【モバマス】杏「勇者特急ウサミンロボ」 (41)

 
 歌って踊ってロボット開発もできるアイドル、池袋晶葉によって開発されたウサちゃんロボ。

ウサちゃんロボもまた、踊って団子も作れる優れロボである。

 そのウサちゃんロボの一部を異星超文明のウサミン科学によって強化改造したものこそ、ウサミンロボ!

 ウサミンロボは今日も、アイドルたちのために張り切るのだ!


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 ある日の昼下がり、事務所にモバPの声が響きます。 

「いかん! このままだと間に合わないぞ!」

 モバPの慌てている姿を見て、ウサミンロボは緊急即応体制をとりました。
 これでランチタイム時間切れ昼食難民から熱核戦争シェルター避難、ゾンビパンデミックまで、あらゆる事態に即応できます。
 準備は万全です。

「スタジオ入りが間に合わないぞ!」

 うさっ!?

 これはウサミンロボにも想定外でした。まさかお仕事でモバPがミスをするなんて。
 人間的には色々ありますが、仕事マンとしてのモバPは超優秀なのです。
 人間的には色々ありますが。
 大事なことなので二度言いました。
 だけどウサミンロボは慌てません。


「杏、急いで支度をしてくれ」

 モバPに名前を呼ばれたのは双葉杏です。ニート・ザ・アイドル、働いたら負ける人です。

「仕方ないなぁ……」

「今日ばかりは絶対に遅刻は許されないんだ」

「えらく今日は慌ててるけど、どうしたの?」

「今日は本当に特別なんだ」

「……なにそれ、初耳だよ」

「変にプレッシャーを与えたくなかったんでな」

「もしかして、共演者?」

「そうだ」


「誰なの?」

「あの、今やアイドル業界向かうところ敵なし、鎧袖一触、絶対無敵、熱血最強、元気爆発の765さんだ」

「……わお」

「わおだよ」

「どうするのさ、とりあえず、仕方ないから杏も急ぐけど」

「今回の遅れは完全にこちらのミスだ。真摯に謝るしかないだろう」

「一緒に謝ろうか?」


「気にするな、俺のミスだ」

「だけど……」

「なーに、お詫び代わりに向こうさんに、うまいラーメンでも腹一杯奢るさ」

「……ちなみに今日の共演者って」

「四条貴音」

「大惨事だね」

 うさぁ……

 ウサミンロボも恐怖しました。
 先日たまたまパトロール中に出会い、望まれるままウサミン団子を作ったところ、一週間分を食べつくされたからです。


「食事前ですので、このくらいの量がちょうどよいですね」と言われたものです。

 そんなふうにウサミンロボが脅えている間に、モバPと杏の意見は固まったようです。

「とにかく急ごう」

 ここでロボの出番です!

 うさっ!

 ウサミンロボの緊急連絡がウサロボ秘密基地に届きます。

 うさっ、うさっ

 ウサウサウサのコールサインです。


 待機中のウサミンロボの瞳が一斉に輝き出します!

 ウサミンロボの瞳が燃えます。

 戦いの海は牙でこぎ、悲しみの海は愛でこぎ、アイドルたちを守るため、愛と勇気の炎を燃やすのです。
 夢と希望の明日も願います。

 ウサミンロボ緊急発進!

 数秒と経たないうちに、二台のウサミンロボが到着しました。

 二台は前後に並び、その間に、時代劇に出てくるような駕籠を担いでいます。

 駕籠側面にはポップゴシック体で「ウサミンロボ特急」と書かれています。
 小さいゴシック体で「うさみんろぼとっきゅう」と振り仮名もついています。お子様向けとしても万全です。


 これぞ勇者特急ウサミンロボ、一時間でウサミン星に到達(無人時理論値)する優れモノなのです。

 うさうさ

 モバPがウサミンロボ特急に気づきます。

「特急? 乗り物か。よし、ロボ、スタジオまで頼む。杏、乗ってくれ」

 うさっ!

「頼むね、ロボ」

 杏の言葉にウサミンロボは頼もしく応えます。

 うさっ!


 駕籠に乗り込む杏。だけど駕籠は一人乗りでした。
 モバPは首をかしげます。

「俺は?」

 うーさー

 ロボはモバPのズボンのベルトを掴むと、自分の耳に引っ掛けます。

 ウサウサウサ!!!

 勇者特急ウサミンロボ発車準備OKです。

「待てロボ、この発車方法は俺が大惨事のような気がする」

 うさっ!?


「駕籠が一人乗りなのは仕方ないが、もう一台用意できないか?」

 うさうさ

 ウサミンロボは賢いので、モバPの言いたいことをすぐに理解しました。

 ウサミン特急をもう一台準備して、再び発車準備完了です。

 いつモバPが耳元から吹っ飛ばされてもいいように、もう一台が後ろからついていくのです。
 吹っ飛ばされたとしても、後ろの一台がいつでもキャッチできます。
 これでもう、安心です。

「違う! 俺が言いたいのはそういうことじゃなくて!!!!」

 勇者特急ウサミンロボは、直ちにスタジオへと向かいました。モバPの声はもう聞こえません。


 すぐにスタジオに到着します。モバPも無事スタジオに着きました。吹っ飛びませんでした。万全です。

 うさっ!

「さすがウサミンロボ! 間に合ったよ」

 駕籠を下りた杏は、ロボに礼を言うと、控え室へと急ぎます。

 ロボは手を振って見送りました。

 今日も無事、アイドルのお役に立ったのです。ウサミンロボはとても嬉しい気持ちで一杯でした。

 そしてウサミンロボは、このまま杏の仕事が終わるのを待つことにしました。帰りも事務所まで送るためです。

 うさ~


 スタジオ前でおとなしく待っていると、一台の車が止まりました。
 タダの乗用車ではありません。いわゆる高級車、ハイグレードな車です。

 前に、ヘレンが乗っているのを見たことがあります。警護を頼まれて、超攻速ウサミンロボ形態で併走したこともあります。

 ウサミンロボが見ていると、車を止めた運転手がそそくさと後部に回ってドアを開けました。

「あら、こんなところで何をやっているの? 子豚ちゃんたち」

 ひざまずく運転手を踏みつけながら降りてきたのは財前時子さまでした。

 ウサミンロボは知っています。これが運転手にとっての「ご褒美」だと。
 ウサミンロボにはよくわかりませんが、直接本人に聞いたことがあるから間違いありません。
 因みに、この運転手さんは財前時子ファンクラブ会員番号三番の猛者です。

 うさ~


 時子さまの声に、後から来た方の特急の後ろ側にいたウサミンロボが反応しました。 

 うさっうさっうさっ

「あら、あなたもいたの? ブタミンロボ」

 実はこのウサミンロボは財前時子専属となったこともあるロボで、ブタミンロボという名前をつけられているのです。
 時子さまによって、一番の豚(ファン)と認定されたロボは豚王、すなわちPIG王(ピッグオー)とも呼ばれています。
 時々、ライブにゲストダンサーとして招かれると、時子さまはピッグオーを呼ぶのです。

「ピッグオー、ショータイム!」と。

 ぷぎっ、ぷぎっ


 時子さまに大恩のあるウサミンロボは、時子さまの前に出ると声もちょっと変わります。
 そして、うさ耳の代わりに豚耳をつけ、顔には豚鼻をつけ、さらに尻尾の電源コードは巻き尻尾形状に変わります。

 ブタミンロボの誕生です。

 ぷぎっぷぎっ

 ウサミンロボの言葉を時子さまはわかりませんが、何故かブタミンロボの言葉はわかるようです。

「そぅ、あなたは、この財前時子を差し置いて他のアイドルの送迎をしているという事ね」

 ぷぎっ!?

「そう、わかったわ」

 ぷぎっぷぎっぷぎぃいいいいっ!!


「言い訳はいらないわ、わかっているはずよ。この財前時子のファンであるということが、一体どういう意味なのか」

 財前時子ファンクラブに入会すると漏れなくもらえる黒革の手帳。
 その手帳を開いた一ページ目には、こう書かれているのです。

『この手帳開く者、全てを捧げよ』

 それが、それこそが、財前時子ファンの証にして存在意義。
 捧げてこそ、全てを捧げ尽くしてこそ、財前時子ファン。
 身を惜しんで、何がファンか。身を捧げられることなくして、何がアイドルか。

 ぷぎぃぷぎぃ

 うさっうさっ!

 ウサミンロボは慌ててブタミンロボを弁護します。


「あら、庇うの?」

 うさっうさっ

「何言ってるかわからないわ」

 うさっ!?

「だけど、庇っているのはわかるわね」

 うさ~

「ふふふっ、ほんの冗談よ。女王(クイーン)は暴君(タイラント)であっても、愚者(フール)であってはならない」

 ぷぎぃ


「ブタミンロボ、貴方は貴方のつとめを全力で果たしなさい。それでこそ、私の子豚ちゃんよ」

 時子さまはそれだけを言うと、身を翻してスタジオへと入っていきます。

 ぷぎぃっ!

 ブタミンロボは両手を挙げて時子さまを称え見送ると、再び特急駕籠へと戻りました。

 うさ~

 ブタミンロボ装備をパージして、ウサミンロボ装備に戻ります。

「……あ、ロボくんだ」

 再び待機していると、男性アイドルたちの登場です。


 無人島を開拓したり、重機に乗ったりラーメンを作ったり、畑を耕したり、40歳過ぎたりしているアイドルグループです。
 歌も歌います。

「あれ、そしたらウサミン来てるんかな?」

「いやいや、安部さんと一緒とは限らないでしょ」

「ウサミンは何か話通じるからなぁ」

「安部さん17歳なのに、なんでリーダーとそんなに話通じるんだろね」

「それはまあ、謎やな」

 うさ~

「ロボは相変わらず可愛えな」


「よーしよし、よーしよし」

「犬じゃないんだから」

 うさうさ~

「ほら、喜んでる喜んでる」

「いや、どっちかって言うと、こっちが遊んでもらってるっぽいよ、それ」

 男性アイドルたちは、スタジオ横の倉庫から巨大な何かを持ち出してどこかへ行ってしまいました。

 ウサミンロボは手を振って見送ります。
 以前、「ロボくんにはこれやな」と日清オイリオギフトセットをくれた男性アイドルたちが、ロボは大好きなのです。


うーさー
うーさー

うさ、うさ、うさ、うさ

暇になったロボたち四台は、車座になってウサミン会議を開きました。

 暇ウサ

宣伝ウサ

賛成ウサ

行くウサ

四台は宣伝行脚を開始することにしました。


双葉杏のアルバムの一部を流しながら街を練り歩き、CDも直販です。ロボにつなげればDL販売も可能です。

 買ってくれた人には、おまけとして出来たてのウサミン団子も進呈します。
 中には、ロボとの握手を求めてくる人もいます。

 宣伝行脚終了予定時間も近づいていましたが、あまりの盛況ぶりに、ウサミンロボたちは二手に分かれることにしました。

 杏を迎えに行く一組と、宣伝を続ける一組です。

 杏迎え隊が発車します。宣伝隊は宣伝を続けます。

 たくさん売れてお客さんも減り、合流時間も近づいた頃、一人の男の子がロボたちに近づいてきました。

 嬉しそうにロボたちの流す歌を聴き、ロボの掲げているウサミン団子をじっと見ています。

 うさ?


 ロボがCDを差し出すと、男の子は困ったように首を振ります。

 DL販売だ、とロボは思いました。だけど、男の子はプレイヤーどころか機器類を一切持っていません。

 男の子はただ、ロボたちについてきて歌を聴いているだけでした。

 そこへ、杏迎え隊が合流しました。

「んー? どしたの?」

 杏は、その場に漂う妙な雰囲気に気づきます。

 いつもの宣伝行脚をやっていたことはすぐにわかりました。そして、売れ行きも見せてもらいました。

「凄いね、宣伝ロボは優秀だね。もっとたくさん売って杏に印税を……」


「帰ろう」

 男の人の声がします。

 ロボと杏が目をやると、男の子の横にいつの間にか男の人が立っています。どうやら、お父さんのようです。

 杏は密かに顔をしかめました。
 
 男の子はさほどでもありませんが、お父さんは見るからに古ぼけたシャツを着ています。

 CDを買わない……いえ、買えない男の子。団子をずっと見ている男の子。そして、着古した服のお父さん。
 よく見ると、靴には継ぎが当てられています。

「……お父さん」

 お父さんは無言で首を振り、言います。


「もう、いいだろう? 帰ろう」

「……」

 男の子はもう一度だけ、と言うように顔を上げ、ロボの手に持ったCDを見ました。

「ごめんな」

 お父さんの言葉に、男の子はニッコリと笑います。

「いいよ、ラジオでもテレビでも聞けるよ」

「ロボ、回り込んで」

 杏が言いました。ロボは、即座に男の子の背後へと回ります。


「え?」

 お父さんは男の子を守るような姿勢でロボに身体を向けます。

「お客さん!」

 杏は声を上げました。

「おめでとうございます! ウサミンロボ特別販売、ちょうど百人目のお客様だよ!」

 きょとんとした顔の男の子に、杏は続けます。

「百人目記念にCDプレゼントです、それから、ウサミン団子も!」

 ロボは首を傾げていました。この男の子は百人目じゃありませんし、こんなキャンペーンも初耳です。


「ロボ、CDとお団子1ダース出して」

 うさっ
 
 それでも双葉杏の命令です。ロボは素直にCDとお団子を出しました。

「それからついでに、杏のサインもつけちゃう!」

 男の子の顔に、ようやく理解の色が生まれます。

「え、あの……」

 慌てるお父さんに、杏は続けました。

「百人記念のキャンペーンだから、大丈夫だよ」


「うふっふ、それじゃーあ、きらりのサインもつけゆね」

「きらり?」

「うきゃ?」

「な、なんできらりが」

「きらりは今日はぁ、オフなんだにぃ。だからねぇ、お散歩してたんだけど」

 諸星きらりが笑っていました。

「なんだかこの辺りから杏ちゃんの匂いがすうからフーシギ、って」

「マジか」


うさっ!?

 きらりんの鋭さに、ウサミンロボも杏も動揺が隠せません。

「あんきらサイン、プレゼントすぅ~♪」

 結局男の子は、CDを数枚とウサミン団子1ダース、そして杏ときらりのサインをもらうことができました。
 男の子、そしてお父さんは何度も礼を言いながら、帰って行ったのです。

「うぇへへ、杏ちゃんはいい子ぉ」

 きらりはでれでれと杏を抱きしめています。とても嬉しそうです。

「勘違いしないでよ。アレは宣伝だから。損して得取る高等戦術なんだよ」

「うふふふ、杏ちゃん、優すぃ~」


仲良し二人の様子を見ていたウサミンロボは、特急の発車準備を始めます。

その前に杏に、お疲れさまのウサミン団子飴を渡すことも忘れません。

「一緒にお帰りだにぃ」

丁度、ウサミン特急も二台あります。二人とも乗ることができます。

ウサミン特急、発車準備です。

「ところでロボちゃん?」

 うさ?


「Pちゃんはぁ、そんなところで何をしてゆの?」

 きらりが指さした先には、ロボの耳に引っかかったまま失神しているモバPがいました。

「……」

 うさっ!?

 今まで忘れていたようでした。





 終

 以上、お粗末さまでした

 最初は仁奈や薫とロボが電車ごっこして幸子とみくが巻き込まれて……

 というネタを書こうとしていたはずなのにどうしてこうなった

そうです

仁奈「ダンス・ウィズ・ウサミンロボ」

ですね


ついでに一番最近の過去作は

菜々「ウサミン星で逢いましょう」

でした

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