緑輝「高坂さんの髪に半額シールが付いてます!」麗奈「……?」 (29)

※響け! ユーフォニアム短編
※2016年4月23日 劇場版公開決定←New!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1449069532

緑輝(今日もみどりたち吹部は、早朝から朝練です!)

緑輝(『朝早くから辛くないの?』と言われることもありますが、みどりは朝練大好きです!)

緑輝(澄み切った空気……小鳥さんたちのさえずり……)

緑輝(早朝の街並みを歩いていると、心がすがすがしくなるのです)

緑輝(『早起きは三文の徳』とはよく言ったものですね)


緑輝(ちなみに三文とは現在のお金で数十円にしかならないそうですが)

緑輝(その代わりにお金では買えない……とっても素敵なものが得られると、みどりは思っています)


緑輝(そんなことを考えているうちに、学校が見えてきました)

緑輝(……おや?)


麗奈「……」スタスタ


緑輝(あれは、わが吹部のトランペットのエースであり久美子ちゃんの友だち、高坂さんですね!)

緑輝(みどりの友だち久美子ちゃんと、とっても仲がいい高坂さん)

緑輝(音楽に対してとってもストイックな彼女)

緑輝(ぜひみどりも仲良くなりたい! 音楽について熱く語り合いたい!)

緑輝(そんな思いを抱えながら早数か月)

緑輝(『友だちの友だち』以上に距離を詰められないまま、ずるずると来てしまいました)


緑輝(みどりは決して人見知りだというわけではありませんが)

緑輝(才色兼備で文武両道、ボンキュッボンのナイスバディに世界が嫉妬するサラサラロングヘアーと)

緑輝(天から二物も三物も与えられたような彼女の放つオーラには、易々と近づけません)

緑輝(それでも、久美子ちゃんの話を聞いていると、実は結構優しい人のようで)

緑輝(きっかけさえあれば、すんなりと仲良くなれる気がするのです)


緑輝(同時に、あまり絡むことなく数か月過ごしてしまったので、きっかけがなければ今更距離を埋めづらい、ということでもあります)

緑輝(この先、あまり絡みのない期間が長ければ長くなるほど、ファーストコンタクトの壁は高くなるばかり)

緑輝(今日こそ何かきっかけが……きっかけがほしい!)

緑輝(なんてことを考えているうちに校門を過ぎてしまいました)

緑輝(やっぱり今朝もダメなのでしょうか……)



麗奈「……」スタスタ



緑輝(……おや?)

緑輝(高坂さんの髪に何か……シールのようなものが付いているのが見えます)


緑輝(あれは……なんと!)

緑輝(『半額』と、確かにそう書いてあります!)

緑輝(才色兼備で文武両道、ボンキュッボンのナイスバディに世界が嫉妬するサラサラロングヘアー!)

緑輝(それらすべてを兼ね揃えたあの高坂さんが、まさかの半額!)

緑輝(これは朝から大事件ですよ!)

緑輝(きっとこれは、天がみどりに与え給うた絶好の機会!)


緑輝(『高坂さん、髪にシールが付いてしまってますよ』)

緑輝(『あら、ありがとう』)

緑輝(『今剥がしますね……わあ、高坂さんの髪って、絹織物のようにしっとりしてますね』)

緑輝(『……そんなに褒めても、何も出ないよ』)

緑輝(『どんなシャンプー使ってるんですか? みどりは毎朝自らのモワモワヘアーと闘っているので、ぜひ知りたかったんです』)

緑輝(『えーとね……』)


緑輝(これなら繋がります! 会話が! そして2人の友情の絆が!)

緑輝(そうと決まれば川島みどり! いざ参りますよ!)

緑輝「あの、高坂さ」



「高坂さん、髪に何か付いてるよ」



麗奈「?」

葉月「何これ……半額シール?」

麗奈「あ……」

麗奈「今日時間がなくて調理パンですませたから……そのときに付いたのかも」

葉月「そっかー、あ! でもこれじゃ高坂さんが半額みたいだね!」ハハ

麗奈「え」

葉月「買っちゃおうかな~」


麗奈「……半額でも、高いよ?」

葉月「いくら?」

麗奈「10億円」

葉月「高ー!」

アハハ フフフ


緑輝(……)

緑輝(くぅ~~!)


葉月「じゃあまたあとでー!」

麗奈「うん、また」

葉月「……あ、みどりいたんだ! おはよー!」

緑輝「くぅ~~!」

葉月「……?」

次の日


緑輝(今日も今日とてみどりたち吹部は、早朝から朝練です!)

緑輝(季節は夏……街路樹の若葉は成長著しく、毎朝見るたびにその色は深みを増し、大きく育っているのがわかります)

緑輝(みどりたちも大会に向けて、この若葉たちのような急成長を遂げたいものです)

緑輝(そのためには毎朝の練習が欠かせません!)

緑輝(朝早く起きるのは辛いときもありますが、この辛さは絶対に、無駄にはならないと信じています!)

緑輝(……おや?)


麗奈「……」スタスタ


緑輝(あれは……今日も黒髪が麗しい、久美子ちゃんの親友の高坂さんですね!)

緑輝(昨日は折が悪く仲良くなるきっかけを逃してしまいましたが、きっとまたチャンスは訪れるはずです)

緑輝(きりっとした凛々しい表情が魅力の高坂さんですが、久美子ちゃんによると、笑顔がとてもかわいいそうです)

緑輝(私はまだ、高坂さんの笑顔らしい笑顔を見たことがありません)

緑輝(心からの笑顔とは、その人の幸福の証)

緑輝(ともに幸せな時間を分かち合うような、そんな友達になれたらいいなとみどりは思います!)


緑輝(なんてことを考えているうちに、校門を通過してしまいました)

緑輝(今日ももしかしたら良いきっかけが、などと期待してしまいましたが)

緑輝(運命の神様もそこまで気前はよくなかったようです)

緑輝(今日のところは仕方がありませんね……おや?)


麗奈「……」スタスタ


緑輝(高坂さんの肩に何やら……動くものが見えます)

緑輝(あれは……なんと!)

緑輝(毛虫! それも大きい!)

緑輝(透き通るような白い肌……われらが日本の誇る宝、大和撫子の首筋が、いけない虫に蹂躙されようとしています! これはいけません!)

緑輝(昨日に引き続き、朝から大事件ですよ!)

緑輝(きっとこれは、運命の神がみどりに与え給うた2度目のチャンス!)

緑輝(神よ、あなたはみどりの想像を超える太っ腹であらせられたのですね!)


緑輝(『高坂さん大変です! 肩に毛虫が付いてますよ!』)

緑輝(『え……ひっ! と、取って! お願い!』)

緑輝(『この悪い毛虫さんめ! 高坂さんから離れるのです!』ポイ)

緑輝(『あ、ありがとう……川島さん』)

緑輝(『みどり、と呼んでください』)

緑輝(『みどり……』)


緑輝(こうして大和撫子の首筋は守られ、みどりと高坂さんの熱い友情物語が幕をあけるのです……まさに王道を行く筋書き!)

緑輝(さあ行くのです川島みどり! 輝かしい未来へ!)

緑輝「あの、高坂さ」


「高坂さん、肩に何か付いて……きゃあっ!?」


麗奈「?」

優子「け、けけ毛虫! 毛虫ついてる! 毛虫!」

麗奈「……!」

優子「ああああ! 危ないいい! 首の方に向かってるう!」

麗奈「……どこですか」

優子「肩肩肩!」

麗奈「……?」クル

優子「逆逆逆! 右右右!」

麗奈「……ああ」

麗奈「……」ヒョイ


優子「きゃあああ!? なんで素手で持ってんのよぉぉぉ!? 毒あるでしょ毒!」

麗奈「……これ、毒の無い種類ですよ」

優子「な、なんでそんなの知ってるの!?」

麗奈「昔、図鑑で読んだので……」

優子「っていうか毒が無くても素手はないでしょ普通!」

麗奈「そうですか?」

優子「そうよ!」

麗奈「よく見ると愛嬌のある顔ですよ、ほら」

優子「きゃあああ! 近づけないでよ!」

ギャーギャー


緑輝(……)

緑輝(くぅ~~!)


優子「無理無理無理! 毛虫は無理だからー!」ダッ

ドン

緑輝「あいた!」ドテー

優子「あ、ご、ごめん! もう、高坂さんのせいだからね!」

麗奈「……すみません」

緑輝「……くぅ~~!」

次の日


緑輝(今日は朝寝坊をしてしまいました)

緑輝(やむを得ず、朝食を牛乳1杯ですませることでなんとか電車の時間に間に合わせました)

緑輝(お腹と背中がくっつきそうです……みどり一生の不覚)

緑輝(……おや?)


麗奈「……」スタスタ


緑輝(……)

緑輝(ななななんとー! 高坂さんのスカートがめくれあがっています!)

緑輝(スカートの裾が下着に挟まってしまい……前からだと普通なのですが、後ろからだと純白の下着が丸見えです!)

緑輝(女の子ならごくまれにやらかしてしまう、アレです!)

緑輝(3日連続で高坂さんを襲うハプニング……彼女が一体何をしたというのでしょう?)

緑輝(せめてもの幸運は、今が朝練の時間だということ)

緑輝(つまり、登校中の生徒はほとんどいないということです)

緑輝(願わくば、その真っ白な下着を晒した相手が、同性のみどりだけでありますように……)

緑輝(……おや?)


秀一「……」スタスタ

後藤「……」スタスタ


緑輝(ああああ! ここに来て背後から吹部の数少ない男子部員が!)

緑輝(これはいけません!)


麗奈「……」スタスタ

秀一「……!」

後藤「……!」


緑輝(殿方が純白の存在に気付いてしまいました!)

緑輝(乙女の貞操の危機! ここは見なかったことにしてそっと目をそらすのが紳士の心遣いですが、いかに……!)

麗奈「……」スタスタ

秀一「……」チラチラ

後藤「……」チラチラ


緑輝(殿方ぁー!)

緑輝(塚本くん! あなたは久美子ちゃんが好きなのではないのですか!?)

緑輝(後藤先輩! あなたは梨子先輩とお付き合いしている身ではないですか!)

緑輝(それそれ最愛の人が別にいながら、乙女の下着に目を奪われるなんて……)

緑輝(男性というのは、なんと業の深い存在なのでしょうか……)


緑輝(いえ、そんなこと考えている場合ではありません!)

緑輝(ここは一刻も早く、高坂さんに今の状況を知らせなくては!)

緑輝(……いいえ、焦ってはいけませんよ、みどり)

緑輝(慎重に言葉を選ばないと、かえって高坂さんに恥をかかせることになりかねません)

緑輝(もう一つの幸運は……高坂さんが恐らく背後の殿方に気付いてないということ……であれば)

緑輝(『高坂さん、あの……』)

緑輝(『……?』)

緑輝(『スカートの裾がまくれあがってしまっています……』)

緑輝(『……!//』)

緑輝(『い、今直しますね!』)

緑輝(『み、見た……?』)

緑輝(『え、ええ……すみません。でも、みどりだけしか見てないと思うので、大丈夫ですよ』)


緑輝(みどりしか見てない……これは嘘になってしまいますが、高坂さんの乙女心を守るための方便)

緑輝(同時に、塚本くんと後藤先輩にさりげなくその場を立ち去ってもらうためのサインとしての役割を果たしています)

緑輝(みどりの考え着く、これが最善手です!)

緑輝「高坂さん、あの」


「高坂ちゃん、おはよー!」


麗奈「……?」

あすか「元気?」

麗奈「田中先輩……おはようございます」ペコ

あすか「んー? 元気ないなぁ」

あすか「何事もスタートが肝心だよ、高坂ちゃん! 明るい一日は明るい朝から!」

あすか「ほら、笑って!」コチョコチョ

麗奈「え、ちょ……! ふふ、やめ……!」

あすか「ほらほら! 笑顔大事!」コチョコチョ

麗奈「はふふ……! ひゃふ……!」

あすか「よし! これで元気出た?」

麗奈「……は、はい」

あすか「結構結構」スタスタ

麗奈「……?」


緑輝(……これは!)

緑輝(高坂さんのスカートの裾がもとに戻ってます!)

緑輝(恐らく、あすか先輩がくすぐったときにそっと直したのでしょう)

緑輝(……そんな方法があったとは)

緑輝(くぅ~~!)


後藤「余計なことを……」

秀一「くぅ~~!」

麗奈「……?」

次の日

緑輝(今日は朝から雨降りです)

緑輝(もちろん雨の日だって、みどりたち吹部は朝練に全力投球です!)

緑輝(雨の日の雰囲気、みどりは嫌いではありません)

緑輝(特に夏の雨は、いい感じに涼しくなって助かります)

緑輝(今日のように風もある日は、傘をさしていても雨に濡れてしまいますが)

緑輝(それもまた心地いいものです)

緑輝(……おや?)


麗奈「……ふわぁ……」スタスタ


緑輝(あれは……歩く姿は百合の花、久美子ちゃんの心の友の高坂さんですね!)


緑輝(いつもなら、うっかり背後から寄ろうものなら拳が飛んできそうな隙のない雰囲気なのですが……今日はなんだか眠そうです)

緑輝(ですが、今日の高坂さんは、何も付けていません)

緑輝(半額シールも、毛虫も……ついでに言いますと、スカートもめくれてません)

緑輝(これはこれで面白くない、なんて邪な感情を抱いてしまうみどりは悪い子でしょうか?)

緑輝(しかし、これでは話しかけるきっかけがありません……)


緑輝(などと、今までのみどりなら諦めてしまっていたでしょう)

緑輝(ところがどっこい、今日のみどりはそうではありません)

緑輝(そう……この数日間で、みどりは確信にいたったのです)

緑輝(鋼鉄のようなオーラを纏う高坂さんも、決して他人を拒絶しているわけではないのだと)

緑輝(むしろ勝手に壁を作っていたのは、みどりの方でした)

緑輝(今日こそ、その心の壁を打ち壊すときが来たのです!)

緑輝(そうと決まれば早速……)


ビュー

麗奈「……!」


緑輝()

緑輝(突然の強風……)

緑輝(……見間違いでしょうか?)

緑輝(高坂さんが、スカートの下に何も履いてないように見えたのは)

緑輝(いえ、きっと見間違いです……そうに違いありません)

緑輝(だってさすがに……ねぇ? 誰がそんなミスを犯すでしょうか? ましてあの高坂さんが……)

緑輝(『今日も高坂さんに何か異変があるだろう』などと考えるみどりの邪な心がきっと、見間違いを引き起こしたのでしょう)

緑輝(そうですよ、そうに違いありませ)


ビュー

麗奈「……」


緑輝()

緑輝(見えました)

緑輝(見事な桃が)

緑輝(どどどどうしましょう……!)

緑輝(鋼鉄オーラの高坂さんが、スカートの下はノーガード!)

緑輝(いくら睡眠不足だからと言って、こんなことがあるのでしょうか!?)

緑輝(いえ……長い人生、そのような過ちを犯してしまうこともあるのでしょう。人間ですから)

緑輝(とはいえこの状況、下手を打てば高坂さんの人生に幕を閉じることになりかねません、社会的に)

緑輝(みどりたちはここで、吹部の若きエースを失うわけにはいかないのです)

緑輝(それに同じ女性として、ここは手を差し伸べるべきところでしょう)

緑輝(……)

緑輝(しかしながら、みどりも代えの下着を持ってきているわけではありません)

緑輝(一体どのような手を打てば、高坂さんの大事なところを衆目に晒す危機からお救いできるでしょうか……!?)


ビュー

麗奈「……」


「……れ、麗奈っ!?」



麗奈「……?」

久美子「し、下着……はき忘れてない?」

麗奈「……」

麗奈「」

久美子「あの……もしかしてわざとだったり?」

麗奈「……変態!//」

久美子「そ、そんなわけないか……そうだよね」

麗奈「……////」

久美子「え、えっと……私の体操ズボン、貸そうか? 半ズボンの方……」

麗奈「……////」コク

久美子「じゃ、じゃあとりあえずトイレ行こうか……」

麗奈「……////」コク

久美子「……でもさ、私より今の麗奈の方が変態だよね」

久美子「あっ」

麗奈「~~~~!//」


バシーンッ


緑輝(……)

久美子「あ、み、みどりちゃんおはよう!」ヒリヒリ

麗奈「!」

緑輝「おはようございます、久美子ちゃんに高坂さん」

麗奈「……おはよ」

久美子「……あの、もしかして……見た?」

緑輝「……何のことでしょう?」

久美子「ああ、いや、こっちの話! じゃあまたあとでね!」

緑輝「はい!」ニコ



緑輝「……」

緑輝「くぅ~~~!」


──そして、次の挑戦が始まるのです



END

劇場版の公開日が決まったので夏に書きかけだったのを引張りだしてきた

\ \  ゝ __   |   /         ー――=彡/: :ハイ:(___):} ヽ  / /
  \ \ /   |  ′   /  ハ     }    {:_: :し':「ヽ: : 入 }./ /
             | j{    /  / }    }\  、_): : :ゝノ:(___):}ヾ
 ̄―_./  /   \{   ./   、__ }     /__ィ \ \: :し}`¨¨¨´ :.
      {     /   \ / /ー‐’//}/ー‐′ \  ー′   :,  :!  _ ―  ̄
…―--∨ {  :′    ./  ____       ____     v..}     }  }
       \{  {     斗rャ≦        ≧=yミk.  } :}     }  }   --―…
三二ニ=---ヽ j{     {/(⌒⌒)       (⌒⌒)ヾ }/   j  / --=ニニ三
         :, i{     {  \/        \/  /   /}../´ -----------
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           \ ーヘ                   / :/}厂 ̄     ̄ ― _
              り{  \     ⊂ニ⊃       イ:/        
              乂{\ 丶            イ人_(           丶
    /   /        )八__〕>―<〔./ノ        \ \    丶
.  /   / /ニ{ ̄ ̄ ̄`′ }ノ}      {、⌒ヽ/ ̄ ̄ ̄}ヽ  \ \

みどりちゃんかわいい

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