■北大阪地区予選　エキシビションマッチ


恒子「やはり小鍛治プロの圧勝か！」

恒子「決勝戦先鋒で勝負を決めた、突如として現れた千里山のエース、園城寺怜が何もできない！」

恒子「更に千里山の三年である、清水谷竜華、江口セーラも小鍛治プロの前には為す術なし」

恒子（……とはいえ、すこやんがここまで本気で打つのは久しぶりじゃないかな）

恒子（決勝戦で園城寺さんが出てきた時に、いきなり打ってみたいと言い出してエキシビションを開くし）

恒子（強いんだろうけどね。先鋒で終わらせるぐらいだし）

恒子（全国があるからすこやんに潰されないといいんだけど）

怜（……ほんとう、しんどいわ）

怜（国内では無敗。永世正七冠。元世界ランキング2位。恵比寿時代は毎年リーグMVP。そんな怪物と打つことになるとはなぁ）

怜（この怪物に五分で打つには――）

ｽﾞｯｽﾞｽﾞｯｽﾞｽﾞ

傀から伸びる闇が怜を浸食する。

健夜「駄目だよ」

怜「――え」

傀『――！』

小鍛治健夜から放たれた強大な威圧感により、傀の浸食は弾かれた。

怜（――う、嘘やろ）

怜（ウチも一度だけ弾いたことあるけど、簡単にできるものやない）

怜（それも対面からの威圧感だけで――ｯ）

怜（思ってた以上の怪物や）

傀『……』

健夜「駄目だよ。私は弱い傀なんて見たくないもん。だから、全力で邪魔させてもらうよ」

怜（……どう考えてもコレは無理ゲーやろ）

健夜「――ロン」

健夜「ロン」

健夜「ロン」

怜「――ッ」

怜（ウチを狙い撃ちかい）

怜（未来を読むにしても、なんだか、妙にズレて、キチンと読めん）

■北大阪地区予選　エキシビションマッチ 観客席

照「小鍛治プロは感覚を奪う」

淡「感覚を奪う？」

照「うん。なにかしらの能力じみた力は、感覚を研ぎ澄ませた副産物のようなもの。そうじゃなくても、麻雀では感覚を研ぎ澄ませておかなければならない」

淡「んー。なんとなく分かるような分からないような」

照「感覚を失って打つ麻雀は地獄。精神が弱いと二度と打ちたくなくなるほど」

照「――そこに狙い撃ちのようにされたら……もう最悪」

淡（テルーが震えてる？ オンジョウジトキの偵察にきたのに、予想外のものが見えるかもね）

怜「――ハァ、ァ……っ」

怜（意識が遠くなる、いや、違うなぁ）

怜（感覚が鈍くなりすぎや）

怜（お陰で聴牌すらできへんやん）

怜（――もうええ。なんで、こんな目にあってまで、打たなあかんのや）

暗く、混沌とした、場所

一つ麻雀卓があるだけの場所

傀「……」

怜「なんや。こんな所に連れ込んで」

怜「好きにすればええやろ。ウチはもう疲れたんや」

傀「……」

ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞ

闇が触手のように動き、椅子に座っている怜に絡みつくと椅子から引きずり下ろし、怜はじわじわと闇へと沈む

傀「――」

そして傀は空いた席へと座った

健夜「――」ﾄﾞｯｸﾝ

竜華「……」ｿﾞｸｯ

セーラ「……」ｿﾞｸｯ

傀「失礼。それでは、再開しましょう」


健夜（さっきと違って深層世界からの浸食――。これは私でも防げないなぁ）

健夜（そのボロボロの肉体で、貴方がどこまで打てるか期待するよ）


傀「……」ﾆｯ

傀「……」

竜華（この感じは間違いない、傀や。でも、なんかいつもと雰囲気が――）

傀「[白]ポン」

ﾀﾝ

健夜（……役牌で早く上がって流れを掴むつもり？）

ﾀﾝ

セーラ「……」

ﾀﾝ

傀「……[中]――カン」

ﾀﾝ

竜華・セーラ（え。[中]をカンして、[發]をツモ切り。何かんがえてるん）