男「お前ら悪魔か?妖精か?」【最終章】 (511)

当初は三章で終わる予定でしたが、とても1スレでは足りないので、【最終章】ということになりました

話は第三章からそのまんま続いてます
なので、ここから新しく読む方は、せめて前スレだけでも読んでおくことをおすすめします


前スレ
男「お前ら悪魔か?妖精か?」【第三章】
※SS速報VIP

前々スレ
男「お前ら悪魔か?妖精か?」【第二章】
※製作速報VIP

初代スレ
男「お前ら悪魔か?妖精か?」
※パー速VIP

あらすじ(第三章を未読の方でも、これを読めば多少は分かる…かも)


ついに始まった天使と悪魔の最終戦争『天獄戦争』

天国最強の戦力である《天》九階位は『兵器』奪還を目論み、わずか数名で黄の城に迫る

また地獄内においても、テロ集団『ヘルアクロウズ』と、『魔王エレカ』に因縁がある『テンコ』が牙を向く

そんな中、熾天使によって『戦闘天使α』に意識を移されてしまった人間『男』は、二年ぶりにテンコと敵として再会することになる

混戦乱戦どんちゃん騒ぎの戦争は、更に激化していく…!?

人物紹介

悪魔 >>4

テンコ >>5
クロ >>6
イン >>7
シロ >>8
ルシファル >>9

王族 >>10
エレカ >>11
クレア >>12
シェアリ >>13
ポチ >>14

流刑地(エンドエリア) >>15

テロ集団『ヘルアクロウズ』 >>16
ゼクト >>17
シオン >>18
アーティエ >>19

上級悪魔 >>20
その他の悪魔 >>21


天使 >>22

《天》九階位 >>23

>>24
ゼルガ >>25
レトル >>26

悪魔(あるいは地獄人)

我々人間の住まう地上の遥か上空に存在する『地獄』の住人

姿かたちは人間とさして変わらないが
圧倒的に高い知能、身体能力を持つ

また、どの悪魔も生まれつき
必ず一つ『能力(>>27)』を持っている
この能力は成長、進化し、二つ目の能力『バイ・セカンド』を習得することができる

テンコ(シャル・ヴィーノ・トリアンテ・ランバ)
18歳 11月14日生まれ 四姉妹の長女
金髪ポニテの貧乳美少女

最後の『兵器の鍵』の持ち主だったがエレカに指輪を奪われ、瀕死の状態に追い込まれる
しかしその後、テロ集団『ヘルアクロウズ』に救われ、仮とはいえメンバー入りし、No.3であるゼクトに鍛えられた

修行終了後、戦争に参戦し、四大天使ガブリエルを能力なしで倒した
現在、暴走状態の男に二年ぶりに再会したが、その正体に気づいていない
「さっさと倒させてもらいます


地獄兵器 鉄製の指輪(四つ目の「兵器の鍵」)
能力:神の見えざる手(インビジブル・ハンド)
見えない手で物体を動かす能力
早さはかなり遅いし、範囲も7~8m以内と、かなり狭い

『バイ・セカンド』危険な操作法(リスキー・ハンド・ラップ)
『引き寄せる力』…好きな物体を手元に持ってこさせる
物体が近くにあれば近くにあるほど、速く手元にやってくる
『弾き飛ばす力』…物体を見えない手で弾き飛ばしたり、浮かせたりする力
車でさえ飛ばすことができる
また、それ自体が壁を削る程度の威力を持つ。
※地獄兵器がないため、現在は実質使用不可能

『不可視の力撃(インビジブル・ブレイカー)』…「操る力」そのものを見えない拳(力の塊)として使って、相手を殴る
威力は圧倒的だが、通常の『バイ・セカンド』以上の精神力を消費するため、使用回数に制
限がある(現時点では、日に6発が限界。7発使えば、動けなくなってしまう)

『仮想解束(かそうかいそく)』
能力ではなく、ゼクトの重力修行によって得た技術
超重力を受け続けていた時の感覚(苦痛)を引き起こし、自らの肉体に偽りの負担をかけ、意識下に制限されていた力を発揮させる
脳を騙し、全身に誤った命令を出すという、自己催眠に近いもので、要するに『ハッタリで本気になる技』
生半可な集中力では、この状態にはなれないため、ダメージを受けるなどして『追い込まれ』ことが必須条件になる
普段以上の力を平均レベルで出せるようになるが、疲労もたまりやすい。また、集中力が切れると元に戻ってしまう

クロ(クロノ・ヴィーノ・トリアンテ・ランバ)
15歳 5月20日生まれ 四姉妹の次女
黒髪ロングの貧乳美少女

エレカと共にイン、シロを取り返しに戦ったが、彼女に欺かれ、敗北
自分の無力さに歯痒さを感じていたが…

地獄兵器 ギター(ピック)
能力:漆黒を駆ける翼(フライ・ミィ・トゥ・ザ・ムーン)
背中から黒い翼を生やし、自由に飛び回る
精神力の度合いにより、翼をさらに大きくすることができるようになった

『バイ・セカンド』黒き胡蝶の舞い(バタフライズ・ダーティ・エフェクト)
翼を6枚に増やす能力
他人に翼を「貸す」こともできる
クロが翼の動きを操る「マニュアル」と、翼の主の意思で動く「オート」と、二種類のモードが存在する(ただしオートモードはマニュアルと比べて自由度が少ない)

『黒羽射撃(ブラック・バレット)』…羽を弾丸のように飛ばす
『黒羽風奏(ブラック・シルフィ)』…翼を羽ばたかせ発生した風圧で相手の攻撃を押し返す
『黒羽創剣(ブラック・スライサー)』…翼を腕に纏わせ、剣として使う
『漆黒の流星(シューティング・ジェット・ブラック)』…空高くから急降下して、羽を体ごとドリルのように回転させながら相手に突っ込む、クロの必殺技
他にも多彩な攻撃方法を持つ

イン(レイン・ヴィーノ・トリアンテ・ランバ)
12歳 6月16日生まれ 四姉妹の三女
心優しいボクっ娘

エレカの策によってテンコを誘き寄せる餌にされたが、自力で脱出し対峙
その際のエレカの電撃により、記憶喪失になる

地獄兵器 傘
能力:移り気な天気予報(レイニー・ブルー)
一日につき一度だけ、天候を自由に変えることができる

『バイ・セカンド』憂鬱な天の支配者(バニシング・ゲリラ・ストーム)
自分の周囲300mの気温、湿度を自由に変えたり、風を自由に起こし、天候を変える能力。インが動くと気候のエリアも動く。回数制限はなし
そこから生み出される本物の「落雷」はエレカのそれさえも上回る威力を持つ

シロ(シロン・ヴィーノ・トリアンテ・ランバ)
8歳 3月23日生まれ 四姉妹の四女

末っ子と言うだけあって、姉たちには大変甘えん坊
エレカの計画に利用されるが、インとクロにより救出される
大好きなインが記憶を失ったことに、大きなショックを受けていたが…

地獄兵器 子箱
能力:溢れる記憶の泉(ディープ・イン・トゥ・ザ・ナイト)
自分の好きな記憶をいくつでも保存でき、忘れないようにできる

『バイ・セカンド』恐怖(幸福)の再記体験(ネガティブ(ポジティブ)・フラッシュ・バック)
触れた相手の記憶を読み取る能力。そして相手にとって恐怖(幸福も可能)の対象である記憶をそのまま呼び起こし、相手に精神的なダメージを負わせることができる

ルシファル・ヴィーノ・トリアンテ ?歳
テンコたちの父親

テンコが6歳のときから5年間、その圧倒的な力を持って魔王として地獄を支配していた(王族以外が魔王になった、唯一の例)
それ以前は流刑地(デッド・エリア)の看守長として、やはり圧倒的な力の持ち主として恐れられていた

地獄兵器:漆黒の指輪
能力:黒無導(クロムロード)
空間に黒い穴を開け、あらゆる攻撃を飲み込む(飲み込んだ先は『無』であり、要するにその攻撃は「なくなって」しまう)

『バイ・セカンド』悪 魔 神 - TheoS=DiaboloS -
黒い闇から恐ろしい姿をした悪魔を出現させ、あらゆるものを蹂躙し尽くす『具象化』と
肉体と同化させ、凄まじい力を得る『憑依状態』の、二つの使い方がある(前者はあまりにも規模が大きすぎるため、仮に使われても出現するのは「腕」などの一部分だけである)

エレカの『雷の力』、クレアの『炎の力』、シェアリの『水の力』と同じく、鍵に込められた『神の力』として、代々継がれてきた能力(テンコたちは継いでいないので、ルシファルが最後の代になる)
しかし決して他の三つと同列にあるわけではなく、それらを遥かに凌駕している
おそらく、地獄史始まって以来ずっと、『最強』の攻撃型『バイ・セカンド』と称されるほどである

・王族

地獄における最高権力
代々『魔王』を務めてきた
黄、赤、青の三つの王族が存在する

かつて神が兵器封印に用いた『兵器の鍵』を発見し、そこから強大な力を得た者たちがそれぞれのルーツである

・黄の城
黄の王族の城
現在の地獄のすべてを司る拠点
エレカとルシファルの戦いによって、一部分が大きく破壊されてしまった

・赤の城、青の城
それぞれ赤の王族、青の王族の城
赤の城は財務に、青の城は軍務に長けた悪魔が多い

エレカ(エレカ・グロード・アステリス)
18歳 10月9日生まれ
黄の王=魔王
黄髪ロングの美少女。貧乳(テンコよりは大きい)

魔王である父を自作自演で殺害し、自らその跡を継いだ
そしてテンコから『兵器』の鍵を奪い、兵器復活を目指す


三人の女王の中では最も強いと言われているが、本人はそう思っていな
しかし、カリスマ性においては二人を圧倒的に上回り、加えて、かなりの強運の持ち主でもある


地獄兵器 金の髪留め(四つの「兵器の鍵」の一つ)
能力:中央電波網(センター・ラジオワーク)エレカを中心とした半径50km以内に電波網を張り巡らせ、自由に会話などを傍受できる能力

『バイ・セカンド』雷神の裁き(ライトニング・パニッシャー)
全身のあらゆる箇所から放電する能力
シンプルだが、威力は最大クラスである
『落雷(ラクライ)』…指定した箇所に雷を落とす
『豪雷(ゴウライ)』…指定した箇所に力を集中させた巨大な雷を落とす
『雷門(ライモン)』…指定した箇所に雷の口が出現し、上下から相手の攻撃を砕く盾になる
『雷槍(ライソウ)』…手のひらから発生させた雷(『雷閃(ライセン)』)の形を変え、槍を作り出す
『雷槍・螺旋(ライソウ・ラセン)』…二本の雷槍を捻り合わせたもので、「抉る力」に特化している
『雷神槍(ライジンソウ)』…『雷槍・螺旋』を完全に融合させ、一つの槍に変えたもので、威力、速さ共に通常の『雷槍』を遥かに上回る。エレカの最強の武器
『魔翌雷の獅子(ライ・ライガー)』…雷のたてがみを纏った巨大な獅子で相手を襲う奥義

ちなみに、全身から電撃を発することができると言っても、唯一背中からは発電ができない

クレア(クレア・ロシュディル・フレイン)
17歳 7月13日生まれ
赤の城の女王
赤髪ロングの美少女。巨乳
男勝りで強気な性格だが、「男みたい」と称されることを極度に嫌っている

エレカの計画に協力するが、その際側近であるノエルを失い、以来エレカを憎むようになった
シェアリと共に戦争に参戦し、四大天使ラファエル、ウリエルを撃破するが、自身も重傷を負った

地獄兵器 ライター

能力:呼吸熱(ブレッシング・ヒート)
あらゆる熱を吸収し体内に蓄えることができる能力(巨大な蝋燭などを使えば、多量の熱を吸収できる)

『バイ・セカンド』炎舞せし紅蓮の魂(バーニン・クリムゾン・ソウル)
呼吸熱で蓄えた熱を炎にして発射する能力

『旋焔殺(フレイム・ブラスト)』…巨大な炎を回転させながら打ち込む
『弐旋焔殺(ツインズ・フレイム・ブラスター)』…『旋焔殺』を二発同時に使用する
『流星導(メテオロード)』…相手の物理攻撃を炎に包んで押し返す
『灼熱の独眼竜(ヒートガンドラ)』…龍をかたどった巨大な炎で相手を襲う奥義
他にもさまざまな攻撃方法を持つ

ノエルの能力で周囲の熱を取り払わなければ、自身も危険な状態に陥ってしまう

シェアリ(シェアリ・サー・フレジャタン)
16歳 2月18日生まれ
青の城の女王

青髪ロングの美少女。胸はクレアより小さく、エレカより大きい(要するに「普通」サイズ)
三人の女王の中では最も年下だが、王として相応しい素質を持つ

ノエルを失ったクレアを支えるように、共に行動する
四大天使ラファエル、ウリエルを撃破した後は、傷ついたクレアを引きずりながら黄の城へ向かう

地獄兵器 水瓶

能力:夢幻の呼び水(ウォーター・イリュージョン)
水瓶から溢れる水に長時間触れている相手に、幻覚を見せる能力
様々な手段で、相手の負の感情を増長させ、戦闘不能の状態に追い込む(クロに使ったのは『親しい人物の幻と対面させる』という手段)

『バイ・セカンド』清なる泉水の女神(ラクス・アクア・ディオサ)
一定範囲内のあらゆる水を自由自在に操る能力
『旋水貫(アクア・スパイラル)』…水の塊を回転させながら高速で打ち出す
『硬水枷(ヴァダー・シェイクル)』…水を鞭状にして相手を締め付ける
『溺愛水泡(アクア・ラヴァーズ)』…相手の首から上を水の球で包み込み、溺死させる(本人はこの技を「溺死体は気持ち悪いから」と嫌っている)
『大津波(タイダル・ウェイブ)』…大規模な波を発生させ、広範囲にわたって攻撃する
『大海の王蛇(リヴァイアサン)』…大量の水を圧縮し、巨大な蛇の姿に変えて突撃させる奥義
他にもさまざまな攻撃方法を持つ

ポチ(ロッタ)
17歳 9月19日生まれ
元・エレカの側近

第三章には未登場
エレカの計画に踊らされていたテンコを支え、力を尽くしたが…

地獄兵器 リストバンド(流刑地投獄前の兄のミサンガと取り替えた)

能力:聖域(サンクチュアリ)
地面に手を付けることにより、一定の範囲内にいる味方へのダメージをゼロにする能力(自分へのダメージは防ぐことができない)
ただし持続時間は10秒ほど

『バイ・セカンド』銀の踊り(シルバー・ダンス)
シフトチェンジの能力
脚力を数倍にはね上げる

銀と金の舞い(シルバー・アンド・ゴールド・ダンス)
兄であるコヨーテの『バイ・セカンド』金の踊り(ゴールド・ダンス)と同時に使うことによって発動する技
互いの肉体レベルを最大まで強化させ、最強の一撃を打ち込む

テロ集団『ヘルアクロウズ』

王族にとって地獄内最大の危険因子
王族を快く思わない者が集い、秘密裏に潰そうと動く集団

かつて一度代表者やその他の過半数のメンバーが殺害、投獄されてしまい、現在の組織は残ったメンバーが数年かけて再興させたものである
復興後はまだ目立った活動がないらしく、王族もその所在を把握できていない

現リーダーは『神にもっとも近い悪魔』
他のメンバーも優秀な悪魔ばかり

ゼクト・ヴァズィーラ
『ヘルアクロウズ』No.3
No.1及び2が不在であることが多い組織において、常にメンバーを束ねている存在

一度解体されかけた組織を、シオンと共に再興させた

地獄兵器 イヤリング
能力:太陽の超重力(グラヴィティ)
周囲の重力を増加させる。ゼクトとの距離が近ければ近いほど、より重くなる

『バイ・セカンド』未登場

能力以外にも天才的な格闘センスを持ち、その実力は上級悪魔と比べても差し支えないほど
能力を失ったテンコに能力なしで戦える強靭さを与えるために、『10Gの空間』で修行をさせる

シオン・ルーベンカルド
『ヘルアクロウズ』No.4
独自の医療技術を持つ、天才女医と呼ばれる悪魔

「~かね?」と、老人じみた喋り方をする
眼鏡を掛けており、髪型は茶髪にポニーテール。テンコのように長くはない

ただの鉄板を「鋼鉄の診断書(アイアン・カルテ)」と呼び、叩いたり盾にしたりしている

年齢は四十代らしいが、それを感じさせない若い外見を保っている(その事に触れる者には、例えメンバーであっても容赦しない)

地獄兵器:メス
能力:鋭利な刃物(メイキング・エッジ・シャープ=MES)
手にしたメスの切れ味を上昇させる。巨木すら一閃で切り崩すほどになるが、能力はメス以外の刃物には一切使用できない
また、メスが手から少しでも離れると能力は解除される

『バイ・セカンド』未使用

いかん流刑地忘れてた…

アーティエ
『ヘルアクロウズ』No.5
グルグルメガネ(シオンからもらったもの)を掛けた長身の悪魔
元は凶悪な殺人鬼だったが、シオンの治療を名目に、ヘルアクロウズに入った(そのためシオンには素直に従う)
他のメンバーとは異なり、その圧倒的な力のみで、一気にNo.5の座に就いた

地獄兵器:グルグルメガネ
能力:独裁者の束縛(デスポット・バインダー)
全身から鎖(チェーン)を無数に発生させる
鎖同士を束ねて、巨大な「大鎖鎚(チェーン・ギガトール)」にすることができる

『バイ・セカンド』血を纏う銀糸(アルギュロス・ストリーム)
左右の腕をチェーンソーに変える能力。凄まじい切れ味を持つ
このチェーンソーは一つの物質であるため、本人の腕から外して使うことができる
必殺技は、鎖で相手の動きを封じてから、二本のチェーンソーで十字に斬り裂く「紅の十字架(ブラッディ・ブラッディ)」

流刑地(エンドエリア)

いわゆる監獄
囚人の大半は悪事を働いた連中なのだが、一部王族に『危険視』されたり、十分な判定なしに濡れ衣で投獄されてしまった者もわずかながら存在する
例:コヨーテ(ポチの兄)、メイ(テンコたちの元メイド)

ルシファルはこの流刑地の元、看守長である

黄の王と断崖絶壁に挟まれる形になっているため、脱獄できる者はいない

上級悪魔(ネオンテーゼ)

王宮護衛の最高権力を持つ、六人の悪魔
それぞれが圧倒的な力を持っているが、王宮の護衛などめったに行わず、王族に従うこと自体がほとんどない
ただし有事の際に召集がかけられると、半分ほどは集まるらしい

鋼鎧のロキ
強化型(レア・スタイル)の完成作
常人を遥かに越えた身体能力と鉄壁の能力「無敵の外装(インビンシブル・アームズ)」を持つ
人間界でテンコと戦ったが、深手を負い、メイの能力で地獄に送還された
現在は消息が分からないため、実質的に除名されている

千骨のドクロ
上級悪魔最高齢
能力は「甦りし屍骨の宴(リ・ボーン・デッド) 」
全身が骨で構成されており、地中に埋められた骨などを自由に使って、骨の鞭や「屍骨帝龍(スカルドラゴン)」「屍骨卿の演舞(バークエンド・スカルロンド)」などの強力な攻撃を繰り出す
骨の肉体を得てから182年生きていた

機皇ユーカイ
強化型の失敗作を改良した、現存する唯一の機械型(ジクロ・スタイル)
能力は使えないが、自らの肉体を「通常形態」と「全銃火器展開形態(フルメタル・オーケストラ=FO)」に切り替えることができる
通常形態は人の姿で、マシンガンとマグナムを使って戦うが、戦闘形態(全銃火器展開形態)になると全身から無数の火器、兵器が出現する


レクラン
サヤ
ディザード

未登場の上級悪魔
全員が全員『生きているか』さえ、分かっていない

その他の悪魔

・王族護衛隊

その名の通り、王族護衛のためのエキスパートの集団
基本的には兵士の中で戦闘に長けているものがその一員だが、中にはフリーであるにも関わらず、その実力の高さを買われて所属している者もいる

センリ
?歳 12月12日生まれ
王族護衛隊総部隊隊長

圧倒的な力の持ち主であり、王族からも絶大な信頼を寄せられている
己の力を過信しているようであるが、実際その実力は、上級悪魔に並ぶほどである

地獄兵器 黒い眼帯(右目)

能力:騎士の銀凱(レアメタル・アームズ)
全身を白銀の鎧で固める能力

『バイ・セカンド』魔帝の弓矢(アーチエネミー・ジ・アーチェリー)
シフトチェンジの能力
①Type1.左腕を小型の弓矢に変化させ、矢をマシンガンのように連射する
②Type2.右腕を巨大な弓矢に変化させ、超強力な一撃を放つ
①は精神力が切れるまで使用できるが、②はチャージが必要であり、矢を一度放てば解除される


ジーク
?歳 1月17日生まれ
王族護衛隊総部隊副隊長
実力はセンリとほぼ同クラスであるが、性格は比較的おとなしい

地獄兵器 白い眼帯(左目)

能力:深淵への道(ナイトメア・ロード)
ジークが走り抜けて行った箇所に黒い影のようなラインを引き、そこを踏んだ相手は動けなくなってしまう
ただしラインは一定時間が経つと消滅する

『バイ・セカンド』雄々しき黒山羊の猛進(カプリス・エス・インペトゥス)
シフトチェンジの能力
自らの肉体を黒山羊のような姿に変える(通称は『神獣化』)
肉体のレベル(攻撃力、速さ、耐久力など)が飛躍的に上がるが、精神面にも大きな変化が現れるため、非常に危険な能力である
ただし、姿はそのままに、肉体の部分的な強化だけを行うこともでき、その場合は精神面にほとんど変化が生じない


両者ともに、エレカの『対《天》九階位用戦力』として真っ先に集められた
主天使(ドミニオンズ)、力天使(デュナメイス)と戦う

天使

基本的な部分は悪魔とだいたい同じだが、こちらには『バイ・セカンド』がない
これにより天使は『進化しそびれた存在』と悪魔に揶揄されることもある

ただ、こちらは《天》九階位の圧倒的カリスマにより、集団として見ると悪魔より遥かに完成されている

《天》九階位

上位三隊、中位三隊、下位三隊、計37人によって構成された天使の集団
一般の天使にとっては憧れの存在である

『上位三隊』
史上最強の天使であり『神に最も近い天使』である熾天使(セラフィム)
ほぼ同等の立場にある智天使(ケルビム)、座天使(スローンズ)の三人によって構成される
全天使への命令権を持ち、地獄における魔王とほぼ同義

『中位三隊』
主天使(ドミニオンズ)、力天使(デュナメイス)、能天使(エクスシアイ)の三人によって構成される
上位三隊と比べると幾分統治能力は低いが、ある程度好き勝手できる立場
少し中途半端な存在ではある

『下位三隊』 権天使(アルカイ)、四大天使(クアドラ・アークエンジェルズ)、戦闘天使(ファイティング・エンジェルズ)の計31人によって構成される
権天使は中位三隊レベルの天使だが、戦闘向きではないためランクが一つ低い
四大天使は熾天使直属の部下である四人の天使であり、熾天使に代わり一般の天使を動かすこともある
戦闘天使はα~ωまで、26体いる天使
戦闘天使というだけあって、戦闘のエリート集団
実績が低い者は容赦なく首を切られ、また新たな枠にスカウトされた一般の天使が入る

また、このランク付けは熾天使の独断によるもので、必ずしもランクが上の天使ほど強いというわけではない
熾天使にとって『どれだけ役に立つか』で分けられている

また、これとは別に『護聖白天(ホワイトガーディアンズ)』など、熾天使を心酔する戦闘集団が複数ある

各天使については、全員出揃ってからまとめる予定…

男→アギル・レイシュダート
人間→戦闘天使α

本作のもう一人の主人公。もう空気じゃない

四姉妹との同居生活から二年、通常の大学生として過ごしていたが、突如現れた『セイラ』=熾天使によって、意識のみを戦闘天使αに移されてしまう

ゼルガに能力の使い方を教わって戦えるようになる

戦闘天使なので当然、戦争に参加させられるが、単独で熾天使を倒そうと目論む

部下であるレトル、師であるゼルガの相次ぐ死に加え、テンコに敵として遭遇してしまったことで、暴走状態に陥っている

能力 空天掌(エアクルーラー)
周囲の空気を操る能力
空気なので不可視であり、様々な使用法がある
・高気砲(エアバースト)…空気の弾丸を発射し、当たると爆発する
・高飛刀(エアカッター)…複数の空気の刃を発射する
・飛天来(エアフロウ)…自らの体を空気で持ち上げ、浮く(そのまま少しだけ移動することもできる)
・空座包(エアクッション)…空気のクッションを作り出す
・名称不明…ゼルガとの戦闘訓練中に超強力な技を発動したが、男自身が疲労しきって倒れてしまった

その他本で学んだ『なんちゃって格闘技』も使う

ゼルガ・マキラービン

戦闘天使αの師
かつては自らも戦闘天使だったらしく、非常に高い戦闘能力を持つ
男にはおっさんと呼ばれ、それまでの得てきた知識をほとんど忘れてしまった彼を奇妙に思いながらも、親身に鍛えさせる

開戦後、ヘルアクロウズのメンバー四人の相手を一人でするが、自らも瀕死の重傷を負い、男の前で自害した

能力:鬼面斧(きめんふ)
鬼の面(正確には『能面』)のついた斧を操る
斧は斬れば斬るほど強さを増していき、一ノ面から八ノ面まで強化される

レトル

戦闘天使αの部隊の天使
部隊が半壊したため、最終的には男と二人で行動をしていた

男の目的が熾天使を倒すことだと知るや否や対峙したが、敗れる
その直後男を狙って狙撃してきた『護聖白天』から彼を庇い、死亡する

能力:装改甲羅(ソウカイコウラ)
効果が複数あり、自由に使い分けることができる

『固駕甲羅(コカコウラ)』…もともと硬い甲羅をさらに硬化し、盾として使用する
『巨化甲羅(キョカコウラ)』…甲羅を巨大化させ、規模の大きい攻撃を防ぐ。目一杯大きくすれば、非常用のシェルターにもなる
『降下甲羅(コウカコウラ)』…甲羅を上空から落とし、その重量で攻撃する。どこから落とすかは指定できるが、範囲はだいたい目の届く距離まで
他にもいくつかあるが、専らこの三つが多用される

登場人物まとめだけでこんなにかかるとは…
能力の種類についてのまとめを前スレにしましたが、そちらはもう放っておきます(さほど重要じゃないので)

とりあえずこれで今日は失礼します

乙!
まさかテンコと戦うことになるなんて

タイトルがお前らは悪魔→お前ら悪魔、に変わっている事に今更気付いた

あの本はやはり伏線だったか

あけましておめでとうございます>>1です
前スレ中途半端に残っちゃってますが、続きはこっちからです
今日から書きはじめたいと思ってます

やっちまいました書く書く詐欺…
本当にすみません…

もはや恒例

女ちゃんの出番マダー?

新年そして最終章入ってようやく…書きます…少ないですが

男「…お前も殺す…!」

転「…出来るものなら…ね」

男「空天掌(エアクルーラー)!」スッ

転(いきなり能力ですか?)

男「…高気砲(エアバースト)!」

転「ちっ…!」バッ

転「……?何も起きな…」

シュルルルルル

転(!…何かの渦巻く音…!?)ハッ

男「遅いッ!」

ボンッ!!!!

転「……う…!?」

転(爆発…!?でも『爆炎』は起きてない…)

転「はっ…」ズザッ

転(なんとか腕で庇える程度の威力…直撃はちょっとヤバそうですね)

男「ふーっ…ふーっ…」

男(当たった…当てた!俺があいつに攻撃を…)

男(そうだ何も…問題ない!俺は天使だ!こいつを倒す…)

男「勝つ!」バッ

転(また来るか…)

男「高気砲(エアバースト)!!」スッ

シンッ…

転(たぶん…)

シュルルルル…

転「…今だっ!」タンッ

男「!跳んだ!見えてるのか!?」

転「ふっ!」スタッ

ポフッ…

男(不発…ギリギリで避けられた!なんで…)

転「見えませんけど…その爆発攻撃…」

転「なんか『風を切る音』がすごくしますよ」

男「!?」

転「それ…『空気(エア)』でしょう」

男「な」

男(も…もうバレた…!?)

転「って言うかそんなに大声で技名叫んだら…ねぇ」ニコッ

転「見えない意味がない!」ダッ

男「来…クソッ!」

男(返り討ちに…!高気砲!)バッ

転「!」グンッ

男「あ!!?」

スカッ

男(この…近距離で避けた…!?)

転「…あなたさっきからなんか」

転「動きが素人臭い!」ブンッ

男「ぐっ…!」バキッ

転「もしかして『なんで近距離で放った攻撃が避けられたんだ』…とか思ってます?」

転「はい……これ!」バッ

男「!?」ビクッ

転「この『手のひらを向けるという動作』!これじゃもう、目の前に撃ってくるってバレバレです!」

男「っ……」

転(私も似たような能力ですし……さて、そろそろ仕掛けてみるか…?)

転「…ぶっちゃけ弱いですね。あなた」

男「なんだと…!」

転「あなたみたいな素人が天使の中にもいるんですね。びっくりしました」

男「素人で…悪かったな…」

転「…さっさと私の目の前から立ち去りなさい。これ以上あなたのような素人と戦う気はありません」

男「…!」ピクッ

転「あなたに勝機はない…もう分かったはずですよ」

男「…うるっせぇな!!」ガッ

転「!」

男「勝機だと…?んなもん知るか!俺は天使だぞ…お前と戦わなきゃいけないんだ!」

男「機なんてのは後から来る!終わってもいない戦いの勝ち負けを、勝手に決めんなよ…!」

転(な…なんですかコイツ…変だ…)

転(素人とかそういうのじゃない…他の天使とは根本的に『何か』が違う)

男「まだ負けてない…まだ戦える!当たり前だろ!?」ブゥンッ

転(!しまった…間合いが近すぎる…!)スッ

男「高飛刀(エアカッター)!」シュッ!!

転「っ…!」チッ

男(くそ…かすっただけかよ…)

転「……」タラー

ポタッ

転(さっさと負けを認めてもらおうと思いましたが…さすがに無理か)

転「戦いはまだ終わってない…そうですね、始まったばかりでした…やっぱまだ続けましょう」

転(とは言うものの、さっきのやつ(ガブリエル)とのダメージはまだ残ってる。どこまでいけますかね…)

男「……無限…飛刀!!」スッ

ブ ブ ブ ブ ブ ブ ブ ブ ブンッ!!!

転「!…見えないけど、なーんか嫌な予感…」

男「切り刻め!」バッ

転(切り刻む?…鎌鼬か!?)サッ

ズパ ズパッ!!!

転(…の…複数バージョンって…!)ブシュッ

転「…せっかくの服が…またズタズタだ…」ザザァ

男「!」

転「…近距離なんで遠慮しませんからね!」グッ

転「はぁっ!」シュッ

男「っ!?」バッ

スカッ

転(惜しい…!もう少し低ければ…)

男(危ねぇ…!もう少し低ければ…)

転/男(次は 当 て/た る!! )

転「背中っ!」ブンッ!!

男「!!?」

ドゴッ!!!

男(ぐ…よりによって蹴りかよッ…!)

ザシャッ

男「う…」ズキズキ

男(痛い…重い…)

男「…!」ハッ

転「遠慮しないって言ったでしょう!!」グオッ

男「え…高気砲(エアバースト)!」バッ

ボッ!!!!

転(足を…!?く…まさかこのタイミングに合わせるとは…!)ドサッ

男「何食わぬ顔してスタンピングかよっ!このまま足を封じさせてもらうぞ!」ガッ

転「な…!させませんよ!」グッ

転「……手ぇ、放せッ!」ギュルンッ

男「お…!!?」グイッ

ベシャアッ!!

男(…尻着いた状態から『腕力だけ』で体をひっくり返した…!アリかよ!?)

転「私を嘗めんな!」ブンッ!

男「嘗めてねぇよ!」ブンッ!

ゴッ!!!

いくら天使の肉体とは言え…繰り出すのはただの人間

男の放った拳は、完璧なものにはほど遠かった

そして真正面からそれを弾いたテンコの白い手に

明らかな力量の差が現れていた

男「お…おおおおぉ!?」バシィ!!!

男「押し負けた…!いや…そもそも力比べにさえなってない!」

転「ずいぶん簡単に弱音を吐きますね…私を嘗めるなって言っておいたのに」

男(こっ…こいつここまで……!!)


男『お前そんなめちゃくちゃな筋トレよくやるよなぁ…』

転『めちゃくちゃじゃありませんよ。効果あるんですよ』

男『ホントかぁ?』

転『疑ってるんですか?いいですよ、あなたの体で試してみましょう』

男『いやいやいやそれはいいって!!』


ここまで強い…!!


男「はぁ…はぁ…!」

拳二つが繋がった途端

まるで走馬灯のように、二年前の記憶が男の脳内を巡っていった

男(分かってる…強いんだ…こいつは強い…でも…)

男(それでも俺は…)

男「…うおおおおっ!!」ブンッ!!

転「またですか…はっ!」シュッ

バキッ!!

男「ぐぅっ…!!」ズキンッ

転「なんなら両手が砕けるまで続けますか?」

男(それでも俺は…!)

男「はぁ…はぁ…上等…だ!!」ブンッ!!!

転「懲りません…ねぇっ!」ブンッ!!!

ゴッ!!!

男(それでも俺は…!!)

…チッ

転(!『軸』がズレた…!?)

男「ぉおりゃああああっ!!!」

ドッ!!!

転「……う…!?」

男(…負けたくない…!!!)

ホントに少なかったですが、今日はここまでにします
この男VSテンコ、短期決戦の予定です
…って言うか次で終わる…?

乙!!

熱いあついぞおおおお乙

男「入った…!」

転「ぐっ……!?」ザザァッ

男(倒れない!)

転「……っふ」

転「侮ってましたよ。なかなかいい拳持ってるじゃないですか」

男「…負けられないからな…」

転「それはこっちも…」グッ

転「同じですよ!」シュッ!!

男(…!さらに速い…!)

転「はぁっ!」ギュルンッ

男(蹴り…なら!)

男「高気砲(エアバースト)!」バッ

ボンッ

転「!?」グラッ

転(軸足の方を…)

男「決まった!」

転「まだ…です!」バンッ

男(手で止まっ…)

転「我流…カポエイラ……風キック!」グッ

男「!!?」ドスッ!!!

転「こういうのを…決まったって言うんですよ!」スッ

男「が…っ」ザシャアッ

転「さて…しばらくは息苦しいの続きますよ…まだやりま…」パンパン

男「……!」ギロッ

転「っ…すいませんね…この質問はなしでした」

転(もうこれ以上やっても折れないか…今のはそういう眼だ)

男「はっ…はっ…」

男(蹴りがまるで突き刺さるように…くそっ…マジで痛ぇ…)

転「…悪いですが起きるまで待ったり…しませんよ!」ブンッ!!!

男「だろう…な…」スッ

男「飛天来(エアフロウ)」ボフッ!!

フワッ

転「また…ふわふわふわふわと…!」イラッ

男「これだけが取り柄でね…!」ニヤッ

転「いい加減…」シュッ

転「鬱陶しいんです…よ!」バッ!!!!

男(飛び蹴り!?)

転「これは防げないでしょう!?」ギュオオオオオッ!!

男「いや防ぐ!」スゥッ

転(?腕を引いた…まさか)

男(拳に風を…集める!)ギュウウウウウンッ

転「カウンター!?」

男「カウンター!」シュッ


バシンッ!!

転「!!?」ビリビリ


転(私の蹴りが弾か…)

転(!?いや、それだけじゃない…まだ生きてる!)

男「名付けて…空握拳(エアナックル)!」ゴォッ

ドォンッ!!!

転「…!!」


これは…似ている…

私の『不可視の力撃』に!

転「っああああああ!!!」ビキィ!!!


男「あのときは何もできなかった…悔しかったんだ…でも…」

男「今なら…この力なら…お前に届く!」


転「ふっ…ふぅー…!」ズキンッ

転(呼吸ができない…!?)

転(まさか…私の周囲の空気を大量に奪った…!?)


男が放った「空握拳」は、別にテンコの技をモチーフにしているわけではなかった

ただ一度、能力訓練中にゼルガが話した「お前は空気を拳に纏わせて使っていた」というのを再現しただけにすぎないものだ

しかしその威力は凄まじく…殴っても拳は止まらず、さらに敵の周囲の空気を巻き込んで炸裂する!

が、そんな強烈なものを放って、殴った拳が無傷で済むはずなどあり得ない…

男「っ…」ズキィ!!

男(まるで巨岩を全力で殴ったような痺れ…!強いが…何度も使えば拳が砕ける!)

男(高気砲以上…『アレ』以下ってとこか…)

このとき男は全身に鈍痛を感じていた…だが…

既に一戦交え傷だらけだったテンコの肉体は、それ以上の痛みに襲われていた…

転(痛い…熱い…!肋骨でも折れたかな…)ズキズキ…

転(呼吸はやっとマトモに出来るようになった…でも…)

転(痛い…!!)

ところどころを刃物に刻まれ、巨大な拳で殴打された先の戦い

そこに追い討ちをかけるように、腹部に強烈なのを二発…

もはやテンコは、戦いを次の段階に移さざるを得なかった

転(痛い…)

転(痛い…)

転(…この…痛みを…)グッ…

転(飼い慣らす…!)パチッ

男「!?」ハッ

転「さぁ続けましょうか!」ズオッ

重力修行が生み出したのは仮想解束だけでなく、本来は耐える力であった

痛みを…感覚を無理やり誤魔化して戦う!

男(!?効いてない…ハズがない…!いくらあいつでも今のは…)

転「……!」ゴフッ

男(やっぱり効いてる!?…どっちだ!)

転「う…ぐ…」ピタッ

転「神の…見えざる手(インビジブル・ハンド)」クイッ

男「?……あ…!?」クンッ

男(しまっ…!!)

転「はあああああああっ!!!」グッ

バキッ!!!

男(見えない…)

男(手…)ドサァ


転「はぁー…はぁー…」

転(とうとう…使ってしまった…)

指輪を奪われたテンコだが、地獄兵器がないと使えないのは『バイ・セカンド』だけである

つまりこの能力の使用は何も問題ないのだが…

転(しまった勢いで…使っちゃった…能力…)

無理に無理を重ねて能力まで使用…

それはまさに自殺行為であった

とどのつまり、テンコは限界寸前

転「け…けっちゃく…を…」ガクガク…

転「さっさと着け…ましょ…う…!」スッ…

その決着を急ぐしかなかった

男「決着か…そうだな」

男「もちろんやってや…」

男「…る…?」


ボヤァッ…


重い拳が脳にダメージを与えたのか

はたまた別の理由か…

男(あ……そうか…お前は…)

不意に男の眼前に、もう一人悪魔が現れた

かつての『テンコ』

男(テンコ…なんだ…)

同じ存在であることを確認させるように、二年前に見た姿は今の彼女とそのまま重なり

男はその向けられた手のひらに、懐かしさすら感じていた


転(なんだ…?動きが止まった…チャンスだ!狙いは…)

転(肩!)


男「なぁ…」


転「!」ビクッ


男「もうやめないか…?」ツー…


転(え…?泣いて…)

転「何を言ってるんですか!?あなたが天使なら…野放しにしておくわけにはいきませんよ!!」

男「……そうだな…そうだ…」

男「俺は…天使だ…」ボロボロ

転(だからなんで泣いて…)

転「!」ハッ

ズオオオオオオオオオオオ…

転(これは…ヤバい…凄い量の力が集まってる…)

男「俺は…天使だ…」

男「………」


ゼルガ『…いいか、α。お前はあれを撃ってから今まで、六時間気絶しっ放しだった』

ゼルガ『肉体の疲労、精神力の急な消費…あの技一つで、お前は戦闘不能の状態に陥ったんだ』

ゼルガ『ここが戦場なら、お前はもう死んでいる』


男(まさに今だな…でも…)


ゼルガ『あの技は…ほぼ『一撃必殺』と呼んでもいいほどの破壊力を持っている。しかし、リスクが大きすぎるんだ』


男(…この技じゃないと…)


ゼルガ『あの技はもう使うな』


男(勝てない…!)

オオオオオオオオオオ…


転(木の葉が舞ってる…まるで彼を中心に木枯らしが巻き起きているような…)

転(ダメだ…これはダメだ…!生半可な攻撃じゃ凌げない!)

転(ならもう…やるしかない…)

転(全力で!全力を潰す!)ググッ…

転(でも)

指輪なしで撃てるのか!?

『不可視の力撃』!!


男(俺の)

転(私の)

最強の技…!

ザザザザザザザ…

男「……」ギギギギギギ…

男(腕がねじきれそうだ…それだけの回転…空気の渦…)

男(撃てば空っぽになる…下手したら…)

男(死ぬ…!)


転(指輪なしで『不可視の力撃』…私の中の精神力を全部出し切れば…!)

転(でも…ここで撃てても、この後の戦いは……)

転(…いや…もういい…)


男「いくぞ…」

転「…こっちこそ」


ビリ…ビリ…

ビリビリビリ…!!!


男「空・来・転…」スッ


転「…不可視の力撃!!」ダンッ!!!


男「超…」ギィィイイイイイイイン!!!!


転「はぁああああああっ!!!」ブンッ!!!


男「……」ニヤッ

男「…撃て…ろ……こ…」


転「!?」


ドッゴォン!!!!!


転「……あ…」


男「……」ゴボッ

転「…なん…で」


ザザザザザァッ

男「……」


転「なんで…撃たなかったんですか!!?」


男「……」パクパク

男(……声も出ねぇか…)


転「あなた…私が撃った瞬間…言いましたよね…」


男『撃てるわけねぇだろお前に…テンコ…』


『テンコ』


転「なんでその名前を知ってるんですか…あなたはいったい誰なんですか…!?」


男「……」

男「………」パクパク

転「…え…?」

(さ…き…に…い…け)

転「……っ!」

そうだ…クロ…イン…シロ…

私の目的はこんなところには…


転「……でも…」

転(…こんなにっ)クルッ

転(こんなに気分の良くない勝利は…初めてだ…!)ギリッ

ザッ…ザッ…ザッ…



男(ダメだなぁ…俺は)

今日はここまでにします
テンコVS男、終了です
読み直したら改行多すぎわろえない…


※空握拳(エアナックル)と空纏殴(エアナックル)に関する訂正

忘れっぽいので覚えてませんでしたが、レトル戦で同じ読みをする技を出していました
今回出た『空握拳』は『空纏殴』の強化版(というか完全版)ってことで納得しといてください
レトルに使った時は今回ほどの威力はありませんでしたし…

乙できるわけねぇだろお前に……テンコ……

感動した
痛みに耐えて
よくやった
おつ

テンコが立ち去ってから、男はずっとその場に横たわっていた

今、この世界でもっとも惨めで愚かなのは自分だろうと思い

もうこのまま、死んでしまいたかった


男「…………」


顔の上に手を置いても、涙は止まらない


男「……なに…何を…」

男「何…やってんだ…俺の馬鹿…」

男(俺はなんであいつを倒せなかった…)

男(あそこで撃つのを止めなければ…勝てた…多分)

男(なのになんで止めたかな…俺…)

男「……」

男(俺はなんのために戦ってたんだっけ…)

男(……そうだ…俺が天使で…あいつは悪魔だから…ここが戦場だから…)

男(……でも)

男「撃てなかった」

男(これって…なぁ…ホント…)

男(俺がなりきれてないってことだろうが…天使…)

男(…でも)

男(俺は最初から…セラフィムを倒すために動いてたんだから)

男(天使なんかじゃなかったのか…?)

男(俺はいったい、なんなんだ?)

男(何がしたくてここまで来て、何のために悩んでるんだ!?)


男(なんなんだよ…こんな…)

男(こんな思いをするために、ここに来たわけじゃねぇんだよ…!!)

男「…お…おおお…」

男「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



?「うるさいぞ」ビュオッ


男「!!?」

そいつは、まるで空を飛んでいたかのように

遥か高くから『落ちてきた』

?「……」スタッ

男「……!?」

?「……なんだお前は…?」

男「お…お前こそ…」ハッ

男「…敵か…!!?」

?「敵……」バサァ

男(!…あれ…)

?「敵…俺が?いや違うな…」

?「この戦争を終わらせるつもりではいるが」

男(こいつ…この顔…どこかで…)

男(誰だっけ…見たことある…見たこと…)

?「その格好、天使か…」

男(格好…そうだ…あのマント…)

男「……あ!」

?「……なんだ」

男「お…おま…え…っ」パクパク

?「……?」

男「あのときの…ろ…」


男「上級悪魔…ロキ…!!」


?「…元、だ」

男「…なっ…なんで…なんで…!!?」

ロキ「……ふん」

ロキ「その反応は…単に俺に怯えているってわけじゃなさそうだな…」グイッ

男「っ!」

ロキ「…お前、誰だ」

男「…う……」

ロキ「答えないなら…それでもいい」ブンッ!!!

男「なっ…」フワッ

ロキ「元通りに寝かせてやる」ヒュッ…

男「ちょっ…待った!!」バッ

ロキ「……」ピタッ

男「うおあ!!」ドシャッ!!

男(くっ…痛ぇ…テンコの攻撃のダメージがでかすぎる…)

ロキ「…待ったぞ」

男「おっ、俺はっ…天使だ…!」

ロキ「だろうな」

男「だけどお前に…会ったことがある…」

ロキ「…なに?」ピクッ

男「…分からないと思うけど…」

ロキ「顔をよく見せろ」グイッ

男「わっ…!!?」

ロキ「……」ジィーッ

男「……」

ロキ「…覚えがないな」ポイッ

男「っ!」ドサッ

ロキ「…戦えるようには見えん…とっとと失せろ」

男「…待て…待てよ…お前」

男「お前、人間と戦ったことってあるか…」

ロキ「人間……?」

男「悪魔と人間…ペアと戦ったことあるだろ!」

ロキ「……確かに、ある。が、それがなんだ?」

男「俺がその人間だって言ったら信じるか」

ロキ「…!」カッ

男「…!なんだよ…」

ロキ「お前…」ズカズカ

ロキ「その眼!」

男「……眼…?」

ロキ「さっきは気づかなかったが…よく見ればなんだ…『神具』か、それ」

男「…?」

ロキ「そうか……あの時の人間か…覚えているぞ…」ニタァ

男(……あれ…俺これ殺されるんじゃね…?)

ロキ「くっくっ…くくくくく…」

男「なに笑ってんだ…」

ロキ「いや…まさかこんな面白いことになっているとはな…」

男「?」

ロキ「かつて一度戦った人間と…天使になって再び出会う…まぁ…あり得ないだろうが」

男「な…信じてねぇな…!」

ロキ「いや信じてる…その眼を見てすぐに理解した」スッ

ロキ「まったく向こうの神は…何がしたいのかどこまでも掴めない」

男「??」

ロキ「それで人間…お前はそこで何をしてる?」

男「何って…倒れてたんだよ」

ロキ「悪魔にやられたのか?」

男「……」

男「そうだ。悪魔にやられた」

ロキ「……今、視線が泳いだな」

男「!」

ロキ「嘘ついたか?」

男「う、嘘はついてない!」

ロキ「じゃ、なんだ…」

男「…戦ったのは…テンコだ…」

ロキ「テンコ…」

ロキ「…ああ…あの時の悪魔か…なるほど…」

男「なるほどって…お前あいつにやられたんだぞ!」

ロキ「やられた…?…そうだったか?…どうだったか…よく覚えてないな」

男「な…なんだよそれ…」

ロキ「まぁそれはいい…問題はそこじゃない」

ロキ「…お前も面倒なことに巻き込まれてるようだな」

男「…は?」

ロキ「そっちのボスは本気なんだろう?ただの人間に神具まで使うとはな…」

ロキ「お前の実力は分からんが…利用されるのは楽じゃないだろ」

男「なんなんだよその…じんぐ?って…」

ロキ「!…言い過ぎたな。知らないなら知らないでいい」

男「気になるんだよ…」

ロキ「……まぁいいだろう少しくらい…知ったところでどうにかなるものじゃない」

男「……」

ロキ「『神具』とはその名の通り、神の道具だ。神が作り出し、神のみが使える特殊な道具」

男「特殊な道具…」

男「!…俺を天使の身体に移したあの目玉って…」

ロキ「くく…わざわざ言わなくても分かったな」

ロキ「…お前、その眼を鏡でよく見てみろ…銀色の印が付いてる…『それ』の証拠だ」

男「神具…そんなもんが…」

男「あ、じゃあ、あいつは神ってことなのか?そもそも神っていったいどういう存在…」

ロキ「質問するな」

男「な…」

ロキ「俺もそう暇じゃないんでな…今だってわざわざ立ち止まってお前の相手をしてるが…」

男「忙しい…?」

男「お前も戦ってるのか…天使と…!」

ロキ「いや、まだ戦っていない」

男「まだ?開戦から何時間も経ってるぞ…お前みたいな強い奴が何をして…」

ロキ「俺は暇だが、あいつはこれから忙しい…その手伝いだ」

男「??あいつって誰だよ?」

ロキ「それは言えない」

男「っ…じゃ、お前は何者なんだ!?」

ロキ「『元』上級悪魔のロキだ。お前もさっき言ったろう」

男「今は!?」

ロキ「……」


ロキ「ヘルアクロウズを知ってるか」

かなり短いですが、ここまでにします
最近はメモ帳に書いてからまとめて投下してるんですが
これだと1レスの量がバラバラになっちゃうんですよね…
スカスカなレスはなるべく減らすように努力します…

スカスカでも面白ければいいじゃない


スカスカだろうと、びっちりだろうと、好きなように書けば良いよ

男「ヘ…ヘルアクロウズ…?」

ロキ「知らなくて当然だろうな」

男「なんなんだよ、それ」

ロキ「テロ組織だ」

男「てっ…テロ!!?あんたテロリストだったのか!?」

ロキ「そういうことになるな」

男「もしかして、この戦争に乗じてテロを起こす気なんじゃ…!?」

ロキ「……」

ロキ「そういうわけではない…」

男「な、なんだよ今の間は」

ロキ「俺は今、ヘルアクロウズを離れて行動している」

男「離れて…?」

ロキ「だから向こうで倒れていたメンバーたちを救うこともない」

男(!!おっさんが戦ったあの悪魔達も、その組織のメンバーなのか…!)

ロキ「あいつらは…そうだな…確かにこの戦争の中で王族を潰しにかかるだろうが」

ロキ「俺はまったく、別行動だ」

男「…あんたの…あんたの部下のせいで…おっさんが…」

ロキ「知ったことか…」

男「あんたは敵だ!」バッ

ロキ「……拳を向けたな」

ロキ「その天使の肉体、いったいどんな能力を持つかは知らないが…」

ロキ「俺の能力はすでに知っているはず…それでもその拳を向けるのか?」バサァ…

男「くっ……」

ロキ「…だいたい…お前、強いのか」

男「……!」

男「……分からない」

ロキ「…それは自信がないということか」

男「分からないんだ…俺…この身体と能力を手に入れてまだ数日なのに…もう力を使いこなせるようになった…」

男「この戦いでも…何度も勝ってきた…」

男「でもあいつに…テンコに負けて…分からなくなったんだ」

男「俺は強いのか、弱いのか、って…」

ロキ「少なくとも、本当に強い奴は自分の強さを疑ったりしない…」

ロキ「が…慢心が敗北に繋がるのも確かだ…」

男「じゃあ…」

ロキ「結局、自分の強さを知るには」

ロキ「戦う以外に手段はない」

男「……だろうな」スッ

ロキ「…立ち上がるのか」

男「あんたと戦う」

ロキ「……違う」

男「…え?」

ロキ「戦う相手は俺じゃない…お前自身だ」

男「俺…?」

ロキ「別に俺が戦うのは問題ない…時間に余裕がある訳じゃないが、お前相手に苦戦するとは思わない」

ロキ「だが、今お前が戦うべき相手はお前なんだ。お前の迷いと戦えるのはお前だけだろう」

男「迷いと戦う…」

ロキ「迷いを抱えたままじゃ強くなれない…迷いから抜け出したときにはじめて、強くなれる」

ロキ「だから、戦え」

男「……」

男「分かった…」グッ

ロキ「……」

男「……」

男「…うん」

男「…やっぱあんたと戦いたい」

ロキ「まぁそうなるか…頭より身体だ、正直なのは…」

男「でも一つ…ハンデが欲しい…」

ロキ「能力を使うな、か」

男「ああ…俺はこの戦いに命をかける気なんてない…けど、勝ちを捨てるわけでもない」

ロキ「みっともないように聞こえるが…お前自身にけじめをつけるための戦いだからな…好きにやらせてやる」バサッ

ロキ「マントは捨てた…これでいいな」

男「ああ…」

男「ありがとう!」シュッ!!!

ロキ「……」スッ

パシッ

ロキ「礼なんてするな」ブンッ

ゴッ!!!

男「……!!」ドサッ

ロキ「……終わりでいいな?」

男「やっぱ強ぇなあんた…この身体になっても、めちゃくちゃ痛い…」

ロキ「お前が傷を負っているというのも一因だろう」

男「でも…強い。衰えなんて一切ない…」

ロキ「……そうだな。俺の身体は衰えない」

男「?」

ロキ「そしてもうじき、朽ちる」

男「……え…?」

男「朽ちるってなんだよ…どういう意味だ!?」

ロキ「朽ちる。そのままだ」

男「し…死ぬってことか…!」

ロキ「…教えてやる…強化型の寿命は、肉体改造を受けてから『20年』程度だ」

男「!そんなに短いのか!?」

ロキ「肉体的な劣化はほとんどないがな…そして…」

ロキ「20年など、もう過ぎた」

男「…じゃあ」

ロキ「俺はもういつ死んでもおかしくない」

男「……そう、か」

ロキ「だから今必死になって、ここまでやってきた…」

ロキ「悪いがそろそろ行かせてもらうぞ」

男「…分かった…足止めして、悪かったよ」

ロキ「……」

ロキ「最後に…せっかくだから聞いておいてやる」

ロキ「答えは出たか?」

男「……ああ」

男「俺はあのときから変わってない…あんたに勝てないままだ」

ロキ「強くない、と?」

男「いや、たぶん…」

男「俺は別の強さを持ってるんだと思う」

ロキ「……それが答えか」

男「答えっていうかなんというか…とりあえず、やることは決まった」

ロキ「なんだ?」

男「戦争を止める」

ロキ「なぜだ?」

男「俺が人間だから」

ロキ「ふん…もう非力じゃないだろうが」

男「それでも俺は」

男「おっさんとレトルに感謝してるし」

男「テンコの敵にはなりきれなかったし、セラフィムは倒したい」

男「この我が儘を通すには、人間がちょうどいい」

ロキ「……勝手にすればいい」バサッ

男「…なぁ」

男「あんたもそうなんじゃないか?」

ロキ「……」

ロキ「俺は悪魔だ」

男「でも俺と同じで『どっちつかず』なんじゃないか」

ロキ「……いい線行ってる…かもな」

男「……」

ロキ「セラフィムを倒しに行くなら、黄の城へ向かえ」

男「分かってる。あんたも黄の城に行くんだろ」

ロキ「…誰もが、導かれているんだ」

男「何に?」

ロキ「神に…」グググッ…


ダンッ!!!!


男「……速ぇな、もう見えなくなっちまった」


男「…さて」ヨロッ…

男「行く…か」ザッ



ビュオオオオオ…

ロキ「……」バサバサッ
※ロキは飛行能力を持たないが、超跳躍による長時間滞空が可能

ロキ「!」

ロキ(あれは…)


テンコ「…はっ…はっ…」フラフラ…


ロキ「黄の城まで歩いていくつもりか…その身体で…無茶をする」

ロキ(……俺もそろそろ)

ロキ(死ぬほど辛い無茶をする時か…)



黄の城へ続く道

セラフィム「……ふふふふ。来てるな」

スローンズ「強そう…」

ケルビム「…そろそ『ロ私ガ』出てもい『イ頃ダロ』う」

セラフィム「…疼くか?」

ケルビム「あ『ア』…」

今日はここまでにします
前回よりも少なくなってしまいました…

そろそろ上位天使の出番が来そうです

?「………」

?「…駄目です、エレカ様。センリ様、ジーク様共に連絡が取れません…」

?「恐らく交戦中かと…」

エレカ「……だろうね。それも、かなり強い相手と…」


黄の城・屋上


エレカ「ヘイセ、もうあの二人はいい。それより彼らの方は?」

ヘイセ(エレカの側近)「それが…未だに反応が…」

エレカ「…そうか」

エレカ(やはり彼らに期待はできない。名目通りの仕事を果たすような連中じゃないか…)

エレカ「……では、ラインは?」

ヘイセ「……未だ健在です」

エレカ「後どのくらい…保つと思う?」

ヘイセ「天使勢が何体でやって来るのか分かりませんが…そう簡単には崩せないかと…」

エレカ「……そうかな」

ヘイセ「……!!エレカ様!来ました!」

エレカ「……!」

ヘイセ「天使で……え?」

エレカ「…どうした?」

ヘイセ「いえ…天使のはず…なんですが…」

ヘイセ「見たところ…数人だけしか…」

エレカ「……貸して」スッ

エレカ「……」ジッ

エレカ「…そんな」


エレカ「たったの4人…?」


黄の城へ続く道

セラフィム「……」

セラフィム「ここまでのんびり歩いてきて…ずいぶん平和と思っていたら…」


ゾロゾロゾロゾロ…

兵士たち『…来たな…天使…!』


セラフィム「ここ一点に固まってたのか」

アルカイ(影薄いけど第七位。一応…)「くくく…ずいぶん群れてる…アホかよこいつら」

ケルビム「だいた『イ…300人ト』言ったと『コロ』か」

スローンズ「………虫…小虫…蟲…」

スローンズ「………鬱陶しゴホッ」ボタボタ…

セラフィム「おい…こんなところで無駄に血ぃ吐くな。じっとしてろ…」

スローンズ「……」ゴシゴシ

セラフィム「で…お前らぞろぞろ揃って…今さら足止めか?」

兵士たち『ここから先へは一歩も…』

セラフィム「行かせん!とか言うなよ。自粛しろ、殺すぞ」

兵士たち『!!!』ビクゥ

セラフィム「…わざわざ俺たちがここまで来るのを待ってたのか」

兵士たち『そうだ!』

セラフィム「別のルートから来てたらどうするつもりだった?」

兵士たち『甘いわ!城の前方に我々兵士350人!左右にそれぞれ300人ずつ配置してある!』

兵士たち『間もなくこちらにやってくるぞ!』

セラフィム「足しても…1000人いないのか。少ないな」

兵士たち『なに?』

セラフィム「足りねぇよ。ここまでつまらないほどスムーズに進んでこれて、やっと出てきた敵が1000人かよ」

セラフィム「しかもそのうちの半分以上が『間もなくやってくる』って…お前ら」

セラフィム「ふざけんな」

ズオッ……

兵士たち『……!!!』



黄の城・屋上

ヘイセ「なぜ…なぜあいつら攻めないんだ…!」

エレカ「……」

エレカ(中心にいるのは、熾天使セラフィム…まるで翼を思わせる純白のマント…遠目でも分かる)

エレカ「300人で…どれだけ保つ?」

セラフィム「おい…今…一歩でも退いた奴…いるだろ」

兵士たち『!!』

セラフィム「そういう奴はさっさと逃げた方がいいぞ…いやマジで…」

セラフィム「残ってる奴は一人残らず殺す。さすがにお前ら程度じゃ楽しみようがないから…そうだな…」

セラフィム「指一本で」ザッ

兵士たち『……!!』

ドヨドヨ…

セラフィム「逃げないってことは、いいんだな?まぁ…そうだろうな。面子ってのがあるしな…」ザッ

兵士たち『う…うわあああああああああああ!!』



ヘイセ「!兵士たちが一斉に攻撃を…!」

エレカ「…!貸して!」バッ

エレカ「………」ジッ

エレカ「…あれ」

ヘイセ「……エレカ様?」

エレカ「…ヘイセ…この双眼鏡は壊れてないはずだよね」

ヘイセ「?もちろんです…私が今の今まで何の問題もなく使っていました…」

エレカ「そうか…じゃあ…」


エレカ「兵士はどこに消えた?」


ヘイセ「…は…!!?」

エレカ「そんな顔する前に…自分の目で確かめてみなよ」スッ

ヘイセ「……」

ヘイセ「…兵士が…いない」



セラフィム「……ふぅううう…ああつまらなかった…」

ケルビム「本当に…一『人残らズ容』赦なく…殺『シタ』な。気『ノ毒』に」

スローンズ「……退屈」

セラフィム「もうこうなれば…残りの600人の兵士とやらを待つ必要もないか…」

セラフィム「さっさと進むぞ…ちょっとイライラしてきたし…早く」

セラフィム「早く見たいんだよ…俺の『兵器』…」

アルカイ「……」

アルカイ(しかしさっきから…気配だけちょろちょろ感じる…)

アルカイ(化け物が何人か集ってきてる…熾天使様は無視してるのか?…ぶつかるのも時間の問題だな)

スローンズ「…退屈、退屈、退屈、退屈…」ブツブツ…

エレカ「…進行を再開した…」

ヘイセ「嘘だ…こんなことが…兵士たちが一瞬で消えるなんて…」

エレカ「……」

エレカ(一瞬、か)

エレカ(私がヘイセから双眼鏡を借りた、その時に)

エレカ(一撃で全滅させたとしたら…)

エレカ「どうやら『最強』というのも、あながち嘘ではなさそうだね」

エレカ(そしてこちらの駒はまだまだ足りない…あの天使たち…熾天使以外の三人が『どれ』なのか分からないけど)

エレカ(まずいな…)


エレカがそう危惧する一方で、肝心の戦局はどうなっているのかというと…


第一位・第二位・第三位・第七位・第八位(の一人)…進行中

第四位・第五位…戦闘中?

第六位・第八位(うち三人)…死亡および戦闘不能

第九位…大半は侵略中。しかしいくつかの隊は壊滅


確かに芳しくない


が…

セラフィム「……」

セラフィム(…追ってきてる。明確に…俺たちを『潰すべき敵』と見なしてる奴だ)

セラフィム(しかもそこそこ早い。城に入れないつもりか…)

セラフィム「おいレジエル」

ケルビム「ああ。分か『ッテイ』る」

セラフィム「よかったな。やっと仕事だ」

ケルビム「……待『チ伏セ』るか?」

セラフィム「いや…どんな奴か見てみたい…こっちに追い付いたら、後はお前に任せる」

ケルビム「…『了』解」

スローンズ「………」カチカチ

セラフィム「クレセリア…お前はまだだ…」

スローンズ「………退屈」カチカチ

セラフィム(気持ちは分からなくもない。それになにより、こいつが素直に言うことを聞くわけないからな…)

セラフィム「じゃあこうしよう…城に着けば大勢の兵士が迎えてくれる。お前はそれを全部殺す役だ」

スローンズ「…………」コクン

セラフィム(…あとは…)

セラフィム「ネイズ。お前のやることは分かってるよな」

アルカイ「もちろん。最初から役割があったのは俺だけだし…」

セラフィム「……じゃ、お前ら」

セラフィム「気は抜くなよ。まだ大事なことは何もしてないんだからな…」

セラフィム「……なぁ」チラッ

セラフィム「お前も」



エレカ「……!?」バッ

エレカ(目が…合った…!!?)


セラフィム「……」ニタァ

セラフィム「楽しくやろうぜもっともっと…お互いに」

今日はここまでです
急遽考えて足した話なので、ややテンポが悪くなった気が…
今週中にまた更新したいです

ところで、天使たちの位、名前、そろそろ一致するようになりましたか?
たぶんもう『位だけ』か『名前だけ』でしか書きませんので、分からなくなったら第三章をご参照ください
天使のテンプレを怠ったのはごめんなさいです

乙!
一致しなくても面白ければいいと思う
そう思うだろお前も

乙   乙
 乙 乙  

エレカ「はっ…はっ…はぁっ…!」ドッドッドッドッ

エレカ(動悸が収まらない…双眼鏡越しに目があった…あの威圧感!)

エレカ(まるで分厚い壁のような気迫がこちらに寄せてきて…押し潰されるかと思った…)

エレカ「はぁー…はぁー…」

エレカ(怯んでいる場合じゃない…!)キッ

エレカ「…ヘイセ!奴らはもうじきこの城に来る!急いで兵士たちの配置を!」

ヘイセ「すでに完了しております!」

エレカ「分かった…あと…」

エレカ「『カデナ17』の配置を変更。全員をこの屋上に集めて!」

ヘイセ「……はっ」

エレカ(…たぶん…もう普通の兵士じゃ足止めにならない…ならば…)

エレカ(カデナ17を…王族護衛隊から選りすぐった部隊長たちを『手元』に置いて、使うしかない)

エレカ(城は…たぶん駄目だろう。やはり彼との一戦の修繕も終わらぬうちから天使に仕掛けられたのがまずかった…)

エレカ(兵力が足りない!圧倒的に…!!)

ヘイセ「エレカ様…エレカ様!」

エレカ「…!?」ハッ

ヘイセ「双眼鏡をご覧になってください!」スッ

エレカ「!……」ジッ

エレカ「あ…」

ヘイセ「何かが天使たちの所に近づいています…凄い速さです!」

エレカ「あれは…あのとき私のところにやってきた、マントの…!?」

エレカ「……!!」バッ

ヘイセ「…エレカ様?」

エレカ「そうか…そうだった…彼も…」

エレカ「上級悪魔…!」

黄の城へと続く道

セラフィム「思ったより早く追い付いてきたな。一人で通せんぼか?」

セラフィム「お前が誰かは知らんが…」

ロキ「俺はお前を知っている」バサバサバサ…

セラフィム「…なかなか、強そうだ」スッ

セラフィム「レジエル」パチンッ

ケルビム「……」ググッ

ケルビム「始『末ス』ル!」グオッ!!

ロキ「……」スッ

ロキ「雑魚に用はない…!」


ドンッ!!!


ケルビム「……!!!」ブワッ

ドシャア

セラフィム「…レジエルを掌底一発で吹き飛ばすか。見かけによらず力があるみたいだな」

ロキ「お前に」ザッ

セラフィム「!」

ロキ「話がある…!」ヒュッ

パシッ

ロキ「……!」

ケルビム「…『マズ』は俺を『倒スコ』とだ『ケ考エ』ろ…」ググッ

セラフィム「そういうことだ…」

セラフィム「話は…またオレニ追い付いたら聞いてやる」

スローンズ「……頑張って…強い人…」

アルカイ「くくく死ね!死んじまえ!」

スタスタ…


ロキ「……」

ケルビム「……」グググ…

ロキ「お前、何位だ?」ギギギ…

ケルビム「…『二位』。智天『使ダ』グググ…

ロキ「そうかそれは…奇遇だな…」ギギギ…

バシッ

ケルビム「!力ず『クデ』逃れ『タ』…」

ロキ「俺も…」スッ


ドゴン!!!

ケルビム「!!!?」グラッ…

ロキ「…『No.2』だ」

ケルビム「…『く』…俺を『イトモ簡』単に『蹴リ倒』すとは…」ガクンッ

ロキ「いや…蹴り『飛ばす』つもりだった。よく耐えたな」

ケルビム「…嘗め『テクレ』るな…『No.2』だと?何『ノ数字』だ」

ロキ「しがないテロ組織の…たいした意味のない序列だ」

ケルビム「…テロ組『織ダト』…?」

ロキ「お前らは知らんだろうが…別にそれはどうでもいい…お前らを倒したいのは」

ロキ「俺自身だ!」スッ

ケルビム「ま『タ』…」

ロキ「……」ググッ

ケルビム「…掌『底』か?今『度ハ』防ぐ」バッ

ロキ「……」トンッ

ロキ「…渇ッ!!!」


ズ ズ ズンッッ!!!


ケルビム「……馬『鹿ナ』…ガードをし『タノ』に…!!!」ガクンッ

ロキ「ただ両腕で体を庇っただけだろう…効くかそんなモン」

ケルビム「足が…」ビリビリ…

ロキ「どうした…」

ロキ「まだまだ行くぞ」ザッ

ヒュオッ

ケルビム「!」バッ

ガキンッ!!!

ケルビム「…防『イダ』!」

ロキ「じゃあ」スッ

ロキ「もう少し耐えてみろ」ブンッ

ガキンッ!!ガキンッ!!!ガキンッ!!!!

ケルビム「……!!!」

ロキ「一発で駄目なら何発でも」シュッ

ケルビム「…『グ』う…!!」ビリビリ…

ロキ「次で折る」ブンッ!!

ブシュッ!!!

ケルビム「……」

ロキ「……」

ロキ「……ちっ」ドロッ

ケルビム「さす『ガ』に…効い『タゾ』今のは…」

ロキ(…腕がいきなり硬くなった…いや、それだけじゃない…何か刺のような…)チラッ

ロキ「この傷の感じは…」ボタボタ

ロキ「…『鱗』か」ギロッ

ケルビム「当た『リダ』…」

ロキ「……」ザザッ

ケルビム「!」

ロキ(無闇に攻撃するのはここまでだ)ボタボタ

ロキ「……」ギロッ

ロキ(…改めてよく見るとこいつ…不気味な風貌(ナリ)をしている)

ロキ(2m以上はあろう長身…肩幅も広く…俺の蹴りに耐えたところを見るとそこそこ重い…)

ロキ(あの太い長袖の中の…左腕に、鋭い『鱗』が並んでるわけか…恐らく、能力だな)

ロキ(しかし…それよりも何よりも…なんなんだ奴の着けている)

ロキ(あの不気味な『仮面』は…)

ロキ(あれのせいで、少しも感情が読めん。さっきまでの攻撃が本当に効いていたかも疑わしいな)

ロキ(しかし…これで『二位』…?本当にそうなのか)

ケルビム「ど『ウシタ』…脚『ガ痛』むのか…」

ロキ(その一言、『煽り』か『本音』か分からんな)

ロキ「脚なら…もう平気だ。血も…」スッ

ロキ「止まった」ピタッ

ケルビム「!!本当に止『マッテ』い『ル』…?」

ロキ(この程度の傷、『超速回復(ハイリカバー)』ですぐ治る…)

ロキ「お前こそ、わざわざ俺を攻撃してこないあたり、少々臆病なようだな」

ケルビム「…慎重『ト言エ』…」

ロキ(…いちいち感情が読めないから…ニュアンスが分からんぞ『頭に来てる』のか?)

ロキ「とにかく…攻撃を再開させてもらうぞ!」ダッ

ケルビム「…!」バッ

ロキ(鱗の腕…はもう狙わない…狙うのは…)

ロキ(手!)ブンッ!!

ケルビム「……!」スッ

ズズッ…

ロキ(!…なんだ…今)

ロキ(奴の手の『形』が変わった…?)

ロキ(……まさか、手も…)

ケルビム「……」ズズズ…

ロキ「!…くっ」ビタァッ!!

ケルビム「……『惜シ』い」

ガチンッ!!!

ロキ(…!!?)

ケルビム「…よ『ク見』てるな」ガチンッ

ロキ「…なんだそれは…」

ケルビム「…何に見『エル』…」ガチン!ガチンッ!!

ロキ「……」

ロキ「…鋭い牙の並んだ…生き物の『口』」

ケルビム「…ま『タ』、正解だ」シュッ

ロキ「…!」サッ

ガチンッ!!!

ロキ(これは『口』だ…何の生き物か分からんが間違いなく『口』…そしてこの牙の形状…かなり危険だぞ…)

ケルビム「…こ『レガ怖』いか」ガチン!ガチン!!

ロキ「…見たことのないタイプでな。正直焦ってる。ほんの少しだけだが…」

ロキ「…で」ギロッ


ロキ「手と腕を…その妙なのに変えるのが、お前の能力か」

ケルビム「…そ『ウダ』…名を『狂獣の顎(バンダースナッチ)』…!」ガッチン!!!


ロキ(…厄介な能力だ…一気にやりづらくなるぞ)

今日はここまでにします

ようやくここまで来れました『VS上位天使』
あとはもう少したくさん書けるようにしたいですね…

おつ!
No.2だって言ったところカッコいいわ



俺も乙って言うのが2番目だ……

ちょっと止まっちゃってます
いつもなら無理矢理にでも書いてけばなんとかなるんですが
先の展開を考えるとそろそろ勢いだけで書けません…
もうしばらくお待ちください…

了解!
間隔空くときは何か言ってくれる>>1は好きだよ

ぐぬぬ…
まだ書けぬ…まだ書けぬ…
せめて今週中に一度は書かねば…

1ヵ月も空いてしまいました
一応あらすじを…

ついに黄の城を目前に捉えた熾天使たち
しかしそこに立ち塞がったのは、元上級悪魔にして『ヘルアクロウズNo.2』のロキだった
迎え撃つ《天》九階位・第二位ケルビムは左腕を化け物の『口』に変える能力を使い…

ロキ(厄介だあの左腕…どう対処する…?)

ケルビム「…こ『ノ腕』が怖『イ』か?」スッ

ロキ「……」

ケルビム「そ『ウカ』…怖い『カ』!!」シュッ

ロキ「…ちっ」バッ

ガチンッ!!!

ロキ(回避に専念するか…)ザッ

ロキ「……!」ピクッ

ケルビム「避けら『レル』ものな『ラ避ケ』てみろ!!」シュッ

ギュバババババババババッ!!!

ロキ(連続で…)

ガチッ ガチ ガチ ガチ ガチ ガチ ガチ ガチ ガチ ガチ

ガチンッ!!!

ケルビム「……!」

ロキ「だがまだ遅い…」トッ…

ケルビム「すべ『テ避ケ』たか…よ『ク動』く…『イヤ』見切っ『タコト』を褒め『ルベキ』か」ガチッガチッ

ロキ「………褒める、だと?」

ロキ「お前…」

ケルビム「…?」

ロキ「なんで上から目線なんだ?」ヒュッ

ドゴンッ!!!!

ケルビム「……!!?」グラッ

ロキ「お前…俺を嘗めてるのか?」スッ

ガシッ

ケルビム「…『ム』…!?」ガクンッ

ロキ「膝を折って」ヒュッ

バキッ

ケルビム「!!」ドサッ

ロキ「深く謝れ」ブオンッ

ケルビム「か…『カカ』と落と『シ』…!」サッ

ガブッ!!!

ロキ「……」ブシュッ!!

ケルビム「馬鹿が、迂『闊ニ蹴リナ』ど使『ウカ』らだ!こ『ノママ食』い千『切ッテ』…」ググッ

ロキ「やっぱり嘗めてるだろ」ブンッ!!!

ブチブチッ…

ケルビム「…『ナ』、何故止ま『ラナ』い…!?」

ロキ「かかとのちょっとやそっと、くれてやる。ただし代償は…」グイッ

ロキ「相当でかいぞ」シュッ

ゴッ!!!

ケルビム「……!!」ゴキ ッ

ロキ「…そのふざけた仮面、砕いてやろうと思ったが…さすがに硬いか」

ケルビム「貴『サ…!」ブンッ!!

ガチンッ

ケルビム「!?消』え…」

フワッ

ケルビム「!…上『カ』!」

ロキ「もう当たらん」ブンッ

バキッ!!!

ケルビム「…ぐおお『アア』…!!」ピシッ

ロキ「ヒビ入ったか?まだまだ続けるぞ」スッ…

ケルビム「こ『ノ』…調子に『ニ乗ル』な…!」ヒュッ!!

ロキ「!」

ガチンッ!!!

ロキ(少し危なかったな…今…明らかに反応が速くなってた)

ロキ(顔を蹴られると分かっていたからか?)

ケルビム「た『ダ少』し力が強『イダケノ』…下等『ナ悪』魔が…!」バッ

ロキ「下等で悪かったな…」ザッ

ケルビム「…狂獣の顎(バンダースナッチ)!!」ギュオンッ!!!

ロキ(おい、伸びるのかソレ)サッ

カクンッ!!!

ロキ(…向きも変えられるのかっ)

ガブッ!!!

ケルビム「…腕!『喰ライ』ついた!!」グッ

ギリギリギリ…

ロキ「……」

ロキ「……ちっ」

ケルビム「…!…効い『テナイ』のか!?そ『ン』な馬『鹿ナ』!」

ロキ「…つい使っちまったか…」バサッ

ケルビム「な『ニヲシ』た…!」

ロキ「俺の能力だ」

ロキ「『バイ・セカンド』無敵の外装(インビンシブル ・アームズ)。このマントはあらゆる攻撃の『威力』をゼロにする」

ケルビム「……!!」

ケルビム「…『ナ』に…!?」

ロキ「それだけのものがあってなぜ今まで使わなかったか、って?」

ケルビム「!」

ロキ「答えてやる…これに頼ってたらイマイチ強くなれん気がして…」

フッ!!!

ケルビム「!?…さ『ラニ』速く…」


ドゴッ!!!


ロキ「……ここ2年間ひたすら能力なしで戦ってた」

ケルビム「……!」ヨロッ…

ロキ「それでも2年間マントを手離せなかったのは…俺が弱いからだろうな」

ケルビム「…『ヨク』…言う…そ『レデ弱』いなどと…」フラフラ

ロキ「そうだな…でもこれで…はっきりする」スッ

ロキ「効果があったかどうか…な」ググッ…

ゴッ!!!

ケルビム「…『ガ』はぁ………!!」ヨロ…ヨロ…

ドサッ

ロキ「タフな奴だ…これだけやって、ようやく1ダウンとはな」

ロキ「………だが勝てる」

ロキ「起き上がってこい…もう一度…ボロボロになるまで攻撃してやる」


ケルビム「………」スッ

ロキ(…右腕…?)


ドスッ!!!


ロキ「………!!」

ブシュッ!!

ロキ(これは……!!)

ロキ「……」ザザッ

ボタボタ

ロキ(クソっ腹を…刺された…!!…刃物を隠し持ってたか…!)

ロキ「…!?」

ケルビム「……」

ロキ「……な」

ロキ(なんだ…あれは…あの右腕は…)

ロキ(まるで…巨大な『爪』…)

ボタタタッ

ロキ「…ぐっ……」ガクンッ

ケルビム「…『痛』いか?」

ロキ「…なんだその…右腕は…聞いてないぞ…」

ケルビム「ああ。言『ッテナ』い」

ロキ「……両腕とも変える能力だったのか…」

ケルビム「…『イヤ』、違う」

ロキ「……なに?」

ケルビム「片『腕ズツ』…別の能『力デ変エ』ている」

ロキ「…片腕ずつ…?…別の能力…!?」

ケルビム「左腕は…『狂獣の顎(バンダースナッチ)』…」ズズズッ

ロキ「…!」

ケルビム「そし『テコノ』右腕『ハ』…」ギラッ

ケルビム「暴竜の爪(ジャバウォック)」

ケルビム「…『コノ二』つはそれぞ『レ別ノ』能力だ」

ロキ「…馬鹿な…なぜ…」

ロキ「なぜ『天使』が能力を二つ持っている…!?」

ケルビム「………」ググググ…

ケルビム「…暴竜の爪(ジャバウォック)!!」バッ

ギュオンッ!!!

ロキ「ぐぅっ…!」グッ

ロキ「おおおおおっ!!」ブンッ!!

パンッ!!!

ケルビム「!…『下カラ』打ち上げ『テ防グ』…一目で効『果的ナ対』策を打ち出『スト』は」

ロキ「また上から偉そうに……まぁいい…」

ロキ(くそ…なぜだ…なぜ天使が二つの能力を…そんなことあるはずがない…)

ロキ(…《天》九階位第二位…伊達じゃない…こいつには…)

ロキ(得体の知れない何かがある…!!)

ケルビム「…悩『ンデ』る暇が…」ババッ

ケルビム「…あ『ルノ』か!」ドシュッ ドシュッ!!!

ロキ(両方同時…!)

ケルビム「避『ケラレル』か!?『防ゲ』るか!?」

ギュオオオオオオオオオオオオオオ


ロキ「……」ダラン…

ロキ「…はぁっ」


オオオオオオオオオオオオオオオオオ

ケルビム「死『ネ』!!」


ロキ「すぅっ…」


オオオオオオオオオオオッ!!!!!


ロキ「…………喝ッ!!!」ババッ


ド バンッ!!!!


ケルビム「!!??……また…『マタ掌』低で…弾『キ返』し『タダトッ』」グラッ…


ロキ「……確かに…悩んでる暇はないな…俺は俺の出来ることをやるだけだ」

ロキ「…だがその前に、これだけ言っておくぞ」

ロキ「……てめぇが死ね」

今日はここまでにします
日付空けばたくさん書けるかというと、そうでもないようです…


パワーファイターが好『キナ』のでケルビム頑張れ

マダー?

ロキ「能力が二つ…厄介だ」

ロキ「だが、それがどうした」

ケルビム「……」

ロキ「お前をここで倒す。そのことに何も変わりはない」

ケルビム「…『ズイブ』ん余裕『ダ』な。少し『ハ探ロウ』としな『イノ』か?」

ロキ「探る?何をだ…正体か?」

ロキ「悪いが…俺にそんな暇はない……そして、お前にとってもな」

ケルビム「…どうい『ウ意味』だ」

ロキ「俺に構ってて平気なのか?って聞いてるんだよ」

ケルビム「…平『気ナ』わけが『ナ』い…せ『メテア』の城で戦『イタカッ』た」

ロキ「あの城、か…」

ロキ「…兵器が見たいんだろ」

ケルビム「!」

ロキ「兵器はあの城にある…今回の『戦争』の目的はそれの奪取」

ケルビム「…た『ダノテロリ』ストご『トキ』が…なぜそ『ンナコ』とを知『ッテイ』る?」

ロキ「妙だと思うか?なんてことはない…」

ロキ「俺も関係者だ」ザッ

ブンッ!!

ケルビム「!?…関係『者ダトッ』貴様は『何』者だ!」ヒュッ

ロキ「知りたければ俺を倒してみろ」

ケルビム「元か『ラソウ』す『ルツ』もりだ…」スタッ

ケルビム「『狂獣の顎(バンダースナッチ)』…砂喰らい(サンドイーター)!」ビュオッ!!!

ロキ「!!」バッ

ケルビム「跳『ンデ避』けて…そこか『ラドウス』る?」スッ

ボッ!!!

ロキ「土の塊…!?」

ケルビム「…狂獣の『顎ハ』喰らっ『タモノ』を高速『デ射チ』出すこ『トモデキ』る」

ロキ「射ち出す…?」バサッ

ロキ「…吐き出す、だろ」ヒュッ

ドゴッ!!!

ケルビム「拳ひ『トツ』で…『砂デ出』来ていると『ハイエ』、相当な硬『サダ』ぞ」

ロキ「わざわざこんなこと言いたくないが…」ザシュッ

ロキ「『この場』でそんな弱いのは使うな!」ブンッ!!

ケルビム「!…暴竜の爪(ジャバウォック)!」ヒュッ!!

ガキィンッ!!!

ロキ「ちょっと反応が…遅れたな?」

ガギギギギギギギギギギギ……

ケルビム「!?…爪が通『ラナイ』…」

ロキ「そんなので俺の脚が斬れるかよ…」クルッ

バキッ!!

ケルビム「弾『イ』た…!?」

ロキ「爪研ぎしてやる」シュッ

ガッ…

ケルビム「!…く『ッ』」ヨロッ

ロキ「ほら…じっとしてな」スッ

ガガガガガガガガガガッ!!!!!

ケルビム「!!!!」グラグラッ

ケルビム「速い…受け『キレ』ん…!」スッ

ケルビム「狂獣の顎(バンダースナッチ)!奴『ノ脚』を食『イ千切レ』!!」ギュオオオッ…

ロキ「……鬱陶しいんだよ、その、口!!!」ブオッ

ガキンッ!!!

ケルビム「ひ…膝『ト拳デ』…挟んだ…!?」

ロキ「こういうのは…開ける力は弱いんだろ…?」グググググ…

ケルビム「『ナラ…両』方同…」

ロキ「させるかッ!」タンッ

ゴスッ!!!

ケルビム「膝…蹴り…」ヨロヨロ…

ヨロ………


ガクンッ


ケルビム「…!?」


ロキ「はぁーっ…はぁーっ…はぁーっ…」ドサッ

ロキ(刺された傷が…まずい、暴れすぎたか…!)ズキズキ


ケルビム「き…『貴様ノホ』うが倒れ『ルトハ』な…」ヨロヨロ…

ケルビム「…仕『留メ』る」グッ

狂獣の顎(バンダースナッチ)&暴竜の爪(ジャバウォック)!!

ロキ「クソ…打たれ弱いのが…難点だな俺は…」ギリッ

ケルビム「次まで『ニ克』服し『テオケ』!……こ『コデ死』ぬがなぁ!」

ギュオオオオオオオオオオオオッ!!!!

ロキ(…左右同時……)

ロキ(両方止めるには…どうすればいい…?)

ロキ「……」スッ

ケルビム「立っ『タトコロ』で手は出『セマ』い!!」

ロキ「いや…出す」バッ

ガシッ!!!

ケルビム「!?」

ザザザザザザザザザ…

ロキ「ぐっ…」ザザザザザザザ…

ケルビム「力任せ『ニ止』められる『モノジャ』あないっ!!」

ロキ「俺は…」ザザザザザ…

ケルビム「こ『ノママ』押『シキル』!」

ロキ「俺は…『強化型(レア・スタイル )』だ!!」グッ

ザザザッ…!!!

ケルビム「…!」

ロキ「止めた…完全に…捕らえた…!」

ケルビム「あ…あ『リ得』ん!!」

ロキ「そしてここからは…」スッ

ロキ「大人しく…」スゥッ

ロキ「派手に…」ハァッ

ロキ「…全力でいくぞ」スッ

ダンッ!!!!

ケルビム「な『ッ…』踏み込『ミダケ』でこ『ンナ衝』撃…」


ロキ「…MEGA」ブンッ


左足で踏み込み、右足で蹴る

ただそれだけ

それだけなのに…


ケルビム「……!!!」ゴキッ


この威力!!


ロキ「素力の10倍だ…はぁーっ…」シュウウウウ…

ロキ「疲労もたぶん、そのくらいだがな…」ボタタッ

ケルビム「……かッ…」ドサッ

ロキ「……」グイッ

ロキ「俺は『強化型』…王族の実験によって、肉体の制限(リミッター)を解除された改造悪魔だ」

ロキ「だが…それでも俺には『限界』があった…まったくおかしな話だがな…」

ケルビム「な『ンノ』…話だ…」

ロキ「…まだちゃんと意識があるか。動けるのか。しぶといな…じゃあ聞けよ」

ロキ「限界を超えてみる。お前がその相手になれ」

ケルビム「こ…こ『レ以上』…強『クナル』と言『ウノ』か…!?」

ロキ「試してみる価値はある。この肉体でどこまで行けるか…」


ロキ(そう…2年前のあの戦い…)

ロキ(能力に過信した俺はまんまと…奴…いや、奴らに)

ロキ(手痛いのを貰った…いい一撃だった)

ロキ(強ければ強いほど分からなくなる『限界』のライン…)

ロキ(あの一撃はそんなものを遥かに超えていた)

ロキ(肉体の限界を超えているはずの俺が…遅れを取るほどの…)

ロキ(……)

ロキ(限界を超える力…そんな名状し難い…あれこそが…)

あれこそが『強さ』!!!


ロキ「俺の『強さ』を測る…こんな戦争なんてのはうってつけだな」

ロキ「そういう意味では…お前らが来るのを待ってたんだよ…俺は…」

ロキ「…さぁ、続けようぜ……!」

ケルビム「…イカれて『ルナ』…!!」

無断でサボッててすみません…なかなか書けません…
とりあえず四月入る前に一度書かねば!と思いムリヤリ書きました…

乙!

乙ですのだ
もっと無理やり書いてもいいのよ!

ロキ「……はぁああああああ…」

もし、この世に生きるすべての生物に

いろんな『ゲージ』が存在して

それを超えることができたなら…

ロキ「あああああああああ……」

ケルビム「…ハッタ『リジャナク』…本当に」

ケルビム「設『ケラレ』た限界(リミット)を超え『ルコトガ』で『キル』なら…」

ロキ「あああああああああ…」

ピタッ

ロキ「行くぞ」


それは本当に危険な存在だ


ケルビム「確『実ニ始』末する!!…狂獣の顎(バンダースナッチ)!」ブンッ

ギュオ オオオ オオオンッ!!!

ロキ(縦横無尽に…速度も増している…)

ロキ「…だが」グッ

ロキ「だがッ!」バキィッ!!!

ケルビム「…ど『ウシテ』いとも簡単に潰『シテクル』!?」

ロキ「だが弱い!!!」ダンッ!!!

ケルビム「踏み込…ま『ズイッ来』る…!」バッ

ロキ「………」ヒュッ

パンッ

ケルビム「……『ハ』…?」

ケルビム「拳じ『ャナイ』…?」

ガシィッ!!!

ケルビム「!!…『腕ヲ』捕られッ…」グググ…

ロキ「紙だ…お前など…」

ブオンッ!!!!


ケルビム「………」ブワッ

ケルビム「飛…投げら…何が…」

この時ケルビムは、一度に送り込まれた多量の情報を捌こうと、一瞬『自分の世界』に入りかけた

そこが隙になった

ロキ「おい…」バサバサ…

ケルビム「…!!?」

ロキ「これこそ…防いだ方がいいぞ」ググッ…

ケルビム「なッ…」

ロキ「もう間に合わん」


ドゴンッ!!!!

ボゴォ!!!

ケルビム「……!!!」ガハッ

ロキ「……」スタッ

上空にケルビムを放り投げ、超跳躍(ハイジャンプ)で同じ高さまで跳び上がり

防御のない腹部に、鈍器のような重い拳を振り下ろす!

ケルビム「……!………!!」

ロキ「落下の衝撃も合間って…声が出せないか」スッ

ガキッ!!

ケルビム「………!!?」

ロキ「まだ動けるようだが…もう逃がさん」

ロキ「仕留めるぞ」ニタァ

グググ…

ケルビム「な…『ニヲ』…する気…『ダ』…」

ロキ「続けるぞ、と言ったが…悪いな…」

ロキ「有り余るこの力では…お前など簡単に殺せてしまいそうだ…」

ピタッ

ロキ「この位置だ…心臓を貫く」

ケルビム「!!…ぐ…がぁ…!」スッ

ロキ「…能力か?…無駄だ。俺の手刀のほうが早い」

ケルビム「暴…竜…の…」

ググググ…

ロキ「死ね」シュッ

ズチャッ!!!






…………爪




ドスッ

ロキ「………」

ロキ「…馬鹿…な……」

ブシュッ…

ロキ「……が…」ゴボッ

ケルビム「……」

ロキ(ギリギリ間に合ったとか…そんな都合のいい話ではない…)

ロキ(心臓は貫いた…こいつは『間に合わなかった』…なのに…)

ロキ(…死んでから攻撃した………!!!)

ケルビム「…………」ガクガクガクガク…


もし、この天使が過去に一度

死に瀕したことがあって

もし、その絶体絶命の状況を

『誰か』に救われていたとしたら…


ロキ(異常な耐久性…二つの能力…心臓を潰しても動く…)

ロキ(こんな化け物が…いて…たまるか…!)

ケルビム「………」ユラァッ

ロキ「…!!」

それは、数時間掛けて起こした炎が

突然の暴風によって、一瞬で消されてしまう

そんなのを千倍にも万倍にもしたような絶望感

加えて

ロキ「ぐっ……!」ズキンッ

深々と入り込んだ『爪』の一撃

ロキ(二度も…食らうつもりはなかった…これは…)

ロキ(血が止まらない)ドクドク…

ケルビム「………」スッ

ロキ「っ!」バサッ

ブオンッ!!

ロキ(!!駄目だ『爪』は斬撃…マントでは防げないっ)

ズバッ!!!

ロキ「ぐあああっ…!」ドサッ

ケルビム「………」ダラン…

ロキ「はぁっ…はぁっ……」ボタボタ …

ロキ「おまえ…お前はっ…何だ…」

ケルビム「……」


ケルビム「俺は《天》九階位レジウム・ケルビム」

ケルビム『私ハ《天》九階位レジウム・ケルビム』

ロキ「………」

ロキ「そうか…」

ロキ「…『二人』か…」

ケルビム「死『ネ』」スッ

ズブッ…



セラフィム「………!」ピクッ

セラフィム「…割れたか?…『鏡』…」



ロキ「……」ドサッ

また刺された…

ロキ「……」ドクドク…

血が足りない

ロキ「……」

もう動かん

ロキ「……」


死ぬ……


ロキ「……」

俺はいったい、なんでこんなことしてるんだったか

そもそもここはどこだ

ケルビム「……」ザッ…ザッ…

あいつは誰だ

俺は誰だ?


ロキ「……」


何かのために戦っていた気がする

なんのために…?


ロキ「……」

意識が途切れる………

…………

?『…被検体239号、覚醒しました』

…………

?『ほう…四肢も残っているし、意識もはっきりしている…68人ぶりだな』

ここはどこだ…

?『あとは戦闘テストだけです…どうしますか?』

何だ…お前らは…

?『今すぐ始めろ』

体が…何をした…

?『しかし、術後すぐの肉体では効果をどれほど発揮できるか…』

声が出ない…おい…

?『それを知るのも含めてのテストだろう。早くしろ』

俺を離せ…!

?『はっ』ピッ

ガコン……


?『…あれは?』

?『被検体143号です。術後、肉体の抑制を解放することに成功しましたが、知能が著しく衰えていたので、この戦闘テストにのみ利用している失敗作です』

?『成る程』スッ

?『…おい被検体239号。目の前にいるそいつと戦え』

………なんだ…

何を言っている…?

被検体143号『おおおおおおおおおおっ!!!』グワッ!!

何をしてい…

ドゴンッ!!!!


?『…回避もしないか。今回も残念ながら失敗だな』

?『……いえ…まだ生きています』

?『…なに…?』

?『立ち上がり…ました…』


被検体143号『ヴぅるるるるるる……』

…覚えているぞ…俺は

被検体143号『うおおおおおおおおおおお!!!!!』ブオンッ!!!

俺は…


『ロキ』だ

ゴシャンッ

ズズンッ……

?『なんだ?どうなった…?』

?『すごい砂煙です…143号のやつ、いったいどれだけの力で潰したのか…』

?『潰したのか…?』


ロキ『………』


?『立っているのは239号の方だぞ…』

?『なっ…!!?』

ロキ『……』クルッ

?『!こっちを見…』

ロキ『…満足したか?』

?『…え……』

?『……全言撤回だ…成功作だな…史上初…』

強化型(レア・スタイル)の誕生だ



ガシャアン!!!

ロキ『……』

?『貴様にはもうしばらくこの檻の中に居てもらう』

ロキ『……』

?『ふん…思ったより静かだな』

ロキ『……は…』

?『……?』

ロキ『……はどこにいる…』

?『…なんだ?何て言った?』

ロキ『…ここから出せ…』スッ

?『………!』

ロキ『ここから出せ!!!』ガシャアンッ!!

?『おっ…檻を壊す気か!?』

?『…と焦ったように見えるだろ』

ロキ『………!!!』バリバリバリバリ!!!

?『…この檻は一定の力がかかると電流が流れるようになってる…無理矢理こじ開けるなどできんぞ…』

ロキ『ぐ……』ドサッ

?『心配するな…我々も成功作を殺すつもりはない…しばらくそこでおとなしくしてれば、直にもっとマシな場所に移してやる』

スタスタ…


ロキ『……』

ロキ『…ってろ……』

ロキ『……待ってろ…メイ…』


メイ?


ロキ「………」

そうだ…思い出した…

俺が今、必死になって戦ってるのは…

メイのためだ…


ロキ「………」

指も手首も腕も肩も…

腹も腰も背も脚も爪先も…

首も瞼も眼も舌も顎も…

動かない…


ロキ「……」

これが俺の限界ってわけだ…


ロキ「…っ」ピクッ…


だが…

超える力が俺にはある!!


ロキ「…う…ぅっ」ギリッ…!!


ありがとうよ王族のクソ共

こんな化け物にしてくれて

初めてお前たちに感謝する


ロキ「…はっ…はっ…」


そして…神よ

お前のためなら


俺は死ぬまで戦える!!!


ロキ「お……」

ロキ「おおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

ビリビリビリビリビリビリビリ…!!!


ケルビム「……」

ケルビム「や『ット起』きたな…!」グルンッ!!

今日はここまでにします
何か余計な改行が多かった気がするけど気にしない!


なんか熱い展開だ

乙だよ

ロキ「…………」


ケルビム「立っ『タナ』…立った『ガ…ソレガド』ういう意味か、理『解シテイ』るのか?」

ケルビム「…貴様を死『ヌマデ殺』せる!!」スッ

ケルビム『狂獣の顎(バンダースナッチ)!!』ギュオオオオッ!!

ロキ「………」

ガブッ!!

ケルビム『……避ケナイ?』

メキ…メシメキ…

ケルビム『コノママ肩ヲ…噛ミ砕クゾ!』

ロキ「……」

ロキ「…~…」ボソッ

ケルビム『…ナニ?』

ロキ「……」スッ

ブラン…

ケルビム『立チ上ガレタ…ソコマデハイイガ…モウ腕ガ上ガラナイカ』

ケルビム「当然だな。それだけの傷、出血…限界をとっくに越えているはずだ」

ロキ「……」ピクッ

ケルビム「暴竜の爪(ジャバウォック)…もう少し楽しめるかと思ったが…瀕死の貴様に何の価値もない」ジャキンッ

ケルビム「今すぐ死ね!目障りだ…」ブンッ

ガシッ!!

ケルビム「止…!!」

ロキ「……」グググ…

ケルビム『動ケルノカ動ケナイノカ…ドッチダ…!?』


ロキ「……んだよ」


ケルビム「……!?」

ロキ「俺にはもう限界なんて…ねぇんだ…」

ケルビム『限界ガナイ?…戯言ヲ』

ロキ「…車だ」

ケルビム『車…?ナンノコトダ』

ロキ「俺は坂を下っていく車…もう動力なんてない…今まで走ってきた『惰性』で、ひたすら坂を下る…」

ロキ「動力がない…でも止まれない…
分かるか?俺にはもう道はひとつしか残されてない…
いや、厳密に言えば二つあるんだが最後には同じだ」ブツブツ

ロキ「壊れる…だけだ」

ケルビム「そうだ…もうお前は死ぬしかない」グググ…

ケルビム(こいつ…まだ手を離さない…爪が動かない…!)

ロキ「………違う…」


ロキ「…違うんだただ壊れるんじゃな
い坂道を下ってく途中で車に色んな物がぶつ
かるんだ塵とか枯れ
草とかゴミとかそういうの全部巻き込ん
で進んでいく止まれないからな…」ブツブツ


ロキ「ただずっとそうしているうちに車体にはあ
れこれくっついてごちゃ
ごちゃになってくるそうなると壊れる
ときにはそれら全部含めてぶっ壊れることになる…」ブツブツ


ロキ「俺はお前らを巻き込んで壊れるんだ…」

ケルビム『…ナニヲブツブツト!!』ググッ…

メシメシメシ…

ロキ「フフッ…でも…いいか」

ロキ「俺はそんな壊れた車に
はならない…もっと凄い…なんだ
…なんだ…
俺はそう…強化型だからな」

ロキ「…ただ惰性で進んでくんじゃない…自分の意思で立ち、歩み、拳を握り、戦う」

ロキ「最後まで戦うんだ…そして…」

ロキ「死ぬ」

ケルビム「能力解除」シュオッ

ロキ「…!」ヨロッ

ケルビム『モハヤ能力ナド必要ナイ、殴リ殺セバ済ム話ダ!』ブンッ

ゴッ バキッ ドガッ

ロキ「……」

ロキ「王族のふざけた実験が俺を産み出した…
どんなデータが出たんだろうな?ちょっと気になる…
お前がその体で受ける力ってどんなもんだ…」ブツブツ

ケルビム「まだ口が動くか…!」グイッ

ロキ「…お前は…」

ロキ「お前は考えたことあるか?
何のために生まれ
何のために死ぬのか…
自分なりの答えってのを出したことがあるか」

ケルビム「知るかそんなこと!!」グシャアッ!!

ロキ「……」ブシュッ

ケルビム『舌ヲ噛ンダカ?アンマリオ喋リシテルカラダ』

ロキ「俺は」ボソッ

ケルビム『!』ピクッ

ケルビム「こいつ…まだ…」

ロキ「俺は今、その答えが出たぞ…
戦うためだ…
だが逆なんだよ…生きるために戦うんじゃない…戦うために生きるんだ…
だから…
死ぬまで戦う」ブツブツ…

ロキ「…一人…王族…
…デュロイさん…役に立てる……
…ヘルアクロウズ……
…強化型…
……戦争…」フラッ

ロキ「……」ゴシゴシ

ロキ「…見えない…」

ケルビム「……」

ケルビム「暴竜の爪(ジャバウォック)」ブンッ

ケルビム『狂獣の顎(バンダースナッチ)』ギュオッ

ケルビムは、気がついたら能力を使っていた

もちろん始終『この男を殺す』という意思はあったのだが…


目の前に虫がいて、それをじっと見ているとき、おそらく不快感が生じるだろう

では、そもそもなぜ我々は、虫に対して不快感や恐怖を抱きやすいのか?

その原理のひとつに『表情や思考がいっさい読めないから』とする説がある

このときのケルビムは、あるいはそういった思いをロキに対して持ったのかもしれない

そして、この虫を速やかに排除しよう…と攻撃をしたのかもしれない

いずれにせよ…

スカッ


ケルビム(外れた…?)

ケルビム(前進シテ避ケタ…!)


ロキ「……」スッ

どこかで聞いた気がする

最強の悪魔の存在


ロキ「メイ…」グッ


ケルビム(拳を…)


ロキ「ぉ…ぁ……」パクパク


この瞬間…今、この瞬間だけでいい

俺が…


ロキ「……」パクパク

ロキ「お…れが…」


グ…グ…グ……


ケルビム(マズイ)


………俺が最強だ

ブンッ



それを感じ取ったのは、一部の悪魔、天使だけだった

ある一定のラインを越えた『強さ』を持つ者だけが…


エレカ「!…え…」ピクッ


シェアリ「っ…なんですの…?」ゾッ


クレア「お前もか…?…寒気が…」


シオン「今の気配は…」


ゼクト「…まさか…」


テンコ「…この力……」



スローンズ「…血…」ボタタッ

セラフィム「…これは凄いな」


ゴッ

ケルビム「…………」

ケルビム「…信じられん…」


ロキ「」


ケルビム『拳ガ当タル寸前デ……』ザッ

ロキ「」グラッ

ドサッ

ケルビム「……」

ドクン

ケルビム「ぐ…おああっ!!!」ズキンッ

ケルビム『ゲ…限界…カッ…!!』

ケルビム「は…早く城へ…」

ケルビム『目的ヲ見失ウ前ニ…!』ヨロヨロッ


ビシッ


ケルビム「……!?」

ケルビム『カ…仮面ニ…」

ケルビム「ヒビ…!」


ゴッ


ケルビム『奴ノ最後ノ拳…』

ケルビム「死んでも、拳はこの面を捉えていた…!」


ケルビム「ウおおオおオオオおおオお!!!』




セラフィム「まぁたぶん…間に合わないだろうなぁ。あいつも相手が悪かった」

スローンズ「鏡…」

セラフィム「ああ。勝とうが負けようが、『双魂鏡』は保たない」

セラフィム「だがこっちは…」

熾天使一行、現在位置…

セラフィム「もう、着いた」


黄の城・正門前

今日はここまでにします
台詞だけじゃうまく表現できない部分が多すぎて、よく分からないことになってしまいました

ロキがあんなにお喋りだったのは
喋り続けることで意識を保っていたというか
喋るのをやめたら即、事切れるくらいの状態だったからです
結局死にましたが


あと、前回の内容によって、今までの時系列に矛盾が生じてしまっていたのですが
面倒なのでそのままにしておきます…

乙乙乙

ケルビムたん死んじゃうの……?



ロキ寿命で死ぬのかと思ってた

おつ!
テンコと再戦できないまま死んじまったか・・・

ロキも戦闘狂だったのかしら
乙!

>>121
ぶっちゃけ、今のテンコとロキを戦わせてもテンコじゃ絶対勝てないです
能力使えませんし

>>122
戦いたいから戦う!ってタイプですからね
でも元来の性質なのか、強化型ゆえなのか…

黄の城・正門前

セラフィム「………着いた」

スローンズ「………」

アルカイ「近くで見ると案外…小さいぞこの城…」

セラフィム「よく見ろ…」スッ

アルカイ「!」

セラフィム「なにか『爆発事故』でも起こしたか?…城壁の一部が吹き飛んでる。削れてるから小さく見えるんだろ」

ミカエル『前に来たときから気付かれていたのですか…』ズズズ

セラフィム「ああ……お前はまだ出てくるなよ」

アルカイ「…じゃ、あの壊れたとこから入るつもりで?」

セラフィム「いや…」

シーーーン…

セラフィム「見ての通り正門前(このあたり)には誰もいない…全員城の中にいるんだろ」

スローンズ「……」

アルカイ「なら…」スッ

『天地創造(アグルディミオ)』

グニョン……

セラフィム「…便利な能力だ『天地創造』…周囲の空間を自由に操り、この分厚い門の形状まで変える」

アルカイ「この能力ひとつでここまで来ましたからねぇ」

アルカイ(最もこいつの本領はこれから発揮するんだがな…)

セラフィム「…でもなアルカイ…こんな門は物理的に壊すのが一番だ」スッ

セラフィム「こんな風にな」ブンッ

ボッ!!!!

アルカイ「…やはり見事…まるで『掠め取った』ように門の下半分が消えてしまった…」

セラフィム「これで後から戦闘天使達が来ても入ってこれる」

スローンズ「……来るの?」ボソッ

セラフィム「……!」

スローンズ「……」

セラフィム「…来れなきゃそれまで。悪魔と一緒に消えることになるだけだ」

セラフィム「入るぞ」スッ

カツン…



セラフィムの鳴らした靴の音が、屋上にいたエレカに聞こえたわけではない

しかしその瞬間、彼女の頬を一筋の汗が伝い落ちた

エレカ「…………っ」ピクッ

エレカ(……来た!?…こんなにあっけなく!?)

エレカ(正門の周辺には兵士は誰もいない…当然だ、私がそう指示したんだから…)

エレカ「…ついに…」



セラフィム「入玉だぜ魔王」ニヤァ

セラフィム「待ってろ。すぐに詰ませてやる…」

スタスタスタ…

セラフィム「なんだか寂しいな…せっかく城に入ったのに誰も迎えてくれないなんて」

スローンズ「……」

セラフィム「そもそも……」クルッ

セラフィム「ここに着くまでにこんなに減るとは思わなかった。まさか俺のお前しか残らないとはな」

スローンズ「……」

ミカエル『私のことをお忘れでは?』

セラフィム「分かってる」スッ

セラフィム「もうこうなれば二人で行動する必要もないな」

スローンズ「……」

セラフィム「一見無人に思えるこの城…誰か隠れてるな」

スローンズ「……」

セラフィム「クレセリア…お前は時々、俺以上に勘が働く。さっきから大人しくしてるが、興奮を隠せてないぞ」

スローンズ「………何故」

セラフィム「血が出てる。唇を強く噛み過ぎだ。お前は吐血したり唇切ったり忙しいな」スッ

ゴシゴシ

スローンズ「……」

セラフィム「好きにしていいぞ」スタスタ

スローンズ「……」

スローンズ「……」ニタァ


セラフィム「……」スタスタ

ミカエル(よろしかったのですか)

セラフィム「何が?」

ミカエル(スローンズ…貴方の目の届くところにいないとあいつは…)

セラフィム「やり過ぎる?…何も問題ない。そのために来てるんだからな」

セラフィム「ただまぁ…あいつはただ『殺す』よりも…痛め付けることが楽しいみたいだが」

ミカエル(不気味な女だ…私は未だあいつのことだけは理解しかねます)

セラフィム「…あいつは最高だ…本当に…」

セラフィム「俺が真っ先に《天》九階位に引き入れたんだからな…」

ミカエル(なぜ貴方はそこまで彼女のことを…)

セラフィム「あいつは相当イライラしてただろう」

セラフィム「なぜなら俺はあいつに『大勢の敵が迎えてくれるからそいつらを刈れ』と命令してあった…」

セラフィム「ところが城に入ってみると誰もいない…基本的に俺の言うことを聞かないあいつが、今回はちゃんと従おうとしてたのに…」

セラフィム「そこで俺が『じゃあもう好きにやれ』と言う。するとあいつは…」

セラフィム「暴れ回る。嬉々として。あいつは凶暴だ…もしかしたら俺でも止められないくらいにな」

ミカエル(まさか…)

セラフィム「……さすがに言い過ぎか?だが第三位は伊達じゃない…俺の『腕』だ」


スローンズ「………」ポタ…ポタ…

ズルズル…

兵士「」

黄の城・正門前

…の近くの木


ガサッ

シオン「…天使が入っていったが…さて私はどうしたらいいかね…」

シオン「もう結構待ってるのに、まだ他のメンバーは来ない」

シオン「…一人で入るつもりはなかったんだがね」ピョン

スタッ

シオン「………」キョロキョロ

シオン「本当に…誰もいないね?」

シオン(さっきから妙だ。天使たちが入っていったのに、城の中で何か大きな動きがあったようには見えない)

シオン(まさか、城には誰もいないのか?)

シオン(……)

シオン(入ろう…ここでじっとしていても始まらない)スタスタ

シオン(いや、天使と鉢合わせる可能性が…)ピタッ

シオン(……)

シオン(…落ち着け…私はここまで幸か不幸か…一度も戦闘を行っていない…メンバーたちとも一旦別れてからは会ってない…)

シオン(城に入っても…誰にも会わない…)

シオン(……)

シオン(……うーむ…)


ズズ……


シオン「!?」


ズズズズ…


シオン「…なんだ?城の様子が…」


グニャグニャグニャ…


シオン「…!?城が歪んでいく…!」

グニャグニャ…

シオン「はっ…入れなくなる!?それはまずいっ!!」ダッ

グニャグニャグニャ…

シオン「間に合えっ!」バッ

ズザザーッ


シオン「く…柄にもなく滑り込みなんて…」ムクッ

シオン「……!」

シオン「……」キョロキョロ

シオン「城の中は何も歪んでない…外だけ…?」


バキィ!!!


シオン「!!?」サッ

シオン(向こうのドアを突き破って…誰かが…)


兵士「やめてくれ…こ、これ以上は…」


シオン(…城の兵士…?戦ってる…!?)


兵士「た、頼む…やめ…」

ドスッ!!!

兵士「ぎゃあああああああああああああああ!!!!」ジタバタ


シオン(なんだ!?何かで刺された!?なぜあんなに暴れて…)

シオン(…!)


スローンズ「……」ニタァ

兵士「ひ…は…」ガクガク


シオン(女…!しかもまだ若い…)


スローンズ「…いの…に…げる…」ボソボソ


シオン(?今なにか呟いたのか…?)


ブンッ

兵士「げ」ズチャッ!!!

兵士「」ピクピク


シオン(……)

シオン(あれは…あの女が持っているのは…)

釘……?


スローンズ「……」キョロッ


シオン「!!」ビクッ

シオン(み…見つかった…!?)


スローンズ「………」

スローンズ「……」スタスタ


シオン(バレてない…危なかった…急いで別の場所に隠れ…)スッ


スローンズ「……」ピタッ

グルンッ


シオン「!!!?」


スローンズ「……見つけた」

シオン「……!」

スローンズ「……」

シオン「……」

スローンズ「……敵?」

シオン「…え…」

スローンズ「……」

シオン「……」

スローンズ「……敵」スッ

シオン「いやっ違っ…」

シュカッ!!

シオン「……?」

シオン(何かがすごい早さで飛んで…)チラッ

ビィィィン…

シオン(………やはり釘か!…危ない…もう少しで刺さるところだった…)

スローンズ「………敵…敵…敵…敵…敵……」ボタボタ

シオン(…こいつ…かなりヤバそうじゃないかね…私で相手になるのか…?)

あんまり書けませんでしたが今日はここまでにします

無口なキャラの戦闘は表現するのが難しいです…

最速の乙!
戦闘描写に期待

乙だよ

スローンズ「…………」ボタボタ

ポタッ ポタッ

シオン「……」

シオン(ヤバい奴だってことは、一目で分かる…でもどう戦うんだ…?私の手に負える相手か…?)

シオン「……」チラッ

シオン(これ、ただの釘か?どこから出した?ローブを着てるが、その中に隠していたのか…?)

シオン(……考えてる場合じゃないか)

シオン「…私は医者だ…戦いはどちらかと言うと苦手なんだが…」

シオン「無傷でここまで来れた分、しっかりやらせてもらうよ」バサッ

スローンズ「………」

シオン「…メス」スッ

シオン「鋭利な刃物(MES)…」ブゥン…

シオン(…肩!)ダッ

スローンズ「………」

シオン「はぁあああっ!」シュッ!!

シオン(さぁ、どう防ぐ!!)

ドッ

シオン「……!」

スローンズ「………」ヨロッ…

スローンズ「……ゔ…」ポタッ

シオン(袖から血が…いや、そんなの見なくても分かる)

シオン(避けなかった…まったく反応しなかった!)

シオン「どういうつもりかね」

スローンズ「……」スッ

ズポッ…

シオン(抜く…か。普通に)

シオン(……え?)

ポタポタ…

シオン(こいつ…手に…)

太い釘が…!!

スローンズ「………」ポタポタ…

シオン(長さは10cm以上…直径は2~3cmってところか…?血も出るわけだ…!)

シオン(どっちだ…?戦闘による負傷?それともあれ自身が武器、あるいは能力?)

シオン(…………)

シオン(やはり考えてる場合じゃないっ!!)ジャラッ

シオン「防御しないつもりなら、遠慮なく攻めさせてもらうよ、いいかね!」ブンッ!!

スローンズ「………」スッ

ガキンッ!!!

シオン「手の釘…!?防御するのかしないのか、どっちかね!」

スローンズ「………痛」

シオン「え?」

スローンズ「……」ブンッ

シオン「!」サッ

シオン「振り払った…?」

シオン(いや、そんなことよりもあの釘…能力で強化したメスで切れないのか!?)

シオン(アーティエのチェーンソーのような回転刃だって少しずつ削っていける…なのにあの釘はまったく、傷の一つも付いてない)

シオン(…いや…考えるな)

シオン(考えるな、考えるな、考えるな…考えるよりまず動…)

スローンズ「……」スッ

シオン「っ!?」バッ

スローンズ「………」ペタン

シオン(な…座り込んだ…?)

スローンズ「……」

スローンズ「………」ブツ…ブツ…

シオン(なんだ…何かぶつぶつ言ってるぞ…聞き取れないが…何か…)

スローンズ「………」ブツブツブツブツ

シオン(おぞましい…嫌な感じだ…!)

スローンズ「………」ブツブツブツブツ

シオン(…でも…)

シオン(ただ…なんだ…医者として…)

シオン(…放っておけない)

シオン「…どうしたのかね」スッ

スローンズ「……」ピクッ

シオン「…さっきから何を…」

スローンズ「…が…」

シオン「……が?」

スローンズ「…………我慢できない……」

シオン(………)

シオン「その…我慢っていうのは…?」

スローンズ「………好きに…好きにしていいって…て…セラフィムが…」

シオン(……セラフィム…)

スローンズ「…………退屈…今までずっと…ずっと……」

スローンズ「もう…我慢できない…の…」

スローンズ「…でも………セラフィム…許してくれた……」

シオン(…セラフィム…?)

スローンズ「……だから…」


スローンズ「……遊んで?…お医者のお姉様……」ニタァ…


シオン「……!!」ゾクッ

シオン「…っていうか…セラフィム、セラフィムって…」

シオン「…お前…お前は何位なんだ……!?」


スローンズ「……」ズズズ…

シオン(!…指先から釘が……)

スローンズ「………さん。」

《天》九階位・第三位

シオン「…あ、そう……」

シオン「…参ったね」

シオン(…三位。まさか三位とは。予想外だ…当然、悪い意味で)

シオン(どうする…?三位ってことは単純に、天使の中で三番目に強いってことじゃないか…)

シオン(…そんな超弩級の怪物…敵うはずない…)

シオン(『こっち』の超弩級は私じゃない!ゼクトだ…!)

シオン「まったく…ただの医者には…荷が重すぎるね…」

スローンズ「………くすくす…くす…」

シオン「でも…ま…」

シオン「一度手を付けた手術(オペ)から逃げ出す医者がいるものかね」チャキッ

スローンズ「……苦崇(くす)…」ズズズ…

ギュンッ!!

シオン(来た…!釘!三本!)

シオン(落ち着いて見切れば…)

キラッ

シオン「ここだ!鋭利な刃物(MES)!」ブンッ

キキキンッ!!

スローンズ「………」

バラバラバラ…

シオン「大丈夫…見えてる…反応できる速さだ…」

スローンズ「………倍」ズラッ

シオン(…!…増え)

スローンズ「…………刺…」パッ

ギュオンッ!!

シオン「くっ…鋭利な刃物(MES)!!」ブンブンッ

カキン カキキキンッ

シオン(まだ一本残っ…)

ドスッ!!

シオン「っ…う…!!!?」ズキンッ

シオン(…肩…!まさかあいつ…)

シオン(自分がやられたのと同じところを狙って…)

スローンズ「………」ニタァ

シオン(く…釘が刺さったのは生まれて初めてだ…こんなに痛いとは…!)

スローンズ「………倍…倍…」ズズズ…

シオン「……え…?」

スローンズ「倍…倍…倍…倍…」ザララララーッ

シオン(な…何本…いや何十本!?)

スローンズ「……刺ね…」ブンッ

ギュオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

シオン「ちょっと待っ……」


ドドドドドドドドドドドドッ!!!!!

スローンズ「…………」

シュウウウウウウ……

シオン「……」スッ

シオン「…もったいない…白衣で庇ったはいいが…穴だらけだ…」バサッ

スローンズ「………防御…じょうず…」

シオン「どうも…」

シオン(これだけメスを仕込んでなかったら、『黒ひげ危機一髪』みたいになったかもしれないがね)

シオン「よくもまぁこんなに大量の釘を……」ブンッ

バラバラバラ…

シオン「……」スッ

シオン「……~っ」グイーッ

シオン「…ん…」コキッ

シオン「さて…ちょっと…いいかね」

スローンズ「………」

シオン「…ウチ…ヘルアクロウズには…女は私しかいなくてね…いや最近一人増えたんだけど」

シオン「私が白衣の下はこんな薄着だから…結構『クる』男共がいるわけだ…」

シオン「むしろ反応しないのは…しっかりしたゼクト…あと、そういうのに全然興味ないっぽいアーティエ…そのくらいかね」

スローンズ「…………」

シオン「いやまぁ…何が言いたいかって…そんな大したことじゃあないんだが…」スッ

シオン「そんな男共のやらしい手からこの身を守ってきた私が…」グググッ

ズポッ

シオン「弱いはずがないんだよ!!」ポイッ

スローンズ「……」

シオン「ここだけの話、私はまだ処女なんだ…たぶん、死ぬまで…だけどこんな釘なんかで傷物にされるのは絶対に嫌だね」

スローンズ「………」

シオン「さっき私は自分のことを『ただの医者』と言った…あれやっぱ無し。訂正しよう」カチャ

シオン「私は地獄一の天才女医、シオン…三位とかそんなの関係あるか…私の前じゃ等しく患者だ」

スローンズ「………素敵…」ニタァ

「………今日は…ここまで……」ニタァ


無口キャラ?
そんな設定5秒で無くした!

乙!
指先から釘ってのは爪と肉の間から湧き出てる感じなか?

乙ニタァ

昨日投下したのがGW分
今から投下するのが今週分
って感じです…

シオン(と、威勢よく啖呵を切ったはいいものの…)チラッ

シオン(これだけの釘を瞬時に出現させる…厄介だ…厄介すぎる!ましてやこっちのメスは有限だぞ…)

シオン(もう白衣で防ぐわけにはいかない。まだメスを保持できてるから着ておくけど)バサッ

シオン「……ふーっ」

シオン(…釘を使わせない。それしか、ない)

スローンズ「………」スッ

ザラララララララーッ

シオン(……)

シオン「なんだい君は…私の心でも読めるのかい…さっそく私のやる気を殺いでくるなんて」

スローンズ「………ゑ?」ブンッ

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ

シオン「………!!」ダッ

ズドドドドドドドドド…

シオン「…っ…ふざけるな…!こんなの避けきれるわけ…」ガッ

シオン「うわっ!」ズザザァッ

ドドドドドッ!!!

シオン(…危ない…頭上20cm…倒れなかったら刺さってたぞ)チラッ

シオン「…さっきこいつに殺された…城の兵士か…」

兵士(故)「」

シオン「さすがにここまで酷く殺られてると医者の私でも……あれ…」

…ない…?

スローンズ「………」ザラザラザラーッ

シオン「!…ま…またか!」グイッ

ズドドドドドドドド!!!

スローンズ「………」ピタッ

シオン「……どうした」

シオン「…死体を盾にしちゃまずかったかね」スッ

兵士(故)「」ボロボロ…

スローンズ「………」

シオン「…ところでこの兵士…君が釘で殺したんだったね。わざわざ顔を貫いて…」

シオン「その釘はどこに行った?」

スローンズ「………」

シオン「…その手に刺さってる釘じゃあないだろう。確かに君はあのとき釘を『持っていた』…」

シオン「…どこやった?」

スローンズ「……」

シオン「…時間が経つと消えるんじゃないかね」

スローンズ「……」

シオン「まぁ君みたいな『特定の物質を出現させる能力』で出したものってのは、だいたいがほっときゃ消える」

シオン「そして、それ自体は別にデメリットってわけじゃない」

シオン「ただ気になるのは…」スッ

シオン「床の血」ズズ…

ピッ!!

スローンズ「………」ピチャッ

シオン「私がこんなに大量の血を流してるわけじゃない。だって今のところ、流血箇所は肩だけだ。高が知れてる」

シオン「でもこの床に散らばってる血は……どうも『釘そのもの』から溢れてるように見えるんだがね」

スローンズ「………」スッ

ビシュッ!!

シオン「……!」パシッ

シオン「釘…わざわざサンプルを寄越すか…」ジッ…

シオン「…ふむ…血が流れる釘…じゃない…そうじゃないな……」

シオン「この釘一本一本が『血』なんだな?」

スローンズ「………」ニタァ

シオン「手に刺さった釘…その傷口から流れる血…君はそれを釘にしてる」

シオン「血が流れてる限り釘はいくらでも作れる…だからあんなにたくさんの釘を出せる」

スローンズ「………」ボタボタボタ

カランカランカラン…

シオン「口からも…か。じゃあ、君は」

シオン「今までどれだけ血を流している?いくらなんでも限度があるはずだ…ある一定の血を失えば君の体は…」

スローンズ「………」バタッ

シオン「!な、なんだ…?なんで倒れ」

ピチャ…

シオン「……まさか」

スローンズ「……」ピチャピチャ

シオン「床の血を…自分の血を…舐めて…」

スローンズ「………」ペロペロ

シオン「く…狂ってる…!!」ジャラッ

シオン「鋭利な刃物(MES)!脳を潰せば!いくらなんでも即死だろう!?」シュッ!!!

ガギッ

シオン「!!?」

シオン(止まっ…た…?これ以上刺さらない…!)

シオン「…な…なんだ…何か被ってるのか?頭に何か着けているのか!?」

シオン「フードを取れ!」グイッ…

シオン「……」

シオン「……あ」

スローンズ「……」ポタ…ポタ…

シオン「……頭にも…釘……?」

スローンズ「…………見ィィられ…ちャったぁ」ニタァ~

シオン(こ…これは…どうなってる…)

シオン(頭に釘…!?手に刺さってるやつよりさらに太い…普通死ぬぞこんなの…)

スローンズ「…けた…ケタ…」

スローンズ「ケタけたケタケタ桁怪他傀沱ケタ異……」

シオン「……」

シオン「ふ…ふふっ」

シオン「そのローブを脱いでみろ…!!」

スローンズ「………いいの…」

シオン「……なんとなく、予想が付いた」

スローンズ「……」グイッ

バサッ…

シオン「………」

シオン「……想像以上だ」

両肩に釘…

両手に釘…

両足に釘…

そして………

シオン「……いったいどうしたら『胸』のど真ん中に釘が刺さる?」

スローンズ「………」スッ

ググ…

シオン「…おい…ちょっと待て…」

スローンズ「………」バッ

ギュオオオオオオオオオオオオッ

シオン(全身の流血箇所から…!)ダッ

ドドドドドドドドドドドッ

シオン(さっきより正確に狙ってきてる…くそっ)

シオン「鋭利な刃物(MES)!!」ジャララララッ

シオン(持てるだけのメスを持て!振れるだけのメスを振れ!少しでも被弾数を減らして…)

ギュオオオオオッ

シオン「っ…おおおおお!!?」ギキキキキンッ!!!

シオン(こんながむしゃらで…凌ぎ切れ…)

ドスッ!!

シオン「…ぐ…っ!!」

シオン「……っ」ブシュッ

シオン(…まだっ…手は動く!)ブン ブンッ

キキキキキキキキキキキンッ!!!

ドスッ!!

シオン(……わき腹…!)

ドス ドスッ!!

シオン(…う……)

ドスッ!!!

シオン「………!!」ヨロッ

ドスッ!!

シオン「」ガクンッ

バラバラバラバラバラバラ…

スローンズ「………」ピタッ

シオン「…はっ…はっ…」

シオン(意識が…飛びそうだ…)

シオン(メスじゃ…無理か…そりゃそうだ…あんな数…防ぎきれるわけがな…)

シオン(………!!)

ズキンッ!!

シオン「ぐっ…ああああああああ!!!?」

シオン(なんだこの痛み…内側から焼けるような…釘に刺された痛みって…こんなに…)

シオン「ぐっ…うう……うううううう…!!!」ガクガク

スローンズ「………」

シオン「…こ…れは…」

スローンズ「……」

シオン「…この釘…は……なんだ…お前の血で作られてる…それだけか…!?」

スローンズ「………」

スローンズ「……『痛咬寄生(パラサイト・ペイン)』…」

シオン「……なに…?」

スローンズ「……私の…能力……釘に『痛み』を…」

シオン「……痛み…」

シオン「……」ゾッ

『痛み』そのものを与える釘…!?

スローンズ「……あなたの…痛みは…」

スローンズ「…私の痛み……」

シオン「……ぐ…」

スローンズ「痛いの…痛いの…あなたにあげる……」

シオン「…ふざけっ……」バッ

ズキッ!!

シオン「っううう…!!」ドサッ

シオン(た…立てない…痛い…痛い…!)

スローンズ「……」

シオン(くそ…このままじゃ…負ける…)

シオン(…死ぬ……)



『シオンよ…死ぬのは怖いか?』

――怖いです

『哀れじゃのう…「命に限りがある者」など…脆弱すぎる…』

――それではあらゆる生物を否定することになります

『当然そういうことになるのう。だがわしは…この不死の身は…それらを完全に超越したのじゃ…!』

――貴方はどんな生物よりも滑稽だ…

シオン「……」


…ドクロ先生――


シオン「…ドクロ…せんせ…い……」


『最初から死なぬと分かっていれば
、何も恐れることはない』

――では、先生は『痛いこと』は怖くないんですか

『……はぁ?何をふざけたことぬかしておるんじゃ』ゴンッ

――痛っ!なんで叩くんですか!先生の骨の体は硬いから、軽く叩いただけでも…

『痛いことを恐れる?違う。痛さを知るのが医者じゃ』

『他人に痛みを与えるも、取り払うも、両方できるのは医者だけじゃよ』

――痛さを恐れる医者はいない、と?

『医者にとって痛さは常に側にあるもの。お前は普段吸ってる空気が怖いか?飲んでる水が怖いか?』

――いえ

ここまでにします
次回からはシオン先生の昔話です

乙!
シオン先生って意外と熱いですね



まさかのドクロか

すみません更新しようと思ってたんですが
書きためといた分全部消しちゃったので
今日は書けません…

なん…だと…
気長に待ってるよ~

話はとっくにできてるのに書く気力がまったく起きません…
どうしたもんかなぁ…もうしばらくお待ちを…

やる気まで消しちゃうなんでいきすぎです!
息抜きにまたVIPで書けばいいのでは

2ちゃんは絶賛規制中で書けないんです…(規制なかったから書くのかよ、というのはナシで)
今日はやるよ!思い出しつつアレンジしつつ…

35年前

「ば、化物ォッ!」

?「化物で結構。じゃあの」スッ

ドスッ!!

「!……」ボタボタ

狭い地獄に広く伝わる、とある悪魔の存在

『灰積もる谷に近づくな。白骨の者に取って食われ』

ズルズルズル…

?「……まったく…誰が肉なぞ食うか…」

?「…この体じゃ食いたくても食えんわい」

その悪魔…白骨の者とは、他でもないこのドクロである

生前に目覚めた『バイ・セカンド』は「骨を操る能力」だった

彼はそれを使い、自らの肉体を骨で代用することを可能にする

骨の肉体に『死』の概念はなく

定期的に移し変えれば、意識が絶えることもなかった

絶対無敵の悪魔である

王族がその力に目をつけ、初の上級悪魔として雇うのも当然であろう


だが…


ドクロ(つまらぬ)

死なない…寿命がない…一見、悪くないような気がする

違うのだ

それは永遠を手にしたと言うことなのだ

ドクロ「つまらぬ…」

時間制限のない生涯に、どんな楽しみがあろうか

なにもないのである


ドクロは上級悪魔になって…王城への出入りが自由になって…暇を潰せるだろうと数多の本を読んだ

特にドクロが強く興味を示したのは『医術』だ

人間界に定期的に送られる留学生たちの歴史の結晶

しかし不死身のドクロにとって、量などさして重要ではない

142年で、地獄に伝わる医術のすべてがドクロ一人のものになった

しかし、彼はそこから骨の有効な使い方をいくらか発見したが

それ以外のこと…つまり本来の用法である、救命は一切行わなかった

なんと無意味な医術だろうか

ドクロ「この死体はどうしようかのう。もう新たな実験も思い浮かばんわ」

ドクロは退屈していたのである

しかしそれが理由であることなど、誰も知らない

彼女を助けた理由であることは…

ガサッ

ドクロ「む…」

ドクロ(またか。最近はどうしてこう、この辺りにやって来る阿呆が多いのかのう…近々場所を移したほうがいいかもしれんな)

ガサガサ…

ドクロ(……仕方ない、さっさと能力で殺…)

ヨロヨロ…

ドクロ「………む」

?「うう…」

ドクロ(…子供とは珍しいのう)

?「う……」ヨロヨロ

ドクロ「……」

ゴツンッ!!

?「」ドサッ

ドクロ「何をやっとるんじゃ…前を見て歩か…」

?「……」

ドクロ「……気絶しておる…この寒さじゃ、わしが手をかけるまでもなく死ぬじゃろうな」

?「……」

ドクロ「…………」

ドクロ「…たまには生体実験も悪くないかもしれんのう」

?「………」

?「……う…」ピクッ

?「………!!」ガバッ

?「……」キョロキョロ

ドクロ「起きたか」

?「……?」

ドクロ「……なんじゃ」

?「…お面?」

ドクロ「この顔か?本物じゃよ」

?「……」ボーッ

ドクロ(まだ意識がはっきりしてないようじゃな)

?「ここ、どこ…?」

ドクロ「わしの家じゃ。正確にはその隣のテント…『手術室』じゃがな」

?「…しゅじゅつしつ…」

ドクロ「お主こそなんじゃ…わしの家の回りをふらつきおって」

?「…お母さんが…」

ドクロ「お母さん?…母親がどうかしたのか」

?「………」

?「うわぁあああああああん…!!」

ドクロ「なんじゃ…なんじゃ急に…なぜ泣くんじゃ」

?「わぁああああああああああん…」

ドクロ「うるさいのう子供は…泣くから嫌いじゃ…ほれ」ブンッ

ゴンッ!!

?「」バタン

ドクロ「骨でどつくだけで気絶してくれるから楽じゃな」

?「」キュー…

数時間後


?「!!」ガバッ!!!

?「…あれ…?」

シーーーン…

?「……」ピョン

スタスタ…

?「…?」バサッ


ドクロ「……」グ…ググ…

バキッ!!

?「……」

ドクロ「……」スッ

ゴリゴリゴリゴリ…

?「……」

ドクロ「…ん?」チラッ

ドクロ「なんじゃ、また起きたのか」

?「……」ジッ…

ドクロ「ん?これか?昼に拾ってきたんじゃよ。とりあえず解剖して…」

ドクロ「いや…子供が見てもいいもんじゃないのう…怖くないのか」

?「…よくわかんない…」

ドクロ「………」

ガシャッ

ドクロ「普段は手術室でやるんじゃが今日はお前がいたからのう」ガシャガシャ

?「…あなただれ?」スタスタ

ドクロ「……」ガシャガシャ

ドクロ「…改名なんてした覚えはないが、この姿になってからドクロなんて呼ばれておる。ただのジジイじゃよ」ガシャガシャ

?「おじいちゃん」スタスタ

ドクロ「…お前こそなんじゃ。名前は?」ガシャガシャ

?「……わかんない」スタスタ

ドクロ「…分からない?…なにを言っとるんじゃ」ガシャ…

?「わかんない…おぼえてない…」

ドクロ「……」ピタ

ドクロ(もしやどついた拍子に記憶がすっぽり抜けたとかそんなことはないかのう)

?「……」

ドクロ「……お前の目、いい色をしとるのう…なかなか見ない色じゃ」

ドクロ「そういえばわしの読んだ本に色についてまとめたものがあっての」

ドクロ「たしか『日本』の花からできた色だったか…気に入ってるのがある。お前の目はその色だ」

?「……なに色?」

ドクロ「…紫苑色」

?「…しおん…」

ドクロ「…よし。覚えてないからといって、そのままでいるわけにもいかん。お前のことはシオンと呼ぶことにしようかの」

?「………うん」

ドクロ「…ではシオンや。お前ここでなにをしておったのじゃ」

シオン「…うーん…」

ドクロ「覚えてないのか」

シオン「……」コクン

ドクロ「家はどこじゃ?親はどうした?」

シオン「……わかんない…」

ドクロ(まずいのう。さっきは母親のことは覚えているようじゃった。わしのせいで忘れてしもうたのか)

ドクロ「まあいいわい。では、お前はもう帰るところが分からんわけじゃ」

シオン「……」

ドクロ「最近なんか退屈でのう…お前わしの話相手になれ」

シオン「え?」

ドクロ「いいじゃろう。寝床は用意してやる」

シオン「……」

シオン「うん」

こうして名を忘れた少女は、新たに名前を得て、ドクロのもとで生活することになった

ドクロにとっては、長い『退屈しのぎ』の始まりである

少ないですが、ここまでにします
でもこの話自体、そんなに長いもんじゃないはずです
また今週中に書けるかな…?

まさかの骨が出るとはおもわなかった
乙!

乙髑髏

シオン「おじいちゃん」

シーーーン

シオン「おじーちゃーん!!」

シーーーーーン…

シオン「……」グスッ


ドクロ「……ふぅ。シオンはまだ寝てるかのう」スタスタ


わぁああああああああああん


ドクロ「…なんじゃ?」

わぁあああああああああ…

ドクロ「どうしたシオン…」ガラッ

シオン「あ…」ピタッ


ドクロ「なるほど…朝起きたらわしがいなくなっていて、捨てられたと思って泣いとったわけじゃな」

シオン「うん…」コクン

ドクロ「お前のう…いくらなんでも拾ってやった次の日に捨てるなんて、鬼でもせんわい」

シオン「でも…」

ドクロ「わしは毎日4時半に起きて一時間ほど散歩しとる。覚えておけよ」

シオン「……うん」

ドクロ「だいたいのう、お前のような子供がなぜそんな早くに起きて…」

グー…

シオン「……」

ドクロ「……そういうことか」


ドクロ「わしゃこの体になってからは食事を摂る必要がなくなった」

ドクロ「しかもここに連れてくる者はいずれ死ぬのだからと何も食わせん…」

ドクロ「だがそうか…これからお前の食いぶちは用意せんとな…王族の奴らに言えばなんとかならんかのう?(わし上級悪魔じゃし)」

シオン「……」

ドクロ「…とりあえず今日の分はどうにかせんとな…」ガサゴソ…

15分後

ドクロ「…見事に何も出てこんかったわ」

シオン「……」ジッ…

ドクロ「…分かっておる!分かっておるからそんな目で見るな!」

ドクロ(ここには無いが外に出れば…)



シーーーン…

ドクロ「……」

シオン「……」

ドクロ「シオンよ…」

シオン「?」

ドクロ「もう一時間は我慢してもらうぞ…」

シオン「…?」

ドクロ「このだだっ広いエリアから食えそうなものを探すんじゃ…」


ガサゴソ…

ドクロ「…ほれ…この野草なんかどうじゃ」ブチッ

シオン「……」パクッ

シオン「…にがい!」ポイッ

ドクロ「あく抜きせんと食えんか…」


ガサガサ…

ガサッ!!

ドクロ「!野うさぎじゃ!シオン、捕まえよ!」

シオン「えっ…えっ!?」

チョロチョロチョロチョロチョロ…

野うさぎ「キキッ!!」ガサッ

シオン「は、早すぎるよ…!」

ドクロ「うーむ…素人には難しいのう」

ドクロ「ならあそこじゃな」


ビュオオオオオオ…

シオン「が、崖…?降りるの…?」

ドクロ「…心配するな、道具なしでも行ける高さじゃ…だが慎重にならんと落ちるぞ」

シオン「……」ゾッ

ドクロ「平気じゃ、骨折くらいならわしが治してやるわ」

シオン「…う、うん…」

ガラガラ…

シオン「こ、怖い…」ソーッ

ドクロ「ゆっくりじゃ、ゆっくり降りるのじゃ」

シオン「おじいちゃん、落ちたら受け止めてくれる…?」

ドクロ「さすがに片手じゃ厳しいのう」

シオン「……う…」

ドクロ「…戻るか?」

シオン「え…?」

ドクロ「今ならまだ戻れるじゃろ」

シオン「……」

シオン「も、戻らない。降りる…!」

ドクロ「……そうか…偉いぞ」


ガラガラ…

シオン「……」ソーッ…

ドクロ「落ち着くんじゃ…ここの岩肌は表面が掴みやすくなっとるからのう。ゆっくりいけば必ず降りられる」

シオン「う、うん…」ドキドキ

パラパラ…

シオン「……」ビクッ

ドクロ「落ち着け。平常心じゃ平常心」

シオン「へーじょーしん…?」

ドクロ「そうじゃ。どんな事であろうと、成し遂げるには平常心でいることが大事じゃ。決して焦ってはならん。恐れてはならん」

シオン「……」グッ

シオン「へーじょーしん…へーじょーしん…」ソーッ…

30分後

シオン「へーじょー…しん…」プルプル

ドクロ(体力がもう保たんか?)

シオン「へーじょー…あっ!」ズルッ

ドクロ「!」

ドシャアッ!!!

シオン「…う…」

シオン「……あっ!おじいちゃん!?」

ドクロ「……まったく…後少し高いところから落ちてたらわしの体が潰れとったわい」ガシッ

シオン「あう…ありがとう…」

ドクロ「…さぁやっと降りれたぞ」

ザァアアアアアアアア…

シオン「川…」

ドクロ「…この川にはな…」スッ

シオン(石ころ?)

ドクロ「ほっ!」ヒュッ

バシャバシャ!!

シオン「魚…!」

ドクロ「わしはいつもこの川で死体を洗っとってのう。魚どもは屍肉に群がってくるんじゃよ」

ドクロ「しまいにはただの小石を屍肉だと思い込んでおるわ」

シオン「……」

ドクロ「捕まえてみよ」

シオン「…うん」タタタタッ

バシャバシャバシャ

ドクロ「……」

シオン「………できないよ!」

ドクロ「…なんじゃお前…せっかくここまで来て…」

シオン「うー…石を投げたら寄ってくるの?」

ドクロ「そうじゃ」

シオン「じゃあ…」ザブザブ

シオン「ちょっと大きいかな…えいっ」ブンッ!!

ザバンッ

…バシャバシャ!!

シオン「わぁっ」ザブザブ

ドクロ(浅い川だがあの子の膝辺りまであるんじゃな)

シオン「……!捕まえた!一匹だけ捕まえたよ!」バシャバシャ

ドクロ「おお、これでひと安心じゃ」

シオン「……あれ?」

ドクロ「どうした」

シオン「この魚、動かなくなっちゃった…」

ドクロ「水から出たからか?それにしても少しは暴れそうなものじゃが…」スッ

ドクロ「む…?なんじゃこいつ、頭が潰れとるじゃないか」

シオン「?」

ドクロ「お前の投げた石がたまたま、直撃したんじゃろう」

シオン「……」

ドクロ(やれやれ、ひと安心かと思ったがまぐれで一匹じゃちと不安じゃのう)

シオン「…さい」ボソッ

ドクロ「…む?」

シオン「ごめんなさい…お魚さんごめんなさい…」

ドクロ「………」

パチパチパチ…

ドクロ「この骨の…こことここをこの角度でぶつけると火花が散るんじゃ。それで火が着けられるんじゃよ。驚いたじゃろ」

シオン「……」

ドクロ「……そんなに魚を死なせてしまったのが悲しいか」

シオン「……」

ドクロ「どうせ食うのじゃから、結局死ぬのじゃよ」

シオン「……でも…」

ドクロ「……ほれ、焼けたぞ」ヒョイ

シオン「…うん…」スッ

ジュッ

シオン「あつっ…!!」ビクッ

ドクロ「お前何をやっとるんじゃ!目の前で焼いてたのを素手で触る馬鹿がおるか!冷やしてこい!」

シオン「うぇーん!」タタタッ

ドクロ「…というかわしの体は熱いとか冷たいとか感じないから触れるんじゃがの」


ドクロ「……皿の代わりはこの平たい石でいいとして…何で食わせればいいかのう」

シオン「ひりひりする…」タタタッ

ドクロ「…む…そうじゃ!」

シオン「ふー、ふー」

ドクロ「待てシオン。手で食うなんて汚い真似はさせんぞ。これを使え」スッ

シオン「…それなに?さっきも使ってた…」

ドクロ「これはメスじゃよ。医療器具だが常に持ち歩くようにしとる。さっきは内蔵を取るのに使ったんじゃ」

シオン「メス…」ジーッ

ドクロ「刃が小さいナイフと思えば不便ではないじゃろ。それで身を切り分けて…」

シオン「こう…?」スッ

ドクロ「おっと、指を切らないようにするんじゃぞ。メスは切れ味がいいから…」

シオン「うん」サクッ

ストンッ!!

ドクロ「……ん?」

シオン「……?」

パカッ

シオン「切れたよ!」

ドクロ「あ、ああ…そうじゃな…上手に切れた…」

ドクロ(おかしい…おかしいぞ…なぜ魚と一緒に…)

ドクロ(『下の石皿』まで切れる!?)

ドクロ(いくら切れ味がいいからと言えどこれは…)

ドクロ「シオン、そのメスを一度返すんじゃ…」

シオン「?」

ドクロ「…この石…ふんっ!」ブンッ

ガキンッ!!

ドクロ「…切れん…そうじゃな…普通はそうじゃ…」

シオン「おじいちゃん、お魚食べたいよ…」

ドクロ「…わ、悪かったのう。ほれ」スッ

シオン「……」ヒョイ

ドクロ(…あの切れ味…もしやこいつの…)

シオン「あーん…」

ドクロ(…能力…?)

シオン「……」パクッ

シオン「ん……」モグモグ

ドクロ「…どうじゃ?」

シオン「…味しないよ…」

ドクロ「…ま、まぁ調味料の類を用意しとらんからな」

ドクロ(刃物の切れ味を増加させる能力といったところか…しばらくは様子見じゃな)

シオン(これからどうやって捕まえようかな…)モグモグ

今日はここまでにします

久しぶりに、わりとほのぼのした話を書いてて気分がよかったのに
室内を飛び回る蚊にイライラしてきました

乙!!
自分で自分の身体を切り落としてしまわないか心配になるな

更新されていたか

数日後

シオン「よいしょ…よいしょ…」ソーッ

シオン「あと…ちょっ…と……」プルプル

シオン「よい…しょ…!」スタッ

ドクロ「やっと一人で降りれるようになったのう」

シオン「うーん…」グッタリ

ドクロ「次は魚じゃ。いつもはわしも手伝っておったが、今日は一人でやれ」

シオン「…えー…」

スタスタ

シオン「……」ヒョイッ

シオン「……えいっ!」ブンッ

バチャン!!

シオン「わ、わ…」バシャバシャ…

シオン「取れた!取れたよー」

ドクロ「うむ……」

ドクロ(なんだかすっかりなついてしまったのう)

ドクロ(だがまぁ思っていたほど苦労はせんし、退屈しのぎにもなっておるし…)

ドクロ「しかし二匹じゃ足りんじゃろう」

シオン「うーん、でも」

ドクロ「?」

シオン「一日にいっぱい取っちゃったらいつか取る分がなくなっちゃうよ」

ドクロ「……」

ドクロ「…くくっ」

ドクロ「なくなりゃせんわ…たかだか一匹二匹…好きなだけ取ればいいんじゃ…」

シオン「…でもシオンの手じゃ二匹までしかとれないもん…」

ドクロ「なら違う方法を考えるんじゃな…」

シオン「…違う方法…?」


シオン「ただいまぁ」

ドクロ(もう自分の家も同然なんじゃな)

ドクロ(いやいや悪いことではないが…)

シオン「……」

ドクロ(こりゃ本格的に面倒を見てやらなきゃならんようじゃな)

さらに数日後

シオン「おじいちゃーん」

ドクロ「…なんじゃ」

シオン「なにしてるの?」

ドクロ「見れば分かるじゃろう。本を読んどるんじゃよ」

シオン「おじいちゃん本好きなの?」

ドクロ「ん…?」

ドクロ(…そういえば最近読書ばかりしているのう)

ドクロ(死体弄りに興じる余裕が…いや余裕はあるがこいつの前ではやりづらいのじゃ)

ドクロ「そうじゃな…本はいいぞ…この年寄りにもまだまだ新たな知識を与えてくれる…」

シオン「…シオンも読みたい」

ドクロ「…本棚にあるのなら好きなだけ読んでよいぞ」

シオン「……」ジッ

ドクロ「……」

ドクロ「なんじゃその目は…」

シオン「……」

ドクロ「まさか読んでほしいなどと言うつもりではなかろうな…」

シオン「……うっ」

ドクロ「…まぁいいわい…こっちにこい」

シオン「…!いいの!?」

ドクロ(読み聞かせなんてしたことないがのう…)

ドクロ「わしが声に出して読むのをお前は黙って聞くだけじゃ。それでもいいのか」

シオン「うん!!」


それからしばらくドクロはシオンに読み聞かせをするのだが

ドクロが読んでいたのはどれも『医学書』ばかりだった

ほとんど理解していなかったとはいえ、シオンがはじめて医術に触れたのはこのときになる

さらに数週間後

ドクロ(こいつがやってきてもう一ヶ月。早いもんじゃな)

シオン「……」フムフム

ドクロ「のうシオン。読書中に悪いが…」

シオン「…?」

ドクロ「そろそろ能力を鍛えてみてはどうじゃ」スッ

シオン「能力…?」

ドクロ「……」

ドクロ「お前まさか、自分の能力が何か分かっとらんのか」

シオン「…うーん、お魚を上手に取れる!」

ドクロ「違うわいアホウ。ちっとも上手くないじゃろが」

ドクロ「よいか?お前の能力は…」


シオン「ホントに?ホントにこれが切れるの?」

ドクロ「そのはずじゃ」

シオン「だってこれ鉄だよ…堅いよ…」

ドクロ「いいからやってみよ…」

シオン「…うーん」スッ

ブゥンッ!!

ドクロ(!精神力が『可視化』した…なるほど刃の表面をコーティングしとるんじゃな)

シオン「やぁっ!」シュッ

ストン…

ドクロ「…やはりこれで間違いないのう」

シオン「……これだけ?」

ドクロ「ん…?」

シオン「色んなものが切れるようになるだけ…?」

ドクロ「不満なのか」

シオン「もっと便利なのがよかった…」

ドクロ「そこまで不便には思わんがのう…」

ドクロ「まあ能力なんて使い方次第でいくらでも便利になるわい」

ドクロ「だから『鍛える』と言ってるのじゃよ…」

シオン「…じゃあ、やる!」

ドクロ「よし…着いてこい」スッ

ドーーーン

シオン「…大っきい岩だね…」

ドクロ「うむ。削り甲斐があるじゃろう」

シオン「…え?削るの…?」

ドクロ「そうじゃ」

シオン「…どんなふうに…?」

ドクロ「お前の好きなように削ればいい…」

シオン「うーん…」

ドクロ「なに、別に今日一日じゃなくてもいいんじゃ。能力とは時間をかけてじっくり磨くものじゃからな」

シオン「……」タタッ

ガリガリガリガリ…

ドクロ「……」

ドクロ(刃物の切れ味を増加させる。確かにあの子には不向きな能力かもしれんのう)

ドクロ(しかしなぜ自分の能力のことを知らなかったのじゃ…?)

ドクロ(普通、生まれ持った能力がどういうものかは物心つく頃には自然と使えて、理解できるものじゃ)

ドクロ(それが分からぬということは…単純に能力を使ったことがなかっただけのう。強化の対象…刃物など子供の手には渡らぬか?)

ドクロ(それとも)

ドクロ(…記憶にないということか…?)

シオン「うーん…どうしよう…とりあえず削ってるけど…」ザクザク

シオン「そうだ、おじいちゃんの形にしようかな」ザクザク

シオン「あっ」ツルッ

パキン!!

シオン「あわわ…」

ドクロ「なんじゃ、どうかしたのか」

シオン「お、落として折れちゃった…」

ドクロ「別にいいわい安い刃物など…じゃこれを使え」キラン

シオン「メス…」

ドクロ「そうじゃ」

シオン「よいしょ」スッ

スパンッ!!!

シオン「え?」

ドクロ「ぬ…?」

ズズゥン…!!!

シオン「…き、切れちゃった…」

ドクロ(…真っ二つじゃと?あの岩が?…いったいどんな切れ味なんじゃ)

シオン「メスだとよく切れるのかなぁ」

ドクロ「……」

ドクロ「…『物質強化能力』にはそういう場合もある…物によって発揮される効果にムラがある場合がのう…」

シオン「??」

ドクロ「要するに、お前に最も適した刃物がその『メス』というわけじゃ…多分じゃが」

シオン「へぇえ…」ジーッ

シオン「でも、メスってちっちゃいよ」

ドクロ「持ち歩くのには便利じゃろ」

シオン「あ、そっか!」

ドクロ(しかしまぁ、不釣り合いじゃのう…こんないたいけな娘にメスなど…)

シオン「えいっ!えいっ!すごーい!なんでも切れる!」スパスパ

ドクロ「……いや意外と釣り合ってるやもしれんのう」

ドクロ「……」パラ…

ドクロ(……わしはこの子に何を期待しておるのじゃろうか)

ドクロ(柄じゃないのう…わし自身が学ぶためではなく…教えるために書を読むなど)

シオン「……」スヤスヤ

ドクロ「…これが『教育欲』ってやつじゃな」

ペラ…


翌朝

ドクロ「起きよシオン」

シオン「ふぇ…ん…」モゾモゾ

シオン「う…いつもより早い…なんで…?」

ドクロ「今日からお前の生活を改めることにしたのじゃ」

シオン「……?」

ドクロ「さぁ顔を洗ってこい!」

シオン「…??」タタタ
※生活用水は川の水とは別にあります


ドクロ「さて…シオンよ、そこに座るんじゃ」

シオン「お、おじいちゃん…いきなりどうしたの」

ドクロ「どうもこうもないわい。お前と同じ年頃の子供というのはだな、学校で勉強するか親のために働くかどちらかをしてるんじゃ」

シオン「で、でも学校に行くお金なんてないよ…」

ドクロ「わしもかつてはそうじゃった。あんなところに行けるのは王族か金持ちだけじゃ」

ドクロ「だが運がいいのうシオン」

シオン「…?」

ドクロ「わしなら長年積み上げた膨大な知識をタダでお前に分けてやれるぞ」

シオン「……えっ」

シオン「おじいちゃんがお勉強教えてくれるの?」

ドクロ「そうじゃ。学校でなにを教えておるのか詳しくは知らんが、お前にはわしの知識を叩き込んでやろう」

シオン「能力を鍛えるのは?」

ドクロ「それもやる」

シオン「……」

ドクロ「お前は今日からわしの教え子じゃ」

シオン「…うん!」

ドクロ「ではわしのことは『おじいちゃん』ではなく『先生』と呼ぶように…」

シオン「はい先生!」

ドクロ「くく…よろしい」


ドクロがシオンを拾って一ヶ月

ここで二人の関係は『師弟』になった

以後この関係は15年間続くことになる…

今日はここまでにします

もともと、そこまで長いエピソードにするつもりはありませんでしたが
なんせ二週間空いてしまったので、少し飛ばしながら書きました

おつ

面白くなってきたな

わくわく。わくわく。

また二週間空いてしまいました。申し訳ない

シオン「おじいちゃん、おじいちゃん」

ドクロ「……」

シオン「……せ、先生!」

ドクロ「うむ」

シオン「お話ってなに?」

ドクロ「お前にはまず目標を持ってもらおうと思ってのう」

シオン「目標?」

ドクロ「そうじゃ。目標がなければ努力できんじゃろう」

シオン「でも、まだなにしたらいいのか分からないのに目標なんて…」

ドクロ「難易なことでなくてもよいんじゃぞ」

シオン「……」

シオン「お魚取れるようになりたい」

ドクロ「……」

シオン「……」

ドクロ「…ま、そういうのもありじゃろう。ではそのために必要になるのは…」

ドクロ「……やはり能力を使いこなせるようになることじゃな」

シオン「うん!」


ドクロ「…よいかシオン。お前は刃物に触れている間、その刃物の切れ味を増強できる」

シオン「離したらダメなの?」

ドクロ「物質強化型ってのはそういうもんじゃ」

シオン「ブッシツキョウ…??」

ドクロ「最近成立した能力の種類じゃよ…また今度教えてやるわい」

シオン「それで、お魚取るには能力を使うのが一番いいの?」

ドクロ「そうじゃ。どんな刃物でも、一突きで獲物も仕留める万能の銛になる」

シオン「………そうかなぁ」

ドクロ「む?」

シオン「それじゃ結局、手で取るのと変わんない気がする…」

ドクロ「…いや一緒ではないじゃろう」

シオン「…うーん……」

ドクロ(変わった子じゃのう)

シオン「とりあえずやってみる!」

ドクロ「うむ」

シオン「行ってきまーす」

ドクロ「一人で行けるのか」

シオン「……」

シオン「着いてきてぇ…」

ドクロ「やれやれじゃ」

ザザザザザザザザザザザ…

シオン「……むー…」ジーッ

ドクロ「……」

シオン「…!」キュピーン!!

シオン「えいっ!」ブンッ

ジャボッ

シオン「……」

ドクロ「……上げてみよ」

シオン「……」ザバッ

シオン「…うーん…取れてない…」

ドクロ(能力だけじゃなく動体視力も要求されるわけか)

シオン「もう一回!」スッ

ジャボッ

シオン「えいっ」ザバッ

ドクロ「おらんのう」

シオン「まだまだ!」スッ

ジャボッ

シオン「やぁっ」ザバッ

ドクロ「む、取れたか」

シオン「や、やった!見えてなかったのに!」

ドクロ「まぐれか?」

シオン「!」

ドクロ「ちゃんと見て取らねば意味がないぞ」

シオン「…わっ分かってるもん!」ジャボッ

ザバッ

ドクロ「残念、外れじゃ」

シオン「わーん…!!」ジャボッ


シオン「も、もう無理ぃ…」フラフラ

ドクロ「三時間で5匹か。ちゃんと見て取ったのは?」

シオン「……2匹」ボソッ

ドクロ「…散々じゃが…ま、取れただけマシじゃ。明日は3匹明後日は4匹。少しずつでも増やせればいいのう」

シオン「うん…でもねやっぱりもっといい方法があると思うの」

ドクロ「その方法もおいおい見つけていくんじゃな…」

シオン「…か、帰ったら寝てもいい…?」ヨロヨロ

ドクロ「なに言っとるんじゃ、勉強に決まっとる」

シオン「えーっ…」

ドクロ「えーっじゃない、お前の返事は『はい』これだけじゃ」

シオン「……」

シオン「…はーい」

ドクロ「一日一冊、必ず本を読むようにするんじゃ。この本棚の中の本ならどれでもよい」

シオン「難しそうなのばっかりだよ」

ドクロ「……」

ドクロ「…王族の書庫に連れていってやる。多少はお前でも読める本があるじゃろう」

シオン「!」

ドクロ「ただし隠して連れてくがのう」

シオン「おじいちゃん、偉い人なの?」

ドクロ「そういえば言ってなかったかのう…」

ドクロ「わしは王族の連中のボディガードのようなもんじゃ…呼びがかかればわざわざ出向かねばならん」

シオン「ふーん…」

ドクロ「…そんなつまらなそうな顔をするでない。心配せんでもわしはここから離れんよ」

シオン「いいの?」

ドクロ「…護衛など二十年と少しでやめたわ。連中もわしが融通の効かん爺さんだと思っとるだろうが、決して始末はできんからのう」

シオン「おじい…先生って強いの?」

ドクロ「……」

ドクロ「強い。なんせわしは不死身じゃからな」

シオン「……」ポカーン

ドクロ「話が逸れたが…とにかくお前はたくさんの本を読んで、その小さな頭にありったけの知識を詰め込むんじゃ」グリグリ

シオン「いたたた」

ドクロ「そしたらわしが直々にものを教えてやろう」

シオン「何を教えてくれるの?」

ドクロ「そのときお前がもっとも関心を持ってるものじゃ」

シオン「……?」

こうは言ったものの、シオンの関心は必然的に医学に向くことになる

それ一色で本棚が埋まっているのだから

しかし難しいことは何も分からぬシオンが『一日一冊』を6年間続けられたのは

普通じゃ少しあり得ないことだった…

6年後

シオン「……」ペラッ

シオン「……」ペラッ

シオン「……」ペラッ

トンッ…

シオン「んん~っ…」グググ…

シオン「読み終わった!1683冊!」

シオン「長かったなぁここまで…本当に…」

シオン「……」グー…

シオン(夜通し読んでたからかお腹空いちゃったな)

シオン「よしっ」スクッ


ドクロ「……む」

シオン「……」タタタ

ドクロ「今日は早いのう…さては一晩中読んどったな」

ドクロ「どれ…久々に着いてってやろうかの」


ザザザザザザザザザザザ…

シオン「ふふふ…いるいる…みんな私の餌になるとも知らずに」

シオン「…よいしょ」グググ…

シオン「うりゃっ」ブンッ!!!

ドッボーーン!!

シオン「……」スッ

シュッ! シュッ!! シュッ!!!

カカカッ!!!

シオン「いちにぃ…八匹か…」

ドクロ「…相変わらず大した腕じゃの」

シオン「あ、先生おはようございます。いつの間に…」

ドクロ「大岩を川に投げ込んで跳ね上がった魚をメスの投擲で仕留める」

ドクロ「それも魚同士が重なる瞬間を狙って、メス一本で二匹以上捕るとは」

シオン「最初に先生が見せてくれた方法をアレンジしたんです」

ドクロ「いやはや見事なもんじゃよ」

シオン「…あ、そうだ。読み終わりましたよ。本棚の本全部」

ドクロ「……まさか本当にやるとはのう」

シオン「年に80冊くらいのペースで王族の本も読みましたし、自分で言うのもなんですが結構すごいですね」

ドクロ「…調子に乗るんじゃない」コンッ

シオン「たっ…やめてくださいよ、先生の手は骨なんだから、軽く小突いただけでも硬くて痛いんですよ」

ドクロ「……」

ドクロ「そうか。本を読み終わったのか」

シオン「?…ええ」

ドクロ「よくやったのう」

シオン「……どうも」

ドクロ「と言うわけで約束通り、今日からわしが直々にお前に教えよう」

シオン「何を?」

ドクロ「何を学びたい?」

シオン「政治学」

ドクロ「なんじゃとっ!?」

シオン「…冗談ですよ。私が学びたいのはもちろん」

シオン「医学」

ドクロ「…よろしい…では後ろを向け」

シオン「?」クルッ

バサッ

シオン「…!」

ドクロ「…そいつをお前にやろう」

シオン「…白衣…先生のですか?」

ドクロ「そうじゃ。代わりはいくらでもあるぞ」

シオン「…大事にします」


こうしてついに、ドクロが直に師事をするようになった

書によって得た膨大な知識と実践的な技術

この両方のみで構成された彼女に、天は更なる贈り物を授けた

変化は4年後、シオンが17歳の頃に生じる


シオン「…………先生」

ドクロ「む?」

シオン「今ちょっとボーッとしてて、よく覚えてないんですが」

シオン「先生この献体に何かしました?」

ドクロ「何か、って具体的になんじゃ」

シオン「……ここ、私が切除したはずの部分なんですけど」

シオン「すごく中途半端に縫合してあって…」

ドクロ「わしがそんなことするわけないじゃろ…見せてみよ」スッ

ドクロ「…む?抜糸までしてあるのう…古傷じゃあないかのう」

シオン「抜糸跡ありませんよ」

ドクロ「…なんじゃこの死体は。どうなっておる?見えない糸で縫合してあるみたいじゃな」

シオン「見えない糸…?」

ドクロ「……!シオンお前…何をしておる?」

シオン「…?」

ズズズズズ…

シオン「…え」

シオン「手を置いた部分の傷が塞がっていく…」

ドクロ「何が起きとるんじゃ?」

シオン「……」パッ

シオン「…止まった。でも切れてたはずの筋肉や神経が完全に繋がってる」

ドクロ「……」

シオン「……」

ドクロ「もしや能力か?」

シオン「この献体の?彼はもう死んでますよ」

ドクロ「お前のじゃよシオン」

シオン「………私の?」

ドクロ「……あり得んか。『回復能力』などわしでさえ聞いたことがないわ」

シオン「…あり得ませんよ。『回復能力』なんて、医術が必要なくなってしまう」

ドクロ「…………」

ドクロ「…調べる必要がありそうじゃな」

シオン「えぇー…」



翌日

ドクロ「ひとまず…結論が出たのう。お前の能力…」

シオン「まさかあんなことやこんなことができるとは」

ドクロ「ひたすら医学に専念した結果かのう」

シオン「なんでしょうかね…」

ドクロ「…名前はどうする?」

シオン「なんでもよくないですか?」

ドクロ「こういうのはどうじゃろう…」カキカキ

シオン「なんか安直ですね。ちょっと変えませんか…」

………………


15年目。シオン22歳

別れの時がやって来た

バサバサバサ…

?「あなたがこの一帯で罪のない者共を襲っていると聞いた」

ドクロ「………君は誰じゃ」

?「…俺の名はデュロイ。テロ組織『ヘルアクロウズ』のリーダーだ」

ドクロ「…ヘルアクロウズ。はじめて聞くのう」

デュロイ「ついこないだ出来たばかりでな。メンバーはまだ4人だ」

デュロイ「だがいずれはこの地獄を変える最強の組織になる」

ドクロ「…して、わしに何の用じゃ」

デュロイ「あなたをメンバーに引き入れたい」

ドクロ「……なんじゃと?」

デュロイ「この狭い地獄でも、医術に通じている悪魔はごく僅かしかいないと聞く」

デュロイ「しかしその中には、100年以上生き続けている天才医師がいると…あなたのことで間違いないはずだ」

ドクロ「……半分正解じゃ」

デュロイ「どうか我々にその力を…」

ドクロ「断る」

デュロイ「……何故だ」

ドクロ「生憎わしは既に王族に腕を買われておるんじゃよ」

デュロイ「…王族に…」ピクッ

デュロイ「…では仕方がない。諦めることにする」

ドクロ「ずいぶん諦めが早いのう」

デュロイ「王族絡みとなれば、迂闊に味方に率いれるわけにはいかない」

ドクロ「……なるほどのう」

ドクロ「ではわしの弟子はどうじゃ」

デュロイ「……弟子?」



シオン「…先生の元にお客さんが来るなんて珍しいですね」

ドクロ「いやそれが、お前に用があるそうなんじゃ」

シオン「私に…?」


ドクロ「…連れてきたぞ」

シオン「……?」

デュロイ「…この娘があなたの弟子…?」

ドクロ「そうじゃ」

シオン「あの、先生、誰ですあの人」

ドクロ「テロ組織『ヘルアクロウズ』のリーダーだそうじゃ」

シオン「テロ組織…ですか?」

ドクロ「シオンよ…」

ドクロ「この組織に入るんじゃ」

シオン「……は…?」

今日はここまでにします

この二週間のあいだにスマホを修理に出したんですが
新品のほうがなぜか反応が悪い…

シオンの回想は次で終わる予定です

乙ですのだ!
続き楽しみにまってるぞ

乙!!
シオン「着いてきてぇ…」 が可愛すぎてやばい。可愛いのう可愛いのう
今は・・・coolだよね!

乙シオン

シオン「いや…入るって…組織…テロ…」

シオン「テロ組織のメンバーになれってことですか…」

ドクロ「それ以外になかろう」

シオン「………」

シオン「冗談でしょう…テロ組織なんて…なんで私がそんなのに手を貸さなきゃいけないんです」

ドクロ「彼らが必要としとるのじゃ」

シオン「私を?」

ドクロ「お前の医術じゃ」

シオン「………」

シオン「…いやですよ…テロ組織なんかのために使うような医術はありません」

ドクロ「そう言うでない」

デュロイ「…我々もそこまで反発されては、率いれる気にはならないな」

シオン「…ほら、こう言ってることだし、断ります」

ドクロ「駄目じゃ。行け」

シオン「…なんでそんなに…!」

ドクロ「お前はここにおらん方がいい」

シオン「…え?」

ドクロ「これ以上わしと一緒におっても、お前のためにならんと言ってるのじゃ」

シオン「…私のためにならない…?なんで…先生は私に医術を教えてくれてるじゃないですか」

ドクロ「ためになっておるか」

シオン「もちろんです」

ドクロ「嘘じゃな」

シオン「なっ…嘘なんかじゃありませんよ!先生に教えてもらった医術は…」

ドクロ「役に立ったか」

シオン「…役…に……」

シオン「………」

ドクロ「分かるじゃろうシオン」

ドクロ「お前の医術は何も救ってはおらん」

ドクロ「無意味なんじゃよ今のお前は」

シオン「無…意味…」

ドクロ「………」

ドクロ「お前のその腕を生かせる機会は、今まで一度もなかったじゃろう」

ドクロ「ここで蹴ったらお前は一生あぶれたままじゃ」

ドクロ「お前のような天才がこんなところで燻ってるわけにはいかん」

シオン「…でも……」

シオン「………」

デュロイ「…俺は君を無理に引き入れるつもりはない」

デュロイ「ない、が。今答えが出せないなら…せめて一日待ってやろう」

デュロイ「…また明日来るから、それまでに考えておけ」

シオン「……」

ドクロ「さあシオン」

シオン「……」

ドクロ「荷物をまとめておくんじゃ。お前の私物などほとんどないがのう」

シオン「……嫌です」

ドクロ「む?」

シオン「行きませんあんな連中のところなんて…私はここにいる…」

ドクロ「…お前は彼らのところに行くのが嫌なのか、ここから離れるのが嫌なのか」

ドクロ「どっちじゃ」

シオン「…どっちもですよ」

ドクロ「では、何故彼らのところに行くのが嫌なのじゃ?」

シオン「だって、テロ組織なんて」

シオン「危ないこと、死にかけるようなこと、たぶんたくさんするんでしょう」

シオン「私は死にたくありません」

ドクロ「……」

ドクロ「シオンよ…死ぬのは怖いか?」

シオン「怖いです。当たり前じゃないですか」

ドクロ「…哀れじゃのう…『命に限りがある者』など…脆弱すぎる…」

シオン「……」ピクッ

シオン「それではあらゆる生物を否定することになります」

ドクロ「当然、そういうことになるのう」

ドクロ「だがわしは…この不死の身は…それらを完全に超越したのじゃ…!」

シオン「今さらそんなこと言われなくても知ってますよ。でも…」

シオン「貴方はどんな生物よりも滑稽だ…」

ドクロ「滑稽…か…言うのぉ」

ドクロ「わしからすれば…何よりも死を恐れておるお前のほうが滑稽じゃよ」

ドクロ「わしのように、最初から死なぬと分かっていれば、何も恐れることはない」

シオン「…では、先生は『痛いこと』は怖くないんですか」

ドクロ「……はぁ?何をふざけたことぬかしておるんじゃ」ゴンッ

シオン「痛っ!なんで叩くんですか!先生の骨の体は硬いから、軽く叩いただけでも…」

ドクロ「痛いことを恐れる?違う。痛さを知るのが医者じゃ」

ドクロ「他人に痛みを与えるも、取り払うも、両方できるのは医者だけじゃよ」

シオン「…痛さを恐れる医者はいない、と?」

ドクロ「医者にとって痛さは常に側にあるもの…」

ドクロ「お前は普段吸ってる空気が怖いか?飲んでる水が怖いか?」

シオン「いえ…」

シオン「でもそれはさすがに極端すぎますよ…」

ドクロ「極端なものか。痛みは常に側にある」

ドクロ「そして医術とは、痛みを知ることから始まるのじゃ」

ドクロ「お前はそんな当たり前のことすら知らん。まだまだ未熟者じゃな」

シオン「…未熟なのは否定しませんけど」

ドクロ「よいか?だからこそわしは…彼ら…テロ組織に加われと言っておるんじゃよ」

シオン「……」

ドクロ「彼らはお前の医術を利用したいんじゃろうが…違う」

ドクロ「お前が彼らを利用して、成長するのじゃ」

ドクロ「お前なら間違いなく、強くなれるはずじゃ」

シオン「別に強くなりたいわけじゃありませんし…」

ドクロ「変わるのじゃよお前は」

シオン「……もう寝ます」スッ

ドクロ「ちゃんと準備をしておくんじゃぞ」

シオン「…まだ行くなんて言ってませんよ」

ドクロ「……そうか」

シオン「まったく先生は昔から強引なんですよ…」ブツブツ

ドクロ「……」

ドクロ「……」

ドクロ「のうシオン」

シオン「…っなんですか。まだ何かあるんですか」

ドクロ「わしはさっき…恐れるものは何もない、と言ったのう」

シオン「…それがどうかしたんですか」

ドクロ「確かにわしは、死も、痛みも怖くない」

ドクロ「だが本当は…ひとつ…ひとつだけ怖いものがあるんじゃよ」

シオン「……?」

ドクロ「…『喪失』じゃ」

シオン「…喪失?何を…?」

ドクロ「……」

ドクロ「こうして…100をとうに越えても…どうしてもこれだけは慣れん…」

ドクロ「…他者を喪失するということだけは」

シオン「……」

ドクロ「死なぬというのはとても寂しい…どれだけ若い知人でも…必ずわしより先に死んでゆくのじゃ」

ドクロ「想像できるか?お前にこの悲しさが…」

シオン「……いえ」

ドクロ「わしが何をしようが…他者の命を永遠に繋ぐことなどできはせん」

ドクロ「むしろ手を尽くせば尽くすほど、失ったときの虚しさが増す」

ドクロ「わしにはどうしようもできん。これだけを恐れておる…」

シオン「……」

ドクロ「だがのうシオン…わしはもしかしたら…この悲しみから救われることができるかもしれぬ」

ドクロ「喪失の恐怖を克服することが…」

シオン「…その方法は?」


ドクロ「送り出すことじゃ」


シオン「……」ピクッ


ドクロ「分かるじゃろう。失う前に手放す…わしが救われるにはこれしかないのじゃ」

ドクロ「例えそれがどれだけ辛くとも…」

ドクロ「それでも…送り出して去る者なら…わしにとっては幸福な別れなのじゃ」

ドクロ「だからのうシオン…わしはたぶん、お前のためではなく…」

ドクロ「他でもないわし自身のために、お前を手放すのじゃ」


シオン「……」ジワッ


ドクロ「…今まで…年寄りの戯れ言に付き合ってくれてありがとうのう」

ドクロ「…いい退屈しのぎになったぞ…シオン」

シオン「……」ツー…

ポタポタ…

シオン「私のほう…こそ…ありがとうございました…先生…」

ドクロ「…うむ」

シオン「……おやすみなさい」

バタンッ




ドクロ「…お前も昔は、よく泣く子だったのう」

ドクロ「今じゃすっかり立派になりおって」

ドクロ「……」

ドクロ「骨の体じゃあ涙も流れんわい…」


翌朝

シオン「…ん……」ピクッ

シオン「……」

シオン「…先生の…におい…」

シオン「…!」ガバッ

シオン「…やっぱり…先生がいつも来てた白衣…なんでここに…」

シーーーーーーン

シオン「……」

シオン(…前にも、こんなことがあった気がする)

シーーーーーーーン

シオン「……!」

シオン「…これ…鞄…」スッ

ジャラッ

シオン「メスがこんなにたくさん入って……」

パサッ

シオン「紙…」

『わしからの最後のプレゼントじゃ 達者でのう』

シオン「……!」



シオン「先生!…先生!」タタタッ

シオン「先生っ!」ガチャッ


ヒュオオオオオオ…


シオン「雪…」

シオン(足跡も分からない…)

シオン「……」ガク…

ザッ

シオン「!先せ…」

デュロイ「…答えは出たか…?」

シオン「い……」

デュロイ「彼はこの家を捨てたようだな…」

シオン「……」

デュロイ「それしかないとは言え…さすがに酷いな。お前を強制的に離れさせるために、自分から離れるとは」

シオン「…違う…」

デュロイ「?」

シオン「…先生は…どこかから死体を連れてきて…また戻ってくる…」

シオン「あの時はそうだった…」

デュロイ「……」

シオン「でも今は…先生は…」

シオン「私を送り出せれば…それが…幸福だって言ったから…」

シオン「私は…自分の足でここを離れるんだ…」ポロポロ…

シオン「…それが…師に報いるということだから……」

デュロイ「……お前、名前は」

シオン「……シオン・ルーベンカルド…」

デュロイ「そうか…シオン…」

デュロイ「お前は強いよ。ぜひ、お前のその意志を、力を、俺たちに貸してほしい…」

シオン「……」

シオン「……はい」

デュロイ「…さぁ、着いてこい」

シオン「……」スッ

バサッ

シオン(先生の白衣…ボロボロで、血生臭いけど)

シオン(これで私は、いつでもあなたを感じられる…)

シオン(不死のあなたに、またどこかで逢うことがあるかもしれないけど)

シオン(それでも今は…さようなら)

お世話に…なりました


ビュオオオオオオオオオ…

シオン「…ふ…ふふ……」

シオン「なんだ…今のが…あの…走馬灯ってやつかね…?」

シオン「ずいぶんと懐かしい記憶だが…そうか…20年も前になるのか…」


スローンズ「…痛く…ない……の」


シオン「…痛いさ…今までこんなに痛いと思ったことはない…」

シオン「でもね…師の言葉が今はっきりと…頭の中を流れていった…」


医術とは、痛みを知ることから始まる


シオン「…治す。治せる…私は医者だ…」

シオン「この程度の痛み…克服してやるさ…!」グググ…


スローンズ「………?」



シオン「……『バイ・セカンド』」スッ

今日はここまでにします

こんなの、二ヶ月近くかけてやるほどのものではないはずなのですが
スマホの不調やら単純に時間が取れないやらで、かなり手間取ってしまいました
次からはまた戦闘です。頑張ります

乙ですー!
シオンの過去を聞けてすごいよかった。
少しずつでも更新してるからいつまでも楽しみに待てる
この物語は本当に面白いと思うから応援してる!

おつ
ドクロの優しさに泣いた


 乙

シオン「……『バイ・セカンド 』…」ブゥン

シュウウウウウ…

スローンズ「………?」

シオン「……」シュウウウ…

ポタポタポタ…

ポタ…ポタ…

ポタ………

スローンズ「…血……」スッ

ビシュッ!!

シオン「…手術の邪魔だ」パシッ

スローンズ「……!」

シオン「…釘を取っただけでそんなに驚くかね」

シオン「さしあたって両腕が使えれば私は戦える」

シオン「まずは腕を治療させてもらった」バッ

スローンズ「……傷…無い…」

シオン「言っただろう?『治す』と」

スローンズ「……」バッ

ビシュシュシュッ!!

シオン「ふん…何本でも投げればいい」スッ

カキキキンッ!!

スローンズ「……?」

シオン「これかい?なぁに、大したものじゃない」

シオン「メリケンサックにメスを装着したものだ…メンバーの一人が私にくれたんだがね」

シオン「ただ単に薙ぐ、裂くだけならこうやったほうが効率がいい」

スローンズ「………」ニタァ

シオン「…余裕そうな顔してるが…」

シオン「脚の治療も終了した。これで立てる」スクッ

スローンズ「…それ…」

シオン「……」

スローンズ「なに?」

シオン「…私の能力だけど」

スローンズ「…あげた痛み…どこ……」

シオン「…いいとこに気づいたね」ニヤッ

シオン「治療では傷を塞ぐことができても、痛みを消すことはできない」

シオン「だから麻酔で一時的にシャットアウトする」

スローンズ「…ますい……」

シオン「私の『バイ・セカンド』超法規的緊急医療術(サル・デ・オペレーション)は、道具なしで複数の医療技術を行う能力だ」

シオン「まず縫合…糸はいらない。傷をなぞるだけで筋繊維、皮膚を塞ぐことができる」

シオン「裸眼じゃ見えない神経だって繋ぐ、自然にくっつくのを待つしかない骨だって繋げる」

スローンズ「……」

シオン「そして麻酔。局部、全身、好きなところに麻酔をかける」

シオン「副作用はない。かけられた側は一瞬意識が途絶えるだけだ」

シオン「そして私は…」

シオン「全身麻酔をかけていても、動くことができる!」ダッ

スローンズ「……!」

スローンズ「……」ボタボタ…

ジャラララッ

スローンズ「痛咬寄生(パラサイトペイン)…」パッ

ドシュシュシュシュシュ!!!

シオン(…しかしいくら傷を塞いだって、これを完全に防ぎきることは不可能だ)

シオン「だから避けるしかないっ」

スローンズ「…それ……無理…」ニタァ

シュシュシュシュシュシュ!!!

シオン(そう…私の全身を狙った広範囲の釘…逃げ場はどこにもない)

シオン(だが走り回ってる私を狙っている限り、必ず『ここ』が安全地帯になる)スッ

シオン「鋭利な刃物(MES)!」ジャララララッ

スローンズ「…まだ…防ぐ……の…」

シオン「いいやこれは…」

ドスッ ドスッ ドスッ

スローンズ「…壁に……?」

シオン「あと三本っ!」ドスッ

スローンズ「…もう……手遅れ」


ドドドドドドドドドドッ!!!!


スローンズ「…串刺……」

シオン「当たってないよ」フワッ

スローンズ「………!?」

シオン「能力で強化したメスをかべに刺せば『階段』になる。そしてそこを一気に掛け上がれば…」スッ

スローンズ「……!!」

シオン「空中(逃げ場)がある!」ブゥンッ!!

シオン(上空からの強襲…狙いは首!釘で迎撃するにはもう遅い!!)

シオン「終わりだッ!!」ギランッ

スローンズ「……」ぐるんっ

シオン(!?なッ…なぜこっちを…)

グサッ!!!

シオン「……っ!」ドサッ

スローンズ「………」ボタ…

シオン「……馬鹿な」

スローンズ「………」ボタボタ…

シオン「首狙いを防ぐためにこちらを向いて…顔面で受けたのか…」

スローンズ「………」ニタァ

シオン「…ほっ…」

シオン「頬を串刺しにされても…まだ笑うのかッ!!」シュッ!!

スローンズ「……あ…」

スローンズ「…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!……」

シオン「……!」ピタッ

スローンズ「あ゛あ゛っ!!」ブンッ!!

シオン「くっ…」ドガッ

シオン(いきなり蹴りか…足にも釘が刺さっているから…危なかった…)

シオン(麻酔を掛けていなかったらまたあの『痛み』を受けてるところだ…)

シオン(だが…あいつ自身は…本当に痛みを感じてるのか…?)

スローンズ「…ふ……」スッ

ガシッ

シオン「…!?まさか…」

スローンズ「ふ…ふふふ…ふふふふふ…」グググ…

ブチブチッ!!!

シオン(…自分の頬を…自分で…裂いた……あり得ない…!)

スローンズ「ふふ…う゛……う………」ボタボタボタボタ

スローンズ「愉シい…ネ、お姉さマ…」ニタァ…

シオン(…やはりこいつは…痛みを痛みとして捉えていない…)

シオン(こんな…狂った奴が存在するなんて…)

シオン「……」チラッ

シオン(痛みこそ誤魔化してるが…腹部の止血をしないと…まずい…)

スローンズ「…ふ…ふ……ふふ……」ニタニタ

シオン「…そんな暇…くれるわけない…かね」

スローンズ「あは歯は爬坡巴播羽端!!」

ボタ…ボタタタタッ

シオン(裂いた頬からまた血が…傷つけるほど攻撃が増えるなんて…勝てるわけないじゃないか…)

スローンズ「…痛…咬…寄…生…」スッ…

ジャラララララララッ!!

シオン(…万事休す、かね…)

スローンズ「……死…」

シオン(最後の一撃でしくじり…今度こそ終わったか…)


……オオオオオオオン


シオン「……え…?」

シオン(なんだ…音…振動…後ろの壁から……?)

ギュオオオオオオオオオオオオオ

シオン「……!」

シオン(この…音は…!)

スローンズ「………」ピクッ

ズガギャギャギャギャギャギャ!!!!!

スローンズ「……!?」

ボゴォン!!!

シオン(壁が崩…)

ヴィイイイイイイイイイイイッ!!!!

スローンズ「!」ジャラララッ…

ズバッ!!

スローンズ「………ぎっ」ゴボッ

シオン「あ……」

アーティエ「おおおおおおおおおお!!!」

シオン「アーティエっ!!!」

今日はここまでにします

元祖『マトモに喋らないキャラ』アーティエ再登場です
能天使エクスシアイと戦ってたのが現実時間で1年半近く前ですから、ちょっと記憶が怪しいところもあります…


進展してきた!
続きが楽しみ


1年半……凄く長期連載だな

アーティエ「お゛おおお゛お゛おお゛お゛お゛おおお゛お゛っ」

シオン「アーティエっ…!!」

スローンズ「……」ドチャッ

アーティエ「大丈夫が…?シオン先生…」

シオン「ああ…ギリギリだったよ…ありがとう」

シオン「でもよかった…君こそ…ここまでたどり着けたのか…」

アーティエ「一人…天使ど…戦っだ…」

シオン「天使…」チラッ

アーティエ「……」ボロボロ

シオン「…全身傷だらけだな。よし、すぐに治療する!」バッ

シオン「そこに横になってく…」

スローンズ「………くす」

シオン「!」バッ

スローンズ「……くす…」グググ…

スローンズ「…くすくすくす…」ユラァ

シオン「馬鹿な…アーティエのチェーンソーでも死なないのか…!?」

アーティエ「…真っ二づになっでな゛い゛…」

スローンズ「くす……ごぼっ…」ドクドク

シオン「!そうか…胸に刺さってる釘がチェーンソーで切断するのを阻んでたんだ…」

シオン「でも…これだけの大きな傷!さすがにタダじゃ済まないだろう!」

スローンズ「き・ず……?」ウゾゾゾッ

シオン「!?」

シオン(そんな…溢れる血を釘にして…傷口を塞いでいる!?)

シオン「なんてデタラメな処置だ…医者の私だってそんなことしないよ」

スローンズ「くすくすくすくす…」チラッ

スローンズ「…あなた………邪魔」スッ

シオン「!!避けろアーティエ!」

スローンズ「痛咬寄……生」ドロッ

バシュバシュ!!

アーティエ「ぎっ……」バッ

カキンッ!!

シオン(チェーンソー…あれがあれば私みたいにわざわざ避ける必要はない…か)

シオン「でも気を付けろアーティエ!あの釘が刺さると半端じゃなく痛いぞ!」

アーティエ「ぎるるるるるるる…もう…」

アーティエ「射だぜな゛い゛」ブオンッ!!!

スローンズ「……」ニィ

アーティエ「死ねねねねねねね!!!」ヴィイイイイイイイイイイイイ!!!!

スローンズ「……」ス…ッ

ガギギギギギギギギギギギギギ!!!!!

シオン「手のひらに刺さった釘で止めた!?」

アーティエ「ぎゃ…ぎぎぎぎぎぎお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」ググッ

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ!!!!

スローンズ「…頑…張る……ね」スッ

ドスッ

シオン(もう一本…左手の釘…!)

ビキビキビキビキビキ…!!

アーティエ「……!!?」

スローンズ「……くひゃひゃひゃっ!!」

バキャァッ!!!!

アーティエ「ご………」

シオン「アーティエッ!!距離を取れ!一本でも刺さったらまず…」

アーティエ「があ゛あ゛あ゛っっ!!」ジャララララララララッ

スローンズ「…!!」グルグルグルグル…

アーティエ「独裁者の束縛(デスポット・バインダー)!!」グイイッ

スローンズ「……」フワッ

アーティエ「……消え゛ろ゛ッ!!!」ブンッ

ドゴッ!!!!

スローンズ「……っ」ガフッ

ブワッ!!

スローンズ「あ……う…えっ…」ドサァ

シオン「あ、アーティエ…」

アーティエ「ごい゛づは俺が倒ず…シオン先生には危ない゛…」

シオン「…任せたいところだけど…そううまく行くかね…?」

シオン「手のひらの釘でチェーンソーを砕いた…」

シオン「動きを封じた上で思いっきり殴り付けても…」チラッ

スローンズ「く…く…」ヨロッ…

シオン「まだ起き上がってくる…やはり異常だよ」

アーティエ「でも゛…や゛る゛!!」バッ

アーティエ「独裁者の束縛!!」バッ

ジャラジャラジャラジャラジャラ!!!!

スローンズ「………うっ…と…おし」バッ

ビシュビシュビシュビシュビシュ!!!!

シオン(向かってくる鎖を正確に打ち落としている…!)

アーティエ「ごおおおおおっ!!」ジャラララララララッ

アーティエ「鎖鎚(チェーン・トール)!!」ブオンッ!!!

スローンズ「…いらない…それ…」シュッ

ピンッ!!

アーティエ「!!」

ガシャアッ

シオン(アーティエが掴んで支えている鎖一本を狙い、位置をずらすとは…!)

シオン「明らかに…負傷すればするほど強くなっている…!!」

アーティエ「ごぎ…ぐるるるるるるるる……」イライラ

スローンズ「くくふっ…ひゅるるるるるる……」ニタニタ


シオン(どんな攻撃をしても痛みは感じない…そして確実に対処してくる…どうすれば、どうすればいい!)

シオン(…アーティエの鎖でまた動けなくすればどうにか…いや…その前に釘で弾かれるかね…)

アーティエ「シオン先生…!どう゛ずれ゛ばい゛い゛…!?」

シオン「…君にしてはずいぶん不安げだね」

アーティエ「ごい゛づは今ま゛で戦っだ奴どは違う゛…!」

シオン「その通り…こいつは一つの生物として別次元の存在だ…」

シオン「痛みを感じないなんて致命的な欠陥のはずなのに!今はひたすら厄介…」

スローンズ「………」ゴフッ

シオン(でも吐血はしてる。痛くないと言うだけで、損傷は確かにあるんだ…)

シオン(そしてあいつ自身の力は大したことない…私の攻撃で吹き飛ぶ程度には脆弱…)

シオン(となると………)

シオン「…アーティエ、作戦だ」グイッ

アーティエ「!!」

シオン「…………」ボソボソ

スローンズ「………」ニタァ

シオン「…いけそうかね?」

アーティエ「……分がっだ」

シオン(…よし)

シオン「…悪かったね、待っててもらって」

スローンズ「待ってない…」

スローンズ「…準備…してたの………」レロ…

シオン「またそんな大量の釘を…まぁいい。アーティエ!」

アーティエ「お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」バッ

アーティエ「独裁者の束縛(デスポット・バインダー)!!」ジャラジャラジャラ!!

スローンズ「…嫌いぃ……」シュシュシュッ!!

カキカキカキンッ

シオン「まだまだ!当たるまでやれ!!」

アーティエ「ぎぎぎららららららららららら!!!!」

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ!!!!

スローンズ「いらない…いらないいらないいらないいらないいらないの」ドロドロ…

シュシュシュシュシュシュシュッ

カキンッ!カキカキカキキンッ!!
カキンッ!!キキンッ!!カキカキンッ!!!


シオン「今だっ!」ビシュッ!

スローンズ「!」サッ

シオン「私とアーティエの同時攻撃だ!これでも防ぎきれるかね!?」シュシュシュッ!!

アーティエ「ぎららららららららるるるるるるるららぁぁ!!!」ジャラッ

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラララッ!!!!!!

シュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!!

スローンズ「……くす…」ボタボタボタ…

カキキキキキキキキキキキキキキキキキキキンッ!!!!!

シオン「本当に…全部防ぐのか…!!」シュッ

スカッ!!

スローンズ「……?」ピクッ

スローンズ「…わざと……」

シオン「バレた…か。でももう十分だろう」

シオン「アーティエ!…鎖を引けッ!!!」

アーティエ「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」グイッ!!

ビィーーーンッ!!!

シオン「……鎖の先は…」

ピシピシッ

シオン「…天井!!」

スローンズ「……!」バッ

ボゴォッ!!!

スローンズ「…っあ……」

ズシィィン!!!!

シオン「…別に鎖そのもので君を攻撃するつもりはなかった…ただの目眩ましだよ」

シオン「…君を狙って放つ中で、何本かは天井に向かわせる」

シオン「私がメスを投げたのも君を攻撃するためじゃなく、鎖を天井に固定するためだ!」

シオン「手から離れたメスは能力の影響を受けない。私が投げただけで鎖を固定させるのは無理だろうから」

シオン「アーティエが上に鎖を放った瞬間に、メスを鎖の先端に引っ掛けて、勢いを利用して刺さるようにした!」

シオン「君と違って私はもう何度も彼の鎖を見ているからね…うまく引っ掛けるくらいは余裕なんだよ」

シオン「とにかく私の目的は、君を攻撃することではなく『動きを封じること』にあった…」

シオン「いくら痛みを感じなくても…崩れた天井に潰されたらもう動けないだろう!?」

シオン「これで…強制終了(アボート)だ!」

アーティエ「……ぐる…」

シオン「…さぁアーティエ、待たせたね。君の傷を治療しよう」

スローンズ「くすす……」

シオン「……!まだ笑うのか…本当に化け物かね…」

スローンズ「…やっぱり…素敵な…お姉様………」ピチャピチャ…

シオン「今さら血を舐めても、戦えないはずだ!」

スローンズ「もう…戦わない…………」モゴ…

スローンズ「ぷっ」

シュッ!!

シオン(しまった、口から…!)

アーティエ「シオン先生い゛!!」バッ

グサッ

シオン「あ…アーティエ…その釘は『痛み』が……」

シオン「いや…もう勝ったんだ…今さら一本くらい、なんてことないかね…」

アーティエ「…先生」

シオン「……何かね?」

アーティエ「逃」

ズボォッ!!!

アーティエ「…げ………」ガクンッ…

シオン「…………え?」


スローンズ「…もう…戦わない………」

スローンズ「………殺す…だけ」ニタァッ

アーティエ「…ぎ……」ドサッ

シオン「…アーティエ!!??」バッ

シオン「なんで…まだこんな力が……」

スローンズ「…楽しかったの…だから……」

スローンズ「見せてあげる………」ス…

シオン「……なん…だ…」

ズズズズ…

シオン(部屋中の血液が…釘が…あいつに集まって…)

ギギギ…ギギギギギ……

シオン(巨大な……釘に…)

スローンズ「…これ…とっておきの………」


スローンズ「…『釘の腕(ブラス・オングレス)』…」バキバキ…


シオン(…動きを封じてた天井が…簡単に壊された……)


もう、勝ち目がない?


スローンズ「…おわり……」ニタァ


ドスッ

シオン「……が…」ズボッ

シオン「あ……」ドロドロ…

シオン(これ…はっ…駄目だ…腹を貫いて…る…血が…)

シオン(もう一本…ある…あれ食らっ…たら…)

シオン(絶対に…死……)

スローンズ「…まだ…動けるの……」

シオン(……なに…言って…)

アーティエ「………」ズズッ…

シオン(…アーティエ…!?)

アーティエ「お゛……お゛お゛お……」ヨロ…ヨロ…

シオン「ア…っ…」

シオン(声……出ないっ…!!)

アーティエ「先生…は……」スッ

アーティエ「俺…が……守る……」ドクドク……

スローンズ「……」ニタニタ

アーティエ「…『バイ・セカンド』…!!」ガシャッ

シオン(無理…だ…そんな状態で…『バイ・セカンド』なん…て……)

アーティエ「…ぞの゛…釘……が……最後…だ……」ヴィイイン…ヴィイイン…

スローンズ「……くすっ…」ガチャチャッ


シオン(やめ…てくれ……)


アーティエ「…あるるるるるるるるるるる!!!!」ヴィイイイイイイイイイイイイ!!!

スローンズ「……釘の腕(ブラス・オングレス)」ググググ・……

アーティエ「ぎゅろ」ブオッ…

グヂャッ!!!

シオン「アー…ティエぇっ……!!」グッ

アーティエ「………」ボタボタ

アーティエ「…す…」

スローンズ「……!?」


すとりいむ


スローンズ「…あ…」ズシュッ!!!


シオン「…ああ…」

アーティエ「……」ガクンッ

シオン「ああああ…」

シオン「あ……」フッ

ドサァ……


ヴィイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!



アーティエが『バイ・セカンド』で生成したチェーンソーは、独立した一つの道具だ

つまり

持ち主であるアーティエが死んでしまっても…

血を纏う銀糸は煌めき続ける

それでもその喧しい回転音は、アーティエによく似ていて……

今日はここまでにします

『釘の腕(ブラス・オングレス)』は必殺技みたいなものです
能力で限界まで釘を作り出し、それを組み合わせて、名前の通り巨大な腕(二本)にして相手を串刺しにします

おつ

お乙

気が付いたら三年目…
更新はもうちょっと待っててください

ちょっと前に読み直したときに2009年って見て驚いたわ
日常パートのクロが可愛いくてにやけながら読んでた

書けないよぉおおおおお
「その時になってから考えればいいや」と後回しにしてた罰が当たったんだ…
でもいい加減にやって後悔したくないので…もう少し考えます…

がんばれ、俺はいつまでも待ち続ける

書けぬ…

待ってるよ~

ルシファル「……今度は…」

ルシファル「…何の用だいクロ」

クロ「…外が騒がしくなってきたわ」

ルシファル「……」

クロ「もう三時間…いや、四時間は経つかしら」

クロ「騒いでるのは天使なのよね」

ルシファル「そうだ」

クロ「父さまは何もしない」

ルシファル「何をしろと言うんだい?」

クロ「あいつらをどうにかして」

ルシファル「……できないな」

クロ「そんなわけないでしょう!?父さまの力があればあんな奴ら…」

ルシファル「私が動くにはもう遅すぎる」

ルシファル「あの時…指輪を奪い返せなかった時点で、最後の機を逃した」

ルシファル「もう私にはどうしようもない」

クロ「天使を倒せない、と言うこと?」

ルシファル「戦争を止められない、と言うことだ」

クロ「どうして!!何が機を逃した、よ!なんでそんなすぐに諦めるのよ!!」

ルシファル「今の私に…」スッ

ルシファル「…『バイ・セカンド』は使えない」

クロ「指輪がない…?」

ルシファル「こんな私に戦えと言うのかい…」

クロ「……」

クロ「ふふっ。情けないわね父さま」

クロ「『バイ・セカンド』が使えないから戦えない…?腑抜けたこと言ってるんじゃないわよ!!」

クロ「よくもまぁ娘の私の前でそんなことが…」

ルシファル「……」

クロ「こうなったら」

クロ「私一人でも行くわ…!」

ルシファル「…それだけは」

ルシファル「それだけは絶対に、許すわけにはいかないな」ガタ…

クロ「…私の勝手でしょう?」

ルシファル「私にどうすることもできないことを、お前の力でどうしようと言うんだ?」

クロ「どうにかするわよ」

ルシファル「無理だ」

クロ「…じゃあこのまま黙って見てろって!そう言いたいの!?」

ルシファル「…そうだ」

クロ「私は…悔しいのよ…何が起きてるのか分からないで…それを知ることさえ許されないで…ただ、見てることしか…」

ルシファル「仕方ないんだ…」

クロ「……!」キッ

クロ「エレカは!私たちを利用して姉さまをおびき寄せた!」

クロ「それが何のためなのは分からないけど…でもあいつは魔王になってる!」

クロ「私の知らないところで、何か大きなことが起きてる!」

クロ「私は『答え』が欲しいのよ!!仕方ないとか、そんなのいらないわ!!」

ルシファル「………」

ルシファル「父としてお前は…」

ルシファル「すべてを背負うには…」

ルシファル「お前はまだ幼い、と。そう思っていたよ」

クロ「……?」

ルシファル「だが…もしもお前が…この過酷な戦いに身を投じると覚悟があるのなら」

ルシファル「…いつまでも、子供のままでいるわけにはいかないな?」

クロ「…どういうことよ」

ルシファル「無論、覚悟ひとつじゃ通せない…だから」

ルシファル「私を破れば、お前に答えをやろう」

クロ「!!」

ルシファル「子は親を越えてはじめて一人前になるものだ。違うか?クロ」

クロ「なによ…終いにはそんな、さんざん言い尽くした言葉なんて…」

クロ「待ってたのはそれよ!父さま!」バサァ

ルシファル「血は争えないな…お前もこんなに、戦いに餓えているとは」

クロ「戦いに餓えてるですって?臆病風吹かせてるくせに…」

ルシファル「あの子に似てると言うことさ」

クロ「…姉さまに似てるなんて…普段は言われたくないけれど」

クロ「それは満更でもないわ」

ルシファル「……自慢の翼…自由に使うんだ」

クロ「もちろんよ」

ルシファル「ただし一発でも当たれば、もう立てないと思いなさい」

クロ「…上等よ!」

クロ「黒羽垂幕(ブラック・カーテン)!」ザザザ…

ザザザザザザザッ

ルシファル「…目眩まし…か」ググッ

ルシファル「邪魔だ」ブンッ

ブワッ!!!

クロ(ただの拳圧で吹き飛ばすなんて…でも!)

クロ(私はすでに後ろよ…!)シュッ

ルシファル「ああ…知ってるとも」スッ

ガシッ!!!

クロ「!!?」

ルシファル「……」グルンッ

ポイッ

クロ「!」ドシャア

ルシファル「まだまだ遅いぞクロ。そんなものか?」

クロ「っ…なら…」バッ

クロ「『バイ・セカ…」バサバサバサァ…

ルシファル「…遅い…」フッ

クロ「…ン…ド…!?」ピタッ

ルシファル「と…言ったんだ」シュンッ

クロ(うそ…一瞬で後ろに……)

ルシファル「……」スッ

トンッ

クロ「……!!」ヨロッ…

クロ「?…何が一発食らえばもう立てないよ……軽く小突いただけじゃない…」

ルシファル「…そうだな…」

クロ「…っ!?」ゴホッ

クロ「く…うぅっ…!」ドサッ

ルシファル「翼に阻まれたせいで少し遅れたが…しっかり届いてたようだな」

クロ(……な…内臓に…直接触れられたような…痛みがっ…)

ルシファル「分かったろう…強がってはいるが、お前もまだまだ弱いんだ…」

クロ「…う……」ガクガク

ルシファル「…しばらくは動かない方がいい」

クロ「…………」

クロ「…う…るさい…のよ…」ググッ…

ルシファル「…!」

クロ「…私だって…分かってるのよ…弱いことなんて…」グググ…

クロ「!」ベシャッ

ルシファル「クロ…無理するな…」

クロ「…でも…だからって…ね…」

グググ…

クロ「そんな理由で戦うのを諦めてたら…ずーっとそのままじゃない…!」

ルシファル「!」

クロ「成長するっていうのは…」

クロ「自分の弱さを知って…それが悔しくて進むことよ…」

クロ「生きるっていうのは、戦うことよ…!!」

ルシファル「……」

クロ「強がって何がいけないのよ…」

クロ「戦おうとして何がいけないのよ…」

クロ「エレカには勝てなかったし…結局姉さまを越えることもできなかった…」

クロ「悔しくて…」

クロ「悔しくて悔しくて悔しいから!だから前に進みたいだけなのよ!!」

クロ「私の生き方に文句つけないで!!」

ルシファル「……!」

更新されているとは、乙
まだ書いてる途中かな?

『けっ…あんたが相手じゃあ勝ちの目はねぇな…』

『そんな能力が…なぜ存在を許される…!』

『魔王になる…ですって?笑い話にしか聞こえませんがね…あなたには無敵の能力がありますからなぁ…』

『辞めると言うなら止めはせんよ。ただ君のその力にはわしも手が出せん…ともかく、5年間お疲れじゃった』

『元魔王ルシファル…相変わらず化け物だ…』


ルシファル「…思えば…そう…私は…」

ルシファル「強さが最初から出来上がってた」

ルシファル「だからクロ…お前の気持ちは私にはよく分からないのだよ…」

クロ「……」

ルシファル「……でも」

ルシファル「…子供の成長を邪魔する親がいてたまるものか…」

ルシファル「…私の敗けだよ。クロ。お前の生き方はお前にしか決められないからな…」

クロ「……父さまがそう言うなら、勝ちはもらっておくわ…」

クロ「…!!」ズキンッ

クロ「はぁ…はぁ…はぁ…!」フラフラ

ヨロッ

ルシファル「…おっと」ガシッ

クロ「……思いっきり…やった?」

ルシファル「いや…お前と本気で戦うなんてあり得ない…躾のつもりでやったよ」

クロ「…なによ。そんなこと言われたら、今もらった勝利の価値がなくなっちゃうわ」

ルシファル「それは悪かったね」

クロ「……こんなに強いのに…どうして戦おうとしないのよ…」

ルシファル「…お前にとっては私もまだまだ強いかもしれんがね…」

ルシファル「この戦いはもう、そういう次元じゃないんだ……」スッ

クロ「父さまの強さより…さらに上の次元があるの…?」

ルシファル「………」

ルシファル「座りなさい…約束通り、お前にすべてを話そう」

もうこれ以上はまずいだろ、と思い、とにかく書きました
当初はまったく考えてなかったクロVSルシファル
親子喧嘩なんてさせても話にならない!と去年の今ごろは思ってたんですがね…

二ヶ月近くお待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした
このまま元のペースに戻せるよう努力します

乙!
父さん気合でバイセカンドつかってくださいよ!

おつ

最近忙しくて書けません…
来週中には更新したいです

もう一ヶ月以上前ですが
>>236
普段はほとんど能力なんて使わないルシファルですから、指輪には大量の精神力があります
そして一度使えばその大半を持ってかれるのです
指輪なしで発動したら精神力が空っぽになって、即死します…

楽しみにまってますぞ

ルシファル「そうだな…まず…何から話したらいいか…」

クロ「…質問してもいいかしら」

ルシファル「……ああ…確かにその方が早いな」

クロ「まず……」

クロ「…いえ、これが一番知りたいことよ」


クロ「姉さまは本当に死んだの?」


ルシファル「……!」

クロ「なんとなく、死んだと思えないの…心のどこかで引っ掛かってる」

クロ「根拠は無いけれど、姉妹だから」

ルシファル「……なるほど。揺るぎない繋がりだな」

ルシファル「……生きているよ…シャルは生きている」

クロ「…やっぱり…!」

ルシファル「死にかけていたところを私の知り合いに救われたようだ」

クロ「知り合い…?」

クロ「父さまこの間、出掛けていたわよね…あのときに会ってきたの?」

ルシファル「直接見たわけではないが、確認は取れた」

ルシファル「そして、指輪を託してきた」

クロ「え…」

ルシファル「あの子には今、能力がない。地獄兵器を奪われたからね」

ルシファル「そしてそんな状態なのにシャルは、この戦争に参加している」

クロ「……!」

クロ「…そうでしょうね。生きていたら…きっとそうだと思ってたわ」

クロ「無事かしら」

ルシファル「そこまでは分からないな…」

クロ「…でも、よかったわ。生きてるってことが、父さまの口から聞けて」

クロ「自分を信じたかったけど…ずっと不安で…」

ルシファル「黙っていてすまなかったね…」

クロ「……」

クロ(戦ってるのね、姉さま。今もまだ)

クロ(…何のために?)

クロ「…聞きたいことはまだあるわ」

ルシファル「…言ってみなさい」

クロ「この戦争は…正直まだピンと来てないけど」

クロ「いったい何が原因なの…?」

クロ「悪魔と天使のいがみ合いなんて、今に始まったことじゃないはずよ」

ルシファル「……今に始まったことじゃないなら、いつ始まったことだと思う?」

クロ「え…ずっと、昔…?」

ルシファル「そう…ずっと昔だ…」

ルシファル「神の時代。原初の時代」

ルシファル「カオスと呼ばれる時代だよ」

クロ「…か、カオス…?」

ルシファル「簡単に話そうか…その時代から今に至るまでの流れを」

クロ「……」


ルシファル「神が自らのコピーを造り出した。それも二つ。最初の『悪魔』と『天使』だ」

クロ「ちょっ…いきなりだけど、神ってどういう…」

ルシファル「全ての根元だよ。それ以上のことは我々では絶対に知り得ない」

ルシファル「…悪魔と天使…二つはそれぞれ『地獄』と『天国』で繁栄し、対立しあった」

クロ「…どうして?」

ルシファル「残念だが、その理由を正確に知るものはいない。思い当たる節があまりに多すぎるんだ」

ルシファル「お前だって、なんてことない理由で、よくシャルとケンカしていたろう」

クロ「…それはそうだけど…」

ルシファル「とにかく、悪魔と天使にケンカされては神にとっては大迷惑だ。よって、両方とも処分することにした」

ルシファル「そしてそのために『兵器』が造り出された」

クロ「悪魔と天使を処分するための兵器…?どんなのか想像できないわ」

ルシファル「…ところが、彼らも大人しく滅ぼされるわけにはいかない。必死に抵抗して、なんと神から兵器を奪取したんだ」

ルシファル「悪魔のほうがね。そして…この兵器を使えば天使とのケンカを終わらせられる、と考えたわけだ」

ルシファル「ところが悪魔は、兵器を使うことができなかった」

クロ「…?」

ルシファル「兵器には鍵が必要だったんだ」

クロ「…鍵!」

ルシファル「それは、神が兵器を奪われた時に対策として、急遽用意したものだった」

ルシファル「己の力で兵器を封印して、その鍵は地獄の各所に隠された」

ルシファル「そして神は彼らの処分から手を引いた…」

クロ「…待って。神はその鍵を自分で持っていればよかったんじゃないの?わざわざ地獄に隠す意味が分からないわ」

ルシファル「…それも未だに分かっていない。鍵ごと奪われそうになった神がとっさに散らした、という説が有力だがね」

クロ(…分かってないことがずいぶん多いのね)

ルシファル「さて、兵器を使うために鍵が必要だと分かった。すると悪魔たちは当然、それを探し求める」

ルシファル「長い時間をかけて、鍵を探す…」

ルシファル「そうして、鍵は三つ見つかった。『赤の鍵』と『青の鍵』そして『黄の鍵』」

クロ「…赤青黄…それってもしかして」

ルシファル「…そう、この鍵を見つけた悪魔たちが、現在の『三つの王族』だ」

クロ「鍵を見つけた功績で大きな権利を得たのね?」

ルシファル「いや、得たのは権利だけじゃあない…能力だよ」

クロ「え?悪魔は最初から能力を持っていたんじゃ…」

ルシファル「悪魔しか持っていない能力があるだろう」

クロ「……!」ハッ

ルシファル「『赤の鍵』は『炎の能力』。『青の鍵』は『水の能力』。『黄の鍵』は『雷の能力』…」

ルシファル「いずれもそれまでに存在した能力を遥かに上回る強さを持っていた」

ルシファル「これらは後に『バイ・セカンド』と呼ばれるようになり、王族の血を継ぐ者のみが目覚める新たな能力とされたんだ」

クロ「だから天使は『バイ・セカンド』を持っていない…」

ルシファル「そうだ。…王族の血と言えども、長い年月を経てほとんどすべての悪魔に流れている」

ルシファル「お前たちもそう。今や習得『しない』のではなく、習得『できない』悪魔はほとんどいないはずだ」

クロ「……でも、父さまの言ってた鍵っていうのは…?」

ルシファル「……」

ルシファル「三つの鍵が発見された。なのに兵器は使えなかった」

ルシファル「悪魔たちは絶望しただろう。これまで必死に鍵を探してきたのに、徒労に終わるのか、と」

ルシファル「しかしもしかしたら王族は、その時点で気づいていたのかもしれない…鍵がもう一つあることに!」

クロ「もう一つ…!?」

ルシファル「神は鍵が三つだと欺き、四つ目を存在そのものから隠した…そうすれば兵器は使えないままだからね」

ルシファル「しかしある悪魔が…兵器のことなど知らぬ一悪魔が、たまたま見つけてしまったのだ」

ルシファル「四本目…『黒の鍵』を!」

ルシファル「その悪魔は…鍵から新たな能力を得たが、その事を誰にも明かさず…王族になることもなく…」

ルシファル「つまり四つ目の鍵が発見されたと、知られることはなかったのだ」

ルシファル「しかし強力なその能力だけは代々受け継がれていった」

クロ「鍵も一緒に?」

ルシファル「そうだ。…いいかい、鍵の力から生まれた『バイ・セカンド』は、鍵がなければ受け継がれない。黄の王族以外に雷の力を持つものはいないだろう?」

クロ「…じゃあ、黒の力ってもしかして」

ルシファル「…そう…私の『悪魔神』だ」

ルシファル「そして、それまで知られることのなかった黒の鍵とその能力を、王族に知らしめたのは…他でもないこの私だ」

ルシファル「あろうことかその常軌を逸した力で、魔王に成り上がった…」

ルシファル「それまで可能性の一つでしかなかった『四つ目の鍵』の存在を王族が確信したのは、間違いなくこの時だろう」

ルシファル「そして…歴代の魔王は見送っていたが…エレカはついに、最後の鍵の回収に踏み切った」

クロ「じゃあ、エレカが私たちを利用してまで姉さまを狙ったのは…」

ルシファル「『黒の鍵』を奪うためだ」

クロ「……そういうこと…だったのね…」

クロ「…でも…待って、姉さまは『悪魔神』を使えないわ。鍵を受け継いでいないってことじゃないの!?」

ルシファル「確かにシャルは『悪魔神』を継いでいないが、鍵だけは受け継いでいる。私が鍵を…指輪を与えたのは、彼女が『バイ・セカンド』を習得してからだ」

ルシファル「いくら鍵の力と言えど、すでに持っている『バイ・セカンド』に上書きされることはない。それは過去に分かっていたこと…」

ルシファル「私はシャルに『悪魔神』を…あの能力だけは絶対に継がせたくなかったんだ。もちろんお前たちにも」

クロ「……じゃあもしも姉さまが父さまから鍵を受け継いでいなかったら、エレカの計画は失敗に終わっていたの…?」

ルシファル「…いいや…そうしたら今度は、シャルやお前を人質にして、私から鍵を奪おうのしただろう…そしてその状況になれば私は…鍵を渡した」

クロ「………」

ルシファル「シャルは自分が鍵を受け継いだことすら知らない。ただの指輪として、ただの地獄兵器として渡したからね」

クロ「…じゃあ結局、天使が攻めてきたのは…」

ルシファル「揃った鍵…そして兵器を奪うためだ」

クロ「……」ハッ

クロ「ねぇ、じゃあどうしてエレカは兵器を使ってないの…?使っていればこんな戦争なんて…」

ルシファル「…それが気になっているんだ。だがもしかすると」

ルシファル「鍵が四つ揃ったのに、それでもまだ兵器が使えないのかもしれない…」

クロ「!?」

ルシファル「五つ目の鍵があるのかもしれないし、別の条件があるのかもしれないが…」

ルシファル「今このタイミングで攻めてきた天使が、もしその条件を知っていたとしたら」

ルシファル「…我々に勝ち目はない」

クロ「……そんな…」

前回から更に一ヶ月近く、お待たせして申し訳ないです
ちまちま書いて、とりあえずこれだけ…

二章ラストでも触れた話ですが、再確認のためにももう一度書きました

もうあと2回更新する内に話は一気に進むはずです
いつ頃になるかは分かりませんが、次回はなるべく早くにします…

乙!
次も楽しみに待ってるぜ

乙ですー!
少しづつ分かって来たな

5つ目の鍵……それは乙の鍵

おつ

クロ「……そもそも今攻めてきてる天使って、どんな奴らなの?」

ルシファル「二年前…お前は天使と戦ったそうだね」

クロ「…ええ、戦ったわ。『バイ・セカンド』があったから勝てたけど…」

ルシファル「天国には『そのレベルの天使たち』によって構成された戦闘集団がいる」

クロ「戦闘集団?」

ルシファル「全26の隊だ。そしてそれらは最低ラインに過ぎない」

ルシファル「さらに上の力を持った天使がいる…」

クロ「……」

ルシファル「総称して《天》九階位。天国唯一無二の戦力だ」

クロ「で、でもそんな数、たかが知れてるわ」

ルシファル「そうだ…単純な数なら地獄の戦力を大きく下回る」

ルシファル「しかし彼らの目的は兵器の奪取。つまりそれさえできるのなら数は問題じゃない」

ルシファル「一人でだって、兵器さえ使うことができれば、それでもう勝ちが決まる」

クロ「……そんなの、どうしたらいいのよ」

ルシファル「兵器を死守するか、天使を殲滅するか…だ」

ルシファル「どちらにしろ一筋縄ではいかないがね…九階位の上位メンバーは相当な実力者だ」

ルシファル「そして第一位は最強の天使…私でも勝てないかもしれない」

クロ「父さまでも勝てない…!?『バイ・セカンド』が使えないから?」

ルシファル「使えても、だ」

クロ「…嘘よ。そんな強い奴がいるはずないわ」

ルシファル「いるから彼らは戦争を仕掛けてきた」

クロ「…!」

クロ「と、父さまは…私たちが…」

クロ「悪魔が負けるって本気で思ってるの…?」

ルシファル「このままでは勝てないだろう」

クロ「…だから父さまは戦わないの?」

ルシファル「……」

ルシファル「鍵の力がなんだと言うんだ。しょせん私など少し強いだけの一悪魔に過ぎない」

クロ「…どういうことよ」

ルシファル「『こちらの』最強は、決して私ではないのだよ」

クロ「じゃあ誰がいるのよ…!」

ルシファル「……」

クロ「…そう。教えてくれないのね」

クロ「なら私の目で確かめてやるわ…」スッ

ルシファル「クロ。何度も言って悪いが」

クロ「……」

ルシファル「お前を戦わせたくはない」

クロ「…分かってるわよ!だけど…」

ルシファル「それに…あまりこういう言い方はしたくなかったが」

ルシファル「お前がいなくなったら、インとシロはどうなる?」

クロ「……!」ハッ

ルシファル「今は戦えないあの子たちのそばにいてやるのが、お前の役目じゃないのか」

クロ「………」グッ

クロ「…そうね…」

クロ「私としたことが、大事な妹をほったらかしにするところだったわ」

ルシファル「……」

クロ「……ごめんなさい、父さま」

ルシファル「…お前たち姉妹が一人も欠けずにここにいてくれれば、私は他に何も望まない」

クロ「……部屋に戻ってるわ…」スッ

クロ(私は戦わない…戦っちゃいけない…)

クロ「姉さまがいない今、あの子たちに必要なのは私だから…」スタスタ


「なに言ってるの?姉さん」


クロ「…え?」

ルシファル「!」ピクッ


イン「…やあ…」スッ


クロ「やあ、って…イン、あなた寝てなくて平気なの?」

イン「……寝てる場合じゃないのは分かってる。今の話は聞いてたよ」

クロ「…ねぇ、イン、あなたどうしたの?」

イン「姉さんは戦えない。ネックになってるのは僕たちだ…」

イン「それなら、僕たちも一緒に戦えばいいんだよ」

ルシファル「……イン、馬鹿なことを言ってないで部屋に戻るんだ…」

ルシファル「お前は記憶がないんだから、今はゆっくり休んでいなさい」


イン「それなんだけどね、僕はもう、大丈夫だよ」

イン「記憶は全部戻った…取り戻した、って感じだけどね」


クロ「!?」

ルシファル「…!!」

クロ「記憶が戻ってるって、本当に…!?」

イン「……僕もビックリしたんだけどね」スッ

シロ「…シロのせいなの…」ヒョコッ

クロ「し、シロ…?」

ルシファル「…どういうことだ?」

イン「…シロの能力は『記憶の保存』…知ってるよね」

クロ「……」

イン「シロは僕とずっと一緒にいる。だからシロの体験は、僕の体験でもある。シロはそれを記憶してる…」

クロ「それはシロの記憶の話でしょう?」

イン「うん…だけど…」

イン「…シロには『バイ・セカンド』もある」

クロ「シロの『バイ・セカンド』…使ってるところは見たことないけど、たしか…」

ルシファル「触れた相手の記憶を読み取り、その中から好きなものを再現させる能力…」

イン「…そしてシロは、その能力を使って…」

イン「シロ自身の『僕との記憶』を、僕の中で再現した…」

ルシファル「……なるほど」

イン「膨大な記憶のピースが僕の中に流れ込んで、互いに結び付きあっていく」

イン「もちろんシロが記憶していない空白の部分だってたくさんあった」

イン「だけど、ピースが埋められていけばいくほど、連鎖的に、空白の部分が僕自身の中から蘇っていった…」

イン「そうして僕はシロの力で、記憶を蘇らせたんだ…完全にね」

クロ「…本当に?」

イン「…うん」

シロ「でもね、シロ、そんなことできるなんて知らなかったんだよ。お姉ちゃんとくっついてたら、勝手に箱が光って、それで…」

クロ(そういえばさっき、シロと一緒にいたときにも…!)

ルシファル「ふむ…そうか、記憶が戻ったか…それもまさか、シロの能力がきっかけになるとは…」

イン「…心配かけてごめんなさい。お父様」

ルシファル「……」スッ

ナデナデ

イン「……」

ルシファル「…ならお前も……」


イン「…僕のためにシャル姉さんは戦ってたんだ」

イン「今度は姉さんのために、僕が戦う!」

ルシファル「…だがシロはどうかな…」

シロ「……っ!」ビクッ

ルシファル「お前は、戦いが嫌いなシロを置いて、クロと二人で戦うのか?」

イン「そんな嫌な聞き方されたら、困るけど…」

イン「でも僕は、シロにどうしろと言うつもりはないよ。シロの口から、シロ自身の意思を聞きたい」

クロ(無理よ…いくらなんでもシロを戦争なんかに巻き込むわけにはいかないわ…)


シロ「うぅ……」


エレカ『そんな…両手広げて、身代わりになる気かい?』

イン『……シロには傷一つ付けさせない』


シロ「……!」

シロ「…あのとき、お姉ちゃんがシロを守ってくれた…」

シロ「だからシロも、お姉ちゃんのために戦う!」

クロ「え…!?」

クロ(この子がこんなに強い目を…)

イン「……だって。お父様」

ルシファル「…ふっ」

ルシファル「…さすがお前は…私よりシロのことを知り尽くしているな」

イン「そんなことないよ…ホントのことを言えば、シロはきっと拒むだろうと思ってた」

ルシファル「……分かった」

ルシファル「お前たち三人で、この戦争を止めるんだ」

ルシファル「そしてシャルを連れて、みんな一緒に帰ってくること」

ルシファル「それが約束できるなら、許そう」


クロ「口約束なんて意味あるのかしらね…」クスッ

イン「…今度は記憶も何も失わないように、戦うよ」ニコッ

シロ「でもお姉ちゃんどこにいるの?会えるのかなぁ?」


ルシファル「…今さら『無茶するな』と言っても聞かんだろうな」

ルシファル「ならば…行ってこい、娘たちよ!」」

クロ「……『バイ・セカンド』黒き胡蝶の舞い(バタフライズ・ダーティ・エフェクト)」バサァ

クロ「あなたたちに翼を二枚ずつ貸すわ」

クロ「もう分かってるわよね?『オートモード』はあなたたちの意思で自由に動かせるけど、私みたいに羽を飛ばしたりすることはできないし、少しずつ精神力も消費する」

クロ「もしも危ないと思ったら私が無理やり翼ごとあなたたちを動かすわ」

イン「でも一応、自力でなんとかするよ」バサァ

シロ「シロが遅くてもおいていかないでね?」バサァ

ルシファル「…三人とも、聞きなさい」

ルシファル「恐らくシャルは黄の城へ迎うだろう…だがそこは、天使たちの最終目的地点でもあるはずだ」

クロ「天使と鉢合わせるかも知れないってことでしょ?もちろん承知の上よ」

イン「正直あそこにはもう行きたくないんだけどね…」

クロ「そうと決まればさっさと行くわよ!」バサバサッ

イン「行ってきます!お父様!」

シロ「待ってー!」

ギュウウウウウウン…


ルシファル「…まったく、せっかちな子たちだ」

ルシファル「……」フー

ルシファル「さっきはああ言ったが、あの子達にすべてを任せるわけにはいかない…」スッ

ガチャ

シルク(側近。第二章ラスト参照)(…内線?)ピロロロロ…

シルク「どうなさいました?ルシファル様」

ルシファル「…今、娘たちが城を出た」

シルク「え……は!?この危ない状況でですか!?」

ルシファル「私も出る。地下の『ベヒモス』を用意してくれ」

シルク「…ベヒモス…!?」

シルク「いや…あれはもう使えないはずでは…」

ルシファル「破損はしていない。動力さえ用意できればすぐに使える」

シルク「それはそうですが…じゃあ本気なんですね…!?」

ルシファル「…あの子達があんなに強い意思を示したのに、私だけ黙って見てるわけにはいかない」

ルシファル「それにどちらにせよ、天使の手によって兵器が蘇った時、私は動くつもりでいた」

シルク「…分かりました。直ちに取り掛かります」

ガチャ

ルシファル「……」

地下室

ガコン……

シルク「ここに入るのも…何年ぶりだろうか…」カチッ

パッ

シルク「相変わらずの迫力だな…」


シルク「特殊大型三輪駆動『ベヒモス』」


シルク「ルシファル様が流刑地の看守長だった頃に自ら作り出したこれを…まさかまた使われるとは」

シルク「地のほうは特に問題ないだろうが…天は機能するのか…?」

シルク「とにかくやってみるしかないか」



黄の城・最上階へ続く階段

セラフィム「なんで誰もいないんだよ」スタスタ

セラフィム「つまんねぇなぁ…」スタスタ

クルッ

セラフィム「ネイズはもう準備できたのか?」

セラフィム「……まぁいいか…」スタスタ

セラフィム「よし、これが最後の扉だな…もうここにいなかったら…」スッ

ガチャ

セラフィム「ん…?」

ガチャガチャ

セラフィム「開かない…」

今日はここまでにします


本当の意味での最終章、ようやくスタートです
このスレ建ててもう一年経ってますが…

更新乙!

セラフィムからそこはかとなく漂うギャグキャラ臭

熱いバトルをきたいしてるぜ!

おつ

時刻は18:20

クロがルシファルと喧嘩していた頃…


黄の城・最上階(天井破損のためほとんど『屋上』)


エレカ「………」バチバチ…バチ…

エレカ「…ヘイセ」

ヘイセ(エレカの側近)「はっ!」

エレカ「そろそろ奴が来る」

エレカ「何人いるかは分からないが…くれぐれも気を抜かないように」

ヘイセ「…兵士61名!警戒体勢は万全です!」

兵士『警護は我々におまかせください!!』

エレカ「……」

コツ…

エレカ「!」

エレカ(来た!)

コツ…コツ……

エレカ「足音…まさか、一人…?」

ガチャ

ヘイセ「…鍵は…かけてあります。一応…」

ガチャガチャガチャ

エレカ「無意味だろうね」

ガチャ……

エレカ「……」


シーーーーーーーン…

セラフィム「じれったい!」ドガァン!!

セラフィム「ったく、なんでここだけ鍵掛かっ…」


エレカ「撃て」ボソッ

ヘイセ「撃てッ!!」


セラフィム「あ?」


ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!

乙!
でいいのかな

1レスだけ書いて即寝落ちとは申し訳ないです…
昼頃に続き投下します

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!

ヘイセ「撃て撃て撃て!」

ダダダダダダダダ…

カチッカチッ…カチッ…

ヘイセ「……」

シュウウウウー…………

エレカ(…さぁ、どう出る…?)


セラフィム「…ふーん」

ヘイセ「!」

セラフィム「まさか…そう、まさかだ」

セラフィム「まさかいきなり撃ってくるとは…いやもちろん可能性の一つとしては考えちゃいたが」

セラフィム「よくそんなつまらないことができるよなぁ」


エレカ「こんなに早く再会するとは思ってなかったよ…熾天使」

セラフィム「いかにも俺が熾天使だ…こんにちは…いやもうこんばんはだな。魔王」

ゾロッ

セラフィム「……そしてその他大勢悪魔の皆さん、か」


エレカ「…ふ」

エレカ「しかし…まさかと言うならこっちの方だ。あなた一人で此処に来るとは思わなかったからね」

セラフィム「…それはどういう意味だ?」

エレカ「……」

セラフィム「『この大人数相手に一人で挑むなんてカワイソーに』って嫌味か?」

エレカ「……そんなところだね」

セラフィム「そうか…」


セラフィム「そんなことないだろ」ヒュンッ

エレカ「……え」


兵士たち『……!?』

ヘイセ「…エレカ様っ!?」


セラフィム「大人数いればどうにかなるだろう、と…いやもちろん少ないよりはマシかも知れないけど」

セラフィム「肝心のお前の周りががら空きじゃ意味ないよな…」

エレカ(…一瞬で私の後ろに…)

兵士たち『………撃…!』ガチャッ

ヘイセ「撃つな!撃つな!!あれだけ密着されたらエレカ様にも当たる!」

セラフィム「ご自慢の兵士…このくらいで焦ってるようじゃあまりアテにならないんじゃないか?」

エレカ「……ッ」キッ

セラフィム「…そういえば、その眼帯…」

エレカ「!」

セラフィム「この間お邪魔したときにも着けてたが…怪我でもしたのか?大丈夫かよ」

エレカ(……)

エレカ「お気遣いどうも。だけど敵であるあなたにそんなことを…」

セラフィム「そうじゃねぇよ」

セラフィム「俺に『分かりやすく死角を目立たせてる相手』と戦わせる気じゃないよなぁ」

エレカ「っ…」

セラフィム「嫌味だよ」

ヘイセ(なぜ逃げないのですエレカ様…!あれでは、こちらから攻撃することができない…)

ヘイセ(イヤそもそも熾天使…あの銃撃の嵐を無傷で凌いだのはどういうことだ…!!)

セラフィム「……おいお前ら…余裕こいてる場合じゃないだろ」クルッ

セラフィム「もし俺がこのまま王を殺したら、もうそれでおしまいだ」

兵士たち『……くっ…!』

セラフィム「お前ら素人じゃないんだから分かるよな?」

パリパリッ

セラフィム「……ん?」

エレカ「雷槍(ライソウ)」

ビュオンッ!!!


セラフィム「…お…そうかやる気になったか」スタッ

エレカ「……」ブンッ

セラフィム「やる気があるのはいいよ…それはいいけどお前…」

セラフィム「なんだ…せっかくこんなに兵士がいるのに使わないのかよ」

エレカ「……必要ない」

エレカ「私一人で十分だ…!」バリバリバリッ!!

セラフィム「言うほど余裕があるようには見えないが…まぁいい」

セラフィム「やってみな…」

エレカ「雷槍!」ヒュヒュヒュッ!!

セラフィム「……」スッ

セラフィム「高速で三度振っても狙いは一発…」

エレカ「なら…」バリッ…

エレカ「雷撃砲(ライゲキホウ)!」バリバリバリ!!!

セラフィム「……」ヒョイッ

セラフィム「ほんの少しでも溜めの動作を見せたらダメだ…」

エレカ「なら…雷…」

セラフィム「おい」

エレカ「……!」ピタッ

セラフィム「さっきから様子見ばかり…そんなに俺に能力を使わせたいか?」

エレカ(……お見通し、か)

セラフィム「しかしなぁ…能力…もう使ってるんだよ…」

セラフィム「城の前に大勢の兵士がいて、邪魔だったから一掃した」

セラフィム「お前ここから見てただろ?目が合ったもんな」

エレカ「……」

セラフィム「あと、さっきも使ったぞ…お前たちがいきなり撃ちまくってきたから…」

エレカ「…やっぱり…」

セラフィム「…二度も機会があればさすがに使ったことには気付いてたか」

セラフィム「でもここに来て様子見ってことは、まだその能力が『どんなものなのか』までは理解できてないってことだ」

セラフィム「教えてやろうか?」

エレカ「……!」

セラフィム「……いや」

セラフィム「そういうのはよくないか…自力で分かったほうが面白いだろうし…でも全然難しくない、むしろ死ぬほどシンプルな能力なんだけどな」ブツブツ

エレカ「…さっきから…バカにしてるのか?」

セラフィム「……えぇ~?バカにしてるって…俺がお前をか?」

エレカ「……」

セラフィム「ああバカにしてる。お前みたいな奴にわざわざ能力を使うつもりなんてないし、お前の攻撃を真っ向からどうにかしようって気もない」

セラフィム「だから、一発」ビッ

セラフィム「まずは一発当ててみろ。そうしたら能力使うか考えてやる」

エレカ「…雷槍…」スッ

セラフィム「おい」ガシッ

エレカ「!!」ググッ

セラフィム「当てろって言ったんだよ…」

セラフィム「そんな、手首掴まれただけで止められるような攻撃するな!」

ヘイセ(い…異常だ…!異常すぎる光景!)

ヘイセ(素手の相手にあしらわれるエレカ様と、それを見ていることしかできない兵士!)

ヘイセ(だが…)


エレカ「くっ…雷閃!」バリバリッ!!!

セラフィム「……」ヒョイッ

エレカ「雷槍!」ブンッ

セラフィム「……」サッ

エレカ「もう一本!」ビュッ!!

セラフィム「……」フワッ

スタッ

セラフィム「……なんかなぁ」

セラフィム「お前、やる気ないだろ?」

エレカ「……」ググッ

セラフィム「さっきからヌルい攻撃ばっかでどうも…」

エレカ「雷槍・螺旋!!」ギュルルルルルルッ!!!

セラフィム「…お、ちょっとだけ強くなったか?」ピョンッ

エレカ「……!!」スカッ

セラフィム「それでもまだ当たらないけど」ザッ

エレカ「……」ニヤッ


ヘイセ(いや、エレカ様の本当の狙いは…)

バッ!!!


セラフィム「上から…?」

ヘイセ(エリート兵団『カデナ17』…潜んでいた彼らが一斉に奇襲を仕掛ける…!)


カデナ17『熾天使、覚悟ぉおおおおーッ!!!』


セラフィム「伏兵…?あーそうか、それでダラダラやってたわけだ」

セラフィム「まぁいいか」シュオッ!!


ボトッ


エレカ「……」

エレカ「…え?」


バラバラバラバラバラバラ……

セラフィム「いきなり飛び込んできて見せ場を貰えるのは、本当に強い奴だけだぜ」


ヘイセ「一瞬で全員…こっ…細切れに…!?」


セラフィム「ま、嫌いじゃないけどな…」

セラフィム「さて…何人いたかちゃんと数えなかったが、あれなら一発は当たってただろうから」

セラフィム「特別サービスで『一発当てた』にカウントしてやった」

セラフィム「で、能力も使った」

セラフィム「…今度はちゃんと見えたか?」

エレカ「……」

エレカ「斬撃…のように見えた」

セラフィム「…じゃあ答え合わせだ」スッ

ブンッ!!!

セラフィム「これが俺の能力…神剣(グレイヴァ)」

セラフィム「お前の言う通り斬撃…つまり剣だよ…今は半分に押さえてるがな」

セラフィム「だがそれだけじゃない」


セラフィム「この神剣には、斬った箇所を消滅させる能力がある」


エレカ「…消滅…!?」

セラフィム「なんてことない。普通の剣で手首を斬れば手が転がり落ちて、大量の血が溢れてくるが」

セラフィム「この剣で斬れば手が落ちても血は出ない。なぜなら『手首から上は存在しない』ことになるからだ」

セラフィム「痛みも斬った瞬間だけ。斬られた後は『元からそうだったように』痛みも出血もなしに、ただ存在する」

セラフィム「今飛びかかってきたそいつらも、首を斬った。ダルマ落としみたいに頭と体がバラバラになっているが、まだ生きてる。脳と繋がってないからそのうち死ぬが」

エレカ「…消…滅…」

セラフィム「分かったか?」

エレカ「…あのとき、城の前にいたはずの兵士が一瞬で消えたのは…」

セラフィム「もちろん能力だ。剣は手から出現する…ちょっと本気出せば一振りで300人は簡単に消せる」

セラフィム「つまり俺を倒したければ手を潰せ。そうすればとりあえず能力は封じられるぞ」

エレカ「…なぜそんなことを教える?」

セラフィム「ハンデだよ」

エレカ「ハンデ…!?」

セラフィム「だって何も言わずに俺がお前の頬を触れたら」

セラフィム「その瞬間、お前の頭は消えるんだぜ。それでおしまい。そんなのいくらなんでもつまらなすぎるだろ?」

エレカ「…な」ゾッ

セラフィム「だから俺は、事前に能力を説明しておく。そうしてお前がどうやって抵抗するのか、楽しむ」

エレカ「ふざけるな…!」

セラフィム「ふざけてるのはお前だよ。もしお前が初見でこの能力に対抗できるようなら、俺は何も言わなかった」

セラフィム「だが生憎、そんなことができるようには思えない」

エレカ「っ……」ギリッ

エレカ「…雷槍!」ブンッ

セラフィム「……」スッ

ガキンッ!!!

セラフィム「攻略法…もうひとつあるぞ」

セラフィム「お前のその雷の槍みたいに、体から連続的に発生しているものは、俺の剣で消滅(け)してもまたすぐ発生する」

セラフィム「つまりそうやって能力を使えば、とりあえず受けることは可能だ」

セラフィム「ただし腕にしろ脚にしろどこか一ヶ所でも消えたら、マトモに戦えなくなると思え」

エレカ「……くっ!」ブンブンブンッ

セラフィム「まぁもっとも…」ギンギンギンッ

セラフィム「この剣はあくまでオマケに過ぎないが」シュッ!!!

メキッ

エレカ「…ぐっ…!!?」ブワッ

ドシャァッ

エレカ(な…なんて蹴りだ…!)

セラフィム「もちろん素手で戦ってもいい。お前くらいなら文字通りぶっ飛ばせる」

セラフィム「これで…少しはやる気になってくれたか?」

エレカ「ベラベラベラベラ…よく喋る!」バッ

エレカ「千雷閃!!」バリバリバリバリバリッ!!!

セラフィム「……」

セラフィム「はぁー…」スッ

セラフィム「いや別に…喋らないと戦えないわけじゃないんだよ」バシバシッ

エレカ(軽く…払い除けて…!)

セラフィム「だけど…」バシッ

セラフィム「ただでさえ退屈なのにその上黙って戦ってたら」バシッ

セラフィム「とても正気でいられる気が…」バシッ

ギュオオオオオオッ

セラフィム「……ふわぁーあ…」ダランッ

バチチチッ!!!

エレカ「…当たった…!?」

セラフィム「……んーなるほど…こんなもんか…」ゴキッ

セラフィム「眠気覚ましにはいいかもな…あと肩凝りにも効きそうだ。凝ったことないけど」

エレカ(わざと受けたのか…!?千雷閃は確かに一撃の威力は小さいが…)

セラフィム「さて、次はどんなのを使う?」

エレカ「…兵士全員、離れて!!」バッ

兵士たち『……!」ザザッ

エレカ「…魔雷の獅子(ライ・ライガー)!!」

バリバリバリバリバリバリ!!!

ヘイセ(!!エレカ様の攻撃の中でも最も範囲の広い…)

エレカ(これなら…!)

セラフィム「…百獣の王ライオン、か……魔王にピッタリかもな」

セラフィム「だが…」ブンッ


バシュッ!!!


セラフィム「『王』でも『神』には敵わない」


エレカ(神剣…!私の体を一度離れた雷なら、この規模でも消してしまえるのか…)

エレカ「だったらやはり!」ダッ!!

セラフィム「…そうそう…」シュッ

ガキィン!!!

エレカ(接近戦しかない…!)

セラフィム「ビビらず向かってこなきゃ、俺は倒せないぜ」



同時刻…クロたちが飛び立ってから数分後

クロ「ど、どういうこと…!?」バサバサ

イン「黄の城が…」バサッ

シロ「ぐにゃーってしてる…!!」バササッ

クロ「蜃気楼…とか?いや、そんなんじゃなさそうね…」

イン「もう少し近づいてみないことには分からないよ…」

シロ「でもお姉ちゃん、どこにいるのかな…」

クロ「それよ…さっきから下を見ても、悪魔も天使も交戦してる様子がほとんどないわ」

イン「もうあらかた終わってるんじゃ…?」

シロ「あっ、誰か走ってる…!」

クロ「もしかして姉さま!?」バッ


シュンッ シュンッ シュンッ!!!


クロ「は、走ってるって…そんな速さじゃないでしょ…!」

イン「ここからじゃよく分からないな…天使?悪魔?」

シロ「わかんないけど、何か持ってるよ…」

イン「本当だ…長い棒みたいな…」

クロ「……?」

ヘイセ(魔雷の獅子が…エレカ様の最大の技が…通じない…!)

ヘイセ(それどころか、雷槍だけで挑まなくてはならないなんて…)


セラフィム「……!」ピクッ

セラフィム(今…クレセリアの精神力を感じた…まさか『釘の腕』を使ったのか?)

セラフィム(ただ雑魚を相手にするだけならそこまでしないはずだが…まさかマトモに戦ってるんじゃないだろうな…)

エレカ「はぁあああっ!」ブンッ

セラフィム「…おっと…」ヒョイッ

セラフィム「悪いな…考え事をしてた」

エレカ「くっ!」シュッ

セラフィム「ん…」サッ

エレカ「当たれっ!!」ザンッ

セラフィム「まだ遅いな」スカッ

エレカ「双雷槍…!」ヒュヒュッ

セラフィム「まだまだ」ユラッ

エレカ「あああああああっ!!!」ググッ

ババババババババババババッ!!!

セラフィム「まだまだまだまだまだまだだな」クンッ


ヘイセ(すべてを最低限の動きで躱している!)


エレカ「螺旋!」ギュルルルルッ!!

セラフィム「それでやっと…」ブンッ

ガキィイイイイン!!!

セラフィム「俺の攻撃を凌げるレベルか」

エレカ「……雷槍…」バリリッ

セラフィム「…!」

エレカ「蛇節(だせつ)!」ギュオオオオッ!!

セラフィム「曲がる?…そういうのもあるのか」ググッ

ピョンッ!!

エレカ「…跳べば隙ができる…!」バッ

エレカ「万雷獄(ばんらいごく)!」バリバリバリバリバリバリバリ!!!

セラフィム(全方位…電撃の網か…)

エレカ「これなら避けられないはずだ!」

セラフィム「いや、俺は避けない」ググッ

ビュオッ!!

エレカ「!?」

ヘイセ(宙に浮いた状態から…雷の網に囲まれた状態から攻撃を…!)

エレカ「くっ…!」ズザザァッ

セラフィム「そう、いい判断だ」

セラフィム「避けなきゃいけないのは、両腕突き出して雷バリバリ発生させてるお前のほうだよ」スタッ

セラフィム「攻撃に徹すると言うことはつまり守りを捨てるってことだ」

セラフィム「そして俺の攻撃に触れたら即アウト…」

セラフィム「絶対に隙を見せるなよ」

エレカ「……」ジワッ

セラフィム「どうした…冷や汗かいてるぜ」

セラフィム「まぁ、難儀だろうが…頑張って、俺に退屈させないでくれ」


エレカ(悔しいが…こいつは…)

ヘイセ(私とは強さの次元が違う…!)

今日はここまでにします

目標は年内完結!

乙!
たまには息抜きに別のを書いてもいいと思うぜ

今日更新する予定だったのですが、書けませんでした
今週中になんとか…書けるかな?

>>271の最後の台詞、ミスがあったので訂正しておきます

×ヘイセ(私とは強さの次元が違う…!)
→○エレカ(私とは強さの次元が違う…!)

またしても1ヶ月空けてしまいました
本当に申し訳ないです
更新します

エレカと熾天使セラフィムの戦闘開始から20分経過

同時刻・上空

バサッバサッバサァッ!!!

クロ「いくら黄の城までとは言え…10分以上全速力で飛び続けるのはキツいわね…!」

シロ「も、もっとゆっくり飛んだほうが、お姉ちゃん、探しやすいよ」

イン「でも、もう城は目の前だ!」

クロ「ええ…姉さまがすでにあの城に来てる可能性もある!」

シロ「でも、なんであんなにぐにゃぐにゃしてるのー!?」

クロ「分からない…わよっ!!」ギュゥンッ!!

バサバサ…

黄の城・入り口前

クロ「……着いた」ザッ

イン「…さて」

グニャグニャグニャ…

イン「これ…どうしよう?」

クロ「さぁ…何なのかしら、本当に」

シロ「……」ソロソロ

シロ「!」ゴツンッ

シロ「痛ーい…!」

クロ「壁にぶつかった…ということは、城自体は確かに存在してるのよね」

イン「入り口は?」タッ

グニャグニャグニャ…

イン「これか、歪んでて分かりにくいけど…」スッ

ドバーン!!!

イン「!?」

クロ「い…イン!?」

?「うおおおおおおー!一番乗りだぜー!!」バッ

クロ「城の…兵士…?」

クロ(違う、天使!!)

天使「……ん?なんだおま…」

クロ「黒羽横薙(ブラックカットダウン)!」ブンッ

天使「ぐおあああっ!」ドサッ

イン「姉さん、これは…!?」

クロ「天使よ!…なんで城の中から…!?」

天使「へっ…お前ら…さっそく止めに来たのか?」

クロ「…止めに?」

天使「だがもう遅ぇぜ…」ニヤッ

クロ「!…シロは!?」バッ

イン「え…あ、中に入ってる!」ダッ

クロ「くっ!無理矢理入るわよ!」バサッ

イン「う、うん!」

城内

シロ「わ、わあああああっ!!」アワアワ

イン「シロ!大丈夫!?」ザッ

シロ「お、お姉ちゃん!どうしよう…!!」

クロ「どういうことよ…」

ゾロゾロゾロゾロ……

クロ「なんで『城内』が天使で溢れてるの…!?」

天使たち『ひひひひひ…やっと開いたかぁ!』

天使たち『これから暴れさせてもらうぜ…!』

クロ(…この口ぶり、まさか)

イン「姉さん、これだけの数、僕たちじゃどうすることもできない!」

クロ「分かってるわ!でもたぶんこいつら…」

クロ「この城から湧き出してる!」

シロ「ど、どういうことー?」

クロ「分からないけど、とにかく…」スッ

クロ「イン、シロ…もう一度翼を!」バサァ

イン「翼…ってことは」バサァ

シロ「!」バサァ

クロ「飛んで、躱しながら進むわよ!どこからか増えてるというなら、そこを探す!!」ギュンッ!!

イン「了解!」ギュン!!

シロ「待ってー!」バサバサッ

天使たち『なんだあいつらは…飛んでるぞ!』

天使たち『俺たちの仲間にあんなのはいない…悪魔だ!あいつら悪魔だぞ!』

天使たち『殺せ!殺せ!』

殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!

クロ「これだから飛べない連中は…下から『口』撃するしかできない連中は…」

クロ「嫌いなのよ!」バッ

ズドドドドドドドド!!!!

天使たち『羽だ!羽で攻撃してきやがる!』

クロ「イン!シロ!こいつら上から出てきてるわ!私たちも2階に!」

イン「うん!」ギュンッ

シロ「だから待ってよー!」バサバサッ

2階

ゾロゾロゾロゾロ…

シロ「こ、こっちもたくさんいるよ!」

イン「しかも廊下が狭いぶん、こっちのほうが飛び抜けづらい!」

クロ「ちっ…面倒くさいわね…!無理矢理突破するしか」

ブオッ!!

イン「姉さん!何か飛んで…!」

クロ「…!」ドゴッ

クロ「うっ…!?」グラッ

ドサッ

シロ「お姉ちゃん!!」

天使たち『こうもりモドキを落としてやったぜ!』

天使たち『いいから早く進め!つっかえてんだよ!!』

クロ「っあ…あなたたち…」ヨロヨロ

バサッ

クロ「外には出させないわ…!」

天使たち『…あ?やる気か』

天使たち『おいおいこの人数相手に…バカだなぁーお前!』

クロ「バカで結構…!」

クロ(だけどこの狭いスペースでは、一度に動ける天使の数も少なくなる!もちろん1VS1じゃ済まないけど…)

クロ「イン、シロ!覚悟を決めなさい!」

イン「姉さんらしくないね…」

イン「でも僕もここで逃げるほど、臆病じゃないし弱くないよ」スッ

シロ「し、シロも頑張るよ!」

天使たち『…近い奴からどんどん行け!こんなガキども、相手にするな!』

天使たち『おおおおおおおー!!』

ズドドドドドドドドド…

クロ「とは言ったものこの数、どうすれば…」

イン「僕がやるよ」

クロ「で、できるの?」

イン「…今の僕は、力が溢れてるんだ。さぁ、姉さん、シロ。なるべく僕の後ろにいて」

クロ「ええ…」

シロ「うん」ギュッ

イン「少し、少しだけ」

イン「本気を出す…」バサッ

天使たち『傘!?そんなもので戦うつもりか!!』

イン「…『バイ・セカンド』憂鬱な天の支配者(バニシング・ゲリラ・ストーム)」

ヒュウウウウウ…

天使たち『?』

イン「暴風!」カッ

ビュゴォオオオオオオオオッ!!!

天使たち『!!!』ズズッ

天使たち『おっ…押される!!』

天使たち『なに言ってんだ!これだけの数がいるのに…どんなバカ力だ!』

天使たち『違う!風だ!すげー強い風に押されてる!!』

ズズズズズズズ…

クロ(す、すごい…今までよりも明らかに、精神力が増えてる!)

イン「でも…さすがに…押しきるのはキツい…かな…っ」グググ…

シロ「お姉ちゃん頑張ってー!!」

イン「!…うん…」フッ

イン「…頑張る!『超暴風』!!」

ゴオオオオオオオオオッ!!!

天使たち『うおおおおおおおおおッ!!!』ブワッ

ズシャア…

イン「ざっと…20人って…とこかな…」ゼェゼェ

クロ「…イン、あなた最高よ!だけどまったく…」

クロ「お姉ちゃんにプレッシャーかけるなんて、ちょっと酷いじゃない?」バサァッ

イン「そ、そうだね…あとは…任せたよ…姉さん」ヨロッ

シロ「お姉ちゃん!」ガシッ

イン「…ごめんね、少しだけ休ませて…」ハァハァ

クロ「大丈夫、残りは全員…」

クロ「この私が倒すわ!」キッ

天使たち『ナメやがって、てめぇら』

天使たち『ブッ殺してやる!!』

クロ「別に地獄のために戦おうとか…そんなことは思ってない…けど」

クロ「インもシロも、覚悟して私についてきた…私が逃げ出すわけにはいかないわ」

クロ「それになにより」

クロ「姉さんなら、必ず立ち向かう…!」

クロ「『バイ・セカンド』黒き胡蝶の舞い(バタフライズ・ダーティ・エフェクト)!」バサァッ

イン(六枚羽…姉さんも本気だ…!)

クロ「…この数相手なら…そうね」

クロ「潰しあってなさい」バサッ

天使たち『!!!』

チョン チョン チョン チョン

天使たち『な、なんだ…何をした?』

天使たち『飛び抜けただけか?』

天使たち『いや、俺一瞬触られたぞ!』

クロ(この技を使うと…2年前のあの戦いを思い出すわ)

クロ(あの時、『彼』にやりすぎだと言われてから…なんとなく使わなくなってたけど)

天使たち『うわっ!おいお前、翼が生えてるぞ…!』

クロ「翼を貸してあげる…だけど利子は、高く付くわよ」

クロ(四つの翼を一つずつ…それぞれ四人に貸した)

クロ(これを一度に操る!)

クロ「Prestissimo(極めて早く)!!」

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!

翼付き天使「ぐあああああああっ!!!」

天使たち『や、やめろ!暴れるな!!』

天使たち『翼が勝手に動いてるのか!?』

天使たち『しかも4人操られた…まずい!』

天使たち『味方に潰される!!』

クロ「四枚の翼を別々に動かす…これだけでも…相当…難しいけど…」

クロ「プラス…黒羽射撃(ブラックバレット)!」ズドドドドド

ズドドドドドドドド!!!

天使たち『ぐぉっ!?』

天使たち『くそっ!羽で撃ちまくってくるから近付けねぇ!!』

天使たち『ならあいつだ!あそこでヘバってるガキを狙え!』

クロ「…イン!」クルッ

シロ「やめてっ!」バッ

イン「…し、シロ…」

天使たち『どきな、ガキ!』

天使たち『なんならてめぇごと殺してやっても…』

シロ「い…いいの?」

天使たち『…あ?』

シロ「シロにさわったら…すごく痛いんだよ」

天使「なに言ってやがる…オラ!どけってんだ!」ブンッ!!

シロ「もうっ…!」ガシッ

天使「てめえ…くっつくんじゃねぇっ!!」

シロ「知らないもんっ!」カッ

バリッ…

天使「……!」ドクンッ

天使「…う」

天使「ぎゃあああああああああああ…!!??」

天使たち『な…!?』

クロ「…『バイ・セカンド』恐怖の追記体験(ネガティブ・フラッシュバック)…!」

クロ(触れただけで相手の『恐怖の記憶』を呼び起こすなんて、本当に恐ろしい能力ね…)

イン(あの能力は強い…非力なシロでも、一瞬で相手を戦闘不能にできるほどに…)

イン(だけど、シロ自身も嫌ってた…)

シロ「う…」ピョンッ

天使「…わあああああああああ!!!」ガクッ

イン(恐怖の記憶を見るのはシロも一緒。もちろん体験している本人と比べれば心への被害(ダメージ)は少ないけど…)

天使たち『き、気を付けろ!こいつに触れられると、それだけで…』

シロ「もう…来ないでーっ!!」ペタッ

天使「うぎゃああああああああ!!」ビクンビクン

天使「やめろおおおおお!!!」ガクガク

イン(シロは優しいから…本当はこんなことしたくないんだ…!)

シロ「はぁ…はぁ…シロが…」ポロポロ…


イン『必ず僕がシロを守るよ。だから、心配しないで』

クロ『本当は怖いのに無理して着いてきたんでしょ…バカね、私がいれば大丈夫よ』


シロ「シロが、お姉ちゃんたちを守るのっ…!」ダッ

天使たち『く、来るなぁ!!』

クロ「…操作解除!」バシバシッ

天使たち『あいつの羽が戻ったぞ!』

クロ(これ以上シロに能力を使わせたらまずいわ…)ギュンッ

天使たち『クソッ…だいぶやられたが、こっちはまだ20人以上いる!怯むな!』

クロ「シロ!もう大丈夫だから、能力を使わないで」

シロ「ほ、ホント…?でも、まだたくさんいる…」

イン「姉さん…」ヨロッ

クロ「イン…動けるの!?」

イン「とりあえず…あと一度だけ能力を使う余裕ができた…よ…」

クロ「でもあの風はもう起こせないでしょう!?この数を倒すには…」

イン「…前に、姉さんと二人でトレーニングしたときに作った…」

イン「二人だけの『必殺技』…覚えてる?」

クロ「…!あれなら…」

イン「いくよ、姉さん!」

クロ「ええ、まずは…」バサァッ

クロ「六枚羽・黒羽掃撃(ブラックマシンガン)!」

ズドドドドドドドド!!!!

天使たち『はっ!なにかと思えばただの羽じゃねぇか!それじゃ俺たちは倒せな…』

イン「ただの羽じゃあね」スッ

イン「…『氷結』!」カッ

ピキピキピキ…

天使たち『なんだ!?羽が…』

ピキィン!!

天使たち『氷に覆われて…より鋭く…!』

クロ・イン『降り注ぐ黒い雪(ブラック・ウィンターダスト)!』

グサグサグサグサッ!!!

天使たち『……うぐぅっ!?』ドサッ

シロ「や、やったよ!みんな倒れ…」

クロ「よし…!」

イン「う」ドサッ

クロ「イン!」

イン「ちょ、ちょっと…頑張りすぎた…かなぁ」

クロ「……っ」

クロ「…いいわ。2階の天使はすべて倒した!あなたたちはここで少し休んでなさい!」

シロ「お姉ちゃんは!?」

クロ「三階へ!」

イン「…もし危ないと思ったら、すぐに引き返してよ…姉さんだって結構、精神力を消費してる…」

クロ「心配はいらないわ…それに」

クロ「やっぱり姉さまなら…この程度で止まらないもの」ニコッ

イン「…そうだね…シャル姉さんなら、そうする」

シロ「……!」タッ

シロ「待って!」ピョンッ

クロ「…?シロ、なにを…?」

バリッ

クロ「……!」ビクッ

シロ「こっちのほうが、シロも好きっ」

クロ「…幸福の追記体験(ポジティブ・フラッシュバック)…!ありがとう、少しモチベーションが上がったわ」

クロ「じゃあ、行ってくる!」ギュワッ

イン「…さ、おいで、シロ…僕たちはちゃんと休もう」

シロ「…うん」

イン「そして少しでも早く、姉さんを助けるんだ…」

三階・最奥部

権天使 ネイズ・アルカイ「さぁ…」

アルカイ「俺の能力…『天地創造(アグルディミオ)』で、城の周囲の空間を変化させる」

アルカイ「今はまだ不完全だから、せいぜい歪んで見えるだけだが…もう少し経てばこの城は完全に異質のものとなる」

アルカイ「そして…天国から繋がる空間の門をこの城内部に造り出し…天使をどんどん送り込む!」

アルカイ「攻め込むための兵士は最低限にし、攻め込んだあとの兵士を大量に残しておくとは…熾天使様もおかしなことを考えるぜ」

アルカイ「まぁあの方の物事の基準は『楽しいかどうか』だからな…たぶん『少人数で攻めていったほうが面白い』とかそんな理由だろ」

アルカイ「…ところで」

アルカイ「この城に…単純に強い気を放ってる奴が三人と、桁違いの精神力の持ち主が二人、合わせて5人、大物が近づいてきてるな」

アルカイ「窓の外から見えるあいつがその一人…か…?」


?「……」ウロウロ


アルカイ「何者だ?あいつ…あんなちっちぇガキみたいな悪魔が、なぜこれほどの精神力を…?」


?「……」ジッ


アルカイ(!…見られた!?)



?「見つけた」


?「白幻涙の左目(ルーベン・ティア)」ツツー…

ポタッ


アルカイ「なんだ…?泣いてる…?」

アルカイ「…まぁ、あんなガキどうでもいい。今はこっちに集中して…」クルッ

シーーーン…

アルカイ「…あ?」

アルカイ「誰もいない…何もない?」

アルカイ「天国の門は!?天使は!?」

シーーーン…

アルカイ(バカな、能力を解除した覚えはない…)

アルカイ「いや、それ以前に…」


この真っ白な空間はなんだ!?


アルカイ「ここは城じゃ…城の中じゃ…」クルッ

アルカイ「今見てた窓も消えた…なんだ…なんだこの白い空間は!?」

アルカイ「……」キョロキョロ

アルカイ「クソッ!」ダッ

アルカイ「はぁ…はぁ…」タタタタ

アルカイ(もう、10分は走っている…なのに依然として景色は変わらない…)

アルカイ(ただひたすら真っ白な世界…音もなにもない…)

アルカイ(これは…もしかしてこれは…)

幻 覚 !?

「…そう…これは幻覚」

アルカイ「!」バッ

「あなたは、幻覚世界の中にいる」

アルカイ「さっきのガキ…!」

アルカイ「おい!この幻覚を消せ!」

?「できない」

アルカイ「できないだと!?どういうことだ!お前の能力じゃないのか!」

?「わたしの能力」

アルカイ「ならどうして…」

?「わたしの『白幻涙の左目(ルーベン・ティア)』を見たら、無差別に、この幻覚世界に送られる」

アルカイ「無差別の幻覚、だと…?」

アルカイ「ふざけるな!!」ブンッ!!

ドチャッ

?「……」ぐちゃぐちゃ

アルカイ「顔が…崩れ…」

?「この世界では、色も、音も、匂いも、温度も、他にもいろいろ…すべて、私が支配する」

アルカイ「すべて…だと…!?」

?「あなた、どのくらい、この世界を走っていた?」

アルカイ「…10分は走っていたはずだ…それがどうした!!」

?「まだ、1秒も、経ってない」

アルカイ「は…?」

?「厳密には0.0006秒。それでも、これだけの時間で、幻覚だと気づけたのは、すごい」

アルカイ「……」ゾッ

アルカイ「そんなこと…あるわけが…」

?「…私は、あなたの心が砕けるまで、そこであなたを見ていなきゃいけない…」

アルカイ「お前は…お前は何者だぁ!!」

?「私、サヤ」


サヤ「上級悪魔(ネオンテーゼ)の、サヤ」

アルカイ「ネ…ネオンテーゼ…」

セラフィム『悪魔の勢力で特に強い連中が王族には集まっている』

セラフィム『だがそいつらよりもさらに上の存在がいる』

アルカイ『さらに上?』

セラフィム『上級悪魔(ネオンテーゼ)。王族護衛の兵士とは別にいる…要するに用心棒みたいな奴らだ』

アルカイ『なるほどな、少し聞いたことがあるぜ』

アルカイ『えらく不真面目な連中だってな…!ハハハハハ!!』


アルカイ「…ま…まさか本当にっ…」

サヤ「……」スタスタ

アルカイ「!…く、来るな!」ズザッ

サヤ「私、一日に一回しか使えないこの能力を、誰に使えばいいのか、聞いてなくて」スタスタ

サヤ「だから、最初に目が合った、あなたにしたんだけど」スタスタ

サヤ「これでなんとか、王族のうるさいのに、怒られなくて、済みそう」スタスタ

アルカイ「ふっ…ふざ…」ドンッ

アルカイ(…さっきまで、こんなところに壁はなかった…)

アルカイ「ほ、本当に…すべて思いのままなのか…」

サヤ「……」コクン

アルカイ「……ここから出る方法はないのか」

サヤ「…あなたの心が折れるまで、待つしか、ない…」

アルカイ「…そっ…それしか…ないのか…!」

サヤ「もう一つ、ある…」

アルカイ「な、なんだ…」

サヤ「この『幻覚世界の私』を倒すこと…」

アルカイ「…なに…?」

サヤ「すべてが私の思いのままの空間で…」

サヤ「私を倒すことができたら…」

アルカイ(…バカな…さっき崩れた顔すら、一瞬で戻ったんだぞ…)

アルカイ(…絵に書かれたを果物を収穫することが、食べることができないのと同じように)

アルカイ(俺はこいつにどうすることもできないんじゃ…)

サヤ「空間は思いのままでも、あなたの行動を操ることは、できない…」

サヤ「…それでも、出たいなら」

アルカイ「……やってやる」

アルカイ「俺は《天》九階位・第七位の―…」

サヤ「…はじめ」

ぐにゃんっ

アルカイ「………」

さっきまで目の前にいたのは、白いドレスを来た、幼い少女だった

いや、そう『見えて』いた

なのに、今ここにいるのは…



サヤ「ド ぅ し タ 乃 ?」


7本の腕、巨大な鎌、純白の翼、へし折れたスコップ、一房の葡萄、無数の眼球、紅い心臓

爛れた表皮、機械の脚、歪んだパイプ、錆びたドアノブ、青紫の卵、緑の唇、揺れる頭


俺の、顔


アルカイ「これは、なんだ?」

サヤ「死のかたちをした、夢」

アルカイ「……あ」


ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ

ピ─────────────────────






あっ。








プッ

天使たち『アルカイ様!アルカイ様!!』

天使たち『くそっ、いったい何が…!』

アルカイ「」



サヤ「…3.9秒…よく保ったほうだけど」

サヤ「永遠に、おやすみ」クルッ…

今日はここまでにします

2章のときから名前だけ出ていた4人目の上級悪魔が、やっと出せました
と言っても、出番はこれで終わりなんですが…

乙!
沙耶おもいだした
一日一回ってロマン仕様だな

白幻のサヤ

上級悪魔(ネオンテーゼ)の一人で、唯一の女性
容姿は子供にしか見えないが、少なくともロキよりも前に上級悪魔になっていた

地獄兵器 銀のネックレス
能力:未来視の右目(メビウス・デュート)」
ランダムに未来を見ることができる
ただし一度見た未来をそのまま迎えるか、変えるかするまでは、二度目の使用はできない

『バイ・セカンド』白幻涙の左目(ルーベン・ティア)
『左目から流れ落ちる涙』を見た者を無差別に、幻覚空間に引きずり込む
空間内ではすべてがサヤの意のままになっており、相手は自力で出ることはできない
精神が崩壊した相手は、空間から解放されるが、逆に解放されるまではサヤも同じ時間をそこで過ごすことになる
そのため、わざわざ相手に『もっとも恐ろしい夢』を見せて、早々に精神を破壊しようとする

『精神操作能力』では最強とされているが、使用中はただじっとしていることしかできないため、隙だらけになる
また、現実世界における本人は非常に弱く、よほど非力でなければ一撃で倒すことができる

>>293
元ネタはずばりそれです
最初は『サエ』という名前だったんですが、「微妙に変えるのも逆にあざといんじゃないか?」と思い、そのままにしました

引きずり込まれて饅頭怖いの精神でイチャイチャしたい

七位ェ…
相手が悪かっただけで、ほんとはもっと強いんだよね…?

クロ(…さぁ、来なさい)

バサッバサッ

クロ(何人いようが全員、私が倒す!)

ギュウンッ!!

クロ「…三階っ!」バサッ!!

クロ「!?」

ゾロ…ゾロ…

クロ「いる…いる、けど」

クロ(明らかに少ない…二階、一階よりも…)

クロ(なにか不気味だわ…隠れて様子を…)サッ


天使たち『クソッ…どうしたらいいんだ…』

天使たち『いったい何が起きたんだよ…!』


クロ(…?)


天使たち『なんで権天使様が倒れてる…?誰にやられたんだ!』

天使たち『アルカイ様だって決して弱くはない!なのに無傷で死んでいるなんて…』


クロ(権天使…アルカイ…同一人物よね…?雰囲気的にこいつらをまとめあげていたようだけど…)


天使たち『残りの奴らもこっちに来れなくなっちまった!』


クロ(!…なるほど、天使を大量に動員させていたのが、その権天使(アルカイ)だったのね)

クロ(でも、無傷で死んでるって…誰がそんなことを…?)


天使たち『このフロアに悪魔がいるのか!?権天使様を倒すほどの奴が!』

天使たち『いや、誰もいないはずだ!だからここまでスムーズにやってこれたってのに…』


クロ(下で私たちが暴れてたことを知らないみたいね…これほど好都合なことはないわ)

クロ(…見たところ20人もいないようだし、戦う必要はない…)

クロ(一気に飛び抜ける!)バサァッ!!

再び、屋上


ヘイセ(もう30分近く経っている…なのにまだ、まともな戦いにすらなってない)

ヘイセ(エレカ様が、完全に遊ばれている…!)

ヘイセ(兵士たちも動かない…あの『カデナ17』が一瞬で倒されて、明らかに士気が下がった)

ヘイセ(いや、下がったどころじゃない)

ヘイセ(エレカ様と熾天使…二人の圧倒的な力の差が、兵士から戦う気力を奪っている…)

ヘイセ(一体…どうすれば…)


エレカ「…千雷閃!」バリバリバリバリバリッ

セラフィム「…そんなものが通るかよ」ブンッ

バシュッ!!!

エレカ「雷…槍っ…!」シュッ

ガギギギ…

セラフィム「当たらないようにするので精一杯か?」

エレカ「はぁ…はぁ…」

ギィン!!

セラフィム「そんな息切らせて…それが魔王か。それで魔王かよ!」

エレカ「…黙れ…!」ギロッ

セラフィム「…いいか、お前のような小娘じゃあ絶対に辿り着けない世界(つよさ)がある…」グッ

セラフィム「圧倒的な経験不足!ネックになってるのはそれだ」ブンッ

エレカ「うっ!」バキッ!!

セラフィム「経験が与えるのは有無を言わさぬ『自信』…ほら、立て」グイッ

エレカ「はぁ…はぁっ…!」ヨロッ…

セラフィム「自分こそが『最も強い』と、そう思えること…この地獄の頂点にいるくせに、お前にはそれがない」スッ

セラフィム「だから弱い!」ドゴッ!!

エレカ「あぐっ…!」ドサッ

セラフィム「…能力を使わずにここまでやると、さすがにダルいな」

セラフィム「もう終わりにするか…?」スッ

エレカ「はぁ…はぁ…はっ…」ズキズキ

エレカ「…な…」

セラフィム「…ん?」

エレカ「なぜ…そこまで強い…!」

セラフィム「……はぁ…?」

セラフィム「いやいやいやまだ全然…本気の『ほ』の字も見せてないってのに…」

セラフィム「しかしまぁ…くくっ…やっぱりお前も同じか」

エレカ「…同…じ…?」


セラフィム「強さに理屈を求めるのは、いつだって弱者(おまえたち)だ」


エレカ「……!!!」

セラフィム「現実を見ろ。強い奴は強い。弱い奴は弱い。理由なんかない、『そういうもの』だろ」

セラフィム「強いていうなら、強くなろうって意思があるかどうかだ」

エレカ「…さっき…経験がどうとか…」

セラフィム「ああ、そりゃ経験があるに越したことはない」

セラフィム「が。しかし…実際」

セラフィム「経験だけなら俺に勝る奴はいくらでもいる」

エレカ「な…に…?」

セラフィム「俺だってまだまだ若いし…言うほど戦ってないんだよ」

エレカ「…だったら…」ヨロヨロ…

エレカ「だったら、お前はなんなんだ…!」ダッ!!

セラフィム「考えてみな」ガシッ

エレカ「かっ…!」ググッ

セラフィム「なぜ…俺はこんなにも強いのか?」

エレカ「く…うぅっ…!」ジタバタ

セラフィム「…苦しくて考えられないか?このまま俺が能力使ったら終わりだぜ」ポイッ

エレカ「…!」ゴロゴロッ

セラフィム「ま、教えてやるよ…何度も何度も言ってることだ」

セラフィム「俺が『神の血を引く天使』だから」

エレカ「神の血を引く…天使…?」

セラフィム「その通り」

セラフィム「…『血』の強さはお前もよく分かっているはずだ…『鍵』から雷の能力を得たお前の一族…」

セラフィム「だが俺はそんなモンじゃねぇ」


セラフィム「俺は生まれたその瞬間から、他のどの天使よりも特別で優秀な存在…『最強』だった」

セラフィム「それは俺が『神の血』を最も濃く継ぐ天使だからであり…周りの連中もそのことをよーく知っていて、俺になんの不自由もない生活を送らせた…」

セラフィム「そうして俺は与えられた力を持て余しながら10年以上ダラダラと過ごし…」

セラフィム「ある日、思った」


火が消える…


エレカ「…火…?」

セラフィム「そうとも…俺がたったひとつ持ってる命を、点いてるのか消えてるのか分からないような『とろ火』で燃やして」

セラフィム「そのまま死んでいくように俺は思った…」

エレカ「…命を燃やす…そんな陳腐な喩えが…」

セラフィム「そんな陳腐な喩えが、だ…俺にはすべてなんだよ」

セラフィム「俺たちの命は蝋燭なんだ。蝋燭の火はいつか必ず消えるようになってる」

セラフィム「だけどただの火にも燃え方ってものがある…」

セラフィム「新鮮な空気から酸素をたっぷり取り込んで激しく燃える火…」

セラフィム「密閉されて空間の淀んだ空気からわずかな酸素を取り込んで燃える弱々しい火…」

エレカ「……やっぱり陳腐だ」

セラフィム「俺は…俺のような『神の血を引く天使』は存在自体がもう奇跡的だ」

セラフィム「さっき言った『強い奴は強い』そんなレベルじゃねぇ。『最初から最強』そんなの俺しかいないだろ」

セラフィム「そんな俺が」


こんなところで燻っている場合ではない…


セラフィム「俺はもっともっともっともっともっと…盛大に燃えなくてはならない!」

セラフィム「だから俺は…俺の火が充たされて爆ぜるまで」

セラフィム「俺に新鮮な酸素を与えてくれるような、強い奴と戦いたいんだよ!!」

セラフィム「いいか『神の血を引く天使』を…『最強』を倒せる奴が存在するなら」

セラフィム「そんな奴と出会うために俺は生きている!」

セラフィム「より強い奴を…俺を倒せる可能性を秘めた奴を…今の俺より一歩でも先にいる奴を…」

エレカ(こいつ…何を言ってるんだ…?)


セラフィム「何を言っているか…って?」


セラフィム「弱いお前は、俺を燃やすに値しない」


エレカ「…!!」ゾクッ


セラフィム「もう、消えていいぞ」スッ


ボッ!!!

エレカ「え……」

シュウウウウウウ…

セラフィム「………」

セラフィム「なんだお前…」

バサッバサッ…


クロ「……間に合った…」

エレカ「君は…クロ…?」

クロ「……!」ハッ

クロ「…な、何をしてるのよ…私!こんな奴を助けるなんて…!」

セラフィム「…ふーん。そうか、助けが来たのか」

セラフィム「よかったなぁ魔王。もうすぐで半身消し飛んでたぞ」

エレカ「…っ…!」


セラフィム「…さて」クルッ

セラフィム「おいそこの…黒くてちっちゃいの」

クロ「ちっちゃいの…!?」ピクッ

セラフィム「今のは少し驚いてたぞ…あのタイミングでいきなり飛び込んできて、俺の手を攻撃するなんてな」

クロ「……あなた誰よ?」

セラフィム「話がしたいなら降りてきな」

クロ「……」バサッ

エレカ「クロっ…そいつに近づいちゃ駄目だ…!」

クロ「…あなたに言われなくても分かってるわ!」バサッバサッ

セラフィム「!」

クロ「黒羽射撃(ブラック・バレット)!」ビシュッ!!

クロ(エレカを攻撃しようとしてたってことは、こいつが天使なのは間違いない…つまり敵!)

セラフィム「おいおい、話がしたいんじゃないのか?」パシッ

クロ「…止めた!?」

セラフィム「…羽か…そういえば『飛べる悪魔』に会うのは初めてだな」ググッ

ピョンッ…

クロ(ジャンプしたって届くはずないのに…?)

スタッ

クロ「…え!?」

エレカ「…な…!」


セラフィム「翼があって飛べるってのは…素直に羨ましいぜ」


クロ「う…浮いてる!?」

クロ「どうして翼もないのに浮けるのよ!?」

エレカ「そんなバカな…!」

セラフィム「バカな、だと?言っただろうが…俺は神の血を引く天使」

セラフィム「というか俺はもうほとんど神。お前たちには出来ないこともだいたいこなせる」

エレカ「……神…」

クロ「なにを言ってるのかさっぱり…だけど…」

クロ「私以外に飛んでる奴がいるってなんか気に食わないわ!」バッ

クロ「黒羽掃撃(ブラック・マシンガン)!」バシュバシュバシュッ!!

セラフィム「気に食わない…ね。じゃあ例えば…」

シュンッ!!

セラフィム「…こんな速さで回り込んでみたり…」

クロ「後ろ…!?」

セラフィム「ほら…」ガシッ

クロ「っ!」グラッ!!

セラフィム「墜ちな」ブンッ

クロ「……!?」ギュオッ!!

ドサァッ

クロ「う…」

セラフィム「やっぱり俺は見下ろされるより見下ろす方が好きだ」

エレカ「滞空の能力…!?」

エレカ(いや、天使の能力は一人ひとつ…あの神剣以外には持っていないはず…)

エレカ(今の移動だって、そんな特別な能力を使ったようには見えなかった…)

セラフィム「…これ全部、俺にしか出来ないことなんだから、そんなに気に病む必要はないぜ」

クロ「…そういう問題じゃないわよ!」バサァッ

セラフィム「はは…元気だな。お前が相手してくれるのか?」

クロ「はああああああああっ!!」ギュウンッ!!!

セラフィム「!…ちょっと速くなったか」

クロ「黒羽創剣(ブラック・スライサー)!」ゾワゾワッ

セラフィム「なんだ?お前も…」

セラフィム「剣、使うのか」ブンッ

ボッ

クロ「……!」

クロ(剣が消えた…!)

クロ「くっ…」ギュウンッ!!

セラフィム「もう逃げるのか?」

クロ(落ち着け…落ち着きなさい、私…)

クロ(剣が通用しなかったなら…)

クロ「直接攻撃よ!」バサァッ!!

セラフィム「……うーん」

ヒュンッ

セラフィム「その翼、目障りだぞ」

クロ(…上……!?)


エレカ「クロ!避け…」

セラフィム「神剣」ブンッ!!

クロ「っ!」ヒュンッ

クロ(あ…危なかった…!)バサァ

セラフィム「今…危なかった、と思ったな?」

クロ「避けられたんだもの…当然でしょ」

セラフィム「いや、当たってる」

クロ「は……え?」グラッ

クロ「…片翼がない!?」

エレカ(速すぎる…)

クロ「二度も落とされるなんて初めてよ…」ストッ

クロ「あなた…タダ者じゃないわね」

セラフィム「…そりゃ、神だからな」

エレカ「クロ…あの剣に触れると…」

クロ「……うるさい!」

エレカ「!」

クロ「あなたの指図なんて死んでも受けないわよ…!それに、翼が消えた時点で、危険そうなのは分かったわ」

クロ「……けど、一つだけ訊くわよ」

クロ「あいつ、どうして宙に浮いているの…」

エレカ「…分からない」

クロ「…翼もないのに浮けるなんてありえないわ…!」

セラフィム「……ありえない、か…そうだな、普通はそうだ」

セラフィム「言いたくないが…言わなきゃなんだかズルい気がするな…教えてやろうか?」

クロ「…なんですって?」

セラフィム「俺が浮ける理由。いや、聞きたくないなら別にいいぜ」

クロ「…ふざけてるの?」

セラフィム「俺が神だからだよ」

クロ「ふざけてるでしょう…」

エレカ「神だから…?そんなの理由になってない…」

セラフィム「…ずっとこう思ってたんだよ」

セラフィム「俺は神だ。なのに俺が歩く道と、お前たちが歩く道が、同じであっていいのか?」

エレカ「……なに…?」

セラフィム「神は神だけの道を歩くべきではないのか?」

セラフィム「…もっといえば…」

セラフィム「道ってのは神のいる場所にできるものなんじゃないのか?」

エレカ「…まさか」

クロ「…!?」

セラフィム「俺は好きな空間に足場を作ることができる。見えないし質感もない。だが俺だけが使える足場が、ここにある」コンコン

セラフィム「そしてこれは、俺の意思で自由に動く」

クロ「『浮く』んじゃなくて『空に足場を作ってその上に立っている』…!?だからあんなに自由に動けるのね…!」

エレカ「そんなことができるはずない…能力が二つあるというのか…!?」

セラフィム「いやいや、持って生まれた能力はこの神剣ただひとつ…」ブンッ

セラフィム「だが俺には能力以外に自由に使える便利な道具を持ってる」

セラフィム「そしてそれを可能にするのが神具『天国への階段』…この靴に仕込んであるんだけどな」

クロ「神具…?何よそれ!」

セラフィム「神が作り出した道具の数々だ」

セラフィム「かつて俺たち天使やお前たち悪魔が、神から兵器を奪取しようと挑んでいったが…」

セラフィム「神はそれらを迎撃するためにいろいろ使ったらしい」

セラフィム「そのうちのいくつかは天国、地獄に散った」

セラフィム「これまで途方もない時間をかけて天国から30近い神具が見つかった」

セラフィム「しかし俺が生まれるまでは誰も使うことができなかったし、俺が使おうにもその半分は壊れていた」

セラフィム「だが、ひとつひとつが奇跡と呼べるような事象を引き起こすことができる…こうやって宙を駆け回ったりな」

エレカ「そんなものを使っていたのか…!」

セラフィム「まだあるぞ…今、左目に『神眼』を使ってる…まぁ視力を数十倍まで上げるコンタクトみたいなものだな」

セラフィム「部下に使わせてるのもある…あと人間にもくれてやった」

クロ「そんなのがあるなんて、反則よ!」

セラフィム「反則…?」

セラフィム「それじゃ…寒いからコートを着るのは汚いことか?」

クロ「詭弁ね…私たちは『そのコート』を持ってないわ!」

セラフィム「…お前、ちっちゃいくせに生意気だな…だから言いたくなかったんだよ」

セラフィム「ま、『こいつが強いのは神具とかいう小物に頼ってるせいだ』と思われるのも癪だし…」

セラフィム「分かった全部、オフにする」フシュッ

スタッ!!

クロ「!」

セラフィム「これで俺はもう宙を歩けない。視力も元に戻った」

セラフィム(他にも持ってるが最初から使ってなかったしな…)

セラフィム「小細工なし。これで文句はないよな?」バッ

エレカ「……」ギリッ

クロ(なんなのよ、こいつ…!?)

クロ「まだこいつのことはよく分からないけど、エレカ!あなたがこいつにやられて、相当まずい状況だっていうのは明白ね…」

クロ「あなたの負けは地獄の負けよ!そんなことさせないわ!」バサァッ

エレカ「駄目だ…君じゃ絶対に勝てない!」

クロ「やってみなきゃ分からないわ!」ギュオオオオオッ!!!

セラフィム「…いいね。強い弱いはともかく、その姿勢は評価してやる」

エレカ「…クロっ…君に言っても分からないかも知れないけど…」

エレカ「そいつは第一位の熾天使!最強の天使だ!」


クロ「一位…?」

ルシファル『そして第一位は最強の天使…私でも勝てないかもしれない』

クロ(…こいつが!?)


セラフィム「ん…?その反応…お前みたいなチビでも俺のこと知ってるのか」

セラフィム「いかにも、俺が《天》九階位の第一位…熾天使セラフィムだ」

クロ「く…」

クロ「クロノ・ヴィーノ・トリアンテ・ランバ!地獄で一番強い悪魔の娘よ!!」

エレカ(臆さない!…だけど今はその性格じゃ駄目なんだ…!)

セラフィム「…待て、今なんて言った…」

セラフィム「一番強い悪魔?」ギョロッ

クロ「…!?」

クロ(表情が変わった…)

セラフィム「…って言ったよな。今」

セラフィム「地獄で最強の悪魔とは、誰だ?」

クロ「…と…父さまよ…父さまが一番…」

セラフィム「…俺の認識では、地獄最強の悪魔は女のはずなんだが…」

クロ「…え…?」

エレカ(…誰のことを言っている…?)

セラフィム「お前の勘違いだな」ブンッ

ボッ!!

クロ「…!…また翼が消え…」ヨロヨロッ

セラフィム「相手にならん…その翼一枚で許してやるよ」

クロ「……うっ!」ドサッ

クロ(翼をこれで、まるまる二枚消された…あの『剣』に斬られたからなの…?)

クロ(そういう能力なら手が出せないじゃない…!)

セラフィム「諦めて居直るのもいいが…巻き込みを食らいたくないならさっさと引っ込んだ方がいいぞ」スッ

クロ「…?」

セラフィム「魔王…さっきは仕留め損ねたからな…」ギロッ

エレカ「!」

エレカ(まずい…もう凌ぐ余裕は…)


クロ(…あいつの狙いはあくまでも魔王(エレカ)一人なのね…)

クロ(私が隙を狙って攻撃すればなんとか…)

クロ(なんとか…)

ボッ

クロ(…駄目…あんな攻撃、一度でも喰らったらおしまいだわ…)ゾッ

クロ(私にはもう…)


セラフィム「さぁ、消えてもらうぞ」ブンッ

エレカ「……!」


クロ(ただ見ていることしか…)



スカッ


クロ(…え…?)

セラフィム「……またか」

セラフィム「…俺としたことが格好悪い…盛大に空振るなんてな」

セラフィム「で…今度は誰だ?」



エレカ「……はぁ…はぁ…」

エレカ「あ、あなたは…」

?「……」

?「…呼んだのはお主であろう」

エレカ「呼んだ…?」

エレカ「…!…まさかあなたは、上級悪魔…」


?「我が名はレクラン・クラン…人呼んで『双剣使い』なり」


クロ(上級悪魔…!?)


セラフィム「…なるほど少しは…いやかなり、強そうだ」

今日はここまでにします

一月の頭に用意した書き貯めが、ついに尽きてしまった…!
ここからが本番なので、なるべく早くに更新できるよう頑張ります

おっつー

乙!
人間にくれてやった神具きになるな

クロ(こいつ…ここまで飛んで来たときに見た、すごい速さで走ってたあの男…よね)

クロ(上級悪魔だったの…!?)


セラフィム「またか…また邪魔か…」ハァ

セラフィム「しかもお前、城の前で足止めしてきた『あいつ』よりも強そうだな…」

レクラン「誰のことを言っているか知らぬが、貴様よりは強いだろう」

セラフィム(自惚れ屋か本物の実力者か……比べるまでもないな)

セラフィム「まったく俺は本当に…運がいいのか悪いのか…」

セラフィム「………比べるまでもない。最高だ」ニタァ

エレカ「……」ギリッ

セラフィム「さて…」ザッ

セラフィム「城の中には部下たちがいるはずだが…どうした?」

レクラン「…すでに半分は倒れていたが」

セラフィム「…なに…?」

クロ(そりゃそうよ…私たちが倒したんだから…)

セラフィム「……!」

セラフィム「いつの間にかアルカイの精神力が途絶えてる…誰にやられた?」

クロ(それは私も知らない…)

セラフィム「…まぁ、いい」クルッ

セラフィム「お前…上級悪魔(ネオンテーゼ)なんだって?」

レクラン「……」

セラフィム「相当強い集団だって聞いてるぜ…六人いるんだろ?残りはどうした?」

エレカ「私は二人しか呼んでいない」

セラフィム「……二人?」

エレカ「一人はここにいる『双剣使い』レクラン。もう一人、『白幻姫』サヤは来てな…」

レクラン「来ていたようだが、もうここにはいない」

エレカ「え…」

レクラン「此処へ向かってるときに一瞬、凄まじい精神力を感じた。あの娘が能力を使ったからであろう…」

レクラン「今は遠ざかっているが」

エレカ「遠ざかって……」

エレカ(…いや、上級悪魔とは元々そういう連中だ。一時でも来ただけ十分…)

エレカ(しかし、誰か倒していったのか…?)

セラフィム「そうか、残りはいないのか…そりゃ残念」

セラフィム「…だが」

セラフィム「一人でも強い奴と戦えるなら、それでいい…」スッ…


『セラフィム様、お待ちを』


セラフィム「…!」ピクッ


クロ「…声!?どこから…」

ズズズズズ…

エレカ(…そうか、コイツがいたか…)

ズズズズズ…

レクラン「……」

ズズ…

セラフィム「なんのつもりだ?」

セラフィム「…ミカエル」


セラフィムの影の中から現れたその男は

四大天使(クアドラ・アークエンジェルズ)最後の一人、スレイダ・ミカエル


ミカエル「熾天使様…貴方は遊び過ぎるのです」

セラフィム「そういう性分なのはお前もよく知ってるだろ?」

セラフィム「それともまさか…お前がやるなんて言わねぇだろうな」

ミカエル「ここは私にお任せを」

セラフィム「…そうか…言うのか」

セラフィム「……」

セラフィム「ま…お前はずっと俺の影の中で待機だからな。退屈で死にそうになるのも無理ないか」

セラフィム「いいぜ。好きにしな…俺はここで見てる」

ミカエル「では…不肖このミカエルめがやらせていただきま
す」ズズズズ…

クロ「影から何か出てきたわ…」

ミカエル「暗蛇狩刃(アンダーカバー)」ジャキンッ

エレカ「…あのときの薙刀…」

クロ「エレカ、こいつを知ってるの?」

エレカ「…前に、熾天使セラフィムを騙って私の前に現れた…さほど苦戦はしなかったが、加減していたに違いない…」

エレカ「能力はおそらく『影への潜行』…ここは屋上だけど、『カデナ17』が隠れていた壁には大きな影がある。その分、向こうが有利かもね…」

クロ「でも、あの…上級悪魔のほう」

クロ「見てすらいないわ…」

レクラン「……」

セラフィム「なんだその視線は…そんなに俺と戦いたいのか?」

レクラン「……」

レクラン「茶番など不要…分かっておろう」

セラフィム「…ハハッ」

セラフィム「戦う前から茶番だってよ。ミカエル、悔しいだろ!さぁ見せてやれ!お前の実力を!」

ミカエル「言われずとも…すでに…」ズズズ…

トプン

クロ「消えた…これが…」

エレカ「…影への潜行」


シュン シュン シュンッ!!!

ミカエル(我が能力『影神(アバジャド)』は影の中を自由に動くことができる!そしてそれを感覚で認知することは不可能!)

ミカエル(貴様は背後から突然現れた私に対応できずに、この薙刀の餌食となるのだ!!)

ズズッ

ミカエル(死…)


ブシュ ブシュ ブシュ ブシュッ!!!


ミカエル「……え…」ドロッ


クロ「血!?」

エレカ(なっ…!?)


レクラン「後ろか…直ぐ近くで助かる…わざわざ動くのは面倒でな」スッ

ミカエル「い、今…何を…」

ズバッ!!!


ミカエル「……」ズルッ

ゴトッ


レクラン「味気、なし」

間を持たせるために、3レスだけですが投下しました

早いうちに続きも投下しようと思っているのですが…なんとも…


なんというかませ具合なんだミカエルまさかこれで終わりかミカエル

セラフィム以外の天使って弱いんじゃ……

最初はミカエルにはもっと活躍してもらう予定だったのですが
「同じ上級悪魔のサヤが一方的に勝利したのに、レクランに苦戦させるのはどうなんだ?」
と思ってしまい…結果こんなことにしてしまいました
正直少し後悔してます…

いきなり言い訳が出ましたが、今さらどうにかなるものではないので、続き更新します

ミカエル「……」ドチャ


レクラン「味気なし。他愛、なし」キンッ


クロ「ま…真っ二つ…」パクパク

エレカ「あ、あんな見事な太刀筋…見たことがない…」


セラフィム「……おい」

セラフィム「おいおいおい……情け容赦なしに瞬殺か…つまらねぇことするよなぁ」

セラフィム「……瞬殺か」

セラフィム(明らかに格上の敵に『お任せを』とか言ってる時点で勝ちは無ぇと思ったが)

ミカエル「」

セラフィム「仮にも俺の影武者をやらせてるくらいだ。本当はもっと強い…」スタスタ

セラフィム「が、相手が悪過ぎたな」ピタッ

セラフィム「お前にはいろいろ迷惑をかけた……せめて、安らかに眠れよ」スッ

ボッ!!

クロ「……!」


レクラン「……次は」

セラフィム「お前だ…だろ。分かってる…『次こそ』俺だ」クルッ

レクラン「……」

セラフィム「茶番と…お前さっきそう言ってたよな…」

セラフィム「確かに茶番もいいとこだ。俺の側近が、こんな醜態晒すことになるとは思わなかった」

セラフィム「これで四大天使は全員敗北。ミカエル以外は死んじゃいないようだが、ほとんど戦えないのは間違いない」

セラフィム「残りの天使たちも全員、一通り交戦して…そして勝ったか負けたか、いずれにせよ負傷はしているようだな…」

セラフィム「レジエルにクレセリアまで…誰にやられたのか知らんが、予想外だ」

セラフィム「九階位は壊滅寸前。相当ヤバい」

レクラン「何が言いたい」

セラフィム「……ふふ」

セラフィム「だが…そんな状況なのに俺は…ここに来てかつてないほどに高揚している…」

セラフィム「やっとお前のような腕の立つ奴と戦える。ようやくだ…嬉しくて仕方がない」

セラフィム「それにいくら部下達(あいつら)が傷つき倒れようが結局…俺が勝てば全部チャラだ」

レクラン「何が言いたいのかと訊いている」

セラフィム「待ちわびたって、ただそれだけだよ…」ニタァ

レクラン「ならお喋りはもうよかろう」

セラフィム「…あと、お前さぁ」

セラフィム「俺の前で気取った喋り方するなよ…」ギロッ

エレカ「……!!」

エレカ(一気に…力が溢れ出した)

セラフィム「そういうの嫌いなんだよな」

レクラン「そうだな…饒舌な貴様には…この一言で十分だな」

レクラン「……斬る」ギラッ

セラフィム「…それでいい」ニヤッ

レクラン「……」

バヒュッ!!

セラフィム「!」


クロ「…消えた…!?」

エレカ「上級悪魔『最速』。そう呼ばれるのがあのレクランだ。私も実際に見るのは初めてだが…」

エレカ「…まさか『見えないほど速い』とは思わなかったよ」

エレカ「そして、一瞬見せたあの眼光は…ハッタリじゃない。本当に強い…」

エレカ「セラフィムも、今までと明らかに感じが違う…私なんてまったく相手にされてなかったんだ……」


セラフィム「……成る程な」

ヒュン ヒュン ヒュン ヒュンッ…

セラフィム(飛び回っているのか…確かに速い)

セラフィム(が…)

ヒュン ヒュン ヒュン ヒュンッ!!

セラフィム(姿が見えないからどこから攻撃されるか分からない…なんてことはねぇ)

ヒュンヒュンヒュンッ

セラフィム「剥き出しの『敵意』が教えてくれる…神剣!」シュッ!!

キィンッ!!!

セラフィム「……ん?」

シュウウウウウ…

セラフィム(奴じゃねぇ。何を消した…?)


クロ「…!!当たった!」

エレカ「いや…当たったならレクランの剣は消えてるはずだ。それどころか」

エレカ「依然、姿が見えていない…」


ヒュン ヒュン ヒュンッ

セラフィム(…俺の神剣は触れたものを消滅させる…そして今、確かに『消滅させた』手応えはあった)

セラフィム(だが消したのは剣じゃない…まして本体でも…)

セラフィム(なんだ…どうなってる?)

ヒュン ヒュン ヒュンッ

セラフィム「…音だけははっきりと聞こえている。お前が飛び回っている音だ」

ズッ…

セラフィム「…そこかッ」ブンッ

ボッ!!!

セラフィム(…まただ…また消した手応えだけが…)

クロ「ど、どうなってるの…あいつは何を斬ってるの?」

エレカ「少なくともレクランじゃない…でも無闇に剣を振ってるようにも見えない…熾天使は『何か』を捕らえてる…」

クロ「なにも見えないわよ…」

エレカ(上級悪魔レクラン・クラン…他と違って、能力に関する情報は一切ない。あの刀ひとつであらゆる敵を斬ってきたと…そう聞いている)

エレカ(そもそもなぜ『双剣使い』なんだ?どう見ても剣はひとつしか持っていないのに…)

エレカ(それとも…)


セラフィム「!」ブンッ

ボッ!!

セラフィム(さっきからずっと『ハズレを引かされてる』…それは分かる)

セラフィム(せめて本体の位置を捉えることができれば…)

ヒュン ヒュン ヒュンッ

セラフィム「……!」ピクッ

セラフィム「神剣!」ブンッ!!

ボッ

セラフィム「…チィッ」

セラフィム(またハズレ…敵意だけは感じてる…だが奴自身にこの剣は届いていない)

セラフィム(……研ぎ清ませ)

セラフィム「生ぬるい戦いはもう終わってんだ…ここからが本当に…俺の求めてた最高の舞台…さぁ…」ブツブツ…

セラフィム(研ぎ清ませ)


ヌルッ…


セラフィム(……?)


それは、そもそも自分に敵意を向ける相手の少ない天国では、まず感じることのできない感覚だった


セラフィム(今まで俺は…メラメラと燃える炎のような敵意の…その飛びかかるわずかな火の粉に反応していた…)

セラフィム(だがこれは違う…まるで)


氷のように冷たい刃が、静かに懐に迫る嫌な感覚…


セラフィム(感覚?)


違う


ズッ


セラフィム「本物か……!!!」バサッ

レクラン(!マントが…)

セラフィム「見付けたぜ」ギュオッ

バキィッ!!

レクラン「……っ」ズザァッ

セラフィム「はは…はははは…!はははははははは!!」

セラフィム「はーっ…スッキリした…」

セラフィム「さぁ、気分はどうだ?」

レクラン「…まさか捉えられるとは思わなかったぞ…」

セラフィム「ずっと…敵意に囲まれていた」

セラフィム「だがその中でお前の放つ殺気は…強力すぎたな、逆に浮いてたぜ」

レクラン「…見切ったつもりか?」

セラフィム「敵意と殺意の違いなんて簡単に…いや、なかなか味わえるもんじゃないが…」

セラフィム「このお気に入りのマントに傷が付かなくてよかったぜ」バサッ

レクラン「あと少し気付くのが遅ければ貴様ごと串刺しだ」

セラフィム「そうかもな…しかし残念、そんな機会はもう二度と来ねぇ」

レクラン「……もう一度訊くぞ」

ゆらっ…

レクラン「見切ったつもりか?」ヒュッ

セラフィム「……!!!」バッ

ガキンッ!!!

ギギギギギギギ


クロ「…えっ!?」

エレカ「…どういうことだ…?」


セラフィム「…てめぇ…なぜ…なぜ…」

セラフィム「なぜ俺の神剣を受けている…」

ギギギギギギギ…

レクラン「…影の男を消したその剣…触れさえすれば、我を殺せるということだろう…念のためだ」

キンッ!!

セラフィム(…鍔迫り合いなんて初めてだぜ)

セラフィム「充満する敵意…斬ってもハズレ…神剣を受けても消えない剣…念のため…」

セラフィム「ワケ分からん…が…いいぞ、面白くなってきた」スッ

レクラン「……麗鳳の剣舞(スウィフト・ダンサー)」ヒュオッ

ヒュン ヒュン ヒュン ヒュンッ

セラフィム「…速さで翻弄するのは…もう諦めな」

キィン!!

レクラン「…!!」

セラフィム「言ったろ…この場じゃお前の冷たい殺気は目立ちすぎるんだよ」

レクラン「お前が敏感過ぎるんだ」

セラフィム「そんなギラギラした眼ぇして、よく言うぜ」

レクラン「……」

レクラン「この能力は…剣を持っている間のみ、我が速度を上昇させる…他愛ないものだ」

セラフィム「自嘲かよ。なんでもっと素直に『俺の能力はスゴいんだ』と言わねぇ?」

レクラン「少なくとも追える貴様はもう常人ではない」

セラフィム「…当たり前だろ…なんせ俺は」

セラフィム「神だからなァ!」ブンッ!!

ヒュンッ!!

エレカ(!大きく空振りをして…隙ができた!!)


セラフィム(…当然、背後を取るよな)

セラフィム(…そしてこれが罠だと言うのも分かってるはずだ…)

セラフィム(さぁ、どう出る?)

レクラン「…隙だらけだ…」バッ

セラフィム(おい…馬鹿正直に後ろを狙う気か…?)

セラフィム「興醒めだぜ」ブンッ!!

レクラン「…斬る」シュッ!!

ギキィンッ!!!

セラフィム(チッ…やはり消滅しねぇ…)

ズッ…

セラフィム(あ?)

ブシュッ!!

セラフィム「…!?」ボタボタ


キィンッ!!

レクラン「……」スタッ

セラフィム「腕から…血が…なんだ…いつ斬られた…?」ボタボタ…

セラフィム「そうか……地獄(ここ)に来て初めて…傷つけられたぜ」

セラフィム(しかし…まぁ…)ペロッ

セラフィム(この傷口…)

セラフィム(小さいが間違いなく『切り傷』だ…一度にいくつも付けられている)

セラフィム(だが奴の持っている剣には斬られちゃいねぇ。原理は分からんがあの剣、俺の神剣を受けていたからな)

セラフィム(何をした…?)

レクラン「…苛立っているな。傷付けられたのが嫌だったか」

セラフィム「そんなにナーバスじゃねぇよ俺は…少し苛立ってるのは確かだがな」

セラフィム「思ったより謎が多い…そしてまったく見えてこねぇ。楽しさとイライラが半々だ」

レクラン「貴様からは見えまい」

セラフィム「……なに?」

レクラン「…獄葬(ごくそう)」シュッ

セラフィム「…!」

レクラン「我が刀の名だ…」ピタッ

レクラン「この地獄で貴様を葬る」

セラフィム「…普段なら軽く笑って流す台詞だが…今だけ真面目に受け取ってやるよ」ニヤリ

今日はここまでにします

つい「鍔迫り合い」という単語を使ってしまいましたが、セラフィムの神剣に鍔はありません…

乙!
なんか久々の熱いバトルだな

セラフィム「……」

レクラン「……」

エレカ(明らかに変わった…二人の間の空気が)

エレカ(清涼だった互いの間合いが、淀んだ泥沼に見える)

エレカ(その中心にいるのは…)


レクラン「……」


セラフィム「…多くを語らない男ってのは格好いいと思うか?」

レクラン「……」

セラフィム「てめーだよ。てめーに言ってるんだ」

レクラン「知らん」

セラフィム「……まぁー大事なことほど語りすぎないほうが良いよな」

レクラン「我にとって大事なことはただ一つ」

レクラン「貴様を…」

レクラン「斬る!!!」シュンッ


クロ「また消えた…!」

エレカ(でもさっきまでとは違う。もうセラフィムはレクランを追える)


ヒュンヒュンヒュンヒュン


セラフィム「……」ギョロギョロ

セラフィム(殺気は感じている。目で追う必要はどこにもない…だが)

スパッ

セラフィム「!…肩」ポタタッ

セラフィム(これの正体を見極めるためには必要だ)


スパッ スパッ スパッ!!


クロ「血が散ってる…細かく斬られてるんだわ!」

エレカ「ああ…でも…」

エレカ「まるで掠らせているような…その程度の手傷しか負わせていないのはなぜだ?」

エレカ(セラフィムがレクランの動きを捉えているなら…あの速さの中で『掠りもしない』そういう状況になるはず)

エレカ(するとレクランのしていることはいったいなんだ?)

クロ「……?」

クロ「目が…」ゴシゴシ

セラフィム(そう…気になっていた…こいつ、さっきから加減して斬っているのか?)

セラフィム(腕といい肩といい…まぐれで当たったとか、そのレベルの斬撃だ)

セラフィム(まったく予測もできないところから斬りかかる…のなら、一撃で致命傷を負わせるのが好ましいはずだ)

セラフィム(でなきゃこうして、俺に怪しまれるからな)

セラフィム(そうしないのは何故だ?)

セラフィム(まぁ今は…刻まれながら、もうしばらく様子を見てるしかねぇ)

スパ スパ スパ スパッ!!

セラフィム「…チィッ」スッ

ブオンッ!!!!

セラフィム「神剣…」

レクラン「……フン」スタッ

レクラン「闇雲に振れば当たると思ったか」

セラフィム「当たるとは思ってない…だがお前の足は止まったぜ」

レクラン「……当たるというのはこういうものだ」

ブシュッ!!

セラフィム「………!!!」ドロッ

レクラン「当てるとは、こういうことだ」

セラフィム(また…どこからだ…)


エレカ(なんの動きもなかった…今レクランは完全に止まっていた…なのに斬った…!!)

クロ「エ…エレカ…」

エレカ「!?」

クロ「あなた…何もしてないわよね…」

エレカ「…残念だけど私にあんな芸当は…」

クロ「そうじゃないわ…目が」

クロ「目がおかしいの…霞んで見えるのよ」

エレカ「……なに?」

セラフィム「はぁぁ……」

セラフィム「なんだこれ…まるで俺が手も足も出せてないみたいじゃねぇーか…」

レクラン「出せるなら出してみろ。即、刻む」

セラフィム「……仕方ねぇ」スッ

セラフィム「神…剣…」ズズズ…

レクラン「さっきも言ったが…闇雲に振っても当たらんぞ」

セラフィム「ちゃんと見て振る」ググッ

ギュアッ!!

レクラン「!」バッ

ボッ!!!

レクラン「…いい踏み込みだが…」スタッ

ギラッ

レクラン「……!」

セラフィム「なんだってぇ?」

ブンッ!!

レクラン「すかさず追撃…か」サッ

セラフィム「だから…なんだってぇぇええ!!?」グルン…

レクラン(もう一撃…!?その構えは)


ブオッ!!!


レクラン「…横薙ぎ…!」

セラフィム「結構思いっきりやったんだけどな…全部躱すとはさすが、よく見てる…」

レクラン「もう終わりか?」

セラフィム「まだに決まってんだろ」スッ

ブンッ…

レクラン(今更そんな大振り…当たるはずが…)バッ

ガシャン

レクラン(…柵!?)

セラフィム「お前が後ろに跳んで避けるように攻撃した…三度も避ければ壁際だ」

セラフィム「そして最後の一撃をしゃがんで避けただろ」

セラフィム「…その体勢じゃ左右に避けるのは無理なもんよ」

レクラン「……」ニィ

キンッ!!

セラフィム「…また、受けやがったな…」

レクラン「我が刀は貴様には斬れぬ」

レクラン「返すぞ」


獄葬・斜交一燕(しゃこういちえん)


スパンッ

セラフィム「………!!!」ブシュッ

エレカ「…入った!見えない斬撃じゃない…確実な一太刀!!」

クロ「…………れなの」

エレカ「…え?」

クロ「あれなの?ずっとあいつを斬っていたのは…」

エレカ「…なんのことを言ってるんだ?」

クロ「……見えたわ…あいつが何を使っているのか、やっと分かった」

クロ「って言うか…今までずっと見えていたんだわ…あまりにも自然すぎて、気づかなかったけど」

エレカ「だからなんのことを…」

クロ「あの悪魔は、ずっとあれを展開してた…そしてあれが天使を切り裂く斬撃になって、逆に天使の剣から刀を防いでいた…」


セラフィム「………」グラッ

セラフィム「っ……」ヨロヨロ

レクラン「倒れない…浅かったか」

セラフィム「今のは…よかったぜ…」

セラフィム「こんなんじゃ到底俺は殺せないが…かなり痛い…こんなのは久しぶりだ…」ドクドク…

レクラン「…だったらもっと上の…」

セラフィム「なぁ」

レクラン「……」ピクッ

セラフィム「時計を持ってないか?時計…」

レクラン「……時計だと?」

セラフィム「だってお前…俺が地獄に来て何時間経つのか知らないが」

セラフィム「もう真っ暗だぜ」

レクラン「なんの話だ」

セラフィム「見てみろよ…こんなに」スッ

セラフィム「こんなに…空が綺麗だったのにな」


セラフィム「今までぜんぜん気づかなかったぜ」

セラフィム「なんだか『頭に靄でもかかってた』みたいで……」


レクラン「……」

レクラン「貴様」

セラフィム「ふふ…でもこれでスッキリした…靄がかかってたのは頭じゃねぇ…」

セラフィム「俺の視界だな」

セラフィム「そして…この屋上の広範囲を包んでいた」

セラフィム「端っこまで来たから外れたみたいだな…お前のその範囲から」

レクラン「貴様…見えているのか…」

クロ「ずっと、気になってはいたの」

クロ「彼らが戦っているあたりだけ、色が変なの」

クロ「私の目がおかしいんだと、勝手にそう思っていたけど、違ったのよ」

クロ「これはあの悪魔がやってることなのよ…」

エレカ「色…?」キョロキョロ

エレカ「……あ」

エレカ「本当だ…まったく気付かなかった…ちょうどさっきまでレクランが跳びまわっていたあのあたりが…」

紫色に霞んで見える

クロ「…そして、ついに見えたわ」

クロ「この屋上の端っこ、色のついてないあの位置で、あの悪魔が刀を出した瞬間……」

クロ「同時にあれが噴き出した」


セラフィム「その刀が俺の神剣で斬れないのは、これで覆っていたから…か?」

レクラン「……」

セラフィム「この妙な…紫陽花みたいな色した靄…そこにいると俺は斬られる」

セラフィム「そういやお前さっき『貴様からは見えん』とか言ってたが…なるほどな、確かに包まれてる間はまったく気付かなかったぜ」

レクラン「……」

セラフィム「これがお前の能力だな?」

レクラン「…よく、よく気付いたな…本当に…」

レクラン「だがひとつ、訂正しておく」

セラフィム「?」

レクラン「靄じゃない」

レクラン「煙だ…」

セラフィム「……へぇ」


『バイ・セカンド』霞む死界(サラウンド・バイ・ザ・ライラック)

今日はここまでにします
パソコンからの更新は久しぶりでした

相変わらず少なくてごめんなさい。GW中には続き書きます

乙!
タネがばれてピンチか?!

乙!
初めから読んでやっと追いついたー!

ブワァッ

セラフィム「おいおいおい…」

ゾワワワワワワ…

セラフィム「煙…煙だが『モクモク』なんてレベルじゃないぞ」

セラフィム「何も見えねぇ」


ズズズズズズズズズズ……

ギラッ


セラフィム「!」

ザクッ!!

セラフィム「…チッ…左腕を…いよいよ本気になってきたか」ポタポタ


レクラン「……もう理解しているであろう…この煙はただの煙ではない…」

レクラン「触れた物質を斬る性質を持つ」


セラフィム「…ほう…」

チリチリチリ…

セラフィム「…この肌の痛み…気のせいじゃなかったか」

セラフィム「俺はこの煙に包まれている間、常に切り刻まれ続けなきゃならないってわけだ」


レクラン「…いいや、この煙の状態では貴様を刻み殺すのに何時間も掛かる」

レクラン「だからこれは…」

ギュウゥウウウン…

レクラン「固める」スッ

ヒュッ

セラフィム「!!」スパッ


レクラン「分かるか」

レクラン「この煙の斬撃能力自体は微々たるもの…しかしこうして凝固させれば…」

レクラン「それはもう一本の小刀に匹敵する」


セラフィム「…へぇ…つまり…なんだ」

セラフィム「そうやって余裕ぶって能力の内容をベラベラ話しているのは、もう勝利を確信しているからか」


レクラン「…勘違いするな…端から貴様に負ける気などない」


セラフィム「そりゃそうだろうな…」スッ

セラフィム「……神剣」

ボッ

セラフィム「この剣をもってしても消せるのは『剣の周囲の煙』のみ…思えばこんなにやられ放題なのは初めてだ」

セラフィム「だが俺こそ…負けるつもりなんて最初からないんだよ…お前もしょせん楽しみの一つに過ぎない」

レクラン「楽しみか…せいぜい油断せぬことだ」

セラフィム「お前がな」

セラフィム「俺の神剣は触れたら終わり。ちゃんと理解しておけよ」

セラフィム「死んでからじゃ言い訳できないからなぁ・・・」

レクラン「……それでは…」

レクラン「もう一つ、我が能力の真髄を見せてやろう…」

セラフィム「……なに?」

レクラン「極限まで凝縮させた煙は『形』を得る」ズズズズズ

レクラン「これが何か分かるか」ズズズ…

セラフィム「……」

セラフィム「刀……」

レクラン「左様……これが我が二本目の刀」

レクラン「名を『冥桜(めいおう)』」チャキッ

セラフィム「…二刀流…か…」

セラフィム「しかし煙を固めて刀…なんでもありだな」

セラフィム「もう付き合ってられねぇよ…さっさと終わらせようぜ」

レクラン「……」スッ

セラフィム「神剣!!」ブンッ

ボッ!!!

セラフィム「煙たいのは嫌いでね…こうすりゃ視界もスッキリ…」

レクラン「無骸(むがい)…」スッ

セラフィム「!」

『弧月(こげつ)!』

ブオッ

セラフィム(この範囲……!)バッ

セラフィム「神剣!」ブンッ

ボッ!!!


シュウウウウウ……


セラフィム「…なるほど、二本目は『煙の刀』…」

セラフィム「煙が及ぶ範囲ならいくらでも刀身は延びるってことか」


レクラン「その通りだが一つ違う……斬撃の煙ですべてが構成されるということは」

レクラン「刀身だの刀背だの柄だのという概念を持たぬ。どこであろうと触れれば斬れる」


セラフィム(性質的には俺の神剣に似ている…既存の剣に当てはまらない)

セラフィム「いよいよもって厄介だな…」

クロ「…何も見えない…」

クロ「あの煙の中…もうどうなってるのかまったく分からないわ」

エレカ「でも精神力の揺らぎを感じる。つまり…」

エレカ「どちらかが実力を出し始めている…」



レクラン「無骸・湖陽(こよう)」


ズオッ…!!


セラフィム(煙が広がっていく…狙いは脚か!)

セラフィム「神剣!」ブォッ

ボッ!!

セラフィム(消せる…が、消しても、だ)

ズズズズッ

セラフィム(すぐに周囲の煙で再構成される!)


レクラン「無骸・光伸(こうしん)!」ビュオッ!!


セラフィム(今度は直線…突き!)

セラフィム「神剣!!」バッ

ボシュッ!!!

セラフィム(…そしてまた再構成)

ズズズズズ…

セラフィム(ならば…それより速く!)ダッ

レクラン「!!」

セラフィム「終わらせるって言っただろうよ!!!」ブンッ

ギキンッ!!

セラフィム「!…防…」

レクラン「獄葬…二刀流と言ったろう。その意味を忘れるな」ブオッ

セラフィム「チッ!」ダンッ!!

セラフィム(…今分かった…こいつ…)

セラフィム(こっちの『実剣』のほうも煙で覆ってやがったか…)

セラフィム(神剣が触れても消すことができなかったのは、触れているのが覆っている「煙」だけだからだ)

セラフィム(それでも長時間俺の剣に触れていれば、煙のコーティングはすべて消え、刀本体を曝すことになる)

セラフィム(だが奴は、そうなる前に神剣をいなすだけの力を持って…)

ザクッ

セラフィム「…!!」ズキッ

レクラン「無遊搦(むゆうじゃく)」

セラフィム「!」スタッ

レクラン「あまり跳び回らないが良いぞ…すでに上空に…凝縮させた煙を展開させている…」

セラフィム「隙のねぇことだ…!!」

レクラン「そして…これを降らせればどうなると思う」

セラフィム「あ?」

レクラン「無骸・火螢(こけい)!」

ヒュンヒュンヒュン!!

セラフィム「斬撃の礫…!まるで雹だな!」ズォッ

セラフィム「全部…消してやるよ!!」ヒュバ

ギュババババッ

ボボボボッ!!!

レクラン「…大した腕よ…だが」

レクラン「これは消しきれぬ…!」ズズッ

セラフィム「!」


無骸・蓮舞城(れんぶじょう)!!


セラフィム「……全方位の…刃…」

レクラン「さぁ…その剣一本で消してみるがよい!!」


シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ
シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ 
シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュオォッ!!!


セラフィム「………」

セラフィム(一本じゃ…キツいか…)

セラフィム「…神剣」スッ


ブワァッ!!!!


レクラン「!?」

レクラン(まさか…本当に全部消したのか…!?)


シュウウウウ~…


セラフィム「…まさかなぁ…」

セラフィム「久しぶりだ…いやまさか…ここまで追い込まれるとは思わなかった…」

セラフィム「初めてお前に…敬意を表すぜ…」ジャキッ


レクラン「…貴様…その剣…二本目……!?」

レクラン「貴様も二刀流か…!!!」


セラフィム「…なんたって腕は…二本あるからなぁ…左腕はだいぶ刻まれちまったが」

セラフィム「まったく問題ない」

セラフィム「少しだけ…俺の本気を見せてやるよ」

書けそうだったから書いたもののやっぱり少ないっす
メモ帳にだーっと書いたときはたくさん書いたような気がするんですけどね

GWの更新は変わらず予定しております。二回以上はなんとか・・・

>>333
一気読みありがとうございます!っていうかお疲れ様です
こんなノリでずっと続けてますがもう話は終盤です
現実時間でどのくらい掛かるか分かりませんが、これからも読んでくださったら幸いです

そろそろ男がなつかしい

GW中に必ず更新するといいましたが無理でした
ごめんなさい
なるべく早めに書きます・・・

まだ今日があるじゃないか!

じっと待つ!

この地獄において、レクランの経歴を語れるものはおそらく誰もいないだろう

彼の過去はあまりにも単調すぎるからである

10歳のとき、初めて『それ』を手にしてから

剣を鍛えてきた

ただ、剣を鍛えてきた

剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え
剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え
剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え、剣を鍛え

気が付けば、『上級悪魔』の称号がそこにあった

それでも彼は変わらず、剣を鍛え、剣を鍛え、ひたすら剣を鍛え

42年経った今、比類なき力を持った最強の剣士がここに在る


セラフィム「うれしい誤算だぜ…まさかここで二本目を使わせるなんて」

セラフィム「それにお前、ずいぶん剣の腕が立つようだからなぁ…」

セラフィム「いろいろと教えてもらうぜ」ニヤッ

レクラン「………小僧が」

セラフィム「双・神剣(ディオ・グレイヴァ)」ググッ…

セラフィム「ぁははァああああああああああああハハハハァ!!!」ズダンッ!!

レクラン(跳んだ…紫煙の壁を…)

レクラン(…いや、二刀)

ギキィン!!!

レクラン「合わせてやろう!!」ギギギギ…

セラフィム「ハハ…ハハハハハハァ!!」キンッ!!


レクラン「貴様の力を試してやる」スッ

セラフィム「測り違えるなよ?」シュッ!!

レクラン「獄葬…」ガキンッ


セラフィム「ふん…消滅の剣を普通に防ぐなんて…本当にめんどくせぇ能力だぜ」ググッ

レクラン「……どうした、お前の攻撃…」ググッ…

レクラン「軽いぞ」

セラフィム「……!!」


レクラン「冥桜…」ズズズズ…


レクラン「無骸・弧月」ブオンッ!!!


セラフィム「…チィ」バッ

ザザァ…ッ

レクラン「ずいぶん簡単に引くな…二刀になってその程度か?」

セラフィム「……まったく、大したもんだよお前」

セラフィム「二本VS二本。これでイーブンになるかと思えば…とんでもない」

セラフィム「俺の二太刀を一本で止め、そして二本目で弾き飛ばす」

セラフィム「それだけのことができる…どうやら俺とお前では力の使い方に差異があるな…」

レクラン「それだけと思っているのか」

セラフィム「……」ピクッ

レクラン「こういうことだ」

ゆらっ…

セラフィム「…!」バッ

キィンッ

セラフィム(一瞬で急所を狙って飛び込んできた…やっぱ速いな)

レクラン「……それだけ、と」クルッ

レクラン「思うな」グンッ!!!

セラフィム「……!!」ガクンッ

セラフィム(刃を…返して…力ずくで…)

セラフィム「…じゃ…ねぇか…」ググッ

レクラン「……」

セラフィム「面白いじゃねぇか!!なァ!!!」ギラッ

レクラン「無骸・光伸」シュッ

ギギギギギギギギギギッ…!!!

セラフィム(俺の突きを真正面から受け止める…!!)

レクラン「無骸・火螢」ポッ

バラバラバラバラバラバラ

セラフィム「斬撃の礫…ちっ」バッ

ザザァ…

レクラン「また引いたな…二本目を出した。出したはいいが…攻めきれんか」

レクラン「これが我と貴様の『距離」だ」

セラフィム「認めよう…」

セラフィム「力…速さ…技巧…お前は並々ならないモノを持っている…」

セラフィム「今まではこの神剣が触れればどんな奴だろうと一瞬だったからな…そんなものが必要だと思ったことはなかった」

セラフィム「お前は強いなぁ」

レクラン「貴様よりもな」

セラフィム「だが…測り違えるなと言ったはずだぜ」

レクラン「……」

セラフィム「その実力…そのすべてが超一流…だが、それだけだ」

セラフィム「頂点はこの俺ただ一人!」

セラフィム「そのことに…何も変わりはねぇ」

レクラン「……」ギラッ

セラフィム「俺の持っていない力を持っているお前が…俺に劣るんだよ」

レクラン「吠えるな小僧…」

セラフィム「だが…『そういうのを』見せられると…」

セラフィム「俺もやってみたくなる」ニィ

レクラン「無骸……」ヒュッ

レクラン「光…」

セラフィム「神剣!!」シュッ

ボッ!!

レクラン「……」

セラフィム「……」

レクラン「……」パラッ

セラフィム「うーん惜しい…袖をかすっただけか…」

レクラン(こいつ…今…)

レクラン(我が一撃を繰り出すより、先に…)

セラフィム「まずは俺も…そのくらいの速さで動けるようになるか」

レクラン「……なんだと?」

セラフィム「もう慣れてきた…あとは真似するだけだ」

レクラン「……」

レクラン(嘘ではない…)

セラフィム「次はそのパワーが出せるように…ふふ…」

セラフィム「お前に分かるか?この楽しさが…」

レクラン(こいつは本当に…)

セラフィム「新たな強さを取り込んでいく楽しみが…!」

レクラン(我が強さを取り込んでいく…!)


セラフィム「行くぞ…!」シュンッ

レクラン「……貴様などに」シュンッ

レクラン「追いつか…」ブンッ

セラフィム「追いつくさ、すぐに」ヒュオッ

キンッ!!!

レクラン「……」グッ

セラフィム「……どうした?」グッ

セラフィム「さっきより軽く感じるぜ」ググッ

レクラン「……」ギリッ

セラフィム「ほら、こんな感じだろ」クルッ

ギャリギャリギャリッ

レクラン「!!」グラッ

セラフィム「そしてバランス崩したところを…」スッ

セラフィム「こうだろ!?」ブンッ!!!

レクラン「……」

レクラン「確かに真似は上手いな」ボソッ

セラフィム「!?」

ドゴォ!!!

セラフィム(……蹴り…!)ブワッ

ズシャァッ


レクラン「………」

レクラン(近づいている。迫っている。この領域に)

レクラン(こんな若造が。この短時間で)

レクラン(一秒一秒強くなっている…)


セラフィム「ハッ…ハァ…ハハハハハハ…」ユラッ…

セラフィム「こんなだから…ここにきてよかったと思える…」

セラフィム「この戦いが…俺を強くする…」

セラフィム「ただでさえ最強の俺がこれ以上強くなったら…どうなるんだろうなぁ!!!!」バッ

セラフィム「双・神剣(ディオ・グレイヴァ)!!!」ブンッ!!!

レクラン「……成長というのはいつか必ず止まるものだ」

レクラン(もはや加減などしている場合ではないな…)スッ

キンッ

セラフィム(納刀……まさか…!!!)

レクラン「無骸・虚空(こくう)」シュッ

ズパッ

セラフィム「……!」ブシュッ

レクラン「……よく防いだな」

セラフィム「今のは…」

セラフィム「居合って…ヤツか…」

レクラン「…そうだ」

セラフィム(納刀から予想はできた…とっさに防御もした…だが)

セラフィム「…そういう技術があるのは知っていたが…実際に目にするのは初めてだぜ」

レクラン「目にするのは初めて…嘘だな」

レクラン「見えてないだろう」

セラフィム「……」

レクラン「我が最速の剣技だ。本来は暗殺などに向いたものだが」

レクラン「この速さならそんなものは関係ない」

レクラン「模倣してみよ。それしか出来ぬというのなら」

セラフィム「……!!」



クロ「……どうなってるの…?」

クロ「なにも見えなくなってから…まだ数分も経ってないのに…」

クロ「…なのに…いったいどれだけ斬り合って…」

エレカ「……」ギリッ

エレカ(もし…このままレクランが勝利したら…)

エレカ(この戦いは終わる……)

エレカ(それでいいはずなのに……!!)





城から数キロ離れた場所・・・


天使たち『うう…痛ぇ…』

天使たち『ちくしょう…なんでこんな奴が…』

ズシンッ…!!!



ゼクト「………だいたい20人か。また一気に増えてきたな」

ゼクト「…気になるのはあの時感じた巨大な力だ…俺の勘が正しければ、アレは…」

ゼクト「……急ぐか」ギュンッ

GW中に更新できなくて本当にスイマセンでした

最近はどうしてもたくさん書くってことができません
先の展開が明確に決まっているときほど書くのが進まない不思議

次は…なるべく早く…

乙!

乙!
テンコが懐かしくなってきた

乙!

え~となかなか書けずに苦戦しています…
なんでも一ヶ月書込みがないとスレがHTML化されてしまうとかなんとか
まぁ大丈夫だとは思いますが…どうにも書けないときはこうやって頻繁にお伝えするようにします
更新の方、もうしばらくお待ちください

まつよ!
息抜きに別のでも書いたらいいのでは

1ヶ月で流れるのか

顔出し目的なら、没設定とか裏設定とか公開するのはどうよ?

レクラン出てきてからもうすぐ3ヵ月…
やばいよー書けないよー…(;∀;)

しかし、ただお待たせさせてしまうのも申し訳ないので
ひとつ裏設定を晒します…(出すタイミング逃したってだけの設定ですが)

























シオン先生は42歳

なにか『このキャラの裏設定ないの』っていうのがあれば晒すかもです
ネタバレにならない範囲で…(死んじゃったキャラとかならいくらでもおk)

もちろん話のほうもちゃんと書こうとしてますからね!

シオン先生…BBA最高や!

前回のあらすじ
熾天使セラフィムと上級悪魔レクラン
戦いながらセラフィムは、同じ剣使いであるレクランの圧倒的な強さを学習していく・・・

セラフィム「最速…?最速…最速か…ふふふ…いいだろう」

セラフィム「…その速さも俺のものにしてやる…」バッ

レクラン「……」チャキッ

セラフィム「…神剣!」ボッ

レクラン「無骸・虚空」シュッ

セラフィム「!」バチィッ

セラフィム(ここまで簡単に神剣が弾かれるとは…)ザザァッ

レクラン「…どうした…浅いぞ」

レクラン「臆しているのか」

セラフィム「……」

セラフィム「馬ぁ~~っ鹿じゃねぇの」

レクラン「……」ピクッ

セラフィム「さっきの一撃で俺を仕留められず、二発目も止められてる」

セラフィム「俺のことはどうでもいいから自分の心配したほうがいいぜ」

レクラン「……そうだな」ヒュッ

ブンッ…


剣を

ただ剣を振るってきた

ギィンッ!!!


この体が欲するままに!!


セラフィム「ハハ…ハハハハハハッハハハハハハハハハ!!!!」ブオッ

キン ギンッ ギキンッ

レクラン「愉しいか」

セラフィム「愉しいさ…もはや…お前の技術は完全に俺の物だ!!」

レクラン「そうか…」ザザッ

レクラン「ならば…見せてみよ」キンッ

セラフィム「……納刀…!」

レクラン「お前の速さを」

セラフィム「…比べっこしようって?『居合』と『居合』をか?」

レクラン「……」

セラフィム「……いいぜ」ザッ

セラフィム「やってみるか…どっちが速いか」スタスタスタ…

レクラン「……」

セラフィム「…さぁ、間合いだ」

レクラン「……」チャキッ

セラフィム「……どうしたァ」スッ


セラフィム「さっさと来な!!!!」


レクラン「……」

レクラン『虚空』ビュオッ!!!


レクラン(…捉えた)

セラフィム「……」ニィ


ボッ!!!


レクラン「!?」ピタッ

レクラン(違う…此奴の威圧が見せた幻…!)ハッ

セラフィム「呑まれたな。今…」

レクラン「……!」

セラフィム「所詮…」ブンッ

ボッ!!!!

セラフィム「その程度…!」

レクラン「……!!」

ボトッ…

レクラン(薬指と…小指を…)

セラフィム「それでも…惜しいな。すんでのところで気付きやがって…あと少し止まるのが遅かったら」

セラフィム「もう二度と刀を握れ…」

ビュッ!!

セラフィム「!」サッ

レクラン「くれてやろう…指や一本、二本…腕の一本、二本…」

レクラン「されどこの体に宿した剣が貴様を斬る」ズズズズッ

セラフィム「また煙か…まったく鬱陶しい」ダッ

セラフィム「神……」グオッ

レクラン「……居合の勝負だったな」スッ

セラフィム「!?」

レクラン「間合いだ」ギラッ

セラフィム(こいつ…!)

キンッ!!!!

レクラン「……」

セラフィム「……」ザザァッ

セラフィム「ちぃ…」ドロッ

セラフィム(俺としたことが…ここに来て勝負を急いた)

セラフィム(しかし…『居合』…こんなもんか…)

レクラン「貴様にとっては…我が居合が剣の極致のようだな」

セラフィム「……違うってのか?」

レクラン「違う」

セラフィム「…そうか。だろうなぁ…こんな簡単に覚えられるようなもん…取るに足らない」

レクラン「だから教えてやろう…貴様が覚えるまで何度も、その身に刻んでやる…」

セラフィム(…楽しんでいる…こいつも)

セラフィム「…俺と同じか。全力を出してぶつかれる相手を求めて…」


レクラン「…言っておくが、今までとは違う…」チャキッ

レクラン「我が全力を甘く見るな」


セラフィム「ふふ…ふふふ…!期待させてくれるよな…」

セラフィム「楽しみだ…俺の強さもまだ止まらない!」


レクラン「……」

ただ剣を振るってきた

この地獄のため、などとは微塵も思ってはいない

それでも『上級悪魔』であり続けたのは

いつかきっと、こんな日が来ることを望んでいたから


レクラン「この煙で月が見えぬのは些か残念だ」

レクラン「だが…分かるか…月は決してこちらから目を離さない」

レクラン「照らされているのだ。今も、こうして」

セラフィム「……ぶっ壊れたか?」

レクラン「歓喜しているのだ」

レクラン「この夜を待っていた」

セラフィム「…へぇ……じゃ、気分が良い内に見せてくれよ」

セラフィム「お前の全力を!!!」バッ

レクラン「……」スッ

セラフィム「……!!?」

セラフィム(しゃがむ…!?)

その行為に対する疑問が消えぬうちに

もう一つの変化に気づいた


チリチリチリ…

セラフィム(背中を刺すような…この痛み…!)

セラフィム(煙の領域が狭まっている!?)


レクラン「奥義・月下魔閃」

このままほっとくのが一番ヤバいと思って書いたのですが、悩みぬいた結果、想定してた描写を大幅にカットすることになりました
物足りなさを感じたらごめんなさい
次で終わらせます

苦しんでる様子がありありと・・・乙。
こんなこといいたくないけど、SSで剣と剣の戦いを書くっていうのがそもそもかなりの無茶なんじゃ?

凄く熱い展開嫌いじゃないわ!

三連休に更新しようと思ってましたが例によって書けませんでした
もう謝ることしか出来ません。すいません!!
8月には終わると思っていた時期があったんですが・・・

面白くなるように練るに練ってるに違いない!
そうだろ!

セラフィム(これは…)


ザザザザザザザ…


セラフィム(そういうことか…)


クロ「…な、なに…?」

クロ「煙の範囲が狭くなってく…」

クロ「エレカ…これはいったいなにが…」クルッ

エレカ「……早いうちに」

ヘイセ「はっ」ダッ

クロ「…?」

エレカ「……そろそろ」

エレカ「決着がつく」

クロ「…ええ。それは…なんとなく分かるわ」


ザザザザザザザ…

セラフィム(奴が…居合の構えを取ってから)

セラフィム(この煙の領域が狭くなりはじめた…)

セラフィム(じわじわと…)


レクラン「……」


居合とは本来「向かってくる相手を斬る」技術である

したがってそもそも回避されるようなものではないのだが…


最強の天使の前ではそれも危うい


決してレクランが『こういう相手』を想定していたわけではない

しかし彼の究極の剣技への追求が導き出した一つの答えが

これであった


レクラン「奥義…月下」

セラフィム「双・神…!」


ズズンッ!!!


レクラン「!?」ピタッ

セラフィム「!」グラッ

レクラン(…地鳴り…?なんだ…)

セラフィム(…このタイミングで…!)バッ

セラフィム「……また面白そうなのが来たな」


レクラン(煙を一度…いや…)

レクラン(このまま斬る!)ブンッ!!!


セラフィム「ハッ…ヌルいんだよッ!!!」シュッ

ギィン!!!!


レクラン「…っ…」ザザァッ…

セラフィム「言ったろうが…俺の技術はすでにお前を上回ってるんだよ…」

セラフィム「だが何か…大技を繰り出そうとしてたな…」

セラフィム「俺を取り囲んだあの高密度の煙…またやってみるか?」

レクラン「……言われなくとも」キンッ

レクラン「貴様は『これ』で仕留める」

セラフィム「……なんのプライドだ?」

レクラン「敬意だ」

セラフィム「…敬意だと?俺に?」

レクラン「……この戦いで初めて」

レクラン「生きててよかったと思えた」

セラフィム「……は」

セラフィム「…はははぁ…アハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

セラフィム「生きててよかった!?この戦いで!?ハハハハッハハハハハハァ!!!」

セラフィム「……俺もだよ」

レクラン「……」

セラフィム「ここに来てお前と戦えただけで…楽しめた…」

セラフィム「……だが」

セラフィム「やることはまだ何も終わらせてないんでね」

レクラン「貴様は今ここで終わる」

セラフィム「………」

レクラン「………」

ズオッ・・・!!!

セラフィム「……いいぜ…やってみろ」

セラフィム「俺を終わらせてみな…!」

シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ!!!!


セラフィム(無数の煙の刃…これが)

迫ってくる!!


ズズズズズズズズズ…!


セラフィム「…分かるぜ…お前の狙いが…」

セラフィム「そしてその上で評価してやる…」

セラフィム「確かにこれは…剣技のひとつの極致だろうな」

セラフィム「まったくよく思いついたよ」

セラフィム「…『全方位の斬撃』とはな!!!」


シュンシュンシュンシュンシュンシュン!!!


敵の背後 左右 頭上 半球状に展開された『煙の領域』

触れれば斬られるこの領域を狭めていくことで、敵は必然的に引き寄せられることになる

 何処に?

レクラン「……」チャキッ


セラフィム「引き寄せられる先はお前の居合!前方を完全に塞いでいるわけだ!」

セラフィム「上下左右あらゆる方向から襲い来る絶対不可避の斬撃!面白い…本当に面白い!」

セラフィム「だが…お前の失敗は」

セラフィム「その全容を俺に悟らせてしまったことだ」

レクラン「………」

セラフィム「俺はまだまだ終わらねぇよ」スタスタ


レクラン(不可避と分かっていて…向かってくるか)

関係ない

レクラン(斬る。それだけが…それしか…)

レクラン(生きていく術を知らぬのだから)

ズアッ…!!!

セラフィム「……」ピタッ

セラフィム「双・神剣」ブンッ


レクラン「完全な『円の領域』が完成した」

レクラン「闇を差す月光から誰も逃れられぬように…この斬撃から逃れることは何人足りとも敵わん」

セラフィム「……」

レクラン「覚悟はできたか」

セラフィム「とっくに…」

レクラン「……」ヒュォッ…!!!

月 下 魔 ………

レクラン「……!!?」


ブシュウッッ!!!

それは、レクランが刀を抜いて

その刃を返し、斬りかかった直後の一瞬の出来事だった


セラフィム「回避はできない…知っているとも」

セラフィム「だったら簡単だ」


ブシュッ!!!!


レクラン「……!」

レクラン「貴様……」


セラフィム「煙の刃の殺傷力なんて…たかが知れてるからな…」

セラフィム「だが…これだけの数…さすがに…」ゴフッ


ボタボタボタッ

レクラン(背後の斬撃をわざと…)

セラフィム「お前のその…居合は受ければ即死だろうが

セラフィム「この煙の刃で死ぬことはないだろう」

セラフィム「…と踏んでいたが…なかなかどうして…」

セラフィム「効いたぞ。今のは…」ギロッ…

セラフィム「無傷でお前に勝てなかったのは今更悔しくもなんともないが」

セラフィム「悔しいのはその居合から『引く』という選択をせざるを得なかったことだ…」

セラフィム「ここまで俺を追い詰めてくれるとは思わなかった」

レクラン「……」

セラフィム「さて」ザッ

セラフィム「今のが最後か?」

レクラン「……まだだ…まだ…」スッ

レクラン「!」ガクンッ

セラフィム「…これだけの煙を一度に制御するのはさすがにキツかったみたいだな」スッ

グイッ

セラフィム「立て」

レクラン「…ぐ…」ヨロヨロ…

セラフィム「…さっき…敬意がどうとか言ってたな」

セラフィム「この背中の傷は…お前の名誉だ」ドロッ…

セラフィム「俺もお前に敬意を表すことにする…」ズッ

セラフィム「双・神剣(ディオ・グレイヴァ)…」

 交差の型

レクラン「………」

ボッ!!!

クロ「!!?」

エレカ「……!」

クロ「煙が消えていく…!まさか決着が…?」


シュウウウウウウウウウウウ……


レクラン「………」


クロ「…!上級悪魔のほうが立ってる!」

クロ「やったのね!?これでついに熾天使を…」

エレカ「…いや。よく見るんだ」

エレカ「立ってるのは…」

クロ「……あ…」


セラフィム「………ふー」ガシッ

レクラン「……」


クロ「く…首から…下が…無…」

エレカ「……」ギリッ


セラフィム「……はっきり言って」ポイッ

ゴロンッ

セラフィム「こいつは間違いなく…今まで戦った奴の中では最強だった」

セラフィム「だからこそ…」スッ

ボッ!!!


クロ(ひどい…残ってた頭すら…)


セラフィム「だからこそ…」バサッ

セラフィム「もう誰にも止められない」


エレカ(…あの背中の傷…レクランが付けたのか…)

エレカ(…終わっちゃいない)

エレカ(まだ何も…終わっちゃいない)

エレカ「……私が止める」スッ

クロ「…え、エレカ…もう無理よ…」

エレカ「……」

クロ「上級悪魔でも止められなかったのよ…もう…誰も…」

エレカ「さっきの振動は…この城にまた誰かが来たということだ」

エレカ「誰もまだこの地獄を諦めちゃいない」

エレカ「だから…私も諦めるわけにはいかないんだ」

クロ「……っ」


セラフィム「……そうか…」ポタ…ポタ…

今日はここまでにします
おまたせしてすいませんでした。でも切り抜けた・・・切り抜けたぞおおお
これで少しでも書くペースを戻せたらいいんですが…

おつん!
好きなように書いておくれ

おつ!

時間がないわけではないのです、すっかり放置してしまいました…
近いうちに書きます!

エレカ「お前を倒す…私が…倒す!」フラフラ…

セラフィム「そうだな…第二戦といこうか!」ポタポタ


クロ「やめましょうよ…ねぇ…エレカ…もう無理よ…」

エレカ「……」

クロ「上級悪魔でも勝てなかったのよ!?それにあなた、まだフラフラしてるじゃない…!」

エレカ「…私を心配してくれるのかい…君たちを陥れた私を…」

クロ「だって…今のままじゃ勝ち目なんて……」

エレカ「そうだね…でも…」

エレカ「それしかできない。私は…王だから」フラ…フラ…

セラフィム「フフフ…御大層なことだ」スタスタ

エレカ「…行くぞ…!」ダッ

セラフィム「…来な!」スッ

エレカ「はあぁっ!!」ブンッ!!

セラフィム「クハハハハッ!」シュッ!!

ドゴッ!!

エレカ「ぐ…うっ…」ヨロォッ

エレカ(…倒れ…ない…!…多少は休めたんだ…まだやれる…!)

エレカ「ふっ…ぁああっ!!」バッ!!

セラフィム「能力を使う余裕もないくせに…不器用なヤツだ」ガシッ

セラフィム「いいぜ…」クルンッ

ゴキッ!!

エレカ「……っ!?」ブラン…

エレカ(て、手首を外された…!?)

セラフィム「ただ消してしまうのもつまらない…俺も素手でやってやるよ」

エレカ「な…めるなっ!」ドゴッ!!

セラフィム「ん~…そうだ、そのテンションで来い」フワッ

スタッ

セラフィム「いい目だな…闘志だけギラギラさせて…フフフ」

セラフィム「お前、なんか狙ってんだろ?」

エレカ「……さぁ。なんのことかな」

セラフィム「…惚けるなよ…いいんだいいんだ、俺を楽しませてくれるなら…」

セラフィム「なんでもしろッ!」ダッ

エレカ(来る!速い!これを食らって…立ち上がれるか…!?)

セラフィム「…ただの蹴りだ、死にゃしないぜ」グオッ…

セラフィム「死ぬほど苦しいけどな」ブンッ

エレカ(防…)バッ

ドゴォッ…!!

エレカ「あ、ぐっ…!!?」ザザザザァ…

エレカ「はぁ…はぁ……?」

エレカ(…確かに効くが、こんな程度のハズじゃ…)

セラフィム「…ち…」

エレカ「!!」

ボタボタ…

セラフィム「…動き過ぎたか…この傷、結構響いてたな…」ボタタ

セラフィム「おかげで蹴りの威力が弱っちまったぜ…相当ぶっ飛ばすつもりだったんだが」

エレカ「……!」

エレカ(そうだ…あの傷がある…セラフィムだって消耗してる…)

エレカ(いったいどんな戦闘が繰り広げられたのかは知らないけど…余裕で切り抜けられたわけじゃない!)

エレカ(…さっきとは状況が違う…どちらが勝つかは)

エレカ「まだ分からない…!」バッ!!

セラフィム「……」

エレカ(呼吸を整えろ…左手首は自力で治せる…が、今そんな余裕はない…)

エレカ(集中しろ…向こうが能力を使わないと言うのなら、それに越したことはない!)

エレカ(全力で行けば、機はまだこちらに……)

セラフィム「……なぁ」

エレカ「……?」

セラフィム「……静かになったよな」

エレカ「…急になにを」

セラフィム「まぁ確かに…こっちの部隊はそっちと比べたら少ないだろうが」

セラフィム「それにしたって静かすぎる…」

セラフィム「…もしかしてもう、俺以外全員負けてるのか?」

エレカ「…だと…嬉しいけどね」

セラフィム「いや…」

セラフィム「いやいやいやいや…まだ残ってるな…あと数人…」

エレカ「…っ」

セラフィム「……解せないのはお前らの戦力だよ」

セラフィム「いったい何を飼っている?俺の優秀な部下たちを次々倒していったのは…どこの誰だ?」

エレカ「…さぁ、ね…」

セラフィム「気になるんだよ。これだけの戦力があると知ってれば俺は最初からもっと大勢を動員した」

セラフィム「お前の持ってる駒とやられた部下たち…だいぶ…計算が合わん」

エレカ「それは負け惜しみのつもりか…?」

セラフィム「負け惜しみ?…いや?たとえ俺一人しか残らなくても」

セラフィム「最後には俺が勝つ」ギラッ

エレカ「……!」ビリビリ…

エレカ(…す、凄い気迫だ…やっぱり、勝ち目…ないかも…なんて…)

エレカ「…でも、戦うしかないんだ!」ダッ!!

エレカ(あの背中を狙う!弱点を狙って戦うなんて少し汚い気もするが、そんなことは言ってられない!)

エレカ「私が勝つ!」ヒュッ!!

セラフィム「……ふん」

ガシッ!!

エレカ(!…蹴りを止めた!?)

セラフィム「背中の傷が気になるんで、あまり激しく動くのはやめる」

セラフィム「必要最小限の動きのみでお前を…」ググッ

エレカ「え…!」フワッ

セラフィム「…ぶっ飛ばす!」ブンッ!!

エレカ(…バカな…!片手で投げ……!?)

エレカ(…落ちる!)

エレカ「っ…!」ガシッ!!

エレカ「…はぁ…はぁ」ヒュオオオオー…

セラフィム「…危なかったなぁ。もう少しでまっ逆さまだ…とっさに伸ばした手が外された左でもアウトだったな」スタスタ

エレカ「ど…どこにそんな力が…!」

セラフィム「そんな力って…どんな力だ…?」スッ

グイッ

セラフィム「こんな力か」ギリッ

エレカ「…く…う…!」バタバタ…

セラフィム「この高さから落ちればいくらなんでも即死だろ?なぁ…どうする?」

セラフィム「お前、どうやってこの危機を乗り越えるんだ…?」

エレカ「か……はっ…」

エレカ(危機も…なにも…今、能力を使われたら私はもう終わってる…)

エレカ(こいつはこの期に及んでまだ手加減して遊んでる…)

エレカ(やっぱりもう無理なのか…?私じゃ勝て…)

セラフィム「……」

クロ「その背中、隙だらけよ!」

セラフィム「…んん!?」グルンッ

クロ「なんて…ね…!」ギュンッ!!

セラフィム(羽の悪魔…俺の脇をすり抜けて…なんのつもりだ)

セラフィム「…!」

エレカ「く、クロ…」バサッバサッ…

クロ「はぁ…はぁっ…!せ、背中なんて…怖くて狙えないわよ!」

セラフィム(魔王にも翼?…そういうことか)

セラフィム「…なるほど…その翼は他者に使わせることもできるのか…なかなか面白いな」

セラフィム「だが…二度も邪魔をされちゃあさすがに笑って許すわけにもいかないぜ」スッ

クロ「っ…」ギュンッ!!

エレカ「…クロ…どうして…!」バサッバサッ

クロ「あいつ…強すぎる…めちゃくちゃよ!…あなたでも勝てないでしょ!?」

エレカ「…!!」

クロ「だったらもう逃げるしかないわ…!あいつには誰も…」

エレカ「……」

エレカ「…クロ、私は弱いと思うかい」

クロ「!…なにを…」

エレカ「私は君の姉にあと一歩のところまで追い詰められて…自分の弱さを思い知った…」

クロ「あなたは弱くない…あいつが異常なのよ!」

エレカ「それだけじゃない…そのあとすぐに、君の父親にも一方的に追い込まれた…」

クロ「…!」

エレカ「そんな私が…」

エレカ「弱いまま、ここに立ってると思うのかい」

クロ「…どういうことよ…」

エレカ「翼を解除してくれ」

クロ「な…今降りたらあいつにやられて…」

エレカ「このまま逃げ切るのは不可能だ。彼には宙を歩く道具がある。その気になればすぐに追いかけてくるだろう」

クロ「…でも…!」

エレカ「もう、来る」

クロ「…来るって、誰が…」


ガチャッ

セラフィム「…!」ピクッ

ギギギ…

セラフィム「……ほう」

ヘイセ「…はぁ…はぁ…」

セラフィム「魔王の側近…か?俺が上級悪魔と戦ってる間にいなくなってたと思ったら…」

セラフィム「なにを持ってきた…」

ヘイセ「はぁ…はぁ…え…」

ヘイセ「エレカ様ーーーッ!!」

ギュンッ!!

エレカ「…待ってたよ、ヘイセ」ストッ

クロ「……!そういえば…さっきのあいつと上級悪魔が戦ってる途中で…」

クロ『エレカ…これはいったいなにが…』クルッ

エレカ『……早いうちに』

ヘイセ『はっ』ダッ

クロ『…?』


クロ「…あのときに…?」


セラフィム「……何を狙ってるかと思えば、こいつ頼りだったわけだな」

セラフィム「で…その紐みたいなのは一体なんだ?縄跳びでもする気が?」


エレカ「これは『電線』だよ」スッ

セラフィム「…電線?」

エレカ「もしものときのために用意しておいた。いつかこんな日が来るだろう、と」グッ…

バチバチ…バチッ

エレカ「…過充電(オーバーチャージ)」バチバチバチッ!!!

セラフィム「…!!」

クロ(す、凄い音…!)

エレカ「私の雷の力は…もちろん自ら作り出すことも可能だが」

バチバチバチ…

エレカ「その利点は充電することであらかじめ体内に蓄えておけること」

バチチ…バチバチッ

エレカ「だから本来は『こんなふうに』戦闘に充電するなんてあり得ないんだ」

バチチッ…バチッバチッ

セラフィム「うるさいなそれ。殴っていいか?」

エレカ「まぁ聞きなよ…」

セラフィム「話しながら戦え」ブンッ!!!

パリッ…

セラフィム(……なに?)

エレカ「だけど万が一…敵を倒せないまま充電切れしてしまったときのために、これを用意しておいた」

エレカ「過充電で…この特製の電線に蓄えられた雷の力を一気に取り込む…」

エレカ「そしてこれから…そのすべてを一気に解放する」チリッ…チリッ…

エレカ「充電切れして追い込まれときの最終手段だ…」チリチリチリッ…

クロ「…なに…これ…エレカの体を…黒い雷が…」

セラフィム「……要するにドーピングだろ?」

エレカ「……私は」

エレカ「私は…ここから強くなる」バリッ

エレカ「激烈裁雷(ライジング・レオ)…!」バチチチ…!!

ゴキキッ!!

エレカ「…っふぅ…これでやっと…両腕が使える」スッ

セラフィム(外れた手首を治したか…)

クロ「…エレカ、これは…!?」

エレカ「非常用のこの電線は前からあったんだけど…ヒントになったのは、君の父の能力だよ…」

クロ「……父様の…?」

エレカ「悪魔神…憑依形態」

エレカ「私がこれまで主流にしていたのは、雷の形質を変え、武器として使う戦法だったけど」

エレカ「これは違う。この電線を通して蓄えた雷の力で、強引に肉体に刺激を与え…」

エレカ「身体能力をはね上げる」スッ

ギュゥンッ!!

セラフィム「…ん…?」

エレカ「黒雷の爪跡(ライジングクロウ)」ブンッ!!

セラフィム「…!」バリッ

エレカ「黒雷の双牙(ライジングサーベル)」シュッ!!

セラフィム「!!」ドスドスッ!!

クロ「…な…なに…!?」

ザクッ!! バリッ!! ガキャッ!! ドゴッ!!!

クロ「は、速すぎて見えない…!」


ヘイセ「はぁ、はぁ…」

クロ「!あ、あなた、よく見たらすごい傷じゃない!」

ヘイセ「し、城の中に何体か天使たちがいる…なんとかここまで無事戻ってこれたが…逃げるのはやめたほうがいいぞ…」

クロ「…あ、あなたがそこまでして果たした役目があれってわけね…」

クロ「でも、エレカはいったい何をしているの…!?」

ヘイセ「見えんか…見えんだろうな…だがやっていることはシンプルだ」

ヘイセ「エレカ様はさきほど蓄えた雷の力を電気ショックにし、自らの肉体に刺激を与え、身体能力を増強している…」

ヘイセ「さらに、今までは相手の攻撃が体に達する前に反応するセンサーの役割だった『雷の膜』はもはや『雷の鎧』に進化し…」

ヘイセ「触れたものに電撃を浴びせ、その動きを一瞬、硬直させることができる!」

ヘイセ「もちろんエレカ様自身もあのように光速で攻撃を仕掛ける!もはや奴に太刀打ちはできん!」

クロ「す、すごい…けど…そんな無茶をして大丈夫なの…!?」

ヘイセ「…それは……」

エレカ「はぁああああ!!!」バリバリバリ!!!

ガッ!! ブシュッ!! ザクッ!!

エレカ(肉体を…フルに稼働させろ!この男が倒れるまで!!)

セラフィム「………」

セラフィム「…だからさ、やっぱドーピングなんだろ?」

エレカ「…!」


ヘイセ「なっ…!」

クロ「き、効いてない!?」

エレカ(まさか…そんなはずは…!)

セラフィム「いやいや効いてる効いてる…見ろよこの全身の傷を」

セラフィム「ただ殴られたり引っ掛かれただけでこの出血…」ボタボタ…

セラフィム「それに足元には焦げた跡まで…いったいどれだけのスピードで動けばこうなる…?」

セラフィム「だが所詮この程度なんだな」

エレカ「…『この程度』だと…!?」

セラフィム「究極の速さならもうあの悪魔が見せてくれた。お前もそれなりに速いが、奴はもっと予測できない位置から仕掛けてきた」

セラフィム「それに、せっかくそのスピードで動けるのに俺の背中を狙った攻撃が案外少ない。制御しきれてないんだろ?」

エレカ「っ…!何を…」

セラフィム「だいたい、どう見たって長持ちする戦い方じゃあない」

セラフィム「さっき充電?してたんだろ…せいぜい数十秒だ。ま、俺の前であれ以上やるのは無理と踏んだんだろうが」

セラフィム「その調子でやってちゃたぶん3分も保たないぜ…」

エレカ「……」ギリッ

セラフィム「やるならさっさとやれよ。時間は有限じゃないんだぜ…それに」

セラフィム「何やら…また近づいてきてるからな…」ボソッ

エレカ「…言われなくても…やってやるッ!」

エレカ「黒雷槍(コクライソウ)!!」バリバリッ!!

ヘイセ「…!!いけませんエレカ様!その状態で武器を使うのはあまりに…!」

セラフィム「無理に無理を重ねすぎだな…だがまぁ…」スッ

セラフィム「面白くなってきたぞ!神剣(グレイヴァ)!!」ヴンッ!!

ガキィン!!!

エレカ「く…あああああああっ…!!!」ギギギギ…

セラフィム「ハハハ…アハハハハハハハ!!!」ギギギギ…



黄の城・一階

「やっと、やっと…たどり着いた…」

ドミニオンズ「だけど…天井に開いたこの穴…いったい誰の仕業だ…!?」

今日はここまでにします
毎度毎度、更新が空いてしまって本当に申し訳ありません
なんともうすぐ4年目です…これっぽっちの量で…あり得ません…

次回こそなるべく早く更新するつもりです!
皆さん熱中症にお気を付けて過ごしてください

面白いが勝てる絵が浮かばねえなこいつ

乙乙
もうセラフィム1人で数ヶ月戦ってるのか

昨日もあったけど流出ファイルに偽装した中身が尊師関連のファイルをばら撒くのはどうや?
小さくでもどっかで取り上げられたりせんかな

誤爆しちゃったンゴ
恥ずかしいンゴ
応援してるンゴ

ドミニオンズ「……この穴…いったい何なんだ…?誰の仕業だ…?」

ドミニオンズ「この城に誰がいるんだ…!?」


第四位、主天使シャウラ・ドミニオンズ

彼が到達する前に、黄の城はその大部分を破壊されていた

それは当然、多くは天使たちの攻撃によるものだったが

このとき最も大きな被害を出していたのは、天使ではなく…



少し前


スローンズ「………」

スローンズ「……」

スローンズ「…!」パチッ

スローンズ「………」


第三位、座天使クレセリア・スローンズは眠っていた

シオンとアーティエを倒したのは覚えている…

…倒したが、その際に大量の血液を失ったために、気を失っていたのだ

そして…彼女が気絶している間に…


周囲の状況は一変していた


スローンズ「……いない…」

目の前で倒したはずの、シオンとアーティエがいない


スローンズ「……ある…」

しかしその代わりとでも言うかのように

数十の天使が倒れ伏していた…


スローンズ「………」


ズズッ…

スローンズ「………」チラッ

ズズズ…

スローンズ「……だ、れ…」ドロッ

ビシュッ!!!

バシッ!!

?「……釘…スローンズか…」ズズッ…

ケルビム「こんなところで何をしている…」


スローンズ「……ケルビム」

ケルビム『ナニヲ座リ込ンデイル…ナゼセラフィムノトコロニイカナイ?』

スローンズ「……つかれ、た…」

ケルビム「ここでくたばってるのは…アルカイが送り込んだ増援か…」

ケルビム「お前がやったのか?」

スローンズ「……しらない…『天使(みかた)は攻撃しない』セラフィムと約束…した…」

ケルビム『マァ…ドウ見テモオマエノ釘ニヨル攻撃デハナイナ…コノ痕…』

スローンズ「………」ジッ…

ケルビム「…面か…ふん…セラフィムとお前以外に晒したことのない素顔を、危うく…」

ケルビム『ダガコノママジャ砕ケテシマウゾ…』

スローンズ「……」

スローンズ「…この、死にぞこない……だれが、やったの……」

ケルビム「…先にいたお前が知らないことを知ってるわけがない。誰か悪魔どもが倒したんだろう」

ケルビム『アルイハ増援同士潰シアッタカ……』

……ピシッ

ケルビム「…ナンダ…?」

パラパラ…

ケルビム「…天井のあちこちが凹んでいるぞ…いったい何があった」

ケルビム『ソモソモ、オマエハ何故、負傷シテイル…誰ト戦ッタ?ソイツガコノ増援ドモヲ倒シタンジャナイノカ?』

スローンズ「……お医者のお姉様…と…あとから来たおまけ…どっちも、倒した……」

スローンズ「……だけど、もういなくなってる……」

ケルビム「いなくなってる?…誰かがそいつらを回収したとでも言うわけか」

ケルビム『コノ増援ノ天使タチヲ全滅サセタ上デ』

スローンズ「……誰…?」

ケルビム「…まぁいい。増援が役に立たなかったようで残念だが、俺たちが来た以上もう関係ない」ザッ

ケルビム『セラフィムノトコロニ行ク。スローンズ、オ前モ翌来イ』スタスタ

スローンズ「………」スッ

スローンズ「………!」ピタッ

ケルビム「…なんだ…来ないつもりか…」

ケルビム『フン、好キニシロ…オマエガイナクテモ事足リ…」

スローンズ「……」 ジッ…

ケルビム『ドウシタ…』

スローンズ「…あそこ……いる」ギョロッ

ケルビム「…上…」

ケルビム「!?」


コオオオオオオ……


ケルビム『…ナンダ…穴?…最上階マデ続イテルゾ…』

ケルビム「この…上か…!」ダッ

黄の城は三階建てである

それでもこの城が巨大なのは、各フロアの天井の高さによるものだ

この天井の穴が『上から下』に空けられたものならともかく

逆だった場合には…


ケルビム『タダ者ジャナイゾ』

ケルビム「だろうな…」

スローンズ「………」



二階

コキ・・・ゴキ・・・

パキキッ…

?「……」



改めて確認するようなことではないが…ケルビムとスローンズは《天》九階位の『第二位』と『第三位』

この2人が揃えば、それはもはや天国の最大戦力と呼んでも差支えはない

強いて両者の難点を挙げるとするならば、ともに「手の付けようがない化物」であることだ…

そして…


両者もまた「目の前にいるそれ」が化物であることを瞬時に悟った


ケルビム「……貴様…だな」

ケルビム『増援ヲ全滅サセタノハ…』

スローンズ「…………」



ゼクト「……ああ…ついでに」

ゼクト「お前らも潰す」


ケルビム「アルカイも貴様が殺したのか」

ケルビム『仇討チナンテ性ニ合ワンガ一応訊イテオイテヤル』


ゼクト「…知らん…そんな奴は…だが…」

ゼクト「お前は知っている」スッ


ケルビム「!?」

ケルビム『ナンノ話ヲ…』


ズシンッ…!!

スローンズ「!」ガクンッ…


ケルビム「…!?なんだ!なにをされ…!」


ゼクト「シオン先生とアーティエを殺したのはお前だな」

ゼクト「いや…シオン先生は生きているが…とにかく」

ゼクト「俺は仇を討たねばならん」

とても短いですがここまでです。すみません
また後日

最早ゼクトが懐かしい
テンコもまってるぞ!

あと男も空気になっちょる

ゼクトはまだ見ていない

目の前の天使の能力を

しかし、シオンとアーティエにつけられた傷から、推測することは可能だった


ゼクト「お前だろ…アーティエを殺し…シオン先生をここまで追い詰めたのは……」



スローンズ「………!」グググ…

ゼクト「抵抗するだけ無駄だ…」ズッ

スローンズ「!」ベシャッ


ケルビム「コ、コノ…重サ…!」グググ…

ケルビム「こいつの能力か…」グググ…


ゼクト「……お前は耐えるか…なかなかやるみたいだな…」

ゼクト「…まぁいい…まずは女…お前だ」スタスタ

スローンズ「………」

ゼクト「あの場で倒れていたお前を殺さなかったのは…確証が得られてなかったからだ」

ゼクト「本当に二人を攻撃したのはこいつなのか?…と」

ゼクト「別に俺が優しいわけじゃない…迂闊にお前を殺して、もしお前が本人じゃなかった場合…情報が途絶えるからだ」

スローンズ「………」ガクガク…

ゼクト「…!起き上がるつもりか」

スローンズ「痛…咬…寄生…」モゴモゴ…

ビュッ!!

ゼクト「!血……」


ポト…


スローンズ「……!?」


ゼクト「…何かと思えば…くだらないな」

ゼクト「分からないか?重力だ…この部屋に15Gの重力をかけている」

ゼクト「そしてそんな重力が働いてるんじゃあ」スッ

ゼクト「飛ばせないだろうな…こんなモノ」チャリ…

ゼクト「見たまんまに言うなら…釘だが…血を吐いたと思ったら出てきたあたり、ただの小道具ってわけじゃないだろ」

スローンズ「………」

ゼクト「これがお前の能力ってことでいいんだな?」


ゼクト「あの二人を穴だらけにしたのはお前だな」




ズシンッ!!!!



スローンズ「!!!」ブシュッ


ゼクト「その手のひらの釘…ちょうどいいな…このまま磔にしてやる」グリグリ


スローンズ「て…わた、しの…手…!!」ドロドロ…



ケルビム「あの手の釘を地面に打ち込んで…逃げられないようにしたか…」

ケルビム「ドノミチ、スローンズノチカラデハコノ『重サ』サカラハ逃ゲラレン」

ケルビム「だがこっちは動ける…スローンズには悪いが囮になっていてもらう…」

ケルビム「気取ラレル前ニ一瞬デ仕留メル!!」


スッ


ケルビム「!!?」グオンッ!!!

ケルビム「グッ!!」ドゴォッ

ケルビム(なんだ…これは…いきなり…)

ケルビム(カ…壁ニ…張リ付イテ動ケナイ…)


ゼクト「お前は後回しだ…」


ケルビム「……!」

ケルビム「貴様ハイッタイ…」


ゼクト「……ヘルアクロウズ…No.3…」

ドゴォ!!!

スローンズ「!!!」ゴフッ


ゼクト「…いや…名乗るのも後回しだ…まずはお前を殺す…」


ケルビム「…ヘルアクロウズ……」

ケルビム「ドコノ…ドイツダ…!」

ゼクト「……」ザッ

ゼクト「仇討ちなんて安い言葉を使いたくないが…俺が今からするのはそういうやつだ」スッ

ゼクト「お前が天使としてどのくらい強いのかは知らん…少なくともあの二人を倒して生きていられるということは相当の実力を持ってるんだろう」

ゼクト「だが、ここまでだ」

ズシンッ…


スローンズ「か……く……」メキメキ…

ゼクト「俺が近づけば近づくほど重力は増す…あそこにいる…あの仮面の大男のあたりで12G」

ゼクト「ここが15Gだ」

スローンズ「………!!」グググ…

ゼクト「まだ動こうとするのか…もはや『重い』を超えて『痛い』と感じてるはずだが…まるでゾンビだな」

ゼクト「ではそんなお前に…特別にサービスしてやる…」スッ



ゴガンッ!!!



スローンズ「!?」

ゼクト「このまま押し花みたいにしてやろう…内臓を花びらみたいにぶち撒けてな…」


ケルビム「……スローンズのいる箇所だけが…」

ケルビム「ヘコンデイルノカ…ドウナッテル…!?」


ゼクト「なんてことない…今まで『一定範囲内』に掛けていた超重力の範囲を狭くする代わりに…その重さを増す」

ゼクト「最大で30G。さっきまでの2倍の重さだ。さすがにそれは疲れるんで少し控えめにしてるが…それでも25G」

ゼクト「華奢に見えるお前でもおそらく1トン近くになってるだろう…だから床が凹む」

ゼクト「そして能力の効果範囲が狭まったと言ったが…これまではこの部屋全体を覆えたのが、今はこの手のひらを向けた方向のみになっている」

ゼクト「つまり片手一本ずつでお前ら二人を抑えるのが精一杯ってわけだ」

スローンズ「………!!!」メキ…メキ…

ケルビム「何の話だ…!」


ゼクト「これが俺の『バイ・セカンド』…」


ケルビム「……!?」



ゼクト「逆転する世界(リバース・リヴァース)…だ」

ケルビム「…『バイ・セカンド』ダト…?」グググ…


ゼクト「そうだ…既に何回か使ってたが…気付いてなかったようだな…」


ケルビム「…!まさか…さっき我々を壁に押し付けたあの力の正体は…!」


ゼクト「…ああ…そうだ…あれも重力だ。少し向きをいじっただけの」


ケルビム「向キ…!?」


ゼクト「…この『バイ・セカンド』は指定したポイントの重力を増加させるだけではなく…その方向も操る」

ゼクト「こんなふうにな」クイッ


ケルビム「!!??」グンッ!!!

ドゴォン!!!

ケルビム「ぐ…!!」

ケルビム「天井ニ…動ケン…」


ゼクト「『上向き』の重力」


ケルビム「こ…こんな力が……」

ケルビム「コンナ男ニ…!」


九階位最強の二人が……!!


ゼクト「……さて、まだ死んでないよな」

スローンズ「あ…ぎぐ……」グバァ

ゼクト「?…釘はもう届かないと」

スローンズ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ゴボボッ

ズドドドドドドドドドドドドドド!!!!

ゼクト「…………」ピタッ…

ゼクト「なるほど…意外と惜しかったぞ…あと少しで俺に届いたのにな…」

ゼクト「釘を次の釘で押し込み…さらにその次の釘で押しこむ…その連続で一気に加速をさせ、重力を跳ね除けて俺の頭目掛けて飛ばす…」

ゼクト「だが言ったとおり俺は重力の向きを操作できる…上からではなく、釘の正反対の方向に重力を向けた。今…この力は釣り合っているが…」

ゼクト「こうすれば…」ピンッ


ズドドドドドドドドドドドドドドド!!!!


スローンズ「……!!」

ゼクト「返すぜ」


ドドドドドドドドドドドドドドドドド

ブシュウッ…


ゼクト「……顔面穴だらけだな…だが同情はしない…これが『ヘルアクロウズ』の復讐だ」


スローンズ「………」ドサッ

セラ……フィム………

今日はここまでにします
やっぱり毎日少しずつでも書き進めるべきなんですが、なかなか思うようにいかず・・・


>>393,394
その二人はちゃんと、出すタイミングが決まってます!
まだもう少しかかりそうなので、それまで我慢しながら読んでいてください!
もちろんなるべく早く話を進めたいとは思ってるんですが…

きてくれた!更新乙!
おとなしく待っておきます!

おつ
やっぱり重力の能力はいいな
発想が大事

今週中には更新しようと思ってたんですが・・・ここに至ってまったく書けなくなってしまいました
すみませんがもうしばらくおまたせすることになりそうです

一ヶ月空けてしまいましたがまだ・・・もうしばらくお待ちください

御意

わかったわかったわかった。もうわかった。
だからもうわかったって。 もういいからもうわかったから。
お前の言いたい事も言ってる事もわかったから。 全部わかった。全部。すごいわかった。
ものすごくわかった。 こんなにわかったの初めて。初めてわかりあえたな俺達。
だからわかってるわかってるそれもわかるよ。わかってるって。 わかりまくってる。
ていうかわかってた。実を言うとわかってた。 始めっからわかってた。
わかってた上でさらにわかったから。 二重にわかってるから。むしろわかりすぎてヤバイ。
全部わかるんだもん。わかっちゃうんだもん。 ほら、お前もわかってきただろ?それもわかるから。

今週中に書くつもりです・・・申し訳ない

楽しみにして待ってるぜ!

そこがどこかと問われれば、『教会』と答えるのが最も適切であろう

彼女はそこで生まれ、そこで育てられ、そこで13年間を過ごしてきた

そして今日がその、最後の日であった…


6年前・天国


ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ……

パチパチ…パチ……パチパチ…

「ふーん…」

?「燃えてるな…ずいぶん贅沢に…面白そうだから見に来たが」

?「磔か」


ゴォオオオオオオオオオ…

「ううう…うう…」

「ううううううう…熱い…熱いぃ……」


磔にされた少女の名はクレセリア

その理由は…


?「……宗教…か」

?「こんな少女の血をどうする…なにに使う?それは知らんが」

?「荘厳に飾り立てられた祭壇…そしてこの炎は倒れた燭台によるものだな」

?「フフ…最近多くなったよな…こういう馬鹿げたカルト集団…」

?「やっぱ今の天国はダメだ…神ならここにいるのに」


クレセリア(…誰か…いる……助けて…!)

クレセリア「た……けて……」


?「……」

?「俺か?今、俺に言ったのか?」


クレセリア「…たすけ…て…あつい…あつ……」


?「そうだな…助けてやりたいが火を消すには…」

?「水がいる…」


クレセリア「たす…け…て…」ポタ…ポタ…

ポタ…ポタ…ポタ……


?「…その血で消せばいいんじゃないか?」


クレセリア「……え…?」


?「それだけ血が流れてればいつかは炎も消えるだろ…千里の道も…ちりも積もれば…いやどっちも違うか…ハハハ」


クレセリア「いや…たすけて…」


?「俺はただの野次馬だ…別にお前を助ける理由なんてない…じゃあな」スタスタ

クレセリア「まって…」

クレセリア「まっ…」


『クレセリア…13歳の誕生日おめでとう』

『これでお前は晴れて生贄になれるんだ』

『父さんと母さん…そして信徒たちのために死ぬことができるんだ…』

『誇りなさい…今まで何もできなかった無能なお前が、やっと私達の役に立てるのだから…!』

クレセリア『やめて…そんなのいやだよ…痛いよ…!』

『お前の血が私達を救うんだ…それが神の意志なんだよ…どうして分かってくれないんだい?』

クレセリア『いやだよ…神なんていないんだ…そんなの嘘だよ…』

『…最後まで分かってくれないか。残念だ…』

『でも安心しなさい…せめて痛くないように一瞬で…』

『死なセ テ あゲ るかラ…』スッ

クレセリア『いや…』


ポタ……


クレセリア「い゛や゛ああ゛あああ゛あ゛あ゛あああ゛ああああ゛あ゛あ゛あああ゛!!!!」


ビシュッ!!


?「……」スッ


ドスッ……


?「……釘」ポタポタ

?「……」クルッ

?「理由が出来た。助けてやる」


フシュッ


クレセリア「…え…火が…消……」ベキベキ…メシ…

クレセリア「…!…落ち…る…!!?」グラッ…


ズズゥン…


クレセリア「………」

クレセリア「………え」


?「悪い悪い…別に十字架を倒す必要はなかったな…」ガシッ

クレセリア「………」

クレセリア「………あなた…は…」


?「…セラフィム。アヴァロン・セラフィム」

ボッ!!!


クレセリア「!」ドサッ!!

セラフィム「これで十字架は消えた…もう動けるだろ」

クレセリア「………どうして」

クレセリア「どうして助けてくれたの…?」

セラフィム「……『どうして助けてくれなかったの』とは言わないんだな。一回見捨てようとしたのに」

クレセリア「………」

セラフィム「質問に質問を被せるようで悪いが…お前、痛くないのか」

クレセリア「え……」

セラフィム「胸に杭…それと手足に釘、刺さったままだぜ」

クレセリア「……!!」ハッ

クレセリア「痛く…ない…」

セラフィム「……それと…俺のこの手に刺さってる釘に見覚えはあるか」スッ

クレセリア「……分からない…ただ…あなたが行ってしまうと思ったから…怖くて…それで…」

セラフィム「…たまにいるんだよな…自分の持つ能力を一度も使えないやつ」

セラフィム「あの瞬間…死の危機に瀕したことで、使えるようになったんだろうな」

セラフィム「この釘、ものすごく痛いぞ」

クレセリア「え……」

セラフィム「お前が能力で出した釘だ…消してくれよ」

クレセリア「わ、分かんない…」

セラフィム「……ま、我慢してやるよ」

クレセリア「……」

セラフィム「で…どうして助けたかって?そういう話だったよな?」

クレセリア「…うん…」

セラフィム「…俺は…わけあって最近…旅…みたいなことをしてる」

クレセリア「旅…?」

セラフィム「いや、違うな…探しものと言ったほうがいいか」

クレセリア「何を探してるの…?」

セラフィム「俺の部下に足る優秀な天使だ」

クレセリア「……部下…?」

セラフィム「そうだ」

クレセリア「……どうして…?」

セラフィム「俺が神になるために」

クレセリア「……神…」


『お前の血が私達を救うんだ…それが神の意志なんだよ…どうして分かってくれないんだい?』


クレセリア「違う…そんなものを信じてたからお父さんもお母さんもおかしくなったんだ…」

クレセリア「神なんて…!」

セラフィム「お前…俺の部下になれ」ズイッ

クレセリア「…!?」

クレセリア「え……?」

セラフィム「……この釘に込められたあの一瞬の本気…」

セラフィム「生きようとする執念。あれが気に入った」

クレセリア「…い…嫌…」

セラフィム「何故?」

クレセリア「神なんて信じない…!神様が本当にいるなら私は…どうして私がこんな目に…!」

セラフィム「…だいたい分かる…『お前は神に選ばれた子』なんて言われて、信仰の対象にされてきたんだろう?」

セラフィム「そんなものは迷いの生んだ嘘にすぎない」

クレセリア「じゃあなんで…」

セラフィム「俺は違う」

セラフィム「…『お前は神に選ばれた』お前を選ぶのは俺だ…本物の神になる男だ」

セラフィム「望むならこの命すべてを懸けてでも…今までの辛く惨めだった生涯の埋め合わせをしてやろう」

クレセリア「……」

セラフィム「お前は俺という神に選ばれた…」

セラフィム「まぁ…お前自身ピンと来ないだろうが…なんでもいい…とにかく俺に着いて来いよ」

クレセリア「……」

クレセリア「…本当に?」

セラフィム「信じられないか?」

クレセリア「………うん…」

セラフィム「……」スッ

ズポッ

クレセリア「…?」

セラフィム「こんな細い釘だが…うまくやれば俺を一撃で殺すことができるはずだ…」

クレセリア「な…何を…」

セラフィム「言っただろ…この命すべてを懸けると!」グイッ!!

クレセリア「……やめ…!」


シュッ


セラフィム「!…釘が消えた……お前が消したのか?」

クレセリア「…はっ…はっ……」

クレセリア(け、消せた…釘…けど…もしあと少し遅かったら、本当に…)

クレセリア「…し…」

クレセリア「信じてもいいの…?あなたを…」

セラフィム「…ああ」

クレセリア「……」ジワッ

ギュウッ

クレセリア「ぐすっ…ひっく…」ボロボロ

セラフィム「…約束してやろう。お前が泣くのは今日が最後だ」

セラフィム「いつか必ず俺がこの世界を…お前がこんなに辛かったことすら忘れてしまえるような…そういう場所に変えてやる」

セラフィム「そうだ…お前にプレゼントをやろう」

クレセリア「……プレゼント…?」

セラフィム「ああ…」

セラフィム「たぶんだが…お前にはこれが適応する」

クレセリア「適応…?なんの話…?」

セラフィム「……」スッ

セラフィム「その胸に刺さった杭…おそらく本来なら心臓を一突きにするつもりだったんだろうが」

セラフィム「少しズレてる…素人がやったからか…それともわざと外したのか…それは分からんが」

セラフィム「いずれにせよこの出血量…もうあと数分も保たない」

クレセリア「え…」

セラフィム「お前は痛みを感じていないようだが…元からか?それともこれがきっかけになったのか?どっちでもいい」

セラフィム「たとえ痛みを感じることがなくても、血を失いすぎれば生物は死ぬ」

クレセリア「…いや…!死にたくない…!せっかく助かったのに…」

セラフィム「偶然とは思いたくない…何かの因果だろうな」ゴソッ

クレセリア「!」


セラフィム「神具・神中の釘(しんちゅうのくぎ)」


クレセリア「じんぐ…?え…?く…釘…?」

セラフィム「今からお前のその杭を抜き…傷をこの釘で塞ぐ」

クレセリア「…!?」

セラフィム「そうすることでお前が死ぬことはなくなる」

クレセリア「な…なんで…!?意味が分からないよ……死んじゃうよ…!」

セラフィム「もしお前が死んだら俺も死んでやる」

クレセリア「嫌…!!」

セラフィム「……」ガシッ

クレセリア「ひッ…!!!」ビクッ

セラフィム「…行くぞ」グッ

ズボッ!!

クレセリア「!!」ブシュゥッ

ボタタタタッ

セラフィム(これだけの大きさの杭が抜ければ当然血も吹き出す…もたもたしている暇はない…即座にこいつを)

セラフィム(空いた穴に突き刺す!)

ドスッ!!!!


クレセリア「………」

ボタボタボタ…

クレセリア「…!!」

ドクンッ

クレセリア「!?…う…あ…」

セラフィム「……」

ドクンッ

クレセリア「……あ…ち…血が…」ボタボタ…

クレセリア「血が止まらない……!!!」

セラフィム「……神中の釘は…『永遠に血を流し続ける釘』…果たしてどう使えばいいか悩んでいたが…」

セラフィム「息絶えないということは、お前の心臓と一体化したようだな…やはり適応した」

セラフィム「お前の体は二度と血を失うことはなくなった…そしてその血を釘に変える能力」

クレセリア「…そ、そんなのあり得ない…」

クレセリア「血を…失わな…い…」

クレセリア「なん…て……」グラッ

ドサッ

セラフィム「…さすがにさっきまでの失血が多すぎたか」

セラフィム「いいだろう…神中の釘が生み出す血液が失われた分を満たすまで、ゆっくり眠るがいい」



スローンズ「……」パチッ

スローンズ「……あ…」

セラフィム「…目が覚めたな…ちゃんと生きてる」

スローンズ「…夢…?」

セラフィム「夢なんかじゃない」

セラフィム「おめでとう…今お前は、俺の部下として生まれ変わった」

スローンズ「…そうだ…」

スローンズ「今日…私の…誕生日…だったの…」

スローンズ「ずっと…こうやって誰かに、心からお祝いしてもらいたかった…」

セラフィム「これからは祝ってやるよ…毎年」

スローンズ「…うん…!」

セラフィム…覚えてる…?

今日は私の…誕生日……

ちょうど、6年目の…



再び、現在



ゼクト「………バカな」


スローンズ「……」ガクガク


ゼクト「なぜ…起き上がれる…」

ゼクト(脳にまで達していなかったのか…いや、どっちにせよ…)

ゼクト「その出血量では長く保たないはずだ…!」


セラフィム『お前の体は二度と血を失うことはなくなった』

スローンズ「……」ニタァ

セラフィム『そしてその血を釘に変える能力』


セラフィム…私は…

この釘のせいか…それとも痛みを忘れてしまったせいか…いつからか…

まともな感情も…言葉も消え失せた…

だけどいつだって…あなたのそばにいられて…

ずっと幸せだった…


スローンズ「…痛咬…寄生(パラサイト・ペイン)…」


時間なんて必要なかった…あなたについていくと誓ったその日から

いつだってそこが望んだ世界だった…


だから……

あなたの望む世界が見られるまで…私は死ねない


スローンズ「釘の腕(ブラス・オングレス)…!!」

ギギギ…ギギギギギギ…


ゼクト「…!!」

グオオオオオオオオッ


ゼクト(でかい…!!)


ケルビム「スローンズ…まだあんな力を…!」

ケルビム「…アレガ最後ダ…間違イナク…」


ゼクト(…止められるか…!)

ゼクト「重力…最大…」グググッ

ダンッ

ゼクト「…重山靠(じゅうざんこう)!」


ゴバァアッ!!


ケルビム「砕イタ…!?」

ケルビム「いや…『釘の腕』は二本だ…!」


ドスッ!!!

ゼクト「……!!!」ズキンッ

スローンズ「あはははははははははははァアアアア!!」

ズズズズズ…

ピタッ

スローンズ「…!」

ゼクト「……知っていた」

ゼクト「このでかいのが二本あることも…そして相手を確実に殺すためのとっておきであることも…]

ゼクト「すべて…シオン先生から聞いていた)

ゼクト「アーティエが!命懸けでシオン先生を守った理由を!そしてシオン先生が得た情報を!俺が無駄にすると思うのか!!!」


ゼクト(左腕は…くれてやる!)

ゼクト「こっちも二撃だ…!!!!」ダンッ

スローンズ「!!」


重山靠!!

スローンズ「……!」ブワッ…

ズドォン…


ケルビム「二本目モ…!!」

ケルビム「だが左腕を失った…!」



スローンズ「………」ポタポタ…

ポタ…


もう…全部…使いきった…

私の…血…

私の…命…


ピキッ…

パキィン!!


ケルビム「神中の釘が砕けた!」

ケルビム「…終ワリダナ…今度コソ」


ゼクト「はぁ…はぁ…」

ゼクト「なるほど…な……死ぬほど痛い…とっておきと言うだけのことは…ある…」ボタタッ

ゼクト「…壁にめり込んで…まるで磔みたいだが…気分はどうだ」


スローンズ「……」パクパク


ゼクト「……!?」


スローンズ「しあ…わせ…」ニコッ


ゼクト「……フン…最後の最後に…嫌に晴れ晴れしい笑い方をしやがって…」クルッ

スタスタ…


スローンズ「……」ゴボッ

手足が熱い…胸も…そうだ…思い出した…これが「痛い」って気持ち…

でもね…セラフィム…あの日みたいに苦しくないの……

あなたが私を救ってくれたから…


スローンズ「……」

ありがとう さようなら

私の神様




ゼクト「はぁ…はぁ…さて…」

ケルビム「……!」

ゼクト「次はお前だ」

一ヶ月どころか二ヶ月近くあけてしまって本当にすみませんでした
次でゼクト戦は終わるはずです。たぶん・・・

乙!
こんな状態で戦えるのか


久しぶりに見に来たらあまり進んでなかった

ザッ…ザッ…

ゼクト「お前も…」

ザッ…ザッ…

ゼクト「あの女の後を追え」


ビリビリビリ…


ケルビム「片腕をもがれたくらいじゃ…闘志は絶えんか」

ケルビム「ダガ、スローンズ…オ前ノオカゲデ、ヤリヤスクナッタ」

ケルビム「せめてお前の死は…」

ケルビム「無駄ニハシナイッ……狂獣の顎(バンダースナッチ)!!!」グオオッ

ゼクト「……フン」スッ

ズシンッ

ケルビム「……」ニヤッ

ケルビム「暴竜の爪(ジャバウォック)!」ジャキンッ

ブォンッ!!

ゼクト「!」サッ

ケルビム「ギリギリデ避ケタカ…ダガ…」

ケルビム「重力を解除したな!」ググッ

ゼクト「チッ」バッ

ドゴンッ!!!

ゼクト「……」ザザザァッ

ゼクト(…左腕と右腕…『両方』を強化する能力か…)

ゼクト(……)

ケルビム「どうした!片手しか使えないのが不便なようだな!」

ゼクト「別に…肘まであれば、能力は使えなくともお前を殴ることはできる」

ケルビム「強ガルナヨ…」

ゼクト「……お前がな」スッ


ズシンッ!!!


ケルビム「……!!!」

ゼクト「分かってるはずだ片手だろうと両手だろうと…お前一人を重くする分には何も変わらない」

ゼクト「相手が二人のままなら多少の不便はあるが、今この状態において特に問題はない」

ゼクト「隻腕相手に強がるなよ」

ケルビム「嘗め…るなッ!」ドゴンッ!!

ゼクト「…強引に動くつもりか」

ケルビム「コノ程度ッ…」ドゴンッ

ドゴンッ ドゴンッ ドゴンッ

ゼクト(床をめり込ませながらもしっかり踏み込んでくるあたり相当タフだな…だが)

ゼクト「何も問題はないと言っただろ」スッ


ゼクト「横向きの重力(サイドG)」

ズズズズ・・・

ケルビム「!!」グンッ!!

ケルビム「押サ…レル…!……暴竜の爪(ジャバウォック)!」ドスッ

グググッ…


ゼクト「ほう…爪を床に突き立てて耐えるか……なら」

ゼクト「これだ」スッ

フワッ…

ケルビム「!?」

ケルビム「マ…マサカッ」

ゼクト「ご存知…無重力(ゼロ・グラビティ)」

ゼクト「そしてもう…その体勢では防御も何もできない」

クルッ

ケルビム「…ッ!!!」グンッ

ゴギャッ!!

ゼクト「一気に…重力最大」


ケルビム「ぐ…おお…」メキメキ

ゼクト「粘るだけ無駄だ…今お前に掛けているのは『バイ・セカンド』の最大重力30G」

ゼクト「耐えてどうにかなるものでは…」


ケルビム「暴竜の…」バッ


ゼクト「……さっさと倒れろと言ってんだよ!!」ブンッ

ゴキャッ!!

ゼクト(重力を乗せた蹴りだ…これで首がへし折れなければ…)

ゼクト「…!!」


ビキ…

バラバラバラ……

ケルビム「あ…ア…」

ケルビム「面が…面がァアアアアアアアアアア」


ゼクト「……なるほどな…薄々勘付いてはいたが」

ゼクト「それがお前の…いや」

ゼクト「…『お前ら』の素顔か」


ケルビム「キ…貴様ダケハ……」

ケルビム「絶対に」

ケルビム「許さ『ンッ』!」

セラフィムがスローンズを『最初の部下』として九階位に加え入れ

数カ月後、その次の枠を埋めたのがケルビムであった


セラフィム「………」

スローンズ「…『この人たち』もう死んでる…?」

セラフィム「……いや」

セラフィム「まだ生きている…かろうじてな」


ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…


ケルビム「……肉体『ノ融合』、か」

セラフィム「そうだ…何があったか知らんが、互いに『半身ずつ残して』死にかけていたお前ら二人の肉体を」

セラフィム「俺の持つ『神具・双魂鏡(そうこんきょう)』でひとつにした」

ケルビム「………」

セラフィム「その鏡が無事である限り、お前らはその姿でいられる…まぁ体内から取り出す方法はないがな」

セラフィム「最初は体が自由に使えなくても不便かもしれないが……あのまま死ぬよりはマシだっただろ?」

ケルビム「…かま『ワナ』い。俺た『チハ』もう別々『ノ存在だ』った過去『ハ捨テ』る」

セラフィム「そうか…だがせめて名前くらい残しておこう」

セラフィム「レジュークとマキシエル…それぞれの名前を取って…」

セラフィム「レジエル。お前は今日からレジエルだ」

ケルビム「レジ『エル』か…悪『クナイ』ぞ」

セラフィム「そして俺はお前の力が気に入った」

セラフィム「今日から俺の部下となれ」

ケルビム「…『部』下…部『下カ』……」

ケルビム「な『ニヲ企』んでいる?」

セラフィム「……そうだな…強いて言うなら」

セラフィム「長らく止まっていたこの歴史を…俺が動かす」

ケルビム「…『命ヲ救』われた『後デハ断』れないな」

ケルビム「い『イダ』ろう…歴『史ヲ動』かす『トヤ』ら…協『力シテヤ』る」

セラフィム「では…」スッ

ケルビム「……?」

セラフィム「双魂鏡とは別に…これもお前にやろう…」

ケルビム「仮面…?」

セラフィム「さすがに『二つの顔を無理やり繋ぎあわせた顔』なんて気味が悪いぜ」

ケルビム「…フン、薄『情ナ奴』だ」グッ…

ガキッ

ケルビム「!…なん『ダコレ』は…た『ダノ』仮面じゃな『イ』…!?」

セラフィム「その通り…それも神具だ。その仮面を付けている間は…」

セラフィム「お前は常に精神を抑え込まれる」

ケルビム「…つま『リ本来ノ』力を出『セナクナ』ると?」

セラフィム「そうだ…」

ケルビム「な『ゼソン』なもの『ヲ寄越シ』た…」

セラフィム「……双魂鏡は」

セラフィム「二つの精神・そして肉体を一つの肉体に融合させるもの」

セラフィム「しかし精神の波長が大きく揺らいだとき…」

セラフィム「その力はお前たちの意識を上回って暴走する」

ケルビム「暴『走ダト』…」

セラフィム「そのためのストッパーだ。こいつら尽く使い道が分からなかったが、一気に持ち主が見つかってよかったぜ」

ケルビム「……」コンコン

ケルビム「もし『コノ仮』面が砕『ケタラド』うなる…?」

セラフィム「さぁ…実際にその段階にならなければ分からんが」

セラフィム「その仮面をぶち壊されるほどお前が追い詰められたなら」

セラフィム「それは『本気を出さざるを得ない状況』ってことだよな」

ケルビム「…成る『程ナ』…暴走『ハ時間ノ問』題とい『ウワ』けだ」

セラフィム「……」ニヤ

ゼクト「それが…お前らの素顔か」


レジューム「貴…様…如きがァアアアアアアア」

マキシエル「我ガ仮面ヲォオオオオオオ」


ゼクト「ふん…今までもそうやって二つの口で喋っていたわけだ…」

ゼクト「目障りだし耳障りだな」


レジューム「殺す!!」ギュオオオオオオオオオッ

ゼクト「右腕が爪…か。覚えたぞ」バッ

ググッ

レジューム「!!」

ゼクト「そんな大雑把な攻撃…重力の壁で簡単に止まる」

マキシエル「狂獣の顎(バンダースナッチ)!!」グオオッ!!

ゼクト「左腕が牙。当然分かってる」スッ

ガキィン!!!

マキシエル「蹴リデ下顎ヲ…!」

ゼクト「……」

ゼクト「弱い…弱いぞお前たち」

レジューム「……黙れ…!」ビキィッ

マキシエル「貴様ハ…!貴様ハココデ必ズ殺ス!!」

ゼクト「キレるなよ…キレて強くなれるなら…」

レジューム「暴竜の爪(ジャバウォック)!」ジャキィン!!

マキシエル「狂獣の顎(バンダースナッチ)!」グオオオッ!!

ゼクト「なれる、なら……」


ズシンッ……!!!


ゼクト「もうとっくに終わってる」


レジューム(腕が…動かん…!!)

マキシエル(ナゼココマデ…力ノ差ガアル!?)

レジューム「なぜだ…!なぜこんな…!」

マキシエル「貴様ノ様ナ…ドコノ誰トモ知ラン奴ニ…!」


ゼクト「死体には…」

ゼクト「…噛み痕と斬撃の痕が残っていた…」

マキシエル「……!?」

ゼクト「つまり…お前らと戦うことを望んでたんだ…」

レジューム「何を言っている!」


ゼクト「強かっただろう…ロキさんは」


レジューム「……ロキ…!?」

マキシエル「…サテハアノマントノ男コトカ…!」

ゼクト「そうだ…そしてその男は」

ゼクト「俺が最も尊敬した男だ…!」



ズシンッ!!!!!



レジューム「…さらに」

マキシエル「重ク…!」



ゼクト「お前らが…ロキさんに勝ったとは思いたくないが…事実目の前にお前らが立っているのだからそういうことなんだろう」

ゼクト「だがタダで得た勝利ではないことも確か…」

ゼクト「すでに疲弊しきったお前らを倒すことなど造作もない」

ゼクト「それでも…俺は……」


ゼクト「本気でやる」


ブワッ!!!


レジューム「こ…の…圧力は…!?」

マキシエル(重力…ジャナイ…!!)

奴の気迫…!!


ゼクト「俺もたった今キレた…」

ゼクト「終わりにするぞ」

レジューム「……マキシエル…!仮面が割れた今我々も本気を出せる…!」

マキシエル「シカシ…!」

レジューム「後のことなどもう知らん…ここでこいつを倒せれば、あとはもう…」

マキシエル「……分カッタ…」

レジューム「暴竜の爪!!!」メキメキメキメキ

マキシエル「狂獣の牙!!!」メキメキメキメキ

メキメキメキメキメキメキメキ……

レジューム「意識…が…」

マキシエル「呑マレル……!!」


ケルビム『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…!!!!』


ゼクト「その様で天使か…『堕天使』のほうがよく似合っているぞ」

ゼクト「もう…遅いが」スッ

ドンッ!!

ケルビム『…カ……!?』

ゼクト「どうした…本気になったんじゃないのか?」

ケルビム『…キ…サ…マァアアアアアアアアアアアアアアアア』

ゼクト「いいか…これからお前が倒れるまで…」

ゼクト「ひたすら…殴り続ける」スッ

ドンッ!

ケルビム『ぐ…オオ……!!』

ドンッ!!

ゼクト「拳の向きに重力を合わせて…叩き込む…」スッ

ドンッ!!!

ケルビム『ガハッ!!』ビチャッ

ゼクト「ただそれだけだ…」スッ

ドンッ!!!!

ゼクト「しかし忘れるなよ『通常の重力』も最大重力15G…避けることはできん」スッ

ドンッ!!!!!

ケルビム『……ウ……ご……け…』

ゼクト「……」スッ

ドンッ!!!!!!

ケルビム『動…ケ…この…程……度……』ガクガク

ドンッ!!!!!!!!


ケルビム『コ…ノ…程度ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』ブンッ!!!!


ゼクト「……たったこれだけの時間で…俺の最大重力に適応するとはな…だが惜しむらくは」

ゼクト「ロキさんと戦っていなければ、もっと速く動けただろうってことだ」スッ


ドンッ!!!!!!!!!!!!

ケルビム『…ご……あ…!』ビシッ

ビキビキ・・・


セラフィム『その鏡が無事である限り、お前らはその姿でいられる』


ゼクト「喰らえ…」スッ


すべての重力を…


ゼクト「重…」


渾身…


ゼクト「山…」


この一撃に


ゼクト「靠」




ド ゴ ンッッ!!!!



ケルビム「……」ヨロッ

ビキ・・・バシ・・・

バリィン!!!!

ケルビム「」ドシャア…


ゼクト「まったく…大した化け物だったが…すでにロキさんと戦っていた時点で、ハナからお前に勝ち目なんてなかった」

ゼクト「これが俺の…ヘルアクロウズの仇討ちだ」

同階・別フロア

ズズンッ…!!!

イン「!?」

シロ「わあぁっ!?」

イン「な、なんだろう…今の…一瞬だったけど、すごい揺れだった…」

シロ「じ、地震…?」

イン「違う…もっと強引な力だ…この城の内側から…」

シロ「クロお姉ちゃん…大丈夫かなぁ…」

イン「……行こう、僕たちも」

シロ「!!」

イン「分かってるんだ…今ので分かった…」

イン「この城で戦っているのは僕たちの力なんて遠く及ばない存在だって」

イン「でも、だからこそ逃げてるわけにはいかない…姉さんを助けにいくんだ…!」

シロ「…う、うん…!」




屋上


レクラン「奥義…月下」

セラフィム「双・神…!」


ズズンッ!!!


レクラン「!?」ピタッ

セラフィム「!」グラッ


レクラン(…地鳴り…?なんだ…)

セラフィム(…このタイミングで…!)バッ

セラフィム「……また面白そうなのが来たな」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

位置不明


テンコ「!!」ピクッ

テンコ「まただ…また大きな力……空気を伝うような…」

テンコ「でもさっき一瞬感じたのとは違う…」

テンコ「……早く、早く黄の城に…行かないと…」

ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・

ゼクト「………」

シオン「ゼク…ト…無事だったか…ではさっきの揺れは君が起こしたのかね…」

ゼクト「ああ…さすがに少し…疲れた…」

ゼクト「先生こそ、傷は…」

シオン「……だいたい全部塞いだよ…まだ立ち上がれんがね…」

シオン「そして…彼の傷も…」

アーティエ「」

ゼクト「……」

シオン「無駄だと言うのは…もう分かってる…だけど…」

シオン「だけど思ってしまうんだ…もしも…私があのとき…貫かれたあと…自分の傷より先にアーティエの傷を治療していれば…アーティエは助かったんじゃないかって…」

ゼクト「……」

シオン「私だけが生き残ってしまった…」

シオン「初めてだよ…患者を救えなかったのは…!」

ゼクト「……いいや」

ゼクト「救われていたはずだ…アーティエは」

ゼクト「でなきゃこんな満ち足りた死に顔をするわけがない…」

シオン「……」

シオン「確かに、アーティエが来なければ私はとっくに死んでいた…」

シオン「殺人鬼と呼ばれた彼が私を助けにここまで来たんだ…」

ゼクト「…命を賭した償い。それがアーティエが救われる唯一の道だったんだろう」

シオン「……ふん…そうかね…。死人に口無し…アーティエが救われたかどうかなんてアーティエ自身にしか分からないさ」

シオン「生意気な口利くんじゃないよ…ゼクト」

ゼクト「なにを今更…何年の付き合いになると思ってるんだ」

シオン「…22年。忘れるわけない。入ったばかりの私に、14の小僧が先輩面してきたんだからね」

ゼクト「そう…22年…決して短くはなかったが…」

ゼクト「…今日でヘルアクロウズは終わりだ」

シオン「……だろうね」

シオン「16年前のあの日に一度終わったはずのこの組織が…よく保ったほうさ…」

シオン「…デュロイ様が捕まって、ディアナ様も、60人いたメンバーの半数も殺されて…」

ゼクト「そしてあの方が連れて行かれた」

シオン「…しかし…よく再興させたよ。5年もかけて」

ゼクト「信じていたからな」

ゼクト「今でも」

シオン「………頑固だね君は…」

ゼクト「リーダーは来る」

ゼクト「ロキさんはもういないが…」

ゼクト「…『彼女』は必ずここに来る」

シオン「…神の血を継ぐ、悪魔…」

今日はここまでにします
紛らわしいかもしれませんが、ゼクトの戦闘はすべてセラフィムVSレクランと同時刻に行われたものです
年内に終わらせるのが目標でしたが、次回の更新は年明けてからになるかもです・・・

乙!
テンコ久々だな
やっぱり重力はロマンにあふれてるな

[ピーーー]よ

明日更新します・・・

期待

黄の城・屋上

エレカ「はぁぁぁぁっ!!!」バリバリバリッ

ギュンギュンギュンッ!!!

セラフィム「……」

セラフィム(意外としぶとい…てっきり保って3分…いや、それ以下だと思っていたが)

セラフィム(限りある力をうまく調整しているようだな。腐っても魔王…その辺りはなかなかセンスがある)

セラフィム「だが…」スッ

エレカ(…来る!)

セラフィム「みみっちいのは嫌いなんだよなぁ!!」バッ!!

ボシュッ!!!!

セラフィム「……俺の反撃が来ると分かれば、即座に雷の力を『攻撃』から『回避』のみに切り替えるか」

エレカ「はぁ…はぁ…」

セラフィム「だがもう5分以上…いくら器用にやりくりしようと、限界はあるだろ」

エレカ「……っ」グッ

セラフィム「なぁ!!!」ブンッ

エレカ(激雷走!)バチチチチッ

ギュウンッ!!!

エレカ「うっ…!?」ドサッ

セラフィム「……ただ避けるにも脚がもつれるか?」

エレカ(さっきまでは、『普通に走る感覚』でトップスピードが出せた…だけど今は意識しないと体が反応してくれない)

エレカ(だけど…)ギラッ

セラフィム「…!」

エレカ「黒雷の薙尾(ライジングテール)!!」ビュオッ!!

エレカ(止まるわけにはいかない!)

セラフィム「!!」バチィッ!!


クロ「…もう、見てられないわ…一見、淀みなく攻め続けてるけれど、スピードだって少しずつ落ちてきてるし、息を切らしてるのは明らかにエレカのほう…」

ヘイセ「……エレカ様…!せめて、せめてもう一度充電の時間があれば…!!」

クロ「……」

クロ(私がエレカに代わってアイツの相手をすれば、少しでも時間を稼ぐことができる…?)

クロ(……違う、そうじゃない)

クロ(そもそも、すべてエレカ頼りにしてるのがいけないのよ…まだ他にも誰か、戦える悪魔がいるはず…)

クロ(……誰…か…)

クロ(………ダメだわ…誰も助けてなんかくれない…)

クロ(これ以上に最悪な状況なんて……!)

クロ「……ねぇ…エレカ…」ユラ…

ヘイセ「…!?」

クロ「ねぇ…エレカ…ねぇ…」

クロ「ねぇ!!」


エレカ「クロ…!」ピタッ


クロ「エレカ…もう無理よ…勝てないわよ…そいつには……」

クロ「だから…諦めましょう?降参…そうよ…降参して………」

セラフィム(…なんのつもりだ…?)

エレカ「降参…!?君は…自分が何を言ってるのか分かってるのか!」

クロ「分かってるわよ!『降参』なんて情けない言葉、今までに一度だって使ったことなかったわ!」

クロ「でも、分かってるんでしょ…そのとっておきも通じないの…どう足掻いても、ここでおしまいなのよ…」

クロ「口先だけ強がったってもうどうしようもないのよ!!」

エレカ「……」ギリッ

セラフィム(…わざわざ自分とこの大将を煽ってどうする…?何か企みがあるのか?)

セラフィム(…まぁ、なんにせよ…)

セラフィム「俺はそういうのが気に入らねぇ」ギュンッ

クロ「!?」

セラフィム「隅っこでおとなしくしてる分には放っておいてやろうと思ったが…」ザッ

クロ「な…」

セラフィム「…降参だと!?そんなことは絶対に許さない。今のは俺に対する冒涜だ!」

クロ「なん…で…」

セラフィム「仮にも……」

セラフィム「仮にもお前らんとこの魔王だろうが…」

クロ「……」

セラフィム「お前らが信じないでどうする…!?」

クロ「ど…どうしてあなたがそんなことを…!」

セラフィム「………!」ハッ

セラフィム「……そうだな…確かに…俺のことじゃない…関係ない話だったな…」クルッ

クロ「……」

クロ(違和感があるわ……こいつがこんなふうに…まるでエレカをかばうようなことを…)

クロ(私は今…こいつの…なにか『触れてはいけないところ』に近づいていたような……)

セラフィム「悪いな魔王…俺が取り乱すようなことじゃなかった…続けようか…」スッ

エレカ「……っ!」

セラフィム「お前が降参することがあったとしたらそれは…自分が本当に心から『もうだめだ』と思ったときだけだ」

セラフィム「…そのときにはもう死んでるかもしれないがな」ブンッ!!

エレカ「くっ!」タンッ

エレカ「……雷槍!!」シュッ

バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!!!

エレカ「クロ!…君には悪いけど、私の心は『まだやれる』って言ってるんだ…」

エレカ「ここで引くことはできないッ!」グッ

セラフィム「当然!続行だッ!」ググッ

ビキキ…!!!

エレカ(とは言ったものの…もう…雷槍も維持できない…!)

エレカ(…ここまでか…!?)


バァン!!!


セラフィム「!!」グルッ

エレカ「!?」フシュッ

クロ「!!?」

クロ(知らない顔だわ…もしかして、エレカはまだ誰かを呼んでいた…!?)

エレカ「…誰だ…!」

クロ(!エレカも知らない…!?)


セラフィム「ドミニオンズ……」

エレカ「……!」

クロ(…まさか…嘘でしょ…?このタイミングで…)

クロ(『向こう』の仲間…!?)


ドミニオンズ「……」ニヤ

セラフィムは、彼…第四位 主天使シャウラ・ドミニオンズが「生きていること」は知っていた

知っていたが、それはあくまで精神力を感じ取っていただけに過ぎず、その事細かな詳細を知っているわけではない

聞きたいことは山ほどある


セラフィム「ドミニオンズ…お前……」


とりわけ彼がどうしても気になったのは、この一点であった


セラフィム「デュナメイスはどうした?」

ドミニオンズ「……」

力天使ガンダル・デュナメイス。ドミニオンズと同列の第五位であり、彼らは二人一組での戦闘を前提とした能力を持つ


セラフィム「デュナメイスは、どうした?」

ドミニオンズ「聞こえてるよ」

セラフィム「……」

ドミニオンズ「死んだよ。ガンダルは…僕より先にね」

セラフィム「そうか…」


「ドミニオンズの存命が分かる」ということは「デュナメイスの死も分かる」ということだ

彼の精神力はとっくに…この黄の城に着くより前に尽きていた。それは知っていた

だから疑問なのだ


セラフィム「よくここまで来れたな…『たった一人』で」

ドミニオンズ「フ…フフ……」

ドミニオンズ「ククククク……!」

ドミニオンズ「大変だったよ…ここまで来るのに何時間もかかった」

セラフィム「……」

ドミニオンズ「だけど、いろいろ試してたんだ…僕にうまく適合してくれてよかったよ」

セラフィム「……適合?」

ドミニオンズ「僕らはね…セラフィム、知ってるかい?王族護衛隊」

セラフィム「…当たり前だろ」

ドミニオンズ「その、一番強いのと戦ってきたんだ。僕らの前任を倒したっていうあの二人とね」


エレカ(センリとジーク…!?まさか、こいつに負けたのか…!?)


セラフィム「で…そのさなかにデュナメイスは逝ったのか」

ドミニオンズ「そういうことさ…いやぁ悲しいよ…僕らはずっと一緒だったからね…」

セラフィム「そう言う割には…嫌に晴れやかな顔してるじゃねぇか」

セラフィム「正気には見えねぇぜ…強迫薬でも使いすぎたか?」

ドミニオンズ「だって…こんなに素敵なものを拾ってしまったんだもの…!」

セラフィム「……その…背に隠してる右手を見せてみろよ」

ドミニオンズ「……見せてやるとも…」

ドミニオンズ「これが僕の!新たな力だよ!!」バッ

セラフィム「……」

セラフィム「それは…」

ドミニオンズ「これが何かなんて言わなくていいよ!僕だって分かってる…」

ドミニオンズ「なんでも…元は大事な『神器』の一つだったそうじゃないか!それを僕たち普通の天使が使えるように改造したんだろう!?」

セラフィム「なぜお前が…それを持っている…」

ドミニオンズ「たまたま落ちていたから拾ってきたのさ!!いやぁツイてたよ!まさに絶体絶命の危機!ってタイミングでこれを拾った時は…」

ドミニオンズ「……神っているんだ、と思ったねぇ」

セラフィム「……」

ドミニオンズ「だけどそれはあんた以外の別の誰かだ…」


クロ(なに…あいつ…なんなの?あれは…武器…?)

エレカ(……チャンスがあるとしたら、今だ…)ダッ


セラフィム「それはお前のものじゃない…俺がエクスシアイに与えたものだ…」

ドミニオンズ「だけど僕にも使えた!『相手の力を吸収し、自らの力に変えて発射する』…僕の能力に酷似しているせいかなぁ」

ドミニオンズ「ここに来るまでに邪魔してきた奴はみ~んなこれで殺したよ!!」ケラケラ

セラフィム「聞きたくないが…訊いてやる」

セラフィム「なぜそれを俺に向けている?」

ドミニオンズ「殺すためだよッ!!あんたを!!」

セラフィム「……あんた、あんたって」

セラフィム「やっぱりお前、生意気だよな…」ズッ…


クロ「……え…」

クロ(こ、これって…もしかして…)


『仲間割れ』…?

セラフィム「俺を殺す…理由が分からん…なぜここに来てわざわざ俺を殺そうとする?」

ドミニオンズ「あ、ん、た、はァァァぁぁぁぁぁ」フゥゥゥゥゥゥ

ドミニオンズ「分かってないのかもしれないけどね…戦況は最悪だよ…」

ドミニオンズ「エクスシアイはバラバラになって死んでた…この『翠翼』だけ残してね…」

ドミニオンズ「デュナメイスはボロボロになりながらずっと戦ってきた…けど、耐えられなかった…僕だけ逃がそうとしたんだ…」

ドミニオンズ「そしてこの城に来てみればなんとかなると思ったけど…大間違いだったよ」

ドミニオンズ「二位も!三位も死んでたんだ!!!」

セラフィム「……」

ドミニオンズ「あんたが今まで積み上げてきた誇り高き《天》九階位はァ」

ドミニオンズ「僕一人残して壊滅しましたァ~~~」ケラケラケラ

セラフィム「……だから?」

ドミニオンズ「だから?」

ドミニオンズ「……だからじゃないだろぉおお!?」

ドミニオンズ「僕たちはもうダメなんだよ!おしまいなんだ!たとえあんた一人がしつこく粘っても…」

ドミニオンズ「天国は地獄に勝てないんだよ!!!」

セラフィム「……言ってなかったか?」

セラフィム「たとえ天国の戦力が俺一人になろうが、必ずこの地獄を落とすと」

セラフィム「それが敗れていったあいつらへの弔いだ」

ドミニオンズ「……はぁ~~~~~~~???」

ドミニオンズ「まだそんな夢みたいなこと言ってんのかよ!!俺一人でも必ず落とす!?それが弔いぃ!?」

ドミニオンズ「そんなことできるわけないだろバァーーーーカ!!!!!」

セラフィム「…ほんき…が」

セラフィム「……」

セラフィム「本気を…お前には見せたことがなかったな…そういえばそうだ…」ブツブツ

セラフィム「お前とデュナメイスは…九階位入りが最も新しいから…機会がなかったな…」ブツブツ

ドミニオンズ「なにブツブツ言ってんだよ!!!」

セラフィム「……」

セラフィム「本気が見たけりゃそう言えよ…」

セラフィム「それで俺の力を信用できるなら…いくらでも見せてやったのに……」

セラフィム「だが……もう………」


セラフィム「遅い……!!」


その瞬間、どろっとした『なにか』が、この空間を満たしていった

それはレクランの能力の煙とか、そういう具体的なものではなく

もっと漠然とした、得体のしれない……


クロ(なにこれ…ふ、震えが止まらない…!)ガタガタ…

クロ(怖、い…!)

セラフィム「俺が…この世で最も嫌いなものを知ってるか…?」

ドミニオンズ「え……え…?」ビクッ

セラフィム「それは………」

セラフィム「……裏切り、だ」


それは、すべてにおいて「楽しさ」を優先させてきたセラフィムが

今までに見せたことのない感情だった


『怒り』


セラフィム「お前には…どうしても…俺が信じられなかったのか…」

セラフィム「この俺の強さを。信じられなかった…と……」

セラフィム「どうしてだ?何故?お前はあの日『あんたの強さを信じる』と…そう言って九階位に入ったはずだ」

ドミニオンズ「お、覚えてるわけない…そんなこと…」

セラフィム「言ったんだよ。お前は」ギロッ

ドミニオンズ「ひッ…」

セラフィム「だから俺もお前を信じた…デュナメイスもだ…俺の強さを信じるって、そう言ってくれたお前たちを信じてた」

セラフィム「だが、今……」

セラフィム「それが嘘だったと…分かってしまった……」ボロッ

崩れていく…

ボロ…ボロボロ……

ここまで築き上げてきたものが!!


セラフィム「俺はお前らとの間に絆を感じていた…確かにお前らは礼儀を知らないところもあるが、それでも俺のためによく動いてくれた」

セラフィム「だから悲しくて仕方ない…お前の罪を許せない自分が……」

セラフィム「だけど俺の強さを信じられないと言うなら…信じさせるしかないよな…その身を以て…」

セラフィム「なぁドミニオンズ……何か言いたいことはあるか?一つだけ聞いてやる……」

ドミニオンズ「ひ……は…あ…」ガタガタ

ドミニオンズ「うわぁあああああああああああああああああああああああ」バッ

『翠翼』!この黄の城に辿り着くまでに吸収してきた生気を、力として一気に解き放つ!

ドミニオンズ「あんたが悪いんだあああああああああああああああああああ」


セラフィム「……残念だ…ここで詫びのひとつでもあれば…あるいは…生かしてやれたかもしれないのに…」スッ

セラフィム「双・神剣(ディオ・グレイヴァ)」ブンッ

ボッ!!!

セラフィム「罪には…罰(エグザクロス)」


ドミニオンズ「あ……」


バシュンッ!!!!


クロ「嘘…でしょ…?」

クロ「消えてしまった…彼…完全に……」

セラフィム「はぁああ…」

セラフィム「はぁああああああああ……」


エレカ「……さっきクロに対して激昂したのは、あなたが『裏切り』を嫌っていたからか」


セラフィム「……」



エレカ「まさかそこまで豹変するとはね…正直いつこちらに意識が戻るか恐れたよ…」

エレカ「だけどこっちも…もう一度…」スッ

エレカ「充電させてもらった…」バチ…バチチ…!


セラフィム「…あの瞬間…お前のことなんてもうどうでも良かった」

セラフィム「ただ…俺の中身全部が…怒りに支配されて…」

セラフィム「このコントロールのやり方だけは…未だに分からん…」


エレカ「さっきの技…『消滅波』を飛ばしたようだね…それだけのことができるのに今までやらずにいたのは」

エレカ「…『つまらないから』だったんだろうけど。もうそんなこと言ってられないって、そういう顔してるよ」


セラフィム「そうだな……もう…」

セラフィム「…どうでもいい…ただ今は…」

セラフィム「全部ぶち壊したい気分だ……」ギロッ


クロ(ただでさえ強かったあいつが…ブチギレてる…)

クロ(さっきは、もうこれ以上最悪な状況なんてないと思ったけど……)

クロ「きっと、これが本当の最悪…なんだわ…」




「待ってなさい…エレカ…」

シェアリ「今助けに行きますわ…!」ズリ…ズリ…

クレア「もう引きずらなくていいっつーの!」

前スレ>>885でドミニオンズが見つけたものこそが、他でもない『翠翼』だったんですが
時間が空き過ぎたこともあって少々分かりにくかったかもしれません

もう笑わないセラフィムVSエレカ、いよいよ最終局面です

最早誰も助からないのでは
乙!

もうしばしお待ちを
今週中には・・・

エタらなければ問題ないぞ!
たまには息抜きに違うのでも

すいません、結局先週は書けませんでした・・・
早いうちに書こうとは思ってますがどうも進まず・・・いつも申し訳ないです

エレカ(……ここに来て、もう一度充電できたのは)

エレカ(もう一度『激烈裁雷(ライジング・レオ)』で戦えるのは大きい…)

エレカ(でも向こうも、間違いなく本気を出してくる……)

エレカ(………これが、最後だ)


セラフィム「…………」

自分の計画がうまくいかないこと……それ自体に苛立っているわけではない

計画が難航することもまた一興。常に冷静に、そう考えていた

しかし……


絶対に許されない『禁忌』というものはある


セラフィムの精神を切り崩す術があるとしたら、それは他でもないこの禁忌を犯すこと…

部下(ドミニオンズ)の『裏切り』は、セラフィムを激しく揺さぶった!



セラフィム(俺は……)

セラフィム「俺は……」

フッ

エレカ「!!」

セラフィム「もう止まらんぞ……!!」ブンッ

エレカ(上…!)バッ

エレカ「満月雷盤(フルムーン・ディスク!!)」バリバリッ…


ボッ!!!


エレカ(…盾がまるで役に立たない…!!出力が上がっているのか!?)

エレカ「ならッ……!」バッ

エレカ「大顎雷門(タイガクライモン)!!」バリバリバリ…


ガグォンッ!!!


エレカ(雷の顎で上下から噛み砕く!!)


ボシュシュッ!!!!


セラフィム「双・神剣…」スタッ

エレカ「…これも…通用しないのか…!」バッ

エレカ「黒雷そ…」バリリッ…

ブンッ!!

エレカ(!…蹴り…)

セラフィム「鬱陶しいッ!!!」ドッ

グオッ!!!

エレカ「………!!!」

ズザザァッ…

エレカ「く……」

エレカ(雷の鎧が威力を弱めてくれると思ったが…)

エレカ「……かはっ…」ビチャッ

エレカ(まっ…たく…効いていない…なんてめちゃくちゃな力……)

エレカ(だが…明らかに暴走している…今だって神剣で攻撃すれば……)

セラフィム「おい…」ザッ

エレカ「…!」ビクッ

セラフィム「聞こえなかったのかよ…」

エレカ「なに…を…」

ゴスッ!!

エレカ「……うぐッ…!?」

セラフィム「鬱陶しいって言ってんだよ!!!」

エレカ(………そうか)

エレカ(分かった。神剣を使わなかったのは)

エレカ(私を『痛めつけることに』専念するため…か…)

セラフィム「なんでお前みたいな虫が…俺の前で生きてんだ…」ガシッ

セラフィム「っていうかお前誰だ…誰なんだよ!!!」ブンッ!!!

エレカ「……!!」ガシッ

セラフィム「…あ…?なに掴んでんだよ……」

エレカ「…イカれてるよ…『能力を使わない』なんて選択…熱くなりすぎるのも問題だね…」ボソッ

エレカ(この…直接触れた状態なら…防御は不可能…!)


エレカ「放電(スパーク)!!」


バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!


セラフィム「!!!!」

バリバリバリバリバリバリバリバリ…


クロ「え、エレカ…!」

ヘイセ「おお…!あの至近距離からあれだけの電撃を受ければ…さすがに……!!」


バリバリバリバリバリバリバリバリ……


エレカ「倒れ…ろ…!」

セラフィム「こ……」

セラフィム「この期に及んで…まだ……」

エレカ「…!!」

セラフィム「まだこんなモンで…俺を殺せると…思ってんのか……」

エレカ(バカな…これでも効かないのか…!?)

セラフィム「だから……」

エレカ「黒雷槍ッ!!」バリバリバリバリバリ!!

セラフィム「だから…!」ガシッ

エレカ(…素手で止めた…!?)


怒り狂ったセラフィムが「能力を使わないこと」

それがあるいはチャンスになるかもしれないと、ほんの少しだけ期待した

だが…


セラフィム「だから鬱陶しいんだよ!!!!」バキィン!!!

エレカ「……!!!」

エレカ(す…素手で…)


甘かった…甘すぎた……


セラフィム「死ぬより苦しめ…」ヒュッ

ドゴッ!!

エレカ「!!」ヨロッ

ズガッ!!

エレカ「っ…!」

バキッ!!

クロ「………あ、あんな一方的に…もう……」

クロ「こんなのもう戦いじゃない…ただの暴力よ…!!」

クロ「これ以上は死んじゃうわ!やめて!!」ダッ

ヘイセ「……」バッ

クロ「……!あ、あなた…」

クロ「なんで止めるのよ…あなたエレカの部下なんでしょ!?助けないと…!」

ヘイセ「エレカ様は魔王なのだ…」

クロ「…!?」

ヘイセ「エレカ様は我ら悪魔を…地獄を背負うお方なのだ」

ヘイセ「ここで手を出すことはあのお方を侮辱することになる!」

クロ「侮辱!?そんなバカなこと言ってる場合じゃ…死んだらおしまいよ!?」

ヘイセ「それに……」

ヘイセ「それにもう我々では…どうすることもできん…!」ギリッ

クロ(!…堪えてるんだ…この人も…本当は止めたくて仕方ないはずなのに…)

クロ(…私が弱いから……私にもっと力があれば…!!)


僕たちがいる!


クロ「…え?」

クロ「幻聴…いや…違う!」

バンッ!!


イン「姉さん!」

シロ「お姉ちゃん!」


クロ「…!イン!シロ!」


「…で?アタシらが倒さなきゃならねーのはどいつだよ?」

「そんなのどう見たって一人だけですわ…」


クロ「…え」


クレア「ってことはあの銀髪の野郎でいいんだな?」

シェアリ「でもエレカをあそこまで…いったい何者ですの?」


クロ「クレアとシェアリ!?…どうしてあなた達まで…」

イン「2階に来てたから…姉さんを助けてくれないかって頼んだんだ…」

クレア「はっ!てめーらを助けるつもりなんてねぇーよ!」

シェアリ「そんな余裕ありませんもの…」

シロ「さっきは助けてくれるって言ってたのにー!!」

クレア「うるせぇな…いいか、敵は同じとは言え、てめーらにうろちょろされると邪魔なんだよ!」

シェアリ「あの天使…相当強いと見ましたわ…!」

クロ「…相当なんてものじゃないわ…あいつは熾天使!間違いなく『最強の天使』よ!」

シェアリ「!!…熾天使…セラフィム…あれが…」

クレア「つーかアイツさっきからずっとボコボコにされてるぜ…ちょっとヤバそうだな…」

クロ「…そうよ!早く止めないと…このままじゃエレカが…!」


ドガッバキッ

エレカ(クレアとシェアリ…来たのか…)

エレカ(セラフィムは…二人に気づいてない…周りが見えてないんだ…いま二人が不意打ちでも仕掛ければ倒せるのかな…)

エレカ(……そうじゃないんだ…)

エレカ(そうじゃない…)


シェアリ「とにかくなんでもいいから攻撃して、あいつの動きを止めますわよ!旋水(アクア…」


バッ!!


シェアリ「!?」


エレカ「……」ヨロヨロ


シェアリ「……手を出すな…と…そう言いたいんですの?」


殴られ蹴られ、ダメージが蓄積していく一方で

少しずつ…どこかでひっそりと眠っていたモノが覚醒していくのが分かる



エレカ(このままやられっぱなしでいたら…死ぬ…それは分かる…)

エレカ(だけど……恐ろしいのはそんなことじゃない…)

エレカ(本当に恐ろしいのは……)

エレカ(私が魔王として……何も残せないこと……)

まず、エレカの胸中に浮かんだのは

感じたことがない…わけがなかった『罪悪感』


エレカ(イン…シロ…そしてクロ……君らもそこにいるんだろう)

エレカ(……ずっと…謝らなきゃ……って…思ってたんだ……)

エレカ(あのとき…君たちを利用してまで…私は魔王になったんだ…)

エレカ(…きっと許されないだろう)

エレカ(だけどこのまま負けて…なにも出来ないまま死んでしまったら…)

エレカ(私自身が私を許せないと思う……)

エレカ(せめて私は自分を許したいんだ…)


そして、もうひとつは…


エレカ(もしかしたら私は、こんな形で手にした魔王の座に)

エレカ(納得がいってなかったのかもしれない)

エレカ(もしこのまま負けてしまっても…『どうせ正当な手段で魔王になったんじゃないから』と)

エレカ(自分に言い訳をするつもりだったのかもしれない……)

エレカ(だけど……父上、あの時…)


マグナ『エレカよ、お前はお前が望むように生きよ』

マグナ『たとえその先に何があろうが、わしは黙って見ている…』


エレカ(私の望むように…きっと父上は、私がこうすることを…あの時すでに分かっていたんだ)

エレカ(では…父上が望まなかったこの戦争を!父上を手にかけてまで奪った魔王の座を!)

エレカ(ここで捨ててしまったら私はいったいどうなる!?)


エレカ(私のすべきことは…この戦いに勝って『私の魔王』を父上に見せることだ)

エレカ(それが償いなんだ…!)


もうひとつは…『使命感』


エレカ(セラフィム…私は『陳腐』と言ったけれど…だけどあなたの言うとおりだ……)

エレカ(何も出来ないまま命の炎が尽きてしまうなんて…そんなの耐えられない…)

エレカ(私が魔王になってまだ一月も経ってないんだから…)


エレカ(…終われない!こんなところで!!)

セラフィム「いつまでもいつまでも…ふらふらふらふら…」

セラフィム「目障りだ!」ブンッ!!

ゴスッ!!

エレカ「……」グラッ

ドサッ


クレア「おい…!今の倒れ方はやべぇぞ…死んでねぇだろうな!」

シェアリ「エレカ!!」ダッ


エレカ「手を…出さないでくれ……」


クレア「…あぁ…!?」

クロ(そんな…まさかまだ……)


エレカ「やっと…わかったんだ…私の…」グッ

エレカ「すべきこと…が…」ヨロヨロッ…


エレカ「こ…れ…は……」

エレカ「私の戦いだ…!」


セラフィム「……立てる…立つ…のか…しぶといな」

セラフィム「……ん?」チラッ


シェアリ「!」バッ


セラフィム「…なんだ…?いつの間にか…増えてるな…有象無象……やるか?」

セラフィム「…だが俺が待っているのはお前たちじゃない…」クルッ

エレカ「……そうだね…」

セラフィム「………」

エレカ「少しは…落ち着いたのかな」

セラフィム「…まぁな……でも」

セラフィム「やっぱりお前…イラつくよ」ギラッ

エレカ「……!」バッ


セラフィム「…神剣(グレイヴァ)!」ブンッ!

エレカ「黒雷槍(コクライソウ)!」バリバリッ!


ギキィイイン!!!


クロ「あれでまだ動けるなんて…どうして…」

イン「…僕にはなんとなく分かる」

イン「あのとき…シロを守るためなら…僕は何度だって立ち上がれた」

イン「きっと…なにか『本能』みたいなものが、止まることを許さないんだ」

シロ「……でも、ボロボロだよ……」

シェアリ「……」

クレア「こいつが最強ってのは嘘じゃねぇ…ヤバい感じがビシビシする…」

シェアリ「分かって…ますわ…」

シェアリ(だけどエレカも…この力は…)


エレカ『魔王と…ルシファルと戦って…なにもできなかった。あのとき君が来なかったら死んでいただろうし』

エレカ『私も案外大したことないってことが、よくわかったよ』

エレカ『ああいう、格が違う相手と少しでも渡り合うためには、もっと大きな力が必要だ…』


シェアリ「その結果が…黒い雷(それ)ですのね…」



エレカ「はぁぁっ!!」ブンッ

ギギギギギ…!!

セラフィム「死にぞこないが…よくもここまで食らいついてくるな…」

ガキンッ!!

エレカ「くっ…」

セラフィム「無駄なんだよ…お前の底はもう知れてる…お前じゃ俺を満足されられないんだよ…」

セラフィム「そしてこの地獄は滅びる…俺が滅ぼす!」ドガッ!!

エレカ「ぐあっ…」ドサッ

セラフィム「いくらお前が泣こうが喚こうが暴れようが…この流れをお前に止めることはできない…解ってるんだろ?」

エレカ「……」

セラフィム「お前がいくら粘ってもこの未来は覆らない!」

エレカ「覆らない…未来が?……」ピクッ

セラフィム「そうだ…」ブンッ

ギィンッ!!

セラフィム「!」

エレカ「…わかってる…分かってるさ…私が未熟で、あなたを止める力を持たないこと…私自身が一番よく理解してる」グググ…

エレカ「だけど…訂正しろセラフィム…『未来は覆る』…!」ギラッ

セラフィム「……覆らねぇよ…地獄は滅ぶ…何も残さずにな…」

セラフィム「お前らが俺を止められずに!今この場に俺を立たせている時点で!決まってるんだよ!」

エレカ「……その未来には…一つの誤りもないのか…」グッ…

セラフィム「…なに?」

エレカ「私がいくら弱くても…あなたがいくら強くても…たとえこの地獄を破壊されようと…」グググッ

エレカ「なにか一つ…なにか一つでも残せるなら…」グググググッ

セラフィム(…押し返してくるだと?)

エレカ「そこからまたやり直せるんだ…ッ!」バッ!!

エレカ「黒雷撃砲(コクライゲキホウ)!」バリバリバリバリッ!!!


シェアリ「そうですわ……止まりませんわよ。エレカは…」

クレア「頑固だからな…ああ見えて。怖ぇえくらいに…」

セラフィム「やり直せる…か……」

セラフィム「戯言だな…!神剣(グレイヴァ)!」ブゥンッ

バシュウウンッ!!

エレカ「…戯言は…あなたの説く未来のほうだ!」ダッ!!

セラフィム(向かってくる…!?こいつ、正気か…)

エレカ「やり直せる…」グッ

エレカ「やり直してみせる!!」ブンッ

セラフィム「馬鹿が…消されると分かって直接殴ってくるとは…!」シュッ

ボッ!!

セラフィム「……!」

エレカ「はあぁっ!!」グオオッ

セラフィム(消えていない…消したのは『雷の装甲』!腕を覆っていたのか…あの男(レクラン)が刀に『煙のコーティング』をしたのと同じように!)

バキィッ!!!

セラフィム「ちっ…!」ヨロッ…

エレカ「あなたが何をしようが…地獄は終わらない!必ず進んでいける!」

エレカ「そして導いていく!この私が…だから今、戦うんだ…!」

セラフィム「お…前…ごとき…が…」

セラフィム「俺の未来を穢すなよ…!」ブンッ

エレカ「その先を見ているだけだ!!」バッ

バリバリバリバリバリバリッ

エレカ「双雷槍・螺旋!」ギュルルルル…ッ


クレア「二本の雷槍を重ねた…!来るぜ…」

シェアリ「エレカ最強の武器…そこにさらに黒い雷の力が…!」


エレカ「雷神黒槍(ライジン・コクソウ)!!」ギュイイイイイッ!!


セラフィム「そんなモノで俺の神剣が止められると思うな!」ギュオッ!!

ガキィン!!!

エレカ「く……!」

ギギギギ…

セラフィム「よく保ったが…ここまでだ…!」


父上…見てますか…?


エレカ「歴史はいつだって…進歩の積み重ねだった…そして…」

エレカ「それを導いていくのが…王……!」


これが私の『魔王』です…!


エレカ「あああああああああああああああああああああ!!!」グオッ!!!

セラフィム「……!!」


パキィイイン…!

パキィイイン…


セラフィム(……砕けた…神剣が…出力で負けた…?)


エレカ「よそ見するなぁあああッ!!」

セラフィム「!」バッ

ドスッ!!!


セラフィム「が………!」

ズザザザザザザザザザ…


クロ「当たった…!」

イン「しかも吹き飛んだ…確実に入ったんだ…」

シロ「………」


シェアリ(エレカ…答えが出たんですわね…あなたの中で)

クレア(……だけどありゃ…)


エレカ「はぁ…はぁ…はぁっ……」




セラフィム「………」

セラフィム「………はぁあああああ…」

セラフィム「…背に腹に…ここまで…傷を負わされることになるとはな…」ブシュッ

セラフィム「だがそんなことより……」チラッ

シュウウウウウウ…

セラフィム「…神剣を…砕かれたのは…初めてだ…」

セラフィム「驚いた…まさかそれだけの力を持っていたとは…」

セラフィム「………」フー…

セラフィム「双・神剣なら押し切れただろう…だがそんな言い訳を今更するのは…ダサいよな」

セラフィム「お前が俺を楽しませるほどの力を見せてくれるとは思わなかった…」

セラフィム「すっかり…イライラも収まったぜ……それじゃ」スッ

セラフィム「ここからは…俺が……」

セラフィム「本気を出そう」


セラフィム「双・神剣(ディオ・グレイヴァ)」ブゥンッ

エレカ「はぁっ…はぁっ……」

エレカ(……片方は今砕いたはずなのに…もう再生している…私の雷の力と変わらないか……)

エレカ(それでもいいさ…)

エレカ(私だって…これで終わりじゃない)


セラフィム「…覚えてるか?」

セラフィム「最初にこの能力を…『今は半分に抑えている』と言ったのを……」


エレカ「………」


セラフィム『これが俺の能力…神剣(グレイヴァ)』

セラフィム『お前の言う通り斬撃…つまり剣だよ…今は半分に押さえてるがな』


エレカ「さぁ…どうだったかな……」


セラフィム「この剣はもともと一本きりだった」

セラフィム「それを二本に分けたのが今の『双・神剣』」

セラフィム「そしてそのうち一本だけで戦っていたのが『神剣』」

セラフィム「お前が砕いたのは俺の全力の半分程度の力だ」


エレカ「……それがどうした…今さら私の心を折ろうと?」


セラフィム「…とは言え」

セラフィム「半分程度とは言え、だ。本当に…予想外だったんだよ…」

セラフィム「俺の神剣を打ち破ったのは」

セラフィム「だから特別に…全力を見せてやる」

セラフィム「真化(エボル)」スッ

グググググッ…


エレカ「………」

エレカ(二本の神剣が…一つになっていく…)

エレカ(私の雷神槍と似ている…?いや、あっちはアレが『本来あるべき姿』というわけか…)

エレカ「…関係ないんだよそんなことは……」パリッ…

エレカ「私も…本気だ…」

バリバリバリバリバリバリッ!!!



シェアリ「…互いに本気を……」

クレア「あいつ…アレ以上の力を使う気か……」

クロ「…エレカ…お願い……」

クロ「負けないで…!」

セラフィム「……俺が勝つかお前が勝つか…どっちが勝つかは分からんが」

セラフィム「これで間違いなく終わるぞ…なにか」

セラフィム「最後に言っておきたいことがあるか」


エレカ「そんなもの……」

エレカ(…そういえば、名乗っていなかったな…今さら…遅いけど)

エレカ「いや……」スゥウ…

エレカ「私の名はエレカ・グロード・アステリス!!この地獄の魔王として、あなたをここで倒す!!」バッ


エレカ「魔雷の獅子王(グロード・ライ・ライガー)!!!!!」

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!!


シェアリ「魔雷の獅子よりさらに巨大な…!?」

クレア「これが…エレカ……!!」


セラフィム「…いいぞ…認めてやる…こっちも全力で応えてやろう!」

セラフィム「真・神剣(リオ・グレイヴァ)!」ズズズズズッ…


クロ「…上下に一本ずつ刀身が…!?」

イン「形だけじゃない…質感もさっきまでとは明らかに違う…」

シロ「き…きれい…」


エレカ「はぁあああああああああああああああああ!!」

エレカ(避けられない距離だ…行け…行け……行けッ!)

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!!!


セラフィム「ああ…許されるなら……」

セラフィム「この身を以って確かめてやりたい……味わいつくしたい……」

セラフィム「だが……俺の…俺の目的は……」


バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ

セラフィム「絶覇(ゼッパ)」ブンッ…


振るった『真・神剣』から放たれた消滅波は、襲い掛かる獅子の顎を目指して真っ直ぐに突き進んだ

そして……


バシュウウウウウンッ!!!!


エレカ「………!!」

シェアリ「消された…あれだけの大技が…跡形もなく…」

クレア「……おい!あいつの斬撃はまだ消えてねぇぞ!」


ギュオオオオオオオオオオオオオオオッ


エレカ「……」ダランッ

エレカ(持てる力…全部使った……これ以上は……)


クロ「エレカ!まだよ!避けて!!」


オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!


エレカ(もう……)


クロ「避けてーッ!!」


ボッ!!!!



…………


エレカ「……」

エレカ「……!」

エレカ(まだ…生きてる……?)


クロ「……あ…」


セラフィム「せっかくの本気に…水を指すようで悪いが……」

セラフィム「お前を今ここで殺したら…計画がおじゃんだ…だから」

セラフィム「…『左腕』を狙った」


エレカ「……え?」シュウウウウウウ…


クレア「死んでねぇよ…死んでねぇ…けど…」

シェアリ「…そんな…腕が…消えて…」


セラフィム「楽しかったぜ…最後の最後…いいものを見せてもらった…」

セラフィム「だが…一つ言わせてもらおうか」

セラフィム「…『王』でも『神』には届かない!」

今日はここまでにします

初めて2回、全部消して書き直しました・・・
一回めは先週の時点で・・・2回めは一昨日・・・遅れた言い訳ですゴメンナサイ

乙!
てっきりテンコでもきたのかとおもった

『激烈裁雷』で自身を強化するには制限時間がある

エレカはそれを遥かに超えて活動し続けていた

無理に無理を重ねたその結果が……


エレカ「あ……腕……」


誰の目にも明らかな…完全敗北


クレア「……ッ」

シェアリ「こんなことって…」


セラフィム「………くく」

セラフィム「くくくくく…くくく……」

セラフィム「あははははははははははははは!!!!」


クレア「笑うんじゃねぇッ!!」バッ

セラフィム「ん?」

シェアリ「クレア!?」


ドゴンッ!!


クレア「く……はっ…」ドザァァッ

セラフィム「……お前、赤の女王ってヤツだろ?知ってるぜ…」

セラフィム「そしてお前は青の女王」ピッ

シェアリ「……!」

セラフィム「どうだ…」

セラフィム「負けちまったぜ。お前らの大事なお友達」

シェアリ「……」ギリッ

セラフィム「ははは…あー……」

セラフィム「でもな…よくやったほうだと思うよ」

セラフィム「まさかこの俺に深々と一撃を入れるとは…まぁ結局倒せなかったんじゃ意味ないが…」

セラフィム「そして俺をここまで本気にさせてくれたのもお前が初めてだ」

セラフィム「あるいは…俺が我を失ったまま…お前を攻撃していたら…」

セラフィム「お前を殺してしまっていたら…計画は失敗。それはそれでひとつの『勝ち』だったかもな」


エレカ「………」


セラフィム「言葉も出ないか?」

セラフィム「なんだかお前なりにいろいろ考えて…熱く語ってたようだが…」

セラフィム「力の伴わない思いほど白々しいものもないよな」

クレア「テメェっ!!!」

セラフィム「うるせぇな…いちいち吠えるなよ…」

セラフィム「もうお前らに興味なんてないんだよ…お前らこいつより弱いだろ?だから助けられなかった…違うか?」

クレア「……万全な状態ならテメェなんて…アタシの敵じゃねぇよ…!」

セラフィム「だがココはそんなたらればが通じる世界じゃないぜ」スッ

セラフィム「蹴り飛ばすぞ、防御しろよ」ヒュ…

クレア「!?」バッ

ゴッ!!!

クレア「……!!!」グオッ

クレア(まっ…マジかよ……)

クレア(蹴り飛ばすって…文字通り…クソ…こんな野郎が……)

ズザアアッ

クレア(……こんな野郎と…渡り合ってたのかよ…アイツは…)


シェアリ「クレア…!」ダッ


セラフィム「ふん…あとは…」チラッ

セラフィム「お前らだな」


クロ「…!」

イン「!!」

シロ「わぁっ!!」サッ


セラフィム「お前らチビはなんなんだ…?いや…黒いのは知ってる…元魔王の娘とか言ってたな…」

クロ「この子たちは私の妹よ!!…手出しはさせない!」バッ

セラフィム「手出しなんてするかよ…ただこれ以上視界の端でチラチラされるのも目障りだ…ご自慢の羽でさっさと飛んで逃げたらいいじゃねぇか」

セラフィム「………待てよ」

セラフィム「会うつもりはなかったが…お前らを使えば元魔王と戦えるのか?」

クロ「……なっ…!!」

セラフィム「それなら面白そうだ!」ダッ


シェアリ「線水貫(アクア・レーザー)!」ビッ!!


セラフィム「!!」バッ

スパッ!!


セラフィム「……」

セラフィム「……へぇー」ポタポタ

セラフィム「つまり……闘るんだな?俺と…」


シェアリ「そう受け取って…構いませんわ…!」

己の力を過信しているわけでも…確実に勝てる策があるわけでもない…

それでも…

自分しかいないのだと…そう理解したときには…


クレア「シェアリ……!?」

シェアリ「悪いけどアナタそのままそこで横になっててくださる?」

クレア「できんのかよ…お前に…」

シェアリ「…さぁ…でも…」

シェアリ「体が勝手に……」


セラフィム「あ~……こんな不意打ちも避け切れんとは…俺もちょっと疲れてるな…」グイッ


シェアリ(かすっただけ…だけど…まったく届かないレベルではない…)

シェアリ「すぅ…はぁ……」

シェアリ「やる……しか…ありませんわね…」スッ

セラフィム「ま、いいや…やろうぜ…」ザッ


エレカ「………」

エレカ(シェアリ……闘うのか……でも無茶だ…君じゃ勝てない……)


セラフィム「神剣(グレイヴァ)」ヴンッ


シェアリ「……」

シェアリ(あの剣は触れたものを消す…だけどエレカの雷なら受けられた…きっとワタクシの水でも)

シェアリ「でき…」

ボッ!!!

シェアリ「……は…?」パラッ

セラフィム「おいおいおい…ちゃんと動けよ…」

セラフィム「次は首を狙う…」スッ

シェアリ(早い…いや今のは完全にこちらの油断が原因…!)バッ


シェアリ「剛水腕(アクア・ナックル)!!」シュルルルル…


セラフィム「…お…水の拳か?」バッ

シェアリ「はぁっ!!」ブンッ

セラフィム「なら…」グッ

ゴッ!!!

シェアリ「!!?」

セラフィム「素手で十分!!」


クロ「あいつ…また『遊んでる』…!エレカ相手にやってたことと同じだわ…」

シロ「お、おねえちゃぁん…逃げようよ…」ビクビク

クロ「いえ…せっかく命拾いしたところ悪いけど…逃げるわけにはいかないわ…」

クロ「イン!シェアリを援護するわよ!」

イン「うん…分かった!」

シェアリ「旋水貫(アクア・スパイラル)!!」バシュッ

ギュオオオオオッ


セラフィム「ふん…そんな水球…!」バッ

バシャァァアアン!!

セラフィム「サッカーでもする気か?」


シェアリ(ただの蹴りで…!)

シェアリ「つくづく化物ですわね…!」

セラフィム「化物?違うな…最強だ!」ブンッ

シェアリ「防水障壁(アクア・リフレクト)!」ザバァアアアッ!!

バキィン!!

セラフィム「!!…盾など!」

ガッ! ガッ!! ガッ!!!

セラフィム「無意味!」グオッ

バシャアアアッ!!

シェアリ「水弾連射(アクアマシンガン)!!」バシュシュシュシュシュ!!

シェアリ(水の盾で予備動作が見えていない状態…そしてこの至近距離なら止められない!)

セラフィム「そんな……細かいの……」

バシャバシャバシャッ

セラフィム「防ぐ価値もない!!」ズオッ

シェアリ(全部当たったのに、まったく怯まない…!?)

セラフィム「水遊びはもう終わりか!?」ブオンッ!!

シェアリ(まずい…避けられない…なら!)バッ

ザブンッ

セラフィム「!…水球?だがさっき撃ってきたのとは違う…」

シェアリ「それは…こうして使いますのよ!」スッ

ズズズズズッ

セラフィム「腕を伝って登ってくる?…まさか!」

シェアリ(いくら身体能力が高くても、水の中で息を止めていられる時間には限界があるはず…!)

シェアリ「水遊び『は』ここまでですわ!溺愛水泡(アクア・ラヴァーズ)!!」

ズズズズ…

セラフィム「………」スッ

シェアリ「無駄ですわ…その水球から自力で逃れることはできない!」

セラフィム「ごぼごぼごぼごぼ…」パクパク

シェアリ「……え?」

セラフィム(逃れなきゃいいんだろ?)

ブンッ

シェアリ「なっ…!!」

ゴッ!!!

シェアリ(そのまま攻撃を…!?)

シェアリ「く…」ヨロッ

セラフィム「……」スッ

シェアリ「…なんですの…その三本指は」

セラフィム「ざんぶん…」ごぼごぼ…

セラフィム(水に顔突っ込んだまま闘うのは初めてだが…3分は保つ)

セラフィム(三分あればお前を殺せる。お前を殺せばこの水が消える)


クロ「……シェアリ!!そいつはそのくらいじゃ止まらないわ!!」


シェアリ「……みたいですわね…」

シェアリ(だけど…ワタクシも携帯用水瓶の水をほとんど使いきってしまいましたわ…せめてあの二人組との戦いがなければ…)

シェアリ(これで倒せなかったら、もう手がない……!)


セラフィム「……」ゴボゴボ

ブンッ!!

シェアリ(そのまま食らうのはまずいですわ…当たる部分だけごく少量の水の盾を…!)ザバッ

バキッ

シェアリ「くっ…!!ほとんど役に立ちませんわね…!」

セラフィム「………」ゴボゴボ

セラフィム(節約してる場合か?)

シェアリ「硬水枷(ヴァダー・シェイクル)!!」シュルルルルルルッ

セラフィム「?」

ギュウウウウッ…

セラフィム「………」

シェアリ「足を縛らせてもらいますわ…このまま時間までアナタは動けない…卑怯と呼んでもらって構いませんわ」

セラフィム「……ひきょう?」ゴボゴボ

セラフィム(この程度の小細工がか…?)グルンッ!!!

バシャアッ!!

シェアリ「……こ、これさえも…!?」

セラフィム(あと二分か)ダッ

シェアリ(まずい…もう水がな……)

シェアリ「……!」ピクッ

シェアリ「ある…?」バッ

シュルルルルルルッ

セラフィム「!!」

シェアリ「剛水腕(アクア・ナックル)ッ!!」ブンッ

ドゴッ!!!

セラフィム「……!」ゴボボボッ

セラフィム「……」ザザァッ

セラフィム(…節約してたんじゃなかったのか?…さっきまでは確かにそう見えたが…)

セラフィム(しかし参ったな…今の一撃で2分保ちそうだったのが1分凌げるかどうかって感じになっちまった)


シェアリ「はぁ…はぁ…」

シェアリ「気づきませんでしたわ…いつの間にこんな霧…」

シェアリ「アナタですわね…」チラッ


イン「……姉さんの判断は予想以上に正しかったね」

イン「君の能力は周囲の水分を掻き集めなきゃならないんだろう?」

イン「僕の『バイ・セカンド』でこの屋上一帯を『濃霧』にした!これで水分は補えるはずだよ」

クロ(とは言っても…たぶんあの上級悪魔の戦いを見てなかったらこんなこと思い浮かばなかったわ)


シェアリ「…素直に感謝しますわ…ふたりとも…」

シェアリ「さぁ熾天使!覚悟なさい!!」バッ

シェアリ「線水鞭(アクア・ウィップ)!!」バシュッ

キュウウウウウウウウンッ…

セラフィム(あの細さ…ちょっとマズいな)バッ!!

スカッ


クロ「あの速さの鞭を見切った!?」

イン「しゃがんで避けた…!」


クレア「…シェアリ!!まだだァ!!!」


シェアリ「分かって…ます…わ!」ガシッ

グンッ

セラフィム(振り切った右腕を左手で無理やり…まさか…)


シェアリ「はぁあああああああああああっ!!!」

ビュオンッ!!!

セラフィム(もう一撃か!!)


スパッ!!!



クレア「……クソッ…!」

クロ「どういうことよ…!」


セラフィム「なにがだよ…」

セラフィム「ヤバいと思ったから能力を使わせてもらった…それだけじゃねーか」ブンッ…


クロ「能力は使わないって…!!」


セラフィム「そんな約束した覚えはねぇよ…ただ、使うまでもないと思ってた相手が予想以上に粘ったってだけだ」

セラフィム「当然あの鬱陶しい頭の水球も消させてもらったぜ」

セラフィム「さて…」スタスタ

セラフィム「…勝負あり…でいいよな」

シェアリ「くっ…」

セラフィム「まぁ……腐っても女王…その辺の雑魚と比べればずいぶんマシだが…」

セラフィム「一つ言わせてもらうと…」ヒュッ

ドゴッ

シェアリ「……!!」ヨロヨロ

セラフィム「体も鍛えたほうがいいぜ」スッ

グイッ

シェアリ「!?」ガッ

セラフィム「じっとしてろよ…下手に動いたらこのまま絞め殺す」

シェアリ「なっ……ぐ…!」グググ


クレア「…おい!テメェ…どういうつもりだ…!?」


セラフィム「お前に用はねぇよ…」グイッ

シェアリ「…!!」

セラフィム「魔王!」

エレカ「………」

セラフィム「そろそろ動けよ…左腕消しただけで死ぬわけじゃねぇんだから」

エレカ「………」

セラフィム「……まぁ…そりゃ落ち込むよな…地獄を背負って戦った…頑張って…頑張って頑張って…頑張った」

セラフィム「だけど…『頑張ったけど負けました』が通じないのは…お前が一番よく解ってるんだろ?」

セラフィム「だからさ」

セラフィム「早く案内しろよ。兵器のところに」


シェアリ「……!!」

クレア「兵…器…!」


セラフィム「わざわざ左腕だけ消して戦意を奪って…わざわざこいつを人質に取って」

セラフィム「そうまでして果たしたい目的が俺にはあるんだよ」

セラフィム「だから…さぁ、立て」


エレカ「………」


セラフィム「立て…立て…」


エレカ「………」


セラフィム「立て!!!!」

シェアリ「…エレカ!こんな…こんな奴の言うこと聞く必要ありませんわ…!」

セラフィム「……はぁー…」グッ

シェアリ「う…ぐっ…!!」グググ…

セラフィム「じゃ、いいよ。こいつはとりあえず殺そう。次は赤いのが人質だ」

シェアリ「なっ……!」

クレア「……やめろ!!だったら最初からアタシを人質に…」


セラフィム「別に俺は…どっちでもいいんだよ。ただ、こいつがこのまま黙り決め込むなら…」

セラフィム「もう、誰も残さない」


クロ「……やめて…やめてよ…こんなの…!」

セラフィム「……」

クロ「兵器…っていうのが…どんなのか知らないけど……」

クロ「そんなものを蘇らせて、どうしようっていうのよ!!」

セラフィム「悪魔を、地獄を滅ぼす」

クロ「どうしてそんなことを!!」

セラフィム「………どうしてって…」

セラフィム「だってそんなこと今まで誰もやったことないんだぜ」

セラフィム「そういうのって…なんか…」

セラフィム「ワクワクするだろ?」

クロ「………!」

イン「そ、そんな理由で…」


クロ(ダメだ…こいつは…もう……)

クロ(どうすることもできない…!)


「わかった」


クロ「…!」



クレア「…おい…!!」


エレカ「……」ゆら…


セラフィム「…何が分かったって?」


エレカ「…案内する…兵器の…場所に……」


セラフィム「……それでいい」

シェアリ「…そんな…どうしてワタクシなんかのために…!!」

エレカ「……」フラッ

ガクンッ

セラフィム「……ん?」

エレカ「…はぁ…はぁ…」カタカタ

セラフィム「………ふん」

セラフィム「見た目もそうだがどうやらそれ以上にボロボロのようだな…」

セラフィム「…心が」


エレカ「……っ」カタカタ


セラフィム「…お前も来い」

クレア「…あ…!?」

セラフィム「せっかくだし…王女三人揃って見てけよ…記念すべき兵器復活」

セラフィム「あと…そうだな、右腕一本じゃいろいろ不便かもしれないから…お前がサポートしてやれ」

クレア「…ふざけ…てんのか」

セラフィム「別に」

クレア「ふざけてんのか!!!」

セラフィム「……」

セラフィム「なんなら…今この場で殺しても…」

セラフィム「兵器が復活すればお前らはいずれ全滅だ…今のうちに死んどくのもアリっちゃアリかもな…」

クレア「……この野郎…!」


エレカ「クレア…君も来てくれ……」

クレア「……それは『助けてくれ』って意味かよ…」

エレカ「………いや」

エレカ「もう、どうしようもない……」

クレア「………チッ」ザッ


セラフィム「…ほら、離してやるよ…」パッ

シェアリ「うっ…げほっ…げほっ」ヨロッ

セラフィム「まぁお前にも着いて来てもらうがな…」

シェアリ「くっ…!」キッ


セラフィム「……」

セラフィム(一番つまらないのはこれだ)

セラフィム(三人共、自由の身だというのに…)

セラフィム(…『諦め』という見えない鎖にがんじがらめにされてやがる)

セラフィム「………なぁ」スッ

セラフィム(いつ来るんだ?お前は…)

今日はここまでにします

夜はどうしても手がかじかんでツラいです・・・

あ、復活してる・・・
また近いうちに更新します・・・

復活オメ!

セラフィム「さぁ…案内してもらおうか……兵器の場所に」

エレカ「………」

セラフィム「…今さら『実は知りません』『この城にはありません』なんてヘタなウソ吐くなよ」

エレカ「…分かってる」ヨロッ

セラフィム「……お前らもだ」

クレア「チッ…!」ザッ

シェアリ「……」スタスタ

セラフィム「………」

そうじゃないだろ

お前らのすべきことは俺に抵抗することだろ!?

セラフィム「………やっぱ…」

セラフィム「殺すかぁ。どっちか…」スッ

シェアリ「!?」

クレア「…あ!?」

セラフィム「なんだろうな…やっぱ何にしてもそうだけど…あんまり素直すぎたり順調すぎるのも面白くないんだよ」

セラフィム「ここでどっちか片方潰しておけばお前らマジになってくるか?」

セラフィム「なぁ…どうだよ魔王」

エレカ「………」

エレカ「そんなことをしてみろ…」ギロッ

セラフィム「!」

エレカ「私も死んでやる…今この場で…兵器の場所を明かさないまま……!」

セラフィム「……」

セラフィム「そりゃーよくないな…残った天使総掛かりで探してもいいが…なにか一手間あったら面倒だしな」

セラフィム「悪かったよ…そんな睨むなって…さあ、さっさと導いてくれ」

エレカ「……」クルッ

スタスタ…


イン「ね、姉さん…このままじゃマズイよ…兵器っていうのを復活させる気だ…」

クロ「………ど、どうしよう…私…どうしたら……」

シロ「……」ガタガタ

クロ(シロが怯えている…もしかしたらシロは私達よりずっと…あいつの強さに敏感なのかもしれない…)

クロ「…こ…ここは…あいつを追うべきじゃない…死に急ぐことにしか、ならないわ…」

イン「でも…それじゃ…」

クロ「……私にだって」

クロ「どうにもできないことがあるわよ……」

イン「…姉さん……」

クロ(上級悪魔も来た…あいつの部下も裏切った…シェアリも戦った…)

クロ(チャンスはもうすべて使い果たしてしまった…の…?)

クロ(でも…もし…もし誰かいるなら……お願い)

クロ(助けて…!!)

黄の城・地下

セラフィム「ふん……こんな地下がね…もしかしたら実はまだまだ兵士がいて俺の首を獲ろうとしてる…とか、そんな気になるじゃないか」

エレカ「…もう、そんな兵力はないよ」

セラフィム「………それは残念。本当に残念だ」

クレア「……てめーが」

クレア「てめーがいきなり現れて宣戦布告してきたんだってなぁ」

クレア「なのに『用意が不十分』とでも言いたそうじゃねーか。あぁ?ふざけてんのかよ」

セラフィム「なら幾月が必要だった?」

クレア「…なに?」

セラフィム「いや、幾年か?いったいどれだけ待てば俺を止めるに相応しい戦力を揃えられた?」

クレア「そ…それは……」

セラフィム「兵器が手の内にあるという安心感…いざとなればこれを復活させて…それでもって俺らを撃退できる…とか」

セラフィム「そんな風に思ってたんじゃないか?今までずっと…」

エレカ「違う」

セラフィム「…なにが違うって?」

エレカ「兵器を復活させられる状況になったのはつい最近だし、しかも私には兵器を復活させることはできなかった」

エレカ「そしてそれを知ってて攻めてきたんだろう」

セラフィム「…ああ、知ってた」

セラフィム「お前たち王族では兵器を蘇らせることはできない」

セラフィム「そして一方で俺は天国にいながら遠く離れたここ地獄で兵器復活の手筈が整ったことを感知できた」

シェアリ「何故…そんなことが…」

セラフィム「で?この地下のどこに兵器を……」

エレカ「ここだ…」スッ

セラフィム(…普通の壁?いや、違うな…)

セラフィム「この奥から匂いがする!」

エレカ「…開け」

ゴウンッ…

セラフィム「………なるほど、一部の者にしか開けないようになっているわけか…当然だな」

セラフィム「そしてこれが…兵器…」

クレア「テキトー言ってんじゃねぇよ。真っ暗で見えてねぇだろうが」

セラフィム「いや…分かる…」スタスタ

セラフィム「見える…球体が…これはまるで…」

セラフィム「中の物を護る『殻』…」

クレア「!?…マジで…見えてんのか…!」

エレカ「………」

セラフィム「鍵はもう…揃えてあるんだよな」スッ

シェアリ「だけど復活は…」


セラフィム「ああ、『お前ら』じゃ無理だ」ピタッ


ドクンッ

クレア「…っ!?」

シェアリ「え…?」

エレカ「………」


セラフィム「ふふ……」


ドクンッ…


クレア「どうなってやがる…!?」

シェアリ「部屋全体に伝わってくる…この震えは……!?」


セラフィム「……『胎動』ってところか…」


ドクンッ…


セラフィム「お前たちが…いったい神のことをどれだけ知っているのかは分からんが…」

セラフィム「教えてやろう…この兵器の正体を…」


クレア「…兵器の…」

シェアリ「…正体…!?」


ドクンッ…ドクンッ…


セラフィム「そもそも俺たち天使…そしてお前たち悪魔とは……神が作り出した自らのコピーだ…おそらく最初期のな」

セラフィム「しかし天使も悪魔も…お互いを潰そうと敵対しあういわば『超排他的生物』。神はこれを良しとせず、失敗作とした」

エレカ「…そして…その失敗作を一度リセットするために『兵器』が作られた…」ボソッ

セラフィム「……そうか」

セラフィム「そういうことになってるのか。お前たちの中では」

エレカ「…なに…?」ピクッ

セラフィム「実際は少し違う。神はわざわざ俺たち失敗作を処理するために『兵器』を作っていたわけじゃない」

セラフィム「神は天使、悪魔に次ぐ3つ目のコピーを作ろうとしたのだ」

セラフィム「しかしその3つ目のコピーも…」

クレア「…失敗作だったってわけか…!」

セラフィム「その通り…3つ目のコピー…後に『兵器』と呼ばれるそれは、神のコピーというにはあまりにも力が強大すぎた」

セラフィム「いわば『超破壊的生物』だったわけだ」

シェアリ「……『生物』!?」

セラフィム「おいおい…お前たちまさかこの『兵器』がでかいミサイルだとかそんなふうに思ってるんじゃないだろうな?」


シェアリ(…!そうだ…あのとき…)

ラファエル『その『兵器』ってのは…どうやらお前らが想像してるような、ごっつい大砲とかミサイルとか、そういうのじゃないらしい』

シェアリ「だけど…まさか…生物だなんて…!」

セラフィム「失敗続きの神だったが…終始頭に浮かべている『ビジョン』はブレなったんだろう」

セラフィム「つまり…二本の足で立って歩き、二本の手を使って器用に物を操り、そして……」スッ

セラフィム「神の持つすべてをここに」トントン

クレア「脳…」

セラフィム「天使と悪魔が対立したのも、『兵器』があまりにも破壊的すぎるのも、この脳のせいだ…だから神は考えた」

セラフィム「脳の持つ危険な力を一定まで抑えこむとどうなるのか…」

シェアリ「抑えこむ……!?」

セラフィム「神は……3つ目の失敗作『兵器』を天使と悪魔の処理のために利用しようとしたが、これがうまくいかなかった。あろうことか悪魔に奪われてしまった」

セラフィム「やむを得ず封印をかけて、鍵を地獄に散らしたり…実は4本あるのを3本と偽ったり…まぁその辺はお前らもよく解ってるだろ」

セラフィム「そして…わざわざ「地球(アース)」とかいう惑星を用意し、そこでひっそりと…生み出されたそれは…」


セラフィム「ヒト」


クレア「ヒト…!人間か…!?」

シェアリ「そんなまさか…!」

エレカ「………!!」


セラフィム「今でこそ、こちらから地球に一方的に干渉できるようになったが」

セラフィム「そもそもそれもはるか昔に発見された神具のおかげだ。次元を超える力を持つらしいぜ」

セラフィム「で、お前らは見たことあるか?本物の人間を」


クレア「…いや…ねぇよ…」

シェアリ「ありませんわ…」

エレカ「………」


セラフィム「ま、別に見たことがなくても何も問題はないからな。だが…俺は見に行ったぞ。ついこの間な」

セラフィム「………」

セラフィム「日本という国だ。面白いところだった。別に観光が目当てってわけじゃなかったが…」

セラフィム「天国より地獄より…ずっと後に生まれたはずなのに…あの星はその文化レベルははるかに上回っていた。日本だけじゃなく他のところもそうだろう。なんだかあいつらは人種やらなにやら色々な括りを設けているが、すべて等しく『人間』だからな」

セラフィム「連中、一見とても脆弱だ…奴らは脳を制限されているから俺たちのような能力も持たない…非力な存在…と、そう思っていた」

セラフィム「だが。制限されているのに…いるからこそか…」

セラフィム「奴らは進化の余地を持っていた」

クレア「進化…!?」

セラフィム「俺たちがこの『無骨な力』に大部分を割り振った脳のキャパシティを、奴らはうまく使い、文化の向上に活かしている」

セラフィム「そしてそれは俺たちの持つ能力を越える圧倒的な力を産み出し続けている!」

セラフィム「戦うことしかできぬ俺たちとは違う…人間は『人間だけの生き方』を新たに見つけ出したのだ」

セラフィム「神がこれまで繰り返してきた失敗…破滅へと直進するしかできない俺たちの宿命を、大きく飛び越えた!」

セラフィム「もちろん争いはするが…その本能はもはや生物である以上いかなる方法を使っても抑えられないものなんだろうな」

セラフィム「分かるか?俺たち天使も、お前たち悪魔も、そしてこの『兵器』も、すべて失敗作」

セラフィム「しょせんは『人間に辿りつけなかったもの』にすぎないんだよ」


シェアリ「それが『兵器』の…いえ、ワタクシたちの正体…!?」

セラフィム「とは言え…お前たちが知りたい『答え』なるものがあるとすればそれは…」

セラフィム「今、目の前にあるこれがいったいどういうものなのか、ってことだろ?」

セラフィム「もうじき分かるさ…」


ドクンッ……


クレア「またっ…」


セラフィム「今や…こっちが地球側の文化を模倣するようになってしまった。より強い力を持つはずのこっちが、だ」

セラフィム「そして神からすれば…失敗作が失敗作を取り合ってるのなんてもうどうでもいいんだろう」

セラフィム「俺たちはあの時…人間が生み出されたときからずっと、置き去られたままだ」

セラフィム「何億年も……ずっと……」


ドクンッ……


セラフィム「なぁ『兵器』…お前を生み出した神は、もうお前のことなんてどうでもいいらしいぞ。寂しいか?」

セラフィム「だが安心しろ…起こしに来てやったぞ」

セラフィム「俺が、神だ」


ドクンッ!!!


シェアリ「!!」

シェアリ(さっきより深い…まるで地の底から揺すられるような…)


クレア「おい…おいエレカ!!本当に兵器を起動させる気だぞ!?いいのかよ!!止めなくて!!」

エレカ「……」

エレカ「セラフィム…」


セラフィム「ん?」


エレカ「なぜ…なぜ私には兵器を蘇らせることができなかった…?」


セラフィム「……もう分かってるんじゃないのか?」


エレカ「……」


セラフィム「兵器を蘇らせることができるのは、その時代で『最も神の血を濃く継いだ者』…」

セラフィム「つまり、お前たちは最初から対象外だったんだよ」


エレカ「……そう…か…」

エレカ(もう…)

もうどうでもいい……


ピシッ…

セラフィム「……!」


クレア「今の音…まさか…」

シェアリ「割れている…?覆っていた…球体が…」


ピシ…ピシッ…


エレカ(ああ…砕けていくのが分かる……)

エレカ(この球体が…じゃない……)

エレカ(私の心が……)


ピカッ!!!!!


クレア「うっ!?」

シェアリ「きゃっ…!」


セラフィム「フフ…フフフ……赤子というのは生まれたときには大声をあげて泣くものだが」

セラフィム「お前が見せてくれるのは光か…」


ピシピシッ…


クレア(全部…砕ける!)

シェアリ(眩しすぎて何も見えない…!!)


セラフィム「さぁ…甦れ……」

セラフィム「全てを原初に還すため…もう一度生まれるんだ…お前の名は」


セラフィム「兵器(リ:カオス)」


コオオオオオオオオオ……


クレア「…マジで…アタシらと同じ姿…なのかよ……」

シェアリ「この発光体が兵器…!?」


セラフィム「……美しい…」

セラフィム「…だが、まだ完全じゃないな……」


クレア「…!?おい、どういうこ…」


セラフィム「何億年も眠っていたんだから当然だな…万全の状態になるまでもうしばらく時間がかかりそうだが…」

セラフィム「この部屋は窮屈だな…お前も久しぶりに外が見たいだろう?」

セラフィム「連れ出してやるよ」スッ


クレア「おい…聞いてんのか…!」

シェアリ「…無駄ですわ…今の彼は…まるで生まれたばかりの我が子に語りかける父のようなもの…ワタクシたちの言葉なんて耳に……」

クレア「父だと…!?イカれてんのかよ…!」


セラフィム「真・神剣(リオ・グレイヴァ)」ブンッ


クレア「…ちょっと待てよ…外に連れ出すって、まさか…」


セラフィム「絶覇(ゼッパ)」カッ!!


ボッ!!!!


シェアリ「屋上まで…穴が…!」


セラフィム「さぁ、行くか…神具『天国への階段』…」スッ

スタスタ…


クレア「なっ…宙を歩いてやがる…!?」


兵器『………』フワッ


シェアリ「兵器も浮かび上がっていく…!」

シェアリ(これが…本当に生物だというのなら)

シェアリ(意識を持って…動いていますの…?)


クレア「っ…おい、エレカ!腑抜けてる場合じゃねぇぞ!!早くアタシらも上に…」

エレカ「…どうする?」

クレア「…あ!?」

エレカ「上に行ってどうする…?どうせもう…アレは私には止められない…」

クレア「バカ野郎!止められなくても…見てるだけって訳には…」

エレカ「私はそれでいい…」

クレア「!」

エレカ「散々恋い焦がれてきた兵器…どうせ私のものにはならなかったのだから」

エレカ「このまま黙って、その力を見ていたい…」

クレア「……!!」

クレア「…ふざけんな…!!」ガッ

エレカ「……」

エレカ「ここまでずっと協力してきたから…やっぱり兵器は自分のものにしたいって、そう思っているの?」

クレア「…今さら手にしようだなんて思わねぇよ…だけどこのままじゃ…」

クレア「地獄が!!アタシたちが滅ぼされちまうんだぞ!?」

エレカ「………」

エレカ「滅んでしまえばいい…」

クレア「…てめぇエレカァ!!」ブンッ

バキッ!!

エレカ「………!」ドサッ

シェアリ「クレア!!やめなさい…!!」

エレカ「……君には」

エレカ「こないだも…こんなふうに殴られた…そう…兵器を蘇らせようとしたあの日に…」

クレア「……!」

エレカ「あのときもうすでに…全部決まってたんだ…私じゃ何をやったって無意味だって……」

エレカ「私は選ばれなかったんだ…!!」

クレア「……エ…レカ…」

シェアリ「………」

シェアリ「アナタって、昔からそうでしたわよね」

シェアリ「自分のすごいところをみんなに認めてもらおうとして、いろんなことに積極的に取り組んでましたわ」

シェアリ「果てはその若さで魔王にもなって……」

シェアリ「だけど否定された…最後の最後で…アナタは兵器を蘇らせる資格を持っていなかった…」

シェアリ「あまりにも無慈悲…!耐え難い苦痛だと…思いますわ…」

クレア「………んだよォ…アタシだって知ってんだよ…!お前がどれだけ苦労してここまで来たかって、そんなことぐらい…」

クレア「だけどなぁ…こんなところで折れちまうほどお前は弱くねぇはずだろ!!?」

エレカ「……弱いさ…」

エレカ「私じゃ彼には敵わない…」

クレア「………ッ…!!」

シェアリ「……クレアは…無鉄砲すぎますわ…あの熾天使はもう誰にも止められない」

シェアリ「やってみればきっとなんとかなる…なんて…そんな次元じゃない…」

クレア「じゃあどうすりゃ…!」

シェアリ「ない…けど……」

シェアリ「…『やらなければなんともならない』ですものね…」ザッ

クレア「…お前…!」

シェアリ「ワタクシは戦いますわ。エレカにできないこと、誰にもできないこと…だからやる。やらなくてはなりませんの」

シェアリ「それがきっとワタクシの…青の女王としての使命ですわ…文字通り『命を使う』ときが来たようですわね」

シェアリ「もちろん…さんざん大口叩いてたアナタもやりますわよね?クレア」

クレア「…当たり前だろ…ムカつくんだよ、アイツ…!」

シェアリ「エレカ…アナタがこれ以上なにもしないというのなら、責めることはしませんわ…」

シェアリ「ただ、もしも」

シェアリ「アナタがワタクシを『頼ってくれる』なら。それはなにもしないのとは違いますわ」

エレカ「………っ…」

エレカ「…お…」

エレカ「お願いだ…シェアリ…クレア…」

エレカ「私の代わりに…この地獄を……」

エレカ「地獄を、守って…!」ボロボロ…


クレア「へっ…」

クレア「いいぜ。後はこのクレア様に任せな…!」

シェアリ「青の女王として…そして何より友達として。その頼みは断れませんわね…!」

シェアリ「行きますわよ!もう一度、上へ!」

クレア「っしゃあ!」


エレカ「…ありがとう…ふたりとも……」

再び、屋上


シュウウウウウウ…


クロ「なに…!?いきなり穴が…」

イン「まさか熾天使が…」

シロ「な、なにか聞こえるよ…!?」


ピカッ!!!!


クロ「!?」

イン「ま、眩しい…!」

シロ「わああっ!」



「さあ…出たぞ」

セラフィム「見えるか…これが地獄。これがかつてお前が滅ぼそうとしていた大地だ」

セラフィム「覚えているか…?」

兵器『………』


クロ「な……あれ…は…?」

イン「光ってる……天使?悪魔?僕たちと同じような姿だ…」

シロ「なんで…浮いてるの…???」


セラフィム「ああ…いいんだ。無理に動こうとするな」

セラフィム「時間はいくらでもある…ゆっくりやればいい」

セラフィム「もう、お前を止められるような奴はこの地獄には誰もいないんだ」

セラフィム「そう…誰も……」


クロ「何を言ってるのか聞き取れないけど…話しかけてるんだわ…」

イン「まさかあれが兵器…?だけど、とても攻撃的なようには…」

シロ「…ね、ねぇ…ねぇ…なんで浮いてるの??」

クロ(あれがなんなのか分からない以上…ヘタに動くわけにはいかない…)

クロ(幸い、彼の意識はこちらにまったく向いてないみたいだし…逃げるなら…)

クロ(…逃げる?…逃げるってなに!?どこに逃げればいいの…?)

クロ(最悪、あれが兵器なのだとして…あれが暴れ始めたらこの地獄に逃げ場なんてないんじゃ…)

クロ(だったら今のうちにあいつを倒す…?)

クロ(…無理だわ…セラフィムはもう私達じゃどうしようもない…)

クロ(でもなにか…なにか考えないと…私達全員が生き残る方法……)

クロ(生き残る方法……)

クロ(……ダメだ…何も浮かばない……!!)


シロ「ね、ね、おねえちゃん…」

クロ「な…なに…?大丈夫よ、あなたは私が絶対に守…」

シロ「誰かくるよ…」

クロ「…え?」

イン「誰か来るって…どういう…?」



「熾天使ィ!!!」


クロ「!」バッ


クレア「これ以上好き勝手やらせねぇぞ…」

シェアリ「エレカが守ろうとした地獄を…滅ぼさせるわけにはいきませんわ!」


クロ「クレア…シェアリ…!よかった、無事だったのね!!」

シロ「……ちがうよ」ボソッ

クロ「え?」

シロ「もっと…あの浮いてる人と同じくらい…ビリビリする……」

クロ「…熾天使と…『同じくらい』…!?」



セラフィム「見ろ…分かるか?向こうに見えるのが赤の城。そして逆方向にあるのが青の城だ…」

セラフィム「両方とも壊すことになるだろうな…お前はどう壊したい?」

兵器『………』

クレア「チッ…愛しい我が子とお喋りかよ……無視してんじゃねぇぞコラ…!」

シェアリ「……まだ不完全な状態だと言うのなら…やるのは今しかありませんわ!」



セラフィム「……!」ピクッ

セラフィム(………なんだ?)

セラフィム(何かが…近づいてくる……)

セラフィム「これは……」

ゾワゾワッ

セラフィム「なんだ…鳥肌が……」

セラフィム(兵器…からではない…もっと…もっと俺に近しい力……)

セラフィム「………まさか……!!」バッ



オオオオオオオオオオオオオ……


ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!



この時…その場にいた全員の視線が宙に釘付けになっていた

その先にいるのはセラフィムと兵器…ではなく



セラフィム「…俺と同じその白銀の髪……」

セラフィム「あぁ…それだけで分かる……何も言わなくていい…」

セラフィム「ずっと探していた…」

セラフィム「俺と同等の存在を…『神の血を継ぐ悪魔』であるお前を!!」


?「兵器…少し遅かったカ…」バサァッ



クロ「……神の血を継ぐ…悪…魔……?」

イン「…なん…で……どうして…君が…生きて……!?」

シロ「ほ、ほんとにほんもの…??お化けじゃないよね??」



××の消息は依然として分からないそうです



クロ「メイ……!!」

今日はここまでにします

ここまで来て初めてメモ帳以外のツールに書いてました
行数が分かる便利なやつです
まぁ結局、中途半端なところで切るハメになってモヤモヤするんですが・・・

乙!
メイとか懐かしい
人間と聞いて男が出てくると思ったがそんなことはなかったぜ!

今、わけあってPCが使えない状況にあります
スマホ投稿に逆戻りです…不便ですが、なんとかします
一ヶ月ほど開いてしまったので、必ず近いうちに…

きたいしてまつよ!

うああああああああん
ワケアリで書けません。スイマセン!もしかしたらGWまで書けないかも…
でもこのまま放置する気はないのでご勘弁を…!

つまりGWにはかけるということ!

番外編

天城・大広間


デュナメイス「ついに俺たちも呼び出し食らっちまったな…お前、なんか覚えあるか?」

第五位 力天使ガンダル・デュナメイス

ドミニオンズ「ないよ…何かやらかすならガンダルのほうだと思うけど…」

第四位 主天使シャウラ・ドミニオンズ

デュナメイス「ンだとコラ!?」

ドミニオンズ「いいからさっさと入ろうよ…」

コンコン

デュナメイス「えー…第五位ガンダル・デュナメイスだ」ドキドキ
能力:離射弾(りしゃだん)…ドミニオンズの笏で吸収した相手の攻撃を、そのまま返すか、エネルギー弾に変換して放つ

ドミニオンズ「第四位シャウラ・ドミニオンズ…入ります」ガチャ…
能力:封吸笏(ふうきゅうしゃく)…笏に触れた相手の攻撃の威力を吸収してしまう


ッパーーーン!!!!


セラフィム「イッエーーーーーイ!!!!」バッ


デュナメイス「…部屋間違えたか」

ドミニオンズ「失礼しました」バタン


セラフィム「いやっ間違えてねぇよ…!」ガチャ

セラフィム「待ってたんだぜ、お前らが来るのを」
第一位 熾天使アヴァロン・セラフィム
能力:神剣(グレイヴァ)…触れたものすべてを消滅させてしまう剣

 キラキラ

      シャンシャン


デュナメイス「……なんだこりゃ一体」

ドミニオンズ「随分散らかってるみたいだけど」


セラフィム「散らかってる!?冗談じゃない、綺麗に飾り付けたんだ!」

エクスシアイ「私が、徹底的にな」ドヤァ…
第六位 能天使コバルト・エクスシアイ
能力:3つのUNIT『白蘭(びゃくらん)』『黒翳(こくえい)』『翠翼(すいよく)』


デュナメイス「なんで」

ドミニオンズ「こんなことに?」


セラフィム「知ってるか?お前らが《天》九階位に加わって、今日でちょうど一年だ」

セラフィム「今まではこんなことやったことなかったんだがな…改めてお前らを歓迎するためにこういうパーティ…もとい式典を開くことにした」


デュナメイス「おいおい…てめえそんな気の利く奴だったか?」

ドミニオンズ「……うさんくさいね」


ミカエル「どうやら人間界には『クリスマス』なるイベントが存在し、熾天使様はそれに影響されてるようだ…」ズズズ…
第八位 四大天使スレイダ・ミカエル
能力:影神(アバジャド)…あらゆる影に入り込み、自由自在に移動する


セラフィム「ミカエル…!黙ってろって言っただろうが!」

セラフィム「コホン…まぁ、俺がそのクリスマスってのをやってみたかったのは事実だ。楽しそうだからな」

デュナメイス「んで?俺らはどうすりゃいいんだ?」

ドミニオンズ「悪いけどあんまり面倒なことはやりたくないよ」


セラフィム「面倒なことだと?バカ言うな…おいお前ら!アレを持ってこい!」バッ



ゴロゴロゴロゴロゴロ…


ウリエル「お、重いである…予想以上に」
同じく四大天使ベーツェ・ウリエル
能力:氷神(グラデミド)…氷を自在に生み出し、操る

ラファエル「だから言ったじゃんよぉ!もう少し小さくしたほうがいいって!」
同じく四大天使リオン・ラファエル
能力:風神(リュクウゼ)…風を自由自在に操る

ガブリエル「あんたたちノリ☆ノリで作ってたけどねっ☆」
同じく四大天使ギルシウス・ガブリエル
能力:豪神(ユクレンシー)…腕を四本に増やし、腕力を上昇させる

デュナメイス「こりゃ…ケーキか…!?デカすぎだろ!」

ドミニオンズ「…僕の背丈の倍くらいあるんだけど」


セラフィム「もちろんお前らだけじゃない!全員で食う」ニヤッ

ケルビム「甘いも『ノハ好ミデ』はないのだ『ガナ』…」
第二位 智天使レジエル・ケルビム
能力:『暴竜の爪(ジャバウォック)』と『狂獣の顎(バンダースナッチ)』…それぞれ右腕と左腕を変異させる

スローンズ「…………………じゅる…」ボタボタ
第三位 座天使クレセリア・スローンズ
能力:痛咬寄生(パラサイトペイン)…血液から釘を生成し、自らの痛みを相手に与える

セラフィム「涎か血か知らんが垂れまくってるぞ」

セラフィム「よーし、準備できたな…では」

セラフィム「第四位シャウラ・ドミニオンズと第五位ガンダル・デュナメイスの入隊一周年と…」

セラフィム「我ら《天》九階位のますますの繁栄を…まぁなんでもいい!乾杯!」


一同『乾杯!』


デュナメイス「あんたよぉ、そんな仮面付けた状態でケーキ食えんのか?」

ケルビム「で『キナク』はない『ガ…テット』り早い『ノ』は」…ズズズ

ケルビム「左腕の『狂獣の顎(バンダースナッチ)』に食『ワセ』る!」バクン!!!

デュナメイス(味分かんのか?)



ドミニオンズ「ずいぶん気合入ったケーキだけど…何がどうなってるのさ」

ウリエル「我のアイデア、アイスケーキである!」

ラファエル「氷そのままぶち込んであるだけじゃん!?」

エクスシアイ「私が、デザインしたのだ」ドヤァ…

ドミニオンズ(飾り付けといい、見栄えを気にするタイプだな…)

ガブリエル「あたしも大☆活☆躍したよっ☆」

ラファエル「てめーは輪っかでフルーツ刻んだだけじゃん!!結構バラバラだし!」

ガブリエル「はぁ!?★喧嘩★売っ★てん★の!?★」

ラファエル「ま、たぶん…一番マジメに働いたのはミカエルじゃん?」

ミカエル「や、やめろ!私を褒めるな!ただ熾天使様のために全力を尽くしただけだ…!」ズズズ…

ドミニオンズ(こいつが影に篭ってるのって単に照れ屋だからなんじゃ…)



スローンズ「……………」モグモグ

セラフィム「よかったなぁクレセリア。お前もこういうのに憧れてただろ?」

スローンズ「……………生肉なら…もっとよかった…」モグモグ

セラフィム「………あ、そう…」

ケルビム「スローンズ…お前も『ウ少シ空』気を『読メ』…」

セラフィム「…!」

セラフィム「おいクレセリア、唇の端にクリームついてるぞ」ペロッ

スローンズ「?……………」

スローンズ「………………!」カアアアァ

ケルビム「ほ『ウ…オ前マ』だそうい『ウ表』情がで『キタノ』か」

デュナメイス「むしろあんたが仮面の下でどんな表情してんのか知りてぇよ」

数時間後…

デュナメイス「いやぁ…食った食った…」

ドミニオンズ「わかってたけど…うぷっ…気持ち悪…」

エクスシアイ「たまには、一興…こういうのも」

セラフィム「たまには、なんて言わずにこれから毎年こういうのやろうぜ…楽しいだろ!?」

ミカエル「悪くは…ありませんね」フッ

ケルビム「だが我『々モ、ソロソ』ろ本気で動『カナクテ』はな『ラナイ』ぞ…」

セラフィム「……そうだな…次は」

セラフィム「兵器復活…そして地獄を滅ぼす…!それらを実現したあとだな」

ウリエル「うーむ、はてさてそううまくゆくものであるか…」

ラファエル「バーッカ、楽勝に決まってんじゃん!?」

セラフィム「…どうだろうな…楽勝かどうかは…案外分からないかもしれないぜ」

ガブリエル「あたしは来☆年も再☆来☆年もやりたいなーっ☆」

セラフィム「だったら俺のために死ぬ気で戦えよ」

セラフィム「そして…」

セラフィム「誰も死ぬな…《天》九階位、一人も欠けないまま…来年のこの日を迎えよう」

スローンズ「………………うん…」


デュナメイス「…あ?一人も欠けないまま…ってそういや俺アルカイ見てねぇぞ?」

ドミニオンズ「あいつだけ仲間外れ?かわいそー」

セラフィム「ん…?ああ…そういうわけじゃない…」

セラフィム「あいつには重大な役目を任せてある」

デュナメイス「重大な…」

ドミニオンズ「役目…?」



………………………………………………………………



セラフィム(お前の能力で、寝てる戦闘天使たちの部屋にこっそり侵入して、プレゼントを置いてこい…きっとあいつら喜ぶぞ!)


アルカイ「なんで俺が『サンタ』なんてワケ分かんねー役をやらなきゃならねぇんだ!チクショー!」ゴソゴソ

第七位 権天使ネイズ・アルカイ
能力:天地創造(アグルディミオ)…新たな空間を作り出
す。また、空間と別の空間とを強引に繋げる




おわり

これは、ちょうど昨年のクリスマスあたりに書いたもので、本来は完結後におまけとして公開する予定だったものでした

ですが、あんまり更新できないままなのもまずいと思い、こうして中途半端なタイミングで投下することにしました

本編の更新はもうしばらくお待ちください…
いつもいつも待たせてばかりですが今回は事情がだいぶ異なりまして…本当にすみません

乙!
セラフィムは自由かわいいな

なんかほのぼのいい話みたいだけど実質バッドエンドだよな。全員やられちゃってるし
悲しいな

うーーーーーーん…
そろそろ書かねば……とは思ってます…が………

a

息抜きとか大事!

気づけばもう6月ですね…
すみません。精神的に、一段落つくまでは……

突然ですが宣伝です!

ここの屑>>1が形だけの謝罪しか見せていないため宣伝を続けます!

文句があればこのスレまで!

加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
加蓮「サイレントヒルで待っているから。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/)

待ってるからな

書かないと…

まつよ!

むだか

まとう

そろそろ更新できそうです…
というかします。頑張ります

頑張れー

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