男「毒のグルメ」(22)

男「おっ、これが噂のカエンタケってキノコか!」

男「どれどれ……」パクリッ

男「――うまい!」

男「弾力のある歯ごたえ、まろやかな舌触り、濃厚な味、どれをとっても素晴らしい!」

女「キノコ一つでそこまで舞い上がれるなんて、安い男ね」フゥ…

友人「そのキノコ……食べたらまずいんじゃ……」

男「続いて、ヤドクガエルか」

男「いただきます」モグッ

男「う~ん、デリシャス!」モニュッモニュッ

男「噛みごたえがあるな、このカエル! 砂肝みたいでクセになりそうだ!」グニュグニュ

女「両生類を生で食うとかありえないわ。気持ち悪い」

友人「あの……そのカエルもたしか猛毒……」

男「じゃ、ヒ素いってみるかな」パクッ

男「……」ゴクンッ

男「くぅ~! うまい! さわやかな喉ごし! 五臓六腑に染み渡る!」

男「思わずヒソヒソ話をしたくなるね……」ヒソヒソ…

女「うわっ、さむっ。氷河期がきたわ。ユーモアセンスの欠片もないわね」

友人「いや、寒いとかじゃなくて、命が……」

男「テトロドトキシンか。一気にいただこう」バクンッ

男「おお……いい味だ! 海を泳ぐフグの姿が見えるようだ……」

男「フグはよく食うけど、やっぱりフグ毒の味は格別だな!」

女「フグをよく食べる? しょうもない見栄はっちゃって、バッカじゃないの」

友人「フグはちゃんと……免許を持った人に……」

男「お次はダイオキシンか」

男「よっと」ムシャムシャ…

男「うーん、いい味だ。コクがあって、それでいて後味はスッキリ……品がいい」

男「一言でいえば、超うまい、ってことだ!」

女「最初から一言でいいなさいよ。無駄にかっこつけちゃって。くっだらない」

友人「もうやめた方が……」

男「水銀いくか!」ゴキュゴキュ

男「ほぉ~、なかなか刺激的な味だ!」

男「いいねえ、銀の味がギンギンくる! オリンピックで準優勝できそうだ!」

女「準優勝とか……しょぼっ。優勝以外はゴミよ。あんたは優勝してもゴミだけど」

友人「準優勝でも……十分すごいと思う……けど……」

男「じゃあ、毎度おなじみ青酸カリいってみるか!」

男「いつもはペロッて舐めてるけど、今日は豪快にベロベロいっちゃいます!」ベロベロ

男「うんめぇぇぇぇぇ!」

男「胃の中でじんわり溶けて、俺の体を癒してくれるよ……」

女「あんたの舌の使い方って、ホントド下手クソよね。やんなっちゃう」

友人「青酸カリが……胃酸と反応したらまずいよ……」

男「ボツリヌスって、初めて食うけど……どんな味なんだろ」パクッ

男「……」モグモグ…

男「おお、イケるじゃん! 口の中で溶けてくこの感じがグッド!」

男「これをつまみに、酒飲んだらすっごく合いそう!」

女「発想が完全におっさんね。そろそろ加齢臭も漂ってくるんじゃない?」

友人「どこから仕入れたの……ボツリヌス菌……」

男「っつうわけで、メタノール飲もうっと!」グビグビ…

男「っぷはぁっ!」ゲフッ

男「たまんねえな! やっぱ酒はメチルアルコールに限るってね!」

女「大して酒に詳しくないくせによくいうわ。知ったかぶりもいいとこね」

友人「失明しちゃうよ……飲まない方が……」

男「だけどさ、どんな毒よりも俺の鼓動をドクドクいわせてくれるのは……」

男「お前の毒舌なんだよなァ」

女「なんなのいきなり? そんなんで私が喜ぶと思ってんの? バカじゃないの?」

男「ああ……たまらん」ドクン…

女「キモッ」

友人「気持ち悪がるより……体の心配した方が……」

男「もっと俺をドクドクさせてくれ」スッ…

女「中途半端に胸をさわらないでよ、いくじなしが」

女「どうせなら、ちゃんとさわれっての」

男「こうでいいか?」モミッ

女「ちっ、相変わらず人の胸を揉むのが下手なんだから。もっと優しくやれっての」

友人「あの……ここにもう一人いるから……あまりいちゃつかないで……」

男「まずいな、ますます興奮してきた」

女「まだ私の上着も脱がせてないのに、興奮してどうすんのよ。気が早すぎんのよ」

男「俺の中の猛毒をお前に注入したくなってきた」

女「注入? 言葉のチョイスがマジでキモイわ」

女「いつもやってることなんだから、とっととやんなさいよ。ったくとろいんだから」

男「ああ、そうさせてもらう」ガバッ

友人「二人とも……あの……ちょっと……」

友人「……」

友人(言いたいことも言えないこんな世の中じゃ……POISON)









                                     おわり

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