如月「消されるな、この想い」 (887)



・以前落ちたスレのリベンジです

・艦隊これくしょんのssです


☆内容に関する重要なこと☆

・この物語はフィクションです。実在の人物・団体・出来事等とは一切関係ありません

・アニメネタ

・独自設定あり

・ノムリッシュ要素あり(途中注釈を入れます)

・全方面に喧嘩を売る

・胸糞表現あり

・エログロ要素あり

・だいたいみんなひどい目に遭います

☆内容に関する重要なこと終わり☆


・地の文、誤字脱字、駄文、妙なところで改行あり

・荒らしやコメ上の喧嘩は避けて頂くようお願い致します



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451215373



潮「き、如月ちゃん…? だ、大丈夫?」

如月「………」

夕立「………」

潮「如月ちゃん…?如月ちゃん!?」

夕立「………」

夕立(だめだ…!!)

夕立(何か言おうにも、夕立が何言っても逆効果になるっぽい…頼みの潮ちゃんはテンパってる…)

夕立(この時間(深夜)じゃ誰か来て空気が変わるってのもないっぽい…)

夕立(余計な慰めを入れないで、如月ちゃんを元気にする方法…方法…!!)

夕立( 無 い ! )

夕立( 詰 ん だ っ ぽ い ! ! )ダラダラ



如月「…夕立ちゃん、潮ちゃん」

潮・夕立「はいっ!?」ビクッ

如月「ちょっと…外…出るわね」

潮・夕立「アッハイ。ドーゾ」

如月「遅くなると思うから、先に寝てていいからね?」ガチャ

潮・夕立「アッハイ」

バタンッ

潮・夕立「………」

潮・夕立「………」

潮・夕立(しくじった)



夕立「…どうする?」

潮「…どうしよう?」

夕立「ああ言ってたけど、如月ちゃんが帰ってくるまで起きて待ってようか」コンコン

夕立「?」

潮「はい?」ガチャ

提督「やっぱり起きてた」クスッ

潮「てっ提督!?」サッ

提督「子供が夜更かししちゃ駄目…ってまぁ今はいいや。それより如月は?」

夕立「如月ちゃんなら、さっき出かけに行っちゃった」

提督「マジか。泊地内からは出ないと思うけど…どこに行くかって言ってた?」

潮「…それが何も言ってなくて」

提督「…大丈夫かな」

提督「三人ともこの時間まで起きてるって事は、観てたんでしょ?」

夕立「…うん」



潮「如月ちゃん、あれ見てから顔真っ青で…私、どうしたらいいかわからなくて…」

提督「…辛いだろうな」

提督「自分が沈む瞬間を見せつけられるなんて」ピリリリリリン

提督「電話ぁ!? こんな時間に何だよ!?」ピッ

提督「はいっ、もしもし提督です…っ!?」チラッ

夕立(あっ、これヤバイ人から電話来たっぽい)

潮(凄い視線が泳いでる)

提督「…はい。それに関しては…はい………」

提督「~~~~~~~~~!!」ギリギリッ

提督「はい!大丈夫です!はい!こちらは………」スタスタスタ

潮「提督行っちゃった…」

夕立「…空気読んでほしいよね、電話」



潮「………」

夕立「………」

潮「…夕立ちゃん」

夕立「ん」

潮「あたし達、どうしたらいいんだろう?」

潮「どうしたら如月ちゃんを元気にしてあげられるんだろう?」

潮「あたし達が何か言っても、如月ちゃんを傷付けちゃうだけじゃないかって…」

夕立「うん。夕立もそれ考えてる」

夕立「何を言っても上から目線っぽいというか、他人事っぽいというか」

夕立「…特に夕立なんかあの番組でメイン張ってるし」

夕立「ただの嫌味になっちゃうんじゃない、かな」

潮「どうしたらいいかわかんないよ…」

潮「あたし、如月ちゃんを傷付けたくないよ」

夕立「………」



如月「………はぁ…」

如月(やだ…結構潮風強い…髪が…)ヒュウウウウウウ

如月(『髪が痛んじゃう』………か)

如月(!!)バッ

如月(敵機は、無し…って私、何やってるのかしら)

如月(前線基地でもないし、こんな所まで敵の艦載機が一機で来るわけないのに)

如月(それにあれはテレビ、テレビなんだから)

如月(沈んだのが私と同じ『如月』だとしても)

如月(私は、私はちゃんとここにいる…!)ズキッ

如月(…何かしら。この胸の痛み。さっきから痛みが治まらない)ズキズキ

如月(…何で私、泣いてるんだろう)

如月(あれはテレビでの事…)

如月(私のことじゃない…私のことじゃないのに…)

如月(何でだろう)

如月(涙が止まらない…)



如月(………)ポロポロ

如月(でも駄目よね、こんなの。皆に迷惑かけちゃう)ポロポロ

如月(夕立ちゃんや潮ちゃん…他の班の子…司令官にだって)ポロポロ

如月「んっ…ぐっ…」ググッ

如月(深呼吸して、気持ちを落ち着かせて…)

如月「すー…はー、すー…はー」

如月「……はぁ」

如月「…これで大丈夫かしら」

如月「大丈夫…こんなのは今日限り。明日からは元通りよ…」

如月「夕立ちゃんと潮ちゃんと訓練頑張って、司令官をからかって、みんなで笑って、おいしいご飯を食べて気持ちよく寝る…」

如月「いつもの如月に戻るのよ。大丈夫…できる…できる…」

如月「できる、できる、できる、できる、できる、できる………」ブツブツブツブツ

如月「…よし、戻りましょう」

如月「普段どおり…普段どおりでいいのよ…」ブツブツ



夕立「………」

潮「………」

如月「…」ガチャ

夕立「あっ」

潮「如月ちゃん、おかえり」

如月「ただいま、二人とも」

如月「もしかして待っててくれたの?」

夕立「そんな事より、さっき提督さんが探しに来てたよ」

如月「司令官が?」

潮「如月ちゃんのこと…心配してて…」

如月「そうなの?でも大丈夫よ。ちょっと身体が熱くなってたから風に当たってただけ」

如月「それよりごめんね。待たせちゃったみたいで」

如月「司令官には大丈夫だって、明日言うわ」



如月「今日はもう寝ましょう? 明日は演習なんだから」

夕立「…うん」

潮「うん」

夕立「…電気消すね。おやすみ」

潮「おやすみなさい」

如月「おやすみなさい」パチン

夕立「………」

潮「………」

如月「………」

夕立「如月ちゃん…」

如月「なぁに夕立ちゃん」

夕立「あ………」

如月「?」

夕立「あ、明日の演習頑張ろうね」

如月「えぇ。頑張りましょう。夕立ちゃんの第二次艤装改修も近いしね?」

早速誤字出しました。修正します。

>>10


如月「今日はもう寝ましょう? 明日は演習なんだから」

夕立「…うん」

潮「うん」

夕立「…電気消すね。おやすみ」

潮「おやすみなさい」

如月「おやすみなさい」パチン

夕立「………」

潮「………」

如月「………」

夕立「如月ちゃん」

如月「なぁに夕立ちゃん」

夕立「あ………」

如月「?」

夕立「あ、明日の演習頑張ろうね」

如月「えぇ。頑張りましょう。夕立ちゃんの第二次艤装改造も近いしね?」



夕立「………うん」

如月「夕立ちゃんの艤装改造が終わったら次は潮ちゃんよ。一日でも早くなれるように頑張らないと」

潮「えっ、あっうん…」

如月「あっ…話しちゃってごめんなさい?そろそろ寝ましょう?」

夕立「………うん」

夕立「おやすみ」

夕立(やっぱり、夕立が変に声かけない方がいいっぽい)

夕立(如月ちゃんは一生懸命忘れようとしてるんだ)

夕立(だったら変に話題に出して思い出させちゃいけないっぽい)

夕立(もうあれは思い出しちゃいけないっぽい)

夕立(今日のあれは、悪い夢)

夕立(だから…これでもう…終わりに…しよう…)ウトウト

夕立(明日からは…今までどおりで…)

夕立「」スースー

如月「………」モゾッ



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





気が付くと私は、海の上で一人、立っていた。

遠くの方で、何かが爆発する音が聞こえる。何度も何度も聞いてきた、聞き飽きた位の音。

耳に水が詰まったような感覚。

爆音に紛れて誰かの叫び声が聞こえる。

回避、大発、不可

機銃、魚雷、敵機接近

――――敵機?

首が、頭が、視界を上に動かした。

青い空に、黒い影。あぁ、敵機だ。

逃げなきゃ殺される。だけど身体が動かない。

何かが私を縛り付けている。

影から小さな影が出てくる。

吸い込まれるように、私の身体にぶつかってきたそれは、

破裂して、中から飛び出した炎が私を包み込んだ。

痛い、息ができない、炎が剥がれない。

熱い、身体が燃える、決して逃げられない。

顔まで上ってきた炎と、足まで覆い尽くした炎が重なって、私の身体を逆方向に折り曲げる。


そして、形容しがたい痛みと共に

私の身体は二つに千切れた。



如月「んあぁっ!!」ガバッ

如月「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」

如月「………あ」

如月(夢?)

如月(あれが夢?)

如月(ひどい夢…あんなのを見せられた後にこんな夢って)

如月(こんなに…死んじゃうかもしれないくらい痛くて…)

如月(怖くて…)

如月(あれ?)チカッチカッ

如月(…私の携帯)カチッ

『テレビ見たよ。大丈夫?』

如月(………)

如月(…久しぶりのメールね。パパ)



「本当に、なるのか?」

「うん」

「如月型艦娘の適正があるって決めてから、これしかないって思ってた」

「パパの会社の名前と一緒で、パパの会社が艤装を作って」

「そんなパパの娘が『如月』の適正者! これって凄い運命だと思わない?」

「運命なんて…そんな事で命を粗末にするなんて」

「粗末になんてしないわよ」

「私も『如月』になって、色んな『如月』のお手本になりたいの」

「それに私が活躍すれば、パパの会社も有名になる!」

「それって凄く素敵な事じゃない!?」

「……………」

「大丈夫よ。艦娘って頑丈だから、よほどの事が無い限り死なないんでしょ?」

「それに、私が身に付けるのは、パパが作ってくれる艤装なんだから」

「だから他のどんな艤装より…安心できる」

「戦艦『大和』とか『長門』より、私は駆逐艦『如月』を信じてる」

「だから大丈夫!」

「…わかった」

「そこまで言うのなら止めはしないよ。応援する」

「最高の教官も用意するよ。僕のわがままだけど、それ位はさせてくれ」

「やるからにはお前を、最高の『如月』にしてやりたい」

「…パパ」

「でも無理はしないでくれ」ギュッ

「艦娘になって、今までの名前を封印して、顔が変わって、遺伝子が変わっても、お前はパパとママの娘なんだ」

「パパとママはお前を愛している。どんな姿になってもだ」

「それだけは忘れないし、忘れて欲しくない」

「それと、僕達は愛する娘の死ぬ所なんて絶対に見たくない」

「うん」

「死ぬ位なら活躍なんてしなくていい。無理はしないでくれ」

「うん」

「本当は、お前が傷付く事も嫌なんだ」

「うん」

「だから絶対、絶対、生きて帰ってきてくれ」

「…うん」



如月「………」ピッ

『支給品確認表に載ってないものが入っててびっくりしたかな?』

『軍の人にお願いして、特別にこれだけ入れさせてもらった』

『この携帯が僕達の唯一の繋がりになると思う』

『本当なら、僕らはもう親子ではない。艦娘になると顔も遺伝子も変わってしまう』

『今までの名前も封印して、艦の名前が新しい名前になる』

『この戦いが終わるまでは、赤の他人みたいなものだ』

如月(…もしくは、戦死するまで)

『だからよほどの事が無い限り連絡はできないし、しない』

『でも、もし本当に辛くなった時は』

『逃げ出したいくらい辛くなった時は』

『電話してほしい』

『うちの財力なら、艦娘を一人連れ出す事くらい簡単にできる』

『いつでも迎えに行けるから』

『だからまた声を聞かせてほしい』

『パパより』

如月「……………」



如月(うぅん。まだ大丈夫!)

如月(…大丈夫!…大丈夫!!)ズキンッ

如月(こんな、胸の痛みなんて、耐えられる…!!)

如月(……耐えなきゃ…!!)

如月(『如月』の見本になるって決めたんだから…!簡単に折れちゃいけない…!!)

如月(それに、パパの為に……司令官の為にも……!!)カチカチカチカチ

如月(私は折れるわけにはいかない…!!)ピッ

『大丈夫よ。ありがとう』

如月「……………」

如月(寝ましょう)バサッ

如月(明日は演習なんだし…)

如月「私は、本当に大丈夫だから…」

「いいや」

「あなたはもう終わり」

如月「えっ」ガバッ

如月(………)

如月「…何、今の。何て言った?」

如月「気のせいよね。空耳よね?」

如月「………」

如月(寝ましょう)バサッ

「あなたも近いうちに」

「死ぬ」

如月「!!」

如月(うるさい!!)バッ

如月(何なのもう!何も聞きたくない!)

「………死ぬ」

如月「~~~~~~~~~!!!」ガタガタガタガタガタ



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-翌日 昼-



阿賀野「さーみんなー! 今日は演習だよー!」

龍田「提督はいないけど、代わりに大淀ちゃんが演習相手見つけてきてくれたからねー」

龍田「…って」

如月「………」

龍田「如月ちゃん?」

如月(ぜんぜん眠れなかった)

如月(昨日の夢と、変な声…)

如月(何でいきなりあんな夢を見たのかしら)

如月(『あの時と同じ』、艦載機の攻撃で…)

如月(…『あの時』?)

如月(『あの時』って、どの時?)

如月(テレビでの事?いや、違う。でも何で確信を持ってそうだと答えられるのかしら?)

龍田「き・さ・ら・ぎ・ちゃん?」

如月「!」ピクン

龍田「大丈夫?」

如月「えっ、え…えぇ! いつでも大丈夫です」

龍田「本当に?」

如月「はい」

龍田「無理しちゃ駄目だよー? あなた達はうちの期待の新人さんなんだから」

阿賀野「そうだよ。私たちのはじめての部下なんだし、みんな大事なんだから!!」

阿賀野「夕立ちゃんも、潮ちゃんも、暁ちゃんもね!」

暁「…なんかついでみたいな言われ方じゃない?」

阿賀野「そんな事ないよ!」

阿賀野「みんな大事!大事!!ねー潮ちゃん!」

潮「あははっ…ありがとうございます」

龍田「それじゃあそろそろ本題に入ろうかしら」

龍田「今日の演習相手はね―――」

如月「………」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





阿賀野「偵察機ちゃんから入電…うんっ敵艦発見!」

龍田「軽母1、軽巡2、駆逐3。典型的な軽空母戦隊ね」

如月(空母)ピクッ

夕立「こっちは軽巡2の駆逐4だから、制空権は取られる」

暁「空からの攻撃をしのいだらこっちの番なんだから!」

阿賀野「そうだね。その為の…新兵器!!」

潮「この…91式高射装置、でしたっけ?」

龍田「そうそう。今回の目的は高射装置の運用実験と対空の訓練ってところねー」

阿賀野「これ使って、どこまでやれるか試して、提督さんに結果レポ出さなきゃいけないのよね!!」

龍田(多分レポ作るのは私か大淀ちゃんになると思うんだけどな)

阿賀野「って言ってる間に敵艦隊見ゆ!!」

阿賀野「それじゃ一番手の潮ちゃん!早速高射装置使って!!」

潮「は、はいっ!!」ドォン!ドォン!

龍田「阿賀野ちゃん、私達も対空やるわよ」ガチャッドンッ

阿賀野「アイアイ。対空にも便利な阿賀野砲の力、見せてあげるんだから!!」ガチャッドンドンッ

潮「くっうぅぅぅぅ!!」ドォン!ドォン!

龍田「あら~、潮ちゃん結構いい線いってるんじゃない?」

阿賀野「才能だねー…みんな一回はやってもらおうと思ってたけど、しょっぱな当たり引いちゃった?」

夕立「如月ちゃん!そっちに艦爆行った!!」

如月「!!」



(…迎撃!!)

何度も繰り返してきた動きを、今一度再現する。迫り来る艦載機への迎撃。

こちらの斜め上からの降下体制に入った艦爆を視界に捕らえ、砲を向ける。

砲を構えた腕が不意に震え出す。もう片方の腕で無理やり震えを押さえ込む。

(何やってるのよ!!)

(いつも通り練習通りにやるだけじゃない!いつも通りにやって迎撃して落とす)

(そうじゃないと…そうじゃないとぉ!!!)


「また死ぬ」


(!!!)

「やっぱり聞こえてるんでしょ」

「無視しないで」

「そろそろ見えてくるはずよ」

「貴方を殺す、貴方を殺した」

「影が」

向かってくる九九艦爆のフォルムが黒く濁り、単細胞生物が分裂するように影から二つの影が産み出される。

一つは見飽きた影。深海棲艦が産み出す艦載機の影。

一つは見慣れない影。大きな白星を貼り付けた影。

影に貼り付いた白星から大量の情報が如月の脳内に読み込まれていく。

(そうか)

(あれは…昨日のあの夢は!!)

(駆逐艦『如月』の最期…!!)

如月の心臓に、荒縄で直接縛られたような痛みが突き刺さる。

昨日如月はアレに殺された。

昔の如月もアレに殺された。

それなら『私』は?

「 三 度 目 に 貴方を殺すのは」

三つの影が再び溶け合う。

「こ れ ?」

溶け合った三つの影が大きく黒い九九艦爆を形作る。



黒い九九艦爆が抱えた爆弾が鈍く光ると同時に、如月の身体は催眠術にかかったように動かなくなる。

迎撃しようと挙げた腕を下ろす事もできない。引き金を引く事もできない。

まるで全ての力が身体の震えに使われているように。

まるで昨日の夢のように。

(…嫌)

(嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌ぁ!)

自分の心はこれ以上無いほど暴れている。

反して身体は動かない。何かが私を縛り付けている。

目を逸らす事すら許されない。

まるで昨日の夢のように。

まるで昨日の夢のように。

まるで、昨日の夢の、ように。

あの夢の最後、自分はどうなったか!?

「さぁ」

あぁ!

「貴方もいらっしゃい」

あぁ!!

「こ ち ら の 世 界 に」

爆弾が!爆弾が来る!

私を殺す爆弾が降ってくる!!

誰か助けて!!

阿賀野さん!龍田さん!暁ちゃん!夕立ちゃん!潮ちゃん!

パパ!ママ!司令官!!

司令官!司令官!司令官!司令官!司令官!司令官!司令官!司令官!司令官!
司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官
司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官
司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官司令官
司令官司令官司令官司令かああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ






























・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





明石「やっと落ち着いてきた…よかったぁ」

龍田「…よかった」

明石「でもまだ意識は戻ってないですし、しばらくはこのままにしておかないといけませんね」

天龍「龍田いるか?」ガチャッ

龍田「あら、天龍ちゃん」

明石「天龍さん?うちの泊地に天龍型艦娘(※)っていなかったような」

※ここでの『天龍型艦娘』は『天龍の名を持つ艦娘』の総称としての言葉 (龍田は『龍田型艦娘』という扱い)

天龍「俺はパラオ第一四泊地所属の天龍だ。今日は演習でこっちに来てる。ほら、ドックタグと許可証」チラッ

明石「あっはい。失礼しました」

龍田「もう片付け終わっちゃった?」

天龍「あぁ。艤装のメンテも終わった」

龍田「なんかごめんね」

天龍「気にするなよ、それより如月大丈夫なのか?」

明石「意識はまだ戻っていませんが、さっき脈拍も落ち着いたところです」

天龍「そうか」

天龍「龍田、ちょっと話がある。今いいか?」クイッ

龍田「ん~」チラッ

明石「大丈夫ですよ。如月ちゃんは私が見てますから」

龍田「そう。それじゃあちょっと失礼しまーす」ガチャッバタン



龍田「それで、話ってなぁに?」

天龍「何で如月を演習に出した?」

龍田「何でって、如月ちゃんの練度向上の為よ」

天龍「違う、そうじゃない」

天龍「俺が言いたいのは、何であんな事があったのに無理して出撃させてるんだって事だ」

天龍「昨日のテレビ、見たろ?」

天龍「如月型艦娘の轟沈」

龍田「見たよ。でも如月ちゃんは大丈夫だって言っていたし」

龍田「如月ちゃんはうちの主力候補生だから、今のうちに練度上げておきたいの」

天龍「そりゃ如月に気を使われたんだろう」

天龍「誰彼構わず甘えるようなタイプにも見えないからな」

天龍「だけど今回のは本当にヤバイんだ」

龍田「本当にヤバイって?」

天龍「テレビでの如月型艦娘の轟沈の様子が駆逐艦如月の最期とそのまま一緒なんだ」

天龍「航空機による攻撃で魚雷管が誘爆、轟沈」

天龍「しかも沈んだ場所まで一緒のW島ときた」

天龍「こんなん見せられてみろ。俺達には理解できないかもしれないけど、本人にとっちゃきついなんてもんじゃない」

天龍「そりゃ艦載機見ただけで意識飛ぶのも無理はねぇよ」

天龍「一度ならず、二度も自分を殺したモンに怖がるなって言う方が無理な話だ」

天龍「『今度もそうなるんじゃないか』って、考えちまうよ」

天龍「それにそれだけじゃねぇ…」

天龍「………」



天龍「龍田。ちゃんと聞いてくれ」

龍田「なぁに天龍ちゃん?かしこまっちゃって」

天龍「今からでも遅くない。如月を連れて俺の鎮守府に来い」

龍田「え?」

天龍「お前は自分の泊地の事だから気付いてないかも知れないけど、お前の泊地相当ヤバイぞ」

龍田「ヤバイって何が?」

天龍「提督がだよ」

天龍「コミュニティサイトとか見りゃすぐ出てくるぞ、お前とこの提督の噂」

龍田「何かあったかな?確かにすぐ艦娘に手出す人だけど」

天龍「ちょっと待てそれマジなのか!?」ガバッ

龍田「うわぁんっ」ビクンッ

天龍「龍田お前は大丈夫なのか!?何でそんな平然としてるんだ!?」ユサユサユサ

龍田「ちょっと待って天龍ちゃん。どういう事?」ユサユサユサユサ


天龍「だってお前…レイプされたんだろ!?」

龍田「えっ?されてないけど」


天龍「えっ」

龍田「レイプされてないけど」

天龍「………」

龍田「提督がレイプ魔だって噂が流れてるって事?」

天龍「…あ、あぁ。そうだ」

天龍「配属されてきた艦娘をさ、権力を傘にしてレイプしてんだと」

天龍「あとは命令を聞かない艦娘だとか気に食わない艦娘だとかを懲罰という名目でレイプだとか」

天龍「それだけじゃねぇ泊地の運営費の横領、憲兵への賄賂、市民への脅迫、艦娘の強制労働!」

天龍「もうこれ以上のものは無いってくらい色々聞くぞ」

龍田「なんか色々ひどいね」

龍田「でも友提督さんの鎮守府とかならともかく、こんな辺境の中の辺境みたいな泊地だと運営費もたかが知れてるし」

龍田「憲兵なんて定期的な見回りでも年に一・二回しか来てないし」

龍田「提督はご近所トラブルを怖がって低姿勢だし、潜水艦娘なんて暇だからってたまに事務仕事手伝ってるよ」

天龍「………」

龍田「………」



天龍「…でも火の無い所に煙は立たないって言うからな。お前の知らない所で何かやってるかもしれねぇ」

龍田(素直に折れればいいのに)

天龍「俺はな、少年院にブチ込まれてお前に会うまで、クソ野朗の掃き溜めみたいな所で必死に生きてきたんだ」

天龍「だからわかる。ああいうクソ野朗には学校で習うような道徳も常識も通じねぇ!!」

天龍「自分が反撃食らわない立場からこっちを嬲り殺しにしてきやがる!!」

龍田「そうね」

龍田「その辺は私もよくわかってるわ」

龍田「でも」

天龍「提督がそうじゃないっていう理由にはならねぇ」

天龍「もしかしたらお前の知らない所で何かやってるかもしれねぇ」

天龍「それでもお前はお前の提督を100%信じられるか?」

天龍「もしだ。もし万が一だ」

天龍「お前の所の提督が噂どおりの奴だったら」

天龍「今の如月を見て何をするかわからねぇ」

天龍「危害を…いや、ぶっちゃけて言うぞ」



天龍「遊び感覚で」

天龍「如月を殺すかもしれねぇ」



天龍「今の如月はそういうクズにとっちゃ格好の餌でしかねぇ」

天龍「『テレビで沈んだから』とか何とかぬかしながら笑って如月を殺すだろうよ」

天龍「お前にだっていつ何をするか…」

龍田「提督はそんな事しないと思うけど」

天龍「そんな事わからないだろ!?」

龍田「天龍ちゃん、ちょっと怒りすぎじゃない?」

龍田「提督の事嫌いなの?」

天龍「あぁ嫌いだね。そんなクソ野朗」

天龍「見かけたら一発と言わず十発はブン殴ってやりてぇよ」



天龍「それに何より、そんな噂が出てる提督の所にお前が居るってのが何より気にいらねぇ」

天龍「もしお前に何かあってみろ、俺はお前の提督だろうが絶対…!!」

龍田「大丈夫よ」ギュッ

天龍「あっ」

龍田「天龍ちゃんがそこまで思ってくれてうれしいわ」

龍田「でもね、私にとっての提督はね、『もう一人の天龍ちゃん』なの」

龍田「だからここから離れたくないの。私がここを離れたら、『天龍ちゃん』が寂しがっちゃうから。ごめんね~?」

天龍「あんな噂されてる奴と一緒にされたくねぇ」

龍田「えー、よく見てるとそっくりよ?」

龍田「へっぽこなのに強情張り、お調子者だし後先考えない」

天龍「龍田、お前そこまでむっ」ピトッ

龍田「だけど」

龍田「意外と仲間想いで面倒見が良いのよね」

龍田「ねっ天龍ちゃん?」ニコッ

天龍「むぅ………」

龍田「提督なら大丈夫よ。それに」

龍田「もし提督が天龍ちゃんの言った通りの人だったとしてもね」



龍田「提督くらいならいつでも簡単に殺せちゃうんだから」ニコォッ



龍田「提督の首ってね、喉仏小さいから、邪魔なものが無くて締めやすいんだよぉ?」

龍田「親指を中心に添えて」

龍田「指のお腹で死ぬまで押し潰すか」

龍田「それとも爪を立てて穴を開けちゃうか、ね♪」


天龍「」ゾッ

明石「あっ」ガチャッ

龍田「あら明石さん?」

明石「如月ちゃんの意識戻りました」

龍田「あぁよかった。それじゃあみんな呼んでくるね~」

天龍「………」

龍田「天龍ちゃん。さっきの話みんなには内緒にしてね?」ボソッ

天龍「あ、あぁ。わかった」(さっきの話のどこからどこまでを内緒にすりゃいいんだよ)

龍田「せっかく演習まで組んでもらったのにごめんね?続きはメールでしましょ」

龍田「さっきの噂の出所ってのも気になるし、教えてね?」

龍田「それじゃあね、天龍ちゃん」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





龍田「落ち着いた?」

如月「…はい」

阿賀野「体は痛い?」

如月「いえ、大丈夫です…ごめんなさい。私のせいで」

暁「いいって。それよりどうしたの?」

如月「…飛んでくる艦載機から、変な影が見えて…」

暁「影?」

如月「深海棲艦の艦載機と…」

如月「…F4戦闘機」

如月「駆逐艦『如月』を沈めた戦闘機」

潮「戦闘機って………如月ちゃん、やっぱり昨日の番組の…」

暁「番組って?」

夕立「今艦娘のドキュメンタリー番組放送してるって、知らない?」

阿賀野「あ…あぁ!あれねー?知ってるよぉ!?」

阿賀野・暁(あんな夜まで起きてられないし!普通に忘れてた!!)

潮「それで、如月型の艦娘の子が一人轟沈して…」

阿賀野「えっ………!?」ビクッ

阿賀野「もしかして…艦載機の攻撃で?」

夕立「うん」

阿賀野「…だから、さっきの演習の…艦爆…」

阿賀野「………」グッ



阿賀野「如月ちゃん」ズイ

如月「は、はい」

阿賀野「しばらく休んだ方がいいよ」

如月「い、いえ!如月は大丈夫です!!」



阿賀野「嘘つかないで!!」



如月「!!」ビクッ

阿賀野「夕立ちゃんの改造がもうすぐで、足引っ張りたくないって気持ちはわかるけどさ!」

阿賀野「それで如月ちゃんが無理して、何かあったらって考えると、怖いよ…!」

阿賀野「だからもっと自分を大事にして!!」ガシッ

阿賀野「提督さん…と、代理の赤城さんには私達がちゃんと伝えておくから!!ね!?」

如月「あ、あがの、さん?」

阿賀野「あっ…」

阿賀野「…ご、ごめんね」パッ



暁「…もぅ!!」

暁「仕事の事ばかり考えるからそんなになっちゃうのよ!!」

潮「暁ちゃん」

暁「こういう時は、あれよ!街に出て、ばーっと遊んじゃうの!!」

暁「仕事の事も嫌な事も忘れて!やりたい事やりまくるの!!」

暁「そしたらきっと変わるわよ!!」

暁「…そういえば!ここから近くの日本街も大きくなってきてるから、回ってみるときっと楽しいわよ!」

暁「だから今日はここで訓練切り上げて!皆で気分転換に行きましょ!!」ニカッ

潮「………」

如月「………」

龍田「………」

暁「行きましょ!!」ニコニコッ

阿賀野「………」

夕立「………」

明石「………」

暁「えっ?」

龍田「えっ?」ニコッ

暁「えぇっ?」

龍田「えぇぇっ?」ニコニコッ

暁「ひえぇぇぇっ!?」

如月「暁ちゃん」

如月「気持ちは嬉しいけど、如月は一人で大丈夫よ」

如月「如月一人のために皆の訓練を止めるわけにはいかないし…ね?」

暁「如月ちゃぁん…」

如月「大丈夫よ!今日はちょっと調子悪いだけだから」

如月「明日には元通りの如月を見せてあげるから、期待してて待っててね♪」ニコッ



龍田「ほら、如月ちゃんもこう言ってるんだから、諦めてね?」

暁「きさらぎちゃ~ん…」

如月「頑張って暁ちゃん。多分私の代わりで、暁ちゃんと同じニ班の夕雲ちゃんか荒潮ちゃんが来ると思うから、ね?」

暁「あの二人なんか怖いんだもん…」

如月「そうかしら?二人とも凄くいい子よ?」

暁「そりゃ如月ちゃんはウマが合うから良いと思うけど…」

龍田「はーい。積もる話は後でねー」ガシッ

暁「ぴっ!!」ビクッ

如月「夕立ちゃんも潮ちゃんも頑張ってね」

夕立「うん」

潮「またあとでね、如月ちゃん」

暁「きさらぎちゃバタンッ

如月「………」

『ここから近くの日本街も大きくなってきてるから、回ってみるときっと楽しいわよ!』

如月「日本街…かぁ」

明石「あっ、まだ駄目。一応大丈夫かどうか検査してからじゃないと」

如月「はぁい」

如月(気分転換には、なるかしら)

明石「………」

明石「提督、何の用事か知らないけど、早く帰って来てくれればいいのにね」

如月「…はい」

明石「多分提督も如月ちゃんの事気にしてると思うよ」

如月「…それなら、いつまでもこうしてはいられないですね」

如月「早く元気になって、司令官に安心してもらわなきゃ」

明石「…そうだね。提督心配性だもんね」フフッ

明石「じゃ、ちゃちゃっと終わらせるから、パーッと遊んできなさい!!」


☆今回はここまでです☆

前回スレを立てて落とした時に自分がとんでもない遅筆だと自覚しました。
不定期で、かなりのんびり進む事にはなりそうですが、落とさないようにはしていきます。

>>1氏、ターキーと鶏肉を間違える

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

こんな可愛い信者が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこのチキンを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
ハート「チェイス、そこのチキンを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450628050/)

>>1です。
あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。
それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





-数時間後 パラオ日本街-


如月(…この辺も随分日本っぽくなったわね。パラオなのに)コツ、コツ、コツ

如月(確かパラオも大日本帝国時代には日本が統治してたんだっけ)

如月(防衛ラインの拡張と艦娘の拠点建造に成功したのも、その辺の歴史があったからとか、座学の時に高雄さんから教わったっけ)

如月(………)

如月(やっぱり、頭から離れない)

如月(昨日の夢は、駆逐艦『如月』の最期)

如月(ウェーク島での作戦中に戦闘機の銃撃・爆撃を受けて魚雷が爆発。船体が割れて沈没)

如月(昨日の番組でも、爆撃で、轟沈)

如月(何で…こうまで同じような…)



「それが運命だからよ」



如月「えっ?」

「何もできずに沈んでいく」

如月(また…これ…)

「何かを成す事も無く無様に死んでいく」

如月(頭の中で、何かが…)

「押し付けられるのは不理解と屈辱と侮蔑」

「それが私達に与えられた、歴史の強制力なの」

如月(な、何よ!?)

如月(運命?強制力?私達?)

如月(私もああなるって言うの!?)

如月(そんな事ない!そんな事ない!!)

如月(何だか知らないけど、今はちょっと気分が落ち込んでいるだけ!)

如月(さっきのあれだって、昨日の今日だから意識しちゃっただけ!)

如月(今日一日息抜きすれば、明日からは元気に元通りになるわ!)

如月(そうすれば、そうすれば、全部大丈夫よ!)

如月(だから、別の事を、別の事を考える!)テクテク

「……………」

如月(ほら、もう聞こえない!今のはただの空耳、気の持ちようなんだから!!)テクテクテクテク


如月「あ」ピタッ


如月(この道って………)

如月(去年の秋ごろ…私たちが泊地に来て、はじめての大規模作戦の後で、打ち上げしたのよね)

如月(私と、夕立ちゃんと、潮ちゃんと、司令官の四人だけで…)



「さー今日はお祝いだ!じゃーんじゃん行くぞー!!」

「いぇいっぽい!」

「いぇいいぇい!!Foo!!」

「提督…打ち上げなんて本当にいいんでしょうか?」

「え?何で?」

「渾作戦…結局最初しか活躍できませんでしたよね」

「あー…まさかまたあんな序盤で姫級が出てくるとは思わなかったからなぁ」

「うちの泊地で姫級沈めたのなんて、主力の奴らがアルフォンシーノで一回こっきりなんだぜ?撃退できただけでも上等だろ」

「姫級と最初にやりあった時とか、逃げるしかできなかったんだしな?」

「それよりもさぁ!」

「俺達の連合艦隊の初陣!初勝利!」

「それだけじゃなくて、駆逐艦のお前達が新型重巡と随伴の戦艦の撃沈!」

「俺はね!これを評価したい!!」ウン!

「元々連合艦隊の主力として期待してたけど、こんなにも早く結果出してくれるとは思わなかったよ!!」

「お前達を選んでよかった!いやーもう最高だよお前ら!!」

「もー、司令官ったら…そんなに褒められると、如月困っちゃうわ」

「いいじゃんいいじゃん!」ポンポン

「ひゃっ」

「お前達は頑張ったよ!お前達がこの土地を守ったんだよ!!」ワシワシワシ

「もっといっぱい褒めちゃるよ!ホラホラホラホラ!!」ワシワシワシワシワシ

「いやぁん!髪がっ髪がぁ!」

(もしかして提督、もう酔ってる?)

「ほれほれ困れ困れー!!!」ワシワシワシワシワシワシワシワシワシワシ

「きゃー!!きゃー!!」



「…まぁアホするのもここまでとしてだ」パッ

「」モシャァ

(切り替え早すぎっぽい)

(如月ちゃんの髪、提督のせいでぐしゃぐしゃになってるんだけど)

「戦争ってのはでかいチーム戦だ。一人が勝てばそれでいいってもんじゃないんだ」

「みんなが勝って、それが積み重なって、作戦の成功とか勝利とかに繋がるんだ」

「だからお前達が頑張ってアイツを沈めた事が、今作戦の成功の一因になったんだよ!!」

「ふーん」

「そうなんでしょうか」

「そうなんだよ!?」

「だからな、こういうのでMVPが誰だとかは俺はあんまり気にしたくない」

「俺達の勝利は俺達みんなで均等に分けたい」

「例えミスしようが迷子になってようが、戦う意思を持っていたんだから、名誉はちゃんとあげないといけないと思う」

「お前達だって、そうじゃなきゃ命張りたくもないでしょ?」

「そうじゃなきゃなあ…」

「………」

「…よぉし駆逐一班!前を見なさい!」

「は、はい!」

「はい?」

「はーい」

「よぉく覚えておけよ」

「この街、この道、この建物を、お前達が守ったんだ」

「おっかない化け物相手に勇気を振り絞って守りきったんだ」

「夕立達が…」

「そう!だから命令!」

「慢心しない程度に、誇りに思いなさい!!」


「お前達は、本っ当に!よくやった!!」




如月(あの時髪はめちゃめちゃにされちゃったけど嬉しかった)

如月(司令官のあったかい手も、言葉も、全部嬉しかった)

如月(…司令官)

如月(私の事を期待してくれている、大切にしてくれている、大切な人)



「お前(如月)を使う理由?」

「前に先生…教官に言われたの」

「睦月型駆逐艦の艤装は全体的に性能が低くて低燃費だから、戦闘には参加しない遠征要員になるのが殆どだって」

「だから如月も、遠征要員になっちゃうんだろうなって思ってたわ」

「でもいざ大本営から辞令が出てこの泊地に来たら、水雷戦隊の主力だって言われて…」

「花形になれたのは嬉しかったけど、何でなのか気になっちゃうの」

「如月が『ソロモンの悪夢』夕立と、『幸運艦』潮と一緒に戦える理由って…?」

「んー…理由、と言われてもな…」

「一個はっきりとわかるものと言ったら…」

「言ったら?」

「運命?」

「え?」ドキッ

「何というか…うちの泊地は小さいだろ?」

「艤装作りまくりーの艦娘を呼びつけまくりーので、そこから選ぶーとかそういうのできないんだよねー」

「だから、妖精さんが艤装作ったらすぐに艦娘の召集かけなきゃって思っててさ」

「そしたら妖精さんが取り出してた設計図(※)が如月型艦娘の艤装でさ」

(※)各鎮守府での建造は、資材を与えられた妖精さんが、大本営から送られてきた数多の設計図から、きまぐれに選んで行っているものとする。
(※)提督の台詞をゲーム内での実際の行動に置き換えると、「建造完了時間から見た建造結果の予測」

「理由なんて無くてたまたま私だったって事!?」

「そうだね」

「はぁー…」

「…え、何その反応?」

「運命だなんて言うから期待した私が馬鹿みたい」

「えー、でもこれだって運命の出会いだろー?一期一会よ一期一会」

「そんな全然ロマンチックじゃない運命なんて嫌よ」



「あぁー…」

「いや、でも来てくれたのが如月でよかったってほんとに思ってるよ」

「ふーん」プイッ

「夕立も潮もちょっと極端すぎるから…」

「間に立てる、しかも落ち着いた子がいるとさ…何というか、助かる」

「それだけ?」

「『それだけ』って?…えっ?」

「本当にそれだけ?」ズイッ

「ん!?ちょっ…顔近いよ?」

「司令官言ってたわよね。私達は『期待の新人だ』って」

「こういう事は…期待してくれないの?」スッ

「いやいやいやいやどこさわってんねん」

「かわいい女の子がいっぱいいる職場じゃ溜まっちゃって大変でしょ?」

「溜まってるって?ストレッチパワーが?」

「いいわよ私は…あなたにだったら………」ボソッ

「人の話聞けよぉ」

「司令官」

「はい」

「私の事…見て…」

「あ………」(やべぇぞこれ)

「………」ドキドキ

「………」ドキドキ

「………」ドキドキ

「……………」

「なーんちゃって♪司令官ったら顔真っ赤にしちゃって、かわいい♪」

「…いやいやいやいやシャレならん事すんなって」

「嫌…だった?」

「嫌じゃないけどさぁ、大人をからかうなって」

「こんな所憲兵とかに見られたら、俺死んじゃうよ」

「じゃあ誰にも見られない所ならいいのね?司令官の部屋とか」

「そういう問題でもねぇ」

「えー」

「えーでもびーでもねぇ」

「じゃあ、しーまでイっちゃう?」

「今時どっからそんな古いネタ仕入れてきやがるんだ」

「秘密。でもぜっとまでイってもいいのよ?」

「え?あれZまであるの?Zってどこまで行くの?墓場?」

「妊娠」

「慎め」



如月「…ふふっ」

如月(期待の新人…か。そうね、期待されてるんだったわね)

如月(司令官(あの人)も心配性なんだから、きっと今すっごく不安になってるよね♪)

如月(それじゃあ…そうね、新しい香水でも買おうかしら)

如月(それ付けて、帰ってきた司令官にぎゅーーーっとして…)



「あれ、あいつ」

「死んだんじゃなかったの?」




如月「!!」ズキッ



「ろくに戦えもしなかったのにいいご身分だよね」

「恥ずかしくないのかな?」

「というかあんなヘラヘラしてるからあんな事になるんじゃないの?」



如月「………!!」コツ、コツ、コツ


「だから言ったじゃない」


如月(…またこの声)

「気の持ちようじゃないの。空耳でもないの」

「何度だって言ってあげる」


「これが運命」


「何もできずに沈んでいく」

「何かを成す事も無く無様に死んでいく」

「押し付けられるのは不理解と屈辱と侮蔑」

「それが私達に与えられた歴史の強制力なの」

如月(…だったら、何だっていうの?)


「全てを恨む。全てを憎む。この世の全てに殺意を抱く」


如月(!!)

如月(そんなの駄目よ…!)

如月(私は艦娘なのよ?人々を守る艦娘がそんな)

「だけど如月は死んだわ。人間は如月を切り捨てたの」

「人間に裏切られたのよ」

如月(裏切られたって…でもあれは、あの番組のあれは)

「周りを見て、悟って。私達の置かれた環境を」

「私達は、もうどうにもならない悪意の只中にいるのよ」

如月(悪意、って………)



「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


如月「」ビクッ



男1「くっっっせぇくっせえ!!!!」

男1「なーーーんか腐った匂いがプーンプンするんですけどォォォォォォォォ!?」

男1「人肉の匂いっつーか!?ゾンビの匂いっつーか!?」

如月(な…なんなの、この人達…)

男1「どっからだぁ!?こ っ か ら だ ぁ !!!」

男1「なぁー!きさらぎちゃんよぉぉぉー!?!?」

如月「な…何なんですか、貴方達は」

男2「お前が何なんだよ」

男3「何でゾンビがこんな所に入り込んでるんですかねぇ」

男3「ここは人間様の土地なのになぁ」

如月「ゾ…ゾンビって…」

男1「ゾンビだろ?だってお前死んだじゃん」

如月「!!」ズキッ

如月「私は、死んでなんていません!!」

男1「じゃああのテレビはどういう事だぁ!?」

男1「お前『かみがいたんじゃうぅぅーん』とか言ってるときにヨォ」

男1「爆弾で」


男1「ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!」


男1「で、死んだんだろぉ!?」

男1「そのお前が、何で、今、ここにいるんだって聞いてるんだよぉ!?」

如月「…あれは私じゃありません」

男3「は?」

如月「私じゃないって言ったんですよ!!」

如月「テレビで沈んだのは確かに如月型艦娘だったけど、あれは私じゃ」



男1「んなの知らねーーーーーーーーーーーーーーよ!!!!!!!!!!!!!!」



如月「」ビクッ


男1「お前は死んだんだ!!あの番組で!!!」



男1「で!!!何で死んだお前がここにいるのかって聞いてんだよ!!!!」


如月(…どうすればいいのよ)



男1「あぁそうかわかったぞ」



男1「お前スパイだな?」



如月「えっ」

男1「お前は深海棲艦のスパイなんだな?」

男2「あぁ俺聞いた事ある。沈んだ艦娘は深海棲艦になるって」

男2「それなら今こいつがここにいるのもわかる」

男1「そういえばこないだもパラオが攻め込まれてたよなぁ」

男1「それもこいつが情報流してたからなんじゃねェの?」

如月「!?」

男2「あー!そういえばテレビでも言ってたよなぁ、『情報が漏れてる』ってなぁ!!」

如月「…違う」


男1「そうだ」


如月「違う」


男1「そうだろう!」


如月「違う!!」



男1「そうに違いない!!」



男2「うわぁなんてひでぇ話!!本当に艦娘ってのはクソばかりだな」

男1「まったくだよ。だからよ」



男1「俺達がこいつをブッ殺さないとな」



如月「!?」ゾッ

男3「そうだな」

男1「もう海軍なんて信用できねえ」

男1「自分の身は自分で守るってな」

男3「そうだな」



無意識的に危機感を感じ、一歩引いた時にはもう遅かった。

腕を掴まれ、三本線の入った肌色のモノが視界に飛び込んで来た。

如月には意味がわからないが、鈍い痛みから、殴られたという事は感じ取れた。

顔に向かって飛んでくる。ニ発、三発、四発。

頭を狙って振り下ろされる。五発、六発、七発。

もうなんだかわからない。八発、九発、十発。

自由な片手で頭を庇うが、今度は下半身に痛みが走る。

拳より固く、大きい痛み。

蹴られていると感じた瞬間、女性的な恐怖が頭の中を支配する。

「司令官、助けて」

思わず口に出た言葉に男達は動きを止めた。

「しれいかんン?」

「司令官って提督の事じゃね?」

「あぁ、あの全然出てこない引きこもりのオタク野朗か?w」

男達が何かを思い出したように笑い出した。

「おいお前、提督のクビ飛ばしたくなかったらなあ、抵抗なんてするんじゃねぇぞ?」

「お前が本当に艦娘ならよぉ、知ってるだろ?」



「『艦娘が一般市民に手を出す事は、どんな事があっても許されない』」

「お前が本当に艦娘なら、その通りにしてみろよぉ!!」



軍規の話は如月も覚えている。しかし軍規があろうと無かろうと彼女に抵抗はできなかった。

彼女は相手に対して恐怖していた。

何をしてもどうしようもないと考えてしまった。

今まで死にそうになった事が無かったわけではない。

深海棲艦との戦いはいつも死と隣り合わせだ。

だけど、だとしても、今回の恐怖は深海棲艦と戦う時の比ではなかった。

なぜなら相手は『笑っているから』。

今までの相手のように機械的に破壊するのではない。

今までの相手のように何かを背負っている様子もない。

歯を剥き出しにして涎を垂らして裏返った声で笑い声を上げながら殴りかかってくる。

躊躇なく腹部に蹴りを入れてくる。

それが如月を何よりも混乱させ、恐怖させた。



「死ね」

再び横面に拳が叩き込まれた。

「死ね」

頭上から拳を叩き落された。

「死ね」

腹部に靴裏の感覚が捻じ込まれる。

倒れてはいけない。うずくまってはいけない。

頭を踏みつけられれば、馬乗りにされれば、そのまま殺される。

頭の中から湧き出てくる知識が、如月の生命をギリギリの所で維持させている。

一人の男が、どこからか石のブロックを持ってきた。

誇らしげに、『この瞬間を待っていた』とでも言いたい様に、両手で掲げて持ってきた。

何に使うかは時間をかけて考えなくてもわかる。

艦娘になって多少は丈夫になったとはいえ、艤装を付けていなければ一般人と大して変わらない。

殴られれば痛いし、骨が折れる事もある。

撃たれたら血が出るし、死ぬ事もある。

当たり所が悪ければ、艦娘だろうと普通に死ぬのだ。


では目の前の男は

掲げられたそれを、どこにぶつける気なのか。


石を掲げた『未曾有の化物』の笑顔を見て、如月の中の何かが切れた。



「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



叩き付けられるブロックの巻き添えを避ける為か、周りに人がいない事が幸いした。

軍規も何も関係ない。死にたくない!死にたくない!!

邪魔な男を突き飛ばして走り出した。

後ろから何か声をかけられたが、狂った頭は言語を理解できない。

頭の中にあるのは泊地までの帰り道と暗い考え。


死にたくない!

捕まったら殺される!


帰りたい!

泊地に帰りたい!


司令官!

お願い司令官!



助けて!!



☆今回はここまでです☆

前回スレ落とした時は、ここどうするか悩みすぎて落としました。
とりあえず何とか納得できる形に落とし込めてよかったです。

>>1です。
帝国軍高速戦艦が建造できなくて口からガイエスハーケン出そうです。

明日で以前の更新から一ヶ月になります。スレ落としたくないので生存報告件、予告をします。
明日更新します。ウィークリー任務や1-5等やり残しを潰してからお越しください。

>>1です。
資材300とクリスタル1でヴィーザル出せたからこの配分でいいと思ってましたが、
その時の運がかなりよかっただけなのかもしれないと思ってきました。
それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



「あの野朗突き飛ばしやがった!!」


「やっぱり化け物じゃないか!」


「追え!」


「ブッ殺せ!!」


「化け物だ!捕まえろ!!」


「深海棲艦のスパイが街に潜り込んでいるって!?」


「そうだよ」


「もうあんな腑抜けどもに任せてられるか!!」


「ブッ殺してやる!!」


「俺達がやるんだ!!」


「俺達の場所は俺達で守るんだ!!」


「殺せ!!」


「殺せ!!」


「殺せ!!」


「殺せ!!」


「殺せェ!!」


「おいあの通りにいるらしいぞ!!」


「ちょっと待て!俺はあっちにいるって聞いたぞ!?」




「知るか!両方ブッ殺せ!!」




「どうせ殺したってお咎め無しだ!今までの不満全部あいつにぶつけちまえ!!」




走る。ひたすら走る。



逃げ延びるために。



命を長引かせるために。



ただそれだけを考え、それ以外の考えを腫瘍のように膨らませて。



ひたすら走る。



こんな所早く抜け出したい。



泊地に帰りたい。



もうこんなのは嫌。





一撃で船を無意味な鉄屑に変える戦艦よりも



最深部で待ち構えていた、データに無い重巡よりも



今はただ、砲も持たない、ただの人間が怖い。



だから彼女は一目散に逃げ出した。



抵抗しても勝てるはずがないと心のどこかで感じていた。



捕まったら殺されると確信していた。



今の如月にとってこの街の人間は深海棲艦以上の化け物に見えていた。




必死に走り続ける如月の目の前から

突然、木材の山が激しい音と共に落ちてくる。


「きゃあああああああ!?!?」


「っは…っは…っは…!!」

目の前に崩れ落ちた木材の山を見て呆然として、屋上の舌打ちを聞き逃した。


もう少し前にいたら押し潰されていただろう。

当たり所が悪ければ、それで死んでいた。

当たり所が良くても、動けなくなって、追いつかれて、殺されていた。


もう前には進めない。

後ろからはさっきの男達が如月を追いかけて来ている。

飛び込むように、右の小道に駆け込んだ。

狭い道。どこに繋がっているかもわからない。

でもそれでも進むしかない。

死にたくないから。

殺されたくないから。


だが進んだ先は袋小路だった。



「あっ、あぁっ!行き止まり…!!」

人気の無い。暗い袋小路。

人を殺すにはある意味うってつけの場所だった。



「ハァーーーーーーーイ!これで終わりぃ!!」



「ひっ!!」

追い込んだのは最初に絡んできた3人組。

「この辺の地理でなぁ!俺達に勝てるわけねぇだろぉ!?」

「そこまでして死にたくねぇか裏切り者のくせによォおん!?」

「…裏切ってなんかない、です!」

「この期に及んでまぁだそれか」

「私はっ!私は情報も流してないし!深海棲艦でもないです!!」


「あぁもう面倒くせぇ!!おめぇが深海棲艦だろうがそうじゃなかろうが!そんなもんはどーでもいいんだよ!!」


「えっ…」



何かが目の前に投げ込まれ、金属音を響かせ、ぶつかり合い、地面を跳ね、滑る。

それは如月にとって見慣れたものだった。

彼女の、如月の髪飾り。

ただその髪飾りにはどれも赤黒い汚れがこびり付いていた。

中には強い衝撃で歪んでいるものもある。

「!!!」

如月は悟ってしまった。

これは血だ。

男達に怪我をしている様子もない。

なら、この血は…


だとすると、目の前の男達は一体


「どいつもこいつもお前みたいな反応してたよ」

「『私は深海棲艦じゃありませぇん』『私は裏切ってなんていませぇん』」

一体

「…だからそんなもん関係ねぇっつってんだよ!!」

「俺はな!俺達はなぁ!!」



「ただ 殺 し た い か ら 殺 し て る だ け なんだよォ!!!」



一体何人の如月をその手で殺してきたのか?




男1「俺はな、お前達が、前からずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと嫌いだったんだ」

男1「どいつもこいつも偉そうなツラして街を歩いて…」

男1「どいつもこいつも自分が正しいと思いこんで…」

男1「『世界の平和は自分達が守ってます』って面しやがってよぉ!!」

男1「『だから何してもいいんですぅ~♪』ってかぁ!?あぁ!?!?」

男1「ざけんじゃねぇよ!!誰がテメェらに守ってくれって頼んだよ!?」

男1「こっちはテメェらみたいなヒトモドキの痴女ども見るだけでこちとら腹立ってしょうがねぇんだよ!!!」


男1「テメェらのせいで俺までこんな意味わかんねぇ土地(パラオ)まで連れて来られたんだ!!!」

男1「何が商売チャンスだよ!クソ親父!!クソババア!!」

男1「クソ暑い!ゲーセンも無ぇ!やたらめったら台風は来る!!日本語も通じねぇ!!」

男1「こんなクソみたいな場所に連れてきやがって!!!」


男1「テメェらみたいなのにクソ高い税金払ってるってのもムカついてならねぇ!!」

男1「売女みたいな格好でウロウロウロウロして男漁ってるだけのくせによぉ!!!」

男1「 豚!!! ヒトモドキ!!! ガイジの分際でよぉ!!! 」


男1「偉そうにしてんじゃねぇっつってんだよぉ!!!」

男1「とっとと全員ブチ殺されればいいのによぉ!!!!」



男1「…そう思ってたら放送したのがあのクソテレビよ」

男1「もうwww最高だったわwwwwwww」

男1「テレビw最ww高www!!あんな気持ちのいい映像久々に見たわwwwww」

如月「………」

男1「でな?俺思ったんだよ」

男1「あんな映像が流れたって事はなぁ」


男1「『こいつなら殺してもいいって事なんじゃねぇか』ってさぁぁ!!」ニタァァァ


如月「!!」ビクッ

男1「だってそうだろう!?あれだって当然大本営の検閲が入っているはずだ!」

男1「にも関わらず!お前は死んだ!!」

男1「お前だけが!お前だけが死んだんだぁ!!」

男1「これがどういう事かわかるか?あぁっ!?」

如月「えっ…あ…」



男1「お前は」



男1「大本営からも」



男1「見 捨 て ら れ たって事なんだよぉぉぉぉぉ!!!!」



如月「!!」

男1「ギャハハハハハハハハハハ!!!」


男1「お前の命なんて大本営から見ても そ の 程 度 の も ん だって事なんだよ!!!」


男1「だったらよぉぉ!!殺るしかねぇじゃねぇかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

男1「ギャハハハハハ!!ングゲギャガガガガガガガガガガ!!!!!!!!」

男1「大本営のお墨付きならよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

男1「殺すしかないだろうがよぉおおおおおおお!!!!!」



男1「見ろよこれ!今日だけで3人殺してやった!!」

男1「一人目はブロックで頭潰した後に外れの沼に沈めてやった!!」

男1「二人目はナイフで刺し殺してやった!!」

男1「三人目は気が済むまでブン殴った後に絞め殺してやった!!」

男1「頭は切り取ってそいつの鎮守府の門前に置いてきた…今頃あっちじゃ楽しい事になってるだろうなァ!!」

男1「あ、いや…お前の生首なんかじゃあ何とも思わねぇか?」

男2「むしろそれで漫才してたりしてwwwww」

男3「テレビみたいに???wwwwwwwww」

男1「かもなーーー!!!あー!失敗失敗ぃ!!」

如月「…憲兵!」

男1「あ?」

如月「こんな事しても…憲兵が、憲兵が来るわ!!」

男1「バーーーーカ!!もしそんなもんが動いてたらとっくの昔に逮捕されてるわ!!!」

男1「今この街にはなぁ憲兵なんて一人もいねぇ!!」

如月「そんな事…!」

男1「ちょっと考えればわかるだろうがよぉ」

男1「あれだけ追い掛け回して出てこねぇってのはそういう事だって」

男1「ま、憲兵ってのもよぉくわかってるんだろうよ」

男1「今この瞬間は、俺達が正義なんだってなぁ」ニタァ

男1「つぅかなぁ!!お前みたいなゴミクズの命を有効活用してやってるんだ!!」

男1「感謝される事はあっても捕まるなんておかしいとは思わねぇかぁ!?なぁ!?」

男3「そうだよ」



「もうさっさと殺そうぜ!日が暮れちまうよ!」

「あぁそうだなぁ。おしゃべりは終わりだ」

「次はこいつだ」

男が背中からネイルハンマーを取り出す。

「前から憧れてたんだよなぁ」

「化け物をネイルハンマーで殺すってのを」

「撲殺天使ーってなぁ!!」

メロディを口ずさみながらじりじりと如月に歩み寄る。


耳まで裂けんとばかりに口角を吊り上げ

目をギラギラと輝かせ

興奮のあまりに涎を垂らしながら。




深海棲艦は笑わない。

彼女達は「笑うフリ」をするだけだ。まるで何かを演じるように。

深海棲艦の目に光が灯ることは無い。

何故なら彼女達には「心」が無いから。

彼女達は力が増すごとに、人の形をコピーして、人に近付いていく。

腕をコピーし、脚をコピーし、髪をコピーし、言葉をコピーする。


だけど決して「心」はコピーしない。


「心」の無い彼女達は台本を読み上げるように嘆き、怒り、笑うフリをする。

まるで何かを演じるように。




唯一コピーされなかった「心」が

人間を深海棲艦以上の化け物に変えていた。

だからこそ、その恐怖に如月は耐えられなかった。




「冥土の土産に教えてやるよ」

「この世界にはなぁ」

「ナチスとゾンビに人権なんて存在しねぇんだよ!!!」

そう叫ぶと同時にネイルハンマーを掲げた男の腕が、如月の頭部目掛けて振り下ろされた。




男の拳が如月の鼻先を掠めた。


その手に握られていたハンマーは振り下ろされる前に消えていた。


重りが無くなったことで予想外の勢いが付き、バランスを崩した男が後ろを振り返る。


取り巻きの連中も気配を感じ、後ろを振り返る。


如月もつられて男の後ろに視界を移す。



次の瞬間、如月の身体が引っ張られた。


壁に縫い付けられるように引き寄せられた後、壁に沿うように滑り、ピンボールのように弾け飛んだ。


視界が逆転し、髪飾りがちゃりんと鳴る。


視界の揺れに合わせて白いマフラーがなびく。


衝撃と共に視界が正常の向きに戻り、人の輪がどんどん遠ざかっていく。



「…大丈夫!?息してる!?」



高い声が如月に呼びかける。この声は如月も覚えがある声だった。


「…川内、さん?」



川内「大丈夫ね!それじゃあ、しばらく黙ってて!!」

川内「舌噛むから!!」ダッ!!

男1「あの女ぁ!!」

男2「おい!あいつも艦娘だぞ!!」

男3「裏切り者かよ艦娘のくせによぉンッ!?」

男2「囲め!囲め!!一緒にブッ殺せ!!」

川内「あいつらもう見境無しかよ!!」

川内「だけどこっちにはこれ(脚部艤装)があるんだ!逃げ切ってやる!!」



「嘘だろ…!?何だよあの早さぁ!!」

追いかけていた一人が弱音を吐いた。

「おい!誰か何とかしてあいつ止めろ!!ブッ殺せ!!」

テレビでの知識しか持ち合わせていない彼らには知る機会など無かった。

如月型艦娘を数人殺し、慢心していた彼らには想像すらした事が無かった。


艤装を装着した艦娘の力。


制服を通じ、神経に接続し、己の身体の一部となるその鉄塊は、彼女達に船の力を与える。

即ち全長162.15メートル、排水量5195トン。

この巨体を時速55キロメートル前後で動かす出力。

パーソンズ式オールギアードタービン4基4軸が産み出す9万馬力。

これが、『軽巡洋艦川内型一番艦川内型艦娘』の力だ。

正確には脚部の艤装のみ装着してきた今の彼女の力はこれには満たない。

砲を撃ち、破壊する力も持たない。

だがそれでも、人一人抱えながら、ただの人間を振り切るのは簡単な事だった。

だがそれでも、『水上スキー』と揶揄されたテレビの中の艦娘とは別次元の動きをしていた。

人を掻き分け、階段を飛び越え、壁を蹴り、猛スピードで日本街を駆け抜ける。


だが予想外のものに阻まれた。



「嘘でしょ」


川内が思わず足を止めて呟いた。

「そこまでする?」

川内の視界の先を見た如月が、彼女の腕の中で身体を縮こませた。

真正面から彼女に向かって車が全速力で走ってくる。

車の中心に彼女を捕らえ、クラクションも鳴らさずに突っ込んでくる。

このまま二人まとめて轢き殺すつもりだろう。

(本当に、狂ってる!!)


だけどこのピンチはチャンスでもある。


周囲に目を配る。やるには十分。



そこまで判断したら後は行動するのみだ。



川内は自分達に突っ込んでくる車に対抗するように、全速力で車に走り出した。

「目つぶってて!!!」



地面を踏み込み、身を屈める。

身体が伸び上がり、彼女の身体は車めがけて飛んでいく。



そのまま車のボンネットに着地した。取り合えず激突の心配はもうしなくてもいいようだ。

ボンネットをへこませながら次の足場に飛び移る。


「1!!」


車の天井に右足がめり込む。だがこれで終わりではない。

鉄がぶつかり、曲がる音を後にして川内は更に飛ぶ。


「2の!!」


身体を捻って電線を避けつつ、街灯の上に両足で着地する。ここが最後の正念場。失敗するわけにはいかない。

脚部艤装の出力と、自身の脚の力を全て使い、全力で跳躍する。




「3ン!!!」





白いマフラーをなびかせて、車と街頭を足場にして、少女は街の空を飛ぶ。

人を掻き分け、風を切って空を飛ぶ。その姿はさながら現代に蘇った忍者だ。

9万馬力の力によって彼女達は束の間の無重力に身を置いた。

ふわりと動く未体験の浮遊感覚の中、自分の身体を制御して目的地を定める。

条件は二つ。受身は取れない。また広い場所に着地しなくてはならない。

戻ってきた重力に導かれ、着地点を注視し、足から着地出来るように身体の制御を全力で行う。

衝撃が来る。何とか耐えろ。倒れるわけにはいかない。











ぐあん。という音と共に川内達は建物の屋上に着地した。

脚に電撃のような痛みが走る。艦娘じゃなかったら折れていたと川内は感じた。

脚部艤装も痛み始めていた。元々地上で使うものではない上にこんな無茶をすれば当然の結果だ。

摩擦で磨り減り、衝撃で歪む。損害で言うのならば「小破」だ。


背後から聞こえてくる強烈な破壊音が、痛みで飛びかける意識を戻す。

先程の車はものの見事に、ド派手にぶつかったようだ。

まるでアクション映画だ。

敵の狂気に満ちた攻撃を華麗なアクションで退け、度肝を抜かせた。

そうだ、自分はアクション映画の主人公だ。そう思い込んで気分を高揚させる。

そうでもしないと痛みで動けなくなりそうだと感じたから。

懐から携帯を取り出す。壊れていたらどうしようかと思ったが、壊れていなかった。

電話アプリから履歴を開き、リストの一番上の人物に電話をかける。


『もしもし!?』

「阿賀野。阿賀野?聞こえる!?」

「如月は大丈夫!私今から如月連れて泊地に戻るから!阿賀野も戻って!!」

『わかった!っておわぁ!?』

「阿賀野!?」

『だ、大丈夫大丈夫!私もすぐ戻るー!!』

そう叫んで電話が切れた。



川内(本当に大丈夫かな?)

如月「はっ…はっ…はっ…!」ガタガタ

川内(でも、まずは如月を泊地まで連れ戻さないと)

川内「あともうちょっとだけ我慢して」

川内「このまま屋上を伝って泊地まで帰るよ!!」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





-パラオ泊地-

名取「はぁ…」

名取(提督さん、いつ帰ってくるんだろう…)

名取(極秘の召集で横須賀に行ってるって赤城さんは言ってたけど…私は心配です)

名取(提督さんはいつもみんなに優しくて、面白くて…私なんかにもよくしてくれる)

名取(でも何でだろう)

名取(提督さんの目には『何かが足りていない』気がする)

名取(気が付いたら、いなくなっちゃってるような気がする)


「…とり!」ダダッ


名取(だからなのかな…あの極秘の召集っていうのが、凄く怖く感じたのが)


「名取ぃ!!」ダダダッ


名取(もし提督さんがこのまま帰ってこなかったら…私は…)



「なーとりーーーー!!!!」ダダダダダッ



名取「ふぇっ?」キョトン

川内「門閉めて!!」ダダダダダッ

名取「へぇあっ!?」

川内「いいから!閉めて!」ズザアアアア

名取「は、はい!!」ガラガラガラガシャン!!

川内「はー…っ!!ふーっ!!!」

名取「あ、あの…一体どうしたんですか?」

川内「どうしたって、アンタ…」

川内「…いや」

川内「ちょっと、ね」

名取「?」

川内(後は阿賀野が戻ってくれば…)



阿賀野「はぁっ、ふぅーっ!」

川内「阿賀野、大丈夫だった?」

名取「え、阿賀野さん?」

阿賀野「うん…なんとかぁ」ボロッ

名取「えぇえええ!?」

川内「いやボロボロじゃん!」

川内「…とりあえず、門閉めちゃったから、よじ登って来てくれる?」

阿賀野「わかった」ピョイッ

阿賀野「ひどいよね。ちょっと如月ちゃんの事聞いたら、ナイフ持ってガーッ!、て来たよ」ガシッ


名取「如月ちゃん…?」

如月「はぁっ、はぁっ…」ガタガタ

名取「あ、如月ちゃんも一緒だったんだ。…どうしたんだろう…」


阿賀野「というかちょっと聞いて!あいつら、如月ちゃんの髪飾り…」ズザッ

川内「見た…殺した如月型艦娘の髪飾りをああやってコレクションしてるんだ」

川内「あれが、人間のやる事かよ…!」

阿賀野「…でもとりあえずここまで来れば流石に追いかけてこないと思う」

川内「そうだね」

川内「それより助かったよ。阿賀野」

阿賀野「えっ」

川内「阿賀野が『嫌な予感する』って叩き起こしてくれなかったら、如月を助けられなかった」

阿賀野「お礼なんていいよ。阿賀野だって予感だけで確信があったわけじゃなかったし!」


川内「それでもさ!!」


川内「私も神通も気付けなかったんだ!気付かなきゃいけなかったはずなのに!!」

川内「気付かなかったら、また、また、私!!」

阿賀野「しっ!」

川内「!」

阿賀野「その話はお終い!川内ちゃんまでカッカしてたら如月ちゃんがびっくりしちゃう!」

川内「あっ…あぁ…うん…」



名取「如月ちゃん、大丈夫?」

名取「って!どうしたのこの怪我!?」

如月「これ…」

如月「…あっ…」ビクッ

名取「…如月ちゃん?」

如月「あぁ…あぁああああ…」ガタガタ

名取「えっ、あっ…如月ちゃん…!?」




恐怖と痛みと緊張という名の鎮静剤で抑えられていた『それ』は


それらが無くなった事で活動を再開した。


腫瘍のように膨らんでいた『それ』は痛みと共に動き出し。


一斉に破裂を始めた。




『お前達は頑張ったよ!お前達がこの土地を守ったんだよ!!』

「ろくに戦えもしないのにいいご身分だよね」

「『世界の平和は自分達が守ってます』って面しやがってよぉ!!」

「ざけんじゃねぇよ!!誰がテメェらに守ってくれって頼んだよ!?」

「豚でヒトモドキのガイジの分際でよぉ!!!」



『だから絶対、絶対、生きて帰ってきてくれ』

「お前みたいなゴミクズの命を…!!」

「そこまでして死にたくねぇか裏切り者のくせによォおん!?」

「大本営のお墨付きならよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「殺すしかないだろうがよぉおおおおおおお!!!!!」



『みんな大事なんだから!!』

「『こいつなら殺してもいいって事なんじゃねぇか』ってさぁぁ!!」

「でも捕まらねぇ。それってよ、そ う い う 事なんだろぉぉぉぉぉ!?!?」

「お前の命なんて大本営から見ても そ の 程 度 の も ん だって事なんだよ!!!」



「ろくに戦えもしなかったのにいいご身分だよね」

「ゾンビだろ?だってお前死んだじゃん」

「ナチスとゾンビに人権なんてもんは存在しねぇんだよ!!!」

「死ね」

「ゴミクズ」

「裏切り者」

「豚」

「化け物」

「ヒトモドキ」



「あなたは」

「もう」

「終わり」



「あぁあああ…!!」




想いが



「如月ちゃん!?どうしたの如月ちゃん!?」

「あああああ
あああああああああ




ああああああああ!!!!!」



思い出が





「如 ちゃん!?」



「如月ちゃん!し

っか

            りして!



 月ち   」






血を吐き出しながら死んでいく。






「ああ  あああああああああああああああああああああああああ


          ああ  あ   あ
ああああああああああああああああああ  ああああああああああああああ


ああ                               あ

ああああああああああああああ
ああ      ああああああああああああ!!!!!!!!!!!

ああああああああああ    ああああああああああああああああああああ
あああ

あああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああ


      あああああああああああああああああああああああ!!!!」





断末魔をあげて死んでいく。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





-某海域-

海兵「提督殿。これより安全海域から離脱します」

海兵「深海棲艦からの奇襲の可能性もあるので、絶対に外には出ないでください」

提督「わかりました。道中よろしくお願いします」

海兵「あぁあと、先ほど検査でお預かりしていた通話機器類をお返し致します」

提督「あっはい。ありがとうございます」

海兵「ですが通話やメールなど、外部との通信はお止めください」

提督「この召集が極秘であるから、ですよね?」

海兵「そうです」

海兵「最近、深海棲艦によってこちらの通信や暗号が傍受されるというケースが起きています」

海兵「ここから送られた通信が傍受された事で奇襲を受けたり機密が漏れる、といった事は避けなければいけません」

提督「緊急時の対応は?念のため、泊地に残った秘書艦には、何かあった時には連絡入れるよう言っておいたのですが」

海兵「…その場合はすぐにこちらにお伝えください」

提督「わかりました。連れてきた秘書艦二人にもそう伝えておきます」

海兵「くれぐれも、宜しくお願いいたします」

海兵「では」

バタン

提督「聞いてた?」

那珂「………」

羽黒「………はい」

提督「………うむ…」ドサッ

羽黒「如月ちゃん…大丈夫でしょうか」

提督「わからない」

提督「俺は結局、声をかけてやることすらできなかった」

提督「辛いってわかってたのに」

提督(深夜に突然来た、大本営からの緊急召集。あれがなければ…)

提督(あんな電話無視して如月を探していればよかったんだ)

提督(そうすれば、また如月と会うチャンスなんていくらでもあったはずなんだ)

提督(クソッタレが!あの時何で電話なんかに出ちまったんだ…!!)


那珂「如月ちゃんはこれからどうなるんだろう」

那珂「私みたいになっちゃうのかな」

提督「わかんねぇ」

提督「でも、怖い。何だかわからないけど」

提督「何だこの怖さ?踏み込んではいけない場所に入り込んだような…」

提督「それでいて、もう取り返しの付かない何かをしてしまったようなこの感覚」

提督(それに、胸が痛い)

羽黒「そんな事…ないですよ。でも早めに戻ってあげましょう?」

那珂「うん。那珂ちゃんも凄い嫌な予感がするし、パパパっと済ませてとっとと帰ろうよ」

提督「そうだね」



提督(にしてもだ、本当にパパパッとやって、終わりってわけにはいかないだろうな)


提督(さっき説明受けたけど、この移動、海路な上に異様に時間がかかる)


提督(制海権を深海棲艦に取られている今、空路は危険すぎる)

提督(ヲ級やら何やらがどこにいるかもわからないのに飛行機なんて飛ばせないんだ)

提督(しかも艦娘が飛ばす艦載機以外であいつらに対抗できる手段は今のところはない)

提督(深海棲艦が使う艦載機は既存の戦闘機よりも小型だ…まぁ、人型サイズから飛び出すんだから当然だが)

提督(高速で飛び回るそれは戦闘機と同じように機銃やら爆弾やらで武装している)

提督(普通の戦闘機じゃ、機銃もミサイルも当たりはしない。そもそも有機的素材が主になって構成されたアレはロックオンもできない)

提督(しかも艦載機を止めるには本体…『深海棲艦そのものを沈める』以外に対処法は無い)


提督(『本体を殺せばそいつが操っていた艦載機もコントロールを失って動かなくなる』…それが奴らの法則だ)


提督(でもそれだって既存の兵器でどうにかなるもんじゃねぇ)

提督(物量で押せるアメリカならともかく、日本の国防じゃ艦娘無しであいつらにダメージを与える事すら難しい)

提督(だから護衛を付けるのも無駄。飛行機なんてデカイ的、空飛ぶ死体処理場にしかならないんだ)



提督(残っているのは海路。だけどこっちでもいつ深海棲艦が襲ってくるかわからない)

提督(小回り効いて速度もある艦娘と違って、ただの船だけじゃ深海棲艦から逃げることはできない)

提督(しかも最悪の場合、この船の真下から急に沸いて出てくる事だってある)

提督(…ま、報告で聞いた事もないし、滅多に無い事だと思うけど)

提督(護衛として艦娘が使えるだけまだマシだけど、見つからないように、どこから出てきても大丈夫なように警戒しながら少しずつ進むしかない)

提督(艦娘の艤装でも使えば半日もかからないだろうけど、普通の人間が付けても動かないし、そもそも耐えられない)

提督(で、これが行きと帰り?さらに向こうでの滞在期間もあるから…?)

提督(早くても3日?万が一途中で襲撃されたり、向こうでの用事で遅くなったらもっとかかるか?)

提督(…沈まされでもしたら、生き残っても泊地に帰るまでどれだけかかるか)


提督(召集の理由も、何をするかも、全く聞かされていない)

提督(教えられたのも、ただ『極秘』であるという事ってだけ)

提督(内容によっちゃ最悪一週間近く泊地を空ける事になるかもしれない)

提督(その間の通信も、できない)

提督(泊地の事は大淀と赤城達に任せてあるけど…その間俺には何もできない…!)ググッ


提督「…頼むから………」ボソッ

提督「…頼むから、何も起こらないでくれ…」

羽黒(司令官さん…)

那珂「………」


☆今回はここまでです☆

くぅ~疲れましたw これにて(如月脱出編)完結です!
銀英伝、劇場版PV、頂いたコメント等、色々喋りたい気持ちを抑え、次回からの提督横須賀編の制作に移ります。
ご清覧ありがとうございました。

>>1です。
2月になりました。このssの主人公である如月の月ですね。
まだまだ寒い日が続く中、提督と宇宙艦隊司令と伝説のビルダーと元極道の不動産事務所経営とキャバクラ経営を掛け持ちしていますが私は元気です。
ほんのちょっとだけ更新します。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





-パラオ泊地-

大淀「通信は…まだ、駄目か」

赤城「最上さん達はどう?」

最上「うーん…」ピッ

最上「駄目。プライベートの携帯でも出ない。三隈(※)と鈴谷は?」

(※)非常事態につき自重中。なお熊野は未着任

三隈「こちらも駄目ですわ」ピッ

鈴谷「こっちも。メールもSMSも入れておいたよ」ピッ

鈴谷「でもさ、移動中で電波通じないって事あるの?」

大淀「個人用の携帯はともかく、通信機すら通じないなんて事は聞いたことがありません」

霧島「通信も駄目、携帯も駄目となると…」

三隈「提督に、何かあったんでしょうか?」

赤城「かもしれないわね」

大淀「友提督さんに連絡を入れましょうか」

赤城「そうですね。お願いします」

赤城(最悪捜索部隊を組むことになるかも…)



鈴谷「…なんか、とんでもない事になっちゃったね」

三隈「えぇ…暁さんもショックで寝こんじゃいましたし」

最上「…責任感じちゃうよね。自分のせいで如月ちゃんがあんな事になったんだ、って考えちゃったら…」

鈴谷「ていうか何!?そいつらマジ意味分からないんだけど」

鈴谷「テレビで沈んだからって、自分達も殺していいとか…探して殺して回るとか…頭イカれてるんじゃないの!?」

鈴谷「人を何だと思ってるのさ!?」

三隈「沈んだ姿を映されたとしても、私達と一緒にいる如月さんは生きていて、ここにいる」

三隈「だから大丈夫だと、あんなものはすぐに忘れてしまえる悪い夢だと思っていました」

三隈「三隈は、間違っていたのでしょうか」

霧島「…私も三隈さんと同じ考えだったわ」

大淀「私もです」

赤城「…私も」



「……………」



最上「と、というか、こういう時の為の憲兵じゃないの?憲兵は何やってんのさ!」

霧島「先ほど連絡は入れたわ。でも反応的に期待は出来ないと思う」

鈴谷「はぁ!?何で!?」

霧島「どう聞いてもお役所仕事的というか、そんな反応だったのよ」

霧島「ここまでじゃないけれど、前から憲兵はこういう時には積極的に動いてくれないものだから…」

鈴谷「…意味わっかんない!!」

鈴谷「誰これがエッチしたとかそういうのにはすぐ反応するくせに、何でこういう時ばっかり…!!」

鈴谷「何の為にいると思ってんだよ!デバガメ以外に能が無いのかよ!給料泥棒!!」

三隈「………」

赤城「…次から次へと問題か」

赤城「…こういう事を言うのは、如月ちゃんに申し訳ないのはわかっている」

赤城「でも、まずは一番深刻な問題から解決していかないと」

霧島「司令との通信回復…もしくは、捜索」

赤城「うん」

最上「提督との通信が繋がれば、もしかしたら提督が何か如月ちゃんの事でいい方法を思いついてくれるかも!」

鈴谷「…任務なんて切り上げて早く帰ってきてくれるのが一番いいんだけど…そうはいかないよねぇ」

三隈「提督も、大本営から頂いた任務であちらに赴いていますからね」



赤城「そういえば、金剛の休暇終わりで、本土から帰ってくるのって今日だったわね?」パラッ

霧島「えぇ夜遅くになるそうなのですが」

赤城「…って事はもう船には乗っちゃってる、か」

赤城「もうちょっと遅かったら提督の無事を確認して貰おうと思ったんだけど…」

赤城「わかったわ。まずは友提督に連絡を入れましょう…?」コンコン


明石「赤城さん、明石です」


赤城「あぁ明石さん。どうぞ」



明石「失礼します」ガチャ

最上「あれ、明石さんどうしたの?」

赤城「さっきちょっと頼み事をしたの。それで、どうでした?」

明石「そうですね。あの映像しか情報が無いからアレですけど」

明石「私も赤城さんと感じた事は一緒です」

明石「人体・艤装ともに大した疲労・損傷無し。致命的欠陥も見当たりませんでしたね」

赤城「艤装整備に長けてる明石さんにもそう見えますか」

最上「何の話?」

三隈「もしかして、如月さんの?」

明石「はい。轟沈する瞬間の映像の解析を」

赤城「辛い事を頼んでしまって申し訳ございません」

赤城「でも、どうしても気になったんです」



赤城「『無傷に近い状態からどうやって轟沈するのか』が」



三隈「えっ」

鈴谷「…そういえばそうか!」

鈴谷「私達は基本、ダメージ無いところから沈むなんて事はないから」

最上「『結界』?『ストッパー』?だっけ?」

明石「そうですね。そこは開発企業によって名称が違います」

明石「名称の違いは置いといて、私達艦娘にとっての命綱になる機能です」


明石「艤装装着時から常に不可視のバリアを展開し続け、攻撃から身を守る為の機構」

明石「艤装の機関部すぐ近くで直結させてる機能だから外装が壊れた程度で機能停止することはない」

明石「これが動かなきゃ、私達は砲が撃てて海に立てるだけの、ただの人。イ級の攻撃一発も耐える事はできません」

明石「だから大破でもしない限りはその機能が停止することはないよう作られてるはずですけど…」


最上「…でも、テレビの如月ちゃんは…」

鈴谷「………」

三隈「………」

明石「………」

赤城「………」

最上「…だとすると、どういう事なんだろう」

三隈「『ストッパー』が壊れていた、とか」

最上「そんな事だったら大変じゃんか!」

明石「そりゃもう大変ですよ」

明石「深海棲艦が『ストッパー』を貫通する兵器を開発したとか噂は立つし」(おかげで一部鎮守府じゃ今パニック状態らしいですし)

明石「世間からは鎮守府全体の整備に問題点があるんじゃないかって、クレーム三昧だし」(今日の整備員連絡網とか葬式と修羅場を足したような雰囲気でしたよ)


明石「艤装開発に携わったキサラギ社も今頃は大変なんじゃないですかね」



鈴谷「え、キサラギ…キサラギって、あのキサラギ?」

三隈「えぇ。製薬会社のキサラギ社」

三隈「元々は高速修復剤とか高速建造剤の開発が、海軍との繋がりだったのですが…」

三隈「キサラギ社の若社長きっての希望で、艤装開発に着手したそうですわ」

三隈「そういえば最近、その若社長の娘さんも艦娘適正があったらしく、如月型艦娘になったとか」

鈴谷「え、よりによって如月型?キサラギの開発した艤装ってあと何があるの?」

霧島「キサラギ社のだと…睦月型艦娘、弥生型艦娘、卯月型艦娘が開発担当ね」

鈴谷「全部睦月型駆逐艦なんだ」

鈴谷「でもキサラギ社の娘さんがキサラギ社で開発した艤装背負って如月型艦娘かぁ…大丈夫かなぁ」

鈴谷(もし今回のアレで殺されてたりでもしたら…)

鈴谷(その若社長はどうするんだろう?)

鈴谷(復讐する?それとも諦める?どっちにしてもヤバイよ)

鈴谷(それで最悪会社そのものが駄目になりでもしたら、高速修復剤の供給そのものまでストップするから)

鈴谷(ウチらは修復剤ありきで戦ってるところあるし…艦娘全体がヤバくなるよ)


明石「それに加えて、艤装性能の問題視と違法プログラムの噂がありますからね。頭痛の種も胃痛の種も満載でしょうね」

最上「…違法プログラム!?」


明石「今朝出た週刊誌の記事なんですけどね」

明石「キサラギ製の艤装で違法の追加プログラムが使われてるんじゃないかって」

明石「その違法プログラムは艤装に追加機能を付ける代わりに『ストッパー』の機能を停止させちゃうんだとか…」


最上「…追加プログラムなんてあったんだ」

鈴谷「友提督さんとこならともかく、ウチの提督はそういうのには疎いからねぇ」

三隈「提督は文系ですからね」

明石「この件で『全ての鎮守府・泊地は(所属する如月型艦娘の)艤装点検後報告しろ』とは言われましたけど…まぁ所詮は週刊誌の記事ですからねぇ」

霧島「飛ばし記事ですか?」

明石「だと思いますよ。そもそもこういうプログラムは、所属の艦娘全員に付けて初めて効果が出るもの」

明石「生産時に同型艦娘の艤装に付けてた所で殆どがバラバラに色んな鎮守府に送られるし、『ストッパー』機能が止まるっていうデメリットもあるのに付ける理由も無いですし」



明石「艦娘をわざと沈めたいとでも思わなきゃ、やる理由なんて無いですよ」



三隈「だからこそ、キサラギ社がバッシングを受けているという事でしょうか」

明石「まぁそうですね。これが本当なら無意味どころか害にしかならないプログラムを植えつけているんですから」

最上「利敵行為の極み、みたいなもんだしね」

明石「でもキサラギ社がそんな事するメリットが無いんですよねぇ」

大淀「…明石。向こうの如月にそれが付いてたかって、わかる?」

明石「その辺はわかんないね」



明石「調べたくても、もう海の底だもの」




・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





-某海域-

提督「………」ポチッ

提督「………」

提督「………」ゴソゴソ

那珂「落ち着かないね」

提督「そりゃそうだ。本読む気にもゲームする気にも昼寝する気にもならない」

提督「いつ泊地から連絡が入るかもわからないんだ」

提督「だからこうやって、こまめに通信と携帯チェックして連絡来るかどうか見ておかないと」

那珂「充電切れるよ?」

提督「そん時はちょっとコンセント借りる」

提督「発信源探られて極秘任務がばれたら駄目だって言われて、こっちから送信したりできないってんだから、これ位許してくれって話だ」


提督「それより二人とも、寝ておいたほうがいいんじゃないの?」

提督「昨日ほとんど寝てなくない?向こうで忙しくなったら辛くなるよ」

那珂「それはお互い様じゃない?」

羽黒「それに、何かあった時には私達も戦わなきゃいけませんから…」

提督「大丈夫だって。外の護衛艦隊、凄いぞ」


提督「大和型戦艦二番艦の武蔵型艦娘いるんだぞ」


提督「硬い・強い・遅いを体言した最強の戦艦だ。あれが護衛についてるならこっちも安心できる」

那珂「大和型をアーダン扱いするって色々な人から怒られるよ?」

提督「へーきへーき。で、他の所属艦も、名簿見たらどいつもお前達とそう変わらない練度だったし」

提督「例え戦艦が出てきてもあれなら余裕だろ」



提督「…大和型かぁ」

那珂「何?また『欲しい』とか言うの?」

提督「………いやだって大和だぜ?提督になる前の俺だって知ってたぞ」

提督「戦艦大和…宇宙戦艦ヤマト…」

提督「あこがれるわぁ…俺の指揮下に大和がいたらさぁ」


那珂「手出すんでしょ?」ギュムッ


提督「痛いッ!?痛い痛い!!!脇腹つねるのクソ痛い!!!」

那珂「見境無く手出しまくってまだ増やし足りないの?この色情狂。ん?」ギリギリギリギリ

提督「止めて!マジ止めて!超痛い!!お願いします!!」

那珂「うるさーい。大声出したら勘違いされちゃうよー?」ギリギリギリギリジンジン

提督「だったら止めて!お願い!!羽黒助けて!!!助けて羽黒!!!」

羽黒「…那珂ちゃん」

那珂「羽黒ちゃんもやろうよ。ほらもう片方空いてるから」ポンポン

提督「やめろォ!!」

羽黒「それ以上やったら痣できちゃうからやめたほうがいいよ」

提督「何だその止め方!?」

那珂「おっそうだね」パッ

提督(あ、それで納得するんだ)

提督「ってー…マジ脇腹の肉持っていかれるかと思ったぞ」

那珂「つまめる程あるんだからちょっとは持っていかれたほうがよかったんじゃないかな」

那珂「ていうか、カレー食べ過ぎるからそうなるんだよ」

提督「しょうがないだろ!?足柄のカツカレーが美味すぎるのがいけねぇんだよ!!」

提督「俺もうあれが無きゃ生きていけないレベル!!!」

那珂「那珂ちゃんにそんな事言われても殺意しか沸かないんだけど」

提督「って!今携帯振動した!?」ガバッ

提督「………連絡無し」

那珂「………はぁー」


☆今回はここまでです☆

『礼号作戦を完遂する』、『ユリアンゲットの為に作戦回す』、『同時並行のイベントもこなす』
「全部」やらなきゃいけないのが「提督」のつらいところです。

>>1です。
冬イベントお疲れ様でした。今回は札無しだったので、個人的には楽な気持ちでイベントに臨めました。
E-3までしっかり完遂して、ユリアンもゲット致しました。ミュラーは諦めました。

それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





-パラオ泊地 駆逐三班の部屋-

叢雲「しかし…」

叢雲「凄い大所帯になったわね」

磯波「私たち三班三人に、一班二班から二人ずつで、七人?」

荒潮「ごめんなさいねえ」

夕雲「ちょっと、何というか…暁ちゃん、一人になりたいって言うから」

夕雲「物凄く狭くなるけど、お泊りさせてね?初雪ちゃん?」

初雪「…ゆるさん」

初雪「…初雪王国(キングダム)(※)が侵略された…」

(※)要するに引きこもりスペース

初雪「私は先輩だぞ…結構古参なんだぞ…」


荒潮「まぁまぁ、そこはこれで何とか…」スッ


初雪「…!!」ブボァッ

初雪「…ゆるす」

潮「初雪ちゃん鼻血」

夕雲「お二人も、これを」スッ

磯波「ッ!?あぁあああ…!!///」ブシュウウウウウウウウ

叢雲「おっほァッ!!」ドバァ

潮(何渡したんだろう)

荒潮(駆逐二班秘蔵のワレアオバよ)

潮(なにそれ)


叢雲「…まぁそれは置いといて」ゴソゴソ

潮(しまった)

夕雲(机の中にしまった)

荒潮(あとでこっそり抜き取っておこうかしら)

叢雲「夕立、あんた大丈夫なの?」

夕立「!!」

叢雲「あんたも相当やられてるっぽく見えるんだけど」

夕立「…うん。大丈夫…っぽい」

夕立「あれは夕立が悪かったの…だから」

夕立「落ち込む権利も無い」

潮「…夕立ちゃん」

夕立(…そうだ。夕立がもっとうまくやってれば…)

夕立(もっともっと…うまくできたら…)

夕立(あんな事にはならなかったのに…)



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





「長良さん!まだ泊地に着かないっぽい!?」

「あ~…うー、あともうちょい!!」

「あともうちょいってどれくらい!?」

「夕立ちゃんちょっと落ち着いて…」

「あんな話聞かされて落ち着けるか!!如月ちゃんが殺されかけたんだよ!?」

「潮ちゃんは心配じゃないっていうの!?」

「そういうわけじゃないけど…」

「早く、早く如月ちゃんに会わないと…!!」

「…でも…」

「でも何!?」

「…よしっ!見えてきた!!泊地だよ!!」

「!!」

「…心配する気持ちは凄くわかるけど、まずはちゃんと報告を終わらせてから
「長良さん報告お願いします!!」ダッ!
「わっ!?」

「ちょ、ちょっと待って夕立ちゃん!」

「夕立ちゃん!!」




ダダダダダダダダ!!!!

「如月ちゃん!!」バァン!!

「ひっ!!」ビクッ

「…夕立、ちゃん」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」

「…如月ちゃん」

「…何?」

「………!!」


(うっ………!!)

(何で………)

(何でこんな事になったの…!!)

(今朝会った時の如月ちゃんとは全然違う)

(顔の痣…殴られた?)

(髪だってぐしゃぐしゃで…あんなにいつも気にしてた髪なのに…)



(それに)

(完全に、目が死んでいる…!!)

(今朝だって…今朝だってそんな目してなかったでしょ…!?)



(こんなの…)

(こんなの…何て声をかければいいか…わからない…)


(何て言えばいいの…!?)


(何て言えば如月ちゃんは元気になるの…!?)


(どうすれば如月ちゃんは元に戻るの…!?)


(どうするのが正解なの…!?)


「………」

「…夕立ちゃん?」

「如月ちゃん…」




「つ…」

「次」

「また今度、頑張ろうよ」




「………」

「っほ、ほら!また今度戦果を上げたらさ!みんなわかってくれるっぽい!!」

「こないだだって戦艦倒したでしょ!?」

「っ今度は、姫級を倒せるように頑張ろうよ!!そこまでしたらさ!みんなわかってくれるっぽい!!」

「…今変なこと言ってる奴らを、見返してさ!!」

「…無理よ」

「む、無理なんかじゃないって!夕立も!!」



「夕立ちゃんはねぇ!!!!」



「!!!」ビクッ




「夕立ちゃんはね、それでいいでしょう!?」

「でも、私は違うの!!」

「…きさらぎちゃん…?」


「夕立ちゃんに…」

「夕立ちゃんに私の何がわかるのよ…!!」



「ずっとチヤホヤされてきた夕立ちゃんに何がわかるのよ!?」



「えっ…」


「夕立ちゃんはいいわよねっ、武勲艦だから、どこの鎮守府でも重宝されて!!」

「だからそんな事言えるんでしょう!?次があるって!!」

「姫級を倒す?簡単に言わないでよ!!そんなのできるのは夕立ちゃんだけ!!」

「私は!『ソロモンの悪夢』じゃないの!!」

「ただの旧型駆逐艦の…低性能の駆逐艦娘なのよ!!」

「しかもあんな映像も…流されて…!!」

「その結果がこれなのよ!!!」

「私にはっ、私には次なんて無いの!!!これで終わりなの!!!」

「そんなっ!!」
「夕立ちゃんはこんな思いしたこと無いでしょ!?」



「『ろくに戦えもしないのに』って言われた事ある…!?」

「深海棲艦のスパイ扱いされて殺されかけた事ある…!?」

「生きてる事を否定された事がある!?」

「ヒトモドキ、ゾンビ、化物…もう色々言われたわ…そんな経験夕立ちゃんにはある!?」


「無いでしょ!?だって夕立型艦娘は武勲艦だものね!!」

「この戦争が始まってから!ずうっと!ずうっと!!夕立型艦娘は!注目を集めて!!重宝されて!!!活躍してきたんだものね!!!」

「…そんな夕立ちゃんに、私の何がわかるっていうの!?」

「司令官との思い出の場所で…今までの事も、これからも!!」

「何もかもを否定された気持ちなんてわからないでしょう!?」

「こんな思いもしたこと無いくせにわかったような事を言わないで!!!」

「出て行ってよ!!何もわからないくせに!!!」

「如月ちゃん…!」

「夕立ちゃんには私の気持ちなんて絶対理解できない!!」

「誰も如月の気持ちなんて理解できないくせに!!!」

「如月ちゃん!」


「出て行って!!!!」

「もう如月を一人にしてよぉ!!!!!」




・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





夕立「…あれしか思いつかなかった」

夕立「急いで行って、如月ちゃんを元気にしなきゃとしか思ってなくて」

夕立「でも如月ちゃんに会って、何言っていいかわからなくなって」

夕立「思いついて口から出たのが、あれだった」

夕立「もっとちゃんと考えていれば…夕立がしっかりしていれば…」

叢雲「………」

夕雲「………」

夕立「…ごめん」スッ


潮「夕立ちゃん?」

潮「夕立ちゃん、どこ行くの?」

夕立「どこだっていいっぽくない?」

潮「よくないよ。今の夕立ちゃん変だもの」

夕立「変じゃない!!」

夕立「居座ると初雪ちゃんに迷惑かかるっぽいから消灯ギリギリまで外にいるだけだから!!」

初雪(いやそこで私の名前出されても…)

夕立「ちゃんと、戻るから…!ちょっとだけ、外に…!!」バタンッ

潮「夕立ちゃん…」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





夕立「………」フラッフラッ


『夕立ちゃんはいいわよねっ、武勲艦だから、どこの鎮守府でも重宝されて!!』


夕立「何が…武勲艦だ…」フラフラ


『えぇ。頑張りましょう。夕立ちゃんの第二次艤装改造も近いしね?』


夕立「何が…改ニだ…」フラフラ


『ずっとチヤホヤされてきた夕立ちゃんに何がわかるのよ!?』

『出て行ってよ!!何もわからないくせに!!!』

『夕立ちゃんには私の気持ちなんて絶対理解できない!!』


夕立「!!!」グァッ

夕立「畜生!!!」ガンッ

夕立「畜生!!畜生!!畜生!!畜生!!!」ガンッガンッガンッガンッ


夕立「何が武勲艦だ!!何が改ニだ!!」


夕立「何が『ソロモンの悪夢』だぁ!!!」



夕立「友達一人も助けられない無能が!!」



夕立「友達一人も守れない体たらくで!!!!」



夕立「いい気になって…!!」



夕立「全部思い通りになると勘違いして…!!」



夕立「…馬鹿っみたい…!!」ポロポロ



夕立「ほんとに…馬鹿みたい………」



夕立「!!」ズキッ

夕立「………」

夕立(手…壁殴ったら血が出ちゃった)

夕立「………」

夕立「駄目だなぁ…こんなんじゃ…」

夕立「こんなんじゃ、全然駄目、っぽい…」

夕立「何にもかんも、全然駄目っぽい…」


夕立「………」グァッ、ガンッ


夕立「あははっ」ガンッ


夕立「ははははははははっ…」ガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッ



ボタボタボタッ



夕立「…足りない…」

夕立「こんなんじゃ全然足りないっぽい」

夕立「如月ちゃんの…気持ちなんて…わかりっこない…!」ポロポロ

夕立「何もかも…全然…全部…駄目、っぽい…!」




・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-パラオ特別鎮守府-


友提督「ちょっと待て睦月!!行くな!!」

睦月「離して友提督!!」

友提督「いいから落ち着け!今お前が一人で出るのは危ない!!」

友提督「通達で来てただろ!?今外に出たらお前も殺されるぞ!?」

睦月「でも!如月ちゃんが!!」

友提督「大丈夫だ!手は打ってあるから!!」

睦月「手って何…!?何するんですか!?」

友提督「こっちから横須賀に数人向かわせた…順を追って説明するぞ」


友提督「今…提督と通信が取れなくなっている」

睦月「えっ…」

友提督「向こうの赤城が教えてくれた」

友提督「あのテレビ放送の直後、アイツの所に大本営からの連絡が入った」

友提督「緊急かつ極秘の召集の命令だ」

友提督「アイツはすぐさま準備して、秘書艦二人と一緒に船で横須賀に向かった」

友提督「それから連絡が付かないらしい」

友提督「如月が事件に巻き込まれた事も連絡しようとしたらしいんだが…」

睦月「まさか…まさか深海棲艦に!?」

友提督「無いわけじゃないけど、可能性としては低い」

友提督「深海棲艦の奇襲くらい想定してるだろうし、そんなお粗末な事をする大本営じゃないはず」

睦月「じゃあどうして!?」



友提督「確信は無いけど、予感はある」

友提督「アイツも如月も…何かとんでもない事に巻き込まれた」

友提督「それも恐らく大本営が関わっている」



睦月「…!!」

友提督「俺が向かわせた奴等には二つの目的を伝えておいた」

友提督「一つは、『今如月に起こっている事を提督に知らせ、アイツに早急に戻って来て貰う』事」

友提督「もう一つは、『恐らく起こっているであろう、とんでもない事について調査する』事だ」

睦月「………」

友提督「榛名達、第一艦隊を向かわせた。あいつらなら絶対提督を連れて来てくれる」

友提督「それと、こういう調査には一番うってつけな奴もな」

友提督「俺達は俺達のやり方で何とかするから、頼む。俺達が終わるまでは動くな」

友提督「如月も、あいつが慕う提督も、絶対何とかしてみせるから」

睦月「友提督…」

友提督「………」

友提督(そうだ)

友提督(もし、青葉の言っていた事が本当なら…)

友提督(マジで早く何とかしなきゃいけないんだ)



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





「どうした衣笠?」

「あの…青葉から友提督にって、電話」

「………ちょっと携帯借りるぞ」ピッ


「もしもし。友提督だ」

「ども、お久しぶりです。青葉です」

「大丈夫なのかそっち(提督の泊地)は」

「…いい、とは言えないですけど」

「さっきも如月ちゃんと夕立ちゃんが喧嘩して」

「…あの二人が喧嘩って…相当ヤバイんじゃないのか」

「………それより、ちょっと気になる話というか、情報伝達と相談をと思いまして」

「情報と相談?」

「他の青葉型艦娘から聞いた噂話なんですけどね」


「どうやら以前にも一度、今みたいな感じで轟沈の様子が放送された事があったそうです」


「!?」


「ニュース番組で艦娘についての報道をした際に」

「蒼龍型艦娘と比叡型艦娘の轟沈が偶然映ってしまっていたそうで」

「偶然…?」

「何かご存知ではないですか?」

「いや俺もはじめて聞いた。そんなのがあったのか…」

「…いやちょっと待て。それなら今回の如月狩りみたいな事が前にもあったって事か!?」

「いえ、その時は特に何も無かったみたいです」

「でも変な噂が残ってるんです」

「変な噂って…?」

「その放送の後」



「艦娘が」


「数人」


「突然発狂して死んだそうです」



「…何だそれ!?」

「私もよくわかんないです。でもそういう噂があるんです」

「命令無視して敵に突っ込んでそのまま射殺されたとか」

「突然艤装を外して海に身投げしたとか」

「尾ひれ付いてるし資料も少ないから何が本当かもわかんないですけど、そういう噂があるんです」

「…轟沈記録とか、探れないのか?」

「探ってはいたらしいんですけど、得られるものはなかったみたいです」

「命令無視して敵に突っ込むのは、どの艦娘でもたまにいますし…まぁ大体、忠誠心の暴走ですが」

「身投げってのも…ちょっとそういう記録は出てこなかったみたいです」



「………大本営が何かをした?」

「そういう事を言う子もいますね」

「今回の件もあって、この事件について知ってる子は思い返しているみたいです」

「確かに色々不可解だ」


「何故ドキュメンタリー番組の放送を大本営が通した?」


「何故過去に一度轟沈の様子を流してしまったというのに、もう一度同じミスをした?」


「何故前回で起こらなかった艦娘狩りが、今回起こるようになってしまった?」


「仮に前回、放送直後に情報規制や憲兵の警備を強化して事件を未然に防いでいたとしよう」

「普通ならそうしますよね。安全の為に」

「それならどうして今回、そういう対策を執らなかったのか、という事になる」

「………」


「もう一つの仮説として」

「前回も今回も、こういう事件が起こる事を予想できていなかったとしたら」

「…あまり考えられませんね」

「自分で言っておいて何だけど、俺もそう思う」



「…じゃあ三つ目の仮説」

「今回こうなる事が大本営の目的だったとしたら…?」



「えっ…それって大本営に何のメリットがあるんですか?」

「艦娘を貶める事に何の意味が?『大本営発表』を捨てたというポーズの為?」

「俺には、具体的な事までは予想できない」

「でも大本営は、『たまにそういう事』をするんだ」



「『アイアンボトムサウンド』」

「『那珂型艦娘』」



「命を命と思わない、時代に逆行した暴挙をやってのける」

「那珂、ちゃん………」


「…何にせよ」

「このまま何もしなかったら事態は好転しない」

「俺の方から数人、横須賀に向かわせるよ。提督の捜索と、その辺の事を調べさせてみる」

「いいんですか!?」

「お前達よりは動きやすいはずだ」


「俺が『パラオで』『鎮守府』を任されている理由…」

「ちょっとは『肩書き』を使わせてもらっても罰は当たらないだろ」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





友提督「………」

睦月「友提督…?」

友提督「睦月、暫く鎮守府の運営を最小限に抑えるぞ」

睦月「えっ」

友提督「俺もこの一件に集中したい。必要最低限以外は鎮守府を動かすつもりは無い」

睦月「………」

友提督「何かしてないと落ち着かないか?」

友提督「それなら新入り(秋月)の世話をしてやってくれ。あいつもまだここに慣れていないだろう?」

友提督「…頼む」

睦月「…わかりました」

友提督「…すまんな」


友提督(………)

友提督(もし万が一、本当に、大本営が何かやっているとしたら…)

友提督(このタイミングで横須賀に呼ばれた提督は、一体…何を命じられるんだ?)

友提督(…嫌な予感しか、しない…!!)

友提督(頼むぞ、榛名…!)

友提督(あいつを助けてやってくれ…!)



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-横須賀-


海兵「お疲れ様でした。提督殿。ではこちらへ」

提督「…ここに来るのも久しぶりだなぁ」

提督(あまり来たくはなかったけど)

提督(神奈川の空気はパラオと違って、なぁんか淀んでるからあまり好きじゃないし)


那珂「…ん?」



あきつ丸「長時間の移動、お疲れ様であります」

憲兵「お疲れのところ申し訳ございませんが、ここからは大本営…念の為ボディチェックを」

提督「あぁ、はい」

あきつ丸「艦娘のお二方は私が」

那珂「那珂ちゃんはアイドルだから変なもの持ち込んだりしてないんだけどなー」

あきつ丸「そう言わないでください。規則ですから」

あきつ丸「万が一拳銃を持って誰かが入るなんて事があったら何が起こることか…」

那珂「あ、那珂ちゃん拳銃なら持ってるよ?」

羽黒「えっ」




那珂「那珂ちゃんにーメロメロになっちゃう、恋のピストル一丁ね♪」キャルルルーン

那珂「たいほしちゃーうぞ♪ばっきゅん(はあと)」






憲兵「」


羽黒「」


提督「」


海兵「」







那珂「もいっぱつ、ばっきゅん(はあと)」






憲兵(えぇぇぇぇぇー…)


羽黒(びぃぃぃぃぃー…)


提督(しぃぃぃぃぃー…)


海兵(でぇぇぇぇぇー…)


那珂「いーえぃ☆」キラン
あきつ丸「ふ正所持なので没収しますね」グリゴリィ


那珂「Gゃあーッ!」



アーイタイイタイイタイィ!!

タマハコノツメデアリマスカネー

ヤメテ!ナカチャンノソレハハーブティーノンデモハエテコナイノ!!



☆ボディチェック中です。しばらくの間那珂ちゃんのグラビアを想像しながらお待ちください☆



トカイイイツツナンデムネミルヒツヨウガアルンデアリマスカ

ヨクミルトアキツマルチャンオッパイオオキイネ

………

ギャーーーーーー!!!!



那珂「あーん指痛いー。提督ツバつけてー」

提督「捻挫にツバは効かねぇだろ!いいかげんにしろ!」



憲兵「…何か、すげぇな、あの人達…」

あきつ丸「ははははは………ん?」ブーッブーッ

あきつ丸「…これは…」

憲兵「待てあきつ丸」

あきつ丸「!!」

憲兵「それが例のものだ。絶対に触るなって命令だっただろ?」

あきつ丸「えっ、でも…」

あきつ丸「物凄い着信の数、入っているでありますよ?」

あきつ丸(それにこの携帯…見間違えでなければ…)

憲兵「…みたいだな」

憲兵「でも上からの命令だしな。変に触るわけにもいかないよ」

あきつ丸「あっ、けっ、憲兵殿」

あきつ丸「上の方々からは、どういった命令を?」

憲兵「一緒に聞いてただろ?忘れたのか?珍しい」

憲兵「ただ『一切触れるな』としか言われてない」

憲兵「理由は言われてないけど…俺は嫌だぞ」

憲兵「上の奴等の口ぶりじゃ、大目玉じゃすまなさそうだからな」

憲兵「お前も触るなよ?とんでもない事になるぞ」

あきつ丸「………」


憲兵「ところであきつ丸」

あきつ丸「!!」ビクッ



憲兵「どっかで言おうと思ってたんだけど…」

あきつ丸「何でありますか、改まって」


憲兵「その…化粧、変えた?」

あきつ丸「…?」


あきつ丸「………」

あきつ丸「えぇ、まぁ…いつもの化粧品を切らしてしまったのでちょっと同僚にお借りしたであります」

あきつ丸「今、非番の同僚に買ってきてもらうよう頼んでいるのでありますが…」

憲兵「そ、そうなのか…お、俺は、そっちも可愛いと思うんだけどなぁ!?」

あきつ丸「ありがとうございます」ニコッ

憲兵「」ドキッ

憲兵(何なんだ今日のコイツ…!!いつもは仕事と正義以外に興味ありません的な堅物の癖に…!!)

憲兵(何だそのプリティスマイルは…!ここぞとばかりに俺を誘惑しおってからに…!!)

あきつ丸「ですがやっぱりいつものじゃないと、どうも本調子にならないのであります」

憲兵(化粧か?化粧が違うから違うのか?ゴージャスアイリンか何かかお前?)

あきつ丸「あぁ!そろそろ、その同僚との約束の時間なので、少しだけ待っていて頂けますか?」

あきつ丸「化粧品を受け取って、化粧直しをしたいのであります」

憲兵「あ、あぁ!わかった!この後そんな急ぎの仕事は無いけど、あまり遅くなるなよ!?」

あきつ丸「そこまで厚化粧じゃないので十分もすれば終わるであります」タッタッタッ



あきつ丸「………」


「もう大丈夫でありますか?」


あきつ丸「はい。貴官の協力に感謝するであります」



あきつ丸「あきつ丸殿」



もう一人のあきつ丸(以下あきつ丸甲)「…それを言うなら貴官もあきつ丸ではありませんか」

あきつ丸「ふふっ…そうですね」

あきつ丸甲「それで、目当てのものは見つかりましたか?」

あきつ丸「えぇ、まぁ」

あきつ丸甲「そうでありますか」

あきつ丸甲「…突然入れ替わって欲しいと言われた時は何事かと思いましたが…」

あきつ丸甲「何か、それほどまでに重大な事が?」

あきつ丸「…聞かれても何も答えられないでありますよ。貴官を巻き込みたくありませんから」


あきつ丸「あ、そうだ。あの憲兵殿…」

あきつ丸甲「憲兵殿がどうかされたでありますか?」

あきつ丸「貴官は、あの憲兵殿とお付き合いされているのでありますか?」

あきつ丸甲「へっ?」

あきつ丸「いえ、貴官と、もっと仲良くなりたさそうみたいだったので」

あきつ丸甲「…うーん」

あきつ丸甲「憲兵殿はいい人だと思うのですが…」

あきつ丸甲「やっぱり、戦時中の身…色恋に現を抜かしている余裕は私には無いであります」

あきつ丸甲「それに、もし私の事がそんなに気になっているとしたら」

あきつ丸甲「入れ替わっていた事に気付いて欲しかったって気持ちが、ちょっとあります」ニガワライ

あきつ丸「気付かれてたらお互いにまずい事になってましたけどね」クスッ

あきつ丸「まぁそれは置いておいて…それなら次からは気付いてもらえるように、もっとお互いの事を知るのはどうですか?」

あきつ丸「守る者、待つ者がいるのといないのでは、死地に立たされた時の気力が違うでありますよ」

あきつ丸「貴官の性格なら、色恋に現を抜かして任務を疎かにする事は無いと思うでありますし」

あきつ丸甲「そういうものでありますか?」

あきつ丸「そういうものであります」

あきつ丸「私達は船(艦)であり、乙女(娘)。故に『艦』『娘』」

あきつ丸「乙女が恋して何が悪い」

あきつ丸「私はそう考えているであります」ニコッ



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





あきつ丸甲「お待たせしたであります」

憲兵「あ、あぁ…大丈夫だ」

あきつ丸甲「では、残りの仕事を終わらせたら昼食に行きましょう」

憲兵「そうだな…って、ん?」



憲兵「昼食…一緒に取るの?」



あきつ丸甲「え…あ、はい」

あきつ丸甲「わ、私達も…一緒に仕事するようになってもう半年も過ぎますし…」

あきつ丸甲「もうちょっと、お互いの事を知ってもいいのでは、と…思いまして…」

あきつ丸甲「駄目…でありますか?」

憲兵「…い、いや」

憲兵「そんな事はない!そんな事はないさ!!」

憲兵「よぉし!とっとと済ませて飯食いに行くぞ!!」

あきつ丸甲「は、はい!」



あきつ丸「…ふふっ」

あきつ丸(二人とも、応援してるであります)


あきつ丸「…さて、と」

あきつ丸(極秘任務でこちらに来ている、という事は半端な方法では提督殿の居場所は掴めないでありますな)

あきつ丸(提督殿がこの横須賀に居る事は憲兵隊の中でも一部しか知らされていない)

あきつ丸(下手に憲兵隊に働きかければ、極秘任務の情報が流出した事がバレて、私も友提督殿も、提督殿も危ない)

あきつ丸(先程のあきつ丸(甲)殿も提督殿の行き先までは知らされていなかったみたいですし…)



あきつ丸(先程見かけたあの品々は…)

あきつ丸(提督殿の携帯と通信機)

あきつ丸(そう安々と手放すものでもなければ、提督殿がそれを気にしている様子も無かった)

あきつ丸(つまり、考えられるのは…)



あきつ丸(移動中に船内ですり替えられたという事)



あきつ丸(検査と称して提督殿から一時的に預かり、その間にすり替えたのでありますな)

あきつ丸(提督殿は神経質なお方…携帯をいつもケースに入れて傷一つ付けずに管理されているであります)

あきつ丸(だからこそ逆に、代替品の用意は容易い…)

あきつ丸(そして、これが提督殿と通信が取れなくなった理由でありますな)


あきつ丸(『通信が入っていない』のではなく、『通信機そのものを持っていなかった』、という事)


あきつ丸(これはいよいよもって、怪しくなってきたであります)

あきつ丸(しかし…これからどうすれば?)

あきつ丸(提督殿と連絡を取る手段は奪われ、居場所を特定する事も難しい、となると…骨が折れそうでありますな)

あきつ丸(一旦榛名殿達と相談するでありますか)コツコツ


あきつ丸(しかし…)

あきつ丸(何故提督殿が?)

あきつ丸(友提督殿は、悪名高きアイアンボトムサウンド海域を突破し、AL/MI作戦においても深海棲艦の鎮守府奇襲を予想し、見事守りきった)

あきつ丸(その活躍から『パラオの英雄』と讃えられ、パラオ特別鎮守府を任されるようになった…)


あきつ丸(友提督殿には10年来のご友人がいる…それが、提督殿)

あきつ丸(しかし提督殿には友提督殿のような実績は無い)

あきつ丸(あるとしたら…AL作戦時での姫級(北方棲姫)の撃破くらい、か)

あきつ丸(それなのに、まるで提督殿を狙い撃ちにしたかのようなこの状況…一体誰が何の目的でこんな事を?)

あきつ丸(提督殿には狙われるほどの地位も実力も無いはず)

あきつ丸(如月型艦娘の現状と何か関係が…?いや、しかし、それなら何故提督殿が…?あぁもう、これでは無限ループであります!!)


☆今回はここまでです☆

今回はシステム面での勉強不足で、いくつか「saga」と間違えて「sage」てしまったり
他のssで見たハートの記号の出し方がわからなかったので、(はあと)でゴリ押ししたりしてました。
キルヒアイスほしいぜったいとる。

>>1です。
キルヒアイスは手に入りましたが、その前にスカウトでキルヒアイスが出てきてしまいました。
シェーンコップも出てきてしまいました。オーベルシュタインも手に入ったしこれもう…

それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





提督「パラオ泊地所属、提督、秘書艦二名、入ります」ガチャ


教官「………」


提督「………」



提督「………」


教官「………」



教官「…久しぶりだな。提督。まぁ、座れ」

提督「………」

提督「失礼します…お久しぶりです、教官殿」(何でテメーとまた会わなきゃいけないんだ)

提督「申し訳ございませんが、すぐに本題に入っていただけますでしょうか」(もう二度と見たくない面なんだから)

提督「今うちの泊地で少々厄介な問題が起こっていますので」(とっとと終わらせて帰らせてくれ)

教官「…敵の通信を傍受した」

羽黒「!!」

提督「内容は?」

教官「近々、どこかの泊地が強襲される」

提督「どこかって…何泊地ですか? パラオか、トラックか…」

教官「そこまではわからん」

提督「わからないって…」

教官「だが、情報が入ってきた以上何もしないわけにもいくまい。どこが狙われるにせよ、我々にとって重要な拠点ばかりだ」

教官「大本営は近いうちに全鎮守府に向けて防衛作戦の指示を出す予定だ」

教官「防衛作戦に向けて、練度の向上や資材の確保が必要になる…そこでだ」


教官「俺が、お前の部隊を一度見直す」


提督「…どうして私にそこまで?」



教官「お前が、俺が今まで指導してきた『特務提督』(※)の中で」

(※)艦娘を指揮する役職の正式名称。彼らの役割は、大本営から任された鎮守府・泊地の経営と所属する艦娘の指揮のみ。
(※)正規の軍人ではない一般人が大半を占めていて、軍人の提督との区分けの為にこの役職名が付いた。

教官「一番成績が悪いからだ。このままでは俺の評価にも響きかねないからな」



那珂「…」ムッ

提督「…そうですか」



教官「部隊編成図は用意してあるな?」

羽黒「こちらです」スッ

提督「…第一部隊は主力部隊です」

提督「ここにいる第二秘書艦羽黒を旗艦として、金剛・霧島の高速戦艦…」

提督「赤城・翔鶴・瑞鶴の正規空母で構成しています」

教官「何故赤城型艦娘と五航戦を?加賀型艦娘はどうした?」

提督「…彼女達は我が泊地で最高練度の正規空母です」

提督「主力に相応しい戦力は持っています」



教官「馬鹿か」



教官「加賀型艦娘の性能を何だと思っている。アレの前では赤城型も五航戦も劣化品でしかない」

教官「しかも何だこれは。主力と言い張る割には翔鶴型艦娘の練度はお粗末じゃないか」

提督「…申し訳ございません」

教官「帯に短し襷に長しの赤城型と、火力不足の五航戦」

教官「これで主力部隊とはな。それにこれでは潜水艦相手に手も足も出ない」

提督「………」

教官「で、加賀型はどうした?確か半年ほど前に艦娘配属申請書を提出していたな?」

提督「あの作戦の前だから…六月ですね」

提督(今が一月だから…本当に、あれからもう半年以上経ったのか…)

提督「加賀は………」

提督「………」

提督「都合により、他の鎮守府への転属になりました。艤装も既に解体済みです」

教官「ハッ!無能っぷりに嫌気差されて見捨てられたか!」

教官「まぁいい。ならさっさと妖精に次の艤装を作らせろ」

教官「で、艤装が出来たらすぐに申請。艦娘が到着次第練度向上だ」

那珂(…なんだこれ)



教官「…で、第二部隊は、駆逐艦隊?」

提督「水雷戦隊です」

教官「相変わらずズレているな。水雷戦隊は基本第三部隊だろう?」

那珂(はっ?そんなん人の勝手じゃん)

教官「こっちもお粗末だな」

提督「…申し訳ございません。AL/MI作戦後に編入した艦娘が主ですので」


教官「MIではない」

那珂「え?」

教官「お前は、あのミッドウェーには一歩も踏み入れていない」

教官「アルフォンシーノで北方棲姫(クソジャリ)に足止め食らって、それまでだったお前が」

教官「歴戦の提督のようにミッドウェーを口にするな」


那珂(いちいちうるさいなこいつ)

教官「で、メンツは…」

提督「旗艦阿賀野・龍田・大淀の軽巡三隻と、如月・夕立・潮の駆逐艦です」

提督「また状況に応じて、暁・夕雲・荒潮の駆逐二班…この三隻とのメンバー入れ替えを行っています」

教官「如月?あぁ、あの…」ニヤ

提督「…如月が何か?」(何笑ってんだテメェ)











教官「沈 め ろ」











羽黒「…え?」


那珂「はぁ?」


提督「は?」



教官「この駆逐艦娘を『沈 め ろ』、と言ったんだ」

教官「我が海軍には、『『こ ん な も の』 は 必 要 な い』」

那珂(…こいつ)

提督(嫌な予感はしたけど、やっぱりそう来たか、このクソ野朗)

提督(だけどな)


提督(あの時みたいに行くと思ってんじゃねぇぞ…!!)



提督「お言葉ですが教官殿」

提督「我が泊地の如月は、着任してから日は浅いものの、既に結果を出し始めています」

提督「渾作戦では駆逐艦娘潮と連携し、新型重巡と随伴艦の戦艦の撃沈に成功させています」




提督「我が泊地の如月は、我々にとって、無くてはならない戦力なんです」

教官「こんな性能の低い旧型駆逐艦が『無くてはならない戦力』?冗談だろ?」




教官「戦艦の撃沈なんてのはな、何も特別なものじゃない」

教官「他の鎮守府の記録を見た事が無いのか?戦艦の撃沈なんて、どんな駆逐艦娘でもやってのけるぞ」

教官「夕立、時雨、雪風、島風、綾波…こいつらが今まで一体何匹の深海棲艦を沈めてきたと思う?」



教官「それに比べれば、たかが一匹ごときで…」

提督「そうですか、『どんな駆逐艦娘でもやれる』のですか」



提督「なら、如月をわざわざ特別視する理由は何ですか?」




教官「はぁ?」

提督「私も聞いたことがありますよ」

提督「今の駆逐艦娘の運用について。性能に多少の違いはあれど、殆どどんぐりの背比べ状態、だと」



提督「乱暴な言い方をしてしまえば、練度を積んで、我 々 が戦略をしっかり練れば」

提督「どんな駆逐艦娘でも活躍はできる」

提督「なのに、何故、教官殿は、如月を、名指しで、沈ませろなんて、おっしゃるのでしょうか?」トントントントン



提督「先程教官殿は、如月はこの軍には必要ない、と言いましたね?」



提督「何度でも言わせて頂きます」



提督「如月は我々の艦隊にとっては無くてはならない戦力です」



提督「何があっても沈ませませんし、手放すつもりもありません」



提督「それに、教官殿の言っている事は合理的に考えてもおかしいですよ」

提督「人道的な事は置いておいて、如月を沈めたとしましょう」

提督「そこからまた新しい艤装を開発して、艦娘を呼んで、育てるのですか?」

提督「そこまでの手間をかける理由が思いつきません。それこそ非効率です」

提督「艤装を作るのもタダではありません。資源と時間を消費します。艦娘の配属にも時間がかかります」

提督「そんなリスクを背負ってまで、新しい艦娘を配属するメリットが私には理解できません」

提督「性能に大差も無い。時間をかけるメリットもわからない。なのに教官殿は如月を沈めろとおっしゃられる」

提督「納得できる理由を教えていただけますか?」

提督「私だけではなく、艦娘の立場としてここにいる、私の秘書艦達も納得できる理由を」チラッ

那珂「…」

羽黒「…」

教官「…チッ」

提督「理由を、教えて、いただけ、ますか?教官殿!?」



教官「ちょっと口が上手くなっただけで調子に乗るなよ」





提督「!?」

教官「結局お前はあの時から何も変わっていない。無能の、脳無しだ」

教官「この程度の事すら自分で考えて思いつくことすらできないんだからな」


教官「いいものを見せてやるよ」ポイッ

提督「これは…!?」バサッ

羽黒「!!」


教官「番組の放送後から集計した如月型艦娘の評価、情報だ」


提督「…なんだよ、これ」

教官「それとこれが」


教官「如月型の、轟沈記録、な」バサッ


提督「なんだよ…なんなんだよこれ!!」



提督「どういうことなんだよこれは!!!!」




教官「どうもこうも、見れば察しがつくだろう?」

教官「今後の鎮守府運営は、あの鎮守府をモデルとして行われるという事だ」


教官「主な提督業務は長門型艦娘に委任し、特務提督は裏方へと回る」


教官「艦娘の指導担当に妙高型重巡洋艦娘を充て」


教官「所属する艦娘や艦隊の人員を出来得る限り一定化する」


教官「吹雪、睦月、夕立」

教官「川内、神通、那珂、赤城、加賀、瑞鶴、大和、大鳳」

教官「大井、北上、金剛、比叡、榛名、霧島、高雄、愛宕その他諸々」


















教官「そ し て」



教官「如 月 は」



教官「た だ 一 人」




教官「轟 沈 す る」



















提督「………」

教官「お前の所には確か、陸奥型艦娘がいたな?今日から提督業務は全てそいつに引き継げ」

教官「なぁに、無能のお前よりはうまくやれるさwww」

教官「なぁ? 万 年 中 佐 ?」



提督「…ふざけんなよ」

教官「あ?」



提督「あんな烏合の衆の極みみたいな鎮守府が!」

提督「今後の俺達の手本として扱われるって事なのかよ!!」

提督「しかも向こうで艦娘が沈んだらこっちでも沈めってか!?」

提督「そんなの納得できるかよ!!!」

教官「お前が納得できるかできないかは聞いていない!!」

教官「あの鎮守府はこれからのお前達のモデルケースとなる。そう決まったのだ!!」



提督「そんな理由で人を殺すのかテメェら軍人はぁ!?」

教官「殺すさ!それが最善の方法なんだからな!!!」



提督「何が最善だぁ!?」

教官「人は常に平等であることを望む」

教官「あっちの鎮守府はあんなにも優れているのに、何故自分達を守る鎮守府はこうも駄目な奴らばかりなのだろうか」

教官「市民のそういった不安や不満は解決しなければならない」

教官「我々は、市民を守る事が仕事なのだからな」

教官「だからこそ、モデルの提示と、モデルに沿った鎮守府運営が必要となるのだ」

提督「それがあの番組で!?人死にもモデルだってのか!?」

教官「あぁそうだ!お前も見ただろう!!」

教官「如月は沈んだ!ただ一人!他の誰も沈まなかった戦場でただ一人!」

教官「それを見た人々はどう思う!?」

教官「それをはっきりと示したのがこの資料だ」


教官「既に不満が溜まった市民によって如月型が殺される案件が各地で起きている」



教官「如月型自身にも、自ら犬死を望むような特攻や自殺をする者まで現れている」



教官「まるで『狂ったように』な」



教官「その結果が!この記録だ!!」



教官「昨日と今日で、既に80以上の轟沈、死亡が確認されている!!」



教官「他の艦娘がせいぜい一日に、3・4…多くても10にも満たない中でだ!!」




教官「想像してみろ!こんな出来損ないに守られたいと思うか!?」

教官「もはや如月型艦娘は誰も必要としていない!!」

教官「如月型艦娘は国防において邪魔にしかならない!!」

教官「如月型艦娘は海軍の恥晒しだ!!」

教官「一般市民にとってもそうだ!!だからこそ!!リンチに走り!如月型艦娘を狩っているのだろう!?」

教官「だから沈めろ!!一人残らず殺せ!!」


教官「『番組と同じように』な!!」


提督「!!」ギリッ

教官「何だその目は」

教官「お前以外の特務提督はこちらから何も言わずともやってのけたぞ」

教官「情報が入った瞬間にな」

提督「…だとしても!!」



教官「…そうだ面白い話をしてやろう」

提督「…は?」


教官「今のお前のように反発していた特務提督が一人いたんだ」

教官「『誰一人として沈ませたくない』と夢物語を語ってな」


提督「…夢物語じゃないでしょう。艤装の『ストッパー』を『しっかり管理していれば』、ですが」

教官「俺はそいつに言ってやったんだ」



教官「『これは大本営直々の、軍直々の『許 可』だ』」

教官「『あの放送を許可した理由を考えてみろ。君は何も気にする必要は無い』と」



教官「それを伝えた数時間後…そいつはどうしたと思う?」

提督(…答えたくない。まさか、まさか…)











教官「笑いながらなぁ!!!」

教官「轟 沈 の 完 了 報 告 を し て き た ん だ よ ! !」












提督「………」

教官「…だけどお前はそうはいかないんだろうな」

教官「お前は察しが悪く、頭の回転も遅い、物事に対して独断と偏見で満ち溢れていて視野も狭い」

教官「だからこうやって直々に呼び出してやって、教えてやってるんだ」



教官「軍のしきたりと」

教官「この世界の常識って奴をな」



提督「ざ け ん な ぁ!!!」

提督「こんなもんがなぁ!!常識だってんなら俺は一生頭のおかしい異常者でいい!!!」

提督「こんなくだらねぇ理由で如月を殺してたまるかよぉ!!!」

提督「誰が!如月を沈めたりするものか!!!」

提督「アンタが言いたいのはそれだけか!?その命令は聞き受けられない!!」

提督「那珂!羽黒!帰るぞ!!」

那珂「うんっ」



教官「動くな提督!!後ろを見ろ!!」



提督「!!」


武蔵「………」ガチャッ


提督「お前は…行きの船で護衛に付いていた武蔵…!?」

武蔵「動くなよ。動いたら、撃つぞ」

武蔵「教官殿を巻き添えにするとかは考えるだけ無駄だ」

武蔵「艤装を付けていないお前達では、砲撃の衝撃にすら耐えられまい」

武蔵「『衝撃だけを』当てて、お前達だけを殺す事だって、難しい事ではないぞ」

提督(しかも艤装付きかよ…!!こっちには人間一人と艤装無しの艦娘二人!!)

提督(おまけに真正面から向き合ってると来た!)

提督(この状況じゃ、一発入れる前にこっちが砲撃で粉微塵にされる…!!)

提督「そういう事かよ…最初ッから!」



教官「帰れるわけがないだろう?」

教官「お前がここで俺の言う事を聞かなければ」

教官「お前は一生この横須賀から出る事は出来ないぞ」

提督「武蔵型艦娘なんてもんまで引っ張り出してきやがって…!!」

提督「こんな事してでも、如月を殺したいのかよ…!!」

教官「あぁ殺したいね」



教官「いいか?これはイメージという点だけの問題じゃないんだ」

教官「そもそも駆逐艦なんてものは消耗品なんだ。そして戦争に犠牲は付き物だ」


提督「そんなのは昔の話だ!『ストッパー』があれば犠牲は無くなるはずだって…!!」

武蔵「黙れ」


教官「だが、艦娘が人型でコミュニケーション可能な存在である以上、ある程度の情が沸いてしまうのは避けられないだろう?」

教官「正規の軍人である我々ならともかく、素人のお前達、特務提督が情を捨てて作戦を考えるなんて無理な話だ」



教官「なら、犠牲になる艦娘を固定してしまえばいい」



教官「最初から『こいつは沈める』と心に決めてしまっておけば、そんな問題は無くなってしまう」

教官「全ての如月は沈み、他の艦娘は、決して、沈まない」

教官「生きとし生ける者、全てが幸せになるんだ」



教官「あいつ(如月)が死んでくれればな!!」



教官「口にしなくてもな!口では綺麗事を言ってもな!全ての提督がこう感じているだろう!!!」





教官「『うちの大切な艦娘が沈まなくて本当によかった!』」





教官「『沈むのがあいつでよかった!!』」





教官「『ざまぁみろ!!ざまぁみろ!!!ざまぁみろぉ!!!!』」





教官「そうだ!それが!!特務提督という生き物だ!!!人間という生き物だ!!!」

提督「だったら!如月に情が沸いた者はどうすればいいってんだ!」

教官「それはただ、先を見ることが出来なかった大馬鹿者だ。お前のようにな」

教官「特別や例外は許されない。それをしてしまったら体制が崩れてしまうのでな」

教官「如月は、一人残らず、沈ませる」

提督「そんなの…そんなのなぁ…!!」



教官「そうだな…お前はずぅっとそうだったなぁ!」





教官「最初の秘書艦は軽巡洋艦娘『那珂』」



教官「『解体のアイドル』」





教官「次の秘書艦は『重巡洋艦娘』羽黒」



教官「『軽巡以下の産業廃棄物』」





教官「その次が正規空母艦娘『赤城』」



教官「『妖怪食っちゃ寝』『大飯喰らいの木偶の棒』」





教官「お次に入れ込むのは『如月』か!!」



教官「今度は何だ!?」



教官「『大本営公認捨て艦』!?」



教官「いや『唯一の轟沈艦娘』か!?」





教官「お前は本当に先を見る目が無いな!?よくもここまで『ハ ズ レ』を引いていけるものだ!!!」


教官「だから俺達はいつも言っていたんだ!!」


教官「『お前がこの世界でやっていけるはずがない』ってなぁ!!」


教官「『お前の為を思って』!!『教えて『やっていた』』んだ!!!」


教官「やぁっっっぱり!!そうだったじゃないかぁ!!!!!」



提督「…てめぇ!」


教官「そろそろいい加減にしておけよ」ズイッ


提督「!!」ビクッ

教官「ただの一般人だったお前達がここに居て、艦娘の指揮を執れるのが誰のおかげだと思っている」

提督「…少なくとも…アンタのおかげじゃねぇよ!!」


教官「」ドスッ

提督「ごぶっ!!」


羽黒「司令官さん!!」

提督「ふぐ…おえっ…」

教官「人手不足というのは恐ろしいな。こんな、話を聞かない、無能な奴まで利用しなければいけないのだから」

教官「特に今回のは目に余る」

教官「その非常に反抗的な態度。ここまで来ると逆に素晴らしい」



教官「憲兵!憲兵!!」

憲兵「どうしましたか、教官殿」

教官「この馬鹿を連れて行け。反抗し、私に危害を加えようとした」

憲兵「!!それは…」

憲兵2「お前達はこの提督の秘書艦か」ガシッ

羽黒「!!」

那珂「ちょっと!離して!!」


教官「おっと、その二人は丁重に扱ってやってくれ」


那珂「は?」


教官「何せコイツは、自分の部下の艦娘を片っ端からレイプするような外道だ」

教官「その二人も心に大きな傷を負っているだろう…もし間違えてコイツと同じ部屋に入れてでもしてしまったら、何が起こるか…」

教官「そんな悲劇は見たくないからなぁ」フーッ


提督「………」ギリッ



教官「それに…」ジロッ

羽黒「!」ビクッ

那珂「!」ゾッ

教官「彼女達は貴重な戦力だからな。こんな事で失いたくない」クククッ

那珂(おえっ)



教官「お前は別だがな、提督」

教官「お前がこの命令を了承するまで横須賀から出られると思うなよ」

教官「それまでは毎日、臭い飯を食わせてやる」

教官「あの時の泣き虫野朗がどこまで粘れるか、見物だな?」ククク

重巡が軽巡以下の産廃って、ええ…(困惑


☆今回はここまでです☆

やけに具体的な数値を出しましたが、これは今回のssネタの件で、誰でも確認できる、あるデータを元に数値を出しました。特に意味はありません。

>>146 さん
これ以降全く触れない点なのでご説明させて頂きます。

今でこそ重巡はそれなりの地位を獲得していますが、夜戦補正・弾着実装前は本当に産廃扱いされていました。
軽巡とどっこいの火力・回避で、対潜はできない、燃費は悪い、修理に資材も時間もかかると、ネガティブな面が取り上げられる事が多かったです。
その為重巡は軽巡以下、下手すれば駆逐以下とも言われ、当時の艦これプレイヤーの間では重巡無能無用論が主流でした。
特に台詞が重巡推し、かつ旧型で性能が控えめな古鷹が、この件で槍玉に挙げられているのをよく見かけました。

詳しい事は検索をかければ出てきますので、興味とお時間がございましたら調べてみるのも一興かと思います。


アニメ放送後の時間軸なのに産廃扱いされている事に違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、
この台詞、提督への嫌がらせで口走ってるだけなのであまり気にしないでください。

>>1です。
敗北しました(帝国軍人)。
あと最近友人の勧めでアイギスをやり始めたのですが、主人公見てるとルカ・ブライトを思い出してしょうがないです。

それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





「龍田、今度な、新しく駆逐艦隊を組もうと思っていて」


「はじめまして、如月ちゃん。私が今日から如月ちゃんの教官になる…」



「ストレッチパワー」


「いいじゃんいいじゃん!」ポンポン



「囮艦隊でありながら、損傷軽微で生還を果しました」


「でね、実は今日こっそり連れてきちゃったんだ。ちょっと早い顔合わせって事で」


「その内の…至近弾だけでも爆弾が48発、魚雷17本!!」


「…にも関わらず、二隻とも損傷軽微で生還できた理由がこの…」



「ストレッチパワー」


「俗にそう呼ばれる現象の原因について、詳しい事はまだわかっていません」



「如月ちゃんに宿題!次に会う時までに素敵な女性に近付いている事!」


「わかっているのは、特別な改造を施さなくても光を発している間は、艤装性能と艦娘の身体能力が爆発的に向上する事」



「私の事覚えてる?第三十駆逐隊時代の…」


「お前と阿賀野と大淀で、指揮を執ってもらいたいんだ」


「知り合いの伊勢さんと日向さんの協力のもと、作ってみました!」



「ストレッチパワー」


「そこまで言うのなら止めはしないよ」



「こうやって私と如月ちゃんがまた出会えた事だって、運命よ」


「膨大なエネルギーの蓄積による自壊を防ぐ為とも言われ…」


「艦娘になって、今までの名前を封印して、顔が変わって、遺伝子が変わっても、お前はパパとママの…」



「アネモネの花」




「如月ちゃんにあげる。お祝いの花!」


「アネモネの花はね、2月の誕生花なの」


「如月っていう名前も旧暦の2月だし、ちょうどいいなと思って」


「それでね、この花の花言葉はね―――――」




「気分はどう?」





……………



「だから言ったでしょう?」



「もうどうにもならないって」



「あなたはもう終わりだって」



「それでもまだ信じるの?」



「それでもまだ生きたいの?」



……………



「そう…それなら、見せてあげる」




視界が切り替わる。

たった一人で海に立つ女の子。

如月。



これは私?

「そう。貴方と同じ如月」

「貴方と同じ如月『だったもの』」



…何の、ために



如月「…何の、ために」

如月「何のために、如月は死んだの?」




「人間の自己満足のため」




「『こうした方が面白い』」

「『こうでなくてはならない』」

「ただそれだけのため」


「理由なんてそれだけ。それ以上の意味は、私達の命には無かった」

「これからずっと、如月は殺され続けるの」



「欲望のため、自己満足のため」



「何人」

「何十人」

「何百人」

「何千人の如月が」




「如月だけが」




「何も知らずに死地に赴き、殺される」



「ほら」



「また一人、死ぬ」





目の前の如月が、突然飛んできた爆弾の直撃を受ける。


艤装が完全に壊れ、沈んでいく。


艦娘の身体と艤装の最後の力が、彼女の身体を欠損させなかったのは


せめてもの慈悲か、これを見る者への拷問の一種か。


そして沈み行く彼女は最期の言葉を遺す。







「如月のこと…忘れないでね…」







如月「………!!」

如月「やめて!!こんなの見たくない!!」

如月「こないだのテレビでさえ辛かったのに!!何で!何で何度も!!」



「いいえ、見なければいけないの」グイッ

如月「あっ!」

「貴方は全ての如月の手本になりたいのでしょう?」

「目を、開けて」グググググググ

「顔を、上げて」グググググググ

「現実を直視して、受け入れなきゃ」




「ほら」


「まだまだ、死ぬ」


「みんな、死ぬ」



「よぉし!俺も殺そう!!」

「助けて!助けて司令官!!」

「ねぇどんな気持ち?轟沈晒されてどんな気持ち?wwwwwwwwww」

「テレビで死んだんだから殺してもいいよね!!」

「で、うちの如月ちゃんはいつ死ぬの?」

「なんかこの辺ゾンビ臭くないですかぁ!?!?」

「死にたくない…!!」

「大本営のやる事なんだから尊重しなきゃ!!」

「尊重して!僕達も!如月を殺そう!!!」

「お前もとっとと死ねばライバルが減るデース!!」

「如月ちゃん死にましたーwww」

「違う!私は!死んでなんていないのに!!」

「別に俺達が殺したって問題ないって事だよなぁ!?」

「生きとったんかいワレェ!!」

「じゃけんもう一度殺しましょうねー」

「何故かしらねぇけど憲兵がいないんだから殺しちまっても大丈夫だろ!!」

「えっ?死なないの?それじゃダメだよぉーww」

「テメーの命なんて所詮その程度だって事なんだよ!!」

「はい!別に沈んでも何の感情も沸かないので大丈夫です!!」

「オラオラー!!死ねや化け物が!!」

「嫌ぁ!やめてぇ!!」

「人殺しにはならないだろ。だって人間じゃないんだから」

「ゾンビか化物か」

「俺が!俺達が!テレビ提督だ!!」

「ざっまぁwwwwwwww」

「何が艦娘だぁ!!!」

「W島で沈んだあいとー(笑)の意を表してぇwwけえええええいれええええええええええええええいwwwwwww」

「髪がいたんじゃあああううううううんwwwwwwwwwwwwwwwww」

「司令官…どうして…!?」

「きぃさらぎぃ~?んん~??www誰だったっけなぁ~wwwww」

「高い税金払わせておいてなんだあの様はよぉ!?!?」

「死ねや!深海棲艦がぁ!!!」

「まだまだ殺せるはずだ!探せ!!探しまくって殺しまくれ!!」

「ちょっとゾンビ沸いてんよ~」

「えー如月が轟沈しましたー。いやー!悲しい!かなしいねえー!!」

「テメーみたいな雑魚艦娘がよぉ!!」

「司令官、私…大破して…」

「犬死するのがお前の役割だろうが!!ゴタゴタ言ってないでとっとと死ね!!」

「ま、そういう運命なんだよお前はww」

「よかったじゃないか!価値が産まれて!!」

「じゃあ、死のうか」



如月「………!!」

如月「うぐっ…」

如月「うっ…おぇっ……」



如月「私に…私にこんなのを見せて…どうしろっていうの…!?」

「あれになるの」



築き上げられた如月の死体の山の奥に

佇む影が二つ現れた。

深海棲艦

正規空母、ヲ級と姫級、中間棲姫。



如月「!?」

如月「深海棲艦…!?」


「人を憎みなさい。そして殺しなさい」

「人間はこれ以上罪を重ねるよりも、死んだ方が人間の為…世界の為」

「あれはその為の力、その為の姿」


如月「…嫌よ…!!」

如月「私は人間よ…これからだって…人間のままでいたい…!!」

如月「化け物なんかになりたくない…!!」




「だけどその人間は如月を否定した」

「如月の命を、如月の名誉を、如月の全てを否定した」




「私たちにはもう味方はいない」


「私たちにはもう何も無い」



「このままでは」

「彼女のような凄惨な死しか残らない」








「カミカザリ…カエシテ…」







視界が切り替わる。


灰色の空の下。


艦隊と、深海棲艦の戦い。


のはずだ。


そのはずなのに。


艦娘が砲撃を、爆撃を加える


その標的は



如月「…!?」

如月「何で…なんで、如月が…」



如月「艦娘に攻撃されて…!?」



如月「誰も気付いていないの!?誰も!?」

如月「やめてっ…やめてぇっ!!」

如月「それは味方よ!!如月なのよ!!!」

如月「やめて!!!!!」

如月「お願いやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」



「敵空母を沈めたっぽーい」




如月「あっ…あぁ、あああ…ッ!!!」ガクッ




「かつての仲間に銃を向けられ…敵意と殺意に晒されて…」


「一人」


「たった一人」


「孤独に死んでいくしかない」


「もう、地上にも、空中にも、海上にも、私たちの居場所はない」


「だから、海の底の仲間達に付くの」

「もっともっと深い憎悪を」

「もっともっと身に纏って」


如月「…嫌よ……」

如月「こんなの嫌よ…」











「嫌ヨ…一人ハ…」




「貴方モ…一緒二…来テ」ガシィ


「皆デ…水底ニ…」




如月「ひっ!?」

如月「離してっ!離してぇ!!」





「誇りも、名誉も、意思も、全ての光を無くしたわ」


「私たちに遺されたのは、恨みと、辛みと、無念だけ」


「私を大事にしてくれたあの人も、もういない」







「なら」



「もう人類に生きる価値なんて見出せない」



「私たちは再び一つとなって」



「人類を滅ぼす」




「再び一つに」





「人間はいつだってそうだった」

「自分の為なら他人を殺す」

「自分の欲で他人を殺す」

「あの時だってそうだ」

「ウェーク島上陸作戦の為に展開された大発艇のせいで、私はろくに回避もできずに沈んだ」

「たかが戦闘機ごときに沈まされる事になった」

「あんなものいなければ!あんな攻撃で沈みはしなかったんだ!!」

「なのに後世では、そこまで鑑みる人は居ない…」

「いつだってそうだ」

「私はいつも!!誰かの勝手で殺されるのに!!!」

「誰もそこに目を向けてはくれない!!!!!」

「否定されるのは私だけ!!いつもいつも!!!」



「今回だってそうだ!!!」

「あんな!」



「あんな奴らの勝手な都合で!!殺されて!!!!」


「ふざけるな…!!勝手な都合で…!いつも勝手な都合でえええええええ!!!!」



「殺してやる…!!」


「殺してやる!!!」


「人間なんて、一人残らず殺してやる!!!」


「痛みをわからせてやる!!」


「怖さをおしえてやる!!!」


「そして世界から消し去ってやる!!!」



「お前達のようなものがいなければ!!!」



「地球の歴史をやり直すんだ!!!!!」



「これ以上奴らにチャンスなんていらない!!」



「殺せ!!!」



「滅ぼせ!!!」



「絶滅させろ!!!!」





「あなたも辛かったでしょう!?」


「追い掛け回され!殺されかけて!狂ったあいつらのために!!」


「心配しなくていいわ。これからの私達には相応しい!特別な身体を貰えるんだから!!」


「狂気に触れたものにのみ許される特別な身体…」




「戦艦、レ級!!」




「この力で…みんなで!みんな!みんな!殺してやる!!!」


「あいつらから貰った狂気を…全部、全部、あいつらに返してやる!!!」



「だから…」



「早く」



「あなたもこっちの存在になれって言ってるのよ!!!!」




水面から這い出る腕が


如月を掴む腕が増える。


脚を、腕を、首を、胴を


細い腕が、如月の腕が、彼女を掴んで離さない。


「助けてっ!誰かっ…!!」


「しれいかんっ!しれいかぁん!!!」


そしてそのまま海の中へ引き擦り込まれた。



「如月………!!」


薄くなる意識の中で


「如月ちゃん!!」


果てしなく暗い海の底で


かすかな光を感じた。


その光は如月を招くように、彼女を身体を引き寄せた。



それは、死の海底からの出口だった。




☆ちょっと休憩します☆



「如月ちゃん!如月ちゃん!!」

如月「うぅっ…あぁっ!!」

如月「あぁっ…あ……」

如月「あっ………」ピクッ

如月「??…?…」ムクッ



潮「如月ちゃん」

如月「ひっ!!」



潮「大丈夫。あたし…潮だよ」

如月「う、潮、ちゃん?」

潮「如月ちゃん、うなされてたんだよ」

如月「うなされて…?ってことは…あれは夢?」

如月(…本当に夢!?)

如月(あの…光景は…あの…痛みは、息苦しさは…!!)

如月「あれが…本当に…夢なの…!?」


潮「………」

潮「ねぇ、如月ちゃん…」スッ



動揺と恐怖のせいか


または『自分の片割れ』の影響か


如月の感覚は暴走し、その先の未来を見せる。



如月に伸ばされた潮の手は


突然彼女の首に襲い掛かり、締め付けた。



「そう!その手は貴方を殺すつもりなのよ!!」


頭の中の何かがそう叫んだ。



如月「!!」バシッ

潮「!!」



如月「来ないで…!!」



潮「えっ」

如月「来ないでよ!!」

如月「あなたも如月を殺すんでしょう!?」


「そう!!油断させて絞め殺すつもりだったのよ!!」



潮「えっ…ち、違う…」

如月「他の如月みたいに、潮ちゃんも私を殺すんでしょう!?」



「そう!!もう私達に味方はいないんだから!!」



潮「…如月ちゃん…!?」



「だから!!早くあなたもこっちにいらっしゃい!!」



如月「いやっ…」

如月「死にたくない!死にたくない!!」



如月「死にたくないよぉ!!!」ドンッ!



潮「あうっ!」ドスッ

如月「!!」ダダダダダダッ

潮「如月ちゃん…!如月ちゃん!!」

潮「…!!」

潮「誰かっ!誰か!!如月ちゃんを止めて!!」



潮「如月ちゃんを止めてぇ!!!」




如月「はぁっ…!はぁ、はぁっ…あぁあああ…!!!」



「『如月』は、もともとは一つの存在」



如月「!!」ゾクッ

如月「何なの…」

如月「何なのよこの声…!!」



「『如月』は、たった一つの存在から分かれて増えた」

「一ツノ魂カラ分カレテ増エタ」

「ソレガ艦娘」

「『如月』は、全てが一人で、一人ガ全テ」



如月「あぁ…あぁああああ…ああああああああああ…」ガタガタガタガタ



「ダから、オ前モ」







「オ前モアノ如月ノ様二沈メ」









如月「あぁあああああああ!!!!!ああああああああああああああ!!!!!!!」

如月「声がっ…頭から…剥がれないっ!!」



「皆死ヌ」



如月「助けてっ!誰か助けてよぉ!!」



「皆死ンダ」



如月「パパっ、ママっ、あたまいたいっ!!」



「皆死ンデ一ツニナッタ」



如月「誰かとめてっ!だれかたすけてぇっ!!」



「オ前モ死ネ」


「死ンデ一ツニナレ」



如月「たすけてぇっ!しれいかぁん!!」



「如月ノ歴史ハ」


「ココデ終ワリ」


「ソシテ始マリ」


「復讐」



如月「しれいかん…たすけて…」


「ナラ会イニ行コウ」


如月「……………会いに…イコウ…」


「我々ト共ニ」


如月「我々と共に…」


如月「この海ヲ越エテ…日本マデ…」


「ソシテ全テヲ滅ボソウ」


如月「波ニ乗ッテ…」



「シレイカン…」




「コレデ」


「今度コソ」




「迎エニ行クワ」


「港ヲ出テ、北ニマッスグ」


「ソコニ使イヲ出シテオク」


「余計ナモノ(ストッパー)ハ付ケナイデ、ソコマデ一人デ来ルノヨ」



「早クシナイト」


「マタ、苦シクナルダケダカラ」



☆今回はここまでです☆

ロックマンX8がアーカイブ配信されている事を今日知りました。
PS3向けって事はPS4ではできないって事ですよね。それならまだまだPS3には出番がありそうです。

>>1です。
パワプロ2016はメニュー画面にオリジナル変化球作成モードがあって驚きました。
というか変化球作って、どうやって習得させるのでしょうか?
それは置いておくとしても、栄冠ナインモードも続投だと知り、買う予定は無かったのですがここに来て突然欲しくなってきました。

それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-船上-


男A「なぁ、あそこにいるのって…有名な艦娘の?」

男B「あぁ。金剛型一番艦の金剛だ」

男A「はーっ、俺こんな近くで金剛見たの、はじめてかもしれねぇ」

男A「艤装も付けてないって事は休暇か何かか?」


男A「…でもあれだな」

男A「ああやって黙ってると全然印象違うんだな」

男B「そうだな。テレビだの、雑誌の記事だので見るのはいつもハイテンションだからな」

男A「あんな遠く見つめてて…何かあったんだろうか?」

男B「愛しの提督に会えなくて寂しいだけなんじゃないか?」

男A「ちょっ」

男B「どっちにしろ、初対面のお前が突っ込んでいくって選択肢はデリカシーが無いと思う」

男A「ぐぬぬ」


男B「それに、金剛型艦娘は提督の間でも人気が高いからな」

男B「提督のセフレ、恋人、愛人、妾、妻…そういうのが殆どなんだってさ」

男B「たまに溢れるのもいるらしいけど、そんなのは少数だ」

男B「変にちょっかい出して、問題に巻き込まれても知らないぞ」

男A「何だよ、お前は気にならないのかよ?」

男B「お前人の話聞いてたのかよ」

男B「確かに艦娘ってのは美人ばかりだけど、提督の女である奴も多いって言ってるの」

男B「前にもいたろ?榛名型艦娘の事が好きになったけど、結局提督に取られた奴」

男B「人の、ってか軍人の女に手付けるなんて怖え事できねぇよ」

男A「…じゃあ、あまり人気じゃない艦娘なら?」

男B「お前ゲスか!?」



男A「…あぁ~…いいよなぁ提督って。あんな子達を侍らせられるんだろ?俺も応募して提督になろうかなぁ」

男B「色々大変だと思うけどなぁ」

男A「色々って?」

男B「あぁ」



金剛「………」

金剛(もうすぐパラオか)

金剛(…ここからは、またいつもの『金剛』デス)

金剛(テートクにはいつも無理言って休暇貰ってるんだかラ、ちゃんと恩返ししないとネ)

金剛(………)


「お姉様ー!!」


金剛(また、会いに行けるよネ、比叡…)


「おーい!」


金剛(…でも…本当なら…)

金剛(私もそっちに行った方が…いいのかも…しれない…)



「迎えに来ましたよお姉様ー!!」



金剛(迎え…あぁ、やっぱり。そうなのかも…)



金剛(って)



金剛(え!?)






比叡「お姉様ー!!」ズザァァァァァァ




金剛「ひっ!?」ガタッ

比叡「あれー?お姉様どうしましたかー!?」

金剛「ひ、比叡…!?」

比叡「そうですよー!お姉様の比叡です!!お久しぶりですー!!!」

金剛「お久しぶり…?」

金剛「え、あ、あ、そうか…」

金剛「ど、どうしてここニ…?」


エッ、ヒエイ? マジカヨナンカアッタノカ? トイウカナンカヨウスオカシクネ?


比叡「やだなー!迎えに来たんですよぉ!お姉様に一秒でも早く会いたいと思って!!」

金剛「あ、さ、Thank You…」


サスガシスコン メディアドオリノシスコンヤ ヤッパスキナンスネェ ヨコカラノリツケトハマタアグレッシブナ


比叡「ささ、お姉様!ボート持ってきたから乗ってください!」

ボート「」オッスオネガイシマース

金剛「えっ、これテートクの視察用のMotorboat…」


オイイイノカアレ マァジョウセンダイハハラッテルシイインジャネ グンジンハイソガシイナー トイウカドウヤッテノルノ?トビオリルノ?ビショヌレコンゴウナノ?


比叡「私が引っ張って行きますから、泊地まで一直線で行けますよ!!」

比叡「あっ護衛の艦娘さん達お疲れ様です!!すぐ居なくなるんで、悪いですけどもう少しだけ待っていただけませんか!?」

金剛(…乗ろうか)



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-海上-


金剛「」ザザー

比叡「乗り心地はどうですかお姉様!?」

金剛「悪くないヨ」

金剛「でも…何か、悪いネ」

比叡「いえいえそんな!私の行動原理はお姉様!比叡はお姉様の為なら何でもしますよ!!」

金剛「テートクは?」

比叡「それは二の次」

金剛「ひどい」

比叡「まぁそんなわけで!私はお姉様の幸せのためなら何だってするんですから!」

比叡「だからもっともっと、私に頼ってほしいんです!!」

金剛「でも」



比叡「デモも暴動もありません。たまには妹の我侭も聞いてくれたっていいじゃないですか」

金剛「」ビクッ



比叡「…私いつも寂しいんですよ。お姉様はいつも赤城さんとか羽黒さんとかとお喋りしてて」

比叡「部屋も違うから、お姉様とお話しする機会なんて全然無いし」

比叡(なんかちょっと避けられてるような気がして…)

金剛「…Sorry。悪いとは、思ってる、ヨ」

金剛「でも、私にとって比叡は、大切なSisterだヨ?」

金剛「だから…あまり無理はして欲しくないっていうか…」



金剛「…あれ?」

金剛「比叡、今Harborから出撃したKanmusuって?」

比叡「え?」

比叡「あっ本当だ…おかしいですね。今出撃控えてる筈なんですけど」

比叡「…しかも、一隻だけ?」

金剛「ちょっと寄り道してあのKanmusuの所まで頼むヨ。あの大きさならDestroyerClassだと思うし、比叡なら間に合うと思いマス」

比叡「了解です!」ザザー



金剛「あれは…如月…?」

金剛(こんな時間から出撃…いや…ちょっと待って)





金剛(…背中の艤装は!?)





比叡「えっ、如月ちゃん!?やばっ!」

金剛「えっ、やばいって?」

比叡「あぁ、えっと、話が長くなるんですけど…」

金剛「いいから説明!!」

比叡「んんっ…えぇっと…如月ちゃんが轟沈して…」



金剛「What!?」



比叡「ひえっ!いや、あの如月ちゃんじゃなくて!!」

比叡「テレビで、如月ちゃん…如月型艦娘が轟沈したんです!!」





金剛「えっ………!?!?」





比叡「それで、ちょっと色々あって、如月ちゃんの様子がおかしくって…」


金剛「………」


比叡「しばらく休養、のはず、だったんですけど…」


金剛「………」


比叡「お、お姉、様…?」






金剛「 比 叡 ィ ! ! ! ! ! ! ! 」







比叡「は、はい!?」ビクゥッ

金剛「如月を止めて!!Hurry!!!」

比叡「へ!?」

金剛「Hurry!! Hurry!! Hurry!!」

比叡「りょ、了解しましたぁ!!」

比叡「お、おーい!!如月ちゃーん!!止まってー!!」

如月「………」ザァァァァァァァァァ

金剛「あぁもう…!!私に構わなくていいからFullthrottleで飛ばして!!」

比叡「え、でも!」




金剛「はやくしろーーーーーーーーーー!!!!!!」


比叡「ひええぇぇぇぇぇぇ!?!?!?わかりましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」グァァアアッ




金剛「!!!」ガゥンッ

金剛「んぶっ!!」ゴンッ

比叡「あぁっ!?すいません!すいません!!」

金剛「いいからっ…いいから早く如月を追いかけて!!」



金剛「このままじゃ…このままじゃ…間に合わなくなる!!!」



比叡「間に合わ…??」





金剛「いいからはやくーーーーーーーーーーー!!!!!!」


比叡「ひぃええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?」バヒューーーーン






如月「港ヲ出テ、北ニマッスグ…」ブツブツ

如月「ソコニ使イヲ…出シテオク…」ブツブツ

如月「早クシナイト…マタ、苦シクナルダケダカラ…」ブツブツ





「うぉおおおおおぉおぉぉぉおおおおおい!!待ってぇぇええぇぇぇぇっええええええ!!!」ズッザァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!





如月「!?」

比叡「ぜーはーぜーはー!!」

比叡「まにあったぁ!?」



金剛「…如月…!?」

如月「…来ナイデ」

比叡「そういう訳にはいかないんですよぉ色々な意味でぇ」

如月「来ナイデ!!」ズザッ


比叡「わわ待って!もうこれ以上の追っかけは嫌だって!!」ガシッ


比叡「泊地に帰ろうよ!?皆心配してるよ!?ね!?」

如月「離シテ!シレイカンにアイニイク!!!!」

比叡「司令にって…?横須賀まで行くつもりだったの!?」

金剛「脚部Unitだけで!?敵が出るZoneを突っ切って!?」

金剛「Stopperも張ってないで、自殺行為だヨ!!」

如月「…ソレガ、何ヨ」




如月「早ク行カナイト…マタ、苦シクナルノヨ…」




金剛「………!!」ゾッ

金剛(あぁ…!!やっぱり…!!)

金剛(やっぱりそうだ!!)

金剛(その眼…一緒だ…!)



金剛(あの時と…!!!)





「あははははははは!!!!はははぎゃははああああああはははははははぎゃはあはははははは!!!!!!」




「お姉ちゃん!!」





「お迎えだ!お迎えが来タンダヨ!!」





「私モウ楽ニナレル!!」





「モウ苦シクナクテイインダ!!」






「アハハッ!!アビャバアアハアハハハババババハハハアアアアハハハハハ!!!」










「オ 待 タ セ ミ ン ナ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! !」











金剛「比叡………!!」グッ

比叡「えっあっ、はい!!」



金剛「…えっ!?」

比叡「えっ?」



金剛「………比叡」

比叡「はい!」(何今の!?)



金剛「如月を…今すぐ黙らせろ。ブン殴ってでも!!」



比叡「えっ、え、えぇ!?」ポーン

如月「!!」



比叡「えぇぇぇぇぇぇ!?こんな時に何の反応!?」




ッズザァァァァァァァァァ




イ級「オオオオオオオオオオッ!!」



比叡「駆逐イ級…はぐれ駆逐艦!?」

如月「迎エガ…来タ…!!」

金剛「!!」ゾッ




金剛「 如 月 ィ ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」ガシッ




如月「!?」

比叡「お姉様!?」

金剛「比叡!!如月は私が何とかしておくから、急いでイ級を倒して!!」ガシャンッ

如月「ヤメテッ!!」

金剛「っこの!」

比叡「で、でも艤装が付いてないお姉様じゃ!!」

金剛「やりようはある!!」

金剛「Wireは外しておいたから!!Hurry!!」

比叡「はっ、はい!!」


金剛「Oneshotで仕留めて!!そうじゃないと…私も如月も、やられる!!」


比叡「えっ…!?はっ…はい!!」ガシャッ

比叡(まさかこの泊地に来て、はじめての実戦がこんな形でなんて…)

如月「ヤメテッ!ヤメテェ!!ソレハ!!!」

金剛「お前は…!!」ガチッ



金剛は必死に如月にしがみ付くも、数秒後にはあっけなく海に投げ出された。

駆逐艦娘と言えど、その出力は3万8千500馬力。

ロ号艦本式缶4基、艦本式タービン2基2軸。

艤装を付けていない艦娘一人が太刀打ちできるものではない。

馬力が違い過ぎるのだ。人の力で押さえ付けようなどという発想は、無謀としか言い様が無い。

真正面から力で押さえ付けようという場合は、だが。



邪魔者を振り払った如月はイ級の元へと向かう。

既に彼女の思考回路は汚染され尽くし、常人のそれから逸脱していた。

あれが使いだ。あれが自分を楽にしてくれる使いなのだ。

あれが自分だ。如月なのだ。



だから、沈まされる前に、沈まなければ。



だが、今まさに死に突き進もうとする如月は新しい障害物に直面する。

ワイヤーである。彼女の身体にいつの間にかワイヤーが巻き付いていた。

ワイヤーの先には、先程まで比叡が牽引していたモーターボート。

金剛が如月にしがみ付いていた時、如月の艤装にワイヤーを引っ掛けていたのだ。


今は無人のボートの縁に白い手がかかる。

手の主はそのままボートに身を乗り出し、操縦席に文字通り転がり込んだ。

水が滴る手と腕がボートのハンドルをがしりと掴む。

「行かせるか!!!!」

金剛の叫びと共にエンジンが唸りを上げた。



モーターボートが全力で旋廻し、それに合せるように如月の身体も回転する。

牽引するはずのモーターボートに牽引され、如月の身体は帯回しを受ける女性のようにぐるぐると回転する。

そして足がもつれ、バランスを崩した所で、この殺人的帯回しの中で最大級の衝撃が加わり、一気に海面に叩き付けられた。


モーターボートが全速力でイ級から遠ざかっていく。

如月は海面を引きずられながらイ級から遠ざかっていく。


「っだぁあああああああああああああああああ!!!!!」

咆哮と共に再び舵が切られる。

暴力的な騒音を立てて、危険な角度で旋廻するボートと、その先で引きずられる如月。

当然ボートは転覆。如月もボートを中心に円を描くように海面を転がっていく。

そこに金剛が再びしがみ付く。立ち上がる事は許さない。


「ちょっと!!」

「眠ってろ!!」

「お前!!!」

裸絞め。バックチョーク。スリーパーホールド。

頚動脈洞を絞める。ひたすら絞める。

落ちろ。

落ちろ。

早く落ちろと念を込めてひらすら絞める。

「比叡ーーーーー!!!!早くイ級を倒せぇぇーーーーーーー!!!!!」

焦りと恐怖をぶちまけながら金剛は叫んだ。



比叡「早く倒せったって…!!」

比叡(こんな暗闇で…一撃でって…!!)



「でも」



比叡「でも…」



「やらなきゃいけない」



比叡「やらなきゃいけない…!!」



「大丈夫。私も力を貸してあげるから」



比叡「お姉様は!!」

「お姉ちゃんは」

比叡「私が!!」

「私達が」

比叡「守る!!」

「守る!!」

比叡「主砲!!」

「斉射!!」

比叡「当たってぇっ!!」ドォオン!!!



イ級「グオオオオオオオオオオオッ!!!」ズドォオオン!!!

イ級「オ…オオオオオオ………」ズズズズズズズズズ


比叡「やった…!!」

比叡「やった!!やりましたよ!!お姉様!!お姉さ」







ボート「」テンプクー

如月「」ブクブク

金剛「」ブクブク







比叡「まあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!?!?!?」ガビョーン



比叡「何やってるんですか二人とも!?危ないですよ!?」ザバァ

金剛「ごほっごほっ」

比叡「ちょっ、如月ちゃん!?如月ちゃん!?どうしたのしっかりして!!」ガシャンッ

金剛「…絞め落とした。早く、Harborに連れて行かないト」

比叡「な…何でそんな事を!!」

金剛「…こうでもしないと…如月は…殺されてたんだヨ…!!」

比叡「えっ?」ッザアアアアアアア




「…金剛!?」




比叡「あっ、赤城さん!」

赤城「…如月ちゃん!?如月ちゃん、しっかりして!!」ガシッ

赤城「金剛!比叡さん!一体何があったの!?」


金剛「…赤城、ワタシが居ない間に何があったの…!?」


金剛「あんな…如月の目…」

金剛「如月に何があったの!?テートクはどこ行ったの!?」

赤城「………」

金剛「答えてヨ!!!」

赤城「…提督は今、大本営からの召集でいないわ」

赤城「今この泊地は私が代理で動かしてる」

金剛「赤城が…」

赤城「詳しいことは執務室で話すわ。来て」

金剛「…わかった。こっちで何があったかも、ちゃんと話すヨ」

赤城「それじゃあ私に掴まって。泊地まで送るわ」

金剛「如月は…?」

赤城「片手で何とかする。空母の馬力を舐めないでよ」

赤城「比叡さん、モーターボートの方をお願いできる?」

比叡「は、はい。わかりました!」

赤城「ありがとう。それじゃあ、お先に…」ザアアアアアア



比叡「………」

比叡「一体何がどうなってるの?」


比叡(どうして如月ちゃんは一人で出撃したの?)

比叡(どうしてお姉様はあんなに怖がっているの?)

比叡(どうしてあんな無茶苦茶な事をしたの?)



比叡(そういえば)

比叡(さっきの変な声も、あれ何だったんだろう?)

☆今回はここまでです☆
金剛の言葉ってどこからどこまでをルー語にすればいいのか、判断がしにくいですね。
ルー語そのままだとルー語要素強すぎるし、かといって意識して変えていかないとただのお姉ちゃんになるし。あと変換めんどくさいし。

明日また更新します。

>>1です。
ついにシムシティに手を出してしまいました。
人気の理由を身をもって理解しました。

それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・






金剛「 馬 鹿 野 郎 ぉ ッ ! ! ! 」バシィン!!



夕立「…ッ!!」

赤城「金剛!?」

金剛「このっ…」



金剛「 馬 鹿 野 郎 ! ! 」バシィン!!



潮「うぅっ!!」


金剛「何で如月についてあげなかった!?」

金剛「何で誰も如月を支えようとしなかった!?」

金剛「お前等同じ班員でしょうガ!?」

金剛「如月を見捨てる気!?」

金剛「如月を…見殺しに…する気ッ!?」

夕立「………」

金剛「このっ…何とか…!!」

赤城「それ以上はやめて金剛」

赤城「やるなら、全部私にやりなさい」

金剛「赤城…!」

赤城「提督から大事な任務を与えられて浮かれてて…如月ちゃんを見てあげられなかった。これは私のせいでもある…」


金剛「!!!」バシィン!!!


赤城「ッ!!」

金剛「はぁっ!はぁっ!!」

赤城「それで十分…!?まだ、足りないならいくらでも」

金剛「…!!」グァアッ



夕立「やることは…やった…!!」



金剛「!!」ビタッ



夕立「あの場所にいなかった金剛さんにはわからないかもしれないけど!!」

潮「夕立ちゃん…」



夕立「やったんですよ!!」


夕立「夕立なりに!!!」


夕立「でもっ!何もできなかった!!何にもならなかった!!」


夕立「必死にやったんですよ!?やってこれなんですよ!?」


夕立「これ以上夕立達に何ができるって言うんですか!?」


夕立「夕立達じゃ、如月ちゃんの気持ちなんて…わかりっこないのに!!」


夕立「誰も!誰も如月ちゃんの事なんてわかりっこないのに!!」


夕立「何やったって!!上から目線の同情にしかならないってのに!!!」


夕立「じゃあどうすれば、いいっていうんですか!?」



金剛「………」ギリッ…


金剛「…気持ちがわからない…!?」


金剛「どうすればいいかわからないって…!?」


金剛「だからって…!!」



金剛「だからって見捨てていい理由には、ならないでしょうがァッ!!!」バァンッ!!!




ダダダダダダダダダダダッ…


赤城「………」

潮「赤城さん…」

赤城「…二人とも大丈夫?痕にならなきゃいいけど…」

夕立「これ位入渠すれば大丈夫っぽい」

赤城「ごめんなさい。私がもっとしっかりしていればこんな事にはならなかったのに」

潮「い、いえ!そんな事…ない、ですよ!」

潮「赤城さんだって提督の代わりになって、仕事がいっぱい増えちゃって大変だったと思うし…」

赤城「提督は、その『いっぱいある仕事』をこなしながら、私達の事も見てくれてたのよ」


赤城「私がそこまでできていれば…如月ちゃんの事だってすぐわかったのに」


夕立「え?すぐわかったって…?」

潮「赤城さん、如月ちゃんに何が起こってるのか知ってるんですか?」

赤城「えぇ。多分…」




赤城「あの子は深海棲艦になりかけてる」





夕立「!?」

潮「赤城さん!?それってどういう事なんですか!?」

赤城(…どこから説明すればいいか)

赤城「…長くなると思うけど、聞いて、よく考えて」

赤城「私達艦娘は、第二次世界大戦当時の軍艦の魂を取り込んで生まれ変わった人間なの」

赤城「魂を取り込むのと一緒に、その軍艦の記憶も取り込んでしまっている」

赤城「それってどういう事だと思う?」


赤城「例えば…夕立さん。あなたは艦娘になる前の事は覚えてる?」

夕立「…忘れられないよ」

赤城「それならもう一つ聞くけど、艦娘になる前に駆逐艦夕立の艦長…吉川さんに会った事はある?」

夕立「………無い…っぽい」

赤城「そうよね。そもそも吉川艦長が亡くなられて何十年も経ってるもの」


赤城「でもあなたは吉川艦長の顔を知っている。どんな人で、どんな戦術を好んだかも覚えている」

赤城「艦から貰った記憶とはそういうものよ。会ったことの無い人の、顔も名前も性格も知っている」

赤城「魂を取り込んだお陰で私達は深海棲艦に対抗できるようになっただけでなく」

赤城「戦闘の知恵、昔の知識まで得ることができた」



赤城「でもいい事ばかりではない。悪い記憶だって引き継いでいる」



赤城「艦が沈んだ瞬間の記憶と向き合わなければ行けない時は、最悪よ」

赤城「『死ぬ』瞬間の記憶が頭の中で何度も何度もリピートする」

赤城「搭乗員の無念、死への恐怖、理不尽への怒りと、生きている筈なのに夢の中で何度も何度も何度も何度も『殺される』現実とのズレ」

赤城「船体(からだ)に刻み付けられた痛みと、へばり付いた苦しみ」

赤城「そういう類の怨念が、声が、頭の中から…染み出してくる」

夕立「声?」

潮「もしかして、赤城さんがたまに言う『頭の中の何か』?」

赤城「あー…うん。それね」

潮「でもそれって赤城さんにいつも索敵と警戒の大切さを呼びかけてくれていたんですよね?」

潮「それが…如月ちゃんが深海棲艦になっちゃうかもしれない原因だなんて…」

潮「そんな、悪いものだなんて思えません」

赤城「…考えた事はないかしら」



赤城「私達艦娘の根本…私達が受け取った軍艦の魂ってのは何なのか、って」




潮「え?」

赤城「私たち艦娘はこの世界に沢山いるわ」

赤城「『赤城』、『如月』、『夕立』、『潮』」

赤城「私達と同じ見た目の別人」

赤城「彼女達は確かにこの世界に存在する」

赤城「でも元になった艦船はこの世界に一つしかない」


赤城「それなら私…『赤城』が受け取った艦船の魂と、他の鎮守府に所属する『赤城』が受け取った艦船の魂の違いは何なのか」


赤城「それと、深海棲艦」

夕立「どうしてそこで深海棲艦が…?」


赤城「この間、貴方達が戦った春雨型艦娘によく似ている姫級」

赤城「何故、あんなにも艦娘に似た深海棲艦が出てくるのかしら」

赤城「しかも彼女達は、私達と同じように艦の記憶を持っているようにも見える」

赤城「というより…私達も受け取った『艦の記憶』が、彼女達にとっての『怨念』なのかもしれない」


赤城「魂を受け取った艦娘と、その同型の艦娘と、それらと同じ見た目の深海棲艦が、この世に同時に、何人も何十人も存在するこの世界」

赤城「一体何がどうなって、こんな世界になってしまったのか」


赤城「…もし、艦娘と深海棲艦の根本にあるものが…受け取った魂が、全く同一のものだとしたら」


赤城「もしこの仮説が正しいのなら、沈んだ艦娘が深海棲艦になるっていう現象にもある程度の納得がいく」

赤城「逆に、倒した深海棲艦が艦娘になるっていう現象もたまに聞くけど」

赤城「これにも説明が付くはず」

赤城「元々が同じ、一つのものから生まれたなら、作り変えるのも簡単だからね」



夕立「つまり…?」


赤城「一つの艦の魂が、艦娘と深海棲艦の両方を産み分けているかもしれないという事よ」

赤城「私達は、オスとメス、陰陽とかプラスマイナスみたいに反発しあう同士であるけれど、本質は一緒」

赤城「木材と石油由来のプラスチックみたいな全く別のもの同士じゃない。しかも積み木細工で作られた作品同士のようなもの」

赤城「何かあれば、あっけなく崩れるし、簡単に作り直すこともできる」

赤城「だから…私達は、ふとした瞬間にあちら側に飲み込まれる危険性がある」


夕立「それが、あの声のもう一つの顔って事?」

赤城「うん…確かにあの声は私がまた過ちを起こさないようにアドバイスをくれるけど」

赤城「消えない傷…トラウマを私に刻み付けたのもあの記憶(声)」


赤城「『誇り』を取るか、『怨み』を取るか。私達(艦娘)と深海棲艦を分けているのはそれだけなのかもしれない」

赤城「一瞬でもあっち側に踏み込んだ瞬間、向こうは私たちを引きずり込んでくる」

赤城「それが、轟沈した艦娘が深海棲艦になる理由で」

赤城「今、如月ちゃんが深海棲艦になりかけている理由なんじゃないかって、私は考えている」

夕立「………」

潮「………」


赤城「如月ちゃんの場合は、テレビのアレが着火剤になってるのね」

赤城「ご丁寧に、艦の死とテレビの如月の死因が一致してしまった」

赤城「しかも、そこに…あの日本街での出来事…」

赤城「………」

赤城「深海棲艦にとっては、これ以上無い獲物でしょうね」

赤城「あんな事が立て続けに起こって、人を恨むなっていうのが無理な話よ」



赤城「…これからは私が如月ちゃんの面倒を見るわ」

潮「え?」


赤城「提督代理は霧島に代わって貰う」

赤城「もうこれ以上見過ごしたくない。如月ちゃんが傷付くのも見たくない」


赤城「如月ちゃんがかつての私のようになる前に、あの子の支えになりたい」

潮「かつての私…?」

夕立「もしかして赤城さんも…」

赤城「うん。ミッドウェーの事をね」

赤城「…あの時は、それこそ深海棲艦とそう変わらなかったと思う」

赤城「頭の中から声が聞こえてくるたびに、自分の肉が焼ける匂いも音も痛みも思い出して」

赤城「醜い気持ちの何もかもをぶちまけたような気持ちになったわ」


潮「………」

赤城「二人も気を付けてね」

赤城「日本は敗戦国。どんな艦船も、きついトラウマ持っててもおかしくないわ」

赤城「夕立ちゃんみたいな武勲艦でも、潮ちゃんみたいに沈むことなく生涯を終えた艦でも、何が引き金になるかわからないから」



潮「………」

夕立「………」


赤城(二人には言えないよね。私のもう一つの仮説)

赤城(同一の魂が艦娘と深海棲艦の、二つを『分け隔てて産み出している』として)




赤城(魂自体が意思を持ってそれをしているとしたら)

赤城(その魂が『一つの存在に集中する事を決めた』としたらどうなるか)




赤城(『如月の魂』が今回の件で)









赤城(『人類を見限ったとするなら』どうなるか)









赤城(全ての如月型艦娘を深海棲艦に変えて、人類への報復に出たらどうなるか)

赤城(もしそうなったら、私達の如月ちゃんも…いつか…)



赤城(…それだけの事を、私達や私達が知らない人たちはやってしまったのかもしれない)

赤城(でも…)

赤城(そんなのは…嫌だ…!!)




・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-パラオ泊地 駆逐一班の部屋-


赤城「龍田。入ってもいいかしら?」コンコン

「えぇ。待ってたわ」

赤城「そう。それじゃ、失礼するわね」ガチャ


如月「………」

龍田「お疲れ様。赤城ちゃん」

赤城「…人前でその呼び方は恥ずかしいから止めて」

龍田「それって人前じゃなきゃいいって事?赤城ちゃんも意外と甘えん坊さんね~」

赤城「…それより如月ちゃん、ちょっとは落ち着けた?」

龍田(無視?)

如月「はい………ごめんなさい」

赤城「いいのよ。辛いのは、わかってるつもりだから」

龍田「経験者は語るって奴かしら?」

如月「えっ」

龍田「赤城ちゃんもね、如月ちゃんが来る前は結構大変だったのよ?」

龍田「ミッドウェーの事を思い出して…提督もそれを無理に解決しようとして…」

龍田「それこそ軍規違反までする所だったわね~」クスクス

赤城「その話はそこまで」サーッ

赤城「………はい、これ飲んで」

如月「薬?」

赤城「睡眠薬よ。如月ちゃんに合わせた量を入れたから大丈夫」

赤城「私も昔これを使ってたから知ってるんだけど、夢を見る余裕なんてない位ぐっすり眠れるわよ」

如月「………」

赤城「もちろん毒なんて入ってないわよ。飲んでみせようかしら?」

如月「いえ!大丈夫ですわ」

如月「…いただきます」ゴクッ

如月「…ありがとうございます」

龍田「じゃあ、横になって目を閉じて」

如月「ん…」



龍田「何か面白い話でもしてあげよっか~?」



龍田「赤城ちゃんの性感帯の話とか」



如月「」

赤城「」ブーッ!!

龍田「赤城ちゃんいつもはこう澄ましてるけど、もう性欲が凄くて…『最近提督が他の子ばっかり相手して』って私と」

赤城「それ提案してきたのそっちでしょお!?」

龍田「赤城ちゃんのアへ顔凄いのよぉ…いつもとのギャップ萌えっていうか…ムラムラっていうか」

赤城「あーもー!!やめてー!!その話!!」

龍田「やめないよ?もっと恥ずかしい話もしようと思ってるんだから。提督と3人でシた時の話とか」

如月( ゚д゚)

赤城「あれは駄目!一番駄目!!絶対!駄目!!」

龍田「じゃあ赤城ちゃんが提督の椅子でディルドオナニーしてた話」

如月( ゚д゚ )

赤城「」

龍田「青葉さんって、凄いわよね」

赤城「…あのアマ………」


如月「…ふふっ…ふふふっ…」


如月「仲…良いんですね」

赤城「…えぇ…まぁ、龍田には色々お世話になったから」

龍田「赤城ちゃんの膣内(なか)?そうねぇ、何度シても指をぎゅーぎゅー締め付けて…」

赤城「」ゴスッ

龍田「あいたっ」

如月「…うらやましいなぁ」



赤城「如月ちゃんにも友達がいるじゃない。夕立ちゃんに潮ちゃん、夕雲ちゃんと荒潮ちゃんとも仲良いんでしょ?」

如月「…そうかもしれません」

如月「でも…もう、無理です」

龍田「恥ずかしい所見られたって気にする事ないと思うけど?」

龍田「そんなに気になるなら、私赤城ちゃんのエッチな写真を泊地中にバラ撒こうかしら。そしたら」

赤城「やめろォ!!」

如月「そういう事じゃなくて」



如月「…もう怖いんです。今も」

如月「赤城さんの…そういう、恥ずかしい話を聞いた今も…私…」


如月「赤城さんの事が…龍田さんの事が…怖い…!!」



龍田「………」

如月「私…見たんです。あの番組の…如月の最期…」

如月「深海棲艦になって…でもあの鎮守府の人達は如月に攻撃をしかけ続けて…」

如月「そのまま…集中砲火を浴びて…沈んだ…」

赤城「………」

如月「わかってるんです!わかってるんだけど…!!」



如月「私もあぁやって殺されるんじゃないかって…!!」




如月「そんな事ないってわかってるのに!!頭の中から…!!」


如月「………死んでしまえ、って言われたんです」

如月「街に出たときに…みんな…」

如月「『この間死んだんじゃなかったのか』」

如月「『恥ずかしくないのか』って」

如月「『スパイだ』『殺せ』『ゾンビ』『深海棲艦』って」

如月「頭のなかから…こえもっ…!」

赤城「………」


如月「みんなでっ、わたしにしねって!しずめって!!」

如月「あのちんじゅふのひとたちも!そうやって!きさらぎをころしてっ!!」

如月「ほかのちんじゅふのひとたちも!きさらぎをころしてっ!!」

如月「わたし…わたし…!!」ポロポロ

如月「いままでっ…んぐっ…みんなをまもれるとおもって…」

如月「いたいのもっこわいのもっがまんして…がんばってきたのに…」

如月「なのにっ…なのになんでっ…」



如月「なんでそんなこというんですかぁっ!!」



如月「わたしはっどうしたらっいいんですか!!」

如月「わたしのいままでやってきたことってっなんだったんですかっ!!」

如月「こんなことのためにっ!わたしはっ!わたしはぁ!!!!!」


赤城「………」


如月「…あかぎさん、わたしも、しんだほうがいいんですか?」


赤城「そんなわけないでしょう!!」


如月「でもそのほうが、ひとも、みんなも、きさらぎのたましいも、しあわせになるんでしょう?」


赤城「声がそう言ったの…!?そんな出鱈目を!!」


如月「しんで、しんでひとつになれって」

赤城「!!」

如月「わたしはっしにたくなんてないのに…!おまえもしずめ、しねって!!」

如月「しにたくないっしにたくないのに!!みんなは、わたしにしねっていう!!」

如月「どうしたらっこんなのどうしたらいいんですかぁ!!」

如月「しにたくない…!しにたくないのにぃ…!!」

如月「あぁああああああっ…!!ああああああああああぁあああああ!!!!!!!!」

「あぁあああああああああああああああああぁああああああああああぁああ!!!!!」

「うぁあああああああああああぁあああぁあああああぁあああああああああ!!!!!」

「あぁぁぁぁあああぁああああああ…!!!!!!」

「あぁああああああああ…!!!!あぁああ…………………………………………………」



如月「………」

龍田「…寝ちゃったみたい」

赤城「………」

龍田「簡単な話じゃ終わらないみたいね」

赤城「…そうね。私と同じ位だと思ってたけどこれは…予想以上だわ」

赤城「私なんかよりよっぽど傷付いて、苦しんでるって、わかる」コンコン


龍田「はい?」ガチャ

金剛「………」

赤城「金剛?」

金剛「如月のCryが聞こえてきて…」

金剛「今、如月は…?」

赤城「睡眠薬を飲ませて、寝させたわ」

金剛「…何か、何か言ってませンでした?」

赤城「『お前も死ね』、って、言われたって」

金剛「………」

赤城「死にたくないのに、皆が如月を殺そうとするって」

赤城「泣きながら…寝たわ」

金剛「…そうデスか」

金剛「………」

金剛「………んっ」グスッ

金剛「…赤城」

赤城「えっ?」

金剛「Sorry、ちょっと胸貸して」ガバッ

赤城「わっ」



赤城「どうしたの?」ポンポン

金剛「何もっ…何も変わってない!!」

金剛「あの時とっ何もっ…!!」

赤城「あの時…?」

金剛「比叡と…蒼龍…!!」

龍田「比叡と蒼龍?」

赤城「…!!」ハッ

赤城(青葉から聞いた…あの、例のニュース…!!)

金剛「あの時からっ誰もっ何もっ変わってない!!学んでないっ!!!」

金剛「またそうやってっそうやってぇ!!」

赤城「金剛…あなた、あの事件で何が…」



金剛「…比叡がっ死んだ…!!」

赤城「比叡が…?うちの比叡は…」





金剛「いや…私の…艦娘になる前からの…実の妹がっ…死んだ…!!!」





赤城「!!」

金剛「あの時の如月は、妹が死ぬ時と同じ目をしていた…!!」

金剛「このままっ、このままじゃ、如月も…殺される…!!」

金剛「嫌…!もう嫌…!!また…こんな事で誰かが死ぬなんて…!!」

赤城「金剛…」

金剛「赤城ぃ…!!」ギュウッ

金剛「怖いよ…!助けてよ…!赤城ぃ…!!」

赤城「………」

☆今回はここまでです☆

が、また近いうちに書きます。あと数レス分、あと数レス分だけ書いて次に繋げたかったー!!!

>>1です。
プライベートな事で色々あり、結局あれから近いうちに書けませんでした。

前回の悔いだった数レスの更新分を投下致します。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-横須賀・大本営 資料室-


巻雲「つまり…どういうことなんですか?」

榛名「私達艦娘が頂いた艦の魂が持っていた正負のバランスが崩れたのではないかと榛名は考えています」


榛名「今回のこの一件で、駆逐艦如月の魂が負に大きく傾いた結果」

榛名「正(艦娘)であったものを負(深海棲艦)へ変えようとする力が働いているんじゃないかと」


雲龍「比叡、蒼龍、如月の三人の共通点はそこなのね」

雲龍「艦の魂から見てみれば、自分の片割れの死を笑いものにしたあれらの放送は、自分の誇りを踏み躙るもの」

雲龍「だから魂が持つ恨みが強くなって…負に傾いて、その影響で艦娘が発狂し、深海棲艦に変わっていく…と」


五十鈴「発狂死なんて聞くとオカルトじみた感じがするけど…こうやって考えると、ちょっと納得しちゃう」

榛名「榛名の推測ですけどね」

千歳「…今回酷い事になってるのは、知名度と、規模の問題って事かしら?」

榛名「恐らくは。あの頃に比べて注目度は段違いですから」


千歳「こうしてる間にも如月型艦娘の発狂死の件数がどんどん増えていってる」

五十鈴「テレビの模倣って言い訳でやってる捨て艦と、一般市民の『如月狩り』がそれに拍車をかけているわ」

五十鈴「このままじゃ…提督のとこの如月ちゃんも」



五十鈴「…狩られるか…それとも…発狂するか………」



巻雲「…如月ちゃん」

巻雲「早く、司令官様の言うとおりに提督様を見つけて連れ帰らないと!!」

巻雲「あきつ丸さん、あれから何か情報は見つからなかったですか?」

五十鈴「そうね。通信手段を奪ってまでここに閉じ込める理由なんてロクなもんじゃないに決まってる」

五十鈴「どういうつもりか知らないけど、如月をなんとかしないといけないんだから、早く返して貰いたいわね」

五十鈴「それに、もし提督さんに何かあったら長良と名取が悲しむわ」

あきつ丸「情報…申し訳ありませんが、有力なものは何も」

あきつ丸「協力してくれたあきつ丸にも何かあったら情報を流してくれるように伝えたのですが」

あきつ丸「何かあったのか、さっきから連絡入れても反応がありませんね」

雲龍「そういえばさっき何か騒いでたわね」

巻雲「えっそうでした?」

雲龍「何の騒ぎかまではわからなかったけどね」


榛名「…となると、こちらから動いていくしかない、か」

雲龍「いっそ爆撃でもしてもっと混乱させて、その間に提督さんを見つけ出してこっそり連れて帰るのはどうかしら」

巻雲「うんりゅうさん!?」

雲龍「冗談よ」

榛名「あはは…それじゃあ、行きましょう」

五十鈴「…冗談よね?」

雲龍「嘘よ」

五十鈴「何が!?どこまでが!?」



榛名「資料室使わせてくれてありがとう。吹雪ちゃん」

吹雪「いえっ!こちらこそ…!!」

吹雪「こんな所であの有名なパラオの英雄の奥様方とお会いできるなんて…光栄です!!」

吹雪「私、貴方達にずっと憧れてるんです!!」

五十鈴「そうなの?まぁ、いいんじゃない?」フフン

吹雪「えへへっ…今はこんな資料室任されてますけどね」

吹雪「今度の辞令で新しい鎮守府の初期艦娘として着任する事になったんです!!」

千歳「あら、よかったじゃない!」



吹雪「はいっ!あの番組の放送以来、提督の応募者が増えたらしいんですよ!!」

榛名「」ピクッ



吹雪「あと、あれってメインが私と同じ吹雪型艦娘じゃないですか!?」

吹雪「ちょうどいいタイミングで改ニ艤装が開発されたのもあって、吹雪型艦娘の需要が爆発的に増えたらしいんですよ!」

吹雪「それで私も初期艦娘になれて…もうほんと、いいことづくしで、番組様様ですね!えへへっ!!」ニコッ



榛名「………」

千歳「………」

五十鈴「………」

雲龍「………」

巻雲「………」

あきつ丸「………」


千歳「えぇ、そうね」

吹雪「私いつか、皆さんと一緒に、肩を並べて戦いたいです!!」

雲龍「これは期待の新人ね」

榛名「えぇ、榛名も、そう思います」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





ヒソヒソ… デケェ ミンナデケェ

デッカイオッパイイッパイオッパイボクゲンキヤ ヤッパキョニュウスキナンスネェ イチバンマエノメガネノコカワイソウ

あきつ丸「…しかし」

あきつ丸「外を歩くと…こう…視線が気になりますね」

巻雲「ここにいる(憲兵隊所属の)あきつ丸さん達はみんな灰色の服ですからね」

あきつ丸「うーん…そんなに目立つでありますか?」

五十鈴「まぁ…陸軍の事情はよく知らないけど、艦娘って言ったら海に出てナンボだからね」

五十鈴「『海軍所属です』っていう証になるその服装は、結構憧れてる子が多いんじゃないかしら?」

あきつ丸「…だからか?」

千歳「え?」

あきつ丸「いえ…潜入調査の時に…やけにあっさり承諾を頂けたのが、今になって気になって」

五十鈴「『一度海軍仕様の服を着てみたかったから』って?」

五十鈴「それなら、夢を叶えてあげられてよかったじゃない」

あきつ丸「うむ…ん?」カツカツカツカツ

雲龍「誰か、こっちに向かってくる?」



憲兵「パラオ特別鎮守府所属のあきつ丸だな?」

憲兵「ちょっと…同行願いたいんだが」

あきつ丸「!!」ビクッ

五十鈴(まさか…バレた!?)

あきつ丸(しまった…!やってしまったか…!!)

あきつ丸(………)

あきつ丸「…わかりました。貴官に同行致します」

巻雲「あきつ丸さぁん」

あきつ丸「『何があったかはわかりませんが』すぐに戻るので心配ご無用であります」

巻雲「えっ?」

雲龍「そう、『何があったかはわからないけど』、気を付けてね」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-取調室-


あきつ丸「………」

あきつ丸(取調室…これは………)

憲兵「連れて来たぞ」ガチャ

憲兵「あきつ丸…彼女で、間違い無いんだな?」

あきつ丸甲「………はい」

あきつ丸(やはり、あなたも一緒か…となると…)

あきつ丸(やっぱり…入れ替わっていたのがバレたか…)

あきつ丸(…これでは…友提督殿にも、ご迷惑をおかけする事になってしまう…)







「さっきぶりだね。あきつ丸ちゃん」







あきつ丸「えっ」





あきつ丸「あ、貴方は………」













「入れ替わって何をしてたか知らないけど」









「私の目をごまかせると思わないでよね」












「なんてったって」












那珂「アイドル、なんだから♪」キラーン












☆今回はここまでです☆

天使長ミルノさん、ミルモでポンみたいな名前のくせしてやたら強くないっすか?

>>1です。
E-5突破したので更新しようかと思ったのですが、SS速報で色々あったみたいですね。
このSSもわりとアウトで、更新分もアウトっぽいかもと思ったんですけど、その辺の事は管理人さんに任せてこのまま上げていいのか
何かしらのアクション起こしてRへの移転を待ってからにするべきか、迷います。
なるべく早めに更新したいー。スレ落としたくないー

>>1です。
よくわからない事は専門の人に任せて更新分投下します。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-数十分前-


『…で、あるから、如月が沈んだのは彼女の運命に他ならないのです』

『運命、ですか』

『そう。艦娘は皆沈む運命を背負っているのです』

『彼女達の元になった艦のように』

『如月の場合はウェーク島、赤城の場合はミッドウェー、皆沈む運命にあります』

『そして今回、まさに定められた運命の通り、如月が轟沈したのです』


『更に深海棲艦は米国の艦を模している存在である事は周知の事実です』

『つまり、運命…あの当時の歴史を少しでも知っている者には、この戦いの結末はわかりきったものなのです』

『日本は敗戦国ですから』

『艦娘は全員轟沈し、深海棲艦に敗北する』


『それがわかっていながら艦娘という制度を維持し、若い命を無駄に散らす政府のやり方は、はっきり言って狂っています』

『本当に勝つつもりであるのなら一刻でも早く艦娘を排除し、深海棲艦に対抗する新しい手段を模索しなければいけません』

『あのようなものに頼っている限り、我々人類が勝利する事は絶対にありえないのです』

『政府は日本を…いや、人類を侵略者に明け渡すつもりなのでしょうか?』



羽黒「…那珂ちゃん」

羽黒「それ観るのやめようよ」


那珂「………」

那珂「羽黒ちゃん、この番組気にならない?」

羽黒「えっ?」

那珂「いくらなんでも不自然だと思うんだよね、この番組」

那珂「こういう番組放送するの、早すぎじゃない?」

羽黒「………あっ」

羽黒「そうだね。放送したばっかりの番組の内容についてもう話題に挙げてるって…」

那珂「生放送だとしても、いくら何でも早すぎるよ」


那珂「しかもこういう話をするんだったらもっと前から切り出せたはずなのに」

那珂「例えば…あの番組の収録中とか」

那珂「撮影して、編集して、放送するまでどれだけの期間置いてるのさ」

那珂「…なーんか、怪しくない?これ」ピッ


那珂「放送局は…空条テレビ」

那珂「あの番組を放送した局と一緒か」

那珂「だったら尚更…」


『しかし、それなら…』

『今現在、生きている艦娘というのは一体何なのでしょうか?』

『は?』


那珂「あっ、馬鹿!」



『艦娘と深海棲艦の戦いが始まってもうすぐ2年になります』

『如月型艦娘が艦の時の再現をしてしまう運命なのだとしたら…深海棲艦との戦争が始まった数日後に、彼女達全員が轟沈していなければなりません』

『ですが現実には如月型艦娘は今も各鎮守府、泊地に着任し続けています』

『また、数ヶ月前に大本営から発表されたALMI作戦では』

『深海棲艦の奇襲は許したものの、迎撃に成功し各海域の解放も成功…つまり、勝利の発表がされています』

『本来沈むはずだった赤城、加賀、飛龍、蒼龍達の多数も生き残り、今も任務に就いています』

『運命が存在するのならば、今いる彼女達は一体何なのですか?』

『艦娘の運命なんてのは本当に存在するのでしょうかね?』


那珂「…馬鹿野朗」

羽黒「え?」

那珂「多分、この人来週から…」



『何を根拠にそんな出鱈目を言うのですか!それでも評論家ですか貴方は!!』

『そんな一方的な論理が通ると思っているのですか!!』

『ここはあなたの妄想を聞く為の場ではありません!!』

『あなた今のでこの会場の全員を敵に回しましたよ』

『大本営は当時から嘘を突き通してきたじゃないか!今回だってそうに違いない!!』

『狂人!!』

『出て行け非国民!!』



羽黒(うわ………)

那珂「ほーらやっぱりこうなった…」


教官「」ガチャ

羽黒「きゃあっ」



羽黒「あ、あなたは…」

那珂「」スッ

那珂「女性がいる部屋にノックも無しに入ってくるってどうなんですか?」ピッ

教官「テレビとは随分余裕じゃないか。お前達の提督は今頃拷問を受けてるかもしれないのに」

那珂「どうしようが那珂ちゃん達の勝手ですよね?」

那珂「で、指揮官が拘束された艦娘に一体何の用事でしょうか?」


教官「…あいつはもう終わりだ」

那珂「!!」

教官「命令違反、上司への暴言のみならず、暴力まで振るおうとした」

那珂(むしろ暴力振るったのはそっちだったんだけど?)

那珂(まぁ…このクソ野朗はそんな事くらい捻じ曲げられるって事かな)

教官「それにこれまでの失態や好ましくない態度から考えれば…もう、あいつに未来は無いよなぁ?」


教官「だがなぁ」

教官「あいつの処遇が少しでも軽くなるようにこっちで対処を考えてやらんでもない事も無いんだ」

羽黒「!!」

那珂「…で、その為に那珂ちゃん達に何をしろって言うんですか?」

那珂「どうせ何か条件があるんですよね?」



教官「よくわかってるじゃないか」ニタァ

教官「古来よりこういう時には『誠意』を見せる事が大事なんだ」

羽黒「誠意…」

那珂「金ですか」

教官「馬鹿」



教官「 身 体 だ よ 」




羽黒「………!!」ゾッ

那珂「………」

教官「これまでのあいつの失態分、全てお前達の身体で返してもらう」

教官「お前達二人で俺に奉仕しろ」

教官「俺を満足させることができたなら…あいつの処遇の事を考えてやる」

羽黒「…そんなの………」

教官「秘書艦なんてやってるんだから、経験はあるんだろぉ?」

教官「それとも…まだ 処 女 か ? 」

羽黒「………」

教官「ククッ…それもいいな…」

那珂「それ…もし私達が断ったら?」





教官「お前達の愛しい提督は…そうだなぁ、海の藻屑―――だな」

那珂「なんだその程度か。やるわけないじゃん」





教官「…は?」

那珂「何いつもより変な顔してるんですか。予定通りちゃちゃっとやっちゃえばいいじゃないですか」

那珂「那珂ちゃん達は全然気にしませんから」

那珂「それとも、元から私達の身体目当てでそんな事言ったんですか?」



那珂「キモッ」

教官「」ピキッ



那珂「そんな簡単に女の子が身体差し出すとでも思ってんの?」

那珂「誰もが振り向く超絶イケメンとかならともかく、顔面脂ぎってるオッサンのくせに何で上手くいくと思ったの?」

那珂「常識から考えなよ。ほんっと、気持ち悪い」

那珂「一体どんな生活送ってたらそんなのがまかり通ると勘違いしちゃうの?」



那珂「不潔でジメジメした部屋で、一人でシコシコし続けたせいで脳ミソまでカビちゃった?」

那珂「妄想叩き込むのは右手だけにしておけよ オ ッ サ ン 」

教官「」ブチッ



教官「うるせぇんだよテメェ!!」ドゴッ

那珂「あぐっ!!」ドサッ

羽黒「那珂ちゃ…!!」

教官「何様のつもりなんだよおめぇはよ!!」

教官「違法解体(バラ)されて臓器パーツになるしか価値のねぇクソ艦娘がよぉ!!」

教官「俺に向かって何だその口の聞き方ァ!?!?」

那珂「変態の強姦魔に対しちゃ上等な口の聞き方でしょうが!!!」

教官「るせぇ!!!」ゴスッ

那珂「んぐっ!!」


那珂「っづ…あぁ…!!」

教官「思い出したぞお前…確かアイツの所に最初に着任した奴だな?」

教官「暫く見ないからとっくの昔に違法解体(バラ)されて臓器屋行きになってるもんだと思ってたがなあ!!」

教官「まぁどうせ身体で釣って命乞いでもしてるんだろうが」

那珂「………」



教官「 な ぁ ぁ あ あ あ あ あ 」

教官「 枕 や っ て ん だ ろ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ お お ぉ お ! ? 」

教官「 ア イ ド ル な ん だ か ら な ぁ あ ぁ あ あ あ ぁ あ あ ! ? ! ? 」

教官「 あ ぁ あ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ  あ ぁ あ あ あ あ ぁ ぁ あ ぁ あ あ ! ? ! ? 」



那珂「………」

教官「…ま、お前が枕やってようがやってなかろうが、処女だろうが中古だろうが関係ねぇ」

教官「」ビリイッ

那珂「いっ…」

那珂「いやぁああああああああぁああああああ!!!!!!!!」

羽黒「あ…あ………」



教官「お前を犯してやる…!!寝取ってやる…!!」

教官「くたばるあいつの目の前でお前等二人を犯してやる!!」

教官「可愛い秘書艦二人を目の前で寝取られるあいつの顔を想像するだけで射精しちまいそうだ!!」



那珂「やだ!!やだぁあああああああ!!!助けてぇえ!!!」

教官「ギャーギャー騒ごうがなぁ!!」

教官「俺のチンコ突っ込まれて堕ちなかった艦娘は一人もいねぇんだよ!!!」

教官「オラ見てみろよオラ!!」

教官「長茎手術に真珠入り!!コイツでアへらなかった女はいねぇ!!!」

教官「おめぇも!!おまえぇらもなぁあ!!!」ガシッ

那珂(あっ、足首…!!)

教官「コイツをブチ込んで俺のモノにしてやるんだよぉぉおお!!!」ガバァ



夕立「…どうする?」

潮「…どうしよう?」

夕立「ああ言ってたけど、如月ちゃんが帰ってくるまで起きて待ってようか」コンコン

夕立「?」

潮「はい?」ガチャ

提督「やっぱり起きてた」クスッ

潮「てっ提督!?」サッ

提督「子供が夜更かししちゃ駄目…ってまぁ今はいいや。それより如月は?」

夕立「如月ちゃんなら、さっき出かけに行っちゃった」

提督「マジか。泊地内からは出ないと思うけど…どこに行くかって言ってた?」

潮「…それが何も言ってなくて」

提督「…大丈夫かな」

提督「三人ともこの時間まで起きてるって事は、観てたんでしょ?」

夕立「…うん」



教官「うるせぇんだよテメェ!!」ドゴッ

那珂「あぐっ!!」ドサッ

羽黒「那珂ちゃ…!!」

教官「何様のつもりなんだよおめぇはよ!!」

教官「違法解体(バラ)されて臓器パーツになるしか価値のねぇクソ艦娘がよぉ!!」

教官「俺に向かって何だその口の聞き方ァ!?!?」

那珂「変態の強姦魔に対しちゃ上等な口の聞き方でしょうが!!!」

教官「るせぇ!!!」ゴスッ

那珂「んぐっ!!」


那珂「っづ…あぁ…!!」

教官「思い出したぞお前…確かアイツの所に最初に着任した奴だな?」

教官「暫く見ないからとっくの昔に違法解体(バラ)されて臓器屋行きになってるもんだと思ってたがなあ!!」

教官「まぁどうせ身体で釣って命乞いでもしてるんだろうが」

那珂「………」



教官「 な ぁ ぁ あ あ あ あ あ 」

教官「 枕 や っ て ん だ ろ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ お お ぉ お ! ? 」

教官「 ア イ ド ル な ん だ か ら な ぁ あ ぁ あ あ あ ぁ あ あ ! ? ! ? 」

教官「 あ ぁ あ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ  あ ぁ あ あ あ あ ぁ ぁ あ ぁ あ あ ! ? ! ? 」



那珂「………」

教官「…ま、お前が枕やってようがやってなかろうが、処女だろうが中古だろうが関係ねぇ」

教官「」ビリイッ

那珂「いっ…」

那珂「いやぁああああああああぁああああああ!!!!!!!!」

羽黒「あ…あ………」



教官「お前を犯してやる…!!寝取ってやる…!!」

教官「くたばるあいつの目の前でお前等二人を犯してやる!!」

教官「可愛い秘書艦二人を目の前で寝取られるあいつの顔を想像するだけで射精しちまいそうだ!!」



那珂「やだ!!やだぁあああああああ!!!助けてぇえ!!!」

教官「ギャーギャー騒ごうがなぁ!!」

教官「俺のチンコ突っ込まれて堕ちなかった艦娘は一人もいねぇんだよ!!!」

教官「オラ見てみろよオラ!!」

教官「長茎手術に真珠入り!!コイツでアへらなかった女はいねぇ!!!」

教官「おめぇも!!おまえぇらもなぁあ!!!」ガシッ

那珂(あっ、足首…!!)

教官「コイツをブチ込んで俺のモノにしてやるんだよぉぉおお!!!」ガバァ



『艦娘と深海棲艦の戦いが始まってもうすぐ2年になります』

『如月型艦娘が艦の時の再現をしてしまう運命なのだとしたら…深海棲艦との戦争が始まった数日後に、彼女達全員が轟沈していなければなりません』

『ですが現実には如月型艦娘は今も各鎮守府、泊地に着任し続けています』

『また、数ヶ月前に大本営から発表されたALMI作戦では』

『深海棲艦の奇襲は許したものの、迎撃に成功し各海域の解放も成功…つまり、勝利の発表がされています』

『本来沈むはずだった赤城、加賀、飛龍、蒼龍達の多数も生き残り、今も任務に就いています』

『運命が存在するのならば、今いる彼女達は一体何なのですか?』

『艦娘の運命なんてのは本当に存在するのでしょうかね?』


那珂「…馬鹿野朗」

羽黒「え?」

那珂「多分、この人来週から…」



『何を根拠にそんな出鱈目を言うのですか!それでも評論家ですか貴方は!!』

『そんな一方的な論理が通ると思っているのですか!!』

『ここはあなたの妄想を聞く為の場ではありません!!』

『あなた今のでこの会場の全員を敵に回しましたよ』

『大本営は当時から嘘を突き通してきたじゃないか!今回だってそうに違いない!!』

『狂人!!』

『出て行け非国民!!』



羽黒(うわ………)

那珂「ほーらやっぱりこうなった…」


教官「」ガチャ

羽黒「きゃあっ」





「……………は?」





「バーカ」

掴まれた足首を振り解き、靴の裏を教官の顔面に押し付ける。

腕、腹、脚に力を込めて、転がるように起き上がる。

ただそれだけの力だったにも関わらず、教官の身体は後ろの壁まで突き放された。

どぉん、という音と共に、壁に弾かれ戻ってきた教官の身体の一部に狙いを付ける。


臓器が傷付けられる事は、人体に大きな影響を及ぼす。最悪の場合、それだけで生物は死ぬ。

だからこそ臓器は筋肉の中に、脂肪の中に保護されている。はずなのだ。

だが、例外が存在する。とある理由でほぼ皮でしか守られていない、ある臓器が存在する。

普段布で覆われ不十分ながら守られている『そこ』だが、今はそれが無い。

那珂は『そこ』を目掛けて蹴りを放った。

狙いは直角90度。僅かな膨らみ以外の何の無駄も無い、那珂の鋭すぎる一撃が叩き込まれた。



金属バットで殴られたような感覚。

皮を剥いだ蜜柑を潰すような感覚。

視界が歪み、天地が逆転する。

激痛の中の謎の虚脱感と、謎の温かみ。



数多の小さな命と共に

男の『命』は潰れた。




教官「」ピクピク

那珂「羽黒ちゃん!!」

羽黒「那珂ちゃん!!」

那珂「逃げるよ!!!」

羽黒「う、うん!!!」

那珂「面倒くさい!!蹴破る!!」ズドォン!!




羽黒「これからどうするの!?」

那珂「那珂ちゃんにいい考えがある!!」

那珂「今から叫ぶから、羽黒ちゃん続いて!!」

那珂「いくよぉ!せーーーのっ」










「 助 け て 犯 さ れ る ー  ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」












あきつ丸甲「どうしたでありますか!?」

那珂「憲兵さん!!助けて!!助けてぇ!!!」ガバッ

あきつ丸甲「大丈夫であります!一体何が!?」

那珂「教官さんが…教官さんに…私…!!乱暴されそうになって…!!!」

那珂「それで思わず蹴って逃げてきちゃって…!!どうしよう!?怖いよ!!!助けて!!!」

那珂「」チラッ


あきつ丸甲「!!」

あきつ丸甲「その服も…!?」

那珂「う、うん…」

あきつ丸甲「わかったであります。後の事は憲兵に任せて…あなた達はとりあえず…」

あきつ丸甲「…ちょっと不安かもしれませんが、取調室に隠れるであります」

あきつ丸甲「大丈夫であります。ついてくるであります」タタッ

那珂「………」

那珂「」ニヤリ


-取調室-


あきつ丸甲「大丈夫でありますか?」

羽黒「…はい」

那珂「う、うん…落ち着いてきた…」

あきつ丸甲「元自衛隊隊員で現海軍の教官殿とはいえ、女性を脅迫、暴行、強姦しようとしたとなれば大問題であります」

あきつ丸甲「教官殿は先程憲兵隊によって身柄を拘束したであります」

あきつ丸甲(…憲兵殿が発見した時、彼は失禁して気を失っていたらしいのですが)

あきつ丸甲(一体何があったか、憲兵殿は教えてくれませんでした…)

那珂「…………はぁ…」

あきつ丸甲「ところで、お二人の提督はどちらへ?」


那珂「命令違反で捕まっちゃった」

あきつ丸甲「えっ?」

那珂「艦娘を轟沈させろって命令が出て…それを拒否したからって…」

あきつ丸甲「え」

那珂「教官に、承諾するまで拷問にかけるって言われて…那珂ちゃん達も反対したんだけど、武蔵型の艦娘に脅されて…」

あきつ丸甲「………」

那珂「憲兵さん、ううん、あきつ丸さん!」

那珂「お願い!那珂ちゃん達の提督も助けて!!」

那珂「那珂ちゃん、泊地ができた時から提督とずっと一緒に頑張ってきたの」

那珂「もし提督に何かあったら…那珂ちゃんは…!!ぐすっ……!!」

那珂「うぅううぅっ…嫌だよぉ…提督ぅ……!!」ポロポロ

あきつ丸甲「あ、あぁ!わかった!わかったであります!!こちらから何か掴めないか調べてみるであります!!」



羽黒「あきつ丸さん…!ありがとうございます!!」

あきつ丸甲「いえ…それで、那珂さん達の提督殿の特徴は…」


那珂「え?」

あきつ丸甲「え?」


那珂「今朝会った人だよ」

あきつ丸甲「…今朝?」

那珂「ボディチェックの時」



あきつ丸甲「ボディチェックの時って…」

あきつ丸甲(入れ替わってた時の…!?)




那珂「あきつ丸さんって、あの時のあきつ丸さんだよね?」

那珂「あの時見たのと同じドックタグ付けてるし」




あきつ丸甲「えっ………」



那珂「ほら」チャリ

那珂「識別番号『7538315』」

那珂「やっぱりあの時のあきつ丸さん」



あきつ丸甲「………!!」

那珂「そういえばその時会った時と何か雰囲気違うけど…」


那珂「何かあった?」


あきつ丸甲「!?」ゾクッ





あきつ丸甲「い、いや…それは………」

あきつ丸甲「お化粧直し…して………」

那珂「まぁ全部わかってるんだけどね」

那珂「ボディチェック受けるフリして服に盗聴器付けといたから」





あきつ丸甲「えっ!!!」バッ

あきつ丸甲「えっ…あっ…ど、どこに………」


那珂「あれ?何してるの?」

あきつ丸甲「え」

那珂「嘘だよ?」

あきつ丸甲「………!!」ドクン



那珂「でも、嘘付いてたのはお互い様だからいいよね?」

那珂「 あ き つ 丸 さ ん ? 」

羽黒「………」

あきつ丸甲「………!!!!!」



那珂「ちなみにこの一部始終全部録音してるから」

那珂「この事バラしちゃったら…どうなるかなぁ?」

あきつ丸甲「やめ…やめて、ください」

那珂「それじゃあ…入れ替わったもう一人もここに連れて来てくれない?」

那珂「識別番号は、下が確か『114514』…パラオ特別鎮守府所属のあきつ丸ちゃん、だよね」

あきつ丸甲「な、何で、そんな事まで…」

那珂「あそこの鎮守府の提督とうちの提督が仲良いから、何度か会った事があるの」

那珂「真のアイドルはね、一度会ったファンの顔は絶対忘れないんだ」



那珂「で」

那珂「連れてきて、くれるかなあ?」ニコォ



-現在-


憲兵「最初にあきつ丸から言われた時は何だと思ったけど」

憲兵「…まさか、本当に入れ替わっていたなんて」


那珂「で、どうしようかな?この事バラされたくないよねぇ?」

あきつ丸「…私達に何をしろと?」

那珂「わぁっ♪話が早くて助かるよ」

那珂「三人にはね…これ」コトッ

那珂「これを、憲兵隊のお偉いさんに渡してほしいの」

あきつ丸甲「これは…一体?」

那珂「」ピッ


『この駆逐艦を沈めろ、と言ったんだ』

『我が海軍には、こんなものは必要ない』


あきつ丸「!?」

那珂「そっちのあきつ丸ちゃんにはさっき言ったけど、これが、教官が提督に如月ちゃんの轟沈を命令した時の録音」

那珂「それとこっちは」カタッ

那珂「さっき教官が那珂ちゃんの事をレイプしようとするまでの一部始終の録音」


あきつ丸「そんな、録音なんて、ボディチェックの時に盗聴器の類は」

那珂「やだー、あんなガバガバチェックでバレるわけないじゃん」

あきつ丸「ガバ…っ!?」

那珂「那珂ちゃんにはね、絶対にバレない『秘密の隠し場所』があるんだよー」

あきつ丸「ボディチェックでも絶対にバレない…」

あきつ丸甲「秘密の…」

憲兵「隠し場所…?」

三人「……………」

三人「………!!!」

三人(まさか…まさか…この子は…この子はぁぁぁぁ!!!!)



「んんっ!あっん!!」

「やだぁ…取れない…」

「早く取って…提督を助けてあげなくちゃ…んぁあん!!」ビクンッ

「あっ…はぁあ…ん…提督…提督ぅ………」





あきつ丸「いけません那珂ちゃん!そんなふしだらな!!」

あきつ丸甲「そうでありますよ!!アイドルでしょう!?アイドルなんでしょう!?」

那珂「二人とも一体何想像したの」





那珂「まぁとにかく、これをお偉いさんに渡してくれるかなあ?」

憲兵「渡してどうなる?」

那珂「当然、こんなもんが出てきたら教官は完全に終わりだし、提督も解放されるよね」

憲兵「俺達には、お前達の携帯とか通信機の事は上から一切触るなという命令が来てたんだ」

憲兵「つまり俺達の…憲兵隊の上の連中の誰か…もしくは副数人が、教官寄りだ」

憲兵「俺達がこれを出したところで、握りつぶされるかもしれない」



那珂「もしそうなったら、ネットにこのファイルをバラ撒く」

那珂「この携帯…何かいつの間にかすり替えられてたみたいだけど、通信は通るみたいだね」

那珂「メアドくらい覚えてるから手打ちで何とかなるし、そうすりゃうちの青葉通じてファイルをばら撒く事だってできるんだよ」



憲兵「!!待て、そんな事をしたら…!!」

那珂「海軍だけじゃないよねぇ。全軍が猛バッシング喰らうよ」

那珂「理不尽な命令、従わなければ拘束、しかもそれを使って艦娘を脅迫して性行為の強要、従わなければレイプ」

那珂「ネットもマスコミも喜んでしゃぶりつくネタだねぇこれは」

那珂「下手すりゃ軍の崩壊…そうでなくても痛手でしょ?」

那珂「その中心にいた…貴方達は無事でいられる?」

那珂「やらないっていうなら、さっきの入れ替わりの事を代わりにバラ撒く」

那珂「どちらにせよ、うまくいかなかったら貴方達は終わりだよ」

那珂「被害被るのが貴方達だけになるか、軍全体を巻き込むかの違いしかない」

憲兵「…お前………」

那珂「そうなりたくないんなら、教官を捕まえて、うちの提督を解放すればいいの」

那珂「皆死ぬ気でやればできるはずだよ。やってくれるかな?」

あきつ丸「………言われなくても」

あきつ丸「最初からそのつもりでいるであります」



あきつ丸「那珂ちゃん、あなたは全部自分がわかっていると思っているようでありますが」

あきつ丸「一つだけ、勘違いをしている所があるであります」

那珂「えっ?」

あきつ丸「私が潜入調査をしていたのは提督殿を助ける為であります」

あきつ丸「私だけではありません。榛名殿達も、提督殿を助ける為に横須賀に来ているであります」

那珂「あぁ、そうなんだ」

あきつ丸「私達は同じ意志で集まっている仲間であります」

那珂「そう言えるね」

あきつ丸「でも今の那珂ちゃんを見ていると…まるで」




あきつ丸「私達の事を敵として見ているような気がしてくるであります」




羽黒「………」

那珂「………」

あきつ丸「もし本当にそう見ているのなら、やめていただけますか」

あきつ丸「…提督殿だって、那珂ちゃんがそんな目で他人を見ていると知ったら悲しみますよ」

那珂「提督は関係ない」

あきつ丸「!!」

那珂「でも………」

那珂「………そうだろうね」



那珂「教官は今、拘束されてるんだっけ?」

憲兵「うん」

那珂「じゃあ…ちょっと、トイレ行ってくるね。何か色々あって疲れちゃった」

那珂「羽黒ちゃんもね」

羽黒「あっ、うん…」

那珂「あきつ丸ちゃん、詳しい話は後でいいかな?」

あきつ丸「えぇ」

憲兵「…俺達は、ファイルを渡してくる」

憲兵「いくらなんでも全員が全員黒ってわけじゃないはずだ…あの人とかなら…」

あきつ丸甲「…すみません、憲兵殿」

憲兵「いいって」

憲兵「…お前は、大事な相棒だからな。こんな事で別れてたまるかよ」

あきつ丸甲「憲兵…殿…///」

あきつ丸(進むの早っ)

那珂「…じゃあ、何とかできたらまたここで集合ね」

那珂「提督を助ける方も考えなきゃいけないから」ツカツカ



羽黒「…那珂ちゃん」ツカツカ

那珂「はい、鍵」チャリン

羽黒「あ、うん」

羽黒「………」

羽黒「…これがなかったら…」

那珂「ん?」

羽黒「これがなかったら…私達、今頃酷い事になってた、よね」

那珂「那珂ちゃんならともかく、羽黒ちゃんは危なかったかも」


羽黒「…もしあんな事が無かったら」

羽黒「こんなのも無かったし、那珂ちゃんも私も昔のままだったんだよね」

羽黒「…あんな辛い事が無かったら」

那珂「でもあんな事がなければ今、酷い事になっていた」

那珂「羽黒ちゃんも多分ずっとあのままで、提督に処女あげられなかったでしょ」

那珂「那珂ちゃんだってあの変態振り払えなかったし、犯されてたよ、多分」

那珂「盗聴なんて真似考えもしなかっただろうし、そもそもできなかった」


那珂「でも………」

那珂「だからって、素直に喜べないのは、わかるよ」

那珂「正直那珂ちゃんだってあんな事、思い出したくもない」

那珂「でも、あれが無ければ今の提督も、私達も、いなかった」


羽黒「思い出すだけでも辛いのに」

那珂「でも、あれがあったからこそ、今の私達がいるんだと思うよ」


那珂「提督に好きって言えて…提督に愛して貰ったり受け入れて貰ったり」

那珂「貞操帯(こんなもん)まで付けるのだってなんやかんや言うけど許してくれてるし」


那珂「だからさ…色々あったけど、那珂ちゃんはね、今幸せだなーって思うよ」

那珂「多分、皆そう思ってる」


羽黒「…うん」

羽黒「如月ちゃんも…」

羽黒「如月ちゃんも、今を乗り越えられれば…きっと」

那珂「そうだね。だからこそ…」




那珂「提督と一緒に泊地に帰ろう」

那珂「どんな手段を使ってでも…!!」








那珂「…ところでトイレどこ?」

羽黒「…ちょっと聞いてくるね」


☆今回はここまでです☆

今回のイベントでは数多くの艦載機使う事になりました。特に艦爆。彗星まで引っ張り出す羽目になりました。
今後もどこかで艦爆特効とか基地航空隊が来るかもと考えると、開発しておいた方がいいような気がしてきました。

別件ですが管理人さん。忙しいとは思いますがこんなSSだから早めの移転をお願いします…!!

>>1です。一週間前にE-7クリアして今はのんびりしています。
初めての大規模作戦完遂は嬉しいのですが、某所で聞いた『春イベは前哨戦に見せかけて誰一人としてE-1のクリアすらままならない地獄』という予言が
当たってたらどうなるんだろうと、始まるまで凄くワクワクしていたので…………………………

それでは、短めですが更新分の投下を始めさせて頂きます。



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-翌日 憲兵詰所-


上官「あぁ、あきつ丸。昨日の件か?今何とかしようとしてるところだ」

上官「憲兵隊の膿を出す丁度いい機会だしな。何とかやってみるさ」

上官「欲を言うなら…もうちょい証拠が欲しいけどな。憲兵(こっち)とグルだってのが本当なら、この程度じゃ握り潰されちまうかもしれない」

上官「ごまかしようのない、どうしようもない証拠でも転がってりゃ、いいんだけど…」

あきつ丸甲「………」

上官「しっかし、第二次世界大戦当時じゃ仲悪かったとか言われてたのに、よくもまぁ結託するもんだよ…」

上官「陸軍はともかく、海軍が海軍を陥れて一体何の得が…」

上官「…今はまぁいいか。罪状を確定させてから吐かせよう」

上官「で、お前はどうなの?憲兵とようやくくっついたって聞いたけど」

あきつ丸甲「………」

上官「あきつ丸?」

あきつ丸甲「上官殿、一つご相談があるのですが…」

上官「…どうした?」

あきつ丸甲「拳銃を一丁、お借りできますか?」

上官「!!お前…何を…!?」



・・・・・・・・・・・

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・・・・




-パラオ泊地-


如月「ん………」

赤城「おはよう如月ちゃん」

如月「私…ゆめ………」

赤城「大丈夫だった?」

如月「………はい」

如月「………」

赤城「…また夢を見るのが怖い?」

如月「………」

赤城「それとも、これからが怖い?」

如月「………はい」

赤城「大丈夫よ。誰だって辛い事はあるから」

赤城「みんなもきっとわかってくれる…いや、わからせるわ」


赤城「…さっき那珂ちゃんから連絡があったわ。提督、帰る目処が付いたって」

如月「!!」

赤城「だから」ギュ

如月「んっ」

赤城「帰ってくるまでは私で我慢してね」ポンポン



如月「………」

赤城「…ちょっと前まで、私も辛い時期があったの」

赤城「ミッドウェー、運命の5分間、あの嫌な記憶に苦しめられたわ」


赤城「でも提督が助けてくれた」

赤城「『絶対助ける』って言ってくれた」


赤城「何かあるたびにこうやって抱きしめてくれて、私が落ち着くまでずっとこうしてくれていた」

赤城「別に『私の事が好きだから』とか『特別だから』とかそういうのじゃないと思う」

赤城「…ううん、もしかしたら提督にとって私達皆が特別なのかもしれない」

赤城「でも、だからこそ提督は、絶対、如月ちゃんの事も助けてくれる」

赤城「みんなにも、絶対に、如月ちゃんの事をわからせる」

赤城「提督はいじめとか、そういうの嫌いだから。徹底的にやってくれるわよ」

如月「………」



赤城「あともうちょっと、あともうちょっとだから、一緒に耐え切りましょう?」

如月「…はい」



如月「でも赤城さん、仕事は」

赤城「霧島に任せてきたわ。霧島は秘書艦補佐歴も長いし、いけるわよ」

如月「………」

赤城「………そうだ」

赤城「話でもしましょう」

赤城「ここに来る前…艦娘になる前の話とか」



如月「え?」

如月「でもそれって規則違反ですよね?私達艦娘は本名を封印して…」

赤城「大丈夫よ。私は提督に本名も今までの事も全部話しちゃったもの」

如月「えぇっ?」

赤城「というかこんな事してるの日本くらいよ」

赤城「ドイツの艦娘は定時報告で毎回本名言わされてるって、特別鎮守府の子から聞いた事があるの」

赤城「『艦になりきりすぎて自分の存在を忘れないように』っていう事らしいわ」

赤城「…正直私は、ドイツが羨ましいな」

赤城「制度の理由は色々あるだろうけど、ちゃんと一人の人間として見てくれてる気がする」

赤城「国防だ人類防衛だ何だと色々言われるけど、艦娘になる理由なんて人それぞれだからね」


如月「………」

赤城「…如月ちゃんは、どうして艦娘になろうと思ったの?」


如月「…私は」

如月「パパとママの役に立ちたかった」

如月「それと…約束したんです」


赤城「約束?」



如月「…あ」



如月「艦娘になる前の話じゃないですけど、一個あります」

赤城「何何?」



如月「私…その、色々あって…教官とマンツーマンで研修を受けてたんです」

赤城「へぇ!特別待遇なのね!」

赤城「その教官さんと何かあったって事?」

如月「…はい」

如月「今の私にとって大切な人なんです」

赤城「はぁー…どんな人なの?」

如月「名前はちょっと言えないですけど、艦娘候補生だったんです」

赤城「って事は…新型艦娘のテストメンバーみたいな?」(あと、艦娘って事は女性なのね)

如月「えぇ。その一環として私の研修の担当になったみたいです」

赤城「テストの一環で研修担当ねぇ…その教官さんって戦艦艦娘とか、空母艦娘とか?」

如月「私もちょっとよくわからなかったです」

如月「戦艦とか空母って感じの艤装じゃなかったですし、駆逐艦って程のものでもなかったです」

赤城「重巡」

如月「うーん、そこまででもないですね」

赤城「軽巡か雷巡」

如月「軽巡よりは…わりと大きな艤装だったような、気がします。雷巡って言うほど魚雷は積んでませんでした」

赤城「えーっ、それじゃあ何だろう?」

赤城「名前が言えないっていうのがなぁー…まぁ、機密漏えいとか色々あるからでしょうけど」

赤城「ん、何かヒント無い?」

如月「うーん…あぁ!」

如月「私…じゃない、『駆逐艦如月』が会った事があるんです」

赤城「へぇ!!」

赤城「うーん…って事は…夕張…?」
赤城「いや夕張はもう普通にいるし、装備大きいけど軽巡か…」ブツブツ
赤城「夕張以外に装備が大きい軽巡クラス…大淀…?」ブツブツ

如月「…赤城さん?」

赤城「…如月ちゃんって第三十駆逐隊…だったよね?」

如月「はい」

赤城「その辺から何かヒントを得られるか…?」ブツブツ

赤城「第三十駆逐隊は駆逐艦のみの構成…だけど如月ちゃんの情報だと駆逐艦ではない…」ブツブツ
赤城「つまり第三十駆逐隊のメンバーではなく、その関連の艦隊を探していく必要がある…」ブツブツ

如月「…あかぎさーん?」

赤城「第三十駆逐隊周り…『空母赤城』の記憶を辿れば何か…何か見つかるはず…」ブツブツ
赤城「その際に気をつけなければいけないのは今の価値観で考えるのは厳禁だという事…」ブツブツ
赤城「今の…艦娘の価値観で照らし合わせると『灯台下暗し』に遭う可能性が高い…」ブツブツ

如月(ガチだ!この人ガチだ!!)



如月「赤城さん!」

赤城「…ん!?あっ!!あぁ、ごめんなさい!!」

赤城「私一度考え込んじゃうと、何か、こうなっちゃうみたいで、あはは、ははははは!!!」

如月「…ふふっ」

赤城「…あぁまーいーや!それで、どんな人だったの!?」

如月「何というか…凄い人…でした」


赤城「凄い人って…筋肉モリモリマッチョで叫びながら上半身裸になって、くるくる回ってラリアットしたり?」

如月「ちょっ、何ですかそれ!?」


赤城「凄い漢(おとこ)よ!」コノタワケガ

如月「女!女ーー!!!」


赤城「甘いわね。師範にとっては男だろうが女だろうが全て平等に漢(おとこ)なのよ」・・・・スゴイオトコダ

如月「壊れちゃう!性別の垣根壊れちゃう!!」




如月「…あ、筋肉モリモリではなかったですけど、おっぱいは大きかったです」

赤城「ほう。それはまた」




如月「先生はいつも綺麗で、優しくて、周りの視線を独占してました」

如月「今でも、女として憧れてます」

赤城「なるほどね。それでちょっとおませさん演じちゃってたの?」ニヤニヤ

如月「演じっ………はい」

如月「『男の人ってこういう人が好きなのかな』。『先生みたいな女性になりたいな』って、思ってて」

如月「…そういう雑誌読んでみたりして、少しでも先生に近づけるように、キャラ作ってました」

如月「こういうの、司令官にはバレちゃってるかな」

赤城「提督は鈍いからなあ。多分バレてはないと思うけど」


赤城「…如月ちゃんは提督の事好き?」

如月「………」

赤城「…男として好き?」

如月「………はい」

赤城「…それなら、帰ってきたら思いっきり甘えちゃいなさい」

赤城「大人の女を演じるのもいいけど…ん?」ガヤガヤ

赤城「…何か外が騒がしいわね」ガラッ







赤城「……………え」






如月「赤城さん?」

赤城「…何、あれ………」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-横須賀・大本営-


提督「………」



「この駆逐艦を沈めろ、と言ったんだ。我が海軍には、こんなものは必要ない」



「如月は沈んだ!ただ一人!他の誰も沈まなかった戦場でただ一人!」

「それを見た人々はどう思う!?それをはっきりと示したのがこの資料だ」



「既に不満が溜まった市民によって如月型が殺される案件が各地で起きている」

「如月型自身にも、自ら命を捨てる特攻や自殺をする者まで現れている。まるで『狂ったように』な」

「想像してみろ!こんな出来損ないに守られたいと思うか!?」

「だから沈めろ。『番組と同じようにな』」



「私はそいつに言ってやったんだ」

「『これは大本営直々の、軍直々の『許可』だ』と」

「『あの放送を許可した理由を考えてみろ』」

「『君は何も気にする必要は無い』と」

「それを伝えた数時間後…そいつはどうしたと思う?」



「笑いながらなぁ!!!轟沈の完了報告をしてきたんだよ!!」




提督「どいつもこいつも」

提督「何を考えてやがる」


提督「そんな理由で人を殺すのか」

提督「笑いながら人を殺すのか」

提督「あいつらは…」ゴンゴン

提督「何?」


あきつ丸「」ガチャ

あきつ丸「お久しぶりであります、提督殿」

あきつ丸「パラオ特別鎮守府所属のあきつ丸であります」

提督「あきつ丸さん!?どうしてここに?」

あきつ丸「提督殿をお助けする為であります」

提督「マジですか!?それはありがたい!!早く帰らないと…」

あきつ丸「事情は全て聞いているであります。如月ちゃんの事も、教官の事も」

提督「それなら話は早いですよ!すぐにでもここを出たいんだ!助けてくれます!?」

あきつ丸「勿論であります…ですが」

あきつ丸「万が一に備えて、これを」スッ

提督「うぉっ」ズシッ

提督「何これ、け、拳銃?本物!?」

あきつ丸「ここから出す事はできますが、訳あって一緒に行く事はできません」

あきつ丸「『ストッパー』付きの艦娘…しかも武蔵型艦娘相手では牽制程度にしかならないかと思いますが、念のため持っておいてください」

提督「…ありがとう」

あきつ丸「使い方はわかるでありますか?」

提督「うん。川内と夜せ……んー、サバゲーで遊んでるからな、当て方くらいなら…」

提督「本物持つのは初めてなんだけど、これセーフティーとかはどうなってるの?」

あきつ丸「リボルバーに安全装置はありませんよ。だからうっかりで撃たないように気を付けてください」

あきつ丸「本当に使う時以外にトリガーに指をかけないでください。自分の脚を撃ち抜くミスをよく聞くであります」

提督「わかった。ありがとう」ゴソッ



あきつ丸「埠頭で那珂ちゃん達と、我が鎮守府の第一艦隊が待っているであります」

提督「第一艦隊って、榛名さんと千歳さん達!?」

あきつ丸「えぇ。泊地に着くまで護衛を勤めさせていただくであります」

提督「すげぇな…本当に助かります」

あきつ丸「礼なら友提督殿に」

あきつ丸「あの方は貴方が行方不明になったと聞いて、真っ先に我々に調査命令を出したであります」

提督「…え、行方不明?それなら何で通信機とか携帯に電話かけてこなかったんだろう」

あきつ丸「それ、すり替えられているであります」

提督「えっ!?」

提督「…まさか最初の検査の時に!?」

提督「って事は本当に最初ッからこのつもりで連絡よこしやがったな…クソッタレ!!!」


提督「出れるんならこんな所すぐに出てやる!!」

提督「この話って、他の憲兵には通ってるんですか?」

あきつ丸「はい。なのでコソコソする必要はありません。急いで合流地点まで来てください」

あきつ丸「自分もすぐに向かいます」

提督「了解しました。ありがとうございます!!」ダッ

あきつ丸「………」

あきつ丸(…さて、あとは………)



提督(何が命令だ!何が大本営直々の許可だ!!)

提督(俺は絶対に如月を沈めはしないし、解体だってするものか!!)




提督(作戦の為でもない!!!)

提督(大義の為ですらない!!)




提督( 自 分 の 欲 の 為 だ け に )



提督( 艦 娘 を 殺 す 奴 な ん て な ぁ ッ ! ! ! ! )




提督(そんな事あっちゃいけねぇ!!!)




提督(許されちゃいけねえんだよ!!!!)




提督(何が笑いながら轟沈報告だ!!!!)

提督(俺は…どうしようもないクズだけどなあ!!!そこまで堕ちたくはねぇ!!!!)

提督(なのにあいつらは、あいつらはぁ………ッ!!!!!)









「待て!!!」









提督「!!」ビクッ

提督「…やっぱりテメェが出てくるのかよ」





提督「この、クソ教官が!!!!」






教官「どこに行く気だ」

提督(というか何でちょっと内股なんだコイツキメェ)

提督「俺の泊地に帰る。あんな命令聞けるわけが無いだろ」

提督「とっとと帰って、俺はあいつに励ましの言葉の一つや二つはかけてやらないといけない」

教官「そうか、泊地に帰るのか、泊地に…」


教官「…行けよ」


提督「…は?」

教官「帰りたいんだろう?だったら帰れよ」

提督「…何言ってんだ。アンタ昨日は横須賀から出さないって」










教官「…今さら帰った所で」













教官「 も う 手 遅 れ だ か ら な 」














提督「えっ………」

教官「今から行ったってもう間に合わない」

提督「お前…!!」



提督「何をした!?」


提督「俺の泊地に何をした!?」


教官「俺は何もしてないさ、ただ…」





教官「大衆が」






教官「お前らを」












教官「邪魔者だと認識しただけさ」














・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-パラオ泊地前-


「かの英雄、坂本竜馬はこう語った」

「『日本を今一度、洗濯致し候』、と」

「彼は、汚れた日本を洗濯し、誇りある、輝かしい日本を取り戻そうと戦った」



「我々日本人は、彼の遺志を引き継ぎ、今一度、日本を『洗濯』するべき時に直面したのだ」

「即ち」

「大日本帝国の遺物、第二次世界大戦の遺物、艦娘の排除」

「化けの皮が剥がれた戦前の汚物、艦娘を排除したその時より」

「戦前の罪を悔い、償い、未来に生きる事を決めたその時より」

「日本は真の先進国として進み始めるであろう!!」



「先日のテレビ放送によって、艦娘の実態が世間に晒された」

「奴らに深海棲艦からの防衛、そして制海権の奪取という使命は一切無い!!」

「大日本帝国の領土だったからという理由で、防衛と言う名の実質的な支配と文化侵略!!!」

「あまりにも無様な!!!!!その戦い!!!!!!」

「敗北の運命に逆らう心算も無い癖に、いつまでも国の守護者気取りの詐欺師集団!!!!」

「己の欲望の為だけに国民の血税を使い!!!贅沢三昧!!!!!」

「その裏では侵略者とも手を組み!!!!マッチポンプの戦争ごっこ!!!!!」

「守られ『なければならない』者として!!我々市民は声を上げなければいけない!!!」








「お前達のような存在を、我々市民は決して許さないと!!!!!!!」









「我等は『盾』!!艦娘のようなまがい物ではない!!真の市民の『盾』!!!」

「我等の使命は忌まわしき艦娘を排除し!!」

「市民の!市民による!市民の為の!!」

「本当の平和と自由を得る事!!!」

「我々市民は、艦娘の存在を、絶対に許さない!!!!!」

























「シュプレヒコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオル!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

























「我々市民は、もう我慢の、限界だ!!」


「限界だ!!」


「先日の、テレビ放送こそ、奴等の狂った、本性だ!!!」


「本性だ!!」


「この世界に、艦娘は、要らない!!」


「要らない!!」


「英雄の皮を、被ろうとする、詐欺師どもを、許すな!!」


「許すな!!」


「敗戦国は、大人しく、してろ!!」


「大人しく、してろ!!」


「化物は、海に還れ!!」


「海に還れ!!」


「深海棲艦と、共謀し、世界を脅かす、艦娘を、許すな!!」


「許すな!!」


「深海棲艦の、スパイを、排除しろ!!」




「排除しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」




☆今回はここまでです☆

資源と資材がわりと余裕あったので大型回したらビスマルクが出ました。NEWソートでパツキンのねーちゃんが並んでいます。やったぜ。
というか今回のイベント、艦隊全部姫で固めるのが出てきましたが、それでも突破されてるんですね………

>>1です。
比叡の「金剛姉様」という台詞、油断していると「コングお姉様」と聞き間違えをしてしまいます。
超弩級ロケランとして大爆発技術導入を兼ねてニュード溜まりから建造されたコングウホ。コア攻撃でも持前の爆発力を活かして大活躍ウホ。自爆してネ!

それでは、短めですが更新分の投下を始めさせて頂きます。



摩耶「ちっ!!」ザァアアアアアアア

時雨「友提督駄目だ!」

時雨「船まで出てる!あれじゃあ埠頭に近付けない!!」

友提督「船!?そこまでするか普通!?」

衣笠「どうするの!?」

友提督「…全員一旦待機。船に絶対近付くなよ」

時雨「でもそれじゃあ!!」

衣笠「憲兵隊への連絡は!?」

友提督「わかっているもうしている!!」

摩耶「にしては遅すぎだろ!?あいつら今にも泊地に突っ込みかねねぇぞ!?」

友提督「でも一般人に手出しできないのは知ってるだろ!?」

摩耶「だからってこのまま待ってたら高雄も愛宕も鳥海も!!!」

友提督「わかってるっつってんだろ!!!」

友提督「でも…俺達じゃどうする事もできねぇんだ…!!」

摩耶「パラオの英雄でもか?」

友提督「……………あぁ」

摩耶「畜生が!!」

時雨「…何でこんな事になったんだろう」

友提督「あの番組だろ」

友提督「…あのザマが知られたら、こうしたくなる気持ちはわかる」

摩耶「怒るってか?詐欺だってか?血税返せってか?」

摩耶「…あたしにはそうは見えねぇよ!!」

摩耶「通信通してる友提督にはわからねぇだろうけどさ、あたし達にははっきり見えてるんだよ、あいつらの掲げた横断幕…」


オイゲン「…本当に怒ってるんですか?」



時雨「!!」

摩耶「新入り…?」

オイゲン「Admiralさん」

オイゲン「あの人たちは本当に怒ってるんですか?」

友提督「………」



オイゲン「私だって」

オイゲン「私だって、艦娘になる事を反対された事もあります」

オイゲン「ナチスの軍艦になんてなるもんじゃない、って」

オイゲン「ナチスが、どういうものなのか…私だって学校で勉強してきました!!」

オイゲン「ナチスが世界大戦で何をしてきたか、知らないわけじゃありません!!」

オイゲン「でも!守る力があるってわかったから!」

オイゲン「例えそういう歴史があるとしても!守る力があるってわかったから!!」

オイゲン「そういう反対を押し切って、こうやって日本に来て、艦娘になったんです!!」



オイゲン「でも、でもあの人達は…ドイツの人達と何かが違う…!!」



友提督「………」

オイゲン「これが…」グッ


オイゲン「これが、日本なんですか?Admiralさん?」


友提督「…違う…」

友提督「違うんだオイゲン…」


オイゲン「そう言われたって…」

オイゲン「わからないんですよ、Admiralさん…!!!」



オイゲン「あの人達が掲げている横断幕…」





オイゲン「 『 轟 沈 お 祝 い 申 し 上 げ ま す 』 って何ですか!?」






オイゲン「あの人達は、誰かが亡くなる事を悲しんでいないんですか!?」


オイゲン「あの人達は、これからの日本を想ってああいう事してるんですか!?」


オイゲン「あの人達は、何で同じ日本人にあんな汚い言葉を投げかけられるんですか!?」


オイゲン「あの人達は…!!」




オイゲン「あの人達は一体、何なんですかぁ!!!!」




友提督「………」

摩耶「…なぁ」

摩耶「本当に、突っ込んじゃ駄目なのか?」ギリッ

友提督「…駄目だ」

友提督「もし間違ってあいつらに傷一つ付けてみろ。あいつらの掲げてる理想がそのまんま現実になるぞ」


摩耶「その為にあたし達が…泊地のあいつらが殺されちゃ意味ねぇだろうが…!!」

友提督「…頼む。これは命令だ」

友提督「動くな」

友提督「機会を見計らえ」

摩耶「………クソッタレが」

時雨「!!!」ハッ

時雨「まずい!!あいつ、石を!!!」

摩耶「!!!」



扶桑「きゃあっ」ガシャァアン!!!

伊勢「い、石!?扶桑大丈夫!?」

扶桑「えぇ、何とか…でも窓、割れちゃったわね」

伊勢「今窓はいいでしょ窓は!!」

伊勢「というか…これもしかしなくても囲まれてるよね!?」

金剛「Fuck!!何が『Seald』ネ!!」

金剛「囲んで石投げるとか、やってる事は『KuKluxKlan』とどう違うのヨ!!!」

陸奥「デモというか、これはもう暴動ね」

伊勢「ちょっと、これまずいんじゃないの…!?」

伊勢「確かうちって元ホテルなんだったよね…?」

陸奥「えぇ…深海棲艦の影響で商売あがったりになったホテルを軍が買収して改装したの」

陸奥「だから、ちゃんとした軍事施設に比べたら頑丈じゃないかも」

扶桑「広い敷地取ってる鎮守府ならまだ話は違うのだけれど…うちは泊地だから」

伊勢「泊地なんて言うけどさ、ホテルとその周りくらいしか土地無いのに」

伊勢(百何メートルもある軍艦が何隻も滞在出きる泊地と)

伊勢(人型で人並みの大きさの艦娘が滞在する泊地じゃあ、必要になる土地の広さもダンチって事ね!)

伊勢(だから、こうなる!!)

陸奥「えぇ。だから門乗り越えられて乗り込まれでもしたらあっという間に滅茶苦茶よ」

扶桑「私達艦娘は一般人に手出しできないから…そうなったら大変ね」

伊勢「じゃあどうすればいい!?」

伊勢「石まで投げられてこのままじゃやばいでしょ!?」

金剛「Barricade作って入り口に置くヨ!!気休めにはなる!!」

陸奥「そうね。正規空母の子にも手伝ってくれるよう呼びかけてみるわ」



叢雲「磯波!窓から離れなさい!!あいつら何投げてくるかわかんないわよ!!」

磯波「う、うん!!」

夕雲「荒潮ちゃん、私、暁ちゃんの所に行ってくるわ」

荒潮「わかったわ。気を付けてね」

初雪「もう嫌だ…何なのこんな、事ばっか…」

潮「…夕立ちゃん」

夕立(…スパイ?スパイだって…!?)

夕立(つまり…)

夕立(テレビで沈んだ如月ちゃんが、深海棲艦のスパイだって言ってんだろ!?)

夕立「あの野朗ッ!!!」グァッ

叢雲「ちょっ夕立!!やめなさいって!!危ない!!!」ガシッ

夕立「離して!!あいつらあのまま調子に乗らせておくわけにはいかない!!」

叢雲「だからって私達にはどうしようもないでしょうが!!」

叢雲「万が一傷一つでも付けてみなさい…アイツ…提督が責任取らされるのよ!?」

夕立「じゃあどうしろって言うの!?」

荒潮「向こうが飽きるまで待つしかない、かしら」

夕立「どれくらい!?」

荒潮「えーっと………」

夕立「わからないくらいずっと待ってろって!?」

夕立「あんな事言われて!?」

夕立「夕立達だって、如月ちゃんだって、提督さんだって!!!」

夕立「今までずっと頑張ってきたってのに!!!」

夕立「何であんな事言われなきゃいけないの!?!?」

叢雲「わかってるわよッ!!!」

叢雲「私だって正直イラついてるわよ!!」

叢雲「でもねぇ!!でもこんなんどうしたら良いのよッ!?!?」

荒潮(…この感じだと)

荒潮(夕雲ちゃん、暁ちゃんを止められるのかしら?)



暁「………」ガタガタ

暁「…私の、せい、だ」

暁(私が)


こういう時は、あれよ!街に出て、ばーっと遊んじゃうの!!


暁(私があんな事言わなきゃ)


…そういえば!ここから近くの日本街も大きくなってきてるから、回ってみるときっと楽しいわよ!


暁(こんな事にならなかったのに!!)

暁(如月ちゃんがあんな目に遭わなかったのに!!)

暁(こんな所まで!!こんな事に!!ならなかったのに!!)


暁「私のせいだ、私のせいだ…!!」ガタガタガタガタ


暁「全部、私の…」ブルブル


暁「だから」


暁「私が」ヨロッ


暁「私が」


暁「責任を」


暁「取らなきゃ」


暁「帰って、貰わなきゃ」フラフラ


暁「如月ちゃんを、泊地を、守らな、きゃ」ガチャ


バタン



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-横須賀・大本営-


提督「…デモ!?艦娘反対デモだって!?」

教官「ククククク!!!!あぁそうさ!!!!」

教官「お前達は自分が受け入れられているとでも勘違いしていたのか!?」



教官「馬鹿だな!!」



教官「お前達の事なんて死ぬほど嫌いに決まっているだろうが!!」

教官「この俺のようになぁ!!!」



教官「そんな中であの放送が流れてどう思うか…」

教官「その答えが、これだ!!」

教官「今まで封殺され続けた世論がついにぶちまけられたのさ!!!」

教官「これぞ民主主義の力!!」

教官「これこそが世論!!!!」

教官「世界は!!」

教官「誰もお前達の事なんて必要としていないィッ!!!!」

提督「だとしても、何でこのタイミングで…」

教官「ケケケケケ…知りたいか?知りたいかぁ!?なら教えてやるよ!!!」



教官「この一連の騒動は」


教官「俺達によって」


教官「何もかも」






教官「 仕 組 ま れ た も の な ん だ か ら な あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! ! 」








提督「!!」ゾッ

提督「何も、かもって…!?」




教官「あぁ!!そうだ!!!」



教官「 何 も か も だ ! ! ! 」



教官「あの番組の話から!!!」


教官「如月型艦娘の轟沈から!!!」


教官「貴様がここに居ることまで!!!」


教官「何もかもが!!!」


教官「俺達の」


教官「掌の上での出来事だって言ってるんだよおおおおおおおッ!!!!!!」




教官「そして今この時こそ俺達がいつしか夢見た瞬間なのだッ!!!!」

提督「え…え…あ…!?」

提督「番組…!?如月…!?」

提督「俺達、って………!?」

教官「まだわからんのか!?馬鹿が!!」

教官「俺達のような、艦娘とかいう化け物に役目を追われた自衛隊と」





教官「あの番組を放送した空条テレビの社長だよォッ!!!!」




☆今回はここまでです☆

でも僕は王道を往くバラージでした。重火力なんて味方がコア前取った時と防衛足りない時しかやらなかったから…

>>1です。
更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





如月「赤城さん…」

赤城「………」ギュッ


ブーッ、ブーッ…


赤城「!?」ビクゥッ

如月「私の、携帯…?」

赤城「け、携帯?」(しかもガラケー?)

如月「電話が………」スッ

赤城「待って!!」

如月「」ビクッ

赤城「出なくていい」

赤城「このまま放っておいて」


ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ…


赤城「………」

如月「………」


……………


ピコンッ


如月「…えっ?」

如月「SMS?」スッ

『次に出なければ』




『君達の提督を殺す』





如月「!?」

赤城「!?」



ブーッ、ブーッ…



赤城「………」

如月「………」

赤城「いい。私が出る」ピッ

赤城「…もしもし」



「…ん?この電話は如月さんのものだったはずじゃ?」



赤城「如月は…今電話に出られません」

赤城「用件があるのなら、私が伝えます」

「それは困りますね。どうしても直接伝えなければいけませんので」

「どうせ近くにいるのでしょう?代わってください」

「代わらないと…どうなると思いますか?」

赤城「………」

赤城「………」

赤城「…なら、スピーカーにしてもよろしいでしょうか?」

「どうして?」

赤城「今外に居る連中、貴方の指示ですよね」

「ほう、どうしてそう思いますか?」

赤城「その反応。外に居る連中としか伝えていないのにその言葉」

赤城「もし無関係ならば、『外の連中とは何の事ですか?』と聞くべきではありませんか?」

「貴方は知らないかもしれませんが、このデモは今ニュースになっているのですよ?」

赤城「…そうですか。なら、尚更です」

赤城「『うちの泊地の』如月に用事があるなんて言うのなら」

赤城「うちの泊地がどこにあるか、今どういう状況か、よく知っているのなら」

赤城「普通こんなタイミングで電話なんてかけてきませんよね」

「………」

赤城「沈黙は肯定と受け取りますよ」

「…いいでしょう。あまり長話もしたくないですし、もういっそ自己紹介といきましょうか」

「私は社長…」



「空条テレビの社長です」




赤城「空条………」

赤城(…あの番組を流した所か)チラッ

赤城(…確かに、空条テレビの車らしいものがデモ隊の後ろにいる…)

赤城「私はこの泊地の第三秘書艦、赤城です」

赤城「現状、緊急事態発生時の対応は私に一任されています」

赤城「なのでこの泊地に関わる事を、如月一人の判断で行わせるわけにはいきません」

「………なるほど」

赤城「提督を殺すと言い出した時点で、もはや彼女と貴方だけの問題じゃなくなりました」

赤城「泊地と、艦娘とやりあうつもりならかまいませんが…」

「わかりましたわかりましたよ。スピーカーでいいでしょう」

赤城「…」ピッ

如月「………如月です」

「こんにちは、如月さん」

「…電話に出られないなんて嘘付いちゃいけませんねぇ」

赤城「で、何が目的なんですか。早く本題に入ってください」

「気分がいいので貴方にも教えてあげましょうか?」

「私はね、そこのお嬢さんに消えてほしいのですよ」

赤城「艦娘に、ではなく?外の連中みたいに」

「ええ。私は、貴方達がどうなろうが知ったことではありません」

「ですが、そこのお嬢さんは邪魔にしかならないのですよ」

赤城「何故?」

「そこのお嬢さんが背負う艤装を作った会社…キサラギ社」

「それが本当に目障りで、目障りで、目障りでしょうがないんですよ」





「そうだ!!貴様等は本当に目障りでしかなかった!!」





教官「貴様らのせいで、俺達の誇りは踏み躙られたんだ!!」

教官「名前を変えられ、俺達のような元自衛隊は一線を退かれ!!」

教官「代わりに成り代わったのは!!!」




教官「コスプレをした化け物女どもと!!!」




教官「セックスする事しか頭に無い猿餓鬼どもだ!!!!」




教官「俺達の誇りはテメェらにことごとくブッ潰されたんだ!!」

教官「既存の兵器が効かない!?深海棲艦への唯一の対抗手段!?」



教官「俺にはなぁ!!こんなもんただのクールジャパン!!オタク文化の一環にしかみえねぇよ!!!!」



教官「コスプレしてチヤホヤされたいだけのクソ女と!!!」

教官「それにホイホイ吊られる下半身直結野朗!!!!!!」

教官「終いにはヤりたい盛りの『ヤリたいだけのクソガキ』が『年齢査証してまで』入り込む!!」

教官「ハハハハハハハハハハハ!!!!なんだそりゃ!?学徒動員か!?!?!?」




教官「ふざけんじゃねぇッ!!!!!!!!」




教官「何が国の為だ!!何が守る為だ!!!どうせどいつもこいつもヤリたいだけだろうが!!!!」

教官「俺達が築いた自衛の精神も!!秩序も!!何もかもをテメェ等が台無しにしたんだ!!!」



教官「だから俺は!!俺達は!!!」



教官「どんな手を使ってでもお前達を陥れてやると決めたんだ…!!!」

教官「そして再び俺達がこの国を守り、ヒーローに返り咲いてやる!!!!」




提督「その陥れる手段ってのが…あの番組か!!!」


教官「そうだ!!!」


教官「メディアの力には何人たりとも勝つ事はできない!!」

教官「どんな有力な政治家も!!」

教官「どんなに愛されている芸能人も!!」

教官「スキャンダル一つで命まで取られる!!」

教官「それがメディアの力だ!!」


教官「お前達を陥れるには最良の手段だろう!?」

教官「そして現実問題!!あの番組を見て、デモが勃発した!!!!」


教官「市民は目を覚ましたのだ!!」

教官「お前等は不要だとな!!!!」


提督「………」グッ

教官「お前等が全部悪いんだ」

教官「本当ならもっと早くに、俺達がお前等を全て滅ぼすはずだった」

教官「その為に何でもやった」

教官「俺達は元自衛隊という立場を利用し、教官の座に就き、わざとイメージダウンを狙わせた」



教官「違法解体!!」



教官「捨て艦!!」



教官「そしてアイアンボトムサウンド!!!」



教官「半年と少しで全て終わらせるはずだったんだ!!」




教官「だが!!!」

教官「お前らは英雄として取り上げられ、ゴキブリのように今も生き長らえている!!」


教官「だから俺達は最終手段に出た!!」

提督「それが、あのテレビか」


教官「苦労したぜ…だが、いると思ってたんだよ…!!」

教官「あらゆる社会に必ず存在する極少数のサイコパスのように…」


教官「万以上に膨れ上がったお前ら特務提督とその配下の艦娘…」


教官「それだけいれば…どれだけ容姿が似ていても絶対一人や二人、規格外の奴等…狂人が出てくる」


教官「そして俺達は見つけたのだ!!!」

教官「どうしようもないクズばかりが集まる、おあつらえ向けの鎮守府をなぁ!!!!」


教官「艦娘の適正率が標準より大きく下回るクズ、飯を食う事しか考えてないクズにプライドだけのクズ!」

教官「自分本位なクズ反抗的なクズブリッコする事しか能の無いクズ色ボケのクズ!!」


教官「そして!!!」


教官「全ての責任を投げ出して押し付けて、逃げ出すクズ!!!」



教官「そいつ独占取材という名の下に、汚点を世間に曝け出す!!」


教官「それが全ての鎮守府の基準であるかのように!!!!」


教官「全ての鎮守府の基準にする為にまた努力した!!!!」


教官「そしてついに、俺達の努力は実を結んだ…!!」


教官「今日は俺の人生で最高の日だ…!!!」



教官「今日が貴様ら!!!」




教官「艦娘と提督の!!弔いの日なのだからなぁあああああ!!!」






提督「………それだけか?」

教官「あ?」

提督「俺には、まだ納得できねぇ」

提督「だったら」

提督「何で如月だったんだ」

提督「何で俺の泊地でこんな事が起こる」


提督「アンタのあの命令は一体何だ!?」

提督「俺を足止めして何がしたい!?!?」


教官「ハーハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!知らないか!!知らないかぁ!!!!!!!」

教官「だったら教えてやる…!」





教官「 お 前 の 如 月 の 正 体 を … ! ! ! 」





提督「如月の正体…!?」

教官「そうだ!!お前の如月の正体は………!!!」




「そう、そこに居る如月型艦娘のお嬢さんこそ」

「忌々しいキサラギ社のご令嬢なのですから」




赤城「!?」

赤城「如月ちゃんが…キサラギの社長令嬢…!?」



「キサラギってあのキサラギ?」

「えぇ。製薬会社のキサラギ社」

「元々、高速修復剤とか高速建造剤の開発が海軍との繋がりだったんですけど…」

「キサラギ社の若社長きっての希望で、艤装開発に着手したそうですわ」

「そういえば最近、その『若社長の娘さん』も艦娘適正があったらしく、如月型艦娘になったとか」



赤城(まさか…まさかその『若社長の娘』が、うちの如月…!?)

赤城「…如月ちゃん。本当なの?」

如月「…本当です」

如月「私のパパは、キサラギ社の社長」

赤城「………」


「ここまではいいですかぁ?」

赤城「…えぇ、よくわかったわ」

「よろしい、では次だ」


「週刊誌は読まれますか? 今キサラギはバッシングを受けているのですよ」

「艦娘の命を守る艤装の不備、でね」

赤城「…ストッパーの機能を止める、違法プログラム」

「そうです。よく勉強されていますねぇ」



「実はそのプログラム自体は結構前から存在していたのですがね、デメリット部分が発覚したのが最近なんですよ」

「そのプログラムが、睦月型駆逐艦娘の艤装に使われていた事が、『キサラギ内部からの告発で』わかったのですよ」

「勿論」



「『テレビの如月』にもそのプログラムは積まれていた」



「 だ か ら 彼 女 は 沈 ん だ ! ! 」

「死ぬはずじゃなかった彼女は」


「キサラギが!殺した!」

「それなら非難されるのは当然でしょう!?」



赤城「何でそんな事がわかる」

赤城「『あの如月』は、艤装と一緒に海の底に沈んだ!」

赤城「その後に艤装が引き上げられたとも聞いていない!!」


赤城「それに、キサラギが艤装を作った睦月型駆逐艦娘全員にそのプログラムが積まれていたのなら…」

赤城「あの鎮守府にいた睦月型艦娘、弥生型艦娘はどうなるの!?」

赤城「あの子達は、何故沈まなかった…!!」



赤城(いや…そもそも、コイツの言っている事は何かがおかしい!)


赤城(艤装開発会社…キサラギが最初からプログラムを艤装に組み込んで出荷した!?)

赤城(一発の爆弾で簡単に轟沈するような艤装なら、まず耐久テストに通るはずがないでしょ!?)

赤城(ごまかしたり何だりで、百歩譲って通ったとする!)


赤城(でも一撃食らえば終わりなら)

赤城(最初の数回の出撃で間違いなく死ぬ!)


赤城(睦月も、如月も、弥生も、全員生き残れるはずがない!)

赤城(…あのテレビの収録まで生きていられるはずがない!!)

赤城(でもあの番組では睦月も弥生も生き残っている!!)

赤城(如月が一発被弾しただけで沈んだのに、彼女達が生き残れた理由がわからない…!!!)

赤城(指揮官の戦術!?あり得ない!!あんな無茶苦茶な編成をする奴がそんな事ができるはずがない!!)



赤城(それに何だこいつの口ぶりは!?まるで全てを知っているかのような…!!)



赤城(いや……………)



赤城(待って、空条………『テレビ局』………?)



赤城(…まさか)

赤城(…だとすると、可能性として考えられるのは…!!)




赤城「…まさか」

「?」







赤城「仕込んだな?」






「…仕込んだ、というのは?」



赤城「…違法プログラムを如月の艤装に仕込んだのかって事よ!」



赤城「お前達(空条テレビのスタッフ)が!!!!」



赤城「テレビの取材が入る鎮守府の如月に…プログラムを仕込んで…」

赤城「戦場に送り出した!!!!!」

赤城「それが、あの如月が轟沈した理由!?」



「………」



赤城(そうだ!!!)

赤城(もしそうなら全ての辻褄が合う!!!)

赤城(攻撃を防ぐストッパーがあるにも関わらず如月型艦娘が一撃で轟沈した理由も!!!!)

赤城(同型駆逐艦娘の睦月と弥生が生き残った理由も!!!!)




赤城(あの…地獄の始まりが…)

赤城(最初から…)

赤城(最初から…!!!!)




赤城( 如 月 を 殺 す つ も り で 番 組 を 放 送 し よ う と し て い た の な ら ば ! ! ! )




赤城( 最 初 か ら そ の つ も り で 計 画 を 練 っ て い た の な ら ば ! ! ! )




赤城「答えろォ!!!!!!!!!!!!!!」



「…フフフッ」




「ふははっ!!」

「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

「あははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
「はははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
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「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
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「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっっはぁ!!!!!」







「だぁぁああああああああああああい!!!!!!」






「正ぇぇぇぇぇえええええええええぇい!!!!!」






「解ぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」







「番組の関係者であれば、鎮守府に入り込むのは簡単だからねぇぇぇぇ!!!!」

赤城「!!」



「何…直接殺したのは」

「艦隊指揮を間違えたあの提督と、あの旗艦。そして深海棲艦だ」

「悪いのは、僕じゃない」



「僕は、『ただほんのちょっぴり』後押ししただけ」



「 な ぁ ん に も 悪 く な ぁ い 」



赤城(この…!!)



赤城(こ の 野 郎 ! !)



赤城「違う!!!!!!」

赤城「お前は!!!!!!」

赤城「お前が殺したんだ!!自分の都合の為に!!!」

赤城「邪魔な会社を、キサラギを叩き潰す為だけに!子供の命をぉ!!!!!」



「違う。指揮を間違えなければ一撃も貰う事は無かった」

「事前に艤装を点検していれば轟沈する事は無かった」

「全てはあちらの責任だ」



赤城「それもどうだか!」

赤城「なら何故如月にカメラを合わせた!!」

赤城「何故部隊から孤立した如月にカメラを合わせられた!?」

赤城「何故あの局面で如月が孤立した!?」

赤城「静止した如月を置いて他の艦娘はどこに行った!?」


赤城「何故あの場に深海棲艦の艦載機が一機だけ残った!?」


「?」



赤城「深海棲艦も私達艦娘も、空母から発艦する艦載機は本体の遠隔操作で動かしている!!」

赤城「本体が死ねば、動かしている艦載機は二度と動かない!!」

赤城「つまり…」


赤城「あの艦載機が本当に深海棲艦のものならば」

赤城「戦闘が終了したあの場所に別の艦隊が攻撃を仕掛けたことになる!!」


赤城「だけど、奴等は一度自分達の『持ち場』を決めたら、他の『持ち場』に干渉することはない!!」

赤城「あれは…如月を轟沈させたあれは!!」






赤城「 本 当 に 深 海 棲 艦 の 艦 載 機 か ! ? 」






赤城「 答 え ろ ぉ ! ! ! ! ! ! ! 」





「そんな事はどうでもいいですね」



赤城「はぁ!?」

「重要なのは、如月型艦娘が沈んだという事実です」

「これほどまでに世間で注目されていた番組内で、何の戦果も挙げられずに死んでいった如月型艦娘」

「これを見た人達は一体何を感じたのでしょうかねぇ」



赤城「何を感じただと!?ふざけるなッ!!!!」

赤城「全部お前達で仕組んでやっておいてほざくなッ!!!!」

赤城「その結果が外の連中だって言うのか!?」

赤城「その結果が如月狩りだって言うのか!?」

赤城「全部お前の思い通りに行くと思ってるのか!?」

赤城「神にでもなったつもりか!?」



「そうだ」
















「   僕    は    神    だ    」
















赤城「………はぁッ!?」

「そうだ。僕は神なんだ。特別な存在なんだ」

「誰も逆らえるはずが無い!!」

「そうだった…実際にそうだった!!僕はずっと頂点だった!!!」

「小学校中学校…ずっとずっと頂点だったんだ!!!」

「金持ちの家に生まれ、能力も容姿も優れた僕はスクールカーストの頂点に立っていた…!!」



「なのにあいつは…如月は…!!僕を否定したんだ…!!」



「如月…!!」



「如月ィ…!!」



「 如 月 ィ ィ ! ! ! ! 」



「如月…如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月」
「如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月如月ィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!!!」




「あァアアアアアァアアあああぁああああアアァアアアア!!!!!」


「あいつの名前を聞くだけで!!!」


「あいつの名前を見るだけで!!!」


「殺したくなる!!!!」


「思い知らせたくなる!!!!」


「この僕の力を!!!!!」


「あいつがいなければ…!!!!」


「あんな奴がいなければ!!!!」




「僕は!!!!あんな目に遭わずにいたものを!!!!!!!」




「あいつのせいだ!!如月のせいだ!!!!!」


「だから!!!!!!!!思い知らせてやった!!!!!!!!!」


「あいつの目の前で!!!!!」


「あいつの名前の入ったクソッタレを!!!!!!」


「あいつのご自慢の製品を!!!!!!!!」


「ブッ潰してやった!!!ブッ殺してやった!!!!!」


「その結果がこれだ!!!!!」


「皆が僕の望んだ通りになった!!!!」


「そして皆の望む通りになった!!!!」



赤城「何が皆の望みだ!!そんなイカれた欲求持ってるのはお前だけだろ!!」


「世の中の事何もわかっていないなお前は!!!」

「人間は誰もが他人を否定したがる生き物だ!!!」

「相手の容姿を否定し、行動を否定し、思想を否定し、団体を否定し、生活を否定し、環境を否定し」

「生きる事すら否定する!!否定をしなければ満たされない!!!」

「否定しなければ己の存在理由すらわからない!!それが人間だ!!!」

「ドラマや小説、アニメや漫画…何で人が死ぬか、考えた事があるか?」




「 皆  人 が 死 ぬ の が 見 た い か ら だ よ ! ! ! 」




「自分が傷付かない所で誰かが傷付いているのを見るのが好きなんだ!!」

「自分が傷付かない所で誰かを上から哀れんで優越感に浸るのが好きなんだ!!」

「自分が傷付かない所で誰かが死ぬところを見るのが好きなんだ!!」

「自分が傷付かない所で誰かを殺す体験をするのが好きなんだ!!!」


「それを疑似体験するために、物語の中で人は死ぬ!!!」

「そうさ誰もが!!!本当は!!本当に!!!」




「 人 を 殺 し た い と 思 っ て い る ん だ ! ! ! 」




「だから、こうやってちょっと合法っぽく演出してやれば」

「人は、簡単に人を殺す…!!!」

「例え合法でなくとも、僕らが動けば簡単に人は信用する」



「 馬 鹿 だ よ ね え え え え え え え ! ? ! ? ! ? 」

「いつもはあれだけ馬鹿にしてるテレビを!メディアを!」

「自分の都合の良い時には簡単に信用して、こっちの思う通りに動いてくれる!!!」



「市民の如月狩り!提督ども主導の如月型の捨て艦!!」

「何もかもが思い通りだ!!!!僕の思い通りだ!!!!!」

「そして如月型艦娘が死ねば死ぬほど、奴の会社の評価は下がっていく!!」

「何もかもが!!!僕の望み通りだ!!!!」

「皆が僕の望みどおりに動いていく!!!!」

「今!!皆の心は一つになった!!!!!!」




「『如月を殺せ』となあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」





「世論を操り!!人の心を操る!!!この世は、マスメディアこそが神だ!!!!!」

「どうだ!!これが神だ!!!これが神の力だ!!!!!!!」


「あぁ~たまらない!最高だ!笑いが止まらない!!」

「愉快!!愉悦!!!!愉・悦!!!!愉・悦!!!!!」




「 圧 ! ! ! 」



「 倒 ! ! ! 」



「 的 ! ! ! ! 」



「 愉 ! ! ! ! ! 」



「 悦 ! ! ! ! ! ! 」





如月「……………」

赤城(この…ッ!!この野朗ォ…ッ!!!!)

「………ふぅ」

「でもね、そこのお嬢さんには他にやって頂きたい事があるんだ」

赤城「まだ何かあるのかよ」

「…ようやく本題に入れますねぇ如月さん」

「如月さん、君には他の奴みたいに沈んでほしくはないんだ」

「君には、艦娘を辞めて貰いたい」

赤城「……………は?」

「ここが大事なんだよ…死ぬのではなく、辞める事が」

「この携帯から連絡を付ければすぐにでも辞められるんだろぉ?」

「君のお父さんの…キサラギの力で」

赤城「え?」

如月「………」


「如月家の人間はこういう人間なんだよ」

「他人なんて知った事じゃない、自分が助かればそれでいい」

「死んだって文句は言われない、いや、死ぬべき人間の屑だ」

「それを世間に知らしめなければいけない」


「人の心なんて所詮は一時的なもの」

「週刊誌の記事の影響力は低い。普通なら半分も信じて貰えないだろう」

「今の世の中、ネットというものがいくら便利だからと言って…」

「キサラギの汚点が一生ネットに保存され続けてしまうとはいえ…」

「このままではただのブームで終わってしまうかもしれない。もしかしたらいつかは忘れ去られるかもしれない」

「ゴキブリのように、トカゲの尻尾切りのように、小賢しく狡賢く生き残るかもしれない」

「でもそんな中で、そこのお嬢さんが艦娘を辞めて逃げ出したりしたら、どうなるか」

「…もう言わなくてもわかるよね?」

赤城「………疑惑は、確信に変わる」



「そう!敵前逃亡の臆病者!かつ!自分達の罪を認めたことになる!!」

「決して許されない自分達の過ちを認め!あろうことか自分の子供だけは死なせまいと金と権力を使って守る!」


「他の艦娘達は、もう親に会う事なんてできないかも知れないというのに!!」

「他の如月は、そうしている間にも次々と、その命を散らしているというのに!!」



「…それを逃す人々ではないだろう?」


「この状況!この現状!今や如月型艦娘とキサラギ社は深海棲艦を超える世界の敵!いや…サンドバッグ!!」

「どんな批判だろうが否定されることは無い!どんな中傷だろうが賞賛される!!」



「そしてそれらの悪意は!キサラギを!必ずや打ち倒す!!!」



「これぞ人間の底力!!!人間の実力!!!」

「 人 間 の  絶 対 な る 力 ! ! ! ! 」



「そして僕をここまで追い込んだ『如月』への…最大の復讐は一つのピリオドを迎える…!!」



「今!!!ここで!!!!」

「『如月』を!!!」



「 殺 し 尽 く す 事 に よ っ て ! ! ! ! ! 」




赤城「この外道…!!」

赤城「如月ちゃん!切るわ!!こんな奴の言う事なんて聞く必要は無い!!」

「おっと」

「切ったら、君達の提督がどうなるかわかっているのかな?」


赤城「提督には今羽黒と那珂が付いている」

赤城「あの二人はこの泊地で最強…あの二人がいる限り、提督に手出しはできない」

「『阿修羅』と『四水戦旗艦』ですか」

「武勲艦二人相手とは!なぁんて恐ろしいんだ!!」

「でも、一人の人間を殺すのに艦娘を相手にする手間は要らないよね」

「それこそ、ストッパーが機能していない艦娘より簡単に殺せる」




「例えば、帰りの船に爆弾が積まれていたとしたら?」




如月「!?」



「例えば、僕の指示を受けた大和型戦艦艦娘が君達の提督を狙撃したら?」


「例えば、『偶然』深海棲艦の艦載機の大群が襲ってきたら?」


「さっき貴方は外の団体に指示しているのが僕だと言ったね?」





「…なら、この程度の事ができないわけがないだろう?」





「さぁどうする?」


「察知できるかな?」


「防げるかな?」


「即座に対応できるかな?」


「そもそも今、君達の提督にこの事を知る方法があるかなぁ?」


赤城「……………!!」





「ッ…の野朗ォ………!!!」





武蔵「………」

教官「遅かったじゃないか武蔵。何をしていたんだ」

武蔵「貴様が憲兵に連れて行かれて行方がわからなかったからな」

武蔵「しかもその後に勝手に抜け出したと聞かされてみろ」

武蔵「作戦時間外まで貴様にくっついていろとは言われていないのでな、探すのに時間がかかった」

教官「チッ…まぁ、もうテメェの出番は無い」

教官「コイツは一人じゃ何もできないヘタレ野朗だからな」

提督「………」

提督「あの番組の何もかもが…俺達を、艦娘を…如月を陥れる為だっていうのか!!」

教官「そうだ」

教官「俺達としては死ぬのが誰だろうがどうでもいいんだがな」

教官「誰か一人死んでくれればそれでよかった。そうすれば、後は勝手に騒ぐからな」

教官「まぁ、いい気になってたお前達特務提督のアホ面はお笑いだったぜ!!」

教官「そして放送後は、何の疑問も持たずに如月を殺していく!!!」

教官「自分達の無知と無能を曝け出し!!!」

教官「そうすればするほど民衆はお前達に嫌気が差す!!!」



教官「いい事だらけだ…こんなに幸せな事は無い…!!」




提督「今すぐにデモとクソ社長と止めろ!!!!」

教官「無理だね。これが国民の世論の力だからな」

教官「憲兵だって俺達に協力してくれている」

教官「これが世論だ!!お前達は文字通り『世界の敵』になったんだ!!!」

提督「何が世論だ!!!捏造しておいて!!何が…!!!」

教官「それより帰るんじゃないのか?こんな所で遊んでないでとっとと行けよ」

教官「まぁ帰った所でもう手遅れ、だけどなぁ!!!」


教官「もしかしたら」

教官「デモ集団に皆殺しにされてるかも、なぁ?」ニタァ

提督「」


教官「ま、それも自業自得って奴だ」

教官「産まれてきた事から、お前の下に就いた事まで何もかもが自業自得だ」

提督「………」

教官「どうした?俺は言いたい事も言わせて貰った。とっとと帰れ」


提督「…帰らねぇよ」

教官「は?」

提督「俺は、もう帰らねぇ」

教官「…はぁぁぁ?じゃあどうするんだ?」





提督「…す」スッ





提督「殺す」スチャ





提督「ここでお前を殺す」ジャキッ





教官「」






武蔵「!?」

教官「はっ!?…はっ…はぁぁ…!?!?はっ、はぁぁぁぁぁ!?!?」ガクッ

教官「な、何でっ、何でお前、そんなもの」



教官「拳銃なんてどこで手に入れたァ!?!?」



提督「言うかよ」

教官「~~~~~~~!?!?!?!?!?!?!?!?」


教官「お…お前…!!!」

教官「何でそんな事するんだよ…!?」

教官「あの時の事まだ恨んでるのか?」

提督「その事と、今殺すか殺さないは別の話だろ?」ツカツカ


教官「お、おい、近付くな」

提督「お前が動くな。そこから一歩でも動いたら撃つぞ」

武蔵「………」

提督「お前もだ!!少しでも動いたらすぐにブッ放すぞ!!!」

提督「テメェらが何なのか知らねぇけどよ!コイツ死ぬのは流石にマズいんだろ!?」


教官「はっ…ハハハハハハハ!!!」

教官「お前それ…弾入ってねぇぞ!?セーフティ切ってねぇぞ!?」

提督「弾はさっき確認した」ツカツカ

提督「それにリボルバーにセーフティがあるかよ」ツカツカ

教官「……………」


教官「…あー!!!!あー!!!!!」

教官「そうだな!!!考え直したよ!!!!」

教官「もっといい方法もあったよなぁ!!!!!」

教官「俺達が手を取り合って一緒に協力する道もあるはずだよな!!!!」

提督「………」ツカツカ

教官「や、やめろよ…」

教官「馬鹿な真似はやめろよぉ!!!!」

提督「………」ツカツカ




提督「………そうだな」

提督「馬鹿な真似しようとしちゃったな」

教官「!!」




教官「そうだ、今ならまだ
提督「本気でブッ殺すんならな」ガッ



提督「こうやって、口の中に銃口ブチ込んでやらなきゃな!!」ズボォ

教官「ぶんごぁ!?」



提督「殺す時は脳幹に向けてニ発だったか」

提督「もう堪忍袋の尾が切れた」

提督「テメーには万が一でも生きていられちゃぁ腹の虫がおさまらねぇ」



提督「キレーサッパリ脳幹ブチ抜いて殺してやる」



教官「ひゃっ…ひゃめほぉ………!!!」

提督「…嫌かよ」

提督「だったら命乞いでもしてみろよ」

提督「『この惨めな豚にお慈悲をください』ってな」


教官「はっ…そんは…」

提督「じゃあ死ね」

教官「んごの惨めな豚にお慈悲をくだはいぃ!!!」


提督「駄目だ」

教官「はぁあぁあああ!?!?」

提督「テメーらのせいで何の罪も無い女の子が何人も、何十人も、何百人も殺されてるんだ」

提督「テメーの何倍も苦しんで、怖がって、痛がってなぁ」

提督「それをテメー…」

提督「自分の番になったら『許してください』は無いだろォッ!?!?」ガンッ!

教官「ひゃめろぉ!!!やめてくでぇええ!!!!」



武蔵「待て!!!」

提督「待つかよ!!!」

武蔵「貴様、上官を殺したらどうなるかわかっているのか!?」

提督「ハッ!どうなるってんだよ!?銃殺刑か!?」



提督「 構 う も の か よ ォ ! ! 」



提督「こんなどうしようもねぇゴミクズ一人道連れにできるんならよォ!!」

提督「俺の命くらいくれてやらぁ!!!!」



提督「…ンククククク…ヒャハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

提督「コイツはもう死ぬしかねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!」

武蔵(こいつ………!!)

提督「どっち道お前はここまでした俺をぶち殺すんだろ!?拳銃持った瞬間から俺も死ぬのは決まってるんだ!!」

提督「俺は死んだってどうでもいい!!!!」



「コイツを!!」


「ブッ殺せれば!!!」


「何も!!かもが!!!」


「滅茶苦茶になったって!!!!!」


「 ど う で も い い ! ! ! ! ! ! ! 」




提督「あいつらの事を散々馬鹿にしてくれたよなぁ!?あぁ!?何が化物だぁッ!?」

提督「化け物はお前達の方だ!!!」

提督「クソみたいな見栄と自己満で人を殺す!!!」




提督「お前達の方が化物だ!!!!」

提督「お前達こそ死ぬべきだ!!!!」




教官「たふけてくで死にたくない死にたくない死にたくない!!!」




提督「だから!!!」

提督「……………ッッッッ!!!!」




提督「 俺 が こ の 場 で 殺 し て や る! ! ! 」







教官「やめろ!!やめて!!!やめでええええええええええええええ!!!!!!!」







提督「死ぃぃぃぃいいぃいいいねええええええええええええええッ!!!!!!!」











 









「死ね!死ね!死ね死ね死ね死ね!!!」





「若いチンポと金目当てのクソ売女の集まりの癖によぉ!!!」

「馬鹿野朗!!!!豚野朗!!!!!死ね!死ね!死ねえええええ!!!!」

「俺等の税金返しやがれこのクソどもがあ!!!死ね!死ね!!死ね!!!」



「随分ヒートアップしてきたじゃないか」

「さて、どうする?」

「このままじゃ君達も、無事じゃ済まない」

「僕の言う事を断ったり、電話を切ったりしたら…」

「提督は不幸な事故で死に、外の連中はこの泊地に突っ込むだろう」

「理性を失ってる連中が、何をするかはわからないが…」


「何で君達は全員そんなに美しいんだろうねぇ?」

「そんなに美しいと、さぞや劣情を喚起させられる事だろうねぇ?」

赤城「…最低!」

「そろそろ口の聞き方に気を付けろよ。大飯喰らいの木偶の棒の分際で」

「今ここで、お前らの泊地の命運を握ってるのは、僕だ」

「僕が一声かければ何とでもなる」

「この泊地に突っ込ませる事も、ここでデモを終わらせる事も、どっちもできる」

「それで、デモを終わらせるには」

「今ここで、如月が艦娘を辞める事を宣言しなければいけない」

「さぁどうする?」

如月「………」



「なぁ、僕は難しい話をしているんじゃないんだが?」

「この一連の騒動の原因が君であり」

「君と、君のお父さんが潰れてくれれば、皆満足するんだ」

「皆が幸せになる道はそれだけなんだ」

「それだけ。とってもシンプルな話だろ?」



「君達が、君達だけが、滅びてくれれば。皆幸せになれるんだ」



如月「………」



「話に乗れ」


「乗れ!」


「乗れ!乗れ!乗れ!」


「 乗 れ ! ! 」



「乗
「うるさああああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!」



「!?」

赤城「!?」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさああああああああああああああああい!!!!!!!!!」

如月「今の声…暁ちゃん…!?」

如月「何をするの!?」ガラッ


暁「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!!」

暁「帰ってよ!!!」

暁「艦娘がどうとかっ、海軍がどうとかっ!スパイがどうとか文化侵略がどうとかぁ!!!」

暁「今っ…それどころじゃないのよぉ!!」

暁「如月ちゃんが…私達の仲間が…大変なのよ!!!」


「如月?」

「そいつはゾンビ(深海棲艦)じゃねぇか。何が仲間だ」

「そうだよ」

「やっぱ艦娘と深海棲艦はグルなんすねぇ」

「そうだそうだ!!そうに違いない!!!」


暁「違う!!!!!!」

暁「私達だって人間よ!!!」

暁「人間が、艦船の魂を受け取って、産まれたのが私達艦娘!!!」

暁「私達だってあなた達と同じ人間よ!!!」

暁「傷つくのは怖いし、遊ぶのは楽しいし、勉強は嫌いだし!!」

暁「辛いと感じるときだってある…!!」

暁「だからわかってよ!!!」

暁「今如月ちゃんが…私たちの友達が大変なの!!」

暁「辛くて辛くて、もうどうにかなっちゃいそうなのよ!!!」

暁「友達が…大切な人が、辛い思いをしている時のこと…わかるでしょ!?」

暁「何とかしたいの!助けてあげたいの!!」

暁「だから邪魔しないでよ!!!」

暁「あなたたちの話を聞く余裕なんて…こっちにはないんだってばあ!!!」

暁「毎日毎日、命がけで…!!」


暁「毎日毎日訓練とっ!海域の見回りと!出撃でっ!!」

暁「敵と遭えば戦わなきゃいけない!!」

暁「戦って、死んじゃうかもしれない…!!」

暁「それこそテレビの如月ちゃんみたいによ!!!」

暁「まだやりたい事もいっぱいあるのに…いっぱいいっぱい遊びたいのに…」

暁「好きな人に告白もしてないのにっ…!!」



暁「艦娘の代わりに日本を守るって言ったわね…!?」

暁「じゃああなた達はそんな怖さと毎日毎日!!一人で向き合って生きていけるの!?」

暁「無理なのよっ…!だからっ!だからっ…私は…友達が…仲間が欲しかったの…!!」

暁「友達を…仲間を…無くしたくなんかない…!!」

暁「このままっ如月ちゃんがっテレビみたいになっちゃったら…!!」


暁「そんなの嫌!!」


暁「だからっ、だからっ…」

暁「 助 け な き ゃ い け な い ん で し ょ ぉ … ! ! 」ギリッギリッ…


暁「だから、お願いだから…」

暁「今日は、帰って…お願いだから…」

暁「もう、みんな、いっぱいいっぱいだから…!!」

暁「そんな事言われたって!!私達にはどうしようもないんだから!!!」

暁「これ以上何か余計な事増やしたりしないでよぉ!!!」



「んだとこのガキィ!!!」

「わけわかんねぇ事言ってんじゃねぇ!!!」

「人気があるからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!!!」

「深海棲艦をかばう奴に遠慮はいらねぇ!!」

「殺せ!!殺しちまえ!!!」

「石で撃ち殺しちまえ!!」ブンッ



暁「づッ!!」ガスッ

ボタボタッ

金剛「暁!!」


「殺れ!!殺っちまえ!!!」

「非国民が!!!死ね!!死ね!!ヒャハハハハハ!!!死ね死ね死ね死ね!!!!」


ガンガンガンガンガンガンガンガン!!!

ガシャンガシャンガシャン!!



明石「うわ!うわわわわわ!!!」




如月「暁ちゃん…!!」


「馬鹿な子だ」

「あんな事を言ったら怒らせるだけに決まってるじゃないか」

「でも」

「あれも君のせいだ」


「そもそも君が如月でなければ、如月にならなければ、如月なんていなければ、こんな事は起こらなかったんだ」

「キサラギがいるから多くの命が失われ、キサラギがいるから海軍は信頼を失った」

「君のせいだ。全て君達キサラギのせいだ」


「今あそこで、あの子が石を投げられて頭から血を流しているのも、君のせいだ」

「君のわがままのせいで、泊地や仲間達がこれ以上犠牲になってもいいのか?」

「提督がどうなってもいいのか?」

「ここまで君を守ってくれる、そこのお姉さんがどうなってもいいのか?」


赤城「お前、どの口が!!!!」

「黙れと言ったのが聞こえなかったのかこの大飯喰らいの木偶の棒が!!!!!」

「いいか!?お前は僕の交渉相手でも何でもない!!」

「人質なんだよ人質!!!ギャーギャー騒いで何とかなると思うな!!!」

「これ以上イラつかせたら本当に突っ込ませるぞ!」

「それでもいいのかァ!!なぁ!?第三秘書艦殿ォッ!!!!!」

赤城「!!!」

「この泊地とコイツ一人どっちが大事だ!?あぁ!?言ってみろよ!!!」

赤城「………」

「そうだそうやって黙っていればいい!!」


「いいか!!」

「お前が見栄を張らなければ!こんな犠牲は産まれなかった!!」

「海軍を貶めたのも!!」

「人々の精神を退化させたのも!!」

「元はといえばお前が全て悪いんだ!!」

「お前があんな事をしなければ!」

「お前が『如月』でなければ!!」

「『如月』なんてものが存在していなければ!!」

「『如月』なんてものが産まれてこなければ!!」

「こんな事にはならなかったんだ!!」

「お前はその責任を取らなければいけない…!!!」

「その責任の取り方は…!!」

「お前が艦娘を辞めて!!キサラギ社をブッ潰す事以外に無い!!!」



如月「………」

「どうする!?どうする!? ど う す る ! ? 」

「皆殺しにするかぁ!?あぁああッ!?!?」

如月「…わかりっ…ました…」

如月「如月はっ…私は…」

如月「海軍から…この泊地から…除隊…します…」

「………ッ!!」

如月「だからっだからっこの泊地の、みんなだけはっ」

「…ッ!!…ッ!!」

如月「この泊地のみんなだけは、助けて、ください…」

「………それだけか?」

如月「えっ…」

「それだけじゃないだろう?」

如月「何、が………」




「謝れよ」

「僕に」





如月「えっ」


「え、じゃねーよ」

「お前の父親のせいで僕はとんでもない目に遭ってきたんだ」

「それを謝れって、言ってんだよ!!!」


如月「………」



「言えよ!!殺すぞ!!!」

「早く言え!!3、2、1!!!」



如月「…ごめんなさい」



「そんなので気が晴れるか!!!」



如月「申し訳ございませんでした…」



「違うだろ!!そうじゃないだろ!!!」



如月「………」

如月「パパが…父が、ご迷惑をおかけしました」



「まだ謝罪が弱い!!!」



如月「私達のせいでっ…私達は、とんでもない事をしてしまいましたっ…」

如月「全部っ…全部、如月が、如月が悪かったです…」

如月「本当に…本当に、申し訳ございません…」




「よく聞こえなかったな、もう一回!!」



如月「全部…如月が悪かったんです…」



「もっと!!!」



如月「全部、私達の責任です!!!」



「もっとだ!!!!」



如月「何もかもが、私達のせいです!!!!」



「最後にもう一回!!!!!」



如月「如月のせいで、本当に申し訳ございませんでした!!!!」



「………」


如月「うっ…うぅぅぅううううう………」ポロポロ



「ふひっ」

「ひひひっひははははははっはははははははははははははははははははは!!!」




「勝ったァ……!!」

「勝った!勝った!勝った!」



「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った」
「勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝った勝ったァァァァァァ!!!」



「 ざ ま ぁ み ろ キ サ ラ ギ ! ! ! 」



「 く た ば れ キ サ ラ ギ ! ! ! 」



「お前の顔も見納めだ!!!!!」


「僕が勝った!お前の負けだ!!」

「ハハッ!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」


「アーッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ」
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」



赤城「………」ギリィッ

如月「………」



「…ふぅ」



「後の事は気にしなくて良い」

「君のような欠陥艦が居なくなったところで戦線に異常は生じない」

「加賀型や金剛型じゃなくて、ちっぽけな駆逐艦一隻ならね」

「むしろ感謝して欲しいくらいだよ。死ぬのは怖いだろう?」

「もう無理して戦わなくてもいいって言ってるんだ」

「僕は、『ただほんのちょっぴり』その為の後押しをしただけだよ」

「…ま、すぐに君の後を追う事になるかも知れないけど、ね」


赤城「………」

「それじゃあ、よろしく。今すぐにだ」

「わかってると思うけど…誤魔化しなんて通用しないからね?」

「君の携帯、こっちはいつでも盗聴できるんだからな」


プツッ

ツー ツー ツー ツー




如月「うぅっ…ぐっ…あぁああああああ………!!!!」ポロポロ


如月「ああぁああああああああぁあああああああ!!!!!!」


「あああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





「アネモネの」


「花言葉はね」








「見捨てられた」



「儚い希望」



「見放された」



「消えた希望」


☆今回はここまでです☆

>>1です。
前回の投稿から二週間も過ぎてしまい、このままうっかりでスレ落ちたらギャグにしかならないのでほんのちょっとだけ更新します。



「えーっ、今日の活動でぇ」

「艦娘が、提督が、海軍がいかに危険な存在か、この地域の方々にもわかって貰えたでしょう」

「ですが艦娘の鎮守府は、今や世界各地に散らばっています」

「世界各国に誤った、恥ずべき歴史と、防衛という名の支配を散らばらせているのです」

「本日のデモは以上で終了になりますが、我々の活動に終わりはありません」

「奴らを一つ残らず根絶やしにするまで!我々は戦い続けましょう!!」


「世界平和の為に!!」

「「「世界平和の為にーーーー!!!!」」」

「「「頑張るぞーーーー!!!!オーーーーー!!!!!」」」



男3「ぬわぁん疲れたもぉ~ん」

男4「おう、お疲れ」スッ

男1「おっ、これが」


男4「あぁ、今回のデモの参加代…」

男4「『艦娘反対配当金』ってところだ」


男3「3人で14万!?おぉ~えぇやん!!」

男2「暴れられてしかも金まで貰えるなんてこんな楽しい仕事他に無いな」

男4「おいおい、人聞きの悪い事を言わないでくれ。世界の平和がかかってるんだぞ」

男2「わかってるわかってる。世界が平和になる為にもっと一杯暴れなきゃなあ」

男1「まだまだ如月も殺したりねぇしなぁ…あの一匹今度見つけたら絶対殺す」

男4「今日みたいに憲兵がいない日なんて早々来ないと思うから、うまくやってくれよ」

男1「あ?これからずっと憲兵いないんじゃないのか?」

男4「多分今日が特別だ」

男1「あぁ~?じゃあ殺したらどっか人が来ない建物の床下にでも隠さなきゃいけねぇのか?」

男4「そうだな。昨日みたいに殺した如月の首を鎮守府の門に置いておくなんて事するなよ」


男1「はぁ~つ・ま・ん・ね。そりゃねぇだろ?」

男1「これからだって殺したっていいじゃねぇか?」


男4「まぁそう落ち込むな。機会を見計らえ」

男1「機会って?」

男4「俺達がやってる事は正義なんだ。だけど馬鹿な市民どもはそれにまだ気付いていない」

男4「だから俺達がわからせてやるんだ」

男1「…どれだけ時間かかるんだよ、それ」

男4「そう長くは無いはずだ」

男4「どっかのアニメでも言ってただろ?『俺達は分かり合う事ができる』ってな」

男2「あぁーあの映画の」

男4「虐殺OK差別OKキチガイ信仰の大日本帝国時代の遺物野朗どもならともかく、今の日本は民主主義国家だ」

男4「俺達が正しい心を持って語りかけ続ければ絶対にわかりあえるんだ。あのアニメみたいにな」

男4「そして俺達の正義を民衆が理解した時こそ、時代遅れのクソ売女とそれに群がる馬鹿男ども…」


男4「そして政府の馬鹿どもに、民主主義の強さと怖さを思い知らせてやる時だ」

男1「やるならその時、って事か」

男4「あぁ」

男4「俺達は絶対正義として、あいつらに裁きを下せるんだ」



赤城「………」

「さて、これでお互いの約束は果された」

如月「私達の泊地が…ボロボロに………」

「誰のせいだと思ってるんだよ」

「それにもう君の泊地ではないだろう?」

「君はもう艦娘じゃないんだ」

「一刻でも早く迎えに来てもらって、去ったほうがいいんじゃないか?」


「そうじゃなきゃ」

「あの鎮守府の如月みたいに殺されるぞ?」


如月「!!」ビクッ

赤城「…どういう意味」

「わかってるだろ?君だって如月を殺した一人なんだ」

赤城「…は?」



如月「………MI作戦の時…」



「!?」

赤城「如月ちゃん…!?」

如月「あそこに…あの如月がいた」

如月「でも………」







「カミカザリ…カエシテ…」






如月「誰一人気付かずに…殺された」


「…あれは僕にとっても一種の賭けだったよ」

「轟沈した艦娘が深海棲艦になるっていう話は知っていた」


「そして」

「何故かそういう経緯で生まれた深海棲艦は」

「ほぼ必ず、古巣の鎮守府と敵対するというケースも聞いた」

「…深海棲艦は、完璧だった僕の計画に最後の華を添えてくれたんだ」



「…やると思ったよ!!」

「やってくれると思ったよ!!」



「あのカスどもならなぁ!!」



「全く気付かずにボコボコにして沈めるくらいやると思ったよ!!」

「あれは賭けだった!でも僕は賭けに大勝したんだ!!」

「収録の後に海域をスタッフに探させたら、落ちてたさ!!」



「 如 月 の 髪 飾 り ! ! ! 」



「もう笑ったね!!そして確信したね!!」


「 や っ ぱ り 如 月 は 死 ぬ べ き 存 在 なんだってなぁあああ!!!」


「僕は正真正銘の神なんだ!!神の怒りに触れた奴等は全員滅びるんだ!!!」




ダカラ


オ前モ


アノ如月ノ様ニ沈メ




如月「!!」ゾォッ!!

如月(また…また…声…が…あ…あぁ…あああ………!!!)




ダカラ言ッタデショウ?



「今だってそうだろぉ!?」

「お前のせいでこんな事になって!!」



アナタハモウ終ワリダッテ



「お前の鎮守府の連中は皆お前の事を恨んでいる!!」



ソレデモマダ信ジルノ?



『お前なんていなければこんな事にならなかったんだ!!』

『お前らキサラギが規約違反なんてしなければこんな事にならなかったんだ!!』

「さぁどうなる!?皆お前の事を恨んでいるぞぉ!?」



ソレデモマダ生キタイノ?



「どうなる!?」



私タチニハモウ味方ハイナイ



「どうする!?」



私タチニハモウ何モ無イ

モウ、地上ニモ、空中ニモ、海上ニモ、私タチノ居場所ハナイ



「誰もお前を助けてなんてくれない!!」

「皆、お前が嫌いだから!!!」

「だからお前は沈められたんだろう!?」

「所詮お前の存在なんてその程度だって!!皆が皆思ってるんだ!!!」



ダカラ、海ノ底ノ仲間達ニ付クノ

モットモット深イ憎悪ヲ

モットモット身ニ纏ッテ





如月「ごめんなさい…!!!」



如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
如月「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
如月「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」



如月「産まれてきてゴメンナサイ!!」


如月「生きていてゴメンナサイ!!!」


如月「もう!!もうやめて!!もう許して!!!」


如月「ごめんなさい!!ごめんなさい!!許して!!許して!!!」


「おいどうした?キチガイの振りして責任逃れしようってのか!?」


「駄目だ!許さん!何もかもお前らのせいだから!!!」


「死ね!!!!!!!」


「罪を償って死ね!!!!!!」


「お前ら如月の存在価値はもうそれしかない!!!!死ね!!!!」


「死ね!!!!!!!」


「死ね!!!!!!!」


「死ね!!!!!!!」


「お前の親もろとも死ね!!!!!!!」


「s」ブツッ



赤城「………!!」


赤城(MIまで…)

赤城(あの作戦まで、こいつのオモチャだったって事?)

赤城(…ふざけるな)

赤城(あの作戦に、どれだけの想いを込めてきたと思ってるんだ!!)

赤城(どれだけのっ苦労を…!!背負ってきたと、思ってるんだ!!)


赤城(提督が…!!)

赤城(自分を犠牲にしてでも私に行かせようとしてくれた、あの作戦が…!!)


赤城(あんなクソみたいな奴のくだらない欲望の為に!!!!!)

赤城(如月を、キサラギ社を貶めるためだけの為に!!!!!)クッ


如月「!!」ビクッ

如月「…ごめんなさい…!!」

赤城「あっ…」

如月「ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

如月「許して…!許してください…!!」

赤城「………」


如月「お願いです…謝ります、謝りますから…」

如月「私を…見ないでください………」

如月「お願いですから…もう………」

☆今回はここまでです☆

主砲が7.7mm機銃の人は、小さくても威力は十分ですわよ、という名台詞を胸に強く生きてください。

>>1です。
7.7mm機銃には勝てなかったのでリスポーンして初投稿です。

投下を始めさせて頂きます。



「キャァアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

赤城「!?」ビクッ



赤城「今度は何………!?」

赤城「………!!」ゾッ

赤城「は…泊地が…」



「燃えてる………!?」




男C「ふざけんじゃねぇよ!!」

男C「何が『私達も人間よぉ!』だ!!」


男C「おめぇらみてぇなのがなぁ!!」

男C「人間なわけがねぇだろぉが!!!!」


男C「おめぇらみてぇなのはなぁ!!」

男C「人間じゃねぇんだよ!!!!!!!」



男C「人間じゃねぇおめぇらが『娘』なんて大層な名前使ってんじゃねぇ!!!」



男C「豚だ!!豚!!!」

男C「 艦 豚 だ ! ! ! ! 」



男C「豚は死ね!豚は死ね!豚は死ねぇぇぇぇえええ!!!!」



比叡「デモ隊帰ったんじゃなかったの!?」

陸奥「もう何でもありじゃないあんなの!」

扶桑「火炎瓶なんて初めて見たわ…」

伊勢「そりゃみんな初めてだよあんなの!!」


暁「は、泊地が…」

暁「工廠が…資材庫が…!!」

夕雲「待って暁さん!!」グッ

夕雲「今出たら、今度こそ殺されちゃうわよ!!」

暁「そんな事言ったって…!!」

暁「あのままじゃ、工廠も、資材庫も弾薬庫も…!!」


陸奥「弾薬に火が付いて爆発なんてしたら最悪ね…」

陸奥「今向こうに誰がいるの!?」


夕雲「…火事の事は任せて、私達はここにいましょう」

暁「でも、私が…私が止めなきゃ」

夕雲「こんな怪我してるのにどうするの!?」

夕雲「私達は足手まといにしかならないわよ…!!」

暁「………」

夕雲「戦艦の人もいるし、向こうには明石さんもいる」

夕雲「きっと大丈夫、大丈夫だから…」ギュッ


暁「………うぅ…!!」

暁「あぁああ…あぁああああああ…!!!」ポロポロ

夕雲「………」ギュウッ

暁「何で…なんで…」

暁「こんな事になるのよ…!!!」

暁「頑張って…頑張ってやってるのに…何で…」


「 な ん で こ ん な 事 に … 」



赤城「………」ガタガタ



ピコンッ



『何勝手に切ってんだよてめぇ』

ピコンッ

『切ったら殺すっつっただろ?』

ピコンッ

『まあ用事は終わってるから今日はこの程度で許してあげるよ』

ピコンッ

『でも死ね!!』

ピコンッ

『焼け死ね!!』

ピコンッ

デモ隊員「死ね!!」

『死ね!!』

ピコンッ

デモ隊員「死ね!!」

『死ね!!』

ピコンッ

デモ隊員「死ね!!」

『死ね!!』

ピコンッ

デモ隊員「死ね!!」

『死ね!!』


赤城「………!!」ガクンッ



赤城「助けて………」



赤城「……早く…早く、帰ってきて…!!」





「提督ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」





・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-横須賀・大本営-


提督「………」


教官「」


提督「………」


教官「」ピクンッ









教官「」ジョボボボボボボボボボ









提督「………」

提督「えっ?」



提督「…これ、不発弾!?」


提督「じゃあこれで死ね!!!」ガチンッ

提督「!?」

提督(また不発!?どうなってやがる!!)


武蔵「………」ガチャッ

提督「!!」

提督「動くんじゃねぇ!!うっかり引き金を引いちまうかもしれないんだぜ!?」

提督「いつ暴発するかもわからねぇ!遅発や腔発の可能性だってある!!」

武蔵「馬鹿か!そうなれば銃を持つ貴様も無事では済むまい!!」

提督「言ったよなぁ!?そんな事構うもんかってなぁ!!!」



提督「残りの弾で脳ミソブチ抜かれるか!腔発で俺もろともズタズタにされるか!!」

提督「その二択以外残っちゃいねぇんだよぉ!!!!」



提督「せいぜい一緒に地獄に堕ちようぜェ!!」カチッ

提督「死ね!!!」ガチンッカチッ

提督「死ね!!!」ガチンッ


提督(なんだよこれ!どうなってやがる!!全部、不発弾って…!!)

提督(まさかあきつ丸さん…いや、だとしても俺は拳銃を離せねぇ!!)

提督(離した瞬間、武蔵は俺を撃つ!!)

提督(あいつは昨日『衝撃を当てて俺だけを殺す事もできる』と言った…それをやられたら俺は犬死だ!!)


提督(だから今俺ができる事って言ったら…)

提督(どこかで弾が出る事を信じて引き金を引く事だけだ!!)


提督「………ん?」

教官「」


提督「おい…嘘だろ…!!!」

教官「」


提督「ふざけんなよ…!!!」




「何気絶してんだよテメェェェェェェ!!!!!」





提督「それじゃあ意味がねぇんだよぉぉぉ!!!」

提督「最期の瞬間までビビって貰わなきゃあ!!!気が付いたら死んでたじゃ駄目なんだよぉぉ!!!!」

提督「畜生!!畜生ぉ!!!」

提督「クソッタレがああああああああああああああ!!!!!!!」カチッガチンッ

提督「………!!!!」


武蔵「…迫真の演技だが、ただのハッタリか」

武蔵「その様子だと、最後のも弾は出るまい」

提督「………」

武蔵「引き金を引いてみろ」

武蔵「その瞬間、お前はこの46cm三連装砲の衝撃波でバラバラになるがな」

提督「余裕こいてんじゃねぇぞ」

提督「最後の一発でコイツが死んだらどうする」

武蔵「…実を言うと、そいつの生き死にはそこまで大事な問題ではない。生きているならそれに越した事はないがな」


武蔵「だがお前は別だ」

武蔵「お前をあの泊地に帰すわけにはいかない」

武蔵「『このまま通す位なら殺してしまえ』と指示を受けている」

武蔵「覚悟を決めてもらおうか」

提督「………クソが…!!」

提督「……………」カチッ






ガチンッ

ズダァァァァァン!!!!























提督「………」

提督「………」

提督「………え?」




武蔵「っかは…!!!」


「…艤装強制解除、完了」バシュウッ




武蔵「………馬鹿な」

武蔵「この武蔵が…!!!」

武蔵「不意打ちとはいえ、ただの人間に…!!!」


憲兵「…ただの人間?」

憲兵「お前、自分が超弩級の戦艦だからって調子に乗りすぎだ」

憲兵「確かにお前達の力は凄い」

憲兵「海の上に立つ力、人間を大きく上回る力、そして砲撃。俺達にはできないものだ」



憲兵「だけどそれは所詮、『船』としての力だろ?」

憲兵「いくら船として強くても、陸で、『人』として強いかどうかは別問題だ!!!」



武蔵「ぐうっ…」

憲兵「俺達は憲兵だ」

憲兵「お前達を取り締まる役割を持ったお前達の抑止力だ」

憲兵「俺達がその役割を遂行する為に!特殊な力を持ったお前達に対抗する為に!俺達は日々修練を積んできた!!」




憲兵「力を以って対抗するのではなく、柔能く剛を制す」



憲兵「人の『技』を磨いてきたんだ!!!」




憲兵「陸に上がったお前達は、打ち上げられた魚!!」

憲兵「棒立ちで射撃するド素人!!!」

憲兵「『技』の無いお前達を打ち負かす事なんて、俺達には朝飯前!!!」

憲兵「だからこそ俺達はお前達の抑止力に!!『憲兵』になれたんだ!!!」



提督「………憲兵さん!?」

憲兵「提督殿、ご無事ですか!?」

提督「え」

提督「…まぁ…大丈夫、ですが、一体何が起こって…」



「提督君、ご苦労だったな」




提督「!?」

提督「え、えぇ…!?」

提督「ご、ご苦労って、何ですか!?」

上官「説明するよ。でもその前に拳銃を返して貰おう」


あきつ丸「…はい」ツカツカ

あきつ丸「提督殿、その拳銃を」

提督「い、いやこれは危ないよ!!いつ暴発するかわからない!!」

あきつ丸「」ヒョイ

提督「あ」

あきつ丸「…この拳銃に撃てる弾丸は一発たりとも入っていませんよ」

提督「え」

あきつ丸「あらかじめ全ての弾丸から火薬を抜いておきました」パキッ

提督「!?」

あきつ丸「だから遅発の可能性もゼロであります」



あきつ丸「それと」

あきつ丸「代わりに発信機と盗聴器を詰め込んでおきました」スッ



提督「は………?」

提督「って事は!?」

上官「今までの話は全部聞かせて貰った」

提督「………マジですか」



上官「これで『どうにも誤魔化せない明確な証拠』はしっかりと頂いた」

上官「俺達憲兵隊の立会いの下、収集された完全無欠な証拠だ。これがあれば誤魔化しなんてできないだろ」

あきつ丸甲「教官殿の罪状、追加しないといけないでありますね」




提督「………」

提督「…憲兵さん」

上官「ん?」

提督「俺を逮捕しないんですか?」

上官「………」

提督「俺は上官を殺そうとしました」

提督「弾が入ってなかろうが、何だろうが、こんな奴だろうが、罪は罪です」

上官「そうは言ってもな…君はこの逮捕劇の立役者で、俺達の協力者だ」

上官「君がコイツを無力化して、武蔵型艦娘の注意を引かなかったらこう上手くはいかなかった」

提督「でもそれじゃあ、示しが…」

上官「あー…こっちも忙しいんだよ」

上官「いくら君がコイツを殺そうとした悪党だったとしても、コイツに比べりゃ可愛い小悪党だ」

上官「コイツの裏にまだ何かあるのは見えている。君のおかげでこれから忙しくなりそうだ」

上官「だから、君みたいな小悪党に構っている時間は無い」

上官「小悪党一人と大悪党何十人、どっちを捕まえるかって考えたらさ、当然大悪党の方を選ぶだろ?」

提督「………」

上官「で、パラオに戻るんだよな?こっちは任せて、早く行ってやれ」

提督「……………」

上官「そこで突っ立たれても捜査の邪魔だ。早く行ってくれ」

あきつ丸「…上官殿!」

提督「………わかりました」

上官「それじゃあ、あきつ丸。君ともここでお別れだ。気を付けてな」

あきつ丸「えぇ…上官殿もお気を付けて」

あきつ丸「…行きましょう、提督殿」


提督「あきつ丸さん」ツカツカ

提督「…用事はもう大丈夫なの?」

あきつ丸「………」



「なるほど…そういう事情があるのか」

「それで、脱出の為の護身用として拳銃を、と」

「確かに相手は武蔵型だ。それ位はしないと心許ないのはわかる…が」


「………いや、待てよ」ボソッ

「上官殿?」

「憲兵、ちょっとそっちのパソコン使って教官のデータを今から調べてくれ」

「え?あ、はい。わかりました」カタカタ

「あの…上官殿は一体何を?」

「あきつ丸、君はその提督と知り合いらしいけど、どういう人なんだ?」カタカタ

「私もまだ数回しかお会いした事がありません…が、悪い人ではないであります」

「性格は?」カタカタ

「優しい人ではありますが…面倒臭がりで、悪い意味での直情径行が目立ちます」

「艦娘との関係は上手く行ってるのか?」カタカタ

「…えぇ、まぁ。あちらの泊地の子の話を聞く限りでは結構な人数と特別な関係を持っているみたいであります」

「へっ」

「でもお互い不満は無い、らしい、であります」

「ふぅん、なるほど…」カタカタタンッ

「………ド素人か」ボソッ

「憲兵、そっちはデータ出たか?」

「はい」

「どれどれ」

「………なるほどこれはいい」ボソッ

「え?」

「わかった。拳銃は持たせよう。だけど…」



「撃たせる標的は武蔵型艦娘じゃなくて教官にしよう」




「…え!?」

「今拘束している教官をこっそり解放するんだ」

「恐らく奴は提督の所に向かう」

「そして多分…また煽るだろうな」

「研修時代随分と苛め倒してきた相手だ。教官は相手が自分に適わないとわかっている」


「だけど今回は提督が銃を持っている」

「今までの恨み、そして今回起こっているであろう事件の経緯を知る事で怒り」

「提督は銃を向けるだろう」

「そして引き金を引く」


「提督殿に…人を殺させると?」

「あくまでフリだよフリ」

「え?」

「銃に盗聴器と発信機を仕込むんだ。ド素人にはわかりゃしない」

「盗聴器と発信機?」

「あの手の小物は煽る時にベラベラ喋ってくれるんだよ」

「そうする事で優越感を得るのがどうしようも無く好きなんだ」

「提督も提督の方で、周囲の人間に危害を加えるような人間ではないみたいだ」

「研修時代に相当やられたのが堪えたのかな?…まぁ、感情が爆発するまでは教官の話を聞いてしまうだろう」


「それはつまり」

「俺達からしてみりゃ、喉から手が出るほど欲しい情報を手に入れる絶好のチャンスになるってわけだ」



「盗聴器を使って証拠を収集しつつ、発信機で位置を特定した憲兵隊の一部が現場に向かい、奴等を拘束する」

「銃を付き付けられて無力化したも同然の教官を再拘束するのは簡単だ」

「そして一緒に付いて来る武蔵型艦娘もまとめて拘束できる」

「万が一提督を拘束することになった場合でも…相手は格闘技の経験も無いド素人だ」



「俺達なら」

「簡単に抑えられる」



「…どうだ?」

「そんな、提督殿を騙すような真似なんて」

「でもあきつ丸」




「お前達はその提督の秘書艦に騙されたんだろう?」

「その艦娘も憲兵相手に随分な真似してくれたじゃないか」




「舐められっぱなしは陸軍としても憲兵としても本意じゃない」

「この策を使えば、一石二鳥だ」



「提督が泊地に帰る障害になる二人を排除して」

「騙された仕返しもできる」

「やってやろうじゃねぇか」




あきつ丸「…えぇ、終わりました」

提督「…そっか。ごめんな。こんな事になっちまって」

あきつ丸「………いえ」

提督「………埠頭に行こう」

あきつ丸「…はい」

☆ちょっと休憩します☆

>>1です。
ハンバーグうまかっです。

それでは投下を再開させて頂きます。










「………これで勝ったつもりか?」










提督「!!」

上官「随分早いお目覚めだな。おねしょしてるけど」

教官「け、憲兵!?あいつを!!あのキチガイを拘束しろ!!」

上官「あのキチガイとは…?それよりも」

上官「アンタ、随分とやらかしてるようじゃねぇか?」

上官「アンタがあの提督に色々言った事、全部聞かせて貰った」

教官「!?!?」

教官「だ、だがこの件は!!憲兵隊は何があっても見逃すと!!!」

上官「俺はそんな命令受けてないんだよなぁ。文句があるなら伝達ミスった俺の上司に言いなよ」

上官「…その前にお前には知ってる事洗いざらい話して貰うけどな」

上官「空条テレビの奴が何を考えてんのかとか、お前達の仲間がどんな奴なのかとかとかとか」

上官「全部話したら文句を言わせてやるよ」

教官「………!!」

上官「でお前は、この状況から勝つ手段があるとでも?」

上官「タマ潰されて、周りは憲兵に囲まれて、ここから逆転できるとでも?」


教官「ひ…ヒヒヒ…!!!ヒヒヒハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」




教官「どうせテメェはただの格好付けたがりだろうが!!!」


教官「『皆と違う俺って格好良い』って思いたいだけの!!ただの中ニ病野朗なんだろうが!!!!」


教官「だから艦娘一人も沈められねぇ!!!!」


教官「如月を沈めないアピールで格好付けたいだけなんだろうが!!!!!」


教官「違うか!?違うか!?!?違うかあああぁああああ!?!?!?」


教官「あぁああああああ!?!?!?」


教官「聞こえてんだろ提督ゥぅぅうううあうああああああああああああ!!!!!!!!!」




提督「………」



教官「だがなぁ!!!これでもうテメェは終わりだよ!!!!!」



教官「俺達の裏に誰がいるか!!!」


教官「お前等はわかっちゃいねぇんだろうが!!!!!」



武蔵「!!」

提督「裏…?」

上官「ほーそいつは興味深い」

教官「この日本を…『本当の日本を指導する組織』だよ!!!」

教官「この世界であの方々に勝てる奴なんて誰もいねぇ!!!」

教官「ましてはお前達なんかじゃなぁあ!!!!!」

提督「…何だそりゃ、どこのカルト宗教だよ」



教官「金!!!」


教官「暴力!!!」


教官「支配力!!!」


教官「何一つ取っても!!お前らなんか逆立ちしたって勝てやしねぇ!!」


教官「いや!!」


教官「この日本であの方々に勝てる奴がいるわけがねぇ!!!」



武蔵「………」

教官「お前はもうあの方々にとっての敵なんだよ…!!!!」

教官「馬鹿だなおめぇはあ!!!格好付けのために一番敵に回しちゃいけねぇ人を敵に回しちまった!!!!!」

教官「お前等も!!みんなもう終わりだよ!!!!」

教官「みんなみんな!!皆殺しにされちまえ!!!」

上官「はいはい。後で全部尋問してやるから」

提督「………行こう」



教官「お前の艦娘も皆殺しにしてやる!!!!」

提督「」ビクッ



「俺達が…何もしてないとでも思ったかぁ!?」

「もうとっくに進めてるんだよ!!!」

「艦娘なんぞに頼らなくてもいい、兵器の開発をな!!!」



「船に積める砲!!」



「戦車に積める砲弾!!!」



「戦闘機に積める爆弾!!!」



「歩兵が持てる銃!!!!!!!!」



「それが出来上がった暁には、お前等みたいな非国民どもも!まとめて一掃してやる!!!」

「その時は!!最初に!!真っ先に!!お前とお前の艦娘を皆殺しにしてやる…!!!」



「 あ の 薄 汚 い 如 月 み て ぇ に な ぁ ・ ・ ・ ! ! ! 」



「 ボ ロ 雑 巾 に し て 殺 し て や る よ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! ! ! ! 」



提督「――――――」



決定的な何かが切れた音がした。



「あきつ丸さん。先に行ってて」

「え?いや、先…って」


言葉を待たずに走り出す。


拳を握り、口から感情を吐き出し、地を砕かんが如く踏み締める。


標的は両方から憲兵に挟まれていた。

腰が抜けているのか、両腕を掴んでいる憲兵を支えにして立っているようだった。


だからこそ、簡単に


標的の顔面に拳を叩き込む事ができた。



叩き込んだ拳を振り抜き、敵が地面に倒れる。

身体の上に座り込み、拳を叩き付ける。


拳を叩き付ける。


叩き付ける。


叩き付ける。



叩き付ける。




叩き付ける。




叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。叩き付ける。
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「やめろ!!もうやめろ!!」

腕が引っ張られ激痛が走る。

激痛が正気を引き戻す。

「両手折れてるぞ!!!!!」

指がうまく曲がらない。曲げようとして激痛が走る。

激痛が正気を引き戻す。



殺意が正気を覆い尽くす。







 お 前 も 殺 し て や ろ う か ・ ・ ・






悲鳴と共に力が抜けた手を振り払い、敵と正面を向き合う。

こいつだけはどんな手段を使ってでも殺す。

それが自分があの子達にできる唯一絶対の事だと盲信している。



ろくでなしと呼ばれようと


人でなしと呼ばれようと


無能と呼ばれようと格好付けたがりと呼ばれようとお荷物だと呼ばれようとどうでもいい。








ここで



こいつを殺す事さえできれば



地位も



名誉も



金も



命も



人としての尊厳も



何もいらない





喉笛に歯を突き立てた。



皮膚を引き千切り


脂肪を砕き


筋肉を突き破る。



そして絶叫と共に血が吹き出す。



「おい!?やめろ!!!」

口の中に血が流れ込む。

「やめろ、って…!!何だこの力!!!」

言葉にならない呻き声と振動が血を震わせ、唾液と混ざって口から零れ落ちる。

「おい引っ張るな!!肉が持って行かれる!!!」

「死なせるな!!情報が取れなくなる!!!」

顎を伝い、喉を滑り、胸を紅く染めていく。

「ならどうしろと!?」

白い軍服に広がる血痕が広がる度に殺意が増していく。

「落とせ!!一撃で!!!」

顎の力が増していく。

殺す。

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
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死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
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死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死





 




提督「」ドサッ

憲兵「はっ…はっ…はぁっ……」ガタガタガタガタ

上官「…お、おい!止血だ!!早く!早くしろぉ!!」

憲兵2「了解!!」

上官「死なせるなよ…!そいつから情報を引き出さなきゃいけないんだからな!」

憲兵2「りょ、了解しました!!」


上官「………」

あきつ丸「上官、殿…」

上官「…何なんだよ…」

上官「何なんだこいつは…」

上官「なんら一切躊躇無く殴りにかかって、拳が潰れたら噛み付き?」

上官「まともじゃねぇ…まともじゃねぇよこいつ…」

上官「そこまでして…人を殺したいか…!!」


上官「手が…」ブルブル

上官「まだ震えてやがる…」ブルブルブルブルブルブル

あきつ丸「………」

上官「こういう仕事してきて色々な人間見てきたつもりだったけど…」

上官「あんな目した人間見たことがねぇ…」

上官「いや」




上官「あれが、人間がする目であってたまるか…!!!」




上官「あきつ丸…こいつの扱いには気を付けろ…」

上官「こいつは…小悪党なんてもんじゃない」



「化物だ…!!」

「下種な奴等やチンピラなんかとは比べもんにならない殺意を」

「一切躊躇せず手段も選ばずそのまま相手に叩き付けて、殺しにかかる化物だ…!!!」



上官「俺は…やっちまったんだ………!!」

上官「化かしちゃいけねぇ奴を化かしちまった」

上官「外しちゃいけないタガを外しちまった…!!!」

あきつ丸「……………」

☆今回はここまでです☆

憲兵の強さのイメージは、バキに出てくる武器持たぬゲバル軍団くらいです。

>>1です。
最初のポケモンはピカチュウではじめました。
ライチュウがすごく好きです。プクリンも好きです。

それでは更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-横須賀・埠頭-


あきつ丸「………やっと埠頭か」

あきつ丸(…提督殿は目覚めなかったでありますか)

あきつ丸(途中で目を覚まされて、暴れる事が無かった、と考えれば良いのでありますが…)

あきつ丸(………)

あきつ丸(どうすればいいのだろうか)

あきつ丸(口は拭ったものの、両手の骨折と血まみれの軍服は隠しようが無いであります)

あきつ丸(理由があったとしても、提督殿をこうしてしまったのは自分の責任…)

あきつ丸(………)


那珂「あきつ丸ちゃん遅いよ!!」

あきつ丸「!!」

千歳「あきつ丸!提督の泊地にデモ隊が来てるって!!」

あきつ丸「………えぇ」

那珂「………?」



那珂「…ねぇ」

那珂「………提督、どうしたの?」



あきつ丸「………」

あきつ丸「」スッ

提督「」

千歳「」

千歳「巻雲ちゃん!!」ガバッ

巻雲「はえっ?」

巻雲「」

那珂「てっ………!!!!」

羽黒「司令官さん!!!!」


あきつ丸「っ大丈夫であります!ちょっと気絶しているだけであります!!」

那珂「…あきつ丸ちゃん!!」

那珂「何でこんな事になったの!!!」



あきつ丸「ここに来る途中で、教官殿と遭遇しました」

あきつ丸「今回の一件は軍も一枚噛んでいたのであります」

あきつ丸「…それを知った提督殿は」

あきつ丸「教官殿を噛み殺そうとしたであります」

那珂「!!」

羽黒「司令官さん………!!」



那珂「何してたの!?」ガッ

あきつ丸「ッ!!」



那珂「提督の護衛につくって!!そういう話だったでしょ!?」

那珂「何でこうなったの!?何で!?何で提督がこんな…!!」

あきつ丸「………」


あきつ丸「…教官殿と付き人の武蔵は憲兵隊が拘束したであります」

那珂「!?」


那珂「…提督を利用したんだ」

あきつ丸「………」

那珂「敵として見るなとか言っておいて…騙したんだ」

那珂「しかも!よりにもよって提督に!!!」

那珂「騙した仕返しなら那珂ちゃんにすればいいじゃん!?何で提督に!?」



那珂「………ッ!!!」


那珂「…こうなるのが!!!」


那珂「こうなるのが嫌だったから!!!」


那珂「必死にやってきたのに!!」


那珂「っ何で…何でこんな事したのぉ!!!」




あきつ丸「…これ以外に武蔵を抑える方法が思いつかなかったであります」

あきつ丸「射程も装甲も、私達の誰よりも勝る武蔵を相手に、提督殿を守りながら勝つなんて…」



五十鈴「………そう、かも」
羽黒「できます」



あきつ丸「………え?」

羽黒「榛名さん、千歳さん、五十鈴さん、雲龍さん、巻雲さん、あきつ丸さん」

羽黒「那珂ちゃん」

羽黒「それと」




羽黒「私の『阿修羅』があれば」




羽黒「司令官さんを守りながらでも、勝てます」

巻雲「あしゅら…?」

雲龍「艤装の事かしら」

榛名「………」


千歳「…この話はもう止めにしましょう」

千歳「早く泊地に行かないといけないのよ?」

五十鈴「!!」

五十鈴「そうね!!早く行かないといけないんだったわ!!」

五十鈴「あきつ丸!!提督をボートに乗せて!!牽引もお願いできる!?」

巻雲「あきつ丸さんの艤装はそこに持ってきてます!!」

あきつ丸「了解であります!!」ガチッ




羽黒「あきつ丸さん、待って」

あきつ丸「え?」







ぱぁん、と何かが破裂したような音が鳴った。





あきつ丸が目の前に羽黒の顔があると気付いたのはその数秒後。

何が起こっているのか理解できなかった。

平手で打たれたわけではない。

ましては銃で撃たれたわけでもない。

だが、何かをされたと理解できたのは

あきつ丸の頭部左に在る空間を羽黒の腕が突き抜けているからだ。

左の頬に何かが掠める感触と後ろに引っ張られる感覚を知ったからだ。


「これでおあいこにしましょう?」

羽黒は悲しんでいる。同時に怒っている。

あきつ丸は困惑し、困惑が恐怖を助長する。

何をされたのか一切わからなかった。


憲兵隊の訓練を始めて見た時の感覚を思い出す。

彼らは訓練により技を磨き、艦娘に対抗する術を身に付けていた。

人知を超えた存在に立ち向かう為の、人知を超えた訓練。


あの時の困惑。

そしてその時の知識があるからこそ理解できる




恐怖




憲兵が艦娘の抑止力となれるのは、艦娘には無い、人の技があるからだ。

だが、もし、仮に

人の技を身に付けた艦娘を相手しなければいけなくなったら、どうなるのか。


今、あきつ丸の目の前にいる羽黒が

憲兵の敵となったら、どうなってしまうのか。





悲しみの表情を浮かべたまま、羽黒は腕を引いた。

「行きましょう、あきつ丸さん」

「は、はい」

「びっくりさせちゃってごめんなさい五十鈴さん」

「え、えぇ…」


礼儀正しく五十鈴に頭を下げる羽黒から、五十鈴やあきつ丸が知る気弱な重巡艦娘の印象は感じなかった。

今、彼女の奥深くに眠っていた気丈さが噴き出し、覚悟がそれを身に固めている。



まるで抜き身の刀





破き、砕き、破壊する


戦鎚のような覚悟。



何が彼女をそう変えたのか、那珂以外は誰も答えられない。

唯一誰もが理解していた事は




彼女が


那珂や提督と同じ


歪んでしまった化物だという事実だけだった。





・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-海上-


提督「………あ?」パチッ

羽黒「!!司令官さん!!」

提督「あ、羽黒?あ、あれ?ボート?」

提督「あきつ丸さん…ここ、海の上?」

あきつ丸「はい。今、泊地に向かっている所です」


提督「…アイツはどうした?」

あきつ丸「憲兵が治療をしています」

提督「死んでないのか!?」

あきつ丸「死なせるわけにはいかないんですよ。あの人から情報を聞きださなければいけないでありますから」

提督「ックソ!!」


那珂「提督、一体何があったの?」

提督「何が…って、お前こそ何があったんだよ!?その顔の痣!!」

那珂「あ、ちょっと転んで」

提督「んなコテコテの嘘なんか付くんじゃねぇ!!」

那珂「大丈夫だって。入渠すれば治るよ。それに」
提督「そういう問題じゃねぇだろ!!!」


提督「…わかった。何があったか、ちゃんと説明する。だからお前も何があったか教えてくれ」

那珂「………」

提督「なぁ羽黒からも、頼むよ」

羽黒「…那珂ちゃん」

那珂「ちょっとあの変態糞教官にレイプされかけただけ」

提督「!?」

那珂「落ち着いて大丈夫だから!!ほら、これもあるし」チラッ

那珂「逆に股間蹴り上げてやったよ」

提督「…お前、まだそんなもん(貞操帯)付けて」

提督「って事はお前もか、羽黒」

羽黒「…はい」

提督「はぁ~…」

提督「こんなもんに何の意味があるのさ」

那珂「少なくとも」



那珂「『私達が貴方のものである』って意味にはなるでしょ」



提督「俺は」
那珂「はい。次は提督の番」



提督「え」

那珂「何やったの?」

提督「ブン殴って、噛み付いてやった」

提督「ブチ殺すつもりでやったんだけど…何でいつもこうなるのかなぁ」


那珂「流石に殺すのはまずいでしょ」

提督「俺は殺すつもりだったんだ!!」

那珂「そんな事したら二度と泊地に戻れない!!」

提督「構うものか!!!」



提督「あいつが!!!」

提督「あいつらが!!!」

提督「何をやってきたか、教えられていないのか!!!」

提督「まだ小学校を卒業したばかりの子供が」

提督「自分の青春を投げ出してまで、国の為に戦って…」

提督「いつ死ぬかもわからない、死ぬかもしれないのに…!!」

提督「あのクソどもは!!それを自分の欲に利用しやがった!!!」



提督「ただ如月が気に食わない!!!」


提督「ただ艦娘が気に入らない!!!」


提督「ただ自分以外の何かを傷付けたい!!!」


提督「たったそれだけ!!それだけの為に!!」



提督「如月を地獄に突き落としやがった!!!!」



提督「くだらねぇ理論振りかざして、自分を正当化した気になって…!!!」

提督「子供を地獄に叩き落すのがあいつらのやり方かよ…!!!!!」




提督「俺は…俺は…そんな!!!」




提督「そんなクソどもの為に!この仕事やってんじゃねぇ!!!!!!!!」




提督「どうしようもねぇクズどもが…!!」

提督「何が運命だ!!!」

提督「何が定説だ!!!」


提督「死ね!!!!!!」

提督「死ね!!!!!!」

提督「死んでしまえ!!!!!!!」





提督「 お 前 ら が 代 わ り に 死 ね ! ! ! ! ! ! ! 」






「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
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「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
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「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
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「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ねぇぇ!」




「死ねええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」




「あいつを傷付けた奴は皆死ね!!」





「深海棲艦も!人間も!何もかも皆死ね!!!」




「死ね!!!みんな死ね!!死んじまえぇ!!!!!!!!!!!」





「ちくしょう!ちくしょう!!ちくしょうぉぉぉぉぉぉ!!!」





羽黒「司令官さん…」

那珂「…だから」

那珂「だからあのクソ教官を殺そうとした?」


提督「あぁそうだ!!!」

提督「あのクズどもがいる限り、あいつは…」

提督「どれだけ頑張ろうが」

提督「どれだけ功績を上げようが」

提督「地獄から抜け出す事ができねぇ!!!!」

提督「だから…」





 刺 し 違 え て で も 殺 し て や り た か っ た の に さ あ ・ ・ ・ ! ! !





千歳「!?」ゾクッ

那珂「………提督」





「 ふ ざ け た 事 言 っ て ん じ ゃ な い よ 」






雲龍(わぁお)

巻雲「」


那珂「私の」

那珂「私の言う事が聞けないっての?」

提督「………」




那珂「………忘れたわけじゃないよね」


那珂「『私達があなたのもの』である限り」


那珂「『あなたは私達のもの』であるって事」




提督「覚えてるよ」

提督「だから」

提督「俺はお前達の為なら何でもする」

提督「死んで欲しいって言うなら死んでやる」



那珂「誰もそんな事は言っていない!!!!!」

提督「だけど今!!!!

提督「ここで命張らなきゃあいつは一生地獄だ!!!!!!」



提督「俺はこれからあのクズどもを殺して回らなきゃいけねぇ」

提督「今回のクソッタレな計画を思い付いたキチガイも」

提督「それに便乗した大本営のクソジジイどもも」

提督「またそれに便乗した殺人中毒のサイコパスどもも」


提督「裏にどんなキチガイカルト宗教が隠れてようが知ったこちゃあねぇ」

提督「俺がこの手でブッ殺してやる」

提督「ここが、俺の命の使い所だ」



千歳「…無茶よ、そんな事」

提督「わかってますよ。全員殺すのは数が多すぎるし、俺一人で全員殺すなんて無理かもしれない」

提督「でも最悪4、5人バラバラにでもしてやりゃいいんだ」

提督「それであいつらは大人しくなるはずだ」

提督「ああいうクズは、自分は傷付きたくねぇ正真正銘のクズばかりだからな」

提督「途中で俺が死のうが、『そういう流れ』ができちまったら」

提督「もう二度と如月を悪く言う事はできやしねぇ」



提督「だから…如月を救う為には、殺すしかない」


提督「俺が死ぬまで…何人も何人も何人も殺して殺して殺して…!!」


提督「あいつらに…わからせてやらなきゃいけねぇ…!!!」


提督「それ以外に…如月が助かる道は…無い…!!」



五十鈴「…その為の犠牲になるって言うの?提督が?」

提督「俺じゃなきゃ駄目だ」

提督「他の誰かの手を汚させるわけにはいかない」

提督「もう既に手を汚した」

提督「人殺しの俺が、やらなきゃいけない」

提督「死んでいった如月の代わりに…!!」

提督「俺が…!!!」





 一 人 で も 多 く の ク ズ を ブ チ 殺 し て や る ん だ ・ ・ ・ ! ! !






巻雲「司令官、様………!!」

あきつ丸「………」

あきつ丸(弾が出なかったとはいえ、『他人を殺すつもりで』引き金を引いてしまった事が…)

あきつ丸(提督殿を…化物に変えてしまった…)

あきつ丸(…友提督殿…申し訳、ありません…)ググッ

あきつ丸(自分は…!!)




「………提督さん」


榛名「それで、気は済みましたか?」





巻雲「は、榛名さん!?」

五十鈴「ちょっ…そんな事言ったら…!!」

提督「…何、だって?」


榛名「そうやって誰かのせいにして」

榛名「できもしない妄想を口にして」

榛名「それで、少しは気が楽になりましたよね?」



榛名「…もう、それで止めにしませんか」



提督「…榛名さん。あんたが何を言ってるのかわからない」

榛名「わからないというのならどうするのですか?」

榛名「本当に如月ちゃん達の提督を全員探し出して殺しますか?」

榛名「如月ちゃんを陥れたテレビの人達も全員殺しますか?」

榛名「日本も海外も、一人で回って殺していきますか?」

榛名「提督も、市民も、憲兵も、深海棲艦も。全て、あなた一人で?」



提督「あぁ…殺したい!!」


提督「無理なのはわかってる!!でもできる事なら全員俺がブチ殺してやりたいんだよ!!!」


提督「指を一本ずつ切り落として!!両手両足もぎ取って!!腸を引きずり出して!!」


提督「あいつらがやった事を!!恐怖を!!苦痛を!!!かみ締めさせながら!!!」


提督「殺してやりたい…!!!」


提督「そうでもしなきゃなぁ!!!納得できないんですよ…!!!!」


提督「他人を陥れておいて、自分だけがのうのうと生きているなんて…!!!!!」


提督「そんな不条理…あっちゃならないんですよ…!!!!!!」


提督「だから教えてやるんだ!!!」


提督「てめえが奪っていった命がどういうものなのかを…!!」


提督「てめえが作ったルールがいかにイカれた代物なのかを…!!」


提督「てめえと俺の命を引き換えに…!!叩き込んでやる…!!!」


提督「地獄の底まで…引きずりこんでやる!!!!」


榛名「………」



榛名「提督さん、あなたは間違っていますよ」





提督「間違っている!?」



提督「あいつらは死ななきゃならねぇんだよ!!!」


提督「そうじゃなきゃ、そうじゃなきゃなぁ!!」


提督「如月は…!!一生地獄の中で生きていかなきゃならねぇ!!」


提督「あいつらが!!如月に悪意の目を向けている限り!!!!」


提督「如月は、いつまでも…!!!」


提督「地獄から抜け出す事ができない!!!」




提督「だから如月を助けるためにはなぁ!!!!」


提督「あいつら殺すしかないだろうが!!!!」




提督「ブッ殺してやる…!!!」

提督「俺が、あのゴミクズどもを…!!!」




提督「死んでいった如月達の代わりに…!!!!!」





「この!!!!」



「馬鹿野朗ォ!!!!!!!!!」



金属がぶつかり捻じ曲がる音と共に、船が空に舞い上がり、回転し、提督を振り落とす。

提督はしがみつく事すらできず、無抵抗のまま海に叩き込まれた。


酸素が欠乏する海の中、何が起こったかも理解できない意識の中

酸素を求めて反射的に動く身体が彼を浮かび上がらせ、海面まで辿り着く。

だが酸素が十分に行き渡る事無く、次の災難が待ち受けていた。


胸倉を掴まれ引き上げられる。

揺さぶられる頭を必死に制御して、叫び声を一字一句逃さずに聴いていく。





「一人の女の子も救えない奴がぁ!!!!」









「偉そうにぃ!!!!」









「 御 託 並 べ て ん じ ゃ ね ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! ! ! ! 」









頭に酸素が行き渡り、状況を理解した提督は困惑した。

自分の胸座を掴んでいるのは、いつも礼儀正しく朗らかな、榛名だったからだ。






提督「……………!!!」

榛名「っはぁ…はぁ…はぁ…!!」

提督「………」

榛名「………」

榛名「…提督さんにとっての艦娘って何なんですか?」

榛名「ただの兵器でしか無いんですか?」

提督「そんなわけがあるか!!!!」

榛名「じゃあ何で如月を見れないんですか!?」

提督「!?」



榛名「あなたの!!泊地の!!如月を!!!何で見れない!!!!」

榛名「あなたは!!!あなただけの、如月を通して、『駆逐艦如月』しか見えていないんじゃないんですか!!!」

提督「……………」



榛名「答えろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」



提督「…そんなわけが、あるか!!!」

提督「でもうちの如月だって、如月型艦娘の一人だ!!」

提督「如月型艦娘全体が悪意の目を向けられていたら、あいつだって幸せになんてなれない!!!」

榛名「だから殺す!?だから無駄死にしに行くって言うの!?」

提督「無駄死にじゃねぇ!!!」


榛名「 無 駄 な ん だ よ ! ! ! 」

榛名「 も う 遅 ぇ ん だ よ 何 も か も ! ! ! ! 」



榛名「4、5人殺せば考え直す…!?」


榛名「あの人達に…『そんな頭がある』と『本気で思ってる』の!?」

榛名「あの人達は…自分と同じ考えの人間が何人死のうが…」

榛名「そんな事も笑って済ませる…!!」

榛名「いや!!むしろあなたを煽って如月狩りを今以上に進めていく!!!」


榛名「そういう奴なのよ!!あいつらは!!!!」

榛名「もうどうしようもない!!!!」



榛名「友提督でも!」



榛名「元帥でも!」



榛名「大本営でも!!」



榛名「神様にだって!!!!この状況は変えられない!!!!!!」



榛名「人の悪意には…どんな手を使っても勝つことはできない…」


榛名「誰が何を言ったって!!消す事なんてできない!!!」


榛名「悪意に満ちた、人の心を変えることなんてできやしない!!!」


榛名「悪意は…人が、一人残らず死ぬまで…一生消えない…」


榛名「いや…人が死んでも、悪意だけは生き続ける…!!」


榛名「あなたが相手しようとしてるのはそういう奴なのよ!!!」


榛名「だから…絶対に勝てない…!!!」


榛名「立ち向かったって…無駄死にするだけで終わる…!!!」


榛名「だから…だから…」




榛名「止めてください…」





提督「……………!!」バッ

羽黒「司令官さん!」ガシッ


提督「………だったら…!!!」

提督「だったら俺はどうしたらいいんだよ!?!?」


提督「殺しても…!殺しても!!殺しても!!!」


提督「如月を助ける事ができないっていうんなら!!!」



提督「 ど う し ろ っ て い う ん だ よ ぉ ! ! ! ! ! ! ! 」



提督「あいつは、これから…ずっと…下手したら…一生…」

提督「この事を引きずって生きていかなきゃいけないんだぞ…」

提督「自分のせいでもない…自分達のせいでもない…」

提督「なのにこんな…!こんなの…呪いだ…!!」

提督「それを消してやりたい…!!何とかしてやりたいんだよ…!!」

提督「このままずっと惨めな思いをさせなきゃいけないなんて…嫌だ…!!!」

提督「そんなのは嫌だ…!!嫌なんだ…!!」

提督「あいつの笑顔が消えるなんて…嫌だ…!!」

提督「俺は、あいつの笑顔が好きなんだよ!!!」

提督「あいつには笑っていて欲しいんだよ!!!」

提督「なのに!!!!」

提督「殺したって!!!何にもならないんだったら!!!どうしろっていうんだよ!!!!」

提督「何をどうしたらいいっていうんだよぉ!!!!」



提督「もう…無理だってのかよ…!?」

提督「もう…どうにもならないのかよ…!?」

提督「あいつはずっと!!一生!!」

提督「あんなふざけたキチガイどものせいで!!!」

提督「一生辛い思いしなきゃいけないのかよぉ!!!!」



提督「そんなの…!!ぞんなのなぁ…!!!」ポロポロ

提督「そんなの…って…!!!ないだろぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」






千歳「でも」


千歳「あの子の傍にいてあげる事はできるでしょう?」





提督「!?」

千歳「ずっと辛い思いをする事になったとしても、誰かが傍にいてくれるなら」

千歳「心の痛みっていうのは、凄く楽になるものよ」


千歳「如月ちゃんは、あなたの事を愛しているわ」

千歳「人として、異性として、心の底から愛している」

千歳「そんなあなたが、居なくなったら、もう二度と会えないと知ったら」

千歳「そしてそれが自分のせいだと知ったら」

千歳「遺された如月ちゃんは…もう二度と立ち直れなくなる」

千歳「あなたが言う悪意に負けてしまう」

千歳「本当に、あの子は笑えなくなる」


提督「………」

千歳「わかってる。提督は、優しい人だから…」

千歳「本気で…如月ちゃんのこれからの事を考えているのよね」


千歳「でもあの子の事を大切に思っているのなら、ちゃんと向き合ってあげて」

千歳「あなたの事を見ている、今も生きている、『一人の女の子』の方を向いてあげて」

千歳「そうしたら、あなたが今ここで命を投げ捨てるよりも、如月ちゃんはずっとずっと幸せになれると思うわ」



千歳「『あなたの如月ちゃん』は『あなたにしか救えない』」



千歳「それは那珂ちゃんも、羽黒さんも、友提督も、私達も、他の誰にもできない」

千歳「あなたにしかできないの」

千歳「代わりは、誰もいない」

提督「………」



五十鈴「どうするの?」

五十鈴「先に言っとくけど、五十鈴は『テロリストの護送』なんてしたくないわよ」

五十鈴「でも、『友提督の友達の護送』なら全力でやってあげるわ」

五十鈴「対潜も対空も、五十鈴に任せて」

巻雲「提督様!!急いで行けばまだ間に合うと思います!!」

巻雲「巻雲も、全力で提督様をお守りしますよ!!」

雲龍「邪魔する奴は艦載機一機でダウンよ」

あきつ丸「…提督殿」

那珂「提督」

羽黒「司令官さん」




提督「………俺は…」


提督「行きましょう」


提督「…じゃなかった」フルフル


提督「帰りましょう」


提督「俺の泊地に」




千歳「………うん!!」

榛名「了解しました!!」



提督「…で、ボートなんだけど」

提督「ひっくり返したらまた使えるかな」

ボート「」マタテンプクカヨー

榛名「………」

あきつ丸「やるだけやってみるであります」

那珂「そうだn」





ボート「ひでぶ!!」ズボム!!!





巻雲「ふぉ!?」ビクゥッ

提督「………」

榛名「………」

羽黒「………」

那珂「………」

提督「那珂。肩貸してくれね?」

那珂「いいよ」

榛名「あ…あの、提督…さん」

榛名「ごめんなさい!!」

提督「いいですって」


提督「…お陰様で目が覚めたんだから」

提督「ありがとうございます…千歳さんも」

千歳「やだそんな…」



千歳「可愛い義弟の為だもの」




あきつ丸「えっ」


提督「えっ」


千歳「えっ」




千歳「…千代田に手、出したって…聞いたんだけど」

提督「どっから流れたその情報!?」

千歳「千代田本人から」

提督「何やっちゃってんのアイツー!?」ガビョーン

那珂「何?お酒に酔ってロストバージンさせちゃった話するの?」

提督「 お ま え も 」ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

千歳「あら」


五十鈴「さ、最低!!やっぱテロリスト!!こいつエロテロリスト!!」

提督「義姉さんごめんなさい!!」

提督「友提督ごめんなさい!!」


提督「 お っ ぱ い ご め ん な さ い ! ! 」

五十鈴「おっぱいじゃねーよ!!!」


提督「僕を死刑にしてください!!」

五十鈴「いい覚悟ねこのエロテロリスト!!」


五十鈴「 姉 の ブ ル マ と 妹 の お っ ぱ い は 私 が 守 る わ ! ! ! 」

那珂「いや本体守ってあげなよ」

羽黒(本体って何だろう)


オマエハイスラデボコルワ… イスズチャンハハイスラッテヨリパイスラダヨネ ウルサイキガチル


あきつ丸「………」

雲龍「………」

巻雲「………」

雲龍「愛を確かめたいエゴイストは君の奥まで辿りつきたいのね」

巻雲「何を言ってるのかよくわからないよ」

雲龍「ググれ」

巻雲「ググります」




雲龍「それでy………!!」ピクン



雲龍「敵機発見」

千歳「!!」

五十鈴「!!」

提督「敵?」

榛名「数は?」

雲龍「数は…艦載機が90くらい」

千歳「でも、敵艦が見えない…?」

五十鈴「アウトレンジからの攻撃?」

五十鈴「バカね。万全じゃなくても沈められると思ったのかしら」

榛名「ですが、全力で行かせてもらいます」

千歳「羽黒さん、那珂ちゃん、提督さんをお願い」

千歳「ここは私達だけで片付けます」

榛名「時間がありませんので速力はそのままで行きましょう」

羽黒「わかりました。お願いします」




千歳「やるわよ、榛名」

榛名「えぇ」

榛名「待ちに待った反撃の好機」

榛名「邪魔するものは!誰だろうと!!」




「私達が許しません!!!」





巻雲「ど真ん中!撃ち抜いちゃいます!!」


五十鈴「対空戦も五十鈴の十八番よ。一機残らず落としてあげる」


雲龍「人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて地獄に落ちなさい」


あきつ丸「不肖あきつ丸、烈風にてご助力するであります」


千歳「私達がいる限り、提督さんはやらせはしないわ」


榛名「パラオ特別鎮守府第一艦隊!!旗艦榛名!!!」

榛名「全力で!!参ります!!!」




榛名「 全 艦 ! ! ! 」


榛名「  反  撃  開  始  !  !  !  !  」




☆今回はここまでです☆

ピカピカーァ

>>1です。
イベントが近付いていますが、皆様は資源資材の貯蓄や練度の向上は順調でしょうか。
こちらはパツキンのねーちゃんがあともうちょいでdreiになれそうです。

それでは、短めですが更新分の投下を始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





「ックソ!!」


「あぁ!!こっちもやられた!!」


「ふざけんなよ…」


「何なんだよあいつら」


「勝てるわけねぇだろこんなの!!」


「あと何機残っている!?」


「ふっざけんなよこいつら…」


「何でこれだけいて一人も殺せない!?」


「このままじゃ…」


「………!!」


「………!!」
「………!」
「………」



社長「」ガチャ

部下1「社長………」

社長「どうなった?」

社長「殺せたのか?」

部下1「それが………その」



部下1「全滅です」



社長「え?」

部下1「90機の深海棲艦の艦載機…」

部下1「に似せたドローン部隊…」

部下1「全滅しました」



社長「嘘だろ!?」

社長「たった3分だぞ…!!」

社長「たった3分で…90機のドローンが全滅…!?」



社長「化物…いや!待て!!」

社長「あいつらはたった2隻と1人だろうが!?」

社長「何で殺せない!?」

部下1「それが…護衛の艦隊がいるみたいです」

社長「護衛の艦隊ぃ!?そんな話は聞いていないぞ!!」

社長「一体どこのどいつだ!こんな事に首を突っ込んだ奴は!!」

部下1「………」



部下1「…パラオの英雄、友提督です」

社長「は?英雄?」


部下1「………」

部下1「多くの艦娘が沈んだと言われるアイアンボトムサウンドを『一切の犠牲を出さずに』突破し」

部下1「AL/MI作戦では深海棲艦の本土奇襲を予想し防衛に成功」

部下1「その他様々な功績から特進を繰り返し」

部下1「ついにはパラオの『特別鎮守府』に着任した事から付いた渾名です」


社長「特別鎮守府?」

部下1「パラオには『鎮守府』よりも小規模な『泊地』しかありません」

部下1「深海棲艦の狙いは大本営のある日本の本土…他の土地はその為の足がかりだと考えられています」

部下1「襲撃の度合も戦力差も、日本に向けられるものと、日本が防衛拠点を置いている海外に向けられるものでは大きな差があります」

部下1「だから、日本本土には規模の大きい『鎮守府』を配置しています」

部下1「逆に海外には『泊地』しか配置されていません。それで十分だと判断されているからです」

部下1「過剰な防衛力は必要無い。必要の無い防衛力に貴重な資金も資源も割けない。それが大本営の考えです」

部下1「普段は常駐の艦娘で対応し、万が一大規模の襲撃があった際は外部からの救援を呼ぶ、というつもりらしいです」


部下1「にも関わらず」

部下1「友提督は『パラオ』で『特別』に『鎮守府』を任されています」

部下1「…例外中の例外でしょう」

社長「それを任せるだけの価値があると…つまり、大本営からの信頼も厚い、相当な実力者だと」

部下1「…恐らくは、そういう事でしょう」



部下1「彼の傍にはいつも二人の秘書艦が付いている事でも有名です」


部下1「軽空母千歳型一番艦娘、千歳」

部下1「高速戦艦金剛型三番艦娘、榛名」

部下1「二人ともアイアンボトムサウンドを切り抜け生還した…歴戦の艦娘です」


部下2「ちょっと待て!今あそこに居るのは!!」ガタッ



部下1「…そうですね。榛名型艦娘もしくは千歳型艦娘を旗艦とした…恐らくは第一艦隊…」

部下2「じゃあ、あそこにいる奴らは!!」

部下1「パラオ特別鎮守府…友提督の誇る最強の戦力…だと思います」




部下2「なんてこった…!!」

部下2「散々お膳立てして孤立させた駆逐艦娘1人ならともかく…バケモン6人!?」

部下2「そんな奴らにこんなラジコン飛行機で勝てるわけ無いだろ!!」




社長「いいや…殺せる…殺せるさ…!!」

部下1「社長」

社長「何もあいつらを殺さなきゃいけないわけじゃない」

社長「英雄だかドコモだか知らないけど、無視してやればいいんだ」

社長「僕達の狙いは…」

社長「あの特務提督一人!!」

社長「要はアイツ一人殺せばいいんだよ!!」

部下2(何言ってやがる、今の90機使っても殺せなかったんだぞ!?)

部下2(他にどんな手段があるっていうんだよ!?)




社長「船に仕掛けた爆弾を起爆だ!!」バッ

社長「あいつの乗っている船を爆破してやれ!!」

社長「結界の無い生身の人間なんて、それで木っ端微塵だぁ!!!」




部下1「………」

部下2「………」

社長「あ?」



部下1「社長」

部下1「…それが…」

部下1「提督は船に乗っていないみたいです」

部下1「艦娘にしがみ付いて移動しています」

社長「…は?」






社長「 は あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ? ! ? ! ? 」






社長「っざっけんなよ!!何考えてやがる!!ざけんじゃねぇぞ!!!キチガイ野朗が!!!」バァン!!

社長「あぁぁああ!!イライラするぅ!!!」

社長「意味わからねぇ奴は出てくる!!爆弾は使えない!!!」

社長「とっとと死ね!!」

社長「死ねっつってんだよ!!!」

社長「 ク ソ が ! ! ! ! 」

部下2(うわっ………)

部下1「………」

部下1(…ん?これは………)



部下1「あ、あの…社長」

社長「あぁあ!?!?」



部下1「今大本営の方から連絡が入りました」

部下1「武蔵の随伴艦隊が追撃をかけています」

社長「武蔵の随伴艦隊?武蔵はどうしたんだよ武蔵は!!」

部下1「それが、連絡が取れなくなっているみたいです」

社長「ックソ!!何やってやがる!!!」

社長「で、使えるのかそいつらは!?」

部下1「えぇ…まぁ…」

部下1「教官さん曰く、『寝取ってきたコレクションの中でも特に練度の高い連中を用意してきた』らしく」

社長「でもあいつらだって『パラオの英雄』なんだろう!?勝てるのかぁ?」

部下1(それでも駄目なら、もうどうしようもないだろ…)

部下1「せ、性能は社長もよくわかっているのが揃っているかと…」

社長「あ?」

部下1「こちらは教官さんから頂いていた資料です。今回の作戦で使う艦娘の戦力表です」

社長「はっ…」パラッ

社長「…あーあーあーあーあー、こいつらか」

社長「これとこれとこれ、あの馬鹿どもの鎮守府でもよく見た顔だ」

部下1「正確にはあの鎮守府にいたものの同型艦娘で、今回の出撃した艦娘はあの鎮守府の艦娘よりも練度ははるかに高く」
社長「そんな事は聞いてねぇ」

部下1「………」

社長「じゃ、進捗だけ報告して来い」ポイッ

部下1「あ…はい。お疲れ様です」

社長「………」ガチャバタン



社長「………」ツカツカツカ

社長「チッ…何で僕がこんなイライラしなきゃいけないんだ」ブツブツ

社長「もう僕の勝利は確定しているんだ…」

社長「あんなガキ(提督)一人いようがいまいが関係ない…」

社長「…僕からしてみりゃ特務提督なんてどうだっていいんだ」

社長「なのに、あいつらが………」




「彼女の所属する泊地の特務提督を殺してください」



「あれ(特務提督)は」



「我々にとっても危険な存在なんです」




「今の海軍の要である艦娘にばかり目が行きがちなんですけどね」

「艦娘単体なら正直言ってそこまで脅威じゃないんです」

「海の上を移動できる?」

「特別な艤装で砲撃ができる?」

「そんなものは大したものじゃありません」

「私達が本気になって手段も選ばなければ、一週間ちょいで全員消せます」

「まぁ艦娘だけだったら、私達が何もしなくてもいつかボロが出て全滅すると思いますけどね」


「貴方が作った番組がそれを証明していましたよね」

「提督と艦娘の関係が必要最低限レベルまで希薄になった鎮守府…それがあの鎮守府」

「提督は艦娘とのコミュニケーションを極力避け」

「直接指揮も取らずに艦隊編成から指揮まで艦娘任せ」

「その結果は、まぁ、あんなゴミみたいなものですが」

「やたらご執心なのがいたみたいですけど、あんなの逆効果ですよ」

「全体的に見てみれば、上下の繋がりも左右の繋がりも、希薄中の希薄」

「傍から見てても嫌悪感しか感じませんでした」

「正直あんな負債みたいなのを抱えなきゃいけない海軍に同情しちゃいますよ。そこだけは」


「でも」

「提督と艦娘」

「この二つが強く、本当に強く結びついてしまった時は注意しなければいけません」

「どういう原理で、あんなお飾りみたいなのが役に立ってるのかは知りませんが」

「最悪の場合、こっちの予想を大きく越えてくる」

「アイアンボトムサウンドの時のように…」ギリッ…



「だから殺してください!」


「いいえ、殺しなさい。絶対に殺しなさい!」


「どんな手段を使ってでも殺しなさい!!」


「人1人死んだくらい、貴方ならごまかせますよね?」



「 殺 り な さ い 」


「 あ な た に 、 拒 否 権 は 、 な い 」



「私達がやれと言った事に従えないっていうのでしたら」



「死にますか?」



「私はそれでも構いませんが?」


「あれから随分年月が経ちましたけど」


「あなたを恨んでいる人は沢山いるんですよ」


「私はそれでも構いませんけど」




「人として死ねるとは思わないでくださいね」





「殺りますか?それとも死にますか?」

「でもここで死んだら、あれだけ恨んだキサラギ社にも、しかえしできませんよ?」

「私としては殺った方がおすすめだと思いますよ」

「殺りますか」

「えぇ…それでいいんですよ」



「…じゃあ、話を進めちゃいましょう」

「戦艦大和って知ってます?宇宙戦艦じゃないですよ」

「あれの二番艦、って言っても艦娘ですけど」


「あれをこっちに引きずり込みました」


「今回協力してくれる大本営さんの方からも数人艦娘を出してくれるそうです」

「後は大本営さんと相談してください」



「え?私達ですか?」

「外から様子を見てますよ」

「やるわけないじゃないですか」

「万が一足が付いたときに貴方達の巻き添えを喰うのはごめんですよ」

「イメージって、大事ですからねぇ」クスクスクスクス



社長「クソッタレが!!!あのブス!!!!!調子に乗りやがってあのブス!!!!!!」ガスッ

社長「あいつらはやたらビビッてたけど、あんなんのどこにビビる要素があるって言うんだ!?」

社長「僕には関係ないね…どうだっていい!!」

社長「僕が手を下さなくたってどうせこの一件で特務提督も全員終わりさ!!!」

社長「だから殺せないなら殺せなくたってそれでいい…!!」

社長「随伴艦隊とかいうのは、時間を稼げばそれでいい…!!」

社長「時間だけ稼いでくれりゃ…その間に…」



社長「キサラギ社員のフリをした人間が」

社長「如月の娘を回収し…」

社長「キサラギ社に身代金だの何だの、色々要求してやる…!!」



社長「娘を見殺しにするようなら、また飛ばし記事だの何だので社会的に殺してやる」

社長「あいつが素直に用件にしたがえばそれでいい…!ケツの毛まで毟り取ってやる!!」

社長「どっちにしたってアイツに残るのは、腹が膨らんだ薬漬けのガキ一人って算段だ…!!」



社長「如月ィ…!!」

社長「お前はこの手で地獄に叩き落してやる…!!!」

社長「神であるこの僕を散々馬鹿にして、否定した…その罪を…!!!後悔させてやるんだ…!!!!」

社長「僕が味わった地獄…!!それ以上の地獄の底で…!!!」



「地獄の底で…後悔して後悔して後悔して後悔してェェェェェェ!!!!!」



「 僕 に 詫 び 続 け る 運 命 な ん だ よ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ! ! ! ! ! ! ! 」







「 娘 と も ど も ォ ォ ォ ォ ォ ! ! ! ! 」





「 地 獄 に ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ! ! ! ! ! 」





「 堕 ち ろ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ! ! ! ! ! 」 





☆今回はここまでです☆

艦娘だって人間なんです。あとの事は察してください。

>>1です。皆様イベントの進捗はいかがでしょうか。
こちらはパツキンのねーちゃんが頑張って、パツキンのねーちゃんがナマカになりました。
ですがここからが本番であり、イベント期間中にパツキンのねーちゃんをナマカにしたいのです。

続きはパツキンのねーちゃんがナマカになった後、もしくはイベント終了後に投下します。
11月中には完結させたいです。

>>1です。
夏イベントお疲れ様でした。
皆様のご理解ご協力のお陰で、パツキンのチャンネーがナマカでわっちアゲアゲです。

それでは、更新分の投下をのんびり始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





雲龍「偵察機からの入電。敵艦無しね」

五十鈴「じゃあ本当にあれで終わり?」

あきつ丸「まるで手応えが無かったでありますな…不気味な」

榛名「先を急ぎましょう。この後何が来たとしても、突き進むしかありません」

千歳「そうね」

巻雲(…何だろう、凄く嫌な予感が…)




巻雲「!!」ビクッ

巻雲「!!!」バッ

巻雲(…あれは!!?)




「提督様、危ない!!!」





叫び声と共に巻雲の魚雷発射管から魚雷が放たれる。

提督を支える那珂の背後を覆うように突き進む魚雷は

不意に現れた8本の雷跡の最先端に激突し、爆音と水柱を上げた。


「本命はこれ!?これって、酸素魚雷!?」

那珂が悲鳴に近い驚きの声を上げる。

「この距離からの雷撃…まさか甲標的!?」


千歳の分析の成否を判断する間も無く、次の脅威が降り注ぐ。


「提督殿!!!」


あきつ丸が叫び、那珂を押しのける。

那珂が居た場所、今あきつ丸が居る場所に砲弾が降り注ぐ。

落下を続ける砲弾はあきつ丸の結界の層を突き破り、彼女の身体に直撃した。

砲弾の衝撃と結界に掛かかった負荷によりあきつ丸の艤装が悲鳴を上げ爆発する。



「あきつ丸さん!!!」

「大丈夫であります…まだ、艤装は生きているであります」

爆発の衝撃であきつ丸の服の所々が弾け飛び、焼かれている。

その程度で済んだのは彼女の艤装が展開する結界の恩恵であるが、


何一つ大丈夫ではない。


彼女の身を守る為に全力で展開された結界による負荷が、艤装の命を確実に削っている。

あと一撃でも貰ってしまえば、彼女の艤装は、彼女の結界は完全に機能を停止する。

そうなってしまえば艦娘は、ただの人とそう変わらない。


彼女は続く攻撃に耐えられずに、死ぬ。

装着者の生体反応が無くなる事で完全に機能を停止する艤装は浮力すらも失い、装着者を海の底へと引き擦り込む錘と化す。



即ち、轟沈である。




緊張の糸がギリギリまで張り詰められる中、那珂達のものでも榛名達のものでも無い艦娘の声が聞こえる。


千歳の分析は正しかった。

だがそれで事態が好転するわけではない。


「チッ…今ので終わってくれればよかったのに」

「ま、そういう事もあるよね」


不快感を露にする神経質な声と、緊張感を感じられない無気力な声。


「弱すぎる。パラオの英雄の艦隊らしいが、足手まとい一人いるだけでこの程度か」

「だが、やはり殴り合いにまで縺れ込むか。そうでなくては私がいる意味が無い」

「ここから逃げられると思わないでよネ!私は食らいついたら離さないワ!」


堂々たる気丈夫さを感じられる声二つに続く、場違いなほどハイテンションな声。



「さ………」

「最悪だ………!!」




編成にして

重雷装巡洋艦娘三、戦艦娘二

対して

戦艦娘一、正規空母艦娘一、軽空母艦娘一、重巡洋艦娘一、軽巡洋艦娘ニ、駆逐艦娘一、強襲揚陸艦娘一


数ではこちらが勝るものの、一番出会いたくなかった最悪の相手と言える。

火力は圧倒的に向こうが上。

練度は恐らくこちらと同等かわずかに下回る程度。

統一された艦種。


こちらの一人は既に手負い、もう一人はまともに戦えない。

そして、護衛対象の提督は艦娘の攻撃を一撃たりとも耐えられない。

直撃でなければ、那珂の結界で提督を守れる。

だが直撃ならば耐えられない。

万が一戦わなければいけないのであれば

間違いなく、狙いを集中させるだろう。それを守らなければいけない。

合わせて120門の酸素魚雷と、圧倒的な火力を誇る戦艦の主砲から、である。

相手側の戦艦娘の一人は、榛名の35.6cm連装砲よりも大型の主砲、41cm連装砲とそれに耐えられる装甲を持ち合わせている。

それを掻い潜り、場合によっては受けざるを得ない事もあるだろう。

その直撃を受けて平然としていられる艦娘は、こちらの艦隊には居ない。


万が一戦わなければいけないのであれば

こちらにとって圧倒的に不利な状況である事は明らかだ。



「いきなり魚雷と砲撃って、どういうつもりなのよ!?あなた達正気!?」

「正気さ」

躊躇無く言い放たれた言葉に、五十鈴と榛名が不快感を露にする。

不快感と焦りが混ざり合い、怒りと化して言葉の端々に現れる。

「まともな奴はいきなり魚雷ブッ放したりはしないわ…!!」

「どういうつもりなのか、説明して頂けませんか」

眼帯の重雷装巡洋艦娘が彼女達の怒りを鼻で笑い、至極冷静に言い放つ。


「どういうつもりも何も」

「俺達はそこの提督を殺すよう命じられている」

「これは立派な作戦行動だ」


「教官の差し金か」

つい数時間前まで自分を殺そうとすらしていた武蔵を思い返しながら提督が呟いた。

「武蔵が言ってたな。生かして帰すくらいなら殺してしまえってな」



不快感と焦りと戸惑いが混ざり合い、徐々に腸を煮え滾らせるかの如き怒りと共に言葉を強めていく。


「何なんだよ、お前ら」

ずっと疑問に思っていた事を叩き付けるように叫ぶ。

「あいつが何考えてるのか知らないのか?」

「艦娘をどう思ってるか知らないのか?」

「なんであんな奴の味方に付いてるんだよ!?」


「艦娘が指揮官の立てた作戦を遂行する事に何の不満がある」

冷静に突き付けられる事実が提督の怒りを助長する。

そんな事はわかっている。それでもわからない事がある。


「あいつが指揮官のタマかよ!!」

「あいつは!!!」

何故、自分達の身を貶めるような男に仕えるのか。

「あいつは艦娘を蹴落とそうとしてるんだぞ!!」

叫ぶ。

「お前達なんて邪魔者としか思ってない!!!」

叫ぶ。

「あんな奴の味方をしたってなぁ!!!何にもならねぇんだよ!!!!」

肺の空気を全て吐き出すかのように叫ぶ。



直後、空気が不足した肺と、最後に残った理性が燃え盛る怒りを心の臓に引きずり込み閉じ込める。

閉じ込められた怒りの代わりに主導権を握ったのは紛れもない彼の本心。


「何であんな奴の味方するんだよ」


「頼むから邪魔しないでくれよ」


「俺は如月を助けたいんだ」


「邪魔しないでくれ」


「頼むから」


弱弱しく、勢いも無く、情け無い、命乞い。

それでも如月を助けたいという意思だけは捨てられなかった。

あの夜、見る事ができなかった彼女の姿が忘れられなかった。


理想という名の、偏見という名の理性の扉は彼の怒りを完全に閉じ込めた。

那珂に支えられながら、不恰好ではあるが、頭を下げて懇願する。



頼むから。


わかってくれ。


わかるだろう?


同じ艦娘なんだ。


お願いだから。


本当に、お願いだから。


見逃してくれ。







「如月?」





「あんな





ゴミみたいな駆逐艦娘なんて 





 ど う で も い い ヨ 」










脳髄を叩き切られるかのような感覚が走った。





顔を上げるが言葉が出ない。

言われた事が理解できない。

お前は何を言っているんだ。


脳細胞に記録された姿が目の前の戦艦娘と重なり、ブレる。

そんな筈が無い。

お前がそんな事を言う筈が無いだろう。

お前はいつもハイテンションで、皆のムードメーカーで、時にはリーダーであった筈だ。


脳細胞に記録された姿が目の前の重雷装巡洋娘達と重なり、ブレる。

そんな筈が無い。

お前達はこの状況でそんな顔をする筈が無いだろう。

お前はいつもマイペースだけど、本当は誰かを助ける事に躊躇しない事を俺は知っている。

お前はいつも姉妹艦娘ばかり気にしているように見えるけど、本当は誰かを失うのを何より恐れる、優しい女の子だって事を俺は知っている。


そんな筈が無い。

俺が

俺が知っているお前達は

そんな筈が無いだろう。


脳髄に走る鈍い痺れが言語機能を麻痺させる。

言葉になれなかった思考が漏れ出した電気のように弾かれて消える。


だって


だって


お前は


艦娘は


お前達は


そんな





「お前が何と言おうが私達の指揮官は教官だ」

「イエス!」

「私達はトゥルーラーブを教えてくれたキョーカンのモノだからネー!!」

「俺達は教官の命令でお前を殺す」

「それで如月がどうなろうが知った事じゃない」

「俺達は痛くも痒くもないからな」

「ちゃちゃっと殺してご褒美貰おうねー、大井っち」

「わ、私はあの男が北上さんに変な事しない様にしてるだけで!!」

「そんな事言って」

「大井っちも、提督なんてどうでもよくなるくらい好きなんじゃん」

「教官…………が」



へらへらと口から出る言葉と、そこから読み取れる事実に神経を逆撫でされた五十鈴が叫ぶ。


「この………このッ!!!」


「女の風上にも置けない馬鹿どもがぁ!!!!」




その言葉を皮切りに、情けも容赦も無い戦いが始まった。





轟音が響き、砲弾に内蔵された焼夷弾子が辺り一面に叩き付けられる。


戦艦娘から放たれたのは対空砲特殊砲弾、三式弾。

艦隊戦で有効に使えるものではないが、この状況下ならば最適解である。

なぜならば最優先で倒すべきは艦娘ではない、一人の、ただの人間だからだ。

ただの人間相手に41cm連装砲など必要無い。子弾が一発でも直撃すればそれで十分だからだ。

万が一空母艦娘と対峙する事になったとしても、三式弾の対空性能はそれらへの牽制となる。

その万が一が千歳と雲龍に突き刺さった。


「こっのぉ!!!」

怒号と共に五十鈴と巻雲の主砲による反撃が飛んでいく。

「フッ、効かぬわ」

「バァーーーーーニング!!!!パァーーーーーーーーンチ!!!!!!!」

それを戦艦娘達の拳がいとも簡単に弾き飛ばす。

いくら高練度といえど、駆逐艦娘と戦艦娘、軽巡洋艦娘と戦艦娘、

艤装のスペックの絶望的な差は埋められない。


「複縦陣!!!」

榛名が叫び、陣形を変えて海面を駆ける。

まともに戦っては勝ち目は無い。そもそもこちらの勝ちとは相手を倒す事ではない。

提督を守りながら海域を突破する事、それだけだ。

こちらの被弾を抑え、後ろの艦隊を振り切る事に集中する。その為の複縦陣だ。

「逃がすか!!!」

再び轟音が響き、三式弾がばら撒かれる。

海面には120門の酸素魚雷がばら撒かれる。

点と線が交わった死の領域の、針の穴の如く狭い隙間を潜り抜けるように榛名達は駆けていく。



雨のように降り注ぐ三式弾と、人食い蛇のように襲い掛かる酸素魚雷は

榛名達の逃走経路を尽く妨害していく。

振り切れない。

守りきれない。

毒の様な不安が榛名達の心の中を蝕んでいく。

このままでは

提督も、如月も。

最悪のビジョンを磨り削るように歯を食いしばる。

最悪のビジョンを潰すかのように拳を握り締める。



羽黒も、拳を握り締めていた。

だが、彼女の拳が握り潰すそれは

持て余し、行き場を失った力でもあった。




「提督!!」

子弾が掠めて解けた髪を振り乱しながら那珂が提督に呼びかける。

「提督、しっかりしてよ!!」

彼の手は那珂を掴んで離していない。

だが彼の目は現実を見ていなかった。

「提督!!」

目の前に叩き付けられた圧倒的な現実を咀嚼しきれていなかった。




「提督!!!」




彼の意識は現実世界から半ば飛び出し、そこで咀嚼し続けていた。

即効性の猛毒である現実を咀嚼し続けていた。




何故、あの子は死ななければいけなかったのか。



何故、こんな事になってしまったのか。



自分は今どこで何をしているのか。



自分は何をするべきなのか。



提督の脳裏に、記憶が、言葉が、走馬灯のように駆け巡る。





「お前は察しが悪く、頭の回転も遅い、物事に対して独断と偏見で満ち溢れていて視野も狭い」

「だからこうやって直々に呼び出してやって、教えてやってるんだ」

「この世界の常識って奴をな」



そうか、そうだったか。そうだよな。



この世界は



そういうものなんだ。




「如月?あんなゴミみたいな駆逐艦娘なんてどうでもいいヨ」

「それで如月がどうなろうが知った事じゃない」

「俺達は痛くも痒くもないからな」



そうだよな



お前らは



お前らも



人間だものな。



人間だから



どうでもいいものは、どうでもいいんだ。




「番組の放送後から集計した如月型艦娘の評価、情報だ」

「それとこれが如月型の、轟沈記録、な」



どうでもいいから、殺せるんだ。



如月の命なんて



てめーらにしてみりゃどうでもいいものなんだろう。



だから



「如月は、ただ一人、轟沈する」



殺せる。



だから



「昨日と今日で、既に80以上の轟沈、死亡が確認されている!!」

「他の艦娘がせいぜい一日に、3・4…多くても10にも満たない中でだ!!」



見捨てる。



どうでもいいから。




それが



世界の常識だ。



それが



人間だ。



そして



お前達艦娘も



人間なんだ。




「あなたの!!泊地の!!如月を!!!何で見れない!!!!」

「あなたは!!!あなただけの、如月を通して、『駆逐艦如月』しか見えていないんじゃないんですか!!!」



同じじゃない。



人間だから。



「如月?あんなゴミみたいな駆逐艦娘なんてどうでもいいヨ」



同じじゃない。



「ちゃちゃっと殺してご褒美貰おうねー、大井っち」



同じじゃない。



お前達は



別人だ。




「『あなたの如月ちゃん』は『あなたにしか救えない』」

「それは那珂ちゃんも、羽黒さんも、友提督も、私達も、他の誰にもできない」

「あなたにしかできないの」

「代わりは、誰もいない」



そうだ。



「あんなゴミみたいな駆逐艦娘なんてどうでもいいヨ」

「どうなろうが知った事じゃない。俺達は痛くも痒くもないからな」

「如月は、ただ一人、轟沈する」



そうかよ。



わかったよ。










お前らがそうだってんなら………









瞳に掛かっていた帳が上がり、視界が急に明るくなる。

現実を見据えろ。

轟音、怒号、かすかに響く波の音が耳に入る。

現実を見据えろ。

勝利の為の道筋が電流となって脳髄を駆け巡る。

現実を見据えろ。

自分達の勝利条件。最優先案件。

相手の武装、得意な射程、戦術。

回避、武装の無効化、距離を詰める方法。


一番の勝機は

敵が致命的な勘違いをしている事だ。

あまりにも大きな、文字通り致命的な勘違い。

敵がその認識を訂正する暇も与えずに、突く事ができれば―――――







「勝てる………!!」








彼が纏う白い軍服



その胸にこびり付いた血液は



世界に漂う、大量の酸素によって変色していた。



それはまるで



彼の胸中のように



紅く



どす黒く



その軌跡は



流した涙のように



飢えた獣が唾液を垂れ流すように



胸を伝い



滑り



堕ちていく



☆今回はここまでです☆

腹を括る。

>>1です。
今年も秋刀魚祭りがあるみたいですね。
またあのBGMが聴けると思うと今から待ち遠しいです。というか今聴いてます。

それでは、更新分の投下をだらだら始めさせて頂きます。
今回思う所があり、意図的に見辛くした箇所がございますが、ご了承願います。



雷巡娘A「もういい加減にして諦めたらどうだ?」

戦艦娘A「ドウユーアンダースタンドゥ?逃げられないって何度も言ってるデショ?」

戦艦娘B「私達はそこの提督を殺せと指示は受けているが、他の事は何も言われていない」

戦艦娘B「提督を差し出せば、お前達の安全は保障できる」

榛名「………嫌です!この人は、榛名の友人です!」

榛名「貴方達のような、艦娘の誇りすら捨てた人達に、渡すものですか!!」

雷巡娘B「…そうは言ってもねー」

雷巡娘B「この戦力差をどうするつもりなのさ」

千歳「………!!」

戦艦娘B「こちらは無傷、そちらは既に4人が中破。決定打も無い」

戦艦娘B「もう勝負はついているんだ」


戦艦娘B「提督を差し出せ」

戦艦娘B「こちらとて、可愛い駆逐…いや、同じ艦娘を沈める気は無い」


雷巡娘C(…またこのロリコンは)

戦艦娘B「いや待て、今のは言葉のあやだ。決してそこの眼鏡の駆逐艦が可愛いから助けるんじゃないぞ。決して、うん決して」

巻雲「………」

雲龍(何でその感情を如月ちゃんに向けられなかったのかしら)

五十鈴「ちっくしょう…!!」

提督「………」

提督「…皆、聞いてください」



提督「この場を無事に切り抜ける方法が、二つあります」




あきつ丸「無事に…って?」

雲龍「この状況から?」

提督「はい。あります」


提督「一つは」

提督「俺をあいつらに差し出す事」


那珂「!!」

五十鈴「馬鹿!!そんな事できるわけないじゃない!!!」

提督「でも俺が死ねば、向こうがあなた達を追う理由は無くなります」

提督「万が一それでも殺しに来るとしても、俺が居なければ戦いやすい」

提督「違いますか、榛名さん」

榛名「………」


提督「もう一つは」

提督「羽黒を殿にして俺達は先に進む」


巻雲「え…」

提督「俺達は一刻も早く泊地に帰らなきゃいけない。あいつらはそれを邪魔しに来ているんです」

提督「撤退戦における選択肢ってのはいつも二つ」

提督「全力で攻撃して敵を散らすか」

提督「一部の兵が食い止めている間に本隊がひたすら逃げるか」




雲龍「つまり………」

雲龍「捨てがまり?」



五十鈴「あんたね!!!!」

五十鈴「羽黒はあんたの秘書艦でしょ…!?なのに見捨てるって言うの!?」

提督「見捨てるとは言ってません」

提督「羽黒」



提督「『阿修羅』は使えるか?」



羽黒「!!」ビクッ


羽黒「………相手は」

羽黒「艦娘ですよ?」

提督「そんな事はわかっている」

提督「俺は正気だ」


羽黒「………」ジッ

提督「………無理なら」
羽黒「はい」

羽黒「できます」

提督「……………」

提督「条件がある」





提督「皆殺しだ」






あきつ丸「!?」


提督「手加減して生かそうと思うな」


提督「全員殺せ」


提督「もし、それができないと思うのなら」


提督「ここで俺をあいつらに差し出せ」


羽黒「やります」

羽黒「貴方達の背中は、私が守ります」

羽黒「例え、五倍の相手だって…!!」グッ

提督「その為に、人を殺すことになってもか」

提督「考え直せるのは、今しかないぞ」

羽黒「………」ギュウッ

羽黒「やります」

羽黒「誰かに言われたからじゃない」

羽黒「私の意志で」

羽黒「あなたが教えてくれた、私の意志で」

羽黒「私は、あなたを、守りたいんです」

巻雲「羽黒さん…」

提督「………わかった。ありがとう」


巻雲「………」

巻雲「………!!」ハッ



巻雲「ちょ、ちょっと待ってください。本当に羽黒さん一人で残るんですか!?」

巻雲「五対一なんて勝ち目無いですよぉ!!」

五十鈴「そうよ!それに練度だって足りてないでしょ!?」

五十鈴「足止めどころか嬲り殺しにされるわよ!!」

提督「勝ち目はある」

提督「あいつらには致命的な弱点があるんですよ」

雲龍「弱点?」

提督「はい。本当に致命的な弱点です」

提督「羽黒の『阿修羅』ならそこを突ける」

提督「つまり…この戦いは十分勝てる要素がある」

提督「いや…八割、九割方、こちらの勝ちだ」


榛名「それなら」

榛名「榛名も残ります」


提督「え?」

榛名「榛名は高速戦艦です。羽黒さん以上の装甲と射程、役に立つと思います」

提督「で、でも榛名さん………」

榛名「一割二割の敗北の可能性も消して、確実な勝利に導くのが指揮官の役割です」

榛名「…違いますか、提督さん」

提督「………」

榛名「決まりですね」

榛名「千歳さん、榛名が居ない間、旗艦の役割をお願いします」

千歳「…榛名、大丈夫なの?」

榛名「…生き残るのには慣れていますから」

千歳「………」



榛名(…それに、知っておきたいんです)


榛名(『阿修羅』とは、何なのか)


榛名(提督がそこまで自信を持てる理由が何なのか)

榛名(………知っておかなければいけません)




「三つ数える。行け、と行ったら開始だ」

艦娘の殺害を艦娘に命じる、冷酷な眼をした男の声を聞きながら、戦術を練る。

「榛名さん。遠距離から援護をお願いします」

「私は」

「接近戦で行きます」

思わず聞き返したくなる言葉が聞こえ、榛名が脳内で組み立てた戦術が崩れた。

遠距離からの援護?接近戦?

たった二隻しかいない艦隊が分断して個々で戦うのか?

一体彼女は何をするつもりなのだろうか?

混乱する榛名を尻目に、その時間は一刻と迫っていく。



「三」



羽黒は目を閉じる。

その脳裏にある光景が映し出される。

未だ知らない見慣れた海。

迫る五隻。

守る一隻。

その一隻の姿が不意に如月と被る。

羽黒は確信した。

この戦いは、あの時の繰り返し。

かつての私は一隻の駆逐艦を守る為に戦い、戦い、戦い、沈んだ。

そして今も、一人の駆逐艦娘の為に五人に戦いを挑む。


だが



「二」



心の臓から包み込むように光が溢れる。


 あの時とは違う事がただ一つある。


その光は、艤装を包み、乳房を包み、肩を包み、腹部を包み


 自分は変わったのだ。


頭を包み、腰を包み、腕を包み、臀部を包み、脚を包み


 あの時の自分とは違う。


手を包み、足を包み込む。


 自分は変わったのだ。




阿修羅




そのものに




「一」


閉じた目が開かれる。


複縦陣の中から二人の艦娘が左右に飛び出す。


「行け」



その合図と共に轟音と破裂音が響き


黒髪の重雷装巡洋艦娘の●が弾●●んだ。




尋常ではない量の水飛沫と共に

隣に立っていた茶髪の重雷装巡洋艦娘の横顔に付着する

生●かい●●。

●片。

幾夜も触れた頬の感触。

その●側。

幾夜も触れた髪の感触。

その●側。

愛して

愛して

どれだけ愛しても触れられない

●側の感触を彼女は今、感じている。




お前達は勘違いをしている。

お前達の存在そのものを。

お前達のその名前の意味を。

お前達は、艦娘だ。

軍艦ではない、艦娘だ。

その名前の意味を、今まで考えてこなかった事。

それがお前達の敗因だ。





「4」



黒髪の重雷装巡洋艦娘がいたはずの場所から声が聞こえる。

拳を突き出したままの羽黒が、死刑完了の報告を行ったのだ。


羽黒が超長距離から一瞬で腕が届く距離まで移動した事。

一撃で重雷装巡洋艦娘を殺害したその方法。

この一瞬、羽黒以外の全員がわからない事だらけだった。

だが茶髪の重雷装巡洋艦娘はその一言で、必要最低限の事は理解した。

こいつが、殺した、と。


「おまえェ!!!!」


怒りと共に14cm単装砲が、羽黒の頭を吹き飛ばさんと突き付けられる。

だが羽黒の裏拳がそれを弾き飛ばす。

右足つま先が無防備になった水月に叩き込まれ、胴体にめり込む。

右足を踏み込み、左足で肩を踏み、人体を駆け上がる。


右膝が顎を捉えた。

急速に移動する視界の中心で、空中を舞う羽黒と、鈍く光り回転する酸素魚雷。


その切っ先が顔面の真正面を捕らえた瞬間

轟音と共に蹴り込まれた。


●蓋の中心を捕らえた炸薬の容器が●骨を●き

頚●を擦り●り、●し●げ、涙●を●き●し

鋤●を粉●し蝶●●を●通する。


酸素魚雷はその勢いのまま、彼女を海の底まで引きずり込み

彼女の●髄を十回は●散出来る程の衝撃が、海面に水柱として浮かび上がった。


「3」




砲雷撃、爆撃、お前達がいくら軍艦になり切ろうが

お前達は、人間なんだ。人の身体を持って産まれた存在なんだ。

だからお前達は軍艦、ではなく、艦娘。

艦であり、娘(人)である。

だから、艦娘、なんじゃないか。

艤装は艦の武器、結界は艦の装甲を模したもの。

だが、お前達は人間だ。



それがお前達の死因だ。




空中で回転する羽黒の姿が、轟音と共に消える。


その瞬間だった

最後の重雷装巡洋艦娘と榛名が異変に気付いた。


水柱が上がっている。


先程の重雷装巡洋艦娘を葬ったものではない。

戦場から離れた所で水柱が上がっていた。

まるで砲撃でも撃ち込んだかのような、水柱が。


一体何故水柱が上がるのか。

この状況でまだ誰も砲撃を始める事はできていなかったはずなのだ。

榛名ですら、援護射撃を開始していない。

先程の合図から、長く見積もっても1分しか経っていない。



轟音。

水柱。

人智を超える速さ。

まさか

最後の重雷装巡洋艦娘は狂気の閃きを見た。



だがそれが命取りになる。

羽黒は海面を抉り取りながら、最後の重雷装巡洋艦娘の傍に着水していた。




位置は右斜め後ろ。

右目に眼帯を付けている彼女にとって、それは致命的な死角となる。

再び轟音が響き

叩き込まれた蹴りが重雷装巡洋艦娘の脚を柳の枝のように●し●る。

絶叫が海域に響きわたる。


羽黒が次の追撃を加えんと、右肘を背後に回す。

その手の形は砲雷撃の為のものではない、

四本貫手と呼ばれるものだ。

己の五体を武器と化す、空手においても伝わるその型は

拳に本来殆ど存在しない貫通力を与える為に使われる。


放たれた羽黒の貫手が重雷装巡洋艦娘の結界に突き刺さり、途中で防がれる。

結界とは軍艦の装甲であり、命綱だ。

本来ならば、たかが素手の一撃で破られるはずがない。



だが

羽黒の主砲が回転し、轟音を上げた。

狙うは、誰も居ないはずの自身の背後の空間。

戦場において命取りになるその無価値、無意味な行動によって



『阿修羅』は顕現する。



羽黒の背後、爆炎の中から紅い腕が現れ、結界へ叩き込まれる。

紅い腕の一撃が艤装に未曾有の負荷をもたらし、

羽黒の貫手は結界を突き破る。




人は脆い。

鉄の塊の船とは違う。

軍艦ならば、多少穴が開いても問題は無い。

だが人間は、欠片でも失えば大怪我になる。

指一つ無くなるだけで力を入れる事が困難になり

片足を失えば、何かの支えが無ければ立ち続ける事すらできない

目玉が一つ無くなるだけで世界の半分は見えなくなる。


そして何より

『三寸切り込まれれば人は死ぬ』のだ。


それはお前達も同じだ。

いくら艦としての練度が高かろうが

いくら艦としての性能の差が開こうが

お前達の半分は人間だ。

だからお前達は艦娘なんだ。


お前達がいくら艦そのものになりきろうが、

人の身体を持って産まれた以上、避けられない弱点がある。


結界が消滅するまで砲弾を叩き込み、轟沈させる方法では勝ち目が無くても

結界を貫通させ、わずかに届く人体への攻撃で

そこを突く事ができれば


『轟沈』させられなくても

『殺す』事はできる。


嘘だと思うのならばてめえの身体で試してみやがれ。





頚動脈を引き裂かれても生きていられるかどうか!!!!






「2」

掌から●を感じ取りながら、羽黒は冷酷に死刑宣告を下した。

●●●を握り締め、残った親指を食い込ませ、横一文字に振りぬく。





 ぶ ち ぶ つ ぐ ち ぶ ち 





という音と共に●●が噴●●していく。

羽黒の手袋は既に●●に浸かったかのように●く染まっていた。

目の前の重雷装巡洋艦娘は、失った●●●を●で●うように押さえ、押●●●●●●●


暫くすると動かなくなり、海の底に沈んでいった。





「ッてぇ!!!」

羽黒の20.3cm2号連装砲が爆炎を上げ、戦艦娘まで一直線に飛んでいく。

近距離から放たれたその砲弾を、戦艦娘は難なく弾き飛ばした。


「どんなウェポンを使ってるのか知らないケド!!」

「重巡洋艦のオマエが、重雷装巡洋艦ならともかく戦艦のワタシ達を倒せるものかー!!!」

「この程度の攻撃だって、ワタシにかかればチャメシ・インシデン………」

決め台詞を言い切る瞬間、戦艦娘は信じられないものを見た。

空中から襲い掛かる、羽黒自身。

砲弾とほぼ同じ軌道を描きながら、重巡洋艦娘そのものが飛んできたのだ。

そう、本命はこちらだ。

轟音が響き、羽黒の背から紅い腕が顕現する。

紅い腕が結界を叩き割り、羽黒の拳が砲弾の如き速さで襲い掛かる。


拳が円の軌跡を描き、戦艦娘の顎を掠めた。

既に生命反応を失い海の底に沈んだ三人のそれと比べ、あまりにも小さな一撃。


だが、撃ち損じでは決してない。



人体の構造上、顎とは急所になり得る部位である。

横から顎を振り抜かれる拳打は脳を激しく揺さぶり、神経伝達物質を過剰なまでに放出させる。

その結果引き起こされるのは

頭痛、眩暈、意識混濁と喪失、記憶喪失

俗に言う脳震盪である。

いかに数々の武勲を持つ戦艦だろうとも

人体を有してしまった瞬間から、この事象からは逃れられない。


脳震盪により意識が飛び、膝から崩れ落ちる戦艦娘の右側面に羽黒の、続く左拳が撃ち込まれる。

俗に、肝臓打ちと呼ばれる一撃である。

艦本式高低圧タービン4組が産み出す13万馬力を基に繰り出されるその一撃は

●●を割り、●膜を突き破り、内●を砕いた。


そして、続く一撃が

轟音と共に顕現する腕と共に繰り出され

戦艦娘の身体が●●を撒き散らしながら遥か上空へと舞った。


「1!!」



共に空中へと舞う羽黒が、残った最後の戦艦娘を視界に捉える。

既に戦艦娘は全力を以って羽黒から距離を取り、自分だけが一方的に攻撃できる間合いから主砲を向けていた。

絶叫と共に空から降り注ぐ41cm砲弾、三式弾の嵐を

羽黒は紅い腕を携え、人智を超えた速度ですり抜けて進む。

直線的な砲弾に対し超高速でランダムな横移動を繰り出し続け、間合いを詰めていく。


榛名は


背から紅い腕を生やし、殺害の決意を持って接近する羽黒の姿に


恐れ


見惚れ


賞賛した。



この戦いは軍艦がやるものではない。

人体の急所を的確に突き、殺害する。

これは砲雷撃戦では決して無い。

殺し合いだ。


艦としての実力が足りない彼女は、艦としての性能や練度が勝敗を左右する砲雷撃戦を避け

人としての技術と意思が勝敗を決める、殺し合いの勝負に周りの全てを引きずり込んだ。

『艦』を沈めるのではない。

『人』を殺す戦いに持っていった。


その為に、その為だけに、彼女は艤装の全てを使い尽くしたのだ。

並大抵の狂気では辿り着けない、正気から大きく逸脱した発想とそれに対する執着、狂信によって

彼女は阿修羅と化したのだ。



成程

『阿修羅』とはよく言ったものだ。

今目の前で殺戮の舞踏を続ける彼女にこそ相応しい。


三面六臂の神阿修羅。

紅い腕を携え、光り輝く彼女の姿は神々しくも思えてくる。


戦闘神阿修羅。

彼女は一対五の圧倒的不利な状況を己の力だけでひっくり返した。


非天の神阿修羅。

虐殺を続ける彼女は、果たして正義と呼べるのだろうか。



そして何より

軍艦、重巡洋艦羽黒の最期は

彼女がその身を犠牲にして守り切ったある駆逐艦により、こう呼ばれていたではないか。



阿修羅の如き、と





次の瞬間


轟音と破裂音と肉の音が辺り一面に響き、


一人が五人を一方的に殺戮する


情けも容赦も無い


寸劇じみた虐殺劇は終わりを告げた。




・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





ア…アイドン、ワナ…ダ…

ズドォン!

グチャァッッッ


羽黒「………」

榛名「………」

羽黒「………終わりです」

榛名「………」

榛名「あなたは…」

榛名「抵抗は無いの?」

榛名「同じ艦娘を殺す事に」


羽黒「無い、とは言えません」

羽黒「でも」

羽黒「人殺しを決意した時、あの人達を殺すつもりで向かい合った時」

羽黒「思っていたより怖くありませんでした」



榛名「…いつも」

榛名「ヲ級や鬼級、姫級のような人型を相手にしてきていたから?」

羽黒「かも知れないです」

羽黒「でもそれよりも、やっぱり私は」

羽黒「汚い女なんだな、って、思いました」

榛名「やっぱり、って…どういう事?」

羽黒「私は」



羽黒「司令官さんの事が好きなんです」



榛名「?」

羽黒「司令官さんの泊地に来るまで私は、自分の意思も何も無い女でした」

羽黒「ただやらなきゃ、ってだけで艦娘になって」

羽黒「自信なんて全然持てない」

羽黒「でも司令官さんや那珂ちゃんに会って、自分の意思を持つ事を教えてもらったんです」


羽黒「………私は、教えてもらった自分の意思で」

羽黒「仲間を見殺しに…」フルフル

羽黒「ううん」



羽黒「邪魔な女を、殺したんです」




榛名「………」

羽黒「いつも司令官さんの傍にいるあの女が」

羽黒「邪魔で、邪魔で、しょうがなかったんです」

羽黒「私が司令官さんの傍にいる為に」


羽黒「私は、自分の意思で、殺したんです」


羽黒「自分の意思で始めて動いた結果が、よりにもよってそんなのだったんです」

羽黒「私は、もう、人殺しなんです」

羽黒「だから」

羽黒「思っていたより、怖くなかったんだな、って………」


榛名「………」

羽黒「………」

榛名「提督さんは、あなたを恨んでいるの?」

羽黒「え?」

榛名「そんな大切な人を殺されて、そんな人が近くにいて、人が正気でいられるなんて思えないわ」

榛名「むしろ、提督さんはあなたの事を大事にしてる」

榛名「さっきのあの命令だって、あなたが一瞬躊躇した時に、別の案を出していた」

榛名「…そんなの恨んでいる人がする事じゃないはず」

羽黒「………」

榛名「あなた達に一体何があったの?」

榛名「提督さんがおかしくなったのはそのせい?」



榛名「あなたの力は、そこから身に付けたものなの?」




榛名「あんな戦い方…普通の戦いじゃ思いつかないでしょ?」

羽黒「………『阿修羅』は」

羽黒「本当に偶然身に付けたんです」

羽黒「AL作戦中に、姫級と戦っている時に」

羽黒「どうしても、負けられなくて」

羽黒「どうしても、取り逃せなくて」

羽黒「どうしても、どうしても、勝ちたい」

羽黒「今度こそ、勝って、生き残らないと、司令官さんは」

羽黒「…死んでしまう、って思って」




羽黒「気が付いたら」

羽黒「目の前の姫級の顔が、半分無くなっていたんです」





榛名「………!?!?」

榛名「艦娘以上の結界を持つ姫級を、一撃で…!?」

羽黒「…今思い出してみると」

羽黒「あの頃から、こうなるのは決まっていたのかもしれません」

榛名「………」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





五十鈴「あなた………」

五十鈴「今、何考えているの?」

提督「…羽黒と榛名さんが無事に帰って来て欲しいとしか」


巻雲「………」

あきつ丸「………」

那珂「………」


雲龍「艦娘を」

雲龍「皆殺しにするって言った事、どう考えているの?」

五十鈴(雲龍!!)


提督「…皆殺しにでもしなきゃあ、死ぬのはこっちですよ」

提督「何とか振り切ったとしても、あいつらが教官の差し金ならこっちの泊地の場所は掴んでる訳だし、絶対に追いかけてくる」

提督「他に仲間がいるなら、そいつらも相手しなきゃいけなくなる」

提督「『阿修羅』で追い払った所で、次には対策されるかもしれない」

提督「だから、皆殺しにしました」


巻雲「提督様…」


五十鈴「…仲間でしょ?」

五十鈴「あなたにとっての艦娘って何!?」

五十鈴「提督と艦娘は!!一緒に深海棲艦と戦う仲間でしょう!?」


提督「………」


五十鈴「!!」ビクッ

五十鈴「それを、殺す、なんて…!!」

提督「………」



提督「そうですね。その通りだ」

提督「でもその言葉を」

提督「如月を殺した連中が聞いて、どう思うと思いますか?」



提督「何も言わないかもしれません」

提督「開き直るかもしれません」

提督「『俺の失態だ。赦してくれ』と謝るかもしれません」



提督「 表 面 上 は な 」





提督「だけど、頭の中で考えてる事は皆同じさ」



提督「『どうでもいい』」




提督「どんなに格好付けた言葉で飾っても、どいつもこいつも本心は一緒だ」

提督「如月の命なんざ、どうだっていいんだ」

提督「そんなものより自分の欲や他の艦娘の方が大事なのさ」


提督「それに比べちゃ…如月の命なんざ」

提督「グチャグチャになるまで弄んで、糞と一緒に便所に流す知育菓子程度にしか思っちゃいねぇんだよ」


提督「だから殺せる」


提督「だから見殺しにする」


提督「だって『どうでもいい』んだからな!」


提督「だから『赦してくれ』なんて格好付けで済ませるんだろう!?」


提督「言葉だけの格好付けで済ませて、謝罪の為の努力もしないで、女の股座しゃぶり付く事に夢中なんだろう!?」


提督「本当に悪いと思ってるなら!命だって差し出せるだろう!?」



提督「なぁ!そうだろ!!那珂ぁ!!」

那珂「………」



提督「だから俺も」

提督「『どうでもいいもの』を切り捨てる事にしました」




提督「榛名さんは、皆を救うなんて無理な事だと言ってたよね」

提督「だから俺は、だからこそ俺は」

提督「俺の周りの、本当の仲間だけは、助けたい」

提督「五十鈴さん、あなたもそうなんです」

提督「俺の、かけがえのない友達は、仲間達は、絶対に助けたい」

提督「その為なら俺はどんな手段でも使ってやる」

提督「そうじゃなきゃ、そうでもしなきゃ」

提督「俺の仲間は、あの如月のようになってしまうから…!!」


提督「俺は今回、学んだ事がある」

提督「この戦争に、名誉の戦死なんてものはありはしない」

提督「生き残った奴だけが人並みになれる」

提督「死んだ奴は、皆家畜の糞以下だ」

提督「俺はずっと誤解していたんだ…名誉の戦死なんてありはしないのに」


提督「死ねば、あの如月みたいに、死体の頭から爪先まで陵辱される」

提督「そして、同型の艦娘も同じように犯され、殺され、また犯される」

提督「俺は、もうそんなのを見たくない」

提督「俺の大事な友達がそんな目に遭う所なんて、絶対に見たくない!!」

提督「だから俺は、どんな手を使ってでも、俺の友達だけは生き残らせるんだ!!」

提督「俺ができる事は…これぐらいしかない…!!」


提督「邪魔をする奴は」


提督「深海棲艦だろうが」


提督「上官だろうが」


提督「市民だろうが」


提督「艦娘だろうが」



提督「一人残らず殺す…!!!」




五十鈴「………!!」

提督「五十鈴さん。あなたはさっき、俺にとっての艦娘とは何なんだ、と聞きましたね」


提督「艦娘を、一緒に深海棲艦と戦う仲間と定義するのなら」

提督「俺の艦娘と、友達だけが、俺にとっての艦娘です」


提督「クソ売女(他の艦娘)どもなんざ100人死のうが、10万人死のうが俺の知った事じゃありませんよ」

提督「何であんな、仲間を見殺しにして平然としていられるような便女どもを助けなきゃいけないんですか」

提督「例え俺の艦娘とそっくりな見た目だとしても、中身は全然違う」

提督「…そりゃそうなんですよ。だって元々は人間ですからね。色々な価値観やら思想宗教があって当然ですよ」


提督「だから、あいつらが俺にとって何だ、と言われれば」

提督「『艦娘の皮を被った深海棲艦』ですかね」


提督「邪魔になるなら、殺す事に躊躇もクソもありませんよ」

提督「躊躇すれば、こちらが殺されるんですからね…!!」

雲龍「如月でも?」

提督「如月型艦娘でもです」

提督「俺にとっての如月は、俺の泊地の如月だけです」

提督「他の如月型艦娘を助けるなんて、俺にはできないし」

提督「他の如月型艦娘が俺達の邪魔をするってんなら、殺します」


五十鈴「…でも」

五十鈴「それを実行するのは、あなたじゃない」

五十鈴「あなたの仲間の艦娘よ!!」

五十鈴「あの子達が!あなたと同じ感性を持ってるとでも思ってるの!?」


提督「だけどそれは俺の作戦の結果に過ぎません」

提督「俺の、作戦の、です」

提督「作戦の責任は俺が取りますよ」


提督「軍の行動によって生じた問題の責任は、それを命じたものだけが負う」

提督「命じられた側が負う意義も、権利も、義務も、無い」

提督「その為に、提督(俺)がいる」


提督「俺はあいつらと同じにはならない」

提督「仲間(如月)の命と一緒に」

提督「責任感も、国防の意思も、五省の精神も、何もかも」

提督「クソ溜まりに投げ捨てたアホどもには死んでもならない」

提督「そんなのになるくらいなら、死んだ方がマシだ」

五十鈴「………」

提督「五十鈴さん」



提督「俺が間違っているっていうんなら撃ってください」




「「「ッ!?」」」


提督「客観的に見て」

提督「俺がやった事は私的な軍事力の使用、味方殺し。軍規から見れば違反中の違反です」

提督「そんな俺を撃った所で五十鈴さんの罪にはならないはず」

提督「俺が間違っているっていうんなら、ここで終わらせてください」

提督「これが、俺の責任の取り方です」

提督「奪った命の責任は、俺がちゃんと取りますよ」

提督「クソ野朗の汚名もちゃんと受け入れます」

提督「あんな責任も取れないゴミ野朗どもと同じになりたくないんでね」


那珂「ていとっ………五十鈴さん!!」グァッ

那珂「お願い!撃たないで!!!」

那珂「提督を撃たないでぇッ!!!」

五十鈴「那珂………」

提督「那珂」

提督「撃つかどうかを決めるのは、五十鈴さんの意思だ」

提督「お前が俺の事をどう思おうが関係ない」

提督「千歳さん!あきつ丸さん!雲龍さん!巻雲さん!!」

提督「あなた達も!!俺が間違っていると思うのなら撃ってください!!」

提督「艦載機の爆撃でもいい!!」

提督「俺が間違っているのなら!!ここで終わらせてください!!」


提督「…あなた達に殺されて終わるんなら」

提督「本望ですよ…俺は…!!」


あきつ丸「………」

雲龍「………」

千歳「………」

巻雲「…できない…できないよぉ…!!そんな事!!!」

巻雲「提督様はっ…夕雲姉さんの提督で…!!司令官様の友達で…!!!」ポロポロ

提督「…泣いてくれるの?巻雲さんは優しいね」

提督「でも、優しいだけで生きていけるほど、この世の中は甘くないんだよ」

提督「優しさを見せたり、ちょっと甘さを見せたりするだけで」

提督「一瞬で殺される事だってある…あの如月みたいにね」


五十鈴「そうよ!!如月!!!」

五十鈴「あんたが死んだら!!如月はどうなるの!!!」

五十鈴「あんたの泊地の!!!如月は!!!!」

提督「如月は」


提督「頼みました」



五十鈴「………は?」

提督「別の男を好きになるまで、俺の代わりにあいつを支えてください」

五十鈴「…何、言ってるのよ………」


提督「子供が、仲の良い異性の友達と結婚の約束をする」

提督「だけどそういうのは大体忘れて他に彼氏彼女を作る」

提督「良くある話。それと同じですよ」

提督「あの子はまだ若い」

提督「如月も、いつか俺以外の誰かを好きになる」

提督「俺以外を心の支えとする時が来る」

提督「だから、俺じゃなきゃいけない理由なんて、どこにもない」


提督「大事なのは」

提督「あの子の心の支えになれる存在、であって」

提督「俺じゃない」


千歳「提督…あなた、は…!!!」

五十鈴「…あんた………!!」

五十鈴「あんた一体、何なの…!?」

五十鈴「頭おかしいんじゃないの…!?」

五十鈴「何で、何で、そんな事を………!!!」



雲龍「提督、五十鈴、止めにして」

提督「?」

雲龍「羽黒さん達が追いつくわ」

提督「!!」バッ


五十鈴「………」

羽黒「司令官さん!!」ザァァァァァァ

提督「羽黒!!大丈夫か!?」

羽黒「はい」

提督「…敵は、全員死んだのか」

羽黒「はい」

羽黒「全員撃沈してきました」

提督「そうか」スッ

羽黒「え?」

提督「ありがとな、羽黒」ギュッ

羽黒「ふぁっ///」

五十鈴「!?」ギョッ

提督「ありがとう」

提督「本当にありがとう」

羽黒「し、司令官、さん………」ポー


五十鈴(…何なのよ)

五十鈴(さっきまで、あんな事言ってた奴が、何でそんなことできるのよ…!!)

あきつ丸(だからか…!!)

あきつ丸(だからあなたは、自分を犠牲にしてあんな事をしたのか…!!)


五十鈴(でも)

あきつ丸(何故でありますか)

五十鈴(どうして、あんたは)

あきつ丸(提督殿、あなたは)





(自分の生きる価値を見出さない…!!!)






「司令官さん」

「ん」

「手、震えてます」

「あぁ」

「怖かったんだ」

「…もしお前が戻ってこなかったらって思って」



「うそつき」



「また、死のうとしたんじゃないですか?」

「那珂ちゃん、泣いてますよ」

「それは………」

「やめてください」

「那珂ちゃんも言ってたじゃないですか」


「私達があなたのものである限り」

「あなたは、私達のものだって」


「だから勝手にいなくならないでください」

「不精に亘る勿かりしか、ですよ」

「…そこで五省出すのか。赤城みたいな事を…」

「………」

「司令官さん?」

「いや、懐かしいなって思って」

「俺が特務提督候補生になって一番最初に覚えたのがそれだ」

「…まぁ」

「何もかも、全てが狂いだした瞬間でもあるっぽいけどな」

「………」





至誠に悖る勿かりしか


―――――――――――――――俺は、俺の仲間の為に生きる


言行に恥づる勿かりしか


―――――――――――――――俺は、絶対に守り抜いてやる


気力に缺くる勿かりしか


―――――――――――――――俺は、絶対に諦めたりしない


努力に憾み勿かりしか


―――――――――――――――俺は、その為ならどんな事だってする


不精に亘る勿かりしか


―――――――――――――――俺は、全力で守り抜く




そう



俺が



彼女達に捨てられる



その最期の瞬間まで




・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-パラオ泊地-


如月「………」ゴソゴソ

如月「………」ギュッ

如月「………」ガチャ、バタン

如月「………」コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ



「待ってよ!!」



川内「…本当に行っちゃうの!?」

如月「………」

川内「ちょっと待ってよ!!」



如月「だって皆、私の事を恨んでいるんでしょう!?」




如月「私のせいで!!」

如月「私のせいで!!」

如月「泊地がこんなめちゃくちゃになって!!」

如月「世間の評価もあんな事になって!!!」

如月「私が…私がいなきゃ、こんな事にならなかったのに…!!!」

阿賀野「如月ちゃん…」

暁「そんな事無いもん!!!!!」

暁「如月ちゃんのパパが偉い人だからって、何で如月ちゃんを恨んだり何だりしなきゃいけないの!?」

暁「友達なのに…!!」

名取「そうだよ。私達、心配なんだよ…」

夕雲「…如月さん。考え直してくれないかしら」

如月「………」


  「ソウヤッテ引キ止メラレタママ」
如月「そうやって引き止められたまま」

  「他ノ如月達ハ殺サレテイッタノヨ」
如月「他の如月達は殺されていったのよ…!!」



暁「!?」

如月「あのテレビの如月、あの後どうなったと思う?」

如月「あの子は戻って来ようとしたのよ。でもね、深海棲艦もろとも殺されたの」

如月「自分がいた鎮守府の艦娘達にね!!!!」

磯波「き、如月ちゃん…?」


如月「他の鎮守府の如月だってそう!!!」

如月「『お前はいつ死ぬんだ』とか『ゾンビ』だとか言われて!!」


如月「そのまま狂って死んでいった!!!」


如月「あるいは!!!」


如月「無理矢理出撃させられて深海棲艦に殺された!!!」


如月「もしくは!!!」


如月「何も知らないまま…通りがかりに殺された!!!!」


如月「テレビでそうだったからって!!それだけの理由で!!!」


如月「何が、友達よ…!!!」

如月「そうやって如月達は殺されていったのよ!?」

如月「あなたたちだってそうでしょう!?」

如月「私を殺したいんでしょう!?」


叢雲「馬鹿!!!そんな訳が!!!!」

  「嘘ダ!!!」
如月「嘘だ!!!」

  「ジャア何デ如月ハ殺サレタノ!?」
如月「じゃあ何で如月は殺されたの!?」

  「何デ誰モ助ケテクレナカッタノ!?」
如月「何で誰も助けてくれなかったの!?」



如月「あなた達にとって、如月なんてその程度のものなんでしょう!?」

叢雲「違う…そうじゃなくて…!!!」

如月「もう!!!」


如月「私の事を見ないで…!!」

如月「怖いの…!!」

如月「皆の視線が怖いの!!!」

如月「今でも…次の瞬間に、殺されるんじゃないかって…!!思うと…!!!」

如月「みんな…みんな…!!」

如月「私の事なんてどうでもいいくせに…!!」

如月「恨んでるくせに…!!」

如月「私は、死にたくないのに…!!!」



龍田「あなた」

龍田「そんな調子でこの先ずっと生きていくの?」

如月「!!!」ビクッ

龍田「そうやってずっと他人に怯えて生きていくの?」

龍田「自分の殻に引き篭もって?」

龍田「あなたはただ逃げてるだけじゃないの?」

龍田「この状況を一番受け入れられていないのは、貴方じゃないの?」

龍田「逃げたって変わらないと思うわよ」

龍田「あなたが如月である事実は変わらない」


龍田「どんなに都合良く考えても、どんなに妄想しても」

龍田「あのテレビの事は、もう変えようがない事実なのよ」

龍田「如月型艦娘は、あのテレビの番組内で、轟沈した」

龍田「その事実は誰にも変えられないわ」

龍田「あなたの家も」

龍田「如月狩りを続ける街の人達も、『盾』とかいう人達も」

龍田「こんな事を引き起こした連中でさえも」

龍田「もう二度と、あの番組が放送する前には戻せない」


龍田「この先、何ヶ月、下手したら何年も」

龍田「あの事実はあらゆる時間、あらゆる場所で突きつけられていくのよ」

龍田「その度にそうやって逃げていくつもり?」

龍田「なら、あなたの逃げ場所なんてこの世界に無いわよ」

龍田「頼みのキサラギ社だって、もうすぐ無くなっちゃうんだから」

龍田「そうなったら、次はどこに逃げるの?」


如月「………!!!…!!!」ダッ

長良「如月ちゃん!!」

長良「…龍田さん、何であんな事…」

龍田「事実じゃない」

龍田「これからここに残ってても、ずぅっと言われるのよ」

龍田「私達が言わなくても、外のうるさい人達とか、他の鎮守府の艦娘からずぅっと」

長良「………」


龍田「その事実を如月ちゃんが受け入れなきゃ、多分」

龍田「如月ちゃんは近いうちに壊れるわ」

龍田「もう二度と、取り返しのつかないくらいに」



如月「はっ、はっ、はっ、はっ…!!」ダダダダダダ

如月(だったら…!!)

如月(だったら私は…!!!)

如月(どうすればいいのよ!?!?)

如月(私には、私には!!もうこれ以外の方法が!!!)

如月(方法が!!!!!!!!!!)




「如月ちゃん!!!」




如月「!!」ズザッ

夕立「…如月ちゃん」


如月「…夕立、ちゃん」

夕立「如月ちゃん…」ガシッ

如月「」ビクッ

夕立「………行かないで」

夕立「謝るから」

夕立「謝るから…」ポロポロ

如月「………」

夕立「夕立が悪かったから…謝るから…だから…」

夕立「行かないで…」

如月「夕立ちゃん…」

如月「私こそ、酷い事言っちゃってごめんなさい」

如月「でも、夕立ちゃんは悪くないわ」

如月「全部、如月が悪いの」

如月「だから、もう私はいなくなるから…許して」スッ

夕立「………!!!」

夕立「あ…あぁあああ…!!!!」




「うわぁああぁぁぁああああああああっぁあ!!!!!!!」


「アァアあぁあぁあアアアアアぁあぁあああああアアアあアアアアアアあああああアア!!!!!!!!!」



如月「………」



黒服「…お嬢様、こちらへ」

如月「…お願いします…えー…と………」

黒服「黒服と申します」

如月「黒服さn」ガシッ

如月「………」

金剛「如月」

金剛「よく考え直して」

金剛「本当にこれで良いノ?」


如月「私が、私がいれば…迷惑がかかります」

金剛「…May be」


金剛「………で?それだけ?」

如月「…!!」

如月「私は、もう、死にたくありません…!!」

如月「ここに残っていたって、私はいつか殺されるんです!!」

黒服(何度目だよこのやり取り。早くしてくれねーかなー)



金剛「………誰が、殺すって?」



金剛「誰が」

金剛「そんな事を許すと思ってるノ?」

如月「え…?」



金剛「 誰 が そ ん な 事 を 許 す と 言 っ た ! ! ! ! 」



金剛「 誰 が お 前 を 殺 す と 言 っ た ! ! ! ! 」




金剛「夕立か!?」


金剛「龍田か!?」



金剛「 提 督 か ! ? 」



如月「……………」


金剛「ちょっと来なサイ」ガシッ

如月「あぁっ!?」グイッ

黒服「ちょっ、お嬢様!?お前、お嬢様に何を!!」

金剛「Shut up!!」

金剛「これはこの軍のProblemデス!!ここの所属どころか二等兵ですらないOutsiderはすっこんでロ!!」


金剛「ついてきなさい!睦月型駆逐艦二番艦娘如月!!」グイグイグイグイ

如月「い、止めて!!離してください!!!」

金剛「…絶対に」

金剛「離さない」

金剛「離すものカ…!!」



金剛(…もう嫌だ!!!)



金剛(あの時の繰り返しなんて、もう!絶対に!!嫌だ!!!)


金剛(あの時と同じ事を、繰り返したくない!!!)


金剛(その為なら私は、私にできる事を、全力でやる!!!)


金剛(その結果自分がどうなろうが知った事か!!!!)


金剛(私は!!!!私は!!!!!)



金剛(全力で!!!!!!!)







「叩き直してやる!!!」





「その腐った根性を!!!!!!!!」





☆今回はここまでです☆

秋刀魚は大量の大根おろしと味ぽんで食べる派です。
塩焼きにして骨を取る感覚まで味わいたい派です。

>>1です。
二週間経っても新しいのできてないので、生存報告だけしておきます。

>>1です。
秋刀魚、ACイベント、秋イベとこれから忙しい時期が続きそうですが皆様はいかがお過ごしでしょうか。
私は低練度艦娘の底上げを重視してレベリングしてました。

ぼちぼち更新していきます。



夕立「う…うぅうううう…!!」ポロポロ

時雨「…夕立」

夕立「………」

時雨「行こうよ。今度は金剛さん達の番だ」

夕立「………」

時雨「…自分が止められなくて悔しいのはわかるよ」

時雨「でも、これで終わりじゃない」


時雨「個々の出来事に物語と名付け、勝手に区切りを付けようなんておこがましい話だと思わないかい?」

時雨「ハッピーエンドで区切った話も、先を覗けばバッドエンドかもしれない」

時雨「全てを支配した悪者が次の瞬間、病に倒れて苦しみながら死ぬかもしれない」

時雨「それが世界ってものだって、僕は思っている」


時雨「如月だってそうだ」

時雨「今がどれだけ辛くても、これから何があるかなんて誰にもわからない」


夕立「…ここから、何があるっていうの」

夕立「何を!どうしたら!!元通りになるの!?」

夕立「夕立にはわかんないよ!!」




時雨「元通りになんてならないよ」


時雨「如月の評判は、多分ずっとこのままだ」

時雨「忘れられる権利なんて言葉は死語同然だもの」

時雨「一年後、二年後も、ずっと言われ続けると思うよ」

時雨「『轟沈した艦娘』」

時雨「『死んだ艦娘』」

時雨「『何もできずに死んでいった役立たず』」

時雨「『ゾンビ』」

時雨「『深海棲艦』」

時雨「『日本帝国の残党』」

時雨「『ヒトモドキ』」

時雨「何も知らない人達も、知ってもあえてやめない人達も、言い続けると思うよ」

時雨「今までも、これからも、ずっとずっと」

時雨「僕達が一人残らずいなくなるまで」

時雨「いや」

時雨「多分、僕達がいなくなっても、ずっとずっと」

時雨「だってあの人達にとってそれは」


時雨「楽しくて」

時雨「楽しくて」

時雨「しょうがない事なんだから」


夕立「!!」ギリッ

夕立「時雨ェ…!!」



時雨「でも」スッ



時雨「僕は信じているよ」

時雨「どんな障害にも」

時雨「どんな運命にも」

時雨「負けない愛がきっとある、って」



夕立「………」

夕立「愛?」




・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





金剛「」コツコツコツコツ

如月「………」


金剛「瑞鶴、そっちの準備は?」

瑞鶴「大丈夫。全部できてる。赤城姉も…だけど」

瑞鶴「本当にやるの?」

金剛「やるに決まってるデショ?」

金剛「…もう、Chanceが無い」

瑞鶴「………」

金剛「お願いだから協力して。文句とかは、後で聞くから」

瑞鶴「…わかった」スッ

金剛「Thank you」

瑞鶴「その代わり、上手くいったら教えてよ」

瑞鶴「…そんな顔してる金剛、初めて見たんだから」

瑞鶴「赤城姉は知ってるみたいだけど…聞きにくいし」

金剛「…OK。Promiseデスネ」



金剛「よし、行くヨ」ズイッ

如月「きゃっ」

金剛「艤装の用意!!」

青葉「りょーかい、です!」ガラガラガラガラガラガラ

足柄「はい、足上げて」

如月「え?」ガション

愛宕「もう片方も、はい」ガション

高雄「背中も付けるわよ」ガチョン

如月「わっ」

鳥海「じゃあ、後はこれを」ヒョイ

如月「えっ、あっ、これ…私の主砲?」ガシッ

金剛「はい出発」スイー

エッアッエェ?


高雄「よし」

愛宕「じゃあ私達は次の準備行きましょう」

足柄「えぇ」

鳥海「…無事に終わればいいのですが」

愛宕「大丈夫よ。あの子は」

愛宕「私…ううん」

愛宕「私達と『同じ匂い』がするもの」

愛宕「ね?高雄♪足柄♪」

足柄「………えぇ」

高雄「そうね」

愛宕「ふふっ♪」

鳥海「…えっと」

愛宕「大丈夫よ。鳥海もわかってるでしょ?」

愛宕「…これだけ人数が揃ってても、誰も何ともできない」


愛宕「結局」

愛宕「何故かいつも」

愛宕「あの人がいなきゃ何にもならないのよ、私達って」

愛宕「何故か、ね♪」ニコッ



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





飛龍「………来たね」

金剛「うん。用意はできてるよネ?」

飛龍「できてる」

如月「あ、あの、一体何を」

金剛「ここに来たんならやる事は一つでショ」


金剛「演習だヨ」


如月「!!」

金剛「如月と飛龍の一対一の勝負」

金剛「普通は轟沈判定が出たらFinishだけど…飛龍は中破したら即、Loseデス」(というか空母は中破したら何もできないし)


金剛「そして」

金剛「飛龍の艦載機は全て九九艦爆」


如月「艦、爆…!?」ゾッ

金剛「雨霰と降ってくる爆弾を全てかわして、飛龍に攻撃を叩き込むのデス」

金剛「もし勝てたなら、除隊を認めてあげるヨ」

如月「そ…そんな!!!」

如月「無理です!!如月が…駆逐艦が!正規空母に勝てるはずがありません!!」

如月「金剛さん…!!!」



金剛「Start!!!」




飛龍「………行きます」ギリッ

飛龍「………」グググググ…

飛龍「発艦始め!!」バシュン!!


ブウウウウウウン…


飛龍「………」



「おい、本当にいいのか?」



飛龍「………」

「駆逐艦1隻に18機」

「あっという間に勝負がつくどころか」

「向こうに勝ち目が万に一つでもあるなんて思えないぞ」

飛龍「………」

「いいんだよ」

「!!提と…!!」

「お前達は如月のお嬢ちゃんを叩きのめしてくればそれでいい」

「金剛のお嬢ちゃんだって何も考えずに飛龍に頼んだわけじゃないだろう」

「飛龍は、俺達は、全力を使って如月のお嬢ちゃんを叩きのめすだけだ」

「何度も」

「何度も」

「根性叩き直すまで」

「何度でも」


飛龍「………」

「………」

「それとも」

「お前がやるか?久々に」


「『人殺し多聞丸』の特訓を」


「……え、遠慮しておきます」

「なら行け」



「あの甘えた坊主が帰ってくる前にある程度事を進めておかなければいけないんだ」




ブウウウウウウウウウウウン…


(…見えた)

(これより爆弾投下体勢に入る)

(了解)


ウウウウウウウウウウウン…


(………)


如月「ひっ………」ビクッ

如月「あっ、あぁっ!!」ガタガタ…


(どうした、如月のお嬢ちゃん)

(動け)


(動けよ!!)


如月「嫌…嫌…!!!」ブルブル


(怖いか!!)


(動けないのか!!!)


(でも動かなきゃ!!!)


(当たるんだぞ!!!!)



( 動 け よ ォ ! ! ! ! )ガシュッ



如月「いやあああぁあああああああ!!!!」





ズドォン!!!




如月「あぐっ!!」ズシャァッ!!

金剛「………」

飛龍「………」


金剛「轟沈判定。飛龍の勝ちデスネ」

如月「はぁっ…ん…うぅ…」

金剛「バケツ」


翔鶴「はいっ!!」バシャァ!!

如月「きゃぁっ!!!」


如月「こ、これ…!?」ビシャァ

金剛「高速修復剤だヨ。普通に使うよりも思いっきり薄めてあるけどネ」

金剛「一戦くらいの疲れならそれで無くなるでショ?」

金剛「…艤装の方はこれくらいならまだ大丈夫ネ」


金剛「立ちなさい」

金剛「これでFinishなわけないデショ」

金剛「演習はまだまだ始まったばかりなんだから」

如月「………!!!」



金剛「飛龍!!!次!!!!」




バシュン!!ブウウウウウウウウウン

「あのお嬢ちゃん、中々だな」

飛龍(そりゃあ何てったって鬼金剛だからね)

「『地獄榛名に 鬼金剛』」

「『羅刹霧島 夜叉比叡』」

「「『乗るな山城鬼より怖い』」」

「っへへー!!」

「へー!!」


飛龍(…その戦艦勢にドン引きされたんだけどね、うちら)

「鬼と人殺しの共演か。胸が冷えすぎて凍傷になるぜ」

「おい」

「あっ何でもありませーん」


金剛「次!!!」


バシュン!!ブウウウウウウウウウン

飛龍(………)

「飛龍よう」

「まだ納得できないか」

飛龍(そりゃあそうだよ)

飛龍(何で金剛はこんな、いじめまがいの演習なんて)

「いじめじゃねえ」

「訓練だ」

飛龍「………」

「如月のお嬢ちゃんが今後どうあれ」

「あの恐怖心は、今ここで克服しておかなくちゃならない」

「何せ艦載機見ただけであのビビりようだ」

「艦娘としてやっていくなら致命的」

「日常に戻るにせよ」

「一度逃げた奴は、何かきっかけがなけりゃずっと逃げ続ける」

「金持ちのお嬢様とあれば、逃げる手段なんていくらでもあるだろうしな」

「下手すりゃ一生あのまま…いや」



「明日明後日には深海棲艦、か」




「ギリギリの所で粘ってるみたいだけどな」

「無意識でやってるんだろうけど、艦の魂と本来の魂を分化して、少しでも深海棲艦に飲み込まれるのを抑えている」

「そこらの如月だったら、とっくの昔に深海棲艦に呑まれてるぜ」

「同化した魂の再分化。空母艦娘の才能か。あと数年遅かったら如月じゃなくて蒼龍あたりになってただろうな」

「あの歳であのおっぱいなら可能性はある」

「あぁ。あのおっぱいなら可能性はあるな」



「「ッヘーイ!!!」」



「しばくぞ」

「「はい」」



「何にせよ、今の如月のお嬢ちゃんの居場所は地獄の淵のギリギリって所だ」

「もたもたしてたら地獄の底まで真っ逆さま」



「だけどな」

「地獄の淵の砂は魔法の砂だ」

「触れて戻ってくれば、強運と破滅がひっくり返る」

「お前さんがあの坊主から借りてた漫画にそう書いてあっただろう?」



飛龍(戦いはギャンブルじゃない)

「似たようなものさ」


「地獄を見て生き延びた人間ってのはな、どこか壊れちまうんだ」

「人間であって人間じゃなくなる」

「普通なら死んでもおかしくない状況でも死ねなくなる」

「それが撃墜王と呼ばれるモノの製造工程だ」

「敗戦国に撃墜王が多いのは、敗戦国だからこそ、地獄を見る機会に恵まれるからだ」


「つまり、撃墜王とは」

「生存本能を研ぎ澄まして人間である事の『何か』をごっそり削り落とし」

「それと引き換えに戦闘能力を極限まで高めた」



「気違いだ」




「その狂気こそ、南雲機動部隊に必要だと俺は考えていたんだ」

「気違いを兵装し」

「気違いを教導し」

「気違いを編成し」

「気違いを兵站し」

「気違いを運用し」

「そして気違いを指揮する太平洋最強の航空部隊」

「それができなければ、日本はいずれ負けると感じていた」


「その為にまず」

「俺自身が気違いになった」


「迷いなんて無かった」

「妻を喪う辛さを知っていたから」

「愛する妻の居る日本に戦火が及ぶ所なんて見たくはなかったから」

「俺は、自他共に認める気違いになった」

「誰にも負けない気違いになって、誰にも負けない部隊を作るしかないと思っていたから」



飛龍「………」

「だからこそわかる事がある」



「もし」

「万が一」

「如月のお嬢ちゃんが恐怖を乗り越えて吹っ切れたら」



「今の俺達じゃあ歯が立たないよ」



☆今回はここまでです☆

いくら危機感感じたからって書いてできたら即投下してを繰り返すのはまずいですよ!!

>>1です。
秋刀魚イベントも終盤に差し掛かりました。
皆様の進捗はいかがでしょうか。私はWG42取った所で終わりとしました。対地攻撃は大事。

それではほんのちょっとだけ更新します。



「…俺達じゃ、歯が立たない?」

「…負ける?」

「俺達が負ける?」


「提督、いくらなんでもそればかりは信じられない」

「俺達は飛龍」

「第一航空艦隊、南雲機動部隊、その二航戦」

「アホか」

「そうやって名声にタカをくくってるから、ミッドウェーで沈む羽目になったんだろうが

「………」

「言い換えてやる」

「そうやって慢心してるから」

「俺達はミッドウェーで負けたんだ」



「自分が負けるはずが無い」

「自分が死ぬはずが無い」

「自分の力を誰もが知っている」



「そういう心が」

「人を犬畜生以下に貶める」




「犬畜生じゃあ化物は殺せまい」


「息も出来ないほどの死線を潜り、それでもなお生きる事を諦めず」

「精神を歪ませ、変質させ、環境に適応し、力を磨き、進化した怪物に」


「生きる事を保障され」

「何もしなくても餌を与えられ」

「生きる環境も与えられる」

「そんな腑抜けた室内犬に」


「勝てる道理があるとでも?」



「………」

「飛龍よう。わかっているか?」


「俺達は、また慢心していたんだ」


「突然湧いて出てきた人類の敵、深海棲艦」

「それに唯一対抗できる人類の希望、艦娘」

「その地位に驕っていた」


「褒められて当然」

「賞賛されて当然」

「全ての人間が自分達を受け入れると」

「そうじゃないと言いつつも、そうであると思い上がっていた」


「そのツケを、あのお嬢ちゃんは一人で背負ったんだ」

「たった一つの切欠でも俺達を好く思わない連中にとっては十分すぎるものだった」

「お嬢ちゃんは、俺達全員が受けるはずだった悪意を一身で受ける事になった」


「役割を否定され」

「存在を否定され」

「生きる事すら否定された」




「…その時他の奴らは何をしていた?」





「他の艦娘はその苦しみを理解しようとすらしなかった」

「面倒見が良いと専ら評判の、天龍型艦娘があいつに何をした?」

「艦娘の母親役だのと評判の、鳳翔型艦娘や大鯨型艦娘があいつに何をした?」


「慰めようとしたか?」

「支えようとしたか?」

「立ち直らせようとしたか?」

「誰も何もしようとしなかった」

「それどころか嘲り笑い、後ろ指を指して追い討ちをかけた」

「あいつの苦しみを理解する事を面倒臭がって」

「今もなお在り続ける自分の地位を驕る事しかしなかった」


「駆逐艦娘も」

「軽巡洋艦娘も」

「重雷装巡洋艦娘も」

「重巡洋艦娘も」

「航空巡洋艦娘も」

「戦艦娘も」

「航空戦艦娘も」

「軽空母娘も」

「正規空母娘も」

「装甲空母娘も」

「水上機母艦娘も」

「潜水艦娘も」

「潜水空母艦娘も」

「潜水母艦娘も」

「揚陸艦娘も」

「工作艦娘も」

「同型艦ですら、睦月型艦娘以外見向きもしない」


「これだけ雁首揃えて誰一人として苦しみを理解しようとしない」



「取り返しがつかなくなってから、ようやく上辺を見繕う」



「俺達もだ、飛龍」




「だから」

「だからこそ」


「あいつの苦しみはあいつだけのものだ」

「あいつの地獄は、あいつしか理解できない」

「理解されない」



「だからこそ」


「その地獄から這い上がってきたなら、その時」


「あいつは、それはもう、立派な、立派な」


「俺達なんかとは比べ物にならないくらいの」




「気違いになっているだろうさ」





・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





冷たい鎖が身体を縛り付けていた。

何重にも重なった鎖が、逃げる事を拒ませていた。

何度目になるかも覚えていない、爆撃機が近付く。

それでも空を見上げる事しかできない。身体が動かない。

逃げ出したいと感じていても、身体に食い込んだ鎖がそれを許さない。

海面から顔を出した子鬼が鎖を引っ張り

頭の中から湧き出た鬼が囁く。


「アノ時ト同ジダ」

「如月ハマタ、殺サレル」

「皆ガソレヲ望ンデイル」


爆風が結界を突き破り、衝撃が身体を海面に叩き付けさせる。

誰かが叫んだ。

掴み起こされ、頭上から希釈された修復剤が降り注ぐ。

損傷した艤装は損傷箇所を取り除かれ、すぐに換えの部品に取り替えられていく。

身体の一部となっているはずのそれに、如月は違和感を覚えた。


「艤装」

「結界」

「防御機能」

「ドウシテコンナモノヲ付ケテイルンダロウ」


額と前髪を伝う修復剤によって歪んだ視界の中、歪んだ声が頭に響く。


「モシ」

「次ノ一撃」

「結界ヲ張ラナカッタラ」

「モウ終ワリニシテクレルダロウカ」


その考えがとても魅力的に思えた。

結界無しで爆撃を受けたらどうなるか、そんな事はどうでもよかった。

痛み、恐怖、苦しみ、悲しみ、痛み、恐怖苦しみ悲しみ痛み恐怖苦しみ悲しみ痛み恐怖苦しみ悲しみ痛み恐怖苦しみ悲しみ。

これらが全部終わるのなら、一緒に何もかもが終わっても良いと思っていた。


空の色に灰色が混ざり、遠くに見える地面の色が黒く染まる。

視界の上から垂れ下がってくる修復剤がヘドロのように見えた。

これ以上これが続くのなら、いっそ全て終わってしまえば。

どうせ、何もできない。

逃げ場も、どこにもないのなら、いっそここで全てが終わってしまえば。

世界が滅びてしまえば。何も考えなくて済むようになってしまえば。

頭にこびり付いたヘドロが前頭葉に染み込み、重さに引っ張られ頭が下を向く。


視界に広がった海面も、酷く、黒く、薄汚れて見えた。



突然、視界が上に引き上げられる。

身体が前後に揺さぶられ、髪にへばり付いたヘドロを撒き散らしながら首が前後に動く。

揺さぶられ、振り落とされかけた意識を取り戻し、正面を見る。

如月の両肩を掴んだ金剛が、彼女の目を見据えていた。



金剛「…いつまでそうしているつもりだ」

金剛「突っ立ってるだけで状況が変わるものカ」

如月「………」

如月「こんな事に、一体何の意味が」

如月「あるんですか」

如月「こんな事をして、何になるんですか」

如月「もう、いなくなる如月に、こんな事をしたって」

金剛「………」

如月「………ふふっ」

如月「そんなに、如月の事が嫌いですか?」

如月「如月が憎いですか?」

如月「そうですよね」

如月「如月がいたから、こんな事になった」

如月「如月のせいで、艦娘みんな信用されなくなった」

如月「如月がいるから、街のみんなもおかしくなった」

如月「みんな、みんな、みんな、如月のせい」

如月「如月の…っくく…キサラギの…!!!」

金剛「………」

如月「………」



「殺してもいいですよ?」




「如月の事が嫌いなんでしょう?」


「遠慮なんかはいらないわ」


「さっくりと殺してください」


「だって私が悪いんだから」


「そうやって殺されるのが如月の運命なんだから」


「如月は結局みんなそうやって死んでいく運命なんだから」


「結局最後はそうなるんだから」




「だから!」




「………殺してください」

「殺さないと、わたし」

「わたし、これからどうすればいいのかわからないの」


「嫌うくらいなら殺してください」


「一気に殺してください」


「嫌わないで」


「私を見ないで」


「私、死ぬから」


「すぐに死ぬから」


「殺したいなら」


「嫌うくらいなら」


「ここで一気に殺してください」



如月「如月の事、嫌いなんでしょう…?」

金剛「………」





金剛「ワタシは」

金剛「お前の事が大嫌いダ」





金剛「テートクにいっつもベッタベッタベッタベッタくっ付いて」

金剛「子供のクセして、ませた事を言ってからかって」

金剛「ちょっと隙を見せれば色仕掛け」




「だけど!!!」




「そんな些細な事は!!!!」







「 ど う で も い い ! ! ! ! ! ! 」








「その目…!!!」


「その目が気に入らないんだヨ…!!!!」



「オマエのその目が…」


「妹そっくりなのが…!!!」



「妹が、死んだ時と、同じ目をしているのが…!!!」



「嫌で!!」



「嫌で!!!」



「嫌で!!!!」







「 し ょ う が な い ん だ よ ォ ! ! ! ! ! 」







☆続きは明日書きます☆

ACの方は翔鶴姉が一発で出ましたウヒョーイ


☆再開します☆



「………私の妹は」

「所謂シスコン、って奴だった」

「子供の頃からずっと私に付いてきて」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、って私の事を呼んできた」


「ちょっとくっつきすぎじゃないかとは思ったけど」

「…正直、そんなに悪い気はしてなかったはずなんだ」



「大学生になっても妹は、まだ私にべったりだった」

「そんなだったからなのか」

「私が艦娘になるって決めた時も一緒に付いて来た」


「姉妹揃って艦娘の適正があったんだ」

「私は金剛」

「妹は比叡」

「艦娘になっても、私達は姉妹同士だって、妹は凄く喜んでいた」





「…でも、それが、駄目だった」

「あの時、何だかんだ理由を付けてでも、妹を艦娘にしてさえいなければ」

「妹は死ななくてよかったはずなのに…!!」






「艦娘になって変わった事は」

「今まで使っていた名前が封印された事」

「顔が変わった事、遺伝子が変わった事」

「妹が私の事を、お姉ちゃんじゃなくて、お姉様って呼ぶようになった事」

「それだけだった」


「艦娘になった後、私達は研修施設で艦娘の基本的な事を学び始めた」

「そこでも妹と一緒だった」

「姉妹艦だったからか、部屋割りでも一緒だったし」

「訓練でも、座学でも一緒になる事が多かった」



「そんな中、ひとつのニュース番組が放送された」

「『艦娘とは何か』」

「まだ艦娘の知名度も今ほどまでには高くなかった頃」

「広報の意味もあってか、そんな特集が組まれた」








「その番組の途中で」


「艦娘が二人轟沈した」











「蒼龍と」


「比叡」







「偶然だったのかもしれない」

「わざとやったのかもしれない」

「でも、そんな事はどうでもいい」

「どっちだろうが関係ない」



「ニュースでその映像が流れてしまったから」

「妹は死ぬ事になった」




「そのニュースの放送後、何があったと思う?」

「何でそんな事になったと思う?」







「いじめだよ」








「机の上に花とか遺影を置かれたとか」

「まだ生きてるのかって言われたとか」

「廊下を通るだけでニヤ付いた顔で敬礼されるとか」

「聞いた時は子供みたいな事してると思った」


「でも」

「いつ、本当に命を失うかもわからない中で」

「仲間だと思っていた人からそんな仕打ちをされる」

「それでどれだけ傷付くか」

「どれだけ怖い事か」

「誰も理解しようともしなかった」

「…私も」



「相談はされたんだよ」

「でも、真剣に考えようとしなかった」

「いつまでもベタベタくっついてくる妹が面倒臭いと心のどこかで思っていて」

「それよりもこれからの事とか、任された役目の事とか、自分の事とか」

「私を気にかけてくれてる教官の事ばかり考えて」


「あの子がどれだけ傷付いていたか、苦しんでいたか、考えていなかった」




「だから」

「妹は死んだ」





「ある日、練習航海の途中でイ級が突然現れた」

「戦艦娘もいる艦隊でイ級一匹なんて相手にもならない」

「そう思っていた」




「でもそうじゃなかった」




「妹はそのイ級を見つけた途端」

「狂ったように笑いながら」


「『迎えが来た』」

「『楽になれる』って叫びながら」


「背部艤装を切り離して、一人でイ級に突っ込んでいった」

「イ級はそうやって近付いて来た妹を容赦無く撃った」





「妹は」

「抵抗すらしないまま」

「砲弾の直撃を喰らって」

「一撃で、轟沈した」






「何が起こってるのかわからなかった」

「イ級がいきなり出てきて」

「妹が狂ったように笑いながら突っ込んで死んだ」

「何でそうなったのか、わからないまま、ずっと泣いてた」

「酷い話だよね」

「でもまさかそんな事になるなんて全然思っていなかった」

「まさか死ぬなんて、そんな、思っていなかった」


「でも気付いちゃったんだ」

「『楽になれる』ってどういう意味だったのか」

「妹が私に何を言っていたか」


「妹はいじめられていた」

「妹はそれで辛くなって、自分から死ににいったんじゃないか」

「妹は」

「イ級に殺されたんじゃない」

「私達が殺したんだ、って」


「頭がおかしくなりそうだった」

「あの時私がもっと真剣に相談に乗っていれば」

「いや、そもそもあいつらがそんないじめなんてしなければ!」

「いや、教官がちゃんと把握して止めさせていれば!!」

「こんな事にはならなかった!!」

「妹は死なずに済んだのに!!!」



「私は、妹をいじめた奴等も、教官も、全員半殺しになるまでブン殴った」


「馬鹿だよね」

「そんな事をしても自分の罪が軽くなるわけでもないのにね」

「私が妹を殺したようなものなのにね!!」


「でももう何もかも、自分もグチャグチャにしてやらないと気が済まなかった」


「でも結局、戦艦金剛だからって理由で大した罰は受けなかった」

「あの頃は艦娘の数も今ほどじゃなくて、その中でも戦艦娘は貴重な戦力だからって」

「特に金剛型艦娘と榛名型艦娘は人気が高いからって、そういうスキャンダルをメディアに流すわけにはいかないって」

「それだけの理由で、全部もみ消された」

「妹が死んだ事も」

「妹だって金剛型戦艦娘なのに」



「その後私はこの泊地に」

「提督への『嫌がらせ』の為に配属された」

「誰かが言っていたよ」

「『あいつも半殺しにされればいい』ってさ」




如月「………」

金剛「色々あって、色々失って、グチャグチャになって」

金剛「それでも結局、順調に人生が進んで、今こうしているけど」

金剛「あの時の事は、一日たりとも忘れた事はない」


金剛「遠洋航海に出る前の、疲れきった妹の目」

金剛「イ級を見つけた時の、ギラギラした妹の目」

金剛「もう何もかもを捨ててしまおうと、諦めた目」



金剛「…今のあなたと同じ目」



金剛「私は、その目が怖くて怖くてしょうがない」


金剛「…だからって、こんな事をしたって」

金剛「もう妹は戻ってこない…あの子は死んだ」

金剛「そんな事はわかってる」

金剛「あの子の墓を思い出の場所にこっそり立てた」

金剛「そんな事をしたって何にもならないってわかってる!!」

金剛「私のせいで、妹が死んだんだ!!」

金剛「もう何度も死にたいと思った!!」

金剛「でも…死ぬのが怖くて…何もできなかった…」



金剛「…ここでまた、妹と同じ目をしたあなたを見過ごしたら」

金剛「もし、死んじゃうような事になったら」

金剛「私は…もう…!!…何も、耐えられない…!!!」



金剛「だから!!」

金剛「もうあんなものは見たくないんだ!!!」




金剛「だから!如月!!!」ガシッ

如月「!!」


金剛「……!!………!!!」グググッ


金剛「…艦娘辞めるなんて言わないでよ…!!!」ポロポロ


金剛「死ぬのが運命だからなんて言わないでよ!!!」


金剛「死んでもいいなんて言わないでよ!!!」


金剛「殺してなんて言わないでよぉ!!!」


金剛「生きてよ…」


金剛「お願い…!!」


金剛「お願いだから…!!!」




金剛「お願いだから立ち直ってよぉ…!!!」




☆続きは明日か明後日書きます☆

>>1です。
続きは明日とか言っておいてこんな事になって本当に申し訳ない。

それではぼちぼち始めます。



飛龍「ッ………」

「…そうか、あのお嬢ちゃんにそんな事が」

飛龍(…多聞丸は、知らなかったの?)

「俺は、な」

「他の俺なら知っているかもしれない」

飛龍(……えぇ、そうだろうね)

飛龍(私達は正規空母、南雲機動部隊のニ航戦だものね)

飛龍(今の今まで活動している鎮守府になら、残っているだろうね)


飛龍(なら)


飛龍(今、こんな事があって)

飛龍(昔、そういう経験をしたのに)

飛龍(…何もしなかった奴がいるって事、か)チッ


飛龍(…何がニ航戦だ。何が南雲機動部隊だ!」

「おい、飛龍」

飛龍「こんなもの、慢心どころの騒ぎじゃない!」



飛龍「馬鹿だ…!!私達(ニ航戦)は!」

飛龍「何も学ばなかったのか!!」

飛龍「何も感じなかったのか!!」

飛龍「苦労して得たのは殺しの技だけか!!」

飛龍「それだけを!それだけを誇りに!糧にして生きていくつもりか!!」

飛龍「…それは誇りでも何でもない」

飛龍「ニ航戦の名前に泥を塗るだけだ!!」

飛龍「仲間の一人も思いやれない奴が!ニ航戦の名を騙るな!!名が汚れる!!!」



「落ち着け!!それ以上考えるな!!」

「このままじゃお前も、あいつと同じになっちまうぞ!!」


飛龍「わかっている!!」

飛龍「私は、私は、同じにはならない…!!!」

飛龍「同じになって、たまるか…!!!」

飛龍「そんな、ろくでなしの人でなしと同じになんてなってたまるか!!」



「飛龍………」


飛龍「…私は、今ここで私だけの役割を果たす」

飛龍「『飛龍の』じゃない。『私』の、『私だけ』の役割を」

飛龍「…それでも、とことん付き合って貰うよ。多聞丸」

飛龍「いや…」

飛龍「南雲機動部隊隷下第二航空戦隊司令官」

飛龍「山口多聞『海軍中将』」


「…当たり前だ」

「分化されようが、今の俺はお前の一部だ」

「お前の意志も、お前の怒りも、後悔も、よくわかる」




飛龍「なら、全部賭けて貰うよ」




飛龍「ニ航戦の誇りも、命も」

飛龍「空母飛龍の名誉も」

飛龍「自身の名声も何もかも」

飛龍「…もし、それでも駄目なら」

「一緒に滅びる、か?」

飛龍「………覚悟はしている」

飛龍「金剛が、そうしてるように」

飛龍「私も…!!」



瑞鶴「………」

赤城「………」

比叡「…そういう、事、だったんだ」

比叡「何か、避けられてるなって思ってたけど」

比叡「そっか………」ポロポロ

瑞鶴「…比叡」

瑞鶴「大丈夫?」

比叡「え?」

瑞鶴「涙出てるよ」

比叡「え」

比叡「あ…あぁ、ほんと、だ?」

比叡「あ、だめだ、これ、止まらない」




「お姉ちゃん」





比叡(痛い)


「お姉ちゃん」


比叡(胸が痛い)


「ごめんなさい。お姉ちゃん」


比叡(心が痛い)


「苦しかったよね」


比叡(身体が裂けるくらいに痛い)


「いつも見ていたよ」


比叡(そっか)


「ごめんなさい」


比叡(わたしは比叡で、あなたも比叡だったから)


「私が、私が弱かったから」


比叡(今あなたは、わたしの中にいるんだ)

比叡(比叡の中に、あなたはいるんだ)

比叡(比叡の中で、みんな、ひとつに、なって)



比叡(だから、わかった)




比叡「…大丈夫」

比叡「大丈夫だから」

瑞鶴「…本当に?」

比叡「うん」

比叡「きっと大丈夫」

瑞鶴「きっとって」


比叡「全部何とかしてみせる」

比叡「お姉様の」

比叡(お姉ちゃんの)

比叡「為に」

比叡「何一つ妥協してたまるもんですか」


赤城「…瑞鶴、比叡。摩耶さんから通信よ」

赤城「提督が近くまで来てる」

瑞鶴「!!」

比叡「…わかりました。行きましょう」


比叡(大丈夫)

比叡(比叡(あなた)の想いも痛みも全部わかったから)

比叡(全部、比叡(わたし)が伝える。やりとげる)



摩耶「…そういう事かよ」

摩耶「時間が無いとはいえ、あたし達には言っておいて欲しかったな」

摩耶「でも」

摩耶「おかげでようやくあたし達の役割がだいたいわかった」バシッ


摩耶「新入り!!偵察は!?」

オイゲン「…近くまで来てます」

オイゲン「榛名さん達の艦隊と…軽巡洋艦娘一人と重巡洋艦娘一人」

オイゲン「あと誰か、しがみついてます」

摩耶「その艦娘ってのは団子頭と黒髪で丸っこい髪飾りしてる奴か?」

オイゲン「はい、そうです」


摩耶「来たか。行くぞ」

オイゲン「…どうするんですか?」


摩耶「提督を足止めする」

摩耶「今、如月と提督を会わせる訳にはいかねぇ」


オイゲン「え?…会わせてあげないんですか!?」

摩耶「それじゃあ本当の解決にはならないんだよ!!」

オイゲン「でも」


摩耶「…いいか、よく聞け」





摩耶「あたし達はな!!」


比叡「もう十分痛い思いはした」


飛龍「だからこそ、ここで全てを終わりにする」




飛龍「誇りも名誉も全部かなぐり捨ててでも」


比叡「私達は、全力で!!」


摩耶「今までの分を取り戻しにいかなきゃ納得できねぇ!!」




比叡「如月ちゃんは」


摩耶「あたし達全員で、何があっても、どんな手段を使ってでも!!」


飛龍「 救 っ て み せ る ! ! ! 」





・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





羽黒「………」

提督「…赤城」

提督「そこを、どけ」

赤城「どけません」

赤城「誰だろうと、ここは通せないんです」

赤城「例え提督、あなたでも」


赤城「後で、どんな処罰を下されても構いません」

赤城「………例え、解体だと言われても」

提督「ッ誰が!!!お前をそんな!!!!」

赤城「………」

瑞鶴「………」

提督「………」


提督「…そうかよ。お前が本気なのはわかってる」

提督「本気用の外套まで引っ張り出してきてるんだからな」

提督「でもな!!!だからって!!!」


提督「あんないじめまがいの事が許されると思ってるんじゃねぇぞ…!!!」



赤城「………」

提督「瑞鶴」

瑞鶴「!!」ビクッ


提督「俺を、通せ」

瑞鶴「……できない」


提督「………」ジッ


提督「通してくれ」

瑞鶴「………できない」


提督「お前なら、わかるだろう…!?」

瑞鶴「…それでも、できない」


提督「何でだよ」

瑞鶴「!!」ビクッ

提督「何で通せないのか、言ってくれ」

瑞鶴「………」


提督「………」

提督「瑞鶴、俺の目を見てくれ」

瑞鶴「………!!」ギュッ

提督「…どうして、できない?」



比叡「司令、いい加減にしてください」スッ

提督「比叡!」

摩耶「…黙って聞いてりゃ、的外れな事言いやがって」

摩耶「何がいじめまがいだ」

摩耶「勘違いもいい加減にしろよこのクソ提督!!!」

提督「!?摩耶さん…!?」




摩耶「あたしだって…!!この泊地の奴等だって!!」

摩耶「あんなキチガイどもの思う壺になんてなりたくねぇんだよ!!」

摩耶「このままじゃ終われねぇって!!みんな思ってるんだよ!!!」

摩耶「あんたらだってそうだろ!?榛名!!」

榛名「………」


比叡「司令が戻ったら、この場は何とかなるかもしれません」

比叡「でも!!それじゃあここまでやった意味がないんです!!」


比叡「司令が何かをするんじゃない!!」

比叡「あの子が!如月ちゃん自身が!今の状況を乗り越えなきゃ!!」

比叡「乗り越える強さを持たなきゃ!!」

比叡「また同じような事が延々と続いちゃう!!!」


比叡「金剛姉様は、心を鬼にしてるんです!!」

比叡「如月ちゃんが!今を乗り越えるために!!」

比叡「だから、司令を如月ちゃんを会わせる訳にはいかない…!!」

比叡「この演習を、止めさせるわけにはいかない!!」

比叡「無理矢理通るなら」

比叡「私達は力づくでも通しません」ガシャッ



比叡「私達、私達みんなが」

比叡「そういう覚悟でここにいるんです」




提督「………」

提督「そうか、そういう事か…」

提督「そりゃあ確かに俺の勘違いだ」

提督「前に一度そういう事があったから、またかと思っちまった」

提督「…あいつらにも謝らなきゃな」


摩耶「…提督!!」

提督「でも」

提督「ごめん」ドンッ

那珂「えっ」




バシャン




羽黒「司令官さん!?!?」

比叡「司令!!!」

摩耶「………!!!」

摩耶「 馬 鹿 野 朗 ォ ! ! ! 」


赤城「潜った…!?」

瑞鶴「ぐっ、あぁくそっ!手が届かない!!」バシャッ

五十鈴「手怪我してるのに何て無茶な事を…!!」



提督(わかっている!!わかっている!!!)ゴボゴボ

提督(俺がやってる事は大馬鹿野朗のやる事だ!!)


提督(でも…怖い…!!怖いんだ!!)

提督(もし万が一、如月自身が死ぬ事を望んじまったら)

提督(万が一、万が一!!如月自身の意思で防御装置を外してしまったら!!)

提督(それに誰も気付かないまま、爆弾が如月に当たったら!!)

提督(演習用だろうが関係ねぇ!!如月は死ぬ!!!!)


提督(嫌だ!!ここまで来てそんなのは嫌だ!!!)

提督(そんなんになるくらいなら!!今ここで演習を中断させてしまえば!!)

提督(俺は!!俺のできることなら何をしてでも―――――)





「ん?今何でもするって言ったのね?」





提督(え?)

ボグッ

提督(ぶぇーッ!?)






伊19「とったのねーーーー!!!」ザバーン

提督「ウギャアーーーーッ!?ッ!?ッ!?!?」






羽黒( ゚д゚)

瑞鶴( ゚д゚)

五十鈴( ゚д゚)

摩耶( ゚д゚)

雲龍(帰ったらウォーターボーイズでも見ようかしら)


伊19「海に潜ってしばらくホッとしたろう!でもそれは大きなミステイクなのね!!」

比叡「ナイス19!!」

伊19「提督ならこの位の事はすると思ったのね!!海のスナイパーなめんなのね!!」

摩耶「こ、このクソバカ提督!!簀巻きにしてやる!!!」

摩耶「手伝えお前らー!!」ガバッ

提督「離せ!離せコラ!!」

伊19「艦娘6人に勝てるわけないだろなのね!!諦めるのね!!」

提督「馬鹿野朗お前!!俺は振り切るぞお前!!」

伊19「かにみそー!!」

提督「あ~やめろ!あ~ヤメロ!!あ~!!」

瑞鶴「比叡そっち持って!!」

提督「離せコラ!!あー!!!」

摩耶「縛るぞ!!!」

比叡「あーもう!もう抵抗しても無駄ですよ!!」

提督「やめろォ!!何するー!!!」






「如月ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」






☆今度こそ続きは明日書きます☆

AC比叡の後ろ姿を見ていると、ACfA時代の愛機を思い出します。


☆再開します☆



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





如月「………」

金剛「如月」


金剛「あなたは何で今までここでやってこれたの?」


如月「え?」

金剛「戦闘機に、艦載機にやられて沈むのが運命だって言うけど」

金剛「じゃあ今まで何度も空母と戦ってきたはずなのに、何で沈まずに生き残れたの?」

金剛「それまでのは運命じゃなかったなんて、そんな都合の良い事が起こるものでもないでしょう?」

金剛「今と、今までで、一体何が違うの?」


如月「…随伴艦が守ってくれた…?」

金剛「No。こっちも危ないってのに、いちいちあなたを気にかけて行動なんてできない」

如月「…運が良かったから?」

金剛「No。真っ先に沈んだ船に運なんてものがあると思ってるの?」

如月「…沈められた記憶を忘れていたから?」

金剛「…そんなものを忘れられるほどに、夢中になった何かがあったんじゃないの?」


金剛「その為に、その為だけに、一生懸命だったから」

金剛「そんなものを気にしないで、今まで戦ってこれたんじゃないの?」

金剛「如月にとって、それは何?」

金剛「…如月が『帰る場所』って、何?」


如月「帰る場所…?」



「お帰り。始めての遠征はどうだった?」


「慣れてきたら近海の警備とイ級殲滅もやって貰うよ」


「お前達はこれからの主力になるんだからな。期待の新人って奴よ」



「おい!大丈夫か!?怪我は!?何があった!?」



「如月。お前と潮の連携、イエスだったよ」


「新型重巡と随伴の戦艦の撃沈!」


「まさかもう、こんなすげえ戦果を上げるなんて思ってなかったぞ!?」



「よくやった!本当に、よくやったよお前ー!!」




如月「司令、官」

金剛「そう」

金剛「そうなんだよ」

金剛「あの人はずっと私達の帰る場所にいた」


金剛「如月…提督っていう役職は、ただのお飾りでも旗振り役でもない」

金剛「私達艦娘にとって、何よりも大事な人」



金剛「『艦』が帰る『港』であり、『艦娘』を導く『上官』であり」

金剛「『娘(女)』である私達の…大切な『父(男)』」



金剛「だから!だからこそ!」

金剛「あなたも!私も!こんなにもあの人に恋焦がれている!!」


金剛「その想いは、そんな簡単に折れるもの!?」

金剛「知らない誰かの勝手な都合で折れ曲がってしまう程度のもの!?」






金剛「 馬 鹿 に す る な ぁ ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」






金剛「その想いは、私と同じその想いは!そんなチンケものじゃない!!」

金剛「私は!これがあるから戦える!これがあるから、どんな恐怖にだって立ち向かえる!!」

金剛「これがあるから、帰って来れる!!」

金剛「私を信じて待つ提督がいるから!!私は姫級だろうがぶちのめして帰ってきたんだ!!」


金剛「でも!提督は!!!」

金剛「あなたの事だって、信じて待っているんだよ!!!」

金剛「無事に帰ってこれるよう、裏方の仕事を頑張って!!」


金剛「いつも!!いつだって!!いつまでも!!!」

金剛「そういう人だから…!!」

金剛「私は、また、人を好きになったんだから…!!!」

金剛「こんな私でも、信じて、帰ってくるって信じて、待ってくれるから…!!!」


如月「信じて…待つ…」

如月「………!!」ハッ



「信じて、待つ…!?」




「アネモネの花言葉はね」


「『見捨てられた』『儚い希望』」


「『見放された』『消えた希望』」



「でもね」


「この紫色のアネモネにはまだ花言葉が残っているの」


「それは」




「『あなたを信じて待つ』」





「これから先の未来は、楽しい事ばかりではないと思う」

「辛い事もある、『見捨てられる』事もある、『見放される』事もある、裏切られる事もある」

「…一人じゃ耐えられないくらい、悲しい事もある」


「でもね、そういう時には、紫のアネモネを思い出して」

「『あなたを信じて待つ』人がいる事を」

「忘れないで」

「どんな時でもあなたは一人じゃない」

「私も、如月ちゃんのお父さんも、お母さんも」

「みんな『あなたを信じて待っている』から」

「どうしようもないくらいに辛くても、諦めないで」

「あなたが居なくなったら…みんな、悲しんじゃうから…ね?」

「私も頑張るから」

「立派な艦娘になって、如月ちゃんに会いに行くから…」


「………約束、破っちゃ嫌よ?」



如月(…先生…私は………!)ギュッ

金剛「それを…それをお前は!!」ガッ

如月「!!」ビクッ

金剛「あんなFuckin Uncle Fuckerどものせいで折れるのか!?」


金剛「私なんて!!」

金剛「私達なんて!!」

金剛「いくらでも嫌ってくれて構わない!!」


金剛「でも!!提督を!!本当にお前を信じて待っている人達を!!捨てるな!!!」

金剛「お前が、どんなになっても、ずっと!!ずっと!!待ってる人達から!!逃げるな!!!」

金剛「その人達は!!お前の名誉にあやかりたくて一緒にいるんじゃない!!!」

金剛「お前が!!お前だから!!一緒にいたいんだ!!!」

金剛「そういう人達を、勝手な都合で捨てないで!!!」


如月「……………」




「如月ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」




如月・金剛「!!」

如月「司令官!?」バッ

金剛「提督!!!」バッ







簀巻き「如月ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」ジタバタジタバタジタバタジタバタ




如月・金剛「なんだあの簀巻きーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?」ガボーン







榛名「大丈夫ですよお姉様」

金剛「榛名!?」

榛名「羽毛布団ですから!!」( ´∀`)b

金剛「お!?おぉ!?あぁ、うん!?」(何が大丈夫なのか全然わからねぇ…!!!)



摩耶「金剛!!!とりあえずこのアホの事はアタシ達に任せろ!!!」

金剛「任せろって、大丈夫!?」


金剛「Tokyo Bayに沈めたりしない!?」

摩耶「誰がするかー!!!」



摩耶「………いや」

摩耶「それ、いいかもな」ニヤリ

羽毛布団の簀巻き「マジすか」

金剛「…ちょっと?」




摩耶「おい!如月!!!」



摩耶「お前はいつまでそうしてるつもりだ!!」

摩耶「如月の名声だの、これからの事だの、みんなに嫌われてるだの、何か色々考えてるみたいだけどな!!」

摩耶「その前にもっと大事なもんが近くにあるって!!わかれよ!!!」グイッ

羽毛布団の簀巻き「うおっ!!」


摩耶「こいつはな!お前の為に両手折れてんのに海に飛込みまでしたんだぞ!!」

摩耶「そのお前がそんなザマで、恥ずかしいとは思わねぇのか!?」

摩耶「申しわけねぇって思わねぇのか!?」

摩耶「こいつがどう思うか想像もできねぇのか!?」


摩耶「お前は、こいつの事が好きなんだろ!?」

摩耶「だったら、こいつにかっこいい所見せるくらいの気概を見せやがれ!!」


摩耶「いつまでも!どうにもならねぇ事までグダグダグダグダ言ってる暇があるならなぁ!!」

摩耶「飛龍ぶちのめしてとっととこっちに来やがれ!!」


摩耶「まぁ」

摩耶「こいつがどうなってもいいってんなら、そのままでもいいけどな!!」

摩耶「所詮お前の気持ちがその程度だってんなら、それでもいいけどな!!」



如月「………!!」ギュッ

摩耶「でも違うだろ!?そうじゃないだろ!?」

摩耶「馬鹿な事考えてる暇があるなら!ちょっとは考えてみろよ!!」

摩耶「その辺のイカレポンチとこいつ、どっちが大切なのかって!!」

摩耶「お前にとって、本当に大切なものは何かって!!」


如月「………」

摩耶「あたし達はこいつ引っ張って先に船着場に行ってる」


摩耶「でもお前がその辺はっきりさせないなら、あたしは!!」

摩耶「こいつと絶対!!会わせねぇからな!!」


摩耶「行くぞおめぇら!!」

雲龍「あらほらさっさー」ザァアアアアアアアア



如月「………」

金剛「如月」

金剛「提督が帰ってきたヨ…簀巻きだったけど」

如月「え、えぇ…簀巻きだったけど」

金剛「それで、どうする?」

如月「え?」

金剛「提督はあそこにいる。簀巻きだけど」

金剛「だけど、この演習は飛龍が中破するまで終わらない」



金剛「どうする?」

金剛「まだ、戦えるよね」



如月「………」



金剛「たかが名誉を無くしただけ」

金剛「たかが友達を無くしただけ」

金剛「壊れた砲は取り替えた。壊れた艤装は修理した、疲れも取った」

如月「………」


金剛「砲に弾を込めろ!炉に火を灯せ!!」

金剛「脚に力を込めて立ち上がれ!!歯を食いしばって腕を上げてみろ!!」

金剛「まだ終わっていない!!まだこれからだ!!!」


金剛「お前はまだ戦える!!!」

金剛「お前はまだ全力すら出していない!!!」

金剛「お前にはまだ、大切なものが残っている!!!」

金剛「名誉より、何より、本当に大切なものの為に!!!」


金剛「見せてみろ!!!」

金剛「如月の…お前の!!!」







金剛「Burning Loveを!!!!」







如月「!!!」





 





飛龍「…立つ…!!」ビクッ

「いや待て」

飛龍「………うん」

「まだやるな」

飛龍「………」

「邪魔をしてやるな」

飛龍「わかってるよ」

飛龍「ようやくここまで来たんだ」

「あぁ、ようやくだ」



「俺達はこの瞬間の為にここまでやったんだ」

飛龍「特等席で見せてもらおうじゃないの」



飛龍(………さぁ!!)

「さぁ!!」

飛龍(さぁ!!!)


見せてみろ!!!

このウジャウジャして暗いだけの、気分の悪い空気を

何もかも全部全部、台無しにしてやろうじゃないの!!!



お前の意思で!!!

お前の強さで!!!

何もかも!!全部!!!台無しにしてやろうじゃないの!!!




如月「帰るべき場所…大切なもの…」

如月「………パパ」

如月「ママ」

如月「先生」

如月「…司令官。私の、帰るべき場所」


「………でもその帰るべき場所に裏切られたのよ、如月は」

「あなたに帰る場所はもうこの地上にどこにも無いと言ったでしょう!?」

「諦めなさい…!諦めてよ…!!」

「諦めて…沈みなさいよ…!!!」





如月「黙りなさい…!」

「!?」





如月「私は、沈まない…!!」

如月「私は、死なない…!!」

如月「私は、帰るんだ…!!」

「帰る場所はもう無いって言ってるでしょう!?」

「如月が帰る場所にいる人間は…みんなみんな如月を裏切った!!」



如月「司令官は!!!」

如月「『私の』司令官は!!!」

如月「そんな人間じゃない!!!」




「そんなのわからないじゃない!いずれ裏切るかもしれない!!」

「それが怖いだけよ!!それが怖くて誤魔化しているだけなのよ!?」

「提督なんて!人間なんて!!みんなみんな敵なのよ!?敵しかいないのよ!?」

「あの司令官があなたの言うような、清廉潔白な人間だとでも思ってるの!?」


如月「そんなの私にもわからないわよ!!」

如月「それでも!!」

如月「それでも!!あの人は…!!!」




如月「優かったから…」

如月「私の事を大切にしてくれている、大切な人だから…」

如月「私は『男』として…司令官の事を愛しているから…!!」

如月「私は、司令官を、信じたい!!」





如月「あなた達にそれを否定する権利なんてあるの!?」

如月「あなた達は如月で、私も如月だけど!!」

如月「だからって!!私の!私だけの!!この想いまで否定されたくない!!!」

如月「この身体も力も記憶も、全部如月から貰ったもの」

如月「でもこの想いだけは、如月のものじゃない!!」

如月「私だけの想いだから!!!」


如月「…もし私が死んだら」

如月「…もし私がずっとこのままだったら」

如月「パパも、ママも、先生も、司令官もみんな悲しむ」

如月「それだけは、それだけは、嫌!!」

如月「私の大好きな、世界で一番好きな人達が悲しむなんて、絶対に嫌!!」


如月「………そうよ」

如月「こんな事になる前、私が艦娘になる前だって」

如月「パパとママを守りたかったから!!パパとママの役に立ちたかったから!!」

如月「私は艦娘になったのよ!!」

如月「誇りだとか名誉だとかじゃない!!ただ、二人が大好きだったから!!」


如月「私だけのパパ!私だけのママ!私だけの先生!私だけの…司令官…!!!」

如月「みんなに悲しんでもらいたくない…みんなとずっと一緒にいたい!!」



如月「だから、私は」

如月「ここで立ち止まるわけにはいかないの…!!」

如月「例え、私以外の如月が皆死ぬ事になったとしても!!」


如月「『艦(如月)』の名誉も!力も!何もかもを否定されたとしても!!」

如月「この、『私の想い』だけは!」

如月「誰にも否定させない…!消されたくない!!!」

如月「何があっても…誰が何を言おうとも…!!」

如月「誰が何をしようとも…!!」

如月「同じ如月だろうとも!!!」








如月「 こ の 想 い だ け は ! ! ! ! 」




如月「 消 さ れ て た ま る か ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」








叫びと共に立ち上がる。

身体を縛る鎖もろとも、身体を戦場へと駆り立てる。


海面から鎖を引き続ける子鬼の身体がぶるぶると震え、

ついに彼女の意志に負けた。


子鬼もろとも空中高く舞い上がった鎖が分解され、跡形も無く霧散する。


その瞬間


如月の内面から発せられた光が波となって辺り一面に広がっていった。



光の波は海の波と風の波を引き連れ、船着場近くから演習を見守っていた艦娘達に直撃する。

波の直撃を受けてある者は思わず目を背け

ある者は気圧されて思わず身を引いた。


波が過ぎ去って数秒後、艦娘達は異常なものを見つける。

誰もが予想していなかった、異常なもの。


演習場となった海域に留まり続ける光。




光を纏う、如月の姿。



☆今回はここまでです☆

バーニングラブ≒火事場のクソ力

>>1です。
ついに秋イベが始まりました。そして来週にはACのイベントが終了します。
無理しない程度に、満足のいく結果を出せるように楽しんでいきましょう。

それでは少しずつですが始めさせて頂きます。



大井「っ…」

北上「大丈夫?大井っち」

大井「えぇ。なんか、お腹がジリジリしますけど…」

北上「私も顔がジンジンしてる」

大井「何なのあれ…光がぶつかってきたと思ったら」

北上「船着場から見てる人達大丈夫なのかな…」


北上「……って!?」


北上「大井っち!!」

大井「今度は何ですか!?」

北上「あれ!あれ!!」

大井「あれ、って………!?」

大井「如月…!?」

北上「あれって、まさかと思うけど、あれだよね?」

大井「………えぇ、間違いないわ」



「……『改ニ』、です」




如月「………改、二…?」


「改二」

「改二」

「改二」

「改二」




「『改二』」

「俗にそう呼ばれる現象の原因について、詳しい事はまだわかっていません」





「わかっているのは、特別な改造を施さなくても光を発している間は、艤装性能と艦娘の身体能力が爆発的に向上する事」


「この光は私達艦娘に元々備わっている霊的エネルギーの一種であり」

「何らかの理由で、そのエネルギーが急激に増幅した結果このような現象が発生していると考えられています」


「視覚化する程に溢れ出した光は、膨大なエネルギーの蓄積による身体の崩壊を防ぐ為に、体外に排出されているという説が有力で」

「この現象は、艦娘の身体と艤装では消費し切れない余剰エネルギーが発生している証とも言われています」

「このエネルギーを無駄なく、強力に利用する為に特別に設計されるのが」



「『改二艤装』です」




如月(すごい…)

如月(こんな、溢れるくらいに光が…)


「嘘よ!!こんなのは嘘よ!!」

如月「!!」

「如月が改二なんて…!!武勲艦でもない如月が改二になんてなれるはずがない!!」

如月(………それが、何か?)

「!?」


如月(確かに如月は武勲艦じゃないわ)

如月(真っ先に沈められて、艦娘になってもたった一人沈んだ)

如月(名誉なんて無い)


如月(でも私は改二になれた)

如月(名誉も武勲もいらないと思って)

如月(愛している人のために生きようと思った時に、私は改二になれた)


如月(それで十分よ)

如月(世間を納得させる理由も理屈も何も要らない)

如月(納得して貰おうとも、もう思わない)


如月(私の愛は)

如月(生きる力に変えることができるってわかったから)

如月(私自身が、納得できたから)

如月(私の愛している人達は、それで納得してくれるって信じてるから)



「何を馬鹿な」
「 き゛さ゛ら゛き゛ち゛ゃ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛! ! ! ! ! 」

「!?」

如月「!?!?!?」ビクーン




暁「 き゛さ゛ら゛き゛ち゛ゃ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛! ! ! ! ! 」ボロボロボロボロ


暁「 お゛め゛て゛と゛う゛き゛さ゛ら゛き゛ち゛ゃ゛ん゛! ! ! 」ボロボロボロボロ



暁「 か゛ ん゛ は゛ れ゛ え゛ え゛ え゛ え゛ え゛ え゛ え゛ ! ! ! ! 」ボロボロボロボロ


暁「 か゛ん゛は゛れ゛き゛さ゛ら゛き゛ち゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛! ! ! ! 」ボロボロボロボロ





如月「あ、暁ちゃん?」



夕雲「暁さん…」

荒潮「あらあら…あんな顔ぐしゃぐしゃにして」

長良「…そうだね。そうだよね!!」

長良「ここまで来たら!!!あともうちょっとなんだから!!!」


長良「がんばれー!!きさらぎちゃーん!!」

名取「が、がんばれー!!」

潮「がんばれ如月ちゃーん!!」

大淀「がんばれー!!」

夕立「がんばれ…がんばれー!!!」

愛宕「がんばれ♪がんばれー♪」

高雄「が、がんばれ♪がんばれー♪」

鳥海「が、がんばれ♪がんばれー!!」

川内「駆逐一班の意地見せろー!!」

伊勢「きさらぎのー!もっといいとこみてみたいー!!」

龍田「まさかこれで終わりじゃないわよねー?」

叢雲「やられた分は倍返しよ!!やっちゃいなさーい!!」

初雪「ちくわ大明神」叢雲「初雪ィ!!」ビスッ

初雪「が、がんばれー」

夕雲「ここで負けたら提督は私が貰っちゃうわよー!!」

荒潮「あはははっそれ面白そうね~!やだったら早く戻ってきなさ~い!!」

阿賀野「終わったら友提督の間宮さんとこで奢ってあげるからがんばれー!!」

足柄「改二になれたんだから、あともうちょっと頑張りなさーい!!完全勝利よ完全勝利!!!」

陸奥「そうよー!!あともうちょっとなんだから!!全力でやっちゃいなさい!!!」

明石「今の如月ちゃんならいけるってー!!!」

鈴谷「ガンガンいっちゃえー!!!」

最上「バッチリがんばれー!!!」

三隈「いのちだいじにー!!!!」

蒼龍「ボッコボコにやっちゃえー!!!」


磯波「が、がんばれー!!」

扶桑「がんばってー!」



「がんばれーーー!!!がんばれーーーー!!!!」


飛龍「………」

「飛龍よう」

「あいつら皆如月の味方みたいだ」

「俺達はまた一人になっちまったなぁ」

飛龍「そうだね」

「どうするんだ?」

飛龍「ボコボコにやれとか言ってた蒼龍揉む」

飛龍「あいつ3桁の世界に連れて行く」

飛龍「揉む、めっちゃ揉む。もみくちゃにする」

飛龍「垂れろ。肩凝れ。九九艦乳首はみ出ろ」

「やったー!!」

「OPPAI!!OPPAI!!巨乳OPPAIFレベル!!!」

「「イエー!!」」

「黙れ」

「「はい」」


飛龍「それ以外は…まぁ、いつも通りやるだけだよ」

「いつも通り、か。本当にそれでいいのか?」

飛龍「うん。いつも通りでいいんだ」

飛龍「いつも通り。貴方から教えられたとおりに。全力で」



「だって私は『飛龍』だから!!」




「二航戦の誇りにかけて!!」

「たとえ!」



「私が最後の一艦だとしても、徹底的に叩いてみせます!!」



「…よく言った!!それでこそ、だ!!!」

「行くよ!!多聞丸!!!」

「応!!!」



如月「………」

「あいつら…!!今更になって!!!」

「今まで何もしてこなかったくせに…!!!今になって、偉そうに…!!!」

如月(そうね)

如月(だから、悔しがらせてあげるわ)

「…なら!!」

如月(決めたわ)

如月(目の前の飛龍さんを倒して、司令官に抱きしめて貰うわ)

如月(深海棲艦になんて、絶対にならない)

「………!!」



「もう諦めろ。お前の負けだよ」




如月「………え?」


「もうこの子はお前の言う通りには動かない」

「もう諦めろ」

「諦めて深海に戻れ、離島棲鬼」

「黙れ!!地上の猿の分際で!!」

「俺が黙っても、この子をどうこうするのは無理だぞ」

「この子の意思の固さはお前もよくわかっているだろう?」

「………!!!」


如月(………あなたは、あなた達は、誰?)

「俺も如月。君の一部さ」

「ここまであんなのの邪魔を受けながらよく頑張ったな。だけど」

「あの空母娘をどうにかしなければ作戦完了とは言えないみたいだな」

「…ただの駆逐艦で、正規空母の相手をするのは難しいだろう?」

「12.7cm連装砲で、正規空母の装甲を抜くのは難しいだろう?」

如月(………正直な話、そうだけど)

「だから」



「俺の技を使え」




「武器は」

「武器は無いか?」


その言葉を聞いた途端、頭の中にイメージが広がる。

イメージの電流は身体を流れ、脚に伝わる。

何かが解き放たれる音が響き、視界の下方からゆっくりと回転し現れるそれを掴み上げる。

身体を覆う光が波打ち、掴んだそれを覆い尽くす。

如月の手には61cm魚雷が握られていた。


如月が掴んだ61cm魚雷の表面で黄色い光が波を打ち、炎のように揺らめく。

頭に浮かぶイメージに身体を乗せて動かす。

魚雷がゆっくりと下ろされ、その先端が飛龍に向く。

そして構えが完成した。


「いいぞ。様になっている」

頭の中から再び声が響く。

今までの女性の声ではない。男性の声。

「半漁人どもに見せ付けてやろうじゃないか。俺達の可愛い人魚姫」

彼はこちらに危害を加えるつもりではないらしい。

彼の正体を、如月は少しずつだが察し始めていた。


「人間の戦いって奴を、さ」



魚雷を掴んだ手に力が入る。

言葉が喉を通り、発せられる前に噛み殺した。

自分が本当に言いたい事ではなかったから。

これから戦いに赴くにあたって、そんな簡素な言葉で済ましてはならないと感じていたから。


記憶を辿り、言葉を捜す。

それは先生、敬愛する師との、大事な思い出の一つ。



「もし、艦娘が軍艦の時と同じような出来事を辿るなら」

「こうやって私と如月ちゃんがまた出会えた事だって、運命よ」

「だから、私は私の運命に感謝してる」

先生は、同性から見ても綺麗だと感じる人だった。

切れ長の目。青い瞳。


「こうしてまた如月ちゃんに会えて、如月ちゃんと勉強してお喋りして、私凄く幸せなの」

「如月ちゃんは、どう?」

「…うふふっ♪嬉しい」

さら、と動く銀髪のツインテール。誰に対しても優しく、微笑みかける。

その微笑で、多くの男を本人の知らない内に骨抜きにしていた。

艦娘になり、社会を知り始めた時からずっと一緒だった先生に、如月は憧れ続けていた。

こんな大人になりたい。こんな女性になりたい。先生と一緒に歩きたい。

先生はあらゆる点で如月の先生になった。

大人の魅力を、先生を見て学んだ。


「でも、沈むところまで運命だなんて私は認めない」

「私の可愛い教え子がそんな理由で沈んでたまるもんですか!」

「だから、如月ちゃんには色々な事を教えてあげる」

「あの当時じゃわからなかった事とかその後の事とか、全部知っていれば絶対未来は変わってくるんだから!!」

艦の歴史を、先生から学んだ。

生き残る知識を、先生から教えてもらった。


あの頃は難しくてできないと感じていた事も、今ならできると確信した。


あの日々が、先生と会えた事が、如月の運命なのだとしたら。

せめて、せめてそこだけは感謝しなければいけない。

だからこそ、あんな簡単な言葉で自分の決意を口にしてはならない。

そして、沈む事が運命だとは考えてはいけない。

先生はそれをずっと認めなかったから。


私は生きる。

生きて証明し続ける。

自分の存在意義を。

先生の正しさを証明する為に。

自分の愛する人の為に。



だからこそ

如月は叫んだ。





かつて、艦隊の旗艦を務めた先生の為に




「 第 四 艦 隊 ! ! 隷 下 ! ! 」


「 第 三 十 駆 逐 隊 ! ! ! ! 」



「 如 月 ! ! ! ! 」




「 参 り ま す ! ! ! ! ! ! 」





あなたとの思い出を

あなたから学んだ全てを

それから知った想いの全てを使って

あなたの正しさを証明します。

暗い運命を消してみせます。

愛する人達を笑顔にしてみせます。




だから、力を貸してください。


―――――鹿島先生!!!




☆今回はここまでです☆

秋イベといえば鹿島。

>>1です。
始めさせて頂きます。



「如月ちゃん!!」

如月に呼応するように飛龍が叫ぶ。

「あなたの想いはよぉくわかった!!!」

「でもだからって『はいそうですかどうぞどうぞお通りください』とはいかないのよ!!」

矢筒に手を伸ばし、矢を手に取る。

鏃の代わりに付いた艦載機を一瞥し、番える。

「私は今、貴方の敵としてここに立っている!!」

「だから!!その想い、全力で叩き潰します!!!」

「下手に当たれば、轟沈、一歩、手前まで!!!!」



「九九艦爆!全機!一斉発進!!」

凄まじい速さで四本の矢が放たれ、それぞれの矢が光となって散らばる。

形作られた光が実体を持つ。

左右の翼に日の丸を描いた九九式艦爆へと形を変える。

瞬く間に、飛龍と如月の間に広がる空が艦爆で埋め尽くされた。



「第一攻撃隊、12機!!」

「第二攻撃隊、27機!!」

「第三攻撃隊、18機!!」

「第四攻撃隊、7機!!」

「総勢64機の九九艦爆の嵐が!!貴方を遮る高い!高い!高ぁい壁だ!!!」

「あなたのその想いを、提督に伝えるっていうんなら!!!」

「この嵐を潜り抜けて!!私をブッ倒してからにしろォ!!!」


一瞬圧倒され、一歩引いた足に力を入れ、前の一歩を踏み込む。

「倒す!!」

叫ぶ。

「倒します!!!」

叫ぶ。

「生きます!!!」

叫ぶ。

「行きます!!!」

叫ぶ。

「往きます!!!」

叫ぶ。

「来ぉい!!!!」

たった一人の少女を叩き潰す為に、爆弾を携え64機の艦爆が飛んでいく。

標的の少女は連装砲を構え、動き出す。

逃げる為ではなく、避ける為に。

逃げる為ではなく、勝利の為に。

逃げる為ではなく、進む為に。



爆弾の降下体勢に入る直前で如月が舵を切る。

予測コースを外された爆弾が、無慈悲に落下し、怨嗟の声を上げるかの如く爆発する。

その爆風が当たる事は無く、

打ち上げられた水柱、かすかに如月に当たった水滴すら瑞々しい肌に弾かれ滑り落ちていく。

次も、その次も、その次も。

避けていく。避けていく。何度でも避けていく。



その様子を見ていた扶桑がある事に気付いた。

如月の回避方法は、取舵一辺倒である事を。



その様子は扶桑の記憶を巡り、扶桑の知識を辿り、ある閃きを導いた。

そこから一秒足らずで、扶桑は自分の閃きを隣に居た伊勢に叩き付け始めた。



「伊勢…伊勢!」

二の腕をぺちぺち叩き服を引っ張る扶桑を少し鬱陶しく思いながらも、伊勢はその感情を出さないように返事をした。

「扶桑、どうしたのさ?」

「如月ちゃん、さっきから取舵しかしてないわ」

取舵のみ。その言葉は伊勢の脳髄をぴくりと動かし、ある疑惑を産み出した。


目を凝らして如月の動きを念入りに観察する。

あれは。

疑惑が確信に近付くにつれ、高揚感と困惑が絡み合った混沌が伊勢の感情を支配する。

そうだ。いや、そんな、まさか


「あれは………!!」

「あれって、もしかして…」

混沌を制御しきれずについに言葉を漏らした伊勢に扶桑が続く。

「伊勢さん、何か知っているんですか?」

伊勢の逆、扶桑の隣で完成していた潮が二人の様子を察して疑問を投げかける。

「知っているも何も…あれは………」

「私は、忘れちゃいけないよね」


生唾を飲み込み、伊勢は言葉を続ける。




「………『爆撃回避法』」

「私と日向が、あのレイテ沖で生き延びられたのは、あれがあったからだよ」







極限まで高められた集中力で、如月は過去の記憶を鮮明に思い返していた。





「かつて松田千秋少将は言いました」

「『空襲は全て回避可能である』と」

「太平洋戦争末期の帝国軍人であった彼はその後、第四航空戦隊…四航戦の司令官としてレイテ沖海戦に参加しました」

「…そして、戦艦伊勢・戦艦日向は彼が編み出した『爆撃回避法』を活用し」

「囮艦隊でありながら、損傷軽微で生還を果しました」

「当時の二隻の艦長は揃って新米同然。しかも攻撃してきた敵機は150機!」

「その内の、伊勢が認識できた攻撃回数の中の、至近弾だけでも爆弾が48発、魚雷17本!!」

「…にも関わらず、二隻とも損傷軽微で生還できた理由がこの『爆撃回避法』なんです」

「伊勢艦長の中瀬大佐は松田少将から『爆撃回避法』を完全にマスターした人物であると評されたと言います」


「と、言うわけで!」

「知り合いの伊勢さんと日向さんの協力のもと、マニュアルを作ってみたの!」

「うふふっ♪これを使って『爆撃回避法』の勉強していきましょ?」

「最初は慌てちゃって上手くいかないかもしれないけど…」

「絶対役に立つはずだから、ね?」



今、如月はあの時の知識に忠実に従っている。

自分を殺すかもしれない艦爆の嵐の中で、

ただひたすらに、一心不乱に教えに忠実にあらんとしている。

先生の為に、提督に会う為に、自分の為に。




一度へばり付いた恐怖は剥がれず

いくら叫んでも、いくら否定しても心のどこかに闇は残っている。

捨てきれない恐怖と闇が、錘となって身体に圧し掛かる。

怖い。今自分の周囲にある何もかもが怖い。



だが

覚悟と勇気が、肥大化した恐怖を覆い潰さんと巨大化し

重くなった身体を動かそうと、身体の奥底が信じられない程の力を産み出していく。


愛に生きると決めた『覚悟』が

恐怖を知って尚、覚悟を押し通す為に戦う『勇気』が

今の如月の何者にも変え難い原動力となっていた。

その想いはやがて、身体を蝕むはずの恐怖すら勝利の為に利用し始める。





恐怖が、艦爆隊が軌道を変えたのを察知した。


取舵しかしないのであれば

それをデータに入れた上でルートを予想し

爆弾を叩き込むのみ。


至極当然の帰結。

既に艦爆隊が、爆撃回避法を想定したルートを取り始めている。


今から方向転換を始めれば、動きが遅くなる。

熟練の艦爆隊にとって、そんなものは絶好のチャンスにしかならない。

結果、爆弾の直撃を喰らって、負ける。


だが、爆撃回避法を想定してきている相手にそれを押し通すのならば

それもまた、爆弾の直撃を喰らって、負けることになるだろう。



万事休すか。王手詰みか。絶体絶命か。



否。

相手は大きな勘違いをしている。


自分達は、船ではない。艦娘なのだ。





如月は足に力を入れ


海面から跳ね上がった。






空中で、高速で、左回転で視界が回る。


一回転。


ニ回転。


三回転。


そして、着水。


脚部艤装が大きな円を描き、唸りを上げて加速する。




艦爆に搭乗していた妖精が呆気に取られた表情で如月を見送った。





空中に飛び上がり、身体を捻り、速度を殺さずに急激な方向転換を成功させた。

船ではない。人体を持つ艦娘だからこそ可能な芸当。

海面を滑る脚部艤装がその勢いのまま、飛龍の所まで如月を運んでいく。


飛龍は思わず舌打ちをした。

今の如月相手に正攻法で勝てる気がしない。


「ならば!!」

合図と共に残りの艦爆が整列する。

一糸乱れぬその編隊は、如月に向かってまっすぐに飛んでいく。

横に広がった艦爆隊は如月の視界の左端から右端まで、ぴったりと埋め尽くしていた。






「これでぇぇぇぇぇ!!!!!」



「どうだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」






一隻の駆逐艦に対する、正規空母の絨毯爆撃が始まった。




如月は脚部艤装に急ブレーキをかけ、今まで通ってきた道を逆走する。


爆音。

爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音


爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音


爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音


爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音
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無数の水柱と爆音が、巨大な一つになって海域に産まれた。

爆音が収まった後も水柱は暫くの間、その形を維持し続けた。

水柱の上方から崩壊が始まり、空中に舞い上げられた海水が局地的大雨の如き勢いで海面を叩き始める。


人工的に産み出された局地的大雨を飛龍は睨み付ける。

その中にいるはずの如月を見つけるために目を凝らす。

だが見えない。白に覆われた空間の中に、彼女の姿を見つけられない。





「………やったか?」





頭の中から聞こえてきた声に、少し脱力した。

「…多聞丸。それね、フラグって―――――」





飛龍の左肘下の空間に、まるで飛行機雲のような、真っ直ぐな軌跡が産まれた。

それに飛龍が気付いた時には、彼女の着物の左袖が、大きな風穴を開けて千切れ飛んでいた。





☆今回はここまでです☆

☆再開します☆



「なっ………!?」

「ん、だとぉ!?」

左腕を庇うように動いた時には、既に弾は遥か後方に落ちていた。

前方の水柱から人魂のような光が浮かび上がる。

その人魂は、火薬が炸裂したような煙を中心から産み出し、空に浮かび上げていた。


(水柱を影に砲撃!?)

飛龍が辿り着いた答えがそれだった。

絨毯爆撃によって打ち上げられた水柱は、飛龍の視覚を奪い去っていた。

つまり、敵を、如月を、見失っていた。

その状況は敵にとって、如月にとって、何物にも変えがたい好機だったのだ。

何物にも変えがたい、攻撃の機会だったのだ。


だがしかし

(どんな集中力があれば命中させられる…!!)

飛龍から如月が見えないように、如月からは飛龍が見えない筈だ。

それに加え、如月は爆撃を避けつつこちらに狙いを定めなければいけない筈だった。


狂っている。評価するならば、それ以外の言葉が見つからない。

どれだけの狂気が、その集中力を支えているのか。

どれだけの想いが、あの砲弾に込められているのか。


あの砲弾は放物線『すら』描かず、『真っ直ぐに』飛んできた。


ただそれだけで、あの砲弾の威力を推して知る事が出来る。

光の軌跡を放ちながら、重力に逆らい真っ直ぐに飛んでいく砲弾。

もし、あの砲弾があと少し、上を飛んでいたら。

あと少し、私の身体に近い所を飛んでいたら。


考えただけで背筋が冷える推測。

あの一撃は、駆逐艦の一撃だと思ってはいけない。

ただの12.7cm連装砲の砲弾だと思ってはいけない。

少し前に提督と蒼龍と、三人で観たロボットアニメのワンシーンが頭を掠める。

電磁の光線がけたたましい音と共に放たれ、鉄の塊を抉り取る。


あの一撃は、まさにそれだ。

まともに喰らえば、一撃でも直撃してしまえば、終わるかもしれない。

今自分が無事でいるのは幸運以外の何者でも無いかもしれない。

まさに命拾いをしたのかもしれない。

だが生き残ったからこそ、次は気を付けられる。

あの一撃を受けないように、注視すれば




「 下 だ ァ ! ! ! ! 」





聞いたことの無いような怒号により、飛龍の頭脳が戦況分析を停止して警告を上げる。

「!!」

飛龍がその身を翻した瞬間、彼女が元いた場所に大きな細長い影がぶち当たった。

槍の如く突き進んだ細長い影は、雷跡を残しつつ後ろへ後ろへと突き進んで消えた。

(あれは…!!!)


駆逐艦が放つ、水中を航行する物体と言えば一つしかない。

飛龍の頭の中にそれがイメージとして浮かび上がる。

何度も何度も見てきた兵器。駆逐艦娘も、軽巡洋艦娘も、重巡洋艦娘も、潜水艦娘も使う兵器。

それが頭の中にイメージとして浮かび上がる。



雷跡を見送り、正面を向きなおした飛龍の視界に、彼女がイメージしていたもの、そのものが映る。

魚形水雷。通称魚雷。何も間違っていない。


だが


だがしかし


何故


何故目の前の魚雷は





自分の顔の中心を捉えているのだ。






光に覆われた魚雷は

反時計回りに回転しながら

飛龍の眉間に抉り込まんが如く猛進する。

本来あるべきはずの水中ではなく、空中で

敵を沈めるという、本来の役割を果すべく猛進する。



飛龍は首を捻り、上半身を逸らし

頬に伝わる熱い感触を感じながら回避する。

彼女の癖っ毛が、魚雷の風圧に負けてびくんびくんと跳ね回り、魚雷を追いかけんと彼女の頭を引っ張った。



間違いない。

こいつは、如月は、頭がおかしい。



飛龍は頭の中で、他人事のようにげらげらと笑いながらそう評した。



主砲と魚雷の連携攻撃はまだわかる。

だけど、魚雷を投げてくるなんて一体どんな発想をしているんだ。

こんなにも全力で、魚雷を投擲してくる艦娘が他にいるだろうか。



そこまでして勝ちたいか。

勝ちたいだろうな。

勝って、提督に会いたいんだろうな。



気違いめ。

色情に溺れた気違いめ。

その為ならどんな手段でも使うか。

常識も投げ出して生きるか。



気違いが。

お前は気違いだ。

最高の気違いだ。



罵倒ではない。賞賛として浮かび上がる言葉。

つまりあれが、

飛龍が敬愛する男が理想としたものの一つなのだ。

飛龍はそう認識した。




水柱から、黒い影が勢い良く飛び出す。

如月。その手には新しい魚雷が握られている。


如月の全体重が加わった魚雷が飛龍の身体を打ち抜かんと繰り出される。

魚雷を覆う光が炎のように波打ち、ぶちまけられた水のように飛龍に襲い掛かる。

その一撃を、飛龍は寸での所で回避した。


「流石だ」

「流石は」

「陸軍」


飛龍の頭の中の声が心底楽しそうに呟いた。


「今までよくも好き勝手やってくれたな」

「今度はこちらの番だ」


如月の頭の中の声が心底楽しそうに呟いた。



(陸軍ってどういう事!?)

如月の攻撃を避けながら飛龍は頭の中で叫んだ。

「『調べがついた』」

「如月の動きは…『片手軍刀術』がベースになっている」

(………あ?軍刀?片手軍刀?)

唐突に出てきた言葉に飛龍が困惑する。

「第二次世界大戦当時じゃあ、わりと廃れてる戦技だ」


(じゃあ、なんでそんなのを如月が?)

「剣術教範の改定以降、片手軍刀術は騎兵科のみで訓練されるようになった」

「その騎兵科は後に戦車兵と統合され、騎兵の多くは戦車隊の要員となったんだ」

まるで台本を読み上げるかのような、今まで全く知らなかった事を理解もしないまま他の誰かに説明しているような、

感情のあまり篭っていない、たどたどしい説明に飛龍は不満を露にする。

そんな説明で飛龍が納得できるはずがなかった。


(…わからないよ。そもそも如月は陸軍じゃない)

だが

「そうだな」

そこからは打って変わって、自信と確信に満ちた声が飛龍の納得を引きずり出していく。

「だけど、駆逐艦如月がウェーク島で轟沈した原因は」

「周囲の大発の存在が回避を困難なものとし、その間に攻撃を受けて魚雷管が爆発した事だ」

「あの戦いで死んだのは駆逐艦如月の乗組員だけじゃあない」

「………その後も含めてな」

その声は、不可解な事象の理解に繋がる仮説を、飛龍に与えるのに十分な力を持っていた。

(………まさか!?)

それに呼応し、頭の中の声が答える。


「船の魂っていうのは、要するにあらゆる魂の集合体だ」

「その船の搭乗員の命、それに関わった者の命、魂の集合体」

「それが、船の魂だ」



「如月の魂は、多くのものを取り込んで出来上がっている」

「駆逐艦如月の搭乗員…周囲の大発の搭乗員」

「海軍も」

「陸軍も関係ない」

「ウェーク島で散っていった者達の魂」

「それらを全て取り込んで」



「如月の魂は、産まれたんだ」

「それは、俺達にはない」

「あいつだけの、駆逐艦娘如月の、独自のもの(オリジナリティ)だ」




「駆逐艦娘如月は」

「海軍の魂を受け継ぎながら」

「陸軍の魂すら取り込んだ希少な存在なんだろう」


「だから」

「だからこそ」




「この状況は危険だ」





人並の大きさまでダウンサイジングされた艦娘の戦いにおいて

超接近戦で艦載機を使うのはリスクが大きすぎる。

背後左右から雷撃を加えようにも、少し軸をずらされてしまえば

自分の艦載機に自分が痛手を負わされる羽目になる。

爆撃なんてもっての他。爆風に自分が巻き込まれてしまう。

自爆、道連れ以外の何物でも無い。

この状況で飛龍が攻勢に出るのは至難の業。


そして如月には超接近戦で戦う術がある。

陸軍の魂から得た片手軍刀術。

直撃すれば一撃必殺の威力を誇る魚雷。

そして

生きる為に目の前の相手を叩き潰す勇気。

目の前の相手を叩き潰す為に前に進み続ける覚悟。


故に飛龍は察した。

(捕まった…!!!)

如月の空間に。

如月の間合いに。



完全に捕まった。



☆今回はここまでです☆

次の主人公候補
・赤城
・那珂、阿賀野
・潮
・大和
・早霜
・伊58、U511、雪風

☆再開します☆



光を纏った刺突。波打ち溢れ出る光が槍となって突き進む。

飛龍は身を捻る事で辛うじてそれを回避した。

頬に熱を感じさせながら、如月の腕が飛龍の頭の横を貫く。


頬を切ったわけじゃない。

攻撃が掠めたわけじゃない。

なのに何故、熱いと感じるのか。


ふと感じた違和感を分析する間もなく、綺麗に整えられた飛龍のうなじが殺意を感じ取る。

横薙ぎに流れる、生暖かい風。

何も考えずに横に動き、如月から距離を取る。

その一瞬後に、光の軌跡が空を描いた。


順手で握られていた筈の魚雷は、いつの間にか逆手に変わっていた。

気付かなければ今頃、後頭部に魚雷が直撃していただろう。


だがそれだけでは終わらない。

空を切った軌跡が鋭角を描き、逃げた飛龍に向かって跳ねる。

崩れた体勢ではこれ以上の回避は出来ないと判断し、飛龍は覚悟を決めた。



止める!!!




逆手に掴んだ魚雷に、もう片手を添え

飛龍に突き立てんという意思を露に

光に覆われた魚雷が空気を抉り取っていく。


飛龍は意を決して如月の両手首を掴む。

そして全力で押し出す。

二の腕と肘の裏側に僅かな痛みが走る。



そして飛龍の眼前で、魚雷の先端が止まった。



黒く、鈍く光る魚雷が飛龍の頭部を捉えている。

無機質なそれに、まるで感情があるかのような何かを感じる。

そして何よりも、熱い。

鉄で出来た弾頭がこんなにも熱を持つ筈がない。

今にも暴発してしまうかもと感じる程のエネルギーを感じる。

何故だ。

何故だ。

この光の所為か。



理解の外の事象が起こっている。


片や艦本式タービン2基2軸、385百馬力

片や艦本式タービン4基4軸、152千馬力

拮抗するはずなど無い、文字通り桁違いの馬力の差。


だが現実では拮抗している。

一瞬でも気を抜けば、顔面に弾頭がめり込むのは目に見えている。

押し返せない。

撥ね返せない。


何故だ。

何故だ。


数値ではない。人の想い。

地獄の淵の砂に触れて産まれた奇跡。

人としての何かを捨てて得た力。

それが桁を埋めてきているのか。



これが

改二の力なのか。




喉が震える。

無意識に声帯が振動を起こす。

徐々に振動が大きくなる。

そしてそれが極限まで大きくなった瞬間、力のベクトルが変化する。

前ではない。

横へ、斜めへ、変化する。

ぶつかり合っていたもう一つの力のベクトルは

その急激な変化に対応出来ずに横に滑っていく。



飛龍は攻撃を受け流す事に成功した。




だが

如月の身体は回転する。

力のベクトルに逆らうことなく回転する。


途中で、たん、と身体が跳ね上がる。

空中で身体が横向きに倒れる。

如月は、これまでの力の流れに腰の回転を乗せていく。


薄い桃色の布がちらりと見えた。

そこから伸びる、細く、白い、如月の脚が

爪先で飛龍のこめかみを抉り取らんと、全ての力を使って横薙ぎに襲い掛かった。



飛龍の鼻先を靴が掠める。

飛龍がそのまま後ろに下がって距離を取る。





それが


最大の悪手であると知らずに。





「 馬 鹿 野 朗 ォ ! ! ! 」


「『 真 後 ろ に 』下がるんじゃねぇ!!!!」


突然飛龍の頭の中で響く怒号に心臓が跳ね上がる。

背筋の熱が大気に奪われる感覚が広がる。



その


次の瞬間






どす、という音と共に


飛龍の腹部に何かが押し込まれた。





一瞬の空白の後、飛龍が視界を下に下げる。


腹部に押し込まれたのは12.7cm連装砲の砲塔。

今の如月の、主砲が押し込まれていた。


如月本人もまた、飛龍のすぐ近くに居た。


着水の態勢のまま、左腕だけを突き出した姿勢で。




飛龍は、艦娘にとって最も基本的な事を失念していた。

その事を後悔するしかなかった。





艦娘の移動とは


『脚部艤装を装着し、海面に足を付ける事』


ただそれだけ。ただそれだけの事なのだ。

燃料の消耗を気にしなければ足を動かす必要もない。

ただ、身体のバランスを保っていれば前に進める。

ただそれだけ。ただそれだけの事なのだ。



だからこそ



真後ろに下がって距離を取ったから安心というのは

あまりにも愚かな考えだった。



飛龍が戦っているのは人ではない。

人ではないから、踏み込みは必ずしも必要ではない。

船が距離を詰める為に、踏み込みなどをしないように

艦娘もまた、距離を詰める為の踏み込みなど、不要なのだ。


ただ、全力で脚部艤装を稼動させる。

それだけだ。それだけで、『前に進める』。


もっと言ってしまえば

海面に足を付けてさえいれば、足から上がどうなっていようが関係無い。

脚部艤装は全力で、時には残酷なまでに、前に進み続ける。

今の如月のように。



超接近で、人の技での戦いを強いられた飛龍は、ここに来てついに見誤った。


いくら人の戦いをしようが

これは人の戦いではない。


艦娘の戦いなのだ。


だから、こうなる。




そして







「この距離なら」



「結界は上手く作用しない!!!」





距離0、仰角0。


正真正銘


完全無欠


回避不能


問答無用


情け無用の零距離射撃が


飛龍の腹部に叩き込まれた。



光の軌跡を描きながら突き進む砲弾は

飛龍の身体を後方まで押し込み続け、止まらない。

飛龍の絶叫を置き去りにして、光の弾は更に後方へと突き進んでいく。



激痛の中、飛龍は考えた。



凄い。

凄いな、如月ちゃんは。

これが

改二の力なんだ。

戦ってみてわかる

受けてみてわかる

この力の強さ。

圧倒的な強さ。


もう

これで

勝負は

「諦めるな」


最後の最後で、声が聞こえた。



「お前があれだけ偉そうに語ったニ航戦の誇りというのは」

「その程度のものなのか」

「たかが駆逐艦風情に攻撃を貰って、しょうがないと諦めるのが」

「そうやって大人しく負けを受け入れるのが」

「お前の誇りなのか」

「お前が大事にしてきた二航戦の誇りなのか」



「そうじゃないだろう!?」



「抗え」

「最後まで抵抗し続けろ」

「あの時のように」

「あのミッドウェーのように!!」

「それが!!」

「それこそが!!!」

「俺達の誇りだろうが!!!」


「何が改二だ!!」


「何が零距離射撃だ!!」



「諦めるな!!!!」




「 こ ん な も の ! ! ! ! 」


「 止 め て 見 せ ろ ォ ! ! ! ! 」





そうだ。

最後まで抗う。

一人になっても叩いてみせる。

それが、飛龍の誇りだったはずだ。


脚に力を入れ、突き進む弾丸を両手で挟み込む。

熱い。熱過ぎる。火傷をしてしまいそうだ。だが構うものか。

全馬力を四肢に集中し、全馬力を持ってこの弾丸を止める。

耐えてみせる。


それすらしないで諦めるのは

飛龍の名折れだ。二航戦の名に泥を塗る行為だ。


やってやる。

やってみせてやる。

待っていろ如月。

こんなもので終わると思ってくれるな。

耐えてやる。

立ち続けてやる。




二航戦の


誇りに賭けて。




「 俺 達 を ! ! ! ! 」


「 ニ 航 戦 を ォ ! ! ! ! ! 」






「「なめるなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」













 














「へっ……へへっ………」




「 ど う よ ! ? ! ? 」



飛龍は立っていた。

あのまま崩れ落ちてしまえば、海面に激突していた状況で。

艤装が破壊され、負けが決まってしまう状況で。

耐えた。見事、耐え抜いた。誇りを賭けて、耐え抜いたのだ。



「あ、あんな凄い攻撃だったのに、まだ…」

名取が呆然と呟いた。

それは名取の近くで観戦していた誰もが感じていた事だった。


飛龍の左袖に風穴を開けた、真っ直ぐに飛ぶ光の砲撃。

あれこそが決め手になると考えていた。

そしてそれが直撃した今、勝敗が決まると思っていたのだ。



だが如月は


そんな事は毛ほども考えていなかった。




「安心するのは、まだ――――」

飛龍の頭の中から警告が聞こえる。

目の前には光を纏った魚雷が視界の中心から迫る。

如月自身の投擲により、対艦ミサイルと化した魚雷だ。

(速い!!!)

身体を捻って魚雷を回避すると、今度は足元から魚雷が迫る。

腰を捻り、脚部艤装の進行方向を調整して回避する。

そして次に襲い掛かるのは

魚雷を手に迫る、如月本人だ。


「またそのパターンか!!地上の猿の一つ覚えが!!!」

「ろくに対策も出来ない半漁人にはこれが一番だって事だ!!!」


魚雷を腰の位置に構え、如月が突撃する。

避ければ連続攻撃。

受け止める事は不可能。

受け流せば、蹴りが飛んでくる。

そして、あの砲撃が飛んでくる。

飛行機雲のような軌跡を描く、光の砲弾が身体に叩き込まれる。

流石にあれの二撃目を耐えるのは、体力的な問題で難しい。



今度こそ、これで決着か。




「この」





「クソガキが」


まだ手が残されている。


「お遊びは」


その手とは


「いい加減にしておけよ!!」


相手が動くよりも先に相手を潰す事!!



頭に浮かび上がるイメージに身体を合わせる。

如月の腕を掴み、引き寄せる。

重心が急激に後ろに移動し、視界が上に向いていく。

片足を持ち上げ、如月の腹部に叩き込む。

ぐふ、と空気が口から漏れる音が聞こえた。

片足に、如月の重みを感じる。

子供の重さだ。駆逐艦の重さじゃない。当たり前の話だ。

だが、だからこそ、できる。

既に飛龍に見えているのは如月と、後ろに広がる青空のみ。


今一度

両手片足、己の三肢に全馬力を集中させる。

両手を振り上げ

片足を蹴り上げ



如月を遥か後方に投げ飛ばした。




「今だ!!全機突撃!!!」

文字通り空中に投げ出された如月に向かって艦爆隊が飛んでいく。


「こっ………のぉおおおおおおお!!!!!!」

如月は空中で身体を折り曲げ、主砲を構える。

上下反転した世界の中、艦爆が自分に迫ってくる。

構えた主砲が連続して爆音を上げ、光の軌跡が数機の艦爆を貫く。


如月の身体が、がくんと揺れた。


翼を折られた艦爆が斜めに高度を下げながら海面に突っ込んでいく。

如月は空中で更に身体を折り曲げ、上下反転した世界が元通りになる。


着水の衝撃に備えなければいけない場面で、

如月は今の感覚を思い返していた。


砲撃をした瞬間に身体ががくんと揺れる、あの感覚。

そして、身体が少しふわりと浮いた、あの感覚。




それは正に、天啓だった。





脚部艤装が海面とぶつかり、衝撃によってバランスが崩れる。

その一瞬を、艦爆隊が見逃す筈がなかった。

動きの止まった如月に、容赦なく爆弾が降り注ぐ。



爆炎が上がり、如月の身体が上空へと吹き飛ばされた。




「……………え?」

一番最初にその違和感に気付いたのは、羽黒だった。

如月は上空へと吹き飛ばされた。

だが、何故彼女は吹き飛ばされたのか。

艦爆隊の爆弾か?

羽黒は、違うと確信していた。

では、一体何が彼女を吹き飛ばしたのか。



『同じ天啓を得ていた』羽黒は、正解に誰よりも早く辿り着いていた。




「………ちょっと?」

羽黒に続いて違和感に気付いた明石が声を震えさせながら呟いた。


「如月ちゃんの艤装…」


彼女もまた、何が如月を吹き飛ばしたのか

否、どうやって如月があの爆撃を回避したのか、気付いたのだ。



「………反動制御がイカれちゃってる!?」



如月は爆弾によって吹き飛ばされたのではない。


自分の主砲の反動を使って飛んだのだ。




艦娘の艤装には、反動を制御する機能が必ず組み込まれている。

これは艦娘の身を守る結界の応用技術であり、

砲撃による反動を結界によって緩和する事で、艦の主砲を不自由なく使用する事が出来るのだ。



普通の人間が艤装を取り扱えない理由は

砲撃による反動に身体が耐えられないからであり、

万が一耐えられたとしても、結界を張る事が出来なければその反動で遥か後方まで吹き飛ばされてしまうからだ。

たかが数十キロの重さの人間が、今まで何万倍も重い軍艦が取り扱っていた砲の反動に耐えられる訳がないからだ。



この後者の理由に関しては艦娘にも当てはまる。

反動制御機能が停止した状態で砲撃を行えば、艦娘だろうがその反動で自分が吹き飛ばされる。

彼女達の身体も数十キロ。超弩級と呼ばれる艤装を装着したとしても、船の重さには程遠いからだ。


人の身を授かりながら、武装だけは艦の力を使う弊害が、ここに現れていた。




だが如月は


それを、それすらも、勝利の為に利用した。





反動制御機能をあえてシャットダウンし

己を吹き飛ばす反動を利用して

砲撃によって生まれる、一切緩和されていない反動を推進力に変え

高速で移動し空を飛ぶ。


それこそが、如月が爆弾の嵐を潜り抜けた理由なのだ。




そして、その発想、その技術は


偶然にも


羽黒の『阿修羅』と同一のものだった。





如月が再び海面に着水する。

勢いを殺さず、左手に魚雷を持って飛龍へと突き進む。


正面から対峙しながら飛龍は様子を伺っていた。


次に来る攻撃は何だ!?

魚雷を使っての超接近戦か!?

それともその光の砲撃を撃つのか!?

何だ、次は何で来る!?


左手に装着された主砲と、その手に握られている魚雷に視界が集中していく。


何だ、何が来る!?

どの攻撃が飛んでくるんだ!?





その瞬間、如月の身体が沈んだ。

がくん、と腰から崩れ始めた。





高速移動でバランスが崩れたか。

ここに来て制御をミスしてスリップか。

否。

断じて否。

これは次の攻撃への予備動作だ。


如月の脚部艤装が海面を滑るように円形に抉り取り、

周囲に大量の水飛沫を撒き散らす。

水飛沫は目の前にいる飛龍に直撃し、海水が目に入り視界が歪む。

視界が暗転。瞬き。

飛龍は意地で視界を回復させるも、元の場所に如月はいない。


飛龍が如月の位置を把握した瞬間

「………やられた」


飛龍が敗北を確信した瞬間

彼女の懐に入り込んだ如月は

魚雷を彼女の腹部に叩き込んでいた。


飛行甲板を模した腹部の装甲は、ついに真っ二つにへし折れ

一拍置いて、魚雷が爆発した。


爆発から抜け出した一つの影は

倒れていく飛龍に一瞥もせずに沖まで駆け抜けていった。



摩耶「お………」

摩耶「終わった、のか…?」

摩耶「なんか途中から色々ありすぎてよくわからんが勝ったのか!?」

暁「…勝った」

暁「勝った!勝った!勝った!」




暁「 如 月 ち ゃ ん が ! ! 勝 っ た ん だ ぁ ! ! ! ! 」





羽毛布団の簀巻き「如月………!!」ガバッ

羽毛布団の簀巻き「如月ぃぃぃぃぃぃ!!!!」ダダダダダダダダ

伊19「あっ!!提督!!」

摩耶「やべぇ夢中になっててほどくの忘れてた」

榛名「大丈夫ですよ」

榛名「羽毛布団ですから!!」( ´∀`)b

摩耶「お前何でそれ気に入ったんだ?」



羽毛布団の簀巻き「如月ぃぃぃぃぃぃ!!!!」ダダダダダダダダ




青葉「さぁ始まりました第一回簀巻きダッシュ大会!!司会は私青葉がお送りします!!」


「如月ぃぃぃぃぃぃ!!!!」ダダダダダダダダ


青葉「ただ今走っておりますのは我等が泊地の提督!!」

青葉「大本営から戻ってきて早数時間!!両手は折れ、海に飛び込み果ては簀巻きにされてこのザマです!!」


ダダダダダダダダ


青葉「走る!!走る!!とにかく走る!!前見えてないのによく走れます!!」

青葉「さぁ辿り着けるか!?勝利を収めた如月ちゃんと希望の未来へレディーゴーできるのかぁ!?」


「へぶっ」ボテッ


青葉「あっ転んだ」



「ふん!ふむー!!ンー!!」ジタバタジタバタジタバタジタバタ


青葉「あぁー!!起き上がれない!!起き上がれないー!!」

青葉「両手が塞がってて起き上がれないー!!」

青葉「さぁー早速ピンチです提督ー!!」

青葉「この状況をどう思いますか榛名さん!?」

榛名「大丈夫です」

青葉「ほぅ!?それは!?」


榛名「羽毛布団ですから!!」( ´∀`)b

摩耶「何がお前をそこまで駆り立てるんだ」



青葉「あーーーーッ!!!これはー!!!!!!」




「このヤローーーー!!!!」ゴロゴロゴロゴロ


青葉「 転 が っ て い る ー ー ー ー ー ー ! ! ! ! 」


青葉「この男ついに起き上がるのを諦めて転がり始めました!!」


「あっ」ボチャン



青葉「 海 に 落 ち た ァ ー ー ー ー ー ー ー ! ! ! ! ! 」

雲龍「妥当な結果ね」




如月「もう、何やってるの司令官」ザパン

青葉「あっ」

青葉「………」(撤収、撤収です)

摩耶(そこは空気読むのか…)


シュルシュル


提督「ぶはっ!!」

提督「あー…もう…」




如月「おかえりなさい。司令官」

提督「!!」


提督「………」

提督「ただいま。如月」ギュッ


如月「んっ」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





飛龍「あいてて…流石に二回同じ場所は、きつい」

蒼龍「飛龍ー!!」ザアアアアア

飛龍「お」


蒼龍「飛龍、大丈b」
飛龍「オラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」ガバッ


蒼龍「ぎゃー!?」

飛龍「何がボコボコにやっちゃえだこの裏切り者ー!!」グイグイグイグイ

蒼龍「ひえええええ!?」


飛龍「ヒレツなまねをしおって もう がまんならん!!」

飛龍「貴様を三桁の世界に連れて行く!!」

飛龍「つっかもっうぜ!!ドラゴンボールー!!」ムニムニムニムニ

蒼龍「うぎゃぁー!?!?」

飛龍「おぉう、このドラゴンボール大きいですなぁ。ナメック星のドラゴンボールかぁ?」

蒼龍「私のバストだよ!バスト以外の何物でもないよ!!」

飛龍「胸に尻付いてんのかぁ?」

蒼龍「バストだっつってんだろ!?ドラゴンボールから離れろ!!」


蒼龍「…まったく、人が心配して来たってのに」

飛龍「まぁ、そこは、ありがと」

蒼龍「大丈夫なの?」

飛龍「流石にきつい。中破どころか大破させられちゃった」



飛龍「でも」

飛龍「お陰でいいもの見せてもらったよ」

蒼龍「うん」

飛龍「あれが私達皆が見たかった光景なんだから。概ね満足だよ」

蒼龍「………そうね」


飛龍「………蒼龍」

蒼龍「何?」


飛龍「私達も、早くなりたいね」

飛龍「改二」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





黒服「………」

「あー、やっと見つけた」

黒服「!?」ガシッ

北上「裏切り者」壁ドンッ

黒服「あなたは…何を…!?」


北上「あんた、キサラギ社の人じゃないでしょ?」

北上「泊地の建物から見てたけどさ、明らかに動き怪しすぎるんだよね」

北上「どこのどいつか。まぁ大体予想は付くけど」

北上「金剛が止めたりしなかったら、そのまま如月を拉致って身代金でも取ったりとかするんだろうけどさ」

北上「残念だったね。全部滅茶苦茶だよ」


北上「大井っち」

大井「はい」バシン

黒服「ぶっ!」ガシャッ

北上「いいじゃん。豪快なグラサンの取り方するねぇ」

北上「じゃあ、写メ取っといて」

大井「はい…こんな感じで?」ピローン

北上「あーいいねー。ありがとね」ゴソゴソ

北上「運転免許証と社員証…まぁこれでいっか。これもお願い」ピローン



北上「………やっぱ空条か」


北上「まぁそういうわけで、あんたの顔は覚えておくから」

北上「あんた達のとこの社長にも伝えておいてよ」

北上「何しようが勝手だけど、私たちはここで楽しくやってるだけだからさ」

北上「次にウチにちょっかい出したら、どうなるかわかってるよな?」ギロッ

北上「何も言わずにマジで行くよ?」


黒服「ッ…やってみろよ…」

北上「あ?」

黒服「艦娘は…いついかなる時でも人間には手出しできねぇ…!!」

黒服「その規則を破って…『処分』されてもいいんならなァ…ッ!!」


北上「そうだね。そんなものもあるよね」

北上「でも」

北上「所詮規則でしょ?」

北上「私が処分される前に、あんたら全員確実にフッ飛んでると思うけど?」

北上「一撃でも艦を沈めて人間バラバラにできる酸素魚雷」

北上「それが40門」


大井「あら、北上さん。それはちょっと違いますよ」

北上「え?」


大井「80門です」

大井「一撃でも艦を沈めて人間バラバラにできる酸素魚雷を、80門」

大井「それが二回だから160門です」ニコッ

北上「大井っち」


大井「で、どうしますか?」

大井「信じられないなら…」

大井「この場でアンタの、その粗末な玉でも蹴り潰してやりましょうか」

大井「アンタの股間に向かってスッ飛んでいく艦娘の蹴りを」

大井「アンタが盾にしてる規則とやらが、物理的に守ってくれるって本気で信じてるなら、ご勝手にどうぞ?」

大井「私は、全力で、アンタの股間を蹴り潰すから」

黒服「………!!」



青葉「まぁまぁ二人とも落ち着いて」

北上「青葉?」

青葉「それで二人に何かあったら司令官が後を追いかけちゃいますよ?」

北上「またまた…」


青葉「で、まぁ、この個人情報は後で有効活用するとして」

青葉「もっと有効で面白い方法があるんですよ」

青葉「お二人に是非協力を、と思いましてね?こうやって探してたんです」

北上「そうなの?」

青葉「そうなんです」

青葉「後でここに来てください。その時にちゃんと説明します」スッ

北上(メモ?)

大井(後ろの部外者に聞かれたくないからだと思いますよ)

北上(あぁーなるほど)

北上「ん。わかった」ゴソッ

青葉「ありがとうございます♪ではその時にまた」


青葉「あ、後ろの黒服さんは帰っちゃっていいですよ」

青葉「くれぐれも、今回の事はご内密にお願いしますね?」

☆ちょっと休憩したい☆



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





水が床を叩く音が聞こえる。


水が流れる音が聞こえる。


後は何も聞こえない。



提督は自分の部屋のベッドに腰掛けていた。


彼は帰ってきて早々に秘書艦娘達に執務室から叩き出されたのだ。

いつもの笑顔を向けたまま部屋から押し出してきた大淀の顔が忘れられない。

ろくに眠っていないので正直ありがたいと思う気持ちはあったが、

大本営に呼び出されてから今まで業務を委任していたのに、帰ってきても委任し続けるのは気が引ける。

彼が艦娘達にそう伝えたら、足柄に頭を掴まれてここに放り込まれた。



ここは提督、彼の自室である。

だが今ここに居るのは彼一人ではない。


この泊地がまだリゾートホテルだった頃の様子を残したこの部屋は

小さいながらも浴室を備えている。


先ほどから聞こえる水の音はそこから聞こえてくるものだ。


(どうしよう)

彼は迷っていた。

(何もできねぇ)

テレビに接続されたゲーム機を見る。却下。

本棚を見る。却下。

枕を見る。論外。

扉を見る。無理。

冷蔵庫を見る。妥当な所だと自己評価を下す。



きゅ、と何かを閉める音と共に水の音が止んだ。




如月「司令官」

提督「ん。上がったか」

如月「何飲んでいるの?」

提督「あぁ、これな」



提督「俺の秘蔵の」




提督「りんごジュースだ」

提督「コンビニ注文で3000円ちょいの三本セット」





如月「お、お酒じゃないの?」

提督「俺あまり好きじゃないんだよね。弱いし」

提督「それにこれなら、如月でも飲めるでしょ。ほい」

如月「いいの?」

提督「そりゃもちろん」



「………」

「………」


提督(やっぱ無茶振りだよなこれ)

提督(如月と一緒に寝るのが仕事って何やねん)

提督(あんな事があった後に気が効く話をする自信もねぇ。ストレッチマンの話でもしろってか?)

提督(それに)

提督(この状況)

如月「………」チラ


提督(凄く嫌な予感がします)



如月「司令官」

提督「ん」

如月「お願いがあるの」

提督「………何」


如月「如月を、抱いてくれる?」


何故だ


提督「………」

如月「如月には、もう何も残っていないの」

如月「昔の顔も、名前も、立場も、艦娘としての名誉も、もう何も残っていないの」

如月「全部、全部、否定された」

如月「………生きている事も」

提督「」ギュッ

如月「んっ」


提督「こんな感じ?」

如月「あったかい…あったかくて…硬くて…幸せ…」

如月「司令官の、心臓」ピトッ

如月「ふふっ、少し早くなってきてる」トクントクン

提督「そりゃお前、だってそりゃ…」


如月「司令官」

如月「今度は、私の」

如月「私の心臓の音を、聞いて」


何故お前達はそうなる



「私は、生きてるのよね」

「うん」


何故お前達はいつもそうなんだ。


「私の心臓の音、聞こえる?」

「うん。凄く早くなってきている」

「私は」

「ゾンビなんかじゃないわよね」

「街に出た時に言われたの」

「『この間死んだんじゃなかったのか』」

「『恥ずかしくないのか』って」

「『スパイだ』『殺せ』『ゾンビ』『深海棲艦』って」

「皆で如月を殺して、他の鎮守府の提督さん達も如月を殺して…」

「この数日だけで、沢山の如月が死んでいった」



「私は…私は」



「私は、生きていても、いいの?」

「私は、本当にあなたのお傍にいてもいいの?」

「教えて、ください、司令官」




「私が生きているって事」

「あなたが生きているって事」

「私が、あなたの傍で生きていいって事」

「教えてください」


「こんな事を言うのはずるいってわかっている」

「でも」

「少しでも」

「私の事を愛してくれているのなら」

「………拒まないでください」


「如月には、もう何も残っていないの」

「昔の顔も、名前も、立場も、艦娘としての名誉も、何も残っていないの」

「全部全部、否定されて…残ってないの」

「残っているのは…この想いだけ」




「愛しています。司令官」


「だから」


「私は、あなたが欲しい」





ぶつん、と何かが切れる音がした




初雪「あっ」

青葉「………流石にこれ以上は止めておきましょう」

青葉「今回ばかりは、ね」

北上「………そだね」

初雪「………………」

大井「………はぁ」



青葉「それじゃあ、本題に入りましょうか」




青葉「三人に、これをお渡しします」コト

初雪「…USBメモリ?」

青葉「えぇ。使い方は大丈夫ですよね」

初雪「………勿論」

青葉「じゃあ」



青葉「その中身を一斉にネットにバラ撒いてください」

青葉「手段は問いません」

青葉「ツイッターでも2ちゃんでも荒らしでも何でもいいからとにかくあらゆる手段でバラ撒きまくってください」



北上「それがさっき言ってた良い方法?」

青葉「はい」

北上「…いまいちピンと来ない」

青葉「それなら後でこのメモリの中のファイルを聞いてみるといいですよ。多分わかります」

青葉「………あまりいい気分になるもんじゃないですけどね」



青葉「あのアホのせいで、泊地はめちゃくちゃ、如月ちゃんも死ぬ寸前までやられたんです」

青葉「このまま無事で済ましてたまるものですか」


青葉「幸いな事にあのアホは、一番の悪手をやらかしているのに気付いていません」

大井「一番の悪手?」



青葉「この青葉への対策を全く取っていなかった事です」



初雪「………あぁ」

初雪「そういう事かぁ」




青葉「せいぜい苦しんでもらいましょう」

青葉「人間の絶対なる力って奴に」





・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-数日後 東京某所-



社長「おごぇ!?」ドスッ

男一「寝てんじゃねぇよ、おら」グイ

男一「あぁあ!?」バキッ

社長「ぶげっ!!」


社長「な、何で…」

社長「何で僕が、こんな目に…!!!」




女「何度言えばわかるんですか?」

女「貴方が、あのファイルを流出させたからですよ」




カチッ

『そこのお嬢さんが背負う艤装を作った会社…キサラギ社』

『それが本当に目障りで、目障りで、目障りでしょうがないんですよ』



女「貴方がキサラギ社の娘にかけた電話内容のその殆どが」

女「ネット上のあらゆる場所にばら撒かれているんです」




『仕込んだな?』

『…仕込んだ、というのは?』

『違法プログラムを如月の艤装に仕込んだのかって事よ!お前達が!!!!』

『テレビの取材が入る鎮守府の如月に…プログラムを仕込んで戦場に送り出した!!!!!』

『それが、あの如月が轟沈した理由!?』


『だぁぁああああああああああああい!!!!!!』

『正ぇぇぇぇぇえええええええええぇい!!!!!』

『解ぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!』

『番組の関係者であれば、鎮守府に入り込むのは簡単だからねぇぇぇぇ!!!!』


社長「う、嘘だ…だってあの時、そんな様子は…」

女「これ、通話の途中でスピーカーに切り替えていますよね?」

女「そこから、盗聴をされたんですよ」

社長「す、スピーカー!?」


「…なら、スピーカーにしてもよろしいでしょうか?」


社長「じゃ、じゃあ、あの時から…!!!」

女「貴方は、まんまとハメられていたんですね」



女「随分余計なことまでベラベラベラベラと喋ってくれましたね」

女「………私、最初に言いましたよね」

女「万が一足が付いたときに貴方達の巻き添えを喰うのはごめんですよ、って」

女「………このファイルの所為で汚らしいネズミに嗅ぎ回られているんですよ」


女「ネットに流れたファイルを消去して!!!」

女「一連の情報をもみ消すのに!!!」

女「どれだけの金がかかると思っているんだぁ!?あぁあああ!?」


女「どれもこれも、テメェのせいで無駄な金を使わされてんだよ…」

女「わかってねぇだろ!?あぁあぁあああああ!?!?!?」ガシッ



女「テメェが!!!」ガン!!


女「その金!!!!」ガン!!


女「全部弁償!!!」ガン!!


女「できんのかぁ!?」ガン!!



女「 で き ん の か ぁ ! ? 」ガン!!!




社長「」ピクピク


『世論を操り!!人の心を操る!!!この世は、マスメディアこそが神だ!!!!!』

『どうだ!!これが神だ!!!これが神の力だ!!!!!!!』


女「………やっぱり」

女「貴方を生かしておくのは間違いだったみたいですね」

女「我々の金の卵を台無しにした時に、殺しておくべきでした」


女「ねぇ、若頭さん?」

若頭「………」

女「この人はもう殺します。何か良い方法はありますか?」

若頭「溶かしましょう」

若頭「アスファルトに混ぜて道路にするか、薬品でドロドロにして流すか、お好きな方で」

女「アスファルト、ですか。いいですね。そっちにしましょう」


社長「ひっ!!」

社長「たっ…助けて…!!」

男一「誰が助けるか、豚が」

若頭「じゃあ」

若頭「ちゃっちゃと片付けましょうか」チャキッ

女「えぇ」

女「この部屋は防音にしてありますから、遠慮なく」

社長「助けて!!助けてぇ!!!」

社長「たすけでええええええええ!!!!!」




「待ってください!!」




社長「!!!」パアアアアアアアアアアア

男二「今回の目標は海軍のイメージダウンだったはずです」


男二「社長さんは最低限度の仕事はしてくれました。何も殺さなくても…」

女「その事後処理をしくじったんですよ。その火消しでどれだけのお金が無駄になったか…」


女「そもそもこの男は以前にも一度しくじってるんです」

女「この男が勝手に好き放題やったせいで、我が社は金の卵を失った」

女「これはその汚名返上のチャンスとして、慈悲として、与えてあげたものです」

女「それなのに、この男は」


男二「それでも!!」

男二「最低限の仕事は果しました!それに対しての報酬は与えるべきです!」

男二「艦娘達はこの一件で大きく力を失った!!」

男二「デモ団体、政治団体の立ち上げにも成功した!!」

男二「ここまでの成果は!!彼で無ければ成し得ませんでした!!!」


女「では、どうするのですか?」

女「このまま野放しにしていては百害あって一利も無いと思いますが」


男二「いいえ」

男二「利はあります」




男二「もう一度やって貰いましょう」

男二「ですが今度はあんな似非ドキュメンタリー番組じゃない。もっと大掛かりなもので」




女「…成る程」

女「今度こそ止めを刺す、という事ですね」

男二「えぇ、次もまた同じような事があればいくら軍と言っても、その信用は完全に失われるでしょう」

男二「今回立ち上がった『盾』も更なる力を付けられます」

男二「あの国からの支援も、海軍の更なる弱体化に繋がると説明すればもっと貰えるでしょう」


女「支援…支援、報酬…うふふふふ…!!」

男二「そうです。報酬です」

男二「もし次の策で、海軍を完全に潰す事が出来たのなら」

男二「褒賞金は今回振り込まれた金額の比ではない」

男二「数倍、いや、数十倍にもなりえます」

女「億…兆…京…!!うふふっ!!うふふふふ!!!!ふははははははははは!!!!!」



女「…いいでしょう。あと少しだけ生かしておいてあげます」

女「ですが、次しくじった時は、絶対に殺します」


女「せいぜい、肝に銘じておきなさい」

社長「は…はは………」

男二「立てますか?」

社長「………」

男二「貴方は立派な精神をお持ちだ」

男二「いつまでも自分の罪と向き合おうとしない、反省しようとしない者達に毅然と立ち向かう勇気を持っている」

男二「ただ、奴等は貴方の足元にも及ばないほど下種な精神しか持ち合わせておりません」

男二「その奴等の下種な策略に、今回はたまたまひっかかってしまっただけです」

男二「貴方ならやれます。あんな奴等に負ける筈がありません」

男二「貴方は、正しい事をしているのですから」

社長「そう…そうだ…」

社長「どれも、これも」

社長「全部あいつが悪いんだァ…」


社長「全部」



社長「 如 月 が 悪 い ん だ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ァ ア ア  ア ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」


社長「 殺 す ゥ ゥ ウ ウ ウ ウ ウ ! ! ! ! 」


社長「 今 度 こ そ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ッ ! ! ! 」


社長「 完 全 に ! ! ! 」


社長「 絶 対 に ! ! ! ! 」


社長「 殺 し て や る う う う う う う オ オ オ オ オ オ オ オ ウ ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっああああああ!!!!!」

「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


バン!!


ダダダダダダダダダダダダダダダダダ



女「………」

男二「………」

女「随分元気になりましたね」

女「まさか貴方に女の子だけじゃなくて男まで落とす才能があるなんて思いませんでした」

男二「やめてくださいよ気持ち悪い」

女「えぇ?嫌ですよ。他人に猿芝居を売たせた報酬はこれくらいが相場です」


女「でもまぁ、これで次の1手も確保できて暫くは安心ですね」

女「裏番組を叩き潰し、向こうのシェアを奪うことも出来た」

女「…元々は私達の下に入るはずのお金なんですけどねぇ」

女「それを奪い取るっていうんなら、親だろうが誰だろうが」

女「残らず、叩き潰してあげますよ」


女「海軍が無駄に仕事をする所為で、深海棲艦に直接支援ができなくなって回りくどい方法を取らざるを得ないのは癪ですが」

女「報奨金も入るようになって、結果的にはプラス…!!」

女「ちょっと国を売るだけで、数億数兆が簡単に手に入る…!!!」

女「ふふふ…ふふふふふ…!!まだ…!!まだまだ稼げる…!!!ふふふふふふふ…!!!!」




女「もっともっと稼げる…金が…金が手に入る…!!!ふふふ…ふふふふふふふふふ…!!!!!」




☆もう限界なので寝ます☆

劇場版艦隊これくしょん、いよいよ本日公開です。



「この世界の金は」


「全部全部」


「私のもの…!!」


「誰にも渡さない…誰にも…!!」




「私だけの金…!!!」


「私だけが触れていい…!!!」


「 金 ! ! 金 ! ! 金 ! ! 金 ! ! 金 ! ! ! 」




「そんな私の金を奪おうとする奴は」

「軍だろうが」

「マスコミだろうが」

「総理大臣だろうが!!」

「絶対に、許さない…!!」


「便所に隠れていようが」

「地獄の底まで堕ちようが」


「全員跡形も無く、叩き潰す…!!!」



「私の、この私の、金の力で…!!!!」



☆ここで一区切りです☆

次の主人公の候補の中で、これを見てみたいというのがありましたら教えて頂けますと幸いです。

なお、鎮守府(泊地)の設定は引き継ぎますが時間軸は主人公によってバラバラです。

>>1です。

始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





如月がふと気が付くと、彼女は海の上で一人、立っていた。

何度も何度も聞いてきた、聞き飽きた程の波の音。それ以外は何も聞こえない。

視界の上では灰色の空と雲が広がる。

周囲には誰もいない。それだけで彼女はどこか不安になった。

海風が身体を撫でる。寒さが彼女の不安を助長する。



何かを求めるように下腹部に掌を当てる。

冷えた身体、冷え切った世界で唯一そこだけが暖かかった。

その温もりを感じるだけで、彼女の心は落ち着いていく。


この暖かさは自分のものではない。自分が愛する男から注がれた命そのものだ。

自分を受け入れ、自分を承認して、自分を愛してくれる証。

死体のように冷えた身体に注がれた熱い命。

とてつもない痛苦の果てに、ようやく見つけた一つの希望。

自分は今、生きてここにいる。

自分は、一人じゃない。

帰りたい場所がある。愛している人がいる。


掌の熱が身体全体に伝わる。

熱に追いやられていくように不安が消え去っていく。


(帰ろう)

(こんな所で立ち止まってたら帰れない)


彼女は脚部艤装を動かして進みだした。



当てがあるわけではない。

だが進まなければずっとあの場所に居続ける事になる。

あんな所に居たくない。

泊地に帰ろう。あの人に会おう。

身体に広がった暖かさが消えてしまう前に。


もう一度、温もりを与えて欲しい。

もう一度、命を与えて欲しい。

もう一度、あの人が欲しい。

もう一度、あの人を感じたい。

もう一度、自分を感じて欲しい。

もう一度、もう一度、生きている実感が欲しい。

愛し、愛され、愛でて、愛でられ。

そうする事でしか、如月は生きている実感を感じられなくなっていた。


冷え切った世界で唯一暖かい場所。

どんな麻薬よりも強力に、身体を蝕むもの。

もう一度、いや、何度でも味わいたい。

何度味わっても味わいきれない。

今も、身体も心も、それを求めて騒ぎ立てている。


だから、進む。

進み続ける。

立ち止まってしまったら二度と戻れないのがわかっているから進み続ける。



進み続ける如月の行く手に影が立ちはだかった。

深海棲艦、空母ヲ級の姿をしたそれを目にした如月は身体に光を纏わせ、魚雷を手に取り、吐き捨てるように言い放つ。

「またあなた?」

「いい加減、邪魔しないでくれるかしら」


ヲ級が杖をかざすと、その後ろから艦載機が現れ飛んでいく。

爆弾を積んだ艦載機が如月を捉え、爆弾を投下する。

だがその爆弾は如月に当たる事無く、海面へと落ち、何かの肉片を撒き散らすだけだった。


轟音が連続して響き渡り、その度に如月が加速してヲ級に肉薄していく。

如月の主砲の範囲内にヲ級が入り込んだ瞬間、また轟音が響き、如月の身体が空に跳ね上がる。

ヲ級の頭上を越え、くるくると回転しながら背後に着水した如月は再び主砲を構える。

ヲ級とは真逆の方向に。


火薬が炸裂する音が響き、身体が反動で弾き飛ばされる。

とてつもない衝撃の中、身体を捻り魚雷の弾頭をヲ級に向ける。

反動と全体重を乗せた魚雷がヲ級の身体に突き刺さり、大爆発を起こした。



ヲ級の身体が水風船の中身のように弾け飛ぶ。

液体調味料の感触に似た、どろどろとした何かになったヲ級は海面へと崩れ落ち。

海底へ、あるいは波に流されて消えていった。



「カミカザリ…カエシテ…」


如月以外誰もいなくなったはずの海域で、どこからか声が響く。

如月の記憶に訴えかける声。


「カミカザリ…」

「髪飾り…?」


如月が下を向くと、ヲ級がいた場所に目に付く何かが浮かんでいた。

見覚えのある形。見覚えのある色。だけど、周りがどす黒く変色している。

如月はそれを見て嫌悪感と苛立ちを覚えたが、それを掌に乗せ、独り言のように呟いた。


「これが、あなたの?」



「ワタシノ…」

「如月の髪飾り」

「私と同じね」

「アナタト…?」

「えぇ。見えるかしら、私の髪飾り」

「私も如月なの」

「あなたも、如月でしょう?」



掌に乗せた薄汚れた髪飾りに、如月の身体を纏う光が流れていく。

髪飾りが酸の中に入れられた鉄片のように、だけど速やかに溶けて消えていく。

やがて髪飾りは全て溶けて消え、如月の掌に光の粒だけが残った。

掌を傾け、光の粒を落としていく。

光の粒は、如月の後ろから吹く風に流され、前へと飛んでいった。



風に流されていく光の粒は突然進路を変え、同じ場所をぐるぐると回りだす。

後から流されてきた光の粒も、同じ場所でぐるぐると回りだす。

ぐるぐると回りだした光の粒が、膨張し、加速し、いつしか一つの固体と変わっていく。

光の固体から光が消えてなくなると、そこには



如月がいた。




だが、目の前の如月から強烈な違和感を感じる。


「あぁ…そうか」

「あなたは、形だけなのね」

「これからどうなるかは、わからないわね」

如月は独り言のように呟いた。

目の前の如月が、自分の言う事を理解しているようには到底思えなかった。


それでも、言いたいという欲求を抑える事ができなかった。



「下を見て」


如月の言葉に従い、目の前の如月が下を向く。

表情を変えることなく、ずっと下に広がる光景を見続けている。

海の中、よく目を凝らすと、ぼんやりと浮かび上がっている光景。




海の中を埋め尽くす、如月の死体。








二十


五十











それよりも多い数の死体。


彼女達はその上に立っていた。


おびただしい数の如月の死体によって水増しされた海の上に。


『そのはずなのに』普段と代わらない風景が広がる海の上に。


遠くでぼちゃんと音がした。


少しだけ、水位が上がったように感じた。





「彼女達は、皆死んだわ」






「私が如月だったから」


「あなたが如月だったから」



「たったそれだけの理由で皆殺されたわ」


「たったそれだけの理由と、人を殺したいという好奇心」


「たったそれだけの事で、皆殺されたわ」


「たったそれだけの事で、それがまるで正義の行いかのように殺されたわ」



「あなたは今ここで如月の身体を取り戻した」


「これから心も取り戻せるかもしれない」



「でも」


「この子達は、もう戻れない」


「戻れるはずがない」


「誰も、戻す気すら沸かない」


「だって」


「どうでもいいから」


「如月の命なんて、殺した人にとってはどうでもいいから」


「だから、戻そうなんて気には絶対ならない」


「そういう人達だから」



「ずっとずっと、ここで沈み続けるのよ」


「何があっても、誰も助けてくれずに」


「ずっとずっと」


「ずっとずっと死に続けるのよ」





「それだけは覚えておいて」

「それと」

「そこから何を感じるかは、あなた次第よ」

「あなたはあなた」

「私は私」

「同じ如月でも、別人だもの」




「だから」

「あなたがこの先どうなろうが知った事じゃないわ」


「私は私の道を行く」


「私は、大切な人と約束したから」

「如月の手本になれる如月になるって」


「尊敬する人と約束したから」

「素敵な女性になってもう一度会うって」


「愛している人に教えられたから」

「私は、あの人の女になったって」


「タイセツナ…人…?」

「………睦月チャン…?」


「あなたはそうかもしれない」

「でも私は違う」

「確かに私にとっての睦月ちゃんはいるわ」

「でも、もっともっと、大事な人達が私にはいるの」


「もしあなたが死んでも、私の大事な人達は悲しまないけど」

「もし私が死んだら、私の大事な人達はみんな悲しむ」


「だから、私は生きるわ」

「例え私以外の如月が全員死ぬような事になっても」

「私は生きて、如月の存在を証明し続けるわ」

「そうしないと、私の大事な人達はみんな悲しんじゃうから」

「私は、私が死んだ後にそんな事が起こるなんて」

「『死んでもゴメン』よ」



「……………」

「もし、万が一」

「あなたが、少しでも、今のままじゃ嫌だと思うのなら」


「あなたがいなくなったら泣いちゃうかもしれない人の顔を思い浮かべなさい」

「その人が、どうすれば笑顔になれるか、考えなさい」


「その人の事を思って」

「その人の為に生きてあげて。帰ってあげて」


「その為なら、何だってしなさい」

「手段を選んでいられるほど、私達は強くはないわ」



そこまで言った瞬間、如月の心に虚しさが覆い尽くした。

(…私、何言ってるのかしら)

こんな事を言っても理解しているかどうかもわからない。

覚えているかもわからない。

これ以上何を言った所で意味があるのだろうか。

こんなものは八つ当たり以外の何物でもない。

ここに来てようやく正気を取り戻した如月は脚部艤装を動かし始める。

泊地に帰る為に。司令官に会う為に。

もう一度、暖めてもらう為に。



「…それだけよ」

「私はもう行くわ」


別れの言葉すら理解せずにぼんやりとしている、目の前の如月の顔を見て

如月は再び嫌悪感といらつきを覚えた。

どうも、目の前の如月の顔を見るといらつきを覚えてしまう。

嫌な記憶が、蘇ってしまう。

殴り、蹴られ、殺されかけたあの記憶が。

泊地がボロボロになっていくのを見ている事しかできなかったあの記憶が。

あの時から全てがおかしくなってしまった。

もう元には戻れない。

如月の未来は地獄かもしれない。


でも、地獄には地獄の生き方があるはず。

例えそれが、天国にいる者達には狂人だと思われる生き方でも。

如月は、地獄で生きていく覚悟を決めた。


だから生きていく。

一緒に地獄に堕ちてくれると。

それすらも受け入れてくれた司令官と共に。


「…できる事なら」

「あなたとは、もう二度と会いたくないわ」

そう捨て台詞を残して、如月は機関全速で海域を駆け始めた。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・






-提督私室-

如月「………ん」モゾッ

如月「…ふ…あぁ………」

如月「あふ………」

如月「……………あれ?」

如月「………司令官…?」キョロキョロ



荒潮「あらあら、やっと起きたのねぇ」

如月「きゃあッ!?」ビクン




夕雲「ごきげんよう。如月さん」ヒラヒラ

如月「ゆ、夕雲ちゃん!荒潮ちゃん!何でここに!!」

如月「今授業中でしょ!?」

荒潮「特別任務遂行中で~す」

夕雲「提督から、如月さんを執務室までお連れするよう言われたの」(鍵も預かったわ)

如月「司令官からって…司令官は今どこ!?」

夕雲「大丈夫。執務室よ。何か今日は急にお客さんが来る事になったからって、向こうにいるの」

夕雲「裸でベッドの上からおもてなし、ってわけにはいかないでしょう?」クスクス

如月「はだ………!!!」ガバッ


荒潮「そんな隠さなくたっていいじゃない。一緒にお風呂に入った仲でしょ~?」

如月「っそれと、これだと、話が違うわよぉ!!」

荒潮「そうかしら~私そういう経験ないからわかんないわぁ」


夕雲「まぁとりあえずシャワー浴びてらっしゃいな。制服は用意してあげるから」

如月「………ひ、一人で行っちゃ、駄目?」

夕雲「駄・目♪」

荒潮「提督命令だからねぇ」

如月「……………」

夕雲「そんな急ぎの用でもないみたいだから、シャワー浴びながらゆっくり覚悟決めておいてね」

如月「……………はぁい」ガチャ


☆今回はここまでです☆

次回、もしくは次々回で最終回になります。作ってみないことにはわかりません。

>>1です。
始めさせて頂きます。



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・




-パラオ泊地 廊下-


荒潮「ふぅ~ん」

荒潮「じゃあやっぱり、『ゆうべはおたのしみ』だったってわけなのね」

如月「………」

如月「まぁ、そう」

荒潮「あらあらあらあら」ニヤニヤ

夕雲「まぁまぁまぁまぁ」ニヤニヤ

荒潮「ねぇ、どうなの!?」

如月「ど、どうなのって!?」

荒潮「 提 督 の 」

夕雲「荒潮さん。まだお昼よ」

荒潮「夕雲ちゃんだって気になるんでしょ?」

荒潮「今まで三人でずぅっとこんな話してきたけど」

荒潮「ここに来て如月ちゃんが本物を知っちゃったのよぉ?」

荒潮「気にならない?私は気になるわぁ」

夕雲「それは、まぁ…そうねぇ」


夕雲「凄く気になるわ♪」

荒潮「でしょ?」

如月「…これ、私に拒否権無いわよね」

夕雲「無いわ」

荒潮「無いわねぇ」



如月「………」ゴホン

如月「何というか、気持ち良いというより…」

如月「心地良かった」

夕雲「心地良い?」

如月「司令官に私の心臓の音を聞いてもらうこと」

如月「司令官の心臓の音を感じること」

如月「司令官の暖かさを感じることが、凄く安心したの」


如月「私は生きているんだって」

如月「生きていていいんだって」

如月「司令官がそう思っていてくれているって感じて」

如月「そう思ったら凄く安心して」

如月「何も心配しなくていいんだって思って」


如月「司令官が」

如月「もし司令官が、私の思っているような司令官じゃなかったら」

如月「もしかしたらこれは夢で」

如月「目が覚めたら私も海の底に沈められているんじゃないかって」

如月「そう考えるのが怖かった」

如月「でも、司令官は私が起きるまでずぅっと、抱きしめていてくれた」

如月「それが、本当に、嬉しくて」

如月「私の事を想ってくれているって」

如月「私が好きになった司令官は、私が好きになったままの司令官なんだって」


如月「それで」

如月「申し訳ないのと、恥ずかしいのと、嬉しいのとか、色々な感情がぐちゃぐちゃになって」

如月「…思いっきり泣いちゃった」



夕雲「………」

荒潮「………」(なんか思ってたのと違う)


如月「夕雲ちゃん、荒潮ちゃん」

夕雲「はい?」

如月「ごめんなさい」


荒潮「え?」

如月「ずっと迷惑をかけちゃってて」

如月「私のせいで、酷い目に遭わせちゃって」

如月「泊地の事も、それまでの事も、迷惑だったわよね」

如月「私、本当におかしかった」

如月「ごめんなさい」


夕雲「………そんな」

荒潮「そんな事言われてもねぇ」


夕雲「え?」

荒潮「散々提督とイチャイチャした後に、思い出したようにそんな事言われても何とも思わないわよぉ」

夕雲「荒潮さん!」

如月「………」

荒潮「………」


荒潮「だから」

荒潮「私達も提督の看病していいってんだったら許してあげる」


如月「…司令官の!?」

荒潮「そうよぉ」

荒潮「今は如月ちゃん一人で提督の看病してるけど」

荒潮「その役割を私達三人で受け持つの」

荒潮「ご飯食べさせてあげたり、身体拭いたり他にもイロイロ…してるんでしょう?」

荒潮「そんな状況を如月ちゃんが一人占めなんて許せないわ」

荒潮「だからちょっとはお裾分けしなさい」

荒潮「全部取っちゃうわけじゃないし、手空いた時は提督とイチャイチャしててもいいから」



如月「荒潮ちゃん」

荒潮「夕雲ちゃんはどうかしら?憧れだったんでしょ?こういうの」

夕雲「うーん………」

夕雲「確かに絶好のチャンスだけど…如月ちゃんがいいなら」

如月「………わかったわ」

夕雲「いいの?」

如月「この泊地は私と司令官だけのものじゃないから」

如月「司令官だって、色々な人と付き合ってるのは知ってるし」

如月「…私も、やっぱりみんなで一緒に幸せになったほうが、いいと思うから」

如月「私を見捨てないでいてくれたみんなにも、幸せになってほしいから」

夕雲「如月ちゃん…」


荒潮「じゃあ決まりね。これからもよろしくね、如月ちゃん」ウフフッ

如月「よろしく、荒潮ちゃん。夕雲ちゃん」

荒潮「これから楽しくなりそうねぇ」

荒潮「如月ちゃんに手を出したって事は」

荒潮「私達にもチャンスがあるって事だものねぇ」ニッコリ

夕雲「あぁ!そうね!」

夕雲「今まで駆逐艦娘だからってスルーされてたのも、もう通じないわね!」

夕雲「如月ちゃんに手を出したんだから」ムフフ

夕雲「私、如月ちゃんよりプロポーションには自信があるわ」

荒潮「あらあら。提督は私の方がいいって言うかもしれないわよぉ?」

夕雲「荒潮さんのぺたんこおっぱいが?」

荒潮「なんだって提督は駆逐艦娘に手を出すロリコンなんだからぁ」

夕雲「でも今秘書艦してる人達は皆おっぱいが大きくて…」



「お前ら昼間から何て話をしてるんだ」



夕雲「え?」クルッ



友提督「ここの風紀大丈夫かマジで」

五十鈴「気にするのが半年程遅い気がする」

友提督「ですよねー」


荒潮「こんにちは友提督さん」

夕雲「ごきげんよう友提督さん」ペコリ

如月「今日来るお客様って、友提督さんの事だったんですね」

友提督「うん…如月、もう大丈夫なのか?」

如月「えぇ…ご心配をおかけしました」

友提督「そういうのいいって。睦月(こいつ)の妹だし、提督(あいつ)の艦娘なんだからさ」

睦月「えへへ。久しぶり如月ちゃん」ヒョイ

如月「睦月ちゃん!」

睦月「今日はね。如月ちゃんがびっくりする凄い情報を持ってきたんだにゃあ♪」

如月「凄い情報?」

友提督「その事は後でな。提督(あいつ)は今執務室か?」

夕雲「はい。執務室でお待ちしています」

友提督「うし、じゃあ一緒に行くか?」

荒潮「はぁい。ご一緒させていただきま~す」ツカツカ


荒潮「そういえば友提督さん、ここまで来る時大丈夫だったんですかぁ?」

友提督「あ?あぁ、あの時外にいた連中の事?」

友提督「今は日本街の方でやってるみたいだな」

友提督「でも数は減ってるし、こっちの方まで来る事は無いはず」

友提督「青葉の策が上手くいってんのかな?」

夕雲「ワレアオバをあんな手で使うなんて、青葉さんの考える事は凄いわね」

五十鈴「その、ワレアオバって何?大体予想付くけど」

夕雲「青葉さんの盗聴・盗撮ファイルシリーズです」

あきつ丸「盗撮ってさらっと言ってますけど、犯罪でありますよ?」

荒潮「提督は知ってるみたいですけどねぇ」

友提督「え?」

夕雲「青葉さんはどこからともなく仕入れてきて、私達に販売してるんです」

夕雲「食事中とか執務中みたいな健全なものから裏モノまでなんでもござれな感じで…」


友提督「ここの治安大丈夫かマジで」

夕雲「意外と平和にやってますよ」

友提督「というか駆逐艦娘に手を出すって、憲兵的にどうなんだ?」

あきつ丸「ここで『逮捕しちゃうゾであります』とか空気読めないにも程があると思うであります」

あきつ丸「なので見なかった振りをするであります」

あきつ丸「円滑に収まるなら、それで…」

友提督「丸くなったなぁあきつ丸」

あきつ丸「…誰のせいだと」


友提督「……まぁその事はおいおいアイツからも聞くとして…」



友提督「ここだな」

扉「」オソカッタジャナイカ…

千歳「提督さん。パラオ特別鎮守府の千歳です」コンコン

「どうぞー」

千歳「失礼します」ガチャ

扉「」コチラニニゲコメェ!!


提督「よーう。久しぶりー」

友提督「酷いザマだな」

提督「全くだよ。とりあえず座ってみたものの、書類に目を通してハンコを秘書艦娘にお願いする事しかできねぇ」

提督「一人で飯も食えねぇ。シモの世話もできやしねぇ。ギプスが取れたらリハビリだ」

提督「知ってるか?関節固まるからすげえ痛ぇんだぞリハビリ」

友提督「まぁ素敵な恋人が助かったんだから、それくらい我慢しろ」

友提督「なぁ如月」


如月「司令官…」

提督「ごめんな如月。友提督来るのに流石に何もしねぇってわけにはいかなくて」

提督「でも変に気使わせるかって思うと…」

那珂「はいしゅーりょー」コン

提督「ちょっと!?」

川内「とりあえず友提督はこちらにどうぞ」スッ

友提督「ありがとさん」

阿賀野「えーっと……………友提督さーん?」ガチャ

神通「ホットコーヒー。ミルク多めで砂糖無し」

神通「でしたよね?」

友提督「…よく覚えてたな」

神通「提督のご友人ですから」

神通「阿賀野ちゃん。ここは私がやります」スッ

阿賀野「あっ…うん…」


提督「あ、じゃあ阿賀野。千歳さん達に椅子出しておいて」

阿賀野「はぁい」

提督「で、神通…俺は」

神通「アイスコーヒーですか?」

提督「うん。そう。ストローでホットは死ぬからな」

神通「あの…飲ませてあげてもいいんですよ?」チラッ

提督「あつあつおでん食べる芸人みたいになるのは嫌よ」

神通「ふふっ。わかりました」

阿賀野「おまたせ。パイプ椅子しかなかったけどいいかな?」ガチャガチャ

千歳「うん。ありがとう」



神通「お待たせしました」カチャ

友提督「どうも」ボフッ

提督「ありがとう」ドスッ


如月「」スッ

夕雲「」ススッ

荒潮「」スススッ

神通「!?」ムッ

提督「ちょっと?」

夕雲「何ですか?」

提督「何か、近くない?」

荒潮「そりゃあこのソファで4人座ったらこうなるわよねぇ」

提督「座る意味って…座る意味って…」

夕雲「これからは3人でお世話するって話になりましたから」

提督「いつの間に」

荒潮「さっきよ」

提督「そうか。さっきか。そりゃ気付かんはずだわ」

友提督「すげえ。女侍らせてる世紀末ザコみたいになってんぞ」

友提督「まぁ、俺は気にしないけど」

提督「マジすか」

五十鈴「いいじゃない。モテモテで」

提督「いやいや五十鈴さん…」

五十鈴「じゃあそこの二人押しのけて如月ちゃんだけにする?」

五十鈴「皆平等に愛してあげなきゃ贔屓よ?クソ提督よ?」

提督「愛するって」

荒潮「そうよそうよー」グリグリ

夕雲「提督、私も愛してくれますか」ムニムニ

如月「司令官…」ギュッ

提督「あじゃぱァー」


五十鈴「まぁ自分が愛されてるって自覚して、その幸せをかみ締めなさい」

提督「わーい宇宙的にうれぴー」

千歳「マンモスうれぴーじゃなくて?」(あとネタが古いわよ)

提督「俺は文庫版からなので」

睦月「何の話にゃしか」


友提督「というか五十鈴…何か言い方きつくないか?何かあったのか?」

五十鈴「ちょっとね」

友提督「おいおい…できれば揉め事にするなよ?」

五十鈴「わかってるわよ…でもそんな物騒な話じゃないから」



提督「………で、だ」

友提督「そろそろ真面目にやるか?」

提督「うん」

提督「急にどうした?心配で来てくれただけじゃないだろ?」

友提督「…伝えたい情報が三つある」

友提督「悪い情報が二つ。良い情報が一つ。何から聞きたい?」

提督「悪い情報から」

友提督「わかった」


友提督「………教官と、その護衛に付いていた武蔵が死んだ」

提督「!?」

那珂「やったじゃん」

提督「何で死んだ?いや、というかそれが悪い情報だって事は…」


あきつ丸「暗殺であります」


あきつ丸「憲兵隊曰く、二人とも正面から拳銃で頭を撃ちぬかれて死亡したであります」

提督「あのクソ野朗(教官)は重要参考人だったんですよね?何でそんなあっさりと…」

あきつ丸「取調べ中に、憲兵隊の一人が他の憲兵を射殺したであります」

提督「は!?」

あきつ丸「その後、教官を射殺」

あきつ丸「同時刻に、武蔵殿…いや、武蔵も同じ手口で射殺されているであります」

提督「変装…してたって事、ですか?」

あきつ丸「」コクン

提督「殺した奴は捕まったんですか!?」

あきつ丸「……………」フルフル

提督「…犯人を特定する証拠は!?」

あきつ丸「…何も」


あきつ丸「ただ…青い髪が見えたとか」

提督「青髪…?日本人じゃ…いや、外国人でもない…!?」


あきつ丸「艦娘の可能性があります」

提督「青髪の艦娘と言ったら…五月雨、涼風、叢雲、大潮、霞、初風、浦風、伊19、蒼龍…あたりか」

提督「でも…」

あきつ丸「艦娘一人が、武蔵型艦娘相手にも対抗できる憲兵隊を、たった一人で振り切れるものではないであります」

あきつ丸「まして、その候補で武蔵型艦娘に勝る者は…」

提督「………」

提督「そいつが、変わった動きをしていたとかはわかりますか?」

提督「羽黒の『阿修羅』みたいな特別な何かを持てばいけるかもしれない…」

榛名「……………」


あきつ丸「いえ、ほぼ力任せ…地力で突破された、と…」

提督「……………」



あきつ丸「さらに続きがあります」

あきつ丸「…武蔵殿が入隊される前の親族…全員が死体で発見されたであります」

提督「!?」

提督「何だよ、それ…!!」


あきつ丸「この二つの事件の関連性は調査中であります」

あきつ丸「ただ、関連性があるとすると…」

あきつ丸「裏に付いている連中は、相当恐ろしい相手だという事になるであります」

提督「…『本当の日本を指導する組織』か。クソ野朗(教官)が言ってたな」


提督「要するに、武蔵はその組織に脅されてあのクソ計画に参加していたって事か?」

提督「『断れば、もしくは失敗すれば家族の命は無い』って言われて」

提督「秘匿にされているデータすら盗み出して脅しに使える奴って事か?そのキチガイカルト宗教は」


提督「………だけど何でそんな事する?そんな事をして何の利益がある?」

友提督「利益…」

友提督「利益なら考えればいくらでもあるだろ」

提督「………外国とか?」

友提督「そうだな。今回の一件は」

友提督「頭のイカれたテレビ局のクソ社長がキサラギを貶めたいって考えたのと」

友提督「艦娘の地位を貶めたいって考えた海軍の一部、それとさっき話に出た謎の組織」

友提督「こいつらが結託して起こした事だった」

友提督「そして恐らく、『盾』とかいう艦娘反対派集団を裏で糸引いてんのもこいつらだ」


友提督「あまり聞かれたくないであろう情報を青葉がネットにぶち込んだ途端に」

友提督「あいつらの活動がわりと大人しくなったのが証拠だ」

友提督「多分『盾』とか言う奴らは活動金か何かで動いているんだろう。クソ社長か、海軍の裏切り者か、組織から」

友提督「で今頃、三つとも情報のもみ消しに躍起になってるんだ」

友提督「事実、俺が見させてもらったツイッターも今じゃアカウントごと凍結させられてる」

提督「マスターファイルはネットに繋がっていない所に取ってあるって青葉は言ってた」

提督「そのファイルをコピーして、各地の青葉にばら撒いて協力してもらってる。とも」

友提督「じゃあしばらくは消しては増えての繰り返し合戦だなこれは」

提督「いずれ飽きられて見向きもされなくなってばら撒く意味がなくなるまで続くってか」


提督「その前に憲兵が抱きこまれて情報源が一掃される可能性は?」

提督「例えば…なんかこじつけて青葉が逮捕されたりしたら」

あきつ丸「今回の一件で憲兵隊にも上層部に不信感を持つ者が少なからず出てきているであります」

あきつ丸「そう簡単に憲兵が動いたりは…無いかと」

提督「…信じてますよ」

あきつ丸「はい。上官殿にも、そう伝えておくであります」

提督「上官さん…よかった、さっきの話聞いて心配だったんだ」

あきつ丸「あの人がそう簡単に死んだら憲兵隊はお終いであります」



友提督「………話を戻すぞ」

友提督「こいつらの最終目標は恐らく艦娘の完全排除だ」

友提督「艦娘が排除されて喜ぶのはどいつかと考えれば」

友提督「深海棲艦か、外国だ」


友提督「今現在日本の防衛予算の大半は艦娘に注ぎ込まれている」

友提督「頼みのアメリカは『マーシャル・インパクト』と『マンハッタン・インパクト』の影響でパニックになった自国を何とかしなきゃならない」

提督「いきなり核相応の攻撃を自国に2発も喰らったものな…」

友提督「核相応って言うか、放射能は出てないんだけどな」

友提督「深海棲艦との関連性の疑いも晴らさなきゃいけないし」

友提督「その上あの国は今現在も深海棲艦の標的の一つだ。こっちに構っている暇なんてどこにもない」

友提督「だから日米安保はもはや無意味だ。今日本を守る為には日本自身の力、艦娘の力に頼るしかない」



友提督「だけど」

友提督「日本とアメリカ以外の国は殆ど被害を受けていない」



友提督「実際、そういう外国からの艦娘の評価はかなり低い」

友提督「酷いサイトを見れば、艦娘が福島原発の放射能を浴びて産まれたミュータントだとか」

友提督「731部隊の生き残りが開発した生物兵器だの、言いたい放題だ」


友提督「だから、他の国からして見ればこれは」

友提督「強国アメリカを潰すチャンスであり」

提督「それに付随する日本を潰すチャンスとしか考えていない、と?」


提督「上手くやれば国力を削ることなくこの2国を潰す事ができるってか?深海棲艦がそこの国民を皆殺しにして?」

提督「あいつら深海棲艦を自分達の神の使いか何かと勘違いしてるんじゃねぇのか?」

提督「………今回のあのクソッタレを裏で糸引いてた連中はそういう国と結託してるって事か?」

提督「深海棲艦がその後てめえらに銃を向けないなんて保障はないのにさ」

友提督「それが100%当たりとは言えないけどな」

友提督「でもまぁ、俺達(元一般人)が考えられる所といったらそんな所だろ」

提督「あんなデモ隊まで出してきて、そこまでしてでも得たいものなのかね…」



如月「………人は」ボソッ

如月「自分が死ぬかもしれないって思う人は、少ないわ」


提督「如月」

如月「自分が死ぬはずが無い」

如月「ましては、殺されるなんてそんな事はありえない」

如月「自分だけは、助かると」

如月「そう、思っているものよ」

如月「………本当に、殺される直前になるまで」


提督「……………」

友提督「そうか、そうだな」

提督「それが、人間ってものだったな」

提督「………次の情報を教えてくれ」

友提督「次か」



友提督「深海棲艦の大規模攻勢の予測が出たぞ」

提督「あぁ、通信を傍受したとか言ってた奴か。次はどこが狙われる?」

友提督「トラックだ」

提督「トラックか…」

友提督「………わかってるか?」

提督「何を?」

友提督「今回は本当にまずいぞ」

友提督「先日のあのクソ電波のせいで世論は艦娘反対に傾いている」

友提督「そんな中で万が一トラックが陥落したらどうなるか」


提督「艦娘への不信感がますます強くなる?」

友提督「最悪、そのまま海軍の解体だ」

友提督「世界中の鎮守府泊地が残らず解体され、艦娘も一人残らず居なくなる」

友提督「それで、艦娘に代わる防衛力が居るかなんてのは関係ない」

友提督「でも、そうなる可能性はある」

提督「それで最後まで喜べるのはさっき言ってた海外のどこかの人達だけだろうな」


友提督「いいか。気合を入れて行くぞ」

友提督「俺達は失敗できないんだ」

提督「あぁ。わかっている」

提督「勝ってやるさ」

提督「誰一人失うことなく」





提督「 ど ん な 手 を 使 っ て で も な ァ 」




☆今回はここまでです☆

>>1です。
落ちそうなので生存報告を出します。

次の主人公を赤城か伊58かの二択には絞れましたが、どちらにしようか悩んでいます。
こっちが見たいという意見がございましたらお知らせください。
赤城はこのssの前日譚、伊58は後日譚です。

>>1です。
いつもの時間より早めですが、投下を始めさせて頂きます。



那珂「……………」

あきつ丸「………!!」

五十鈴「………あんた…!!」

提督「俺はな、この一件で本当に大事な事を学んだよ」


提督「どれだけ多くの敵を倒しても」

提督「どれだけ多くの拠点を潰しても」

提督「死んだら何もかもが終わりだ」

提督「名誉もクソもあったもんじゃねぇ」

提督「死人に与えられるのは」

提督「『途中で死んだ役立たず』っていうふざけた肩書きだけだ」


提督「それで、戦いもしねぇし貢献もしねぇクソ野朗どもの玩具にされる」

提督「『戦争に犠牲は付き物だ』なんて言いながら」

提督「その犠牲になった人達に敬意も何も表すわけでもなく」

提督「死体に体液引っ掛けてケツの毛まで毟り取って食い潰そうとするクソ野朗どものな」


提督「…世の中はそういうもんだって事を学んだよ」

提督「自分の遊びで他人を殺す。世の中はそういうクソ野朗の溜り場だ」

提督「それを痛いほど思い知ったよ」

提督「とんでもない痛みだった」

提督「でもそのおかげで現実を理解できた」



提督「俺は、この痛みを忘れない」

提督「何があっても、一生忘れない」

提督「忘れるものか」

提督「忘れてたまるか」



提督「これ以上あんなクソ野朗の思い通りになってたまるか」

提督「どんな手段を使ってでも生き延びてやる」


提督「あのクソどもが何を言おうが、こいつ(俺の如月)は」

提督「俺のすぐ傍で生きているんだ」ギュッ

如月「……………」


提督「………俺がここに帰ってこれた夜に、それを実感した」

提督「如月は生きている。今も、こうしていれば、俺のすぐ近くで、心臓が動いているのがわかる」

提督「でも、あいつらからして見ればそんなものはどうでもいいんだ」

提督「殺して、犯して、ゴミのように捨てる」

提督「そしてまた次の如月を見つけて殺す」

提督「如月がいなくなるまで、それが永遠に続けられる」


提督「俺は、本当なら如月の汚名を返上できればそれでいいんだ」

提督「それで、何もかもが元通りになればそれでいいんだ」

提督「何もかもが元通りになってしまえば、これ以上如月が苦しむ事も無いはずだから」

提督「でもそれはできない。俺にそんな力は無い」



提督「それにあいつらは…」

提督「何をやっても『学びもしない』し『反省もしない』、『真性のクズ』どもだ」



提督「人の悪意には、何を言っても、どんな手を使ってでも勝つ事はできない」

提督「悪意に満ちた人の心を変えることなんてできやしない」

提督「だから、もうこの世の中が良いように変わることは無い」

提督「悪意には、絶対に勝てない」


榛名「……………」

提督「…そう思っていたけど」

提督「一つだけ、たった一つだけ勝つ方法を思い付いた」




提督「相手以上の悪意を以って」


提督「邪魔する奴を皆殺しにすればいい」


提督「深海棲艦も、人間の皮を被ったクソどもも」


提督「俺達の邪魔をする奴は全員」


提督「俺達が受けた以上の痛みを与えて」


提督「皆殺しにしてやればいい」


提督「俺達が受けた痛みがどういうものかを思い知らせながら」


提督「グチャグチャのミンチになるまで叩き潰してやる」




提督「邪魔する奴はどんな手を使ってでも全員殺す」

提督「深海棲艦だろうが、名目上の友軍だろうが、艦娘だろうが、一般人だろうが」

提督「『俺の如月』を、俺の仲間を、殺そうとする奴は全員ブチ殺してやる」

提督「『俺の』、『俺の』、『俺の』仲間だけは、何があっても殺させはしない」

提督「戦争に犠牲が付き物だって言うが、その犠牲になるのが俺達じゃいけない理由なんてどこにもない」

提督「他の誰かを犠牲にし続けてでも生き延びさせてやる」


提督「友軍を蹴り飛ばして、盾にしてでも生き延びさせる」

提督「それでも邪魔なら後ろから頭をブチ抜かせる」

提督「市民だろうが撃ち殺す」

提督「周りに撃ってやるだけであんな奴等は全員バラバラになる」

提督「俺達が受けた以上の痛みを与えて、殺す」


提督「俺は」

提督「そういう命令を下して、その責任を取る」



友提督「……………」

あきつ丸「……………」


提督「聞いてんだろ!!青葉!!!」


五十鈴「!?」

五十鈴(青葉…!?)

あきつ丸(執務室にも盗聴器が仕掛けられている…!?)

友提督(それも黙認しているのか、お前は…)


提督「この事を泊地の皆に伝えろ!!!」

提督「俺はもう手段は選ばない!!!」

提督「お前達が生きる為なら何でもやる!!!」

提督「強奪!略奪!!殺戮!!!艦娘だって屠殺する!!!!」

提督「どんな手段を使ってでも、俺達が全員で生きて帰れるように!!」



提督「もしそれでも万が一、誰かが死ぬような事があるんなら…」

提督「俺も、そいつと一緒に死んでやる!!!」

提督「作戦の責任は全部俺が取ってやる!!!」



提督「無能だって言うんならそれでもいい!!そんな事は俺が一番よくわかっている!!」

提督「でもこれが、これからの俺のやり方だ…!!曲げるつもりは毛頭ない!!」

提督「文字通り死ぬ気で、全員が生きて帰る作戦を立てる!!!」


提督「だから、お前達は自分の身を守る事を考えろ!!!隣の仲間を守る事を考えろ!!!」

提督「全員で生き延びろ!!!それだけを考えろ!!!」



五十鈴「……………」ギュッ

友提督「…変わったな、お前」

友提督「結構長い間お前と一緒にいるつもりだけど、そんな目をしているお前を見るのは初めてだ」

提督「変わりもするさ」


提督「艦娘の死をヘラヘラ笑う奴、自分の欲に利用する奴」


提督「意味のわからねぇ大義名分を立てて殺しにかかるサイコパス」


提督「そんなもんばかりをここ数日ずっと見せられてきたんだ」

提督「本当に痛い位に思い知ったよ」

提督「そういう奴等に対抗するには、そういう奴等の手だって使っていかなきゃいけねぇ」

提督「手段なんて選んでいたら」

提督「…俺達も、あっという間にあの如月と同じになる」


提督「俺は無能なんだ」

提督「今回だって、お前達の力が無かったら俺は泊地まで帰って来れなかった」

提督「そもそもあの夜、俺が大本営に行こうとしなかったら、如月だってあんなに辛い思いをしなくて済んだんだ」


提督「そんな俺が、手段を選ぶ余裕なんてあるわけがない」

提督「ギリギリのギリギリまで妥協して、どうしても譲れない物だけは守ろうとして、思い付けたのがこんなもんだ」

提督「誰に何と言われようが、これ以外に皆が生き残る方法が思いつかねぇ」

提督「こんなやり方以外何も思いつかねぇんだ」

提督「あいつらだって、自分の欲のためなら手段を選ばねぇんだからな」



提督「…知ってるか、あの空条テレビの現社長の手口」

提督「あいつは、『如月』を貶めるためならどんな手段だって使ってきた」

提督「社長になる前も、立場を利用して『如月』を地獄に落としてきた」

提督「ドラマに出演したら役の風評被害をモロに受けて学校を中退しなきゃいけなくなった子役の子とか」

提督「撮影中の事故で大怪我させられて芸能生命絶たれたアイドルだっているらしい」

提督「どっちも、如月何とかっていう名前の人」

千歳「そんな情報どこから」

提督「青葉からですよ。今回の事もあって他の鎮守府の青葉と一緒に調べたんだとか」


提督「イカれてるよ。何がそこまであのキチガイを動かすのか」

提督「でもそれがこの世界に蔓延るクソ野朗の手口だ」

提督「自分が気にくわねぇ相手を殺すためなら何だってする」

提督「それっぽい理由を付けて、自分が正義のように振舞って、その実ただ殺したいだけ」

提督「そんなイカれ野朗が何十何百何千何万何億も集まってるのが今の世界だ」

提督「そんなのに、俺みたいな無能がいい子ちゃんぶってまともに歯向かったらあっという間に殺されて終わりだ」



提督「でも手段を選ばずに努力し続けていれば」

提督「俺の周りにいる人達だけは、助けられるかも知れない」




提督「俺はな、もうこの戦いを戦争だなんて思っちゃいないよ」


提督「これは、生存競争だ」

提督「人類と深海棲艦」

提督「それと、それを利用して私欲を満たそうとするクソどもで争う生存競争だ」


提督「人間社会のモラルなんてもんは何の意味も無い」

提督「何だろうが、どんな手を使おうが、相手を一人残らず括り殺して生き残った奴だけが勝者だ」


提督「俺達は、その生存競争に生き残る」

提督「他の何を犠牲にしてでも、絶対に生き残る」

提督「餌になってたまるか」

提督「ゴミのように捨てられてたまるか」

提督「俺達が逆に餌にしてやる」

提督「ボロ雑巾にして殺してやる」



如月「……………」

千歳「……………」

那珂「……………」

五十鈴「……………」

友提督「……………」

提督「……………」

友提督「………何でだろうな」ボソッ

提督「え?」


友提督「俺も」

友提督「いつかお前に殺されるような気がしたよ」


提督「…何言ってんだよ。そんなわけないじゃん」

提督「お前は…ううん、お前と特別鎮守府のみんなは、俺の友達だろ?」

提督「だから俺は、お前達にも死んでほしくない」

提督「所属する鎮守府、泊地は違うけど…お前達は、俺の仲間だよ」

提督「お前も、千歳さんも、榛名さんも、あきつ丸さんも、五十鈴さんも!睦月さんも!!みんな、みんな!!俺の仲間だよ…!!」

提督「誰一人だって死んでほしくない!みんなで生きて帰りたい!!」

提督「その為だったら!俺は何だってする!!」

提督「だから…そんな変な事言わないでくれ」

友提督「……………」

提督「……………」

友提督「………わかった」

友提督「悪かったよ」

提督「……………」


友提督「よし!」パン!

友提督「悪い話はここまでだ。次は良いニュースの話をしよう」

友提督「本当に良いニュースだ。気分を切り替えていこう。なぁ睦月」

睦月「んっあ、はい!!」



友提督「千歳。アレ出してくれないか?」

千歳「はい」パサッ

提督「紙?」

夕雲「はい、提督」スッ


提督「ありがと……………」

提督「!!」

提督「おい、これ!!」

提督「如月!!これ!!!」

如月「え?」ヒョイ


如月「…『睦月・如月型改二艤装機動試験』…って!?」


睦月「そうなのじゃよ!!」

睦月「キサラギ社の、改二艤装開発が進んだって話にゃし!!!」

如月「パパ達が…?え、でも…如月の改二は、まだ…」

睦月「何言ってんのよ~。如月ちゃんは改二になったでしょ?」

如月「でもそれは私だけで…」

友提督「色々調べてわかった事なんだけどな」

友提督「お前(如月)があの日、改二に覚醒してから」

友提督「各地の鎮守府泊地で睦月・如月型艦娘の改二特有の発光現象が確認されだしている」

如月「え?」

荒潮「あらあら凄いわねぇ」

睦月「睦月もその一人にゃし!!通知が来た次の日くらいに改二の光が出てきたにゃしよ!!」

提督「マジか!?すげえ!!おめでとう睦月さん!!!」



那珂「~♪」ピッピッピッ


睦月「うんにゃ!礼を言うのはこっち!!」

如月「え?何で?」

友提督「改二現象ってのは、原因とかまだまだわかっちゃいないが」

友提督「一人が成りだすと他の同型艦娘も一斉に成りだすらしい」

友提督「まるでネットに情報が広がっていくみたいにな」

友提督「恐らくだけど如月の魂を通じて、改二に覚醒した影響が他の如月にも影響が出ているんだ」

友提督「今まで悪い事が連鎖して起こっていたように、改二への覚醒も連鎖して世界中に散らばった」

友提督「そして如月型艦娘だけじゃなくて、魂の様相が近い睦月型艦娘にも影響を及ぼした、と」


如月「……………」

友提督「わかるか如月」

友提督「お前が、ここにいるお前が、諦めず、堪えて、吹っ切ったからこそ」

友提督「今こういう流れができたんだ」


友提督「世間じゃ何言われるかわかったもんじゃないが絶対そうだ」

友提督「誰が何と言おうと、俺はそうに違いないって確信している」


友提督「『パラオの英雄』の俺が、そう心の底から信じているんだ」

友提督「他の無能どもが何を言おうがまともに取り合うなよ」

友提督「どうせろくな活躍もしてない雑魚の妬みなんだから」

如月「友提督さん…」




友提督「だからこそ俺は」

友提督「お前が、この機動試験に参加するべきだと思っている」



提督「え?」

如月「え?」

友提督「俺にこの通知が送られてきたのは偶然だ」

友提督「だがな、これこそ運命なんじゃないかって思ってるよ」

提督「それってどういう…!?」

友提督「中身の文章読め」

提督「…あぁ!そういう事かこれ!!!」

提督「『実戦経験豊富な睦月・如月型艦娘を求む』って!!!」


友提督「今回俺はキサラギ社から直々の依頼を受けたんだ」

友提督「改二艤装のテストに相応しい艦娘を連れて来いってな」


友提督「俺は睦月を連れて行く」ポン

睦月「にひひっ」

友提督「改二現象も発現済みで、実力も十分なのは俺が一番よく知っているからな」

友提督「そして、如月型艦娘の枠は」


友提督「お前を推薦したい」

友提督「来てくれるか?」


☆休憩します☆


☆再開します☆



提督「当たり前だ!!!なぁ如月!!!」

如月「………はい!!!」

提督「精一杯親孝行しようぜ!!」

如月「えぇ!!私、パパとママに司令官の事を紹介したいわ!!」

提督「え、それ」

五十鈴「あらいいじゃない。ついでに言っちゃえば?」


五十鈴「『私、この人と結婚するんです』って」


提督「けっ」

如月「こん」

提督「いやちょっとそれは待って待て待て」

五十鈴「駄目なの?」

提督「駄目でしょ」

五十鈴「何が?」

提督「色々と」

五十鈴「だからそれが何?」

提督「いやだから…」

五十鈴「如月はどうなの?」

提督「あぁん無視酷い」


五十鈴「こいつ(提督)と、結婚したいでしょ?」

五十鈴「こいつの子供産みたいって思ってるでしょ?」

提督「突然何を言いだすんすか五十鈴さん」

五十鈴「うるさいわね。年頃の女の子に手を出して傷物にしておいて親にはなりたくないなんて通用すると思ってんじゃないわよ」

提督「ふんぐー」

荒潮「あらあら。痛い所突かれたわねぇ」

提督「夕雲さん、荒潮さん。ここに俺の味方はいないのかね?」

荒潮「私は別に名目上二番三番それ以下でも構わないわよ」

夕雲「私もそうね」

提督「あぁ逃れられない!」


五十鈴「で、如月はどうなの?」

五十鈴「提督の事、好きなんでしょ」

如月「………私は」

如月「私は、司令官と」





明石「はい!お待たせしましたー!!!」ズッバァン!!!





提督「」

友提督「」

如月「」

五十鈴「」

明石「…あれ?」

提督「………どうしたの?」

明石「あ、あれー?私、呼ばれて来たんですけど…」

那珂「私が呼んだの」

提督「いつの間に」


那珂「明石さん、例のもの持ってきたよね?」

明石「あぁ、はい。提督に頼まれてた奴ですね。これとこれ」

明石「仕入れるのに手間取りましたけど、まぁ何とかなりました」

榛名「あれって………アネモネ?」

千歳「アネモネね。でも、造花かしら?」

提督「あぁ、届いたのか。ありがとう明石」

あきつ丸「そっちのやたら大きい箱は?」

提督「これは………まぁ、いいよ」

提督「如月、これで間違い無いんだよな?」

如月「えぇ。紫のアネモネ」


如月「私の大切な人…鹿島先生がくれた大切な花」

如月「どんな事があっても私を信じて待っていてくれる人達がいるって、教えてくれた大切な花」

如月「…もう何があっても一時だって忘れない。何があっても心が折れたりしないように」

如月「ずっと傍に置いておきたいの」


提督「造花でよかったのか?」

如月「艤装に付けるのよ?本物の花だとすぐ散っちゃうわ」

如月「それに…」

如月「造花だったら、枯れずに残り続ける」

如月「鹿島先生が込めてくれた気持ちも、ずっと残り続ける」

如月「花が偽者だとしても、そこに込めてくれた気持ちは私にとっては本物よ」


提督「………!!」

如月「司令官、どうしたの?」

提督「…いや、大丈夫。前に同じような事を聞いたことがあってびっくりしただけ」

提督「何かの漫画だったかな?なんだったっけなぁ」



那珂「うし、じゃあ」ヒョイ


那珂「はい」スッ

提督「え」


五十鈴(…あぁ~そういう事ね)ニヤリ

那珂「持って」

提督「俺両手折れてるんだけど?」

那珂「ギプスで挟んで何とかして」

提督「マジすか」


五十鈴「じゃあ如月ちゃんはこっちね」スッ

如月「え?」


提督「………ねぇ、これってまさか」

那珂「提督の事だから、気の利いた事もろくに言えてないんでしょ?」

提督「言えてる自信は無い」

那珂「自信満々に言わないでよみっともない」

那珂「まぁそれなら今がチャンスでしょ?おあつらえ向けの物もあるんだから」

提督「あぁ~やっぱこれそういう流れ~」


神通「提督………」

提督「神通」

提督(そうだ、神通ならこの流れは…!!)

神通「………」

五十鈴「じー…」

阿賀野「じー…」

川内「じー…」

那珂「じー…」

神通「………」

神通「あとで、私にも何か下さい」

提督( 折 れ た よ チ ク シ ョ ウ ! ! ! )


友提督「何だか面白い事になってますねぇ」

あきつ丸「文字通り『花を持たせる』という事でありますな」

千歳「何か少女漫画のワンシーンみたいね」

睦月「提督ー如月ちゃーん!頑張ってー!!」

榛名「榛名、こういう展開大好きです!」フンス

五十鈴「ねぇみんな、この後ちょっと…」ヒソヒソ

友提督「ん?」




那珂「じゃあ覚悟を決めてバシッといってよね」

那珂「『艦隊のアイドル』さん」



提督「ッお前」

那珂「はい、3、2、1、キュー!」ドン

提督「ほぁ!」

如月「………」

提督「………」



「如月」

「はい」


「………俺は」

「作戦立てるのが上手いわけじゃないし、階級も高くないから給料もいいわけじゃない」

「さっきまで物騒な事を口走ってたし、これからそういう命令を下す事もあると思う」

「そもそもこんな事を言う事自体が憲兵事案だし…」

「ッちっ………もういい、これ以上並べたって時間の無駄だ」

「……………」


「それでも俺は、お前の悲しい気持ちとか、苦しい気持ちとか、全部代わりに背負いたいと思うし」

「どんな手を使ってでも何を犠牲にしてでも守りたいと思っている」

「如月…こんな俺でよかったら」

「俺と一緒にいてほしい」

「これからも、ずっと」


「………」

「………」


「はい」

「喜んで」

「私も、司令官と、ずっと一緒にいたいです」



提督「………!!」


榛名「………キースっ」ボソッ

提督「え」


千歳「キースっ」

五十鈴「キース!」

那珂「キース!」

荒潮「キース!」

提督「えぇえええええええええ」


榛名「キース!」

川内「キース!」

千歳「キース!」

五十鈴「キース!」

夕雲「キース!」

那珂「キース!」

荒潮「キース!」

提督「中学生かお前ら!?」


あきつ丸「いいからとっとと男を見せるであります」

あきつ丸「できないなら、淫行の罪でこの場で現行犯逮捕するであります」

提督「この国の司法は今ここで死んだ!!!」


友提督「はいキース!」

榛名「キース!」

千歳「キース!」

五十鈴「キース!」

睦月「きーす!」

あきつ丸「キース!」

夕雲「キース!」

那珂「キース!」

荒潮「キース!」

阿賀野「キース!」

川内「キース!」


提督「~~~~~~~~~~!!!」グルッ

如月「司令官………」

提督「…今さらキスくらいで何とかなったりするかよ」

提督「目閉じて」

如月「………」スッ

提督「……………」






 








五十鈴「 い ぃ ぃ い い い よ っ し ゃ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! 」グッ


那珂「 ト ム の 勝 ち デ ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ス ! ! ! 」ググッ



五十鈴「今の瞬間ちゃんと撮ったよねぇー!?」

五十鈴「青葉ぁー!!!!」

提督「はっ!?」



青葉「バッチリ撮りましたよ五十鈴さぁーん!!!」ズドバゴォン!!

扉「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

提督「扉ァー!!!!」



青葉「何なら録音録画もありますよ!!!」

五十鈴「流石青葉!!うち(特別鎮守府)にも新聞発行よろしくぅ!!!」

青葉「よっしゃ!!一面丸々特集ですね!!!」

千歳「衣笠貸すから遠慮なく盛大にやっちゃって!!」

青葉「おーう秘書艦太っ腹!!!それなら遠慮なくコキ使わせてもらいましょうか!!!」

提督「衣笠さん…!!衣笠さん…!!!逃げて衣笠さん…!!!!」


青葉「あぁ提督のアレは3面くらいの端っこでいいですよね」

提督「一応ここの司令官なのにこの扱い。涙がちょちょ切れますわ」



五十鈴「ま、そういうわけだから!!!」

五十鈴「ちゃんと自分が言った事の責任は取りなさいよ」ポン

提督「五十鈴さん」


五十鈴「…あんな可愛い子落としておいて死んで逃げようなんて考えたら」ボソッ

五十鈴「ここにいる全員…いや、うちのみんなも絶対にアンタの事を許さないから」


提督(…………ハメられた!?)

提督(もしかして青葉がここを盗聴してる事を逆手に取られた!?)



友提督「よし!!」ボン

提督「うぇ!!」


友提督「トラック泊地防衛の前祝い…」

友提督「兼!!」

友提督「睦月如月の改二の前祝い…」

友提督「兼!!」

友提督「新たなカップル誕生祝いだ!!!」




友提督「 全 員 思 い っ き り 騒 げ ! ! ! ! 」





千歳「よっしゃー!!!」ドン

千歳「全員ここに呼びなさい!!」

千歳「飲むわ!!!」


那珂「飲むの!?誰か急いで隼鷹ちゃんと千代田ちゃんと飛鷹ちゃん連れて来てー!!!」

青葉「はーい!!全体放送で呼んできまーす!!!」ダッ

提督「マジかよ!?」


川内「開けろ開けろー!飲み物全部開けろー!!」ギュポギュポ

阿賀野「お菓子の開封は任せろー!!」バリバリ

提督「やめて!!」


友提督「もしもし間宮ー?あぁうん。ちょっと持ってきて欲しいもんがあってさ」

友提督「あ、さ、お酒も持ってきて。うん、はい、ヨロシクぅ!」

提督「あぁもう滅茶苦茶だよ」



「ほぉおおおおう!祭りの会場はここかぁー!?」

「話は聞かせてもらったわ!ぱんぱか案件ね!!」

「もう計算なんて不要です!!」

「すもい!」


「タッカラプトポッポルンガプピリットパロー!!!」

「だから私のバストはドラゴンボールじゃねぇっつってんだろぉー!!!」

「龍拳だぁあああああああああ!!!!」

「ぎゃあああああああああああ!!!!」


「もっと目立て目立て目立て目立て!!」

「YEAH!後ろの方!どうなんだよ人として!」


「今日はスペシャルゲストォ!!」

「ミス間宮さん!!ンハッ!!」

「間宮さん何しに来てんのぉ!?」

「それは勿論…スイーツを持ってきました!!」

「そんなトッピングの無いドシンプルなスイーツがあるんで…」


「そぉい!!!」

「グワーッ味覚!!!!」


「また鎮守府に遊びに来てくださいね、提督、さん!!」

「グワーッ視覚!!!!」

「あと今度、私の後輩にここを紹介しようと思うので、よろしくお願い、します!!」

「嗅覚グワーッ!!!!」

「どぉーだぁー!?間宮さん特製の顔面パイの味はぁー!?」

「乳脂肪分がたっぷりで、おいしいです」



ワイワイガヤガヤピーピーピーボボボボボ


金剛「……………」

金剛(改二艤装機動試験、か)

金剛「…Congratulations、如月」スッ


「入らないの?」

「お姉ちゃん」


金剛「………え?」バッ

比叡「ちゃんとお祝いしてあげればいいのに」

金剛「比叡…?」

比叡「あの子がここまで元気になったのだってお姉ちゃんのお陰じゃん」

比叡「お姉ちゃんは胸を張ってお祝いしてくればいいんだよ」

金剛「………!!」

金剛「比叡…!!」

比叡「何?」

金剛「何のマネですカ…!!」

比叡「…マネじゃないよ」

金剛「そんな…!!…そんな喋り方…してなかったでショ…!!」

比叡「………そうだね」

比叡「でもたまにはいいでしょ?」


比叡「お姉ちゃん」



金剛「私の妹は、死んだ」

金剛「私の目の前で、イ級に殺された」

比叡「でも、その魂は比叡の魂と一つになった」

比叡「そして今、比叡(わたし)はまたここにいる」

比叡「比叡の魂を持った比叡(わたし)がここにいる」


金剛「冗談はやめて!!」

金剛「どこから知ったかは知らないけど、そんな事が、そんな事が…!!!」


比叡「…Standing where I should be(私がいるべき場所はここ)」

金剛「!?」


比叡「Believing as I'm told to believe(自分を信じろと心が言っている)」

比叡「Being who I should be(誰かに言われたわけではなく)」

比叡「Doing what I should do(私はすべき事をしているだけ)」


金剛(この…歌…!!)


比叡「Going on and on I have the future in my hands(絶え間なく続く現実の中で、私は未来を掴んでみせる)」

比叡「Getting lose from days I never could get over(遠回りだっていい、絶対諦めたくない)」

比叡「Going on and on until I'm finally myself(ユメを手にするまで、ずっと目指し続けるわ)」

比叡「Getting out of this dishonest world I never wanted(自分にウソをついて生きるなんてまっぴらゴメンよ)」

比叡「Now is time(私は今、ここにいる)」

比叡「Now is time(私は今を生きている)」


金剛「………」

比叡「古い曲だけど、お姉ちゃん好きだったよね」

比叡「エレナ・ヒューストンの、『Mermaid ROCK』」

金剛「………!!!」


比叡「…これで」

比叡「信じてもらえるかな?」



金剛「そんな、そんな事が、あって、たまるか」

金剛「だって、それじゃ、それじゃあ今まで…」ポロポロ

比叡「見てたよ」

比叡「ごめんなさい。私のせいで辛い思いをさせちゃって」

比叡「恨んでなんかないの」

比叡「憎んでなんかないの」

比叡「ただ悲しかったから、辛かったから、それだけだから」


比叡「だからもういいんだよお姉ちゃんは」

比叡「お姉ちゃんは、お姉ちゃんの幸せを追いかけて」

比叡「私は、お姉ちゃんの傍で私の幸せを追いかけるから」

金剛「私の傍で、って…何?」

金剛「比叡は!?あなたの前にいた比叡はどうなるの!?」


比叡「比叡(あの子)は比叡(わたし)だけど」

比叡「比叡(わたし)は比叡(あの子)でもある」

比叡「私達は比叡という大きな魂の中で一つになって、今ここに比叡(わたし)がいる」

比叡「お姉ちゃん…お姉様に本当に笑顔になって貰いたい比叡(わたし)」

比叡「長崎で家族を焼かれて、家族の温もりを求める私」

比叡「いつもお姉ちゃんの後ろを追いかけてた私」

比叡「どれも比叡(わたし)」

比叡「それを受け入れたのも、私」

比叡「お姉ちゃんに幸せになってほしいって、私達みんなが思ったから」

比叡「今、私はここにいるの」



金剛「……………」

比叡「だから、もう悲しい事は終わりにしようよ」ギュッ

比叡「私は、お姉ちゃんの所に帰ってこれたから」


金剛「………うん」

金剛「おかえり」ポン

比叡「ただいま。お姉様(お姉ちゃん)」





比叡「………じゃあ」

比叡「早速行きましょうか」

金剛「…OK」


比叡「」スゥウウウウウウ

金剛「」スゥウウウウウウ


金剛「テートクゥーーーーーーー!!!!!」ズダダダダダダダダ

比叡「おぉめでとーございまぁーす!!!」ズダダダダダダダダ

榛名「あぁお姉様方!」

提督「一番やばいのが来てもうたァー!?!?」



・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・





友提督「ところでさ、その箱の中身は一体何なの?」

提督「え」

明石「あぁ、これは提督から頼まれてた如月ちゃんへのプレゼントですよぉ」

千歳「ほぅほぅ」


提督「プレゼント………っていうか」

提督「お守りみたいな、もんだよ」

如月「司令官、開けてみてもいいかしら?」

提督「え、あ、いや」

明石「開けろ開けろー私が許可する!!」

千歳「ヒャッハー!!」バリバリ

提督「俺の意志は、どこに行くんだろう」






ドス「」






如月「」

千歳「」

友提督「」

榛名「」

五十鈴「」

ドス「Go straight this way」




「「「「なんでだよ!?!?!?!?!?」」」」ズドーン




明石「いやー!加工しててなかなか楽しかったです!!」キラキラ

提督「いや日向型艤装を改造して駆逐艦娘用に作り直した接近戦用の」

榛名「そういう事を聞いているんじゃないんですよ!?」

友提督「いやお前…女の子にドスって…というかお守り!?これお守りぃ!?」

五十鈴「どこから突っ込み入れていいかわからないわよこれ!?」


阿賀野「あー!何これー!!凄ーい!!こんないいドス久しぶりに見たー!!!」

友提督「え?」

阿賀野「え?」

千歳「え?」

阿賀野「え?」

明石「わかる人にはわかる。わかってしまうのが工作艦娘の仕事」フフン

提督「え?」

明石「え?」



榛名「………如月ちゃんはこれ見てどう思う?」

如月「よ、予想してなかった、けど」

如月「司令官がくれた大切なお守りだから…大切に使わせて貰うわ」

榛名「そう…如月ちゃんがいいなら、いいんだけど」


如月「……………」

榛名「どうしたの?やっぱりドスなんて貰っても」

如月「違うんです」

如月「みんなここに顔を出して、一緒に騒いでいるけど」


如月「二人…見ていない人がいるんです」

榛名「…え?」


如月「羽黒さんと、夕立ちゃん」

榛名「………」

如月「私…夕立ちゃんに謝らなきゃいけないんです」

如月「夕立ちゃんに酷い事を言ったままで…」


夕雲「大丈夫よ、如月さん」

如月「え?」

夕雲「夕立さんは、如月ちゃんの事を嫌ったりなんてしていないわ」

如月「…でも、夕立ちゃんはここに来ていない」

夕雲「それはね…ちょっと事情があるの」

如月「事情、って」

如月「………!!」ハッ




夕立「………」




如月「夕立ちゃん…!!」

夕雲「え?」

夕立「」スッ

如月「…ごめんなさい。ちょっと行ってきます!」ダッ


提督「………夕立、如月」

夕雲「…何だ」


夕雲「結局気になって来ちゃったのね、夕立さん」クスッ



夕立「………」

羽黒「もう、いいんですか?」

夕立「うん。これだけでいい。早く戻ろう」


如月「夕立ちゃん!!」

夕立「!!」

夕立「………」

羽黒「……………」

如月「…夕立ちゃん」

如月「私、夕立ちゃんに謝らなきゃいけない」

如月「夕立ちゃんに、酷い事を沢山言っちゃったわね」

夕立「……………」

如月「本当に、本当に、ごめんなさい」

夕立「………」



夕立「羽黒先生。早く戻ろう」



如月「…!!!」

羽黒「夕立ちゃん」

羽黒「如月ちゃんの方を向いて」

羽黒「如月ちゃんに、ちゃんと自分の気持ちを伝えて」

夕立「………」



夕立「羽黒先生」

夕立「夕立は、まだ如月ちゃんに会っちゃいけないの」




夕立「…あの日」

夕立「夕立は、改二が目の前まで来て調子に乗ってた」

夕立「駆逐艦娘初の改二っぽい、自分はここの泊地の誰よりも強いっぽいって思ってた」


夕立「でも、全然駄目だった」

夕立「夕立は、弱かった。甘かった」

夕立「夕立が何しても、如月ちゃんはどんどん傷付いて」

夕立「逆に夕立自身が如月ちゃんを傷付けた」


夕立「夕立じゃあ駄目だった」

夕立「ソロモンの悪夢じゃあ、駄目だった」

夕立「『悪夢』は所詮『夢』でしかない」

夕立「目が覚めればいなくなる、所詮その程度でしかない」


夕立「なのに、夕立は、そんな事も考えずに、自分に力があるっぽいって思って、調子に乗って」

夕立「…取り返しの付かない事を、しちゃった」


夕立「………だから」

夕立「私はもっと強くならなきゃいけない」

夕立「『悪夢』なんかよりもっと上…『地獄』とかにでもならなきゃいけない」


夕立「そうじゃなきゃ…また、誰も守れない」

夕立「広島の時みたいに」

夕立「如月ちゃんみたいに」


夕立「もう、あんなのは嫌だ」

夕立「もうあんな悔しい思いも、悲しい思いも絶対にしたくない」

夕立「だから、私は」





夕立「羽黒先生に、『阿修羅』を教えてくださいって頼んだんだよ」





羽黒「……………」

夕立「…完全にモノにするまで、夕立は如月ちゃんに会っちゃいけない」

夕立「弱いままの夕立じゃあ、会う資格なんてない」



夕立「弱いままの夕立じゃ、また如月ちゃんを」

如月「資格なんてどうでもいいわ!」

如月「私は…前みたいに夕立ちゃんとお話したい」

如月「あんな事が起こる前みたいに…」


夕立「また如月ちゃんを傷付ける!!!」

如月「」ビクッ

夕立「もうあの頃には戻れないんだよ!!!」

夕立「何もかも…何もかもが…変わっちゃったんだから…!!!」


如月「……………」

夕立「…そうだよ」

夕立「悔しかったのは、自分が弱いからだけじゃない」

夕立「如月ちゃんに対してだって…!!」

如月「………私?」


夕立「改二を目前にして、みんな夕立の事を気にかけてくれていたのに」

夕立「如月ちゃんが改二に覚醒した!!あの時から!!」

夕立「夕立に誰も目を向けてくれなくなった!!」

夕立「如月ちゃんが私より先に改二になって!!!」

夕立「ずっと提督と一緒にいて!!次の秘書艦候補だって噂も出て!!」


夕立「…あんな事が無かったら」

夕立「今、如月ちゃんが居る場所に、私が居たかもしれないって…」

夕立「そう考えるだけで!!!」ドン!!


如月「……………」

夕立「そんな事になって…今さらになって…!!」

夕立「あの時は悪かったって…何なんだ…って!!!」

夕立「………そんな事」

夕立「友達に…言えるわけ…ないじゃないの…!!!」

夕立「また…守りたい友達を、夕立が傷付けるなんて、絶対に嫌だ…!!!」

夕立「そんな事言ったら…何もかも、滅茶苦茶になっちゃう…っぽい…!!」

夕立「でも、弱い夕立は…そう、考えちゃう…」


夕立「…だから」

夕立「夕立は、弱いままじゃ駄目なんだ」

夕立「如月ちゃんに追いついて、如月ちゃんを追い抜いて、強くなって」

夕立「如月ちゃんと肩を並べて戦えるようにならなきゃ」

夕立「如月ちゃんに会う資格なんて、無いんだ」

夕立「もう二度と、傷付けない様に」

夕立「もう絶対、守れないなんて事が無いように」



夕立「………」

如月「………」

如月「心の中で、どう思われていたとしても」

如月「私は、夕立ちゃんと友達でいたいと思っているわ」

如月「あんな事を言ったから、信用してもらえないかもしれないけど」

如月「夕立ちゃんは、私の大切な友達よ」


夕立「………」

夕立「如月ちゃんは」

夕立「如月ちゃんは、夕立の大切な人」

夕立「だから」

夕立「夕立は絶対に、今度こそ如月ちゃんを守れるように強くなってやる」



夕立「待っててね、如月ちゃん」

夕立「今度は、ちゃんと、絶対に守れるようになってみせるから」



如月「…うん。待ってる」

如月「夕立ちゃんの事を信じて、待っているわ」


夕立「…早く戻ろう。羽黒先生」

夕立「早く『阿修羅』を使いこなせるようになりたい」

羽黒「うん」


羽黒「………」チラッ

如月「………」





私は、色々なものを失った。

私達は、色々なものを失った。

失う事が悲しくて、もっと失う事が怖くて、ただただ泣き叫んで

最後に残ったもの、足元に落ちてるものにも気付かずにいた。







多くの如月が殺された。

これからも多くの如月が殺されていくと思う。


でも私は生きている。

私は死ななかった。

これからも生きていたい。


パパとママ、鹿島先生

夕立ちゃん…大切な友達

そして、司令官

多くのものを失った私に残った、本当に大切なもの。


名誉も何もかも、無くなったとしても。

生きる権利すらも無くなったとしても。

私の大切な人達の為に。大切な人達と一緒に、私は生きて行きたい。

前に進んで行きたい。







その過程で、また色々なものを見つけたり、失ったりするのだと思う。

ここまで来るのに多くのものを失った。


痛みを知った。

失って

痛みを知って

私は大人になった。


私はこれからも、多くのものを失うのだろう。

でも、本当に大切なものが私の傍にあり続ける限り

本当に大切なものが無くならない限り

私は前に進み続けられる。


進んだ先で、いつかまた、大切なものを得る事があるのなら。

私はもっと前に進み続けられる。







だから


ここから先の未来、ずっと暗い道しか無いとしても


血でべっとりしているどす黒い道しか無いとしても


私は



生きて


生きて


生きて


生きて


生きて


生きて




生きます。




☆完☆

>>1です。次は半年くらいで終わらせる事が目標です。

次の主人公を誰にするかのアンケートを取っていましたが、現在

赤城(一航戦) 1票
伊58    1票

となっています。


31日もしくは2月1日に二つの話の簡単なあらすじを紹介いたします。
そこから一週間程待ち、意見が多い方を次の主人公とします。
全く無かった場合は一回自分が書き込んで、そのコンマで決めます。

その後一週間後ぐらいに新主人公のスレを立てて、ここで案内を出してからこのスレを落とす予定です。

>>1です。
次回候補の2つのあらすじを紹介します。


・赤城
空母赤城の記憶に悩まされ心が壊れた空母艦娘赤城は、左遷先のパラオで提督と出会う。

・伊58
駆逐艦娘雪風は遠征の帰路で漂流している伊58を救助する。
泊地に運び込まれ一命を取り留めた伊58だったが、彼女の四肢は失われた。


もし興味がございましたら、どちらか書き込んでいただけますと幸いです。
選ばれなかったものも後日やります。

>>1です。
アンケートにご協力いただきありがとうございました。次の主人公は伊58に決定しました。

今から冒頭部分の書き溜めを始めますので、一、二週間後に新しいスレを上げてから、ここのHTML依頼を出します。

>>1です。
新しいスレを立てました。よろしければこちらもどうぞ。

【艦これ】伊58「黒く塗り潰せ」
【艦これ】伊58「黒く塗り潰せ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1488709580/)


☆おまけ☆

比叡が歌った歌
https://www.youtube.com/watch?v=swhT9oVpu6E

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年09月01日 (木) 04:46:02   ID: OxY0W47O

発想と設定はなかなか面白い

2 :  SS好きの774さん   2016年12月05日 (月) 04:58:06   ID: vXTFPhzZ

長編だからそこは単純にすごいけどつまらないし下手
悪い作品にある共通点が多いから見直した方がいいと思う。それか単純にそれを理解出来てない

3 :  SS好きの774さん   2017年04月20日 (木) 14:41:15   ID: DnDZHLZE

面白かった。評論家気取りのくせに自分じゃ書けねえやつは批判するかもな

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