雪穂「凛さんと」凛「雪穂ちゃん」【ラブライブ】 (210)


という珍しいカップリングが見たいが為だけのSSです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449838837


――とある休日


――穂むら――

凛「こんにちはー!」

穂乃果「凛ちゃん、いらっしゃい」

凛「急にごめんね穂乃果ちゃん。せっかくの休日なのに、いきなり穂乃果ちゃん家のマンガが読みたいだなんて無理言っちゃって……」

穂乃果「大丈夫気にしないで。それに私も一人で暇してたから」

穂乃果「ささ、あがってあがって」

凛「おじゃましまーす!」

――穂むら2階・廊下――

雪穂「あ、凛さん!」

凛「雪穂ちゃん、こんにちは」

雪穂「凛さん、今日はどうしたんですか?」

凛「今日はね、穂乃果ちゃん家に遊びに来たの!」

凛「ほら、今日お休みでしょ?μ's の練習も無くて暇だったし、せっかくのお休みの日に一人で家にいるのももったいなくて穂乃果ちゃんにお願いしたの。いきなりだったんだけど穂乃果ちゃんオーケーしてくれたんだ」

雪穂「あ…そうなんですか」

雪穂(凛さん、またお姉ちゃんの話ばっかり……)

雪穂(凛さんとお姉ちゃんホント仲良しだよね……)

凛「雪穂ちゃんは?」

雪穂「え?」

凛「雪穂ちゃんは何か予定ないの?」

雪穂「特にこれといった用事はないですけど」

凛「なら雪穂ちゃんも一緒にどう?」

雪穂「え…いいんですか?」

凛「もちろん!せっかくだから雪穂ちゃんも一緒に遊ぼうよ」

雪穂「や……」

雪穂(やったぁ!凛さんから誘われちゃったー!どうしようどうしよう!何お話しよっかな///)


雪穂「ええっと…/// じゃあ私も――」

穂乃果「なになにどうしたの、雪穂も来る?」ヒョイ

雪穂「あ……」

雪穂(そっか……そうだった姉ちゃんも…一緒なんだよね……)

雪穂「えっと……私これから勉強するつもりだったから遠慮しておきます」

穂乃果「んー…そっか勉強かあ、残念」

雪穂「休憩がてらまた来ますから、ゆっくりしていってくださいね」

凛「そっか勉強なら仕方ないよね、頑張ってね!」

雪穂「はい……」

雪穂(私は、生返事をしながらお姉ちゃんの部屋の扉を閉めた)


ヨーシ!ナニカラヨモウカニャー
ジャアコレナンカ、オススメダヨー


雪穂「…………」

雪穂「お姉ちゃんばっかりズルい……」

雪穂「私も凛さんとお話したいのに……」


雪穂「なんで勉強するだなんて言っちゃったんだろう…」ハア

雪穂(お姉ちゃんが一緒でもついて行けば良かった)


ガラッ――

凛「あれ、雪穂ちゃん?」

雪穂「うわあ!…り、凛さん!?」

凛「どうしたの?廊下でボケーッとしたりして…」

雪穂「あ…なんでもないです///」

雪穂「それで凛さんはどうしたんですか?」

凛「いやぁ、さっきまで外にいたし手洗っときたいなーって思って」

雪穂「ああ…それなら洗面所は階段下りてすぐ横ですよ」

凛「ありがとう雪穂ちゃん」ニコッ

雪穂「いえ…そんなことないです///」


凛「…………」

雪穂「…………あの」

凛「雪穂ちゃんは偉いね」

雪穂「え……何がですか?」

凛「だって休みの日まで勉強だなんて偉いよ」

雪穂「えー普通ですよ」

凛「私なんて宿題ほったらかして遊びに来ちゃってるし」アハハ

凛「遊ぶの我慢して勉強だなんて、やっぱり雪穂ちゃんは偉いよ」

雪穂「ま…まあ受験生ですから///」

凛「音ノ木坂受験するんだっけ?」

雪穂「はいそのつもり頑張ってます!」

凛「やっぱりスクールアイドルも始めるつもりなんだ?」

雪穂「はい!私、μ's に憧れてて。スクールアイドルを始めるならぜったい音ノ木坂って決めてるんです!」

凛「じゃあ合格したら一緒に踊れるね」

雪穂「はい!せっかく学校が存続したのに受験で失敗したくないですから…毎日頑張ってます!」

雪穂「それで凛さんと同じ学校に……」ボソボソ

凛「ごめん、最後よく聞こえなかった。もう一回言ってもらってもいい?」

雪穂「あ、なんでもないです!///」


雪穂「凛さん!今度―― 「あ、雪穂。ちょうど良かったー。お茶淹れてくれない?」

雪穂「お姉ちゃん!?(タイミング悪いよ!)」

穂乃果「雪穂お願ーい」

雪穂「それくらい自分でやってよ!」

穂乃果「えー、いつもは淹れてくれるじゃん。あ、あと今日は凛ちゃんがいるからお菓子はおまんじゅうで大丈夫だよ」

雪穂「…………」

雪穂(もう!せっかく凛さんと喋ってたのに…)

雪穂(なにさ…凛さんがいるからって気なんか遣っちゃってさ……)

雪穂「…………」むすー

穂乃果「ええっと…雪穂?」

雪穂「なんでもない!お茶持ってくればいいんでしょう!?」

雪穂「そのかわり持ってくるだけだから、お茶は自分で淹れてよね!」

凛「あ…行っちゃった…」

穂乃果「なにかあったの?」

凛「さぁ」


――穂むら・1階――

凛「ふぅ~」

雪穂「まったくお姉ちゃんったら……」ブツブツ

凛(あ、雪穂ちゃん下りてきた。ちゃんとお茶運んでくれたんだ)

雪穂「あ、凛さん!お茶運んでおきました」

雪穂「まったく……ほんとお姉ちゃんは人使いが荒いですよ」ムスー

凛「あはは…そうかもね……でもありがとう雪穂ちゃん」ニコッ

雪穂「う……///」

雪穂(凛さん、ころころ表情が変わるから可愛いなあ///)

凛「あっ、階段下りてる途中にボーッとしてたら危ないよ」


ズルッ


雪穂「え?」

凛「あ」

雪穂(あ…、足踏み外しちゃった)

雪穂(ああ…踏ん張りがきかないし、これは階段から落っこちちゃうな)

雪穂(でも良かった、足滑らした位置が低いところで)

雪穂(ちょっと体を打っちゃうけど、この位置からならなんとか軽い傷で済みそうだし大丈夫―― )

凛「駄目だよ雪穂ちゃん!!」

雪穂「え……!?」


ドンガラガッシャーン

.


雪穂「痛たた……」

雪穂(何が起きたんだっけ……)

雪穂(確か私が階段から足を踏み外しちゃって……)

雪穂(それを凛さんが受け止めようとしてくれて……)

雪穂(あれ?じゃあその凛さんはどこに……て、うわあ!凛さんが私の下敷きに!?」

凛「うーん、頭がくらくらするにゃぁ」

雪穂「うわ!凛さん大丈――「雪穂ちゃん大丈夫!?」ガバッ

凛「あわわ…大丈夫?怪我はない?体痛くない?」

雪穂「だ、大丈夫です」

凛「良かったー」ホッ

雪穂「ありがとうございます。助かりました」

凛「…………」

雪穂「あの……」

凛「……雪穂ちゃん、駄目だよ」

雪穂「え?」

凛「雪穂ちゃん今、この位置からなら落ちても大丈夫とか思ってたでしょ」

雪穂「……ギクッ」

凛「駄目だよ、そんな自分を大事にしない考え方は良くないよ」

凛「雪穂ちゃんはスクールアイドル始めるつもりなんでしょ?だったらなおさらそういう考え方は駄目」

凛「それに雪穂ちゃんは女の子なんだよ。もし怪我なんかしたら大変なんだよ。もっと自分を大切にしなきゃ」

雪穂「ごめんなさい……」

凛「これから気をつけていけばいいよ。ほんと怪我が無くて良かった」


ポンポン

.


雪穂「え……」

雪穂(今……凛さんに頭ポンポンされた!?)

雪穂(凛さんに!?)

雪穂(私が!?)

雪穂(うわわわわ///)

凛「雪穂ちゃん大丈夫?顔真っ赤だよ」

雪穂「あ……///」カアアッ

雪穂(ヤバい今凛さんの顔見れないよ///)

雪穂(ていうか今私どんな顔してるの!?///)

凛「立てる?」

雪穂(あ…凛さんが手を差し伸べてくれてる……)

雪穂「はい……///」

雪穂(でも私は恥ずかしくて、嬉しくて……)

雪穂(うつむいたままその手を取る事しかできなかった)


――――――


――とある学校帰り


――コンビニ・店内――

凛「やっと見つけたー!少女漫画の新刊!」

凛(なんで凛がマンガでこんなにはしゃいでるかというと理由があります)

凛(なぜなら今日は大人気少女漫画の最新刊にして最終巻の発売日だからです)

凛(最後というだけあって大きな本屋では既に完売、他の書店でも売り切れ続出…)

凛(置いてるハズもないと思いつつ、ダメもとでコンビニを巡り巡って7件目、ついに出逢えたのです)

凛「ラスト1冊みたい……ラッキーだにゃー!」

ヒョイ

凛(ついに最後の1冊ゲットだにゃ―― )グッ

コンビニ客「あ……」

凛「え?」


コンビニ客「……えっと…」

凛(うわあ~、これアレだあ……)

凛(他のお客さんと同じ商品取り合っちゃって、気まずくなるっていう、ドラマでよくあるアレにゃあ)

凛(いつもなら譲るんだけど、今回はようやく見つけたモノだし、あんまり手放したくないな……)

凛(よしっ、適当にはぐらかして逃げよう!)

凛「あ、すいません私はこれで……」


コンビニ客「あれ……凛さんじゃないですか」


凛「え?雪穂…ちゃん?」


――回想


雪穂「あー、もう本当に疲れたー!ぜんぜんどこにも売ってないじゃん!」

雪穂(今日は少女漫画の最終巻の発売日、売り切れるのが速いと予想した私は家に帰らず学校から直で本屋を探し回ってるんだけど、案の定どこにも売ってません…) 

雪穂(お姉ちゃんは早々に諦めて家に帰るってメールきたし……)

雪穂(ていうか、ずっと歩き回ってたし、家と正反対の場所まで来ちゃった……)

雪穂(今日はもう諦めて帰ろうかな)ハア

雪穂(あ、コンビニ…こんなところにもあったんだ)

雪穂「普段ならぜったい利用しないんだけどね。もう疲れたし、このコンビニに置いてなかったら今日は帰ろう」



イラッシャイマセ-


雪穂(うーんと…お目当てのマンガは……)

雪穂(あっ、あった!しかも残り1冊…)

雪穂(やったあ、これでやっと読む事できるよ♪)タタタ


ヒョイ


雪穂「あ……」

雪穂(あ…最後の1冊取られちゃった……)

雪穂(せっかく見つけたのに……)

コンビニ客「え?」

雪穂(うわ、しかもこの制服…音ノ木坂だ……)

雪穂(よりによって音ノ木坂の人!?)

雪穂(ちょっと最悪……て、あれ?)

コンビニ客「あ、すいません私はこれで……」

雪穂「あれ?……凛さんじゃないですか」

凛「え?雪穂…ちゃん?」

凛「どうしたの学校帰り?」

雪穂「はい、まあ…そんなところです」

雪穂(しかも、よりにもよって凛さん!?///)


雪穂「ところで…それ…」

凛「? このマンガ?」

凛(あ、そういえば雪穂ちゃんもこのマンガが目当てだったんだよね)

凛(このコンビニまで来てるって事は、雪穂ちゃんもかなり探し回ったんだろうな)

凛(うーん、ほんとは凛ものどから手が出るほど欲しかったんだけど、雪穂ちゃん欲しがってるみたいだし―― )

凛「雪穂ちゃん!これ譲る!」バッ

雪穂「え、それって……」

凛「雪穂ちゃんがこのマンガ買っていいよ」

雪穂「え、でも…」

凛「凛のことは気にしなくていいよ。そのかわり読み終わえたら今度読ませてね」

雪穂「あ…ありがとうございます!」パアア

雪穂「じゃあお言葉に甘えて、買ってきますね!」タタタ


イラッシャイマセー
コレ、オネガイシマス


凛(あーあ、譲っちゃった)ハア

凛(せっかく見つけたと思ったんだけどな~)チラッ

雪穂「ア、1000エンカラデ…」ニコニコ

凛「ま、雪穂ちゃんも嬉しそうだし、まあいいか!」


――コンビニ前――

凛(うーん、これからどうしよう)ムムム

凛(またコンビニ回ろうかなー、でもさすがに歩き疲れたんだよね…)

雪穂「あ、凛さん!」タタタ

雪穂「にゃ?」

雪穂「凛さん本当にありがとうございます!」

凛「いいって、気にしないで」

雪穂「凛さんそれで…えっとその……良ければ今から私の家に来ませんか?」

凛「……?」

雪穂(あ…ヤバッ!理由もなく誘っちゃたよ。私の馬鹿!凛さんも困ってるじゃん)

雪穂「……あ!そうだ、これ!これです!このマンガを譲ってくれたお礼がしたいんです!」

凛「ああ、そういう事なら!」

凛「おじゃまさせてもらうね」

雪穂「はい、ぜひ来てください」

雪穂(やったっ!なんとかうまく誘えたー///)


――雪穂の部屋――


凛「おじゃまします」

雪穂「どうぞ座ってください」

凛「うわあー、雪穂ちゃんのお部屋初めて入ったよ」

雪穂「そうですか?よく家には来てくれてるじゃないですか」

凛「うん、確かにそうだけど雪穂ちゃんの部屋に入ったのは初めてだよ」

雪穂「いつもお姉ちゃん目的ですもんね」

凛「うん!いつもは穂乃果ちゃんと一緒にいることが多いからね」

雪穂「あ……」


雪穂(一瞬、自分の言ったことを後悔した……)


凛「でも今日は雪穂ちゃんと一緒だよ!」

雪穂(うわ、今度は近――///)

雪穂(凛さんて、ひとつひとつの動きが速いからついて行くのが大変…///)

雪穂「そうだ!お茶淹れますね…///」

凛「ありがとう。じゃあこのお菓子開けるね、さっきのコンビニで買ってきたんだ」

雪穂「わあ!美味しそう!」

凛「期間限定のお菓子なんだ。雪穂ちゃんこういうの好きでしょ?」

雪穂「はい……」

雪穂(あ……私が好きなものちゃんと考えて選んでくれたんだ)

雪穂「ありがとうございます!はい、お茶どうぞ」

凛「いただきます。……うん、美味しい!雪穂ちゃんお茶淹れるの上手だね」

凛「そ、そんなことないですよ///」


雪穂「そうだ、このマンガ凛さんが先に読んでください」

凛「え?雪穂ちゃんが買ったものなのにいいの?」

雪穂「はい、それに元はといえば凛さんが最初に見つけたんですし」

雪穂「だから凛さんが先に読んでください」

凛「うーん…ちょっと気が引けるんだけどなー、あ!そうだ!」


凛「なら一緒に読も?」

雪穂「……はい?」

.


雪穂「あの…一緒に読むってどういう事ですか」

凛「えっとね~」グイッ

雪穂「うわ!」

凛「マンガは雪穂ちゃんが持ってて!」

凛「私は横から覗き込む感じで読むから」

凛「読むスピードは合わせるから一緒に読もう?」

雪穂「えっと…一緒に読むのはいいんですけど……」

凛「?」

雪穂(凛さん顔近いよ///)

雪穂(一緒に読むって事は読んでる間、凛さんの顔がずっと横にあるって事だよね///)

雪穂(こんなんじゃ集中できる訳ないよ……///)


……数分後


雪穂「…………」ジー

凛「…………」ジー

ペラッ

凛「え…なんでそこで引いちゃうの!?」

雪穂「いえ!まだ終わってません!次のコマで…」

ペラッ

凛&雪穂「きゃああああ///」
             .


凛「いやあハッピーエンドで終わって良かったよー!」

雪穂「はい!ホントいいもの読ませてもらいました」

凛「雪穂ちゃんその言い方なに?」クスクス

雪穂「えー言いませんか?」

凛「言わないよー、それになんだかおばあさんみたい」

雪穂「だって本当の事なんですもん!」クスクス

凛「……ぷっ」

雪穂「……ふふっ」


凛&雪穂「あははは」

.


ニコ生あるの忘れてた……
いったん離脱します

俺は完全に忘れてたぜ!

>>29
ドンマイです

寝る前に書きためた分、投下していきます


凛「それにしてもすごいマンガの数だね」チラッ

凛「穂乃果ちゃんのマンガの量もすごいと思ってたけど、雪穂ちゃんもマンガけっこう持ってるんだね」

雪穂「あはは…お姉ちゃんの影響でついつい買うようになっちゃったんですよね……」

凛「けど穂乃果ちゃんが持ってるものとはずいぶんジャンルが違うね」

雪穂「私はどっちかというとファンタジーとかSFとか少し少女漫画っぽくない作品が好きなんですよね」

凛「ふーん、あ!でもこのマンガ私も持ってるよ。」

雪穂「あ、それ面白いですよね!あ、このマンガとかどうですか?」

凛「あ、それ雪穂ちゃんも持ってたんだ!凛のいちばん好きな作品なんだー」

雪穂「私もこれ大好きです!」

凛「おお!雪穂ちゃんも!?」

雪穂「はい、すごく面白いですよね!」

凛「凛たち気が合うにゃー」


雪穂「あ!じゃあこんなのとかどうですか?」

凛「あ、このマンガ読んだことない」

雪穂「なら読んでみてください。凛さんぜったい好きだと思いますよ」

凛「じゃあ1話目だけ読ませてもらうね」

雪穂「どうぞ」

凛「…………」ジー

雪穂「…………」

凛「……雪穂ちゃん」

雪穂「……どうですか?」

凛「凛…こういうの、スッゴい好き!」

雪穂「ですよね!」

凛「凛の好み、どストライクだよ!」

雪穂「やっぱり凛さんは好きだと思ったんですよ」

雪穂(良かった喜んでくれたー!)


それからも凛さんといっぱい話をした

ずっとマンガの話ばかりだったのはちょっと不本意だったけど……

沈黙になっちゃうのが怖くて、今の私には一つの話題で引っ張る事で精いっぱいだった……

けど凛さんが喜んでくれるのが嬉しくって、私の好きなをマンガを知って欲しくて……

あれもこれもと、本棚の本を片っ端から引っ張り出した…

お互いのおすすめを教え合ったりなんかして、

今度凛さんのマンガを貸してもらう約束もした。

凛さんと話せることがすごく楽しかった。

でも楽しい時間はあっという間で……


凛「あ、もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと…」

雪穂「あ、ホントだ…」

凛「雪穂ちゃん今日はありがとう」

雪穂「いえ私も楽しかったです」

凛「あ、でも…」チラッ


グチャグチャ~

目線の先には床に散乱した大量のマンガで散らかっていた


雪穂「あはは…調子に乗って本棚のマンガ全部引っ張り出しちゃいましたからね……」

凛「あはは…なんかごめんね」

雪穂「いいえー、気にしないでください。これ私が片付けておきまから!」

凛「え…でも……」


雪穂「凛さんも、もう外も暗くなってきてるし早く帰った方がいいですよ」

凛「……やっぱり駄目っ!私も片付け手伝うよ!」

雪穂「いや…でも…」

凛「それに、こういうのは2人でやった方が早く終わるから!」

雪穂「別に…大丈夫なんですけど……」

凛「……雪穂ちゃん?」ジー

雪穂「…………」

雪穂「分かりました……」

凛「よーし決まり!じゃあ私はこっちから元に戻していくね」

雪穂「お願いします…」


その時、なんで私は一人で片付けるなんて言ったのか良く分からなかった。

別に凛さんに余計な手間を掛けさせたくないとか、そんなんじゃなくて……

ただ自分から進んで片付けが出来るってところを凛さんに見せたかっただけだった。

けっきょく手伝ってもらっちゃったけど……

きっと凛さんはそんな事はこれっぽっちも考えてなくて、それが当たり前だと思ってて……

だから余計に凛さんが大人びて見えて、強がってた自分が恥ずかしかった


雪穂「ふう、片付け終わりましたね」

凛「ね!ねっ!二人でやったらすぐ終わったでしょ!?」

雪穂「本当ですね、助かりました!」

凛「私もつい、はしゃいで散らかしちゃったからね。これくらい当然だよ」

雪穂「そうですか」

雪穂(当然か……)

凛「それじゃあ片付けも終わった事だし、今度こそ凛は帰るね!」

雪穂(あ!凛さん帰っちゃう。私…まだ手伝ってくれたお礼言ってない!)

雪穂「ちょっと待ってください!」

 
ギュッ――


凛「え……?」

雪穂(あ……凛さんの袖つかんじゃった……)


凛「雪穂ちゃん!?」

凛(びっくりしたー。雪穂ちゃん…、なんで凛の服の袖つかんでるの!?)

雪穂「…………」

凛(なに、この状況?…それにこれじゃあ凛動けないよ……)

雪穂「…………」

凛(それに雪穂ちゃん、さっきからずっとうつむいたままだし…何も喋らないし……これどうしたらいいの~!?)

雪穂「…………」

凛「……えーと、雪穂ちゃん?」

雪穂「あ……///」ハッ

雪穂(……あ…ヤバッ!いきなり袖掴まれたらさすがにびっくりするよね。凛さんも明らかに困ってるし…)

雪穂(何か、何か言わないと…)

凛「雪穂ちゃん?」

雪穂「凛さんは、やっぱりいい人です」

凛「……え?え!?」

雪穂(いやいや、何言ってるの私!?)


バカバカ、私の馬鹿っ!こんな事言ったら凛さん困るに決まってるじゃん

雪穂「優しくて…」


駄目だって……


雪穂「気遣いができるし…」


これ以上喋っちゃ駄目だって……


雪穂「私のこと、ちゃんと考えてくれるし……」


ヤバい、言い出したら止まらない……


雪穂「片付けも手伝ってくれた……。お姉ちゃんとは大違い……」


あぁ駄目っ!それ以上は――


雪穂「私、凛さんみたいな人がお姉さんが良かった」


…………言っちゃった


雪穂「凛さんみたいな人がお姉さんなら良かった」

凛「…………」

雪穂「だから私!……あの…えっと……」

雪穂「えっと、その……」

雪穂「…………だから……」

雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「……雪穂ちゃん、あのね―― 」


――ドンドン  穂乃果「雪穂いるー?」


凛&雪穂「!!」ビクッ


穂乃果「おーい!ゆ・き・ほー!」

――ドンドン


凛「…………」

雪穂「…………」

凛「………開けるね?」

雪穂「はい……」


ガララ――


穂乃果「あ!雪穂……てあれ、凛ちゃん!?来てたんだ?」

凛「う…うん」


すいません、途中ですが今日はここまで。


穂乃果「もうっ!二人とも居るなら居るって言ってよー」

凛「あはは……、それで穂乃果ちゃんは?なにか用があったんじゃない?」

穂乃果「おおっ、そうだったそうだった!雪穂にね、今日マンガが買えたのか聞きたくて!」

穂乃果「で、もし買えたんなら私にも読ませてほしいなーって思ったんだけど、雪穂どう?」

雪穂「…………」

穂乃果「雪穂聞いてる?」

雪穂(お姉ちゃん本当タイミング悪い)

凛「……ほら雪穂ちゃん、穂乃果ちゃん聞いてるよ?」

雪穂「…………うん、買ったよ」

穂乃果「おおー!さすが雪穂!早速なんだけど私にもそのマンガ読ませてくれない?」

雪穂「それって……、今じゃなきゃ駄目なの?」

穂乃果「うーん、ホントは晩ご飯の後、ゆっくり読もうと思ってたんだけどやっぱり我慢できなくって……、だから雪穂~、お願い!」

雪穂「ハア…、せっかちなんだから……」


雪穂「分かった!持ってくればいいんでしょ!?」

穂乃果「やったあ!雪穂ありがとー!!」ギュッ

雪穂「うわ、ちょっと!?」

穂乃果「雪穂大好きだよー!」ギューッ

雪穂「……やめてよ、くっ付かないで!!」

穂乃果「あ…ごめん……」パッ

雪穂「あっ!……こっちこそ…ごめん」

雪穂「……今、渡すからちょっと待ってて」

穂乃果「う…うん……」

穂乃果「…………」

穂乃果「ねえ凛ちゃん、何かあったの?」ヒソヒソ

凛「あはは……」

穂乃果「?」


ああ、もう!ほんと、お姉ちゃんってデリカシー無いんだから!


イラついた気持ちを抑えながら、私は整理したばかりの本棚に手を伸ばした

本を探す自分の手が視界に入った。それを見て、凛さんから手を離していたことに気が付いた。

雪穂「手、離しちゃったな……」

タイミングは最悪だったな。けれど、これで良かったんだと思う……

もしお姉ちゃんが来なかったら、私は多分あのままどうする事も出来なかったから……


穂乃果「あ、雪穂!それだよ、それ!」

雪穂「……え」


お姉ちゃんの声で我に返った

いつの間にか、お姉ちゃんが欲しがってたマンガを手にしていた


これ、さっきまで一緒に読んでたんだよね

さっきまでスゴく楽しかったのに……

でもその楽しい時間を変な空気にしちゃったのは私なんだよね……

お姉ちゃんのせいじゃないって自分でも分かってる。

なのに私、お姉ちゃんに八つ当たりして……



雪穂「はい、これ……」

穂乃果「ありがとう……」

雪穂「あ…お姉ちゃん……」

穂乃果「…………」ピクッ

雪穂「さっきは変に怒鳴っちゃったけど……」

穂乃果「うん……」

雪穂「ごめん」

穂乃果「うん……、私も悪かったよ、ごめんね雪穂」


凛「良かったね!仲直りできて♪」

凛(ちょっと気まずかったけどね……)アハハ

雪穂「なんかすいません…/// お恥ずかしいところをお見せしてしまって……」アハハ

雪穂(でもおかげで、なんとか場も和んだし、ひとまず良かったよ)

雪穂(これで後は……)

穂乃果「よし!じゃあ、なんかお邪魔だったみたいだったし、穂乃果はこれで退散するね」

雪穂「え……!?」

凛「にゃ!?」

穂乃果「そうだ、このマンガは借りてくね!」

雪穂(本当に驚いた。お姉ちゃんのあまりの切り替えの早さに、私も凛さんも完全に不意を突かれてしまった)

穂乃果「ではお二人の気の済むまで、ごゆっくり~♪」

雪穂「ええ、ちょっと!?」

凛「ままま待ってっ、穂乃果ちゃん!」


ガララ……ピシャ――


雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂(これは………)

凛(…………ピンチだにゃ!!)


まずい……、また凛さんと二人きり……

せっかく、なんとかなりそうだったのに!

ていうかお姉ちゃんの馬鹿っ!ほんとデリカシー無い!こんな時に、変な所で気を使わなくていいっての!

……て、そんな事を考えてる場合じゃてなくて!

今はこの状況をどうにかしないと……

一度、落ち着いたとはいえ、やっぱり気まずい事に変わりはない訳で、今さら言い訳の仕様もない。


雪穂「……あの~、凛さん?」

凛「…………」


凛さん、ずっとこっちを見てる

さっきの事、ぜったい気にしてるよね……?

どうしようもし嫌われてたら……、それとも、もしかして怒られるのかな……

聞き出すのが怖くて、こちらから話を切り出すことが出来ない


凛「ねえ雪穂ちゃん……」

雪穂「……!」


来た……

凛さんの声にビクッと反射的に体が反応した。けど私は黙って次の言葉を待った……

しかし凛さんの口から飛び出した言葉は意外な一言だった


凛「ケータイのアドレス教えて!」


雪穂「え、アドレスですか?」

凛「うん!だって私たち、よく顔を合わせたり話すことはあるけど、お互いの連絡先はまだ知らないでしょ?」

凛「これから会う事も多くなると思うし、交換しておいても損はないかなーって思って。……それとも、もしかして嫌だった?」


嫌なんて、そんな事ない

私だって凛さんの連絡先くらい知りたい……

でも、なんでこのタイミングで凛さんは私の連絡先を聞いてきたのか分からなかった

まさかさっきの事、忘れてる訳じゃないよね?

私あんなに気まずい事をしたのに、なんでそう平然としていられるの?

それとも、気まずいと思ってたのは私だけ?

凛さんにとっては、なんでもない事だったの?


分からない……

凛さんが何考えてるのか、よく分かんないよ


凛「……ダメかな?」


でも正直凛さんの連絡先は知りたかった、だから――


雪穂「お願いします……///」


凛「赤外線で大丈夫だよね……、よし!じゃあ凛から送信するから雪穂ちゃん受信してね!」

雪穂「はい、お願いします」

ピピ――

雪穂「あ、受信しました!」

凛「ほんと!?じゃあ今度は私が受信するね」

雪穂「はい、じゃあ送信しますね」

ピピ――

凛「うん、受信した。ありがとう!」

雪穂(やったっ!これが凛さんのメールアドレス……)

凛「これで、いつでも連絡取り合えるね!」

雪穂「はい……///」

雪穂(本当はすごく嬉しかった。今すぐ飛び跳ねたいくらい、嬉しかった)

雪穂(でも凛さんの前でそんな事なんか出来るはずもなく、手に持ったスマホを思いっきり握りしめた)



凛「それじゃあ私帰るね。バイバイ雪穂ちゃん、今日は本当にありがとう」

雪穂「はい、さようなら凛さん!」


そう言って凛さんは帰っていった――


雪穂(……あっ)

雪穂「そういえば今日の事、結局はぐらかされちゃったな……」

――――――


その夜、晩ご飯を終えて自分の部屋に戻ると、凛さんからメールが届いていた

――――――――――――――

雪穂ちゃんこんばんは

今日は楽しかったよ
ホントにありがとう

今度は凛のお気に入りのマンガ
貸してあげる

だからまた遊ぼうね ≧▽≦

それじゃあおやすみ!!

          凛より・・

――――――――――――――


雪穂「凛さん……、私のことなんか、お姉ちゃんの妹くらいにしか思ってないんだろうな……」


ぼやきながら今日のことを思い出して、ため息が漏れた


――凛さんみたいな人がお姉さんなら良かった――


雪穂「なんで、あんな事言っちゃったんだろ……」


ずっと引っかかってた……

あの時、帰ろうとする凛さんを引き止めた時、

最後の最後で言葉に詰まって、続きが言えなくなった


あのとき私は何を言おうとしたんだろ……

何を言って、どうしたかったの?

凛さんにお姉さんになって欲しかった?

ううん……、そんな事は現実的に無理ってことくらい、分からないほど私は子どもじゃない

だったら私はいったい何を……


雪穂「よく分からないや……」



雪穂「ハア、……あっ」


自分でため息をついておいてビックリした。自分でも驚くくらい大きなため息だったから。


雪穂「あはは……、ほんとだ私、おばあさんみたい……」


横になった途端、一気に眠気が迫ってきた

そういや今日はめちゃくちゃ歩いたっけ……

マンガを探して歩き回って、それでコンビニで凛さんと会って、家に招いて、いっぱいお話して、それで……

今日一日、いろんな事があったな……


雪穂「凛さん……」


まだまだ考えたい事はあったけれど、どんどん襲ってくる睡魔に私は抵抗することができなくて……

いつの間にか眠りについていた――

――――――


今回はここまでです

とある学校帰り編はこれで終わりですが、もうちょっと更新していきます。

ちょっとだけ更新します!


――ある日

――穂むら――


その日、お姉ちゃんは次のライブに向けての作戦会議という名目でμ's の人たちを家に連れて来ていた


雪穂「みなさん、いらっしゃい」

希「お!雪穂ちゃん久しぶり」

花陽「雪穂ちゃん、こんにちは」

雪穂「こんにちは」

雪穂「みなさんお疲れ様です」

穂乃果「あ、雪穂!私も居るよ、私もねぎらってよー!」

雪穂「お姉ちゃんうるさい」

ことり「あはは……」


雪穂(凛さんは、いないみたい)


ちょっとガッカリしそうになった

あっ…ダメダメ、他の人もいるのに。目当ての人がいないだけでガッカリするのは悪いクセだ。凛さんにも嫌われちゃう……

なんとなく人を選んでしまっている気がして、自分でも嫌になる

でも花陽さんが来てるってことは凛さんも一緒だと思ったんだけど……

とりあえず聞いてみようかな。

さりげなく……、さりげなくね……


雪穂「あのー、今日は凛さんは……?」

花陽「えっ、凛ちゃん?」

雪穂(しまった、ストレートに聞いちゃった!)

花陽「凛ちゃんは真姫ちゃん達と後から一緒に来る予定だよ」

雪穂「そうなんですか」

雪穂(よし、後でお茶持っていこう……)

花陽「?」

穂乃果「むうっ、雪穂……、最近凛ちゃんの事よく気にしてるよね」

雪穂「え!?」

雪穂(なんで今その話をするの!?)

雪穂「してない、……お姉ちゃんの気のせいじゃない?」

穂乃果「ええ、してるよー!それに、なんとなくだけど凛ちゃんの話すること多くなった」

雪穂「お姉ちゃんうっさい!」

ことり「まあまあ、ほのかちゃん……」


雪穂(もう、お姉ちゃんの馬鹿っ!他の人もいるのになんで今、そういう話するかなぁ)

希「……!」

希「……ほほ~」ニヤニヤ

雪穂「…………」

希「…………」ニヤニヤ

雪穂「な…何ですか、希さん?」

希「いやあ~、雪穂ちゃんも女の子なんやなあって思うてな?」

雪穂「?、いやいや当たり前じゃないですか。なに言ってるんですか」

希「なあ、雪穂ちゃん」

雪穂「……今度はなんですか?」

希「大変やと思うけど頑張ってな?」

雪穂「?、……はあ」


その後、私は急にお店の手伝いをさせられる事になり、結局その日は凛さんに会うことはありませんでした

まあ凛さんに会えなかったのは仕方なかったとして……


――大変やと思うけど頑張ってな?――


雪穂「……何を?」

――――――


――亜里沙の部屋――


パソコン『ユメノトビラ――♪』


亜里沙「見て見て、ユキホっ!ここのμ's の人たちスゴくかっこいいよね!」

雪穂「…………」ジーッ

亜里沙「……ユキホ?」

雪穂「……ん~」

亜里沙「ねぇねぇユキホ!聞いてる?」

雪穂「あ……、ごめん、聞いてなかった!なに?」

亜里沙「もうっ、どうしたの?、真剣な顔して……」

雪穂「いやあ、ここの凛さんの踊りがさあ……」

亜里沙「凛さん?」

雪穂「うん。相変わらずキレがハンパないなーって思ってさ、……ほらここ!難しい振りのところなのにさらっとに踊ってるし」

雪穂「しかも余裕もあるし笑顔もつくれてる。やっぱり運動神経そのものが違うのかなぁ」

亜里沙「ふふっ…、ユキホ最近凛さんの話よくするようになった」クスクス

雪穂「え!?…そ、そうかな!?」

亜里沙「そうだよ!前までは『お姉ちゃんが…、お姉ちゃんが…』て穂乃果さんの話が多かったのに……」

亜里沙「最近じゃ凛さんの話ばっかり!」

雪穂「うそ!?」

雪穂(まさか亜里沙にまで指摘されるとは思ってもみなかった……、私そんなに凛さんの話してたっけ!?)

雪穂(全然そんなつもりは無かったんだけど……)


亜里沙「雪穂は凛さん推しなんだね!」

雪穂「あ…、ごめん、推しってどういう意味だっけ?」

亜里沙「推しっていうのはイチ推のメンバーの事で、その人のファンというか、応援しているっていうか……」

亜里沙「つまりいちばん大好きなメンバーてことだよ♪」

雪穂「……それって、つまり…」

亜里沙「つまりユキホは凛さんの事が( ファンとして )好きだって事だよ!」

雪穂「ええ!?……私が…凛さんを!?」

亜里沙「……ユキホ?」

雪穂「凛さんの…ことを!?………す…す///」カアア

亜里沙「違うの?」

雪穂「…ハッ!……違う違う!ぜったい違う!!」

亜里沙「そっ、そうなんだ……」アハハ

亜里沙(そんなに否定しなくてもいいのに……)クスクス

雪穂「亜里沙の気のせいじゃないの!?」

亜里沙「うーん、じゃあ気のせいか」

亜里沙(ユキホって、てっきり凛さんみたいな人がタイプなんだと思ったんだけどなぁ)チラッ

雪穂「あわわ……///」

亜里沙「?」

――――――


――雪穂の部屋――

その夜、また凛さんからメールが届いた

受信欄に映る凛さんの名前を見て、嬉しくて体をバタつかせた

でも、亜里沙の言葉を思い出してすぐ我に返った


雪穂「もう亜里沙が変なこと言うから……///」


――つまりユキホは凛さんの事が好きだって事だよ――


雪穂「好き、か……」


確かに凛さんの事は好きだよ、それは認める。

でも私の『好き』は、どういう『好き』なの?

凛さんと仲良くなりたいって気持ちは本心だけど……


……じゃあその先は?

私は凛さんとどうしたいの……、どうなりたいの?


友達になりたい?

……だったらあんなに否定したりしない


お姉さんになってほしい?

そんなのは無理だ……


それともお姉ちゃんと比べているだけ?

ただ、お姉ちゃんの無いものねだりしているだけなの?


けっきょく答えは出なかった

劇場版特典のSIDで凛ちゃんが雪ちゃんって呼んでるの見て大いなる可能性を感じました


雪穂「はぁ……、あっ!危ない危ない」


あの日以来、ため息を出さないよう気を付けるようになった

理由は単純で年寄りくさいと思われたくなかったから

マンガに手を伸ばすことも少なくなった……


雪穂「…あ!そういや凛さんのメール忘れてた」


最近、よく考え込むようになった……

寝てもさめても、ずっと考え凛さんの事ばかり考えてる

考え出すと、止まらなくなる

考えて、分からなくなって、同じところをグルグル回って、答えも出せずに泥沼にハマっていく……

考えてると時間が経つのは本当にあっという間だ



雪穂「メールの内容はなになに…、……お出かけ!?」

――――――



凛さんと初めて出会ったのはいつだっけ……

確か最初は、お姉ちゃんが同じグループで踊る仲間だということで紹介された。

その時は画面の中で踊ってた人が、実際に目の前に現れたことでスゴく興奮した。

他のメンバーの人たちも数人いて、いっぺんにお姉ちゃんに紹介されたっけ。

メンバーの人たちが並ぶ中、自然と最初に目にとまった……

初めは、どことなくお姉ちゃんと雰囲気が似てる人だと思った。

でも話してみると、本当に優しくて、私のことを大事にしてくれて……

確かにお姉ちゃんと似てるところもあったけれど、ぜんぜん違っていた。


周りからはμ's の妹キャラとか言われてるみたいだけど……

そりゃあ他のメンバーと比べると確かに幼く見えるけど、私から見れば十分お姉さんで……


ただ、仲良くなりたいと思った……

.


それからも、お姉ちゃんと仲がいいみたいで良く家に来るようになった。そのたび、顔を合わすようになって話す機会は増えた。

確かに話す機会は増えて、仲良くなれた。けど……

凛さんはいつもお姉ちゃんと一緒で、自分と話してる以上に楽しそうに笑う二人を見て、そのたびに羨ましく思って……

自分の願いは叶ったはずなのに、どんどん望みが大きくなっていくのを感じた。

仲良くなれたはずなのに、もっともっと話していたい、もっともっと仲良くなりたい。どんどん気持ちが強くなっていった。

この欲深い気持ちが何なのか分からない……

いったい私は凛さんとどういう関係になりたいの?

本当に凛さんと仲良くなりたいだけなの?

仲良くなりたいだけで、人はこんなにも悩むの?


分からない……

自分がどうしたいのか分からない……


…………誰か教えてよ

――――――


『私、星空凛っていうの!よろしくね!』

『はじめまして!高坂雪穂です』

『じゃあ雪穂ちゃんだ!よろしくね!』

『よろしくお願いします、星空さん』

『星空さんだなんてやだなぁ、私のことは下の名前で呼んで!私も雪穂ちゃんのこと、雪穂ちゃんって呼ぶから!』

『えっと、じゃあ、…………凛さん///』

『うん♪改めましてよろしくね雪穂ちゃ――――


――――――



…………夢を見た


本当に懐かしいあの頃の記憶


自室で眠っていた私は、夜中に目をさました

外は真っ暗で、時間はまだ深夜だった


雪穂「うそ……、まだ1時間ちょっとしか寝てないじゃん……」


最近こんなことが多くなった。

体は疲れてるはずなのに、寝てもすぐ起きてしまう。

すぐに寝ようとして横になっても眠れず、けっきょくまた同じことを考え始める。


また…、長い夜が始まるんだね……


――――――

いったい休憩します。
ようやく雪穂の内面を描けた気がします

そして少しずつ誤字が目立ってきましたね……

>>75
SIDはまだ読んでないですね。今度読んでみます!


この先も更新していきますが、この先の展開少し会話が噛み合わないところがあるかもですが、ご了承ください。


あとレス感謝です。少し更新します。


穂乃果「雪穂……、最近元気ないね」


自分の部屋に戻ろうとしたところで、お姉ちゃんに呼び止められた

まさかお姉ちゃんに言われるとは思ってなもみなかった。ホントこういう時に察しがいいから面倒くさい


穂乃果「夜もずっと起きてるみたいだし……」


気づいてたんだ……、これでも上手く隠してたつもりだったんだけどな……


穂乃果「もしなにか悩みがあるなら言って?、何か力になりたいの、だって……」


やめて……


穂乃果「だって、私は雪穂の――」


今それ以上言わないで……


穂乃果「お姉ちゃんだから」


…………ほら、だから嫌だったんだよ

ただでさえ頭の中がぐちゃぐちゃなのに余計に訳分かんなくなっちゃったじゃん……

お姉ちゃんとは話したくない……

――――――


――学校・教室――


亜里沙「――キホ、ユキホ!」

雪穂「……ん~」

亜里沙「どうしたの?学校に着いた途端に寝ちゃって……。まだホームルームも始まってないよ?」

雪穂「いやぁ、昨日よく眠れなくてさ」

亜里沙「ユキホ最近元気ない……」

雪穂「そうかな……、あはは……」

亜里沙「最近、学校にいる間はずっと寝てるようになった……、机で寝るのは良くないよ。保健室で休んできなよ?」

雪穂「いいの、それに人の目があった方がよく眠れるし」

亜里沙「ユキホ、なに言ってるの?」


まさか亜里沙にまで言わるとは……

確かに最近、睡眠時間が極端に減った。

夜はぜんぜん眠れなくなって、かわりに昼間学校で寝るようになった。

でも教室の方が眠れるっていうのは本当だ。

保健室を勧めてくれた亜里沙には悪いけど、一人になったらまた考え始めちゃうから……


雪穂(でもさすがに心配かけてるみたい……、やっぱり話した方がいいのかな……)

雪穂「亜里沙はさ……」

亜里沙「……!!、ユキホなに!?」

雪穂「いや、そんな前のめりにならなくても……」

亜里沙「気にしないで!……いいから続きを言って!」


本当は話すつもりはなかったんだけどな……

まさか亜里沙がこんなにもグイグイ来るとは思わなかった。だからけっきょく話すことにした。

でも、どうやって?

自分の考えすら、まとまってないのにどう切り開けばいいのか分からない……

それに、いきなり凛さんの事を言われても亜里沙困るよね……


雪穂「もし…もしもね、亜里沙が仲良くなりたい人がいるとしたら、亜里沙ならどうする?」

亜里沙「仲良くなりたいなら、自分からもっとその人に歩み寄ればいいんじゃないかな」

雪穂(即答!?……まあそりゃそうだよね)

雪穂「じゃあ、その人ともっと仲良くなりたいのにどうしたらいいのか分からない時、どうすればいいと思う?」

亜里沙「うーん、良く分からない……、私は考える前に動き出しちゃうタイプたから」

雪穂(あぁ、そう言うと思った。亜里沙はそういう子だから……)

亜里沙「だったら……、考えても分からないなら、また同じこと考えるよりも、行動してみればいいんじゃないかな……」

雪穂(行動してみて…か……)


亜里沙「あのねユキホ!私のお姉ちゃんの話なんだけどね…」

雪穂「絵里さん?」

亜里沙「うん、お姉ちゃんってね……、今でこそ楽しそうにμ's の活動してるけど、本当は始める前はぜんぜん乗り気じゃなかったの」

亜里沙「あれこれ理由つけて、ずっと言い訳ばっかりで、踏ん切りがつかなくて……」

亜里沙「もう、スクールアイドルがやりたいならさっさと始めちゃえばいいのに!って、見てるこっちがイライラしたよ~」プンプン

雪穂「あはは……、亜里沙らしい」

亜里沙「でもね……、いざ始めると、あっという間にのめり込んでいったの」

雪穂「…………」

亜里沙「スクールアイドルの楽しさを知った途端、楽しそうに真っ直ぐに……」

亜里沙「いじけてたのは何だったんだ、悩んでたのはいったい何だったんだーって思っちゃうくらいに夢中になっていった」

亜里沙「だから……、だからね、行動してみて初めて分かる事って、やっぱりあるんだよ!」


亜里沙「ねえユキホ……、私はユキホが何に悩んでるか良くわからない。何でそんなに思い詰めてるのかも分からない」

亜里沙「でも、私はユキホの話を聞いてあげることは出来るから、いつでも頼ってね」

雪穂「……うん、ありがと」

亜里沙「……ねぇユキホ」

雪穂「ん?」

亜里沙「ファイトだよ!」

雪穂「ふふっ……なにそれ、ぜんぜん似てない」クスクス

亜里沙「あ、やっと笑った!」

雪穂「……え」

亜里沙「ユキホのちゃんと笑った顔、久しぶりに見た!」

雪穂「…………」

雪穂「ねえ亜里沙……」

亜里沙「なあに?」

雪穂「……ほんとにありがとう」

亜里沙「うん」


雪穂(ファイトだよ……、頑張れ…か……)

雪穂(あっ、そういえば希さんにも同じようなこと言われたっけ……)

――大変やと思うけど頑張ってな――

雪穂「…………」

雪穂「……帰りに神社に寄ってみよう」

――――――


――神田明神――


雪穂「希さん」

希「お!やっぱり来たね雪穂ちゃん。ずいぶんゆっくりやったやん」

雪穂「…………」

希「それで、今日はどうしたん?」

雪穂「……ちょっと話があるんです」

希「……うん、長くなりそうやし座って話そか」


希「それで……、話は凛ちゃんのことやろ?」

雪穂「はい」

希「凛ちゃんのことが気になるんや?」

雪穂「はい」

希「ウチはこれでも雪穂ちゃんのこと少しは理解してるつもり。何を考えてここに来たのか、分かってるつもりや……。なんでも聞いて?」

雪穂「聞きたいことは……、全部です……」

希「ふふっ、欲張りさんやなあ」クスクス

希「じゃあ聞き方を変えるね?雪穂ちゃんはこれからどうしたい?」

雪穂「…………分からないんです」

希「……ん?雪穂ちゃん?」

雪穂「私もう、どうしたらいいのか分からないんです!この気持ちがいったい何なのか、ぜんぜん分からないんです!」

希「!!」


希(……これは、だいぶ重症やな)


雪穂「お願いします!この気持ちが何なのか教えてください」

希「…………」

希「うーん……、雪穂ちゃんが欲しいと思ってる答えは、ウチの中ではもう一通り出とるんやけどなぁ」

雪穂「だったらそれを教えてください!」

希「……それを聞いてどうするの?」

雪穂「え……」

希「その答えを聞いたら雪穂ちゃんは、納得して受け入れるの?」

雪穂「それは……」

希「あのな雪穂ちゃん。こういうのはウチから聞いてもどうしようもない」

希「これは雪穂ちゃん自身の問題や。雪穂ちゃんが自分で答えを見つけ出さんとあかん、自分自身でその気持ちに気付いていかんとあかんねん」

希「だからウチの口から答えることはできへん」

雪穂「そんな……希さんは、いじわるです」

希「うん……、確かに厳しい事を言ってるけど、いじわるしてる訳やないよ」

雪穂「また悩めって言うんですか……」

希「うん、つらいと思うけどな……」

希「それでも答えは雪穂ちゃんが自分で見つけらんとあかん。悩んで悩んで悩みぬいて、自分で答えを出さんとあかんねん」

雪穂「そんな……」


希「ただ、雪穂ちゃんはひとつだけ勘違いしてるよ」

希「雪穂ちゃんは一人やないんやで。頼るべき人がいる。現にウチを頼ってここまで来たやろ」

雪穂「でも、さっき答えは教えられないって言ったじゃないですか……」

希「うん、答えは教えられないけど、答えを見つける手伝いは出来るつもりや」

雪穂「なんですか、それ……」

希「別に一人で悩めって言ってる訳やない。誰かと一緒に答えを探せばいい」

雪穂「本当にそれで、答えが見つかるんですか?」

希「それは雪穂ちゃん次第や。もしかしたらすぐに答えが出るかもしれんし、出ないかもしれん……」

希「けど、それでも、もし答えが出ないんだったら、分からないままでも思い切って行動に移してみるのもええんとちゃう?」

雪穂「でも……、何をしたらいいのか分からない……」

希「いやいや、雪穂ちゃんには選択肢があるはずやで?」

雪穂「え……」

希「メール、……凛ちゃんから届いとるんとちゃう?」

雪穂「…あ」

希「雪穂ちゃん忘れてたんとちゃう?」


雪穂(本当に忘れていた……。確かに、いつだったか凛さんからメールが送られてきた。今度の休みの日に出かけようと言ってくれた、お誘いのメール……)

雪穂(考える事に必死で、未返信のままだった……)


雪穂「でも……」

希「怖い?」

雪穂「はい、それで何かが変わってしまうような気がして」

雪穂「前と同じように凛さんに接する事が出来なくなりそうな気がして……」

希「確かに分からない状態のまま、踏み出すのは怖いよな」

希「でも、怖がってるばかりやと、前には進めれへんよ」

雪穂「でも……」

希「無理にオーケーしろとは言わへん。けどメール返すくらいはしてあげたら?凛ちゃんすごい心配してたで?」


希「それに、さっきも言ったやろ?」

希「雪穂ちゃんには頼れる人たちがいる、亜里沙ちゃんや穂乃果ちゃんがいるやん。一人で怖がらなくていい」

雪穂「でも……、お姉ちゃんには……」

希「頼りづらい?」

雪穂「頼りづらいっていうか……、引っかかってるのはお姉ちゃんにも原因があるというか……」

希「うん、確かにお姉さんと凛ちゃんは姿が被るよな」

雪穂「……でも」

希「でも二人は同じやない」

希「お姉さんはお姉さん、凛ちゃんは凛ちゃん。凛ちゃんはお姉さんのかわりやない」

雪穂「……はい」

希「もし穂乃果ちゃんに頼れないんなら、穂乃果ちゃんやなくてもいい」

希「亜里沙ちゃんがいる、お母さんがいる、なんなら海未ちゃんやことりちゃんに頼ったっていい」

希「みんなが雪穂ちゃんの力になってくれる。みんな雪穂ちゃんの答えを探すのに協力してくれる」

希「だから一人で悩まなくていいんよ」

雪穂「…………」

希「そして大事なのは、もし答えが見つかった時に雪穂ちゃんが自分に正直になれるかどうかや」

雪穂「自分に…正直に……」

希「そうや。そしてみんな、雪穂ちゃんがどんな答えを出したとしても、きっと応援してくれる。みんなが雪穂ちゃんのそばに居てくれる。だから怖がらんでいい」

希「雪穂ちゃんは一人じゃないって事だけは忘れないで」



一瞬、涙がこぼれそうになった。

自分は一人じゃない

その言葉だけで、とても救われた気がした。

もう一人で悩まなくていいんだと思うと、それだけで心が楽になった。


やっぱりここに来て良かった。

結局この気持ちが何なのかは分からなかったけど……

相変わらず心の中はぐちゃぐちゃのままだけど……

もう全部一人で抱え込まなくてもいいんだと思うと少し勇気が湧いてきた。

うん、やる事は決まった。


希「お!なんか決まったみたいやな」

雪穂「はい。まだ分からない事に変わりないですけど、とにかく動き出してみることにしました」

希「そっか、……また、おいでな」

雪穂「はい、今度はできれば答えが見つかってからまた来ます」

希「ふふっ、……大変やと思うけど頑張ってな」

雪穂「はい!」タタタ




希「行ってしもたな……」

希「まったく……、一人で抱え込むところは、ほんま穂乃果ちゃんとそっくりなんやから……」クスクス

希「…………」

希「自分の気持ちが何なのか分からない…か……」



希「ふふっ、女の子やけど、まだまだ子どもやなぁ」


――――――


いったん休憩します、長文でどうもすみません

乙です
別に問題ないですよ
読みやすいです


プルルルル……

ピッ――


希「もしもし、こんな時間に電話かけてきて、どうしたん?」

『 ―――――― 』

希「うん、来たよ。今日ウチのところを訪ねてきた。雪穂ちゃん……そうとう、まいってるみたい」

『 ―――――― 』

希「いやいやウチはただ話を聞いただけや。まあ、なんとかなりそうみたいやし、あとは雪穂ちゃんを信じるしかないね」

『 ―――――― 』

希「そんな事ないよ。それに、そっちこそ妹思いのええお姉さんやん」

希「…………ちゃんと見守っててあげような」


ピッ――


――――――

よくこんな文章書けるな~。
俺にもその能力を分けてくれ……w

>>107
そう言っていただけると、助かります

>>109
流石にやり過ぎだと自分で思います。収拾がつかなくなりそう……


――穂乃果の部屋――


雪穂「ねぇ……、ちょっといいかな?」

穂乃果「あ、雪穂!こんな夜遅くにどうしたの?」

雪穂「あの……、えっと……」

雪穂「…………」

穂乃果「…………自分のペースでいいよ」

雪穂「うん」

雪穂「…………」

雪穂「あのさ……、まだ良く分からないんだけど、とりあえず一歩踏み出してみることにした」

穂乃果「そっか」

雪穂「…………」

穂乃果「……ねえ雪穂」

雪穂「うん……」

穂乃果「どんな結果になっても、私は雪穂の味方だから」

穂乃果「……それだけは忘れないでね」

雪穂「ありがと、……お姉ちゃん」

――――――


前に凛さんから届いたメールを久しぶりに開いた。

未返信でほったらかしのままだったメール……


『 今度の休みの日 一緒に出かけようよ 』


画面にはそう表示されている。

返信メールを打つ自分の手が震える。

あれから少しだけ気が楽になった。夜も前より少しだけ眠れるようになった。

それでも、考え始めるクセは消えなくて、やっぱり答えは出なかった。

相変わらず心の中はぐちゃぐちゃだけど

ずっとこの気持ちが何なのか分からないままだけど

このもやもやした気持ちの正体を知りたいから……



お誘いを受けることにした


次の休日、凛さんとお出かけだ


――――――

休憩します、短いですけど今日はここまで


それからはあっという間だった。1日が終わって約束の日が近づく度に、期待と不安が大きくなっていった。


出掛る前日に亜里沙が家に来て、明日着ていく服を一緒に考えてくれた。


亜里沙「ユキホ、ユキホ!明日はデートだよ!ちゃんと着ていく服は決めた!?」

雪穂「デートだなんて、そんな大げさな……、ただ凛さんと出掛けるだけだよ///」

亜里沙「けど二人っきりなんだよね?」

雪穂「……うん///」

亜里沙「じゃあデートだ!」パアア

雪穂「だから、そんなんじゃないってばっ///」

亜里沙「だったら、なおさらちゃんとした服装で臨まないとね!」

雪穂「聞いてないし……」

亜里沙「ユキホ、頑張ってね!」

雪穂「……ありがとう」


結果、明日は明るい色の服装で出掛けることにした。

大した理由はない。ただなんとなく服装まで落ち込んだ色にしたくなかったから……


雪穂「けど亜里沙ったら、……あんなに、からかわなくてもいいじゃん///」カアア

――――――


穂乃果「雪穂、ファイトだよ!」

家を出る直前にお姉ちゃんが声を掛けてくれた

いつもは雑な励まし方だと馬鹿にしていたけど、今日に関してはとても心強い。


そうだ…ファイトだ、私。

亜里沙も希さんもお姉ちゃんも……、みんな居てくれる。

皆が私の背中を押してくれた。

皆が、一人じゃないと教えてくれた。

だから――


雪穂「行ってきます」

穂乃果「行ってらっしゃい」

――――――


――デート当日


――待ち合わせ場所――


待ち合わせ場所には先に着いた。

いや、正確には先に着くよう早く来たと言う方が正しい

結局、凛さんと会うのはあの日以来だ……
その前に少しでも気持ちを整理しておきたかった。

あの日の事を思い出すと、今でもバツが悪くなる。

一度、大きく深呼吸をした。


そういえば今日は2人っきりでお出かけなんだよね……


――じゃあデートだ!――


これって本当に、デデ……デート!?///

ヤバい、緊張してきた。

亜里沙が変な事言うから///

もう一度、深呼吸しないと。……あれ?……深呼吸ってどうやるんだっけ!?


雪穂「来た!」


遠くから凛さんがやって来るのが見えた。

一目で凛さんだと分かった。だって大勢の人の中で、一人だけ、ものすごいスピードでこっちに走ってくるんだもん。

まだまだ遠くにいると思ってたけど、凛さんはあっという間にその距離を詰めてきて、そして――


凛「雪穂ちゃんお待たせー!」

雪穂「ふふっ」クスクス

凛「にゃ!?会っていきなり笑うなんてひどくない?」

雪穂「ごめんなさい。今日も元気だなって思って」クスクス

凛「うん!凛はいつも元気だよ!」


やっぱり凛さんと一緒にいるとペースを乱される。

なんだか、くよくよ悩んでた自分が馬鹿らしくなってきた。

凛さんと会うまでは怖かったけど、元気いっぱいの凛さんを見てると少し救われた気がする。

やっぱり凛さんと一緒にいるのは楽しい。


凛「あ!雪穂ちゃん、今日の服かわいい!」ニコッ

雪穂「そんなことないです///」


振り回されるのが、たまにキズだけどね……


けど私だって、振り回されてばかりじゃない


雪穂「凛さんだって、そのコートとっても素敵ですよ」ニコッ

凛「あ、そうなの!この秋物のコート、この前買ったんだー!……変かな?」

流された!?
……って、そりゃそうか。

雪穂「いえ、すごく似合ってますよ。……ただ凛さんがそういうコートを着るなんてイメージなくて」

凛「そうかなー」

雪穂「最近の凛さん、ちょっと服装が変わりましたよね。なんというか女の子っぽくなったというか……」

凛「うん、最近いろいろあったからね」

雪穂「いろいろ?」

凛「そうなの!それで、今はいろんな服装に挑戦してるんだー!」

凛「ちなみに今日のコートは絵里ちゃんをお手本にして選んでみたんだよ!……どう?ちょっと大人っぽいでしょー」

雪穂「確かに大人っぽいですけど……、今日ってそんなに寒いですか?」

凛「え?」

雪穂「確かに最近少し肌寒くなってきましたけど、厚着すれば気にならないし、まだコートを着る程じゃないと思うんですよね」

凛「うーん、寒いからって訳ではないんだけどね……」

雪穂「じゃあ、どうして?」

凛「ほら、今は外にいるから気にならないけど、電車とか建物の中だと暖房がきいてて暑いでしょ」

凛「そういう時に、サッと脱いだり羽織ったりできるコートがあれば便利でしょ!だから着てきたんだー」


なるほど……、賢い。

私なんか、そんな事ひとつも考えてなかった。


凛「……でも何て言うんだっけ?」

雪穂「?、……何がですか?」

凛「この秋物のコートの呼び方」

雪穂「……はい?」

凛「えーと……、秋のコートだから…、秋は英語でどう言うんだっけ?…ええっと確か……、……お、…お」

雪穂「…………」

雪穂「…………オータム?」

凛「そう、それ! オータム!」

凛「オータムコートっていうんだよ、これ!」

雪穂「え、今の本気ですか?」

凛「なにが?」

雪穂「オータムが出てこなかった事ですよ。ちょっと酷くないですか?」

凛「だって秋の言い方って複数あるじゃん。どう覚えたらいいいのか良く分からなくて……」

雪穂「 fall と autumn ですよね。確かにややこしいですけど、それでも言えないのは本当にヤバいですよ」

凛「うーん、……凛って、英語苦手なんだよね」アハハ

雪穂「いやいや、今のは苦手ってレベルじゃないです」

凛「そ…、そんなことないよー!」

雪穂「凛さん……」


ちょっとショックだった……

英語が苦手だということは聞いていたけど、まさかここまでとは……

いくら苦手とはいえ、流石に酷過ぎる。


雪穂「あぁ私ったら……、なんでこんな人のことが気になっちゃったんだろう」ボソボソ

凛「えっ、何か言った?」

雪穂「なんでもないです」


雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂(ヤバッ沈黙……、何か話さないとっ)

雪穂「それで、今日はこれからからどうしますか?私何も考えてないですけど……」

凛「おぉ、そうだった!今日はいろいろと行きたいところがあるんだー!」

雪穂「行きたいところ?」

凛「うん、最近ちょっと忙しくて遊びに行く時間がなくてね。……ほら最近ライブ続きだったでしょ?」

雪穂「あぁ、そういえばこの間ハロウィンフェスでも踊ってましたね」

凛「それにもうすぐ最終予選もあるし……、そうなるとまた練習で忙しくなるから……」

凛「ゆっくり遊べるのは今のうちかなーって思って、だから雪穂ちゃんを誘ったの!」

凛「……それとも迷惑だった?」シュン

雪穂「…………え!?」ビクッ

雪穂(なんで急にシュンとなるの!?)

雪穂「いや迷惑なんて、そんなこと無いです!」

凛「ほんと!?」パアア

雪穂「……っ!///」



もうっ!急にしおらしくなったかと思えば、今度は一気に明るくなって……

テンションがいきなり上がったり下がったり、凛さんは感情の起伏が激しい。

前触れも無く表情がころころ変わるから、こっちはホント調子狂う。


雪穂「それで、凛さんの行きたい所って?」

凛「うん、まずはショッピング!!」

凛「服を見て、雑貨屋にも行って、……そうだ!新しいマンガも欲しいでしょ。それから――」

雪穂「そっ、そんなに回るんですか!?」

凛「うん!だから雪穂ちゃん、今日は付き合ってね!」

雪穂「いや、だったら少し計画を立てた方が……」

凛「よーし、じゃあ出発にゃー!」

雪穂「ちょっと凛さん!?待ってください!!」

――――――


凛さんを追いかけるように一緒に街へ繰り出した。

休日で人通りの多い街中を二人で進んていく。

凛さんが前を歩いて、私がすぐ後ろを付いて行く形になった。


それにしても、凛さんは歩くスピードが速い。気を抜いたらあっという間にはぐれてしまいそう……

私は置いて行かれないよう、とこどころ小走りになりながら必死に付いて行った。

そんな私に気付いてくれたのか、凛さんは時々振り返って、私の姿を確認しては歩調を合わせてくれた。


ちゃんと気にかけてくれてるんだな


何も言ってこなかったけど、凛さんの優しさをちゃんと感じ取ることができて嬉しかった。


最初はどこへ行くんだろうと思っていたら、着いた場所はまさかのゲームセンター。

理由は凛さんがリズムゲームで体を動かしたいという事だった。


……まさか過ぎる


けど、休みの日まで体を動したいというのは、ちょっと凛さんらしい。


凛「雪穂ちゃん、踊り上手だねー!」

雪穂「はい。これでも亜里沙と練習してますから」

凛「これならスクールアイドル始めても即戦力になるよ!」

雪穂「いやいや、凛さん達に比べたらまだまだですよ」


でも実際その通りだった。

画面に表示されたスコアは比べ物にならないほど差が開いていた。しかも凛さんは息切れひとつ起こしていない。

まさか朝一番で体を動かす事になると思ってなかった私は、いつも以上に息が上がってしまった。


雪穂「朝一番で踊るのは流石に疲れますね」

凛「うん。ちょっと喉が渇いたね」

雪穂「あっ!じゃあ私、飲み物買ってきます!」

凛「えっ、ほんと!?」

雪穂「凛さん、ジュースでいいですよね?」

凛「ありがとう!」

凛「…………」


ゲームセンターを後にした私たちは、そのまま近くのアイドルショップへ行った。

グッズを物色しながら、凛さんとスクールアイドルについて話し合った。

でも私の方が、最近のアイドル事情に詳しいと分かった時は笑っちゃった。

だって凛さんったら自分の方が詳しいって言って、必死に張り合ってくるんだもん。

全部、見事に返り討ちにしてみせた。


ふふっ、ほんとおかしい……

悔しそうにする凛さんも可愛かったなぁ



その後は凛さんの宣言通りショッピング。

大きなショッピングモールに行って服を見て、アクセサリーを見て、CDショップに行って新しい曲をチェックした。


そして本屋にも立ち寄った。

どうやらここが凛さんが一番来たい場所だったみたい。

本屋に入るなり凛さんは一目散に漫画コーナーへ。迷いの無いところも凛さんらしい。

脇目も振らず楽しそうに、新刊コーナーと睨めっこしている。


でも……、凛さんには悪いけど、私はマンガを見る気分にはなれなかった。

正直マンガなんて、しばらく読んでなかったし、気にも留めていなかったから……

そもそもマンガを手に取ること自体が久しぶりだった。


凛「雪穂ちゃんは見なくていいの?」

雪穂「私は見てるだけでいいです」アハハ

凛「?」

――――――

レス、本当に感謝です。 

年末の忙しい時期ですが年内で完結させたいと思います。もう少しお付き合いください。


……あれ?

けっきょく、本当に凛さんの行きたいところに付き合わされただけだったな。

今日行ったところ、全部私じゃなくても良かったんじゃないのかな……

なんで私を誘ったんだろう?

ただ私が変に意識してただけなのかな……


そんな考えが頭をよぎったけど、足の疲れでどこかに行ってしまった。

そういえば今日は朝から凛さんに振り回されっぱなしだったな……


そんな私に気付いてくれたみたいで、休憩ついでに凛さんがよく行くカフェでお茶することになりました。

凛さんに連れられて、凛さん行きつけのお店へ。

着いたところは奥がテラスになっていて、外で飲食が出来るみたい。とても雰囲気のいいお店だった。

さすが……と言うか、やっぱり高校生にもなるとオシャレなお店の一つや二つは知ってるんだなーと、ちょっと尊敬


……やっぱり憧れちゃうな

――――――

――――――

雪穂ちゃんを連れて目的のカフェへ。


ホントはまだまだ元気なんだけど、雪穂ちゃん疲れてきたみたいだし、休憩ついでにお茶する事にした。

本当は今日一日、凛がリードするつもりだったんだけど……、けっきょく自分の行きたい所ばかり行って振り回しちゃった。


いいお店を知ってると言って、以前みんなと一緒に来たことのあるテラスカフェに。

大見得切って連れて来ちゃったけれど実はここ、本当は真姫ちゃんに教えてもらったお店なんだ。

だからあまり来たことがないんだ。


雪穂ちゃんが嬉しそうにしてるから、本当の事を言い出せなくなっちゃた……

けどすごく喜んでるみたいだし、連れてきて正解だった


……よね?

――――――


――カフェ店内――


凛「雪穂ちゃん、今日は振り回しちゃってごめんね。つい楽しくなっちゃって……」

雪穂「気にしないでください。私の方こそ楽しかったです」

凛「ほんと!?なら良かったー!」

雪穂「あの……、ところでずっと気になってたんですけど、今日はなんで私を誘ってくれたんですか?」

凛「え?」

雪穂「今日、回った所って本当に凛さんの行きた所ばかりだったじゃないですか……」

雪穂「だったらμ's の人たちでも良かったんじゃないかなーって思ったんです 」

凛「あ、もしかして嫌だった?」

雪穂「嫌って訳じゃなくてちょっと気になっただけです」

凛「うーん……確かにかよちん達でも良かったんだけど、やっぱり雪穂ちゃんとも一度遊んでみたかったからね」

雪穂「はあ」

凛「凛も今日は楽しかったよ♪」ニコッ

雪穂「……つ!///」

雪穂「そっ、それにしても、とっても雰囲気がいい素敵なお店ですね」

凛「あっ!もしかして、こういうお店初めて?」

雪穂「いや、初めてって訳じゃないですけど、友達同士で来ることってほとんどないですね」

凛「ああ、なるほど」

雪穂「さすが凛さん、いいお店を知ってますね」

凛「え!?……う、うん」アハハ

凛(真姫ちゃんホントにありがとう)

雪穂「……?」


そうだったね……

雪穂ちゃんってしっかりしてるから忘れそうになるけれど、まだまだ中学生なんだよね……

凛も中学の頃はハンバーガーみたいな手頃なお店ばかりだったし、中学生はやっぱりこういうお店に来る機会って少ないんだね。

よーし、

じゃあこういう時こそ凛が年上らしいところを見せないとね。


凛「よし、雪穂ちゃん!ここは凛が奢るよ!」

雪穂「え!?なんで急にそうなるんですか?」

凛「え!?」

雪穂「いいですよ。そこまで気を遣わなくても……」

凛「でも……」

雪穂「それに凛さん、今日いっぱい買い物してましたよね。……だったらここはワリカンでいいですよ」



あれ? 逆に気を遣わせてしまった!?

想定してなかった雪穂ちゃんの返しに、思わず面食らってしまった。

雪穂ちゃん、ほんとにしっかりしてる……

じゃなくて――


凛「い…いいの!それに今日一日付き合ってくれたし、お礼がしたいの!」

雪穂「…………」

凛「……だめ?」

雪穂「…………そういうことなら」

凛「ほんと!?良かったー!」



凛(ふぅ、危なかったぁ。雪穂ちゃんが相手だと口実作るのも大変だにゃ)

雪穂(凛さんったら……、口実作るの下手だなあ)


雪穂「それよりも、そろそろ注文しませんか?」

凛「そ、そうだね!」

雪穂「なに頼もうかなぁ」

凛「雪穂ちゃん、このお店は実はね……、スイーツの種類も豊富なんだよー!」

雪穂「うわあホントだあ、全部美味しそう!」パアア

凛「それにどれも美味しい……、って雪穂ちゃん?」

雪穂「ああ、どれにしようかなあ♪」

凛「…………」


雪穂ちゃん楽しそう。

会話そっちのけで、ショーケースに並べられたケーキに釘付けになる雪穂ちゃんの横顔を見て、ふいにそう思った。

顔を合わせるのは、いつも穂むらでばかりだったから知らなかったけど……

目をキラキラさせちゃって……、こういうところ見るとやっぱり女の子なんだね。


凛「…………可愛い」ボソッ

雪穂「え、何か言いました?」

凛「ううん、なんでもない!」

雪穂「?」

凛「それで?…どれにするか決まった?」

雪穂「うーん、悩みますね……。あっ!」

凛「どうしたの?」

雪穂「そういえば、ここって凛さんがご馳走してくれるんですよね!?」

凛「うん、なんでも頼んでいいよ」

雪穂「やったー!じゃあショートケーキと、チョコレートと……そうだ!あとワッフルと――」

凛「そそ…、そんなに頼むの?」

雪穂「だって凛さんが言ったんですよ?、ここは奢るって……」

凛「確かに言ったけど……」

雪穂「じゃあ約束は守ってもらいますね。……あっ!ドーナツもあるっ♪」

凛「ええっ!まだ頼むの!?」


凛(……やっぱり奢るなんて言わなきゃ良かった)


雪穂「すいません、いっぱい頼んじゃって……」アハハ

凛「気にしないで。奢るって言ったのは凛の方だし」

雪穂「でも、運ぶのまで手伝ってもらっちゃって……」

凛「ケーキいっぱい頼んだもんね!気にしないで!」

凛「それに普段見られない雪穂ちゃんも見れたし♪」

雪穂(ううっ、恥ずかしいところを見せてしまった…///)


雪穂「……あっ、凛さん、お砂糖はセルフサービスみたいですね。ここから持っていくみたいですよ。」

凛「あっ、じゃあ―― 」

雪穂「凛さん、砂糖取とります。凛さんコーヒーだからいりますよね?」ヒョイ

凛「うん、お願い」

雪穂「ミルクもいりますよね?」ヒョイヒョイ

凛「うん、両方ちょうだい」

雪穂「はい。ついでにマドラーも渡しておきます」ヒョイヒョイヒョイ

凛「ありがとう」

雪穂「じゃあ行きましょう」

凛「うん」
 
雪穂「…………」

凛「…………」


にゃあああ!しまったー!!

ありがとう、じゃないよ!……何やってるの、凛のバカっ!

こういう時は年上の私が気を遣うところなのに!

逆に雪穂ちゃんに気を遣わせちゃった。


やっぱりいつも穂乃果ちゃんのお世話してるからかなぁ。

ホントしっかりしてるにゃあ。


さっきの事だけじゃない……

ゲームセンターでは自分から飲み物を買ってきてくれたし、無計画だった今日のショッピングも計画を立ててくれた。


本当によく気が回るなぁ……


本当は今日一日、凛がリードするつもりだったのに……

これじゃあ雪穂ちゃんに適う気がしないよぉ!



雪穂(……的な感じの事、凛さん考えてるんだろうな)

凛「にゃああ」

雪穂「凛さん!」

凛「……っ!」ビクッ

雪穂「…………どうかしましたか?」

凛「なっ、なんでもない!」

雪穂「…………」


雪穂「あのぉ、……凛さん?」

凛「…………」

雪穂「もしかして機嫌損ねました?」ニコッ

凛「…………」ムス


ふーんだっ!

いくら雪穂ちゃんがしっかりしてるからって……

そりゃあ年下に気を遣われたら、いくら凛でも不機嫌にくらいなるよ。

だけど雪穂ちゃんを変に困らせちゃったみたいだし…

凛もこんなんじゃダメだにゃ。もっとしっかりしないと。

けどそれにしても……


雪穂「あのっ、……り…凛さんっ」アタフタ


凛(困ってる雪穂ちゃん可愛い)


雪穂「…………」


ああ、やっちゃった!

こういう時は先輩である凛さんを立てるところなのに……

私つい、いつもの癖でやちゃった。

だけど凛さん、このくらいで機嫌損ねられても困るよ。

けどそれよりも……


凛「…………」ムスー


雪穂(拗ねてる凛さんも可愛い)


雪穂「そっ、それよりも……」

凛「…………」ピクッ

雪穂「そろそろ席を探しませんか?」

凛「そ、そうだね!早く座ろっか!」

凛(雪穂ちゃんナイスだにゃ!)

凛「そうだ!このお店はテラス席もあるんだよ。外に出て食べようよ」

雪穂「いいですね」

凛「ええっと、じゃあ出入り口は……」

雪穂「ああ、あそこから外に出られるみたいですよ」

凛「あ!ホントだ!」

雪穂「え?」

凛「え!?」

雪穂「…………凛さん、このお店よく来るんですよね?」

凛「そ、そうだよ?」

雪穂「だったらなんで出入り口の場所が分からないんですか」

凛「ギクッ」

凛「ほ、ほら……、凛いつもは店内の席に座るからさ……、あはは」アセアセ

雪穂「…………」ジー

凛「…………」ダラダラ

雪穂「じゃあそういう事にしておきます」

凛「!、……そういう事だから!!」


あぁ、凛さん今 嘘ついたな。

お姉ちゃんと似てるところがあるからかなぁ。見栄張ってる時ってなんとなく分かるんだよね。

別に格好つける必要なんてないのに。


凛さんったら、ほんと何やってるんだか……

今日中にいけるところまで更新したいと思います


凛「それにしても」

雪穂「……?」


ガヤガヤ――


凛「お店の中、ずいぶん賑やかなんだね。今日はお客さん多いのかなぁ」

雪穂「ああ…。にぎやかっていうか、一部のグループが騒いでるだけですけどね」チラッ


「 ギャーギャー 」


雪穂「……あれ?」

凛「知り合い?」

雪穂「知り合いっていうか……、ウチの学校の男子達です。むこうは私のことは知らないと思いますけど……」

凛「そうなんだ」

雪穂「まったく、ほんと男子ってうるさいですよね。特にあのグループっていつも騒がしいんですよ」

凛「あはは……、休日なんだし、盛り上がるのもしょうがないじゃないかなー」

雪穂「それでも店の中でくらい静かにできないのかって思っちゃいますよ」

凛「まあまあ、お休みの日に友達と一緒なんだよ大目に見てあげようよ」

雪穂「まあ……、凛さんがそう言うなら」


凛(凛も、穂乃果ちゃん達と一緒だとうるさくしちゃうし、人の事は言えないにゃ)


雪穂「でも、凛さんは別ですよ」

凛「え!?」

雪穂「凛さんはちゃんと場所をわきまえてるし、きちんとマナーも守れてる。……あんな男子達とはぜんぜん違います」

凛「え!?……う、うん。ありがとう」アハハ


凛「まあまあ…、気にしててもしょうがないよ。早く行こ?」

雪穂「そうですね」

凛「あっ、雪穂ちゃん、もうちょっと端を歩かないと前の人たちと、ぶつかっちゃうよ」

雪穂「え?……あぁ」

中学生「 ギャーギャー 」


雪穂(さっきの男子たち、出入り口のドアの前で騒いでるんだ)

雪穂(ほんと男子ってがさつだなぁ。ゆっくりしたい人もいるのに、静かに楽しむって事ができないのかなぁ……)


ナニヤッテンダヨー、オイ! ウワッ!

凛「あ、雪穂ちゃん危ない!」

雪穂「え?」


ドン――


雪穂「痛っ!」


ドサッ…カランカラン――


何が起こったのか分からなかった。

確か、私は騒いでいる男子達を避けて歩こうとしていたところで……

騒いでいた男子達の一人がふざけてた勢いで突き飛ばされて、そのまま私とぶつかって、

私はぶつかった拍子に、バランスを崩してそのまま床に倒れ込んでしまった。



凛「雪穂ちゃん大丈夫!?」

雪穂「大丈夫です。ぶつかっただけですから」

凛「ええっ、ほんとに大丈夫!?……ケガはとかしてない?……あ」

雪穂「え?、…………あ」



確かにケガは無かった、けど……

私は、倒れた拍子に持ってたコーヒーをこぼしてしまって、そのコーヒーをモロにかぶってしまった。


私の服にコーヒーがかかってしまって……

結果、服が汚れてしまった。


雪穂「あぁ、服にコーヒーかかっちゃいましたね、あはは」

凛「あははじゃないよ!こんなに服、汚しちゃって……」

中学生「 スイマセンデシタ- 」スタスタ

凛「……!」イラッ

凛「ちょっと待ってよ!」

中学生「……?」

凛「たったそれだけ?」

中学生「何ですか?さっき謝ったじゃないですか?」

雪穂「凛さんいいんです。大丈夫ですから……」

凛「でも……」

雪穂「ちゃんと前を見てなかった私も悪いんです」

雪穂(だからもうこれ以上、事を大きくしないで……)

中学生「ほら、その人も自分が悪いって言ってるじゃないですか」

凛「…………」

凛「なんの話してるの?」

中学生「え!?」

雪穂「……え!?」


凛「私は今、どっちが悪いかって話をしてるんじゃないよ」

凛「人としてどうなのかって話をしてるんだよ」

中学生「え……」

凛「人にぶつかっておいて、そのうえ人を転ばしておいて」

凛「向こうが謝ってるから自分は悪くないって考え方、人としてカッコ悪いよ!」

中学生「あ…えっと、ごめんなさ――

凛「私に謝ってどうするの!!?」

凛「謝るなら、この子に言って!今、言おうとした言葉はこの子の顔を見てちゃんと言って!!」

中学生「えっと……すっ、すいませんでした!」

雪穂「…………」

凛「ほらっ、雪穂ちゃんも!」

雪穂「あ…、私もちゃんと前見てなかったから……、すいませんでした……」


凛「…………ほんとに?」

凛「二人とも、本当にもう言い残した事はない?」

雪穂「……はい」

凛「よし!じゃあこれで一件落着だね!」


凛さんのあまりの迫力に、私もその男子も気圧されてしまった。


あぁ……、凛さんって本当にかっこいい

ちゃんと面と向かって言いたい事を言える。

良い事と悪い事の区別ができるし、その上、人の間違いを諭す事もできる。


それに比べて、私は愚痴ばっかり……

直接言う事も出来ずに、陰でウダウダ言ってるばかり……

格好悪い……

私って……、本当に格好悪い。


凛「雪穂ちゃん立てる?」


あ…、凛さんが手を差し伸べてくれてる……


そういえば前にも同じような事があったっけ……

座り込んでいる私に、凛さんが手を差し伸べてくれている。


前と同じ状況だ……

けど、前とぜんぜん違う。

私、今顔を見られたくない。絶対にヒドい顔してる。だから――



うつむいたまま、その手を取った

――――――


凛「駄目だぁ、汚れぜんぜん落ちないよ」

店員「お客様、こちらのタオルをお使いください」

凛「あっ!ありがとうございます」

雪穂「…………」

凛「雪穂ちゃん、ジッとしててね」

ゴシゴシ――


私、何やってるんだろう

服にコーヒーなんか引っかけちゃって

それなのに私はただ立ち尽くしてるだけで、凛さんに余計な手間をとらせてしまっている。


馬鹿みたい……

はしゃいでた自分が馬鹿みたい……


ずっと悩んで、あんなにみんなに迷惑かけて

亜里沙にも、お姉ちゃんにも、希さんにも……、みんなにいっぱい心配かけて、背中まで押してもらって

このデートだってそう。みんなに励ましてもらってようやくここまで来たのに……

おしまいだ、もう全部おしまいだよ……


凛「うーん、やっぱりシミになっちゃう…って、ええ!?雪穂ちゃん、どうしたの!?」

雪穂「うぅ……だって、だって……」ポロポロ


私はふがいない自分が悔しくて、

溢れ出る涙を抑えることができなかった。


凛「ああ、雪穂ちゃん……泣かないで」

雪穂「だって…だって……」

雪穂「せっかくここまでスゴく楽しかったのに、私の不注意で台無しにしちゃって……」

雪穂「せっかく亜里沙に選んでもらったこの服も汚しちゃって……」

雪穂「亜里沙だけじゃない。お姉ちゃんにも希さんにもいっぱい迷惑かけて心配かけて……」

雪穂「せっかく背中押してもらったのに、こんな事になっちゃって」

雪穂「凛さんに余計に手間までかけさせて……」

雪穂「だからもう…、もう……」

凛「…………」

雪穂「だから――」


ギュッ――


雪穂「…………え?」


突然の事で、私は言葉を失った

何が起きたのか分からなかったけど……

気付いたら、私は凛さんに抱きしめられていた


雪穂「え?……うえぇ!?ちょっと凛さん!?」

凛「…………」ギュー

雪穂「いいいったい何を!?」

凛「確かにさっきのは雪穂ちゃんの不注意だったよ?」

雪穂「…………ごめんなさい」

凛「……けど、それで雪穂ちゃんが自分を責める必要なんて無いんだよ」

雪穂「凛さん……」ポロポロ

凛「だからもう泣かないで」

雪穂「でも私…、こんな汚れた格好で外を歩きたくない」

凛「あっ、だったらこれを使って!」


そう言って凛さんは自分の着ていたコートを私に着せてくれた


雪穂「これ……、凛さんが着てたコートなんじゃ」

凛「うん!ちょっと変だけど、前のボタンを閉めれば気にならないでしょ?」

雪穂「でも凛さん、コート無しじゃ外も寒いし……」

凛「凛なら大丈夫!!」

雪穂「でもっ」

凛「あのね雪穂ちゃん。凛はね、寒いのは苦手だけど、嫌いな訳ではないんだよ!」

雪穂「…………何ですかそれ」クスッ

凛「あ!やっと笑った!」

雪穂「……え?」

凛「うんうん♪やっぱり雪穂ちゃんには笑顔がいちばん!」

凛「泣いてる顔なんか似合わないよ」ニコッ

雪穂「凛さん……」

凛「それに言ったでしょ? 今日は楽しかったって」

雪穂「…………」

凛「雪穂ちゃんは楽しくなかった?」

雪穂「楽しかったです、……すごく楽しかった」

凛「だったらその気持ちを大切にしないと」

雪穂「…………」

凛「私も今日の気持ちを大切にしたい!だからコーヒーが、かかっちゃったくらいで落ち込んでたら、もったいないよ!」

雪穂「はい///」

凛「それに……、今日はまだ終わってないよ」

雪穂「え!?」


凛「まずは雪穂ちゃん家に行こう。で、着替えて、そのままいっぱいお話しよう」

雪穂「え…、凛さんはそれでいいんですか?」

凛「うん!雪穂ちゃんいっぱいケーキ買ってたし、持ち帰りにして一緒に食べよ」

凛「それに久しぶりに雪穂ちゃんの淹れたお茶も飲みたい!」

雪穂「…………じゃあ」

凛「ほんと!」パアア

凛「じゃあ決まり!雪穂ちゃん行こ!」

グイッ――

雪穂「え、ちょっと急に引っ張らないでください!」

凛「気にしない気にしない♪」ニコッ

雪穂「……っ///」


いきなり手を引っ張られて驚いてしまった。

ほんと、なにもかも突然でビックリしたけど……

凛さんが、私と手をつないでくれた。

すごく、暖かかった。


雪穂「あぁ……、あったかい///」


凛さんから伝わる手のぬくもりで、体全体があたたかく包まれるような感じした

そのぬくもりを感じた時、心の中のもやが一気に晴れるように理解した。



ああ、そっか……、やっと分かったよ。



凛さん、好きです


今なら、はっきりとそう言えます。


優しい所も、元気いっぱいな所も

私のことを大切にしてくれる所も


少しお姉ちゃんと似てる所も、

突拍子のない所も、ちょっと無茶苦茶な所も、

変に格好付けちゃう所も、素で格好いい所も全部……


全部、私のものにしたい

このぬくもりも、その笑顔も、全部全部私のものにしたい



この気持ちが本気で人を好きになるってことなんだね



この気持ちが 『 恋 』 なんだね



本当は今すぐ、この気持ちを凛さんに伝えたい

ようやく気付くことのできたこの気持ちを全部、ありのままに告白したい

凛さんが受け止めてくれなくても構わない。全部全部、凛さんに話してしまいたい。



でも、やめました



だって、凛さんが手をつないでくれてるから

今は少しでも長く手をつないでいたい。

少しでも長く、このぬくもりを感じていたい。

せっかく、つないだこの手をまだ離したくない

 

だから、今はもう少しだけこのままで…………



凛「何してるにゃ、早く行こう?」

雪穂「はい!」


――――――

ひとまず、これで以上になります

本当は雪穂が自分の気持ちに気付いたところで終わる予定でしたが、最後に後日談みたいなことをやりたいと思います。

こちらは三が日の間に更新したいと思います。

新年あけましておめでとうございます

今年もより良いSSをお届けするため精進していきたいと思います


カフェを飛び出し、二人で帰路についた。

相変わらず手をつないだままで、私はまだその手を離したくなくて凛さんの歩調に合わせて歩いた。

けど、自分の足の痛みでだんだん凛さんに付いていけなくなっていった。


雪穂「痛っ!いたたた……」

凛「あ、ごめん。雪穂ちゃん大丈夫?」

雪穂「ごめんなさい、ちょっと足が……」

凛「そういえばずっと歩きっぱなしだったね」


そういえばカフェで休憩するといっておいて、結局休む事なく店を出てきてしまったな……

私の足はどうやら限界がきたみたい

けっきょく家まで歩くことが出来ず、近くの公園で休憩することになった。


二人で手をつないだまま、公園内のベンチに腰かけた

お互いが同じ方向を向いたまま、しばらく沈黙が流れた

もう日が傾いてきたみたいで、空はオレンジ色に染まっている

近くで子ども達の笑い声が聞こえてきたけど、それもすぐに聞こえなくなってしまった

私たちの周りから人の気配がなくなった


いつの間にか2人っきりになっていた


雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「凛さん……」

凛「なあに?」

雪穂「私、凛さんに話したいことがあるんです」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「大事な話なんだね?」

雪穂「……はい」


雪穂「…………」

凛「…………」


ヤバい、声が出ない

いざ話すとなるとやっぱり怖い


凛「雪穂ちゃん」ギュッ

雪穂「……っ!///」


そんな私の手を、凛さんは両手で優しく握りしめてくれた

自然と凛さんとの距離が縮まる


顔を上げると私の視界が凛さんの瞳を捉えた

至近距離でお互いの目が合う


凛さんは真剣な眼差しでこちらを見つめている。


凛「大丈夫、私は雪穂ちゃんの言葉ならどんな事でも、ちゃんと受け止めるから」

雪穂「……凛さん」


あぁ、やっぱり憧れてしまう

普段はおちゃらけて見えるのに、こういう大事なところで、ちゃんと相手の事を汲み取って真剣に受け止めようとしてくれる


この真っ直ぐな姿に私は惚れたんだ……


伝えないと……、凛さんが私の言葉を待ってる。

私の気持ち全部、凛さんに伝えたい。


雪穂「私…、私は……」

雪穂「初めて会ったときから、ずっと凛さんのことが気になっていました」

凛「…………うん」

雪穂「凛さんのことをもっと知りたい。もっともっと凛さんと仲良くなりたい、そう思ってました」

凛「そっか」

雪穂「でも、どんどん自分の気持ちが分からなくなっていって……」

雪穂「凛さんとどう接したらいいのか分からなくなっていって」

雪穂「……けど、ようやく分かったんです」

雪穂「ようやく自分の気持ちに気付くことができたんです」

凛「…………」

雪穂「私は……」





雪穂「私は凛さんのことが好きです!」

雪穂「だから私と付き合ってください!!」




――――――


次の更新がおそらく最後になります


雪穂ちゃん……、手が震えてる

握った両手から、その事が良く伝わってくる

きっと、話すのにすごく勇気が必要だったんだろうな

答えなきゃ……、雪穂ちゃんの想いに答えないと

雪穂ちゃんは私のことが好き

だったら凛は……


私の本当の気持ちは――



凛「ごめんなさい!」

雪穂「…………え」


凛「…………」

雪穂「それは……、私の気持ちには答えられないってこと……」

凛「違う!そうじゃないの!」

凛「…………そういうことじゃないの」

雪穂「?」

凛「凛も同じなの!」

凛「雪穂ちゃんと同じで、凛も自分の気持ちが分からなかったの!」

雪穂「……え?」

凛「凛にとって、雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの妹さんで……、大事な友達の妹さんだと……」

凛「……そう思ってるハズだった」

凛「けど一緒にいればいる程、一緒に過ごす時間が増えていく程、どんどん自分の気持ちが分からなくなっていった……」

凛「凛も雪穂ちゃんと同じように、どう接したらいいのか分からなかったの」

雪穂「……凛さんも?」

凛「うん。……でも今の雪穂ちゃんの言葉を聞いて、確信した」

凛「確かに雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの妹さんなんだけど、それだけじゃなくて……」

凛「なんていうかほっとけない存在で」

凛「守ってあげたくなる存在で」

凛「雪穂ちゃんにはいつも笑っていてほしい!」

凛「…………そう思える存在なの」

雪穂「…………」

凛「だから、凛もきっと雪穂ちゃんと同じ気持ち……」

凛「私も雪穂ちゃんのことが好き」

雪穂「……!」

凛「雪穂ちゃんと、もっと一緒にいたい、もっともっと仲良くなりたい」

凛「だからね……、図々しいかもしれないんだけど……」

凛「こんな私なんかで良ければ……」

雪穂「え? ということは……」

凛「うん、だからね……」



凛「こんな私で良ければよろしくお願いします」



凛さんが、私のことを好き?

凛さんが私と付き合ってくれる

本当に?……本当に私、凛さんと恋人同士になれるんだ


…………夢みたいだ


雪穂「…………」

凛「…………雪穂ちゃん?」

雪穂「……った」

凛「……え?」

雪穂「ほんとに……、ほんとうに良かったぁ」ポロポロ

凛「えっ、雪穂ちゃん!?」

雪穂「う……っうう……」ポロポロ

凛「雪穂ちゃん、また泣いてる」

雪穂「……すいません、……だって」ポロポロ

凛「雪穂ちゃんは泣き虫だにゃ」

雪穂「だって、本当に嬉しくって……」

雪穂「私、本当に凛さんと付き合えるんですよね?」

凛「……うん///」

雪穂「…………嬉しい」


凛「あっ、でもちょっと待って!」

雪穂「……?」

凛「これで凛たち恋人同士なんだよね?」

雪穂「そ…、そうですね///」

凛「じゃあね、…………呼び方」

雪穂「え?」

凛「恋人同士なんだから呼び方、変えた方がいいのかな?」

雪穂「えっと……、つまり?」

凛「だからね、これから雪穂ちゃんのとこを呼ぶときは……」

雪穂「?」

凛「……ゆ、雪穂?」

雪穂「ええ!?じゃあ私は……、凛?」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「やっ、やっぱり変だね」

雪穂「そうですね!今まで通りでいいと思います」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「……ぷっ」

雪穂「ふふっ、あははは」

凛「にゃははは」

雪穂「ははは、っ……あぁ、おかしい」


ほんと、おかしい


凛さんと一緒にいると、調子を狂わされる

何もかも忘れて、腹を抱えて大笑いした

おかげでせっかくのムードが台無し


本当におかしくて……

おかしくて、おかしくて……

いつの間にか、また涙が溢れていた



凛「じゃあ雪穂ちゃん、改めましてこれからもよろしくね」

雪穂「はい、こちらこそよろしくお願いします」


――――――


――数日後


――穂むら――


凛「こんにちはー!」

穂乃果「あ、凛ちゃん!いらっしゃい」

凛「あ、穂乃果ちゃん!」

穂乃果「こんにちは、今日は雪穂?」

凛「うん、今日は雪穂ちゃんと一緒に遊ぶ約束してたんだぁ!」

穂乃果「そうなんだ。じゃあ雪穂なら上にいるよ」

穂乃果「おーい、雪穂ー!凛ちゃん来たよー!!」


――ドタバタ


穂乃果「あっ、来たみたいだよ」

凛「あはは」

雪穂「ちょっとお姉ちゃん!大声で叫ばないでよ!!……あ、凛さん!……こんにちは」

凛「うん、雪穂ちゃんこんにちは♪」

雪穂「…………お待ちしてました///」

凛「……うん///」

雪穂「…………」

凛「…………」

穂乃果「…………えーっと、穂乃果もいるんだけど」

雪穂・凛「!!」

雪穂「あっ、じゃあひとまず私の部屋に行きましょう///」

凛「うん、おじゃまします///」


――雪穂の部屋――


凛「おじゃまします」

雪穂「どうぞ、ゆっくりしていってください」

凛「うん!……あっ!じゃあ凛は雪穂ちゃんの淹れたお茶が飲みたいにゃ!」

雪穂「しょうがないですね、ちょっと待っててください」

凛「やったぁ!ありがとう!」ニコッ

雪穂「うっ/// ……すぐお茶淹れますね」

凛「うん」

雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「…………」ソワソワ

雪穂「お待たせしましたー、どうぞ」

凛「ありがとう!……うん!やっぱり美味しい!」

雪穂(……お茶を飲む凛さん、可愛い)

凛「にゃああ……、やっぱり雪穂ちゃんの淹れてくれたお茶がいちばん美味しいにゃ!」

雪穂「あ、ありがとうございます///」


凛「あ!雪穂ちゃん、またマンガ買い始めたんだ!」

雪穂「あ、そうなんです!新しく始まったドラマが面白くて、つい……」

凛「…………もう読まないのかと思ってた」

雪穂「そのつもりだったんですけど、やっぱり好きなことを我慢するってのは無理でした」

凛「うんうん♪やっぱり好きなことをしてる雪穂ちゃんがいちばんだにゃ!」

雪穂「あはは」

凛「凛は好きなことをしてる雪穂ちゃんが好きだよ!」

雪穂「うっ、……うぅ///」


雪穂(不意打ち!?……ズルいよ凛さん///)


凛「それで今日はどうする?」

凛「そうだ!前みたいに一緒にマンガ読もっか?」ニコニコ

雪穂「それもいいんですけど……」

雪穂「今日は一緒にμ's のライブ映像見ませんか?」

凛「ライブ? うん、いいよ!」

雪穂「じゃあすぐパソコン立ち上げますね」

凛「それで、いつのライブを見る?」

雪穂「うーん…、悩みますね……」

凛「凛はどれでもいいよ」ニコニコ

雪穂「あ!……じゃあ、あれ見ましょう。ファッションショーで凛さんがセンターで歌ったやつ!!」

凛「…………にゃ!?」


雪穂「あった、Love wing……これですね♪」

凛「ええっと、雪穂ちゃん? なんで、よりによってその曲なのかな?」

雪穂「なんでって、そりゃあ凛さんのドレス姿なんてそうそう見られませんから♪」

凛「…………」

雪穂「凛さん?」

凛「凛、帰るね!」ダッ

雪穂「あぁちょっと!? 駄目ですよ!!」ガシッ

凛「にゃああ離して!だって恥ずかしいんだもん!」

雪穂「駄目ですよ、今日は一緒に見るんですよ!!」

凛「にゃあああ!? 今日の雪穂ちゃん、押しが強くないかにゃあ!?」

雪穂「どれでもいいって言ったのは凛さんですよ」

凛「それはそうだけど」

雪穂「じゃあ言ったことは守ってもらいます!」

凛「ええええ!?」


――穂乃果の部屋


穂乃果「…………」



『ああー!空飛ぶ少女マンガが!』

『駄目です!その手には乗りません!!』

『にゃにゃ!?』

『あはははは』



穂乃果「うん!今日も仲良しさんだね♪」

――――――


あの日、私は凛さんに自分の想いを告げた


言葉にしなくても伝わる事があるけれど、やっぱり大切な事は言葉にしないと伝わらない。私はそう思う。


いま思い返してみると、自分から一歩踏み出すのはやっぱり怖かった

分からないまま動き出すのは、たまらなく怖かった


けれど、そんな時みんなが教えてくれた。

皆の言う通り、行動してみて分かる事もあるんだと、知ることができた

皆のおかげで私は自分の気持ちに気付くことができた



そして、私は凛さんと恋人同士になれた



自分の気持ちが分からなくて、辛い時もあったけど

悩んで悩んで、みんなにいっぱい迷惑かけたけど……

今なら、はっきり言える


悩んで良かった

悩んだ時間は無駄じゃなかった



だって私の毎日は、とても満ち足りているから

私は今すごく幸せだから



だから何度だって言うよ



私は凛さんが好き

凛さんのことが大好き



凛さんは……


私の恋人――――――


雪穂「凛さん」

凛「にゃ?」

雪穂「あの言葉、もう一度言ってほしいです」

凛「ええ!?でも恥ずかしいよ」

雪穂「それでもお願いします」

凛「うん、じゃあ―――――




「凛は雪穂ちゃんのことが大好き!」


「私も凛さんのことが大好きです」



――――― END ―――――

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