法子「恋するドーナツ、ハート型」 (38)




モバマス・椎名法子のSSです。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450928505




おいしいものって、一緒に楽しく食べたらもっとおいしいんだよ!



え、誰とって? それはもちろん。

仲のいい友達とか。

尊敬する人とか。



好きな、人とか。





晶葉「法子は……好きとかそういうの、あるか?」

法子「ドーナツ」



先週のことだったかな。

寮に帰る途中、晶葉ちゃんとぐうぜん一緒になって。

歩きがてら話していたら、ふいに質問された。



晶葉「うんそうだな、それはわかってる。……『何言ってんの当たり前でしょ』みたいな顔するのはよせ。質問はそういう意味じゃなくて、えっとその」



あたしの返答は想像通りだったみたいだ。

きっとそうだろう。



あたしはドーナツが大好きだ。

それはいつも言っていることで、

みんなも知っている。



でもこの時の話がそういうことじゃないのは、

あたしにも少しわかっていて。





法子「好きな人とか、そういう話?」

晶葉「まあ、そうだ」

法子「うーん、……プロデューサーは好きかなー」

晶葉「!」

法子「だっていい人だもんね。あたしをドーナツアイドルとして育ててくれているし!」

晶葉「……」



表情がコロコロ変わる晶葉ちゃん。

かわいいよね。



法子「晶葉ちゃんはプロデューサーのこと好き?」

晶葉「ええっ…いやその、なんだ、まあ」



みんなハカセだ天才科学者だって言ってるけど、

晶葉ちゃんはそれ以上に、恋する乙女さんなんだ。

かわいいよね。

とはいえ。



法子「んー。あたしも言っておいてなんだけど、好きって難しいよね」

晶葉「……そうだな」

法子「でも今は、ドーナツが好きで、事務所のみんなが好きで、プロデューサーが好きって感じかな!」



好きって難しい。

今回はそんな、あたしの話。



* * * * *

みちる「フゴフゴ! 次のオススメはこれ!」

法子「もぐもぐ……うわっ、おいしい!」

みちる「ねーいいよね!」

法子「じゃあこっちはどう?」

みちる「……むむむ! これもいける!」

法子「でしょー!」



ワイワイ



比奈「(何スかあれ)」

杏「(チームフラワー恒例の、会議という名のオススメ商品紹介合戦だろ)」



みちる「あははー!」

法子「えへへ!」



比奈「(……若さってすごいなー)」グデー

杏「(……アイドルってすごいなー)」グデー

あい「君たち、少しは身体を動かしたまえよ」



こんにちは、椎名法子です。

今日も私は、このドーナツくらい元気で魅力あふれるアイドル目指して、頑張っています。



ちなみに、みちるちゃんとのこの会議は、最近のお楽しみの一つ。




* * * * *



P「みちるー」

みちる「フゴ? フゴフゴ、……(ごっくん)、はーい! 今行きまーす!」



みちる「それじゃあ今日はここまでね! またね!」

法子「うん! お疲れ様!」

法子「〜♪」



はー、今日もおいしさたっぷりの会議だった!

しあわせ!



みちる「ーー」

P「ーー」

みちる「あはは! そうですね!」パアァ



そういえば。

最近、みちるちゃんはかわいくなった気がする。

カワイイポイント、追加しまくりだ。



晶葉ちゃんも恋する乙女って感じでかわいいけど、

みちるちゃんも恋とかしてるのかな?



* * * * *



法子「ゆかゆかって、誰か好きな人いる?」

有香「え、なんですか急に」

ゆかり「私はお二人のことも、事務所のみなさんも好きですよ?」



おひるどき。

事務所でゆかゆかとお弁当を食べている最中、

急に晶葉ちゃんやみちるちゃんのことを思い出した。



法子「ゆかりちゃん、そうじゃなくて、特定の誰かって話だよ」

有香「いやぁ、今は特に……だいいち私たち、アイドルですしね」

ゆかり「ファンの方々の目線もありますしね」

法子「うーん、まあそうなんだけどね」



ゆかり「それを質問するということは……法子ちゃん、好きな人いるんですか?」

有香「そうなんですか?」

法子「えっ、あっいや、そうじゃないんだけどね」



なんというか、晶葉ちゃんと話していた時のことを思うと、ね。



法子「他の人の恋バナとかを聞いてると、自分はどうなんだろうとかって考えたりしない?」

有香「あー、ちょっとわかります」

ゆかり「そうですね。ただ私は男性と話す機会があまりないですし」

有香「あたしもないですよ」



言われてみれば、あたしもほとんどない。



ゆかり「接点のある男性といえばプロデューサーさん、くらいでしょうか。ふふ」

法子「だよねープロデューサーは好き?」

有香「ええっ……まあその、お世話になっていますし、敬意を持つ相手だとは思っていますけど……えと」

法子「有香ちゃん恋バナとか苦手そう」

有香「え、まあそうですけど……法子ちゃんがそれ言うんですか」

ゆかり「ふふっ、よい方だとは思いますよ。好きとかは……今のところ、私は意識したことはありませんけど」

法子「そんな感じだよねーうーん」

有香「あの、あたし一応このメンバーの最年長なんですけどね……」





ゆかり「でも実際、プロデューサーさんはアイドルのみなさんから慕われていますね」

有香「そうですね。恋愛云々はさておき、Cuチームでプロデューサーを苦手だという方は見ないですね」

法子「いい人だもんね。あたしたちのために頑張ってくれてるし」



んー。



法子「……『いい人』は『好きな人』ではない?」

有香「えっ」

ゆかり「?」



んー。よくわからなくなってきた。

恋バナも、自分の目線で考えようと思うと、難しいんだね。



* * * * *



法子「……」



P「法子ー」

法子「あ、プロデューサー! お疲れ様!」

P「何か考え事でもしてたのか?」

法子「ん? ううん別に。チョコドーナツ食べる?」

P「お、うん、ありがとう」



同日午後。

時間が空いていたので、

少しさっきの話を思い返していたら。



P「……じゃあいいけど、何かあるなら遠慮なく言うんだぞ?」

法子「大丈夫大丈夫! ありがとう!」



あたしたちCuチームのプロデューサー。

いつも忙しそうだけど、とても優しくて、マメな人。

いわゆる”話題の人”だ。

あ、晶葉ちゃん的な意味でね。



法子「……ね、プロデューサーって好きな人いる?」

P「なんだ急に」

法子「ううん、別に意味はないけど……。女子ってこういう話好きなんだよ」

P「みんなかわいいし、みんな好きだぞ?」

法子「もー、そういうのを聞いてるんじゃなくって!」



P「個人的にか? 今は……まあ、当面は恋愛とか縁はないだろうな。今はみんなのプロデュースが何より大事だよ」

法子「そっか……えへへ、ありがと!」



そうなんだ。……当面?





法子「当面?」

P「ん、ああ……そりゃあまあ、いつかは結婚とか、そういうのも考えなくはないけどな」



……へぇー。



法子「へー! どんな人が理想とかあるの?」

P「別にないよ。そういう時になってみないとわからないしな」



何だろう。

めずらしくこういう話をしているからか、ちょっとワクワクしているんだけど。

でも、少しもはっきりしない感じ。



法子「プロデューサーってたくさんかわいいアイドルと接してるよね! アイドルに恋とかしないの?」

P「するって言ったら結構な問題発言だな、それは」アハハ



むー。

何かこう、ちょっと子供扱いされている気がする。



P「まあ、とにかく」ナデナデ

法子「んあっ」

P「さっきぼんやりしてたのは悩み事とかではないんだな? 深くは触れないけど、ムリはしないように。あ、相談事ならいつでも乗るから言ってくれよ」

法子「……あはは、ありがとう」



プロデューサーはやっぱり優しい人だ。

だからこそ、なおさら気になること、だったりするんだけど。



* * * * *



おなじCuチーム内にも、プロデューサーと特に仲良しな感じの人は何人かいる。

好き……な感じの人も、多少いるんじゃないかな。



あたしは、まだ恋愛ってよくわからないけど、

プロデューサーが優しくて、一緒にいて楽しい人だってことはホントだし、

いい人だなって思う。

いつ「ドーナツしよ!」って言っても笑顔で対応してくれるし。

そのうえで、食べ過ぎはダメだって気づかってもくれるし。



そういう意味では、

あたしのアイドル活動は、プロデューサーあってのものだ。

けれど、恋愛かと言われると……うーん。



P「そういえば、今日はドーナツ食べてないのか?」

法子「さっき食べたよー! 当然当然!」

P「あはは、そうだったか。法子は本当にドーナツが好きだな」

法子「もちろん!」



うん。

あたしはドーナツが好きだ。

いつの頃からだろうか。もう覚えていない。

けれど、あたしといえばドーナツだ。



プロデューサーもそれをよくわかってくれている。

ドーナツ大好きアイドルとして、

ドーナツアイドルとして、

私をプロデュースしてくれている。



だからプロデューサーは好き。

でも、そういう感じで好きなのだ。



法子「んー」



恋ってもっと、ドキドキワクワクするものじゃないのかな。

あたしドキドキは……まだそんなに、ないし。



* * * * *



法子「ねえ時子さん、好きな人いる?」

時子「……アァン? 何なの突然」



夕方、時子さんと二人の時間。

あ、レッスン待ちで読書中の時子さんのところにあたしがお邪魔したんだけどね。



あたしの一言が聞こえたのか、向こうの方でだらだらしていた杏ちゃんたちが急にこっちを向いた。

ずいぶん驚いた顔してるけど、変なこと言ったかな?



法子「や、恋とかって難しいなーって思って。あ、あたしの話じゃないんだけどね」

時子「あっそう」



興味ないのかな?



法子「あたし例えば、プロデューサーは好きだけど」

時子「……」ピクッ

法子「でもそれは、ゆかゆかとか、みちるちゃんとか、時子さんとか好きーって思うのと同じで」

時子「……」

法子「本とかマンガとかでしか知らないけど、恋ってもっとドキドキするんでしょ? 時子さんはドキドキした経験はある? 恋って素敵?」

時子「……私の詮索をするのはやめなさい。第一私はそのへんの人たちとは違うのよ」

法子「そっかー時子さん女王様だもんなー。うーん」

時子「貴方が言うと全く褒められた気がしないわね」





まったく、とため息をつきながら、時子さんは少しこちらに向き直ってくれた。



時子「恋だ愛だの与太事を無駄に意識するのはやめなさい。貴方が今”特別”を共有する人は誰?」

法子「特別?」

時子「一番大切な出来事を祝ったり、素敵な事を一緒にしたりって話。家族だったり、いつもの娘たちだったりでしょう?」

法子「もしくは時子さんかな!」キラキラ

時子「……とにかく、それが現状のうちは、それでいいのよ」

法子「そういうものなのかな」

時子「それを、……例えばCuのプロデューサーとか、あるいはまた別な誰かと過ごしたいと。そういう思いが強くなったらまたその時に考えなさい。それが恋かもしれないし、違うかもしれない」

真奈美「そうだな、恋はするものというより落ちるもの、と言うしな」

法子「あっ真奈美さん、お疲れ様でーす!」

真奈美「やあ法子、珍しく難しいことに悩んでいるな。ははっ」ナデナデ

時子「……いつからいたの」

真奈美「5分ほど前かな?」



木場真奈美さん。

事務所でたぶん、一番つよい人。

今日もカッコイイ。



* * * * *



真奈美「まあ、私が加わって言えることは然程ないが、法子、時子の言うように、あせらず気長にね。君くらい笑顔の魅力的な子、時がくればおのずと恋もいろいろあるだろう」

法子「あは、ありがとう! えへへ!」

真奈美「あまり焦って大人になろうとせずに、ね。椎名法子という魅力的なドーナツの輪の中には、既にハマってしまっている者もいるだろうし」チラッ

時子「何が言いたいのよ」

真奈美「いや、別に?」



あたし実は、この二人の掛け合い、ちょっと好きなんだ。

時子さんのかわいい感じも見えるし。

真奈美さんつよいし。



真奈美「ではまたね」

法子「お疲れ様でーす」

時子「何しに来たのよ……」

法子「大人ってみんな、カッコイイね」

時子「相変わらずおめでたい頭してるわね」

法子「えへへ」

時子「褒めてないわよ」



* * * * *



法子「時子さんって恋愛経験豊富だったりするの?」

時子「アァン? そんな訳ないでしょ」

法子「そうなの?」

時子「私に適うだけの相手なんでそうそういるわけないじゃない」

法子「そっか。じゃあ豚さんは恋愛対象じゃないの?」

時子「……それは私のファンのことかしら。豚は豚でしょ。ファンであり下僕であり豚なの。それ以上はないわ」

法子「じゃなくって、Paのプロデューサーのこと」

時子「……あれも豚よ」

法子「ええーでもいつも仕事のケアしてもらってるし、信頼関係とかあるよね」

時子「別にそんな大層なものではないわよ」

法子「強い絆で結ばれた女王様と豚……あ、美女と野獣みたいな感じかな?」

時子「話を聞きなさいよ」

法子「美女と野獣なら恋だね!」

時子「そこまでよ法子」コツッ

法子「あはは、ごめんなさい……あれ?」

時子「まったく……」



時子さん、ちょっとだけ顔赤いような。



法子「時子さん♪ ねぇねぇ♪」



ピシイッ



法子「わっ、あぶない」

時子「話は終わりよ。私は私、アレは下僕。いいわね?」

法子「……はい♪」

時子「……じゃあまたね」





カツカツカツカツ



ピンヒール、カッコイイなぁー。

というか時子さん脚綺麗だなー。



< 豚ァ! ちょっと来なさい!



さて、時子さんも行ってしまったし。

今日はもう帰ろうかな。



法子「〜♪」



杏「(いつもながら法子すごいよね)」

比奈「(ホントっスよ)」



* * * * *



別日。

ガチャッ



P「法子いるかー?」

法子「うん? いるよー。どうしたの?」



プロデューサーが事務所に駆け込んできた。



P「これ見て」

法子「……あ! ドナじいのストラップだ!」

P「そう。このあいだ法子も出演した特番仕様のやつな」



覚えている。視聴者プレゼントだったやつだ。

出演者にはもらえるほど数がなくて、

仕方ないことなのに、帰りの車の中でしばらく『いいなぁーいいなぁー』ってワガママ言ってしまったんだ。



P「あの翌日に番組プロデューサーとまた会ったから聞いたら、会社にちょっとだけ在庫があったらしくて、一つお願いして頂いてきたよ。ドーナツ好きの法子ちゃんにそう言ってもらえて嬉しいってさ。是非どうぞって」

法子「え、もらっていいの?」

P「いいよ。法子のために頂いてきたんだから」

法子「あ、ありがとう! ……あの時はごめんなさい、ワガママ言って」

P「いや気にしなくていいぞ、そのくらい。それにそのおかげでこうして法子はストラップが貰えたんだしな」



それはプロデューサーが頑張ってくれたからだ。





法子「……ね、プロデューサーのケータイ貸して」

P「え」

法子「別に中を見るわけじゃないよ」

P「あ、うん」



早速もらったストラップを自分のケータイに取り付けた。

そして、これまでつけていたドーナツのストラップを。



法子「……こうして、よし」

P「あ」



法子「……はい、どうぞ」

P「いいのか? 俺のに付けちゃって。もういらないのか?」

法子「ほ、ほんのお礼の気持ち! それに、そっちも最近買ったばかりだから、けっこう新しいよ!」



何を焦っているんだろう、あたしは。



法子「……邪魔だったらごめんね?」

P「ふふっ、いや、嬉しいよ。それじゃ、ありがたく付けさせてもらうよ」

法子「やったぁ!」



こうして、あたしはプロデューサーがもらってきてくれたドナじいのストラップを、

プロデューサーはあたしが最近つけていたドーナツのストラップを、付けることになった。



その日、あたしは何度もケータイを取り出しては、ストラップを眺めていた。

それはドナじいがかわいいから、欲しかったストラップだから、なんだけど。



なんだけど。



* * * * *



法子「……」モグモグ

法子「……」モグモグ

法子「……………………」

法子「……」モグモグモグモグ

法子「……ふぅ」



周子「風に吹かれ〜背中あずけて♪」ピトッ

法子「んひゃあっ!」



ある日の午後。

ドーナツをもぐもぐしていたら、

とつぜん後ろから、冷たい手で両頬をつかまれた。



周子「おおっ、想像以上のリアクション」

法子「え、あ、周子ちゃん?」

周子「いぇーい周子ちゃんだよ。びっくりした?」

法子「も、もーびっくりしたよ! 手! 手すっごく冷たいし!」

周子「あはは、ごめんね。今外から戻ってきたとこだから」



犯人は周子ちゃんだった。

コート姿の節々から、色白できれいな肌が今日も目立っている。

そのカッコで外、寒くないのかな。

いや、手すっごく冷たかったから、寒いんだと思うけど。



法子「あれ、そういえば周子ちゃんが事務所に入ってきたの気づかなかった」

周子「ん? あーそれはホラ、あたし妖の類だし」コーン

法子「あやかし?」

周子「えっと、妖怪とかそういうの」

法子「強そう!」

周子「ん、そうね、強いかもね」

法子「ドーナツひとつあげるから静まりたまえー。なんちゃって!」

周子「おおう、くるしゅーない」

法子「このドーナツ新作だよ! おいしいよ!」

周子「ありがとねー。法子ちゃんは結構ボケ殺しやねー」



* * * * *



周子「何か悩み事?」モグモグ

法子「えっ」

周子「いや一心不乱にドーナツ食べてたからね。何かあったんかなと」

法子「ドーナツはいつも食べてるよ?」

周子「うん、知ってる知ってる」



周子「でもいつもはみんなと一緒に楽しそうに食べてるでしょ。たまに一人の時だって、幸せそうな顔して食べてる印象があるよ。でも今日は妙に真顔で、考え込んでるって感じだったからさ。あたしが入って来た時も気づいてなかったし。どうかしたんかなーと」



ああそうか、そんな感じなのかあたし。



法子「……えっと、悩みというか、その」

周子「お仕事順調?」

法子「うん、大丈夫」

周子「最近オススメのドーナツは?」

法子「新作もいいけど、あえて今はエンゼルフレンチかな」

周子「何か悩み事?」

法子「えっと、なんというか、その……」

周子「ふふっ。何か、かわいいねぇ法子ちゃん」ニマニマ



褒められてる、のだろうか。



* * * * *



周子「ほーう。お友達の恋バナに感化されて」

法子「や、うん……」

周子「身近な異性に対しての気持ちが恋かとか、そういうことを考えていたと」



うまくボカせたような、そうでないような。



周子「初々しいねぇ。このこの」

法子「いや、そんな……。周子ちゃんは、恋愛とか得意な人?」

周子「あたし? いやー他人のそういう話聞くのは好きだけど、あたしはそんなでもないなー」



そうなんだ。モテそうな感じなのにな。



周子「でもさー、あたし思うけど、このテの話は形とかに拘ってもしょーがないところあるよ」

法子「……何が恋で、とかそういう話?」

周子「そうそう」

法子「あんまり考えない方がいいのかな?」

周子「まあダメってことはないけどね。でも周子ちゃん的にはね、形より気持ちなの」

法子「気持ち……」

周子「何が恋で何が愛かなんてどうでもいいの。”好き”ってことが大事なの。法子ちゃんは誰が好き? どのくらい好き? それをどのくらい大きく素敵なものにしていけるかが大事」

法子「どのくらい……好き……」

周子「誰が好き?」

法子「えっ、いやその」

周子「なにさー誰が好きって話くらい喋っても損しないぞー」ムニムニ

法子「あはは、ちょっと待って」



* * * * *



周子「法子ちゃんかわいいね。”女の子”って顔してる」

法子「え、女の子だよ」

周子「あ、ううん、そうじゃなくて。かわいい恋してるなって意味。”好き”って文字には”女の子”が入ってるでしょ」

法子「……!」



なんだろう。今、すごくいいなって思った。

え、恋してるのかな。そう……なのかな。



周子「ドーナツ愛と恋愛は違うよね。でも、どっちも自分にとって素敵で大切な存在なら、そのことは同じように大切に思えばいいんじゃないのかな。優劣じゃないよ。どっちも大切」

法子「どっちも、かぁ……」

周子「法子ちゃんはドーナツも、ドーナツを一緒に食べる友達も大切でしょ? 恋する相手だって根っこはたぶん同じだよ。ただ」

法子「ただ……?」

周子「特別なドキドキがあるのは、たぶん恋の特徴で。その時はたぶん確認せずとも、そんな気持ちでいっぱいになるよ」



カッコイイ。

周子ちゃん、すごくカッコイイ。



周子「……って紗枝ちゃんが言ってたよ」

法子「えっ」

周子「うん、えっと、お紗枝はんがね。そう言ってたよ」

法子「え、あ、そう……なの?」



あれ。紗枝ちゃんの言葉だったのか。



周子「そ、そうよーホントよー。あたしそんなロマンチックなこと言わないよー」



あ。照れ隠しかな?





周子「それはそうと、法子ちゃんそろそろレッスンの時間じゃない?」

法子「あ、そうだった。じゃあそろそろ行くね!」

周子「忘れ物ないようにねー」

法子「ありがとう周子ちゃん!」タタッ

周子「またねー」



バタン



紗枝「周子はーん?」

周子「ひえっ」



紗枝「おばんどすー」

周子「……わーお紗枝ちゃん、いたんだ」

紗枝「誰がー、何をー、なんやー言いはりました? 火のない処に煙を立てようやなんて、物騒な話や思いまへんか?」ジロー

周子「……堪忍しておくれやすー」



* * * * *



翌日昼。

ワイワイ



法子「それでねー、この写真見て!」

有香「うわぁひどい。あはは」

ゆかり「ふふっ。……あら? 法子ちゃん、ストラップ変えたんですか?」

有香「あ、ホントだ。ドナじい……だっけ」

法子「あ、うん。かわいいでしょ! プロデューサーにもらったの!」

有香「プロデューサーに?」



* * * * *



有香「はー、そんなことがあったんですね」

ゆかり「ふふっ、法子ちゃん思いですね、プロデューサーさんは」

法子「あ、あはは」



何だろう。

この話するの、ちょっと恥ずかしいな。



法子「あっでも、あたしにというか、みんなに優しいよね、プロデューサー」

有香「まあ、そうですけど」

ゆかり「でも、たぶん私たちとは別に、法子ちゃんにはいろいろ気づかっている部分はあると思いますよ」

法子「えっ」

有香「あー、それはあたしも思いますよ」

法子「ええっ!? ど、どういうこと?」



なんだかびっくり。

でも、あたしにはそんな印象がない。



ゆかり「別に贔屓とかそういう話ではないですよ? ただ……アイドル一人一人の姿を見ながら、それぞれに合った支え方をされているように思いますし、それが法子ちゃんの場合は、特にいろいろ工夫されている感じが見られるな、と」

法子「……?」



いまいち、まだピンとこない。

でも有香ちゃんはゆかりちゃんの説明にうなずいている。

同じイメージなんだろうか。



ゆかり「法子ちゃんはアイドルを始めるより以前からドーナツが大好きだったんですよね」

法子「うん」

ゆかり「事実、法子ちゃんはアイドル活動をし始めた当初『ドーナツを宣伝したい』『ドーナツになりたい』『ドーナツの輪を広げたい』といったことをよく話していました」

法子「そうだね。今もそう思ってるよ」

有香「『ドーナツになりたい』って、改めて聞くとすごい言葉ですね」

ゆかり「ですが、スクールガールや幻想公演といった最近のお仕事には……新しい挑戦とか、そういう意欲を感じました」

有香「先日のハイカラガールもそういう感じでしたね」

法子「そう……だね」

ゆかり「思うに、そのあたりから緩やかに変化をしている気がします」



変化……?



* * * * *



ゆかりちゃんの説明は続いた。



みんなを笑顔にしたくって。

ドーナツにはその力があると思っていて。

あたしはドーナツになりたかった。

そう言っていたら、

プロデューサーはあたしをドーナツにしてくれた。



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira097439.jpg
<バレンタインN+>



作るのも楽しいよ、と話したら、

バレンタインにドーナツを作るイベントに出させてくれた。

あ、あれはチョコか。いや結局ドーナツ作ってたっけ。



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira097440.jpg
<ハッピーバレンタイン>



あたしがいつも食べているドーナツのお店のCMにも出してもらえた。



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira097441.jpg
<ドーナッツ☆マーメイド>



そんなあたしだけど。

ドーナツが大好きで、ドーナツをアピールすることにこだわっていたあたしだけど。

そういえば最近、お仕事の内容が変わってきた。



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira097442.jpg
<スクールガール>

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira097445.jpg
<目覚めし勇者>

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira097444.jpg
<ハイカラガール>



ゆかり「きっと、ドーナツのアピールから、ドーナツが好きな法子ちゃんのアピールに変わったんですよ」



ドーナツになろう、ドーナツであろうとしていたあたしから、

ドーナツが好きでたまらない、一人のアイドルとしてのあたしへ。

あまり自覚はなかったけど、少しずつ、少しずつ変わってきている。






有香「きっと、デビュー当初から今のような方向で活動することもできたと思うんです。でもプロデューサーはそうしなかった。なぜかわかりますか?」

法子「……その方が効果的だった?」

有香「それもあります。ドーナツを信奉してやまない女の子って珍しいですからね。何よりの個性ですし」

ゆかり「でも一番の理由はきっと」

有香「ええ」



ぞくっとした。



法子「……あたしがドーナツになりたいって言ってた、から?」

有香「たぶんそうですね。法子ちゃんがそう思っているなら、それを支えることが最善だとプロデューサーが判断したのでしょう」

ゆかり「基本、プロデューサーさんは私たちを、”私たちらしく”アイドルとして伸ばしてくださっています。法子ちゃんもそうですよ」

有香「そのうえで、目標を果たしながら、一つの個性だけに収まってしまわないよう、少しずついろんな挑戦をするようにプロデュースしている……ということなのではないでしょうか。真実のところはプロデューサー本人にしかわかりませんが」

法子「……」



すごい。

あたし、そんなこと考えてなかった。



ゆかり「これを話してしまっていいのか迷いますが……実は以前、プロデューサーさんの机の上のメモをうっかり見てしまったことがあるんですが、そこには」



<「法子といえばドーナツ」から「ドーナツといえば法子」へ>



ゆかり「という記述があったのを覚えています」

有香「唐突にスケールの大きな話が出てきましたね」

法子「……!」

ゆかり「ふふ、これはすごいことですよね。でもそのためには、ドーナツであろうとしているアイドルじゃなくて、きちんとアイドルとしての力があって、その上でドーナツ好きな子であるべきと思われたのでしょう。ドーナツがなくても一人のアイドルとしてかわいい女の子。そんな子がドーナツが大好きというのが魅力であるべきだと」



そうか。

そういう意味だったのか。



ゆかり「13歳ということもあるでしょうが、とにかく法子ちゃんはひときわ、気を配っている印象ですね」

有香「まあ、恋愛の話はさておき、プロデューサーさんはあたしたちのことをちゃんと見てくれていますし、法子ちゃんのことも大好きだと思いますよ」

ゆかり「そうですね。」



うわ。

うれしい。



* * * * *



恋愛の話はさておき、って有香ちゃんは言うけど。

会いたい。



どうしよう。

あたし。



好き、なの、かな。



法子「……」///



有香「え、あれ?」

ゆかり「……法子ちゃん?」



法子「……ドーナツ、を」

有香「?」

ゆかり「?」



法子「ドーナツあげてくる! プロデューサーに!」バッ

有香「えっ、あの、もう少ししたらたぶん帰ってきますよ!」

法子「今会いたい! 会ってありがとうのドーナツを渡したいの!」バタバタ

有香「ええ……」

ゆかり「ふふ、お気をつけて、法子ちゃん」

法子「ありがと!」



バタン



有香「……すごい勢いですね」

ゆかり「ふふっ、これが青春というものなのかもしれませんね」



* * * * *



法子「プロデューサー!!!!!」ドカッ

P「うわっ!」



P「……法子か、どうした?」

法子「……」



ギュー



P「や、あの、後ろから抱きつかれてもだな、その」

法子「……なんでもない」

P「ええ……?」

法子「なんでもないから、もうちょっとだけ、その……このままでいさせて」



……あ、えっと、

……結構、恥ずかしいことしてる、のかな。



法子「……」///

P「……」



……。

……。

……。



……うん、ちょっと落ち着いた。よし。



パッ



法子「えへへ! いきなりごめんなさい。なんでもないよ! いつもありがとう!」ニコー

P「本当に? 大丈夫か?」

法子「うん!」





言いたいことはたくさんあるけれど。



法子「見てこのハート型のチョコドーナツ! ステキでしょ♪」

P「お、うん」

法子「一緒に食べよ! ね!」



今はこれでいい。

いや、これがあたしの、プロデューサーとの幸せな時間なんだ。



顔が熱い。

でもいいの、これが今のあたしの全力なんだから。



P「……うん、じゃあそうしようか。コーヒー淹れてくるな」

法子「はーい!」



* * * * *



プロデューサーは言ったよね。

今はあたしたちアイドルをプロデュースするのが何より大事だって。

だからあたし、もっともっとアイドル頑張るね。



それと、いつかは結婚も考えなくはないって。

いつかは恋……するってことだよね。



じゃああたしは、

プロデューサーが恋するような、とってもステキな女の子になってるね!



法子「おいしいものって、一緒に楽しく食べたらもっとおいしいんだよ!」



え、誰とって? それはもちろん。

仲のいい友達とか。

尊敬する人とか。



好きな、人とか。



法子「だからプロデューサー! これからも、あたしとドーナツをよろしくね!」

P「フフッ、こちらこそ」



ほら、笑顔の輪ができた。





以上です。

過去作もあります。
もしよろしければどうぞ。

☆似たような感じのもの
・みちる「もぐもぐの向こうの恋心」
・裕子「Pから始まる夢物語」
・飛鳥「青春と乖離せし己が心の果てに」
・晶葉「世界はそれを、愛と呼ぶんだ」
・トレーナー「もっともっと、好きにまっすぐ」
・輝子「今日、私は少し、恋を知る」
・あい「恋より先の、もっと先の」
・ライラ「ライク、お慕い、ウヒッブカ」
・裕子「あなたに届け、みんなに届け」
・比奈「オトメゴコロ」
・晶葉「恋する秋は、いと深し」

☆単発コメディ
・紗枝「プロデューサーはんは胸の大きい女の子が好きなんどすかー」

です。


あと、こんなの作りました。

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira097446.png

ありがとうございました。



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