【安価】「力を手に入れるには代償が必要だ」 (39)

「代償?」

「今のお前はただの一般人に過ぎん。スライムにすら勝てない雑魚だ」

「スライム強いですものね」

「お前が弱いのだ。そこで、だ」

「はい」

「異世界から力を得る能力をお前に与える」

「異世界から?」

「強い力をお前に与えることもできるが、それ相応の代償を支払わなければならない」

「だが、この能力なら手に入れられる能力がランダムになる代わりに、代償もランダムになるのだ」

「何故そんな力をくれるんです?」

「いきなり有望な人間に与えて失敗したら目も当てられないだろうが」

「なるほど」

「では早速スライムを倒すために能力を得るとしよう。能力は>>2 代償は>>3だ」

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触れたものの水分を蒸発させる(任意)

ドロップキックが一撃必殺の威力になる能力

「新しい能力を手に入れたな」

「触れたものの水分を蒸発させる能力か」

「代わりにお前はドロップキックを受けると問答無用で死ぬ」

「なにそれこわい」

「だが、スライム相手にはとてもいい能力を手に入れたんじゃないか?」

「確かに。じゃあ早速スライムを倒しに行くとしよう」

-近くの森-

「この近辺でスライムの目撃報告が多発している」

「じゃあこの近辺を探索してみるか」

「その必要はないぞ」

「え?」

振り返るとそこには体長3m以上あろうかという大きな粘液の塊がいた。

それはジュウジュウと枯れ葉や枝を溶かしつつゆっくりと迫って来た。

「待って、なんか思ってたのと違う」

「スライムを見るのは初めてか? 体のほとんどを酸性の液体で覆った不定形の生物だ。物理攻撃はほとんど効かないと思った方が良いぞ」

「これに触らなきゃいけないの……?」

「そういう能力だからな」

しかし、悩んでいる暇は無かった。

そんなやり取りを終えると同時に体から液体を飛ばしてきていたからだ。

「ええい! きっとなんとかなる!」

飛んできた液体を右手で弾くと能力を発動。液体はあっという間に煙のようなものに変わり、霧散した。

「あっつ……いてええええええええ!!!」

「当然だ。一度触れなきゃ能力は発動できんからな」

「うぐ……本体に触らなきゃ、死んじゃう。ほんとに」

「はやくしろ。間に合わなくなっても知らんぞ」

「分かってるよ!」

幸いスライムの動きは遅く、簡単に駆け寄ることができた。

しかし、先ほどの痛みを思い出し、触れることを躊躇った。

「死にたいのか!」

「死にたくない!!!」

スライムに突っ込んだ右手が嫌な音を立てながら爛れていく。

辺りに鼻を突くような匂いが立ち込めた頃、ようやくスライムは辺りに散っていったのだった。

「もう右手は使い物にならんかもしれんな」

痛みに過呼吸を起こしていた俺は返事をする気にもなれなかった。

-数日後-

「さて、今回はコボルトを相手にしようではないか」

「治ったばっかりなんですけど」

「右手が動くようになってよかったな。火傷痕も男の勲章っぽくて恰好いいぞ」

「はぁ……コボルトの情報を教えてよ。スライムの時みたいにはなりたくない」

「一匹一匹の力は弱いが、数が多い。獣と人間を足して割る2したような魔物だな。身長は低いぞ」

「じゃあこの能力はやくに立たなそうだな。新しい能力を貰うとしよう」

「それがいい。では、能力は>>9 代償は>>10だ」

敵味方の区別が付かなくなる

魔物のメスにモテる(相手の知能が高い程深くモテる。手段を選ばない位)

「敵味方の区別が付かなくなる能力だな」

「相手は集団だからな。これは強力だな。しかし、この……魔物のメスに好かれてしまうという代償はどういう意味だ?」

「……いずれ分かるさ」

「随分と含みのある言い方だな」

「それはよい。とにかく移動するぞ」


-近くの森・コボルト陣営近く-

「では早速。混乱させるか」

直後、激しい戦闘音とドラのような音が鳴り響いた。

「これで俺は見てれば終わりだな」

「果てしてそう上手く行くかな」

「うげ!なんだこの数」

狭い場所では戦いづらいと思ったのかコボルト達の一部が洞窟の外に出てきた。

その数、ざっと数百。

「待て待て待て。なんでこう、待て、多くね?」

「これでも一部だぞ」

「魔物は恐ろしいな」

戦火は恐ろしい速度で広がっていき、否応なしに自分も巻き込まれてしまった。

「魔法を使うコボルトに剣やメイス。武器を持たない格闘家みたいな奴もいる」

「隠れているだけとはいいご身分だな」

「どうやって戦えばいいんだ。力弱いってなんだったんだよ。木がさっきから倒れまくってるぞ」

「魔物の中では弱い方だ」

はぁ、とため息を付く。

木の陰から隠れてみていたのだが、隠れてるだけでも疲れるな。

身を隠していた木に背中を預けようと振り返ると、そこにはコボルトがいた。

武器を持たない、見た限り素早さと力が特徴的な格闘コボルトだ。

「あー、女神様? 後ろに何かいますが」

「ん? 自分で何とかしろ。新しい能力でも貰うか?」

「そんな時間は、うわっ!」

予備動作なく突っ込んできたコボルトの攻撃を寸での所で躱す。

隠れていた木は衝撃を受け大穴が開いた。

「死ぬかと思った」

そう独りごちて、身を起こそうとすると悪寒が走った。

目だけを動かし、殺気の方を見ると、コボルトの足の裏が見えた。

あ、これ。やばい。ドロップキックはまずい。起き攻めドロップキックはまじでまずい。

「間一髪だったな」

ドロップキックは目の前まで来ていたが、届くことはなかった。

「お前は私が守ってやるよ」

目の前にはコボルトが立っていた。

まさか代償に身を救われることになるとは。

いやまて、ほんとにそうか? つーかこれメス? よく分からないんだが。

「あ、ありがとう」

「いいってことよ。好きな奴を守ってるだけさ。礼なんていらないさ」

あ、メスか。

その後長いこと戦いの音は続いたがゆっくりと収束していった。

戦いが終わり、村に戻った時には俺の周りには数匹のコボルトがいた。

「頼む、コボルト達よ。暫くの間離れてくれないか?」

このまま村に入っては襲撃と勘違いされてしまう。

「やだ」

なるほどね。代償はやはり代償か。さようなら今までの平穏な生活。さようなら人間との接点。

俺はもう村に入ることは叶わないだろうな。

「そう肩を落とすな。戦力は上がったのだぞ? まずは野宿に慣れることだな」

-野宿に慣れてきたころ-

「よし、それではそろそろオークを倒しに行こう」

「日に日に体力が落ちている俺にとうとうとどめを刺しに来たか」

「頬もこけてきたしな」

「それで、オークというのは? 女騎士が襲われたのか?」

「オークはそんなことしないぞ?」

「分かった分かった。俺の情報が何も役に立たないことがよく分かったよ。オークについて教えてくれ」

「オークは基本一匹で行動している。大きさは約2mの個体が多いな。力はコボルトとは比べ物にならないし防御力も高い」

「まあ弱点があるとすれば、頭が悪いことと、動きがそこまで早くないということだな」

「どうせ魔物基準で早くないだけなんだろ? はあ、とりあえず混乱は一匹相手には意味ないし、水分蒸発も役に立たなそうだな」

「新しい能力か。では行くぞ。能力>>16 代償>>17

味方や意識の無い相手に触れることで爆弾に変え任意に自爆させられる

女騎士に襲われる

「新しい能力は味方や意識のない相手に触れることで爆弾に変えられる能力だ。好きなタイミングで爆破できるぞ」

「なにその非道な能力」

「代償だが、お前は女騎士になぜか襲われるようになったみたいだな」

「嫌われたの? 何かした?」

「知らん」

「オークに勝てるのこれ」

「爆弾はいっぱいあるだろう?」

「女神様って本当に女神なのか疑うときが多すぎるよ」

-近くの森・オークの住む洞穴-

「ねえ、女神様」

「なんだ? 怖気づいたか?」

「近くの森に魔物住みすぎじゃない? というか野宿してたところとそんなに離れてないんだけど」

「女神パゥワーで気付かれないようにしてたのさ」

「女神様が倒せばいいのに……」

「か弱い女の子を働かせるつもりかね?」

「はいはい。はぁ、心が痛むが。コボルト達すまん」




「おでの住処に何か用かあ?」

「悪いがお前を倒しにきたぞ! オーク! 倒すのはコボルトだけど」

「なんで倒されなきゃいけないんだあ?」

「なんでって、そういう決まりだからだよ! 変なこと言うな!」

「悪いことしてないのになあ。決まりなら仕方ないなあ」

「女神様。ほんとに倒していいんですか?」

「うむ。魔物は滅びるべきだ」

「そういうことだ。悪いなオーク。俺に決定権はないんだ。コボルト達、オークを囲め!」

「分かった」

「そして起爆!」

洞穴内部は粉塵に包まれた。

「汚ぇ花火だぜ」

粉塵が晴れると、そこにはオークの欠片も残っていなかった。ついでにコボルトも木端微塵だ。

「さて帰るか」

「またれよ」

洞穴を出たところで背後から声を掛けられる。

とても嫌な予感がするが、振り返らざるを得ない。

「はい、なんでしょう」

「私は女騎士だ。お前を見てると無性にムラムラする。襲わせろ」

「お断りします!!!」

「それをお断りだ! 今甲冑を脱ぐから待っていろ」

待つわけがない。俺は女騎士が甲冑を脱いでいる間に全力でそこから逃げ出した。

-それから数日・事あるごとに現れる女騎士から逃げ続けていたある日-

「女騎士は強敵だったな」

「勝手に殺すな」

起きたら女騎士がパーティに加わっていた。

「女騎士には悪いけど、こいつは私の下僕で魔物退治しなきゃいけないから」

「なに、女神様に迷惑は掛けん。魔物退治してないときを狙うさ」

「それならよろしい」

「何が?」

「早速だけど、今度はメデューサを倒しに行ってもらう」

「メデューサってのはなんだ?」

「ヘビを使い魔にした魔法使いってところだな。見られると石化するから気を付けろ」

「ふーん。まあ俺の知ってるメデューサとそんなにかわ、は?」

「新しい能力はいるか?」

「いるいる! 無理だろ! 見られただけでアウトじゃねえか!」

「あまり能力を使ってもリスクが大きいんだがな。能力>>21 代償>>22 だ」

任意の空間の水分を凍らせて鏡のような氷を出せる

寿命が1年になる

「任意の空間の水分を凍らせて鏡のような氷を出せる能力だ」

「毎度毎度都合のいい能力が出るな」

「その代わりお前はあと1年で死ぬ」

「代償でかすぎない!?」

「なに、もとよりお前はただの捨て駒に過ぎんのだ」

「あと1年以内に襲わなければいけないのだな?」

「こいつらは爆弾しかけられそうにないな」




-近くの森・石造りの城-

「この前見たよこの城」

「キャンプ地を探してる時に見たな」

「怪しすぎて入らなかったけど、よく俺の村滅ばないよな」

「早く入れ、寿命は残り少ないんだぞ」

「はいはい」

城の扉を開けると、大広間があり、そこには女がいた。

闇の中でも分かるほど艶のある黒髪。

ふくよかな胸。すらっと伸びた足。局所にはヘビが巻き付いており、時折見えそうになるのが欲情を誘った。

「おい、何を見惚れている」

女神様の恫喝で思わず我に返る。

だが、俺はまだ石になっていなかった。

「よくぞおいでなさいました。主様」

「は?」

よく見るとその女は目隠しをしていた。

「永久にも感じる長い間あなたをお待ちしておりました。どうか私も旅に連れて行ってください」

後ろから突き刺さる視線が痛い。

殺さなければ殺すぞ、と。

「分かった。だが、目隠しを外してほしい。君の顔が見たいんだ」

「主様……。主様がそうおっしゃるのであれば」

そうしてメデューサは石になった。

目の前に鏡のように綺麗な氷を出していたからだ。

「うむうむ、よく働く下僕だ。案外優秀だったのかもしれないな?」

昼間は女神様の圧力に屈してしまったが……。

本当にこれで良いのだろうか?

そもそも俺は女神様と会うまでは魔物と会ったことすらなかったし、村が襲われたこともない。

オークは悪いことをしてないとか言ってたし、メデューサも目隠しをしていたくらいだ。

そして俺は何のために魔物を倒しているのか分からない。言われるがまま、本当にただの駒だ。

極めつけに寿命は残り364日と数時間。もうだめぽ。

俺はゆっくりと息を吐き、誰にも聞かれないように呟いた。

「能力をくれ 女神を倒す。能力 >>26 代償 >>27

寿命に近いほど基本能力が上がる

「寿命に近いほど基本能力が上がる……か」

「まるで今の俺を覗き見てるかのようなベストな能力だな……。ありがとう」

「代償は……。ん?」

「神が人の身に降り、直接干渉出来るようになってしまう……だと?」

「よく分からんな。だが、代償は必ず代償たるものであった。気を引き締めなければな」




-翌朝-

女神はいなかった。

女騎士もいなかった。

「何が起きた?」

「何が起きたと思う?」

突如後ろからかかった声に驚くことなく拳を入れる。

予想していた感触が無く、攻撃を外したのだと、すぐに迎撃できるよう身構える。

相手は、強い。

「まさか、神に反逆する愚か者だとは思わなかったよ」

「その声、女騎士か」

「半分正解」

右の方で爆ぜる音がし、土埃が上がる。

移動している姿は捕えられぬほど速いが、爆ぜた方向に拳を伸ばせば攻撃は当たるのだ。

速さだけあればいいというものではない。

「ぐっ……」

延ばした腕に無数の切り傷が付き、爛れた右腕が露わになる。

どうやら一筋縄にはいかないみたいだ。

「もしかしてまた新しい能力手に入れたの? 代償は何かなあ?」

「ま、私がこうして現世に干渉できちゃってるのが代償だろうけどね」

「女神か」

「当たり。でもこのままじゃちょっと張り合いが無さ過ぎるなあ」

女騎士、いや、女神は顎に指を当てて何か考えるようなしぐさを見せている。

だが、驚くほどに隙がない。今突っ込んでしまえば間違いなく俺の首は体と離されてしまうだろう。

「もう1個だけ能力貰ってもいいよ。いいハンデでしょ?」

「はは。そりゃありがたい」

「正直女神の底は知れない。貰った能力で勝てるかも分からない」

「だが、おそらくこれが最後の能力使用になるだろう」

「どうせ倒しても1年で死んでしまう身だ、倒せなきゃここで死ぬ」

「代償はでかくて構わない! >>31 だから、女神を倒せるような、そんな能力をくれ! >>32

死ぬと過去に戻り今まで倒されたモンスターに転生する

女神の膣内に射精するまで女神は動けなくなる

「はは……代償は殺されたモンスターに転生……か」

「能力は、と」

「は?」

確かに女神は動かなくなっていた。

顔に怒りを表し、こちらを睨みつけていた。

「女神の膣内に射精しなければずっと動くことはないんだよな……」

俺は地面に大きな穴を掘り、そこに女神を埋めた。

恐らく神の力を持っているのだからあの程度で死ぬことはないだろう。

そしてその真上に俺は家を建てた。

残り短い寿命を女神の監視に充てることにしたのだ。

日に日に強くなっていく体に、本当に死ぬのか?と疑念を抱いたが、強くなるということはそういうことだ。

そしてあれから363日が経った。俺の寿命は残り数時間と言ったところだ。

今なら女神にも勝てるのでは? と思ったが、倒したと同時に女神が解放されたらたまったものではない。

昨日見た時にはまだ女神はこちらを睨みつけていた。

これから永久にも感じられる時を土の中で過ごすがいい。

女神の事を知っている人間はもうこの世にいないのだ。

そして俺は唐突に死んだ。

気が付くと視界は真っ暗だった。

体を何かが這うような感覚がある。

そうか、私も永久にも感じられる時を待つ必要があるのか。

女神もただの駒だったのかもしれないな。

この能力と代償を与えた異世界の”上位の神”がいたのかもしれない。

何、考える時間はいくらでもあるんだ。

今はとりあえず、休みたい。

終わりです

即席で書いたので矛盾とかあったらすみませんでした

HTML化依頼出してきます

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