早川健「鷲巣麻雀……?」 (43)

鷲巣邸前

「……着いたぞ。降りろ。」

幸雄「うっ……。」

幸雄「……お、俺が勝てば、本当に借金をゼロにして、あんたらから解放させてくれるんだな……?」

「当然だ……!お前が浦部との対局以来、代打ちとして負けに負けた末の借金およそ100万(現在の1000万)っ……!」

「これから勝負するこの『鷲巣巌』……!鷲巣巌に勝利し……お前の負け分をとりもどせっ……!」

「さすればお前にはもう一切この組は関わらんっ……!再び代打ちとして打つか自由の身になるかあとは好きにしろっ……!」

幸雄「くっ……やるさ、やってやるっ……!」

幸雄(アカギに関節的敗北を喫して以来……俺の麻雀の感性が大きく狂ってしまった……!)

幸雄(ツキにも見放されたか代打ちとしての実戦も敗北に敗北を重ね……組に多大な借金を背負わせてしまったっ……!)

幸雄(組からは信頼を失い……さらに借金を返す為に体を売れという要望すら飲まざるを得なくなった……!)

幸雄(その時突然この話が入ってきて……上手すぎる話に裏は当然あるだろうが……もう退路なんてねぇっ……!乗らなきゃどの道殺されるっ……!)

幸雄(今日打つのは実質的この日本の帝王……鷲巣巌……!)

幸雄(ここで勝てばっ……!借金はチャラどころか……!もうこの裏社会から足を洗えるっ……!)

仰木「鷲巣様、本日の相手です……」

鷲巣「ご苦労であった……」

仰木「では、私はこれにて、失礼……」

鷲巣「鷲巣麻雀へようこそ……君が今日の相手の平山幸雄君かね……若いな……ハハッ……!」



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街中


早川健(数日前、ちょいと耳に挟んだ「連続失踪事件」……)

早川健(行方不明者の全てがこの街の山奥で死体として発見され、しかもその死体は目立った外傷が無く死因も不明……)

早川健(そして何よりも奇妙なのが、そんな大事件がメディアに全くと言っていい程取り上げられないことだ……)

早川健(現に東条もこの事件については何も知らなかった。何者かがこの街の外へ事件を明らかにされないよう架索しているのだろう。)

早川健(きっとこの街のどこかにこの事件の犯人が隠れているに違いない。)



早川健「まずは情報収集……警察に事件について聞きたい所だが、犯人がこの街に潜んでいるなら当然この街の警察にも何かしら圧力はかけているだろう。」

早川健「自分の足で調査するしかないな。」

数時間後、喫茶店

治(あれからどれくらいになるだろうなぁ……)

治(アカギさんが取り分ってくれたお金で喫茶店開いて、俺はなんとかなってるけど……)

治(あの人大丈夫かな……あいつから勝ったお金もどうせ2、3日でまたパーにしちゃうだろうし……)

カランカラン……

治「あ、いらっしゃいませーっ」

早川健「コーヒー。一つ。」

早川健「山奥の死体遺棄されたらしい所を探ってみたが、何も手がかり掴めず、か……」

早川健「連続失踪事件……こいつは少しばかり厄介な事件になりそうだぜ……」

治「はい、どうぞ」カチャ

早川健「どうも。」

早川健「……」ズズズ

治「……。」

早川健「……どうかしましたか?」

治「い、いや今連続失踪事件って言いましたよね……?」

治「最近、俺もその話聞いたんですけど、誰に話しても『嘘だ』とか『都市伝説だろ』とか言われて……」

早川健「いや……続けて。」

治「はい……」

治「……死体に外傷がない、って話、知ってますかね……?それなんですけど、どうやら死体は体じゅうの血液をありったけ抜かれてるらしいです」

治「それで、一部じゃ吸血鬼の仕業か!なんて言われてましてね……それで、あそこ見てください。」

早川健「……!あんな所に建物があったとはな……」

治「気づかないのも無理ないですよ、古びた建物、それに山の奥にあるんですからね……」

治「……まぁ、丁度この喫茶店からは見える位置にあるんですけど……」

早川健「……まるで吸血鬼の館みたいだな。」

治「そう!そうですっ……!あそこに住んでいる吸血鬼が犯人だ!って……」

治「……でもここまで話しておいて申し訳ないですけど、人から聞いた話だし半分こじつけみたいな物だからアテにしない方が良いですよ……」

早川健「いや、十分だよ。ありがとう。これ、代金ね。」スッ

治「!?い、行っちゃった……って、コーヒー殆ど飲んでないし……」









幸雄(ここだっ……ここだけ……ここだけ凌げば……俺にも勝機がっ……!)

幸雄(鷲巣がここでツモを引き当てる確率は数十分の一以下っ……出来るわけがないっ……!)

鷲巣「カカカッ……キキキッ……クククッ……いやはや、残念だよ、君との勝負もここで終わりだな……!」

幸雄「ばかなっ……まさかっ……!?」

鷲巣「……ツモッ!」ジャラララ

幸雄「あ……ああああああっ!?」

幸雄「やめろっ……死にたくないっ……死にたくないっ……!!」

早川健「……どうも、近くに来ると血なまぐさい匂いが漂ってくるな」

早川健「こんな薄気味悪い館に住んでいるとしたら本当に吸血鬼かもしれんぞ……」

コンコン

早川健「もう廃墟になっちまってると考える方が自然だが……一応あたってみるか……」







白服「鷲巣様……来客です……」


鷲巣「何……?そんなもんに構っている暇はないわっ!追い返せ!」



ガチャッ

早川健「ほぉ、人が住んでいたか。昼間に外に出ても大丈夫なあたり、吸血鬼じゃあなさそうだな」

白服「なんだお前は。さっさと帰れ」

早川健「そういう訳にゃあ行きませんぜ。ちょいと耳とお口を貸して欲しいんだが」

白服「知らん。帰れ。」


シニタクナーイ……シニタクナーイ


早川健「! 今、奥の部屋から何か叫び声が聞こえませんでしたかね?確認しに上がらせて貰うぜ。」

白服「ふざけるな。痛い目見たくなかったら……」

早川健「トイヤッ!」

ドッ!

白服「ぐぅっ!?」ガクッ

……鷲巣邸内



幸雄「誰だ。あんた……」

早川健(これは……麻雀卓?)

早川健「君、しっかりしなさい!」

早川健(体が冷たい……血が通っていないような冷たさだ!)

鷲巣「誰じゃっ……いきなりわしの家に土足で踏み込みおって……」

鷲巣「さっさとつまみ出せっ……!」

鷲巣「いや……この現場を見られたからには生かしてはおけんっ……!」

早川健「……ほう、あんた、こんな所で会えるとはな。あんたが連続失踪事件の犯人か」

早川健「随分とまた悪趣味な事に手を染めてらっしゃる。本物の吸血鬼かと勘違いしちまうぜ」

鷲巣「なんじゃ!」

早川健「鷲巣巌。戦後、共生コンサルタントを設立。持ち前の先見性でありとあらゆる権力をたちまち我が物にした……」

早川健「そして、何よりの最大の武器……豪運の持ち主!そう!」

早川健「日本じゃぁ、二番目の豪運の持ち主だ。」

鷲巣「二番目じゃとぉ!?じゃあ一番は誰だと言うんじゃ!」



早川健「ヒュゥ。チッチッチ……」

スッ

早川健「フフフ、ハハハハ!!!」



鷲巣「な、なんじゃとぉぉぉ〜〜〜〜〜!?」

白服「鷲巣様、落ち着いて下さい!こんな奴相手にしている必要はありません!」

早川健「おぉっと、逃げるんだったら俺はこの青年を連れて帰るぜ。」

早川健「あばよ。」

鷲巣「ぐっ……ふ、ふふ、そこまで言うなら勝負してやろう……」

鷲巣「だがわしはそこのガキの命をついさっき勝ち得たっ……貴様はそれをわしから取り返すと言う事になる……」

鷲巣「わしからそのガキの命を奪い返すには……貴様にも命を賭けて貰おうっ……!」

早川健「良いだろう。だがチンタラ麻雀をやってる暇なんてないぜ。ここは一発豪運対決ってのはどうだ。」

鷲巣「貴様、わしよりも豪運の腕は上といったな……?ならば……」

鷲巣「おい、牌を全て穴へ戻せ!」

白服「はいっ……」


ジャラジャラジャラ……

鷲巣(早川とか言ったな……貴様の口ぶりからするに貴様はわしの事をよく知っているようだ……)

鷲巣(恐らくわしの麻雀の実力を恐れて……運勝負っ……!)

鷲巣(運勝負であるならば……引き分け……もしくは勝ちに引ける可能性が高いと踏んだのだろう……)

鷲巣(カカカ……じゃがわしの豪運の実力については節穴の目のようだな……!)

鷲巣(わしの豪運は貴様のくだらん予想など届かない程の豪運じゃ……)

鷲巣(ククク……初めてじゃよ……わし相手にここまで大口を叩いた若造は……)

鷲巣(一体、この若造はどんな顔をして死んで行くのだろうか……楽しみじゃぁ〜〜〜キキキキ!!)

鷲巣(死ねっ……そこのガキごと死ねっ……!)


鷲巣「フンッ……!」

ザッ ダァアアアアアンッ!


白服「す、すごいっ……鷲巣様……あの牌の山の中からっ……」

幸雄「い……イーピンを一発で引き当てたっ……!?」

幸雄「これが鷲巣巌の真の実力だってのか……!?」

鷲巣「ガハハハハハハ!クハハハハハハハハハ!」

鷲巣「どうよっ……早川くん……どうよっ……どうじゃっ……!」

鷲巣「いひっ……いひっ……いやぁ〜〜〜〜〜死んじゃうなぁ〜〜〜〜早川くん、ここで君は死んじゃうんじゃよぉ……!」

鷲巣「どうよっ……?敗北を目の前にして勝負を挑む気持ちは……」

鷲巣「せいぜいワシと引き分けになれるよう祈って牌を引くが良いっ……!」


早川健「じゃあ、あんたの言う通り勝てるように祈って引くことにしますよ」

ゴソゴソゴソ……

早川健「っ……!トイヤァッ!」

タンッ!タンッタンッ!


鷲巣「減らず口を垂れおって……!?」



白服「ばっ……バカな……こんなバカな事っ……!?」



幸雄「す……すごいっ……有り得るのか、こんな事っ……」

幸雄「これはもう豪運なんてもんじゃ無い……もう……」

幸雄「勝つという運命を無理やりっ……自分の元に引き寄せているみたいだっ……!」

幸雄「ブラックホールっ……!運命を引き寄せるブラックホールっ……!」



幸雄「わ……鷲巣と同じイーピンを……三枚もっ……!!!」



鷲巣「ヒッ……有り得んっ……このワシが敗北するなど許されないっ……有り得んっ……ぐうううううううっ!!!」

早川健「見ての通り、祈ったとおりの俺の勝ちさ。約束通りさせて貰うぜ。」





病院

幸雄「……ん……?」

幸雄「何処だ……ここ……」

早川健「気づいたか。」

幸雄(輸血……?)

早川健「あの館から出てくる途中、君が意識を失ってね。」

早川健「ここに運び込んだって訳さ。」

早川健「なぁに、体から少しばかり血液が抜かれていただけだよ。もう大丈夫だ」

幸雄「は、はぁ……ありがとうございます……」

早川健(血が抜かれていた……か。)

早川健(あの時幸雄君の腕には注射針が刺さっていたな……)

早川健(注射針で体じゅうの血を抜けば……外傷がほぼ無い形での殺人は可能……)

早川健「しかし連続失踪事件の犯人がまさか、一国を復興させ、日本の救世主とも呼ばれた鷲巣巌だったとはな……」

早川健「己の死への恐怖によって狂いでもしたか……?」

早川健「あ……幸雄君、ところで君はなんであんな所にいたんだ?」

幸雄「それが……」

早川健「麻雀の代打ち、ねぇ……」

幸雄「はい……赤木しげる、って男、聞いた事ありませんか……?」

早川健「少しだけならな。だが、どんな男かは詳しくは知らない。」

幸雄「俺を雇ってる組が、どうしてもその男を代打ちとして引き込みたいと考えまして」

幸雄「でも、本物は何処にもいない……」

幸雄「だから、赤木しげるっていう男と姿が似ている俺を組は代打ちとして引き抜いた……」

幸雄「俺は幸いにも記憶術に長けていた……大抵の相手には計算づくで勝つ事が出来た……」

幸雄「……本物の赤木しげるを見るまでは」

早川健「君は赤木しげるって男の偽物を演じていたという事か」

幸雄「俺は本物の赤木しげるには到底及ばない……それを思い知ったあの日から……」

幸雄「俺は負けに負け続け……」

幸雄「組に多大な借金を背負わせた……その尻拭いとしてあの鷲巣巌と……」

早川健(なるほど。つまり幸雄くんは借金のための生贄という訳か)

早川健(幸雄君を捧げれば借金は帰ってくる……組としてのメリットはよくわかるが……)

早川健(鷲巣は何故……?そんな事をしても自分に帰って来る物が無い……『殺しを出来る』以外は……)

早川健(鷲巣巌……どうやらあんた、目も当てられない程狂っちまったらしいな……)

早川健「あぁ。把握したよ。」

早川健「なんにせよ、あの鷲巣巌をやっつけなければ君みたいに生贄になる人も増えていく一方だ」

早川健「もう君は二度と奴らとは関わらない方が良い。鷲巣さえなんとかすれば良いんだ。俺に任せてくれ」

早川健「そしたら、君は……君らしい道を見つけて歩き出せば良い。」

早川健(今すぐにでもやっつけたい所だが……この辺りの警察ではダメだ。)

早川健(恐らく金の圧力に屈している。東条に連絡をしなくてはならない。)

早川健「悪い、暫く席を外すよ。」

鷲巣邸

鷲巣巌「ぐぅっ……何じゃあの男はっ……!」

鷲巣巌「くそったれが……おかげであのガキを殺しそこねたわっ……!」

組員「申し訳ございません……鷲巣様……」

白服「まずいです、もしこのまま世間にこの事件を公表されでもしたらいくら鷲巣様でも……」

鷲巣巌「ワシは許されるはずなんじゃっ……若者(クズ)ならいくら殺しても……」

鷲巣巌「わしはこの日本の言わば帝王っ……!その帝王が……」

鷲巣巌「この王がっ……!あってはならん……一度手にした獲物をリリースっ……逃すなどっ……!」

鷲巣巌「もう一度探し出せっ……!あの男毎引っ張り上げろっ……!」

病室

幸雄「うぐっ……」

幸雄「ダメだ……まだ少しフラフラするな……」

幸雄「だが……立てるくらいには……」


コンコン

幸雄「誰だっ……?」

ナース「平山幸雄……さんですよね。面会をご希望の方が……」

幸雄「はい、誰だ……?」

組員「……久しぶりだな、平山。」

組員2「こんな所で隠れて呑気に暮らしていられると思ったか。」

幸雄「お前っ……!?」

ドッ

組員2「……さっさと連れて行くぞ」





ナース「……!?人さらいよっ!」

「!えっ!?」

「ホントか!?」

「捕まえろっ!」


組員「チッ……」

組員2「騒がれたって構いやしねぇよ!追いつかれる前に車に押し込めっ!」


街中、公衆電話

早川健「あぁ……そうか。すぐ来られるようで何よりだ」

早川健「あまり横から手出すなって……?」

早川健「すまないが、今は横から手を出さずにはいられない状況なんだ……」

早川健「頼むぞ……」

ガチャンッ

早川健「……東条への連絡はついた。」

早川健「本当なら幸雄君を雇ったっていう組もやっつけたいが……今は情報が少なすぎるっ……」

早川健「今は鷲巣を倒す事が先決……!?」


ドルルルルンッ!


早川健「あの車っ……!今横切った車、中に幸雄君が……!」

早川健「待てっ……!あの方角は……間違いなく鷲巣邸っ……!」

早川健「……ズバッカー!」

ゴゥウウウウン……

鷲巣邸


コンコン……

鷲巣「来たか……待っておったぞ……扉を開けろ……」

白服「はい……」

ギィィィィ……

早川健「……また会ったな。鷲巣巌。」

鷲巣「キッ……!?」

鷲巣「カカカッ……これはこれは」

鷲巣「いいや、人違いではあるが、むしろ嬉しいよ……」

鷲巣「丁度君も探していた所だ……」

早川健「……鷲巣さんよ、どうしてあんた、そこまで狂っちまったんだ……?」

鷲巣「なんじゃと……ふざけるなっ……!」

鷲巣「ワシは狂ってなどいないっ……わしは許される事をただしているのみだっ……」

鷲巣「わしがいなければ今の日本は存在するか……?」

鷲巣「わしは許される……若造の命を弄んでも許されるっ……!」

早川健「例え誰であろうが他人の命を弄んで良い訳がなんてないぜ」

早川健「それに鷲巣!俺はあんたから幸雄君の命を勝ち取ったんだ!」

鷲巣「ぐぅっ……若造が……ワシに歯向かうだと……」

鷲巣「バカがっ……許さぬっ……そんな事は許さぬっ……!」

鷲巣「貴様のような何も持たぬ若造がぁ〜〜〜〜〜っ!!!」

鷲巣「かかれっ……!」

白服「はっ……!」

白服2「……」

白服3「……」

早川健「っ……トイヤッ!」

白服2「ぐぁっ……」ドタァン……

鷲巣「キキキ……まぁ早川くん……そう足掻いても……無駄な事だ……」

鷲巣「懐かしいのぉ〜その体の強さ……昔の自分を見ているようじゃ……」

鷲巣「そう……ありとあらゆる権力を手にしたあの時の自分をな……」

鷲巣「その昔……老化を促進させる薬を飲んだ事があってな……」

鷲巣「その後もその薬を実に気に入ってのぉ……製薬会社にこの薬を解析させ……こんな物を作らせたのじゃ……」スッ

早川健「っ!?そのビンは何だっ!」

鷲巣「ククク……」ゴクッ……ゴクッ……


フシュウウウウウ………

ワシズ「フンッ……!」

早川健「おいでなすったな……こいつは驚いた……」

早川健「まさか若返りの薬まで持っていたとは……」

ワシズ「見たか……これがホワイトホール……」

ワシズ「……ぬぉぉぉっ!」

ドゴォッ!

早川健「ぐぅっ!?」

白服「今だっ……!」

白服3「終わったな……身の程知らずめ!」

ドガッ! ゴキィッ! ガキィッ!

早川健「ぐぅっ……あぁっ……」







ワシズ「その程度にしておけ……残りは……吊るし首にでもして死に行く様をじっくり見るとするぞ」

白服「はい……!?バカな!?」

ワシズ「どうした」

白服3「ワシズ様!早川が……早川が消えましたっ……!」

ワシズ「何ィ!?そんな事が起こるハズが無いだろうっ……!」

ワシズ「何処に隠れおった……そう遠くへは行けてないハズだ……扉の錠を閉めろっ!」





ゴゥウウウウウウウン………



「フライト!スイッチ!オン!」


シュルル……


ガシャアアアンッ!





白服「!?」

白服3「何事だっ……!?」

ワシズ「貴様……誰だっ!」






「ハハハハハ……」


「ズバッ!と参上!ズバッ!と解決!……人呼んでさすらいのヒーロー!」


「快傑……ズバァ━━━━ット!」







ワシズ「ズバットじゃと……!?」


ズバット「金を武器にこの街の正義を捻じ曲げっ……身を潜め!」

ズバット「あまつさえ自らの愉悦の為に多くの若者の命を奪う鷲巣巌っ……許さんっ……!!」


白服「そんな虚仮威しで我々が倒せるかっ……!」

白服3「その仮面を剥いでやるっ……!」

ズバット「ズバーット!」

ザッ

ズバット「ゼット!ゼーット!」

シュバァァン!シュバァァァンッ!

白服「ぐぁぁっ!」

白服3「ぬぅおっ……」

ダァン ドォン……


ズバット「残るは鷲巣、貴様だけだ……覚悟しろっ!」

ワシズ「フンッ……その度胸だけは褒めてやろうではないか……」

ズバット「ゼーット!」

ガシィッ

ズバット「っ……!?」

ワシズ「微温いわ……」

ドォンッ!

ガシィィイイイ!

ズバット「ぐぅっ……!?」

ワシズ「ククク……」

ギギギギギ……

ワシズ「貴様のか細い首をへし折ってくれるわ……!」

ズバット「ぬぅっ……このままでは……!」

ワシズ「苦しめ……苦しめ……」

ワシズ「死ねぇ〜〜〜〜〜〜〜っ!」ギュウウウウウウ……

ビコーン……ビコーン……

ズバット「まずい……あと3分が限界だ!」

ズバット「ぬぉおおおお……」

ググググ……

ワシズ「ぬっ!?ワシが力で押されているだとっ……!?」

ズバット「ゼーット!」

ドゴォッ!

ワシズ「ぬわあああああっ!!」

ズバット「ゼットゼットゼーット!」

シュバァァァン!シュバアアアアン!シュバアアアアアン!

ワシズ「グハァッ……」

シュルルルル……

ワシズ「!?苦しいっ……」

ズバット「……2月2日っ……!飛鳥五郎という男を殺したのは……キサマだなっ!」

ワシズ「し、知らんっ……ワシはそんな男……ワシは北京で……」

ワシズ「そんな男など知らんっ……本当だっ……」

ズバット「何だとっ……嘘をつけっ……では誰が殺したと言うんだっ……!」

ワシズ「ぐ……かはっ……」





ズバット「……ズッバァ━━━━ット!」タッ スタッ

ワシズ「……?」




ズバット「ズバット!アタァアアアアック!」




ゲシィィイイイイッ!ドガッ

ワシズ「ぐふぅっ……」

シュウウウウ……

鷲巣「ほへぇ……」

ズバット「……」ビコーン……ビコーン

シュカァンッ!

早川健「……」

ヒュッ

ザシュッ

『この者

   極悪殺人犯人!!』














             『っ……!?』

               『飛鳥ぁああああっ……』













早川健「やはりこの男でも無かった……」

早川健「では一体誰が飛鳥を……?」








組員「鷲巣様、平山を連れて……!?」

組員2「何だこの有様はっ……!?」

組員「……このトランクボックス……!?金が入っているぞっ……!」

組員2「手紙……!?」


『悪いヤクザのお二人さんへ

この箱には丁度幸雄君の借金と同じ額が入っている

 もう二度と幸雄くんとは関わらない事だ

  そして、もしもう一度同じような真似をすればお前たちもその目の前に転がってる鷲巣みたいになるぜ


                    天下の私立探偵 早川健より』

組員「何だとっ……!?」

組員2「誰か来るっ……!?まずい、警察だ!その箱持ってズラかれっ……!」







ピーポーパーポー……

鷲巣「離せっ……わしを離せっ……!」

鷲巣「金なら払うっ……」

東条「悪いな、金には確かに困っているが貴様の積み上げたような汚い金は貰う気にもならないのさ」

東条「さっさと乗れ」

ドンッ

鷲巣「うぅっ……」

ドゥウウウウウウウン……








数日後


安岡「昭和の帝王、鷲巣巌、大量殺人罪で逮捕……か……」

安岡「こりゃまた随分大物が豚箱にぶち込まれる事になったな……」

仰木「……やっぱりな、いつか公になると思っていた」

仰木「もう隠し通すのも限界……さっさと外国へトンズラすれば良かったものの……」

アカギ「老境に陥って狂った末に事故死か……」

アカギ「自分の衰退に気づけず狂い回ったのが全ての終わり……」

アカギ「ゲームオーバー……」





幸雄(あの後、組員に山中に放置されたらしい俺は、再び病院で目を覚ました)

幸雄(無事歩けるように回復し……町外れの喫茶店で働かせて貰っている)

幸雄(ここは鷲巣邸が覗ける位置にあって正直気味が悪いのも事実だが……)

幸雄「早川さん……礼も言わせてくれないでどっか行っちまってよ……」

おわり

ズバットの真似は大変危険ですから絶対にしないで下さいね

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