ミカサ「エレンが怖い」(43)

アルミン「えっ?」ギョッ

ミカサ「先日、晴れてエレンと恋人同士になった」

アルミン「うん」

ミカサ「エレンが私の事を大切に思ってくれるのはとても嬉しい」

アルミン「うん」

ミカサ「なぜなら私も同じくらいエレンの事を大切に思っているから」

アルミン「うん」

ミカサ「エレンを傷つける存在は絶対に許せないし」

アルミン「うん」

ミカサ「私はエレンのためにできることならなんでもしたいと思っている」

アルミン「うん……」イラッ

ミカサ「そもそも私にとってエレンとは」

アルミン「うん、うん……それで、何が言いたいのかな?」

ミカサ「そう、あれは先日の事だった……」

***

ジャン「よ、ようミカサ! 今日もきれいな黒髪だな」

ミカサ「……どうも」

エレン「おい」

ミカサ「エレン?」

エレン「なに他の男と楽しそうにしゃべってんだよ?」

ミカサ「……悪かった」

ジャン「おい、ミカサは何も悪くねーだろ!」

エレン「お前そいつのことが好きなのか……?」

エレン「俺がどれだけお前のこと想ってるか、お前分かってんのかよ、なあ……?」

ミカサ「違う、そんなことはない。私にはエレンだけ」

ジャン「ミカサもそう言ってんだろ、許してやれよ」

エレン「だったら俺だけ見てろ。他の奴の事なんか考えるな」

ミカサ「分かった、そうしよう」

ジャン「もう仲直りしたのかよ。お熱いこった」

マルコ「ジャン、今日はエレンと喧嘩しないんだね」

ジャン「うるせーな、んなもんとっくに諦めてんだよ。いちいち取り合ってたらキリねーだろ」

マルコ「ジャンも大人になったってことだね。僕は嬉しいよ」

ジャン「まあな」

ジャン(自分で言ってて悲しくなってきた……)

エレン「ほら、もう行くぞ。二度とこんな奴と会話すんなよ」

ミカサ「分かった、もう二度としない」

ジャン「なあ、一番可哀想なのって俺だよな?」

***

ミカサ「こんなことがあったのだけれど……」

アルミン「うん、でもこれは別に普通じゃないかな?」

ミカサ「どうしてそう思うの?」

アルミン「好きな人を誰かに取られたくないと願うのは至極普通の感情だと思うよ」

ミカサ「それは分かる……でも私にはまったくそのつもりはないのになぜ?」

アルミン「えっ、まさか気づいてないの!?」

ミカサ「どういうこと?」

アルミン「だって、ジャンってどう見てもミカサに気があるじゃないか」

ミカサ「そう……それは気がつかなかった」

アルミン「あいつはミカサを狙ってるんだ。だからエレンが警戒するのも無理はないよ」

ミカサ「分かった。今後は気を付けよう」

アルミン「ミカサには意外と危なっかしいところがあるからね」

ミカサ「……でも、エレンは私がジャン以外の男と話す際にも攻撃的な態度をとる」

アルミン「ミカサは魅力的だから男子全員に好かれていても不思議ではないんじゃないかな?」

ミカサ「男だけでなくアルミン、あなたと話しているときにも……」

アルミン(僕は男としてカウントされていないのか……!?)

アルミン「……ともかく、それだけなら単に嫉妬深いで済む話だと思うけれど」

ミカサ「それだけではない。他にもこんなことがあった」

***

クリスタ「みんな一日お疲れ! クッキー焼いたんだけど、食べる?」

一同「いただきまーす!」

ユミル「疲れてんのはお前もだろ。もうやめろよ、こんな事」

クリスタ「でも、こうしないとみんなに嫌われちゃう……」

ユミル「……」

クリスタ「ミカサも食べる?」スッ

ミカサ「ありがとう――」

エレン「もらっとくわ」ヒョイッ

クリスタ「あ」

ユミル「お前がっつきすぎだろ。どんだけ女神様のクッキーが欲しいんだよ」

エレン「よし、毒は入ってねぇな」ボリボリ

ミカサ「エレン、何もそこまで……」

クリスタ「え……? 毒?」

ユミル「おい、どういう意味だよ」

エレン「そのまんまの意味だよ。毒盛られてねえか心配だったからな」

ユミル「お前クリスタがそんな事するとでも思ってんのか?」

エレン「ああ。大体お前の態度は嘘くせぇんだよ」

クリスタ「え……」

エレン「そこまでしてみんなに好かれてぇか? 偽善者が。俺のミカサに近づくな」

ユミル「お前っ……! 何も知らない癖に!! クリスタは――」

クリスタ「い、いいのユミル! 私は平気だから……」

ミカサ「ごめんなさい。エレンは少し混乱していて」

ユミル「……お前も大変だな」

エレン「行くぞミカサ。今度から変なもんもらっても口にすんな。お前が汚されちまうからな……分かったか?」

ミカサ「待って。二人に謝るべき」

エレン「分かったな?」

ミカサ「……」

クリスタ「どうしよう……これじゃまだ足りない……このままじゃ、誰にも必要としてもらえない……

     どうしたらいいの? どうしたらみんなの役に立てる? 何か、何かしなくちゃ……

     みんなのために何か……そうしないと生きてる価値ないの私なんか」

ユミル「大丈夫だ、心配すんな」

サシャ「おかわり!」

コニ―「こいつ俺の分食いやがった! ありえねー!」

サシャ「クリスタ、すごく美味しかったですよ! どうやって作るんですか?」

クリスタ「えっ? えっとね……」

ユミル「あー待て。明日ちゃんと教えてやるからお前も手伝えよ」

サシャ「了解しました!」

コニ―「お前全部つまみ食いすんなよ!」

クリスタ「……ふふ」

ユミル「明日はゆっくり休んでろよ」

クリスタ「ありがとう、ユミル」

***

アルミン「そう、エレンがそんな事を……」

ミカサ「ジャンならともかく、クリスタにあんな辛辣な態度をとるとは思わなかった」

アルミン「毒味か……それだけミカサの事を大切に思ってるってことじゃ」

ミカサ「そう思いたい。けれど、最近は特にエスカレートしている気がする」

***

ライナー「おいお前、先日クリスタに酷いことを言ったというのは本当か?」

エレン「ああ、あいつはミカサを殺そうとしたからな。俺が守ってやらないと」

ミカサ「エレン、まだそんなことを言っているの……?」

エレン「ミカサは俺が守るんだ、俺が守ってやらなきゃ」

ライナー「クリスタがミカサを……? お前本気で言っているのか?」

エレン「あぁ? そうかお前、クリスタのこと好きだったよな……」

エレン「嘘つき同士さぞかし気が合うんだろうな……くくくっ」

ベルトルト「!?」

ライナー「なっ……」

ベルトルト「酷い冗談だね。ライナーがいつ嘘をついたっていうんだい」

エレン「なんだお前? だれだお前? よくしゃべる野郎だな。そうやって俺からミカサを奪おうとするんだろどいつもこいつも」

ミカサ「エレン、落ち着いて」

エレン「ミカサ大丈夫だ、俺がついてるから。こんな奴らに騙されちゃだめだ」

ジャン「死に急ぎ野郎てめーミカサを困らせてんじゃねーよ殺すぞ」

マルコ「ジャン、やめるんだ。また喧嘩するつもりか?」

エレン「あぁ、ごめんなマルコ。その前にこいつら駆逐しないとな」

ミカサ「やめなさい」ガシッ

エレン「お前こいつらの味方するのか? なんで?
 
    俺はずっとお前のこと見てきたんだぜ。これからもずっとだ。

    なのにお前は俺を拒絶するのか? なんで?」

ライナー「おい、こいつ大丈夫なのか……」

ベルトルト「大丈夫だよライナー」

ミカサ「エレンは少し疲れている」

ライナー「ああ、お前も気に病むなよ」

ベルトルト「大丈夫だよアニ。きっとうまくいく」


ライナー「あいつら、心配だな……」

ベルトルト「錯乱してるだけだから」

ライナー「しかし俺には嘘をついた覚えなんてないんだが」

ベルトルト「錯乱してるだけだから」

***

アルミン「それは、確かに心配だなあ……」

ミカサ「アルミンもそう思う?」

アルミン「うん、もっとひどいことになる前に手を打たないと」

ミカサ「エレンは元々悪気があったわけではないと思う。だからあまり手荒なことはしたくない」

アルミン「そうだね。でもこのまま放置しておくのはまずいよ」

ミカサ「それは分かっている。けれど……」

アルミン「一度三人で話し合ってみよう。それで状況がよくなるかはわからない、むしろもっと酷くなるかもしれないけれど……」

ミカサ「……」

アルミン「今の彼は何をしだすかわからない、とても危険な状態だけど、少なくともミカサに危害を加えるつもりはないはずだ。

     だからミカサがいれば滅多な真似はしないはず……」

ミカサ「……ありがとう。アルミンに相談してよかった」

アルミン「少しでも役に立てたなら嬉しいよ。ミカサもずいぶん疲れてるみたいだから、お茶でも飲んで落ち着いて」スッ

ミカサ「分かった、そうしよう」ゴクゴク

アルミン「ミカサが僕のこと頼りにしてくれるなんて嬉しいなあ」

ミカサ「……」ウトウト

アルミン「これからも何かあったら僕のところに来てよ」

ミカサ「……」ドサッ

アルミン「僕だってミカサの力になりたいんだからさ……」

つづく

期待

今のところエレンがただのクズ野郎だが大丈夫か

ミカサ「……」パチ

アルミン「お早うミカサ。調子はどう?」

ミカサ「ここは……?」キョロキョロ

アルミン「もう心配しなくていいんだよ。ミカサは僕が守るから」

ミカサ「だったらこの手錠を解いてほしい」ジャラッ

アルミン「ごめんね、別に痛いことをしたいわけじゃないんだ」

ミカサ「アルミン、ここから出して」

アルミン「酷いよね、エレンの奴ミカサの気持ちも考えずに」

ミカサ「アルミン」

アルミン「僕のほうがずっとミカサのこと大切に想ってるのに」

ミカサ「……」

アルミン「ミカサを幸せにしてあげられるのは僕しかいないんだ」

ミカサ「どうして……」

アルミン「なのにミカサはいつもエレン、エレンって」

ミカサ「……どうして」

アルミン「ミカサにとっての僕ってなんなんだろう?」
 
ミカサ「……まさか、アルミンがそんな風に思っていたなんて」

アルミン「気が付かなかったって? 結局僕もジャンと同じ、その程度の存在だったってことだよね?」

ミカサ「そんなことはない。私にとってアルミンは」

アルミン「もういいよ。聞きたくない。もううんざりなんだ」

ミカサ「アルミン……」

アルミン「僕は君にとってのエレンにはなれないから」

ミカサ「……」

アルミン「ジャンのように無関心でいられた方が、まだマシだったよ」

ミカサ「ごめんなさい」

アルミン「謝るな」

ミカサ「私は、どうすれば」

アルミン「どうもしないでいいよ。ここから逃げ出そうとする努力以外は」

ミカサ「それはできない」

アルミン「どうして? 自分の立場がわかってるの?」

ミカサ「エレンに会いたい。会って、ちゃんと話をしなければ」

アルミン「……そう」

ミカサ「……」コクッ

アルミン「言うだろうと、思ったよ―――」


ゴスッ


アルミン「」ドサッ



ミカサ「……え?」

ジャン「ミカサ! 早く逃げるぞ!」ガチャガチャ

ミカサ「アルミン! しっかり!!」ユサユサ

アルミン「う……」

ジャン「そんな奴ほっとけ! 早くここから出るんだ!」

ミカサ「……どうしてこんなことをするの」

ジャン「どうしてって……お前を守るために決まってんだろ」

ミカサ「私を守る……? あなたが?」

アルミン「ミカサ……ついて行っちゃだめだ……」

ミカサ「アルミン、大丈夫。すぐ助けを呼ぶから」

ジャン「そいつの言うことを信じるな。お前を監禁するような危険な奴だぞ」

ミカサ「でも……」

アルミン「ここにいてくれ……ずっと……僕が守るから……」

ミカサ「置いていったりはしない」

ジャン「お前そいつにだまされてんだよ、ほら早くこっち来い」

ミカサ「私は……」

アルミン「ミカサ……僕を信じてくれ……」

ミカサ「……」

ミカサ「分かった、私はアルミンを信じる」

アルミン「ミカサ……!」

ジャン「ちっ」

ミカサ「そこをどいて、ジャン」

ジャン「……お前らなぁ、いい加減目ぇ覚ませっつの」

ミカサ「何が言いたいの?」

ジャン「ミカサと付き合ってんのはこの俺だろ?」

ミカサ「何を言っているの?」

アルミン「ミカサ、真に受けちゃだめだ」

ジャン「はは、とぼけても無駄だぜ」

マルコ「お前、ミカサのことはもう諦めたって……」

ジャン「ああとっくに諦めてるよ。ミカサの浮気癖についてはな」

ジャン「 でも最後には俺のもとに帰ってくるんだよなわかってるよそれくらいだって
    俺たち恋人同士だもんなこんなに愛し合ってるんだもんな? 俺はお前のこと
    を信じてるよお前が俺のことを信じて疑わないように。あは、おいおいなんだ
    よその顔大丈夫だよ別に怒ったりしてねーからそんな怯えんなって今さら浮気
    くらいで嫌いになったりしねえから安心しろよそりゃあミカサが俺のことだけ
    見てくれるんならそれに越したことはねーけどでもな俺はそんなところも含め
    て好きになっちまったんだからこれはもうしょうがねえよ惚れた弱みってやつ
    ?おっとつい惚気ちまったこれじゃああのバカップルのこととやかく言えねー
    な爆発しろとか酷いこと言っちまったけどいやもうあいつら死んだんだっけま
    あんなことはもうどうでもいいんだとにかく聞けよ聞けこら重要なのはな俺は
    ミカサが好きだってことだ後にも先にも重要なのはそれだけだ覚えとけ俺はミ
    カサを愛してる本気だそれ以外のことは本当にどうだっていいんだよ俺はミカ
    サが好きだ初めて会ったときからずっと初めて会ったときよりずっと好き好き
    大好き超愛してる。君の目が髪が指が足が好き好き大好き好き好き大好き好き
    好き大好き愛してるって言わなきゃ殺すなーんてなおっとここ笑うとこだぜ?
    き付けよ俺の気持ちになあ俺はそこの気持ち悪いやつよりずっと死に急ぎ野郎
    なんかよりずっとずっとお前のことを愛しているんだ分かってくれよ浮気癖な
    んてどうしようもない欠点すら愛おしく思ってしまうくらいに大好きなんだよ
    だからミカサもそれと同じくらい俺のことを好きになってくれるはずだよな?」

ミカサ「……………………」

アルミン「……………………」

ミカサ「私はあなたの恋人ではな」

ジャン「分かった分かった。そうやって俺の気を惹こうとしてるんだろ?」

ミカサ「ちが」

ジャン「だから嫌いになったわけじゃねーって! 結構可愛いところあるよなお前」

ミカサ「……………………」

アルミン「駄目だ……何を言っても通じない……もう完全に破綻している」

ミカサ「私はあなたの恋人ではない」

ジャン「はいはい、もういいからそういうの」

ミカサ「私はあなたの恋人ではない」

ジャン「もういいって」

ミカサ「私はあなたの恋人ではない」

ジャン「そろそろ正直になれよ」

ミカサ「私はあなたの恋人ではない」

ジャン「別に怒ったりしねーから」

ミカサ「私はあなたの恋人ではな」

ジャン「やめろっつってんだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

マルコ「ジャン、落ち着くんだ!」

ジャン「うるっせえなあ!! 死人は黙ってろよ!!!!」

ジャン「俺が……この三年間、どんな思いでお前を見てきたかわかんのかよ!!!??? 

    訓練兵の時からずっと!! 調査兵団に入っても俺はお前を」

ミカサ「分からない」

ジャン「そりゃそうだよな」

アルミン「ミカサ、もう行こう」

ミカサ「……エレンが心配だ。この状況下で現れないということは、何か事件に巻き込まれたのかもしれない」

アルミン「そ、そうだね」

ジャン「はぁ? エレンが来るわけねーだろ。ばかじゃねえの」

アルミン「ジャン! やめるんだ!!」

ミカサ「……どういうこと? エレンに何をしたの?」

ジャン「俺が何をするまでもねえよ」






ジャン「エレンはとっくに死んだだろ?」

ミカサ「……………………」





ミカサ「……………………え?」

アルミン「…………!!」

ジャン「はは、なんだよその顔は。あはは、ばっかみてえ」

アルミン「ジャン、君は……たった今取り返しのつかないことをしたんだぞ、分かっているのか!?」

ミカサ「エレンが……死んでいる……?」

アルミン「この人はマルコが死んでおかしくなってしまったんだ。まともに取り合わない方がいいよ」

ミカサ「待って……」


エレン『俺はずっとお前のこと見てきたんだぜ。これからもずっとだ』


ミカサ「それじゃあ、今まで……」


エレン『なのにお前は俺を拒絶するのか? なんで?』


ミカサ「私がエレンだと思っていたものは……」

ジャン「お前自身だよ。正確には俺とお前だが」

ミカサ「……」

ジャン「どうした、喜べよ。お前の大好きなエレンがここにいるぜ」

ミカサ「……」

ジャン「俺がお前の妄想に付き合ってやったのは、そうしないとお前の心が壊れると思ったからだ」

ミカサ「……」

ジャン「自分と異なる人格を演じるってのは不思議な気分だよな」

ジャン「同じように演技してるやつらがいるってことが、何となく分かっちまった……」

ジャン「嘘つき同士、通じ合うものがあんのかな? あいつらのこと、何も知らないのにな……」

ミカサ「……」

ジャン「なあ、お前から俺はどんなふうに見えてたんだ? どこまでがエレンでどこまでがジャンだった? 教えてくれよ」

ミカサ「……」

ジャン「なあ、俺けっこう頑張ったんだぜ。お前の望むエレンになれるように。お前はも
    う壊れる寸前だったから、エレンに縋った。あいつに愛されて嬉しかっただろう 
    な。わかるぜ、片想いは辛いもんな。それにしてもエレンの馬鹿野郎、勝手に死
    にやがって。俺があいつの立場だったら絶対にお前を守るのに。周り全部を敵に
    回してでも。そうしたらきっとお前も俺のことを好きになってくれるはずだって
    思ったから。まあお前が見てるのはエレンであって俺じゃないんだから意味ねえ
    んだけど。あれ、俺って誰だっけ? 俺はエレンだ。ミカサを傷つけたらぶっこ
    ろすぞ。畜生エレンの方ばっか見やがって。まあ最終的には俺のものになるだろ
    うからいいけど。まったくお前って奴は恥を知れよ。うるせえなさっさと成仏し
    ろ。何の話だったっけ。まあいいや、全部無駄だったんだ。お前は俺を拒絶して
    アルミンを選んだよな。どうして? 俺がエレンじゃないから? その通りだく
    そが。だったらどうすりゃよかったんだよ? 支えを失ったお前がだんだん壊れ
    ていくのを黙って見てろっていうのか。なあ教えてくれよ、俺はどうすりゃあよ
    かったんだ? 答えてくれよ。どこ見てんだ。俺を見ろよ。あいつじゃなくて。
    俺を見ろ。俺を見ろ。俺を見ろ。俺を見ろ。俺を見ろ。俺を見ろ。俺をみて」

ミカサ「……」

アルミン「ジャン……」

ジャン「そんな目で見るんじゃねえよ、アルミン。お前だって賛成しただろうが、

    ほかの奴らに白い目で見られたって、ミカサが幸せならそれでいいって納得したじゃねえかよ……」

アルミン「僕は……」

ジャン「俺はもうわかんねえよ……何もわかんねえ。

    それでも好きなんだ、ミカサを愛してるんだ。大好きなんだよ」

アルミン「僕は……ミカサを解放してあげたかった」

アルミン「そんな資格もないのに」

ジャン「お前はエレンじゃないからな、ざまあみろ」

ミカサ「……」

ジャン「そして困ったことに俺もエレンじゃないんだなこれが」

アルミン「……」

ジャン「あいつが全部悪いんだ、エレンの奴死ななきゃよかったのに」

アルミン「エレンは生きてるよ」

ミカサ「え……?」

ズシン……ズシン……

ジャン「エレンの奴死ねばよかったのに」

アルミン「エレンは、生きている」

ミカサ「どこにいるの?」

アルミン「君のそばに」



ドゴォ



アルミン「ほらね」



ドッカァァァン

ガラガラ…



エレン「………………」



ミカサ「………………エレン?」

ジャン「あはっ、お前生きてんじゃねえか! 死んだって聞いてだいぶ心配したぜ」

エレン「ヴヴヴヴヴヴ……」

ミカサ「どうして……」

アルミン「脱走、したんだね」

アルミン(巨人になって……穴を塞いで……自我を失い……

      人間に戻れなくなって……毎日、生きることも死ぬことも許されず……

      有事には利用され……平時には死んだ方がましだと思われるような拷問を受け……

      ミカサが苦しまないようエレンが死んだと伝えたのは僕だ……

      そのせいでミカサは精神に異常をきたし……)

ミカサ「エレン」

エレン「ヴオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

アルミン(それでも)

エレン(ミカサヲ守ルミカサヲ守ルミカサヲ守ルミカサヲ守ルミカサヲ守ルミカサヲ守ル……)

アルミン(それでも、君は―――)

ミカサ「エレン」

ミカサ「助けに来てくれて、ありがとう」













グチャッ













ジャン「なあ、一番可哀想なのって俺だよな?」

おしまい

読み返したら>>19のアルミンのセリフおかしかったので訂正

×アルミン「どうもしないでいいよ。ここから逃げ出そうとする努力以外は」

○アルミン「好きにすればいいよ、ここから逃げ出そうとする努力以外ならね」

他にもあかん奴がちらほらいるな

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