ウサギ「甘いもの食べたいなあ」 (47)

ウサギ「美味しいスイーツいっぱい食べたいなあ。

でも美味しいスイーツ屋さん探すのはめんどくさいなあ。

そうだ、この前郵便受けに入ってたチラシ!

ごそごそ…あった!

『お菓子の列車で日帰りスイーツツアー!!

我々、ロウデント鉄道会社は、今年で創業100周年を迎えました。

これもお客様のご支援の賜物と、心より感謝しております。

この感謝の気持ちをお客様に届けるため、お菓子の蒸気機関車を製造し、

車窓から見える景色と共にスイーツを楽しんで頂くことを決定致しました。

終点では、ちょっとしたサプライズもご用意しております。

応募方法につきましては、下記のURLにて…』

これだ!さっそくインターネットで申し込もう!


…ようし、申し込んだぞ!ああ、楽しみだなあ」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450765149

ウサギ「ついにツアーの日がやってきた!

えっと、この駅が待ち合わせ場所で、時間も間違えてないよね。

ガイドさんは、ええっと…」

リス「ロウデント鉄道会社のツアーをお申し込み頂いたお客様は、こちらに集合お願いしまーす」

ウサギ「あっ!あっちだ!」

ガヤガヤ…

ウサギ「けっこうたくさん申し込んだお客さんがいるんだなあ…」

リス「皆様、本日は弊社のツアーに参加頂きまして、誠にありがとうございます。

私、本日ガイドを務めます、リスと申します。

短い間ではありますが、よろしくお願いいたします」

ウサギ「綺麗なガイドさんだなあ…」

リス「今回私どもが製造したお菓子の蒸気機関車が…あちらです!」

ウサギ「おお!あれがお菓子の蒸気機関車…なの?

今は電車ばっかりで蒸気機関車は絵本でしか見たことないけど、

なんだかお菓子で出来てるようには見えないなあ」

リス「大部分は、チョコレートで出来ております。

窓は飴細工、動力源はブランデー。

ブランデーを燃やして水を沸騰させ、シリンダーを動かしてマジパンの車輪を回すんです」

ウサギ「へえ~、本当にお菓子なんだ。

あ、良い匂いがする!ブランデーの匂いだ!」

リス「さあさあ、並んでご乗車下さい!押さないで!」

ウサギ「どの席にも机がついてるんだ。なんだかつるつるしてるなあ」

リス「壁、天井、床、イス、机は糖衣で厚くコーティングしており、

べたつかず滑らかな手触りを実現しました」

ウサギ「そうなんだ!でも、糖衣ってなんだろう」

リス「分かりやすく言うと、マー○ルチョコの表面を覆っているアレですね」

ウサギ「あー、アレか!確かにアレみたいな手触りかも」

リス「今からメイドが一品目のスイーツを配膳しますので、少々お待ちください」

ネコ「初めましてですにゃあ。わたしはメイド猫のネコですにゃあ。

一品目のスイーツはなんと!フルーツタルトですにゃあ!

よく味わって食べて下さいにゃあ。

飲み物は紅茶とコーヒーがありますにゃあ。

はい、どうぞですにゃあ。はい、どうぞですにゃあ」

ウサギ「僕は紅茶で。どうもありがとう!うわー、おいしそう!」

リス「全員行き渡ったようなので、出発致します。

なお、この列車は強度と動力源の火力の問題で、時速10kmでの運行となります。

次の駅まで約30分、フルーツタルトをお楽しみ下さい」

種族を表す時は漢字で、個体の名前を表す時はカタカナで書きます

ウサギ「ごくり…僕の好きな果物ばっかりだ!

パパイヤ、キウイ、いちご、ブルーベリー、ラズベリー…

たまんないね!がぶり!むしゃむしゃ…

うまい!」テーレッテレー

リス「果物本来のおいしさを楽しんでいただくため、カスタードクリームの甘さは控えめ。

果物は今日とれたばかりのものを使いました。

…右手をご覧くださいませ!あちらに広がる果樹園で作った完熟の果物ですよ」

ウサギ「生地もしっとりサクサクでおいしい!

…うん、紅茶にもよく合う。

このツアー、この先も期待できそうだぞ」

リス「まもなく、次の駅に到着します。15分程度休憩として停車しますので、おトイレ等、駅構内のものをご利用下さい」

ウサギ「次のスイーツはなんだろなー。

ワクワクが止まらない!食べるって素晴らしい!」



リス「…15分経ちました。お客様も全員揃っていらっしゃるようですね。

出発前に、二品目のスイーツを配膳します」

ネコ「またわたしが配りますにゃあ。

二品目はなんと!ミルクセーキですにゃあ!

冷たいから、頭がキーンとならないようにゆっくり飲んでくださいにゃあ。

はい、どうぞですにゃあ。はい、どうぞですにゃあ」

ウサギ「ミルクセーキってあんまり飲んだことないけど…

どんな味がするのかな?」

リス「それでは、再び出発致します。

次は終点、ロウデント鉄道会社本社前に停まります。約20分、ミルクセーキをお楽しみ下さい」

ウサギ「バニラアイスが乗ってる!その上にはさくらんぼ!

まずはストローでミルクセーキだけを…ごくごく…

ああ…なめらかで優しい甘さ…ちょっとプリンに似てる?

次はバニラアイスも!はむっ…ああああああああああ脳みそとろけちゃうよおおおおおおお」

リス「左手をご覧くださいませ!あちらの農場でとれた卵と牛乳を使用しています。

爪楊枝を刺しても割れない濃厚な黄身の卵、

本来の風味を損なわない低温殺菌牛乳…

おや?鶏達と牛達が手を振っていますね。

彼女らにとって、自分の卵や乳が誰かに食べられることは何よりの快楽なのだそうです」

ウサギ「そうなんだ!こっちからも手を振り返そうかな。

おーい、おいしい卵と牛乳をありがとねえ!」ぶんぶん

リス「まもなく、終点、ロウデント鉄道会社本社前です。

三品目のスイーツは本社内にてお楽しみ頂くことになっております。

どなた様も、列車が完全に止まってから席をお立ちになるようお願い致します」

ウサギ「あっ、窓の外に見えるあの建物かな?

大きい!一体、どれくらいの高さなんだろう?」

リス「…ロウデント鉄道会社本社前に到着しました。

三品目をお楽しみ頂く会場まで、私がご案内します」

ウサギ「お菓子の列車、ばいばい!

…ここが本社か!

すっごく広い敷地…さすが、100年も続く会社なだけはあるなあ。

そういえば、サプライズがあるんだっけ?なんだろう、楽しみだなあ

…うわあ、チリ1つない綺麗なエントランス!」

リス「会場は3階です。エレベーターで移動しましょう」

チーン!

リス「3階です。さあ、こちらが会場です。お好きな席にご着席下さい」

ウサギ「丸テーブルとイスがたくさん!

正面にあるのは、ステージ?かな。

…左側の壁、カーテンで何も見えないけど、なんだろう?

まあ、とりあえず座ろうかな」

リス「三品目のスイーツは、先ほどのお菓子の列車を解体し、チョコレートケーキとして作り直したものです。

表面は削り取り、中のキレイな部分のみを使うので、衛生面はご心配なく。

ただ、少々時間がかかってしまいますので、ここで…

チラシにも書いていたサプライズを行います!」

ウサギ「わー!ぱちぱち!なんだろう?ワクワク!」

リス「ステージの上をご覧下さい!」

ウサギ「ステージにスポットライトが…あれは…メイド猫の…

えっちょっとどういうこと」

ネコ「たすけて…」

リス「両手両足を縛られたあちらのメイド猫。

お客様が彼女に鞭打ち、殴打、スタンガンのいずれかを与え、楽しんで頂きます。

最初に彼女を失禁させたお客様には、豪華なプレゼントを用意しています!

名付けて『失禁チャレンジ』!」

ウオオオオオオッ…!!

ウサギ「なんでこんなに盛り上がってるの!?おかしいよ!

ネコ「やめて…お願い…」ぶるぶる

リス「語尾に『にゃあ』をつけろ!このグズ!」

バシィッ!

ネコ「ひぎぃ!?ご、ごめんなさい!にゃあ!鞭は嫌です!にゃあ!」

ウサギ「うっ…痛そう…」

リス「さあ、最初に参加したい方は?

…たくさん手が挙がっていますね。では、そこのあなた様!」

ブタ「ぶひひ…俺が最初かい?嬉しいねえ!ふごっ!」

リス「鞭打ち、殴打、スタンガンのどれにしましょうか?」

ブタ「もちろん…殴打だ!自分の手で殴りつけたい!」

リス「それでは、制限時間はお一人10秒です。はじめ!」

ブタ「顔面パーンチ!」バキィ

ネコ「あぐぅ!」

ブタ「ぶひっ!肉食動物を苛むのは爽快だぜ!次は腹パンだ!おらっ!」ドボォ

ネコ「うぶっ…げぼ…」

ブタ「そら!」…

ウサギ「うう…この状況、誰もおかしって思わないのかな…

おかしいのは僕の方なんだろうか…」

シカ「次は私の番ね!私はスタンガンがいいわ!それっ!」バチチチ

ネコ「がああああああああっ!!

あっ…あっ…」しょろろろろろ

リス「おめでとうございます!なんと、7人目のお客様が成功させました!

皆様、盛大な拍手をお送りしましょう!」

パチパチパチパチ…

シカ「いやぁ、嬉しいわねえ!どうも、どうも!

でも、こんなに早めに成功させちゃって、ちょっと盛り上がりに欠けるかしら?」

リス「サプライズはこの後も用意していますので、ご心配には及びません。

お客様には、プレゼントとして、この最新式コーヒーメーカーを差し上げます!」

シカ「まあ!コーヒーメーカー、前から欲しいと思ってたのよ!」

ウサギ「気持ち悪くなってきた…

うっ…おえええぇぇ…」びちゃびちゃ

リス「お客様!?お客様大丈夫ですか!?」

ウサギ「うう…気持ち悪い…」

リス「とりあえずこちらへ。休憩室へ行きましょう」

ウサギ「せっかく食べたものが出ちゃったよお…ぐすん」

リス「ここなら横になれますよ。どうですか?あまり体調が悪いなら、救急車を呼びましょうか」

ウサギ「ありがとう…でも、横になってれば治ると思う…

ねえ、どうしてメイド猫にあんなことを?」

リス「…?どういう意味でしょうか?」

ウサギ「どういう意味って…あんなに酷いこと…」

リス「酷いこと…でしょうか?

失礼ですが、お客様はどちらにお住まいでしょうか?お仕事は?」

ウサギ「えっ?僕は、田舎で野菜だけを作って暮らしてるんだけど…関係あるの?」

リス「なるほど。それでは、町に出ることもあまりない、ということでしょうか」

ウサギ「たまーに買い物に行くぐらいかな。それが一体何だっていうの?」

リス「なるほど。どうりで知らないはずですね…」

リス「私は一介の鉄道会社社員にすぎないのですが、僭越ながらこの国の歴史について説明させて頂きます。

大昔、草食動物は肉食動物に狩られるだけの存在であり、逃げ隠れしながら暮らしていました。

肉食動物に対抗できるのは、非常に体格の良い草食動物が窮地に追い込まれた時のみだったのです…

三百年前までは。」

リス「三百年前、とある地域の動物達に突然、様々な変化が起こりました。

最近の研究では、変化が起こったのとほぼ同じタイミングで、同じ地域に隕石が落ちてきたことが分かっています。

この隕石が原因で動物達に変化が起こったのではないか…と言われています。

この隕石に何らかのウィルスのようなものが付着していたとする説、隕石が放射能を発していたという説などがありますが、はっきりとしたことは分かっていません。

ただ、この変化によって、草食動物と肉食動物の関係は大きく変わることになったのです」

リス「変化は、声帯の発達、二足歩行化、『知性』の芽生えといったものでした。

肉食動物は、その後も何ら生活を変えようとはしませんでした。

自分達の肉体のみに頼ることを選び、変わったことといえば草食動物を見下すようになったことぐらいでした。

一方、草食動物は自由に使えるようになった両手と知性を最大限活かして肉食動物に対抗しようとしました。

種族間を超えた言語の発明…道具の発明…火の利用…銃器の発明…電気の利用…

いつしか、肉食動物と草食動物の立場は逆転しました。

肉食動物は奴隷として扱われるようになり、この国…草食動物連合国が創られました。

社会インフラ、法律、公共事業などを私達の祖先は迅速に整え、科学技術の進歩も怠ることなく、今に至るのです。

肉食動物は肉を食べられず反抗する力もなく、あらゆる企業で労働力として利用されています。

国外には未だに原始的で知性のない動物が蔓延っていますが、いずれはそうした動物も全て排除し、

私たち知性ある草食動物が地球上の全てを支配する、というのが現在のこの国の方針ですよ。

お客様はあまり町に行かないそうなので、知らなかったのでしょう」

ウサギ「肉食動物が…奴隷…」

リス「長きに渡って、肉食動物は私達草食動物を殺し、食べてきたのです。

下劣で愚鈍で醜悪な肉食動物には、当然の報いでしょう?」

ウサギ「でも…ガイドさんだって、虫を食べたりするんじゃないの?それはいいの?」

リス「虫には知性がありませんからね。気にする必要はないですよ」

ウサギ(うーん…なんか納得できないぞ…)

リス「体調はどうですか?そろそろ、チョコレートケーキが出来上がる頃ですよ。

先程の会場の片側のカーテンを開くと、全面がガラス張りになっており、肉食動物が労働する様を眺めながらケーキを楽しんで頂けるのですが…」

ウサギ「うっ…僕はもう少し休んでいくよ。

道はもう分かるから、ガイドさんも会場の方に行ってていいよ」

リス「左様でございますか。何かありましたら、社員に気兼ねなく話しかけて下さい。

それでは、失礼します」

ウサギ「奴隷だなんて…やっぱりおかしいよね。

肉食動物に話を聞くことはできないかなあ…

探してみよう!」

こそこそ…

ウサギ「社員さんに見つかると怒られちゃうかもしれないからこっそり探さなきゃね。

どこで働かされてるんだろう…む!あれは!」

『フロアガイド
屋上 ビオトープ
30F 社長室




5F 武器庫
4F 休憩室、小ホール
3F 肉食動物作業場
2F 肉食動物詰所
1F エントランス』

ウサギ「フロア案内だ!会場は小ホールかな?

3階に行くと会場から見られるらしいから、2階に行ってみよう!」

ウサギ「ここが肉食動物詰所…し、失礼します!」ガチャリ

「ひぃ!?そ、草食動物だぁ!」

「この時間に来るなんて聞いてないぞ…!」

「また、誰か処刑されるのか…」

ザワザワ…

ウサギ「みんなすごく怯えてる…誰から話を聞けばいいんだろう」

ライオン「草食動物様、一体どんなご用でしょうか…

も、もしや食事の大豆の量をまた減らすというのでは。

もう既に限界なのですじゃ。特に、食べ盛りの子供にとっては…

お願いですじゃ、もうこれ以上減らすのは…」

ウサギ「えーと、あなたが代表…なんですか?」

ライオン「儂がここの肉食動物をまとめております、ライオンですじゃ。

あなたは、よく見ればここの社員ではないようですな。

取り乱してしまい、申し訳ありませぬ」

ウサギ「そ、そんなに頭を下げないで。僕はただ、話を聞きにきただけなんだ」

ライオン「話と言われましても、肉体労働をしているだけでして。

儂らに話せることなど…」

ウサギ「普段どんな風に働いてるかとか、食事とか寝泊まりはどこで、とかが聞きたいんだけど…

さっき大豆って言ってたね。いつも大豆を食べてるの?」

ライオン「はい。食事は茹でた大豆に塩をかけたものと水。それも、餓死しないギリギリの量ですじゃ。

寝泊まりはここでしております」

ウサギ「ここって…布団は?」

ライオン「床に雑魚寝ですじゃ。儂らにそんな贅沢なものは、当然与えられませぬ。」

ウサギ「そんな、ひどい!もしかして、労働も相当にキツイものなんじゃ…」

ライオン「本来ならそれほど過酷でないはずなのですが、肉を食べられず体力が衰えておるのです。

毎日クタクタになるまで働かされ、過労死する者もしょっちゅうですじゃ」

ウサギ「想像以上にひどいよ…

どうして逃げ出さないの?」

ライオン「儂らは5~6頭ずつのグループに分けられ、そのうちの1頭が逃げ出せば、連帯責任で他の者が処刑されるのですじゃ。

それに、草食動物は『じゅう』という武器を使います。あれには、全く敵わんのです。

この会社にも、たくさん用意されているのですじゃ」

ウサギ「う~ん…僕がなんとかする!

みんなをここから出してあげるよ!」

ライオン「な…なぜそんなことを?

いくらあなたが草食動物でも、それは犯罪になりますぞ。

それに、儂らの祖先のことを考えれば、この扱いは当然のことだと…」

ウサギ「祖先は祖先!僕自身は肉食動物に何かされたことなんてないし、みんなもう十分償ったんじゃないかな。

ただ、1つだけ約束して!外に出られても、草食動物を食べたりしないって」

ライオン「もちろんですじゃ。大豆だけでもなんとか生きていけることが分かっておりますからの。

皆の者、それで良いか!?」

「出られる…ここから…!」

「もちろん約束は守るぜ!」

「そもそも俺、生まれた時から肉なんて食ったことねーし」

ライオン「皆、約束は守るそうですじゃ。

して、一体どのようにしてここから儂らを出すので?」

ウサギ「いくら体力が衰えたとはいえ、ここにいる肉食動物の身体…

たぶん、草食動物よりずっと強いと思う。

だから、草食動物が銃を使えなければ、簡単に出られると思うんだ。

武器庫のドアを開かなくさせるだけでよさそうなんだけど…」

ライオン「でしたら…これを使って下され。瞬間接着剤ですじゃ」

ウサギ「ありがとう!僕が戻ってきたら、みんなで逃げよう!それまで待ってて!」

ライオン「気をつけて下され…肉食動物の解放は、死刑にもなりうる重い罪のはずですじゃ…」

ウサギ「大丈夫!僕を信じて!じゃあ行ってきます!」

ウサギ「5階の武器庫。誰もいないよね…。

よし、鍵穴に接着剤を塗り込めて…ふーっ、ふーっ、よし!」

「こら!そこで何してる!」

ウサギ「ひっ!?あ、あの、えと…

スイーツツアーに参加したんだけど、ちょっと道に迷っちゃって」

「あ…そうでしたか。会場は4階ですよ。階段はあちらです」

ウサギ「あ、ありがとっ!さよならっ!

…ああ、びっくりした。さて、肉食動物を解放しに行こう!」

ライオン「無事でしたか!」

ウサギ「うん!さあ、3階に行って他の肉食動物も助けに行こう!」

リス(あのクソガキ…!なんてことしてやがる!

お客様が1匹、迷子でうろついてるって連絡受けたから探してみれば…)こそこそ

リス「今すぐ他の社員に連絡を…

もしもし、私だ。肉食動物が脱走しようとしてやがる!今すぐ武器庫からありったけの銃を持ってこい!」

『そ、それが、武器庫の鍵穴に誰かがイタズラしたみたいで、開けられません!』

リス「はあ!?じゃあぶち破ればいいだろうが!こっちは緊急事態なんだ!」

『それが…武器庫は特別頑丈に作ってあるので、非力な我々ではとても…』

リス「くっ…もういい!私が4階の『焼却処分』ボタンを押す!」

『お願いします!下賤な肉食動物を外に出すくらいなら、その方がずっと良い!』

ウサギ「肉食動物のみんな!一緒に逃げよう!」

「そ、草食動物だぁ!」

「ちょっと待て…一緒に逃げようって、どういうことだ?」

ライオン「皆の者!聞いてくれ!

ここにいるウサギ殿は、儂ら肉食動物を解放するために動いて下さったのじゃ!

今、草食動物は武器を使えんはずじゃ!今の内に逃げるのじゃ!」

「ライオンさん!?」

「夜勤のグループのみんなもいるぞ!」

「ということは、本当に逃げられるのか?」

ウサギ「急いで!4階から丸見えだから、もう脱走に気づかれてる!」

リス「はあっはあっ…!やっとボタンにたどり着いた…!

クソっ、もう半分近くが作業場から出てやがる…だが半分だけでも…

死ね!」ポチっ

ゴオオオオオオ!

「ぎゃああああああああああああ!」

「あづいいいいああああああああ!」

ウサギ「えっ…なに…」

ライオン「作業場が!壁から火炎放射器が!?

やつらめ、こんな仕掛けまで用意しておったのか…!」

「あんた!あんたあああああああ!」

「おい!うっ…これは…」

「おかあさん!おかあさあああああん!」

ウサギ「こんな…ひどすぎるよ…命を何だと思ってるの!?」

リス「はは…あはっあははははは!

脱走だなんて思い上がった肉食動物にお似合いの末路じゃん!あはははははははははは!

全員地獄に落ちろ!」

ウサギ「ううう…みんな…

あれ…みんな何してるんだろう」

「ごめんね…ごめんね…もぐもぐ」

「皮はパリパリで中はジューシィで…うまい!こんなにうまいものは生まれて初めて食べた!」

「おいしい!おいしいよお!むしゃむしゃ!おかあさんの肉、食べるのやめられないよお!」

ライオン「肉が焼ける匂い…皆、この匂いで食欲が刺激されたようじゃ」

ウサギ「うぶっ…おげえええぇぇぇ」びしゃびしゃ

リス「共食いしてやがる。なんて醜い…やはり肉食動物は全員処分するべきか。

もう一度『焼却処分』を…」ポチっ

リス「…?」ポチポチ

リス「クソが!!数十年ぶりに使ったからか!?動け!!動けや!!」ポチポチポチポチ

ウサギ「うう…もう胃液しか出ないよお…」

ライオン「この匂い…儂ももうこの匂いで限界なのですじゃ」

ウサギ「げほっ…え?なんt」がぶり

ライオン「ばりぼり!むしゃむしゃ!もぐもぐ!ごくん!

…うまい!」テーレッテレー

ライオン「力が漲ってくる…やはり肉を食べるということが儂らにとって『生きる』ということなのじゃな…

皆の者!腹は膨れたか!?」

ウオオオオオオ…!

ライオン「行くぞ!草食動物を皆殺しにするのじゃ!

まずは5階の武器庫へ!決して油断するな!驕ってはならぬ!

儂らも知性と銃を利用するのじゃ!」

リス「やばいやばいやばいやばいやばい…!

逃げなきゃ…!」

ライオン「おっと、お嬢ちゃん、こんなところで何をしておるのかね?」

リス「ひっ…に、逃げ」がしっ

ライオン「捕まえたぞ。ふぉっふぉっふぉっ」

リス「は、放せ!穢らわしい!下等な肉食動物が!」

ライオン「その肉食動物に今から食べられるんじゃよ。どんな気分かな?」

リス「クソが!!末代まで祟ってやる!!」

ライオン「ふぉっふぉっふぉ…それでは。

いただきまーーーーーーーーーす」

1つの企業から逃げ出した、たった数十頭の肉食動物。

しかし、知性と道具を利用するようになった彼らに、草食動物はまるで歯が立ちませんでした。

彼らは囚われの肉食動物を次々と解放し、規模をどんどん拡大していきました。

ついには、知性ある草食動物を1匹たりとも逃すことなく殲滅することに成功、草食動物連合国は崩壊。

その後、建物や乗り物や兵器など、およそ文明の利器と呼べるものは徹底的に破壊しました。

あえて原始的な生活をすることを選び、二足歩行から四足歩行へ。徐々に知性も退化し、

地球は、本来あるべき姿に戻りました。

再び知性ある生き物…人類が誕生するのは、これよりずっと未来のこと。

「おかあさーん!今日のばんごはんなにー?」

「今日はハンバーグよ~」

「やったあ!僕、ハンバーグだいすき!」

「牛と豚の合挽きミンチを使ったのよ。さあ、召し上がれ」

「わーい!あーーーん…」

「こら!ちゃんと『いただきます』を言いなさい!」

「あう…ごめんなさい。

いただきます!」

「はい、いただきます。」


おわり

駄文失礼致しました。転載自由です。

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