グラン「燃え尽きちまったよ……真っ白にな……」テレーズ「…………」 (42)

グラン「からっぽさ…もう何にも残っちゃいない…」

グラン「尽き果てたよ……精も、根も……メダルも、ルピも……」

テレーズ「……服も、残ってないですもんね……」

グラン「…………」

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グラン「こうして、夜風にあたりながら、星空を眺めているとさ。まるで随分と昔のことのように、思えるんだ……」

グラン「上だ下だのと、数字に勝手な優劣をつけて……」

グラン「絵柄を揃えるだけなのに、網膜に焼き付くほど回転するドラムを凝視して……」

グラン「転がってきた球体の数字に、罵詈雑言を吐きかけて……」

グラン「燃え盛るほど熱く、興奮し、一喜一憂したあの瞬間が……」

テレーズ「……実際は、ついさっきのことですもんね……」

グラン「………」

グラン「テレーズ……俺は、間違っていたのかな?」

グラン「ただ……皆に喜んでもらいたかった。こっそりとアナトを手に入れて、驚く彼らの顔が見たかった」

グラン「あわよくば、あのアホみたいな必要メダル数の銃も、手に入れちゃったりなんかしてさ……」

グラン「マグナアニマなんかも、限界数まで、全種類とっちゃたりしてさ……」

グラン「たった、それだけのことだったのに。その願いすらも、間違っていたのかな……?」

テレーズ「間違っていたのは多分、20人ルームで最大ベットし続ける、あの無茶な賭け方だと……」

グラン「…………」

テレーズ「あの……寒くありませんか?」

グラン「……寒いよ。凍えそうだ」

テレーズ「なら……その、騎空挺に帰るまでの上着なら貸しますから……」

グラン「……暖かかったんだ」

テレーズ「……え?」

グラン「ここに来た時はさ、暖かかったんだ。身も、心も、……懐も」

グラン「気前の良い貴族からの依頼があってさ。期待以上の成果を上げてくれたって、どんと5万ルピ、支払ってくれたんだ」

グラン「それに、こつこつと貯めてた小遣いの、5万ルピを足してさ」

グラン「計10万ルピ。全部メダルに変換して、五千メダル」

グラン「……ドキドキしたよ。これがこれから、どのくらい増えるんだろうって。勝ち方次第では、本当にジュエルリゾートモデルも、夢じゃないぞって」

グラン「まだ見ぬ未来に、打ち震えていたんだ」

テレーズ「………」

グラン「でもさ、今になって、思えば……浮かれてたんだよな」

グラン「カジノはいつもキラキラしていてさ。朝も夜もなく、眩い装飾と電飾に彩られていてさ」

グラン「客も賑やかで、歓喜の声がそこかしこから聞こえていて」

グラン「自分のそのうちの一人になれるぞって、理由もなく思っちゃってたんだよな……」

テレーズ「……まぁ、その、カジノってそういう場所、ですからね」

グラン「それでも最初は、慎重になってたんだ。まずはポーカーの2カードで手堅く稼ごうって。
     ここで勢いに乗ってから、ジャックポットやスーパービンゴを目指そうって」

グラン「そう思ってポーカーを始めたらさ……アホみたいについててさ」

テレーズ「………」

グラン「役はすぐに出るし、ダブルアップも、ほとんど失敗なしだし」

仕事から帰ってきたので続き書きます。
ところで、職場でスタレジェ引いたらマギサさんをお迎えできました。
本音は死ぬほどナルメアお姉ちゃんが欲しかったんですがガンダゴウザじゃなかったので許す。

グラン「難しい勝負の時も、ええいままよ!ってな感じで賭けたら、勝てちゃったりするのが続いたし」

グラン「五千枚のメダルが、みるみるうちに増えてさ。1時間もするころには、50万枚に増えてた」

グラン「……イケるぞって思った。今日は勝負の女神がついてるって。負け無しだぞって、強気になった」

グラン「…………ツキすぎて、いたんだ」

テレーズ「……だから、あんな賭け方を……」

グラン「びっくりしたよ……ポーカーで勝ちまくって稼いだメダルが、たった三回のベットで、パーだ…」

グラン「一時間勝ちまくったメダルが、10分かそこらで、パーだ」

グラン「……あまりの無常に、泣きそうになったよ……」

テレーズ「………」

グラン「それでも、1000枚とちょっとは手元に残った。保険として、ポーカーでまた稼げるだけのメダルは、残してたんだ」

グラン「また100枚ポーカーから出直しだって。今度は、ジャックポットを狙うぞって。そう思った」

グラン「……1000枚のメダルは、30分かそこらで、50枚足らずになった……」

テレーズ「……あっ」

グラン「ひどいもんだよな……最初は勝たせておいて、流れを逃したら、あとは真っ逆さま」

グラン「立ち直る余裕も与えない。弱者は弱者らしくしてろって。貧乏人が夢見てんじゃないぞって。そう、勝負の女神に言われたような気がした」

テレーズ「それは……ちょっと被害妄想が過大なんじゃ……」

グラン「でも、そこでへこたれないのが、俺の良い所だ」

テレーズ「……自分で言っちゃうんですね」

グラン「惨めなのは慣れてる。あとはどこまで這いつくばれるかだ。そう思った俺は……フロア中を這いずりまわって、落ちているメダルを集めた」

テレーズ「……うわぁ」

グラン「みんな結構気づかないもんでさ。スロット台の下や、壁際なんかに結構落ちてた」

グラン「大勝してる奴が、目の前でぽろっとメダルを落としたのに気づいてなくて、急いでメダルを足で踏んで隠して、あとでこっそり拾ったりもした」

グラン「……見てろよって。1メダルに笑うやつは、1メダルに泣くんだ。俺はここから這い上がるんだって、己を奮い立たせた」

テレーズ「……私の予想以上に、ひどかったんですね」

グラン「一時間もしたら、メダルが500枚にまで貯まった。心もとないけど、復活するには十分な枚数だった」

グラン「ポーカーはダメだ。勝利の糞ビっ……女神が、もう勝たせてくれないと、思った」

テレーズ「今、すごい汚い言葉、いいそうになりませんでした……?」

グラン「……スロットだ。スロットなら、己の眼力でなんとか稼げる。幾度の戦場を駆け抜け、敵の刃を見切ってきた俺なら、
     ドラムの回転を見切る程度、わけないと思った」

グラン「それでジャックポットでも当てれば、形勢逆転、一転攻勢。この夜の勝者は俺だ、……そう、思ったんだ」

テレーズ「……あの、多分致命的に、あなたの性格がギャンブルに向いてないと……」

グラン「20分後。手元には、一枚のメダルも残っていなかった……」

テレーズ「……綺麗に予想通りすぎて、逆にすごいと思えてきました」

グラン「泣きそうになったよ。というか多分、泣いてたんだろうな……後半、回転するドラムが、随分と滲んで見えづらかったんだ」

グラン「隣の台に座ってたオッサンも、いつの間にかいなくなってた。多分、そもそもそこらへんの台が、良くなかったんだろうな……」

テレーズ「……いや、急に泣き出したことにドン引きして、離れていったんじゃ……」

グラン「世の無常を呪った。世界の終わりを垣間見た。……俺以外勝ってるやつ皆吹き飛べって、思った」

グラン「でも……それでもまだへこたれないのが、俺の良い所だ」

テレーズ「それはもう……短所というべきなのでは……?」

グラン「引けなかった……待っている仲間のためにも、お金を貸してくれた、アギエルバのためにも、負けたまま終わるわけにはいかなかった……」

グラン「……ルピを貸りるとき、アギエルバは言った。『グラン、お前が人の金で勝つとは思えねぇ。貸すのはいいが、やめておけ』って」

グラン「だから、俺は言ってやった。『大人しく貸しなさいよ。勝ったメダルで、娘さんの靴買ってやるから。いつも裸足で、寒そうにしてるから』って」

グラン「倍返しだ、俺は倍返しのグランだって、そう、言ってやったんだ。……結果として、恩を仇で返すことに、なるけどさ……」

テレーズ「……ギャンブルで、借金……」

グラン「このままじゃ終われない。だけど、もうメダルもルピも無い」

グラン「だから……大勝負に出ることにした。入るのは20人ルームビンゴ、もちろん最大ベット」

グラン「何位だろうと上がれば、未来が見える。負ければ、そこで絶望のどんぞこに落とされる」

グラン「対価は――――――俺のダークフェンサー装備、一式だった」

テレーズ「………もう、結果は聞かなくても、わかりますね……」

グラン「……ひどいもんさ。負けた瞬間、四方から取り囲むように、黒いスーツを着た厳ついドラフ共が襲ってきた」

グラン「俺ただやられるわけにはいかない。そのために、ダークフェンサーの装備をしてきたんだ。グラビティ、スロウ、ミゼラブルミスト、思いつく限りの抵抗を、した」

グラン「だけど、だも。スロウも、グラビティも、単体。ミゼラブルミストは全体だが、ダメージ自体は無い」

グラン「七、八人で迫ってくる屈強なドラフ族には、時間稼ぎにも、ならなかった……」

テレーズ「……思いつく限りの、最悪な抵抗ですね」

グラン「……あっという間だったよ。気付いたらもう、パンツ一丁になっていた」

グラン「ダークフェンサーの装備って、けっこう厳つくて、脱がしづらいはずなのに」

グラン「まるで脱がすことを生業にしてきた本職のプロみたいに、十秒とかからず、俺はパンツ一丁になっていたんだ……」

テレーズ「……別に、本職では無いと……」

グラン「でも、それでもまだへこたれないのが俺の良い所だ」

テレーズ「……はい、そうですね」

グラン「こうなったら、営業妨害してやろうって。パンツ一丁の青年がフロアの真ん中で体育座りしていたら、どんだけ邪魔になるだろうって。
     もう手元に何も残ってないけど、俺が居たという爪跡くらいは残してやろうって」

グラン「一番迷惑になりそうな場所で、人目も気にせず、俺は体育座りの姿勢をとったんだ」

グラン「……あっという間だった。十秒も経たないうちに、黒いスーツ姿の厳ついドラフ共がやってきて、俺を取り囲んだ」

グラン「そして、息もつかせぬ間に、ジュエルリゾートの外へ放り出した。……体育座りを、維持させたままで」

グラン「そして……今に至るんだ」

テレーズ「……今は、何を?」

グラン「俺はへこたれないからな。こうやって、カジノの前で敗北者の姿を晒すことで、これからカジノに入っていく人たちに、
     ああはなりたくないからやめておこうって、感じさせる妨害作戦に出てる」

テレーズ「……はい。貴方のへこたれなさは、もう長所どころか英雄レベルです」

グラン「このままグランサイファーに帰ってもさ、裸で磔になる運命なんだ。だったらもう少しだけ、ここで夢の息吹を、感じていたい」

テレーズ「………」

テレーズ「私、『カジノの前の変態をどうにかしろ』ってクリス様に命令されて、来たんですよね」

テレーズ「『別にそんなことで影響を受けるわけじゃないが、品格が下がる』って」

グラン「………」

グラン「……そう、か。そうだな。こんなことしても、無駄なんだよな」

グラン「いっそ、一思いに、やってくれ。俺も、どうせやられるんなら厳ついドラフより、バニー姿の女性の方が、ずっといい」

テレーズ「……そう言われると、やる気がいっきに削がれますね」

テレーズ「………」

テレーズ「実は、私はずっと、貴方がギャンブルに打ち込む様子を、見ていました」

グラン「……え?」

テレーズ「職業柄、ギャンブルで破滅する人は星の数ほど見てきました」

テレーズ「そういう人は大体、賭ける前からわかるんです。端から自暴自棄だったり、見えない『何か』に、いつも祈っていたり」

テレーズ「だから、貴方がここに来た時も、すぐにわかりました。きっと深みにハマる人だって」

グラン「…………」

テレーズ「でも……そういう人たちと貴方は、少しだけ違っていました。……ずっと自分を信じて、前だけを見てた」

テレーズ「絶望しても、どうしようもなくても、すぐに立ち直って、顔をあげていた」

テレーズ「そんな貴方を、いつしか応援している自分がいることに、あとになって気付きました」

グラン「……テレーズ」

テレーズ「……諦めないでください。また、イケるって根拠のない自信を持って、立ち上がってください」

テレーズ「……そんな貴方を、またこっそりと、応援させてください」

グラン「……」

テレーズ「ジュエルリゾートは、いつでも待っています。朝も、昼も、夜も。貴方がまた、希望と夢を抱いて、現れるのを」

グラン「……………」

そして彼は、勢い良く立ち上がった。
そこには力強さがあった。芯があった。溢れ出る、生命の息吹があった。

―――ああ、そうだ。この姿こそが、私の応援していた彼。
ビンゴに裏切られ、ポーカーに吸われ、スロットに搾り取られ、それでもなおへこたれなかった、勇ましい騎空士の姿。







「テレーズ―――」

彼はゆっくりと振り返る。
その表情に絶望は無い。ここに来た時と同じ、果てしない夢への憧れと希望だけがある。




「――――――共闘寄生、してくる」





そう言い残し、彼は去っていった。
パンツ一丁で、通りがかる人らに奇異の目を向けられながら。
―――その後、彼が再びジュエルリゾートを訪れたのかは、誰も知らない。

はい。終わりです。カジノの闇を書きたかったので投下しました。
SB出たレスがわさわさ出てて職場で哀しみに包まれたのはここだけの話。

あと書き忘れていましたがキャラ崩壊がひどいです。多分テレーズってこういうキャラじゃ、ない。

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