【艦これ】整備兵「鎮守府で働け?」提督「そうだ」2 (91)

前スレ(【艦これ】整備兵「鎮守府で働け?」提督「そうだ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428133858/))の続きです。
必ず前スレをお読みになった上でご覧ください。

・オリキャラ主人公

・キャラ口調崩壊の可能性有り

・半端な知識及び乏しい構成力による艤装、工廠、妖精等についての妄想独自設定有り

・ほのぼの7割シリアル3割

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450955355

立てたらなんか投稿しとかんと一日で落ちるんじゃなかったか

【??】

ピカッ

??「……!」

ポトリ

パシャッ

??「……あっ!す、すみませ……」

??「しーっ!多分そろそろ終わるから、後で片付けよ。ね?」ヒソヒソ

??「は、はい……」

>>4
ご指摘ありがとうございます。確かに、立て逃げ規制に引っかかるのかもしれませんね。
とりあえず対策に1レスだけ書いておきました。

【??】

??「……さ…………さん……」

??「ぅ……?」

??「整備兵さん……」

??「その……声、は」

??「はい。私です……」

??「……俺も、こっちに来たのか」

??「ええ。残念ですが……」

??「これからどうするか、選べるのか?」

??「もちろんです。潔く往くも良し、勇しく残るも良し……。私の役目は、あなたの意思を叶えることなのですから……」

??「……それなら、俺は残りたい。全部、何もかも女神に任せる。だから、俺を……!」

??「分かりました。――あなたがそう、望むのでしたら」

【宿舎】

白雪「……っ」

漣「……!白雪ちゃん……起きた?」

白雪「漣、ちゃん……」

漣「よ、良かった……!丸二日眠ってたんだよ、白雪ちゃん!」ギュッ

白雪「そ、そんなに……それより、ここは……?」

漣「漣たちの部屋のベッド。身体は何ともない?大丈夫?」

白雪「うん、普段通り……」

漣「良かった……修復しきれないケガがあったら、どうしようかってずっと……」

白雪(そうだ……鎮守府が空襲されて、私……)

白雪「……漣ちゃん、鎮守府は大丈夫なの!?」

漣「今はもう安全だよ。爆撃してきた機動部隊を、ミッドウェーから引き返してきた翔鶴さん達が逆に撃破してくれたから」

白雪「すごい……間に合ったんだ……!」

漣「空母の数は劣勢で苦しい戦いになったみたいだけど、戦闘前からなぜか敵の護衛艦隊が半壊していたのと、敵の戦闘機数が空母数のわりに少なかったのが決め手になって、何とか勝てたんだって」

白雪「そうだったんだ……」

漣「その後は、他の鎮守府の艦隊も次々と帰ってきて……深海棲艦も流石に諦めたみたいで、もう本土近海からはほとんど撤退したよ。だから、今は鎮守府の再建中。……でも、本当に心配したんだよ!白雪ちゃんが工廠の前で倒れてて……それもひどいケガで……」

白雪「ご、ごめんね……あれ?工、廠……?」


『……白雪!白雪っ!』


白雪「整備兵、さん……整備兵さんは?」

漣「え、ええと……」

白雪「私の近くにいたはずだけど……見てない?そもそも、私を見つけたのって、誰……?」

漣「……間宮さんが、最初に白雪ちゃんを見つけてくれたみたい。工廠の入口前の岸壁に倒れていた、白雪ちゃんを」

白雪「うん。そのそばに……」

漣「……」

白雪「ど、どうして……黙ってるの?」

漣「……」

白雪「漣、ちゃん……?」

漣「……間宮さんは、他には誰もいなかったって。ただ、白雪ちゃんが倒れてた場所のすぐ隣……海中で大きな爆発があったみたいで、岸壁には……」

白雪「何か、あったの……?」

漣「整備兵さんの……こ、工員服の、袖と……」ウツムキ

白雪「……!」


『……はぁっ……はぁっ』

『待ってください!どこに行くんですか!?そっちは海――』


白雪「……」バサッ

漣「白雪ちゃん!?まだ、動いちゃ……!」

白雪「……ごめん。すぐ、戻るから。今だけは……行かせて」

漣「……」

【工廠前】

白雪「……」スタスタ

白雪(ひどい。岸壁が、崩れかけてる……)キョロキョロ

白雪「……整備兵、さん」

シーン

白雪「まさか……そんなはず、ないですよね……」

白雪「……」

白雪「……っ」

ポタリ

白雪(どうして……私……整備兵さんは……)ギュッ

バシャバシャ

白雪(……何の、音?)チラッ

妖精「」ジタバタ

白雪(よ……妖精さん?溺れてる……!?)

白雪(早く助けないと……でも、どうしよう。艤装は無いし……)

白雪(……いや。このくらいなら、平気かな)

白雪「……」ピョン

バシャッ

白雪「……」ゼエゼエ

白雪(お、泳ぐのって、水面を滑るのとは全然違うんだ……)

白雪「妖精さん。だ……大丈夫ですか?」

妖精「」コクリ

白雪「その工員服……工廠の妖精さんですか?」

妖精「」ジッ

白雪(違うのかな……?とりあえず、工廠に連れて行って工廠長さんに……)

白雪「……?あの、妖精さん。それ、何ですか?」

白雪(よく見たら、何かを握っているみたい……)

妖精「」パッ


『武運長久』


白雪「えっ……!?」

白雪(私がお祭りで買った、御守り……!)

白雪「それを、どこで……?」

妖精「」ピョンピョン

ペシッ ペシッ

白雪「き、急に地面を叩いてどうしたんですか?ここに、何か……」

ペシッ ペシッ

白雪「ええと、とりあえず落ち着いて……あれ?」

白雪(まさか……水の跡?)

ペシッ ペシッ

白雪(……やっぱり!海水の跡で、コンクリートに文字を書いてる……!)

『ご』

白雪(……ご?)

ペシッ ペシッ

『め』

白雪(め……)

ペシッ ペシッ

『ん』

白雪(……)

ペシッ ペシッ

『な』

妖精「」ジッ

白雪「ご、め……ん、な」

妖精「」コクリ

白雪「そん、な……」



――『ごめんな、白雪』


白雪「せいびへい、さ、ん……」

妖精「」コクリ

白雪「じ、冗談ですよね?嘘ですよね……?」

妖精「」フリフリ

白雪「ま……また、私をからかってるんですか?いくら何でも、こんなの、趣味が悪すぎますよ……」

妖精「」

白雪「……答えてください。こんなの悪い冗談だって、言って……」

ポタッ

妖精「」

白雪「どうして、何も答えないんですかっ!?」

妖精「」

白雪「もう嘘は十分ですから!やりすぎてごめんでも、どうだびっくりしたかでも、何でも良いです!何か言ってくださいっ!」

ポタッ ポタッ

妖精「」

白雪「何を言うか、迷ってるんですか?それなら、簡単なもので良いんです。例えば、そう……名前を呼ぶとかです。呼んでみてください。白雪、と」

妖精「」

白雪「白雪、です。整備兵さん……まさか、忘れちゃったんですか?」

妖精「」フリフリ

白雪「……それなら、どうして呼べないんですか!?」

妖精「」

白雪「お願いです……お願い、します……。それだけで、良いんです……」

白雪「また前みたいに、白雪と……前と同じ、整備兵さんの、声で……」

妖精「」ウツムキ

白雪「ぅ……あ、ぁ……」

白雪「……ぁ、あ、ああぁっ!」

白雪「――       !           !!」






【数日後】




【工廠】

ガラガラガラ……ガタン

工廠長「来たか。……けっ、幽霊を見てるような気分だ」

整備兵「俺の方こそ。偉そうなこと言いながら、白雪をかばった妖精ともども美しく散ったんじゃなかったのか?」

工廠長「俺達はもう人間じゃねェ。……散ることも野垂れ死ぬことも許されねェで、ひたすら消耗品として戦うだけなんだよ。今日からは若造も、そんな奴らの仲間入りだ」

整備兵「……」

工廠長「……」

整備兵「……そういうことで、ようやく復帰だ。しばらく休んでいてすまなかった」

工廠長「ああ。……復帰とは言っても、その姿だがな」

整備兵「それもそうだ」

工廠長「正直言って、俺ァ、若造を真正面から見る日なんか来て欲しくなかったぜ」

整備兵「……」

工廠長「だがな……若造、お前はそういう奴だ。本物の工員だ。結局、何が起ころうと最後にはこうなったのかもしれねェ」

整備兵「……」

工廠長「若造はこれからの世界のために残ることを選んだ。俺達と同じ中途半端なモノになることを選んだ。それなら……自分のやるべきことは、もう分かってるだろうよ」

整備兵「……もちろんだ」

工廠長「……」コクリ

整備兵「また今日から、改めてよろしくな」

工廠長「……おうよ、若造」ニヤッ

【港】

ザザーン ザザーン

白雪「整備兵さん、明石さんから届いた電文です。赤レンガはもう大騒ぎみたいですよ」ピラッ

整備兵「」フムフム

整備兵「」カキカキ

白雪「ええ、そうですね。今まで誰も考えてすらいなかったことが、一度に明らかになったんですから。生き証人もいますし……」チラッ

整備兵「」カキカキ

白雪「照れる……というのは何だか違いませんか?」

整備兵「」カキカキ

白雪「ええ。確かに、真面目な話、そうですよね……。これからは整備兵さんも、何かと大変でしょうし」

整備兵「」カキカキ

白雪「……」サッ

整備兵「」バタバタ

白雪「仕事の話はもうおしまいです。放っておいたら、工廠の話で一日が終わるんですから。こ……恋人といるんですし、少しは意識してください」パサッ

整備兵「」メソラシ

白雪「途端に何も書かなくならないでください……」ジトー

整備兵「」ウーン

白雪「む、難しく考えすぎですよ……」

整備兵「」カキカキ

白雪「書けましたか?」チラッ

整備兵「」ジッ

白雪「……ふふっ。たった三文字ですか?」

整備兵「」ビリビリッ

白雪「わ、笑ってすみません!破らなくても良いじゃないですか!」アワアワ

整備兵「」ポイッ

白雪「あ……す、捨てちゃった。そんなに恥ずかしかったんですか?」

整備兵「」カキカキ

白雪「あまりにも文章力が無くて、ですか?えっと、それは確かに……」

整備兵「」ガーン






白雪「……でも」

スッ

白雪「私も……同じこと、思っています」




ザザーン ザザーン


『好』


『き』


『だ』


ザザーン ザザーン












Fin.






Fin.




Fin.














監督   青葉

助監督  秋雲

後援   海軍省

     海軍軍令部

     暮鎮守府



制作著作 寄越日鎮守府

本日はここまで。次回、1/4(月)の更新で完結です。

【暮鎮守府 試写室】

ザワザワ パチパチ

青葉「というわけで……暮鎮守府の皆様をモデルに青葉と秋雲が計画、また多方面の方々のお力添えで完成しましたこの作品、いかがでしたか!?」シュタッ

那珂「後ろからずーっとカラカラカラカラ言っててうるさかったよー!どうして那珂ちゃんがこんな席なのー!」プンプン

秋雲「あー、それはしょうがないよ。予算節約のために古い映写機使ったからさ。……後、川内型の三人は抽選で最下位だったし」トコトコ

映写機「」カラカラ

川内「うん、私もそのせいでよく眠れなかったよ……」フワァ

神通「姉さん、眠らない方が良いんです……」

整備兵「うーん……いや、普通に面白かったが。しかし、いくら暇ができたとは言っても、こんな壮大な遊びをしてたなんて知らなかったぞ……」

秋雲「またまた、遊びとは聞き捨てならないねぇ~」

瑞鶴「え、違うの?青葉と秋雲なんて組み合わせ……どうせまた趣味が高じたとか何とかでしょ?」

青葉「もちろん違いますよ!これはれっきとした企画であり仕事なんですから」

秋雲「海軍のお偉方も協力してくれてるんだよ?」

翔鶴「そう言えば、後援のところに海軍省と軍令部と……」

整備兵「一応、本当みたいだな。それで一体この映画、というかアニメ映画は何のために……」

青葉「よくぞ聞いてくれました!……ではまず整備兵さん、明日は何の日ですか?海軍に関係することですよ」

整備兵「ああ、それなら……深海棲艦との戦争が終わってから、ちょうど三年の日だ」

秋雲「ご名答っ!」マルッ

整備兵(この国の……いや、世界中の誰もが知っている日だ。世界各地の制海権を少しずつ取り返していった人類は三年前、ついに深海棲艦最後の拠点となっていたノーフォーク港を陥落させ……それ以降、深海棲艦は全世界のあらゆる海から忽然と姿を消した)

整備兵(地球規模での長期的な掃討戦を想定していた俺達にとって、深海棲艦が一度に消え失せてしまうというのはあまりにも突然の出来事だった。しかし、呆気ないとは全く思わない。……そのたった一回の勝利までに、人類は軍民問わず史上類を見ない破滅的な損害を被った)

整備兵(ともかく、深海棲艦はその後世界のどこにも出現していない。手放しで喜ぶというわけにもいかないが、今はこのノーフォーク攻略戦の日が事実上の戦勝記念日として盛大に祝われている)

青葉「さらにさらに、明日はもう一つ別の記念日でもあるんですよ」

整備兵「……?」

鳳翔「AL/MI作戦の完了からちょうど十年……ですね」ニコ

青葉「流石です!一番有名なのは、アリューシャンの戦いでもミッドウェーの戦いでもなくその後の本土防衛戦ですけどね」

整備兵「つまり、映画の内容は何と言うか……タイムリーってことか?」

青葉「その通りです。戦争終結から三年、ミッドウェーから十年の節目の年にこの映画。集客も見込めますよね?」

鈴谷「え、まさかこれ公開するの!?」

青葉「もちろんですよ。そのために作ったんですから。これから海軍省に宣伝を打ってもらうので、知名度についても心配いりません」

龍驤「言いたいことが分かったで。……要するに、この映画売り出して金稼ごうっちゅう単純な計画やないか」

青葉「あはは、身も蓋も無いこと言わないでくださいよ」

龍驤「でも、それが目的なんやろ?」

青葉「まあ、そうなんですけど。ですが実際、この資金調達は青葉の個人的なものではないんです。何せ、他ならぬ海軍から依頼されたものでして」

青葉「深海棲艦が全く現れなくなって三年、今も艦娘による警戒は続けられていますが海軍の役割は徐々に減少、予算も急速に減らされている……そういう現状なわけです。しかし戦後処理やら設備維持にまだ資金は必要……というわけで、国民の目を集め海軍をもっと働きやすくするため、海軍省の募集に青葉が提案した企画がこの映画です」

整備兵「つまり、赤レンガの資金集めの手伝いってことか……」

整備兵(確かに、最近は予算がきつくなって以前より軍務が窮屈になってきているという話もある。何とか自力で資金を工面する必要があるかもしれない)

熊野「けれど、普通の記録映画ではないんですのね?これで本当に人が集まるんですの?」

青葉「真面目な記録映画は、もうとっくの昔に他の会社が作っちゃいましたからね。何せAL/MI作戦は、戦争のターニングポイントと呼ばれるほど有名な作戦ですし。この戦いで深海棲艦の囮作戦が完全に挫かれて以降、人類が本格的に優勢となったと言われてますよ」

青葉「……なのでこちらは差別化を図って、ストーリー性を重視したフィクションにしてみました。ですが、これはあくまで史実を元にしたフィクションです。青葉の取材力を総動員して、細部まで事実に近づけることにもこだわりましたよ!」キラキラ

整備兵「いや……うん。本当にほとんど全部が事実にそっくりで、日記読まされてるみたいだった。俺としては見ていてかなり恥ずかしかったんだが……」

青葉「白雪さんの辺りとかですねー?」ニヤニヤ

整備兵「言うな。……けど、どうやってこんなに調べたんだ。青葉が暮にいたことなんてほとんど無かっただろ。それなのに、その……」

青葉「どうして、白雪さんの肩もみとか白雪さんとの逢引きとか白雪さんとの熱い夜とかについて微に入り細を穿ち描写できたのかですか?」

整備兵「あ……怪しい言い方はやめろ。あと最後のは捏造だ」ペシッ

青葉「ひゃうっ」

整備兵「……別に俺と白雪のことにも限らず、全部だよ。俺が鎮守府に来た経緯、建物の様子、作戦中の動き……取材が来たことなんて無かったと思うが。……いや、待てよ」

青葉「お、気づきました?」

整備兵「他はともかく、俺が鎮守府に来る前のことを知っている奴はただ一人……そうか、提――」

提督「呼んだか?」

整備兵「」ビクッ

整備兵「いつの間にか後ろにいるな……じゃない。提督、お前の差し金か」

提督「AL/MI作戦前最後の演習――映画にも出ていた演習だな――のときに、演習で来ていた青葉に話を持ちかけられてな。将来的に何かの作品を作りたいので今から鎮守府のことを記録させてくれと」

整備兵「え?となると……十年も前から計画していたってことか!?」

青葉「計画というほどのものでもありませんけどね。秋雲さんと約束したんです。いつかきっと、戦争は終わり平和が戻る。そうなったら、艦娘達の姿を自らの手で作品に描き残そう……」

整備兵「……」ジーン

青葉「中でも主に、個性豊かな暮鎮守府の方々の恥ずかしい過去を暴露して玩具にしよう……と」

整備兵「台無しじゃないか!おい提督、どうしてこんなのの提案を受けたんだよ!」

提督「基本的にネタにするのは整備兵で俺は脇役だと聞いたから、まあ良いかと思った。観る分には楽しそうだしな。……じゃあ、俺は司令部に戻るぞ。夕食までに雑務を片付けなければならん」スタスタ

整備兵「この野郎、上手いことやったな……!」

青葉「そういうわけで、暮鎮守府での情報収集や秘密取材の許可を司令官にいただき存分に調べさせてもらいました。もちろん、このことを知っていたのは司令官だけです。ちなみに、整備兵さんの工員服に盗聴器を仕込む許可ももらいましたよ」

整備兵「はっ!?そんなの、いつの間に?俺の身体に何か付ける暇なんて……」

青葉「イヤですね、映画でもきちんと描かれていたじゃないですか。演習が終わって、整備兵さんと別れるとき……」

整備兵「……あ。手を、握って」

青葉「いやぁ、隙だらけですね。青葉が深海棲艦のスパイだったら色々握られて大変なことになっちゃいますよ。……ええ、握手だけに」ドヤッ

整備兵「……」イラッ

青葉「そんなこともあって、映画のほとんどを実際にあった出来事で占めることができました。長年の夢がついに叶いましたよ」シミジミ

青葉「……まあ、鎮守府外の人はどこまでが本当かなんて分かりませんから、恥ずかしがる必要なんてありませんよ。広い心で受け入れてください!」

整備兵「善処するよ……」ハァ

整備兵「しかし……そうなると、青葉達が新しく作ったのは妖精や艦娘の設定周りだけってことか」

青葉「はい。それに関連して、本土防衛戦についてもいくらか脚色しましたが。整備兵さんが自爆するところや、戦闘機の妖精さん達が死闘を繰り広げるところなどですね」

整備兵「艦娘や妖精が昔の軍人の痕跡から生まれただとか、俺が妖精と話せるだとかは面白い設定だったな。俺も実際に妖精の謎を解けたら良かったんだが……」

青葉「整備兵さんはもともと妖精について調べるために鎮守府に来たんでしたね」

整備兵「映画の中の俺みたいに妖精と話せたりはしなかったから、結局ほとんど何も分からないまま戦争が終わっちゃったけどな」

青葉「それは仕方ないですよ。何も手掛かりが無かったんですし。……ですが、工廠業務についてなら整備兵さんの貢献はとてつもないですよ。東の寄越日西の暮。暮は今や、戦中の功績で唯一寄越日と肩を並べられる鎮守府です」

整備兵「そう言ってもらえると嬉しいよ」

青葉「整備兵さんが来る前の暮は装備開発などに弱みを抱えていましたからね。司令官と整備兵さんが合わさることで暮鎮守府は完全な力を発揮したわけですから、整備兵さんのおかげで終戦が早まったとも言えます。……ともかく、最後には勝ったんだから良いじゃないですか、ってことです」

整備兵「……ま、そうかもな。結果オーライだ」

整備兵(こうして全員生き残って戦争を終えられたこと……それが何よりも重要だ)

青葉「それに実は、整備兵さんから物語のアイデアをもらったこともあったんですよ?」

整備兵「?」

青葉「まずは、その妖精さんですね」

整備兵「ああ……女神か」チラッ

女神「」ピョン

青葉「今日も一緒に来ていたんですか?」

整備兵「何だか分からないけど、ずっと昔から懐いてるからな。女神が暮にいるときはよく一緒にいるぞ。にしても、女神が全ての始まりってのは凄かったな……」

青葉「この女神さんを見て、もしそうだったら面白いなと思いまして。そう言えば、どうして名前が女神なんでしたっけ?」

整備兵「確か……色んな鎮守府に現れるから、いつの間にか海軍の守り神みたいになったんだ。法被姿も目立つしな。それで安直に女神の妖精、と」

青葉「実は、この女神さんが映画みたいに人類を裏から支えていたら……?」

整備兵「まさかな」ハハハ

女神「」クビカシゲ

青葉「もう一つは、整備兵さんと工廠長の妖精さんが話す場面です」

整備兵「それも、俺からアイデアを……?」

青葉「あれ、覚えてませんか?整備兵さんが初めて工廠に行ったとき、『工廠長の妖精が喋った』と言っていたと聞きましたけど」

整備兵「そうか……その話か!正直忘れかけてた。一言二言喋ったように聞こえたけど、そのときは工廠内も騒がしかったしな。あれは気のせいだってことになったんだよ」

青葉「そこから着想を得て広げたのが、今回の物語になったわけです」

整備兵「なるほど……」

スタスタ

漣「……」ムスー

白雪「あ、あはは……」

青葉「漣さんに白雪さん、こんにちは!」

白雪「お久しぶりです」ペコリ

整備兵「二人とも、今までどこにいたんだ?」

白雪「魚雷が爆発する場面で、私が驚いて飲み物を落としてしまって……。漣ちゃんに手伝ってもらって片付けていたんです」

漣「……秋雲」ジロッ

秋雲「さん付けは……あれ、してない。な、何だよー?」

漣「よくも漣のことをネタに……!」

秋雲「ん、ああ。あれか。そっちの提督と漣の不器用な……」

漣「」ガシッ

秋雲「く、首が締まるっ!ごめん、ごめんってばー!」ジタバタ

白雪「漣ちゃん!?」

漣「どうせ秋雲さんのことだからろくなこと考えてないとは思いましたけど、他人のことを勝手に映画にするのは良くないですね」ギリギリ

秋雲「お、お許しを……」ピクピク

青葉「まあまあ。今は晴れて周知の仲なわけですし、良いじゃないですか」

漣「そういう問題じゃないんですよっ!」パッ

秋雲「げほっ。しかし、まさか同じ鎮守府から二人も駆逐艦とくっつく人間が出てくるとはねぇ。どうなのよそれは?……まー良いか。いつまでもお幸せに~」ニヤニヤ

整備兵「お、おい、さりげなく俺達を巻き込むな!」アセアセ

白雪「……///」メソラシ

秋雲「いやーそれにしても、上映中に漣が睨みつけてきたのは面白かったね」チラッ

漣「……」

秋雲「流石の漣も劇場じゃ暴れられないし。安全なところで思いっきりからかうってのは優越感があるよ」チラッチラッ

漣「」ブチッ

<モウイッカイシバイテヤルカラトマレヤー!

<ワー!

<マアマアマア!

<アオバサンモドウザイデスッ!

整備兵「はははっ……」

白雪「ふふっ……」

明石「皆さん、そろそろ食堂に移動してくださいとのことです。間宮さんはもう戻って準備を始めていますよ」ガチャッ

秋雲「やった、夕飯の……ぐえっ!」ズザー

漣「隙ありです」

青葉「よっ、天才技師っ!」

明石「やめてください。ただの工作艦ですよ。やたらと鋭い洞察をする映画の中の私は凄かったですが」ニコ

元帥「……整備兵君、どうだったかの?その様子じゃと、どうやらこの映画のせいで少なからず迷惑をかけてしまったようじゃが」

整備兵「元帥閣下!いえ、そのようなことは……迷惑など……」

元帥「硬くならずとも良い。わしが同じことをされたら顔から火が出るわい」フォッフォッ

整備兵「は、はぁ……確かに恥ずかしくはあります」

元帥「しかし、こういうものを作れるというのも今だからこそじゃな。ほんの三年前までは、こんな日が来るなんて誰も知らなんだ。そうは思わんかね?」

整備兵「……はい、その通りだと思います」コクリ

元帥「まだ海軍の仕事は山のように残っておるが、ひとまずは世の中に平和が戻ったのじゃ。これからは軍人としてだけでなく――」

元帥「――家庭人としても、善く生きるのじゃぞ」ニコ

整備兵「な……!」

白雪「……!?」ドキッ

元帥「分かったね?」

整備兵「り、了解しました!」ビシッ

元帥「ふぉっふぉっふぉっ……」スタスタ

整備兵(……な、何だったんだ)

白雪「整備兵さん。私たちも食堂に行かないと……」

整備兵「ああ……分かった」

ギュッ

白雪「え……?///」

整備兵「ほら。行くぞ、白雪」メソラシ

白雪「……はい」

ギュッ

白雪「行きましょう……一緒に」ニコ

【工廠前】

ザザーン ザザーン


「工廠長、どうしたんですかいー?」


工廠長「ちょっと海を見てるだけだ。お前らは先に戻っとけ」


「了解っス!」


工廠長「……ふう」



「白雪さん、今日は来ないっスかね……」

「今日明日と仕事も休みで、今頃は寄越日の方々との食事会でさぁ」

「苦しいっス……ほんの二日会えないだけで、胸が……」キリキリ

「へいへい。勝手に苦しんでいれば良いんでさぁ」スタスタ

「薄情な奴っスね!」

「むしろ、話したことすら無い相手に十年も片思いなんて芸当、どうしてできるんですかい?そもそも、白雪殿には整備兵殿が……」

「今は一時的に騎士役を代わってやっているだけっス!」

「はぁ……」


工廠長「……」ジー

ザザーン ザザーン

女神「」フワリ

工廠長「……」

女神「珍しいですね。工廠以外の場所にいるなんて……」

工廠長「今はもう珍しくもねェよ。仕事も昔よりは随分少なくなった」

女神「良いことです」

工廠長「……そうだな」

女神「この平和な海を……今を生きる人々の手に取り戻された海を、もう一度眺められる。何と素晴らしいことでしょう……」

工廠長「あんたはいちいち感傷に浸り過ぎだ。俺はそんな難しいこと考えちゃいねェよ」

女神「それはすみませんでした」

工廠長「で、今日は何だって?自主制作映画の試写会だったか?」

女神「はい。実際にあった作戦をもとに、人間模様なども絡めて架空の設定を盛り込んだ娯楽映画……という感じでしょうか。近々一般にも公開されるそうですよ……」

工廠長「そうか」

女神「貴方も来れば良かったんですよ」

工廠長「俺には興味の無ェ話だ。俺はただ、あんたに頼ってまで還ってきた目的が果たせればそれで良い」

女神「……整備兵さんと初めて出会った日」

工廠長「あ?」

女神「どうして、整備兵さんに話しかけるのを止めたんですか……?」

工廠長「……」

女神「整備兵さんに一言話しかけて、貴方の声が聞こえていることが分かったとき……どうして口を閉ざしたんですか?」

工廠長「……突然どうした」

女神「ふと思い出しまして。深い意味はありませんよ……」

工廠長「その質問にはもう何回も答えたじゃねェか。艦娘も含めて、今まで話せる奴なんて見たこと無かったからな。どんな奴かも分からない人間相手に、考えも無しに話を続けるのもどうかと思ってとっさに止めたんだよ」

女神「ですが、貴方には話し続けるという選択肢もあったのではないですか……?」

工廠長「……ま、そうかもしねェな」

女神「貴方が彼を見る目はいつも特別でした。まるで、彼を誰かに重ね合わせているかのように。彼に何かを期待するかのように……」

工廠長「……」

女神「貴方の行動一つで、全く異なる歴史が綴られていたかもしれないのですよ……?」

工廠長「良くも悪くも、だがな」

女神「確かにそうですね。良くも悪くも……どちらに転んだかは分かりません。しかし、面白い想像だとは思いませんか……?」

工廠長「……つまらないとは言わねェよ。ただ、無意味だな。いくら想像したところで過去は変わらねェ」

女神「無意味……そう、感じますか……」

工廠長「……」

女神「……」

工廠長「映画はどうだった?」

女神「……それは、本当に私の感想を聞きたいと思って言っているのですか?」

工廠長「お、おう……当然だ」

女神「そうですか。ちょうど私も、その話をしたいと思っていたのですよ。気が合いますね……」

工廠長「で、どうだったんだ?面白かったか?」

女神「ええ。とても良かったです」

工廠長「……」

女神「何ですか、その目は……?」

工廠長「あんたみたいな気難しい奴が、娯楽向けの映画を素直に褒めるとは思わなかったからな」

女神「失礼ですね……。仮初めに過ぎない終戦ですらまだわずか三年前の出来事であるにも関わらず、もうあの戦争を主題に娯楽映画を作って楽しめるということには実に感動しましたよ……?」

工廠長「何だ。過去をすぐに忘れ去っていく、薄情な連中だって言うのか?やっぱり皮肉が言いたいだけじゃねェか」

女神「ああ、すみません……言い方が良くありませんでした。しかしこれは私の本心です。決して皮肉ではありませんよ……」

工廠長「はァ……?」

女神「信じられませんか?いえ、あの映画は本当に素晴らしいものでした。……例えば、先ほど貴方は、変わらない過去の選択について想像を巡らせることが無意味だと言いました」

工廠長「……そうだな」

女神「私は違うと思いますよ。過去は変わらないからこそ、想像する意味があるのです……」

工廠長「何だと?」

女神「過去に存在したあらゆるもの……ちょっとした間違いから大きな悲劇まで、そこで起きたことは何一つ変えられませんし、それらをありのまま知ることは大事です。ですが、ひたすら記録をなぞり『正しい』負の出来事に留まるだけでしたら、人間はこれほど強い生き物にはなれなかったと思うのですよ……」

女神「……人間は、想像できます。有り得たかもしれない道、流石に有り得そうもない道、もはやきちんとした道と呼べるかすら怪しい絵空事の類い……それらを想像するとき、人間は最も深く過去に触れるのです。ただ単に傍から見るだけのものではなく、自らに繋がる生きた出来事として……」

女神「私は気付きました。あの映画が、有り得そうもない過去を創作しながら、かつ本当の過去をこぼさないように拾い集めるものだということに。そこにあるのは薄情や忘却ではなく、全くもって逆のものなのでしょう……」

工廠長「……」

女神「生きている人間は強いですね……。絶望的に見えたこの戦争にも、ついに敗北することはありませんでした。あれほど恐れられた海には再び帆が翻り、そして今日も人々は、過去――いえ、過去だけでなく現在も未来もですね――あらゆるものを想像し表現することを一向に止めようとしません」

女神「……ですが、それは不思議でも何でもないのですよ。その想像がある限り、恐らく人間は何物にも打ち勝つでしょう。誰からもどんな形でも想われず本当に忘却されてしまったことが、深海棲艦という存在が生まれた唯一の理由だったのですから」

女神「当の本人達にとってはあまりにも当たり前すぎて、きっと気付くことも無いと思いますが……。時には難しい顔で知り、思い、考え――しかしそれだけでなく、時には笑顔で自由に想像することこそ、生きている人間の最大の武器なのですよ……」


ザザーン ザザーン


工廠長「……なるほど、な」

女神「貴方はどう思いますか……?」

工廠長「俺ァ細かいことをうだうだ話すのは嫌いだから、あんまり気の利いたことは言えねェが……」

工廠長「つまり……俺達が知らずに落として来ちまった道も、誰かがまた拾ってくれるかもしれねェってことだろ」

女神「ええ……。それだけ分かっていただければ、私も嬉しいです」

工廠長「まァ、後一つだけ付け加えるなら……人間を舐めるな、か?」

女神「よりによって、数えきれないほど多くの人々の力から生み出された私にそれを言うのですか?」

工廠長「……けっ、違いねェ」






NOT TRUE, BUT REALLY REALLY HAPPY END




以上で完結です。ここまでお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。
最後にご意見ご感想などいただけると幸いです。
また、疑問・質問がありましたら出来る限りお答えしたいと思いますので、どうぞ遠慮なく。

完結乙です。
凄く引き込まれて楽しかったです・

乙です

今まで乙ですー
9ヶ月間もこのss読んでただけあって終わると寂しいですね…

乙!
完走お疲れさまでした!

乙です
長い間楽しませてもらいました、ありがとう!

乙。白雪ヒロイン良いな。


初めから夢オチならぬ、映画オチの予定だったの?

>>71
お褒めの言葉ありがとうございます。楽しんでいただけるものが書けて何よりです。

>>72
ありがとうございます。

>>73
最初から読んでくださっていた方でしたか……感激です。

>>74
>>1としても、とにかく完走できたことでほっとしています。

>>75
こちらこそ、楽しんでくださってありがとうございます。

>>76
白雪の魅力をわずかでもお伝えできたなら嬉しい限りです。

>>77
はい。ストーリーの流れはほぼ全て作り終えてから書き始めました。
映画オチの伏線は、前スレの>>26から張り始めています。

乙です
3年後の二人は何してるんでしょうね
まだ鎮守府にいるのか、それとも後方勤務で二人暮らししてるのか

後日談とか書いてくれてもいいのよ

3年後でもまだケッコンしてないの?

>>79
鎮守府で以前よりまったり親密に整備/警備を続けつつも、同居すると一人部屋に残された漣が寂しがってしまうので、相変わらずそれぞれの部屋で暮らしていると思われます。いつまでも初々しい二人でいていただきたいものです。
ただ、ストーリーを練り終えたときからこれ以上は何を書いても蛇足になると考えていましたので、申し訳ありませんが後日談等の予定はありません。想像で補っていただけると……。

>>80
ケッコンカッコカリや指輪のシステムがある世界なのか、本当の意味で人間と艦娘が結婚できると定められている世界なのか、といったことについては特に考えたことがありませんでした。
ですが、もしあったならば恐らくしていると思います。まず周りが放っておきませんので。

まとめ読みしました。途中のが敵対勢力の会話かとビビっていたら映画オチでよかった。ちょっと泣きそうになりました。乙でした。

…前スレ536の読解力は凄い(ボソッ)

>>83
途中が狙い通りの印象になったようでほくそ笑んでおります。特に前スレ>>556は、人体実験のようなものをイメージしながらいかにも悪そうに書きました。

ところで、前スレ>>536を読んでもおっしゃる意味がよく分からず何とも言えません……申し訳ございません。

白雪と工廠長が、お互いの声が聞こえてるかのような振舞いだなと思いました

ところでシリアルは食べさせてもらえるんでしょうか?

>>85
>>375で説明されているように、>>536の時点で既に白雪と工廠長は意思疎通できています。とてもご都合主義的な方法ですが。

シリアルに関しては、シリアスに見えてそうでないという意味合いのスラングとして使いました。整備兵から見ればSS中のシリアス要素は全て映画内の話で、本物のシリアスではありませんので。
今思えば、あまり冴えた表現とも感じられません。

後日談書いてもいいのよ?(チラチラ

>>88
>>81の通りです。すみません。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月25日 (金) 17:45:39   ID: DFBiqk2L

新スレファイトです(゚Д゚)ノ

2 :  SS好きの774さん   2016年01月04日 (月) 16:44:03   ID: 5sLPPkhv

え?どうゆうこと?

3 :  SS好きの774さん   2016年01月18日 (月) 18:15:26   ID: xzbIWVzO

乙でした(^_^;)

4 :  SS好きの774さん   2016年03月05日 (土) 04:03:12   ID: 8SxY5uil

すごい楽しく読めたわ、ありがとう(*^◯^*)

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