魔法使い「あっ!」(94)

魔法使い「帽子が落ちちゃった!」

魔法使い「ぐぐぐ、ストップストーーップ!」

ガサガサ

魔法使い「うーん……このへんに落ちたと思ったんだけど……」

魔法使い「箒で飛んでてブレーキかけられなくて見失うなんて……」

魔法使い「だめだなぁアタシ……箒が使いこなせないなんて……」

魔法使い「うー……住んでる森だから迷いはしないけど……」

魔法使い「帽子がどこいったかわかんないよう……」

3時間後

魔法使い「はあ、はあ」ガサガサ

魔法使い「全然見つからない……」

魔法使い「おばあちゃんからもらった大切な帽子なのに……」

魔法使い「あっ!」

男「よし、これで今日は終わりだ」

魔法使い(知らない男の人だ……あ!)

魔法使い(アタシの帽子!あの人が持ってる!)ガサ!

男「ん?」

魔法使い「あっ!」

魔法使い(見つかっちゃった!)

男(女の子……黒いマントに箒……)

男「ねえ、この帽子……」

魔法使い「ひゃ!あわわわ!」バタバタ

男「え!?ちょ!なんで逃げるの!?」

魔法使い「おばあちゃんが街の人とはあんまり関わるなって言ってたんです!」バタバタ

男「いやいや、なんもひどい事とかしないからさ……ほら」スッ

魔法使い「あ……」

男「この帽子、君のでしょ?キノコとってる時に見つけたんだ」

魔法使い「あ……はい……アタシのです……」

男「じゃあはい、今度はなくさないようにね」スッ

魔法使い「あ……」

魔法使い(かぶせてくれた……)

男「ふふ、かわいい魔法使いさんだね」

魔法使い「!!」

ビュン!

男「うわ!?」

男「びっくりした……箒使わなくてもあんなはやいんだ……」

男「まあとりあえずキノコたくさんとれたし、今日の仕事は終わりかな。帰るか」スタスタ

魔法使い家

ガチャ!バタン!

魔法使い「な、なんなのあの人!なんなのあの人!」

魔法使い「初対面なのにあんなに親切に……し、しかも……」

魔法使い「アタシの事……かっ、かわいいとか……」

魔法使い「ううー……!」カアアー!

翌日 森の中

魔法使い「あっ!」

魔法使い(昨日の人だ!)ササッ

男「んー……なんか今日は当たりが悪いな……」

魔法使い「…………」ジー

男「あ、あったあった、このキノコだ」

魔法使い「…………」ジー

魔法使い(なんでアタシ、あの人の事見てるんだろ……)

魔法使い(話しかけたいな……でも恥ずかしいから見つかりたくないような……)

魔法使い(どうしよう……)ドキドキ

男「よし、今日はここらへんにしとくか」

魔法使い「あ……」

男「母ちゃん待ってるだろうし、早く帰らないとな」スタスタ

魔法使い「行っちゃった……」

魔法使い「…………」

魔法使い「結局話しかけられなかったな……」

魔法使い「はあ……」

翌日

魔法使い スタスタ

魔法使い「はっ!」

魔法使い「なんでアタシは用もないのにキノコがたくさんある場所に!?」

魔法使い「テキトーに散歩してたつもりだったのに……」

魔法使い「…………」

魔法使い「あの人、来るかな……」

魔法使い「……来なかった……」

魔法使い「ここならいっぱいとれるのに……知らないのかな……」

魔法使い「……帰ろ」

魔法使い家

魔法使い「はー……」

魔法使い(アタシってばどうしたんだろ……)

魔法使い(ちょっと親切にされて、かわいいって言われたくらいで……)

魔法使い(か、かわいい……のかな)

魔法使い「…………」ドキドキ

魔法使い「ダメだ、ドキドキする……」ドキドキ

魔法使い「はー……」

魔法使い(あの人、いくつくらいなのかな……)

魔法使い(見た目は20歳とか……そのくらいだったよね)

魔法使い(もしそうならアタシと6つ差……)

魔法使い(はあ……妹だったにしてもにしても年離れてるよ……)

魔法使い(……どうすればいいのかな……)

魔法使い(というか……もし、もしも、アタシがあの人をす、すす、好き……だったとして……)

魔法使い(この歳の差じゃ、子ども扱いされてあしらわれるとか……)

魔法使い(それにアタシ、魔法使いだし……しかも薬作るくらいしか取り柄ないし…)

魔法使い(せめておばあちゃんみたいなすごい魔法使えたらな……)

翌日

男「あ」バッタリ

魔法使い「あ!」

男「この間の……」

魔法使い「あっ、あっ!あ!あの!」

男「ん?」

魔法使い「こっちのほうが……たくさんキノコとれます……」カアアー

男「うわーほんとだ、こんな穴場あったんだな」

魔法使い「は、はい……」

男「ありがとね、この森について詳しいんだね」

魔法使い「自分が住んでる場所ですから……」

男「そっか。さて、今日も働きますか」

魔法使い「あ、あの!」

男「ん?」

魔法使い「よければ……その……お手伝いします……」カアアー

男「ふー、たくさんとれた」

魔法使い「は、はい、そうですね」

男「ありがとう、手伝ってくれて」

魔法使い「い、いえ……」

男「ん、それじゃ、今日は魔法使いちゃんのおかげでたくさんとれたし、もう帰るよ」

魔法使い「あ……」

男「ろくにお返しもできなくてごめんね、母ちゃんが持ってるんだ」

魔法使い「はい……」

男「うちは父親がいないからさ、できるだけ早く帰ってやりたいんだ」

魔法使い「はい……」

魔法使い「あ、あの……」

男「ん?」

魔法使い「明日も、来てくれますか……?」

男「うん、いい場所も教えてもらったし、またここで仕事しようかな」

魔法使い「!は、はい!」

魔法使い家

魔法使い「えへへ……」

魔法使い(うまく話せたかはともかく……今日は長く一緒にいれたな……)

魔法使い(そういえば、今日までお互い名前も知らなかったんだよね)

魔法使い(えへへ……それに、明日も来てくれるって……)

魔法使い(またお手伝いさせてもらおっと)

魔法使い(明日は、今日よりたくさんお話しよ……えへへ)

数日後

男「魔法使いちゃん、よければ家に遊びにこない?」

魔法使い「はっ、はい!?」

男「いや、この間からずっと手伝ってもらってるしさ、お礼にと思って」

魔法使い「えっ、えっ!え!?」

男「うちも裕福ではないけど……ご飯くらいは食べさせてあげれるからさ」

男「それに、かわいらしい魔法使いさんがいる、って話したら、母ちゃんもぜひ会ってみたいって言っててさ」

魔法使い「あ、あう、あう……」

魔法使い(男さんの家……まさか招待されるなんて……)

男「あ、街にはあんまり関わっちゃいけないんだっけ?無理なら……」

魔法使い「い、いえ!ぜひおじゃまさせてください!」

男「ん、よかった。それじゃ明日の昼くらいに、街の入口で待っててくれるかな?」

魔法使い「は、はい」

男「俺が迎えに行くからさ、待っててね」

魔法使い「はい……」

魔法使い家

魔法使い(た、大変な事になった!大変な事になった!)バタバタ

魔法使い(まさか男さんの家に……行く事になるなんて……)

魔法使い(なに着て行こう……ていうかアタシいつもの服以外ほとんど持ってないよう……)

魔法使い(目立っちゃいけないから箒は持っていけない……歩きかぁ……)

魔法使い(うう……ほんとにほとんど服がない……)

魔法使い(あんまりいつもと違う服だと落ち着かないから……黒じゃなくて白のワンピースと……)ガサガサ

魔法使い(この帽子は『魔法使いです』って言ってるようなものだから……麦わら帽子で……)ガタガタ

翌日

男「んー」キョロキョロ

男(魔法使いちゃん、遅れてるのかな。まだ来てないけど)

クイクイ

男「ん?」

魔法使い「あの……男さん……アタシです……」カアアー

男「あ、ごめんごめん、いつもの服で来るかと思ってたからさ」

魔法使い「へ、変でしょうか……?」

男「ううん、その服も似合ってるよ、かわいい」

魔法使い「!は、はい……」カアアー!

男「それじゃ、行こうか」

魔法使い「は、はい」

男「ただいまー」

魔法使い「お、おじゃまします」

男母「いらっしゃい。あなたが魔法使いちゃんね」

魔法使い「は、はい」

男母「毎日男のお手伝いしてくれてるみたいで、ありがとうねぇ」

魔法使い「い、いえ……その……」

男母「ん?どうしたの?」

魔法使い「アタシも男さんとお喋りするの……すごく楽しいですから……」カアアー

男母「あらあら」クスクス

男母「さ、遠慮なく、お腹いっぱい食べてね」

魔法使い「あ、ありがとうございます」

男「いただきます」

魔法使い「いただきます」

男母「どう?お口にあうかしら」

魔法使い「はい!とってもおいしいです!」モグモグ

男「そういえば、魔法使いちゃんは普段どんなものを食べてるの?森でとれるもの?」

魔法使い「あ、はい……果物とか、キノコとかをとって、軽く調理して食べてます」モグモグ

男母「あら、じゃあケーキなんかは食べたことはないの?」

魔法使い「ケーキ……」

魔法使い(おばあちゃんがほんのたまに買ってきてくれたけど……もう何年も食べてないなあ……)

ばらくは食べてない、って顔ね」

魔法使い「はい……」

男母「男、手伝ってくれてるんだから、これからはたまにはケーキくらい持って行ってあげなさい」

男「ん、そうだね、ほんとによく手伝ってくれるし」

魔法使い「え!ええ!?い、いいですよ!アタシが好きで手伝ってるのでそんな!」

男母「遠慮しないの、好きで手伝ってくれてるならなおさらよ」

男「俺もほんとに助かってるんだ、それくらいさせてよ」

魔法使い「男さん……男母さん……」

魔法使い「はい……ありがとうございます」

夕方

魔法使い「今日は本当にありがとうございます。すごく楽しかったです」ペコ

男母「いえいえ、わたしも娘ができたみたいで楽しかったわ」

魔法使い「男さん、お仕事大変なんですね……」

男母「ごめんね、急に仕事で呼び出されたらしくて……」

魔法使い「いえ……」

魔法使い(いっぱい遊べたし……男さんが呼び出されたのがアタシが帰る直前で本当によかった)

男母「これからも、気軽に遊びにきてね」

魔法使い「はい、ありがとうございます」

男母「それとね、大事なことを2つ教えてあげるわ」

魔法使い「?なんですか?」

男母「男はね、鈍感だからハッキリ言わないと気づかないわよ」

魔法使い「はっ!はい!?」

男母「それとこれはいい情報だけど、仕事場に女の子がほとんどいないから、男が誰かにとられちゃう可能性は低いわ」

魔法使い「な、なんのことですか!?わ、わわわ、わからないです!」

男母「ふふ、男は気づかなくてもわたしにはバレバレよ、暇さえあれば男のこと横から見つめて」

魔法使い「う、うう、し、失礼します!」ビュン!

男母「ふふ、かわいい」

魔法使い(うー……!)

魔法使い(そんなにバレバレだったのかな……)

魔法使い(でも男さんは気づいてないって……よかったような残念なような)

男「あ、魔法使いちゃん」

魔法使い「あっ」

魔法使い「男さん……もうお仕事終わったんですか?」

男「んー、呼び出されたけど、話を聞いただけだったからね。魔法使いちゃんは帰るところ?」

魔法使い「はい、今日は本当にありがとうございました」ペコ

男「ん、いいよ、俺も楽しかったし」

魔法使い「は、はい……」

魔法使い(楽しかったって……よかったぁ)

男「ケーキも楽しみにしててね、まあゆってもたまにしか買えないけど……」

魔法使い「いえ、とっても楽しみです。ありがとうございます」

男「おっと、そろそろ暗くなるね、魔法使いちゃんは今日歩いてきたんでしょ?」

魔法使い「はい」

男「じゃあちょっと急がないと暗くなるかも。引き止めてごめんね」

魔法使い「いえ、大丈夫です。さすがにあの森では迷いませんから」

男「ん、それじゃまた明日」

魔法使い「はい、さようなr」ガッ

魔法使い「きゃっ!」ドテッ

ピラ

男「魔法使いちゃ……あ……」

魔法使い「!!!!」

魔法使い「あ、あう!あうあうあうあ!」バタバタ

男「その……」

魔法使い「お、男さん!」

男「は、はい!」

魔法使い「み、見ました……?」

男「……ごめん」

魔法使い「ーーーー!!」ボッ!

魔法使い「う、ううー……」カアアー!

男「ごめん……すぐ忘れるようにするから」

魔法使い「はい……」

男「じゃあ……また明日ね」

魔法使い「はい……」

魔法使い家

魔法使い「う、ううー……」カアアー

魔法使い(楽しかったけど……男さんと男母さんと話せて嬉しかったけど……)

魔法使い(男母さんに、バレちゃった……)カアアー

魔法使い(そのうえ男さんにパンツまで見られちゃったし……)カアアー!

魔法使い(恥ずかしい!恥ずかしいよう!)バタバタ

魔法使い(男さん、忘れてくれたかな?)

魔法使い(でも、なんとも反応してくれないのも……)

魔法使い「ううー……」カアアー

数日後

魔法使い「…………」

魔法使い(今日は男さん、遅いな……)

魔法使い(あんなことがあってもいつもと変わらず一緒に過ごしてたのに、どうしたんだろ……)

翌日

魔法使い「…………」

魔法使い(今日も男さん、来ないや……)

魔法使い(風邪ひいたのかな……?)

魔法使い(明日も来なかったら、思いきって街に行ってみようかな……)

翌日

魔法使い「あ!」

男「おはよ、魔法使いちゃん」

魔法使い「おはようございます。どうしたんですか?昨日と一昨日は……」

男「んー、母ちゃんが風邪ひいちゃってさ」

魔法使い「え……?」

男「しかもかなりしつこい風邪らしくて、なかなか治らないんだ」

魔法使い「大丈夫なんですか……?」

男「ん、風邪は風邪だから命に別状はないよ」

魔法使い「ほっ……」

男「それで仕事休んで看病してたけど、いつまでも休ませてはもらえなくてさ、今は隣街の兄貴に来てもらって、看病してもらってるんだ」

魔法使い「…………」

男「さ、早めに仕事終えて、俺も母ちゃんのとこ行かないとな」

魔法使い「はい……お手伝いします」

魔法使い家

魔法使い「うんしょ、と」ドサ

魔法使い「これで材料は全部だよね……」

魔法使い「……薬作るのが得意でよかったって初めて思ったかも」ゴリゴリ

ゴリゴリ

魔法使い「ふう」

魔法使い「でもどうしても時間はかかっちゃうなぁ……」

魔法使い「ふわああ……」

魔法使い「今夜は徹夜だ……」ゴリゴリ

翌日

男「おはよ、魔法使いちゃん……ん?」

魔法使い「あ……男さん、おはようございます……」

男「なんか眠そうだね、大丈夫?」

魔法使い「大丈夫です……それより男さん」

男「ん?なに?」

魔法使い「キノコはアタシが集めておきますから……今すぐ男母さんにこれを飲ませてあげてください」スッ

男「これ……」

魔法使い「アタシ、薬作るのだけは得意ですから……それを飲めばすぐ治るはずです」

男「でも、キノコまで任せるのは……」

魔法使い「大丈夫です、ずっと男さんのお手伝いさせてもらって、手順とかはわかりますから」

男「そうじゃなくて……」

魔法使い「男さん、アタシも、男母さんには早くよくなってほしいんです」

男「魔法使いちゃん……」

男「……わかった、お願いするよ」

魔法使い「はい」

男「ただ、とったキノコは俺がとりにくるから。ただでさえ寝不足なのに街まで届けるのまで任せられない」

魔法使い「はい、わかりました」

男「……寝不足なのも、この薬を作ってたからなんだね」

魔法使い「……はい」

男「ありがとう」ナデナデ

魔法使い「あ……」

男「ありがとう、魔法使いちゃん」ナデナデ

魔法使い「えへへ……」

魔法使い「撫でてもらっちゃった……」

魔法使い「えへへ……」ニヨニヨ

魔法使い「あ、キノコとらなくちゃ……」

魔法使い「眠いけど、がんばらなくちゃ……」

魔法使い「ふう……」

魔法使い「うん、これくらいあれば充分なはず……」

魔法使い「あ……」クラ

魔法使い「だめだ……眠い……」ウトウト

魔法使い「ん……」

魔法使い「すー……すー……」

魔法使い「ん、んん……」

魔法使い「ん……?」パチ

男「あ、目さめた?」

魔法使い「男さん……?えっ!?」

男「いや、戻ってきたら魔法使いちゃん寝ててさ」

男「魔法使いちゃんの家に運ぼうと思ったんだけど、場所知らなくて、テキトーに探してたんだ」

魔法使い(お、お姫さまだっこ……!)カアアー!

男「疲れてるでしょ?そのままでいいよ」

魔法使い「は、は、はい……」

男「家の方向教えてくれるかな?」

魔法使い「あ、えーと……」

魔法使い「…………」

魔法使い「あっちです……」

男「あっちね」スタスタ

魔法使い「あ……ちょっと間違ったかもです……引き返してください……」

男「ん、わかった」スタスタ

魔法使い(ごめんなさい男さん……もうちょっとだけお姫さまだっこしててほしいんです……)

男「よし、着いたね」

魔法使い(着いちゃった……)

男「じゃ、また明日」

魔法使い「あ!待ってください!」

男「ん?どうしたの?」

魔法使い「その……夜の森は危険です……迷ったりとか……」

魔法使い「だ、だから……その……」



魔法使い「今日は……アタシの家に泊まっていってください……」

男「よいしょ」ゴソゴソ

魔法使い「すみません、お客さまなのにベッドアタシが使っちゃって……」

男「いや、大丈夫だよ」

魔法使い「はい……」

男「それに、むしろ俺は魔法使いちゃんにお礼を言わなきゃね」

魔法使い「え?」

男「あの薬、すごいよく効いたよ。さすがに全快ではないけど、母ちゃん熱下がったしだいぶ楽そうにしてた」

魔法使い「そうですか……よかった」

男「ほんとは明日ケーキ持ってきて、言おうと思ったんだけどね。ほんとにありがとう」

魔法使い「いえ……たいしたことじゃないです」

男「ううん、お礼になんでもしてあげたいくらいだよ」

魔法使い「……なんでも……ですか……?」

男「ん?うん。俺にできることなら」

魔法使い「それなら……男さん……」

魔法使い「アタシの話を……聞いてもらえませんか?」

男「話?」

魔法使い「とっても、大事なお話です」

男「ん、聞くよ、真剣に」

魔法使い「はい……」

魔法使い「すー……はー……」

男「…………」

魔法使い「ふう……」

男「…………」

魔法使い「……男さん」

男「うん」

魔法使い「アタシは……男さんのことが好きです」

男「え……」

魔法使い「男さんにとっては、アタシは妹みたいなのかもしれませんけど……恋愛対象じゃないのかもしれないですけど……」

魔法使い「アタシは……男さんのことが大好きなんです……」

男「…………」

魔法使い「だから……アタシとお付き合いしてください」

男「…………」

魔法使い「…………」

男「……魔法使いちゃんは、とってもいい子だと思うよ」

魔法使い「…………」

男「それに、すごくかわいくて、魅力的だと思う」

魔法使い「…………」

男「でも、俺にとってはやっぱり妹みたいな存在で……」

男「女の子として好きだとは……思わないんだ」

魔法使い「…………!!」

魔法使い「う……」

魔法使い「う、うう……」ポロポロ

男「違うんだ、最後まで聞いて」

魔法使い「ひっく……は、はい……」ポロポロ

男「だから、魔法使いちゃんがこのまま、素敵な女の子のまま成長して、そして、その時もまだ、俺のことを好きでいてくれたなら……」

魔法使い「…………」ポロポロ

男「もう一度、俺にさっきの言葉を、聞かせてほしいんだ」

魔法使い「…………!!」

男「ごめん、こんな中途半端な答えで……」

魔法使い「うっ、ひっく……」ポロポロ

魔法使い「いえ……ひっく……だ、大丈夫です……」

男「……そっか……」

魔法使い「あ、アタシ……がんばりますから……」

男「え?」

魔法使い「むしろ……男さんが我慢できなくて告白してくるくらい……素敵な女の子になりますから……」

男「……そうだね」

男(こんな素敵な女の子なら……将来惚れそうだ……)

魔法使い「あの……男さん」

男「なに?」

魔法使い「もう1つ、お願いしていいですか?」

男「ん、いいよ」

魔法使い「目、つぶってください……」

男「ん?いいけど……」スッ

チュッ

男「あ……」

魔法使い「えへへ……」

魔法使い「まだ恋人同士ではないですから……ほっぺです」

男「…………」

魔法使い「ひょっとして……ドキドキしちゃいました?」

男「……からかうんじゃありません」ワシャワシャ

魔法使い「きゃーっ、ふふふっ」

男「ふふ……」

10年後

赤ん坊「ぎゃああん!」

母「あっ!大丈夫!?ほら、よしよし……」

父「どうした?」

母「やけどしたみたい……冷やすけど、跡残っちゃうかな……」

父「それなら、森の薬屋に行ってみるか」

母「森の薬屋?」

父「隣から聞いたんだが、森の中に夫婦でやってる薬屋があってな、とてもいい薬をくれるらしい」

母「じゃあお願い。この子女の子だから跡残っちゃかわいそうよ」

父「ああ、隣に場所聞いて行ってくる」ガチャ

父「ここだな」ガチャ

父「すみませーん」

魔法使い「はい、どうしました?」

父「子どもがやけどしてしまって。やけどの薬をもらえますか?」

魔法使い「やけどのお薬ですね、たしか奥の棚に……あなた、お願いできる?」

男「ああ、わかった」

男「これだろ?」

魔法使い「はい、ありがとうございます」

父「すまないね、いくらになる?」

魔法使い「いえ、お代はいただきませんよ」

父「え!?しかし」

魔法使い「わたし達はこの森にあるもので暮らしていけますし……夫も働いていますから」

父「んん……そうか、ありがとう」

魔法使い「いいえ、お子さん、早く治るといいですね」

父「ああ、ありがとう」

父「本当にありがとう。今度なにかお礼をしよう、それでは」ガチャ

バタン

魔法使い「ふふ」

男「どうした?」

魔法使い「わたし達も、もう少しであんなふうに、お父さんとお母さんになるんですね」

男「だな。あと半年か」

魔法使い「はい」

男「母ちゃんにも、孫の顔を見せにいかなきゃな」

魔法使い「お義兄さんも、今はお義母さんの家にいますから、甥か姪かわかりませんけど、見せられますね」

男「だな、喜ぶ顔が目に浮かぶよ」

魔法使い「そうですね……ふふ」

男「ん?」

魔法使い「大好きですよ、あなた♪」



おわり

読んでくれた人ありがとう

>>40の冒頭
男母「しばらくは食べてない、って顔ね」

一応訂正

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