未央「昨日アニメ観たんだけどさ」凛「へえ」 (40)

凛「どんなアニメ?」

未央「ロボットが出てくるアニメ」

凛「ロボット……難しいやつ?」

未央「ううん。昨日観た限りはわかりやすい感じだったよ。戦争モノっていうよりは、やっつける、って感じだったし。まあ後半はどうなるかわからないけどね。すごかったよ、味方のロボットが敵を殴る蹴る吹っ飛ばすで」

凛「え? 武器は? ロボットなんだし、ビーム撃ったりとか」

未央「無かったよ。敵は銃撃ってたけど。あ、でも天使っぽく進化したらビーム出せるようになってたよ。空も飛ぶし」

凛「進化?」

未央「うん。でも相変わらず殴る蹴るはしてたね」

凛「へえ……なんだか派手なんだね」


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未央「あとね、主人公がいい子だったよ」

凛「いい子?」

未央「なんか、クリスタルみたいなのの中から女の子が出てきて、いきなりロボットに襲われちゃうんだけど」

凛「うん」

未央「会ったばっかりの女の子を抱えて助けてあげるんだよ。すごくない? その子が何者か、まったくわからないのに」

凛「すごい……けど、そうしないと話が始らないし」

未央「それを言っちゃあおしまいだよしぶりん……。あ、でもさ」

凛「ん?」


未央「ちょっと想像してみて。クリスタルみたいな石の中からさ」

凛「うん」

未央「天使の羽みたいな服の、ちっちゃいしまむーがさ」

凛「なんで卯月?」

未央「いいからいいから。その、しまむーがロボットに襲われたらさ。やっぱり助けちゃわない?」

凛「小さい、卯月が……私に助けを……」



凛「……………………」



凛「……うん。助ける。絶対。仕方ないよ、うん」

未央「ごめん、しぶりん。煽った私が悪かったから、鼻血拭いて」




―――第一話 ルシファーな卯月の場合 おわり―――


―――次の日―――



未央「昨日アニメ観たんだけどさ」

凛「うん」


未央「六つ子が主人公のアニメでー」

凛「うん」

未央「すごかった」

凛「うん?」

未央「なんか、もうめちゃくちゃですごかった。一話が」

凛「……よくわからないんだけど」

未央「あ、もちろん二話からも面白いよ。下品なのも多いけど。笑った笑った」

凛「……あ、ギャグアニメってこと?」

未央「そうだよ?」

凛「ちゃんと説明してくれないとわからないんだけど」

未央「ごめんごめん」


凛「なんてアニメなの?」

未央「昔やってたアニメの新作なんだって、26年前くらいの」

凛「それは……ずいぶん前だね。私たち生まれてない」

未央「そうなんだよね。あ、でもギャグはわかると思うよ。ほら。シェーってやつ」

凛「あ、それならなんとなくわかるかも」

未央「でしょ?」

凛「ふーん……でも、六つ子か。私は一人っ子だからよくわからないかな」

未央「私も兄弟いるけど、さすがに六人は想像つかないなー。でもきっと、すごく賑やかだと思う!」

凛「確かに」

未央「だって、例えばしまむーが六人いたらさー」


凛「また? だからなんで卯月?」


未央「しかも全員ニートでー」


凛「なんでニート?」


未央「名前はー……じゃあ、睦月から水無月とか」

凛「ねえ聞いてる?」



未央「小学六年生並のメンタル、長女『睦月』!」

凛「ねえちょっと」


未央「カッコつけだけどガラスハート、次女『如月』!」

凛「それ他のアイドルと被っちゃってるけど」


未央「比較的常識人のツッコミ役、三女『弥生』!」

凛「それも被ってるけど」


未央「マイペースで皮肉屋、卑屈な四女『卯月』!」

凛「本人やっと来たのに、なんでそんなにネガティブ?」


未央「核弾頭的に明るい五女、狂人『皐月』!」

凛「狂人って」


未央「甘え上手な腹黒、六女『水無月』!」

凛「いちいちデメリットがつかないとダメなの? この姉妹は」



未央「と! いう感じの六人姉妹! どう!?」

凛「いや、どうって……」


凛「………………」


凛「……うん。わかった」

未央「しぶりん?」

凛「つまり、全員私が養えばいいってことだよね」

未央「あれ、そうなる?」

凛「未央のおかげで、私の中の母性が目覚めてしまった」

未央「寝た子を起こしてしまったか……」

凛「でも……んー……私一人の稼ぎで本当に大丈夫かな?」

未央「いやそんな真剣に考えなくても……。例えだから、ね?」

凛「…………」

未央「…………」


凛「うん。わかった」

未央「お」


凛「結婚しよう、未央。いっしょに六人の卯月を育てよう」

未央「しぶりん、そのプロポーズの言葉は無いと思う」



―――第二話 よろしくおあがり島村さんの場合 おわり―――

―――次の日―――


未央「昨日アニメ観たんだけどさ」

凛「また? 最近よく観てるね」

未央「うん。なんかハマっちゃって」

凛「今度はどんなの?」

未央「仮面とマントつけて槍を持ってる主人公が、ちっちゃい女の子を助けるアニメ」

凛「……ん?」

未央「ざっくり言うとそんな感じ。騎士のアニメ」

凛「ざっくりしすぎだよ。それじゃ騎士じゃなくて、ただの変質者みたいだけど」


未央「…………」


凛「?」

未央「あながち、変質者でも間違ってないかも」

凛「え」

未央「いや! ちょっと変わった体質のせいで誤解されやすいってだけだから! それに、女の子のピンチに颯爽と駆けつける騎士様とかカッコいいじゃん!」

凛「うーん……まあ確かに、ヒーローっていったらそんな感じだよね」

未央「でしょ? ほら、私たちも女子だしさ。白馬に乗った王子様とか憧れない?」

凛「今日はずいぶん乙女だね、未央」

未央「なっ!? 普段から乙女度MAXのつもりだよ!?」

凛「冗談だよ。ふふ」



未央「もー、しぶりんめー……。それともなんだね? しぶりんはそんな乙女チックな妄想はしないのかね?」

凛「え? えっと……それは、まあ、ないこともないけど」

未央「ほらほら、言っちゃいなよー。どんな妄想するんだい?」

凛「ええ? うーん……」

未央「あっ、でもしぶりんクールなタイプだから、むしろナイト様のほうが似合ったりして!」

凛「えっ? 私がナイト?」

未央「なーんてっ。冗談冗談! あ、もちろん女っぽくないって意味じゃないからね?」


凛「…………」



未央「……しぶりん? えっと、怒った?」


凛(私がナイト役……ということは……)



凛「……つまり……私が、こう……それで卯月が……こうで……そして、こうなって」



未央「しぶりん? おーい」


凛「……うん、悪くない。悪くないよ。私がナイト。いいんじゃないかな」


未央「いや、よくないから。悪いから。アイドルがしちゃいけない顔になってるから。どんな妄想したらそんな顔になるのしぶりん」



―――EpisodeⅢ ウヅキ・アンド・シブヤスの場合 おわり―――


―――次の日―――


未央「昨日観たアニメはねー」

凛「あ、もう私が聞かなくても話し始めるんだ」

未央「ダメ?」

凛「……いいけどさ。それで、どんなの?」

未央「かわいいアニメだったよ」

凛「へえ」

未央「心がぴょんぴょんした!」

凛「ぴょんぴょん?」

未央「あ、違った。ぽいぽいだったかな? なんだっけ?」

凛「いや、こっちに聞かれても。つまりどういうアニメなの?」

未央「女の子たちが喫茶店で働くアニメ」

凛「まったくわからなかったんだけど」


未央「いやあ、とにかくかわいくてさ。」

凛「ずいぶん気に入ったみたいだね……それで? 次はどんな卯月?」

未央「……うん。そういう話に持ってくつもりではいたけど、まさかそっちから求められるとは」

凛「さすがにこれだけ連続してればわかるよ。さあ、どんな卯月? どんな卯月が来たって、私は負けないよ」キリッ

未央「勝ち負けなの? ……ま、まあいいや。えっとね、じゃあ今回はー……喫茶店の、ウェイトレスなしまむーとか!」

凛「ウェイトレス、か」

未央「……ってごめん、普通だよね。アニメは面白かったんだけど、あんまりシチュエーションが浮かばなくてさ」

凛「…………」


未央「しまむー、メイド服着たことあるし、普段もふりふりな衣装着るもんね。もうちょっと斬新なネタの方がよかったよねー」


凛「…………」




未央「……しぶりん? どうかした?」


凛「ん。今カウンターに座って、卯月がコーヒー淹れるところ」

未央「しぶりんにはなにが視えてるの? コワいよ?」


凛「大丈夫。結構上手だよ? だいぶ練習したんじゃないかな。ふふ」

未央「しぶりん? しぶりん? ねえ、しぶりん?」ユサユサ




―――第4羽 ひと目で尋常じゃないえへ顔だと見抜いたよ の場合 おわり―――

―――次の日―――


未央「しぶりん、昨日観たのもすごかったよ! 核攻撃にも耐えられる装甲! 100門近くある砲塔! 戦争の歴史を変えた超大型機動兵器!」

凛「ふうん。戦争を変える兵器、か」

未央「どう? ロマンに溢れてるよね!」

凛「そうだね。でも大丈夫。卯月の笑顔は戦争を無くせると思うよ?」


未央「……いや、そんな真顔で言われても」



―――第四話 笑顔のシンデレラは舞台で踊る 346プロ制圧戦Ⅰ の場合 おわり―――


―――次の日―――


未央「えい」モミッ

凛「っ!?///」バッ

未央「あー、やっぱりなにも起きないか」

凛「な、なに? なんのマネ?」

未央「いや、こうするとね、武器に変わっちゃうっていうウィルスが流行ってるんだって。女の子の間で」


凛「っ!?」ガタッ


未央「……なーんて。アニメの話だけど―――しぶりん? ちょ、どこいくのしぶりん!?」


凛「卯月もそのウィルスにやられてるかも! 確認してくるっ!」ダッ



未央「いやアニメ! アニメの話だから! ていうかホントはわかってるでしょ!? しぶりーんっ!!」



―――第6話 処女じゃありません、島村です の場合 おわり―――

―――次の日―――


未央「しぶりん、ワンパンチだけで怪人をやっつけるヒーロー! かっこよくない!?」

凛「卯月のダブルピースは、一撃で死ねる」

未央「……しぶりん」



―――♯07 最強の笑顔 の場合 おわり―――


―――次の日―――


未央「しぶりん! その1、君にシンクロするパーソナルエンタメアイドル、ガンバリマスドール!」

凛「?」


未央「その2、もっともっと前に出るロボっ娘アイドル、ミス・ポンコツアンドロイド!」

凛「……なんの話?」


未央「その3、正体不明の奇獣、うづパカ!」

凛「だからなんの―――」


未央「さあ、選ぶとしたらどのしまむー!?」

凛「え、卯月のことだったの?」

未央「さあ、どれ!?」

凛「いや、どれって……」

未央「選べない? やっぱり」


凛「……まあ、強いて言えば」

未央「うん」


凛「足りない。もっと、あるだけ卯月持ってきて」

未央「……。全部、って答えると思ったんだけどな」



―――第八話 ウルトラスーパーウヅキタイム の場合 おわり―――


―――次の日―――



未央「あなたはそこにいますか?」

凛「いつも私の心の中には卯月がいるけど」

未央「アッハイ」



―――第九話 卯月~えがお の場合 おわり―――


―――次の日―――


未央「しぶりん。もしも、しまむーが重い病気になっちゃったとして、世界で唯一治せるお医者さんから治療費一億円かかるって言われたら、どうする? やっぱりしぶりんなら払う?」


凛「…………」


未央「……しぶりん?」


凛「……未央。そんな例え話、私は聞きたくない」


未央「え」


凛「例え話の中だとしても、卯月を悲しませたり、苦しませたりすることは絶対にしたくない。病気になる話なんて、もってのほか。私は、卯月にずっと、笑顔でいてほしい」

未央「あ―――」


凛「……未央は、どう?」


未央「……こんな例え話、悪趣味だったよね……。うん、私も。私もしまむーには、笑顔でいてほしいっ!」

凛「それを聞きたかった」

未央「しぶりん……」


凛「…………」


未央「…………」






未央「いや、なにこれ」






―――第十話 アイドルはどこだ! の場合 おわり―――


――――――



凛「最近、未央がよくアニメの話するんだ」


奈緒「えっ、本当か!?」

加蓮「へえ。なんか意外かも。前からそうだっけ?」


凛「ううん。ひとつ面白いの見つけたら、他のアニメも気になったみたい。色々観てるみたいだよ」


奈緒「そうなのか。なに観てるんだろう……」

加蓮「気になる? あ! なら今度、オススメでも紹介してみたら? 奈緒の一押しアニメとかさ」

奈緒「え」


凛「うん、いいと思う。奈緒のオススメなら確実かな」


奈緒「そ、そうか?んー……よし。わかった。次会うときまでに選んでおく。そうと決まったら、どんなのがいいか考えないとな……」ブツブツ

加蓮「……そんなに難しいの? 奈緒が面白いと思ったのを紹介すれば―――」

奈緒「いや! せっかくオススメするんなら最高と思えるものを観せたい! 妥協はできない!」

加蓮「おお、奈緒が燃えてる」


凛「それだけ真剣に選んでくれるなら、未央も喜ぶよ」


奈緒「ああ、任せとけ!」


凛「ふふ……あ、そうだ奈緒。私にも、何かオススメのアニメ教えてくれない?」


奈緒「え? 凛にも?」


凛「うん。未央の話聞いてたら、私も色々観てみたくなって」


加蓮「おお。凛までアニメの虜に。よかったね奈緒! みんなで上映会だ!」

奈緒「なんだよ上映会って……。うーん、凛にオススメなアニメか。んー……」


凛「……どう?」


奈緒「そうだな……ちなみに、凛はどんなのがいいんだ? なにか好みとかないか?」


凛「私? 私は……うーん……」


奈緒「…………」

加蓮「…………」



凛「とりあえず、未央の話を聞いててわかったのは」


加蓮「うん」

奈緒「なんだ?」





凛「私は、卯月のことが大好きってことかな」キリッ



奈緒「知ってる」

加蓮「知ってる」



奈緒「あと鼻血拭け、凛」

加蓮「よだれもね」






―――(2015年秋アニメ+卯月)×凛 の場合 終わり―――


おわりです。ありがとうございました。

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