悪魔「世界ほろぼさなきゃ(使命感」 人「やめろぉ(建前)ナイスゥ(本音」 (28)

悪魔は、東京タワーの先端に音もなく降り立った。

粘土の塊に無数の穴を空けて、出鱈目に手足を突き刺したようなその姿は足元の毒々しいネオンに照らされ、よりその奇怪さを増していた。

下から見れば、まるで趣味の悪い着ぐるみのように見えるかもしれない。

悪魔は、後ろに挿入されていた手の一本をおもむろに自身の黒い穴へと入れて、

中から恐ろしく錆びついた、銅色の鈴を取り出した。

悪魔は穴から大きく大気を吸い込んでから、掌の上で第一の鈴を小さく震わした。

その音色は金属同士がこすり合わせたような、ひどく耳障りなものだった。

幸運なことに、これを直接聞く事ができた者はいない。

だが、そこから起きた破滅は瞬間的に全世界へと響き渡った。



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最初にそれを捉えたのは、某国の軍事衛星だった。

これまで監視していた『採掘所』が突如雲にすっぽりと覆われたのだ。

男1「ふー、一休み一休み」

男2「今日の現地は晴天のはずだが」ヌッ

男1(うわっ、でた。神出鬼没のトラブルシューター)

男1「大丈夫ですよ。心配することはなにもありませんよくあることです」

男2「理由を話してみろ」

男1「この時期は丁度、季節風がたっぷり湿気を含んで海側から流れ込んでくるんです」

しばらく待ってみましょう。そのうちひょっこり顔を出すでしょう」

男2「ああ、そのとおりだ」男2は表情を一つも変えず、短く合格を告げた。

男1(時々試したりするからおっかない。口の悪い奴は、彼はほんとに知らないから聞くのだと言う。

しかしソイツが答えられず、トラブルシューターに怒鳴られたところをおれは何度も見ている、)

男2「しかしそれでも、この雲は奇妙だな」

男1「あっ!」

男1はそこでようやく画面に表示されている異常に気付いた。

雲は徐々に渦を形成しながら、規模を広げている。

男1はこれと似た現象を知っている。すなわち、竜巻が誕生する瞬間である。

慌てて、男1は操作盤を動かし、ズームアウトする。

男1は驚愕した。

画面一面に、基地の上空の「それ」と同じく、誕生しつつある竜巻の赤子が多数映っていたのだ。

十や二十じゃない。百はあるんじゃないか!?

こんなことが現実にありえるなんて!

いや落ち着け。状況を正確に分析するのがおれの仕事だ。

男1「クラスEF2(家屋の屋根や壁がはがれる)ないしEF4クラス(家屋が完全に破壊される)の竜巻が50個以上発生しています。

…こんな狭い範囲で竜巻が大量に自然発生する事例は聞いたことがありません。奇妙です」それが精いっぱいだった。

男2「何かが採掘場で起きたに違いない。なんらかの兵器実験かもしれない。

作戦司令部に伝えよう。お前は分析することに集中しろ。」

男1「ヤー」

トラブルシューターは足早に去っていった

そのとき男1は去り際のトラブルシューターが微笑んでいたことに気づかなかった。

男2にとって、世界は平穏を取り繕うのに必死だった。

平和を謳う国あれど、一方で警戒を怠らずアンテナを巡らせている。

戦争と戦争の合間にあるものは別の形の戦争だ。

スパイを放ち互いに腹を探り合い、相手の闇を解き明かそうとしてる。

こいつはまるで、人間関係の縮図だなと男2は思った。

男2はそういうものが嫌いだった。さばさばしていると言うべきだろうか。

反面、率直に物を言うので、諍いもよく起こる。

上司にも口答えをしたこがあって、「教育」を受けたこともあった。

だが、彼はそれで満足していた。

自分の伝えたいことが伝わるなら、それに越したことはない。

そして、今回の事件は明らかに敵意をむき出しにしていた。

地下実験場も使わず、堂々と披露した。

これなら延々と画面と睨めっこして、こそこそ入っていくトラックの数を数えなくて済む。

そして、この国も動かざるを負えないはずだ。いつまでもノロノロしてはいられない。

もし、あんなものが街にばら撒かれたら…。

そこまで想像して男2は背筋にぞくりとしたものを感じた。

愛する妻と、5歳になる娘の顔が脳裏によぎった。

週末、ショッピングモールへ買い物する約束をしている。

娘はバービー人形が欲しいのだと、妻は教えてくれた。

失うのが怖いのか。

見えすいた仲良しこよしの嘘にうんざりしていたはずなのに。

俺は、平等な戦争よりも最も不公平な平和を望んでいるのか。

男2のなかで、なにかが変わりそうになっていた。

今日はおわり
タイトル詐欺だってはっきりわかんだね

男2は二回のセキュリテイロックを解除し、西太平洋作戦司令部長官のオフィスへたどり着いた。

ノックしてから扉を開くと、サイス長官が胸元の殊勲バッジをハンカチで撫でつけていた。

爛々と金色に輝くそれを彼はとても気に入っているのだ。

主に見栄えを良くするものとしてだが。

男2「緊急の報告があります」

サイス「君が通信を通さずに直接来たことから、予想はついていたよ」

サイスはリモコンで部屋に設置されている銀色の機械を作動させた。

確か盗聴器をダメにするなにかだ。最近、長官は情報漏えいに悩まされていた。

男2「午後7時21分、軍事衛星がA国の北、シュヴアールの地下実験場で異変を捉えました」

サイス「その場所なら知っている。忌々しい新型ミサイルの開発場所だ」

サイス「それなら知っている。生物兵器を開発しているのだろう」

男2「今の今まで、私もそう思っていました。しかし、今回起きたことは異質です。

地下実験室の上空で、突如雲が発生したことに始まり、それが数十の渦を形成し竜巻となりました。今現在、基地と基地の周りは竜巻でめちゃくちゃにされて

いるでしょう」

サイス「原因は?」

男2「考えられるのは3つです。

一つ目は地下の爆弾によって熱が発生し、急激に温められた大気が上昇気流となって雲を発生させ、異常気象となった可能性です。

ですがこの可能性は低いでしょう。

私はここに来る前に、地表の温度を確認しましたが周りとなんら変わりませんでした。

二つ目は、奴らがなんらかの兵器を用いて竜巻を引き起こした可能性です。

…しかしこれも同じくらいあり得ません。我々は監視しているこの6か月間、彼らは猫のように大人しくそして静かすぎるくらいに活動していました。

つまり彼らは我々には知られまいと行動をとっていたふしがあります。

それなのに彼らがトチ狂って…失礼。突然花火を打ち上げるなんて、矛盾しています。

彼らはひねくれているかもしれませんが、愚かではありません」

そして三つめはただの異常気象である可能性です。

ですがこれは…」

サイス「君が納得できないんだな」

男2「その通りです」

サイス「我々がとるべき行動は一つのように見える」

男2「このまま監視を継続しますか」

サイス「ああ、分かっているとはおもうがこのことは他言無用だ」

男2「了解しました」

男2は足早に去っていった。靴音が聞こえなくなるのを確認してから

サイスはバッジをいじりながらひとりごちた

サイス「おそらくこれから何事もない。そう何も起きないんだ表向きは」

このバッジは、イージス艦の船長であったときに、沈没した他国の船の乗組員を百名弱救助したときにもらったものだ。

海の世界では名誉の証である。

だが彼らが都市を粉々に破壊できるミサイルを積んだ原子力潜水艦の乗組員であったことは伏せられている。

そして領海の近くでうろうろとしていた彼らの目的は明らかだ。

物事には表と裏がある。

サイスは最善の一手を打つために目をとじて黙想をはじめた。


だが皆、間違っていた。

世界を取り巻く事態は急激に変わりつつあった。

今月はおわり
おにいさん許して。おにいさん許して

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