アバン (29)

小ネタスレに投下したものを肉付けしたSSとなります

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450428251

フローラ「そろそろ責任を取るべきでは?」

アバン「そう言われましても」

フローラ「私は十分待ったつもりです。婚期すら逃してしまったのですよ」

アバン「まだまだ十分お美しいですよ」

フローラ「お世辞はいりません」

アバン「いやいやそんな、本心ですよ」

フローラ「そうですか、それが本心ならば男として責任をとってくださいますね?」

アバン「で、でもほら、僕は良い家のものじゃありませんし」

フローラ「勇者というだけで十分です」

アバン「まだ弟子のことが心配ですし」

フローラ「あの子達はあなたの手から離れたのはよくご存知でしょう?」

アバン「でもほら…あの、ほら…えーっと…」

フローラ「……あなたの気持ちはよーくわかりました」

アバン「!」

フローラ「そこまで私の事が嫌ならもういいです!」

アバン「あっいえ!嫌とかではなく…」

フローラ「慰めはいりません!嫌いなら嫌いと言ってくれれば諦めがつくものを!」

アバン「フローラひ」

フローラ「公務の時間ですので!失礼します!」

バタン!

すまん、タイトル消えとるな

アバン「男の責任ですか」

ーーー
ーー

アバン「いやはや困りましたね」

レオナ「何がです?」

アバン「おおっと、レオナ姫」

レオナ「姫ではなくレオナと呼んでください。公務とプライベートは完全に別にしてるんです」

アバン「もう戦いは終わりましたし姫でいいでしょう?」

レオナ「レ オ ナ です!戦いが終わって立場が変わるならあたし、ダイ君を勇者ダイって呼ばなきゃならないんですよ?そんなの帰ってきたときにダイ君が困るだけじゃないの!」

アバン「いやしかし…」

レオナ「…ではレオナと呼ばれるまで返事しませんからね!」

アバン「うーむ、アナタなかなかどうして頑固なところとか彼女に似てますねえ」

レオナ「彼女?」

アバン「っと、では!」

レオナ「ちょーっと待ったー!彼女ってマァムじゃないし…まさかフローラ様?」

アバン「…女性はこういうことに鋭いですねぇ」

レオナ「………アバン先生?もしやこの地から離れる気ですか?フローラ様を置いて?」

アバン「ギックウ!」

レオナ「ちょっと!マァムー!!来て!」

アバン「マァム?近くにいるのですか?」

マァム「どうしたのよ?レオナ…とアバン先生!」

アバン「あ…思いの外近くにいたんですね。つい油断していました」

レオナ「ちょっと聞いてよ!先生ったらまた旅に出る気だったみたいなの!フローラ様を置いて!」

マァム「!?本当ですか!?」

アバン「ええ…まあ…彼女は私とは来れないでしょうしまたしばらく離れちゃいますねえ」

レオナ「フローラ様のお気持ちはご存知なんでしょう?」

アバン「はは…先程それでちょっと揉めまして…」

マァム「…詳しく聞かせてくれますか」

レオナ「逃がしませんからね!」

アバン「…弟子が強いのも困りもんですね」

アバン「…てなことがありまして、いささか困っているんですよねぇ。もし出来たら二人から姫に機嫌を直すように」

レオナ「無理です」

アバン「レオナ、どんな時も諦めてはダメですよ」

マァム「先生…こればっかりは私たちにはどうにもならないと思います」

アバン「そうですか…でしょうねえ。薄々そうは思っていましたが」

レオナ「…“勇者なんてことが済んだらさっさと消えてしまう”…ね」ジロリ

アバン「あは、あはは…」

マァム「先生が…どうしてもフローラ様を嫌いでそばにいたくないのなら仕方がないことだと思います」

レオナ「マァム!」

マァム「レオナは黙ってて!…私たちは先生が決めたなら口出しは出来ません。でも…もしフローラ様のそばにいないことが今後の後悔につながるのならば…それは間違っていませんか?」

アバン「!」

マァム「私なんかが口を出しすることではないのかもしれませんが…」

アバン「いいえ、マァムの気持ちはよくわかりましたよ」

レオナ「…そうね。無理にそばにいてもらっても嬉しくないだろうし…でも、これだけは言わせてもらいます!ちゃんと…ちゃんと考えてあげてくださいね!」

マァム「レオナ」

レオナ「女が国を背負うって…とっても辛いことなんです。あたしにはフローラ様という前例があったから…まだ良かったけれど、それでもいい顔をしない家臣もいました」

アバン「…そうでしょうね。あなたはまだ若いですし」

レオナ「あたし、これでもいくつかの結婚の申し込みが来てたんですよ?」

マァム「ええ!そうなの!?」

レオナ「まあね。立場上どうしても国の安定には政略結婚の打診が多いから」

マァム「そっか…お姫様も大変ね」

レオナ「きっとフローラ様にもいくつかそんな話があったと思うんです」

アバン「まあ…そうでしょうねえ」

レオナ「国を通じての縁談の申し込みは簡単には断れないんです。大国相手だと機嫌を損ねずにうまく回避するには一部の財すら手放すことがあります」

マァム「へえーでもそうよね。結婚断って今まで通りって難しいか」

アバン「むしろそれを狙っての申し込みすらある、と聞いたことがありますよ」

レオナ「…長いことハドラーに対抗するために国同士の戦争はお互い回避していましたが、それでも争いの火種は無くしたいんです!そんな気持ちの中でフローラ様が一人でいた気持ちにだけは向き合ってあげてください!」

マァム「先生、フローラ様はレオナの憧れの人なんだそうです」

アバン「…きっとパプニカはレオナがいる限りいい国であるんでしょうね」

マァム「それは私が保証します」

レオナ「心強いお墨付きね!」

アバン「…あなたたちのような素敵な女性に思われてるうちの男弟子諸君は幸せ者ですねえ」

マァム「!」

レオナ「そう!その話の続き!聞かせなさいよ!」

マァム「さっきその話から逃げてきたところだったんです…」

アバン「おやおや、ヤブヘビでしたか。では私は失礼しますね」

ーーーー

レオナ「あの二人…どうなると思う?」

マァム「さあ?でも先生には幸せになって欲しい…な」

レオナ「あーあ、あたしも早くダイ君に会いたいなー」

マァム「待ち遠しい?」

レオナ「ま、剣が無事な限り待ち続けますよーっと」

………
アバン「こういう時に女性の強さをしみじみ感じますねえ」
ドンッ

ポップ「うわっ!わりぃってせ、先生!?」

アバン「どうしました?ポップ、そんなに慌てて」

ポップ「いや、えーっと…うわわ」

ヒュンケル「ポップ!待て!…っ、先生」

アバン「…二人で追いかけっこですか」

ヒュンケル「いえ…」

アバン「…?どうかしましたか?」

ポップ「…っ!こいつがよぉ!また旅に出るとか勝手に抜かすもんだから!」

アバン「…本当ですか」

ヒュンケル「…はい。ラーハルトとダイを探す旅に出ようと話をつけました。挨拶は後を任せるポップと先生だけに…と」

ポップ「だぁから!マァムはどうするんだって!あいつが悲しい顔するのはもう嫌なんだよ!おれは!」

アバン「ポップ…?」

ポップ「そりゃあよ!コイツがいなきゃマァムはおれを選んでくれるかもしれない!でもそれじゃ意味がないだ!それじゃ…!」

ヒュンケル「だからそれは誤解だ!」

アバン「うぅーむ、私の知らないうちにキミたちは随分こじれた仲になっているようですねえ。ちょっと座りましょうか。冷静に話し合うべきです」

ポップ「ケッ!おれはコイツと話すことはもう何にもないですけどね!」

アバン「ポップ!」

ポップ「う…座ればいいんですね!座れば!」

アバン「そうそう。ヒュンケルもこちらへ」

ヒュンケル「はい…」

アバン「さてさて、こんなこともあろうかと温かい飲み物を用意してあります。男三人でこんなのもたまにはいいものですねえ」

ポップ(よくねぇよなぁ)

ヒュンケル「………」

ポップ「………」

アバン「…二人とも大きくなりましたね」

ヒュンケル「!!」

ポップ「な…なんですか急に?」

アバン「いえね、二人とも人を想い想われるようになったのだなあと思うと師としてなかなか感慨深いものがあります」

ヒュンケル「先生…」

アバン「ヒュンケル、あなたのその不器用さはきっと優しさそのものなのでしょう」

ヒュンケル「………」

アバン「ポップ、キミは素直で無茶で…でもそういう気持ちが何よりあなたらしい魅力です」

アバン「誰かがそんなあなた達を愛してくれている。嬉しいものですねえ」

ポップ「………」

ヒュンケル「…ポップ、オレが旅に出るのは身を引いたなどの理由では無いんだ」

ポップ「わーってるよ!ただダイに会いたいってんだろ!?そんなのおれだって一緒だ!」

アバン「そうですか…ポップも旅に出るつもりなんですね」

ヒュンケル「!」

ポップ「…ルーラで行ける場所が多いに越したことは無いってのは今回わかりましたしね。旅先でダイの手がかりを探すつもりです」

ヒュンケル「マァムを置いていくつもりか?」

ポップ「それはマァム次第だ。一緒に行きたいって言ってくれたら嬉しいけどよ…執行猶予中だし振られたら振られたでどうしようもねえじゃねえか…」

アバン「ふむふむ…そういう事ですか」

ヒュンケル「どういう…」

アバン「ヒュンケル、ポップは男としてあなたとしっかりと話がしたかったみたいですね」

ヒュンケル「…マァムにはオレの気持ちはすでに伝えています。あの戦いの最中、その上でポップの元に駆けつけたのです」

ポップ「ほーん?じゃあヒュンケルはマァムの事はなーーんとも思ってないってんだな?」

ヒュンケル「ああ、そうだ」

ポップ「先生…おれはそんなにバカに見えますかね?」

アバン「いいえ、少なくとも一番物事が見えているのはあなたでしょうね」

ポップ「あのなあ!ヒュンケル!もうそういうのいいんだよ!マァムが好きなら好きでいいじゃねぇか!なんで…なんでおれにそんな嘘つくんだよ…おれ達同じアバンの使徒じゃねぇのかよ!!」

ヒュンケル「…ポップ」

ポップ「マァムがヒュンケルを好きでも、ヒュンケルがマァムを好きでもおれは何にも変わらねえってのに…そういう信頼されてない態度が傷付くのがわからないのが一番嫌なんだよ!」

アバン「……ヒュンケル、嘘は時として人をとても悲しませます。それは信頼していればいるほど悲しみが深くなるものなんですよ」

ヒュンケル「信頼…」

アバン「あなたはとてもいい兄弟子だったのはわかります。でも今はそういう関係がポップには辛いのですよ。わかってあげてください」

ポップ「おれは信頼してるのにお前はおれを信頼してくれないのかよっ…!おれが…馬鹿みたいじゃねえか…」

ヒュンケル「……先生、申し訳ないのですが」

アバン「さ、私は野暮用があるのでもう行きます!では!」

ーーーー

ポップ「…もしかして二人きりにしてくれたのか?」

ヒュンケル「ああ…」

ポップ「はは、先生らしいや…」

ヒュンケル「ポップ、二人でこんな話をするのもなんだが…」

ポップ「ああ、そういや初めてかもなぁ…」

ーーーー
ーーー


アバン「ふーやれやれ、あの2人は本質は似ているのに表現の仕方はまるで正反対ですからね。一度本心でぶつかり合ってみるべきです」

アバン「…本来なら仲間のシコリを消すのはダイの役目だったんでしょうが……あの子はそういう事には疎そうですからね」

アバン「っと、疎いのは私も一緒ですか。はは…」

アバン「そうですか…あの子たちも恋をして愛を理解する年頃になったんですねえ」

アバン「私も…このままではいけません…ね」

アバン「………」

アバン「年をとるとこういうことには尻込みしてしまって嫌になってしまいますね…独り言も増えてしまいますし」

ーーーー
ーー

ガチャリ
バタン

フローラ「…ふぅ。さ、もう一仕事しましょう」

カタンッ

フローラ「誰です!!」ジャラッ!

アバン「おっとっと、チェーンクロスとは物騒な。私ですよ」

フローラ「…あなたですか。何の用です?ここは私の自室ですが」

アバン「存じてます」

フローラ「珍しいですね。あなたがこのような無礼を働くのは」

アバン「別に元々品行方正なタイプでもないんですけどね」

フローラ「…そうですね。私にはあなたのことがわかりませんから」バサッ

アバン「地図ですか?」

フローラ「今日、話し合いの結果でパプニカとの友好条約と黒の核晶の警備が決まりました」

アバン「なるほど。警備もですが凍結したとはいえ処理の仕方がわかるまでは定期的にヒャダルコをかけるのがいいかもしれません」

フローラ「そうですね。それならば魔法を使えるものの育成にも力を入れていかなくては…」

アバン「ポップの話を聞いて私も考えたのですが、ルーラを範囲が広く使える者の育成も今後の課題になります」

フローラ「…では凍結魔法と移動魔法に特化した専門の学校を早急に建てましょう」

アバン「それならば少なくとも一つの大陸に一つは欲しいところです。大陸同士の友好を深める礎にもなるでしょうし」

フローラ「とりいそぎ一つは復興を進めているカールにおきましょう」

アバン「流石ですね。もう復興を進めていますか」

フローラ「当たり前です。世界は大魔王の恐怖から救われたとはいえ人々は暮らしていくのです。私達が立ち止まったら勇者ダイに申し訳がたちません」

アバン「…あなたは強い人ですね。昔から何も変わっていません」

フローラ「…何をしに部屋へ?」

アバン「あ」

フローラ「まさかこんな話をしに来たわけではないでしょう?」

アバン「ええ、まあ」

フローラ「女王の一人部屋に夜、侵入するとは何事です?」

アバン「侵入なんて人聞きの悪い」

フローラ「ならば、用事はなんです?旅立ちのお別れですか?」

アバン「…私が旅立つつもりだったということをなんで王家の女性は気がつくんでしょうねえ?」

フローラ「男とは得てしてそういうものなんでしょう!?とりわけ勇者はね!待たされる私やレオナの気持ちなんてあなた達にはわかりません!」

アバン「今日は怒ってばかりですね」

フローラ「誰のせいだと思ってるんですか!誰の…!!」

フローラ「っ…!もう、責任…なんて言いません……生きていてくれて…よかっ…!」

アバン「……そうですね、そうでしたか…心配をおかけいたしました…私が鈍かったんでしょうね…」

フローラ「…っ…ふ…泣いてませんからねっ!」

アバン「知っていますよ」

フローラ「…いつ、行くのですか…」

アバン「その話ですが…」

アバン「いくの、止めました!」

フローラ「…え?」

アバン「先程の魔法学校の話なんですが講師はいりませんか?元勇者でよかったらなんですが」

フローラ「…カールに留まるのですか?」

アバン「ええ、カール、というよりあなたのお側に」

フローラ「それって…」

アバン「世界は救われました。私は私の幸せを考えてみた結果…姫がよろしければあなたのお側にいたいと思いましてねえ」

アバン「なんて、あはは…照れくさいですね。こういうの」

フローラ「…講師はいりません」

アバン「」

フローラ「私にあなたが必要なのです。アバン」

アバン「姫…」

フローラ「フローラ、と」

アバン「…フローラ、愛しています」

フローラ「私もです。アバン」

アバン「…メガンテより緊張しますね。コレ」

フローラ「…だいぶ夜もふけましたね」

アバン「では私も自室に…」

フローラ「なにを言うのです。一緒にベッドへ」

アバン「さ、さすがにそれはちょっと早すぎやしませんか」

フローラ「女一人の部屋に入ってきたのですから腹を括りなさい!今夜は寝かせませんからね!」

アバン「じょ…女王様ーーー!」

おしまい

ありがとうございました!

冒険王ビィト再開決定記念!みんな見てくれよな!

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