この着物だけでも脱いでいこうかしら)

扶桑(……蚊が多そうだし今は我慢ね……)

扶桑(山城……大丈夫かしら……)




一方その頃……ッ!!

山城(うぅ……)

山城(人がいないところだから静かなんじゃないかと思っていたけど……)


ギャーギャー!!ガサガサッ……


山城「ッ!」ビクッ

山城(生き物、結構いるんじゃないっ)

山城(これじゃあ川の音を頼りに探す計画は台無しだわ……)


山城に戻りつつあった……ッ!!

抑え込んでいた恐怖心が……ッ!!

少しずつ……ッ!!



山城(フフフ……でも、大丈夫……)

山城(ここに来るまでに、目印の石をいくつもおいてきたわ)

山城(小石じゃ動物が持って行っちゃうかもしれないから)

山城(そこそこの大きさのものをわざわざ選んでね)

山城(何かあったときは、これを辿って戻れるの)

山城(これで欠陥戦艦とか言わせないしっ)フンゾリー

山城(姉さま……方向音痴だった私、こんなに成長したんですよ)ジーン


ギャーギャー!!

山城「ヒエー!」ビクッ




扶桑「植物のつると茎がいっぱい見つかったわ……」ニコッ

扶桑(さてと、次は……)

扶桑(柱か壁になるものね……)

扶桑(なにか手ごろなものがあれば……)

扶桑(……あら?)


視界に入るッ……!!

そこそこの大きさの石ッ!!!




扶桑「石……しかもよく見ると等間隔でたくさん落ちてるわ……」

扶桑(そういえば鎮守府も、レンガ積みの壁になってるのよね……)

扶桑「……」

扶桑「これは使えるわね……」ニコッ




扶桑「たくさん拾ってきちゃったわ……」ゼェゼェ

扶桑(帰れなくなったら困っちゃうから……石拾いを途中で切り上げたのは正解だったわ……)

扶桑(これだけ集まれば十分ね……)

扶桑「フフ……山城がびっくりするようなおうちを作るの……」

扶桑「がんばるわ……」


既に扶桑……ッ!!

皿の事など忘却している……ッ!!




山城(キノコだわ……)


視界に入る……ッ!!

キノコッ!!


山城(私、鳳翔さんの料理でこれと似たキノコを見たことがあるわ)

山城(何より……)

山城「……」グゥー



山城(これがもし食べられるキノコなら、今後の貴重な食料になる……)

山城(そして、今ここで毒見をすることは姉さまのためにもなる……)

山城(……ナニヨリモウゲンカイ……)

山城「……」ジュルリ


空腹の極限……ッ!!

失われし危機管理能力……ッ!!

忘却の彼方と消えた野生の勘ッ!!


山城「いただきますッ!!」バクー



山城「え洗剤?」


山城「なにこrシタが弾ケr」

山城「かrあい辛イイタイあぁぁぁ」

山城「ああああああああああああ!!」




山城は走った……ッ!!

顔には涙……ッ!!

喉元にはクサウラベニダケ……ッ!!

胃には無限の潮流……ッ!!

彼女の生存本能が囁いた……ッ!!


山城「ああああああああああああああ!!!」


引き返せッ!!引き返せとッ!!!




山城「hおえぇsうまぁあああああああ(おねえさまあああああああ)!!!

山城(モドルモドルdモr)

山城(ハヤkう!!!)








山城「hあんheいhnいほほぉぉぉ(なんで石がないのよぉぉぉぉぉぉぉ)!!!」



閉ざされた帰路……ッ!!

もがき苦しむ山城……ッ!!


山城「あっ……あアぁっ……」


絶望に絶望が重なりッ!!

更に絶望が重なるッ!!!


猪「フギッ!!フギッィィィ!!!!」


山城は踏み込んでいた……ッ!!

此処は森の主の縄張りッ!!!!!


山城(不幸だわ……)



猪「fィギアアアアアイイイアggィィィ!!!!」ザッザッ

山城「イヤァァァァァァアァァァアァァ!!!」ガタガタ


閉じようとする生涯ッ!!!

受け入れるしかないッ!!!


猪「プギギイイイイ!!!」ダッ!!

山城「あぁぁぁぁぁ……」

山城(姉さま……先立つ不孝をお許しください……)




その刹那ッ!!!

轟く大地ッ!!!

鳥の群れが大空を覆うッ!!!

山城の意識……ッ!!

ここで途絶えるッ!!!




山城が瞼を開いたその時……ッ!!

顔をクシャクシャにした……ッ!!

愛する姉の抱擁を受けるッ!!!


扶桑「山城!!!」

山城「ねえ……さま……!」




扶桑「お姉ちゃん、心配したのよ……っ!!」

山城「ねえさま……なんで……」


刹那……ッ!!山城は見渡す……ッ!!

立派な壁となったそこそこの大きさの石……ッ!!

残すこと二発となった弾丸……ッ!!

丸焼きとなった主……ッ!!


山城は全てを理解したッ!!!



この一日……ッ!!

姉妹の確保した水は無し……ッ!!

しかしッ……!!得たものは大きい……ッ!!

壱に新たな拠点……ッ!!

弐に豪勢なディナー……ッ!!

そして……ッ!!

再確認した姉妹の絆だッ!!!



山城「ねえさま……」

山城「うわぁぁぁん!!怖かったぁぁあぁ!!」

扶桑「えぇ……ごめんなさい……!こんな怖い目に合わせちゃって……!!」

扶桑「本当に……!ごめんなさい……っ!」


無理矢理に収束する……ッ!!

いい話に……ッ!!


一旦風呂と飯にします

ごめんなさい

>>1って数年前VIPでけいおんのサバイバルSS書いてた人?

>>66 SSは書いたことないです!ごめんなさい!



夜は更け……ッ!

聞こえてくるのは波の音……ッ!

そして「がぁるずとぉく」……ッ!

消耗した体を休めることすら忘れ……ッ!

話に花咲くさまいとをかし……ッ!


扶桑「山城……元気がないみたい……もう寝ないと……」

山城「だって……」ボソッ

山城「結局私……姉さまのお役にたてませんでした」

扶桑「フフフ……そんなこと気にしてたの……?」

山城「そんなことって……」



山城「姉さまが頑張って家を建てて、私を助けてくれた上に食べ物まで調達してくれて」

山城「なのに私、川も見つけられずに勝手にキノコを食べて吐くだけ吐いて逃げてきて、巨大イノシシに襲われそうになって、何にも無いっ」

扶桑「……プっ……あははっ」

山城「……笑うところじゃないです……」

扶桑「ごめんなさい……でも、おかしくって……」

山城「ムゥ」



扶桑「私、こんなときにしかお姉ちゃんらしくしてあげられないから……」

扶桑「昔みたいにこうやって姉妹らしいことができて嬉しいの……」

山城「それじゃあ私が子どもみたいです……」

扶桑「そんなことはないわ……」

扶桑「でも、もうすぐこんなこともできなくなるわね……」チラッ

山城(姉さまの指輪……)

山城(……流されてなかったんだ……)

山城(……提督、かぁ……)


しばらくして声は止み……


二人の島は新しい朝を迎える……ッ




姉妹が無人島に流され早三日……ッ!!

快晴の朝……ッ!!

遂に……ッ!!

ヤシの実尽きるッ!!!


山城「不幸だわ……」




扶桑「やっぱり戦艦だから、燃費が悪いのかしら……」

山城(なるほど……)

扶桑「まぁ仕方のないことよ……今日は二人で川を探しましょう」

山城「うぅ……面目ないです」

扶桑「気にしないの……さて」

扶桑「今回は迷わないように、目印を道中に置いていきましょう……」

扶桑「そうね……動物に持っていかれたら困るから、そこそこ大きめの石でも」

山城「あ、思い出しましたよ!姉さm……」ムッ

扶桑「」ビクッ

扶桑「ど、どうしたの……?」

山城「……いえ、なんでも……ないです」ハァ…

扶桑「?」




広大なジャングルに似つかわしくない和服の女達……ッ!!

二人いれば何も怖いものはないと言わんばかりに突き進む……ッ!!


扶桑「そういえば……」

山城「姉さま、どうしましたか?」

扶桑「いえ、昨日の猪さんのお墓……作ってあげて無いなって……」

山城「……猪の墓をですか?」

扶桑「えぇ……」

山城「私、その猪に殺されかけたんですが……」

扶桑「フフっ……そうね……でも」

扶桑「彼らにとっての私達はよそ者だから……」

扶桑「せめてお墓でも立ててあげないと、私も深海棲艦と同じようなものなのかなって……」




扶桑「……そうね、ただの自己満足ね……」

山城「姉さま……」




扶桑(キノコだわ……)


視界に入る……ッ!!

キノコッ!!


山城「!!」

扶桑「山城、このキノk」

山城「いけません姉さまッ!!」

扶桑「……ま、まだなにも言ってn」

山城「いけません!!あんなものを口にしては!!」

山城「姉さまはダメなんですッ!!」

山城「毒に侵されてッ!体中の穴という穴から見境なく体液を垂れ流してッ!」

山城「蛙のように這いつくばってッ!この世のものとは思えない呪詛のような声を喘ぎ垂らしてッ!」

山城「盛ったインコのような痙攣のおこしてッ!お嫁に行けなくなった姉さまはッ!」

山城「絶対にダメですッ!!!」

扶桑(ここまで心配してくれるなんて……うれしいわ……)ジーン



ザアアァァァァァァァ……


山城「姉さま……!ついにやりましたよ!」

扶桑「えぇ……川よ、山城……!」


拠点を離れて早4時間……ッ!!

それは紛れもない手つかずの川……ッ!!

紛れもない清流……ッ!!

姉妹の命……ッ!!

繋がるッ!!




扶桑「フフフ……さっそくいただきましょう……」

山城「はいっ」


二人の血色が蘇る……ッ!!

隠しきれない喜び……ッ!!

足早に川へ……ッ!!

無心で顔を川につけッ!!

啜る啜るッ!!!


扶桑「あぁ……美味しい……っ!」

山城(あぁ……口から水をはしたなく滴らせる姉さま……艶めかしいッ!!)






扶桑「ウフフ、もう少し頂いちゃいましょう……」バシャッ

山城「えぇ!私も……ッ?」


刹那ッ!!山城は見たッ!!

上流に佇む影ッ!!

おそらくは鹿の仲間か否か……ッ!!

ただそれは川に背を向けていたッ!!!




鹿「」ボトボトボトボトボトボトボトボトボト!(迫真)

ポチャポチャポチャ…()迫真





山城「」




扶桑「美味しいわ……何とかして持って帰れないかしら……」

扶桑「……山城?」

山城「」パクパク

扶桑(ウフフ……面白い子ね……)


思い知らされる……ッ!!

大自然の洗礼ッ!!

知らぬが仏ッ!!!

扶桑は知らずに啜り続ける……ッ!!




扶桑「ふぅ……生き返ったわ……」

山城「」

扶桑「それにしても……ここまで来るのに四時間もかかるのよね……」

扶桑「こことは別に、お水を確保できるようにしておいたほうがいいわね……」

山城「はいッ!是、ぜひ!!そうしましょう!!はいッ!!」バッ

扶桑「」ビクッ




山城「あっ」

扶桑「ここは……」


焼け焦げ捻じ曲がった草木……ッ!!

深くえぐれた地面……ッ!!

紛れもないッ!!昨日の闘争の痕跡ッ!!!


扶桑「もう近くまで帰ってきてるのね……よかったわ……」

山城「そうですね……あっ」

扶桑「どうしたの山城……?」

山城「姉さま、これっ」

扶桑「?」



山城が見つけたもの……ッ!!

僅かな火を灯す燃え枯れ草……枯れ木ッ!!


扶桑「あら……まだ火が消えてなかったのね……」

山城「姉さま、これは使えますよ……」

扶桑「……そうなの……?」

山城「少しの間、待っていてくださいっ」




山城……ッ!!

その僅かな火種……両の手で覆いッ!!

隙間より優しく息を吹きかける……ッ!!

手の内で巻き起こる圧力差……ッ!!

正圧より負圧へ酸素の波ッ!!!

次第に火……蘇るッ!!


山城(やったわ……)

アカン眠気が……

半端なところで申し訳ないですが、今日は寝かせていただきます

続きは明日に書こうと思ってます


よんでくれたひと、ありがとうございます

きょうもゆっくりかきます



無人島生活三日目にして……ッ!!

ついに火を手に入れるッ!!

火種は拠点へ……ッ!!

燃え湛える炎……ッ!!

その様まさしく人の心……ッ!!

命の灯ッ!!!




パチ……パチ……

扶桑「暖かいわ……」

扶桑「フフフ、偉いわ山城……」ナデナデ

山城(えへへ)

扶桑「これで……食べ物に火をとおすことができるわ……」




山城「姉さま、それだけじゃありませんわ」

山城「この火から上がる煙をのろしに使うんですっ」

扶桑「なるほど……」

山城「これで誰かが島に近づいたときに気付いてもらえますっ」

扶桑「えぇ、そうね……でも……」

山城「でも……?」



扶桑「この煙じゃ……遠くからじゃ分かりにくいんじゃないかしら……」




パチパチ…パチ……


山城「……確かに……」

扶桑「たぶん……これだけじゃきっとダメなのよ……」

扶桑「もっと多くの煙が上がるようにしないと……」

山城「そんなぁ……」ヘナッ

扶桑「あぁっ山城……」

扶桑「なんにしても、あなたはお手柄なのよっ」

扶桑「この火は狼煙に使えるだけじゃないと思うわ……」



扶桑「たとえば……」


……
…………
………………


「この混合物が蒸発すると……」

扶桑(9)「このこんごうぶつがじょうはつするとっ」

「その中のエタノールが取り出され、このように水が残ります」

扶桑(9)「すごーい!」

山城(8)「わかんなーい!」







扶桑「そう、たとえば……」




取り出すは無残な姿と化した瑞雲……ッ!!

その胴体……ッ!!


山城「……これをどうするのですか?」

扶桑「私たちの使っている瑞雲は超々ジュラルミン製……これはれっきとした金属よ……」

山城「」コクコク

扶桑「そして、この胴体の空洞に……」

瑞雲「」チャポン…

扶桑「こうやって海水を汲むの……」

山城「これを……?」

扶桑「フフっ……これを火にかけてね……」




火にかける事およそ30分……ッ!!

煮えたぎる海水ッ……!!


モクモク モクモク

山城(水蒸気……)

山城「姉さま、この上のヤシの葉は……?」

扶桑「フフっ……あと少しよ……」




扶桑「さぁできあがりよ……」

山城「さすがです……姉さまっ」

山城(ヤシの葉に付いた水蒸気がほとんど真水になってる……)

扶桑「これだけだと量も少ないし心もとないけど……」

扶桑「探せば鍋のかわりになるものは他にもあると思うわ……」

山城(これで例の川の水を飲まずに済むのね……)ジーン




扶桑「とにかく……この火が消えないようにしなきゃ……」

山城「これからは交代で火のお守ですね」

扶桑「そうね……でも」

扶桑「だとしたら……どちらかが一人で食べ物を探しに行く必要があるわ……」

山城「あ……」

扶桑「一人で何度も森に入るのは危険だし……」

山城(何も言い返せない)




扶桑「果汁のなくなったヤシの実ごみならのこってるんだけど……」

扶桑「これはもうパサパサな所しか残ってないわ……」

山城「……!」

山城「姉さま、それ……ひとつくださいっ」

扶桑「えっ?」

扶桑「それ……どうするの?」

山城「えへへ……それはお楽しみですっ」




山城「姉さま、今日はもう遅いですから寝ましょう」

扶桑「そうね……」

扶桑「……今日は何も食べられなかったわね……」

山城「ご安心ください姉さまっ」

山城「この山城、明日こそ必ず姉さまのお食事をご用意します!」

扶桑「ウフフ……頼もしい……」ニコッ



扶桑「火……本当に暖かいわ……」

山城「えぇ……」




本島の所在……ッ!!

日本とほぼ同じ経度に位置す……ッ!!

日本時間の深夜1時……ッ!!

即ち……ッ!!現時刻はおおよそ深夜の1時……ッ!!

扶桑寝静まる……ッ!!

しかし山城……ッ!!

眠らずッ!!!


山城(姉さまはぐっすり寝ていらっしゃる……)

扶桑「」スースー

山城(私……少しでも姉さまの力にならなきゃ)

山城(せめて、こういう形だけでも……)



山城(目がしょぼくれてきた……)ウトウト

山城(……はっ、だめだめ!)

山城(ここはもうひとふんばりだわ)

山城(姉さまをびっくりさせてあげないと……)

扶桑「…………トク…………」

山城「!」ビクッ

扶桑「………」

山城(びっくりした……起きたのかと思った)




山城(……姉さま……)

山城(……泣いてる?)

扶桑「」スースー……

扶桑「」……グスッ

山城(……)

山城(姉さまは優しいから表には出さないけど……)

山城(本当は……私以上にんなの所に……)

山城(……いえ)



山城(……提督の所に帰りたいんだ)



山城(姉さま……)

山城(……この山城)

山城(この命にかえても)


山城(姉さまを日本へ帰すわ)


すみません

ちょっくら晩飯つくってきますね



無人島に流れ着くこと遂に4日……ッ!!

破壊的な紫外線……ッ!!

晴れ渡る空……ッ!!

とどまることを知らぬ相対湿度の上昇……ッ!!

疲労の蝕む身体……ッ!!

鞭打つかのようにッ!!!




扶桑「……」ポリポリ

扶桑「ふぁ……」ノビー

扶桑「……ふぅ」

扶桑「……暑いわね……」

扶桑(さすがに服が臭ってきたわ……)

扶桑(体も……)

扶桑(これじゃ……提督に嫌われちゃうわね……)




山城「お早うございます、姉さまっ」

扶桑「あら……おはよう……」

扶桑「……目元……すごい隈ね……」               ヨンダクマー?>

山城「へ……そ、そうですか?」

扶桑「あまり眠れなかったの……?」

山城「えへへ……じ、実は……」



扶桑「すごいわ、山城っ……」

扶桑「これ、どうやったの……?」

山城「これはヤシの実のパサパサなところを少しずつはがして」

山城「1本ずつ結んで糸がわりにしてみました」

山城「そして、これは釣り糸なのです」

扶桑「まさか……これを寝ないでやったの……?」

山城「はい……」

扶桑「もう……山城ったら……」

扶桑「ただでさえ疲れてるんだから、夜更かしはだめ……」

山城「うぅ……」

扶桑「……でも、ありがとう」ニコッ

山城「……えへへ」



山城「ちなみに釣り針には瑞雲の破片(懸架)を使いました」

扶桑「なるほど……」

山城「……ところで姉さま……?」

扶桑「ん?なぁに……?」


山城「……釣りの餌って何を使うんでしょう?」


扶桑「……………」

山城「……………」


扶桑「そういえば……なんだったかしら……」






みみず「」グネグネグネグネグネグネグネグネ





山城「…………」






……
…………
………………


扶桑「……うん……思い当たることも……」

扶桑「ないことはないのだけど……」

山城「えっ!本当ですか!」

扶桑「うん……でもねぇ……」

山城「姉さま、何でもいいんです!教えてください!」

扶桑「う、うん」

扶桑「それは……」オソルオソル

………………
…………
……



みみず「」グネグネグネグネグネグネググネ


山城(私はミミズが苦手だ)

山城(私だけじゃない……姉さまも)

山城(けど、今はそんなこと言ってもいられない……)

山城(姉さまに……こんな恐ろしいモノを触らせるわけにはいかない……)

山城(私が……やらなきゃ!)



みみず「」グネグネグネグネグネグネググネ

山城「やっぱり無理ッ!!」



それでも振り絞る勇気……ッ!!

乙女の親指人差し指……ッ!!

その赤黒き光沢……掴むッ!!

堪える涙……ッ!!

伸びきる右腕……ッ!!

狼狽える扶桑……ッ!!

重い一歩……ッ!!大地を闊歩……ッ!!

扶桑……逃げる……ッ!!




ボチャン!


山城「」

扶桑「お……おつかれさま山城……」オロオロ




扶桑「こっちは私が見ておくから……」

扶桑「あなたはお家で休んで……」

山城「……アリガトウゴザイマス」

扶桑「火の番だけ、お願いね……」

山城「……ハイ……」

扶桑(山城……かわいそうな子……)

扶桑(あなたの優しさ……無駄にはしないわ)

扶桑「大物を釣るわ……見ててね……」



扶桑「……」

扶桑「…………」

扶桑「………………」


扶桑「釣れないわ……」


釣り……ッ!!

開始から2時間……ッ!!




ザザーン……ザザーン……


扶桑「……こーやって……」

扶桑「……浜辺で空をじっと見てると思い出すわ……」

扶桑(去年の夏だったかしら……)

扶桑(提督と……執務室の模様替えを一緒に考えたわね……)

扶桑(あの人は言ったわね……鎮守府で海の家を開くぞー……って)

扶桑(フフ……可笑しな人……)




扶桑(提督……今頃……どうしてるのかしら……)

扶桑(……心配……してくれて……いるのかしら……)

扶桑(……それとも……)

扶桑(…………)


扶桑(私達のこと………忘れちゃったのかな……)




「……サマ……ネ……サマ……!」

山城「姉さまっ」

扶桑「!」ビクッ

扶桑「気が付かなくてごめんなさい……どうしたの……?」

山城「姉さま、ボーっとしてたから……心配になって……」

山城「もともと私が釣るつもりでしたので、お替わりくださいっ」

扶桑「うん……それじゃあ……」

扶桑「お言葉に甘えようかしら……」



山城「あ、それと……」スンスン

扶桑「?」

山城「姉さま……少し臭いますっ」

扶桑「えっ……そ、そうかしら……」オロオロ

山城「このままじゃ……」

山城「帰ったとき、提督ががっかりしてしまいますよ?」

扶桑「っ!?」

扶桑「……フフッ」



扶桑「そうね」ニコッ



山城「家の火はここからでも見られるので……」

山城「このあたりの海で、ゆっくり水浴びでもされてはいかがですか?」

扶桑「水浴び……」

扶桑「でも……やっぱり、少し……恥ずかしいわ……」ワタワタ

山城(……恥ずかしがってる姉さま……すごく良いですっ)

山城「大丈夫です、この島には他に誰もいませんから!」

山城「ここはバカンスにでも来たと思って……」

山城「ね?」

扶桑「フフ……ありがとう」



ヌギヌギ……

ザブン

扶桑「あぁ……気持ちいいわぁ……」

扶桑「なんだか……すごく……」

扶桑「開放的ね……」

扶桑「貴重な経験というか……なんというか……」

扶桑「……」

扶桑「できれば……本当のバカンスで来てみたかったわ……」




扶桑「あら……?」

扶桑「可愛いお魚さん……」

扶桑「フフっ……あっちに行っちゃ、山城に釣られて食べられてしまいますよ?」ニコッ

扶桑「……ん?」

扶桑「あっ……」

扶桑「そこっ……ダメ……ぇん……」

扶桑「……んぁっ……」


扶桑「……なんてね……」




山城「あー……」ポリポリ


山城「流石に4日もこの姿のままじゃ……ねぇ……」

山城「私も水浴び……したいな……」

山城(……というか、海水浴よねこれ……)


ギシッ


山城「!」



ビチビチ

山城「姉さまっ」

山城「つ、ついに魚が釣れましたー…………っ!?」


扶桑「あら山城……すごいわ……」

山城「ね、姉さま……なんで家の中まで……裸なんですか……?」

扶桑「フフフ……着ていた服も、一緒に洗ってしまったのよ……」

扶桑「ちょうど今……乾かしているところなの……」


山城(姉さまの体……綺麗……)コウオツー




扶桑「ご苦労様、山城……」ギュッ

山城(……ワーイ!)

扶桑「それじゃあ……」

山城「?」




扶桑「あなたも……ね?」

山城「へっ……」




山城「あぁ……なんて開放感なのッ」



山城「山城……ただ今帰りました」

扶桑「お帰りなさい……どうだった……?」

山城「生き返りました……すごく満足ですっ」

扶桑「あらあら……」ニコッ

扶桑「そんなところで立ってたら……風邪ひくわよ?」

扶桑「こっち……いらっしゃい」ポンポン

山城「……」ササッ




パチ…パチ……


扶桑「小さい頃はよく二人で、お風呂に入ったわね……」

山城「あっ、それ……懐かしいです……」

扶桑「……山城、あなた……」

山城「……はい?」


扶桑「…………太った?」

山城「」ガクッ

山城「太ってなんか……いませんから……」ボソッ

扶桑(……予想以上に返事が弱弱しいわ……)クスッ




扶桑「フフフ……冗談よ……」

山城「……姉さま、なんだかいじわるですっ」

扶桑「そんなことないわ……」

扶桑「それよりも……ほら、もう焼けるわ……」

山城「あっ、魚……」

山城「美味しそう……」

扶桑「かかってる塩自体は海水を沸かした時にできたものだから、美味しいかは分からないけど……」

扶桑「ようやくまともなご飯にありつけるわね……」

山城「私としては……猪の丸焼きもなかなか……」

扶桑「山城……やっぱりあなた、太ったんじゃ……」

山城「違 い ま す」



かけがいのない二人の時間……ッ!!

漂流という事実に相応しくない……ッ!!

笑顔……ッ!!

それ即ち……ッ!!

生きているということッ!!!

姉妹には……知る由もない……ッ!!


今日はここまでです

明日は麻雀いってくるのでおそらく書けないです

呼んでくれた人がいましたら、ありがとうございました

今日もゆっくりかいていきます



姉妹の遭難生活は既に5日目を数える……ッ!!

仮の住まいと火種の維持……ッ!!

簡易蒸留による水分の確保……ッ!!

そして釣りによる食料の調達……ッ!!

四苦八苦の末……ッ!!

知恵を出し合うことで逞しく生存していたッ!!!




扶桑「服を脱ぐまで気付かなかったけど……」

扶桑「無駄毛が伸びてきちゃった……困ったわ……」

山城「私は爪も伸びてきました……」

扶桑「そうね……でも、流石にこればかりはどうしようも……」

山城「そうですよね」

山城(……仕方がないとはいえ、なんだか女を捨てているようで複雑な気分)




扶桑「ところで山城……今日は私が釣りをしてみたいわ……」

山城「へ?それは、構いませんが……」

扶桑「ありがとう……昨日は一匹も釣れなかったから悔しかったの」

扶桑「フフ……今日こそは山城に負けない大物を釣るわ……」グッ

山城(こんなことでムキになる姉さま、可愛いです)




山城(なにかの瓶だったのかな……)

山城(……お酒……飲みたいな……)

山城「……はっ」

山城(いけないわッ)ブンブンッ

山城(こんなときに贅沢は敵っ)

山城(姉さまに無人島にコンビニがないと教えられた時に誓ったはずよっ)

山城(……)

山城(お酒飲みたいなぁ)




扶桑「~♪」

山城(……姉さまのおかげで、今が遭難中だってことを忘れてしまいそうよ……)

山城(私はどうしようかなぁ……)

山城「……」チラッ

瑞雲「」

山城(……これだけで水を得るのは、確かに心もとないです)

山城(なら、私はこっちをなんとかするべきね)

山城(けど、無人島で燃えないものを探すとなると……)




山城(そうよ!私達みたいに流れ着いたものがあれば……)




山城「姉さま、日が沈むまでには戻るので」

山城「少し浜辺を散策してまいります」

扶桑「そうなの……?わかったわ……気をつけてね……」

山城「姉さまも、頑張って大物を狙ってくださいねっ」

扶桑「フフ……ありがとう……」


扶桑「よし……頑張るわ……」




ザザーン……ザザーン……

山城(とはいえ……)

山城(全然落ちてないじゃないっ)

山城(そこそこ大きい島みたいだし)

山城(少しは何か流れ着いてると思ったんだけどな……)ハァ

山城(……)

山城「……あっ」

山城(……なんだガラスの欠片かぁ)




山城(なにかの瓶だったのかな……)

山城(……お酒……飲みたいな……)

山城「……はっ」

山城(いけないわッ)ブンブンッ

山城(こんなときに贅沢は敵っ)

山城(姉さまに無人島にコンビニがないと教えられた時に誓ったはずよっ)

山城(……)

山城(お酒飲みたいなぁ)




ザザーン……ザザーン……

扶桑(……)

扶桑(やっぱり釣れないわ……)

扶桑(私には釣りの才能……ないのかしら……)

扶桑(……)

扶桑(……入道雲……)

扶桑(なんだかわたがしみたい……)




扶桑「あれは……車みたいな形ね……」

扶桑「ふふっ」

扶桑「しかもおじいちゃんが昔乗ってたのにそっくりだわ……」ギシッ

扶桑「たしか……エンジンをかけるとものすごい音がなるのよね……」ギシッギシッ

扶桑「フフ……また会いたいわ、おじいちゃん……」ギギギ……パッ

扶桑「……」シーン

扶桑「……あれは日傘みたいな形ね……」




山城「あっ、あれは……」


山城の視界に入るッ!!

紛れもない金属ッ!!!


山城(思ったとおりだわっ)パァッ

山城(これは……灰皿か何かかしら)

山城(何か印刷されてる……外国のキャラクター?)

山城(……外国のキャラクターの絵って)

山城(なぜかかわいいと思えないのよね……)

山城(でも、これは使えるっ)




扶桑「フフ……また会いたいわ……ポチ……」

扶桑「……」

扶桑「あれは孫の手みたいなかたt……」

扶桑「っ!」ギギッ

扶桑「なにか……かかったわ……」ギシ

扶桑「フフ……まだまだ山城には負けないわ……」ギシギシ

扶桑「……勝ったこともないけど」ギギ

扶桑「……え、えいっ」ザパーン




山城(貝殻だわ……)

山城「」サッ

山城(やっぱり身はついてないか……)

山城(……貝殻……昔は姉さまとよく集めていたわ)

山城(だいたい貝殻じゃないものも一緒に拾ってたんだけど)

山城(缶のプルタブとか、色の無くなった海藻とか)

山城(……)




ピチピチ

扶桑(釣れたわ……でも……)

扶桑(すごく……小さいわ……)

扶桑(それに……この子……)

フグ「」ピチピチ

扶桑(……食べられないわよね……)

フグ「」ピチピチ

扶桑「……」

扶桑「可愛いわ……」クスッ




ザザーン……

山城(岩場がいっぱい……ここは磯ね……)

山城(けっこう遠くまで来てるみたいだから)

山城(ここの探索を最後にしましょう)

山城(そろそろ灰皿以外の収穫がほしいところ……)


ズコッ
バシャン!


山城「うぅ……」

山城「落ちちゃった……」グスッ




フグ「」イン・ザ・ズイウン

扶桑「~♪」


扶桑……掘る……ッ!!

家の前に……ッ!!

直径30cmほどの穴……ッ!!!

満る海水……ッ!!


扶桑「できたわ……」

扶桑「ここがあなたの新しいお家よ……」

バシャッ

フグ「」スイスイ

扶桑「……ポチ……」




山城「うぅ……ようやく乾いた着物が……不幸だわ」

山城(フジツボでちょっと切っちゃった……いたた……)

山城(……)

山城「フジツボって……」

山城「食べられるのかしら……」

山城「……見た目はなんだか気持ち悪いけど……」

山城「今はそうも言ってはいられないわ……」グゥー




山城「それに……」

山城「よく見れば、小さいカニとか小魚なんかもたくさんいるわ……」

山城(どうにかして捕まえたいけど……)ピタピタ

山城(あぁ……濡れた着物がうっとおしいわ……)

山城(……)

山城(……ッ!!)


閃くッ!!

山城の頭脳ッ!!





山城の心は実に晴れ晴れとしていた……ッ!!

浴びる太陽光線……ッ!!

手元にカニ……ッ!!

フジツボ……ッ!!

名前の分からない小魚多数……ッ!!

それを包むは自身の着物……ッ!!

山城……全裸ッ!!


山城「あぁ……癖になりそうッ!!」




山城「姉さま、ただいま戻りましたっ」

扶桑「おかえりなさい……あらあら」

扶桑「またそんな恰好してるの……?」

山城「こ、これは……」

山城「……健康法です(適当)」

扶桑「そうなの……?それなら今度、私も試してみるわ……」




扶桑「そうだわ……山城……」

扶桑「新しい家族を紹介するわ……」

山城「はい?」

山城「か……ぞく?」


扶桑「この子はポチよ……」

扶桑「よろしくね……」

ポチ「」スイスイ

山城「……」

山城(姉さま御可哀想に……暑さで正気を……)


この時山城……全裸ッ!!




扶桑「山城もあいさつしてね……」

山城「よ、よろしく……」

ポチ「」スイスイ

山城「姉さま……その……」

扶桑「ん……?どうしたの……?」

山城「このフグ以外に……」

扶桑「山城……この子はポチよ……」ニコッ

山城「……ポチ以外には何か……釣れましたか?」

扶桑「……」

山城「……」




ザザーン……


山城「今日の収穫はこの灰皿と」

山城「磯で見つけたカニが2匹」

山城「小魚が5匹と」

山城「食べられるかは分かりませんが……フジツボが4つですっ」

扶桑「すごいわ山城……お手柄よ……」ナデナデ

山城「えへへ」

扶桑「たぶん……どれも茹でれば食べられると思うわ……」

扶桑「さっそく茹でてみましょう……」




グツグツ

山城「そういえば姉さまっ」

扶桑「どうしたの……?」

山城「姉さま、今日の釣りの……餌はどうされたのですか?」

山城「昨日は私がミミズを持って近づいただけで」

山城「すごい勢いでお逃げになられてたのに……」

扶桑「ふふっ……今日は虫を使ったのよ……」

山城「あぁー……なるほど……」


山城(できれば昨日に教えてほしかったです)




扶桑「出来上がりよ、山城……」

山城「おぉ……まさにシーフードってかんじですね」

扶桑「実際、おダシが出ててスープも美味しいかもしれないわ……」

扶桑「小石には気を付けてね……」

山城「はいっ……いただきますっ」

山城(……あっ、この魚すごくやわらかくなってる)

山城(海水のせいか少しえぐみもあるけど、いけるわ……)

扶桑「沢ガニみたいなカニは初めていただくわ……」

山城「あまり……というか予想通り、そこまで身はありませんね」

扶桑「でも……安心して食べられるわ……」




山城「問題は……」

山城(このフジツボよね……)

山城(おそらく、中身を食べるのだろうけど……)


ズリズリッ


山城「ヒエー……気持ち悪いっ」

扶桑「白くて貝に似てるけど……なんだか見たことない感じだわ……」

扶桑「でも山城がせっかく持って帰ってくれたのですもの……」

扶桑「美味しくいただくわ……」パクッ

山城「姉さま……」




扶桑「あら……これは……」

扶桑「山城、とても美味しいわ……」

山城「へ……本当?」

扶桑「えぇ……嘘じゃないわ……」

扶桑「山城も……ほらっ」

山城「は、はい……」パクッ

山城「あ、本当に美味しいですっ」

山城「ちょっと甘くて……高いカニみたいな触感……」

扶桑「本当ね」ニコッ




山城「あ……私、これ好きかも……」パクッ

扶桑「フフ……こんなことが無ければ経験できなかった味ね……」

山城「えぇ、これなら何度でも食べたいですっ」


山城「あ、小魚が一匹余っちゃいました……」

扶桑「今日は頑張ったんだから……山城が召し上がって……」

山城「ありがとうございます姉さま」

山城「でも、今日はなんだかおなかいっぱいで……」

扶桑「この生活ですっかり小食になっちゃったわね……」クスッ

山城「今度から燃費のいい戦艦として、日の目を見られるかもしれませんねっ」

扶桑「フフッ、山城ったら……」




扶桑「じゃあ、この残りは……」



チャポン……

ポチ「」パクパク

扶桑「いい食べっぷりね……」

山城(明日からフg……いやポチの餌まで必要になるのね……)クラッ

扶桑「さて……暗くなってきたし、今日はもう寝ましょう……」

山城「そうですね……もうクタクタです……」

扶桑「フフ……明日は私もがんばるわね」



扶桑「じゃあ……」

扶桑「おやすみなさい……山城……」

山城「おやすみなさい、姉さまっ」


ちょっちご飯作ってきます……すみません



遭難6日目……ッ!!

この日も変わらず励む……ッ!!

食料探し……ッ!!

しかしこの日……ッ!!

一つの転機が訪れることとなる……ッ!!




扶桑「……!!」

扶桑「や……山城ッ!!」

山城「姉さま?」

山城(なんだか様子がおかしいわ)



扶桑「船が……見えるわ!」




走る衝撃……ッ!!

見渡す水平線……ッ!!

確信す……ッ!!

推定距離30,000m以上……ッ!!

海原走る黒鋼……ッ!!


山城「姉さま!」

扶桑「えぇ……私達、助かるわ……!」




山城「でも……ッ」

山城「こののろしの煙じゃ気付いてもらえません!」

扶桑「そ、そうね……」

扶桑「他の手でッ、なんとかしなきゃ……!」

扶桑「何か!」

扶桑「何か……手段は……ッ」

山城「姉さま……!」


導き出される答えは一つッ!!!



扶桑「……主砲を使うしかないわ!」



他に選択肢等無い……ッ!!

少しでも視認できる距離まで……ッ!!

この島で……ッ!!

生きている証を送り込む……ッ!!



35.6cm連装砲……ッ!!

弾薬は残り2発……ッ!!

よって……ッ!!

片側のみの使用……ッ!!




扶桑「いくわよ……山城ッ」

山城「ハイッ!!」


扶桑「主砲……撃てッ!!!」


刹那ッ!!

迸る轟音ッ!!

跳ね上がる砂の幕ッ!!

迫る波すら割れッ!!

美しき山なり描く鉛弾ッ!!

零式通常弾ッ!!!



山城「…………主砲弾……………着水を確認……ッ!!」

山城「……姉さま……」

扶桑「……可能な限り……船の近くまで近づけたわ……」

扶桑「大丈夫よ山城……」



永遠にも思えた静寂……ッ

水平線上の黒鋼……ッ

其処より発される光ッ!!



山城「姉さま……何か光った……」

扶桑「えぇ……」




扶桑「照明弾……?」

扶桑「それとも……信号弾かしら……?」

山城「姉さま……」



山城「ね……姉さまァ!」

扶桑「あっ……あっ……」

扶桑「そんな……ッ」


みるみる染まる……絶望ッ!!




刹那……ッ!!

光は姉妹の頭上を過ぎ……ッ!!

後方の山で爆裂したッ!!!


光の正体は巡行ミサイル……ッ!!

そしてッ!!

黒鋼の正体は某国の原子力巡洋艦ッ!!!




扶桑「そんな……!」

扶桑(まさか軍属の船だったなんて……!)

扶桑(今の砲撃も……深海棲艦のものと思われたというの……)

扶桑「そんな……」

扶桑「山城……もう一度……主砲を……ッ!!」

山城「姉さまいけませんッ」

山城「そんなことしたら、また報復が……!」

扶桑「離してッ!!」




山城「!」ビクッ

扶桑「あの船は近づいてきてるわ!!」

扶桑「だから、今しかないのッ!!」

山城「姉さま……」

扶桑「お願い……気付いて……!」


放たれる次弾ッ!!

轟音と衝撃で倒れる山城……ッ!!

乾坤一擲ッ!!最後の一弾ッ!!




……がッ!!

零式通常弾……ッ!!

相対の巡洋艦により放たれた第二の光……ッ!!

迎撃ミサイルにより沈黙ッ!!

間を置くことなく放たれる第三ッ!!

そして続く第四第五の光が小さな島に放たれたッ!!




降り注ぐ超重量の炸薬ッ!!!

轟音と共に広大な森林の多くを焦土と変えッ!!

島の地形を大きく変えるッ!!!


あまりにも無情な報復が止み……ッ!!

艦影は90°回頭ッ!!

水平の彼方へ針路を変え……消えて行ったッ!!




静寂……後晴れ渡る視界ッ!!

あれだけの攻撃を受けながらも……ッ!!

奇跡……二人は無事ッ!!!

しかし……ッ!!

心は憔悴……ッ!!

扶桑の希望……打ち砕かれるッ!!

山城が手を差し伸べるが……ッ!!

糸が切れたように……ただ座すッ!!




それから二日が過ぎた……ッ

其の一件以来……ッ

扶桑は何も口にせず……ッ

口だけを動かし……何かを呟き続けるッ

只々衰弱の一方であった……ッ


山城(姉さま……)


そうした中……山城自身にも近づく……限界ッ




生気なく項垂れる二人……ッ

永遠に思えた静寂の中のこと……ッ


山城「…………」

山城「…………」

扶桑「……山城……」

山城「……姉……さま……?」

山城「……よかった、喋られるように」

扶桑「聞いて……やましろ……」

山城「……姉さま……?」




……ごめんなさい……

山城「何です……姉さま……?」

……あなたのこと……怒鳴ってしまった……わね……

山城「そんなこと……忘れちゃ……ました………」

……やさしいのね……ふふ……

……ありが……とう……

山城「……あやまったり……お礼したり……おかしな……姉さま」




さいごまで……しまいでいられた……こと…………

山城「……姉さ……ま?」

あり……がと……

山城「……姉さま……」

山城「……姉さま……ッ」

山城「しっかり……してく……」

まもれな……くて……

ごめ……ん……ね……

山城「くださいッ……姉さま……ッ」

山城「姉さま……ッ!!」




山城「――――――ッ!!」


ごめ……ん……もう……なにもきこえなく……なった……の……

やましろ……や…まし…………ろ………

……提……督……

…………てい…………とく…………


「――――ッ!!――――――ッ!!」


きこ……える……

願わ……くば……あなた……の……ここ…………ろ……に……


てい……とく………















「はい………もう2時間……救出が遅れていれば……」

「……生命活動の維持は極めて困難であったと……報告がありました」

「……そうか……」

「……それで……峠は過ぎたんだな?」

「……両名とも衰弱してはいますが、命に別状はありません」

「……誠に勇断でありました」

「提督……」




「……レイテ沖を回航していた西側の新造艦による例の不審な交戦記録……」

「あちらは上陸型の深海棲艦の攻撃だと断定したそうだが……」

「……俺にはそうは思えなかった……なにより凶報だったんだ」

「上にはすぐに捜索を打診したが」

「先日レイテでしてやられたところだ、腰を上げる気はなかったらしい」

「だから……勝手にやらせてもらった」


「どうして分かったんです?」

「それが俺にも分からねぇんだ」


「強いて言えば……愛の力ってやつだ」




「……なんだか妬けますね……」

「……茶化すなよ……こっちは真剣だったんだ」

「はいはい……そうですかー……っと」

「」ゴホン

「とにかく……護衛に付き合ってくれた最上や時雨たちに休暇を出してやってくれ」

「分かりました」

「機を見て、俺からも直々に労うとするよ」

「今は上への言い訳を考えないとな」

「そうですね」




「あっ、それと……」

「どうしましたか?」

「……面会できるようになるまで……どれほどかかる?」

「それについてはまだ報告は受けておりませんが……」

「近々、私からお伝えいたします」

「そっか、分かったよ」

「では……私は事務作業が残っておりますので、これで……」

「おぅ」


バタン


「……言ったじゃねえか……」

「俺が幸せにするまで沈めさせねぇって……」

「なぁ……扶桑よぉ……」

「……グスッ……本当によかった……」

「……グスッ……」




山城「姉さまっ」

扶桑「あら……あなた……もう動いていいの……?」

山城「はいっ……私、姉さまより長く食事をとっていましたから……」

山城「姉さまも……たくさん食べて、早く動けるようになるといいですねっ」

扶桑「フフ……そうね」クスッ

扶桑「心配しなくても、最近の病院食は美味しいから……すぐに元に戻っちゃうわ……」

山城「姉さまったら…………あらっ」

山城「あなたも一緒に来ちゃったのね……?」

ポチ「」スイスイ




扶桑「山城……あの時は本当に迷惑をかけたわ……」

扶桑「ごめんなさい……」

山城「何をっ……姉さまが謝ることなんてっ」

山城「あの時、姉さまが主砲を撃ってくれたから私たちは助かったようなものですし……」

扶桑「……うん……でも……」


山城「……そ、それはそうと、昨日……提督にお会いしましたよっ」

扶桑「て、提督が……?」

山城「はい……私はてっきり姉さまが来たと思ったから」

山城「いつものようにあしらってしまいましたが……(お礼は言ったけど……)」

山城「退院したら、羽子板で勝負しろって言われました」

扶桑「あら、そうなの……」クスッ




山城「姉さまには今日から面会許可が下りてますから」

山城「もうすぐいらっしゃるんじゃないでしょうか」

扶桑「っ!」

扶桑「そ、そんな……困るわ……」オロオロ

山城「へっ……ど、どうしてです……?」

扶桑「だって私……提督に迷惑かけてしまったし……」

扶桑「それに……髪の毛だって整えてないしっ……」

扶桑「お風呂にも入ってないしっ……臭いもするわっ」

扶桑「あと、お肌だってボロボロだしっ……」

扶桑「声だってガラガラだしっ……」

扶桑「それに……っ」


「聞ーこーえーなーいなぁーーーーっ」




扶桑「ひぇっ……」

山城(さて、山城はクールに去るのですっ)ササッ……



扶桑「て、提督……」カァ-…

提督「よっ、元気か?」

扶桑「は……はぃ……」

扶桑「扶桑……帰投いたしました……」




提督「お帰り……扶桑」

扶桑「……私、提督とまたお会いできて……本当に嬉しいですっ」

提督「……うん」

扶桑「……もう、二度と……会えないかと……」グスッ

提督「……」ギュ



提督「……指輪……守ってくれたんだな……」

扶桑「……グスッ……はい……」

扶桑「山城の存在と……この頂いた指輪がなければ……グスッ……」

扶桑「私、どうなっていたか……」

提督「……ありがとうな……扶桑」

扶桑「……はいっ!」ギュ


扶桑「提督……」

扶桑「今後とも……よろしくお願い致します……」




―――――――――――――――fin――――――――――――――――



以上を以て、このお話は終わりとなります。

ガバガバなサバイバル知識、稚拙な文が目立ちましたが、ここまで読んでくださった皆様に感謝です。

楽しく書かせていただいて、ありがとうございました!

それでは……



HTML化のために、酉付けさせていただきます

そそっかしくて申し訳ないです……

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