エイラ「キラー・クイーン?」(154)

エイラ・イルマタル・ユーティライネンは不思議ちゃんだとよく言われる

彼女自身、それはよく理解しているしそれをどうこうし様とも思って居ない

夜は同僚の夜間哨戒任務に共にしない時は11時には床に付き、8時間の睡眠を取る

彼女自身の望みとは同僚と自分の平穏である

彼女とその同僚とは歳の差はあるも同部隊の誰よりも仲の良い

そして、戦闘時ではよく“ロッテ”を組む

嫌いな食べ物はニシン

好きな事はサウナに入る事と同僚との一時

趣味はタロットカードを用いた占いだ

そんな彼女がキラー・クイーンと出会ったのはある意味必然ともいえるし、偶然ともいえる

彼女がロマーニャに休暇で出た際に有る骨董店にふらりと立ち寄った

その店構えは非常にインチキ臭い、“如何にも”と言う怪しい店だ

ショーウィンドウには髑髏や水晶が並べられ、他にも何に使うか分からない道具まで置いてある

占い好きのエイラとしては其処に立ち寄らない理由は無い

好奇心とちょっとした期待感を胸に、その店にふらりと入って行った

店内に客は居ない

細々とした置物やアクセサリーが置いてあり、その中に一際異彩を放っていた置物が有った

「石…だよナ」

エイラはそれを手に取ろうと手を掛けた瞬間、足元で蠢く何かに気が付いた

それは突然動き出したために、彼女は思わずよろめいてしまう

「おっト」

その拍子に、その“石”を落としそうになった

咄嗟に手を翳し、意思を拾い上げる事に成功

「あ、危ないナ」

足元から飛び出て来たそれ、黒い猫を睨みつける

直後、店主と思しき一人の老婆が出て来た

老婆はエイラを見て何も言わず

エイラも老婆を見て何も言わない

もっとも、エイラ自身は『愛想の悪い婆さんダ』とは思ったが

そして、一通り店を見て、何も買わずに出るのも悪いと思い先程の石を手に取った

「これが欲しイ」

エイラは石を老婆に見せると老婆は10リレと言う

彼女はまぁ、石だしと思い10リレを払って基地に帰還した

その帰り道、同僚に対するお土産を思い出し、道端で売っている

美味しそうなサンドイッチを2つばかり購入していた

その日は何も無く同僚と共にその美味しそうなサンドイッチを食し、一日を終えた

異変が現れたのは翌日の朝

エイラが目を覚ますと、何時も通り、同僚が自分の横で寝息を立てていた

それは毎朝恒例の事で、何処も可笑しい事は無い

ペンギンなのか猫なのかよく分からない、彼女が買い与えたぬいぐるみと共にスースー寝息を立てている

「おはよう、サーニャ」

彼女は彼女の国の言葉で小さく挨拶をする

そして、何の気なしにベッドの脇を見た

そこで声を上げなかったのは奇跡だと思って良い

咄嗟に二段ベッドの二段目の裏に忍ばせた拳銃に手を伸ばし、構えた

安全装置を外し、右手でしっかり握り、左手で右手を握り込む

何時も使っているmg42汎用機関銃よりは使って居ない

だが、それでも愛銃と言わないまでもそれなりに愛着が有る銃だ

それを構え、照門と照星を一直線上に合わせてその先に居る男に狙いを定める

いや、男と断言は出来ない

何故なら、それは中に浮かび、頭部は猫の様な“耳”が付いているのだ

そして、体もベルトのバックルの様な物をしているだけである

身体の色自体も、薄紫色と言う取り敢えず、“人間”と言う概念を超越していた

それは只々じっと黙ってベッド脇に立っている

敵意を向けるも無く、庇護を求める事も無い

それは只々立っていた

エイラを見守る様に立っているのだ

だからと言って銃口を下げる程、エイラは優しくない

取り敢えず、ベッドから音も無く抜け出し、銃口を下さないまま部屋の隅に行く

その間も猫男(仮名)は立ち続けている

エイラは寝巻のまま廊下に出て、音も無く廊下を歩いて行く

猫男は彼女から大体2メートル程離れたぐらいで後を付け始めた

ネウロイでは無い

では、何者か?

暫く歩くと、基地の見張り台まで出た

見張り台には誰も居ない

それもそうだ

ネウロイは3日前に倒し、当分は来ないのだから

なので、見張り台には誰も居らず、当分はレーダーによる監視に頼るのだ

「何者ダ」

猫男は答えない

代わりにエイラを見る

喋りもしなければ、行動を起こそうともしない

「もしかしテ、喋れないのカ?」

彼女はふと思った事を口にした

すると、猫男はコクリと首を動かし、返事をした

「お前は私の敵カ?」

猫男は首を横に振る

「お前は何者ダ」

猫男はエイラを指さし、自分を指さした

「お前は私、と言う事カ?」

猫男はコクリと頷く

其処で漸く彼女は銃口を下げ、一歩だけ猫男に近付いた

ジッと猫男の顔を見詰め、恐る恐る手を伸ばす

そして、その肌に触れる

その瞬間、彼女の体に電撃が走った様に、次々に情報が流れ込んできた

「キラー・クイーン?」

そして、猫男の名前と思われる単語を口にする

猫男、キラークイーンはコクリと頷きそれを肯定した

それから彼女とキラークイーンは朝食だと彼女を探しに来た同僚が来るまでずっと話し込んでいた

正確に言えば、エイラの質問にキラークイーンが頷いたり首を振ったりするだけである

「如何したのエイラ?」

同僚、サーニャ・v・リトヴャク、正式にはアレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャクは彼女を見た

「如何もしてないゾ」

エイラはそれに対してニッコリ笑った返す

「今朝、何処に行っていたの?」

「少し早く起きたからその辺を散歩していたんダ」

「ふーん…」

サーニャは何処か不満そうに返事を返すとカウンターから朝食を取り、席に座る

彼女が何故不満そうにしているのかエイラには分からなかった

だが、彼女の不満を気にするよりも、背後に立つキラークイーンの方が心配でならなかった

一般人には見えない

ただし、スタンドと呼ばれるそのキラークイーンと同じ様な『能力』持つ、『能力者』には見えるのだ

今朝の朝食は“サーモンを焼いた物”に“ミソスープ”、“ライス”と“腐った大豆”である

と、言う事は今日、台所に立ったのは扶桑から来た宮藤芳佳である

「豆狸さん!!」

そして、例によってペリーヌ・クロステルマン、本名はピエレッテ=アンリエット・クロステルマンが騒ぎ出す

毎度のことながら、このガリア人は腐った大豆の食べ物、つまり、納豆が嫌いなのだ

勿論、彼女の言い分も分かる

臭いはキツイし、粘々しており、口の周りにべたついて酷い時にはその糸が髪にまで付くのだ

だからと言って、不味い訳では無い

“ライス”に掛けて食べるのが、扶桑では一般的らしいが、余り、“綺麗”とは言い難い

それに、ライスを盛っていた皿からナットウが盛ってある容器に移す時の糸が物凄くまどろっこしいのだ

エイラはそれが嫌いだった

巻き取っても巻き取っても途切れにくいそれは、彼女を心底苛立たせる

フォークで豆を突き刺そうにも、小さいし柔らかいので意味が無い

その為、フォークかスプーンの腹で掬い上げ、慎重に食べるのだ

上司である坂本美緒や宮藤芳佳は“ハシ”と呼ばれる二本の棒を器用に使う

一度、エイラもトライしてみたが、正直、こんなものを使うなら、素直にフォークを使う

“ネウロイ”と戦うよりも“厄介”な道具である

また、ハシ以上に厄介なのがこの“納豆”なのだ

その為、エイラは扶桑のこの“二つ”は好きに成れない

勿論それを口に出して言う事は無い

何故なら、彼女の望みは“自分とサーニャの平穏”なのだから

故にそれを口に出す事でその平穏を破る事はしない

「またミヤフジに突っかかってるヨ」

隣で自分と同じようにナットウに苦戦しているサーニャを見る

「うん」

サーニャは彼女を見る事無くフォーク片手に粘々と戦っている

エイラはふと周囲を見回した

その場に居る11人は各々が話をしたり、食事をしたりしている

すると、ムクムクと“悪戯心”が沸いて来た

キラー・クイーンの能力は触った物を“爆弾”に出来る

爆発の“範囲”や“威力”、そして、“種類”も有る程度選べるのだ

そして、悪戯の矛先は、未だ騒がしいペリーヌに向かった

彼女がフォークの刃に突き刺しているナットウの一粒を小さな爆弾に変化

種類は時限、爆発範囲はほぼ0

つまり、ポンと音がするだけの、クラッカーの様な物だ

「キラー・クイーン」

エイラはボソリと“スタンド”を呼び出す

彼女の体から抜け出たそれはペリーヌのナットウを触り、戻って来た

時間はペリーヌの説教がクライマックスに向かうその時間だ

「~♪」

エイラはナットウにショウユを垂らし、かき混ぜながら、ペリーヌが驚く顔を想像する

思わず鼻歌を歌ってしまう程に、滑稽な姿が見れるだろう

そして、待つこと数十秒

「大体あなたと言う人は!」

ペリーヌが一段と声を上げたその時、ボォンと小さな破裂音

周囲は一瞬呆気に取られた

ペリーヌが恐る恐る、自身のフォークを見ると、フォークの先が綺麗に無くなっているではないか

エイラは少し遣り過ぎたと後悔する

キラークイーンのせいではない

自身の過失だ

エイラは自身がほくそ笑んでいる事に気が付いて居ない

隣の同僚がそれを見ている事も知らない

こうして、エイラ・イルマタル・ユーティライネンとキラー・クイーンの生活は始まったのだ

エイラ・イルマタル・ユーティライネンの異変にいち早く気が付いたのはサーニャ・v・リトヴャクだ

サーニャとエイラの関係はこの501jfwが設立された時にまで遡る

当時、サーニャに当てられた飛行脚は御世辞にも“凄い”とは言えない物だった

ミール・ガスゥダールストヴァ設計局のmig60後期型だった

これは最高速は高い物の、機体強度や航続距離が低かった

その為、彼女の得意とする夜間哨戒で耐えうる改造を施した物だった

しかし、この改造、彼女の祖国がしてくれた物では無い

当初は自分でしていた物の、彼女自身、飛行脚に着いてはあまり詳しくない

その為、四苦八苦していた所を、エイラが横からやって来て、整備を手伝ってくれたのだ

それが、彼女とエイラの出会いである

それ以来、彼女はエイラと一緒に居る様になった

エイラは彼女にとって“特別な存在”だ

人によってはその“特別な存在”を“恋人”とか“思い人”と言う場合もある

しかし、14歳のサーニャにはそれが何だか分からないし、それを分かりたいと思う事も無い

ただ、“エイラ”と言う存在が“サーニャ”と一緒に入れる事を幸せに思うのだ

そして、そんな“エイラ”の様子が可笑しいのは今朝起きた時からだった

サーニャが目を覚ますと隣にはエイラは居らず、天板に隠してある筈の銃も無い

隠してあると言うと語弊があるが、言ってしまえば、物を挟めるようにゴムひもが通っており

そこに銃を差しこんでいるのだ

紐が緩くなってきて、時々、エイラや彼女の隣で寝ている自分にも落ちてくることが有った

そんな、不意のトラップに成る銃が無かったのだ

最初、ベッドに落ちて居る物と思い周囲を見たが、その形跡はない

エイラは居ないし、エイラの靴も無かった

しかし、服はある

つまり、エイラは“服”を着ずに、“銃だけ”持って何処かに行ったのだ

トイレかと思ったが、トイレに行くにしても銃を持って行く程物騒な場所でも無い

では、何処か?

彼女は途端に不安に襲われた

“大事な人”が突然居なくなったのだ

彼女には“両親”が行方不明である

その為、唯一肉親に近い存在である“エイラ”が居ないと成って只事では無いと思った

それは直感にも近い物だ

そして、基地内を散々探し回った後、見張り台に向かった

時刻は既に朝食が始まる10分前だ

見張り台に向かうと、エイラはその場に寝巻で座り込み右手に銃を持ち、誰かと話していたのだ

正確に言えば、独り言だが、独り言にしては“大きく”、それで居て、“会話の様”だった

エイラは独り言を言う性格では無い

確かに、時々、ブツブツと言っているが、それは、本当に時々で、しかも、小声で、何を言って居るのか分からない程だ

だが、今回は違う

距離が有って“ハッキリ”は聞こえない

だが、“聞こえない距離”では無い

耳をよく澄まして、声を聴く事にする

会話の内容を統合すると、エイラは何やら他の能力を手に入れたらしい

それは如何言う物かよく分からないが、取り敢えず、“凄い物”らしい

どう言う風に凄いのかとか、そう言う事は不明だ

そして、声を掛けた時、エイラは咄嗟にその事実を隠した

つまり、エイラにとってはその事実はサーニャにも知られたくないと言う事である

その後、朝食の時、ペリーヌのナットウが爆発すると言う事件起った

その瞬間、周囲は驚いた顔をしたし例外なくサーニャ自身も驚いた

しか、エイラだけは違った

“まるで知って居たかのように”ほくそ笑んで居たのだ

それはきっと、サーニャだから分かったのかもしれない

他の人から見ればそれが表情に乏しいエイラのほくそ笑みに気が付かなかったかもしれない

それ故に、サーニャは不審に思った

『エイラは何かを知って居るし、隠している』と

それから、サーニャはエイラを観察する事から始めた

物事を行動に移すにはまず必要な物がある

それは“情報”だ

“情報”は何をするにおいても非常に重要な事に成る

外に出かける際にも、外の“天気”やその日の自身の“体調”そして、行動をする為の資本となる“財布の中身”

全て、自分が行動に移す為の“情報”だ

今回は特にその“情報”が彼女の行動を左右する

サーニャはエイラの為に“行動”に出る

エイラは悩んでいた

サーニャが居るからだ

勿論、サーニャは何時も一緒に居る

サーニャに任務が無ければ四六時中一緒に居るし

エイラ自身も“一緒に居たい”と思う

だが、今の“サーニャ”あまりにも“異常”だ

何をするにも一緒に居たがる

エイラがトイレに行くにも、ちょっと喉が渇いたから台所に行くにも

“絶対に着いて来る”

そして、それは周囲の人間にも気付いた様で、サーニャと比較的仲の良い同僚は勿論

サーニャと余り交友が無い者までもそれに気が付き、噂をしていた

その噂は司法執行官として今朝の“不可解な爆発事件”を調査していた

第501統合戦闘航空団司令官である彼女は部隊唯一の“司法執行官”でもある

その為、軍規違反の可能性が有るこの事件を調べていたのだ

と、言っても、やる事は余りない

爆発した料理を調理した“食事当番”である“宮藤芳佳”への事情聴取

爆発した料理を持っていた“被害者”である“ペリーヌ・クロステルマン”への事情聴取

そして、周囲に座っていた者達への事情聴取である

実況見分もする訳だが、何分、爆発した“ナットウ”とそれを刺していた“フォーク”は

“柄”だけを残して綺麗サッパリ“消えて”しまったのだから

余り意味が無い

勿論、それをやらないと言う訳に行かないので形式的に済ませた

>>26 
『その噂は司法執行官として今朝の“不可解な爆発事件”を調査していた』
の後ろに
『ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの耳にも届いていた』
を入れておいてください

「今日は随分と仲がいいのね、あの二人」

「そうだな」

ミーナは助手として共に調査をしていた副司令官である坂本美緒と共に休憩がてら雑談をしていた

「と、言うよりもサーニャがエイラに付きまとっているようにも見えるがな」

ハハハと笑う美緒を尻目に必要以上に引っ付いて居るサーニャと“少し戸惑い気味”のエイラを見る

普段は、エイラがサーニャを“過保護の様に”世話しているのだが、今回は逆だ

サーニャがエイラに色々しているのだ

紅茶を飲むにも、サーニャが“砂糖”や“ミルク”を入れ、かき混ぜるし

クッキーを食べるにしても、口の“カス”をサーニャが拭いて居る

ハッキリ言って“異常”だ

キラークイーンって喋れるのな…
スタンドって人型だと喋れないんだとばかり思ってた…
やっちまったぜ…
まぁ、喋らないに近い無口だから良いか

『この女、何か感づいて居る、“危険”だ』

キラークイーンが初めて喋った事に、エイラは驚愕した

身長190オーバーのそれはエイラに向かってはっきりと忠告する

それは、事有る事にだ

サーニャが紅茶に砂糖やミルクを入れる時や、トイレで“用を足す”時も

そして、その都度、エイラは首を横に振る

キラークイーンがエイラを“守るため”に“危ない行動”にで無い様に

このキラークイーン、非常に危険な能力だ

一つだけ、どんな物でも爆弾に出来る

キラークイーンが触ったそれは爆弾に出来るのだ

それが何にで有れ爆弾に出来る

納豆に然り、きっと“ネウロイ”にも有効だろう

エイラには『未来予知』と言う能力が有る

それを使って、ネウロイに“接近”し、キラークイーンに“触り”、そして、“爆破”する

バカでも分かる“非常に簡単”な攻略方法だ

だが、その為にはキラークイーンの能力を見極めなければならない

しかし、そうするにはサーニャが“邪魔になる”のだ

エイラ自身、サーニャにキラークイーンを打ち明けようとも思った

だが、それによる“マイナス要因”を危惧したのだ

このキラークイーンがどうやって手に入ったのかよく分からない

ただ、このキラークイーンは昨日買った『石』のせいだと言う事は直感として理解していた

そして、この能力は間違いなく“良くない事”も引き起こす

サーニャを、エイラにとって“一番大事な存在”である“サーニャ”を巻き込む訳にはいかない

“サーニャ”の為にならエイラは“自分の命”を掛けても守る事が出来る

だからこそ、“サーニャ”をこの“訳の分からない”自体には巻き込めないのだ

しかし、サーニャは“それ”を知ろうとしている

『好奇心は猫をも殺す』と上手い事を言うが

エイラ自身“猫”を殺さない

いや、“殺させはしない”のだ

兎も角、今は、サーニャの好きにさせよう

「エイラ」

「何ダ、サーニャ?」

「何でも無いわ」

サーニャは時々エイラを注意深く観察する様に見詰める

その時は決まって、彼女が“何処か別の場所を見詰めている”時だ

勿論、そこにはなにも居ないし、誰も居ない

だが、エイラは其処に“まるで何かある様”に見るのだ

サーニャは超能力だとか魔術(突拍子もない様な不思議な力)は信じていない

だが、余りにも不可解な行動に、少し不安に成って来た

エイラは“何か訳の分からない物”に取りつかれているのではないのか?と

思う様にもなった

そして、昼食も終わり午後に成る

2人はテラスに居た

周囲には誰も居ない

のんびりとした麗らかな日差しの中をアドリア海に面したテラスで紅茶を飲む

至福な一時である事は先ず、間違いない

エイラが起こす“不可解な行動”を除けば

「エイラ」

「何ダ?」

「何か私に隠していない?」

「何モ」

「そう」

エイラは背中に今までに感じた以上の焦りから来る“冷や汗”を搔いて居た

想像以上に“手強い”相手だ

もし、これがサーニャでければ迷わず絡みついて居る腕を振り解き、部屋に怒って帰っていただろう

しかし、これはサーニャだ

そんな邪険に扱えない

エイラの今の現状は“浮気を妻に必死に隠す夫”だろう

そして、サーニャは“浮気をしているかもしれないが今一確証が無い妻”だ

紅茶の味が分からない

折角サーニャが淹れてくれた紅茶なのに

エイラはそう思いながらも紅茶を口に付ける

オラーシャはジャムと一緒に紅茶を飲む

しかし、一般的に“紅茶の中にジャムを落として飲む”と言う方法は殆どとられず

ジャムを掬ったスプーンを舐めつつ、紅茶を飲むと言う方式を取る

ジャムを中に落す方式はキエフやカールスラントのオラーシャ寄りの周辺が多い

現にサーニャはスプーンに掬ったジャムを舐めながら紅茶を飲んでいる

前にエイラもやったが、正直、“面倒臭い”飲み方で、直ぐに止めた

周囲を見回すとミーナと美緒が休憩をしているのか、コーヒーを飲んでいるのが目に入る

「中佐に少佐、何か分かったのカ?」

勿論、何も分かるはずがない

キラークイーンの言が正しければ、キラークイーン、つまりは“スタンド”は“スタンド使い”以外には見えないのだから

その為、この501の中でこの事件が分かる者は誰も居ないのだ

「残念ながら、何も分からないわ」

「納豆が爆発する何てあるのカ?」

「ある訳無いだろう」

エイラの問いにミーナは首を振り、美緒は苦笑する

当たり前だ、大豆が爆発して溜まった物か

エイラは内心笑っていた

だが、この悪戯は当分出来ない

此処まで騒ぎになるとは思わなかったのだ

隣に居るサーニャはエイラを疑いの眼差しで見ている

先ずはそれをどうにかしなければいけない

しかし、サーニャの視線や納豆爆発事件もすぐに忘れる事件が起こった

それは新型の飛行脚だ

ジェットストライカーとか言うらしい

エイラにとっては心底どうでも良かった

逆に言えば、有り難いの一言だろう

何せ、部隊の意識が全てそれに向かったのだから

それに伴い、サーニャの“監視”も解除された

その後キラークイーンの“研究”を続け

第2の能力である『シーハートアタック』を見付けた

これはキラークイーンの左手の拳に着いて居る爆弾だ

試しに空を飛ぶ鳥に使ってみたところ、最初は取りに飛んで行ったのだが、その次に太陽に向かって真っすぐ飛んで行った

>>39 シーハートアタック× シアーハットアタック〇

何度かやってみたところ、どうも、このシアーハートアタック

“熱源”に向かって飛んで行くようだ

そして、途中に、何かその“熱源”よりも“大きな熱源”を見付けるとそれに向かって飛んで行く習性が有る様だ

また、空中に浮くようで動きも早い

非常に頑丈な様で、自身が爆発しても壊れない、また、銃で撃っても壊れなかった

いや、壊れないと言うより、傷すらつかないと言った方が適当だ

キャタピラーが付いているが、ぶっちゃけ、空を飛ぶので意味が無い

狙った物は何処までも追い駆けて行く

しかも、喋る

“凄い”が“キモイ”それがシアーハートアタックである

また、キラークイーンの行動範囲は大体2メートルちょっとだが

“爆弾にした物体”の射程はほぼ無限だ

つまり、“弾丸”を“爆弾”して放てばそれは“ロケット弾”である

勿論、当たらなければ意味がないが、“当てる事が出来る”エイラならそれは最強の兵器に成る

mg42の装弾数は100発

そして、セミオート発射すれば装弾数100発のロケット弾に成る

勿論、弾丸1発しか爆弾に出来ない為に外れれば唯の無駄玉だ

そこで利用されるのが、エイラの固有魔法である“未来予知”である

囮で弾を撃ち、相手が避ける先に本命の“ロケット弾”を撃ちこんでやれば相手はそれに当たる

そして、“ロケット弾”の爆発だが

これは、最大限にデカくして撃つ事により、ネウロイを外殻ごとコアを消す戦法にすれば

正直、エイラただ一人でネウロイを相手に出来る

勿論、これは大型ネウロイのみの、しかも一機に対して有効な戦法だ

数で押してこられては対処できない

しかし、今までの経験から言えば、ネウロイが“分裂”する事はあっても

“複数機”で襲来する事は無かった

その為、その心配を考慮する事も無いだろう

勿論、この能力を“他人にばれないように”するのは骨が折れるだろう

しかし、戦闘中での出来事だ

誰も“構っては”居られないこと間違いない

「フフ、キラー・クイーンは最強だ!」

一人誰も居ない見張り台でエイラは体を鍛えていた

エイラは並のウィッチ並には体力は有る

しかし、キラークイーンを使うに当たり、やはり、“体は真面目に鍛えておいた方が良い”と思い直したのだ

キラークイーンのダメージは自身に直接入る

キラークイーンの腕が切れれば、彼女の腕も切られる

キラークイーンの足が折れれば、彼女の足も折れる

逆に考えれば、エイラ自身が丈夫に成れば、キラークイーンも丈夫に成る

そう、エイラは考えたのだ

しかし、突然運動を始めれば、他人、特に“サーニャ”に怪しまれる

その為、誰にも見つからない様に、殆ど人のいない、この見張り台で運動をしているのだ

また、キラークイーンが常に傍で助言をくれるお蔭で、エイラには“ゆとり”が生まれた

それ故に“ヘタレ”と馬鹿にされていたが、最近ではサーニャ相手に“慌てふためく事”が無いのだ

『あの“女”が上がって来ている』

キラークイーンがスッと現れ、エイラの耳元で囁く

勿論、彼女も自身の未来予知で“サーニャ”が上がって来た事が分かっていた

それ故に、逆立ち腕立て伏せを止め、手の埃を払っているのだ

早朝、エイラは常にこの場に居る

それ故に、サーニャもエイラが“隣に居ない時”はこの見張り台に迷わず来るのだ

「エイラ」

「サーニャカ…」

エイラは階段から上がって来たサーニャを笑みを浮かべて迎える

ああ、今日もサーニャは可愛いな、と心の中で思いながら、自然とそのショートカットの髪に手が伸びた

「おはよウ、サーニャ」

「お、おはよう、エイラ…」

サーニャはエイラの突然の行動に思わず頬を赤く染める

ここ最近のエイラはまるで“別人”だ

やることなす事全てが“ジゴロ”に成っている

以前は同じベッドで寝るとカチコリに固まって居た

それはもう“真冬のオラーシャの土地”の様に固まっていた

しかし、今は如何だ?

サーニャが夜間哨戒から帰って来れば、それを起きて出迎え

共に同じベッドで寝ようと申し出れば、快諾してくれる

以前のエイラに有った“ぎこちなさ”と言う物が存在しないのだ

それどころか、過剰なまでなスキンシップまでして来る様になった

この髪へのタッチもそうだ

朝起きれば、サーニャの額にキスをする

頬に“お弁当”を付ければそれを直接食べてしまうのだ

サーニャとしてはそれは“嬉しい変化”でもあったが

同時に、“不可解な変化”でも有ったのだ

毎朝、必ず、何処で、具体的に言えば“見張り台”で何か、つまりは“何か汗を流す様な事”をしているし

サーニャが来ればそれは“まるで無かったかのように”振る舞うのだ

「今日もまた“散歩”なの?」

「あア、そうだヨ」

エイラはニッコリ笑って答える

「そんなに“汗を搔くほど”の?」

「“駄目”カ?」

「素直に答えて」

サーニャは笑みを浮かべているエイラに少しイラ付きを覚えながら言う

低血圧のせいだろう、自分でも驚くほどに低く、“唸るような”声だった

「何を“そんな”に不機嫌なんダ?」

エイラは驚いた様子も無く、サーニャの問いを逸らそうとする

「まダ、寝足りないんじゃないのカ?」

再び、エイラが手を伸ばす

しかし、サーニャはそれを払う

「エイラ、“貴女”は、“私”に、何を“隠している”の!?」

「サーニャ、“私”ハ、“サーニャ”ニ、何も“隠していない”ヨ」

『嘘』である

サーニャはこれ程までに“悲しい気持ち”になった事はなった

“エイラ”と“サーニャ”の関係は“お互いに隠し事をしないし、するつもりも無い”関係である

サーニャはそう信じて来たからだ

だから、それ故に、サーニャは思わず口走ってしまった

「エイラのバカ!」

また、こう続けてしまった

「エイラなんて“嫌い”」

そして、トドメと言わんばかりに口を開く

「“大嫌い”」

「……」

その時、初めてエイラが笑顔を崩した

その顔はまるで“サーニャにプレゼントするために買った品物”を誰かに“壊された”かの様な憤怒の混じった“無表情”だ

「……」

サーニャは思わずその場から去った

サーニャには絶対に向ける事の無い“その顔”を正に今、向けて来たのだから

『クソッタレが!!』

エイラは思わずそう叫び、脇の石の手すりを殴り付けた

勿論、キラークイーンが咄嗟に出て、その手すりを殴り砕いたので、エイラの手には傷は無い

『何でこうなるんだよ!!』

それでもエイラの“怒り”は収まらない

エイラの怒りは3つある

一つ『サーニャを巻き込まない為に行動しているのに、向こうから“態々首を突っ込んでくる”こと』

二つ『サーニャに対して“絶対に向けてはいけない顔”を向けてしまった事』

三つ『全てをひっくるめて“自分が無能”な事』

思わずスオムス語で叫ぶ

『何でこうなった!』

キラークイーンが手すりを壊す

キラークイーンが脇の柱を抉る

エイラはキラークイーンを使って丸々10分、暴れた

勿論、それによるのちの被害調査や原因究明などは一切頭に入って居ない

今までに出来た余裕が一切なくなってしまったからだ

そして、漸く、気分が落ち着き、我に返る

「……糞」

小さく呟くと、散らばった瓦礫を全てキラークイーンの『あらゆる物を爆弾に変える能力』で消していく

この爆弾の利点は“破片”が残らないと言う事だろう

その為、爆発した物が何なのかも分からなければ、どうして爆発したのかもわからない

調査のしようが無いのだ

その為、『元々こうだったんじゃないのか?』と錯覚させるためにも破片を壊すのだ

幸いにも、この見張り台はボロボロであまり人の手入れも無い

だから、手すりが欠けていたり、柱が抉れていても中々気が付かれない

事後処理をして、下に降りる

途中、芳佳と出会った

「あ、エイラさん、朝食ですよ」

「後で取るかラ、先に食べててくレ」

エイラはそう言うと真っ直ぐある場所に向かった

ヒントを言えばスオムス人であるエイラが一番好きな場所である

其処さえあれば、正直、後は“他に何もいらない”と思えるぐらいに“素晴らしい場所”だ

途中部屋により、着替えを手に取り、そのまま脱衣所に

服を脇の籠に放り込むとそのまま、その足で“サウナ”に入る

ムワッとした熱気がエイラの体に纏わり付く

そのまま椅子に座り、眼を閉じた

「キラー・クイーン」

そもそもの根源たる原因のキラー・クイーンを呼び出す

猫の様なシルエットのそれはエイラの前に現れた

『私は如何すればいいんだ?』

『私は如何もしない』

キラークイーンは問いに答える

『私は“傍に立つ (stand by me)”だけだ』

そして、続けた

エイラはそれを聞き思わずニヤケてしまった

『それは、アンタが私の味方って事か?』

『そうだ』

簡潔無比な答えだった

『なら、どうしたらいいか教えてくれよぉ~』

エイラはキラー・クイーンを見る

『……』

しかし、キラークイーンは答えない

『“あの女”は“お前”の“敵”か?』

暫くの後にキラークイーンが尋ねた

『馬鹿言うな!』

エイラは声を荒げる

『サーニャは私の…』

『私の、“大事な”、“大切な”人だ!』

エイラはキラークイーンを睨みつける

『それが答えだ』

キラークイーンはそう言うと、突然、扉を開く

「きゃ!?」

扉に耳を立てていたらしい一人の少女が中に転がり込んできた

「さ、サーニャ!?」

「え、エイラ……」

2人の間に沈黙が流れる

「えっと、その、さっきは御免なさい」

そして、その沈黙に耐えかねたサーニャが口を開いた

「私ハ、サーニャに言わなくちゃいけない事が3つあル」

エイラは指を4本立てた

「一ツ、サーニャに“嘘を吐いて”済まなかっタ」

指を一本折る

「二ツ、サーニャに“隠し事をして”済まなかっタ」

更に指を一本折る

「三ツ、サーニャに“酷い事をして”済まなかっタ」

そして、最後の指を折る

「四ツ、サーニャ“心の底から”『愛して』居ル」

「え?」

突然の告白にサーニャは固まってしまった

「サーニャには見えないだろうけド、此処にはもう一人いル」

そして、エイラは続ける

「名前は『キラー・クイーン』」

隣のキラークイーンを見遣る

「能力は『ありとあらゆるモノを爆弾に変える』能力」

エイラは全く状況の着いて行けないサーニャにさらに言う

「そして『史上最強のスタンド』ダ」

「え?」

サーニャは再びエイラを見る

「私の望む事は唯一ツ」

「サーニャと私が平穏に暮らせる事ダ」

エイラはそう言うとサーニャを抱き寄せた

「サーニャは私の事を“愛してくれる”カ?」

サーニャは思わず口を開いた

「私はエイラに“愛されたい”しそれ以上に“愛したい”」

答えると、エイラはサーニャに口づけをした

それはまるで銃弾を浴びたかのように強烈な物だった

サーニャの頭の中には“銃声”が轟いた程だ

『これでサーニャは“私”の物だ』

エイラはとろんとした目付きで見つめているサーニャを抱き寄せ、母国語で囁いた

終着点が見えない‥‥

取り敢えず、寝る

お早う御座います
>>56 言わなくちゃいけない事は4つです 3つじゃねぇ

劇場版きょう公開だっけ
bd出たら買おう

pspで白銀の翼出るからそれは絶対に買わないとね

それからエイラはサウナの中でサーニャに『キラー・クイーン』の事を事細かに教えた

最初は半信半疑だったものの、池の岩を一つ“消して”見せたら、サーニャは信じた様だ

「でも、どうして“その能力”を手に入れられたの?」

サーニャはエイラの膝の上に座りながら聞いた

頭をエイラに預け、体を預けている

「……ある石ヲ、触ったんダ」

エイラはそんなサーニャの耳元に囁き掛ける

それは“母親”が“赤ん坊”に話しかけるかの様だった

「石?」

「そウ、石だヨ」

エイラはサーニャをそっと抱きしめる

「その石を触れば、私もキラー・クイーンが見れるの?」

「触らせなイ」

サーニャの問いに答えたその声は明確な“拒絶”が含まれて居た

「え?」

「私は“サーニャ”を“危ない目”に会わせたくないんダ」

顔は相変わらずの笑みである

「でも、それはエイラも危ないんじゃ…」

「“多分”ネ」

エイラはニッコリ笑ってつづける

「でモ、“私”が傷つくならそれは“良イ”」

「でモ、“サーニャ”が傷つくならそれは“駄目”ダ」

「そんな!」

「“私”は“サーニャ”を“守ル”」

「“サーニャ”は“私”に“守られル”」

「それは“決定事項”ダ」

顔はにこやかに笑い、“何時もの”エイラだ

サーニャに“優しい”エイラだった

サーニャはそこで“no”とは言わなかった

いや、“言えなかった”と言った方が良い、適切だ

エイラの“笑み”には“拒否権”は一切ないと言わんばかりの笑みだった

『サーニャを守る』と言う意思は凄まじく固いものだ

それは非常に嬉しい事である

だがしかし、それは『サーニャの意志』を大きく"踏みにじる"結果になる

「エイラは、私の事"嫌い"なの?」

サーニャは問う

「"まさカ!"バカな事を言うなよサーニャ」

エイラは愉快そうに笑う

「なら、エイラはどうして私の"嫌な事"をするの?」

「ハ?」

サーニャの問いにエイラは分からないと言う顔で答える

「それハ、"どう言う"意味ダ?」

「"そう言う"意味よ、エイラ」

サーニャはそっとエイラにキスをする

「私は"エイラ"を"守りたい"」

エイラは久しぶりに焦っていた

サーニャは"心"の強い女である

それ故に"下手な"嘘は通じない

「……分かっタ」

エイラは苦渋の決断をしたような声を出す

「石を触らせル」

「!」

サーニャの目が見開いた

「だガ、それは石がサーニャを選んだらナ」

「どういう事?」

サーニャは怪訝そうな顔でエイラを見る

「石は人を選ブ」

嘘だ

「石がサーニャを選んだラ、触っても良イ」

真赤な嘘っぱちだ

今、エイラがそれを考えた

内心笑っている

"石"が"意志"を持っている訳が"無い"と

サーニャには"悪い"が"絶対に触らせない"と

"サーニャ"は"エイラ"の"後ろ"が『ポジション』なのだ

「なら、もうそろそろ"出よう"よ」

エイラは首を巡らす

残念ながらサウナに時計は無い

『入室から20分だ』

キラークイーンがどうして知って居るのか知らないが、時間を知って居た

「そうだナ、そろそろ"出よウ"」

立ち上がり、サーニャを抱き寄せ、池に向かう

"汗"を流す為だ

エイラは"サーニャ"に水を掛け、体を汲まなく流す

サーニャは"エイラ"に水を掛け、体を汲まなく流す

そして、脱衣所に戻る

服を着替え、そのまま部屋に向かう

途中で3人の同僚と出会った

一人はペリーヌ・クロステルマン

一人は宮藤芳佳

一人はリネット・ビショップ

「あ、エイラさんとサーニャちゃん」

開口一番、芳佳は言う

「ご飯、残しておきましたからね?」

芳佳は『自分達でよそって食べてくださいね』と、言うとこれから『訓練』が有る去って行った

「"朝食"と"石"はどっちが良イ?」

エイラは尋ねた

「"石"」

サーニャは答える

「分かっタ」

その"石"を見た時、サーニャは思った

『ああ、コイツは、唯の"石"じゃないな』



勿論、"普通の石"だったら"こんな事態"には成らなかっただろう

形で言えば、それは"勾玉"の様な感じだ

色は"真っ黒"

そして、"禍々しい"感じである

エイラはそれを机の上に置いた

サーニャはそれに"手"を伸ばす見えない"何か"に"腕"を掴まれた

「触っちャ、駄目ダ」

次の瞬間だった

石が"動いた"のだ!

「!?」

「バカ、ナ!!」

2人揃って驚いた

石はそのままサーニャの手に"飛び込む"

思わずサーニャはそれを握り込んだ

「!?!」

そして、次の瞬間、サーニャは目を見張った

「キラー…クイーン……!?」

そう、目の前にはキラー・クイーンが居たから

サーニャの腕を掴む彼?は一見"可愛い"と言えるシルエットをしていた

猫耳を持っているのだ

「サーニャ…"見える"のカ?」

「う、うん、"見える"よ……」

エイラは目を見張った

"サーニャ"を守れなかった

"サーニャ"を未知の世界に引きずり込んでしまった

エイラは"後悔"した

「エイラ、私の"キラー・クイーン"?」

サーニャは足元に何か見つけたらしい

それを拾い上げると、『猫』だった

いや、よく見ると、それは違う

確かに、"猫"なのだが、"草"で出来た猫だった

「ストレイ…キャット……」

「何だっテ?」

エイラは尋ね返す

「ストレイ・キャットよ、エイラ」

「ストレイ・キャット?」

「そうよ、エイラ」

「この子の"名前"」

サーニャはエイラに"ストレイ・キャット"を差出す

「猫…猫草だナ」

エイラはそれを受け取ると、体の周囲を触り始める

「能力は、"空気を操る能力"」

サーニャは直感で感じた事を答える

「ストレイ・キャット…」

エイラは考えていた

空気を操る事で何に成る?

それは"強い"のか?

それは"使える"のか?

「ストレイ・キャットで何かできるカ?」

エイラはストレイ・キャットをサーニャに返す

「分からないわ」

サーニャはストレイ・キャットの"喉"を弄りながら答えた

「でも、きっと、エイラを守ってくれるわ」

そして、サーニャはニッコリ笑う

「ストレイ・キャット、エイラを守って」

「それが、私の命令よ」

サーニャは言うと、ストレイ・キャットをエイラに差出した

「如何しよウ?」

エイラはそれを受け取った物の、どうする事も"出来ない"

『腹に入れろ』

其処で口を開いたのは、キラー・クイーンだ

「しゃ、喋った…」

サーニャは突然喋ったキラークイーンに心底驚いた様だった

「腹に入るのカ?」

エイラが苦笑しながらキラークイーンを見た

キラークイーンは腹の蛇腹を開ける

エイラは其処に"猫草"を入れた

「さぁ、"朝ごはん"を食べに行きましょう」

「あア」

この時、エイラは知らない

"石"の存在を

"石"は机の上に"置いて"あった

しかし、今は"無い"事を

そう、2人が部屋を出ると同じく、"石"も部屋を"出た"事を

そして、それを"誰か"が拾って居る事も

そして、それが"闘争"をもたらす事も

エイラ・イルマタル・ユーティライネンは静かに暮らしたい編完

  /└────────┬┐
 <     to be continued... | |
  \┌────────┴┘


ゲルトルート・バルクホルンは自身が軍人である以上軍隊の規律や規則には従うべきだと考えている

それは、人として当然であり、それは、組織として当然であるとも考える

だから、同僚のエーリカ・ハルトマンにはそれをキツく言う

しかし、それを強要しないし、押し付けようとも思わない

"無理強い"は結局の所、意味を成さないからだ

今朝も同僚であり、同居人であるエーリカに"苦言"を言った

勿論、向こうは聞く耳を持っていない

そして、そんな事が数日続いたある日、"トゥルーデ"は"黒い石"を拾った

"それ"は何か"ペンダント"の様な形をしている

紐は付いて居なかった

『誰かの落とし物』と判断する

"ペンダント"をポケットに押し込み、自室に戻る

『ジークフリート戦線』

そう名付けられた同居人と自分の部屋を区切った"赤い線"

片方は"ゴミ"で埋められ、片方は"ゴミ"も無い

「起きろ、ハルトマン」

そして、その"ゴミ溜め"に足を踏み入れる

朝食にすら出向かなかった"それ"を起こしに来たのだ

「あと10分…」

「もう10分経った」

「ならあと1時間…」

「ふざけた事を言うなよ、ハルトマン!」

"ゴミ"を踏み越え、"ゴミ"を蹴散らし、"ゴミ"を除けながら

『同僚』の元に立つ

「朝食を食べてないのは、"お前"と"エイラ"と"サーニャ"だけだ」

バルクホルンの一言に、惰眠をむさぼっていた同僚は飛び起きた

「エイラとサーニャンが?」

「ああ、"そうだ"」

トゥルーデは溜息を吐き、言う

そして、ポケットから先程の"石"を取り出す

「一応、"聞いておく"」

「ん?」

「"これ"はお前のか?」

トゥルーデは石を取り出し、エーリカに渡す

「なにコレ?」

エーリカはそれを繁々と見詰め、投げて返す

「さぁ?」

エーリカ・ハルトマンはウルトラエースである

しかし、自身はそれを鼻に掛けたり、威張り散らしたりしない

周囲もきっと、言われない限りは気が付かないだろう

"悪戯なお転婆娘"で、"空気"が読むのが非常に"巧い"

しかし、実生活では"ずぼら"で"無頓着"だ

現に今も、ズボンを穿かずに朝食を食べようとして、怒られた

うだうだと食堂に向かうと、エイラとサーニャが朝食を食べている

「おは…よ……」

そして、食堂入口で足が止まった

「何、それ?」

そして、2人の後ろに立つ『ネコミミ男』を見付けた

「キラー・クイーン!!」

次の瞬間、その"ネコミミ男"はエーリカに殴り掛かる

『ザ・ハンド!!!』

だが、"ネコミミ男"の攻撃はエーリカ自身から飛び出て来た"変な男"に止められる

「エーリカ・ハルトマンッッ!!」

次の瞬間には、エイラがテーブルを"踏み越え"、飛び出て来た

「貴様ハァ!!」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!」

状況に追い付けないエーリカは"何故"エイラが激昂しているのか"不明"だった

「エイラ!」

そこで異変に気が付いたサーニャが叫ぶ

「ひぃっ!?」

エーリカは頭を押さえ、"ネコミミ男"の攻撃を避けていた

いや、正確に言えば、"ザ・ハンド"がその攻撃を受け流していたのだが

そして、攻撃はピタリと"止む"

「な、"何なの"さぁ~」

恐る恐る、エイラの方を見る

エイラは"例の無表情"で立っていた

「ハルトマンさん、大丈夫?」

エイラの後ろに立っていたサーニャが尋ねた

「質問に答えロ」

エイラは言う

「"そのスタンド"は"何処"で手に入れタ」

エイラは一切笑わない

自分より前に出ようとするサーニャを、まるで"守る"かの様に立っている

「わ、"分からない"よ…」

正直、今にも"小便"を"チビり"そう

それが、エーリカの"思考"だ

自分の後ろに佇む"変な奴"や、エイラの前に立つ"ネコミミ男"も訳が分からない

『理解不能』

正に、それだった

男「雑草の上には、適当に腐りかけの野菜などをいれます」

男「そこに少し焦がしたトマトを入れると効果的です」

男「これらにドレッシングをかけてサラダは出来上がり!」

男「デザートが難しいですね」

寝る

見てる人はかなり少ないだろうが、他の人のスタンド募集
一応決まってる人とスタンド

エイラ→キラー・クイーン
サーニャ→ストレイ・キャット
エーリカ→ザ・ハンド
トゥルーデ→『悪い中隊』
芳佳→『危ない金剛石』
リーネ→『鼠』

"出来れば"第4部内に留めて欲しいです

「"分からなイ"だト?」

エイラはエーリカの前にしゃがむ

「そんな訳ないだろうガ!!」

「え、エイラ!!」

サーニャが"激昂"するエイラを抑える

「ハルトマンさん、これぐらいの、"黒い石"とか触らなかった?」

サーニャが指でcの字を作る

その"大きさ"は先程トゥルーデがエーリカに見せた"アクセサリー"に似ている

「さ、触った」

「私の"部屋"に入ったのカ?」

エイラは静かに聞いた

サーニャがエイラを押さえているのだ

"サーニャ"は"エイラ"に"庇われている"と思っていた

しかし、それは違う

"エイラ"は"サーニャ"が居なければ、エーリカを一瞬で"殺して"いただろう

「ち、違う!」

エーリカは誓って答えた

どの戦場よりも生きた心地がしない

「とぅ、トゥルーデが"持っていた"のを見せて貰った時に…」

「私のキラー・クイーンは触った物を"爆弾"に変える能力があル」

キラークイーンがスッと寄って来て、脇に転がるスプーン拾って見せた

「これはもう"爆弾"ダ」

そして、次の瞬間、キラークイーンは右手を握り込む

ボゥオンとスプーンが小さく破裂して"消えた"

次の瞬間、キラー・クイーンはエーリカを"触った"

「!?!」

「中尉、"アンタ"はもう"爆弾"ダ」

「う、嘘はついて居ないよ!!」

エーリカは泣きながら答えた

嘘じゃない、それは神に誓っても良い

「エイラ、ハルトマンさんは嘘を吐いてないみたいだよ?」

背後に立っていたサーニャがエイラの袖を引っ張っる

「ん、んン~?」

エイラはサーニャとエーリカを交互に見遣り、思考した

「じゃア、"こう"しよウ」

「中尉ガ、"大尉"から"石"を取り返してくル」

エイラはサーニャを抱き寄せ言った

「"バカ"でも分かル、"単純明快"なお遣いだロ?」

そして、ニタリと笑う

「そ、そう、だね…」

エーリカはそれに合わせてニタリと笑う

「じゃ、じゃあ、"行って来る"よ」

「"変な"気を起こすト…」

キラークイーンが右手の親指を握り込もうとした

「わ、分かってる!」

エーリカはそれを見て顔を真っ青にし、駆け出した

何て"糞みてーな"朝だ

そう、エーリカは思った

背後にはキラー・クイーンが居る

"下痢っ腹"を抱えて"トイレ"に走っている気分に

"買ったばかりの白いスニーカー"で"出来たてほやほやの犬の糞"を踏んだ気分を

足した気分の方がまだ"マシ"だろう

「トゥルーデ~……」

この"最悪"な気分の原因である人物を探す

多分、トゥルーデなら、『執務室』に居るだろう

「ん、ああ、ハルトマンか」

「如何した?」

案の定、書類を抱えたトゥルーデが居た

「さっきの石だけど」

「ああ、あれか」

「あれ、"ユーティライネン中尉"のだった」

「……ユーティライネン中尉の?」

エーリカは目の前の"シスコン堅物"が異変に気が付いて欲しいと祈った

「それか、"リトヴャク中尉"のかも」

「リトヴャク中尉?」

「分かった、今、ミーナに"渡してしまった"んだ」

『クソッタレ』エーリカは心の中で舌打ちした

「私が、後で"直々"に返して置く」

「わ、分かった」

取り敢えず、"事態は好転した"と内心ホッとする

そのまま、踵を返して、エイラ達が待つ食堂に向かった

トゥルーデは考えていた

事態は急を要する、と

「この、小人達はエイラのせいだったのか?」

自分の陰に隠れていた小人、いや、『バッド・カンパニー』を見遣る

『偵察に行ってきます大尉殿!』

大量に居るその小人達の一人が前に出て敬礼する

名前は"グリーン・ベレー"だ

その名の通り、"緑色"の"ベレー帽"を被っている

「ああ、頼む」

全員、"ブランデンブルク"の腕章をしており

stg-44やパンターv、fa223を装備していた

fa223には固定式のロケット弾が装備されており、現実のそれとは違っている

全員、"規律正しく"整列し、行動するため、トゥルーデは最高に素敵だと思っている

“軍隊”と言えば“バッド・カンパニー”と言っても良い位に素晴らしい

詳細は“不明”だが

『エイラ』と『サーニャ』が関わっている事はエーリカの報告で分かった

そして、中核には『あの例の石』が関係していると言うのは“間違いない”だろう

まぁ、何にせよ、あの“石”を回収しないけない事は確かだ

そして、この“バッド・カンパニー”は“石”を触った事から発動した

つまり、石=バッドカンパニーと言う事だ

「ミーナも持っている訳か…」

面倒臭い、と言っても良いだろう

能力を持ってからわかる事

この能力は“指揮能力”が高ければ高い程“厄介”だ

「だが、ミーナだから、“助かった”」

トゥルーデはそのまま『ミーナの執務室』へ向かった

ミーナも『何らかの能力』を発現させている“筈”だ

「ミーナ」

「トゥルーデ!」

「早く来て頂戴!」

トゥルーデは中に入ると、素早く扉の鍵を掛ける

外を見る様に、ミーナは座っていた

「ああ、ミーナ」

「ええ、トゥルーデ」

「「“スタンド使い”ね」」

ミーナはくるりとトゥルーデに向き直る

「バッド・カンパニーだ」

「原因は、あの“石”」

トゥルーデはその場で“休め”の体勢のまま続ける

「ハルトマンも『スタンド使い』に成った」

「フラウも!?」

「ああ、そうだ」

「何てこと……」

「所で、ミーナ」

「何かしら?」

「ミーナも“バッド・カンパニー”を?」

トゥルーデが尋ねるとミーナは首を振った。

「私は“ハーベスト”よ」

トゥルーデは内心ホッとした

ミーナの様な指揮官が“バッド・カンパニー”を持てば、“勝ち目”は無い

「それで、“石”は?」

「そうね、そう、“その事”なのよ」

ミーナは頭を抱えて言う

妙に“歯切れ”が悪い

「持って“行って”しまったの」

「誰が?」

「“美緒”よ」

「“少佐”だな?」

トゥルーデは駆け出していた

これ以上“騒ぎ”を大きくする訳にはいかない

止めるなら“ここ”だと

「大尉、“何処へ”行く気ダ?」

廊下に出ると、“エイラ”が居た

後ろには『エーリカ』が“サーニャ”に連れられて立っている

「エイラ…」

トゥルーデは咄嗟に身構えた

此奴は“敵”だ

直感がそう“言って”居る

「嫌だなァ~大尉」

「“勘違い”しんで下さいヨォ」

エイラは笑みを浮かべながら一歩前に出た

「私ハ、“私の物”ヲ、“返して”欲しいだけでス」

「そうか」

「残念ながら、今、少佐が持っているらしい」

「少佐ガ?」

エイラは首を傾げた

「あ、ああ…」

トゥルーデは構えを解かない

いや、“解けない”と言った方が良いだろう

エイラからは尋常ならぬ“殺気”を感じる

手をポケットに突っ込み、ニコニコと笑っている

が、“凄まじい殺気”だ

効果音を付けるなら『ドドドド』と言った所が適当だろう

「少佐ハ、何処に居るんだろウ?」

エイラはくるりと振り返ってサーニャとエーリカを見た

「少佐の部屋に行ってみれば分かるんじゃない?」

サーニャはエーリカの肩に手を回している

エイラの能力は分からない

だが、“能力者”、だと言うのは確実だろう

しかし、どんな能力を持っているのかは“不明”だ

「エイラ、お前も“見える”のか?」

「……大尉に一つだけ言って置ク」

エイラは振り返り指を指した

「私の“キラー・クイーン”は最強ダ」

エイラの陰から“ネコミミ男”、つまり、『キラー・クイーン』が現れたのだ

「私ハ、“静かに暮したい”だけなんダ」

「争い事は“嫌い”なんだヨ」

エイラはサーニャに“キス”をすると、エーリカを解放した

「私とサーニャハ、少佐に会いに行くかラ」

エイラとサーニャはそう言うと去って行った

「とぅ、トゥルーデ!!」

解放されたエーリカは二人が見えなくなるとトゥルーデに抱き着いた

「だ、大丈夫だったか、ハルトマン?」

「うん」

エーリカは漸く生きた心地がした

先程までエイラに“爆弾”にされていたのだから

勿論、自分が“爆弾”にされていたと言う感覚は無い

ただ、“見えない”と言う恐怖は非常に有効だ

エイラは自分を“爆弾”にしていないかもしれないし

エイラは自分を“爆弾”にしたかもしれない

史上最悪な能力だ

「私の能力は“削り取る”能力だよ、トゥルーデ」

エーリカはトゥルーデの胸の中で“告白”した

トゥルーデは“意味”を考える

「“削り取る”とはどういう事だ?」

「“そのまま”だよ」

エーリカはザ・ハンドを呼ぶ

そして、近くに有った花瓶に向けて手を振った

次の瞬間、花瓶はザ・ハンドの目の前に現れる

「“空間”を削り取ったんだよ」

「“空間”を?」

トゥルーデは耳を疑った

お休み

おはよう

今更ながら、ミーナの能力はエニグマの方が良いと思った

まぁ、良いか

「何でも“削り取れる”のか?」

トゥルーデは取り敢えず、ミーナの執務室にエーリカを入れ、ミーナと共に話を聞いて居た

「うん、“何でも”削り取れるみたい」

エーリカはコーヒーを飲みつつ頷いた

『ザ・ハンド!』

そして、ミーナの書類をザ・ハンドの右手がなぞった

すると、書類の署名欄に書いてあったミーナの名前が削り取れる

「さ、サインが消えたわ…」

「紙にも異常はない…」

「うん、“文字”だけを削り取ったからね」

エーリカは答えた

「それで、削り取った文字は“何処”に有るの?」

「それは、私にも“分からない”」

エーリカは答える

実際、削り取った物がどうなるのか、全く予想が付かないのだ

ただ、上手く使えば、エイラの言う“キラー・クイーン”よりも強いかもしれない

しかし、“エイラ”自身が何を“考えているのか”が分からない

トゥルーデも、ミーナもエイラを“敵”だとは認めたくない

向こうも“警告”以上の事はしていない

実害はないし、エイラ自身“静かに暮らしたい”と言い、それ以上の事はしていない

兎も角、3人は美緒の元に向かうことした

ゴミ山に住もう編完
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 <     to be continued... | |
  \┌────────┴┘


坂本美緒は鈍感である

それは、周知の事だが、本人は気が付いて居ない

いや、気が付いて居なければ『鈍感』とは言わないだろう

そして、そんな“鈍感”でもこの“異変”には気が付かない訳なかった

「s.h.i.t、敵です」

「て、敵?」

そして、“混乱”していた

「“敵”とはずいぶんじゃないですカ、少佐」

美緒とその前に立つ“ちっこい変な奴”から大体10メートルほど離れた場所にエイラが立っていた

その後ろには“サーニャ”が居り、サーニャを守る様に“ネコミミ男”が立っている

「エイラ、その“変な奴”とこの“変な奴”は何だ?」

『失敬ですね、私は“エコーズact3”です』

“ちっこい変な奴”はくるりと振り向答える

「え、エコーズact3?」

美緒はオウム返しする様に尋ねた

>>117 「s.h.i.t、敵です」× 『s.h.i.t、敵デス』〇
エコーズはエイラ以上にs.h.i.tな喋り方しやがる…

『yes、ソウデス』

エコーズはポーズを決めながら答える

『ソレデ、ドウシマス?』

「ま、待て、よく分からんが、“待て”」

美緒はエコーズを止めると、エイラを見る

「サーニャと一緒に居る奴は“何”だ?」

そして、背負っている烈風丸の柄に手を掛けた

「私の“スタンド”ですヨ、少佐」

エイラは不敵に笑う

「“史上最強”の『キラー・クイーン』!」

「能力は“触った物を『爆弾』にする”能力!!!」

エイラは言うと一歩前に出る

「私ハ、戦う気はないでス、少佐」

「たダ、“石”を返して欲しいだけでス」

エイラはcの字を作り、これぐらいのと付け足した

「あ、ああ、それなら“ミーナ”から受け取ったな」

「えエ、その“筈”でス」

エイラはさらに一歩前に出る

距離は大体10mだ

「あれなら“宮藤達”に渡した」

「“ミヤフジ”ですネ?」

エイラは確認すると、スッと下がり、サーニャの元に行く

何時ものエイラとは“雰囲気”が違う

「美緒!」

そこにミーナとトゥルーデ、そして、エーリカがやって来た。

「む、如何した?」

「貴女それは!?」

「ミーナ達にも此奴が見えるのか…」

美緒は理解した"あの石"は"変なの"を見える様にした

『エコーズact3デス』

「喋った…」

『スタンドガ、喋ラナイトキマッテイルトデモ?』

「い、意外に口が悪いな…」

トゥルーデはボソリと呟く

『大尉殿、報告が有ります』

「む、グリーン・ベレーか」

トゥルーデは足元で気を付けをしているグリーンベレーを拾い上げる

『目標は、ヨシカ・ミヤフジ及びリネット・ビショップ、ペリーヌ・クロステルマンと接触』

「そ、そうか!」

『現在、"戦闘中"です』

その場に居る全員に衝撃が走った

「どういう事だ!!」

『はい、ヨシカ・ミヤフジが"石"の受け渡しを拒否した模様です』

その場に居た全員に戦慄が走った

特に、その能力を"体験"しているエーリカは既に駆け出している

それに続いて、美緒、ミーナ、トゥルーデが走る

「場所は!」

『此処から数百メートル先の海岸です』

美緒は加速する

宮藤よ、『無事で』居てくれと願いながら

「エコーズ!」

『何デスカ?』

「お前の"力"は?」

『3freeze、殴ッタ相手ヲ重クシマス』

エコーズact3は答える

「シュトルム!!」

突然、エーリカが加速した

見ると、自身の固有魔法である『疾風』の能力を使い、加速したのだ

「ハルトマン!」

「糞、急ぐぞ!!」

「分かってるわ!」

三人も走る

しかし、エーリカとの間はどんどん広がるばかりだ

遂には姿が見えなくなった

「糞…」

「拳銃は持っているわよね?」

そこでミーナが口を開いた

「拳銃って…」

「仮にも仲間だぞ!」

トゥルーデと美緒は驚いた様にミーナを見た

「『仲間』だからよ!」

「『仲間』が道を間違えたらそれを正してあげるのが『仲間』って物よ!」

ミーナは言うと腰から"拳銃"を抜く

弾倉を確認し、スライドを引っ張った

「ック…」

トゥルーデも同じ様に腰から拳銃を引き抜き弾倉を確認、スライドを引っ張る

「……」

美緒も下唇を噛み締め、背中の烈風丸を腰に下げる

そして、全員が目を伏せたまま走り出す

出来る事なら"此奴"を使いたくない、と思いながら

美緒たちが到着するとそこには8人と"7体"のスタンドが居た

「坂本さん!」

そして、"エイラ"と対峙していた"芳佳"が叫ぶ

芳佳の背後にはやはり"スタンド"が立っている

「"何だってンだ"ヨォォ……」

エイラは薄笑いを顔に張り付け、立っている

口の端には血が垂れており、明らかに"殴られた"跡である

「エイラ! もう止めるんだ!!」

堪らず美緒が叫ぶ

「私ハ、戦うつもりは無イ!!」

「でモ、『ミヤフジ達』には有るんだヨ!」

エイラは左手をまっすぐ横に伸ばし、叫ぶ

「『シアー・ハート・アタック』!!!」

すると、彼女の背後に居るキラー・クイーンが左手を伸ばした

「何か来るっ!?」

ミーナが叫ぶ

『コッチヲミロォォォ』

ガリガリガリと物凄い勢いで地面を進む"何か"が有った

「バッド・カンパニー!!!」

咄嗟にトゥルーデが叫ぶ

周囲に居たバッド・カンパニーは全員、"それ"に向かって銃撃を加えた

『コッチヲミロォォォォ』

しかし、濛々と土煙が立つ中"それ"は走って居た

「バカな!!」

「壊れないのか!?」

「『シアー・ハート・アタック』は止まらなイッッ!!」

「目標を『爆殺』するまでは何が有っても"止まらなイ"!!」

エイラは"高笑い"をする

周囲の者は『ギョッと』した

エイラは"気を違えた"誰もがそう『思った』し、"思いたかった"

 第501jfwの人々編完

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 <     to be continued... | |
  \┌────────┴┘


サーニャ・v・リトヴァクには『夢』が有る

何時の日か、『エイラ』と共に自分の"両親"をさがすのだ

その為には何としてもこの"ヤバい"状況を抜け出なければならない

やはり、『エイラ』は"チョロい"

サーニャがちょっと唆すと、その通りに行動してくれる

最初は確かに"驚いた"

『スタンド』と言う『ネウロイ』とはまた違う摩訶不思議な生き物

特にエイラの『キラー・クイーン』は本当に"強い"

触れば爆弾に出来るのだ

しかも、エイラには『未来予知』と言う固有魔法もある

つまり、『攻撃』すれば一撃死、『攻撃』されれば避けられる

攻防共に最強なのだ

きっと、戦争が終わればまた色々と"メンドクサイ"事が起る

第二次世界戦争が始まる前

つまり、ほんの5,6年前まで、帝政カールスラントとリベリオン、ブリタニアの仲は非常に悪かった

また、オラーシャも扶桑と険悪な状況に成っていた

しかし、『ネウロイ』と言う存在が世界中の"ギスギス"した雰囲気を一転させたのだ

人間同士で殺し合いをする『暇』を無くしたのはネウロイと言う存在なのだ

その"圧倒的武力"を前にカールスラントを支配し、ガリアを制圧、結果として

『世界』を一つにしたのだ

そして、その"共通の敵"を失うと次に待っているの"お互いが敵"と言う状況だ

サーニャの見立てでは、壊滅したカールスラントを復興する為に、各国が軍を"貸す"だろう

だが、復興が終われば、そこは"占領地"に成るはずだ

そうなると、お互いにまた戦争が始まる

人が人を殺し合う真の『第二次世界大戦』が始まることは間違いない

そんな事が起れば、『サーニャ』と『エイラ』は離れ離れに成ってしまう

しかも、下手をすると『サーニャ』と『エイラ』で殺し合いをする事になるかもしれない

だからこそ、『今』、"エイラ"に『サーニャ』と言う存在を『掛け替えの無いモノ』としておかねばならない

そして、世界がそう発展してもエイラが『サーニャに独断で会いに行ける力』を持って貰わなくてはいけないのだ

その為には、ここで『他の能力者』を倒さねばならないのだ

『キラー・クイーン』=『他のスタンド』では無く

『キラー・クイーン』>『他のスタンド』で無いといけないのだ

その為には、ここで何としても『他の能力者』を倒すのだ

「エイラ、耳を貸して」

「何ダ、サーニャ?」

エイラはサーニャを抱き寄せた

エイラの『キラー・クイーン』の最大の障害となるのは

芳佳の『クレイジー・ダイヤモンド』だ

殆どのステータスはキラークイーンより上か同等だ

そして、厄介なのは『対象を直す(治す)能力だ』

先程、エイラのラティを"ぶっ壊した"様に、非常に厄介なのだ

「あのね、取り敢えず、『芳佳ちゃん』は後回しにして」

「隣の"リーネさん"か"ペリーヌさん"を先に『片付けた方が良い』よ」

サーニャはエイラの手に『トカレフ』を握らせる

そして、"秘策"を耳打ちした

「ミヤフジ、お前は私の邪魔ばかりすル」

「エイラさん!! お願いだから正気に戻って!!」

「サーニャちゃんもエイラさんが可笑しいのに気が付いて居るでしょう!?」

芳佳はトカレフの銃口を向けられても臆する事無く叫ぶ

いざと成れば、あれも潰せばいいし、弾丸程度なら弾き落とせる

リーネやペリーヌが狙われたとしても、自分が弾き落とせばいいのだから

「芳佳ちゃん、私はエイラが好きなの」

「私はエイラの物なの」

「エイラの意志は私の意志なの」

「芳佳ちゃん、"石"を返して?」

サーニャは芳佳を見る

「それは出来ない!」

「この"石"のせいでエイラさんが可笑しくなったのならなおさらだよ!」

芳佳は"石"を取り出す

「そう、ならもう良いわ」

サーニャは小さく溜息を吐いた

「シバッ!!」

エイラはペリーヌに向けて弾丸を一発放つ

それとほぼ同時に、クレイジーダイヤモンドがそれを弾き落とす

「きゃあぁあぁ!?!?」

しかし、リーネが"弾き飛んだ"

「な、何ぃぃ!?!」

「"何故"リーネさんが爆発にッ!?!?」

芳佳とペリーヌは瀕死のリーネを見る

「怯えろォッ! 竦めェッ! スタンドの能力を活かせぬママ、死んでゆけェッ!!」

エイラは叫ぶと前に出踏み出た

「ッくぅぅ!?」

ペリーヌが前に出る

『レッド・ホット・チリ・ペッパー!!』

ペリーヌの髪が逆立ち、そこから放出された電撃乗ったチリ・ペッパーがキラークイーンに襲い掛かる

「シバッ!!」

しかし、キラークイーンは一瞬早く右手の親指でコインを弾き出す

「ちぃぃ!!」

ペリーヌはそれを飛んで避ける

「唯のコインだヨォォ!!」

飛んで避けた事により、チリ・ペッパーへの送電力が低下し、キラー・クイーン以下の力になった

其処を突いたキラー・クイーンはチリ・ペッパーを殴り付けた

「きゃあっ!?」

スタンドの受けたダメージは能力者に『反映』する

そして、そのダメージが大きければ大きい程"重傷"を負うのだ

ペリーヌは吹き飛ばされた

「おぉット」

瞬間、エイラが後ろに飛び退く

直後、さっきまでエイラが居た場所に弾丸が着弾した

芳佳に直されたリーネの能力『ラット』の弾丸だ

「やっぱり、"当たらないっ"!!」

リーネは悔しそうにボーイズライフルに憑依したラットを構え直す

ちなみに、ミーナと美緒とバルクホルンにエーリカはシアー・ハート・アタックと"戦闘"して居たりする

「私はヨォォ…」

「何も"難しい"事は言ってねーんだヨ…」

「もう一回だけ言うゾ」

「『石』を返セ」

エイラは芳佳を見据えた

「"イヤ"です」

「エイラさんが何故この『石』に固執するかは分かりません」

芳佳は石を取り出す

「ですが、この『石』のせいでこんな事になっているなら」

クレイジーダイヤモンドが芳佳の『石』を受け取り、グッと握り『壊した』

「!?!?」

「ミヤフジィイィィッッ!!!」

それを見たエイラは激昂し、前に出る

「エイラ!!」

サーニャが咄嗟にエイラの袖を掴む

『畜生』

エイラはそう叫ぶとサーニャを守る様に庇う

次の瞬間、エイラの背中が溶けた

「エイラ!?」

「グゥアアァァァ!??!」

「溶けてる!?」

「え、エイラ!?」

「あ、当たった…」

サーニャが見ると、リーネがボーイズガンを構えていた

そう、エイラはサーニャをリーネのスタンドから守るために、態々背中で受けたのだ

そして、下半身は"完全"に溶けており、まるで"ストーブの上のバター"も同じだ

骨も肉も皮もグチャグチャに混ざって最早、『手が付けられない』状態に成っている

『大丈夫か、サーニャ?』

息も絶え絶えのエイラは顔面蒼白のサーニャを抱き寄せる

意識が朦朧としているのか、スオムス語である

『ほら、サーニャ』

エイラはサーニャの手を握る

『サー…ニャ……』

そして、その手はサーニャの手から滑り落ちた

エイラは『意識』を失った

それは傍から見れば、まるで『死んだ』かの様にも見える

特に"気が動転している"サーニャにとってはそれは『死んだ』としか見えない

同時に、『キラー・クイーン』も意識の喪失に合わせて『消滅』した

それによって、『シアー・ハート・アタック』も消え、追いかけられていた4人は漸く解放されたのだ


宮藤芳佳の冒険篇完
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 <     to be continued... | |
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「ウ、うぅン……」

エイラが目を覚ます

何だか『嫌な夢』を見ていた様な"気がする"

自身に変な"能力"が付き、それで部隊の仲間と戦う話だ

サーニャを守るために、変な『石』を巡って、芳佳達と

周囲を見回すと自分の部屋だ

『キラー…クイーン……』

そして、夢の中で叫んだそれを呼ぶ

『……』

そして、ベッドからヌッと『ネコミミの男』が現れた

「!?!?」

「ウワアァアアアアァァア!?!?」

エイラはベッドから飛び降り、そのまま部屋を出る

「あ、エイラだ」

「ちゅ、中尉!!」

エイラは自分の部屋の前で腕を組んで立っていたエーリカを見付けた

「た、大変なんダ!!」

「どったのさ?」

「き、キラー・クイーンがいタ!!」

エイラはエーリカに抱き着きながらガタガタ震える

まるで"生まれたばかりの小鹿"の様にガクガク足を震わせ

へなへなと倒れる

「キラー・クイーン?」

エーリカが首を傾げる

まるで"それがどうした"と言う感じに

「そ、そうだヨ!」

「当たり前じゃん」

エーリカが何言ってんの?と言う顔でエイラを見た

『ザ・ハンド!!』

エーリカは自身のスタンドを出現させた

「私のは『ザ・ハンド』だよ」

「!?!」

"再び"、エイラは気絶してしまった

「何をしているんだ、ハルトマン」

そこにエーリカの『ゴミ山』の掃除を手伝っていたトゥルーデが現れた

「あ、トゥルーデ」

「いや、エイラが起きて来たんだけど、私のザ・ハンドを見て気絶しちゃって」

「成程、『今までの出来事は夢』として処理したからな」

トゥルーデはフムと考える

遡る事数時間前

「え、エイラが…エイラが……」

サーニャはエイラの上半身を抱き締めて泣き縋った

エイラが『大切な人』が死んでしまったと思ったからだ

『クレイジー・ダイヤモンド!』

しかし、次の瞬間、芳佳がエイラを『クレイジー・ダイヤモンド』で触る

すると、瞬時に、下半身は"元通り"に直った

「サーニャ、悪いが拘束させてもらうぞ」

そして、戻って来た美緒とトゥルーデにエイラとサーニャは拘束された

「終ったかー?」

そして、事態が消息したと思われた所に、ルッキーニを抱えたシャーリーが現れる

彼女達もまた『スタンド』を所有している

「何処に行っていたリベリオン!」

「いや~エイラ超強そうだったからちょっと下がって作戦をね?」

ハハハと笑うシャーリーはスタンドを出す

「私のスタンドは『ハイウェイ・スター』」

「私は『ヘブンズ・ドアー』!!」

ルッキーニがニシシシと笑う

「で、ルッキーニの能力で、エイラに今後、こういう行動を起こさないよう『書き込んで』貰えばいいんだよ」

シャーリーがさも当然が如く言う

「どういう事?」

「ルッキーニのヘブンズ・ドアーの能力は相手を『本』にする能力が有る」

「だから、ルッキーニに『この事件は夢、こんな恐ろしい事は起こさない様に思う』って書き込んでもらえばいいんだよ」

シャーリーは気絶しているエイラを指さして言う

「ミーナ、成程」

「本来なら、これだけの騒ぎを起こしたら、営倉行きです」

「しかし、スタンドは我々以外に"見えない"ので、罰するにもそれは出来ません」

ミーナはフーッと"溜息"を吐く

「取り敢えず、エイラさんとサーニャさんは1週間の食事当番とその他雑務をする事」

ミーナは意気消沈しているサーニャを見る

「エイラは…エイラは、生きているんですか?」

「当たり前でしょう」

脇で溜息をついてるペリーヌが答えた

「宮藤さんの能力は死んでいる人は生き返らせません」

「そして、死んでいるなら、元には戻らないでしょう」

ペリーヌがホラと『脈』を取って見せる

「じゃ、書き込むぜ~」

シャーリーがルッキーニに言う

ルッキーニがエイラを触ると、エイラの顔が本のページを捲るかのように"捲れた"

「うわぁ……」

「余り、気味の良い物ではありませんわね…」

「うじゅ~……」

ルッキーニは余り"綺麗"とは言えない字で余白に文字を書いて行く

「ルッキーニは字が汚いな、明日からは習字を教えてやろう」

それを覗き込んでいた美緒が笑いながら言う

「出来た!」

「よし、では、エイラが目を覚ましたらみんな、夢だと言う振りをするんだぞ」

美緒は振り返り全員を見る

「サーニャ、お前だぞ」

「…はい」

サーニャは力なく頷くとエイラにそっと寄り添う

「御免ね、エイラ」

そして、サーニャはそっと気を失っているエイラに頭を撫でた

これが事の"顛末"だ

「取り敢えず、次起きた時に気絶しない様に、誰かを付けて置かないとな」

「なら、サーニャンで良いじゃん」

エーリカは部屋の中の大量のごみを"削り取り"ながら言う

「バカ、ザ・ハンドは精度が良くないんだぞ!?」

それを見たトゥルーデが慌てて止めるも、時はすでに遅し

ゴミと一緒に床も"削れ"ていた

「まったく、後で埋めて置けよ」

トゥルーデは呆れながら首を振る

「私はエイラを部屋に連れて行く」

トゥルーデは言うとエイラを担ぎ、エイラとサーニャの部屋に行く

部屋に戻ると、顔面蒼白のサーニャが立っていた

「サーニャ、如何したんだ?」

「エイラが…」

「エイラな此処だ」

トゥルーデは肩に担いだエイラを見遣る

「エイラ!!」

サーニャは咄嗟に駆け寄り、エイラを抱き締める

勿論、サーニャとエイラの"体格差"でサーニャはエイラを抱く事は敵わない

「サーニャ、エイラが起きたら、スタンドの事を話すんだ」

「分かってます」

「勿論、午前中の事は"予定通り"隠すんだ」

「分かってます」

「じゃあ、私はハルトマンのゴミ掃除をしなければならないから」

「う、ウゥ……」

暫くして、エイラが目を覚ます

「エイラ!!」

サーニャはエイラに飛び付く

エイラは周囲を見回し、ホッと胸を撫でおろす

「変な夢を見たんダ」

「そう、でもそれは夢じゃないわよ」

「エ?」

「エイラがこの前買って来た『石』からスタンドが出たのよね?」

サーニャは今朝、エイラがキラー・クイーンの能力に気が付き、面白半分で能力を試し

そして、『爆発』が起こって、壁に叩きつけられて『気を失った』と説明した

「そ、そうだったのカ…」

エイラは自分の手を見詰め直し安心した様に笑う

「何だカ、いろんな人に"迷惑"を掛けたんだナ」

エイラは恥ずかしそうに笑うと時計を見る

「もう昼だナ」

「そうね、お昼食べに行く?」

「あア」

部屋を出る際に、エイラはそっと呟く

「キラー・クイーン?」

 501の守護精霊編完



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