モバP「絶対監禁なんかされないんだから!」 (508)

タイトル通りの内容です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451873615

■金曜日の事務所■


ちひろ「たまには1人で休みを過ごしたい……ですか?」

モバP「はい。最近色々落ち着いてきて、毎週土日に休みがとれてるじゃないですか」

モバP「でもせっかくの休みなのに、いつの間にか部屋にアイドルがいてゲームしてたり、ホラー映画見てたり」

モバP「かと思えば家に誰かがやってきて買い物に連れ出されたり……」

モバP「夜は夜で大人組みに引っ張り出されて、朝までお酒に付き合わされたり……」

モバP「……贅沢な悩みってのは分かってるんですよ」

モバP「あんな可愛いアイドルたちに好かれて嫌なわけないですし」

モバP「……でも……たまには、たまには1人で過ごしたいんですよ!」バンッ

モバP「1人っきりで部屋に篭もりたい時もあるんですよ! 男には!」バンバンッ

モバP「篭もって何をやるかは具体的には言えないですけど……色々あるんですよ!」バンババンッ

モバP「そういう人には見られたくない仄暗い趣味の1つや2つが……男にはあるんですよ!」バンバ゙ンッ

ちひろ「なるほど……」

ちひろ「はい、分かりましたっ」ニコリ

ちひろ「私に任せてください」

モバP「え? じゃ、じゃあ……」

ちひろ「私がアイドルの皆を説得してきます」

ちひろ「プロデューサーさんのサポートが私の仕事ですから」

ちひろ「大船に乗ったつもりで待っててくださいね、ふふっ」タタッ


バタン

モバP「相談してみるもんだな」

モバP「あんなに快く対応してくれるなんて……ちひろさんはやはり天使か」

モバP「恐らくかなり階位が上の方の天使に違いない」

モバP「感謝の意味を込めて、毎日1日100回、感謝のガチャを欠かさないようにしないと」

バタン

ちひろ「ただいま戻りましたー」

モバP「そ、それで……どうなりました?」

ちひろ「ええ、上手く話をつけてきましたよ」

モバP「流石ちひろさん! 迅速かつ有能! やっぱ緑色の事務員服を着てる人は違いますね!」

ちひろ「ふふっ、ありがとうございます」

ちひろ「じゃ、これを読んで下さい」バサリ

モバP「え? 何ですかこのA4用紙の束は?」ペラ

モバP「どれどれ……『絶対監禁するアイドルVS絶対逃げ切るモバP』……?」

モバP「……」

モバP「何すかこれ」

ちひろ「説明しますね。私はアイドルの皆さんを説得しました。ですが帰ってきたのはアイドルたちのブーイングの嵐」

ちひろ「そりゃそうですよね。せっかくの休みにプロデューサーさんと過ごす機会を放棄しろって言われて納得するほど、聞き分けのいいアイドルばかりじゃありませんし」

ちひろ「かと言ってプロデューサーさんの望みを無碍にすることもできません」

ちひろ「で、皆さんと話し合い譲歩に譲歩を重ねた結果が――」

『絶対監禁するアイドルVS絶対逃げ切るモバP』

ちひろ「これです。1人で過ごしたいプロデューサーさんとプロデューサーさんと一緒に過ごしたいアイドル――双方の希望を叶える為、ゲーム形式にしてみました」

モバP「……」

ちひろ「何か言いたげな顔ですね? でもこれでも頑張った方なんですよ?」

ちひろ「上手くゲーム形式に持ち込むことで、プロデューサーさんが1人で過ごすことができるわずかな……宝くじの1等に当選するくらいわずかな希望を勝ち取ったんですから」

ちひろ「ゲームに勝てばプロデューサーさんは念願の1人休日を楽しめる。挑戦するアイドルが勝てば土日の2日間プロデューサーさんを独占できる」

ちひろ「win-winですね! いやぁ、いい言葉ですね、win-win」

『絶対監禁するアイドルVS絶対逃げ切るモバP~ルール~』

・制限時間は金曜日の就業時間17時から日が変わる0時まで。
・挑戦アイドルは制限時間内にPを事務所内にある監禁室に連れ込んだら勝利。
・Pは制限時間まで逃げ切る、もしくは掴まらずに事務所から1歩でも出ると勝利。
・挑戦アイドルは毎回くじ引きで選出。
・開始時間までプロデューサーは部屋を出てはならず、挑戦アイドルも部屋の外で待機。
・挑戦アイドル以外の妨害は一切禁止。
・相手の人体に損傷を与える武器や薬品の使用は禁止。
・ルールを守って楽しく監禁しましょう!

モバP「……」

モバP「なるほど……」

モバP(ちひろさんに望んでいた展開とは随分違ったけども……随分違ったけども!)

モバP(このゲームに勝てば晴れて1人で休みを過ごせるわけだ)

モバP(それにこのゲーム……結構簡単そうじゃん)

モバP(要するにゲームが開始した瞬間、アイドルに捕まらないように事務所から出れば俺の勝ちなんだろ?)

モバP(アイドル側は俺を捕まえるだけじゃなくて、監禁室とやらまで連れて行かなきゃならない)

モバP(フフフ……相手は所詮女子よ。追いかけられても逃げ切る自信はあるし、掴まっても振りほどくほどのパワーはある)

モバP(勝ったな……)

モバP(完膚なきまでの勝利のビジョンが見える……優勝だ……)

モバP「やってやりましょう!」

ちひろ「その言葉が聞きたかった! というわけで今日からスタートです!」

ちひろ「頑張って逃げ切って下さいねー」バタン

挑戦者<島村卯月>


P「もうすぐ17時か……」

P「ホワイトボードに今回の挑戦者が書いてある……日直みたいだな」

P「しかし卯月か……勝ったな」

P「負けるビジョンが見えん」

P「どれだけ下手こいても卯月に捕まって監禁される未来が見えんな」フフッ

P「ま、ここは小手調べってことで、軽く捻ってやりますか。赤子の手を捻るようにな」

キーンコーンカーンコーン

P「おっ、終業のチャイムだ。そしてゲーム開始の合図か。さて、卯月はどう来るか?」ガタン

バーン!

卯月「島村卯月です! 入ります!」ドドーン

P「普通に入ってきたな」

卯月「島村卯月行きますっ」タタッ

P「普通に駆け寄ってきたな」

卯月「島村卯月……ダーイブ!」ピョイーン!

P「普通に飛び込んできたな……が、甘い。甘すぎるぞ卯月! そう、例えるならTOHOシネマのプレミアムポップコーンくらい甘すぎる!」

P「そんな普通の捕まえ方でこの俺が捕まるわけがないだろ!」バックステップ

卯月「あっ、届かない――」

P(目測を誤り床にダイブするだろう卯月。俺はその脇を抜けるように入り口に向かって駆け出した。卯月なら大丈夫だろう。それなりに立派なお山を2つも持ってるし、それがクッションになって怪我はしないはず)

P「じゃあな卯月! お疲れ様でーす!」タタッ

卯月「島村卯月――前周り受身をしつつ立ち上がります!」クルン

P「え」

卯月「よしっ」ピタッ

卯月「行きますっ」タタッ

P「あ……くそっ」タタッ

P(何だ今のは……卯月が物凄く機敏な動きで受身を取って立ち上がった……)

P(お手本のような綺麗な受身だったぞ……)

P(だ、だが距離はある。このまま走って逃げれば卯月が俺に追いつくことは――)

卯月「はいっ捕まえました!」ガシッ

P(普通に走って追いつかれたわ)

卯月「じゃあ、お部屋に行きましょう!」ズルズル

P(普通に捕まって脇を抱えられて引きずられてるわ)

P(振りほどこうにもびくともしないわ)

卯月「今まで頑張ってレッスン受けてきた甲斐がありました。島村卯月大勝利です!」ブイッ

P(そうか……卯月は誰よりも真剣にただひたむきにレッスンに取り組んでいたな)

P(普通に……ただ普通に頑張ってレッスンを受けていた)

P(あの瞬発力も運動能力も……全てレッシュンの成果か)

P(負けたよ……)

P「今回は俺の負けだよ……アイドルを甘く見ていた、俺の負けだ」

P「好きにしろ!」

卯月「はいっ、普通にデートに行きましょうねっ。えへへっ」

>毎週1人ずつ

そうです。ある程度話はストックしてます。

7 :オバマ ◆qvf.IClkDc :2012/03/29(木) 12:35:32.96 ID:gqCoKGm50【名前】オバマ
【自分の立場】仮面2年目
【志望校】理Ⅲ
【現在の偏差値】50
その他書きたいことあればご自由に

心機一転して、がんばります。

■次の金曜日■

P「先週の卯月にはしてやられたな……」

P「アイドルを甘く見ていた俺が悪い。あいつらは俺が目を付けて育て上げたアイドル達だった。そこら辺にいる普通の女子と比べるなんて愚の骨頂だった」

P「油断はしない。次は本気だ」

P「しかし先週は楽しかったな。普通に卯月と飯食って、映画を見てゲームセンターに行って……普通にショッピングに行った後、普通に卯月の家にお邪魔をした。それから普通に卯月の親御さんに挨拶をして、卯月の手料理を食べて……有意義な休日だった」

P「だが今週こそは! 1人で過ごす。絶対にだ」

P「今回の挑戦者は――」

<渋谷凛>

P「ニュージェネが続くか……」

P「凛がこんなゲームに乗り気だとは思わないが……油断はしない」

みく「みくは何も曲げないよ!」

2015/12/31(木) 10:23:34.91 ID:9z8VDeqL0
1: ◆qvf.IClkDc[saga]

『ボール』

キーンコーンカーンコーン

P「……っ」ガタン

P「さあ、来い! 凛……どこからでもかかって来い! このモバP、逃げも隠れもせんぞ!」

P「正々堂々お前を打ち倒してやる!」

P「……」

P「……」

P「……あれ?」

シーン

P「凛? おーい凛。凛ちゃーん。凛たそー」

P「……」

P「りんりーん。凛わんわーん。蒼いひとー。足跡を残すひとー」

P「……」

P「来ないな……」

P「い、いやこうやって俺を油断させる作戦なのでは?」

P「俺が油断して気を抜いた隙に、こう……凄い伸びるツタとかで俺を絡め取る気じゃないのか?」

P「凛の実家は花屋だからな。ありうる」

P「俺は何があっても油断しない!」

・・・・・・
・・・・・
・・・

P(あれから1時間が経った)

P(その間、凛からのアクションは全くなかった)

P(流石にここまで来ると……凜は帰ったんじゃないだろうか)

バタン

凛「……あれ? まだいたの?」

P「凛!?」

P(やはり来たか……!)

凛「仕事まだ終わってないんだ。お疲れ様。無理はしないでね」

P「え?」

凛「……なにその顔。残業してたんじゃなかったの?」

凛「ん?」ホワイトボードチラリ

凛「……ああ、そうだった。あの……何とかゲーム? 今日私の番だったんだ」

P「わ、忘れてたのか? 今まで俺の隙を伺ってたんじゃ……」

凛「違うよ。未央たちと外で喋ってただけ」

P「そ、そうだったのか……」

P(何だか気が抜けたな……俺が1人で空回ってただけか)

凛「早く帰ったら?」

P「凜は……俺を監禁しないのか?」

凛「……はぁ」タメイキ

凛「しないよ。プロデューサーだって1人で休みを過ごしたいときもあるでしょ」

凛「他のみんなは知らないけど、私はプロデューサーの意志を尊重するよ」

P(……ほ、本当なのか? 信じてもいいのか?)

凛「……」

凛「……ま、いいよ。私は帰るね。未央たち待たせてるし。プロデューサーも早く帰りなよ」

凛「しっかり休んで、来週から私達をプロデュースして」

凛「じゃ、お疲れ様」ツカツカ

バタン

P「……」

P「……はあぁぁぁぁー」

P「そりゃそうだよな。全員が全員こんなゲームに乗り気なわけないよな」

P「ははっ、全員が俺と一緒に休みを過ごしたいなんて……自意識過剰も過ぎるな」

P「帰るか」

P「……」ブルル

P「緊張から開放されたからか、尿意が……トイレに寄ってから帰ろう」ツカツカ

バタン

☆男子トイレ☆

P「ふぃぃー」ジョバジョバ

P「帰ったらなにしようかなー。まずはアレだな、積んでたアニメの消化だな」ジョバジョバー

P「奈緒とかと一緒じゃ見れないアニメとかがどんどん溜まってるからなー、この機に一気に消化しよ」ジョバジョバン

バタン

P(個室トイレが開いた音? 誰だろ……掃除業者の人かな?)ジョジョジョー

?「……」バタン

?「……」ツカツカツカ

?「……」ピタ

P「……」ジョロジョロ

P(個室から出てきた人が、俺の背後に立っている件について)



P(なにこれどういう状況!? え、もしかして……そういう危機!?)

P(俺のアナル・バジーナ大尉が初出撃しちゃう感じ!?)

?「……くす」

P(笑った……! 怖い……! 誰か助けて……! た、助けてみくにゃん……! もうこの際幸子でもいいから助けて……!)

?「動かないでね。……っていっても、今は動けないか」スッ

P「ムゴォ!?」

P(布で口を覆われた……!?)

?「睡眠作用のあるヒナゲシを改良した、即効性の睡眠薬を含ませてるから」

P(あかんあかん! これ眠らされて拉致監禁→レイP→撮影→事務所に映像が届く→信じて送り出したPさんが……的な展開だ!)

P(なんとか逃げ――って、こんな状況でも頑張り続ける俺の膀胱ちゃんマジ超頑張り屋さん!)ジョロジョローン

P「あ……」

P(いかん……意識が……)

P(薄れ行く意識の狭間。トイレの床に倒れふす俺の目に入ってきたのは――)

凛「おやすみ、プロデューサー」クス

P(慈愛を含ませた笑みを浮かべる凛だった)



☆監禁ルーム☆

P「……」ムクリ

凛「おはようプロデューサー。ちょっとスーツ借りてるね」スンスン

凛「あ、一応言っておくけど、気が変わっただけだから。みんなが参加してるのに、私だけゲームに参加したいのもどうかと思うし」

凛「やっぱり私達って頂点を目指すライバルでありながら、同じ目標を目指す仲間でもあるし」

凛「私1人が不参加でみんなの空気壊したくないし」

凛「そういうこと。分かった?」

凛「あ、それから明日から2日間にかけての予定。ちょっとA4用紙にまとめといたから目を通しておいて」

凛「じゃあ、明日から2日間よろしくねプロデューサー」クス

あ、すいません。書き方がややこしかったですね。
『相手の人体に損傷を与える武器と薬品』です。
基本何を使用しても問題ないルールです。

P「なるほどなるほど……」

P「健康に影響さえなければ薬品も使用してもいい……か」

P「オーケーオーケー。P理解した」

P「相手をただの鍛えたアイドルだと思うなってことだな」

P「いいだろう。この瞬間より俺は――修羅とならん。一切合切の慈悲もなく、挑戦者を叩き潰そう」

P「……」

P「それにしても先週は楽しかったな。何だかんだで凛とのんびり過ごせたし」

P「花屋の店番なんて初めての経験だったよ。凛と並んで店番して……いい経験だった。小さな花屋で慎ましく客を迎える――そういう人生もいいのかもしれないな」

P「凛も『これでいつでもここで働けるね』って言ってくれたし」

P「プロデューサーをクビになったら、働かせてもらうかな」

P「それはそうとして今週のチャレンジャーは……」

《一ノ瀬志希》

P「志希……か」

P「志希も――薬品使い《ドラッグユーザー》だったな」

P「悪いが志希よ。凛との勝負に負けた俺は――もう決して薬に負けることはない。このモバP、1度受けた技は2度と通用せん」

P「それに今回からはこちらから攻めさせてもらう。今までは完全に受身だったから、時間になった瞬間、速攻で部屋を出て事務所から脱出する」

P「志希はガンガンに攻めてくるタイプだが、逆に攻められると脆い部分がある。そこを突かせてもらう」



P「もうすぐ時間だ」

キーンコーンカーンコーン

P「シャオラァッ!」ガタンッ

P「ウオオオオオオオ」ダダダッ

P「お疲れ様でええええす!」ドアガチャッ

P「おおおおおおお」ガチャガチャガチャ

P「おおおおおお……おお?」ガチャガチャガチャ

P「……ドアが……開かない?」ガチャガチャ

P「え……ちょっと待って。ドアが開かないとか……部屋から出れないじゃん」

シュゥゥゥ……

P「……ん? 何だか煙いぞ」

シュゥゥゥゥ……

P「換気口から……煙? え、火事? でも、スプリンクラーは作動してないし……」

P「あれ、何だろうこの匂い……すっごくいいスメルじゃん」

P「思わずスメルリストに登録したくなる……グッドスメル」

P「例えるならそう……子供の頃、田舎のお婆ちゃんの家で嗅いだような懐かしい畳の匂い」

P「ああ、いいなこれ……ずっと嗅いでいたい」

P「あ、ああ……あああああ――ぐぅ」バタン

P「……」グゥグゥ

ガチャ

ガスマスク「……」ツカツカ

ガスマスク「……」ガシリ

ガスマスク「……」ズリズリ

ガスマスク「……にゃは♪」

バタン

☆監禁ルーム☆

P「はっ……!」ムクリ

ガスマスク「……」シュコー

P「ひぃぃ!? か、改造される!? 勝手に改造される!?」

ガスマスク「……」カポッ

志希「じゃ~ん、志希にゃんでした~にゃははっ」

P「知ってた」

志希「駄目だよー? 知らない匂いは嗅いじゃいけないって、学校の先生に教わらなかったー?」

志希「そーいうわけであたしの勝ちっ。にゃっはっは、キミの2日間貰っちゃうね~」

志希「とりあえず土曜日は1日中匂い嗅がせてもらうから」

志希「たっのしみ~♪」ニャハ

■次の金曜日■

P「もうね、分かった。分かったから。新井……じゃなくて全部俺の油断が悪い」

P「分かった、もう分かった。うんすっごい分かったわ」

P「分かった分かった。もうね、悪かった。甘く見て悪かった」

P「これからは挑戦者全員をカテゴリーA以上のアイドルと認識するわ」

P「全身全霊でサーチアンドデストロイ。本気で行く」

P「……」

P「ま、何だかんだで楽しかったよ。土曜日の間ずっとハスハスされたのは流石にしんどかったけど……」

P「日曜に行った世界の匂い展? アレは楽しかった。子供の頃に遠足で行った人体の不思議展を思いだしたよ」

P「志希も目をキラキラさせて普通の女の子みたいに楽しんでさ……いや、普通の女の子はシュールストレミングの臭い嗅いで目キラキラさせないけど」

P「しかし今週こそは本気で勝ちに行く。リミッターを外させてもらう」

P「そんな本気の俺を相手にする哀れな子羊は――」

<安部菜々>

P「羊じゃなくて兎だったか……」

P「……」

P「菜々さん相手に本気を出すのもな……本気を出した俺の動きについてこれると思えないし」

P「いやいや、そういう油断がいけないんだ! 例え相手が菜々さんといえども本気で相手をする」パンパン

P「……」

P「今日で絶滅危惧種ウサミンは……地球からその痕跡を消す!」

P「そういう気概で挑ませてもらう」

P「とりあえず、2度あることは3度あるという諺に従って……と」

キーンコーンカーンコーン

バターン!

菜々「ウッサミーン!」

菜々「今日のチャレンジャーは菜々でーす! キャハッ☆」

菜々「チャレンジャーといえば昔やってた炎のチャレンジャーを思い出しますね! 今回は100万円じゃなくてプロデューサーさんが貰えるとか!」

菜々「そーいうわけでサックリ菜々に捕まってくださいね! プロデューサーさん!」

ガスマスクP「……」シュコオオオ

菜々「ひいいいい!? 映画館で見てトラウマになったベーダー卿!?」ビクッ

P「俺だ」カポ

菜々「プ、プロデューサーさんだったんですか……び、びっくりしました」

P(どうやら薬品の類は持っていないらしい。ガスマスクは不要だな)

P(丸腰のようだし……これは勝ったな)

菜々「ふっふっふ……今からウサミン星の子供達の必修課題であるウサミンCQCでプロデューサーさんを華麗に確保してみせますよっ」ウサウサ

菜々「ウサミンCQCは陸・海・空の3つの型から構成されていて――」

P「はい、お疲れ様ー」ツカツカ

菜々「あっはい! お疲れ様でーす☆」ウッサミーン

菜々「って何素通りしようとしてるんですかっ! 逃がしませんよ! 兎だって狩猟本能はあるんですからっ」ダダッ

菜々「てや~」ヘニャァ

P「おっそ!」

P(こちらを捕まえようとする菜々の手はびっくりするほど遅く、目を瞑っていても避けることができそうだ)

菜々「つーかーまーえ――あぅ!?」ビターン

P(そして避けるまでもなく、椅子に足を引っ掛けて転倒した)

P「あの……じゃあ菜々さん、俺行くんで」

菜々「……」

P「菜々……さん?」

菜々「……おぉぉぉ……こ、腰がぁ……腰がビキッって……」プルプル

P「嘘やろ……」

菜々「た、たす、たす……助けてぇ……」プルプル

P「いや、そんな……あれでしょ? 演技でしょ?」

菜々「え、演技でっ――あぅぅ!?」ビキィッ

菜々「お、大きい声を出させないでくださいぃ……こ、腰に響くんですぅっ……!」ピクピク

P「じゃ、じゃあ誰かを呼んで……」

菜々「後生ですからっ、それだけは勘弁してくださいぃ! プロデューサーさん以外にこんな姿を見られたら……菜々、恥ずかしくて死んじゃいますっ」

菜々「ウサミンが寂しくなると死ぬのは有名な話ですけど……度を越した恥ずかしさでも死ぬことはあるんです……!」

P「いや知らんけど……」

菜々「お、お願いですからぁっ、な、何でもしますから……! 医務室に連れて行ってください……」

P「……」

P(このまま無視して行ったら、多分明日の朝には冷たくなって発見されることになりそうだ……)

P(流石にそんな哀れな菜々を見たくはない……というか親御さんに顔向けできない)

P「……はぁ。背負いますから乗ってください」

菜々「で、できたらお姫様抱っこなるものを……」モジモジ

P「は?」

菜々「……な、なんでもないです……ウサ」

ガチャ

P(ゲーム中に初めて部屋から出たけど……まさか、こんなオマケ付きとは)ツカツカ

菜々「プロデューサーさんの背中って、大きいんですねっ。それに……温かいです」

菜々「昔を思い出しますねぇ。デパートの屋上で遊び疲れて眠る菜々を、パパが背負って家まで連れて帰ってくれて。……あのお金を入れたら動くパンダの乗り物、久しぶりに乗ってみたいですね」

P(しかしウサミン星のお山……結構あるんだよな)

菜々「?」ムニムニ

P(役得だと思っておこう)

菜々「あっ、そこ曲がってください」

菜々「ここが医務室です」


☆医務室☆


P「医務室に来たのなんて久しぶりだけど……こんな場所だったっけ?」

菜々「へぇあ!? そ、そうですよ……ここですよ! も、もー忘れちゃったんですかプロデューサーさん? 忘れっぽいですねぇ……まだまだ老けるには早いですよ、キャハッ☆」

P「いや、ちょっと動いただけで腰いわす菜々さんに言われたくないんですけど」

菜々「え? そ、それってどういう……っていうか、前から行ってますけど、菜々のことは呼び捨てで――」

P「よし入ろう」

ガチャ

P「ん、暗いな。誰かいますかー」

P「おっかしいな。確か専属のドクターが常勤してるはずなんだけど……電気電気」ヒタヒタ

P「お、あった」カチッ

パッパッパ(電気がつく音)

P「よし、これで明るく――」



監禁ルーム「おっすおっすwwwww」


P「は!? こ、ここは自分の部屋より見慣れてきた例の監禁ルーム!?」

P「ど、どういう――菜々がいない!?」

菜々「ふっふっふ……」

菜々「やりました……菜々はやりましたよー!」

菜々「菜々の勝ちでーす! ウサミン大勝利! キャハッ☆」ダブルピース

菜々「騙されましたねプロデューサーさん! 菜々はJKですよ! JK! つまり女子高生! 女子高生がちょっと激しい運動をしたくらいで腰をいわすわけないじゃないですか!」

菜々「つまりトリック! 体を張って成功させた菜々の作戦勝ちですよー、イエイ!」ブイ

P(やられた……! あれは本当に演技だったのか……! まるで何度も腰をいわせた経験からくる、迫真の演技だったから騙された……!)

P(それに菜々ならありえるだろうな、そう思った俺のミス)

P「俺の負けだ」

菜々「ばんざーい! と、とりあえず今日は菜々の家でお酒……んんっ! ウサミン汁を一緒に飲みましょうねっ」ピョン

菜々「そ、それかそれからっ、ウサミンパパとウサミンママに会いに行きましょう! もう、本当に最近『お願いですから身を固めてください。何でもしますから』ってうるさいんですっ。プロデューサーが一緒に来てガツンと行ってやってくださいっ」ピョンピョン

菜々「あと、それにそれに――」ピョンピョ――

菜々「――おお”う!?」ビキリ

P「え?」

菜々「あ、ああ、あああ……」ヘナヘナ

菜々「……」

P「な、菜々さん……?」

菜々「……」

菜々「……医務室に」

菜々「本当に医務室に……お願いします」プルプル

■次の金曜日■

P「先週は酷かったな……」

P「あれから菜々を背負って医務室に。暫く絶対安静指示が出たから、菜々の家に行って俺が菜々の身の回りの世話をした」

P「まあ、久しぶりに自分で掃除やら料理をできたから、それはそれで楽しかったな」

P「アイドルが家に入り浸るようになって、全部家事をやってくれるもんだから、自分のやるのは本当に久しぶりだった」

P「布団で横になる菜々を眺めながら家事をしてたら、何だろう、こう……」

P「介護ってこんな感じなのかなって、そう思ったよ」

P「菜々は菜々で顔を手で覆いながら『もうお嫁にいけない、いや本当にもうこんなの見られたらプロデューサーさんに責任とってもらわないと……』って呟いてたし」

P「まあ1人暮らしの女性の家だからな。色んなものが置いてあって当然だ」

P「しかし、まさか菜々があんな物をなぁ……」シミジミ

P「と、いかんいかん」フルフル

P「今回こそは絶対に勝つ。例え何があろうとも、助けを差し伸べられても――心を鬼にして勝つ」

P「ここから先勝利するためには、同情や哀れみといった感情は不要」

P「鉄の心で挑む。我は鋼なり鋼故に決して惑わされない」

P「さて、今回の相手は――」


<白坂小梅>


P「小梅、かぁ……」

P「……」

P「もし小梅が涙目で上目遣いに俺の裾を引っ張って誘ってきたら……ぐ、ぐうう!」プルプル

P「うううう、うぬぅぅぅぅぅっ」プルプル

P「はあああぁぁぁ……あああああっ……!ブルブル」

P「……ハァッ!」

P「よし、行ける。相手が小梅でも鉄の心を貫ける」

キーンコーンカーンコーン

P「行くぞオラァ!」ダダッ

コンコン

P「え!?」ピタッ

P「ノ、ノック? 今までになかったパターンだな」

コンコン
コンコン

P「えっと……はい」

ガチャ

小梅「え、えへへ……お、お邪魔します」トテトテ

小梅「Pさん……こ、こんばんは。え、えっと、今からちょっと、一緒に行って欲しい、ところがあるんだけど……い、いいかな?」クビカシゲ

P「お、おう。行くか」

P(――って駄目だろ! なに普通に流されてるんだ俺! 心! 鉄の心!)

P「悪いが小梅。一緒には行けない」

小梅「……え? そ、そうなんだ……ざんねん」ショボン

小梅「そっか……そっかぁ……無理言ってごめんねPさん」

P「くっ……ぐぅっ……」ギリギリ

P(イメージトレーニングでは簡単に素通りできたのに……! リアル小梅の破壊力よ!)

P(だが、もう負けることはできない……!)

P(これ以上の敗北は許されないのだ!)

P「すまんっ、小梅!」ダダッ

バタン

小梅「あ……」

小梅「……」

小梅「そう、だね。うん……お願い、ね」

P「はぁ、はぁっ」タッタッタ

P「よし、事務所の出口が見えたぞ! ここを出れば俺の勝ちだ!」

P「さようなら小梅! そしてようこそ1人で過ごす休日!」

P「俺の、勝ちだ」

P(あと一歩。この右足を踏み出せば――勝利)

P(人類全体から見れば些細な一歩だが……俺のとっては革命の一歩だ)

P(この一歩を、踏み出す――)

ピタッ

P(――なん、だ?)

P(あと1歩……1歩踏み出せば……外に出ることができる、そのはずなのに……)

P(足が……動かない)

P(足だけじゃない……体が全く、動かない。金縛りにあったように)

P「……」ギギギ

P(うおい!? どうして反転する俺の体よ!? そっちは出口じゃないぞ!?)

P「……」ギギギピタ

P「……」テクテク

P(エエエエエエ!? ナンデ!?)

P(勝手に体が動くんですけど!?)

P「……」テクテク

P(い、一体どこへ……あっ、ああああああ!? こ、この道は……見覚えがある! 菜々を背負って通った……!)

P(駄目だ! 駄目駄目! そっちは……あああああ!?)


☆監禁ルーム☆


P「……」ガチャ

バタン

小梅「い、いらっしゃいPさん」

P「……」

小梅「あ、そっか。うん……もういいよ、ありがとう」

P「……あ」

P(何かが体から抜けるような感覚と共に、俺の体は自由を取り戻した)

P「こ、小梅さん? これは一体……」

小梅「う、うん。あのね……あの子にね、逃げたPさんを追いかけてもらったの」

小梅「それから、ちょ、ちょっとPさんの体を借りて、自分でここまで来てもらったの」

小梅「……」

小梅「ね、ねえPさん……私の、勝ち?」クビカシゲ

P「……」

P(なるほど。薬品だけでなく、霊的なものへの対抗策も練らなければならない……と)

P(理解した)

P(それを次回の課題にして、今回は――)

P「俺の負けだ」

小梅「やたっ」ピョン

小梅「え、えへへ……じゃあ私の部屋、行こ」ギュッ

小梅「Pさんと一緒に見ようと思って、い、いっぱい……いっぱいDVD借りたから……」

小梅「きょ、今日は寝かさないから……ね」

■次の金曜日■

P「小梅とのホラー映画24時間耐久視聴は疲れた……」

P「ホラーの怖さに耐えるのもそうなんだけど、こう……べったり体を預けてくる小梅に耐えるのも色々な意味で疲れた……」

P「あとホラー映画って結構濡れ場があるから、気まずい。そのシーンで小梅がチラチラこっちに視線を寄越すから、俺も困る」

P「……ふぅ」

P「さて」

P「今日に備えて色々準備をしてきた」

P「まずは小梅に時のことを考え、霊的な存在に対抗する為に……」

P「体中にお経を書いた。幸子に手伝ってもらってな」

P「とてもくすぐったかった」

P「そして俺は今日まで敗因について1つの結論を出した」

P「俺はプロデューサーだ」

P「プロデューサーである以上、アイドルに対してどうしても手心を加えてしまう。敵意を持つなんてもってのほかだ」

P「無意識にセーブがかかってしまい全力を出せない」

P「これはもう職業病だ」

P「ならどうするか」

P「会わなければいい。挑戦者に会わず、事務所から脱出する――これがベストだ」

P「その為にこの部屋に……抜け道を作った」

P「出口近くに通じる抜け道をな」

P「晶葉の実験に付き合う代わりに、サクッと作ってもらった」

P「これでいい……完璧だ」

P「部屋の外で待ちうけるであろうアイドルをスルーして、出口へ向かう」

P「これが俺の脱出ルートだ」

P「当然挑戦者であるアイドルを無視することになるが……勝利の為なら仕方がない」

キーンコーンカーンコーン

P「時間だ」

P「ポチッとな」ポチリ

ウイーンゴイーン(床が開く音)

P「後はこの穴に飛び込めば一気に出口前までショートカットできるって寸法だ」

P「じゃあな! あばよ、まだ見ぬ挑戦者よ!」ヒョイ

ガチャ

?「ニンニンッ! P殿、御用だ御用だー!」シュタッ

?「あ、あれ……いない?」

?「しまった……逃げられました……!」

☆出口近く☆

P「ん……よいしょっと」ヨジヨジ

P「ククク……まさか自販機の取り出し口が事務室と繋がっているとは誰も思うまい」

P「さて、出口は目の前だ」

P「そして俺が抜け道に飛び込む瞬間に扉が開く音が聞こえた。つまり挑戦者はまだ事務室にいる」

P「勝ったな」ツカツカ

P「今度こそ……この一歩を踏み出せば、シャバだ」

P(今……一歩を踏み出した――)

カチリ

P「ん? 何か……踏んだか?」

バサリ

P「なんだ!? 何かが降って来たぞ!?」

P「ちょっ、これ……網か!?」ジタバタ

P「早く外し……ああ!? どんどん絡まっていく!?」

P「ええいっ、もういい! このまま外に這って出てやる!」ホフク

P「もうすぐ……後少しなんだ……後少しで自由に……」

トン

P「何かにぶつかった……あ」

あやめ「……」ニコニコ

あやめ「こんなこともあろうかと、出口に仕掛けて置いた罠が上手く作動したようですね! ニンニンッ」

P(……負け、か)

P(だが、いい。これでいい。今回は惜しかった。このルートは正しいはず)

P(次回はきっと上手くいく)

あやめ「ではではっ、わたくしと共に来てくださいP殿! 色々と一緒に試したい忍術があるので……!」

■次の金曜日■

P「よし! 出口だ!」ダダッ

P「ゴール――」

カチリ

P「うお!? 縄が絡み付いて――」グイン

P「上に参ります!?」ビョイン

亜季「――よし! スネアトラップ見事に作動であります!」ザッ

亜季「ではプロデューサー殿には日曜日に開かれるサバゲー大会にて、私のバディになってもらうであります!」

亜季「明日は地獄の特訓にご招待。ちょっと泣いたり笑ったりできなくなると思いますが……一緒に頑張りましょう!」

■次の金曜日■

P「今度こそ――」ヨジヨジ

P「外へ……って」

茜「待ってましたよPさん!!!」ドーン

P「いやいや……おかしいだろ!? さっきドアぶち破る勢いで事務室に飛び込んできたじゃん!? 慌てて抜け道に飛び込んだじゃん!? 出てきたじゃん! 何で出口の前で陣取ってるんだよ!?」

P「ワープか!?」

茜「走ってきましたっ!!!」

P「だろうな!」

茜「というわけで……ボンバー!!!」ガシリッ

茜「Pさんゲットです!!! 今週末はちょっと青森辺りまで走りたいと思ってたんですけど、やっぱり1人では寂しくて……一緒にお願いします!!!」

■次の金曜日■

P「出口だあああああ!」ダダッ

楓「あ、プロデューサー……」

P(くっ、出口前で待機してたか……だが相手は楓さんだ!)

P(このまま一気に押し通る!)

楓「最近構ってくれなくて寂しかったです……ぐすん」

楓「今週末は温泉行きましょうね、温泉」

P(魅力的な提案だが断る! このまま脇を抜けて――)ダダッ

楓「出口で愚痴る……なんちゃって、ふふっ」

P「うわ、さむっ」

P「あっ」カチコーン

P(あまりの寒さに凍ってしまった……流石アイドル。駄洒落の寒さで人を凍らせるとは……)

楓「じゃあ、監禁室に行きましょうね」ヨイショ

P(ま、まだだ……! まだ辛うじて動ける……!)

楓「あ、プロデューサー。温泉行ったらチンチロやりましょう。ここだけの話、私アレ好きなんですよ」

楓「サイコロだけにダイスき……なんちゃって」

P「……」ガチコーン

■次■

P「出口――」

シュッシュッ

P「なっ、眼鏡が飛んで来た!?」

ビスビスビスッ

P「そのまま服に刺さって……壁に縫い付けられただと!?」

?「メーガネッネッネ……」ツカツカ

P「その無理があり過ぎる笑い声は――榛名!?」

春菜「頑張りますっ……って色々違いますよ」

春菜「さてプロデューサーさん……これから2日間、あなたを眼鏡漬けにします」

春菜「プロデューサーさんのファッションに合う眼鏡を探し、仕事用にブルーライトカットの眼鏡を作り、スポーツ用の眼鏡をかけて軽く汗を流し、そして老眼鏡をつけてそれを着けるであろう老後に想いを馳せる――」

P「思ってたより普通だな」

春菜「それから眼鏡風呂で眼鏡を100数えた後上がって、お風呂上りには眼鏡についた水滴を啜ります。勿論ベッドは眼鏡布団で、寝ている間も睡眠学習マシンを使って眼鏡の夢を見てもらいます」

P「やっぱメガキチだわコイツ」

■次■

P「……」

シュイーン

P「香ばしい匂いのパンが飛んできて、足に絡みついたな」

P「みちるか」

みちる「フゴゴ! フゴゴゴ! フゴゴゴゴ!」(その通りです! 今Pさんの足に絡み付いているのは、フランスパンです!)

みちる「フーゴ! フゴフーゴ!」(フランスパンでありながら、バネのような伸縮性を持ったそのパンは相手に絡みつくやいなや本来の固さを取り戻し、一気に相手を締め上げます!)

みちる「……ゴクン」(当然後であたしが食べます)

P「そうか……」

■次■

P「……」ツカツカ

ガシリ

P「今度は何が足に絡みついたんだ?」

P「ドーナツか? 魚か? 鞭か?」

P「大穴で森久保か?」

早苗「あたしよ~」

P「まさかの婦警さんだった。つーか酒くさっ」

早苗「ちょっと景気づけに一杯ねぇ! あれ? 一杯だけだっけ? えっと1、2、3……」ユビオリ

早苗「あっはっは! いっぱいだ! いっぱい飲んできちゃった!」

早苗「あははー、さーてP君! この後はP君家で宴だからねー!」

早苗「逃がさないわよー、なんたってもうP君はあたしに逮捕されてるからっ」

早苗「罪状は――盗難! あたしの心を盗んだ罪! 終身刑を求刑しまーす!」ギュッ

P「……」

■次■

P「駄目だ……脱出は無理だ」

P「一応ルートを変えて、駐車場から車で脱出しようとしたけど……」

P「挑戦者がほたるの時は何故か車のエンジンがかからなかったし」

P「きらりの時は車持ち上げられてそのまま監禁室へお持ち帰りされたし」

P「桃華におねだりして、思い切って型落ちの装甲車を買ってもらったけど……」

P「なんか真っ黒なスーツ着た仁奈が『くろのけいの気持ちになるですよ!』とか言って、車持ち上げてお持ち帰りされたし」

P「脱出はもう諦めよう」

駐車場→地下駐車場って設定でお願いします。

P「脱出は諦めると言っても、このゲーム自体を下りるわけじゃない」

P「アイドル達の勝利条件は俺を監禁室に連れて行くこと1つだけだが、俺は違う」

P「俺は事務所からの脱出の他のもう一つの勝利条件がある」

P「――制限時間まで逃げ切ることだ」

P「要するに、0時になるまでどこかで隠れていればいい」

P「この方法で勝利を掴む」

P「さて、挑戦者は――」


<緒方智絵里>

P「……」

P「……」

P「前言撤回だ。智絵里相手に隠れるのは……何か、こう……止めた方がいいと思う」

P「何故だか勝てるビジョンが見えない」

P「隠れて安心してたら、いつの間にか背後に立っていた……そんな展開になりそうだ」

P「よし、普通に事務所から脱出しよう」

P「あれだ。智絵里はあまり運動能力が高い方じゃない、可愛いけど」

P「それに他のアイドルみたいに走る俺を捕まえる特殊能力もない、可愛いけど」

P「そうと決まれば……今は15時か」

P「仕事も早く終わったし、ゲーム開始時間まで少し寝るか」

P「おやすみー」

P「……ぐぅ」

P「……」スヤスヤ




ワサ……ワサ……

    ワサ……ワサ……

 ワサ……ワサ……

キーンコーンカーンコーン

P「……ん? ああ、開始のチャイムか。いかんいかん、少し寝すぎた」

P「智絵里と鉢合わせる前に、抜け道から――」



ワサワサワサ
     ワサワサワサ

 ワサワサワサ
          ワサワサワサ

   ワサワサワサ



P「……」

P「目が覚めたら一面のクローバー畑だった」

P「いや、えぇ……何これ。意味分かんない」

P「床一面にびっしりとクローバーが生い茂ってる……」

P「しかもよく見ると……全部四葉のクローバーだ」

P(抜け道までたどり着く為には、このクローバー畑を踏み荒らして行かなければならない)

P「無理無理! 絶対無理だって! 罰当たりすぎる!」

P「いや、待てよ……よく見るとほんの狭いスペースだけど、クローバーが生えてない部分がある。しかも部屋の外までその生えてない道が続いてるぞ」

P「ラッキー! これで外まで行ける!」タタッ

バタン

P「廊下に出たけど、廊下にもクローバーが生い茂ってるな」

 ワサワサ

     ワサワサ
 ワサワサ

        ブモブモ モシャモシャ

  ワサワサ

P「何かクローバーに混じって何かが見えた気がするが……気のせいだろ」

P「よし、クローバーが生えてない道は廊下にも続いている」

P「きっとこの道を辿れば外に出られるだろ。なにせ幸運の四葉クローバーだからな」ツカツカ

P「クローバーを踏まないように慎重に……」ソロソロ

P「慎重に慎重に……」ソロソロ


・・・・・・・
・・・・・
・・・

・・・・・
・・・
・・


P「よし! 何とか1つも踏まないでゴールまで辿り着いたぞ!」


☆監禁ルーム☆


P「監禁ルームの前にな」

P「いかん、罠だこれ。大ハマリだぜ」

P「くっ、来た道を戻って……!」


ワサワサワサ
ワサワサワサ
ワサワサワサ


P「振り返るとさっきまで歩いてきた道がクローバーに覆われていた」

P「後門のクローバー、前門の監禁室、か」

P「どうしたものか」


ワサ……ワサ……
  
     ドシタノ……ワサワサ……
        
   ハイレヨワサワサ……
           ウサウサ……

     モウクローバーヤメル……

  ワカルワ……
 
P「徐々に迫って来んなよ! 分かったよ、入ればいいんだろ入れば!? つーかなんか新種のクローバー混じってるぞ!?」

ガチャリ

智絵里「……すぅ……すぅ……」

P「智絵里が寝てる」

P「おい、智絵里」ユサユサ

智絵里「……んゆ」

智絵里「……あ、プロデューサーさん」パチクリ

智絵里「来てくれたんですね……えへへ」

智絵里「私ずっとここでこの四つ葉のクローバーさんにお願いしてたんです。プロデューサーさんが会いに来てくれますようにって。ありがとう、クローバーさん」ギュッ

P(願いの叶え方が怖いよクローバーさん。汚染された聖杯かよ)

智絵里「えへ、えへへ……今日からプロデューサーさんと一緒ですね」

智絵里「よろしくぴょんっ……なんちゃって」

>>智絵里「よろしくぴょんっ……なんちゃって」
あっ超絶かわいい!(怪植物群生から目を背けながら)

■金曜日■

P「……ウサチエリ……カワイイ……」

P「カワイイ……カワイイヨ……ウサウサ……」

P「チエリガ、ピョンピョンスル……は!?」ビクッ

P「も、もう次の金曜日か……智絵里が可愛すぎて、今週のことを殆ど覚えてない……」

P「……」

P「まあいいか」

P「それよりも今回のゲームだ」

P「前回のゲームでハッキリ分かった」

P「事務所からの脱出は不可能だ。そう思ったほうがいい」

P「故に今回からはもう一つの方法――制限時間まで隠れる切る。そちらに切り替えていく」

P「かくれんぼ……か」

P「くくく……かくれんぼ、ね」

P「これはもう勝利しか見えないな」

P「そう思わないか幸子ッ!?」

幸子「え、ええ!? な、なんですか急に……写経って結構集中力使うんですから、今は話かけないで下さいよ」サラサラ

幸子「――はい。これで完成です! フフーン、我ながら見事な出来です! カワイイ上に写経も上手なんてボクってば凄いですね! 褒めてもいいんですよ!」ドヤァ

P「毎回毎回ありがとうな」ワシワシ

幸子「フフーン、もっと撫でてもいいんですよ!」

幸子「で、プロデューサーさんはかくれんぼに随分自信があるようですね」

P「ああ、ことかくれんぼに関して言えば、俺の右に出る者はいない――そう断言できる」

P「いつも俺の体にお経を書いてくれてる幸子にだけ、俺の秘密を教えよう」

P「子供の頃、俺は『キング・オブ・ハイド』――そう呼ばれていた」

P「かくれんぼの王……キング、と。周囲の子供達の畏怖と尊敬を集め、王として君臨していた」

幸子「はぁ……」

P「俺を誰よりも隠れるのが上手かった。何より俺を王たらしめていたのは嗅覚――決して誰にも見つからない場所を見つける卓越した嗅覚だった」

P「俺はその嗅覚を武器に、ありとあらゆるかくれんぼに勝利してきた」

P「常勝無敗。あまりに強すぎて、恐れおののいたのか……誰も俺を遊びに誘わなくなった。勝者故の孤独を背負った子供時代……ふふ、懐かしいな」

幸子「……」グスン

P「どうして泣くんだ幸子。俺の武勇伝に震えたのか?」

幸子「寂しい子供時代を送ってたんですね。今のみょうちきりんなプロデユーサーさんの性格は、そんな寂しい過去から形成されてるんですね……」

P「撫でるな撫でるな」

P(正直隠れることに関して負ける気はしない)

P(そして幸子にも言っていないが……最近になって、自信の気配を遮断する技術や周囲にいる人間の気配を察知する能力が向上してきた)

P(恐らく、あやめとの修行や亜季にしごかれた地獄のブートキャンプの成果が、今になって現れたのだろう)

P(王としての才能と目覚めた新しい技術。この2つを持ってすれば……負けることなんてありえない)

P「もし俺が勝ったら、そうだな。よし幸子、記念に俺の家で祝勝パーティーするぞ! あっはっはっは!」

幸子「……もうその台詞が既にフラグのような」

幸子「まあ、期待はせずに待ってますよ。もしプロデューサーさんが勝ったら、カワイイボクがカワイイ衣装でお祝いしてあげますよ」フフーン

<佐々木千枝>

P「今回の挑戦者は千枝か。少し心が痛むけど……0時までお前の前に姿を現すことはない、そう言っておく」

P「流石に0時までの7時間、俺を探し続けることはないだろ。その前にちひろさんか誰かが家に帰すはず」

P「勝負はそう長くは続かないはずだ」

キーンコーンカンコーン

P「さて。取り合えずは抜け道を使って部屋を脱出だ」

ウイーンガシャーン

・・・・・
・・・
・・

・・・・
・・・
・・

☆出口前☆


P「よいしょっと」ヨジヨジ

P「周囲に千枝の気配は……ない、と」

P「すぐ目の前には外へ続く出口があるが……今回は無視だ」

P「今回の目的は制限時間まで逃げ切ることだからな」

P「さて、とりあえず隠れる場所を探すとするか」

P「いい隠れ場所は……と」

エヘヘ、ハヤクハヤク

P「……ん? この声は……千枝か?」

P「見つかった……ってわけじゃないな。誰かと話してるみたいだ」

P「この先か?」ソロソロ

P(……いた。千枝だ。1人じゃない? 誰かと一緒にいるな)

千枝「――えへへっ、早く早くっ」

千枝「もうっ、遅いよぉ! ほらほらっ」ギュッ

?「分かった分かった。そう急かさないでくれ」

P「……」

P(千枝が……金髪ロン毛の超チャラチャラした男と歩いてる)

P(しかもかなり仲良さげだ。腕とか組んでるし)

P(……)

P(ウチのアイドルに手出すとか……どこのドイツだよ)

P(許せんな……プロデューサーとして、あの不埒な男には天誅を与えなければならない)

P(千枝みたいな子供に手を出そうとする変態ロリコン相手に容赦は必要ないだろ)

P(晶葉が人体実験用のモルモットを欲しいって言ってたし、そっちに引き渡すとしよう)

千枝「こっちこっち!」グイグイ

?「ははは……参ったなぁ」

P(こっそり後をつけよう)ソロソロ

P(しかしあの金髪ロン毛……ヘラヘラしやがって。背中しか見えないけど、顔がにやけてるのが大分かりだ)

P(その顔が恐怖に歪むのはもうすぐだがな……ふふふ)

千枝「ここだよっ、ついてきてっ」

バタン

P(部屋に入ったな。一体ここで何を――)

P(……)

P「まさか……駄目駄目だ! 千枝にはまだ早い!」

バタン!

P「千枝! お父さんは許しませんよ! そんな男から離れなさい! お前はきっと騙されてるんだ!」

P「その男はお前を言葉巧みに騙し、こう……今のお前にはまだまだ早いアレやコレやをする気だ!」

P「どうせアレだ! 綺麗な服をプレゼントするよー、とか。みんなやってることだよー、とか。君には不思議な魅力を感じるー、とか。その魅力を活かせる場所を見たくないかー、とか」

P「そんな言葉をかけられたんだろ!」

P(……あれ? この台詞どこかで……)

千枝「プロデューサーさんっ」タタッ

千枝「えへへ、来てくれたんですねっ」ギュッ


P「千枝! 無事だったか!? 何もされてないか?」

千枝「千枝を心配して来てくれたんですよね。……えへへ、嬉しいっ」ギュギュー

P(よかった。何もされてないようだ。だが未遂だろうと何だろうとウチのアイドルに手を出そうとした落とし前は付けさせてもらう)

P「おい、そこのあんた!」

?「私かな?」

P「そうだ。アンタだよアンタ! こんな幼くて可愛い千枝に手を出そうとした――」ツカツカ

P「変態!」ムナグラグイッ

P「チャラ男!」ロンゲパサ

P「……」

P「……お父様」

金髪チャラ男「……」

金髪チャラ男改め千枝パパ「どうも千枝の父親です」

パパ「いつも千枝がお世話になっているようで」

P「え、あ……はい。あの、こちらこそ……どうも」

P(金髪のチャラ男の正体は……千枝の父親だった。そんなパパとキッスしそうなくらいの距離で睨みあっているわけだが)

P(どうしよう……てっきり変態ロリコンだと思って罵りまくったが……下手すりゃ名誉毀損とかで司法の場に引き釣り出される可能性が……)ガクガク

P(このままキッスして、精神的に錯乱してたとかそういう恩情をかけてもらうしか方法は……)

パパ「ふむ。もういいかな千枝?」

千枝「うん、ありがとパパ!」

パパ「お前の力になれてよかったよ」ニコリ

パパ「さてプロデューサー君」ズイッ

P(今だ! キスをして意味不明な台詞を叫べ俺!)

パパ「千枝を……よろしく頼むよ」ポン

パパ「では会議を途中で抜けてきたのでね。もう帰るよ」ツカツカ

バタン




P「え、あ……お疲れ様でした」

P(普通に帰ってたぞ。一体何がどうなって……)

千枝「ごめんなさい、プロデューサーさん……」

千枝「千枝、どうしてもプロデューサーさんと一緒に居たかったから、騙しちゃいました……」

千枝「こうすれば、きっとプロデューサーさんは来てくれるからって、そう思って」

P(よく見れば、ここ例の監禁ルームだ)

P(なるほど。一杯食わされたってわけか。変態ロリコンに悪戯されるアイドルはいなかったのか……よかった)

千枝「ごめんなさい。……千枝、悪い子ですよね」

千枝「悪い子は……お仕置き、されちゃうんですよね」チラ

千枝「千枝はまだよく分からないですけど……プロデューサーさんが言ってた、アレやコレ……されちゃうんですよね?」

千枝「プロデューサーさん。悪い子な千枝に……いっぱい、お仕置きしてくださいね」

千枝「えへへ」

■金曜日■

P「……ふぅ」

P「お仕置きしたなぁ……」

P「もう半年分くらいのお仕置きをまとめてやった気がする」

P「しかし誰が千枝にお仕置きの参考としてクリ○ナルガールズを渡したのか……」

P「いずれ突き止めるべきだろうな。プロデューサーの名にかけて」

P「……」

P「さて、気持ちを切り替えて行こう!」

キーンコーンカーンコーン

P「行くぞっ」ガタン

☆男子トイレ☆

P(事務室を脱出した俺は、自らの嗅覚に導かれこの男子トイレの3番目の個室に辿り着いた)

P(ここだ。俺のキングとしての勘が告げている――ここがベストだ、と)

P(ここで時間切れまで隠れきる)

P(0時までの長丁場だが……なに、子供時代の経験でこうやって1人で長時間を過ごすのは慣れている)

P(大丈夫だ。この場所は見つかりっこない。この事務所はでかい。トイレの数も馬鹿みたいに多い)

P(そんな馬鹿でかい事務所の数ある内のトイレの一つをピンポイントで捜索なんてしないだろう)

P(それに……隠れる側ってのはかなり有利だ。探す側はこの広い事務所の中を虱潰しに探していくわけだが、俺は途中で別の場所に移動してもいいのだ)

P(探す側が1度探した場所に隠れる――そんな盲点も突ける)

P(……ククク、容易きことよ)

P(今度こそ勝ったな)


ソナター
ドコデシテー

P「……」

P「今トイレの外から聞き覚えのある声が」

ソナターソナター
フムフム……コチラカラケハイヲカンジルノデシテー

P「声が……徐々に近づいてきてるな」

P「今日の挑戦者は……芳乃か」

P「不味いな。芳乃の特技は確か……失せ物探しだったはずだ」

ソナターソナター
ケハイガコクナッテキテイルノデシテー
コノトビラノナカデシテ?

P「くっ、もうトイレの前にまで……!? 早すぎる……!」

P(……と、今までの俺なら慌てていただろう。だが今の俺は違う。アイドル達との特訓を経て一つ上の段階に至ったのだ)

P(芳乃は何らかの方法で俺の気を辿ってきている――だったらその気配を無くせばいい)

P「……スゥ」

P(無を感じるんだ。体を少しずつ無に近づけていく)スゥ

P(自分という存在を極限まで薄めていく……)

P(自分という存在の殻を外し、この場と一体化する)

P(トイレに満ちる芳香剤の香り、その他もろもろの空気の中に自分を溶け込ませる……)スゥゥゥゥ

P(――成った)カッ

男子トイレP(俺は男子トイレだ。)

コンコン

芳乃「入るのでしてー」ガチャリ

芳乃「……ほー、ここはいわゆる女子禁制の場所なのでしてー。初めて入って少し胸がドキドキしてるのでしてー」ポッ

芳乃「……はて? 確かにこの辺りからそなたの気を感じたのですがー」

芳乃「妙なのでしてー、全く微塵の気も感じないのでしてー」

男子トイレP(当然だ。今の俺は完全に男子トイレと一体化している。例え芳乃といえども、俺の存在を感知することはできないだろう)

男子トイレP(さあ、諦めてこの場を去れ!)

芳乃「ふむぅ」ツカツカ

ガチャン

芳乃「いないのでしてー」

芳乃「隣は……」

ガチャン

芳乃「やはりいないのでしてー」


男子トイレP(全くの躊躇もなく個室トイレのドアを開けていくな……)

男子トイレP(あ。俺がいる個室の前に来た)

ガチャガチャ

芳乃「……開かないのでしてー」

ガチャガチャ

芳乃「……怪しいのでしてー」

男子トイレP(怪しくないぞ! 別に開かずのトイレの1つや2つあってもいいだろ! そのまま無視して行け!)

芳乃「気配はせず、しかし開かない扉……」

芳乃「聞いたことがあるのでしてー、開かずのトイレに潜む妖怪とやらをー」

芳乃「……ここはわたくしの出番なのでしてー。未練を抱いたままこの世の残る化生を送り届けるのもわたくしの仕事なのでしてー」

男子トイレP(何だか妙なことになってきたぞ……)

芳乃「ではではー、儀式を始めるのでしてー」パンパン

芳乃「舞うのでしてー」ヒラヒラ

芳乃「……」ブオーブオー

芳乃「塩を撒くのでしてー」パッパ

芳乃「お香を炊くのでしてー」モクモク

芳乃「一旦休憩するのでしてー」フゥ

芳乃「再開するのでしてー」ヨッコラ

芳乃「拝むのでしてー」ナムナム

P(何だか分からんが、ドアの外が凄いことになっている気がする……)

P(何かさっきから神々しいエフェクトがトイレ全体を照らしてるし)

芳乃「そろそろ頃合でしょうー。では仕上げにわたくしの衣を取り払いてー」パサ

芳乃「水かけをー」

P「風邪ひいちゃうだろ!」バンッ

P「あ」

>>236
ここの主のせいでクリミナルガールズに興味を持ってしまったんだが...
有難うございます。

P(しまった……!)

芳乃「あ、そなたー」パタパタ

芳乃「やっと見つけたのでしてー」ギュッ

芳乃「それにしても不思議なのでしてー。何もないところから突然そなたの気が表れたように……まあ、細かいことはいいのでしてー」

芳乃「ではではー、監禁部屋とやらに行くのでしてー……くしゅんっ」

芳乃「とりあえず体が冷えたので、そなたに暖めてもらいましょうー」

芳乃「ばばさまの教えではこういう時、素肌と素肌で暖めあうのが定石だということでー」

芳乃「……」ポッ

芳乃「不束物ですがよろしくなのでしてー」

>>239
おすすめですよ。1はPSPと完全版がvitaで出てます。RPGとしてもそこそこ面白いし、何よりストーリーが想像以上にいいです。キャラも可愛いですしね。はつにゃんとかはつにゃんとか。

☆男子トイレ☆

P「前回は芳乃相手に不覚をとったが……芳乃に関しては例外と思うことにしよう」

P「しかし俺を探すときに使ってた道具がダウンジングロッドだったのはなぁ……せめてもっとこう、水晶とかその辺りで探して欲しかった」

P「……」

P「先週の休みも凄かったな……」

P「よしのんポストに入ってた『私達の村を助けて欲しい』って投書に導かれて、寂れた村に向かって」

P「その村を脅かしてた祟り神を芳乃パワーでサックリ退治して」

P「村人達が開いた祝いの宴会に出たら、気がつくと気絶して、目が覚めたら村人に捕まってた」

P「実は投書は村人達が芳乃を村のご神体にする為に仕組んだ罠だった」

P「なんとか芳乃と2人で逃げ出したけど、村は包囲されてて」

P「それから色々あって、村の古い風習から脱却するレジスタンス的な村人と協力して、悪い村長を倒して」

P「無事に帰ってきた」

P「これだけで1クールのドラマができるほど、猛烈に濃い2日間だった」

P「というわけで今週は何が何でも家で1人ゆっくりする」

P「この誰にも見つからないトイレで、0時までひっそり過ごそう」

P「なぁに、芳乃がちょっと特別なだけであって、普通に人間に俺を見つけることはできない」

P「ハイド・オブ・キング」

P「不敗の王は――決して負けない」

P「……いや、既に一敗してるけども」

カリカリ
カリカリ

P「ん? 何かがトイレのドアを引っかいてる音が……」

ペロ「ニャア」ヒョコリ

P(ドアの下の隙間から猫……ペロが入ってきた)

ペロ「ニャ……ニャア」ピョン

ペロ「ニャッ」カチャ

P(俺が止める間もなく、ペロは飛び上がり個室の鍵を爪で開けた)

ギィィ

雪美「……P……見つけた……」

雪美「ありがと……ペロ……いい子いい子……」ナデナデ

雪美「P……いこ……今までPと私、深く繋がってたけど……もっともっと……繋がりたいから……ね」ギュッ



☆男子トイレ☆

P「今回こそは――」

バーン!(個室扉をぶち破る音)

ブリッツェン「ブモオオオッ! ブモッ!」

イブ「あー、見つけました~♪ もう何やってるんですかプロデューサー、今から今年のクリスマスに向けてのお手伝いしてくれるって約束してくれたじゃないですか~」

イブ「さあさあ、行きましょうね~」

☆男子トイレ☆

P「こ、今回こそ――」

ヒョウ君「……」ジー

P「ひっ! い、いつの間に個室の中に……!?」

ヒョウ君「……」ジー

ヒョウ君「……」ジー

P「……」

P「……あ、開けるから、分かったよ……分かったらから爬虫類独特のその無感情な目で見つめるのはやめてくれ」

ガチャ

小春「あっ、ヒョウ君、こんな所に……プロデューサーさんも? やった~、ヒョウ君追いかけてプロデューサーさんも見つかるなんてラッキーです~」

小春「明日はヒョウ君と一緒にいっぱいぺろぺろしますね~」

☆男子トイレ☆

優「あっ、P君みっけ! アッキーありがとー」

アッキー「……」

P「……」

P「……」

P「……はい、行きます」

☆男子トイレ☆

P「……」

P「……」

ブヒ! ブヒッ!

P「来たよ……今度は何だよ……」

バタン

?「ブヒッ! ブヒッ! ブヒブヒッ!」カリカリ

時子「そう……ここにいるのね。クックック……下僕の分際でこの私から逃げ回るなんて、随分偉くなったものね」

?「ブヒブヒ……」

時子「アァン? ああ、そうね。よくやったわ豚。ほら、褒美――よ!」

パシィン!

豚「あ、ありがとうございますぅっ! 時子様ぁ!」コウコツ

時子「豚が! 人の! 言葉を喋るな!」

パシィン! パシィン! パシィン!

豚「ぶも! ぶもおおお!」

P(うわぁ……)

■月曜日■

P「動物には勝てなかったよ……」

P「いくら技術を磨こうと、卓越した才能があろうと……動物には勝てないよ」

P「つーかペットってありなのか? いや、まあアイドルと一心同体みたいなところあるから……まあありだと思うけど。よく一緒に撮影したりしてるし」

P「もう……どうすればいいんだ」

P「この事務所に俺が隠れる場所なんてないよ……」

P「この事務所に……事務所に?」

P「――そうか。まだ方法はある」

P「そうと決まれば晶葉に……!」

P「――というわけなんだけど、どうかな?」

晶葉「作れるぞ」

P「本当か!?」

晶葉「当たり前だろう? 私を誰だと思っている? 天才だぞ? それくらい容易い」

P「だったら今すぐに――」

晶葉「いや、まあ助手の為なら今すぐにでも取り掛かりたいのだが……まあ、ほら」

晶葉「流石にそれだけの物を作るとなると、ちょっと……あまり言いたくはないのだが……」

P「金か」

晶葉「うむ……まあ、そういうことだ。私のポケットマネーで出してやりたいのは山々だけど、恥ずかしい話今少し金欠気味でな」

P「分かった。金なら任せておけ――10分で戻る」

☆事務室☆

バタン

P「桃華えも~ん!」バタバタ

桃華「あらあら、どうしましたのPちゃま? いえ、皆まで言わなくても結構ですわ」

桃華「その顔、わたくしに何か頼み事があるのでしょう?」クスクス

P「あ、ああ。実はその……」

桃華「Pちゃま。わたくしにお願いをする時は?」ポンポン

桃華「わたくしの膝に頭を乗せて……でしょう?」

P「……あ、はい」オズオズ

桃華「ふふっ……で、どんなお願いですの?」ナデナデ

P「いや、それがその……ちょっと欲しい物があって」

桃華「欲しい物ですの? それは一体?」

P「……個人用シェルター」ボソ

桃華「はい?」

P「その、個人用シェルターです」

桃華「ふぅん。個人用シェルター……」

P「晶葉に依頼したんだけど、ちょっと予算の方が……」

P「で、理由なんだけど最近――」

桃華「いいですわ。Pちゃまの為ですもの。後でわたくしから話を通しておきますわ」

P「いや、理由とかは……」

桃華「必要ないですわ。Pちゃまが必要……だったらわたくしが用意するまで。わたくしこうやってPちゃまのお願いを聞くのが何よりの楽しみですのよ、ふふっ」

P「すまないな……本当にすまない。いつもありがとう」

桃華「いえいえ。ではPちゃま、例の物を」

P「あ、ああ」スッ

>スタンプカード

桃華「はい、ポンっと、これでいいですわ」ハンコオシ

P(このスタンプカードは桃華が用意したもので、俺が桃華にお願い事をする度に桃華の顔スタンプが押されていく)



P「あのさ。前々から持ってたんだけど……このスタンプって埋まったら、どうなんの?」

桃華「あらあらPちゃま。楽しみを知ってしまっては詰まらないですわよ?」

桃華「ではヒントだけあげますわ。……とっても、とっても素敵な、この世に1つしかない豪華商品」

桃華「それがPちゃまの元に届きますわ」

P「え? 俺の所に? お願いしてるの俺の方なのに? どんなシステムだよそれ?」

桃華「ふふっ、不思議ですわよね? その日を楽しみにしていらっしゃい」

桃華「わたくしも……とってもとっても楽しみにしていますわ、ふふふ……」

■金曜日■

☆個人用シェルター☆

P「ここが桃華出資のもと、晶葉が作り上げた俺用の個人シェルターか」

P(広さは4畳半程度だろうか)

P(決して広いとはいえないが……俺の部屋よりは広い)

P(入るには男子トイレの3番目の個室にある偽装されたコンソールにアクセスして、セキュリティを解除しなければならない)

P(俺は生体認証とやらで、手を翳すだけで入ることができる)

P(中にはリラックスチェア、冷蔵庫、トイレ、本棚、やたらとでかいモニターがある)

P(0時まで快適に過ごせる作りだ)

P(本棚には俺を気遣ってか、桃華が用意した漫画や小説が並んでいる)

P(しかし、殆どお金持ちの令嬢と一般人の男が身分の壁を乗り越えて結ばれる……みたいな内容なんだよな。別にいいけど)

ブウン

晶葉『さて助手よ。シェルターの居心地はどうだ?』

P「お、晶葉か」

P(馬鹿でかいモニターに晶葉がでかでかと映った)

P「いい感じだよ。快適だ」

晶葉『ふふふ、そうだろう。なにせこの私が設計から作成までを全て担った特注のシェルターだからな』

晶葉『過ごしやすさはもとより、セキュリティも万全だ』

晶葉『そこに隠れている限り、絶対に見つかることはないだろう。この私が断言する』

P「それなんだけど……本当に大丈夫なのか? その……晶葉を疑っているわけじゃないんだけど、ウチのアイドルってほら、色々スペック高いしさ。このシェルターに侵入してくる可能性は……」

晶葉『ありえない』ハッキリ

晶葉『いいだろう。いかにそのシュルターが完璧か、それを説明してやる』

晶葉『まずそのシュルターの入り口だが……知っての通り男子トイレの個室だ』

晶葉『その場所の時点で、その存在に気づくアイドルはかなり減るだろう』

晶葉『好き好んで男子トイレに入ろうとするアイドルはいないしな』

P「いや、それは……まあ、普通は、うん」

晶葉『万が一、その男子トイレまで助手を探しに来る奇特なアイドルがいたとしよう。そしてシュエルターの入り口がある、個室に入ったとする』

晶葉『だがシェルターの入り口は完全に偽装されている。一見するとただの壁にしか見えない』

晶葉『そこから更に可能性は低くなるが、偽装に気づきシェルターの扉に気づいたとしよう』

晶葉『そして物理的な侵入を試みるだろうが――それは不可能だ』

晶葉『扉は決して破壊できない。これはこの事務所に所属するアイドルの中で最もアイドル強度が高い諸星きらりに協力を仰ぎ、実験した結果だ』

P(アイドル強度とか初耳なんだけど。……超人強度的なやつか?)

晶葉『その扉は諸星きらりの全力を持ってしても破壊できない。故に物理的な侵入は不可能だ』

晶葉『どうだ? これを聞いて安心したか、助手よ?』

P「ああ、ありがとう。こんなシェルターを作るなんて、晶葉は本当に天才だな」

P「天才な上に可愛いとか……天は人の上にもにゃもにゃ言ってた人は間違いだな」

晶葉『ふふ、ふふふっ、そ、そうだろうそうだろう。そんな可愛くて天才なアイドルの助手になっているPは幸運な男だな、はっはっは』

P「ところで晶葉。物理的な侵入が不可能なことは分かったんだけど……えっと、アレなんだっけ?」

P「あのーハッキング? アレはどうなんだ?」

晶葉『無論そちらも万全だ。この私自らがプログラムを組んだセキュリティだ』

晶葉『そちらの分野は極めたとはいえないから、まだ完璧とは断言できないが……』

晶葉『それでも並のハッカーでは破ることができないレベルのものだ』

晶葉『まあありえないとは思うが、仮にウィザードクラスのハッカーのハッキングを受けたなら……』

ピピピピ……ピー
ガシャンガシャンガシャン……ガチャ
プシュー……ガコン

マキノ「3分12秒……ね。腕が鈍ったかしら?」カツカツ

晶葉『……この様に容易く突破されるだろうな』

晶葉『……』

マキノ「面白いセキュリティだったわ。でもまだまだ無駄が多いわね」ファサッ

晶葉『……ぐ、ぐぅぅ……ぐぬぬ……!』

マキノ「さ、行くわよプロデューサー。少し面白い情報を手に入れたの。あの某秘密組織の情報をサルベージしていたら、幹部の名前に千川ちひろの名前を見つけたの……どう? 興味がそそられたでしょう?」

マキノ「少し危ない橋を渡ることになるとは思うけど、しっかりサポートをお願いするわ」ギュッ

晶葉『ぐぬぬ……! ぐぬぬ……うう……!』ジワァ

恥ずかしい間違いをしてしまいました。
「天は人の上にもにゃもにゃ」→「天はニ物をもにゃもにゃ」ですね

今更ですが252の後に入れるはずだった橘さんの話を忘れていました。

■金曜日■

P「しかし驚いたな……まさか、ちひろさんがあの世界的事件を裏で操っていたとは……」

P「それにこの事務所が設立した30年前、その時の創立メンバーにちひろさんらしき姿があったし……」

P「あの人は一体……いや、やめておこう。人には踏み入ってはいけない領域がある」

P「よし! 今日もマイシェルターにインだ!」

ピピピピ……ピー
ガシャンガシャンガシャン……ガチャ
プシュー……ガコン

P「何度入ってもここは落ち着くな……」

ブゥン

晶葉『……』

P「晶葉、どうしたんだ? 目の下に凄いクマが……」

晶葉『ふふ、ふふふ……あの敗北から1週間、殆ど眠らずにセキュリティを改良していたからな』

晶葉『ふふふ……敗北はいい。敗北は人を強くさせる。久しく味わっていなかった感覚だが、おかげでまた1つ分野を極めた』

晶葉『今度こそ断言しよう』

晶葉『そのセキュリティは例えどんなハッカーが相手だとしても……決して破られることはない、と』

晶葉『スティーブ・ウォズニアック……ケビン・ポールソン……アノニマス……どんな凄腕ハッカーだろうと私のセキュリティは破れないっ! あのBPSでさえもなっ!』バン

晶葉『はっはっは! 私は天才だ! こんなプログラムを生み出した私は紛れもない天才だぁ!』

晶葉『さあ助手よ! そんな天才な私を褒め讃えるがいい! 晶葉ちゃんは天才カワイイと! 晶葉ちゃんじーにあすぷりちーと! 声高々に!』バンバン

P(うーん、徹夜のせいか愉快な感じになってるなぁ……珍しい)

P(晶葉はハイになって話相手にならないし、本でも読むか)

P(いつの間にか本が増えてるぞ……どれどれ)

『日下部若葉~合法の証明~』
『妄想娘に色々しちゃう本』
『正しい乳搾りのやり方』
『魔法少女ラブリーチカ敗北編』
『ゆるふわ自撮り写真集』
『お山とは』
『赤羽根P×武内Pをpixivで流行らせるためのマーケティング理論』
『熊本弁完全解説』
『おや、ルーキートレーナーの様子が……?』
『魔性の光』

P(ちなみにこの本は、『不要な本があったらこちらに』と書いたダンボール箱を俺の机に置いていたものだ)

P(どうやら晶葉が気を利かせてシェルターに入れておいてくれたらしい)

P「色々とあって迷うけど……『お山とは』にしよう」

P(著者は……師匠か)ペラリ

P「ふむ……ふむふむ」ペラリ

P(ううん……何て興味深い本なんだ。これでもかってほどお山に対する愛を語っている。更には近代史におけるお山の存在を紀元前にまで遡って比較を……流石は師匠……いや、誰か知らんけど)ペラペラリ

P(ふぅむ、なるほど『お山に貴賎はない』『何故お山に登るのか――そこに山があるから』『お山に登りたくなるのは本能的な衝動』『だからちょっとのオイタも許してね♪』……か)

P「いいことを言うな……まあ、許さんけど」


P「……」モクモク

P「……」ペラリ

コンコン

P「あ、はーい」

P(……と反射的に返事してしまった)

P「晶葉、今ノックが……」

晶葉『確認している。ふふふ……どこの誰かは知らんが、扉を見つけたようだな』モニタリング

晶葉『だが無駄! その扉は決して開かない! ふふふ、困った顔をしているな……』

晶葉『おっと……そんな適当にボタンを押したところで――』

ピピピピ……ピー

晶葉『開くはずが――』

ガシャンガシャンガシャン……ガチャ

晶葉『ない――』

プシュー……ガコン

茄子「お邪魔しますねー」ススッ

茄子「あはっ、やっぱりここにいたんですねー」パタパタ

茄子「もう、探したんですよプロデューサー♪」ダキシメ

P「茄子……お、お前どうやって入ったんだ?」

茄子「はい? えっとプロデューサーを探して適当に歩いてたら、トイレの壁に変な扉を見つけて……何となくここにいそうだなーって。そう思って適当にボタンを押したら――」

茄子「開いちゃいました♪」テヘリ

晶葉『……』

P「あ、晶葉……大丈夫か?」

晶葉『……』

晶葉『……』

晶葉『……』ジワ

P「涙目で気絶してる……!」

入れ忘れていた橘さんの話です。
253の前に入ります。

■■■■

☆事務室☆

P「さて、怒涛のペットラッシュも終わった」

P「もうこの事務所にペット使いアイドルはいない」

P「これで安心してトイレに隠れることができるわけだ」

P「今日の挑戦者は――」

<橘ありす>

P「ありす、か。子供相手に大人気ないとは思うが……」

キーンコーンカーンコーン

P「本気で隠れさせてもらう! じゃあなありす! 抜け穴にイン!」ズシャァ

バン

ありす「ありすって呼ばないで――あれ?」ガチャン

ありす「プロデューサーは……いない」

ありす「待ってて……くれなかったんですね」ウツムキ

ありす「約束、したのに。待っててくれるって、約束したのに……」

ありす「嘘吐き……」

ありす「……」

ありす「……」スッ

タブレット『……』

ありす「……プロデューサーの居場所」ボソリ

タブレット『廊下を、出て、右に進んでください』ポーン

ありす「廊下を右ですね」ツカツカ

☆男子トイレ☆

P「さて、ありすができるだけ早く諦めてくれるといいんだけど……」

ツカツカツカ

P「……誰か近づいてくる?」

バタン

タブレット「男子、トイレです。個室トイレの、3番目が、目的地、です」ポーン

タブレット「お疲れ様、でした」ポーン

ありす「プロデューサーさん。ここにいるのは分かってます」ツカツカ

ありす「待っててくれなかったこと。少し……ほんの少しだけ怒っていますけど……今出てきたら許してあげます」コンコン

ありす「……」

P(くそ、どうやってここを探し当てたんだ?)

P(だが何を言われようが俺はここを出る気はない)

P(それにこの扉には鍵がかかっている。往生際が悪いと思うが……ありすの根が尽きるまで篭城させてもらう……!)

ありす「そう、ですか。分かりました」ガチャガチャ

ありす「出てくる気はないんですね。……ふんだ」プク

ありす「……鍵のかかったドアの開け方」ボソリ

タブレット「私を、鍵の部分に、かざして下さい」ポーン

ありす「……」スッ

タブレット「解錠アプリ、起動します」ポーン

カチャリ

タブレット「解錠しました。お疲れ様です」ポーン

ギィィ

ありす「かくれんぼは終わりですプロデューサー」

ありす「私怒ってます。プロデューサーが他の大人みたいに嘘吐いて待っててくれなかったこと」

ありす「だからちゃんと待ってて居られるように、私がしっかり勉強させます」

ありす「ええ、大丈夫です。やり方は知ってますよ。最近のタブレットって凄いんですよ?」

ありす「プロデューサーさんが嘘を吐かない素直な人にする為のアプリもあるんです」

ありす「だから……大人しくついて来て下さいね」タブレットツキツケ


■次の金曜日■

ピピピピ……ピー
ガシャンガシャンガシャン……ガチャ
プシュー……ガコン

P「ただいまー」

ブゥン

晶葉『やあお帰り助手よ。今日もはりきって引き篭もるといい』

P(シェルターに入ると、いつもと変わらない表情の晶葉がモニターに映っていた)

P(その姿からは先週の涙目で気絶していた晶葉は想像できない)

P「……あ、晶葉。あの……大丈夫だったか?」オソルオソル

晶葉『うん? ああ、なんだ。もしかして私が落ち込んでいるとでも思ったか?』

晶葉『……まあ確かにショックだったよ。自分が作り上げた最高のセキュリティが易々と突破されたのだからな。キミにも無様な姿を見せてしまった』ポリポリ

晶葉『正直あの日から3日ほど悪夢にうなされた』フッ

晶葉『だが今は……晴れやかな気持ちだ。色々と自分の中で生理がついた』

晶葉『ああ、認めよう。私は鷹富士茄子の幸運を計算に入れてなかった』

晶葉『そのシェルターを設計するうえで、運などという不確定の要素に対する備えなんて考えていなかった』

晶葉『恐らくは……逃げ、だったんだろうな』

晶葉『未だ科学では証明できない「運」という概念』

晶葉『「運命」……文字通り「運」と「命」は神のみが支配する神の領域だ』

晶葉『私はそこから逃げていた。神の領域に踏み込むことに躊躇していた。だがこの敗北を機に私は考えを変える』

晶葉『今はまだ無理だが……いずれは神の領域に挑む。科学の力を持ってして神の力を暴く』

晶葉『いつか運ですら手中に置く――そんな科学者になる』

晶葉『鷹富士茄子には感謝しているよ。私に覚悟を決めさせてことを』

晶葉『だが――いつの日か、彼女を完膚なきまでに負かす。彼女が持つ『天運』とも呼ぶべき不確定要素の極みを完璧に解析する』

晶葉『助手よ。その日がいつになるかは分からないが……きっと何年も先の話だと思う……』

晶葉『その……なんだ』ウツムキ

晶葉『できることなら……それまで私の助手でいて欲しい』カァァ

晶葉『ずっと私のすぐ側で……私のことを支え続けて――』

ピピピピ……ピー
ガシャンガシャンガシャン……ガチャ
プシュー……ガコン

茄子「来ちゃいましたー」ヒョイ

晶葉『ああああああ!? もおおおお! 今いいところだったのに! そして私のセキュリティを自動ドア感覚で通り抜けるな!』バンバン

晶葉『大体どうしてお前がここにいる!?』

茄子「えへへっ。2回連続でクジに当たっちゃいましたー」

茄子「でも流石に他の子が可愛そうなので、今回が終わったら当分参加は避けますねー」

P「ということらしい」

茄子「ふふっ、というわけでプロデューサーさんを借りて行きますね晶葉ちゃん♪」

茄子「さ、行きましょプロデューサーさん♪ 今週も家でのんびり、一緒に過ごしましょうね♪」

ガシャンガシャンガシャン……ガチャ
プシュー……ガコン

晶葉『ぐぬぬ……鷹富士茄子め……!』ワナワナ

晶葉『いつの日か必ずその力の正体を暴いてやるぞ……! 科学的に……!』キッ

晶葉『……』

晶葉『また助手を連れて行かれた……』グスン

■金曜日■

晶葉『助手よ!』

P「お、おう……なんか元気だな晶葉」

晶葉『ふふふ……ああ、元気だとも!』

晶葉『鷹富士茄子という不確定要素が排除された今、ようやくこのシェルターの真価が発揮されるのだからな!』

晶葉『今この瞬間がプロローグというわけだ!』

P「もう1回聞くけど……シェルターは完璧なんだな?」

晶葉『ああ、私が作ったシェルターは完璧だ。断言しよう――どんな相手だろうと外部から侵入することはできない』

晶葉『その扉が開く可能性を考えるとしたら……そうだな、助手自らが内側から開けるくらいしかないな』

P「俺が中から? そんなのありえないだろ?」

晶葉『……』

晶葉『……北条加蓮が扉の外で倒れていたら?』

P「い、今すぐ扉を開けて病院に――はっ!?」

晶葉『……』ジー

P「い、いや……開けない。十中八九罠だろうからな。だ、大丈夫だ……だからそんな目で見ないでくれ」

晶葉『助手はアイドルのことになると正常な判断ができなくなるからな……信用できん。ま、私がいる以上、そういった演技で助手を外に誘い出そうとしても無駄だ』

P「……うん、頼む」

P(晶葉の言う通り、アイドルが倒れてたら多分飛び出すだろうしな。晶葉がストッパーになってくれると助かる)

晶葉『助手よ。今日の挑戦者は誰だ?』

P「今日は未央だ」

晶葉『む、本田未央か。シェルターのデータを取る相手としては、少し期待値が低いが……まあいいだろう』

晶葉『どれ。今の本田未央の様子をモニターに出そう』

ブゥン

未央『お~い、プロデューサー! どこー? 未央ちゃんはここにいますよー?』

P(未央が大声を出しながら廊下を歩いている)

未央『プロデューサーやーい!』

未央『カワイイ未央ちゃんが呼んでますよー! 直ちに出て来なさーい!』


未央『今未央ちゃんに捕まったら、なななんと! 未央ちゃんと一緒に行く「グランブルー横丁2泊3日の旅」に漏れなくご招待だよー!』

未央『現役美少女アイドルと旅行なんて羨ましいー、ひゅーひゅー!』

未央『だーかーらー、早く出てきなよー』

未央『……』

未央『……むぅ』チラ

P(ん? 腕時計を見たな)

未央『……もう少しだけ』

・・・・・・
・・・・
・・

・・
・・・・
・・・・・・

P「開始から3時間経ったけど……一向に見つかる気配がないな。というかシェルターがあるトイレに近づきもしない」

晶葉『それが普通なんだ。今まで侵入してきたアイドルがおかしかったのだ。シェルターがあるこの場所を発見し、偽装された扉に気づきかつハッキングや馬鹿みたいな幸運で扉を突破できるアイドルなんてそういない』

P「……そうなんだよな」チラリ


未央『……うぅ、これだけ探しても見つからない』

未央『……』チラ

未央『……はぁ。一緒に遊びたかったな』

P(ざ、罪悪感が凄いぞ……)

未央『――はい分かった! 未央ちゃんの負け! うん、プロデューサーの勝ちだよ勝ち!』パチパチ

未央『……』

未央『じゃ、私行くから』トボトボ

P「……帰った?」

晶葉『ああ、そうだな。……ん、今事務所から出たのを確認した』

晶葉『おめでとう助手よ。これでキミの勝ちだ』

P(そうか。これで俺が事務所を出るか0時を過ぎれば俺の勝ちか)

P(……勝ち、か)

P(そう、遂に俺は勝ったんだ。だが何だろう。この心の中にある空虚な気持ちは……)

P(そこに1人で週末を過ごせるといった悦びや楽しみといった感情はない)

P(……い、いやそんなことはないだろ。それだとまるで――)

晶葉『私的には全く有用なデータを取れなかったのが不満だが……助手、キミも何やらスッキリしない顔だな』

P「え? そ、そんなことないぞ? ほ、ほら――にょわー☆ 勝てて嬉しいにぃー☆ 心がはぴはぴするよー☆」ダブルピース

P「……どうだ?」

晶葉『いや、どうもこうもないが……』

晶葉『助手よ。私が思うにキミは今までわざと……』

P「はいさい! その話はここまで!」 

P「……スッキリしない表情だったのはあれだ。未央が俺を探すのを結構早めに諦めたからさ、ちょっと残念に思っただけだよ。俺って未央からの人望あんまりないんだなーって」

晶葉『ふっ、そういうことにしておこうか』クスリ

晶葉『キミの懸念だが……安心するといい。本田未央がキミに対して執着が薄いわけじゃない。彼女には帰らなければ成らない理由があったんだ』

P「理由?」

晶葉『そうだ。今日は本田未央主催の……あの、なんだ。パジャマパーティー?とやらでな。流石に主賓がこれ以上遅れるわけにもいかないだろう。だからキミの捜索を早々と切り上げたんだ』

晶葉『といっても、本当にギリギリまで粘っていたがな。いや、これだと遅刻はしている、か』

P「そう、だったのか。しかし妙に詳しいな晶葉」

晶葉『私も誘われていたからな。断ったが』

P「なんで?」

晶葉『それは当然だろう。貴重な助手と過ごす機会を……あ、いやっ、何でもない。あ、あれだ! 今すぐにやっておきたい研究がな!? あはは!』

P「そうか……。じゃ俺も帰るかな」

晶葉『まあ、待て待て。時間に余裕はあるんだろう? まだそのシェルターの快適さも味わってはいないはず』

晶葉『折角だ。シェルターの機能確認ついでに、助手の初勝利記念といかないか?』

晶葉『モニター越しで悪いが、私が付き合おう』

P(確かに。折角シェルターを作ってもらったのに、すぐに連れて行かれたから満足に過ごしてないな)

P(晶葉にも世話になったし、少し付き合っていくか)

P「そうだな。折角勝ったことだしな」

晶葉『ふふふっ、その言葉が聞きたかった。助手よ、シートに備え付けているリモコンを押すといい。2つ目のボタンを押せば、簡単な食事が――』

・・・・・
・・・
・・

・・
・・・
・・・・

P(さて、そろそろ帰るとするか)

P「晶葉、もういい時間だしそろそろ……」

晶葉『――助手!』

P「え? なに?」ビクッ

晶葉『そちらで何か変わったことはないか!?』カタカタ

晶葉『シェルター内の状態を示している数値がおかしい!』カタカタ

晶葉『くっ、何だこれは……計器が滅茶苦茶だ……!』

晶葉『……!? こ、これは……!?』

P「ど、どうしたんだ晶葉!?」

晶葉『シェルター内のバイタルサインが――2つ!? 今そのシェルターには助手しかいないはず! モニターでも助手の姿しか確認していないぞ!?』

P「怖いよ! え、何が起きてるんだ!?」

晶葉『わ、分からん……! このバイタルサインも先ほどから2つに増えたり、1つに戻ったりを繰り返している! い、一体何が……なぁっ!?』

P「なになに!? 今度はなんだ!?」

晶葉『う、うしろだ、助手……助手の後ろ……』ユビサシ

P「そういうのマジやめろって!」



P(俺はゆっくりと後ろを振り向いた)

P(シェルターの隅。何もないはずのそこに――)

P(何もない空間から――足が2本生えていた……)

P「いやあああああ! 助けてぬ~べぇぇぇぇぇぇ! それか神社生まれのDさぁぁぁぁぁん!」ガタガタ

P「ひぃぃぃぃっ!」

P「に、逃げ……っ――腰がぁ……!?」ビキリ

P「ごめんウサミン! もうウサミンの腰ディスらないから! だ、だから誰でもいいから助けてくれ! ……そうだ! あ、晶葉!」

晶葉『……』ジー

P「ああ、駄目だ。もうこれ完全に未知の現象を観察する晶葉ちゃんモードに入ってるやつだわこれ。俺の声なんて届かないやつだわこれ」


P(逃げようにも腰が抜けて立てない)

P(俺は謎の現象を目の前で見せつけられることになった)

P(何もない空間から生えた2本の足は……少しずつ、大きくなっている気がした)

P(いや、違う。足から上が……腰の部分が見え始めた)

P(ゆっくりだが腰、胸、肩……と現れている)

P(そして首から上――顔が現れた)

P(その顔の持ち主は――)

P「……未央、か?」

P(俺の前に現れたのは、間違いなく本田未央その人だった。可愛らしい猫ちゃん柄のパジャマを着た)

P(暫くその場で静止していた未央だが、電池を入れ替えた時計のように、突然活動を再開した)

未央「――頑張れ! 頑張れユッコ! もう少しだよっ、あと少し……ほわぁ!?」ビクビクーン

未央「え!? は、はぁ!? ここどこ!? あれ!? みんなは!?」

P「未央、だよな?」

未央「プロデューサー!? こ、ここ女子寮……じゃないよね? あ、あわわ……何が起こってるのか全然分かんない……」

未央「ドッキリ!? 分かったこれドッキリでしょ!?」

P「とりあえず落ち着け未央」ギュッ

未央「あっ……うん。プロデューサーの手、あったかい……」

・・・・・
・・・
・・

未央「なるほど……専用シュルターねぇ。通りで見つからないわけだよ」キョロキョロ

未央「ていうかコレずるくない? こんなの絶対見つかりっこないじゃん!」ブーブー

P「いや、まあ……普通はな」

P「で、未央。お前はどうやってここに?」

未央「ど、どうやってって言われてもなー。私もついさっきまで女子寮にいたんだけど。えっと、皆でパジャマパーティーしてて……」

未央「お菓子食べながら流行の服の話とか、最近面白い漫画の話とかして」

未央「定番の好きな人の話になって、順番に自分が今好きな人の話をしていって」

未央「で、順番がユッコの番になって」

P「裕子?」

未央「うん。で顔を真っ赤にしたユッコをみんなで囃し立ててたら恥ずかしさが振り切ったユッコが突然立ち上がって」

未央「今からスプーンを曲げます! 曲がったら私の好きな人を告白します! サイキック告白ですっ!」

未央「って。みんなもいい感じにテンション上がってたから、ユッコを囲んで盛り上げて」

未央「で、ユッコが来ました!って言った瞬間、急に私が光に包まれて」

未央「気づいたらここに」

P(完全な密室に突然現れた未央)

P(異常な現れ方。そして裕子)

P(テレポートだこれ!)

P(ま、間違いない……テレポートに違いない)

P「あ、晶葉! 今のって間違いなく――」

晶葉『私は何も見ていない』

P「え?」

晶葉『いやぁ、たまたま眼鏡の掃除をしていな。おかげで何も見えなかった』

P「いや、テレポート! テレポートじゃん!」

晶葉『テレポート? ふむ、おかしなことを言うな助手は。超能力なんてこの世には存在しないぞ? あっはっは』

晶葉『いいか助手? 私は何も見ていないし、何も聞いていない』

晶葉『本田未央がそこにいる気がするが私の気のせいだ』

P「えぇー……」

晶葉『さて、私はそろそろ帰る。色々とやりたい研究もあるからな。では助手よ、さらばだ』スイー

P「逃げたな……」

未央「えっとよく分かんないけど……」チラリ

未央「まだ0時になってないよね?」

P「え? ああ、そうだな」

未央「と、いうことはー……えーい!」ギュッ

P「わぷっ。狭いんだから暴れるなよ!」オシタオサレ

未央「ふっふっふ……つーかまえたー! これで監禁ルームに連れて行けば未央ちゃんの勝ち!」

未央「何が何だか分からないけど……えへへ! これでプロデューサーの週末は私の物だね!」

未央「未央ちゃん大勝利! ぶいっ!」ピース

■シェルター■

P「さて、今日もシェルターで篭城だ」ドッコイショ

ブウン

晶葉『……』

P「お、晶葉。1週間ぶり」

晶葉『私がモニターに映って挨拶をしてくた助手には申し訳ないが、この映像は録画したものだ』

P「ん、そうなのか」

晶葉『少し思うところがあって、研究室に篭もっている。だから今週は付き合えない。すまないな』

晶葉『代わりといってはなんだが……』

晶葉『助手の机の下で居眠りをしていた……森久保乃々を捕まえたので、私の代わりにモニターをお願いしている』

晶葉『では楽しいシェルターライフを』

ブゥン

森久保『……』

P「お、乃々か。元気か?」

森久保『見ての通り椅子に縛り付けられてるんですけど……』

森久保『居心地のいい机の下で居眠りしてたら、いきなり拘束されて目隠し猿轡されたんですけど……』

森久保『いきなりこんな所に連れて来られて、モニターをやれって言われたんですけど……』

森久保『もりくぼをウチに返して下さいって訴えたら、やらないとポエムノートをネットに流出させるって脅されたんですけど……』

森久保『そういうわけでここにいるもりくぼを見て……元気にやってると思うんですか……』ハイライトオフ

P「なんか……すまん」

森久保『……まあ、別にいいんですけど。忙しいプロデューサーと一緒に過ごせるし……』

P「え? 何か言ったか? 忙しいプロデューサーと一緒に過ごせ……しか聞こえなかったんだけど」

森久保『殆ど聞こえてるんですけど!?』カァァ

森久保『……はぁ』

森久保『それでもりくぼは何をすればいいんですか?』

P「えっと。挑戦者のモニターをやって欲しいんだ。多分、どれかのモニターに今日の挑戦者が今どこにいるか映ってると思うんだけど」

森久保『……えっと、あ、これですか。事務室にいる前川さんがゴミ箱を開けてプロデューサーさんを探してるんですけど……』

P「みくの中で俺はどんなキャラなんだろうか……」

森久保『……あ、あれ?』

P「どうした乃々」

森久保『え、えっと、その……前川さんなんですけど、さっきまで事務室にいたのに急にいなくなって、それで、その……』

森久保『今は地下の駐車場にいるんですけど……』

P「え? いや、ありえないだろ。どれだけ距離あると思ってるんだよ」

森久保『で、でも本当なんですけど……! あ、また! またいなくなって……今度はレッスン室にいるんですけど!?』

森久保『あ、また消えて……あ、次はこっち!? いや、あっちで、あっちかと思ったらこっちで……あわわ……』

P「おい乃々、晶葉に頼まれたんだからちゃんとやってくれよ」

森久保『こう見えてももりくぼ死にやってるつもりなんですけど!? それに頼まれたわけじゃなくて脅されたんですけど!?』バンバン

森久保『ってあれ? どのモニターにも前川さんが映ってないんですけど……』

ガタン

森久保『ひぅっ!?』ビクーン

森久保『もりくぼの後ろから物音が……』ビクビク

森久保『……そーっと』オソルオソル





みく『あ、乃々ちゃん。こんばんにゃー』

森久保『むぅぅぅぅぅりぃぃぃぃぃぃ!?』

森久保『……あぅ』ガクリ


みく『にゃ? ちょっと声かけただけなのに気絶しちゃったにゃ。本当に乃々ちゃんはリスみたいなハートの持ち主にゃ』

P「みく?」

みく『あっ! Pチャーン!』

みく『もうっ、みくずっと探してたんだよっ!』プンスコ

みく『ちょっと待っててにゃ! すぐそこに行くにゃ!』フッ

P「消えた……!? き、気のせいか? しかしここに来るって、このシェルターのセキュリティがみくに突破できるわけ……」

みく「Pチャンみっけー!」ガバリ

P「え!? み、みく!? 後ろから抱き着いて……ってさっきまでモニターの向こうにいただろ!?」

みく「何のことにゃ?」クビカシゲ

みく「みくはPチャンを普通に探してここに来ただけにゃ」

P「い、いや、でもさっきまで晶葉の研究室にいただろ?」

みく「にゃ? 確かにさっきは乃々ちゃんが縛り付けられてる部屋にいたけど……まあ、細かいことはいいにゃ! それより久しぶりのPチャンにいっぱいスキンシップにゃ!」ギュギュー

P「お、おいみく! くっつきすぎだぞ!」

P(そんな風に抱きしめられたら、押し付けられた2つのマウンテン・オブ・ミクの形がハッキリ分かって、地殻変動起きちゃうぅぅぅぅ!)

P(ば、馬鹿になっちゃうのぉぉぉ!)

みく「さ、Pチャン。みくと一緒に2人っきりで週末を過ごすにゃ」

みく「Pチャンのお家で、可愛くてPチャンのことが大好きなみくと、いっぱいいーっぱいじゃれ合うのにゃ……ね?」ボソ

みく「猫ちゃんは気まぐれだけど、みくにゃんはずっとPチャンの側から離れないにゃ……ふふっ」スリスリ

>>395
×こう見えてももりくぼ死にやってる→○こう見えても、もりくぼ必死にやってる
ですね。

☆シェルター☆

プシュー

P「しかし、あの時のみくは一体なんだったんだろうな」ドッコイショ

P「晶葉の部屋からいきなりこのシェルターに現れたし……」

P「乃々が言うには、この事務所に至るところに一瞬で移動していたらしいし」

P「みくの身に一体何が……」

ブゥン

晶葉『恐らくそれは、前川みくのAMPだ』

P「お、録画じゃない晶葉」

晶葉『ふむ。久しぶりだな助手よ』

P「で、今言った……AM……PM? コンビニか? それがどうした?」

晶葉『AMPだ。Amazing Marvell Power――略してAMPだ』

晶葉『恐らく前川みくの固有AMPは、どこにでもいて――』

P「いやいやいや! 普通に進めないでくれ! なにその、AMP? ちゃんと説明してくれ」

晶葉『ああ、すまない。名前だけでどんなものか理解してくれると思ったものでな』

晶葉『では最初から説明しよう』

晶葉『私は本田未央がまるでテレポートのような現象を起こした後、研究室に篭もりその現象についてずっと研究していた』

P(見ないふりして逃げたわけじゃなかったのか)

晶葉『まるで超能力のようなあの現象だが、勿論超能力などというものはこの世の中に存在しない』

晶葉『超能力も魔法も……そんな非科学的なものは存在しない』

晶葉『だが現にあのような不可解な現象が実際に起こった』

晶葉『私はモニターしていた過去の助手対挑戦者のゲーム内容のデータを見ていたら、あることに気がついた』

晶葉『一部のアイドルが常識ではありえない現象や身体能力を表している時、そのアイドルから未知の粒子を観測したのだ』

晶葉『粒子はアイドル自身から発生していた。そしてその粒子が現実にはありえない現象を引き起こしていたのだ』

晶葉『私はそのありえない現象をAMP、それらを引き起こす粒子をAMP粒子と名づけた』

晶葉『更に調べていると、その粒子は私達アイドルなら生成量の差はあれども、誰でも生み出していることを発見した。無論私もだ』

晶葉『私達アイドルは無意識にこの粒子を生み出し、自覚なしにAMPを行使している。日常的にな』

P「……」

P(何言ってるのか全然わからねえ……)

P(アレか……研究のし過ぎでちょっと頭が……)

P「なあ晶葉よ。唐突だがちょっと休みをとって旅行にでもいかないか?」

晶葉『助手よ。キミは恐らく私の頭がおかしくなったと思い、そのような提案をしたと思うが……残念ながら私は正常だ』

晶葉『実際にこの粒子は存在し、現実に不可解な現象を行使しているアイドルが存在する』

晶葉『……ふむ。実際にやって見せた方が分かりやすいか』ガタッ

晶葉『助手よ。今から私がAMPを行使し、小規模ではあるが現実ではありえない現象を引き起こす』

晶葉『では行くぞ』キリッ

晶葉『……』スゥ

晶葉『キャハッ』⌒☆

晶葉『……どうだった?』コホン

P「若干表情に照れを残してはいるが、アイドルらしい可愛いポーズとウインクだった」

晶葉『そっ、そうではなくっ。今何か常識的に考えておかしいことがあっただろう?』

P「え?」

晶葉『もう1度だ。しっかり見ていろ』

晶葉『キャハッ!』⌒☆⌒☆

P「さっきよりも気合の入ったいいウインクだった。菜々さんに匹敵するだろう見事なウインクだった」

晶葉『う、うむ……確かにウサミンのそれを参考に……って、そうではない!』

晶葉『今私の目から星が出たな?』

P「ああ、うん。ウインクした時にキラッって」

晶葉『……』

P「え? それが? アイドルなら誰だってできる基本的な特技だろ?」

晶葉『……はぁ』

晶葉『いいか助手よ。――常識的に考えて、人の目から星が出るはずないだろう? 星だぞ星』

晶葉『自分で出しておいてなんだが……何だこれは? ありえないだろう?』

P「……」

P「……」

P「本当だ」ハッ

P「本当だ! あ、あれ!? じゃ、じゃあどういうことだ!? みんなライブとかでも、バッチンバッチン星出してるよな!? え、なに!? 全員具現化系の能力者なのか!?」

晶葉『違うそうじゃない』

P「宇宙人だったのか!?」

晶葉『アイドルだ。落ち着け助手よ。これがAMPだ。常識ではありえない現象だろう? 我々アイドルは無意識のこの現象を行使しているんだ』

P「そ、そんな馬鹿な……」

P「いや、でもそう考えると色々納得できることが……」

P「あ、あれは!? アイドル達がポーズをとった時、背景にやたらキラキラしたエフェクトがかかるやつ!」

晶葉『あれもAMPだ』

P『あいさんがカッコイイ表情した時に、背景に薔薇が咲き乱れるのは……』

晶葉『ああ、そうだ。あれもAMPだ』

P「この間みくと李衣菜がポカスカ喧嘩した時に、事務所の中なのに砂埃が巻き上がったのは?」

晶葉『AMPだ』

P「光がポーズをとった時に、背景が爆発するのも……」

晶葉『収録の時は火薬だが、事務所の中ではAMPだ』

P「他所のアイドルだけど、天海春香さんが明らかに何もないところでどんがらがっしゃんするのも……」

晶葉『アレは天然だな』

P「たまにアイドルが俺を見る時、瞳の中にハートが入ってるのも……」

晶葉『それもAMPだ』

P「まゆに至っては、柱の影からそのハートをパシパシ飛ばしてくるのも……」

晶葉『全てAMPだ』

P「そうか……そうだったのか」

P「どうして今まで気づかなかったんだ?」

晶葉『恐らくAMPには現実を捻じ曲げ、対象に「これは常識の範囲内の現象だ」と誤認させる効果もあるのだろう』

P「あぁ!?」

晶葉『どうした助手よ』

P「今思ったんだけどさ。AMP……American Magic Powerだとちょっと分かりにくいからさ」

晶葉『Amazing Marvell Powerだ。何だそれは。アメリカの魔法の力って……ディ○ニーか』

P「A(アイドルの)M(マジで凄い)P(パワー)の方がいいと思うんだけど、どうだ?」

晶葉『いや、どうもこうも色々と突っ込み所が……あ、いやいい。助手の好きにしろ』

P「凄いなアイドル……」

晶葉『ああ、興味深い。まだまだ私も知らないことばかりだ。実に研究意欲が湧いて来る』

P「あ、もしかして、みくがいきないシェルターに現れたのも……」

晶葉『そうだ。一部のアイドルはAMPを独自に発展させ、更にありえない現象を引き起こしている』

晶葉『前川みくもそうだ』

晶葉『あの現象に名前を付けるとしたら……まあベタだが《シュレーディンガーの猫》だろうな』

晶葉『当日の事務所内のデータを解析したところ、事務所全体に前川みくのAMP粒子が散布されていた』

晶葉『同時に前川みくのバイタルサインも――』

晶葉『恐らく前川みくはあの瞬間、事務所のどこにでもいて――』

晶葉『この事務所の中を箱と解釈した――』

晶葉『量子力学的に――』

晶葉『重なりあった状態ということは――』

みく「ちくわ道明寺」スッ

晶葉『まあ、助手にも分かるように説明すると、あの日前川みくという存在はどこにでもいて、どこにもいなかった。そういった不確かな存在だったわけだ。最終的にその存在を助手がいるこのシェルターに確立させたというわけだ』

晶葉『……誰だ今の』

P「……なるほどなぁ」

P(殆ど分からない。だが、アイドルは凄いってことは理解した)

P「ってそんな凄い力があるんだったら、シェルターとか意味なくね?」

晶葉『ふっふっふ……私が自分の得た研究結果をひけらかす為だけに長々と講釈と垂れたと思うか?』

晶葉『無論、対策済みだ。AMP粒子を発見すると同時に、それらを一定範囲無効化するジャマーを開発した』

晶葉『部屋の中に置いているだろう? 本棚の上に乗っているそれだ』

P「本棚の上にはこの間発売されたばかりの『池袋晶葉1/8スケールフィギュア~眼鏡とツインテールを外した正統派美少女ver~』しか置いてないけど」

晶葉『それだ。手元にたまたまそれがあったからな。その人形に埋め込んだ』

晶葉『それがAMPジャマーだ。まだ試作段階で周囲50メートルほどしか無効化できないが、十分だろう』

晶葉『AMPを使ってシェルターに侵入することも、セキュリティを突破することもできない』

晶葉『心配するな助手よ。そのシェルターにいる限り、今度こそ安全だ』

晶葉『……』

晶葉『しかし分からないな。どうしてアイドルなんだ? アイドルにのみ発現するこの力』

晶葉『それにデータを見る限り、アイドルとしてランクが上がるにつれてAMPの生成量も多くなっていく』

晶葉『更に言うならば、他の事務所に比べて、この事務所に所属するアイドルは誰も彼もが尋常ではないAMP保有者だ』

晶葉『まるで誰かが意図したような……そう、事務所そのものが実験室のフラスコのような……』

晶葉『……いやいや何を言っているんだ私は。考えすぎだな』フルフル

P「しかし、何が凄いってアイドルがそんな凄い力を持っているってこともそうだけど、対応策を即座に作り出した晶葉もだよな」

晶葉『ふっ、何を言う。天才の私にかかれば造作もない』フフーン

P「これがあれば、茄子の超幸運も無効化されるんだろ? いやぁ、凄い凄い」

晶葉『……っ』ギクリ

P「え、どうした晶葉? そんな痛いところを突かれた、みたいな顔で」

晶葉『いや、それなんだが……』

晶葉『個人的に非常に残念なことなんだが……その……』メソラシ

晶葉『鷹富士茄子の幸運は……普通に彼女の自前だ』

P「え、そうなのか? あれこそ常識的に考えてありえない現象だと思うんだけど」

P(GOの10連ガチャやってもらって、8枚☆5が出た時は心臓が止まりかけたし)

晶葉『……ああ、私もあれこそAMPの恩恵だと思っていたのだが……全然関係なかった』

P「そうか……。じゃあ芳乃のアレは? 前に事務所で遠足に行くってなった時に当日まで大雨が続いて、芳乃が法螺貝吹いたら一瞬で晴天になったことがあったじゃん」

P「あれこそAMP――」

晶葉『――あれも彼女が元々持ち合わせている……よく分からない力だ』

P「小梅の『あの子』は? 最近うっすら姿が見えるようになってきたんだけど、あの子も具現化されたAMPとか」

晶葉『あの子? 何の話だ? 白坂小梅は数少ない非AMP行使アイドルだぞ?』

P「……」

P「クラリスと銀行に行った時に、銀行強盗に巻き込まれたことがあっただろ。で、クラリスが強盗の手を握って微笑んだら、一瞬で心を入れ替えて自首しに行った事件があったよな」

P「犯人は『彼女に羽と天使の輪を見た』って供述したらしい」

晶葉『ん? 何の話だ? ただの見間違いだろう。自首したのもただの心変わりだろうに』

P「……」

P「俺この間、こずえが枯れた花に手を翳したら一瞬で復活する光景を目撃したんだけど」

P「ちなみに事務室にある巨大花がそれだ」

晶葉『遊佐こずえか? 彼女も至って普通のAMP粒子量だ。他のアイドルと変わらない』

P「そうか……」

P(なんだろう……一番気になってたところが全く解決されてない……)

晶葉『ふむ? どうした助手よ。何やら言いたげな表情だな?』

P「いや、それが……」

晶葉『待て待て。皆まで言うな。……もっと知りたいのだろう? 他にどんなアイドルがどのようなAMPを持っているのかを』

晶葉『ふふふ……好奇心旺盛なのはいいことだ。アイドル個人のプライバシーにも関わることだから、本来ならば開示できない情報だが……仕方ない。知りたがりの助手の為に教えてやろう!』

P(自分の研究成果を語りたい晶葉ちゃんモードだこれ……)

晶葉『他の固有AMPを持っているのは……』カタカタ

晶葉『神崎蘭子――彼女と話している時に、左耳からいつものよく分からない言葉、右耳からそれを標準語に直した言葉が聞こえる能力』

P「あれ、俺の熊本弁理解能力が上がったわけじゃなかったのか……」

晶葉『多田李衣菜――彼女のにわかロック知識を聞いていても、あまりイラッと来ない能力』

P「確かにあんまりイラッと来ないな……」

晶葉『棟方愛海――アイドルの胸を揉もうとしても必ず誰かに妨害される能力』

P「昭和アニメのスケベ主人公みたいだな……」

晶葉『日下部若葉――いつ職務質問されてもいいように、一瞬で財布の中から免許証を取り出せる能力』

P「いや、それは……技術じゃないか?」

晶葉『和久井留美――猫が好きなのに猫に近づくとくしゃみや涙が出てしまう悲しい能力』

P(それただのアレルギー……)

晶葉『鷺沢文香――一旦読書に集中すると周りで何があっても気づかない能力』

P(性格……)

晶葉『三村かな子――お菓子作りが趣味』

P「もう能力関係ないな。ただのプロフィールだな」

晶葉『……む。まだまだAMPには不明な部分が多いんだ。情報の整理もままならない状態なんだ。あまり深く突っ込まないでくれ』

P(AMPとは一体……まあ、これについてはこれ以上突っ込んでも仕方ない気がする)

晶葉『AMPについての講義もここらで切り上げるとしよう』

晶葉『さて、今日の挑戦者は一体誰だ?』

晶葉『AMPジャマーの動作を確認したいからな。できるだけ協力なAMP保持者を期待したいが……』

P「今日か?」

P「今日は確か……ほたるのはずだ」

晶葉『……』

晶葉『……なんだと?』

P「ほたる。今日の挑戦者はほたるだ」

晶葉『……マズイ』ダラダラ

晶葉『助手、今すぐにシェルターを出ろ』

P「え、なんで?」

晶葉『いいから早く! 間に合わなくなっても知らんぞ!?』

晶葉『くっ、白菊ほたるの現在位置は……既に扉の前だと!?』

P「どうしたんだよ晶葉? そんなに慌てて……」

晶葉『助手こそ何を暢気にしている!? 彼女が持つ不幸が及ぼす力を知っているだろうに!? こんなシェルターなんて彼女の前では――』

ピピピピ……ピー……ガガガガガ……ボンッ

晶葉『セキュリティが破壊された!?』

ガシャンガシャンガシャン……ガチャ……サラァ……

晶葉『扉のロックが特に意味もなく原子分解された!?』

プシュー……ガコ、ガコ、ガコガコッ……パカッ

晶葉『スライド式の扉が割れた!?』

晶葉『く、来る……!?』ガタガタ

ツカツカツカ……

ほたる「あ、あの、すみません……ここにプロデューサーさん、いませんか……?」オドオド

P「あ、ほたる」

ほたる「プ、プロデューサーさん……!」パタパタ

ほたる「よかったぁ……このまま見つからないと思ってました。私って運が悪いから……」

ほたる「でも、こうやってプロデューサーさんに会えたから私……やっぱり不幸じゃありません……えへへ」

ピシ、ピシピシ……ビシビシビシ

晶葉『あ、あああ……シェルターに亀裂が……』

晶葉『AMPジャマーは……作動している! やはり彼女の不幸も鷹富士茄子と同じく、元より備わっていた力だったか……!』

パラパラ……

P「マズイな……崩れる。逃げるぞほたる!」

ほたる「えっ、も、もしかして私のせいですか……!?」

P「いいんだほたる。形ある物はいずれ失われる……このシェルターもその因果から逃れられなかった、それだけだ」

晶葉『よくはないぞ!? 全くよくはないからな!? まだまともなデータも取れていないんだぞ!?』

ガラガラガラ

晶葉『わ、私のシェルターが……崩れていく……』

晶葉『ああ、もう……』

晶葉『運なんて大嫌いだ……』グスン

P(崩壊していくシェルター)

P(ほたるの肩に手を置きながら、俺は思った)

P(やはり俺はアイドルには絶対に勝てないのかもしれない)

P(今まで色んな方法を試してみたが……結局1度もゲームに勝つことはできなかった)

P(……)

P(いや、もしかして……そういうことなのか?)

P(俺はもしかすると……)

■金曜日■

☆事務室☆

P「結局シェルターはほぼ全壊で、復旧には1ヶ月近くかかる、か……」

P「さて、どうするかなー」

P「……」

P「今日の挑戦者は……」

バン!

幸子「そう――ボ ク で す」ドヤーン

幸子「お待たせしました! 満を持してのボク登場です! さあ皆さん拍手を! そしてボクを讃えて下さい!」ドヤヤーン

幸子「遅れてしまってごめんなさい……だけど真打は遅れて登場するもの! カワイイボクは登場するのは最後と決まっているんです! つまりラスト! おおトリ!」

P(オチ……)

P「ん? 最後って……このゲーム終わるのか?」

幸子「おや、ちひろさんから聞いてませんか? 全アイドルが1順したので、一旦終了みたいですよ」

P「そうか……いつの間にそんなに……」

P「長いようで短かったなぁ……」

P「結局、全部1度も勝てなかったな……」

幸子「ちょ、ちょっと待ってください! ボク! ボクとの勝負がまだ終わってませんよっ」

P「ああ、すまんすまん」

幸子「まあかわいいボクを前にすると無条件で負けを認める気持ちは分かります……なにせボクはかわいいので!」

P「で、幸子は俺はどうやって監禁ルームまで連れて行く気だ?」

P「薬か? それとも何か道具でも用意してるのか? まさか丸腰で俺を捕まえる気か?」

幸子「いーえ、違いますよ」

P「……じゃあお前も何かAMPを持ってるのか? それともこの間の即身仏イベントを経て何かの力に開眼でもしたか?」

幸子「それも違います。……まずそのAMPというのが分からないんですけど」

幸子「あと誰かさんが『スカイダイビングで空やったし、次は地面……即身仏はどうだ?』という安易かつ意味不明な提案でボクを地面の下に埋めた素敵なイベントについては、一生根に持ち続けるので」ジトー

幸子「薬や道具、その他よく分からない力なんてボクには必要ありません」

幸子「そんな物ボクには不要です!」

幸子「フフーン! だってボクはカワイイですから!」

幸子「カワイイボクのお願いをプロデューサーさんが断れるはずないじゃないですかぁ!」ドヤァ

幸子「さあ、行きますよ! カワイイボクのカワイイ笛の音に合わせて付いて来て下さいね!」ピッツピッピ

バタン
ピッピッピ……ピッピッピ……

P「……」

P「カワイイか……幸子らしいな」

P「俺の負けだ」

P(だが全く、悔しいという気持ちはなかった)

P(このゲームを通して、アイドル達の色々な魅力を見ることができた)

P(今まであった魅力を更に増してきたアイドル)

P(今までとは全く違った方向性を見せてきたアイドル)

P(改めてその尋常ではない個性を見せ付けてきたアイドル)

P(色んなアイドルがいた)

P(俺を捕まえる為に、様々な魅力を発揮するアイドル達を見るのが楽しくて仕方がなかった)

P(途中からは勝負であることを忘れて「次はどんなアイドルがどんな一面を見せてくれるのか」なんて期待をしていくらいだ)

P(結局1人で週末を過ごすことはできなかったけど……アイドル達の魅力をこれでもかってほど味わえたんだ)

P(それだけでこのゲームに参加した意義は十分ある)

P(ゲーム形式にしてくれたちひろさんいは感謝をしないとな)

P「ん? ちひろさんと言えば……最近あんまり見ないな」

P「いつもだったら平日休日問わずに俺の前に現れて、例のドリンクを売りつけてくるのに……」

P「平日も妙に忙しそうだし、週末に連絡をとっても全然繋がらないし……」

バタン!

幸子「何でついて来てないんですか!?」

幸子「廊下で1人笛を吹くボクが馬鹿みたいじゃないですかぁ!?」ナミダメ

P「あ、ごめん。普通に忘れてた」

幸子「カワイイボクを忘れるなんて、本当にプロデューサーさんは酷い人ですねっ」

幸子「仕方ありません。のろまなプロデューサーさんの為に、ボクが手を握ってあげます!」ギュッ

幸子「時間は有限なんです。早く行きますよっ」

幸子「週末は遊園地ですからねっ」

1週間近く付き合っていただき、ありがとうございました。
一応これで終わりになります。
あとオチ的なおまけがあるので、もう少しお付き合いください。

☆おまけ☆


千川ちひろの《SSS》

☆第二事務室☆

ちひろ「……」カタカタカタ

ちひろ「……んんー」タカラダノバシ

ちひろ「もうこんな時間ですか。そろそろゲームの方も終わった頃ですかね」

ちひろ「ゲームが終わり次第、まゆちゃんが来てくれるはずなんですけど……」

まゆ「まゆならここですよぉ」スッ

ちひろ「ちひっ!?」ガタッ

ちひろ「い、いつから私の背後に……?」

まゆ「うふふ……今来たばっかりですよ」クスクス

ちひろ(び、びっくりした……)

ちひろ(まゆちゃんの力《クイーン・オブ・ハイド》は姿、気配、匂い、音、あらゆる痕跡を消すことができる……)

ちひろ(今回の作戦でこの能力はとても役立ってくれたけど、いきなり何もない所から現れるのは未だに慣れませんね……)ドキドキ

ちひろ「そ、それで例の物は?」

まゆ「はい、どうぞ。これが今まで行われた『絶対監禁するアイドルVS絶対逃げ切るモバP』のゲーム内容。そしてPさんと参加したアイドルの能力値の偏移をまとめた物です」スッ

ちひろ「ありがとうございます。どれどれ……うん、お見事。物凄く細かく、そして正確なデータね」パラパラ

ちひろ(しかし何故手書き……)

ちひろ(これほどの量を手書きで書くとなると、相当面倒くさかったはず……)

ちひろ(今気づいたけど、まゆちゃん……今日は手首にリボンじゃなくて湿布を貼ってる……)

ちひろ「ゲーム内容をまとめるだけじゃなくて、アイドルが不正をしないか監督役も頼んじゃってごめんなさいね」

まゆ「うふふ。いいんですよ。Pさんのすぐ側で色々な表情を見られましたから」

まゆ「Pさんと他の皆さんが目の前でイチャイチャする光景を見せ付けられるのは、少し……ほんの少しだけ辛かったですけどねぇ」

ちひろ「……と、とにかく、ありがとうね、まゆちゃん」

ちひろ「このデータは有効活用させてもらうわ」

ちひろ「ちなみにこのデータを何に使うかというと……」

まゆ「特に興味はないからいいです。それよりも約束の物を」

ちひろ「……ああ、はい。どうぞ」

ちひろ「プロデューサーさんが小学4年生の時の運動会の写真です」スッ

まゆ「ありがとうございます。……うふふ、これでまたコレクションが増えました」スリスリ

ちひろ「本当にこんな物でいいの? まゆちゃんが望むならもっと貴重な報酬を用意するけど」

ちひろ「その写真もちょっとPさんの実家に行って、お母様に『ちょっと書類で使うので……』って言って貰ってきただけよ?」

まゆ「いいんですよぉ。まゆはまだPさんの実家に行くことなんて出来ないから助かります」

まゆ「まゆがPさんの実家に行く時は、Pさんと一緒に結婚の報告に行く時って決めてますから……」ポッ

ちひろ「……はぁ」

まゆ「じゃあ貰う物も戴いたので、まゆは行きますね」スッ

ちひろ(まあ、余計な出費がかからなかったから、いいと思いましょう)

ちひろ「さて、データを見る限り、ゲーム開始前と比べてプロデューサーさん、アイドルの双方の能力値がかなり上がってますね」

ちひろ「特にアイドル側の成長具合が著しい……」

ちひろ「たった数時間のゲームとは思えないほどの成長具合ですね」

ちひろ「何より、今まで力……晶葉ちゃんの言葉を借りるならAMP。今までAMPが目覚める兆候がなかったアイドルが、ゲームの間にAMPを開花させたのは素晴らしい収穫でした」

ちひろ「ただのレクリエーション感覚のゲームでここまで成長するとは……」

ちひろ「やはり鍵はプロデューサーさん、ですね。彼が関わるものになると、アイドル達の変化は凄まじい」

ちひろ「ふふふ……流石私が選んだプロデューサーさん」

ちひろ「これからも頼みますね。アイドルの成長はあなたにかかっているんですよ」

ちひろ「そして私の最終目標……SSSの成就も……ふふふ……」

ちひろ「ふふふ……ふっふっふ……ちーっひっひ!」

コンコン

?「入るよ千川君」

ちひろ「は、はいっ」ササッ

社長「……今あからさまに何かを隠さなかったかね?」

ちひろ「い、いえいえ」

社長「まあ、いい。……さ、追加の仕事だ」バサッ

ちひろ「……」ゲンナリ

社長「では頑張ってくれたまえ」ツカツカ

バタン

ちひろ「……書類の束がマシマシ」

ちひろ「……やりますか」カタカタ

ちひろ「……」カタカタ

ちひろ「それにしても今回の作戦は大成功でした」

ちひろ「ゲームを通してアイドルとプロデューサー双方のレベルアップを図る」

ちひろ「成功としか言いようがありませんね」

ちひろ「途中、晶葉ちゃんやマキノちゃんが厄介な部分に気づきそうになりましたけど……まあ、まだ大丈夫でしょう」

ちひろ「今回の作戦の成功で、またSSS成就への道が近づきました」

ちひろ「SSS……子供の頃に抱いた夢にこんな形で近づくことになるなんて……人生は不思議ですね」

ちひろ「ここまで来るのは……長かったですねぇ」シミジミ

ちひろ(拠点となるこの事務所の設立)

ちひろ(私の手となり足となる幹部達の引き抜き)

ちひろ(アイドルの素質がある少女達の選出)

ちひろ(そんなアイドル達をスカウトし導いていく核となるプロデューサーさんを見つけ出す)

ちひろ(苦労はしましたが……ここまで順調に来ました)

ちひろ(今は計画の第2段階)

ちひろ(様々な試練やチャンス、今回のようなイベントを用意して皆さんのレベルアップを図る)

ちひろ(アイドルとしての能力、そして個人が持っている資質をガンガン磨いてもらいます)

ちひろ(そしてライブやテレビ番組への出演、その他諸々により、我がプロダクションのアイドル達の知名度を完璧にします)

ちひろ(高い人気と能力を持ったアイドル達には、この業界だけで留まらずに各分野に進出してもらいます)

ちひろ(スポーツ、経済、芸能、科学、政治、IT、サブカルチャー、宇宙……日本だけでなく世界中の様々な業界へ)

ちひろ(アイドルとして得た圧倒的な人気と、卓越した能力を持った彼女達は……あっという間にその分野での頂点に辿りつくでしょう)

ちひろ(世界中のありとあらゆる分野のトップに、我がプロダクションのアイドルが君臨する)

ちひろ(するとどうなると思います?)

ちひろ(勘のいい人ならもうお気づきでしょう)

ちひろ(私の一声で――世界が動く)

ちひろ(そう、世界が動くんですよ)

ちひろ(そんなのまるで? そう、それです。その通りですよ)

ちひろ(――世界征服です)

ちひろ(圧倒的な人気を持ったアイドル達に、民衆は盲目的に従うでしょう)

ちひろ(そしてそんな彼女達を裏で操る私――ふふふ! なんてナイスな世界なんでしょう!)

ちひろ(アイドル達による最も優しい世界征服――これが私の夢《SSS》)

《S(千川ちひろの)S(世界征服)S(作戦)》

ちひろ「ふっふっふ……今の時代、巨大ロボットや怪人、デュエルで世界征服なんて古いんですよ」

ちひろ「これからはアイドルによる世界征服の時代です!」

ちひろ「楽しみですねぇ! 昔からの夢、世界を裏から動かす黒幕になる日もそう遠くないかもしれませんね!」

ちひろ「ちーっひっひっひ! ちーっひっひっひ!」バンバン

ガチャ

社長「入るぞ千川君」

ちひろ「ちひっ!?」ビクーン

社長「部屋の中から、仕事をしている千川君が馬鹿笑いしている声と机をテンポよく叩く音が聞こえたようが気がするんだが?」

ちひろ「き、気のせいですよ! だってほら! 千川ちひろは真面目に仕事をしてますから」カタカタカタッ

社長「ならいいんだがね。さ、追加の仕事だ」バサッ

ちひろ「……う」ゲンナリ

社長「何か言いたげな顔だね?」

ちひろ「いや、その……ちょっとお仕事の量が多すぎるかなぁと」

社長「何を言っているのかね? 千川君、君が最初に言い出したんだろう?」

社長「まともに休みがとれていない彼に土日フルで休んでもらう為に、必要な仕事は自分が全てやると」

社長「実際は君だけでは消化しきれず、私も手伝っているわけだが」

社長「まあ、彼の休みについては私も思うところがあったから、こうして文句を言わずに私も手伝っている」

ちひろ「ええ、はい……その、とても感謝をしております、はい」ヘコヘコ

社長「君が仕事を放り投げても構わないが、その場合彼に休日に出てきてもらうことになるが?」

ちひろ「そ、それは駄目です!」

ちひろ(アイドルの皆さんには『土日の2日間誰にも邪魔されずにプロデューサーさんと過ごせる』そういう触れ込みで、くじびきに参加する権利を買ってもらってるんです)

ちひろ(それなのに途中で仕事に呼び出されるなんてことになったら……)

ちひろ(暴動……暴動が起きちゃいますよ……)

社長「だったらしっかり働くといい」

ちひろ「うっ……そ、その社長? ちょっとお願いが……」

社長「何だね?」

ちひろ「来週! 来週は休日返上で働きますから! 今週だけは何とか家に帰らせていただけないでしょうか!?」

社長「何か用事でも?」

ちひろ(帰って2順目のクジを作ります)

ちひろ(アイドルの皆さんには十分に楽しんでもらいましたし、今度は私の番ということで。中身を全部千川ちひろに入れ替えたクジですけど)

ちひろ(い、言えない……そんなこと間違っても言えない)

ちひろ「いや、それはその……あはは」

社長「なら駄目だ。それに私だってこの後、用事があるのにこうやってギリギリまで手伝っているんだよ」

ちひろ「用事ですか?」

社長「ああ」

社長「『時子様の豚になれるクジ』でようやく当たりを引いてね。この後、時子様の下に馳せ参じなければならないんだよ」

社長「というか既に約束の時間は過ぎている」

社長「時子様をお待たせするなんて……どんなお仕置きをされるやら……」

社長「きっとこの世のものとは思えない苦痛を与えられるのだろう」

社長「尊厳も何もかもを放棄してしまうような、過酷な罵倒を浴びせられるはず」

社長「築き上げてきた地位を自らの手で最も恥ずかしい方法で捨てさせられるかもしれない」

社長「もう、想像するだけで私は私は……イクッ!」ビクンビクン

社長「……ふぅ。というわけだ。もう少し手伝うが、残りは君が頑張ってくれたまえ」ツカツカツカ

ちひろ(うわぁ……)

ちひろ(今更ながら、事務所のトップにあの人を選んだのは間違いだった気が……)

ちひろ(いや、昔はもっとまともだったんですけど……アイドルの魅力にやられてあんな風に……)

ちひろ(ポ、ポジティブに考えましょう! やはりアイドルが人間に与える影響力は凄まじいということで! 私の計画は何一つ間違っていないということで!)

ブルルルルル

ちひろ「あ、プロデューサーさんから電話が……。今頃は幸子ちゃんと一緒に家に帰ってるんでしょうね」

ちひろ「出たい……でも出られない……! そういうルール、アイドルと2人の時間を邪魔しちゃいけないんです……!」

ちひろ「ぐぅぅ……」プルプル

ちひろ「はぁ。仕事しよ」

ちひろ「フンフンフフーン、せかいせいふくー。プロデューサーさんといっしょに、せかいせいふくー」カタカタカタ

まゆ「……」

まゆ(何となく姿を消してちひろさんを観察してましたけど……)

まゆ(世界征服、ですかぁ)

まゆ(……まあ、いいでしょう)

まゆ(今のところ、Pさんにも私達にも害はないようですし……見逃してあげます)

まゆ(ただ少しでも、害を成すようなら……うふふ)

ちひろ「……ひっ!? な、なんでしょう……首元に包丁を突きつけられたような悪寒が……気のせい、ですよね?」タラァ

ちひろ「う、うん、気のせい気のせい。さて、夢の為に頑張ってお仕事お仕事!」


おしまい。

これでおしまいです。長々とお付き合い頂きありがとうございました。
微妙に世界観が一緒なSSを近いうちに書く予定なので、よろしくお願いします。そっちはもっと短くするつもりです。
ありがとうございました。

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