一夏「 こ れ は ひ ど い 」 (696)


千冬「ングッ……ングッ……ングッ……」ゴキュッゴキュッゴキュッ

ダンッッ!!!

千冬「ぷっはぁぁぁ?……美味いッ!!ヒック……」

クラリッサ「いやはや全くでありますなぁ!」

摩耶「ですねっ!!」

千冬「んん??ヒック……酒がないなぁ??一夏ァ!ヒック……私の寝床から蜻蛉を持ってこい!!ヒック……」

クラリッサ「なくなる前に次の持ってくるとか当たり前だろ常孝」

一夏「え?い、いや、あれって……悪酔い間違いなしの強いお酒だから封印すーーー」

千冬「あぁん!!??」バキャッッ!!

一夏「ヒッ」ビックゥッ!!

ナターシャ「フゴッ…!?」ビクッ

千冬「姉貴であヒック……この私がぁ!悪酔い悪いかぁ!!??」ズイィッッ!!

一夏「わっ、わわわ、悪くないです!!」

千冬「ならばさっさとヒック…取ってこんかぁ!この愚か者めが!!」

一夏「は、はいぃぃ!!」ピュー

千冬「ふんっ……ヒック……」カシュッ

クラリッサ「あのブリュンヒルデがとんでもない酒乱ブラコン糞姉だった件について」グビグビ

摩耶「この人は昔からこんなんですよー」クピクピ

ナターシャ「zzz……zzz……」スヤスヤ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451370958

クラリッサ「それに比べて二代目と来たら」チラッ


アリーシャ「いい?マテバは、銃身の跳ね上がりを抑えるために弾倉の一番下の弾を発射するという構造を持ち、用途によって自由に銃身を換装できる上に「オートマチックリボルバー」とも呼ばれている。そのオートマチック機構とは、初弾をシングルアクションまたはダブルアクションで発射し、その反動で銃身からシリンダーまでがわずかに後退することで撃鉄を自動的に起こし、シリンダーを回転させるというもの。リボルバーの機構的な信頼性と、自動拳銃並みの引き金の軽さによる命中精度の両立を目指しているものであり~」クドクドクドクド

オータム「へぇ~そうなの~へぇ~」フラフラ


クラリッサ「二代目も酒癖がかーなーりアレな件について」

千冬「ヒック……も、とは何だ?ヒック……」

摩耶「あの人大丈夫でしょうか、ずっと揺れてますけど?」

クラリッサ「前世はメトロノームだったと予想する(名推理)」

ガラガラガラ

摩耶「ん?」

スコール「………」ガラガラガラ

摩耶「な、何してるんですか?」

スコール「うふふっ……ふふふっ………」ガラガラガラ

クラリッサ「……」スッ

スコール「んー?」

クラリッサ「……」パッ

カランカラン

スコール「うふふふふっ、ふふっ……ふふふっ………」ケラケラケラ

クラリッサ「楽しそうでなによりです」キュポンッ

摩耶「あちゃー笑い上戸だったんですかーこの人」

千冬「ヒック……というかコイツとヒック……あのメトロノームはヒック……誰だ……ヒック」

ナターシャ「zzz……zzz……」

クラリッサ「ってゆーか、何で教官殿の家でこんなメンツで飲んでるん?」グビグビ

千冬「クラリッサァ!今日はヒック……無礼講だと行ったヒック…はずだぁ!!片苦しいのはヒック…一切なしだと言ったはずだぞ!!ヒック…」バンバンバン!!

摩耶(メスゴリラじゃないんですから机割れますよー)

クラリッサ「お前ぇ……無礼講言うてもな、親しきなかにも礼儀ありやぞ、お前」スッ

千冬「ヒック……」パシッ

千冬「そうだな!!!!」グイッッ!!

クラリッサ「ッシャァッ!!」グイッ

摩耶(あっ、これ熱燗……)クピッ


アリーシャ「いい?世の中ってのは煮えたぎった鍋の中みたいなもんで、ドロドロに溶けたシチューの中身はどれが偉い訳でも、どれが役立たずでもない。ひとつになってこそ、シチューなんだ。ただ、どぉ~うしても忘れちゃあいけないものがある。何だか分かるか?」グビグビ

オータム「お肉!!」

アリーシャ「フンッ……誰もがそう思う。だがな………シチューの素がなきゃ、シチューじゃない。同じ材料でもカレーにだってなっちまうのさ」グビッ

オータム「シチューの素なら冷蔵庫にあったよっ!!」ニパー

アリーシャ「そういう事言ってんじゃねんだ。いいか?とどのつまりはな~」クドクドクドクドクドクドクドクド

ナターシャ「ンガッ………zzz……」ボリボリ

一夏「只今持って参りましたぁ!!」ズザザー

千冬「遅い!!ヒック…何分かかってヒック……るんだ!!」

一夏「ご、ごめん、姉ちゃん……はい」

千冬「ふん……ヒック……褒美は後でやるからなヒック……」
」パシッ

クラリッサ「まあまあ、そう言わずに。二等兵は無事、任務を完遂したんでありますよぉ?今すぐ褒め称えるべきではありませんかぁ?」ガシッ

一夏「に、二等兵って、俺の事ですか……?」

クラリッサ「そうだぁ……他に誰がいる?ん?んー?」ブハァー

一夏(くっっっっさ!!酒くさ!!ヤバい、この人もだいぶ飲んでる!!)

一夏「ク、クラリッサさんもほら、ビール持って来ましたよ」

クラリッサ「気に入った、我が軍に来て少将を掘ってもいい」

一夏「えっ?は、はい?」

クラリッサ「教官殿の弟×少将……次の作品はこれに決めた!!」

摩耶「ううっ……グスッ………一夏くん……グスッ………」

一夏「や、山田さん!?どうしたんですか!?」

クラリッサ「なーかしたーなーかしたーゲーシュタポにー言っちゃーおー」プシュッ

千冬「始まっヒック……たか……ヒック……」グビグビグビグビ


摩耶「あなたは……カニクイアザラシだったんですね……」ウルウル


一夏「えっ」


摩耶「うっ……うあぁぁぁぁぁん!!」ビエー

一夏「えっ、いや、えっ?ちょっ、何で泣いてーーー」

摩耶「はぐれちゃったんですねぇぇぇぇ!!うわあぁぁぁぁぁぁんかわいそうにぃぃぃぃぃ!!!」ビエー

一夏「泣かないでくださいよぉぉ!!」


クラリッサ「思わぬダークホースが出現した件について」ゴクゴクゴグ

千冬「摩耶はヒック…泣き上戸だヒック……ちなみに私はヒック……イシガキオニヒトデだヒック……そうだぁ」
グビグビグビグビ


スコール「うふふふふっ」ギュッ

ナターシャ「フガッ!?……カッ……クッ……コホッ……・」ジタバタ

スコール「ふふふふっ」パッ

ナターシャ「カハッ………ハァ………z……zzz……」スヤスヤ

スコール「うっふふふふふ」ギュッ

摩耶「で、でも……グスッ………大丈夫ですよ……」ゴシゴシ

一夏「えっ、な、何がですか?」


摩耶「キャプテントンボーグは、きっと私達のところに帰ってきてくれますから!!」ニコッ


一夏「」

クラリッサ「良い子の皆にゃ分かんねぇよ!!」

千冬「ヒック……おら、お前等飲め。ヒック……私の秘蔵のヒック……酒だヒック……」

クラリッサ「アザっす!!」

摩耶「私も飲みます~」

アリーシャ「是非とも頂こう」

オータム「ねぇ~スコール~キスしようよ~ん~」

スコール「うふふふふっ」ギュッ

オータム「むー!!」ジタバタ

ナターシャ「Ain't……war hell……ンガッ………」スヤスヤ

千冬「よーしヒック、全員杯を持てい!!夜はまだまだこれヒック…からだ!!乾杯!!!!」


「「「「「「乾杯!!」」」」」」


一夏「……」ソローリ

千冬「ヒック……待てい、こっちヒック……に来てお姉ちゃんのヒック……相手をせんか……」ガシッ!!

一夏「ヒイッ!?……嫌だぁ!!ここから出してえぇぇぇぇぇぇ~!!!」ズリズリ

~五時間後~

一夏「あーあー結局全員リビングで雑魚寝しちゃって………」ガラガラガラ

一夏「昼間っから夜中の二時までって……いい大人がーーー」

千冬「zzz……ZZZ………んんっ……」ゴロン

一夏「!?」ビクゥッ!!

千冬「zzz……zzz……」スヤスヤ

一夏(ビックリした……起きたのかと思った………)

ナターシャ「…………」

一夏(そういえばこの人ウチに来てからずっと寝てるけど…………死んでない……よな?)

ナターシャ「………」ビクンッ

一夏(あ、動いた……一応生きてる)

オータム「んむ……んんー………」ゲシッゲシッ

一夏「毛布蹴るって……子供ですか」ファサッ

オータム「んみゅ……zzz……zzz……」クークー

摩耶「………」スヤスヤ

一夏(真面目な山田さんまでベロベロに酔うなんて……)ファサッ


ガシッッ!!


一夏「ハウッ!!??」ビターン!!

一夏(何だ!?何に足掴まれたんだ!!!??)

クラリッサ「ん……」グググッ

一夏(ん、じゃないんですけどビックリしたんですけど後スゴイ力で引っ張られてるたすけて)ズリズリ

一夏「ふんッっ………ぐぅおッ………うおおぉぉぉ引っ張られるぅぅぅぅぅぅ」ズリズリ

クラリッサ「こらぁ……逃げるなぁ……」グググッ

一夏「ほんとは起きてるんでしょ?あんた起きてんだろ?なあ?」ズリズリズリズリ

クラリッサ「んん~……」ギュウゥゥゥ

一夏(ヤバい、これは、ヤバい。姉ちゃんとはまた違った鍛えられた胸が顔面にヤバい。ヤバい)

一夏「ふんッ…………」ジタバタジタバタ

クラリッサ「zzz……zzz……」スヤスヤ

一夏(離してえぇぇぇぇぇ!!!お願いしますうぅぅぅぅぅ!!!)

千冬「一夏ぁ………お姉ちゃんだぞぉ………」ユラユラ

一夏(やめてここに混ざらないで、手を伸ばさないで)ジタバタジタバタ

クラリッサ「ん」ガシッ

一夏「んッ!!??」


ググググググッ!!


一夏「んッッ………カッ………ァァッ………」バシバシバシ!!

一夏(い、息がッ、殺される!!完全に決まってる!!)

一夏「チョッ………クッ…………ァッ………」

クラリッサ「…………」ググググッ!!

一夏(まずい……意識が………姉ちゃん………)


一夏「」ゴキンッ


クラリッサ「zzz……ZZZ………」スヤスヤ



「……て………さい………」


一夏(何処だ………ここ………)


「起きて………ください…………」ユッサユッサ


一夏(俺……どうなって………確かクラリッサさんに………)


「起きてくださいよぉ……一夏様ぁ………」ユッサユッサ


一夏(誰だ………俺を……様付け?)

一夏「その…声は……クロエ?」

クロエ「はい、そうです……」

一夏「という事は!!」ガバッ

クロエ「キャッ!」ビクッ

「はろはろーおはようさんだねーいっくん♪」

一夏「束姉ちゃん!」

束「はーい♪いっくんだけのお姉ちゃん、篠ノ乃束お姉ちゃんだよー☆」ブイッ

束「そう、そして。私はこれから先……貴様に地獄を見せる女なのだーっ!」

一夏「………今度はどこの星の宇宙金属?」

束「むぇーつれないなーそんなのじゃないよっ」

一夏「そんなん、って………」

クロエ「えっと、あの……その、非常に申し上げにくい事なのですが……」


束「いっくんは本日から、IS学園に入学する事になりましたー!いえーい!!」パーン

クロエ「い、いえーい……」パーン

一夏「………」


一夏「えっ」


一夏「えっ?俺?」

束「うん」

一夏「いや、うん、じゃないんだけど。俺もうあと数時間で高校の入学式行くんだけど」

クロエ「あの……それは……束様が………」

束「やっちゃった★」キラッ

一夏「は?」

クロエ「いつの間にか…私と一緒に入学する事になってました………」

一夏「えっ、書類とかは?」

束「余裕のよっちゃんだよっ★」

一夏「は?」


一夏「はあぁぁぁぁぁっ!!??」


クロエ「だからやめましょう、って言ったんですよぉ……」

束「いいじゃんいいじゃん、こっちの方がいいじゃん★」キラッ

一夏「どういう事なんだよ!!束姉ちゃん!!どうしてぇ!!?」グイッッ!!

束「あばばばばば、世界が揺れるぅ~」ガクガクガク

クロエ「駄目です…一夏様ぁ………束様がぁ………」オロオロ

一夏「ふざけんなー!飲んだくれの次はこれかぁぁぁぁー!!!」

束「アッハッハッハッハッ」ガクガクガク

一夏「この野郎ぉぉぉぉぉぉ!!!」ガシッ

クロエ「あっ、それは駄目です!束様が死んじゃいますよぉ!!」

~数十分後~

束「落ち着いたかな?」

一夏「お陰様で」

クロエ「………」グッタリ

束「大丈夫?」

クロエ「疲れ……ました………」

束「という事でっ、入学するのはもう決定事項なのでぜーったいに変えられないよっ☆」

一夏「全然という事でじゃないだろ」

束「やったねいっくん、箒ちゃんに会えるよっ。ぶいぶいぶいすりー☆」

一夏「箒?箒もIS学園に?」

束「いぐざくとりーい♪」

束(さあ!これでいっくんは飛び付くはず!!このIS学園入学と言う禁断の果実に!!)

束(待っててねちーちゃんっ、家族が増えるよっ!!)

束(そして、私は………ふふふっ♪)

一夏「とりあえず、ろくに眠れてないんだけど今何時?」

束「ありゃ?」コテン

一夏「何してんの?」

束「気にしないでーんーそうだねー大体ねー」

クロエ「……」スッ

一夏「へー………7時過ぎてるのかぁ………」

束「へーもうそんな時間なんだっ★」

一夏「そうかー………し……ち………じ………」

一夏「…………」

一夏「今日は何月何日?」

クロエ「4月……1日です………」

束「だってさっ★」


一夏「大きな星が点いたり消えたりしてる……あっはは、大きい、彗星かなぁ?」


クロエ「一夏様……あれはただの恒星ですよ……」

束「逃げてもだーめっ★」

一夏「うわぁぁぁぁぁやだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


-----

クロエ「やっぱり嫌です……束様のところへ帰りましょうよぉ……」

一夏「それが門過ぎてから言う事?」

クロエ「怒らないでくださいよぉ……」ウルウル

一夏「いやいや怒ってないって、ただちょっと気分が悪いだけだからさ」

クロエ「やっぱり怒っているんじゃないですか……」ギュッ

一夏「服を掴むな」

クロエ「で、ですが……周りが……」


ナニアノフタリー?オニンギョウサンミタイーカタホウハオトコジャナイ?ホントダー!


一夏「気にしてたって仕方ないだろ?」

クロエ「うう……」

一夏「確かに銀髪に金色の眼をした見たこともない女子と何故かいる男子のどちらか片方だけでも嫌でも目立つのに両方一緒にいるんだからな」

一夏「そういう事だから、いい加減で諦めろよ」

クロエ「そ、そんなぁ……」

一夏「ほら、しゃっきりと歩けよ。クロエ・クロニクル」ポンッ

クロエ「……分かりました」

一夏「じゃあここからは別行動な!」ピュー

クロエ「あっ、ちょっとぉ……!」


クロエ「待ってください……!!」

クロエ「……」ポツーン


アーアノヒトイッチャッターデモアノコハノコッテルワヨ?ニゲラレタ?


クロエ「うう………え………」キョロキョロ

クロエ「一夏様の……バカ………」ウルウル

ズザザザー

一夏「忘れてた。俺に様付けはなし、したら怒るぞ」

クロエ「何でですかぁ……今更変えられませんよ……」

一夏「今更でもやるんだよ。しないとこの状況が悪化するぞ?」

クロエ「ですから私は入学は嫌だって言ったんです……それを束様が無理矢理……」イジイジ

一夏「大丈夫だって、俺がついてるからさ」

クロエ「確かに……そうですが……」

一夏「俺も出来るだけの事はするから。な?」

クロエ「わ、分かりました……努力します」

一夏「じゃあな!」ピュー

クロエ「嘘じゃないですかぁ……!」

一夏「それとこれとは話が別だー!」タッタッタッタッ


-----

摩耶「以上が当学園でのーーって、あれ?織斑くん?」

一夏「……」

摩耶「織斑くーん?あれ?」

一夏「……zzz……zzz……ZZZ……」クカー

摩耶「ちょっと説明が長過ぎましたかねぇ」

隣の女子「先生、それが……話始めからずっと寝てました」

アハハハ

クロエ(や、やっぱり……あまり寝てられなかったと仰っていたから……)

後ろの女子「おーい、起きてーおーい」ヒソヒソ トントン

一夏「……zzz……zzz……ZZZ……」スピー

摩耶(これって元を辿れば私達の責任ですよね)

摩耶(私達の介抱を最後までしてくれてましたもんね……いつ連れ去られたのかは分かりませんが)

-
---
-----
「お前さーいつまで泣いてんだよ?」
「きっとお前のかーちゃんだってお前を探してるって、お前迷子なんだろ?」
「大丈夫だって、俺がついてるからさ。すぐ見つかるって」
「あーあー!泣くなよ!ほ、ほら!これ持ってろよほら!」
「へへ、いいだろーそれはな俺がねーちゃんから貰ったやつなんだぜー」
「それを持ってたらな良いことがーーーん?なあ、あの人お前のとーちゃんとかーちゃんじゃないか?」
「やっぱりそうだ!おーい!こっちこっちー!」
「言っただろ!そのお守り持っておけば良いことあるって!」
「良かったなお前。とーちゃんとかーちゃん見つかって」
「あーあ、また泣いてんじゃん……アイツ、どんだけ泣くんだよ」
「あんたらそいつのとーちゃんとかーちゃんだよな?えーと、そいつめちゃくちゃ泣いてたから目ぇ離しちゃだめだぜー」
「じゃあなーもう二度と迷子になるなよー」
「え?何だ?自分で言いたい事があるって?」
------
---
-



一夏(あれ……?今の……何だっけ………夢………?)


一夏(でも……あれって………)

摩耶「おーい?織斑くん?」

一夏「………んあ?」

摩耶「あ、ようやく起きましたねー説明中に寝ちゃ駄目ですよ」

一夏「うぁい……」ポケー

アハハハハハハ

摩耶「それじゃあ罰として織斑くんから自己紹介をしてもらいましょうか!」

オオー!

一夏「んー………」ポケー


クロエ(嫌な予感しかしません)ヒヤヒヤ

箒「………」ジロッ

箒(相変わらず弛んでいるな。全く)

セシリア(何者ですの。あの殿方は)

一夏「Haben alle begonnen,Mein Name es sagt einem der Sommer.Gleichzeitig, ist I, so da・ es sehr schwierig ist zu verdanken……」


一夏「Ich und ein Kind an der Unterseite des silberhaarigen Ich mag es nicht einen Kampf, aber wahrscheinlich die st・rkste.Ist mehr als」ガタンッ

一夏「ふう………さて、ってあれ?」


クラス一同「」ポカーン


摩耶「……へ?」

クロエ「ああ……もう………」

箒「………」

セシリア「!?」

一夏「え、皆どうかしたのか?俺なんか変な事言った?」

一夏「あーやっぱ正直に言ったらまずかったかな?いやでもこれから一年一緒なんだし隠し事とかは良くなーーー」



ヒュッ!!


一夏「うおっ!!」バシッ!!

千冬「止めたか」グググッ

一夏「いきなり何すんだよ!!俺は腐ったミカンじゃない!!」プルプル

摩耶(うわー容赦ないですねー本当は抱き締めたいはずなのにー)

箒(千冬さんの一撃を止めたか……)

クロエ(相変わらず千冬様は怖いです……)

千冬「……いいか、織斑。ここはドイツではない日本だ」スッ

一夏「え、あ、そういう事だったのか」

千冬「そういう事だ」

一夏「ごめんなさーーー」ゴチン

一夏「いってえぇぇぇぇ~!!」

千冬「ふん、この愚か者めが」

キャーチフユサマー モノホンノチフユサマヨー ダイテクダサーイ

ワタシチフユサマニアコガレテコノガクエンニキタンデスー

千冬「今年とてこれか……全く、この愚か者共は私のクラスばかりに集まるのか……」

摩耶「本当は分散させているんですけどねー」

一夏(痛い……)ジンジン

騙して悪いが(ry

再開します。


千冬「以上で説明を終わりとする。次の授業も教室で行う。では、各自休憩」ガラッ

キーンコーンカーンコーン

一夏「んっ……んん~!やっと終わった~!」ノビー

一夏「よし、これで思う存分寝れーーー」

箒「おい」

一夏「はい?」

箒「………」

一夏「あれ?お前……もしかして……」

箒「付いてこい」

一夏「はいはい」ガタッ

一夏(あ、クロエの事忘れてた)チラッ


「ねえねえクロニクルさん、どこから来たの?」
「どこかのお嬢様?」
「綺麗な目ーいいなー」

ガヤガヤワイワイ

クロエ「あ、ありがとうございます……あの……一度に話しかけられると……その……」モジモジ

クロエ(い、一夏様~助けてくださ~い!)


一夏「うん、大丈夫だな」

箒「何をしている。速く来い」

一夏「いや~久しぶりだな!箒!」

箒「久しぶりだな、一夏。元気そうでなによりだ」

一夏「いやさ、ちょっと見ない間に雰囲気変わったよな。おかげで一瞬誰だか分からなかったよ」

箒「それでも、分かったんだろ?」

一夏「当たり前だろ。たかたが五年程度で忘れられるかよ」

箒「そ、そうだな……」

一夏(でもそんなに変わらないよなぁ……そうやって照れるとそっぽ向こうとするのもそのまんまだし)

箒(そうか……ちゃんと覚えていてくれたのか……)

一夏「中学で剣道は………やって、ないよな?」

箒「ああ、やってない。万年帰宅部だった」

一夏「へえ~あの箒が帰宅部………体験入部で面でも割ったのか?」

箒「い、いや……竹刀を叩き折った……だけだ……」ゴニョゴニョ

一夏「何とかの一つ覚えしかしないから……」

箒「う、うるさいっ、中学で一番強い人だったんだ!」

一夏「それでももうちょっとこう……何かやりようはあっただろ……」

クロエ「い゛ち゛い゛い゛が゛あ゛あ゛あ゛あ゛さ゛あ゛あ゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ギリギリ

箒「!?」

一夏「あれ?こっちにきて良かったのか?クロエ」

クロエ「酷いですよ……私がどれだけ苦労したと思っているんですか……」クスン

一夏「あーごめんごめん、悪かったって」

クロエ「そう思うのなら次からはやめてください……あっ、大変お見苦しいをお見せしました。初めまして箒様」ペコリ

箒「は、初めまして……?箒様?」

クロエ「はい、私は束様に仕えるクロエ・クロニクルと申します。以後お見知り置きを」

箒「姉さんに……?」

クロエ「私を御存知でないのですか?」

箒「あ、ああ……初耳だ……」

クロエ「……」

一夏「こっちを見ないでくれ。俺は何も知らないからな」

一夏(っていうか箒……さっき姉さん、って言ったよな……束姉ちゃん悲しむだろうな)

クロエ(私はてっきり束様は私の事を箒様に言ってるものだと……)

箒(どういう風の吹き回しなんだ?あの姉さんが赤の他人に干渉するなんて……)

箒「一つ聞きたい。姉さんの手引きでクロエと一夏は学園に来たのか」

クロエ「はい」

一夏「手引きって……まあ、そうだけどさ」

箒「姉さんの目的は何だ、何を企んでいる」ズイッ

クロエ「ええっ……それが……私は束様より何も伺っておりませんので……詳しくは……」アセアセ

箒「一夏」ズイッ

一夏「俺は数時間前に初めてここに転入するって聞かされたから目的も何も知らないからな」

箒「そうか……」

一夏「大体検討はつくけどさ」

箒「何だ、教えろ」

一夏「クロエをいじって楽しむ」

箒「な……」

クロエ「そ、そんな……あんまりですよぉ……」

一夏「どうせこんな感じの目的だって。そう眼の色変えて考える程の事じゃないって」

箒「……」

クロエ「あの、そろそろ……教室に戻りませんか?でないと千冬様が……」

一夏「え、もうそんな時間か」

箒「仕方ない。戻ろうか」

一夏「結局何の為にわざわざ屋上に来たんだ?」

箒「……」プイッ

クロエ「?」

一夏「何照れてるんだよ」

箒「照れてなどいない」

一夏「嘘つけ」

箒「うるさいっ!照れてないったら照れていないんだ!」

一夏「はいはい分かりました。分かりましたよ」

箒(二人っきりで話したかったから、なんて言える訳がないだろ……馬鹿……)

箒「ふん……」スタスタ

一夏「あ、おい待てよー箒ー」

クロエ「束様に似ていらっしゃるような似ていらっしゃらないような……」ウーン


千冬「ーーーと、いう事だ。つまり現在ISとはあくまで国の威信と誇りをかけて行われる競技の一項目にしか過ぎない」

千冬「しかしISを扱う以上、ほんの少しでも扱いを間違えてしまえば本来の姿を現すものだという事をしっかりと肝に命じておくように」

千冬「それでは次のページに移るぞ」

一夏「……」ペラッ

一夏(マズイ、姉ちゃんが目の前にいるのに猛烈に眠いマズイ)

一夏(箒に謝って少しだけでも寝とけば良かったなぁ……)

箒(本来の姿……)

クロエ(一夏様……大丈夫でしょうか……)

千冬「クロニクル、ここから読んでみろ」

クロエ「は、はい!現存するISの数はーーー」

一夏(マズイ、本当に、マズイ)ウツラ

千冬「……」ギロッ

一夏(ヒィッ)ビクッ


セシリア「……」ジッ

セシリア(何故男性が女性にしか動かす事の出来ないISを学ぶ学園にいますの)

セシリア(そんな男性が存在したのなら、世界中のメディアが大々的に取り上げているはずですわ……)

セシリア(一体何者ですの……あのブリュンヒルデーーー織斑千冬の弟、ただそれだけで終わるとは思えませんわ……)

一夏「はあぁぁぁ~……やっと終わった~!」

一夏「これでようやく眠れ……」

セシリア「少し、よろしいでしょうか?」

一夏「……」イラッ

一夏「……本当はよろしくないんだけどよろしいって言うのでなるべく手短にお願いします。バフラム・コルセットさん」

セシリア「それは申し訳ありませんわ。それと、私の、名前は、セシリア・オルコットです。以後お間違えのないように」

一夏「分かったから用件をどうぞ仰ってくださいませんか」

セシリア「そんな大した事ではありませんわ。ただ、あなたと少しお近づきになりたいと思いまして」

一夏「俺と?お近づきにぃ?」

一夏(頼むから大した事じゃないなら来るなよ)

セシリア「ええ、私、あなたにとっても興味がありますの」

一夏「へー、あっそう」

セシリア「お聞きしますが、私の事は御存知でしょうか?」

一夏「イギリス代表候補生」

セシリア「……他には?」

一夏「名前、金髪、碧眼、耳飾り」

セシリア「まあ、私の事を何も知りませんのね」

一夏「小さい頃から一緒だったら知ってたと思いますが?」

セシリア「それもそうですわね。貴方と私では済んでいた世界が違いますものね」

一夏「世界は同じだと思いますが?」

セシリア「オルコット社、と言えばお分かりになられると思いますわ」

一夏「あーあの会社ね。へーあの会社なんだー知らなかったなー。わーすっごーい」

一夏(わざわざ言わなくてもいいだろ。お前の名字は何なんだ)

セシリア「……いい加減その減らず口をお止めになられたらどうです?」

一夏「ならその機関銃みたいなお口を閉じられてはどうです?」


クロエ(た、たた、大変です……一夏様の機嫌が……)

箒(小学生か……)

セシリア「いい加減にしてくださいまし!」バンッ

一夏「机は学園の物、つまり国民の血税で購入された物という認識があったらそんな真似は出来やしないと思いますが?」

セシリア「このままでは平行線ですわね」

一夏「今頃気付かれたのですか?へー今頃ねぇー」

セシリア「とにかく!はあ……時を改めてさせて頂きますわ。今度はもっと、生産的なお話が出来ますように」

一夏「あっそう、ガルシア・ガスケッツさんバイバーイ」

セシリア「セシリア・オルコット、ですわ」ニコッ

一夏「……」

一夏(今……こいつの首元……いや……まさかな……)

一夏「じゃあな、セシリア・オルコット」

セシリア「それでは、失礼しますわ」カツカツカツ

一夏(あーイライラした……よし、今から寝ーーー後二分しかないじゃんか……)

一夏「はあ……」ガクッ

隣の女子「大丈夫?」

一夏「心配してくれてありがとう。大丈夫だから」


-----

摩耶「それでは、クラス代表を決めたいと思います」

千冬「自薦他薦は問わない、誰かいないか」

千冬「おらんのか、ならこちらで決めるぞ」

「はい、先生!織斑くんを推薦します!」
「私も!」

千冬「織斑に、二票」

一夏「えっ」

一夏(ヤバい、話聞いてなかった)

「私も、推薦します」

千冬「三票」

一夏(えっ、何に票入れてるんだ?とにかく入れておいた方がいいのか?)

一夏「じゃ、じゃあ俺も……」スッ

千冬「おおっ、クラス代表に自ら進んで立候補するとはいい心構えだな」

一夏「えっ、あ、あはは……」

一夏(しまったあぁぁぁぁ!小学校の時の失敗をまたやったぁぁぁぁぁ!!)

箒(何をやっているんだ……全く……)

クロエ(一夏様が自ら……珍しいですね)



セシリア「織斑先生、意義を申し立てますわ」スッ


一夏(ナイス!!よく言ってくれた!!)

千冬「ほう、何だ。言ってみろ」

セシリア「我々のクラスの代表として恥じぬ人物を選出するのですから、もう少し思慮の余地が必要かと」

一夏(そんな遠回しに言わなくても私がやりますって言ったらいいのにさ)

千冬「そうか、ならオルコット。お前も立候補するのか」

セシリア「ええ、必要とあらば」

一夏「はい、さっきの一票を取り消して、僕もセシリア・オルコットさんを推薦します」ビシッ

千冬「推薦の変更はなしだ。他にいないか」

一夏「あんまりだぁ……」ガクッ

ザワザワ

千冬「静かにしろ。いないか、ならオルコットと織斑で多数決を取る」

セシリア「いいえ、ここは決闘で決めてはいかがでしょうか?」

千冬「ほう、決闘か」

一夏「お前っ!?」ガタッ

セシリア「あら、どうかしましたか?」

一夏「……代表候補生相手じゃあ結果は火を見るより明らかだと思います。ですからクラス代表はセシリアさんでいいと思います」

セシリア「臆病風にでも吹かれましたか?なら代理の方を選ばれても結構ですのよ」


セシリア「例えば……そう、そこにいらっしゃる篠ノ之束博士の妹ーーー篠ノ之箒さん、とか」


エエッ!?


箒「……結構だ。遠慮させてもらう」


ヤッパリソウナンダー!


一夏「お前……!」

「束博士ってどんな人なの?」

箒「最近は会ってないから分からないな」

「どこにいるとか分からない?」

箒「ああ、分からない」

「連絡とかは?家族なんでしょ?」

箒「……」

箒「家族だけど……声も聞けないんだ……すまない、話せる事はもう……ない……」

一夏「……」


ザワザワガヤガヤ

千冬「静かにーーー」


ダンッッ!!


一夏「お前いい加減にしろよな!!自社の宣伝の為に他人を利用するなよ!!それで迷惑する奴だっているんだぞ!!」


シーン


箒(一夏……)

クロエ(い、一夏様!おおお落ち着いて、ください!)アセアセ

千冬「一夏、落ち着け」ボソッ

一夏「……どうなんだよ」

セシリア「な、なら、貴方が私と決闘しますの?」

一夏「ああ、いいぜ、やってやるよ。その鼻っ面叩き折ってやる」

セシリア「最初からそうすれば済む話でしたのに」

セシリア(何はともあれこれで思惑通りになりましたわ)



一夏「そこにいるクロエ・クロニクルがな!!」ビシッ!!


クロエ「へ?」

セシリア「は?」

クロエ「なっ、ななななっ、な何を仰っているのですかー!?」

一夏「俺と決闘をする前にそこにいるクロエ・クロニクルと決闘し"俺の相手"に"相応しいか見定めて゛やるよ」

セシリア「……」ピクッ

クロエ「や、やめて……くださいよぉ……無理ですよぉ……」アウアウ

一夏「残念だけど?お前ごときの腕じゃあクロエに゛圧勝゛されて゛惨めに゛ビースカ泣きべそかいてイギリスにとんぼ返りがオチだけどな」

セシリア「な、なんですって~!!」

クロエ「嫌です!私はやりません!絶対にやりません!!」

千冬(上手く焚き付けたな……)

一夏「何だよ。あっ、まさかお前………怖じ気付いたのか?代表候補生様ともあろうものが?うわ~恥ずかしいな~恥さらしだよ」

セシリア「よろしいですわ!そこまで言われて黙っていられませんわ!!その条件を飲みます!!必ず二人とも倒してみせますわ!!」

一夏「……」ニヤリ

千冬「話はまとまったようだな。二人の決闘は一週間後、第三アリーナで行う」


クロエ「」


箒「南無三」ナムナム

~自室~

クロエ「……」ピコピコ

一夏「なあ」

クロエ「……」ピコピコ

一夏「なあ、クロエ」

クロエ「……」ピコピコ

一夏「クロエってば」

クロエ「……」プイッ

クロエ「……」ピコピコ

一夏「参ったなぁ……まだ今日の事を怒ってるのか?」

クロエ「……」コクン

一夏「そんなに嫌なのか?」

クロエ「嫌です」ピコピコ

一夏「とにかくゲームを一旦やめて、話を聞いてくれよ」

クロエ「それも嫌です」ピコピコ

箒「これはテコでも動かんな」ヤレヤレ

一夏「うーん……」

クロエ「大体、一夏様が御自分でなされば良いのにそれを何故、わざわざ私にさせるのですか……」ムスッ

一夏「俺が手加減下手なの知ってるだろ?特に気分が悪い時にはさ。な?な?」

クロエ「知りません」ツーン

箒「まだ直ってなかったのか」

一夏「三つ子の魂百まで、って言うだろ?」

箒「それで私の事をよく言えたな」

一夏「それはそれ、これはこれ」

箒「うるさい、屁理屈を言うな。そんな話をしている場合ではないだろう」

箒「今はセシリアとの勝負をどうするかだ」

クロエ「私はやりませんよ」ピコピコ

一夏「だからさ、相手が相手だろ?……俺がやるべきじゃないと思うんだけど」

箒「まだそれを言うか……」スッ

一夏「待てってば!せ、せめて理由を聞いてくれ!」

箒「……聞いてやろう」

クロエ(どうせまた上手く言いくるめるつもりです)

一夏「セシリア・オルコット、"スプーンからロケットまで"とすら言われるイギリスのオルコット財閥の一人娘。フェンシングとライフル狙撃で名を轟かせたオルコット夫婦の間に産まれた」

一夏「幼き頃より受けた英才教育に両親より受け継いだ類い希なる才能、三歳から現在に至るまで数々の賞に名を残した天才少女である」

箒「……それで?」

一夏「焦るなよ。それはISでも変わらず、自社が開発したIS、ブルーティアーズを持ち。わずか一年にしてイギリス代表候補生上位19人に食い込み、将来は代表集団ーーー円卓の騎士の一人となりうるであろうと言われてる風雲児なのである」

箒「そ、そんな奴だったのか……」

クロエ(そんな方が何故……)ピコピコ

一夏「性格は至って真面目で実直、質実剛健、才色兼備、天衣無縫。人柄も良く老若男女問わず多くの人々から支持を受けている。………だそうだ、クロエ」

クロエ「そういう事ですか」ピコピコ

一夏「分かってくれたか」

箒「どういう事だ?私にはさっぱり分からんぞ?」

一夏「そういう事だよ」ニヤリ

箒「……」イラッ

一夏「いててててっ!ちょっ、タンマ!!痛い痛い痛い!!本当に痛い!!」

箒「私の分かるように説明しろ」グイーッ

クロエ(当然の結果です)ピコピコ

一夏「分かった!分かったから!!耳を放せって!!でっかくなっちゃうから!!!」グイーッ

箒「……」パッ

一夏「あいたたた……だからな、セシリアは超天才かつ超秀才で今の地位に登り詰めただろ?俺と違って」ヒリヒリ

箒「確かにな……」

一夏「16年もかけて培われてきた絶対的な自信を、馬の骨である俺がちょちょいっと崩しちゃったら申し訳ないだろ?」ヒリヒリ

箒「なるほど……ん?待て、一夏」

一夏「何だよ」

箒「何故お前が勝てる事が前提なんだ?」

一夏「当然だろ。あいつの言動みてれば未熟な部分丸出しなんだから」

クロエ「技術的な面は分かりませんが。あの様子では少々精神的に未熟、と言わざるを得ませんね」ピコピコ

箒「未熟と言えば未熟だが……」

一夏「それにさ……俺とクロエは"あの束姉ちゃん"に鍛えてもらったからな」

箒「何っ!?」

クロエ「それでも私は……あまり強くありませんが……」パタン

箒「……」

箒(姉さんが……二人を……)

一夏「馬鹿言うなよ。クロエは十分強いだろ?」

クロエ「果たして一概にそう言えるのでしょうか……私はーーー」

一夏「とにかく、機体特性や性格面、その他諸々を含めて総合的な判断をするのなら、ここは俺よりもクロエの方が適任なんだよ」

クロエ「……本音を言ってしまうのなら?」

一夏「第一印象が悪いからあいつ嫌だ。戦おうものならボコボコにしかねない」

クロエ「はあ……でしょうね……」ガックリ

一夏「大丈夫だって、クロエなら勝てる」グッ

クロエ「この状況でそれを言われましても……」

箒「姉さん仕込みなら問題なさそうだな。クロエ」

クロエ「あ、ありがとうございます……恐れ入ります……」テレッ

一夏「誠に遺憾の意である」

一夏「じゃあ箒、試合の話終わったから帰れ」シッシッ

箒「なっ、人に世話を焼かせておいてその態度はないだろ!」カチーン

一夏「いやそれについては感謝してるよ。でもそろそろじーーー」

箒「昼に拗ねるクロエを説得してやった恩も忘れてたか!」

クロエ「あっ、あの……箒様……」クイクイッ

箒「む、何だ」

クロエ「お時間の方が……後十分で消灯ですので……お部屋に戻られた方がよろしいかと……」

箒「何っ!?何故言わなかった!一夏!」

一夏「言おうとしたら遮られたんだけど……」

箒「ええい、こうしてはいらない。ではな!」ガチャ バタン

一夏「また明日なー箒ー」

クロエ「お休みなさい。箒様」



シノノノサーン!ドウダッター?キカセテキカセテー!オリムラクントナンノハナシタッタノー!!

アシタニシテクレナイカ?イ,イマハイソガネバ


ワイワイガヤガヤ


一夏「心なしか今の今まで廊下が騒がしかったような気がしないでもないような」

クロエ「気のせいではないと思いますが……」


キサマラートットトヘヤニモドランカー!!ショウトウジカンダー!!


クロエ「!?」ビクッ

一夏「あ、姉ちゃんだ」


シーン


一夏「流石は姉ちゃん」

クロエ「私達も消灯した方が良ろしいのでは……?」

一夏「いいのいいの、消灯時間に消灯しなくちゃ消灯時間じゃないだろ?」

クロエ「それは……そうですが……」


ガチャ

千冬「織斑、消灯時間近くまで男子が女子を部屋に連れ込んでいるとは関心しないな」

一夏「すみません織斑先生、ちょっと話が長引いてしまって……以後気を付けます」

千冬「ふん……ならいい。そろそろ消灯時間だからな」

一夏「はい、分かってます」

千冬「今度の休み、家に帰るからな」

一夏「はいはい、分かってます。分かってますって」

千冬「クロエもな」

クロエ「わっ、私も……ですか……?」

千冬「ああ、そうだ」

クロエ「分かり……ました……」オズオズ

千冬「箒にも伝えておけよ。一夏」

一夏「分かってるよ。姉ちゃん」

千冬「ではな、お休み」

一夏「お休み」

クロエ「お、お休みなさい……」



バタン


一夏「さて、電気電気っと……」パチン

クロエ「あの……」ゴソゴソ

一夏「ん?どうした?」ゴソゴソ

クロエ「千冬様……あれだけの為にわざわざ私達のところに……?」

一夏「そうだよ。何てったって大事な家族だからな」

クロエ「家族……ですか……それなら私はーーー」

一夏「こら」コツン

クロエ「な、何ですかぁ……」

一夏「俺達は家族なんだよ。束姉ちゃんも箒も、クロエも皆……俺達の大事な家族なんだよ」

一夏「いいな?」

クロエ「は、はいっ!」

一夏「それで、だ」

クロエ「何ですか?」


一夏「自然に俺の布団に入ってくるなー!」グイッ


クロエ「で、ですがーーー」グイッ

一夏「問答無用だ!束姉ちゃんとこにいる時もそうしてるのか?!」グイグイ

クロエ「そ、そうです……!」グイグイ

一夏「俺は束姉ちゃんじゃない!」グイグイ!

クロエ「家族なら皆で寝るのが当たり前だと束様がーーー」グイグイ!

一夏「時と場合を考えろ!」グイグイ!!

クロエ「それはそれ、これはこれ、です……!!」グイグイ!!

一夏「そういう事じゃないだろおぉぉぉぉ!!」


-----

一夏「朝から酷い目にあった」

箒「お、お前が悪いんだぞ!朝からクロエに破廉恥な事をだな……あんな……」ゴニョゴニョ

一夏「寝てる間に潜り込まれてたんだからどうしようもないだろ……」

クロエ「わ、悪いのは私なんです……!環境が変わった事により連日眠れていなかったもので……その……お恥ずかしながらあの様な事を……」

箒「そ、そうだったのか……」

一夏「それみろ、俺は無実だ」

箒「うるさいっ!……大体、姉さんのところでもあんな風に寝ていたのか?」

一夏「寝てたけど」

クロエ「お、お恥ずかし……ながら……」モジモジ

箒「……」プルプル

一夏「あっ、ヤバい」ダッ

箒「一夏ぁー!!」ダッ

クロエ「悪いのは私です!!ですから一夏様は!!」ダッ

~食堂~

箒「朝から疲れた……」グッタリ

一夏「全く、何とか武者も大概にしろよな……」

箒「うるさい……誰のせいだ……」

一夏「まだ言うか」

クロエ「申し訳ありません……」

一夏「こいつの何とかでっかちの石頭っぷりには悩まされるよ」

箒「うるさい……いただきます……」

一夏「いただきますっと」

クロエ「い、いただきます」

一夏「あ、この味噌汁美味い」ズッ

箒「本当だな……独特の風味だが味噌汁の味を損ねず、しっかりと引き立てている……」

一夏「後で何使ってるのか聞こうかな」

クロエ「……」グチャア…

一夏「スプーン、いるか?」

クロエ「はい……お願いします……」

一夏「待ってろよ」ガタッ

箒「流石に絹ごしは難しいか」

クロエ「キヌゴシ……?それは種類……ですか?」

箒「ああ、今食べているのが絹ごし豆腐でとても柔らかいが、木綿豆腐ならもう少し硬くて箸でも掴みやすい」

クロエ「キヌゴシにモメン……ですか……お箸は難しいです……」

箒「箸をそれだけ使えていれば御の字だと思うが」

クロエ「箒様は上手にキヌゴシ豆腐を掴むのですね」

箒「小さい頃からよく食べていたからな」

一夏「お待たせ。ほらスプーン」ガタッ

クロエ「あ、ありがとうございます……」

箒「……後ろの三人はどうしたんだ」

一夏「一緒に飯食いたいって言うから席空いてるし別にいいかなって」

本音「私はね~布仏本音だよ~よ~ろ~し~く~」モソモソ

クロエ(何故……わ、私の隣に……?)アセアセ

静寐「私は鷹月静寐、よろしく」

清香「私は相川清香だよ。よろしくねっ」

箒「既に知っているとは思うが篠ノ之箒だ。よろしく」

クロエ「ク、クロエ……クロニクルです……よろしく、お願いします……」

一夏(心なしか周りからの目線が増したような増してもいないような)

本音「さあ~みんなで食べよ~お~」

クロエ「そ、そうですね……」

清香「いきなり押し掛けてきてごめんねー」

箒「いや、別に気にしていない」

静寐(清香、織斑くんの隣はマズイでしょ)

一夏(箒から威圧感を感じる。クロエの横に座っておけばば良かった)

本音「~♪」パタパタ

クロエ「口からこぼれていますよ……」

本音「えへへっ、ありがとぉ~」

静寐「ありがとう、クロニクルさん」

クロエ「いえ……」

清香「もう本音ったら甘えん坊さんなんだからー」

箒(着ぐるみの耳が動いている……)ジッ

本音「な~に~?しーのん?」

箒「何でもない……しーのん?」

本音「そうだよ~しーのんはね~しーのんだからしーのんなんだよ~」

箒「そ、そうか……しーのんか……」

清香「気に入らないならごめんね。本音の癖、みたいなものだからね」

箒「いや、そんな事はないぞ」

静寐「あー本音!袖!袖!ご飯付いちゃうよ!」

本音「ありゃ?」

一夏(セシリアもこっち見てるな。飯ぐらい落ち着いて食えばいいのに)モグモグ

清香「ねえ織斑くん!もう部活動は何に入るか決めた?」

静寐「清香ったら……」ヤレヤレ

本音「?」モキュモキュ

一夏「え?俺?そうだなぁ……特に決めてないな」

清香「篠ノ之さんは?」

箒「私も……まだ決めていないな」

清香「クロニクルさんは?」

クロエ「まだ決めていません」

清香「ならさ!三人ともハンド部に来ない?」

箒「ハンド部……」

クロエ「ハンドボールを知らないのですが……」

一夏「俺男なんだけど」

清香「いーのいーのっ、初心者でも何でも大歓迎だよ!」

清香「だからさ、ね?ね?来ない?」

本音「はじめばっかりずるい~私のところにも~ねえねえ~」クイクイ

クロエ「そ、そうします……」

静寐「清香、その辺にしときなよ。三人だって色々見て回りたいんだから」

清香「ちぇー分かった」

静寐「ちなみに三人は中学の時は何をしてたの?」

箒「私は部活に入ってなかった」

一夏「助っ人で転々としてた。後はバイト」

クロエ「私も……部活動には……入っていませんでした……」

静寐「ええー」

清香「なら丁度いーじゃんっ、放課後部活動を見て回ったら?」

本音「大賛成~!」

一夏「いいな、それ」

箒「特にする事もないからな」

クロエ「私も構いませんが………」

静寐「待って。クロニクルさん、オルコットさんとの決闘はいいの?」

清香「げッ、忘れてた」

本音「がびーん!」

クロエ「ええと……それはその……大丈夫と言いますか……その……」

一夏「大丈夫だって、残り6日で出来る事なんて限られてるんだからさ」

箒「そういう考え方もあるが……それでいいのか?」

清香「それもそうだねっ!」

本音「勝ちは勝ちで~負けは負けで~しょ~がな~い」ユラユラ

清香「そう、本音の言う通り!勝つ時は勝つ、負ける時は負けるんだから!」

静寐「はぁ……それでいいのか体育会系……」

クロエ「心構えとしては良いと思われますが……」

箒「まあ……そうかもな」

一夏「じゃあ今日から適当に見て回るかぁ」


-----

クロエ「え、えいっ」ビュッ

「そっから投げるかぁー!!」バスンッ

「ナイスロングシュー!クロニクルさん」
「若いっていいわー羨ましいわー」

クロエ「皆さん、あ、ありがとうございます……」ペコリ

キャプテン「やるね、クロニクルちゃん」

クロエ「そ、そんな……私なんて……」

キャプテン「入っちゃいなよ。君なら即エースだよ」

クロエ「それは……過大評価だと……思いますが……」

キャプテン「まあ決めるの私じゃないけど」


一夏「おースカウトされてるな、クロエ」

箒「基礎を覚えただけでああも動けるとはな……」

清香「あっれー?二人とも何で見学してるの?」

二人「「ボールが上手く投げられない」」

清香「何言ってんのー!最初から上手い人なんていないよ!行くよっ、練習だー!!」グイグイ

一夏(当たったら結構マズイ勢いで投げるから、とは言えないよなぁ)

箒(ボールを壊してしまいそうなんだが……言えない……)

-----


-----

静寐「そうそう、上手上手」パッカパッカ

箒「馬のおかげだ。私の腕ではない」パッカパッカ

静寐「そんな事ないよ。馬が人を選ぶから、篠ノ之さんは選ばれたんだよ」パッカパッカ

箒「そうなのか?」

白馬「ブルルッ」


クロエ「駆け抜けます!」

黒馬「ヒヒーン!!」パカラッパカラッパカラッ

部長「退けお前等コラー!!じゃじゃ馬様に轢かれんぞ馬鹿野郎この野郎!!」パカラッパカラッパカラッ

部長「って思ったより速いじゃねぇかよ手前この野郎!!」パカラッパカラッパカラッ


箒「……凄いな」

静寐「あの子、今まで誰も背中に乗せようとしなかったんだけどね」


一夏「だっ!誰か止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!」ズリズリズリズリズリ


-----


-----

一夏「失礼しまーす」ガチャ

箒「失礼します」

クロエ「失礼します」ペコリ

一夏「体験入部という体験入会にきましたーよろしくお願いしまーす」

楯無「ようこそ、織斑一夏くん、篠ノ之箒くん、クロエ・クロニクルくん。我々は君達が来るのを待っていたのよ」

簪「……」コソッ

本音「新婚さ~んいらっしゃ~い!」

一夏「だってさ、新婚さん二人」ポンッ

クロエ「えっ……?」

箒「馬鹿な事を言っている場合か」

一夏「はいはい」

クロエ「……」ホッ

楯無(あらあら、見せつけてくれちゃって……)

虚「ふふっ、いらっしゃい。どうぞお掛けになって」

一夏「どうも」

箒「ありがとうございます」

クロエ「あ、ありがとう……ございます……」

楯無「まずは初めまして、生徒会長の更識楯無よ。私は、この学園最強であるが故に生徒会長である、という事を覚えていてもらいたいわ」

簪「……」

楯無「簪、あなたも自己紹介なさい」

簪「は…初め……まして……更識…簪……です……」ボソボソ

一夏(うん?何かデジャヴが……)

虚「私は布仏虚、生徒会長に仕えている者です」

本音「妹の布仏本音だ~よ~よ~ろ~し~く~ってあれれ?」

本音「うむむ?」キョトン

虚「どうかしたの?」

本音「あのねあのね~前にもあったんだけど~前になかって~なんか変~変な感じ~」ヒラヒラ

虚「何言ってるの、もう自己紹介はしていたんでしょ?」

本音「えへへ~そうだった~忘れてた~」

虚「うっかりさんね」

楯無「全く、結局本音ちゃんに崩されちゃうのよね」

本音「えへへっ、ごめんなさ~い」

楯無「いいのよ。毎度の事だもの」

楯無「さて、堅っ苦しいのもここまでにしてと。三人とも楽にしていいわよ」

虚「お嬢様」

楯無「いいでしょ。それと、お嬢様はやめて」

虚「すみません、つい」

簪「……」

一夏(堂々と机に足乗せるって……随分型破りな人だなぁ)

箒(お嬢様?)

クロエ(何故会長以外は対面する形で座っていらっしゃるのでしょうか……)

虚「紅茶とケーキ、よければどうぞ」

一夏「お言葉に甘えて」

箒「いただきます」

クロエ「い、いただきます……」

一夏「美味いな、これ……」

箒「甘過ぎす、上のイチゴとも紅茶とも良く合うな……」

クロエ「この紅茶の香りの深さも、ケーキに勝るとも劣らない……」

本音「でしょでしょ~♪」

楯無「うん、流石は虚ね♪」

虚「恐れ入ります」

簪「……」

楯無「で、織斑くん」

一夏「はい?何ですか?」


楯無「私の簪ちゃん、彼女にどう?」


簪「お姉ちゃん!!?」ガタッ

箒「!?」

クロエ「?」

一夏「あっははーそっすねー」

楯無「どう?私に負けず劣らず結構素敵でしょ?」

一夏「ダメっすね。どう考えてもダメダメっす」

楯無「あら、つれないのね」

簪「ほっ……」

箒(いきなり何を言い出すんだ。この人は……)

クロエ「??」

虚(お嬢様ったら)クスッ

本音「♪♪」モキュモキュ

楯無「訳を……聞かせてもらえないかしら?」

一夏「いやですね。さっきから簪さん、ちっともこっち側見てないんですよ。箒どころかクロエすら」

楯無「あら」

簪「……」

一夏「俺はこの手の人をもう一人知っていましてね。いやあ、それはもう苦労しましたよ。今でこそ大丈夫ですが最初はこんな風に近づく事すら出来なかったものですから」

楯無「へえ……それは大変だったのね」

一夏「今となっては良い笑い話ですけどね」

クロエ「……」モジモジ

箒「どうかしたのか?」

クロエ「何でもありません……」

クロエ(それって私の事ではないですか……やめてくださいよぉ……)

一夏「その経験上、いきなり距離を縮めるのはダメっす。ましてや彼氏彼女なんてのは論外ッス。だから、簪さんとのいきなりの清く正しいお付き合いは無理ッス」ズズー

本音「めっ!」

虚(上手く断りましたね)

楯無「それにしても簪ちゃんの事をよく見てくれているわね?」

一夏「どうにもデジャヴを感じたもので」

簪「……」モジモジ

簪(恥ずかしい……)

クロエ(言われてみれば……どこか私に似ていらっしゃるような……)ジィー

箒(馬鹿馬鹿しい……嫌なら嫌とハッキリ言え……馬鹿者……)

楯無「そうねぇ……それじゃあ友達からお願いしようかしら♪」

一夏「クラスメイトからじゃ駄目っすか?」

楯無「駄目っすね♪」

一夏「なんと……」

簪「お…お姉ちゃん……もう……やめてよ……」

~アリーナ~

セシリア「はあっ……はあっ……」


ビーッ


セシリア「ブルーティアーズ!」ピチュチュチュチュン


ドガガガガガガガガ!!


『目標、残り68……52……36……』

セシリア(まだ……もっと……もっと……速く……!!)

セシリア「そこ!!」バシューン

『命中、目標沈黙』

セシリア「次は!!」ピチュチュチュチュン

『敵機接近』

セシリア「ブルーティアーズ!」

セシリア「はあっ!」シャキンッ



ビュゴォッ!!


セシリア(後ろから!!?)バシューンッ

「……」チュインッ

セシリア「これは……!!」

パンッパンッパンッ

三年生「成る程、強く、そして美しくなりましたね。以前の貴女ならば私の槍を認識すら出来ていなかった」

セシリア「……お久しぶりです」

三年生「久しぶりです。オルコット」

セシリア「私に何か御用でしょうか」

三年生「特に用はありません。ただ、貴女の懐かしい姿を見て、少し思い出しましてね」

セシリア「今の私は、あの時の私とは違います」

三年生「そのようです。連日のあなたの鍛練がそれを物語ってくれています」

セシリア「……見ていらしたのですか」

三年生「ええ、見事なものでした。徐々に貴女はその美しさを増してきている……」

三年生「そして、今も」

セシリア「円卓の騎士であるあなたにお褒め頂けるとは光栄ですわ」

三年生「例え私でなくとも、貴女の姿は美しいと、誰もがそう思うでしょう」

セシリア「どういう事ですか?少なくとも私はまだ……貴女には程遠いはずです」

セシリア(そうです。私が目指すものには……私はまだ……)

セシリア(私は……もっともっと強く……)

三年生「薔薇は美しい……しかし、これが最も美しいという事ではありません」スッ

三年生「分かりますか」ヒュッ

セシリア「……」

三年生「なら来なさい。貴女を更に強く、美しくしてあげます」ガコンッ

セシリア「ありがとう…ございます!!」ピチュチュチュチュン

三年生「明日は少し休んだ方が良いでしょう。貴女の体は貴女が思っている以上に酷使されている」

セシリア「ええ……分かりました……」

三年生「最も貴女の事ですから、言っても無駄ではありますが」

セシリア「……」

三年生「何故私を捉えられないか、そう考えていますね」

セシリア「……はい」

三年生「簡単な事です。貴女の動きは複雑に見えてその実単純だからです」

セシリア「……」

三年生「私は貴女の動きを読んで戦っているのではありません。何故なら、貴女の考えが手に取るように分かってしまうからです」

三年生「考えるのが戦いである、と言えるでしょう。しかし、考えないのも時に戦いでもあるのです」

セシリア「分かり……ました……」

三年生「では戦いの後の紅茶は如何ですか?珍しい茶葉が手に入りましてね」スッ

セシリア「はい、頂きます」


-----

クロエ「あっ……あの……千冬様……?」

千冬「何だ」

クロエ「えっと……その……何故私を……隣に?」

千冬「私の隣は嫌か」

クロエ「い、いえっ……そういう事では……ないのですが……」

千冬「ふん……埒が開かんな」グイッ

クロエ「えっ!?なっ、なななっ、何を……!?」

千冬「家族、というものを教えてやる」ギュッ

クロエ「それと……これに……一体何の…関係が……何故私を……抱き締めるのですか……」

千冬「人の温もりは嫌いか?」

クロエ「嫌いでは……ありません……」

千冬「なら、こうされていろ」ギュッ

クロエ「はい……」

クロエ(千冬様は怖い人だと思っていました……けど、やはり一夏様と同じく、優しい方です……)

一夏「まーた始まったよ。姉ちゃんの休日の過ごし方」パチッ

箒「む……」パチッ

千冬「……」ガスッ

一夏「いってぇ!……蹴る事ないだろ!」

千冬「ふん……」

一夏「はいはい、私が悪うござんしたっと」パチッ

箒「むっ……」

一夏「ほら、お前の番だぞ」

箒「……急かすな」

一夏「はいはい、なるべく速くな」

千冬(箒の事だ。金に気をとられて桂馬を失うな)

クロエ(少し……眠くなってきました……)

箒「……」パチッ

一夏「桂馬もーらいっと」パチッ

箒「なっ……!」

一夏「待ったはなし、だぞ」

千冬(やはりな……昔とちっとも変わらん対局だな)

クロエ「……」ウトウト

箒「むっ……むむむ……」

一夏(うわー考えてる考えてる)

千冬(焦れったいな。そこに打てば良いものを)

箒「……」スッ

一夏「お?」

箒「いや……待てよ……」

一夏「何だよ……打つなら早く打てよ」

箒「うるさい、私は十手先を考えてから打っているんだ」

一夏「それを二手三手の内に崩されてどうするんだよ」

箒「うるさいっ!集中しているんだ!」

一夏「はいはい、分かったよ」

箒「……ここだ」パチッ

一夏「王手、と見せかけて飛車を頂く」パチッ

箒「しまった!角を忘れていた……!」

一夏(これは長くなるなぁ……)

千冬(全く、何をやっているんだ……)

~数十分後~

一夏「長い戦いだったなー」ジャラジャラ

箒「……」ジャラジャラ

一夏「猪突猛進もいいけど、もう少し回りも見ろよ」

箒「……うるさい」

一夏「って、俺が言えた義理じゃないか」

千冬「一夏、箒、こっちに来い」ポンポン

一夏「はいはい、姉ちゃんの仰せの通りに」ゴロン

箒「はい……」ゴロン

千冬「さて、晩飯は何を食おうか」

一夏「もう晩飯の話かよ……さっき食べたところだろ……」

千冬「あんなもの、腹の足しにならんだろうが」

箒「自分で作ったものに……そんな言い方は……」

千冬「自分で作ったからこそ、だ」

千冬(一夏の飯の方が断然美味いからな)

一夏「って、あれ?クロエ?」

クロエ「……」スースー

千冬「よく寝てるぞ。ふふふっ、可愛い奴め」ナデナデ

一夏「……やっぱりな」

千冬「何だ、寝不足だったのか」

一夏「環境が変わったのと、束姉ちゃんが抱き締めて寝てたせいで一人だと眠りにくかったんだってさ」

箒「……」ピクッ

千冬「全く、束の奴……」

一夏「子どもじゃないけどさ、その内一人で眠れるようになってもらわないとさ」

千冬「でないとお前の布団に潜り混むからな」

一夏「……何で知ってるんだ?」

一夏「あっ」

千冬「やはりか」

一夏「カマかけたな」

千冬「かかったお前が悪い」

箒「……」

箒(姉さん……)

千冬「箒」ギュウッ

箒「ちっ、千冬さん……な、何を……」

千冬「さん付けはやめろ。むず痒い」

一夏「千冬さーん」

千冬「黙れ」ガスッ

一夏「ハウッ」

箒「千冬……姉さん……」

千冬「私達の仲だ。今更恥ずかしがる事もないだろ」

一夏(筋に入ったッ……!!)ジタバタ

箒「すみません……」

千冬「ッ~……まあいい」

一夏(痛い痛い痛い痛い痛い)ジンジン

千冬「束がいなくて、寂しいか?」

箒「……少し」

千冬「全く、あの阿呆は何をやっているんだ」

箒「姉さんには……姉さんなりの考えが……あるから……」

千冬「そうか……それにしても仕方のない姉だな。大切な妹にこんな思いをさせるとはな……」

箒「……」ギュッ

千冬「……」

千冬(家族と離れ離れになって十年……私達と離れて四年、か……)

千冬(見知らぬ土地、見知らぬ人の中でたった一人、今日まで……)

千冬「よく頑張ったな、箒」ナデナデ

箒「ッ……」ギュウッ

千冬「こら、余り強く掴んじゃない」

箒「ごめんなさい、今だけ……」

千冬「全く、仕方のない奴だ……」

一夏(仕方のない姉、って点は姉ちゃんも人に言えた義理じゃないだろ)ジンジン

箒「もう……いい……」

千冬「もういいのか?」

箒「後は姉さんに甘えるから……」

千冬「そうか……」

一夏「……」

一夏(もっと……箒に構ってやらなくちゃな)

千冬「一夏、晩飯決めたぞ」

一夏「な、何だよ、いきなり」

千冬「焼肉だ。久々に豪勢にいくぞ」

一夏「入学式の前の日の二の舞はやめてくれよ」

千冬「愚か者、それぐらい分かっている」

一夏「本当かぁ……?」

箒「クロエはどうする」

一夏「寝かしといてやれよ」

箒「……途中で起きたら?」

一夏「書き置きしとくよ」サラサラ

千冬「起きるなよ……」ソッ

クロエ「……」スースー

千冬「ふう…さて、行くぞ」スクッ

一夏「えーっと、財布財布っと」ヒョコヒョコ

箒「歩き方が変だぞ」

一夏「足痛いんだよ」ヒョコヒョコ

箒「手を貸そうか?」

一夏「そこまでじゃないって」

千冬「置いていくぞー」

一夏「姉ちゃん速いって、誰のせいで足痛いと思ってるんだよ」ヒョコヒョコ

千冬「はて、知らんな」


クロエ「……」スースー

~IS学園~

セシリア母『報告をなさい。セシリア』

セシリア「私の要望通り、ブルーティアーズの反応速度は三割向上しています。機体、武器共に以前と何ら変わりなく使用出来ています」

セシリア「後は、お手元の情報を見て頂ければ」ピッ

セシリア母『成る程……ビットはどうです』

セシリア「ビット……ですか?数の増加に伴い懸念されていた操作性については問題ありません」

セシリア「むしろ、私自身この強化は必要不可欠だったと思います」

セシリア母『そうですか』

セシリア母(あの人が妙な細工をしていなければ良いのですが)

セシリア「先日の改修の際、ビットを全て交換なさっていましたが……あれはどういう事ですか?」

セシリア母『あの人が設計した新開発の物を導入しました。説明の通りの性能を既に実感済みとは思いますが』

セシリア「はい、もちろんです」

セシリア母『現在、我が社では順次新装備を開発中です。速くて二ヶ月程で完成するでしょう』

セシリア「分かりました」

セシリア母『それにしてもセシリア、少しやつれたのではないですか』

セシリア「そ、そうでしょうか……?」

セシリア母『新しい環境に順応するのは難しい事です。日頃の体調管理を怠ってはなりませんよ』

セシリア母『ブルーティアーズのデータ収集は二の次三の次でいい、とあの人は言いますが。データが収集出来なければ元も子もありません』

セシリア「……」

セシリア母『ブルーティアーズも一度や二度のの大破なら、こちらから予備パーツを送れば一週間とかからない内に元の状態に戻せるでしょう』

セシリア「……分かりました」

セシリア母『いいですか、お前をその学園に通わせたのはホームステイなどのつもりではありません』

セシリア母『我がオルコット家の次期当主として、学ぶべき事を学ぶ為です』

セシリア母『しかし、依然として確固たる目標を持ち続け、学生としての本文を果たす事もお前が為さねばならない事です』

セシリア「はい、分かっています。お母様」

セシリア「あの……お母様、お父様はいらっしゃらないのでしょうか?」

セシリア母『あの人は今、新企画に夢中で手が放せません』

セシリア「そうですか……」

セシリア母『お前もあまり根を詰めすぎないようにしなさい』

セシリア母『では、私も仕事に戻ります。お休みなさい、セシリア』

セシリア「お休みなさい。お母様」


ピッ


セシリア「……」

セシリア(そうですわ……オルコット家の次期当主……ブルーティアーズのデータ収集……)

セシリア(私には、やらねばならない事が沢山ありますのよ……)

セシリア(失敗なんて許されない)

セシリア(そんな事になれば私はまた……あの時のように……)


-----

一夏「ここだ」ピッ

クロエ「確かに、先程の映像と全く同じ動きをしています」

一夏「この隙だけは、絶対になくしたいはずなのにな……」

クロエ「初歩的なミスですね」

一夏「動揺…か?」

クロエ「この攻撃パターン後が条件なのでは?」

一夏「……他の映像も見てみるか」

クロエ「了解しました」

箒「前日の夜になってから対策を練るな、馬鹿者」

一夏「やらないよりかは万倍マシだろ?」

箒「昼に人を散々引っ張り回しておいて……夏休みの宿題じゃないんだぞ」

一夏「そんな楽な物かよ。公式映像ってなかなか見つからないんだぞ」

箒「そ、そうなのか…?」

クロエ「機密情報漏洩を避ける為に、国同士の戦闘を記録する事自体ありません。そして、記録した映像を一般公開する事はさらにありません」

クロエ「それは国内のIS同士の戦闘においても例外ではありません。どこから機密が国外に漏れるか分かりませんので」

箒「なら機密情報が含まれていない映像ならいいのだろ?」

一夏「そう、その通り。だからこんな風に数少ないその限られた古い映像を探してるんだよ」

箒「そ、そうか……」

クロエ「しかし、このように映像が見つかったとしても参考になる可能性はかなり低いと思われます。世界中の各企業、各社が持てる技術の全てを惜しまず投入し、今やその技術の進歩は留まるところを知りません」

一夏「さながら生き馬の目を抜く状態なんだよ。おかげで産業スパイは企業や会社を飛び交ってる……らしい」

箒「らしい?」

一夏「俺が産業スパイを見た事ある訳ないだろ」

箒「……そうだな」

一夏「もしかしたら公式発表されてた機体と違う、って場合もあるかもしれないな」

クロエ「その可能性は否定出来ません」

箒「なら今無駄な事をしているんじゃないか?」

クロエ「その可能性も、否定は出来ません」

一夏「それは明日になってからのお楽しみ、って事で」

一夏「箒、そろそろ部屋に戻った方が良いんじゃないか?」

箒「もうそんな時間か……仕方ない」スクッ

箒「ではな、お休み」ガチャッ

一夏「お休みーまた明日な」

クロエ「お休みなさい」


バタン


一夏「さて、いよいよ明日は俺達の初試合、特に何事もなく終わると思うか?」

クロエ「一夏様が想定されるような事態はまだ起こらない、と思います」

一夏「まだ、ね……」

クロエ「はい、起こらないはずはありません。その為の私達です」

一夏「なら別に明日はそう気張る必要もないか」

クロエ「私は気張る必要がありますが……」

一夏「それよりも手加減する必要があるけどな」

クロエ「必要です……よね?」

一夏「多分な」

セシリア(明日はいよいよ……決闘の日……)

セシリア(機体のチェックは完璧、体調も万全)

セシリア(後は……あのクロエ・クロニクルさんが一体どんなISを使うか)

セシリア(専用機持ち……ですわよね。まさか学園の打鉄で専用機持ちの私と戦うとは思えませんが……)

セシリア(彼女は何者なのでしょう。専用機持ちなら所属からプロフィールを閲覧出来るはずですのに彼女の名前はどこの国にも存在していない……)

セシリア(未知のIS……未知の操縦者……)スッ


ギュッ


セシリア(いいえ、弱気になってはいけませんわ。セシリア・オルコット)

セシリア(戦う前から負けていては、勝てるものも勝てませんわ)

セシリア(私ったらまた思わずこれを……)

セシリア(しかし、今日の為にしてきた事は決して無駄ではありません)

セシリア(勝利の凱歌をあげるのは私ですわ!)

訂正

セシリア(しかし、今日の為にしてきた事は決して無駄ではありません)

セシリア(しかし、明日の為にしてきた事は決して無駄ではありません)

~アリーナ~

一夏「この前の焼肉、美味かったなー」

クロエ「何故……今そのお話を……?」

一夏「いや、何となく」

クロエ「確かに美味しかったのですが……私は……」

一夏「クロエはさぁ…本当に間が悪いんだよな。何で全部人が取ろうとしたのしか取れないんだろうな……」

クロエ「ううっ……」

千冬「戦いの前に意気消沈させる奴がいるか、この愚か者」

一夏「でも姉ちゃんーーー」

千冬「デモもストもない」

一夏「はーい……」

一夏(姉ちゃんが人の肉まで取るから……)

摩耶「へーこの前焼肉だったんですかーいいですねー」

箒「クロエ、頑張れよ」

クロエ「あ…ありがとう……ございます。頑張ります……!」

摩耶「今度は私も呼んでくださいね。一人は寂しいんです……」ヨヨヨ

千冬「休みが合ったらそうしよう」

摩耶「やったぁ!」

一夏「えっ」

一夏(また酒盛りするつもりだこの二人……!)ダラダラ

箒「一夏、お前からも何か言ってやれ。一緒に修行したんだろ」

一夏「クロエ、程よく弾に当たっていかにも接戦っぽく見せろよ」グッ

クロエ「分かりました……頑張ります……」

箒「馬鹿者が」ドゴッ

一夏「うげ……ッ!」

箒「そんな応援をする奴があるか」

一夏「お……おう……ぐふッ……」

千冬「ほう……腕を上げたな……」


キュランキュラン ヒイィィィィィィィィィン…

クロエ「クロエ・クロニクル、準備完了。ハッチ解放を、お願いします」

摩耶「分かりました。カタパルト、スタンバイ」

クロエ「行きます」ギョイン

バキィッ

摩耶「えっ」

千冬「はあ……」

箒「あっ」

一夏「あーあ」

クロエ「すっ、すみませんっ!!」

一夏「こーわしたこーわした、せーんせーーーぐはッッ!!」ドゴォッ

千冬「やかましい」

一夏「」ピクピク…

摩耶「まさか踏み割るなんて……き、機体が思いの外大き過ぎましたね……」

クロエ「本当にすいません~!!」

箒「姉さんもなんて機体を作ったんだ……」

摩耶「えーっと、それじゃあ自力で発進してもらえますか?」

クロエ「りょ、了解……クロエ・クロニクル、行きます!!」バンッ

一夏「やべっ、対ブラスト姿勢っと」グイッ

箒「やめろッ、引っ張るな……!」


ドンッ!……ゴオォォォォォッ!


摩耶「きゃあっ!あっ、メガネ!」

一夏「おー滑るー」ズリズリズリー

箒「ぐッ……何て推力だッ……!!」

千冬「全く、また面倒な物を作りよって……」ヤレヤレ

クロエ「お待たせしました……」

セシリア「待ってましたわ。クロニクルさん」

クロエ「お、お相手になれるよう……頑張ります……」ペコリ

セシリア「こちらこそ」

クロエ「え…えーっと、初め……ますか……?」

セシリア「ええ、よろしくてよ」

セシリア「お互い正々堂々、力の限り」チャッ

クロエ「了解しました」チュイイイイン

『試合開始、5秒前』

クロエ(なるべく接戦っぽく見せないと……)

セシリア(あなたの実力、拝見させていただきますわ!)



『試合開始』


セシリア「……」バシューンバシューン

ピチュチュチュチュン バシューン バシューン

クロエ(レーザー射撃、ビットを展開……予想通りです)バッ

セシリア「踊りなさい、ブルーティアーズ!」

ドガガガガガガガッ

セシリア(やるべき事はいつもと同じ!!)バシューン

クロエ「うわっ……」チュインッ

クロエ(三次元かつ四方向からのビット攻撃に加えライフルでの狙撃)

クロエ「ですが……!」ヒュッ

ドガガガガガガガッ

セシリア「………」バシューンバシューン

セシリア(当たらない……私の攻撃を読んでいますの……)

クロエ(なるべく、当たりかけで回避を……)


ドガガガガガガガッ

セシリア「ちょこまかと!」バシューンバシューンバシューン

クロエ(右……上……左……次は……)

ピチュチュチュチュン

クロエ(四つによる方位攻撃……)

セシリア「ええい!」ガコンッ ズドンッズドンッ

クロエ(実弾への切り替え、レーザーの冷却開始されましたか)

セシリア「逃げるだけでは戦いになりませんくてよ!」ズドンッ

クロエ(優先順位の高い回避コースにビット攻撃……)バッ

ドガガガッ

セシリア(そんな……あの巨体で避けれるはずは……!?)

クロエ「最後は!」シュッ


バチィッンッ


セシリア「なっ……!!」

クロエ「あっ!」

セシリア(死角からの攻撃を弾いた!?)

クロエ(いつもの癖でついやってしまいましたが……今のは当たるべきでした……)

セシリア「ならば!!」バシューンバシューン


ピチュチュチュチュチュチュチュチュン


クロエ「予想通り、ビットを増やしてましたか……!」

セシリア「八つのビットによるオールレンジ攻撃、受けなさい!!」バシューン

クロエ「……」シャッ


ガァンッガァンッ


セシリア「おっと」バッ

セシリア(腕を伸ばして脚部からリボルバーを……ならもう片方に同じ物がもう一丁……?)

クロエ(上手く避けてくださいましたか)

一夏「あちゃーやっぱり増えてたか」

箒「呑気な事を言っている場合か、あんなもの一丁で応戦出来るか!」

一夏「あんなものって確かに一丁しか……ま、いいや。クロエはちゃんと見て避けてるから大丈夫だって」

千冬「その通りだ。よく見てみろ箒、クロエは数発わざと当たりに行っているぞ」

一夏「流石は姉ちゃん」

箒「……」ジィーッ

千冬「全く…つまらん戦いをしよって」

一夏「でも、どう戦おうが結果は変わらないよ」

千冬「そういう問題ではない」

一夏「敬意を払って完膚なきまでにブチのめして差し上げるよりかは万倍マシだよ」

摩耶(何て会話しているんですか、この兄弟は)

箒(確かに……よく見ているな……かわしている間ですら目を離してはいない………)

セシリア「なかなかやりますわね……!」バシューン

ピチュチュチュチュン

クロエ(オールレンジ攻撃も傾向を把握しました。私がわざと当たりに行っているのを見抜かれるのも時間の問題でしょう)

クロエ(顔にめがけて……リボルバーを投げて、その隙に)

クロエ「……」クルッ


ブンッ!!


セシリア「きゃっ…!」バッ

クロエ「今です!」シュッ

セシリア(あの一瞬で接近された!?)


ガギャッッ


セシリア「くあっ……この!!」ガコンッ

クロエ(迎撃用の多弾頭ミサイルですか)

クロエ「ですが……!」パシッ ガァンッ


ドガアァァァァンッ


クロエ(弾頭を射出する前に撃ち落としてしまえば問題ありません)ジャッ

セシリア(投げたリボルバーでミサイルを!?)

クロエ(この煙を利用させてもらいます!)ゴオォッッ

セシリア「来る……!?」チャキッ

クロエ「そこです!」ドガァッ

セシリア「きゃッ………くッ……!!」

クロエ「……」ガシィッ

ブンッ

セシリア「ッ……ブルーティアーズ!!」

クロエ「……」ガァンッガァンッ

セシリア(銃声は2つなのに6つも落とされた!?)

クロエ(ペースを崩され、動揺するとあなたはビットを一斉に展開させる。残るは二つ)

クロエ「……」シュッ

ガシャアァッ

クロエ(これでビットはなくなりました)

セシリア「まだぁ!!」バシューン

クロエ(位置は私が上を。そして)

バシューン

クロエ「……」ヒュッ


カッッ


セシリア「しまった……!!」

セシリア(太陽の光が……こんなミスを……!!)

クロエ「……」ゴオォッッ



ガシィッッ


セシリア「!!?」

クロエ「……」グググッ

セシリア「また……後ろに……!?」ポロッ

セシリア(関節をッ……早く拘束から抜け出さないと……!!)

クロエ「……」ググググッ

セシリア「あうっ……!!」ズシャアッ


『試合終了 勝者 クロエ・クロニクル』


一夏『クロエ、もういいぞ』

クロエ「はっ!もっ、申し訳ありませんっ!お怪我はありませんか?!」パッ

セシリア「え……ええ……何とか……」

クロエ「本当に申し訳ありません!つい我を忘れてしまい危険な攻撃を!」ペコペコ

セシリア(何も出なかった……)

セシリア(捉える間もなく、ここまで一方的に……)

セシリア(最初の内はわざと手を抜いて……戦っていらしたのですね……)

セシリア(織斑さんの言うとおり……最初から圧勝出来たのに……なのにわざと手を抜いて……)

セシリア(それなのに私は……それに気付かず戦い続け……勝てるものだと……)

セシリア(最後は……こんな……!)ジワッ

クロエ「本当に申し訳ありません!!」ペコペコ

セシリア「もう……結構です……」

クロエ「いえ、しかしーーー」

セシリア「結構です!!」

クロエ「ッ」ビクッ

セシリア「……あなたの勝ちですわ……織斑さんに……おめでとうございます、と……お伝えください……」

セシリア「では」

クロエ「待ってください!あのっ!!……ううっ……」

クロエ(何という失態を……一夏様に何と言えば言いでしょうか……)

摩耶「お疲れ様です。クロニクルさん」

箒「よくやったな、クロエ」

千冬「クロニクル、お前はよくやった」

クロエ「あ、ありがとう……ございます……」

一夏「お疲れ、クロエ」

クロエ「一夏……怒ってませんか?」

一夏「何でだよ?」

クロエ「それは……あの……私が……」ゴニョゴニョ

一夏「やってしまったんだから仕方ないだろ?」

クロエ「確かに……そうです……けど……」

一夏「装甲の破損は引っ掻いた跡と最後の碗部のヒビのみ、ビットは飛行不能自己修復可能な程度の破損、ブルーティアーズの破損は軽かったんだし御の字だよ」

千冬「だが操縦者はどうだ?」

一夏「……それが問題かな」

クロエ「ううっ……申し訳ありません………」

クロエ「余程ショックでしたのか……オルコットさんは少々取り乱していらしたのですが……もしかして……」

一夏「最後の最後でボコボコにしたお前が悪い」ビシッ

クロエ「そうですよねぇ……私が我を忘れたせいでぇ……」グスッ

箒「想定されていた最悪の事態じゃないか……」

一夏「本当にそうだよな」

クロエ「申し訳ありません……」グスッ

一夏「なーかしたなーかした、せーんせいに言っちゃーおー」

箒「ふざけてる場合か」ドゴッ

一夏「ぐふッ…!」

摩耶「何か大変な事になりましたね。イギリスに何て言い訳します?」

千冬「他人事では済みませんよ。山田先生」

摩耶「あははーそうですよねーどうします?」

千冬「下手に干渉するのは逆効果でしょう」

一夏「よし、ここは何とか自分で立ち直ってもらうか!代表候補生様だし」

千冬「そうだ。この程度で崩れる者に国の代表など務まるものか」

一夏「厳しいなぁ、姉ちゃんは」

千冬「愚か者、事実だ」

一夏「いや、まあ…確かにそうだけどさ……大どんでん返しで完全にボコボコにしたから……」ポリポリ

一夏(悔し涙流しかけてるのを必死で我慢してたし……)

箒「クロエ、いい加減切り替えろ」

クロエ「わ……分かりました……」グスン

箒「そう思うのなら一夏、何かあればお前がセシリアをフォローしろ」

一夏「は?俺がぁ?何で?」

箒「いいな」ギロッ

一夏「……はい」

クロエ「私もお手伝いします……原因そのものですから……」

箒「いいや、一番の原因は一夏だ。そもそも一夏が戦っていればこんな事にはならなかったはずだ」

一夏「俺の方が酷かったと思うけど」

千冬「御託を並べるな。お前が何とかしろ」

一夏「はーい……」

摩耶「新学期早々大波乱の幕開け。いやぁ、これぞまさに青春ですねー」


-----

「という事でっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう!!」

オメデトー!!

パン,パパパパーン

一夏「はっはっはっ、ありがとう、皆さんどうもありがとう。この場を用いまして、私に清き一票を入れてくださった皆様方に感謝の意を表明したいと思います」

箒(どこの政治家だ。お前は)

一夏「そして、素晴らしい戦いを披露したクロエ・クロニクルとセシリア・オルコットに、皆さん盛大な拍手と賞賛を!」パンッパンッパンッ

バチパチパチパチパチ

セシリア「ありがとうございます」ペコッ

クロエ「皆さん……あ、ありがとうございます……」ペコリ

「いやー本当にすごかったよ。クロニクルさん」
「カッコよかったよ」
「あれだけ体柔らかいなら体操部に入らない?」
「バカ、めでたい席で何言ってんのよ」
「オルコットさんもクロニクルさんに負けず劣らず、凄い戦いっぷりだったと思う」
「本っ当、惜しかったよね~相性の良し悪しが出たにせよ。あの突撃さえなければ勝ててたと思うけどけ~」

セシリア「まだまだ私が未熟、だったと言うだけですわ」

セシリア「そう……未熟だっただけですわ……」

「ごめんごめん!ほら料理食べよ!」

セシリア「ありがとうございます」

一夏「……」

一夏(やっぱり、か……本当に天才の自信過剰ってのは難儀なもんだな……)

箒「一夏、お前の分だ」

一夏「お、悪いな」

箒「礼なら本音に言え」

本音「どうぞどうぞ~」トテトテ

クロエ「布仏さん……あ、ありがとうございます……」

一夏「布仏さん、ありがとう」モグモグ

本音「どういたまして~あとあと~呼ぶのは~本音だよ~」ニパー

清香「ひゅんふいほはおほろひい… …!」

静寐「口一杯ほおばりながら何言ってるの」

「う~ん、これでクラス対抗戦も華が増えたってもんだね。楽しみだぁ」
「そーだよね」
「ラッキーだったよねー織斑くんと同じクラスで」
「そーだよね」

一夏(何で二組の人がサラッと紛れ込んでるんだ?)


「ねえねえ、クロエさん。今度IS教えてっ」
「ずるーい、私も私もー」
「私もー!」
「アタシもー!」
「アタイも!」
「ウチもウチも!」

ガヤガヤワイワイ

クロエ「あの……私でよければ……ですが……」

「なに盛ってんだお前等はー!」
「全く、騒がしいったらありゃしないね」
「どこに来ておいて何ほざいてんだテメェは」

一夏「人気者だな。クロエ」

箒「一夏、良かったのか」

一夏「何が?」

箒「クラス代表になって、だ」

一夏「別に、カッとなって自ら挑戦を受けたんだ。今更勝っておいてやらない程、俺は無責任じゃないよ」

箒「その責任感を他のところでも発揮しろ」

一夏「……どうもすみません」ポリポリ

セシリア「……」

一夏(あー何か来た)

「はいはーい、どいたどいたー新聞部ですよー泣く子も黙る報道の自由様のお通りだー」

オオー!

「初めまして、私は二年の黛薫子。あ、これ名刺ね。よろしくねー!」ガシッ ブンブン

クロエ「こ……こちらこそ……よ、よろしく……お願いします……」ブンブン

クロエ(な、何故……私に……?)

薫子「さて、織斑君!クラス代表になった感想をビシッとズバッと、どうぞ!」

一夏「これからもスポーツマンシップに乗っ取り、正々堂々、卑怯の限りを尽くしたいと思います」

ドッ アハハハー!

箒(はあ……何を言ってるんだ……)ヤレヤレ

薫子「あっはっはっ!面白い!じゃあ、次の戦闘もクロエちゃん任せで?」

クロエ「……」ジィーッ

一夏「とんでもない。この織斑一夏、是非ともクラスの代表として戦わさせて頂きますよ」

クロエ「ほっ……」

薫子「機体はやっぱり専用機?独占取材させてよー」

一夏「それは今度の試合のお楽しみ、という事で」

薫子「くうっ、つれないねーったくもーそれじゃあ期待の新人クロエちゃん!セシリアちゃんと戦ってどうだった?」

クロエ「期待……ですか?……えっと……その……貫手は危険……だったと思います……」オズオズ

クロエ(なるべく急所を狙うのは避けたのですが……それでも……)

薫子「一発キッツーいのが入っちゃったもんねーそして怒濤の如き攻撃でセシリアちゃんを見事、戦闘不能に!」

クロエ「お、お褒め頂き……ありがとう……ございます……」ペコリ

薫子「それじゃあ、あの白い機体の名前は?武装は?大きな特徴は?」

クロエ「名前は……零式、です……武装はリボルバーのみ……特徴は御覧の通り、一般的なISよりも少し大きい点と、露出部分が極端に少ない点と、スピードに優れている点です……」

薫子「ふむふむ……技術を注ぎ込んだ結果、大きくなっちゃったパターンだね」

クロエ「そう……考えて頂ければ……結構です……」

薫子「零式は誰が作ったの?どこ製?見たところどこの国のISとは似ても似つかないけど?」

クロエ「そっ、それは……その……機密なので……お教えする事は……出来ません……申し訳ありません……」ペコリ

薫子「っかあーまたかー!何だこの一年生は二人はー謎すぎんでしょー!っかあー!」

一夏「そりゃどうも」

クロエ「本当に……申し訳ありません……」ペコリ

薫子「仕方ない。腹びれから背びれに尾ひれまで、何から何まで色々と捏造しておくからいいとしようかな」

一夏「それは主に感想云々でお願いします」

薫子「よろこんでー!」

箒(それで良いのか……)

クロエ(捏造……娯楽としては必要ですが……過度なものは……)

薫子「さてさて、お待たせしました。セシリア・オルコット嬢、惜しくも敗れてしまいましたが……クロエちゃんはどうだった?」

セシリア(惜しくも、ですか……)

セシリア「最初は少し侮っていましたが、その考えはすぐになくなりました。機体性能の高さに加えクロニクルさんの実力も計り知れないものでしたわ」

薫子「ふむふむ……」

セシリア「八つのビットのオールレンジ攻撃を全て紙一重で回避、的確で精密な射撃にバーストショット、リボルバーを投擲なさってからの格闘戦、どこをどう取っても私で太刀打ち出来た相手とは思えませんわ」

薫子「まさかのべた褒め!あのセシリア・オルコットにここまで言わせるなんて!」

クロエ「そんな……私なんか……過大評価……ですよ……」

セシリア「いいえ、全て事実ですわ。例えブルーティアーズの性能を上げたところで叶うとは思えません」

クロエ「そうでしょうか……」モジモジ

薫子「ほうほう……」

セシリア(そう、全てのビットを同時射出とその撃墜……得意ではない近接戦に持ち込まれた挙げ句……あんな簡易か目眩ましを食らうとは……)

一夏「……」

薫子「ーーーそして、互いに全力を尽くし戦った、と……」

クロエ「そ……そうです……」

セシリア「ええ、そうです」

一夏(あいつ……ここに来てからよく胸元に手をやるな……癖か?)

薫子「くっはー!いいネタもらったー!私のイマジネーションが超特急だーっ!」

薫子「それじゃあ最後に二人並んで握手して、写真撮るから!」

クロエ「はい……し、失礼します……」スッ

セシリア「ええ、構いませんくてよ」スッ

薫子「はい、真ん中に織斑くんね」

一夏「えっ、俺ですか?」

薫子「パーティーの主役なんだからいないと駄目でしょうが、ほら」グイグイ

一夏「分かりましたから……押さないでくださいよ……」

薫子「よーし、それじゃあいくよー!」

一夏(気まずい……)

クロエ(どういう表情をすれば良いのでしょうか……)オロオロ

セシリア「しっかりしてください。私に勝ったのでしょう?」ボソッ

クロエ「も……申し訳……ありません……」ボソッ

一夏「セシリアの言う通りだぞ」ボソッ


パシャシャシャシャシャ

セシリア「あなた今……」

一夏「ごめんごめん、いきなり名前で呼ばれるのは嫌いだったか?」

セシリア「いえ……間違えずに言われたもので」

一夏「あーあの時はあまり寝てなくて苛立っててさ。ごめん、悪かったよ」

セシリア「こちらこそ……」

薫子「うげっ、何か集合写真みたいになっちゃった」

ワイワイガヤガヤ

クロエ(皆さん素早く後ろに入られましたから……)

一夏「何だよ。お前も写りたかったのか?」

箒「馬鹿を言え、引っ張られただけだ」

本音「にへへ~」

清香「おのれ……」

静寐「何で私まで……」

セシリア「……」

セシリア(今の……何故か……)



バタン


一夏「ふーっ、ようやく終わったな」ドサッ

クロエ「流石に……疲れました……」

一夏「良かったじゃないか、色んな人と関われて」

クロエ「そうですが……あれほど多くの人とお話しするのは……」

一夏「何事も慣れだよ」

クロエ「わ、分かりました」

一夏「で、問題のセシリアだけど」

クロエ「懸念されていた通りだと思いますが……」

一夏「そうだよなぁ……」

クロエ「どうします?」

一夏「現状維持だ。最悪の場合は俺が何とかする」

クロエ「手を付けにくい場所で抜けた穴は……大き過ぎましたね」

一夏「その通りだよ。何て面倒な事をしたもんだよ、ったく……」

一夏「あーもう風呂入るのも面倒だ。このまま寝ようかな」ゴソゴソ

クロエ「いくらなんでもそれは駄目ですよ……」グイッ

一夏「分かってるって、冗談だから引っ張るな」

セシリア「……」


ギュッ


セシリア「……」

「あの……セシリアさん」

セシリア「は、はい、どうかなさいましたか?」ササッ

「電気消してもいい?」

セシリア「ええ……どうぞ」

パチッ

セシリア「……」

「セシリアさん……こんな事言うのも何だけど……私はその……セシリアさんは頑張ったと思うよ……何も恥ずかしい事なんてないぐらい……」

セシリア「……」

「確かに結果はああなっちゃったけどさ……でも、だからってセシリアさんが弱いって訳じゃないと思う……だって前の日まであんなに特訓してて……」

セシリア「……」

「相手が悪かったーーーじゃなくて……だからその……」

セシリア「そのお気持ちだけ、受け取られさせていただきますわ……お休みなさい」

「お休みなさい……」


-----

箒「おはよう、一夏」

一夏「おう、おはよう」モグモグ

クロエ「おはようございます」

箒「失礼するぞ」ガタッ

一夏「どうぞどうぞ、おー今日は鮭定食か」

箒「やらんぞ」

一夏「ここの焼き鮭は焼いてないからいらない」

箒「いちいち文句が大い奴だな……」

一夏「だから食べてないだろ。大体な、焼いてないの焼きって付くのはおかしいだろ」

箒「なら表記を蒸し鮭にしてもらうか?」

一夏「そこまでしてまで食べたいものじゃない」

クロエ(豆が掴めません……)ツルッ

クロエ(掴めました!後は……ゆっくり……ゆっくり……)

クロエ「……」プルプル

クロエ(もう少し……!)プルプル

クロエ「あっ!」カチャン

一夏「んぐっ!?」ピシーン

クロエ「すっ、すす、すみませんっ!」

一夏「何だ……煮豆?」

クロエ「お怪我はありませんか?」アセアセ

一夏「大袈裟だな……ほらスプーン」ヒョイ パクッ

クロエ「すみません……本当に……」

箒「何で箸で食べ難いものばかり食べているんだ……」

クロエ「料理の内容を充分把握せずに……購入していますので……」

一夏「だから俺は常にスプーンを持ってる」

箒「お前が料理を教えれば済む話だろ」

一夏「箸で掴み難い料理でも、クロエの大好物になるかもしれないだろ?」

箒「いちいちいちいち屁理屈を……!」イラッ

クロエ「喧嘩はやめてくださいよぉ……」

箒「全く……それでだ。セシリアはどうするんだ?」

一夏「別に、どうもしないかな」

箒「お前……」

一夏「どうどう、落ち着けよ……今のところは、だ。必要があればどうにかするよ」

箒「ふん……ならいいが」

一夏「自分で立ち直ってくれたら万々歳なんだけどな」

箒「原因の張本人が何を言うか」

一夏「あくまで俺の希望だよ……最近のセシリアは見てるだけで……こう、何というか……心配になるからさ」

箒「自信をなくしたんだ……無理もない」

クロエ「本当にそれだけなのでしょうか……?単なる自信の喪失のみであそこまで……」

一夏「ならない、よな。今回の一件がセシリアの個人的な部分に引っ掛かった事は確かなんだよ」

箒「だから手出し出来ない、という事か」

一夏「そういう事だ。だから俺はこうやっていつも通り飯食ってるって訳だよ」

箒「ッ~……呆れた……」

クロエ「精神面はしようがありませんので……致し方ないかと……」


-----

千冬「ではこれより、ISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。クロニクル、オルコット。試しに上へ飛んでみろ」

クロエ「りょ……了解しました……」

セシリア「了解です」

一夏(姉ちゃん、何でそのチョイスをするかなぁ……)

ドンッッ

一夏「あっ」

摩耶「おー速いですねー」

エッ!?モウアンナトコロニ!?ゼンゼンミエナカッタヨ?

千冬「……クロニクル、ISの展開と急上昇は同時に行うな。これは授業だ」

クロエ『も、申し訳ありません!!』

一夏(本人からすれば一応遅くやってるんだろうけど……)

千冬「まあいい。オルコット、準備はいいな?」

セシリア「はい、もちろんです」

千冬「よし、飛べ」

千冬「よし、飛行はもういい。クロニクル、オルコット、次は急降下と地表数センチでの完全停止をやってみせろ」

クロエ『了解しました……お先にどうぞ……』

セシリア『了解です。私から行きます』

一夏(一見、問題なさそうに見えるんだけどなぁ……なんでこんな心配になるんだろうな……)

ギュンッ

セシリア「……」ピタッ


オオー!


千冬「……次、クロニクル」

……ォォォォオオオオッッ

クロエ「……」ビタッッ


オオー!!


千冬(十一センチと四センチ……らしくもないミスだな。オルコット)

一夏(あちゃー……)

千冬「では次は武装の展開だ。クロニクル、まずはお前だ」

クロエ「あっ、あの……織斑……先生……」

千冬「何だ」

クロエ「私の機体に……武装は右足にあるリボルバーしか……ないのですが……」

千冬「……本当にそれだけか」

クロエ「はい、これだけです……ISの展開ではなく……ただのクイックドロウだと……思います……申し訳ありません……」

一夏(まあ、実際そうなるよな。そもそも武装なんて後付けの外付けなんだし)

千冬「謝る必要はない。オルコット、武装を展開しろ」

セシリア「はい」チャッ

千冬「流石だな。次は近接用の武装を展開しろ」

セシリア「……」

シャキンッ

千冬「……いいだろう」

クロエ(ここまで影響が……)

一夏(はあ……流石に罪悪感が……)

千冬「時間だな。次の授業に遅れるなよ」

ハーイ!

千冬「オルコット、少し話がある」

セシリア「はい、何でしょうか?」

千冬「お前も気付いているとは思うが武装の展開時間が落ちている」

セシリア「……」

千冬「今までは違ったがいずれは動作の一つ一つですらコンマの世界になる。このまま落ち続けるという事のないようにしろよ」

セシリア「分かりました……」

千冬「ではーーー山田先生?」

摩耶「お願いします。クロニクルさん……持つだけでも……せめて持つだけでも……!」

クロエ「ですから……その……これは……零式専用の物ですので……」

千冬「ッ~持病が出たか……」

摩耶「そう言わずに、そこを何とかお願いしますよ……ね?ね?ちょっとだけですから……そう、ちょっとだけ……」

摩耶(そしてあわよくばその十三ミリを……うへへ)

クロエ『一夏様……どうすれば……?』

一夏『やめといた方がいいな。山田さんなら撃ちかねない』

千冬「山田先生」ガシッ

摩耶「へ?あ、織斑先生?」

千冬「次の授業の、用意があります。戻りますよ」

摩耶「まっ、待ってください!まだ十三ミリをーーー」

千冬「問答無用」グイッ

摩耶「待って!まだ撃ってないんですよ~!せめて!せめて持つだけでも!!」ズリズリ

千冬「トリガーハッピーが何を言おうと説得力がありません」ズリズリズリ

摩耶「待ってぇぇぇ!!私に十三ミリを撃たせてぇ!!十三ミリを!!!」ズリズリズリ

千冬「また今度にしてください。教師がみっともない……」ズリズリズリズリ

摩耶「クロニクルさぁぁぁん!!」ズリズリ少し

クロエ「も……申し訳ありません……」ペコリ

千冬「そういう事ですから」ズリズリズリズリズリズリ

摩耶「撃たせてえええぇぇぇぇぇ!!うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ズリズリズリズリズリズリ

一夏「やっぱりな……」

クロエ「え、えーっと……これで良かったのですか……?」

一夏「いいんだよ。姉ちゃん曰く山田さんの病気らしいから」

クロエ「……山田先生からはよく……火薬の匂いがしますが……病気……」

>>>124

オリジナルIS、零式のリボルバーは一夏の台詞通り後付けです。
「リボルバーをISで扱うサイズにしただけの物」ですからセーフティが組み込まれておらず、持てるのなら発射は可能な設定です。


-----

セシリア「はい!」ヒュッ

「ッシャアァ!食らえオラァァァ!!」パシッ ヒュッ

セシリア「あっ!」

ピーッ

「チェイス!」
「追え追えー!!」

セシリア「……」

エース「ほら、ボサッとしてんじゃないよ」トンッ

セシリア「申し訳ありません……」

エース「パス捕られたぐらいでいちいち何凹んでんだい。とっとと走りな」

セシリア「はい……」タッ

エース(らしくもないミスだね……パスをアタッカーに捕られて決められるなんて)

エース(本当頼むよ。イギリスのお嬢ちゃん)

セシリア(何をやっていますの……これ以上失敗出来ませんのに……)

セシリア(取り返さないと……何とかして……!)

セシリア(私が……!)

「パス!」ヒュッ

セシリア(これなら!) バッ

「ちょっ、セシーーー」

セシリア「あっ!?」ガッ

「うわっとっとっとおぉぉぉぉぉ!!」バターンッ ポロッ

ピッピー

「セシリア、パーソナルファール。三分のマンダウン」

エース「……」

セシリア「もっ、申し訳ありません!大丈夫ですか!?」

「何とかね……痛ってて……」サスリサスリ

セシリア「申し訳ありません……」


「気にしない気にしなーい。よっと、こんなの全然へっちゃらなんだから」スクッ ヒョコッヒョコッ

セシリア「そんな……肩をお貸しします」スッ

「おっ、悪いね。お嬢」ヒョコッヒョコッ

セシリア「いえ、当然の事です……」

エース「セシリア、マンダウン終了と同時にあんたは交代よ」

セシリア「はい……」

エース「頭を冷やしな。今のあんたは危なっかしくて困んのよ」

セシリア「……分かりました」

エース「そんで、あんたは休んでな。セシリアかばって無茶な着地してんだから」

「もーこんなのへっちゃらだってば。唾付けとけば治るって」

エース「塩で傷口揉まれたくなけりゃ黙ってベンチに行きな」

「あいあいさー」

セシリア「……」

一夏「ったく、何やってるんだよあいつは…思いっきりぶつかってんじゃんか……」

クロエ「あ、あの……一夏様?」

一夏「あーあ、しかも交代か?相手もまともに歩けてないし……」

クロエ「一夏様……?」

一夏「ラクロスってあんな激しいもんなのか…流石はラグビーとかアメフトの類いだな…恐ろしい」

クロエ「いっ、一夏様!」

一夏「さっきから何だよクロエ、ちゃんと聞こえてるよ」

クロエ「なら返事をしてくださいよぉ……」

一夏「はいはい、何だよ」

クロエ「屋上から男子生徒が……部活動中の女子生徒を監視しているのは……少しどうかと思うのですが……」

オリムラクーン!

一夏「おー!部活頑張れよー!」ヒラヒラ

クロエ「ちゃんと聞いてくださいよぉ……!」

一夏「監視なんて人聞きの悪い事言うなよ。俺はただ、屋上でボーッとしてるだけだよ」

クロエ「ISを使ってこのような事をしているのが千冬様に知れたら……どうなるか分かりませんよ……」

一夏「ないない。箒ならまだしも、姉ちゃんは忙しいから」

クロエ「なら良いのですが……」

一夏「意外と山田さんが現れたりしてな」

クロエ「それは……その……困りますーーー三人、来ます」


バーンッ


楯無「目標発見!確保よー!!」ブンブンブンッ

本音「逮捕だ~!ルパ~ン!」

簪「……」コソッ

一夏「あっはっはっはっ、予想外の三人が来た」

楯無「おりゃあー!」ブーンッ

一夏「ほいっと」スルッ

本音「年貢の納め時だ~!」ジャラジャラ

一夏「ワッパは勘弁!」スパーン

本音「ありゃりゃ?」ガチャーン

楯無「ちょっと!柵に繋がれちゃったじゃないの!」ガチャーン

一夏「クロエ、逃げるぞー!」ダッ

クロエ「はい……!」ダッ


簪「ま……待って!」バッ



一夏「!?」ピタッ

クロエ「……」ピタッ

簪「く……だ…さい……」

一夏「……これも予想外」

楯無「ナイス簪ちゃん!ほ、ほらっ、本音ちゃん早く鍵!」

本音「待て待て待て、駄目ですよ~鍵さんどちら~手のなる方へ~」バラバラ

楯無「えー…これ?違う……これ…でもないし……あーもう、どうしていっぱい投げたのよ!」ガチャガチャ

本音「戦いは数なのだ~」ガチャガチャ

一夏「……」スススッ

簪「……!」スススッ

一夏「……」ススススッ

簪「……!」ススススッ

一夏「……あのさぁ」

簪「ご……ごめん……なさい……でも…お姉ちゃんが……」

一夏「はあ……」

クロエ「どうしますか……?」ヒソヒソ

一夏「無論、一転突破だ」ヒソヒソ

クロエ「了解」ヒソヒソ

一夏「なあ、簪ちゃん」ズイッ

簪「えっ……いや……近い……」スススッ

一夏「俺は君の事をよく知らない。だから君のお姉さんの申し出を断ったんだよ?」ズズイッ

簪「うぅ……ううぅ……」スススッ

一夏(このいじり甲斐…久しぶりだ…!!)ワクワク

クロエ(嫌な顔をしていらっしゃいます……)

楯無「来た?来たのね?お姉さんの思惑通りなのね?なっちゃうのね?本音ちゃん早く~!」ガチャガチャ

本音「えーっと、えーっと」ガチャガチャ

一夏「……」ジリジリ

簪「……」ジリジリ

トンッ

簪「あっ……」

一夏「もう逃げるのはなしだ。聞かせてくれ、俺はもっと君の事を知りたい。君はどうなんだ?」

簪「あ……あっ……あああ……あの……!!」アタフタ

一夏「お姉ちゃんは関係ない。本当の気持ちを聞かせてくれ、簪」ズイッッ

簪「あうあうあうあう~!!」ワタワタ

本音「う、うわ~!簪ちゃん……!」モジモジ

楯無「きたぁぁぁぁぁ!!」



簪「……」ボンッッ


楯無「えっ」

本音「あっ」

一夏「仕方ないなーまた今度な!」ダッ

クロエ「失礼します……!」ペコリ ダッ

簪「……」プシュー

本音「簪ちゃん…オーバーヒートしちゃった……」

バキーンッ

楯無「待てえぇぇぇ!!逃がすかぁぁぁぁぁ!!」ダッ

本音「うんしょっ……」カチャン トテトテ

簪「……」プシュー

本音「簪ちゃん、簪ちゃん」ユサユサ

簪「……」プシュー

本音「駄目だこりゃ~」

一夏「という事が今日あったんだよ」モグモグ

箒「一夏」

クロエ「お、落ち着いてください……」

一夏「正直言って、何か間違えかもしれないかなーとは思わないでもない」

箒「何かではない。全部だ、全部」

一夏「孫子だって言ってるだろ?戦いとはーーー」

箒「孫子に謝れ」

一夏「何で怒ってるんだよ。いいだろ、知りたいのは事実なんだし」

箒「言い方を考えろ」

一夏「だから考えに考え抜いーーー」

箒「……」グリッッ

一夏「いってえぇぇー!!」

箒「ふんっ……馬鹿……」

クロエ「ああ……もう……」

一夏「お……おおぉぉぉ……痛ぇ……」ジンジン

箒「自業自得だ」モグモグ

クロエ「……」オロオロ

一夏「ブーツは駄目だろ……骨が砕ける……」ジンジン

箒「なら砕いてやろうか」

一夏「けっ…結構です……うぉぉぉぉ……」ジンジン

クロエ「大丈夫……ですか?」

一夏「足の指…繋がってるかな……」ゴソゴソ

クロエ「そんな……!」

箒「いちいち大袈裟だ」

一夏「はーい……」

クロエ「ほっ……」

一夏(しかし何でだろうな……何かずっと俺の中で引っ掛かってるんだよな……何で引っ掛かってるんだ?)

一夏(いつからこの感じがしてたんだ?)

一夏(この感じ……何か……忘れちゃいけないぐらい……大事な事を……忘れてる……ような……)

一夏(大事な事?忘れてる?)

一夏(何だ……何を……)

一夏「……」

箒「一夏……?」

一夏「あ、ああ…どうしたんだ?」

箒「どうしたんだじゃない。お前がどうしたんだ」

クロエ「難しいお顔をなさっていましたよ……」

一夏「え、あれ?おかしいなーちょっと考えただけだからそんなに難しい顔した覚えないんだけどなー」ジョバババー

クロエ「あの……それは醤油ではなくソースですよ……」

一夏「うわっ!?本当だ……刺身にソースって……」ガクッ

箒「何をやっているんだ……」ヤレヤレ

楯無「お・り・む・ら・くぅ~ん♪」ムニュ

一夏「あ、楯無さん、こんばんわ」

箒「こんばんわ」

クロエ「こんばんわ……」ペコリ

楯無「はい、三人ともこんばんわ~ねえ~織斑くん、お姉さんはとっても悲しいわ~」ツツー

一夏「何が…ですか?」

楯無「今日の事よ~はあ……お姉さんはてっきり織斑くんが簪ちゃんを、と思ったのに……ふーっ」

一夏「は、はあ……」

箒(何をやっているんだこの人は……)

楯無「おかげで簪ちゃんは茹で蛸よ~ほら、あそこ」


簪「……」プシュー


一夏「わーほんとうだー……ん?」

楯無「他人事じゃあ済まないわよ~?」

一夏「ちょっと、すいません」グイッ

楯無「あん……いけず」

セシリア「……」

セシリア(日に日に状況が悪化していますわ……)

セシリア(原因は……あの敗北以来……私が……不安定だから……)

セシリア(情けない……この程度で揺らいでいて……代表候補生は務まりません……)

セシリア(イギリス代表も……オルコット家の……当主も……)

セシリア「はあ……」

セシリア(思い詰めても始まりません。今日はもう部屋にーーー)カツン

セシリア「あっ!」

一夏「おっと!」パシッ

セシリア「あなた……」

一夏「ん~ナイスキャッチ……気を付けろよ」

セシリア「ありがとうございます…助かりましたわ」

一夏「いえいえ、どういたしまして」

セシリア「私に何か用ですの?織斑さん」

一夏「いや、別に用って程の事じゃないんだけどさ……」ポリポリ

セシリア「何ですの?」

一夏「何というか……今のお前、危なっかしくて……見てると心配なんだよ」

セシリア「危なっかしい……?私が?」

一夏「さっきだって、お前心ここにあらず、って感じでさ……フォーク落としかけてたし」

セシリア「……」

一夏「いらない世話かもしれないけどーーー」

バンッ

セシリア「結構ですわ!あなたの情けなど必要ありません!」

一夏「いや、別に情けって訳じゃーーー」

セシリア「結構てす。部屋に帰らせてもらいます」スタスタ

一夏「待てって!話は最後まで聞けよ!」

セシリア「来ないでください!」



タッタッタッタッ


セシリア「はっ……はっ……」

セシリア(何ですの……どうせ私を嘲りにでも来たのでしょう……)

セシリア(敗者の私を……!)ギュッ

一夏「待てよ!」ガシッ

セシリア「離してください!」バシッ

セシリア「何ですの?勝者の余裕ですか?!あなたは善意のつもりでも私にとっては屈辱に他ならないのですよ!」

セシリア「試合の時だって、クロニクルさんに最初は手を抜くように指示なさったのもあなたでしょう!!分からないとお思いでしたでしょうが違いますのよ!!」

一夏「確かに……俺がそう言ったけど……」

セシリア「いい身分ですわね。努力も何もせずに優秀な能力を手に入れて、それ盾に出来ますものね」

セシリア「楽しかったですか?面白かったですか?人の気持ちや自信を踏みにじって!!そうやってヘラヘラと人を嘲笑って!!」

一夏「違う……違うって……俺はそんなつもりじゃない」

セシリア「そうやってあなたは!!無自覚に人を傷付けているのです!!何故分からないのですか!!」

一夏「違うんだ……聞いてくれ……」

セシリア「違う?……とぼけるのもいい加減にしなさい!!あなたのせいで苦しんでいる人がいないと思うのですか!!?」

セシリア「思い上がりも甚だしい!!恥を知りなさい!!!」

一夏「だから違うんだ!!!」

セシリア「ッ……」

一夏「ごめん……俺が悪かったよ……確かに手を抜けって言ってお前の気持ちとか……敬意とか誇りとかを踏みにじった……ごめん……」

一夏「でも……だから俺……その……上手く言えないけど……何とかしたいんだよ……」

一夏「お前の力に……なりたいんだよ……」

一夏「クソッ……何なんだよ……ずっと何とかしたいから考えてたのに、いざその時になったら全然お前の為になる事出来なくて……」

一夏「こうやって……聞いてもらうのだけで精一杯で……」

一夏「ごめん……でもお前を笑おうなんて気はないんだ!」

セシリア「そッ……そんな……そんな言葉!!信じられると思うのですか!!?」

一夏「思わない。でも……信じてほしい……」

セシリア「この期に及んで……!!」

一夏「頼む……セシリア……」

セシリア「こッ、この~!!」

一夏「頼む、セシリア」

セシリア「無理です!!あなたは信じられません!!」クルッ

一夏「待ってくれ!!」ガシッ

セシリア「離して!!!」ブチッ ポトッ


パシーンッ


一夏「セ、セシリア……」

セシリア「はあっ……はあっ……はっ!」

一夏「ごめん……」

セシリア「ッ~!」クルッ


スタスタ


一夏「……」ヘタッ

一夏「は……ははっ……カッコ悪いな……俺……何本気になってるんだろ……」カサッ

一夏「これって!!」

~寮長室~

千冬「こんな時間に外出許ーーーどうした、その顔は」

一夏「いや、その……まあ……不名誉の負傷、かな?」

千冬「……箒をからかうのも大概にな。それで、明日の外出許可はどこに行くんだ?」

一夏「家…かな」

千冬「掃除ならこの前しただろ」

一夏「違う違う、ちょっと野暮用が出来て……」

千冬「野暮用……?何だ、詳しく聞かせろ」

一夏「いや……だから野暮用なーーー」

千冬「黙れ、聞かせろ」

一夏「ッ~……これだよ」スッ

千冬「……どこで見つけた」

一夏「知りたい?」

千冬「ああ……知りたいな」

一夏「……」

千冬「……」

一夏「教えない」

千冬「この愚か者めが」ガスッッ

一夏「ハウッッ」

~廊下~

セシリア「……」

セシリア(私にはもう……迷う暇などありません……)

セシリア「……」スッ

ガチャッ

三年生「さあ、入りなさい」

セシリア「!……私が来るのを知っていたのですか?」

三年生「……」

三年生(成る程……)

三年生「いいえ、知りませんでした。来る頃だろうとは思っていただけですが」

セシリア「そ、そうですか……」

三年生「ですのでローズティーを入れていたのですが……どうやら、それも必要なかったようですね」

三年生「私に、決闘を申し込みに来たのでしょう」

セシリア「はい……そうです」

三年生「いいでしょう。受けて立ちます」

セシリア「あ、ありがとうございます」

三年生「場所は第三アリーナ、日時は明日の午後一時……で、構いませんね」

セシリア「はい、構いません」

三年生「では、お休みなさい。オルコット」

セシリア「あの!」

三年生「……どうかしましたか?」

セシリア「……いえ……お休みなさい」

バタン

三年生「……」

三年生「セシリア・オルコット……」スッ


グシャッッ パラパラ……


~織斑家~

ガサガサゴソゴサ

一夏「あっれー?どっかに置いといたはずなんだけどなーどこやったー?」

クロエ「……」ガサゴソ

一夏「これ……じゃないな」

クロエ「……」ガサゴソ

一夏「そういえば前に姉ちゃんがこの辺いじくってたような……」ウーン

クロエ「こちらですか?」

一夏「いや、違う。もうちょっと古びた箱」

クロエ「了解しました」ガサゴソ

一夏「……なあ、別について来なくても良かったんだぞ。箒だって来てないんだし」ガサゴソ

クロエ「そういう訳にはいきません……お手伝いさせてください……」ガサゴソ

一夏「そんなに部活のお誘いが嫌か?」ガサゴソ

クロエ「そ…そういう……事では……ありませんが……その……苦手、と申しますか……不得意と申しますか……」

一夏「嫌なら嫌って素直にーーーん?あっ!」グイッ

一夏「おわあぁぁぁ!!」ドンガラガッシャーン

クロエ「いっ、一夏様!?大丈夫ですか!?」

一夏「げほっ……お……おう……何とかな……」

クロエ「ほっ……」

一夏「悪い、クロエ……ちょっと手を貸してくれ」

クロエ「は、はい」ガシッ

一夏「せーの、よっと!」スポーン

一夏「ふう……織斑選手無事復活っと」

ガラガラ……ゴトン

クロエ「……用事が……増えましたね」

一夏「それを言うなよ」

クロエ「す、すみません……」

一夏「ま、何はともあれ目的は達成したから、とりあえずは良しとするか」スッ

クロエ「目的の物はそちら……ですか?」

一夏「おう、まさかこんな奥にしまってたなんてな」パカッ

クロエ「……」ジィー

クロエ(針と布に……様々な物が入っています……何の為の物なのでしょう……)

一夏「さて、お目当ての物はと」

一夏「ん~ん、ん、ん、ん~……」


パタン


一夏「なかった」

クロエ「ええ……」

一夏「丁度切らしてた」

クロエ「では……調達に参りますか……?」

一夏「もちろん。でもその前に、ここを片付けなくちゃな」

クロエ「りょ、了解しました」

一夏「ゴミ袋取ってくる」

~IS学園~

清香「あっ、いたいたー篠ノ之さーん!」パタパタ

本音「あ~!しーのんだ~」トテトテ

箒「清香に本音か……部活はどうしたんだ?」

清香「今日はオフなんだ♪」

本音「おふこ~す~」

箒「なら静寐だけが部活か」

本音「そ~なのだ~」

清香「そういう篠ノ之さんは何でシャワー室から?」

箒「少し汗をかいたものでな」

本音「どれどれ~?」ヨジヨジ

箒「!?」

清香「本音!?」

本音「くんくん……いい匂い~」ニパー

箒「そ、そうか……ありがとう」

清香「でさでさっ、そろそろお昼だし一緒にどう?」

箒「ああ、そうさせてもらう」

清香「やたっ!」

本音「ごはんっ♪ごはんっ♪」

箒「……いつまで背中に乗ってるんだ?」

本音「だめ……?」ジィー

箒「いや……だからその……」

本音「……」ジィーッ

箒「……構わないよ」

本音「わ~い、ありがとーしーのん」

清香「何て甘え上手ッ……恐ろしい子……!」

静寐「三人とも何してるの?」

清香「静寐!丁度良かった~皆でお昼食べない?」

静寐「いいけど」

箒「結局、勢揃いか」

本音(しーのんの髪が当たる~!)クシクシ

~商店街~

一夏「おばあちゃーん、いるー?」ガラッ

クロエ「失礼します」ペコリ

店主「いらっしゃい。おや、その隣の子は……外人さんかい?」

クロエ「初めまして……クロエ・クロニクルと申します……い、一夏には……お世話になってます……」

店主「そうかいそうかい……良かったねえ、一夏は昔から優しい子だからねえ……」

一夏「いやいや、そんな事ないよ」

店主「殺生が嫌い嫌いで、蟻一匹殺そうとしなかったもんねえ……」

クロエ「そうだったのですか……?」

一夏「いや、まあ……そうだったけどさ」ポリポリ

店主「さて、立ち話も何だし二人ともお上がんな」

一夏「お言葉に甘えまーす」

クロエ「あ……ありがとうございます……」ペコリ

店主「それで、学校の方はどうだい?」

一夏「そりゃもう楽しくやってるよ。そういうおばあちゃんは?」

店主「いつも通り、楽しくやらせてもらってるよ」

クロエ「……」モグモグ

店主「饅頭、美味しいかい?」

クロエ「はい!このお菓子……とても美味しいです……!」

店主「まだまだ、たーんとあるからねえ」

クロエ「ありがとうございます……!」モグモグ

店主「元気だねえ……昔連れてきた子とは大違いだねえ……」

一夏「ああ、そういえばそんな事もあったあった」

店主「あの子、今頃どうしてるんだろうねえ」

一夏「……楽しくやってるんじゃない?」

店主「そうだといいんだけどねえ……」

クロエ「……」モグモグモグ

一夏「で、おばあちゃん。頑丈な紐ってある?」

店主「頑丈な紐ねえ……少し待っときなよ」スクッ

一夏「はーい」

クロエ「……」モグモグモグモグ

一夏「……」

クロエ「……」モグモグモグモグ

一夏「なあ、クロエ」

クロエ「はい、何でしょうか?」ピタッ

一夏「食べ過ぎじゃないか」

クロエ「そっ……そうでしょうか……?」

一夏「昼飯前だぞ?」

クロエ「昼食に支障のない程度に食べていますが……」

一夏「だからって二箱も食べるなよ……」

クロエ「す、すみません……」

店主「はい、お待たせ。うんと頑丈なの持ってきたよ」

一夏「おーありがとう、別にうんと頑丈なのじゃなくても良かったんだけど」

店主「いいじゃないかい……ほら、試しに引っ張ってごらん」

一夏「千切るだけど思うけど……ふんっ!あれ!?」グイッ

一夏「んんっ!ふうんぬぐぐぐぐぅっっ!!」グイーッ

一夏「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」グイーッ!!

クロエ「!?」

一夏「だあっー!何だこれ……本気で引っ張ってもちっともびくともしない……!」

店主「どうだい?うんと頑丈だろ?」

一夏「これ切れるの?」

店主「そりゃあ、紐なんだから鋏で切れば切れるさ。ほら」チョキン

一夏「……昔の人の知恵は恐ろしいや」

クロエ(どう紡げばあのような強度に……?)ジィーッ

~食堂~

静寐「今度クロニクルさんと一緒に来てくれない?あの子達寂しがってるから」

箒「そ、そうなのか……余程気に入られたのだな……私達は」

静寐「織斑くんは……あんまり乗り気になってくれないと思うけどね」

箒「市中引きずり回しの刑を食らった挙げ句、蹴り飛ばされかけ、轢かれかけたからな……」

本音「な、なんだって~!?」

清香「ねえ……それ大丈夫だったの?」

静寐「それがかなりの距離を引き摺られてたのに織斑くんは無傷、蹴りも当たりかけただけ、轢かれるのも上手く逃げてくれたから大丈夫だったんだけど……」

本音「窮鼠に一票を得たのだ~」

静寐「それを言うなら九死に一生、でしょ?」

本音「そうそう~それそれ~」

箒「一夏本人はじゃじゃ馬だな、と笑ってたがな」

清香「なぁんだ……良かった……」

箒「しかし何故あんなにも馬に嫌われるんだろうか……」

静寐「クロニクルさんが乗った黒馬以外は知らない人でも乗せてくれるんだけどね……」

清香「もしかして織斑くんって、動物に嫌われるタチなんじゃないの?」

箒「いや、逆に動物が寄っていっていた。野良犬野良猫なんかは特に」

清香「じゃあ何で……?」ウーン

静寐「謎は深まるばかりね……」ウーン

箒「野生の勘で、何か邪な気持ちを感じ取ったのか……それとも……」

本音「馬が合わない?」

清香「本音……」ガクッ

本音「あり?違った?」キョトン

静寐「確かにその言葉の通りだけどね」

箒「正しいと言えば正しいが……」


ガヤガヤワイワイ

箒「何だ、向こうが騒がしいな」

清香「何かあるのかな?」

静寐「イベント?そんなのなかったと思うけど」

本音「このあとあと~一時からから~セシリア・オルコットががが~円卓の騎士の一人と決闘するんだてだて~」

箒「セシリアが!?」

清香「円卓の騎士って……代表集団じゃん!」

静寐「そんなーーーって本音、知ってたの?」

本音「ううん~聞こえた~」

静寐「聞こえたって……」

本音「えっへん!私は出来るの子なのだ~」

清香「恐ろしい子……!」

箒(一夏に教えなければ……)



『御用の方は発信音の後に』ブツッ


箒「あの馬鹿……何をしている……」

清香「どうしたの?」

箒「いや、気にしないでくれ」

静寐「いくら代表候補生だからって言っても代表相手は無理じゃないかな……」

本音「でもでも奇跡は分からない~」

清香「そう、本音の言う通り!ってそうじゃなくて!」

本音「?」キョトン

静寐「この学園にいる円卓の騎士は一人だけ……駄目、セシリアさんと最も相性が悪い……」

箒「どんな人なんだ?」

静寐「円卓の騎士の中では最年少で日も浅い……けど、円卓の騎士の実力は全員ほぼ互角……そしてーーー」

本音「武装は~八つのランサービットに~槍と盾だけ~」

清香「えっ?それだけ?なら大丈夫なんじゃない?」

静寐「馬鹿、それだけなのに円卓の騎士になってるのよ」

本音「絶断オールオーバーは~装甲は豆腐で~絶壁ソリッドシールドは~今まで傷がなくて~二つともちょ~おっきくて~」

箒「近接戦闘……駄目だ、近付かれたら終わりだ」

清香「あわわわ……ど、どうなるのかな?」

静寐「セシリアさんには悪いけど、結果は目に見えてるね。流石に相手が悪過ぎる」

本音「でもでもお互い様様~」

箒「相性が悪いのはお互い様だ。しかし、実力がそれを帳消しにする」

静寐「そういう事、相手の人に賭けるのが利口だね」

箒(何故セシリアはそんな相手に勝負を……?嫌な予感がする……まさか……セシリアは……)

清香「何薄情な事言ってんの!クラスメイトなんだから応援してあげようよっ!」

本音「お~!ふれーふれー!セッシー!」

静寐「ここで応援しても仕方ないでしょ……」


『御用の方は発信音の』ブツッ


箒(馬鹿……何をしている……早く出ろ!)

~織斑家~

一夏(箒から電話?ま、いっか)ジュージュー

一夏「クロエーもうすぐ出来るからなー」ジュージュー

クロエ「はい……!」

クロエ「一夏様、先ほどから携帯に着信が来ていますよ」

一夏「いいの、いいの。今は飯が先」

クロエ「は、はあ……そうですか……」

クロエ(恐らく緊急事態だと思うのですが……先程から何度も発信なさってますのに……)

一夏「おっとと、焦げる焦げる」カンカンカン

一夏「仕上げのマヨネーズを入れてよく混ぜてっと」サッサッサッ

一夏「ほいっと」ボンッ

一夏「それとこっちもフライパンに皿を当てて……よっと」クルッ

一夏(何回かけてくるんだ?いい加減、留守電っていうシステム使えよ……)

一夏「よっしゃ、お待たせ。特製餃子と特製炒飯だ」

クロエ「お、美味しそうです」

一夏「それじゃあ、いっただきまーす」

クロエ「いただきます」

一夏「うん、やっぱり料理は出来立てに限る」モグモグ

クロエ「……」モグモグ

一夏「あれ?口に合わなかったか?」

クロエ「そ、そんな事ありませんよ……!どちらも手作りとは思えない味です……!」モグモグ

一夏「そうかー何てったって直伝だからなースーパーで買った食材が店の味になるんだよ」モグモグ

一夏「ま、若干アレンジ足してあるけど」

クロエ「それでも美味しいです……」ホクホク

一夏「うん、我ながら惚れ惚れする出来だな」モグモグ

クロエ「着信、止まりましたね……」

一夏「箒も観念したか」

一夏「もう一時前か……早いもんだな」モグモグ

クロエ「そうでしょうか……?」

一夏「ああ、俺の体感の話だから、気にしない気にしない」

クロエ「探し物が予想以上に時間がかかってしまったからだと思うのですが……」

一夏「確かに……それもあるな」ヒョイ パクッ

一夏(ま、俺が食材選ぶのに時間かかったのもあるんだけど……)モグモグ

一夏(何時にIS学園に戻るかな……晩飯食べてからでもいいけど箒が寂しがるだろうし……)モグモグモグモグ

クロエ「……」モグモグ

クロエ(先程一夏様は直伝、と言っていましたが……誰に教わったのでしょうか……)モグモグ

クロエ(千冬様、でしょうか……?)モグモグ

一夏(そうだな……それでいいかな。後で晩飯の買い物に行くのも面倒だし)モグモグ

一夏「もーらいっ」ヒョイ

クロエ「あっ……」スカッ

~アリーナ~

「セ、セシリアさん……本当にやるの?」

セシリア「ええ、もちろんです」

「……」

セシリア「あなたの応援、感謝します」

「あのっ……!無理にする必要ないんじゃ……ないかな……」

セシリア「……何故ですか?」

「だって……セシリアさん、何か変だよ……クロニクルさんに負ける前とは全然違うし……」

セシリア「……」

「ねえ、やっぱりやめようよ……こんなの無茶だよ……今からでもーーー」

セシリア「私は退けないのです!」

「ッ」

セシリア(そう……差し伸べられた手を払い除けるような……恥知らずな私は……)

セシリア「お待たせして、申し訳ありません」

三年生「構いません。例え何が起ころうと結末は同じ」

セシリア「……」

セシリア(いつもと違う……何故……)

三年生「どうしました。どこからでも来なさい」

セシリア「……それでは!」

ピチュチュチュチュチュチュチュチュン

セシリア(最初から全力で……!!)

三年生「……」スッ


バチチチチチチチチィンッ


セシリア「ッ!?」

セシリア(ビットで全ての攻撃を防いだ!?)

三年生「それだけですか。この程度ならビットで充分です」

セシリア「ッ……なら!」バシューンッ

三年生「……」バチィンッ

セシリア(包囲しましたわ!!これなら!!)


ピチュンッ ピチュチュチュチュン ピチュンッピチュンッ


三年生「……」ドンッッ

セシリア(突破されーーー)


バシーンッ


セシリア「あうっ……ッ!」チャキッ

三年生「……」ガシッ ググググッ

セシリア「ううっ……くうッ………この!!」ガコンッ

三年生「愚かな」スッ

セシリア(しまった!?)


ドガガガガガガガガッ


セシリア「きゃあああぁぁぁっ!!」

三年生「はあッ!」ドゴッッ

セシリア「うあッ……!!」

三年生「……こうも容易く背中を取れるとは」

セシリア「けほっ……はあっ……はあっ……」

三年生「どうしました。威勢が良いのは最初だけですか」

三年生「私はまだ、薔薇を手放してはいません」スッ

セシリア「ッ……!!?」

セシリア(そんな……盾すら喚び出していない……!?)

三年生「貴女はまだ……私を敵に回すには未熟」

箒(何をやっているんだ……戦い方があまりに盲進的過ぎるぞ……)

本音「あう~お手玉だ~」

静寐「ほら、やっぱりね……」

清香「やっぱりね、じゃないって!」

静寐「あそこ簡単に肉薄されちゃあこの先どうしようもないでしょ……」

清香「この薄情者~!」

静寐「事実を言ってるだけだよ」

箒「静寐の言う事は確かに事実だ」

清香「篠ノ之さんまで~!」

箒「爆発的な機転がなければ、セシリアは勝てない……」

本音「boom~!」

清香「頑張れー!セシリアさーん!!」

箒(一夏……速く……気付いてくれ……)ギュッ

三年生(無駄な事を……いくら包囲したところで)

バチチチチチィンッ

三年生(私にも、ビットがあるというのに)

バチチチィンッ バチィンッ バチチチチチチィンッ

セシリア「……!」チキッチキッ

『OVERHEAT』

三年生(熱管理を誤るとは……)

セシリア「ッ……!」ガコンッ ズドンッ

三年生「……」チュインッ

セシリア「……」ズドンッズドンッズドンッ

三年生「……」バッ

セシリア「ブルーティアーズ!!」ズドンッ

ピチュチュチュチュチュン ピチュンッ ピチュチュチュチュン

セシリア(ランサービットは戻っている最中……!!)

三年生(同じ事を)ドンッッ


バシーンッ


セシリア「ううっ……!!」

三年生「……」スッ

セシリア「ッ……はあっ……はあっ……!」

セシリア(何故……攻撃は顔をはたくだけ……止めを差そうと思えば……いつでも出来るはずなのに……)

三年生「……」

セシリア(私は……あの薔薇を手放させる事すら出来ないのですか……)

セシリア「いいえ!そんな事は!」ズドンッ

ピチュチュチュチュチュチュチュチュン

三年生「……」バッ

バチチチチチチチチィンッ

セシリア「来るッ!?」

ドガガガガガガガガッ

セシリア「ううううっ!!くうぅぅぅぅっ!!」

ガシャシャシャシャシャシャシャシャ

三年生「己にすら打ち勝てぬものが、敵に打ち勝つ事など……不可能です」

セシリア「けほっ……こほっ……私にッ……恐れるものなど……ありません!!」

三年生「その意地……どこまで保てますか」

~織斑家~

チョキン

一夏(あいつの癖……ずっとこれを触ってたんだな……)

一夏(大事にしてくれてたんだな……紐変えてまで……肌身離さず……)

一夏(なくしたと思ってたけど……まさかな……)

一夏(あいつに何て言おうかな……とりあえずお礼言わなくちゃな)

一夏「……」シュルッ

キュッ

一夏「よし……出来た……」

一夏(これで当分、千切れないだろうな)

クロエ「あの……一夏様……」

一夏「どうした?」

クロエ「箒様からの連絡は……よろしいのですか?」

一夏「あ、忘れてた」

一夏「おーい、箒ー?」

箒『この馬鹿者ッ!今まで何をしていた!?』

一夏「何って……野暮用なんだけど……」キーン

クロエ(箒様……怒っていらっしゃいますね……)

箒『野暮用でも急用でも何でも、電話ぐらいすぐに出ろ!』

一夏「どうもすいません……」

箒『ッ~!そんな話をしている場合ではない!セシリアが大変なんだ!』

一夏「セシリアが……?どうしたんだ?」

箒『円卓の騎士に戦いを挑んだんだ!しかしまともな戦いが出来ていない!』

一夏「だろうな……」

箒『他人事ではない!セシリアは文字通り当たって砕ける気だ!このままでは!!』

一夏「……」

箒『相手もセシリアの事を見抜いている!だからあえて叩き潰す事はしていないがそれも時間の問題だ!!』

一夏「……」

箒『ここで挫けてしまったら、あいつは二度と立ち直れないかもしれない!!』

箒『おい一夏!!聞いているのか!!』

一夏「分かった。すぐ行く」


ピッ


クロエ「一夏様」

一夏「クロエーーー」

クロエ「施錠なら既に」

一夏「急いで学園に戻るぞ」

クロエ「了解しました」

~アリーナ~

「セシリアさん……頑張って……」ギュッ


バシュンッ


一夏「クロエ!」

クロエ「はい」ピピピッ

「ちょ、ちょっと……」

一夏「ええい、もう俺が行くしかないよなぁ!ああ、そうだよな!ISでブッ飛んでまで来たんだ!こうなったらとことんやるしかないよなこん畜生!」

クロエ「準備完了。ハッチ解放」

「待って!二人とも!!」

一夏「待てるかよ!このままじゃセシリアがーーー」


「セシリアさんはまだ!!負けてない!!」


一夏「!!」

三年生「まだ、戦いますか。セシリア・オルコット」

セシリア「……」バシューンッ

三年生「……」バッ

バチチチチィンッ バチチチィンッ バチチチィンッ

セシリア(そこ!!)

三年生「……」ヒュッ


バチィンッ


三年生「これが答えですか」シュウゥゥゥ…

セシリア「そんなッ……!!」

三年生「包囲した八つのビットで時間差攻撃を加え、回収すると見せかけ、残しておいた一発を背後で撃つとはいい考えです」

三年生「しかし、苦し紛れの技など盾を使うまでもありません」

セシリア(次は……次の攻撃は……どうすれば……)

三年生「何故、分からないのですか」

セシリア「そんな事……分かりたくもありません……」



三年生「いい加減にしなさい!!そのような事で、誰も倒す事など出来ません!!」


セシリア「ッ!?」ビクッ

三年生「……考えないのも戦いと、私は言いました……しかし、このような事をさせる為にそう教えたのではありません」

セシリア「……」

三年生「何故分からないのです。貴女は、ただただ無為な事をしているのですよ」

セシリア「ですが……ですが私は!!」

三年生「ならば」


ビュゴォッッ!!


セシリア「きゃああぁぁぁっ!!」

三年生「私は貴女を、倒します」

セシリア(全く見えなかった……!?)


ジャキッ

セシリア「ッ!?」

セシリア(迎撃ーーー間に合わない!!?)


ドガガガガガガガガガガガガガッ!!


セシリア「うああぁぁぁぁぁぁ!!!」

三年生「はあッ!!」ビュゴオォォォッッ


ガギャギャギャギャギャギャギャンッッ!!


三年生「うおぉぉッッ!!」


ドゴッッ!!


セシリア「かはッッ……!!」



ズシャアァァァ


セシリア「う……あ……あぐっ……」

セシリア(意識が……駄目……ここで負ける訳には……)

セシリア(武器を……インター……セプター……)チャキッ


バチィンッ


セシリア「ッ……!?」

三年生「どうしました。立ちなさい、立って戦いなさい」

三年生「セシリア・オルコット」

セシリア(私の……攻撃は……何一つ……あの人に……届かないの……です……か……)

セシリア(私は……私は……!!)ジャリッ

三年生「……」

三年生「薔薇の花言葉は愛」スッ



グシャッッ


三年生「愛とともに、散りなさい」パラパラ…

セシリア(もうっ……駄目……!!)

三年生「はあぁぁぁぁッッ!!」ビュゴオォォォッッ


ガアンッガアンッ


三年生「何ッ!?」バッ

セシリア「この……攻撃はッ……!?」


一夏「まさかの時にスペイン宗教裁判!!」


セシリア「なっ……!?」

三年生「!?」

一夏「我々の多様な武器は恐怖、唐突、未知、えーっと……以下省略だこの野郎!!」

クロエ「モルドレット様、突然の無礼を御許しください。我々は、再試合を申し出ます」ギョインッギョインッ

三年生「私達の決闘を邪魔するとは……許せません……」

一夏「決闘?『こんなの』が?」

一夏「力で相手を叩き潰すだけが決闘か!?ふざけんなよ!!こんなもの、もう決闘でも何でもないんだよ!!」

一夏「さっきから聞いてれば気持ちのいい事ばっかり言いやがって!!何様だよ!!円卓の騎士様がそんなに偉いのかよ!!?」

一夏「悩んでる奴を叩き潰すだけの奴のがそんなに偉いのかよ!!!」

三年生「ッ……」

一夏「どうなんだよ!!?」

セシリア「あ、あなた!!」ガシッ

一夏「おう……だ、大丈夫か?セシリア」

セシリア「自分のなさっている事が分かっていますの!?」グイグイッ

一夏「わ、分かってる!分かってるって!」ガクガク

セシリア「いいえ!分かってませんわ!!」

セシリア「私はあなたの助けなど必要ありません!!余計な事をしないでくださいまし!!」

一夏「馬鹿言うなよ……」

セシリア「いいえ、馬鹿な事など言ってませんわ!!」

セシリア「大体あなたに……あなたなんかの助けがなくったって私は……私は……あの人に……!!」グスッ

セシリア「あの人にッ……ううっ……」ポロポロ


一夏「あーあー泣くなよ。ほら、これ持ってろよ。ほら」 スッ


セシリア「こ……これは……それにその言葉……!」

一夏「いいだろ。それはな、俺が姉ちゃんから貰ったやつなんだぜ」

セシリア「あなた……あの時の……!!」

一夏「お前もな」

一夏「すいませんねー!セシリアは再試合してもいいそうですー!そっちはどうですかー?」

三年生「……構いません」

クロエ「それでは御二方、ピットへ」

一夏「エネルギー補給が終わったらすぐに出ろよ」

セシリア「ええ……分かりました……」

一夏「クロエ、どうだ?」

クロエ「残り三十秒です」

一夏「はいはい、三十秒ね」

一夏「……」

セシリア「……」

セシリア「あの……」

一夏「詳しい事は後だ。今は試合に集中しろ」

セシリア「い、言われなくても分かってますわ!」

一夏「はははっ、それだけ強がりが言えるならまだ大丈夫だな」

『補給完了』

一夏「よし、行ってこい。セシール」

セシリア「セシリアですわ!!」

セシリア「お待たせしました」

三年生「……」

三年生(恐怖が、なくなっている……?先程までとは別人……いや、これが彼女の本来の姿……なのでしょう……)

三年生(今までオルコットに纏わり付き続けていたものが……こうも簡単に……打ち払われるとは……)

一夏『セシリア、大丈夫だ。俺とそのお守りがついてるからさ』グッ

セシリア『はい!』

セシリア(私に……力を……)ギュッ

三年生(織斑一夏……私は……貴方に少し……)

三年生「ふふっ……」

セシリア「どうかなさいましたか?」

三年生「いえ、気にしないでください」

セシリア「そ、そうですか……」

三年生「それでは始めましょうか。今度こそ、決闘を」

セシリア「はい、互いに全力を尽くして!」

クロエ「それでは、試合開始」

続きは明日で。
ビット系ってどこかの監督の言う通り駄目なやつだと改めて認識した。

クロエ『一夏様、本当に、これで宜しかったのですか?』

一夏『ああ、これでいいんだよ』

一夏『迷子には、誰かがついていてやるだけで』

クロエ『迷子、ですか?』

一夏『あいつさ、昔近所で迷子になって事があったんだよ。ずっと泣いててさ、一人が怖くて怖くて仕方ない、って感じだったんだよ』

一夏『クロエに負けてから、またあいつからそれが出てたんだよ』

一夏『本人が気付かない内に、あの出来事がトラウマになってたんだろうな』

クロエ『仰っていた不安感の原因は既視からきていたものでしたか』

一夏『気付くのに……かなり時間かかったけどな』

クロエ『ですが。彼女は今、その恐怖を捨て去り、戦っていらっしゃいます』

一夏『当然だろ。何てったってあいつは超天才の超秀才、風雲児セシリア・オルコットなんだからな』

セシリア「ブルーティアーズ!!」

ドガガガガガガガガッ

三年生(私のビットが追い付きませんか……しかし、ソリッドシールドは破れません)ガガガガッ

セシリア「……」バシューンッ

チュインッ

セシリア「!」

セシリア(今の動きは……もしかして!!)

三年生「はあっ!」ビュゴオォォォッッ

セシリア「同じ手を!」バッ

三年生「いいえ!!」ブンッッ

セシリア(槍の軌道を変えた!?ですが受け止めてみせます!!)バッ

『BURST MODE』ジャパッ

セシリア「これは!?」


バシュウゥゥゥゥゥンッッ


三年生「ぐあぁぁッ!!……なッ……!?」

三年生(ブルーティアーズのビームが変わった……!?)

セシリア(ビットが合わさり放つビーム攻撃……これが……お父様が作った新しいブルーティアーズの力……)

セシリア(これならやれますわ!!)

セシリア「行って!!」バシュウゥゥゥゥゥンッッ

三年生「うおぉッ……!!」

三年生(この威力……ビットの放てるものではありません!)

セシリア「まだです!」ガコンッ

三年生(近接用のミサイルをこの距離で……?)

ジャキッ

セシリア「させません!」バシューンッ

ピチュチュチュチュチュチュチュチュン

三年生「はッ!!」


バシャッ ドドドドドドドガアァァァァンッ


三年生(弾頭を分裂させてしまいましたか……しかし狙いはこの爆煙を作り出す事でしょう……)

セシリア(狙い通り……後はインターセプターを!)ガチンッ ガコンッ

三年生(居場所は分かっています)ジャキッ

ピチュチュチュチュン ピチュチュチュチュチュンッ

三年生(この攻撃は全て陽動……本当の狙いは)

三年生「そこです!!」ビュゴオォォォッッ

セシリア「てやあぁぁぁ!!」ゴオオォォォッ


ガギャギャンッッ!!


セシリア「うぐッ……まだッ……!!」ガシィッ

三年生「何ッ!?」


ズドンッズドンッズドンッズドンッズドンッズドンッ


三年生「ぬッ……おおおッ……!!」

三年生(接射の為だけに突進を……!?)

セシリア(全てを一点に!!)ズドンッズドンッズドンッ

三年生「ッ!!」バッ

三年生「はあぁぁッッ!!」ドゴッッ

セシリア「きゃあぁぁぁっ!!」


ジャキッ

セシリア(ビットが来るッ……迎撃を……!!)

バシュウゥゥゥゥゥンッッ

セシリア「しまった!?」

セシリア(ビームを掻い潜られたッ!?)


ドガガガガガガガガッ


セシリア「きゃあああぁぁぁっ!!」

三年生(ビットを合わせたという事は、手数を減らし、機動力を殺し、射線は巨大な一つのみ……突破は容易い!!)

三年生「おおぉぉぉぉぉッッ!!」ビュゴオォォォッッ


ガギャギャギャギャギャギャギャンッッ!!


セシリア「うああぁぁぁぁ!!くうぅぅぅぅっ!!」

ガコンッ

三年生「何度も同じ手を!!」バッ

ピチュンッ ピチュチュチュチュン ピチュチュチュチュュン

セシリア「そこ!!」バシューンッ



ドガアァァァァンッ


三年生「同じ手は通用しません!!」ジャキッ

バシュウゥゥゥゥゥンッッ

三年生「う、うおぉぉぉッッ……そこです!!」

ズガガガガガッ

セシリア「ビットがッ……!?しかし!!」

バシューンッ バシューンッ

三年生(これでブルーティアーズはビットを全てを失いました!!)

三年生「おおぉぉぉぉぉッッ!!」ビュゴオォォォッッ

セシリア「!?」バシューンッバシューンッ

セシリア(レーザーを避けずに!?止められない!!)

ガギンッッ

セシリア「うあッ……!!」

三年生「はあぁぁッ!!」ビュッッ

セシリア「くうッ!!」ガシィッ

セシリア「この!!」チャキッ ヒュッッ

三年生「ッ!!」バシィンッ

セシリア「ッ……!!」ポロッ

三年生「おおッッ!!」ドゴッッ

セシリア「うあッッ!!」

三年生「はあぁぁぁぁぁッ!!」バッ


ガギャギャギャギャギャギャギャンッッ!!


セシリア(……ライフルと……インターセプターが……それにもうミサイルもビットも……ありません……)

セシリア(もう戦う術が……私には……ありません……)

セシリア(私の負け……ですね……)

セシリア(やはり私は……まだあの人には届かないのですね……)


カサッ


セシリア「!!」

セシリア(いいえ、まだ……私は……負けてはいません)

セシリア(ブルーティアーズはまだ……戦えます!!)

セシリア「ブルー……ティアーズッ……!!!」


『BLUETEARS FULL-DRIVE』


キュイィィン……バシュウゥゥゥゥゥンッッ!!


三年生「ビームが曲がった!!?うおぉぉぉぉッッ……!!」

三年生(これさえ……これさえ凌げれば……!!)

ピキピキピキ

三年生「そんな!!?」ピキピキピキ

三年生「ばッ、馬鹿なッ……!?ソリッドシールドが……!!?」


バキィンッッ


三年生「うああぁぁぁぁぁぁッッ!!」

セシリア「やった……砕けた……!!」

三年生「まさか……あなたは……最初からこれを狙って……」

セシリア「あなたのソリッドシールドは……今まで一度も交換した事はありません……」

三年生「その通りです」

セシリア「しかし、いくら頑強な盾だったとしても『絶対に壊れない』という事はありません……いつか必ず壊れる時が来ます……」

セシリア「今日の戦いに至るまで蓄積されてきたダメージに加え……ビットでは防ぐ事の出来なかった私の攻撃……」

三年生「あの無茶な接射や……ミサイル攻撃……私を狙ったビーム攻撃も……」

セシリア「はい、そうです……持てる火力を集中させ、あなたのソリッドシールドを破壊する為に……」

三年生「私の傲りが、仇になりましたか……」

三年生「見事です……セシリア・オルコット」

セシリア「ありがとうございます……ですが」


『ENERGY EMPTY』


セシリア「私の負け、です……」

三年生「いいえ、勝ったのは貴女です」

三年生「私の傲りである……ソリッドシールドを打ち砕いたのですから」

セシリア「しかし!」


パチ…パチパチパチ……パチパチパチパチパチパチ!!


三年生「ほら、この場にいる誰もが貴女を勝者だと認めていますよ」

セシリア「み、皆さん……」


清香「いいぞー!!セシリアさーん!!」

本音「よっ、日本一ぃ~!!」パタパタ

静寐「格好良かったよー!!」

箒「良い戦いだった……」

クロエ「御見事です」

一夏「……」グッ


パチパチパチパパチパチパチパチパチパチパチパチッ!!


セシリア「皆さん……ありがとうございます!!」

セシリア「え……あっ……」フラッ

三年生「おっと」トンッ

セシリア「あ、ありがとう……ございます……」

三年生「言ってたでしょう?貴女は無茶をし過ぎです」

セシリア「……」

三年生「まるで、昔の私を見ているようですがね……」クスッ

セシリア「えっ……?」

三年生「意外ですか?」

セシリア「は、はい……少し……」

三年生「よく言われます」

三年生「……まずはピットへ戻りましょうか」

セシリア「はい」


「セシリアさん!大丈夫!?」

セシリア「はい……見た目より、幾分か軽いものですから」

「良かった……本当に良かった……セシリアさん……」グスンッ

セシリア「そ……そんな……泣かないでくださ……い」オロオロ

「だって……あんなに頑張ってるのに……私……ここで見てる……事しか出来なくて………」グスッ

三年生(……素晴らしき隣人ですね)

三年生(実に、美しい……)

一夏「……」

クロエ「……」チラッ

一夏「何だよ」

クロエ「いえっ……何でもありません……」

一夏「流石の俺でもここは茶化さないよ」

クロエ「そ、そうですね……」


「ご、ごめんね……本当は……笑顔で迎えなくちゃって……思ってたのに……駄目だよね……」

セシリア「そんな事はありません!」

一夏「そう、セシリアの言う通り。この中で一番セシリアを信じ続けてたんだからな」

三年生「ほう……」

セシリア「私を……」

「お、織斑くん……」

一夏「俺とクロエはもっと早く戦いに水を指せてたんだよ。でも『セシリアさんはまだ負けてない』って俺達を止めてくれた」

一夏「誰よりも、セシリアの強さを信じてたから」

クロエ「その通りです。一部始終を知らずに、冷静さを欠いていた私達には出来なかった事です」

「やめてよ……そんな事ないよ……」

三年生「いいえ、貴女は誇るべきです」

三年生「この……薔薇の様な美しさを」スッ

「えっ……あ、ありがとうございます……」

三年生「いえ、礼など結構です」

(赤い薔薇……これが私かぁ……ちょっと恥ずかしいな)テレッ

三年生「フフフッ……」

セシリア(何故こちらまで恥ずかしくなるのでしょうか……)

一夏(独特な人だな……何か宝塚とかにいそうだな)

クロエ(何処から薔薇を……?)

三年生「そして、オルコット。あなたにはこの蒼い薔薇を」スッ

セシリア「私に……ですか?」

三年生「そうです。この薔薇は貴女にこそ相応しい」

セシリア「ありがたく、頂戴させて頂きます」

セシリア(私のブルーティアーズと同じ色の薔薇……これを……私に……)

三年生「その薔薇の花言葉は奇跡、神の祝福ーーー」

三年生「不可能な事を成し遂げる」

セシリア「!」

三年生「しかしその蒼い薔薇の美しさも、闘う貴女と貴女のブルーティアーズの前には霞んで見える事でしょう」

三年生「それ程までに、貴女は美しい」

セシリア「ありがとうございます!」ペコッ

三年生「いいえ、事実を言ったまでです」

「とっても綺麗だねっ。セシリアさん」

セシリア「ええ、本当に綺麗な薔薇です……」

セシリア(あの人が……初めて認めてくださった……)

セシリア(私が……美しい……)

セシリア「ふふっ♪」

三年生(そうです。蒼い薔薇よりも、です)

三年生(私は貴女に、己が中に蔓延っていた傲慢さを教えて頂いたのですから……)

一夏(そういえば青い薔薇って絶対に無理だって言われてて、作るのにかなり手間取った奇跡の代物って聞いたな)

クロエ(一体何本薔薇を持っていらっしゃるのでしょうか……?)ウーン

三年生「クロニクルさん、織斑さん。貴方達にはこれを」スッ

クロエ「あ……ありがとう……ございます……」

一夏「えっ、俺もですか?」

三年生「ええ、そうです。貴方達にです」

一夏「ありがとうございます……」

一夏(白い薔薇?何で俺とクロエに?)

クロエ(何か意味あっての事なのでしょうか……)

三年生「それでは、皆さん御機嫌よう」

一夏「ーーーって、あの人解説もなしに帰っちゃったよ」

クロエ「……」ジーッ

セシリア「あの人の事ですから……花言葉に意味があると思いますわ」

「えーっと、白い薔薇の花言葉は純潔と純粋」

一夏「は、はあ……純潔と純粋……?」

「深い尊敬」

クロエ「尊敬、ですか……?」

「えっ」

セシリア「どうかなさいましたか?」

「あのね……最後の一つなんだけどね……花言葉はーーー」



三年生(私は貴方に相応しい)

三年生(そう、いつの日か貴方達とも……)

三年生「フフフ……」

一夏「うわぁお……」

クロエ「……」

セシリア「宣戦布告、と受け取っていただいても結構ですが……あの人の意図は……」

一夏「闘争心の塊かよ……」

クロエ「人の内面は外見に伴わないものですね……」

一夏「おう、確かにそうだよな。セシール?」ニヤニヤ

クロエ(また始められましたか……)

セシリア「セ・シ・リ・ア!ですわ!」

一夏「ごめんなー昔お前が名前教えてくれた時にセシールって聞こえてたんだよー日本人耳悪いからさーごめんなー」

「昔?織斑くんとセシリアさんって知り合いだったの?」

一夏「よくぞ聞いてくれた。そう、あれは丁度こんな日のーーー」

セシリア「あー!ああー!旅行に来た時に偶然遊んだだけですわ!」

一夏「おーそうだなー楽しかったよなーあっちこっち駆け回ってなー」

セシリア「ええ、楽しい思い出ですわ」ニコッ

(聞いちゃマズイ事だったのかな……)

~医務室~

「お大事に、セシリアさん」フリフリ

セシリア「ええ、ありがとうございます」

バシュンッ

一夏「リンゴとか食うの久しぶりだな」シャクシャク ショリショリ

クロエ「食べながら皮を剥くのは危険かと思いますが……」

セシリア「……」

一夏「食うか?」シャクシャク ショリショリ

セシリア「はあ……結構です」

一夏「何だよ。そのため息は」ショリショリ

セシリア「別に、何でもありませんわ」

一夏「調子、戻ってきたな」

セシリア「戻るも何も……私はいつも通りでしたわ」

一夏「はいはい、そうでしたね」ショリショリ

クロエ「……」モグモグモグモグ

一夏「良かったな。あれだけやられたのに二、三日安静にしてるだけで」

セシリア「あれだけ、とはどういう意味ですの?」

一夏「……食ってかかる奴だな」

セシリア「当然ですわ」ムスッ

一夏「何で怒ってるんだよ」

セシリア「あなたもご自分の名前を聞き間違える失礼な方がいらっしゃれば分かると思いますが?」

一夏「仕方ないだろ。あんなボソボソとネイティブな発音で名前聞かされてもガキは分からないだろ」

セシリア「……全く、今まで私がどんな気持ちでいたのかも知らずに……」

一夏「そこはお互い様、って事で」

セシリア「まさかあなたでしたとは夢にも思いませんでしたわ」

一夏「それもお互い様」

セシリア「はあ……」

セシリア「でも……」

ギュッ

セシリア「あなたがいなければ、私はあの人に何も出来ませんでしたわ」

一夏「そうか?いつも通りだったんだろ?」

セシリア「いいえ、あの最後の一撃もこのお守りがあったから……」

セシリア「あの時……あの人の攻撃を受け、全ての武器を失って……落ちていく中もう駄目だと思いました……」

一夏「……」

セシリア「でもその時、このお守りが私の目に入りました」

セシリア「そして……私はまだ負けていない、まだ戦える……そう思えたのです」

セシリア「ブルーティアーズも、その気持ちにに応えてくれました」

一夏「……お父様にちゃんと礼言えよ。後、手元が狂って紐が長めになって正解だったよ」

セシリア「もうっ……少しは素直になられたらどうです?」

一夏「俺はいつだって素直だよ。眠い時は特に」

セシリア「ありがとうございました」ペコッ

一夏「やめてくれよ……調子狂うなあ」ポリポリ

セシリア「何故です?あなたは人に感謝されるだけの事をしたのですから、当然の事ではありませんくて?」

一夏「いや、まあ……確かにそうだけどさ……」チラッ

一夏「あっ、ヤッベェ!もうこんな時間だ!ごめん、セシリア!俺今から約束あるからさ!」

セシリア「えっ……ええっ?」

一夏「ほら、クロエ行くぞ!」グイッ

クロエ「は、はい?約束などーーー」

一夏「ヤバイヤバイ、時間に遅れる!!本当にごめんな!!何か持ってまたお見舞いくるからさ!!じゃあな!!」ドタバタ

クロエ「そ、それではまたーーー」


バシュンッ


セシリア「……」ポカーン

セシリア「もうっ……何て素直でない人なのでしょう!」ムスッ

セシリア「でも……ふふっ♪」

一夏「あ"ーこそばゆかったー」

クロエ「いっ、一夏様?約束とは何でしょうか……?」

一夏「ないよ。そんなもん」

クロエ「で、では何故……」

一夏「お前もじゅーぶん知ってるだろ?」

クロエ「何がですか?」

一夏「ッ~……」

クロエ「???」キョトン


千冬「おい」


一夏「ハイッッ!!?ねッ、姉ちゃんッッ!!?」ビックウゥッッ

クロエ「千冬様!!?」

千冬「姉ちゃんでも千冬様でもない。織斑先生だ」

クロエ「申し訳ありません……!」ペコリ

一夏「すいません!!何の御用でしょうか!?」

千冬「ステルス状態だったとはいえ学園内外でのISの無断使用。今回はセシリアに免じて目を瞑ってやる」

千冬「二度目はないぞ。いいな」

一夏「肝に命じておきます……」

クロエ「はい……」

千冬「分かればいい。ではな」

一夏「あれ?織斑先生、そっちは医務室……」

千冬「一組の生徒が怪我をしたんだ。担任である私が見舞いに行かなくてどうする」

一夏「指、切ったら駄目ッスよ」

千冬「黙れ」

一夏「……はい」

千冬「……誰が切るものか」ボソッ

一夏「はい?」

千冬「ではな」

一夏「あー何か不安の種残していったー」

クロエ「千冬様も……皮剥きが苦手なのですか……?」

一夏「下っ手くそだぞ。同じ刃物なのにねえ」


バシュンッ

千冬「失礼する」

セシリア「おっ、織斑先生!?」

千冬「何だ。担任である私に来られるのがそんなに嫌か」

セシリア「いえ、そうではありませんが……その……意外だったもので少し……」

千冬「まあ、そんな事などどうでもいい」ドカッ

千冬「どうだ。リンゴでも剥いてやろうか」ガサゴソ

セシリア「お気持ちは嬉しいのですが……結構です……」

千冬「……」ピタッ

千冬「そうか……」ガサゴソ

千冬「……そうか」

セシリア(な、何か申し訳ない気持ちがしますわ……)

セシリア「あの……それで何の御用でしょうか……?」

千冬「良くやった。見事だったぞ」

セシリア「あ、ありがとうございます……」

千冬「……」

セシリア「……」

セシリア「そ……それだけですか?」

千冬「ああ、それだけだが?」

千冬「それとも何だ。たかだか相手の武装を一つを破壊するので精一杯で。しかもそれだけでエネルギー切れを起こす様な未熟者を、この私が、試合内容の一切合切を拍手喝采するとでも思ったのか」

セシリア「いえ……思ってません……すみません……」

千冬「そう気を落とすな。格上相手にお前は良くやったのは事実だ」

千冬「そうだろ?格上相手の自信を挫き、戦意を削いだんだ。それだけでも今は充分だ」

セシリア「あ……ありがとうございます!」

千冬「精進しろよ、オルコット。いずれ盾だけではなく相手すらも打ち砕く程にな」

セシリア「はい!」

千冬「その為に……まずは武器の展開速度でも上げる事だな」

セシリア「……はい」

セシリア(流石は一夏さんの姉君ですわ……)

千冬「そういえば……何やら私のお守りが大変世話になっていたそうだな」

セシリア「はい、こちらです」スッ

千冬「いらん」

セシリア「しかしーーー」

千冬「私が一夏にやって、一夏がお前にやったんだ。それはお前の物だ」

セシリア「そ、そうでした……」

セシリア「時にこのお守りは……何か由緒正しき物なのですか?」

千冬「昔家の倉庫で見つけた物だ。最早御利益があるかどうかすら分からん程の物だ」

セシリア「ゴ、ゴリヤク……?」

千冬「しまった……そこからだったか……」

~食堂~

一夏「こうして、英国女騎士乱闘薔薇贈呈事件はその幕を閉じたのである」

箒「人の決闘を乱闘扱いする奴がいるか、馬鹿者」

一夏「何でだよ。決闘にしたら事件にならないだろ」

箒「事件にするな」

一夏「充分事件だったと思うけどなあ」

箒「お前の中ではな」

一夏「取り乱してた奴がなーにを仰いますか」

箒「ふんっ……」サッ

一夏「あっ!お前こんにゃくいれるなよ」

箒「うるさい、食え、好き嫌いをなくせ」

一夏「正確に言うならば嫌いっていうかあんまり好んで食べないっていうか……」

クロエ「一夏……はコンニャクが苦手なのですか?」

一夏「昔食べた時に喉に詰まらせたんだよ。それ以来ちょっとな」

箒「お前は落ち着きがないからだ」

一夏「そう言うお前はガキの時にお転婆過ぎて俺入ってる風呂にーーー」

箒「姉さんが!突撃してきて災難だったな。あの時は」

一夏「……」

箒「何だ。その顔は」

一夏「いや、別に……何でもありません」

クロエ「家族で入浴するのは当然なのでは?」

箒「はあ……」

クロエ「???」

一夏「あのね、束姉ちゃんから教わった事を何でも鵜呑みにしちゃあ駄目だよ?束姉ちゃんたまにとんでもなく突拍子のない事言うから」

クロエ「そ、そうなのですか……分かりました……」

楯無「あらあら~いい事言うじゃないクロエちゃん」ムギュ

一夏「わー最近来ないなー思ってたら楯無さんこんばんわー」

クロエ「こ、こんばんわ……」

箒「こんばんわ」

楯無「はい、三人ともこんばんわ~」

一夏「で?何の御用でございましょうか?愛しの妹さんですか?」

楯無「ん~そうねぇ~?当たってるけど、外れてるわね~」

一夏「は、はあ……さいですか……」

楯無「知・り・た・い?」

一夏「知りたいのは山々なんですけど……今の体勢はちょっと……」

楯無「何故かしら?もしかしてお姉さんの魅力にメロメロになっちゃうから、かしら?」

箒(あの三人が来ないと思ったらこういう事だったのか)チラッ


本音「おーい!しーのん!おりむー!くろにーん!」ブンブン

静寐「……」フリフリ

清香「……」フリフリ

楯無「試合への割り込みと代表生に対するあの物言い、お姉さんますますあなたに惹かれちゃった……なんてね」クスッ

一夏「は、はあ……さいですか……」

楯無「つれないわね。このっ」ツンッ

一夏「どうにも魚じゃないもので」

一夏「で?楯無さんの後ろにいらっしゃいます簪さんをば我々はいかがいたしますれば?」

楯無「よくぞ聞いてくれたわね。ほら、簪ちゃん♪」

簪「お……お姉ちゃん……」

一夏「これだけ言うのもあれだけど、自分の意見をーーー」

楯無「だーめっ」ピトッ

一夏「……」

楯無「その手は食わないわよ?」

一夏「別に狙ってませんけど、ってそんなに逃げなくても大丈夫ですから、本当に何にもしませんから」

簪「……本当?」

一夏「何だこの信用の無さ」

箒「当然の報いだ」

クロエ(煮卵が……取れません……)ツルッ

一人のヒロインにどんだけレス使ってんだよハゲ
続きはまた(戒め)明日で


-----

セシリア母『セシリア、どうしたのですか』

セシリア「お母様、これをご覧下さい」

セシリア母『こッ、これは……!?』

セシリア「ご存知ないのですか?」

セシリア母『あなた!少しこちらへいらしてください!』

セシリア父『どうしたんだい?そんなに怒って……』

セシリア母『これはどういう事なのですか!?』バンッ

セシリア父『ああ、これか。ちょっとセシリアを驚かせてやろうと思ったんだけど……マズかったかい?』

セシリア母『何故私に黙っていたのです!』

セシリア父『だって君に教えてしまったら、うっかり口を滑らせてしまうだろ?』

セシリア母『そんな事はありません!』

セシリア父『それにしても、セシリアがバーストとフルドライブを使えたとはね……』

セシリア父『ん?これセシリアと通話してるのかい?おーい、セシリアー?』

セシリア「お父様、説明願えますか?」

セシリア母『そうです。説明してください』

セシリア父『そんな二人がかりで言わなくても……分かったよ。説明するよ』

セシリア父『八つのビット全てを収束させ、巨大なビームを形成するバーストモード。これは元々ビット攻撃に欠けていた瞬間火力を補う為のものではあるが同時に、複数のビットを使用不可能にするという欠点もあるモード』

セシリア父『これの発現が遅かったのは……機体に馴染むのに時間がかかっていたのかもしれないね』

セシリア父『フルドライブは……全ビットの出力を最大まで引き上げ、発射されるビームは恐らく操縦者の思い通りに湾曲するのではないか……とは思ってはいたんだけどね』

セシリア母『開発者であるあなたが、そんな曖昧な理解でどうします』

セシリア父『これはブルーティアーズ自身が作り出した機能なんだ。だから詳しい事は私にも分からなかったんだ』

セシリア母『そして、セシリアはそれを』

セシリア「発現させた、という事ですね」

セシリア父『そういう事になるかな』

セシリア母『一切の説明もなくこんな新機能を実戦で、テストもなしに使わせるとは何事ですか』

セシリア母『しかも、あのモルドレット卿相手にしていたといいますのに』

セシリア父『バーストモードは何度も何度も失敗を重ねて作り出したから託したんだ。実際、役に立っただろう?』

セシリア「はい、その通りです」

セシリア母『もし万が一、ビットが暴発でもしてセシリアが……』

セシリア父『その追及を行うのなら、私達はISを使う事を放棄せざるを得なくなるよ』

セシリア母『……』

セシリア父『それにしても凄いじゃないかセシリア、あのモルドレット卿に勝つなんて』

セシリア母『よくやりました。セシリア』

セシリア「お父様のおかげです」

セシリア父『ここを見てみなよ。フルドライブでビームをソリッドシールドへ一転集中させて破壊し、更には操縦者まで攻撃したよ』

セシリア母『これ程とは……よくここまで扱えましたね』

セシリア「この時は……無我夢中でしたから」

セシリア母『モルドレット卿の猛攻を受けても尚、戦う意思を失わなかったあなたに、ブルーティアーズが応えてくれたのでしょう』

セシリア「確かにブルーティアーズが私に応えてくれたのかもしれません。しかし、私が戦う意思を失わなかったのはこれのおかげです」スッ

セシリア母『そのお守りが、ですか』

セシリア「はい!」

セシリア父『十年前の彼に……また感謝しないといけないね』

セシリア「いえ、もう感謝はしました」

セシリア父『どういう事だい?』

セシリア母『まさか……彼に会ったのですか?』

セシリア「はい、同じ学園の同じクラスにいる。ブリュンヒルデ、織斑千冬の弟、織斑一夏でしたから」

セシリア母『織斑一夏……あの少年が……』

セシリア父『本当だ。ほらこの画像……十年前とほとんど変わらない。むしろ男らしくなっている』

セシリア母『……成る程』



セシリア母『セシリア、彼を必ずものにしなさい』


セシリア「お母様!?」

セシリア父『やっぱりか……』

セシリア母『当然でしょう。あなたがあれ程まで恋い焦がれていた殿方が、この織斑一夏なのでしょう?』

セシリア「そ…そうですが……」

セシリア母『ならば学生の間に首根っこを掴んででも自分の方へと振り向かせ。卒業後は首に縄を付けてでも我がオルコット家へ迎え入れれば良いだけの事です』

セシリア「そ……そんな……」

セシリア父『セシリア、一般人だった私が何故名門オルコット家の婿養子になったのかを教えよう』

セシリア父『それは私が、捕まったからなんだよ』

セシリア「捕まった……?」

セシリア父『そう、素敵なお姫様にね』ソッ

セシリア母『ふふふっ、そうですね。あなた』

セシリア父『少し昔話をしようか。大学生の頃、私は色々なサークルの助っ人をやりながらも幼い頃から続けていたフェンシングに打ち込んでいた』

セシリア父『ある日、フェンシング女子優勝者の彼女がやってきてこう言ったんだ。私の相手になるような者はいませんの?とね』

セシリア「お母様がそのような事を……?」

セシリア母『若気の至り、というものです……そして、この人が私の前に渋々出てきたのです』

セシリア父『当時彼女は様々なところへ殴り込みをしていたものだから、皆まさかとは思っていたが実際彼女を目の前にすると中々出ていけない』

セシリア父『そうしている内に何故か私がサークルを代表して出る羽目になってね。彼女と一騎討ちさせられたんだよ』

セシリア母『私はふざけた人が出てきたものだと思いました。助っ人の噂は常々耳にはしていましたが、実際見てみれば浮わついた冴えない男性だ、とね』

セシリア母『しかし、結果は開始数秒で私の負け』

セシリア「えっ……?」

セシリア父『驚きのあまりしばらく立ち尽くし、エペを投げ捨て、余程悔しかったのか涙を目に浮かべながら私の負けですわ、と言って立ち去った』

セシリア母『愚かでした。私がこんな男に断じて負けるはずがない、そんな傲慢な考えが生んだあまり軽率で、短絡的で、恥知らずで、無礼な行動でした』

セシリア「意外です……お母様がそのような事をなさったなんて……」

セシリア母『間違いは万人にあり得る事です。故に人はそれを正さねばならない義務があるのです』

セシリア「義務……」

セシリア父『話を続けるよ。それから一ヶ月後、お嬢様泣かせの渾名を貰い、彼女のファンクラブのメンバーに何かと勝負を挑まれるようになっていた私の前に、再び彼女が現れて私に決闘を申し込んできたんだ』

セシリア父『もちろん私は断らなかった。決闘が始まると彼女は一ヶ月前とは比べものにならない見事な剣撃で、私と激しく打ち合い続け、最後にはお互いのエペが折れてしまい結果は引き分け』

セシリア父『そして、それが君の猛アピールの始まり、だったんだよね?』

セシリア母『ええ、その通りです。結果こそ引き分けでしたが私はあの決闘に充足感を感じていました。それと同時に……あなたという人に強く、心惹かれていました』

セシリア父『それからもう大変だったんだよ、セシリア。彼女ったら何かにつけて私を追いかけてくる、迫ってくるで……休日には私のいる寮にまで来るようになったんだからね』

セシリア「ふふふっ、お母様ったら……」

セシリア母『当然です。あなたという人を深く知り、私をより知って貰いたかったのですから』

セシリア父『家に招待する、なんて言われた時はもう心臓が口から出そうだったよ』

セシリア母『何ですか、もう……あの時、私はあなたが喜んでいるものだとばかり……』

セシリア「交際はいつ頃から始まったのですか?」

セシリア父『そうだね……気が付いたら始まっていたね。今思えば……全て君の思惑通りだったのかもしれないね』

セシリア母『ええ、結果としては、ですが』

セシリア母『それから私達は二人で多くの時間を共有し、共に笑い、怒り、泣き………様々な事を見て、聞いて、経験しました』

セシリア父『そして数年たったある日、私はこんな事を考えたんだ。プロポーズをしよう、とね』

セシリア父『しかし、大学を卒業しエンジニアとしての道を進んだ一般人の私が、名門オルコット家の令嬢である彼女に普通に指輪を渡すだけでは何とも心許ない』

セシリア父『だから彼女が最も得意とするビッグ・ボア・ライフルで勝利し、満を持して指輪を渡す事にしたんだ。もちろん、御父様や御母様も承認してくださった』

セシリア母『幸いにも、ライフルは私があなたに同じ競技をしてもらいたい一心で、専用の物を作らせていましたから練習するのには困らなかったでしょう』

セシリア父『いいや、大変だったんだよ?私が練習にしている事や、弾薬を買っている事が絶対に君の耳に入らないようにしておいてもらわないといけなかったからね』

セシリア父『そうやって三ヶ月程たった頃かな、彼女のエントリーした国内で行われた男女ビッグ・ボア・ライフルの大会に私もエントリーし、私は順調に勝ち抜いていった』

セシリア母『最初は私も決勝戦来れるとは思っていませんでした。しかし、その決勝戦で私はあなたから決闘を申し込まれ、それを快諾しました』

セシリア父『互いに持てる力の全てを出し切り、結果は私の勝利……呆然とする君へ私は指輪を差し出してプロポーズをした』

セシリア父『あまりの出来事に君は泣いていたね。今でも、あの時の君の顔を良く覚えているよ』

セシリア母『やめてください……恥ずかしい』

セシリア父『そうして私達は結婚し、御父様の呆気ない一言で私は婿養子となり、オルコット社の一流エンジニアとして働き始めた』

セシリア母『社長になる事も出来たものを何故……』

セシリア父『言っただろう?私は社長という柄ではないよ』

セシリア母『そしてセシリア、あなたが産まれたのです』

セシリア父『君が産まれてきてくれて、こうしてどんどん成長していくだけで私達は嬉しいよ』

セシリア母『ええ、そうです』ニコッ

セシリア「お母様……お父様……」

セシリア父『オルコット家なんて関係ない。セシリア、君は君の思うがままに生きればいいんだよ』

セシリア「しかし、お母様は私をオルコット家の次期当主として……」

セシリア母『それは誇り高く、人として恥じぬ行いをし、成すべきを成す立派な女になりなさいという意味です』

セシリア母『あなたが望むのなら、無理に次期当主になる必要はありません。好きな道へと進みなさい』

セシリア「そ、そうでしたか……」

セシリア父『どうやら……余罪が色々と出てきそうだね』

セシリア母『失礼な事を、余罪とは何ですか』

セシリア父『ブルーティアーズのデータ収集はあまりに気にしなくていいよ。その学園で得られるものは充分過ぎるから』

セシリア「はい……分かりました」

セシリア母『あなたはそうやって……』

セシリア父『君は少し心配性過ぎるんだよ。セシリアなら大丈夫だよ』

セシリア母『そしてセシリア、あなたが産まれたのです』

セシリア父『君が産まれてきてくれて、こうしてどんどん成長していくだけで私達は嬉しいよ』

セシリア母『ええ、そうです』ニコッ

セシリア「お母様……お父様……」

セシリア父『オルコット家なんて関係ない。セシリア、君は君の思うがままに生きればいいんだよ』

セシリア「しかし、お母様は私をオルコット家の次期当主として……」

セシリア母『それは誇り高く、人として恥じぬ行いをし、成すべきを成す立派な女になりなさいという意味です』

セシリア母『あなたが望むのなら、無理に次期当主になる必要はありません。好きな道へと進みなさい』

セシリア「そ、そうでしたか……」

セシリア父『どうやら……余罪が色々と出てきそうだね』

セシリア母『失礼な事を、余罪とは何ですか』

セシリア父『ブルーティアーズのデータ収集はあまりに気にしなくていいよ。その学園で得られるものは充分過ぎるから』

セシリア「はい……分かりました」

セシリア母『あなたはそうやって……』

セシリア父『君は少し心配性過ぎるんだよ。セシリアなら大丈夫だよ』

セシリア母『そうでしたね……何故なら、私の娘ですから』

セシリア父『ああ、君と私の娘なんだから』

セシリア母『私は学生時代……人として学ぶべき多くの事を学び、夫となるこの人と出会い、更に多くの事を学びました』

セシリア母『私と全く同じ生き方をしろ、とは言いません。しかしあなたにも、そんな素晴らしい学生生活を送って欲しいのです』

セシリア「はい!お母様!」

セシリア母『まずは何としても、織斑一夏を捕まえなさい。いいですね』

セシリア「はい!」

セシリア父『結局、そうなるんだね……』

セシリア母『当然です。十年前からあなたが思い描いていた通りの、素敵な殿方なのでしょう?』

セシリア「はい……少し素直ではありませんが……それを補って有り余る強くて優しい……素敵な殿方です」

セシリア母『なら大丈夫ですね』

セシリア父『私はセシリアが彼に君と同じ事をしないか心配になってきたよ』

セシリア母『あなたは心配性過ぎます』

セシリア父『自分が何をやったのか覚えているからそう言えるのかい?』

セシリア(私が一夏さんと恋人に……)

セシリア母『どれがおかしかったと言うのです。決闘の次の日のランチで突然隣に座った事ですか?』

セシリア父『それもあるよ。でもまだあるだろ?朝、私の寝ている寮にまで起こしに来た事もあったじゃないか』

セシリア(あんな事や……こんな事まで……ファーストキスも……)

セシリア母『朝から私の顔が見れて嬉しくなかったのですか?』

セシリア父『いや嬉しかったよ。でも寮の皆が君が色々と気にしなさ過ぎるからすごく驚いてたんだよ?後、常日頃私の行動を監視させていただろ?』

セシリア(そしてお父様やお母様に認められ……オルコット家に……)

セシリア母『当然です。あなたにもしもの事があった場合には護衛も兼ねていましたから』

セシリア父『大袈裟過ぎるよ……しかも君、私がよく話す女の子の事までも徹底的に調べてただろ?』

セシリア(私達の子供が産まれて……名前はどうしましょうか……)

セシリア母『もしもの場合に備えて予防線は張っておかなくては安心して眠れもしません。それ程までに、あなたは引く手余多でしたから』

セシリア父『今でも彼女達が君と仲良くしてくれてるのが不思議なぐらいだよ』

セシリア父『セシリア、聞いてたかい?彼への猛アピールも程々にね』

セシリア「は、はいっ!大丈夫です!」

セシリア(どうしましょう……聞いてませんでしたわ……)

セシリア母『夏休みになったら一度こちらへ帰ってきなさい。彼を連れて来れるのならそうしなさい。協力は惜しみません』

セシリア父『それは一旦置いておいて……御父様や御母様、父さんや母さん、久しぶりに家族皆で料理を食べに行こう』

セシリア父『学校の話や彼の話をたくさん聞かせてくれないかい?』

セシリア「もちろんです。楽しみに待っててください」

セシリア父『それじゃあセシリア、お休みなさい』

セシリア母『お休みなさい。セシリア』

セシリア「お父様、お母様、お休みなさい」

ピッ

セシリア「……」ギュッ

セシリア(一夏さん……私の……白馬の王子様)

セシリア「ふふふっ♪」

セシリア母「織斑一夏、ですか……」

セシリア父「彼を探して何度私達は日本に行ったかな」

セシリア母「年間二回のペースでしたから、セシリアがISを使い始めた十五才までで十八回……しかし彼は見つからなかった」

セシリア父「なのにまさかこんな形で再開するとはね……人の縁というのは分からないものだ」

セシリア母「ブリュンヒルデ、あの織斑千冬の弟……どのような少年でしょう」

セシリア父「私はこの目で見るのが楽しみだよ。十年前、セシリアが迷子になって気が立ってた君に物怖じ一つせずに話しかけたんだからね」

セシリア母「それでいて、言葉も通じない怯えるセシリアを励まし続けていたのも彼ですから」

セシリア父「セシリアの御眼鏡に適ったんだ。きっと素晴らしい少年なんだよ」ソッ

セシリア母「ふふっ、そうですね……心配など不要ですね」ギュッ

セシリア父「さて、セシリアはどれぐらいで彼を家に招くのかな」

セシリア母「今に招いて来ますよ」

セシリア父「そうだろうね。昔の君にそっくりだからね」

一夏「おぉう……」ゾワワッ

クロエ「どうかなさいました?」

一夏「こういうのを虫の知らせって言うんだろうかこう……何かが動き出したような気が……」

クロエ「虫の知らせ、とは何ですか?」

一夏「悪い予感がする、って事だよ」

クロエ「そうなのですか……虫の…知らせ……」

一夏「近々何か起きるのかな……」

一夏「俺って虫が良いからこういうのだけは当たるんだよな……あーやだやだ。世の中ラブアンドピース」

クロエ「……」

一夏「おーい、クロエ?」

クロエ「は、はい?何でしょうか?」

一夏「真面目に考えるなよ」

クロエ「す、すいません……」

一夏「今頃セシリアは父さんにお礼言ってるんだろうな……」

クロエ「それがどうかしたのですか?」

一夏「……」

一夏「いや、何でもない」

クロエ「?」

一夏(父さん母さんがいて、お爺さんお婆さんがいる……それってどんな感じなんだろうな……)

一夏(セシリアの家族……セシリアがいなくなって寂しがってるんだろうな……)

一夏(束姉ちゃんや、箒だって……)

一夏(姉ちゃんなんか、俺にちょっと会えないだけで寂しい寂しいって言うんだからな)

一夏「本当、姉バカだよな……」ボソッ

クロエ「千冬様の事ですか?」

一夏「……」

ズイッッ

一夏「姉ちゃんには絶っっっ対に言うなよ」

クロエ「わ…分かりました……」

一夏「それにしても凄いよな。この薔薇……二日も花瓶に入れてないのにな」ツンツン

クロエ「全く枯れる気配がしませんね」

一夏「良く育った薔薇なんだろうな……最初は造花かと思ったけど」

クロエ「込められた意味を……その身で示しているのでしょうか……」

一夏「私はあなたに相応しい、か」

クロエ「いずれ彼女とも戦われますか?」

一夏「嫌でもそうなる気がするんだけど」

クロエ「また虫の知らせ、ですか」

一夏「かもな」

クロエ「……」

一夏「どれどれ円卓の騎士の……えーなになに、モルドレット卿は……」

一夏「あっ」

クロエ「どうかしましたか?」

一夏「実家、薔薇農園だ」

クロエ「な……なるほど……それで薔薇をあれだけお持ちなのですね……」

一夏「華麗なる薔薇の騎士、って……さりげなく実家の宣伝してるし……」


-----

「お嬢、パス」ヒュッ

セシリア「えいっ!」パシッ ヒュッ

「ッシャアアァァァ!届かねぇ!!」

ピーッ

「チェイス!」

「試合終了!」ピピーッ

「最後の最後でどんでん返し。やったね、お嬢」トンッ

セシリア「いえ、あなたのおかげです」

「またまたご謙遜を」

エース「どうやらいい感じに吹っ切れたみたいだね。お嬢ちゃん」

セシリア「そうですか?」

エース「ああ、そうだよ」

エース「ま、何はともあれあんたがいちいち萎れてなくて何よりさ」

「ついでにラクロスに力入れてくれた方がもっと何よりなんだけどね」

エース「こら、余計な事言うんじゃないよ」

「へい、お頭」

エース(確かに、これだけの選手を放っておくのは勿体無いね)

エース「悪いね」

セシリア「いえ、事実ですから」

エース「頭固すぎんのよ、あんたは。もっと馬鹿になっても損なんてありゃしないよ?」

「へい、キャプテン」

エース「あんたは馬鹿過ぎ」

「何でだぁ……」

セシリア「馬鹿に……ですか?」

エース「そう、この前の試合の時みたいにね」

一夏「おー調子出てるみたいだなー」

クロエ「あ、あの……一夏様……?」

一夏「相変わらずラクロスって恐ろしいな……」

クロエ「一夏様……?」

一夏「やっぱり軽いラフプレーは多発するんだな……流石はラグビーとかの親戚」

クロエ「いっ、一夏様!」

一夏「聞こえてるって、これで二度目だぞ?」

クロエ「返事をしてくださいよぉ……」

一夏「はいはい、分かったよ。それで、何だよ?」

クロエ「千冬様に……ISの無断使用は禁止だと言われていましたよね……?」

オリムラクーン!

一夏「部活頑張れよー!」ヒラヒラ

クロエ「ちょっとぉ……!」

一夏「それも言っただろ?箒ならまだしも姉ちゃんは忙しいからありえないって」

クロエ「そ……そうだと良いのですが……」

一夏「今度こそ山田さんが現れたりしてな」

クロエ「今回は……誰も来ませんね」

一夏「そう毎回来られても困るけどな」ペタペタ

クロエ「何をなさっているのですか?」

一夏「紙飛行機だよ。ちょっと待てよ……ほら」ヒュッ

クロエ「なるほど……風に乗って空を飛ぶのですね」

一夏「面白いよな。紙が風に乗るだけであんなに飛べるんだよ」

クロエ「ジェネレーターもスラスターもないのに……こんなに簡単にも空を飛べるのですね」

一夏「ISとは違ってな」

クロエ「まだ飛んでいきますね」

一夏「おー上手く海風に乗ったな」

千冬「ほう、確かに良く飛んだな」

ガシッ

一夏「ヒッ!!ねッ、ねねねッ、姉ちゃんッ!!?」

クロエ「千冬様!!?」

千冬「私は言ったはずだ。二度目はないぞ、とな」

ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ

一夏「ごッ、ごめんッ!!姉ちゃん!!」ジタバタ

千冬「姉ちゃんではない織斑先生だ」ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ

一夏「いだだだだだだだだ!!ごめんなさい織斑先生!!!」ジタバタ

千冬「いいや、許さんぞ。この愚か者め」ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!

一夏「こめかみがなくなるうぅぅぅぅぅ!!!」ジタバタジタバタ

千冬「言う事を聞かないのはここか?ん?」ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!!

一夏「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ジタバタジタバタ

クロエ「……」オロオロ

一夏「」チーン

千冬「全く、この愚か者めが……」

クロエ「……」オロオロ

千冬「安心しろ。お前にはない」

クロエ「そ、そういう事ではないのですが……一夏様が……」

千冬「それも安心しろ、何せ私に似て頑丈だからな。心配の必要はない」

クロエ「は、はあ……一夏様?一夏様?」ユサユサ

一夏「」

千冬「起きろ」ガスッ

一夏「」ビクッ

一夏「!?」ガバッ キョロキョロ

クロエ「どうかしました……?」

一夏「ぼくずぼんはいてる」

クロエ「一夏様ッ!!?」

千冬「この愚か者めが」ガスッッ

一夏「すんませんッッ!!」

一夏「あー……晩飯だってのにまだ痛いよ……」ジンジン

クロエ「大丈夫ですか?」

箒「……」モグモグ

一夏「まあ……何とか」ジンジン

箒「今度は何をやったんだ」

一夏「屋上で紙飛行機折ってた」ジンジン

箒「……」

一夏「何だよ。嘘は言ってないぞ?」ジンジン

箒「どうかな」

セシリア「一夏さん、お隣よろしくて?」

一夏「お、おう……よろしくてよ?」

セシリア「失礼しますわ♪」ストッ

一夏「あ、本当に隣座るのね」

セシリア「いけませんか?」

一夏「べっつうにぃ、俺は、構わないけど?」

箒「何の用だ」

セシリア「あら、皆さんと夕食をご一緒にしたいだけですわ。構いませんか?」

箒「……ああ、構わない」

箒(なら隣に座らなくてもいいだろう……)ミシミシ

クロエ(ほ、箒様の箸が……)オロオロ

セシリア「クロニクルさん、構いませんか?」

クロエ「わ、私ですか?」

箒「……」ジロッ

クロエ「え……ああ……ううっ……構い……ません」

一夏「あのさぁ…飯食うのにそんなに引っ付かないでくれない?」

セシリア「あら、この私に引っ付かれるのがそんなにお嫌ですか?」

一夏「この前までこの世の終わりみたいな顔してた奴はどこに行った事やら……」

セシリア「さあ?どこに行ったのでしょうね♪」

箒「……」

クロエ「……」オロオロ

一夏「なあ、セシリー」

セシリア「セシリア、ですわ」

一夏「ツェツィーーー」

セシリア「セシリア♪」

一夏「……オルコットさん」

セシリア「もうっ、何でそう素直でないのですか」

一夏「いやいや、素直だよ?俺は仲良くなった奴はまずアダ名で呼ぶから」

セシリア「あら、そうでしたの?」

一夏「おう、そうでしたんだよ」

クロエ「本当ですか?」ヒソヒソ

箒「経験あるか?」ヒソヒソ

クロエ「ないです……」ヒソヒソ

箒「ならそういう事だ」ヒソヒソ

一夏「って、さっきお前俺の事……」

セシリア「名前で呼ばれるのはお嫌いでしたか?一夏さん♪」

一夏「いや、まあ……別に好きでも嫌いでもないけどさ。そんなに喜んで呼ぶ程でもないと思うけどな」

セシリア「そんな事はありませんわ。だって……あなたはーーー」

セシリア「私の王子様ですもの♪」

一夏「」

箒「……」ピクッ

クロエ「???」

セシリア「十年前から……その……ずっと、あなただけを思っていましたわ……」モジモジ

一夏「」

箒「……」バキャッ

クロエ「!?」

一夏「」

セシリア「一夏さん?」

一夏「え"っ、あ、はッ、はいッ、何でしょうか!?」

セシリア「例え……あなたが忘れていても……私は覚えていましたから……その……えっと……」モジモジ

一夏「……」ダラダラ

一夏(考えろ。考えろ考えろ考えろ。考えるんだ。俺、考えろ)

一夏(この状況を打破出来る起死回生の答えを。考えるんだ)

一夏(正直言って十年も思われてたなんて嬉しいしいどころじゃないけど目の前にいる奴がもう誰だか分からねぇくらいに何かもう別人だし)

一夏(箒!クロエ!)チラッ

箒「……」ギロリッッ

一夏(不動明王か!!何て顔してんだお前は!!!)

クロエ「……」アタフタ

一夏(落ち着け、考えろ、考えるんだ……口で何とかしようにもセシリアの独壇場……ならテーブル)

一夏(そうか、今日の晩飯にはこれがあった!!)

箒(一夏の奴、何か思い付いたな)

一夏「そうだな……まずはこの冷奴を箸で掴めたら俺の素直な気持ちをセシリア、お前にだけ聞かせるよ」

セシリア「ほ、本当ですか?」

一夏「ああ、本当だ。俺は約束は守る男だ」

箒(そもそもその約束自体が間違っているがな)

クロエ(作った声色と雰囲気……何とか誤魔化そうとしていらっしゃいますね)

セシリア「この程度の事、私にとっては造作も……」ツルッ

セシリア「造作も……」ツルッ

セシリア「造作……」ツルッ

セシリア「……」ツルッ

ツルッツルッツルッツルッツルッ

セシリア「この……!」グチャッ

一夏「あーあ、崩れちゃったよ」

セシリア「ま、まだ掴める部分はありますわ!」

セシリア(落ち着いて……落ち着いて取れば……必ず……)プルプル

セシリア(慎重に……慎重に……)プルプル

セシリア「あっ」ツルッ

セシリア「くっ……まだです、まだ終わりではありませんわ……!」

一夏「……ふう」

一夏(勝ったな。それと、豆腐相手にそんなに格好いい台詞言えんのは君だけだろうなぁ……)

クロエ(恐ろしい……何と的確な作戦なのでしょう……)

箒(ふんっ、馬鹿馬鹿しい……)モグモグ

セシリア「……」プルプル

セシリア「あっ」グチャッ

セシリア「この……!」

一夏(難しいよなぁ……ただでさえ箸が使いにくいのに加えて絶妙な力加減で柔らかい絹豆腐をいきなり挟めってんだもんなぁ……)

一夏(よーし、今の内に逃げーーーってモルドレットさんがめっちゃこっち見てる)

箒「……」モグモグ

クロエ「……」ジーッ

ツルッツルッツルッツルッツルッツルッ

セシリア「……」ツルッ

セシリア「……」イラッ

セシリア(あと少しのところを何故こうも……!!)

セシリア「……」ソーッ

セシリア「!」プルプル

セシリア(なるほどこれぐらいの力で持てば豆腐は挟めるのですね)

セシリア(後はこれを一夏さーーー)

ツルッ……ポチャンッ

セシリア「……」

クロエ「あっ」

箒「……まずは木綿から練習した方がいいぞ」


バンッッ

セシリア「何ですか豆腐なんて!大体この様に柔らかい物はスプーンで掬えばいい話でしょう!!」

セシリア「ほら!!」スッ

箒「私に言うな。一夏に言え」

セシリア「一夏さーーーあら?一夏さんはどこへ?」キョロキョロ

クロエ「あの……それが……豆腐を取ろうと試みていらっしゃっる間にどこかへ……」

セシリア「……」ポカーン

箒「まんまと一夏に一杯食わされたな」

クロエ「えっと……その……申し訳ありません……」

セシリア「もう!!一夏さんったら!!」


三年生「フフフ……」

三年生(オルコット……豆腐も掴めないとは、あなたもまだまだですね……)スッ


-----

千冬「織斑、まさかとは思うが自分のISを忘れた訳ではないだろうな」

一夏「いやいや、ちゃんと持ってますって。ほら」スッ

千冬「よろしい」

摩耶(ついに織斑くんのISを見れます)ワクワク

箒(一夏のIS……どんな姿なんだ……)

一夏(本当は打鉄使おうと思ってたんだけどなぁ……ま、仕方ないか)

セシリア「……」ジィーッ

千冬「オルコットは既に展開している。早くしろ」

一夏「了解しました。アレでいくぞ、クロエ」

クロエ「はい、アレですね」

箒「?」

バッバババッ

一夏クロエ「「着装!」」


オオー!!

一夏「織斑一夏及びクロニクル・クロニクル。準備完了しました。織斑先生」バサァッ

千冬「パフォーマンスは余計だ」

一夏「いやぁ、すんません」

箒(あれが……零式と同じ様だが……マントに加えて肩の盾や全体的に鎧の印象が強いな……武器は刀ではないのか?)

セシリア(零式と同じ大きさであの重装甲……細身の零式で傷が付かなかった程ですからあの機体の防御力は相当あるはず……)

摩耶「……」キラキラ!!

千冬「……山田先生?」

摩耶「何ですか!?」キラキラ!!

千冬「落ち着いてください」

摩耶「あっ、すみません。つい……えへへっ」

千冬「全く……」ヤレヤレ

クロエ『一夏様』

一夏『皆まで言うなよ』

クロエ『分かりました』

クロエ(一夏様が零式とツヴァイフォーミュラを出したがらなかったのはこのせいだったのですね)

一夏(武器を展開する授業じゃありませんように……)

一夏「ゆっくり、焦らず、一歩ずつ歩くんだ。自分の足と同じ感覚で」ズシンッズシンッ

静寐「こ、こう……?なんか竹馬に乗ってるみたいだね」ガシャッガシャッ

一夏「んー……そんな感じなのか。ま、竹馬よりは設置面積が広いからそうそうバランスは崩さないのと、打鉄は操縦に同調する専用機じゃないから気を付けないと……」

静寐「あっ!」ガッッ

一夏「おっと、こういう事になるんだよな」ハシッ

静寐「あ、ありがとう……織斑くん」

一夏「いえいえ、どういたしまして」


清香「おとっ……おっとと……危ない危ない」フラフラ

クロエ「まずは風に乗って動くのが、IS特有の飛行感覚を覚えられますよ」

清香「風に乗る?風を……感じて……むむむっ……」ピタッ

クロエ「どうですか?」

清香「ごめん、全っ然分からない」

クロエ「そうですか……」

箒「こうか」ガシャッガシャッガシャッ

一夏「おー流石、飲み込みが速いな」ズシンッズシンッズシンッ

箒「……動きが気持ち悪い」

一夏「そりゃあ、こいつ等はどうやったって自分の思い通りに動いてくれないからな」

箒「お前のは違うのか」

一夏「さーて、どうだか」

箒「……」ブンッ

一夏「はい残念でしたー余裕綽々で受け止められまーす。強いて言うなら」グイッ

キャーッ!ウラヤマシーイ!

静寐(片手でISを軽々持ち上げてお姫様抱っこ……)

箒「お、降ろせっ!」ジタバタ

一夏「こんな事だって出来るのが俺達の機体、かな」

箒「やめろッ、馬鹿ッ!早く降ろせッ!」ジタバタジタバタ

一夏「はいはい、仰せの通りに」スッ

箒「この……馬鹿!」ブンッ

一夏「……」ガシッ

箒「ッ……このッ、離せッ!」

一夏「……」ニヤッ

本音「きゅーん、きゅーん♪私の彼は~ぱいろっとぉ~♪」

クロエ「上手ですね。以前に操縦した経験があるのですか?」

本音「ニャイよ~だから~なんとな~くでやってる~のだ~」

本音「けどけど~くろにんのみたいに~おっきなが羽が付いてれば~きっと楽チンなのだ~」

クロエ「そうでもありません。零式もIS、この羽だけで飛行の全てを行っている訳ではありません。これはあくまで飛行補助の為の物です」

本音「ど~ゆ~こと~?」

クロエ「基本は同じ、という事です」

本音「にゃるほど~そ~いうことか~」

クロエ「っと、機体が傾いていますよ」

本音「およよ?ほんとだ~」

クロエ「飛ぶ事に慣れていない間は、一度地面を水平の基準とすら設定を行う事を推奨します」

本音「わかった~すいへいり~べ~ぼくのふね~」フラフラ

クロエ「ああっ、他の方にぶつかりますよ!」


キーンコーンカーンコーン

千冬「打鉄をきちんと片付けてから更衣室に向かえ。次の授業に遅れる事のないようにな」

ハーイ!

一夏「何で俺だけ砂運び……」

クロエ「お手伝いします」

一夏「悪いな。砂を入れたところから均していってくれ」

クロエ「了解しました」

セシリア「私もお手伝いいたしますわ」

一夏「おう、ありがとうな。セシリー」

セシリー「当然の事ですわ」フンス

麻耶「織斑くんっ♪」

一夏「げっ、山田先生……」

麻耶「山田先生なんてそんな余所余所しい……私達の仲じゃないですか麻耶さんで結構ですよっ」ニコッ

一夏「は、はあ……さいですか……」

一夏(やっぱりこうなるのかぁ……姉ちゃんは打鉄の片付け手伝いに行っちゃったしなぁ……)

摩耶「それで良かったら織斑くんの機体の武装を持たせてくれませんか?ね?ねっ?」ズイッ

一夏「落ち着いてくださいよ……それでじゃないですよ、話に脈絡なさすぎですよ」

摩耶「ちょーっと持たせてくれるだけでいいんです!」ガシッ

一夏「あのー……僕の話聞いてます?山田先生?」

摩耶「何ならクロニクルさんのでもいいんですよっ!」クワッ

一夏「」

クロエ「……」オロオロ

一夏「あーもう……分かりました。はい」スッ

摩耶「ありがとうござーーーって、あれ?何ですか、これ」

一夏「シェルタープラッテ、俺の機体の肩に着いてる盾です。こうやって自由自在に飛ばせるから飛び道具にもなるんですよ」シュバッ

ギュルルルルル

一夏「どうです?すごいでしょ?」パシッ

摩耶「……」プルプル

摩耶「何が肩の盾ですか!私の目は誤魔化せませんよ!!その機体は銃持ってますよね!?銃ですよ!!ドイツ語でゲヴェーアですよ!!分からない訳ないですよね!!?」ガシィッ

一夏「ちょっと、そんな機体出したまま掴みかからないでくださいよ……」

摩耶「お願いします!!持たせてくださいよ!!私に!!篠ノ乃博士の作った銃を!!!」

千冬「お願いしますからもう少し自重して頂けませんか」グイッッ

摩耶「いたたたたっ、お、織斑先生!!?」

千冬「わざわざ機体まで展開して……そんな事をしなくたって私が言えば持つぐらい……」ヤレヤレ

摩耶「本当ですか!?はい!!」スタッ

千冬「さて、次の授業の用意に行きますよ」グイッッ

摩耶「うわあぁぁぁぁ!!嘘つきいいいぃぃぃぃぃぃ!!」ズルズルズル

千冬「こっちの身にもなってください」ズルズルズルズルズルズル

摩耶「これが大人のやる事ですかぁぁぁぁぁぁぁ!!」ズルズルズルズルズルズル

千冬「その言葉、一字一句そのまま返します」ズルズルズル!!

摩耶「お"り"い"い"む"う"う"う"う"ら"あ"あ"あ"く"う"う"う"う"ん"ん"ん"んんん!!!」ズルズルズル

一夏「南無三」ナムナム

摩耶「撃たせてえええぇぇぇぇぇ!!うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ズリズリズリズリズリズリ


ウワァァァァァァァァァ……

セシリア「……」ポカーン

一夏「ふうー……いつもの事だけど姉ちゃんも大変だな」

クロエ「そうですね……しかしツヴァイフォーミュラが銃を持っている事を見抜かれるとは……」

一夏「さっきの通り、山田さんは銃になると怖いからな。色々と」

クロエ「そうですね……」

一夏「あ、しまった」

クロエ「どうかしましたか?」

一夏「地面、機体で普通に踏んだ」スタッ

クロエ「ああ……」

一夏「また均さなきゃ……ん?」

箒「……」

一夏「トンボなんか持って何してんだ?」

箒「先に戻る」

一夏「嘘だって!ありがとうな!手伝いに来てくれたんだよな!」

箒「もう終わりだろ?なら私がいなくてもいいだろ」

一夏「ごめんなー急いで着替えて手伝いに来たら終わってたから恥ずかしかったんだよなーごめんなー」

箒「そっ、そんな訳あるかっ!」

セシリア「はっ!篠ノ乃さん、いつの間にいらしてたのですか?」

箒「……うるさい」

一夏(おーやっと復活したか)

セシリア「いきなりうるさいとはどういう事ですの!」

一夏「はいはい、プリプリしないの。とりあえず、セシリーと箒は先に戻っててくれ、残りはこの足跡二つだけだからさ」

クロエ「道具はこちらで片付けておきます」

箒「ほら、戻るぞ」

セシリア「……分かりましたわ」

箒「全く……せっかく手伝いに行ったのにあれでは……」ブツブツ

セシリア「あの……」

箒「大体一夏はいつも……」ブツブツ

セシリア「篠ノ乃さん?」

箒「何だ」

セシリア「あなたへの……謝罪がまだでしたわ」

箒「謝罪?何のだ?」

セシリア「クラス代表決定の際、私はあなたの名を利用しようとしてましたから」

箒「何だ、そんな事か」

セシリア「そんな事って……怒ってませんの?」

箒「ああ、一夏が勝手に怒っただけだ。一夏らしいと言えば一夏らしいがな」

セシリア「そうでしたか……」

箒「それに、あんなのにはもう慣れた。苗字を聞いて言ったんだろう?」

セシリア「ええ、そうですわ。もしや、と思いまして」

箒「ならいい。それぐらいなら、まだ可愛い程度のものだからな」

箒(人質にしようとしないからな)

セシリア「……」

セシリア(篠ノ乃さん……やはり……篠ノ乃博士のご家族だけあって……かなりの苦労をされていたのですね……)

セシリア「篠ノ乃さん!」ハシッ

箒「な、何だ?」

セシリア「私に何か出来る事があるなら遠慮なく言ってくださいまし」

セシリア「是非とも、このセシリア・オルコットがお手伝いいたしますわ!」

箒「そ、そうか……急にどうしたんだ?」

セシリア「どうもしていませんわ。困っている人を助けるのは当然の事ですわ」

箒「別に今は困っていないんだがな……」

箒「そういえば……セシリア、一夏の事を王子様、と言っていたが……あれはどういう意味だ?」

セシリア「そのままの意味ですが?」

箒「……なら、十年前に一夏とお前の間に何があった?」

セシリア「それは……私と一夏さんだけの秘密ですわ♪」

セシリア「一つ言えるのは、一夏さんは十年前と変わらず優しくて素敵な殿方だと言う事ですわ♪」

箒「ほう……そうかそうか、十年前か。そうか」

箒「ならその首にかかっているのは千冬さんの御守りか」

セシリア「なッ、何故それを!?」

箒「まさかお前だったとはな。そういえば一夏は昔言っていたな、金髪で外国の言葉を話す女の子に千冬さんの御守りを渡した、とな」

箒(可愛いかったも言っていたがな)イラッ

セシリア「これは渡せませくてよ!」

箒「今更誰がそんなものいるか!」

セシリア「なるほど……どうやら、あなたとはとてもとても良い関係が築けそうですわね。篠ノ乃さん」

箒「ああ、そうだな。セシリア」


一夏「Ohhh……my……」

クロエ「どうかなさいました?」


-----

一夏「やっぱり何でもかんでも度が過ぎる、っていうのは良くないよな。全くしないのは駄目だけどし過ぎても駄目、何にせよその中間の程よいところを見つけないとな」

箒「何の話だ」

一夏「野菜は炒め過ぎちゃいけないって話だよ」

セシリア「私はしっかりと火が通されていると思いますわ」

一夏「さいですか……って、何で俺と一緒の食べてるんだ?」

セシリア「いけませんくて?」

一夏「別にぃ……俺はいいけど」

クロエ「今回の料理は……少し炭化した部分が目立ちますね」

一夏「火力強過ぎなんじゃないか?だから中に火が通る前に外が焦げちゃってるんだよ」

箒「半生よりはいいだろ」

一夏「いや確かにそうだけどーーーって箒も野菜炒めなのか」

箒「何だ、私が野菜を食べてはいけないのか」

一夏「別にぃ……」

クロエ「……」モグモグ

一夏「あ、クロエ、ちょっと止まれ」

クロエ「何ですか……?」ピタッ

一夏「米粒」ヒョイ

クロエ「あ、ありがとうございます……」

一夏「また器用なところに」パクッ

クロエ「いつ付着したのでしょうか……?」

一夏「さあな」

クロエ「……」ウーン

一夏「気にすんなよ。飯が冷めるぞ」

クロエ「分かりました」

箒(……懐かしいな、昔は私がああやっていたのにな)

箒「……」

セシリア(う、うらやましいですわ……一夏さんにあんな風に……)

セシリア「……」

一夏「ん?」ピクッ

一夏(何か視線が……)

箒「……」ジィーッ

一夏(何?俺の顔にも米粒あるのか?)サササッ

クロエ「どうかしました?」

一夏「いや、何でもない」

箒「……」ジィーッ

一夏「???」

セシリア「……」ソーッ

一夏(米粒を顔に……何やってるんだ?)

箒「おい」ガシッ

セシリア「!?」ビクッ

箒「食べ物で遊ぶな。行儀が悪い」

セシリア「あ、遊んでなどいませんわ!」

箒(頬の米粒を一夏に取ってもらおうという魂胆だろうがそうはいかんぞ……)

セシリア(篠ノ之さん……私の考えを見抜いて……)

箒(やはり隣に座って正解だったな)

セシリア(やりますわね……)

箒「……」

セシリア「……」ニコニコ

クロエ「どうかなさいましたか?」

箒「何でもない。なあ?セシリア」

セシリア「ええ、何でもありませんわ。篠ノ之さん」

クロエ「???」

クロエ(何故手を放さないのでしょうか?)

一夏(何か急に仲良くなったよな。隣に座ってるし、この二人)

一夏(うわぁ……何か怖いなぁ……)

セシリア「そうですわ!一夏さん、今日の放課後、お時間頂けますか?」

一夏「放課後?何するんだ?」

セシリア「ISの特訓をお願いします」

一夏「特訓?何で?」

セシリア「何でって……一夏さんはクロニクルさんより強いのでしょう?」

一夏「いや、弱いよ」

セシリア「へ?」

クロエ「えっ?」

一夏「そうだろ?クロエ」

クロエ「は、はい……現状から判断すれば……そうですが……」

箒(現状?)

一夏「あ、そっか。じゃあクロエがやればいいんじゃないか」ポンッ

クロエ「え、わっ、私ですか?」

一夏「戦った相手の方がいいだろ。戦った仲だからこそ分かる事もあるしな」

一夏「という事だ。セシリー」

セシリア「ええ……そ……そう……ですね」

一夏「はい決定っと」

箒「一夏、お前も行け」

一夏「はあ?俺がぁ?」

箒「部屋でゴロゴロしているよりはいいんじゃないか」

一夏「失礼な、誰がゴロゴロしてるってんだよ」

箒「じゃあ何をしているんだ?」

一夏「そりゃあ、まあ……色々と……」

箒「……」ジトー

一夏「ま、とにかく。断じてゴロゴロはしてない。学園内をうろついて色々としてるだけだ」

クロエ(極秘行動をなさっている事は伏せておくべきですね)

一夏(どこで姉ちゃんが聞いてるか分からないからな……迂闊な事は言えないな)

箒「……色々と、か?」

一夏「うん」

箒「……」ジトー

一夏「はい、この話はこれで終わり。放課後はアリーナに全員集合」

セシリア「来てくださるのですか?」

一夏「あれだけ言われたら仕方ないだろ」

セシリア「ふふっ♪楽しみですわ♪」

一夏「そりゃ良かったね」

一夏(ま、俺は見てるだけだけどな)

クロエ「箒……もいらっしゃるのですか?」

箒「打鉄の使用許可で少し遅れるかもしれないがな」

クロエ「そ、そうですか……」

クロエ(存外……ISに対して意欲的でいらっしゃるのですね……)

~アリーナ~

一夏「いいか、考えるな、感じろ」

セシリア「その様に抽象的な事を言われても分かりませんわ!」

一夏「代表候補生たる者が何をおっしゃるんだよ。次の動きを予想するんじゃなくてーーー」

セシリア「大体、お二人のレベルがおかしいのですわ!」

一夏「そうか?」

クロエ「そ、そうでしょうか……?」

セシリア「お二人はそれで当然と思っていらっしゃるかもしれませんがそれは当然と呼べるレベルではありませんわ!」

セシリア「何ですか……もう……」イジイジ

一夏「あーごめんごめん、拗ねるなよ」

セシリア「拗ねてなんかいませんわ!」

クロエ「……」オロオロ

箒(いつまでやってるんだ)

一夏「ほーら、セシリーちゃんは良い子良い子、やれば出来る子」

セシリア「もう!からかわないでください!」

一夏「からかってなんかないぞー」

箒「クロエ、手合わせ願えるか」

クロエ「は、はい、構いませんが……」

一夏「おお、久しぶりに篠ノ之流にお目にかかれるのか」

箒「そんな大層なものじゃない。ただ刀を振るだけだ」

一夏「またまたご謙遜を」

クロエ(篠ノ之流剣術……束様や一夏様は使われなかったのですが……一体どんな剣術なのでしょうか……)

セシリア(長刀と短刀の二刀流……見た事のない剣術ですわ……)

一夏「それじゃあいくぞー両者、構え」

箒「……」スッ

クロエ「……」ヒィィィィン

一夏「始め」

~校門付近~

?「一夏んはあっち?」

?「いやいやこっちじゃない?」

?「じゃああっち?」

?「ならこっち?」

??「「もうどっちも行っちゃおう!」」

?「先にどっち行く?」

?「ここに手頃な棒があります。そしてこれをこうして立てます」コンッ

?「ほうほう、なるへそ。そして?」

?「せーのっ」

?「「尋ね人ステッキ!」」カランカラン

?「うむ、進路は北北東!」

?「うむ、いざ行かん!」

??「「待っててね!一夏ぁーん!!」」

新キャラの正体やいかに(すっとぼけ)

セシリア『篠ノ之さん、あなたに会わせますわ!』

箒『頼んだぞ!』

箒「はッ……せいッ……!!」ヒュンッヒュヒュンッ

クロエ「……」カァンッカカァンッ

セシリア(篠ノ之さんの剣撃の隙間を……)

ピチュチュチュチュンッ

クロエ「……」バッ

箒「もらった!」ヒュッ

クロエ「……」カァンッ

箒「!?」

箒(あんなに簡単に死角からの攻撃を防いだ!?)


バシューンッ

クロエ「……」バチィンッ

箒「畳み掛けるぞ!!」ヒュッ

クロエ「……」カァンッ

ピチュンッ ピチュンッピチュンッ

箒「せいッ……はあッ……!!」ヒュヒュンッ ヒュンッ

クロエ「……」バッ

ピチュンッ ピチュピチュピチュンッ

セシリア「そこですわ!」バシューンッ

クロエ「……」スッ

箒「なッ!?」バチィンッ

セシリア「すッ、すみまーーー」



ガガァンッ


箒「うわッ……!?」ポロッ

セシリア「きゃあッ……!?」ポロッ

クロエ「……」チュイィィィンッ

パンパンパンッ

一夏「はい、残念でしたー本日五回目の箒とセシリーの負けでーす。残念無念また来週ー」

箒「……流石だな、クロエ」

クロエ「そんな……私などまだ未熟です……」

セシリア「何故謙遜なさるのです。もっと胸を張っても誰も文句はいいませんわ」

クロエ「そ、そうですか……?」

一夏「そうだぞークロエ」

セシリア「一夏さんは!いつまでISを展開もせずにそこで見ているつもりですの!」

一夏「別にいいだろー俺はクロエより弱いんだし」

一夏「そもそも、俺はアリーナで集合とは言ったけど『ISの特訓する』とは一言も言ってなかったからな」

一夏「ついでに俺、クロエより弱いし」

箒「いちいち屁理屈を……」ワナワナ

セシリア「お、落ち着いてくださいまし!」ガシッ

箒「放せ、あいつの根性を叩き直してやる」

一夏「生身の人間に対してISの武器を向ける事に関してはまだジュネーブ条約に何も出来てなかったっけ?」

クロエ「現時点では条約と呼べるものに含まれていません」

一夏「おお怖っ」

箒「いいから放せ」ジタバタ

セシリア「駄目です!」

一夏『どうにも打鉄は箒に付いていけてないな』

クロエ『それを無理矢理使われていますね』

一夏『本人は気付いてないみたいだけどな』

クロエ『そのようですね』

一夏「はいはい、気を取り直して六回目を始めるぞー」パンパンッ

一夏「今度こそクロエに手を出させる事が出来るよう頑張れよー」

箒「言われなくても」

セシリア「やってみせますわ!」

クロエ「お二人とも頑張ってください」

箒「……余裕だな」ジトー

クロエ「えっ?い、いえ……そんな事はありません……」

セシリア「……」ジトー

クロエ「あの……その……ううぅっ……申し訳ありません……」

一夏「その威勢は最初だけの為に取っとけよ」

箒「誰が威勢がいいのは最初だけだ」ギロリッ

セシリア「失礼な、そんな事などありませんわ!」

一夏「はいはい、それじゃあいくぞー」

箒「……」スッ

セシリア「……」チャッ

クロエ「……」チャキッ

一夏「始め」



ドンッッ!!


一夏「おっとっとっと、危ない危ない」

一夏「さて、この床綺麗かな……」サッサッ

一夏「うーん、微妙だなぁ……うん?」

??「「……」」

一夏「何だお前等?」

??「「……」」バッ バババッ スーッ

タンッ

一夏(ん?二人?それにその一連の動作は……)


??「「ドラゴンライダーキーック!!」」


一夏「やっぱりな!ライダーパーンチ!!」

??「「……」」スタッ

一夏「いってててっ、久しぶりにだからってもうちょっと加減しろよな」

??「「一夏ぁーん!!」」ピョーン

一夏「鈴!清!」ガシッ

鈴清「「このクソゴミ面だけは見たくなかったんだからー!!」」クルクル

一夏「クソチビ野郎共が言うなよー!」クルクル

鈴清「「言ったなーウスラトンカチのオタンコナスの大根ー!」」クルクル

一夏「おう言ったぜ!こんのチャイナボカンシリーズがー!」

一夏鈴清「「「アッハハハハハハ!!」」」クルクルクルクル


セシリア「何のですの、アレ」

箒「……さあな」

クロエ「???」

クロエ(発言と行動が一致していません)

一夏「ほい、じゃあ二人の自己紹介をどうぞ」

鈴「リュウレンジャー!」バッ バッバッ

鈴「天風星、凰鈴音!!」

清「同じくリュウレンジャー!」バッ バッバッ

清「天雷星、凰清音!!」

鈴「天に輝く!」

清「二つ星!」

鈴清「「二星戦隊!!ダイレンジャー!!」」

一夏「はい、拍手!」パチパチ

クロエ「?」パチパチ

セシリア「?」パチパチ

箒「……」パチパチ

鈴「皆ありがとー!」

清「ありがとー愛してるよー!」

箒「そうじゃないだろ」

鈴清「「何がー?」」

箒「何者だ、お前等は。一夏とはどういう関係だ」

鈴「よくぞ聞いてくれたー!」

清「あたし達は何と!一夏の~!」


鈴清「「幼馴染みでマブのダチ公で将来のお嫁さんなのだー!!」」


クロエ「そ、そうなのですか……」

鈴清「「そうだよーだからそこんとこよろしく!!」」ビシッ

セシリア「一体どういう事ですの~!!」ガクガク

一夏「ギブギブギブ!!ISを展開したまんまはやめてくれ!!頭もげるから!!!」

箒「そのまま、持っていろ。セシリア」

一夏「お前は更に何をする気だ!!!」

セシリア「一夏さん~!!」ガクガク

一夏「説明するからやめてくれ~!!!」

一夏「だから鈴と清は五年生から中学三年までつるんでた悪友の、ダチ公なんだよ。別に将来の伴侶とかそんなんじゃないんだよ」

一夏「分かったか?お二方?」

箒「……ああ、よく分かった」

セシリア「分かりましたわ……」

一夏「ったく……まだ滅茶苦茶痛いよ……」ゴキゴキッ

クロエ(一夏様、少し苛ついていらっしゃいますね……)

鈴「ちょっと、ちょっとちょっと」

清「あたし達をお嫁さんにしないって」

鈴清「「どーいう事?」」

一夏「……鈴、清」

鈴清「「なーに?」」

一夏「うるさい」

鈴清「「はーい……」」ショボン

一夏「ったく……あ痛っ……」ゴキゴキッ

一夏「何か俺に言うことは?」

箒「ごめんなさい」

セシリア「申し訳ありません」

一夏「はい、二人ともよく出来ました」

鈴「一夏ん、あーん」

清「ずるーい、あたしもあたしも」

一夏「ちょっ……左右からラーメンを押し付けてくるな……」

鈴清「「あーん!」」

一夏「あー!」グイッ

鈴清「「ふみゃっ!」」

一夏「頼むから飯ぐらい落ち着いて食わせてくれっての」

鈴「今更何照れてんのよー」

清「あたし達の仲じゃないかよー」

一夏「さっきから汁がこっちに飛んでるんだよ」

一夏「鈴も清もちょっとはクロエを見習え。ほら」

クロエ「私を、ですか……?」

鈴清「「ほうほう、クロちんを」」

クロエ「?」

鈴清「「じぃーっ」」

一夏「クロちんって……」

セシリア「見習う、という点では私はどうでしょうか?」

一夏「アリーナで俺に何した?」

セシリア「……はい」

箒「そういった点は私もセシリアと同じだな」

一夏「……いつになく素直だな」

箒「うるさい、事実を言ったまでだ」

一夏「はいはい」

鈴清「「じぃーっ」」

箒「何だ?私に何か付いているか?」

鈴清「「あんたが一夏んの幼馴染み?」」

箒「そうだが」

鈴清「「へーそうなんだー」」

箒「言いたい事があるならハッキリ言え」

鈴清「「別にないよー」」

一夏「頼むから一悶着起こさないでくれよ」

清「心配御無用!」

鈴「ノープロブレム!」

一夏「本当かよ……前科あるだろ……」

鈴清「「知ーらないっ」」

セシリア「むむむっ……」

セシリア(私だけ蚊帳の外ですわ……)

クロエ「お二人は何故IS学園にいらっしゃったのですか?」

鈴清「「当然、一夏をブッ倒す為!」」

クロエ「は、はあ……ブッ倒す為、ですか……」

鈴清「「いえすあいあーむ!」」

箒「単純明快な答えだな」

鈴清「「でしょでしょー?」」

一夏「……」

セシリア「どうかしました?」

一夏「いや、別に……」

一夏(頼むからあの事だけは言わないでくれよ……)

セシリア「何かあればどうぞ遠慮なさらずに、このセシリア・オルコットに申してくださいまし、一夏さん」

一夏「何かあったそうさせてもらうよ」

清「おうおう、セっちゃんよーい」

セシリア「セっちゃん……!?」

鈴「イギリス代表候補生がどうして無名の一夏んにベットリな訳ー?」

セシリア「あら、いけませんくて?」

鈴「おうおう、一夏んはあたし達のシマなんだからさー」

清「何の断りなしにベットリしようたぁいい度胸してんじゃねぇかよー」

鈴清「「まずは出すもん出してもらおうじゃねぇかよー」」

一夏「誰がお前等のシマだ」

鈴清「「何だよーノリ悪いぞー」」

一夏「はいはい、そりゃ悪うござんした」

セシリア「私の事をご存知ですのね」

鈴清「「もちこーす!敵を知る事は戦いの基礎中の基礎って兵法も言ってるからね!」」

セシリア「ええ、その通りですわね」

鈴清「「でしょでしょー?」」

クロエ(ヘイホー?)

箒(意外と頭を使う奴なんだな)

一夏(箒のやつ、何関心してるんだ?)

鈴清「「で?何で一夏んにベットリな訳?」」

セシリア「それはこの私が、一夏さんと赤い糸で結ばれているからですわ!」

一夏「御守り渡した時、紐って赤かったっけ?」

セシリア「そういう事ではありません!」

一夏「ジョークだって、ジョーク」

セシリア「もうっ……」

鈴「御守り?」

清「持ってんの?」

セシリア「ええ、この通り」

清「じゃあじゃあ一夏の言ってた」

鈴「金髪少女ってのはもしかして」

セシリア「そう、この私の事ですわ」

鈴清「「おおー!」」

セシリア「私と一夏さんの出会い、それは十年前のーーー」

鈴清「「カァーット!!」」

セシリア「ちょっと!」

箒「……誰にでも話してたんだな」

一夏「誰にでもって……数えれる程の人数にしか話してないぞ」

箒「本当か?」ジトー

一夏「嘘ついてどうなるんだよ」

箒「……ふんっ」

クロエ(何故少し不愉快そうなのでしょうか……)


バタン

鈴「うーむ、セっちんに」

清「箒ちん、か……」

鈴「あたし達の一夏んが危ないよ!清!」

清「セっちんはともかく箒ちんは幼馴染みとか言う強ポジだよ!鈴!」

鈴「落ち着け、まだ慌てる様な時間じゃない」

清「ほうほう?して、その理由は如何に?」

鈴「孫子曰く“幼馴染みは負けフラグ”である」

清「つ~ま~り~?」

鈴清「「ダチ公のあたし達が有利なり!!」」

鈴「けどけど~ここはあたし達の一夏んを揺るぎなきものにする為にもう一手欲しいところ……」

清「あたし達の一夏んだって見せびらかす必要があるね……」

鈴清「「うーん、どーしたものかー」」

清「あーっ!コレとかどう?」ピラッ

鈴「ほうほう、これはこれは……」

鈴清「「つ~ま~り~」」ニヤリ

清「あたし達がクラス代表になってー」

鈴「代表戦で一夏んをブッ倒してー」

鈴清「「俺の物宣言をする!!」」

鈴「何という完っ璧な作戦!」

清「もうこれしかない!」

鈴「その為の第一歩は~?」

清「二組のクラス代表になろう!」

鈴清「「よっしゃあー!」」パチン

鈴「ここで孫子の言葉!戦争は国家の一大事で、国民の生死や」

清「国家の存亡にも関わってくるから、細心の注意を払って検討に検討を重ねなければならない」

清「そして~戦争というのは、相手を傷つけずに、降伏させるのが良い
相手をブッ飛ばして降伏させるのは、その次」

鈴「だから、百回戦って百回勝っても、それは良い事じゃなくて、戦わないで降伏させるのが最も善いのである!」

鈴清「「なるほど!」」

鈴「とりあえず変わってもらえるか聞こっか!」

清「それが無理ならやっちゃおう!」

鈴「ええ?やっちゃう?」

清「ええ?やらないの?」

鈴清「「もちのロン!やるに決まってるでしょ!」」

鈴「この神が授けた龍の子!」

清「凰鈴音と凰清音の前に~!」

鈴清「「敵はない!!」」

鈴清「「いざ、二組のクラス代表さんの部屋へー!」」

セシリア(もうっ、何なんですのあの二人は!)

セシリア(一夏さんの幼馴染みである篠ノ之さん一人ですら強敵ですのに……)

「セシリアさん?」

セシリア(悪友……というのは少し分かりませんがそれなりに親しい仲だった事は確かですわ!)

セシリア(このままでは十年前に一度会ったきりの私では手も足もでなくなってしまいますわ!!)

「おーい?セシリアさん?」

セシリア(打開策が必要ですわね……)

「セシリアさん!」

セシリア「へっ?は、はいっ!何ですの!?」

「お茶、いいの?」

セシリア「ああっ!ありがとうございます!」カチャカチャ

「大丈夫?ボーッとしてたよ?」

セシリア「な、何でもありませんわ。ちょっと考え事をしてただけですから……熱っ」

「……本当に大丈夫?」

セシリア「ご心配には及びませんわ!!」

箒(凰鈴音に凰清音か……)

箒(……)モゾモゾ

箒(私もあんな風に一夏に接すれればな……)

箒(私が……あんな風に……一夏に……)

箒(……)

箒(いや、やっぱり駄目だ……恥ずかしくて出来ない……)

箒(第一そんな事をしたところで一夏にからかわれて終わりだ)

箒(大体、一夏の奴はいつもいつも……)イラッ

箒(昔はああではなかったのに私がいない数年の間に何があったんだ)

箒(姉さんは何をしていたんだ)

(篠ノ之さんから……負の感情が……する……)ビクッ

箒(最早セシリアも鈴も清も関係ない。私が一夏を……)

箒(そうだ。私は一夏の幼馴染みなんだからな)

一夏「はあぁぁぁ~疲れた~……冷たっと」ペタッ

クロエ「本当に大丈夫ですか?かなりの負荷が首にかかっていましたが……」

一夏「大丈夫大丈夫、こんなの湿布張って寝ればアラ不思議って具合に……冷たっ」ペタッ

クロエ「ならよろしいのですが……」

一夏「ったく、セシリーも箒も加減ってもんを覚えて欲しいよ」

クロエ「一夏様が過度にからかわれるのが原因なのでは……」

一夏「聞こえなーい。よーし、じゃあ俺は寝るぞ。クロエも早く寝ろよ」モソモソ

クロエ「あの……チェックはよろしいのですか……?」

一夏「もうやったから気にせず寝ろよ」

クロエ「わ、分かりました」

一夏「俺の布団に入ってくるなよ」

クロエ「……分かってます」モソモソ

一夏「何だ今の間は」

クロエ「何でもありません……」


-----

箒「おはよう、一夏、クロエ」ガタッ

クロエ「おはようございます」ペコリ

一夏「おう……」

箒「一夏……大丈夫か?」

一夏「おう……」

セシリア「おはようございます。一夏さん、クロニクルさん、篠ノ之さん」

箒「おはよう」

クロエ「おはようございます」ペコリ

一夏「おう……」

セシリア「一夏さん?」

一夏「おう……」

箒「目の下のクマが凄いぞ」

一夏「おう……まあ……大丈夫だ……」モグモグ

箒「おい、それはソースだぞ」

一夏「ん?ああ、悪い……」

箒「待て!それはラー油だ!」

セシリア「一夏さん、どうしましたの?何やら様子が変ですが……」

クロエ「寝返りの度に首の痛みで目が覚めてしまい……あまり寝付けなかったとの事です」

セシリア「……申し訳ありません」

一夏「いいよいいよ。目が覚めたって言っても数回だけだし」

一夏「大丈夫だって、後半時間ぐらいあれば俺のこのシワの少ない脳みそもフル稼働するからさ」

箒「それは七味唐辛子だぞ」

一夏「あれ?醤油どこだ?」

セシリア「どうぞ」サッ

一夏「おう……悪いな」

クロエ(今日のお味噌汁はほうれん草ですか……)モグモグ

一夏「うん……日本人の朝はやっぱり……卵かけご飯だよな……」チャッチャッチャッ


鈴清「「いーちかんっ!」」パシーン


一夏「……」バシャッ

セシリア「あっ」

箒「あ」

クロエ「ああっ……」

一夏「……」

鈴清「「おはよー!」」

一夏「……」

鈴「んん?どしたの?」

清「元気がないぞー?」

一夏「ん」カチンッ

一夏「食いもんの恨みは……おっかねえぞぉ……」グリグリグリグリ

鈴清「「痛い痛い痛い痛い~!!ギブギブギブッ!!」」ジタバタ

セシリア「二人まとめてこめかみを……」

箒「あれは……千冬さんによくやられたな……」

クロエ「……」オロオロ

一夏「今回は運よく飯にかかったから良かったけどなぁ……お前等これがテーブルにブチ撒けられてたらなぁ……?」グリグリグリグリ

鈴清「「ごめんなさい~!!もうしませんから~!!」」ジタバタジタバタ

一夏「……」パッ

鈴清「「ううぅ……頭がぁ……」」ジンジン

一夏「昨日からこんなのばっかだな……」モグモグ

箒「セシリア……お前……何を食べてるんだ……?」

クロエ「とても……茶色い……粘性の物ですが……」

セシリア「マーマイトですが?」

鈴「ねぇ、一夏ん」

清「今日は何か予定ある?」

一夏「今日かー馬術部に行く予定だなー」

清「だってさっ、鈴」

鈴「そうだねっ、清」

一夏「何かあるのか?」

鈴清「「うししっ!乙女のヒ・ミ・ツ!」」

一夏「は、はあ……さいですか……」

セシリア「どうです?」

箒「これは……その……何というか……あまり……食べられ……ないな……」

クロエ「見た目に……反して……独特の……味を……していますね……」

セシリア「そうですか?美味しいと思いますけど……」

一夏「何でグロッキーになってるんだ?」

セシリア「一夏さんも召し上がられます?マーマイト」

一夏「おーチョコソースか何かか?」

~アリーナ~

鈴「明日のメニュー、どうする?」

清「う~ん、そうだねぇ……中華!」

鈴「炒飯?餃子?」

清「小籠包?青椒肉絲?」

鈴清「「全部!!」」

「ごめ~ん、遅れちゃった~」

鈴「いいよいいよー!」ブンブン

清「全然おっけー!」ブンブン

「よ~し、じゃー早速始めよっか」

清「鈴、やっちゃえ!」

鈴「もちのロン!ソッコーでやっちゃうよ!」

「たはは……お手柔らかにね」

~グランド~

一夏「うぷっ……まだ朝のアレが……」

静寐「織斑くん、大丈夫?」パッカパッカ

一夏「ん?ああ、何とか」

箒「情けないぞ」パッカパッカ

白馬「……」

一夏「あのなぁ……俺の胃はさながらガラスの様に繊細なんだよ。あんな食物兵器食ってもう平気なお前がおかしいんだよ」ササッ

クロエ「どうかなさいましたか?」パッカパッカ

黒馬「ブルルッ」

一夏「おっと」ササッ

箒「見ろ、クロエは平気だぞ」

一夏「あのなぁ……」

黒馬「……」ジー

一夏「ん?何だ?」

黒馬「……」ジー

静寐「織斑くんが気になるのかな?どうしたの?」

黒馬「……」

クロエ「私の時と同じようですが……」

箒「乗せてくれるんじゃないのか?」

一夏「本当か?蹴られるのは嫌だからな」ソーッ

黒馬「……」スンスン

一夏「おおっ……いける?」

静寐「大丈夫そうだね」

箒「良かったな。ようやく馬に乗れて」

クロエ「おめでとうございます」

一夏「別に乗れなくてもーーー」ピトッ

クロエ「危ない!!」

黒馬「ヒヒーン!!」グルンッ

箒「一夏!!」

一夏「おっと」バッ


ブォンッ!!


クロエ「どうどうどう……!」

白馬「ブルルッ」

箒「一夏から離すぞ」

クロエ「了解しました」

一夏「おおっ……今回はそうきたかぁ」

一夏「油断させてまで蹴ろうとするかぁ……俺そんなに嫌われる様な事した覚えないんだけどな……」

静寐「だッ、大丈夫ッ!?」

一夏「おう、この通り。顔に穴は空いてないぞ」

静寐「よ、良かった~……」ホッ

一夏「あの……出来ればその……あまり近付かないでもらえる?ほら、乗せてもらってる子がさ……」

静寐「あ……そうだったね。ごめん」パッカパッカ

一夏「ふーっ、まさにじゃじゃ馬だな」

箒「今回は本当に危なかったな」

一夏「いやいや、あんなの危ないの内に入らないって」

箒「とにかく、お前はもう馬には近付くな。いいな」

一夏「いいな、って……何でーーー」

箒「いいな?」

一夏「……はい」

クロエ「すみません、一夏」タッタッタッ

一夏「あれ?あいつは?」

クロエ「向こうにいてもらってます」

一夏「何かすごいこっち見てるんだけど」

静寐「きっと……触られたのが嫌だったんじゃないかな……」

一夏「そうなのか?」

クロエ「わ、分かりません……」

一夏「繊細なのは同じなのにな……違うタイプなのか?」

クロエ「……何故私に聞くのですか」

静寐「あの子は気難しい子だからね……」

一夏「誰かさんみたいに?」

箒「……うるさい」ゲシッ

一夏「誰とは言ってないだろぉ!!」

一夏「いっててて……」サスリサスリ

箒「ふんっ……」

一夏「何も蹴る事ないだろ……」

クロエ「もしかして、一夏様がそれを持っている事が気に障ってしまったのではないでしょうか?」ヒソヒソ

一夏「まさかぁ……」ヒソヒソ

箒「何をこそこそしている」

一夏「別に、クロエと同じシャンプー使ったから気に障ったんじゃないかって話してただけだよ」

箒「そんな馬鹿な話があるか」

静寐「同じ匂いがしたから、っていうのは充分あり得ると思うよ」

クロエ「同じ匂い……」

一夏「それみろ」

箒「……うるさい」

静寐「あの子の心が分からない限り推測しか出来ないけどね」

一夏「だってさ」ポンッ

クロエ「ですから何故……私なのですか……?」


-----

箒「……」ブンッブンッブンッ

チキッ

箒「はッッ……!!」ヒュオォッッ!!

箒「ふうー……」チンッ

パチパチパチパチ

鈴「ブラボー!サムライガール!」パチパチパチパチ

清「ファンタスティーク!ビューティホー!」パチパチパチパチ

箒「鈴に清か……どうしたんだ?こんな時間に」

鈴清「「そりゃ箒ちんもでしょ?」」

箒「私は見ての通り、ただの日課だ」

鈴清「「あたし達も日課だよ!」」

箒「それで黄色いジャージを着ているのか?」

鈴清「「そうだよー!」」

鈴「我が師が愛用していたこの黄色いジャージを着る事によりぃー!」

清「あたし達の精神テンションを最高潮にまで高めてくれるのだー!」

箒「そうなのか……凄いな……」

鈴清「「でも今からは休憩~」」グテーン

箒「お、おい……二人とも凄い汗だぞ……大丈夫か?」

鈴「大丈夫大丈夫!」フキフキ

清「これも日課だから!」フキフキ

鈴清「「ねー!」」

箒「そんなに汗をかくまで何をしていたんだ?」

鈴「えっとね、こうやってアチョー!」ヒュヒュヒュッ

清「ホワチャー!やってただけ!」パパパァンッ

箒「……少し激し過ぎないか?」

鈴清「「全然!こんなの序の序の口だよ!」」

箒「そうか……」

箒(鈴の拳と蹴りは確かに速かった……しかし、それを止めた清も清だ……)

鈴「ねーねー箒ちんも休憩しようよー」グイグイッ

清「ねーねー箒ちんもダラダラしちゃおうよー」グイグイッ

箒「やめろっ……引っ張るなっ……私はさっき始めたところなんだっ……」

鈴「ちょっとぐらいいーじゃんよー」グイグイッ

清「今ならキリがいーじゃんよー」グイグイッ

箒「お前達が何時からっ……始めていたのかは知らないがっ……休憩なら勝手にしろっ……」

鈴清「「あたし達は五時半過ぎたぐらいからやってるよー!」」グイグイッ

箒「何……?」

鈴清「「ねーだから箒ちんもー」」グイグイッ

箒「だからじゃない!……それに箒ちんとは何だ」

鈴清「「箒ちんは箒ちんでしょー?」」キョトン

鈴「あーっ!もしかしてもしかしてー!」

清「もしかしても、もしかしないでもなくてー!」


鈴清「「箒……って呼んで欲しいわけ?」」

箒「!?」

清「うっしっしっ、なーんちゃってーい!」

鈴「うっしっしっ、それは孔明の嘘でーす!」

鈴清「「って、ああーっ!!?」」

鈴「あわわわっ、やばいよやばいよ!清!」ワタワタ

清「あわわわっ、もう六時半前だよ!鈴!」ワタワタ

箒「な、何だ?どうした?」

鈴「箒ちんごめんね!今からシャワー浴びたり!」

清「何とかかんとかで!ちょっと用事あるから!」

鈴清「「じゃあね!!」」ピューッ

箒「あ……おい……」

箒「何なんだ……嵐の様に来て去って行ったが……」

箒「……」

箒(一瞬だけ……あの二人……)

箒「宣戦布告、か……」

~食堂~

ガヤガヤガヤガヤ

一夏「何か、いつになく周りが騒がしいな」モグモグ

セシリア「何かあったのでしょうか?」

クロエ「皆さん二組のクラス代表が変わった、と口々に言っていますが……」

箒「今頃か?」

一夏「……ふーん、へえーそうなんだー」モグモグ

セシリア「内容が分かりますの?」

一夏「断片的に、だけどな。ま、そんなに焦らなくても鈴と清に聞けばいいさ」

セシリア「それもそうですわね」

クロエ「ですが、今朝から姿を見ていませんが……」

箒「朝から用事がある、と言っていたぞ」

一夏「何で箒が知ってるんだ?」

箒「朝の鍛練の時に会ったからだ」

一夏「へーそうなんだー」モグモグ

セシリア「早くしないと朝食の時間が終わってしまいますわ」

一夏「二度寝でもしてるんじゃないか?」

クロエ「いえ、来ました」

鈴清「「皆おいっすー!いただきまーす!」」ストンッ

一夏「よう、今日はやけに遅かったな」

鈴「ちょっと野暮用があったからね!」

清「それでちっと遅れちゃった!」

一夏「ふーん、野暮用ね……」

清「鈴があそこでしくじらなかったらこんな事にはならなかったのにー」

鈴「そういう清だって、あんなとこでしくじったでしょーがー」

清「仕方ないでしょー久しぶりだったんだからー」

鈴「あたしだって久しぶりだったんだからー」

一夏「食べながらあんまり喋るなよ……」

箒「鈴、清、二組のクラス代表が変わったらしいが……何か知らないか?」

鈴清「「知らなーい。あたし達は昨日お出かけしてたもーん」」

箒「そうか……」

鈴(お出かけの前にサクッサクッと終わらせた事なんだけどね)

清(ここはあえて知らないって事にしておいてー)

鈴清((一夏んをビックリさせるんだから!))

セシリア「どこに行ってらしたのですか?」

鈴清「「それは乙女の秘密!」」

鈴「でもでもーそれが分かるビッグイベントが待ってるよ!」

清「この後すぐ!皆さんこう御期待!」

クロエ「喋られていて……お時間は大丈夫ですか?」

鈴「全然問題なし!」モグモグ

清「赤子の手を捻るよりも容易い!」モグモグ

クロエ「そうですか……」

セシリア「二人ともマナーがなってませんわよ!」

一夏「どんだけ食べながら喋るんだよ……」

箒「あれは気のせいだな……」ボソッ

~教室~

一夏「……」

『次のニュースです。白いISが紛争地帯に現れ、人々を救いました』

本音「おっは~皆元気ぃ~?」トテトテ

クロエ「おはようございます」ペコリ

箒「おはよう」

セシリア「おはようございます」

清香「私もいるよーおっはよー!」

静寐「皆おはよう」

一夏「……」

『難民キャンプに向けられた攻撃全てをバリアのようなもので防いだ後、テロ組織を無力化、政府軍や国連部隊がーーー』

本音「おりむ~」プニ

一夏「ん?」

本音「おっは~元気ぃ~?」ニパー

一夏「元気元気、超元気だぞ」

清香「ワンセグ見てたけど何かあったの?」

一夏「ああ、ちょっと天気予報を見てたんだよ」

静寐「どこかに出かけるの?」

一夏「出かけようかなー、って思ってるんだけどなー天気は微妙らしいし」

本音「雨♪雨♪降れ触れ♪母さんがー♪」

一夏「そこはてるてる坊主の歌だろ……」

箒「そうなのか?」

クロエ「私も初耳です」

セシリア「一夏さん!その外出、私も同行してもよろしいですか?」

一夏「別にいいけど……大丈夫なのか?部活」

セシリア「大丈夫ですわ!」

一夏「ふーん……ま、いいけど。大して面白くも何ともないと思うけど……」

箒「目的も聞かないで着いていくのか」

セシリア「何か問題でもありまして?」

箒「私は構わないがお前はそれでいいのか?」

セシリア「ええ、もちろんですわ!」

一夏「ま、ちょっとした買い物なんだし別にいいんじゃないの?」

箒「お前は何で他人事なんだ。そうやって適当にーーー」

一夏「クロエはどうする?来るか?それともゲームしてるか?」

セシリア「……」ジィーッ

クロエ「ええっと……あの……その……御同行……します……」

箒「聞け!」

一夏「聞いてるって、耳は二つあるんだぞ?」

清香「私等、何かすごい蚊帳の外感が……」

静寐「本音、織斑くんに言う事あるんでしょ?」

本音「あり?そうだっけ?」キョトン

一夏「着いてきたいなら素直に言えよなー」

箒「なっ、べ、別にそういう訳ではない!」プイッ

一夏「ん~?本当かぁ~?」

箒「ふんっ……」

セシリア「!」

セシリア(これはもしかして……チャンスなのでは……?)

セシリア「し、篠ノ之さんもこうおっしゃってますからーーー」

本音「その嘘本当~?」

一夏「その本当嘘~?」ニヤニヤ

本音「ね~ね~」クルクル

一夏「ねーーー」

箒「嘘だ」グリッッ

一夏「いッッ!!ちょッ……お前ッ……踵で踏んだなッ………!!」ピョンピョン

箒「……馬鹿」

セシリア「むっ……」

本音「痛いの痛いの~あっちいけ~」

静寐「思い出せたの?」

本音「何が?」キョトン

クロエ「大丈夫ですか……?」

一夏「おう、あっちいけーそして食らえー」ジンジン

箒「……」

一夏「冗談だって、そんなに睨まなくたって……ねえ?」ジンジン

セシリア「そ、そうですわね。篠ノ之さん、少しやり過ぎではなくて?」

箒「何とかにつける薬はない」

一夏「失礼な、自分が言われるからって人に馬鹿とはなんだ。馬鹿とは」

セシリア「そうですわ!確かに一夏さんは一言多くて人の話をはぐらかしていい加減で面倒くさがりで子供みたいな人ですが馬鹿ではありませんわ!」

一夏「ハッハッハッ、ブリティッシュジョークは面白いなぁ……」

本音「クロに~ん、私ね~おりむ~にね~何か言いたかったのだ~知らな~い?」

クロエ「も、申し訳ありません……分かりません……」ペコリ

清香「あっ、あのさ!二組のクラス代表が変わったんだって!」

一夏「おう、そうだな」

箒「そうらしいな」

セシリア「そういえば、そうでしたわね」

クロエ「昨日変わった、との事です」

清香「あれ?リアクション薄……?」

静寐「あれだけ皆騒いでたから無理もないと思うけど……」

本音「む~ん……出てこい~……こいこい~……記憶~」

一夏「これがまた厄介な奴がなったらしいな」

クロエ「そうですね」

清香「織斑くん、クロニクルさん、知ってるの?」

一夏「飯の時に聞こえたからな」

クロエ「私も…聞こえてました」

箒「どうして言わなかった。鈴と清は結局知らなかったんだぞ」

セシリア「鈴さんや清さんに聞いた後でも、教えてくださってもよろしかったのでは?」

一夏「聞かれなかったからな」

一夏「ヒント、二組のクラス代表は専用機持ち」

セシリア「二組の?」

箒「専用機持ち……?」

一夏「クロエ、ヒントは俺が言う」

クロエ「分かりました」

本音「む~ん……むむむ~ん……」ウーン

静寐「二組だけ、専用機持ってる人がいなかったもんね」

清香「三組や四組、五組には数人いるのにね」

静寐「本当ならオルコットさんは一組で唯一専用機持ち…になるはずだったんだけどね……」

清香「思わぬダークホースが二人も現れちゃったもんね」

静寐「ダークホース……言い得て妙だね」

本音「むむむっ……」ウーン

セシリア「一夏さん……そのクラス代表の方はまさか……転校生、ではありませんか?」

一夏「転校生だな」

箒「じゃあクラス代表というのはまさか!」

鈴「そう!突如としてIS学園に現れた二人の転校生、その素性は謎のベールに包まれていた!」

清「だが!その正体は四千年の歴史を誇る中国より遠路遥々やってきた双子の代表候補生!」

鈴清「「誰が呼んだか知らないが、人はあたし達の事を神が授けた龍の子と呼ぶ!そしてあたし達はそこにいるおーーー」」


本音「思い出した~!」ピコーン


鈴清「「り……斑……一夏に……」」

本音「ねぇ~おりむ~放課後お暇~?」クイクイッ

一夏「お、おう……特に…用事は、ないぞ……」

本音「あのねあのねっ、かいちょーがね~生徒会室に~来てって~だから私にお願いなんだって~」

一夏「おお……そう……なのか……」

箒「……」

セシリア「……」

清香「あちゃっ……」

静寐「本音……」

本音「あり?皆どうしたの~?お騒がせしました~?」キョロキョロ

本音「うひひっ、やめっ、くすぐったいよ、うはははっ」

鈴清「「よくもあたし達の見せ場を邪魔したな~このこの~!」」コチョコチョ

清香「何だろう……とってもプリチーだね」

静寐「うん…分かる。可愛い」

一夏「猫が三匹も集まって何とまあ……」

クロエ「猫、ですか?」

箒「それだ。どうりでこの光景に見覚えがあると思ったら」

セシリア「確かに猫同士がじゃれているのに似てますわね」

本音「あはははっ!ほんとにっ!だめっ!にゃはははははっ!うはははははははっ!!」

鈴清「「こちょこちょこちょこちょ~!!」」コチョコチョコチョコチョ


グイッ


鈴清「「ミャッ!!?」」

千冬「始業五分前だ。自分のクラスに戻らんか」

鈴清「「お久しぶりです!お義姉さん!」」ブラーン

千冬「織斑先生だ。それに、貴様等の姉などになった覚えは一切ない」

鈴「ならなら!どうですか~この優良物件!将来有望、眉目秀麗、才色兼備、天衣無縫、文武両道、二天一流、千客万来、一攫千金!」

清「さらに9つの中華料理を網羅!おまけに炊事洗濯を含む全ての家事全てはお手のもの!それがなんと一軒の値段で二軒も!」

千冬「……」

鈴清「「どうですか!買うなら今ですよ!!」」ブラーン

千冬「いらん」パッ

鈴清「「え~!」」スタッ

千冬「御託はいい。さっさと教室に戻らんか」

鈴清「「はーい!あ、そうだ!」」

鈴清「「一夏んに箒ちんにクロちんにセっちゃん!今日のお昼御飯、頼んじゃ駄目だよ!」」

鈴清「「じゃあねー!」」

千冬「……」

一夏「……」

クロエ「どうかしましたか?」

一夏「いや、別に……散々言いたい事だけ言って帰ったな、って思ってさ」

クロエ「昼食を頼むな、ですか」

箒「結局、私達にそれが言いたかったのか?鈴と清は」

セシリア「挫かれたとはいえ宣戦布告に来たのではありませんくて?」

清香「挫いた本人はそれを無意識でやっちゃったのが何ともね……」

セシリア「ですから、憎むに憎めませんものね」

箒「全くだ」

本音「ぷんすかっ、今度は負けないぞ~ホームランで代打逆転満塁さよ~なら~だぞ~」

静寐「が、頑張ってね」

本音「私はやると言ったらやるのだ~!お~!」

箒(千冬さんの反応から察するにあれは前々から言われていたんだろうな……想像出来なくもないがな……)

セシリア(なかなかどうして、あの織斑先生を前にしてあの様な立ち振舞いが出来るとは……あのお二方の実力は……それか、ただの性格……?)

千冬「全員席に着け、授業を始めるぞ」

千冬「以上だ。各自、休憩」

キーンコーンカーンコーン

千冬「織斑、来い」

一夏「何スかぁ?」

スパーン

一夏「いでぇっ!!」

千冬「気の抜けた返事をするな」

一夏「そんな理不尽な……」ジンジン箒

千冬「……」チョイチョイ

一夏「はいはい」

千冬「鈴と清の事だが」ボソッ

一夏「やっぱり姉ちゃんも気付いたか」

ッパーン!!

千冬「織斑先生だ」

一夏「理不尽……」ジンジン

ジンジン箒って何だよ

~食堂~

鈴「さあさあ皆さんお待ちかね!」

清「お待ちかねの~ビックイベント!」

ドンッ

一夏「いよっ、待ってましたー」パチパチパチ

クロエ「?」パチパチパチ

箒「もうほとんど分かってしまったようなものだがな……」

セシリア「フロシキ……?」

鈴清「「山東、江蘇、浙江、安徽、福建、広東、湖南、四川の全てを取り入れた究極の満漢全席!召し上がれ!」」パカッ

一夏「おおーすげぇ、満漢全席に全然足りてねー」

鈴「うるせー」

清「皆まで言うなー」

箒「……やるな」

セシリア「これだけの料理を……一体……」

クロエ「マンカンゼンセキ?」

一夏「右からバンバンジー、タマゴスープ、ギョーザ、チャーハン、ハルマキ、だな」

セシリア「なるほど……」

クロエ「ギョーザとチャーハン……これは以前一夏が作られたものと似てますね」

清「鋭いね~クロち~ん」プニプニ

鈴「全くもって鋭いね~」プニプニ

クロエ「あ、ありがとうございます……」

一夏「ま、鈴と清の親父さんに教えてもらったからな。そりゃあほとんど同じだよな」

箒「用事とはこれの事だったのか」

鈴清「「いえーす!」」

箒「大変じゃなかったのか?朝からこれだけの量を」

鈴清「「全然!二人一緒だから!」」

セシリア「鈴さんに清さん、これは本当に……中華なのですか?」

鈴清「「えっ?」」

一夏「セシリーは燕の巣とかフカヒレスープとか……」

一夏「……」

一夏「北京ダック……とかを御所望のようだぞ」

鈴「今の間は何だよー」

清「考えなくても出るでしょー」

一夏「いや、俺中華料理の高いやつ知らないし」

鈴清「「御託はいいからとっとと召し上がれ!」」

一夏「わーい、いっただっきまーす」

箒「いただきます」

セシリア「では私も、お言葉に甘えて」

クロエ「……」

クロエ(姉妹……ですか……)

一夏「クロエ?」

クロエ「えっ?あっ、はっ、はいっ!失礼して、いただきます!」

一夏「……」

セシリア「このチャーハン、美味しいですわ」

箒「こっちの卵スープもなかなかだぞ」

クロエ「一夏のとはまた違った餃子……」

一夏「じゃあ俺はこの春巻きをっと」

鈴清「「一夏にはこーれっ!」」ドンッ

一夏「おおぉ……これはまさか」

鈴清「「そう、そのまさか!」」パカッ

クロエ「?」モグモグ

セシリア「何ですの?これ?」

箒「酢豚だな。誰がどう見ても」

一夏「……お手並み拝見、といかせてもらおうかな」

鈴清「「ふっふっふ~♪」」

一夏「んまいっ!」

鈴清「「いえーいっ!ハイターッチ!」」パチンッ

一夏「本場中国に行っただけあって腕を上げたな」モグモグモグモグ

鈴「でしょでしょ?」

清「どんどん召し上がれ!」

一夏「美味い美味い」ガツガツモグモグ

箒「そんなに美味いのか」

鈴清「「だーめっ!」」

箒「な、何故だ?」

鈴清「「この酢豚はあたし達と一夏の約束なの!」」

箒「約束?」

鈴清「「そう、大事な大事な約束!」」

一夏「ングッ!?……ちょッ……まッ……ゴホッ……喉にッ……」

クロエ「水を」サッ

一夏「悪い……」

セシリア「スブタに約束……ですか?」

清「知りたい?」

鈴「どぅゆーのう?」

セシリア「ええ、人並みには」

一夏「鈴、清、やめろ。言うな」グイッ

クロエ(何故私にスブタを……?)

箒「言え、教えろ。鈴、清」

鈴「え~どうしよっか~清」

清「え~どうしちゃおっか~鈴」

一夏「聞くな、絶対に聞くな。聞かない方がお前等の為だ」

箒「早く言え」

セシリア「お願いしますわ」

クロエ(食べてもよろしいのでしょうか……)

鈴清「「ならば、教えてしんぜよう!」」

一夏「や、やめろ!それだけはやめろ!」



鈴清「「あたし達の酢豚を毎日食べてくれるって!!」」


箒「酢豚を?」

セシリア「毎日?」

一夏「ああ……」

クロエ「?」モグモグ

クロエ(こんなのに美味しいものを毎日?一夏様は飽きはこないのでしょうか……?)

鈴「きゃーっ、ついに言っちゃったよ!鈴!」

清「きゃーっ、ついに言っちゃったね!清!」

箒「ま、毎日という事はつまり……」

セシリア「まさかそれは……」

鈴清「「お嫁さんにしてもらうって事!!」」

一夏「もう駄目だぁ……おしまいだぁ……」ガクッ

クロエ「ど、どうしました?」

箒「ほう……なるほどな……」グイッ

セシリア「それはそれは……」ハシッ

一夏「ちょっ……何で二人して俺を掴むんだ……!?」

箒「そんなに、酢豚が好きか?」

セシリア「本当に、毎日食べたいのですか?」

一夏「い、いや、これにはだな……海よりも深~くて山よりも高~い訳があるんだ。だから……な?落ち着けって二人ともぉ!」ジタバタ

クロエ「……」オロオロ

鈴「まさに高みの見物だねっ、清」

清「お高くとまっちゃってるねっ、鈴」

箒「訳なら大方予想がつく。問題はお前のそのいい加減さだ」

セシリア「これも鈴さんや清さんに対しても口から出任せで仰った結果ですわ」

一夏「何でこんなに理不尽に怒られてるんだろう」

鈴「まー座れやい、兄弟」ポンッ

クロエ「で、ですが……!」

清「まー落ち着けやい、兄弟」ポンッ

クロエ「は、はい……」

鈴清「「勝負は見えてるからね」」ボソッ

クロエ「!?」

鈴清「「ふははー!泣き喚くがいい!敗者どもめー!」」

セシリア「誰が敗者ですか!まだ決まった訳ではありませんわ!」

箒「私達はまだ舞台に上がってすらないぞ」ブンブンッ

一夏「お、俺を離してから言ってくれ~!」ガクガクッ

鈴「舞台に上がったところでね!」

清「そこはあたし達の独壇場!」

鈴清「「無駄無駄無駄無駄ぁ!」」ビシッ

箒「……」カチンッ

セシリア「なっ」カチンッ

一夏「……クロエ」スッスッ

クロエ「了解」

箒「大体、酢豚など朝から毎日食べられるものか」

清「別に朝からとは言ってないよー?」

鈴「毎日、だから朝昼晩のどこかでいいんだよー?」

箒「屁理屈を……!」

セシリア「それでは栄養が偏るのではなくて?多種多様なメニューを作るべきかと思いますが?」

鈴「そんな初歩の初歩の初歩的な事なんて」

清「考えるまでもない事なんじゃな~い?」

鈴清「「あ!もしかして!料理した事ないの?」」

セシリア「失礼な!ちゃんとありますわ!」

鈴「ならなら~言葉じゃなくて実力で!」

清「あたし達を黙らせるべきだよね!」

箒「いいだろう。なら勝負だ」

セシリア「その挑発に乗って差し上げますわ」

鈴清「「ならこっちも受けてたぁ~つ!」」

鈴清(ふっふっふ~まんまと罠にかかった!)

鈴清「「判定は一夏んにーーーってあれ?」」

鈴「あれれ?」キョロキョロ

清「あれあれ?」キョロキョロ

鈴清「「一夏んは?」」キョロキョロ

箒「……またしても」

セシリア「逃げましたわね。一夏さん」

鈴「ここはあたし達に任せて!」

清「鬼ごっこは得意だからね!」

箒「いや、四人で探すぞ」

セシリア「その方が懸命ですわね」

鈴清「「呉越同舟ってやつだねー!」」

箒「その通りだ。行くぞ」ガタッ

セシリア「私はあちらを」ガタッ

鈴「あたしはあっちね!」

清「じゃああたしはこっち!」

楯無「……行ったわよ」

一夏「いやーどうもすいません。姉妹水入らずでロシアンティーを頂いてたところを」

クロエ「突然現れて、失礼を致しました」ペコリ

楯無「いいのよ。最近こっちに全然構ってくれなくて寂しかったんだから……ねえ?簪ちゃん?」

簪「えッ!?いやっ……わ、私は……べっ、別に……」

楯無「こーら、隠れないの」

一夏「あのさ……俺が言うのもなんだけど……やっぱりまだ駄目?」ポリポリ

簪「……」コクリ

楯無「あらあら、これは簪ちゃんをこんな風にした責任を、ちゃ~んと取ってもらわないと駄目ね」クスクス

一夏「は、はあー……責任、ですかー……」

楯無「男の子な、分かるでしょ?」

一夏「確かにそうですが……」チラッ

簪「おッ、お姉ちゃん~!」ブンブンッ!!

クロエ「責任?男の子?」

>>>350

楯無「男の子な、分かるでしょ?」

楯無「男の子なら、分かるでしょ?」


-----

箒「……」

一夏「……」

クロエ「……」

箒「……」

一夏「あ、あのぉ……箒さん?」

箒「……」

一夏「もしかして……怒ってる?」

箒「怒ってない」

一夏「さ、さいですか……」

箒「……」

一夏(今のお前は誰がどう見ても怒ってるようにしか見えないよ)

一夏(セシリーはセシリーでなんかプリプリしてたしなぁ……何とかから出た錆、ってやつか……)

クロエ(現状を束様に報告すべきでしょうか……)

箒「……」クイッ

一夏「ん?ど、どうなさいました?」

箒「……からな」ボソッ

一夏「えっ?何だって?」

箒「私だって、やれば料理だって出来るんだからな。毎日作れるんだからな」

一夏「お、おう……」

箒「……それだけだ」プイッ

一夏「……」ポリポリ

箒「……」

一夏「ったく……あのな、別に料理が色々出来るからとか、いつも元気がいいからとかじゃないんだって」

一夏「そうやって早合点するところがお前の悪い癖だぞ。小学三年の時だって俺が女子と仲良くなっただけでーーー」

箒「う、うるさいっ!それ以上言うな!」カァーッ

一夏「はいはい」

箒「何でそんな事を覚えているんだ……」ボソッ

一夏「他にも覚えてるぞー昔神社の階段で転けて大泣きして痛くて歩けないって言うから、俺が背負ってやってー家に帰ってる途中に俺にーーー」

箒「やっ!やめろっ!それ以上は駄目だ!」ギューッ

クロエ「箒様!?」

一夏「ぐえぇぇぇっ……く、首が……」

箒「すっ、すまんっ!大丈夫か?」パッ

一夏「……は、はははっ、やっぱ箒はそうでなくっちゃな」

箒「私は……?」

一夏「らしくないんだよ。さっきみたいに俯いて裾を引っ張るなんてさ」

一夏「箒は箒らしく、いつもみたいにいてくれればいいんだよ。俺の隣でさ」

箒「ッ~……だ、誰のせいだと思ってるんだッ!」

一夏「俺のせいだよな。ごめん」

箒「そ、そうだ!このッ……馬鹿……」

箒(……私らしく、か……そうか、そうだな……ふふふっ♪)

一夏(嬉しいくせにまたそうやってそっぽ向くんだから……)

一夏「ったくしょーがないなぁ!箒はー!ほーら、よーしよしよーし!!」ワシャワシャワシャワシャ

箒「なっ!?何をするッ!?やめっ!やめろー!この馬鹿ーっ!!」

クロエ「報告の必要は……なさそうですね」


ガラッ

一夏「失礼しまーす」ヒリヒリ

箒「失礼します」

クロエ「失礼します」ペコリ

楯無「はい、いらっしゃーーーって織斑くん、どうしたの?その頬」

簪「赤い……」

一夏「いや……これはちょっとですね……元気付け過ぎたというかいつも通りというかですね……思い出に浸ろうとした結果でしてかくかくしかじか……」ヒリヒリ

楯無「そ、そうなの……それは大変だったわね」

一夏「ま、気にせんでください。こんなの直に治りますから」ヒリヒリ

箒「……」

箒(謝ったとはいえ強く叩き過ぎたな……いい加減にーーー)

一夏「あんまり気にすんなよ。箒」ボソッ

箒「……ああ」

楯無「……」

楯無(あらあら)クスッ

簪(何か……あった……のかな?)

楯無「虚の淹れたのには劣るけど紅茶よ。お好みで砂糖とミルク、ジャムもあるわよ」

一夏「おーありがとうございまーす」

箒「ありがとうございます。いただきます」

クロエ「ありがとうございます」ペコリ

一夏「今日はあの布仏姉妹はいらっしゃらないんですね」

楯無「二人ともISの整備に行ったわ。だから、今日は私が淹れたんだけど……美味しくなかったかしら?」

一夏「いやいや、まさかそんな……」

楯無「なら良かったわ♪」

箒(整備……本音は整備をしていたのか……)

クロエ(整備を担当なさっていましたから……lSの機能を熟知していらしたのですね……)

簪「……」ジーッ

クロエ「どうかなさいましたか?」

簪「な、何でもない……です……」

クロエ「?」

簪(金色の眼に銀髪……アニメキャラみたい……)

楯無「さて、織斑一夏くん。単刀直入に言うわ。生徒会に入らない?」

一夏「入りませんです」

楯無「つれないのね。もしかして……馬術部に入るのかしら?」

一夏「だってよ。二人とも」

クロエ「わ、私ですか?」

箒「馬鹿を言うな。お前に聞いているんだぞ」

一夏「はいはい、そうですね」

楯無「そうねぇ……私としても、そろそろ部活動に入ってもらえると嬉しいんだけど」

一夏「すみません。自分、IS一筋ですから」

楯無「どうやら……そのようね」

一夏「クロエはそろそろハンドボール部に入るとか言ってましたけどね」

楯無「あら、それは朗報ね」

クロエ「ひ、一言も言ってませんよ!?」

箒(馬術部か……)

一夏「それにしても何でまたそんな話をするんですか?」

楯無「それはね、織斑くんが馬術部ばっかり見に行ってずるい!って苦情がたくさん寄せられてるからよ」

一夏「さいですか……」

楯無「正直なところ、ずるいと言われても困るわよね」

一夏「それもそうですけど俺なんかに見に来てもらって何かあるんですかね」

楯無「何かあるんじゃない?そのずるいと思う人達には」クスッ

一夏「は、はあ……さいですか……」

箒(馬鹿馬鹿しい……ずるも正しいもあるものか)

クロエ(一夏様が学園内をくまなく見て回っていた事には気付かれていないようですね)

楯無「で?簪ちゃんを彼女にどう?」

一夏「で?じゃないですね」

簪「お姉ちゃん!!」ガタッ

楯無「だって……ねえ?責任取ってもらわないとね?」

箒「ッ~……」

クロエ(このクッキー、ジャムが乗っていておいしいですね……)モグモグ


-----

一夏「おーい、来たぞー開けろーコラーだーん、だーん!」ピンポーンピンポーンピンポーン


ピピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン


弾「お前うるせぇよ!いい加減チャイムは一回でいいって何度もーーー」

鈴清「「ダンダダーン!!」」ピョーン

弾「鈴に清!?ってほわあああぁぁぁぁぁ!!!」ドテーン

鈴「久しぶりだなーこのシスコンやろー」ガシッ

清「元気してたかーなんちゃってV系バンドのベースやろー」ガシッ

弾「言ったなこーーーいだだだだだだっ!ギブギブッ!腕決まってる!決まってるって!!」

鈴清「「おらおらおら~!」」ミシミシ

弾「チョーク!チョオオオォォォォクッ!!たッ、助けろ一夏ぁ!!!」

一夏「あ、部屋の電気消したかな」

弾「この野郎ぉぉぉぉおおおおおお!!!」


-----

一夏「おーい、来たぞー開けろーコラーだーん、だーん!」ピンポーンピンポーンピンポーン


ピピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン


弾「お前うるせぇよ!いい加減チャイムは一回でいいって何度もーーー」

鈴清「「ダンダダーン!!」」ピョーン

弾「鈴に清!?ってほわあああぁぁぁぁぁ!!!」ドテーン

鈴「久しぶりだなーこのシスコンやろー」ガシッ

清「元気してたかーなんちゃってV系バンドのベースやろー」ガシッ

弾「言ったなこーーーいだだだだだだっ!ギブギブッ!腕決まってる!決まってるって!!」

鈴清「「おらおらおら~!」」ミシミシ

弾「チョーク!チョオオオォォォォクッ!!たッ、助けろ一夏ぁ!!!」

一夏「あ、部屋の電気消したかな」

弾「この野郎ぉぉぉぉおおおおおお!!!」

弾「まあ、とりあえずくつろいでくれや」ガチャ

鈴「喜んで~!」

清「やっほ~い!」

一夏「おー相変わらず殺風景だな」

弾「うるせぇ、お前に言われたかねぇよ」

鈴清「「~♪」」ガサゴソ

一夏「仕方ないだろ?姉ちゃんが友達連れて来て飲んだり騒いだりして、俺の部屋に突撃してくるんだからさぁ」

弾「千冬さんもか?」

一夏「ベロベロになった時はな」

清「あった?」ガサゴソ

鈴「なーい」ガサゴソ

弾「かぁ~っ!羨ましい奴め!素敵なお姉様方とお近づきになれるとは!」

一夏「お前なぁ……相手酔っぱらいだぞ?臭い残るぐらい酒臭いんだぞ?素敵の欠片もないんだぞ?辛いだけなんだぞ?」

弾「いいやッ!それでも俺はいけるねッ!」

一夏「そうかぁ…そんなに酔っぱらいがいいのかぁ……頑張れよ」

弾「……千冬さんの友達って酔っぱらいしかいないのか?」

一夏「あのね、基本的にウチに来れるのが稀な人ばっかりだから必然的にね……粉骨砕身に全身全霊で、どう足掻いたところでね……酒盛りに……な…る……」ズーン

鈴「棚の後ろかなー?」

清「引き出しの下の下?」

弾「そ、そうなのか……なんかスマン」

一夏「いいえぇ……なんかもう馴れちゃってね。女の人に妙な耐性出来たからね……うん……」ズーン

弾「さっきから何してんだお前等はぁ!!」

鈴清「「エロ本探し!!」」

弾「女の子が大きな声でエロ本なんて言うんじゃありません!!」

一夏「お前またそんなデカい声でそんな事言ってると蘭に蹴られるぞ」

弾「ああ?蘭はまだ出かけてるよ」

一夏「まだ、ねぇ……」

~織斑家~

クロエ「それでは、ごゆるりと」

セシリア「こ、ここが……一夏さんのご自宅……!」キョロキョロ

セシリア(もしかしたら……私はここに住む可能性もありますものね……一夏さんと!)

箒「日本の家は初めてか?」

セシリア「ええ、外観は何度も見ていましたがこうして中に入ったのは初めてですわ」キラキラ

箒「お前の家とはかけ離れているから今日は過ごし難いとは思うぞ。まず靴を履かずにうろつくからな」

セシリア「いえ、このスリッパもなかなかですわ♪」

箒「そ、そうか……」

箒(そのスリッパがそんなに気に入ったのか?後で一夏にメーカーを聞いておいてやろうか……)

セシリア(これは私も一夏さんを招待すべきですわね♪出来る事なら……織斑先生にも来て頂く事が出来れば幸いですが……)

クロエ(食材は冷蔵庫に入れておきましょうか)ガサガサ

~五反田家~

鈴「もーらいっ!」

弾「あっ!ちょっ!おまっ、カービィで吸い込み自さーーーうわっ、吐き出しやがったな!!」

鈴「へっへーん、頑張ってねー」

弾「上がれえぇぇぇぇ!!俺のサムス!!あっ……」カチャカチャ

ドーン

弾「」

一夏「ファルコンパーンチ」ポチッ

清「にゃっ!?まともにもらっちった!」

一夏「わはは、せいぜい足掻くがいいこのピンクボールめがー」

清「カービィなら余裕で生還出来ちゃうんだからねっ!」カチャカチャ

一夏「ところがぎっちょん、そうはイカの何とかだ」ピューン

清「爆弾なんてあんまりだー!」ドーン

一夏「残るは……鈴、お前だけだ」

鈴「ここで会ったが百年目!五年前の借りを変えさせてもらうからねっ!」

一夏鈴「「ファルコンパーンチ!」」

鈴「あっ!」

ドーン

一夏「所詮はコピー。オリジナルには勝てない……」

一夏「一度言ってみたかったんだよなーこの台詞」ニヤニヤ

鈴「ぐぬぬぬっ……」二位

一夏「ま、当然の結果だな」一位

清「ゼロスーツある方がいいんじゃなーい?」三位

弾「嫌だね。スマブラは64ってのが世の五条項なんだよ」四位

清「wii持ってないだけだろーが」ビシッ

弾「は、はあ!?ちげーし!持ってっし!」

一夏「もう五年経ってから出直してきたまえ、お・チ・ビ・ちゃん♪」ペシペシ

鈴「う~!」

鈴清「「なら次はこれで勝負だーっ!!」」バーン

一夏「わーい、友情破壊ゲームの異名を持つ桃鉄だーすっごーい」

清「これなら負けないんだからね!」

鈴「ぎゃふんと言わせてやるんだからね!」

一夏「いいぜ、かかってこいよ」

鈴清「「はい!」」

弾「はい、じゃねぇよ!セッティングぐらいやれよ!お前等がやりたいんだろうが!」ガサゴソ

一夏(そうは言いつつもセッティングするんだな)

鈴「おー懐かしの画面ですなー」

清「おー五年ぶりの画面ですなー」

一夏「何年やるんだ?」

弾「とりあえず、二十年ぐらいにしようぜ」

鈴清「「じゃあ百年!!」」

弾「ばっ!お前等ーーーああっ……」

一夏「oh……」

~織斑家~

クロエ「……」ポフッ

クロエ(やはりこの……人を駄目にするソファーは触り心地が良いですね)モゾモゾ

クロエ「~♪」

箒「……少し、しょっぱいか」

箒(一夏は何かにつけて文句が多いからな……料理には特に)

箒(味噌を減らして出汁の味を増やすか……それとも他のメニューを薄味に……)

箒「……」ウーン

セシリア「まな板を貸して頂けますか?」

箒「ああ、ほら」

セシリア「ありがとうございます」

箒「……」ウーン

セシリア(かなり悩んでいらっしゃいますわね。篠ノ之さん)

セシリア(料理のシンプルさが時に仇となり、そのように絶妙な加減を必要とされる場面に出くわしてしまうのですわ)

セシリア(しかし、このセシリア・オルコットにそのようなミスなどありませんわ!)

セシリア(フィッシュ&チップスとサンドイッチ……これならばあまり料理の経験のない私でも!)

セシリア(まずは充分な温度になった油に、白身魚を入れてフライに……)

セシリア「熱っ」パッ

ジャボッ

箒「うわっ!油に投げ入れる奴があるか!危ないだろ!」

セシリア「なっ、投げ入れてなんかいませんわ!これは……そう!少し手が滑っただけですわ!」

箒「……次からは気を付けろよ」

セシリア「わ、分かっていますわ……」ソーッ

箒(何故油に入れるぐらいで腰が引ける)サッ

セシリア「えいっ……きゃっ!」ジャボッ

箒「だから投げ入れるな!」

クロエ(あ……眠くなって……きました……嫌……なのに……)ウツラウツラ

~五反田家~

弾「で?実際どうよ」

一夏「何がぁ?」

弾「学園生活だよ」

一夏「楽しいよ。うん……楽しい」

弾「言い聞かせてんじゃねぇよ。ちくしょう」

鈴清「「チョー楽しいよ!!」」

弾「お前等はまだ一週間も経ってねぇだろ」

鈴「ここいる?」

清「鈴にあげる」

鈴「おっけーい」

弾「あっ、そこ俺が狙ってた物件!」

一夏(さて、どのカードを使おっかな……)

弾「お前はいいよなぁ……棘の園でよぉ……禁断の果実をーーー」

一夏「死ねよやー」

弾「お前ッ!?666カード使いやがったな!!」

一夏「カードは持ってりゃ嬉しいコレクションじゃない。使わなきゃ!」

鈴「うっわーえげつなーい」

清「うっわーいい加減やめろよー」

一夏「カードを集めて使うのも桃鉄のルールの一つなのに批判される筋合いはない!」

鈴清「「開き直ってんじゃねーよっ!」」

弾「お前等はどうだったんだ?第二の故郷は?」

鈴清「「日本の方が百億万倍良かった!」」

弾「お前等なぁ……代表候補生になったんだろ?」

鈴「それはそれ!」

清「これはこれ!」

弾「あーあ、そーですか~」

一夏(貧乏神はまだか……)

一夏「実家はもう大丈夫なのか?」

鈴清「「のーぷろぶれむっ!もう心配御無用なーっしん!!」」

一夏「そうか、良かったな」

鈴清「「お父さんが頑張ったからね!もちろん、あたし達も!」」

鈴「その甲斐あって実家は商売繁盛!家計は安泰!」

清「凰家の名は中国に轟き!家族皆で和気藹々!」

一夏「鈴、清、頑張ったな」

弾「泣かせる話だよなぁ……奥さんの家族の為に日本を遠く離れてまで……それを手伝うお前等もまた健気でもう……」グスッ

鈴清「「よせやい!照れるだろーがっ!!」」

弾「わ、悪い……親父さんとお前等の苦労を思うと……」グスッ

一夏(家族の為、か……)

一夏「代表候補生になったのも家族の為なのか?」

鈴「それもあるけど~」

清「一番の理由は~」

鈴清「「ビックリさせたかったから!!」」

弾「お、おう……」

鈴清「「ビックリしたでしょ?」」

一夏「いや、確かにビックリはしたけど……」

弾「お前等さ、国の代表になるぐらいなんだからもうちょっとこう……いや、お前等らしいちゃっお前等らしいな、はははっ」

一夏「はははっ、そうだな」

鈴清「「えへへっ」」

鈴(本当はもう一つあったんだけどね。でも一夏んにはもう必要なかったんだ)

清(空が好きな一夏んに空を見せてあげたい、っていうのがあったんだけどね)

鈴清((これはあたし達だけの秘密))

鈴清「「ねえ、一夏ん」」

一夏「ん?何だ?」

鈴清「「今度の対抗戦、負けないかんね!」」

一夏「おう、やれるものならやってみろ」

弾「え?何?お前等部活かなんかで試合すんの?」

鈴清「「大体そんな感じ!」」

弾「へーまあ頑張れよー」

一夏「ま、所詮は度の過ぎた喧嘩だよ」

弾「は!?喧嘩!?お前等何すんだ?!」

一夏「クラス対抗戦って言ってな。クラスの代表同士がISで殴るわ蹴るわ撃つわ斬るわで一位を争う訳、優勝賞品は知らん」

弾「お、おー……そうかぁ……お、お前等があんなISのバトルをやんのか……そうか」

鈴「で?弾くんよーい」

清「弾くんはよーい」

鈴清「「どっちに賭ける?」」

一夏「額は一万円な」

弾「高ぇよ!そこは最低でも千円だろ!!」

一夏「ダチ公同士が死力を尽くして戦ってるんだから、お前もそれなりに尽くすべきだと思うんだよ」

弾「お前勝った時に金渡す気ないだろ」

鈴清「「あたし達が勝ったらあたし達とダンダダーンで9:1ね!」」

弾「何でだよ!!」

鈴清「「ん?」」

一夏「ほら」スッ

弾「ほら、じゃねぇよ!渡さねぇよ!?」パシーン

一夏「えーってどうした?鈴、清」

弾「ドアに何かあんのか?」

鈴清「「しーっ」」

ガチャッ!

蘭「きゃあっ!」ドテッ

一夏「おー」

弾「蘭!お前いつの間に……」

鈴「おやおやおや、蘭くん」ニコニコ

清「これはこれは、蘭くん」ニコニコ

鈴清「「盗み聞きとは関心しませんねぇ」」ニコニコ

蘭「あ、あはは……どうも、こんにちは……一夏さんに鈴さんに清さん……」

~織斑家~

箒「クロエ、少し来てくれ」

箒「おーい、クロエー」

箒「……クロエ?」

セシリア「?」

クロエ「……」スースー

箒「なるほどな」

セシリア「死んだ様に寝ていらっしゃいますわね」

箒「本当によく寝る奴だな。そういえば……前も寝ていたな」

セシリア「前も?クロニクルさんは来られた事があるのですか?」

箒「前はお前と試合をする前にな。それ以前にもどうせ一夏に何度も連れてこられているんだろう」

箒「そうでなければ前回も今頃も寝てはいないだろう」

セシリア「確かに……クロニクルさんの性格なら……私の部屋に入るのも渋られていましたものね」

クロエ「……」スースー

箒「寝ているのなら仕方ないな……起こすわけにもいかない」

セシリア「クロニクルさんに何かご用でしたの?」

箒「味見をしてもらいたかったんだが……」

セシリア「どれをです?」

箒「これだ。卵焼きだ」

セシリア「では代わりに私が頂きますわ」パクッ

箒「あっ!」

セシリア「んー……ん?……うん……」モグモグ

箒「ど、どうだ?……」

セシリア「?」

箒「何だ。その顔は」

セシリア「いえ、その……味付けはなさって……いました?」

箒「は?お前は横で見ていただろ?」

セシリア「ですから……」

セシリア「ほとんど卵の味しかしないのですが……これは一体……」

箒「そ、そんな馬鹿な事が」パクッ

箒「……」モグモグ

箒「……何故だ」

セシリア「何故……」パクッ

箒「ええい、どうなっているんだ。私の料理は」

セシリア「……」パクッ

セシリア「あっ!」

箒「どうした?」

セシリア「今食べた卵焼きだけ醤油の味がとてもしましたわ」

箒「は?」

セシリア「いえ、ですから……醤油の味が一つだけしました」

箒「一つだけか?」

セシリア「はい」

箒「つ、つまり……全く混ざって……なかったというこか……?」

セシリア「そのようですわね……」

箒「奥が深いな……」パクッ

セシリア「もしかして、焼く前に味を付けるのではありませんか?」ジャッジャッ

箒「そうかもしれない……スクランブルエッグとかは焼いている時に付けるんだが……やはり違うのか」

セシリア「同じ卵料理でもスクランブルエッグと一緒にするのはどうかと思いますわ……」カシュカシュカシュ

箒「!?」

セシリア「……」カシュカシュカシュ

箒「な、なあ……セシリア」

セシリア「何ですの?」カシュカシュカシュ

箒「お前が今混ぜているものは一体何なんだ」

セシリア「はい?サンドイッチのソースですが?」

箒「そこにあるものは何だ」

セシリア「ショクベニ……着色料ですが?」

箒「そうか、だからお前が今混ぜているものはそんなにも赤いのか」

セシリア「料理に見た目は必要ではなくて?」

箒「確かにそうだが……いくら何でもそれは……」

箒(食紅はパンとか菓子づくりに使うものだったような……イギリスの料理は違うのか?)

セシリア「よし、出来ましたわ」

箒「ま、待てっ、その絵の具を本当に使うのか?」

セシリア「絵の具とは何ですの!失礼な……ちゃんとレシピ通り味付けしましたわ」

箒「レシピに食紅を入れろと書いてなかっただろ……」

セシリア「それは私のアレンジですわ!……とにかく、味は何も問題ありませんわ!」フンス

箒「……本当か?」ペロッ

箒「ンッ!!?カハッ!!ケホッ!!コホッ!!」

セシリア「しっ!篠ノ之さん!?」

箒「水ッ……早くッ……!!」

セシリア「どうぞ!」

箒「!」パシッ ゴクゴク

箒「っはあ……助かった……」

セシリア「ど、どうしました?」

箒「セシリア、一つだけ聞かせてくれ」

箒「お前……味覚はある……よな?」

セシリア「突然何をおっしゃいますの?」

箒「まずそのソースの味見をしろ。話はそれからだ」

セシリア「そんな大袈裟な……」ペロッ

セシリア「ッ~!!?」

箒「ほら、水だ」

セシリア「!」ゴクゴク

箒「分かったか?」

セシリア「……ええ……分かりました」

箒「胡椒の辛さ、しょっぱさ、謎の甘さ、酸っぱさ、玉ねぎの辛さが入り交じってるぞ」

セシリア「何故こんな事に……」

箒「分量はちゃんと量ったか?」

セシリア「もちろん、ちゃんと量って……やり……ましたわ……」

箒「……」

セシリア「目分量でやりましたわ……」

箒「原因が分かったな」

セシリア「今度はちゃんと量って、一から作り直しですわね……」

箒「早くしないと揚げた魚が腐るぞ」

セシリア「中まで火を通してあるから大丈夫ですわ」

箒「だといいんだがな……」

セシリア「うぅ……また玉ねぎを切らなくてはならないのですね……」

箒「そういえば言い忘れていた。セシリア、包丁で食材を切る時はこうして切るんだ」ストンッ

セシリア「これは……私が使っていた包丁ですか?」

箒「同じ物だ。使い方が違うんだ」

セシリア「こう……ですか?」ザクッ

箒「違う違う、上から押し切るのではなく……こうやって……横に引いて切るんだ」ストンッ

セシリア「上から押す……のではなく横に引いて……」ストンッ

箒「その調子だ」

セシリア「……」

セシリア「あの……篠ノ之さん?もう手を持っていただかなくて結構ですわ……」

箒「え?あ、す、すまんっ!」バッ

~五反田家~

一夏「百年……終わった……」グテー

弾「長かった……本当に……長かった……」グテー

鈴「あと五年は……桃鉄しなくていいー……」グテー

清「いやいや……あと十年しょ……」グテー

一夏「どこのどいつだよ……百年なんて設定した馬鹿は……」

鈴清「「うっせー……」」

弾「俺……百年の間に何回アルマゲドン食らったんだ……」

一夏「それは良かった……うん、良かった……ハリー・スタンパー……」

弾「やかましいわ……」

鈴「ジョン・マクレーン……」

清「コーベン・ダラス…………」

弾「分かったから……分かったからその……ブルース・ウィリス……縛りはいいって……」

一夏「マイケル・ベイ……」

弾「いいっつってんだろ……ってそれアルマゲドンの監督じゃねぇか……」

一夏「どっこいしょっと……おら、帰るぞーチビどもー」

鈴清「「うーい」」ノソノソ

弾「何だよ……もう帰んのか?」

一夏「悪いな、早く帰ってやんないと首を長ぁーくして待ってる奴がうるさいからな」

弾「っかぁーなんつー台詞吐きやがるんだこんにゃろめー」

鈴清「「こんにゃろーこのたらしヤローがー」」

一夏「何でそこまで言われるんだよ……俺は……」

鈴「いやいやお兄さんよー」

清「胸に手を当てて聞いてみなよー」

一夏「ふむ……」

一夏「分からん」

清「これだから一夏んは……」ヤレヤレ

鈴「ダメダメですなぁ……」ヤレヤレ

一夏「どうもすいませんね」

弾「お前等いい加減に帰る準備しろよ……」

一夏鈴清「「「うーい」」」

弾「おら帰れー」ガチャ

鈴清「「言われなくともー」」

一夏「今日はありがとうな」

鈴清「「お邪魔しましたー!」」

弾「いいって事よ。またいつでも来いよ」

蘭「一夏さん鈴さん清さん、また遊んでやってくださいね」

一夏「おう」

鈴清「「モチのロン!」」

弾「お前は俺のお袋かっつーの」ペシッ

蘭「うっさい馬鹿」ゲシッ

弾「いでぇっ!蹴る事ぁねぇだろ!それに兄貴に向かって馬鹿とは何だ馬鹿とは」

蘭「馬鹿は馬鹿でしょ」

一夏「兄弟漫才の途中悪いけどまたなー弾」

鈴清「「ばいばーい!」」ブンブン

弾「ってもうあんなとこに、じゃあなー!」

蘭「また来てくださいねー!」

鈴「やっぱ日本はいいですなー♪」クルクル

清「やっぱ故郷が一番ですなー♪」クルクル

一夏「どんだけ中国嫌だったんだよ……って俺の周りを回るな」ガシッ

鈴清「「みゃっ!」」

一夏「ったく、そんなんでよく代表候補生になれたな」

鈴清「「哀しいけどこれ実力なのよね!」」

一夏「あーさいですか」

コロコロコロ コツン

一夏「ん?ボール?」ヒョイッ

鈴清「「後ろだよ」」

少年「ううっ……ッ~!」

一夏「おい、大丈夫か?」

少年「平気だもんっ……転んだ……だけ……だもんっ……」

一夏「強いな、よく泣かなかったな」ワシャワシャ

少年「姉ちゃんが……心配するから……俺っ……泣かないっ………」

一夏「姉ちゃんって本当にそうだよな。俺も姉ちゃんいるんだけどさ。本当、弟の事ばっかり心配して自分の事なんてそっちのけだもんな」

少年「お兄ちゃんも?」

一夏「おう、俺もだ。だからさ、強くでっかくなってやりたいよな。姉ちゃんに心配かけないように」

少年「うん!」

一夏「よーし、じゃあとっとと家に帰ろうぜ。もう痛くないな?」

少年「うん、平気!」

少女「あー!いたー!」

少年「姉ちゃん!」

少女「こんな時間まで出歩いて……お母さんに早く帰って来なさいって言われてたでしょ!」

少年「ご、ごめん……姉ちゃん……」

少女「もうっ……あ、弟がご迷惑おかけしました」ペコリ

鈴清「「いえいえ」」

一夏「迷惑だなんてそんな……」

少女「服までこんな汚して……」パンパン

少年「い、いいよ、自分でやるって」

少女「いいから姉ちゃんに任せ!」ウガー

少年「わ、分かった……」シュン

鈴清((なんか千冬さんと一夏んみたい))

少女「ほら、お礼は」

少年「ありがとうございました」ペコリ

鈴清「「どういたしまして!」」

一夏「いいって事よ。姉ちゃんを大切にな」

少年「うん!」

少女「ほら、早く帰って夜ご飯食べるよ。お母さんずっと待ってるんだから」グイッ

少年「うん、お兄ちゃんお姉ちゃん達、ばいばい!」ブンブン

少年「ありがとうございました」

鈴清「「ばいばーい!」」

一夏「じゃあなー」

一夏「お母さん、か……」ボソッ

鈴清「「……」」

一夏「……」

鈴「うししっ、一夏んは相変わらずですなー」クルクル

清「うししっ、本当、相変わらずですなー」クルクル

一夏「相変わらず?何が?」

鈴清「「そういうとこ!」」ビシッ

一夏「そういうお前等はどうなんだよ」

清「え?」キョトン

鈴「お?」キョトン

一夏「日本に帰ってきてから、何か変だっただろ」

鈴「帰ってきてから?」

清「なんか変だった?」

鈴清「「あー……」」

一夏「ん?何だ?」

鈴「え、えーっとね……」モジモジ

清「あのね……あれはね……」モジモジ

一夏「何だよ」


鈴清「「寂しかったから、かな……」」


一夏「……向こうでの生活が?」

鈴「だってだってー!」

清「中国と日本じゃ全然ちがうしー!」

鈴「ご飯ちょーマズイしー!」

清「空気ちょー汚いしー!」


鈴清「「何より一夏んがいなかったしー!!」」


一夏「ま、そうだわな」

鈴「だからよー!今度の対抗戦よー!」

清「タッグマッチでやろうよー!」

一夏「どこが“だから”なんだよ。どこが」

鈴清「「うっせー!つべこべ言うんじゃねー!やるぞー!!」」

一夏「俺は別にいいけど姉ちゃんが許すかどうか……」

清「そこはさぁ、ほらさぁ、一つどうかね?」

鈴「頼んますよぉ、一夏の旦那ぁ」

一夏「俺にゴマすらずに姉ちゃんにすれって……もうすぐ家に着くから」

鈴清「「えー」」

一夏「面倒くさがるなよ……お前等がしたいんだろ?」

清「だってだってー」

鈴「千冬さん頑固だしー」

鈴清「「融通効かないしぃー」」ブーブー

一夏「姉ちゃんの前で絶対に言うなよ……」

一夏「ただいまー姉ちゃーん?」ガチャ

鈴清「「お邪魔しまーす!」」

マッタクオマエタチハ…ナニヲドウスレバコンナコトニナルンダ…

一夏「あーらら、何か怒られてらぁ」

鈴清「「なになにー?」」ヒョコッ

千冬「使った物はせめて一ヶ所に固めろ、食材はちゃんと片付けろ。いいな」

箒セシリア「「はい……」」

千冬「それにしても何だこれは、現代美術か?前衛的芸術か?いずれにせよ料理には見えんぞ」

セシリア「はい……で、ですが味の方はーーー」

千冬「食紅を入れてから味見をしたか?」

セシリア「いえ……」

千冬「箒も、食べ物を粗末にする前に止めろ」

箒「はい……」

一夏「おーこれなんかすごいぞ……色が見事に真っ青だ」

鈴「うわー不味そー」

清「美味しくなさそー」

セシリア「それは食べーーーううっ」ギュルルル

鈴「どったの?」

清「大丈夫?」

セシリア「織斑……先生……」ギュルルル

千冬「行ってこい」

セシリア「失礼……します……」ガチャ

一夏「何があったんだ?」

箒「セシリアが魚を揚げてあったんだがそれにはちゃんと火が通ってなかって……作った分を全部一人で食べてしまって……」

一夏「今に至る、って事か」

千冬「これなら私の方がまだマシだな」

一夏「……いい勝負な気が」ボソッ

千冬「……」ゲシッ

一夏「嘘ですッッ!!!」

クロエ「……」スースー

※料理にむやみやたらに食紅を混ぜるのはやめましょう


地獄をみるぞ



-----

?「なあ、見てるか。俺は必ず次のゲームにも勝つぜ」

?「ライブカードなんざ知った事か。俺はお前達から奪ったチップ……俺の持ってるモンを全部叩き売ってやってアウトランさ」

?「つまり、育てて刈り取ってやるのさ。俺の十八番さ」

?「絶対に手に入れてやる。“好きなだけ奪い好きなだけ与える”事の出来る“自由”を……」


?「“俺達”が望んだ“自由”を」


?「だからさ……うッ……!!」

ガクッガクンガクン

?「ッ……クソッタレ……何だってんだよ……」グッ…

?「冗談じゃねぇ、ゲームはこっからが面白ぇんじゃねぇか……なのにシケた事言ってんじゃねえよ……」

?「ベットもショーダウンもまだだぜ……まだ……ゲームは始まっても……ねえ……」

?「クソッタレ……冗談じゃねぇぜ」

?「……」

?「ふむ……」

?「……」

?「エム、早くしなよ」

エム「分かっている」スッ

カツン

?「待ったはなし、だよ?それがチェスの“ルール”だからね」カツン

エム「……」

?「持ち時間を決めた方がいいみたいだねぇ」

エム「……」

?「まあいいさ、好きなだけ考えなよ」

エム「……」

?「エム、いい手を教えてやるよ」スッ


ガシャーン……カランカラン……


ケイ「ヘッ、これが本当の台無し、ってな」

?「ケイ……これは“ルール違反”だよ」

ケイ「ジェイ、テメェの悪いクセを教えてやるよ。それはルールだの何だのにしがみついて、肝心のポットに手を伸ばそうとしねぇ事さ」

ケイ「そんなんじゃあせっかくのポットを奪われちまうだけだ。分かってんのか?気が付いた頃にゃあお気の毒様、全部“奪い尽くされ”ちまうぜ?」


ジェイ「僕を縛れるのは“ゲーム”の“ルール”だけさ」


ケイ「ケッ……そうかよ……」

エム「ケイ、もういいのか」

ケイ「ああ、チップはもう数え終わったぜ」

ジェイ「必要ないんじゃない?そんな行為」

エム「ジェイの言う通りだ。ケイの行為は時間の無駄だ」

ケイ「チップを奪い、奪われるからこそ、ゲームは面白ぇんじゃねぇか」

ジェイ「なら次は僕にゲームをさせてよ」

ケイ「悪ぃな、まだ俺のターンは終わっちゃいねぇぜ」

ジェイ「いい加減、僕もエムも退屈なんだよ。ねえ?エム」

エム「ケイの好きにしろ。だが、たまには私にも遊ばせろ」

『ジェイ、エム、ケイの三名は直ちに作戦室に来られたし。繰り返す、ジェイ、エム、ケイの三名はーーー』

ケイ「ヘッ、丁度いい。次のゲームのお誘いだぜ」

エム「次の奴は、もっと歯応えがあるといいがな」

ジェイ「大丈夫だよ。わざわざ僕達が呼ばれるんだから、次も楽しめるさ」

ケイ「ヘッヘッヘッ、違いねぇや」

エム「フッ……そうだな」

ジェイ「フッフッフッ……」

?「なあ大将、いい加減にしろよ。これでもう二度目だぞ?」

?「すまなかったと言っているだろう。何かの手違いでーーー」

ダンッ

?「理由なんざ毛ほども問題じゃねぇんだよ。テメェは二度も俺達に約束通りの前金を払わなかった、この事実が問題なんだよ」

?「契約違反、とでも言いたいのか?報酬は上乗せして、こちらとしても誠意を見せたつもりだが」

?「待ちなさい、オータム」

オータム「ああ?何だよ、スコール。こいつの肩を持つのか」

スコール「三度目の正直、というやつよ。大目に見なさい」

オータム「けっ、わーったよ」

スコール「社長さん、私達はお互いプロフェッショナル……そうでしょ?」

社長「ああ、そうだ」


スコール「なら“裏切らない”事ね」


社長「……分かっている」

オータム「テメェが俺達を裏切らない限り、俺達もテメェを裏切らない。それが俺達のルールだ」

オータム「俺としても、出来る事ならアンタらとはこれからも良い商売仲間でいたいんだよ。それこそ、需要と供給ってやつさ……分かるか?」

社長「もちろんだ。こちらもそうでありたい」

スコール「お互い、善処しましょ?」

社長「ああ……もちろんだ」ギシッ

スコール「……」

社長(犬畜生風情が……取るに足らん些末を……)

オータム(そろそろ潮時だな)

スコール「それにしても遅いわね。チームファントムペイン」

オータム「幻肢痛(ファントムペイン)?お前の知り合いか?」

スコール「案外、そうかもしれないわね」

オータム「何にせよ御大層な名前だぜ」

スコール「あなたが言えた義理かしら?」クスッ

オータム「うっせぇ、モノクローム・アバターよかよっぽど品があんだろうが」

スコール「ふふっ、そうね」

バシュン

ジェイ「これはこれは、社長にモノクロームアバター隊長に副隊長」

ケイ「俺達をお呼びかい?」

社長「貴様等、自分の立場が分かっているのか」

エム「分かっている」

オータム『スコール、こいつら……』

スコール『ええ、見ての通りね』

オータム『おいおいマジかよ。こんなのと一緒に仕事たぁよ……』

スコール『どんな状況であろうと仕事は必ず成し遂げる、それがプロよ』

オータム『へいへい、いちいち言わなくても分かってる。分かってんよ』

社長「まずは今回の作戦を遂行するにあたってファントムペイン、貴様等にはモノクローム・アバターと協力して作戦を遂行してもらう」

ジェイ「協力して、ねぇ……いいさ、僕は構わないよ。ゲームの邪魔さえしなければね」

ケイ「まさかたぁ思うがよ。人の上前ハネようなんざ……考えてねぇよな?モノクローム・アバターさんよ」

エム「いいか、私達の邪魔だけはするなよ」

オータム「知るかボケ。まずは大人のルールでも勉強する事だな」

ジェイ「僕を縛れるのはゲームのルールだけさ」

オータム「チッ……面倒せぇな」

スコール「あなたがリーダーかしら?」

エム「何だ」

スコール「これだけは言っておくわ。せいぜい裏切らない事ね。私達を」ニコッ

エム「お前も、私達の邪魔をするなよ」

ケイ「あーあ、先行き不安だぜ……これじゃあまるでクソッタレじゃねぇか」

社長(こいつら……)

社長「作戦を説明する。よく聞けよ」

マドカのエムって
なんのエムなんだろう
わからないや
いずる


-----

一夏「失礼しまーす。織斑先生ー?」ガラッ

千冬「こっちだ」チョイチョイ

一夏「呼び出してまで話って何ですか?」

千冬「単刀直入に言う。クラス対抗戦をタッグマッチにしても構わないか」

一夏「へー……はぁーん……ほー……タッグマッチ、ねぇ……へー」

千冬「二組のクラス代表の鈴から強い要望があった。こちらとしてもお前が良ければそうするが……どうだ?」

一夏「いいっすよ。ま、頑張ったあいつらへのご褒美的な感じなんで」

千冬「当日までにタッグをーーーいや、これは言う必要はないな」

一夏「特に俺だからね」

千冬「なら話は以上だ」

一夏「ほーい、分かりましたー」

千冬「それで、だ」

一夏「それで?」

千冬「鈴と清の奴はどうだったんだ?学園に来た当初は妙なまでに浮わついていたが……」

一夏「向こうでの生活の反動だってさ。久し振りに日本に帰ってきたんだから、はしゃぎまくってたんだよ」

千冬「そうか……なら良かった」

一夏「大げさだなぁ」

千冬「鈴と清の方がな」

一夏「あーそうですかー」

千冬「ふふっ、所詮はあいつらも……まだまだ尻の青い小娘、という事だな」

一夏「そういう姉ちゃんこそ、毎回毎回久し振りに会うからって朝までドンチャン騒ぎすんのに人の事言えた義理?」


スパーン!!


千冬「織斑先生だ」

一夏「……ぅあい……」ジンジン


-----

「ねえねえ、セシリアさん。今日はバドミントン部に来れない?」
「今日こそバスケ部に来てよ~!お願い~!」
「あのぉ……アーチェリー部の方もそろそろ……」

セシリア「すみません、今日は先約がありますの」

「んーならしょーがないねー」
「出来るだけ早く来てね!」
「あい……ならまた今度という事で……」

セシリア「善処しますわ」

ゾロゾロ

一夏「おーいつもながら人気者は辛いな、セシリー」

セシリア「やはり大会が近付くと皆さんからお声をかけられるのが多くなりまして……」

一夏「あれ?ラクロスはもう終わったのか?」

セシリア「ええ、ついこの間終わりましたわ。惜しくも優勝は出来ませんでした」

一夏「セシリーが助っ人にいながら?」

セシリア「私一人で勝てる程、戦いは甘くないという事ですわ」

箒「そうだ、セシリアの言う通りだ」

鈴清「「だねー」」

クロエ「……」モグモグ

一夏「懐かしいなー俺も中学の時によく助っ人やってたな」

鈴「おおっ、そういえばー」

清「そーいう事もありましたなー」

セシリア「一夏さんも?」

一夏「おう、助っ人の神様とか何とか言われてたなぁ」

鈴清「「人呼んで、助っ人のいっちゃん!」」

一夏「誉めるな誉めるな」

セシリア「まあっ、それは素敵ですわね」

一夏「そうか?今となってはいい思い出だよ」

セシリア(まるでお父様のようですわ。一夏さん♪)

箒「クロエ、さっきから黙っているがどうした?」

クロエ「いえ……私は……部活動、というものをここに来てから知ったので……」

箒「そうだったのか……」

クロエ「も……申し訳ありません」ペコリ

箒「あ、謝らなくていいぞ……事情があるんだからな」

一夏「そういえば何部に入ったんだ?鈴と清は」

鈴清「「そういう一夏んこそ、部活してんのかよー」」

一夏「俺はほら、あれだよ……ほら……ISで忙しいとか何とかかんとかで……まあ、そういう事だよ」

鈴清「「じゃああたし達もそういう事!」」

一夏「あーあーさいですかー」

清「それよりさーそんな事よりさー」

鈴「あの話、千冬さんから聞いたー?」

一夏「タッグマッチだろ?もちろん、OKしといたぞ」

鈴清「「やっほーい!ありがとー!」一夏ぁーん」ガシッ

一夏「おわっ……ちょっ……引っ付くな……!」

鈴「一夏ぁーん、大好きだよー」スリスリ

清「一夏ぁーん、愛してるよー」スリスリ

一夏「分かったから!分かったから落ち着いて飯を食わせろっての!」

箒「タッグマッチ……」チラッ

セシリア「パートナーはもちろん……」チラッ

クロエ「私……になりますね……」

鈴「ええっ、クロちんなの?」

清「ええっ、そうなの?」

一夏「何でそんなに驚いてんだ?」

清「だってクロちんあんまりガツガツくるタイプじゃないじゃん?」

鈴「どっちかっていうとあんまり争い事を好まないってタイプじゃん?」

一夏「んーまあ……そうだな」

クロエ「あの……出来る事なら……私は出場したくないのですが……前回のクラス代表決定戦に出場したので……」モジモジ

一夏「何言ってんだよ。いつも通りやればいいんだよ。クロエ」ポンッ

クロエ「……そうですね。分かりました」

鈴「にししっ、これは面白くなりそうですなー」

清「にししっ、これは大波乱の予感ですなー」

セシリア(私ではまだ……一夏さんと肩を並べる事は出来ません……)

箒(私にISがあれば……)

~???~

『俺は生まれついての流れ者さ♪落ち着くなんてできやしねぇ♪』

ケイ「本気なのか?」

ジェイ「ああ、本気さ。僕は二ドルレイズするよ」

エム「……」

『カワイ子ちゃんのいる場所にいるぜ♪』

ケイ「じゃあコールだ」スッ

ジェイ「後悔しないでよ?」スッ

エム「……」スッ

『キスして愛して誰でもいいから♪』

ケイ「クソッタレ……」

ジェイ「育てて刈り取るのは……君の十八番だろ?」

エム「ゲームを楽しむのはいいが、まずはこのうるさいのを止めろ」


『抱いて燃やして名前も言わずに♪』

ケイ「BGMがねぇゲームは面白くねぇだろ?インベーダーゲームにだってBGMはついてんだぜ?」

ジェイ「僕はいいよ。ケイの好きにしなよ」

エム「もういい」

『人呼んで流れ者♪そうさ流れ者♪』

ケイ「それにしても、あのスコールとオータムって奴ぁ結構いい線いってるぜ。チップとしてな」

エム「だが、他の連中はどうだろうな」

ジェイ「さあね、オマケになればいいぐらいじゃないかな?」

『俺は流れて♪流れて♪流れて♪』

エム「織斑一夏とクロエ・クロニクル、奴等のチップは我々と釣り合うのか」

ジェイ「簡単だよ、僕達が足りない分を補ってあげればいいんだよ」

ケイ「補うだぁ?俺はてっきりこう思ってたよ……」

ケイ「補わなきゃならねぇのは俺等だってな」


-----

一夏「唸る疾風、凰鈴音……轟く雷光、凰清音……中国四千年の歴史が生んだ天才少女、まさに神が授けた龍の子なのである」

クロエ「ブルーティアーズとは違い、二人のIS、神龍は最近の戦闘映像まで公開されていますね」

一夏「よっぽど自信があるんだろ。この何とか砲ってのはそれほど会心の出来なんだろうな」

クロエ「そのようですね」

箒「……」

一夏「えーなになに、この神龍は燃費向上に着目した機体ではあるがその攻撃力は他国のISとは一線を画すものであり、さらには操縦者の凰姉妹の実力と相まって他の追随を許さないものとなっているのである」

一夏「って、まだあるぞ、この文章……」

クロエ「過剰な宣伝、と言わざるを得ませんね」

箒「だから前日の夜になってから対策を練るな……」

一夏「やらないよりかは万倍マシだろ?」

箒「……」

クロエ「一夏様は見ないのですか?」

一夏「いーのいーの、機体特徴を見れればいいから」

一夏「それよりもクロエは鈴と清の戦い方をよく見とけよ」

クロエ「はい」

一夏「あいつらは理屈じゃないぞー……喧嘩に関しちゃあ俺でも時々何するか分からないからな」

クロエ「……分かりました」

箒「珍しいな…」

一夏「こればっかりは茶化せないからな」

箒「なら前日の夜にこんな事をするな」

一夏「はいはい、そーですね」

クロエ「……」

一夏「ま、結局のところぶっつけ本番だけどな」

箒「……勝てるのか?」

一夏「珍しいな、そんな事言うなんて」

箒「うるさいっ……で、どうなんだ?」

一夏「勝てなきゃ今頃こんな事してないって」

箒「はあ……そうだな」

鈴「えーなにこれー」

清「一夏んのISの映像ないじゃーん」

鈴「せっかくアリーナ全部の映像集めたのにー」

清「聞いた話じゃ一夏ん全然IS使わないしー」

鈴「武器も何があるか誰も見てないしー」

鈴清「「駄目駄目じゃーん!」」

清「どーすんの、鈴!クロちんはまだしも一夏んのISは未知数だよ!」

鈴「どーしよ、清!とりあえずすごくでかくてすごく白くてすごく重くてすごく堅いって事しか分かってないよ!」

清「とりあえず!一夏んのISはクロちんの零式と同じ系列じゃない?」

鈴「零式は格闘機だから射撃機?」

清「重くて堅いって事は重砲撃型?」

鈴「一夏んが射撃?」

清「っていうかそもそも誰が作ったの?」

鈴清「「まあいっか!後はぶっつけ本番、やるっきゃないね!!」」


-----

オータム「どうだ?」

スコール「……三流以下ね」

「駄目です。奴等また振り込んでやせん」

オータム「あんのアンクル・サムが!!上等じゃねぇか!!」ガスッッ ガシャーン

スコール「二度ある事は三度ある、という事ね」クスッ

オータム「……よーし、働くお姉さん方ぁ……これから俺等チームハーキュリーズは、あのIS学園の生徒さん方に“社会”ってモンを御教示して差し上げるぞ」

オータム「人様との約束を守れねぇとどうなるか……それをあの哀れなガキ共を徹底的にお手本にしてな」

クスクスクスクス

スコール「最悪のタイミングで、最高の邪魔をしてあげましょう」ニコッ


ウオオオォォォォォー!!


オータム「いつになくお前もやる気じゃねぇか」

スコール「そうかしら?私はいつも通りよ」

オータム「その台詞は、目も笑ってから言えよ」


「はーい、先生ー!バナナはおやつに入りますかー?」

オータム「ああ?馬鹿か、あんなモンおやつな訳ねぇだろ」

「やったー!ありがとー先生ー!」

スコール「けど、あなたの場合……おやつに、よりも“もっと他に使うところ”があるんじゃないかしら?彼と別れてから随分と“御無沙汰”でしょ?」

フフフフッ……

「あの、スコールの姉貴、さっきのアレは一体……」

オータム「っといけねぇいけねぇ、忘れてた。ファントム・タスク社の新製品、ナノマシンの化粧品か何かか?」

スコール「私達の監視用ナノマシンを欺く物よ。だから、私達の遠足のお話も資本主義のおじさん達には仕事のお話に聞こえているわ」トントン

オータム「結構じゃねぇか、それじゃああいつら“はバナナはおやつに入る”と思ってるって訳だ」

スコール「彼との関係も続いてる、ともね」

「違うのよ!!あれはあいつがーーー」ガミガミガミ

スコール「また始まったわね……」

オータム「待て、スコール」

スコール「何かしら?」

オータム「そんなモン……どうやって手に入れた」

スコール「新しいクライアント候補がくれたのよ。前金から仕事から共々ね」

オータム「クライアント候補、だぁ?そんな大事な事、何で今まで言わなかった」

スコール「言わなかった訳じゃないわよ?ほら、今言ったじゃない」

オータム「ッ~……そういう意味じゃあねぇんだよ!!」

オータム「はあ……いいか?このハーキュリーズはな、今の今まで俺のモンなんだよ。知ってたか?」

スコール「そうだったの?それは初耳ね」クスッ

「スコールの姉貴、本当に大丈夫なんですか?」

スコール「安心して頂戴、問題ないわ」

オータム「根拠は何だ」

スコール「根拠、ね……」

オータム「……」

スコール「私の勘じゃ駄目かしら?」


-----

クロエ「あの……やっぱり……出場しないと……駄目、ですか……?」

一夏「ここまで来て?今更言う?」

クロエ「ううっ……そうですよね……分かりました……」

一夏「ったく、しょーがないな」

セシリア「何を弱気になっていますの!そんな事では鈴さんと清さんに負けてしまいますわ!」

一夏「いや別に俺ひーーー」

セシリア「クロエさん!」ガシッ

クロエ「はッ、はいッ!?」ビクッ

セシリア「一夏さんを、お願いしますわ」グッ

クロエ「りょ……了解、しました………」

一夏「なあ、俺の話聞いてよ」

箒「クロエは少し謙遜し過ぎだ。もっと堂々としてもバチは当たらないぞ?」

クロエ「了解……です……」

一夏「あのさぁ、そんなに俺って頼りない?」

セシリア「そ、そんな事ありませんわ……しかし、万が一の事を考えると一夏さんお一人では心配で心配で……」

一夏「どういう万が一なんだよ……」

セシリア「ですからこの私をパートナーにーーー」

一夏「はいはい、それはクロエに当ててから言いましょうね」

箒「そんなに嫌なのか?」

クロエ「私は……その……あの……大勢の前で何かをするのは……得意ではありません……」

箒「ならこの機会に治せばいい」

一夏「なかなか酷な事を仰ってますね。それはお前のーーー」

箒「ああ、そうだな」グリッ

一夏「おわっ!……お前ッ……試合前だぞッ……」ピョンピョン

箒「ふんっ」

クロエ「……」オロオロ

セシリア「一夏さん……」

一夏「おああぁ……ちょっと早いけどぉ……先に出とくかぁ……」ジンジン

クロエ「分かりました」

一夏「という事だから、お二人は早く教官室にいけよ。ここは危ないぞ、俺等の出撃で」ジンジン

箒「そうだったな……行くぞ、セシリア」

セシリア「え、あ、はい……」

箒「一夏、クロエ……負けるなよ」

一夏「負けるかよ」

クロエ「了解です」

セシリア「一夏さん、クロエさん。御武運を」

一夏「おう」

クロエ「感謝します」ペコリ


ワアァァァァァ!!

一夏「んー?あ、やっぱり早かったか」

クロエ「そのようですね」

一夏「それよりも」


キャーオリムラクーン!クロニクルサーン!ガンバッテー!ファイトー!マケンナヨー!!


一夏「出てきただけで何だこの歓声は」

クロエ「凄い数の観客です……想像していた以上の……」

一夏「皆見ててくれよー!やあぁってやるぜ!!ほら、クロエも何か言えよ」

クロエ「や……やってやるぜー……?」

ワアァァァァァ!!

本音「ふれ~!ふれ~!おりむ~とく~ろにん!」

清香「一組代表として頑張ってよー!!」

静寐「二人とも始まる前からそんなに言わなくても……」

簪(……頑張って……)

三年生(織斑さんにクロニクルさん。貴方達がいかに美しいか、拝見させて頂きます……)

一夏「んーさてと、今回は相手が相手だからな。クロエ、ちょっとだけウォーミングアップするぞ」

クロエ「分かりました」

一夏「いくぞ」フシュウゥゥゥゥ

クロエ「はい」チュイィィィ


ガキィィィンッッ


一夏「よっと」バシッ ドゴッッ

クロエ(蹴られたの勢いと壁を利用して……)ゴオォォッッ

一夏「来い!ふんっ!」ドガアァッッ

オォォォォ……

一夏(やっぱツヴァイより零式の方が速いな……)

クロエ「……」ガギャッッ

一夏「うおっと、ほいっ」ドゴッッ

クロエ「……」シュッッ

一夏(いつもの……ならこっちは)クルッ

クロエ「ッ」ドゴッッ

一夏「裏拳だ……って大丈夫か?クロエ?」

クロエ「はい、大丈夫です」

一夏「んーさてと、今回は相手が相手だからな。クロエ、ちょっとだけウォーミングアップするぞ」

クロエ「分かりました」

一夏「いくぞ」フシュウゥゥゥゥ

クロエ「はい」チュイィィィ


ガキィィィンッッ


一夏「よっと」バシッ ドゴッッ

クロエ(蹴られたの勢いと壁を利用して……)ゴオォォッッ

一夏「来い!ふんっ!」ドガアァッッ

オォォォォ……

一夏(やっぱツヴァイより零式の方が速いな……)

クロエ「……」ガギャッッ

一夏「うおっと、ほいっ」ドゴッッ

クロエ「……」シュッッ

一夏(いつもの……ならこっちは)クルッ

クロエ「ッ」ドゴッッ

一夏「裏拳だ……って大丈夫か?クロエ?」

クロエ「はい、大丈夫です」

一夏「じゃあ続けるぞ」

クロエ「はい」

一夏「……」シュッッ

クロエ「……」ガシッッ

ググググッッ……

一夏「……」ブンッッ

クロエ「……」バッ ガギャアッッ

一夏「……」ガシッッ ドゴッッ

クロエ「ッ……」


本音「うわわ~ちょ~痛そ~」

静寐「あれで……ウォーミングアップ……?」

清香「ウォーミングアップにしてはやり過ぎだよ!なんかすっごい音してるよ!」アタフタ

三年生(美しい……しかし、あれはまだ氷山の一角……)

簪(二人とも……あれで本気じゃないんだ……)

セシリア「クロエさんの零式の攻撃を受けても怯みすらしませんわね……一夏さん……」

箒「一夏が凄いと言うよりもツヴァイフォーミラの堅さ凄いな……」

セシリア「いくら装甲が堅くても……衝撃は伝わっているはずです……あれだけ直撃していれば……」

箒「流石は姉さんだな……」

真耶(束博士の作った銃……一体どんな代物なのでしょうか……)

真耶「……」

千冬「山田先生?」

真耶「えっ!?は、はいッ!なっ、何ですか?」

千冬「生徒の試合をそんな顔で見る教師がどこにいますか」コツン

真耶「すみませ~ん!だって……つい……えへへっ」

千冬「えへへ、じゃありませんよ。全く……」

真耶「次からは気を付けますっ」

千冬「はあ……是非そうしてください」

クロエ「……」ドンッッ!!

一夏「うおッッ……!」ドガアァッッ!!

クロエ「はっ!す、すみません!」ペコリ

一夏「い、いや……大丈夫だ」


鈴清「「なるほど、恐ろしい力よ。だが!!」」ビシッッ


鈴「貴様等はその力に頼り過ぎておる」スーッ スッスッ

清「力に頼り過ぎておるから、敵に敬意が払えなくなるのだ」バッ スーッ バッ

一夏「ようやく来たと思ったら……はあ、耳が痛いや……」

クロエ「敬意……?」

鈴「その力を背にした貴様等の理屈が」スーッ

清「我等、流派東方不敗に通じるかどうか」スーッ


鈴清「「試してみるがいい!!」」ヒュバッッ


オオォォォォ……

クロエ(何故……敵に……敬意を……“敵に”?……意味は……)

一夏「あれ?お前等ジャッキー・チェンに弟子入りしたとか言ってなかったっけ?」

清「ちっちっちっ、甘い。甘いなぁ~一夏んは」

鈴「ちっちっちっ、状況は刻一刻と、常に変化しておるのだよ」

鈴清「「子曰く、戦いとは正法と詭法の運用に過ぎなくて、水の流れのように極まりないものなのだっ!」」ビシッ

一夏「あーさいですか」

クロエ「……」

一夏「クロエ?」

クロエ「はっ、はいっ!何ですか!?」

鈴清「「何か凄い顔してたよ?」」

一夏「そんなに嫌か?」

クロエ「いえ、あっ、あの……申し訳ありません……少し考え事をしていました……」ペコリ

千冬『凰鈴音に凰清音、パフォーマンスは終わったな?』

鈴清「「終わりましたー」」

千冬『揃ったところで始めるぞ』

一夏「えっ、いきなり?」

クロエ「お二人は……」

清「よっしゃーやろーぜーい」

鈴「よっしゃーやっちまおーぜーい」

一夏「うん……ま、いっか。本人達がこう言ってるんだし」

クロエ「そう…ですね」

鈴清「「余裕ブッこいてられるのも今の内だよ!目に物見せちゃうんだからね!!」」

一夏「おう、いいぜ。やってみろよ」

クロエ「……」


『開始五秒前』

山田先生の名前は“摩耶”ではなく“真耶”でした。


お許しください、メガトロン様ぁ……



『試合開始』


鈴清「「やいやいやーい!IS学園の皆の衆ぅー!!耳の穴かっぽじってぇよーく聞けーい!!」」

一夏「ん?何だ?皆の衆?」ピタッ

クロエ「?」ピタッ

清「あたし達がここにいる織斑一夏をブッ倒した暁には!」

一夏「あッ!馬鹿ッ!お前等ーーー」

鈴「ダチ公同士の約束であたし達のモンになるってゆー事なんで!」

一夏「今それをーーー」


鈴清「「そこんとこよろしくねー!!」」ビシッッ


一夏「ッ~……はあ……ったく……」ガシガシッ

クロエ「二人のもん?になるんですか?」

一夏「俺が負ければな」

クロエ「……なるほど」




エエエェェェェェェー!!?


本音「な、なんだって~!?」

清香「ずーるーい!そんなの反則だよ~!」ダンダン

静寐「どういうルールに乗っ取って反則なのよ……」

簪「織斑、さん……が……?」

本音「ど~しよ~簪ちゃん~」

簪「ど、どうしたの……?」

本音「おりむー取られちゃって二人のもんになっちゃうよ~」アタフタ

簪「え……あ……その……織斑さん……が勝てばいいんじゃないかな……?」

本音「じゃあ一緒に応援だ~頑張れ~おりむ~」パタパタ

簪「が、頑張って……ください……!」

三年生「フフフッ……勝てば、ですか……」クスッ

三年生(織斑さんにクロニクルさん、貴方達はどうでますか……)

セシリア「ふふっ、何を馬鹿な、一夏さんとクロエさんが負ける事なんて万に一つもありませんわ!何せこの私を倒したのですから!」フンス

セシリア「二人には申し訳ありませんが、そもそも一夏さんはこのーーー」

箒「いつからお前のものになった」

セシリア「あら、違いまして?」

箒「なら一夏に聞いてみたらどうだ?」

セシリア「も、もちろん!望むところですわ!」

千冬「ほう、さっきから何やらキャンキャンキャンキャンと面白い事を言っているな。セシリア・オルコット」

セシリア「へ?」

千冬「姉である私が認めた覚えがないんだがな?」

真耶(うわぁ……大人気ないなぁ……」

スパーンッ

真耶「いったぁい……いきなり何ですかぁ……?」ジンジン

千冬「口に出てましたよ」

真耶「えっ?あれっ!?」

箒(一夏……負けるな……)ギュウッ


オリムラクーン!!マケルナー!!ゼッタイカッテネー!!ファイトー!!クロエサンモー!!

一夏「お、おおぉ……声援?が一層増したな……」

クロエ「そ、そうですね……」

鈴清「「っつー訳でやろー!ほらっ!!」」クイクイッ

一夏「じゃあレディファーストって事で」

クロエ「いつでもどうぞ」

鈴清「「じゃあ遠慮なくぅ!!」」ジャパッ

ズドドドンッ

一夏「って、本当に遠慮してねぇな!」バチチチィンッ

鈴「突撃ぃーっ!」ブンッ

一夏「うおわぁ!びっくりしたぁ!ってな」ガキンッ

鈴「にししっ、なかなかやりますなぁ!」

クロエ「……」スッ スススッ

清「ほらほら!逃げてばっかじゃつまんないじゃんよー!」ブンッ ブンブンブンッ

クロエ「了解しました」シュッ

清「おっと、うりゃあっ!」ヒョイッ ブンッ

クロエ「残念ながら」ガシッ

清「ならソバーット!」ヒュッ

クロエ「これも」バッ

一夏「クロエ!」

グインッ

クロエ「ッ……!?」ガスンッ

清「にししっ、油断大敵だよーっ!」ズドドンッ

クロエ「……」バッ

クロエ(あの蹴りから軌道を変えるとは……一夏様の仰った意味がよく分かりました)

清「くらえ!紅地爪陽!」ブンッ

クロエ(投擲は囮、格闘で)バッ

清「おりゃあー!」

クロエ「……」ガシッ スパパァンッ ガスッ

清「うっ……ッ……ナイス連打っ!クロちん!」

クロエ「お褒め頂き、光栄です」

鈴「くらえー龍咆!」ズドンッ

一夏「ふんっ」バチィンッ

鈴「こんなろーなら蒼天牙月だーっ!」ヒュンヒュンヒュンッ

一夏「よっ……ほっ……とっと……」ガンッガンッガンッ

鈴「む~!うらぁー!」ブォンッ

一夏「その隙もらった」シュッ

鈴「にゃっ!?」ギャッ

一夏「さらに」ドゴッ

鈴「いてッ……んなろー!!」ズドドドドドドドッ

一夏「はっはっはっ、このツヴァイフォーミラにそんな攻撃など効かぬわ」

鈴「嘘つけー!こちとらバリア貫通持ちだぞー!」ズドドドドドドドッ

一夏「嘘ついてどうするんだよ。って、お?」

鈴「ほわちゃあ!」シュッ

一夏「大胆に突撃してくるなぁ」バッ

鈴「大胆に!繊細に!ってね!」クルッ

一夏「おっと」ガスッ

鈴「必殺!ドラゴンマシンガンキーック!!」ガガガガガガガッ

一夏「おおっ、すげぇ連続キックだな」ガガガガガガガッ

鈴「涼しい顔してんじゃねーよ!その顔にほわちゃあ!!」ガガガガガガガッ

シュッ

一夏「大振り過ぎーーー」

鈴「……」スッ

一夏(蹴りは視界を遮るのが目的だったのか!?)

鈴「もらったぁ!」ズガンッ

一夏「ッ!?……げほっ……うへぇっ……マジかよ……」

鈴「見たか!寸勁の威力を!」

一夏「ブルース・リーのワンインチパンチ……まさか完成してたなんてな……」

鈴「にししっ、すごいでしょ!あと今のでその機体の堅さは分かったからね!」

鈴「ここからはダメージ通るんだからね!」

一夏「そりゃ結構……なら、俺も……ちょっと本気出そうかな」

~搬入口~

キィッ……

オータム「よし、タオル共、もういいぞ」トントン

バーンッ ガシャガシャガシャ

「だぁーッ!!涼しいッ!広いッ!!空気が美味いッ!!」
「こんなとこで止まんじゃないの」ゲシッ
「いでぇ!やんのかコラァ!」
「お前等、早く前に進め、喧嘩なら向こうでやれ」

ガシャガシャガシャガシャガシャガシャ

オータム「いちいちうるせぇタオルだぜ」

スコール「いくらトラックの荷台とはいえ……潜入装備にこの人数は流石に厳しかったわね」

「あんた、アタイの足踏んでたでしょ」
「え~?そうだったかしら~?」
「この装備まだしてなきゃ駄目?胸がキツくて嫌いなんだけど……」
「贅沢言ってんじゃねぇよ」
「そうそう、キツくない奴だっているんだから」
「馬鹿、タバコ吸おうとしてんな。潜入してんだぞ」
「一本ぐらい……」

ワイワイワイワイガヤガヤガヤガヤ

スコール「本当に遠足ね」

オータム「はあ……全くだ」

オータム「……」ジャキッ

オータム「こっちはOKだ」

「オータムの姉貴、こっちも準備出来てやすぜ」

オータム「スコール、そっちはどうだ?」

スコール「学園の全システムを掌握したわ。学園は予定通り、クラス対抗戦を行っていて大半の生徒が第三アリーナにいるわ……この調子なら作戦通りでも問題ないわね」

オータム「バレてねぇだろうな?」

スコール「何回ここのシステムに潜ったと思っているの?無論、向こうには影も形も見えてないわ」

オータム「よし、そのまま向こうの動きを見てろよ」

スコール「ええ、任せておいて」

オータム「それにしても、まさか先生方もこんな真っ昼間に業者として潜入してくるとは思わねぇだろうな」

スコール「そもそも秘密結社のスパイで、しかもサイボーグが定期的に学園で使用されてるタオルを替えに来ていた、なんて誰も思わないわよ」

オータム「ハハハッ、違いねぇや。普通はこんな外国人が業者で来たら怪しむだろ。どんだけ平和ボケしてやがんだよ」

スコール「ここが女子高でなければ、もっと単純明快で肉体的かつ女らしい方法をとれたのにね」クスッ

オータム「ああ?テメェはどっちでもいけるクチだろうが」

スコール「あら、そうでもないわよ?」

オータム「あっそ、いちいちテメェの性癖なんざ知らねぇよ、知りたくもねぇよ」


「オータム、男は駄目よ。あんなクズのロクデナシの嘘つきの脳ミソが下半身に直結してるだけのケダモノなんてね」

オータム「ブッ飛ばすぞ、テメェの人生経験の方がもっと知らねぇよ。」

スコール「ふふふっ……その台詞、どこかの誰かさんに聞かせてあげたいわね」チラッ

「何よ!ケダモノでも私にとってはハニーだったの!運命の人だったの!」
「いい加減目を覚ましなさい。あなたもいい年なんだから」
「それはこっちの台詞よ!このナメクジ女!」
「あなた、世界中のレズビアンを敵に回したわよ」
「お前等、そういうのは終わってからにしな」

オータム「文の言う通りだ。黙ってろ」

「「了解」」

オータム「ナメクジって……どんだけえげつねぇ事してんだよ……」ボソッ

スコール「いい得て妙、ね……何なら、私がその体にたっぷりと教えてあげるわよ?」

オータム「バラバラにすんぞ」

スコール「忘れられないぐらいの快かーーー」

オータム「切り刻んで東京湾に沈めんぞ」

スコール「つれないのね」

オータム「うるせぇ、ナメクジ」

オータム「テメェ等の夜の営みなんざどうでもいい。今は俺等の昼の営みについてだ」

スコール「そうね。どうするの?ハーキュリーズ隊長さん」

オータム「アルファはアリーナの一番ゲート、ベータは反対の三番ゲートで生徒を人質を取る。残りのガンマは上から現れて適当に好き勝手しやがるからほっとけ、何かしてきたらブチ殺して差し上げろ。以上だ」

「オータム、我々はいつガンマを攻撃するんだ」

オータム「織斑一夏とクロエ・クロニクル、凰鈴音と凰清音がいい感じに奴等を痛めつけてから、俺とスコールで強襲をかける。お前等はバックアップだ」

「戦闘よりも退却を優先すべきではないか?今回、我々には後ろ楯がないからな」

オータム「お優しいなママンは……そんなにガキ共を攻撃するのが嫌か?」

「私個人の感情の問題ではない。我々ハーキュリーズ全体が生き残れるかどうかの問題だ」

スコール「カリーヌ、大丈夫よ。今回は“世界一強力”な後ろ楯を用意してあるわ。この島の地形を抉ろうが体積を減らそうが、退却には何の差し支えもないわ」

カリーヌ「しかし、その後ろ楯が我々には明確でない以上安易に信用する事は出来ない。例えお前個人が信用に値すると判断していたとしてもだ」

文「カリーヌの言う通り私達はその世界一強力な後ろ楯を知りやせん。スコール姉貴にしか知り得ない事なので一応、今ここで明確にして頂けねぇでしょうか?」

オータム「スコール」

スコール「そうね……」ピッ

スコール「少しだけ時間を頂けるかしら?ドクトルT」

~第三アリーナ~

鈴「たあっ!はあっ!でやあっ!」シュッシュシュッ

一夏「鈴、そろそろバテてきたんじゃーーーッ!?」スッスススッ

一夏(しまった!蹴りじゃなくて踵落としだったのか!?)

鈴「せいやっ!!」ガヅァンッッ

一夏「うッ……お……おおっ……やるな!」

鈴「何で倒れないんだよー!まともに顎に入ったのに~!おりゃあっ!」ブンッ

一夏「何でって……そりゃあーーー」ガンッ

ガシッ グイッッ

一夏「負ける訳にはいかないんだよ。俺は」

鈴「うっせー!あと顔が近いんだよー!こんにゃろー!」グリンッ

一夏「あらよっと!」ブンッ

鈴「うにゃあ~!」

清「鈴!」

鈴「うん!」

鈴清「「チェーンジ!」」クルッ

クロエ「……」シュッ

鈴「ちょいな!」ブンッ

クロエ「……」ガシッ

鈴「もらった!」ジャパッ

一夏「こっちがな!」ドゴッ

鈴「ッ!!」グルンッ


ガヅァンッッ


クロエ「一夏様!!」

クロエ(殴られた勢いを利用して回し蹴りを!?)

一夏「ッ……マジかよッ……うおっと!?」ズドドンッ

清「鈴!」ズドドンッ

一夏「悪いな、電撃も効かねぇからな!」バチチチィンッ

清「ならぁ!」シュッッ

一夏「ほいっ」スッ

清「はあっ!たあっ!せいっ!」シュッシュッ

一夏「よっ、ほっ」スッスッ

鈴「くらえ!」ズドンッ

クロエ「……」バチィンッ

鈴「クロちんも!?うにゃあ!」ガギャッ

クロエ「……」ガッ グイッ

鈴「ッ~!離せ~!この!」グリンッ ガシッ

クロエ「しまッ!?」ググググッ

鈴「このまま締め落としてやる~!」ググググッ

ガシッッ

クロエ「ッ!!」ブンッッ

鈴「きゃあっ!」

一夏「おらぁ!」ドゴッ

清「きゃあっ!」

一夏「クロエ」

クロエ「……はッ、はいッ!何ですか?」

一夏「少し落ち着け」

クロエ「え……あ……す、すみません……」ペコリ

鈴「くっそーやりおるなー」

清「ちきしょーやりおるなー」

一夏「おいおい、どうした?もう終わりか?」コキコキッ

清「鈴、“アレ”やっちゃう?」

鈴「清、“アレ”やっちゃう?」

一夏「ん?アレ?」

クロエ「?」

鈴清「「よっしゃー!やっちゃおーぜい!!」」パシーン

鈴「さあさあ!お集まりの皆々様!これより御覧にいれまするわ世界初~!」

清「中華人民共和国が誇る未公開のチョー機密事項!とくと御覧あれ~!」

一夏「機密事項をご覧あれって……」

クロエ「それでよろしいのでしょうか……」


鈴清「「合体!!」」


一夏「はあ!!?」

クロエ「合体?」


ガゴンッ ガチィンッ ブシュウゥゥー


鈴清「「双頭神龍!!」」


クロエ「肩部パーツの交換……?」

一夏「それ合体かぁ?俺はてっきりこう……二人のISが合わさってこう……一つのISになってさ……ほら……あれだよ……すげぇパワーを発揮するとか何とかで……」

鈴清「「うっせーあたし達に言うんじゃねー」」

~???~

ジェイ「……」

ケイ「ッ……」

ガクッガクガクッガクンッ

ケイ(……間隔が……短くなってやがる……クソッタレが……)

ケイ(負けられねぇんだよ……こんなところで……俺は……)

ケイ「……クソッタレが」ボソッ

エム「ケイ、まさかーーー」

ケイ「ああ?何だよ?俺が薬漬けのキリスト様にでも見えたか?」

エム「今回のゲームは降りろ」

ケイ「降りろ、だと?嫌だね。そいつぁ死んでもお断りだ」

ジェイ「コンディションが良くないのなら、ゲームをしても仕方ないんじゃない?」

ケイ「揃いも揃って寝言言ってんじゃねぇよ。ゲームにコンディションもクソもねぇんだよ」

ケイ「分かってねぇな……ゲームにはな“奪うか奪われるか”この二つしかねぇんだよ」

ケイ「クソ垂れ流してやがる場合か?ちょっとは自分のゲームの心配でもしやがれってんだよ」

ジェイ「……ま、それもそうだね」

エム「……」

ジェイ「せいぜい君の独壇場にならないように、応援しておくよ」

エム「問題ないのか」

ケイ「あ?何がだよ」

エム「作戦を遂行すーーー」

ガシッッ

ケイ「エム、くだらねぇタワゴトを何度も言わせんなよ。テメェのオツムはいつからそんなに哀れになっちまったんだ?」グッ…

ジェイ「ケイ、やめなよ」

ケイ「……いちいちうるせぇな」パッ

エム「……時間だ」

ジェイ「ケイ、やれるよね?」

ケイ「当たり前だろうが、俺は勝つぜ」

ケイ「約束があるからな」

~第三アリーナ~

鈴「おりゃあぁぁぁ!」

クロエ(アリーナの壁面を使ったところで、この零式にダメージはありません)ギャリギャリギャリギャリ

鈴「このまま大根おろしにしちゃる!!」ギャリギャリギャリギャリ

クロエ「それは不可能です」ガギャッ

鈴「うわっ!?」

クロエ「この零式は有機物である大根とは根本的に違います」

鈴「そーゆー事言ってんじゃなーい!」シュッッ

クロエ「……」スッ

鈴「どおうりゃあぁぁぁぁ!」シュシュシュシュシュ

クロエ(いくら攻撃の軌道を変えたところで……)

鈴「りゃっ!」ズドドンッ

クロエ「ッ……!」

クロエ(格闘中に射撃出来たーーーしまった!?)

鈴「せいやっ!!」ズガンッッ

クロエ「かッ……ッあ……!?」

鈴「へっへーん油断大敵だよー」ヒラヒラ

清「でやあっ!はあっ!ぜええいっ!!」ガスッドガッゴスッ

一夏(天武の才、ってやつか………いつの間にか清までツヴァイフォーミラの堅さを理解してる……)

清「こんにゃろおぉぉぉ!!」シュッッ

一夏「遅い」シュッ

清「うらぁッ!!」ガシッ

一夏「何!?」

清「この距離ならぁ!!」ズドドドドドドドド

一夏「なッ!?何してんだ!!」ブンッッ

清「きゃっ!……何って見ての通りでしょーが!!」ブンッ

一夏「俺はともかく龍咆を接射してお前が無事で済む訳ないだろ!」ガンッ

清「無事で済むに決まってんでしょーが!!」グルンッ

一夏「根拠は……何だっ!」ガヅァンッッ

清「はあ……はあ……びこーず!それはチョー簡な事!」

清「そうでしょ!鈴!」

クロエ「ッ!?」ガヅァンッッ

鈴「はあ……そ……そうだね!清!」

鈴「あたし達と!」

清「一夏んとクロちんでは!」


鈴清「「気合いが違うんだから!!」」


クロエ「き、気合い、ですか……?」

一夏「ッ~……あのな、龍咆の電撃と衝撃は機体そのものと操縦者の肉体の両方にダメージを与えるものなんだぞ。それをお前等まで食らってたらーーー」

鈴清「「あーっそ」」ズドドドドドドドド

一夏「あっそ、ってお前等なぁ!」バッ

ズドドドドドドドド

一夏『クロエ、プラッテを追い越して突撃しろ』

クロエ『了解しました』

一夏「人の話は最後まで聞け!」シュババッ

クロエ「……」ドンッッ

鈴清「「何それ!?って、きゃあッッ!!?」」ドガアァッ

ザカンッッ ギュルルルルルルル

鈴清「「ッ……まだ動くの!?」」

一夏(いざ動かすとなると結構難しいな……)

鈴「清!」バッ

清「鈴!」バッ

ギュルルルル

清「うらあぁぁ!」ガンッッ

クロエ「……」シュッッ

鈴「どりゃあ!」ギャッッ

クロエ(背中を合わせ、武器を展開しましたか……それなら背面と前面からの攻撃は防げるでしょう……)

一夏(けど、それはその辺のISなら通用した戦法だ)

ドンッッ

鈴清「「待ってました!」」バッ

クロエ「しまッ!?」

一夏「読んでたッ!!?ーーーうおおぉぉッ!!」ドガアァァッッ

鈴清「「クロちんになら!」」ズドドンッ

クロエ「ッ……ッ……!」

ザカンッッ

鈴清「「きゃあっ!」」

一夏「ったく、攻撃かわされて同士討ちなんて久しぶりだな……あー恥ずかしい」パシッ

クロエ「大丈夫ですか?」

一夏「ああ、ツヴァイフォーミラのおかげでな」コキコキッ

鈴清「「なんで余裕こいてんだよー!このやろー!」」

一夏「本気を出してないからな。それよりも……鈴、清、そろそろ限界なんじゃないのか?」

鈴「何をー言ったなー!」

清「こちとらまだまだピンピンしとるわい!」

鈴清「「なら目に物見せてやるんだからね!!」」

一夏「目に物、ねぇ……」

鈴「超級!!」ゴオォォォォ

清「覇王!!」バチバチバチ

鈴清「「電えーーー」」


ヒュウゥゥゥゥン


鈴清「「何!?」」

クロエ「アリーナの電気が……」

一夏「いや、学園の電気が止まったみたいだ」

鈴清「「あたし達のせいじゃないよ!!」」

一夏「見りゃ分かるって」


ザワザワザワザワ……

一夏(予備電源に切り替わらない……ただの停電でないとすれば……予想されるのはーーー上か)

一夏「クロエ」

クロエ「既に」

一夏「頼んだぞ。俺は」

ドンッッ!!

鈴清「「一夏ん!?」」


ドガアァァァンッッ


鈴清「「爆発!?今度は何!?」」

クロエ「敵が来ます。攻撃に備えてください」

鈴清「「え?う、うん……分かった」」



ゴオオオォォォォォッッ


鈴清「「一夏が降ってきた!?」」

一夏「うおおおぉぉぉぉッッ!!」ズンッッ!!

ケイ「ヘッ、やるじゃねぇか」

鈴清「「一夏ん!」」

ガシッッ

鈴清「「えっ!!?」」

ジェイ「どうやら、君と織村一夏にはバレちゃってたみたいだね」グググッ

クロエ「お二人とも、後ろです」

エム「……」ヒュオォッ

鈴清「「こなくそー!」」ガギィンッ

エム「……」バッ

一夏「何者だ、お前等は。目的は何だ?」

ケイ「ただのテロリストだよ。目的の方はテメェとクロエ・クロニクルさ。織村一夏さんよぉ」

一夏「……そうきたか」

ジェイ「でも、ただ目的を遂行するだけじゃつまらないよ。だからさ……僕達と一緒に遊ばない?」

クロエ「遊ぶ……?」

エム「フン、お前達には関係のない話だがな。凰鈴音、凰清音」

鈴清「「な、何だとー!?このチビー!」」

千冬「山田先生」

真耶「駄目です。予備電源に切り替わりません」フルフル

千冬「賊に入られたか……」

セシリア「あっ!一夏さんが!」

ドーン

真耶「上?……ミサイル、ですか」

千冬「……成程、そういう事か」

セシリア「ミッ、ミサイルッ!?い、一体何が……一夏さんはどうなってますの!?」アタフタ

箒「落ち着け、セシリア」

セシリア「ですがーーー」

箒「いいから落ち着け!……いくら焦ったところで今の私達にはどうしようもない……」

セシリア「箒さん……」

箒「……」ギュウッ

千冬「二人とも安心しろ。ミサイル程度では零式に傷一つ付けられん」

セシリア「ほっ、良かったです……」

箒「……千冬さんが何故それを?」

千冬「束に聞け」

千冬「……侵入者の御出座しだ」

箒「一夏!?」

セシリア「一夏さんが押し負けてますわ!」

真耶「……二人目はかなり速いですね」

千冬「これで三人。全員ステルスか……少し厄介だな」

千冬(それにしても、ミサイル迎撃後の隙を突いて、上空から一気に加速して突進をしかけるとはな……ISであるからといって無茶をする奴だ……それに男……?)

真耶(織村くんとクロニクルさんの機体に比べれば小さい……それでもあの三機、既存のISより巨体で全身が装甲で覆われていて、しかもどこの国のISとも似ても似つかない……確認出来る武装は剣と槍……それだけじゃない。絶対に……)

セシリア「一夏さん!今私がーーー」

千冬「待て、セシリア」スッ

セシリア「な、何ですか……!?」

千冬「迂闊に動くな。奴等が何をするか分からない」

セシリア「しかし!」

真耶「一人がこちらを見ましたよ。我々に対する牽制の意図で」

セシリア「……分かり……ました……」

千冬「こうなってはアリーナの生徒達が人質だ。私達は動けん」

箒「けど、観客の中に黙って見ている人がいるとは思えません」

千冬「そうだな。敵も同じ事を考えているはずだ」

一夏『マズった……先手を打とうと思ったのに完全に打たれた……何もかも後手に回ったなぁ……』

クロエ『アレを使いますか?』

一夏『まだだ。さっき鈴と清が戦っている奴が姉ちゃんと山田さんを牽制した。姉ちゃんと山田さんと同意件で俺もこいつらはアリーナの人達を確実に人質にする術を持っていると思う。こいつらの手の内が読めない間は使わない』

クロエ『了解しました』

ゥゥゥウウウウン……パッ

鈴清「「お?電気が!」」

ジェイ「フッフッフッフッ……」

ケイ「ヘッヘッヘッヘッ……」

エム「ハッハッハッハッ……」

鈴清「「何笑ってんだよーこんにゃろー!って、あっ!!隔壁とバリアが!!」」

ジェイ「織村一夏、君ならもう気付いているんじゃないの?」

一夏「……かもな」

ケイ「シラを切ろうたってそうはいかねぇぜ。何なら今すぐーーー」

鈴清「「人質に手ぇ出すな!!」」ズドドンッ

ケイ「馬鹿が!」バチィンッ

一夏「ばッ!馬鹿ッ!お前等何やってんだ!!状況分かってんのか!!?」ガシッ

鈴「はーなーせー!こいつらにあたし達を舐めてやがるんだもーん!人質取ったぐらいでいい気になりやがってー!」ジタバタ

清「ふーざーけーんなー!そんぐらい分かってんだよー!あたし達だってちゃんと出来るんだからなー!」ジタバタ

鈴清「「一夏んと張り合えるぐらいまで強いんだからなー!こんのクソボケー!!後なんかお前等気持ち悪いんだよー!!」」ジタバタ

一夏「分かってるなら攻撃するなよ!こんな時に変な意地張るな!!」

ジェイ「フッフッフッ……まさか、攻撃してくるなんてね」

エム「面白い奴等だ。我々の目的を理解した上でか」

ケイ「ヘッ、相手が俺達で良かったな……いや、悪かったな」

鈴清「「がるるる……!」」

一夏「どうどうどう……落ち着けって」

一夏(敵がお喋りなのが不幸中の幸いか。それにしてもこの三機はステルス……いや、これはそんなレベルじゃない……俺達の機体で認識出来ない……?それに加えてジャミング……厄介だな。俺達はともかく、鈴や清、他の人は通信出来ないんだろうな……)

クロエ(一夏様も同じ事を考えているはず……隔壁とシールドバリアで増援は期待出来ません……ハッキングに関しては私達はあまり得意ではないのですが……駄目で元々……やるしかありません。何としても情報を入手しなければ……後は……)チラッ

鈴清「「どうしたの?」」

クロエ「いえ、何でもありません」

クロエ(先程の様な事をなさらなければ良いのですが……)

一夏(あ、あれ?ハッキングってどうやるんっだっけ?)

一夏(それにしてもこいつ等……何か妙な感じがする……特に最初に現れた武器を持ってない奴……何なんだ……この感じ……)

クロエ(まさかとは思いますが……彼等はもしかして……いや、そんなはずはないはずです……そんなはずは……)

ケイ「さて、まずは第一ラウンドといこうぜ。どいつから相手になってくれるんだ?」

ジェイ「ケイ、待ちなよ。その前に、やる事があるんじゃないの?」ドンッッ

ザカンッッ

クロエ「ッ……ッ……!?」

一夏「クロエ!!」

ケイ「はあっ!!」ドゴッッ

一夏「ぐあッ!!」

鈴清「「一夏ん!?クロちん!?」」

クロエ「このッ……!!」ヒュッ

ジェイ「何それ?そんなのが攻撃?」スッ

ザカカカカカンッ

クロエ「うあッ……!!」

一夏「クロエ!このッ!!」ガシッ

ケイ「ヘッヘッヘッ、何だ?俺と力比べしようってか?」ググググッ

一夏「だったら何だ!」ググググッ

ケイ「オイオイ、何勝手に熱くなってんだ?ゲームはまだだぜ?」


ググググッッ

一夏「何ッ……!?」ググググッ

ケイ「こんなもんか?何だよ、全然大した事ねぇじゃねぇか」ググググッ

一夏「う……おおッ……おおぉぉぉぉ……俺が……力負け………!?」ググググッ

ケイ「残念だったな!!」ドゴッッ

ドドドドドドドゴッッ

一夏「ッ……ッ……!?」

エム「どうした、お前達は何もしないのか?」

鈴清「「……うっせー、チービ」」ビシッ

エム「……」

鈴清((一夏んがパワーで負けて、クロちんがスピードで負けた……?))

鈴(こいつも剣もかなりヤバかったし……今は何もしてこないけど……)

清(さっきの時はクロちんが言ってくれなかったら……)

鈴清((あたし達、絶対やられてた……))

ジェイ「ゲームの進行を妨げたちゃあ駄目だよ?それはルール違反だからね、クロエ・クロニクル、織村一夏」

クロエ「一夏、大丈夫……ですか?」

一夏「……ああ……何とかな。そういうクロエこそ」

クロエ「この程度、問題ありません……」

ケイ「テメェ等の相手は後でちゃんとしてやる。それまで大人しくしてな。命令を守る良い子にじゃねぇと……ゲームの前にブッ潰しちまうぜ」

一夏「……分かったよ」

エム「フン、いくら足掻いたところで結果は同じだがな」

ジェイ「でも、楽しみは多い方がいいよね。フッフッフッ」

エム「それもそうだな」

鈴清「「……」」

一夏「鈴、清、落ち着け」

鈴清「「別に、落ち着いてるし」」

一夏「嘘言うな、フラストレーション溜まってるの丸分かりだぞ」

鈴清「「うっさい!」」ガスッ

一夏「蹴るなよ!しかも二人がかりで。敵の目の前なんだぞ」

鈴清「「ふーんだ」」ツーン

クロエ「……」オロオロ

エム「どうした?仲間割れか?」

鈴清「「いーっだ!」」

ケイ「何だ何だぁ?チームワークなしのチームか?」

ジェイ「そんなのじゃ、先が思いやられるね。フッフッフッフッフッ」

ケイ「よーし決めた。第一ラウンドの相手はテメェ等だ」

鈴清「「は?」」

ケイ「テメェ等だよ。俺の指が曲がってでも見えてんのか?ちゃんとテメェ等の方を指してるだろ?ホラ、この通りよ」ヒラヒラ

鈴清「「……」」

一夏(マズいな……こいつ、鈴と清の一番嫌いなタイプの奴だ……)

エム「随分と少ないハンデーーー」

鈴清「「グチャグチャグチャグチャ言ってないでさっさとかかって来いっての!!怖じ気づいてんのかこの腰抜けボケナスデカブツ野郎が!!」」ビシッ

ケイ「ヘッヘッヘッ、その威勢がいつまで持つかな」

エム「長くは続かないだろうな。第一ラウンドと同じで」

ケイ「その通りだぜ。ヘッヘッヘッヘッ」

一夏『クロエ』

クロエ『既に。しかし、尽力しているのですが相手が相当のハッカーなのでかなり時間がかかります』

一夏『焦らず、確実にやってくれ』

クロエ『了解』

一夏(後は姉ちゃんだな……)チラッ

ジェイ「それじゃあ第一ラウンド開始といこうか、両者とも準備はいい?」

ケイ「おうよ」

鈴清「「早くしろっての、このグズ」」

ジェイ「それじゃあ、開始」

鈴清「「おらぁ!!」」ズドドンッ

ケイ「効くかよ!」バチィンッ

鈴「知ってる!」

清「だから!」

ケイ(左右から来る……いや違うな。あくまで正面から来るか)

ケイ「おらよ!」ブォンッ

ヒラリ

鈴「せいっ!」ドゴッ

清「たあっ!」ガスッ

ケイ「ヘッ、やるじゃねえか!」ブォンッ

清「ぐッ!!」ガシッ

ケイ(よけねぇで腕を固めやがーーー)

鈴「ずえぇい!!」ズガンッッ

ケイ「ッ……!?」

清「……」ミシミシミシミシ

グルンッ

鈴「せいやっ!!」ガヅァンッッ

ケイ「うッッ……こいつッ……!?クソッ……!!」

鈴「もういっーーー」

ケイ「何てなぁ!!」ブンッ

清「きゃあっ!!」

鈴「清!」ガシッ

ケイ「隙だらけだぜぇ!!」ドゴッッ

鈴清「「ぐッ……!!」」

ケイ「おらおらおらおらぁ!!」ドドドドドド

鈴清「「ッ……ッ……ッ……!!」」バシッバシバシッバシッ

鈴清((重い……いなすのが精いっぱいても……でも、ダメージが……何て馬鹿力……))

ケイ「まだまだぁ!!」ギュルルル

ガッ

鈴清「「壁!?やばッ!?」」


ドゴオォォンンッ


一夏「鈴!!清!!」

ジェイ「あーあ、まともに喰らっちゃったね」

エム「動くな、クロエ・クロニクル。ゲームの邪魔をするな」

クロエ「……了解しています」

クロエ(回転を加えてアリーナの壁を破壊するほどの威力……お二人は……)

ガラガラガラ……

ケイ「おっと、少しやり過ぎちまったか?」

一夏「おい!!鈴、清、大丈夫か!!聞こえてんのか!!立て!!立てよ!!」

鈴清「「……」」

ケイ「だとよ。ホラ、さっさと反撃してこいよ」ガスッ

鈴清「「……」」

ケイ「ああ?どうした?もう終わりか?」ガシッ

鈴清「「……」」ダラーン

ケイ「仕方ねぇ、お目覚めの時間だぜ」

ミシミシミシミシミシミシミシミシ

一夏「や、やめろッ!!」

ジェイ「駄目だよ。君はまだ参加してないでしょ?」スッ

一夏「ッ……鈴!!清!!起きろ!!殺されるぞ!!」


ミシミシミシミシミシミシミシミシ

ケイ「早く起きねぇと、そのか細い首が貧相な体とオサラバしちまうぜ?」ググググッ

鈴清「「……」」

エム「……」チャキッ

クロエ「……」

一夏「やめろッ!!それ以上したら二人がーーー」

ガシッ グイッ

ジェイ「大人しくしてなよ。それよりも、ゲームを楽しもうよ」グググッ

一夏「ッ……ゲーム、だと?ふざけんなよ!!人の命を何だとーーー」


ゴキンッッ


ケイ「おっと、やっちまったか?」

鈴清「「……」」ダラーン

ケイ「オイオイ……何だよ。良いのは威勢と最初だけか」

一夏「鈴……清……?」

鈴清「「……」」

エム「フン、所詮はこの程度か」

ジェイ「あーあ、思ってたより速かったね」

一夏「嘘だろ……?な、なあ、嘘だよな……?鈴……清……」

鈴清「「……」」

ケイ「こりゃ感動の場面だな。泣かせてくれるぜ」

一夏「起きろよ!!なあ!!鈴!!清!!起きろッ!!」

鈴清「「……」」

クロエ「一夏様!!」ガシッッ

一夏「離せよ!!クロエ!!」

クロエ「いいえ!!離しません!!ここで離せばお二人だけですまなくなります!!」

クロエ「冷静になってください!!」

一夏「俺は冷静だよ!!」

クロエ「それが冷静でないと言っているのです!!」

一夏「冷静だよ!!早く離せよ!!鈴と清が!!」

ジェイ「フッフッフッ……」

エム「ほう……面白い。ここまで取り乱すか」

ケイ「オイオイ、何だよ。また仲間割れかよ」パッ



ズドドドドドドドドドドンッ


ケイ「う……うおぉぉぉッッ……!!?」

ジェイ「えッ!?」

エム「何ッ!?」

鈴「っだあっ!!」ズガンッッ

清「っぜやあっ!!」ズガンッッ

鈴清「「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!」」

ドガガガガガガガガガガガガガッ

ケイ「ぐあぁぁッ……こッ、コイツ等ッ……!!」ミシッ

鈴清「「らあッッ!!」」ガヅァンッッ

ケイ「がッッ……グッッ……!!」バキン

グルンッッ

鈴清「「くたばれッッ!!」」ドゴッッ

ケイ「うおぉぉぉッッ!!?」

ドゴオォンッ

鈴清「「様あ見ろ!さっきのお返し!」」

鈴清「「ふーっ、スッキリしたぜー」」

一夏「鈴!!清!!無事だったのか!!」

鈴「モチのロン!この通り!首が折れた様に見せただけ!」ゴキゴキッ

清「作戦大成功!敵を欺くにはまず味方からって言うもんね!」ゴキゴキッ

鈴清「「いえーい!」」パチン

一夏「そうか……良かった……本当に良かった……!」

クロエ「お二人とも……御無事で何よりです……本当に……」

鈴清「「えへへ……心配かけてごめんねっ」」

ジェイ「……ま、まさか、死んだフリ、なんてね……」

エム「ケイは気付かなかったのか……?奴等がそこまで巧妙な事をやってのけたとは思えないが……」

ジェイ「僕達だって騙されてるんだよ?」

エム「……そうだな」

鈴清「「さーて、この程度で済むと思ってんの?とっとと立ち上がってかかって来やがれ、アホバカマヌケのオタンコナス」」クイクイッ

ケイ「……ヘッ、ヘヘヘッ、ヘッヘッヘッヘッ、いいぜ、そうこなくっちゃな。そうじゃねぇとオモシロくねぇもんな」

鈴清「「さっき喰らった分、全部兆倍にして返しやるんだからね!!覚悟しやがれ!!」」

ケイ「やれるものならやってみやがれ」

千冬「いいか、絶対に何もするな。絶対に、だ」

セシリア「はい……」

千冬「気持ちは分かる。しかし私達は既に袋の鼠だ。迂闊に行動を起こせば生徒達に被害が及ぶ事になる」

千冬「ISを使って隔壁を破壊しようものなら尚更だ」

セシリア「すみませんでした……」

真耶「ま、まあまあ、織村先生、その辺にしましょうよ。いずれその行動を生かす時が来ますから」

千冬「……そうですね。とにかく、今は大人しくしていろ」

セシリア「……はい」

箒(山田先生に千冬さん、二人とも話ながら手元で何かをしている……)

千冬「箒、お前は何もしないのか?今は非常時だから少々設備を破壊してもお咎めなしだぞ?」

真耶「そうですよ、現場の判断で臨機応変な対応を求められますからね」 ニコッ

箒「いえ……私はセシリアの様にISを持っていませんから……」

真耶「ほえー律儀ですねー」

千冬「山田先生が言うと説得力が違いますね」

真耶「えへへっ」

千冬「誉めてませんよ」

千冬「山田先生、コーヒーでもいかがですか?」

真耶「砂糖とミルクいっぱい入れたのをお願い しまーす」

千冬「分かりました」カツッカツッカツッ

セシリア「えっ」

千冬「何だ?お前もーーーいや、イギリス人のお前には愚問だったな」

セシリア「い、いえ……そういう事ではありません」

千冬「なら何だ」

セシリア「この非常時にコーヒーを飲むのはどうかと思うのですが……」

千冬「外も見えない完全な密室で監視付き、犯人からの声明も何もない。なら大人しくコーヒーでも飲んで、何かが起こるのを待つのが得策だ」

セシリア「そ、そうですね……」

千冬「お、喜べオルコット。お気に召さないとは思うがティーパックの紅茶があったぞ。飲むか?」ガラッ

セシリア「え、あ、はい……頂きます」

セシリア(何と言えば良いのでしょうか……流石は一夏さんの姉君ですわ……)

千冬「箒、お前は?」

箒「私は結構です」

千冬「ほうじ茶もあるぞ?」

箒「結構です」


バシュンッ

真耶「危ないッ!!」バッ

箒「えっ!?」

セシリア「きゃあっ!?」


ヒュカカカッ


真耶「ッ!」シャッッ

シャキンッ

オータム「おー惜しかったな、狂犬さんよぉ。そこのガキ二人に構わなければ俺に勝ててたかもしんねぇな……銃を捨てて両手を頭の後ろにやれ」

真耶「……」パッ ゴトンッ

オータム「オイオイ、マジかよ。M29って……教師なら普通デリンジャーとかキスオブデスとかだろ」

真耶「……」

千冬「山田先生!くっ……!」

スコール「ふふふっ、思った通り……あなた、とても良い体してるわね……」グググッ

千冬(いくら光学迷彩で姿は隠せたとしても、気配や殺気までは隠せない……何なんだこいつは……何も感じなかった……それにこの力……アンドロイドの類いか……)

スコール「……イタリアンコーヒーにしては砂糖の入れすぎね。糖尿病になるわよ?」

千冬「ご忠告感謝する。しかし、それは私のコーヒーではない」

スコール「あら、そうだったの」

セシリア(山田先生と織村先生がこんなにも簡単に負けた……?)

箒(山田先生は私達を守っていたから仕方なかったが……千冬さんは完全に後ろを取られていた……そんな馬鹿な……)

スコール「良い子ね。お嬢ちゃん達、いい?もし“綺麗な体のまま”でお父さんお母さんの所に帰りたいのなら、どうすればいいか分かるわよね?」チャッ

セシリア「……」

箒「……」

スコール「本当に良い子ね。出来る事ならここで今すぐにでも可愛がってあげたいんだけど……まずは」ペロッ

千冬「……それがお前達の要求か」

スコール「まさか、私達はただの馬の骨よ。要求もへったくれもないわ」クスッ

オータム「そろそろ黙れ。早く端末を取り上げろ」

スコール「分かってるわよ」バキッ

千冬「!」

千冬(……いつの間に……)

オータム「自分達は生徒に何もするな、って言っておきながらその実自分達は監視カメラの死角でコソコソとハッキングたぁよ……先生方は生徒の見本にならなきゃあいけねぇのにそれはどうかと思うぜ」

真耶「そうですね。すみませんでした」

真耶(気付いていましたか……この二人……相当腕の立つ軍人……いや、諜報機関のエージェントでしょうか……せめて顔さえ分かれば……)

千冬「お前達は何者だ、目的は何だ」

スコール「秘密結社の犬畜生、目的は……そうね、お金と言ったところかしら」

千冬「……」

スコール「おっと、今のは日本で言う本音と建前の建前の方よ。本当の目的は別にあるから安心して頂戴」

オータム「テメェなら言わなくても分かるだろ?あの隔壁の向こうにある、世界にたったの二つしかないISとその操縦者が、お偉方の目的だよ」

千冬「……やはりか」

オータム「残念だが、俺達に何を言っても既に二人は確保される運命にあるんだよ。悪いな、千冬お姉ちゃん」

千冬「ッ!」

スコール「こら、暴れちゃ駄目よ」

オータム「おおっ、怖ぇ怖ぇ」

スコール「織斑千冬、先に言っておくわ。私達はここから安全に逃走出来ればそれでいいの。その為には、あなた達の協力が必要で、その為ならこちらも協力は惜しまないわ」ボソボソ

千冬「何……?」

スコール「勘違いしないで欲しいのは、我々の言っている事は要求ではなく命令よ。あなた達に拒否権はないわ」

スコール「もし、拒否するというのなら……彼女達の未来は保証出来ないわ」

~アリーナ1番ゲート~

本音「簪ちゃん……」ギュッ

簪「だ、大丈夫だから……大丈夫……」

オータム「さて、IS学園の生徒の皆さん、こんにちわ。お姉さん達はあなた達に社会というものを教えに来た特別教師ですので、これからはよろしくお願い致します」

オータム「えー今回の授業を行うに当たって決まり事が二つあります。一つはお姉さん達に突然襲いかかってこない事、二つ目はISを使用しない事です。もしもこの決まりが守れなかった場合には、お姉さん達は“とっても怖がり”なのでこの人差し指が勝手に動いてしまうかもしれません」トントン

オータム「でも安心してください。あなた達が提示したルールを守ってくれる限り、こちらも絶対にルールを守ります。あなた達に一切の危害は加えません。いいですか?」

シーン

オータム「おや?返事がないですね?いいですか?」

ハ,ハイ……

オータム「よろしい。それでは、お互いルールを守って安心安全な授業にしましょう」

簪(潜入部隊だから数はそんなに多くない……この数なら私だけでも……ミサイルの信管を作動させなければあの装備なら気絶で済むはず……)

カリーヌ『オータム、生徒達の一番奥にいるのはーーー』

オータム『更識簪だろ?んな事ぁ重々も承知、分かってんよ』

カリーヌ『分かっているならいい』

オータム『各員、しっかりと見張ってろよ。何か行動を起こす前に止めねぇと下手すりゃあ嬢ちゃん達を殺らねぇといけなくなるからな。そしたら誇り高き正義の味方、チームハーキュリーズの名折れだからな』

オータム「まずは一人」


ヒュカッッ


簪「ひッ!!?」ビクッ

本音「ッ!?」ギュウゥゥッ

オータム「……ワリぃな、思わず手が滑っちまった。あー……他の奴等も、悲鳴なら別に挙げてくれても結構だぜ。俺達ぁ別に気にしねぇからよ」ツカツカ

簪(こっちに来る……)

本音「……」ギュウゥゥッ

ヒョイッ

オータム「ん~いいメガネしてんじゃねぇか、ちょっと貸してくれよ」

簪「あっ!駄目ッ!」

オータム「ロックオン……んん?何でこんな物騒な単語と、ターゲットサイト諸々が表示されてるんだろうなぁ?」

簪「……」

オータム「信管を作動させないとはいえミサイル攻撃はやり過ぎなんじゃねぇか?敵に対し過剰な攻撃はルール違反だぜ。俺達は大半がサイボーグだが、俺を含んだ数名は生身の人間だ。そこんところ、マジで頼むぜ簪ちゃん」スッ

簪「す、すみません……でした……」スチャッ

本音「……」ビクビク

オータム「嬢ちゃんも、ビビらせて悪かったな。けどよぉ、これが俺達の今のお仕事ってモンなんだ。分かってくれよ、な?」ポンポン

本音「う、うん……分かった……」

カリーヌ(人に言っておきながら、お前も大概ではないか)

~アリーナ3番ゲート~

清香「ど、どどど、どうしよう……ヤバイよぉ……」ボソボソ



三年生「皆さん、落ち着いて下さい」

~アリーナ3番ゲート~

清香「ど、どどど、どうしよう……ヤバイよぉ……静寐ぇ……」ボソボソ

静寐「落ち着きなよ、私達の前に誰がいると思ってるの」ボソボソ

三年生「皆さん、どうか冷静に」

スコール「勇敢ね。あなた一人でこの数をどうにか出来ると思うの?」

三年生「出来るとは思っていません。しかし、成さねばなりません」

スコール「流石は円卓の騎士、モルドレットーーーいや、ナイトオブローズ?それとも、サラ・ウェルキンと呼んだ方がいいかしら?」

サラ「貴女の好きな様に読んで頂いて結構です。他の生徒達に危害を加えにならないのなら」

スコール「勇敢な上に気丈ね。ふふっ、嫌いじゃないわよ?」

サラ「お褒め頂き、光栄です」

スコール「さて、いいかしら?あなた達、良く聞いておいて頂戴。ご覧の通り、今現在この場は裏の金で重武装した我々秘密結社の手先が制圧したわ」

スコール「我々から人質であるあなた達に対する要求は一つ、何もしない事。とっても簡単でしょ?」

スコール「間違っても何かの拍子に盛って私達を襲った場合には5.7x28mm弾か、12.7x99mm徹甲弾、20mmx82弾の三つの内どれかを選んでもらわないといけなくなるわ」

スコール 「それでも良いと言うのならお好きな物を選んでもらって結構よ。しかし、こちらとしてはそれは極力避けたいという事を覚えておいて頂戴」

スコール「あなた達が何もしなければ、こちらも何もしない。これだけは約束するわ。そして、あなた達が約束を守っている限り、私達は絶対に裏切らない」

スコール「……と言っても、信用ならないわよね。この状況じゃあ尚更」

スコール「説明は以上よ。それじゃあ皆、張り切って何もしない人質をやっておいてもらえるかしら」

静寐「何というか……やる気のなさ過ぎじゃない?」ボソボソ

清香「ちょ、調子狂うよね……」ボソボソ

文『姉貴……いくら何でもそれは……』

スコール『いいじゃない。今の私達に豚の餌以下の奴等の為に働く義務も責任なんて微塵もないわ』

文『それはそうですが……牽制を怠れば増長を招きやすぜ』

スコール『その時はその時よ……まあ、オータムは怒るでしょうね』

文『そうならねぇ事を祈ります』

「ねえ、そこのあなた」

清香「は、はひっ!私ですか!?」ビクゥッ

スコール「……はあ」ヤレヤレ

「そう、あなたよ」ツツー

清香「ひゃいっ!?な、な、ななな、何でしょうか!?」

「うふふっ、可愛いわね。もし良かったらーーー」

ガツンッッ

「……何よ」

文「時と場合と相手を考えな。すまねぇな、嬢ちゃん。こいつが迷惑かけたな」ペコリ

清香「い、いえっ、そ、そそ、そんな事ありませんよ!」

スコール「ちゃんと見てるかしら?でないと後でドキュメンタリー番組が出来ないじゃない。タイトルは……そうね、私は見た、IS学園襲撃の真実……うふふっ、これで視聴率は頂きね」

シャッッ

スコール「……」パシッ

スコール「……タイトルが気に入らなかったかしら?」

オータム「少しは口を閉じてらんねぇのか」

真耶(どうやらそんじょそこらのゴロツキではなさそうですね……相当手練れた傭兵か、特殊部隊崩れか、裏組織御抱えの殺し屋か……)

真耶「……」ギロッ

セシリア「!?」ビクッ

真耶「……」フルフル

セシリア「……」コクン

真耶「……」ニコッ

千冬「……」

千冬(それにしても何だ……こいつ等のこの感じ……二人ともアンドロイドか何かなのか……?いや、アンドロイドからこんな感じはしない……なら何だ?)

スコール「あら、随分と怖い顔ね」グイッ

スコール「あなた、結構綺麗な顔しているんだから、そんな怖い顔や仏頂面ばかりしてちゃ駄目よ?男どころか弟くんだって怖がっちゃうわ」

千冬「生まれつき仏頂面なものでな」

スコール「ならこれで笑え……はしないわね。多分、私達も含めて」

スコール『こちらベータ、作戦通り、人質を確保したわ』

オータム『こちらアルファ、同じく人質を確保。ガンマの作戦成功まで現状を維持しつつ待機する』

ジェイ『了解。そのまま人質をよーく見張ってておいてね』

ジェイ「フッフッフッフッ……そろそろ始めようかな」

エム「ようやくか」

ケイ「ふんっ!」ブンッッ

鈴「ほっ!」ヒラリ チョン

ケイ「こいつ等ァ!」ブンッッ

清「よっ!」ヒラリ チョン

ケイ「うおらぁ!」ブンッッ

鈴清「「もらったぁ!」」ヒラリ ガスッッ

ガシッ

ケイ「こっちがな」ジャパッ

鈴清「「やばっ!?」」

バシュウゥゥゥンッ

鈴清「「きゃあぁぁぁっ!」」

一夏「鈴!清!」

鈴「し、心配ご無用!問題ナッシング!」

清「……何のこれしき!こんなのへっちゃらなんだから!」

一夏「ふう……なら良かった……」

エム「フンッ、どうやら調子が出ないようだな。いや、ISにエネルギーがもうないだけか?」

鈴清「「……」」

ジェイ「あれ?もしかして、図星?」

鈴清「「だったら何だっての!このボケ!」」ビシッ

鈴(例えエネルギーが残り少なくても)チラッ

清(こっちには逆転の一手があるんだから)チラッ

鈴清「「……」」コクン

ケイ「ヘッヘッヘッ、だから小ハエみてぇに人の回りをチョロチョロ飛び回ってたって訳か」

鈴清((やっぱり……こいつ……))

ケイ「ジェイ」

ジェイ「分かってるよ。ケイ」



ガコンッ ウィーンッ


鈴清「「はあ?何してんの?」」

ケイ「補給装置だよ。せっかくのゲームなんだからフェアにいこうぜ……まあ、テメェ等はハンデ付だけどな」

エム「早くエネルギーを補給しろ。お前達はエネルギーが減った状態から始めたからな。そんな状態でゲームをしていても、こちらとしても面白くも何ともない」

鈴清「「……」」

ジェイ「変な細工なんてしないよ?それはルール違反だからね」

一夏「鈴、清、いいから補給しろ」

鈴清「「でも……」」

一夏「お情けとかそんなの言ってる場合じゃないぞ」

クロエ「私達との戦闘でかなりのエネルギーを消耗されていたのですから、ここは補給するのが得策かと」

鈴「ここまで言われたら仕方ないね、清」

清「一夏んとクロちんに言われたもんね。鈴」

ケイ「ヘッヘッヘッ、そうだ。そうこなくっちゃあオモシロくねぇぜ」

ジェイ「……」

ジェイ(ケイ……僕はいつでも君と代われるからね……)

エム「……」

ケイ「補給は終わったか?何なら、ついでにトイレも行くか?」

鈴清「「いちいちうっせーんだよ。このアホ」」

ケイ「ならおっ始めるとするか。俺達のゲームをよ」

鈴清「「俺達の?」」

一夏「ゲーム……?」

ジェイ「君達がどれだけチップを失わずに済むか……そう、本当に簡単なゲームさ」

一夏「チップ……?俺達はそんなの一個も持ってないぞ」

エム「いいや、大量に持っているだろ。それも、このアリーナにある」

鈴清「「まさか!チップって……!」」

ケイ「カンの良い奴だ。その通りだよ。チップってのは人質とそれを確保している別部隊だよ」

一夏「ふざけんなよ!!お前等人の命をなんだと思ってんだよ!!」

ケイ「ガタガタ言うんじゃねぇ!!……チップが奪われたくなけりゃ勝ちな。それがこのゲームだ」

一夏「勝手にやらせておいて何偉そうに言ってんだよ!!」

クロエ『一夏様、落ち着いて下さい』

一夏『俺は落ち着いてるって』

クロエ『いや……それが……何でもないです』

~アリーナ1番ゲート~


ウイィィィンッ ゴウンゴウンゴウンゴウン


オータム「あ?何で隔壁が降りてやがんだ?」

簪「何で……?」

本音「?」

カリーヌ『各員、警戒しつつ集結しろ。オータム』

オータム『わーってるよ。あんのクソガキ共……何かやるつもりだな……まさかとは思うがこっちの作戦がバレてたか……?』

オータム『スコール、どうなってやがる』

オータム『……』

オータム『スコール?オイ、聞いてんのか?クソガキ共は何してやがるんだ?』

オータム『……』

オータム「冗談キツいぜ。全く……」

カリーヌ『スコールは何と言っているんだ』

オータム『分からねぇ。通信が妨害されてんのか、それとも通信出来ねぇ状況か……何にせよ俺達ぁ孤立したって事だ』

カリーヌ『マズイな。このままでは我々は人質と運命を共にするぞ』

オータム『クソガキ共にカマでもかけてみる』

~アリーナ3番ゲート~


ゴウンゴウンゴウンゴウン


スコール(……傲っていた訳じゃないけどこの私がハッキングで負けるとはね……)

スコール(流石はハイブリットタイプの最高品……必ずブチ殺してあげる……)

文『姉貴、これは一体……』

スコール『私じゃないわ。ガンマのジェイって子の仕業よ』

文『姉貴がハッキングで……』

スコール『そんなに驚かないで頂戴。一番驚いてるのは私なんだから』

文『す、すんません』

サラ「今度は何をなさるおつもりですか」

スコール「さあ?カメラもある事だし、密室で大乱交でもやれって事かしら」

サラ「……」

スコール「一つだけ言えるのは、お互いにとって芳しくない状況という事ね」

サラ「……了解しました」

サラ(織斑さん、クロニクルさん、凰さん達。どうか御無事で)

清香(だ、大乱交って……そんな……)カァァァッ

静寐(あの人なりのユーモア……なのかな……?)



ブウゥゥゥゥゥゥン


箒「熱っ!?」

セシリア「篠ノ之さん!?」

箒「大丈夫だ。ちょっとビックリしただけだ」

オータム「ああ?何だってこの部屋をサウナにしようとしてんだ?」

スコール「……」

オータム「オイ、聞いてんのか」

スコール「私……は……やってな……い……奪られた……」

オータム「とられた、ってマジかよ!?」シャパッ

千冬(仲間割れか。なら付け入る隙が……)

真耶(マズイですね……完全装備のこの二人は問題ないはずですし、ある程度耐えられる私達はともかく、篠ノ之さんとオルコットさんがどれぐらい保つか……ISは使わせてくれなさそうですし……)

スコール「……駄目ね。完全に向こうの手に落ちたわ」シャパッ

オータム『クソが……やってくれんじゃねぇか。小籠包ごっこなんてゴメンだぜ』

スコール『せっかくの人質を台無しにするなんて……どういうつもりかしら』

ジェイ「フッフッフッフッ……どう?分かったかな?これが君達に与えられたチップさ」

鈴清「「……」」

エム「くだらん理由でゲームを放棄する様な真似はするなよ。せいぜい私達を楽しませろ」

一夏「お前等何て事を!!ふざけんな!!」

クロエ「……」ガシッ

一夏「何だよ!?クロエ!!」

クロエ「……」フルフル

一夏「ッ……分かってるって……分かってるての!」

ケイ「ヘッヘッヘッヘッ、いいぜ、その調子だ。それでこそゲームも楽しくなるってモンだ」


鈴清「「ふざけんな」」


ケイ「……あ?」

鈴「ふざけんな、って言ったの」

清「こんなの、面白くも何ともない」

鈴清「「笑ってんのはあんた達だけなの分かんないの」」ギロッ

エム「好きなだけほざけ。お前達がいくらほざいたところで、ゲームの結果は同じだ」

ジェイ「おやおや?もしかして、怒ったの?」

鈴清「「……」」ブンッ

ジェイ「何してるのさ?どこを狙ってーーー」


ズドドンッ バキャッッ


ジェイ「ッ!?」ザカンッ

エム「何ッ!?」ザカンッ

鈴清「「あんた達は黙ってて」」

エム「ほう……」

ジェイ「フッフッフッ、面白くなってきたね」

一夏(投げた青龍刀二つの結合部分に龍咆を当て、無理矢理分離させて二人に攻撃を……何で俺等の時にやらなかったんだ?)

クロエ『一夏様……お二人の様子が……』

一夏『ああ、キレた』

クロエ『キレた……?』

一夏『普段はうるさいぐらいはしゃいでる鈴と清だけど、イラつくと口と態度がかなり悪くなる。で、本気でキレた時にはこうやって静かになるんだよ』

クロエ『なるほど……』

一夏『怒れば怒る程、鈴と清は冷静になる……ま、言ってみれば箒の逆だな』

クロエ『そ、そうなのですか……』

クロエ(いつの間にか一夏様も冷静になられています……)

ケイ「ヘッ、そうかい。これでも笑えねぇのか。文句の多い奴等だぜ」スッ

ジェイ「ケイ?何をーーー」

ケイ「なら、イヤでも笑わせてやるぜ」ウィーンッ


シャパッ プシューッ


ケイ「さあ、俺は誰だ?」

一夏「お前ッ!?」

クロエ「やはり……」

鈴清「「……」」

ケイ「ヘッヘッヘッヘッ、良いツラだ。まるで、薬漬けのキリスト様でも見たってツラだな。最高だぜ」

鈴清「「それで?」」

ケイ「あ?」

鈴「一夏んと同じ顔してるから何?」

清「本物にでもなりたい訳?」

ケイ「本物だぁ?笑わせんな、偽物とか本物とか関係ねぇんだよクソが」

ケイ「知ったフウな口聞いてんじゃねぇ!!今までのうのうとクソみてぇに生きてきただけのテメェ等に俺の何が分かるってんだよ!!俺の何が!!」

鈴清「「……」」

ジェイ「ケイ……?」

ケイ「ふざけんじゃねぇ!!テメェ等に微塵も分かる訳ねぇだろうが!!俺がここまで来るまでに……こうなる為にどれだけッ……どれだけの俺をッ……ッ……」ポロポロ

一夏「お前……泣いて……」

ケイ「ンな事テメェに関係ねぇだろうが!!クソッ……クソが!!いいか、俺は俺なんだよ!!本物は織斑一夏だとかふざけた事を抜かすんじゃねぇクソチビが!!ブッ殺すぞ!!」

エム「ケイ!」ガシッ

ケイ「エム!!テメェだってそうだろうが!!」

エム「そうだ!だが、今それを持ち出す時ではない!」

ケイ「テメェは何とも思わねぇのか!?それとも自分には関係ねぇって思ってやがるからそんなーーー」

ジェイ「いい加減にしなよ!……ケイ、せっかくのゲームなんだからそういうのはなし。今はゲームを楽しもうよ」

エム「ケイ……ジェイの言う通りだ……」

ケイ「……」

一夏(どれだけ“俺を”……?あいつ……何を言おうとしてたんだ……それに、鈴と清が何言っても笑ってたのにあんなに必死になって怒って……泣いて……)

一夏(あいつは一体何を背負ってるんだ……)

クロエ(やはり彼も……同じ……)

鈴(あたし達……あいつに勝てるかな……正直、あいつの感じちょっと戦いにくいな……)

清(腕の差とかじゃない……よく分からないけど……何か……あたし達にないものがある)

鈴清((あいつは、あたし達とは比べ物にならないものを背負ってるんだ……でも、それでも、倒さないと。皆を助ける為に))

エム「ケイ……」

ジェイ「君がゲームをしないなら、僕がこのゲームをさせてもらうよ?」

ケイ「……分かったよ」ジャパッ

プシューッ ウィーンッ

ケイ「凰鈴音、凰清音……ベットは終わりだ。用意はいいか」

鈴清「「早くしてよ。こっちは人の命がかかってんだから」」

ケイ「ガタガタ言うな。俺にもかかってんだよ」

ジェイ「二人ともいいね?それじゃあ、始め」

鈴清「「……」」ジャパッ

ズドドドドドドドドドド

ケイ(何処狙ってーーーなるほどな)

ブワァァァァァァァ

ケイ(砂埃を巻き上げて煙幕にしようってか。んなチャチなモンが通用するかよ)

ケイ(……クソが、センサーが片方イカれてやがる……頬の装甲が割れただけだと思っていたがアイツ等、この為に顔を狙ってやがったのか……だがよ、来るのは当然)

鈴「っぜやあっ!!」シュッ

ケイ「そこだ!!」ガスッ ドゴッ

鈴「うあッ……!」

ケイ「テメェは見えてんだよ!」バシュウゥゥゥンッ

清「うわッ!?っとととっ!」チュインッ

鈴「シィッ!!」グルンッ

ケイ「馬鹿がーーー」


ザカンッ ザカンッ


ケイ「何ッ……!?」

ケイ(いつの間に武器を拾って投げてやがった!?そうか、センサーの死角から来たコイツは囮で、その隙に向こうのアイツが武器を投げてやがったのか……!!)


バギンッッ

ケイ「ッ……また装甲をッ……!!」

清「……」ズドドンッ

ケイ「ッ!!」バチチィンッ

鈴「っだらあッ!」シュッ

ケイ「うおぉぉぉぉ!」ガスンッ ガシッ

鈴「このッ!」ジャパッ

ケイ「おおおぉぉぉッッ!!」ブンッッ

鈴「きゃあぁぁぁ!!」

清「鈴!!」スッ

鈴「分かった!!」

ガシッ

清「行っけえぇぇぇぇ!!」ブンッッ

バシュウゥゥゥンッ

清「ぐッ……!!」

ケイ(投げ返して来やがった!?クソッ!間に合わねぇ!)

鈴「くらえぇぇ!!」ドゴッ

ズドドドドンッ

ケイ(蹴りと同時に射撃だとッ……!?)

鈴「はッ!!ッだあ!!せいッ!!」ガスンッドゴッゴスッ

鈴「おおおぉぉぉぉぉぉッッ!!」ドガガガガガガガガッ

グルンッ

鈴「らあぁぁッッ!!」ガヅァンッッ

ズドドドドドドドドンッ

ケイ「う……おぉぉぉぉぉぉぉ!!」


ドゴォォォンッ


鈴「ハァ……ハァ……ハァ……清!大丈夫!?」

清「大丈夫、装甲が少し溶けただけ……まだいける」

鈴「ならーーー」


バシュウゥゥゥンッ


鈴清「「ッ!!」」バッ

鈴「あれだけ顔にいれたのに……まだ動けるの……」

清「……上等じゃない。鈴」

鈴「うん、分かってる。清」

鈴清((こいつもしかして……痛覚もない……?もしそうなら……))

ケイ「……」フシュウゥゥゥゥ

ケイ「……」ゴキゴキッ スッ

クイックイッ

鈴清「「……」」ズドドドドドンッ

ケイ「があッ!!」ギュルルルルル

鈴清((あの回転攻撃はやばいッ……龍咆が効かない……けど!!))

鈴清「「顔面なら!!」」ズドドンッ

バチチィンッ

鈴清((弾かれた!!))バッ

ヒラリッ

鈴清((真上からなら!!))

ケイ「……」グイッ

鈴清「「嘘ッ!!?」」



ドゴッッ


鈴清「「うあッ……!!」」

ガッ ゴッ ズザザザー

鈴清「「いッ……ッ……ヤバッ……!!」」

鈴清((方向転換したせいで……まともにもらった……早く、逃げないと……あのビームがッ……))

鈴「!!」カツン

バッ

ケイ「まだだ!!」バシュウゥゥゥンッ

鈴「くッ……ぉぉぉぉおおおお……!!」バチィィィィンッ

清「鈴!!」

ゴトンッ

鈴「ハァ……ハァ……何とか……防げた……!」ガクンッ

鈴(蒼天牙月が片方溶けたけど……それでも、あのビームを防げるなら……充分過ぎる……!)ジュウゥゥゥゥ

清「危ない!」バッ

ケイ「……」ブンッ

清「このぉ!!」ズドドドドンッ

オータム『こちらアルファ、ガンマ、応答しろ』

ジェイ「あーあ、ケイが圧倒してる……これじゃあ出番なしか」

エム「フン、どうやらハンデにすらならなかったな」

オータム『聞いてんのか。応答しろ』

ジェイ『聞こえてるよ。どうかしたの?』

オータム『どうかしたの?じゃねぇよ。テメェ一体何のつもりだ。作戦内容を理解してんのか』

ジェイ『分かってるさ。でも、これはゲームのルールなんだよ』

オータム『テメェで決めたルールだろうが。そんなモンは犬にでも食わせろ。今は作戦に従え』

スコール『勝ち残りたければルールなんて必要ないわ。それでもルールが必要というのなら、盤上で踊らされるただの駒よ』

ジェイ『僕を操れるのはゲームのルールだけさ』

スコール『あら、そう……なら、いつかあなたの言うゲームに、哀れに殺されるだけよ』

オータム『スコール、こんなオモチャにマジになるな。こっちはテメェ等なしで作戦を遂行する。通信終了』

スコール『同じく作戦を遂行するわ。通信終了』

エム『くだらん奴等だ。楽しみを自ら無くすとはな』

ジェイ『全くだね。あれじゃあ、鬼ごっこをする日もない』

エム『その時は私達が奴等と遊んでやろう。私達のルールでな』

ジェイ『フッフッフッ、そうだね』


一夏『クロエ、まだか?』

クロエ『すみません。私の能力だと枝を付けられない様にしているのが精一杯です』

一夏『鈴も清もそろそろ限界が近づいてきてるはずだ』

クロエ『分かっています。ですが……』

一夏『時間がない。アレを使う』

クロエ『駄目です!今ここでアレを使い、彼をシステムから強制的に切り離しても、彼をシステムから完全に排除した事にはなりません。そうなれば今以上に、人質の皆さんに危険が及ぶ可能性が残ります』

一夏『じゃあどうすればいいんだよ!?このままじゃ……!』

クロエ『……一つだけ、方法があります』

一夏『本当か!?』

クロエ『しかし、これは非常に高いリスクを伴う危険な方法です』

クロエ『私か一夏様のどちらかが犠牲になる……と思われます』

~アリーナ外部~

楯無「……」

部長「何してやがんだ!とっととインチキしやがれってんだよ馬鹿野郎この野郎!!」

虚「今やってます!……ですから、少し静かにしてもらえませんか」

部長「ならいつまで手間取ってんだ!いつもみたくちょちょいのちょいで開けやがれってんだ!」

虚「出来るならやってます!!」

部長「てやんでい!!こんなんじゃあ埒も糞もねぇじゃねぇかよ馬鹿野郎この野郎!!」ガシャッ

虚「あっ!駄目っ!!」

部長「んな鉄の板なんざこうやってーーー」

エース「頭を冷やしな」ゴスンッ

部長「ッ~!!いっっっでえぇぇぇ~!!何しやがんでい!!」

エース「敵の情報は一切ない、中の状況も一切分かってない。それなのに強行策に出ようなんてあんた、自分の行動が本当に中の人達を助けようとしてるのか……少しは考えな」

部長「ッ……よ、余計なお世話だってんだよ!んな事は分かってんだよ!馬鹿野郎この野郎!!」

エース「なら大人しくしてな」

部長「けっ!ならそうさせてもらおうじゃねぇか!」ドカッ

楯無「……」

キャプテン「あっちは何か盛り上がってるけど楯無ちゃん、どうするね?」

楯無「どうするもこうするも、虚達や中で頑張ってる人がシステムを奪い返すまで待機するしかないでしょ」

キャプテン「ま、そうなるよねぇ……」ポリポリ

楯無「私達に出来るのはせいぜい待機組のガス抜きよ……」

楯無「……」カリッ

楯無(簪ちゃん、本音ちゃん……無事でいて……)

キャプテン「……」

キャプテン「あーあ、これで私が少しでもハッキング出来れば事は少しは変わってたのかなぁ……あーあ、どーしよーもないなーこれはもう寝るしかねぇーなー」ゴロン

楯無「……」

キャプテン「爪、噛んでるよ」

楯無「爪でも紙でも噛むわよ。こんな状況じゃあね」ギリッ

キャプテン「あ、あはは……そりゃごもっともで……」

部長「……」イライラ

エース「焦らず、確実に頼むよ」ポンッ

虚「……勿論」

~アリーナ1番ゲート~

オータム「熱にやられた奴は何とかして俺等のスーツを使って熱から防護しろ!使えるモンは出し惜しみすんじゃねぇぞ!」

オータム「皆で小籠包はゴメンだ!少しでも長く、全員で生き残るぞ!!」

カリーヌ「これを羽織っていろ。熱を遮断する」

「あ……ありがとう……ござい……ます……」

本音「暑い……」ダラダラ

簪「頑張って……必ず助けがくるから……」ダラダラ

本音「うん……ま、負けないぞ~……」

簪(待っていれば必ず……お姉ちゃんがきっと……助けに来てくれる……きっと……)

オータム「起きろ。ほら、水分取らねぇと死んじまうぞ……飲めるか?」グイッ

「は、はい……」

カリーヌ「何をしている。これではまだ熱が入ってくるではないか」

「ちょっと勘弁してよ。そんな事言われたってこれ以上通気口を塞いだら空気そのものを遮断するのよ?」

カリーヌ「ええい、もう打つ手なしか」

オータム「サイボーグの奴!テメェ等の体を冷たいぐらいまで体温下げろ!そんぐらい出来んだろ!」

「とっくにやってますよ!!けど手が足りないんですよ!!」

オータム「なら出来るだけ多くの奴を冷やしてやれ!」

「言われなくても!!」

簪(そう……もうすぐ……もうすぐお姉ちゃんが……助けに来てくれる……!)

本音「か、簪……ちゃん……」

簪「しっ、しっかり!もうすぐ助けがくるから!」

カリーヌ「待て、見せてみろ。脱水症状を起こしているな……誰かスーツを!」ダラダラ

「駄目です!さっきのが最後です!」

カリーヌ「ならお前!この子を冷やしてやってくれ!」

「了解」スッ

本音「あうぅ……冷たい……」

カリーヌ「お前も異変を感じたら我々に言うんだ。いいな?」ダラダラ

簪「は、はい……分かりました……」

簪(きっと……もうすぐ、助けに来てくれる……)

オータム「オイ!しっかり羽織ってろ!大丈夫だ。これを羽織ってれば大丈夫だからな!」

簪(きっと……もうすぐ……)

カリーヌ「大丈夫、大丈夫だからな。もう少し我慢すれば助かるからな……ほら、水分を補給するんだ」

簪(きっと……きっと……)

オータム「サイボーグ!!早くこっちに来い!!何してんだ!!」

簪(きっと……)

カリーヌ「スーツを症状の軽くなった者から重い者へ渡せ!」

簪(でも、このままじゃ……)

本音「簪ちゃん……」ギュッ

簪「ほ、本音ちゃん……!」ダラダラ

本音「大丈夫……だよね……?きっと……助かる……よね……?」ダラダラ

簪「う、うん!大丈夫だよ!だから、もうちょっとの我慢だよ!」ダラダラ

本音「わ、分かった……が、頑張る……」ニパッ

簪(お姉ちゃんを待っていたんじゃ遅い……今すぐに皆を助けれる人が必要なんだ……)

簪(待っていたって……何も変わらない……皆を助けられない……!)

簪(お姉ちゃんや誰かじゃない……なら私が!)

簪「山嵐、展開!」

オータム「あァ!!?」

カリーヌ「何ッ!!?」

簪(皆を助ける!!)

簪「皆!私の後ろへ下がーーー」

オータム「下がるかこの馬鹿ッ!!!」ゴスッ

簪「痛ッ……!」

オータム「いいか?よく考えろよ?簪ちゃん。この閉鎖空間でそんなでけぇミサイルをブッ放してみろ。ここにいる全員綺麗サッパリ吹き飛んじまうぞ?」グイッ

オータム「それにな、この状況を作り出した奴は俺達を常に監視してやがんだ。もしも全員無事で防壁にブチ破ったとしても、数枚の防壁ごと俺達を一瞬で蒸発させるビームが飛んで来る。残念だがISを使うおうが止められねぇぐらいのやつがな」

オータム「訳も分かってねぇクセに一丁前に動くんじゃねぇ。自分一人ならともかく、全員で助かりたいなら尚更だ。いいな?」

簪「でも……!!」

オータム「いいなッ?!!」グイッッ

簪「ッ……」

オータム「……」ダラダラ

簪「……分かり……ました……」

オータム「クソッ、ただでさえ暑いのに余計に暑くなっちまったじゃねぇか……」パッ

簪「すみません……」

オータム「……けどよ、隣にいる嬢ちゃんやここにいる全員を助けようと思って、行動を起こした事ーーーその勇気は称賛に値する」

簪「えっ……?」

オータム「頼む、もう少しだけ待ってくれ。そうすれば、この状況を打開して、必ず全員で助かる事が出来る」

オータム「そん時には、テメェの力が必要不可欠だ。だからその時まで力を温存しておけ。いいな?」

簪「はっ、はい!分かりました!!」

オータム「よーしその調子だ。手始めに周りの奴を励ましてやってくれ」

カリーヌ(全く、心臓に悪い……だが、これだけの行動を起こしたのにも関わらず、奴等は何もして来ない……弄ばれているのか?それとも……)

~アリーナ3番ゲート~

スコール「はあっ……はあっ……はあっ……っ……」プッ

ピチャッ

スコール「はあーっ……はあーっ……くっ……」

清香「あ……あの……あの人……血が出てますけど……大丈夫……なんですか……?」

文「今は人の心配よりも自分の心配をしな。あの人はそう易々とやられるタマじゃねぇ」

清香「そう……なんですか……」

文「ほら、スーツをしっかり羽織ってな。でねぇと熱にやられて死んじまうぞ」

サラ「お気を確かに、飲めますか?」

静寐「は……はい……何とか……」

「ふぅん、見逃してたけどあなたもなかなかいい女ね」

サラ「お褒め頂き光栄です」

「もし良かったらあたしとーーー」
「ちょっとナメクジ!!悠長にナンパしてる場合じゃないでしょ!!早くこっち手伝いに来なさいよ!!」
「誰がナメクジよ!言われなくともすぐ行くわよ!」

サラ(……ナメクジ?)

スコール「ッ……」ギリッ

スコール(どこかに枝さえ付けられれば……そこから……通信……ナノマシンネットワーク……武器管制……暗号……素数を元にランダム……よし、ICEをーーーなっ!!?)

スコール「チィッ!」バキッッ

スコール(どこまでいってもイタチごっこね……どれだけダミーとウイルスを送っても解析される……加えて防壁は完全なオリジナル……まるでリードボックス……無線状態のこっちに比べて向こうは有線……)

サラ「ハッキングはあまり芳しくないようですね」フォォォォン

スコール「あなた……ISを……」

サラ「カメラの死角になっていますので心配ありません。貴女方の体温冷却には及びませんが十分冷風と呼べるものではあるかと思います」フォォォォン

スコール「私はいいわ……それは他の子達に……してあげて頂戴……」

サラ「しかしーーー」

スコール「犬畜生と……未来あるIS学園の生徒……どちらの方が……価値があるかしら……」

サラ「……」

スコール「分かったら……早く行きなさい……」

サラ「そうさせて頂きます。しかし、様子を見てまた戻ってきます。それでは、失礼します」スクッ

スコール「……」

スコール「……お馬鹿な騎士さんね」クスッ

スコール(……遠回りするしかないわね……ゴールデン・ドーンじゃなくてファントム・タスクのシステムから……)

スコール「……」クイックイッ

オータム「……」スッ

千冬「……」ダラダラ

スコール『人の方を見る前に自分の方を見た方がいいわよ?その黒いブラ……とっても扇情的よ?』

千冬「余計な事を言っていると逃走出来なくなるぞ」

スコール『そうね。けど困るのはお互い様よ。このままだとね』

千冬「そんな事は分かっている」

千冬(さっきまで黙って動かなかったのに突然話し出したか……話せる程の余裕が出来たのか……いや、それともハッキングを諦めたのか……?)

千冬「システムの奪還には後どれぐらい掛かるんだ」

スコール『……』

千冬「……お前、そいつの代わりに教えろ」

オータム『……』

千冬(今度は二人して黙ったか……しかし、敵の敵に頼るしかないとはな……情けない……)ダラダラ

真耶「オルコットさん、篠ノ之さん、大丈夫ですか?」フキフキ

セシリア「はい……」ダラダラ

箒「大丈夫です……」ダラダラ

真耶「異変を少しでも感じたらすぐに言ってくださいねっ。我慢大会なんてしてる場合じゃありませんから」ダラダラ

真耶「ふう……暑い暑い……」フキフキ

箒「……」ダラダラ

箒(……情けない)

箒(一夏は……アリーナにいる人質全員を助ける為に……クロエと一緒に……戦っているんだろう……)

箒(それなのに私は……何も出来ずにここにいる……ただ言われた通り、大人しく座って耐えているだけだ……)

箒(私に力さえあれば……ISさえあれば……一夏やクロエと共に戦えたのかもしれない……少しでも一夏の力に……)

箒(いや、今の私に出来る事など何一つない……例え……ISを持っていた……ところで……何一つ……)

箒(こんな……私にはッ……!)ギュッ

箒「……情けない……」ボソッ

セシリア「篠ノ之さん!」ガシッ

箒「セ、セシリア……」

セシリア「弱気になってはいけませんわ!そんな事では一夏さんに笑われてしまいますわ!」

箒「しかし……今の私に何が出来る……」

セシリア「全く何も出来ない訳ではありませんくてよ?」

セシリア「例えハッキングが出来なくても、侵入者と戦えなくても……指を加えて見ている事しか出来なくても……出来る事はありますわ」

セシリア「一夏さんを信じる事です」

箒「信じる……」

セシリア「ええ、そうです。一夏さんは今も、あの隔壁の向こうで私達を助けようと頑張っていますわ」

セシリア「ですから私達は信じて待つのです」

セシリア「一夏さんが必ず助けに来てくれる、と……」

セシリア「そうすればきっと、この思いは少しでも一夏さんの力になるはずですわ」

セシリア「篠ノ之さんは、一夏さんを信じられないのですか?」

箒「そ、そんな事はない!」

セシリア「なら、一緒に信じましょう。一夏さんを」グッ

箒「……ああ、そうだな。きっと今に一夏はあの隔壁を破って助けに来てくれる」

セシリア「そうですわ!一夏さんの事ですもの、もうすぐ来てくれますわ!」

箒「……セシリア、ありがとう」

セシリア「いえ、当然の事をしたまでですわ」

セシリア「それに……私も……何も出来ませんから……」

箒「何故だ。お前はISを、持っているじゃないか……」

セシリア「ISを持っていたところで、あの侵入者と戦えるとは限りませんわ」

箒「……」

セシリア「今の私は、一夏さんと一緒に戦える程強くありませんので……立ち向かったところで……足手まといになるだけ……」

セシリア「ですから私は、一夏さんを信じます」

セシリア「一夏さんなら勝てる、と……」

箒「……」

箒(そうだ、セシリアの言う通りだ。何も出来ない事なんてない)

箒(例え共に戦えなくても、一夏の力になれるんだ)

箒「……セシリア、その時が来たら、二人で一夏を精一杯応援しよう」

セシリア「ええ、もちろんですわ!」

真耶(うんうん、善き哉善き哉)フキフキ

千冬(二人ともやはり疲弊しているな……本人達が思っている以上に……)

千冬(すまない、一夏……無力な姉で……)

クロエ『ーーー不確定要素が多過ぎる為、安全な方法だと断定は出来ません。私達だけでなく彼まで死亡する危険性が伴っています』

一夏『……』

クロエ『ですので……あくまでこれは一つの方法だと思ってください……他にも方法はあるはずです』

一夏『……』

一夏『いや、今すぐ俺がやる』

クロエ『だッ、駄目です!そんな事!!』

一夏『グズグズしてたって埒が開かない。皆を助ける為なんだ。やるしかないだろ』

クロエ『やめてください!その為に一夏様を犠牲にする訳にはいきません!!それに加えて、彼も犠牲になってしまうのかもしれないのですよ?!それでもよろしいのですか?!』

一夏『俺は犠牲にならないし、あいつも犠牲にはならない』

クロエ『何故そう言えるのです!!?』

一夏『俺には“あの束姉ちゃん”のくれたISがある。だから、誰も犠牲にはならない』

クロエ『し、しかしッ……!』

一夏『科学は人を』

クロエ『助ける……束様がよく口にされる言葉です』

一夏『俺は束姉ちゃんが信じる事を信じてる。だから俺は今すぐやる。誰にも死んで欲しくないから』

一夏『ここにいる全員を助ける為に』

鈴「ッ!!」ガシッ

ミシミシミシミシ

ケイ「ッ……同じ手を食うかよ!」ブンッ

清「っぜやあッ!」ガスッッ

ケイ「がッ……ッ……このッ!!」ジャパッ

ズガッッ

清「遅い……とった……!!」ググググッ

ケイ「そうかよ!!」

ボゴオォォンッ

清「うわッ!?」

清(壊れた砲身にエネルギーを送って爆発させた!?しまった!!?)

ケイ「だがまだ一個残っーーー」ジャパッ

ズドンッ

ケイ「がッ……ぐはあッ……!!」ボゴオォォンッ

鈴「これでゼロ!」

清(畳み掛ける!!)

清「シッ!」グルンッ

鈴「鈴!駄目!!」


ガシッ


清「捕まれたッ!?このッ!!」シュッッ

ケイ「……」ガシッ

ミシミシミシミシミシミシミシミシ

清「くッ……ッ……あぁぁッ……!!」

鈴「清!!」シュッッ

清「ッ……ッ……!!」ジャパッ

ケイ「があぁぁぁッ!!」ブォンッッ

鈴(投げてきた!!?)

鈴「うッッ……!!」ドゴォッ

ケイ「ハァー……ハァー……ハァー……」

鈴(あいつ……どんだけ頑丈なの……痛覚がなくても……体にダメージは与えられてる……はずなのに……)

清(あと少し……急がないと……あたし達もそろそろ……体力的に……限界……なのに……)

ケイ「ハァー……うッ……!!」ガクッガクンガクン

鈴清「「!?」」

ケイ「あぁッ……がッ……こんッ……なッ……時にぃッ……!!」ガクガクガクッ

ジェイ「ああっ!マズイよ!!」

エム「ケイ!!」

鈴清「「もらったぁ!!」」グルンッ

ケイ「うッ……がッ……う……ぉぉぉおおおおお!!!」ガヅァンッッ

鈴清「「耐えたッ!!?なら!!」」ジャパッ

ズドドドドドドド

ケイ「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」

鈴清「「倒れろぉぉぉぉ!!」」ドドドドドドドドドド

鈴清((狙い通り!でもこれで倒れてくれれば……!!))



ドドドドドドドドンッ


鈴清「「……まだ……倒れない……!!」」

鈴清((でも、あいつはボロボロ!!勝機はある!!))

ケイ「ハァーッ……ハァーッ……ゲホッゴホッ……ハァーッ……」ミシッ バキッッ

エム「ッ……ケイ……!!」

ジェイ「ケイ!!もう無理だよ!!」

ケイ「うッ……るせぇッ……!!負け……られ……ねぇッ……んだよ……!!」バキャッ ミシミシッ

クロエ『一夏様……』

一夏『……ああ、分かってる。やるぞ。あいつも助ける為に』

ケイ「ーーーの為に……俺はあぁぁぁぁぁぁ!!!」

鈴清「「あたし達だって!!負けられないんだから!!」」

ジェイ「ケイッ……!!ん?織斑一夏……何をしてるの?」

一夏「何って……見ての通り、お前にクラッキングをしてるんだよ」

ケイ「何ッ!?」

鈴清「「はあッ!!?」」

エム「フン、馬鹿が」

ジェイ「本気かい?それはゲームの邪魔をするって事だよ?」

一夏「お前には悪いけど、こっちはこれ以上お前達のゲームに付き合う気はない」

ケイ「このクソッタレが……ここまで来て何寝ぼけた事抜かしてやがんだ!!フザけんじゃねぇぞ!!」

鈴「馬鹿一夏ん!!何で!!まだ人質がいるのに!!」

清「そんな事したら人質がどうなるか分かってるでしょ!!?」

一夏「分かってる。だから全部終わりにするんだ」

鈴清「「何言ってんの!!馬鹿一夏ん!!」」

ケイ「ジェイ!!」

ジェイ「フッフッフッ、分かってるよ。織斑一夏、僕は君達に言ったよね?ゲームの進行を妨げるのは”ルール違反“だってね」

一夏「ああ、言ったな」

ジェイ「ルール違反は駄目だよ?ルールに従わない者にはーーー」

一夏『クロエ、やるぞ』

クロエ『はい、一夏様』


『COMMAND STAND BY』

ジェイ「死が待ってるよ」

一夏「それはどうかな」

鈴清「「一夏ん!!」」


ギャンッ


一夏「その瞬間を待っていたんだ」ガシッ

ジェイ「ッ……ッ!?……ッ!!?」

『EXECUTION』
『同調完了』

一夏「来い!!ぐあッッ!!」バチィッッ

クロエ「一夏様!!」

ジェイ「そんなッ……こッ、こんな事ッ……あり得ないよッ!!うあッッ!!」バチィッッ

一夏「ッ……クロエ!!今だ!!システムを!!」

クロエ「了解!!」

エム「さッ、させるものか!!」

一夏「……」スッ

クロエ「させません」バシュシュッ

エム「はッ!!ッ!?」シュカカンッ バウッ

エム「煙幕……?何ッ、センサーがッ!!?」ザー

ジェイ「何で!?こっちはISなんだよッ!!?」


ポシュッ ドンッ ドンドンドンッ ドンッ


ケイ「何が起こってやがるんだ!?跳躍地雷から煙幕がーーー何だこの煙、センサーを!!?クソッタレッ!!」ザー

フシュウゥゥゥゥゥゥゥ

鈴清((跳躍地雷にそこら中の壁からも……この煙、センサーとか通信、ISの機能を妨害してる……))

エム「こんな物を使ってくるとはな……だが、これでは奴等も機能を妨害されているはずだ」ウィーンッ シャパッ

ジェイ「もしかして、かくれんぼのつもりなのかな?ま、得意だからいいけど」ウィーンッ シャパッ

ジェイ「でも、その前にルール違反のペナルティとしてチップは全部ーーー」ジャパッ


ズギャッッ


ジェイ「ッ……なッ……にぃッ……!!?」


グワシャアッッ


エム「うッ……どこからッ……!!?」

エム「奴等ッ……私達のビーム砲を……!!」

ジェイ「……どうやら、あの二人には僕達が見えてるみたいだね……」

エム(何処だ……何処から来る……ジェイは無事なのか……)

ジェイ(何でこの煙でも見えてるのさ……ジェイは大丈夫かな……)


ズギャッッ


ジェイ「……人質の方へ行ったのかな」

エム「警戒を怠るな。学園のシステムを」

ジェイ「無理だよ、通信はこの煙に妨害されてる。しかもさっきのアレのせいで僕はシステムから抜けた……と言った方がいいかな」

エム「チッ、織斑一夏は一体何をした」

ジェイ「分からない。織斑一夏の機体にクラッキングを仕掛けたのに、いつの間にか織斑一夏が目の前にいて、クラッキングが僕にまで来たんだ」

ジェイ「それに……IS、ナノマシン、義体ーーーあらゆる物を使って確実に織斑一夏の脳を焼き切るはずだったのに……焼き切られていなかったよね……」

エム「お前もな」

ジェイ「そう……だね……」

エム「……これで私たちは人質を失った。作戦遂行は困難だ」

ジェイ「いいや、まだだよ。こっちにはモノクローム・アバターだっているんだから、完全に人質を失った訳じゃないさ」

鈴(清、分かる?)チラッ

清(鈴、分かるよ)コクン

鈴(敵は今、目を潰されて動こうとしない)

清(それはあたし達だって同じだって考えてるから)

鈴(二人の位置は分かってる)

清(あいつ等が声で教えてくれた)

鈴(例えISを使っても敵が分からなくても)

清(例え敵の姿が煙に覆われていても)


鈴清((戦う術はある))コクン


鈴(三人まとめて倒すなら、今が好機)

清(この機を逃す訳にはいかない)

鈴(行くよ、清)

清(やるよ、鈴)

鈴清((まずはあの二人から!!))

エム「……」

エム(奴等は移動しただろうか……無駄な攻撃で奴等に位置を知らせる訳にもいかない……)

ケイ「……」

ケイ(視界は1m程度……自由自在に動き回れるような状況じゃない……僕達もあいつ等も。今の内にジェイと合流しておくべきだね)

ケイ「エム、降下しよう」

エム「了解した」

ザリッ

エム(そこか!!)ドンッ


ヒュオォォッ


エム「何ッ!?」

エム(空振りだと!?馬鹿な奴は確かにここにーーー)

スウッ

エム「ッ!!」ヒュオォォッ

エム(まただと!?何故だ!?奴には私が見えているのか!?)

>>>536

訂正

ケイ「……」

ケイ(視界は1m程度……自由自在に動き回れるような状況じゃない……僕達もあいつ等も。今の内にジェイと合流しておくべきだね)

ケイ「エム、降下しよう」

ジェイ「……」

ジェイ(視界は1m程度……自由自在に動き回れるような状況じゃない……僕達もあいつ等も。今の内にケイと合流しておくべきだね)

ジェイ「エム、降下しよう」

ジェイ(エム!そんなに動いちゃヤバーーー)

鈴「シィッ!!」ボッ

バキャッッ

ジェイ「なッッ……にぃッ……!!?」

ジェイ「ッ!!」

ジェイ(隠れた……何でエムじゃなくて僕が……?)

エム(ジェイがやられている!?何故だ!?音で位置を特定しようにもISの駆動音で掻き消されーーー)

清「ハァッ!!」ブンッ

ドゴッッ

エム「がはッッ……!!」

ジェイ「逃がさないよ!!」ドンッ

清「……」スウッ

ジェイ「チィッ!」ヒュオォォッ

ガシッ

鈴「だぁッ!!」バキンッッ

ジェイ「ッ!!?」

ジェイ(しまった!武器が!?)

鈴(清、今だよ)

ジェイ「でも!!」シャッ

清「シィッ!!」グルンッ

ジェイ「ぐあッ!!」ガスンッ

清(鈴、来るよ)

エム「はッ!!」ヒュオォォッ


パシッ


エム「なッ……止めたッ……!!?」グググッ

鈴(やっぱり、あんたは袈裟斬りをよく使う)グググッ

清「ぜあッ!!」バキンッッ

鈴「せいやッッ!!」ガヅァンッッ

エム「ぐッ……うおぉぉッッ……!!」

清「……」スウッ

ジェイ「このぉ!!」シュッ

清「……」ガシッ ドガガガッ

ジェイ「ッ……ッッ……!!」

ケイ(クソッタレが!エムとジェイが戦ってんのか!?押されてんのか!?)

シャッ

ケイ「ッ!」カキンッ

ケイ(ジェイのランス……?ッ!?しまった!!)

鈴「ぜあッ!!」ガスンッ

ケイ「うッ!?おおおッ!!」ガシッ

ザカンッ

ケイ「なッ……クソッ……!!」

ケイ(アイツ等の武器だと!?俺がコイツの足を掴むのを読んでやがったのか!!?)

鈴「せいやッ!!」ガヅァンッッ

ケイ「がッッ……ッッ……!!」

鈴「……」トンッ スウッ

ケイ「逃がすかよぉぉぉ!!」ドンッ

ジェイ「ケイ!!?」シャッ

ケイ「なッ!!?ぐあッ!」ガスッ

ジェイ「うわッ!」ドゴッ

エム「ケイ!ジェイ!大丈夫か!?」

鈴(コイツ等、目に頼り過ぎてる)グルンッ

ドゴッ

ケイ「がはッッ……!!」

清(だからあたし達を捉えられない)パシッ ブンッ

エム「馬鹿が!!そこだ!!」スッ シャッ

ブンッ……

エム「ッ!?」

鈴(見えなくたって、あたし達には分かる)

ザカンッ

エム「ぐあッ!」

エム(奴等の武器の軌道に入ってしまったのか!!しまったッ!!?)

鈴「ハァッ!!」シュッ

ジェイ「させないよ!!」

清「だあッ!!」ドゴッ

ジェイ「ぐうぁッ!!」

エム「かッッ……あぁッ……!!」ガスンッ

清(あんた達がどこにいるのか。ハッキリと感じる)

鈴清((少しだけ聞こえる違うISの駆動音、声、呼吸……それを頼りに……後は考えずに、感じるだけで))

ケイ「おおおぉぉぉぉぉ!!」ブンッ

鈴「……」ヒラリ ガンッ

ケイ「ッ……その程度!!」

清「ぜぇい!!」ドゴッ

鈴「ずぇあ!!」ガスッ

ケイ「うッ……ッ……ぐッ……!!」ゴスッバキッドガッ

鈴清「「うおおおぉぉぉぉぉ!!」」ドガガガガガガガガッ

ガガガガガガガガガガガガガッ

鈴清「「せいやッッ!!」」ガヅァンッッ

鈴清((あんた達とだって戦える))

鈴(あたし達、強くなったんだからね)

清(あたし達を守ってくれた一夏んみたいに)

鈴(だから絶対負けない)

清(絶対負けられない)

鈴清((一夏んみたいに、皆を守るんだから!!))

~アリーナ1番ゲート~

フォォォォォォン

オータム「ようやく奪ったか!」

オータム『遅えぞスコール!今まで何してやがった!』ザー

オータム『おいスコール!聞いてんのか?!おい!!』ザー

オータム「……チッ」

オータム(ジャミングかよ……一体誰がやってやがる……あのクソガキ共、なら俺達の通信は妨害されねぇはず……新手か……?)

オータム(だとしたらヤベェな……このままじゃ俺達は袋のネズミだ……足手まといを連れてちゃ尚更……)

簪「空調が……!」

本音「す、涼しい……」

カリーヌ「ふう……危ないところだったな」

カリーヌ(歓喜の声も出ないぐらい生徒達は消耗している……後十分遅ければ死人が出ていたな……)

オータム「サイボーグ共!この隔壁をこじ開けろ!今すぐにだ!」

カリーヌ「どうした?」

オータム「通信の類いがジャミングされてやがる。しかもクソガキ共より強力で誰がやってるか分からねえ。新手かもしれねぇ」ボソボソ

カリーヌ「何だと……!?」ボソボソ

オータム「通信どころかネットすら繋がらねぇ……ならスコールが学園のシステムを奪還するのは不可能だ……学園側がこんな事するはずがねぇし俺等と同じ様にジャミングを食らってるはずだ」ボソボソ

カリーヌ「不明な勢力の仕業、と考えるのが妥当か。なら急がなければな」ボソボソ

簪「あ、あのっ……!」

オータム「ああ、そうだな。お待ちかねの出番だぜ、簪ちゃん」ポンッ

簪「へ?」

オータム「あのお姉さん方じゃパワー不足かもしれねぇからな、ISで手伝ってやってくれねぇか」

簪「いえ……あの……普通に隔壁を操作すればーーー」

オータム「それが出来るならやってる。俺等を閉じ込めたヤローは御丁寧に隔壁を操作する回線を焼き切ってやがる。だからこじ開けるんだ」

簪「あ……は、はい……分かりました……」

オータム「すまねぇ、頼んだぞ」

カリーヌ「自力で歩けるか?無理はするな」

本音「大丈夫……私はやれば出来る子だもんっ」ニパッ

カリーヌ「そうか、なら他の生徒達を助けてやってくれ」ポンポン

本音「は~い!」

オータム「生徒さん方!今すぐここから脱出する!俺等も手伝うが自力で移動できる奴は少しでも他の奴の移動を手伝ってやってくれ!」

オータム(クソッ、やっぱサイボーグ組と生身組を半分ずつにするべきだったな……こういう時に困る……)

オータム(根本的に手が足りねぇってのもあるが……)

オータム「ッ!!」バッ

オータム「……」

オータム(音……金属の擦れる音……?)

「っしゃあ!やってやるわよ!」
「伊達に体に高い金払ってないもんね」
「肯定する」
「最新鋭の性能、お見せしましょう」カチャカチャ
「更識さん、始めましょう」

簪「いきますよ!せーのっ!」グッ

ギッ…ギギギギギギギギ

本音「あう~……耳が~……」


オータム「各員!!生徒達を後ろへ下げ、戦闘用意!!急げ!!」


簪「えっ?」

「何事ですか!?」

オータム「何かが来る!テメェ等は一枚でも多く開けろ!迎撃は俺等がやる!!」

オータム「出し惜しみはなしだ!!20mmと12.7mm をありったけブチかますぞ!!」ガコンッ

~アリーナ3番ゲート~

フォォォォォォン

スコール(ジャミング……アリーナの仕掛けと何か関係があるのかしら……)

文「姉貴、やりましたね」

スコール「私は何もしていないわ。これはアリーナにいたクロエって子のおかげよ。それに……」

文「それに?」

スコール「ジャミングよ。それもかなり強力な、ね。恐らくこの学園内に全てが範囲圏内……今は誰がシステムを握っているのか……」

スコール「蒸し焼きの次は何かしらね……私達はともかく、今の彼女達に耐えられるかどうか」

サラ「芳しくありませんね」

スコール「ええ、そうね。出来る事なら皆で芳しい潮風でも嗅ぎたい気分ね」

サラ「了解しました」

スコール「文、私はもういいわ」

文「分かりやした。お前等!隔壁を開けるぞ!」

オオォォォー!!

文「生徒達は隔壁から離れて耳を塞ぎな!」

清香「だってさ……ほら静寐……」

静寐「うん……分かってるから引っ張らないで……」

スコール(金属の擦れる音に……重い足音……少しずつだけどアリーナから何かが近づいてるわね……)

スコール(文達は気付いてないわね……)

サラ「私一人でも充分ですが」ガシッ

文「数が多けりゃその分速く開けられるだろ」ガシッ

サラ「貴女方の御協力、感謝します」

「うふふっ、やっぱいい女に感謝されて悪い気はしないわね」
「なら腕ブッ壊れるまでやりなさいよ」ゲシッ
「蹴んじゃないわよ!もうっ!」
「うっせぇな……ちったぁ他の奴を見習えよ」

サラ「……よろしいですか?」

オオォォォー!!

スコール(まだ駆動音は聞こえないわね……駆動音さえ分ければ……もしかしたら……)

サラ「いきます!」

ギッギギギギギギギギギギギギギギギギ

文「う……おおおぉぉぉぉぉぉ……!!」

スコール(でも、最悪の場合は……)スクッ

スコール「各員、戦闘用意。文達はそのままでいいわ」

スコール「20mmを」

「どうぞ」スッ

スコール「ありがとう」ガシャッ ガコンッ

「この音……敵でしょうか?」

スコール「さあね?けど備えあれば何とやら、よ」

「そうですね。隔壁をこじ開けてますもの……味方なら嬉しいのですが」
「えっ?えっ?私には何にも聞こえないけど?」

スコール「焦らなくても人間の耳でも今に聞こえるわ」

「そうですか?……あっ!何か聞こえる!」

スコール「それとあなた、無理はしない方がいいわよ?いくら改良してあるとはいえ12.7mmのフルオート、それに生身なんだからはせめて伏射しなさい」

「大丈夫ですよ!私、鍛えてますから!それに……今は少しでも火力が必要ですから!」グッ

スコール「……はあ、なら全弾命中を期待してるわ」

スコール(さて、鬼が出るか蛇が出るかそれとも……)

サラ「私が迎撃します」

スコール「いいえ、あなたは一枚でも多く開けて頂戴。こんな密室で対物火器を使ったら私達はともかく、弱りに弱った生徒達はどうなると思う?」

サラ「……了解しました」


ギギギイィィィィッ ゴウンッ

文「開いたぞ!急いで生徒達を運べ!」

サラ「皆さん、焦らず落ち着いて移動してください」

清香「行こ……」

静寐「うん……」

スコール「義体化率の高い者を最前線にし、順次防衛線を構築、生身の者は殿を」

「了解です!」

スコール(さて、少しずつ聞こえ始めたわね……)

サラ「……」ピクッ

サラ(速い……このままでは追い付かれてしまいます……)

サラ「次、よろしいでしょうか」

オオォォォー!!

サラ「いきますッ!!」

ギッギギギギギギギギギギギギ

文(やべぇな……チンチラしてたら追い付かれちまう……)


ギギギイィィィィィィィィッ ゴウンッ

サラ「次!」ガシッ

文「いくぞ!お前等!!」ガシッ

ウオオォォォー!!

サラ「はあぁぁぁッ!!」グッ

ギギギギギギギギギギギギギギギギ

スコール「生徒の移動が完了し次第、第二防衛線を構築、いいわね」

「はい、お任せ下さい」

スコール(もう少しで……聞こえるはず……)

静寐「織斑くんやクロニクルさん達……大丈夫かな……」

清香「きっと大丈夫だよ……皆強いから……それよりも私達は足手まといにならないように逃げないと……」

「目標接近、各員気を抜かないように」
「ま、あたい達はサイボーグだから気を抜いたって迎撃出来るけどね」
「そーそー」
「気を抜くなと言ってるでしょう!」

スコール「静かに!」

ピタッ

スコール(この駆動音……もしかして……)

スコール「……」

「スコール?」

スコール「待って」

スコール(……音紋確認……データ照合……)

スコール「……やっぱりね」クスッ

スコール「各員、戦闘はなし。繰り返す、戦闘はなし、防衛線も殿も必要ないわ」

「な!?どういう事ですか!?」

スコール「どういうもこういうも……そういう事よ」

ィィィィィィッ……ゴウッ……

文「姉貴!そりゃあ本当ですか!?」

スコール「嘘ついたってしょうがないでしょ?」

サラ「彼女の言う通りです。彼は敵ではありません」

文「そ、そうなのか……」

……シンッ……ズシンッ……ガスッッ

スコール(ん?彼?)



ギャリギャリギャリィィィィィィッッ ゴウンッッ


クロエ「皆さん御無事ですか!救援に来ました!」

スコール「私達は無事よ。でも向こうにいる生徒達はちょっと無事じゃない子もいるわね」

文「なッ……クロエ・クロニクル……!?」

サラ「機体が……何故……?」

クロエ「了解しました」 ズシンッズシンッズシンッ

スコール「あなた、私達に何も言わないの?」

クロエ「……何故です?」

スコール「何故って……はあ、あなたねぇ、私達は生徒達を人質にした張本人よ?何か咎めの一言ぐらいあってもいいんじゃないかしら?」

クロエ「確かにあなた方はIS学園の生徒を人質にしました。しかし、ジェイと呼ばれる彼が人質と共にあなた方すらも殺そうとした時、あなた方は生徒達を助けた」

クロエ「見捨てる事が出来たのに」

スコール「……」

クロエ「それに先程までの行動を全て見させて頂きました」

スコール「あら、プライバシーの侵害ね」

クロエ「申し訳ありません」ペコッ

スコール「冗談よ。私達も助けてくれるのね?」

クロエ「はい、そうです。あなた方が皆さんを見捨てなかったからこそ、こうして助ける事が出来ます」

クロエ「ですのであなた方も一緒に助ける、というのがあなた方の行動に対しての、私や一夏からの感謝の気持ちです」

スコール「……はあ、そんなに畏まらなくてもいいわよ。私達はただ……私達の勝手の巻き添えでここの生徒達を死なせるのが気に入らなかっただけよ」

クロエ「しかし、生徒達が救われたのは事実です」

スコール「ッ~……まあ、いいわ」

スコール「助けに来てくれて嬉しいわ。ありがとう」

クロエ「こちらこそ、ありがとうございました」ペコリ

スコール「それじゃあ早速で悪いけど、隔壁を開けてくれるかしら。私達は生徒の移動を手助けするわ」

クロエ「了解しました」

スコール「あ、後その堅っ苦しい話し方しないでくれると嬉しいわ」

クロエ「堅苦しい?何故です?」

スコール「苦手なのよ。そういうの聞いてるとこう……背中がむず痒くなるというか……こそばゆくなるというか……とにかく、そういうのは私達になしでいいわ。もっと砕けた感じでいいわ」

クロエ「は、はい……分かり……ました」

スコール「……まだ堅いわね」

クロエ「も、申し訳ありません……」ペコリ


ズシンッズシンッズシンッ

スコール「ふう……聞いてた通りね。クロエ・クロニクル……」

「何か……世間知らずのお嬢ちゃん、って感じでしたね」

スコール「カリーヌかオータムなら喜んで相手しそうね」

「あの子の姉妹を見た事ありますけど、とてもあんな風には見えなかったんですけどね」

スコール「あら、人っていうのは存外見かけによらないものよ?」

「ハハッ、そうでしたね」

ズシンッズシンッズシンッ

クロエ「相川さん、鷹月さん、御無事でしたか」

静寐「うん、ちょっと危なかったけど……あの人達のおかげで何とかね……」

清香「静寐はまだ弱ってるけど私はもう元気だよっ。クロニクルさんが来てくれたから元気百倍っ、何か手伝える事があったら言って」

クロエ「なら、相川さんの補助をお願いします。それでは私は隔壁を開けに行きますのでこれで」ズシンッズシンッズシンッ

清香「任された!頑張ってね!」

静寐「任されるも何も……ずっとしてくれてたじゃない……あっ、しまった……」

清香「どしたの?」

静寐「何で織斑くんと機体を交換してるのか聞くの忘れた……」

サラ「待っていましたよ。クロニクルさん」

クロエ「申し訳ありません。敵のハッキングを破るのに手間取り、救援が遅れてしまいました」ペコリ

サラ「いいえ、謝る必要などありません。織斑さんとクロニクルさんならば必ず助けに来ると信じていましたよ」

クロエ「御期待に応えられて良かったです」ガスッ バキバキッ

サラ「さあ、残りの隔壁も開けてしまいましょう」ガシッ

クロエ「いえ、ここは私一人に任せてください。皆さんも私が開けますので隔壁から離れて下さい」

文「待ちな、嬢ちゃん一人に負担をかける訳にはいかねぇ。私達にもやらせな」

クロエ「お気持ちは嬉しいのですが、負担にはなっていませんので御心配なく」


ギャリギャリギャリィィィィィィッッ ゴウンッッ


文「ッ……!!?」

サラ「ほう……」

スコール「へえ……」

オオォォォォォ……

クロエ「この通り、ISを使っていますので片手で上げられます。それに加え、体には一切負担はかかっていません」

文「お、おう……そうなのか……」

文(どうなってんだ?さっきまでIS一つとサイボーグ五人でようやく上がってた物が、少しでけぇISならまるで窓みてぇに片手で上げられるたぁよ……)

文(同じISでもこうも違うのかよ……こいつを敵に回すなんてのは想像したくもねぇな……)

サラ「成程、隔壁を開ける為に機体を交換したのですね。しかし、それでは織斑さんは大丈夫なのですか?」

クロエ「いえ、これは交換したのではなく、交換していたのをお互いに返したのです」

サラ「お互いに……返した……?」

スコール(なるほど、それでツヴァイフォーミュラの駆動音を聞いて彼って言ったのね)

クロエ「それに私のツヴァイフォーミュラよりも、零式の方がスペックは上ですので、一夏の方は問題ありません」

サラ「……」

クロエ「詳しい事は後で説明させて頂きます」

サラ「そう…ですね……今は驚愕などしている時ではありません……それでは隔壁は貴女にお任せしますので、私達はーーー」

文「生徒達の補助だろ。いいさ、任せな。そっちも頼んだぞ。クロエの嬢ちゃん」

クロエ「はい、了解しました」ズシンッズシンッズシンッ


ガスッッ ギャリギャリギャリィィィィィィッッ ゴウンッッ


クロエ『一夏様、人質と合流し、全員の無事を確認しました』

~アリーナ1番ゲート~

……インギョインギョイン

「目標、来ます!」

オータム「ンな事ぁ分かってる。さあ、来るなら来やがれ……」ゴクッ

カリーヌ「……」


ガスッッ バキバキッ ギャリイイイイィィィィィィィィ


オータム「ッ!!」ズドンッッ

一夏「ちょっーーー」ガシッ


ィィィィィィッ ゴウンッッ


一夏「ーーーと待ってください!!俺は敵じゃないです!!撃たないでください!!」カランカラン

カリーヌ「馬鹿なッ……!!?」

オータム「おッ、織斑一夏ぁ!!?テメェ何しに来やがった!!?」

一夏「ここにいる皆を助けに来たんです!だから銃を降ろしてください!」

オータム「お、おう……そうか、分かった」

一夏「ふーっ、ビックリした……」

カリーヌ(あり得ない……20mmセミオートライフルの弾速は秒速1000mを優に越えている……距離も50mにも満たないのにも関わらずだ)

カリーヌ(化物か……0.01秒の世界だぞ……なのに織斑一夏は弾丸を掴んで止めた……?それも隔壁を開ける片手間にだ……人間ではまずあり得ない……並みのISでも不可能なはずだ……)


「良かったぁ~味方かぁ~」ヘナッ
「ふうっ、久々に肝が冷えたな……」
「あたしなんか手ぇ震えてんだよ。ほら」プルプル
「うわっ、いい年こいて恥っずかしー」ガクガクッ
「そういうあなたは足が震えてますよ」

オータム「チッ、ったく……ややこしい事しやがって……おいテメェ、味方なら何とかしてこっちに伝えやがれ」

一夏「それが……急いでたのとジャミングでそっちに通信は……」ポリポリ

オータム「急いでたにしろ何にしろだ。隔壁ちょっと開けて名乗るとか、機体を見せるとか何とかしやがれ。そしたら、後ろの生徒さん方がテメェだって俺等に教えて、もしかしたら撃たれなくて済んだかも知れねぇんだぞ」

一夏「いや……その……はい、すみません……」

オータム「ったく、どいつもこいつも……これだからガキのお守りは嫌いなんだよ……」

一夏「すみません……」

オータム「……ッ~」ガシガシ

オータム「はあ……まあ、その……なんだ。せっあく救援に来てくれたのに撃っちまって悪かった。来てくれてありがとよ。助かったぜ」

一夏「へ?あ、はい、ど、どういたしまして……?」

オータム「オラ、分かったらとっとと隔壁を開けに行きやがれってんだよ。俺等は生徒を運ぶからよ」ゲシッ

一夏「は、はい!」ギョインギョイン

カリーヌ「織斑一夏」クイックイッ

一夏「何ですか?」

カリーヌ「織斑一夏、移動しながら聞いてくれ」

一夏「分かりました」ギョインギョインギョイン

カリーヌ「救援に感謝する。それと同僚の失礼を謝罪する。すまなかった」タッタッタッ

一夏「いや、あの人の言う通り何か方法があったのにしなかった俺が悪いんですよ」ギョインギョインギョイン

カリーヌ「そう言ってくれると助かる。あいつは君に誤射した上にそれを棚に上げ怒りを顕にしていたが、それは君を撃ってしまった自分に対して怒りを感じているからなんだ」タッタッタッタッ

一夏「自分に対して……怒り……」ギョインギョインッ
ギョイン

カリーヌ「あいつは言動こそ粗暴ではあるが性格はそうではない。むしろ、誠実で温厚な方だ。だが言動が粗暴であるが故に、いらぬ誤解を生んでしまいやすく、今回の様に自分に対する怒りを君にぶつけてしまったが」タッタッタッタッ

カリーヌ「君を撃ってしまった事を本当に申し訳ないと思っていて……はあ」パシッ

一夏「ナイフッ!!?」

オータム「テッ、テメェ!!全部聞こえてんだよ!!余計なお世話だっての!!テメェは俺のママンか!!あ!!?」

カリーヌ「恥ずかしがるぐらいなら最初からきちんとしろ。分かっているのか、お前の様な大人が学生相手に取る行動ではなかったのだぞ」ヒュッ

オータム「う、うっせーな!そんなの俺の勝手だろが!」パシッ

カリーヌ「という事だ。分かってやってくれないか」

一夏「ま、まあ、そういう事なら分かりますよ。あの人に近い奴が俺の身近にもいますから」

カリーヌ「フッ、そうか、お互い大変だな……すまないが、隔壁を頼む」

一夏「任せてください」ギョインギョインギョイン

オータム「聞こえてる、つってんだろぉ……!」

「どうどう、落ち着いて落ち着いて」

一夏(それにしてもあの人……顔は分からないけど何かどっかで会った事あるような……しかも割りと最近……気のせいか?いや、でも……)

一夏「皆ー!遅くなってごめん!」ギョインギョインギョイン

本音「あっ!おりむ~だ!」

簪「えっ……あっ……お、織斑……さん……」

オリムラクンダ……エッ,オリムラクン?ホントダ……オリムラクンダー!!オリムラクーン!!

一夏「皆聞いてくれ!アリーナの奴は動けなくしたから大丈夫だ!後ろから襲ってくる事はない。だから今の内に焦らず押さずに皆で早く脱出しよう。他のゲートに逃げた人達はクロエが助けてるから、皆は俺に着いてきてくれ!」

キャー!カッコイイー!ズットツイテイクー!

一夏「いや……かっこいいとかじゃなくてずっとじゃなくて……ま、いっか」

本音「おりむ~!!」ピョンッ

一夏「うわっとっととっ」ハシッ

本音「無事で良かったよ~元気で良かったよ~おりむ~」グリグリ

一夏「ほ、本音ちゃんこそ、無事で良かったよ」

一夏(胸部装甲に顔を擦ってるけど……痛くないのかな……)

本音「えっへん、苦しゅうな~い。私は頑張ったのだ~誉めても良いぞよ~」フンスッ

一夏「はいはい、偉い偉い。あんたは偉い」

本音「にへへ……あ!」

一夏「?」

本音「よっ…ほっ……おとと~」スルスル スタッ

本音「あのねあのね、簪ちゃんがね、私よりず~っとず~っと頑張ってたんだ~だからだから~おりむ~は~簪ちゃんをい~っぱいい~っぱい誉めてあげて~」ピョンピョン

本音「皆を助けようとして~山嵐を使おうとして怒られて~でもでもナイフのお姉さんに誉められちゃって~」ニパーッ

一夏「ナイフのお姉さん?ああ、なるほど」

簪「ほ、本音ちゃん……!」アタフタ

一夏「簪ちゃん」

簪「は、はいッ」ビクッ

簪(また何かされる……!?)ビクビク

一夏「よく頑張った」ポンッポンッ

簪「……へ?」

一夏「誰かに言われたから、じゃなくて自分がやらなきゃ、って思って行動するのって凄い難しい事だと思う。なのに皆を助けようとして迷わず行動を起こせるなんて凄いよ」

一夏「きっと楯無さんだって誉めてくれるって、涙流して喜ぶよ。きっと」

簪「そ……そんな事ない……私は……お姉ちゃんや……織斑、さん……みたいに強くないし……弱虫で……山嵐を展開したけど……結局何も出来なかって……」

一夏「そうじゃないんだって」ガシッ

簪「ッ!?」

一夏「簪だって、引っ込み思案な自分を変えたいって思ってたんだろ」

簪「は、はいっ……思ってました……」ビクッ

簪(名前だけで……初めて……呼ばれた……)

一夏「簪は変われたんだよ。自分がそうなりたいって思う自分に。それって俺には凄い難しくて……ずっと頑張ってるのに全然出来なくて……多分楯無さんもあの姉ちゃんだってそうなんだと思う……誰にだってそうなんだと思う」

簪「でも……私は……まだ……全然……変われてない……皆を……助けられなかった……」

一夏「違う、少しでも変われたんだよ。今の簪はもう前の簪とは違うんだって、何も出来ないししようともしない弱虫じゃなくて、少しでも皆を助けようとする事の出来る奴になれたんだよ」

一夏「簪は凄い頑張って変われたんだ。凄い事をしたんだ。それって誉められて当然の事なんだよ」

簪「あ、ありがとう……ございます……」モジモジ

一夏「それにまだまだ変われてない、もっと変わりたいって思うのなら、これから変わって行けばいいんだよ。もし、俺に出来る事があったら言ってくれ」

簪「は……はい……じゃ、じゃあ……これから色々と……よろしくお願いします。織斑さん」ペコリ

一夏「おう、よろしくお願いされた」

本音(私は空気を読める子~簪ちゃんの為に黙ってる~)

簪(あんなに真っ直ぐ……見つめられたの初めて……)ドキドキ

一夏(うーん……デジャヴ、だな……クロエの時とほっとんど同じ事言っちゃったし、反応も何となくクロエに似てるし……)

一夏(うん?あれ?これってもしかして思わず何かこう……火に油を注いだみたいな感じの……ま、いっか)

一夏「あ、後、さん付けはなしで。呼び捨てでいいよ」

簪「えぇ……いや……その……」

一夏「ほら、俺も勢いでさっき呼び捨てしちゃったからさ……IS解除して肩まで掴んじゃったし……ごめんね」

簪「いっ、嫌じゃないです!……別に呼び捨てで、いいですし……それに」

一夏「それに?」

簪「それに……クロニクルさんや篠ノ乃さんに、話すみたいに……話してください……お願いします」モジモジ

一夏「じゃあ簪も敬語はなし。俺もちょっと疲れるし」

簪「は、はいーーーじゃなくて……うん、分かった」コクリ

一夏「それじゃあ、改めてよろしくな。簪」

簪「こ、こっちこそ……よろしく……い、一夏……」

本音「にしし~簪ちゃんとおりむ~は仲良しさんなのだ~ラブラブさんなのだ~ひゅーひゅー」ピョンピョン

簪「ほ、本音ちゃん!?」

一夏「待って、楯無さんに刺されるからやめて」

本音「え~なんで~?かいちょーがおりむ~と簪ちゃんをくっ付けたいのって~ちょ~本気でしょ~?」

一夏「さあ?あの人って何考えてるか分かるようで分からないからな……」

簪「……」

クロエ『一夏様、人質と合流し、全員の無事を確認しました』

一夏『っと、ほのぼのしてる場合じゃなかったな』

クロエ『ほのぼの、ですか?』

一夏「よし、皆!隔壁から離れて耳を塞いでいてくれ!」

本音「は~い!」トテトテ

一夏『ああ、こっちの話。俺もちょうど合流して全員の無事を確認したところだ。今から隔壁を開ける』ギョインギョインギョイン

簪「わ、私も……」

一夏「いや、簪も下がっていてくれ。皆さんも下がってください」

「そう?じゃあ、御言葉に甘えようかな。無理だけはしないでね」

一夏「心配しなくても、俺なら大丈夫ですよ」

クロエ『スモークチャフの有効時間もーーー』

一夏『分かってる。鈴と清が行儀良く待ってないからな、急いで戻らないと』ガスッッ


ギャリイイイイィィィィィィィィィィィィィィッ ゴウンッッ


一夏『うーん……煙に乗じてあの三人を相手にしてなきゃいいけどな……』

クロエ『あのお二人ならやりかねませんね……』

一夏(そう考えたら心配になってきた……いや、やりかねない、というかあいつらなら絶対にやってるよな……)

一夏(ただでさえ連戦でケイって奴一人相手でもスタミナ切れ起こしてたのに……ああ、もう!)

一夏「……急ぐか」ガスッッ


ギャリイイイイィィィィィィィィィィィィィィッ ゴウンッッ


オータム「おう、取り込み中悪いな。ちょっと教えてくれねぇか」

一夏「教える?何をですか?」

オータム「さっきから通信の類いにジャミングを食らってんだがよ。テメェ等もそうなのか」

一夏「ああ、すみません。俺達がEMPを作動させたからです」ギョインギョインギョイン

オータム「なるほどな、アリーナにいるクソナーブを封じる為にか……けどテメェは、通信が出来るんだよな?」タッタッタッタッ

一夏「もちろん出来ますよ。もう片方のゲートに向かった一人にだけですけど」ガスッッ


ギャリイイイイィィィィィィィィィィィィィィッ ゴウンッッ


オータム「見たところテメェのその白いのは特注品だよな……通信を中継とかは出来ねぇか?向こうの仲間と話がしたくてな」トントン

一夏「それも出来ますよ。あーでも、俺達に内容が筒抜けになりますけど」

オータム「構いやしねぇよ、別に聞かれて困る様な事なんざ話ぁしねぇよ。安心しな」

オータム『こちらアルファリーダー、ベータ、聞こえるか応答しろ』

スコール『あら?こちらベータリーダー、聞こえてるわよ?』

オータム『救援に来た織斑一夏とクロエ・クロニクルの通信に間借りさせて貰ってる』

スコール『ああ、そういう事』

一夏『そういう事です』

スコール『ごめんなさいね。情けない大人よね、助けてもらった上に通信までさせて貰っちゃって』

一夏『そんな事ないですよ。これもお礼の一つです』

スコール『へえ、あなた……将来有望ね。予約しとこうかしら』

一夏『は、はい?』

オータム『この状況で何抜かしてんだテメェは』

スコール『ふふふっ、冗談よ。そう怒らないで頂戴』

オータム『はあ、頼むぜ……』

一夏(ん?このナイフの人とベータリーダーさんの笑い方……どっかで聞いた覚えがあるんだよなぁ……いや、でもこんな裏組織の実働部隊のリーダー何かとその辺で会う訳ないしな……)

クロエ(予約?何を予約するおつもりなのでしょう……)

スコール『あ、そうそう、間借りしたついでにあのアリーナの三人にちょっとハッキングさせてくれないかしら』

クロエ『……どうなさいますか』

一夏『何をするつもりですか』

スコール『さて、どうしてやろうかしらね?うふふっ、あの子達の機体はパイロットなしでもスタンドアローンが可能、パイロットを無視しての活動も可能……後は分かるわよね?』

一夏『ならISの強制解除。それが無理なら動きを止めるぐらいにしてください』

スコール『動きを止める、ねぇ……ま、それでもいいわ。私としてはやられっぱなしは癪だから、あの哀れな子達に、少しでも目に物見せてやろうと思ってるだけよ』

クロエ『一夏様、私は彼女の意見に反対です。彼女はジェイに対抗する程ハッキング技術を持っています。行動の監視は可能であっても、行動を抑止する事すら不可能です』

一夏『ああ、そうだな……でも鈴と清が戦ってるなら少しでも……』

クロエ『彼女達を完全に信用するのは危険です』

スコール『お取り込み中悪いんだけど、最初に言っておいた方が良かったとってもとっても大事な事があるの。まあ、このタイミングで言ったら信用なくす事になるだけかもしれないけど……いいかしら?』

一夏『……何ですか』


スコール『はーい♪私の愛しい愛しい大切ないっくんとクーちゃんへ、は・あ・と♪』


一夏『たッ、束姉ちゃん!!?』

クロエ『ッ!!?』

オータム『はあ!!?』

一夏『……』ポカーン

クロエ『ッ……ッ……!!?』

スコール『えっと……昔ながらの音声のみでいこうと思ったんだけど……やっぱりこういうのは本人の映る映像で伝えた方が良さそうね』

束『これを聞いていると言う事は知っての通り、束お姉ちゃんはいつもの解析でまたしばらく手が離せませーん♪が・し・か・しぃ~★今起こっている出来事は、本当なら私が直々に解決しなければならない事なので~す★』ニコニコ

束『なので今回は箒ちゃんやちーちゃん、いっくんやクーちゃんの為に助っ人を頼みましたー★傭兵の世界ではその名も高き気高き戦女達★チームハーキュリーズの皆々さんにお願いしちゃいましたー★ぱちぱちぱちー★』ニコニコ

束『何かあればーこのスコールお姉さんやオータムお姉さん達に遠慮なくお願い・し・て・ね★』ニコニコ

オータム『あァ!!?俺はンな事一言も聞いてねぇぞ?!!』

一夏『えっ?!』

クロエ『はい!?』

束『それと、束お姉ちゃん的にはこんな事は起きて欲しくなかったので、前々から何度もこんな事は起こさないで欲しいとお願いはしていましたし、こんな事は起こさないと信じていました』

束『がしっかぁしぃ~!え~ん★お姉ちゃんは今、と~っても胸が痛くて悲しいで~すっ。であるが故にぷんぷんっ★と~っても怒ってま~す★あいむあんぐりぃ~っ★』

束『え~んえ~ん★一度ならず二度までも★十年前もそうでしたが、今回も流石の束お姉ちゃんも黙っていられません★今度こそファントムタスクは、全く完全に綺麗サッパリキッチリ歴史の闇にぃ~消えちゃいま~す★』

一夏(束姉ちゃん……腸が煮えくり返るのを何とか押さえてる……本気で怒ってるな……)ブルッ

クロエ(いつ以来でしょうか……束様が……御怒りに……)

オータム(ドクトルTって束のTかよ。結局電話に出なかったのもいつもの解析?とやらが原因……世界一強力な後ろ楯がそんなんでいいのか?)

束『最後に、今起きている出来事も、起きた出来事も、起こるであろう出来事ーーーその全ての責任は私にあります』

束『ちーちゃんやいっくん、クーちゃんや箒ちゃんが責任を感じる必要はありません』


束『全ての罪は私にあります』


束『ですので束お姉ちゃんもなるべく早く、自分の手で状況を終了出来る様に頑張りまーす♪』

束『それじゃあ、皆愛してるよー♪ばいばーい♪』

スコール『……と、いう事なんだけど……どうかしら?』

一夏(束姉ちゃん……)

クロエ(束様……)

スコール『……あー……流石にこのタイミングで見せる物じゃなかった、わね……』

オータム『おいスコール!!テメェ何でこんな大事な事言わなかった!!?』

スコール『言わなかった訳じゃないわよ?ほら、今ーーー』

オータム『言ったな!!ああそうだ言ったな!!けどな!!言うのが遅いつってんだよ!!あァ!!?』

オータム『俺は組み初めから散っ々言ってたよな!!?そういう自分勝手な事するなって!!こんなくだんねぇ事何度も何度も何度も何度も言わせやがっていくつかガキだテメェは!!?』

スコール『いや……あの……その……ごめんなさい』

スコール『驚かそうと思って……』

オータム『誰が、いつ、どこで、驚かせてくれっつった?あァ?』

スコール『本当にごめんなさい。反省してるわ』

オータム『チッ、説教なんざ後でいくらでも出来るからどうでもいい。今は引き上げるぞ』

スコール『そうね。ここらが潮時ね』

オータム『という事だ。悪いが俺等は撤退させてもらうぜ』

一夏『えっ、いや、別に撤退しなくてもーーー』

オータム『出来ることなら俺も国連御抱えの学園を救った最高にかっこよくて頭のキレるスーパーヒロイン…として極上のおもてなしを、ってとこだけどよ。俺等は色々と込み入った事情を持ってる奴が多くてな、そうもいかねぇんだよ』

一夏『は、はあ……そうなんですか……』

スコール(仮にこのまま学園に残ったとしても、残念ながら国際指名手配犯の私は見向きもされないから構わないけど)

クロエ(彼女達は一体……本当に傭兵……?)

オータム『それによ……俺は一刻も早く親切に“契約破棄”を通達しに行かなくちゃあならねぇんだよ。そうしねぇとクライアントはまだ契約が続いてるもんだと思ってやがるからな』

オータム『そうしねぇと満足に束お姉ちゃんの仕事が出来ねぇからな』

クロエ『一夏様、どうなさいますか』

一夏『……仕方ない。撤退してください。後は俺達で何とかします』

オータム『ご理解感謝するぜ。スコール』

スコール『分かってるわ』

オータム「お前等、撤退するぞ!イレギュラーはなし、全て計画通りだ」

オータム『おっと、そういえばまだ別動隊が残ってたんだ。教官室の奴等に通信を繋いでもらえねぇか?』

一夏『分かりました……どうぞ』

クロエ(ISが二機……千冬様を相手にするのなら納得です)

オータム『ショータイムだ。お前等は凰鈴音と凰清音を援護しろ』

一夏「待ってください。何をさせる気ですか」

オータム「何って聞いての通り、凰鈴音と凰清音を援護してやるんだよ」

オータム「ISを破棄するついでにな」


フッ……


一夏「ッ!?停電!!?」

簪「えっ?」

本音「ややっ!?」ビクッ

オータム(行くぞ、遅れるな)スッスッ

クロエ『一夏様!!学園の全システムがダウン、予備も動きません!!』


キャアァァァァァァァッ!!


一夏(まずい!こんなところで停電なんて起きたら!あの人どういうつもりなんだ!?) ピカッ

一夏「皆落ち着いてくれ!大丈夫、この通り明かりはある!それに携帯端末のライトを使うんだ!そうすれば暗くない!大丈夫だ!」

簪「本音ちゃん、私のも使って」

本音「任せよ~」ピカー

ザワザワザワ……

一夏「皆落ち着いて、まずはゆっくり深呼吸をして。もうすぐ脱出できるから」

一夏(ふう……何とかなったな。けど油断出来ない……いつパニック発作を起こす人が出てくるとも限らない。急いで脱出しないと)

一夏(流石にオータムさん達はもういないか……一体どういうつもりでこんな事を……)ギョインギョインギョイン


ガスッッ ギャリイイイイィィィィィィィィ ゴウンッッ


一夏「簪!皆を誘導してくれ!」ギョインギョインギョイン

簪「わ、分かった!」

一夏(先生達や楯無さん達も既に動いてる。早く脱出して、アリーナに戻らないと……!)

~アリーナ3番ゲート~

オータム『ショータイムだ。お前等は凰鈴音と凰清音を援護しろ』

クロエ「……」バッッ

スコール「あら、そんな物騒な物出してどうしたの?それにとっても怖い顔……ふふふっ」

サラ「クロニクルさん!?何を!?」

文「姉貴!!」

ザワッ……

クロエ「先程の通信が暗号だと言う事は了解しています。早急に命令の撤回を」ズシンッズシンッズシンッ

スコール「ふふふっ、もう遅いわ」クスクス


フッ……


クロエ「しまったッ!!?」

サラ「停電!?」

清香「えっ!?」

静寐「何で!?」

スコール(各員、遅れるな)スッスッ

クロエ(一体何が……ハッキング!?しかも先程と同じ!?)

クロエ『一夏様!!学園の全システムがダウン、予備も動きません!!』

クロエ『こちらはーーー』


キャアァァァァァァァッ


クロエ(いけません!!このままではパニックが!!)ピカッ

クロエ「み、皆さん落ち着いてください!明かりはあります!ですから大丈夫です!」

サラ「そうです。皆さんどうか冷静に、携帯のライトを使いましょう。そうすれば大丈夫です」ピカー

清香「あーびっくりしたー」ピカー

静寐「あれ?あの人達がいない……」ピカー

サラ「皆さん、落ち着いて。まずは深呼吸を」

ザワザワザワ……

クロエ(束様のECM装置は現在も正常に作動……対IS用で機能停止させる程ではなく、電子機器なども停止させる程でもないとはいえ、最新鋭のECCM装置を用いたとしてもジャミングの突破は不可能……)

サラ「クロニクルさん」

クロエ「はッ、はいッ!何でしょうか!?」ビクッ

サラ「一刻も早く、ここから脱出しましょう。この状況はあまり芳しくありません」

クロエ「了解しました。直ちに」ズシンッズシンッズシンッ



ガスッッ ギャリギャリギャリィィィィィィッッ ゴウンッッ


サラ「私が皆さんを誘導します。クロニクルさんは隔壁をお願いします」

クロエ「了解しました」ズシンッズシンッズシンッ

サラ「皆さん、慌てず、冷静に、なるべくお互いを照らしながら移動してください」

清香「よーし、行っくぞー!皆で脱出だー!おー!」

静寐「何でそんなにテンション高いの……」

清香「何言ってんの!こういう時だからこそだよ!」

静寐「こういう時だからこそ、ね……確かに、清香の言う通りだね」

「どッ、どうしたのッ!?ねえ、大丈夫!?」
「はあっ……はあっ……はあっ……」カタカタ

サラ(やはりパニック発作が……予想していた通りですね)

サラ「深呼吸出来ますか?」

「はっ……はあっ……しっ……深呼吸……ですかっ……」カタカタ

サラ「駄目ですか……私の背中へ」スッ

「すっ……すみまっ……せんっ……」カタカタ

サラ「負い目を感じる必要はありません。大丈夫です。もうすぐ脱出できます。先生方や更識さん達が助けに来ます。ですから、大丈夫ですよ」

クロエ『一夏様、申し訳ありません。システムを再び奪われました』

一夏『やっぱりか……という事はスコールさんがやったのか?』

クロエ『はい、そうです』

一夏『撤退するならここまでしなくてもいいのに……そっちは大丈夫か?』

クロエ『はい、一名にパニック発作が見られましたがモルドレット様と御友人により、回復に向かっています』

サラ「大丈夫……大丈夫です……ゆっくり……息を吸って……吐いて……そうです……私や皆さんが貴女のそばにいます。大丈夫です」

「大丈夫だからね、ね?ほら?隣にいるからね?」ギュッ
「はあ……う、うんっ……はあ……ありがっ……とう……」

一夏『流石はモルドレットさんだな……頭が下がるよ』

クロエ『私は対処法を知らなかったので、助かりました』

一夏『とにかく今は脱出して、アリーナに戻るぞ。スモークチャフと鈴と清も限界。それに教官室にいたIS二機があいつ等と接触してるからな』

クロエ『申し訳ありません。今一歩のところでスコール様から目的を聞きそびれ、撤退されてしまいました』

一夏『こっちも同じだ。けどオータムさんは“ISを破棄する”って言ってたな……』

クロエ『ISを……破棄……』


ズズズズズゥゥゥゥゥン……


一夏『ばッ、爆発ッ!!?』

クロエ『アリーナからです!!』

>>565

訂正

一夏「ああ、すみません。俺達がEMPを作動させたからです」

一夏「ああ、すみません。俺達がECM装置を作動させたからです」

今更ですが……

~アリーナ~

オータム「……やるか?」

スコール「さて、どうしようかしらねぇ……んーそうねぇ、あなたはどうする?」

千冬「先にこちらの質問に答えろ。学園のシステムは貴様が掌握しているのか」

スコール「いいえ、私じゃないわ」

千冬「なら誰だ」

スコール「さあ?何なら自分で確かめてみる?出来るのなら、ね……」スッ

千冬「何?」ピピピピッ

千冬「……ジャミングか」ダンッ

スコール「うふふっ、一体誰がやってるんでしょうねぇ」クスクス

千冬「ふざけるな、私は真面目な話をしているんだ」ガシッ

スコール「そんなに外が心配なら窓を破って出ていきなさい。ほら、どうしたの?顔は平静を装っていても、心の中ではもう心配で心配で堪らないんでしょう?ふふふふっ」クスクス

スコール「あなたの大切な一夏くんやクロエちゃんはどうなったのかしらねぇ?あの煙じゃあ分からないわねぇ」ニヤァ

千冬「貴様ぁ……!」

真耶「お、落ち着いてください!織斑先生!」ガシッ

スコール「うふふっ、怖い怖い……ふふふふふっ」クスクス

千冬「……山田先生、ISでの通信とコアネットワークシステムは」

真耶「駄目です。正常に機能しません。ISの使用には問題ないようですが……」

千冬「ならハイパーセンサーで煙の中の様子を確認してください」

真耶「了解ですーーーって、あれっ!?」

千冬「どうしました?」

真耶「………すみません、ハイパーセンサーを使ってもあの煙の中の様子は分かりません」

千冬「そうですか……」

千冬(……ISのシステムを妨害するジャミングに……ISの目を潰す煙……学園のシステムはこいつが握っていないとすれば……)

スコール「さあ御決断を、織斑先生」

真耶「私はいつでもいけます」

千冬「山田先生、ISで窓を破ってください」

真耶「了解!待ってました!」

スコール「あら、大胆な手に出るのね。本当にーーー」

オータム『ショータイムだ。お前等は凰鈴音と凰清音を援護しろ』

スコール「ーーー動いても大丈夫なのかしら」

千冬「あの煙とジャミングは一夏とクロエがやっているものだ。ISの機能すらジャミングし、ISの目を潰せる煙を作れる人間はこの世にただ一人ーーー篠ノ之束しかいない」

千冬「そして、それを使えるのは一夏とクロエの二人しかいないからだ」


グシャッ バキバキバキッ……

スコール「……ふふふっ」ニヤァ

千冬「貴様何をッ!!」

真耶「……」ヒュッ

ヒュカンッ

真耶「チィッ!!ぐッッ!!」ガッ

オータム「動くな」グッ

セシリア「山田先生!伏せーーーッ!!?」ヒュカカカッ

オータム「お前もだ」

千冬「山田先生!オルコット!」

フッ……

千冬「また停電だと!!?」


ドッゴオォォォォンッッ


スコール『大正解~♪流石はちーちゃんだね♪』

千冬「何ッ!?」

箒「姉さん!!?」


カァンッ

千冬「箒!!目を閉じろ!!」バッ


バァンッッ


千冬「目潰しか!!」

箒「うわっ!!」

真耶「味な真似を!!」ドドドドドドッ

セシリア「逃がしませんわ!!」バシュウゥゥゥゥゥンッッ

千冬「箒、大丈夫か?」

箒「な、何とか………織斑先生こそ」

千冬「安心しろ、スタングレネード程度なら私には効かん」

真耶「ええい!煙に紛れるなんて姑息な真似を……煙ごと吹き飛ばしてやるぅ!!」ジャキッ

セシリア「山田先生!!そんなものをここで撃てば篠ノ之さんと織斑先生が!!」

ウイィィィィィンッ

真耶「食ぅらえええぇぇぇぇぇ!!!」


ドゴォッッ カシャン

千冬「落ち着いてください。殴りますよ山田先生」

真耶「もう殴ってーーーいえ、すみません………」スチャッ

セシリア(スモークの効果が切れ初めていますわ……もしかしたら姿が見えるかもしれません……)スッ

千冬「ふう……全く……」バカッ ウィーンッ ピピピッ

ピーッ ウィーンッ ガシャンッ

箒(床が開いて武器が……)

千冬「箒、持っていろ」ヒョイッ

箒「えっ、は、はい」パシッ

千冬「……」カチャカチャ ガチンッ

千冬「よし……山田先生は凰の救出を、オルコットはそれを援護しろ」

真耶「了解!やっちゃいますよ~!」ジャコンッ

セシリア「お二人はどうなさるおつもりですか?」

千冬「箒は私と人質の方へ向かう。いいな」

箒「はい」

千冬「……」

千冬(奴は何をした?コンソールに機体の一部を突き刺して破壊したのか?それだけでアリーナを停電させるには不充分だ………それにこの壊れ方……何かが広がった跡だ……まるで木の根のように……)


『ENERGY PAC EMPTY』

ケイ(これで予備も最後か……だがな)

鈴「だあッ!!」ヒュッ

ケイ「遅いなぁ!!」ガスッ

鈴「うあっ!!くッ!!」トンッ スウッ

ケイ「オイオイどうしたぁ!動きがニブくなってんじゃねぇのか!?アクビが出ちまうぜ!」

鈴「チッ……」

鈴(ヤバイ……このままじゃ……負ける……あいつ等だって消耗してるはずなのに……)

ケイ(奴等は確実に消耗してる。回復出来る俺達とは違ってな)

ジェイ「フッフッフッ……そこだよ」シャッ

清「読まれてたッ!!?」ボッ

ガギャッ ガシッ

ジェイ「捕まえたよ。かくれんぼもそろそろ飽きたんだけど?」ミシミシミシ

清「ぐッ……うあぁぁぁ……!!」ミシミシミシ

清(完全に捕まった……腕に絡み付けない……この距離……なら龍咆を……でも……そんな事すれば……あたしまで……)

エム「……」バッ

ジェイ「ん?どうしたの、凰鈴音。助けないの?味方が捕まってるんだよ?」グググッ

清「こッ……のッ……はなッ……せッ……!」ガスガス

鈴(ごめん清、もうちょっとだけ頑張って……)パシッ

ジェイ「ふーん、反応なし、か……それじゃあつまらないよねぇ?」グググッ

清「かッッ……あがッッ………」ミシミシミシ

ブンッ

エム「くどい!」カキィンッ

鈴「うおぉぉぉぉぉぉ!!」ボッ

エム「馬鹿が!!」シャッ

鈴「ぐあッッ!!うッ!!」ザカンッ

ガシッ

鈴「おおおおぉぉぉぉ!!」ズガンッ

エム「がッッ……ハッ……なッ、何ッ!!?」

ジェイ「エム!?うわっ!?」ドガッ パッ

清「ッ!!」バッ

ジェイ「しまっーーー」

鈴「シィィィィィッ!!」グルッ

ジェイ「ぐあッ……はッッ……!!」ガヅァンッッ

鈴「ッ!?しまっ!!」

鈴(体がッ……間に合わないッ……!!)

ケイ「遅いぜ!!」ギュルルルルル

エム「はあッ!!」ヒュオッ

清「ッ……お……おおおおぉぉぉぉ!!」ザカンッ ガシッ

清「らあぁぁぁぁぁぁッッ!!」ブンッ

エム「うおぉぉぉッッ!!?」

ケイ「なッ!?」

ケイ(こっちに投げて来やがっただと!!?クソッ!間に合わねぇ!!)

ドゴッッ

エム「ぐはぁッッ!!」

清「はあっ……はあっ……」バッ

ケイ「逃がすかよ!!」ドンッ

ボッ

清「ッ!!?」

清(煙から抜けた!?これじゃあ姿が!!)

鈴「清!!」ガシッ ドンッ

ケイ「チッ!」 ブンッ

ケイ「……エム!ジェイ!良いニュースだ!この忌々しいクソ煙ももうすぐ終いだ!」

エム「よ……ようやくか……」

ジェイ「フッフッフッ、例え煙に紛れたところで呼吸音でバレちゃうけどね」

清(鈴!!)バッ

清(清!!)バッ

鈴(息が上がりっぱなし……もう体力が……)

清(こんな呼吸じゃ……息が整わない………)

鈴(煙の効果も切れてきてる……もうすぐ時間切れに……)

清(神龍のエネルギーも限界……ケイの攻撃を食らえば持ってかれる………)

エム「さあ、どうしてやろうか」シャキンッ

ジェイ「いつもの鬼ごっこ通りにやろうよ。僕達の得意な、ね」パシッ

ケイ「ソイツはいいな。じっくりと炙り出してやるぜ」

鈴(正直言って……もう勝てないかもしれない……清、どうしよう……)

清(最初からあたし達じゃ……勝てなかったんだよ……一夏んだって苦戦してたのに……)

鈴(そうだよね……あの一夏んだって……苦戦したんだもんね………)


鈴清((あたし達……やるだけやったよね……))


鈴(後は少しでも時間を稼げば………)

清(一夏んが絶対助けに来てくれる………)


鈴清((一夏が……助けに………))


ジェイ「フッフッフッフッ……どこにいるのかな?早く出ておいでよ。ゲームはまだ終わってないんだよ?」

エム「ハッハッハッハッ……逃げ切ろうとしても無駄だ。私達からは逃れられんぞ」

ケイ「ヘッヘッヘッヘッ……諦めな、どう足掻いてもなぁ、テメェ等はゲームに負けたんだよ」


ケイ「なあ!凰鈴音!!凰清音!!」



鈴清((いや、一夏なら……諦めない!!))


鈴(昔、あたし達をいじめてきた奴等にだって……一夏は立ち向かっていった………)

清(一人で六人を相手に勝てるはずがなかったのに……一夏は逃げなかった………)

鈴清((あたし達を、守る為に))

鈴(あたし達、誰の為に代表候補生になったのよ)

清(あたし達、何の為に代表候補生になったのよ)

鈴清((決まってるよね。全部あの一夏の……あの時の一夏の……あのでっかい背中を越える為!!))


鈴清((いつまでもあんなでっかい背中が目の前にあるんじゃあ、一夏の隣に立てないから!!))


鈴(そうだよ。清、あいつ等に見せてやろうよ)

清(うん、あたし達強くなったもんね。鈴)

鈴(一意専心、狙うは一つ)

清(乾坤一擲、全てを一撃に)


鈴清((絶対にブッ倒してやるんだから!!!))




ヒュウゥゥゥゥン


鈴清「「!?」」

ジェイ「ん?」

エム「何故、電力が……」

ケイ「上等じゃねぇか、次はどんなブービートラップを見せてくれやがる。織斑一夏」


ドッゴオォォォォンッッ


ケイ「何だ?」

ジェイ「あれはモノクローム・アバターの二人だね」

エム「スタングレネードまで……しくじったのか」

鈴清「「!!」」

鈴(このタイミングで増援!?)

清(でもこれでこっちにも味方が増えた)

鈴(千冬さんと山田先生が増援なら十二分)

清(あわよくば三人もろとも!)

鈴清((仕掛けるなら今!!))

真耶「味な真似を!!」ドドドドドドッ

ケイ「おっと、ヘッヘッヘッ、危ねぇ危ねぇ」カンッ

セシリア「逃がしませんわ!!」バシュウゥゥゥゥゥンッッ

ジェイ「セシリア・オルコット?ブルーティアーズ……?へえ、こんな攻撃が出来たんだね」

エム「だが、私達のビームキャノン程ではないな」

鈴(何?どこに増援がいるの……!?)

清(これだけ撃ちまくられたら、あいつ等が動いて……!)

スコール「お馬鹿な子ね」


ギュルルルルッ ギチッ


ジェイ「ッ!?ッ……!!……何のつもりかな?これは」

スコール「見て分からないかしら?ああ、ごめんなさい。はあ……あなた達、こういう事を理解するオツムの出来は良くなかったのよね」トントン

ジェイ「何言ってるのさ?エム」

エム「ジェイ……くッ……駄目だッ……」ギリギリギリ

オータム「……」

スコール「殺しては駄目よ。この作られた可哀想なの体にたっぷりと贖ってもらわないと……ね?」ペロッ

ケイ「エム!ケイ!」ドンッ

スコール「いいのかしら?あなたの大事なオトモダチに当たってしまうわよ?」

ケイ「ッ……!」ピタッ

スコール「もしくは」ギチギチギチギチ

ジェイ「ッ……無駄だよ……僕達は痛覚や感覚をカット出来るからね……ッッ!!」ギチギチギチギチ

ゴキンッッ

スコール「でも体は壊れる」

オータム「……」ミシミシミシッ ゴキゴキッ ゴキンッ

エム「ッ……ッッ……ぐッッ……!!」

スコール「あらまあ、ハジメテのベッドの時より激しいわね」クスクス

ケイ「ッ……クソが……テメェ等、どういうつとりだ!!裏切るつもりか!!?」

スコール「裏切る?アッハッハッハッ!そうね、確かにこれは裏切りね」

スコール「だって私達は“裏切り者”を“裏切っている”だけですもの」

ケイ「はあ!?クソ以下のタワゴト抜かしてんじゃねぇぞ!!」

鈴(アレ……仲間割れ……だよね。様子を見る?)チラッ

清(そうしようよ。もしかしたら減らしてくれるかもしれない)コクン スッスッ

スコール「そんなに慌てなくても、あなたもちゃんと相手してあげるわよ。まずは煙から完全に出ておいで、ボウヤ」クスクス

スコール「素敵なものを見せてあげるわ」ジャキッ

シュルシュルシュルシュル

ジェイ「そんなハックワームなんて出してどうすーーーッ!!?」シュルシュルシュルシュル

スコール「ハックワームってとっても便利なのよ。伊達にゴミムシ共が甘い汁啜ってしこしこと作っただけの事はあるから“こういう事”だって出来るのよ?」

ブツッ ブチブチッ ブチッ ブチブチブチブチッ

ジェイ「ッ……ッッ………うッッ……!!」ブチブチッ ブチッ

スコール「ああ、そうそう、個人的体験に基づいた非常に有意義な助言をしておくわ。痛覚とか感覚とかはなるべく切らない方がいいわよ。そうしないと」シュルシュルシュル

ジェイ「ううッ!!」ブツッ シュルシュル

スコール「何も分からなくなっちゃうわよ?ふふふっ、鈴ちゃんに清ちゃん、聞こえる?あなた達は見ちゃ駄目よ。これはちょっと……あなた達にはアダルティ過ぎるわ」クスクス

鈴清((ハックワーム?アダルティ?さっきから何を……))

鈴清「「ッ!!?」」

鈴清((何あれ……管みたいなのが……装甲の隙間に入って……血が……!!))

スコール「ほーら、あなたの中に……たくさん出たり入ったりしてるのよ?残った左目でしっかり見てしっかりと感じなさい……その痛みを。うふふっ」クスクス

ジェイ「ッ……あッ……がッッ………!!」

エム「ジェイ!!」

オータム「……」グッ

ゴキンッッ

エム「うッ……ッッ……!!」ゴキゴキッ

エム(こいつッ……わざと骨を砕いているのか……)

ボキボキボキッ バキャッッ

エム「ぐッッ………ッ……ッッ……」

エム(背骨を……いくら感覚器官を切っていても……これは………だが、ジェイに比べれば………)

ギギギギッ バキャッッ ドスドスドスッ

エム「ッッ!!」シュウゥゥゥゥゥゥ

エム(ヒートナイフをッ……装甲の隙間からッ……!!)

ケイ「クソッ!テメェ等!自分が何してんのか分かってんのか!!?これはーーー」

スコール「あなたはどう?自分が何をしてるのか分かっているかしら?」

ケイ「……ああ?」

スコール「はあ、呆れた……退屈ね、これだからお人形さんと遊ぶのは嫌いなのよ」

ケイ「ふざけんじゃねぇ!!俺は人形なんかじゃねぇ!!俺は俺だ!!」

スコール「はあ……おかげで興が冷めちゃったわ。サマーツー」

ケイ「俺をその名で呼ぶんじゃねぇ!!俺はケイだ!!サマーツーなんかじゃねぇ!!俺は俺だ!!」

ケイ「織斑一夏のデッドコピーじゃねぇ!!!」

スコール「あっ、そう。そんな事私の知った事じゃないわ」

ケイ「テメェ!!!」

ジェイ「うッッ……!!」ガクンッガクガクッ

スコール「今この子の脊髄を遡ってるわ……もし攻撃されて操作が狂ったら……この出来の良いオツムはどうなるのかしらね」

ゴキンッッ

エム「ケイッ……私達のッ……事はッ……気に………するーーーがあッッ……!!」ドスッ

オータム「黙っていろ」グググググッ

ケイ「ッ……クソッ……このクソッタレが!!」

スコール「さて凰鈴音に凰清音、あなた達……まだ彼と戦う気はある?」

鈴清「「えっ?」」

スコール「もう一度だけ聞くわ。彼と戦いたい?早く答えなさい。邪魔が入る前に答えないとこの駒共……叩き潰すわよ?」

鈴清「「……」」コクン

鈴清「「戦いたい!!そいつはあたし達の相手だから!!」」

スコール「うふふっ、良い子ね」

>>592

>>592

訂正

ケイ「エム!ケイ!」ドンッ

ケイ「エム!ジェイ!」ドンッ


スコール「あ、そうそう、前からあなたに聞きたかった事があるのよ。あなた達ってその……ほら、ゲームとか賭けとか………色々と芝居染みた台詞をよく言うじゃない?」

スコール「あれってもしかして歴史のお勉強で見た……ジョン・ウェインの影響だったりするのかしら?」

ジェイ「ッ………なッ……にをッ………ッッ……!!」ズルッッ

スコール「そう……じゃあ、ここらでオチをつけるとしましょうか。用意出来てる?」

オータム「既に」

ケイ「オチ……だと?テメェ等何する気だ!!?」バッ

オータム「……」ズドンッ

ケイ「そんなモンが俺に効くかよ!!」バチャッ

パキパキパキパキパキパキ

ケイ「ッ!!?何だこりゃ!!?固まって………クッソが………!!」バキバキバキッ

スコール「ただのトリモチよ。せっかくのオチなんだから黙って聞きなさい」

ケイ「クソッ!!テメェ等……!!」バキバキバキッ

真耶(見えた!!ようやく観念して煙から出てーーーええい、小癪な真似を!!人を盾になんかしてぇ……!!!)ギリィッ

セシリア(これでは撃てませんわ……ならブルーティアーズで)

鈴清((あの人達……何する気………何で上に上がって行って……))

スコール「ねえ、私思うのよ。あなたってジョン・ウェイン、って言うよりも」

オータム「なあ、お前」


『『DANGER!!ENERGY LIMIT BREAKING!!』』


スコール「ジョン・ドゥよね」
オータム「リング・トリックって知ってるか」


『『『『『『CAUTION!!HIGH ENERGY REACTION INSIDE THE TARGET!!THERE IS A DANGER OF EXPLOSION!!』』』』』』


ジェイ「ッ!!?」

エム「お前等まさかッ!!?」

鈴清((自爆する気ッ!!?))

ケイ「させるかよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」バキバキバキッ ドンッ

真耶「鈴さん!!清さん!!退避してください!!!」

鈴「清!!」

清「分かってる!!」

鈴清((あいつが空けたアリーナの穴に!!!))

セシリア(ブルーティアーズの回収が間に合わない!!)

真耶「オルコットさん!!早くピットの中へ!!」



ドッッ……オオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!


ケイ「うおぉぉぉぉッッ!!!」

鈴「うっ……くッ……清……!!」ガシッ

清「だッ……大丈夫……でも!!」ガシッ

鈴「ちょっとヤバいよね……このままじゃあ……!!」ピキピキピキ

清「なっ……もうちょっとだけ耐えて……!!」

バキィンッッ

鈴清「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

真耶「ッ……何て爆発……オルコットさん、私の後ろから出ないでくださいね」ビリビリビリビリ

セシリア「は、はい……」

セシリア(いくらシールドを展開しているとはいえ……これだけの爆風を受けても微動だにされないとは……流石は元日本代表メンバーのお一人………)


ォォォォォォォォ……パラパラパラ………


ケイ「うう……ぐッッ……クソッ……あいつ等………自爆なんて………」ガラガラッ

ケイ「うッッ……」ガクンッ

ケイ(修復が追い付いてねぇのか……体が……フザけんなよ……クソが……さっさと治しやがれ………)

ケイ「ハァー……ハァー……エム……ジェイ……どこだ……?」

ケイ「チッ、あちこち……ガレキだらけじゃねぇか……しゃらくせぇなクソが………」ガラガラ

ケイ「ッ……まだ治らねぇのかよ……」スカッ ガシッ

ガラッ……

ケイ「あ?」

鈴清「「………」」

ケイ(呼吸、脈拍数等に乱れはねぇ……気絶してやがるのか………)

ケイ「ヘッ、どうやら悪運だけはいいみてぇだな……テメェ等も俺も」

鈴清「「……」」

ケイ「だが、テメェ等はここでゲームオーバーだぜ」

ガラッ

ケイ「ッ!!」バッ

ジェイ「う……ッ……ケイ……?」

ケイ「ジェイ!」

エム「ケイ……駄目だッ……!!」ガラッ


ジャパッ


ケイ「何ッ!!?」バッ


ズドドンッ

ケイ「ッ!!?なッ……にぃッッ……ッ!!?」ゴギィッ


鈴清「「遅い!!!」」ガシッ


ケイ「うおッッ!!?テメェ等………!!」

鈴「作戦通り……流石のあんたでも修復が追っ付かなくなるわよね……」

清「冥土の土産に教えてあげる。あんた……利き手か何なのか知らないけど………右腕ばっかり使う癖があんのよ……」

ケイ「癖……だと!?」

鈴「あたし達の打撃も龍咆を弾くのもほとんどが右腕を使って」

清「身を守る時も右腕を前にしてちゃこうなるわよ」

ケイ「ナメんじゃねぇ、テメェ等なんざ今すぐ振りほどいてやるよ!」グッ

鈴清「「おっと!」」グイッ

ケイ「なッ!?ッ……クソッ!!」

鈴清「「消耗したあんたのボロボロの左腕一本で、あたし達二人を振りほどける訳ないでしょ」」

ジェイ「ケイ!ぐッッ……」ドサッ

エム「ッ……く……そ……から……だ…が……」


ジャコンッ

ケイ「あ?テメェ等何する気だ……?」

鈴「あんた御自慢の装甲と体も、ここまでボロボロにされた上で」

清「この距離と貫通特化に二つ同時に龍咆を食らえばどうかな」

ケイ「バカが!テメェ等がくたばっちまうだけだぜ!」


鈴清「「いいや、あたし達はくたばらない。あんたとは気合いが違うんだからね!!」」


ケイ「救い様のねぇ奴等だぜ。面白ぇ、撃ってみやがれ……撃てるものならな……」

鈴清「「………」」

グッ……

ジェイ「フフフッ、何してるのさ……あれだけ言っておいて……撃てないのかい?」

エム「フン……所詮はただの悪足掻き……さっさと倒されろ……その方が……私達も次に進める……」

鈴(双頭神龍で龍咆を接射するだけでも……危険なのに……)

清(ブッ壊れるまで全力射撃……ただじゃあ済まない………)

鈴清((一夏……))

真耶「鈴さんに清さん!!……まさか、全弾接射する気ですか!!駄目です!!危険です!!」

セシリア「お止めください!!そんな事をすればあなた達まで!!」

ケイ「だってよ。オイオイ、どうした?」

ケイ「撃ってみろよ」

鈴清「「……ッ!!」」グッッ

鈴清((一夏、ごめん!!!))

鈴清「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

ジェイ「えッッ!!?」

エム「何ッ!!?」

鈴清「「食らええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

ケイ「ッッ!!?」


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


真耶「ッ!!」ドンッ

バチィンッ

真耶「うあッ……くッッ……!!」ガガガガガガッ

真耶(流れ弾でこの威力……しかも指向性が全くない……これでは近付けません……!!)

セシリア「鈴さん!!清さん!!」



ズドンッ ボゴオオォォォォォォォォォォンッッ


ケイ「うおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

鈴清「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

ガシッ

鈴清「「え……?」」

一夏「大丈夫か!?鈴!清!」

鈴清「「一夏……う、うん!大丈夫!こんなの全然ッ……へっちゃらなんだから!!」」

一夏「そうか、良かった……本当に良かった……昔からこうやってすぐ無茶するから……」

グッ……

鈴清「「えっと……心配かけてごめんね……一夏」」

クロエ「お二人とも御無事で何よりです」

鈴清「「あれ?……一夏んにクロちん……機体が……」」

クロエ「詳細は後程説明します。今は……」

セシリア「一夏さーん!!」

真耶「織斑くーん!!」

一夏「セシリアに山田さん、二人を第一校舎で待機している救護班のところへお願いします」

真耶「任せてください!」

セシリア「は、はい!」

-
---
-----
「お前は手に入れろ、“好きなだけ奪い好きなだけ与える”事の出来る“自由”を。手に入れられなかった……俺のーーー“俺達”の代わりに」

「泣くなよ………お前は勝ったんだよ………生き残れるんだぜ?これで……また……自由に……近づいたんだ………だから……泣く……な………」

「あー……眠いな………なんか疲れた………先に休ませて……もらうぜ……あー……寒いな……それに……まっ……く……ら……だ………」

「ああ……何で……こうなるんだよ………俺は………じ……ゆ……う……に………」

「ヘッ……ヘヘヘッ……やるな、今度こそ……勝てると思ったのにな………オイオイ……何泣いてんだよ……笑えよ………最後ぐらい笑って……見送って……く……れ………」

「クソッ……何でなんだよ………何で……俺じゃないんだよ……何でお前が………クソッ……こんなの不公平じゃねぇか………何で……俺が……死な……な……く……ちゃ………」

「お前程の奴が……今更何を……躊躇ってるんだ?………どうした?やれよ………殺せ!!!!」

「ヘヘヘッ……最後の相手が………お前で良かった………最高に楽しかったぜ………それじゃあな……地獄で待ってるぜ………」

「嫌だ!!助けてくれ!!俺は死にたくないんだ!!俺はならなくちゃいけないんだよ!!自由に!!嫌だッ!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!死にたくない!!やめてくれ!!死にたくない!!!」

「強い者が……弱い者を殺す………ただそれだけだ……なのに……何故……お前は……泣……い……て………」

「俺は降りるぜ………殺すのも………殺されるのも………もうゴメンだ………」

「ヒャハハハハ!!気分はどうだ?テメェはこれから先、俺達の死を背負って生きてくんだよ!!例え自由になれたとしてもな!!せいぜい苦しみな!!苦しんで苦しんで………苦しみなから生きる………その様を……あの世……から……見て……い……て……や………」

「あーあ、なってみたかったな」


「自由に」


------
---
-


ズンッッ

ケイ「ガハッ……ハッ……ハッ……ハッガッ………ッッ……!!」グググッ

一夏「……」

クロエ「やはり……」

鈴清「「そんな……!」」

真耶「まだ動けるとは………」

セシリア「お止めなさい!もうあなたの負けですわ!!」

ケイ「負け?冗談じゃねぇぞ……シケた事言って……んじゃねぇよ、クソッタレが……ゲームはこれからだぜ………」

ジェイ「ケイ………!!」

エム「やめろッ……このままじゃ……お前は………!!」

ケイ「ベットは済んだか?ならショーダウンだ……だが俺には勝てねぇぜ………俺が勝つからな……そしてテメェ等の自由を奪い尽くしてやる………!!」

クロエ「……」スッ

一夏「やめろ、クロエ………俺がやる」

クロエ「……了解しました」

ケイ「次のラウンドの……準備は出来てるか?」

一夏「いつでも……だけど、お前の負けだ」

ケイ「はぁ!?くだらねぇタワゴト言ってんじゃねぇよ!!」

一夏「俺は絶対にお前を勝たせはしない」スッ

ケイ「があッッ!!!」ドンッ

一夏「絶対にな」ギャンッ


ドゴォッッ


ケイ「うおおぉぉぉぉぉぉッッ!!!」ガシャアァァァンッ

パラパラパラ……

一夏「ゲームは終わりだ」スッ

カキィンッ

ジェイ「なッッ……!?ケイが負けたとしても僕はまだ負けてない!!勝つのは僕達だ!!」グググッ

エム「はあッ!!」ドンッ

一夏「お前等……いい加減にしろよ!!!」ドギャアッッ

エム「ぐはぁッッ!!」ズシャアッ

ジェイ「ガハッッ……!!」ズシャアッ

セシリア(高速で移動している二人を一撃で……!?)

鈴(クロちんですら、あいつの攻撃を捉えられなかったのに……)

清(あり得ない……機体を交換する前より速いはずなのに………)

真耶(まさか織斑くん……先程まで本気を出していなかった……?)


ジャッッ ジャパッ ジャコンッ キイィィィィンッ


千冬『侵入者に告げる。速やかに武装解除し投降しろ。貴様等の身柄は我々が預かる』

楯無「侵入者さん達、聞こえたかしら?抵抗するなら腕の立つ生徒達と、選りすぐりの教員を含めた百人以上を相手にする事になるわ」

千冬『山田先生、オルコット、今の内に凰達を』

セシリア「えっ?あッ、はッ、はいッ!あら?通信が?」

真耶「と、とにかく今は急ぎましょう」

一夏「ふう……これで、一件落着だな」

クロエ「そう……ですね」

一夏「どうしたんだ?」

クロエ「いえ、少し……懸念している事が……」

ジェイ『モノクローム・アバター、こちらファントムペイン、援護を要請する。迅速にね』

ジェイ『………』

ジェイ『モノクローム・アバター、聞こえてるかい?』

ジェイ「チッ……あいつ等……」

エム『突破するか?』

ジェイ『そんなの決まってるじゃないか』

ジェイ『ケイ、いけるかい?』

ジェイ「……ケイ?」

エム『ケイ?どうしたんだ?何故返事をしない?』

エム「ケイ!」

ジェイ「ッ!」バッ

ズドンッ ガァンッ

エム「ッ!!」

ケイ「ッ……!?」

クロエ「……」シュウゥゥゥ

一夏「……」ガチン

千冬『動くな、現在貴様等が行うのは武装解除する事だ』

ジェイ「チッ……」

エム「ケイ……」

社長『ここまでのようだな。ファントムペイン』

ジェイ「ッ!?」

一夏「……?」

クロエ「……」

ジェイ『……ここまで?ハッ、そんな訳ないでしょ。まだゲームは終わってないよ』

社長『モノクローム・アバターは作戦を放棄し消失、人質は解放され、貴様等も織斑一夏に敗北した』

ジェイ『参加してない奴がうるさいよ。黙っててくれないかな?』

社長『作戦は失敗した。速やかに撤退しろ』

ジェイ『僕や、僕達を、操れるのはゲームのルールだけさ』

社長『……お前達は勘違いをしているな、途方もなく愚かな勘違いを、な……』

ジェイ『……何をする気?』

社長『スプリングワン、ウィンターツー……お前達に思い出させてやろう』



『CALAMITY SYSTEM STANDBY』


ケイ「ッ………な……ん……だ……?」

社長『私は駒を操る主であり、ゲームのルールそのものだと言うことを』


『START-UP』


社長『そしてお前達はただの駒だ』

ケイ「うッッ!!ぐあぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

一夏「な、何だ!?」

クロエ「……!?」

ジェイ「ケイ!!貴様何をした!!?」

社長『サマーツーを破棄した。そこにいるのは最早全てを破壊するカラミティゴーレムだ。そいつを囮にし速やかに撤退しろ』

ジェイ「ふざけるな!!貴様なんて事を!!!」

エム「ケイ!!」ドンッ

ケイ「うあぁぁぁ!!ッ……あがッッ……!!」

エム「ケイ!!聞こえるか!!?機体を捨てろ!!今すぐに!!」

ケイ「がッッ……ぐッ……ぁぁああッッ!!!」ドゴッッ

エム「ぐはッッ!!」

ジェイ「ケイ!!」ガシッ

ケイ「ケイッッ!!俺……からッ……は……なれ……ろッッ……!!ぐッッ……あぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

ジェイ「カッッ……ハッッ……!!」ドゴッッ

『『危険!!操縦者の生命反応低下!!』』

一夏「クロエ!!!」ギャンッ

クロエ「はい!!」ギャンッ

ガシッ

ケイ「うあああぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

一夏「何だこれ!?ISがやってるんじゃないのか!!それに何てーーーうわッッ!!?」バシッッ

クロエ「ツヴァイでも抑えるのが……ッッ!!」ガスッッ

ケイ「ああッッ!!ッッ……ふざけんじゃッッ……ねぇぞッッ……!!俺はッッ……俺はあああぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」ブンッッ

一夏「うぉぉぉぉぉぉッ!!?」ズシャアッ

クロエ「ッッ!!?」ズシャアッ

ケイ「ああッッ………はあッッ……ッッ……ぐッッ……!!」ボダボタボタ

一夏「ッッ!!?」

クロエ「なッッ!!?」

社長『ほう……以外にしぶといな、流石はプロトタイプの生き残り』

ジェイ「や……め……ろッ……!!」

エム「ケイ……!!」

一夏「ッ……ッッ………!!?」

クロエ「あ……ああ……ああッ……嫌ッ……!!」ガタガタ

ケイ「お……ぐ……があ……あッッ……俺はッッ………」ボダボタボタ

ケイ「こッッ……こんなところでッ……俺はッ……ッ……俺は死ねないんだよッッ……!!」ゴボッ

ケイ「俺はッ!!……ならなくちゃッッ……いけないんだよッ……!!俺が殺したッッ……皆の分までッッ……!!!」

一夏「だ……駄目だ……やめろ……」

ケイ「好きな……だけ……奪い……好きなだけ……あ……た……え……る………ッッ!!」ゴボッッ

バシャアッッ

一夏「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」バッ

ケイ「そ……ん……なーーー」


ガシャンッ


一夏「ッ……!!!」スカッ



『『生命反応 消失』』


一夏「ッ……ッッ……ッッ……う……うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

クロエ「嫌ッ……違う………私は……私はッッ……」ガタガタ

ジェイ「あ……ああ………」

エム「ケ……イ………」

一夏「何でッ!!何でなんだよ!!何でお前が死ななきゃならないんだよ!!!」

一夏「何でッ……お前が……何で……こんな………」ガクッ

千冬『各員、気を抜くな。何か来るぞ。我々で処理するんだ』

楯無(これは……ちょっとキツイわね……)

サラ(織斑さん、クロニクルさん………)

真耶「………」ギッ…

千冬『一夏、聞こえるか?一夏?』

一夏「ううッ……ッ……うぅぅぅッ………」グスッ

プシュウゥゥゥゥゥゥ

一夏「な……あ……ッッ!!?」

ケイ「……」ガシャッ


『生命反応なし』


一夏「お前……まさか……!!!」


ズドンッ

ケイ「……」ゴバァッ

ガシャァンッ

一夏「ッ……山田さん!!?」

真耶「邪魔です。退いてください」

一夏「ッ……ッ!!」ドンッ

ケイ「……」チュイィィィン

千冬『攻撃!!!』

真耶「……」ズドンッドンッドンッドンッドンッドンッ

楯無「ふう……やるしかなさそうね」ジャパッ

サラ「いささか不本意ですが」ジャキッ

エース「仕方ないわよ」バカッ ボボボボボボッ

部長「なぁに気にする事ぁねぇやい!!」ズドドドドドド

キャプテン「南無三、ってね」チュゴォンッ


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


ケイ「……」ゴバァッ バギンッ バキャッッ

一夏「ISが……体を動かしてる、のか……死んでるのに………違う……この為に……死んだんだ………殺されたんだ………」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォ……


楯無「やった、わよね?」ヒュウゥゥゥン

サラ「爆煙が邪魔ですね」ガシャシャシャシャシャシャシャシャ

エース「あたし等ーーー特に先生方はアリーナが吹っ飛ぶぐらいやったのよ?」

部長「てやんでい!!奴さんもいい加減で年貢の納め時ってもんよ」シュウゥゥゥ

キャプテン「おっ、煙が晴れますよー」シュウゥゥゥ

真耶「……」ガゴンッ フイィィィィィン

ケイ「……」バチッ バチバチバチッ

楯無「ふう……世話焼かせてくれちゃって……」

真耶「……」フィィィィィン

楯無「あ、あの……山田先生?ガトリング構えてますけど……目標、沈黙してますよ?それにあちこち取れちゃってますからそうそう何も出来ませんよ」

真耶「……そうですね」ィィィンッ

真耶(これで終わり?こんなに簡単に?そんなはずない……こんなつまらない終わり方するはずが……まだ……まだ何か……何かあるはず………)

楯無「ふう……全く……」



『警告!!目標内部に異常エネルギー反応あり!! 急激に増幅中!!自爆の可能性あり!!』


一夏「ッ!?」ドンッ

一夏(大気圏外までの最適ルートは……そこか!)ギョインッ ガシッ

サラ「織斑さん?」

楯無「一夏くん、どうしたの?」

一夏「こいつが自爆しようとしてます!だから俺がこいつを安全なところまで持って行きます!!」バンッ

楯無「持って行くってそんなーーー」


ギャンッ……ゴオォォォォォォォォォッッ!!


楯無「きゃあっ、って一夏くん!!」

真耶「無駄ですよ。シュトゥルムならまだしも私達の機体では追い付けません」スッ

楯無「ッ……分かっていますよ。そんな事……でも、これ以上彼に辛い思いをさせろって言うんですか!?」

真耶「そうなってしまった以上、仕方ないでしょう」

サラ「バイロットを殺し、最後には自爆……何という事を……」

エース「外道のする事よ……こんなの……」

部長「一の字……あんのバッキャローが良い格好しやがって………」

キャプテン「……こりゃ流石に寝覚めが悪くなるね」



ゴオォォォォォォォォォォォォォォォ


千冬『一夏!!返事をしろ!!一夏!!』

一夏『姉ちゃん、俺なら大丈夫。ちゃんと戻るから安心して待ってて』

千冬『そういうーーー』ピッ


ゴオォォォォォォォォォォォォォォォッッ………


一夏(外気圏に到達……後は)チラッ

ケイ「……」

『爆発まで残り10秒…9…8…』

一夏「ッ……」


グッ…


一夏「……ごめん」パッ

『3…2…1…』


『0』カッッ

楯無「大丈夫?クロエちゃん」

クロエ「ちっ……ちがうっ……わっ……わた……わたしっ………!!」ガタガタ

楯無「大丈夫、大丈夫よ……クロエちゃん」ギュウッ

楯無(パニック症状……何かトラウマでもフラッシュバックしたのかしら………)

真耶「……」

サラ(もしかしてクロニクルさんは……)

エース「まだ降りて来ないわね」

部長「どこで油売ってやがんでい!ったく!」

キャプテン「おっ?来たんじゃない?」

……ォォォォオオオオッッ フワッ

一夏「……」ギョインッ

サラ「織斑さん、御無事で何よりです」

一夏「零式のおかげです。それよりもクロエが」ストッ

クロエ「ちがうっ……ちがっ……うんですっ……わたしっ……!!」ガタガタ

楯無「この通り、私じゃ駄目みたいなの……」

一夏「俺に任せてください」

一夏「クロエ」

クロエ「ごっ……ごめんっ……なさいっ……わっ……わたしっ……!!」ガタガタ

一夏「クロエ・クロニクル」ギュウッ

クロエ「わたしっ……のせいでっ……!!」ガタガタ

一夏「違う、クロエのせいじゃない。誰もクロエを責めてない」

クロエ「でっ……でもッ……!!」ガタガタ

一夏「お前はクロエ・クロニクルなんだ……ドライツェーンじゃない……そうだろ?クロエ・クロニクル」ナデナデ

クロエ「うぅ……ああっ……わたしは………」ポロポロ

一夏「もう怖くないからな、大丈夫、大丈夫だからな……クロエ・クロニクル」ナデナデ

クロエ「わ……たし……は……クロエ……」ポロポロ

一夏「そうだ。お前はクロエ・クロニクルなんだ」ナデナデ

クロエ「クロエ……クロニクル……」ポロポロ

一夏「そうだよ。だからさ」ギュウッ

一夏「ここにいてもいいんだよ」

クロエ「っ………わ……かり……ました……」カクッ

クロエ「……」スースー

一夏「……」ソッ

一夏「お騒がせしました。救護班のところへ連れて行きます」スクッ

楯無「一夏くん……クロエちゃん、大丈夫なの?」

一夏「はい、大丈夫ですよ。何でこうなるかは詳しい事はあまり分かりませんけど、多分何か色々と重なっちゃったみたいで……」

一夏「えっと……その……クロエって結構デリケートな奴なんです」

楯無「そうね……ガラス細工の様に繊細な子ね」

一夏「ははは、そうですね……それじゃあ」

楯無「一夏くん」

一夏「どうかしました?」

楯無「無理……しちゃ駄目よ」

一夏「……俺は俺に出来るだけの無理をしてるだけですから、大丈夫ですよ」

楯無「そう……ならいいんだけど」

一夏「それじゃあ」

楯無(自分に出来るだけの無理、ね……それでも無理は無理じゃない……それに、何が大丈夫よ)

楯無(そんな必死で取り繕った顔で言われても説得力の欠片もないわよ……)

楯無「……馬鹿ね」

サラ「気丈ですね。彼は」

楯無「そう見える?」

サラ「いえ、気丈であろうとしている、と言ったところですか」

楯無「背伸びも大概にしないと後でとんでもないしっぺ返しを食らうのにね」

サラ「その通りです」

楯無「はあ~若いっていいわね~」

サラ「おや、もうロートルですか?」

楯無「そうでもないのよね~これが」

エース「それにしても……一発目の爆発だけでも被害はかなりのもんね」

キャプテン「織斑くんが持ってったのが爆発してたらどうなってたやら」

部長「あっ!爆発で馬共が暴れてやがっかもしんねぇ!!」

エース「あんたも大変ねぇ」


-----

クロエ「……」パチッ

クロエ「ここは……私は……確か……」

一夏「おう、やっと目が覚めたか」

クロエ「一夏様……それに目が覚めた、という事は私、もしかして……また、ですか……?」

一夏「ああ、そうだよ」

クロエ「あ、あの……お怪我はありませんか……?」

一夏「この通りだ。ま、今回はそんなに酷くなかったからな」

クロエ「そう……でしたか……えっと……その……あの……もっ、申し訳ありません……」モジモジ

一夏「いいよいいよ。もう慣れっこだからな」

クロエ「そう……ですか……」モジモジ

一夏「やっぱり……自分がどうなったのか………何も覚えてないのか?」

クロエ「申し訳ありません……覚えてません……彼等を追い詰めたところまでの記憶はあるのですがそこから先は………分かりません」

一夏「……そっか、やっぱりそうだよな」

クロエ「申し訳ありません……」

一夏「あんまり気にするなよ。それよりも、調子はどうだ?動けるか?」

クロエ「は、はいっ、もちろんですっ。もう大丈夫ですっ!」

一夏「よし、なら鈴と清のお見舞いに行くぞ」

クロエ「はい!」

一夏「と言っても、行ったところでどうせ包帯グルグル巻きで寝てるだろうけどな……」

クロエ「やはりお二人は重傷でしたか……」

一夏「急所に一発も食らわなかったとしても爆発とかも食らったらしいからな……生命維持装置なしなのが不思議なぐらいだ」

クロエ「絶対防御のおかげ、ですね」

一夏「ったく……あの馬鹿共、やめろって言ったのに龍咆の接射までやりやがったもんな」

クロエ「砲身が自壊するまで威力を上げてましたからね……電撃と衝撃は凄まじいものだったでしょう……」

一夏「まあ、それでも……生きてるから何よりだ……うん……」

一夏「そうだよ……生きてるんだよ……」ボソッ

グッ……

クロエ「一夏様?どうかしたのですか?」

一夏「……いや、何でもない」

一夏「とにかく鈴と清の病室に行こうぜ」

クロエ「は、はい……」

クロエ(一夏様……私の記憶のない間に何かあったのでしょうか……それに彼等は……?)


ガラッ

一夏「おーい、鈴と清はーーー」

包帯女「「んふふぁー!!!」」ガバッッ

一夏「へっ?」

クロエ「!?」

セシリア「動いてはいけませんわ!!」ガシッ

箒「こら、大人しくしろ!!」 ガシッ

包帯女「「んふぁー!!ふあせー!!」」ジタバタ

包帯女「「ふんぐっっ!!」」ビタッッ

バターン

包帯女「「ふぶおぉぉぉ………めっはいへぇ……!!」」ピクピク

セシリア「まだ治ってもないのに動くとそうなりますわ。もうっ」

箒「はあ……さっき起きたところでな、グルグル巻きが気に入らなくて包帯を外そうとしてたんだ」

一夏「起きた……のかよ……しかも包帯まで外そうとしたって……」

クロエ「いくら治療されたとはいえ……信じられませんね……」

包帯女「「ん!!」」ズイッ

セシリア「駄目ですわ」

箒「包帯は外さんぞ」

包帯女「「んはう!!んひほほ!!ほうはひ!!」」スッスッ

一夏「口元の包帯を外せ、って事だろ?」

包帯女「「!!」」コクコク!

一夏「箒、セシリー、外さなくていいぞ」

包帯女「「!!?」」

一夏「お前等は普段うるさいからな、たまには静かな時もないとな」

包帯女「「んふふぁー!!!」」ガバッッ

一夏「そうはイカの何とかっと」チョン

包帯女「「うぐっっっ……!!!」」ビタッッ

バターン

包帯女「「お゛……お゛おおぉぉぉぉ………」」ピクピク

一夏「怪我人が騒ぐなっての……」ヤレヤレ

セシリア「クロエさん、もう大丈夫ですの?」

箒「倒れたって聞いたから心配したんだぞ」

クロエ「もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」ペコリ

一夏「それにしてもーーー」


ガラガラッ バァーンッッ


女医「はあっ……はあっ……!」

一夏「……はい?」

女医「あ~んら、もぉ~う起きたのねぇ~凰鈴音ちゃんに凰清音ちゃん……んん~!エクゥセレンツ!ブゥリリアァ~ンツ!素ん晴らしいわぁ!」ワキワキワキ

女医「さぁ~その素ん晴らしい体を更に素ん晴らしい体にしてあげるわ~!!」ワキワキワキ

「目標発見ッ!!確保ォーッ!!」

ダダダダダダダッ

女医「えッ、ちょ、ちょッ、いやんっ……どこさッ、こッ、このッ、離しなさいッ!!」ガシッ

「先生駄目ですよ!!勝手に手術しようとしちゃあ!!」グイグイ
「先生落ち着いて!!」グイグイ
「勝手にやったら国際問題ですよ!!先生ってば!!」グイグイ

女医「離しなさい!!手術ッ!!私に手術をさせなさぁいッッ!!あの体をッッ!!」

「しっ、失礼しました!!」


ガラガラッ ピシャッッ


一夏「……え?」

箒「な、何だったんだ……」

セシリア「……」ポカーン

クロエ「国連から派遣されてきた医師?の方でしょうか……」

鈴「で!どうなってんの!!」

清「どうなってんのさ!!」

一夏「何がだよ」

セシリア(結局外されましたわね……)

箒(二人とも、嬉しそうだったな……)

クロエ(しかしお二人とも元気ですね……)

鈴清「「IS学園!!」」

一夏「ボリューム下げろって……状況終了と同時に俺が束姉ちゃんところからリペアーズを呼んで現在被害のあった施設を修復中だ。フル稼働してるから明日の朝にはもう大方直ってるよ」

鈴清「「リペアーズ?」」

一夏「その名の通り万能修理ロボットだよ。建物から電子機器から土地に至るまで何でも直せるAI搭載の人型ロボット」

鈴「すっげー!」

清「見たい見たーい!」

一夏「窓見りゃ見えるって」

鈴清「「どれどれー!ん?」」

鈴清「「んん?」」

鈴清「「……」」ジィーッ

一夏「どうしたんだ?」

鈴清「「あれって……ISじゃあ……」」

一夏「開発者曰く、IS技術のちょっとした応用、だそうだ」

鈴清「「へー!すっげー!!」」キラキラ

セシリア「本当に何でも直せますのね……あら、穴まで埋められてますわ……」

箒「さっき間近で見たが窓ガラス程度なら一瞬だったぞ」

クロエ「必要ならば改修も行いますよ。例えば窓ガラスは強度の高い強化ガラスに変更しています」

箒「その強化ガラスの強度はどれぐらいなんだ?」

クロエ「ライフル弾を弾き、割れた際にガラスは破片にならず完全な球体となります」

箒「そ、そうなのか……すごいな……」

セシリア「そんなものを何故……篠ノ之博士は今まで隠してらしたのでしょう……」

一夏「ああ、あれってこの間出来たばっかりなんだよ。だから今回が初お披露目」

セシリア「出来たばっかりで初お披露目……だ、大丈夫ですの……?」

一夏「テストだけは数えきれないぐらいやってるからな。問題点は全て改善済、実戦投入に何の問題もないレベルに仕上がってるよ」

鈴清「「……あのさ、一夏」」

一夏「ん?どうしたんだよ、さっきまではしゃいでた元気はどこに行ったんだ?」

鈴清「「あいつ等、どうなったの?」」

一夏「ッ……」

セシリア「凰さん、いくら一夏さんが事件の当事者とはいえ、彼女達の処分までは知らされるとは限りませんわ」

鈴清「「そっか……そうだよね………」」

箒「一夏?大丈夫か?」

一夏「ああ、俺なら大丈夫だ……」

箒(一夏のこの反応……まさか……あいつ等は……)

セシリア「しかし、IS学園の保有する戦力とお二人の力がありましたから、彼女達をみすみす逃がすという事はあり得ませんわ!」

セシリア「そういえば……お二人は何故あのタイミングで機体の交換をなさったのですか?」

クロエ「機体の交換、というよりは“本来の機体に戻した”のです」

セシリア「へ?」

クロエ「零式は本来一夏のISで、ツヴァイフォーミュラは私のISなんです」

鈴清「「は?」」

セシリア「な、なるほど……しかし何故……機体の交換を……?」プルプル

クロエ「それは……機体のリミッターとする為です」

クロエ「御存知の通りツヴァイは重装甲型重砲撃機、それに対する零式は高機動型格闘機です。原型こそ同じですがこの二つは戦闘においては全く異なった機体です」

クロエ「操縦者を交換する事で、機体性能を必要以上に発揮させないようにしたのです」

セシリア「あ、あの性能で……あれだけの性能でありながら……リッ、リミッターが……かかっていると……?」プルプル

鈴清「「……」」ポカーン

クロエ「はい、それに加え機体にもリミッターを施し、機体性能を20%しか出せないようにもなっています」

セシリア「つまりは……」

鈴「二重のリミッター」

清「付きって事?」

クロエ「はい、そうです」

セシリア「……」ガクッ

鈴清「「……」」グテーン

クロエ「どっ、どうなさったのですか?」オロオロ

セシリア「二重のリミッターがかかっていながら……」ズーン

鈴清「「勝てなかったあたし達って……」」ズーン

クロエ「わっ、私達も機体性能を全く引き出せていなかったという訳ではありませんっ。そうですっ、基本的な操縦が同じでしたので機体特性や武装、それによる戦闘方法が大きく異なったのでーーー」アセアセ

鈴清「「クロちん、もういいよ」」

クロエ「えっ……あっ……そっ、その……はい、分かりました……」

セシリア「何という事でしょうか……」ズーン

鈴清「「うん……まあ……仕方ないよね……」」ズーン

クロエ「うぅ……申し訳ありません……」

箒「一夏、本当に大丈夫か?」

一夏「悪い……ちょっとまだ……気持ちの整理がつかなくて……」

箒「今日はもう休め、二人の面倒なら私とセシリアで見る。お前だって疲れているんだ」

セシリア「そうですわ。いつもの調子が全く見られませんもの……事件が終わってからずっと休まれてないのでしょう?」

一夏「ああ、セシリーと箒が来るまで鈴と清、来てからはクロエに付きっきりだったからな……」

セシリア「なら少しでも横になるべきですわ」

一夏「いや、その前に……あいつ等がどうなったのかだけは言わせてくれ………鈴も清も知りたいだろ」

鈴清「「……」」コクン

一夏「俺とクロエが人質を救出して先生達や先輩達とあいつ等を追い詰めた。そしたら突然、ケイの生命反応が低下し始めたんだ」

一夏「エムやジェイ、俺達もケイを助けようとしたんだけど………ケイの生命反応低下は体内のナノマシンによるもので、何の対策も持っていなかった俺達にはどうしようもなくて………」

一夏「あいつは言ってたんだ………俺はならなくちゃいけないんだよ。俺が殺した皆の分まで、好きなだけ奪い好きなだけ与える。そんな………」

一夏「そう言って……必死で何かに手を伸ばして……あいつは死んだーーー殺された……だからあいつが何にならなくちゃいけなかったのかは分からない……でも、それがあいつにとって凄く大切な事だったんだと思う………」

一夏「俺……何も出来なくて……あいつを助けられなくて……泣いてた……そしたら、生命反応が完全に消えて倒れていたはずのあいつが起き上がったんだ」

セシリア「ッ!?」

鈴「それって……」

清「まさか……」

一夏「機体が自立稼働を始めたんだ……中に残ったいつの体を……ケイを……人をただの部品として動き始めたんだ……その為にあいつは……あいつは殺されたんだ………!!」

グッ……!!

箒「一夏……」ギュッ

一夏「……悪い、箒……」グスッ

クロエ(なるほど……彼はやはり……私と同じ……だから私はあの時………)

セシリア「それで……動き始めたそれは……どうなりましたの……?」

一夏「……何かする前に山田さんが一発撃って、邪魔ですって目の前にいた俺が退いて、包囲していた先生達や先輩達から集中攻撃されて……機体のあちこちがバラバラになっていって………」

一夏「攻撃が止んで、活動停止したと思ったら……今度は機体が自爆しようとしたんだ」

鈴清「「自爆……」」

セシリア「そんな!!」

箒「ッ……」

クロエ「……」

クロエ(私達が駆け付ける前の爆発は一体何だったのでしょうか……)

一夏「俺とクロエにしか自爆するのが分からなかったから……俺はすぐにあいつの機体を持って空へ向かって全力で飛んで……宇宙空間で爆発させた………」

一夏「だからあいつは……ケイは……機体と一緒に爆発の中に消えた………」

一夏「その間にエムとジェイの二人は……逃亡した……んだと……思う………」

鈴清「「………」」

セシリア「何という事を……人を……人の命を一体何だと思って……」

一夏「ああ……そうだよな……本当に……人の命を何だと……ッ……思ってッ……!!」グスッ

箒(何を……言えばいいんだ……今の一夏に……私が出来る事は……ないのか……)ギュッ

クロエ「……」

セシリア(こんなお二人を見るのは始めてですわ……無理もありませんわ……目の前で人が死ぬのを見てしまったのですから………)

セシリア(もし私だったのなら……今頃一夏さんのようにしている事すら出来ませんわ………)

鈴「ごめんね……一夏……」

清「あたし達が……弱かったから……」

一夏「そ、そんな事ない!鈴も清も悪くない!あいつを救えなかったのはッ………救え……なかった……のは……ッ~!」ポロポロ

一夏「ッ……!」ゴシゴシ

一夏「ごめん、何か湿っぽくなっちゃったな。もう風呂入って寝るよ」スクッ

一夏「皆、また明日」

箒「ああ、しっかり休めよ……」

セシリア「お休みなさい」

鈴清「「お休みーまた明日ねー」」

箒「クロエ……クロエ?お前はいいのか?」トントン

クロエ「えッ、あッ!はッ、はいッ!はいッ!?あっ、わっ、私も失礼します!お休みなさい!」ガタッ ペコリ タタタッ


ガラガラ……

箒「……」

セシリア「……」

鈴清「「……」」チラッ

鈴清「「……」」コクン

鈴「んっんん!げっほごっほ!セっちゃん、腹減った!」

セシリア「えっ?あ、はい」カチャッ

清「あー……んっんんーあ゛ー喉乾いちゃったなー!」

箒「……ほら」スッ

鈴「調子狂うよねー」モグモグ

清「狂うよねー」ゴクゴク

セシリア「鈴さん!食べながら話すのはマナー違反ですわ!」

鈴「ほーい」ゴクン

箒「じっとしてろ、包帯が緩まっている」ギュッ

清「んがっ!」グンッ

鈴「あんな一夏ん初めて見たね」

清「一夏んでもあんな顔するんだね」

鈴清「「ねー」」

セシリア「いくら何でも失礼ではありませんか?」

鈴清「「何だよーならセっちゃんは知ってたのかよー」」ブーブー

セシリア「……始めて見ました。一夏さんのあの様なお姿」

鈴「そらみろ、そーだろー」ブーブー

清「箒ちんは?」

箒「私は一度だけある………ずっと昔に一度だけ……」

箒「多分今回の事は……それが関係しているんだと思う………一夏に両親がいないのは知っているよな?」

セシリア「はい」

鈴清「「モチのロン」」コクコク

一夏「じゃあ“何故いないか”は?」

セシリア「それは……知りません」

鈴清「「はぐらかされた事なら何度もあるよ」」

箒「あれは一夏が三才の時だった。父親と母親、千冬さんと一夏、四人の織斑家にもう一人家族が増える事になったんだ」

箒「名前は百秋(ゆしゅう)、女の子だった。一夏は妹が出来る、ってずっと嬉しがってた」

箒「でも、一夏のお母さんはあまり体が強くなくて、千冬さんや一夏を産む時でもかなり危険な状態になりながらも二人を産んでいたらしい」

箒「だから医者には百秋を産む時はお母さんか百秋、二人の内どちらか死ぬって……言われてたんだ」

箒「当然一夏のお母さんは百秋を産む事にした。今思えば聞くまでもない事だが理由を聞くと、私が今こうして千冬と一夏と一緒にいるから、と笑顔で言っていた」

箒「そんなお母さんの姿を見ていたからか、千冬さんと一夏の二人は少しの不安も感じてなかった。織斑家全員が百秋が産まれて五人家族になるのをとても楽しみにしていたんだ」

箒「お母さんのお腹が大きくなるにつれて、皆とても嬉しそうにしていたし、待ち遠しくて仕方なさそうだった」

セシリア「強い……お母様でしたのね……」

鈴清「「うん……」」

箒「だが出産当日……お母さんと百秋……二人とも死んでしまったんだ………」

箒「この辺りの事は詳しくは知らない……一夏のお父さんや千冬さんにとっても辛い事だったから………子どもながらに聞けなかった………」

箒「ただ覚えているのは……状況が全く理解出来ていない一夏とずっと泣いていた千冬さん、二人に死んだ事を教え、優しく慰めるお父さん……でも、そんなお父さんも二人がいないところで……ずっと、たくさん泣いていた………」

箒「ごめん、ごめん、って誰に何て謝っているのかは分からなかった………」

箒「二人のお葬式になると一夏も幼いながらに二人の死を理解していた。だから式が始まる前からずっと俯いていたし、最後には泣いていた……千冬さんもずっと一夏を慰めていたが……最後には一緒に泣いていた………」

箒「そんな二人を一夏のお父さんは優しく抱き締めていた………私が見たのはそこまでだ………私は泣きじゃくる二人を見ていられなかったから………」

箒「それに私は三人を見ていて……何か嫌な胸騒ぎがずっとしていて……どうしようもなく不安だったのもあった………」

箒「お葬式が終わった帰り、三人の乗った車が事故に会った……」

箒「トラックの居眠り運転、だったそうだ……車は大破していて一夏のお父さんは即死……後ろに乗っていた二人は奇跡的に軽傷で済んだ………」

箒「後から聞いた話では……一夏のお父さん自分がトラックに潰されると分かっていながらも………ハンドルを切ったのかもしれないって………二人を守る為に………」

箒「まだ何も聞かされていなかった私は父さんや母さんを引っ張って二人のいる病室へと走った。嫌な予感がしていたんだ………もしかして千冬さんや一夏が大変な事になっているかもしれない……そんな漠然とした不安があったから………」

箒「千冬さんと一夏は少し包帯を巻いているぐらいで、ほとんど怪我はなかった。その時私は心底ホッとした。自分の不安がただの杞憂だった事に」

箒「そんな安心に浸りながら千冬さんや一夏と話すと……恐ろしい事に気が付いた………」


箒「一夏は……お父さんやお母さん……百秋の記憶の何もかもを無くしていたんだ………」


セシリア「そんな……!」

鈴清「「ッ……!」」

箒「事故のショックらしい……だから一夏は未だに家族の事を何も思い出せないし……事故の後遺症で小学校までの事を何も覚えていない………」

箒「私は一夏が怖かった。何度家族の事を聞いても、あれだけ悲しんでいたのに本当に何も分からなくなっていたから………一夏がまるで自分の知らない何かになってしまったんじゃないか、って思えて………」

ギュッ……

箒「すまない、話が逸れたな。引き取り手のなかった二人を私の父さんが引き取った。ご近所付き合いも良くしていたし、父さんと一夏のお父さんは親友だったから」

箒「一夏は記憶を無くしていたからか、篠ノ乃家で暮らす事に何の抵抗もなかった。けど、千冬さんはよく泣いていた………」

箒「一夏は突然泣き出す事があった。一夏自身は何故涙が出るのか分からないのに……ただ泣いて……千冬さんがそれを慰める。そんな事がよくあった……」

箒「全く笑わなくなった千冬さんや一夏の為に父さんや母さん、姉さんや私は二人が泣かなくていいように、家族として出来る精一杯の事をした」

箒「しばらくして二人は笑うようになった。千冬さんは父さんに剣を教わり、一夏は前の活発さを取り戻した。けど、突然泣き出すのだけはどうしようもなかった………」

箒「そして私と一夏が小学生三年生の時、織斑家の墓参りが終わった次の日、一夏がいなくなった」

箒「千冬さんが一夏までいなくなった、と泣き崩れ、父さんは真っ先に家を飛び出し町中を探し回った。母さんと姉さんは千冬さんを慰めながら私を連れて探し回った」

箒「一時間ぐらい探し回っても一夏が見つからなくて、父さんはあちこちに電話して親戚や近所の人、町の人や警察も集まって一夏を探した」

箒「千冬さんは言ってた。私のせいだ。私が一夏にお父さんとお母さんと百秋は“いなくなったんだ”って教えたから。だから一夏はお父さんとお母さんと百秋を探しに行ったんだ、って……泣きながら言ってた………」

箒「夜になって、五キロ程離れた山で一夏が見つかった。保護された一夏は泥だらけで小さな怪我がたくさんあった。けど、見つかった時から泣いていたりなんかは全くしていなかったらしい」

箒「誰よりも速く、一夏に駆け寄った千冬さんが一夏を殴った。その場所にいた誰もが驚いていたし、一夏が一番驚いていたと思う」

箒「お父さんとお母さんと百秋は死んだんだ。探してもどこにもいないんだ。だから二度と帰ってこないんだ。死んだんだ。なのにお前までいなくなるな」

箒「そう怒りながら大声で泣き出した千冬さんが一夏を抱き締めて、一夏も謝りながら泣き出した」

箒「ちょっとだけだけど、姉ちゃんの言うお父さんやお母さんや百秋がいるんだって思い出したから探しに行ったんだ。でも家に行ってもどれだけ探してもどこにもいなくて、姉ちゃんに喜んで欲しかったから、ごめんなさい、って泣きながら言ってた」

箒「覚えていない家族、その事で泣く千冬さん、何故か悲しくて出る涙、名前の違う家族、前まで友達だった姉妹、違和感を覚える家、分からない記憶、………」

箒「一夏がそんな行動を取った理由なんて数えきれないぐらいあったし………自分でも分からないものでずっと悩んで、苦しんでいたんだ………なのに私達は一夏に何も出来ていなかった………」

ギュッ……

箒「一夏はその時あちこち探し回って、千冬さんに言われて初めて、本当に理解したんだと思う」

箒「家族の死と千冬さんの悲しみを」

箒「その日から一夏は、人の“死”や“悲しみ”に敏感になった」

箒「鈴、清、お前達は見た事ないか?軽はずみで死ねと言った奴に殴りかかったり、人の事なのにまるで自分の事のように悲しむ一夏を」

鈴「えっ?う、うん、怒って飛びかかるなんてしょっちゅうあったよね」

清「うん、一緒になって泣いていたりもしょっちゅうあったよね」

箒「だから今回もきっとそれなんだと思う……人が死ぬのを目の前で見たからそれが強くて……一夏は昔から優しかったから……」

箒「あんなに……泣くぐらいまで………」ギュッ

鈴「……ふんっ、馬鹿だよ、一夏んは……大馬鹿たれだよっ………」

清「何があいつにとって凄く大切な事だったんだと思う、だよっ……」

箒(一夏が泣いてるのに……私は何も出来ない………昔からそうだ……慰める事すら……私には出来ない………)

鈴(馬鹿一夏ん……敵だった奴の事まで……自分の事みたいに悲しまなくたっていいじゃんか……)チラッ

清(って言ったら一夏ん怒るよね。人が死んだんだぞ!って……)チラッ

鈴清「「はあ……本当、馬鹿だよ……」」ボソッ

鈴清((あ、一夏んの泣いてるとこ思い出したら……ちょっと……))ジワッ

セシリア「うっ……ううぅっ……うううぅぅぅぅえええぇぇぇぇ!!一夏さあぁぁぁぁぁん!!」ボロボロボロ

鈴「うぎゃーっ!!セっちゃん鼻水ー!!汚いー!!」

清「えぇ……」

セシリア「そっ、ぞんなっ……ひぐっ……そんなお辛い経験をっ……なさって……えぐっ……いたとは……私っ……しっ、知らずっ……ううぅぅぅっ!」ボロボロボロ

箒「そ、そこまで泣かなくてもいいだろう……ほら」スッ

セシリア「しっ、失礼しますっ……」チーン

セシリア「だって……一夏さん……ひぐっ……普段あんなに楽しそうに笑って……らっしゃっるのに……そんな……そんなっ……っ……うううぅぅぅっ!!」ポロポロ

鈴「ばっ!馬鹿セっちん!人の事で泣き過ぎ!そっ、そんなに……泣いたらぁ……!」グスッ

清「なんか……こっちまでっ………もらい泣き……しちゃうじゃんかぁ………!」グスッ

セシリア「一夏さぁぁぁぁん……!!」ポロポロ

箒(つくづく冷徹な女だ……私は……人の事で涙の一つも出ないのか………)

箒「落ち着いたか?」

セシリア「はい……はしたないところをお見せしました……」ペコッ

鈴「セっちゃんてば全くだよっ」プンプン

清「うんっ」チーン

ガラガラッ

真耶「皆さーーーあれっ?クロニクルさんと織斑くんは?」ヒョコッ

箒「二人なら部屋に戻りましたよ」

真耶「あちゃーそうでしたかー」

真耶「とにかくっ、今日はもう休んだ方がいいですよ!明日から事情聴取とか事後処理の関係でと~っても忙しくなりますから!」

鈴清「「え~!」」

真耶「お二人は怪我に響くぐらい事情聴取されるので覚悟しておいた方がいいですよ!」

鈴清「「やだ~!!」」

真耶「怪我人なんですからしっかり休む!!」クワッ

鈴清「「はーい……」」シュン

箒「事情聴取、か……」

セシリア「山田先生の仰る通りですわ。休む時に休まないと、いつまでもミイラ女のまんまですわよ?」

鈴「うぐぅ……」

清「んぬぅ……」

真耶「い・い・で・す・ね・?」ニコッ

鈴清「「りょ、了解でありますっ!」」ビシッ

箒「一夏の気持ちが分かるな」ヤレヤレ

真耶「それじゃあ皆さんっ、気が滅入りますが明日は頑張りましょう!」

真耶「お休みなさい!」

箒「お休みなさい」

セシリア「お疲れ様です。お休みなさい」

鈴清「「お休みなさ~い」」フリフリ

ガラガラッ

箒「さて、私達も帰るか」

セシリア「そうですわね」

鈴清「「え~もう帰るの~!」」ブーブー

箒「はあ、山田先生に釘を刺されたばかりだろう」

鈴清「「うっ……そうだった……」」


コツッコツッコツッ

一夏「……」

クロエ「……」チラッ

一夏「……」

コツッコツッコツッ……

クロエ「………」

ギュッ……

クロエ「あっ、あのっ!一夏様っ!」

一夏「ん?どうした?」ピタッ

クロエ「えっと……その……も、申し訳ありません……」

一夏「何でクロエが謝るんだよ。別に謝るような事なんて何もしてないだろ?」

クロエ「えっと……ですからその……何もしていない事を……謝罪、したんです……」

一夏「何もしていない事を……?」

クロエ「はい……もし、私が箒様なら、束様なら、千冬様なら……今の一夏様に何か出来たと思うんです……」

クロエ「ですが……今の私には……一夏様に何も出来なくて………その事がとてももどかしくて………」

クロエ「一夏様は私の為に色んな事をしてくださいます………しかし、私は……一夏様の為に出来る事が……多くありません……」

クロエ「今だってそうです……一夏様がとても……苦しんでいらっしゃるのに……私は……何も出来なくって……ですから……申し訳なくて……私……わたしっ……!」グスッ

一夏「……はあ、クロエ」

クロエ「申し訳……ありません……一夏様……」ポロポロ

一夏「クロエ」ソッ

クロエ「一夏……様……?」

一夏「聞いてくれ、これは俺の問題なんだ。箒や束姉ちゃんや姉ちゃん、クロエがどうとかじゃないんだ。だからさ、クロエが泣いて謝る必要なんてないんだよ」ナデナデ

クロエ「そう……でしたか……」

一夏「でも、ありがとう。そこまで俺の事を気遣ってくれて」

クロエ「いえ……私にはこれぐらいしか……出来ませんので……」

一夏「それで充分だよ。だから、泣かないでくれ」

クロエ「は、はいっ!了解しましたっ!」クシクシ

一夏「うん、よろしい。いつものクロエだな」ポンポン

クロエ「はいっ、いつものクロエですっ」フンス

真耶「あっ!見つけたっ!織斑くんにクロニクルさ~ん!」パタパタ

一夏「あれ?山田さん、どうしたんですか?」

真耶「えっとですね、通達があって来ました。お二人はもう寝ますか?」

クロエ「いえ、私は夕食やお風呂がまだですので」

一夏「クロエに同じく。それが通達ですか?」

真耶「いえいえそんなまさか、一夏くんに大浴場の使用許可が降りた事が通達ですよ」

一夏「へー大浴場が、ですか」

真耶「そうですっ、普段は女子高ですから男の子である織斑くんには使用許可が降りません。ですのでせめてこんな時だけでも、という事です!」

クロエ(大浴場……私は平常時でも使用可能……でも……恥ずかしい……)

真耶「まあ、その……ほら、今日一日色々ありましたし、明日からも色々ありますから広いお風呂でゆったりして、心も体もリフレッシュ!してくださいね!」

一夏「そうですね、お言葉に甘えてそうさせて貰います。ありがとうございます」

真耶「こちらとしては今日の織斑くんの活躍に対して、大浴場の使用許可だけ、というのも申し訳ないですが……」

一夏「……」

一夏「そんな事ありませんよ。充分ですよ」

クロエ(一夏様……)

真耶「そんな事ありません事はありません!織斑くんはたくさんの人の命を救ったんです!称賛されて然るべき事なんです!!」

真耶「私達はただ手をこまねいて敵の良いようにされていただけでしたので、本当に感謝しているんです!だから!」

ガシッ

真耶「彼の事は気の毒です。けど、だからってそんなに自分を責めないで」

真耶「一夏くんの行動のおかげで、多くの人の命が、救われたんです……!」

ギュウゥゥゥ……

真耶「だから……!」

一夏「……でも、俺はあいつを……救えなかったんです……!」

グッッ

真耶「ッ……あっ!ごめんなさい!わっ、私っ、勝手に一人で熱くなって、織斑くんの気持ちを考えてなくてーーーああもう!私ったら何してるんだろう!」パッ

真耶「ごめんなさい!今日はゆっくり休んでくださいね!」タッタッタッタッ

一夏「……お休みなさい」

クロエ「あ……」

クロエ(山田先生のあんな姿……初めて見ました……)


タッタッタッタッ……

真耶「はあっ……はあっ……」

ピタッ

真耶「ふうーっ……本当、何しているんですかね、私……」

真耶「織斑くんと自分をダブらせるなんて……」トンッ

ズリズリ……ストンッ

真耶「駄目だなぁ……私……」

真耶「私と一夏くんじゃあ状況も装備も、何もかも全然違うのに………」

グッ……

真耶「やっと忘れたって思ったのに……何で……」

真耶「ッ……!」ギュウゥゥゥ

真耶「……一夏くん……優し過ぎるよ……」

真耶「そんなんじゃあ……束博士に貰ったISを使っていけないよって……束博士と一緒にいられないよって………」

真耶「甘ちゃんの戯言だ、って何で言えないんだろう………」

真耶「やっと変われたんだって思ったのにな……」

真耶「本当、駄目だなぁ………」

~大浴場~

クロエ「……」オソルオソル

プルプルプル

クロエ「っ……」チャプッ

クロエ「お、おお……」チャプチャプ

クロエ(これが……大浴場、ですか……)キョロキョロ

クロエ(当然ですが……広い……)

クロエ「……」チラッ

一夏「………」シャコシャコ

クロエ(一夏様……やはりまだ………)

ガラッ

千冬「ふーっ、全く、疲れた疲れた」ゴキゴキッ ヒタヒタ

クロエ「ちッ、千冬様!!?」ビクッ

一夏「ああ、姉ちゃんか……」チラッ ザバッ

千冬「………」

千冬「何を驚いている?私だって人間だ。風呂ぐらい入る」ヒタヒタ

クロエ「は、はい……そうですね……」

千冬「私も普段は大浴場に入れないからな」チラッ

一夏「………」ゴシゴシ

千冬「それに今日は……いささか疲れた……広い風呂でゆっくりさせてもらおう」ザバッ

ヒタヒタ チャプッ…

千冬「ふうーっ……生き返るな……」

クロエ「……」オロオロ

千冬「クロエ、湯船にタオルを浸けるな」

クロエ「えっ、あっ、はっ、はいっ!」バッ

一夏「………」ザバッ

千冬「ほら、もっとこっちに来い」

クロエ「は、はいっ」スススッ

一夏「……」ヒタヒタ チャプッ

千冬「今日はよくやったな。おかげで助かった」ワシャワシャ

クロエ「い、いえっ、その為の私達ですから……」モジモジ

千冬「一夏もだ。お前達は充分やった。もっと胸を張れ」

一夏「……うん」

クロエ「………」

千冬「それとも……納得いかないのか?」

一夏「……」

グッッ……

一夏「そういうんじゃ……ないんだ……ただ……」

千冬「ただ?」

一夏「ごめん……姉ちゃん………」

千冬「……何だ?どうしてお前が私に謝る?」

一夏「俺……ドイツで目が覚めて……姉ちゃんや束姉ちゃんが泣いてるの見て……色々考えて……束姉ちゃんにISを貰って……必死で特訓して……強くなったんだって……思ってたんだ……」

一夏「でも……実際は……全然強くなくて……皆を守るどころか……目の前の人一人守るのに精一杯で………」

一夏「守れもしなかった………!!」グッッ

バシャッ

一夏「っ……うぐっ……っ……!」グスッ

一夏「ううぅっ……っ……ぁああっ……」グスッ

クロエ「一夏様……」

千冬「………」

千冬(一夏……お前という奴は……つくづく……)

千冬「……なあ、一夏」スッ

一夏「ねえ……ちゃん……?」

千冬「人はどこまで強くなればいいんだろうな……」

一夏「え……?」

千冬「私はあの日……父さんが亡くなって、お前が記憶を無くしたあの日から……強くなろうと心に決めたんだ」

千冬「私は……お前をこの世界のあらゆる事から守りたい……お前が笑っていてくれるのならそれでいいと………ただその一心で、ただひたすらに強くなった……」

千冬「篠ノ之家に迎い入れられては……新しい家族皆を守りたい……もう二度と誰一人だって失わない……そう思っていた……」

千冬「今考えてみればただの愚か者だ。たった一人で世界の全てに立ち向かうようなものだ。年端もいかない小娘の、世間知らずで思慮浅き愚かな思い上がりだ」

千冬「だが私は……離れ離れになる家族を止める事すら出来ず………口当たりの良い口車に乗せられ、いつの間にかブリュンヒルデーーー世界最強の女として祭り上げられるまでなってしまった」

千冬「その後はお前がよく知っている通りだ。世界最強の女は、世界中の誰もを倒す事は出来ても、離れ離れの家族を一つにするどころか、残されたたった一人の家族を守る事すら出来ぬ愚か者だった……」

千冬「その挙げ句……まるで弟を守る事すら出来なかった罰のように……私はISを使えなくなった………」

千冬「どこまで強くなればいいのか。どうすれば皆を守れるぐらい強くなれるのか、それは分からない……だがな」

ギュッ……

千冬「誰かに綺麗事だ偽善だと言われようと、例えどんな事があったとしても……お前はその思いを忘れずにーーーそのままで強く在り続けろ」

千冬「そうしなければ……私のようになってしまうぞ………いいな?」

一夏「……うん」グスッ

千冬「よし、なら思いっきり泣け。何もかも吐き出せ」ワシャワシャ

一夏「う……あ……俺ぅ……俺っ……!!」ポロポロ

千冬「ん?何だ?」

一夏「ケイを助けられなかった!!あいつにだって大事な人がいたのに!!エムやジェイがあいつの事を大事に思ってたんだ!!」ポロポロ

一夏「あいつ等ケイの事ずっと心配してて!!ケイが死にそうな時に本気で怒って!!助けようとしてた!!なのに俺は!!何も出来なくて!!ケイを助けられなくてッ……!!」ポロポロ

一夏「あいつ等今頃泣いてるんだ……ケイが死んで……二度と話せないし会えもしないから………きっとどこがで……どこかで泣いてるんだ!!!」ポロポロ

一夏「ケイに会いたい……もう一度っ……はっ、話がしたいって……あいつ等……泣いてっ……る……はず……なんだっ……」ポロポロ

千冬「ああ、そうだな」ナデナデ

一夏「な……なのにッ……俺ッ……な、何もッ……出来なくてッ……っ……うっ……ぃぐっ……うあ……うあぁぁぁっ……ああああああ!!!姉ちゃああああぁぁぁぁぁぁん!!!」ポロポロ

一夏「うああああぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」ボロボロボロ

千冬「そうだ、思いっきり泣け。この……愚か者が……」ギュッ

千冬「クロエ、こっちに来い……」

クロエ「はいっ……!?」スススッ

千冬「………」ギュッ

クロエ「ちっ、千冬様?」

千冬「今は……こうされていろ……!」ギュウゥゥゥ

クロエ「ッ!……分かりました」ギュッ

クロエ(千冬様……声が震えて……一夏様の悲しみを感じていらっしゃるのですね……)

クロエ(暖かい……とても……暖かいです……千冬様……一夏様………)ギュウゥゥゥ



-----

?「………」スッ


カチャ……カチャ


?「………」スッ

?「………」カチャ


ジャラジャラジャラジャラ……


?「………」

ウィーンッ

?「任務か」

ジャコンッ カランコロン

スコール「さあ?何なら当ててみなさい。外せばブービー賞でその綺麗綺麗なドタマに前衛芸術な風穴をあげるけど?」

?「……」

スコール「ソリタリア、ね……ヘドがで出るわ。で?答えは?」バキャッ

?「それは命令か」

スコール「チッ、呆れた……この状況が分からないのかしら?」

スコール「いきなり入ってきた馬の骨が、リロードしてショットガン頭に突き付けてるのよ?何が起きてるのか想像出来るでしょ?」

スコール「少なくとも、他のあなた達は想像出来ていたわ。とても想像力豊かな答えが聞けたわ。だから今頃ブービー賞貰って死ぬ程喜んでいるわよ?」

?「お前に殺される事が命令か」

スコール「ッ~!ああッ!もうッ!!これだから人形は嫌いなのよ!!」ガシガシッ

ゴリッッ

スコール「抵抗ぐらいしてみろ………!!」グググッ

?「お前を殺せとは命令されていない。殺せ」

スコール「なら今からする私の質問に答えろ!!これは命令だ!!」

?「了解」


スコール「生きたいか?!自分の意志で、自由に!!生きるか?!!」


?「………」

スコール「答えろッ!!!」グイッッ!!!

?「……」

スコール「フーッ……フーッ……フーッ……!!!」

スコール「答えろ!!サマーシリーズ最後の生き残り!!サマーハンドレット!!!」

サマーハンドレット「俺は影だ」

サマーハンドレット「織斑一夏という光から生まれた影だ」

サマーハンドレット「影は光の中にはない」

サマーハンドレット「俺達やウィンター達、スプリング達も、そうだ」

サマーハンドレット「この世界に居場所などない」

サマーハンドレット「生きる意味も」

サマーハンドレット「存在理由も」

サマーハンドレット「自由も」

スコール「こッ、このッ……!!」ギリィッッ!!

サマーハンドレット「どうした。やれよ」

スコール「ああそう!!なら死になさい!!!」ガチッ


ズドンッ……ビチャッ………


スコール「ハァーッ……ハァーッ……ハァー……ッ……ッッ……あ
あッッ!!!」ジャコンッ


カランコロン……

スコール「………」

グッッ……

スコール「こッ……このぉッッ……!!どいつもこいつもッッ!!」ガスッッ!

バキャアッ!!

スコール「何が命令よ!!何が存在理由よ!!何が影よ!!光ですって?!!」ズドンッ

スコール「くだらない御託並べて!!ふざけやがって!!そんなものあろうがなかろうが人は生きれるのよ!!!」バキィッッ

スコール「あぁぁぁッッ!!クソッッ!!こんなの笑えない……笑えないのよ!!」ガッッ ガシャーンッ

スコール「自分がクローン?!生まれながらのキリングマシーン?!だからどうしたってのよ!!!ええ!!?」ジャコンッ

カチッカチッカチッ

スコール「ッ!!?自由がない!!?」ブンッッ!!

バキャッッ

スコール「だったら死んでもいいっていうの!!?ゴミ以下の死に方で満足なの!!?こんなので生きたの!!?」ドゴッッ

スコール「ケイは生きたがっていたのよ!!!誰よりも!!自由に!!多くの自分を殺し!!墓も作って!!!それでも生きようとしてた!!!」ジャッッ

バキャッッ

スコール「なのにあんた達は何もッ……何も生きようとせずにッ………殺すか殺されるかだけでッッ……!!」


グッッ!!!

スコール「生きてみろ!!生き恥だろうが何だろうが晒し!!地べたを這いずり、泥でも血でも何でも啜って無様にみっともない生き方でも何でもやって生きてみろ!!!」

ドゴッッ!!

スコール「自分の意志で!!!」

パラパラ……

スコール「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」ズボッ

スコール「ハァーッ……ハァーッ……クソッ……何よ……訳も……分からず……死んで……」

スコール「本当は自由になってみたかったくせに……なのに……怖がって……だからって死ぬ事ない……じゃないッッ………!!」

ゴスッッ

スコール「どいつもこいつも………自由になりたい……そんなの抱えた目で死なれたんじゃあ……殺したこっちも胸糞悪いのよ………」

スコール「笑えないのよ……なのにあんた達は……自分達だけ笑って……死んで………」

ダンッ……

スコール「ふざけんじゃないわよ……!!」グググッ

文『スコールの姉貴、そっちはどうですかい?』

スコール「……」

文『姉貴?どうかしやしたか?』

スコール『文、今終わったわ。生存者はなし。どいつもこいつも皆殺しにしてやったわ』

文『そうですか……あわよくばウチに、って算段でしたのにね……きっとこいつ等ぁ戦力になりやしたぜ』

スコール『そうね。首輪付けてでも生き残りにしておくべきだったわ』

スコール『それに……他人の犬を調教して自分のものにするって……最高じゃない?』

文『ハハハ……姉貴はそうでしたね……ハハハ』

スコール『そう考えたら惜しい事をしたわ。あーあ、もうっ、私とした事がもったいない事を……』

文『と、とにかくですね。姉貴、上は私達が全部処理しやした。後はオータムの姉貴の向かった本部へカチ込んでやるだけですぜ』

文『契約違反したツケ、キッチリ払わせてやりやしょうや』

スコール『ええ、そうね。ド三流がプロの仕事を汚した罰は……受けてもらわないとね』

文『それでは、エンジンを温めてお待ちしてやす』

スコール『二分で行くわ』

スコール「………」

スコール「……」スッ

ピチャッ……

スコール「馬鹿ね……本当に……お馬鹿な子……」

スコール「………」スクッ

コツッコツッコツッ

『START INCINERATION』

スコール「……お休み、永遠に」ペロッ

~???~

「貴様……何のつもりだ………」

社長「御覧の通り、これが新しい時代を作る者達……スプリングシリーズだ。そして、新しい時代に貴様等のような老人は必要ない」

社長「地べたを這いずり回る事を良しとする哀れな存在にはな」

「恩を仇で返されるとはのう……悲しいのう……」
「だッ、誰が貴様をその地位つかせてやったと思っーーー」ズドンッ

ビシャッッ

社長「それについては感謝している。しかし、それとこれとは話は別だ」

「我等を贄としたところで、お前は地から離れる事は出来ない」

社長「確かに、私はそうかもしれない。だが人類は失っていた力を取り戻す時がもうすぐ来る……そう、この空を越えた先にある未知の宇宙へと進む時が……」

社長「そして、あの白いISを越える時が」

「それはどうかしらね」

社長「何……?」

「あなたの言う“失っていた力を取り戻させない”のが白いISの本来の目的ではなくて?」

社長「戯れ言を……ならば私達が力を持つに値するのだと、あの白いISに思い知らしめてやればいいだけの事」

社長「あの力は、あんなものの手ではなく人の手の中にあって然るべきものだ」


「ならば地獄で見ていてやろう……彼女が、お前に力を授ける時をな………」

社長「授けられるのではない。私達の手で、あんなものを越える力を手に入れるのだ」スッ

「哀れね、人はまだ空を飛べる程賢くはないというのに」


パチンッ ズドンッ……ドサドサドサドサッ


社長「フン、あの世で神に陳情でもしていろ」クルッ

コツッコツッコツッ ウィーンッ

社長「今終わった」

秘書「そのようで。後の処理はお任せください」

社長「一切の痕跡を残すな、あの部屋には時間も金もかけたからな」

秘書「承知しております。それと、オータムから契約について話がある、との事です」

社長「犬畜生風情が……おめおめと戻ってきたとはな。フン、まあいい、どこにいる?」

秘書「社長室にて待っている、との事ですが。如何致しますか」

社長「野良犬が手を噛むかもしれんからな、スプリングシリーズを用意しておけ」

秘書「はい、極めて早急に」

社長(犬畜生が……くだらん事をほざきに……奴をクビにしてスコールを変わりにするか)コツッコツッコツッ


ウィーンッ

社長「オータム、貴様今までどこにーーー」

オータム「お待ちしておりました。社長」ピシッ

社長「ッ!?」

オータム「まずは……」ツカツカ

社長(こいつがスーツだと……契約の時すら戦闘服だったこの女が……何だ……何のつもりだ……?)

ピタッ

オータム「こちらを」スッ

社長「フン」パシッ

社長「度重なる契約違反につき、契約破棄をここに通達……違約金……貴様くだらん事をーーー」

オータム「お読みになられた時点であなたは最早、契約者ではありません」

スコール「ま、そーいう事なのよ。とにかく、契約は契約……払うものはキッチリ払うのがプロってものよ。アマチュアクライアント様」クルッ

社長「貴様私の椅子を……」

スコール「ああ、これね。座り心地の悪さはまさに現代芸術の傑作ね。でも、あそこの棒みたいなインテリアはなかなかいいわね。アウシュビッツの檻を彷彿とさせるもの」

オータム「スコール、どけ」ツカツカ

スコール「はいはい」

ガラッ キュポンッ ジョボジョボジョボ

スコール「あーあ、品がないわね。せっかくのウィスキーなのに」

オータム「黙ってろ」シュルッ グイッ

ゴクゴクッ カンッッ

オータム「っはあ~!さて、とっとと出すもん出してもらおうじゃねぇか。こいつは前金みてぇなもんだ」

社長「好き勝手も大概にしろよ」

オータム「ああ?こっちの台詞だクソボケ、どっかの誰かの好き勝手のせいでこっちは人質と無理心中しかけたんだぞ」

社長「私とて今回の奴等の行動を許すつもりはない」

オータム「作戦が失敗したから、だろ?ふざけんじゃねぇよ。作戦が失敗しようが成功しようが奴等の行動は俺達に銃口を向けた事に変わりはねぇ」

オータム「それをみすみす見逃したテメェも、テメェのこの組織も、俺達に銃口を向けたんだよ。分かるか?」

スコール「……」スッ

オータム「っと」サッ

スコール「私にもよこしなさいよ」ムスッ

オータム「待機中に散々飲んでたろうが」

社長「だったらどうする?我々ファントム・タスクにたかたが一小隊で楯突くつもりか?」

オータム「場合によってはな。だがな、俺は御覧の通りビジネスウーマンだ」

スコール「ビジネスウーマンねぇ……」

オータム「だからこういういった事は……商談で済ませたようと思うんだよ。一方的な虐殺劇で何もかも失うよかよっぽどマシだろ?」

社長「もういい」

オータム「あ?」

社長「犬畜生風情が、黙って話を聞いていてやればベラベラとくだらん事をほざきよって。私とて我慢の限界だ」ピッ

バンッ ゾロゾロゾロ

スコール「あら、もう出来てたのね」

オータム「アーマードトルーパーズ……ビームガン持たせた方が見映えはいいな」

スコール「じゃあ、あなたは赤のライトセーバーね」

オータム「うるせぇ、誰がダースモールだ。俺はクワイ=ガン・ジン派なんだよ」ジョボジョボジョボ

社長「これは奴等の代わりだ。貴様等の代わりもじきに来る。ステーーー」

スコール「はあ?あなた正気?あんなアバズレ雇うなんて……ヤクでもやった方がいいわね」

オータム「残念なお知らせだが、そいつは俺達の界隈でも特別ハミダシ者でな。理由は……三度の飯より殺しが好きだからな」

社長「殺せ」

スコール「貰うわね」パシッ

オータム「あっ、テメェ!」

シーン

社長「……?どうした、何故動かん……!?」

「………」ガクガクガクッ

社長「何だ……何が起きている……!?」

スコール「ゲフッ、アーマードトルーパーズ、中身はスプリングシリーズという事は……その体には当然ながらナノマシンが入ってる」

オータム「クソが、全部飲みやがって……」

スコール「そして今現在、私はファントム・タスクのメインシステムを乗っ取っている。もちろんそこには火器管制システムや、ナノマシン制御システムも含まれている……後は分かるわよね?」

「……」スッ

社長「銃を互いに!?きッ、貴様まさかッ!!?」

スコール「そのまさかよ」


ズドンッッ……ゴシャッ


スコール「無敵の帝国鉄十字団ここに破れたり、ってところかしらね」

オータム「流石は対IS用だ。文字通り消し飛んじまったな……ま、クラシックもたまには良いって事だ」

スコール「で?次はどうするの?」

社長「きッ……貴様等ッ……!!」

スコール「まさかこの程度で終わりだ、なんて言わないで頂戴。こっちはこの程度で済ませる気なんてないのよ?」

スコール「さっさと次の手を使いなさい。その為に通信だけは出来るようにしてあるのよ?」

社長「貴様等!仕事だ!!早く社長室に来い!!」ピッ

オータム「あ?今度は雇われか?」

スコール「一小隊……どこの連中かしら?ナノマシンは入ってないとなると……雇われたばかりね」

オータム「せめて同情だけでもしてやるか、初仕事で相手が相手……対IS装備のプロを相手にするんだからな」

社長「対IS装備だと!?貴様等のどこにそんな物がーーー」

スコール「格好良くいこうかしら、小隊一斉射用意、装弾」

ガコンッ

社長「何ッ!?どこから音が!!?」

スコール「隊長殿、目標は後十秒で到着……御命令を」

オータム「よーし、テメェ等ァ!派手に行こうぜ!!」

オータム「ロックンロール!!」クイッ


ズドドドドドドドドドドドドド


社長「うおッ!!?」


ドドドドドドドドドドドドドォォォォン………


オータム「対IS火器の威力を体感したご感想をどうぞ、ってな」

スコール「“死ぬ程凄い”」

「うっひっひっ~!やっぱ手が痺れるぅ~!」プラプラ
「そりゃ12.7mmの全弾フルオート……サイボーグじゃないと使えないのにアホが無茶してブッ放すから……」
「銃身を制御した事を褒めるべきでは?」
「あーあ、もったいないわねぇ……良い女がいたかもしれないのに……」
「あんたはちょっと黙ってなさい」

スコール「悪い知らせを言うなら、あそこに女だったものはないわよ?」

「ならいいわ」ケロッ
「切り替え早っ」

社長「ッ……ッッ………なッ……!!?」

オータム「さーて、今回のタネあかしといこうか」

オータム「まずは本日のイカしたスペシャルゲストをご紹介させて頂くとしようか!大将が会いたがってた天才博士!さあ、拍手で迎えてもらおうかぁ?」

オータム「レディースアンドジェントルメン!篠ノ之束博士のご登場だ!!」

社長「なッ……はあっ!!?」

束「とうっ!」ビョーンッ スタッ

束「は~い♪あなたのハートを全て解析っ☆篠ノ之束お姉さんだよ~!いえ~い、ぶいぶいぶいすりゃあっ☆」ビシッ

ヒューヒュー パチパチパチパチパチパチ ヒューッ!!

束「ありがとー皆ありがとー!大好きだよ~!」

社長「何故……貴様がここに……」

束「なぁ・ずぇ・だっ・てぇ~???」グルッ

束「は~い★それはと~ってもと~っても★単純明快、起承転結、一部始終、正確無比で約束破りな事で~す★」ツカツカ

ズイッ

束「やり過ぎだよ。何もかも」

社長「やり……過ぎ……だと……?」

束「そう、やり過ぎ」

束「クローン技術、ナノマシン、IS、対IS火器、パワードスーツ、それ等を用いてのIS学園襲撃……」

束「私が忙しい時に実行出来て良かったね」ニコッ

社長「忙しい、だと?小娘が笑わせるな、今回の作戦は貴様が解析が必要だと言ってIS技術を公開しようとしないから行ったものだ」

社長「貴様がIS技術を独占さえしなければ、わざわざこんな事を我々がする必要はなかったのだがな」

束「少なくとも、あなたには絶対に渡さない。ナノマシンに義体技術……ISから派生した技術すらも逸早く軍事利用したのにISを軍事利用しないはずがない」

束「事実、アメリカ、ドイツ、フランス、日本に譲渡されるはずだったISを強奪、ゴーレムへの改造、一部の技術を流用してアーマードトルーパーを作ったのに」

社長「当然だろう。ISの欠点はあれだけの性能を持ちながら女性にしか扱えないという致命的な欠点だ。だから私は性別に関係なく操作可能なパワードスーツを作っただけだ」

社長「今はまだ空も飛べず、物体の量子化も出来ず、絶対防御すらないがいずれは、現存のISと同等の性能を、それ以上の性能を得るだろう。くだらん男女の隔てなく、万人が扱う事の出来る物としてな」


社長「そして、いつの日かあの白いISすらも越えるのだよ」


スコール「誇大妄想狂も喜んで舌噛み切るぐらいの野望ね」

オータム「世界征服でもおっ始めかねねぇ勢いだな」

社長「何とでも言え、犬畜生風情には分かるまい。これが如何に人類にとって必要な事か、が」

オータム「おっと、謎の義務感持ちの帝国主義侵略者かと思いきや無垢な進歩主義者だったか」

スコール「フッ……フフッ……ヒヒヒッ……ンフフッ……フッ、フフフフッ……アハッ……アハハハッ!アーッハッハッハッハッハッ!!!」

オータム「お前……そんな笑い方するキャラだったのかよ」ヒキッ

社長「何がそこまで可笑しい」

スコール「ウフフフフッ……ふうーっ、よく見なさい篠ノ之束、これが自ら滅びの道を進み、それを進歩だと信じて疑わない哀れな存在よ」

束「………」

スコール「どうかしたの?震えてるわよ?」

束「……で……に……のさ……」ボソッ

スコール「え?」

束「何でそんなに平気なのさ!!?十年前、彼女が何をしたのか忘れたの!!?」

社長「彼女?ああ、白いISの事か。ならよく覚えているともアレは飛来した隕石を消滅させ、緊急発進した各国の戦闘機、軍艦、ミサイルの攻撃全てを防いだだけだ」

束「だけじゃないよ!!彼女は隕石を消滅させるだけの力を持っているんだよ!!それをあえて使わなかったんだよ!!!」

社長「どうだろうな、隕石を消滅させた事で攻撃に使用するエネルギーを消耗し、防御する事しか出来なかったのかもしれん。これに関しては白いISを捕らえん事には分からんがな」

束「彼女は!!今の私達を遥かに上回る力を持った存在で!!何故眠っていたのか!!どうやって生まれたのか!!何が出来るのか!!何で一人しかいないのか!!全く何も分からないんだよ!!?」

束「なのに何で平気でいられるのさ!!!」

スコール「お、落ち着きなさい……」

社長「小娘が、そうやって恐れるから何も得られんのだ。私は違うぞ、アレを恐れず、必ずアレの力を手に入れてやる」

束「恐れないなんて出来ないよ!!もし、あの隕石を消滅させた力を私達に使っていたらどうなっていたか!!そんな事も考えられないの!!?」

社長「考えられるとも、隕石が衝突する前に滅びていただろうな」

束「だからさ!!だから私は!!彼女の分身のISが恐いんだよ!!もしも、もしかしたら、何かを間違えてしまったら、彼女の力が暴走して何もかも無くなっちゃうかもしれないから!!!」

束「そうならない為に!!私はISを解析してるんだよ!!!」



束「今の人類に!!あの力は手に負えない!!!だから私は恐いんだよ!!!」


束「フーッ……フーッ……フーッ……」

スコール「……確かに」

オータム「専門家による至極当然の意見が浴びせられたが……こいつの脳には入ってないだろうな」

社長「いいか、よく聞け小娘。最初の一歩はいつだって無茶だ無謀だと言われているものだ。だが、その一歩を踏まねば前には進めんのだ」

社長「それを誰も踏まず、貴様も踏もうとせずにいるから私が踏む。ただそれだけの事だ」

束「この……!!」

オータム「待った。篠ノ之博士、ここは俺に任せてくれねぇか?」スッ

束「え?」

オータム「それに……少し頭を冷やしな可愛い顔が台無しだぜ?」ポンポン

束「あ……うん……」

オータム「さて大将、少し議論するとしようか。お題は……何故白いISが一人しかいないのか、だ」

社長「一人とは限らんまだどこかで機能停止している機体もあるはずだ。それを機動させるのがアレの目的かもしれん」

オータム「なるほどな、確かに他にも白いISと同じ様なISがあると考えるのは自然だ。だが、今は“白いISが一人だけしかいない”と考えてもらおうか」

社長「滅びたのだろうな。それも一切の痕跡を残さず」

オータム「滅びたんじゃなくて、白いISが滅ぼしたんじゃねぇか?」

社長「は?」

オータム「個人的な推論だがよ。あの白いISが何もかも綺麗サッパリ自分の文明を消したから、何も残ってないし仲間もいない。やる事もなくてただ眠っていたのが十年前、何らかの拍子で起こされたんじゃねぇか?」

スコール「仮定に仮定を重ねて……大した推論ね」ヤレヤレ

社長「考えられない事ではないな。性能が不明である以上、隕石を消滅させるのが限界ではない可能性もある」

オータム「で、そんなおっかねぇ奴を敵に回そうとするのはあまり頭の良い選択とは思えねぇんだけどなぁ?」

社長「……何が言いたい」

オータム「おおっと、とぼけんなよ?スコール」

スコール「はいはい」

オータム「見てみな」ツカツカ スッ

社長「……白いISの出現記録がどうした」

オータム「出現地付近の何かしらの作戦や実験に、正規非正規を問わず、多かれ少なかれISから流用された技術が使われていて、公にはなってねぇが白いISはそれに関する情報を全て抹消してんだよ」

オータム「これが一体どういう事か……分からねぇ事ぁねぇよな?」

社長「白いISはISに関する技術を消そうとしている、と言いたいのか」

オータム「ブッブゥ~!ハズレだボケ、白いISが技術を消すには基準があるんだよ。だったら篠ノ之博士はとうの昔にいねぇだろうが」

スコール「ちょっと待って、白いISが別の世界とか別次元から来た存在、って可能性もあるんじゃないかしら?」

社長「は?」

束「何で今それを言うの……」

スコール「あり得ない話じゃないでしょ?」

オータム「テメェ……話の腰ブチ折りやがって……」

スコール「思考は広くないとね」

オータム「とにかくだ!!ファントム・タスクのやり口はあまり好ましくないって訳だ」

社長「だから貴様等は白いISの標的にされる事を恐れ、我々を裏切り、そこの小娘に媚びへつらった、と?」

オータム「勘違いすんじゃねぇ、相手が俺達を裏切らない限り、俺達も相手を裏切らない。それが俺達ハーキュリーズのルールだ」

オータム「裏切ったのはテメェだ。金さえ払えば契約違反しても良い、相手は所詮犬畜生だ……随分と舐め腐った態度じゃねぇか、誠意あるプロフェッショナルがする事じゃあねぇよなぁ?」

社長「フン、くだらん。何がプロフェッショナルだ」

オータム「だからテメェは三流なんだよ。くたばれ、犬畜生以下のクソ野郎が」

秘書「社長!!大変です!!」カツッカツッカツッ

社長「どうした?」

オータム「クソッ……せっかく俺が決めたのに……」

スコール「あれで?グダグダだったじゃない」クスッ

束「ん?あの人って……」

秘書「社長の所有されているスイスの銀行口座が何者かにハッキングされ、預金全てが盗まれました!」

社長「何だと!?貸せ!」カタカタカタ タンッ

ピッ ピピピピピピピピピピピピ

社長「なっ、何だこれは!!?私の金が!!?クソッ!!止まらない!!」

スコール「ふふふっ、大変そうね」

社長「貴様の仕業か!!」

オータム「おっと、やめときな」

社長「どけ!!!」

オータム「俺の動きが速すぎるのか、それともナイフが鋭すぎるのか……大抵の奴は刺された事すら気づかねぇ」

社長「な……?」

オータム「俺からの“ほんの気持ち”ってヤツだ」

社長「ぐぅッッ……きッ……貴様ぁッッ……!!」

オータム「おー痛そうだな。いや、痛そうっていうか……実際すげぇ痛いよな?それこそ小便チビってママンに泣きつきたいぐらいに……違うか?」

スコール「良い子ね、おいでなさい」チュッ

秘書「んっ……っはあ……スコールさん……」トロン

スコール「御褒美は後でたっぷりあげるわ。だから先行って待ってられるわね?子猫ちゃん」ボソッ

秘書「はい……!」ゾクゾクッ

オータム「ッ~……向こうでやってくんねぇか?」

社長「くッッ……そッ……ッッ……!!」グッ

オータム「やめときな、そのナイフは歯こぼれしちまってノコギリみたいになってる。それでも並のナイフよか切れ味は抜群だが……まあ、簡単には抜けねぇんだよ……多分」

スコール「そろそろ帰りましょ。私、大事な予定があるのよ」

オータム「ああ、そうだろうな。さっき目の前でよーく見てたから知ってるよ」

オータム「ッ!!?」バッッ!

スコール「どうかしたの?」

オータム「何か……来た………テメェ等外だ!!」

束「待って!!」

オータム「邪魔すんじゃ―――って、ッッ……!!」

束「来たんだよ……“彼女”が」

社長「なッ……何が……起きてッ……!!」


白いIS「…………」


スコール「光の……翼……?」

オータム(何だよ何なんだよあれは……何であんなに光ってるだけなのに……こんなに体が震えんだよ……!!)

オータム(ヤバい……何か分からねぇがこいつはヤバい………何がこんなに体を震えさせんのか分からねぇ……何なんだよ、あれは……!!)

スコール(何十年ぶりかしら……この体でも身震いするような恐怖を感じるなんて……篠ノ之博士以外誰も声すら出なくなってるわね……)



白いIS「………」


スコール(何て恐ろしいの………それに、今彼女は何を見てるの……一体何処を……?)

「ッ……ッッ………」カタカタカタ

束「駄目、彼女に銃を向けないで」

「でッ……でもッ………もしもッ……!」カタカタカタ

束「彼女を敵にしたいの?」

オータム「やめとけ……誰も……引き金に指をかけるな………いいな」


『危険!!未確認高エネルギー反応 急速に増大中!!』


オータム「ッ!!?消え……た……?」

束「皆、外に出て……早く!!」

オータム「お、おう……分かった……聞こえたな!!テメェ等!!小便チビってねぇでさっさとズラかるぞ!!」

「はあぁぁぁ~ん、もおぉぉぉ~怖かったよおぉぉぉぉ~」グデェー
「どわっ!人を突っ掛えにすんな馬鹿!!」
「に、ににに、逃げ、逃げるががが、かっ、勝ちってね………」プルプル
「ぷっ、だっせー生まれたての小鹿みたいになってやんの」ガクガク
「そういうあなたは膝が笑ってますよ」

社長「くッッ……そぉッッ………!!」

スコール「……」ガシッ ブンッ

社長「ぐおっ!!?」

ドゴッッ ドサッ

社長「う……ぐッッ……きさ……まッ……な……に……を………」

カチャリッ

社長「ッ………なッ……あッッ……!!?」ガチャガチャ

スコール「鎖を切らない方がいいわよ。手遅れになるわ」

社長「切る……!?どうやって!!?待て!!やめろ!!手錠を外せ!!」

スコール「……」クルッ カツッカツッカツッ

社長「待て!!金なら払う!!やめろ!!助けてくれ!!置いていくな!!!スコール!!!」

スコール「……」カツッカツッカツッ

束「ね、ねえ、ああ言ってるけど……いいの?」

スコール「ええ、いいのよ」

束「ここまでする事ないんじゃ……ないかなって……思うんだけど……」

スコール「優しいのね。でも、私はあなた程優しくはないし、オータム程割り切る事の出来る女じゃないの」

スコール「裏切り者は必ずブチ殺す。ただそれだけよ」

オータム「オラ、起きな」ペチペチ

束「ん……あれ……ここは……?」キョロキョロ

秘書「それで……スコールさん仕事終わりの私を無理矢理バーに連れて行ってくださって……とても親身に私の話を聞いてくださって……私、誰かにそんな風にされたのは初めてで……」モジモジ

「流石はスコールねぇ……羨ましいわね、このっ」

スコール「私は何も特別な事はしてないわ。ただ心の支えになってあげただけよ?」

オータム「タスクと白いのがよく見える所だ」

束「あ、そっか……移動してたんだよね……」

カリーヌ「あの部屋を出た瞬間気絶したが……何かの発作ではないよな?」

束「ううん、私ね……人が怪我したり血が出てるのを見れないんだ………それで……何とか頑張ったんだけど……」

オータム「血が駄目って……それでよくこんな真似しようと思ったな……」

束「彼女に全部任せておくのは……嫌だったから………」

オータム「確かに……アレに何もかも任せる、ってのはな………」チラッ

カリーヌ「博士、教えてくれ。あの白いのは今何をしているんだ?」

束「力を溜めているんだよ。多分、ファントム・タスクの何もかもを消す為の………」

スコール「後は物理的消去だけね」

オータム「うおっ!?」ビクッ

スコール「今現在、世界規模でファントム・タスクが関連していた電子情報は全て消えたわ」

束「本当だ。これと平行して力を溜めてたんだね」

オータム「世界規模で、って……何でもありかよ……」

スコール「彼女からしてみれば……私達のする事なんて積み木を積み上げる程度なのかしらね」

束「恐らくね……ッ!!?」

『未確認高エネルギー放出』

束「……始まったよ」


白いIS「………」シュウゥゥゥゥゥゥゥン


オータム「羽の次は何だ………膜、か……こりゃ……?」

スコール「エネルギーの波、とでも言うべきかしら………?」

文「姉貴!あれを!!」

オータム「ああ?ッ!!?」

スコール「……驚いたわね」

カリーヌ「い、一体何が……博士っ、白いISは何を……している………」

束「消滅させてるんだよ……何もかもを、ね……」

スコール「声も出なくなるわね……」

秘書「あ……ああ………」ヘタッ

文「映画……みてぇですね……」

オータム「正気の沙汰じゃねぇよ……こんなの………」

スコール「おいで、子猫ちゃん」ギュッ

秘書「あ、ありがとう……ごっ、ございますっ……」

スコール「……」カタカタカタ

秘書(スコールさんが……震えてる………やっぱり……スコールさんも……怖いんだ………)ギュウゥゥゥ

オータム「これは……あれだな………家に帰ったら……三日間極上のカウチに寝そべって……ドリトスだけ食って……マウンテンデューを飲みながら……デンジャラス・ビューティーを飽きるまで……見ねぇとな………」

束「……」ポロポロ

スコール「博士?……どうかしたの?何故、泣いているの……?」

束「あのね……とっても……悲しくて……胸が……苦しいんだ………」ポロポロ

スコール「どうして……?」

束「私じゃないんだ……彼女が……悲しくて……胸が……」

スコール「彼女……白いISが……?」


白いIS「………」


誤送信しました。

スコール「どうして……?」

束「私じゃなくて……彼女が……悲しくて……胸が……苦しいんだ………」

スコール「彼女……白いISが……?」


白いIS「………」


束「こんなはずじゃなかったんだ」

束「ごめんなさい」

~IS学園~

クロエ「一夏様、どうかしたのですか?それに、この光は……?」

一夏「分からない……零式が……何かに反応してるんだ……」

一夏(今までこんな事なかったのに……どうして……突然………)

一夏『束姉ちゃん、零式が、突然光出したんだ!』

一夏『聞こえてる?……束姉ちゃん?』

一夏「……駄目か」

クロエ「束様と通信出来ないのですか?」

一夏「駄目だ……通信が繋がらない……」

クロエ「繋がらない……?」

一夏「分からない……何が………うっ!!」


(姉さん……みーーなーーーまーーてーーー)キィィィィィン


クロエ「一夏様!大丈夫ですか!?」

一夏「頭の中に………声が……する………誰だッ……それに……姉さんって………お前は……何を……言って………!!?」


ィィィィィィンッ………


クロエ「一夏様!!」

一夏「声が……止んだ……」

一夏「もう大丈夫だ……クロエ、ありがとう……」

クロエ「ほ、本当ですか?」

一夏「声が止まったし……ほら、零式も元通りになった………」

クロエ「いえ、大丈夫には見えません。私、お水とタオルを持ってきます」タタタッ

一夏「あっ、クロエ………」

一夏「しかし、何だったんだ……何でお前は光ったんだ……?それに」


(姉さん……みーーなーーーまーーてーーー)


一夏(姉さん?誰の?一体何を伝えようとしていたんだ?)

一夏(何で零式からそんな声が………)

ポタッ……ポタポタッ………

クロエ「お水とタオルをお持ちしましたーーーい、一夏様?」

一夏「ん?どうしたんだ?クロエ?」ポロポロ

クロエ「何故……泣いていらっしゃるのですか……?」

一夏「え……あ……ほ、本当だ……何で……止まらない………」ポロポロ

一夏「お……おかしいな……別に悲しくなんか……ないのに涙が……止まらないんだ………」ポロポロ

クロエ「一夏様!」ギュッ

一夏「クロエ………?」ポロポロ

クロエ「いつもは一夏様が私をこうして落ち着かせていますが、今度は私がこうして一夏様を落ち着かせます!ですから今は!」ギュウゥゥゥ

一夏「クロエ……ごめんな……こんなはずじゃ……なかったんだ………」ポロポロ

クロエ「一夏様、謝らないでください」

一夏「ごめん……なさ…い………こんな……はず……じゃ………」ポロポロ

クロエ「一夏様……?」

一夏「な……かった………のに………わ……た………し………は………」ポロポロ

クロエ「一夏様!!お気を確かに!!」

一夏「お……ま……え……ま……で……」ポロポロ

クロエ「一夏様!!!」

一夏「……ッ!!?いッ、今のはッ!!?」

クロエ「一夏様!!」ギュウゥゥゥ

一夏「クロエ……ありがとうな………後で……束姉ちゃんに……色々と聞かないとな……」

クロエ「良かったです……元の一夏様に戻られて……さっきの一夏様は別人でした………!!」ギュウゥゥゥ

一夏「はははっ、大げさだなぁ……クロエは……」ナデナデ

クロエ「本当に……本当に……良かったですっ……一夏様っ………!!」ギュウゥゥゥ

一夏「ありがとう……クロエ……」ソッ


-----

『はーい♪せっかく電話してくれたのにごめんねーいっくん☆束お姉ちゃんは今現在ぃ~お電話に出られませーん。めんごめんごっ☆』

一夏(駄目か……束姉ちゃん……どうしたんだ?もしかして、昨日の零式が何か関係が………?)

鈴「一夏ん!あー!」

一夏「はいはい」ヒョイ

清「一夏ん!あー!」

一夏「はいはい」ヒョイ

鈴「本当にもーちょー疲れたー」モグモグ

清「こっちは怪我人だっつーのにー」モグモグ

一夏「あんまり食べながら喋るなよ。ほら、こぼれてるぞ」フキフキ

清「んっ、ありがと」

セシリア「まるで雛に餌をやる親鳥ですわね」

箒「全くだ」ヤレヤレ

クロエ「し、清さん……どうぞ……」スッ

清「やだっ!」プイッ

クロエ「えっ」

清「呼び捨てで呼ばないと食ーべないっ!」

クロエ「え……呼び捨て……ですか……うう……」オロオロ

箒「意地の悪い奴だな……」

セシリア「清さんなりのフレンドシップ?なのでは?」

鈴「しーん、しーん、しーん!」

一夏「しーん、しーん、しーん!」

清「……」ジトー

クロエ「ううっ……しっ……ん……さん……」ゴニョゴニョ

清「えー!?何だってー!?聞こえないなー!!?」

クロエ「あうぅ……しっ……し……し………」モジモジ

清「……」ジーッ

鈴「じぃーっ」

一夏「……」ジーッ

クロエ「しっ、清……どうぞ……」スッ

清「うむ、苦しゅうない」パクッ

鈴「あー!」

一夏「はいよ」ヒョイ

クロエ「……」モジモジ

清「どったの?」

クロエ「いっ、いえっ……わ、私っ……そのっ……あまり清……のような人と接した事が……なかったので……戸惑っている……というか……」

鈴「クロちんさぁ、セっちゃんとか箒ちんとかにどー接してるか知らないけど」

清「あたし達には一夏んみたいに接してよね」

鈴清「「だってあたし達もうマブのダチ公でしょ!!」」

鈴「いや、さもすれば姉妹的な?」

清「いや、さもすればお姉ちゃん的な?」

鈴清「「いししっ!なーんちゃってね!!」」

クロエ「マブの……ダチ公……ですか………」

一夏「いいから怪我人はじっとしてろ」ベシッ

鈴清「「いでーっ!」」

箒「妹、か……ふふっ、言い得て妙だな」

一夏「そうだな、そういえばクロエは妹って感じだな」ナデナデ

クロエ「私が……妹……ですか……」

一夏「箒の事をお姉ちゃん、って呼んでみるか?」

クロエ「いっ、いえっ、そ、そのような事はっ………」

箒「クロエ、別に呼ばなくていいぞ。だが一夏、私がお姉ちゃんならお前はお兄ちゃんだぞ?」

一夏「いいんじゃないか?クロエも家族だし、妹が二人になっただけだし」

箒「妹が二人……」

一夏「そう、二人」

箒「私が、お前の、妹?」

一夏「俺と双子、って感じじゃないだろ?」

箒「そうだが!……はあ、もういい……」プイッ

セシリア(いつものムードになってしまいましたわ……これでは私の出る幕がありませんわ……)ムスーッ

鈴(今に見てろよー箒ちんのコノヤロー)

清(今にその中に食い込んでやるからなー)


『束姉ちゃん メッセージとファイルを受信』

一夏「ん?」

『大好きないっくんへ、忙しくて電話に出られなくてごめんね。今回の学園襲撃の黒幕のぶぅえりぃー極秘のデータを送るから良かったら目を通しておいてね☆迂闊に他の人に見せちゃダメだぞっ☆束お姉ちゃんより♪』

一夏「クロエ、お前にもか?」

クロエ「はい」

鈴清「「???」」キョトン

セシリア「どうかなさいまして?」

箒「……」

一夏「ちょっと待ってくれ」

一夏(忙しい?解析中なら解析中って言ってくれるよな………)

一夏(それに、他人に見せられない極秘のデータ……?)

『ファントム・タスク』

一夏(凄い情報量だ……けど、もしかして………)

クロエ「……」

一夏「……」

クロエ「……」

セシリア「お二人とも何かに集中されていますわね……」

箒「しかもれんげを空中で止めたまんまだぞ……」

鈴清「「おーい」」ブンブン

一夏「悪い、しばらく自分で食ってくれ」スッ

クロエ「同じく、申し訳ありません」スッ

鈴清「「ええっ!?」」

一夏クロエ「「………」」

セシリア「この感じ……ISを使われていますわね」

箒「ISを……?」

箒(二人がこれだけ集中する事……姉さんから何か連絡か……?)

一夏「ッ!!?」ガタッ

鈴「どったの!?」ビクッ

一夏「あ……悪い、驚かせたな……何でもないよ」

鈴「そんなのうっそでーすぅー」

清「何もない人はそんな立ち上がり方しませんー」

一夏「………」

鈴「ってさっそく無視かーい!」

清「反応しろやーい!」

一夏「………」

鈴清「「ええ………マジのノーリアクションって……」」ヘタッ

箒「……どうやら、長くなりそうだな」

セシリア「そうですわね……」

一夏「いや、もう終わったよ」

鈴「マジで?」

一夏「ああ、マジで」

清「マジの本気?」

一夏「大マジだ」

箒「それで?姉さんからか?」

一夏「流石箒、鋭いな……」

箒「内容は何だったんだ?」ズイッ

一夏「お、おう……」

セシリア「まあまあ、篠ノ之さん、そう慌てずに」

一夏「今から見せる事は絶対に他言無用で頼む。恐らく国家機密レベルだ」

一夏(あ、そうだ。ジャミングしとこっと)

クロエ『周辺に生体反応はありません』

一夏『おう、ありがとな、クロエ』

セシリア「こ、国家機密レベル……ですか……?」

一夏「そう国家機密レベル」

鈴「それってヤバくない?」

一夏「ああ、ヤバいな」

清「ちょーヤバくない?」

一夏「ちょーヤバいな」

箒「もしその情報をどこかに漏らしたら?」

一夏「それは束姉ちゃんに聞いてくれ……想像したくもない」

箒「確かに……」

クロエ(抹消、なさるでしょうね……完全に………)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom