提督「もうすぐクリスマスだし、鎮守府の皆に指輪でも送るか」 (30)

提督「我ながら素晴らしい考えじゃないか?」

<引き出しガラガラ

提督「大本営から届いたケッコンカッコカリの指輪はこれ一つしかない」

提督「たった1人にしか渡せないから、今日まで埃を被ってたわけだが……」

提督「1人に渡してしまうと、どうしてもその艦娘を特別扱いしてると他の子から思われてしまうからな」

提督「1つしか無いのが問題なんだ。全員分あれば何も問題はない」

提督「天才だな……俺。自分の天才っぷりに何だか涙が出てきたよ……」グスン



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提督「涙と一緒に鼻水も出てきた」ズズ

早霜「……司令官、鼻紙です」

提督「ああ、ありがとう早霜」チーン

提督「ところでいつからそこに?」

早霜「……朝からずっとお側に……うふふ」

提督「そうか……だからそんなに眠そうなわけか」

早霜「……はい」ウトウト

提督「まだ少し早いけど、業務を切り上げて帰るか?」

早霜「い、いえ……! せっかくの秘書艦で司令官のお側にいられる貴重な時間を……無駄にはしたくありませんので」

提督「そうか。だったら俺から言うことはない」

提督「ところでさっきの俺の言葉を聞いたか?」

早霜「ええ。指輪を全員に送るとか……とてもいい考えだと思います」

提督「そうだろうでしょう!」

早霜「ですが、新しく指輪を申請するにはお金が……その……全艦娘の分を用意するとなると……かなり……」

提督「ああ、分かってるさ」

提督(早霜の心配は分かる。だがこう見えても俺は、結構な戦果を上げてるベテラン司令官だ。突破した海域も数知れず。そんな俺だから、大本営から結構な褒賞も出ている)

提督(それを証拠に預金通帳の残額も……240円)

提督(240円。これは現代の貨幣価値に換算して……240円だ。安い自販機でジュースを2本買えるくらいの金だ)

早霜「どうかしましたか司令官? ……ひっ」

提督(俺の通帳を覗き込んだ早霜が真っ青な顔になり、手で口を覆った。年収が低い人を見る表情だ)

早霜「あ、あの司令官……」

提督「言うな。言わないでくれ……」

提督(そういえば先月、比叡が作ったカレーのせいで消滅した工房の修繕費をポケットマネーで支払ったんだった……)

提督(大本営に請求すると、どうしても比叡に責任が及ぶから仕方が無かった)

提督(しかし金が無いとなると、俺の素晴らしい提案が実行できない)

提督(さっきから俺の自分の通帳を押し付けてくる早霜の献身的な行動は嬉しいが、流石にこれは受け取れない)

提督(ならば別ルートで金を用意するしかないだろう)

提督「この手は使いたくなかったが……仕方あるまい」

>放送用スピーカーON

提督「えー、駆逐艦雪風。今すぐ司令室に来なさい」

提督「これでよし」

提督「後は暫く待つだけか」

>タッタッタッタ
>キキーッ!
>バタン

雪風「司令! 駆逐艦雪風来ました!」ビシリッ

提督「早いな。早すぎじゃないか? まだ20秒も経ってないぞ?」

島風「ふふーん! だって私早いもの!」

提督(なるほど……。島風におんぶをしてもらって来たのか。島風タクシー、この鎮守府の名物だ)

提督(間宮のデザート引換券を渡せば、好きな場所に迅速に送ってくれる)

提督(俺も何度か利用したが、下手にタクシーを使うよりも、早くて安い)

提督(まあ、艦娘ではない俺には早すぎて漏れなくゲロを吐くことになるのだが……)

島風「じゃーね島風! またのご利用をお待ちしてるから!」

>ドヒュン!

雪風「それで司令! 雪風に何の御用ですか?」

提督「うん。今からちょっと出かけるぞ」

雪風「お出かけですか! わぁい! 司令とお出かけですっ」

提督「というわけで早霜。留守は任せた」

早霜「はい、お気をつけて。……ちなみにどちらへ?」

提督「ちょっと競馬場に。その後、パチンコ行って、帰りに宝くじ売り場にな」


......
....
...

・・・・
・・・・・
・・・・・・


>ガチャリ

提督「ただいまー」

早霜「お帰りなさい司令官。温かいお茶をどうぞ」

提督「ありがとう」ゴクゴク

早霜「……その、それで……どうでした?」

提督「ああ、上手くいった。ほら」

早霜「ひっ」ふらり

提督(スーツケースに入った札束を目にした早霜が顔を真っ青にして、悲鳴をあげた)

提督(そのまま倒れそうになったところを支える)

早霜「あっ……あ、ありがとうございます///」

提督「気をつけるんだぞ。さて、早速で悪いがこの金を使って大本営に指輪を請求してくれ」

早霜「分かりました」

早霜「……あの、司令官。そ、その、できればでいいんですけど……」

早霜「早霜に一番に指輪を戴けたら……とても嬉しいです」

提督「それは無理だ」

提督「だって早霜。……お前の錬度、まだ8だし」

早霜「……くすん」

自室

提督「さて。明日の皆の反応が楽しみだ」

提督「喜んでくれるといいんだけどな」

提督「さて、寝るか」

>布団バサッ

那珂「じゃじゃーん! 那珂ちゃんだよー! お布団の中からとうじょーう! ねえねえびっくりした?」

提督「何してんの那珂ちゃん」

那珂「もーっ、今日は月に1度のシークレットライブの日でしょ! と・く・べ・つ・に! 那珂ちゃんのハジメテのファンの提督の為に、こうして来てあげたんじゃない! じゃあ行くよ! 最初の曲――」

提督(早起きして皆の反応を確かめたかったんだけど……今日は遅くなりそうだ)

遅くなりましたが初SSです。
こんなノリで進みます。
基本鎮守府をうろついて、艦娘と遭遇する……という流れです。

那珂「まだまだ行くよー! 17曲目『ドキ☆ドキ大破進軍』!」

提督(さて、夜も遅くなってきた。そろそろ早霜が各部屋をこっそり回って、最高錬度の艦娘の枕元に指輪を置いていってくれてるだろう)

提督(そういえば、机の中にあった指輪が手元にあったっけ)

提督(せっかくライブしてくれてるんだし、那珂ちゃんにあげるとするか)

提督「那珂ちゃーん」

那珂「はーい! 那珂ちゃんだよー! あ、もしかしてもう疲れちゃった? でも、まだまだ折り返しだから! 最後までついてきてねー!」

提督「これあげるわ」

那珂「え、なになに? もー、本当はプレゼントはジャーマネさん通してからじゃないと、駄目なんだからねっ。今日は特別だからねっ、えへへっ」

那珂「なにかななにかなー」

>パカリ
>指輪「ヨウ」

那珂「……!?」

那珂「な、え……こ、これって?」

提督「いつも俺の為にライブを開いてくれてありがとう。それは感謝の気持ちだ、受け取ってくれ。そしてこれからもよろしく頼む」

那珂「え、ええぇー!? ちょ、ちょっと待って! そ、それってつまり……そういうことっ!? そういうことでいいの!?///」

提督「そういうことだ」

提督(どういうことが分からんが)

那珂「で、でもっ、那珂ちゃんはアイドルだし、みんなの物だし……で、でもでもっ」

那珂「う、うぅー……。――ファンの皆ごめんね! 那珂ちゃん、普通の女の子になるっ」

提督「あれ? どこ行くんだ?」

那珂「引退ライブの準備! 暫くの間忙しくなるけど……それが終わったらよろしくね! ありがとう提督! 那珂ちゃんを選んで暮れて……嬉しいっ」

>バタン

提督「行ってしまった……。引退ライブか。寂しくなるな」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月19日 (土) 03:59:52   ID: 4gj80DQz

楽しみ
頑張ってくだちぃ

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