勇者「まず野菜を切ります」魔王「食べます」(14)

勇者「まずは人参を切ります」

魔王「切ったところから食べていきます」

勇者「おや、人参がありません。いったいどうしたのでしょうか」

魔王「なんと」

勇者「しかたがないのでもう一本使います」

魔王「少しづつ食べていきます」

勇者「なぜか、人参が少ないような気がします」

魔王「不思議です」

勇者「仕方がないので、玉ねぎは多めに使うことにします」

魔王「お、玉ねぎですね」

勇者「まずはさっくり半分に」

魔王「そしてその片方はわたしの口の中へ」

勇者「玉ねぎをみじん切りしていきます」

魔王「切ったそばから口にかきこんでいきます」

勇者「おや、きったはずの玉ねぎがありません。いったいどうしたのでしょうか」

魔王「謎は深まるばかりです」

勇者「野菜はもうないので、いそいそと白いご飯を取り出します」

魔王「食べた後でした」

勇者「ご飯はありませんでした。困りました、これではチャーハンがつくれません」

魔王「それは困りました」

勇者「チャーハンは諦めて、お味噌汁をつくることにします」

魔王「なんと」

勇者「ラッキーなことに、冷蔵庫にネギとお豆腐がありました」

魔王「わお」

勇者「まずはネギを」

魔王「端からかじって」

勇者「切っていきます」

魔王「そしてわたしの口の中へ」

勇者「切っても切っても、ネギの山ができあがりません。不思議です」

魔王「実に奇妙なことです」

勇者「僅かばかりのネギがまな板に張り付いているので、とっていきます」

魔王「ひもじい」

勇者「次にお豆腐を切ります」

魔王「お豆腐ですか」

勇者「まずは豆腐を手の上にのっけます」

魔王「横からわたしの両手がそれを挟みます」

勇者「そして包丁を」

魔王「お豆腐をさらって、食べます」

勇者「入れようと思ったのですが、いつのまにか豆腐がなくなっていました」

魔王「わお」

勇者「鍋に水を張り、切った野菜を入れていきます」

魔王「わたしは静かにそれを見守ります」

勇者「まずは硬い物から先に煮ていきます」

魔王「お湯が熱いので野菜が悲鳴をあげています」

勇者「どんどん入れていきます」

魔王「熱い……っ!? な、なんだここは! だ、誰か助けてくれ! 嫌だ! ボクは煮られたくない! 熱いよう熱いよう!」

勇者「煮えているかを確かめる為に、お箸でつつきます」

魔王「な、お前大丈夫か!? しっかりしろ! くっ、くそおおおお! やめろォ! そいつに……そいつに手を出すな! やるならボクを、あっ、あ、い、いたい!」

勇者「煮えてきたようなので、お豆腐を入れていきます」

魔王「食べました」

勇者「お豆腐がありませんでした」

勇者「最後に仕上げ。ネギは後にして、先にお味噌を入れます」

魔王「お味噌の良い香りがします」

勇者「少量ずつ、お玉の上でといていきます」

魔王「味見は任せてください」

勇者「そしてちょうど良いので、火を止めます」

魔王「いっぽうわたしは、お鍋の中身をおいしくいただきます」

勇者「…………おい」

魔王「勇者にばれたので、これにて退散いたしますね」




勇者「てめええええええええ待てえやこらあああああああああああああ!!!」ドドドドド

魔王「」テレポート! テレポート!

~おしまい 腹へった

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