二宮飛鳥「子守唄をキミへ」 (36)



ー事務所ー


飛鳥「……ふぅ」

幸子「……」本読んでる


飛鳥「はぁ……」

幸子「……」ペラペラ

飛鳥「……」ジ-

幸子「……」ペラペラ

飛鳥「……」ジ-

幸子「……」


幸子「…なにしてるんですか?」

飛鳥「いや、推理小説読んでるみたいだからネットで検索して犯人の名前バラそうかなって」スマホスッスッ

幸子「やめてくれます!?」




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450459990



飛鳥「冗談さ、ボクがそんなことするとでも?」

幸子「飛鳥さんだからやりかねないんですよ」

飛鳥「これはこれは…困ったものだね」


幸子「で、なにか悩みでもあるんですか?」

飛鳥「何も言わずともボクが悩んでると見抜くとは…案外幸子は観察力が鋭いね、感心するよ」

幸子「横でこれみよがしにため息つかれてたらイヤでもわかりますよ」




飛鳥「実はプロデューサーから頼まれごとをされてね」

幸子「はいはい」

飛鳥「年少組達の子守りを頼まれたのさ」

幸子「完全に人選ミスですね」

飛鳥「まぁね、でも頼られたからにはその期待に応えるしかないだろう?」

幸子「それでなにか心配でもあるんですか?」


飛鳥「…子供、苦手なんだ」

幸子「なんでしょう、想像通りですよ」

飛鳥「子供は無邪気だからね、ボクのような翼の無い存在からすれば彼女達は白い翼をもつ天使なんだ…その天使達は無邪気にもボクの領域に踏み込んでくる」

幸子「簡潔にまとめてください」

飛鳥「エクステひっぱられる」

幸子「とればいいじゃないですか」





飛鳥「まぁでも実はそこまでそれに関しては気にしてないんだ」

飛鳥「ボクが子守りを頼まれたのは読み聞かせとお昼寝の時だからね」

幸子「事務所の子達は皆いい子ですからね、たぶんそんなに苦労はしないと思いますが」

飛鳥「それが救いかな、実は読み聞かせの本も歌う子守り歌も決めてるんだ」

幸子「子守唄ですか、あれ?じゃあ悩みってなんですか?なんだか大体解決してるみたいですけど」

飛鳥「悩みというよりも相談に近いかな、幸子にはボクの読み聞かせと子守唄を聞いてほしいんだ」

飛鳥「自慢じゃないけどボクのセカイは独特って言われるからね、そんなセカイを子供達は受け入れてくれるかどうかの判断を幸子に頼みたい」




幸子「ふーん、まぁ構いませんよ!優しくてかわいいボクに感謝してください!」

飛鳥「じゃあ本とってくる」スタスタ

幸子「無視ですかそうですか」





飛鳥「とってきたよ、いくつか候補があるからすまないが付き合ってほしい」

幸子「はいはい、ではどうぞ」

飛鳥「じゃあ…コホン…」

幸子(飛鳥さん声はかなり良いですから読み聞かせとか向いてそうですけど…まぁボクほどではありませんが!)



飛鳥『ブギーポップは笑わない』

幸子「ボツで」

飛鳥「えっ!!?」




幸子「え!?じゃないですよ!!読み聞かせの意味しってますか!!?」

飛鳥「読んで聞かせるんだろう?」

幸子「言葉通りに受け取り過ぎです!読み聞かせっていうのは大体絵本を子供達に見せながら本文を読んであげるんですよ!」

幸子「活字見せられても子供困るだけですからね!?」


飛鳥「で…でも…おもしろいんだよ…?」オロオロ

幸子「面白いのは認めますけど子供向けではないってことです!!」


飛鳥「じゃあ……『化物語』」

奈緒「っ!?」ガタッ


幸子「話聞いてましたか!?あと奈緒さんどこから出てきたんですか!?」





飛鳥「理解ったよ、つまり絵本ならいいんだよね?」

幸子「まぁそういうことです」

飛鳥「絵本か…実は最近、乃々と絵本専門店に行くことがあってね」

飛鳥「そこでボクのセカイに合う絵本と邂逅ったからいくつか買っておいたんだ」

幸子「へぇ、楽しそうですね」

飛鳥「…次は幸子も一緒にいこうよ」

幸子「フ...フフ-ン!いいですよ!ボクはかわいいうえに優しいですからね!」






飛鳥「じゃあ読むよ…コホン…」


飛鳥『ギャシュリークラムのちびっ子達』


幸子(…ちょっと絵が不気味ですけどちゃんと絵本ですから大丈夫ですね)








飛鳥『Aはエイミー かいだん おちた』


幸子「え?」



飛鳥『Bはベイジル くまにやられた』



幸子「ちょ」



飛鳥『Cはクララ やつれおとろえた 』




幸子「ちょっと待ちましょうか飛鳥さん!!!?」

飛鳥「どうしたんだい幸子、絵本だよ?」

幸子「どんな絵本発掘してきてるんですか貴方は!!?なんですかその絵本!?」

飛鳥「なにって、エドワード・ゴーリーの絵本だよ」

幸子「…ちなみにどんなお話ですか?」

飛鳥「アルファベット順に子供達が死んでいく話だね」

幸子「バカなんですか!!?」



幸子「ただでさえ怖いのに飛鳥さんが読むと雰囲気出てさらに怖いんですよ!!子供泣きますよ!?」

飛鳥「小梅は喜んでくれたよ?」

幸子「小梅さんはでしょう!?」


幸子「とりあえず却下!!却下です!他のにしてください!!」

飛鳥「うーん…他だと…」




飛鳥『自殺うさぎの本』

幸子「ほんとに貴方は好きですねぇそういうのが!!!」

飛鳥「あ、でもこれ文章ないんだよね」

幸子「じゃあダメですね…いやあってもさらにダメですけどね!!?」







飛鳥「冗談だよ、ボクだって区別はつくさ」

幸子「ならなによりですけど…ほんとにお願いしますよ?」

飛鳥「あぁ、じゃあ……この絵本を」




飛鳥『絵のない絵本』



飛鳥『昨晩 私はお月様が口にしたことをそのまま書いています

ーーーーーーー』












ー数十分後ー



飛鳥『 第一夜 おしまい 』


飛鳥「どうだっかな、幸子のお眼鏡にはかなったかい?」

幸子「…子供向けかどうかと言われると疑問ですが、ボクは好きです」

幸子「飛鳥さんの声もあるんでしょうが、難しい言い回しも頭に無理なく入ってくれるますし…確かに貴方の世界観にあってるとも思います」

飛鳥「ふふ…これはドイツの絵本でね、実はボクが小さな頃から家にあったものなんだ」

飛鳥「つまり、ボクのセカイは『絵のない絵本』に作られたといっても過言じゃない…最もボクは『絵のある絵本』も好きだけどね、今の自分みたいな、ね」


幸子「素晴らしかったですよ……でもこれ子供、理解できるんですか……?しかも第一夜ってまだまだあるんですか…?」

飛鳥「30くらいあるよ」

幸子「思ってたより長い……!」


飛鳥「まぁいいんじゃないかな、正直ボクの母親も子守唄代わりに使ってたからねコレ」

幸子「貴方のセカイを作ったんじゃないんですか!!?」





飛鳥「それに絵本とはいうけど、これどちらかというと文学作品として扱われることが多いしね、絵もないし」

幸子「…あぁほんとだ!雰囲気にのまれて失念してました……ダメじゃないですか…素敵なのに残念ですね」


飛鳥「…いいんじゃないかな、べつに」

飛鳥「この絵のない絵本は、絵がなくとも絵本だ」

飛鳥「それはボク達アイドルに似ている、ボクはそう思う…アイドルも体験したことのないことを歌にして歌うんだ」

飛鳥「この絵本に描かれた『詩』もボク達の『歌』も同じ『唄』さ」

幸子「…簡潔にいってください」

飛鳥「もうこれにボクは決めたから変えたくない」


幸子「…まぁ想像の余地がある絵本というのもきっと楽しいでしょう」

飛鳥「だろう?」ドヤァ









飛鳥「さてと、実はね問題はこれからなんだ」

幸子「問題ですか?」

飛鳥「子守唄さ」

幸子「はぁ…子守唄なんて限られてると思いますが」

飛鳥「ねんねーころーりよー、ってやつかい?」

幸子「有名ですよね」


飛鳥「あれ…お母さんが歌うやつだよ?」

幸子「…まぁ確かに」






飛鳥「流石のボクもあれを歌うのは何か違う気がしてね…だからこそ悩んでるんだ」

幸子「確かに子守唄ってお母さんが歌ってくれるものですからね、ボク達が歌ってもしっくりこないとは思います」

飛鳥「だからこそのさっきの絵のない絵本だったんだけどね、さて適当に何曲か選んだきたから聞いてくらるかい?」

幸子「いいですよ、ボクも少し気になりますから」


飛鳥「じゃあ…ンッンッ...」









飛鳥『 Highway to the Danger Zone!!

Ride into the Danger Zone!!!』

幸子「寝かす気ないでしょ貴方!!?なんでトップガン!!?」




飛鳥「知ってるのか、意外だね」

幸子「この前プロデューサーさんとたまたま見たので…じゃなくてなんであえてのその選曲なんですか!!?」


飛鳥「……かっこいいから?」

幸子「子守唄にかっこよさいります!!?」










飛鳥「じゃあ…」


飛鳥『no place to run
You pulled the trigger of my

Love Gun!!
Love Gun !!』


幸子「一回洋楽から離れませんか!!?」

飛鳥「おや、幸子は洋楽が嫌いかい?だとしたら一度触れてみるといいよ、最高の音楽に」

幸子「子守唄なんですよね!!?飛鳥さんはこれを聞いて寝れるんですか!!?」

飛鳥「…実は英語のリスニングとか苦手で、ね?」

幸子「よくそれで最高の音楽どうこう言えましたね…」

飛鳥「音楽は言葉じゃなくて心で聴くのさ」

幸子「心で聴いて感じる音楽は子守唄として成り立たないので省いてください」


飛鳥「…難しいね、子守唄って」








幸子「まず飛鳥さんは子守唄の認識が間違ってますね、子守唄は子供を寝かしつける歌なわけですから激しい曲はまず向いてませんよ」

飛鳥「なるほど、静かな曲ならいいんだね」


飛鳥『かわいた風が…』

幸子「こいかぜは後半わりとアップしていくのでボツです」


飛鳥「なるほど…つまり静かでそれでいてアップテンポにならない穏やかな歌が良いという事か」

幸子「そういうことですね、なにかありますか?」




飛鳥「うーん…あ、そういえばボクもうすぐCDデビューするからその歌は…」

幸子「それはおめでたいですけどまだどんな歌かしりませんよね!!?」




飛鳥「そうは言われてもボクはあまり静かな曲は聴かないからね…知ってる曲を歌うしかないんだよ」

飛鳥「例えばさ」



飛鳥『月曜日おんなじ幸子「それボクの歌ですよね!!!?」」




飛鳥「いや、ちょうどいいかなって」

幸子「子守唄なんですよ!?がっつりラブソングなんですよこれは!!」

飛鳥「それはそれでおもしろいだろう?」

幸子「意図が不明すぎてわかりませんよ!!!!」








『その後も飛鳥と幸子の二人の子守唄選びは難航した』



『幸子が「静かで穏やかな曲がいい」と言うと飛鳥は紅を歌い出し』



『幸子がこれがいいのではないか?とYouTubeから探してみると飛鳥があからさまに嫌そうな顔をし』


『そもそも自分は本を読んでいただけなのになぜこんな必死に考えてるのかと思うと幸子に怒りがフツフツと湧き上がるが飛鳥と会話をしていると怒る気力さえなくなってくるので事をなきを得た』








『そして飛鳥が【自分は友達がいないのではなく作らないだけで作ろうと思えば片手では足りないくらい出来る】と大胆なのか控えめなのかよくわからない主張をしている時、幸子がある事を閃いた』



幸子「クラシックってどうですか?」


飛鳥「クラシック…?」







幸子「はい、今YouTubeで探してたんですけどさっき飛鳥さんが言っていた絵のない絵本のオーケストラ版があったんですよ」

幸子「合唱ではあるんですが歌もあります、どうですか?」


飛鳥「へぇ、それは知らなかったな」

飛鳥「オーケストラ…多人数で1つの音を奏であげ、不協和音を響かせることなく調律されたパーフェクトハーモニー、か」

飛鳥「いいね、チャレンジする気力が湧いてくる」


幸子「簡潔にまとめてください」

飛鳥「それにするから練習つきあって」










ー後日ー


モバP「よし、じゃあ後は頼んだぞ二人とも」

飛鳥「あぁ、ボクと幸子に任してくれ」

幸子(なし崩しでボクまで巻き込まれた…)

モバP「それじゃあなー」ガチャン



飛鳥「ふ…ついに来たねこの時が」

飛鳥「さぁ今までの練習の日々をぶつけようか」

幸子「今までってうか昨日だけですよ練習したの」




飛鳥「重要なのは時間ではなくその密度さ、問題ないよ」

飛鳥「ボク達の1日は現実時間に換算すると実に1年になるからね、つまりボク達は1年間練習していたのと同義でありそれこそが唯一のボルト達をボク達としらしめるストーリー……」


幸子「飛鳥さん、緊張してるんですか?」

飛鳥「!!?」ギクギクギクギククク-!!!!


飛鳥「き、き、き、緊張なんて、し、してないし?飛鳥ほんばんにつよいし???」

幸子「どれだけわかりやく緊張してるんですか…よくそれでステージに立ててますね…」





飛鳥「仕方ないだろう!?ステージではファンしか見てないけどこう…知り合いに見られるっていう羞恥心と子供が苦手という意識がまざりあってるんだよ!!」

飛鳥「まぁ幸子はボクなんかよりもアイドル歴も長いからわからないだろうけどステージだって本当は毎回上がる前震えて…!!!」

幸子「大丈夫ですよ飛鳥さん」


飛鳥「…幸子?」

幸子「同じです、ボクだってステージに上がる前はいつだって緊張しますからね」

幸子「それに飛鳥さんは子供が苦手だっていってるのにこうやって子守りを引き受けてあげたりする優しさや、意外と緊張するタイプだってことも知ってますよ、ボクこうみえて貴方のこと結構見てるんですから」


幸子「でもそれも全て含めて、いつだって余裕な態度でいるのが貴方じゃないですか」

幸子「大丈夫です、飛鳥さんはきっと今日もいつもの飛鳥さんでいられますよ」

幸子「それになんといってもボクがついてますからね!」



飛鳥「…ありがとう、幸子」

飛鳥「心配かけたね、でもそこまでボクを評価してくれているなんて意外だったよ」

幸子「…ま、まぁ友達…ですからね」///

飛鳥「フフ……じゃあそろそろ」


飛鳥「OKだ、クールになろう…いつものボクのように、ね」






飛鳥『ボクはいったい何に怯えていたんだろう…』

飛鳥『失敗か?孤独か?それとも喪失か?』

飛鳥『だとしたらボクは愚かだ、ボクは怯える必要など何もない』

飛鳥『なぜか、それは決まりきっている』

飛鳥『ボクは独りじゃない、そんな当たり前の事実を信じているから』




ガチャ



飛鳥「待たせたね、皆…さぁ今宵ボクが誘うのは月が見た不思議な世界」

飛鳥「月の詩を聴き、そして感じた後は…ボクの唄う月の歌をきいてほしい」

飛鳥「それでもいいかい?」




ー数時間後ー



幸子(そろそろ終わる時間ですね…飛鳥さんはうまくやれてるでしょうか…)


ガチャ



飛鳥「…戻ったよ」

幸子「お疲れ様です、どうでしたか?」


飛鳥「あぁ…それなりに良かったとは思うよ」

飛鳥「仁奈は『月の気持ちになるですよー』といって読み聞かせを楽しんでくれたし、薫や雪美も歌を楽しんでくれたさ」

飛鳥「こずえに至っては本をいたく気に入ってくれてね、寝ずに自分で読み始めてしまったんだ」

幸子「大成功じゃないですか!良かったですね飛鳥さん!」


飛鳥「ただ…失ったモノも大きかったけどね」

幸子「失ったモノ…?」



幸子(あれ…なんだか…んー…?)




幸子(なんだか……)


幸子「…足りなくないですか?」








飛鳥「……エクステ、引きちぎられた」






ーおわりー







おわりです、お付き合いいただきありがとうございました

SS内で紹介したエドワード・ゴーリーの絵本は翻訳もされており日本でも手に入るので興味があれば是非読んで友人に勧めてみてください
確実に変な人扱いされます



過去作
モバP「アイドルの飼い方」シリーズ

飛鳥と幸子が出てる過去作
二宮飛鳥「幸子、キミは友達が多いのか?」


このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom