グラン「祝って欲しいんだ……」ランスロット「……え?」 (31)

グラブルSSです。多分キャラ崩壊。
SSを書くのもスレ立てするのも初めてなので容赦してください……。


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グラン「今日はさ、俺の誕生日なんだ」

ランスロット「……そう、だったのか」

グラン「ああ。もう何回目なのかは……忘れたけど、一年に一度しかない大事な日だ」

ランスロット「……そうだな」

グラン「これでもさ、そこそこ大きな団の団長でさ。団員もたくさんいるし、日頃からコミュニケーションだって欠かしてない」

ランスロット「……ルリアやダヌアとは特に、仲が良かったな」

グラン「誰かを蔑ろにしたことはないし、皆一緒に戦った大切な仲間だ。信頼だってもちろんしてる」

ランスロット「俺とも、背中を合わせて戦ったことは、一度や二度じゃないしな」

グラン「……それなのに、だ」

グラン「朝に目が覚めて、パーティーなんて大掛かりなことはなくても、おめでとうの言葉くらいはあると思ったら。
    皆『おはようグラン』って、いつもどおりの挨拶をするんだ」

ランスロット「………」

グラン「誰に会ってもだ。ルリアも、カタリナも、オイゲンも、ラカムも、ロゼッタも、イオも、リーシャも、ビィも」

グラン「皆、ただいつもと同じように、おはようって。それだけなんだ」

ランスロット「………」

グラン「もしかして、ドッキリなのかなって。後で驚かせるために、わざと忘れてるフリをしてるんじゃないかなって」

グラン「そう思ってさ、いつもどおりに過ごしたんだ。……そう思わなきゃさ、ココロが折れそう、だったんだ」

ランスロット「……辛かったんだな」

グラン「でもお昼になっても、皆いつもと変わらないままでさ。ルリアなんか特に嘘がつけない子だから、
     これでもし忘れてるフリをしてるんだったら、主演女優賞レベルの名演技でさ」

グラン「いてもたってもいられなくて、つい、ルリアに言っちゃったんだ。『実は俺、今日誕生日なんだ』ってさ」

ランスロット「……それは、」

グラン「その時の俺の気持ち、わかるか?情けないような、寂しいような、泣きたいような、辛いような、全部がごちゃまぜになった気持ちが。
     いますぐ部屋に戻って、ベッドに顔を埋めたまま明日になって欲しいとさえ、思った」

ランスロット「………」

グラン「そしたらさ、ルリアが、言ったんだ。『え?グランの誕生日パーティーは、この間しましたよね?』って」

ランスロット「……それはつまり、どういう」

グラン「俺にだってわからないよ。……してない、してないんだ。だって俺の誕生日は、今日なんだから。前もってパーティーをするはずないし、
     それにそもそも、俺にはパーティーをした憶えがない」

グラン「でも、ルリアは頭の上に疑問符が浮かんで見えそうなほど、心底不思議そうにしていてさ」

グラン「つい、『そっか。そういえばそうだったな。ごめんルリア、変なこと言った』って、そう言っちゃったんだ」

ランスロット「……団長」

グラン「ルリアに背中を向けた時さ、正直泣きそうだった。わけがわからないし、とは言ってもルリアが嘘を付くとは思えないし」

グラン「だから、もう一人だけ、と思ってさ。ビィなら、長年一緒にいるビィならと思って、会った時にまた言ったんだ。今日は俺の誕生日だって」

グラン「そしたらビィも、言うんだ。『何言ってんだグラン?それはこの前過ぎただろ?』って」

ランスロット「……それは、団長が本当に忘れて」

グラン「違う、違うんだよ……俺の誕生日は確かに今日なんだ……カレンダーも見なおしたし、日付も確認したし、絶対に今日なんだ」

グラン「でも俺以外は皆、誕生日はもう終わったって、そう言うんだ……。もう、頭がどうにかなりそうだった」

グラン「だから、この際どっちでもいいって思った。俺はただ、今日お祝いの言葉が欲しかった。パーティーやプレゼントなんて、豪勢なものは望んじゃいない。
     ただ一言、おめでとうって。誰かにそう言って欲しかったんだ……」

ランスロット「………」

グラン「だから、いろんな団員のところに行った。ダヌアも、ヴィーラも、アルベールも、ジャンヌも、パーさんのところにも」

グラン「思いつく限りの団員のとこに行って、実は俺の誕生日は今日なんだって、言ったんだ」

グラン「そしたら皆言うんだ。『冗談だろ』って。『それはこの間じゃないか』って。『パーティーは楽しかったな』って」

ランスロット「………」

グラン「……憶えがないんだ。そんなパーティー、した記憶が無いんだ。プレゼントだって、皆はしたっていうけど、一つも残ってないんだ」

グラン「彷徨ってさ。誰でもいい、団員じゃなくてもいい、ただ一言、俺の誕生日を祝ってくれる人を探して、歩きまわってさ」

グラン「そして……ここに来たんだ」

ランスロット「……経緯はわかった。団長が辛い思いをしたことも、わかった」

グラン「……そうだろ?じゃあランスロット、俺の誕生日を祝う言葉を……」

ランスロット「……ああ。その前に、一つ頼みがある」











ランスロット「この鎖を、解いてくれないか……?」

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グラン「……そういえば、なんで鎖で繋がれてるんだ?ランスロット」

ランスロット「……イザベラだ。多分、杯に何か盛られたんだと思う」

グラン「……ああ、あのお婆ちゃんか。また悪巧みしてるのか、飽きないねあの老人」

ランスロット「囚えられていたはずのイザベラが、また国を乗っ取ろうとしている……。恐らく何か、大きな組織が動いてるはずだ」

グラン「そうなのか」

ランスロット「頼む団長。どうやってここまで来たのかは、不思議でしょうがないが。今はともかく、この鎖を」

グラン「……惨めだ」

ランスロット「……え?」

グラン「……今話しを聞いてる間、今日一日の自分の行動を、思い返してさ。そしたら……なんだこれって。情けないってレベルじゃねぇぞ、って」

グラン「世界中を探しても、俺以上に惨めなやつ、いないんじゃないかって」

グラン「その上で、何か鎖に繋がれてる半裸の男を、何かよくわかんないまま助けたらさ」

グラン「……正直、惨めさで心が、押しつぶされそうだ……」

ランスロット「……別に、俺を助けたからといってそう変わるわけでも」

グラン「ギリギリ、ギリギリなんだ。今、この場面が心が潰れるか重さで歪むかの、瀬戸際なんだ」

ランスロット「いずれにせよ、ダメージは負うんだな……」

グラン「ランスロットを助けて、自分の心を修復不能なまでにすり潰すか。一旦このままにして、お祝いの言葉で心の重さをとっぱらったあと、余裕を持って助けるか」

グラン「ランスロット。どっちが、正解だと思う……?」

ランスロット「……わかった。俺が間違っていた。すまない」

グラン「わかってくれれば、それでいいんだ」

グラン「それで話は変わるんだけどさ。ランスロット、誕生日のお祝いって言ったら、なんだと思う?」

ランスロット「……プレゼントや、ケーキ、だろうか」

グラン「ああ、そうだ。特にケーキだ。ケーキは素晴らしい。見た目も華やか、食べて幸せ、祝いの場に相応しいこれ以上ないパーフェクトな一品だ」

グラン「だから、せめて自分でケーキを準備しようって。虚しさはあるけど、それよりもケーキの幸福度で身も心も満たされようって」

グラン「そう思って近場のケーキ屋さんに、行ったらさ」

ランスロット「……売り切れ、だったのか?」

グラン「……手持ちのルピが、50しか、なかった」

ランスロット「……ケーキは、買えないな」

グラン「あれれ、おかしいなって。それなりに蓄えはあったはずだぞって。よーく考えた」

グラン「そしたら、答えは案外、身近なところにあってさ」

ランスロット「何だったんだ……?」

グラン「……アーミラ、カリオストロ、レディ・グレイ、ネツァワルピリ」

ランスロット「……それは?」

グラン「彼らの共通点。一体、なんだと思う?」

ランスロット「…………あ……」

グラン「そう、最終上限解放だ。一体いくらとんだのか、俺自身もう、わからないんだ……」

グラン「毎日こつこつ貯めてさ。毎週金色とか銀色のスライムも、たくさん倒してさ……」

グラン「……でも無くなるのは一瞬だ。全部尽きて、ようやく本人は、それを自覚するんだ」

グラン「まるで信頼関係のようだって、そう思わないか?ランスロット……」

ランスロット「……そう、だな。似ている部分は、あるかもしれないな」

グラン「でも、そんな俺でも、一つだけ手に入れたものがあってさ」

グラン「蝋燭だけは、なんとか一つだけ、買えたんだ」

グラン「本当はルピが足りなかったけど、お店の人に必死でお願いしてさ。その間、情けなさのあまり涙が出てさ」

グラン「そんな俺を哀れんでくれたのか、タダで一つだけ、譲ってくれたんだ」

グラン「店主は俺をまるで、ゴミ捨て場にたかるネズミでも見るような目を、してたけど」

ランスロット「それは……厄介がっていたんじゃ……」

グラン「しかもだ。見てくれよ、この蝋燭」

ランスロット「……でかい、な」

グラン「ああ、ケーキに載せたら、スポンジが潰れてしまう大きさだ。歳の数くださいって額を地面にこすりつけたらさ、特大のを一つ、くれたんだ」

ランスロット「……特大というか、それは多分、違うことに使う蝋燭……」

グラン「……でも、これを載せるケーキは無いんだ。小さいケーキなら、もいっかい泣きながら頼んだら、くれたかもしれないけど」

グラン「この大きさの蝋燭じゃ、載せるんじゃなくて、蝋燭の下敷きになるって表現の方が、しっくりくる」

ランスロット「……そうだな。多分、ぺしゃんこに、なるだろうな」

グラン「だからさ、ランスロット……」

ランスロット「なんだ……?」

グラン「この蝋燭をさ、頭に載せてくれないか……?」










ランスロット「…………どうして、だ?」

グラン「この部屋、暗いだろ?灯りなんて一つもない。でも、だからこそ、蝋燭の灯りが一層眩く、尊く輝くと思うんだ」

グラン「……でも、地べたに置いていたら、尊さなんて感じっこない。ケーキの上だからこそ、蝋燭は明るく輝く」

グラン「……でもケーキも無いんだ。じゃあ、あとはランスロットに載せるしか、ないだろ……?」

ランスロット「……順序立てて説明したようだが、まったくもって、俺には理解できない……」

グラン「頼むランスロット……。この蝋燭を頭に載せてくれ……。そして俺の誕生日を祝う言葉が、欲しいんだ……」

ランスロット「…………わかった」

グラン「……わかって、くれたのか?」

ランスロット「……ああ。団長の頼みだ。無碍には、できない」

グラン「ありがとう……ランスロット。君は俺の……大事な仲間だ」

ランスロット「……しかし、だ。一つだけ、確認したいことがある」

グラン「……なんだ?」

ランスロット「蝋燭を灯すものは、何か持ってきているのか……?」























グラン「…………………………あ」

グラン「……今、折れた……俺の中で、決定的な何かが……折れた……」

グラン「……駄目だ……もう立てない……最初っから体育座りだったけど、もうここから復帰できない……」

ランスロット「………団長…」

グラン「こんなに苦労して、さ……惨めな思いまでして、さ……結局、ちょっとしたことで、躓くんだ……」

グラン「……俺は、たった一言。誰かから―――おめでとう、って。そう言って貰いたかった……だけなのにな……」

ランスロット「……………」

ランスロット「……団長」

グラン「……なんだ?」

ランスロット「団長の苦労は、計り知れない。パーティーも、プレゼントも、ケーキも、明るい蝋燭も、何一つ無い」

ランスロット「貴方が味わったものに釣り合うものなんて、今の俺にはとても、用意できない」

ランスロット「……だけど、だ」

グラン「……ランスロット」

ランスロット「本当に欲しがっていた、お祝いの言葉なら、渡すことが出来る」

ランスロット「こんな囚われの身の、みすぼらしい格好をした男の、何にもならない言葉だけど……」

ランスロット「こんなもので団長が救われるなら、俺は喜んで、心の底からの祝福を贈ろう」

グラン「……ラン、スロット……」

そして、ランスロットは微笑んだ。
鎖に両腕を繋がれ、自由など効かない身なれど。
言葉を紡ぐ口だけは、自由に動き祝福の言葉を述べられると。

そしてゆっくりと、少しづつ、ランスロットの口が動き――――――

はい。続きはぜひとも、グランブルーファンタジーにてイベント『亡国の四騎士』を進め、
SRランスロットを手に入れてルリアノートから誕生日ボイスを見てください。

勢いだけで書いちゃったSSですが、言いたいことは一つ。
グラブルの誕生日設定は適当にしないようにね、ってことです。
じゃないと実際の誕生日でボイスが聞けない羽目になるので……。

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