モバP「だりやすかれんの大晦日」 (32)



―――いつも通り、泰葉の部屋


泰葉「――おまたせ。年越し蕎麦、できたよ」トコトコ…

加蓮「待ってましたー♪」

李衣菜「当然のごとく手伝わないよね……。もう、加蓮? 箸くらい運んでよね」トテトテ

加蓮「それがね、大変なの李衣菜」

李衣菜「……一応聞くけど」

加蓮「こたつから出られなくなっちゃって」

李衣菜「泰葉ー。加蓮お蕎麦いらないってさー」

泰葉「あ、そう? じゃあ加蓮の分は下げるね」

加蓮「箸運びまーす」スック

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李衣菜「――よし、なんとか準備できたね」

泰葉「もう今年も残りわずかね……ふふ、本年もお世話になりました」ペコ

李衣菜「うんっ、こちらこそ!」

加蓮「ふふ、来年もよろしくね?」

李衣菜「来年も加蓮の健康を守らないとねっ」

泰葉「ええ、それが私たちの使命だもの」

加蓮「もー、またそういうこと言うんだから……。ふふっ、ありがと」

泰葉「李衣菜も、来年こそはちゃんとギター弾けるようにならないと。ね?」

加蓮「あー、確かに。いつまでも初心者向けの教本じゃかっこつかないよね」

李衣菜「うぐ。ま、まだ私の才能が開花してないだけだから……!」

加蓮「ふふ、いつになったら開花するの? 早くギターソロ聞きたいなぁ~」

李衣菜「そ、それくらい余裕だぜ。なんなら作詞作曲も手掛けちゃうし!」

加蓮「あ、言ったね? 聞いたからね、絶対だよ?」ニヤリ

泰葉「わぁ……頑張って、李衣菜っ」


李衣菜「……ごめんなさいやっぱりギターだけで許してください……」

「「ふふふっ♪」」

李衣菜「つ、次は泰葉っ。ほら、来年の抱負っ!」

泰葉「……お蕎麦冷めちゃうから早く食べましょう?」

加蓮「あ、逃げた」クスッ

李衣菜「んもー、じゃあ食べながらでもいいよ……」

加蓮「うん、早く食べよっ」

泰葉「ふふ、それじゃ――」


「「「いただきますっ!」」」

李衣菜「ずるずる」

加蓮「ちゅるちゅる……んー♪」

泰葉「ふふ、美味しい……海老天もどうぞ?」

李衣菜「ん。……もぐもぐ」

加蓮「かき揚げもらうね。さくさく」

李衣菜「……で、泰葉の抱負だけど」

泰葉「ちゅるちゅる」

李衣菜「ねぇ抱負」

泰葉「…………。さくさく」

李衣菜「……ほーおーふー!」

加蓮「んふっ、ふふふ……♪」

泰葉「……こほん。それじゃあ……」

李衣菜「んもう……!」

泰葉「さくさく」

李衣菜「もういいから!」

加蓮「あはは♪」

泰葉「んむ。抱負……抱負ね。うーん、うーん……」


泰葉「3人で一緒に、笑顔でいられますように。……とか……?」

加蓮「……普通だね」

李衣菜「んー、もっとひねってほしいなぁ」

泰葉「うぅ、こういうの苦手だって知ってるでしょっ。だから言いたくなかったのに……!」

李衣菜「ま、泰葉らしいかな。つまんないけど」

加蓮「うん、頑張ったよ泰葉。つまんないけど」

泰葉「~~~っ!」ペシペシ

加蓮「ふふ♪ でも笑顔、大事だよね。何事も楽しまないと」

泰葉「で、でしょうに」

李衣菜「笑って泰葉~っ」

加蓮「笑って~♪」

泰葉「………………えへっ☆」キャピ


ぱしゃり


加蓮「撮った! 撮ったよ!」

李衣菜「っし、ナイス加蓮!」

泰葉「あああああああ!」

加蓮「うーん、泰葉かわいい♪」

李衣菜「加蓮、それ送ってー!」

泰葉「……うー、うーうーうぅー!」ポコポコポコッ

李衣菜「いたっ、あはは、いたいよ泰葉っ」

加蓮「ふふっ、危ないってば泰葉、お蕎麦溢れちゃうって、ふふふっ♪」

泰葉「誰のっ、せいだとっ、思ってるのっ! もうっ!」ペシペシペシ!

李衣菜「そんな怒んないでよ、えへへ♪」

泰葉「もう知らない……2人ともきらい……!」

加蓮「あーあ、嫌われちゃった」

李衣菜「大晦日なのに、最後の最後でやっちゃったね」

加蓮「やーすはー。かまぼこあげるから許してー?」

李衣菜「なら私は油揚げあげるー」

泰葉「…………」ツーン

李衣菜「ダメかぁ、へへへ」

加蓮「ふふ、拗ねてる泰葉もかわいいっ」ツンツンッ

泰葉「…………もう……。1年の締め括りでも相変わらずなんだから……」クス

李衣菜「お、機嫌直してくれた?」

泰葉「というよりも慣れた、が正解かな……。これで許してあげる」ムニッ

李衣菜「うにゅ。……ふへへ♪」

泰葉「ふふ♪ ……さて」

李衣菜「にゅ?」

泰葉「最後は……加蓮。あなたの抱負、まだ聞いてないけど?」

李衣菜「あ、そういえば」

加蓮「くっ、バレたか……!」

泰葉「さぁ」

李衣菜「さぁさぁ」

加蓮「んー、しょうがないか……。じゃ、私の来年の抱負!」

李衣菜「ん!」

加蓮「健康で過ごせるように頑張るっ」

泰葉「…………」

李衣菜「…………」

加蓮「どう、私的には結構ハードル高いでしょ? ……なんか言ってて悲しいけど」

泰葉「……それは私たちみんなの目標だからね?」

李衣菜「加蓮ひとりじゃ無理でしょ」

加蓮「えぇ、そこまで……!?」

李衣菜「腕立て10回くらいにしとこ?」

加蓮「流石にそこまで貧弱じゃないよ!?」

泰葉「……じゃあちょっとやってみて?」

加蓮「…………い、いいよ。やってやろうじゃない」


加蓮「ふっ……!」プルプルプルプル

加蓮「……~~~~っ!」

加蓮「」ペチャッ


李衣菜「嘘でしょ2回もできてないよ!?!?」

泰葉「……うん、腕立て10回が妥当かも……」

加蓮「うっ……うっ……!」グスングスン

李衣菜「ご、ごめんごめん……頑張ろ? 加蓮ならできるよ……」ナデナデ…

加蓮「ダンス、ダンスはまだまともに踊れるのにっ……こんなことってぇ……!」

泰葉「だ、大丈夫だから……ね? 泣かないで」

加蓮「うぅ、体力増やす……来年の抱負ぅ……」メソメソ…

李衣菜「う、うんうん……よしよし」

泰葉「――お蕎麦、すっかり伸びちゃってる……」ズルズル

李衣菜「ま、まぁしょうがないよね」チュルチュル

加蓮「はぁ……もぐもぐ……」

泰葉「げ、元気出して加蓮?」

加蓮「……年越し直前にブルーな気持ち……」サクサク

李衣菜「も、もうすぐ除夜の鐘も鳴り出すし、そういう気持ちも払おう、ね?」

加蓮「うん……ちゅるちゅる」

泰葉「――ふう、なんとか食べ切れた……」

李衣菜「伸びても美味しかったしね。……もうすぐ、かぁ」

加蓮「……来年は、どんなことが私たちを待ってるのかな」

泰葉「……楽しいことも、つらいこともあると思う」

李衣菜「だね。でも……一緒なら乗り越えられるよ!」

加蓮「……うんっ。私たちなら、きっと……!」


――ごーん……

    ごーん……


泰葉「あ……」

李衣菜「始まったね。煩悩払わないと」

加蓮「……思ったんだけどさ、アイドルってたくさんの人に夢を見せる職業じゃない?」

泰葉「? うん」

加蓮「夢って言い方変えれば、人の願望……欲? みたいなものだよね」

李衣菜「……あ。煩悩払ったらもしかして、誰かに夢を見せられない……?」

泰葉「……それ、考えたことなかった……」


ごーん……

  ごーん……


李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「…………」


李衣菜「よし、私にはヘッドホンがある!」スチャッ

加蓮「あっずるい!」

李衣菜「あーあー聞こえなーい」

泰葉「……んしょ。うん、お布団の中なら鐘の音も聞こえない……」モゾモゾ

加蓮「あ、ちょっと泰葉まで! 私も入れてーっ」ボフッ

泰葉「あ、待って待って加蓮っ、ふあ!? ど、どこ触ってるの!」

加蓮「はぁあったか♪ ……うん、ほんとに聞こえないね。安心安心」モゾモゾ…

泰葉「もう……もっとこっち、落ちちゃうから……」

加蓮「うん♪」ムギュ


李衣菜「…………」ポツン


李衣菜「……私もーっ!」ボフー

泰葉「きゃあっ! お、重い李衣菜……!」

加蓮「ふふ、さみしがりーな……♪」



―――布団の中


李衣菜「おぉ……あったかいね」

加蓮「んー、除夜の鐘聞こえなくなったのはいいけど……眠くなってきたかも……」ウト…

泰葉「あっ、加蓮ダメ。まだ歯磨きしてないのに」

加蓮「んん……」ムニャ

李衣菜「うりうりうり」ムニムニムニムニムニ

加蓮「ぅにゃにゃにゃにゃ!?」

李衣菜「あははは! にゃにゃにゃにゃだって、あははははっ♪」

加蓮「……りーなぁぁぁああっ!」

泰葉「もう! うるさいっ!」

李衣菜「ひーっ、ひーっ……わ、笑った笑った。あはっ」

加蓮「こ、このぉっ……!」

泰葉「……2人とも、時計見てみたら?」

李衣菜「へ?」

加蓮「……あ」


0:01


李衣菜「……あ、あけおめ?」

加蓮「こ、ことよろ?」

泰葉「はぁ……あけましておめでとう。煩悩どころの話じゃなかったじゃない……ふふっ」

李衣菜「わー、加蓮で遊んでたら年明けちゃうなんて」

加蓮「また1年間いじられる運命にありそうですごくイヤなんだけど……」

泰葉「ふふ。とにかく、今年もよろしくね」

李衣菜「うん、よろしくっ」

加蓮「えへへ……去年と同じように、どんなときも仲良しでいようね」

泰葉「ええ、もちろん……♪」

李衣菜「へへ、当然でしょ!」

李衣菜「――んー、年明けてもあんまりやること変わんないよね。歯磨きして、寝間着に着替えて、ってさ」

泰葉「ふふ、まぁそれはね。あ、でも……朝起きたらお雑煮だから」

李衣菜「あ、そっか! へへ、楽しみ楽しみ♪ ……ね、加蓮?」

加蓮「…………ん……たのし、みぃ……」ムニャ…

泰葉「……もう夢の中みたい」クス

李衣菜「あはは……着替えまで自分でできたんだし、上出来だよ」

泰葉「くすっ、そうね……♪」

加蓮「むにゃ……」

李衣菜「朝……起きたらさ……」

泰葉「うん……」

李衣菜「……また、あたらしい……たのしいまいにち、が……」ウト

泰葉「……ん……」ウトウト…

李衣菜「……おや、すみぃ……」

泰葉「おやすみ……なさい……」

加蓮「ぉや……、すみぃ……。ふふ……♪」


―――

――



―――新しい朝


李衣菜「もっちもっちもっち」

加蓮「もっぐもっぐ」

泰葉「はぁ、2人とも……そんなに慌てなくてもいいのに」

李衣菜「むぐむぐおいしい」

加蓮「お雑煮さいこーはぐはぐ」

泰葉「ふふっ、まだたくさんあるからね」

加蓮「んー♪」

李衣菜「もぐもぐ……ね、初詣行く?」

泰葉「あ、うん。行くつもりでいるけど」ハフハフ

加蓮「えー、寒いから遠慮したいなぁ」

李衣菜「じゃあ泰葉と行ってこよっと♪」

泰葉「お留守番お願いね、加蓮」

加蓮「もうちょっとねばってよそこは! ふふ、もー……♪」

泰葉「風邪ひかないようにしないと」

李衣菜「厚着して、ホッカイロ貼って!」

加蓮「……全部私に向けて言ってない?」

李衣菜「え? 当たり前じゃん」

泰葉「むしろ加蓮以外に言う必要ないでしょう?」

加蓮「やっぱり留守番してていい?」

李衣菜「強制!」ガシッ

泰葉「連行っ」ムギュッ

加蓮「あー捕まったー。……ふふ♪」

李衣菜「――あ、そうだ! Pさんとちひろさんも誘おうよ!」

泰葉「え、急だけど平気かな……」

加蓮「もしもしPさん? あのね――」

泰葉「ってやること早い……!?」

李衣菜「さっすが加蓮♪」

加蓮「……うん、よろしくね。うん、はーい」

李衣菜「なんだって?」

加蓮「うん、来てくれるって! 私たちが電話してくるの、なんとなく分かってたみたい」

李衣菜「えっ、……あ、あはは……バレバレってことかぁ」

加蓮「ちひろさんにも連絡してくれるって言ってたよ。だから先に行ってて、って」

泰葉「ふふ……それじゃ、行きましょう!」

加蓮「うん! 新しい1年、いい年にしようねっ」

李衣菜「へへっ、私たちならできるよ! やるぞーっ!」


「「「おーっ♪」」」



おわり

というお話だったのさ
書き納め(3回目)

って新年だああああ
あけましておめでとう!!
今年もだりやすかれんをよろしくお願いします

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