【咲-saki】久「どちらも同じ位に好きで」 (108)

京太郎「それじゃあ仕事いってきます」

久「いってらっしゃい」


京太郎が家を出てから、久は出かける支度をし始める。

夫である京太郎は残業で遅くまでまで帰って来れないようで、

「先に寝てていいッスよ」と話していた。

久は家の戸締りを確認し、普段久が使っている携帯と、もうひとつ。

『彼』に渡された携帯を持って家を出た。

軋むような罪悪感に朝の光は眩しかった。

まるで京太郎を思い起こすような眩しい太陽から目を背けて、西へと歩を進める。

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やがて通りの向こうにいつもの喫茶店が見えてきた。

ふと車が目の前でブレーキを響かせながら急停止した。

一太「乗ってください」

彼の言葉に従って素直に乗り込むと、彼はアクセルを踏んで発進した。

久「いつから見てたの?」

一太「久さんが家を出るところからです」

家を出るところから?

久の顔が青褪めると一太は面白そうに笑った。

一太「大丈夫ですよ、彼には見られてませんから。…安心しました?」

久「いえ…別に」

素っ気なくなってしまった返事を気に留めた様子もなく、

「そうですか?」と一太は前へと視線を戻した。

一太「今日はどこに行きたいですか?」

久「え…ホテルじゃないの?」

尋ねると、お望みとあらばと薄い笑みが返ってきた。

一太の笑みから顔を背けてガラス越しに流れていく景色を見つめる。

久「一太はどこに行きたいの?」

一太「僕ですか?」

逆に質問で返すと一太は「どこへでも」と答えた。

一太「あなたと一緒なら、どこでも構わないですよ」

ステアリングを握っているのと逆の手で久の手を握りしめた。

一太「久さんは?」

久「…私も」

なぜだろう、酷く緊張する。

久「私も、あなたとならどこへでも」

一太は意外そうに眼を細めて「それは困りましたね」と笑った。

一太「じゃあ、東京湾にでも行きましょうか」

せっかくのいい天気なのだからと、眩しい陽に目を眇めた。

久「そうね」

今朝からいつもと違う様子の一太に調子を狂わされながら、

今日の彼も好きだなと思った。

しかし。

ふっと過る京太郎の笑顔が久の顔に影を差す。

一太「どうしました?海は嫌でしたか?」

久の暗い陰を逃さなかった一太が尋ねる。

久「いえ…楽しみだわ」

脳裏によぎった夫の顔を今は忘れようと。

久は静かに首を振った。

車で1時間程行ったところで久たちは車を降りた。

人の姿はまばらで、それにも関らず綺麗な砂浜だった。

一太に軽く手を引かれて、波打ち際を歩き出す。

一太「風が気持ちいいですね」

久「そうね」

鼻腔を擽る潮の香りが心地よかった。

一太の手が久の手を握りこむ。

一太「こうしていると、まるで恋人同士ですね」

その言葉に咄嗟に返すことが出来なかった。

久「…そうね」

極めて平坦な声を出す。

一太「どうかしましたか?久さん」

分かっているだろうに。

それでもあくまで久の口から言葉を紡がせようとする。

久「どうもしてないわ」

その返事に、一太は久の手を握ったまま海の方へと歩みだした。

久「え、ちょっと、一太?」

黙々と歩く一太の歩調が速く、引きずられるように手を引かれる。

久「一太…!手が痛いわ…!」

あらん限りの握力で握られた手が痛い。

もう一度一太と叫ぶと、ぐんと勢いよく引っ張られる。

身体が浮遊した感覚を味わった。

久「…きゃっ!」

まだ少し冷たい海水の中に落とされた。

久「何す…」

彼の有無を言わせない瞳に、出かかった言葉を飲み下す。

一太「少しは頭が冷えましたか?」

冷たく見下ろす一太の表情は、陰になってよくわからない。

わからないが、いい感情でないことだけは確かだった。

一太「久さん。あなたの目の前にいるのは誰ですか?」

怖い。さっきまでの穏やかな彼が嘘のようだった。

一太「誰ですか?」

久「…一太よ」

その言葉に少しは苛立ちも紛れたのか、剣呑な空気が幾分か和らいだ。

一太「今、あなたの前にいるのは僕だ。彼じゃない」

久「…ええ。わかってるわ」

一太「ならいいです」

先程とは一変、穏やかな声音で頷くと。

未だ海中でしゃがみこんだままの久を引っ張り上げた。

一太「このままだと流石に冷えますね。風邪でも引いたら大変です」

久「そこまでやわじゃないわ」

一太「彼への言い訳も思いつきませんしね」

久「……」

一太「身体が冷えるといけませんから、どこかで部屋をとりましょう」

一太は久をナビシートに乗せて、車を出した。

――――――――――

―――――

数分で到着したホテル。

あらかじめ一太はここに部屋をとっていたということだろう。

海際に建てられただけあって、先程までいた海辺から潮の香りが漂ってくる。

久「私に行き先を聞いておきながら、準備万端じゃない」

一太「はい。でも久さんの意志を優先したいですからね」

無駄にならなくて良かったですよと一太は笑った。

カウンターで素早くチェックインを済ませて、フロントの案内を断って部屋に向かう。

一太「まずはシャワーですね。先に入っていいですよ」

久「そう?それじゃあ…」

お言葉に甘えて先にシャワーを浴びることにした。

海へと中途半端に身体を浸からせてしまったせいで心なしか寒気がした。

とりあえず肌にはりつく感覚が気持ち悪い。

ノズルを回して頭から熱いシャワーを浴びる。

排水溝に流れていく水をぼんやりと眺める。

いつからだったろうか。一太とこのような関係になったのは。

どちらも選べないまま、2年、3年と年月がたっていった。

咲、和、まこに優希。周りの皆が次々と結婚していくなか、久は焦っていた。

このままうやむやにしていては、どちらも失うことになってしまう。

それはどうしても避けたかった。

考えに考え抜いた久は、先にプロポーズしてくれた京太郎の方を選ぶことを決意した。

苦渋の表情で一太に京太郎との結婚のことを告げると、彼は暫く沈黙した。

重い重い沈黙の後。

やがて、彼は静かな声で言った。

不倫相手でもいいから別れたくない…と。

もし、あの時縋る一太をきっぱりと振っていたら。

京太郎と平凡だけど幸せな結婚生活を送れていたのだろうか。

咲たちのように、結婚相手と心から笑い合える日々を過ごしていたのだろうか。

今更考えても詮無いことだ。

結局、久の方も一太に未練があったことは事実だ。

でもこうして一太と二人でいると、

時折蘇る理性が久の不貞を責め立てるのだ。

一太「久さん」

彼の呼ぶ声がする。温まってぼんやりとする顔を上げた。

一太「のぼせますよ」

久「今でるわ」

慌てて湯船から立ち上がると、大量のお湯があふれ出ていった。



一太「随分と長かったですね」

渡されたバスロープを羽織って前を向くと、一太がタオルで久の頭を拭き始めた。

一太「お腹空いてませんか?何か頼みましょうか」

久「いいえ、特には」

そうですかと返事をした一太は、唐突に久の腰を抱き寄せて唇を重ねた。

驚きで小さく開いた久の口からぬるりと一太の舌が入り込む。

口腔を弄るように舌で嬲られている内に、するりとバスローブの裾から一太の手が侵入してくる。

久「あ…っ、一太…」

一太「だって、食事いらないんでしょう?」

きょとんした顔を返されて、久は慌てて彼の肩を押す。

久「でも、まだ明るいじゃない…」

一太「どうせ明日からまた逢えない日が続くんだから、いいじゃないですか」

それに明るいところで久の淫らに喘ぐ姿が見たい、と耳元で囁かれる。

一太「本当に嫌ですか?」

好きな男にそんなことを言われて、首を横に触れるはずがない。

ふっと強張った体を抱きしめられたかと思えば、そのままベッドへと投げ落とされた。

久「一太…っ」

これ以上の言葉は望まれていないらしい。

目を細めた一太は、下唇をうっそりと舐めながら言った。

一太「ねえ?久さんは僕に逢えるのを楽しみにしてくれてた…?」

久の頬をゆるりと撫で上げ微笑んだ。

一太「僕は楽しみでしたよ…久さんに逢えるのが…」

目元や鼻に戯れのように軽いキスをされている間も、一太の手が久の身体を弄る。

久「私も一太に会えて…」

一太「嬉しい?」

こくりと首を縦に振った。

嘘ではない。嘘ではないけれど。

一太がいない間は一太に会いたいと思う。

でも会っている間は京太郎のことが何度もこの胸に刺さるのだ。

どちらと一緒に居ても、必ずどちらかひとりが恋しくなってしまう。

京太郎のあたたかい愛情も、一太の激しく求めるような激情も。

どちらも強く心惹かれるのだ。

自分が一度に二人の人間を愛せるような器用な人間だと思わなかった。

そして、それがとても苦しくて辛い事だとも知らなかった。

久「一太」

彼の服を握る。

そういえば、彼はまだシャワーを浴びていない。

しかしそんなことは気にならなかった。

久「好きよ」

一太は、案の定おどろいていた。

目を丸くして、掴まれた服と久を交互に見下ろしている。

久「好き…大好きよ」

あなたのことも、そして彼のことも。

一太「分かっています、久さん…」

一太は甘えるように久の胸に頭を乗せる。

一太「好きでもない男に抱かれたりしないでしょう?」

久「…ええ」

一太「鼓動の音がすごい。緊張してるんですか?」

初めてでもあるまいし、と一太は揶揄する。

かぁっと頬一面に熱が集まるのを感じた。

真っ赤な顔を見られたくなくて、横に背けるも追ってきた両手がそれを許さない。

一太「見せてください、全部」

久「一太…」

一太「あなたの全部が欲しい」

首筋に吸い付かれ、一瞬肌を襲った鈍い痛みに震える。

一太「綺麗につきましたよ」

彼の柔らかい髪が首筋をくすぐった。

こそばゆくて、なんだかひどく気持ちがいい。

それはこの先に与えられるであろう快感を知ってのことかもしれない。

目を閉じ、彼の首に腕を回そうとすこしだけ頭を上げた刹那。

久「…っ!!」

視界の先で携帯の画面が光った。

無機質なメロディが流れ出して、久の身体が硬直した。

一太も刺すように鋭い視線を携帯に投げる。

鳴っているのは一太に渡された携帯ではなく、久が元々持っていたものだ。

どうして、こんな時にと心拍数が異常なほど跳ね上がる。

一太「出ていいですよ」

久「でも…」

一太「いいから」

怖いほど無表情の一太に促されて、久は携帯を取りあげた。

画面に浮かんだその名前。

もう逃げられないと腹をくくる。

くくるしか、なかった。

久「…はい」

京太郎『あ、久さん?いま大丈夫っすか?すみません、突然電話しちゃって』

久「ええ、平気よ。京太郎こそ大丈夫なの?仕事は?」

京太郎『それが急に残業なくなっちゃって。早く帰れることになったんです』

さあ、と顔が青ざめるのがわかる。

久「そう…」

京太郎『だから、もしよかったらこのままどっかドライブでも行かないかなーと思って』

家にいますよね、と。

彼の声音が酷く冷たいことに、電話越しの久は気づくことができなかった。

京太郎の台詞だけが頭の中でがんがんと鳴り響いていた。

咄嗟に助けを請うように一太を見るも、彼は沈黙したままだ。

久「京太郎は…今どこにいるの?」

京太郎『今、家に向かってるっすよ。多分40分くらいで着くと思います』

だめだ、間に合わない。

ここから車を飛ばしてもゆうに1時間以上はかかるはず。

何とかしなければと焦る久を、

一太は不気味なほど黙って見守っている。

久「その…」

咄嗟にどうにかしてこの状況を嘘で塗り固めようと、

久は必死に頭を振り絞る。

京太郎『はい?』

久「実は、…まこの買い物に付き合ってて」

京太郎『まこ先輩?へえ』

彼は純粋に驚いた様子で続きを促した。

久「使ってた財布が古くなったから、新しいのを買いに行ってるのよ」

京太郎『ああ、財布ですか。そういや買いたいって言ってましたよね』

久「え、ええそう」


ごめんなさい、まこ。

内心で彼女に謝りつつ、ほっと胸を撫で下ろす。


京太郎『でもそのホテル、財布なんて売ってるんスか?』



…え?

久「…!!」

GPSという単語が脳裏を横切った。

嘘を嘘で塗り固めてきた真実が暴かれようとしている。

自分の浅はかさがこの事態を招いてしまったのだ。


久「……」

京太郎『ねえ、何とか言ったらどうなんですか』

返す言葉も思い浮かばず、沈黙する久に楽しそうに話しかける。

京太郎『今、誰といるんですか?』

久「そ、れは…」

京太郎『誰だよ?』

いつもの敬語が消えて凍れるほどの冷たい声色になった。



京太郎『今からそっち行くから』

久「…え?」

京太郎『会わせてくださいよ。久さんの男』

GPSでこちらの居場所を把握しているのだろう。

久は震える手で携帯を握りしめる。

通話がきれた。呆然と携帯電話を見下ろす。



今からそっち行くから。

死刑宣告とも思える京太郎の声音が頭の中をかけまわる。

耳鳴りが痛かった。



―――――

――――――――――


一太「彼、何て言ってました?」

ずいぶんしらけた様子で一太はこちらを見ていた。

久「ここに来るって…」

震えた声音で告げる。

一太は剣呑に目を細めた。

一太「じゃあ、久さんが選んでください」

久「え…」

一太「あなたが望むなら、どこにだって隠してあげます」

まさかそんなことを問われるとは思っていなかった。

いつかきっとぶち当たる壁なのだと心のどこかで分かっていた。

でも選ぶということは、きっとそういうことだろう。


一太「僕を選んで隠してもらいます?それとも彼に見つかって弁明しますか?」


好きな方を選ぶといい。

そう言うと一太はまた嗤った。

一太と京太郎。

いずれ、どちらかを選ぶ選択を迫られる時がくるだろう。

そう覚悟していた。覚悟していたのに。

いざ現実が戻ってくると久には覚悟も何もできていなかったと自覚した。

二人に甘えて、宙ぶらりんな態度をとり続けて、二人を傷つけた。

自分が傷つくのは当たり前だ。

それを悲しむ資格も、悔いる資格も久にはない。

でも彼らは違う。

こんな卑怯な自分でも愛してくれた。

久「…私は…」

一太「はい」


ここで終わりにしよう。


久「京太郎と離婚するわ。そして…一太、あなたとも別れる」

一太「…へえ」

彼からの叱責するような視線が痛かった。

久「これが私のけじめよ…」

どちらも同じ位に好き。

どちらか片方をなんて選べない。

…だから、ふたりから離れよう。


私が間違っていたのだ。

なら、私がその間違いを正さなければ。

一太「彼とだけでなく、僕とも別れるんですか」

眼底に侮蔑の光を宿らせて久を嘲笑する。

その一太の態度に胸が痛む。

久「本当にごめんなさい。一太、私と別れ…」

一太「別れませんよ」

一太が久の首を捕まえてベッドに押し付けた。

苦しい。息が出来ない。

このまま絞め殺されるのではないかという程の強さで久の首を絞めてくる。

久「…はっ…」

一太「今さら僕から離れられるとでも?」

久「ぐ…う…」

一太「彼だって、きっとあなたを非難しますよ」

久「いち、た…っ」

一太「そうだ。せっかく彼がここに来るんです、僕とあなたの愛の証を彼に見せてやりましょうか」

久「…え…」

いま、なんて。

呆然と彼を見上げた。

一太「僕たちがセックスしているところを見せてやりましょうか、って言ったんです」

相変わらず一太の指は久の首をぎりぎりと締めている。

だからといって呼吸できないほどでもない。

ぎりぎりの均衡を保ちながら、指に力がこめられていく。

一太「記念に形に残してもいいけど、どうせなら間近で見せてあげたほうが、あいつの目も覚めるでしょう」

あいつ。京太郎を指す人称が変わったことに気づく余裕はなかった。

どうしよう。どうすればいい。

答えは一向にまとまらない。

言い返したい。声が出ない。

否定したい。否定できない。

一太が、こわい。


一太「縛ってあげてもいいですけど…まるで僕があなたに無理強いしているみたいで嫌だな」

唐突に体が解放された。

突然体に取り込まれた大量の酸素にげほげほとせき込みながら体を折る。

なんとか息を整え、再び彼の方へ顔を向けると目の前に一太の顔があった。

久「!!」

彼の暖かい舌が咥内をはい回る。

熱くて気持ちが良い。

快感で思考がかすみ、ふわふわとした浮遊感が体を襲う。

身体が熱い。

体中が火照ったような感覚に襲われた。

動悸が激しく息が苦しい。

久「…っ、いち…た…っ」

一太「良い表情ですね、久さん」

凄くそそられます、と再び唇を塞がれる。

ねっとりとした舌が這いずり回る。

その感触にぞくぞくと背中に衝撃が走る。

腰の下に澱んでいくように溜まる熱。

たまらず腰を捩じる。

物欲しそうに揺れる久の腰を見て、一太は人知れず笑みを零した。

久のバスローブの合わせ目から一太の指先が忍び込む。

軽く胸を揉まれた後、もう固くなりつつある蕾をきゅっと潰される。

久「…ひぃん…っ!」

一太「痛かったですか?でもおかしいな。久さんのここ、悦んでいるみたいですよ?」

敏感になった女陰に甘やかな愛撫を施される。

久は思わず高い嬌声を上げた。

久「…あっ…あん…!」

一太は久の身体を知り尽くしている。

どうすれば久の身体から快楽が引き出せるのか熟知している。

いつも一太の手管に溺れ、淫らな痴態を晒してしまうのだ。

一太「分かっていると思いますけど、いま僕は少し気が立っていましてね」

久「っ、あ」

一太「本当なら慣らさないで突っ込んでやりたい位なんですよ?」

久「…んっ」

青ざめる心に反して、体はどこまでも正直に熱を追っていく。

一太「血だって立派な潤滑油ですからね」

そういって彼の指が膣穴に伸びる。

久「あ…っ」

つん、とまだ閉じたままのそこを爪ではじかれる。

内部が一太による快楽を期待して、きゅんと締まるのが自分でもよく分かった。

一太「ふふ、ひくついてますね」

これならもう十分かな、と。

熱くて固いそれが何度もぐりぐりと押し付けられる。

後退しようとする意思と、快楽に流されそうになる体が相反して。

久はその場から動けなかった。

熱く脈動する雄を押し付けられる。

怯える気持ちとは裏腹に、これからされることへの快楽で身体は勝手に期待してしまう。

久「…んっ」

一太を受け入れる箇所が収縮する。

もう何度も何度も慣らされ、覚えこまされた感覚を身体が覚えているのだ。

一太「これなら慣らさなくてもちゃんと入りそうですね」

久「や…めて…もうすぐ、彼が…来るから…」

久の弱弱しい声は一太の嗜虐心を満足させる。

一太「やめてあげません」

久の腰を押えて、突き刺すような勢いで膣へと雄を突き立てた。

一気に奥まで貫かれ、久は思わず息を止めた。

久「…あっ、あ…っ」

腰を激しく揺さぶられる。

彼の先走りのせいか滑りの良い中を何度もしつこく押し付けられる。

気持ち良すぎてまともに酸素も吸えやしなかった。

一太「いい恰好ですね」

そんな声が聞きたくなくて。

うつ伏せになったまま両手でシーツをつかみ、顔を枕にうずめる。

久「…っ」

その場にどうにかとどまろうと踏ん張っても、

与えられる快楽と激しい律動に体は勝手に前へと逃げていった。

そんな久の体を、腰を掴むことで一太はあっという間に引き戻した。

一太「想像してください」

笑って、軽く久の背中を叩いた。

一太「こうして僕とつながっているところを、あいつに見られたらどうましょうか」

久「あ…っ」

一太「あいつは…一体どんな反応をするでしょうね」

びくん、恐怖とも興奮ともいいがたい震えが全身を走った。

一太「中、締まりましたよ久さん。淫乱ですね」

久「一太…!こんなの…やめて…!」

一太「うそ。本当は僕に抱かれて悦んでいるくせに」

これは何だと、久の尖った乳首をぎゅっと摘まむ。

そのまま擦り付けるような愛撫を施す。

羞恥と快楽で潤んだ瞳を久はこちらに向けてくる。

中の感触も楽しみながら、収縮する柔壁に固く勃起した雄を何度も擦りつけた。

久「ひっぃん…っ!いやぁ…ん…っ」

一太「…久さん」

いやいやと首を振る久に苛立ちを感じながらも、胸の突起を摘まんでぐりっと弄る。

久「はぁ…っ」

一太は久の性感を刺激しながら入念な愛撫を続ける。

久「っひ、あ、ふあっ、あ」

一太「ふふ。こんなにも喜んでるじゃないですか」

強く体重をかけられたまま動かれて、うまく言葉にならない。

口から飛び出すのはただの媚声だけだ。

否応なしに腰が震えた。

硬く張り詰めた雄が久の内を蹂躙する。

生々しい一太の感触が伝わってきてぶるりと腰が震えた。

無意識のうちに腰が一太の律動に合わせて動く。

それを揶揄する一太の瞳にすら久は気付く余裕もなかった。

イきたい。イきたい。イきたい。

それだけしか考えられない。

身体は狂ったように一太の身体を求めてる。

徐々に早くなっていく律動に耐えられないと頭を振り続ける。

久「あ…!も…イク…っ!」

一太「いいですよ、イっても」

ぐんと奥を思いっきり強く押し上げられて、久はあっさりと絶頂に達した。

脳裏で白い火花が散って視界が真っ白になる。

程なく膣内で一太の熱い精が流れてくるのを感じた。

久「あ、は、っ、ひ…っ」

息が整わないうちに、もう固さを取り戻した一太がゆらゆらと腰を揺らめかせた。

イったばかりだというのに容赦のない一太の激しい動き。

ただ頭の中が快楽だけを追う。

気持ちがいい。もっと彼の手で気持ちよくしてほしい。

鮮明でおぼろげな快楽が久の身体を支配する。

視界の端で一太が泣きそうに顔を歪めた気がした。



―――――

――――――――――


短い時間で立て続けに絶頂に追い上げられて、くたりと全身から力が抜ける。

もう指先ひとつ離すのも億劫だ。

久の中の一太は熱を持ったままで一向に衰える気配がなかった。

一太のものでしっかり栓をされていて一滴も零すことを許されず、

今まで吐き出されたものが久の胎内に詰まっていて苦しかった。

一太「ね?気持ち良かったでしょう?」

久の腹を愛おしそうに撫でながら一太が言う。

その優しい手つきにうっとりしながら久はささやく。

久「ええ、気持ちよかったわ…好き、私やっぱり一太が好き…」

一太「そうですか。ならその僕との子供を産んでくださいよ」

久「いち、た…っ」

程なくまた律動が始まって、久はあられもなく喘ぐしかなくなった。


――――――――――

―――――


そうして一体何度中で出されたのか。

もう数えられないくらいの回数をこなして、なすがままに快楽へとその身を任せる。

腕を引かれるがままに引き寄せられると、そこは一太の膝の上だった。

久「ん…っあ」

目をつむった一太が優しく唇を寄せてきた。

今日はじめてのキスだった。

久「…一太」

一太「なんですか?」

久「もっと…私を抱いて…っ」

一太「言われるまでもなく、抱いてあげますよ」

そのまま下から激しく突かれ、久は乱れに乱れた。

もうすぐ夫である京太郎がこの場所にやって来る。

一太と絡みあっている久を見て彼はどう思うだろうか。

妻の不実をなじり、罵倒を浴びせられるだろうか。

一瞬の思考は、だが激しく強く押し寄せる熱が消し去ってしまう。

今はただこの快楽に酔いしれよう。

愛する男とのセックスで身も心も満たされよう。

一太の腰に足を絡め、彼の激情に流されるまま。

久はただただこの身を焦がす熱を甘受し声を上げ続けた。

足音が近づいてくる。

やがて二人が激しく愛し合う部屋の扉が音を立てて開かれた。

ギィィ・・・

目の前に現れたのは―――――

血走った眼で、手に鋭い刃物を持った・・・夫の姿。



京太郎「…久さん…」


もっとドロドロさせようかと思ったけどこれが限界でした。
一久京の三角関係好きなのでいつかまたリベンジしたい。

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