男「今日も俺の周りは平和だ」(159)

俺の名前は男。歳は16歳。平にして凡なるごく一般の男子高校生だ
通ってる学校にも何の問題もなく、友達も少なくない
部活には入っていないけど、先輩後輩とのコミュニケーションもある
この16年、ドラマのような事件や、ファンタジーのような展開など一つもなかった
しかしそれは喜ぶべきことだろうと俺は思う
楽しい仲間と楽しく過ごす日々
それ以上を望んで何になるのか
平和こそ最高 平穏こそが至高
そう思い続けて16年
あれは、二年の夏休み前のテストも終わり、みんな無駄にテンションがあがっていた夏の日だった

~学校~

さて、ここで我が愛すべき母校について説明してみよう
市立oo高校、偏差値は中の上
びっくりするぐらい平和で、不良みたいな格好をした奴も皆いいやつ
そんな学校の二年a組に俺こと男は所属する
昨日テストが終わって、教室内はちょっとした祭りムードだった

友1「いやっほぅ!終わったぜ!」

友2「ああ、とてもいい気分だ!素晴らしい!」

不良1「お前らうるせぇ!今からお菓子配るから並びやがれ!」

サッスガフリョウサ~ン!オトコマエ!

不良2「お前ら少しは落ち着けよ・・・あ、おい、ジュースはちゃんと皆で分けろよ?」

ハ~イ!

男「凄いテンションだな・・・」

親友「はは、男はこういうの苦手だっけ?」

男「いや、嫌いじゃないんだが・・・ほら・・・」

親友「ああ、中学の時のあれのことね」クスクス

男「うう・・・」

というのも俺は昔そうとうに羽目をはずして、結構大変なことになったことがあるのだ
それ以来俺は騒ぐのを自重している
もともとがお祭り気質なので、結構つらいんだけどね・・・


委員長「ちょっと!みんな!先生が来たよ!」

カクセェェェ! ガタガタ!

ガララッ

先生「おはよう~ちゃんと片付けたか~?」

一同(ばれてるし・・・)

先生「羽目はずすんもいいけど、いい加減落ち着きを覚えろよ?」グビ

一同(いやいや、アンタも酒飲んでるし・・)

先生「は~い、今アンタもだろって思ったやつ正直に言え~。今なら留年で許してやる」

一同(無駄に厳しい!)ガーンッ!

男「まったく・・・」

親友「フフフ・・・」クスクス

ふざけた仲間に適当な担任に俺が呆れて、親友が笑う
まさにいつもどおりの光景で、ああ、今日もまた一日が始まるんだな、と思っていた

先生「え~、ていうか、転校生がいるんだ」

男「え?」

親友「珍しいね、この時期に?」

友1「先生!女の子ですか?美少女ですか!?」ガタッ

女子1「美少女だったらあんたなんかに見向きもしないだろうけどね?」

友2「同感」

ドウカ~ン

友1「お、お前ら酷い!」

男「まぁ、なんつうか・・・ドンマイ?」ポンポン

友1「男・・・お前って奴は!」ガシッ!

男「あ~くっつくな鬱陶しい」グイグイ

先生「お前ら少し静かにしろよ、外に居るんだから・・・」

先生「じゃあ入ってきて~」

ガラガラ

ザワ

男「・・・」

親友「・・・うわぁ」

俺は絶句し、親友は硬直、他の生徒も各々いろんな反応を見せた
そこには、黒髪の美少女が立っていた
さて、こんな時女子がどんな反応をするのか少し気になったので、少しクラスを見渡した

女子1「うわぁ・・・髪綺麗・・・」

女子2「嫉妬の念すらわかないレベル・・・」フゥ・・・

女子3「むしろおこぼれに預かりたい・・・」

うん、美人もここまで極まると、逆にいいのかもしれない
さて、転校生を前にあまりキョロキョロするのも失礼だろう
ちゃんと前を向くとしよう ・・・いや、別に見たいとかじゃないよ?
うわぁ・・・改めてみると凄い綺麗だなぁ・・・
なんていうか、もちろん顔もありえないレベルで整ってるんだけどさ
一番目立っているのはその黒髪、腰ぐらいまで届いてるストレート
毛先までさらさらで、枝毛なんて見つかりそうもない
なにより艶がやばい。反射する光がもう神々しい
お、そんな彼女が挨拶をするようだ

女「どうも、転校してきた女といいます。仲良くしてくれたらうれしいな」ニコッ

コエキレイ! ワーッ!

外見にベストマッチな落ち着いた、川のせせらぎのような声だ
さて、ここまでの素材を前に男子がどんな反応を見せるのか・・・

友123・・・ ポーッ

不良123・・・ 「ほ、ほれた・・・」

なるほど、面白いまでに骨抜きにされている
今日一日彼女が質問攻めにあうのは確定、ご愁傷様。まぁ悪い奴らじゃないから、相手してやってくれ
そんなことを考えながら俺は何となしに女を眺めていた

女「・・・」チラッ

あれ?今目があった気がしたんだが・・・
まあ気のせいだろう
それより、今日の授業は授業になりそうにないな・・・
骨抜きになった男子と、輝いた目でみる女子を見てそう思った

さて、授業と授業の間も中々だったのだが、昼休みになって”それ”は本格化したのだった
美形転校生恒例、質問攻めタイム
おお、他のクラスからもかよ

他クラス男子「どこから来たんですか!?」

他クラス女子「恋人とかいるの?」

みたいな感じを、延々と
さて、本人はというと、かなり困っている様だ
そらそうだ、さっきから一口も昼飯を食べていない
うん、義理はないがここでいっぺん助け舟を出すか

男「お~い、お前らいい加減にしとかないと女さんさっきから昼飯食えてないぞ~」

親友「そうだよ、初日なんだしもう少し落ち着かせてあげようよ」

他クラス男子「あ!ごめん!気づかなかった!じゃあまたの機会にね!」

他クラス女子「私たちもそうしよっか!ごめんね女さん!」

女「ううん、声かけてくれてうれしかった、また話しかけてくれたらうれしいな」ニコッ

あ、他のクラスの男子も落ちたな、ありゃ・・・
まぁあんな笑顔を見せられたら落ちるだろうな、普通は
そんな益体のないことを考えている俺を親友は笑って見てるし

そんなこんなで一日が終わり、俺は帰宅部として親友と帰ろうとしていた
しかし校門の前であることに気づいた
やばい・・・数学のノート忘れた・・・
休み前とはいえ、課題を出す輩もいるのだ
俺は仕方なく教室に戻ることにした

男「わるいな、今日は先に帰っててくれ」

親友「いいよ、その代わり明日食堂で何かおごってね?」ニコッ

男「・・・オーケー、なんでも買ってやるよ」

親友「ふふ、男、不用意になんでもとか言っちゃ駄目だよ?僕が大食いだったらどうするのさ?」フフッ

男「お前はうちのクラスでも一番少食だろ・・・身長も150で止まってるしさ」

親友「身長のことは言うなー!」プンスカッ!ポカポカ!

男「ははっ、牛乳に相談しないとな」ナデナデ

親友「撫でるな~!」ポカポカ!

男「わるいわるい、じゃあな」ダッ

親友「ふん!男なんて知らないもん!」

そんなことを言いながらも、ちゃんと手を振ってくれる小さい親友を背に俺は教室へと急いだ

ガララッ

男(え~と・・・)ガサガサ

男(あ、あった!)

ガララッ

男(誰か来た?)

女「あ、男・・・」

男「え?」

女「くん!」

何だろう、今の「くん!」は凄く後付けな感じがするのだが・・・
ていうか、女さん俺の名前覚えたんだ・・・だとしたら素晴らしい記憶力だな
一日でクラスメイトの名前を覚えるなんて
あれ?何か違う気がするんだが・・・

女「男君も、忘れ物?」

男「ああ、数学がね」ピラピラ

女「そ、そうなんだ・・・」

男「女さんは?」

女「ちょ、ちょっと大事なノートを・・・」アタフタ

男「そうなんだ、お互い大変だな」

女「そ、そうだね・・・」///

さて、夕焼けを受けて教室全部が紅く染まってきている
暗くなってからはあれなので、そろそろ帰らねばなるまい

男「じゃあ、また明日ね」

女「う、うん・・・また明日ね」///

あ、明日という言葉で思い出した
うん、一応言っとくか

男「今日はなんかごめんね、皆悪気はない、いい奴なんだけどさ」

女「?」

男「ほら、今日女さんを質問攻めにしちゃってさ、このとおり、ごめん」ペコ

女「え、別に気にしてないし、男君が頭下げなくても・・・」アセアセ

男「いや、友達の無礼だからな、それに、できれば明日も相手して欲しいって頼む意味も込めてさ」

女「大丈夫ですよ・・・皆さん優しいですし、むしろうれしいですよ!」ニコッ

男「そういってくれるとありがたいよ。じゃ、今度こそまた明日」

そのようなやり取りで、その日は終わったのだった

~翌日~

さて、ここでクラスの中がどんな感じなのか見てみよう

ガララ

ヲタ「おはようございますwww」

オハヨウ!

女子3「あっ消しゴムが」ポロッ

ヲタ「あwwwおとしたよwww」スッ

女子3「ありがとう~」

不良1「おいヲタク~wよく学校これたなwww」

不良2「またやられにきたのかよwww」

ヲタ「・・・」

不良1「さぁ・・・出すもの出せよ」

不良1&2&ヲタ「「「さあ!対戦だ!」」」スチャッ ピコピコピコ!

不良1「くっ!やるじゃねぇか・・・!腕を上げたな!?」ピコピコピコピコ!

不良2「がんばれ!昨日は勝てたじゃないか!」

ヲタ「ふふwww昨日の僕と一緒にしてもらってはこまるwww」ピコピコピコピコ!

不良1「なっ!そのコンボは・・・!」

ヲタ「昨夜徹夜して練習したwwww死角はない!www」ピコピコ!

ガララッ

先生「は~いお前らそれ没収な~」

不良1&2&ヲタ「まじかよ」

先生「なめた事してるな馬鹿ども」グビ

一同(いやだからあんたも酒飲むなよ!)



ー休み時間ー

友1「おい・・・これ見ろよ・・・」ゴクッ

友2「すげぇ・・・」ゴクッ

友3「なんてエロい体してやがんだ・・・」ゴクッ

親友「ああいうの男は興味ないの?」ニヤニヤ

男「いやいや、あの程度なら俺の秘蔵コレクションの方が・・・」

親友「男ぅ?」ジト・・・

男「な、何?」

親友「うわぁ・・・」

何故だろう、親友の目が酷く冷たい
しょうがないじゃないか、これは男の業だ

ー昼休みー

さて、美形転校生である女は昼休みに多忙を極める
相変わらずの人だかり
う~ん、昨日頼んだ身であれだが、結構大変そうだな
まあ一週間もすれば落ち着くとは思うんだ
昨日よりは落ち着いてるし、徐々に減ってくだろうし
うん、まあ、大丈夫だと思う
そこで愛すべき俺の親友

親友「男~、食堂行こう!昨日いったこと忘れてないよね?」

男「もちろん、じゃあ行こうか」

女「あ、あの男君?」

男「ん?」

女「食堂に行くなら、私も一緒にいっていいかな?」

男「え?」

親友「え?」

瞬間、さっきまで群がってた奴らの視線を感じた
女子からは好奇心
男子からは・・・いうまでもない
もはや身の危険を感じる
ので、ごめんなさい、断ります

男「いや、でもさ・・・」

女「だめ・・・かな?」ウルッ

うわぁ・・・涙目かわいいなぁ
できればもう少し見ていたいのだが、うん。
男子から殺意の目が飛んできてるわけで、
もう俺はどうすればいいのか、と頭を悩ませていたら

親友「いいよ、僕も女さんとは一度ゆっくり話してみたかったんだ」ニコッ

我がクラスの人気no.2(女さんが来る前はno.1)の親友の一言で全ての視線は止まった
助かった・・・
で、食堂にて
俺はラーメン
親友はうどん
女さんは定食
ついでにこれは全て俺のおごりである

男「うちの食堂は値段の割りにおいしい」

女「そうですね、おいしいですね」

親友「オススメは日替わり定食だよ、まあ五分で売り切れちゃうほどだけどね?」

男「大体は一番近い三年生が買っちゃうんだ」

女「まあよくある話ですね」

男「よくあるね」

女「と、ところで親友さんと男さんはどんな関係なんですか?」

さっきまでの話はドコへいったのか
女さんはどこかぎこちなく聞いた

親友「お、男の関係?」アセアセ

男「親友だよ、無二の親友」サラッ

女「そ、そうなんですか?」ホッ

親友「む・・・」

何故だろう、親友が少し不機嫌そうだ
おかしいな、今の発言に問題があったとは思えないけど・・・
そこで原因不明の腹痛

男「ごめん、ちょっとトイレ・・・」ガタッ

親友「大丈夫?男?」

男「ああ、大丈夫だ・・・けど急ぐ!」ダッ

女「お気をつけて!」

男「ごめん、すぐ戻るよ!」

タッタッタッタッ

女「・・・」

親友「・・・で、女さん、これからはガールズトークとしようか?」

女「ええ・・・そうですね」


周り(なんか怖い・・・)

ラノベ主人公みたいな鈍感男だな

妖精が耳塞いだり色々邪魔してるから仕方ない



ジャー
ガチャッ

ジャー

男(間に合った・・・)

友1「お、男ジャン!」

男「ああ、友1か」

友1「どうだ?両手に花の昼食は」グリグリ

男「いたいいたい!やめてくれ~!」

友1「ふん!親友ちゃんはもう皆諦めたけど、女さんのほうはまだがんばるぜ!」

男「ん?なんで親友を諦めるんだ?」

友1「お前は相当の鈍感だが、流石に呆れるぞ?」

男「何がだよ・・・ていうかその二人を待たせてるから、急ぐわ」ダッ

友1「いやぁ・・・本当に鈍感・・・」ハァ・・・

タッタッタッ

男「ごめん、おくれた!」

女「いえ、大丈夫ですよ」チラッ

親友「遅いよ~」チラッ

うん?なんだろう?ちょっとした目配せがあった気がしたんだが・・・
ていうか二人の目が少し怖いのは気のせいかな?
なんかこう、獲物を狙う鷹ノ目っていうか・・・ホークアイ?
いやいやいや、クラスメートをそんな扱いするなんて、俺としたことが、いけないいけない

男「あ、ていうかラーメン伸びちまってるよ・・・」

そして俺の腹は減ったまま

男「しょうがない、また違うの買ってくるかな・・・」ガタッ

親友「お、男?よければ僕のうどん食べない?僕のほうが遅く頼んでたし、うどんの方が伸びにくいし・・・」///

男「お、いいのか?」

親友「うん・・・じゃあはい」

男「?」

親友「あ、あーん!」///

男「え?」

女「!」

親友「え、じゃないよ!はい!あーん!」///

男「え、あ・・・あーん?」

パクッ

親友「ど、どう?おいしいかな?」///

男「え?あ、まあ。」

親友「///」

女「お、男君!私の方も食べてみていいよ!」

親友「む・・・」

男「え?」

女「元はといえば男君が払ったんだし、それに定食なら伸びるとかないよ!」///

ふむ、一理あるといえばある
でも、でもさ
なんで女さんまで

女「あ、あ~ん///」

とか言い出してるの?
なんか各方面からいろんな視線が飛んできてるけどもういいや、やけだ
多分親友の行為を見て好奇心でも沸いたのだろう
ならばそれに答えてあげるのが紳士というものだろう

男「はむ」パクッ

女「ど、どう?///」

男「うん、おいしいよ」

親友「男!はい、あーん!」グイッ

男「え?」

女「男君!はいあーん!」

男「え、ちょ」

その後は思い出したくない
唯一つ、首を痛めたといっておこう
頼むから、二人とも別のところで張り合っていただきたい

ー放課後ー

色々あったが、なんとか今日一日も終わった

男「さて、帰るか?」

親友「そうしようか」ガタッ

女「あ、あの私も一緒に帰っていいですか?」

男「え?」

はい、本日二度目の痛い視線
もういやだこいつらおれにどうしろっていうんだよ
お願い親友助けて!
俺は目線で必死に訴える
しかしなぜか今回親友助けてくれようとしない
むしろ何かいいたげな目だ
う~ん・・・
よくわからん・・・

男「・・・」チラッ

女「・・・」 ウルウル

男「・・・」チラッ

親友「・・・」ジトッ

男「・・・」チラッ

一同「・・・」ジーッ

男「・・・」

ー帰り道ー

というわけで、帰り道
右側には機嫌のよさそうな女さん
左側には機嫌の悪い親友
両手に華というが、この状況はあまりうれしくない
だってなんか板ばさみみたいな、両側から圧力を感じるんだもん
この状況がうらやましい奴は今すぐメールしてくれ
代わってくれ、これは耐えられない

女「そういや、男くんは中学の時に引っ越してきたんだっけ?」

男「え?ああ、そうだけど・・・誰から聞いたの?」

女「え、あ、今日親友ちゃんに?」

何故疑問系なのかということは気にしない方がいいのか?
まあ昼飯のときに色々あったみたいだし、そこは放っておこう

女「・・・と、ところで男さんはここに引っ越す前のことは覚えていますか?」

親友 ピクッ

男「引っ越す前?え・・・と・・・いや、あんまり覚えてないな」

女「そ、そうですか・・・」シュン

男「え?なんで?」

目に見えて女さんが落ち込んだ
え、何でだろう?
しょぼくれた女さんとは二つ目の交差点で別れた

そしていつもどおりの親友との帰り道
さっきまでの少しぎこちない空気も解けて、実に居心地がいい
うん、やはりこいつといると落ち着くな
さて、そういう幸せな時間はすぐ過ぎるのだ
親友と別れる道である
いつもならここで「また明日」などといって終わり・・・なのだが
親友はなにやらもじもじしている
どうしたんだろうか?

親友「え、っとね?・・・男・・・///」

男「どうした?なんかあるのか?」

親友「え・・・と、あのさ・・・明日は土曜日・・・だよね?」

男「え?ああ、そうだな」

親友「ひ、久しぶりに僕のうちに来ないかな?」

男「うん?お前の家?なんかあるのか?」

親友「うん、僕に弟がいるのは知ってるでしょ?」

男「ああ、あいつ元気か?」

親友「うん。でね、その弟の誕生日でさ、弟が男にも来て欲しいって!」

男「そうなのか?」

親友「うん、うちの親もいいって言ってるし、どう・・・かな?」///

男「そうだな・・・親に聞いてみるわ」

親友「うん!来れそうだったらメールしてね!」

男「わかった、じゃあな」

親友「うん!じゃあね」

さて、明日か
とりあえず家に帰って聞いてみるとしようか

~男家~

ガチャッ

男「ただいま」

ガチャッ
ドドドドドドドド

兄「おかえり!我が優秀なる弟!!」ガバッ

男「ただいま兄さん」ヒョイッ

ドガッ!

兄「いたい・・・」

男「母さんは?」

兄「いるよ~」

男「サンキュ」

ついでに言うと、俺の家族構成はこうである
父、母、兄、俺
ごく一般的な四人家族
あ、兄は例外でよろしく

母「え?あした?」

男「ああ、親友の弟が誕生日なんだと」

母「ふぅ~ん」ニヤニヤ

男「なんだよ?」

兄「ふぅ~ん」ニヤニヤ

男「兄さんうっさい」

兄「(´・ω・`)」

男「で、いいかな?」

母「いいんじゃない?」ニヤニヤ

男「なんで笑ってるの?」

母「なんでもないよ」ニヤニヤ

イイヨー

その後、謎のニヤニヤは夕飯が終わるまで続いた
おっと・・・親友にメールするのを忘れていた

男(え~と・・・「あした行けそうだ」っと)ピッ

カチャッ
ポンッ
ピロリン

男(返信はやいな・・・)

親友『そう!きてくれる!それは弟も喜ぶよ!うん!ありがとう!』

さて、ここで少し変な気がした
というのはこれである

男(俺ってそこまであいつの弟に懐かれてたっけ?そこそこじゃなかった?)

まあ親友がそうだと言うのだからそうなのだろう
とりあえず明日は少し早く起きよう
プレゼントやらを用意した方がよさそうだからな
そして俺はベッドに入った

~翌日、親友の家~

さて、ここで我が親友について明記しておこう
身長は150ジャスト(ついでにこれを本人に言うとキレる)
その愛らしい感じと、ちいさい男の子のような言葉遣いから女さんが来る前はうちの学校の人気no.1マスコットキャラだった
そんな彼女とは中学、俺が転校した時からの付き合いだ
俺は彼女の横の席になったのだが、その時は今とは違ってなにか思い悩んでるようだった
まあ時間が経ったらそれも解消されたのだが
そんな彼女の家族構成はこうである
父、母、親友、弟、妹
これまたごく一般的によく見る家庭だ
むしろあのアブノーマルな兄がいない分まともだろう
そんな親友の家は上の下の感じ
大富豪というわけではないが、お金に困る様子はない


男(とりあえず今人気っていうゲームソフト買ってきた)

ピンポーン

男(もう持ってるとかなければいいけどなぁ)

ガチャッ

親友弟「あ、男兄さん!待ってましたよ!」

男「やぁ親友弟くん、これ、被ってなければいいだけど」ガサ

親友弟「あ、ありがとうございます!うわぁ!これジャスト僕が欲しかった奴ですよ!男兄さんすごい!」

男「そうか、それはよかったよ」ニコ

親友弟「まぁこんなところで、てのもなんですからどうぞ中へ」

いやしかししっかりしてるな
確か今日で・・・14?14歳?最近の14はこんなにも礼儀正しいのか?
いや、多分この子は特になんだろうが
補足事項、この子の身長は165

?「あーーーっ!男兄ちゃんだ!」

と、ここで無駄にハイテンションのかわいらしい声
残りの面子的にも分かると思うが、親友妹である

親友妹「男兄ちゃんひさしぶり!」ギュッ!

男「ああ、そうだね」ナデナデ

親友弟「こらこら、男さんが靴脱ぐ間くらい待ちなさい!すいません男兄さん」ぺコッ

男「いや、いいよ、まだ小さいんだし」

親友妹「小さくないよ!」ギュッ

すこし抱きつく力が強くなったが、あくまで子供の力
全く持って痛くない
ついでに言うと親友妹は12歳
こちらは兄とはちがって年齢以上に幼い感じがする
補足事項、この子の身長は145

親友母「あら男君、いらっしゃい」

男「すいません、お邪魔してます」ペコッ

親友母「あらあら、ご丁寧に」ペコッ

落ち着いた感じの人
親友の話では、40は越えてる筈なのだが、見た目は20代といっても問題ない
補足事項、この人の身長は157

親友「あ!男!いらっしゃい!」

階段を下りてきたのは我が親愛なる親友である
あいかわらずちっちゃいなぁ
補足事項、俺の身長179

親友「まだ時間あるけど、ゲームでもする?」

男「お、久しぶりだな。俺のコントローラーさばきをみせてやるぜ!」

親友「それじゃあ僕の部屋に・・・」ハッ!

親友弟&母 ニヤニヤ

男「どうした?」

親友「な、なんでもないよ!さ、行くよ!」///

男「お、おお?」

支援

さて、久しぶりに親友の部屋に入る
大きさは16畳ぐらいの部屋
その言動から、何かと男の子様な印象を受ける彼女だが、その部屋は実に中性的である
本棚には少年漫画やらが積みあがっているが、バトル系のものは少なく、ラブコメ、日常ものなど
机やベッドの上にはお気に入りのぬいぐるみが何個かある(オールテディ)
そしてゲームの趣向は俺と同じく、冒険ものを好む

親友「ゼルダやる?」

男「いやいや、それじゃ1人プレイになるくね?」

親友「いやそれが、実は少し進めないところがあって・・・」

男「ああ、なるほど、じゃあ先にそっちやっちまうか」

ついでに言うと俺と親友では俺のがゲームが上手い
だからたまにこうやって俺が代わりにやってやることがある
ていうかそこまでわからないなら攻略でも見ればいいのに
などと思いながらとりあえず親友が困っているという場所を攻略していく

男「こういうのは自分でやるから楽しいんだけどな~」

親友「う、うん・・・そうだね・・・///」モジモジ

男「あ、まあ確かにここは難しいな」カチカチ

親友「そう!そうなんだよ!」ソワソワ

と、ここで少し違和感に気づく

男「お前なんでさっきからソワソワしてるの?」

実に素朴な疑問
むしろ親友を気遣っての発言
だったのだが・・・

親友「え!?ソワソワ!?そんなのしてるわけじゃないか!なにをいってるんだい!?」アセアセ

男「え?あ、そう?」

親友「そうだよ!何を言ってるんだい!?」アタフタ

男「ああ、分かったから落ち着けって」

親友「今回は少しお洒落をしてみたから少しは意識させられるかもと思った僕が馬鹿だったんだよ・・・」ボソッ

男「ん?なに?」

親友「なんでもないよ!」プイッ

男「?」

と、そこで気づく
なんかいつもよりこいつお洒落してネェ?

男「なぁ」

親友「なんだい?」プイッ

男「お前これから外にでも出るの?」

親友「な、なんでだい?」

男「だってなんかお洒落してるじゃん」

親友「そんなわけないじゃないか、今からお祝いをするんだから」

男「そうだな、まあ俺の勘違いか」

親友「ぐ・・・へ、変かい?」

男「いや、すげぇ似合ってる、かわいいぜ?」

親友「!!!」カァァァァッ///

目に分かるぐらい顔を赤くしてうつむく親友
はて、何か怒らせてしまったのだろうか?

親友「な、なんでこういうところはちゃんとおさえてくるんだこの男は・・・」///ボソボソ

男「え?なんて?」

親友「な、なんでもない!ひとりごとだよ!うん!」///

男「そうか、ならいい」

顔を上げた親友は思ったよりも機嫌がよさそうだった
よかったよかった

それから暫くして下から呼ばれた
どうやらお祝いの準備が出来たようだった
そこには親友父の姿があった
すらっとしてた感じの印象を受ける長身のダンディな親父さんだ
補足事項、この人の身長187

親友父「やぁ、男君、いつも親友がお世話になってるね」

男「いえいえこちらこそ。おじさんも元気そうでなによりです。」ペコッ

親友父「ふふ、そう畏まらなくていいさ。今日は祝いの席なんだしね」

男「家族水入らずの時に失礼しています」

親友父「気にすることはないさ。私も君のことは個人的に凄く気に入っていてね。早くうちに来てくれないかと思っているんだ」ハハ

親友母&弟「ぶっwww!」

親友妹「?」

親友「ちょ、おとうさん!?」カァァッ!

男「?今日来てますが?」

親友父「いや、そういう意味ではなくてだね・・・」

親友「ストーっプ!男!早く座ろうか!」アセアセ

親友弟「安定の鈍さですね、男兄さん」フフ

男「?」

親友妹「ねぇねぇどういうこと~?」

親友母「はいはい妹ちゃんは静かにしてましょうね~」

ついでに何故親友父に気に入られているかというと、それはこちらに引っ越してきた時、
親友父とはぐれ迷子になっていた親友妹を警察に預けに行ったのが最初だ
そのあと親友と仲良くなり家にお邪魔した時はびっくりした
以来いたく気に入られているというわけだ

その後はものすごく豪勢なディナーが出てきて、親友父が泥酔し、
親友弟と俺でその父を介抱し、親友妹が寝るまで横にいて欲しいとごね
親友がそれをなぜか赤面しながら一緒に妹を寝かせつけ、
親友母に挨拶をして、今は帰り道だ

ピロリン

男(うん?親友からか)

親友『今日はありがとう!弟も凄く楽しかったって!』

男(え~と・・・『いいよ、むしろ俺の方こそ誘ってくれてサンキューな』と)

パタン

ピロリン

男(だから早いって!)パカッ

親友『そう?それはよかった!よければまた来てよ!』

男(『おう、また機会があればな』で、送信)

パタン

男(帰りコンビにでも寄るかな~)

親友の家から帰って比較的早くに寝た俺は自動的に朝早く起きることになった
日曜日で天気もいい
これは散歩に出るしかないと確信し、玄関から出る
さて、とりあえず公園にでも行くかと思ってぶらついていたら

女「あれ?男くん?」

男「え?女さん?」

驚くなかれ、女さんとの遭遇
私服がかわいいなぁ
などと思ってみる

男「・・・」ジーッ

女「え~と・・・男君?」

男「ああ、ごめんごめん」

女「男君はどうしたの?」

男「ああ、ちょっと散歩にでも、と思ってね」

女「そうなんだ・・・じゃあ目的地はないんだね?」

何故だろう、その瞬間何か狼に狙われた子羊の如し寒気がした
いや、そんな経験ないけど

なにか理由がなかったら男は鈍い通り越して病気だな

女「じゃ、じゃあ私の買い物に付き合ってくれる?」///

男「ん?買い物?いいよ、別に。何買いに行くの?」

女「え・・・と。新しい服とか・・・かな?」

男「ふ~ん、じゃあ行こうか」

女「う、うん!」///

そういう感じで話が進み、服屋に行き、お目当ての服を買った後は、
ファミレスに入って昼食にした
俺はカルボナーラを頼み
女さんはハンバーグセットを頼んだ
そして二人ともドリンクバー
これは余談だが、俺は意外とこってり好きである


男「女さんは何飲みたい?」

女「あ、じゃあオレンジジュースを・・・」

男「了解っと」ガタッ

ついでに俺はコーラ
炭酸飲めない奴がいることが理解できないタイプである
そういえば女さんは炭酸はいけるのだろうか?
等と考えていると、視線に気づいた
うわ、他の客の視線集めまくりじゃないか女さん・・・
親友の時もこんなんだから、落ち着いて飯が食えないんだよなぁ
そして今回もそうなるのだろう

男「お待たせ」ガタ

コト

女「あ、ありがとう・・・」///

男「いえいえ」

店員「お待たせしました、ハンバーグ定食のお客様」

女「あ、はい」

コト

店員「カルボナーラのお客様」

男「あ、俺です」

コト

店員「それではごゆっくりどうぞ」ペコ

この店は何度も親友とも訪れてるので、店員さんは流石の対応だ
最初に来た時は店員さんの嫉妬具合がやばかった
今ではもう悟ったような目で対応してくれる
それはそれで逆に怖いのだが

女「前も聞いたけどさ・・・」

男「うん?」チュルッ

女「男君は前に居たところのこと覚えてないの?」

男「全くじゃないけど・・・」

女「実はね・・・私と男君は初対面じゃないの・・・」

男「え?」

女「男君が居たところに私も居たんだよ?」

はて、果たしてそうなのだろうか
このレベルの美少女が近くにいて忘れるほど俺もやばくはないはずだが・・・
と俺が不思議そうな顔をしていたのか、女さんは

女「まあ私はだいぶ変わったし、クラスも違ったから」アセアセ

と必死にフォローしてくれた
しかし何故それを最初に言ってくれなかったのか

女「ううん・・・と・・・言い出すタイミングをなくしたというか、そもそも男君がこっちにいるのにびっくりしたし・・・」

男「まあクラス違ったらそうだね・・・」

女「私、向こうであなたにお世話になったことがあるの!」

男「ん?」

いよいよもって自分の脳細胞を疑わざるを得なくなった
そういうイベントらしきものがあったならそれぐらい覚えておけよ、俺
ていうか ん?お世話?

男「俺は何したの?」

女「え・・・なんというか・・・今話さないと・・・駄目?」

男「いや別に・・・」

実際は凄く気になるし、もやもやするから今のほうがいいのだけれど、
上目遣いでこちらを伺う、さながら小動物のような女さんをそれ以上追及することは
残念ながら俺には無理だった

なんだか男にイラッとくるな

買い物も食事も無事に済ませ、女さんを家に送ることにした
もちろん荷物も全部持っている
そこは男の甲斐性という奴である
女さんの家は一昨日分かれた交差点から10分ほどにあった
結構でかめの家だな・・・
なんか怖そうな犬もいるし
あれだ、ドーベルマンって奴だ

女「お、送ってくれてありがとう」///

男「いやいいよ。ていうか女さんって結構金持ち?」

女「ま、まあ少し?」

男「へぇ・・・」

美少女令嬢
そんな存在が今目の前に居た

さて、荷物も無事届けたし、帰るとしようか

男「じゃあこれで」

女「あ、あの!」

男「?」

女「暑い中荷物持ってくれたし・・・よ、よかったらあがっていかない?」///

流されました
今現在女さんの家のリビング
でも大丈夫、ちゃんと親御さんが居たから

女母「どうぞ」カチャ

男「あ、どうも・・・」

女「ママ、こちらが男君。 男君、こちらが私のおかあさん」

女母「女がいつもお世話になっております」ペコ

男「あ、いえこちらこそ」ペコ

・・・気まずい!
それはそうだ、娘が誰とも知らない男を連れてきてすぐ打ち解けるはずがない
肝心の女さんもさっきからなんだかソワソワしてるし、どうしよう・・・

女母「あなたが女がいつも話している男君ね?」

男「え?あ、そうです。(いつも?)」

女「ちょっと!お母さん!」///

女母「いいじゃない、少しぐらい」クスクス

女母「以前は女がお世話になったって言うしね」ニコ

男「はぁ・・・(肝心の俺は覚えてないんだけど・・・)」

その後はとりあえず根掘り葉掘り学校での話を聞きだされた
途中で何度か女母が目を細めた気がしたんだが、気のせいだろう
なんか途中で高そうなお茶菓子が出てきたんだけど、緊張からだろう、味はおぼえていない
それから暫くしてやっと尋問、いや質問タイムが終わり、俺は家に帰ることになった

女「で、できればまた来てね?」///

男「う、うん・・・(出来ればもう来たくない・・・)」

という感じで、学校1の美少女の家を訪問という友連中辺りが聞けば泣いて喜びそうなイベントは苦い思い出になった

鈍感すぎラノベ主人公への皮肉なのかな
男ウザー

ー男家ー
ガチャッ
男「ただいま~」

兄「遅かったじゃないか!弟よ!!」ドドドドドドド!

男「ああ、ちょっとクラスメイトの家にね」

兄「クラスメイト?」ンバッ!

男「ああ、女さんって言うんだ」

兄「女?」ピタッ

男「?」

兄「・・・そうか、こっちにきてたのか・・・」スッ・・・

男「え?どうかした?」

兄「男・・・ちょっと自分の部屋に行ってなさい。俺は母さんと話がある」

男「・・・分かった」

なんともいえない感覚が頭をよぎるが、何かがそこに至るのを拒否してるような感覚
いったいこれは何なのか、よくわからないまま、その日を終えた

ー数日後、終業式ー

友1「明日から夏休みだぜひゃっほい!」

不良1「クラス会しようぜ!」

\サンセ~イ/

友2「焼肉にしようぜ!」

\ソウシヨウ!/

男「・・・」

親友「男・・・どうかした?」

男「ああ、なんでもないよ・・・」

女「男さん・・・」

不良2「お~い、男たちも参加でいいよな?」

男「ああ、もちろん」

親友「参加するよ」

女「はい」

友3「じゃあ全員参加だな!」

\イツニスル?/

友2「善は急げ!明日だ!」

男「早いな、まあいいけど」

友1「詳しいことが決まったらメールするよ」

\リョウカイ/

女「ふふ・・・仲いいね」クス

男「まあうちの学校はクラス替えないからな」

女「でもそういうのってもし仲悪くなったら大変だよね・・・」

男「ああ、そういえばそうかもね・・・そうはなってないけど」

親友「そうだね~」

ー翌日・焼肉屋ー

\イッキ!イッキ!/

男「おお、あれが宴会恒例の一気対決か」

親友「コーラだよね、あれ?」

男「忘れてはいけない、コーラの炭酸力の恐ろしさ」

不良1「肉焼けてるぞ~」

男「おう、サンキュー」

友2「男はタレ派?それとも塩?」

男「タレで」

女「男くんって信頼あるって言うか・・・」

親友「言いたいことは僕も分かるよ」

親友「なんせこのクラスが真に一つにまとまったのは彼のおかげでもあるんだからね」

女「そうなの?」

親友「僕つながりの話・・・まあ今みたいな時に話すことじゃないよ」

女「はあ・・・」

親友「あれで鈍感ですらなかったらな~・・・」ハァ・・・

女「そのことは・・・」

親友「うん?」

ー数十分後ー

男「ちょっと外の空気吸いに行くわ」

友1「行ってらっしゃい~」

ガラッ

女「わ、私も」

不良1「いってら~」

ガラッ

親友「・・・」

友1「追わなくていいの?」

親友「う~ん・・・そうしたいんだけど、今日はあの娘の日だから・・・」

友1「?」

ー外ー

男「う~ん・・・食べ過ぎたかも・・・」

女「男君、大丈夫?」

男「ああ女さん、大丈夫だよ」




男「すこし頭の古傷に煙が響いただけだよ」

女「!!」

女「ふ、古傷って・・・」

男「そう、昔事故にあったらしくてね、よく覚えてはいないけど」

女「そ、そうなんだ・・・」

男「そう、ここにね」クルッ 

後頭部を指し示す

女「・・・」

ナデ

男「え?」

女「ごめんなさい・・・」ボソッ

男「ん?何が?」

女「ううん!なんでもないよ!」アセアセ

男「そう?」

女「それより、そろそろ戻らない?」

男「あ、そうだね」

少し女さんになでられたところを気にしながら、俺は部屋に戻った

その後も結局てんやわんやの大騒ぎで、帰るときは真っ暗だった
家の方向が結構同じなので、俺と親友、女さんの三人で帰ることになった
女さんを家に送り届けた後、俺と親友だけ
これはいつものパターン、なのだが・・・

親友「男~」///

そう、こいつ、間違えて酒を飲んだのである
しかもコップ一杯丸ごと
よって今べろんべろん状態
足元もおぼつかない様子

親友「うう・・・」/// フラッ

男「あぶね!」ガシッ

親友「ふふ・・・男が助けてくれたようぅ・・・」/// ポワーン

男「はいはい、そうですね(危ないな・・・車が少ないとはいえ・・・)」

男「しゃあない、よっと」

親友「う~ん?」///

男「おぶってやるよ、ほら」

親友「・・・ありがとうぅ・・・」///

男「どうも・・・と」

親友「おもく・・・ない?」///

男「小さいからな、むしろ軽いくらいだ」

親友「ちいさいゆうな~」/// ポカポカ

男「はは、わるいわるい」

親友「むきゅ~!」///ギュゥゥゥ

男「はは、苦しいって・・・」

なんだか懐かれた猫みたいでふわふわする
こんな無防備な親友はじめてみたなぁ・・・
けっこう可愛らしいとこあるじゃないか
なぁんて思いながら
親友の家です

男「ほら、おまえんちついたぞ」

親友「スー・・・スー・・・」

男「寝てるし・・・」

男「しゃあない・・・」ハァ・・・

ピンポン

親友弟「は~い」

ガチャッ

親友弟「あ、男兄さんじゃないですかぁ~・・・て、姉さん寝てるし・・・」

男「ああ、酒飲んじまったみたいでな・・・お~い!」

親友「ううん・・・」/// スースー

男「起きそうにないなぁ・・・」フゥ・・・

親友弟「わざわざすいませんでした、」

親友弟「今からは俺がもちますよ」

男「ああ、たのm・・・」

親友「男ぅ~」/// ギュゥゥゥゥッ

男「・・・」

親友「・・・」

男「離れそうにないから俺が持ってくわ・・・」

親友「すいません・・・どうぞ、あがってください」

男「失礼します、と」

親友母「あら男く・・・あらあら」ニヤニヤ

男「あなたの娘さんべろんべろんに酔ってますよ」

親友母「その子アルコールに弱いからねぇ」ニヤニヤ

親友弟「まあ災い転じて福となす・・・て奴かな?」ニヤニヤ

男「何をニヤニヤしてるんですか・・・まあじゃあこいつ置いてきます」

親友弟「どうぞどうぞ(お!?一線を越えてしまうのか!?)」ニヤニヤ

タン タン タン タン

ガチャッ

男「さて、ついたぞ・・・と」

親友「う~ん・・・」

男「ほら、お前の部屋だぞ~」

親友「う・・・ん・・・」

男「さて、こいつも置いたし帰るか」

支援&期待(中)

親友「う~ん・・・」

男「・・・おやすみ」ナデ

親友「ぐへへ・・・男・・・」

男「さてと・・・」

ガチャッ

男「ん?」

ドアの前で親友弟がしゃがんでいた

親友弟「・・・」

男「君は何をしてるんだい?」

親友弟「お茶が入りましたよ、それを伝えに」ニコッ

男「そうなの?じゃあいただきます」

おいしいお茶菓子をいただきました

夏休み開始から数日、家にいたら友1からメールが来た

友1『何人かでプール行こうぜ!親友ちゃんと女さん誘ってよ!』

男「何で俺が・・・まあいいか」

男「(同時でいいか・・・)」

男『今日プール行かない?』

パタンッ

ピロリン、ピロリン

男「(二人とも返信早いな・・・)」

親友『もちろんいくよ!』

女『もちろんいく!』

男「(ノリノリだな・・・まあ暑いからな)」

男「さて、行く準備するか・・・」

男「じゃあいってきま~す」

母「いってらっしゃい、友君たちと一緒?」

男「ああ、後親友と女さんとか」

母「そう・・・女さん・・・ね」

男「?いってきま~す」

ガチャッ

母「・・・もう話すべきなのかしら・・・」

兄「母さん・・・」

~市民プール前~

友1「遅かったな!男!」

友2「待ちくたびれたぞ~」

親友「この暑い中待たせるとか何を考えているのやら・・・」

女子1「おわびにジュースおごれ!」

女「はは・・・」

男「ごめんごめん」

ー男子更衣室ー

友1「結局不良たちは来なかったな」

友2「今度の祭りの屋台のバイトの準備だと」

男「本当あいつら健康的だな」

友1「でも祭りかぁ」

友2「夏の醍醐味だよな!」

男「二人は行くの?」

友2「もち」

友1「できれば女子と」

友2「そりゃあな」

男「クラスで行けばいいだろ?」


友1「分かってないな、男君」チッチッチッ

男「なんだそのジェスチャ」

友2「折角の祭り!狙った相手と行くのが定石だろ!」

男「そういうもんかねぇ」

友2「そういうもんなんだよ」

友1「まあ俺は無難に女子1かなぁ」

友2「だから今日呼んだのか?」

友1「今のうちに好感度アップを狙う!」

男「がんばってるなぁ」

友2「俺はどうしようかなぁ」

男「俺に何か出来たら言ってくれよ?」

友2「ありがとう男・・・しかしここは1人で何とかしてこその日本男児!」

男「日本関係あるか?」

なんてことはなしながら着替えも終わり、プールに出る
うわぁ・・・結構混雑してるなぁ
夏だし当然だけどさ

支援

友2の心意気に感動した

女子1「おまたせ~」

親友「うわ!すごい混んでるね!」

女「夏本番よりはましなのでは?」

友1と友2がすごい勢いで振りかえる
おお、人の首がこの速度で動くとは・・・
二人から少し遅れながらも三人を見る俺
・・・うん、なんていうかね
たとえば活発な感じの女子1が健康的なサロペットつきビキニ着てたり
たとえば小さい親友がかわいらしいワンピース着てたり
たとえばスタイルのいい女さんが結構大胆なビキニを着てたら
うん、なんだろうね
ありがとう、神様

女子1「ははは、どうしたの黙りこくっちゃって!」

友1「無難とか言って悪かったな・・・」

女子1「はい?」

男「こっちの話だ、気にするな」

友2「友1の目が本気になったな」

女子1&親友&女「「「?」」」

男「まあいいさ、どうせ来たんだ、泳ごうぜ」

親友「そうだね!男、一緒にウォータースライダー行こうよ!」

男「お、久しぶりだな。いいぜ」

タッタッタッ

女「市民プールなのにすごい設備ですよね、ここ・・・」

友2「前の前の市長が開発に力入れててね、その一環だわ」

女子1「他にも色々あるから回ろうよ」

女「う、うん・・・」

友1「あれ?女さんは男のほう行かなくていいの?」ボソ

女「うん、今日は親友ちゃんの日だから・・・」

友1「?」

女子1「・・・」ムスッ

グイ!

友1「いたいいたい!なんで耳をひっぱる!!」

女子1「ほら!デレデレしてないでいくよ!?」

友1「誰が・・・!っていたいいたい!歩くから!離して~!」

友2「(あれはあれでお似合いだな・・・)」

女「はは・・・」

ーウォータースライダーー

係員「おや?カップルですか?でしたら一緒にどうぞ」

男「あの人毎度話し聞かないよな・・・」

親友「(カップル・・・男と・・・ふふ)」///

男「まあなんでもいいや、ほれ」ポンポン

親友「今回もそうするの?」///

男「そっちのがすべりやすいだろ?」

親友「うう・・・」///ポン

男「いいか?」

親友「う、うん・・・(お、男のひざの上・・・)」///

男「よっと・・・」グイ

親友 ギュッ

保守

ついでに言うと、親友はこういうのが苦手なので俺にしがみつく癖がある
そして滑る
うおお、重力感
そして着水ざっぱーん
・・・
毎度毎度思うのだが、着水の瞬間ぐらい手を離さない?
じゃないと結果としてこうなるのだ

男「よっと」ザパァ

親友「・・・」///

男「大丈夫?」

親友「・・・うん、だいじょうぶだよ」///

いわゆるお姫様抱っこ
水から立ち上がるのが疲れる
まあ親友はかわいらしいぐらい小さいから問題はないのだが・・・

親友「男、もうおろしていいよ?」///

男「ああ、わるい」スッ

親友「面白かったね!」///

男「ああ、相変わらずの爽快感だ」

親友「じゃあ・・・も、もっかい・・・」///

なぜかモジモジと言いよどむ親友
なるほど、確かにこの歳にもなってアトラクションに騒ぐのは若干恥ずかしいものだ
しかしまあ親友である俺はそんな野暮なことは言わない

男「面白いからもう一度やりたい、いいかな?」ニコッ

親友「!しょうがないな!男が乗りたいなら!!」パァァァ

うんうん、喜んでくれてよかった
そうおもいながら親友と列に並ぶのだった

そして暫くして残りのメンバーと合同
友1が女子1といい感じになってるのは作戦通りなのだろう
友2は女さんといい感じに間を持ってる感じだな

男「なんかおなかすいたな」

女「そこで食べられるの?」

友2「テーブル席だな」

友1「そこの店でなんか買って来るわ、何がいい?」

女子1「焼きそばかな?」

女「私はホットドッグで」

親友「僕はハンバーガーが良いな」

友2「俺は」

友1&男「「お前は一緒に来い」」

友2「え~」

男「え~、じゃねぇよ。手を借りないのが男だろ?」ニヤ

友2「ああ、さっきの自分の発言がにくい・・・」

女子1&女&親友「「「?」」」

店員「いらっしゃい、ご注文は?」

男「え・・と ハンバーガー、ホットドッグ、焼きそば」

友1「俺はチャーハン」

友2「うどん」

男「じゃあ俺はカツどんで」

友1「まじで色々あるな」

友2「いつみてもすごいな」

男「素晴らしい設備だな」

ー十数分後ー

店員「はいおまち!」

男「お盆にのせて・・・と」

友1「きをつけろよ?」

友2「あ!」グラッ

男「わざとらしいぞ?」

友2「わるい・・・」

友1「はいはい、さっさと行くぞ」

友1「おまたせ~」

女「まってないよ」ニコッ

親友「少し待ったよ」ニコッ

女子1「いつまで待たせてんだバカヤロウ」ニコッ

友1「一瞬で分かる三人の優しさランキング」

女子1「ん?」ニコッ

友1「すいませんでした」

女子1「焼きそばおいしい」

友1「焼きそば好きかよ」

女子1「うん、料理できないから自分では作れないけどね」

友2「友1は料理できるんじゃなかった?」ニヤ

女子1「そうだっけ?」

男「そういや調理実習では友1すごかったな」

親友「あれはなかなかすごかった」

女「よくしらない・・・」

友1「まあ親が共働きだからな、妹もいるから、自炊ぐらい出来る」

女子1「いいねぇ!こんど友1んちに食べに行っていい!?」

友1「がっつくなよ」ハハ

と、そんな感じに適度にだべりつつの食事

親友「男ソレおいしい?」

男「ん?ああ、おいしいぞ、一口いる?」

親友「い、いいの?」///

男「気にすんな、ほれ」

親友「えええええええええ!?」///

女「むっ!」

男「食べないのか?」

親友「いや!食べる!食べるよ!」

女 ジーッ

男「ほら」

親友「あ、あ~ん・・・」パク

男「おいしいか?」ニコッ

親友「う、うん・・・」///カァァァァッ

女「お、男くん!」

男「ん?」

女「わ、私にも一口!」///

親友「!!」

男「べつにいいけど・・・はい」スッ

親友「ムス・・・」

女「ん・・・」パク

男「おいしい?」ニコ

女「うん!うん!」パァァァァァッ

親友「む!」グイ!

女「うわ!」

親友「ちょっと!今日は僕の番じゃないの!?」ヒソヒソ

女「す、少しぐらいいいじゃん!」ヒソヒソ

男「?」パクパク

女子1「平和だね~」

友1「平和だな」

友2「修羅場だろ」

ただの三角関係と思わせておいて……?
支援

その後休んで、また少し泳いで、夕方少しぐらいに解散した
帰り道が同じ方向なのは例によって女さんと親友
なんか今日はピリピリしてるなぁ・・・
結局親友も最後の最後まで喋らなかった

~男家~

男「ただいま」ガチャッ

そこで異変に気づく
兄が
飛んでこない

母「男・・・ちょっと来て」

男「何?」

ただならぬ雰囲気があった
何故だか頭の古傷が痛み始めた

ズキ

母「座って」

男「・・・」ガラッ

母「今日話すのは他でもない・・・」

ズキ

男「・・・」

母「あなたのその古傷についてよ」

母「あなたには何て説明したんだっけ?」

男「・・・事故」

母「そう、事故・・・でもね、男」

母「その前後の詳しい記憶はある?」

ズキ

男「なに言ってるんだよ・・・そんなの・・・」

ズキ

男「あ、あれ・・・」

母「ないのよ・・・あなたには、あの時の詳しい記憶が」

母「これはあなただけじゃなくて、あなたの兄にも関係するわ」

男「兄さんに?」

母「あなたも知ってるとおり、兄さんは最近帰ってきた」

男「ああ・・・」

母「どこから?」

男「・・・しらない」

母「これから話すのは全て本当のこと、出来ることなら言いたくなかった」
 「でも日ごろのあなたを見て、不安だった」
 「そこに女さんが来て、もう隠せないと思った」
 「だから話すわ、全て」

母「あなたが中学生の時、そう、引越しする前」
 「女さんもそこにいたの、これはしってるかしら」
 「でもね、ある日暴漢に女さんが襲われたの」
 「あなたはそれを助けに入ったの、相手は金属バットとナイフを持ってたのに」
 「一応兄から訓練を受けてたあなただもの、ナイフは落とせた」
 「でも、女さんをかばってあなたは金属バットで頭を殴られたの」
 「女さんの悲鳴で他の人が来るまで・・・ね」
 「その時の反動であなたは記憶を失った」

意味がわからない
いや、意味は分かる
実際に今はその時のことが徐々にもどりつつある
凍っていた何かが解ける感覚
しかしなんで?
記憶がないなんてことにまで気づかないほど俺はおかしいのか?
いや
それこそが

男「記憶の欠落の二次影響か」

母さんは無言でいいづらそうに頷く

母「記憶の無くし方が悪かったの」
 「医者はその影響であなたは圧倒的に感情の起伏がへるといっていた」
 「人の気持ちにも気づきにくくなった」
 「記憶が戻ってきてる今なら感じるでしょう?」
 「それがそもそもあなたにあった感情・・・」

しかし、記憶のことを話せば記憶も戻り、感情も戻るなら、何故今まで話してくれなかったのか・・・
そこである考えにいたる
他ならぬ、俺の兄についてだ

男「その・・・暴漢は?」

母「つかまった・・・というより、うん・・・なんていったらいいのか・・・」

母さんは言いよどんでいる
それもそのはずだ
もしこれが今俺の思ったとおりなら
だとしたら
それは

男「兄さんが?」

母「ええ・・・」

母「あなたが病院にいる間に警察にその暴漢は捕まった」
 「人とは到底呼べない状態」
 「骨という骨は壊されて、腕も足もまともに向いてる方向なんてない・・・」
 「二度と生きてるとはいえない状態で差し出されたの」
 「その全てを素手で、感情のままにした、兄によって」
 「当時未成年だったから、配慮はされた・・・」
 「でも少年院には行かなきゃ行けなかった」
 「兄はね?つい最近まで少年院にいたの」

男「兄さんが・・・」

母「これが全てよ」

母「兄のこともあるけど、そもそもあなたは最初は凄く不安定の状態だったの」

母「感情も少なく、その状態でそれを思い出しても何があるかわからなかったの」

思い出す、最初に転校してきたときのクラスの反応
納得した、あの時俺は、そんな状態だったのか・・・

母「でも親友ちゃんとクラスとの一件で色々あって、すこしずつあなたも安定してきた」

兄「そろそろタイミングだと思ったんだ、俺も出所して、お前も安定して」

男「兄さん・・・」

兄「悪いな・・・隠していて・・・」

兄「自分の中のソレと折り合いをつける時間が必要だろう・・・」

兄「今なら気づいただろう?親友ちゃんや女ちゃんの気持ち」

男「・・・」

兄「今俺たちが話せるのは、それだけだ・・・」

男「・・・」

それから数日、ずっと自分の部屋にこもり、考え事をしていた
二人の気持ちに気づいた今、自分も感情を持った今
俺はどうすればいいのか・・・
自分の気持ちは分かっている
でもこれは駄目だ、俺が、俺なんかが・・・

気づいた時には、メールが来ていた
親友と女さんから
内容は、祭りに三人で行こう、との誘い
ここで言わなければ
しょうがない、そもそも今までが仮初の平和だったのだ
今の日常を手放すのはつらい
でも、続けるのは騙しているようで、嫌になる
俺は・・・どうすれば・・・

そんなことを考えてるうちにその日は来た
母さんはまだ心配してるようだった
兄さんは一言

兄「最善を尽くせばいいさ」

そして祭りについた
二人はもう居た
ああ、二人とも浴衣が似合ってるなぁ
二人を見てると胸の奥がおかしくなる
俺は本当に・・・
いや、よそう
俺の勘が正しければ、今日以外ないだろう
だからこそ、だ

親友「おそいよ!男!」ブンブン

女「ふふ、親友ちゃん、まだ時間はありますから」クスクス

男「ごめんね、おそくなっちゃった」ニコッ

果たして、今の自分はどんな顔をしてるのか
きっと最高の笑顔で、最低な表情だろう
でもせめて、今日だけは、この二人を楽しませたいな
友2の日本男児として、じゃあないけども

そこから先はとりあえず楽しんだ
はしゃいで、騒いで、遊んで、堪能して、
時間の流れが狂ったようだった
そして最後の最後
花火だ

毎年親友と花火を見ていた特等席
少し道から外れたベンチから見える
人気もすくなく、知ってる人もわずか
今は三人でそこに居た
花火があがる
ああ、きれいって感情はここまで劇的だったか
忘れていた

親友「あのね、男、私たち、男に言いたいことが・・・」///

男「なに?」

女「私は男君が好き・・・付き合ってほしいの!」

親友「僕も、男が好きなんだ・・・付き合ってくれないかな?」

男「・・・」

うん、しょうがない
潮時だ
全てを終わらせよう
残念だがお別れだよ、平穏
また別の形であえたら良いね

親友「・・・男?」

女「男くん?」

男「全部聞いたんだ、傷のこと、昔のこと・・・」

二人に驚愕が走ったようだった
やはり親友は女さんから聞いていたか
まあ、手間が省けたかな

男「俺はそこで記憶をなくして、感情が少なくなっていた、つい最近までね」
 「親友・・・君が好きになった俺はもういないんだ・・・あの時君とクラスの隔たりを壊した俺はいない・・・
 「女さん・・・あのことに罪悪感があったのかもだけど、あれは兄から日ごろ言われたことで、気に病むことじゃ・・・
 「だから二人が好きになった俺は俺で俺じゃない
 「だから俺なんかより二人は・・・

女&親友「「男(くん)!!」」

男「!」ビクッ

親友「君は勘違いしているよ!僕が確かに君を気になり始めたのはあのことだ・・・でもその後は違う!」

親友「僕は君からにじみ出てくる優しさにほれたんだ!」

親友「感情が薄くても、結局最後には他の人の事を考えてしまうそんな君に!!」

女「罪悪感?最初はそうだったかもしれないわ!でもね、でもね?」

女「ナイフとバットを持った人に立ち向かって、私をかばってくれたあなたはすごいの!」

女「今も全ての原因である私を責めずに気遣ってくれてる・・・」

女「優しくて勇気があって信念があるそんなところにほれたの!」

親友「それをそんな思春期みたいに・・・」

女「らしくないです!」

親友「それにそれは答えになってないよ!」

女「うん!」

男「え?」

親友「男は僕たちのことをどう思っているのさ!」

男「・・・それは」

女「お願い、男君の気持ちを聞かせて・・・」

男「俺は・・・俺は・・・」

俺は・・・

男「俺は二人とも好きだよ・・・選べないくらい、どっちも」

親友「・・・」

女「・・・」

二人とも呆れたか、そりゃそうだ、こんな優柔不断は許されるもんじゃない

親友「じゃあこうしよう!僕と女さんを恋人候補にして、どっちとも付き合う!候補だから二股じゃない!」

女「うん!事前に話してたとおりだね!」

男「・・・え、ええ?」

親友「なんだい?僕たちのことが好きなんじゃないの?」

男「好きだよ・・・でも・・・」

男「でも駄目なんだ、今の俺は・・・」

男「戻ってきたのはいい感情だけじゃないんだよ・・・」

男「この数年分の感情に心が耐え切れてない・・・今すぐ壊れそうだ・・・」ポロ

男「最悪だよ、なおさら・・・俺は・・・結局」ポロポロ

親友「・・・」

女「・・・」

瞬間、二人に抱きしめられた

親友「大丈夫、僕たちは気にしない・・・」

女「全部受け止めてあげるし、全部受け入れるつもり・・・」

親友「クラスの皆も散々男の世話になったんだ、大丈夫だよ」

女「男君が負の感情よりいい感情をもてるように、私たちがんばるよ・・・?」

男「でも・・・でも・・・」ポロポロ

親友「ああ!もう!聞き分けのない奴だな!」グイ

首を持たれ、無理やり親友の方を向けさせられ

チュ

俺のファーストキスは親友に奪われていた

親友「・・・負の感情とやらはおちついた?」///

男「う、うん・・・」

どころか、胸の中から跳ねる様な何かがあふれ出そうになる
酷く劇的で、それでいて嫌じゃない
思い出したよ、これが

うれしい、だったかな・・・

女「親友ちゃん?」ムス

親友「うへへ・・・うん」///ポーッ

男「二人とも・・・本当に、俺でいいのか?俺なんかで・・・」

女「ネガティブ禁止!」チュッ

男「~~!!」

女「俺なんか、とか、俺で、じゃないよ!」

親友「そうだよ!男 が いいんだよ!」

男「・・・フフ・・・」

親友「な、なにさ・・・」///

男「いや、よく聞く言葉だと思ってね」クスクス

女「む~!」プクッ

男「でもさ、うれしいよ・・・ありがとう、二人とも」

空を見上げると、ちょうど最後の花火が上がった
兄さん、俺は最善を尽くせましたか?
そして今年の、祭りは終わった

~休み明け~

俺の名前は男。歳は16歳。過去に色々あって、今それを乗り越えている途中の男子高校生だ
通ってる学校にも何の問題もなく、友達も少なくない
部活には入っていないけど、先輩後輩とのコミュニケーションもある
この16年、馬鹿みたいな事件やいざこざに結構巻き込まれてたらしい、なぜ気づかなかったのか
平穏こそが喜ぶべきことだろうと俺は思っていた


親友「男!一緒に学校行こう!」

女「男君!私も忘れないでね!」

男「はいはい」クス

二人の恋人候補と過ごす刺激的な日々
平穏からは程遠く、色々問題は山積、騒がしいったらありゃしない

でも最近は、それも悪くないんじゃないかと思っている


終わり



激しく乙

ー前日談・あの日ー

男がまだ引っ越す前、女や男はまだ中学生の時だった
男の家に父はいない、警察官としての信念をつらぬき、犯罪者を捕まえる際に殺されてしまった
そんな父の信念を受け継ぎ、人のためあれ、と男は兄から教わっていた
護身術等も習っていた

女は昔から美少女ではあったが、性格が明るくなかったためそこまで目立ちはしなかった
8クラスもあった中学でお互いのことを知るのは無理があったのだろう
だからこそ、女にとってはなおさらショックだったろう
知らない人が、自分のせいでああなることは

女「え?」

それは突然だった
いつもどおり帰っていたのに、目の前には息の荒い小太りの男がナイフとバットを持って目の前に居た
動くことも、声を上げることもできなかった
その男は女をつかみ、今まさに暴行を加えんとした時だった

男「なにしてやがんだてめぇぇぇ!!!!」

横から当時まだ中2だった男が男の手をつかみ、巧みに倒してナイフを蹴り飛ばした

男「大丈夫!?怪我は!?」

女「・・・ァ・・・・!」

女は3年経った今でもあの時のことを悔いている
なぜあそこで声を出さなかったのか
なぜ、男の反応を遅らせてしまったのか
暴漢はバットを振り上げていた
男1人ならかわせないはずはなかった
しかしそうもいかなかった、反応は遅れた上に、こいつは「女」を狙っていた
身を挺すしか、方法がなかった
体格が上の相手に思い切りバットで殴られて平気な奴はいない
男は倒れ、暴漢は邪魔をされた恨みとばかりに男を殴り続けた

女「い、いやああああああああああああああああああ!!!!」

女はやっと悲鳴をあげられ、それに気づいた人たちが駆けつけてきた
暴漢は騒ぎを避けるために逃げた

女「だれか!だれか救急車!!この人・・・私をかばって・・・」ポロポロ

「だれか警察!」

「救急車まだか!」

男の意識は、ここで途絶える

話はすぐ家族に伝わった
病院のicu
家族でも中には入れない状態が続き、やっとあえた時男は頭に傷が残っていた

母「なんで・・・なんで男がこんなことに・・・」

女「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・男さん・・・」

兄「・・・」ガタ

母「兄!こんな時にどこへ・・・!」ゾワッ

母は最後までいえなかった
兄は、静かに部屋を出た

ー数日後・夜・廃墟ー

暴漢「はぁ・・・はぁ・・・もうがまんできない・・・外へ・・・」カラッ

兄「お前が俺の弟をやったゲスか」

暴漢「!?」

兄「探したよ・・・お前のこと・・・」

暴漢「なんだてめぇ・・・誰だよ・・・」ギュッ

言いながら暴漢は持っている包丁をさらに強く握り締める

兄「俺の弟が女をかばってお前に痛めつけられたんだ」

暴漢「ああ?ああ、あのガキのアニキか」

暴漢「畜生!余計なことしやがって!!折角の上玉だったのにあいつが邪魔したせいで逃しちまった!!」

暴漢「ぶち殺してやりたかったが・・・ちょうどいい、お前が代わりに殺されろよ」ニヤァ

兄「そうか、まあ、反省はしないよな」

暴漢「ひゃははははは!」ブンブン!

兄「・・・」スッ

暴漢「しねしねしねしねしねしねshボギッ!!

暴漢「え?」

包丁を持っていた右手が、あらぬ方向へ向いていた
力任せに、折られていた

暴漢「うギャ・・・グ・・・いたああああああああああああああああああああ!?」

兄「クズが・・・折ってやる裂いてやる嬲ってやる剥がしてやる・・・」ブツブツ

暴漢「ひ、・・・!」

兄「逃がさないよ」ガッ

ー翌実、夜・交番ー

警官1「例の暴漢ってのはまだ見つかってないんだって?」

警官2「まったく、恐ろしいねぇ・・・」

コンコン

警官1「? こんな時間に何だ?」

ガラララ

警官1「はい?」

ゴロン・・・

警官1「え?」

そこには何かがあった
元は人だったのだろう
しかし骨という骨が折られているせいか、四肢は曲がりきり
皮膚で大丈夫なところなどなく、爪も懇切丁寧に全て剥がされていた

次に悪臭が鼻を襲った


警官2「どうしt・・・何だこれは!?」

警官1「なんだこれ・・・ひ、人?」

そこでやっとソレの横に立っている人に気づいた
その男は両手を血に染めていた

兄「それが最近うわさの暴漢ですよ・・・」

警官1「・・・コレが?」

警官2「コレは君がやったのか?」

兄「はい」

その後その行為は兄がやったことが科学的に証明され、兄は少年院に入ることになった
その事件から数週間後、男は目を覚ました

男「・・・ここは?」

母「!!男!気づいたのね!?」

男「いてぇ・・・母さん・・・なんで俺病院に?」

母「え?」

男「なんで?」

言われては居たのだ
なんらかの影響はあるかもしれないと・・・
しかし・・・

医者「記憶がありませんね」

母「それはこの一連の、ですか?」

医者「そうです・・・しかも」

母「しかも?」

医者「記憶の欠如から、感情の起伏が圧倒的に乏しくなっています」

母「そんな・・・」

医者「端的に言うと、そのことを思い出さないうちは、心からの笑顔になることも、心から涙を流すことも、心から怒ることも出来ません」

母「じゃあ・・・そのことを話せば・・・」

医者「ソレも危険です」

母「?」

医者「まずそれ自体が非常にショックの多い内容であること、そしてさらに兄君のこともあります」

母「・・・つまり?」

医者「そこで精神を壊しかねないということです」

母「そんな・・・じゃあどうすれば・・・!」

医者「経過を見るしかないでしょうが、事情を知る人が多いこの町にいると危険です」

母「引越し・・・ですか?」

医者「考えうる手段はそうですね・・・引っ越して、誰も何も知らないとこで情緒が安定するのを待つ・・・」

母「・・・傷のことは本人には何と?」

医者「事故、とだけでいいでしょう。むしろ下手に設定を作った方が危険です」

母「わかりました・・・」

ー病室ー

男「・・・」ボーッ

ガララ

母「調子はどう?」

男「ああ・・・母さん。大丈夫だよ」

母「それはよかった」ガラッ

男「・・・この傷って結局なんだっけ?」

母「ああ、それはね?ちょっと事故があってそれで巻き込まれちゃったの」

男「へぇ・・・」

何の感想も無さそうに無表情でそう返す男
その後、男は引っ越すことが決まった

ー前日談・あの日 終わりー

ー前日談・ガールズトークという名の駆け引きー

親友「・・・で、女さん、これからはガールズトークとしようか?」

女「ええ・・・そうですね」

一同(こえええええ・・・)

親友「女さんは男のことをどう思っているんだい?」

女「私は前に中学の時に男さ・・・くんに助けれらて以来男君が好きです」

親友「む・・・」

女「そういう親友さんはどうなんですか?【親友】なんですか?」

親友「僕は男を親友以上の対象としてみているよ」

親友「男は鈍いから気づかないけどね・・・」フゥ・・・

女「それは・・・」

親友「?」

説明後

女「というわけなの」

親友「・・・どおりで最初あんなだったわけだ」

女「コレを聞いてもまだ好き?」

親友「何が?逆に僕が守ってあげたくなったくらいだよ?」

女「奇遇ね、私もなの」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

女「譲る気は?」

親友「ないね」

女「私も」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

一同(見ないフリ聴こえないフリ)

親友「じゃあこうしよう」

女「?」

親友「明日から僕と女さん、毎日交互にアプローチする権利が渡される」

女「うん?」

親友「お互い相手の日には邪魔をしない」

女「なるほど」

親友「そして夏祭りに男に思いを両方が伝える」

女「選ばれなかった方が引き下がる・・・と?」

親友「うん。そして両方選ばれなかったら二人とも引き下がる」

女「なるほど、それでいいですよ」

女子1「ないとは思うけど、選べなかったら?」

親友&女「!」ビクッ


親友「女子1!?いつから!?」

女子1「いや、最初から居たよ・・・話す場所考えた方がいいよ?」

一同(うんうん・・・)

女子1「で?その場合どうするの?」

親友「その場合は・・・」

女「ううん・・・どうだろう・・・」

女子1「面倒だから二人で付き合っちゃえば?」

親友&女「!?」

親友「ど、ど、どういうこと!?」

女「それって二股!?」

女子1「う~ん、ていうか保留って言うか?恋人候補って言うのかな?」

女子1「まあ考えときなよ、じゃあね」タッタッタッ

親友&女「・・・」

タッタッタッ

男「ごめん、おくれた!」

ー前日談・ガールズトークという名の駆け引き・おわりー



男の記憶が戻ったあたりから一気につまらなくなったな…

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