にこ「虎太郎のタイムアイドル物語」 (218)

ラブライブ以外のキャラも登場します

・・・
宇宙には、始まりはあるが、終わりはない。無限。
星にもまた、始まりはあるが、自らの力をもって滅び行く。有限。
英知を持つものこそ、もっともおろかであることは、歴史からも読み取れる。

これは抗える者たちに対する、神からの最後通告であると言えよう。


・・・
第0話 穂乃果の高校受験

これは私、高坂穂乃果が高校入学直前の中学3年生の3学期、高校入試の日のことでした。

成城にある中堅私立高校の受験のために、小田急線に乗っていたときのこと。

私の乗った電車が下北沢を発車したときには、既に気づくのが遅れてました。この電車が、成城学園前に止まらないことを。

「快速急行、藤沢行きです。次は、新百合ヶ丘、新百合ヶ丘。」

穂乃果「新百合ヶ丘って、成城学園前より先だったよね? 成城学園前に停まらないんだ・・・」

穂乃果「どうしようー!」

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穂乃果「海未ちゃん、電車に乗り間違えちゃったよ。今乗ってる電車、下北沢の次は新百合ヶ丘だって。」

海未『快速急行に乗ってしまったのですか。だからあれほど乗る電車の種別、行き先を確認しなさいと言ったのに。』

穂乃果「そんなこと言われても、私これからどうすればいいの?」

海未『新百合ヶ丘まで行って戻ってたらおそらく間に合わないでしょうね。受験はあきらめるしか・・・』

穂乃果「そんなの嫌だー」

海未『そんなこと言ったって、止まらない駅に電車を途中で止めてもらうわけにもいかないし。。』

穂乃果「電車を途中で・・・、何年か前にそんなニュースあったよね。」

海未『はい、京葉線や東北新幹線で受験生が乗り間違えて、電車を本来止まらない駅に止めてもらったことがあります。私もあまり好きじゃありませんが、こうなったら仕方ありません。』

穂乃果「私、運転手さんにお願いして停めてもらうよ。」

海未『あなた、本当にやるんですか? そんな恥ずかしいこと・・・』

穂乃果「運転手さん、成城学園前で降りたかったのに電車を乗り間違えてしまったんです。止めて下さい。」

運転手「困るよ、いきなりは。それにこのことは車掌のほうが・・・」

穂乃果「お願い、このままじゃ受験に遅刻しちゃうんです」 ポロポロ

穂乃果が泣いて臨時停車を頼んだ。
運転手さんも穂乃果の涙に、受験生を見捨てることはできず、登戸駅に臨時停車した。

その後穂乃果は成城学園前に戻り、ギリギリ入試には間に合った。
とはいえこの学校は実は滑り止め。第一志望だった音ノ木坂学院にも合格し、結局この温情停車は無意味と化したようなものだった。

なんともずっこけたオチだったが、この話がただの笑い話になるか、ハッピーエンドになると思ったら大間違いだった。
私はこの温情停車が想像もしなかった事態につながってしまったことを、生涯後悔することになったのだ。

第0話 レッド☆トレイン~真っ赤な電車~

人の数だけあると言われる都市伝説。あなたはこんな噂をご存知ですか?
東京の地下鉄には、絶対に乗ってはいけない恐怖の列車が走っている。
その列車の名は、レッド☆トレイン、真っ赤な電車。

私がこの噂を聞いたのは3年生が卒業して、新学期の教室でのことだった。
最近インターネットにハマっている穂乃果ちゃんが、ネットで奇怪な噂を知ったと話しかけてきたのだ。

穂乃果「こんな噂知ってる?」

穂乃果「東京の地下鉄には、絶対乗ってはいけない恐怖の列車が走っているそうだよ。」

海未「絶対乗ってはいけないってどういうことですか?回送列車のことですか?」

穂乃果「違うよ」

ことり「女性専用車のこと?いや、私たち女だし。」

ことり「まさか男性専用車が出来たとか言うの?」

穂乃果「そんなんじゃないよ。その程度の電車だったらまだ可愛いもんだよ。」

穂乃果「噂によると、その列車に乗ると殺されてしまうらしいよ。」

ことり「誰に?」

私は思わず笑ってしまった。

ことり「穂乃果ちゃんはそういう出所のわからない噂話が好きだねー」

ことり「その噂を流して人は今頃どっかで喜んでいるよ。」

海未「・・・」

ことり「あれ、海未ちゃん怯えてるの?」

海未「怖がるの早すぎだよ。ここからが本番なのに。海未ちゃんは怖がりだな。」

穂乃果「その列車はとにかく車体が真っ赤な車両で、東京の地下鉄なのに1両編成の2ドア車。」

ことり「真っ赤?京急みたいに?」

穂乃果「うん、京急に近いかな。」

海未「名鉄もですよね。」

穂乃果「そうだね。もっと近いのは、戦車道の聖地を走ってる電車。」

ことり「戦車道の聖地?」

穂乃果「鹿島アントラーズのホームグラウンドの最寄駅もある。」

海未「鹿島臨海鉄道のことですか?」

穂乃果「うん、それ。鹿島臨海鉄道をイメージすればいいって。ちょうど鹿島臨海鉄道も1両編成だし。」

ことり「わたしは鹿島臨海鉄道ってどんな電車だったか思い出せないけど」

穂乃果「そしてその列車には誰も乗っていない。運転手さんはいるけど暗ーい顔をしてる。」

穂乃果「でも誰かが乗るまで発車しないみたい。」

ことり「それって誰も乗らなかったらどうなるの?」

穂乃果「ずっとそのホームに止まったまま」

ことり「じゃあ次の電車は入ってこれないじゃん。」

穂乃果「そこは不思議なんだけどね。」

穂乃果「しかもその列車の行き先表示には行き先が表示されず、「レッド☆トレイン」って方向幕が出てるからますます不思議なんだ。」

穂乃果「ねえ、面白そうでしょ?」

穂乃果ちゃんは目を輝かせながら生き生きと話し続けた。

穂乃果「この話を穂乃果が初めて聞いたとき、写真に取って新聞部の人に提出しようかな、と思ったんだ。」

穂乃果「まあ新聞部の友達に話したら信じてくれなかったけどね。」

穂乃果「その電車を一目見ようと最近ずっと待ってるんだけど、なかなか来なくてね。」

海未「そんな電車来るわけありません。」

ことり「穂乃果ちゃん・・・」

私も最初はノリノリだったけど、少し呆れてきた。

穂乃果「今度の休み、ことりちゃんと海未ちゃんも別の駅で一緒に探してくれないかな。」

海未「やりません。来年受験なんだからそんなくだらないことやってる暇があったら勉強しなさい。」

ことり「わたしは、一緒に待ってみるよ。1回だけなら。」

穂乃果「おお、さすが我が親友!」

ことり「その列車が走ってるのって何線なの? 赤といえば丸ノ内線だったよね。」

穂乃果「いや、日比谷線。」

ことり「そうなんだ。」

穂乃果「発見したらぜひ電話して。」

穂乃果ちゃんはそういうと、手を振りながら足早に帰っていった。

海未「穂乃果っていつからあんなくだらない噂話を信じるようになったのでしょう。」

別の日 日比谷線秋葉原駅

穂乃果ちゃんは六本木駅で待機することにした。

前日にインターネットの検索サイトを使ったりしていろいろその情報を探してみた。
しかし、どれも穂乃果ちゃんが言っていた以上の情報はなかった。

その赤い電車は来ない。刻々と時間だけが過ぎていく。
秋葉原駅では、乗客が乗り降りしていく。いつもの当たり前の風景が展開されるだけ。
かれこれ3時間は経っていた。

もともと信じていなかったこともあり、次の電車に乗って遊びに行った。


翌日、再び日比谷線秋葉原駅

今日はこれから六本木に向かうことにした。
噂のことなんかすっかり忘れていたそのとき、その列車は突然ホームに入ってきた。

スー

ことり「あっ!」

日比谷線秋葉原駅に突然現れた赤い電車。あまりの不意打ちの事に驚愕してしまった。

ことり「ほ、本当に来た・・・」

東京の地下鉄なのに1両編成、2つドア。そして銀色のステンレス車両ではない、真っ赤なっ車両。
車内には赤字ローカル線のように誰も乗っていない。
そして行き先表示機には行き先ではなく、「レッド☆トレイン」の文字。
穂乃果ちゃんは鹿島臨海鉄道に似てると言ってたけど、私は昔走ってた京急2000形の2ドア車に見えた。

私はその車両の写真を取った。

ことり「とりあえず穂乃果ちゃんに電話しよう」

『プルルルル』

『プルルルル』

ことり「出ない・・・。」

いくら待っても出なかった。

ことり「留守?まさか携帯持って行かなかったの?普段はすぐ出るのにおかしいな。」

ことり「それにしても本当に誰も乗ってない。そして誰も乗らない。そしてずっと止まったままで発車しない。」

到着してから15分が経った。ローカル線ならともかく、東京メトロ日比谷線は日中でも5分に1本電車が来る。

ことり「このままこの電車が止まってたら次の電車が入って来れないじゃない。」

ことり「そうだ!」

そのとき、この電車についての一番の噂を思い出した。
この電車に乗ると殺される・・・。

ことり「本当なの?」

嫌な妄想が頭を巡り、鳥肌を立たせる。

ことり「なわけないよね。東京の地下鉄の車内で人を殺せるわけないし。」

ことり「どうせ新型車とかでしょ。わたしの知らない。じゃあ乗ったらどうなるんだろう?さすがに[ピーーー]まではできないでしょ。」

ことり「乗ってみよう」

変な好奇心が生まれ、自分が自分でなくなるような感じがした。
正確な判断が取れているのだろうか。

ことり「いや、大丈夫だ。どうせ普通の電車だよ。」

恐る恐る電車の中に入った。するとドアが閉まり、電車が動き出した。
秋葉原を出て、小伝馬町、人形町、茅場町と電車は止まっていく。
乗客は私1人だけ。そして誰も乗り降りしなかった。

ことり「誰も乗らないのが奇妙だけど、やっぱり普通の電車じゃん。」

ことり「殺されることはないけど、誰も乗らない。やっぱりそういう仕掛けだったんだ。」

ことり「やっぱりあの噂嘘だったんだ!」

さっきまでの緊張がほぐれた気がした。
そして六本木の1つ手前、神谷町を過ぎたときのこと。降りる準備をしていたとき、突然異変が。

「まもなく、南栗橋、南栗橋、終点です。」

ことり「南栗橋?なんで?」

ことり「南栗橋って北千住の先だよね・・・中目黒方面に乗っていたはずなのに・・・。」

ことり「いや、そもそもこの電車に行き先は書いてなくて『レッド☆トレイン』ってなってたけど。」

ことり「勘違いして間違えて北千住方面に乗っちゃったのかな?」

ことり「でも確かに秋葉原の次、小伝馬町、人形町って、中目黒方面に向かってた。もしかしてうっかり寝過ごして反対方面に折り返しちゃったってこと?」

ことり「確か日比谷線の直通電車の最長は南栗橋行きだった。その可能性はある。」

ことり「とりあえず次で降りて引き返そう。」

東武日光線 南栗橋

「まもなく3番線に、地下鉄半蔵門線、東急田園都市線直通、急行中央林間行きが参ります。」

とアナウンスでは流れたのだが・・・

ことり「またこの電車?」

入ってきたのはさっき乗っていた赤い電車だった。

ことり「いいや、急行って言ってるんだし乗ろう。乗り換えなきゃいけないけど。」

そして北千住の1つ手前、西新井を過ぎたときのこと。またしても異変が

「まもなく、東武日光、東武日光、終点です。」

ことり「日光?」

ことり「わたしが乗っていたのは中央林間行きでしょ?仮に乗り過ごしたとしても、そこから折り返して日光まで一本で行く直通電車なんてなかったはず。」

ことり「どうして?」

ことり「また折り返さなきゃいけないの? 日光まで乗り過ごしちゃったら時間かかるよ。」

そして折り返し乗った電車はまたしても赤い電車

その電車が日光を出発した直後、突然車内が揺れ始める。
そしてキラキラした、異世界へのトンネルの中のような車窓が映し出された。

ことり「え・・・。どうなってるの・・・」

ことり「やだ、降ろしてよー・・・」

私は直後に気を失った。

気がついたら知らない駅についていた。

ことり「ここはどこ?」

ことり「どうも知らない駅に来ちゃったみたい。どこにある駅なの?」

さっきまで昼間だったはずなのに、気がついたら夜になっていた。
駅のホームには長い伝言板のようなものがあった。
昭和時代にはよく駅で見かけたが、携帯電話の発達で姿を消したと言われる懐かしの伝言板が。
まるで昭和にタイムスリップしたかのような感覚を覚えた

ことり「なにこれ、全部人の名前?」

ことり「なんか気味悪いな。この駅もどこかわからないし、電車に乗って帰ろうかな。一体なんの名前なんだろう・・・」

ことり「あっ!?」

その伝言板の一番最後に書いてあった名前は・・・

ことり「高坂穂乃果・・・。」

ことり「穂乃果ちゃんの名前が一番最後にある!?」

ことり「なんなの一体?なんで穂乃果ちゃんの名前が?」

ことり「もういいや。早く帰ろう。なんかすごくやばいような気がする。」

ことり「折り返しの電車で・・・、いや、一旦駅員さんのところに行こう!」

ことり「!?」

ことり「動けない・・・。足が固まって動けない・・・。」

ことり「誰かがいる・・・。ことりの後ろに誰かがいる!!」

ことり「早くこの場から逃げ出したいのに動けない・・・」

ことり「やだ・・・いやだ・・・助けて・・・」

「キャー!」

その日の夜

『プルルルルル』

海未の携帯に電話が鳴る

海未「もしもし」

花陽「海未ちゃん、大変です!大変なことが起きてしまいました!」

海未「どうしたの花陽。わかった、次回のラブライブの知らせですね。」

花陽「そんなんじゃありません!穂乃果ちゃんとことりちゃんが・・・」

花陽「ニュースを見て。」

海未はテレビをつける

『今日夕方5時ごろ、東京メトロ日比谷線の秋葉原駅と六本木駅のホームで、女子高校生が遺体で発見されました。』

『所持品から、遺体は国立音ノ木坂学院3年生の高坂穂乃果さんと、南ことりさんであることが判明しました。』

『2人とも動脈が傷つけられており、出血多量で死亡したものと見られております。』

『警察は事件の可能性が高いとみて捜査しています』


海未「穂乃果・・・ことり・・・」

海未「いやー!」

そしてあの駅の伝言板には「高坂穂乃果」の後ろに「南ことり」の名前が追加されていた。

・・・
ここあ「高坂穂乃果と南ことりは、レッドトレインの犠牲になった。」

にこ「え?」

ここあ「高坂穂乃果と南ことりを助けたければ、イエロートレインに乗らなければならない。」

・・・
海未「穂乃果・・・ことり・・・」

にこ「あ、海未」

海未「・・・にこ、お久しぶりです。まさかこんな形で会うとは」

にこ「穂乃果とことりは、レッド☆トレインの犠牲になったそうよ。」

海未「レッドトレイン?」

にこ「東京の地下鉄にある、その列車に乗ったら殺されるという都市伝説。」

海未「穂乃果が言ってた奴ですか?そんなのただの都市伝説です。私は信じません。」

にこ「それが、イエロートレインに乗れば穂乃果とことりを助ける行けるって聞いたのよ。」

海未「イエロートレイン? そんなの誰から聞いたのですか」

にこ「ここあ」

海未「え?ここあちゃんってまだ小学生じゃありませんでした?」

にこ「うん、だから私も信じられない。でも騙されたふりしてやってみるしかないわよ。このままじゃどっちにしても穂乃果とことりは助からない。」

海未「わかりました。」

日比谷線秋葉原駅

海未「本当にイエロートレインなんてあるんですか?」

にこ「来た!」

スー

その列車は突然ホームに入ってきた。
それは文字通り黄色い電車。しかも1両編成2ドア、まるで非電化のローカル線みたい。車内には誰も乗っていない。
そして行き先表示機には行き先ではなく、「イエロー☆トレイン 過去」の文字。

・・・過去?

にこ「とにかく乗るわよ。」

ドアが閉まり、電車が動き出した。

「ようこそ。イエロートレインへ。」

誰?

それはある女の人の声だった。車掌だろうか?

「皆さんにはこれから、昨日の時間にご案内いたします。あなたがたのご友人を助けられるのに、ご協力できれば幸いです。」

海未「昨日の時間?」

そのとき、周りが光った。ある時空に飛ばされるかのように。

気付けばそこは、秋葉原駅前だった。

にこ「あれ?電車に乗っていたはずなのに?」

私は見慣れた人影を発見した

海未「穂乃果!、あなた無事だったんですね?」

穂乃果「無事?なんのこと?」

海未「昨日死んでしまったと聞いて」

穂乃果「私が死ぬわけないじゃん。それより、レッド☆トレイン、見つかった?」

海未「だからあんなの都市伝説で・・・」

海未「・・・穂乃果、レッドトレインが来ても、絶対に乗ってはいけませんよ。殺されちゃうんですから。」

穂乃果「あれ?海未ちゃん怖いの?」

海未「そんなことは・・・」

にこ「ねえ、携帯見たら、私たち本当に昨日に来ちゃったみたいよ。」

海未「本当ですか?」

日付を見ると、確かに1日前だった。

海未「ということは穂乃果は今日・・・」

にこ「絶対に阻止するのよ。」

穂乃果の後を追って、日比谷線秋葉原駅のホームへ。
すると・・・

穂乃果「あっ!」

それは私がさっき見た黄色い電車、イエロートレインと色違いの赤い電車だった。
これが噂の、レッド☆トレイン。

穂乃果は驚くとともに興奮していた。
いろんなところから写真を撮っていた。

穂乃果「本当に来たよ!レッド☆トレイン!」

にこ「ダメよ。これに乗ったら殺されるんだから。」

穂乃果「何言ってるの。そんなのわからないじゃない。」

穂乃果は私とにこの話を聞かずにレッドトレインに乗ってしまった。
そのとき、周りがまた光って、気が付くと私たちは秋葉原駅近く、さっきとは別の場所に。

にこ「どうやらさっきとの10分前に戻ったみたいよ」

海未「穂乃果を救出することに失敗したから、さらに前の時間に飛ばされたということですか?」

にこ「この際、穂乃果を秋葉原駅の日比谷線ホームに近づけないようにしよう。」

直後に私はまた穂乃果を発見。

海未「穂乃果、これからどこに行くのですか?」

穂乃果「あ、海未ちゃん。これから銀座まで買い物に」

海未「銀座ですか。それなら末広町の駅から行きましょう。」

穂乃果「え? 秋葉原のほうが近いんだけどな。まあいいや。」

こうして穂乃果を銀座線末広町駅に誘導することに成功。
すると、周りがまた光って、私たちは別の時空に飛ばされていく。

気が付くと、秋葉原近くの町だった。

海未「にこ、今日は何日?」

にこ「日付はさっきと同じよ。時間はさっきの1時間後。」

すると私はまた人影を発見した。

海未「ことり!あなたはここにいたんですね!」

ことり「海未ちゃん、どうしたの? 泣きそうだけど?」

海未「レッド☆トレインが来ても、絶対に乗ってはいけませんよ。」

ことり「レッド☆トレインって穂乃果ちゃんが言ってたの?もしかして海未ちゃん信じてるの? 私はとっくに忘れてたのに」

にこ「穂乃果のときと一緒ね。レッドトレインを見たら興味本位で乗っちゃうかもしれない。別の路線に誘導するのよ。」

海未「ことり、これからどこに行くのです?」

ことり「六本木だけど?」

海未「六本木のどの辺?」

ことり「六本木ヒルズだけど」

にこ「とりあえず新御茶ノ水に誘導するわよ」

海未「はい」

ことり「え?」

私とにこは、ことりを千代田線の新御茶ノ水に連れて行った。

海未「千代田線で日比谷まで行って、そこで乗り換えたほうが早いから。」

ことり「そ、そうだね。」

見事ことりをレッドトレインから遠ざけることができた。

にこ「いや、まだよ。日比谷でレッドトレインに遭遇してしまうかもしれない。」

海未「じゃあどうすれば・・・」

にこ「乃木坂なら・・・」


海未「あの、私これからミッドタウンに用事があるので、よかったら一緒にどうですか?」

ことり「別にいいけど、それだとどこの駅になるんだっけ?」

海未「乃木坂ですね。」

こうして私はことりを日比谷線から遠ざけることができた。


・・・
ことりと乃木坂で降り、ミッドタウンの近くに来たところで周りが光って、気が付くと私は自分の家に戻っていた。

海未「穂乃果とことりは助かったんですか?」

穂乃果とことりに電話をしたら、2人は生きていた。2人はレッドトレインに乗ったことは覚えていなかった。

ここあ「ご苦労だった。あなたの友達を助けてやったお礼として、もう一度イエロートレインに乗ってやってもらいたい仕事があるの。」

にこ「え?仕事?」


こうして矢澤にこは過去の時代に旅立った。過去の時代で私はある人と出会った。

ここあ「ここで路上ライブをやってほしい」

にこ「え?」

ここあ「無名歌手がよくやる路上ライブだよ。もちろんこの時代に君の名前を知るものはいないから安心してほしい。」

にこ「そうね。この時代のにこは小学生だし。でもそのせいで過去が変わって、タイムパラドックスが起きたりしない?」

ここあ「大丈夫。これは、既定事項ですから。」

にこ「10年前に流行った某京アニアニメの台詞みたいね。」


こうして私は初めての路上ライブをした。そこに寄ってきたのは・・・

にこ「あの人は・・・、もしかして如月千早さん?」

ここあ「そうだね。」

765プロ所属のアイドル、当時小学生の如月千早だった。

千早「お姉さん、なんて言うの?」

にこ「えーっと」

さすがに本名を使うわけにはいかない。

にこ「ジェーン・スミス」

これも某京アニアニメで使われた偽名じゃないか。

千早「へえ、外人さんか。」

そういえば穂乃果がニューヨークで謎の歌手に出会ったと言っていた。
この千早ちゃんに今の私も同じように見えてるのかな。

路上ライブだけをやって私は未来に帰っていった。どんな目的があったのかも知らずに。


第0話 終わり

・・・
第1話 突然の事故

2024年11月16日
1997年に日本がワールドカップフランス大会のアジア第3代表決定戦に勝利し、悲願のワールドカップ出場を決めた日から丁度27年が経ったこの日。

俺、中学1年生の魔法ヶ沢京太郎、本名矢澤虎太郎は広島で行われるイベントに向かおうとしていた。途中友人と待ち合わせるために福岡に立ち寄る予定だった。

羽田空港

ここあ「虎太郎も、にこお姉ちゃんみたいになれるといいね。」

虎太郎「俺はあの姉ちゃんとは違ったタイプのアイドルを目指してるんだぞ。」

ことり「あ、虎太郎君」

虎太郎「あなたは元μ'sのことりさんでしたよね?」

虎太郎「だが俺は虎太郎ではない。世界のアイドル、魔法ヶ沢京太郎だ!」

ことり「さすがにこちゃんの弟ということで、かなり痛いキャラになったんだね。」

ことり「それより大変なの。お姉ちゃん、こころちゃんとここあちゃんが、すごく慌てて探してた。」

虎太郎「ここあ姉ちゃんならここにいますけど?」

ことり「いや何言って・・・あれ? いつの間に・・・」

虎太郎「ここあちゃん、さっき私に虎太郎君の居場所聞いてたよね?」

ここあ「そんなの聞いてませんよ。今日この場所にことりさんが来てたことも初めて知りました。」

虎太郎「俺の居場所を探してた・・・」

虎太郎「さては貴様、まさか機関が送り込んだエージェントだな!」

ことり「機関、そんなのじゃないよ。わたしは本当にここあちゃんと話して・・・、勘違いだったのかな。」

虎太郎「もしもし、機関のエージェントにつかまった。南ことりという名のな。まあ問題ない、ここはなんとか切り抜ける!」

ことり「誰と話してるの?」

ことり「なんだ、携帯の電源オフじゃない。」

虎太郎「うわっはっは、特別に教えてやろう。その携帯は俺以外がさわると自動的に電源がオフになる、特殊仕様携帯なのだ。」

ここあ「独り言だよ。虎太郎には電話するような友達いないから。」

虎太郎「いくらなんでも友達がいないってことはねえよ。」

虎太郎「スクールアイドルの天才少女、次に会うときは敵同士だな! わっはっはっは!」


♪着メロ:僕らは今のなかで

虎太郎「って本当に電話がかかってきたぞ」

こころ『虎太郎、広島に行くのに福岡を経由するって本当?虎太郎

虎太郎「ああ、福岡空港で知り合いと待ち合わせがあってな。」

こころ「そこまでの飛行機って虎太郎』

虎太郎「羽田発17時30分のスカイマスター。」

こころ『まさかスカイマスター765便じゃないよね?虎太郎』

虎太郎「便名までは覚えてねえよ。航空券見ればわかるだろうが」

こころ『今空港の入り口にいるの、すぐ来て。虎太郎』

ビルの前にこころ姉ちゃんがいた。

虎太郎「スカイマスター、765便。確かにこころ姉ちゃんがさっき言ったやつだ。」

こころ「この飛行機、墜落するんだって。未来の世界からFAXが届いたってお姉さまが言ってたの。」

虎太郎「何、未来の世界から?」

こころ「これがそのFAX。」

『スカイマスター765便は墜落する。別の飛行機にするか、直接広島に行け。』

今でも世界各国で航空機事故は起きているが、日本では1985年の日本航空123便墜落事故以来、もう40年も死者の出た航空機事故は起きていない。。

虎太郎「100%信じるわけではないが、俺はこういう中二病じみたことも疑わないんでな。この手紙が嘘とは思えない。」

虎太郎「まあ俺も広島に行くのにわざわざ飛行機で福岡に行って、上りの新幹線で広島に行くのは面倒だと思ってたんだ。知り合いには1人で広島に行ってもらうことにするよ。」


チケットカウンター

虎太郎「福岡行きをキャンセルして、広島行きに変えていただけますか?」

カウンター「はい。」

航空券の変更手続きをした直後

虎太郎「・・・ん、なんなんだ?この感覚は」

そのとき、脳内に突然強力な威圧感を感じた。。

虎太郎「ひ、人が消えた・・・」

空港窓口から人がいなくなった。

虎太郎「なぜだ?羽田空港に誰もない? そんなバカな・・・」

そのときこころ姉ちゃんが・・・

虎太郎「こころ姉ちゃん、人が消えたよな。ここにいた人みんな・・・」

こころ「え?消えてないけど?」

虎太郎「だってほら・・・、あれ? 普通だ・・・」

そしてその夜

「ピコーンピコーンピコーン」

『羽田発福岡行きのスカイマスター765便がレーダーから消える』

虎太郎「なんだって!」

『番組の途中ですがここでニュースをお伝えします。』

『羽田発福岡行きのスカイマスター765便がレーダーから消え、墜落した可能性が強まっております。』

虎太郎「スカイマスター765便!あのFAXに書いてある飛行機、本当に墜落したんだ?」

スカイマスター765便は四国の山中に墜落し、乗客乗員606人全員が死亡。日本航空123便墜落事故を抜いて単独機では世界最悪の航空機事故となった。

虎太郎「俺が乗ろうとしてた飛行機が本当に墜落した。なんてことだ。姉ちゃんのおかげで助かった・・・」

・・・
それから3週間後の2024年12月8日。
俺、矢澤虎太郎はこの日、秋山という人物の会見に参加していた。

場所は、スクールアイドルミュージアムの8階。
かつてここには音ノ木坂学院の旧校舎があった。
老朽化による校舎移転にともない、改築され、あのμ'sを中心としたスクールアイドルの歴史や資料を展示する博物館が完成した。

虎太郎「にこ姉ちゃんが行ってた高校はここにあったんだよね。」

にこ「うん、懐かしいなあ。」

にこ「私が卒業した直後に校舎移転が決定したみたい。まさか校舎移転の費用が捻出できないことが、廃校の最大の原因だったなんてね。」

にこ「まあそれも私たちスクールアイドルμ'sのおかげで解決、廃校どころかこれ以上ない大黒字で移転もスムーズに進んだ。」

にこ「旧校舎の跡地にスクールアイドルミュージアムを建設することを提案したのも、私なのよね。」

虎太郎「発起人は穂乃果さんでしたけどね。」

にこ「まあ、そうね。」

ここあ「で、ここで何があるの?」

虎太郎「ここあ姉ちゃんはそれも知らずにここに来たと言うのか? 黒板に書いてあるだろ。」

ここあ「タイムマシン制作研究発表会・・・」

こころ「へえ、タイムマシンか。すごいね。」

会見

秋山「皆さんもSAO事件についてはご存知だと思います。ナーブギアをタイムマシンに使えないかと思ったのですが」

虎太郎「ナーブギアでタイムマシン? それじゃ仮想世界にしか行けないじゃないか・・・。」

虎太郎「こいつ茅場晶彦のバッタモンかよ。まさか関係者か? SAO事件が集結した今でも別の何かをやってるって噂もあるし。」

キリト「あの、矢澤虎太郎君だったね?」

虎太郎「あ、SAOをクリアしたという噂の桐ヶ谷君か。SAO事件の当事者である桐ヶ谷和人君がここにいるってことは、今回の会見の内容も知ってたってことかな?」

キリト「まあ、噂でね。世界を騒がせるのは茅場晶彦だけで十分だ。」


会見の後俺は秋葉原駅に向かった

海未「あなたは何やってるんですか。こうやってニートが出来上がっていくんですね・・・」

穂乃果「ニートニート言うなー!」

虎太郎「あの、どうかしましたか?こんなところで言い争いは・・・」

穂乃果「あ、君はにこちゃんの弟さんの、名前なんだって・・・」

海未「虎太郎君でしたね。」

穂乃果「あ、そうだった。」

虎太郎「元μ'sの穂乃果さんと海未さんでしたか。」

海未「あなたにはわからないでしょうけど、私と穂乃果は昔からこういう関係なので、穂乃果は情けないですから」

穂乃果「情けないってどういうことよ。そういう海未ちゃんこそ!」

虎太郎「仲がいいんですね。何よりです。」

俺はにこ姉ちゃんにメールを送った

『秋葉原のホームで穂乃果さんと海未さんを見た。仲良さそうだった。』

送信

虎太郎「なんだ・・・、まただ・・・、この感覚」

11月16日に羽田空港で感じた謎の威圧感が再び襲う


・・・
2024年12月8日午後

『本日、東京秋葉原のスクールアイドルミュージアムの屋上に謎の人工衛星が墜落しました。』

虎太郎「それにしてもなんなんだ。謎の人工衛星だと?」

虎太郎「先月のスカイマスター765便の墜落事故のニュースが人工衛星の影に隠れて空気化している。日本航空123便以来40年の国内で起きた航空機事故だっていうのになんなんだこの扱いの差は。しかもあのときは4人の生存者がいたが、今回は乗員乗客全員死亡だというのに。」

虎太郎「秋山博士の会見は中止になったって本当か?」

にこ「本当も何も、ミュージアムの屋上に人工衛星が墜落して最上階が壊れたんだから、会見は中止になるに決まってるでしょ。」

ここあ「虎太郎は『人工衛星に驚いて秋山が逃げたぞ、この意気地なしめ』なんて笑ってたけどね。」

虎太郎「俺は確かに秋山博士の会見に行ったんだぞ・・・」

虎太郎「中止になったんだとしたら、俺と姉ちゃんたちはあの日なんのために音ノ木坂学院旧校舎に行ったんだ?」

こころ「虎太郎とお姉さまは人工衛星が墜落したから野次馬に行ったんじゃない。わたしとここあは興味ないから行かなかったけど。」

にこ「もし会見が開かれてたら、あんたは人工衛星の下敷きだったわよ。」

ここあ「最初から中止になってたんだからそれはないよ」

なんなんだ、この記憶の相違は。まるで涼宮ハルヒの消失の、キョンみたいだ。

虎太郎「ネットで検索しても確かに秋山博士の会見は中止になっていた。俺は幻を見てたということか。」

ことり「あ、にこちゃんと弟さんの虎太郎君だよね。久しぶり。」

虎太郎「μ'sのことりさんか。」

ことり「私のこと覚えててくれたんだ。嬉しいな。そんな暗い顔してどうしたの?まるで洗脳されたみたいだけど。」

虎太郎「1つ聞きたいことがあるんですが、11月16日に羽田空港で会いましたよね?」

ことり「その日はスカイマスターの墜落事故があった日だよね? 確かに羽田空港にいたけど、虎太郎君にも会ってない。今回が3年ぶりくらいの再会じゃない。」

虎太郎「やっぱりそうなのか。」

ことり「私、3年間海外に留学してたから、知り合いが穂乃果ちゃんと海未ちゃんしかいないんだ。にこちゃんのアドレスも変わっちゃったみたいだし。よかったらにこちゃんの電話番号とメアド教えてくれないかな。」

虎太郎「姉にだまって勝手に番号を教えたら後で怖い。まあことりさんなら大丈夫だと思うけど。」

ことり「そう。じゃあ虎太郎君の電話番号とメアド教えてくれないかな。」

虎太郎「わかりました。今からいいますね。後でメールして下さい。」

♪着メロ:START DUSH

虎太郎「おお、早速」

『登録お願いね。』

虎太郎「それではまた今度」

続く

0話で期待してたのに、どうしてこうなった

>>32
このあとの伏線になるかもしれません

第2話 会見に行った、ような・・・

ここ最近、ネットに未来人を名乗る人物が現れた。その人によると

「時間は過去から未来へ流れる1本の線ではなく、無数の世界線が川のように存在する。」

「例えば3時間前に恭二が通り魔に殺されたとする。それを俺が未来から来て阻止したとする。すると恭二が殺された世界と、生き延びた世界、2つの世界に分岐するのだ。」

「また俺が過去に飛んで、Aという人物を殺したとする。するとAという人物がいた世界からいなかった世界に、世界線が移動する。そのとき人々の記憶は再構築される。Aという人物がいた世界の記憶は書き換えられ、Aという人物がいない世界の記憶が再構築されるのだ。」


・・・
この日、にこ、こころ、ここあの3人を研究所に招待した。その途中

にこ「佳織じゃない、にっこにっこにー。」

佳織「にこちゃん。」

こころ「この人は誰?」

にこ「私の大学の同級生の佐々木佳織。」

佳織「初めまして。」

佳織「にこちゃんってなんでも知ってるんだよね?」

にこ「何でもは知らないわよ。アイドルのことだけ。」

佳織「今、このゲームを探してるんだけど?」

その写真を見せてもらうと

にこ「うーん、見たことないわね。」

佳織「そう。」

にこ「なんかわかったら報告する。」

研究所

虎太郎「ようこそタイムアイドル部へ。俺は部長でこの部の創設者、世界と時間を支配するアイドル、魔法ヶ沢京太郎だ!」

ここあ「普通に矢澤虎太郎でいいでしょ。」

虎太郎「なんのことだ? 矢澤虎太郎は世間での仮の名前、ここでは魔法ヶ沢京太郎なのだ!」

恭二「俺はアイドル兼フリーター、鷹城恭二。」

冬馬「俺は315プロ所属、天ヶ瀬冬馬。」

虎太郎「タイムアイドル部の目的は、世界の支配構造の変革にある!」

ここあ「へえ、そういう団体なんだ。」

こころ「お姉さまとは違った意味の中二病だね。」

虎太郎「この研究所に来たあかつきに、3人にもタイムアイドル部に入部してもらおう。」

にこ「いきなりの勧誘?」

虎太郎「最低でも部員は10人はほしいところだ。μ'sを越えるために。」

にこ「人数が10人以上になっても越えたことにはならないって。」

虎太郎「そういえば、にこ姉ちゃんに3日前にメール送ったよね?穂乃果さんと海未さんを見かけたって奴。」

にこ「あれ1週間前届いてたよ。なんで虎太郎が穂乃果と海未に会ったのかわからないけど」

虎太郎「1週間前?そんな馬鹿な。3日前に送ったぞ。ちょっと見せてみろ。」

俺はにこ姉ちゃんのメールを見た。

虎太郎「ない・・・ない・・・。」

虎太郎「あった・・・。い、1週間前?」

虎太郎「なんで1週間前なんだ。3日前に送ったはずなのに。」

虎太郎「そういえばこころ姉ちゃんが、2週間後の未来からFAXが届いたとか言ってたな。あのFAXがなかったら、俺はスカイマスター765便に乗って死んでたんだよな。姉ちゃんは俺の命の恩人ってことか。」

こころ「そんなFAX送ったっけ? 覚えてるような、覚えてないような。」

虎太郎「ここあ姉ちゃんの記憶も曖昧になってるのか。」


恭二「3日前は休日だから、虎太郎・・・、魔法ヶ沢が出かけてたころ、俺がAWOをプレイしてた日だな。」

虎太郎「AWO?アザーワールドオンラインのというゲームのことか。」

冬馬「この世界と全く同じような仮想世界に行くことができるゲームらしい。」

虎太郎「それって過去とか未来とかか?」

冬馬「わからない。多分現代だろ。」

虎太郎「待てよ。このゲーム、FAXにつながってるんだよな?」

虎太郎「そのゲームをプレイしてくれ。」

恭二「わかった。」

虎太郎「これからメールを送る。」

「『魔法ヶ沢京太郎はかっこいい』と」

虎太郎「送信。」

すると思わぬ放電現象が

虎太郎「なあ、冬馬の携帯にメールを送った。見せてみろ。」

冬馬「わかった。」

虎太郎「『魔法ヶ沢京太郎はかっこいい』。日付は・・・、5日前に送られてる。」

虎太郎「今のメールは5日前に送られた。間違いない。このアザーワールドオンラインはタイムマシンだ!」


にこ「まさか・・・」

虎太郎「そのまさかだ。」

冬馬「俺は信じるぞ。そういうSF的展開も俺は信じる。」

虎太郎「さすが冬馬だ。」

そのときある訪問者が現れた

♪ピンポーン

虎太郎「誰だ?」

一夏「君が矢澤虎太郎君というんだよね」

虎太郎「本名はそうだが、ここでの名前は魔法ヶ沢京太郎だ。」

一夏「俺は織斑一夏という」

達也「僕は鹿目達也。」

一夏「なかなか興味深い研究をしてるようだね。君になら任せられそうだ。」

達也「今日は君たちにお願いがあって来たんだ。」

虎太郎「お願い?」

達也「インフィニットタイム・オンラインというゲームを探して、引き取ってもらえないか?」

虎太郎「インフィニットタイム・オンライン? 今流行のオンラインゲームか?」

一夏「そうだ。この時代の東京都千代田区のどこかにあるはずなんだ。」

達也「早くしないと悪の組織に取られてしまう。その前に君たちに引き取ってもらいたい。」

虎太郎「今この時代のって言ったか?」

一夏「いや、なんでもないよ。」

虎太郎「わかった。俺に任せろ!」

にこ「そう言ってもアテはあるの?口だけじゃないだろうな?」

虎太郎「それは・・・」

・・・
夕方

にこ「虎太郎ってこんな狭い部屋に寝泊まりしてるの?男3人で」

虎太郎「たまにな」

こころ「狭い部屋に男3人・・・」

ここあ「ごくり」

虎太郎「こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは何を妄想してるんだか」

研究所の隣にはアイドルショップがある。その店長が小泉花陽、副店長はその兄がやっている。

にこ「花陽、久し振りだね。」

花陽「にっこにっこにー。にこちゃん、久しぶり。今日はこころちゃんとここあちゃんも一緒なんだ。そして虎太郎君も。2階で何やってるのかな?」

虎太郎「忠告しよう。1つ、俺は虎太郎ではない。魔法ヶ沢京太郎だ。以後魔法ヶ沢君、あるいは京太郎と呼ぶように。1つ、俺の前でその挨拶は禁句だ。」

花陽「どうせならもっとかわいいあだ名にすればいいのに。」

にこ「あと虎太郎の友達の恭二君がここでバイトをしているんだよね。アイドルなのにフリーターって大変だな。」

小泉メガ兄ぃ「おい鷹城、マジメにやらねえとクビにするぞ。」

恭二「やば・・・」

小泉メガ兄ぃ「矢澤もうちの仕事の邪魔してんじゃねえ。」

虎太郎「だから俺は魔法ヶ沢京太郎だ。小泉さんもどうせ妹に欲情してるだけじゃないですか? 千葉の某シスコン主人公みたいに。」

小泉メガ兄ぃ「てめえ、俺が妹に欲情するわけないだろ。」

虎太郎「この世界一のアイドル、矢澤にこもついてくるけど?」

小泉メガ兄ぃ「は?誰がこんなぶりっ子なんか」

にこ「ぶりっ子じゃないもん。笑顔を届けるアイドルだもん。」

小泉メガ兄ぃ「本当お前ら兄弟は変な奴ばかりだな。花陽がこいつらと同類にならないか不安だ。」

・・・
翌日

♪着メロ 僕らは今のなかで

虎太郎「もしもし」

にこ「にっこにっこにー。虎太郎、ビッグニュースがあるよ。」

虎太郎「虎太郎ではない、魔法ヶ沢京太郎だ。」

にこ「うるさいな、せっかくいいニュースがあるのに。昨日言ってたゲーム、私の友達が見たことあるって。」

虎太郎「マジか?」

にこ「今渋谷のホールにいる。」

虎太郎「わかった。」


渋谷

にこ「如月さん、連れてきたよ。」

にこ「この人は私の友達のアイドル仲間の、如月千早。」

虎太郎「よろしくお願いします。」

千早「矢澤さんの弟さんなんだ。」

虎太郎「インフィニットタイム・オンラインを見たことあるって本当ですか?」

千早「どうしようかな、教えてあげようかな~」

虎太郎「馬鹿なこと言うな。悪の組織に取られるかどうかの瀬戸際なんだぞ。」

千早「まあにこちゃんにはお世話になってるから特別に。まあ確実ではないからない、その場所に行ったらかもしれないけどね。」

千早「何年か前、神田明神で見かけたような。」

にこ「そこって希が働いてるとこだよね?」


にこ「もしもし、希」

希『にこちじゃない。何のようや?』

にこ「インフィニットタイム・オンラインというゲームを探してるんだけど、知らない神田明神にあるらしんだけど。」

希『ゲームか。ウチは知らないな。パパなら知ってるかもしれない。聞いておく。』

にこ「あとで弟と神社に向かうから。」

神田明神

にこ「希、絵里、久しぶり。」

希「久々やな。」

希「そちらは弟さん?」

虎太郎「俺は世界と時間を支配するアイドル、魔法ヶ沢京太郎だ。」

希「えーっと、そんな名前やったっけ? 確か虎太郎じゃ・・・」

絵里「しかも魔法ヶ沢って、にこと苗字違うじゃない。」

にこ「こいつの脳内設定だから気にしないで。」

希「でさっきのゲームの事だけど、パパに聞いたら、確かに神田明神に奉納されてたって。」

虎太郎「本当か?」


希父「いやー、まさか現実になるとは。」

希父「何年か前、いつか矢澤虎太郎という少年がこのゲームを必要として取りに来るから、それまで大事にとっておくようにと。」

希父「希の高校のときの友人に矢澤という苗字の人がいて、その人とスクールアイドルをやってたときはもしやと思いましたが。」

虎太郎「そんなことがあったのか。これぞ運命の符号だ。」

希父「わたくしには必要ないので、是非お譲りします。」

虎太郎「感謝します。」

希「なんならウチが運ぶの手伝おうか?」

虎太郎「結構です。譲ってもらう上に手伝いまで・・・」

にこ「あんた、運べるの?」

虎太郎「台車があるんだろ。問題ない。」


虎太郎「台車を持ってきたのにまさか途中で壊れるとは、どんなボロ台車持ってきてるんだ。」

にこ「仕方ないでしょ。気づかなかったんだから。」

・・・
第3話 メールのプリンスさま、マジLove-1000%

『秋葉原のスクールアイドルミュージアムに人工衛星が墜落してから今日で1週間がたちました。今日も多くの見物人が訪れております。』

『この人工衛星は国籍等不明のまま、依然撤去の目処は立っておりません。』


研究所前

にこ「絵里と希にも手伝ってもらえばよかったじゃない。あるいはこころやここあを呼ぶとか。」

虎太郎「世界の頂点に立つ研究者兼アイドルが、女の力を借りるなど・・・」

にこ「そのくせ何回も休憩してるくせに。時間をかけたらそれだけ疲労がたまるのに・・・」

花陽「にこちゃんと虎太郎君~。何これ?」

虎太郎「ふむ。聞きたいか?本来であれば重要機密事項のため教えるわけにはいかないところだが・・・」

にこ「もう、長くなるんなら一回おろすわよ」

虎太郎「耐えろ、にこ」

にこ「だったらもったいぶってないでちゃっちゃと言いなさいよ」

虎太郎「バカを言うな。謎の組織に知られたらどうする。ここでもったいぶらずに、どこでもったいぶるんだ。」

椿「これはもしかして、インフィニットタイム・オンライン?」

虎太郎「バレてしまったではないか!ていうかお前は何者だ?」

花陽「この店のバイトの、澤部椿ちゃんだよ。」

椿「ここ最近、よく会ってるでしょ」

虎太郎「覚えてないな。」

椿「どこにあったの?」

虎太郎「神田明神に奉納されていたのを、この神に選ばれしアイドルである魔法ヶ沢京太郎が・・・」

にこ「だから長くなるなら下ろすと行ってる」

椿「神田明神・・・」

花陽「ちょっと椿ちゃん、どうしたの?」

にこ「なんで睨まれたの?」

虎太郎「姉ちゃんの目付きが悪いからだろ。」

研究所

虎太郎「よし、ゆっくり下ろせ。」

冬馬「にこさんも一緒なのか。世界的なアイドルがいると心強いね。」

冬馬「で、その箱は何なんだ?」

虎太郎「聞きたいか?本来であれば重要機密事項のため、簡単に教えるわけにはいかないところだが、部員であるから特別に教えてやる。」

にこ「インフィ二ットタイム・オンラインよ」

冬馬「マジで?さすがです魔法ヶ沢さん」

虎太郎「神田明神に奉納されていたのをこの神に選ばれしアイドルである魔法ヶ沢京太郎が発見したのだ。」

にこ「私の友人の如月千早さんから神田明神にあるのを教えてもらって、東條希っていう高校の同級生に聞いて見つけたのよ。」

冬馬「そうなのか。でもそこまでたどりつけるあたり、さすが我が部長虎太郎、いや魔法ヶ沢君だな。」

にこ「見つけられたのは、にこのおかげよね?」

虎太郎「だな。今回ばかりはお手柄だ。」

虎太郎「これで機関、悪の組織の手に渡らずに済んだ。世界は救われたのだ。」

達也「本当に見つけたんだ。すごーい。」

一夏「俺は君を信じてたよ」

虎太郎「で、これを何に使うんだ?」

一夏「特に使うことはない。悪の組織の手に渡らなければそれでいいんだ。だが・・・」

一夏「タイムマシンを持ってるんだよな?」

虎太郎「ああ、アザーワールドオンラインのことだな。」

一夏「このゲームを改良すれば、タイムマシンとして使えるぞ!」

虎太郎「なんだと?それは本当か?」


達也「にこちゃんだ。本物・・・。確か隣ではかよちゃんも働いてたよね・・・」

虎太郎「それがどうした? まさかお前、姉ちゃんのファンだったりするのか?」

一夏「だな。達也は伝説のスクールアイドルμ'sのファンなんだ。」

にこ「それって本当? 嬉しいなー。にこやμ'sがここまで知られてたなんて。まあ何年も前からそうだったけど。」

虎太郎「さて、タイムアイドル部の円卓会議を始める。」

冬馬「会議っていうほどでもないけどな。」

虎太郎「まずは、過去に送れるメールやFAXの名前をつけようと思う。」

虎太郎「もちろんμ'sみたいに一般市民に募集なんかしないぞ!」

にこ「何から何までμ'sを引き合いに出さないでよ。」

こころ「どうせ変てこな名前つけたいんでしょ」

虎太郎「変てことはなんだ!ならば発表しよう。俺はこの過去に送れるメールについてこう名付けた!」

虎太郎「その名も、『俺の青春はメールで変える』」

こころ「却下!」

虎太郎「貴様、新入部員の分際で部長の提案を即却下とは何事だ!」

にこ「じゃあ多数決取るわよ。『俺の青春はメールで変える』に賛成のもの」

虎太郎「はーい」

にこ「反対のもの」

他全員「はーい」

虎太郎「お前ら裏切ったな!」

冬馬「ラノベのタイトルかよ。中二病過ぎだろ。言うの恥ずかしいわ。」

恭二「俺はそんな長い名前覚えられない。」

虎太郎「じゃあ他に案あるのか?」

にこ「『あの日見たメールを僕たちはまだ知らない』なんてどう」

虎太郎「もっと長くなってるじゃねえか。しかもパクリだろ。」

にこ「略して『あの僕』でいいでしょ。虎太郎のふざけた名前よりマシよ。」

恭二「俺は長いのは嫌だな」

恭二「こんなのはどう? 『タイムトラベルメール』略して『TTM』なんて。」

虎太郎「横文字かよ。入力しづらい。」

冬馬「お前が言うな」

こころ「こころも思いついたよ。『メールのプリンスさま、マジLove-1000%』。過去だからマイナスね。」

虎太郎「お前ら人気ア二メのもじりしか思いつかんのか。」

冬馬「じゃあ『雷轟丸』なんてのは?」

虎太郎「富山の某二ワトリの名前じゃないか。全く関係ない。」

冬馬「とりあえずこれまで出た案を黒板に書いて多数決取ろうぜ。」


俺の青春はメールで変える 0
あの日見たメールを僕たちはまだ知らない 1
タイムトラベルメール 3
メールのプリンスさま、マジLove-1000% 2
雷轟丸 0

冬馬「それでは『タイムトラベルメール』略してTTMで決定ということで」

虎太郎「3票しかないのにそれでいいのか?」

虎太郎「・・・まあ仕方ないか。それではタイムトラベルメール、TTMの実験を開始する。」

冬馬「でもTTMの発生条件わからなくね? 放電現象くらいしか。」

虎太郎「お前らまだ気付いてないのか?」

にこ「虎太郎はわかるの?」

虎太郎「ズバリ、時刻だろ!」

虎太郎「最初のTTMは13時、2回目のは16時ごろ、そしてFAXは12時ごろ発生している。つまりこれらの時間で実験すれば再現が可能」

冬馬「単純すぎるだろ」

虎太郎「試してみる価値はある。今は16時、メールとFAXを同士にやろう。AWOの準備を。」

恭二「準備完了」

虎太郎「よし、メールを送れ。」

こころ「送ったわ」

虎太郎「よし今だ!」

放電が発生した。

虎太郎「FAXは届いているか?」

にこ「希の家に送ったんだけど、確認してみる。」

にこ「もしもし、希、私がFAX送ったんだけどちゃんと届いてる? え、5日前?」

にこ「ありがとう。」

にこ「ちゃんと届いてたわ、5日前に。」

虎太郎「メールは?」

こころ「『Kotarou is an fool』、確かに5日前に届いている。」

虎太郎「ちなみにどんな意味だ?」

こころ「自分で調べなさい。」


買い物

虎太郎「さっきのメール、虎太郎は馬鹿って意味じゃないか。こころの奴、どさくさに紛れて・・・」

恭二「気づくの遅すぎだろ。」

・・・
翌日

♪START DUSH

虎太郎「メールか?」

虎太郎「『1時間前にメールを送る』、またTTMか。」


花陽「虎太郎君、いや魔法ヶ沢君」

虎太郎「おお、アイドル店長。ちゃんと名前覚えてくれたか。」

花陽「お兄ちゃんがカンカンに怒ってるよ。2階からの振動が酷いって。家賃1万円アップするぞこら!、とか言ってた。」

虎太郎「1万・・・、仕方ない。冬馬に実験をやめるように言ってくれ。」

恭二「わかった。」

花陽「早く謝りに行ったほうがいいよ。」


小泉メガ兄ぃ「お前ら一体何やってるんだ?」

小泉メガ兄ぃ「実は人類の歴史を塗り替える世紀の科学実験をやっているんです。でもご安心を、今日これ以上の実験は行いませんので。」

ぐらぐら揺れる

虎太郎「あいつ、実験はやめろと言ったのに・・・」

虎太郎「何やってる、実験は中止と言っただろ。」

恭二「冬馬が最後にもう1回だけって」

冬馬「ちゃんとメール送っただろ。1時間前に。」

虎太郎「そういうことか・・・」

冬馬「だがだいたい統計は取れた。まずプレイ設定1秒につき1時間遡るってことだ。だから120秒だと120時間で5日ということだ。」

虎太郎「そうだったのか。」

・・・
翌日

にこ「にっこにっこにー。今日は友達連れてきたよ。」

虎太郎「誰だ?μ'sの元メンバーか? いや、見ない顔だな。」

佳織「にこちゃんの大学の同級生の、佐々木佳織といいます。」

佳織「インフィニットタイムオンラインを発見したって本当ですか? できれば見せてほしいんですが。」

虎太郎「これは最重要機密アイテムであり、大切に保管しておく義務があるんだ。」

にこ「見せるだけならいいでしょ。」

虎太郎「わかった。にこ姉ちゃんの友達なら害はないだろう。だが見せるだけだ。」

佳織「できれば写真も取らせて欲しいです。」

虎太郎「・・・その写真、他の奴に見せるんじゃないぞ。特に悪の組織にはな。」

佳織「わかりました。」


虎太郎「佐々木佳織って何者なんだ?」

にこ「ただのレトロゲームマニアじゃない?」

虎太郎「一夏君と達也君から託され、希さんに譲ってもらった貴重な品だし、絶対に他の誰かに取られるわけにはいかないな。」

佳織「希さんって、にこちゃんのスクールアイドルの友達の希ちゃんのこと?」

にこ「うん。希が巫女をやってる神田明神にあったわ。」

佳織「そう。」

冬馬「なあ虎太郎、ちょっとこのゲーム改良しようと思うんだ。メールやFAXを過去に送るのもいいけど、もっとすごい機能ないかって。」

佳織「メールやFAXを過去に送ってどういうこと?」

虎太郎「いや、なんでもない。聞き違いだ。そんなことできるわけないだろ。」

虎太郎「ちょっと、なんでもかんでもベラベラ話すなよ。この人は部員じゃないんだぞ。」

こころ「お姉さま来てたんですね。虎太郎、タイムマシンの実験もいいけどちゃんと食べなよ。」

ここあ「私、タイムマシンについてちょっと思いついたんだけど」

虎太郎「わあわあ見えない聞こえない!」

虎太郎「もしもし、俺だ。まずいことになった。我がタイムアイドル部の情報が部外者に漏れた。なんとかこいつの気を逸らす。機関に知られるわけにいかん・・・」

にこ「また独り言か」

♪START DUSH

虎太郎「電話中にメールすんな。ていうかなんで俺のメアド知ってるんだ?」

佳織「ひょっとして・・・」

『もしかしてスプリングツリー?』

虎太郎「スプリングツリーってなんだ?」

佳織「なんでもない。違うならいい。」

虎太郎「わかった。秘密を知られたからには仕方ない。佐々木佳織、お前もタイムアイドル部の部員になってもらう。」

佳織「え?」

虎太郎「俺様はついに世界の頂点に立とうとしている! 世界は俺様に震えろ!」

にこ「いいの?入部したらあんな奴と一緒になるんだけど?」

佳織「いい。」

続く

・・・
第4話 タイムトラベルメール

虎太郎「それでは今日の実験を始める。」

こころ「本当にタイムマシン?」

虎太郎「絶対に口外するなよ?」

ここあ「でもまたかよちゃんのお兄ちゃんに怒られない?」

虎太郎「小泉メガ兄ぃか。」


1階アイドルショップ

虎太郎「あれ?澤部椿だけか。ところで小泉メガ兄ぃは?」

椿「小泉メガ兄ぃって?副店長のこと?店長と副店長はさっき出張サービスにいきました。しばらく帰ってきません。」

虎太郎「そうか。でないと恭二はさぼってないよな。恭二がいる時点で気づくべきだった。」

虎太郎「よし、実験再開だ。TTMをより実践的に使う実験を使用。」

冬馬「実践的って何するんだ?」

虎太郎「過去を変える!」

にこ「待って、そんなの危険すぎるわよ。もしタイムパラドックスが起きたら」

虎太郎「にこ姉ちゃんも、過去を変えられるか確かめたいと思わないのか?」

にこ「それは・・・思わないわよ。」

恭二「過去を変えるって、どう変えるんだ?」

虎太郎「いい質問だ。俺が本作戦において成し遂げたいこと、それは・・・」

虎太郎「ギャンブルだ。競馬で大穴を当てよう。」

ここあ「虎太郎にはがっかりしたよ。もっと世界が平和になる方法考えてよ。」

にこ「あんたはつまんない男ね。」

虎太郎「過去を変えられるかどうかの実験だぞ!一番わかりやすいではないか!」

にこ「でもあんた未成年でしょ。」

虎太郎「あ・・・。仕方ない、にこ姉ちゃんが買ってくればいい。」

にこ「わたしが競馬なんか行くと思う?だいたいあんたも興味ないでしょ。」

虎太郎「そ、そうだな。」

恭二「じゃあ宝くじなんてどうかな?」

虎太郎「それいいな。」

ここあ「結局あんたたち金目的か。」

恭二「今日発売のシニアジャンプ宝くじなんかどう? 今当選番号見てみるね。」

恭二「どれにする?まず1等は3億円。」

恭二「3億?」

虎太郎「3億はさすがに目立ちすぎる。俺たちは機関や悪の組織に追われてるんだぞ。」

にこ「ビビったわね。」

虎太郎「2等は?」

恭二「1000万円」

虎太郎「3等」

恭二「それだと100万円まで落ちるけどね」

虎太郎「そ、それー!100万でいい」

にこ「虎太郎ってチキンね。」

虎太郎「それがタイムパラドックスを心配してる奴のセリフか!」

虎太郎「じゃあにこ姉ちゃんが文面を考えろ。何も知らない2週間前の俺に、シニアジャンプ宝くじを買わせるように仕向ける文面を。」

虎太郎「24×15=360で、設定は360秒に合わせてくれ。」

『334XXXXXXXXX、シニアジャンプを買え!絶対当たる!』

虎太郎「こんなもんだろ。ついに世界を変えるときがきた!」

冬馬「じゃあAWO起動だ!」

虎太郎「送信!」

メールを送信する。放電現象が起きた。すると


虎太郎「ん?なんだこの感覚は? これはあのとき、ミュージアムの前と羽田空港での感覚と同じだ・・・。」

にこ「虎太郎、どうしたの? なんかボーッとしてるけど」

こころ「大丈夫?」

虎太郎「俺は何分くらいここに立ってた?」

にこ「30秒くらいでしょ。」

虎太郎「30秒?」

冬馬「さっきまで過去を変える実験の話をしてたら、急にハアハア言い出して。」

虎太郎「それで、メールは送ったんだよな? ちゃんと15日前に届いてるし」

虎太郎「宝くじは?俺はちゃんと3等を当てたんだよな?」

こころ「宝くじってなんのこと?」

虎太郎「は? 今話してただろ、TTMで過去を変える実験を。」

ここあ「わかってるよ。どんな内容がいいか話し合ってて。」

虎太郎「なんてことだ。話が変わってる・・・。」

トントン

にこ「虎太郎、言ったとおり宝くじ買ったらちゃんと当たったよ。3等だけど。」

虎太郎「100万円だ・・・」

冬馬「すげー、虎太郎、予知能力者だな。」

こころ「まさか、メールで過去のお姉さまにに当選番号を送ったの?」


虎太郎「俺は確かにTTMを送ったが、送信履歴にはない。過去が書き換えられたということか?」

虎太郎「あいつらは実験のことを覚えていなかった。俺だけが覚えている。まさにこの感覚はあのときと一緒だ。」

・・・
1階

花陽「魔法ヶ沢君、どうしたの?洗脳されたような顔してるけど」

虎太郎「花陽さんに、澤部さんか。聞きたいことがある。さっき放電現象見たか? 10分ほど前」

椿「うーん、気づかなかったな。花陽ちゃんは?」

花陽「わからなかった。」

虎太郎「やっぱりか」


虎太郎「そういえばあの未来人が掲示板で行ってたな。過去を変えると、世界線が移動すると、移動する前の世界線の記憶は消去され、新たな記憶が再構築されると。冬馬も同じことを考えてるらしい。」

虎太郎「過去へのメールで、にこ姉ちゃんが宝くじを買わなかった世界線から買った世界線に移動し、過去も変わった。」

虎太郎「ここは宝くじを買うTTMを過去に送らなかった世界線ってことなのか。」

今回のことを冬馬に話した。

冬馬「それが本当なら、過去を変え、世界線が移動したということで間違いないだろう。君に過去改変前の記憶が存在する理由は、過去を変えた本人だからってのが有力だな。」

冬馬「それともいくつもの世界線の記憶を保持できるからか。今話題の未来人の説がそうらしいな。いくつもの世界線の記憶を保持できる者もいると。」

・・・
夕方

虎太郎「これより、タイムトラベルメールの実験を再開する。」

こころ「本当にやるの? 私はあまり乗り気じゃないんだけどな。」

虎太郎「何言ってるんだ。昼間は協力的だったじゃないか。」

こころ「昼間?昼間は実験やらなかったでしょ?」

虎太郎「いや、確かに実験は行われたんだ。メールにより既に過去が変わってるんだ。」

虎太郎「世界線が変わった。冬馬や恭二、そしてこころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃんは改変前の記憶を一部失ったんだ。」

ここあ「それって例の宝くじがどうとか言う奴?」

こころ「じゃあなんで虎太郎だけが記憶を持っているの? まさか主人公特権とか言うんじゃないだろうね?」

虎太郎「ある意味間違ってない。過去を変えた本人だからか、あるいは俺には前の世界線の記憶を保持する力があるのか、冬馬が言ってた。」

虎太郎「世界線を越えて記憶を保持する力、いわゆるリーディングシュタイナーだ。」


♪着メロ START DUSH

虎太郎「メールだ。誰から?」

『南ことりです。今からにこちゃんと虎太郎君のいる研究所に行っていいかな?』

虎太郎「まあμ'sのメンバーなら問題なかろう。」

ことり「こんばんは。そして2人は初めましてだね。矢澤にこちゃんの高校生の友達で、同じスクールアイドルμ'sのメンバーだった南ことりです。」

恭二「テレビで見てたから知ってる。俺は315プロ所属のアイドル兼フリーター、鷹城恭二。」

冬馬「同じく315プロ所属の天ヶ瀬冬馬。」

ことり「へえ、ここが研究所か。ここでタイムマシンの研究やってるんだ。」

虎太郎「なんでそれを? さてはにこ姉ちゃん喋ったな! お前は本当に口の軽い女だ。」

にこ「そりゃちょっと喋ったけど、ことりはよく隣の花陽のアイドルショップに来るから、あんたたちの話が聞こえてるのよ。」

虎太郎「んぬ・・・。うかつだった。」

にこ「アイドルショップにはアイドル研究部のメンバー全員来たことあるから、μ'sのメンバー全員にもう知られてるかもね。虎太郎がタイムマシンの研究してること。」

虎太郎「タイムマシンと言っても、まだメールやFAXを過去に送ることしかできない。それで過去を変えることもできるけどな。」

ことり「過去を変えられるんだ。よかったらわたしにも使わせてくれないかな?」

ことり「わたし、1つ後悔してることがあるの。あまりいいことじゃないのかもしれないけど。」

虎太郎「どんなことだ?」

ことり「それは・・・」


・・・
にこ「当時アイドル研究部の部長だった私にとっても、このことは心残り。だから協力してもらえないかな。」

虎太郎「わかった。俺にとっては実に下らないことだが、それがにこ姉ちゃんやことりさんにとって幸せなことなら協力しよう。」

虎太郎「だが、このことは部外者には秘密にしたいことだ。だからことりさんにはタイムアイドル部に入部してもらうぞ。」

虎太郎「しかしいきなり数年前か・・・」

AWOを起動したあと、メールを送信。メールはことりさんが高校2年生のときに送信された。

ことり「送信履歴はなし。着信履歴は・・・、かなり古いけどちゃんと届いてるよ。」

虎太郎「そんな前のメールよく保持してますね。実験は成功か。」

にこ「過去は変わった?」

虎太郎「なぜそのことを覚えてる?」

にこ「あ!」

ことりが高校2年生、にこが高校3年生の文化祭、リーダーの穂乃果さんが無理をしすぎたせいで文化祭中に倒れてしまい、そのままμ'sの演技は中止。
そのせいで音ノ木坂学院のスクールアイドルμ'sは、第1回ラブライブの参加を辞退することを余儀なくされたのだ。

そこで当時のことりにタイムトラベルメールを送り、穂乃果に無理させないように気をつけて見張るようにしたのだ。


ことり「ねえ穂乃果ちゃん、高校2年生のときの第1回ラブライブってどうだったっけ?」

穂乃果『第1回ってARISEが優勝した大会?μ'sは出れなかったでしょ?』

ことり「そうだったよね。確か文化祭が失敗して・・・」

穂乃果『文化祭は成功したよ。ことりちゃんと海未ちゃんのおかげで倒れなくて済んだし。ラブライブは・・・、惜しかったんだよね。ランキング20位位内に入れなかったんだっけ。よく覚えてないや。』

ことり「そうだったね。」

・・・
虎太郎「過去が変わったのか変わってないのか、正直わからん。」

にこ「第1回のラブライブに出れなかったということは同じだったわね。その理由は私たちの記憶通り辞退して、さっきの穂乃果はそれを忘れてるだけなのか、それとも辞退はしてなくてランキング上位に入れなかっただけなのか。」

虎太郎「微妙に過去が変わったのかもしれんが、この程度では世界線は変動しなかったってことか。」

にこ「で、どう思ってんの?あんただけに記憶が継続してることについて。」

虎太郎「言っただろ。我が、リーディングシュタイナーの力だ。」

にこ「ようするに主人公特権ね。」


♪着メロ Nobrand girl

虎太郎「にこ姉ちゃんにメール? 誰からだ?」

『私も過去にメールを送りたい。 佳織』

にこ「佳織から。」

虎太郎「さて、次回のタイムアイドル部は」

♪着メロ Nobrand girl

『いいでしょ? お願い』

にこ「いいじゃない。佳織も混ぜてあげようよ。」

虎太郎「仕方ない。じゃあ明日な。」

続く

・・・
第5話 ほのかに苦い過去の思い出

翌日

虎太郎「私的なメールは禁止だ。過去が変わったかどうかわかりやすい、シンプルなメールでな。」

佳織「2週間に新しい洋服を買ったんだけど、買わないほうがよかったって自分に伝えたい。」

虎太郎「それって今着てる服のことか?」

佳織「うん。地味だから。」

にこ「過去が変われば今着てる服も変わる。一目瞭然ね。」

虎太郎「では実験開始だ。2週間前、メール送信!」

再び放電現象が起こり、メールは送信された。
俺の脳内にもあの感覚が発生する。

虎太郎「またこの感覚。過去は変わったってことか。」

佐々木佳織の服をチェックしてみようとしたが・・・

虎太郎「あれ、いない? 佐々木佳織はどこへ行った?」

冬馬「佐々木佳織?誰だそいつ?」

にこ「それ私の大学の同級生のこと? なんで虎太郎が知ってるの?」

虎太郎「知ってるも何も・・・。今日は来ていないのか?」

にこ「来るわけないわよ。私もしばらく会ってないし。なんで虎太郎が佳織のことを知ってるの・・・、まさかまたタイムトラベルメールを?」


にこ「つまり2週間前のメールで佳織の行動が変わり、部員にはならなかった。そういうふうに過去が改変された。」

にこ「でもなんで今回も虎太郎だけが記憶を保持してるの? 過去を変えた本人だからって前言ってたけど。今回の改変にあんたは関係ないじゃない。」

虎太郎「それは俺の力、リーディングシュタイナーのおかげだ。やはり俺にはそういう力があったということで間違いないな。」

にこ「何それ。」

・・・
にこ「今日の買い出しなんだけど、穂むらに一緒に行ってくれない?」

虎太郎「ほむら? なんだそれ。まどマギのキャラクターか?」

にこ「そうじゃなくて、穂乃果の家の和菓子屋さんよ。」


穂むら

虎太郎「こんなところに和菓子屋か。」

穂乃果「にこちゃん、久しぶりだね。」

にこ「久しぶり。海未も一緒なんだ。」

海未「私は穂乃果の家の和菓子が大好きですから。そちらにいるのはにこの弟さんでしたよね?」

虎太郎「俺は世界と時間を支配するアイドル、魔法ヶ沢京太郎だ!」

海未「魔法ヶ沢、京太郎さん?」

にこ「こいつの脳内設定だから気にしないで。」

穂乃果「ねえ、過去にメールが送れるって本当?」

虎太郎「な、なぜそれを!」

穂乃果「実は昨日、穂乃果と海未ちゃんがアイドルショップの隣のこの部屋にことりちゃんが入るのを見て、しばらく聞いたたら過去にメールを送れると聞いて・・・」

海未「立ち聞きするつもりはなかったんです。すいません。」

穂乃果「で、穂乃果もやり直したいことがあって、過去にメールを送りたいな、って思って。」

虎太郎「またか・・・。」

穂乃果「今回だけ特別にタダにしてあげるから。」

虎太郎「まさかあなたは、取り引きしようと言うのですか!」

にこ「いいじゃない。私の友達のスクールアイドル仲間なんだし。」

虎太郎「どんな内容を希望してるんですか?」

穂乃果「私、高校入試の日に乗る電車を間違えちゃって、試験に遅刻しそうになったから、運転手さんにお願いして止まらない駅に電車を止めてもらったことがあるの。」

虎太郎「それ昔流行ったらしい温情停車ですか。京葉線とか、東北新幹線とか、中央線の特急あずさであったとか。まさか穂乃果さんもやってたんですか。」

虎太郎「で、試験は受けられたんですよね?」

穂乃果「受けられて、合格したけど、滑り止めだったんだよね。」

虎太郎「滑り止めかよ! じゃあ別に過去改変する必要ないだろ。」

穂乃果「電車に乗り間違えて止めてもらうなんて恥ずかしいし、できればなかったことにしたい記憶なの。だから電車は気をつけて乗るようにって、高校入学前の穂乃果にメールを送りたいの。」

海未「私もこのことで穂乃果が傷ついてしまったと思っているので、ぜひお願いします。」

虎太郎「確かに恥ずかしい記憶だな。なかったことにしたいのはわかる。だがこの程度のことじゃ過去は変わらないと思うぞ。」

にこ「だったらいいじゃない。それならタイムパラドックスも起きないだろうし、ものは試しってことで。」

虎太郎「わかった。だが昨日のことりさんのように、穂乃果さんと海未さんにも我がタイムアイドル部に入部してもらう。」

海未「わかりました。穂乃果、いいわね。」

穂乃果「うん。」

虎太郎「とはいえ研究所以外から本格的にこの機能を使うのは初めてだな。」

プルルル

虎太郎「もしもし、俺だ。」

冬馬『誰だ?』

虎太郎「だから俺だよ俺。そちらの状況を伝えてくれ」

プチッ。ツーツー。

虎太郎「冬馬の奴切りやがった。」

にこ「そりゃ切られるわよ。」

虎太郎「もしもし、魔法ヶ沢京太郎だ。いきなり切るな。」

冬馬「なんだ虎太郎か。オレオレ詐欺かと思ったじゃないか。」

虎太郎「ちゃんと俺の番号表示されてるだろ。」

冬馬「いきなりあんな話し方されたら不審者だと思って切るよ。」

虎太郎「それはつまりこの魔法ヶ沢京太郎をお前は怖がってるってことだな!わっはっはっは」

プチッ

虎太郎「あいつまた切りやがった。」


虎太郎「矢澤虎太郎です。AWOを、さきほどのおメールの通りのお設定していただきたく思います。」

冬馬「最初からそう言えばいいんだ。あと敬語変だぞ。それだと日本人として恥ずかしいぞ。」

虎太郎「黙れ、このフリーターが・・・、設定お願いします。」

穂乃果「仲が悪いの?」

にこ「いいのよ。穂乃果と海未みたいに。」

海未「私と穂乃果みたいにですか・・・」

AWO起動。

虎太郎「放電開始した。メール送信だ」

穂乃果「わかったよ。送信!」


虎太郎「んんんんん・・・・」

リーディングシュタイナーが発動した。ということは・・・、過去が変わったのか?

穂乃果さんと海未さんはそのままいる。

虎太郎「あの、高校入試の日に電車を乗り間違えた体験とかしましたか?」

穂乃果「えーっと、確かに私ならそうなったりしたかもしれないから、海未ちゃんと一緒に行ったよ。だから乗り間違えなかった。」

海未「私も気をつけて行きました。」

虎太郎「そうか。」

今度は過去は変わったようだ。微々たるものではあったが。
ともあれ、これでμ'sの元リーダー、穂乃果さんの高校入試での黒歴史がなくなった。

・・・
それから2日ほど経ったあとのアイドルショップ

にこ「花陽ー!」

花陽「にこちゃんと虎太郎・・・、いや魔法ヶ沢君。」

にこ「それと真姫と凛もいたんだ。久しぶり。」

真姫「久しぶり!」

凛「ねえ、さっき言ってた世界線がどうとか、タイムなんとかメールってなんのことにゃ?」

虎太郎「なぬ?」

にこ「ほらね。このアイドルショップを訪れる色んな人に知られてるわよ。」

虎太郎「気をつけなければ・・・」


虎太郎「花陽さんってにこ姉ちゃんみたいにアイドルに詳しいんですよね?」

花陽「そうだよ。たとえば第1回ラブライブ優勝のARISEの写真もあるの。いわゆるμ'sのライバルだったんだけどね。」

虎太郎「確か第1回の優勝がARISEで、第2回の優勝がμ's。特に第1回の優勝者はこのスクールアイドルが存在し続ける限り語り継がれるでしょうね。ワールドカップ初代優勝のウルグアイ、ワールド・ベースボール・クラシック初代優勝の日本みたいに。」

ラブライブの歴代優勝者はyoutubeに動画があったりするので俺も知ってる。特に第1回、第2回の優勝チームは有名だ。

虎太郎「全国高校野球選手権大会の第1回優勝の京都二中は、一度廃校になったのに跡地にできた鳥羽高校を無理矢理後進の学校にするくらいですから。」

花陽さんが持っていた、今は貴重なスクールアイドルの写真。

凛「と言っても、実際は凛のお姉ちゃんが持っていたのを分けてもらったんだけどね。」

凛さんに姉がいたのか

花陽「凛ちゃんのお姉ちゃんはスクールアイドルに詳しいんだよ」

虎太郎「それってにこ姉ちゃんや、花陽さんより?」

花陽「そうかもね。」

その割には、今まで俺はその人の存在を知らなかったな。


花陽「私、虎太郎君にお願いがあるんだけど。ただ一度だけ、私も過去にメールを送らせてほしいの。」

虎太郎「なぬ!」

凛「凛からもお願い。」

にこ「いいじゃない1回くらい。」

虎太郎「わかった。ただし花陽さんもタイムアイドル部に入部してもらう。」

研究室

花陽「研究室にしては狭いね。」

虎太郎「で、どんな内容ですか?」

花陽「私、中学生のときTKB48のオーディションを受けたんだけど、直前に凛ちゃんが風邪を引いてその看病をしてたから落ちちゃったんだよね。」

凛「凛もかよちんに申し訳ないことしたと思ってるから、是非とも過去を変えたいと思うにゃ。」

虎太郎「ちょっと待った。メールやFAX1つで風邪を引かないようにできるか?」

真姫「凛は手洗いうがいはしてるから、あとはちゃんとビタミンCを取るようにすればなんとかなるかも。」

凛「それからあのころ、寒いのに薄着だったのも原因だったと思う。」

にこ「じゃあメールの文面は、ビタミンCをちゃんと取るように、薄着はしないようにってことでいいわね。」

AWO起動。

虎太郎「じゃあ、メール送信だ」

虎太郎「んんんんん・・・・」

リーディングシュタイナーが発動した。ということは・・・

虎太郎「花陽さんは・・・、いなくなった。凛さんと真姫さんもいない。」

確かに世界線は移動した。何かが変わった。
一体何が変わったんだ?

続く

第6話 まきりんぱなの消失

虎太郎「それではタイムアイドル部、円卓会議を始める。今日の議題はズバリ、物理的タイムトラベルだ。」

「・・・」

恭二「おー!」

虎太郎「棒読みかよ。」

虎太郎「お前たち、なんでこんな素晴らしい発表に歓声を上げない」

にこ「無理に決まってるでしょ。」

虎太郎「だがメールやFAXは確かに過去に送られてるんだぞ。」

にこ「送られる量も限られてるじゃない。やりたいなら1人でどうぞ。」

虎太郎「ぬぬぬ・・・」

♪インターホン

虎太郎「誰だ?」

達也「鹿目達也です。」

一夏「織斑一夏だ。」

虎太郎「そうか。入っていいぞ。」

達也「お邪魔します。」

一夏「あの、インフィニットタイム・オンラインは見つけられたかい? まあ無茶な要求だとは思ってるんだが。」

虎太郎「何言ってる。もうとっくに見つけたさ。こないだ言っただろ。」

にこ「は? 虎太郎、あんた何言ってるの?」

虎太郎「にこ姉ちゃん、それってどういうことだ?」

にこ「どういうこと?」

虎太郎「インフィニットタイム・オンライン、ちゃんと見つけてきただろ。どこにある?」

にこ「私が知るわけないじゃない。」

虎太郎「なんでだよ・・・。まさか・・・」

インフィニットタイム・オンラインは・・・、そこにはなかった。

虎太郎「ない・・・。にこ姉ちゃん、もしかして俺はインフィニットタイム・オンラインを手に入れられなかったのか?」

にこ「もしかしなくても、まだどこにあるかもわかってないでしょ?」

虎太郎「なんてことだ・・・。」

インフィニットタイム・オンラインが消えた・・・。一体なぜだ?

冬馬「その話を信じるとすると、虎太郎君はITOを見つけたのか。でもその記憶がお前以外に残ってないということは・・・。」

冬馬「メールやFAXによる過去改変が原因だな。」

虎太郎「いや、送ったものは些細なものばかりだぞ。」

一夏「バタフライ・エフェクトだよ。過去の1つのメールを送ることで、そこで世界線は変化する。小さな変化が少しずつ変わっていき、1つの変化が玉突き上に次の変化を起こし、それは大きくなっていく。昔からよく言われるタイムパラドックスの事実の1つだ。」

虎太郎「じゃあインフィニットタイム・オンラインは一体どこに?」

一夏「逆に聞く。どこにあったんだ?」

虎太郎「神田明神だ。にこ姉ちゃんと運んできた。」


希『もしもし、にこち。』

希『え?ゲーム?』

希『今パパに聞いたら、確かに奉納されてたけど、今はないって。何者かに盗まれたかもしれないみたいやで。』

にこ「そう。ありがとう。」

にこ「確かに神田明神にそのゲームはあったらしいけど、現在はどこにもないって。誰がいつ持ちだしたかもわからない。」

一夏「これはまずいことになったかもな。悪の組織に神田明神にあることを知られて、先に取られてしまったのかもしれん。」

虎太郎「なんてことだ。俺のせいってことか。」

達也「虎太郎君は悪くないよ。むしろよくやってくれたと思う。」

・・・
ここあ「ねえ、虎太郎。こんな話知ってる?」

ここあ「ある家族が妻の実家に遊びに行くために田舎までのバスに乗っていた。山のふもとあたりまできたときに、子供が『お腹空いた』とだだをこね始めたので、しょうがなく途中のバス停で降りて近くの定食屋で食事をすることにした。」

ここあ「食事が終わり定食屋に設置されているテレビをふと見ると、さっきまで家族が乗っていたバスが落石事故で乗員全員死亡というニュースが流れていた。」

虎太郎「それはよかったな。子供のおかげで命拾いしたってわけだ。これぞ世界に選ばれし強者。」

ここあ「でも、夫が『降りてよかった』とつぶやいたら、妻が『何言ってるの。降りなきゃよかったのよ』って言ったの。それを聞いて夫も、『あぁ、なるほど。確かに降りなければよかった…』と妻の意図に気づく。」

ここあ「さて、なぜ降りなければよかったのでしょう?」

虎太郎「えーっと、実は事故に遭ったのは乗ってたのとは別のバスで、その落石事故でバスが走らなくなって目的地に行けなくなった。」

ここあ「ブッブー、正解は・・・」

ここあ「家族がバスから降りなければ、停留所に停まる時間がなくて、おそらく落石がある前にバスはその場所を通過していた。だから事故自体がなかった。」

ここあ「そうすれば乗客全員の命が助かった。ここで降りてよかったと思ってしまうのは、自分たちだけの命が助かればいいと思ってる自分勝手な奴ってこと。」

虎太郎「それおかしいだろ!その家族に、落石事故が起きるなんてわからなかっただろうし、まるで事故の責任はその家族にあって、その家族が殺したって言ってるようなもんじゃないか。そんなのあんまりだ。」

虎太郎「落石事故の責任は危険な状態を放置していた町や道路の管理会社にあるのであって、ただバスを降りただけの乗客に重い十字架を背負わせるのは間違いだ。」

虎太郎「それに事故が起きる前、途中の停留所でバスを降りたのはその家族だけではない。降りなければ落石の前に事故現場を通過できたなんて、他の人にも言えるはずだ。そして1組の家族が降りるのにかかる時間は10秒程度。そんな短時間の誤差で事故が回避できたとは思えん。」

ここあ「なんかすごい熱く反論したね。確かに虎太郎の言う通りだよ。でも虎太郎が言ってたバタフライエフェクトとかいうの、つまりこういうことでしょ?」

虎太郎「まあ、そうなのかもな。」

・・・
にこ姉ちゃんと研究所からの買い出し中。

にこ「佳織、また会ったね!」

佳織「にこちゃんに、虎太郎君。」

にこ「どうしたの?そんな顔して。」

佳織「なんでもない・・・。」

佳織「どうして?・・・神田明神にちゃんとあるってスプリングツリーは言ったのに・・・」

虎太郎「まさか、インフィニットタイム・オンラインを探してるんじゃ?」

佳織「知ってるの!?どこにあるのか?」

虎太郎「あんたも知らないのか。」

佳織「知らないの・・・」

虎太郎「ていうか、俺は佳織さんと前に会ったことあるのか?」

にこ「こないだ私と研究所に来たじゃない。」

佐々木佳織が過去にメールを送ったあと、佐々木佳織の存在は俺とにこ姉ちゃん以外の記憶が消え、研究所に来たという事実も消えた。
高坂穂乃果と小泉花陽がメールを送ったら、再び佐々木佳織が研究所を訪れた世界になった。
メールやFAXによる過去改変が起きるたびに、事実が少しずつ変化している。

・・・
椿「あ、矢澤にこちゃん。」

にこ「えーっと、確かアイドルショップのバイトの澤部椿ちゃんだっよね。」

椿「すいません、西木野総合病院ってどこかわかりますか?」

にこ「西木野総合病院なら、あそこの信号を左に行けばすくだよ。」

椿「ありがとうございました。」

澤部椿、どうもこいつは不気味な存在だ。

虎太郎「・・・ってちょっと待った。この近くに西木野総合病院なんかあったか?」

にこ「最近できたのよ。」

虎太郎「そうだったっけ? 大体その信号を左に行ってすぐにある大きな建物といえば音ノ木坂学院旧校舎、スクールアイドルミュージアムしかないだろ。」

にこ「スクールアイドルミュージアムって?」

虎太郎「何言ってるんだ。スクールアイドルミュージアムならそこに・・・」

虎太郎「あれ?」

にこ「虎太郎何言ってんの? そんなミュージアムないよ。」

虎太郎「音ノ木坂学院旧校舎の跡地が、スクールアイドルミュージアムではなく、病院になってる・・・。西木野総合病院だと?」

にこ「スクールアイドルなんて専門の博物館ができるほどメジャーなジャンルじゃないよ。アキバどころか、この日本に、いや世界のどこにもないだろうね。」

にこ「確かに私は音ノ木坂学院のスクールアイドルμ'sだったけど、所詮は地下アイドルよりもマイナーな存在だよ。」

虎太郎「にこ姉ちゃんが卒業旅行も兼ねてニューヨークまで行ってイベントを行い、帰国して全国にスクールアイドルの文化を広めたんだろ?おかげで今やラブライブが地上波でテレビ中継されるほどに・・・。」

にこ「何の話をしてるの?私やμ'sのみんなにできたのは、廃校を阻止することだけだよ。そこまでのことできるわけないでしょ。ラブライブなんてテレビ中継どころか、芸能新聞にも載らないだろうね。」

にこ「卒業旅行か。そんなお金があればよかったけど。行ってたら楽しかったのかな。けいおんの映画みたいに。」

これが花陽さんのTTMによる過去改変の影響なのか?
花陽さんのメールによって、スクールアイドルミュージアムがなくなり、スクールアイドル自体がマイナーな文化に成り下がっただと?

虎太郎「なあ、小泉花陽って知ってる?」

にこ「知ってるよ。有名じゃない。TKB48、今年の総選挙1位でこないだのシングルはセンターだった。」

虎太郎「その花陽さんが、μ'sのメンバーだったなんてことは。」

にこ「はぁ?何いってんの。かよちゃんがμ'sにいるわけないでしょ。音ノ木坂学院にもいるわけないって。」

虎太郎「・・・μ'sのメンバーって何人だったっけ?」

にこ「希と、絵里と、穂乃果と、海未と、ことりと、私で、6人。」

虎太郎「6人!?」

花陽さんだけじゃない。真姫さんと凛さん、花陽さんの学年の1年生メンバーが3人ともμ'sから消えた。
あのメールによって。

続く

第7話 弟襲来

春香「千早ちゃん。」

千早「なあに?」

春香「今度のイベントでの質問コーナー、これにしようと思うんだけど。」

千早「どれどれ?」

春香「過去に戻って1つだけやり直せるとしたら何をしますか?」

春香「千早ちゃんは何をする?」

千早「・・・えーっと、宝くじを当てるとか?」

春香「千早ちゃんらしくないね。もっと世界が平和になること望むと思ったんだけど?」

・・・
アイドルショップ

虎太郎「あの、小泉メガ兄ぃさん。この店の店長って誰ですか?」

小泉メガ兄ぃ「俺、小泉光司だけど?」

虎太郎「やっぱり・・・」

虎太郎「妹さんってアイドルでしたよね?ここの店で働いてたりは。」

小泉メガ兄ぃ「確かに花陽もここの店の一員だ。だがTKB48のナンバー1だからな。全国を飛び回ってるからこの店にはなかなか来れない。」

虎太郎「そうですか。」

佐々木佳織と小泉花陽のメールでインフィニットタイムオンラインが俺の手元から消え、
さらにはμ'sのメンバーが3人減り、花陽さんはTKB48に。そしてスクールアイドルがマイナーなジャンルに成り下がった。

これはやってしまったのか・・・

虎太郎「ちょっと待った。にこ姉ちゃん、こないだの人工衛星ってどこに墜落したっけ?」

俺の知ってる世界線ではスクールアイドルミュージアムの屋上だった。しかしスクールアイドルミュージアムはこの世界線にはない。
代わりに立ってた西木野総合病院にも人工衛星はなかった。

にこ「秋葉原にあるハシモトカメラの屋上でしょ。そんなことも忘れたの?」

虎太郎「そうだったな。」

やはり世界線はずれているようだ。

・・・
にこ「千早さんだ。」

虎太郎「え?」

千早「矢澤さん、お久しぶりです。こちらの方は?」

にこ「弟の虎太郎です。」

虎太郎「いや。俺は世界を支配するアイドル、魔法ヶ沢京太郎である。よろしくお願いします。」

にこ「こいつの脳内設定なんで気にしないで。」

千早さんか・・・。待てよ。

虎太郎「ちょうどいいところに来てくれました。実は聞きたいことがあるんですが」

千早「何でしょう?」

虎太郎「インフィニットタイムオンラインというゲームについてご存知ですか?」

千早「えーっと、確か昔神田明神にあったような気がします。」

虎太郎「そうですか。」

やはり神田明神にあったらしいが、何者かに盗まれたようだ。


千早「あの、実は今日は、にこさんと虎太郎さんにお願いがあって来たんです。実は、私も過去に手紙を送りたいんです。どちらかというとFAX希望なんですけど。」

虎太郎「なぬ?」

千早「昨日、花陽ちゃんのアイドルショップを訪れた時、偶然ここでの会話を聞いてしまいまして。すいませんでした。盗み聞きするつもりはなかったんですけど。」

にこ「いいですよ。千早さんなら問題ない。」

虎太郎「なんで姉ちゃんが決めてるんだ。TTMは部外者には絶対に秘密なんだぞ。」

にこ「だったら千早さんも入部すればいいじゃない。部員もっとたくさんほしいんでしょ?」

虎太郎「だがこれ以上メールを送って過去を変えるのは危険すぎる。」

にこ「競馬とか宝くじ当てようとしてたくせに何言ってるのよ。」

虎太郎「にこ姉ちゃんだって乗り気じゃなかっただろ。」

にこ「ねえ、どんな手紙を送りたいの?」

千早「小学生のとき、私がとんでもなく困ってた時、過去の私を励ましてあげたいな、なんて。」

にこ「このくらいならいいでしょ?」

虎太郎「まあ、ずいぶん些細な同期だが、この程度のことで大して過去は変わらないだろう」

バタフライ・エフェクトによる影響が不安だが、ここでやめたところでインフィニットタイムオンラインは永遠に戻ってこない可能性がある。
少しでも状況が好転すれば・・・。

にこ「よかったね、如月さん。」

虎太郎「ただし、にこ姉ちゃんの言うように千早さんにもタイムアイドル部に入部してもらう。」

千早「わかりました。」


虎太郎「AWO、セットしたか?」

冬馬・恭二「準備完了」

千早「でもこんなこと本当にいいのかな?」

虎太郎「では送信!」

虎太郎「んんんん・・・・・・」

リーディングシュタイナーが発動し、再び世界線が変わる。

虎太郎「千早さんは・・・、いない・・・」

やはり過去は変わった。
ついでに冬馬もいない。この世界線では今日はもう帰ったのだろうか?

・・・
研究所からの帰宅中、偶然ある人を発見した。

虎太郎「希さん?」

虎太郎「あの、すいません。」

希「えーっと、君はにこちの弟さんだったっけ?確か虎太郎君。久しぶりやね。」

虎太郎「あの、インフィニットタイム・オンラインというゲームについてご存知ですか?」

希「聞いたことないやね。」

虎太郎「神田明神にあったりしませんかね?昔はあったけど、今は何者かに盗まれたとか。」

希「神田明神にはないと思うよ。」

虎太郎「そうですか。」


・・・
翌日

この日の朝、神田明神に立ち寄った。

虎太郎「インフィニットタイム・オンラインをご存じないですか?探してるんです。過去にこの神社に奉納されたことはありませんか?」

希父「知りませんね。そのようなものを譲り受けたこともありません。」

如月千早が過去にメールを送る前、ITOは神田明神にあったが何者かによって盗まれた。
今度は神田明神に最初からなかった。

何かが少しずつ変わっていくようだ。俺の知らないところで、何かが変わっているのかもしれない。

恭二「虎太郎、何を悩んでるんだ?」

にこ「例のゲームのこと?それともタイムマシンのこと?」

虎太郎「恭二も来てたのか。」

虎太郎「もしかしたら、俺はもう取り返しの付かないことをしてしまったのかもしれない。」

そう、このときの俺はまだ知らなかった。俺たちはもう、取り返しの付かないことをしてしまっていたことを。
次の瞬間、俺に恐怖が襲いかかる・・・。次のインターホンで、ある人が訪れる・・・。

ピンポーン

??「今日はお客さん連れてきたぞ。」

千早「如月千早です。お邪魔します。」

にこ「如月さんだ! 入っていいですよ。」

??「いきなりで悪いね。」

にこ「いいですよ。超ビッグアイドルじゃない。」

まさか千早さんが2日連続で来るとは・・・。というのは俺の記憶だけで、この世界線では昨日は千早さんは研究所に来ていない。
おや、隣の男は誰だ? 千早さんは俺の記憶では昨日会ったが、もう1人の男は初の来客か?

虎太郎「なあ、お前は誰だ? もしかして初訪問のお客さんか?」

恭二「虎太郎、何言ってるんだよ。ついに頭がおかしくなったのか? 部員の顔忘れるなんてあんまりだろ。」

にこ「確かに優君は姉の千早さんほどアイドルとして有名じゃないけど、あんたは部員の顔と名前くらい覚えていなさいよ。」

虎太郎「部員・・・だったのか。」

虎太郎「すまん。名前を言ってもらえないか?」

優「如月優。315プロ所属のアイドル。ちなみにこの人は765プロ所属の如月千早、僕の姉だ。」

虎太郎「なんだ、千早さんの弟か。」

虎太郎「これはすまなかった、優君。ちょっと事情があってお前のこと忘れてたんだ。」

優「こいつ部員の名前忘れるとか、どんな中二病設定だよ。」

おそらくさっきの千早さんの過去へのFAXの影響だろう。
どういうわけか、世界線が変わって千早さんの弟がタイムアイドル部の部員になってしまったようだ。

にこ「じゃあ私は買い出しに行ってくるよ。」

千早「じゃあ私も行きます。にこちゃんともっとお話したいので。」

にこ姉ちゃんと千早さんが出かけると、研究所は俺と恭二、そして千早さんの弟、優の男3人に。
まるでいつもの男子3人に、1人が入れ替わったようだ。

1人・・・。俺と恭二がいるのに、冬馬がまだ来てないぞ。

虎太郎「優、お前の研究所での席そこだったっけ?確かそこは冬馬の席だったよな。 ていうか冬馬遅いな。今日は休みか。」

恭二「・・・冬馬? 冬馬って誰だ?」

虎太郎「・・・え? タイムアイドル部の部員、315プロ所属の天ヶ瀬冬馬だよ。」

恭二「優、知ってるか?」

優「天ヶ瀬冬馬、聞いたことないね。虎太郎、部員にそんな人はいないよ。」

虎太郎「なんだって?」

優「僕の所属してる315プロにもいなかったと思う。」

なんてことだ。世界線の変動で、みんなの記憶から冬馬の存在が消えた。
たった1通のメールで、タイムアイドル部の部員が1人消えるなんて。俺以外のみんなの記憶からも・・・。

まさか、世界からも消え去ってしまったんじゃ・・・、いやまだそう判断するのは早計だ。

優「虎太郎、もしかしてタイムトラベルメール送ったの?で、リーディングシュタイナーとかいう奴で、虎太郎だけ別の世界線の記憶があるっていう。」

恭二「それだ!俺はまだその設定ついていけてないけどな。」

優「さっき僕のこと覚えてなかった時点でなんとなくそんな気がした。虎太郎が僕たちと記憶が食い違ってるの、ここ最近で初めてではないから。」

虎太郎「その通りだ。実は昨日、優の姉、千早さんが小学生のころの自分にFAXを送った。過去の自分を励ますという些細なものだったんだが、まさかこういう結果を生むとは。」

恭二「じゃあお前の記憶では天ヶ瀬冬馬とかいう奴が部員で、優は部員じゃなかったってことか?」

虎太郎「そうだ。優と会うのは俺の記憶上、今日が初めてだ。」

佐々木佳織のときとは違う。冬馬を知ってる人間は回りに誰もいない。おそらくにこ姉ちゃんも。
これはとんでもないことをやってしまった。

続く

第8話 天ヶ瀬冬馬の消失

買い出しから戻ったにこと千早

恭二「実は昨日、TTMが送られて過去が変わり、どうやら別の世界線では優ではなく別の人物が部員だったらしいぞ。名前なんだっけ?なんとか冬馬とかいう奴。」

虎太郎「天ヶ瀬冬馬だ。にこ姉ちゃん、その人のこと知ってるか?」

にこ「知らないわよ。また過去を変えて厄介なことになったのね。」

千早「天ヶ瀬冬馬?それって昔961プロに所属していたジュピターの天ヶ瀬冬馬さんのこと?」

にこ「如月さん知ってるの?」

千早「ずいぶん懐かしい名前ね。人気でなくて、ジュピターの解散とともにやめちゃった人ですけどね。」

虎太郎「あの、天ヶ瀬冬馬と連絡取れたりはしませんか?」

千早「連絡先は知りません。私もよく知らない。かつて私が所属する765プロのライバルとして知ってただけで、大してつながりはなかったから。」

このタイムアイドル部の貴重な戦力だった冬馬が世界線の変化という形でいなくなってしまった。さすがに今回のタイムトラベルメールの影響はきつかった。
タイムアイドル部の重要な戦力が消失したんだ。もしかしたら優がそのまま冬馬の穴を埋めてくれるのかもしれないが。

優「そういえばお姉ちゃん、今度アメリカに行くんだっけ?」

千早「来年の年明け以降だけどね。25日には武道館でライブがあるの。」

にこ「世界一のアイドルは忙しいね。」

千早「まだ世界一ってほどじゃないよ。」

虎太郎「千早さんってそんなに有名だったか?」

にこ「当たり前でしょ。今年のCD売り上げ総数はソロ歌手日本一よ。現在10曲連続ミリオンで初登場オリコン1位。そんなことも知らなかったの?」

恭二「それともあれか、お前の知ってる世界線ではそれも違ったのか?」

虎太郎「違った。俺の元いた世界線では、千早さんは有名アイドルではあったが、せいぜい中堅より少し上くらいだった。」

千早「そうだったの。さっき言った天ヶ瀬冬馬さん、私がいなかったらもっと人気出てたのかもしれないわね。」

・・・まさか。
千早さんは、アイドル界から冬馬を追い出して自分の地位を上げる内容のFAXを送ったのか?

千早「矢澤さんも今でこそ人気アイドルだけど、昔は大変だったみたいね。」

千早「スクールアイドルをやってたそうだけど、母校の高校、確か音ノ木坂学院でしたっけ、そこが廃校になっちゃったんですよね?」

にこ「そう。私が高3のときに決まって、卒業した2年後に廃校。」

虎太郎「・・・廃校になった? 音ノ木坂学院が?」

にこ「うん。私の後輩の穂乃果が音ノ木坂学院の廃校を阻止するためにスクールアイドルを始めたんだけど、廃校を阻止するなんてそんな簡単なことじゃなかった。」

にこ「虎太郎は知らないだろうけど」

千早「音ノ木坂学院の跡地は西木野総合病院になったんですよね。学校の跡地が病院になるなんて・・・」

隣のアイドルショップの店長、小泉メガ兄にも聞いたら、確かに音ノ木坂学院は廃校になったという。
花陽さんは音ノ木坂学院の生徒ではなかったが、花陽さんの幼馴染の凛さんが音ノ木坂学院の最後の世代だった。

まただ。
花陽さんのメールによる世界線の変化で、9人いたはずのμ'sが6人になり、スクールアイドルがメジャーな文化ではなくなった。
さっきの千早さんのFAXで、今度はμ'sは音ノ木坂学院の廃校を阻止できなかった世界線になってしまった。

まさかタイムトラベルメールが、ここまで世界に影響を及ぼすとは。

・・・
♪着メロ START DUSH

虎太郎「メールだ。」

『短い間でしたがお世話になりました。俺たちは新たな協力者を求めて旅に出ます。
タイムアイドル部の皆さんのことは決して忘れません。 織斑一夏&鹿目達也』

虎太郎「なんだ。いなくなってしまったのか。俺がインフィニットタイムオンラインを手に入れられなかったから。」

『ニュースです。ハシモトカメラの屋上から、人工衛星がなくなりました。』

虎太郎「人工衛星が消えた? 世界線の変化か? いや今回は過去に何も送ってないが・・・」

虎太郎「まあそんなことどうでもいいや・・・」

・・・
♪着メロ START DUSH

虎太郎「またメールか。今度は誰だ?」

『お前を見ているぞ。このまま無事でいられると思うな。』

虎太郎「んぬ・・・」

虎太郎「いたずらメールか。誰だ、こんなことする奴は・・・。」


にこ「にっこにっこにー。」

にこ「虎太郎、あの2人知らない。達也君と一夏君。」

虎太郎「実は今日の昼、旅に出たって言い残してどっかに行ったよ。」

にこ「え? そんな・・・」

虎太郎「どうかしたのか?」

にこ「達也君、μ'sのファンだって言ってくれてたから、サインくらい上げたかったなって。」

実は俺は数日前から、恭二とタイムマシンの開発に取り組んでいる。
今ここにはいない冬馬から教わった情報を共有して、アザーワールドオンラインを改良したのだ。

優「虎太郎に朗報だ。」

虎太郎「なんだ?」

恭二「どうやらAWOを使って、タイムマシンの制作ができそうだ。何日か前から優と研究してたんだが、結構進んでる。」

虎太郎「そうか!さすが我が部の部員。ついに世界を変革するときが来る。」

恭二「タイムマシンといっても、メールやFAXと同じ容量で過去の自分に記憶を送る、タイムトラベルというよりタイムリープだ。」

優「実質過去にしか行けない片道のタイムマシンみたいになるんだけど。」

虎太郎「聞け、矢澤にこ!我がタイムアイドル部はついにタイムマシンの開発に成功しようとしている」

にこ「へえ。すごいわね。」

虎太郎「なんだその反応は!」

にこ「あまり信用出来ない。」

にこ「ねえ、いまさらで悪いかもしれないけど、私にも過去にメールを送らせてくれないかな?」

虎太郎「本当にいまさらだな。使いたいならもっと早く言えよ。」

にこ「今までは使いみちが思いつかなかったのよ。」

虎太郎「悪いがこれ以上過去を変えるのは危険だ。何が起きるかわからないしな。」

にこ「ここまで付き合ってきた姉の頼みが聞けないって言うの?」

虎太郎「わかったよ。にこ姉ちゃんはどんなことを送るんだ。」

にこ「達也君と一夏君を引き止めてほしい。」

虎太郎「なんだって?」

にこ「達也君、μ'sのファンだっていうからせっかくだからμ'sのメンバーでライブを開いてあげようと思ってたのに、その前にいなくなっちゃって。」

にこ「穂乃果や他のメンバーにも言っちゃったんだよ。超マイナーだったスクールアイドルに興味を持ってくれる人がいて、みんな嬉しそうだったのに。」

にこ「当初の目的だった、廃校寸前の学校を守ることすらできなくて。」

たしかこの世界線ではスクールアイドルのファンなどかなり貴重な存在だったんだよな。

虎太郎「そういう意味では、俺もタイムマシンの完成には一夏の力を必要になりそうなんだ。」

何しろ冬馬がいなくなってしまったからな。

虎太郎「賛成だ。過去の俺に一夏と達也を引き止めるように言おう。」


今回はFAXにして、μ'sのサインまで入れて送信したのである。これを2人に見せてここにとどまらせると。

虎太郎「AWOの準備完了。よし、送信だ!」

にこ「了解。」

リーディングシュタイナーが発動し、再び世界線が移動する。
気付けばそこには一夏と達也がいた。過去改変でここにとどまらせることができたのだ。

・・・
虎太郎「達也がμ'sの大ファンだっていうから、あの2人のためにライブをするんだってな。」

にこ「え? なんで知ってるの?」

虎太郎「FAXによる過去改変で、別の世界線の姉ちゃんが言ってた、って言えば納得するか?」

にこ「またそれか。あまり信じられないけど、今はもう嘘だとは思えなくなってきたわね。」

こころ「タイムリープってどうやるの?」

虎太郎「さっき恭二と優が言ってただろ。今の、この自分の意識を過去に飛ばすのだ。」

ここあ「タイムトラベルメールじゃダメなの?」

虎太郎「TTMはいろいろ不安定だ。メール1通で予期せぬことが起きる。」

インフィニットタイムオンラインが消えたり、μ'sのメンバーから3人いなくなって、そのうち1人がTKB48に入ってたり、
μ'sの活躍で廃校を阻止したはずの音ノ木坂学院が廃校になっていたり、
挙げ句の果てにはタイムアイドル部の重要な部員が1人入れ替わったり。

虎太郎「その点タイムリープなら過去改変についてある程度コントロールが可能になる。」

虎太郎「少なくとも、メール1つで1つの学校を廃校にするような変化は起きない。」

こころ「廃校?」

虎太郎「いや、なんでもない。」

こころ「でも記憶を送ったあとの自分はどうなっちゃうの?体はここに残ったままなんだよね?」

虎太郎「それはそうだな。」

こころ「そして私はいまこうやってお姉さまやここあや虎太郎とお話してるでしょ? もし1週間前に戻って、1周間をやり直すとするでしょ?そのときお姉さまとお話しないようにしたらどうなるのかな?」

虎太郎「おそらく、こころ姉ちゃんに記憶が残るが、話したという事実が消える。こころ姉ちゃんにだけその記憶は残る。」

こころ「お姉さまは覚えてないってこと?」

虎太郎「そうだろうな。」

こころ「なんか寂しいな。私1人取り残されるみたいで。」

ここあ「あ、ことりちゃんだ。」

にこ「ことりー。また会ったね。」

ことり「ねえ、メールを過去に送るのってまだやってるの?」

こころ「はい。それでね、今度はタイムリープができるかもしれないそうです。」

虎太郎「軽々しく話すな。」

こころ「えー、でもことりちゃんも部員でしょ?」

虎太郎「そうだが・・・。まあことりさんならいいか。」

ことり「タイムリープって何?」

虎太郎「アニメとかでよく見たことありませんか? 記憶の時間跳躍ですよ。」

ことり「そうなんだ。」

ことり「にこちゃん、今度久々にライブができるんだよね。」

にこ「今から楽しみ。」

ここあ「そういえばもうすぐクリスマスだね。街はクリスマスツリーやイルミネーション一色だ。」

佳織「にこちゃんたちー。」

ここあ「あ、佳織さんだ。」

ここあ「にっこにっこにー」

佳織「にっこにっこにー」

虎太郎「やっぱりそれやるのか。」

佳織「これからどこに行くの?」

にこ「家に帰るけど。」

佳織「そうなんだ。」

そのとき、佐々木佳織は俺の耳元でこう言った

佳織「タイムリープなんてやるわね。せいぜい頑張りなさい。」ヒソヒソ

虎太郎「なぬ?」

なぜそれを。しかもここ数日研究所にもアイドルショップにも顔を出してないはずの佐々木佳織が。
あれから外に漏れないように気をつけていたのに、まだ聞こえてたのか・・・

こうしてタイムリープマシンの制作は最終段階に入った。

・・・
12月20日、夕方のニュースを見ていると信じられないことが。
それは俺の想像もできないことだった。

『続いてはまもなく発生から33年を迎える東海道新幹線の脱線衝突事故についてです。この事故は1991年12月24日、東京発新大阪行きのひかり315号が熱海駅付近で脱線、鉄橋下に転落しました。』

『この事故で乗客650人が死亡し、開業以来死者ゼロだった新幹線の初の事故でした。今年も12月24日、事故現場の静岡県熱海市で慰霊祭が行われます。』

虎太郎「なんだって!」

新幹線の事故があったのか? 新幹線は開業から60年、未だに死亡事故ゼロだったはずだぞ。
これもメールやFAXによる過去改変が原因か。俺はまた、恐ろしいことをしてしまった。

しかし一体どのメール、あるいはFAXが原因なんだ?
バタフライ・エフェクトが、ここまで恐ろしい事態を招くとは。

『事故現場から謎の人工衛星が発見され、これが衝突して事故原因になったものと思われています。』

続く

第9話 タイムリープ

・・・
12月22日

にこ姉ちゃんや穂乃果さんが音ノ木坂学院近くの体育館を借りてライブを行った。

穂乃果「鹿目達也さん、織斑一夏さん。今日は私たちμ'sのライブに来てくれてありがとうございます。」

にこ「2人のおかげで、今日またこんな日が来ることができました。」

海未「μ'sは、今はもう解散しちゃった昔のスクールアイドルで、母校の学校はもう廃校になってしまい、ほとんどの人は覚えてない存在ですが、2人のために精一杯歌います。」

ことり「ぜひ聞いて下さい。」

数年ぶりに聞いたμ'sのライブ。にこ姉ちゃんの高校時代は俺は小学校に入学する前だったから、感覚的には初めて聞いたかもしれない。
しかし俺の知ってるμ'sは9人。だが今いるμ'sは6人・・・

世界線の移動によって、花陽さんの学年の3人がμ'sではなくなってしまったのだ。
しかもμ'sのいた音ノ木坂学院も廃校になってしまってる。


そのとき、俺はある異変に気づく。

虎太郎「2人が薄い・・・?」

6人のうち、2人の体が薄くなっていることに気づいた。
高坂穂乃果と、絢瀬絵里。

どういうことだ? まさかこれも過去が変わって、世界線が変わって2人が消えるというのか?
いや、それならなんでこの時点ではまだ存在してるのだ?

・・・
虎太郎「久々にμ'sの演奏を聞いたけど、なかなかよかったぞ。まあにこ姉ちゃんの現役時代は、俺はまだ小学校に入学する前だったんだけどな。」

にこ「そうね。でも2人にも、そして虎太郎や、冬馬君、優君にも楽しんでもらえてよかったな。」


μ'sの復活ライブから家路につく途中、俺は姉ちゃんたちと別れてコンビニに寄っていた。

♪着メロ START DUSH

虎太郎「メールか。誰だ?恭二か?にこ姉ちゃんか?」

『お前は知りすぎた』

虎太郎「んが!?」

虎太郎「また脅迫メール? 誰がこんなことしてるんだ?」


♪着メロ 僕らは今のなかで

虎太郎「今度は電話だと・・・」

『矢澤虎太郎、お前を見ているぞ。このまま無事でいられると思うな。』

虎太郎「今度は脅迫電話。嫌ないたずらだな・・・」

虎太郎「やばい・・・、なんだかすごくやばい予感がする・・・。」

矢澤家

にこ「・・・やっぱり。外からパソコンアクセスして何か変だと思ったんだけど・・・」

虎太郎「何かあったのか?」

にこ「この家、よくわかんないけどどっかの組織とダイレクトで回線がつながってるみたい。」

虎太郎「え?」

にこ「タイムアイドル部の研究所にも似たような形跡があった。」

虎太郎「組織? 謎の組織にハッキングされたと言うのか?」

にこ「なんかわからないうちにつながってたみたい。」

こころ「お姉さままで虎太郎みたいになっちゃったの?そんなの嫌だよー」

虎太郎「俺みたいとはなんだ?」

にこ「いや、確証はないから。私もそっち方面は詳しくないし・・・。」

俺の嫌な予感は当たっていたのか・・・

にこ「虎太郎、どうしたの? 何かあったの?」

虎太郎「いや、なんでもない・・・」

これは、本当に取り返しの付かないことになってしまったのか・・・


・・・
12月24日 13時

優「μ'sのライブに負けないように、僕たちも頑張ったよ。」

恭二「ついにタイムリープマシンが完成したー!」

虎太郎「おおおおお」

恭二「3日間だけ!」

虎太郎「なんだその言い訳みたいな付け足しは。」

虎太郎「とはいえついに世界の歴史が変わった。今日2024年12月24日は永遠に語り継がれる日になるだろう!」

優「ちゃんとできていたらね。」

恭二「さあ、これがタイムリープマシンだ。」

ここあ「なんかイヤホンみたいだね。」

恭二「理論上はこれで記憶を過去に送ることができるはずだ。データはタイムトラベルメール同様、過去の携帯に送られる。そして携帯の拡散電波を利用して、過去の自分に今の記憶をコピー、今の未来の記憶を持った自分が誕生する。」

恭二「データを送れるのは今のところ72時間まで。それ以上はデータが大きすぎて難しい。」

優「それと問題が1つ。これを誰が実験するか。送るのが記憶である以上、誰かが被験者になるしか成功か失敗か確かめられない。」

にこ「つまり、この中の誰かがこれを使うしかないってことね。私はパス。怖いから。」

こころ「私もパス。お姉さまの言うように怖い。」

ここあ「パス。」

恭二「俺がやろうか?」

優「いや僕がやる。」

虎太郎「俺に実験させてくれ。」

全員「どうぞどうぞ!」

虎太郎「なんでそのお約束の流れなんだよ!」

虎太郎「とはいえ、今日はクリスマスイブだ。実験はまた別の機会にして、今夜はタイムリープマシン完成記念パーティー兼クリスマスパーティーでもしようか。」

にこ「あんた、ビビって先延ばしにしたな。」

虎太郎「そんなことはない。俺も早く使ってみたいと思ってるぞ!」


虎太郎「ところで冬馬と優、研究所と矢澤家が謎の組織にハッキングされた原因はわからないんだよな? 誰がハッキングしたかも。」

優「うん。誰がハッキングしたのかもわからない。この研究所の人の知り合いなのか、μ'sの知り合いなのか、僕たちが全然知らない人なのかも。」

にこ「私はそもそも本当にハッキングされたのかもわからない。本当に私たちの行動がバレていたらなんらかのアクションがあるはずだし。」


研究所は狭いので、俺の家でパーティーを行うことにした。
夕方はその買い出しである。

虎太郎「機関の妨害工作で牛肉の値段が高い。オペレーションタイムセールはまだか?」

にこ「なんか久々にその設定見た気がする」

・・・
12月24日夜 矢澤家

ことり「にこちゃんの家に来るのって久し振りだね。」

海未「にこが高校3年生のとき以来ですよね。」

絵里「懐かしいな。」

希「当時幼かった妹や弟さんもすっかり大きくなったようやね」

穂乃果「虎太郎君に、恭二君に、優君もアイドルなんだっけ?」

恭二「はい。副業としてアルバイトをしてますけど。」

虎太郎「俺はスクールアイドルならぬタイムアイドル、魔法ヶ沢京太郎だからな。」

優「とはいえμ'sのメンバーまで呼んじゃって大丈夫なのかな。タイムリープマシンは機密事項なのに。」

虎太郎「まあなるべく部外者には知られないようにしとけ。」

そして・・・今日もだ・・・。
穂乃果さんと絵里さんの体が薄い。しかもこないだよりさらに薄くなってる。


穂乃果「一夏君と達也君のおかげで、またこうやってみんなでライブができて、こんなパーティーもできたよね。本当にありがとう。」

達也「僕たちこそ、ありがとうございました。夢みたいでした。」

こうして楽しい時間もあっという間にすぎ、タイムアイドル部、そしてμ'sのメンバーは帰っていく。

穂乃果「今日はありがとう。」

ことり「またこうして集まろうね」

こんな時間がずっと続いてくれればいいのに、せめて明日までは、みんなそう思っていた。
だが運命は明日までさえも、待ってはくれなかった。

こころ「お姉さま、虎太郎、そして皆さん、大変です!」

にこ「どうしたの?」

こころ「電車が止まってる」

虎太郎「なんだって?」


『今日午後6時ごろ、何者かから爆破の予告があったため、JRと地下鉄の一部路線が運転を見合わせております。』

『現在運転を見合わせているのは次の路線です。山手線、京浜東北線、横須賀線、中央線、総武快速線、中央・総武緩行線、東海道線東京~小田原間、上野東京ライン、東海道新幹線、東北新幹線東京~仙台間、東京メトロ丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、半蔵門線、都営地下鉄新宿線、都営地下鉄三田線の各路線です。』

海未「テロの予告なんて迷惑ですね。一体誰がこんなことを?」

穂乃果「私はいいけど、恭二君や優君はどうするの?タクシーで帰るの?」

優「タクシーはお金がかかるからな」

そして2024年12月24日、21時ちょうど、とうとう恐れていたこと、いや想像もしてなかったことが・・・。

ドクンドクン ドクンドクン ドクンドクン・・・

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

不審な足音が家の近くに響き、それはやがて大きくなり、そして恐怖の音が響いてドアが開く・・・

強盗「動くな!金を出せ!全員両手を上げろ!」

10人ほどの男が家に侵入し、俺たちにピストルを向けた。

ここあ「キャー!」

こころ「助けて、お姉さまー!」

強盗「君が長男か。ならば家の大事なものの在処くらい教えられているだろ? 地震が来たらそれを持って逃げなさいだとか、強盗さんがきたらそれを差し出してお帰り願いなさいとか、聞かされた覚えはあるだろ?」

強盗「さあそれを探してこい。俺たちが気に入らなかったら、この子たちとは悲しいことだけど1人ずつお別れになってしまうよ。1人につき10分、10分毎につ持って来い。」

俺は必死に家の中を探した。頭がひどく痛かった。吐き気がした。倒れそうだった。姉ちゃんたちの命がかかってるんだ。探しださなきゃならない。
けど、あいつらが気に入る価値がありそうなものなんかわからない。

虎太郎「急がなきゃ。この一番大きな壺を持って行こう。重い・・・これだけ大きければすごい価値があるに違いない・・・」

足を滑らせて壺は割ってしまった。

ドン!

10分おきに銃声が2回鳴り響いた。

虎太郎「やめろ・・・やめてくれー・・・」

警察は来なかった。20分の間にこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは殺されてしまった。

俺は血だらけになって仰向けに倒れこんだ、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを見て、その場にひざまずいた。

虎太郎「こころ姉ちゃんと、ここあ姉ちゃん・・・」

虎太郎「なんだよこれ!」

強盗「この家の大事な品はどうした!」

虎太郎「大きな壺を持ってこようと思ったのですが・・・、割ってしまって・・・」

そのとき、ある人物が俺の近くに・・・

虎太郎「お前は・・・佐々木佳織・・・」

佳織「タイムリープマシンを出せ。」

虎太郎「・・・」

佳織「タイムリープマシンは、スプリングツリーに差し出す。」

にこ「スプリングツリー? どういうこと?」

佳織「離れなさい。早く、タイムリープマシンを渡しなさい。」

虎太郎「今ここにはない・・・」

にこ「虎太郎、離れて、虎太郎も殺されちゃう!」

虎太郎「許さない・・・、俺は、お前を・・・」

一夏「虎太郎、助けに来たぞ。」

虎太郎「一夏と達也・・・」

達也「自転車を手配した。研究所に優と恭二が待ってる。AWOを起動して。」

虎太郎「・・・タイムリープするしかないのか。」

一夏「早く!」

虎太郎「わかった。」


俺は一夏と達也が時間を稼いでる隙に自転車で研究所へ。そして・・・

優「タイムリープするのか、でも失敗したら・・・」

虎太郎「そんなこと心配してる時間はない。早く!」

まだ1回も実験したことがないタイムリープマシンをかぶり、いざ今日の夕方へ・・・

放電現象が始まる。

ドン!

研究所にまで強盗犯がやってきた。

虎太郎「飛べよー!」

続く

第10話 ときを巻き戻して(前編)

時間は巻き戻る・・・。

12月24日、17時20分。

虎太郎「はあ、はあ、はあ・・・」

恭二「どうしたんだ?急にそんな息切らして。」

虎太郎「今は何時だ?」

恭二「えーっと、17時20分だけど? これから買い物に行くんだろ。にこ姉ちゃんは先に行った。」

虎太郎「17時・・・成功したのか・・・」

虎太郎「こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんはどこだ? にこ姉ちゃんも」

優「だから買い物に行ったって。こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんはμ'sのメンバーを誘いに行った。」

誘いに行った。このままだとみんな矢澤家に・・・
パーティーの場所はこの研究所に変更するように言うか。いや、この場所もハッキングされてるんだ。安全とはいえない。

虎太郎「パーティーは中止だ。今日は解散とする。みんな早く家に帰ってくれ。」

恭二「なぜだ?」

虎太郎「急用ができて俺の家が使えそうもないんだ。」

俺は飛び出していった。

恭二「どうしたんだあいつ? 携帯がかかってきたと思ったら・・・」

恭二「・・・携帯?」

にこ姉ちゃんに電話だ!

トゥー、ポチッ

にこ『にっこにっこにー。あなたのハートににこにこにー、笑顔届ける矢澤にこにこ。にこは今電話に出られません。ピーという音の後にメッセージを入れてね。』

虎太郎「にこ姉ちゃんは何を恥ずかしい応答メッセージ入れてるんだ。いや今はそんなことどうでもいい・・・」

次はこころ姉ちゃんだ

こころ『矢澤こころです。こころちゃん言うなー! 今電話に出られません。ご用の方はピーという音の後にメッセージを入れて下さい。』

虎太郎「こころ姉ちゃんもかよ!」

次はここあ姉ちゃんに

ここあ『矢澤ここあだよ。ここあは電話に出られないの。ご用の方はピーという後にメッセージを入れてね。』

虎太郎「ここあ姉ちゃんもダメか!」

虎太郎「世界線が大きく変わった様子はない。本当に今日の17時台に戻ってきたんだ。」

凛「あっ、カラスがお家に帰って行くにゃあ。一羽」

雪穂「二羽」

亜里沙「三羽」

真姫「四羽」

凛「凛たちの台詞これだけ? まるで町の子1だにゃ。」

真姫「文句言わないの。」


そのとき、異変に気づく。
あのモブキャラのうちの2人も、μ'sの2人のように体が薄くなってるぞ。雪穂さんと亜里沙さんだ。
・・・は!この2人はμ'sで体が薄くなっていた穂乃果さんと絵里さんの妹だ。これは一体どういうことだ?

いや、そんなことを気にしてる場合ではない!

亜里沙「ちょっと!モブキャラ言うな! お前のほうがラブライブ本家ではチョイ役だろ! そもそもなんでラブライブに男が出てるのよ!」

凛「そうだにゃあ。SIDに虎太郎なんてキャラいないのに」

雪穂「何ナレーションに突っ込んでるの!」

真姫「それにSIDじゃあんたも存在しないキャラでしょ」

亜里沙「あ、それは・・・」

このあと、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんはμ'sのメンバーを連れて家に帰ってきて、今夜21時に・・・

警察に駆け込むか。いや、未来からタイムリープしてきたなんて信じてくれるわけない。
あと3時間あまりで、なんとかするしかない!

穂むら

虎太郎「穂乃果さん・・・」

穂乃果父「君は、誰だ?」

虎太郎「穂乃果さんは知りませんか?」

穂乃果父「友達のこころちゃんと一緒にパーティーに行きました。」

虎太郎「なんだって!」

虎太郎「どこかに立ち寄るとは言ってませんでしたか?」

穂乃果父「穂乃果ですか、さあ・・・」

虎太郎「穂乃果さんに連絡してパーティーは中止、家に帰るように言って下さい。それからここあ姉ちゃんには家から離れて他の人の家に泊まるように言って下さい。」

穂乃果父「はい」


そのとき別の人を見かけた

虎太郎「ことりさん。こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを見かけませんでしたか?」

ことり「こころちゃんなら神田明神の希ちゃんのとこにパーティーに誘いに行ったと思うよ。私もこれから行くとこ。」

ことり「まだ来てないの?」

虎太郎「パーティーは中止にします。絶対に矢澤家には行かないで下さい。」

ことり「え? どうして?」

虎太郎「両親が急に家に帰ってくることになって、今日は無理なんだ。」

虎太郎「こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを見かけたら俺に連絡して下さい。電話番号は知ってますよね?」

ことり「うん。」

世界線が変わっていないということは、こころ姉ちゃんやここあ姉ちゃんの行動は、俺がなんとかしないと変えられない。
どこだ?

♪着メロ 僕らは今のなかで

虎太郎「誰だ?」

にこ『にこだよ』

虎太郎「よかった。やっと連絡がついた。」

虎太郎「突然だが、今日のパーティーは中止にする。家から離れて、どこかに泊まってくれ」

にこ『いきなりどうしたの?』

虎太郎「今夜9時に、家に強盗が入るんだ。絶対に家に帰るな!」

にこ『またあんたの中二病?』

虎太郎「本当だ。俺は未来からタイムリープしてきたんだ! 恭二がタイムリープマシンを作っただろ!」

にこ『嘘もほどほどにしなさい。そういうこと言ってるとあんたオオカミ少年になっちゃうよ。』

虎太郎「嘘じゃない。」

しまった。日頃の行いが悪いせいか、俺はもうオオカミ少年になってしまったのかもしれない。強盗が入るなんて、姉ちゃんが信じてくれるわけがない。

にこ『・・・それ本当なの? 未来からタイムリープしてきたって。』

虎太郎「本当だ。」

にこ「最近はあったの言ってることが本当のようなことばかりになってきてるからね。あんたの今の様子じゃ、かなり慌ててる。これは嘘だとは思えない。」

にこ「それにあんた、いつもは機関とか謎の組織とか言ってるからね。強盗なんて言葉、虎太郎らしくない。だから冗談だとは思えない。疑ってごめんなさい。」

虎太郎「信じてくれるならいいんだ。」

にこ「せっかくだから今夜、希の家にでも泊めてもらうよ。あと、事情はあとでちゃんと話すんだよ。」

虎太郎「わかった。」

♪着メロ 僕らは今のなかで

虎太郎「こころ姉ちゃんか、ここあ姉ちゃんか?」

恭二『俺だけど。』

虎太郎「恭二か。今日はもう解散だと言っただろ。』

恭二『お前、もしかして未来からタイムリープしたきたのか?」

虎太郎「な・・・なぜわかった?』

恭二『携帯に出た瞬間、人が変わったようになったから、その様子だと何かあったってことだろ。」

虎太郎「ああ』

虎太郎「だが詳しく話してる時間はない。とにかく逃げるんだ。」

恭二『逃げるってどこに?』

虎太郎「どこでもいい。なるべく研究所や俺の家からは離れるんだ。」

恭二『あとでちゃんと説明しろよ。』


そのとき

海未「あなたは、虎太郎君ですね。」

虎太郎「海未さん・・・」

海未「今こころちゃんとここあちゃんが絵里を誘いに行ってます。」

虎太郎「どこにいる?」

海未「こころちゃんとここあちゃんですか? ならあそこの角に・・・」

虎太郎「ありがとうございます。それと今日はパーティーは中止にします。両親が急に家に帰ってくることになりました。」

海未「そうなんですか?残念ですね。」

虎太郎「詳しくはあとで話すので、絶対に矢澤家には近付かないで下さい。」

虎太郎「こころ姉ちゃんにここあ姉ちゃん。」

こころ「虎太郎、どうしたの、そんなに慌てて。」

虎太郎「一緒に来るんだ!」

ここあ「え? パーティーは?」

虎太郎「中止だ。他のメンバーにも言ってある。」

ここあ「なんで?」

虎太郎「理由はあとで話す。時間がないんだ。」

こころ「あんた弟のくせに姉に命令する気?」

虎太郎「両親が急に帰ってくることになってパーティーはできなくなったんだ。 そして夫婦喧嘩で家が大変なことになってる。」

ここあ「何その今考えたような理由?」

こころ「今日の虎太郎、なんか変だよ。」

虎太郎「なあ、今は言うとおりにしてくれないか? 詳しいことは後でちゃんと話すから。」

ここあ「わかったよ。」

こころ「あとでお姉さまと一緒にちゃんと話してね。」


プルルル

虎太郎「聡、今から京都に用事があって、今夜お前の家に泊めてもらいたいんだが。」

聡『今からか? まあお前の頼みなら聞いてやる。』

虎太郎「ありがとう。待っててくれ。」

今からなら最終新幹線に間に合う。そのための金も研究所から持ってきた。

秋葉原駅

ここあ「すごい人だね。」

虎太郎「帰宅ラッシュの時間で、しかも今日はクリスマスイブだからな。」

こころ「あれ? でもホームに誰も居ないよ」

虎太郎「は!」

・・・
『今日午後6時ごろ、何者かから爆破の予告があったため、JRと地下鉄の一部路線が運転を見合わせております。』


「運転再開の目処はまだ出てないって」

「誰よこんないたずらしたの」

・・・
虎太郎「しまった!こんなときに・・・」

確か新幹線も止まってるんだ・・・。どうすれば・・・。仕方ない、こうなったら・・・

虎太郎「羽田だ! タクシーでモノレールの浜松町まで、そこから羽田に・・・」

強盗犯「矢澤虎太郎だな・・・」

虎太郎「んが・・・!」

こころ「どうしたの?」

強盗犯「一緒に来てもらう」

花陽「そこ何止まってるの!」

虎太郎「花陽さん?」

虎太郎「今のうちに、逃げろー!」

こんなところで花陽さんに助けられるとは・・・。この恩はいつか返します。

虎太郎「逃げろ、全力で逃げるんだ!」

こころ「あの人たち誰?」

21時まで1分を切った。そのとき、俺は転んでしまった。

虎太郎「走れ、姉ちゃんたちだけ先に行ってくれ!」

こころ「うん」

が、しかし・・・

ガーン

こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは、飛び出してきた車に轢かれてしまった。

虎太郎「こころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃん・・・」

愕然としている俺の後ろに、別の人影が・・・

佳織「矢澤こころ、矢澤ここあはたった今ひき逃げにあって死亡しました。矢澤虎太郎は今から確保します。タイムリープマシンはスプリングツリーに差し出します。」

佐々木佳織だと・・・。

俺は強盗の男を突き飛ばして、研究所へ走り出した。

虎太郎「くっそー!」

虎太郎「殺させない!こころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃん、絶対に助けてやる!」


研究所

タイムリープマシンを被った。

虎太郎「こんな運命御免だ! 絶対に変えてやる」

・・・
12月24日、17時20分。

恭二「中止?なぜだ?」

虎太郎「実はな、俺の両親が今夜家に帰ってくることになった。全員を家に入れられそうにない。」

優「そうか。それは残念だね。」

虎太郎「それと、この研究所も小泉メガ兄が乗り込んでくるらしい。ここにいては危険だ。」

虎太郎「タイムリープマシン完成記念パーティーは後日改めて行う。お正月にでもやろう。」


トゥー、ポチッ

にこ『にっこにっこにー。あなたのハートににこにこにー、笑顔届ける矢澤にこにこ。にこは今電話に出られません・・・』

虎太郎「ダメだ。多分、こころ姉ちゃんやここあ姉ちゃんにもつながらない。」

どうしても時間がかかってしまう。これではさっきと同じになる。

まずはμ'sのメンバーを矢澤家から遠ざけるのが先だ。
俺が電話番号を知ってるのはにこ姉ちゃんの他にはことりさんしかいない。

俺から電話をかけるのは初めてだな・・・

トゥー、ポチッ

虎太郎「もしもし、ことりさん。」

ことり『虎太郎君、いや、魔法ヶ沢君。これからにこちゃんの家に行こうかと思ってるんだけど』

虎太郎「パーティーは中止にします。今夜両親が帰ってきて、家が使えなくなりました。」

ことり『そうなんだ。残念だね。』

虎太郎「μ'sのメンバー全員に伝えて下さい。あとにこ姉ちゃんに連絡がついたら、秋葉原のタクシー乗り場に行くように言って下さい。」

ことり『わかった。』

虎太郎「それと穂乃果さんの家の電話番号を教えて下さい。携帯ではなく家の方で。ここあ姉ちゃんがそこにいるはずなので。」

ことり『穂乃果ちゃんの家なら・・・』

虎太郎「ありがとうございます。あと海未さんに、こころ姉ちゃんを見かけたら穂乃果さんの家に行くように言って下さい。」

穂乃果父『はい、高坂です。』

虎太郎「矢澤虎太郎といいます。穂乃果さんとその友達はいますか?」

穂乃果父『今から友達のここあちゃんと一緒に矢澤さんの家に行くところです』

虎太郎「呼び止めて下さい。俺が行くまで、絶対にそこから動かないように。」


♪僕らは今のなかで

にこ『にこだよ。虎太郎、一体どうしたの?』

虎太郎「これから秋葉原のタクシー乗り場に来てくれないか?パーティーは中止になった。今夜家に強盗が入ってくるんだ。」

にこ『強盗?またあんたの中二病? 嘘もほどほどにしない。そんなこと言ってるとあんたオオカミ少年になっちゃうよ。』

虎太郎「嘘じゃない。」

にこ『わかった。じゃあ今日だけあんたの中二病的オオカミ少年につきあってあげます。』

凛「あっ、カラスがお家に帰って行くにゃあ。一羽」

雪穂「二羽」

亜里沙「三羽」

真姫「四羽」

は!
モブキャラの雪穂さんと亜里沙さんが、さっきよりも薄くなってるんじゃないか?
いやそんなことどうでもいい。

亜里沙「なんで私がモブ同然のキャラで、あの虎太郎とかいうガキが主人公なのよ!」

凛「ラブライブで名前ついてるキャラで一番嫌われてるキャラなのに」

雪穂「男って時点で邪魔な存在だよね」

真姫「文句言わないの。」

穂むら

虎太郎「ここあ姉ちゃん」

穂乃果「あ、虎太郎」

穂乃果「虎太郎君、一体どうしたの?これからにこちゃんの家に行くとこだったのに」

虎太郎「パーティーは中止、いや、延期になった。両親が家に帰ってきて、夫婦喧嘩してるらしい。メンバー全員が入れそうもなくて、仕方ないんだ。」

穂乃果「そうなんだ。」

虎太郎「こころ姉ちゃんと合流したら、これから行くとこがあるんだ。」

穂乃果「こころちゃんならさっきことりちゃんから電話があって、今からここに向かってるらしいよ。」


そしてこころ姉ちゃんも合流し

穂乃果「これからどこに行くの?」

虎太郎「ちょっと遠出する。」

穂乃果「え?これから? もう夜遅いのに?」

虎太郎「さっきいったように家が大変なことになってるから、友人の家に泊めてもらうんだ。時間がないんだ。早く行こう。」


秋葉原タクシー乗り場

虎太郎「これから浜松町に行く。」

こころ「浜松町までタクシーで?」

虎太郎「電車が止まってるんだ。爆破の予告があったらしくてな。」

ここあ「ああ、そういえばそんなニュース聞いたな。」

ところが渋滞していたせいで予想以上に時間がかかり、浜松町到着は20時過ぎに。
しかも東京モノレールも運転見合わせになってしまった。

モノレール浜松町駅

虎太郎「やばい、さっきまでモノレールは止まってなかったのに・・・」

そして恐怖の21時が近づいていた。

ドクンドクン ドクンドクン ドクンドクン・・・

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

こころ「お姉さまのスマホも止まってますよ。」

にこ「あ、本当だ、なんでかな?」

ガン! ドカ!

「キャー!」

突然屋根の板が崩れ落ち、こころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃん、そしてにこ姉ちゃんが下敷きに。

虎太郎「こ、にこ姉ちゃんに、こころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃん・・・」

虎太郎「何だよこれ!」

さっきまでこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんだけだったのに、今度はにこ姉ちゃんまで死んでしまった。
どうしてこうなった? さっきより悪くなってるじゃないか・・・

俺はホームを抜け出し、タクシーで研究所に戻った。

佳織「矢澤にこ、矢澤こころ、矢澤ここあは死亡しました。矢澤虎太郎は逃走しました。」

なぜ佐々木佳織がそこにいる。

虎太郎「死なせるもんか!姉ちゃんたちを、絶対に助けてやる!」

そして三度タイムリープで12月24日の夕方へ

続く

第11話 ときを巻き戻して(後編)

12月24日、16時

虎太郎「ハアハアハア・・・・」

今度は1時間早い時間にタイムリープした。
まだ研究所ににこ姉ちゃんがいた。

虎太郎「にこ姉ちゃん・・・」

にこ「あんたどうしたの? ハアハア言ってるけど。」

虎太郎「突然で悪いんだが、今日のクリスマスパーティーは中止にする。」

にこ「中止?どうして?」

虎太郎「今夜9時に、家に強盗が入るんだ。絶対に家に帰るな!」

にこ「またあんたの中二病?」

虎太郎「本当だ。俺は未来からタイムリープしてきたんだ!」

にこ「嘘もほどほどにしなさい。そういうこと言ってるとあんたオオカミ少年になっちゃうよ。」

虎太郎「嘘じゃない。」

やはり最初は信じてくれないか。

恭二「お前、本当にタイムリープしてきたのか?」

虎太郎「ああ。」

恭二「そうか。実験は成功したんだな。」

にこ「恭二君、信じるの?」

恭二「信じるさ。タイムリープマシンを作ったのは俺と虎太郎と優なんだから。」

にこ「そう。まあ最近はあったの言ってることが本当のようなことばかりになってきてるからね。」

にこ「それにあんた、いつもは機関とか謎の組織とか言ってるからね。強盗なんて言葉、虎太郎らしくない。あんたの今の様子じゃ、かなり慌ててる。これは信じるしかないようね。」

にこ「こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんはもうμ'sのメンバーを誘いに行ってしまったのか。」

トゥー、ポチッ

虎太郎「もしもし、こころ姉ちゃん。」

こころ『なんだ、虎太郎か。』

虎太郎「事情があってパーティーは中止になった。家には帰らず、研究所に戻ってきてくれ。理由は後で話す。」

こころ『今から希さん誘おうと思ったんだけどな。そこまで言うなら戻ってくるよ。』

よかった。こころ姉ちゃんとは連絡が取れた。

トゥー、ポチッ

ここあ『矢澤ここあだよ。ここあは電話に出られないの。・・・』

こっちはダメか。

虎太郎「今からここあ姉ちゃんを探してくる。研究所に戻ったら電話してくれ。」


・・・
凛「あっ、カラスがお家に帰って行くにゃあ。一羽」

雪穂「二羽」

亜里沙「三羽」

真姫「四羽」

凛「さようならカラスさん、気をつけてねー。」

真姫「ちょっと、何アドリブ入れてるのよ」

凛「だって台詞少ないんだもん」

亜里沙「虎太郎とかいう男が主人公で、私がチョイ役なんて・・・。虎太郎こそいらない存在なのに・・・」

穂むら

穂乃果「あ、虎太郎君だ。もしかしてパーティーに誘いにきてくれたの?」

虎太郎「パーティーは中止になりました。今夜両親が家に帰ってきて、家が使えなくなったんだ。」

虎太郎「ここあ姉ちゃんはまだ来てないですか?」

穂乃果「うん、もうすぐ来ると思うけど。」

こうしてここあ姉ちゃんと合流し、事情を説明。

穂乃果「ねえ、これからどこかに行くの?」

虎太郎「ちょっと、遠出する。旅行だ。」

穂乃果「え?今から?」

ここあ「姉ちゃんやこころちゃんとも一緒に?」

虎太郎「そうだ。」

ここあ「どこに行くの?」

虎太郎「それはあとで話す。電車の時間がないんだ。」

ここあ「わかった。」

研究所を17時30分に出発。今度こそ間に合いますように。

こころ「なんでこっちなの? 秋葉原の駅通りすぎちゃったよ?」

虎太郎「浅草橋から都営浅草線で羽田に行く。」

こころ「そうなんだ。」

ここあ「なんか、こうやって虎太郎も含めて4人で出かけるの久しぶりだね。」

だがそのとき
不審な男の視線を感じた。多分強盗犯だ。

虎太郎「ここはダメだ。こっちだ。」

強盗犯の目を逃れながら、なんとか浅草橋駅へ。

虎太郎「よし、行こう。」

そして無事羽田空港までは到着することができた。


羽田空港

虎太郎「聡、今から京都に用事があって、今夜お前の家に泊めてもらいたいんだが。」

聡『今からか? まあお前の頼みなら聞いてやる。』

虎太郎「ありがとう。待っててくれ。」

♪着メロ START DUSH

メールの音に一瞬ドキッとするが

『何があったかわからないけど、あとでちゃんと話してね』

虎太郎「なんだ、ことりさんか。」

こころ「ずいぶん人が多いね。」

虎太郎「新幹線が止まったんだろう。」

ここあ「え?止まってるの?」

虎太郎「ああ、何者かが爆弾を仕掛けたという電話が入ったらしくてな。」

ここあ「そうなんだ」

20時30分、大阪伊丹行きスカイマスター961便は羽田空港を離陸。

だが、離陸してからわずか15分ほどだった。

ドカーン
異常な爆発音が聞こえた。

「当飛行機はただいま異常が確認されたため、羽田空港に引き返すことを決定しました。」

ドクンドクンドクン

虎太郎「なんてことだ。まさかこの飛行機が・・・」

虎太郎「いや、それだけは勘弁してくれ。」

21時直前、羽田空港への緊急着陸直前。

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

にこ「でも着陸するから電源は切っとかないと。」

にこ「あ、にこのスマホも止まってる。故障かな?」

虎太郎「やだ、やめてくれ・・・」

ドカーン

「キャー!」

こころ「お姉さま」

ここあ「お姉ちゃーん」

羽田に引き返し緊急着陸したスカイマスター961便は、着陸に失敗、機体前方が炎上した。
俺は墜落直後、まだ意識があった。

虎太郎「にこ、こころ、ここあ姉ちゃん・・・」

虎太郎「そんな・・・こんなときに飛行機事故が起きるなんて・・・」

俺は病院に搬送され、一命を取り留めた。

この飛行機事故で、にこ、こころ、ここあ姉ちゃんが死亡。他にも計120人が死亡した。
最初はこころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃんだけだったのが、あとからにこ姉ちゃんも死んでしまい、
今度は3人だけでなく周りの人まで巻き添えになってしまった。

タイムリープするたびに死者が増えていく・・・

俺は病院に搬送され、数日間入院。このままだとタイムリープもできない。
だが一夏と達也が携帯型のタイムリープマシンを持ってきてくれた。

・・・
12月24日、16時00分。

虎太郎「ハアハアハア・・・・」

虎太郎「にこ姉ちゃん・・・」

にこ「あんたどうしたの? ハアハア言ってるけど。」

虎太郎「突然で悪いんだが、今日のクリスマスパーティーは中止にする。」

にこ「中止?どうして?」

虎太郎「今夜9時に、家に強盗が入るんだ。絶対に家に帰るな!」

にこ「またあんたの中二病?」

虎太郎「本当だ。俺は未来からタイムリープしてきたんだ!」

にこ「嘘もほどほどにしなさい。そういうこと言ってるとあんたオオカミ少年になっちゃうよ。」

虎太郎「嘘じゃない。」

恭二「お前、本当にタイムリープしてきたのか?」

にこ「恭二君、信じるの?」

恭二「信じるさ。タイムリープマシンを作ったのは俺と虎太郎と優なんだから。」

・・・
穂むら

穂乃果「あ、虎太郎君だ。もしかしてパーティーに誘いにきてくれたの?」

虎太郎「パーティーは中止になりました。今夜両親が家に帰ってきて、家が使えなくなったんだ。」

虎太郎「ここあ姉ちゃんはまだ来てないですか?」

穂乃果「うん、もうすぐ来ると思うけど。」

今回も夕方までにこころ姉ちゃん、ここあ姉ちゃんと合流することに成功。


現在東海道新幹線と東北新幹線は爆破予告によって運転を見合わせているが、上越新幹線と北陸新幹線は運転していることを確認。
今度は富山に住む石動純に連絡を取った。

虎太郎「今から富山に用事があって、今夜お前の家に泊めてもらいたいんだが。」

石動純『今からか?まあ矢澤は有名なアイドルだからな。お前の頼みなら聞いてる。』

虎太郎「ありがとう。」

上野20時2分発のかがやき号で富山へ。


北陸新幹線は群馬県から長野県内を走行中、例の21時に近づこうとしていた。

虎太郎「今度は大丈夫だよな? 新幹線は開業以来60年、死者を出した事故はゼロなんだ。」

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

こころ「お姉さまのスマホも止まってますよ。」

にこ「あ、本当だ、なんでかな?」

虎太郎「まただ・・・。まただ・・・。今度はこの列車が、新幹線が事故を起こすのか?そんなバカな・・・。」

虎太郎「そんなはずがない。新幹線が事故るなんてありえない・・・」

キーン
ドカーン

「キャー!」

こころ「お姉さま」

ここあ「お姉ちゃーん」

スピードの出し過ぎとATCの故障が原因だった。列車は長野県内で脱線し橋から転落。
にこ、こころ、ここあ姉ちゃんを含め315人が死亡する大惨事となった。

そんな
日本の新幹線史上初の死亡事故を起こしたことがなかったはずなのに・・・。
いや、違った・・・

・・・
『1991年12月24日、東京発新大阪行きのひかり315号が熱海駅付近で脱線、隣を走っていた上りのひかり334号に衝突。この事故で乗客650人が死亡し、開業以来死者ゼロだった新幹線の初の事故でした。』

・・・
この世界線では、1991年に新幹線は事故を起こしてしまっていたのだ。
この事故は日本の新幹線史上2回目の死者が出た事故ということになった。

俺は・・・、助かった・・・。
俺がタイムリープして過去を変えればこの事故自体はなかったことになるだろう。さきほどのタイムリープでの飛行機事故も今回は起きていない。

佳織「矢澤にこ、矢澤こころ、矢澤ここあは死亡しました。矢澤虎太郎は重傷です。」

なんでこんなところにまで佐々木佳織がいるんだ・・・。

虎太郎「殺させない! 俺が必ず助けてやるからな!」

・・・
それから俺は、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを助けるために、何度もタイムリープをした。
しかし・・・、どんな手を尽くしても・・・・、どんだけ逃げようとしても、12月24日の21時に、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは死んだ。
あるときはにこ姉ちゃんも巻き添えになって死んだ。
あるときはもっと多くの人が巻き添えになった。

強盗犯や佐々木佳織が襲ってこなくても、飛行機事故も、新幹線事故も起きなくても、
運命に殺されるように、まるで神様がこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを殺そうとしてるかのように・・・。

何をどうしようが、どんな方法を取ろうが、決まって12月24日の21時に死んでしまう・・・。
これじゃまるで運命じゃないか・・・。

続く

どうしてラブライブはアホにおもちゃにされるんだ
虎太郎とか原形残してることの方が少ないし

>>132
虎太郎以外は原形残してるけどな

第12話 タイムリープはもう嫌だ

12月24日 15時

まだ外は明るい時間のはずなのに、感覚的には既に真っ暗だった。

虎太郎「何度繰り返しても同じだ・・・。いくら姉ちゃんたちを逃がしても、結局・・・」

虎太郎「いや・・・待てよ。」

メール
『佐々木佳織よ、インフィニットタイムオンラインに関する新しい情報を入手した。研究所前に集合だ。』


佳織「で、インフィニットタイムオンラインについて何か知ってるの?」

虎太郎「手を上げろ・・・」

おもちゃの銃を向ける

虎太郎「お前の正体は何者だ!」

佳織「佐々木佳織だけど?」

虎太郎「お前が強盗を連れて今夜21時に俺の家を襲おうとしてることは知っている。」

佳織「なぜ?」

虎太郎「未来から来たからだ!早く答えろ、お前たちは悪の組織なのか?」

佳織「ラウンダー。任務は、インフィニットタイムオンラインの捜索。」

虎太郎「それを盗んだのはお前なのか?」

佳織「知らない」

虎太郎「とぼけるな。過去にメールを送ったのがきっかけで・・・」

そうだ。この世界線では神田明神にも最初からなかった。

虎太郎「なぜ俺の家を襲う? 俺はインフィニットタイムオンラインを持ってないんだぞ」

佳織「理由は、タイムマシンを作り上げたから。」

虎太郎「そんなことが理由で?」

佳織「私の司令はスプリングツリーから来る。」

虎太郎「スプリングツリー?誰だそいつ? お前の親玉か?」

佳織「私の彼氏のような存在」

虎太郎「ウオ!」

俺は近くにいた男たちに捕まって、意識を失った。


そこは車の中だった。

強盗犯「動くな!大人しくしろ!」

もうすぐ21時になってしまう・・・。

強盗犯「脅迫電話によって秋葉原、御茶ノ水、神保町を通る列車はすべてストップしています。予定通りです。」

佳織「矢澤虎太郎は確保済み。矢澤にこを確保、矢澤こころ、矢澤ここあは殺せ。」

虎太郎「待ってくれ!頼む、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを殺さないでくれ!」

虎太郎「この家で一番大きい壺をやるから・・・。タイムリープマシンのお前にやるから・・・。」

虎太郎「お願いだ、何でも言うこと聞くから・・・ただの好奇心だったんだ・・・だから・・・」

佳織「もう遅い」

ドン!

銃声が鳴り響いた。

俺は男を突き飛ばして研究所に。もう何度目かわからないタイムリープで今日の16時に。

・・・
12月24日、16時

虎太郎「ハアハアハアハア」

恭二「どうしたの? そんなに息切らして・・・」

にこ「何があった? いや、何が起きる?あんた、タイムリープしてきたんでしょ?」

虎太郎「にこ姉ちゃんからその言葉ができるはな」

虎太郎「全部俺のせいだ。メールで軽々しく過去を変えなきゃ良かった、タイムマシンを作らなきゃ良かった、佐々木佳織をタイムアイドル部に入れなければよかった・・・」

虎太郎「俺のせいでこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんが・・・」

そして今夜21時に起きることをにこ姉ちゃんと、恭二と優に話した。

虎太郎「何度タイムリープしても、決まって12月24日の21時に死ぬんだ。」

虎太郎「あるときはにこ姉ちゃんも巻き添えになって、あるときはもっと多くの一般人が巻き添えになって・・・」

恭二「どうして死んでしまうのかわからないけど、今は時間がない。もっと早い時間にタイムリープするしかない。」

虎太郎「ごめん。」

にこ「あんたが謝らないでよ。こころとここあは大切な妹、私も助けたい。力になりたい。」


研究所

恭二「時間は今から6時間ほど前の今日の午後1時設定した。ちょうどタイムリープマシンが完成したら、すぐに解散させて、俺や優、にこさんにさっきの話をしてくれ。未来から来たといえば、多分俺は信じる。」

虎太郎「だな。お前なら信じてくれる。」

恭二「だが一応合言葉を決めておこう。ジョン・スミス。俺の仮の名だ。」

虎太郎「そうか。」

にこ「私も合言葉を決めておく。 私が好きなキャラは影山飛雄」

虎太郎「ハイキューのか?」

にこ「そう。ってそこに興味を持つな!」

虎太郎「じゃあ行くぞ。」

いざ、今日の13時へタイムリープ

12月24日13時

優「μ'sのライブに負けないように、僕たちも頑張ったよ。」

恭二「ついにタイムリープマシンが完成したー!」

恭二「3日間だけ!」

にこ「なによその言い訳みたいな付け足しは。」

その台詞、今度はにこ姉ちゃんか。

虎太郎「とはいえついに世界の歴史が変わった。今日2024年12月24日は永遠に語り継がれる日になるだろう!」

俺もあのときと同じ台詞を言う。

にこ「ちゃんとできていたらね。」

恭二「さあ、これがタイムリープマシンだ。」

ここあ「なんかイヤホンみたいだね。」

虎太郎「だが今日はみんな疲れてるだろうし解散とする。」

ここあ「え?まだ1時だよ?」

虎太郎「ちょっと急用があってな。恭二とにこ姉ちゃんは残ってくれ。」

優も誘ったほうがよかったかな? でも俺にはこの人の記憶があまりないんだよな。

・・・
恭二「話ってなんだ?」

虎太郎「実はな・・・、俺は6時間後からタイムリープしてきたんだ。」

恭二「な・・・。」

虎太郎「お前、まさか信じないのか?」

恭二「いや、信じないってことはないけど、いきなりすぎてびっくりして。」

恭二「まあ俺もそういうことは信じる。」

虎太郎「そうか。それに合言葉もあるしな。お前の仮の名は、ジョン・スミス。」

恭二「おお、さすがだ。」

にこ「さっきから言ってんのよ。嘘を付くのもほどほどにしときなさい。あんたそういうこと言ってるとオオカミ少年になっちゃうよ。」

虎太郎「にこ姉ちゃんの好きなキャラは影山飛雄だ。6時間後のにこ姉ちゃんから教えてもらった。」

にこ「・・・それ本当に言ったの? 恨むぞ、6時間後の私。」

・・・
そして俺はこれから起きる事実を話した。

恭二「これがすべて本当ならかなりやばい状態だな。」

恭二「ならば佐々木佳織と強盗犯を止めるやり方は?」

虎太郎「試した。それでも姉ちゃんたちの死は回避できなかった。」

恭二「こころさんやここあさんの死は、この世界の運命、寿命ってことなのかもな。」

虎太郎「なんだよそれ。」

一夏「恭二の言うことはおおむね間違ってないね」

そこには一夏と達也がいた

虎太郎「いつのまに・・・」

一夏「にこさんの妹、虎太郎の姉の死は、この世界線では何をやっても回避できない。どんなにタイムリープして過去を変えてもこころさん、ここあさんは死んでしまう。これはアトラクタフィールドの収束って言うんだ。」

一夏「例えばお前が東京から大阪に行くとする。いろんなルートがあるが、どんなルートを使ったとしても、方角さえあってれば大阪につけるんだ。」

虎太郎「それって[たぬき]の第1話のセワシの説明じゃないか。」

一夏「まあ[たぬき]の設定は説明が不十分だ。のび太の結婚相手がジャイ子から静香に変わっても、子孫のセワシは結局生まれてくる。しかしのび太の父、のび助の結婚相手が片岡玉子から大金持ちの画家に変わったらのび太は生まれてこなくなるって、矛盾でしかない。」

一夏「実際はのび太とセワシの間には3世代あるから、3世代の間にジャイ子の子孫ともつながれば、最終的にはセワシは生まれるということなんだろうが、そこまでの説明はされてない上、過去改変前ののび太とジャイ子が結婚して生まれてくる子供は犠牲にすることになる。同時に静香がのび太以外の男と結婚した世界での、静香の子供も同時に犠牲にすることになる。」

優「僕には別の仮設があって、実はのび太は静香と結婚することが最初から決まっていた。セワシも最初からのび太と静香の子孫だった。しかしこの2人が結ばれるには[たぬき]が20世紀ののび太の家に来ることが既定事項で、のび太をやる気にさせるためにのび太はジャイ子と結婚して、100年立っても返せない借金を残すという嘘の未来をのび太に言った。」

優「どちらかといえば涼宮ハルヒシリーズの理論に近い仮説だね。」

虎太郎「そうだな。どちらかといえば達也の理論のほうがある意味納得できる。」

一夏「雑談はこのくらいにして本編に行こう。この人工衛星の謎、これはタイムマシンだ。俺たちは、未来から来た未来人なんだ。」

「・・・」

虎太郎「えー!?」

一夏「って大袈裟に驚きすぎだ。」

虎太郎「だが俺は薄々気づいてはいたぞ。」

一夏「マジか?」

虎太郎「まず最初に俺にインフィニットタイムオンラインの捜索を頼んだ時、俺に『この時代の東京都千代田区のどこかにある』と言った。この時代のなんて言葉をつける奴は、過去か未来から来たタイムトラベラーしかいない。」

一夏「おお、そんなこと覚えてたのか。」

虎太郎「そして俺の家に強盗が入った、連絡もしてたいのに警察より先に助けに来てくれたからな。といっても、本当に未来人なら強盗が入った直後に助けてくれてもよかったと思うが。」

達也「そうだね。そこはタイムパラドックスの防止ってとこかな。強盗が入るのを阻止しちゃうと虎太郎がタイムリープする歴史が生まれないし、それにさっき言ったようにどっちにしろこの世界線ではこころさんとここあさんの死は回避できない。」

一夏「この2人を助けるためには、過去を変えて、今いるα世界線から、β世界線に移行しなければならないんだ。」

一夏「東京から大阪に行くのにどのルートを使っても最終的には大阪に着けるように、この世界線でどのルートを使って2人を助けようとしても最終的には死んでしまう。しかし世界線そのものを変え、β世界線に行けば違う結果が得られる。いわば行き先を大阪から北海道とか福岡に変えるようなものだ。」

一夏「実はこのα世界線では、今から10年後に地球上の男性のほぼ全員が死亡することになってる。残ったのは俺と達也だけなんだ。」

虎太郎「・・・なんだって!?」

続く

・・・
第13話 叛逆の巨人

その日、男たちは思い出した。奴らに支配されていた恐怖を。
女たちに虫のように扱われていた屈辱を。

西暦2045年

21世紀、ここ日本で飛行パワードスーツ「IS<インフィニット・ストラトス>」が開発された。
これにより人類の技術は急成長した。しかしそれはあくまで当時の世界人口の半分だけであった。

インフィニット・ストラトスは女性にしか扱えない。このISが開発されて以来、世界は女性優位の社会になった。
それは男性という種族の終わりの始まりであった。
その上単為生殖や、iPS細胞の発達で女性同士で子供が作れるようになり、男性の存在意義はますます薄れていく。
そして日本から始まり、あっという間に男性は消えていった。

2040年代、産み分け技術によって女の子だけが産まれる時代になり、10代以下に男の子はもうほとんどいない。
そんな中、僕はこの街に1人しかいない男子学生である。

名前は鹿目達也。

今の時代、男はもはや人間扱いされていない。犬、ペット、いやそれ以下、虫のような扱いだ。
基本的人権というのものは男にはないのだ。

食事は1日1回、キャベツやレタスのような野菜を少量だけ。食事はあくまで栄養補給だけだと思ってるのでこれで十分なのだ。
僕も生まれたころは女の赤ちゃん同様、お母さんの乳を吸っていたそうだが、離乳して以降、人生で口にしたのは野菜だけである。
肉や魚、お米とかそういう食べ物は女性の食べ物で、僕には無縁だった。

幼稚園、小学校、中学校とクラスメートは女子ばかり。
当然だ。学校どころか、この町、いやこの国に男子は僕以外ほとんどいないのだ。
全世界でも男性は何人くらいいるかわからない。地球に女性は36億人ほどいるが、男性は100人もいないだろう。

「あれが男?」

「男ってISも使えないんでしょ?」

「なんで男なんているの?」

「ゴキブリ以下だよね。」

「いや、ウンチ以下でしょ。」

肩身が狭かった。小学校入学以降、ずっといじめに遭ってきた。
かつての男性も、こんな思いをしてきたのだろうか?

小学校には給食というものがあるらしい。だがそれはあくまで女子だけだ。
女性は食事は朝昼夜の1日3回取るそうだが、俺は夜に1日1回だけ。だから昼はない。
とはいえ女子が給食を食べてる間は、俺は女子からいじめられることはないから、ある意味俺にとっても給食の時間は気楽だった。

食事が1日1回だったのは小学校くらいまでだ。
その後2日に1回、3日に1回と減っていき、今は1週間に1回あるかないかだ。
まあ俺の栄養補給はそのくらいで十分なのだ。
むしろなぜ女は1日3回も栄養補給の必要があるのかが不思議なくらいだった。

西暦2042年、僕は高校生になった。
といっても入学したのは日暮里西高校。東京一の底辺校である。僕、というか今の男子の学力で入れる学校はここしかなかったのだ。
日暮里西高校の生徒の間では、この日本に数十年ぶりに生まれた男子生徒が入学してくると話題になったそうだ。
だがそんなのいじめの標的にしようと思ってたに違いない。

入学式のあと

女子「あなたが噂の男性? 本当に人間?アニメキャラじゃないよね?」

達也「アニメキャラじゃない。」

女子「名前なんていうの?」

達也「鹿目達也」

女子「男性って本当に実在したんだ。漫画やアニメだけの架空の存在だと思ってた。」

達也「その前に歴史の教科書に出てるだろ。普通そっちをイメージすると思うけど。」

女子「そうだけど、教科書より漫画のほうがおもしろいじゃない。」

女子「まあ魅力はストーリーより萌えなんだけどね。男と男の関係性萌えっていうか。」

達也「萌え?」

女子「私とその友達がよく使ってる言葉なんだけどね。ボーイズラブっていうジャンルの萌え。」

達也「ああ、そういうものか。」

達也(そのジャンル聞いたことあるわ。一部の女子の間で流行ってるとか。僕は別に興味ないけど。)


一夏「達也、やっと一緒の学校に通えたね。」

達也「一夏」

実はこの日本に住む男は僕1人ではない。もう1人いるのだ。
彼は織斑一夏。僕と同い年。同じ年に男の赤ちゃんが2人も生まれたということで、当時大騒動になったそうだ。

一夏のことを、僕は幼稚園くらいのころから知っていた。住んでる場所は100km以上離れてるが、男の子の赤ちゃんというだけでニュースになった時代、知ってしまうのは当然のことだ。
小学校、中学校と、別々の学校に通っていたが、何度か会ってお互いの辛さを分かち合っていた。
この日本に2人しかいない男。俺が生まれてから今まで友達と呼べる存在は彼だけだった。
中学校の修学旅行では偶然一夏の通ってる学校も同じ日に行った。そこでも2人で会話したものだった。
高校に入り、初めて同じ学校の生徒になった。もっとも一夏も入れる学校がここしかなかったというだけだが。

実は彼には男性でただ1人、ISを使えるかもしれない人物なのだ。

達也「一夏って中学のときは部活やってたの?」

一夏「やってるわけないだろ。」

達也「だよな。僕もやってないし。」

一夏「この時代に男が部活やってどうするんだよ。」

達也「僕たち2人だけで新しいクラブを作らないか?」

一夏「新しいクラブ?」

達也「クラブ名は・・・、男子部だ!」

一夏「なんだよ男子部って」

達也「男子の男子による男子のための部活、男子部。」

達也「男子部、それはやむを得ずIS社会の現代に男として生まれてしまった、虐げられし男の子のための部活。」

達也「今まで女子に支配されてきた鬱憤を、男子だけで、楽しく美しく過ごすのさ。」

達也「昔あるアニメに女子部ってクラブが出てきたんだよね。あれに対抗して。」

一夏「なんかその名前格好悪い。」

達也「じゃあ一夏は何部がいいんだ?」

一夏「この部活は何人勧誘するんだ?」

達也「勧誘しないよ。部員は君と僕の2人だけ。」

達也「だってこの日暮里西高校に、いやこの東京に、いやこの日本に男子生徒は2人しかいないんだから。」

一夏「2人だけじゃ部活なんて作れないだろ。同好会にすら認められないだろうし。」

達也「いいじゃん。別に学校に認められなくても。非公認の部活ってことで。」

一夏「部室はどうするんだ?」

達也「そうだね。そこをどうするか・・・」

達也「僕、どうして男に生まれちゃったのかな。」

達也「こんな部活でも作らないと自分の存在意義を見いだせないなんて。」

達也「せめてもっと昔の時代に生まれていれば、男ももう少しいい人生が遅れてたんだろう。」

一夏「この21世紀後半、男に基本的人権はないからな。」

一夏「虫以下の扱い。毎日のようにいじめにあい、クラスメートと仲良くすることも許されず、生きてて何が楽しいのかわからない。」

達也「もううんざりだよ・・・」


一夏「そうだ。お前には話してもいいな。実は俺、ISを起動できるんだ。」

達也「なんだって?」

一夏「どうやら男で世界初めて、ISを起動できたらしい。だがそれがニュースになると、世界中の女から危険人物として認識された。」

一夏「もしかしたら殺されていたかもしれない。だが実験用動物として、観察対象として生かしてもらえるようになったんだ。」

もはや野生生物の扱いすらされてない、実験用動物である。この時代、男は動物愛護法の保護対象にもなってないのだ。

・・・
そして日本の女性たちは、ついにあまりにも残酷な政策にとりかかる。
それはDGO、「男子虐殺オペレーション」。地球上に残ってる数少ない男性までも核兵器によって絶滅させる政策だ。

西暦2044年、日本の東京大学の教授により新原子爆弾の開発に成功した。
それまで原子爆弾といえば、20世紀の昭和時代、第2次世界大戦のときにアメリカが開発。
西暦1945年、アメリカ軍が日本の広島と長崎に投下し、第2次世界大戦終戦のきっかけとなった爆弾として有名だった。
この戦争に日本は負けた。原子爆弾を当時日本が開発することは不可能だった。

それから100年のときを経て、ついに日本人が原子爆弾の開発に成功したのである。
だがその原子爆弾は、アメリカ軍が広島と長崎に落とした原子爆弾とは全く違うものだった。

その原子爆弾は、Y染色体を持つ人間のみ死亡させる。つまり男性である。原子爆弾は女性には全く無害。

2044年11月16日、この新原子爆弾の開発を発表するとすぐに、日本の女性軍は東京に投下。
東京から半径700キロの男性がその日のうちに1人残らず絶滅した。
その3日後の2044年11月19日、福岡に新原子爆弾を投下。日本から男性が絶滅した。
これを見て、日本の女性たちは歓喜に沸いた。

かつては原子爆弾を自分の国に投下する国が現れるなど夢にも思わなかっただろう。
そして日本の女性軍はついに海外にも新原子爆弾を投下する。最初の標的はアメリカだった。

殺戮範囲を2000キロにまで拡大したさらに強力な原子爆弾の開発に成功。

2045年8月6日、アメリカのワシントンに新原子爆弾を投下。ワシントンから半径2000キロの男性が全員死亡した。
そして2045年8月9日、アメリカのロサンゼルスに新原子爆弾を投下。
2045年8月15日にも投下され、全米の男性が絶滅した。

このニュースが発表されると、日本では第2次世界大戦でアメリカに原子爆弾を投下されてから、
90年越しで復讐を果たしたと日本に投下したとき以上に歓喜、特に広島県と長崎県民の女性は大盛り上がりだった。

その後も世界各国で新原子爆弾は次々投下され、2035年中に地球上から男性が絶滅した。


地球上の男たちは死に絶えていった・・・
その日、男たちは思い出した。奴らに支配されていた恐怖を。
女たちに虫のように扱われていた屈辱を。

・・・
しかし僕たちは助かった。地球上の男性で織斑一夏と鹿目達也、たった2人にだけ新原子爆弾が効かなかった。
僕たちは特殊な存在だったのだ。

さらに僕、鹿目達也には人類でただ1人、女性には誰もできない、タイムマシンを操縦する能力を持っていた。
そして僕と一夏は過去に飛び立った。過去を変え、歴史を変えるために。

目指すはISが開発されず、新原子爆弾も開発されず、地球上の全男性が殺されることがない世界、β世界線に。

続く

第14話 バタフライ・エフェクトの真実

一夏「女性にしか操縦できないISが開発されたことにより、10数年後にはもう男性に人権などないんだ。矢澤虎太郎、鷹城恭二、如月優も、今から20年後の2044年11月16日に東京に投下された新原子爆弾によって死亡した。」

達也「このままだと君たち3人も20年後に死が確定してるってこと。だが僕たちはそんな未来御免だ。絶対に変えてやる。IS、そして新原子爆弾が発明されなかった世界に。」

虎太郎「20年後の未来とか、俺にはピンと来ないことだが、今のままでは姉ちゃんの命も助からないってことなら協力するしかないな。俺も原爆で死ぬなんで勘弁だ。」

一夏「ISの開発のために重要になったのが、日本の女性研究機関、ラウンダーが手に入れたインフィニットタイムオンラインのゲーム、そのうちの特殊な1台。これを女性研究機関が手に入れられないようにすれば、ISの開発されなかった未来に行けるらしい。」

一夏「そしてこころさんとここあさんを助けるには、インフィニットタイムオンラインのタイムトラベル機能で2024年11月28日に行き、最初に送られたというタイムトラベルメールを消すこと。あれが原因で虎太郎君たちが狙われたんだ。」

虎太郎「秋山博士が会見があった日の、穂乃果さんと海未さんを見かけたって奴か。あれ正しくは12月8日だぞ。」

一夏「そうなのか?11月28日と聞いたんだけど。」

一夏「とはいえこの時代では既にラウンダーに取られてしまった可能性が高い。俺たちはこのゲームが発売されたという1992年に行き、別の人に託すことにする。」

虎太郎「そうか。力になれなくてすまん。」

一夏「もちろん最終的には矢澤虎太郎に預かってもらうことにするよ。他の世界線の記憶を持ち続けることができる君なら、女たちから世界を取り戻すことができると信じてるからね。」

達也「お別れだね。短い間だったけど今までありがとう。」

一夏「あ!」

虎太郎「どうした?」

一夏「タイムマシンが壊れてる・・・」

タイムマシンが故障していた

虎太郎「まさか音ノ木坂学院旧校舎の最上階の壁を突き破ったから・・・、いやそれは前の世界線、この世界線ではハシモトカメラの屋上にちゃんと着陸したんだった。じゃあなぜ?」

一夏「多分先週、17日の雷雨が原因だろうな。修理するしかない。」

虎太郎「タイムリープして雷雨が来る前に・・・、タイムリープができるのは3日までだった。1週間前までは無理か。」

虎太郎「3日前の12月21日に戻って修理するしかない。それが今残された最長の時間だ。」

・・・
12月21日

恭二「どうした?」

虎太郎「恭二と優か。ちょっと頼みがある。」


恭二「これがタイムマシンだったのか?」

虎太郎「そうだ。なんとか修理するしか無い。」

優「修理って、未来のタイムマシンを現代の技術で修理できるわけ無い。」

虎太郎「やってみなきゃわからないよ。今はそうするしかない。」

虎太郎「3日間でなんとかしてほしい。俺も手伝うから、優になんとかしてほしい。恭二はタイムリープマシンを頼む。」

優「わかった。」

虎太郎「これは世界を救うミッションでも、学校を廃校から救うミッションでもない。こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを救うミッションだ。」


こうして3日間をやり直した。翌22日にはあのライブもあった。

恭二「どうか?治りそうか?」

優「AWOと構造が似てる。これはなんとかなるかも。ただ・・・」

虎太郎「なんだ?」

優「このタイムマシン、過去にしか行けないんだ。過去に行ったら、この時代には二度と帰ってこれない。」

虎太郎「え・・・」

まさかそんな事情があったなんて


虎太郎「一夏と達也、タイムマシンって過去にしか行けないんだな。過去に行ったら、二度と帰ってこれないと。俺たちとはもう会えないと。」

一夏「そう。だから仲良くならなきゃ良かったなんて思うこともあった。」

虎太郎「仲良くなったことを後悔なんかさせないからな。」

一夏「わかってる。それに20世紀にもいい人はいるから。」

そして3日が経ち、再び迎えた12月24日の朝。

一夏「すげー。本当に修理したんだ。」

優「うん、なんとか間に合ったよ。」

虎太郎「1992年、日付は、今日と同じ12月24日にしよう。」


虎太郎「みんなも知ってる通り、一夏と達也の能力では過去にしか行けず、もうこの時代には戻ってこれない。」

達也「お別れだね。今までありがとう。短い間だったけど楽しかったよ。」

一夏「初めてだった。俺が生まれた時代ではずっと女たちに酷い目に合わされてたから。初めて達也以外に、本当の仲間に出会えた。昔はこんないい時代だったんだって思えた。」

一夏「だからこんないい時代が未来でも続くように、未来を変えてほしい。」

虎太郎「わかった。」

一夏「じゃあ32年後にまた会おう。君たちには数時間後だけどね。」


こうしてタイムマシンに乗り込み、2人は過去へと旅だった。

虎太郎「きっとお前たちのために、未来を変えてやるからな!」

・・・
その直後、俺にリーディングシュタイナーが発動した。
気付けば今いたメンバーがそのままだった。

虎太郎「一夏と達也のこと覚えてるか?」

にこ「覚えてるも何も、今ここにいたじゃない。」

虎太郎「そうか。今俺にリーディングシュタイナーが起きた。世界線が変わったってことだ。」

にこ「そうなんだ。じゃあこころとここあは助かるのかな。」

虎太郎「わからない。そうなるといいな。あのインフィニットタイム・オンライン、ちゃんと神田明神にあるかもしれない。行ってみるか。」

にこ姉ちゃんと少し散歩をしながら神田明神へ、しかしその途中・・・

虎太郎「あれ?このあたりに穂乃果さんの家と和菓子屋があったよな?」

穂乃果さんの家、穂むらがそこにはなかった。

にこ「・・・穂乃果?」

にこ「穂乃果って誰?」

虎太郎「え?何言ってるんだよ。スクールアイドル、μ'sの高坂穂乃果さんじゃないか。覚えてないのか?」

にこ「スクールアイドルね、確かに私、1年生のころ目指してたけど、みんな辞めちゃって1人になっちゃったんだよね。今では私がアイドルとしてソロ活動。」

にこ「μ'sって何?」

虎太郎「μ'sも知らないのか?」

近くの家に聞いてみた

虎太郎「すいません、この隣に高坂さんの家と、高坂さんの和菓子屋がありましたよね?」

「高坂さんですか、懐かしい名前ですね。確かに30年前まで高坂さんが住んでたのですが・・・」

虎太郎「引っ越したのですか?」

「亡くなられたんです。1992年のちょうど今日起きた、東海道新幹線の事故で。」

「亡くなった・・・事故で・・・」

そういえばこの世界線では1992年12月24日に東海道新幹線の事故が起きたのだ。
この事故で穂乃果さんの母は亡くなったらしい。
つまり穂乃果さんと雪穂さんは最初から生まれてない。

虎太郎「穂乃果さんと雪穂さんの体が薄くなってた原因はこれだったのか。ということは、絵里さんの母親も・・・」

神田明神

虎太郎「あの、絢瀬さんってご存知ですか?」

希パパ「懐かしい名前ですね。昔働いてたのですが、32年前のちょうど今日発生した、あの東海道新幹線の事故で・・・」

やっぱり・・・

虎太郎「インフィニットタイムオンラインってご存知ですか?」

希パパ「それは聞いたことありませんね。」

しかし一夏と達也が過去に行く直前までの世界線ではなぜ完全には消えず、薄くなってたんだ?
・・・12月24日?


・・・
一夏「1992年、日付は、今日と同じ12月24日にしよう。」

・・・
新幹線の事故が起きた日に、あの2人は旅立った。まさか・・・

♪着信音

虎太郎「電話だ・・・。って着メロまでμ'sの曲じゃなくなってる!」

虎太郎「もしもし」

こころ『あ、虎太郎。実は家に西木野真姫さんって人が来て、虎太郎に用があるみたいなんだけど、知ってる?』

虎太郎「真姫さんだと?」

一体どういうことだ?

矢澤家

真姫「西木野真姫です。初めまして、いやお久しぶりです。矢澤にこさんですよね?音ノ木坂学院の私の2つ上の先輩でしたから、高校の時会ったこともあると思います。」

にこ「はい。そういえば一度だけ会いましたね。私の2つ下ということは、廃校になる前の最後の学年でしたか。」

真姫「あなたが矢澤虎太郎君?」

虎太郎「はい」

真姫「私の高校の2つ上の先輩に矢澤にこって人がいて、その人の弟の名前が虎太郎君と聞いて、もしかしてと思ったのですが・・・」

真姫「1992年の12月24日、東海道新幹線の脱線事故があったことは知ってますよね? その事故の原因が、謎の人工衛星との衝突だったことも。」

虎太郎「・・・!?」

真姫「その謎の人工衛星に乗っていたと思われる2人の遺体と、そこから見つかった遺書が、矢澤虎太郎という人宛だったんです。」

真姫「2024年の12月24日に渡すようにと書いてあるので。」

遺書・・・ そこには


「矢澤虎太郎さんへ
あなたにはついさきほどのことかと思います。今は1992年12月24日。
実はタイムマシンが壊れていて、そうじゅう不能になりました。原因は、あの雨・・・
修理が完全じゃなかった。でも皆さんは、悪くない。全部自分が悪いんだ。
あの雷雨がある前に飛べばよかった。

俺は残念だ。きっと助からない、未来は変えられない、ごめんなさい・・・

2024年12月24日、矢澤虎太郎さんに渡してください。」

インターネットで事故について調べた。新幹線史上初の事故は、原因は謎の人工衛星の衝突。
そして人工衛星からは、身元不明の2人の遺体と、遺書が見つかった。

真姫「1992年にまだ虎太郎君は生まれてなかったし、それどころかにこさんも生まれてなかったのに、まるで予言者かと思ったわね。しかも今年に入って、またあの人工衛星をこの秋葉原で見るなんて・・・」


タイムマシンが壊れ、それが原因で飛んだ先の1992年12月24日に東海道新幹線の事故が起こり、その事故で穂乃果さんと絵里さんの母が死亡。
穂乃果さんと絵里さんは生まれてくることもなく、μ'sは結成されず音ノ木坂学院は廃校に。

なんというバタフライエフェクトだ・・・

虎太郎「俺のせいだ。俺がメールで過去を変えて、引き止めたから・・・」

にこ「私のせいよ。達也君が私のファンと聞いて、ライブをやりたいって言ったから・・・。」

この世界線では、達也はにこ姉ちゃんのファンだったのか。


虎太郎「タイムトラベルメールだ。2人を引き止めるのをなかったことにするしか・・・」

虎太郎「でもそれだとにこ姉ちゃんが・・・」

にこ「いいの。送って。全部私のわがままで、そのせいでこんなことになっちゃったんだから・・・」

虎太郎「すまん・・・」

『引き止めは中止。悪の組織の罠だ。』

にこ姉ちゃんのライブがなかったことになる犠牲を承知でメールを送信。
放電現象、そしてリーディングシュタイナーが発動した。

・・・
12月24日夕方、神田明神

虎太郎「あのー」

希「虎太郎君だったやね? ある人から預かってるものがあるってパパから聞いたんや。」

虎太郎「本当ですか?」


希パパ「10年ほど前に、織斑一夏さんという方から矢澤虎太郎さん宛に手紙を預かってます。まさか本当に現れるとは。」

虎太郎「・・・ありがとうございます。」

『矢澤虎太郎さんへ。お久しぶりです。あなたにとってはつい1週間ほど前のことですね。
インフィニットタイムオンラインは如月さんに預けました。しかし、もし手に入らなかった場合は、過去を変えるために送ったメールを取り消して、元の世界線に戻れば手に入るかもしれません。』

「こんなアドバイスまで・・・」

『インフィニットタイムオンラインを手に入れた場合、その時点で俺たちが未来から来た痕跡がなくなると思います。その時点でISと新型原子爆弾の開発を阻止することには成功。しかしまだβ世界線への移行は完了してないでしょう。
その時点ではまだこころさんとここあさんは助からないかと思います。いわばα世界線とβ世界線の中間、θ世界線に行ったものと思います。
α世界線からθ世界線へ移行したあと、β世界線に移行するためには、インフィニットタイムオンラインで仮想世界に行き、11月28日に最初のタイムトラベルメールが送られるのを阻止するのです。』

「どうやらθ世界線という別の世界線を経由しないといけないようだな。」

秋葉原駅前。気付けば日が暮れていた

♪着メロ 僕らは今のなかで

にこ『もしもし、虎太郎、何やってるの。家でクリスマスパーティー始まるよ。』

虎太郎「やべえ、あと2時間ちょっとで21時に・・・。」

虎太郎「待てよ、この時間に電車がJRが動いてるぞ。新幹線も動いてる。ということは・・・」

・・・
久々に家でパーティーを行った。世界線が変わってこの時間に脅迫電話で運休してたはずの電車は動いてる。もしかしたら強盗も来ないかもしれない。

もうすぐ21時・・・
心臓の鼓動が鳴る。

強盗は・・・。来なかった・・・。

虎太郎「電車が動いてる、強盗が来ない、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんも死んでない。」

虎太郎「やったー!」

にこ「何?どうしたの?」

虎太郎「なんでもない」

にこ姉ちゃんの想いを犠牲にしてしまったが、これでこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを救えた。
ほっと胸をなでおろした。

続く

第15話 失われた弟を求めて

これまでは12月24日、クリスマスイブの21時にこころとここあは死んでいた。
しかし日付が変わり、12月25日になっても2人は生きている。

過去と未来は変えられたのか。俺はそう思った。しかし・・・


12月25日、夜20時30分

ドクンドクン ドクンドクン ドクンドクン・・・

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

またしても恐怖の足音が・・・

強盗「動くな!金を出せ!全員両手を上げろ!」

ここあ「キャー!」

こころ「助けて、お姉さまー!」

強盗「君が長男か。ならば家の大事なものの在処くらい教えられているだろ? 地震が来たらそれを持って逃げなさいだとか、強盗さんがきたらそれを差し出してお帰り願いなさいとか、聞かされた覚えはあるだろ?」

強盗「さあそれを探してこい。俺たちが気に入らなかったら、この子たちとは悲しいことだけど1人ずつお別れになってしまうよ。1人につき10分、10分毎につ持って来い。」

こうして今までとは1日遅れでこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは殺された。
再び俺はタイムリープする

・・・
12月25日、13時

虎太郎「恭二と優、そしてにこ姉ちゃんもいたか。助けてくれ・・・。」

恭二「どうしたんだ?」

虎太郎「今日の夜からタイムリープしてきた。今夜8時半に、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんが死ぬ。」

恭二「なんだって?」

虎太郎「最初は12月24日の夜9時だったんだが、にこ姉ちゃんのタイムトラベルメールを取り消すメールを送ったら1日伸びた。」


虎太郎「にこ姉ちゃんのタイムトラベルメールを取り消したことで、インフィニットタイムオンラインは神田明神に預けたらしい。だがなかった。」

恭二「これまでのタイムトラベルメールで世界線が変わったのって、宝くじ、穂乃果、花陽、如月さん、達也君と一夏君の引き止め。そして最後のを取り消すメールを送ったら、強盗の襲撃が1日伸びたわけか。」

虎太郎「一夏からの手紙に、過去を変えるタイムトラベルメールを取り消していけば世界線を元に戻せると書いてあった。」

優「じゃあ1つずつ取り消していけばいいのか。順番的に次に取り消すのは僕のお姉ちゃんのだね。」

優「お姉ちゃんは今夜武道館でライブがあるんだ。」

虎太郎「ライブ・・・、遅いのか?」

優「まあ8時半は過ぎるだろうね。今から行けば会えるかも。」

765プロ事務所

優「如月千早の弟の如月優です。あの、如月千早に用事がある方を連れてきたのですが。」

P「千早なら今から出かけるとこなんだが、少しなら時間取れるぞ。」

虎太郎「世界を支配するアイドル、魔法ヶ沢京太郎・・・、いや、矢澤虎太郎です。1週間前に俺の研究所に来ましたよね?」

千早「うん、優と一緒に確かに行ったわね。」

虎太郎「そのとき、過去にメールかFAXを送ったことを覚えてませんか? それを取り消さないといけないんですけど。」

千早「過去に? そんなの送ってないけど。」

虎太郎「やっぱり覚えてないか。」

虎太郎「小学生のころの千早さんが、とんでもなく困ってた時、過去の自分を励ましてあげたい、と思ったらどんな手紙を送りますか?」

千早「小学生のころ・・・。当時私のたった1人のファンだった優がいてくれたら、それだけで私はよかったな。だから優に手紙を送ったかも」

虎太郎「優に、ですか。」

そういえば前の世界線で優はタイムアイドル部の部員ではなく、そこは天ヶ瀬冬馬のポジションだった。
俺は優とは前の世界線では出会ったことがない。

結局過去に送ったFAXの内容を思い出せないまま、武道館へ。

千早「この『約束』って曲、765プロのみんなが作詞作曲した曲なんだよ。」

虎太郎「そうなんだ。」

千早「私がメジャーデビューが決まった直前だったかな。しばらく765プロの友達と会えなくなるから、ちょっと寂しかったな。」

優がチケットを2枚持っていたため、俺も武道館のライブへ。
そのライブ会場で見かけたのは・・・

虎太郎「冬馬・・・」

優「何?虎太郎の知り合い?」

虎太郎「前の世界線でタイムアイドル部の部員だった奴だ」

久しぶりにあった前の世界線での部員。如月優と入れ替わりでタイムアイドル部から消えた天ヶ瀬冬馬がそこにいた。

冬馬「お前は・・・あ、スクールアイドルの矢澤虎太郎と、315プロの如月優だな、今人気の。」

冬馬「しかし君がなんで俺のことを知ってるんだ。」

虎太郎「過去にどっかの事務所、961プロだったかな、にいましたよね?」

冬馬「そうだな。確かに俺は961プロにいて、ジュピターというユニットに参加してた。人気でなくて辞めちゃったけどな。今は芸能界からも遠ざかってるが、今度は芸人を目指そうと思うんだ。」

冬馬「なんで虎太郎君が俺の名前を知ってるんだ?」

虎太郎「俺もアイドルには詳しいんだよ」

冬馬「俺の名前を知ってるとは大したものだ。でも虎太郎君みたいな人に覚えてもらえてたのは光栄だ。」

虎太郎「そうですか。」

この冬馬は、俺の知ってる冬馬ではなかった。

優「今でこそお姉ちゃんはオリコン1位になるくらいの大人気歌手だけど、昔は僕1人のために歌ってくれてたんだよね。ずいぶん遠くに行っちゃった気がして、なんか寂しいな。でも僕もすぐに追いつきたいと思ってる。」

虎太郎「そうだな。優ももっと上に行けたらいいな。」

優「僕、小学生のころ重い難病にかかって、手術を受けたんだよね。そんなときも、お姉ちゃんの歌が力になったな。」

優「だから30人に1人くらいしか助からないって言われた難病を克服できたんだよ。」

虎太郎「へえ、そんなことが。」

虎太郎「如月千早さん、さすが今年の総売上ソロ歌手1位だよな。」

俺の知ってる世界線ではなんで売れなかったのだろうか。


ライブも終盤

優「次の曲が「約束」だね。さっき言ってた。僕の好きな曲だ。」

虎太郎「そうなんだ。」

ところが突然・・・
千早さんの声が出なくなった。曲のCDだけが流れていく。武道館の観客席は騒然となった。

虎太郎「どういうことだ?」

優「わかんない。もしかして・・・、別の世界線でこの曲に悲しい思い出があったとか。」

虎太郎「そんなわけないだろ。千早さんが前の世界線のことを覚えてるわけがない。」

ライブはまさかの途中打ち切りとなった。

時刻は20時に近づいていた。この世界線でのデッドラインは12月25日20時30分。
あと30分ほどでこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは死んでしまう。だがまだ過去に送ったFAXの内容は思い出せてない。

千早「虎太郎君、あるゲームを探してたんだよね?」

虎太郎「インフィニットタイムオンラインのことですか」

千早「あれ、優が難病にかかって手術費用が払えないから、お父さんとお母さんが売っちゃったんだ。織斑一夏さんって人から託されたのに。」

虎太郎「そうだったんだ。」

千早「私、全部思い出したの。小学生の私に送った手紙、FAXの内容。それは・・・」

虎太郎「・・・」

千早「交通事故で死んだ優を生き返らせた」

虎太郎「え・・・」


・・・
千早の回想

当時小学校3年生の私は、弟の優と夏祭りに行った。
その日、優は車に轢かれて死んだ。私の不注意が原因だった。

私のたった1人のファンだった弟を失った私は失意のどん底だった。
このことでその後両親は離婚。

765プロに入り、アイドルとして人気が出始めていた矢先、週刊誌に弟のことが掲載され、私は再び失意のどん底に。何ヶ月もアイドル活動を休んだ。
そんなとき765プロのみんなが作詞作曲し、私が復帰ライブで歌った曲、それが『約束』。

私は再び歌えるようになった。そこから再び動き出した時間・・・。


でも私の唯一の後悔は、優を死なせてしまったこと。だから1度だけ過去を変えられるなら、私はあの日の夏祭りに行かず、優が交通事故に遭わないようにした。

『夏祭りは明日の三丁目の公園に変えて。そっちのほうが楽しい。』と。

・・・
優「僕も思い出した。夢で見たことあるんだ。車に轢かれる夢を。怖い夢だった。まるで現実であるかのように。」

優「でも今見てるのが夢で、そっちが現実だったんだね。」

千早「その手紙、取り消さないとどうなるの?」

虎太郎「こころ姉ちゃんと、ここあ姉ちゃんが死ぬ。」

千早「え・・・」

20時30分を回り、恭二から電話がかかってきた。

♪着メロ 僕らは今のなかで

恭二『もしもし、大変だ。お前の家に強盗が入って、こころさんとここあさんが殺された・・・。にこさんも泣いてる。』

虎太郎「そうか。悪かったな。きっと過去を変えるから。」


虎太郎「たった今、こころ姉ちゃんと、ここあ姉ちゃんが死んだって連絡が入った。もしタイムリープして今日をやり直しても、このままじゃまた今日のこの時間にこころ姉ちゃんと、ここあ姉ちゃんは死んでしまう。」

千早「そんな・・・」

千早「私、あのFAXをなかったことにしたくないよ。そしたら優がまた死んじゃう・・・。」

優「でもこのままじゃ にこさんの妹、虎太郎のお姉さんたちが死んじゃうんだよ?」

千早「わかってる。矢澤さんは私の友達、そして虎太郎君も優の友達だもんね。友達が悲しむとこは見たくない。」

虎太郎「ちょっと待った。俺は優を見殺しになんかできない。前の世界線ではどうだったとしても、この世界線では大事な部員なんだ。まだ優と姉ちゃんたち、両方を助ける方法があるかもしれない。ここでその可能性を捨てるのは早計だ。」

千早「それは無理だと思う。さっき言ったように、優があのあと難病にかかって、手術費用のために例のゲームを売っちゃったから。」

優「もういいんだ。僕はこの世界に生きててはいけない人間。今までは全部夢だったんだ。夢から醒めるよ。」

千早「私ももう夢から醒める。でも・・・、これまでの優との思い出も忘れちゃうのかな? そんなの嫌だよ・・・」

虎太郎「そんなことはない。千早さんなら、きっと覚えてる。今までの思い出も。」

優「虎太郎、君は僕の一番の友達だよ。だから悲しませたくない。見殺しにするなんて思うなよ。助けなきゃいけないのはお姉さんなんだから。」

虎太郎「わかった。」


優「お姉ちゃん、大好きだったよ。」

千早「うん。私も。」

千早「優、さようなら・・・ぐすっ・・・」

優「今度はちゃんとお別れ言えたね。きっと空の上から見守ってるから。」


虎太郎「恭二、送信の準備を。」

恭二『準備完了』

内容は『夏祭りはやっぱり四丁目の公園で。そっちのほうが優が喜ぶ。』

すまん、優、千早さん・・・。2人の幸せを奪うことになって・・・。

FAXを送信し、リーディングシュタイナーが発動する。

・・・
俺は気づいたら自分の家にいた。
こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんもちゃんとそこにいる。今日も2人は生き延びた。

翌日、研究所

冬馬が部員に戻っていた。久々に研究所で会う冬馬。
優はもうここにはいない。この世のどこにも・・・。

研究所に千早さんが訪れた。

虎太郎「あの・・・」

千早「そういえば私が8歳のころ事故で亡くなった弟に最近夢で会った気がするの。なんかいい夢だったな。」

虎太郎「そうですか。」

千早「弟のためにも頑張らないと。」


また世界が一部戻り、音ノ木坂学院の廃校は阻止されたようだ。
このままインフィニットタイムオンラインを手に入れられれば・・・

・・・
12月26日昼、神田明神を訪れた。

希パパ「申し訳ありませんが、こないだも言ったように、そのゲームは今はここにはありません。」

虎太郎「そうですか。如月さんって人をご存知ですか?」

希パパ「よくわかりましたね。如月さんが昔ここで働いていて、預かったんです。」

希「パパ、虎太郎君に本当のこと話してあげようと思うんやけど」

虎太郎「本当のこと?」

希「実はそのインフィニットタイムオンラインというの、音ノ木坂学院を廃校から守るためにウチが高校生のとき売ってしまったんや。」

虎太郎「なんと!?」

虎太郎「スクールアイドルのμ'sが、学校を救ったんじゃなかったんですか?」

希「確かに最初はそれが目標やったけど、たった6人のスクールアイドルじゃ廃校寸前の学校を守るなんて無理やった。同じ東京にARISEっていうスクールアイドルの超強豪がいたから、ラブライブには出場できなかったし。」

希「タロットカードの占いで、9人いれば未来が開けるって出たんやけどな。ここだけの話、μ'sって名前も9人の女神って意味でウチが考えたのに、結局6人しか集まらなかった。」

希「だけど穂乃果ちゃんやにこちたちが頑張ったから、なんとか廃校を阻止したいという生徒会の思惑もあって。」

希「そしたらちょうどこのゲームを高く買い取ってくれるという人が現れて、そのお金で予算を確保できて、なんとか廃校を阻止することができたの。一応穂乃果ちゃんの顔を立たせるために、μ'sが廃校を阻止したってことにしてるけど。」

希「あのゲーム、必要やったんか? 申し訳ないことしたな。」

虎太郎「いいんです。希さんのせいじゃないですから。」

とはいえ世界線を変える鍵はわかった。インフィニットタイムオンラインがなくても音ノ木坂学院を廃校から救うこと。
そのためには元の世界線のように、μ'sを9人に戻せばいいのだ。

花陽さんのメールを取り消せばいい。順番的にも次に取り消すのは花陽さんだ。

続く

第16話 花咲くアイドル

花陽さんがどこにいるのか、メガ兄さんに聞くのは危険すぎる。だが一体どうすれば・・・
そうだ。

虎太郎「にこ姉ちゃん。小泉花陽さんってどこにいるか知ってる?」

にこ「TKB48の?今日は、秋葉原のTKB劇場でライブやってたと思う。 昨日はこの研究所の隣のアイドルショップにいたんじゃないかな。」

虎太郎「昨日か。」

タイムリープして昨日、12月25日の昼に。


アイドルショップで花陽さんに会った。この世界線では初めてだ。

虎太郎「あの、お久しぶりです。」

花陽「えーっと、隣の研究所の虎太郎君だっけ? いや、魔法ヶ沢京太郎って言ったほうがいいかな。」

虎太郎「その名前、覚えててくれたんですか。」

虎太郎「過去にメール送ったの、覚えてますか? 多分忘れてると思いますけど。」

花陽「過去にメールか。知らないね。」

虎太郎「スクールアイドル、μ'sってのは知ってますか?」

花陽「えーっと、音ノ木坂学院のスクールアイドルだったよね?矢澤にこさんが元メンバーで、廃校の危機だった学校を救うためだったんだよね。」

虎太郎「花陽さんもそのμ'sにメンバーだった世界線があるって言ったら、信じますか?」

花陽「それってパラレルワールドの話?」

虎太郎「そうですね。今、ビッグアイドルの花陽さんがスクールアイドルをやってるなんて信じられないでしょうけど。」

花陽「私、もし中学の時TKBのオーディションに落ちてたら、高校に入ってもアイドルをあきらめきれず、そっちの世界に入ってたかもしれないね。」

虎太郎「そう思いますか?」

メールを取り消すことに1日ずつ姉ちゃんの死が伸びてるとしたら、この世界線でのデッドラインは12月26日だろう、

虎太郎「実はにこさんの妹で、俺の姉でもある、こころさんとここあさんが明日の夜死んでしまって、そのために花陽さんが過去に送ったメールを取り消して、世界線を元に戻さなければならないんです。信じてくれないでしょうけど。」

花陽「こころちゃんとここあちゃんが? あまり現実的な話じゃないからわからない。」

虎太郎「とにかく、μ'sのライブを1度見てもらえたらいいな、と思いまして。」

虎太郎「にこ姉ちゃん、今日か明日、μ'sのメンバーを集められないか?」

虎太郎「ほら、今度ライブやりたいとか言ってただろ。一夏と達也はいなくなっちゃったけど。」

にこ「それなら空いてるホールはあるけど、なんでいまさら?」

虎太郎「あるビッグアイドルを招待したいって言ったらどう思う?」


・・・
そして1日経って、12月26日。

穂乃果「もしかしてTKB48のかよちゃん? すごーい」

海未「どうやって呼んだのですか?」

虎太郎「俺の研究所の隣が、花陽さんのお兄さんの店でしたから。うまくにこ姉ちゃんと話をつけてきました。」

ことり「さすが世界と時間をを支配するアイドル、魔法ヶ沢京太郎だね。」

穂乃果「ことりちゃん、その名前覚えちゃってたの?」

希「この人の前で歌うって、かなりプレッシャーやね。」

絵里「私たちとはレベルが違うからね」

花陽「皆さんだって同じアイドルだった人なんですから、別にいいですよ。それに私のほうが年下ですし。」

にこ「それでは、花陽さん。聞いて下さい。」

この世界線の花陽さんは、生では初めて聞いたであろうμ'sのライブ。


花陽「私、思い出したよ。あの人たちとスクールアイドルをやってた記憶はないけど、TKB48のオーディションに落ちたってこと。オーディション直前に凛ちゃんが風邪を引いてその看病をしてたんだよね。」

千早さんのときと同じだ。前の世界線の記憶がうっすらとあるのだ。

花陽「私がTKB48に入れなかった世界に戻さないと、にこちゃんの妹が死んじゃうんだよね?」

虎太郎「そうです。」

花陽「今までTKB48の仲間と過ごした時間、最高だったよ。できれば失いたくない。でもにこちゃんのことも大切、妹さんの命が危ないなら、助けなくちゃね。」

虎太郎「花陽さん、きっとμ'sとして、スクールアイドルとして過ごした時間も最高だったと思いますよ。前の世界線の花陽さんがそう言ってましたから。」

花陽「ありがとう。」

こうして過去の凛さんに、『たまには薄着もいいな』という内容のメールを送信。
世界線は元に戻った。


・・・
アイドルショップには、いつものように花陽さんがいた。

虎太郎「花陽さん、μ'sの仲間のことは好きですか。」

花陽「うん。大好きだよ。」


神田明神にインフィニットタイム・オンラインは、またしてもなかった。1年前まではあったそうだけど。
さて、次は穂乃果さんだ。穂乃果さんにとっての黒歴史、滑り止めの高校受験の日に電車を乗り間違え、運転手さんに通過駅に温情停車してもらったということ。

大したことではないことだが、これを変えた俺にはリーディングシュタイナーが発動し世界線は変わった。
バタフライ・エフェクトでなんらかの事実が変わったということだが、どのような変化があったかはわからない。

・・・
12月27日

穂むら

穂乃果父「矢澤にこさんか。そちらは虎太郎君だね。」

にこ「穂乃果に用があって来ました。」

穂乃果父「そうか。じゃあ娘を呼んでくる。」

にこ「なんで私までついてくるのよ。」

虎太郎「仕方ないだろ。男1人で女の人と会うの気まずいし。」


穂乃果「にこちゃん、こんにちは。それと虎太郎君も、こんにちは。」

虎太郎「あの、成城にある高校の受験の日のこと覚えてますか? 確か電車を乗り間違えそうになったって聞いたのですが。」

穂乃果「その日は海未ちゃんと一緒に行ったよ。だから乗り間違えなかった。海未ちゃんが穂乃果1人じゃ心配だって言ってたからね。」

虎太郎「もし乗り間違えて、しかも乗った電車が下北沢の次は新百合ヶ丘まで停まらない快速急行だったりしたら、運転手さんにお願いして電車を停めてもらったしますか?」

穂乃果「それって昔京葉線とか、東北新幹線とか、中央線の特急あずにゃん、もといあずさであった電車を乗り間違えた受験生への温情停車って奴?」

特急あずにゃんって・・・

穂乃果「私も乗り間違えたら温情停車お願いしちゃうかも。海未ちゃんはめちゃくちゃ怒りそう。あとお父さんやお母さんも。大切な日に何やってるんだって。でも最後はいつもの穂乃果のドジっ娘ってことで許してくれそう。」

虎太郎「恥ずかしくなってあとから乗り間違えた過去をなかったことにしたくなったりしませんか?」

穂乃果「うーん、電車に乗り間違えて停めてもらったのも穂乃果にとってはいい思い出だから、なかったことにはしないかな。海未ちゃんだったら恥ずかしくて過去を変えたいって言いそうだけど。」

話が違うぞ。前の世界線の穂乃果さんは受験の日に温情停車してもらったのが恥ずかしくて、電車に乗り間違えないよう気をつけたいと言ってたのに。
世界線が変化しても、穂乃果さんの性格までは変わらないと思ったのに。

あのあと、ことりさんに電話した。

ことり『穂乃果ちゃんは、成城の高校の受験の日は海未ちゃんと一緒に言ったって聞いたな。』

ことり『もし電車に乗り間違えちゃったりしたら、穂乃果ちゃんなら運転手さんか車掌さんに泣いてお願いして、電車を停めてもらいそう。で、そんなのを恥ずかしく思ったりもしないと思う。』

虎太郎「そうですか。」

穂乃果さんのことをよく知ってる、幼馴染のことりさんが言うんだから間違いない。
ならばなぜ、前の世界線の穂乃果さんは受験の日に電車を乗り間違え、温情停車してもらったのをなかったことにしたいと思ったのだろうか?

ことり『そういえば穂乃果ちゃんの成城の高校の受験の日って、小田急線の生田の近くで電信柱が倒れる事故が起きたんだよね。偶然電車が通ってない時間に倒れたからけが人はいなくてよかったんだけど、穂乃果ちゃんと海未ちゃんがすごい怖がってた。』

ことり『もしかしたら自分が乗った電車が電信柱の下敷きになってたかもしれないと思うとぞっとするって。実際は成城より先での事故だから関係なかったんだけど。』

虎太郎「へえ、そんなことが。」

そういえば時期は忘れたが、昔小田急線の快速急行が倒れてきた電信柱と衝突して、死者が出た事故があった。
まさか他もあったと言うのか?

・・・
研究所

♪インターホン

虎太郎「いらっしゃい」

虎太郎「穂乃果さん、どうしたんですか?泣いてるみたいですけど」

穂乃果「どうしよう・・・。私、本当のことを思い出したかも。」

虎太郎「え?」

穂乃果「私のせいで・・・、事故が・・・。」

虎太郎「それってどういうことですか?」

穂乃果「元に戻さなきゃ駄目なの?」

虎太郎「このままだとこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんが死んでしまうんです。」

穂乃果「そんな・・・」

穂乃果さんは走って行ってしまった。


世界線を1つずつ戻すたびに2人の死が1日ずれてるのだと仮定すれば、この世界線でのデッドラインは12月27日。
念のためこの世界線での正確なデッドラインを知っておきたい。

夜19時30分

にこ『ぐすっ、こころとここあが、車に轢かれて・・・』

虎太郎「そうか、辛かったな。」

デッドラインは12月27日の19時30分。花陽さんのメールを取り消す前は26日の20時だったとすれば、世界線を1つずつ戻すたびに、23時間30分ずつずれていってるのか。

・・・
タイムリープをして、12月27日の昼に。

虎太郎「こんにちは。穂乃果さん、それに海未さんとことりさんも」

虎太郎「受験の日に電車を乗り間違えたこと、思い出したんですよね?」

穂乃果「うん。私が電車を乗り間違えなければ・・・・、運転手さんに電車を停めてもらわなかったら・・・、事故は起きなかったのに・・・。」

虎太郎「それってどういうことですか?」

ことり「バスの落石事故の話って知ってる?」

ことり「ある家族が妻の実家に遊びに行くために田舎までのバスに乗っていた。山のふもとあたりまできたときに・・・」

虎太郎「あ、その話前にここあ姉ちゃんから聞きました。酷い話ですよね。まるでただバスを降りただけの乗客に、落石事故の責任を負わせるかのような。」

海未「虎太郎君が言う前の世界線で、穂乃果が乗り間違えた電車がまさにそうだったんです。」

虎太郎「え?」

海未「穂乃果なら電車を乗り間違えて、受験に遅刻しそうだったら通過駅に電車を停めてもらったりでしょう。そしてそれを恥ずかしい過去だと思って、なかったことにしたいと思うような人ではありません。」

こよち「穂乃果ちゃんなら、そんな出来事もいい思い出と笑って済ますよね。」

海未「でもそれが原因で、事故が起きて人が死んでしまったのだとしたら・・・」

・・・
今から10年ほど前、穂乃果さんが成城の滑り止めの高校の受験に行った日、穂乃果さんは間違えて快速急行に乗ってしまい、それに気づいたのは成城学園前を通過した直後だった。
新百合ヶ丘まで停まらないことを知って、穂乃果さんは運転手さんに泣きながらお願いし、登戸に温情停車をしてもらった。
穂乃果さんは無事試験開始に間に合い、入試を受けることができた。

だが、話はこれで終わりではなかったのだ。
穂乃果さんが乗り間違え、登戸に3分ほど臨時停車をした快速急行が、その後生田の手前を走行中に、倒れてきた架線柱に衝突する事故が発生。
乗客25人が死亡する大惨事となってしまった。

ニュースで、多くのテレビ局が事故に遭った快速急行に受験生が乗り間違え、本来停車しない登戸に臨時停車していたことを報道。言うまでもなく、その受験生とは穂乃果さんのことである。
既に京葉線の通勤快速、東北新幹線のやまびこ、中央線の特急あずさで行われ物議を醸していた温情停車と大事故と重なるというまさかの事態。

2ちゃんねるなどネット上では、あのバスの落石事故の話と重ねて、受験生が温情停車をさせなければ事故が起きなかった、受験生が25人の乗客を殺したという書き込みまでされるようになった。
報道機関も受験生の気持ちを考慮し、事故に遭った電車が温情停車したことはすぐに伏せられるようになった。

現に温情停車により3分の遅延が発生し、その遅延がなければ快速急行は事故現場を何事も無く通過できていたのだ。


穂乃果さんは受験の日、温情停車が恥ずかしい思い出だという理由でなかったことにしかったわけではない。
自分が温情停車を要求したせいで、事故が起きてしまったと思い、誰よりも責任を感じてしまったのだ。
ましてやその学校が、本命ではなく滑り止めの学校だったというからなおさらだ。

・・・
海未「私とことりは、電車を止めたのはいけないことだけど、事故は穂乃果のせいじゃないって励ましたんですけど。」

虎太郎「その事故の犠牲者に、どんな人がいるんですか?」

ことり「全員は知らないけど、凛ちゃんのお姉ちゃんがその1人だった。」

虎太郎「!?」

そうか。だから俺は凛さんのお姉さんの存在を知らなかった。

穂乃果「私、凛ちゃんがその事故で亡くなったのを知って、凛ちゃんにしばらく合わせる顔がなかった。」

海未「凛も、穂乃果のせいじゃないって言ってました。」

虎太郎「世の中には知らない方がいい事実もある。凛さんには言わずにTTMを取り消そう。」

穂乃果「ダメだよ。ちゃんと凛ちゃんに言わなきゃ。私が撒いた種だから。」

そして俺は穂乃果さん、ことりさんとともに凛さんの家に行く。


虎太郎「ところで、この世界線でインフィニットタイムオンラインが神田明神にない原因はなんなんだ?」

ことり「わからないよ。」

虎太郎「推測として考えられるのは、事故の死者25人の中に、生き延びたことでインフィニットタイムオンラインを盗んだ奴がいる、ってことだろうか。ならそいつを見つけてインフィニットタイムオンラインを取り返せば、凛さんのお姉さんを犠牲にしなくて済むな。」

ことり「そんなことできるの? アテもないのに」

虎太郎「だよな。やっぱり世界線を戻すしかないのか。」

星空家

凛「穂乃果ちゃん、どうしたの?」

穂乃果「それが・・・」

穂乃果さんは、凛さんに事情を話した。

穂乃果「本当にごめんなさい。」

凛「穂乃果ちゃんのせいじゃないよ。でも、なんでこんなことになっちゃったのかな?」

虎太郎「俺のせいでもある。俺が過去を変えたから・・・」

凛「ううん、ちょっとだけでも、お姉ちゃんが生きてる夢を見させてくれてありがとう。」

凛「にこちゃんも大切だから。妹さんの命が危ないなら、我儘言ってられないよ。お姉ちゃんにお別れ言ってくるね。」


『AWOの準備完了』

虎太郎「放電が始まった。穂乃果さん、メールの準備を」

『受験は1人で行け』というメールを送信することに

穂乃果「凛ちゃんごめん・・・」

そしてリーディングシュタイナーが発動し、世界線が変わった。

千早さんに続いて、またしても俺は大切な人との死を2度も味あわせてしまった。もうこんなこと二度と味あわせたくない。
過去を変えることは、こういう悲劇を生む残酷なことなのだ。

続く


星空家

凛「穂乃果ちゃん、どうしたの?」

穂乃果「それが・・・」

穂乃果さんは、凛さんに事情を話した。

穂乃果「本当にごめんなさい。」

凛「穂乃果ちゃんのせいじゃないよ。でも、なんでこんなことになっちゃったのかな?」

虎太郎「俺のせいでもある。俺が過去を変えたから・・・」

凛「ううん、ちょっとだけでも、お姉ちゃんが生きてる夢を見させてくれてありがとう。」

凛「にこちゃんも大切だから。妹さんの命が危ないなら、我儘言ってられないよ。お姉ちゃんにお別れ言ってくるね。」


冬馬『AWOの準備完了』

虎太郎「放電が始まった。穂乃果さん、メールの準備を」

『受験は1人で行け』というメールを送信することに

穂乃果「凛ちゃんごめん・・・」

そしてリーディングシュタイナーが発動し、世界線が変わった。

千早さんに続いて、またしても俺は大切な人との死を2度も味あわせてしまった。もうこんなこと二度と味あわせたくない。
過去を変えることは、こういう悲劇を生む残酷なことなのだ。

続く

第17話 スプリングツリー

にこ「こころとここあ、明日死ぬんだ。」

虎太郎「ああ。最初は12月24日だったのが、過去へのメールを取り消すたびに1日ずつ伸びていった。」

この話をにこ姉ちゃんにするの何度目だろうか。

さて、次は佐々木佳織のメールだ。

虎太郎「佐々木佳織がメールを送る前までは確かにインフィニットタイムオンラインがあった。だからおそらく次が最後。このメールを取り消せば、間違いなくインフィニットタイムオンラインを手に入れられる。」

にこ「そう」

にこ姉ちゃん、千早さん、花陽さん、穂乃果さんと凛さんみたいに誰かの想いを犠牲にするのはもう嫌だ。次は大したことない内容であることを願いたい。

虎太郎「メールの内容は、買った服を買わないようにしたいというものだった。そのメールによって佐々木佳織が研究所に来ない世界になってしまったのだがな。」

12月28日昼

にこ姉ちゃんが住所を知っていたので、俺は佐々木佳織が住んでいるというアパートを訪れた。
しかし・・・

佳織が住んでいるというアパートの部屋は立入禁止の黄色いロープが貼られていて、アパートの周りは騒然としていた。

虎太郎「あの、何があったんですか?」

警察「203号室に住んでいる人が昨日の夜、死亡したんだ」

虎太郎「!?」

虎太郎「佐々木佳織が、死んだ・・・」

警察「ご遺体は上野の西木野総合病院に運ばれた。身寄りが誰もいないみたいでね、困っていたんだ。」

虎太郎「なんで?死因は?」

警察「それがまだわかってない。争った形跡がないことから、自殺の可能性が高いと思われる。」

ちなみに音ノ木坂学院旧校舎がスクールアイドルミュージアムとなったこの世界線では、西木野総合病院は上野にある。

虎太郎「そんな・・・」

警察「君・・・、大丈夫か?」

虎太郎「佐々木佳織が死んだ・・・なんでだ・・・。仲間に殺された?こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを[ピーーー]前に・・・」

虎太郎「いや、そんなことはどうでもいいのか。これじゃあメールを取り消せないじゃないか・・・」

虎太郎「そうだ。タイムリープすればいい。佐々木佳織が死ぬ前に。」

だがその前に、この世界線での正確なデッドラインを確かめておこう。

12月28日、19時。

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

こころとここあは建設現場の上から落ちてきた金属の下敷きになって死んだ。
デッドラインは12月28日、19時ちょうどか。やはり23時間30分ずつずれているんだな。

にこ「こころ・・・ここあ・・・」

虎太郎「辛い思いさせてすまなかったな」

俺は5日前、12月23日にタイムリープした。


・・・
再び佐々木佳織のアパートへ。

インターホンを鳴らす

虎太郎「矢澤虎太郎です。矢澤にこの弟なんですが、入っていいですか?」

どうやら鍵は開けっ放しだった。なんて無防備だ。

部屋はあかりを点けることなく、佐々木佳織は携帯と向き合っていた。

佳織「スプルングツリー、なんで・・・メールくれないの・・・お願い・・・返事をちょうだい」

もはや廃人と化していた。佐々木佳織は携帯に「SP」と何度も入力していた。
これがヤンデレという奴なのだろうか。

虎太郎「俺は矢澤虎太郎だ。聞こえないのか?」

虎太郎「許さない・・・。姉ちゃんたちを殺したお前を・・・絶対・・・」

俺は携帯を強奪した。

『その服は買え。早くしないと売れてしまう』と打った

虎太郎「もしもし、冬馬か?携帯は奪いとった。AWOの設定を頼む」

冬馬『準備完了。放電始まった。なんの音だ?』

部屋では佳織が暴れていた。

虎太郎「気にするな。じゃあ送信するぞ。」

これで最後・・・。こいつを送れば・・・

虎太郎「・・・なぜだ。世界が変わってない。」

冬馬『送ったの?』

虎太郎「送信した。なのにリーディングシュタイナーが発動しない。」

冬馬『え?』

虎太郎「リーディングシュタイナーが発動しない。なぜだ? メールは確かに過去に送られてるのに・・・」

虎太郎「いや、待てよ。あいつ、前の世界線と同じ服を着てるぞ。つまり、服を買ったわけじゃないんだ・・・。」

冬馬『どういうことだよ? メールの内容は確認したんだろ?』

虎太郎「おそらく、服を買わないようにしたいというのは真っ赤な嘘。直前に別の内容に変えたんだ。」

冬馬『そんな・・・じゃあメールの内容はわからないのか?』

虎太郎「聞いてみる」

佳織「返せ!携帯返せ!!!」

虎太郎「過去にメールを送ったことを覚えてないか?」

虎太郎「1週間ほど前に、奇妙なメールを受け取ったはずだ。未来の自分から。」

佳織「どうして、知ってるの?」

虎太郎「内容を教えろ。そしたら携帯を返してやる。」

佳織「・・・」

虎太郎「どうした?言えないのか? さてはインフィニットタイムオンラインに関することか?」

佳織「・・・」

虎太郎「図星か・・・。内容を言え!」

佳織「裏切れない・・・。スプリングツリーを裏切れない・・・」

佳織「私の指示はスプリングツリーから来ている。彼は私のすべて、」

虎太郎「そいつが、お前を動かしてるのか?」

虎太郎「裏切れないか。だがそのスプリングツリーとかいう奴はお前を裏切った。連絡がないんだろ?お前のことは捨てたんだ。」

佳織「彼はそんなことしない!スプリングツリーは私を助けてくれたの。何もなかった私に、居場所をくれた。」

虎太郎「お前は利用されただけだ。お前はスプリングツリーとかいう奴に捨てられて、死ぬんだ。なぜわかるかって?」

虎太郎「俺はタイムマシンを持っている。5日後からタイムリープしてきた。未来から来たメールが証拠だ。12月27日の夜にお前が死んだのを見た。死因は不明で、自殺という線が有力らしいがな。もうスプリングツリーから連絡なんか来やしない。」

佳織「いや。そんなの嘘!」

虎太郎「いつから返事が来てないんだ? ずっと待ち続けてるんだろ?」

佳織「いやーーー。うわあああああん。」

虎太郎「悪かった。俺はお前を助けたい。」

虎太郎「スプリングツリーとやらは誰だ? 男か、女か?」

佳織「私の恋人。」

虎太郎「じゃあ男なのか?」

佳織「多分・・・。会ったことない。会いたくない・・・」

虎太郎「お前は会ったこともない奴の言いなりになっていたのか?」

佳織「会ったらきっと幻滅されるから・・・」

虎太郎「性別がわからないってことは声も知らないのか?電話もしたことないんだな。なんで会ったこともない奴の言いなりになってるんだ。」

佳織「好きな人にフラれちゃったから・・・。高校生のとき、片思いしてた幼馴染の男の子にフラれっちゃったから。」

佳織「あれ以来好きな人できなくて、でも恋愛体質に私にはそれじゃ生きていけ亡くて、だからせめてメールだけの恋人が欲しかった・・・」

虎太郎「そんな理由で会ったこともない奴についていってたのか。」


俺は12月中旬ごろのメールを見た。するとそこに・・・『インフィニットタイムオンラインは神田明神にある』というメールがあった。

冬馬に連絡した。

虎太郎「メールの内容確認した。『インフィニットタイムオンラインは神田明神にある』と」

冬馬『ということは?』

虎太郎「インフィニットタイムオンラインを盗んだのは佐々木佳織で間違いない。まあ薄々気づいてはいたが」

冬馬『今はどこにあるの?』

虎太郎「わからない。それ以上は話してくれなかった。とはいえ予定通りメールを取り消す。AWOの準備を」

『神田明神に行くな。これは罠だ、そこにインフィニットタイムオンラインはない。』と入力

冬馬『準備完了。放電始まった』

虎太郎「よし、今度こそ・・・」

俺はメールを送信した。しかし・・・

虎太郎「なぜだ・・・」

冬馬『どう?』

虎太郎「ダメだ。またリーディングシュタイナーが発動しない・・・。」

冬馬『過去の佐々木佳織がメールを信じなかったのか?それとも最初に送られた方のメールに従ったのか?』

冬馬『別の文面でもう一度・・・』

虎太郎「いや、俺じゃダメなんだ。おそらく佳織を動かせるのは、スプリングツリーとかいう奴だけだ。あいつの携帯からメールを送ることができれば、無条件で信じるはず。」


虎太郎「俺はスプリングツリーを探す。居場所に心当たりはないか? あっても話さないか?」

虎太郎「スプリングツリーの指示なら、強盗を連れて俺の家を襲うんだろ?」

佳織「多分。きっと」

虎太郎「利用されているとわかっていてもか。そうやってそいつの言いなりになったまま、そのまま1人寂しく死んでいくんだ。この世界線で変えられないことだ。だが俺は変えてやる。スプリングツリーなんかに利用されるお前も助けてやる。」

佳織「・・・UTX学院前のコインロッカーに、インフィニットタイムオンラインを預けた。まだあるかもしれない」

・・・
12月24日

虎太郎「UTX学院前のコインロッカーに例のものがあるらしい。まだ回収されていないようだ。」

冬馬「だからどうするんだ?」

虎太郎「何かでぶち壊す、ってのは無理か。警察沙汰にはなりたくない。」

恭二「タイムトラベルメールを順番通りに取り消して、元のインフィニットタイムオンラインがあった世界線に戻るしかないだろ。」

冬馬「そのスプリングツリーとやらは悪の組織のボス、まあ中ボス程度かもしれないが、おそらくインフィニットタイムオンラインを回収しに来るはずだ。UTX学院前で見張っていれば発見できるだろう。」


UTX学院前

虎太郎「ここがスクールアイドルの最高峰、UTX学院か。にこ姉ちゃんや、μ'sのメンバーたちは校舎に入ったこともあるんだっけな。」

虎太郎「佐々木佳織じゃないか。何しに来た?」

佳織「私もスプリングツリーに会いたい。本当のこと確かめたい。」

虎太郎「まあいい。敵同士ではあるが、タイムアイドル部の部員でもあるからな。」


夜になった。もう何度目かわからないクリスマスイブの夜。
やばい。こんな日にこいつと2人でいたら、周りから見たらカップルに間違われるんじゃないか?できればそういう事態は避けたかったとこだが、この際どうでもいい。

虎太郎「今日はスプリングツリーは現れなかったか。」

佳織はスプリングツリーからのメールを読んでいた。メールでは佐々木佳織は「K2」と呼ばれているようだ。

佳織「『K2』、これは私のコードネーム。私と彼だけが知る。」

翌12月25日

台車を持ったある女がUTX学院前のコインロッカーに入っていった。それは見覚えのある人

虎太郎「あれは、亜里沙さんじゃないか。」

亜里沙さんは何物かを持って行った。

佳織「間違いない。あれはインフィニットタイムオンライン」

虎太郎「じゃあ、亜里沙・・・、あの人がスプリングツリーなのか?」

佳織「違う。彼は男の人。」

虎太郎「そうだと願いたいね。あの女に見覚えある?」

佳織「ない。」

虎太郎「この人もスクールアイドルだったんだが、μ'sほど知られてないか。」

亜里沙さんがスプリングツリーを正体で、悪の組織の中ボスなんて展開は勘弁だ。全国のスクールアイドルファンの夢を壊すことになる。

亜里沙さんは秋葉原駅の山手線ホームに上がった。そこで一度見失ってしまう。
気づいた時には亜里沙さんの手にインフィニットタイムオンラインはなかった。

すると山手線外回り電車の車内から、別の男がインフィニットタイムオンラインを持っているのが見えた。

虎太郎「しまった。バトンタッチか・・・」

山手線のドアは閉まってしまった。仕方なく俺は30分のタイムリープ。

今度はきっちり別の男にインフィニットタイム・オンラインが渡るのを確認。
男は山手線に乗り、池袋で下車。

池袋の西口改札前でまた別の男に渡る。男は東武東上線に乗り、川越で下車。
川越駅前で待ち受けていたのは・・・

虎太郎「澤部椿・・・」

澤部椿は男から譲り受けたインフィニットタイム・オンラインを川越市内の実家と見られる家に持ち帰った。

虎太郎「あの女に見覚えある?」

佳織「見たことない。この人もスクールアイドル?」

虎太郎「それは違う。タイムアイドル部の部室の隣のアイドルショップで働いてる女だ。見かけたことならあるんじゃないか?」

佳織「覚えてない。」


澤部椿の実家前で見張る。ここでにこ姉ちゃんに電話をかける。

虎太郎「いい知らせと悪い知らせがある。どっちから先に聞きたい?」

にこ『何かっこつけてるのよ。じゃあ悪い知らせから』

虎太郎「亜里沙さんがUTX学院前のコインロッカーからインフィニットタイム・オンラインを持って行くところを発見した。」

にこ『え?じゃあスプリングツリーとやらの正体は亜里沙だっていうの?』

虎太郎「その可能性もあるが、まだわからない。それと澤部椿もインフィニットタイム・オンラインを運んでいた。」

虎太郎「俺は今川越でインフィニットタイム・オンラインを見張っている。にこ姉ちゃんは亜里沙さんに事情聴取をしてくれ。」

にこ『わかった。』

続く

第18話 大勝利!我らが魔法ヶ沢京太郎様

・・・
絢瀬家

絵里「あ、にこ。数日ぶり~」

にこ「亜里沙はいる?」

絵里「うん、今いるけど。」


亜里沙「にこさんじゃないですか。突然どうしたんですか?」

にこ「スプリングツリーって人知ってる?」

亜里沙「スプリングツリー? 知りません、聞いたことないです。」

にこ「じゃあインフィニットタイムオンラインって知ってる?」

亜里沙「それも知りません。」

にこ「亜里沙がUTX学院前のコインロッカーからあるゲーム、インフィニットタイムオンラインを持っていくのを虎太郎が目撃したの。」

亜里沙「へえ、あの大きなゲームそんな名前だったんですか?」

誤魔化してるようには思えない。どうやら本当に亜里沙は何も知らないようだ。

にこ「じゃあ亜里沙はスプリングツリーじゃないのね。」

亜里沙「私はメル友の『いろは』って人に頼まれてやっただけです。」

いろはとは・・・また別の登場人物か

にこ「メル友なの?」

亜里沙「はい。そのいろはさんとは会ったこともないです。」

・・・
翌12月26日

澤部椿は自宅からインフィニットタイム・オンラインを持ち出し、ある場所に持って行った。

虎太郎「もしかして、悪の組織のアジトか。」

以後、インフィニットタイム・オンラインは運ばれなかった。

佳織「スプリングツリーは現れなかったね。」

虎太郎「今までの運んできた奴らの中にいるんだろ。」

♪着メロ 僕らは今のなかで

にこ『もしもし、亜里沙に確かめたら亜里沙も例の奴に操られてただけだって。』

虎太郎「よかった。まあ亜里沙さんじゃないと俺も思ってたけどね。」

俺は大体の目星はついている。

虎太郎「行くぞ。直接あたってみよう。花陽さんのアイドルショップでバイトしてる例の女に。」

12月27日。
川越ににこ姉ちゃんが到着

♪ピンポーン

椿「はい」

虎太郎「矢澤虎太郎だ。」

にこ「私は矢澤にこ。そして友達の佳織もいる。」

椿「私のことつけてきたんですか? そこまでして一体何の用です?」

虎太郎「お聞きたいことがあって来ました。」

虎太郎「スプリングツリーという人物をご存知ですよね? 俺たちは全部見ていたんです。川越駅から澤部さんがインフィニットタイムオンラインも持っていくのも、この家からある研究所に持っていくとこも。」

虎太郎「スプリングツリーに会いたいんです。どんな情報でもいいので教えて下さい。」

椿「そう。裏切ったんだね。K2」

佳織「え!?」

佐々木佳織は呆然とした

佳織「その名前、私とスプリングツリーしか知らない秘密のコードネーム・・・」

虎太郎「やっぱり」

にこ「やっぱりって、どういうことよ? 虎太郎」

虎太郎「前から怪しいと思ってた。タイムアイドル部の研究所をハッキングできる奴なんて、その近くによく通う奴しかありえないだろう。」

虎太郎「最も近いのは隣にあるアイドルショップの店長か店員。だがその中でまずタイムアイドル部の部員である恭二はないだろう。あいつが俺たちを裏切ったりするわけない。」

虎太郎「そして花陽さんもない。花陽さんも俺たちを攻撃するとは思えないし、花陽さんがTKB48のメンバーだった世界線ではアイドルショップにいなかったからだ。」

それに秋葉原駅前で強盗犯に襲われそうになったときに助けてくれたこともあるからな。

虎太郎「となれば候補は小泉メガ兄ぃか、バイト店員の誰か。だがその中で最も怪しいと思ったのは・・・」

澤部椿である。

虎太郎「ポイントはコードネーム。スプリングは春、ツリーは木。そして椿って漢字は木偏に春と書く。だからスプリングツリーの由来は、お前の名前だ。」

椿「お見事だよ。バカにはわからないと思ったけど、さすが虎太郎君だね。」

佳織「そんなの・・・嘘・・・」

椿「依存の次は現実逃避かな、K2?」

佳織「だってスプリングツリーは男の人じゃ・・・」

椿「騙したんだよ。相手の理想の人物像を演じるくらい簡単なことさ。」

にこ「まさか、亜里沙とメールをしていた『いろは』って人の正体もあなたなんですか?」

椿「そうね。『いろは』というのはA4との連絡に使っていたコードネーム。あんたA4とも知り合いだったんだ。」

にこ「高校の後輩です。」

椿「ちなみに由来はそのとき見てたアニメキャラの名前。ここじゃ狭い。ちょっと場所を変えようか。」


川越市内の河原

椿「あんただけじゃない。他の奴らもそいつが求める人物像を演じた。」

椿「もっとも、あんたが一番騙しやすかったよ。あんたほどの、恋に恋する乙女はなかなかいないね。2ちゃんねるでいえば、スイーツ(笑)とか、ま~ん(笑)とかいう奴?」

佳織「そんな・・・」

虎太郎「佐々木佳織との連絡を断った理由は?」

椿「インフィニットタイムオンラインを手に入れた時点であんたは用済みだよ。だから捨てた。」

椿「ダイレクトメールでメンバーの集めるの。こういう助けを求めてる奴は扱いやすい。用が済んだら始末もしやすい。」

虎太郎「お前が悪の組織の一員だったなんてな。」

椿「いいじゃない。私は世界を支配したいの。あんたも一緒でしょ?」

虎太郎「生活に困ってる人を犬のように扱って何が楽しい!」

椿「犬?そんなの生易しい。家畜だよ。いや、豚小家出身、家畜以下だね。私はそんな家畜以下のクズに、蜘蛛の糸を垂らしてやったの。この人みたいに生活に苦しんでる奴なら、登るしかないだろうね。たとえ行き着いた先が地獄よりもさらに過酷な奴隷生活だとしてもね。」

虎太郎「佳織さんは、大好きだった幼馴染にフラれて、それ以来人を好きになることもできず1人で生きてきた可哀想な人なんだぞ。」

椿「知ってる。志望動機に書いてあったからね。アウトブレイク・カンパニーの主人公かよ。まさかリアルにいるなんてね。アハハハ。」

虎太郎「人の不幸を笑って何が楽しいんだ!」

椿「でも私と一緒だね。私も家が隣同士で、生まれてからずっと一緒だった幼馴染の男の子が好きだったんだけど、結局フラれちゃったんだ。」

椿「彼が好きだった人も中学を卒業するときに死んじゃったんだけど、彼は永遠にその人のことを好きでいたいみたいで、結局私の想いは永遠に届かない。私は彼以外の人を好きになれるわけないし、一生独り身。そして気づいたらこんなことやってた。」

椿「あんたたちが今回得るべき教訓は、幼馴染は結ばれないってことだね。」

椿「そして逃れることなんかできないわよ。糸から逃れた家畜には・・・死だ。」

ドン
澤部椿はふところから鉄砲を取り出し、佐々木佳織を撃った。佐々木佳織は一瞬で倒れた。

椿「裏切り者には死だ。女王様に楯突かなければ、命だけは助けてあげたのに。」

椿「矢澤虎太郎に矢澤にこ。あんたたちも生かしておくわけにはいかないわね。佐々木佳織のせいで、あんたたちにも私の秘密を知られちゃったし。」

俺とにこ姉ちゃんの周りを黒服の男が囲いに来た。あのときの強盗だ。

虎太郎「な、な・・・」

にこ「やだ・・・私、死にたくないよ・・・」

ドン
そのとき銃声が鳴り響き、澤部椿が撃たれて倒れこんだ。

雪穂「この男たちは武器を持ってない。虎太郎君ならやっつけられる。」

かけつけたのは、なんと雪穂さんと亜里沙さんだった。

亜里沙「このSSで、ようやく私の出番だね。まったく、学芸会の村の子3の役だけなんて酷いよ。」

雪穂「亜里沙はさっきインフィニットタイムオンラインを運ぶ役もやってたけどね。」

亜里沙「悪役なんて嫌だよー。まだバックダンサ~、のほうがマシだよ。」

雪穂「その名言もこのSSで初登場だね。」

雪穂「私は復讐に来た。友達の佳織さんのね。佳織さんがそこまで思ってくれてるかわからないけど。」

ここでは語られなかったが、雪穂さんもアイドルということもあって顔が広いのだ。

虎太郎「なんでここがわかったんですか?」

雪穂「私たちは1年後の未来からタイムリープしてきたからだよ」

虎太郎「え?」

雪穂「1度に3日しかタイムリープできないからかなり手間取ったけどね。最短で122回、実際はそれより多くタイムリープしたけど。」

虎太郎「この復讐のためだけに、1年もタイムリープしてきたんですか?」

雪穂「澤部椿は私の友達を殺した。さらにこころちゃんとここあちゃんも[ピーーー]ように命令した。だから絶対に許さない。こいつを[ピーーー]のは私しかいない。」

雪穂「さあ、早く澤部椿の携帯からメールを送って。こいつの携帯から過去にメールを送ればこころちゃんとここあちゃんも助かるんでしょ?」

虎太郎「はい。ありがとうございました。」

佳織「あの・・・虎太郎君・・・」

突然佳織が意識を取り戻した

佳織「ごめん・・・。そして・・・ありがとう・・・」

そう言い残してまた意識を経った。

雪穂さんと亜里沙さんに助けてもらって、ようやくスプリングツリー、本名澤部椿の携帯からタイムトラベルメールを送ることができる。
しかしこの世界線はなかったことにしなければ。2人が復讐のために1年もタイムリープして、人を射殺した世界線なんて。

『インフィニットタイムオンラインの捜索は中止。このことは忘れろ』 この内容でメールを送信。

リーディングシュタイナーが発動し、世界線が変わる。
変わった世界線では、雪穂さんが人を殺した事実はなかったことになってほしい。

・・・
12月27日 昼

俺は秋葉原の駅前にいた。
最初に佐々木佳織のアパートに行ってみた。この世界線でも佐々木佳織は死んでしまっているのだろうか?

だが佐々木佳織はそこにいた。どうやら無事だったみたいだ。
アイドルショップに行くと、澤部椿も生きていた。

にこ姉ちゃんが希さんに電話をした。

希「インフィニットタイムオンラインね。パパに聞いたら確かに神田明神にあるって。」

にこ「本当?」


前の世界線と同様に、にこ姉ちゃんと2人でインフィニットタイムオンラインを神田明神から持ち帰った。

虎太郎「あった・・・。」

虎太郎「勝った!。俺たちはこの戦いに勝ったんだ。」

とはいえまだ終わりじゃない。AWOと連動してタイムスリップ機能を使って、12月8日の昼に行ってその時間の回線を切断し、最初のTTMが送られるのを阻止しなければならない。
あれが原因で俺たちが狙われた。そしてこのα世界線に移行することになった原因なのだ。


インフィニットタイムオンラインを起動。自分ではあまり経験がない、リアルオンラインゲーム

虎太郎「リンクスタート!」

そして12月8日、秋葉原駅前に3週間前の俺がいた。
回線を切断するプログラムでメールが送られるのを阻止する。

メールの内容は穂乃果さんと海未さんが喧嘩したのを見かけたというもの。最後に取り消すのがあまりにも些細な内容のメールというのも拍子抜けだが、まあこれも物語の醍醐味だろう。

12月8日の昼、回線を切断するプログラムを発動。
こうして俺が秋葉原駅前で送った最初のメールは送信されなかった。

ログアウトすると、再びリーディングシュタイナーが発動、世界線が変わった。β世界線への移行に成功した。

12月27日夜、そして12月28日、12月29日も強盗は来なかった。
これで本当に終わった。俺の長い戦いが終わった。

・・・
12月30日
今年もあと2日。激動の1年が終わろうとしている。
といっても大変だったのは最後の3週間くらいだったけど。

これでこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは助かった。俺はこの戦いに勝った。俺が待ち望んだ世界線にようやくたどりついたのだ。
俺も、にこ姉ちゃんも、そしてタイムアイドル部のみんなも、誰もがそう思った・・・

虎太郎「ははは。大勝利だ。我らがアイドル魔法ヶ沢京太郎様の!」

にこ「何自画自賛してるのよ」

虎太郎「まあいいじゃないか。なんていうか、俺はやり切ったんだな。かつて姉ちゃんが母校の廃校の危機を救ったことよりもずっと大きなことを。こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを、そして未来の世界を救ったんだからな。自分で自分を褒めたいと思う。」

こころ「なにそのオリンピックのマラソン選手みたいな言葉。」

にこ「確かに虎太郎の言ってることが本当だとすると、新型原子爆弾が開発されて世界中の人が死ぬことを阻止したのなら、廃校を阻止した私たちなんか生ぬるいのかもね。」

世界と時間を支配するアイドルに大きく近づいたのだ。
すっかり日が暮れてもうすぐ夜6時になろうとしたそのときだった・・・

ドクンドクン ドクンドクン ドクンドクン・・・

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

!?
こころとここあ姉ちゃん、また死ぬのか?

虎太郎「なぜ?、なんでだよ~。世界は変わったはず。ちゃんとβ世界線に移行したはずだぞ!」

強盗「動くな!金を出せ!全員両手を上げろ!」

こころ「キャー!」

ここあ「助けて、お姉さまー!」

強盗・・・。もう何度目かわからない強盗。
だが今回は佐々木佳織はいない。世界が変わって彼女は足を洗った。それは確かだった。なのになぜ、強盗はここにいるんだ?

強盗「君が長男か。ならば家の大事なものの在処くらい教えられているだろ? 地震が来たらそれを持って逃げなさいだとか、強盗さんがきたらそれを差し出してお帰り願いなさいとか、聞かされた覚えはあるだろ?」

強盗「さあそれを探してこい。俺たちが気に入らなかったら、この子たちとは悲しいことだけど1人ずつお別れになってしまうよ。1人につき10分、10分毎につ持って来い。」

またしてもこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは強盗に殺された。
なぜまだ2人は助からないのかわからない。とにかくタイムリープすればまだ望みはある。

俺は携帯用のタイムリープマシンで前日、12月29日へ。

続く

第19話 最後に残った課題

12月29日

虎太郎「冬馬、恭二、助けてくれ。」

虎太郎「明日の18時、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんが死んでしまう。」

冬馬「ってなんでだよ? インフィニットタイムオンラインを手に入れ、12月8日にお前が送ったメールを取り消してβ世界線への移行に成功したはずだろ?」

虎太郎「そのはずだったんだが、まだ何かが足りないらしい。」

虎太郎「ちなみに12月8日、秋山博士の会見は開かれたか?」

冬馬「ちゃんと開かれたぞ。お前も行っただろ。」

虎太郎「じゃあ秋葉原に謎の人工衛星は来てないよな?」

冬馬「人工衛星?なんだそれ?」

ではβ世界線への移行には確かに成功ということだ。ならばなぜこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは助からないのだ?
そういえば一夏からの手紙にはまだ続きがあった。

『インフィニットタイムオンラインを手に入れた場合、その時点で俺たちが未来から来た痕跡がなくなると思います。その時点でISと新型原子爆弾の開発を阻止することには成功。しかしまだβ世界線への移行は完了してないでしょう。
その時点ではまだこころさんとここあさんは助からないかと思います。いわばα世界線とβ世界線の中間、θ世界線に行ったものと思います。
α世界線からθ世界線へ移行したあと、β世界線に移行するためには、インフィニットタイムオンラインで仮想世界に行き、11月28日に最初のタイムトラベルメールが送られるのを阻止するのです。』

このことをにこ姉ちゃんにも話した

虎太郎「現在俺たちはθ世界線にいる。謎の組織がISと新型原子爆弾を開発することを阻止することはできた。だがまだこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは助かっていないってことだ。」

にこ「そうか。まだこころとここあは助かってないんだ。」

虎太郎「こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを助けるには、最初のメールが送られるのを防がなければならない。だが12月8日のメールは既に取り消したのだが・・・」

冬馬「まだ何か取り消してないタイムトラベルメールがあるとでも言うのか?」

虎太郎「そういえば一夏は最初のメールが送られたのは11月28日だと言ってたぞ。秋山博士の会見は12月8日、最初は勘違いだと思っていたが、もしかして11月28日にも誰か過去にメールを送ったのか?」

冬馬「え?知らねえよ。」

にこ「AWOの機能に気づく前でしょ。」

冬馬「もしかしてこころちゃんかここあちゃんじゃ」

虎太郎「まさか」

ここあ「・・・11月28日?・・・はっ」

にこ「ここあ・・・どうしたの?」

ここあ「思い出した。私、その日謎の女に過去にFAXを送れるという話を聞いて、FAXを送ったんだ。」

冬馬「何?AWOを持っていたのは俺たちだけじゃなかったのか!謎の女というのは誰かは知らないが・・・」

虎太郎「おそらくそれだ。そのFAXを取り消せば、今度こそこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは助かる。」

ここあ「嫌だ・・・」

虎太郎「え?」

ここあ「取り消したくない・・・」

ここあは何かを思い出したようだ。

ここあ「11月28日のFAXを取り消すのはなしよ。世界線を変えずに、こころお姉ちゃんを助ける方法を考えよう。」

虎太郎「って、そんなの無理に決まってるだろ。」

ここあ「そうしなければならない事情があるの。とにかく11月28日のFAXだけは取り消しちゃいけない。」

虎太郎「まず11月28日のメールかFAXの内容を言え。ここあ姉ちゃんが送ったってことで間違いないんだな?」

ここあ「言いたくない。言ったらあんた、取り消せって言うでしょ。」

虎太郎「当たり前だ。11月28日のタイムトラベルメールを消去すれば、今度こそ本当にβ世界線に行けて、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんは助かるんだ。」

虎太郎「今までにこ姉ちゃんや、千早さんとその弟の優君を犠牲にし、花陽さんの夢を犠牲にし、穂乃果さんに罪悪感を押し付けた上に凛さんのお姉さんを犠牲にし、いろんな人の想いを犠牲にしてきたんだぞ。」

虎太郎「なのに最後の最後で取り消せないなんて、お前やこころ姉ちゃんのために自分の想いをあきらめた人、亡くなった優君や凛さんのお姉さんに申し訳ないだろ!」

ここあ「嫌なの。」

にこ「どんな内容かわからないけど、あんたがインフィニットタイムオンラインを確保したことで、もう世界は救われたのよ。ISや、新型原子爆弾が作られることはない。だからなんとかこの世界線でこころとここあを助ける方法を考えなさい。」

虎太郎「無茶言うな。前にも言っただろ。どんなに2人を逃がそうとしても、世界はアトラクタフィールドの収束により、こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんはどうやっても死んでしまうんだ。」

にこ「やってみなきゃわからないでしょ! あんたは世界と時間を支配するアイドルでしょ。なんとかしなさい! 自分の姉も救えないようじゃ、私やμ'sの足元にも及ばないわよ。」

虎太郎「お前らわがまま言ってんじゃねえ。ここあ姉ちゃんはどうせ自分の欲望を犠牲にしたくないだけだろ。」

ここあ「私の欲望なんかじゃないもん。」

虎太郎「じゃあ内容言えよ」

ここあ「今は言えない。言ったらその時点で願いが叶わなくなっちゃうから言えない」

虎太郎「何言ってるんだよ。」


・・・
ここあの回想

そうよ。言えるわけない。そして取り消せるわけない。あのFAXを。

11月16日、虎太郎は羽田発福岡行きのスカイマスター765便の墜落事故で死んだ。
11月27日に葬儀が行われ、失意の私は翌日、謎の女に過去にFAXを送れるという話を聞いた。

謎の女「矢澤虎太郎を助けたい? なら過去に手紙を送るといいよ。11月16日の、スカイマスター765便に乗る直前の矢澤虎太郎に。」

ここあ「はい。」

そのFAXで過去が変わり、虎太郎はスカイマスター765便に乗らなかったことになり、助かった。

もしこのFAXを取り消して、私たちが追われない世界線、こころとここあが死なない世界線、
虎太郎とタイムアイドル部のみんなが目指した、β世界線に行ったら・・・

おそらく、虎太郎は死ぬ・・・

・・・
結局12月30日夕方、俺はにこ姉ちゃんも含めて4人で逃げまわることにした。
そして18時・・・

こころ「あれ?私のスマホ止まっちゃってる。」

ここあ「本当だ。私のもだ。おかしいな?さっき充電したばかりなのに、故障かな?」

虎太郎「嫌だ・・・ここまで来たのに・・・」

そのとき、道路に一台の車が猛スピードで突進する

にこ「ここはお姉ちゃんに任せて!」

虎太郎「にこ姉ちゃん」

にこ「ここで私が轢かれれば、命を投げ出せば何かが変わる、運命を変えられる。」

こころ「お姉さま危ない!」

こころとここあが飛び込む

ドーン!

結局、3人とも轢かれてしまった。

こころ「お姉さま・・・、こころはお姉さまの役に立ててよかったです。」

こここあ「姉ちゃん、無茶しないでよ・・・」

虎太郎「・・・うわああああぁぁぁ!」


俺はその後タイムリープ、再び12月29日へ戻った。

・・・
12月29日

虎太郎「なんでまたこの話をしなきゃいけないんだ。わからずやの誰かさんのせいで。」

ここあ「わからずやって私のこと?」

虎太郎「そうだよ。ここあ姉ちゃん、11月28日に送ったFAXって一体何なんだ?」

ここあ「当ててみなさい。あんたも11月中旬頃、未来から送られてきたFAXについて覚えてるはずよ。」

虎太郎「なんだったっけ? 覚えてねえよ。俺はもう何百回とタイムリープして、今年の11月のことも20年くらい前の感覚だ。」

虎太郎「それにずっとこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを助けることばかり考えてたんだぜ。」

にこ「そ、そんなにタイムリープしてたんだ・・・。そこまでこころとここあのことを・・・」

にこ「じゃあ今度は私に任せなさい。今度は私がこころとここあを守る。」

虎太郎「って一体どうするんだよ!」

にこ「ニューヨークにアイドルの知り合いがいるから、その人の家に泊めてもらう。さすがの強盗もアメリカまでは追ってこれないでしょ。」

虎太郎「どうせ無駄だ。ニューヨークに行ったってワシントンに行ったって、ヨーロッパに行ってもアフリカに行っても南極に行っても、極端なことを言えば月に行っても、アトラクタフィールドの収束からは絶対に逃れられない!」

にこ「やってみなきゃわからないでしょ!」

虎太郎「ニューヨークなら高3のときにμ'sのみんなと行ってるから土地勘あるし。」

にこ姉ちゃんはこころとここあを連れてニューヨークへ行ってしまった。

・・・
にこ姉ちゃんたちは飛び出したまま、この世界線でのデッドライン、12月30日18時を過ぎた。
姉ちゃんたからの連絡はまだない。

♪ピコンピコンピコン

『成田発ニューヨーク行きの飛行機が墜落、日本人の乗客多数』

虎太郎「まさか・・・」

『それでは日本人の乗客名簿をお1人ずつご紹介します。』

『ヤザワココア、ヤザワココロ、ヤザワニコ』

虎太郎「ほら、言わんこっちゃない・・・。」

前の世界線で俺も体験した。無理に逃げようとすればこういう事故が起きて他の一般人も巻き添えになるんだ。

俺は再びタイムリープした。


・・・
12月28日

虎太郎「この世界線では12月30日にこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんが死ぬ。2人を助けるためには11月28日にここあ姉ちゃんが送ったらしい、FAXを取り消さなければならない。だがここあ姉ちゃんは嫌だと言い、頑なにその内容を言おうとしない。」

にこ「まだ大丈夫。私がこころとここあを連れて逃げれば・・・」

虎太郎「それもにこ姉ちゃんが試したところを見てきた。外国に高飛びしようとしてるんだろ?確かニューヨークだっけ? その途中でにこ姉ちゃんたちが乗った飛行機が墜落したとこを俺は見てきた。」

にこ「見てきたんだ・・・」

虎太郎「どこに逃げても無駄だ。それどころか、下手に逃げようとすると大事故が起きて他の関係ない人まで巻き添えになって死んでしまう。俺も遠くに逃げようとしてそうなったことがある。60年間死亡事故ゼロの新幹線が事故を起こしたこともあったんだぞ。」

にこ「そんな・・・」

虎太郎「11月28日のここあ姉ちゃんがFAXを送るのを阻止するしか方法はない。」

こころとここあが合流して

こころ「お姉さま、私、最近怖い夢ばっかり見るの。夢のなかでいつも私とここあは酷い目に会うの。強盗が入ってきてピストルで撃たれたり、車に轢かれたり、駅のホームで落ちてきた屋根の下敷きになったり、飛行機や新幹線の事故に巻き込まれたり。」

こころ「まるで本当のことみたいに、すごく怖くて痛くて苦しくて。誰か助けてって叫ぼうとしても声が出なくて。なんでそんな夢見るのかな?」

こころ「でも夢の最後にいつも虎太郎が助けに来てくれるの。ヒーローみたいに。あんなかっこいい虎太郎見たことなかったな。私は虎太郎にありがとうって言うんだけど、その声も聞こえなくて。」

こころ「お姉さまや虎太郎の話を聞いたら、どうやら本当に起きていたことだったみたいだね。」

ここあ「私も同じような夢見た・・・」

虎太郎「ここあ姉ちゃん泣いてるのか?仕方ないな。お前も怖かっただろうし。」

虎太郎「とはいえ、FAXの内容、そして取り消したくない理由を説明してくれ。そうしないと別の方法も考えられない。時間がないんだ。」

虎太郎「一夏と達也が1992年へのタイムトラベルによって事故を起こし、花陽さんの夢を奪い、千早さんに弟の死を二度も経験させ、凛さんにも姉の死を二度も経験させ、穂乃果さんには事故の原因となったことに苦悩し、みんなの想いを犠牲にしてここまで来たんだぞ!」

ここあ「ここまで来た・・・。虎太郎は私とこころお姉ちゃんを助けるために何度もタイムリープして、何度も辛い思いしたやっとたどりついたのに、こんな結末だなんて・・・」

虎太郎「どういうことだ?」

ここあ「11月16日のスカイマスター765便の墜落事故は覚えてるよね?その飛行機、虎太郎も乗ろうとしてたでしょ?」

虎太郎「ああ。この時空ではまだ記憶に新しいが、何度もタイムリープしてた俺の感覚では20年以上前だな。」

1985年8月12日の日本航空123便墜落事故以来、39年ぶりの日本の航空会社の墜落事故。
乗員乗客607人全員が死亡し、123便の事故を抜いて単独機での史上最多の死者を出した事故となり、123便では4人いた生存者も今回は存在しなかった。

虎太郎「あの飛行機、俺も乗る予定だったけど、直前に回避して命拾いしたんだよな。」

ここあ「ううん。あの飛行機に、虎太郎は乗ってたんだよ。」

虎太郎「え?」

ここあ「でも未来から来た手紙で乗るのをやめた。」

虎太郎「あ・・・・」

・・・
『スカイマスター765便は墜落する。別の飛行機にするか、直接広島に行け。』

続く

第20話(最終話) True times

ここあ「あのFAX、虎太郎の葬式が行われた翌日の11月28日に、謎の女に過去に手紙を送れるって聞いて、私が送ったの。11月16日に。」

ここあ「そのFAXやβ世界線からα世界線とかいうのに移行するきっかけだったんだね。だからそのFAXを取り消して、β世界線に戻ったら、虎太郎は死ぬ。」

虎太郎「・・・」

にこ「虎太郎がこころとここあを助けようと一生懸命になったように、ここあもまた虎太郎を助けたかったのよ。だからこのことは責めないであげて。」

虎太郎「責めたりなんかしないよ。でもまさか・・・、そんなことがあったなんてな・・・」

虎太郎「あの飛行機、離陸から15分くらい経ったあとに異常が発生して、緊急着陸の案内が流れて、ずっと揺れてて・・・」

にこ「覚えてるの?」

虎太郎「ぼんやりとだけどな。夢に見たんだよ。痛さや絶望感もあまりにリアルだった。」

虎太郎「俺も今思い出した。俺がスカイマスター765便に乗ったことを。あれは夢じゃなくて現実だった。しかし今までなんでこの世界線のことははっきりと覚えてなかったのかな。俺にはリーディングシュタイナーがあるっていうのに。」

にこ「自分が死んだ世界線のことは記憶にないってことなんじゃない?わからないけど」

虎太郎「おおむねその通りだろうな。」

にこ「私にも記憶があるの。主に虎太郎に関する記憶。こころやここあと同じような夢を見た。夢とは思えないようなリアルな夢を。」

にこ「虎太郎は、こころとここあを助けるために必死になって、一人で傷つきながら、何百回も同じ日を繰り返して・・・。何度繰り返してもこころとここあは助けられないって気づいても、それでもあきらめず運命に抗おうとして・・・。何度か私もこころとここあと一緒に死んじゃったんだよね。」

にこ「それを見て私は、虎太郎がこころとここあをどれだけ大切に思っているか、人が誰かを思えるのかと思って。そして虎太郎は私の妹をここまで必死に助けてくれてることに感動して・・・。」

にこ「なのに私は虎太郎に何の力にもなってあげられなかった。今度は私がこころとここあを守るとできもしないことを言って、虎太郎を置いてニューヨークに逃走しようとして、その途中で飛行機事故に遭って・・・。」

にこ「今度は私が虎太郎に協力したい。」

虎太郎「じゃあ今までどおりやればいい。すべては予定通り。」

にこ「って、何するの? どうやってこころとここあを助けるの?」

虎太郎「決まってるだろ。俺が消えればいいんだよ。」

虎太郎「そのFAXを取り消せばいい。それで全てが解決する。」

にこ「あんた今自分が何言ったかわかってんの? 自分が死ぬんだよ?」

虎太郎「他に方法があるって言うのかよ?」

にこ「あきらめちゃダメよ。まだ2日もある。それにまたタイムリープすれば時間はいくらでもある。今度は私も一緒に考えてあげるから・・・」

虎太郎「少し休ませてくれ」


・・・
俺とにこ姉ちゃんは2日の間、あらゆる策を試そうとした。だが方法はなかった。
再び迎えた12月30日朝、今日の18時にまたこころとここあは・・・

虎太郎「今日が期限の日だ。」

にこ「まだよ。まだ夕方まで時間はある。それにあんたはタイムリープできるんでしょ。他に方法が思いつくまで何回でもやり直せるんだから」

虎太郎「何回やり直しても同じだ。」

にこ「できるわけないわよ。あんたを見殺しにするなんて。」

にこ「こんなの私は認めない、あきらめない。できるわけないよ。虎太郎を見捨てるなんて。今度は私が自分で自分を守る。ここあと一緒に。」

虎太郎「どうするつもりだ?」

にこ「時間が来たら私がここあを一緒に逃げるから・・・」

虎太郎「逃げたって苦しむだけだ。どこに逃げたって世界の収束には抗えない。俺が2人が死ぬところを見るだけなんだよ。少しは・・・俺の身にもなってくれよ・・・。」

虎太郎「俺が何回こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんの死を見てきたと思ってるんだ!何回も何回も、何回も何回も・・・。またそれを見ろって言うのか、もうたくさんなんだよ!」

虎太郎「もう疲れたんだよ。俺が[ピーーー]ば全部解決するなら、そうしてくれ・・・」

・・・
俺とにこ姉ちゃんは2日の間、あらゆる策を試そうとした。だが方法はなかった。
再び迎えた12月30日朝、今日の18時にまたこころとここあは・・・

虎太郎「今日が期限の日だ。」

にこ「まだよ。まだ夕方まで時間はある。それにあんたはタイムリープできるんでしょ。他に方法が思いつくまで何回でもやり直せるんだから」

虎太郎「何回やり直しても同じだ。」

にこ「できるわけないわよ。あんたを見殺しにするなんて。」

にこ「こんなの私は認めない、あきらめない。できるわけないよ。虎太郎を見捨てるなんて。今度は私が自分で自分を守る。ここあと一緒に。」

虎太郎「どうするつもりだ?」

にこ「時間が来たら私がここあを一緒に逃げるから・・・」

虎太郎「逃げたって苦しむだけだ。どこに逃げたって世界の収束には抗えない。俺が2人が死ぬところを見るだけなんだよ。少しは・・・俺の身にもなってくれよ・・・。」

虎太郎「俺が何回こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんの死を見てきたと思ってるんだ!何回も何回も、何回も何回も・・・。またそれを見ろって言うのか、もうたくさんなんだよ!」

虎太郎「もう疲れたんだよ。俺がしねば全部解決するなら、そうしてくれ・・・」

にこ「あんたがそんな人だとは思わなかった。自分が[ピーーー]ばいいだなんて。こころとここあを助けてくれるヒーローだと思ってたのに。もう知らない!」

虎太郎「いいよ。何度言ってもわかってくれないなら、にこ姉ちゃんのことなんか大嫌いだ!」

にこ「・・・ダメだね。ここで喧嘩したら、また虎太郎だけを傷つけることになっちゃう。ごめん。」

にこ「私は、虎太郎みたいに強くなれないのかな。」

虎太郎「俺は強くなんかない。にこ姉ちゃんにはそう見えてるのかもしれないが、もう精神的にボロボロなんだよ。」

虎太郎「こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんが何度も死ぬのに俺は驚かなくなっていった。いつからか俺の精神は麻痺していた。2人が死ぬ時刻を確かめるためにタイムリープせずに待っていたこともあった。」

虎太郎「人が死ぬのにいつからか何も感じなくなった。またやり直せばいいと、どこかでそう思い始めた。これ以上2人の死を見たら、本当に壊れちゃうんだよ・・・」

にこ「虎太郎がそこまで苦しんでるのに、私はずっと・・・」

にこ「だけど自分がしねばいいなんて、そんな悲しいこと言わないで・・・」

虎太郎「じゃあどうしろって言うんだよ。」

にこ「まだ何かあるでしょ・・・。こっからだって大逆転が・・・」

虎太郎「ないよ。大逆転の方法なんて。俺も2日間いろんな方法を考えた。何百回とタイムリープして得た経験を生かしてな。でも今回ばかりは何も思いつかなかった。」

虎太郎「もう他に方法はないんだ。こころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを救うには、ここあ姉ちゃんのFAXを取り消すしかないんだ。」

虎太郎「このままこころ姉ちゃんとここあ姉ちゃんを見殺しにしたら、俺は一生後悔する。にこ姉ちゃんもな。姉ちゃんたちを助けるために、千早さんの弟の優君や凛さんのお姉さんを見殺しにしたって言うのに、俺が生き残るなんて、そんなの通るわけないんだよ。」

ここあ「私は虎太郎を犠牲にしてまで生きていたくないよ」

こころ「虎太郎を見殺しにしたら、私やお姉さまやここあは後悔しないって言うの?」

虎太郎「犠牲にするんじゃない。元に戻るだけなんだよ。最初の世界線に戻るだけ。それが正しい道なんだ。優君が言ってたぞ。僕はこの世界に生きていてはいけない人間なんだって。」

虎太郎「ここあ姉ちゃんの11月28日のFAXを消して、これからは3人で幸せに生きていってくれ。それが俺のためだと、俺を助けると思ってな。」

虎太郎「ある未来人が言ってたじゃないか。世界線は無数に存在するって。世界線が変わっても、この世界線の俺はそのままなんじゃないかな。」

虎太郎「だからいいじゃないか。β世界線の俺が死んでいても、この世界線の俺はこれからも存在し続けるだろう。みんながβ世界線に行ったとしても、別の世界線に魔法ヶ沢京太郎が存在し続けると思えばいいんだ。そういうことでなんとか納得してくれ。」

にこ「そんな中二病くさい理論で納得できると思ってんの? でも納得するしかないのよね。」

こころ「お姉さまも、ここあも、私も、虎太郎が男の子だからっていつしか仲間外れにしてたよね。私たち3人のやりたいことに、虎太郎はついていけなくなっちゃってた。」

こころ「そして虎太郎は男友達のところに行っちゃって、いつしか虎太郎は私たちから離れてた。だからこの2週間、久しぶりに虎太郎と楽しく過ごせて嬉しかったんだよ。」

ここあ「虎太郎とずっと口を聞かなくなっちゃって、なんの思いも伝えられないままあの飛行機事故に遭って、私お別れの言葉も言えなかった。だから謎の女に頼って、過去を変えて虎太郎を助けちゃった。」

ここあ「虎太郎にどんなに恨まれても仕方ないよね。」

虎太郎「恨んでなんかないよ。むしろ感謝してる。ありがとう。俺を助けてくれて。そして俺のためにそんなに悩んでくれて。」

にこ「なんでよ・・・。よりにもよってなんで虎太郎なのよ・・・。それもこころとここあのために何度も同じ時間を繰り返して、私が想像もできないくらい必死に戦った虎太郎を犠牲にしなきゃいけないなんて。」

虎太郎「アメリカの調査で、航空機事故に遭う確率は0.0009%、8200年間毎日飛行機に乗り続けて一度死ぬかどうかの確率らしい。10万分の1の不運が俺を襲ったってことだ。そうとしか言いようが無い。」

虎太郎「ここ2週間は、今まで姉ちゃんたちと離れていた時間を十分に埋め合わせてくれたから、何の不満もない。それに、今度はちゃんとお別れの言葉を言えるしね。」

虎太郎「最後は笑ってお別れしよう。」

にこ「うん」

虎太郎「今回は死んでるはずの俺が行くとタイムパラドックスが起きる。にこ姉ちゃんかこころ姉ちゃん、あるいは姿が見えず声だけが聞こえる機能を使って、ここあ姉ちゃんが行くしかない。」

ここあ「私がやる。自分で撒いた種だから。」

ここあはインフィニットタイムオンラインを起動し、11月28日の仮想世界へ。

・・・
『スカイマスター765便は墜落する。別の飛行機にするか、直接広島に行け。』

謎の女「日付は11月16日、内容はこれでいいのね?」

ここあ(過去)「はい。お願いします。」

ここあ(過去)「虎太郎・・・、どうか生き返って・・・」

ここあ「ダメだよ。そんなの送っちゃ。」

ここあ(過去)「え?何? この声、もしかして私?」

ここあ「そう。私は矢澤ここあ、未来のあなた。」

ここあ「過去は変えちゃダメだよ。そんなことしたら、取り返しの付かないことになっちゃうんだよ。」

ここあ「虎太郎を生き返らしたあなたは、こころ姉ちゃんと一緒に死んじゃうの。それで今度は虎太郎が傷つくことになるの。だから過去を変えちゃダメだよ。」

ここあ(過去)「だって、虎太郎が・・・」

ここあ「虎太郎は飛行機事故で死んだ。その現実を受け入れなきゃいけないの。決して変えてはいけない事実。」

ここあ「虎太郎にお別れの言葉も言えなかったことも含めて、あなたは現実と向き合わなきゃいけないんだよ。」

ここあ「大丈夫。別の世界線で、虎太郎はきっと生きてるから。」

過去の私も、未来の私も、泣いて言葉が出なくなってしまった。

謎の女「で、どうするの? 送るの? やめるの?」

ここあ(過去)「やめます。やっぱり過去は変えちゃいけない。私は虎太郎が亡くなった現実を受け入れます。」

ここあ「よく言ったね、過去の私・・・」

ここあ「ぐすっ・・・」

ここあ「さようなら、虎太郎・・・」

そのとき、私にも脳内にある感覚を感じた。これが虎太郎が言ってた世界線が変わる瞬間、リーディングシュタイナーなのかな?

・・・
12月30日 17時30分

ゲームをログアウトし、元の時空に戻った。そして世界線も変わったみたいだ。

ここあ「世界は・・・変わったの?」

ここあ「こころお姉ちゃん、さっきのこと覚えてるの?」

こころ「うん、なんとなく。お姉さまは?」

にこ「私も、かすかに。」

ここあ「虎太郎は・・・、どうなったの?」

にこ「ここあ、何言ってんの。虎太郎は先月の飛行機事故で・・・」

リビングには虎太郎の遺影と仏壇があった。

にこ「あれ・・・なんで・・・私・・・泣いてるの・・・」

こころ「お姉さま・・・私も涙が止まらない・・・」

ここあ「虎太郎は、勝ったんだね・・・この戦いに・・・。ようやく虎太郎が待ち望んだ世界が訪れたんだね・・・、自分の死と引き換えに・・・」


・・・
12月31日

今年最後の日。テレビでは紅白歌合戦をやっていた。こうして激動の1年が終わった。

1月1日、正月3が日を過ぎてもこころとここあは生きている。
確かに世界は変わった。今度こそこころとここあは助かった。でも同時に、2人を助けるために必死で戦った虎太郎がいなくなった。

あれ以降、タイムリープはしていない。アザーワールドオンライン、AWOのおかげで虎太郎にまた会えた。だけど、アザーワールドオンラインのせいでたくさんの人を傷つけた。
矢澤虎太郎が消えたように、タイムリープも消えるべきなのだ。
生きることは本来、やり直しが効かないことだから。

ここあ「そういえばあの謎の女って誰だったんだろう。そういえば富山にいる虎太郎の知り合いにいたような・・・」

虎太郎の犠牲を無駄にしないためにも、私たちは今日も生きる。

終わり

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