P「団結2015を収録するぞー」 (200)

伊織「もう2015年終わろうとしてるのに今更?」


P「まあそう言うな」


春香「私は天海春香ですイェイ!」


……


雪歩「萩原雪歩17歳です――あれ?」


雪歩(団結2010の時も17歳って言ってたような……)


ガッ


雪歩「あ――」


雪歩(足がもつれて――)


ガターン!


P「雪歩!」

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雪歩「いたた……すみません。一瞬ぼうっとしちゃって」


伊織「何でダンスレッスンでもないのに転ぶのよ。春香じゃあるまいし」


春香「酷いっ」


真「たんこぶできてるよ雪歩。大丈夫?」


P「念のため病院に行こう」


雪歩「そんな大げさですよプロデューサー」


P「だから念のためだよ。頭打ってるしな」


……


雪歩「……」

雪歩(私は17歳……うん。間違ってない)


雪歩(今は2015年12月……うん。間違ってない)


雪歩(団結2010を収録したのは……あれ、いつだっけ?)


雪歩(2010ってことは5年前……のはずだよね)


雪歩(その時も私は17歳って言ってた……あれ、どういうこと?)


雪歩(ミンミンミン、ミンミンミン、ウーサミン)


雪歩(違うそうじゃない)


雪歩(私の記憶違い? ――ううん。そんな問題じゃない気がする)


真「雪歩、どうしたの? ぶつけたとこまだ痛む?」


雪歩「真ちゃん……うん。ちょっと考え事」


真「悩み事? 僕で良ければ聞くよ」


雪歩「あのね……」

……


真「……」


雪歩「あはは、私変なこと言ってるよね。忘れて」


真「いや、変じゃないよ」


雪歩「真ちゃん……」


真「何で今まで気づかなかったんだろう。この違和感に」


雪歩「そうだよね……。皆にも教えてあげよう」


真「まって。嫌な予感がする」


雪歩「嫌な予感?」


真「こんな大事、誰も気づかないなんておかいしよ」


真「もし気づいた上で黙ってるんだとしたら、何か理由があると思うんだ」

真「おかしいよ」

雪歩「理由?」


真「うん。触れちゃいけない理由」


雪歩「そうなのかな?」


真「わからない。……このこと、僕以外に話した?」


雪歩「ううん。真ちゃんが最初」


真「じゃあ皆に話すのはちょっと待って」


雪歩「うん。真ちゃんがそう言うなら」


真「じゃあ今日はもう遅いし、また明日ね。今日はお疲れさま」


雪歩「うん。ばいばい、真ちゃん」

続くなの

……


真(よく考えたら、おかしいのは年齢のことだけじゃない)


真(雪歩は気づいてないみたいだったけど、雪歩って前からああいう声だったっけ?)


真(声と言えば社長の声も変わってる)


真(声どころか、社長の顔が思い出せない。何度も見てるのに)


真(亜美と真美って、前から真美の方が姉だったっけ?)


真(美希って髪切って茶髪にしなかったっけ?)


真(響と貴音って前から765プロに居たっけ? いつから?)


真(事務所って移転しなかったっけ?)


真(僕っていつからこの髪形だっけ?)


真(僕たちは何度アイドルの頂点に立った?)

真「……」


真(まったく頭痛がしてきたよ。一体どうなってるんだ)


真(考えれば考えるほど、おかしなことだらけ)


真(怖い……)


真「……」


真「あーもう! わっかんないよー!」


真(明日プロデューサーに相談してみるか)


真「……あれ?」


真(プロデューサーって何て名前だっけ?)

◆翌日◆


雪歩「おはようございますぅ」


春香「おはよう雪歩」


雪歩「春香ちゃん。真ちゃんはもう来てる?」


春香「真ちゃん?」


雪歩「うん。ちょっと話したいことがあって」


春香「真ちゃんって誰?」


雪歩「え?」


春香「新しいアイドル候補生の子?」


雪歩「やだぁ、何言ってるの春香ちゃん。菊地真ちゃんだよぉ」


春香「えっと……ごめんね。私その人知らないや」


雪歩「え……」

続くなのー

亜美・真美「なになに、どうしたの?」


春香「二人は菊地真ちゃんって知ってる?」


亜美「誰それ?」


真美「新しいアイドルの人?」


雪歩「え? え?」


春香「?」


亜美・真美「?」

ガチャ


P「おはよう。お、皆揃ってるな」


雪歩「あのぉ、プロデューサー。真ちゃんがまだ……」


小鳥「!?」


P「真ちゃん? 誰だそれは?」


雪歩「ぁ……」


小鳥「……」


真美「ねーねー兄ちゃん。新しいアイドルの人でも来るの?」


P「そんな話は聞いていないが……」


真美「なーんだ」

春香「雪歩、どうしちゃったの? 何か変だよ?」


雪歩(変なのは……皆の方だよ……)


雪歩「……」


P「雪歩?」


雪歩「あ……あ……」


雪歩「穴掘って埋まってますぅぅぅ!」ザックザック!


春香「あぁ雪歩! 事務所に穴掘っちゃ駄目だよー!」


雪歩「ああああああ!」ザックザック!


亜美「うわぁ! ゆきぴょんが壊れたぁ!」


雪歩「ああああああ!」ザックザック!


ズガァァァン!


たるき亭「」

……


P「ただいま戻りました」


律子「お帰りなさい。どうでした、雪歩の様子?」


P「一応落ち着きはしたけど……今日は休ませることにして、さっき送って来たよ」


律子「それが良いですよね。一体どうしたのかしら、あの子」


小鳥「……」


P「律子は菊地真って知ってる?」


律子「さあ、聞いたことない名前ですけど。その人が雪歩と関係してるんですか?」


P「雪歩が言ってたんだよ。765プロのメンバーで、雪歩と一番仲が良かったんだって」


律子「えぇ……」

P「最近忙しかったし、疲れてたのかな?」


律子「いや、そんなレベルじゃないでしょ」


律子「病院に連れていった方が良いんじゃないですか?」


P「そうだな……」


小鳥「待ってください。マスコミに知られると雪歩ちゃんもっと辛くなると思います」


律子「ですけど……」


小鳥「もう少し様子を見てみましょう」

続く、なのー

……


雪歩(皆どうしちゃったの? 真ちゃんのことを忘れるなんて……)


雪歩(私どうしたらいいの……真ちゃん)


雪歩(こんな時、真ちゃんが居たら相談できるのに……)


雪歩「――あ!」


雪歩(そうだよ。真ちゃんに電話すればいいんだ!)


雪歩(えっと携帯は――)


雪歩(もし電話帳に真ちゃんの名前が無かったらどうしよう)ポチポチ


雪歩(……そんなことないよね)ポチポチ


ポチ…


雪歩「……」


雪歩(無い……)

……


テクテク


雪歩(ちょっと夜風に当たろう)


雪歩(――あれ、あそこでランニングしてるの……)


雪歩「真ちゃん!?」


真「え?」


雪歩「真ちゃーん!」ダキッ


真「ええっ!?」


雪歩「真ちゃん真ちゃん真ちゃん!」


真「あ、あの……どなたですか? 何で僕の名前……」


雪歩「え……」


真「ああっ! ひょっとしてアイドルの萩原雪歩!? ラッキー! サイン貰って良いですか?」


雪歩「あ……あ……」


雪歩「穴掘って埋まってますぅぅぅ!」ザックザック!


真「うわぁ! どうしたの!?」

◆翌日◆


ガチャ


雪歩「おはようございますぅ……」


雪歩(はぁ、昨日は大変だった。私おかしくなっちゃったのかなぁ……)


真「ゆーきほっ! どうしたの暗い顔して」


雪歩「真ちゃん!?」


ペタペタ


真「えぇっ!? どうしたの雪歩? 会うなり人の顔触って――」


雪歩「幻じゃない!」ペタペタ


真「そりゃそうだよ!」


雪歩「うわぁぁぁん! 真ちゃぁぁぁん!」ダキッ


真「うえぇっ!?」

続くの

春香「おはようございまー――うわっ! 事務所に来るなり雪歩と真が抱き合ってる!?」


伊織「朝から見せつけてくれるわね」


やよい「うっうー! ラブラブですー!」


千早「高槻さん、私たちも……」


やよい「うっうー?」


真「皆、見てないで助けてよー!」


雪歩「真ちゃん好きー!」


春香「あら」///


真「ちょ、雪歩! どさくさに紛れて何言ってるの!?」

……


真「なるほど。僕が765プロに入ってない世界の夢を見た、と」


雪歩「うん。寂しかったよぉ」


雪歩(きっと夢だよね)


雪歩「ところで真ちゃん。私達の年齢の話なんだけど……」


真「年齢?」


雪歩「うん。昨日の収録で気づいて話したこと」


真「昨日収録なんてあったっけ?」


雪歩「え?」

雪歩(まさか、あれも夢?)


雪歩(それとも真ちゃん……記憶がない?)


――真『こんな大事、誰も気づかないなんておかいしよ』――


――真『気づいた上で黙ってるとしたら、何か理由があると思うんだ』――


――真『うん。触れちゃいけない理由』――


雪歩「……」


雪歩(記憶を……消されてる?)


雪歩(――待って。記憶を消されたのは真ちゃんだけ?)


雪歩(真ちゃんが言ってた様に、この違和感に気づかないなんておかしい)


雪歩(思い出した人は皆消されてるの?)


雪歩(私も……記憶にはないけど、ひょっとして……)


雪歩(なーんて、何考えてるんだろ私)


雪歩(でも……)

真「おーい雪歩ー。帰って来てー」手フリフリ


雪歩「あっ、ごめんね。何でもないよ」


P「おーい雪歩。そろそろ行くぞー」


雪歩「あ、プロデューサー。レッスンって午後じゃありませんでしたっけ?」


P「午前だよ。しかもレッスンじゃなくて営業な」


雪歩「予定変更になったんですか?」


P「最初からこのスケジュールだよ」


雪歩「あれ?」


P「おいおい、しっかりしてくれよ」


雪歩「ご、ごめんなさいぃ」


雪歩(でも確かに今日は午前にレッスンだったはず)

【訂正】


雪歩(でも確かに今日は午後にレッスンだったはず)

続くなの
マストソングス楽しみなの

……


雪歩(何かがおかしい)


雪歩(ううん。何もかもがおかしい)


雪歩(年齢のこと。記憶のこと。スケジュールのこと)


雪歩(それに昨日のこと。夢で片付けようとしたけど、あんなリアルな夢あるかな?)


雪歩(――あれ?)


雪歩(昨日のこと思い返してたら違和感が……)


雪歩(なんだろう、この……)


雪歩(――あ)


雪歩(小鳥さん)


雪歩(真ちゃんのこと言ったとき、小鳥さんだけ驚いてた?)


雪歩「……」


雪歩(気になる)

……


P「遅くなっちゃったなー。雪歩、送ってくよ」


雪歩「ありがとうございますぅ」


P「小鳥さん。俺もこのまま直帰しますけど、閉め任せちゃって良いですか?」


小鳥「はい。お疲れ様でした♪」


P「ありがとうございます。お先です」


雪歩「お先に失礼します」


ガチャ バタン


小鳥「……」


小鳥「ふぅ」


小鳥「記憶が混在する子はたまに出てくる」


小鳥「でもそれも、一晩ぐっすり眠ればリセットされる」


小鳥「多分それが、正常な脳の働き」


小鳥「雪歩ちゃん、一昨日頭打ったらしいから、その時に何かしら傷害が?」


小鳥「でもここの雪歩ちゃんは頭打ってないし……」


小鳥「ひょっとして頭打った雪歩ちゃんの意識が今……?」


小鳥「う~ん……」


雪歩「小鳥さん」


小鳥「ひゃぁっ!?」

小鳥「ゆ、雪歩ちゃん……プロデューサーさんと帰ったんじゃあ……」


雪歩「忘れ物をしたと言って戻って来ました。そしたら小鳥さんの一人言が聞こえました」


小鳥「あれ、あたし声に出してた?」


雪歩「記憶がどうとか言ってました」


小鳥「う……」


雪歩「やっぱり小鳥さん何か知ってるんですね」


小鳥「……そうね」


雪歩「一体誰が皆の記憶を消してるんですか? 何のために?」


小鳥「え、記憶を消す?」


小鳥「……なるほど。確かにそう思ってしまうのも仕方ないわね」


雪歩「違うんですか?」

雪歩「――あ。あと私が頭打ってないってどういうことですか? 私は確かに頭打ちました。こぶもできて――」


雪歩「あれ?」


雪歩「こぶが無い……治ったのかな?」


小鳥「こぶなんて無くて当然よ。だって雪歩ちゃん、頭打ってないもの」


雪歩「え、でも確かに……団結2015の収録中に転んで、プロデューサーに病院に連れていってもらいました」


小鳥「それは別の世界の雪歩ちゃんよ」


雪歩「?」


小鳥「この世界では団結のリメイクなんてしていないわ」


雪歩「そんなはず……」


小鳥「雪歩ちゃん。パラレルワールドって知ってる?」


雪歩「この世界とは別にそっくりな世界があって、別の私達が住んでるってやつですか? ドラ●もんで見ました」


小鳥「そう。日本語にすると並行世界」


小鳥「団結2015の収録があって、転んでこぶができたのは、並行世界の別の雪歩ちゃんの体なのよ」


雪歩「……」

続くなのぉ

雪歩「どうしよう……」


小鳥(突然こんなこと聞かされたら、混乱するわよね……)


雪歩「小鳥さんがおかしくなっちゃいましたぁ!」


小鳥「あたしは正常ですっ!」


小鳥「いや、正常じゃないかも知れないけど、言ってることは間違ってないわ」


小鳥「そうだ。雪歩ちゃん、昨日のこと覚えてる?」


雪歩「昨日って言うと……」


小鳥「真ちゃんが765プロに在籍していなかったでしょ」


雪歩「!?」


小鳥「やっぱり、あの世界の昨日の雪歩ちゃんは、あなただったのね」


雪歩「どういうこと……ですか?」


小鳥「雪歩ちゃんは、並行世界の765プロを体験したのよ。そして今も体験している」

雪歩「そんなまさか……あれは夢じゃあ……」


小鳥「今日の日付は、団結2015の収録から2日後よ。雪歩ちゃんは昨日、1日中眠っていたの?」


雪歩「ぁ……」


小鳥「並行世界の記憶が混在することはたまにあるわ」


小鳥「でも雪歩ちゃんの症状は記憶の混在というより、並行世界の意識がそのままこの世界の雪歩ちゃんの体に入った感じね」


小鳥「原因として考えられるのは……確証は無いけど、一昨日頭を打ったとき脳の機能を損傷したんじゃないかしら」


雪歩「の、脳の機能を損傷!?」ビクビク


小鳥「眠るって一種、意識を失うってことでしょ?」


小鳥「眠って失った意識がちゃんと次の日の体にあるのは、脳が意識を繋ぎ止めてるからなの」


小鳥「その機能を損傷したことで、脳は眠って失った意識を次どの体に繋げばいいか、わからなくなってしまった」


小鳥「その結果、並行世界の雪歩ちゃんの体に繋いでしまった……あたしはこう推理したわ」

雪歩「その理屈だと一昨日から昨日はわかるんですけど、昨日から今日がよくわからないです」


雪歩「昨日体験した体の脳は損傷してなかったのに、今日また別の体と繋がってるのは何故でしょう?」


小鳥「う~ん、あたしは専門家じゃないから……専門家なんて居るのかわからないけど」


小鳥「ひょっとして意識と脳は一対一で、替えがきかない……とか」


雪歩「どういうことですか?」


小鳥「さっきあたしは、脳が意識をどこに繋げばいいかわからなくなったって言ったけど、その逆で、意識の方がどこに繋がればいいかわからなくなったのかも」


小鳥「意識を繋ぎ止める脳の器官は意識にとっては目印で、その目印が見えなくなったから、並行世界も含めた中から適当な脳に繋がってしまっている」


雪歩「意識が行き場を失って、さ迷ってるってことですか……」


小鳥「そうね」

雪歩「それって、もうどうしようもないってことじゃ……私もう元の世界には帰れないんですか!?」


小鳥「一緒に方法を考えましょ」


雪歩「でも、寝ちゃったらこの世界の小鳥さんとはお別れなんですよね? うぇぇん、寝ないなんて無理ですぅぅぅ!」


小鳥「大丈夫よ雪歩ちゃん」


雪歩「ほぇ?」


小鳥「あたしね、並行世界の記憶があるの。理由はわからないけど、いつからかこんな体になっちゃって」


小鳥「だから、この世界のあたしとはもう会えなくても、別の世界のあたしが必ず助けるわ」


雪歩「小鳥さんが色々詳しいのは、そういうことだったんですね」


小鳥「うふふ。頼もしいでしょ?」


雪歩「うわぁぁぁん! ありがとうございます小鳥さぁぁぁん!」


小鳥「よしよし」ナデナデ

◆翌日◆


雪歩「小鳥さん!」


小鳥「あら雪歩ちゃん。どうしたの?」


雪歩「えっとその……並行世界のことなんですけど……」


小鳥「――! もしかして、転んで頭打った世界の雪歩ちゃん?」


雪歩「そうですぅ! 覚えててくれてありがとうございますぅ!」


小鳥「別の世界とはいえ、自分が言ったことだしね。助けるって」


雪歩「でも、転んで頭打った世界の私って……」


小鳥「あはは、ごめんなさい。次からは、えっとー……団結2015の雪歩ちゃんって呼ぶわね」


雪歩「それでお願いします」


ワイワイ キャッキャッ


伊織「雪歩と小鳥ってあんなに仲良かったかしら?」


春香「でも、仲が良いのって良いことだよね♪」


伊織「まあそうだけど」


雪歩(元の世界に戻るまで大変かも知れないけど、小鳥さんと一緒なら大丈夫だよね♪)

続くなの
マストソングス難しいけど楽しいの!

◆翌日◆


ジリリリリリリ


雪歩「ふわぁ~……あれ、ここどこ?」キョロキョロ


雪歩(いつもの部屋より随分小さい……この世界ではここに住んでるのかな?)


コンコン


雪歩「あ、はーい」


春香「おっはよー雪歩ちゃん!」


雪歩「おはよう……ええっと、春香ちゃん?」


春香「ん、春香だよ? 雪歩ちゃん、ひょっとして寝ぼけてる?」


雪歩「あ、はは……そうかも」


春香「あはは。珍しー♪」

雪歩「あの、まだ寝ぼけてるみたいで……私たち、一緒に住んでるんだっけ?」


春香「そうだよ。雪歩ちゃんと私と、伊織ちゃんと律子さんの四人暮らし」


雪歩(みんな知ってる人で良かった)


春香「雪歩ちゃん、今日は喋り方がいつもと違うね」


雪歩「えっ、変……かな?」


春香「変じゃないけど……えーっとね、いつもはもっと丁寧というか……私のこともさん付けで呼ぶし」


雪歩(そ、そうなんだ)


コンコン


伊織「ちょっとバカリボン。雪歩起こすのにどれだけかかってるのよ」


春香「あぁ伊織ちゃん。ごめーん」


雪歩(い、伊織ちゃんなの!?)


雪歩(なんかいつもの世界とだいぶ違うなぁ)

バタバタバタ


律子「みんな、急いで準備して!」


春香「律子さん!?」


伊織「どうしたの!?」


律子「たった今、ドロップ出現の連絡が入ったわ! 数は二つ!」


伊織「――! 行くわよバカリボン!」


春香「うん! 雪歩ちゃんも早く!」


雪歩「えぇぇ!? 行くってどこにぃぃぃ!?」


……


春香「行くよインベル! 雪歩ちゃん、サポートよろしくね!」


雪歩「」

……


ジョセフ「なんとかドロップの破壊には成功しましたが……萩原さん」


雪歩「」


ジョセフ「今日はどうしたのですか? 体調が優れないようでしたら……」


名瀬「体調が優れないってレベルじゃないような……」


あずさ「本当に大丈夫?」


雪歩(穴掘る気力すらない……)


ジョセフ「これは重症のようですね」


ジョセフ「名瀬くん」


名瀬「はい課長。なんでしょう?」


ジョセフ「始末書、よろしくお願いしますね」


名瀬「」

……


雪歩「はぁ……」


雪歩(本当に何、この世界……小鳥さんも居ないみたいだし……)


真「……」スタスタ


雪歩(あ、あれは真ちゃん!)


雪歩(うん。大変だけど、真ちゃんが居れば堪えられる!)


雪歩「真ちゃーん!」ダキッ


真「うわっ!? 何だよ萩原。やめろ!」


雪歩「」

◆翌日◆


雪歩(流石に昨日ほどのことはない……よね?)


ガチャ


間島P「おはよう雪歩」


雪歩「いやぁぁぁ化け物ぉぉぉ!」ダッ


間島P「」


◆翌日◆


武内P「アイドルに興味ありませんか?」


雪歩「いやぁぁぁ怖い男の人ぉぉぉ!」ダッ


武内P「」

続くなの
ゼノマス結構好きです

ゼノ伊織って名瀬だっけ?

ゼノ伊織も水瀬じゃなかった?

ざわわん時空もいいがPがいないカラフルデイズ時空にだな

全てを理解し、全てを繋げ!
世界の観測者、萩原雪歩。
幾つもの世界を巡りその瞳は何を見る。

って感じのナレーションが思い浮かんだ

>>80
ゼノ伊織も水瀬です
伊織とは別に、名瀬という毎回課長に始末書押し付けられてるキャラがいます

続き投下します

◆翌日◆


ガチャ


雪歩「おはようございますぅ」


春香「おはよー雪歩」


響「遅いぞー」


雪歩「二人とも早いね。今日なにかあるの?」


響「今日の朝早く集まってレッスンしようって、昨日決めたじゃないか」


雪歩「え……あ、ああ! そうだったね!」


雪歩(そうだったんだ)

春香「まあまあ、時間には間に合ってるんだし。私もさっき来たとこだし」


雪歩「じゃあ響ちゃんが一番乗りだったんだね」


響「ふふーん! 自分完璧だからなー!」


響「――と言いたいとこだけど、プロデューサーはもっと早かったぞ。あっちでパソコンカタカタやってる」


春香「プロデューサーさん、無茶をしないって約束したのに……ちゃんと寝てるのかな?」


春香「雪歩、プロデューサー私たちが来たの気づいてないみたいだし、挨拶しにいこ♪」


雪歩「う、うん」


雪歩(今回のプロデューサーさんはどんな人かなぁ。優しい人だといいな)

トコトコ


春香「おはようございます、プロデューサーさん♪」


雪歩「おはようございますぅ」


ざわわんP「ん、おはよう二人とも」


雪歩(凄い三白眼……昨日の人以上だ)


ざわわんP「さっき我那覇さんも来てたから、SprouT(スプラウト)全員集合だね」


雪歩(SprouT……ユニット名かな?)


春香「プロデューサーさん、また無茶してないでしょうね?」


ざわわんP「はは、今日はちょっと早起きしただけだよ」

雪歩「あの、小鳥さんはもう来てますか?」


春香「小鳥さんになにか用事?」


雪歩「えへへ、ちょっとね」


ざわわんP「小鳥さんはまだ来てないな。これからレッスンだよね。伝言預かっておこうか?」


雪歩「えっとじゃあ、『団結』って伝えておいてください」


ざわわんP「――? よくわからないけど、わかった」


春香「団結って?」


雪歩「ああ!」

……


小鳥「今日はこの世界に来たのね」


雪歩「よろしくお願いしますぅ」


小鳥「まずこの世界の雪歩ちゃんについて説明するわね」


小鳥「もう気づいてると思うけど、この世界の雪歩ちゃんは春香ちゃん、響ちゃんと一緒にSprouTというユニットを組んでいて――」


ざわわんP「……」


……


黒井「萩原雪歩の様子が変? なんだその具体性のまったくない報告は」


ざわわんP「すみません。一応共有しておこうかと」


ざわわんP「記憶喪失と言うと言い過ぎだと思いますが、今日だけ特に物忘れが激しかったんです。普段はそんなことないんですが」


黒井「フンッ、どうでもいい報告だ。私から言わせれば765プロの連中は普段から変だよ」


ざわわんP(俺からすれば貴方の方が変ですがね)


黒井「なんだその顔は?」


ざわわんP「いいえ! なんでもありません!」

◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


……


雪歩「うわぁぁぁん! 小鳥さぁぁぁん!」


小鳥「よしよし」ナデナデ


雪歩「もう一ヶ月経っちゃいましたぁ……このまま元の世界に戻れなかったらどうしよう……」


小鳥「雪歩ちゃん……」

雪歩「もう嫌です。皆と話は合わないし、覚えのない喧嘩してたり、皆の仲が悪い世界があったり」


雪歩「うぅ……」


小鳥「大丈夫よ。並行世界のあたしも協力してくれてる」


小鳥「あたしも、明日になって雪歩ちゃんがまた別の世界へ行ってしまっても、調査を続けるわ」


小鳥「記憶を共有してるんだもの。無数の並行世界の音無小鳥、一人でも解決にたどり着けば良いのだから、まだまだ希望はあるわ」


小鳥「諦めずに行きましょう♪」


雪歩「小鳥さん……はい!」


雪歩(そうだよね。小鳥さんが居てくれれば大丈夫だよね!)

◆翌日◆


ジリリリリリリ


雪歩「ふわぁ~……ってもうこんな時間!?」


雪歩「この世界の予定がわからないから、早く事務所に行かないと!」


……


バタバタ


雪歩「行ってきますぅー!」


雪歩父「今日は日曜だぞ。そんなに急いでどこへ行くんだ?」


雪歩「事務所だよ」


雪歩父「事務所ってどこの?」


雪歩「何言ってるのお父さん。765プロの事務所だよ」


雪歩父「765プロ……ってあのアイドル事務所か!?」


雪歩父「お前アイドルになるつもりか!? 父さんはそんなの認めんぞ!」


雪歩「え、お父さん何言って……」


雪歩「――あ」

続くなの

2016年になってしまった…

……


カタカタ カチッ カチッ


雪歩(――やっぱり。765プロのサイトの名簿に、私の名前がない)


雪歩(ここは私がアイドルにならなかった世界なんだ)


雪歩(そう言えば真ちゃんがアイドルになってない世界もあったし、私がアイドルにならなかった世界もあって当然だよね)


雪歩(普通の女の子か……何か不思議な感じ)


雪歩「……」


雪歩(って、ぼーっとしてる場合じゃない!)


雪歩(小鳥さんと連絡を取らないと。記憶を共有してるから、765プロに入ってなくても私のことわかるはずだよね)

トゥルルルルルル ガチャ


律子『はい、765プロダクションでございます』


雪歩(律子さんの声だ)


雪歩「萩原雪歩と申します。音無小鳥さんいらっしゃいますか?」


律子『音無ですね。少々お待ちください』


小鳥『お電話代わりました。音無です』


小鳥『えっと……雪歩ちゃん……?』


雪歩「はい、雪歩ですぅ!」


雪歩(やっぱり知っててくれた。私のこと)


小鳥『ごめんなさい。今日ちょっと忙しくて……20時以降なら電話できると思うけど、それでもいいかしら?』


雪歩「え……あ、はい。すみません忙しい時に」


小鳥『こちらこそ、ごめんなさいね。それじゃあ――』

……


ガチャ


小鳥「ふぅ……」


小鳥(雪歩ちゃん……か)


小鳥(記憶はあるけど、この世界のあたしは雪歩ちゃんと出会ってないから、他人なのよね……)


小鳥(って、何薄情なこと考えてるのあたし!)


小鳥(あたしがいないと雪歩ちゃん一人ぼっちになっちゃうもの。力になってあげないと)

◆翌日◆


ガチャ


雪歩「おはようございますぅ」


雪歩(今日はちゃんと765プロでアイドルやってる私だ)


ちひろ「あ、雪歩ちゃん。おはようございます」


雪歩(あれ?)


雪歩(小鳥さんの席に知らない人が座ってる)


ちひろ「どうしたの雪歩ちゃん? 私の顔に何かついてます?」


雪歩「いっ、いえ。何でもないです」


雪歩「あの、小鳥さんは……」


ちひろ「小鳥さん……って、346プロの音無小鳥さん?」


雪歩「346プロ?」

雪歩(346プロってあの大企業のプロダクション……この世界の小鳥さんは346プロで働いてるんだ)


ちひろ「雪歩ちゃんって小鳥さんと知り合いだったんですね。小鳥さんがどうかしましたか?」


雪歩「ああいえっ、何でもないです」


ちひろ「?」


雪歩(後で346プロに電話してみよう)


……


トゥルルルルルル ガチャ


小鳥『お待たせいたしました。こちら346プロダクション、担当音無でございます』


雪歩「小鳥さん!」


小鳥『わぁっ!』


雪歩「あっ、すみません」


小鳥『こちらこそすみません。あの、どちら様でしょうか?』


雪歩「私です! 萩原雪歩です!」

小鳥『萩原さん……ああっ、あの萩原さん!』


雪歩「はい! きっとその萩原ですぅ!」


小鳥『今日はこの世界に来たんで……来たのね』


雪歩「はいぃ。よろしくお願いしますぅ」


雪歩(……喋り方になんとなく距離があるなぁ)


◆翌日◆


雪歩「……」


雪歩(小鳥さんが居ない)


雪歩(765プロにも、346プロにも、他のどのプロダクションにも)


雪歩(周りに小鳥さんが知り合いの人も居ないし)


雪歩(小鳥さんがアイドル事業に関わってない世界なのかな?)


雪歩(それとも小鳥さんが生まれてない世界?)


雪歩(どっちにしても、これじゃあ一人ぼっち……)


雪歩(――あ、明日になれば会えるよね!)

◆翌日◆


雪歩(今日も小鳥さんは居ない)


◆翌日◆


雪歩(今日も居ない)


◆翌日◆


雪歩(今日も――)


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


……

続くなの

雪歩(一ヶ月が経ってしまった。あれから一度も小鳥さんと連絡が取れていない)


雪歩(どうしよう。小鳥さんが居ないと私……)


雪歩「……」


雪歩(――ううん)


雪歩(小鳥さんに会えない世界が珍しくないとわかった以上、小鳥さんに会うのが前提の暮らし方は止めよう)


雪歩(世界によっては解決策を探してくれている小鳥さんが居るし、私は別のアプローチを考えてみよう)

雪歩(……と言っても、一人じゃどうしていいかわからないよぉ)


雪歩(やっぱり誰かの力は借りたい)


雪歩(誰に相談すれば良いだろう……)


雪歩(このSFみたいな話を信じてくれて、かつ解決できそうな人。もしくは解決できそうな知り合いが居る人)


雪歩(そこまでピンポイントじゃなくても、とにかく人脈が多い人でも良いかも知れない)


雪歩(人脈が多い人……)


雪歩「あ!」


雪歩(居た。身近に!)


雪歩「――お父さん!」

……


雪歩父「どうした雪歩、改まって。今日は仕事はいいのか?」


雪歩「まだ時間あるから大丈夫」


雪歩「あの……これから私、信じられないような変なこと言うけど、どうか信じてほしいの」


雪歩父「はっは。雪歩の言うことなら、なんだって信じるとも」


雪歩「お父さん。真面目な話なんです」


雪歩父「……聞いてみないことには判断できないが、信じるよう努力しよう」


雪歩「ありがとう。あのね、私……」


雪歩「……」


雪歩父「……」


雪歩「……私、この世界の人間じゃないの!」


雪歩父「……」


雪歩「こことは別の並行世界から、魂だけが来ちゃったの!」


雪歩父「……」


雪歩「……お父さん?」


雪歩父「あ、ああ。すまない。予想外の話でな。面食らってしまった」


雪歩「変な話してるってことは私が一番よくわかってる。でも、最後まで聞いてほしい」


雪歩父「ああ。続けなさい」


雪歩「んっとね――」


……

雪歩父「なるほど。そんなことがあったのか」


雪歩「信じてくれるの……?」


雪歩父「信じるとも。正直信じがたい話だが、雪歩の真剣さを見ては一蹴できない」


雪歩「お父さん……ありがとうございますぅ!」


雪歩父「――よし! お父さんに任せなさい」


雪歩「え?」


雪歩父「元の世界に戻る方法を探せばいいのだろう? 詳しそうな知り合いを当たってみよう」


雪歩「……ぅ……うわぁぁぁん! お父さんぁぁぁん!」ダキッ


雪歩父「よしよし」ナデナデ


雪歩父「若い衆には悪いが、今日は仕事を休んで片っ端から調べてみよう」


雪歩父「雪歩も今日は休みなさい」


雪歩「はい……ありがとうございますぅ!」

……


雪歩(お父さん信じてくれた! しかも早速知り合いを当たってくれるって!)


雪歩(流石に今日中に解決策がわかるかも、なんて期待はしない)


雪歩(でも、明日になってまた別の世界に行ってしまっても、この世界のお父さんは解決策を探し続けてくれる)


雪歩(なにより、相談できる人が居ることが、凄く嬉しい!)


雪歩「ふふっ♪」


雪歩「……」


雪歩(おトイレ)


……


テクテク


雪歩(あ、お父さんの声がする)


雪歩「……」コソッ

雪歩父「ああ。にわかには信じられない話なんだが――」


雪歩(早速知り合いに電話してくれてるみたい。簡単にはいかないかも知れないけど、きっとなんとかなるよね)


雪歩父「それが雪歩は本気で言っているみたいなんだ」


雪歩父「くそっ! だから芸能界なんて訳のわからないところ……反対だったんだ!」


雪歩(……え?)

続くなの
雪歩のトーチャンって実際どんな感じなんだろう

雪歩父「――ああ。765プロダクションへの訴えも並行して進める。場合によっては――」


雪歩父「だがそれよりも雪歩の治療が先決だ。腕の良い精神科医を手配してくれ。頭を打ったらしいから脳神経外科医もだ」


雪歩父「いや、素人が診療科を判断しては危険か。関係のありそうなところは全て当たってくれ」


雪歩父「――ああ、よろしく頼む。ではな」ピッ


雪歩「……」


雪歩父「ん、雪歩?」


雪歩「お父さん、どういうことなの?」


雪歩父「雪歩を治すために、知り合いに電話してたんだよ」


雪歩「765プロを訴えるって……」


雪歩父「……雪歩をここまで追い詰めて、精神的に参らせたんだ。当然だ」


雪歩「違うよ! 皆は関係ない!」


雪歩父「雪歩が頭を打ったのに、親に連絡もしない連中だぞ!」


雪歩「それは別の世界での話なの!」

雪歩「お父さん、信じてくれてなかったんだ……」


雪歩父「……とにかくまずは病院だ。今、信用できる医者を探してもらっている。今日中には一度診察してもらうぞ」


雪歩「……」


雪歩(今まで……頭を打ったのは別世界の体だから、診察を受けるって発想はなかった)


雪歩(望み薄だけど、一度お医者さんに見てもらうのは、ありかも知れない)


雪歩「……わかりました。診察は受けます」


雪歩「でも765プロを訴えるなんてやめて! 皆を悪く言わないで!」


雪歩父「……」


雪歩「皆は……私の……大切な……」グスッ


雪歩父「……はぁ、わかったよ」


雪歩「うっ……うっ……」


雪歩父「ごめんな、雪歩」

……


診察結果は、一回の診察ではわからないとのことだった。


日を改めて診察ということになったが、その時にはもう私の意識はここにない。


きっとこの世界本来の私が診察を拒んでおしまいだろう。


仮に拒まなくても、なにがわかるとも思えないけど。


雪歩(ごめんね。この世界の私……)


◆翌日◆


雪歩「はぁ……」


雪歩(ずいぶん大事になっちゃったなぁ)


雪歩(お父さんに話すのは、やめておこう)


雪歩(昨日はなんとか防いだけど、また765プロが訴えられかねないもんね)


雪歩(……むしろ訴訟で済めばまだマシか)

雪歩(他に相談できる人は……)


雪歩(お母さんは……お父さんに伝わっちゃうよね)


雪歩(私の話を真剣に聞いてくれて、新味になって協力してくれて――)


雪歩(この話を信じてくれそうな、とにかく純粋な人……)


雪歩「……よし」


……


ガチャ


雪歩「おはようございますぅ」


雪歩(小鳥さんは……居ないか)


春香「おはようございまーす!」


雪歩「あ、春香ちゃん。おはよう」


春香「おはよう雪歩。相談があるって……どうしたの?」


雪歩「ちょっと事務所だと……近くのカフェに行こう? 今時間大丈夫?」


春香「――? うん。大丈夫だけど……」

……


雪歩「――以上が、私が体験してきたこと」


春香「……」ボー


雪歩「この話は他の人には……ううん。他の人に話すかは、春香ちゃんの判断に任せるよ」


春香「……」ボー


雪歩「春香ちゃん?」


春香「はっ! ごめん、ちゃんと聞いてるよ!」


春香「あはは、理解するのに時間かかっちゃった」


雪歩「わかるよ。難しいもんね」


春香「でも凄いよ雪歩!」


雪歩「――?」


春香「タイムトラベラーならぬ、ワールドトラベラーって言うのかな? 格好良いね♪」


雪歩「……」


雪歩(そんな風に考えたことなかった)

春香「――あっ! ごめん浮わついたこと言って。雪歩にとっては大変な状態だよね……」


雪歩「信じてくれるの?」


春香「うん。そりゃあSFみたいな話だけど、雪歩がこんな嘘つく訳ないもんね」


春香「それよりどうしよっか。確かに誰彼構わず相談できる内容じゃないよね……」


雪歩「ありがとう……」


春香「ん?」


雪歩(やっぱり、春香ちゃんに相談して良かった)ウッ


春香「うわぁっ、なんで泣くの!?」アタフタ


……


春香「うーん、雪歩が元に戻る方法……うーん……」


雪歩「うーん……」


春香(相談してくれたのは嬉しいけど、私になにができるだろう……)


春香ちゃんになにができるはずもなく。


私の気持ちが安らいだだけで、解決への進展はなにもなかった。

続くなの
もう少しで終わる予定です

更新が遅くてすみません
続き投下します

◆翌日◆


貴音「あなたには悪霊が取り憑いています」


突然現れたのは765プロのミステリアスアイドル、四条さんだ。


雪歩「悪霊?」


貴音「悪霊め! すぐに雪歩の体から立ち去りなさい! そして雪歩を元の世界に帰すのです!」


四条さんがそう言うと私の体から黒い煙のようなものが現れ、私の体から完全に分離したのち、老婆の外見を形作った。


老婆「わしの存在を見破るとは! ……しかし、わしの力を見くびっているな? 私と対峙するということは、すなわちお前自身の死を意味し――」


貴音「破ぁ!!」


老婆が言い終わる前に、四条さんは老婆に向かって両手の手のひらを突きだし、青白い光弾を放出させた。老婆は死んだ。


貴音「雪歩、元の世界に戻っても、“私”と仲良くしてくださいね」


そう言って四条さんは去っていった。


ミステリアスってスゴイ。私は初めてそう思った。




















雪歩「……夢か」


元の世界には戻っていなかった。

◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


……


雪歩「小鳥さぁぁぁん!」ダキッ


小鳥「わぁっ! どうしたの雪歩ちゃん?」


雪歩「お久しぶりです小鳥さんんん!」グスッ


小鳥「お久しぶりって……まさか、あの雪歩ちゃん!?」


雪歩「はい、その雪歩ですぅ。団結2015の雪歩ですぅ!」


小鳥「よしよし。最近、別世界の私と会わなかったから、心細かったのね」


雪歩「もう邪神崇拝はしたくありません……」グスッ


小鳥(いったいどんな世界を渡り歩いて来たんだろう)

春香「ふたりでなに話してるんですか?」


雪歩「あ、春香ちゃん」


小鳥「ああ、えーとその、これは……」


春香「ひょっとして、並行世界の話ですか?」ニヤ


雪歩「え!?」


小鳥「なぜそれを……!?」


春香「ふっふっふ……なんと私は、別の世界から来たのです! 雪歩を救うためにね」


雪歩・小鳥「!?」

……


無限に存在する並行世界。無限に存在する故に無限の可能性がある。


この世界の春香は科学者だった。


この春香に『雪歩に相談された春香』の記憶が混在したことは、無限の可能性の中から起きた奇跡か、それとも無限の可能性故に、このような事象の世界があって当然なのか。


春香は、この世界においては見ず知らずの雪歩を救うために研究を始めた。


……


翌日、春香は雪歩の記憶をなくしていた。


混在していた記憶が整理され、正常な状態に戻ったのだ。


しかし春香は前日の日記から状況を把握。研究を続けることにした。


……


春香は雪歩の意識を元の世界(便宜上『団結世界』と呼ぶことにする)に戻すだけで済まそうとは考えていない。


団結世界の雪歩の体は、①植物状態、②別の意識が憑依、③死亡、のいずれかであると考えられるが、いずれにしても団結世界に戻ったあとの雪歩には厳しい状態だ。


理想は、団結世界の意識が飛んだ日に戻すこと。まるで今までの体験が夢であったかのように、目覚めると団結2015を収録した翌日にいること。


または意識が飛ぶ原因と思われる、頭を打つ前の体に戻すこと。


春香は体と意識を繋ぎ止める研究と並行して、並行世界を横断する方法、そして時間を遡行する方法を研究した。

……


春香「そうして長い年月の末、私はここに辿り着いたの」


雪歩「春香ちゃぁぁぁん!」ダキッ


春香「よしよし」


小鳥「長い年月ってどのくらい?」


春香「う~ん、200年くらいですかね」


雪歩「そんなに!?」


小鳥「まって。それだとあなたが生きた時間と私たちが生きた時間が合わないわ。私たちは雪歩ちゃんが頭を打ってから数ヶ月しかたってないけど、あなたにとっては200年以上経過したというの?」


春香「時間を遡行してきたんです」


雪歩「遡行って?」


春香「つまり未来からきたの」

小鳥「でもあなたは、私が――この世界の私がよく知る17歳の春香ちゃんだわ。とても200歳以上には見えない」


春香「タイム・トラベルの際も、並行世界を越える際も、肉体ごと移動したわけじゃありません。最初はそれを目指してたんですけど無理でした。時間を超えられるのは意識だけだったんです。少なくとも私の研究のうちでは」


雪歩「どうして肉体は時間を超えられないの?」


春香「肉体は光の速度を超えられないから」


雪歩「?」


春香「光よりも速く動くと過去へ行けるのよ」


小鳥「意識はそれが可能だと?」


春香「はい。新幹線の名前を思い出してください。こだまより速いのは?」


小鳥「ひかり」


春香「ひかりより速いのは?」


小鳥「のぞみ……あ」


春香「そう。この『のぞみ』とは意識のこと。実は、光速を超えるものは意識だと、昔から知られていたんです」

春香「例えば雪歩、月面を想像してみて」


雪歩「うん」


春香「じゃあ月にいる自分を想像してみて」


雪歩「うん」


春香「月にいる自分を想像するのに何秒かかった?」


雪歩「そんな何秒もは……一秒くらいかな?」


春香「多分、もっと早かったと思うよ」


雪歩「これでなにがわかるの?」


春香「光が地球から月に届くまでに、約二秒かかるの。おめでとう雪歩。あなたの意識は光速を超えたわ」


雪歩「なるほど~……ってあれ? でも過去には行ってないよ?」


春香「じゃあ雪歩、昨日のことを振り返ってみて」


雪歩「え? う~んと……」


春香「ほら、過去へ行った」


小鳥「いやそれは……」


春香「意識は過去に行くも行かないも自由自在なんですよ」


雪歩(なんだかよくわからないけど、凄い話だなぁ)

春香「――そんな訳で、最初にタイム・マシンを完成させたんですが、そのころにはもう90歳を超えてしまっていたので、何度か人生をやり直して、やっとのことですべての研究を完成させて、ここまで辿り着いたんです」


小鳥「タイム・マシンがあるのなら、未来に行って研究結果を持ち帰ったほうが早かったんじゃあ……?」


春香「私のタイム・マシンは過去にしか行けません。恐らく、今後開発されるタイム・マシンもすべて」


小鳥「なぜ?」


春香「未来なんてないからです」


雪歩「え、だって未来から来たって……」


春香「過去を振り返ることはできるけど、未来を振り返ることはできないでしょ? 過去は確定しているけど、未来は不確かなのよ」


雪歩「?」


春香「未来は観測して初めて現実になる。そして観測した瞬間からそれはもう過去なの。だから未来はない。ないところへは行けない」


雪歩「???」


小鳥「なんとなくわかったわ。シュレディンガーの猫的なやつね」


春香「その思考実験の話が果たして今適切なのかは微妙なところですけど、量子力学の話という意味ならその通りです」

雪歩「この春香ちゃんは頭よさそうだね」


春香「雪歩の中で私ってどんな扱いなの……」


小鳥「でも凄いわね。タイム・マシンを完成させるなんて」


小鳥「もし過去に戻れたら、うまくいきそうだった男の子とやり直したり、宝くじや競馬の当選番号を調べて大金持ちになったり、誰でも一度は妄想したことあるわよね!」


雪歩「ありませんけど」


小鳥「えーえーないでしょうねぇ。可愛くて家がお金持ちの雪歩ちゃんは」


雪歩「そんなー」


小鳥「そんな訳で春香ちゃん。あとでタイム・マシン貸して♪」


春香「無理ですよ」


小鳥「」

春香「ああいえ、タイム・マシンを貸すことが無理なんじゃなくて、過去に戻っても宝くじは当たらないという意味です」


小鳥「そんなー! どうして?」


春香「過去に戻った時点で、未来はまた不確かになるからです」


小鳥「未来を過去として経験しているんだから、それは確かなんじゃないの?」


春香「確かに、過去として経験した未来はすでに確定されたものです。タイム・トラベルすることも可能かもしれません。でもそれとは別の話で、観測する事象が異なると未来が変わるので、戻った過去の世界で宝くじの結果が同じになるとは限りません」


雪歩(なんだか混乱してきた)


春香「宝くじ以外に関しても言えることです。良かったことが悪くなる可能性だってあります」


春香「今まで自分が築いてきたものを無意味にしてまで、どうしてもやり直したいことがあるのであれば止めはしませんが……」


小鳥「うっ……」


春香「しんどいですよ。同じ記憶を持っての二度目の人生を歩むのって。以外にうまくいかないことも多いんです」


春香「人生は一度きりだから価値があるんだって、タイム・トラベルをして実感しました」


小鳥「あああ、もういい! もういいわよぅ! なんだか自分が惨めになってくるわ」

ちょっと中断なの

雪歩「あれ、ちょっとまって?」


春香「どうしたの?」


雪歩「意識だけが過去に戻るってことは、体は昔のままなんだよね?」


春香「もちろん」


雪歩「どうして未来から来た記憶があるのかな? 脳が昔の状態なんだから、記憶もリセットされそうなものだけど」


春香「記憶を保存しているのは脳ではなく意識ってことよ」


小鳥「雪歩ちゃんだって、別世界の体に入ってるのに前の世界の記憶があるじゃない」


雪歩「あ、そっか。……でも例えば、記憶喪失とかって脳の障害で起きるものですよね? たぶん」


小鳥「あー、確かに」


春香「多分だけど、脳の機能の中に、脳と意識を繋いで記憶をやり取りするコンバータ的な機能があるんじゃないかな」


春香「体験したことが脳を伝って、意識に記憶として保存される。また逆に、意識に保存されている記憶を脳が解析して、物事を思い出せる」


春香「脳を損傷して記憶喪失になった人は、意識から記憶を解析する脳の機能を失ったということなんだと思うんだ」


春香「ま、あくまで私の仮説だけどね。検証する気もないし」

春香「――さて! 長話が過ぎちゃったね。ついつい話し過ぎちゃうの、私の悪い癖だなぁ」


春香「という訳で雪歩。時空を超えてやって来た、大天才・天海春香さんが、元の世界に戻してあげますよ!」


雪歩「わぁ! 春香ちゃんありがとぉ!」


小鳥「これで問題解決かしらね。……そして、なんの役にもたっていない私……」


雪歩「そんなことないです! 小鳥さんは唯一の心の支えでした!」


小鳥「そう言ってもらえると救われるわぁ……」


春香「さて、それでは――」


雪歩(これで帰れる!)


小鳥(世紀の瞬間だわ!)


雪歩「……」ドキドキ


小鳥「……」ワクワク


春香「まずは開発設備から整えますか」


雪歩・小鳥「」ドンガラガッシャーン

続くなの
たぶん次で終わりますなの

◆翌日◆


雪歩「……」


雪歩(準備に日をまたいじゃダメだよ春香ちゃん)


雪歩「はぁ……」


……


雪歩「おはようございますぅ」


春香「あ、雪歩。おはよー!」


雪歩「……」ジー


春香「?」


雪歩(やっぱり、“あの”春香ちゃんじゃない……か)


雪歩「はぁ……」


春香「えぇっ!? 人の顔見て溜め息とかひどくない?」


雪歩「あ、ごめんね春香ちゃん」


雪歩「……」


雪歩「はぁ……」


春香「えぇー」

◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


◆翌日◆


……


雪歩(“あの”春香ちゃんと再会しないまま何日が経っただろう)


雪歩(もう疲れたよ)


雪歩「……」


真「雪歩ー。どうしたの、屋上なんかで黄昏て?」


雪歩「あ、真ちゃん。ううん、なんでもないよ」

真「ふーん」


雪歩「……」


真「……」


真「えいっ」ギュ


雪歩「ひゃっ!」


雪歩「ななな、なんで急に抱きしめ……!」


真「雪歩が元気なさそうだから、元気にしようと思って」


雪歩(ううっ、恥ずかしい)


真「なにかあった? ボクでよければ聞くよ」


雪歩「……信じてもらえないかもしれないけど……」

……


真「なんとも盛大な体験をしてきたんだね」


雪歩「信じてくれるの?」


真「正直、半信半疑だよ。でもそうだな……雪歩、これから時間ある?」


雪歩「うん。今日のお仕事はもうない……はず」


真「よし! じゃあ今からボクとデートしよう!」


雪歩「デート……ぅえええ!?」


真「まずはゲーセンから! さあ、しゅぱーつ!」


雪歩「ええ!? ちょ、えええ!? 真ちゃーん!?」


……


P「あれ? 音無さん、雪歩と真しりませんか?」


小鳥「さっき、デートに行くって言って出かけましたよ」


P「青春ですね~」ホノボノ


小鳥「そうですね~」ホノボノ

……


雪歩(ゲームセンターに遊園地、海……結局デートを満喫しちゃった)


雪歩「楽しかったぁ」


雪歩「私を元気づけるためにしてくれたんだよね。ありがとう真ちゃん」


真「へへっ。ボクには雪歩を元の世界に戻すことはできないけど、一緒に遊ぶことはできるからね」


真「どう? 別の世界でも楽しいこといっぱいあるでしょ」


雪歩「うん。私、帰ることばかり考えてて、楽しもうとしたことなかった」


真「帰ろうとすることは大事だと思うよ。でも、ずっとそのことばかり考えてても息が詰まっちゃうし、折角凄い能力を手に入れたんだから楽しまないと」


雪歩(そう言えば、いつかの世界で春香ちゃんにも凄いって言われたな)


雪歩「本当にありがとう真ちゃん。すっごく元気出たよ!」


真「へへっ♪」

雪歩「じゃあ名残惜しいけどそろそろ……」


真「あれ、もう帰るの?」


雪歩「うん。もう遅い時間だし」


真「むしろデートはここからが本番だよ」


雪歩「そうなの?」


真「うん。カップルがデートの最後に行くところと言えば……」


雪歩「え……」


雪歩「えええええええええ!?」///


真「じゃあゆこうか! Sey hoooooo!」


雪歩「hoooooo! ――じゃなくてぇぇぇ!」


雪歩(そんな……真ちゃんに、私のHoneyがHeartbeatされちゃう……)///


……


……


……


……


……


……

◆翌日◆


雪歩「ん……」


目が覚めると見知らぬ部屋だった。


雪歩(ここは?)


キョロキョロ


雪歩「――!?」ガタッ


雪歩(ままま、真ちゃんがいる!?)///


雪歩(ひょっとして昨日の続き? ……ううん違う。ここは――)


雪歩(病院……?)


雪歩(私はベッドに寝ていて、真ちゃんはベッドに突っ伏して寝ている。――この世界の私は病気で、真ちゃんは看病してくれてたってことなのかな?)


真「……」スヤスヤ


雪歩(はうっ! 昨日のことがあって、真にまともちゃんの顔見れないよぉ――って、落ち着け私ぃ!)

真「んぅ……」モゾ


真「朝かー」


雪歩「お、おはよう真ちゃん」///


真「!!?」


真「ゆ、雪歩……?」


雪歩「うん。雪歩だよ」


真「うわぁぁぁん!」ダキッ


雪歩「ひゃっ!?」///


真「おかえり雪歩ぉ!」


雪歩「ただいま――って、え、どういうこと?」


春香「ここはね、雪歩――」


雪歩「わぁっ!? 春香ちゃん、いつのまに」


春香「ここは団結2015の世界なんだよ」


雪歩「………………………………え」


春香「おかえり雪歩」


雪歩「……」


雪歩「……」


雪歩「……ただいま」

もうちょっとだけ続くなの

2015年中に書き上げるつもりだったんですけどね
どうしてなんだろうね

忙しすぎてなかなか進まん…

ちょっとだけ投下します

……


雪歩「ええっと、つまり――」


雪歩「あのときの未来から来た春香ちゃんが、この世界――団結2015の世界――に来て、私の魂を連れ戻してくれた、と」


春香「そ。この方法なら日を跨いでも問題ないでしょ」


雪歩「この世界の私は……私が帰ってくる前の私はどうだったの?」


春香「毎日違う世界の雪歩になってたよ」


真「雪歩が狂ったと思って怖かったよ。でも春香が事情を教えてくれたんだ」


雪歩「よく信じたね」


真「妙に頭がよかったり、未来を言い当てたりしてたからね」

春香「みんなの――特に伊織の協力が不可欠だったからね。説得するのに苦労したよ」


雪歩「伊織ちゃん?」


春香「研究とマシン開発のために、水瀬財閥に資金援助をお願いしたの」


雪歩「なるほど。――ほかのみんなにも話したの?」


真「765プロのみんなは知ってるよ。心配したんだから」


雪歩「うん……ごめんね」


雪歩「でもこれで万事解決、だね」


春香「ところがどっこい。そうはいかないんだよね」

雪歩「えっ、どうして?」


春香「雪歩の魂を呼び戻す方法はわかったんだけど、その魂を繋ぎ止める方法は見つからなかったんだ」


雪歩「えっ……じゃあ……」


春香「次に寝たらまた別の世界に飛ばされちゃう」


雪歩「そんなぁ」


春香「ふっふっふ! 私がなんのためにタイム・トラベルの研究をしたと思ってるの?」


雪歩「え? ――あっ!」


春香「魂を繋ぎ止めることが――脳を治すことができないのなら、脳が傷つく前に戻ればいい」


春香「――タイム・マシン。いつでも起動できるよ」


雪歩「……」

つづくの

雪歩「素朴な疑問なんだけど……」


春香「なに?」


雪歩「過去に戻るのは私の意識だけなんだよね? そのあとこの体はどうなるの?」


真「確かにそれは気になるね。怖い話だけど、意識のない抜け殻になってしまうのか、また別の雪歩の意識が憑依するのか、過去に戻った雪歩から続く意識になるのか。……最後のが一番しっくりくるかな」


雪歩「でも過去に戻った私はケガをしない――脳の例の部分が傷つかないから、未来が変わって今のこの世界には辿り着かないはずだよね」


真「あそっか。じゃあ雪歩がケガをしなかった世界が生まれて、ケガをした世界はそのままとか」


雪歩「どういうこと?」


真「パソコンで例えると、“現在フォルダ”の中にある“雪歩の意識”というファイルが、“過去フォルダ”にコピーされて、コピー元のファイルは“現在フォルダ”に残ったまま、両方のフォルダが運用され続ける……ってこと」

雪歩「もしそうだとしたら、それって解決になってるのかな? 過去にコピーされた私の意識は助かるけど、現在に残されたままの私の意識は助かってないってことだよね」


雪歩「それならまだマシだけど、過去に戻ったと思ったら実は新しく生まれた並行世界だった、なんてことになったら……」


春香「その場合、過去に戻った雪歩も助かってないね。今まで通り別の世界に飛んだだけっていう」


雪歩「うぅぅ……。考えれば考えるほど暗い方向に考えちゃうよぉ」


春香「もっと単純に、未来が変わるって考えにはならない?」


春香「この世界の過去に戻るんだから、この世界の現在が修正されるんだよ」

雪歩「あっ」


真「あー。春香から並行世界の話を聞いてたから、難しく考えすぎちゃってたかも」


春香「そんな私のせいみたいに言わないでよ」


真「あはは。ごめんごめん」


真「――あれ?」


雪歩「どうしたの真ちゃん?」


真「春香の言うように現在が変わるんだとしたら、ボクや春香はどうなっちゃうんだろう?」


真「自分自身の成長や仲間との絆……今まで培ってきたものが、なかったことになるのは辛いな……」


真「それに春香。別の世界の別の時代から来た春香はどうなるんだろう?」


雪歩「そうだよねぇ。春香ちゃん、どうなるの?」

春香「……雪歩がそれを心配する必要はないよ。雪歩の観測対象が現在から過去になるから、現在が過去に戻った雪歩に影響を及ぼすことはない」


真「……回りくどくてわかりづらいけど、要は雪歩には不利益がないから気にしなくていいよってことか」


雪歩「私はいいけど、真ちゃんや春香ちゃんたちは……」


真「そうだよ春香。ボクも気になってるんだって」


春香「……」


雪歩「春香ちゃん」


真「春香」


春香「……」


春香「ソ、ソレヲシンパイスルヒツヨウハナイE」


真「あーっ、わからないんだな! 雪歩が過去に戻ったあと、ボクたちがどうなるかわからないんだな!」


雪歩「ひょっと考えてなかったんじゃ……」


春香「うるさいなぁ! 天才春香ちゃんだってなんでも知ってるわけじゃないんだよ!」


真「うわ、居直ったよ」

春香「歴史が新しくなっても同じぐらいの努力してるでしょきっと。それが自然なことなら」


春香「私も多分、元の世界の元の時間に帰るんじゃない? 知らないけど」


春香「――さ。もういいから過去に戻るよ雪歩! ――はい、このヘルメットを被って!」ガポッ


雪歩「はわわっ!」


真「これがタイムマシン? 持ってきてたんだ」


春香「時間を設定して……スイッチオン!」ピッ


雪歩「え、ちょ――」


雪歩「……」


雪歩「ありがとう春香ちゃん。真ちゃん。みんなにもよろしくね」


春香「どういたしまして。みんなによろしくする余裕があるかは、わからないから……帰ったあとのみんなによろしくね」


真「そっか。一瞬でこの世界が書き変わるかも知れないんだ」


真「ボクからも言うよ春香。ありがとう。雪歩だけじゃなくて、ボクたちも春香のおかげで――――――――――――」


歴史は変わった。

>>179
雪歩「ひょっと考えてなかったんじゃ……」

↓↓↓修正↓↓↓

雪歩「ひょっとして考えてなかったんじゃ……」

はたして雪歩は無事過去に戻れたのか!?
続くなの

副業の転職活動で忙しくて遅くなりました(言い訳)
続き投下します

◆2015年12月7日 朝◆


雪歩「ぅぅ~ん……」ムニャムニャ


雪歩「――はっ!」ガバッ


雪歩(カレンダー!)


雪歩(今日は……2015年12月7日。戻ってきたんだ……本当に)


雪歩(ううん待って。まだ浮かれるのは早い)


雪歩(この世界が本当に元居た世界の2015年12月7日なのか見極めなきゃ)


……


P「団結2015を収録するぞー」


雪歩「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」


P「うおっ!?」


P(雪歩、そんなに団結好きだったのか)


伊織「もう2015年終わろうとしてるのに今更?」


雪歩「そんなこと言わずに歌おうよ伊織ちゃん!」


伊織「別に歌わないなんて言ってないわよ。それにしても凄いやる気ね雪歩」


雪歩「えへへ♪」

……


雪歩(収録は無事に終わった。どこも怪我してない!)


真「雪歩、おつかれ」


雪歩「あ、真ちゃん。お疲れ様♪」


真「今日機嫌いいけど、なにかいいことでもあった?」


雪歩「……」


雪歩「んっと、まじめな話なんだけどね……」


……


雪歩「――ってことがあったの」


真「は、はあ……」


雪歩「ひょっとして信じてない?」


真「話が途方もなさすぎてね。でも嘘を言っているようには見えないし、半信半疑だよ」


真「本当だったら凄い経験だね」


雪歩「本当なんだってばぁ!」

雪歩「それに、もう二度と経験したくないよぉ」


真「あはは、そうだね」


真「それにしても、凄い話だなぁ」


真「……あれ?」


雪歩「どうしたの?」


真「その話が本当だったとしたら――」


真「小鳥さんって何者?」


……


◆その日の夜、雪歩の部屋◆


雪歩(真ちゃんの言った通り、小鳥さんって何者?)


雪歩(なんで並行世界の記憶を共有してるんだろう?)


雪歩(ひょっとして、小鳥さんも私と同じように、頭悪くしちゃったのかな?)


雪歩(いやいや、この言い方はよくない)


雪歩(小鳥さんも頭ケガして脳に障害が……?)


雪歩(明日聞いてみよう。明日……)


雪歩「……」Zzz


……

ピピピピ ピピピピ


雪歩「ん……朝……」


千早「おはよう雪歩」


雪歩「おはようございま――」


雪歩「……なんで千早ちゃんがここに? それに、その呼び方……」


千早「なにを言っているの雪歩。私たち一緒に暮らしてるんじゃない」


雪歩「え………………」


雪歩「――!?」


雪歩「千早ちゃん! 昨日、団結2015の収録したよね!?」


千早「団結? なんの話かしら?」


雪歩「……そん、な……」


雪歩「ぁ……ぁあ………」


……


◆翌日◆


雪歩「ひいいいいいいいいいいいい!」ガバッ


雪歩「はぁ……はぁ……夢?」


雪歩「うっ……うぅぅ……よかったよぉ……」


春香「どうしたの雪歩ちゃん! 怖い夢でも見たの!?」


雪歩「うん。それが………………………え?」


雪歩「――――――――――――」

◆◆◆


小鳥「世の中には、知らないほうがいいこともあるのよね」


小鳥「ああ、可哀想な雪歩ちゃん」


ガチャ


高木「やあ音無くん。萩原くんの様子はどうだね?」


小鳥「せっかく元の世界に戻ったと思ったのに、また並行世界に飛んじゃって錯乱しているんじゃないでしょうか」


高木「なにぃ!? うーむ。戻りたがっていたから似た世界を創ってあげたんだが、逆効果だったか」


小鳥「ずっとその世界に居られるならいいんですけどね」


高木「しかしねぇ、似たような世界ばかり続けていては新たな物語が生まれなくなってしまう。基本的に同じ似た世界は創らないつもりだよ」


高木「それに、まったく同じ世界を創ろうとしても、できないしね」


小鳥「そうですね。変に期待させないほうがよかったかもしれません」

高木「脳の――いや、意識の障害を治してあげるのが一番なんだがね。残念ながら我々にその術はない」


小鳥「いっそ私たちの側に引き込むというのは?」


高木「うぅ~む……世界の秘密を教える……か。どちらがマシだろうね」


小鳥「驚くでしょうね――」


小鳥「本当は並行世界なんて存在しないって知ったら」


高木「世界は常に一つだ。昨日と今日、今日と明日は繋がっていないし、記憶は毎日、新しい世界にとって都合のいいものに上書きされる」


高木「故に、経験や記憶といったものは意味をなさない。努力は無意味だ。人生は無価値だ」


高木「団結2015の世界で積み上げたものなどない。あの世界は一日しか存在しなかったのだから。その日に生まれてその日に死んだ。ほかの世界も同じ」


高木「そのことを知ってしまうほうが、よほど残酷だと思うがね」


小鳥「……そうですね。すみません。失言でした」


高木「いやいや、音無くんは優しいだけだよ」

小鳥「じゃあ、雪歩ちゃんは……」


高木「可哀想だが、これからも孤独な思いをしてもらうことになるな」


高木「解決策が見つかるまで。あるいは永遠に」


小鳥「……」


小鳥(きっと永遠になるんだろうな)


……


……


……


◆いつか◆


P「団結2016を収録するぞー!」


美希「ミキの名前は星井美希♪ 15歳だから結婚できるよ♪」


美希(――――あれ?)


おわり

読んでくださった方、ありがとうございました
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